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特表2024-511739シリコーン組成物の硬化のためのI型光開始剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】シリコーン組成物の硬化のためのI型光開始剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/50 20060101AFI20240308BHJP
   C08F 299/08 20060101ALI20240308BHJP
   C07C 69/24 20060101ALI20240308BHJP
   C07C 69/14 20060101ALI20240308BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240308BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20240308BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C08F2/50
C08F299/08
C07C69/24 CSP
C07C69/14
B32B27/00 101
B05D3/06 102Z
B05D7/24 302Y
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555439
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-11-08
(86)【国際出願番号】 FR2022050430
(87)【国際公開番号】W WO2022189757
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】2102359
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507208484
【氏名又は名称】エルケム シリコンズ フランス ソシエテ パ アクシオンス シンプリフィエ
(71)【出願人】
【識別番号】523343536
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドゥ オート アルザス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】アロナス,グザビエ
(72)【発明者】
【氏名】イブラヒム,アフマド
(72)【発明者】
【氏名】フランセス,ジャン-マルク
(72)【発明者】
【氏名】テイユ,ペリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】マリヴァーニー,クリスチャン
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4H006
4J011
4J127
【Fターム(参考)】
4D075BB42Z
4D075BB46Z
4D075BB47Z
4D075CA07
4D075DB01
4D075DB21
4D075DB31
4D075EB43
4F100AK25A
4F100AK52A
4F100AL09A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100EH46
4F100EJ08
4F100EJ52
4F100EJ54
4F100JB14A
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB49
4H006BJ50
4H006BN10
4H006BP30
4H006BR30
4J011QB25
4J011SA06
4J011SA14
4J011SA16
4J011SA20
4J011UA01
4J011UA03
4J011UA04
4J011VA01
4J011WA02
4J127AA06
4J127BB041
4J127BB051
4J127BB081
4J127BB091
4J127BB22
4J127BC021
4J127BC031
4J127BC051
4J127BC131
4J127BD291
4J127BD331
4J127BE311
4J127BE31Y
4J127BE341
4J127BE34Y
4J127BF781
4J127BG101
4J127BG121
4J127BG381
4J127DA17
4J127DA18
4J127DA61
4J127DA64
4J127EA13
4J127FA08
4J127FA14
(57)【要約】
本発明は、放射線硬化性組成物のフリーラジカル硬化のためのI型光開始剤に関する。特に、本発明は、I型光開始剤と少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を有するオルガノポリシロキサンとを含むシリコーン組成物に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサンAと、
b.式(I)
【化1】
(式中、
およびRは、互いに独立して、C~Cアルキル基およびC~Cシクロアルキル基から選択され、またはRおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になってC~Cシクロアルキル基を形成し、
は、HまたはC~Cアルキル基であり、好ましくはRはHであり、
は、
【化2】
基であり、
それぞれのR基は、独立して、C~Cアルキル基を表し、
n=0、1、2、3、または4であり、好ましくはn=0、1、または2であり、
は、C~Cアルキレン基またはC~Cヘテロアルキレン基であり、
10は、直鎖または分岐のC~C18アルキル基であり、好ましくは直鎖または分岐のC~C17アルキル基であり、より好ましくは直鎖または分岐のC~C13アルキル基であり、更により好ましくは直鎖または分岐のCアルキル基である)
の化合物である、少なくとも1種のラジカル光開始剤Bと
を含む、放射線硬化性シリコーン組成物X。
【請求項2】
前記式(I)の化合物が式(II)
【化3】
(式中、R、R、R、およびRは、請求項1に規定されたとおりである)
の化合物である、請求項1に記載のシリコーン組成物X。
【請求項3】
前記式(I)の化合物が式(III)
[Chem.17]
【化4】
(式中、R10は、請求項1に規定されたとおりである)
の化合物である、請求項1に記載のシリコーン組成物X。
【請求項4】
前記オルガノポリシロキサンAが
a)下記式(I)
SiO(4-a-b)/2 (I)
(式中、
前記R符号は、同一かまたは異なっており、それぞれが、直鎖もしくは分岐のC~C18アルキル基、好ましくはハロゲン原子により、置換されてよいC~C12アリール基もしくはアラルキル基、または-OR基(式中、Rは水素原子もしくは1~10個の炭素原子を含む炭化水素基である)を表し、
前記Z符号は、式-y-(Y’)nの一価の基であり、
yは、多価のC~C18アルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し、前記アルキレン基およびヘテロアルキレン基は、直鎖または分岐であることができ、1つ以上のシクロアルキレン基に割り込まれてよく、C~Cで二価のオキシアルキレン基またはポリオキシアルキレン基により伸長されてもよく、前記アルキレン基、ヘテロアルキレン基、オキシアルキレン基、およびポリオキシアルキレン基は、1つ以上のヒドロキシ基で置換されてよく、
Y’は、一価のアルケニルカルボニルオキシ基を表し、
nは、1、2、または3に相当し、
aは、0、1、または2に相当する整数であり、bは、1または2に相当する整数であり、かつ合計a+b=1、2、または3である)
の少なくとも1つの単位、ならびに
b)任意に、下記式(II)
SiO(4-a)/2 (II)
(式中、
前記R符号は、式(I)において上記で規定されたとおりであり、
aは、0、1、2、または3に相当する整数である)
を有する単位
を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載のシリコーン組成物X。
【請求項5】
基材上で剥離コーティングとして用いることのできるシリコーンエラストマーの調製のための、請求項1から4のいずれか1項に記載のシリコーン組成物Xの使用。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載のシリコーン組成物Xを硬化させることにより得られるシリコーンエラストマー。
【請求項7】
基材上にコーティングを調製する方法であって、
請求項1から4のいずれか1項に記載のシリコーン組成物Xを塗布する工程と、
電子線照射または光子照射により、好ましくは、電子ビームへの曝露、γ線への曝露、または200nmから450nmの間の波長を有する放射線、特に紫外線への曝露により、前記組成物を硬化させる工程と
を含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法により得られるコーティングされた基材。
【請求項9】
アディティブマニュファクチャリングプロセスによるシリコーンエラストマー製品の調製のための、請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物Xの使用。
【請求項10】
式(I)
【化5】
(式中、
およびRは、互いに独立して、C~Cアルキル基およびC~Cシクロアルキル基から選択され、またはRおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になってC~Cシクロアルキル基を形成し、
は、HまたはC~Cアルキル基であり、好ましくはRはHであり、
は、
【化6】
基であり、
それぞれのR基は、独立して、C~Cアルキル基を表し、
n=0、1、2、3、または4であり、好ましくはn=0、1、または2であり、
は、C~Cアルキレン基またはC~Cヘテロアルキレン基であり、
10は、直鎖または分岐のC~C18アルキル基であり、好ましくは直鎖または分岐のC~C13アルキル基であり、より好ましくは直鎖または分岐のCアルキル基である)
の化合物。
【請求項11】
下記式(II)
【化7】
(式中、R、R、R、およびRは、請求項10に規定されたとおりである)
であることを特徴とする、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
下記式(III)
【化8】
(式中、R10は、請求項10に規定されたとおりである)
の化合物であることを特徴とする、請求項10または11に記載の化合物。
【請求項13】
ラジカル光開始剤としての、特に、少なくとも1種の放射線硬化性不飽和化合物Dを含む放射線硬化性組成物Yにおけるラジカル光開始剤としての、請求項10から12のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項14】
前記放射線硬化性不飽和化合物Dが、1つ以上の二重結合、ならびに任意に、N、P、O、S、およびFから選択される1つ以上のヘテロ原子を含む炭化水素化合物である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記放射線硬化性不飽和化合物Dが1つ以上の二重結合を含むオルガノポリシロキサンである、請求項13に記載の使用。
