(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】眼位異常を測定および分類するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/08 20060101AFI20240308BHJP
A61B 3/113 20060101ALI20240308BHJP
A61B 5/107 20060101ALI20240308BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
A61B3/08
A61B3/113
A61B5/107 300
H04N7/18 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554298
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 US2022018715
(87)【国際公開番号】W WO2022187492
(87)【国際公開日】2022-09-09
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523338037
【氏名又は名称】ボドナー、ザカリー
(71)【出願人】
【識別番号】523338048
【氏名又は名称】モス、ヘザー
(71)【出願人】
【識別番号】523338059
【氏名又は名称】ブイッキアンズ、デビッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボドナー、ザカリー
(72)【発明者】
【氏名】モス、ヘザー
(72)【発明者】
【氏名】ブイッキアンズ、デビッド
【テーマコード(参考)】
4C038
4C316
5C054
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB03
4C038VB04
4C038VC05
4C316AA16
4C316AA21
4C316FA01
4C316FA18
4C316FB01
4C316FB02
4C316FB12
4C316FC01
4C316FC04
4C316FC07
4C316FC14
4C316FY05
5C054CA04
5C054CA05
5C054CC02
5C054CF07
5C054FE17
5C054HA12
(57)【要約】
患者の目の眼位異常を測定および分類するための装置は、筐体と、1つが患者の各目に対応する、筐体の前面にある2つのレンズと、レンズ間に横方向に位置づけられた、筐体内の分離機と、筐体内のスクリーンと、スクリーンに接続された統合マイクロプロセッサと、統合マイクロプロセッサに接続された少なくとも1つの入力制御装置と、患者によって操作可能な少なくとも1つの入力制御装置と、を含み、ここで、統合マイクロプロセッサは、2つの画像を生成してスクリーンに送信し、各画像は各レンズに対応し、統合マイクロプロセッサは、少なくとも1つの入力制御装置を介して患者から入力を受信して、スクリーン上の少なくとも1つの画像を操作し、統合マイクロプロセッサは、その入力に基づいて眼位異常の定量化を計算して出力する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の目の眼位異常を測定および分類するための装置であって、前記装置が、
筐体と、
前記筐体の前面にある2つのレンズであって、1つが前記患者の各目に対応する、2つのレンズと、
前記筐体内の分離機であって、前記レンズ間で横方向に位置づけられた、分離機と、
前記筐体内のスクリーンと、
前記スクリーンに接続された統合マイクロプロセッサと、
前記統合マイクロプロセッサに接続された少なくとも1つの入力制御装置であって、患者によって操作可能である、少なくとも1つの入力制御装置と、を備え、
前記統合マイクロプロセッサが、2つの画像を生成して前記スクリーンに送信し、各画像が各レンズに対応し、前記統合マイクロプロセッサが、前記少なくとも1つの入力制御装置を介して前記患者から入力を受信して、前記スクリーン上の少なくとも1つの画像を操作し、前記統合マイクロプロセッサが、前記入力に基づいて眼位異常の定量化を計算して出力する、装置。
【請求項2】
前記装置が、ジャイロスコープおよび比重計からなる群から選択される少なくとも1つのセンサをさらに備え、前記少なくとも1つのセンサが前記統合マイクロプロセッサに接続され、前記統合マイクロプロセッサが、前記少なくとも1つのセンサからセンサ入力を受信し、部分的に前記センサ入力に基づいて眼位異常の定量化を計算して出力する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記装置が、スマートフォンをさらに備え、前記統合マイクロプロセッサおよび前記スクリーンが前記スマートフォンの部分であり、前記筐体が、前記スマートフォンが入れられる受信機を含む、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記装置が、タブレットをさらに備え、前記統合マイクロプロセッサおよび前記スクリーンが前記タブレットの部分であり、前記筐体が、前記タブレットが入れられる受信機を含む、請求項1記載の装置。
