IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アガダ メディカル リミテッドの特許一覧

特表2024-511740患者固有の生体力学的パラメータを用いた脊椎手術の計画
<>
  • 特表-患者固有の生体力学的パラメータを用いた脊椎手術の計画 図1
  • 特表-患者固有の生体力学的パラメータを用いた脊椎手術の計画 図2
  • 特表-患者固有の生体力学的パラメータを用いた脊椎手術の計画 図3
  • 特表-患者固有の生体力学的パラメータを用いた脊椎手術の計画 図4
  • 特表-患者固有の生体力学的パラメータを用いた脊椎手術の計画 図5A
  • 特表-患者固有の生体力学的パラメータを用いた脊椎手術の計画 図5B
  • 特表-患者固有の生体力学的パラメータを用いた脊椎手術の計画 図6A
  • 特表-患者固有の生体力学的パラメータを用いた脊椎手術の計画 図6B
  • 特表-患者固有の生体力学的パラメータを用いた脊椎手術の計画 図7
  • 特表-患者固有の生体力学的パラメータを用いた脊椎手術の計画 図8
  • 特表-患者固有の生体力学的パラメータを用いた脊椎手術の計画 図9
  • 特表-患者固有の生体力学的パラメータを用いた脊椎手術の計画 図10
  • 特表-患者固有の生体力学的パラメータを用いた脊椎手術の計画 図11
  • 特表-患者固有の生体力学的パラメータを用いた脊椎手術の計画 図12
  • 特表-患者固有の生体力学的パラメータを用いた脊椎手術の計画 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】患者固有の生体力学的パラメータを用いた脊椎手術の計画
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/10 20160101AFI20240308BHJP
   A61B 6/46 20240101ALI20240308BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20240308BHJP
   A61B 17/70 20060101ALI20240308BHJP
   A61F 2/44 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
A61B34/10
A61B6/46 536Z
A61B5/055 380
A61B17/70
A61F2/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555447
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-08
(86)【国際出願番号】 US2022019299
(87)【国際公開番号】W WO2022192222
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】63/158,134
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523343754
【氏名又は名称】アガダ メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】シャノン サムエル
(72)【発明者】
【氏名】ダガン アディ
(72)【発明者】
【氏名】ブランク ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】デヴィッド オル メイヤー
(72)【発明者】
【氏名】マー ダモン ユージーン
(72)【発明者】
【氏名】リーバーマン イサドール
【テーマコード(参考)】
4C093
4C096
4C097
4C160
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093FD03
4C093FF11
4C093FF35
4C093FF42
4C093FG13
4C093FG14
4C093FG16
4C096DC14
4C096DC36
4C096DC40
4C096DD13
4C096DD14
4C097AA10
4C097BB01
4C097CC01
4C160LL24
(57)【要約】
脊椎矯正術用の外科的ハードウェアの選択または設計によって潜在的な外科的介入を最適化することを目的とした対象の脊椎の生体力学的特性を評価するための方法およびシステムである。このシステムは、生理学的、生体力学的、および解剖学的要因を考慮することによって、外科手術の転帰を分析、予測、および改善するように構成された模擬動的分析を使用する。機械学習アルゴリズムでは、対象の脊椎に加わる力およびモーメントの演算された分布を使用し、対象の結果を基準集団の患者の結果と比較する。基準集団中の個人の生体力学的パラメータを分析するとともに、手術に成功した個人を手術に失敗した個人に対して識別し、それぞれの生体力学的パラメータを脊椎手術の評価対象個人と比較することによって、この方法では、手術の成功の機会の予測、最適な手術および/または最適なインプラント構成の推奨を行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計画された整形外科手術の成功を予測するための方法であり、コンピュータプロセッサにより実行される、方法であって、
前記コンピュータプロセッサにより、基準集団の少なくとも一部のメンバーそれぞれについて、術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの少なくとも一方と整形外科手術の転帰との間の少なくとも1つの相関を受信することと、
コンピュータプロセッサにより、整形外科の評価対象の術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を使用して、前記対象の仮想生体力学的モデルを生成し、前記評価対象の生成仮想生体力学的モデルを用意することと、
前記コンピュータプロセッサにより、前記対象の前記生成仮想生体力学的モデルから、術前生体力学的パラメータおよび術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を導出し、導出術前生体力学的パラメータおよび導出術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を用意することと、
前記コンピュータプロセッサにより、前記少なくとも1つの相関を前記対象の前記導出術前生体力学的パラメータおよび前記導出術後生体力学的パラメータの少なくとも一方に適用し、所定のレーティングに従って、前記計画された整形外科手術の予測転帰を等級分けすることと、
を含み、
前記少なくとも1つの相関を前記対象の前記導出術前生体力学的パラメータおよび前記導出術後生体力学的パラメータの少なくとも一方に適用することが、前記所定のレーティングに従って前記計画された整形外科手術の予測転帰を等級分けすることを可能にし、
前記計画された整形外科手術の前記予測転帰の前記等級分けが、前記計画された整形外科手術の実行または非実行に関する健康管理者による適当な決定を可能にし、前記対象の整形外科の成功の機会の最適化および/または整形外科の失敗のリスクの低減を図る、方法。
【請求項2】
前記コンピュータプロセッサにより、基準集団の少なくとも一部のメンバーそれぞれについて、術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの前記少なくとも一方と前記整形外科手術の前記転帰との間の前記少なくとも1つの相関を受信することに先立って、前記コンピュータプロセッサにより、前記基準集団の整形外科手術を受けたメンバーの術後撮像データおよび術前撮像データの少なくとも一方ならびに/または術後人体測定データおよび術前人体測定データの少なくとも一方を分析し、術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの前記少なくとも一方を導出することと、
前記コンピュータプロセッサにより、所定のレーティングに従って、前記整形外科手術の転帰を等級分けすることと、
前記コンピュータプロセッサにより、前記基準集団の別のメンバーに対して、術後撮像データおよび術前撮像データの前記少なくとも一方ならびに/または術後人体測定データおよび術前人体測定データの前記少なくとも一方の前記分析と、前記整形外科手術の前記転帰の前記等級分けと、を繰り返すことと、
前記コンピュータプロセッサにより、前記基準集団のメンバーのうちの前記少なくとも一部のそれぞれについて、術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの前記少なくとも一方と前記整形外科手術の前記転帰との間の前記少なくとも1つの相関を決定することと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記整形外科手術が、人工椎間板置換、脊椎固定、椎弓切除、脊椎変形矯正、および脊椎除圧を含む一組の考え得る外科的介入のうちの1つを含み、前記整形外科手術が、ハードウェアインプラントの挿入を含んでいてもよい、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記所定のレーティングが、成功/失敗の分類、初期カテゴリおよび最終カテゴリとして成功および失敗を有する少なくとも3つの段階的カテゴリの分類、線形回帰分析を使用して決定される連続スケール、またはこれらの任意の組み合わせのうちの1つを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記術前生体力学的パラメータおよび前記術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を導出することが、少なくともいくつかの脊椎分節の力、モーメント、可動域、応力分析、靭帯強度、および椎骨強度のうちの1つまたは複数を分析することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記術前生体力学的パラメータおよび前記術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を導出することが、少なくとも1つの椎骨、少なくとも1つの椎間板、少なくとも1つの靭帯、または少なくとも1つの筋肉のうちの少なくとも1つの劣化の程度を決定することを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記術前生体力学的パラメータおよび前記術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を導出することが、
前記対象の脊椎を分節化することと、
前記分節化脊椎の逆運動学および有限要素解析の少なくとも一方を適用することと、
を含み、
前記導出生体力学的パラメータが、安静時および運動時の前記対象の前記脊椎の仮想モデルを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記コンピュータプロセッサにより、前記基準集団の別のメンバーに対して、前記術前生体力学的パラメータおよび前記術後生体力学的パラメータの前記少なくとも一方の前記導出と、前記整形外科手術の前記転帰の前記等級分けと、を繰り返すことが、前記少なくとも1つの相関が所定の閾値よりも高い所定のレベルに達するまでである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記基準集団が、整形外科手術の評価対象に類似する臨床状態について経時的に評価されたメンバーを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記整形外科手術の成功が、患者報告の転帰の尺度、放射線撮像の結果、機能転帰の尺度、またはこれらの任意の組み合わせのうちの1つにより決定される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記基準集団のメンバーが、実行された特定の整形外科手術に従って部分集合にグループ化される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの相関を前記評価対象の前記導出術前生体力学的パラメータおよび前記導出術後生体力学的パラメータの前記少なくとも一方に適用することが、対象の現在の臨床整形外科病理の評価と、整形外科手術を行わない場合の疾患進行の予測と、に用いられる、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記基準集団の少なくとも一部のメンバーの術前生体力学的パラメータを導出することが、整形外科的疾患進行を観察するため、前記整形外科手術に先立って複数回繰り返される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
機械学習アルゴリズムを使用して、前記コンピュータプロセッサにより実行される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記計画された整形外科手術の前記予測転帰の前記等級分けが、現在利用可能な整形外科手術およびインプラントからの健康管理者による少なくとも1つの整形外科手術の選択を可能にする、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記整形外科手術の前記評価対象に対して、少なくとも1つのインプラントをカスタマイズすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのインプラントが、人工椎間板、または、椎弓根スクリュー、脊椎ロッド、および椎体間スペーサのうちの1つまたは複数を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記整形外科手術が、人工椎間板置換、脊椎固定、椎弓切除、脊椎除圧、ならびに前記対象の前記脊椎の解剖学的欠陥もしくは生理学的欠陥を矯正する手術から成る群から選択される、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記導出術前撮像データおよび前記導出術後撮像データの前記少なくとも一方が、医用デジタル撮像・通信(DICOM)フォーマットの3次元CT、3次元MRI画像、X線画像、またはこれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記所定のレーティングが、前記導出生体力学的パラメータのうちの1つまたは複数の加重和を有する複合スコアに基づく、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記導出生体力学的パラメータのうちの前記1つまたは複数がそれぞれ、成功転帰または失敗転帰の少なくとも一方と相関された値の範囲を有する、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記成功転帰が、前記基準集団のメンバーの部分集合に実行された特定の整形外科手術を表す、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記人体測定データが、体格指数、体重、身長、ならびに胴体および四肢の寸法の定量的測定結果のうちの1つまたは複数を含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記コンピュータプロセッサにより、術前生体力学的パラメータおよび術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を導出することが、前記コンピュータプロセッサにより、前記計画された整形外科手術を模擬し、前記対象の前記生成仮想生体力学的モデルを使用して前記対象の前記術後生体力学的パラメータを予測することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
脊椎外科手術の成功を予測するための方法であり、コンピュータプロセッサにより実行される、方法であって、
前記コンピュータプロセッサにより、それぞれが脊椎外科手術を受けた基準集団のメンバーからの術前人体測定データおよび術後人体測定データの少なくとも一方ならびに/または術前撮像データおよび術後撮像データの少なくとも一方から導出された生体力学的パラメータを分析することと、
前記コンピュータプロセッサにより、計画された脊椎外科手術の評価対象の術前撮像データ、模擬術後生体力学的データ、および人体測定データのうちの少なくとも1つから導出された生体力学的パラメータを分析することと、
前記コンピュータプロセッサにより、アルゴリズムのトレーニングに用いられる基準集団の少なくとも一部のメンバーの生体力学的パラメータを使用して、前記計画された脊椎外科手術の少なくとも1つの転帰を予測することにより成功の可能性を決定することと、
前記コンピュータプロセッサにより、計画された脊椎外科手術の評価対象の術前撮像データ、模擬術後生体力学的データ、および人体測定データのうちの少なくとも1つから導出された前記生体力学的パラメータに前記トレーニング済みアルゴリズムを適用することと、
を含み、
前記コンピュータプロセッサにより、前記トレーニング済みアルゴリズムを前記対象の前記生体力学的パラメータに適用することが、a)前記脊椎外科手術の相対的成功の予測またはb)別の計画された脊椎外科手術の選択の少なくとも一方を可能にする、方法。
【請求項26】
前記脊椎外科手術が、人工椎間板置換、脊椎固定、椎弓切除、および脊椎除圧等の一組の考え得る外科的介入のうちの1つを含み、前記脊椎外科手術が、ハードウェアインプラントの挿入を含んでいてもよい、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記アルゴリズムをトレーニングすることが、成功/失敗、初期カテゴリおよび最終カテゴリとして成功および失敗を有する少なくとも3つの段階的カテゴリ、または、たとえば線形回帰分析により決定される連続スケールのうちの1つを使用して分類することを含む、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記生体力学的パラメータが、少なくともいくつかの脊椎分節の力、モーメント、可動域、応力分析、靭帯強度、および椎骨強度のうちの1つまたは複数を含む、請求項25~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記生体力学的パラメータを分析することが、前記脊椎を分節化することと、前記分節化脊椎の筋骨格モデリング、逆運動学、および有限要素解析のうちの少なくとも1つを適用することと、を含み、前記分析生体力学的パラメータが、安静時および運動時の前記対象の前記脊椎の仮想モデルを含む、請求項25~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記基準集団が、脊椎外科手術の評価対象に類似する臨床状態について経時的に評価されたメンバーを含む、請求項25~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記脊椎外科手術の相対的成功の予測が、患者報告の転帰の尺度、放射線撮像の結果、および機能転帰の尺度のうちの少なくとも1つにより決定される、請求項25~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記基準集団のメンバーが、診断グループまたは実行された特定の脊椎外科手術の一方に従って部分集合にグループ化される、請求項25~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記トレーニング済みアルゴリズムを前記評価対象の前記分析生体力学的パラメータに適用することが、対象の現在の臨床脊椎病理の評価と、脊椎外科手術を行わない場合の疾患進行の予測と、に用いられる、請求項25~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記トレーニング済みアルゴリズムが、機械学習アルゴリズムを含む人工知能の形態を使用してトレーニングされる、請求項25~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
