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特表2024-511718長期陰イオン電導性化合物、その調製および電気化学におけるその使用
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  • 特表-長期陰イオン電導性化合物、その調製および電気化学におけるその使用 図1
  • 特表-長期陰イオン電導性化合物、その調製および電気化学におけるその使用 図2
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  • 特表-長期陰イオン電導性化合物、その調製および電気化学におけるその使用 図6
  • 特表-長期陰イオン電導性化合物、その調製および電気化学におけるその使用 図7
  • 特表-長期陰イオン電導性化合物、その調製および電気化学におけるその使用 図8
  • 特表-長期陰イオン電導性化合物、その調製および電気化学におけるその使用 図9
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  • 特表-長期陰イオン電導性化合物、その調製および電気化学におけるその使用 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】長期陰イオン電導性化合物、その調製および電気化学におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/48 20060101AFI20240308BHJP
   C07D 211/22 20060101ALI20240308BHJP
   C07D 471/10 20060101ALI20240308BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20240308BHJP
   H01M 8/1025 20160101ALI20240308BHJP
   H01M 8/1027 20160101ALI20240308BHJP
   H01M 8/1032 20160101ALI20240308BHJP
   H01M 8/18 20060101ALI20240308BHJP
   C25B 13/08 20060101ALI20240308BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240308BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240308BHJP
   H01B 1/06 20060101ALN20240308BHJP
【FI】
C08G65/48
C07D211/22
C07D471/10 101
H01M8/10 101
H01M8/1025
H01M8/1027
H01M8/1032
H01M8/18
C25B13/08 301
C25B1/04
C25B9/00 A
H01B1/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553631
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2022055824
(87)【国際公開番号】W WO2022194605
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】21162711.2
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルトジョム マルジュスキ
(72)【発明者】
【氏名】オリバー コンラディ
(72)【発明者】
【氏名】ハラルド ローグル
【テーマコード(参考)】
4C065
4J005
4K021
5G301
5H126
【Fターム(参考)】
4C065AA13
4C065BB09
4C065CC01
4C065DD01
4C065EE02
4C065HH04
4C065JJ01
4C065KK01
4C065LL01
4C065PP03
4C065QQ02
4J005AA24
4J005BA00
4J005BD00
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB36
5G301CD01
5H126AA05
5H126BB06
5H126BB10
5H126JJ05
(57)【要約】
本発明は、化合物、特にポリマー化合物、その調製方法、およびこれらの化合物の使用を提供する。電気化学の分野での使用が意図されている。開示される化合物の陰イオン伝導特性により、この材料は陰イオン伝導膜の調製に適している。したがって、本発明の目的は、長期にわたって安定したイオン伝導性を有する材料を提供することである。本目的は、式(I):
【化1】
(式中、Xはケトン基またはスルホン基であり、
Zは、少なくとも1つの第三級炭素原子と、酸素原子のうちの1つに直接結合している少なくとも1つの芳香族6員環と、を含む構成要素であり、
Yは、正電荷を有する少なくとも1つの窒素原子を含む構成要素であり、Zの前記第3級炭素原子に結合している。)
の単位を少なくとも1つ含む化合物によって解決される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、Xはケトン基またはスルホン基であり、
Zは、少なくとも1つの第三級炭素原子と、酸素原子のうちの1つに直接結合している少なくとも1つの芳香族6員環と、を含む構成要素であり、
Yは、正電荷を有する少なくとも1つの窒素原子を含む構成要素であり、Zの前記第3級炭素原子に結合している。)
の単位を少なくとも1つ含む化合物。
【請求項2】
式(Ia)または式(Ib):
【化2】
(式中、Vは、同一のまたは異なるハロゲン、好ましくはフルオルであり、Mは、1~1000の整数、好ましくは5~500の整数である。)
で表される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
前記構成要素Yは、式(IIa)、式(IIb)または式(IIc):
【化3】
(式中、nは、脂肪族鎖中の炭素原子の数を表し、0~9、好ましくは0~5である。R、RおよびRは、同一のまたは異なる炭素数1~9のアルキル基であり、好ましくはそれぞれメチル基である。)
の単位を表す、請求項1または請求項2記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物中に存在する前記構造要素Yは、5%を超える、好ましくは50%を超える、最も好ましくは90%を超える出現率を有する式(IIa)、式(IIb)または式(IIc)の単位を表す、請求項1~請求項3のいずれか一項記載の化合物。
【請求項5】
前記構成要素Zは、式(III):
【化4】
(式中、R、R、RおよびRは、同一のまたは異なる炭素数1~4のアルキル基、好ましくはそれぞれメチル基、イソプロピル基またはtert-ブチル基、より好ましくはそれぞれメチル基である。)
の単位を表す、請求項1~請求項4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項6】
式(IVa)~式(IVf):
【化5】
(式中、nは、脂肪族鎖中の炭素原子の数を表し、0~9、好ましくは0~5であり、M、MおよびMはそれぞれ1~1,000の整数、好ましくは5~500の整数である。)
のうちの少なくとも1つにより表される、請求項1~請求項5のいずれか一項記載の化合物。
【請求項7】