【請求項5】
患者の目を観察するために前記筐体内に位置づけられた少なくとも1つのカメラをさらに備える、請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記筐体に接続されたスタンドをさらに備える、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの入力制御装置が、前記筐体の外面に配置された少なくとも1つのボタンを備える、請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの入力制御装置が、ジョイスティックである、請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記装置が、前記統合マイクロプロセッサに接続された遠隔ディスプレイをさらに備え、前記統合マイクロプロセッサが、眼位異常の前記定量化を前記遠隔ディスプレイに出力する、請求項1記載の装置。
【請求項10】
前記レンズが、前記スクリーンから実質的に3.5~4.0cmの間の距離だけ分離される、請求項1記載の装置。
【請求項11】
検査者によって眼位異常を測定および分類するための方法であって、前記方法が、
筐体と、前記筐体の前面にある2つのレンズであって、1つが患者の各目に対応する、2つのレンズと、前記筐体内の分離機であって、前記レンズ間に横方向に位置づけられた、分離機と、前記筐体内のスクリーンと、を備えるビューアを提供する工程と、
1つが各レンズに対応する、2つの異なる画像を前記スクリーン上に表示する工程であって、前記患者の各目が異なる画像を見る、工程と、前記患者からの入力を受信する工程であって、前記入力により前記患者の知覚に基づいて前記画像を位置合わせする、工程と、
前記入力を受信した後に残る画像間の位置異常を判定する工程と、を含む方法。
【請求項12】
前記患者からの入力を受信しながら前記患者の頭の傾きを測定する工程と、をさらに含み、
前記判定する工程が、前記患者の頭の傾きを利用する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記位置異常を判定する工程が、ねじれによる位置異常を判定することを含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記位置異常を判定する工程が、水平方向の位置異常を判定することを含む、請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記位置異常を判定する工程が、垂直方向の位置異常を判定することを含む、請求項11記載の方法。
【請求項16】
前記判定の結果を前記検査者に出力する工程をさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項17】
前記筐体がスロットを含み、前記提供する工程が、スマートフォンを前記スロットに挿入することを含み、前記スクリーンが前記スマートフォンの一部である、請求項11記載の方法。
【請求項18】
患者の目の眼位異常を測定および分類するための装置であって、前記装置が、
互いに相対して回転可能な2つの接眼レンズと、
2つのスクリーンであって、各スクリーンが別個の前記接眼レンズに関連付けられている、2つのスクリーンと、
互いに相対する前記接眼レンズの回転を判定する少なくとも1つのセンサと、
各スクリーンに接続された統合マイクロプロセッサと、を備え、
前記統合マイクロプロセッサが、2つの画像を生成して送信し、1つの画像が各スクリーンに送信され、前記統合マイクロプロセッサが、前記少なくとも1つのセンサを介して前記患者から入力を受信し、前記統合マイクロプロセッサが、前記入力に基づいて眼位異常の定量化を計算して出力する、装置。
【請求項19】
前記装置が、前記統合マイクロプロセッサに接続された少なくとも1つの入力制御装置をさらに備え、前記少なくとも1つの入力制御装置が前記患者によって操作可能である、請求項18記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2021年3月5日に出願された米国特許出願第17/193,322号に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、概して、眼科学、検眼学、視能矯正学、小児科学、および神経学の分野に関し、より具体的には、目の位置異常を検出および測定する、およびその方向および量を検出および測定する、ならびに検出された偏位を正常なパターンまたは眼球運動系の特定の障害に関連するパターンに分類するための、新しい有用なシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
