(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】標識レベルの制御を備えた金属標識ポリマーマイクロビーズ
(51)【国際特許分類】
C08F 212/00 20060101AFI20240308BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240308BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240308BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20240308BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240308BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240308BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20240308BHJP
C08F 220/02 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C08F212/00
G01N33/53 P
G01N33/53 U
G01N33/543 525U
G01N33/543 525E
G01N33/543 525W
G01N27/62 V
C12M1/00 A
C12M1/34 F
C08J3/12 Z CER
C08F220/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555572
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 CA2022050386
(87)【国際公開番号】W WO2022193004
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518353957
【氏名又は名称】ザ ガバニング カウンシル オブ ザ ユニバーシティ オブ トロント
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ウィニク,ミッチェル エー
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ジエイー
【テーマコード(参考)】
2G041
4B029
4F070
4J100
【Fターム(参考)】
2G041CA01
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(57)【要約】
本開示は、マスサイトメトリービーズ系アッセイおよび多重化適用のための金属標識されたポリマーマイクロビーズ、特に、ランタニド標識されたポリマーマイクロビーズに関する。ポリマーマイクロビーズは、構造モノマーおよび金属キレートモノマーを含む、コポリマーを含む。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造モノマー、および
金属およびキレート化剤を含む金属キレートモノマー
を含むコポリマー、
を含む金属コード化されたマイクロビーズであって、
前記キレート化剤は、少なくとも3つの部位で前記金属を配位し;および
前記構造モノマーは、前記キレート化剤を含まない、金属コード化されたマイクロビーズ。
【請求項2】
前記構造モノマーは、置換されたもしく置換されないスチレン、α-メチルスチレン、アクリル酸およびそれらのエステルならびにアミド、メタクリル酸およびそれらのエステルならびにのアミド、ならびにそれらの誘導体から選択され、場合により前記構造モノマーは、スチレンである、請求項1に記載のマイクロビーズ。
【請求項3】
前記金属キレートモノマーは、重合の前に式I:
【化1】
(式中、リガンドは、前記キレート化剤であり、Lは、リンカーであり、Xは、重合可能な末端基であり、Mは、金属であり、およびnは、1または2以上の整数であり、前記金属キレートモノマーは、重合の前に中性電荷であり、
場合によりLは、結合、C3-C8アルキルアミン、C3-C8アルキレン、C3-C8シクロアルキル、C3-C8ヘテロシクロアルキル、5員または6員アリールまたはヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルへテロアリール、C3-C8シクロアルキルアリール、C3-C8シクロアルキルヘテロアリール、C(O)、-C(O)O、またはそれらの混合物から選択され、場合により前記アルキレン、アリール、アルキルアリール、アルキルへテロアリール、シクロアルキル、シクロアルキルアリール、およびシクロアルキルヘテロアリールのそれぞれは独立に、置換されないかまたはC1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C3-C8シクロアルキル、C3-C8ヘテロシクロアルキル、アミド、エステル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルへテロアリール、C3-C8シクロアルキルアリール、C3-C8シクロアルキルヘテロアリール、CN、またはそれらの混合物から選択される1個または複数の置換基により置換され、および/または
場合により前記重合可能な末端基は、アリルビニル、スチレン、α-メチルスチレン、アクリル酸塩エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、2-メチルアクリルアミド、およびそれらの混合物から選択され、場合により前記重合可能な末端基は、アリルビニルまたはスチレンである)の構造を有する、請求項1または2に記載のマイクロビーズ。
【請求項4】
下記の1つまたは複数である、請求項3に記載のマイクロビーズ:
Lは、アミドまたはエステルを介して前記キレート化剤に付着され、および
前記キレート化剤は、4座配位、5座配位、6座配位、7座配位、または8座配位であり、場合により前記キレート化剤は、6座配位または8座配位であり、
場合により前記キレート化剤は、アミノポリ酸部分、またはそれらの誘導体を含み、場合により前記アミノポリ酸部分は、アミノポリカルボン酸、アミノポリホスホン酸、またはそれらの組み合わせから選択され、場合により前記アミノポリ酸部分は、エチレンイミン、プロピレンアミン、またはそれらの混合物の1種または複数の置換されたオリゴマーであり、前記オリゴマーは2種以上のカルボン酸および/またはホスホン酸で置換され、場合により前記オリゴマーは、クラウンエーテルまたはアザクラウンエーテルである。
【請求項5】
前記オリゴマーは、C1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C3-C8シクロアルキル、C3-C8ヘテロシクロアルキル、アミド、エステル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルへテロアリール、C3-C8シクロアルキルアリール、C3-C8シクロアルキルヘテロアリール、CN、またはそれらの混合物から選択される1個または複数の置換基によりさらに置換される、請求項4に記載のマイクロビーズ。
【請求項6】
前記キレート化剤は、DFO、EDTA、DTPA、EGTA、EDDS、EDDHA、BAPTA、H4neunpa、H6phospa、H4CHXoctapa、H4octapa、H2CHXdedpa、H5decapa、Cy-DTPA、Ph-DTPA、TACNタイプキレート化剤、TACDタイプキレート化剤、サイクレンタイプキレート化剤、サイクラムタイプキレート化剤、(13)aneN4タイプキレート化剤、1,7-ジアザ-12-クラウン-4タイプキレート化剤、1,10-ジアザ-18-クラウン-6タイプキレート化剤、またはそれらの誘導体から選択される、請求項4に記載のマイクロビーズ。
【請求項7】
前記TACNタイプキレート化剤は、NOTA、NOPO、TRAP、またはそれらの誘導体から選択され、前記サイクレンタイプキレート化剤は、DOTAまたはその誘導体から選択され、前記サイクラムタイプキレート化剤は、TETA、架橋TETA、DiAmSar、またはそれらの誘導体から選択され、前記(13)aneN4タイプキレート化剤は、TRITAまたはその誘導体から選択され、前記1,10-ジアザ-18-クラウン-6タイプキレート化剤は、MACROPAまたはその誘導体から選択され、および/または前記キレート化剤は、DTPA、Cy-DTPA、Ph-DTPA、またはそれらの誘導体から選択される、請求項6に記載のマイクロビーズ。
【請求項8】
前記金属キレートモノマーは:
【化2】
、から選択され、場合によりLは、請求項3で定義される通りであり、
場合により前記金属キレートモノマーは、
【化3】
、またはこれらの混合物から選択される、請求項3に記載のマイクロビーズ。
【請求項9】
前記キレート化剤は、ポルフィリンまたはフタロシアニンを含み、場合により前記キレート化剤は、置換されたまたは置換されないポルフィリンであり、および
場合により重合の前に前記金属キレートモノマーは、
【化4】
、またはこれらの混合物から選択され、かつnは、1~4の整数であり、場合によりnは、少なくとも2であり、
場合によりLは、アニリンである、請求項4に記載のマイクロビーズ。
【請求項10】
前記金属は、複数の金属であり、
場合により下記の1つまたは複数である、請求項1に記載のマイクロビーズ:
前記複数の金属は、1種または複数の濃縮同位体を含み、場合により前記複数の金属は、1種または複数の濃縮された同位体を含み、
前記複数の金属は、少なくとも2種の金属、少なくとも3種の金属、または少なくとも4種の金属を含み、
前記複数の金属の各金属の量は、前記複数の金属の別の金属の量の約20%または約10%以内であり、および
前記金属は、前記マイクロビーズ全体にわたり分散され、および
場合により前記金属は、インジウム、ビスマス、または希土類金属を含み、場合により前記希土類金属は、ランタニド金属、イットリウム、またはそれらの混合物から選択され、
場合により前記金属は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、それらの別々の同位体、またはそれらの混合物から選択される希土類金属を含み、かつ
場合により前記希土類金属は、89Y、139La、136Ce、138Ce、140Ce、142Ce、141Pr、142Nd、143Nd、145Nd、146Nd、148Nd、145Pm、144Sm、149Sm、150Sm、152Sm、154Sm、151Eu、153Eu、154Gd、155Gd、156Gd、157Gd、158Gd、160Gd、152Gd、159Tb、156Dy、158Dy、160Dy、161Dy、162Dy、163Dy、164Dy、165Ho、162Er、164Er、166Er、167Er、168Er、170Er、169Tm、168Yb、170Yb、171Yb、172Yb、173Yb、174Yb、176Yb、175Lu、またはそれらの混合物から選択される。
【請求項11】
下記の1つまたは複数である、請求項1~3のいずれか1項に記載のマイクロビーズ:
前記マイクロビーズは、約60℃のもしくは60℃を超える、場合により約70℃のもしくは70℃を超える、約80℃のもしくは80℃を超える、約90℃のもしくは90℃を超える、約100℃のもしくは100℃を超える、約115℃のもしくは115℃を超える、約125℃のもしくは125℃を超える、または約135℃のもしくは135℃を超えるガラス転移温度を有し、および
前記マイクロビーズは、約0.6μm~約20μm、約1μm~約15μm、約2μm~約10μm、約2μm~約6μmの直径を有し、および
前記マイクロビーズは、水中でコロイド的に安定である。
【請求項12】
前記マイクロビーズの表面は、生体分子への付着のための機能化を含み、
場合により下記の1つまたは複数である、請求項1~3のいずれか1項に記載のマイクロビーズ:
前記付着は、共有的付着または非共有的付着であり、
前記マイクロビーズの表面は、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、またはそれらの混合物により機能化され、および
前記マイクロビーズの表面は、前記生体分子にコンジュゲートされ、
場合により前記生体分子は、タンパク質、オリゴヌクレオチド、小分子、脂質、炭水化物、またはそれらの混合物から選択され、
場合により前記生体分子は、親和性試薬であり、場合により前記親和性試薬は、抗体であり、場合により前記抗体は、サイトカイン、場合によりケモカイン、インターフェロン、リンホカイン、モノカイン、IL-1~36などのインターロイキン、腫瘍壊死因子およびコロニー刺激因子に特異的であり、かつ場合により前記抗原は、ウィルス抗原であり、かつ
場合により前記機能化は、前記マイクロビーズの表面上の二酸化ケイ素のコーティングを含み、場合により前記機能化は、二酸化ケイ素の前記コーティングを機能化することをさらに含む。
【請求項13】
前記金属は、前記生体分子を特定するバーコードを提供する、請求項12に記載のマイクロビーズ。
【請求項14】
場合により下記の1つまたは複数である、請求項1~3のいずれか1項で定義されるマイクロビーズの集団:
前記集団は、約10%または10%未満の変動係数(CV)を有する粒度分布を有し、場合により前記変動係数は、5%未満であり、
各マイクロビーズは、複数の金属を含み、前記複数の金属の各金属の前記マイクロビーズの集団にわたる平均量は、前記複数の金属の別の金属の平均量の約10%または約10%以内であり、
場合により前記複数の金属は、1種または複数の濃縮された同位体を含み、
前記マイクロビーズの集団の各金属の量は、約20%または20%未満、または約10%または10%未満の変動係数の分布を有し、
前記マイクロビーズの集団の1つのマイクロビーズの各金属の量は、前記マイクロビーズの集団の別のマイクロビーズの同じ金属の量の約20%もしくは20%以内、または約10%もしくは10%以内、または約5%もしくは5%以内であり、かつ
前記マイクロビーズの集団のマイクロビーズは、実質的に同じ量で同じ金属を含み、場合により前記同じ金属は、複数の金属であり、かつ前記マイクロビーズは、実質的に同じ量で前記複数の金属の各金属を含む。
【請求項15】
場合により下記の1つまたは複数である、請求項14で定義されるマイクロビーズの複数の別個の集団を含むキット:
マイクロビーズの各集団は、前記マイクロビーズの前記金属または複数の金属に基づきマイクロビーズの別の集団から識別でき、および
前記マイクロビーズの少なくとも1つの集団のマイクロビーズは、前記マイクロビーズの別の集団のマイクロビーズの金属または複数の金属とは異なる金属または複数の金属を含むか、または前記マイクロビーズの少なくとも1つの集団のマイクロビーズは、前記マイクロビーズの別の集団のマイクロビーズとは異なる比率で複数の金属を含む。
【請求項16】
前記マイクロビーズの各集団のマイクロビーズは、異なる生体分子にコンジュゲートされる、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
重合された構造モノマー、重合されない構造モノマー、および立体安定剤を含む第1の混合物を得るために核生成段階で前記立体安定剤の存在下にて構造モノマーを重合すること、
第2の混合物を得るために前記第1の混合物を金属および少なくとも1種の重合可能な末端基に付着されたキレート化剤を含む金属キレートモノマーと組み合わせることであって、
前記キレート化剤は、少なくとも3つの部位で金属を配位しおよび前記金属キレートモノマーは、構造モノマーと重合可能である、組み合わせること;および
前記マイクロビーズのコポリマーを形成するために前記第2の混合物を重合することであって、
前記構造モノマーは、前記キレート化剤を含まない、重合すること
を含む、金属コード化されたマイクロビーズを調製する方法。
【請求項18】
下記の1つまたは複数である、請求項17に記載の方法:
前記金属は、複数の金属であり、
前記構造モノマーは、前記構造モノマーに基づき約5%~約20%完結まで前記核生成段階で重合され、
前記第2の混合物の重合は、前記構造モノマーに基づき75%~約100%完結、約80%~約99%完結、約85%~約95%完結、約85%~約93%完結まで起こる。
【請求項19】
前記マイクロビーズを機能化するステップをさらに含み、
場合により前記マイクロビーズの機能化は、
第3の混合物を得るために前記重合された第2の混合物を第3のモノマーと混合することであって、前記第3のモノマーが反応性官能基を含み;
場合により前記反応性官能基は、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、エポキシド、ビニル、アルキン、マレイミド、またはそれらの混合物から選択される、混合すること、および
前記第3の混合物を重合すること
を含み;および
場合により下記の1つまたは複数である、請求項17に記載の方法:
前記マイクロビーズの機能化は、二酸化ケイ素で前記マイクロビーズをコートすることを含み、
前記マイクロビーズの機能化は、二酸化ケイ素の前記コーティングを機能化することをさらに含み、および
生体分子に前記マイクロビーズをコンジュゲートすることをさらに含む。
【請求項20】
請求項17に記載の方法により調製されたマイクロビーズ。
【請求項21】
金属コード化されたマイクロビーズを調製する方法であって、
膨潤可能なシード粒子およびアニオン性界面活性剤の水性分散液を提供すること;
前記水性分散液を構造モノマーと金属キレートモノマーを含むモノマーと接触させることであって、前記金属キレートモノマーは、金属および少なくとも1種の重合可能な末端に付着されたキレート化剤を含み、前記キレート化剤は、少なくとも3つの部位で金属を配位し、かつ前記構造モノマーは、キレート化剤を含まない、接触させること;
膨潤したシード粒子の水性分散液を形成するために前記モノマーをシード粒子中に拡散させること;および
膨潤したシード粒子の前記水性分散液中で前記モノマーの重合を開始すること、
を含む方法。
【請求項22】
下記の1つまたは複数である、請求項21に記載の方法:
前記構造モノマーは、アクリルモノマー、メタクリレートモノマーおよびスチレン、ジビニルベンゼン(DVB)、エチルビニルベンゼン、ビニルピリジン、アミノスチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、エチルメチルスチレン、p-クロロスチレンまたは2,4-ジクロロスチレンからなる群より選択されるビニルモノマーからなる群より選択され、
膨潤したシード粒子の前記水性分散液は、立体安定剤をさらに含み、場合により前記立体安定剤は、ポリビニルピロリドンであり、
膨潤可能なシード粒子の前記水性分散液を提供することは、乳化重合により単分散の膨潤可能なシード粒子を調製することを含み、
膨潤可能なシード粒子の前記水性分散液は、5000ダルトン未満の分子量および10
-2g/L未満の25℃での水溶性を有する有機化合物;および場合によりその中で前記有機化合物が可溶性である有機溶媒をさらに含み、
前記膨潤可能なシード粒子は、単分散の膨潤可能なシードのオリゴマー粒子であり、および
前記アニオン性界面活性剤は、デシル硫酸ナトリウムである。
【請求項23】
前記構造モノマーは請求項2で定義される通りであり、および/または前記金属キレートモノマーは、請求項1、3、および8のいずれか1項で定義される通りである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
質量タグを含むレポーターをさらに含み、前記レポーターは、前記異なる生体分子の少なくとも1種により特異的に結合された試料生体分子を特異的に結合し、
場合により下記の1つまたは複数である、請求項16に記載のキット:
前記試料生体分子は、オリゴヌクレオチドであり、かつ前記異なる生体分子の前記少なくとも1つは、前記試料生体分子に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであり、
前記レポーターは、前記試料生体分子に複数の質量タグ付きオリゴヌクレオチドを間接的に結合させるためにハイブリダイズする複数のオリゴヌクレオチドを含み、かつ
前記異なる生体分子の前記少なくとも1つは、抗体などの親和性試薬である。
【請求項25】
下記の1つまたは複数である、請求項24に記載のキット:
(i)前記試料生体分子は、ウィルス粒子であり、前記異なる生体分子の前記少なくとも1つは、前記ウィルス粒子を特異的に結合する第1の抗体であり、および前記レポーターは、前記ウィルス粒子を特異的に結合する第2の抗体を含み、(ii)前記試料生体分子は、サイトカインであり、前記異なる生体分子の前記少なくとも1つは、前記サイトカインを特異的に結合する第1の抗体であり、および前記レポーターは、前記サイトカインを特異的に結合する第2の抗体を含み、または(iii)前記試料生体分子は、癌バイオマーカーであり、前記異なる生体分子の前記少なくとも1つは、前記癌バイオマーカーを特異的に結合する第1の抗体であり、および前記レポーターは、前記癌バイオマーカーを特異的に結合する第2の抗体を含み、
