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特表2024-511713被覆され、反りをなくした基材を製造する方法
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  • 特表-被覆され、反りをなくした基材を製造する方法 図1
  • 特表-被覆され、反りをなくした基材を製造する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】被覆され、反りをなくした基材を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/14 20060101AFI20240308BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20240308BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20240308BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240308BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20240308BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
B05D3/14
B05D7/00 A
B05D3/12 C
B05D7/24 303Z
B05D7/24 301A
B05D7/24 301E
H01M4/1393
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552570
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2022056013
(87)【国際公開番号】W WO2022189492
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】102021105657.8
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519075786
【氏名又は名称】バトリオン・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Battrion AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ボジギット デニズ
(72)【発明者】
【氏名】コリー マックス
(72)【発明者】
【氏名】エブナー マルティン
【テーマコード(参考)】
4D075
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
4D075BB06Z
4D075BB07Z
4D075BB24Z
4D075BB81Y
4D075BB81Z
4D075BB99Z
4D075CA24
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB06
4D075DC19
4D075EA02
4D075EA10
4D075EA14
4D075EA19
4D075EC11
4D075EC23
5H017AA03
5H017AS02
5H017BB08
5H017BB14
5H017EE01
5H050AA19
5H050BA17
5H050CB08
5H050DA03
5H050DA07
5H050FA17
5H050GA01
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA10
5H050GA22
(57)【要約】
本発明は、ペースト(3)またはドライコーティングで被覆された基材(1)を製造する方法に関し、この方法は、箔(2)を提供することと、ペースト(3)/ドライコーティングを提供することと、被覆された基材(1)を得るためにペーストで箔(2)を被覆することと、基材(1)上のペーストを乾燥させることまたは基材(1)上のドライコーティングを固化させることと、を備え、基材(1)は、基材の提供と、乾燥および/または固化工程と、の間で搬送方向(T)に搬送され、粒子は、力場内において搬送方向(T)に対して直角に整列される。搬送工程を改善するために、基材(1)は、被覆(3)の収縮に起因する基材(1)の反りを相殺するため、乾燥/固化工程の前および/または最中に成形される(III)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にペースト(3)および/またはドライコーティングを有する、被覆された担体(1)、を製造する工程であり、
箔(2)を提供することと、
ペースト(3)および/またはドライコーティングを提供することと、
被覆された担体(1)を得るために、前記箔(2)を、前記ペースト(3)および/またはドライコーティングで被覆することと、