人間の視覚系は、両眼視を維持するために、網膜および内耳における前庭器から視覚信号を統合して、目および瞼の運動を制御する外眼筋への信号を生成する。脳、脳幹、外眼筋を指令する脳神経、または外眼筋自体の病変はすべて、結果として目の位置異常(斜視)を引き起こしかねない。このような病変の例としては、限定されないが、脳卒中、頭蓋内血管動脈瘤、外傷、甲状腺眼疾患、脱髄疾患、重症筋無力症、および先天奇形が挙げられる。目の位置異常はまた、片目の未修正の屈折異常などの、両眼融合のための不十分な皮質刺激が原因で発生し得る。
【0004】
眼球運動系の障害の原因は、多くの場合、結果として生じる眼球偏位のパターンによって判定することができる。その一例は、左眼核内眼筋麻痺であり、ここで、右方視で左目が右に動かないことを除いて、目の運動は完全に正常である。いくつかの場合では、頸動脈解離や頭蓋内血管動脈瘤などの生命を脅かす緊急事態を排除するために、眼球偏位の正しいパターンを特定することが非常に重要であり得る。多くの場合、外眼筋を強化する、弱める、または移動させる手術が伴う、眼位異常の多くの障害の処置はまた、眼位異常の正確な測定および特徴づけに大きく依存している。重要なことに、子供の斜視は、重要な発達年齢(およそ8歳)前に処置されない場合、失明を含む永久的な視力喪失につながりかねない。
【0005】
眼位異常の測定は、現在、小児眼科医、神経眼科医、視能訓練士などの高度に訓練された専門家によって行われなければならない。この測定は、プリズム覆い試験(PCT)と呼ばれ、通常は、患者の目の前にプリズムを置き、患者が視覚目標を固視するために使用される目を交互に強制されるときの目の運動を分析することによって実施される。これは、さまざまな注視位置で行われ、近くおよび遠くの両方の固視目標の使用を必要とし、場合によっては頭を片側または反対側に傾けた状態で行われる。遠い固視目標は患者の目からおよそ6mであり、結果として、プリズム覆い試験には、試験を実施することができる広いスペースが必要になる。出現するパターンは、診断を下し、処置を誘導するように専門の検査者によって解釈される。検査者はまた、目の運動、さまざまな注視方向を観察し、外眼筋の制限を特定するために欠陥を全体的に定量化する。ねじれによる位置異常(すなわち、瞳孔軸を中心にした異常回転)を測定するために、特殊なレンズを含む技術も存在する。たとえ専門家によって実施されたとしても、これらの技術は、本質的に主観的なものであり、小児患者および認知障害のある成人に制限され得る。斜視のすべてのパターンの客観的な測定を実施することができるアナログ装置はシノプトフォアのみであり、これは専門のオペレータを必要とする。
【0006】
垂直斜視のいくつかの形態は、頭が、垂直であるか、左に傾いているか、または右に傾いているかに応じて、さまざまな規模の偏位を有し得る。頭の傾きのさまざまな方向で偏位を測定することは、罹患した神経経路または筋肉を特定するために重要である(Parks-Bielschowskyの3段階試験)。さらに、頭を片側または反対側に傾けることによってねじれによる偏位が最小限に抑えられ得、患者はそれに応じて自然に頭を位置づけて複視を最小限に抑える。したがって、真のねじれによる偏位は、頭の傾きを考慮した場合にのみ測定することができる。さらに、一部の神経病変によって患者の主観的な垂直感覚が変化し得、結果として、頭の傾きがねじれによる偏位とともに生じ得る。しかし、眼球偏位および頭の傾きを同時に測定することができる装置は現時点ではない。
【0007】
したがって、専門のオペレータを必要とせずに、頭の位置を考慮しながら斜視のすべてのパターンを客観的に測定する装置が必要とされる。本発明は、このような新規の有用な方法を提供する。
【発明の概要】
【0008】
眼位異常を測定および分類するための装置は、「ビューア」と以下で呼ばれる、左目と右目との間の画像を分離する中央分離機を備えたビュー用筐体によって囲まれた電子ディスプレイを含み得る。
【0009】
患者の目の眼位異常を測定および分類するための装置は、筐体と、1つが患者の各目に対応する、筐体の前面にある2つのレンズと、レンズ間に横方向に位置づけられた、筐体内の分離機と、筐体内のスクリーンと、スクリーンに接続された統合マイクロプロセッサと、統合マイクロプロセッサに接続された少なくとも1つの入力制御装置と、患者によって操作可能な少なくとも1つの入力制御装置と、を含み得、ここで、統合マイクロプロセッサは、2つの画像を生成してスクリーンに送信し、各画像は各レンズに対応し、統合マイクロプロセッサは、少なくとも1つの入力制御装置を介して患者から入力を受信して、スクリーン上の少なくとも1つの画像を操作し、統合マイクロプロセッサは、その入力に基づいて眼位異常の定量化を計算して出力する。
【0010】
眼位異常を測定および分類するための方法は、筐体と、1つが患者の各目に対応する、筐体の前面にある2つのレンズと、レンズ間に横方向に位置づけられた、筐体内の分離機と、筐体内のスクリーンと、を含むビューアを提供する工程と、1つが各レンズに対応する、2つの異なる画像をスクリーン上に表示する工程であって、患者の各目が異なる画像を見る、工程と、患者からの入力を受信する工程であって、入力により患者の知覚に基づいて画像を位置合わせする、工程と、入力を受信した後に残る画像間の位置異常を判定する工程と、を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】ディスプレイを含むビューアの正面図である。