酸素原子のうちの1つに直接結合している前記芳香族6員環は、1つまたは複数のハロゲンおよび/または1つまたは複数のC~C4-アルキル基でさらに置換されており、
メチル、イソプロピルおよびtert-ブチルからなるリストから選択されるアルキル基が好ましく、メチルが最も好ましいアルキルである、請求項1~請求項6のいずれか一項記載の化合物。
【請求項8】
酸素原子のうちの1つに直接結合している前記芳香族6員環は、1つまたは複数のハロゲンおよび/または1つまたは複数のC~C4-アルキル基でさらに置換されていない、請求項1~請求項6のいずれか一項記載の化合物。
【請求項9】
(a)式(VIa)または式(VIb):
【化6】
(式中、Vは、同一のまたは異なるハロゲン、好ましくはフルオルである。)
のうちの少なくとも1つの化合物を含む第一遊離体を準備し、
(b)式(VIIa)、式(VIIb)、式(VIIc)または式(VIId):
【化7】
から選択される少なくとも1つの化合物を含む第二遊離体を準備し、
(c)前記第一遊離体と前記第二遊離体とを反応させ、
(d)少なくとも1つの請求項1~請求項8のいずれか一項記載の化合物を得る、請求項1~請求項8のいずれか一項記載の化合物の調製方法。
【請求項10】
アルキル化試薬、好ましくはメチル化試薬が、少なくとも1つの工程で使用されること、請求項9記載の方法。
【請求項11】
式(VIa)または式(VIb)または式(VIIa)または式(VIIb)または式(VIIc)または式(VIId)の化合物のうちの少なくとも1つが、それぞれ第1遊離体または第2遊離体として準備され、
前記化合物の芳香環が1つまたは複数のハロゲンおよび/または1つまたは複数のC~C-アルキル基でさらに置換されており、
メチル、イソプロピルおよびtert-ブチルからなるリストから選択されるアルキル基が好ましく、メチルが最も好ましいアルキルである、請求項7記載の化合物を調製するための請求項9または請求項10記載の方法。
【請求項12】
式(VIa)または式(VIb)または式(VIIa)または式(VIIb)または式(VIIc)または式(VIId)のうちの少なくとも1つの化合物が、それぞれ第1遊離体または第2遊離体として準備され、
前記化合物の芳香環が1つまたは複数のハロゲンおよび/または1つまたは複数のC~C-アルキル基でさらに置換されていない、請求項8記載の化合物を調製するための請求項9または請求項10記載の方法。
【請求項13】
陰イオン伝導性膜として、または陰イオン伝導性膜の製造のための請求項1~請求項8のいずれか一項記載の化合物の使用。
【請求項14】
少なくとも1つの請求項1~請求項8のいずれか1項記載の化合物を含む陰イオン伝導膜を有する電気化学セル。
【請求項15】
電解槽または燃料電池またはレドックス・フロー電池の部品である、請求項14記載の電気化学セル。
【請求項16】
請求項14または請求項15記載の電気化学セルを用いた電気化学プロセスの実施。
【請求項17】
前記電気化学プロセスが電気分解、または電気透析、または燃料電池の稼働中に行われる電気化学プロセス、またはレドックス・フロー電池の稼働中に行われる電気化学プロセスである、請求項16記載の電気化学プロセスの実施。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、特にポリマー化合物、その調製方法、およびこれらの化合物の使用を提供する。電気化学の分野での使用が意図されている。開示される化合物の陰イオン伝導特性により、この材料は陰イオン伝導膜の調製に適している。
【背景技術】
【0002】
電気化学プロセスの重要な例の1つは、分子状水素および分子状酸素を得るための水の電気分解である。このようなプロセスの実施に使用される電気化学集合体は、電解装置と呼ばれる。このような電解装置は、通常、多くの電気化学セルを備えている。各電気化学セルは、2つのコンパートメントで構成され、各コンパートメントには、1個のガス発生電極と、両コンパートメントを分離する膜と、が装備されている。水の電解分解を可能にするには、その膜は、イオン(陽イオンまたは陰イオン)に対して導電性でありながら、水素ガスおよび酸素ガスに対してほとんど不透過性でなければならない。本明細書で議論される化合物は、そのような膜を構成することを意図している。
【0003】
電気化学セルに使用される膜は非導電性である必要があり、そうでなければ、両電極の間に電気的短絡が生じる。したがって、電気的な観点から、膜は電気的に絶縁されている必要がある。しかしながら、電気化学的な観点から見ると、セル内の膜は、あるコンパートメントから別のコンパートメントへと膜を通過するイオンに対し、オーム抵抗が低くなければならない。電子が孤立した状態でイオンを通過させる能力をイオン伝導性という。水の電気分解の分野では、使用される陰イオン伝導膜の陰イオン伝導性が非常に重要である。
【0004】
電気化学セルの効率は、膜のイオン伝導性に大きく左右される。イオン伝導性が低い場合、発熱を引き起こす抵抗損失のために、所望量の水素を生成するためにより多くの電力を消費する必要がある。したがって、イオン伝導性の高い材料を提供することは、膜工学における主要な目標である。
【0005】
イオン伝導性は膜材料の固有の特性である。電気化学セル内の過酷な条件のために、膜材料の分子構造は、化学的および電気化学的劣化にさらされる。その結果、膜材料のイオン伝導性は、時間の経過とともに低下し、プロセス効率が低下し、電力消費量の増大につながる。
【0006】
したがって、イオン伝導性が短期間で急速に失われる場合、初期のイオン伝導性が高い膜は価値がない。
【0007】
いくつかの水電気分解用陰イオン交換膜が市販されている。市場の概要は、Henkensmeierらによってまとめられている:
Henkensmeier, Dirk and Najibah, Malikah and Harms, Corinna and Zitka, Jan and Hnat, Jaromir and Bouzek, Karel (2020) Overview: State-of-the Art Commercial Membranes for Anion Exchange Membrane Water Electrolysis. Journal of Electrochemical Energy Conversion and Storage, 18 (2), 024001. American Society of Mechanical Engineers (ASME). DOI: 10.1115/1.4047963 ISSN 2381-6872
第3.7節において、Henkensmeierらは、長期安定性の必要性についてはすでに概説しているが、数千時間以上持続する膜を特定することはできていない。
【0008】
市販の陰イオン交換膜の一例は、FUMATECH BWT GmbH社(ドイツ ビーティッヒハイム=ビッシンゲン 74321)によって製造されているfumasep(登録商標)FAA-3-50と呼ばれる製品である。Henkensmeierらによれば、この膜は、主鎖にエーテル結合を持ち、主鎖に第四級アンモニウム基が結合した多芳香族ポリマーをベースとしている。発明者ら自身の評価により、この膜は80℃の2M KOH中では120時間後に完全に崩壊することが確認された。
【0009】
中国特許出願公開第104829814号明細書は、四級化ピペリジン基を含むポリマーを開示している。このポリマーは、陰イオン交換膜の調製にも使用される。中国特許出願公開第104829814号明細書では、長期安定性は評価されていない。
【0010】