前記担体(1)上の前記ペースト(3)を乾燥させること、および/または前記担体(1)上の前記ドライコーティングを固化させることと、
を備え、
前記担体(1)が、前記担体の提供と、乾燥および/または固化と、の間で搬送方向(T)に搬送され、前記粒子が、前記力場内において前記搬送方向(T)に対して直角に配向される、工程であって、
前記被覆(3)の収縮に起因する前記担体(1)の反りを相殺するために、前記乾燥および/または固化の、前および/または最中に、前記担体(1)の成形(III)が行われることを特徴とする、工程。
【請求項2】
請求項1に記載の工程であって、
前記担体(1)の前記成形(III)は、前記担体(1)が、前記被覆(3)に向かって、および/または、前記被覆(3)から離間するように屈曲されるように、特に、前記湾曲面内の2つの点を結ぶ前記複数の仮想線が前記担体(1)上の前記被覆(3)の外側を通るように、前記担体(1)を屈曲させることにより行われることを特徴とする、工程。
【請求項3】
先行する請求項のいずれかに記載の工程であって、
前記担体(1)が被覆される前に、熱応答性材料が前記ペースト(3)に添加される、および/または、前記ペースト(3)が熱応答特性を有する、ことを特徴とする、工程。
【請求項4】
先行する請求項のいずれかに記載の工程であって、
前記箔(2)が被覆されるのに使用される前記ペースト(3)は、板状の粒子、および/または球状の粒子、および/または針状の粒子を含有するペーストであることを特徴とする、工程。
【請求項5】
先行する請求項のいずれかに記載の工程であって、
印加される前記力場は、局所的および/または時間的に変化可能な磁場であることを特徴とする、工程。
【請求項6】
先行する請求項のいずれかに記載の工程であって、
銅箔を含む、および/または銅箔からなる、担体(1)が使用されることを特徴とする、工程。
【請求項7】
先行する請求項のいずれかに記載の工程であって、
使用される前記ペースト(3)は、水性懸濁液であることを特徴とする、工程。
【請求項8】
先行する請求項のいずれかに記載の工程であって、
前記方法は、リチウムイオン電池のための、黒鉛が被覆された負極の製造の一部として使用されることを特徴とする、工程。
【請求項9】
先行する請求項のいずれかに記載の工程であって、
整列可能な粒子、特に炭素系粒子、好ましくは黒鉛粒子を含む、ペースト(3)および/またはドライコーティングが使用され、前記粒子が、力場の影響下で整列可能であり、その力場では、前記力場と相互作用している前記粒子が、前記力場の前記力線に対して前記粒子を整列させる力を受け、および、
前記塗工された担体(1)を前記力場の前記影響に曝すことによって、前記粒子が整列される
ことを特徴とする、工程。
【請求項10】
先行する請求項のいずれかに記載の工程であって、
前記担体(1)の成形(III)は、前記整列中、および/または前記整列と前記乾燥との間に、行われることを特徴とする、工程。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に係る、被覆された担体を製造する工程に関する。
先行技術は、例えば、電池の製造、特に、リチウムイオン電池のための、黒鉛粒子で被覆された負極の製造に関して、この種の担体の製造方法を開示している。負極のためのこの種の製造工程は、特にUS2014/0072076A1またはWO2018/047054A1から知られている。担体箔は、適切なペーストで被覆され、一連の製造プロセスにおいて工程から工程へと搬送される。最終的に、ペーストは担体上で乾燥される。例えば、ペースト中に存在する任意の粒子の整列といった中間工程は、乾燥前または乾燥中に任意で行われる。黒鉛粒子は、例えば時間的または局所的に変化している磁場において、ペースト内に整列され得る。
【0002】
担体基材の膨らみを相殺するために、DE102019118111A1によれば、被覆工程の後にダブルベルトプレスを使用して、被覆の活物質を締め固めるとともに負荷導入に起因する膨らみを補償する。
【0003】
本発明の目的は、被覆された担体の製造工程であって、製造中にシステムを通過する担体の改良された、具体的にはより良く整列された、搬送を可能とする製造工程を提供できるようにすることである。
【0004】
本目的は、冒頭で述べた種類の製造工程を出発点として、請求項1の特徴的な特徴によって達成される。
従属請求項で特定されている手段により、本発明の有利な実施および展開が可能となる。
【0005】
本発明に係る製造工程は、まず、同様に、基本的な処理工程、すなわち、担体および担体に被覆されるペーストまたはドライコーティングを提供すること、ペーストまたはドライコーティングを担体上へ被覆することまたは塗布すること、および、それに続く乾燥/固化工程を備えている。
【0006】