【請求項16】
少なくとも1種の放射線硬化性不飽和化合物Dを含む放射線硬化性組成物Yにおけるラジカル光開始剤としての、式(I)
【化9】
(式中、
およびRは、互いに独立して、C~Cアルキル基およびC~Cシクロアルキル基から選択され、またはRおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になってC~Cシクロアルキル基を形成し、
は、HまたはC~Cアルキル基であり、好ましくはRはHであり、
は、
【化10】
基であり、
それぞれのR基は、独立して、C~Cアルキル基を表し、
n=0、1、2、3、または4であり、好ましくはn=0、1、または2であり、
は、C~Cアルキレン基またはC~Cヘテロアルキレン基であり、
10は、直鎖または分岐のC~C18アルキル基であり、好ましくは直鎖または分岐のC~C17アルキル基であり、より好ましくは直鎖または分岐のC~C13アルキル基であり、更により好ましくは直鎖または分岐のCアルキル基である)
の化合物の使用であって、
前記不飽和化合物Dが1つ以上の二重結合を含むオルガノポリシロキサン、好ましくは少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含むオルガノポリシロキサンである、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[1]本発明の対象は、放射線により硬化可能な組成物のフリーラジカル硬化のためのI型光開始剤である。特に、本発明は、I型光開始剤と少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含むオルガノポリシロキサンとを含むシリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
[2]剥離コーティング(ノンスティックコーティング)を生成させるためにシリコーンコーティングの表面塗布のための基材材料としてプラスチックフィルムを使用することは、適切な技術を必要とする。実際、これらのプラスチックフィルムのほとんどは熱に弱い。したがって、フィルムの寸法変形が、張力とフィルムが供される温度とが合わさった影響下で、コーティングおよび熱オーブンにおけるシリコーン層の乾燥の間に起こる。放射線照射、特に紫外線(UV)照射により官能性シリコーン油を硬化させる技術は、高温の使用を除外し、それにより基材に影響を与えることなく剥離コーティング層を硬化させることを可能にする。更に、この技術は、エネルギーを大量消費することなく、かつ溶媒を使用することなく高い生産性を達成するという利点を有する。プラスチック基材は多くの用途にとって最適な材料であり、それらの使用は常に増大している。
【0003】
[3]シリコーン剥離コーティングの調製は、一般的に以下のように行われる。シリコーン組成物を、超高速(例えば600m/min)で作動するローラーを含む産業用コーティング装置で基材に塗布する。基材に塗布したら、シリコーン組成物を硬化させて固体シリコーン(例えばエラストマー)剥離コーティングを形成する。得られたコーティングされた基材はまた、シリコーンライナーとも呼ばれる。このシリコーンライナーは特に粘着剤で積層することができ、これはシリコーン剥離コーティングがこれらの基材に可逆的に結合した粘着材料の除去を容易にするためである。したがって、これらのシリコーンライナーは、糊を必要としないラベル、封筒を含む細長い一片、グラフィックアート、医療および健康用途の分野で用いることができる。
【0004】
[4]剥離コーティングを形成するために用いられるシリコーン組成物は、一般的に、放射線照射、特に、発光スペクトルが200nm~450nmに広がるドープされたまたはドープされていない水銀ランプにより放射される紫外線または可視放射線照射により硬化(架橋)される。スポットUVまたは可視光を供給する光源、例えば頭字語「LED」でより良く知られている発光ダイオードもまた用いることができる。
【0005】
[5]エポキシ基のカチオン重合またはアクリル官能基のフリーラジカル重合の2つのアプローチに従って、官能性シリコーン油の放射線硬化を行うことができる。フリーラジカル重合は塩基または湿気のいずれにも阻止されない。したがって、コーティング基材および添加剤がより多様であることができ、そのようなフリーラジカルシステムへの関心が高まっている。
【0006】
[6]アクリル官能基を有する分子の放射線照射、特に紫外線照射によるフリーラジカル重合は十分に実証されている。一般的な見解では、放射線照射による硬化はラジカル光開始剤分子により促進される。大量の文献がラジカル光開始剤およびそれらの使用について記載している。アクリル系シリコーン組成物のフリーラジカル重合の分野では、一般的に用いられる光開始剤分子は、I型光開始剤と呼ばれる。放射線照射により、これらの分子は分裂してフリーラジカルを生成する。これらのフリーラジカルは、組成物の硬化を引き起こす重合開始反応を生じさせる。I型光開始剤にシリコーン-アクリル系配合物におけるそれらの使用を可能にする特性を保持させて剥離コーティングを得るために、多くの努力がなされてきた。本出願を通して、語句「I型光開始剤」は、分子内の均等分裂により放射線照射によって重合開始フリーラジカルを生成することのできる化合物を意味すると理解される。
【0007】
[7]ラジカル光開始剤および補助開始剤を含むII型光開始剤システムもある。II型光開始剤システムでは、用いられる光開始剤は、補助開始剤と呼ばれる別の化合物との反応により重合開始フリーラジカルを生成することができ、その反応は、補助開始剤からその光開始剤への水素の移動を引き起こす。II型光開始剤システムで用いられる光開始剤は「II型光開始剤」と呼ばれる。
【0008】
[8]I型光開始剤は市販されているが、欠点を有しうる。特に、それらの光開始剤のシリコーン組成物中での溶解度は必ずしも最適ではない。更に、光開始剤およびそれらの分解生成物、例えばベンズアルデヒドは健康上のリスクを有し、不快な臭いを有しうる。
【0009】
[9]したがって、これらの欠点を克服することのできるI型光開始剤を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[10]これに関連して、本発明は、以下の目的の少なくとも1つを満たすことを目的とする。
[11]本発明の本質的な目的の1つは、剥離コーティングを形成するのに用いることのできる、I型光開始剤を含む放射線硬化性シリコーン組成物を提供することである。
【0011】
[12]本発明の別の本質的な目的は、I型光開始剤を含み、改善した特性を有する放射線硬化性シリコーン組成物を提供することである。
[13]本発明の別の本質的な目的は、I型光開始剤を含み、変換および/または反応速度論の観点で改善した特性を有する放射線硬化性シリコーン組成物を提供することである。
【0012】
[14]本発明の別の本質的な目的は、光開始剤の分解生成物の毒性が低く、かつ/またはコーティングを通って移行する可能性の低い、I型光開始剤を含む放射線硬化性シリコーン組成物を提供することである。
【0013】
[15]本発明の別の本質的な目的は、放射線硬化性組成物においてラジカル光開始剤として用いることのできる化合物を提供することである。
[16]本発明の別の本質的な目的は、ラジカル光開始剤として用いることができ、シリコーン組成物に可溶性であり、好ましくはシリコーン組成物に迅速に溶解可能である化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[17]なかでもこれらの目的は、
a.少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサンAと、
b.式(I)
【0015】
【化1】
(式中、
およびRは、互いに独立して、C~Cアルキル基およびC~Cシクロアルキル基から選択され、またはRおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になってC~Cシクロアルキル基を形成し、
は、HまたはC~Cアルキル基であり、好ましくはRはHであり、
は、
【0016】
【化2】
基であり、
それぞれのR基は、独立して、C~Cアルキル基を表し、
n=0、1、2、3、または4であり、好ましくはn=0、1、または2であり、
は、C~Cアルキレン基またはC~Cヘテロアルキレン基であり、
10は、直鎖または分岐のC~C18アルキル基であり、好ましくは直鎖または分岐のC~C17アルキル基であり、より好ましくは直鎖または分岐のC~C13アルキル基であり、更により好ましくは直鎖または分岐のCアルキル基である)
の化合物である、少なくとも1種のラジカル光開始剤Bと
を含む、放射線硬化性シリコーン組成物Xに第一に関する、本発明により達成される。
【0017】
[18]ラジカル光開始剤Bは、変換および反応速度論の観点で良好な特性を有するシリコーン組成物Xを得ることを可能にする。更に、ラジカル光開始剤Bの使用は、良好な特性を有するシリコーン剥離コーティングを調製することを可能にする。ラジカル光開始剤Bはまた、シリコーン組成物Xの良好な硬化を可能にする。
【0018】
[19]更に、ラジカル光開始剤Bからの分解生成物は、既存の市販の光開始剤よりも移行する可能性が低い。
[20]ラジカル光開始剤Bはまた、シリコーン中で良好な溶解度を有する。したがって、純粋な光開始剤を用い、それを直接オルガノポリシロキサンA中で希釈することができる。有利には、ラジカル光開始剤Bは、15時間未満、または10時間未満、または5時間未満、または2時間未満、オルガノポリシロキサンA中で溶解することができる。例えば、溶解度は、1.5から3重量部の間のラジカル光開始剤Bを100重量部のオルガノポリシロキサンAに添加することにより決定することができる。
【0019】
[21]ラジカル光開始剤Bの別の利点は、シリコーン組成物Xの硬化後に得られたエラストマーの透明性である。
[22]本発明はまた、基材上で剥離コーティングとして用いることのできるシリコーンエラストマーの調製のための、本出願に記載されたシリコーン組成物Xの使用に関する。
【0020】
[23]本発明はまた、本出願に記載されたシリコーン組成物Xを硬化させることにより得られたシリコーンエラストマーに関する。
[24]本発明はまた、基材上にコーティングを調製する方法であって、
本出願に記載されたシリコーン組成物Xを塗布する工程と、
電子線照射または光子照射により、好ましくは、電子ビームへの曝露、γ線への曝露、または200nmから450nmの間の波長を有する放射線、特に紫外線への曝露により、組成物を硬化させる工程と
を含む、方法に関する。
【0021】
[25]本発明はまた、本方法により得ることのできるコーティングされた基材に関する。
[26]本発明はまた、アディティブマニュファクチャリング(additive manufacturing)(積層造形)プロセスによるシリコーンエラストマー製品の調製のための本発明に記載の組成物Xの使用に関する。
【0022】
[27]本発明はまた、式(I)
【0023】
【化3】
(式中、
およびRは、互いに独立して、C~Cアルキル基およびC~Cシクロアルキル基から選択され、またはRおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になってC~Cシクロアルキル基を形成し、