第三級アミン型ポリアリールエーテルスルホン(ケトン)ポリマー樹脂の調製方法は、中国特許出願公開第110294845号明細書から知られている。このポリマーは、陰イオン交換膜の調製に使用される。この中国特許出願公開第110294845号明細書では長期安定性は評価されていないが、以下が記載されている:中国特許出願公開第110294845号明細書に記載されているように第三級アミンビスフェノールモノマー(MPDDP)を使用して調製されたポリマーは、80℃の2M KOH中では1,000時間後にいくつかの小片に崩壊した。
【0011】
電解槽で使用される膜の調製に適したポリマー陰イオン伝導性材料は、国際公開第2019/076860号パンフレットから知られている。この材料は、少なくとも1つのイミダゾールおよび/またはイミダゾリウム単位によって特徴付けられる。この材料は良好なイオン伝導性を示すが、長期的な挙動については、国際公開第2019/076860号パンフレットでは評価されていない。
【0012】
国際公開第2021/013694号パンフレットは、式(0a):
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、Xは、CおよびCに結合している、正電荷を有する窒素原子を含む構成要素であり、2つの結合を介して炭素数1~12、好ましくは1~6、より好ましくは1または5の1つまたは2つの炭化水素基に結合している構成要素あり、
Zは、CおよびCに結合している炭素原子と、酸素原子のうちの1つに直接結合している少なくとも1つの芳香族6員環と、を含む構造要素であり、その芳香環は、1つまたは複数のハロゲンおよび/または1つまたは複数のC-~C-アルキル基で置換されていてもよい。)
の単位を少なくとも1つ含む化合物から作られるポリマー陰イオン伝導膜に関する。
【0015】
以下に示すように、この材料は、かなりの時間持続する非常に高いイオン伝導性をすでに達成している。80℃の2M KOH中で2,000時間経過した後でも、依然として初期のイオン伝導率の85%以上を保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】中国特許出願公開第104829814号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第110294845号明細書
【特許文献3】国際公開第2019/076860号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2021/013694号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、今日では持続可能性が単にエネルギー効率の問題ではなく、むしろ物質的な充足の問題となっているため、長期安定性に関する要求がますます重要になってきている。
【0018】
したがって、本発明の目的は、長期にわたって安定したイオン伝導性を有する材料を提供することにある。
【0019】
現在未公開の欧州特許出願第21152487.1号は、機械的安定性に焦点を当てており、別の課題に向いている。その未公開出願は、少なくとも1つの式(0b):
【0020】
【化2】
【0021】
(式中、Xは、CおよびCに結合している、正電荷を有する少なくとも1つの窒素原子を含む構成要素であり、2つの結合を介して炭素数1~12、好ましくは1~6、より好ましくは1または5の1つまたは2つの炭化水素基に結合している構成要素あり、
Zは、CおよびCに結合している炭素原子と、酸素原子のうちの1つに直接結合している少なくとも1つの芳香族6員環と、を含む構造要素であり、その芳香環は、3位および5位が、同一のまたは異なる炭素数1~4のアルキル基、好ましくはメチル基、イソプロピル基またはtert-ブチル基、より好ましくはメチル基で置換されている。
好ましい実施形態では、式(0b)の構成要素Xは、隣接する構成要素に単一の脂肪族鎖で結合している正に荷電した窒素原子を含む。)
の単位を特徴とする化合物に関する。
【0022】
同発明者らは、経時的にイオン伝導性の低下がより遅い、改良された化合物を発見した。
よって、最近発見された化合物は前述の課題を解決するものであり、したがって本発明の主題事項である。これらの本発明に係る化合物は、以下そして特許請求の範囲にも記載される。
【課題を解決するための手段】
【0023】
式(I):
【0024】
【化3】
【0025】
(式中、Xはケトン基またはスルホン基であり、
Zは、少なくとも1つの第三級炭素原子と、酸素原子のうちの1つに直接結合している少なくとも1つの芳香族6員環と、を含む構成要素であり、
Yは、正電荷を有する少なくとも1つの窒素原子を含む構成要素であり、Zの第3級炭素原子に結合している。)
の単位を少なくとも1つ含む本発明の化合物。
【0026】
したがって、上記の従来技術の化合物と比較して、本発明の化合物は、構成要素Yが結合している構造要素Z内の少なくとも1つの第三級炭素原子を特徴とする。
同様の化学的性質を有する従来技術の材料と比較して、本発明の化合物は、イオン伝導性のより良好な長期安定性を達成している。
【0027】
本発明の好ましい実施形態によれば、化合物は、式(Ia)または式(Ib):
【0028】
【化4】
【0029】
(式中、Vは、同一のまたは異なるハロゲン、好ましくはフルオルであり、Mは、1~1000の整数、最も好ましくは5~500の整数である。Mが1である場合、化合物はモノマーとみなされる。Mが1を超える場合、本発明の化合物はポリマーであるとみなされる。)
で表される。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によれば、構成要素Yは、式(IIa)、式(IIb)または式(IIc):
【0031】
【化5】
【0032】
(式中、nは、脂肪族鎖中の炭素原子の数を表し、0~9、好ましくは0~5である。R、RおよびRは、同一のまたは異なる炭素数1~9のアルキル基であり、好ましくはそれぞれメチル基である。)
の単位を表す。
【0033】
本発明の好ましい実施形態によれば、化合物中に存在する構成要素Yは、5%を超える、好ましくは50%を超える、最も好ましくは90%を超える出現率を有する式(IIa)、式(IIb)または式(IIc)の単位を表す。この出現率は、例えば、溶媒としてのトリジュウテリオ(トリジュウテリオメチルスルホニル)メタン(DMSO-d6)中、室温で、01/2005:20233(ヨーロッパ薬局方5.0.2.2.33.核磁気共鳴分光法)に準拠して実施される古典的なH-NMRにより測定することができる。出現率は、対応するシグナルの面積の積分と、対応するシグナルの正規化面積(ピーク)と目標単位内の対応するプロトンの数との比較と、により計算できる。
【0034】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、構成要素Zは、式(III):
【0035】
【化6】
【0036】
(式中、R、R、RおよびRは、同一のまたは異なる炭素数1~4のアルキル基、好ましくはそれぞれメチル基、イソプロピル基またはtert-ブチル基、より好ましくはそれぞれメチル基である。)
の単位を表す。
【0037】
本発明の化合物の6つの好ましい実施形態が式(IVa)~式(IVf):
【0038】
【化7】

【0039】
(式(IVa)~式(IVf)中、nは、脂肪族鎖中の炭素原子の数を表し、0~9、好ましくは0~5であり、M、MおよびMはそれぞれ1~1,000の整数、好ましくは5~500の整数である。)
のうちの少なくとも1つにより表される。
【0040】