【
図2】患者の目のねじれによる位置異常を定量化するために使用される、異なる角度に配向された2つのバーを示す、ディスプレイ上に表示可能な2つの画像の第1のセットである。
【
図3】患者の目の垂直方向および水平方向の位置異常を定量化するために使用される、鳥および籠を示す、ディスプレイ上に表示可能な2つの画像の第2のセットである。
【
図4】例示的な検査の結果を示すヘスチャートである。
【
図5】2つの別個のディスプレイを含む、ビューアの別の実施形態の斜視図である。
【
図6】ハウジングが筐体内にスマートフォンを収容する、ビューアの別の実施形態の斜視図である。
【
図7】ビューアに関連付けられたカメラと、ビューアに接続可能な三脚と、を含む、ビューアの別の実施形態の斜視図である。
【
図8】ジョイスティックを介してビューアに入力が提供され、ビューアからコンピュータにデータが出力される、ビューアの別の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
眼位異常を測定および分類するための装置は、概して、ディスプレイからの画像の焦点を合わせるための各目に対する少なくとも1つのレンズを備えたビュー用筐体と、各目に提示される画像を分離するための分離機と、を含み得る。当該装置はまた、ディスプレイを制御し、さまざまなセンサからの、および筐体の外側にあるボタンを介してユーザからの入力を処理するための、マイクロプロセッサを含み得る。
【0013】
図1A~
図1Bを参照すると、ビューア20の一実施形態が示されている。ビューア20は、スクリーン2およびレンズ3a、3bを収容し得るビュー用筐体1を含む。レンズ3a、3bは、当該技術分野の標準用語であるため、レンズの他に接眼レンズとも呼ばれ得る。レンズ3a、3bの横方向の位置を患者の瞳孔間距離に適合するように調整することを可能にするために、ホイールおよびギアシステム4が設けられ得る。他の実施形態によれば、レンズ3a、3bの横方向の位置は、任意の他の適切な方法で調整され得る。レンズ3a、3bは、有用な診断プロセスを可能にするのに十分長く、ビュー用筐体1が扱いにくくならない程度に十分短い、任意の距離だけスクリーン2から分離される。一例として、レンズ3a、3bは、スクリーン2から実質的に3.8cmの距離だけ分離され得る。別の例として、レンズ3a、3bは、スクリーン2から実質的に3.7~3.9cmの間の距離だけ分離され得る。別の例として、レンズ3a、3bは、スクリーン2から実質的に3.5~4.0cmの間の距離だけ分離され得る。別の例として、レンズ3a、3bは、スクリーン2から実質的に3.0~4.5cmの間の距離だけ分離され得る。別の例として、レンズ3a、3bは、スクリーンから10cm以下、15cm以下、20cm以下、または25cm以下の距離だけ分離され得る。1つまたは複数の入力制御装置が提供される。一例として、入力制御装置は、筐体1の上面に位置づけられたボタン5aおよび5bであり、以下でより詳細に説明されるように、装置に入力を提供する。ボタン5a、5bは、筐体上の異なる位置に交互に位置づけられ得る。他の実施形態によれば、ボタン5a、5bは、コードを介して、無線接続を介して、または他の適切な方法でビューア20に接続される別個のハンドヘルド装置上に置かれ得る。また
図8を参照すると、入力制御装置の別の例として、入力制御装置は、ビューア20に入力を提供するために、ボタン5a、5bと併せて、またはそれらの代わりに使用されるジョイスティック10であってもよい。分離機22が、横方向でレンズ3a、3b間に位置づけられ得る。分離機22は、略平面かつ略垂直であり得る。利点として、分離機22は、スクリーンから発せられる光がスクリーン2のいずれかの側面から反射するのを最小限に抑えるかまたは防止するために、マットブラックであり得る。分離機22によって、各レンズ3a、3bに通して、2つの別個の画像を患者に表示する1つのスクリーンを使用することが可能になる。このようにして、別個で異なる画像が患者の各目に提示され得る。
【0014】
また
図1Cを参照すると、ビューア20の一実施形態は、スクリーン2上に画像を表示するために使用される統合マイクロプロセッサ40を含む。ビューアの実施形態は、少なくとも1つのジャイロスコープ42および/または少なくとも1つの比重計44を含み得る。筐体1が患者によって装着されるように構成されている場合、ジャイロスコープ42および/または比重計44は、患者の頭の動きを検出し、そのような頭の動きに対応するデータを生成し、その頭の動きのデータを統合マイクロプロセッサ40に送信する。統合マイクロプロセッサ40はまた、ボタン5a、5bからのボタンの押下など、患者からの他の入力を受信し得る。統合マイクロプロセッサ40は、少なくとも1つの通信ポート46を介して、検査者による使用のために二次スクリーンにデータを出力し得る。各通信ポート46は、モニタ、タブレット、ラップトップコンピュータ、またはデスクトップコンピュータなどの二次スクリーンへの有線または無線接続のために構成され得る。バッテリ48または他の電源が、統合マイクロプロセッサ40に接続され、それに電力を供給する。