は、HまたはC~Cアルキル基であり、好ましくはRはHであり、
は、
【0024】
【化4】
基であり、
それぞれのR基は、独立して、C~Cアルキル基を表し、
n=0、1、2、3、または4であり、好ましくはn=0、1、または2であり、
は、C~Cアルキレン基またはC~Cヘテロアルキレン基であり、
10は、直鎖または分岐のC~C18アルキル基であり、好ましくは直鎖または分岐のC~C13アルキル基であり、より好ましくは直鎖または分岐のCアルキル基である)
の化合物に関する。
【0025】
[28]本発明はまた、本出願で規定された化合物のラジカル光開始剤としての使用に関する。
【0026】
定義
[29]本出願では、用語「放射線硬化性シリコーン組成物」は、電子線照射または光子照射により硬化可能な少なくとも1種のオルガノポリシロキサンを含むシリコーン組成物を意味すると理解される。電子線照射は、電子ビームへの曝露を含む。光子照射は、200nmから450nmの間の波長を有する放射線、特に紫外線への曝露、またはγ線への曝露を含む。
【0027】
[30]「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート基またはアクリレート基を意味すると理解される。
[31]「アルキル」は、直鎖または分岐のアルキル基を意味すると理解される。アルキル基は、好ましくは1~6個の炭素原子を含む。
【0028】
[32]「アルキレン」は、二価の直鎖または分岐のアルキル基を意味すると理解される。アルキレン基は、好ましくは1個から6個の間の炭素原子、より好ましくは1個から4個の間の炭素原子を含む。
【0029】
[33]「ヘテロアルキレン」は、二価の直鎖または分岐のヘテロアルキル基を意味すると理解される。ヘテロアルキル基は、好ましくは、1個から6個の間の炭素原子、およびO、N、およびSからなる群より選択される1個から3個の間のヘテロ原子を含み、NおよびSは任意に酸化されうる。ヘテロ原子は、ヘテロアルキル基のあらゆる部位、内部または一端に配置することができる。
【0030】
[34]本出願では、別に記載されなければ、全てのパーセンテージは重量%として示される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[35]硬化性シリコーン組成物X
[36]本発明は、第一に、
a.少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサンAと、
b.式(I)
【0032】
【化5】
(式中、
およびRは、互いに独立して、C~Cアルキル基およびC~Cシクロアルキル基から選択され、またはRおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になってC~Cシクロアルキル基を形成し、
は、HまたはC~Cアルキル基であり、好ましくはRはHであり、
は、
【0033】
【化6】
基であり、
それぞれのR基は、独立して、C~Cアルキル基を表し、
n=0、1、2、3、または4であり、好ましくはn=0、1、または2であり、
は、C~Cアルキレン基またはC~Cヘテロアルキレン基であり、
10は、直鎖または分岐のC~C18アルキル基であり、好ましくは直鎖または分岐のC~C17アルキル基であり、より好ましくは直鎖または分岐のC~C13アルキル基であり、更により好ましくは直鎖または分岐のCアルキル基である)
の化合物である、少なくとも1種のラジカル光開始剤Bと
を含む、放射線硬化性シリコーン組成物Xに関する。
【0034】
[37]1つの実施形態によれば、シリコーン組成物Xが光子照射により、好ましくは200nmから450nmの間の波長を有する放射線、特に紫外線への曝露により、硬化可能である。
【0035】
[38]1つの実施形態によれば、放射線硬化性シリコーン組成物Xが50から2500mPa.sの間、好ましくは100から1500mPa.sの間の粘度を有する。したがって、シリコーン剥離コーティングを調製するのに用いられるコーティングツールによりそれを用いることができる。
【0036】
[39]本明細書で言及される全ての粘度は25℃での動的粘度の大きさに相当し、これは測定粘度が速度勾配と無関係となるのに十分に低いせん断速度勾配でBrookfield粘度計を用いてそれ自体が知られた方法で測定される動的粘度を意味する。
【0037】
[40]オルガノポリシロキサンA
[41]本発明によれば、本発明の硬化性シリコーン組成物Xは、少なくとも1つの(メタ)アクリレート基、好ましくは少なくとも2つの(メタ)アクリレート基を含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサンAを含む。
【0038】
[42]シリコーンにより保持される本発明に最も特に適切な(メタ)アクリレート官能基の代表として、Si-C結合によりポリシロキサン鎖に連結された、アクリレート、メタクリレート、(メタ)アクリレートのエーテルおよび(メタ)アクリレートのエステルの誘導体を特に挙げることができる。
【0039】
[43]1つの実施形態によれば、オルガノポリシロキサンAは、
a)下記式(IV)
SiO(4-a-b)/2 (IV)
(式中、
R符号は、同一かまたは異なっており、それぞれが、直鎖もしくは分岐のC~C18アルキル基、C~C12アリール基もしくはアラルキル基であって、そのアルキル基およびアリール基が好ましくはハロゲン原子により置換されてよいC~C12アリール基もしくはアラルキル基、または-OR基(式中、Rは水素原子もしくは1~10個の炭素原子を含む炭化水素基である)を表し、
Z符号は、式-y-(Y’)nの一価の基であり、
yは、多価のC~C18アルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し、そのアルキレン基およびヘテロアルキレン基は、直鎖または分岐であることができ、1つ以上のシクロアルキレン基に割り込まれてよく、C~Cで二価のオキシアルキレン基またはポリオキシアルキレン基により伸長されてもよく、そのアルキレン基、ヘテロアルキレン基、オキシアルキレン基、およびポリオキシアルキレン基は、1つ以上のヒドロキシ基で置換されてよく、
Y’は、一価のアルケニルカルボニルオキシ基を表し、
nは、1、2、または3に相当し、
aは、0、1、または2に相当する整数であり、bは、1または2に相当する整数であり、かつ合計a+b=1、2、または3である)
を有する少なくとも1つの単位、ならびに
b)任意に、下記式(V)
SiO(4-a)/2 (V)
(式中、
R符号は、式(IV)において上記で規定されたとおりであり、
aは、0、1、2、または3に相当する整数である)
を有する単位
を含む。
【0040】
[44]上記の式(IV)および(V)では、R符号は、同一かまたは異なっており、それぞれが、直鎖もしくは分岐のC~C18アルキル基またはC~C12アリール基もしくはアラルキル基を表す。好ましくは、R符号は、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリル、およびフェニルからなる群より選択される一価の基を表し、より好ましくは、R符号はメチルを表す。
【0041】
[45]オルガノポリシロキサンAは、直鎖構造、分岐構造、環状構造またはネットワーク構造を有することができる。好ましくは、オルガノポリシロキサンAは直鎖構造を有する。直鎖オルガノポリシロキサンに関する場合、これらは
式RSiO2/2、RZSiO2/2、およびZSiO2/2の単位から選択される「D」シロキシ単位、
式RSiO1/2、RZSiO1/2、RZSiO1/2、およびZSiO1/2の単位から選択される「M」シロキシ単位
から本質的になることができ、
R符号およびZ符号は、式(I)に上記で規定されたとおりである。
【0042】
[46]1つの実施形態によれば、上記の式(IV)では、上述のY’アルケニルカルボニルオキシ基がアクリルオキシ[CH=CH-CO-O-]およびメタクリルオキシ基[CH=C(CH)-CO-O-]を含む。有利には、オルガノポリシロキサンAが少なくとも2つのY’アルケニルカルボニルオキシ基、好ましくは少なくとも3つのY’アルケニルカルボニルオキシ基を含む。
【0043】
[47]式(IV)の単位におけるy符号の例として、以下の基を挙げることができる。
-CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-CH-CH(CH)-CH-、
-(CH-NR’-CH-CH-(R’は、C~Cアルキル基である)、
-(CH-OCH-、
-(CH-[O-CH-CH(CH)-]-(n=1~25)、
-(CH-O-CH-CH(OH)(-CH-)、
-(CH-O-CH-C(CH-CH)[-(CH-)]
-(CH-O-CH-C[-(CH)-]、および
-(CH-C(OH)-。
【0044】
[48]好ましくは、オルガノポリシロキサンAは、下記式(VI)
【0045】
【化7】
(式中、
符号は、同一かまたは異なっており、それぞれが、直鎖もしくは分岐のC~C18アルキル基、C~C12アリール基もしくはアラルキル基であって、そのアルキル基およびアリール基が好ましくはハロゲン原子により置換されてよいC~C12アリール基もしくはアラルキル基、または-OR基(式中、Rは水素原子もしくは1~10個の炭素原子を含む炭化水素基である)を表し、
符号およびR符号は、同一かまたは異なっており、それぞれが、R基または式Z=-y-(Y’)nの一価の基のいずれかを表し、
yは、多価のC~C18アルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し、そのアルキレン基およびヘテロアルキレン基は、直鎖または分岐であることができ、1つ以上のシクロアルキレン基に割り込まれてよく、C~Cで二価のオキシアルキレン基またはポリオキシアルキレン基により伸長されてもよく、そのアルキレン基、ヘテロアルキレン基、オキシアルキレン基、およびポリオキシアルキレン基は、1つ以上のヒドロキシ基で置換されてよく、
Y’は、一価のアルケニルカルボニルオキシ基を表し、
nは、1、2、または3に相当し、
a=0~1000、b=0~500、c=0~500、d=0~500、かつa+b+c+d=0~2500であり、好ましくは、a=0~500かつa+b+c+d=0~500であり、
少なくとも1つのR符号またはR符号が式Zの一価の基を表す場合、好ましくは、少なくとも2つのR符号またはR符号が式Zの一価の基を表す)
に相当する。
【0046】
[49]好ましい実施形態によれば、上記式(VI)では、
c=0、d=0、a=1~1000、b=1~250であり、符号Rは、式Zの一価の基を表し、符号RおよびRは、上記と同じ意味を有する。
【0047】
[50]更により好ましくは、上記式(VI)では、
c=0、d=0、a=1~500、b=2~100であり、符号Rは、式Zの一価の基を表し、符号RおよびRは、上記と同じ意味を有する。
【0048】
[51]1つの実施形態によれば、本発明のオルガノポリシロキサンAが下記式(VII)、(VIII)、(IX)、または(X)
【0049】
【化8】
(式中、
x1は、1から1000の間であり、好ましくは、x1は、1から500の間であり、