式(I)、式(Ia)、式(Ib)、式(IVa)~式(IVf)および式(Va)~式(Vd)ならびに関連する定義から導出されるように、本発明の化合物はすべて、芳香族6員環を含み、その芳香族6員環は、酸素原子のうちの1つに直接結合し、3位および5位が、同一のまたは異なる炭素数1~4のアルキル基で置換されている。
【0041】
本発明の第一変形例によれば、上記の芳香族6員環は、1つまたは複数のハロゲンおよび/または1つまたは複数のC~C-アルキル基でさらに置換されている。好ましいアルキル基は、メチル、イソプロピルおよびtert-ブチルからなるリストから選択される。最も好ましいアルキルはメチルである。
【0042】
本発明の第二の好ましい変形例によれば、上記の芳香族6員環は、1つまたは複数のハロゲンおよび/または1つまたは複数のC~C-アルキル基でさらに置換されていない。このような化合物を調製するための前駆体材料は安価である。したがって、調製と最終化合物のコストはそれほどかからない。
【0043】
本発明のさらに別の目的は、本発明の化合物の製造方法を提供することである。
この目的は、
(a)式(VIa)または式(VIb):
【0044】
【化8】
【0045】
(式中、Vは、同一のまたは異なるハロゲン、好ましくはフルオルである。)
のうちの少なくとも1つの化合物を含む第一遊離体を準備し、
(b)式(VIIa)、式(VIIb)、式(VIIc)または式(VIId):
【0046】
【化9】
【0047】
から選択される少なくとも1つの化合物を含む第二遊離体を準備し、
(c)第一遊離体と第二遊離体とを反応させ、
(d)少なくとも1つの本発明の化合物を得る工程を含む方法により解決される。
【0048】
このような方法は非常に簡単に実施でき、所望の化合物が得られる。化合物 (VIa)および化合物(VIb)(第一遊離体内の前駆体)は、市販されている。式(VIIa)、式(VIIb)、式(VIIc)または式(VIId)による化合物(第二遊離体内の前駆体)は、古典的な有機化学によって調製できる。反応ルーチンは、それぞれ実験例1、8、15および18から導出される。
【0049】
好ましくは、この反応工程は100℃~300℃の温度、より好ましくは125℃~175℃の反応温度で行われる。最も好ましくは、反応工程は、反応混合物が沸騰する温度で、好ましくは撹拌しながら実施される。反応工程は、不活性ガス雰囲気下、好ましくは窒素雰囲気下で実施されることが最も好ましい。反応容器の上部で、生成された水が除去されることが好ましい。
【0050】
反応工程は、好ましくは、KOH、NaOH、KCOまたはNaCOのような塩基の存在下で行われる。好ましい塩基はKCOである。
【0051】
反応工程は有機溶媒の存在下で行われる。好ましい溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)およびN,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)からなるリストから選択される。好ましくは、N,N-ジメチルアセトアミドが溶媒として使用される。
【0052】
好ましくは、本発明による方法は、アルキル化試薬、好ましくはメチル化試薬を使用する工程を含む。使用される好ましいメチル化剤は、ヨードメタンまたはクロロメタンである。アルキル化が行われる場合、この工程は、時系列的に本発明の化合物を得る前に実施される。この場合、調製される本発明の化合物は、アルキル化された化合物である。
【0053】
上記のように、本発明の化合物はすべて、芳香族6員環を含み、その芳香族6員環は、酸素原子のうちの1つに直接結合し、3位および5位が、同一のまたは異なる炭素数1~4のアルキル基で置換されている。本発明の第一変形例によれば、その芳香族6員環は、1つまたは複数のハロゲンおよび/または1つまたは複数のC~C-アルキル基でさらに置換されている。本発明の第二の好ましい変形例によれば、その芳香族6員環は、1つまたは複数のハロゲンおよび/または1つまたは複数のC~C-アルキル基でさらに置換されていない。
【0054】
本発明の調製方法の過程で本発明の化合物の両方の変形例を実現するために、前駆体、すなわち式(VIa)または式(VIb)または式(VIIa)または式(VIIb)または式(VIIc)または式(VIId)の化合物が適宜選択される。
【0055】
第一変形例によれば、これらの化合物(前駆体)の芳香環は、1つまたは複数のハロゲンおよび/または1つまたは複数のC~C-アルキル基でさらに置換されており、アルキル基は、メチル、イソプロピルおよびtert-ブチルからなるリストから選択され、それらが好ましいアルキルであり、メチルが最も好ましいアルキルである。
【0056】
第二変形例によれば、これらの化合物(前駆体)の芳香環は、1つまたは複数のハロゲンおよび/または1つまたは複数のC~C-アルキル基でさらに置換されていない。
【0057】
本発明の化合物は、色々な目的に使用することができる。好ましくは、本発明の化合物はポリマーであり、陰イオン伝導性膜として、または少なくとも陰イオン伝導性膜の製造に使用される。このような使用は本発明のさらなる目的である。
【0058】
このような膜内では、本発明の化合物は、長期の安定した陰イオン伝導特性により分離活性物質として機能する一方、気密性が非常に高い。本発明の化合物に加えて、上記の膜は、さらなる材料、例えば多孔質支持体(布材または不織布材など)を含み得る。
【0059】
本明細書中で開示される構成要素の設計された特性のおかげで、そのような材料を含む陰イオン伝導性膜は、電気化学セルに使用され得る。したがって、本発明の別の実施形態は、陰イオン伝導性膜を有する電気化学セルであり、この陰イオン伝導性膜は本発明の化合物を含んでいる。
【0060】
本化合物の特定の機械的および化学的安定性により、この材料は電解槽、燃料電池またはレドックス・フロー電池での使用に適している。したがって、本発明の電気化学セルの好ましい実施形態はそれぞれ、電解槽、燃料電池またはレドックス・フロー電池である。
【0061】
本発明の電気化学セルを用いて電気化学プロセスを実施することは、本発明の別の実施形態である。
【0062】
好ましくは、上記の電気化学プロセスは、電気分解、電気透析、燃料電池の稼働中に行われる電気化学プロセス、またはレドックス・フロー電池の稼働中に行われる電気化学プロセスである。
【0063】
本発明のさらなる詳細は、実験例および添付の図面から導出できる。後者を以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】モノマー(VIIa)のH-NMRスペクトルである。
図2】実験例3からの四級化ピペリジン含有ポリマーのH-NMRスペクトルである。
図3】実験例6からの四級化ピペリジン含有ポリマーのH-NMRスペクトルである。
図4】モノマー(VIIb)のH-NMRスペクトルである。
図5】実験例10からの四級化ピペリジン含有ポリマーのH-NMRスペクトルである。
図6】実験例13からの四級化ピペリジン含有ポリマーのH-NMRスペクトルである。
図7】モノマー(VIIc)のH-NMRスペクトルである。
図8】実験例16からのスピロ含有ポリマーのH-NMRスペクトルである。
図9】モノマー(VIId)のH-NMRスペクトルである。
図10】実験例20からの四級化ピペリジン含有ポリマーのH-NMRスペクトルである。
図11】実験例23からの四級化ピペリジン含有ポリマーのH-NMRスペクトルである。
【実施例
【0065】
実験例1:
実施例1:ピペリジン含有モノマー(VIIa)の合成