前記異なる生体分子の前記少なくとも1つは、ウィルス抗原を含み、前記試料生体分子は、前記ウィルス抗原を特異的に結合する抗体であり、かつ前記レポーターは、前記試料生体分子に結合する二次抗体を含み、かつ
前記キットは、複数の異なるレポーターをさらに含み、前記異なるレポーターのそれぞれは、異なる生体分子により特異的に結合される試料生体分子を結合する。
【請求項26】
下記の1つまたは複数である、請求項25に記載のキット:
前記複数の異なるレポーターはそれぞれ、同じ質量タグを含み、
前記質量タグは、金属ナノ粒子を含み、および
前記質量タグは、金属キレートポリマーを含む。
【請求項27】
酵素基質が前記試料生体分子により修飾されている場合それに特定的に結合するレポーターをさらに含み、または
酵素基質が試料生体分子により修飾されていない場合それに特異的に結合するレポーターをさらに含み、場合により前記酵素基質は、前記酵素基質が前記試料生体分子により修飾されると除去される質量タグを含む、
請求項26に記載のキット。
【請求項28】
複数の異なる集団からの前記マイクロビーズは、マイクロビーズの第1の混合物中に存在し、
場合により前記マイクロビーズの第1の混合物と同じ生体分子を含むマイクロビーズの第2の混合物をさらに含み、前記第1の混合物のマイクロビーズは、前記第2の混合物のマイクロビーズとは異なる試料バーコードを含む、
請求項24に記載のキット。
【請求項29】
前記試料バーコードは、前記マイクロビーズの内部にあり、場合により前記試料バーコードは、前記第1および第2の混合物の前記マイクロビーズの前記金属キレートモノマーによりキレート化された金属のサブセットであり、または
前記試料バーコードは、前記第1および第2の混合物の前記マイクロビーズの表面上に存在する、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
下記の1つまたは複数である、請求項28に記載のキット:
異なる複数の集団からのマイクロビーズの表面に結合するように機能化される別の区分中の複数の試料バーコードをさらに含み、および
互いの混合物中に質量タグ付き抗体のパネルをさらに含み、前記パネルの少なくともいくつかの抗体は、細胞表面マーカーに特異的であり、場合により前記複数の抗体は、前記キットのマイクロビーズとの混合物中に存在し、および
場合により前記質量タグ付き抗体の少なくともいくつかは、前記キットのマイクロビーズの金属キレートモノマーによりキレート化された金属と同一の金属を含む。
【請求項31】
下記の1つまたは複数である、請求項24に記載のキット:
前記キットのマイクロビーズとの混合物中に立体安定剤をさらに含み、場合により前記立体安定剤は、ポリビニルピロリドンであり、
前記キットのマイクロビーズは、5および9または5~9のpHで緩衝された溶液中に存在する、または前記マイクロビーズは、凍結乾燥され、および
1種または複数の緩衝剤、抗凝固剤、固定試薬、および透過処理試薬をさらに含む。
【請求項32】
前記マイクロビーズは、固体担体に融合され、
場合により前記固体担体は、顕微鏡スライドまたは接着膜である、請求項24に記載のキット。
【請求項33】
質量分析により請求項14に記載のマイクロビーズの集団を検出することを含む方法。
【請求項34】
前記マイクロビーズから得られた質量スペクトルに基づき前記マイクロビーズを検出するために使用される質量分析計を較正することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記マイクロビーズから得られた質量スペクトルに基づき複数の質量タグから得られた質量分析シグナルを正規化することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
請求項14に記載のマイクロビーズの別個の集団を試料と混合することであって、マイクロビーズのそれぞれの集団のマイクロビーズは、異なる生体分子に結合されかつマイクロビーズのそれぞれの集団は、前記マイクロビーズの金属または複数の金属に基づきマイクロビーズの別の集団から識別できる、混合すること;
前記試料の異なる試料生体分子をマイクロビーズの別個の集団の前記異なる生体分子に結合させること;
前記異なる試料生体分子のそれぞれにレポーターを、直接にまたは間接的に、結合させることであって、前記異なる試料生体分子のそれぞれに結合される前記レポーターは、質量タグを含む、結合させること;および
質量分析により個別のマイクロビーズの前記金属および前記質量タグを検出すること、
を含む、質量分析の方法。
【請求項37】
前記マイクロビーズの別個の集団を前記試料と混合するステップの前に前記マイクロビーズの別個の集団のマイクロビーズに前記異なる生体分子を付着させることをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記異なる試料生体分子は、オリゴヌクレオチド、抗体、サイトカイン、および/または癌バイオマーカーを含む、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
マイクロビーズの別個の集団を試料と混合することであって、マイクロビーズのそれぞれの集団のマイクロビーズは、異なる生体分子に結合されかつマイクロビーズのそれぞれの集団は、マイクロビーズの金属または複数の金属に基づきマイクロビーズの別の集団から識別できる、混合すること;
前記試料の異なる試料生体分子をマイクロビーズの別個の集団の前記異なる生体分子に結合させること;
前記異なる試料生体分子のそれぞれにレポーターを、直接にまたは間接的に、結合させることであって、前記異なる試料生体分子のそれぞれに結合される前記レポーターは、質量タグを含む、結合させること;および
質量分析により個別のマイクロビーズの前記金属および前記質量タグを検出すること、
を含む、請求項24に記載のキットを用いる質量分析の方法。
【請求項40】
複数の質量タグ付き抗体を提供することであって、前記質量タグ付き抗体の各抗体は、金属またはその濃縮された同位体の複数原子をキレート化するポリマー質量タグにコンジュゲートされる、提供すること;
試料を前記複数の質量タグ付き抗体と接触させること;
質量分析により前記試料および前記マイクロビーズに結合された前記質量タグ付き抗体を検出すること、
を含む、請求項12に記載のマイクロビーズを用いる細胞試料の質量分析の方法。
【請求項41】
前記検出するステップで使用される前記質量分析計を較正することであって、前記較正は、前記マイクロビーズから得られる質量分析シグナルに基づく、較正すること、
前記マイクロビーズから得られる質量分析シグナルに基づき前記質量タグから得られた質量分析シグナルを正規化することであって、場合により前記マイクロビーズおよび前記質量タグ付き抗体は、同じ金属を含む、正規化すること、または
前記質量タグ付き抗体のそれぞれについての金属原子の平均数および前記質量タグ付き抗体および前記マイクロビーズからの前記検出された質量分析シグナルに基づき前記質量タグ付き抗体を定量化することであって、場合により前記マイクロビーズおよび前記質量タグ付き抗体は、同じ金属を含む、定量化すること、
をさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記検出するステップは、イメージングマスサイトメトリーおよび/またはレーザアブレーションICP-MSまたは二次イオン質量分析法(SIMS)を含み、
場合により前記マイクロビーズから検出された質量分析シグナルに基づき個別のピクセルでまたは個別の細胞に結合された前記質量タグ付き抗体を定量化することまたは正規化することをさらに含み、および/または
場合により前記マイクロビーズは、前記検出ステップの前に固体表面に対し融解される、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2021年3月15日に出願された米国特許出願第63/161,414号、および2022年3月14日に出願された米国特許出願第63/319,608号の優先権の利益を主張する。これらの特許仮出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本開示は、マスサイトメトリービーズ系アッセイおよび多重化適用のための金属標識されたポリマーマイクロビーズ、特にランタニド標識されたポリマーマイクロビーズに関する。
【背景技術】
【0003】
マスサイトメトリー(MC)は、新たに出現した分析技術であり、細胞およびマイクロビーズ試料上の同位体標識のシグナルを解析するために、誘導結合プラズマ飛行時間質量分析計(ICP-TOF-MS)を採用する。マスサイトメトリーでのビーズ系の適用は、MCにより個別に特定できる種々の金属イオンによるマイクロビーズの標識を必要とする。
【0004】
ビーズ系アッセイは、高スループット能力を有するマルチプレックスアッセイに対するそれらの高い試料体積効率のために、分析技術として魅力的である。キャプチャーサンドイッチイムノアッセイ、競合免疫測定法、血清学、遺伝子発現プロファイリングおよび遺伝子型判定を含む、様々な用途が、ビーズ系アッセイ技術を用いて開発されてきた1、2。古典的なプレーナ技術またはELISA技術とは対照的に、ビーズ系アッセイは、分析物として異なる分子を標的にできる異なる親和性試薬に対する固体担体として粒子のコロイド懸濁液を用いる。ビーズをコード化すること、および分析物のための分類子としてのビーズのライブラリーを生成することにより、種々の捕捉された分析物を、ある実験にわたり個別のビーズを解読することおよび特定することにより追跡できる。このように、複数の分析物の分析が、異なる親和性分子で機能化された一連のビーズを用いて、1回のアッセイで同時に実施できる。ほとんどの商業的に入手できるビーズ系アッセイは、これらのビーズをバーコード化するための標識として発光タグを使用し、フローサイトメトリーによりこれらの分類子ビーズを高スループットで検査する。Luminexは、10種の異なる強度レベルの3種の異なる色を有し、生物親和試薬に付着するための表面機能性を備えた、フローサイトメトリーによるビーズ系アッセイのための500個の別々に標識されたポリスチレンマイクロスフェアのライブラリーを市販した3-5。
【0005】
マスサイトメトリー(MC)は、新たに出現した分析技術であり、フローサイトメトリーと元素質量分析の特徴を組み合わせて、単細胞またはビーズ試料の特性を決定する5。マスサイトメトリーでは、細胞およびビーズ試料は、重金属同位体で標識され、誘導結合プラズマ飛行時間質量分析計(ICP-TOF-MS)のプラズマトーチに別々に導入されて、金属同位体標識のシグナルを分析する。MCは、チャネルオーバーラップなしに、かつ生体試料中の重金属同位体の少ない存在量でも、それらの原子質量に基づき異なる金属同位体を正確に分析でき、MCは、フローサイトメトリーに付随する複雑なシグナル補償処理を回避する。それは、蛍光系ビーズアッセイに比べて高められた解像度および感度を有し試料の特徴の検出を大きく改善する。遙かに多くの数の重金属同位体が標識として採用され得るので、MCは、遙かに高い多重化能力を有する高スループットのサイトメトリービーズ系アッセイのための大きな可能性を提供する7-8。
【0006】
多重化MCアッセイのための金属コード化マイクロビーズを開発するために、Abdelrahmanらは、異なる濃度レベルの種々の金属同位体でコード化したマイクロビーズのライブラリーを合成する概念を導入した9。このマイクロビーズライブラリーの理論的最大変動(n)は下記の式で計算できる:
n=KM-1 (1)
ここで、Kは、マイクロビーズの金属濃度レベルのレベル(ゼロ濃度を含む)であり;Mは、ビーズにおいてコード化された異なる同位体の数である。項(-1)は、全ての同位体のゼロ金属含量のビーズであり、これは、MCにより検出できない。ランタニド同位体は、MCでのそれらの類似の化学的および物理学的特性、低い天然存在度ならびにそれらの高い検出感度の理由で、PSマイクロビーズをコード化するための質量タグとして魅力的な選択肢である8。15種のランタニド元素が存在し、これらの同位体は、ビーズ標識として採用されるために理論的に利用できる、139amu~176amuの少なくとも36個の検出チャネルを含む。例えば、各コード化同位体に対し4種の濃度レベルを用いて、数千の変種を有するビーズのライブラリーを、MCビーズ系アッセイのために原理上作成できる。MCシグナルの品質を確保するために、MC適用で採用される金属含有マイクロビーズは、非常に狭い粒度分布を有する直径約1~5μmの範囲のサイズである必要がある。より小さいマイクロビーズは、より少ない金属同位体を含む傾向があり、これは、MCでの単一イベントとして検出されるには十分でない場合があり、一方でより大きなマイクロビーズは、一貫性がなく、ICPトーチ中で完全に消費されない場合がある。
【0007】
いくつかのタイプの重金属同位体でコード化されたポリマーマイクロビーズの合成が報告されている。Abdelrahmanらにより採用された手法では、ランタニドコード化ポリスチレン(PS)マイクロビーズが、立体安定剤としてポリビニルピロリドン(PVP)および金属イオン組み込みのためのコモノマーとしてアクリル酸(AA)の存在下でスチレンの多段分散重合(DisP)により合成された。いくつかの最適化を用いて、Abdelrahmanらは、ビーズ当り約1x108個のランタニドイオンでコード化されたPSマイクロビーズを達成でき、これは、MC適用での試薬として使用するための要件を満たす、相対的に小さいビーズ間変動(RCV<15%)を有するMCにおける強力なシグナル強度を生成した9、10。
【0008】
Liangらは後に、コモノマーAAをメタクリル酸(MAA)で置換する考えを試験し、類似の結果を得た11。シード乳化重合でのスチレン可溶性ランタニドキレートのPSビーズ中への吸収、および分散重合でのランタニドナノ粒子のポリマーマイクロビーズ上への共有結合組み込みによる、マイクロビーズ中に金属イオンを組み込むための他の手法も調査されてきた12、13。しかし、Abdelrahmanらにより開発されたAAアプローチと比較して、遙かに低い組み込み効率およびより高いビーズ間金属含量変動が、これらの後の試みで観察された。
【0009】
AA手法はしかし、MC較正目的のための設計された異なる金属含量を有するビーズのバッチの合成には不十分である。この戦略は、特に多数の異なる金属イオンが第2の段階の一定分量中でAAと混合される場合に、ビーズ合成における金属組み込みの制御がうまくできない。例えば、より小さいイオン半径を有するランタニドイオン(例えば、Ho3+およびLu3+)は、より大きなイオン半径を有するランタニド(例えば、Ce3+およびEu3+)より遙かに効率的にマイクロビーズ中に組み込まれる傾向がある14、15。
この制御性の欠如は、特に例えば種々の金属イオンでコード化されかつ各金属について異なるレベルで所定の金属含量を有する複数のマイクロビーズまたはマイクロビーズのライブラリーを合成しようとする場合、時間のかかる難題である。
【0010】
マイクロビーズは、種々の定性的および定量的用途のために、例えば分析物検出のために使用できる。いくつかのサイトカインは、COVID-19の病態に重要な役割を果たすと考えられている。しかし、サイトカイン生成および作用の機序を完全に調査するためには、現在の研究ツールでは制約が存在する34。
サイトカインは、免疫応答を調節し細胞活動を調節するために、ピコモル~ナノモル濃度で細胞により産生される可溶性シグナル伝達タンパク質分子である。それらは、身体中の炎症促進性および抗炎症性の因子の極めて大きく多様な群である35。血液試料中のサイトカインの深い特徴付けは、疾患または感染症に対する、またはワクチン、療法および介入に対する免疫応答の重要な細目を提供できる。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)は、生体試料中のサイトカインの分析のために最も広範に使用されるモノプレックスAb系免疫アッセイ法である。しかし、ELISAアッセイは、相当量の試料を必要とし、多数のサイトカインが同時に分析される場合、時間がかかる36、37。
ビーズ系免疫アッセイ法は、高スループット設定において情報が豊富なマルチメトリック分析を提供する技術プラットフォームである。シグナル検出に蛍光染料を採用するビーズ系アッセイは、多重化サイトカイン分析のための現在の基準試験法であり、サイトカイン分析用のキットが市販されている。このタイプのアッセイでは、ポリマーマイクロビーズは、明確に定義された強度へと種々の濃度で、2または3種の異なる蛍光染料により標識される。良好な抗原検出は、個別の発光を有する色素で標識されたレポーター抗体(Ab)により認識される38-44。しかし、2015~2018年に行われた6件の米国病理医協会のサイトカイン調査からの最近の報告は、4種のサイトカインセット(IL-1、IL-6、IL-8、TNFα)におけるサイトカイン分析の変動性を記載している45。この調査は、検査室間の変動性および方法間の、さらに同じ試験室内の変動性を調査した。この報告は、定量的サイトカイン検出における現在の課題のいくつかを強調する。
【発明の概要】
【0011】
本明細書で記載されるのは、多段階分散重合により合成でき、かつ構造モノマーおよび重合に供される前に金属にキレート化されるキレート化剤を含む金属キレートモノマーを含む、金属コード化ポリマーマイクロビーズである。マイクロビーズは、コポリマーを含むポリマーを含み、このポリマーにより形成される。本明細書の実施形態で示されるように、得られるマイクロビーズは、狭い粒度分布を有し、所定量の異なる金属を有する。マイクロビーズ中に組み込まれる金属の量は、ビーズ間で実質的に一致しており、マイクロビーズの実質的に均一な集団が得られることを可能にする。金属は、表面上にのみ存在するのとは対照的に、マイクロビーズ全体にわたり組み込まれ得る。さらに、いくつかの実施形態で記載のように、本開示のマイクロビーズは、マイクロビーズの表面上で機能化でき、かつ抗体などの生体分子または他の親和性試薬にコンジュゲートすることもできる。
【0012】
特に、特定の実施形態で提供されるのは、実質的に制御された金属含量を有するマイクロビーズおよびそれらを作製する方法である。金属コード化されたマイクロビーズは、少なくとも1種の金属元素を含み、複数の金属元素を含んでもよい。金属元素は、元素の天然存在度の同位体を含んでよく、または1種または複数の元素の濃縮された同位体を含んでもよい。実施例で示されるように、ランタニドコード化されたマイクロビーズが、2段階分散重合で、リガンドとして重合可能な金属-錯体を採用することにより作成された。一例では、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)が、DTPA酸二無水物を4-ビニルベンジルアミン(VBA)と反応させることにより、重合性モノマーで機能化された。次に、このDTPA誘導体の種々のランタニド金属イオン錯体が調製された。金属コード化されたマイクロビーズは、これらの重合可能な金属-DTPA錯体をスチレンなどのモノマーの分散重合反応中に導入することにより合成された。得られたマイクロビーズは、それらのサイズおよび金属含量において極めて小さいビーズ間変動を有する。類似の金属組み込み効率が、この重合可能なキレート化剤に錯化された異なる金属イオンを用いたビーズ合成でも認められた。この手法を用いて調製されたマイクロビーズ中の金属含量は、金属の種類に関係なく、ビーズ合成における金属錯体供給量に一次従属した。3種の異なる濃度で4種のランタニドによりコード化されたマイクロビーズのバッチを、調製した。これらのマイクロビーズは、非常に良好なベースライン解像度を有する3種の異なるレベルのMCシグナル強度を生成した。
例示的実施例のように、および本明細書の以降で記載のように、マイクロビーズバッチの表面は、機能化された表面であり、抗体にコンジュゲートされ、かつ標的分析物(例えば、試料生体分子)を検出するために使用された。
【0013】
マスサイトメトリー(MC)における本開示のマイクロビーズの代表的用途として本明細書で示すように、多重化ビーズ系アッセイを、サイトカインを含む分析物の検出のために開発した。このタイプのアッセイでは、分類子ビーズを、異なる金属組み込みレベルの重金属同位体で標識した。各分類子ビーズは、その表面上に異なるAbを保持した。レポーターは、その表面に結合された他の生体識別素子の適切なAbを有する金属または金属酸化物ナノ粒子(NP)であり得る。試料を、誘導結合プラズマ飛行時間型質量分析計のプラズマトーチ中に確率的に注入した。この測定器は、m/z:85~m/z:209の範囲にわたり単一質量分解ができる。従って、示されるように、極めて高いレベルの多重化が可能であった。MCによるビーズ系アッセイでは、サイトカインを、例示的標的として使用した。
本明細書で記載のように、4種のサイトカインの混合物の4プレックス分析を実証する。9プレックスアッセイもまた、同様に例示した。9プレックスアッセイを、非刺激試料をサイトカイン分泌を促進するために刺激された試料と比較して、末梢血単核球(PBMC)試料について試験した。