n1は、1から100の間であり、好ましくは、n1は、2から100の間であり、
x2は、1から1000の間であり、好ましくは、x2は、1から500の間であり、
n2は、1から100の間であり、好ましくは、n2は、2から100の間であり、
x3は、1から1000の間であり、好ましくは、x3は、1から500の間であり、
x4は、1から1000の間であり、好ましくは、x4は、1から500の間である)のうちの1つに相当する。
【0050】
[52]放射線硬化性シリコーン組成物Xは、放射線硬化性シリコーン組成物Xの全重量に対して25から99.99重量%のオルガノポリシロキサンAを含むことができる。好ましくは、放射線硬化性シリコーン組成物Xは、放射線硬化性シリコーン組成物Xの全重量に対して50から99.5%のオルガノポリシロキサンAを含むことができる。
【0051】
[53]当然ながら、変異型に応じて、オルガノポリシロキサンAはオルガノポリシロキサンAの定義を満たす化合物の混合物でありうる。
【0052】
[54]ラジカル光開始剤B
[55]ラジカル光開始剤BはI型光開始剤である。光子照射後、ラジカル光開始剤Bはカルボニル官能基のα位で均等開裂し、2つのラジカル断片が形成され、そのうちの1つはR4基で置換されたベンゾイルラジカルである。
【0053】
[56]光開始剤Bは、特に変換および反応速度論の観点でシリコーン組成物Xの特性を改善させる。更に、ラジカル光開始剤Bは、シリコーン組成物Xの良好な硬化を得ることを可能にする。
【0054】
[57]シリコーン組成物Xは、放射線硬化性シリコーン組成物Xの全重量に対して0.01から20重量%の間のラジカル光開始剤Bを含むことができる。好ましくは、放射線硬化性シリコーン組成物Xが0.1から10重量%の間のラジカル光開始剤B、好ましくは0.1%から5重量%の間を含む。
【0055】
[58]ラジカル光開始剤Bは、式(I)
【0056】
【化9】
(式中、
およびRは、互いに独立して、C~Cアルキル基およびC~Cシクロアルキル基から選択され、またはRおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になってC~Cシクロアルキル基を形成し、
は、HまたはC~Cアルキル基であり、好ましくはRはHであり、
は、
【0057】
【化10】
基であり、
それぞれのR基は、独立して、C~Cアルキル基を表し、
n=0、1、2、3、または4であり、好ましくはn=0、1、または2であり、
は、C~Cアルキレン基またはC~Cヘテロアルキレン基であり、
10は、直鎖または分岐のC~C18アルキル基であり、好ましくは直鎖または分岐のC~C17アルキル基であり、より好ましくは直鎖または分岐のC~C13アルキル基であり、更により好ましくは直鎖または分岐のCアルキル基である)
の化合物である。
【0058】
[59]1つの実施形態によれば、式(I)の化合物が式(II)
【0059】
【化11】
の化合物である。
【0060】
[60]1つの実施形態によれば、式(I)の化合物が式(III)
【0061】
【化12】
の化合物である。
【0062】
[61]有利には、RおよびRは、互いに独立して、C~Cアルキル基から選択される。好ましくは、RおよびRはそれぞれメチル基である。
[62]有利には、RはHである。
【0063】
[63]1つの実施形態によれば、n=0である。別の実施形態によれば、n=1または2であり、それぞれのR基は、独立して、C~Cアルキル基、好ましくはメチル基を表す。
【0064】
[64]1つの実施形態によれば、RがC~Cヘテロアルキレン基であり、特に-O(CH2)-基であり、酸素原子はフェニルに結合される。
[65]R10は、直鎖または分岐のC~C18アルキル基であり、好ましくは直鎖または分岐のC~C17またはC~C18アルキル基であり、より好ましくは直鎖または分岐のC~C13またはC~C10アルキル基であり、更により好ましくは直鎖または分岐のCアルキル基である。
【0065】
[66]1つの実施形態によれば、R10が直鎖または分岐のC~C18アルキル基であり、好ましくは直鎖または分岐のC~C13アルキル基であり、より好ましくは直鎖または分岐のC~C10アルキル基であり、更により好ましくは直鎖または分岐のC~Cアルキル基である。
【0066】
[67]1つの実施形態によれば、R10が直鎖または分岐のC~C18アルキル基であり、好ましくは直鎖または分岐のC~C13アルキル基であり、より好ましくは直鎖または分岐のC~C10アルキル基であり、更により好ましくは直鎖または分岐のC~Cアルキル基である。
【0067】
[68]1つの実施形態によれば、R10が分岐のC~C18アルキル基であり、好ましくは分岐のC~C17またはC~C18アルキル基であり、より好ましくは分岐のC~C13アルキル基であり、更により好ましくは分岐のCアルキル基である。
【0068】
[69]R10基の例は、分岐のCアルキル基、分岐のCアルキル基、分岐のCアルキル基、分岐のCアルキル基、分岐のC11アルキル基、および分岐のC13アルキル基を含む。
【0069】
[70]R10が分岐のアルキル基である場合、第4級炭素を含むことができる。好ましくは、第4級炭素はカルボニルのα位にあり、結果として用語トリアルキル酢酸エステルが用いられる。トリアルキル酢酸はカットオイルに由来しうる。1つの実施形態によれば、R10-(CO)-O-基がトリアルキル酢酸エステルを表し、好ましくは、R10が分岐のC、C、C、C、C11、またはC13アルキル基を表す。
【0070】
[71]いくつかの場合、R10-(CO)-O-基がカットオイル由来のトリアルキル酢酸エステルを表す場合には、いくつかの構造上の異性体が存在しうる。特に、R10が分岐のC、C、C、C11、またはC13アルキル基である場合にこの場合となりうる。したがって、R10は構造上の異性体の混合物を表すことができる。例えば、R10が分岐のCアルキル基を表す場合、このアルキル基は以下の種類、-C(CH-CH(CH)-CH-CH(CH、-C(CH)(CH(CH)-CH-CH(CH、-C(CH-(CH-CH、および-C(CH-CH-(CH-CHの異なる異性体を含むことができる。
【0071】
[72]他の添加剤
[73]放射線硬化性シリコーン組成物Xはまた、他の添加剤、例えば重合開始剤、充填剤、殺ウイルス剤、殺菌剤、摩耗防止添加剤、および顔料(有機または無機)を含んでよい。重合開始剤としては、フェノール、ヒドロキノン、4-OMe-フェノール、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール(BHT)、フェノチアジン、およびニトロキシルラジカル、例えば(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル(TEMPO)を挙げることができる。
【0072】
[74]放射線硬化性シリコーン組成物Xはまた、少なくとも1つの(メタ)アクリレート官能基を含む有機化合物Cを含んでよい。少なくとも1つの(メタ)アクリレート官能基を含む有機化合物Cは、1つ以上の(メタ)アクリレート官能基を含むあらゆる化合物を意味すると理解される。1つの実施形態によれば、少なくとも1つの(メタ)アクリレート官能基を含む有機化合物Cはシロキサン構造を含まない。
【0073】
[75]エポキシ(メタ)アクリレート、グリセリル(メタ)アクリレートのポリエステル、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレートのポリエーテル、ポリエステル(メタ)アクリレート、および(メタ)アクリレートアクリル樹脂が、特に(メタ)アクリレート官能基を含む有機化合物Cとして適切である。トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、およびペンタエリスリトールテトラアクリレートがより特に好ましい。
【0074】
[76](メタ)アクリレート官能基を含む有機化合物Cの例は、エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソデシルアクリレート、2(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、トリデシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、アルコキシル化フェノールアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート、およびジペンタエリスリトールペンタアクリレートを含む。
【0075】
[77]放射線硬化性シリコーン組成物Xはまた、充填剤を含んでよい。放射線硬化性シリコーン組成物Xは、放射線硬化性シリコーン組成物Xの全重量に対して0.1から40重量%の間の充填剤を含むことができる。1つの実施形態によれば、放射線硬化性シリコーン組成物Xが20から30重量%の間の充填剤を含む。別の実施形態によれば、放射線硬化性シリコーン組成物Xが0.1から10重量%の間の充填剤を含む。この充填剤は好ましくは無機である。充填剤は、0.1μm未満の平均粒径を有する非常に細かく分けられた製品であることができる。充填剤は特にシリカであることができる。シリカ材料に関して、それらは補強または半補強充填剤として機能することができる。補強シリカ充填剤は、コロイド状シリカ、燃焼沈降シリカ粉末、またはそれらの混合物から選択される。これらの粉末は、一般的には0.1μm(マイクロメーター)未満である平均粒子径、および30m/gより大きく、好ましくは30から350m/gの間のBET比表面積を有する。半補強シリカ充填剤、例えば珪藻土または破砕石英もまた用いることができる。これらのシリカは、そのままで、またはこの目的で従来用いられている有機ケイ素化合物で処理された後に取り入れることができる。これらの化合物のなかには、メチルポリシロキサン、例えばヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン;メチルポリシラザン、例えばヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、テトラメチルジビニルジシラザン;クロロシラン、例えばジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン;アルコキシシラン、例えばジメチルジメトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、およびそれらの混合物がある。非シリカ無機材料に関して、それらは半補強またはパッキング無機充填剤として機能することができる。単独でまたは混合物として用いることのできるこれらの非シリカ充填剤の例は、有機酸または有機酸のエステルで表面処理されてよい炭酸カルシウム、焼成粘土、ルチル型の酸化チタン、鉄、亜鉛、クロム、ジルコニウム、またはマグネシウムの酸化物、様々な型のアルミナ(水和または非水和)、窒化ホウ素、リトポン、メタホウ酸バリウム、硫酸バリウム、およびガラスミクロスフェアである。これらの充填剤は比較的粗く、0.1μmより大きい平均粒径および一般的には30m/g未満の比表面積を典型的には有する。これらの充填剤は、この目的で通常用いられる様々な有機ケイ素化合物による処理によって表面改質されていてよい。