現在利用可能な脊椎外科手術およびインプラントから、脊椎外科手術および少なくとも1つのインプラントを選択することをさらに含む、請求項25~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
脊椎外科手術の前記評価対象の前記脊椎に対して、少なくとも1つのインプラントをカスタマイズすることをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも1つのインプラントが、人工椎間板、または、椎弓根スクリュー、脊椎ロッド、および椎体間スペーサのうちの1つまたは複数を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記術前撮像データおよび前記術後撮像データが、医用デジタル撮像・通信(DICOM)フォーマットのX線、2次元もしくは3次元CT、またはMRI画像のうちの少なくとも1つを含む、請求項25~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記トレーニング済みアルゴリズムが、成功転帰と相関された前記分析生体力学的パラメータのうちの1つまたは複数の加重和を有する複合スコアに基づく、請求項25~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記複合スコアが、前記分析生体力学的パラメータのうちの1つまたは複数の前記成功転帰と相関された値の範囲に基づく、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記成功転帰が、前記基準集団のメンバーの部分集合に対して実行された特定の脊椎外科手術を表す、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
前記トレーニング済みアルゴリズムが、前記基準集団のランダム部分集合を使用して検証される、請求項25~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
対象に対して脊椎外科手術を計画するシステムであって、
少なくとも1つの非一過性記憶媒体に格納された命令を実行するように構成された少なくとも1つのコンピュータプロセッサであり、前記命令が、
対象の術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を適用することと、
脊椎外科手術を必要とする脊椎の少なくとも1つの領域を含む前記対象の前記脊椎の生体力学的特性を分析することと、
前記対象の前記脊椎に対して前記脊椎外科手術を仮想的に実行した後、前記生体力学的特性の前記分析を繰り返すことと、
前記脊椎外科手術を仮想的に実行した後、前記分析生体力学的特性をアルゴリズムに入力して、前記脊椎外科手術の成功率を予測することと、
先行する脊椎外科手術のデータベースから、成功した過去手術および失敗した過去手術のレトロスペクティブ分析に基づいて、前記成功率が所定の基準を満たすかを判定することと、
を当該少なくとも1つのコンピュータプロセッサに行わせる、少なくとも1つのコンピュータプロセッサを備えた、システム。
【請求項44】
脊椎インストゥルメンテーション術を計画するシステムであって、
少なくとも1つの非一過性記憶媒体に格納された命令を実行するように構成された少なくとも1つのコンピュータプロセッサであり、前記命令が、
対象の術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方に対して、固定対象の脊椎の少なくとも1つの領域を含む前記対象の前記脊椎の生体力学的特性の分析を実行することと、
予め選択された一組の人工椎間板から、置換対象の椎間板の椎間腔に対して、潜在的な人工椎間板を仮想的に埋め込んだ後、前記生体力学的特性の前記分析を実行することを繰り返すことと、
過去に人工椎間板置換術を受けた基準集団の対象の脊椎の撮像データに対して前記生体力学的特性分析を実行することであり、前記対象の術前撮像データおよび術後撮像データの両者に対して前記分析を実行することと、
前記生体力学的特性の分析を手術成功カテゴリまたは手術失敗カテゴリと関連付けることと、
前記対象の前記脊椎の前記生体力学的特性の分析の実行ならびに前記対象の術前撮像データおよび術後撮像データの両者に対する前記分析の実行の出力を成功カテゴリまたは失敗カテゴリの一方に分類して、所与の人工椎間板置換術の成功率を予測することと、
置換対象の前記潜在的な人工椎間板について、予測成功率が所定の基準を満たすかを判定することと、
を当該少なくとも1つのコンピュータプロセッサに行わせる、少なくとも1つのコンピュータプロセッサを備えた、システム。
【請求項45】
対象の脊椎の生体力学的パラメータを矯正する個別脊椎インプラントの3次元特性を決定するための方法であり、コンピュータプロセッサにより実行される、方法であって、
前記コンピュータプロセッサにより、脊椎外科手術を必要とする前記対象の前記脊椎の生体力学的パラメータを含む仮想モデルを生成することと、
前記コンピュータプロセッサにより、仮想的に調整可能な3次元特性を有する一般的脊椎インプラントを前記仮想モデルに対して仮想的に埋め込むことで前記仮想モデルの前記生体力学的パラメータを変化させることにより、仮想的埋め込み脊椎インプラントを用意することと、
前記コンピュータプロセッサにより、前記脊椎の所望の生体力学的パラメータの実現を可能にする前記仮想的埋め込み脊椎インプラントの前記3次元特性を決定することと、
前記コンピュータプロセッサにより、前記脊椎インプラントの剛性および寸法の数理解析を実行することによって、前記脊椎インプラントの剛性係数、厚さ、および側方寸法を決定することと、
を含み、
前記数理解析が、前記対象の前記脊椎の前記所望の生体力学的パラメータとなる前記3次元特性を有する前記個別脊椎インプラントの構成を可能にする、方法。
【請求項46】
前記生体力学的パラメータが、前記脊椎の力、モーメント、可動域、応力分析、靭帯強度、および椎骨強度のうちの1つまたは複数を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記数理解析の前記実行が、逆運動学的解析および順運動学的解析、所定の脊椎荷重計算、および一組の術前医用画像を使用して、少なくとも1つの脊椎インプラントの剛性マトリクスを決定することを含む、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
前記特性が、少なくとも1つの脊椎インプラントの3次元剛性および寸法を含む、請求項45または46に記載の方法。
【請求項49】
計画された脊椎外科手術の成功を予測するための方法であり、コンピュータプロセッサにより実行される、方法であって、
a)脊椎外科手術を受けた基準集団のメンバーの術前撮像データ、術前人体測定データ、術後撮像データ、および術後人体測定データのうちの少なくとも1つから導出された生体力学的パラメータを分析することと、
b)所定のレーティングに従って、前記脊椎外科手術の前記成功を等級分けすることと、
c)前記基準集団の別のメンバーに対してステップa)およびb)を繰り返すことと、
d)前記基準集団の少なくとも一部のメンバーそれぞれについて、術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの少なくとも一方と前記脊椎外科手術の成功との間の少なくとも1つの相関を決定することと、
e)計画された脊椎外科手術の評価対象について、術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を分析し、前記対象の前記脊椎の仮想生体力学的モデルを生成することと、
f)前記対象の前記脊椎の前記生成仮想生体力学的モデルから、術前生体力学的パラメータおよび術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を導出し、導出術前生体力学的パラメータおよび導出術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を用意することと、
g)ステップd)において決定した前記少なくとも1つの相関を前記対象の前記導出術前生体力学的パラメータおよび前記導出術後生体力学的パラメータの少なくとも一方に適用し、前記所定のレーティングに従って、前記計画された脊椎外科手術の予測転帰を等級分けすることと、
を含み、
前記少なくとも1つの相関を前記導出術前生体力学的パラメータおよび前記導出術後生体力学的パラメータの少なくとも一方に適用することが、前記所定のレーティングに従って前記計画された脊椎外科手術の前記予測成功を等級分けすることを可能にし、
前記計画された脊椎外科手術の前記予測転帰の前記等級分けが、前記計画された脊椎外科手術の実行または非実行に関する健康管理者による適当な決定を可能にし、前記対象の整形外科の成功の機会の最適化および/または脊椎外科の失敗のリスクの低減を図る、方法。
【請求項50】
前記術前生体力学的パラメータおよび前記術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を導出することが、前記計画された脊椎外科手術を模擬し、前記生成仮想生体力学的モデルを使用して前記対象の前記術後生体力学的パラメータを予測することを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
計画された脊椎外科手術の成功を予測するための方法であって、
a)術前撮像データおよび術前人体測定データの少なくとも一方から、基準集団のメンバーの術前生体力学的パラメータを分析することと、
b)前記メンバーが脊椎外科手術を受けた後、術後撮像データおよび術後人体測定データの少なくとも一方から、術後生体力学的パラメータを分析することと、
c)所定のレーティングに従って、前記脊椎外科手術の前記成功を等級分けすることと、
d)前記基準集団の別のメンバーに対して、ステップa)~c)を繰り返すことと、
e)前記基準集団の少なくとも一部のメンバーそれぞれについて、前記術前生体力学的パラメータおよび前記術後生体力学的パラメータの少なくとも一方と前記脊椎外科手術の成功との間の少なくとも1つの相関を決定することと、
f)脊椎外科手術の評価対象の術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を分析し、前記対象の仮想生体力学的モデルを生成することと、
g)前記対象の前記生成仮想生体力学的モデルから、術前生体力学的パラメータおよび術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を導出し、導出術前生体力学的パラメータおよび導出術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を用意することと、
h)ステップe)において決定した前記少なくとも1つの相関を前記対象の前記導出術前生体力学的パラメータおよび前記導出術後生体力学的パラメータの少なくとも一方に適用し、前記所定のレーティングに従って、前記計画された脊椎外科手術の予測転帰を等級分けすることと、
を含む、方法。
【請求項52】
術前生体力学的パラメータおよび術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を導出することが、前記計画された脊椎外科手術を模擬することと、前記仮想生体力学的モデルを使用して、前記対象の術後生体力学的パラメータを予測することと、を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
計画された脊椎外科手術の成功を予測するための方法であり、コンピュータプロセッサにより実行される、方法であって、
前記コンピュータプロセッサにより、撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を使用して、脊椎手術を必要とする対象の仮想生体力学的モデルを生成することと、
前記コンピュータプロセッサにより、前記仮想生体力学的モデルを使用して、前記脊椎手術を必要とする前記対象の術前生体力学的パラメータおよび術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を導出することと、
前記コンピュータプロセッサにより、(i)術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの少なくとも一方、(ii)先行する脊椎外科手術の既知の転帰、ならびに(iii)ある脊椎状態を有していた複数人の過去の患者の脊椎を含む骨、靭帯、および筋肉のうちの1つまたは複数の既存の基準データ間の少なくとも1つの所定の相関を受信することと、
前記コンピュータプロセッサにより、前記少なくとも1つの所定の相関ならびに前記脊椎手術を必要とする前記対象の前記術前生体力学的パラメータおよび前記術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を使用して、前記脊椎手術を必要とする前記対象の成功/失敗の機会を決定することと、
を含み、
前記脊椎手術を必要とする前記対象の成功/失敗の前記機会を決定することが、計画された脊椎外科手術の実行または非実行に関する健康管理者による適当な決定を可能にし、前記対象の整形外科の成功の機会の最適化および/または整形外科の失敗のリスクの低減を図る、方法。
【請求項54】
前記コンピュータプロセッサにより、前記対象の術前生体力学的パラメータおよび術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を導出することが、
前記コンピュータプロセッサにより、前記脊椎手術を必要とする前記対象の前記仮想生体力学的モデル上で脊椎手術を模擬することと、
前記コンピュータプロセッサにより、前記仮想生体力学的モデル上で模擬した前記脊椎手術から、前記脊椎手術を必要とする前記対象の術後生体力学的パラメータを導出することと、
を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記コンピュータプロセッサによる前記仮想生体力学的モデル上での前記脊椎手術の前記模擬が、少なくとも1つの仮想インプラントを前記仮想生体力学的モデルに挿入することを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記コンピュータプロセッサにより、(i)術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの少なくとも一方、(ii)先行する脊椎外科手術の既知の転帰、ならびに(iii)ある脊椎状態を有していた複数人の過去の患者それぞれの既存の基準データ間の前記少なくとも1つの所定の相関を受信することが、
前記コンピュータプロセッサにより、ある脊椎状態を有していた前記複数人の過去の患者それぞれに対応する術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を使用して、前記複数人の過去の患者それぞれの仮想生体力学的モデルを生成することと、
前記コンピュータプロセッサにより、前記複数人の過去の患者それぞれに生成した前記仮想生体力学的モデルを使用して、前記複数人の過去の患者それぞれの術前生体力学的パラメータを導出することと、
前記コンピュータプロセッサにより、トレーニング済み機械学習アルゴリズムを使用して、術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの少なくとも一方と前記脊椎手術の成功/失敗との間の相関を決定することと、
を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記トレーニング済み機械学習アルゴリズムが、前記過去の患者のうちの1人または複数人の術後撮像データに基づいて生成された仮想生体力学的モデルを使用して、前記術後生体力学的パラメータを導出する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記コンピュータプロセッサにより、(i)術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの少なくとも一方、(ii)先行する脊椎外科手術の既知の転帰、ならびに(iii)ある脊椎状態を有していた複数人の過去の患者それぞれの既存の基準データ間の前記少なくとも1つの所定の相関を受信することが、
前記コンピュータプロセッサにより、ある脊椎状態を有していた前記複数人の過去の患者それぞれに対応する術後撮像データを使用して、前記複数人の過去の患者それぞれの仮想生体力学的モデルを生成することと、
前記コンピュータプロセッサにより、前記複数人の過去の患者それぞれに生成した前記仮想生体力学的モデルを使用して、前記複数人の過去の患者それぞれの術後生体力学的パラメータを導出することと、
前記コンピュータプロセッサにより、トレーニング済み機械学習アルゴリズムを使用して、術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの少なくとも一方と前記脊椎手術の成功/失敗との間の相関を決定することと、
を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項59】
前記トレーニング済み機械学習アルゴリズムが、前記複数人の過去の患者それぞれに対応する術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方に基づいて生成された仮想生体力学的モデルを使用して、前記術前生体力学的パラメータを導出する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
整形外科手術を計画するための方法であり、コンピュータプロセッサにより実行される、方法であって、
前記コンピュータプロセッサにより、計画された整形外科手術の少なくとも1つの目標を受信することであり、前記少なくとも1つの目標が、1人もしくは複数人の健常者および/または手術に成功もしくは失敗した1人もしくは複数人の対象の仮想生体力学的モデルから導出される生体力学的パラメータ、ならびに/または、ある脊椎状態を有していた複数人の過去の患者の脊椎を含む骨、靭帯、および筋肉のうちの1つもしくは複数の既存の基準データに関連する、ことと、
コンピュータプロセッサにより、整形外科の評価対象の術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を使用して、前記対象の仮想生体力学的モデルを生成することと、
前記コンピュータプロセッサにより、前記計画された整形外科手術を模擬し、前記対象の前記生成仮想生体力学的モデルを使用して、前記対象の術後生体力学的パラメータを予測することと、
