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特表2024-511723酸化セリウム粒子、その製造プロセス及びその化学機械研磨における使用
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  • 特表-酸化セリウム粒子、その製造プロセス及びその化学機械研磨における使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】酸化セリウム粒子、その製造プロセス及びその化学機械研磨における使用
(51)【国際特許分類】
   C01F 17/235 20200101AFI20240308BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20240308BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20240308BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C01F17/235
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
B24B37/00 H
H01L21/304 622B
H01L21/304 622D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554067
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2022056266
(87)【国際公開番号】W WO2022189598
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】21162231.1
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】プリッソノー, マリ
(72)【発明者】
【氏名】トス, レカ
(72)【発明者】
【氏名】ダレンコン, ローリアーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ビュイセット, ヴァレリー
(72)【発明者】
【氏名】ブドー, ミカエル
【テーマコード(参考)】
3C158
4G076
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158DA12
3C158DA17
3C158ED11
4G076AA02
4G076AB07
4G076AB11
4G076BA13
4G076BB03
4G076BB08
4G076BC02
4G076BD02
4G076CA02
4G076DA30
5F057AA28
5F057BA11
5F057BB11
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA09
5F057EA16
5F057EA17
5F057EA18
5F057EA32
(57)【要約】
本発明は、粗さ指数RIが少なくとも5である酸化セリウム粒子と、その製造プロセスと、その化学機械研磨用途における使用と、に関する。
【数1】
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化セリウム粒子を製造するためのプロセスであって、以下に示す工程:
(a)不活性雰囲気下に、(i)塩基の水溶液と、(ii)NO 、CeIII、任意選択的にCeIVを含む水溶液と、(iii)有機酸又はその塩とを、混合物を得るために接触させる工程であって、前記有機酸は、置換又は無置換のC1~C20-アルキル、-アルケニル又は-アルキニルカルボン酸である、工程と;
(b)工程(a)で得られた混合物を熱処理に付す工程と;
(c)工程(b)で得られた混合物を任意選択的に酸性化する工程と;
(d)工程(b)又は(c)の終了時に得られた固体材料を水で任意選択的に洗浄する工程と;
(e)工程(d)の終了時に得られた固体材料を任意選択的に機械的処理に付すことにより粒子を解凝集させる工程と;
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記有機酸は、置換又は無置換のC1~C12アルキルカルボン酸、好ましくは、無置換(unsubstitued)C1~C6アルキルカルボン酸又は少なくとも1つのC1~C3アルキル基で置換されたC1~C6アルキルカルボン酸、より好ましくは、少なくとも1つのC1~C2アルキル基で置換されたC1~C3アルキルカルボン酸、更により好ましくは、ピバル酸又はジカルボン酸である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
工程(b)の前記熱処理は、75℃~95℃の範囲の温度で実施される、請求項1又は2のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセスにより得ることができる酸化セリウム粒子。
【請求項5】
前記粒子は、粗さ指数RIが少なくとも5であり、特に5~20の範囲、特に6~17の範囲、より詳細には7~14の範囲にあり、RIは、式:
【数1】
(ここで、「TEMサイズ」は、透過電子顕微鏡像から測定した粒子の平均サイズを表し、「SSAサイズ」は、そのBET比表面積から求めた理論上の平均粒子サイズを表す)により定義されることを特徴とする、酸化セリウム粒子。
【請求項6】
前記「SSAサイズ」は、次式:
【数2】
(ここで、SSAは、粒子のBET比表面積を表し、ρは、酸化セリウム(IV)の密度を表し、これは7.22g/cmである)に従い算出される、請求項5に記載の酸化セリウム粒子。
【請求項7】
前記粒子の前記BET比表面積は、窒素吸着から求められる、請求項5又は6に記載の酸化セリウム粒子。
【請求項8】
前記粒子は回転楕円体形状を有することを特徴とする、請求項5~7のいずれか一項に記載の酸化セリウム粒子。
【請求項9】
前記粒子は、円形度SRが、0.8~1.0の間、より詳細には0.85~1.0の間、更により詳細には0.90~1.0の間にあることを特徴とする、請求項8に記載の酸化セリウム粒子。
【請求項10】
SRは、粒子投影像の外周P及び面積Aの測定値から、次式:
【数3】