担体は、次に、被覆が施される基本材料として、箔を備える。リチウムイオン電池のための負極の製造には、例えば、長尺シート形態の銅箔が使用される。しかし、先行技術に係る従来の工程では、例えば乾燥中に、望ましくないように担体が変形し得ることが分かっている。このような状況では、長尺の箔シートを直線的な配置で搬送することは困難である。
【0007】
本発明は、箔における機械的応力を回避または相殺することにより、搬送作業におけるこれらの困難を軽減する。箔における機械的応力は、担体材料を屈曲または変形させる効果を有し得る。
【0008】
箔に塗布されたペーストが箔とすでに機械的に接触していて箔に付着しているため、特に乾燥に関連して本発明が引用するこの具体的な原因は、ペーストが乾燥するのに伴ってペーストの体積が収縮することにより生じる反りである。典型的には、箔のサイズは、仮にペーストの乾燥中に変化するとしてもごく僅かである。ペーストの体積が収縮するにつれて、ペーストと担体との間に機械的応力が生じる。これらの応力が相殺されない場合には、担体が反ることになる。具体的には、箔は搬送方向に対して横方向に湾曲し得る。
【0009】
したがって、本発明は、先行技術とは対照的に、比較的広い領域にわたり両側を強固にクランプして荷重を導入することによって、特に乾燥作業に関連して考慮される、変形の原因または基本的な幾何学的状態、または関連する湾曲の影響を、担体に追加的に機械的応力をかけることなく相殺することを可能にする。
【0010】
担体箔を覆うペーストは、例えば、板状の粒子を含み得る。板状の粒子の大半において、特定の粒子形状に近似する楕円体は、同様の長さの2つの軸および明らかに短い1つの軸を有する。
【0011】
担体箔を覆うペーストは、例えば、球状の粒子を含み得る。球状の粒子の大半において、特定の粒子形状に近似する楕円体は、同様の長さの3つの軸を有する。
担体箔を覆うペーストは、例えば、針状の粒子を含み得る。針状の粒子の大半において、特定の粒子形状に近似する楕円体は、長い1つの軸および明らかに短い2つの軸を有する。
【0012】
担体箔を覆うペーストが平板状の粒子、例えば炭素系粒子、特に黒鉛粒子を含む場合、粒子の整列が乾燥時の方向に依存した体積の減少を引き起こしてそれにより整列されていない粒子と比較して多少なりとも箔が反る可能性がある。
【0013】
可能ならば、被覆は熱応答性材料であってもよい。
軟質または液状材料を含むペーストの他、例えば粉体を含むドライコーティングを使用することもできる。しかし、ここでも、搬送中の雰囲気温度における他の変化と同様に、固化工程が担体の反りを引き起こす可能性がある。ドライコーティングは、力場において整列可能な粒子を含んでもよい。
【0014】
したがって、ペーストの組成自体が収縮およびそれに伴う反りを低減できない場合にも有利に使用できる、より一般的な手段を用いることで、本目的は本発明により達成される。この目的のために、担体は、被覆の収縮の結果として生じる担体の反りに逆らうように予備成形される。担体が予め成形されるので、その後の担体の任意の変形が、この変形の大部分または全部を再度補償する。
【0015】
有利な方法では、担体のこの成形は、乾燥作業、または反りを生じさせ得る工程の、前および/または最中に実施される。
ペースト中の粒子の配向は、例えば、力場の影響下で実行され得る。黒鉛粒子は、例えば、磁場、特に時間的および/または空間的な交流磁場の中で、配向され得る。配向された粒子がペースト中にある場合、それら粒子は、それらの環境の中、例えば、完全に乾燥および固化したペーストに囲まれている中では、通常、機械的にほとんど動けないため、この工程は、有利には乾燥または固化工程の前および/または最中に実行される。粒子の整列は、粒子の配向が(例えば収縮の影響下で)全体的または部分的に再度失われないように、部分的には乾燥工程と同時に行われ得る。したがって、箔または担体の予備成形は、整列中、またはより一般的には整列の開始から乾燥の終了までの期間において実行され得る。
【0016】
担体箔は、一般的には、箔シートの形態であってもよい。塗布されたペースト体積の収縮の結果として、一般的に、変形は、箔シートの面における箔シートの長手方向軸に対して直角な箔表面の湾曲の形態で典型的に現れ得る。本実施例において、担体は、補償のために被覆側に予め湾曲される。すなわち、曲率面内の2つの点を接続している2つの仮想線は、担体上の被覆の外側を通るか、または逆に被覆から離れる。これは特に、システムにおける担体の横方向の案内の改善を可能にする。
【0017】
ペーストの乾燥および収縮により生じる変形に影響を及ぼす効果は、本発明の実施例において、被覆が、ペーストに添加される熱応答特性を有する材料を含むか、またはペーストが既にそのような材料を含む若しくはそのような材料からなる、という点においても追加的に補助され得る。このように、被覆中の任意の揮発性成分を除去することなく、ペーストが加熱されるため、被覆の固化を達成することもまた可能である。さらに、整列される粒子は、同時に固定される。粒子が力場内で配向されていれば、乾燥の過程でペーストに作用する加熱があったとしても、粒子の整列が良好に維持され得る。