前記コンピュータプロセッサにより、前記少なくとも1つの目標を前記対象の前記予測術後生体力学的パラメータに適用し、前記対象の前記術後生体力学的パラメータに基づく前記計画された整形外科手術の予測転帰を前記少なくとも1つの目標と比較することと、
を含み、
前記少なくとも1つの目標を前記対象の前記予測術後生体力学的パラメータに適用することが、所定のレーティングに従って前記計画された整形外科手術の予測転帰を等級分けすることを可能にし、
前記計画された整形外科手術の前記予測転帰の前記等級分けが、前記計画された整形外科手術の実行または非実行に関する健康管理者による適当な決定を可能にし、前記対象の整形外科の成功の機会の最適化および/または整形外科の失敗のリスクの低減を図る、方法。
【請求項61】
前記1人または複数人の健常者の前記仮想生体力学的モデルが、体格指数、体重、身長、ならびに胴体および四肢の寸法の定量的測定結果のうちの1つまたは複数に基づいて正規化された複数人の健常者からの撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を使用して生成される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記コンピュータプロセッサにより、前記対象の前記生成仮想生体力学的モデルから術前生体力学的パラメータを導出することをさらに含む、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記対象の前記人体測定データに対して、前記対象の前記術後生体力学的パラメータおよび/または前記予測転帰を正規化することをさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記対象の前記術前生体力学的パラメータに対して、前記対象の前記術後生体力学的パラメータおよび/または前記予測転帰を正規化することをさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
計画された脊椎外科手術の成功を予測するための方法であり、コンピュータプロセッサにより実行される、方法であって、
前記コンピュータプロセッサにより、ある脊椎状態を有していた複数人の過去の患者それぞれに対応する術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を使用して、前記複数人の過去の患者それぞれの仮想生体力学的モデルを生成することと、
前記コンピュータプロセッサにより、前記複数人の過去の患者それぞれに生成した前記仮想生体力学的モデルを使用して、前記複数人の過去の患者それぞれの術前生体力学的パラメータおよび術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を導出することと、
前記コンピュータプロセッサにより、トレーニング済み機械学習アルゴリズムを使用して、前記複数人の過去の患者それぞれの術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの少なくとも一方と脊椎外科手術の成功/失敗との間の少なくとも1つの相関を決定することと、
を含む、方法。
【請求項66】
前記コンピュータプロセッサにより、撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を使用して、脊椎手術を必要とする対象の仮想生体力学的モデルを生成することと、
前記コンピュータプロセッサにより、前記仮想生体力学的モデルを使用して、前記脊椎手術を必要とする前記対象の術前生体力学的パラメータおよび術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を導出することと、
前記コンピュータプロセッサにより、(i)術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの少なくとも一方と(ii)前記複数人の過去の患者それぞれの前記脊椎外科手術の前記成功/失敗との間の前記少なくとも1つの相関を受信することと、
前記コンピュータプロセッサにより、前記少なくとも1つの相関ならびに前記脊椎手術を必要とする前記対象の前記術前生体力学的パラメータおよび前記術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を使用して、前記脊椎手術を必要とする前記対象の成功/失敗の機会を決定することと、
をさらに含み、
前記脊椎手術を必要とする前記対象の成功/失敗の前記機会を決定することが、計画された脊椎外科手術の実行または非実行に関する健康管理者による適当な決定を可能にし、前記対象の整形外科の成功の機会の最適化および/または整形外科の失敗のリスクの低減を図る、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記コンピュータプロセッサにより、前記対象の術前生体力学的パラメータおよび術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を導出することが、前記コンピュータプロセッサにより、前記脊椎手術を必要とする前記対象の前記仮想生体力学的モデル上で脊椎手術を模擬することと、前記コンピュータプロセッサにより、前記仮想生体力学的モデル上で模擬した前記脊椎手術から、前記脊椎手術を必要とする前記対象の術後生体力学的パラメータを導出することと、を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記コンピュータプロセッサによる前記仮想生体力学的モデル上での前記脊椎手術の前記模擬が、少なくとも1つの仮想インプラントを前記仮想生体力学的モデルに挿入することを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
計画された整形外科手術の成功を予測するための方法であり、コンピュータプロセッサにより実行される、方法であって、
前記コンピュータプロセッサにより、基準データを受信することと、
前記コンピュータプロセッサにより、整形外科の評価対象の術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を使用して、前記対象の仮想生体力学的モデルを生成し、前記評価対象の生成仮想生体力学的モデルを用意することと、
前記コンピュータプロセッサにより、前記計画された整形外科手術を模擬し、前記対象の前記生成仮想生体力学的モデルを使用して、前記対象の術後生体力学的パラメータを予測することと、
前記コンピュータプロセッサにより、前記基準データを前記対象の前記予測術後生体力学的パラメータに適用することと、
を含み、
前記基準データを前記対象の前記予測術後生体力学的パラメータに適用することが、所定のレーティングに従って前記計画された整形外科手術の予測転帰を等級分けすることを可能にし、
前記計画された整形外科手術の前記予測転帰の前記等級分けが、前記計画された整形外科手術の実行または非実行に関する健康管理者による適当な決定を可能にし、前記対象の整形外科の成功の機会の最適化および/または整形外科の失敗のリスクの低減を図る、方法。
【請求項70】
前記基準データが、
(a)計画された整形外科手術の少なくとも1つの目標であり、(i)1人もしくは複数人の健常者、(ii)手術に成功もしくは失敗した1人もしくは複数人の対象の仮想生体力学的モデルから導出される生体力学的パラメータ、ならびに/または、(iii)ある脊椎状態を有していた複数人の過去の患者の脊椎を含む骨、靭帯、および筋肉のうちの1つもしくは複数の既存の基準データに関連する、少なくとも1つの目標、ならびに/または
(b)基準集団の少なくとも一部のメンバーそれぞれの術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの少なくとも一方と前記整形外科手術の転帰との間の少なくとも1つの相関、
を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記既存の基準データが、書籍のデータ、参考文献のデータ、および/またはオンラインデータソースからのデータを含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
計画された整形外科手術の成功を予測するための方法であり、コンピュータプロセッサにより実行される、方法であって、
前記コンピュータプロセッサにより、基準データを受信することと、
前記コンピュータプロセッサにより、整形外科の評価対象の術前撮像データ、術後撮像データ、および人体測定データのうちの少なくとも1つを使用して、前記対象の仮想生体力学的モデルを生成し、前記評価対象の生成仮想生体力学的モデルを生成することと、
前記コンピュータプロセッサにより、前記計画された整形外科手術を模擬することであり、模擬インプラントを前記対象の前記生成仮想生体力学的モデルに組み込むことを含む、ことと、
前記コンピュータプロセッサにより、前記模擬の結果を前記基準データと比較することと、
前記コンピュータプロセッサにより、前記基準データに基づいて、前記インプラント、骨、靭帯、および筋肉に加わる応力が前記インプラントの破壊点を越えているかを判定することと、
を含む、方法。
【請求項73】
前記基準データが、(a)手術に成功もしくは失敗した1人もしくは複数人の対象からの基準データ、ならびに、(b)ある脊椎状態を有していた複数人の過去の患者の脊椎を含む骨、靭帯、および筋肉のうちの1つもしくは複数の既存の基準データの少なくとも一方を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記基準データが、(i)人間の患者の骨、靭帯、および/もしくは筋肉、(ii)1つもしくは複数のインプラントの構造特性、(iii)1つもしくは複数のインプラントの材料特性、ならびに(iv)人間の患者の脊椎に加わる力のうちの1つまたは複数に関する書籍のデータ、参考文献のデータ、およびオンラインデータソースからのデータのうちの少なくとも1つを含む、請求項72に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年3月8日に出願された米国仮特許出願第63/158,134号の優先権の利益を主張するものであり、そのすべての内容を本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、脊椎病理(spinal pathology)の外科的矯正(surgical correction)の分野に関し、特に、生体力学的分析(biomechanical analysis)に基づく脊椎固定術(spinal fusion procedure)または椎間板置換術(disc replacement procedure)の転帰の改善に用いられる。
【背景技術】
【0003】
脊椎手術は、脊椎変形の軽減、腰椎不安定の緩和、ヘルニア椎間板の置換、脊椎の外傷の修復、および他の病因による病理の矯正のために実行され得る。脊椎手術の成功は、患者報告の症状の改善および痛みの解消、脊椎固定および脊椎姿勢の矯正の証拠となるX線像、医師の評価、ならびに機能回復に関する医療補助スタッフによる客観的評価等、複数の基準を使用して測定され得る。手術目標の達成の成功に関する短期的な証拠にも関わらず、脊椎手術の大部分は、根本的な病理の矯正にも、患者を治療に向かわせた一次症状の緩和にもならないため、一般的に脊椎手術後疼痛症候群(failed back syndrome)と称する結果になる。たとえば2004年には、米国における脊椎固定術の年間直接費用が160億ドルを超え、全体の失敗率が10%~45%と推定される。脊椎手術後疼痛症候群は、まともに生活できないほどの痛みを特徴とし、瘢痕組織が脊髄神経根の周囲に蓄積して圧迫すると悪化する可能性がある。衰弱して通常の活動に戻ることができなくなると、再手術が必要になる場合もあるが、これにはより大きな罹患率のリスクがある。このため、最初の脊椎固定術の成功率を高めるソリューションを見出すことが非常に重要である。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、解剖学的欠陥の矯正の計画のほか、安静時および模擬運動時の患者の脊椎の個々の物理的な生体力学を考慮することによって、脊椎の外科的矯正術の転帰を改善するための新たな例示的システムを記載する。本開示の例示的な方法では、機械学習を過去の脊椎の外科的矯正のデータベースに適用して、成功した手術と最終的に失敗となった手術とを識別する。このレトロスペクティブ分析は、各場合の力、モーメント、応力、歪み、および圧力のうちの少なくともいくつかの計算に基づくことにより、機能的なスコア基準が満たされるかに基づいて成功または失敗が規定されるようになっている。幾何学的パラメータの考察にのみ基づく現在の計画方法とは対照的に、本開示の方法では、脊椎が動く際に個々の脊椎分節(spinal segment)に加わる力のモーメントおよび圧力を考慮することにより、病理の根本原因を探って特定する。外科的矯正術には、脊椎固定または椎間板置換を含み得る。脊椎固定または椎間板置換を受けることになる対象の脊椎生体力学は、これらのレトロスペクティブデータに照らして評価される。したがって、脊椎の外科的矯正のパラメータの計画により、生体力学的転帰を改善して、手術の失敗率を低減することができる。
【0005】
本開示の一態様は、計画された整形外科手術の成功を予測するための方法であり、コンピュータプロセッサにより実行される、方法を提供することである。この方法は、コンピュータプロセッサにより、基準集団の少なくとも一部のメンバーそれぞれについて、術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの一方と整形外科手術の転帰との間の少なくとも1つの相関を受信することと、コンピュータプロセッサにより、整形外科の評価対象の術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を使用して、対象の仮想生体力学的モデルを生成することと、コンピュータプロセッサにより、対象の生成仮想生体力学的モデルから、術前生体力学的パラメータおよび術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を導出することと、コンピュータプロセッサにより、少なくとも1つの相関を対象の導出術前生体力学的パラメータおよび導出術後生体力学的パラメータの少なくとも一方に適用し、所定のレーティングに従って、計画された整形外科手術の予測転帰を等級分けすることと、を含む。少なくとも1つの相関を対象の導出術前生体力学的パラメータおよび導出術後生体力学的パラメータの少なくとも一方に適用することは、所定のレーティングに従って計画された整形外科手術の予測転帰を等級分けすることを可能にする。計画された整形外科手術の予測転帰の等級分けは、計画された外科手術の実行または非実行に関する健康管理者(health practitioner)による適当な決定を可能にし、対象の整形外科の成功の機会の最適化および/または整形外科の失敗のリスクの低減を図る。
【0006】
一実施形態においては、コンピュータプロセッサにより、基準集団の少なくとも一部のメンバーそれぞれについて、術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの少なくとも一方と整形外科手術の転帰との間の少なくとも1つの相関を受信することに先立って、コンピュータプロセッサにより、基準集団の整形外科手術を受けたメンバーの術後撮像データおよび術前撮像データの少なくとも一方ならびに/または術後人体測定データおよび術前人体測定データの少なくとも一方を分析し、術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの少なくとも一方を導出することと、コンピュータプロセッサにより、所定のレーティングに従って、整形外科手術の転帰を等級分けすることと、コンピュータプロセッサにより、基準集団の別のメンバーに対して、術後撮像データおよび術前撮像データの少なくとも一方ならびに/または術後人体測定データおよび術前人体測定データの少なくとも一方の分析と、整形外科手術の転帰の等級分けと、を繰り返すことと、コンピュータプロセッサにより、基準集団のメンバーのうちの少なくとも一部のそれぞれについて、術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの少なくとも一方と整形外科手術の転帰との間の少なくとも1つの相関を決定することと、をさらに含む。
【0007】
本開示の別の態様は、脊椎外科手術の成功を予測するための方法であり、コンピュータプロセッサにより実行される、方法を提供することである。この方法は、コンピュータプロセッサにより、それぞれが脊椎外科手術を受けた基準集団のメンバーからの術前人体測定データおよび術後人体測定データの少なくとも一方ならびに/または術前撮像データおよび術後撮像データの少なくとも一方から導出された生体力学的パラメータを分析することと、コンピュータプロセッサにより、計画された脊椎外科手術の評価対象の術前撮像データ、術後生体力学的データ、および人体測定データのうちの少なくとも1つから導出された生体力学的パラメータを分析することと、コンピュータプロセッサにより、アルゴリズムのトレーニングに用いられる基準集団の少なくとも一部のメンバーの生体力学的パラメータを使用して、計画された脊椎外科手術の少なくとも1つの転帰を予測することにより成功の可能性を決定することと、コンピュータプロセッサにより、計画された脊椎外科手術の評価対象の術前撮像データ、術後生体力学的データ、および人体測定データのうちの少なくとも1つから導出された生体力学的パラメータにトレーニング済みアルゴリズムを適用することと、を含む。コンピュータプロセッサにより、トレーニング済みアルゴリズムを対象の生体力学的パラメータに適用することは、a)脊椎外科手術の相対的成功の予測またはb)別の計画された脊椎外科手術の選択の少なくとも一方を可能にする。
【0008】
本開示の別の態様は、対象に対して脊椎固定術を計画するシステムを提供することである。このシステムは、少なくとも1つの非一過性記憶媒体に格納された命令を実行するように構成された少なくとも1つのコンピュータプロセッサであり、命令が、対象の術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を適用することと、脊椎外科手術を必要とする脊椎の少なくとも1つの領域を含む対象の脊椎の生体力学的特性を分析することと、対象の脊椎に対して外科手術を仮想的に実行した後、生体力学的特性の分析を繰り返すことと、外科手術を仮想的に実行した後、分析生体力学的特性をアルゴリズムに入力して、脊椎外科手術の成功率を予測することと、先行する脊椎外科手術のデータベースから、成功した過去手術および失敗した過去手術のレトロスペクティブ分析に基づいて、予測成功率が所定の基準を満たすかを判定することと、を当該少なくとも1つのコンピュータプロセッサに行わせる、少なくとも1つのコンピュータプロセッサを備える。
【0009】