【0014】
従って、一態様では、本開示は、
構造モノマー、および
金属およびキレート化剤を含む金属キレートモノマーを含む、コポリマーであって;
キレート化剤は、少なくとも3つの部位で金属に配位し;および
構造モノマーは、キレート化剤を含まない、コポリマー
を含む、金属コード化されたマイクロビーズを含む。
別の態様では、本開示は、本開示のマイクロビーズの集団を含む。
別の態様では、本開示は、本開示のマイクロビーズの複数の個別の集団を含むキットを含む。
【0015】
別の態様では、本開示は、
重合構造モノマー、非重合構造モノマー、および立体安定剤を含む第1の混合物を得るために核生成段階で立体安定剤の存在下にて構造モノマーを重合すること、
第2の混合物を得るために第1の混合物を金属および少なくとも1種の重合可能な末端基に付着されたキレート化剤を含む金属キレートモノマーと混合すること、キレート化剤は、少なくとも3つの部位で金属を配位し;および金属キレートモノマーは、構造モノマーと重合可能である、混合すること;および
マイクロビーズのコポリマーを形成するために第2の混合物を重合することであって、構造モノマーは、キレート化剤を含まない、重合すること、
を含む金属コード化されたマイクロビーズの調製方法を含む。
別の態様では、本開示は、本開示の方法により調製されたマイクロビーズを含む。
【0016】
別の態様では、本開示は、金属コード化されたマイクロビーズを調製する方法を含み、方法は、
膨潤可能なシード粒子およびアニオン性界面活性剤の水性分散液を提供すること;
水性分散液を、構造モノマーと金属キレートモノマーを含むモノマーと接触させることであって、金属キレートモノマーは、金属および少なくとも1種の重合可能な末端に付着されたキレート化剤を含み、キレート化剤は、少なくとも3つの部位で金属を配位する、接触させること;
膨潤したシード粒子の水性分散液を形成するためにモノマーをシード粒子中に拡散させること;および
膨潤したシード粒子の水性分散液中でモノマーの重合を開始させること、
を含み、構造モノマーは、キレート化剤を含まない。
本開示の例示的実施形態は、図面と関連してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】D
2O中に溶解したNa
3(DTPA-VBAm
2)分子の
1H-NMRスペクトルを示す概略図である。所与のNa
3(DTPA-VBAm
2)の構造は、示される化学シフトに対応する標識されたプロトンを有する。
【
図2】
図2Aおよび2Bは、それぞれ、第2段階で加えられたCe(DTPA-VBAm
2)金属錯体の存在下で合成された金属含有マイクロビーズCe-1のSEM像およびサイズのグラフである(d=2.9μm、CV=1.2%)。
【
図3】M(DTPA-VBAm
2)錯体(M=Y、Ce、Eu、Ho、およびLu)を用いた、Y-1、Ce-1、Eu-1、Ho-1、Lu-1および5E1マイクロビーズ中への(
図3A)および4E1、4E2および4E3マイクロビーズ中への(
図3B)5種の金属イオンの組み込み効率を示す一連のグラフである。
【
図4】第2段階の一定分量における、M(DTPA-VBAm
2)金属錯体(M=Y、Ce、Eu、Ho、およびLu)の存在下で調製した5元素コード化マイクロビーズ(5E1)についてのMCシグナル強度(
図4A)および金属含量(
図4B)を示すグラフである。a)およびb)中のエラーバーは、それぞれ、MCシグナル強度のRSDおよびMCシグナル強度から求めた金属含量のSDを表す。
【
図5】第2段階の一定分量における金属錯体の供給量濃度に対するマイクロビーズ中の金属含量濃度の線形依存性を示すグラフである。塗りつぶした記号は、予備的なビーズ合成(Y-1、Ce-1、Eu-1、Ho-1、Lu-1、および5E1)からのデータである。実線は、これらの塗りつぶしたデータポイントの線形回帰である。白抜き記号は、ビーズ合成試料4E1、4E2、および4E3からのデータであり、ここでビーズ合成設計のための基準として予備的なビーズ合成で観察された直線関係を使用した。
【
図6】第2段階の一定分量における、M(DTPA-VBAm
2)金属錯体(M=Ce、Eu、Ho、およびLu)の存在下で調製したPSマイクロスフェアの3種の異なる集団のMCシグナル強度を示し、それぞれ、
140Ce、
151Eu、
153Eu、
165Ho、および
175LuのMC強度ヒストグラムを表す。それぞれの図のx軸は、同位体のシグナル強度であり、y軸は、100に正規化されたビーズの数である。第1、第2および第3のヒストグラムは、それぞれ、4E1、4E2、および4E3からのシグナルを表す。
【
図7】
図7Aは、M(DTPA-VBAm
2)コード化マイクロスフェア(Eu-1)を用いた抗原検出薬を示す概略図である。このスキームでは、ヤギ抗マウスIgGで表面機能化されたEuコード化マイクロビーズを、レポーターとしての
175Lu標識マウスIgGとインキュベートする。洗浄されたマイクロビーズをその後、レポーター検出の証拠として、
153Euおよび
175Luの両方についてMCにより検査する。
図7Bは、
図7Aの検出薬を用いて生成されたMC測定のヒストグラムを表し、ヤギ抗マウス(GAM)修飾Eu-1マイクロビーズ(Eu-1/GAM)についての
175Luシグナル強度を示す。第2の実験では、GAMなしのNAv-修飾Eu-1マイクロビーズ(Eu-1/NAv)は、陰性対照としてマゼンタ色で示される弱いシグナルを生じた。
【
図8】
図8Aおよび
図8Bはそれぞれ、D
2O中で測定したNa
3(DTPA-BAm
2)およびNa
3(DTPA-ALAm
2)の
1H-NMRスペクトルである。
図8Cは、Na
3(DTPA-AmPMAm
2)の
1H-NMRスペクトルである。所与のこれらの分子の構造は、示される化学シフトに対応する標識されたプロトンを有する。
【
図9】D
2O中で測定したCe(DTPA-VBAm
2)(
図9A)、Ce(DTPA-BAm
2)(
図9B)、Ce(DTPA-ALAm
2)(
図9C)、およびCe(DTPA-AmPMAm
2)(
図9D)の
1H-NMR(500MHz)スペクトルである。図中の共鳴ピークは、Ce(III)が常磁性NMRシフト試薬であるため、広がりかつシフトした。
【
図10】D
2O中で測定したY(DTPA-VBAm
2)(
図10A)、Eu(DTPA-VBAm
2)(
図10B)、Ho(DTPA-VBAm
2)(
図10C)、およびLu(DTPA-VBAm
2)(
図10D)の
1H-NMR(500MHz)スペクトルである。b)およびc)中の共鳴ピークは、Eu(III)およびHo(III)が常磁性NMRシフト試薬であるため、広がりかつシフトした。
【
図11】
図11A~11Dは、それぞれ、Ce-1、Ce-2、Ce-3、およびCe-4マイクロビーズにおけるMC
140Ceシグナル強度カウントのヒストグラムである。x軸は、
140Ceシグナル強度であり、y軸は、100に正規化されたビーズの数である。
【
図12】
図12Aは、Y-1のマイクロビーズ試料における同位体シグナル強度カウントのヒストグラムであり、
図12Bは、Eu-1のマイクロビーズ試料における同位体シグナル強度カウントのヒストグラムである。
図12Cは、Ho-1のマイクロビーズ試料における同位体シグナル強度カウントのヒストグラムであり、
図12Dは、Lu-1のマイクロビーズ試料における同位体シグナル強度カウントのヒストグラムである。x軸は、同位体シグナル強度であり、y軸は、100に正規化されたビーズの数である。
【
図13】
図13Aは、ICP-MSにより決定された0.5%固形分含有量での4E3マイクロビーズ(塗りつぶした記号および実線)からpH3.0緩衝液(50mMの酢酸ナトリウム)中への、金属イオンCe
3+(四角)、Eu
3+(丸)、Ho
3+(上向き三角形)およびLu
3+(下向き三角形)の放出プロファイルを示すグラフである。
図13Bは、ICP-MSにより決定された0.5%固形分含有量での4E3マイクロビーズ(塗りつぶした記号および実線)からpH7.0緩衝液(10mMの酢酸アンモニウム)中への、金属イオンCe
3+(四角)、Eu
3+(丸)、Ho
3+(上向き三角形)およびLu
3+(下向き三角形)の放出プロファイルを示すグラフである。
図13Cは、ICP-MSにより決定された0.5%固形分含有量での4E3マイクロビーズ(塗りつぶした記号および実線)からpH10.5緩衝液(200mMの炭酸/重炭酸ナトリウム)中への、金属イオンCe
3+(四角)、Eu
3+(丸)、Ho
3+(上向き三角形)およびLu
3+(下向き三角形)の放出プロファイルを示すグラフである。
図13Dは、ICP-MSにより決定された0.5%固形分含有量での4E3マイクロビーズ(塗りつぶした記号および実線)から1%PVP溶液中への、金属イオンCe
3+(四角)、Eu
3+(丸)、Ho
3+(上向き三角形)およびLu
3+(下向き三角形)の放出プロファイルを示すグラフである。比較として、白抜き記号および破線は、4E3 DTPAビーズと同じ条件下でAA手法により調製されたマイクロビーズバッチからの金属イオンの放出プロファイルを示す。
【
図14】シリカコーティングによりヤギ抗マウス(GAM)でマイクロビーズを機能化するための多段戦略の概略図である。
【
図15】本開示のマイクロビーズアッセイの概略図である。
【
図16】96ウェルフィルタープレート中で実施されるMCによる例示的多重化ビーズ系サンドイッチ免疫アッセイ法を示す概略図である。
【
図17】11種の分類子マイクロビーズ(C-1~C-11)の混合物のドットプロットダイアグラムであり、パネルaは、11種の分類子マイクロビーズ(C-1~C-11)の混合物の
140Ce~
142Ce同位体ドットプロットダイアグラムを示す。楕円は、11種のマイクロビーズのシングレットイベントを分離する。パネルb~kは、MCによりC-1~C-11マイクロビーズを個別に特定するためのゲーティング戦略を示すドットプロットダイアグラムである。
【
図18】種々のIL-4濃度での標準溶液の一連の4プレックスアッセイにおけるIL-4分類子ビーズ(C-5)についてのレポーターシグナル強度のヒストグラムである。(a)、(b)、および(c)AuNPは、それぞれ、0、1.2、および20pg/mLの濃度でIL-4を含む標準溶液の4プレックスアッセイでレポーターとして採用された。(d)、(e)、および(f)NanoGoldは、それぞれ、0、1.2、および20pg/mLでIL-4を含む標準溶液の4プレックスアッセイでレポーターとして採用された。
【
図19】(a)IL-4、(b)IL-6、(c)IFNγ、および(d)TNFαについての2組の4プレックスアッセイの検量線である。各プロットのx軸は、分析物濃度であり、y軸は、対応する分類子ビーズに付着されたNPのMCシグナル強度中央値である。2種の異なるタイプのストレプトアビジン-結合レポーター(AuNPおよびNanoGold)を、これらの4プレックスアッセイで調査した。結果を、AuNPについて円(●)およびNanoGoldについて四角(■)として示す。1カウント/ビーズ以下の
197Auシグナル強度を有するネガティブイベントを、強度中央値の統計解析から除外した。用量反応曲線を、4パラメーターロジスティック回帰分析モデルを用いて実験結果をフィットさせることにより作成した。
【
図20】検出Abカクテル中のビオチン化抗CD163および抗CXCL-9の異なる濃度での、(a)IL-1β、(b)IL-4、(c)IL-6、(d)IL-10、(e)IL-18、(f)IFNγ、(g)TNFα、(h)CD163および(i)CXCL-9についての4組の9プレックスアッセイの検量線を示す。各プロットのx軸は、分析物濃度である。各プロットのy軸は、対応するタイプの分類子ビーズに付着されたAuNPのMCシグナル強度中央値である。低分析物濃度でのバックグラウンドノイズを最小化するために、検出Abカクテル中のビオチン化抗CD163および抗CXCL-9の濃度を、2.5から2.0、1.0および0.5μg/mLに低減し、一方で他の検出Abの濃度を、カクテル中で2.5μg/mLで一定に保持した。これらのアッセイの結果を、2.5μg/mLの濃度について塗りつぶした円(●)で、2.0μg/mLの濃度について塗りつぶした四角(■)で、1.0μg/mLの濃度について塗りつぶした三角(▲)で、および0.5μg/mLの濃度について塗りつぶした菱形(◆)でプロットした。1カウント/ビーズ以下の
197Auシグナル強度を有するネガティブイベントを、強度中央値の統計解析から除外した。用量反応曲線を、4パラメーターロジスティック回帰分析モデルを用いて実験結果をフィットさせることにより作成した。
【
図21】異なる試料希釈比率での刺激されたおよび刺激されないPBMC試料中の(a)IL-1β、(b)IL-4、(c)IL-6、(d)IL-10、(e)IL-18、(f)IFNγ、(g)TNFα、(h)CD163および(i)CXCL-9の分析のための9プレックスアッセイにおける分類子ビーズに付着されたAuNPレポーターの
197Auシグナル強度中央値を示すヒストグラムである。図中の塗りつぶしたバーは、刺激された試料の分析結果であり、縞模様のバーは、刺激されない試料の分析結果である。
【
図22】
図22(a)は、2段階DisPにより調製されたC-1マイクロビーズのSEM像である。
図22(b)は、M(DTPA-VBAm
2)錯体(M=La、Ce、Pr、Tb、Ho、およびTm)を用いてC-1マイクロビーズ中へ組み込まれた6種の金属イオンの効率を示すグラフである。エラーバーは、同じ溶液に対する3回の測定の標準偏差である。
【
図23】異なるレポーター(NP)濃度での(a)IL-4、(b)IL-6、(c)IFNγ、および(d)TNFαについての3組の4プレックスアッセイの検量線である。各プロットのx軸は、分析物濃度である。各プロットのy軸は、対応する分類子ビーズに付着されたAuNPのMCシグナル強度中央値である。ストック溶液から200x、400x、および800x希釈の3種の濃度のAuNPを、これらの4プレックスアッセイで調査した。それらの結果を、200x希釈を円(●)で、400x希釈を四角(■)で、および800x希釈を三角(▲)で示す。1カウント/ビーズ以下の
197Auシグナル強度を有するイベントを、強度中央値の統計解析から除外した。用量反応曲線を、4パラメーターロジスティック回帰分析モデルを用いて実験結果をフィットさせることにより作成した。
【
図24】分析物分子の非存在下(0pg/mL)でのブランク試料の一連の9プレックスアッセイにおける分類子ビーズに付着されたAuNPのMCシグナル強度中央値をまとめた図である。
【
図25】刺激されたおよび刺激されないPBMC試料の分析と同じアッセイ条件を用いた、IL-1β、IL-4、IL-6、IL-10、IL-18、IFNγ、TNFα、CD163およびCXCL-9についての9プレックスアッセイの検量線である。用量反応曲線を、4パラメーターロジスティック回帰分析モデルを用いて実験結果をフィットさせることにより作成した。
【
図26】
図25の用量反応検量線に基づいて計算された、刺激されたおよび刺激されないPBMC試料中のサイトカイン濃度を示すグラフである。
図21に示されたいくつかの測定MC強度値は、
図25に示された4P-LRモデル化検量線の最小値より小さい。濃度は、これらの値からは計算されない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
I.定義
特に指示がない限り、このおよび他のセクションで記載される定義および実施形態は、当業者により理解されるように適切に本明細書で記載される本開示の全ての実施形態および態様に適用可能であることが意図される。
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、列挙された項目が個々に、または組み合わせて存在する、または使用されることを意味する。事実上、この用語は、列挙された項目の「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」が使用される、または存在することを意味する。その薬学的に許容可能な塩および/または溶媒和物に関して「および/または」という用語は、本出願の化合物が、本開示の化合物の個々の塩および水和物、ならびに、例えば、本開示の化合物の塩の溶媒和物の組み合わせとして存在することを意味する。
本開示で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、その内容に別段の明確な指示がない限り、複数の言及物を含む。例えば、「1種の化合物(a compound)」を含む一実施形態は、1種の化合物、または2種以上の追加の化合物を有する、特定の態様を提示すると理解されるべきである。
追加のまたは第2の化合物などの、「追加の(additional)」または「第2の(second)」成分を含む実施形態では、本明細書で使用される第2の成分は、他の成分または第1の成分とは化学的に異なる。例えば、第2の成分にキレート化される金属は、第2の成分と第1の成分が同じキレート化剤を有し得る場合、第1の成分にキレート化された金属とは異なり得る。「第3の(third)」成分は、他の、第1および第2の成分とは異なり、さらに列挙されるまたは「追加の(additional)」成分は、同様に異なる。
【0019】
本開示および請求項で使用されるように、語句「含む(comprising)」(および「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの、含む(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(および「有する(have)」および「有する(has)」などの、有する(having)の任意の形態)、「含む(including)」(および「含む(include)」および「含む(includes)などの、含む(including)の任意の形態)または「含む(containing)」(および含む「含む(contain)」および「含む(contains)」などの、(containing)の任意の形態)は包括的または開放型であり、かつ追加の、列挙されない要素または工程ステップを排除しない。
「構成される(consisting)」という用語および本明細書で使用されるその派生語は、明言された特徴、要素、成分、基、整数、および/またはステップの存在を特定し、かつまた、他の明言されない特徴、要素、成分、基、整数および/またはステップの存在を排除する、閉鎖型用語であることが意図される。
本明細書で使用される場合、「から本質的に構成される(consisting essentially of)」という用語は、明言された特徴、要素、成分、基、整数、および/またはステップならびにこれらの特徴、要素、成分、基、整数、および/またはステップの基本的および新規特性に実質的に影響しないものの存在を明示することが意図される。
【0020】
本明細書で使用される場合、「好適な(suitable)」という用語は、特別な化合物または条件の選択は実施される特定の合成操作、変換される分子の素性および/または化合物のための特定用途に依存するが、選択は十分に、当技術分野において訓練された者の技術の範囲内であることを意味する。
【0021】
本開示の実施形態では、本明細書で記載の化合物は、少なくとも1つの不斉中心を有し得る。化合物が2個以上の不斉中心を有する場合、それらはジアステレオマーとして存在し得る。全てのそのような異性体および任意の比率でのこれらの混合物は、本開示の範囲に包含されることを理解されたい。化合物の立体化学は、本明細書に列挙されたいずれかの所与の化合物で示される通りであってよいが、このような化合物は一定量(例えば、20%未満、適切には、10%未満、より適切には、5%未満)の別の立体化学を有する本開示の化合物を含んでよいことも、さらに理解されるべきである。分離された、純粋なまたは部分精製された光学異性体またはこれらのラセミ混合物のようないずれの光学異性体も、本開示の範囲内に含まれることが意図される。
本開示の化合物はまた、異なる互変異性型でも存在し得、化合物が形成するいずれの互変異性型、並びにこれらの混合物は、本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【0022】
本記述は当業者により使用される多くの化学用語および略語に言及する。それにもかかわらず、選択された用語の定義が、明確さおよび一貫性のために提供される。
本明細書で使用される「約(about)」、「実質的に(substantially)」および「約(approximately)」という用語は、最終結果が顕著に変化しないような、合理的な量の修飾される用語の逸脱を意味する。程度のこれらの用語は、この逸脱が、それが修飾する単語の意味を無効にしない場合、または当業者に文脈が別義を示唆しない限り、修飾される用語の少なくともまたは最大±5%の偏差を含むものとして解釈されるべきである。