を用いて算出される、請求項9に記載の酸化セリウム粒子。
【請求項11】
SRは、動的画像解析(DIA)により、特にISO 13322-2(2006)に従い求められる、請求項9又は10に記載の酸化セリウム粒子。
【請求項12】
前記粒子の炭素重量比は、0.001重量%~5重量%の範囲、特に0.1重量%~2.5重量%の範囲にあることを特徴とする、請求項5~11のいずれか一項に記載の酸化セリウム粒子。
【請求項13】
前記粒子の比表面積は、15~100m2/gの間、より詳細には32~80m2/gの間、より詳細には35~70m2/gの間、更により詳細には36~60m2/gの間に含まれることを特徴とする、請求項5~12のいずれか一項に記載の酸化セリウム粒子。
【請求項14】
前記粒子の比表面積は、20~40m2/gの間に含まれることを特徴とする、請求項13に記載の酸化セリウム粒子。
【請求項15】
前記粒子の平均サイズは、30~500nm、特に70~300nmであり、前記平均サイズは、TEM像から測定されることを特徴とする、請求項5~14のいずれか一項に記載の酸化セリウム粒子。
【請求項16】
前記粒子の平均サイズは、140~300nmの間、特に145~270nmの間、より詳細には150~250nmの間、更により詳細には155~240nmの間に含まれ、前記平均サイズは、TEM像から測定されることを特徴とする、請求項15に記載の酸化セリウム粒子。
【請求項17】
請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセスにより得ることができる、請求項5~16のいずれか一項に記載の酸化セリウム粒子。
【請求項18】
前記粒子は、回転楕円体形状を有し、式:
【数4】
(ここで、「TEMサイズ」は、透過電子顕微鏡像から測定した粒子の平均サイズを表し、「SSAサイズ」は、次式:
【数5】
(ここで、SSAは、窒素吸着から求めた粒子のBET比表面積を表し、ρは、酸化セリウム(IV)の密度を表し、これは7.22g/cm3である)に従う理論上の平均粒子サイズを表す)で定義される粗さ指数RIが、少なくとも2、特に、少なくとも3.5であることと、前記粒子は、炭素重量比が0.001重量%~5重量%の範囲、特に0.1重量%~2.5重量%の範囲にあることと、を特徴とする、酸化セリウム粒子。
【請求項19】
前記粒子は、円形度SRが、0.8~1.0の間、より詳細には0.85~1.0の間、更により詳細には0.90~1.0の間にあることを特徴とする、請求項18に記載の酸化セリウム粒子。
【請求項20】
SRは、粒子投影像の外周P及び面積Aの測定値から、次式:
【数6】
を用いて算出される、請求項19に記載の酸化セリウム粒子。
【請求項21】
SRは、動的画像解析(DIA)により、特にISO 13322-2(2006)に従い求められる、請求項19又は20に記載の酸化セリウム粒子。
【請求項22】
前記粒子の比表面積は、15~100m2/gの間、より詳細には32~80m2/gの間、より詳細には35~70m2/gの間、更により詳細には36~60m2/gの間に含まれることを特徴とする、請求項18~21のいずれか一項に記載の酸化セリウム粒子。
【請求項23】
前記粒子の比表面積は、20~40m2/gの間に含まれることを特徴とする、請求項22に記載の酸化セリウム粒子。
【請求項24】
前記粒子の平均サイズは、30~500nm、特に70~300nmであり、前記平均サイズは、TEM像から測定されることを特徴とする、請求項18~23のいずれか一項に記載の酸化セリウム粒子。
【請求項25】
前記粒子の平均サイズは、140~300nmの間、特に145~270nmの間、より詳細には150~250nmの間、更により詳細には155~240nmの間に含まれ、前記平均サイズは、TEM像から測定されることを特徴とする、請求項24に記載の酸化セリウム粒子。
【請求項26】
請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセスにより得ることができる、請求項18~25のいずれか一項に記載の酸化セリウム粒子。
【請求項27】
請求項4~26のいずれか一項に記載の酸化セリウム粒子の液体媒体中の分散体。
【請求項28】
請求項4~26のいずれか一項に記載の酸化セリウム粒子又は請求項27に記載の分散体の、研磨用組成物、より詳細にはCMP組成物を調製するための使用。
【請求項29】
請求項4~26のいずれか一項に記載の酸化セリウム粒子又は請求項27に記載の分散体を含む研磨用組成物。
【請求項30】
基板の一部を除去するための方法であって、前記基板を請求項29に記載の研磨用組成物で研磨することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化セリウム粒子及びその研磨用組成物、特に化学機械研磨(CMP)用組成物の構成成分としての使用に関する。本発明はまた、酸化セリウム粒子の調製方法にも関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、CMP組成物中で使用すると良好な研磨特性を示す酸化セリウム粒子及び簡単、経済的且つ工業規模で実施することが容易なこの種の粒子の調製方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
酸化第二セリウムは、研磨用途によく使用されている。エレクトロニクス産業が発展したことにより、ディスクなどの様々な部品や誘電体化合物を研磨するための組成物を以前にも増して多く使用することが必要になっている。通常、分散体の形態で商品化されているこれらの組成物は、一定の特性を示さなければならない。例えばこれらは、材料を高度に除去できることが必要であり、これが研磨能力に反映される。これらはまた、欠陥性が可能な限り低くなければならず;「欠陥性(defectuosity)」という用語は、特に、その組成物で処理された後の基板に現れるスクラッチの量を意味することを意図している。通常、この分散体は、安定性及び易使用性の観点から、サブミクロン寸法、すなわち、概して300nm未満の粒子を含む。加えて、こうした分散体中に存在する粒子が細か過ぎると、その研磨能力が低下し、粒子が大き過ぎると、欠陥性が増大する一因となり得る。
【0004】
これに従い、CMP用途に特化させて精巧に作られた数種の酸化セリウム粒子が先行技術から知られている。