【0015】
また
図6を参照すると、スクリーン2、ジャイロスコープ42、比重計44、統合マイクロプロセッサ40、および/または通信ポート46は、スマートフォンまたはタブレット80によって提供され得る。スマートフォンまたはタブレット80は、スクリーン2がレンズ3a、3bに面した状態で、筐体1内へと筐体1内の受信機82に挿入される。スマートフォンまたはタブレット80の使用によって、ビューア20の使用の利便性が向上し、ビューア20のコストが大幅に削減され得、それによって、より多くの患者のためのスクリーニングへのアクセスが増強される。
【0016】
使用時、筐体1は、一対のゴーグルのように、患者の目の近位に配置される。筐体1は、患者が視力の試験中に筐体1を装着することを可能にする(1つまたは複数の)ストラップに接続され得る。(1つまたは複数の)ストラップを使用することによって、筐体1(およびしたがってビューア20全体)は、検査中に患者の頭に実質的に相対して固定され得、検査の一部として少なくとも1つのジャイロスコープ42および/または比重計44の使用を促進する。他の実施形態によれば、筐体1は、検査を行う人によって保持され得るか、三脚などのスタンド9に取り付けられ得る(
図7も参照)か、または他の適切な方法で位置づけられ得るかもしくは取り付けられ得る。スタンド9は、随意に、伸縮可能および/または格納可能であり、および/またはビューア20から取り外し可能である。
【0017】
また
図2を参照すると、2つの画像50a、50bがスクリーン2上に表示されており、これらの画像50a、50bは、患者の目のねじれによる位置異常を定量化するために使用される。画像50a、50bは、画像50aがレンズ3aを通して患者に見られ、画像50bがレンズ3bを通して患者に見られるように、分離機22によって分離されてスクリーン2上に表示される。各画像50a、50bはバー52a、52bを含み、バー52a、52bは、互いに相対する異なる角度に回転して示されている。たとえば、
図2は、互いに相対して15度回転されたバー52a、52bを示す。したがって、
図2に見られるように、スクリーン2上に表示されると、患者の左目は左レンズ3aを通してバー52aを見て、患者の右目は右レンズ3bを通してバー52bを見る。ねじれによる位置異常は、ビューア2を使用して被験体が見たときにバーが平行に現れるようにすることによって定量化される。ボタン5a、5b、または他の入力を使用して、被験体の作業は、2つのバー52a、52bが互いに平行に現れるまで画像50a、50bの1つを回転させることである。この作業の終了時における回転の残留不一致、すなわち、2つのバー52a、52bが平行であると患者が知覚したときの2つのバー52a、52b間の角度は、患者の両目の間のねじれによる位置異常の角度である。そのねじれの位置異常の角度は、統合マイクロプロセッサ40によって計算され、統合マイクロプロセッサによって検査者に通信される。この試験中にジャイロスコープ42または比重計44によって頭の傾きが検出された場合、それを定量化し、存在する場合にはねじれによる眼球偏位と比較して、脳幹から内耳の卵形嚢までの経路に沿ったどこかの病変を示唆する、眼球傾斜反応(別名、斜偏位)を検出することができる。
【0018】
また
図3を参照すると、2つの画像60a、60bがスクリーン2上に表示されており、これらの画像60a、60bは、患者の目の垂直および水平方向の位置異常を定量化するために使用される。画像60a、60bは、画像60aがレンズ3aを通して患者に見られ、画像60bがレンズ3bを通して患者に見られるように、分離機22によって分離されてスクリーン2上に表示される。画像60a、60bは、互いに異なっており、互いに相対して異なる水平位置および/または垂直位置に配置されている。
図3に見られるように、画像60aは鳥であり、画像60bは籠である。他の実施形態によれば、画像60aは十字であり、画像60bは円であり得る。代替的に、画像60a、60bは、任意の他の適切な画像であり得る。したがって、
図3に見られるように、スクリーン2上に表示されると、患者の左目は左レンズ3aを通して鳥60aを見て、患者の右目は右レンズ3bを通して籠60bを見る。垂直および水平方向の位置異常は、ビューア2を使用して被験体が見たときに鳥60aを籠60bの中に移動させることによって定量化される。ボタン5a、5b、または他の入力を使用して、被験体の作業は、鳥60aを籠60bの中に移動させることであり、すなわち、2つの画像60a、60bを互いに位置合わせするように移動させることである。この作業の終了時の画像60a、60b間の水平変位の残留不一致、すなわち、鳥60aが籠60bの中心にあると患者が知覚したときの鳥60aの中心と籠60bの中心との間の水平距離は、患者の両目の間の水平方向の偏位の角度に変換される。同様に、この作業の終了時の画像60a、60b間の垂直変位の残留不一致、すなわち、鳥60aが籠60bの中心にあると患者が知覚したときの鳥60aの中心と籠60bの中心との間の垂直距離は、患者の両目の間の垂直方向の偏位の角度に変換される。水平および垂直方向の偏位の角度は、統合マイクロプロセッサ40によって計算され、統合マイクロプロセッサによって検査者に通信される。