本開示の別の態様は、脊椎インストゥルメンテーション術(spinal instrumentation procedure)を計画するシステムを提供することである。このシステムは、少なくとも1つの非一過性記憶媒体に格納された命令を実行するように構成された少なくとも1つのコンピュータプロセッサであり、命令が、対象の術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方に対して、固定対象の脊椎の少なくとも1つの領域を含む対象の脊椎の生体力学的特性の分析を実行することと、予め選択された一組の人工椎間板から、置換対象の椎間板の椎間腔に対して、潜在的な人工椎間板を仮想的に埋め込んだ後、生体力学的特性の分析を実行することを繰り返すことと、過去に人工椎間板置換術を受けた基準集団の対象の脊椎の撮像データに対して生体力学的特性分析を実行することであり、対象の術前撮像データおよび術後撮像データの両者に対して分析を実行することと、生体力学的特性の分析を手術成功カテゴリまたは手術失敗カテゴリと関連付けることと、対象の脊椎の生体力学的特性の分析の実行ならびに対象の術前撮像データおよび術後撮像データの両者に対する分析の実行の出力を成功カテゴリまたは失敗カテゴリの一方に分類して、所与の人工椎間板置換術の成功率を予測することと、置換対象の潜在的な人工椎間板について、予測成功率が所定の基準を満たすかを判定することと、を当該少なくとも1つのコンピュータプロセッサに行わせる、少なくとも1つのコンピュータプロセッサを備える。
【0010】
本開示の別の態様は、計画された脊椎外科手術の成功を予測するための方法であり、コンピュータプロセッサにより実行される、方法を提供することである。この方法は、コンピュータプロセッサにより、撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を使用して、脊椎手術を必要とする対象の仮想生体力学的モデルを生成することと、コンピュータプロセッサにより、仮想生体力学的モデルから、脊椎手術を必要とする対象の術前生体力学的パラメータおよび術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を導出することと、コンピュータプロセッサにより、(i)術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの少なくとも一方と(ii)ある脊椎状態を有していた複数人の過去の患者それぞれについて先行する脊椎外科手術の既知の転帰との間の少なくとも1つの所定の相関を受信することと、コンピュータプロセッサにより、少なくとも1つの所定の相関ならびに脊椎手術を必要とする対象の術前生体力学的パラメータおよび術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を使用して、脊椎手術を必要とする対象の成功/失敗の機会を決定することと、を含む。脊椎手術を必要とする対象の成功/失敗の機会を決定することは、計画された脊椎外科手術の実行または非実行に関する健康管理者による適当な決定を可能にし、対象の整形外科の成功の機会の最適化および/または整形外科の失敗のリスクの低減を図る。
【0011】
一実施形態において、コンピュータプロセッサにより、(i)術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの少なくとも一方と(ii)ある脊椎状態を有していた複数人の過去の患者それぞれについて先行する脊椎外科手術の既知の転帰との間の少なくとも1つの所定の相関を受信することは、コンピュータプロセッサにより、ある脊椎状態を有していた複数人の過去の患者それぞれに対応する術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を使用して、複数人の過去の患者それぞれの仮想生体力学的モデルを生成することと、コンピュータプロセッサにより、複数人の過去の患者それぞれに生成した仮想生体力学的モデルを使用して、複数人の過去の患者それぞれの術前生体力学的パラメータを導出することと、コンピュータプロセッサにより、トレーニング済み機械学習アルゴリズムを使用して、術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの少なくとも一方と脊椎手術の成功/失敗との間の相関を決定することと、を含む。
【0012】
別の実施形態において、コンピュータプロセッサにより、(i)術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの少なくとも一方と(ii)ある脊椎状態を有していた複数人の過去の患者それぞれについて先行する脊椎外科手術の既知の転帰との間の少なくとも1つの所定の相関を受信することは、コンピュータプロセッサにより、ある脊椎状態を有していた複数人の過去の患者それぞれに対応する術後撮像データを使用して、複数人の過去の患者それぞれの仮想生体力学的モデルを生成することと、コンピュータプロセッサにより、複数人の過去の患者それぞれに生成した仮想生体力学的モデルを使用して、複数人の過去の患者それぞれの術後生体力学的パラメータを導出することと、コンピュータプロセッサにより、トレーニング済み機械学習アルゴリズムを使用して、術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの少なくとも一方と脊椎手術の成功/失敗との間の相関を決定することと、を含む。
【0013】
整形外科手術を計画するための方法であり、コンピュータプロセッサにより実行される、方法である。この方法は、コンピュータプロセッサにより、計画された整形外科手術の少なくとも1つの目標を受信することであり、少なくとも1つの目標が、1人もしくは複数人の健常者および/または手術に成功もしくは失敗した1人もしくは複数人の対象の仮想生体力学的モデルから導出される生体力学的パラメータ、ならびに/または、ある脊椎状態を有していた複数人の過去の患者の脊椎を含む骨、靭帯、および筋肉のうちの1つもしくは複数の既存の基準データに関連する、ことと、コンピュータプロセッサにより、整形外科の評価対象の術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を使用して、対象の仮想生体力学的モデルを生成することと、コンピュータプロセッサにより、計画された整形外科手術を模擬し、対象の生成仮想生体力学的モデルを使用して、対象の術後生体力学的パラメータを予測することと、コンピュータプロセッサにより、少なくとも1つの目標を対象の予測術後生体力学的パラメータに適用し、対象の術後生体力学的パラメータに基づく計画された整形外科手術の予測転帰を少なくとも1つの目標と比較することと、を含む。少なくとも1つの目標を対象の予測術後生体力学的パラメータに適用することは、所定のレーティングに従って計画された整形外科手術の予測転帰を等級分けすることを可能にする。計画された整形外科手術の予測転帰の等級分けは、計画された外科手術の実行または非実行に関する健康管理者による適当な決定を可能にし、対象の整形外科の成功の機会の最適化および/または整形外科の失敗のリスクの低減を図る。
【0014】
本開示の別の態様は、計画された脊椎外科手術の成功を予測するための方法であり、コンピュータプロセッサにより実行される、方法を提供することである。この方法は、コンピュータプロセッサにより、ある脊椎状態を有していた複数人の過去の患者それぞれに対応する術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を使用して、複数人の過去の患者それぞれの仮想生体力学的モデルを生成することと、コンピュータプロセッサにより、複数人の過去の患者それぞれに生成した仮想生体力学的モデルを使用して、複数人の過去の患者それぞれの術前生体力学的パラメータおよび術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を導出することと、コンピュータプロセッサにより、トレーニング済み機械学習アルゴリズムを使用して、複数人の過去の患者それぞれの術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの少なくとも一方と脊椎外科手術の成功/失敗との間の少なくとも1つの相関を決定することと、を含む。
【0015】
一実施形態において、この方法は、コンピュータプロセッサにより、撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を使用して、脊椎手術を必要とする対象の仮想生体力学的モデルを生成することと、コンピュータプロセッサにより、仮想生体力学的モデルを使用して、脊椎手術を必要とする対象の術前生体力学的パラメータおよび術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を導出することと、コンピュータプロセッサにより、(i)術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの少なくとも一方と(ii)複数人の過去の患者それぞれの脊椎外科手術の成功/失敗との間の少なくとも1つの相関を受信することと、コンピュータプロセッサにより、少なくとも1つの相関ならびに脊椎手術を必要とする対象の術前生体力学的パラメータおよび術後生体力学的パラメータの少なくとも一方を使用して、脊椎手術を必要とする対象の成功/失敗の機会を決定することと、をさらに含む。 脊椎手術を必要とする対象の成功/失敗の機会を決定することは、計画された脊椎外科手術の実行または非実行に関する健康管理者による適当な決定を可能にし、対象の整形外科の成功の機会の最適化および/または整形外科の失敗のリスクの低減を図る。
【0016】
本開示の別の態様は、計画された脊椎外科手術の成功を予測するための方法であり、コンピュータプロセッサにより実行される、方法を提供することである。この方法は、コンピュータプロセッサにより、基準データを受信することと、コンピュータプロセッサにより、整形外科の評価対象の術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を使用して、対象の仮想生体力学的モデルを生成することと、コンピュータプロセッサにより、計画された整形外科手術を模擬し、対象の生成仮想生体力学的モデルを使用して、対象の術後生体力学的パラメータを予測することと、コンピュータプロセッサにより、基準データを対象の前記予測術後生体力学的パラメータに適用することと、を含む。基準データを対象の予測術後生体力学的パラメータに適用することは、所定のレーティングに従って計画された整形外科手術の予測転帰を等級分けすることを可能にする。計画された整形外科手術の予測転帰の等級分けは、計画された外科手術の実行または非実行に関する健康管理者による適当な決定を可能にし、対象の整形外科の成功の機会の最適化および/または整形外科の失敗のリスクの低減を図る。
【0017】
一実施形態において、基準データは、(a)計画された整形外科手術の少なくとも1つの目標であり、(i)1人もしくは複数人の健常者、(ii)手術に成功もしくは失敗した1人もしくは複数人の対象の仮想生体力学的モデルから導出される生体力学的パラメータ、ならびに/または、(iii)ある脊椎状態を有していた複数人の過去の患者の脊椎を含む骨、靭帯、および筋肉のうちの1つもしくは複数の既存の基準データに関連する、少なくとも1つの目標、ならびに/または、(b)基準集団の少なくとも一部のメンバーそれぞれの術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの少なくとも一方と整形外科手術の転帰との間の少なくとも1つの相関を含む。
【0018】
本開示の別の態様は、計画された整形外科手術の成功を予測するための方法であり、コンピュータプロセッサにより実行される、方法を提供することである。この方法は、コンピュータプロセッサにより、基準データを受信することと、コンピュータプロセッサにより、整形外科の評価対象の術前撮像データ、術後撮像データ、および人体測定データのうちの少なくとも1つを使用して、対象の仮想生体力学的モデルを生成し、評価対象の生成仮想生体力学的モデルを生成することと、コンピュータプロセッサにより、計画された整形外科手術を模擬することであり、模擬インプラントを対象の生成仮想生体力学的モデルに組み込むことを含む、ことと、コンピュータプロセッサにより、模擬の結果を基準データと比較することと、コンピュータプロセッサにより、基準データに基づいて、インプラント、骨、靭帯、および筋肉に加わる応力がインプラントの破壊点(failure point)を越えているかを判定することと、を含む。
【0019】
一実施形態において、基準データは、(a)手術に成功もしくは失敗した1人もしくは複数人の対象からの基準データ、ならびに、(b)ある脊椎状態を有していた複数人の過去の患者の脊椎を含む骨、靭帯、および筋肉のうちの1つもしくは複数の既存の基準データの少なくとも一方を含む。
【0020】
別の実施形態において、基準データは、(i)人間の患者の骨、靭帯、および/もしくは筋肉、(ii)1つもしくは複数のインプラントの構造特性、(iii)1つもしくは複数のインプラントの材料特性、ならびに(iv)人間の患者の脊椎に加わる力のうちの1つまたは複数に関する書籍のデータ、参考文献のデータ、およびオンラインデータソースからのデータのうちの少なくとも1つを含む。
【0021】
本発明の特許請求の範囲に係る実施形態は、図面と併せた以下の詳細な説明から、より完全に理解および認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】理想的なインプラントを予測するための開示の方法の例示的な一実施態様におけるステップから成るフローチャートである。
図2】利用可能なインプラントのうちの少なくとも1つを選択するための開示の方法の例示的な一実施態様におけるステップから成るフローチャートである。
図3】この方法の例示的な一実施態様において特定の対象を評価する際のステップを詳細に示した図である。
図4】対象の脊椎の動的分析の例示的な出力を示した図である。
図5A】基準集団に関する開示の方法の例示的な一実施態様におけるステップを示した図である。
図5B】特定の対象に関する開示の方法の例示的な一実施態様におけるステップを示した図である。
図6A】手術の成功または失敗の可能性の予測に用いられる基準集団中の個人の術前評価を示した図である。
図6B】手術の成功または失敗の可能性の予測に用いられる基準集団中の個人の術後評価を示した図である。
図7】手術転帰を予測するための機械学習アルゴリズムのトレーニングおよび使用に用いられるステップから成るフローチャートである。
図8】開示の機械学習アルゴリズムのうちのいくつかの一実施態様を使用した対象の術前分析の詳細を示した図である。
図9】対象における転帰の成功の可能性が最も高いインプラントの選択を可能にする、考え得る脊椎インプラントの生体力学的分析の出力を示した図である。
図10】開示の方法の実行に用いられる代表的なシステムを示した図である。
図11】基準データを使用する特定の対象に関する開示の方法の例示的な一実施態様におけるステップを示した図である。
図12】開示の方法の実行に用いられる別の例示的なシステムを示した図である。
図13】この方法の例示的な一実施態様において特定の対象を評価する際のステップを詳細に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
現在の治療法の改善において求められる手段は、治療対象の患者の個々の解剖学的特性に基づく脊椎外科手術の個別化である。これらの方法では、脊椎アライメントパラメータおよび他の解剖学的側面を定量化できるように、2次元および3次元の術前画像検査によって、患者の解剖学的特徴を測定または計算しようとする。これらの定量的な測定結果に基づいて、既知の関連パラメータを測定可能に改善することができる。したがって、脊椎の安定化または矯正のためのカスタムインプラントを生成するため、現在、多くの例示的な方法およびシステムが開発されている。このような方法では、患者の術前撮像データをプログラム的に分析して、患者の目標領域の関連する解剖学的特徴の形状および寸法と、解剖学的欠陥を修正するための潜在的なインプラントと、を取得する。パラメータ化モデルおよび/または多体シミュレーションを用いることにより、患者に適応した関節修復システムが開発されている。術前撮像によって、関連する患者の生体構造のサイズ、形状、および状態を評価することにより、特定の患者に対してインプラントのサイズおよび形状をカスタマイズすることができる。また、未処理の電子画像データの使用により、患者の生体構造の1つまたは複数の表現または「モデル」(患者の生体構造の2次元または3次元の物理的複製を含む)を生成することができる。そして、このようなモデルの使用により、患者の生体構造に適した整形外科用インプラントを選択または設計することができる。これら提案のさまざまなソリューションは、患者の生体構造に対するソリューションのカスタマイズに基づく。
【0024】
脊椎矯正術を患者に合わせてカスタマイズすることは、二次的合併症の防止に関連する。たとえば、脊椎固定を実行した後には、椎骨分節を固定する際の潜在的な合併症として、隣り合う分節の変性が起こる。固定に隣り合う脊椎分節の変性の広がりは、自然退行過程の別途広がりを示し得るが、この過程の一部は、固定された脊椎分節に隣り合う生体力学の変化に起因すると考えられる。また、脊椎安定化のための手術後、ある割合の患者は、吻側および尾側の隣り合うレベルの一方または両方に不安定感を生じる。これらの二次的な病理は、脊椎矯正術を計画する際に考慮された解剖学的な考察とは無関係と考えられる生理学的な力および脊椎力学の結果である。これらの力は、たとえば2つの椎骨の固定時に変化し得る。このような予想または予測可能な力およびモーメントの変化を考慮しなければ、固定された関節の上下にある椎骨に応力または歪みが発生する結果、隣り合う分節の疾患等の二次的な合併症につながる可能性もある。
【0025】
脊椎力学の重要性が認識されたことで、脊椎手術の転帰の改善を意図した別のカテゴリの方法が生じており、脊椎矯正を計画する際に脊椎力学をモデル化して関連する生体力学的な力を考慮する。このような提案のソリューションとして、軟部組織の材料特性および生体構造によって決定される脊椎運動分節の運動学を使用したプロセスがある。この方法は、対象の脊椎の所与の可動域および形態に基づき、脊椎運動分節の運動学と関連付けられた関連する材料パラメータを識別する。そして、これらの識別パラメータの使用により、腰椎運動分節の形態および材料特性のパラメトリック有限要素モデルを策定する。これらの方法の限界は、このようなシミュレーションが本質的に理論的なものであるため、術後に人間の脊椎に作用する実際の直線力および回転力を決定するのではなく、予測に依拠する点にあると考えられる。したがって、患者の特定の脊椎を模擬し、脊椎が動いている間に脊椎内で発生する力およびモーメントを分析可能な筋骨格シミュレーションシステムは存在するものの、インプラントの使用を含め、意図した外科的介入が成功するか失敗するかを予測できるものはない。
【0026】
手術転帰の予測の実際の適用は、複数の理由により、理論的なものに留まる。術前および術後の患者の脊椎力学に対するシミュレーション測定結果およびそれぞれの意味を検証する手段を欠くほか、複数のパラメータを単独または組み合わせにて使用することにより生成され得るデータが膨大であることから、研究者は、最適化すべき最も重要なパラメータを明確に示すことができない。現在までのところ、対象の生体力学的データを最適化する上で、関連する疑問に対する答えを提供するように構成されたシステムは存在しない。また、生体力学的研究の結果の臨床的関連性は、所与の患者について遡及的に、すなわち術後にしか判定され得ない。シミュレーションにより提供される生体力学的パラメータデータの臨床的意義および精度を事前に知ることは困難であるため、このようなシステムは、医師が所与の患者に対して最適な治療を決定する際に役立つ診断ツールとしても予測ツールとしても有用ではない。