【0076】
[78]1つの実施形態によれば、放射線硬化性シリコーン組成物Xは、
a.25から99.99重量%の間の少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサンAと、
b.0.01から20重量%の間の少なくとも1種の、式(I)
【0077】
【化13】
(式中、
およびRは、互いに独立して、C~Cアルキル基およびC~Cシクロアルキル基から選択され、またはRおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になってC~Cシクロアルキル基を形成し、
は、HまたはC~Cアルキル基であり、好ましくはRはHであり、
は、
【0078】
【化14】
基であり、
それぞれのR基は、独立して、C~Cアルキル基を表し、
n=0、1、2、3、または4であり、好ましくはn=0、1、または2であり、
は、C~Cアルキレン基またはC~Cヘテロアルキレン基であり、
10は、直鎖または分岐のC~C18アルキル基であり、好ましくは直鎖または分岐のC~C17アルキル基であり、より好ましくは直鎖または分岐のC~C13アルキル基であり、更により好ましくは直鎖または分岐のCアルキル基である)
の化合物であるラジカル光開始剤Bと
を含む。
【0079】
[79]用途
[80]本発明はまた、シリコーンエラストマーの調製のための放射線硬化性シリコーン組成物Xの使用に関する。これらのシリコーンエラストマーは、粘着剤と比べて剥離特性を有することができる。
【0080】
[81]本発明はまた、シリコーンエラストマーを調製する方法であって、放射線硬化性シリコーン組成物Xを硬化させる工程を含む、方法に関する。
[82]本発明の方法の1つの実施形態によれば、硬化工程は空気中または不活性雰囲気で行われる。好ましくは、この硬化工程は不活性雰囲気で行われる。
【0081】
[83]1つの実施形態によれば、本発明の方法の硬化工程は、好ましくは不活性雰囲気で、200nmから450nmの間の波長を有する紫外線照射により行われる。
[84]別の実施形態によれば、本発明の方法の硬化工程は、電子ビームまたはγ線への曝露により行われる。
【0082】
[85]紫外線照射は、発光スペクトルが200nm~450nmに広がるドープされたまたはドープされていない水銀ランプにより放射することができる。スポットUVまたは可視光を供給する光源、例えば頭字語「LED」でより良く知られている発光ダイオードもまた用いることができる。
【0083】
[86]本発明の好ましい実施形態によれば、放射線は400ナノメートル未満の波長の紫外線である。本発明の好ましい実施形態によれば、放射線は200ナノメートルを超える波長の紫外線である。
【0084】
[87]1つの有利な実施形態によれば、LED UVランプが用いられる(365、375、385、および/または395nmでのUV照射)。
[88]約0.1~約0.5ジュールの範囲の紫外線照射の量が、一般的に、架橋を生じさせるのに十分である。
【0085】
[89]照射時間は短いものであることができ、一般的に1秒未満であり、薄いコーティング厚さについては100分の数秒のオーダーである。得られた硬化は、いずれの加熱も行わない場合であっても優れたものである。
【0086】
[90]1つの実施形態によれば、硬化工程は、10℃から50℃の間、好ましくは15℃から35℃の間の温度で行われる。
[91]当然ながら、硬化速度は、特に用いられるUVランプの数、UVに曝露する時間、および組成物とUVランプとの間の距離により調整することができる。
【0087】
[92]本発明はまた、基材上にコーティングを調製する方法であって、
基材上に放射線硬化性シリコーン組成物Xを塗布する工程と、
電子線照射または光子照射により、好ましくは、電子ビームへの曝露、γ線への曝露、または200nmから450nmの間の波長を有する放射線、特に紫外線への曝露により、その組成物を硬化させる工程と
を含む、方法に関する。
【0088】
[93]本発明の無溶媒組成物X、即ち非希釈物は、少量の液体を均一に堆積させることのできる装置を用いて塗布することができる。この目的で、例えば、特に2つの重ね合わされたローラーを含む「Helio glissant」として知られている装置を用いることができる。組成物が配置されるコーティング槽に浸漬される下側のローラーの役割は、上側のローラーに1つの非常に薄い層で染み込ませることであり、結果として後者の役割は、紙上に所望の量の染み込ませた組成物を堆積させることであり、そのような付与は、互いに関して反対方向に回転する2つのローラーのそれぞれの速度を調整することにより得られる。
【0089】
[94]シリコーン組成物Xの硬化物をもたらす硬化は、組成物でコーティングされた基材を、コーティングされた基材がコーティングの硬化を完了するのに十分な滞在時間を確保するように設計された照射装置に通過させることにより連続的に行うことができる。好ましくは、硬化は、可能な最も低い酸素濃度の存在下、典型的には100ppm未満の酸素濃度、好ましくは50ppm未満で行われる。硬化は、一般的には、不活性雰囲気、例えば窒素またはアルゴン中で行われる。シリコーン組成物Xを硬化させるのに必要な曝露時間は、
用いられる特定の配合物、放射線の種類および波長、
放射線流量、エネルギー束、
ラジカル光開始剤の濃度、ならびに
コーティングの雰囲気および厚さ
のような因子により変化する。これらのパラメーターは当業者に良く知られており、当業者はそれらを適応させる方法を知っている。
【0090】
[95]基材上に堆積された組成物Xの量は変化可能であり、最も多くは処理表面の0.1から5g/mの間の範囲である。これらの量は、基材の性質および所望の剥離特性に依存する。それらは最も多くは非多孔質基材の0.5から1.5g/mの間である。
【0091】
[96]この方法は、布地、紙、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、または不織繊維ガラスでできているフレキシブル基材である基材上に、シリコーン剥離コーティングを調製するのに特に適する。
【0092】
[97]シリコーン剥離コーティングでコーティングされたフレキシブル基材は、例えば、
紙またはポリオレフィン型(ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレンもしくはポリエチレン)もしくはポリエステル型(ポリエチレンテレフタレートもしくはPET)のポリマーフィルム、
内面が感圧粘着剤の層でコーティングされ、外面がシリコーン剥離コーティングを含む粘着テープ、
または糊を必要としないもしくは感圧性の粘着成分の粘着面を保護するためのポリマーフィルム
でありうる。
【0093】
[98]これらのコーティングは、剥離コーティングの分野でのそれらの使用に特に適する。
[99]本発明はまた、上述した方法に従って得ることのできるコーティングされた基材に関する。上記に示したように、基材は、布地、紙、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、または不織繊維ガラスでできているフレキシブル基材でありうる。
【0094】
[100]コーティングされた基材はノンスティック撥水特性を有するか、または表面特性、例えば滑りやすさ、耐汚染性、または柔らかさを改善させる。
[101]本発明の別の目的は、本発明の剥離コーティングで少なくとも部分的にコーティングされた、上述したように糊を必要としないラベル、封筒を含む細長い一片、グラフィックアート、医療および健康用途の分野における、基材の使用に関する。
【0095】
[102]本発明はまた、アディティブマニュファクチャリングプロセスによるシリコーンエラストマー製品の調製のための本発明の組成物Xの使用に関する。アディティブマニュファクチャリングプロセスはまた3D印刷法としても知られている。この記載は一般的にASTM F2792-12a指定の「アディティブマニュファクチャリング技術の標準専門用語」を含む。このASTM規格によれば、「3Dプリンター」は「3D印刷に用いられる機械」と定義され、「3D印刷」は「プリントヘッド、ノズル、または別のプリンター技術を用いた材料の堆積による物の造形」と定義される。
【0096】
[103]アディティブマニュファクチャリング「AM」は、サブトラクティブマニュファクチャリング(subtractive manufacturing)プロセスに対して、3Dモデルデータから物を製造するために通常は何層も材料を接合する方法と定義される。3D印刷に関連して3D印刷に包含される同義語は、積層造形(additive fabrication)、付加プロセス、付加技術、およびレイヤーマニュファクチャリング(layer manufacturing)を含む。アディティブマニュファクチャリング「AM」はまた、ラピッドプロトタイピング(RP)と呼ぶこともできる。本明細書で用いられる場合、「3D印刷」は「アディティブマニュファクチャリング」と交換可能であり、逆も同様である。
【0097】
[104]印刷を進めるものとしてのシリコーン組成物Xの層の照射は、製造中に組成物の少なくとも一部を迅速にゲル化させ、それによりそれぞれの層が、印刷された構造が崩れることなくその形状を保持する。
【0098】
[105]有利には、本発明のシリコーン組成物Xは、液槽光重合法(デジタルライトプロセッシング、ステレオリソグラフィー)を用いる3D印刷法、材料押出し、材料の堆積、またはインクジェットに用いることができ、シリコーン組成物Xの粘度を用いられる技術に適応させる。
【0099】
[106]式(I)の化合物
[107]本発明は、また、式(I)
【0100】
【化15】
(式中、
およびRは、互いに独立して、C~Cアルキル基およびC~Cシクロアルキル基から選択され、またはRおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になってC~Cシクロアルキル基を形成し、
は、HまたはC~Cアルキル基であり、好ましくはRはHであり、
は、
【0101】
【化16】
基であり、
それぞれのR基は、独立して、C~Cアルキル基を表し、
n=0、1、2、3、または4であり、好ましくはn=0、1、または2であり、
は、C~Cアルキレン基またはC~Cヘテロアルキレン基であり、
10は、直鎖または分岐のC~C18アルキル基であり、好ましくは直鎖または分岐のC~C17またはC~C18アルキル基であり、より好ましくは直鎖または分岐のC~C13アルキル基であり、更により好ましくは直鎖または分岐のCアルキル基である)の化合物に関する。
【0102】
[108]1つの実施形態によれば、式(I)の化合物が式(II)の化合物である。
【0103】
【化17】
[109]1つの実施形態によれば、式(I)の化合物が式(III)の化合物である。
【0104】
【化18】
[110]有利には、RおよびRは、互いに独立して、C~Cアルキル基から選択される。好ましくは、RおよびRはそれぞれメチル基である。
【0105】
[111]有利には、RはHである。
[112]1つの実施形態によれば、n=0である。別の実施形態によれば、n=1または2であり、それぞれのR基は、独立して、C~Cアルキル基、好ましくはメチル基を表す。
【0106】