【0005】
国際公開第2015/197656号パンフレットには、金属がドープされた酸化セリウムの粒子が開示されている。
【0006】
国際公開第08043703号パンフレットには、酸化セリウム粒子の液相中の懸濁液が開示されており、前記粒子は、最大200nmの平均サイズを有する二次粒子であり、前記二次粒子は、平均サイズが最大100nmである一次粒子を含み、その標準偏差は前記一次粒子の前記平均サイズの値に対し最大30%である。
【0007】
国際公開第2015/091495号パンフレットには、酸化セリウム粒子の液相中の懸濁液が開示されており、前記粒子は、一次粒子を含む二次粒子を含み、前記二次粒子は、105~1000nmの間に含まれる平均サイズD50を有し、標準偏差は前記二次粒子の前記平均サイズの値の10~50%の間に含まれ;前記一次粒子は、100~300nmの間に含まれる平均サイズD50を有し、標準偏差は、前記一次粒子の前記平均サイズの値に対し10~30%の間に含まれる。
【0008】
本発明者らは、CMPにおいて向上した性能を示す新規な酸化セリウム粒子に加えて、簡単、経済的且つ工業規模で実施することが容易なこの種の粒子の調製方法を得るためにまだ改善の余地があると考えている。
【発明の概要】
【0009】
本出願人は、上に述べた問題を解決することができる新規な酸化セリウム粒子を精巧に作製した。
【0010】
したがって、本発明の一つの主題は、粗さ指数(roughness index)(RI)が少なくとも5、特に、5~20の範囲、特に、6~17の範囲にある酸化セリウム粒子にある。より詳細には、粒子の粗さ指数は次式で定義される:
【数1】
(ここで、「TEMサイズ」は透過電子顕微鏡(TEM)像から測定した粒子の平均サイズを表す)。好ましくは、この平均サイズを得るために、透過電子顕微鏡像から少なくとも80個の粒子を測定する。
【0011】
「SSAサイズ」は、BET(ブルナウアー・エメット・テラー(Brunauer,Emmett and Teller))比表面積から求めた理論上の平均粒子サイズを表す。より詳細には、これは次式に従い求めることができる:
【数2】
(ここで、SSAは、粒子のBET比表面積を表し、ρは、酸化セリウム(IV)の密度を表し、これは7.22g/cmである)。より詳細には、BET比表面積は、窒素吸着から求めることができる。
【0012】
本発明者らの知識の限りでは、本発明の粒子により達成される粗さ指数は、先行技術の酸化セリウム粒子のそれよりも高い。このような粒子は、CMP組成物中で又はCMPプロセスで研磨粒子として使用した場合に、より高い研磨効率の達成に寄与すると考えられている。
【0013】
本発明はまた、本発明の酸化セリウム粒子を製造するためのプロセスであって、少なくとも以下に示す工程:
(a)不活性雰囲気下に、(i)塩基の水溶液と、(ii)NO 、CeIII、任意選択的にCeIVを含む水溶液と、(iii)有機酸又はその塩とを、混合物を得るために接触させる工程であって、この有機酸は、置換又は無置換のC1~C20-アルキル、-アルケニル又は-アルキニルカルボン酸である、工程と;
(b)工程(a)で得られた混合物を熱処理に付す工程と;
(c)工程(b)で得られた混合物を任意選択的に酸性化する工程と;
(d)工程(b)又は(c)の終了時に得られた固体材料を水で任意選択的に洗浄する工程と;
(e)工程(d)の終了時に得られた固体材料を任意選択的に機械的処理に付すことにより粒子を解凝集させる工程と;
を含む、プロセスにも関する。
【0014】
有利には、このプロセスにより、本発明の酸化セリウム粒子を単純な様式で調製することが可能になる。
【0015】
本発明はまた、上に述べたプロセスにより得ることができる又は得られた酸化セリウム粒子と、本発明の酸化セリウム粒子の液体媒体中の分散体と、前記分散体又は本発明の粒子の、CMP組成物を調製するための使用と、前記分散体又は前記粒子を含むCMP組成物と、前記CMP組成物を基板の一部を除去するために使用する研磨プロセスと、それにより研磨された基板を含む半導体と、にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】透過電子顕微鏡法により観察した本発明の粒子の画像である。
図2】透過電子顕微鏡法により観察した本発明の粒子の画像である。
図3】透過電子顕微鏡法により観察した本発明の粒子の画像である。
図4】透過電子顕微鏡法により観察した本発明の粒子の画像である。
図5】透過電子顕微鏡法により観察した先行技術の酸化セリウム粒子の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
これらの写真は、JEM-1400(JEOL)装置を120kVで動作させて撮影した。
【0018】
本開示における「...~...の間に含まれる」又はこれに類する表現は、境界値を含むものとして理解すべきである。
【0019】
本発明の粒子に関連する「酸化セリウム(cerium oxide)」という用語は、酸化第二セリウム(ceric oxide)としても知られる酸化セリウム(IV)を意味する。酸化セリウムは、概して、酸化物の重量に対し少なくとも99.8重量%の純度を有する。酸化セリウムは、概して、結晶性酸化第二セリウムである。この酸化物中には、セリウム以外に若干の不純物が存在し得る。この不純物は、酸化セリウムの調製プロセスで使用される原材料又は出発物質に由来し得る。不純物の比率の総和は、概して、酸化セリウムに対し0.2重量%未満である。残留硝酸塩は、本出願では不純物と見なされない。
【0020】
本発明の酸化セリウム粒子の分散体に関連する「分散体」という表現は、液体媒体中に安定に分散しているサブミクロン寸法の固体の微細な酸化セリウム粒子からなる系を指し、前記粒子は、任意選択的に、残存量の、結合しているか又は吸着されている、例えば、硝酸イオンやアンモニウムイオンなどのイオンを含有する可能性もある。
【0021】
ここで本発明を、その異なる実施形態に従いより詳細に説明する。
【0022】
先に説明したように、本発明の一つの主題は、粗さ指数(RI)が少なくとも5である酸化セリウム粒子にある。より詳細には、本発明の粒子の粗さ指数は、5~20の範囲、特に、6~17の範囲、より詳細には7~14の範囲とすることができる。
【0023】