【0023】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、単独で使用されるか別の基の一部として使用されるかに関係なく、直鎖または分枝鎖の、飽和のアルキル基を意味する。言及されるアルキル基で含有可能な炭素原子の数は、接頭辞「Cn1-n2」により示される。例えば、C1-10アルキルという用語は、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。
「アルキル」という用語は、本明細書では、単独で使用されるか別の基の一部として使用されるかに関係なく、直鎖または分枝鎖の、飽和のアルキル基、即ち、その末端の2つに置換基を含む飽和炭素鎖を意味する。言及されるアルキレン基で含有可能な炭素原子の数は、接頭辞「Cn1-n2」により示される。例えば、C2-6アルキレンという用語は、2、3、4、5または6個の炭素原子を有するアルキレン基を意味する。
「利用可能な水素原子」または「利用可能な原子」におけるような、「利用可能な」という用語は、置換基により置換できることが当業者に既知であると想定される原子を指す。
本明細書で使用される「アミン」または「アミノ」という用語は、単独で使用されるか別の基の一部として使用されるかに関係なく、一般式NR’R”の基を指しし、式中、R’およびR”はそれぞれ、水素またはC1-6アルキルから独立に選択される。
本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語は、単独で使用されるか別の基の一部として使用されるかに関係なく、1つまたは複数の環を含む飽和炭素環基を意味する。言及されるシクロアルキル基で可能な炭素原子の数は、数的接頭辞「Cn1-n2」により示される。例えば、C3-10シクロアルキルという用語は、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意味する。
本明細書で使用される「アリール」という用語は、単独で使用されるか別の基の一部として使用されるかに関係なく、少なくとも1個の環を含む炭素環基を指す。本開示のある実施形態では、アリール基は、フェニル、インダニルまたはナフチルなどの、6、9または10個の炭素原子を含む。
本明細書で使用される「ヘテロシクロアルキル」という用語は、単独で使用されるか別の基の一部として使用されるかに関係なく、その中の1個または複数の原子がO、SおよびNから選択されるヘテロ原子である少なくとも1個の非芳香環を含む環式基を指す。ヘテロシクロアルキル基は、飽和または不飽和(すなわち、1個または複数の二重結合を含む)のいずれかである。ヘテロシクロアルキル基が接頭辞Cn1-n2を含む場合、この接頭辞は、対応する炭素環基中の炭素原子の数を示し、その中で1個または複数、適切には1~5個の環原子が、上で定義されるヘテロ原子で置換される。
本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、単独で使用されるか別の基の一部として使用されるかに関係なく、その中で1個または複数の原子がO、SおよびNから選択されるヘテロ原子である少なくとも1個のヘテロ芳香環を含む環式基を指す。ヘテロアリール基が接頭辞Cn1-n2を含む場合、この接頭辞は、対応する炭素環基中の炭素原子の数を示し、その中で1個または複数、適切には1~5個の環原子が、上で定義のヘテロ原子で置換される。
【0024】
全ての環式基は、アリールおよびシクロ基を含み、1個または2個以上の環を含む(すなわち、多環式である)。環式基が2個以上の環を含む場合、環は融合され、架橋され、スピロ縮合され、または結合手により連結されてよい。
第1の環が第2の環と「融合され」ているということは、第1の環および第2の環がこれらの間で2個の隣接する原子を共有することを意味する。
第1の環が第2の環と「架橋され」ているということは、第1の環および第2の環がこれらの間で2個の非隣接原子を共有することを意味する。
第1の環が第2の環と「スピロ縮合され」ているということは、第1の環および第2の環がこれらの間で1個の原子を共有することを意味する。
本明細書で使用される用語「ハロ」は、ハロゲン原子を指し、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを包含する。
【0025】
用語「任意に置換される」は、置換されないか、または1個または複数の置換基で置換される、基、構造体、分子を指す。
本明細書で使用される場合、用語「atm」は、気圧を指す。
本明細書で使用される場合、用語「MS」は、質量分析を指す。
本明細書で使用される場合、用語「aq.」は、水性を指す。
【0026】
本明細書で使用される「保護基」または「PG」などの用語は、分子の反応性部分を保護またはマスクして、分子の別の部分を操作するまたは反応させる間に、分子のこれらの反応性部分における副反応を防止する、化学部分を指す。操作または反応が完了した後、保護基は、分子の残りの部分を劣化または分解しない条件下で除去される。好適な保護基の選択は、当業者により実施できる。従来型の多くの保護基が当技術分野で知られており、例えば、"Protective Groups in Organic Chemistry" McOmie,J.F.W. Ed.,Plenum Press,1973,Greene,T.W.and Wuts,P.G.M.,"Protective Groups in Organic Synthesis",John Wiley & Sons,第3版,1999およびKocienski,P.Protecting Groups,第3版,2003,Georg Thieme Verlag(The Americas)に記載されている。
【0027】
コポリマーの形成では、金属キレートモノマーの特定の重合可能な末端基は、より良好に適合されるか、または特定の構造モノマーと選択的に重合されると理解できる。コモノマーの反応性は、当該技術分野において既知の方法を使用して、例えば反応性比率の測定により、決定できる。例えば、ビニルおよびメチルビニルは、ビニルエーテルと反応し、アリールビニルは、他のスチレンと反応し、アクリレートは、他のアクリレートと反応する。
【0028】
本明細書で使用される用語「EDTA」は、エチレンジアミン四酢酸を指す。
本明細書で使用される用語「DTPA」は、ジエチレントリアミン五酢酸を指す。
本明細書で使用される用語「EGTA」は、エグタズ酸を指す。
本明細書で使用される用語「EDDS」は、エチレンジアミン-N,N’-二コハク酸を指す。
本明細書で使用される用語「EDDHA」は、エチレンジアミン-N,N’-ビス(2-ヒドロキシフェニル酢酸)を指す。
本明細書で使用される用語「BAPTA」は、1,2-ビス(o-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N’,N’-四酢酸を指す。
本明細書で使用される用語「TACN」は、1,4,7-トリアザシクロノナンを指す。
本明細書で使用される用語「TACD」は、1,5,9-トリアザシクロドデカンを指す。
本明細書で使用される用語「サイクレン」は、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカンを指す。
本明細書で使用される用語「サイクラム」は、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカンを指す。
本明細書で使用される用語「(13)aneN4」は、1,4,7,10-テトラアザシクロトリデカン(tetraazacyclotridecane)を指す。
本明細書で使用される用語「1,7-ジアザ-12-クラウン-4」は、1,7-ジオキサ-4,10-ジアザシクロドデカンを指す。
本明細書で使用される用語「1,10-ジアザ-18-クラウン-6」は、1,4,10,13-テトラオキサ-7,16-ジアザシクロオクタデカンを指す。
本明細書で使用される用語「DFO」は、デスフェリオキサミンを指す。
本明細書で使用される用語「TACDタイプキレート化剤」、「TACNタイプキレート化剤」、「サイクレンタイプキレート化剤」などは、特定基部構造(すなわち、TACD、TACN、サイクレン、など)を含むキレート化剤を指し、特定基部構造は、利用戒能な水素原子の位置でさらに置換できる。
【0029】
本明細書で使用される用語「膨潤可能ポリマーシード」は、体積を増やすことができるポリマー粒子を指す。例えば、膨潤可能なポリマーシードは、膨潤剤と接触されると、体積を増大できる。膨潤剤は、例えばアニオン性界面活性剤および/または有機化合物であり得る。膨潤可能なポリマーシードが膨潤されると、モノマー(例えば、構造モノマーおよび金属キレートモノマー)、立体安定剤、および重合開始剤などの化合物は、膨潤ポリマーシードの内部に拡散できる。続いて、モノマーの重合が起こり得る。
【0030】
本明細書で使用される用語「実質的に無酸素条件」は、酸素含量が低いか、または酸素が存在しない反応条件を指す。例えば、実質的に無酸素条件は、反応が不活性雰囲気下、例えば、希ガス(例えば、ヘリウム、アルゴン)または窒素雰囲気下で実施される反応条件を指し得る。例えば、実質的に無酸素条件は、約0ppm~約5ppm、約0ppm~約3ppm、約0ppm~約2ppm、または約0ppm~約1ppm、または約0.01ppm~約2ppmの酸素含量を指し得る。
【0031】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、およびキメラ抗体およびこれらの結合フラグメントを包含することが意図される。抗体は、組換え源由来であっても、および/または遺伝子導入動物で産生されてもよい。抗体は、従来の技術を使用してフラグメント化できる。例えば、F(ab’)2フラグメントは、抗体をペプシンで処理することにより生成できる。得られたF(ab’)2フラグメントは、ジスルフィド架橋を還元してFab’フラグメントを産生するように処理できる。パパイン消化は、Fabフラグメントの形成をもたらし得る。Fab、Fab’およびF(ab’)2、scFv、ds-scFv、二量体、ミニボディ、ディアボディ、二重特異的抗体および他のフラグメントもまた、組換え技術により合成できる。本明細書で使用される抗体フラグメントは、結合フラグメントを意味する。
【0032】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、天然および非天然起源の塩基、糖、および糖間(主鎖)結合からなるヌクレオチドまたはヌクレオシドモノマーの配列を含む核酸を指し、一本鎖および二本鎖分子、RNAおよびDNAを含む。オリゴヌクレオチドは、非天然起源モノマーを含み、長いサイズ(例えば、1000モノマーより大きく~最大で10Kモノマー)、中間サイズ(例えば、200~1000(両端を含む)ヌクレオチド)または短いサイズ、例えば200モノマー、100モノマー、50モノマー未満であってよい。用語「オリゴヌクレオチド」は、例えば、単鎖DNA(ssDNA)、ゲノムDNA(gDNA)、相補DNA(cDNA、RNAからの逆転写される)、メッセンジャーRNA(mRNA)、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」および「miRNA」ならびにオリゴヌクレオチド類似体、例えば「モルホリノオリゴヌクレオチド」、「ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド」、または当業者に既知の任意のオリゴヌクレオチドまたはその類似体を包含する。
【0033】
本明細書における終端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に含まれる全ての数および小数部を包含する(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4、および5を包含する)。全ての数およびその端数は「約」という用語によって修飾されるとみなされることも理解されるべきである。
【0034】
さらに、特定のセクションで記載される定義および実施形態は、当業者により理解され得るように適切に本明細書で記載される他の実施形態に適用可能であることが意図される。例えば、次の節では、開示の異なる態様がより詳細に定義される。そのように定義されたそれぞれの態様は、別義が明確に指示されない限り、いずれかの他の態様と組み合わされてよい。特に、好ましいまたは有利であるとして示されるいずれかの特徴が、好ましいまたは有利であるとして示されるいずれかの他の特徴と組み合わされてよい。
【0035】
本明細書で記載される範囲について、部分的範囲、例えばそれらの間の0.1毎の増分もまた、意図される。例えば、範囲が0ppm~5ppmである場合、0.1ppm~約5ppm、0ppm~約4.9ppm、0.1ppm~約4.9ppm、などの部分的範囲も意図される。
【0036】
II.本開示の化合物、組成物およびキット
従って、一態様では、本開示は、金属コード化マイクロビーズを含み、マイクロビーズは、
構造モノマー、および
金属およびキレート化剤を含む金属キレートモノマーを含むコポリマー、を含み;
キレート化剤は、少なくとも3つの部位で金属を配位し;および構造モノマーは、キレート化剤を含まない。
【0037】
本開示のマイクロビーズは、実質的に均一に分散された金属を含み得る。
例えば、金属キレートモノマーにキレート化された金属は、表面結合に限定されず、むしろ、本開示のマイクロビーズ全体にわたり、および/またはマイクロビーズの内部で分散されると見出され得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、キレート化剤は、少なくとも4つの部位で、少なくとも5つの部位で、少なくとも6つの部位で、少なくとも7つの部位で、または少なくとも8つの部位で、金属を配位する。例えば、DTPAは、8座配位リガンドである(8つの部位で配位できる)。
【0039】
いくつかの実施形態では、構造モノマーは、いかなるキレート化剤も含まない(例えば、少なくとも2つの部位で金属を配位するいかなるキレート化剤も含まない)。
いくつかの実施形態では、構造モノマーは、金属不含である。例えば、構造モノマーは、キレート化による、共有結合による(例えば、構造モノマーの炭素骨格中のテルル)、または場合によりいずれか他の手段による金属を含み得ない。構造モノマーは、遷移金属または遷移金属の部類を含み得ない。例えば、構造モノマーは、希土類金属(例えば、ランタニド)および/または本明細書で記載の軟金属を含み得ない。マスサイトメトリーへの適用の場合のような、いくつかの実施形態では、金属キレートモノマーは、重金属(例えば、80amu超の)を含み得るが、一方で構造モノマーは、重金属(例えば、80amu超の)を含まない。
【0040】
いくつかの実施形態では、構造モノマーは、置換もしくは非置換スチレン、α-メチルスチレン、アクリル酸およびエステルならびにこれらのアミド、メタクリル酸およびエステルならびにこれらのアミド、ならびにこれらの誘導体から選択される。一実施形態では、構造モノマーは、置換もしくは非置換スチレンおよび/またはまたはこれらの組み合わせから選択される。
【0041】
いくつかの実施形態では、金属キレートモノマーは、重合の前に式(I):
【化1】
の構造を有し、式中、リガンドは、キレート化剤であり、Lは、リンカーであり、Xは、重合可能な末端基であり、Mは、金属であり、nは、1または2以上の整数であり、金属キレートモノマーは、重合の前に中性電荷である。
金属は、イオン性の非共有結合相互作用を介して、金属キレートモノマーのキレート化剤にキレート化される。従って、金属は、非共有結合相互作用を介して本開示のマイクロビーズ中に組み込まれる。
【0042】
いくつかの実施形態では、Lは、結合、C3-C8アルキルアミン、C3-C8アルキレン、C3-C8シクロアルキル、C3-C8ヘテロシクロアルキル、5員または6員アリールまたはヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルへテロアリール、C3-C8シクロアルキルアリール、C3-C8シクロアルキルヘテロアリール、C(O)、-C(O)O、またはこれらの混合物から選択される。アルキレン、アリール、アルキルアリール、アルキルへテロアリール、シクロアルキル、シクロアルキルアリール、およびシクロアルキルヘテロアリールのそれぞれは独立に、置換されない、またはC1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C3-C8シクロアルキル、C3-C8ヘテロシクロアルキル、アミド、エステル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルへテロアリール、C3-C8シクロアルキルアリール、C3-C8シクロアルキルヘテロアリール、CN、またはこれらの混合物から選択できる1個または複数の置換基により置換されてよい。
Lは、例えば、アミドまたはエステル基/結合によりキレート化剤に付着できる。
【0043】
構造モノマーおよび金属キレートモノマーが類似の疎水性を有する場合、他方への一方の組み込みまたは混合が好ましいことが、理解され得る。例えば、構造モノマーが疎水性の場合、疎水性金属キレートモノマーは、構造モノマーとより好ましい相互作用を有し得、2種のモノマーのより効率的な混合をもたらす。従って、いくつかの実施形態では、Lは、疎水性であり得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、重合可能な末端基は、アリルビニル、スチレン、α-メチルスチレン、アクリル酸塩エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、2-メチルアクリルアミド、およびこれらの混合物から選択され、場合により重合可能な末端基は、アリルビニルまたはスチレンである。いくつかの実施形態では、重合可能な末端基は、アリルビニルまたはビニルエステルである。
【0045】
キレート化剤は、例えば三座配位であり得る。いくつかの実施形態では、キレート化剤は、4座配位、5座配位、6座配位、7座配位、または8座配位であり、場合によりキレート化剤は、6座配位または8座配位である。
いくつかの実施形態では、キレート化剤は、アミノポリ酸部分、またはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、アミノポリ酸部分の誘導体は、アミノポリ酸部分のアミドを含む。
例えば、アミノポリ酸部分は、アミノポリカルボン酸、アミノポリホスホン酸、またはこれらの組み合わせから選択できる。
【0046】
いくつかの実施形態では、Lは、結合であり、キレート化剤は、アミノポリ酸であり、重合可能な末端基は、アリルビニルである。例えば、金属キレートモノマーは、金属に配位したビニルベンゼンイミノ二酢酸または金属に配位したジビニルベンゼンイミノ二酢酸であり得る。
他の実施形態では、アミノポリ酸部分は、エチレンイミン、プロピレンアミン、またはこれらの混合物の1種または複数の置換オリゴマーであり、オリゴマーは、2個以上のカルボン酸および/またはホスホン酸で置換されている。オリゴマーは、クラウンエーテルまたはアザクラウンエーテルであり得る。いくつかの実施形態では、アミノポリ酸部分は、エチレンオキシド、エチレンイミン、プロピレンオキシド、プロピレンアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、アミノフェノールシクロヘキサンジアミン、またはこれらの混合物の1種または複数の置換オリゴマーである。
さらに他の実施形態では、オリゴマーは、C1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C3-C8シクロアルキル、C3-C8ヘテロシクロアルキル、ハロ、アルコール、アミン、アミド、エステル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルへテロアリール、C3-C8シクロアルキルアリール、C3-C8シクロアルキルヘテロアリール、CN、またはこれらの混合物から選択される1個または複数の置換基によりさらに置換される。
【0047】
いくつかの実施形態では、キレート化剤は、DFO、EDTA、DTPA、EGTA、EDDS、EDDHA、BAPTA、H4neunpa、H6phospa、H4CHXoctapa、H4octapa、H2CHXdedpa、H5decapa、Cy-DTPA、Ph-DTPA、TACNタイプキレート化剤、TACDタイプキレート化剤、サイクレンタイプキレート化剤、サイクラムタイプキレート化剤、(13)aneN4タイプキレート化剤、1,7-ジアザ-12-クラウン-4タイプキレート化剤、1,10-ジアザ-18-クラウン-6タイプキレート化剤、またはこれらの誘導体から選択される。
例えば、TACNタイプキレート化剤は、NOTA、NOPO、TRAP、またはこれらのいずれかの誘導体であり得る。
いくつかの実施形態では、サイクレンタイプキレート化剤は、DOTAまたはその誘導体である。
いくつかの実施形態では、サイクラムタイプキレート化剤は、TETA、架橋TETA、DiAmSar、またはこれらの誘導体から選択される。
他の実施形態では、(13)aneN4タイプキレート化剤は、TRITAまたはその誘導体から選択される。