[113]1つの実施形態によれば、RがC~Cヘテロアルキレン基であり、特に-O(CH2)-基であり、酸素原子はフェニルに結合される。
[114]R10は、直鎖または分岐のC~C18アルキル基であり、好ましくは直鎖または分岐のC~C17またはC~C18アルキル基であり、より好ましくは直鎖または分岐のC~C13またはC~C10アルキル基であり、更により好ましくは直鎖または分岐のCアルキル基である。
【0107】
[115]1つの実施形態によれば、R10が直鎖または分岐のC~C18アルキル基であり、好ましくは直鎖または分岐のC~C13アルキル基であり、より好ましくは直鎖または分岐のC~C10アルキル基であり、更により好ましくは直鎖または分岐のC~Cアルキル基である。
【0108】
[116]1つの実施形態によれば、R10が直鎖または分岐のC~C18アルキル基であり、好ましくは直鎖または分岐のC~C13アルキル基であり、より好ましくは直鎖または分岐のC~C10アルキル基であり、更により好ましくは直鎖または分岐のC~Cアルキル基である。
【0109】
[117]1つの実施形態によれば、R10が分岐のC~C18アルキル基であり、好ましくは分岐のC~C17またはC~C18アルキル基であり、より好ましくは分岐のC~C13アルキル基であり、更により好ましくは分岐のCアルキル基である。
【0110】
[118]R10基の例は、分岐のCアルキル基、分岐のCアルキル基、分岐のCアルキル基、分岐のCアルキル基、分岐のC11アルキル基、および分岐のC13アルキル基を含む。
【0111】
[119]R10が分岐のアルキル基である場合、第4級炭素を含むことができる。好ましくは、第4級炭素はカルボニルのα位にあり、結果として用語トリアルキル酢酸エステルが用いられる。トリアルキル酢酸はカットオイルに由来しうる。1つの実施形態によれば、R10-(CO)-O-基がトリアルキル酢酸エステルを表し、好ましくは、R10が分岐のC、C、C、C、C11、またはC13アルキル基を表す。
【0112】
[120]いくつかの場合、R10-(CO)-O-基がカットオイル由来のトリアルキル酢酸エステルを表す場合には、いくつかの構造上の異性体が存在しうる。特に、R10が分岐のC、C、C、C11、またはC13アルキル基である場合にこの場合となりうる。したがって、R10は構造上の異性体の混合物を表すことができる。例えば、R10が分岐のCアルキル基を表す場合、このアルキル基は以下の種類、-C(CH-CH(CH)-CH-CH(CH、-C(CH)(CH(CH)-CH-CH(CH、-C(CH-(CH-CH、および-C(CH-CH-(CH-CHの異なる異性体を含むことができる。
【0113】
[121]式(I)の化合物は、当業者に知られた有機化学で用いられる標準的な方法に従って合成することができる。
[122]特に、式(III)の化合物は、当業者に知られた有機化学で用いられる従来の方法に従って式(XI)の化合物からまたは式(XII)の化合物から合成することができる。
【0114】
【化19】
[123]多くの入手経路が可能であり、例えば、
強酸および形成される水による共沸混合物の蒸留を可能にする溶媒の存在下での、式(XI)の化合物による対応する酸R10-COOHの直接エステル化、
例えばIV族金属のβ-ジケトネート、特にジルコニウムテトラアセチルアセトネートにより触媒される、式(XI)の化合物による対応する酸R10-COO-のメチルエステルまたはエチルエステルのエステル交換、
トリエチルアミンの存在下での、対応する酸の塩化物R10-COClとの化合物(XI)の反応、
例えばエステル化またはエステル交換、次いで塩化イソブチリルによるFriedel-Crafts反応、および得られたケトンの塩素化または臭素化、最後に次いで塩基加水分解により式(I)の化合物を形成することによる、2-フェノキシエタノールからの式(XII)の化合物の調製がある。
【0115】
[124]式(I)の化合物の使用
[125]本発明はまた、ラジカル光開始剤としての、特にアクリル系シリコーン組成物のラジカル光開始剤としての上述した式(I)の化合物の使用に関する。
【0116】
[126]実際、本発明の式(I)の化合物はシリコーンに可溶性であり、したがって、溶媒を添加することなくそれをこれらの組成物のラジカル光開始剤として用いることができる。
【0117】
[127]別の実施形態によれば、式(I)の化合物をシリコーン組成物に可溶性にするのを助けるために少量の溶媒を用いることもできる。
[128]本発明はまた、少なくとも1種の放射線硬化性不飽和化合物Dを含む放射線硬化性組成物Yにおけるラジカル光開始剤としての上述した式(I)の化合物の使用に関する。
【0118】
[129]本発明はまた、
少なくとも1種の放射線硬化性不飽和化合物Dと、
上述した式(I)の化合物である光開始剤と
を含む、放射線硬化性組成物Yに関する。
【0119】
[130]放射線硬化性不飽和化合物Dは、芳香環の一部ではない1つ以上の二重結合を含んでよい。
[131]1つの実施形態によれば、放射線硬化性不飽和化合物Dが、1つ以上の二重結合、ならびに任意に、N、P、O、S、およびFから選択される1つ以上のヘテロ原子を含む炭化水素化合物である。不飽和化合物Dは、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、不飽和酸無水物、スチレン、アルキルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルエーテル、ビニルエステルおよびアリールエステル、イソシアヌレート、N-ビニル複素環、ならびにそれらの混合物から選択することができる。
【0120】
[132]不飽和化合物Dは、単量体またはオリゴマーであることができる。不飽和化合物Dが単量体の場合、2~40個の炭素原子、ならびに任意に、N、P、O、S、およびFから選択される1~20個のヘテロ原子を含むことができる。不飽和オリゴマー化合物Dの例として、主鎖またはペンダント鎖に二重結合を含むポリマーを挙げることができる。これらのポリマーのなかでも、不飽和ポリエステル、不飽和ポリアミド、および不飽和ポリウレタンを挙げることができる。
【0121】
[133]別の実施形態によれば、放射線硬化性不飽和化合物Dが1つ以上の二重結合を含むオルガノポリシロキサンである。好ましくは、放射線硬化性不飽和化合物Dが少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含むオルガノポリシロキサンである。不飽和化合物Dは上述したオルガノポリシロキサンAでありうる。
【0122】
[134]本発明はまた、少なくとも1種の放射線硬化性不飽和化合物Dを含む放射線硬化性組成物Yにおけるラジカル光開始剤としての上述した式(I)の化合物の使用に関し、その不飽和化合物Dは、1つ以上の二重結合を含むオルガノポリシロキサン、好ましくは少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含むオルガノポリシロキサンである。
【0123】
[135]放射線硬化性組成物Yは、多種多様な技術分野、例えば印刷用インク、印刷技術、ワニス、木のコーティング、プラスチックのコーティング、金属のコーティング、粘着剤、および3D印刷で用いることができる。
【実施例
【0124】
[136]
[137]以下の例では、様々なオルガノポリシロキサンAおよびI型ラジカル光開始剤を用いて本発明の放射線硬化性シリコーン組成物Xを調製した。それらの構造を以下の表に示す。別に記載されなければ、本明細書を通してパーセンテージは重量%として表される。
【0125】
[138]オルガノポリシロキサンA
[139]
【0126】
【表1】
【0127】
[140]下記式のI型ラジカル光開始剤B
B1
【0128】
【化20】
市販の化合物、CAS番号106797-53-9、同業者信用照会先=I2959。
【0129】
B2
【0130】
【化21】
CO-C19がネオデカン酸由来の基を表す本発明の化合物。
【0131】
B3
【0132】
【化22】
この化合物は、脱水剤の存在下での酢酸による化合物B1のエステル化により調製した。化合物B3は再結晶固体の形態である。
【0133】
[141]例1:光開始剤B2の合成、ならびにシリコーン組成物中での化合物B2およびB3の溶解度研究
[142]一口フラスコに1当量のB1、1当量のネオデカン酸、および生成物のmmol当たり1mLの濃硫酸を投入する。室温でアルゴン下で2時間撹拌させておく。次いで、120℃、アルゴン下で12時間反応させる。
【0134】
[143]反応が完了したら、反応媒体の容積の10倍を水に添加し、混合物をn-ヘキサンで3回抽出する。次いで、有機相を合わせ、炭酸ナトリウムで中和し、乾燥してエバポレーションする。次いで、得られた粗生成物を90/10のシクロヘキサン/酢酸エチル溶離液を用いてシリカゲルで精製し、生成物B2を得る。
【0135】
[144]化合物B2について赤外線およびNMRにより特性を調べた。結果を以下の表2に示す。
[145]
[146]
【0136】
【表2】
[147]シリコーン組成物中の化合物B2およびB3の溶解度もまた試験した。結果を以下の表3に示す。
【0137】
[148]
【0138】
【表3】
[149]これらの結果は、本発明の光開始剤がシリコーン組成物に可溶性であることを示す。
【0139】
[150]例2:UV水銀ランプ下でのアクリル系シリコーンのアクリル官能基の重合のモニタリング
[151]以下のように調製を行った。光開始剤の重さを量り、オルガノポリシロキサンA1に投入し、均一な生成物が得られるまで(約30分)全体を撹拌した。混合物を2gのオルガノポリシロキサンA1をベースとして作製した。データは重量%で表される。組成を以下の表3に示す。
【0140】
[152]次いで、結果として得られた調製物を、365nmで反射器を備えた水銀キセノンランプにより紫外線照射により硬化させた。UVランプの出力は510mW.cm-2に設定した。
【0141】
[153]空気条件下で、または酸素による反応種のあらゆる阻害を防ぐために積層条件下で操作を行った。「積層」条件で操作を行う場合は、配合物を2枚のポリプロピレンのシートの間、次いで2枚のCaF2ディスクの間に置く。
【0142】
[154]リアルタイムフーリエ変換赤外線(RT-FTIR、Brucker Optik製Vertex 70)を用いて重合反応速度論をモニタリングする。この分光技術は、アクリル官能基のC=C結合のバンド特性である1636cm-1におけるIRスペクトルの変化をたどるために試料を同時に光および赤外線に曝露することからなる。
【0143】
[155]重合中のC=CからC-Cへの変換率は、以下の方程式、変換率(%)=(A0-At)/A0×100(式中、A0は照射前のピーク下の面積であり、Atは照射中のそれぞれの時間tにおけるピーク下の面積である)に従って計算された1636cm-1におけるピーク下の面積の減少に直接関連する。
【0144】
[156]時間のプロットは、最終変換率だけでなく、他の重要なパラメーター、例えば最大変換速度((Rp/[M]0)×100)にも近づくことを可能にする。後者は変曲点での変換率(%)=f(t)曲線の傾きにより決定される。
【0145】
[157]結果を以下の表4に示す。
[158]
【0146】
【表4】