ピペリジン含有モノマー(VIIa)の合成は、反応スキーム1(工程1)および反応スキーム2(工程2)に従って2つの工程で実施した。
【0066】
【化10】
【0067】
1.3Lの乾燥THF中の227.2g(662.778ミリモル)のメトキシメチル-トリフェニル-ホスフィンクロリドの混合物を、温度計、滴下漏斗、メカニカルスターラー、氷浴、N雰囲気を備えた6L容量三口丸底フラスコに入れ、0℃まで冷却した。900mLの乾燥テトラヒドロフラン(THF)中の99.16g(883.704ミリモル)のカリウムtert-ブトキシドの溶液を滴下し、反応混合物を室温で30分間撹拌した。30分後、その反応混合物を0℃まで冷却し、900mLの乾燥THF中の50g(441.852ミリモル)の1-メチルピペリジン-4-オンの溶液をその反応混合物に滴下した。その混合物を室温で一晩撹拌した。その反応混合物を2つのバッチ(バッチ1およびバッチ2)に分けた。バッチ1を1Lの氷水に注ぎ、5×200mLのジクロロメタン(DCM)で抽出した。複合有機層を塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、真空下で溶媒を除去し、45.25gの粗物質を得た。固定相としてシリカを使用し、移動相としてDCM/メタノール(+1%NH)を使用するカラムクロマトグラフィーを精製に使用して、24.89gの中間体1を得た(収率55%)。
【0068】
温度計、滴下漏斗、メカニカルスターラーおよびN雰囲気を備えた三口フラスコ(500mL容量)に16g(0.113モル)の中間体1を入れた。170mLのアセトニトリル中の37.4g(0.306モル)の2,6-ジメチルフェノールの溶液を10℃で滴下した。さらに、26mL(0.34モル)のトリフルオロ酢酸(TFA)を滴下し、続いて12mL(0.136モル)のトリフルオロメタンスルホン酸をさらに滴下した。得られた溶液を室温で一晩撹拌した。その反応混合物を真空下で蒸発させた。粗残留物をジエチルエーテル(EtO、300mL)で処理し、室温で一晩撹拌した。固体を濾過し、EtO(100mL)で洗浄し、高真空下45℃で乾燥させた。得られた生成物のTFA塩を、90mLのアセトニトリルに溶解することによって遊離塩基に転化させ、続いて6mLの水を加え、10%アンモニア水で塩基性化し、pHをおよそ8にした。その結果、白色の沈殿物が生成された。沈殿物を濾過により収集し、10mLの水で洗浄し、真空下で乾燥させた。得られた白色固体を1Lのメタノールに溶解し、溶液が濁るまで真空下で濃縮し、室温で保存した。結晶化した固体を真空濾過により濾別し、真空下で乾燥させた。順相カラムクロマトグラフィーを精製に使用して、24.97g(収率62%)のピペリジン含有モノマー(VIIa)を得た。モノマー(VIIa)の化学構造をH-NMRによって確認した。H-NMRスペクトルを図1に示す。溶媒としてトリジュウテリオ(トリジュウテリオメチルスルホニル)メタン(DMSO-d6)を使用した。
【0069】
実験例2:ピペリジン含有ポリマーの合成
合成については、油浴、メカニカルスターラー、調整可能な戻り率と凝縮液除去を備えた蒸留ヘッド冷却器付き充填カラムを備えた500mL容量三口フラスコで実施した。合成の最初に、10.61g(0.03モル)の実験例1からのピペリジン含有モノマー(VIIa)、6.55g(0.03モル)の4,4’-ジフルオロベンゾフェノン(VIa)、165mLのN,N-ジメチルアセトアミド、および9.12g(0.066モル)の細かく粉砕したKCOを窒素雰囲気下、室温で1時間かけて混合した。その後、その反応混合物の温度を120℃に上昇させ、生成された水をカラムを使用して4時間かけて除去した。4時間後、追加の10mLのN,N-ジメチルアセトアミドを反応混合物に加え、反応混合物の温度を165℃に上昇させた。20時間後、油浴の加熱を止め、粘稠な反応生成物を冷却し、冷水に注いだ。 沈殿した生成物を湯で3回洗浄し、真空下、40℃で48時間かけて乾燥させた。収量は14.64g(91.8%)であった。
【0070】
実験例3:実験例2のピペリジン含有ポリマーの四級化
10gの実験例2からのポリマーを、60℃で1時間撹拌しながら40mLのN,N-ジメチルアセトアミドに溶解した。ポリマー溶液を30℃まで冷却した後、2.5mLのヨードメタンをポリマー溶液に滴下し、ポリマー溶液を30℃で24時間撹拌してポリマーを四級化した。実験例3からの四級化ピペリジン含有ポリマーの化学構造をH-NMRによって確認した。H-NMRスペクトルを図2に示す。溶媒としてDMSO-d6を使用した。
【0071】
実験例4:実験例3からのピペリジン含有ポリマーの膜キャスティング
実験例3からの四級化ポリマー溶液を膜の調製に直接使用した。必要量のポリマー溶液をシリンジで採取し、40℃に予熱したガラス板に、1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターを通して直接塗布した。ガラス板をコーティングするために、ドクターブレードを備えたアプリケーターを5mm/秒の速さでガラス板上を自走させた。塗布したの湿潤層をN雰囲気下、室温で24時間予備乾燥させ、そして最後に真空下60℃で6時間乾燥させた。
【0072】
実験例5:ピペリジン含有ポリマーの合成
合成については、油浴、メカニカルスターラー、調整可能な戻り率および凝縮液除去を備えた蒸留ヘッド冷却器付き充填カラムを備えた500mL容量三口フラスコで実施した。合成の最初に、10.61g(0.03モル)の実験例1からのピペリジン含有モノマー(VIIa)、7.63g(0.03モル)の4,4’-ジフルオルジフェニルスルホン(VIb)、165mLのN,N-ジメチルアセトアミド、および9.12g(0.066モル)の細かく粉砕したKCOを窒素雰囲気下、室温で1時間かけて混合した。その後、その反応混合物の温度を120℃に上昇させ、生成された水をカラムを使用して4時間かけて除去した。4時間後、追加の10mLのN,N-ジメチルアセトアミドを反応混合物に加え、反応混合物の温度を165℃に上昇させた。20時間後、油浴の加熱を止め、粘稠な反応生成物を冷却し、冷水に注いだ。沈殿した生成物を湯で3回洗浄し、真空下40℃で48時間かけて乾燥させた。収量は15.21g(89.3%)であった。
【0073】
実験例6:実施例5のピペリジン含有ポリマーの四級化
10gの実験例5からのポリマーを、60℃で1時間撹拌しながら40mLのN,N-ジメチルアセトアミドに溶解させた。そのポリマー溶液を30℃まで冷却した後、2.5mLのヨードメタンをポリマー溶液に滴下し、ポリマー溶液を30℃で24時間撹拌してポリマーを四級化した。実験例6からの四級化ピペリジン含有ポリマーの化学構造をH-NMRによって確認した。H-NMRスペクトルを図3に示す。溶媒としてDMSO-d6を使用した。
【0074】
実験例7:実験例6からのピペリジン含有ポリマーの膜キャスティング
実験例3からの四級化ポリマーの溶液を膜の調製に直接使用した。必要量のポリマー溶液をシリンジで採取し、40℃に予熱したガラス板に、1μmのPTFEフィルターを通して直接塗布した。ガラス板をコーティングするために、ドクターブレードを備えたアプリケーターを5mm/秒の速さでガラス板上を自走させた。塗布したの湿潤層をN雰囲気下、室温で24時間予備乾燥させ、そして最後に真空下60℃で6時間乾燥させた。
【0075】
実験例8:ピペリジン含有モノマー(VIIb)の合成
ピペリジン含有モノマー(VIIb)の合成は、反応スキーム3(工程1)、反応スキーム4(工程2)および反応スキーム5(工程3)に従って3つの工程で実施した。
【0076】
【化11】
【0077】