さらに他の実施形態では、1,10-ジアザ-18-クラウン-6タイプキレート化剤は、MACROPAまたはその誘導体から選択される。
【0048】
いくつかの実施形態では、キレート化剤は、DTPA、Cy-DTPA、Ph-DTPA、またはこれらの誘導体から選択される。
例えば、DTPAの誘導体は、それらの間の原子と一緒に結合されて5員または6員環、場合によりシクロアルキル環、アリールまたはヘテロアリール環、を形成する2個の隣接する炭素原子を有するDTPAを含み得る。
【0049】
重合の前に、本明細書で記載のモノマーは、未反応であり、即ち、モノマーは、重合に参加できる重合可能な末端基を含む。いくつかの実施形態では、重合の前に、金属キレートモノマーは:
【化2】
であり、式中、LおよびXは、本明細書で記載の通りである。
【0050】
他の実施形態では、重合の前に、金属キレートモノマーは:
【化3】
、またはこれらの混合物から選択される。
例えば、混合物は、異なる金属を有する1種または複数の前記金属キレートモノマーを含み得る。
【0051】
他の実施形態では、キレート化剤は、ポルフィリンまたはフタロシアニンを含む。
例えば、キレート化剤は、置換されたまたは置換されないポルフィリンであり得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、ポルフィリンおよびフタロシアニンはそれぞれ独立に、C1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C3-C8シクロアルキル、C3-C8ヘテロシクロアルキル、アミド、エステル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルへテロアリール、C3-C8シクロアルキルアリール、C3-C8シクロアルキルヘテロアリール、カルボン酸、またはこれらの混合物で置換される。
【0053】
キレート化剤がポルフィリンまたはフタロシアニンであるか、またはこれらを含む場合、金属は、軟金属であり得る。例えば、軟金属は、カドミウム、コバルト、銅、鉄、亜鉛、ニッケル、スズ、オスミウム、パラジウム、白金、金色、タリウム、水銀、または鉛であってよく、これらの同位体、ならびにこれらの混合物を含み得る。いくつかの実施形態では、軟金属は、80amu以上の原子質量を有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、重合の前に金属キレートモノマーは:
【化4】
、またはこれらの混合物から選択され、nは、1~4の整数である。
例えば、Lは、アニリンであり得る。
いくつかの実施形態では、nは、2であるか、または少なくとも2である。
【0055】
他の実施形態では、金属キレートモノマーは:
【化5】
、またはこれらの混合物から選択される。
【0056】
本開示のマイクロビーズはまた、立体安定剤をさらに含み得る。立体安定剤は、PVP、ポリビニルアルコール、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、アクリル酸エステルの水溶性ホモポリマー、メタクリル酸エステルの水溶性ホモポリマー、アクリルアミドの水溶性ホモポリマー、メタクリルアミドのホモポリマー、水溶性コポリマー立体安定剤、またはこれらの混合物であり得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、水溶性コポリマー立体安定剤は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミドまたはメタクリルアミドと、メチルアクリレートおよび/またはエチルアクリレート、またはこれらの混合物とのコポリマーから選択される。
コポリマーはまた、例えば金属キレートモノマーおよび/または構造モノマーが2つ以上の重合性基を有する場合に達成されるように、架橋されてよい。
例えば、本開示のマイクロビーズは、複数の金属を含み得る。例えば、各金属は、同じタイプまたは異なるタイプの金属キレートモノマーにより組み込まれてよい。金属は、複数の金属であり得る。
いくつかの実施形態では、複数の金属は、1種または複数の濃縮同位体を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、複数の金属は、少なくとも2種の金属、少なくとも3種の金属、または少なくとも4種の金属を含む。
他の実施形態では、複数の金属の各金属の量は、複数の金属の別の金属の量の約20%または約10%以内である。例えば、これは、マイクロビーズの集団、または1個のマイクロビーズに対しマスサイトメトリーにより決定できる。
金属は、例えば、遷移金属(すなわち、周期表の3~12族の金属、またはランタニドまたはアクチニドシリーズの金属)であり得る。金属は、例えば、インジウム、ビスマス、または希土類金属であり得る。希土類金属は、例えば、ランタニド金属、イットリウム、またはこれらの混合物であり得る。いくつかの実施形態では、金属は、インジウム、ビスマス、軟金属、または希土類金属である。軟金属は、カドミウム、コバルト、銅、鉄、亜鉛、ニッケル、スズ、オスミウム、パラジウム、白金、金色、タリウム、水銀、鉛、およびこれらの同位体、ならびにこれらの混合物であり得る。
他の実施形態では、金属は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、これらそれぞれの同位体、およびこれらの混合物から選択される希土類金属を含む。
さらに他の実施形態では、金属は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、これらそれぞれの同位体、およびこれらの混合物から選択される。
さらに他の実施形態では、希土類金属は、89Y、139La、136Ce、138Ce、140Ce、142Ce、141Pr、142Nd、143Nd、145Nd、146Nd、148Nd、145Pm、144Sm、149Sm、150Sm、152Sm、154Sm、151Eu、153Eu、154Gd、155Gd、156Gd、157Gd、158Gd、160Gd、152Gd、159Tb、156Dy、158Dy、160Dy、161Dy、162Dy、163Dy、164Dy、165Ho、162Er、164Er、166Er、167Er、168Er、170Er、169Tm、168Yb、170Yb、171Yb、172Yb、173Yb、174Yb、176Yb、175Lu、またはこれらの混合物から選択される。
金属は、マイクロビーズ全体を通して実質的に均一に分散され得る。それはまた、例えばマイクロビーズの内部で、区分化されてよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、マイクロビーズは、約60℃もしくは60℃超、場合により、約70℃もしくは70℃超、約80℃もしくは80℃超、約90℃もしくは90℃超、約100℃もしくは100℃超、約115℃もしくは115℃超、約125℃もしくは125℃超、または約135℃もしくは135℃超のガラス転移温度(例えば、示差走査熱量測定(DSC)により測定される)を有する。例えば、DSCの結果は、約10℃/分~約20℃/分の走査速度にて、第2または第3の加熱走査で取得される。
【0060】
他の実施形態では、マイクロビーズは、約0.6μm~約20μm、約1μm~約15μm、約2μm~約10μm、または約2μm~約6μmの直径を有する。いくつかの実施形態では、本開示のマイクロビーズは、マスサイトメトリーに好適なサイズを有する。
さらに他の実施形態では、マイクロビーズは、水中にてコロイド状態で安定である。例えば、本出願のマイクロビーズは、緩衝液中および/または生理的媒体中での貯蔵時に実質的に安定である。例えば、緩衝液中および/または生理的媒体中で実質的に安定は、緩衝液中および/または生理的媒体中の貯蔵時に、金属の顕著な漏出または1%未満の漏出がないことを意味する。
【0061】
いくつかの実施形態では、マイクロビーズの表面は、生体分子への付着のための機能化を含む。機能化は、コーティング層を付加することにより導入できる。
いくつかの実施形態では、付着は共有的付着である。例えば、実施例で示されるように、マイクロビーズは、シリカでコートでき、カルボン酸基などの反応性官能基で機能化できる。生体分子がマイクロビーズに付加されてよい。
生体分子は、タンパク質、オリゴヌクレオチド、脂質、炭水化物、または小分子として分類され得る。代わりにまたは追加して、生体分子は、その機能により分類され得る。生体分子は特に限定されず、種々の機能化を使って、生体分子をマイクロビーズにコンジュゲートできる。例えば、オリゴヌクレオチドは、単鎖DNA分子、場合によりストリンジェントな条件下で標的核酸分析物(例えば、試料核酸生体分子)にハイブリダイズするcDNAであり得、またはオリゴヌクレオチドは、アプタマーであり得る。例えば、生体分子は、試料に対し内在性の(例えば、試料オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする)標的mRNAなどの、標的オリゴヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであり得る。ハイブリダイゼーションは、8個超、10個超、15個超、または20個超のヌクレオチドである配列のものであってよい。
【0062】
特定の態様では、生体分子は、その機能により分類され得る。例えば、生体分子は、親和性試薬、抗原(例えば、親和性試薬により特異的に結合される分析物)、または酵素基質であり得る。親和性試薬は、抗体(例えば、またはそのフラグメント)、アプタマー、受容体(例えば、またはその一部)、または標的を特異的に結合する任意の他の生体分子(例えば、ビオチンを特異的に結合するストレプトアビジンなどの、アビジン)であり得る。例えば、ビーズは、抗体と結合され、試料中のその標的抗原の存在、例えばサイトカイン、ウィルスタンパク質、癌バイオマーカーなど、の存在を検出するために使用され得る。特定の方法およびキットでは、マイクロビーズは、ビオチンで機能化された別の生体分子の付着のために、アビジンで機能化され得る(例えば、ビーズを多数の異なるアッセイのいずれかに適合可能にするために)。抗原は、抗体などの親和性試薬により特異的に結合されるエピトープを含むタンパク質(またはそのペプチド配列)であり得る。例えば、ビーズは、ウィルス抗原(ウィルスタンパク質配列など)に付着され、本明細書でさらに記載されるように、ウィルス抗原を特異的に結合する試料中の抗体の存在を検出するために使用され得る。酵素基質は、酸化還元酵素、トランスフェラーゼ、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼまたはリガーゼなどの、特定の酵素の作用を受ける任意の基質であり得る。例えば、基質は、プロテアーゼ、ホスファターゼ、キナーゼ、メチルトランスフェラーゼ、脱メチル化酵素などの酵素に対する基質であるタンパク質(例えば、またはそのペプチド配列)であり得る。非タンパク質基質は、例えば、制限酵素もしくはDNA修復のための部位(ニックなど)により切断可能な制限配列を含む二本鎖オリゴヌクレオチド、DNAメチルトランスフェラーゼによる標的化配列を含むオリゴヌクレオチド配列、または当業者に既知の任意の非タンパク質基質を含む。例えば、ビーズは、基質に付着され、基質を修飾する酵素を含む試料に曝露され、かつ基質の修飾(またはその欠如)が、検出され得る(例えば、本明細書でさらに記載されるように)。
【0063】
いくつかの実施形態では、親和性試薬は、抗体またはその結合フラグメントであるか、またはこれらを含む。抗体は、例えばビオチン化抗体または結合フラグメントであってよく、マイクロビーズに直接的にまたは間接的に加えることができる。
例えば、実施例で示されるように、ニュートラアビジン(NAv)が、EDC/NHSカップリングによりマイクロビーズ表面にコートされたシリカ上のCOOH基に共有結合された。ビオチン化抗体は、強力なビオチン-アビジン親和性によりNAv修飾マイクロビーズ表面に付着された。
【0064】
従って、親和性試薬は、アビジンまたはストレプトアビジン、ニュートラアビジンおよびカプトアビジン(CaptAvidin)などの関連ビオチン結合分子であり得る。このような親和性試薬を含むマイクロビーズは、着目している標的分析物に特異的なビオチン化抗体を用いてカスタマイズできる。
【0065】
いくつかの実施形態では、場合により抗体である親和性試薬は、サイトカイン、場合によりケモカイン、インターフェロン、リンホカイン、モノカイン、IL-1~36などのインターロイキン、腫瘍壊死因子およびコロニー刺激因子に特異的である。
抗体はまた、ウィルス、細菌または真菌病原体などの病原性タンパク質に特異的であり得る。このようなマイクロビーズは、環境または患者試料などの試料中のこのような病原体またはそれらの産物の存在の検出のために使用できる。
他の実施形態では、抗原は、ウィルス抗原である。ウィルス抗原を含むこのようなマイクロビーズは、例えば患者試料中のウィルス抗体の検出するために使用できる。他の病原体由来のものなどの抗原も同様である。
【0066】
さらに他の実施形態では、マイクロビーズのコポリマーは、第3のモノマーをさらに含み、第3のモノマーは、少なくともマイクロビーズの表面上に存在し、かつ少なくとも1種の反応性官能基を含む。いくつかの実施形態では、マイクロビーズは、第3のモノマー中に含まれる少なくとも1種の反応性官能基により、例えば3段階分散重合により、機能化される。いくつかの実施形態では、第3のモノマーは、置換もしくは非置換アクリル酸またはメタクリル酸である。3段階分散重合の例は、Abdelrahmanらの、JACS,2009,15276に記載され、この文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
例えば、マイクロビーズの表面は、反応性官能基により機能化できる。
いくつかの実施形態では、反応性官能基は、二酸化ケイ素コーティング上にある。
他の実施形態では、反応性官能基は、アミン、チオール、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、エポキシド、ビニル、アルキン、マレイミド、またはクリックケミストリー部分(例えば、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)、アジド、トランスシクロオクテンもしくはテトラジン、またはこれらの誘導体)またはこれらの混合物から選択される。
さらに他の実施形態では、機能化は、マイクロビーズの表面の二酸化ケイ素のコーティングを含み、場合により機能化は、二酸化ケイ素のコーティングを官能化することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、マイクロビーズの表面は、反応性官能基により機能化される。
他の実施形態では、反応性官能基は、二酸化ケイ素コーティング上にある。
例えば、反応性官能基は、アミン、チオール、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、エポキシド、ビニル、アルキン、マレイミド、またはまたはこれらの混合物から選択できる。
【0068】
二酸化ケイ素コーティングの機能化は、当該技術分野において既知の方法を使用して実施できることが、理解される。例えば、二酸化ケイ素コーティングによるマイクロビーズの機能化の方法が、米国特許出願公開第2019/0091647号に記載されている。この特許出願公開の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
いくつかの実施形態では、生体分子への付着は、非共有的な付着である。
他の実施形態では、マイクロビーズの表面は、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、またはこれらの混合物により機能化される。
さらに他の実施形態では、マイクロビーズの表面は、生体分子にコンジュゲートされる。
【0070】
いくつかの実施形態では、金属は、生体分子を特定するバーコードを与える。
いくつかの実施形態では、マイクロビーズの内部構造は、コポリマーを含む。
他の実施形態では、金属キレートモノマーは、単一金属原子をキレート化し、複数の金属原子をキレート化しない。
【0071】
いくつかの実施形態では、マイクロビーズは、金属キレートモノマーを含まないポリマーシードを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーシードは、ポリマーシードを膨潤することにより形成される内部空間を有し、コポリマーは、少なくともポリマーシードの内部空間内に存在する。
いくつかの実施形態では、ポリマーシードは、構造モノマーを含み、場合によりポリマーシードの構造モノマーは、コポリマーの構造モノマーと同一の構造である。
別の態様では、本開示は、本開示のマイクロビーズの集団を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、集団は、約10%または10%未満の変動係数(CV)を有する粒度分布を有する。
他の実施形態では、変動係数は、5%未満である。
【0073】
いくつかの実施形態では、各マイクロビーズは、複数の金属を含み、複数の金属の各金属のマイクロビーズの集団にわたる平均量は、複数の金属の別の金属の平均量の約10%または10%以内である。
他の実施形態では、複数の金属は、1種または複数の濃縮同位体を含む。
いくつかの実施形態では、マイクロビーズの集団の1つのマイクロビーズの各金属の量は、マイクロビーズの集団の別のマイクロビーズの同じ金属の量の約20%もしくは20%以内または約10%もしくは10%以内または約5%もしくは5%以内である。
他の実施形態では、マイクロビーズの集団の各金属の量は、約20%または20%未満の変動係数の分布を有する。
さらに他の実施形態では、マイクロビーズの集団の各金属の量は、約10%または10%未満の変動係数の分布を有する。
いくつかの実施形態では、マイクロビーズの集団のマイクロビーズは、実質的に同じ量で同じ金属を含む。
いくつかの実施形態では、同じ金属は、複数の金属であり、かつマイクロビーズは、実質的に同じ量で複数の金属の各金属を含む。
【0074】
さらなる態様は、マイクロビーズまたは複数のマイクロビーズを含む組成物である。組成物は、例えば緩衝液であってよく、例えば約7のpHに緩衝化される。緩衝液は、アンモニウム酢酸などの緩衝剤を含み得る。組成物は、PVPも含み得る。
ある実施形態では、組成物は、水性のコロイド懸濁液である。
組成物は、安定剤、防腐剤、緩衝剤、およびおよびこれらの混合物から選択される1種または複数の成分を含み得る。
別の態様では、本開示は、本開示のマイクロビーズの複数の個別の集団および/または組成物を含むキットを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、マイクロビーズの各集団は、マイクロビーズの金属または複数の金属に基づいて、別のマイクロビーズ集団から識別できる。
いくつかの実施形態では、マイクロビーズの少なくとも1つの集団(例えば、各集団)のマイクロビーズは、マイクロビーズの別の集団のマイクロビーズの金属または複数の金属とは異なる金属または複数の金属を含む。
いくつかの実施形態では、マイクロビーズの少なくとも1つの集団(例えば、各集団)のマイクロビーズは、マイクロビーズの別の集団のマイクロビーズとは異なる比率で複数の金属を含む。
いくつかの実施形態では、マイクロビーズの各集団のマイクロビーズは、異なる生体分子にコンジュゲートされる。例えば、マイクロビーズは、マイクロビーズ中の金属または複数の金属の性質によりマイクロビーズに付着された生体分子に対するバーコーディング剤として使用できる。
別の態様では、本開示は、本開示の方法により調製されたマイクロビーズを含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、構造モノマーおよび金属キレートモノマーは、本明細書記載の方法のいずれかの方法により共重合され得る。注目すべきことは、本明細書に記載の方法で使用される構造モノマーおよび/または金属キレートモノマーは、このセクションで記載のいずれかの態様を有し得ることである。
【0077】
本開示のキットは、本明細書で記載のマイクロビーズ、またはマイクロビーズ集団のいずれかを含み得る。マイクロビーズ、またはそれらのキットはまた、本明細書でさらに記載されるように、質量分析アッセイのための追加の態様も含み得る。本開示の態様はまた、本明細書でさらに記載されるように、質量分析アッセイなどの追加の方法も含む。
【0078】
III.本開示の方法
別の態様では、本開示は、
重合された構造モノマー、重合されない構造モノマー、および立体安定剤を含む第1の混合物を得るために核生成段階で立体安定剤の存在下にて構造モノマーを重合すること、
第2の混合物を得るために第1の混合物を、金属および少なくとも1種の重合可能な末端基に付着されたキレート化剤を含む金属キレートモノマーを組み合わせることあって、