【0027】
要約すると、幾何学的な考察に基づいて脊椎矯正術をカスタマイズする個別の脊椎インプラントでは、患者の脊椎アライメントの解剖学的な要素しか考慮しない。生体力学的な考察に基づく個別化では、個人の脊椎力学の生理学的要素を考慮に入れるが、術後パラメータの測定結果または予測を術前に計算または模擬するのは困難である。したがって、変形矯正術および他の脊椎手術の両者について、手術転帰のより優れた計画および予測を可能にする方法およびシステムが求められている。求められているのは、脊椎パラメータを術前に最適化および個別化して、脊椎矯正術の結果を改善する手段であり、従来技術のシステムおよび方法の不都合の少なくとも一部を克服するものである。
【0028】
開示のシステムおよび方法の実施態様は、手術計画に関する従来技術の選択肢の代替として成功するように構成されている。本開示の方法は、術前および術後状態の模擬運動における特定の患者の生理学的モデルの生体力学的分析により生成されたデータに依拠する。これらの動体を分析した生体力学的データは、現在の潜在的な患者のデータへの適用によって、外科的介入の必要性の評価および計画された脊椎手術の成功/失敗の予測(必要な場合)を可能にする。この方法の利点として、幾何学的生体構造が類似する患者がデータベースに見つからなくても、新たな患者に対して計画された手術の予想転帰を検証または予測可能となる。別の利点として、異なる既存のインプラントおよび既存の手術手技の生体力学的な予測結果を比較可能となる。最終的に、本方法の実施態様によれば、最適なインプラントまたは一組のインプラントの構成(形状および運動/剛性)の決定が可能となる。
【0029】
本開示は、個々の患者撮像データへの機械学習アルゴリズムおよび/または基準データの適用に基づいて、患者の現在の脊椎強度、剛性、および可動域を診断するとともに、意図する外科的介入の成功または失敗の可能性を予測するように構成された方法およびシステムを記載する。この方法では、運動シミュレーション中の生体力学的パラメータを決定することにより、予測を実現する。この目的のため、一実施形態において、このシステムは最初に、術前のステータス、実行された外科手術(ある場合)、および術後のデータ(関連する場合)が既知の基準集団からの幾何学的データのほか、力、モーメント、圧力、および剛性を考慮した多くの患者のレトロスペクティブデータでトレーニングされる。データには、たとえばDICOMフォーマットの患者の術前および術後の画像検査、人体測定データ、人口統計学的データ、ならびに手術なしの場合または成功もしくは失敗の程度を含む手術転帰を伴う場合の追跡調査を含んでいてもよい。
【0030】
一実施形態において、この方法は、特定の脊椎状態にある基準集団中の多くの患者からの術後(場合によっては術前も含む)の人体測定データ、人工統計学的データ、および生体力学的パラメータ解析データでトレーニングされた機械学習アルゴリズムに基づく。アルゴリズムは、生体力学的特性に基づいて、失敗から成功の転帰を識別するようにプログラムされている。アルゴリズムは、a)シミュレーションにより測定されたパラメータそれぞれにおいて、転帰の成功または失敗と関連付けられた模擬結果の範囲と、b)術前および/または術後の模擬生体力学的分析結果を入力として使用し、個々の評価対象に対して意図した脊椎矯正術の成功または失敗の可能性を予測する他のアルゴリズムと、を検索および規定するように構成されている。生体力学的分析には、幾何学的または解剖学的矯正のほか、手術の成功または失敗の主な予測因子として、力、モーメント、圧力、歪み、および他の生体力学的因子を含んでいてもよい。比較は、現在の患者と同じ脊椎状態または類似の生体力学的異常を患う基準集団の部分集合に対して行われる。
【0031】
この方法の実施態様では、一般的に特定の患者の人体のコンピュータ表現を含む筋骨格シミュレーションシステムを使用する。患者の画像検査および人体測定データをコンピュータ可読フォームに変換することによって表現が生成されると、コンピュータは、有限要素解析および逆運動学等の技術を使用するソフトウェアによって、運動時の身体を模擬することができる。分析の出力には、患者が動く際に脊椎で生じる力およびモーメントに関する生体力学的データを含む。このシステムは、椎骨、椎間板、面関節等の分節、ならびに各分節を囲む靭帯および筋肉を含むさまざまな構造それぞれにおいて、脊椎の各分節に適用された生体力学的な力および他のパラメータを分析するように構成されていてもよい。
【0032】
現在までのところ、患者の特定の脊椎を模擬し、脊椎が動いている間に脊椎内で発生する力およびモーメントを分析する多くの筋骨格シミュレーションシステムが開発されているものの、インプラントの使用を含め、意図した外科的介入が成功するか失敗するかを予測できるものはない。脊椎病理の外科的矯正を計画する現在の方法では一般的に、外科医がハードウェアを埋め込んで修正しようとする解剖学的異常を考慮する。ハードウェアの埋め込みの目的は、痛みの軽減、機能の回復、および/または可動域の維持を含み得る目標に向けた脊椎の安定化および/または測定可能な幾何学的脊椎パラメータの生理学的なアライメント化である。これらの目標の実現は、可変であって、多くの因子に依存するものであるが、その一部は患者固有であり、一部は外科医による器具類および手術手技の選定によって決まる。腰椎前弯(LL)、骨盤傾斜(PT)、仙骨傾斜(SS)、および矢状椎軸(SVA)等の幾何学的脊椎パラメータの測定結果は有用であるが、運動中の生理学的変化を考慮していない。患者の生活の質および機能に関する最終的な長期的転帰は、解剖学的に依存する脊椎パラメータの矯正のみならず、生体力学的因子にも依存する。このため、場合により、脊椎パラメータの解剖学的調整では、患者報告の痛みおよび障害の緩和において期待される改善は得られない。関連する生理学的または生体力学的因子には、患者の脊椎に作用する力、モーメント、圧力、ならびに応力および歪みのほか、骨および靭帯強度等の生理学的因子を含む。屈曲および延伸、側屈および軸回旋等のさまざまな姿勢での脊椎可動域は、手術の成功または失敗を決める重要な因子である。
【0033】
本開示の利点として、このようなシミュレーションにより患者の脊椎の生体力学を調べることは、インプラントの使用を含み得る外科的介入の前後両者の患者の状況に対して実行可能である。開示の方法の実施態様の有効化によって、外科的介入(たとえば、モデル中の骨および靭帯の切断)を模擬するとともに、安静時および運動時の患者の脊椎のデジタルモデルに埋め込まれた後のインプラントの形状および関連する材料特性のコンピュータ表現を生成する。また、これらの方法は、模擬脊椎手術後の隣り合う脊椎レベルへの力およびモーメントの再分布に関する情報を提供し得る。この方法の出力には、手術なしの場合または意図した外科的介入後の患者の将来的な生体力学的パラメータの予測を含み得る。この方法では、生体力学的パラメータの特定の結果が手術の成功と関連付けられる一方、その他が手術の失敗と関連付けられるかを判定することができる。
【0034】
術後生体力学的考察を脊椎矯正術に取り込むことによって、これらの手術の転帰が大幅に改善される可能性もある。ただし、現在のところは、所与の個人において、外科手術の術後機能への影響を術前に測定または模擬するのは困難である。本開示の実施態様は、対象の生体力学的および生理学的な脊椎機能に対する術前分析を実行するように設計されている。この分析には、対象の術前画像検査の分節化分析を含み、脊椎の骨組織および軟部組織の要素に関する情報を提供する。分節化分析の出力は、評価対象の硬組織および軟部組織ならびに骨強度に対して予想される可動域、力およびモーメントの分布、応力および歪み分析の付加的な動的分析を含む最適化モジュールであるダイナミックソルバの入力として用いられる。軟部組織には、靭帯、筋肉、腱、および他の結合組織要素を含み得る。これらの分析は、逆運動学および有限要素解析等の方法を使用して実現される。次に、この分析の出力は、機械学習アルゴリズムへの入力および/または基準データとの比較によって、所与の脊椎矯正術の転帰の予測が行われる。このアルゴリズムでは、クラスタリングまたは分類技術を使用して、基準集団中の個人に実行された脊椎矯正術の転帰を手術の成功または失敗に基づいて2つ以上のグループに分割する。このシステムでは、分析対象に使用したのと同じ分析方法を使用し、術前および術後の両画像検査に基づいて、基準集団中の個人の生体力学的因子を分析する。したがって、このシステムでは、対象の生体力学的特性を過去の患者と照合して、転帰が成功となる可能性が最も高い外科手術を選択することができる。最適な脊椎矯正術の選択に際して、このシステムは、たとえば人工椎間板置換対脊椎固定等の特定の手術のみならず、埋め込みの手術方式および手術器具類の種類、強度、ならびに安静時および運動時の対象の脊椎に対してインプラントが生成する力も考慮に入れる。
【0035】
筋骨格シミュレーションシステムは、人体のコンピュータ表現である。この表現は、一般的な人間を表すことも可能であるし、特定の患者を表すことも可能である。特定の患者の場合、このシミュレーションシステムは、CT、MRI、およびX線等の患者の画像検査ならびにBMI、体重、身長、および個人の他の定量的測定結果等の人体測定データから導出される。これらの測定結果は、CAD等のコンピュータ可読フォームに変換され、有限要素解析(Abaqus)または逆運動学(Anybody Tech)等の技術を採用するソフトウェアを用いた運動時の身体のコンピュータシミュレーションを可能にする。分析の出力は、生体力学的な力等のパラメータ(たとえば、運動時の患者の脊椎の各分節レベルに生じる力およびモーメント)に関するデータを提供する。脊椎分節ごとに、椎骨、椎間板、面関節、およびこれらを囲む靭帯等の分節を含む構造がそれぞれ分析される。このようなシミュレーションによる患者の脊椎の生体力学的パラメータ解析は、任意の外科的介入前の患者の状況に関して実行されるようになっていてもよい。また、患者の脊椎の生体力学は、インプラントの使用を含む仮想的な外科的介入の後に模擬されるようになっていてもよい。外科的介入は、患者の脊椎のデジタルモデルにおいて骨および靭帯を仮想的に切断し、埋め込み対象の外科的ハードウェアの形状および材料特性のコンピュータ表現を生成し、ハードウェアを患者のモデルにおいて仮想的に埋め込むことにより模擬されるようになっていてもよい。患者の脊椎の術前および術後状態の生体力学的評価は、症状が脊椎生体力学に及ぼす影響および治療転帰の有効性の予測の評価における強力なツールとなる。このシステムは、手術なしの場合および意図した外科的介入を伴う場合の一方または両方において、患者の病理の経時的な進行の予測を可能にする。
【0036】
シミュレーションシステムを使用して疾患の進行または外科的治療の効果を予測することは、測定結果の検証が困難であることから不可能であった。たとえば、例示的な一実施態様において、対象の脊椎の生物物理学的パラメータに関する完全な研究では、運動中の30を超える脊椎分節それぞれに加わる力に関する10個の指標を評価する。このため、計測器は、評価対象に固有の300を超える定量的測定値を生成する。その場合の課題は、患者の状態および計画された外科的介入に対する臨床的関連が最も高いレベルおよび各レベルでのパラメータを決定することである。本方法およびシステムの利点として、患者に最適な治療を医師が決定するのに役立つ診断および予測ツールとして使用する特定の生体力学的パラメータの臨床的意義を決定および検証することができる。
【0037】
以下は、本開示の実施形態に係る、患者の状況に関するパラメトリック研究により提供されたデータに対して機械学習を使用することにより、患者の現在の状態を評価するとともに、意図した外科的介入の成功または失敗の可能性を予測する方法およびシステムの説明である。こうするため、このシステムは最初に、術前、術中、および術後データが利用可能な多くの患者のレトロスペクティブデータでトレーニングされる。アルゴリズムの入力データには、患者のDICOM(術前および術後)、人体測定データ、人工統計学的データ、ならびに術後もしくは無手術転帰を含む。出力には、脊椎要素の解剖学的/幾何学的形状ならびに各脊椎分節の各硬組織および軟部組織の力、モーメント、圧力、および強度等の生理学的/生体力学的データの両者を含む。転帰は、成功/失敗の2分類、マルチクラススケール(成功、成功の欠如、成功の程度)、または連続回帰スケール等、複数の方法で分類されるようになっていてもよい。
【0038】
機械学習アルゴリズムは、特定の脊椎状態となった多くの患者の術前および術後のパラメトリック研究データ(ならびに、人体測定データおよび人口統計学的データ)に対して実行され、結果が成功となった患者および結果が失敗となった患者を把握するものであって、1)シミュレーションにより測定されたパラメータそれぞれにおいて、転帰の成功/失敗と関連付けられたシミュレーション結果の範囲、ならびに、2)術前および/もしくは術後の模擬生体力学的分析結果を入力として使用し、意図した手術の成功/失敗の可能性を予測するアルゴリズムを提案する。
【0039】
多くの利用可能な術前脊椎手術計画ソフトウェアプログラムは、画像検査に反映された対象の術前姿勢の静的な幾何学的分析に依拠し、解剖学的シミュレーション、インプラントの意図した配置、およびそれぞれが患者の姿勢に及ぼす影響に基づいて、術後転帰を予測する。このように静的な幾何学的姿勢の分析に適用可能なプログラムは、脊椎変形の外科的矯正に有用である。理論的には良好な矯正が予測され得るものの、複雑な脊椎手術では最大50%以上の失敗率が発生する可能性もある。実際の術後の解剖学的所見は予測転帰と一致する可能性があるものの、これらの場合の大部分では、手術による患者の兆候および症状の緩和が意外に失敗となる。
【0040】
本発明は、患者の骨、靭帯、および筋肉を含み、患者の術前状況を分析するとともに術後転帰を予測する仮想モデルを含む、患者固有の解剖学的、生体力学的、および生理学的システムの生理学的研究の使用を記載する。幾何学的指標を測定して使用することにより、文献データに基づいて最適な転帰を導き出す代わりに、脊椎の動きによって発生する力およびモーメントを使用して、最適な転帰を導き出す。動く物体(たとえば、脊椎)の静的な幾何学的分析に依拠するソフトウェアプログラムとは対照的に、本発明の実施態様では、手術の成功または失敗の根本原因となり得る動く身体部分の分析に対してより物理的かつ生理学的に関連する生体力学的パラメータの分析を使用する。
【0041】
たとえば、一実施形態によれば、開示の方法は、(a)DICOMおよび/または人体測定データから患者の筋骨格/生体力学的モデルを生成することと、(b)モデルを使用して、(i)患者の術前状況の生体力学的パラメータを導出すること、(ii)インプラントの潜在的な使用を伴う意図した手術を模擬することと、および/または(iii)模擬術後状況の生体力学的パラメータを導出することと、を行うことと、(c)術前および術後生体力学的パラメータの一方と手術の成功/失敗との間の所定の相関を使用して、この特定の患者の成功/失敗の機会を決定することと、を含み得る。所定の相関を決定するため、ある脊椎状態を有し、手術を受け、手術の転帰ならびに術前および術後のDICOMが既知の患者のレトロスペクティブデータでMLアルゴリズムがトレーニングされる。これらの過去の患者に対して、筋骨格/生体力学的モデルを生成する上記ステップ(a)が各患者の術前および術後の両状況に対して実行され、生体力学的データが術前および術後の両状況について導出され、MLアルゴリズムの使用によって、術前および術後生体力学的パラメータの一方と成功/失敗との間の相関が試行および探索される。この相関はその後、上述のステップ(c)において使用される。一実施形態によれば、上述のようなMLアルゴリズムのトレーニングには、新たな患者を評価する場合に術後状況に対して生成される模擬筋骨格モデルとは対照的に、過去の患者の術後DICOMを使用することにより患者の術後状況に基づいて生成された筋骨格モデルを使用する。
【0042】
本開示の方法の実施態様は、少なくとも以下のように用いられるようになっていてもよい。
1)患者固有の仮想デジタルモデルから導出されたデータは、患者の現在の生体力学的脊椎機能の分析および将来的な術後生体力学的機能の予測に用いられるようになっていてもよい。
2)患者固有のデジタルモデルから導出された生体力学的パラメータ研究データは、最適な手術方式および現在利用可能なインプラントの最適な構成の規定に用いられるようになっていてもよい。
3)患者固有のデジタルモデルから導出された生体力学的パラメータ研究データは、1つまたは一組のインプラントの最適な幾何学的および生体力学的属性の規定に用いられるようになっていてもよい。インプラントはパラメトリック研究の結果に従って調整されるが、現在のところ、そのようなインプラントは市場に存在しない。
4)手術に成功および失敗した多くの患者のデータに対して生体力学的パラメータ研究を行い、本明細書に規定の機械学習アルゴリズムを使用して、術後転帰の成功に重要なパラメータを決定する。
5)生体力学的パラメータ研究に対して、
a)手術が成功した患者の術後データに機械学習アルゴリズムを使用して、成功転帰となるために必要な関連する重要なパラメータおよび明らかに失敗の転帰と関連付けられたパラメータの値の範囲を決定し、
b)手術に成功および失敗した患者の術前および術後データに機械学習アルゴリズムを使用して、成功転帰となるために重要なパラメータおよび失敗と関連付けられたパラメータ、ならびに各パラメータの値の範囲を決定し、
c)重要なパラメータおよび各パラメータの値の範囲を考慮した式を定義し、特定の疾患を有する特定の患者における成功転帰に寄与する生体力学的因子の規定に際して重要な各パラメータの相対的な重みを決定する。
【0043】
上記を実現するための方法には、
a)患者の仮想的な解剖学的および生理学的モデルを構築するステップと、
b)仮想的な運動において、生体力学的パラメータ研究をモデルに行うステップと、
c)モデルに修正操作を採用する(たとえば、生物組織の構造を変化させ、インプラントを挿入し、それぞれが生体力学的パラメータに及ぼす影響を評価する)ステップと、
d)モデルに最適化アルゴリズムを採用して、理想的な手術計画および少なくとも1つの理想的なインプラントの幾何学的形状および剛性等の生体力学的属性を規定するステップと、
を含んでいてもよい。
【0044】
これらの方法は、脊椎矯正を実現する可能性が最も高い外科的介入を予測するシステムにより実行されるようになっていてもよい。あるいは、外科医は、システムによりテストするさまざまな外科的介入を選択するようにしてもよい(最良の術後転帰となることが予測される介入を選択肢から選択する)。
【0045】
開示のシステムおよび方法のいくつかの実施態様において、この方法では、多くの考え得る脊椎インプラントを評価して、術後の長期的な成功を与える可能性が最も高いものを決定する。たとえば、人工椎間板置換の場合は、開示のアルゴリズムにより、生体力学的特性の異なる多くの潜在的なインプラントが評価されるようになっていてもよい。患者に最も適合する最適な生理学的特性のインプラントを選定することによって、成功転帰の機会が増すことになる。
【0046】
本開示の全体を通して使用する用語の定義を以下に与える。
【0047】
本明細書における定義の通り、生体力学的パラメータは、脊椎の生理学および生物物理学に関するパラメータであって、対象の脊椎または脊椎-インプラントアセンブリに加わる力、モーメント、トルク、応力、および結果としての歪みを含む。骨強度および密度、ならびに人体測定データについても、生体力学的パラメータと考えられる。
【0048】