[159]これらの結果は、本発明のI型光開始剤が、市販の光開始剤より変換および反応速度論の観点でより効率的であることを示す。
【0147】
[160]例3:ノンスティック用途のための薄い層の適用におけるシリコーンのアクリル官能基の重合をモニタリングすることによるI型光開始剤の有効性の評価
[161]以下の例では、本発明のシリコーン組成物をフレキシブル基材にコーティングし、次いで、放射線に曝露することにより硬化させた。その結果得られた基材の剥離性能を評価した。この目的のために、以下のように配合物を調製した。70重量部のオルガノポリシロキサンA2および30重量部のオルガノポリシロキサンA3を含む100重量部の混合物を調製する。次いで、この混合物に6.6mmolの光開始剤B1、B2、またはB3を添加する(約1.5重量部の光開始剤B1、2.5重量部の光開始剤B2、および1.8重量部の光開始剤B3にそれぞれ対応する)。光開始剤を完全に可溶化した後、様々な例において記載された条件下で組成物を様々な基材にメイヤーロッドを用いてコーティングする。
【0148】
[162]シリコーン剥離コーティングによりコーティングされた基材について行った試験
[163]堆積:ケイ素のX線蛍光分析による、表面にコーティングされたシリコーン堆積物の検証(Oxford製Lab-X 3000)。X線管がケイ素原子の電子殻を励起し、励起ケイ素の量に比例したX線の放射を引き起こす。この値またはカウント数は(標準曲線を用いた)計算によりシリコーンの量に変換される。
【0149】
[164]汚染:以下からなる指汚染法による表面重合の定性的検証。
検査するシリコーンコーティングされた基材の試料を平らで硬い表面に置き、
適度ではあるがしっかりと押し付けながら指先で線を引き、かつ
好ましくは斜光で、結果として作製された線を目で観察する。表面の光沢の差により、ほんのわずかであっても結果として指の跡の存在を確認することができる。評価は定性的である。「汚染」は以下の表記、即ち最も良い結果から最も悪い結果のA~Dの評点により定量化される。
A:非常に良い、指により線が残らない
B:少し良い、ほとんど見えない線
C:鮮明な線
D:非常に鮮明な線および表面の油様外観、生成物はほとんど重合されていない
【0150】
[165]擦り落ち:以下からなる指で前後に擦ることによる、フレキシブル基材に付着するシリコーンの能力の検証。
【0151】
検査するシリコーンコーティングされた基材の試料を、シリコーンを上側にして平らで硬い表面に置き、
適度ではあるがしっかりと押し付けながら指先で前後に10回(約10cmの長さにわたって)擦り、
擦った領域の外観を視覚的に観察する。擦り落ちは、細かい白色粉末または指の下で回転する小さい球の外観に相当する。
【0152】
評価は定性的である。擦り落ちは以下の表記により定量化される。
10:非常に良い、10回前後に擦った後に擦り落ちがない
1:非常に悪い、最初に擦った際に擦り落ちがある
スコアは擦り落ちが生じた前後に擦った数(1~10)に相当し、即ち最も劣る結果から最も良い結果の1~10のスコアである。
【0153】
[166]ディウェッティング:標準化表面張力試験インクを用いてコーティングと接触する粘着剤へのシリコーンの移動を評価することによる、シリコーン層の重合度の評価。方法は以下のとおりである。
【0154】
巻き戻し方向(機械方向)に採取された、特性を調べるシリコーンコーティング紙の約20×5cmの試料を選び、
粘着テープを約15cmの長さに切断し、次いで、シワのない検査する紙上に粘着剤側を下にして置き、粘着テープ(3M「Scotch」テープ、参照番号610、幅25mm)の長さに沿って指を滑らせることにより10回圧力をかけ、
粘着テープを取り除いて粘着剤側を上にして平面に置き、
(使い捨て可能な)綿棒を用い、テープの粘着剤部分に約10cmの長さまで広がる一筋のインクを置き(SHERMANまたはFERARINIおよびBENELIの銘柄のインクで約30dyn/cmの表面張力および2~4mPa/sの粘度)、すぐにタイマーを開始し、
一筋のインクがその外観を変化させたら、ディウェッティング現象のフェーズに入ることが起こったと考え、次いで、タイマーを停止し、
テープの粘着剤部分へのインクの塗布は、シリコーンでのコーティング後、2分以内に行う必要があり、
得られた結果が10秒未満の場合、シリコーンの粘着剤への移行が起こっており、重合が完全ではないと考え、
ディウェッティング現象が観察される前の秒の経過時間に応じて0~10のスコアが得られ、
得られた結果が10秒の場合、重合が完全であると考え、この場合、10のスコアが得られ、結果が非常に良いことを意味し、
得られたスコアおよび用いたインク(名称、銘柄、表面張力、粘度)を書き留める。
【0155】
[167]抽出物:重合中に形成されたネットワークにグラフトされていないシリコーンの量の測定。これらのシリコーンは、機械から離れてすぐに試料をMIBK(メチルイソブチルケトン)に最低24時間浸漬することによりフィルムから抽出される。これはフレーム原子吸光分析により測定される。
【0156】
[168]糊を必要としない多層製品の調製
[169]多層製品を形成するため、TESA 7475標準粘着剤基材(基材=PET-粘着剤=アクリル)を上記で製造したシリコーンライナー(=UV硬化により得られたシリコーンコーティングでコーティングされた基材)に積層する。エージング前後の剥離力、ならびに残留接着率(subsequent adhesion)およびループタック値を決定するために引張試験を行う。これらの試験を以下に記載する。
【0157】
[170]得られた多層製品について行った試験
[171]残留接着率(または「SubAd」):当業者に知られているFINAT 11(FTM 11)試験に従って、シリコーンコーティングと接触した粘着剤(TESA 7475)の残存タックを検証する測定。ここでは参照の試験片はPETであり、粘着剤は試験するシリコーン表面と1日70℃で接触したままであった。
【0158】
結果を、参照テープの残存粘着力%、CA=(Fm2/Fm1)×100(%)(式中、
Fm2=20時間のシリコーン基材との接触後の平均テープ剥離力、
Fm1=シリコーン基材との接触のない平均テープ剥離力)
で表す。90%を超える粘着力が望ましい。
【0159】
[172]剥離力:TESA 7475標準粘着剤で剥離力測定を行う。多層製品の試験片(シリコーン表面と接触する粘着剤)をFINAT 10試験に従って必要な圧力条件下で1日23℃、および1日70℃で保ち、次いで、当業者に知られているFINAT 3試験(FTM 3)に従って遅い剥離速度で試験した。
【0160】
[173]剥離力はcN/インチで表され、室温(23℃)または加速エージング試験のためのより高温(通常70℃)のいずれかでの試料の加圧後に動力計を用いて測定される。
[174]試験した配合物および試験結果を以下の表5に示す。
【0161】
[175]
【0162】
【表5】
[176]本発明のI型光開始剤の汚染、擦り落ち、およびディウェッティングの結果は、アクリル系シリコーン配合物の良好な重合を示す。この良好な重合はまた、低いレベルの抽出物に反映される。得られたフィルムは予想されたノンスティック特性を有する。特に、残留接着率は比較例のものよりも良好である。
【0163】
[177]したがって、本発明のI型光開始剤は、剥離システムを製造するために用いることができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサンAと、
b.式(I)
【化1】
(式中、
およびRは、互いに独立して、C~Cアルキル基およびC~Cシクロアルキル基から選択され、またはRおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になってC~Cシクロアルキル基を形成し、
は、HまたはC~Cアルキル基であり、好ましくはRはHであり、
は、
【化2】
基であり、
それぞれのR基は、独立して、C~Cアルキル基を表し、
n=0、1、2、3、または4であり、好ましくはn=0、1、または2であり、
は、C~Cアルキレン基またはC~Cヘテロアルキレン基であり、
10は、直鎖または分岐のC~C18アルキル基であり、好ましくは直鎖または分岐のC~C17アルキル基であり、より好ましくは直鎖または分岐のC~C13アルキル基であり、更により好ましくは直鎖または分岐のCアルキル基である)
の化合物である、少なくとも1種のラジカル光開始剤Bと
を含む、放射線硬化性シリコーン組成物X。
【請求項2】
前記式(I)の化合物が式(II)
【化3】
(式中、R、R、R、およびRは、請求項1に規定されたとおりである)
の化合物である、請求項1に記載のシリコーン組成物X。
【請求項3】
前記式(I)の化合物が式(III)
【化4】
(式中、R10は、請求項1に規定されたとおりである)
の化合物である、請求項1に記載のシリコーン組成物X。
【請求項4】
前記オルガノポリシロキサンAが
a)下記式(IV
SiO(4-a-b)/2IV
(式中、
前記R符号は、同一かまたは異なっており、それぞれが、直鎖もしくは分岐のC~C18アルキル基、好ましくはハロゲン原子により、置換されてよいC~C12アリール基もしくはアラルキル基、または-OR基(式中、Rは水素原子もしくは1~10個の炭素原子を含む炭化水素基である)を表し、
前記Z符号は、式-y-(Y’)nの一価の基であり、
yは、多価のC~C18アルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し、前記アルキレン基およびヘテロアルキレン基は、直鎖または分岐であることができ、1つ以上のシクロアルキレン基に割り込まれてよく、C~Cで二価のオキシアルキレン基またはポリオキシアルキレン基により伸長されてもよく、前記アルキレン基、ヘテロアルキレン基、オキシアルキレン基、およびポリオキシアルキレン基は、1つ以上のヒドロキシ基で置換されてよく、
Y’は、一価のアルケニルカルボニルオキシ基を表し、
nは、1、2、または3に相当し、
aは、0、1、または2に相当する整数であり、bは、1または2に相当する整数であり、かつ合計a+b=1、2、または3である)
の少なくとも1つの単位、ならびに
b)任意に、下記式(
SiO(4-a)/2
(式中、
前記R符号は、式(IV)において上記で規定されたとおりであり、
aは、0、1、2、または3に相当する整数である)
を有する単位
を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載のシリコーン組成物X。
【請求項5】
基材上で剥離コーティングとして用いることのできるシリコーンエラストマーの調製のための、請求項1から4のいずれか1項に記載のシリコーン組成物Xの使用。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載のシリコーン組成物Xを硬化させることにより得られるシリコーンエラストマー。
【請求項7】
基材上にコーティングを調製する方法であって、
請求項1から4のいずれか1項に記載のシリコーン組成物Xを塗布する工程と、
電子線照射または光子照射により、好ましくは、電子ビームへの曝露、γ線への曝露、または200nmから450nmの間の波長を有する放射線、特に紫外線への曝露により、前記組成物を硬化させる工程と