キレート化剤は、少なくとも3つの部位で金属を配位し;および金属キレートモノマーは、構造モノマーと重合可能である、組み合わせること;および
マイクロビーズのコポリマーを形成するために第2の混合物を重合することであって、
構造モノマーは、キレート化剤を含まない、重合すること、
を含む金属コード化されたマイクロビーズを調製する方法を含む。
【0079】
より効率的な重合のために、構造モノマーおよび金属キレートモノマーは反応媒体中で可溶性である必要があることが理解され得る。さらに、モノマーが、例えば重合を妨げる置換基(例えば、ハロ、アミン、アルコール)で置換される場合、置換基は、重合の前に、および/または重合中に、当該技術分野において既知の保護基を用いて一時的に保護されてよいと理解され得る。重合の後で、当該技術分野において既知の方法を使用して、保護基は、選択的に除去されてよく、置換基は、選択的に脱保護されてよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、金属は、複数の金属である。
他の実施形態では、構造モノマーは、構造モノマーに基づき約5%~約20%完結へと核生成段階で重合される。
さらに他の実施形態では、第2の混合物の重合は、構造モノマーに基準づき75%~約100%完結、約80%~約99%完結、約85%~約95%完結、約85%~約93%完結へと行われる。
【0081】
いくつかの実施形態では、構造モノマーは、本明細書で定義される通りである。
いくつかの実施形態では、金属キレートモノマーは、本明細書で定義される通りである。
いくつかの実施形態では、立体安定剤は、本明細書で定義される通りである。
いくつかの実施形態では、金属は、本明細書で定義される通りである。
【0082】
いくつかの実施形態では、方法は、マイクロビーズを機能化することをさらに含む。
いくつかの実施形態では、マイクロビーズの機能化は、
第3の混合物を得るために重合された第2の混合物を第3のモノマーと混合することであって、第3のモノマーが、反応性官能基を含む、混合すること;および
第3の混合物を重合すること、
を含む。
例えば、反応性官能基は、アミン、チオール、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、エポキシド、ビニル、アルキン、マレイミド、またはまたはこれらの混合物から選択できる。特定の反応性官能基は重合プロセスを妨げる可能性があり、かつ重合の前に、および/または重合中に、当該技術分野において既知の保護基を用いて保護できることが、理解される。例えば、アミンおよびチオールは、保護基により保護できる。例えば、反応性官能基で置換されたモノマーは、保護形態で使用でき、それにより反応性官能基は重合プロセスを妨げないはずである。場合により、保護された反応性官能基は、当該技術分野において既知の方法を使用して脱保護されてよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、第3のモノマーは、任意に置換されるアクリル酸、任意に置換されるメタクリル酸、およびこれらの混合物から選択される。
【0084】
他の実施形態では、マイクロビーズの機能化は、二酸化ケイ素によるマイクロビーズのコーティングを含む。
他の実施形態では、マイクロビーズの機能化は、二酸化ケイ素コーティングの機能化をさらに含む。
例えば、二酸化ケイ素コーティングの機能化は、二酸化ケイ素コーティングを有機シランと反応させることを含み得る。例えば、有機シランは、クロロシラン、アルコキシシラン、これらの誘導体、およびこれらの混合物から選択できる。
いくつかの実施形態では、二酸化ケイ素コーティングの有機シランとの反応は、触媒の存在下で実施される。例えば、触媒は、アンモニア、水酸化物、有機アミン、またはこれらの混合物から選択できる。
いくつかの実施形態では、有機シランは、反応性官能基を含む。
いくつかの実施形態では、反応性官能基は、アミン、チオール、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、エポキシド、ビニル、アルキン、マレイミド、またはまたはこれらの混合物から選択される。
いくつかの実施形態では、有機シランは、APTESである。
【0085】
他の実施形態では、方法は、生体分子にマイクロビーズをコンジュゲートすることをさらに含む。
いくつかの実施形態では、生体分子は、本明細書で定義される通りである。
いくつかの実施形態では、マイクロビーズは、約0.6μm~約20μm、約1μm~約15μm、約2μm~約10μm、約2μm~約6μmの直径を有する。
いくつかの実施形態では、マイクロビーズは、本開示のマイクロビーズである。
いくつかの実施形態では、マイクロビーズの内部構造は、コポリマーを含む。
【0086】
別の態様では、本開示は、金属コード化されたマイクロビーズを調製する方法を含み、方法は、
膨潤可能なシード粒子およびアニオン性界面活性剤の水性分散液を提供すること;
水性分散液を、構造モノマーと金属キレートモノマーを含むモノマーと接触させることであって、金属キレートモノマーは、金属および少なくとも1種の重合可能な末端に付着されたキレート化剤を含み、キレート化剤は、少なくとも3つの部位で金属を配位する、接触させること;および
膨潤したシード粒子の水性分散液を形成するためにモノマーをシード粒子中に拡散させること;および
膨潤したシード粒子の水性分散液中でモノマーの重合を開始させることであって、構造モノマーは、キレート化剤を含まない、開始させること、
を含む。
【0087】
別の態様では、本開示は、
膨潤可能なポリマーシード、有機化合物、アニオン性界面活性剤、および場合によりその中で有機化合物が可溶性である有機溶媒を含む水性分散液を提供すること;
有機化合物を膨潤可能なポリマーシード中に拡散させること;
水性分散液を構造モノマーおよび金属キレートモノマーを含む混合物と接触させることであって、場合により混合物は、立体安定剤および/または重合開始剤をさらに含む、接触させること;および
マイクロビーズのコポリマーを得るために混合物を重合させること;
を含む、金属コード化されたマイクロビーズを調製する方法を含み、
有機化合物は、5000Da未満の分子量および25℃で10-2g/L未満の水溶性を有する。
【0088】
別の態様では、本開示は、
乳化重合により膨潤可能なポリマーシードを調製することであって、アニオン性界面活性剤が、実質的に無酸素条件下で乳化剤として使用される、調製すること;
膨潤可能なポリマーシードを、有機化合物、アニオン性界面活性剤、および場合によりその中で有機化合物が可溶性である有機溶媒を含む水性分散液と接触させること;
膨潤可能なポリマーシード中に有機化合物を拡散させること;
水性分散液を構造モノマーおよび金属キレートモノマーを含む混合物と接触させることであって、場合により混合物が、立体安定剤および/または重合開始剤をさらに含む、接触させること;および
マイクロビーズのコポリマーを得るために混合物を重合させること;
を含む金属コード化されたマイクロビーズを調製する方法を含み、
有機化合物は、5000Da未満の分子量および25℃で10-2g/L未満の水溶性を有する。
【0089】
いくつかの実施形態では、構造モノマーは、アクリルモノマー、メタクリレートモノマーおよびスチレン、ジビニルベンゼン(DVB)、エチルビニルベンゼン、ビニルピリジン、アミノスチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、エチルメチルスチレン、p-クロロスチレンおよび2,4-ジクロロスチレンからなる群より選択されるビニルモノマーからなる群より選択される。
いくつかの実施形態では、膨潤したシード粒子の水性分散液は、立体安定剤をさらに含む。
いくつかの実施形態では、立体安定剤は、ポリビニルピロリドンである。
いくつかの実施形態では、膨潤可能なシード粒子の水性分散液を提供することは、乳化重合により単分散の膨潤可能なシード粒子を調製することを含む。
いくつかの実施形態では、膨潤可能なシード粒子の水性分散液は、5000ダルトン未満の分子量および25℃で10-2g/L未満の水溶性を有する有機化合物;および、場合によりその中で上記有機化合物が可溶性である有機溶媒をさらに含む。
いくつかの実施形態では、膨潤可能なシード粒子は、単分散の膨潤可能なシードのオリゴマー粒子である。
例えば、アニオン性界面活性剤は、アルキル硫酸またはアルキルスルホン酸であり得る。いくつかの実施形態では、アニオン性界面活性剤は、C8-16アルキル硫酸またはスルホン酸またはこれらの塩である。例えば、アニオン性界面活性剤は、デシル硫酸、ドデシル硫酸、デシルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、またはこれらの塩であり得る。いくつかの実施形態では、アニオン性界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウムまたはデシル硫酸ナトリウムである。
いくつかの実施形態では、構造モノマーは、本明細書で定義される通りである。
いくつかの実施形態では、金属キレートモノマーは、本明細書で定義される通りである。
いくつかの実施形態では、有機化合物は、重合開始剤である。
いくつかの実施形態では、重合開始剤は、過酸化物、アゾ化合物、またはこれらの混合物である。
いくつかの実施形態では、有機溶媒は、アルコール、エーテル、ケトン、ジアルキルスルホキシド(例えば、DMSO)、ジアルキルホルムアミド(例えば、DMF)、またはこれらの混合物から選択される非重合性溶媒である。
【0090】
IV.本開示のモノマーの合成
本開示のモノマーは、種々の合成方法で調製できる。特定の構造特徴および/または置換基の選択は、別の方法に対する1つの方法の選択に影響を与え得る。所与のモノマーの特定の調製方法の選択は、当業者の技量の範囲内にある。本開示で記載の化合物を調製するためのいくつかの出発材料は、市販の化学的供給源から入手可能である。例えば、後述のような、他の出発材料は、当該技術分野において周知の直接的な変換を用いて入手可能な前駆体から容易に調製される。本出願の第2のモノマーの調製を示す下記スキームでは、全ての変数は、別に定める場合を除き、本記述で定義される通りである。
【0091】
式(I)の化合物は、例えば下のスキームに示される方法により調製できる。下に示す構造式では、変数は、別に定める場合を除き、式(I)で定義される通りである。当業者は、下のスキーム中に示された反応の多くは、酸素および/または水に感受性であり得ることを理解し、必要に応じて無水の不活性雰囲気下で反応を実施することを知っているであろう。反応温度および時間は、例示のみの目的で提示され、当業者により理解されるように、収率を最適化するために変わる可能性がある。
【0092】
従って、ある実施形態では、式Iの化合物は、スキームAに示されるように調製される。式Aのキレート化剤またはリガンドは、式Bの重合可能な末端基を有する1つまたは複数のリンカーに付着されて、式Cの金属キレート化ができるモノマーを形成する。その後、金属Dは、式Cのモノマーにキレート化されて、式Iの金属キレートモノマーを形成できる。
スキームA
【化6】
いくつかの実施形態では、式Aのリガンドは、1個または複数のカルボン酸基を含んでよい。従って、スキームA中のステップaは、スキームBに従って実施できる。式Eのリガンドは、式Fの金属キレート化可能なモノマーを得るために、アミド結合形成またはエステル化により、式Bの重合可能基を有する1つまたは複数のリンカーに付着できる。アミド結合形成は当該技術分野において既知の方法を使用して、例えば活性化エステルの形成により実施できることが、理解される。
スキームB
【化7】
金属キレート化ステップbは当該技術分野において既知の方法を使用して実施できることが、理解される。例えば、いくつかの実施形態では、式CまたはFおよび式Iの金属の金属キレート化可能なモノマーは、それぞれ、好適な溶媒中に溶解され得る。好適な溶媒は、当業者により選択でき、水を含み得る。式Dの金属は、金属の塩、例えば、金属のハロゲン化物塩であり得る。金属キレート化のできるモノマーおよび金属の溶液は、一緒に混合され得る。例えば、得られた混合物のpHは、監視され、かつ好適なpHに調節できる。いくつかの実施形態では、好適なpHは、約5.5~約7.5、または約6を含む。得られた混合物は、式Iの金属キレートモノマーが生じるまで、撹拌され得る。
【0093】
本明細書で記載される方法を通して、適切な場合には、好適な保護基は、様々な反応物および中間体に、当業者により容易に理解される方式で付加され、その後除去されることが理解されるべきである。そのような保護基を使用するための従来の手順、ならびに、好適な保護基の例は、例えば、"Protective Groups in Organic Synthesis",T.W.Green,P.G.M.Wuts,Wiley-Interscience,New York,(1999)に記載される。化学的操作による基または置換基の別の基または置換基への変換は、最終生成物に向かう合成経路上で任意の中間体または最終生成物に対し実施できることもまた理解されるべきであり、この場合、可能な変換方式は、他の官能基の変換に使用される条件または試薬に対しその段階で分子が有する固有の不適合性によってのみ制限される。そのような固有の不適合性、ならびに好適な順で適切な変換および合成ステップを実施することによりそれらを回避する方法は、当業者に容易に理解されよう。変換の例は、本明細書で提供され、記載される変換は、変換が例示される一般的な基または置換基にのみ制限されないことが、理解されるべきである。他の好適な変換の参考文献および記載は、"Comprehensive Organic Transformations-A Guide to Functional Group Preparations" R.C.Larock,VHC Publishers,Inc.(1989)で与えられる。他の好適な反応の参考文献および記載は有機化学の教科書、例えば、"Advanced Organic Chemistry",March,第4版 McGraw Hill(1992)または"Organic Synthesis",Smith,McGraw Hill,(1994)に記載されている。中間体および最終生成物の精製のための技術としては、例えば、カラムまたは回転プレートによる順相および逆相クロマトグラフィー、再結晶化、蒸留および液-液または固-液抽出が挙げられ、これらは、当業者により容易に理解されるであろう。
【0094】
V.質量分析法およびキット
上記マイクロビーズおよびキットは、質量分析アッセイでの使用のための追加の態様を含み得る。以下に記載するのは、質量分析アッセイのための方法およびキットであり、これらは、本明細書の別の箇所で記載される任意の好適なマイクロビーズまたはキットを包含または使用し得る。好適なアッセイは、標的オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えば、サイトカイン、癌バイオマーカー、または特異的抗原に対する抗体)、または酵素(例えば、キナーゼ、ホスファターゼ、プロテアーゼ、またはマイクロビーズに付着された基質生体分子を修飾する任意の他の着目すべき酵素)などの標的または試料生体分子を検出するためのアッセイを含む。アッセイは、標的試料生体分子を検出するために、ハイブリダイゼーションおよび/またはサンドイッチELISAフォーマットを使用し得る。好適なアッセイはまた、細胞の分析も含む(例えば、マスサイトメトリーアッセイにおける較正、正規化または定量化のための標準としてのマイクロビーズの使用)。
【0095】
本開示のマイクロビーズ(およびキットまたはその方法)は、光学検出(例えば、蛍光系検出)のために使用され得る。あるいは、本開示のマイクロビーズ(およびキットまたはその方法)は、元素分析(例えば、質量分析)により分析され得る。従って、マイクロビーズは、低蛍光を示す可能性がある(例えば、可視および/またはUVの範囲にわたり、0.2未満、0.1未満、0.05未満、または0.02未満の蛍光量子収率を有し得る)が、それでも、質量分析(例えば、ICP-MSによるなどの原子質量分析)または別の形態の元素分析(例えば、ICP-OES、X線分散分光法)による分析に好適であろう。
【0096】
本明細書で記載のアッセイ方法およびキットは、質量分析による試料の分析のためであり得る。好適な試料は、細胞試料(例えば、細胞または組織切片の懸濁液)または生体液(例えば、懸濁状態の試料生体分子を含む)などの任意の生体試料を含む。試料は、細胞株、細胞培養上清であってよく、またはヒト、げっ歯類または他の哺乳動物などの生物から採取されてもよい。試料は、全血、血清、血漿、または末梢血単核球(PBMC)などの血液試料であってよい。試料は、唾液試料、経鼻綿棒、切除物(例えば、固形組織の生検)であってよい。試料は、全細胞を含んでよく、または全細胞を含む試料から(例えば、溶解物から)ホモジナイズされてもよい。特定の態様では、試料は、本明細書で記載のアッセイにより、またはキットを使って特徴付けられる精製された試料生体分子であり得る。例えば、アッセイまたはキットは、薬物候補である潜在的試料生体分子を選別し得る。注目すべきことは、追加のステップが、マイクロビーズからの非結合試料生体分子、マイクロビーズからの非結合レポーター、または細胞からの非結合質量タグ付き抗体を除去するように、本明細書で記載のいずれかの方法で実施され得ることである。
【0097】
イメージングマスサイトメトリー(IMC)では、試料は、質量分析(例えば、LA-ICP-MSまたはSIMS)による分析のための質量タグ(例えば、質量タグ付き抗体による)で標識される組織切片であってよい。懸濁液マスサイトメトリー(suspension mass cytometry)では、懸濁液中の粒子(細胞および/またはビーズなど)が、分析のためにマスサイトメーター(例えば、ICP-MSシステム)中に導入され得る。
【0098】
本願の質量分析は、原子質量分析であり得る。本願の質量分析計は、複数の質量チャネルを同時に検出し得る。異なる質量チャネルは、異なる質量タグからの金属またはその同位体に対応し得る。このような同時質量分析計は、例えば、飛行時間質量分析計(TOF-MS)または磁気セクター質量分析計であり得る。質量分析計は、原子質量分析のために試料を微粒化し得る。例えば、ICP、レーザアブレーションICP、二次イオン(例えば、二次イオン質量分析法(SIMS)のための)または任意の好適なイオン化源を用いて試料を微粒化し得る。マスサイトメーターは、本明細書で記載の質量タグおよび/またはマイクロビーズから金属を特異的に検出し、例えば、より軽い原子(例えば、C、N、Oなどの内在性元素、および軽金属、および、質量分析計がICPシステムである場合、場合により、アルゴンおよびアルゴン二量体などのさらなるプラズマガス元素)を除去するためのイオン光学を含み得る。例示的マスサイトメーターは、米国特許出願公開第20050218319号および同20160049283号にさらに記載されており、これらの特許文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0099】
例示的アッセイスキームを
図15に示す。本開示のコポリマーマイクロビーズは、バーコードを含み得る。バーコードは、金属キレートモノマーによりキレート化された複数の金属または濃縮された金属同位体であり得る。バーコードは、アッセイバーコード(すなわち、マイクロビーズが結合するように機能化された試料生体分子を特定するバーコード)であり得る。代わりにまたは追加して、マイクロビーズは、マイクロビーズが混合された、または混合される予定の試料を特定するために使用される試料バーコードを含み得る。マイクロビーズは、試料生体分子に特異的に結合する生体分子(例えば、捕捉生体分子)に付着(例えば、共有結合)され得る。生体分子は、例えば、ウィルス粒子、サイトカイン、癌バイオマーカーなどの目的の試料抗原生体分子を特異的に結合する抗体などの親和性試薬を含み得る。生体分子は、例えば、目的の試料オリゴヌクレオチド生体分子に特異的にハイブリダイズする配列を有するssDNAオリゴヌクレオチドなどのオリゴヌクレオチドを含み得る。複数のこのようなビーズを試料と混合することは、
図15に示すように、各ビーズの生体分子がそれらそれぞれの試料生体分子へ結合することを可能にし得る。さらに、