【0019】
水平および垂直方向の偏位の角度は、統合マイクロプロセッサ40によって任意の適切な方法で計算され得る。一例として、鳥60aの画像は、患者が水平方向の偏位を示さなかった場合に占めるであろう位置から右にXpピクセルだけ変位され得る。スクリーン2の解像度はピクセル/ミリメートルで知られているため、Xpピクセルの距離はXmミリメートルの距離に変換することができる。目からスクリーン2までのミリメートルの距離Zも、ビューア用筐体1の幾何学的形状から知られている。水平方向の偏位の角度θは、その後、三角方程式:tanθ=Xm/Zを使用して計算される。Xmの符号は、回転方向(内または外)の判定に重要である。垂直方向の偏位も同様の方法で計算される。
【0020】
偏位の設定における垂直および水平方向の変位を測定する場合、被験体はレンズ3a、3bの中心を通して見ていないことになる。結果として生じるプリズム歪みによって、測定値が歪められる。たとえば、籠60bの画像は、右に変位された場合、患者には実際よりもさらに右に現れることになり、その歪みは非線形である。この歪みは、レンズ歪みのBrown-Conradyモデル、または全体が引用により本明細書に組み込まれる、他の同様のアプローチ(Brown,Duane C.(May 1966).「Decentering distortion of lenses” Photogrammetric Engineering.32(3):444-462,Conrady,A.E.(1919).「Decentred Lens-Systems」.Monthly Notices of the Royal Astronomical Society.79(5):384)を使用して、スクリーン座標の変換を実施することによって修正され得る。このような変換は、画像座標がスクリーン2上で患者に表示される前に画像座標に適用されるため、患者がそれらを調整すると患者には画像(鳥60aおよび籠60bなど)がスクリーン2上で直線的に移動するように見え、前の段落の計算が効果的かつ正確になる。
【0021】
垂直方向の偏位がある場合、頭の傾きの角度を測定するためにジャイロスコープ42および比重計44を用いて、頭を左右に傾けて追加の測定を実施することもできる。当該装置は、自動化されたParks-Bielschowskyの3段階試験を使用して測定値を比較して、垂直斜視につながる筋力低下を特定することができる。目標形状を中心から外れた位置に配置することによって、注視のさまざまな位置での偏位を測定することができる。また
図4を参照すると、これらの測定値の組み合わせは、ヘスチャート70の形態で二次ディスプレイに出力され、検査者が斜視のパターンを分析し、罹患した神経筋経路を特定することが可能になる。ヘスチャート分析は、自動化された方法でアルゴリズム的に分析することもできる。
図4の例では、ヘスチャート70は、右下斜筋(RIO)の制限または弱さにより、右目の上および右への注視が制限されていることを示している。
【0022】
眼球外の運動も直接検査することができる。また
図7を参照すると、別の実施形態では、ビューア20は、注視の9つの位置(前方、上、左、下、右、上および右へ、上および左へ、下および右へ、下および左へ)の各々で目を捕捉することができるカメラ8を備え得る。その後、各目が、この目的のための既知のコンピュータビジョンアルゴリズムのいずれか(たとえば、ニューラルネット)を使用して、カメラ8によって捕捉された各画像において特定される。その後、楕円検出のためのPatraucean V.,Gurdjos P.,von Gioi R.G.(2012)A Parameterless Line Segment and Elliptical Arc Detector with Enhanced Ellipse Fitting.In:Fitzgibbon A.,Lazebnik S.,Perona P.,Sato Y.,Schmid C.(eds)Computer Vision-ECCV 2012.ECCV 2012.Lecture Notes in Computer Science,vol 7573.Springer,Berlin,Heidelbergに記載されるアルゴリズム、または楕円セグメントの検出のための任意の他の同様のコンピュータビジョンアルゴリズムを使用して、対応する対象領域において、角膜縁を特定することができる。その後、角膜縁に対応する楕円の偏心が、注視の所与の位置における関係する目の眼球回転量の定量として使用され、