粒子の粗さ指数(RI)は次式で定義される:
【数3】
(ここで、「TEMサイズ」は、透過電子顕微鏡像から測定した粒子の平均サイズを表し、「SSAサイズ」は、そのBET(ブルナウアー・エメット・テラー)比表面積から求めた理論上の平均粒子サイズを表す)。具体的には、SSAサイズは、次式に従い求めることができる:
【数4】
(ここで、SSAは、粒子のBET比表面積を表し、ρは、酸化セリウム(IV)の密度を表し、これは7.22g/cmである)。具体的には、SSAサイズは、窒素吸着から求めることができる。
【0024】
TEMサイズは、粒子の平均有効サイズである。これは、好ましくは、統計解析が行えるように、多数の粒子、例えば、少なくとも80個、好ましくは少なくとも90個、より好ましくは少なくとも100個で測定される。この測定は、通常、酸化セリウム粒子の同一サンプルの1つ又は複数の写真上で行われる。粒子は、好ましくは、それらの像が写真で十分に視認できるように保持される。一実施形態によれば、後に詳細に説明するが、回転楕円体形状を有する粒子の数は、好ましくは、粒子の少なくとも80.0%、より詳細には少なくとも90.0%、更により詳細には少なくとも95.0%に相当する。
【0025】
比表面積(SSA)は、ブルナウアー・エメット・テラー法(BET法)によって酸化セリウム粒子の粉末上に窒素を吸着させることによって求めることができる。この方法は、規格ASTM D3663-03(2015年再承認)に開示されている。この方法は、定期刊行物「The Journal of the American Chemical Society,60,309(1938)」にも記載されている。比表面積は、製造者のガイドラインに従って、Micromeriticsの装置TriStar 3000で自動的に測定することができる。測定前に、吸着している化学種を除去するために、粉末形態のサンプルを静止空気中で最大210℃の温度で加熱することにより脱気するものとする。
【0026】
BET比表面積を測定することにより、上に示した式に従い、SSAサイズを算出することが可能になる:SSAが与えられることにより、上式から、粒子が球状であると仮定した場合の酸化セリウム(IV)粒子の理論上のサイズが得られる。したがって、TEMサイズ/SSAサイズの比は、粒子の粗さの指標となり:この比が高いほど、粒子は粗い。粗さ指数が高い酸化セリウム粒子をCMPなどの研磨プロセスに使用すると、効率が向上すると考えられている。
【0027】
好ましい一実施形態によれば、本発明の酸化セリウム粒子は、回転楕円体形状を有する。本発明者らの知識の限りでは、特定の粗さ指数と特定の回転楕円体形態とを兼ね備える粒子がCMPに貢献し、従来の酸化セリウム粒子(即ち、回転楕円体ではなく、所要の粗さ指数を有しない)を用いた場合と比較して、向上した結果が得られる。
【0028】
回転楕円体形状にある本発明の酸化セリウム粒子の円形度(sphericity ratio)SRは、0.8~1.0の間、より詳細には0.85~1.0の間、更により詳細には0.90~1.0の間とすることができる。SRは、好ましくは0.90~1.0の間又は0.95~1.0の間であり得る。粒子の円形度は、次式を用いて、粒子の外周P及び投影面積Aの測定値から算出される。
【数5】
【0029】
理想的な球体のSRは1.0であり、回転楕円体粒子の場合は1.0未満である。
【0030】
円形度は、通常、動的画像解析(DIA)により求められる。DIAを実施するために使用することができる装置の例は、RetschのCAMSIZER(登録商標)P4又はSympatecのQicPic(登録商標)である。
【0031】
円形度は、より詳細には、ISO 13322-2(2006)に準拠して測定することができる。DIAでは、一般に、統計学的に有意な多数の粒子(例えば、少なくとも80個)の解析が必要である。
【0032】
一実施形態によれば、本発明の酸化セリウム粒子の平均サイズは、30nm以上となり得る。多くの場合、粒子サイズは70nm以上である。本発明の酸化セリウム粒子の平均サイズは、500nm以下とすることができる。多くの場合、粒子サイズは、300nm以下、特に150nm以下である。一態様において、本発明の酸化セリウム粒子の平均サイズは、140~300nmの間に含まれ、特に145~270nmの間、より詳細には150~250nmの間、更により詳細には155~240nmの間に含まれ得る。平均サイズは、好ましくは、TEM像から測定される。この測定は、好ましくは、少なくとも80個の粒子で行われる。
【0033】
一実施形態によれば、本発明の酸化セリウム粒子の比表面積は、30~100m2/gの間、より詳細には、32~80m2/gの間、より詳細には35~70m2/gの間、更により詳細には36~60m2/gの間に含まれ得る。比表面積は、先に説明したように、ブルナウアー・エメット・テラー法(BET法)による窒素吸着により、粉末で測定される。
【0034】
特定の態様において、比表面積は、15~100m2/g、より詳細には20~40m2/gの間にある。
【0035】
他の態様において、本発明は、酸化セリウム粒子であって、前記粒子は、次式:
【数6】
(ここで、「TEMサイズ」は、透過電子顕微鏡像から測定した粒子の平均サイズを表し、「SSAサイズ」は、次式:
【数7】
(ここで、SSAは、窒素吸着から求めた粒子のBET比表面積を表し、ρは、酸化セリウム(IV)の密度を表し、これは7.22g/cm3である)に従う理論上の平均粒子サイズを表す)で定義される粗さ指数RIが、少なくとも2、特に、少なくとも3.5である回転楕円体であることと、前記粒子は、炭素重量比が0.001重量%~5重量%の範囲、特に0.1重量%~2.5重量%の範囲にあることと、を特徴とする、酸化セリウム粒子に関する。
【0036】
特定の実施形態において、この態様における粗さ指数RIは5未満である。
【0037】
本発明者らの知識の限りでは、この態様による酸化セリウム粒子の炭素重量比は、酸化セリウム粒子と、CMP用途に一般に使用されている分散体及び研磨組成物の他の構成成分との適合性に寄与する。
【0038】
この態様における回転楕円体形状、粒子サイズ及び比表面積の特性評価は上に記載した通りである。
【0039】