図15に示すように、レポーターが、試料生体分子に結合され得る(例えば、ビーズに付着された生体分子へ試料生体分子を結合させるステップの前に、後で、またはその間に)。レポーターは、質量タグを含み得る。従って、本開示の方法は、バーコード化されたマイクロビーズに付着された生体分子(例えば、捕捉生体分子)に試料生体分子を結合させることを含み、および試料生体分子に質量タグ付きレポーターを結合させることをさらに含み得る。バーコードおよび質量タグはその後、本明細書で記載されるように原子マスサイトメトリー(atomic mass cytometry)により検出され得る。同様に、本明細書で記載される特定のキットは、場合により試料生体分子を特異的に結合する生体分子に付着されたバーコード化されたマイクロビーズを含み、キットは、質量タグを試料生体分子と結合させるレポーターをさらに含み得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書のいずれか他の実施形態で記載のように、マイクロビーズの集団、または複数のマイクロビーズの個別の集団を含む。特定の態様では、マイクロビーズの各集団は、マイクロビーズの金属または複数の金属に基づいて、マイクロビーズの別の集団から識別され得る(例えば、原子質量分析により)。例えば、マイクロビーズの少なくとも1つの集団(例えば、各集団)のマイクロビーズは、マイクロビーズの別の集団のマイクロビーズの金属または複数の金属とは異なる金属または複数の金属を含むか、またはマイクロビーズの別の集団のマイクロビーズとは異なる比率で複数の金属を含んでよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、キット中のマイクロビーズの各集団のマイクロビーズは、異なる生体分子にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも1種の異なる生体分子により特異的に結合される試料生体分子を特異的に結合できるレポーターなどの、質量タグを含むレポーターをさらに含み得る。キットのマイクロビーズに付着された異なる生体分子は、異なる試料生体分子に特異的に結合し得る。試料生体分子は、試料中に存在する本明細書で記載の任意の生体分子であってよい。このような試料生体分子は、タンパク質(例えば、またはそのペプチド)、オリゴヌクレオチド、脂質、炭水化物または小分子であり得る。タンパク質は、例えば、抗体またはサイトカインであり得る。オリゴヌクレオチドは、ゲノムDNA配列、cDNA配列またはmRNA配列などのRNA配列であり得る。オリゴヌクレオチドはまた、DNA RNAハイブリッドであり得、および/または1種または複数の修飾残基を含み得る。
【0102】
試料生体分子は、オリゴヌクレオチド(例えば、RNA)を含み得、マイクロビーズの少なくとも1つの異なる生体分子は、試料生体分子(例えば、標的分析物)に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(例えば、ssDNA)であり得る。例えば、レポーターは、ハイブリダイズして複数の質量タグ付きオリゴヌクレオチドを試料生体分子に間接的に結合させる、複数のオリゴヌクレオチドを含む。あるいは、質量タグを含むレポーターは、試料生体分子に直接ハイブリダイズし得る。特定の態様では、試料生体分子は、抗原(例えば、サイトカインなどのタンパク質)などの、オリゴヌクレオチド以外の生体分子であり得、レポーターは、抗体にコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドを含み得、この場合、抗体は抗原に結合でき、抗体にコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドは、レポーターの質量タグオリゴヌクレオチドに直接または間接的に(例えば、ハイブリダイゼーションにより)結合される。このような間接的ハイブリダイゼーションは、ヘアピン鎖反応、分岐インサイツハイブリダイゼーション、または任意の他の好適な方法などにより、複数の質量タグの試料生体分子との結合を可能にし得る。従って、いくつかの実施形態では、本明細書で記載のレポーターは、質量タグを試料生体分子と一緒に結合させる、別の生体分子のシステムを含み得る(または含み得ない)。
【0103】
いくつかの実施形態では、マイクロビーズに付着された少なくとも1つの異なる生体分子は、抗体(例えば、または、ナノボディなどのそのフラグメント)である。例えば、試料生体分子は、ウィルス粒子であり、ここで少なくとも1つの異なる生体分子は、ウィルス粒子を特異的に結合する第1の抗体であり、レポーターは、ウィルス粒子を特異的に結合する第2の抗体を含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの試料生体分子は、サイトカインであり、例えば、マイクロビーズに付着された少なくとも1つの異なる生体分子は、サイトカインを特異的に結合する第1の抗体であり、レポーターは、サイトカインを特異的に結合する第2の抗体を含む。
いくつかの実施形態では、サイトカインは、IL-18、IL-1F4、TNFα、IL-6、IFNγ、IL-4、CD163、CXCL-9/MIG、IL-10、IL-1β、およびこれらの組み合わせから選択される。
【0105】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの試料生体分子は、癌バイオマーカー(例えば、前立腺特異抗原)であり、少なくとも1つの異なる生体分子は、癌バイオマーカーを特異的に結合する第1の抗体であり、レポーターは、癌バイオマーカーを特異的に結合する第2の抗体を含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異なる生体分子は、ウィルス抗原を含み、試料生体分子は、ウィルス抗原を特異的に結合する抗体であり、レポーターは、試料生体分子に結合する二次抗体を含む。
【0107】
本開示の方法およびキットは、複数の異なるレポーターを含み得、それぞれの異なるレポーターは、異なる生体分子により特異的に結合される試料生体分子を結合できる。複数の異なるレポーターはそれぞれ、同じ質量タグ(同じ質量チャネル中で検出される)、または異なる質量タグ(異なる質量チャネル中で検出される)を含む。質量タグは、金属ナノ結晶(例えば、ナノゴールド粒子)、量子ドット、ポリマーナノ粒子、などの金属ナノ粒子を含み得る。ナノ粒子は、100nmであるか、または100nm未満、50nm未満、20nm未満、10nm未満の直径、例えば、2nm~100nmまたは5nm~50nmの直径であり得る。質量タグは、金属結合(例えば、金属キレート)ペンダント基を含む直鎖または分岐鎖ポリマーなどの金属キレートポリマーを含み得る。テルル原子がポリマーの炭素原子に共有結合される有機テルルポリマー質量タグなどの、他の質量タグもまた、本開示の範囲内にある。質量タグは、1個または複数の金属元素またはその濃縮された同位体を有し得る。質量タグは、本明細書で記載される、または当業者に既知のいずれかの好適な結合手段により生体分子(例えば、試料生体分子に結合するレポーターの生体分子)にコンジュゲートされ得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、マイクロビーズに付着される生体分子は、試料生体分子に対する酵素基質である。本開示の方法またはキットは、酵素基質が試料生体分子により修飾されている場合に酵素基質に特異的に結合する(例えば、特異的に結合できる)レポーター、または酵素基質が試料生体分子により修飾されていない場合に酵素基質に特異的に結合する(例えば、特異的に結合できる)レポーターをさらに含み得る。例えば、酵素基質は、キナーゼ基質を含み、試料生体分子(例えば、標的分析物)は、キナーゼ基質をリン酸化するキナーゼを含み、レポーターは、リン酸化された基質を結合するリン酸化特異的抗体であり得る。別の例では、酵素基質は、酵素基質が、プロテアーゼである試料生体分子により切断されるペプチド配列などの試料生体分子により修飾される場合に除去される、質量タグを含む。いくつかの実施形態では、従って、質量タグのシグナルの非存在は、試料生体分子酵素の存在を示し得る。酵素アッセイの例は、米国特許出願公開第20070190588号に記載され、この特許文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0109】
本開示のキットおよび方法のいくつかの態様では、複数の異なる集団からのマイクロビーズは、混合物中に(マイクロビーズの第1の混合物中に)存在する。いくつかの態様は、マイクロビーズの第1の混合物と同じ生体分子を含むマイクロビーズの第2の混合物をさらに含み得、第1の混合物のマイクロビーズは、第2の混合物のマイクロビーズとは異なる試料バーコードを含む。試料バーコードは、例えば、マイクロビーズの内部に存在する(例えば、第1および第2の混合物のマイクロビーズの金属キレートモノマーによりキレート化された金属のサブセットであり得る)。あるいは、その場合、試料バーコードは、第1および第2の混合物のマイクロビーズの表面上に存在し得る。方法またはキットは、複数の異なる集団からのマイクロビーズの表面に結合するように機能化される別の区分中の複数の試料バーコードを含み得る(例えば、各区分の試料バーコードが異なる混合物のマイクロビーズに適用される場合)。試料バーコード化マイクロビーズは、一緒に混合されてよく(例えば、それらのそれぞれの試料との混合後であるが、場合によりレポーターとの混合の前に)、その後質量分析により分析され得る。各マイクロビーズの試料バーコードからの質量スペクトルはそれにより、それが由来する試料を特定するために使用され得る。
【0110】
特定の態様では、キットまたは方法は、相互の混合物中に質量タグ付き抗体のパネルをさらに含み得、パネルの少なくともいくつかの抗体は、細胞表面マーカーに特異的である(例えば、細胞試料中の細胞表面タンパク質を結合するために使用される)。複数の抗体は、例えば、緩衝液中で、または凍結乾燥形態(例えば、5体積%未満または1体積%未満の水分)で、キットのマイクロビーズと混合され得る。複数の(例えば、それぞれの)質量タグ付き抗体は、キットのマイクロビーズの金属キレートモノマーによりキレート化される金属と同一の金属を含む。しかし、本明細書で記載の細胞およびマイクロビーズは、原子質量分析により識別可能であり得る。例えば、本明細書で記載の細胞は、天然起源の細胞が通常含まない、細胞のDNAに結合するイリジウムインターカレーターなどの、1種または複数の金属(またはそれらの濃縮された同位体)を含み得る。マイクロビーズは、質量標準として、および/または試料溶液(例えば、細胞培養上清または血清)中の生体分子(例えば、サイトカイン、抗体、癌バイオマーカー)を検出するために、細胞と共に分析されるてよい。
【0111】
いくつかの実施形態では、本明細書で記載のマイクロビーズの1つまたは複数の集団を含むキットは、立体安定剤(例えば、キットのマイクロビーズとの混合物中で)をさらに含む。本明細書で記載のように、立体安定剤は、0.05重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.5重量%、または1重量%超、例えば約0.05重量%~約10重量%、約0.1重量%~約5重量%、約0.2重量%~約2重量%などのポリビニルピロリドン(PVP)であり得る。代わりにまたは追加して、キットのマイクロビーズは、約4~約10(両端含む)のpH、約5~約9(両端含む)のpH、約6~約8(両端含む)のpH、約3を超えるpH、約4を超えるpH、または約10未満のpHで緩衝化された溶液中に存在し得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、本開示のキットのマイクロビーズは、凍結乾燥される。例えば、キットのマイクロビーズは、10重量%未満、5重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.2重量%未満、0.1重量%未満、または約0.05重量%~約5重量%の水分である。
【0113】
いくつかの実施形態では、マイクロビーズは、本明細書でさらに記載されるように、イメージング質量分析(またはイメージングマスサイトメトリー)における較正(例えば、基準粒子として)、正規化または定量化のために、固体担体に融合される。固体担体は、スライド(例えば、透明ガラスまたは石英スライドなどの、顕微鏡スライド)または接着膜(いずれかの本発明の方法で顕微鏡スライドに適用するために)などの任意の好適な担体であり得る。固体担体は、生体試料をさらに含み得る。
【0114】
いくつかの実施形態では、固体担体は、少なくとも2個、例えば、少なくとも3個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも50個、少なくとも100個、少なくとも500個、少なくとも1000個、少なくとも2000個、少なくとも5000個、または少なくとも10000個の融合されたマイクロビーズを含む。マイクロビーズ(基準粒子)は全て同じであってよく、またはマイクロビーズは、金属またはその含量が異なってよい。異なるマイクロビーズが使用される場合、マイクロビーズの複数のそれぞれの集団が通常存在する。
【0115】
マイクロビーズは、ほぼ全てのマイクロビーズが個別に(即ち、離散して)固体担体上に位置するように、固体担体上に分散され、それにより各融合されたマイクロビーズは、個別に特定されおよびサンプリングされ得る。当業者なら、固体担体は、試料キャリア上に凝集したいくつかの融合されたマイクロビーズをさらに含み、そのためこれらの凝集体は、シグナル強度の較正および正規化のためのサンプリングに好適でない可能性があることを理解するであろう。例えば、約2%まで、例えば、最大で約5%、最大で約8%、最大で約10%、最大で約15%、または最大で約20%の融合されたマイクロビーズが固体担体上に凝集されてよい。換言すれば、少なくとも約80%、例えば、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、または少なくとも約95%のマイクロビーズが、個別に分離され得る。光学的照合は、どの位置の固体担体が離散したマイクロビーズを有するかを特定し、かつイメージング質量分析計による取得をガイドできる。
【0116】
固体担体へ少なくとも1つのマイクロビーズを融合するステップは、固体担体を加熱することを含み得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのマイクロビーズと試料キャリアまたは固体担体を融合するステップは、マイクロビーズのガラス転移温度を超える温度での試料キャリアまたは固体担体を加熱することおよび次いでマイクロビーズのガラス転移温度未満で試料キャリアまたは固体担体を冷却することを含む。換言すれば、試料キャリアまたは固体担体への少なくとも1つのマイクロビーズの融合は、ガラス化により行われる。いくつかの実施形態では、試料キャリアまたは固体担体は、最大で300℃、例えば、最大で275℃、最大で250℃、最大で225℃、または最大で200℃の最高温度に加熱される。
【0117】
本明細書で記載のいずれかの実施形態のキットは、1種または複数の緩衝剤(例えば、PBS、赤血球溶解緩衝剤、洗浄剤緩衝剤、染色緩衝剤、および/または凍結乾燥マイクロビーズなどの凍結乾燥試薬を再構成するための緩衝剤、凍結乾燥レポーター、凍結乾燥抗体)、抗凝固剤(例えば、血液試料を処理するための)、固定試薬、透過処理試薬、または本明細書で記載の方法また実施例を実施するための任意の試薬をさらに含み得る。
【0118】
本開示の方法は、質量分析により本明細書で記載のいずれかのマイクロビーズを分析することを含む。例えば、マイクロビーズ(例えば、1つまたは複数のマイクロビーズ集団)は、質量分析計を較正するために、および/または正規化(例えば、質量タグから得られる質量スペクトルの正規化)するためにまたは定量(細胞またはピクセル中の抗体の数を定量)するために使用される元素標準であり得る。
【0119】
いくつかの実施形態では、質量分析の方法は、本開示のマイクロビーズの別個の集団を試料と混合することであって、マイクロビーズの各集団のマイクロビーズが、異なる生体分子に結合され、マイクロビーズの各集団が、マイクロビーズの金属または複数の金属に基づきマイクロビーズの別の集団から識別される、混合すること;試料の異なる試料生体分子をマイクロビーズの個別の集団の異なる生体分子に結合させること;レポーターをそれぞれの異なる試料生体分子に直接にまたは間接的に結合させることであって、それぞれの異なる試料生体分子に結合されるレポーターが、質量タグを含む、結合させること;および質量分析により個別のマイクロビーズの金属および質量タグを検出することを含む。
【0120】
このような方法は、マイクロビーズの別個の集団を試料と混合する前に異なる生体分子をマイクロビーズの別個の集団のマイクロビーズに付着させることをさらに含み得る。1種または複数の試料生体分子は、オリゴヌクレオチド、抗体(または別の親和性試薬)、サイトカイン、癌バイオマーカー(例えば、1種または複数の前立腺特異抗原)などを含み得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、質量分析の方法は、本明細書で記載のいずれかの実施形態のキットを使用し、かつ、マイクロビーズの別個の集団を試料と混合することであって、マイクロビーズの各集団のマイクロビーズが、異なる生体分子に結合され、マイクロビーズの各集団が、マイクロビーズの金属または複数の金属に基づきマイクロビーズの別の集団から識別される、混合すること;試料の異なる試料生体分子をマイクロビーズの個別の集団の異なる生体分子に結合させること;レポーターをそれぞれの異なる試料生体分子に直接にまたは間接的に結合させることであって、異なる試料生体分子のそれぞれに結合したレポーターが、質量タグを含む、結合させること;および質量分析により個別のマイクロビーズの金属および質量タグを検出することをさらに含む。
【0122】
いくつかの実施形態では、本明細書で記載のいずれかのマイクロビーズを用いる細胞試料の質量分析のキットまたは方法は、複数の質量タグ付き抗体を提供することであって、質量タグ付き抗体の各抗体が、金属またはそれらの濃縮同位体の複数金属をキレート化するポリマー質量タグにコンジュゲートされる、提供すること;試料を複数の質量タグ付き抗体と接触させるステップ;質量分析により試料およびマイクロビーズに結合された質量タグ付き抗体を検出することを含む。マイクロビーズおよび細胞試料は、質量分析による分析の前に組み合わされ得るか、または別々の試料実験で分析され得る。マイクロビーズは、1種または複数の試料生体分子をアッセイするために使用され得る。代わりにまたは追加して、マイクロビーズは、本明細書でさらに記載されるように、較正、正規化および/または定量化のために使用される元素標準であり得る。
【0123】
マイクロビーズは、本明細書で記載されるように、一貫したサイズおよび/または量の1種または複数の金属を有する単一集団のものであり得る。あるいは、マイクロビーズは、金属の異なるセット、金属の組み合わせ、および/または金属の量によりそれぞれ特徴づけられる異なる集団のものであり得る。例えば、あるセットのマイクロビーズ集団は、10種を超える別個の元素(例えば、30種を超える別個の同位体質量)からの金属を一緒に有する。例えば、本願のマイクロビーズは、4を超える、6を超える、10を超える、20を超える、または30を超える個数の質量チャネル(例えば、80amuより大きい原子質量チャネル)のシグナルを一緒に提供し得る。マイクロビーズは、懸濁液マスサイトメトリーワークフローにおいて細胞と一緒に添加され得るか、またはイメージングマスサイトメトリーワークフローにおいて組織切片または細胞塗抹標本と同じ担体上で提供され得る。マイクロビーズは、本明細書で記載のアッセイで使用され得るか、または標準(例えば、マスサイトメトリーにより検出される質量タグが検出される、ほとんどまたは全ての質量チャネルでシグナルを与える)であり得る。異なる量の同じ金属(例えば、またはその濃縮された同位体)を有するマイクロビーズの質量スペクトルは、本明細書でさらに記載されるように、較正、正規化または定量化で使用される曲線(例えば、既知の量金属に対するシグナル強度の曲線)を作成するために使用され得る。
【0124】
マイクロビーズは、本明細書で記載されるいずれかの検出ステップで使用される質量分析計を較正するために使用され得る。較正は、質量分解能、質量較正、デュアルカウントキャリブレーション(dual count calibration)、pre-xyおよびxy最適化(pre-xy and xy optimization)、検出器電圧、ガス較正または電流較正の1種または複数であり得る。質量分解能は、異なる質量のイオン間で十分な分離が存在することを確実にし、特定の同位体からのピークの形状に一部は基づき得る。特定の値を超える質量分解能は、合格を示し得る。質量較正は、1つまたは複数の質量チャネルの値(例えば、マイクロビーズ標準の金属からの値)を検査し、かつその後追加の質量チャネルに対するTOF値を計算する自動調整を含み得る、および/または各イオンの全シグナルが収集されるように正確なイオンを検出チャネルに整列させることを含み得る。デュアルカウントキャリブレーションは、デュアルカウント係数(パルスカウントおよび強度を相関させるためのデュアルスロープ)を決定し得る(デュアルカウント係数は、類似体シグナルをイオンカウントシグナルに変換する)。この相間は、例えば、細胞のまたはマイクロビーズのイベント中に、イオン濃度が増大し、かつパルスがオーバーラップする場合に重要であり得る。XY最適化は、それによりトーチと真空境界の最適整列が決定されて質量チャネルに対し最大シグナル(例えば、マイクロビーズ標準の金属からの)を提供する過程である。システムの整列を最適化することは、真空境界中へのイオンの最大伝送のために重要である。検出器電圧較正は、デュアルカウントキャリブレーションを用いて、検出器の寿命を確保しながら最良のシグナルを提供する検出器電圧を決定する。最適検出器電圧は、デュアルカウント係数が0.03±0.003である場合に達成され得る。検出器電圧は、-1,100Vよりプラス側であってはならない。ガスおよび/または電流較正は、酸化物形成を制御しながらメイクアップガス流および噴霧器ガス流を変化させることにより達成できる最大質量チャネルシグナル(例えば、マイクロビーズ標準の金属からの)を用いて、噴霧剤ガス流およびメイクアップガス流(および場合により、追加のガス流)を最適化し得る。これは、プラズマ温度がシステム中で最適であり、かつ最小限の金属酸化物が形成されることを保証する。真空境界で印加される電流は、境界を通してイオン雲の移動を促進するために徐々に高められる。最高のシグナルを与える値が次いで、選択され得る。較正は、試料実験中に実施され得る(例えば、感度の変動を説明するために)。