本開示の目的として、分類器は、機械学習アルゴリズムを使用して特定のデータ点にカテゴリクラスラベルを割り当てる際に用いられる仮説または離散値関数である。
【0049】
クラスタ分析(または、クラスタリング)は、データ中の自然なグループ分けを自動的に発見することを含む教師なし機械学習タスクであり、同じグループ中のオブジェクトが他のグループ中のオブジェクトよりも互いに類似するように一組のオブジェクトをグループ化するタスクを実行する。クラスタリングアルゴリズムは、入力データを解釈して、特徴空間中の自然なグループまたはクラスタを見つける。
【0050】
畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は、画像等のデータの構造化アレイを処理するように設計された深層学習ニューラルネットワークである。
【0051】
医用デジタル撮像・通信(DICOM)は、医用撮像情報および関連データの通信および管理のための規格であって、最も一般的には、医用画像の格納および伝送に使用され、医用撮像デバイスの統合を可能にする。
【0052】
有限要素解析(FEA)は、工学および数学モデルの問題解決に最も広く用いられる有限要素法を使用して評価可能となるように、所与の条件下で部品またはアセンブリの挙動を模擬するプロセスである。
【0053】
逆運動学的解析は通常、身体分節の運動力学の測定に基づき、選択された外力(たとえば、地面反力)の測定結果で補完されることが多い。
【0054】
筋骨格モデルは、関節で結合された剛体分節(骨)で構成された骨格を含む演算モデルである。骨格には、複数の制約が考えられる(たとえば、最大関節角度)。関節から伸びる筋肉は、腱を介して骨に結合される。筋肉は、力および運動を生成可能である。
【0055】
ここで図1を参照するが、この図は、好ましいインプラント構成を計画して、計画された脊椎矯正術の術後転帰を改善する本開示の例示的な一実施態様に含まれる主なステップの概略を模式的に示している。モジュール100は、脊椎固定または人工椎間板置換等の脊椎矯正術の評価対象のパラメータおよび結果を表し、開示の方法の入力を含む。最適化モジュール101は、理想的なインプラントまたは一組のインプラントの形状および生体力学を計画および予測して評価対象の生体力学を矯正するのに用いられる最適化モジュールを表す。ボックス102(レポート)は、解剖学的および生理学的病理の詳細を示す対象の術前状態150または特定のインプラントもしくは一組のインプラントを用いた脊椎矯正術の実行後のインプラントおよび計画器具類の理想的なパラメータの予測パラメータの分析の出力を表す。
【0056】
これらの主なステップそれぞれを詳細に精査すると、人体測定データ110への入力は、年齢、性別、喫煙ステータス等の対象の人口統計学的データ、体格指数、身長、体重、脊椎可動域、および骨密度等の人体測定データ、DICOM(医用デジタル撮像・通信)フォーマットのX線、CT、およびMRIファイル等の撮像データを含む。DICOM規格は、生体医用画像および画像関連情報のための非機密データ交換プロトコル、デジタル画像フォーマット、およびファイル構造を規定する。これらの入力によって仮想対象モデル120が構築されるが、これは、骨組織および軟部組織の要素を含む患者の脊椎生体構造の仮想分節化モデルを示す。このモデルにおける導出情報は、脊椎(椎骨、椎間板、筋肉、および靭帯)の分節化を含むデータを有する。これらのデータは、最適化モジュール101への入力として使用される。ステップ120から取得されたデータには、動的分析130が実行される。動的分析には、Abaqus Unified FEA(Velizy-Villacoublay、フランス)から入手できるような脊椎構造の有限要素解析およびAnyBody Technology(Aalborg、デンマーク)から入手できるようなソフトウェアシステムを用いた人間工学的最適化等、力およびモーメント、応力および歪みに関するさまざまな生体力学的研究を含み得る。動的分析の出力140には、可動域(ROM)、モーメントおよび力の分布、応力および歪み分析、ならびに骨強度を含む。出力140は、最適化モジュール101のステップ(機械学習アルゴリズム)160に進んで、脊椎矯正術の計画が行われる。
【0057】
機械学習アルゴリズム160は、対象の固有脊椎機能を使用して、手術の転帰を予測する。この予測は、生体力学的特性が類似する患者に対する類似の手術を行うための既知の複数組の成功または失敗出力に対して、現在の対象の出力を比較することに基づく。成功または失敗の出力間の差の決定は、レトロスペクティブデータで独立してトレーニング済みの新規の付加的な機械学習アルゴリズムに基づく。そして、これらの出力は、図5A図8に別途説明および記載の通り、評価対象の予測分類に用いられる。機械学習アルゴリズム160に基づいて、対象の固有脊椎機能のレポート150が生成される。ステップ152においては、対象の病理が即時の外科的矯正を認可するのに十分深刻であるかについての評価がなされる。この決定は、外科医により行われるようになっていてもよいし、システムに入力された所定の基準により行われるようになっていてもよい。深刻でない場合は、モジュール100に戻り、実行する手術の決定がなされるまでの必要に応じて評価を繰り返すことにより、分析を経時的に繰り返すことも可能である(ステップ145の反復)。このような評価の経時的な繰り返しによって、評価対象患者の臨床経過を定量的に観察可能となり、外科的修復が必要となりそうなタイミングをシステムで予測可能となる。レポートは、外科的矯正の評価を必要とする脊椎の病理学的パラメータに関する情報を提供する。
【0058】
予測アルゴリズム(たとえば、機械学習アルゴリズム)160は、考え得るさまざまな手術およびインプラントの定量的なランキングを外科医に提供する複数の予測マトリクスを生成する。ステップ170において、このシステムは、ステップ130および140の適用により、対象の理想的な一組のインプラントの幾何学的および生体力学的パラメータを決定する。現在の患者の脊椎に適用されたステップ140からの生体力学的パラメータ(たとえば、モーメント、力分布、応力、歪み分析、骨強度等)を使用して、170のアルゴリズムは、選択された外科手術に対して所与のインプラントまたは一組のインプラントに期待される改善を反映した機能スコア180を出力することになる。ある計画された手術(たとえば、脊椎固定)は、成功の機会が多くなるものの、別の手術(たとえば、AIDR)は、長期的な成功の機会がわずかに少なくなる一方で、より大きな可動域を得られる可能性がある。機能スコアは、2値(すなわち、成功/失敗のみ)で成功率を与えるように構成されていてもよいし、他の因子を考慮するようになっていてもよい。場合により、機能スコアは、システムがパラメータの加重和を使用して、手術の成功が期待される転帰を規定するように、成功または失敗転帰と関連付けられた生体力学的パラメータごとにカットオフ値または値の範囲を有することになる。開示の方法のいくつかの例示的な実施態様においては、予測によって最適な解剖学的および生理学的ソリューションが提供されるため、システムは、所望の生体力学的および幾何学的パラメータに一致するインプラントの3次元印刷または製造の指示を出力する。ステップ185において、パラメータの最適化は、手術方式、手術対象の脊椎分節の数、および各椎間レベルで挿入されるインプラントの種類(インプラントの剛性、インプラントの高さ、およびインプラントの角度を含む)のうちの少なくとも1つに基づいていてもよい。
【0059】
ここで図2を参照して、この図は、図1に示すプロセスの代替的な一実施態様を示しており、一組の利用可能なインプラントのうちの1つが選択される。評価対象のデータはモジュール200により表され、ステップ(モデル)210、220、230、および240を含み、図3において別途記載の通り、その結果は動的分析出力240となる。最適化モジュール201は、個々の対象に関するデータ(ステップ(モデル)220、230、および240)および評価対象に計画されたものと同様の外科的矯正を過去に受けた患者に関するレトロスペクティブデータを考慮した対象のデータの分析の両者を含む(機械学習アルゴリズム260、270)。機械学習アルゴリズム260におけるレトロスペクティブデータの使用により、力およびモーメント、圧力、応力、ならびに歪を含む対象の生体力学的データが分類されるとともに、機能スコアが決定され、これにより計画された手術の転帰が予測され得る。ステップ252においては、対象の病理が即時の外科的矯正を認可するかについての評価がなされる。この決定は、外科医により行われるようになっていてもよいし、システムに入力された所定の基準により行われるようになっていてもよい。深刻でない場合は、モジュール200に戻り、実行する手術の決定がなされるまでの必要に応じて評価を繰り返すことにより、分析を経時的に繰り返すことも可能である(ステップ245の反復)。このような評価の経時的な繰り返しによって、評価対象患者の臨床経過を定量的に観察可能となり、外科的修復が必要となりそうなタイミングをシステムで予測可能となる。レポートは、外科的矯正の評価を必要とする脊椎の病理学的パラメータに関する情報を提供する。機能スコアは、図6Aおよび図6Bにおいてより詳しく説明する通り、手術が成功した患者の術後データに基づき、成功転帰となるために必要な関連する重要なパラメータおよび明らかに失敗の転帰と関連付けられたパラメータの値の範囲を決定する。そして、機能スコアの評価により、所与のインプラントを使用するステップ270の所定の基準を満たすかが判定される。満たさない場合は、ステップ285において、モデルに別の手術が埋め込まれる。満たす場合は、手術の生体力学的パラメータが最終レポートに含まれる。すべての潜在的なインプラントが評価されると、最適化モジュールの各反復の結果のほか、対象の固有脊椎パラメータ250を考慮した最終レポート290が発行される。
【0060】
機械学習アルゴリズムにおいては、手術成功転帰の少なくとも3つの考え得る分類が単独または組み合わせにて用いられるようになっていてもよい。機械学習のこれら3つの方法またはカテゴリは、2分類(成功/失敗)、マルチクラス分類(たとえば、明らかな成功、中間、明らかな失敗)、または連続スコアリングの回帰である。値が許容範囲内である場合、このプロセスは、外科手術を実行するための推奨を含む最終レポート190、290を発行することになる。脊椎の生体力学および生体構造に影響を及ぼす状態に対して評価対象が脊椎矯正を必要とすることを所与として、対象は、脊椎病理の矯正に少なくとも1つの脊椎インプラントを必要とすることが予想される。この要件は、機能スコア基準に反映されることになるが、これは、外科的矯正の計画なしでは機能的基準を満たさない。このような場合、このプロセスは、ステップ270からステップ285に進み、患者の脊椎の生体力学的モデルに対して、選択された複数組の異なるインプラントが順次挿入される。この方法は、複数の椎骨分節の固定も脊椎変形の矯正もなく、運動を維持するために対象が1回の椎間板置換を必要とする場合の例により示される。考え得る各関連インプラントは、対象の脊椎に埋め込まれる背景において、動的分析モデル230を通過する。対象の脊椎のROM、モーメントおよび力分布、ならびに応力および歪み分析を含む動的分析出力240は、テストされている特定のインプラントの生体力学的特性、サイズ、形状、および剛性に基づいて変化することが予想される。各インプラントは、上述の通り、有益な生体力学的転帰に術後寄与する因子を規定した後、インプラントが仮想的に埋め込まれた患者の脊椎の重要なパラメータおよび各パラメータの値の範囲を考慮した式に基づいて評価される。
【0061】
引用例は、椎間板置換を1回行った場合であるが、この方法の開発は一般的に、患者の動的分析に基づく任意回数の脊椎矯正術等の手術の成功または失敗の予測に適用可能である。また、この方法は、手術が必要であるかについての決定を可能にする。計画された脊椎矯正術の最適化は、先行ステップで得られたスコアに基づき、形状の最適化(すなわち、2つ以上の椎骨間の前弯角度)、インプラントの種類(すなわち、人工椎間板対椎体間ケージおよび椎体間ロッド)、手術対象の脊椎レベルの数、ならびに手術方式(すなわち、前方、後方、側方、または他の手法)を含み得る。テストされるインプラントごとに、機械学習アルゴリズム160、260を用いた手術転帰の予測では、成功転帰と関連付けられたパラメータおよび各パラメータの値の範囲を考慮することにより、過去の患者の転帰の背景において、動的分析の出力に基づいて機能スコアを生成することになる。単一の椎骨レベルおよび患者特性に対して、最適化モジュール101、201で潜在的に好適な一組の人工椎間板インプラントをテストした後、患者の動的分析の制約内で最適な生体力学的矯正および所望の生理学的特性をもたらすインプラントが選択される。その後、最適化モジュール分析の結果の詳細を示した最終レポート190または290が発行される。
【0062】
図1または図2において、手術転帰は、1つまたは複数のパラメータであってもよいし、パラメータの組み合わせであってもよい。手術転帰パラメータの例としては、以下が挙げられる。
a)患者報告の転帰の尺度(PROM):患者は、経時的な変化を追跡するため、治療の前後に、痛み、障害、および健康関連の生活の質(HRQOL)と関連する質問に答える。一般的なPROMには、痛みの視覚的アナログスケール(頸部、腕、中腰、脚部等)およびOswestry障害指数を含む。PROMは、脊椎関連の処置および研究における患者由来の転帰の金字塔であり、不十分な転帰に対して良好な転帰を見分けるため、臨床的に重要な最小限の差を基準として評価されることが多い。
b)X線アライメント転帰:冠状および矢状X線画像の使用により、グローバルアライメントおよび領域固有のアライメントの態様を反映したさまざまな脊椎アライメントパラメータを測定する。そして、これらのパラメータは、理想的な再アライメント目標に照らし合わされる。PROMと同様に、アライメント転帰が手術前後に追跡される。理想化された再アライメント目標は、健康で無症状の対照群から導出され、変形の重症度、年齢、骨質、骨形態等の調整因子を考慮することができる。アライメント変形の重症度は、構造的転帰およびPROMとの関連付けが示された閾値を基準として評価されることが多い。
c)機能転帰の尺度:運動追跡技術を用いて患者の物理的機能を評価することにより、機能的ステータスおよび能力の客観的尺度を提供することができる。機能転帰の尺度は一般的に、通常の日常生活の活動(ADL)に対して導出され、運動学的、運動的、および神経筋的要素を含み得る。他の転帰決定因子と同様に、機能転帰の尺度は、手術の前後に追跡され、一般的には健康管理データと照らし合わせられる。
【0063】
ここで図3を参照して、この図は、各対象の個々の分析に関して、モジュール100、200に関する別途詳細を開示している。モジュール300は、畳み込みネットワークアーキテクチャの使用の有無を問わず、自動CTまたはMRI分節化310に由来し得るような脊椎および軟部組織の3次元解剖学的モデリングに基づく。この評価は、上半身に対して実行され、椎骨、筋肉、靭帯、椎間板、および脊椎可動域、ならびに人体測定データ等の要素を分析する。人体測定結果は、人体のサイズ、形状、および組成に関する一連の定量的かつ体系的な測定結果であって、筋肉、骨、および脂肪組織の測定結果を含む。人体測定の複数の中心的要素は、身長、体重、体格指数(BMI)、身体周囲径(ウエスト、ヒップ、および四肢)、ならびに皮下脂肪厚である。これらの包括的な解剖学的および生理学的データ320は、動的分析モジュール330への入力として使用される。
【0064】
動的分析モジュール330(仮想予測および評価技術)は、筋骨格、有限要素解析、有限差分解析、および有限体積解析のうちの少なくとも1つ、通常はそのすべてに基づき得る。筋骨格モデル分析は、たとえばAnyBodyソフトウェアを用いて実行されるが、これにより、環境と協調して働く人体を模擬する筋骨格モデルが生成される。これらのシミュレーションでは、その他の方法では予測、測定、または決定が困難な体内の力、トルク、および運動を定量化する。生体力学的分析の目標には、耐荷重要件の決定およびインプラント配置の最適化を含み、手術成功の可能性を高めるものである。有限要素解析では、対象の脊椎の背景でのインプラントを評価し、現実世界の力、モーメント、応力、歪み、および他の物理的効果に対する反応を予測する。有限要素解析は、所与のインプラントが機能しなくなるか、その早さ、または設計通りに機能することになるかを予測するのに用いられる。これらの予測は、脊椎-インプラントアセンブリに作用する応力を考慮して、特定のインプラントの構成材料に関する既知の材料特性に基づいていてもよい。対象分析モジュールの出力340には、一組の潜在的なインプラントに関するデータを含み、直立、脊椎屈曲および延伸、左右側屈、および左右捩り等のさまざまな状態下での合力、可動域、およびモーメントを比較する。これらの測定は通常、脊椎の関連領域におけるL1-L2、L2-L3、L3-L4、L4-L5等の各椎骨対および関節に対して実行される。所与の潜在的なインプラントに対する生体力学的分析の出力は、埋め込まれる両関節(たとえば、L2-L3)への影響のほか、脊椎領域全体(たとえば、L1-L5)に予測される影響の背景において与えられる。また、潜在的な各インプラントの出力は、検討中の一組のインプラントそれぞれの出力と比較される。これらのデータには、固有患者レポート(図1のステップ150、図2のステップ250)に含まれる分析を含む。そして、図5に別途記載の通り、これらの同じデータが後で、動的分析/モデル130、230の動的分析ステップに用いられる。
【0065】
ここで図4を参照して、この図は、開示の方法の例示的な実施態様のステップを示しており、一組の潜在的なインプラントの一部が対象の3次元脊椎モデルにおいて個別かつ仮想的に埋め込まれる。この方法においては、この時点でDICOM画像がコンピュータ支援描画(CAD)モデルに変換され、骨要素ならびに椎間板、筋肉、靭帯、および腱等の軟部組織の両者を含む患者の脊椎の構成要素を表示する詳細な2次元または3次元表現が生成されている。CADプログラムは、最適化モジュールの分析プロセス全体で用いられる脊椎画像の個々の3次元要素を生成する。置換対象の椎間板としては、潜在的に好適な一組の人工椎間板48が選択される。所与の対象について、選択集合は、脊椎レベルならびに固有椎間板の重量および寸法等の他の対象固有の検討事項に対して適当なものとなる。また、潜在的に好適な一組の人工椎間板48はそれぞれ、CADモデル49に順次埋め込まれることになる。各脊椎-インプラント構成に対しては、有限要素および/または筋骨格モデルによる動的分析43が実行され、ステップ44においてデータ一式が出力される。これらのサンプルデータは、図3のステップ出力340に示すものに対応し、上述の人工椎間板置換術のような人工椎間板であれ、脊椎固定術の場合の椎弓根スクリュー、椎体間ロッド、または椎体間ケージ等の他のインプラントであれ、潜在的に好適な各インプラントの運動、力、モーメント、応力および歪み分析等を比較する。これらの分析は、特定の対象の脊椎病理の兆候に応じて、屈曲、延伸、側屈、および捩れといったさまざまな姿勢において実行される。
【0066】