図4のヘスチャート70の形式で検査者に出力される。
【0023】
また
図5を参照すると、ビューア20の別の実施形態が示されており、ここで、スクリーン2は2つのスクリーン2a、2bに分割され、その各々は別個の接眼レンズ6a、6bから見ることができる。接眼レンズ6a、6bは、互いに相対して旋回することができる。被験体は、ディスプレイ内の画像が平行移動で整列して現れるまで接眼レンズ6a、6bを旋回させる。互いに相対する接眼レンズ6a、6bの水平および垂直方向の角度は、目の水平および垂直方向の位置異常を判定するために定量化される。互いに相対する2つの接眼レンズ6a、6bの物理的角度は、任意の適切な方法で判定され、統合マイクロプロセッサ40に送信され得る。一例として、標準的なデカルト座標系が確立され、ここで、z軸が、前頭面に垂直に、患者の鼻の方向の前方を指し、y軸(軸方向)が上下(垂直)であり、x軸が左右(水平)である。xz平面およびyz平面における接眼レンズ6a、6b間の角度を判定するために、2つのセンサを使用して、それらの角度が判定され得る。一例として、これらのセンサは、それらの回転軸に物理的に連結されたポテンショメータ(図示せず)であり得、それにより、xz平面およびyz平面における接眼レンズ6a、6b間の角度は、ポテンショメータの各々で電気抵抗から直接測定することができる。他の実施形態と同様に、ディスプレイ上の画像を互に相対して回転させて、ねじれによる位置異常を定量化することができる。目に対向する赤外線カメラ7が、瞳孔の運動を追跡するために使用され得、眼位異常に関する追加情報を提供することができる。
【0024】
図8は、被験体によって装置に入力を提供するためにジョイスティックまたは他のコントローラ10が使用される、さらなる別の変形例を示す。被験体によって見られた画像をミラーリングし、出力データを検査者に提供するために、PC11、または他のタイプの遠隔ディスプレイが使用される。コントローラおよびPCは、有線シリアルもしくはバス接続12、またはBluetooth(登録商標)または他の無線通信プロトコルを実装する無線接続13を使用して、ビューアにテザリングされ得る。
【0025】
本文書で使用されるように、明細書および特許請求の範囲の両方においておよび当技術分野で慣例的に使用されるように、「実質的に」、「およそ」という単語、および同様の近似用語は、製造公差、製造ばらつき、製造上の不正確さ、および物理世界の任意の機構または構造を作製および操作する際の避けられない部分である測定の誤りおよび不正確さを説明するために使用される。
【0026】
本発明を詳細に説明してきたが、本発明から逸脱することなく、さまざまな変更および修正を行い、同等物を利用することができることは当業者に明らかである。本発明が、上記の説明で明示された、または図面に例示された、構造の詳細、構成要素の配置、および/または方法に限定されないことが理解されるべきである。本文書の要約の記述および本文書の概要の記述は、単なる例示であり、特許請求の範囲を限定するものではなく、限定するものとして解釈することはできない。さらに、図面は単に例示的なものであり、限定的なものではない。トピックの見出しおよび小見出しは、読者の便宜性のみを目的としている。これらは、実質的な重要性、意味、または解釈を有していると解釈されるべきではなく、解釈することはできず、任意の特定のトピックに関連する情報のすべてが、任意の特定の見出しまたは小見出しの下に見られる、またはそれに限定されることを示唆するものであるとみなされるべきではなく、みなすことはできない。本文書の要約の目的は、米国特許商標庁の他に、特許または法律の用語や表現に詳しくない読者が、おおまかな調査から迅速に、本出願の技術開示の性質および本質を判定することができるようにすることである。要約は、本発明を定義することを意図したものではなく、本発明の範囲を限定することを意図したものでもない。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲およびそれらの法的同等物に従う場合を除いて、制限または限定されるものではない。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の目の眼位異常を測定および分類するための装置であって、前記装置が、
筐体と、
前記筐体の前面にある2つのレンズであって、1つが前記患者の各目に対応する、2つのレンズと、
前記筐体内の分離機であって、前記レンズ間で横方向に位置づけられた、分離機と、
前記筐体内のスクリーンと、
前記スクリーンに接続された統合マイクロプロセッサと、
前記統合マイクロプロセッサに接続された少なくとも1つの入力制御装置であって、患者によって操作可能である、少なくとも1つの入力制御装置と、を備え、
前記統合マイクロプロセッサが、2つの画像を生成して前記スクリーンに送信し、各画像が各レンズに対応し、前記統合マイクロプロセッサが、前記少なくとも1つの入力制御装置を介して前記患者から入力を受信して、前記スクリーン上の少なくとも1つの画像を操作し、前記統合マイクロプロセッサが、前記入力に基づいて眼位異常の定量化を計算して出力する、装置。