一実施形態によれば、本発明の酸化セリウム粒子の炭素重量比は、0.001重量%~5重量%の範囲、特に0.1重量%~2.5重量%の範囲とすることができる。この微量の炭素は、粒子の調製に用いた、特定の有機酸を必要とする合成方法の痕跡であり得る。元素状炭素の含有量(dosage)は、Horiba EMIA 320-V2などの炭素・硫黄分析装置を用いて実施することができる。
【0040】
本発明はまた、本発明の酸化セリウム粒子を製造するためのプロセスであって、少なくとも以下に示す工程:
(a)不活性雰囲気下に、(i)塩基の水溶液と、(ii)NO 、CeIII、任意選択的にCeIVを含む水溶液と、(iii)有機酸又はその塩とを、混合物を得るために接触させる工程であって、この有機酸は、置換又は無置換のC1~C20-アルキル、-アルケニル又は-アルキニルカルボン酸である、工程と;
(b)工程(a)で得られた混合物を熱処理に付す工程と;
(c)工程(b)で得られた混合物を任意選択的に酸性化する工程と;
(d)工程(b)又は(c)の終了時に得られた固体材料を水で任意選択的に洗浄する工程と;
(e)工程(d)の終了時に得られた固体材料を任意選択的に機械的処理に付すことにより粒子を解凝集させる工程と;
を含む、プロセスにも関する。
【0041】
高純度の塩及び成分を使用すると有利である。塩の純度は、少なくとも99.5重量%、より詳細には少なくとも99.9重量%とすることができる。
【0042】
工程(a)においては、塩基の水溶液(i)が使用される。特に、水酸化物型の生成物を塩基として使用することができる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物及びアンモニア水を挙げることができる。第二級、第三級又は第四級アミンも使用することができる。塩基の水溶液は、不活性ガスをバブリングすることによって予め脱気しておくこともできる。
【0043】
工程(a)で使用される塩基の量を、塩基/Ce全体のモル比で表すと、これは、好ましくは、4~10の間に含まれ、好ましくは、5~8の間に含まれる。
【0044】
工程(a)においては、NO 、CeIII及び任意選択的にCeIVを含む水溶液(ii)が使用される。溶液の調製には、特に硝酸塩又はセリウムを使用することができる。CeIVを水溶液中に存在させる場合は、CeIV/Ce全体のモル比は、好ましくは、1/500000~1/4000の間に含まれる。このモル比は、特に、1/6000~1/4000の間とすることができる。実施例で使用されるCeIV/Ce全体のモル比を用いることができる。
【0045】
この調製方法においては、硝酸と酸化第二セリウム水和物との反応により得られる硝酸第二セリウム水溶液を使用することができる。酸化第二セリウムは、過酸化水素水の存在下において、CeIII陽イオンをCeIV陽イオンに変換するように、第一セリウム塩溶液とアンモニア水溶液とを反応させることによって従来通りに調製される。仏国特許第2570087号明細書に開示されている、硝酸第一セリウム溶液を電気化学的に酸化する方法に従い得られる硝酸第二セリウム溶液を使用することも特に有利である。仏国特許第2570087号明細書の教示に従って得られる硝酸第二セリウムの溶液は、約0.6Nの酸性度を示し得る。
【0046】
工程(a)にCeIVが存在する場合、CeIVは塩により提供することができ、これは、硝酸セリウム(IV)又は硝酸セリウムアンモニウムとすることができる。
【0047】
工程(a)で使用される水溶液中の硝酸イオンの量は、NO /CeIIIのモル比で表した場合、概して、1/3~5/1の間にある。工程(a)で使用される水溶液の酸性度は、好ましくは、0.8N~12.0Nの間に含まれる。
【0048】
工程(a)においては、置換又は無置換のC1~C20-アルキル、-アルケニル又は-アルキニルカルボン酸である特定の有機酸(iii)又はこれらの塩が使用される。アルキル、アルケニル又はアルキニル基の鎖長は、より詳細には、C1~C12、C1~C6であってもよく、又はC1~C3であってさえもよい。有機酸は、好ましくは、アルキル又はアルケニルカルボン酸、より好ましくは、アルキルカルボン酸である。
【0049】
一実施形態によれば、有機酸は置換されている。置換基の例としては、ハロゲン、低級アルキル(すなわち、6個未満の炭素原子を有するアルキル基)、アリール、アルコキシ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルフィニル及びアリールスルホニルが挙げられる。好ましい置換基は、低級アルキル基、より詳細にはC1~C3アルキル基、特にメチル基である。このアルキル、アルケニル又はアルキニル基には、1つ又は複数の置換基、特に1つ又は複数のC1~C3アルキル基、とりわけ1つ又は複数のメチル基が存在してもよい。好ましくは、有機酸は、少なくとも1つのC1~C3アルキル基で置換されたC1~C6アルキルカルボン酸、より好ましくは、少なくとも1つのC1~C2アルキル基で置換されたC1~C3アルキルカルボン酸、より好ましくは、少なくとも1つのメチル基で置換されたC1~C3アルキルカルボン酸、更により好ましくは、ピバル酸である。
【0050】
他の代替的な実施形態によれば、有機酸は、無置換(unsubstitued)である。この場合、有機酸は、好ましくは、無置換C1~C20アルキルカルボン酸、より好ましくは、無置換C1~C12アルキルカルボン酸、より好ましくは、無置換C1~C6アルキルカルボン酸、より好ましくは、無置換C1~C3アルキルカルボン酸、更により好ましくは、プロピオン酸である。
【0051】
更なる他の実施形態において、有機酸は、ジカルボン酸、例えば、C2~C8ジカルボン酸、例えば、マロン酸、コハク酸、好ましくは、アジピン酸である。ジカルボン酸は、本明細書において先に記載したように、置換されていてもよく、特に、無置換であってもよい。
【0052】
上述の有機酸の好適な塩として、アンモニウム塩を挙げることができる。
【0053】
一実施形態によれば、有機酸は水溶液の形態で存在する。水溶液中の有機酸の濃度は、例えば、1~20重量%の範囲、特に、2~10重量%の範囲、より詳細には3~7重量%の範囲とすることができる。他の実施形態によれば、純粋な、すなわち、無希釈の有機酸が使用される。
【0054】