ここで図5Aおよび図5Bを参照して、これらは、最適化モジュール(図1の101、図2の201)の代表的な一実施態様に使用し得るステップの概略を与えるフローチャートであり、図7においてより広く説明する。図5Aのステップ51Aにおいては、過去の患者のCT/MRI撮像データおよび手術転帰を含むレトロスペクティブデータ(術前および術後DICOM)を使用することにより、基準集団から第1のモデルを生成する。ステップ52Aにおいては、動的分析の使用によって、筋骨格モデルならびに/または基準集団の各患者の脊椎性能を術前および術後に模擬する有限要素解析を用いた仮想患者固有モデルを生成する。このモデルの出力は、各運動軸において一覧化されたパラメータ(ROM、力、モーメント、圧力、歪み、応力等)である。ステップ53Aにおいては、図7において別途説明する通り、患者データを「トレーニングセット」および検証用の「テストセット」に分割する。ステップ54Aにおいては、たとえば分類またはクラスタリングを使用する機械学習アルゴリズムを「トレーニングセット」でトレーニングし、機械学習モデルを「テストセット」で検証する。これらと同時および/またはこれらの後、図5Bに示すように、ステップ51Bにおいては、それぞれ固有の術前CT/MRIデータ(DICOM)を使用して、新たな現行対象に対する仮想モデルを生成する。ステップ52Bにおいては、動的分析の使用によって、患者の術前脊椎性能を模擬するこの新たな対象の患者固有の仮想モデル(たとえば、CADモデル)を生成する。そして、このモデルを本方法の入力として用いることにより、手術が必要であるかを決定することができる。手術が決定された場合は、モデルの使用(たとえば、ステップ52BのCADモデルの使用)によって、患者を評価する特定の手術を模擬することができる。ステップ53Bにおいては、ステップ54Aからのトレーニングおよび検証済みモデルの使用によって、モデル出力と患者の転帰との間の相関(高い成功/失敗転帰と関連付けられるパラメータ集合)を確定する。ステップ54Bにおいては、確定した相関を個々の患者の予測出力と比較して、特定種類の手術の成功/失敗に関する個々の患者の確率を評価する。
【0067】
ここで図6Aを参照して、この図は、図5Aのステップ54Aに記載するとともに図6Bおよび図7のステップ711、712に示すようなトレーニングモデルの進行を示している。過去に脊椎矯正術を受けた患者から、任意数のデータ源に由来する臨床データが収集され、分析される。これらのデータから、重要な生体力学的パラメータおよび各パラメータの値の範囲を考慮した式が定義され、特定の疾患を有する特定の患者における成功転帰に寄与する生体力学的因子の規定のため、各関連パラメータの相対的な重みが決定される。これらのデータには、脊椎矯正術を受けた各患者の術前61および術後62の両画像検査を含む。開示の方法の図示の実施態様において、患者は、脊椎固定術の術後であり、それぞれに脊椎安定化のための複数組の椎弓根スクリューおよび椎体間ロッドが埋め込まれている。収集された撮像データは、図3図5Bに上述した機械学習アルゴリズムに従って分析され、ハードウェアが埋め込まれた後、各患者の脊椎の3次元CADモデルが術前および術後に生成される。ハードウェアは、脊椎の生体力学に影響を及ぼすことが予想されるため、術前および術後の両分析が比較に用いられるようになっていてもよい。場合によっては、術前データまたは術後データのみを使用して、別個の分析が実行されるようになっていてもよい。動的分析の出力は、術前分析については矢印61により、術後分析については矢印62により表される。それぞれが予測機械学習アルゴリズム63に別個に入力される。
【0068】
図1のステップ130および図2のステップ(モデル)230の動的分析(通常は、逆運動学および有限要素解析を含む)から、関連する生体力学的な力、モーメント、可動域、およびモーメントが直立姿勢で計算される。アルゴリズムの逆運動学および有限要素解析の部分は、たとえば特定の角度(たとえば、25°)の屈曲の姿勢で見られると予想される生体力学的パラメータを計算するための外挿に使用される。そして、動的分析の出力は、機械学習アルゴリズム63への入力として使用され、手術転帰が予測される。予測アルゴリズムは、少なくとも2つの機能を実行する。第一に、各患者の外科的な脊椎矯正術の相対的な成功または失敗を決定する。予測スコアは、たとえば機械学習分類器から得られる成功または失敗の確率である。第二に、各患者の術前および術後撮像パラメータの生体力学的特性を分析する。これらの両ステップの出力により、アルゴリズムは、成功転帰と関連付けられた生体力学的特性と失敗転帰と関連付けられた生体力学的特性との間の相関を決定する。成功または失敗は、複数のパラメータおよび側面によって決まり、患者の状態の広範な術後変化を含むとともに、主観的な結果が外科医と患者とでは異なり得るため、成功の定義の定量的な評価を決定する必要がある。
【0069】
機械学習アルゴリズムの例示的な一実施態様において、トレーニング集団の結果には、すべての基準によって「最適」と規定され得る結果(すなわち、成功)およびすべての基準によって明らかに失敗である結果を含むことになる。その中間には、一部成功、あるいは、1つもしくは複数の生体力学的もしくは解剖学的測定パラメータまたは患者の満足度に関して成功と転帰が規定され得る場合が相当数存在し得る。時間の経過とともに、より高い成功率と関連付けられた生体力学的パラメータとより低い成功率と関連付けられたパラメータとがより明確に区別されるようになる。
【0070】
成功転帰と関連付けられた生体力学的特性と失敗と関連付けられた生体力学的特性との間の相関を予測術後生体力学的パラメータに適用することによって、所定のレーティングに従って計画された脊椎外科手術の成功予測を等級分けすることを可能にする。計画された脊椎外科手術の予測転帰の等級分けは、計画された外科手術の実行または非実行に関する健康管理者による適当な決定を可能にし、対象の整形外科の成功の機会の最適化および/または整形外科の失敗のリスクの低減を図る。
【0071】
脊椎手術の転帰を最適化する従来の試みと比較して、この方法を使用する利点は、過去に手術に成功した個人の生体力学的パラメータと現在の評価対象との相関に基づくことである。生体力学的パラメータのほか、解剖学的測定結果を使用することにより、外科医は、成功の機会が最も多くなる脊椎矯正術をより良好に予測および計画可能となる。対象の術後生体力学的パラメータを術前に予測する方法は存在しないため、基準集団の使用により、有益な生体力学的特性を生成する可能性が最も高い手術を選択することを目的として、術前および術後の生体力学的要素を仮想的に比較可能となる。
【0072】
この図6Aのステップ(アルゴリズム)63に表す原理および方法を図6Bにおいてより詳しく説明するが、これは、例示的な基準集団と、手術転帰の予測ならびに有益な長期的結果を生成する可能性が最も高い手術およびインプラントの選択を目的として開示の方法が適用され得る様態と、を示している。この例示的な方法は、複数の独立した相互接続モジュール601~606により構成される。モジュール601は、基準集団の各個人の術前特性に対してクラスタリング機械学習アルゴリズムを実行することにより、人体測定および生物物理学的パラメータが類似する患者を識別する。モジュール601の例示的な機械学習アルゴリズムはニューラルネットワークを示すが、クラスタリングの実行には、多くの異なる方法が使用され得る。モジュール602は、基準集団の患者をトレーニングサブセットまたはテストサブセットへとランダムに割り当てる。モジュール603は、トレーニングサブセットおよびテストサブセットの両者について、基準集団の各個人の術前および術後撮像データに分節化および動的分析を適用する。モジュール604においては、予測モデルの生成により、分類または回帰機械学習を使用して、生体力学的パラメータを手術転帰の成功対失敗と相関させる。モデルは、図7において別途詳述する通り、トレーニング集団でトレーニングされ、テスト集団で検証される。モデルのトレーニングおよび検証がなされると、モジュール605において、術前評価を受ける新たな患者または対象に適用され得る。モジュール606においては、モジュール601の転帰を含むクラスタ化基準集団に従って、新たな対象が最初に分類される。これとは独立して、図3に記載の通り、術前画像が分節化および動的分析を受けた後、モジュール605からの予測モデルが対象の生体力学的パラメータに適用される。選択されたインプラントの生体力学的表現を使用することにより、選択された意図した外科手術が患者の仮想モデルにおいて仮想的に実行されることになる。606におけるこの方法の最終出力は、基準集団のレトロスペクティブ分析により予測されたインプラントを使用して選択手術の長期的転帰を最適化する外科手術の推奨である。
【0073】
ここで図7を参照して、この図は、開示の方法の例示的な一実施態様に含まれるステップを示しており、動的分析定量モデル700の後、トレーニングおよび検証済み手術転帰予測モデル720によって所与の対象のデータが評価されることによって、上述の方法がすべて統合される。ステップ701においては、対象の人体測定データ、CT、MRI、およびX線ファイルが入力される。ステップ702においては、図1のステップ120に記載の通り、骨および軟部組織(すなわち、脊椎、筋肉、および靭帯)の分節化の実行によって、入力データが分析されるとともに仮想モデルが生成される。ステップ703においては、ステップ702の出力がステップ130、230、および330のような動的分析を受けるが、これには、ステップ704において生成された仮想モデルへの外科的介入および/またはインプラントの埋め込みを含む結果、ステップ705に示すように、ROM、モーメントおよび力分布、応力および歪み分析、骨強度を含む評価対象患者の個々の出力パラメータが得られる。ステップ705の出力(出力パラメータ)は、ステップ713への入力として使用され、ここでは、以下に説明する通り、手術転帰を予測するためのトレーニングおよび検証済みアルゴリズムがこの出力に適用される。
【0074】
一実施形態において、ボックス(手術転帰予測モデル)720のモジュールは、システムが手術転帰の予測を実現する方法を取り入れて、対象動的分析モジュール700のステップ705からの個々の患者の出力パラメータに適用する。この手順は、システムがセットアップされた場合に最初に実行され、より多くの患者からのより多くのデータが流れ得るように継続して更新されることで、モジュールが学習を継続する場合に精度が向上する。ステップ706Aおよび706Bにおいては、過去に脊椎矯正の外科手術を受けた患者のレコードから基準集団が選択される。これらの患者レコードには、ステップ701において特定の評価対象患者から収集された同じ種類の情報を含むが、術前ステップ(706A)および術後ステップ(706B)の両者の撮像結果および人体測定結果を含む点は除く。このようなレコードは、健康管理組織、病院、保険会社、またはそれぞれのリソースのプールに同意した民間外科医から得られる。いずれの場合も、基準集団は、評価対象と同様の地理的または遺伝的集団に由来するものとする。異なる臨床問題に対しては、各臨床病理学がその問題に固有のデータでトレーニングされるように、異なる機械学習モデルをトレーニングすることが必要となり得る。基準集団の大部分がトレーニングセット707を含むようにランダムに選定される一方、その他のレコードは、テストセット708を含むように確保される。トレーニングセット707からのデータは、ステップ702において特定の対象データに実行されるものに相当する分節化をステップ709で受け、その出力は、ステップ703において実行される動的分析に相当するステップ710の動的分析モジュールへの入力として使用される。そして、ステップ710の出力が機械学習モデル711に入力され、動的分析710において計算された生体力学的パラメータに関して、トレーニングセット707の個人に実行された外科手術の転帰が分析される。
【0075】
したがって、上記段落から当然のことながら、動的分析法によれば、計画された脊椎外科手術の成功/失敗の予測が可能となる。この方法は、コンピュータプロセッサ上で実行される。コンピュータプロセッサは、基準集団の少なくとも一部のメンバーそれぞれについて、術後および術前生体力学的パラメータの一方と脊椎外科手術の転帰との間の少なくとも1つの相関を受信する(レトロスペクティブデータ)。そして、コンピュータプロセッサは、対象の術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を使用して、脊椎手術の評価対象の仮想生体力学的モデルを生成する。コンピュータプロセッサは、対象の生成仮想生体力学的モデルから術前生体力学的パラメータを導出するとともに、計画された脊椎外科手術を模擬し、対象の生成仮想生体力学的モデルを使用して、対象の術後生体力学的パラメータを予測する。その後、コンピュータプロセッサは、少なくとも1つの相関を対象の導出術前生体力学的パラメータおよび予測術後生体力学的パラメータの少なくとも一方に適用し、所定のレーティングに従って、計画された脊椎外科手術の予測転帰を等級分けする。少なくとも1つの相関の適用は、所定のレーティングに従って計画された脊椎外科手術の予測転帰を等級分けすることを可能にする。計画された脊椎外科手術の予測転帰の等級分けは、計画された外科手術の実行または非実行に関する健康管理者による適当な決定を可能にし、対象の整形外科の成功の機会の最適化および/または整形外科の失敗のリスクの低減を図る。
【0076】
上記実施形態において、機械学習モデル711のトレーニングに用いられる基準集団の生体力学的データは、過去に脊椎矯正の外科手術を受けた患者のレコードから選択される。別の実施形態においては、シミュレーションシステムおよび/または筋骨格モデルから生体力学的データを導出し、脊椎運動によって各脊椎分節の少なくとも1つの目標値(または、正常な目標値の範囲)を決定することによって、健康な基準集団ならびに/または手術に成功もしくは失敗した1人もしくは複数人の対象の生体力学的データが機械学習モデル711のトレーニングに用いられる。たとえば、60~65歳の健康な女性等の集団において、30°屈曲時の椎間板それぞれの正常な椎間板内圧の範囲を決定する。一実施形態において、データ(すなわち、術前または術後の生体力学的パラメータ)は、たとえばBMI/体形またはその他任意の正規化方法によって正規化され得る。そして、このデータは、矯正術で実現しようとする目標として機能する。たとえば、この目標は、対象の生成仮想生体力学的/筋骨格モデルを使用して、整形および/または脊椎手術の評価対象の少なくとも術後の生体力学パラメータに基づく計画された整形および/または脊椎手術の予測転帰と比較可能である。対象に計画された整形および/または脊椎手術の予測転帰が目標または値の範囲と重なる場合、健康管理者は、対象に対して、計画された整形および/または脊椎手術を進めるように決定してもよい。ただし、対象に計画された整形および/または脊椎手術の予測転帰が目標または値の範囲と重ならない場合、健康管理者は、代替的な整形および/または脊椎手術の実行を決定するようにしてもよいし、手術を一切行わないように決定してもよい。
【0077】
一実施形態においては、上記段落から当然のことながら、整形外科手術を計画するための方法が提供される。この方法は、コンピュータプロセッサにより実行される。この方法は、コンピュータプロセッサにより、計画された整形外科手術の少なくとも1つの目標を受信することであり、少なくとも1つの目標が、1人もしくは複数人の健常者および/または手術に成功もしくは失敗した1人もしくは複数人の対象の仮想生体力学的モデルから導出される生体力学的パラメータ、ならびに/または、ある脊椎状態を有していた複数人の過去の患者の脊椎を含む骨、靭帯、および筋肉のうちの1つもしくは複数の既存の基準データに関連する、ことと、コンピュータプロセッサにより、整形外科の評価対象の術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を使用して、対象の仮想生体力学的モデルを生成することと、コンピュータプロセッサにより、計画された整形外科手術を模擬し、対象の生成仮想生体力学的モデルを使用して、対象の術後生体力学的パラメータを予測することと、コンピュータプロセッサにより、少なくとも1つの目標を対象の予測術後生体力学的パラメータに適用し、対象の術後生体力学的パラメータに基づく計画された整形外科手術の予測転帰を少なくとも1つの目標と比較することと、を含む。少なくとも1つの目標を対象の予測術後生体力学的パラメータに適用することは、所定のレーティングに従って計画された整形外科手術の予測転帰を等級分けすることを可能にする。計画された整形外科手術の予測転帰の等級分けは、計画された外科手術の実行または非実行に関する健康管理者による適当な決定を可能にし、対象の整形外科の成功の機会の最適化および/または整形外科の失敗のリスクの低減を図る。
【0078】
一実施形態において、コンピュータプロセッサは、対象の生成仮想生体力学的モデルから、術前生体力学的パラメータをさらに導出する。一実施形態において、コンピュータプロセッサは、対象の人体測定データに対して、対象の術後生体力学的パラメータおよび/または予測転帰を正規化する。あるいは、対象の術前生体力学的パラメータに対して、対象の術後生体力学的パラメータおよび/または予測転帰を正規化する。
【0079】
モデルは、図6Aのステップアルゴリズム63および図6Bのように確定され、成功転帰が失敗転帰から識別された後、同じくステップ709の分節化およびステップ710の動的分析を受けたテストセット708からのデータを用いて検証される。テストセットは、ステップ711において策定された機械学習アルゴリズムを使用して評価される。ステップ712においては、テストセット708からのデータに適用されたステップ709および710からの出力の使用により、ステップ711において得られた結果が検証される。
【0080】
モデルが検証され、所定の精度で実行されたら、脊椎矯正を必要とする現在の対象に対して、アルゴリズムが適用されるようになっていてもよい(予測モジュール730参照)。ステップ713においては、ステップ705の評価対象からの出力が成熟モデルに入力されて評価される。この予測アルゴリズムを用いた分析により、ステップ714においては、対象の脊椎矯正術の推奨が生成される。これらの推奨には、生体力学的パラメータおよび成功転帰が類似の先行する患者結果に対象が一致するように、基準集団に対するモデル分析の結果を考慮している。分析する患者が増えるほど、アルゴリズムおよびモデルの精度および性能の向上が期待できる。開示の方法のいくつかの実施態様においては、術後人体測定データおよび撮像データがステップ715において収集され、基準集団に入力される。このように、このシステムは、将来に向けて、推奨の更新および転帰の改善を継続するように構成される。
【0081】
成功転帰と関連付けられた生体力学的パラメータと成功転帰となるように実行された外科的介入の種類との間には相関が予想され、脊椎矯正の評価を受けた対象に対して、これらの介入が選択および推奨され得るようになっている。現在の対象の生体力学的パラメータを手術で成功転帰となったトレーニングセットおよびテストセット中の患者のパラメータと照合することにより、外科医は、評価対象の転帰が成功となる可能性が最も高い1つまたは複数の考え得る手術を選択することができる。
【0082】