6N HCl水溶液を実験例1のバッチ2に加えてpHを1にした。反応混合物を1.5LのEtOとともに30分間撹拌した。次いで、有機相を分離し、水相を1LのEtOで再度抽出した。得られた水相をpHおよそ10まで3N NaOHで塩基性化し、DCM(3×1L)で抽出した。有機相を分離し、濃縮乾固して、45.5gの粗生成物(中間体2)を得た。
【0078】
温度計、滴下漏斗、メカニカルスターラー、氷浴およびN雰囲気を備えた四つ口フラスコ(6L容量)中で、259.84g(0.758モル)のメトキシメチル-トリフェニル-ホスフィンクロリドを、1.55Lの乾燥THFに懸濁させ、0℃まで冷却した。この懸濁液に、1LのTHF中の127.58g(1.137モル)のカリウムtert-ブトキシドの溶液を滴下した。得られた溶液を室温で1時間撹拌した。その反応混合物を0℃に冷却し、780mLのTHF中の45.5gの粗生成物(中間体2)の溶液を反応混合物に添加した。得られた反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を3Lの氷冷水に注ぎ、水相の生成物が見えなくなるまで3LのDCM×3で抽出し、複合有機相を塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。固定相としてシリカを使用し、移動相としてDCM/メタノール(+1%NH)を使用するカラムクロマトグラフィーを精製に使用して、52.89gの中間体3を得た。
【0079】
温度計、滴下漏斗、メカニカルスターラー、氷浴およびN雰囲気を備えた三口フラスコ(500mL容量)に、47.5g(0.306モル)の中間体3を入れた。230mLのアセトニトリル中の101g(0.827モル)の2,6-ジメチルフェノールの溶液を10℃で滴下した。さらに、70mL(0.919モル)のTFAを滴下し、続いて32mL(0.367モル)のトリフルオロメタンスルホン酸を滴下し、得られた溶液を室温で一晩撹拌した。反応混合物を真空中で濃縮乾固し、得られた粗製物を1LのEtOとともに撹拌した。そのEtO濾液をデキャンタに移し、再度1LのEtOを加えた。粘着性固体を濾過し、EtO(500mL)で洗浄し、真空下で乾燥させた。茶色の固体を300mLの酢酸エチル中で30分間撹拌し、オフホワイトの固体を濾過し、酢酸エチル(100mL)で洗浄し、高真空下で乾燥させ、オフホワイトの固体を得た。得られた生成物のTFA塩を100mLの水に懸濁させ、200mLの25%NHで中和することにより遊離塩基に転化させ、ピペリジン含有モノマー(VIIb)を白色固体として沈殿させた。得られた生成物を真空下で一晩乾燥させ、20.67gの生成物を順相カラムクロマトグラフィーで精製して、12.13g(収率59%)のピペリジン含有モノマー(VIIb)を得た。モノマー(VIIb)の化学構造をH-NMRによって確認した。H-NMRスペクトルを図4に示す。溶媒としてDMSO-d6を使用した。
【0080】
実験例9:ピペリジン含有ポリマーの合成
合成については、油浴、メカニカルスターラー、調整可能な戻り率および凝縮液除去を備えた蒸留ヘッド冷却器付き充填カラムを備えた500mL容量三口フラスコで実施した。合成の最初に、11.03g(0.03モル)の実験例8からのピペリジン含有モノマー(VIIb)、6.55g(0.03モル)の4,4’-ジフルオロベンゾフェノン(VIa)、165mLのN,N-ジメチルアセトアミド、および9.12g(0.066モル)の細かく粉砕したK COを窒素雰囲気下、室温で1時間かけて混合した。その後、その反応混合物の温度を120℃に上昇させ、生成された水をカラムを使用して4時間かけて除去した。4時間後、追加の10mLのN,N-ジメチルアセトアミドを反応混合物に添加し、反応混合物の温度を165℃に上昇させた。20時間後、油浴の加熱を止め、粘稠な反応生成物を冷却し、冷水に注いだ。沈殿した生成物を湯で3回洗浄し、真空下、40℃で48時間かけて乾燥させた。収量は15.14g(92.4%)であった。
【0081】
実験例10:実験例9のピペリジン含有ポリマーの四級化
10gの実験例9からのポリマーを、60℃で1時間撹拌しながら40mLのN,N-ジメチルアセトアミドに溶解した。そのポリマー溶液を30℃まで冷却した後、2.5mLのヨードメタンをポリマー溶液に滴下し、ポリマー溶液を30℃で24時間撹拌してポリマーを四級化した。実験例10からの四級化ピペリジン含有ポリマーの化学構造をH-NMRによって確認した。H-NMRスペクトルを図5に示す。溶媒としてDMSO-d6を使用した。
【0082】
実験例11:実験例10からのピペリジン含有ポリマーの膜キャスティング
実験例3からの四級化ポリマーの溶液を膜の調製に直接使用した。必要量のポリマー溶液をシリンジで採取し、40℃に予熱したガラス板に、1μmのPTFEフィルターを通して直接塗布した。ガラス板をコーティングするために、ドクターブレードを備えたアプリケーターを5mm/秒の速さでガラス板上を自走させた。塗布したの湿潤層をN雰囲気下、室温で24時間予備乾燥させ、そして最後に真空下60℃で6時間乾燥させた。
【0083】
実験例12:ピペリジン含有ポリマーの合成
合成については、油浴、メカニカルスターラー、調整可能な戻り率および凝縮液除去を備えた蒸留ヘッド冷却器付き充填カラムを備えた500mL容量三口フラスコで実施した。合成の最初に、11.03g(0.03モル)の実験例8からのピペリジン含有モノマー(VIIb)、7.63g(0.03モル)の4,4’-ジフルオルジフェニルスルホン(VIb)、165mLのN,N-ジメチルアセトアミド、および9.12g(0.066モル)の細かく粉砕したKCOを窒素雰囲気下、室温で1時間かけて混合した。その後、その反応混合物の温度を120℃に上昇させ、生成された水をカラムを使用して4時間かけて除去した。4時間後、追加の10mLのN,N-ジメチルアセトアミドを反応混合物に添加し、反応混合物の温度を165℃に上昇させた。20時間後、油浴の加熱を止め、粘稠な反応生成物を冷却し、冷水に注いだ。沈殿した生成物を湯で3回洗浄し、真空下、40℃で48時間かけて乾燥させた。収量は15.39g(88.1%)であった。
【0084】
実験例13:実験例12からのピペリジン含有ポリマーの四級化
10gの実験例12からのポリマーを、60℃で1時間撹拌しながら40mLのN,N-ジメチルアセトアミドに溶解した。そのポリマー溶液を30℃まで冷却した後、2.5mLのヨードメタンをポリマー溶液に滴下し、ポリマー溶液を30℃で24時間撹拌してポリマーを四級化した。実験例10からの四級化ピペリジン含有ポリマーの化学構造をH-NMRによって確認した。H-NMRスペクトルを図6に示す。溶媒としてDMSO-d6を使用した。
【0085】
実験例14:実験例13からのピペリジン含有ポリマーの膜キャスティング
実験例13からの四級化ポリマーの溶液を膜の調製に直接使用した。必要量のポリマー溶液をシリンジで採取し、40℃に予熱したガラス板に、1μmのPTFEフィルターを通して直接塗布した。ガラス板をコーティングするために、ドクターブレードを備えたアプリケーターを5mm/秒の速さでガラス板上を自走させた。塗布したの湿潤層をN雰囲気下、室温で24時間予備乾燥させ、そして最後に真空下60℃で6時間乾燥させた。
【0086】
実験例15:スピロ含有モノマー(VIIc)の合成
スピロ含有モノマー(VIIc)の合成は、反応スキーム6(工程1)、反応スキーム7(工程2)、反応スキーム8(工程3)および反応スキーム9(工程4)に従って4つの工程で実施した。中間体4については、モノマー(VIIb)の合成と全く同じ工程に従って合成したが、1-メチルピペリジン-4-オンの代わりに1-ベンジルピペリジン-4-オンから合成を開始した。