を含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法により得られるコーティングされた基材。
【請求項9】
アディティブマニュファクチャリングプロセスによるシリコーンエラストマー製品の調製のための、請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物Xの使用。
【請求項10】
式(I)
【化5】
(式中、
およびRは、互いに独立して、C~Cアルキル基およびC~Cシクロアルキル基から選択され、またはRおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になってC~Cシクロアルキル基を形成し、
は、HまたはC~Cアルキル基であり、好ましくはRはHであり、
は、
【化6】
基であり、
それぞれのR基は、独立して、C~Cアルキル基を表し、
n=0、1、2、3、または4であり、好ましくはn=0、1、または2であり、
は、C~Cアルキレン基またはC~Cヘテロアルキレン基であり、
10は、直鎖または分岐のC~C18アルキル基であり、好ましくは直鎖または分岐のC~C13アルキル基であり、より好ましくは直鎖または分岐のCアルキル基である)
の化合物。
【請求項11】
下記式(II)
【化7】
(式中、R、R、R、およびRは、請求項10に規定されたとおりである)
であることを特徴とする、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
下記式(III)
【化8】
(式中、R10は、請求項10に規定されたとおりである)
の化合物であることを特徴とする、請求項10または11に記載の化合物。
【請求項13】
ラジカル光開始剤としての、特に、少なくとも1種の放射線硬化性不飽和化合物Dを含む放射線硬化性組成物Yにおけるラジカル光開始剤としての、請求項10から12のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項14】
前記放射線硬化性不飽和化合物Dが、1つ以上の二重結合、ならびに任意に、N、P、O、S、およびFから選択される1つ以上のヘテロ原子を含む炭化水素化合物である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記放射線硬化性不飽和化合物Dが1つ以上の二重結合を含むオルガノポリシロキサンである、請求項13に記載の使用。
【請求項16】
少なくとも1種の放射線硬化性不飽和化合物Dを含む放射線硬化性組成物Yにおけるラジカル光開始剤としての、式(I)
【化9】
(式中、
およびRは、互いに独立して、C~Cアルキル基およびC~Cシクロアルキル基から選択され、またはRおよびRは、それらが結合する炭素原子と一緒になってC~Cシクロアルキル基を形成し、
は、HまたはC~Cアルキル基であり、好ましくはRはHであり、
は、
【化10】
基であり、
それぞれのR基は、独立して、C~Cアルキル基を表し、
n=0、1、2、3、または4であり、好ましくはn=0、1、または2であり、
は、C~Cアルキレン基またはC~Cヘテロアルキレン基であり、
10は、直鎖または分岐のC~C18アルキル基であり、好ましくは直鎖または分岐のC~C17アルキル基であり、より好ましくは直鎖または分岐のC~C13アルキル基であり、更により好ましくは直鎖または分岐のCアルキル基である)
の化合物の使用であって、
前記不飽和化合物Dが1つ以上の二重結合を含むオルガノポリシロキサン、好ましくは少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含むオルガノポリシロキサンである、使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0163
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0163】
[177]したがって、本発明のI型光開始剤は、剥離システムを製造するために用いることができる。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[1]
a.少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含む少なくとも1種のオルガノポリシロキサンAと、
b.式(I)
【化23】
(式中、
およびR は、互いに独立して、C ~C アルキル基およびC ~C シクロアルキル基から選択され、またはR およびR は、それらが結合する炭素原子と一緒になってC ~C シクロアルキル基を形成し、
は、HまたはC ~C アルキル基であり、好ましくはR はHであり、
は、
【化24】
基であり、
それぞれのR 基は、独立して、C ~C アルキル基を表し、
n=0、1、2、3、または4であり、好ましくはn=0、1、または2であり、
は、C ~C アルキレン基またはC ~C ヘテロアルキレン基であり、
10 は、直鎖または分岐のC ~C 18 アルキル基であり、好ましくは直鎖または分岐のC ~C 17 アルキル基であり、より好ましくは直鎖または分岐のC ~C 13 アルキル基であり、更により好ましくは直鎖または分岐のC アルキル基である)
の化合物である、少なくとも1種のラジカル光開始剤Bと
を含む、放射線硬化性シリコーン組成物X。
[2]
前記式(I)の化合物が式(II)
【化25】
(式中、R 、R 、R 、およびR は、[1]に規定されたとおりである)
の化合物である、[1]に記載のシリコーン組成物X。
[3]
前記式(I)の化合物が式(III)
[Chem.17]
【化26】
(式中、R 10 は、[1]に規定されたとおりである)
の化合物である、[1]に記載のシリコーン組成物X。
[4]
前記オルガノポリシロキサンAが
a)下記式(I)
SiO (4-a-b)/2 (I)
(式中、
前記R符号は、同一かまたは異なっており、それぞれが、直鎖もしくは分岐のC ~C 18 アルキル基、好ましくはハロゲン原子により、置換されてよいC ~C 12 アリール基もしくはアラルキル基、または-OR 基(式中、R は水素原子もしくは1~10個の炭素原子を含む炭化水素基である)を表し、
前記Z符号は、式-y-(Y’)nの一価の基であり、
yは、多価のC ~C 18 アルキレン基またはヘテロアルキレン基を表し、前記アルキレン基およびヘテロアルキレン基は、直鎖または分岐であることができ、1つ以上のシクロアルキレン基に割り込まれてよく、C ~C で二価のオキシアルキレン基またはポリオキシアルキレン基により伸長されてもよく、前記アルキレン基、ヘテロアルキレン基、オキシアルキレン基、およびポリオキシアルキレン基は、1つ以上のヒドロキシ基で置換されてよく、
Y’は、一価のアルケニルカルボニルオキシ基を表し、
nは、1、2、または3に相当し、
aは、0、1、または2に相当する整数であり、bは、1または2に相当する整数であり、かつ合計a+b=1、2、または3である)
の少なくとも1つの単位、ならびに
b)任意に、下記式(II)
SiO (4-a)/2 (II)
(式中、
前記R符号は、式(I)において上記で規定されたとおりであり、
aは、0、1、2、または3に相当する整数である)
を有する単位
を含む、[1]から[3]のいずれか1項に記載のシリコーン組成物X。
[5]
基材上で剥離コーティングとして用いることのできるシリコーンエラストマーの調製のための、[1]から[4]のいずれか1項に記載のシリコーン組成物Xの使用。
[6]
[1]から[4]のいずれか1項に記載のシリコーン組成物Xを硬化させることにより得られるシリコーンエラストマー。
[7]
基材上にコーティングを調製する方法であって、
[1]から[4]のいずれか1項に記載のシリコーン組成物Xを塗布する工程と、
電子線照射または光子照射により、好ましくは、電子ビームへの曝露、γ線への曝露、または200nmから450nmの間の波長を有する放射線、特に紫外線への曝露により、前記組成物を硬化させる工程と
を含む、方法。
[8]
[7]に記載の方法により得られるコーティングされた基材。
[9]
アディティブマニュファクチャリングプロセスによるシリコーンエラストマー製品の調製のための、[1]から[4]のいずれか1項に記載の組成物Xの使用。
[10]
式(I)
【化27】
(式中、
およびR は、互いに独立して、C ~C アルキル基およびC ~C シクロアルキル基から選択され、またはR およびR は、それらが結合する炭素原子と一緒になってC ~C シクロアルキル基を形成し、
は、HまたはC ~C アルキル基であり、好ましくはR はHであり、
は、
【化28】
基であり、
それぞれのR 基は、独立して、C ~C アルキル基を表し、
n=0、1、2、3、または4であり、好ましくはn=0、1、または2であり、
は、C ~C アルキレン基またはC ~C ヘテロアルキレン基であり、
10 は、直鎖または分岐のC ~C 18 アルキル基であり、好ましくは直鎖または分岐のC ~C 13 アルキル基であり、より好ましくは直鎖または分岐のC アルキル基である)
の化合物。
[11]
下記式(II)
【化29】
(式中、R 、R 、R 、およびR は、[10]に規定されたとおりである)
であることを特徴とする、[10]に記載の化合物。
[12]
下記式(III)
【化30】
(式中、R 10 は、[10]に規定されたとおりである)
の化合物であることを特徴とする、[10]または[11]に記載の化合物。
[13]
ラジカル光開始剤としての、特に、少なくとも1種の放射線硬化性不飽和化合物Dを含む放射線硬化性組成物Yにおけるラジカル光開始剤としての、[10]から[12]のいずれか1項に記載の化合物の使用。
[14]
前記放射線硬化性不飽和化合物Dが、1つ以上の二重結合、ならびに任意に、N、P、O、S、およびFから選択される1つ以上のヘテロ原子を含む炭化水素化合物である、[13]に記載の使用。
[15]
前記放射線硬化性不飽和化合物Dが1つ以上の二重結合を含むオルガノポリシロキサンである、[13]に記載の使用。
[16]
少なくとも1種の放射線硬化性不飽和化合物Dを含む放射線硬化性組成物Yにおけるラジカル光開始剤としての、式(I)
【化31】
(式中、
およびR は、互いに独立して、C ~C アルキル基およびC ~C シクロアルキル基から選択され、またはR およびR は、それらが結合する炭素原子と一緒になってC ~C シクロアルキル基を形成し、
は、HまたはC ~C アルキル基であり、好ましくはR はHであり、
は、
【化32】
基であり、
それぞれのR 基は、独立して、C ~C アルキル基を表し、
n=0、1、2、3、または4であり、好ましくはn=0、1、または2であり、
は、C ~C アルキレン基またはC ~C ヘテロアルキレン基であり、
10 は、直鎖または分岐のC ~C 18 アルキル基であり、好ましくは直鎖または分岐のC ~C 17 アルキル基であり、より好ましくは直鎖または分岐のC ~C 13 アルキル基であり、更により好ましくは直鎖または分岐のC アルキル基である)
の化合物の使用であって、
前記不飽和化合物Dが1つ以上の二重結合を含むオルガノポリシロキサン、好ましくは少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含むオルガノポリシロキサンである、使用。
【国際調査報告】