【請求項2】
前記装置が、ジャイロスコープおよび比重計からなる群から選択される少なくとも1つのセンサをさらに備え、前記少なくとも1つのセンサが前記統合マイクロプロセッサに接続され、前記統合マイクロプロセッサが、前記少なくとも1つのセンサからセンサ入力を受信し、部分的に前記センサ入力に基づいて眼位異常の定量化を計算して出力する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記装置が、スマートフォンをさらに備え、前記統合マイクロプロセッサおよび前記スクリーンが前記スマートフォンの部分であり、前記筐体が、前記スマートフォンが入れられる受信機を含む、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記装置が、タブレットをさらに備え、前記統合マイクロプロセッサおよび前記スクリーンが前記タブレットの部分であり、前記筐体が、前記タブレットが入れられる受信機を含む、請求項1記載の装置。
【請求項5】
患者の目を観察するために前記筐体内に位置づけられた少なくとも1つのカメラをさらに備える、請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記筐体に接続されたスタンドをさらに備える、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの入力制御装置が、前記筐体の外面に配置された少なくとも1つのボタンを備える、請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの入力制御装置が、ジョイスティックである、請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記装置が、前記統合マイクロプロセッサに接続された遠隔ディスプレイをさらに備え、前記統合マイクロプロセッサが、眼位異常の前記定量化を前記遠隔ディスプレイに出力する、請求項1記載の装置。
【請求項10】
前記レンズが、前記スクリーンか
ら3.5~4.0cmの間の距離だけ分離される、請求項1記載の装置。
【請求項11】
検査者によって眼位異常を測定および分類するための方法であって、前記方法が、
筐体と、前記筐体の前面にある2つのレンズであって、1つが患者の各目に対応する、2つのレンズと、前記筐体内の分離機であって、前記レンズ間に横方向に位置づけられた、分離機と、前記筐体内のスクリーンと、を備えるビューアを提供する工程と、
1つが各レンズに対応する、2つの異なる画像を前記スクリーン上に表示する工程であって、前記患者の各目が異なる画像を見る、工程と、前記患者からの入力を受信する工程であって、前記入力により前記患者の知覚に基づいて前記画像を位置合わせする、工程と、
前記入力を受信した後に残る画像間の位置異常を判定する工程と、を含
み、
前記患者からの入力を受信しながら前記患者の頭の傾きを測定する工程と、をさらに含み、
前記判定する工程が、前記患者の頭の傾きを利用する、方法。
【請求項12】
前記位置異常を判定する工程が、ねじれによる位置異常を判定することを含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記位置異常を判定する工程が、水平方向の位置異常を判定することを含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記位置異常を判定する工程が、垂直方向の位置異常を判定することを含む、請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記判定の結果を前記検査者に出力する工程をさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項16】
前記筐体がスロットを含み、前記提供する工程が、スマートフォンを前記スロットに挿入することを含み、前記スクリーンが前記スマートフォンの一部である、請求項11記載の方法。
【請求項17】
患者の目の眼位異常を測定および分類するための装置であって、前記装置が、
互いに相対して回転可能な2つの接眼レンズと、
2つのスクリーンであって、各スクリーンが別個の前記接眼レンズに関連付けられている、2つのスクリーンと、
互いに相対する前記接眼レンズの回転を判定する少なくとも1つのセンサと、
各スクリーンに接続された統合マイクロプロセッサと、を備え、
前記統合マイクロプロセッサが、2つの画像を生成して送信し、1つの画像が各スクリーンに送信され、前記統合マイクロプロセッサが、前記少なくとも1つのセンサを介して前記患者から入力を受信し、前記統合マイクロプロセッサが、前記入力に基づいて眼位異常の定量化を計算して出力する、装置。
【請求項18】
前記装置が、前記統合マイクロプロセッサに接続された少なくとも1つの入力制御装置をさらに備え、前記少なくとも1つの入力制御装置が前記患者によって操作可能である、請求項
17記載の装置。
【国際調査報告】