工程(a)において混合物を形成するために接触させる成分(i)、(ii)及び(iii)は、任意の順序で接触させることができる。一実施形態によれば、特に、塩基の水溶液(i)及び有機酸(iii)を互いに接触させ、得られた混合物を、硝酸セリウムを含む水溶液(ii)と接触させる。この場合、塩基の溶液(i)は既に水溶液の形態にあるので、純粋な(すなわち、無希釈の)有機酸(iii)を使用することができる。(i)及び(iii)の混合物と(ii)との接触は、好ましくは、撹拌しながら及び/又は不活性ガスをバブリングしながら(ii)を前記混合物に添加することから構成することができる。
【0055】
代替的な実施形態によれば、硝酸セリウムを含む水溶液(ii)と塩基の水溶液(i)とを互いに接触させ、得られた混合物を有機酸(iii)と接触させる。その場合、有機酸(iii)は、その水溶液の形態で使用することができる。(ii)及び(i)の接触は、(ii)を(i)に、好ましくは、撹拌しながら及び/又は不活性ガスをバブリングしながら添加することから構成することができる。
【0056】
有機酸(iii)は、工程(a)で得られる混合物の総体積に対し1~245mmol/Lの範囲、特に、2~150mmol/Lの範囲、より詳細には5~100mmol/Lの範囲、より詳細には5~50mmol/Lの範囲の濃度で使用することができる。この範囲は、明確に定義された(well-defined)粒子の形成に特に適している。
【0057】
混合物中の遊離酸素の量は慎重に制御し、最小限にすべきである。この目的のために、使用する成分(i)、(ii)及び(iii)及び/又は結果として得られる混合物の1つ又は複数を、不活性ガスをバブリングすることによって脱気することができる。「不活性ガス」又は「不活性雰囲気」という用語は、酸素を含まない雰囲気又はガスを意味することを意図し、このガスは、例えば窒素又はアルゴンとすることが可能である。
【0058】
工程(a)は、成分(i)、(ii)及び(iii)を反応させることから構成される。工程(a)は、好ましくは、不活性雰囲気下に、特に密閉式反応器内で、又は不活性ガスで掃引しながら半密閉式反応器内で実施される。接触は、概して、撹拌型反応器内で行われる。
【0059】
工程(a)は、概して、5℃~50℃の間に含まれる温度で実施される。この温度は20~25℃とすることができる。
【0060】
工程(b)は、先行する工程の終了時に得られる反応媒体の熱処理である。これは、(i)加熱副工程及び(ii)熟成副工程から構成され得る。
【0061】
加熱副工程(i)は、媒体を、概して75℃~95℃の間に含まれる温度、より詳細には80℃~90℃の間に含まれる温度で加熱することから構成することができる。
【0062】
熟成副工程(ii)は、媒体を、75℃~95℃の間に含まれる温度、より詳細には80℃~90℃に含まれる温度に維持することから構成することができる。熟成副工程(ii)の持続時間は、2時間~20時間の間である。経験則として、熟成工程の温度が高いほど、熟成副工程の持続時間は短くなる。例えば、熟成副工程の温度が85℃~90℃の間にあり、例えば88℃である場合、熟成副工程の持続時間は2時間~15時間の間、より詳細には4時間~15時間の間となり得る。熟成副工程の温度が75℃~85℃の間にあり、例えば80℃である場合、熟成副工程の持続時間は15時間~30時間の間となり得る。
【0063】
工程(b)を行う間に、CeIIIがCeIVに酸化される。この工程は、不活性雰囲気下で行うこともでき、工程(a)のこの雰囲気に関する説明はここでも同様に適用される。熱処理も同様に、撹拌型反応器内で実施することができる。
【0064】
工程(c)においては、工程(b)の終了時に得られた混合物を、任意選択的に酸性化することができる。この工程(c)は、硝酸を使用することにより行うことができる。反応混合物は、HNOにより、3.0未満、より詳細には1.5~2.5の間に含まれるpHに酸性化することができる。
【0065】
工程(d)においては、工程(b)又は工程(c)の終了時に得られる固体材料が、水、好ましくは脱イオン水で洗浄される。この操作により、分散体に残留する硝酸塩の量を減らし、目標の導電率を得ることが可能になる。この工程は、混合物から固体を濾過し、固体を水に再分散させることによって実施することができる。濾過及び再分散は、必要に応じて数回行うことができる。
【0066】
工程(e)においては、工程(d)の終了時に得られた固体材料の粒子を解凝集するために、機械的処理を行ってもよい。この工程は、ダブルジェット処理又は超音波解凝集によって実施することができる。通常、この工程を行うことにより、粒度分布がシャープになると共に、大きな凝集粒子の数が減る。一実施形態によれば、酸化セリウム粒子は、解凝集の機械的処理に付されている。他の実施形態によれば、酸化セリウム粒子は、解凝集の機械的処理に付されていない。
【0067】
工程(e)の後、固体材料を、粉末形態の酸化セリウム粒子を得るために乾燥させることができる。工程(e)の後、水又は水と混和性液体有機化合物との混合物を添加することにより、液体媒体中の酸化セリウム粒子の分散体を得ることもできる。
【0068】
本発明の更なる一つの目的は、上に述べたプロセスにより得ることができる又は得られた酸化セリウム粒子にある。
【0069】
本発明は、酸化セリウム粒子の液体媒体中の分散体にも関する。この分散体は、本発明の酸化セリウム粒子及び液体媒体を含む。液体媒体は、水又は水と水混和性有機液体との混合物とすることができる。この水混和性有機液体は、粒子を析出又は凝集させてはならない。水混和性有機液体は、例えば、イソプロピルアルコール、エタノール、1-プロパノール、メタノール、1-ヘキサノールのようなアルコール;アセトン、ジアセトンアルコール、メチルエチルケトンのようなケトン;ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸エチル、酢酸メチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、乳酸エチルのようなエステルであってもよい。水/有機液体の比率は、80/20~99/1(wt/wt)の間とすることができる。
【0070】
分散体中の酸化セリウム粒子の比率は、1.0重量%~40.0重量%の間に含まれ得、この比率は、分散体の総重量に対する酸化セリウム粒子の重量として表したものである。この比率は、10.0重量%~35.0重量%の間に含まれ得る。
【0071】