【0087】
【化12】
【0088】
温度計、滴下漏斗、メカニカルスターラー、氷浴およびN雰囲気を備えた三口丸底フラスコ(1000mL容量)中で、20g(45.1ミリモル)の中間体4を、451mLのDCMに溶解させ、18.4g(270.5ミリモル)のイミダゾールを添加した。その混合物を慎重に排気し、Nを再充填した(3回)。反応混合物を氷浴で冷却し、20mLのDCM中の16.31g(108.2ミリモル)のtert-ブチルジメチルクロロシラン(TBDMSCl)を反応混合物に滴下した。添加後、冷却をやめ、反応混合物を室温で一晩撹拌すると、白色沈殿物が生成された。反応混合物を200mLの飽和NHCl溶液でクエンチし、200mLの水を加え、続いて600mLのDCMで抽出した。水相を300mLのDCMで洗浄し、複合有機層を400mLの水で2回洗浄し、400mLの塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物を順相カラムクロマトグラフィーで精製して、24.92g(収率65%)の中間体5を得た。
【0089】
メカニカルスターラー、N雰囲気およびH雰囲気を備えた三口丸底フラスコ(1,000mL容量)中で、24.7g(36.7ミリモル)の中間体5をN下、150mLのDCM/メタノール(3/1)に溶解した。その混合物に、4.45gのPd/C(10%、50%湿潤)を添加し、雰囲気をHに変更した(3回)。その反応混合物をH雰囲気下、室温で一晩撹拌した。
24時間後、追加の3gのPd/C(10%、50%湿潤)を反応混合物に添加し、反応混合物をH下、室温でさらに24時間撹拌した。粗生成物をセライトで2回濾過し、DCM(100mL)で洗浄した。濾液を蒸発させて、21g(粗収率69%)の中間体6を得た。
【0090】
温度計、メカニカルスターラー、氷浴およびN雰囲気を備えた三口丸底フラスコ(1L容量)中で、21g(36.1ミリモル)の中間体6を、500mLのアセトニトリルに懸濁させ、35.3g(108.2ミリモル)のCsCOを一度に加えた。その反応混合物を0℃に冷却し、10g(43.3ミリモル)の1,5-ジブロモペンタンを一度に加えた。その反応混合物を0℃で2時間撹拌し、次いで室温で一晩撹拌した。室温で合計24時間反応させた後、追加の3gの1,5-ジブロモペンタンおよび5gのCsCOを反応混合物に加えた。さらに、反応混合物をNで排気し(3回)、室温でさらに6時間撹拌した。反応混合物を濾紙で重力により濾別し、反応混合物を蒸発させ、続いてEtO中で沈殿させ、濾過し、高真空下で乾燥させ、18.17g(収率69%)の中間体7を得た。
【0091】
温度計、滴下漏斗、メカニカルスターラー、氷浴およびN雰囲気を備えた三口丸底フラスコ(1L容量)に、186mLのメタノールを入れ、5.7mLの臭化アセチルを0℃で滴下した。この混合物に、50mLのメタノール中の17g(23.25ミリモル)の中間体7を0℃で滴下した。その反応混合物を室温で一晩撹拌した。合計24時間反応させた後、反応混合物を蒸発させ、続いてEtO中で沈殿させ、濾過し、高真空下で乾燥させて、12.35gの粗生成物を得た。中性条件下で逆相カラムクロマトグラフィーを使用して精製を行い、5.51g(収率44%)のスピロ含有モノマー(VIIc)を得た。モノマー(VIIc)の化学構造をH-NMRによって確認した。H-NMRスペクトルを図7に示す。溶媒としてDMSO-d6を使用した。
【0092】
実施例16:スピロ含有ポリマーの合成
合成については、油浴、メカニカルスターラー、調整可能な戻り率および凝縮液除去を備えた蒸留ヘッド冷却器付き充填カラムを備えた250mL容量三口フラスコで実施した。合成の最初に、5.02g(0.01モル)の実験例15からのスピロ含有モノマー(VIIc)、2.18g(0.01モル)の4,4’-ジフルオロベンゾフェノン(VIa)、70mLのN,N-ジメチルホルムアミド、および3.04g(0.022モル)の細かく粉砕したKCOを窒素雰囲気下、室温で1時間かけて混合した。その後、反応混合物の温度を120℃に上昇させ、生成された水をカラムを使用して4時間かけて除去した。4時間後、追加の5mLのN,N-ジメチルホルムアミドを反応混合物に添加し、反応混合物の温度を154℃に上昇させた。20時間後、油浴の加熱を止め、粘稠な反応生成物を冷却し、冷水に注いだ。 沈殿した生成物を湯で3回洗浄し、真空下、40℃で48時間かけて乾燥させた。収量は5.48g(85.6%)であった。実験例16からのスピロ含有ポリマーの化学構造をH-NMRによって確認した。H-NMRスペクトルを図8に示す。溶媒としてDMSO-d6を使用した。
【0093】
実験例17:実験例16からのスピロ含有ポリマーの膜キャスティング
5gの実験例16からのポリマーを、60℃で1時間撹拌しながら20mLのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解した。必要量のポリマー溶液をシリンジで採取し、40℃に予熱したガラス板に、1μmのPTFEフィルターを通して直接塗布した。ガラス板をコーティングするために、ドクターブレードを備えたアプリケーターを5mm/秒の速度でガラス板上を自走させた。塗布したの湿潤層をN雰囲気下、室温で24時間予備乾燥させ、そして最後に真空下60℃で6時間乾燥させた。
【0094】
実験例18:アミン含有モノマー(VIId)の合成
500mLの酢酸中の138.05g(1.13モル)の2,6-ジメチルフェノール溶液を、温度計、滴下漏斗、メカニカルスターラーおよびN雰囲気を備えた2L容量三口丸底フラスコに入れ、500mLのHCl濃水溶液および74.59g(0.56モル)の2,2-ジメトキシ-N,N-ジメチルエタンアミンを滴下した。その反応混合物を室温で一晩撹拌し、追加の250mLの濃HCL水を24時間反応させた後に添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。合計48時間反応させた後、それを真空下で直接濃縮乾固し、1.5Lの水と混合し、30分間超音波処理した。固体生成物を濾過により収集し、水で洗浄し、次いで、500mLのアセトニトリルに懸濁させ、真空下で濃縮して、97gの粗生成物を得た。次いで、その40gを逆相カラムクロマトグラフィーによって精製して、30.8gの純粋な生成物をHCl塩として得た。その後、700mLの25%アンモニア溶液に懸濁させ、室温で一晩撹拌することにより、それを遊離アミンの形態に転化させた。得られた固体を濾過により収集し、水で洗浄し、直接凍結乾燥させ、25.03g(収率63%)のアミン含有モノマー(VIId)を得た。モノマー(VIId)の化学構造をH-NMRによって確認した。H-NMRスペクトルを図9に示す。溶媒としてDMSO-d6を使用した。
【0095】
同じ反応条件を、脂肪族鎖の長さnが異なる類似のモノマーの合成にも適用できる。例えば、3,3-ジメトキシ-N,N-ジメチル-1-プロパンアミンを使用する場合、nは2になる。
【0096】
実験例19:アミン含有ポリマーの合成
合成については、油浴、メカニカルスターラー、調整可能な戻り率および凝縮液除去を備えた蒸留ヘッド冷却器付き充填カラムを備えた500mL容量三口フラスコで実施した。合成の最初に、9.4g(0.03モル)の実験例18からのアミン含有モノマー(VIId)、6.55g(0.03モル)の4,4’-ジフルオロベンゾフェノン(VIa)、150mLのN,N-ジメチルアセトアミド、および9.12g(0.066モル)の細かく粉砕したKCOを窒素雰囲気下、室温で1時間かけて混合した。その後、反応混合物の温度を120℃に上昇させ、生成された水をカラムを使用して4時間かけて除去した。4時間後、追加の10mLのN,N-ジメチルアセトアミドを反応混合物に添加し、反応混合物の温度を165℃に上昇させた。20時間後、油浴の加熱を止め、粘稠な反応生成物を冷却し、冷水に注いだ。沈殿した生成物を湯で3回洗浄し、真空下40℃で48時間かけて乾燥させた。収量は13.36g(90.6%)であった。