【0018】
加えて、力場内の粒子の、搬送方向に対して直角な整列は、ペーストの乾燥中における変形にも影響を与え得るため、さらなる効果がある。しかし、粒子になされる整列は、決められているため、必ずしも反りを低減する必要はない。
【0019】
前述のとおり、ペースト中の粒子の整列のための力場は、例えば、局所的および/または時間的に変化する磁場の形態であってもよい。局所的に変化する磁場が提供される場合には、磁場に対して相対的に移動される、継続的に移動する担体から見ると、磁場には時間的な変化がある。そのような変化可能な磁場は、板状の黒鉛粒子の配向を確実にする。
【0020】
この方法は、特に、リチウムイオン電池の、黒鉛が被覆された負極の製造に好適である。リチウムイオン電池の負極には、一実施変形例では、例えば6μm~15μm、典型的には8μmまたは10μmの厚さを有する、銅箔の形態の集電箔が使用される。実施形態によっては、ペーストは、水性懸濁液の形態で担体に塗布されてもよい。ドライコーティングは、例えば、粉末の状態で塗布され得る。
【0021】
本発明の一つの展開では、担体箔の予備成形は、搬送の過程で、対応する形状の表面上、例えば搬送方向に対して横方向に湾曲されて表面の屈曲をもたらす表面上に、箔を案内することにより実行される。また例えば、担体箔を辺縁領域に固定することにより、例えば、向かい合う固定具が互いに近寄るように動いて、または、固定される担体箔が係合する固定具の受容部または固定具の開口部が角度をなして配置されて、担体箔の表面が湾曲するという点で、担体箔の成形をもたらすことも考えられる。
【0022】
ペーストまたはドライコーティング中に存在する粒子の整列は、力場、特に磁場によってもたらされ得る。担体の予備成形は、乾燥中、または乾燥前においてさえも、実行され得る。一般的には、粒子の整列は、乾燥前、または、ある程度は乾燥中においてさえも開始される。粒子の整列中に担体がすでに予備成形されている場合、ペーストからの場発生要素の距離が一定になるように、または、ペーストの領域(搬送方向に対して直角な担体表面に沿った、ペーストの領域)においてそれぞれのケースで場が一定になるように、力場を発生させる要素を正確に配置または調整することが有利である。
【0023】
[実施例]
本発明の実施例は、図面に示され、更なる詳細や効果に関して、以下に詳細に説明される。図面は、具体的には以下のことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】乾燥後に湾曲した表面を有する担体箔、および、本発明に係る補償として予備成形された表面を有する担体箔の概略図。
図2】搬送領域を有するコーティング装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、まず、シート状の箔2と、さらに、箔2上にペーストとして塗布された被覆3と、を備える担体1を示している。状況Iは、被覆の塗布後であって乾燥前の、担体1を示しており、ペースト3は箔2上で水性懸濁液の形態のままとなっている。
【0026】
担体1が乾燥工程に供されたとしたら、被覆2は体積に関して収縮するであろう。そのため、被覆3の固定化が進むにつれて、ペーストは箔2に力を及ぼすことになるであろう。箔2は、状況IIに示すように、特に箔2の(搬送方向Tに対して直角な)幅に沿って次第に反っていくことになるであろうし、湾曲するであろう。そして、湾曲した箔2は、位置合わせが難しくなり、そのことが、搬送およびあらゆる工程、特に力場における粒子の整列を困難にし得る。横方向のガイドが使用される場合、箔2の端部にて横方向部分がこのガイドから滑り出る可能性がある。
【0027】
対照的に、状況IIIでは、状況IIとは異なり、担体箔2は、例えば乾燥中に、IIとは反対方向に事前に予備成形されている。それに対応して、乾燥工程がこの屈曲を排除するので、すでに被覆および乾燥された担体は、次に、状況IVに示すように、平坦な平面を形成する。
【0028】
図2は、箔または担体1の被覆のためのコーティング装置30の概略図を示す。箔または担体1は、塗布ステーション31内でペーストを塗布され、その後ペーストの乾燥のために乾燥モジュール32へ搬送方向Tに送られる。乾燥モジュール32は、直列に接続された、特定数nの個別ステーション32.1、32.2、・・・、32.n-1、32.nを備える。リターンステーション33により、担体1は、例えば反対側を被覆するために、方向が反転されて返送される。
【符号の説明】
【0029】
1…担体、2…箔、3…被覆/ペースト、30…コーティング装置、31…塗布ステーション、32…乾燥ステーション、32.1,32.2,…,32.n…個別ステーション(乾燥)、33…リターンステーション、I…状況:箔上の水性懸濁液、II…状況:乾燥の結果としての屈曲、III…状況:予備成形された担体、IV…状況:乾燥後の屈曲補償、T…搬送方向。
図1
図2
【国際調査報告】