ここで図8を参照して、この図は、対象に対して潜在的なインプラントが評価される様子を示している。個々の患者のパラメータ81が分析され、これに基づいて、一組の潜在的なインプラントがステップ82で選択される。機械学習予測アルゴリズム85においては、潜在的なインプラントのうちの1つが埋め込まれる背景において、分析された患者の脊椎生体力学的パラメータが機械学習予測アルゴリズム85に入力される。このアルゴリズムは、所与の潜在的なインプラントの成功の可能性を予測し、機能スコア基準テスト86において、このシステムは、提案のインプラントがその期待される機能を満たすかを判定する。ステップ87において、このシステムは、すべての潜在的なインプラントが評価されたかを判定する。判定された場合、このシステムは、ステップ(レポート)89において、成功転帰になると予測されるインプラントのランキングリストを提供するとともに、その脊椎矯正術の推奨を行う。対象の分析データ81に対して機械学習予測アルゴリズム85を実行した後、このシステムは、手術転帰の成功に合致するものとして図6Aで規定された生体力学的因子および値と患者の機能スコアを比較することにより、推奨された矯正術に対して機能的基準ステップ86が満たされるかを評価する。また、基準集団に対する過去の外科手術の分析によって、一組の有益な生体力学的パラメータ値が判定される。存在する場合は、選択された特定の手術が受け入れられ、このシステムは、外科手術の推奨89へと進む。機能スコア基準が満たされない場合、選択された手術インプラントは、屈曲、延伸、側屈、および軸方向回転において所望の生体力学的な力、モーメントを満たさないものと予測される。この場合、システムは、ステップ88に進んで、形状が改善されるとともに運動が可能となった別のインプラントを選択する。ステップ83において、このシステムは、動的分析を実行し、ステップ88において選択されたインプラント特性により対象の生体力学的特性を再評価する。この反復ループは、すべての潜在的なインプラントが評価されるまで実行されるようになっていてもよく、すべてが評価された場合、このシステムは、生体力学的な力に関して手術転帰が成功となる可能性に従って潜在的なインプラントをランク付けしたレポート89を提供する。
【0083】
ここで図9を参照して、この図は、開示の方法を使用することにより特定の患者に対して個別のインプラントが生成され得る様子を示している。図2図4において説明した通り、対象の脊椎の背景において埋め込まれる潜在的な各インプラントの生体力学的パラメータが決定されると、評価対象の最適化インプラントが選択され得る。これらのパラメータには、ステップ90のように、屈曲、延伸、側屈、軸方向回転、力、およびモーメントといったさまざまな姿勢において最適化された可動域を含む。ステップ90の出力は、O.DavidおよびM.Shohamによって2020年6月18日に公開され、Technion Research & Development Foundation, LTD.に譲渡されたWO2020/121054A2「Motion preservation by an artificial spinal disc」に記載の数学的原理によりステップ92で分析される潜在的な各インプラントの一組の剛性91を生成する方法93への入力として使用される。モジュール93の出力に基づいて、ステップ94では、特定の力およびモーメントの下で必要な可動域を有する最適なインプラントまたは一組のインプラントの幾何学的および生体力学的パラメータの数学的記述が生成され得る。これらの数学的な値は、たとえば3次元印刷によって特定のインプラントを構築するのに用いられる。例示的な一実施態様において、1つまたは複数の最適化されたインプラントは、形状およびばねアレイが規定された少なくとも1つの人工椎間板または治療対象の患者に必要な力および許容される屈曲に整合する脊椎固定用の一組の椎体間ケージおよびロッドを含む。
【0084】
ここで図10を参照して、この図は、開示の方法の実施形態を実行するための例示的なシステム1000を示している。システム1000は、少なくとも1つのプロセッサおよびプロセッサユニット1001、ランダムアクセスメモリ(RAM)1002、ユーザインターフェース1003、ネットワークインターフェース1006、動的分析用ユニット1004、ならびに少なくとも1つのデータベースもしくはクラウドストレージ1005を備える。プロセッサユニット1001は、上述のような機械学習用のアルゴリズムおよびコントローラをさらに備える。RAM1002は、剛性マトリクス(図9に示す)、さまざまな脊椎レベルおよび外科適応に適したさまざまな特徴および特性を有するインプラントのライブラリ、生体力学的分析の結果、ならびに対象の医用データおよび画像検査を含む。データベースまたはクラウドストレージ1005は、DICOMプロトコル、生体力学的モデル特性、ならびに基準集団の術前および術後データ(図7に示す)を含む。動的分析1004は、逆運動学および有限要素解析の実行に必要なコーディングを含む。
【0085】
上記段落から当然のことながら、計画された脊椎外科手術の転帰を予測するための方法が提供される。この方法は、a)基準集団メンバーの術前撮像データおよび人体測定データの一方からの術前生体力学的パラメータを分析することと、b)メンバーに対する脊椎外科手術の実行後、メンバーの術後撮像データおよび術後人体測定データの少なくとも一方からの生体力学的パラメータを分析することと、c)所定のレーティングに従って、基準集団のメンバーの脊椎外科手術の成功を等級分けすることと、d)基準集団の別のメンバーに対してステップa)~c)を繰り返すことと、e)基準集団の少なくとも一部のメンバーそれぞれについて、術前生体力学的パラメータと術後生体力学的パラメータとの間の少なくとも1つの相関を決定することと、f)脊椎外科手術の評価対象の術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方からの術前生体力学的パラメータを分析することと、g)外科的介入を模擬するとともに、脊椎外科手術の評価対象の予測術後生体力学的パラメータを分析することと、h)ステップe)において決定した少なくとも1つの相関をステップf)およびg)の少なくとも一方に適用し、所定のレーティングに従って、計画された脊椎外科手術の予測転帰を等級分けすることと、を含む。この方法は、少なくとも1つの相関を予測術後生体力学的パラメータに適用することをさらに含み、これは、所定のレーティングに従って計画された脊椎外科手術の予測成功を等級分けすることを可能にする。計画された脊椎外科手術の予測転帰の等級分けは、計画された外科手術の実行または非実行に関する健康管理者による適当な決定を可能にし、対象の整形外科の成功の機会の最適化および/または整形外科の失敗のリスクの低減を図る。
【0086】
また、上記段落から当然のことながら、計画された脊椎外科手術の成功を予測するための方法であって、a)術前撮像データおよび術前人体測定データの少なくとも一方から、基準集団のメンバーの術前生体力学的パラメータを分析することと、b)メンバーが脊椎外科手術を受けた後、術後撮像データおよび術後人体測定データの少なくとも一方から、術後生体力学的パラメータを分析することと、c)所定のレーティングに従って、脊椎外科手術の成功を等級分けすることと、d)基準集団の別のメンバーに対して、ステップa)~c)を繰り返すことと、e)基準集団の少なくとも一部のメンバーそれぞれについて、術前および術後生体力学的パラメータの少なくとも一方と脊椎外科手術の成功との間の少なくとも1つの相関を決定することと、f)脊椎外科手術の評価対象の術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方からの術前生体力学的パラメータを分析することと、g)術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を使用して、対象の仮想生体力学的モデルを生成することと、h)ステップe)において決定した少なくとも1つの相関を対象の分析術前生体力学的パラメータおよび予測術後生体力学的パラメータの少なくとも一方に適用し、所定のレーティングに従って、計画された脊椎外科手術の予測転帰を等級分けすることと、を含む、方法が提供される。
【0087】
したがって、一般的に、たとえば本開示の一実施形態においては、計画された脊椎外科手術の成功を予測するための方法であり、コンピュータプロセッサにより実行される、方法が提供される。この方法は、コンピュータプロセッサにより、基準データを受信することを含む。基準データは、(a)計画された整形外科手術の少なくとも1つの目標であり、(i)1人もしくは複数人の健常者、(ii)手術に成功もしくは失敗した1人もしくは複数人の対象の仮想生体力学的モデルから導出される生体力学的パラメータ、ならびに/または、(iii)ある脊椎状態を有していた複数人の過去の患者の脊椎を含む骨、靭帯、および筋肉のうちの1つもしくは複数の既存の基準データに関連する、少なくとも1つの目標、ならびに/または、(b)基準集団の少なくとも一部のメンバーそれぞれの術後生体力学的パラメータおよび術前生体力学的パラメータの少なくとも一方と整形外科手術の転帰との間の少なくとも1つの相関を含み得る。たとえば、既存の基準データは、書籍のデータ、参考文献のデータ、および/またはオンラインデータソースからのデータを含む。
【0088】
この方法は、コンピュータプロセッサにより、整形外科の評価対象の術前撮像データおよび人体測定データの少なくとも一方を使用して、対象の仮想生体力学的モデルを生成することと、コンピュータプロセッサにより、計画された整形外科手術を模擬し、対象の生成仮想生体力学的モデルを使用して、対象の術後生体力学的パラメータを予測することと、コンピュータプロセッサにより、基準データを対象の前記予測術後生体力学的パラメータに適用することと、をさらに含む。基準データを対象の予測術後生体力学的パラメータに適用することは、所定のレーティングに従って計画された整形外科手術の予測転帰を等級分けすることを可能にする。計画された整形外科手術の予測転帰の等級分けは、計画された外科手術の実行または非実行に関する健康管理者による適当な決定を可能にし、対象の整形外科の成功の機会の最適化および/または整形外科の失敗のリスクの低減を図る。
【0089】
本開示の別の実施形態においては、計画された整形外科手術の成功を予測するための方法であり、コンピュータプロセッサにより実行される、方法が提供される。この方法は、コンピュータプロセッサにより、基準データを受信することと、コンピュータプロセッサにより、整形外科の評価対象の術前撮像データ、術後撮像データ、および人体測定データのうちの少なくとも1つを使用して、対象の仮想生体力学的モデルを生成し、評価対象の生成仮想生体力学的モデルを生成することと、コンピュータプロセッサにより、計画された整形外科手術を模擬することであり、模擬インプラントを対象の生成仮想生体力学的モデルに組み込むことを含む、ことと、コンピュータプロセッサにより、模擬の結果を基準データと比較することと、コンピュータプロセッサにより、基準データに基づいて、インプラント、骨、靭帯、および筋肉に加わる応力がインプラントの破壊点を越えているかを判定することと、を含む。一実施形態において、基準データは、(a)手術に成功もしくは失敗した1人もしくは複数人の対象からの基準データ、ならびに、(b)ある脊椎状態を有していた複数人の過去の患者の脊椎を含む骨、靭帯、および筋肉のうちの1つもしくは複数の既存の基準データの少なくとも一方を含み得る。別の実施形態において、基準データは、(i)人間の患者の骨、靭帯、および/もしくは筋肉、(ii)1つもしくは複数のインプラントの構造特性、(iii)1つもしくは複数のインプラントの材料特性、ならびに(iv)人間の患者の脊椎に加わる力のうちの1つまたは複数に関する書籍のデータ、参考文献のデータ、およびオンラインデータソースからのデータのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0090】
上記段落においては、図5Aおよび図5Bを参照しつつ、最適化モジュールの実施態様において例示的なステップを提供した(図1の101、図2の201)。図5Aおよび図5Bに示す例示的な実施形態においては、(図5Aの)ステップ54Aからのトレーニングおよび検証済み機械学習モデルの使用によって、モデル出力と患者の転帰との間の相関(高い成功/失敗転帰と関連付けられるパラメータ集合)を確定する(図5B)。代替的な一実施形態においては、図11に示すように、機械学習モデルが使用されず、代わりに、成功/失敗を予測する既知または既存の基準データおよび/または文献閾値が使用される。たとえば、脊椎にチタンロッドを組み込むことで手術が模擬される場合、(ロッドに印加された力/モーメントにより)チタンロッドに加わる応力が既知の閾値に基づくチタンロッドの破壊点を超えているとの判定がなされ得る。さらに別の実施形態においては、モデル出力と患者の転帰との間の相関の確定に用いられる(図5Aの)ステップ54Aからの検証済み機械学習モデルならびに成功/失敗を予測する既存の基準データおよび/もしくは文献閾値の両者を使用可能である。
【0091】
図11を参照して、ステップ111においては、それぞれ固有の術前CT/MRIデータ(DICOM)を使用して、新たな現行対象に対する仮想モデル(たとえば、CADモデル)を生成する。ステップ112においては、このモデルを使用して、患者が評価を受ける手術を模擬するとともに(たとえば、患者の模擬脊椎に対するチタンロッド等のインプラントの模擬組み込み)、動的分析によって、患者の術前脊椎性能を模擬する。ステップ114においては、インプラントに印加された力を含むシミュレーションの結果を基準データ(たとえば、模擬患者の体内に力が加わる状態でのチタンロッド等のインプラント、骨、靭帯等の破壊点の既知の閾値等)と比較する。そして、ステップ116においては、ステップ114において実施したシミュレーションとの基準データの比較に基づいて、個々の患者の成功または失敗の確率に関する判定および/または評価を行うことができる。たとえば、ステップ116においては、(チタンロッド等のインプラントに印加された力/モーメントにより)ロッド等のインプラントに加わる応力が既知の閾値に基づくチタンロッド等のインプラントの破壊点を超えているかを判定することができ、超えている場合は、個々の患者に対して提案されたインプラントおよび/または外科手術が失敗となる。
【0092】
ここで図12を参照して、この図は、開示の方法の実施形態を実行するための別の例示的なシステム1200を示している。システム1200は、少なくとも1つのプロセッサおよびプロセッサユニット1201、ランダムアクセスメモリ(RAM)1202、ユーザインターフェース1203、ネットワークインターフェース1206、動的分析用ユニット1204、ならびに少なくとも1つのデータベースもしくはクラウドストレージ1205を備える。プロセッサユニット1201は、上記段落に記載の通り、シミュレーションの結果と閾値とを比較するための機械学習予測アルゴリズムおよび/またはソフトウェアと、コントローラと、を実行するように構成されている。RAM1202は、剛性マトリクス(たとえば、図9参照)、基準データ(たとえば、さまざまな脊椎レベルおよび外科適応、骨、靭帯、および筋肉の特性に適したさまざまな特徴およびそれぞれの特性を有するインプラント(たとえば、ロッド等)のライブラリを含む)、生体力学的分析の結果、ならびに対象の医用データおよび画像検査を含む。データベースまたはクラウドストレージ1205は、DICOMプロトコル、生体力学的モデル特性、ならびに基準集団の術前および術後データ(たとえば、図7参照)を含む。動的分析1204は、逆運動学および有限要素解析の実行に必要なコーディングを含む。
【0093】
図13は、本発明の一実施形態に係る、対象の個々の分析に関する別のモジュールを示している。モジュール1300は、本実施形態においては(畳み込みネットワークアーキテクチャの使用の有無を問わず)画像検査1310、自動CTまたはMRI分節化1320、およびデジタルツイン1330の生成に由来する脊椎および軟部組織の3次元解剖学的モデリングに基づく。この評価は、上半身に対して実行され、椎骨、筋肉、靭帯、椎間板、および脊椎可動域、ならびに人体測定データ等の要素を分析する。上述の通り、人体測定結果は、人体のサイズ、形状、および組成に関する一連の定量的かつ体系的な測定結果であって、筋肉、骨、および脂肪組織の測定結果を含む。人体測定の複数の中心的要素は、身長、体重、体格指数(BMI)、身体周囲径(ウエスト、ヒップ、および四肢)、ならびに皮下脂肪厚である。これらの包括的な解剖学的および生理学的データ(たとえば、画像検査1310、分節化1320、およびデジタルツイン1330を含む)は、動的力分析モジュール1340への入力として使用される。
【0094】
動的力分析モジュール1340(仮想予測および評価技術)は、筋骨格、有限要素解析、有限差分解析、および有限体積解析のうちの少なくとも1つ、通常はそのすべてに基づき得る。筋骨格モデル分析は、たとえばAnyBodyソフトウェアを用いて実行されるが、これにより、環境と協調して働く人体を模擬する筋骨格モデルが生成される。これらのシミュレーションでは、その他の方法では予測、測定、または決定が困難な体内の力、トルク、および運動を定量化する。生体力学的分析の目標には、耐荷重要件の決定およびインプラント配置の最適化を含み、手術成功の可能性を高めるものである。有限要素解析では、対象の脊椎の背景でのインプラントを評価し、現実世界の力、モーメント、応力、歪み、および他の物理的効果に対する反応を予測する。有限要素解析は、所与のインプラントが機能しなくなるか、その早さ、または設計通りに機能することになるかを予測するのに用いられる。これらの予測は、脊椎-インプラントアセンブリに作用する応力を考慮して、たとえば基準データ(たとえば、特定のインプラントの構成材料に関する既知の材料特性を含む)に基づいていてもよい。対象分析モジュール1300の出力1370(たとえば、転帰の予測)には、一組の潜在的なインプラントに関するデータを含むが、これには、たとえば直立、脊椎屈曲および延伸、左右側屈、および左右捩り等のさまざまな状態下での合力、可動域、およびモーメントを組み合わせた一組の潜在的なインプラントの方法1350、1360の比較を含む。これらの測定は通常、脊椎の関連領域におけるL1-L2、L2-L3、L3-L4、L4-L5等の各椎骨対および関節に対して実行される。所与の潜在的なインプラントに対する生体力学的分析の出力1370は、埋め込まれる両関節(たとえば、L2-L3)への影響のほか、脊椎領域全体(たとえば、L1-L5)に予測される影響(たとえば、模擬応力)の背景において与えられる。また、潜在的な各インプラントの出力は、検討中の一組のインプラントそれぞれの出力と比較される。出力1370(たとえば、模擬応力)を精査することにより、さまざまなインプラントの比較によって、(特定のインプラントに印加された力/モーメントにより)インプラントに加わる応力が既知の閾値等の基準データに基づくインプラントの破壊点を超えているかを判定することができ、超えている場合は、個々の患者に対して提案されたインプラントおよび/または外科手術が失敗となる。
【0095】
上記段落においては、脊椎矯正術の例を参照することによって、本開示の実施形態に係る方法およびシステムを説明した。ただし、当然のことながら、上記方法およびシステムは脊椎矯正術のみに限定されず、任意の整形外科用途または整形外科手術(たとえば、股関節手術、膝の手術、足の手術、手の手術、肩の手術等)にも使用可能である。本明細書において、用語「整形外科(orthopedic)」は、脊椎、腕、脚部、関節、および靭帯を含む任意の筋骨格系を表すのに使用している。
【0096】
当業者には当然のことながら、本発明は、本明細書において具体的に図示および記載したものに限定されない。むしろ、本発明の範囲には、本明細書に記載のさまざまな特徴のほか、それらの変形および改良の組み合わせおよび副組み合わせの両者を含み、これらは、従来技術に含まれない上記説明を読むことによって当業者が想到し得るものである。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】