【0097】
実験例20:実施例19のアミン含有ポリマーの四級化
10gの実験例19からのポリマーを、60℃で1時間撹拌しながら40mLのN,N-ジメチルアセトアミドに溶解した。そのポリマー溶液を30℃まで冷却した後、2.5mLのヨードメタンをポリマー溶液に滴下し、ポリマー溶液を30℃で24時間撹拌してポリマーを四級化した。実験例20からの四級化アミン含有ポリマーの化学構造をH-NMRによって確認した。H-NMRスペクトルを図10に示す。溶媒としてDMSO-d6を使用した。
【0098】
実験例21:実施例20からのアミン含有ポリマーの膜キャスティング
実験例20からの四級化ポリマー溶液を膜の調製に直接使用した。必要量のポリマー溶液をシリンジで採取し、40℃に予熱したガラス板に、1μmのPTFEフィルターを通して直接塗布した。ガラス板をコーティングするために、ドクターブレードを備えたアプリケーターを5mm/秒の速さでガラス板上を自走させた。塗布した湿潤層をN雰囲気下、室温で24時間予備乾燥させ、そして最後に真空下60℃で6時間乾燥させた。
【0099】
実験例22:アミン含有ポリマーの合成
合成については、油浴、メカニカルスターラー、調整可能な戻り率および凝縮液除去を備えた蒸留ヘッドクーラー付き充填カラムを備えた500mL容量 三口フラスコで実施した。合成の最初に、9.4g(0.03モル)の実験例18からのアミン含有モノマー(VIId)、7.63g(0.03モル)の4,4’-ジフルオルジフェニルスルホン(VIb)、160mLのN,N-ジメチルアセトアミド、および9.12g(0.066モル)の細かく粉砕したKCOを窒素雰囲気下、室温で1時間かけて混合した。その後、その反応混合物の温度を120℃に上昇させ、生成された水をカラムを使用して4時間かけて除去した。4時間後、追加の10mLのN,N-ジメチルアセトアミドを反応混合物に添加し、反応混合物の温度を165℃に上昇させた。20時間後、油浴の加熱を止め、粘稠な反応生成物を冷却し、冷水に注いだ。沈殿した生成物を湯で3回洗浄し、真空下40℃で48時間かけて乾燥させた。収量は13.87g(87.6%)であった。
【0100】
実験例23:実験例22のアミン含有ポリマーの四級化
10gの実験例22からのポリマーを、60℃で1時間撹拌しながら40mLのN,N-ジメチルアセトアミドに溶解した。そのポリマー溶液を30℃まで冷却した後、2.5mLのヨードメタンをポリマー溶液に滴下し、ポリマー溶液を30℃で24時間撹拌してポリマーを四級化した。実験例6からの四級化ピペリジン含有ポリマーの化学構造をH-NMRによって確認した。H-NMRスペクトルを図11に示す。溶媒としてDMSO-d6を使用した。
【0101】
実験例24:実験例23からのアミン含有ポリマーの膜キャスティング
実験例23からの四級化ポリマー溶液を膜の調製に直接使用した。必要量のポリマー溶液をシリンジで採取し、40℃に予熱したガラス板に、1μmのPTFEフィルターを通して直接塗布した。ガラス板をコーティングするために、ドクターブレードを備えたアプリケーターを5mm/秒の速さでガラス板上を自走させた。塗布した湿潤層をN雰囲気下、室温で24時間予備乾燥させ、そして最後に真空下60℃で6時間乾燥させた。
【0102】
実験例25:水酸化物形態の膜のイオン交換
国際公開第2021/013694号パンフレットの実施例4で調製された膜(膜#1と表示)、本明細書の実験例11で調製された膜(膜#2と表示)、本明細書の実験例17(膜#3と表示)で調製された膜、中国特許出願公開第110294845号明細書記載の第三級アミンビスフェノールモノマー(MPDDP)を本明細書の実験例2と類似の反応条件下で使用して調製したポリマー製膜(膜#4と表示)、および市販の陰イオン交換膜FAA-3-50を、以下の手順でイオン交換した:
各膜の6個の試料(40×40mm)を、1M KOH溶液の新鮮部に60℃で1時間ずつ3回置き、続いて、1M KOH溶液の新鮮部に60℃で24時間置いた。その後、その膜試料を脱イオン水ですすぎ、脱イオン水の新鮮部に室温で1時間ずつ3回置いた。続いて、その膜試料を脱イオン水の新鮮部で室温で一晩保管した。
【0103】
実験例26:80℃の2M KOH中での膜試料の分解
実験例25からのすべての試料(ボトル当たり各膜タイプの試料6個)を、厚いPTFE材料で作られ気密ねじ蓋を備えた250mL容量ボトルに入れ、2M KOH溶液を充填し、80℃の乾燥キャビネットに2,000時間入れた。その後、試料を脱イオン水ですすぎ、各試料のイオン伝導度を測定した。
【0104】
実験例27:イオン伝導度(IC)の測定
実験例25および実験例26からのイオン交換膜試料のイオン伝導度(IC)を、従来の四電極配置でのインピーダンス分光法(EIS)により測定した。 膜試料を市販のBT-112セル(Bekk Tech LLC社)に取り付けた。その結果、2本の外側Ptワイヤが試料の下に配置され、2本の中点Ptワイヤが試料の上に配置された。BT-112セルを2枚のPTFEプレートの間に取り付け、脱イオン水で満たした。脱イオン水の温度を水浴によって制御し、脱イオン水をセル内に常時ポンプで送った。膜抵抗(Rmembrane)は、広く使用されているR(RC)ランドルス型等価回路を使用して、取得したEISスペクトルを適合することにより計算した。
【0105】
膜試料のイオン伝導度(σ)は式(1)で得られる。
σ=L/(Rmembrane*A) (1)
式中、LはPtワイヤ間の距離(5mm)であり、Aは2本の外側Ptワイヤ間の膜試料の面積である。各膜ごとに6個の試料について各測定を繰り返し、平均±標準偏差を計算した。市販の陰イオン交換膜FAA-3-50も同じ方法で試験した。さらに、実験例25からの天然膜試料(調製されたままの状態の膜の非分解試料)のICを比較対照として測定した。
表1にすべての測定結果をまとめている。正規化初期ICは、天然膜試料(調製されたままの状態の膜の非分解試料)の正規化ICを表しており、残留正規化ICは、2,000時間にわたって分解された後の試料のICを表している。
【0106】
【表1】
【0107】
表1:国際公開第2021/013694号パンフレットの実施例4の膜(膜#1と表示)、本明細書の実験例11の膜(膜#2と表示)、本明細書の実施例17の膜(膜#3と表示)、中国特許出願公開第110294845号明細書記載の第三級アミンビスフェノールモノマー(MPDDP)を本明細書の実験例2と類似の反応条件下で使用して調製したポリマー製膜(膜#4と表示)、およびFUMATECH BWT GmbH社製の市販の陰イオン交換膜FAA-3-50を用いた実験例25~実験例27から得られた実験データ。
*膜4は、80℃の2M KOH中で1,000時間後にいくつかの小片に分解した。
**FAA-3-50膜は、80℃の2M KOH中で120時間後に完全に分解した。
【0108】
表1から、本発明による膜は、従来技術の膜よりも高い残留正規化IC値を示すことが分かる。したがって、本発明の化合物は、そのイオン伝導性を長期間維持するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】