この分散体はまた、導電率が300μS/cm未満、より詳細には150μS/cm未満、更により詳細には100μS/cm又は50μS/cm未満となり得る。導電率は、HORIBA,Ltd.の導電率計9382-10Dで測定される。
【0072】
本発明の酸化セリウム粒子又は本発明の分散体は、研磨用組成物、より詳細にはCMP組成物を調製するために使用することができる。これらは、研磨用組成物、より詳細にはCMP組成物の構成成分として使用される。
【0073】
本発明は、CMP組成物にも関する。CMP組成物(すなわち化学機械研磨用組成物)は、基板の表面から材料を選択的に除去するために使用される研磨用組成物である。これは、集積回路及び他の電子デバイスの分野で使用されている。実際には、集積回路及び他の電子デバイスの製造において、導電性、半導体性及び誘電性材料の複数の層が、基板表面上に堆積されたり、又は表面から除去されたりする。材料の層が基板上に順次堆積されたり基板から除去されたりするので、基板の最上面は非平面になり、平坦化が必要になる場合がある。表面の平坦化(即ち、表面の「研磨」)は、基板の表面から材料を除去して、全体として一様で平らな表面を形成するプロセスである。平坦化は、粗い表面、凝集した材料、結晶格子欠陥、スクラッチ及び汚染された層又は材料などの、望ましくない表面形状及び表面欠陥を除去するのに有用である。平坦化はまた、フィーチャを充填するため並びに後続のメタライゼーション及び処理のための一様な表面を提供するために使用された余分な堆積材料を除去することによって基板上にフィーチャを形成するのに有用である。
【0074】
研磨用組成物又はCMP組成物で研磨することができる基板は、例えば、二酸化ケイ素系基板、ガラス、半導体又はウェハとすることができる。
【0075】
本発明の粒子又は本発明の分散体は、CMP組成物の調製に使用することができる。したがって本発明は、上に定義したものなどの酸化セリウム粒子又は分散体を含むCMP組成物にも関する。
【0076】
研磨用組成物又はCMP組成物は、通常、酸化セリウム粒子以外の異なる成分を含有する。研磨用組成物は、以下の成分のうちの1種又は複数種を含むことができる:
- 酸化セリウム粒子以外若しくは本発明の分散体の研磨粒子以外の研磨粒子;並びに/又は
- pH調整剤;並びに/又は
- 界面活性剤;並びに/又は
- 粘度向上剤及び凝固剤などのレオロジー調整剤;並びに/又は
- 非イオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー、第四級アンモニウム、シラン、スルホン化モノマー、ホスホン化モノマー、アクリレート、デンプン、シクロデキストリン及びこれらの組合せから選択される添加剤。
【0077】
研磨用組成物のpHは、概して1~6である。典型的には、研磨組成物のpHは3.0以上である。また、研磨用組成物のpHは、典型的には6.0以下である。
【0078】
本発明はまた、基板の一部を除去するための方法であって、基板を上に述べたものなどの研磨用組成物で研磨することを含む方法に関する。
【0079】
最後に、本発明は、この方法によって研磨される半導体に関する。
【0080】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が、ある用語を不明確とし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0081】
本発明を実施例において更に詳しく説明するが、本発明を実施例に限定することは意図していない。
【実施例
【0082】
実施例1
2.87Mの三価セリウム硝酸塩111.3g、68%のHNO3を16.82g及び脱イオン水3.26gを混合することにより、硝酸セリウム溶液を調製した。この溶液を250mLの半密閉式容器に投入した。次いで、この硝酸セリウム溶液に、セリウムIV/セリウム全体のモル比が1/5000に相当するように、硝酸セリウム(IV)を添加した。13.35Mのアンモニア水74.55g、脱イオン水623.03gを混合することによりアンモニア水溶液を調製した。この溶液をジャケット付きの1Lの半密閉式反応器に投入し、1時間撹拌しながらN2ガスを210L/hの流量でバブリングした。上述の硝酸セリウム溶液を、同じ撹拌及びN2バブリング条件下で、約30分間かけてアンモニア水溶液に加えた。ピバル酸0.90gを脱イオン水20gに加えることにより有機酸溶液を調製し、N2ガスを1時間バブリングした後、反応器に加えた。撹拌条件を同一とし、N2バブリングの流量を低下させて(10L/h未満)、反応混合物の温度を約1時間かけて85℃まで昇温し、約4時間維持した。反応混合物を冷却し、68%のHNO3でpH2に酸性化した。デカンテーションして上清を除去し、スラリーにNH4OHを加えてpH8にした。
【0083】
反応混合物を遠心分離により脱イオン水で洗浄した。洗浄液の導電率が0.04mS/cm未満になるまで洗浄を繰り返した。
【0084】
窒素吸着から求めたBET比表面積は37.9m2/gであった。この懸濁液をTEMで観察し、懸濁液の代表的な約80個の粒子について、粒子をそれぞれ計数し、測定した。平均粒子サイズは193nmであり、標準偏差は平均粒子サイズの20%に相当する39nmであった。本明細書に記載した通りに求めたSSAサイズは22であり、粗さ指数RIを本明細書に説明したように求めると、8.8となった。炭素の比率は、%C=0.4重量%と決定される。得られた回転楕円体の粗い粒子のTEM写真を図1に示す。
【0085】
実施例2
2.87Mの三価セリウム硝酸塩111.3g、68%のHNO3を16.81g及び脱イオン水3.25gを混合することにより、硝酸セリウム溶液を調製した。この溶液を250mLの半密閉式容器に投入した。次いで、この硝酸セリウム溶液に、セリウムIV/セリウム全体のモル比が1/5000に相当するように、硝酸セリウム(IV)を添加した。13.35Mのアンモニア水74.20g、脱イオン水643.50g及びピバル酸0.92gを混合することによりアンモニア水溶液を調製した。この溶液をジャケット付きの1Lの半密閉式反応器に投入し、1時間撹拌しながらN2ガスを210L/hの流量でバブリングした。上述の硝酸セリウム溶液を、同じ撹拌及びN2バブリング条件下で、約30分間かけてアンモニア水溶液に加えた。撹拌条件を同一とし、N2バブリングの流量を低下させて(10L/h未満)、反応混合物の温度を約1時間かけて85℃まで昇温し、約4時間維持した。反応混合物を冷却し、68%のHNO3でpH2に酸性化した。デカンテーションして上清を除去し、スラリーにNH4OHを加えてpH8にした。
【0086】
反応混合物を遠心分離により脱イオン水で洗浄した。洗浄液の導電率が0.04mS/cm未満になるまで洗浄を繰り返した。
【0087】
窒素吸着から求めたBET比表面積は44.8m2/gであった。この懸濁液をTEMで観察し、懸濁液の代表的な約80個の粒子について、粒子をそれぞれ計数し、測定した。平均粒子サイズは165nmであり、標準偏差は平均粒子サイズの30%に相当する50nmであった。本明細書に記載した通りに求めたSSAサイズは19であり、粗さ指数RIを本明細書に説明したように求めると、8.9となった。炭素の比率は、%C=0.37重量%と決定される。得られた回転楕円体の粗い粒子のTEM写真を図2に示す。
【0088】
実施例3
2.87Mの三価セリウム硝酸塩222.4g、68%のHNO3を33.9g混合することにより、硝酸セリウム溶液を調製した。この溶液を250mLの半密閉式容器に投入した。次いで、この硝酸セリウム溶液に、セリウムIV/セリウム全体のモル比が1/5000に相当するように、硝酸セリウム(IV)を添加した。15Mのアンモニア水133.1g、脱イオン水1297.7g及びピバル酸0.83gを混合することによりアンモニア水溶液を調製した。この溶液をジャケット付きの2Lの半密閉式反応器に投入し、1時間撹拌しながらN2ガスを100L/hの流量でバブリングした。上述の硝酸セリウム溶液を、同じ撹拌及びN2バブリング条件下で、約30分間かけてアンモニア水溶液に加えた。撹拌条件を同一とし、N2バブリングの流量を低下させて(10L/h未満)、反応混合物の温度を約1時間かけて80℃まで昇温し、約4時間維持した。反応混合物を冷却し、68%のHNO3でpH2に酸性化した。デカンテーションして上清を除去し、スラリーにNH4OHを加えてpH8にした。
【0089】
反応混合物を遠心分離により脱イオン水で洗浄した。洗浄液の導電率が0.04mS/cm未満になるまで洗浄を5回繰り返した。
【0090】
窒素吸着から求めたBET比表面積は23m2/gであった。この懸濁液をTEMで観察し、代表的な約150個の粒子について、粒子をそれぞれ計数し、測定した。平均粒子サイズは81nmであり、標準偏差は平均粒子サイズの37%に相当する30nmであった。本明細書に記載した通りに求めたSSAサイズは36であり、粗さ指数RIを本明細書に記載したように求めると、2.2となった。炭素の比率は、%C=0.21重量%と決定される。得られた回転楕円体の粗い粒子のTEM写真を図3に示す。
【0091】
実施例4
2.87Mの三価セリウム硝酸塩222.4g、68%のHNO3を33.9gを混合することにより、硝酸セリウム溶液を調製した。この溶液を250mLの半密閉式容器に投入した。次いで、この硝酸セリウム溶液に、セリウムIV/セリウム全体のモル比が1/5000に相当するように、硝酸セリウム(IV)を添加した。14.9Mのアンモニア水133.9g、脱イオン水1296.8g及びアジピン酸1.18gを混合することによりアンモニア水溶液を調製した。この溶液をジャケット付きの2Lの半密閉式反応器に投入し、1時間撹拌しながらN2ガスを100L/hの流量でバブリングした。上述の硝酸セリウム溶液を、同じ撹拌及びN2バブリング条件下で、約30分間かけてアンモニア水溶液に加えた。撹拌条件を同一とし、N2バブリングの流量を低下させて(10L/h未満)、反応混合物の温度を約1時間かけて80℃まで昇温し、約4時間維持した。反応混合物を冷却し、68%のHNO3でpH2に酸性化した。デカンテーションして上清を除去し、スラリーにNH4OHを加えてpH8にした。
【0092】
反応混合物を遠心分離により脱イオン水で洗浄した。洗浄液の導電率が0.04mS/cm未満になるまで洗浄を5回繰り返した。
【0093】
窒素吸着から求めたBET比表面積は35m2/gであった。この懸濁液をTEMで観察し、懸濁液の代表的な約220個の粒子について、粒子をそれぞれ計数し、測定した。平均粒子サイズは87nmであり、標準偏差は平均粒子サイズの39%に相当する34nmであった。本明細書に記載した通りに求めたSSAサイズは24であり、粗さ指数RIを本明細書に記載したように求めると、3.6となった。炭素の比率は、%C=0.61重量%と決定される。得られた回転楕円体の粗い粒子のTEM写真を図4に示す。
【0094】
比較例1
2.87Mの三価セリウム硝酸塩139.1g、68%のHNO3を21.1g及び脱イオン水4gを混合することにより、硝酸セリウム溶液を調製した。この溶液を250mLの半密閉式容器に投入した。次いで、この硝酸セリウム溶液に、セリウムIV/セリウム全体のモル比が1/5000に相当するように、硝酸セリウム(IV)を添加した。13.35Mのアンモニア水100.5g、脱イオン水795.5gを混合することによりアンモニア水溶液を調製した。この溶液をジャケット付きの1Lの半密閉式反応器に投入し、1時間撹拌しながらN2ガスを210L/hの流量でバブリングした。上述の硝酸セリウム溶液を、同じ撹拌及びN2バブリング条件下で、約30分間かけてアンモニア水溶液に加えた。撹拌条件を同一とし、N2バブリングの流量を低下させて(10L/h未満)、反応混合物の温度を約1時間かけて85℃まで昇温し、約4時間維持した。反応混合物を冷却し、68%のHNO3でpH2に酸性化した。デカンテーションして上清を除去し、スラリーにNH4OHを加えてpH8にした。
【0095】
反応混合物を遠心分離により脱イオン水で洗浄した。洗浄液の導電率が0.04mS/cm未満になるまで洗浄を繰り返した。
【0096】
窒素吸着から求めたBET比表面積は16.8m2/gであった。この懸濁液をTEMで観察し、懸濁液の代表的な約150個の粒子について、粒子をそれぞれ計数し、測定した。平均粒子サイズは87nmであり、標準偏差は平均粒子サイズの24%に相当する21nmであった。本明細書に記載した通りに求めたSSAサイズは50であり、粗さ指数RIを本明細書に記載したように求めると、1.7となった。TEM写真を図5に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】