【0125】
マイクロビーズは、マイクロビーズから得られた(例えば、少なくとも1つの質量タグとして1種または複数の同じ金属を含むマイクロビーズ、または類似の質量スペクトル、または異なる量の金属を含む複数のマイクロビーズ集団から生成した検量線から得られた)質量分析シグナルに基づき質量タグ(例えば、本明細書で記載の試料の質量タグ)から得られた質量分析シグナルを正規化するための標準として使用され得る。それぞれのタグは、1つまたは複数の質量チャネルでシグナルをもたらし得る。質量タグシグナルのこのような正規化は、個別の細胞またはアッセイのマイクロビーズイベント(例えば、懸濁液マスサイトメトリーで)に対して、または個別の細胞、アッセイのマイクロビーズまたはピクセル(例えば、イメージングマスサイトメトリーで)に対してであってよい。例えば、細胞塗抹標本の個別の細胞は、IMCにより検出され得る、または膜染色に基づきアルゴリズムにより分割された固体組織切片の細胞、および単一細胞全体にわたる質量タグシグナルは、本明細書で記載のように正規化または定量化され得る。細胞またはピクセルの質量タグシグナルは、細胞またはピクセルの時間間隔内、例えば、細胞またはピクセルが検出されたときの10,000秒以内、5,000秒以内、2,000秒以内、1,000秒以内、500秒以内、200秒以内、または100秒以内に検出されるマイクロビーズからのシグナルに正規化され得る。代わりにまたは追加して、標準として使用されたマイクロビーズが異なる金属を有する別個の集団のマイクロビーズを含む場合、質量タグシグナルの正規化は、その金属が質量タグと同じ質量チャネルで検出される1種または複数のマイクロビーズに基づき得る。代わりにまたは追加して、標準として使用されるマイクロビーズが異なる金属量を有する別個の集団のマイクロビーズを含む場合、同じ金属を含む質量タグからのシグナルの正規化は、同じ質量チャネルに対し類似のシグナル強度(例えば、10倍またはそれ未満の差異の、5倍またはそれ未満の差異の、2倍またはそれ未満の差異の、など)を与える1種または複数のマイクロビーズに基づき得る。本明細書で記載のように、金属は、濃縮された同位体であり得る。従って、異なる金属および/または異なる金属量を有するマイクロビーズの集団を含むマイクロビーズ標準が、使用されてよい。このような正規化は、マスサイトメトリーデータ(例えば、マスサイトメトリーにより得られるFCSファイルの正規化されたデータ)を正規化するためにFluidigmにより提供されるEQ4(商標)ビーズと類似であり得る。しかし、本開示のマイクロビーズは、4を超える、6を超える、10を超える、20を超える、または30を超える個数の質量チャネル(例えば、80amuより大きい原子質量チャネル)のシグナルを一緒に提供し得る。
【0126】
マイクロビーズは、質量タグからの既知の(または推定される)数の金属原子が抗体(または他の生体分子)と結合される場合などの、1種または複数の質量タグ付き抗体(または他の質量タグ付き生体分子)の量を定量化するための標準として使用され得る。例えば、1つ以上の質量タグの実体を有し得る質量タグ付き抗体(または他の生体分子)と結合される金属原子の数は、質量タグ当りの(例えば、ポリマー質量タグ上の)金属の既知の数およびUV/可視スペクトルまたはICP-MSシグナル特性から出発すること;およびUVまたは可視スペクトルまたはICP-MSにより質量タグ付き抗体(または他の生体分子)の割合をさらに分析すること、により決定され得る。このような分析は、高速タンパク質液体クロマトグラフィーにより得られる画分上で実施され得る。質量タグ付き抗体を定量することは従って、それぞれの質量タグ付き抗体に対する金属原子の平均数ならびに質量タグ付き抗体およびマイクロビーズから検出された質量分析シグナルに基づき得る。マイクロビーズは、金属原子の既知の数(例えば、本明細書で記載のように決定される)を有し得る。マイクロビーズおよび質量タグ付き抗体(または他の生体分子)は、同じ金属を含み得る。従って、質量タグ付き抗体を定量することは、マイクロビーズ中の金属の数に、マイクロビーズからの金属のシグナルに対する質量タグ付き抗体(または他の生体分子)からのシグナルの比率を乗じ、これを抗体(または他の生体分子)当りの金属原子の平均数により除算したものとして計算され得る。定量化は、個別の細胞、アッセイマイクロビーズ、またはピクセルについて実施され得る。
【0127】
本開示の実施形態は、本明細書で記載の較正、正規化、または定量化の1つまたは複数を実施するように構成されたコンピューター可読性媒体を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、検出するステップは、懸濁液マスサイトメトリーまたはイメージング質量分析のためなどの、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を含み得る。質量分析は、飛行時間質量分析計(TOF-MS)または磁気セクター質量分析計などの、同時質量分析によるものであり得る。
いくつかの実施形態では、マイクロビーズを検出することは、イメージング質量分析(例えば、イメージングマスサイトメトリー)によるものであり得る。マイクロビーズ(例えば、マイクロビーズ標準)は、検出ステップの前に、固体表面に融合され(例えば、融解され)得る。イメージング質量分析は、例えば、レーザアブレーションICP-MSまたは二次イオン質量分析法(SIMS)によるものであり得る。
【0129】
生体試料は、分析を必要とする生物学的性状の任意の試料を含み得る。例えば、試料は、生体分子、組織、体液、および動物、植物、真菌、または細菌の細胞を含み得る。それらはまた、ウィルス起源の分子も含み得る。典型的試料は、限定されないが、喀痰、血液、血液細胞(例えば、PBMC)、組織または細針生検試料、尿、腹腔液、および胸水、またはそこからの細胞を含。生体試料はまた、組織学的目的のために採取された凍結切片などの組織の切片も含み得る。別の典型的な生体試料源は、ウィルスおよび動物、植物、細菌、真菌の細胞培養物であり、この場合、遺伝子発現の状態が、遺伝子内の関連性を調査するために操作され得る。場合によっては、人工の試料などの他の試料が、調査され得る。本開示の特定の態様は、ヒト起源の試料を調査する場合に、特に有用であり、かつヒト末梢血の試料を調査する場合に、特に有用である。
【0130】
質量タグ付きオリゴヌクレオチドは、標的オリゴヌクレオチドに、直接または間接的にハイブリダイズされ得る。例えば、1種または複数の中間体オリゴヌクレオチドは、複数の質量タグ付きオリゴヌクレオチドがハイブリダイズできる骨格を提供し、それによりシグナルを増幅できる。本願のいくつかの態様は従って、ハイブリダイゼーションベースのシグナル増幅のためのオリゴヌクレオチドを含む。
【0131】
いくつかの態様では、試料生体分子は、細胞またはビーズのDNAまたはRNA分子(コーディングRNA、低分子干渉RNA、またはミクロRNAなど)などの、標的オリゴヌクレオチドであり得る。標的オリゴヌクレオチドは、一本鎖であり得る。標的オリゴヌクレオチドは、既知の特異的配列(または既知の特異的配列に対する相同性)を有し得る。
【0132】
いくつかの態様では、レポーターは、抗体またはその誘導体などの、非オリゴヌクレオチド生体分子を含み得、これらは、既知の配列を含む合成の単鎖DNAオリゴヌクレオチドなどの、オリゴヌクレオチドにコンジュゲートされ得る。このような場合、抗体およびオリゴヌクレオチドの両方は、レポーターの一部と呼ばれてよい。
【0133】
標的オリゴヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされた非オリゴヌクレオチド生体分子を含むレポーターからのシグナルは、ハイブリダイゼーションスキームにより増幅され得る。ハイブリダイゼーションは、分岐であっても直鎖であってもよい。特定の態様では、ポリメラーゼは、テンプレートに沿って第1のオリゴヌクレオチドを伸長して、元素タグの付着のための追加の部位(元素タグ付きオリゴヌクレオチドのための追加のハイブリダイゼーション部位など)をもたらす。質量タグ付きオリゴヌクレオチドは、単一の標識原子を含むか、または複数の標識原子を含むポリマーを含み、レポーターと呼ばれることもある。質量タグ付きオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドそれ自体の化学構造中に、重金属原子などの標識原子を含み得る。
【0134】
シグナル増幅は、ビーズ系アッセイに特有の利益をもたらし、このアッセイでは、同じレポータータグ(標識金属元素または同位体)が、異なるビーズおよびそれらの標的分析物全体にわたり増幅されおよび使用され得る。
【0135】
アッセイ生体分子がオリゴヌクレオチドである場合、元素タグ付きレポーターオリゴヌクレオチドは、標的RNAまたはDNAの別の部分にハイブリダイズし、それにより標的RNAまたはDNAがビーズに結合されるとシグナルをもたらす可能性がある。アッセイ生体分子が、第1のエピトープで分析物を結合する抗体などの、親和性試薬である場合、元素タグ付きレポーター親和性試薬(例えば、レポーター抗体)は、分析物上の別のエピトープに結合し、それにより標的分析物がビーズに結合されるとシグナルをもたらす可能性がある。分析物は、元素タグ付きレポーター抗体またはオリゴヌクレオチドなどの、レポーターによりさらに結合され得る。レポーターは、極めて多くの同位体(例えば、50、100、200、500、1000コピーの単一同位体)を提供する、高感度の(例えば、高強度の)元素タグを含み、それによりアッセイビーズに結合された、より小さい数の標的分析物の検出を可能にする場合がある。このような高感度の元素タグは、ナノ粒子(例えば、抗体またはオリゴヌクレオチドなどの生体分子を結合するように機能化された金属ナノ結晶表面を含む)または超分岐ポリマーを含み得る。例えば、同じナノゴールド粒子元素タグを含む複数のレポーター生体分子は、高シグナルを提供し、同じ元素タグを含む別のレポーター生体分子はアッセイバーコード(例えば、それらが特異的である分析物を提示するビーズの)により識別できるという事実を利用するはずである。特定の態様では、ナノ粒子タグ(例えば、金ナノ粒子)は、ビオチン-アビジン(例えば、ビオチン-ストレプトアビジン)相互作用を介してレポータープローブと結合され得る。例えば、ナノ粒子(例えば、金ナノ粒子)は、ストレプトアビジンにコンジュゲートされ得る。レポーターはまた、極めて多い同位体とは異なる、少ない存在量の同位体(例えば、100、50、30、20、10、または5コピーの同位体)を提供する低感度の元素タグを含み、それにより極めて多い同位体が検出器を飽和させるであろうこのような多い存在量の分析物の量の検出/定量化を可能にする場合がある。特定の態様では、高いおよび低い存在量の同位体は、質量の差異(例えば、5、10、20、30、40または50amuより大きい)を有し、それにより、高い存在量の同位体による検出器の飽和は低い存在量の同位体の検出に影響を与えない。異なる分析物(例えば、異なるアッセイビーズの標的分析物に結合する抗体を含む)に対するレポーターは、分析物がビーズの特有のアッセイバーコードにより識別されるので、同じ同位体または同位体の組み合わせを含み得る。
【0136】
特定の態様では、レポーターは、標的分析物(例えば、試料生体分子)の単一の実体との元素タグの複数の実体の結合によりシグナル増幅を提供する、レポーターシステムを含み得る。シグナル増幅は、酵素沈着、ハイブリダイゼーション(例えば、分岐ハイブリダイゼーション、鎖ハイブリダイゼーション、および/または複数のレポーターオリゴヌクレオチドの単一長中間体オリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーション)、伸長(例えば、単一伸長、ローリングサークル伸長)、および/または一連の分岐コンジュゲーション(branched conjugation)によるものであり得る。特定の態様では、アッセイビーズで検出される複数の(例えば、全ての)分析物は、同じレポーターシステムで検出され得る。特定の態様では、シグナル増幅レポーターシステムは、高感度の元素タグを有し得る。
例えば、酵素基質部分を含む元素タグは、レポーター生体分子に付着された酵素により溶液からビーズ(またはビーズに付着された分子)上に沈着され得る。このような反応は、レポーター生体分子に結合された西洋ワサビペルオキシダーゼにより作用を受けるチラミド元素タグによる共有結合であり得る。
【0137】
いくつかの態様は、ハイブリダイゼーションスキームを含み、それにより複数の元素タグ付きオリゴヌクレオチドは、単一オリゴヌクレオチド標的に間接的に(1種または複数のオリゴヌクレオチド中間体を介して)ハイブリダイズする。例えば、オリゴヌクレオチド標的は、標的RNAまたはDNA(例えば、gDNAまたはcDNA)配列であってよく、またはレポーター抗体上に存在するオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0138】
本明細書で記載のように、マスサイトメトリーは、レポーターのための追加のチャネル(アッセイ標的を検出するための)を可能にしながらビーズ中の試料およびアッセイバーコードの両方を検出するための十分な検出チャネル(質量チャネル)を可能にし得る。従って、本明細書で記載のビーズアッセイは、マスサイトメトリーでの使用のためのバーコード化された試料および/またはアッセイであり得る。例えば、複数の異なる条件(例えば、酵素または1種または複数の酵素の作動薬または拮抗薬などの薬物候補)が、生体試料に適用され、複数の標的に対するその効果が、酵素アッセイビーズで検出され得る。個別の条件は、同じ条件に曝露された異なるアッセイビーズにわたり共通の試料バーコードで特定され得る。アッセイバーコード化ビーズは、分析の前に、例えば、条件への曝露の前に、組み合わされ得る。試料バーコード化ビーズは、分析の前に、組み合わされ得る。
【0139】
特定の態様では、酵素は、プロテアーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、またはDNAメチルトランスフェラーゼなどのDNAを修飾するタンパク質であり得る。標的は、酵素により作用を受ける基質であり、レポーター(例えば、本明細書で記載のレポーター生体分子)は、それが酵素により作用を受ける前にまたは後でのみ、標的(例えば、試料生体分子)を結合し得る。例えば、リン酸化型のタンパク質標的を検出するホスホ特異的抗体は、キナーゼ酵素により作用を受けると存在量が増大し、またはホスファターゼにより作用を受けると存在量が減少し得る。酵素がプロテアーゼである場合、レポーターは、ペプチド基質の末端と結合され、基質が切断されるとビーズとの結合から取り外され得る(それにより、レポーター元素タグの減少は、プロテアーゼ活性の増大を示す)。
【0140】
試料バーコードは、多数の酵素(またはそれらの作動薬/拮抗薬)のどれが特定のアッセイで試験されたかを示すために使用され得る。例えば、候補酵素、作動薬、拮抗薬は、細胞ライセートなどの生体液に加えられ、その後試料は、酵素の活性を検出するために、アッセイバーコード化されたビーズと接触させられる。あるいは、候補は、細胞に投与され(例えば、直接に、または遺伝子工学により)、または患者または哺乳動物試験対象などの生物に投与され、その採取源から採取された試料は、アッセイビーズと接触させられ得る。試料バーコーディングは、多くのこのような候補が同時に選別されることを可能にする。いずれの場合でも、試料バーコードは、ビーズについて本明細書で記載されるように添加されて、候補を特定できる。例えば、10個超、20個超、50個超、100個超、500個超、または1000個超の別個の試料が、バーコード化され得る。例えば、6個のユニークな組み合わせで12種の別個の同位体は、924種の別個の組み合わせを与える(例えば、最大で924個の試料のバーコード化のために)。別の12種の別個の同位体は、1000に近いアッセイのバーコード化のために使用され得る。従って、10個超、20個超、50個超、100個超、500個超、または1000個超の別個のアッセイビーズを、バーコード化できる(例えば、候補剤による作用を受ける異なる基質の量を検出するビーズ)。少なくとも1つのチャネルが、本明細書で記載のように、レポーターによる基質の検出のために残されるであろう。これは、マスサイトメトリーによる即時読み取りを備えた従来にないスクリーニングを可能にする。
【0141】
タンパク質の翻訳後修飾は、生細胞中の酵素により実施される。既知の翻訳後修飾は、タンパク質リン酸化および脱リン酸化ならびにメチル化、プレニル化、硫酸化、およびユビキチン化を含む。タンパク質、特に酵素の上のリン酸基の存在または非存在は、多くの生化学的経路およびシグナル伝達経路で、調節的役割を果たすことが知られている。
【0142】
マスサイトメトリーのためのビーズ系キナーゼアッセイは、米国特許出願公開第20070190588号で考察されており、この特許文献は、参照により本明細書に組み込まれ、下で要約される。しかし、このようなビーズ系アッセイは、試料およびアッセイバーコーディングの両方のために提案されたことはなく、これは、スクリーニングのための利点を提供し、マスサイトメトリーの高い複雑性により独自に可能にされる。
【0143】
キナーゼ機能は、ATPなどの高エネルギードナー分子から特定の標的分子(基質)へとリン酸基を移動することである(リン酸化)。リン酸基を標的から除去する酵素は、ホスファターゼとして知られる。キナーゼの最大の群は、プロテインキナーゼであり、それは、特定のたんぱく質に作用し、それらの活性を調節する。種々の他のキナーゼは、小分子(脂質、炭水化物、アミノ酸、ヌクレオチド、など)に作用し、多くの場合それらの基質に因んで命名され、アデニル酸キナーゼ、クレアチンキナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ヘキソキナーゼ、ヌクレオチド二リン酸キナーゼ、チミジンキナーゼを含む。
【0144】
タンパク質キナーゼは、セリン、トレオニン、またはチロシン残基でのアデノシン三リン酸(ATP)から標的化ペプチドまたはタンパク質基質へのリン酸の移動を触媒する。タンパク質キナーゼは、個別の配列上の基質をリン酸化するそれらの能力により識別される。商業的に入手できるキナーゼは、活性型(供給業者によりリン酸化された)であるか、または不活性型であり別のキナーゼによるリン酸化を必要とする。
【0145】
タンパク質ホスファターゼは、ホスホセリン、ホスホトレオニン、またはホスホチロシン残基でリン酸モノエステルをリン酸イオンおよび遊離ヒドロキシ基を有するタンパク質またはペプチド分子へと加水分解する。この作用は、プロテインキナーゼの作用の正反対である。例は、タンパク質チロシンホスファターゼを含み、これは、ホスホチロシン残基、アルカリホスファターゼ、セリン/トレオニンホスファターゼおよびイノシトール一リン酸分解酵素を加水分解する。
【0146】
本開示の別の態様は、試料中の元素の検出および測定のためのキットを提供することであり、測定される元素は、リン酸化基質に付着された元素タグ、金属イオン配位化合物の元素、および独自に標識された担体の元素を含み、キットは、リン酸化基質に直接にタグ付けするための元素タグ;多数のリン酸化された基質;ユニークに標識された担体;金属イオン配位化合物;および場合により、ホスファターゼ、ホスファターゼ緩衝剤およびADPを含む。
【0147】
本開示の別の態様は、キナーゼアッセイのための方法を提供することであり、方法は、ATP、少なくとも1種のキナーゼ、遊離金属イオン配位化合物、および単一タイプの非リン酸化基質が単一タイプの元素標識担体に付着されるように元素標識担体上に固定された多数の非リン酸化基質を、キナーゼが基質をリン酸化することを可能にする条件下で、インキュベートすること;遊離金属イオン配位化合物および多数の固定化された非リン酸化基質から、付着された金属イオン配位化合物を有する元素標識担体上に固定された多数のリン酸化された基質を分離すること;および元素分析により付着された金属イオン配位化合物を有する元素標識担体上に固定された多数のリン酸化された基質を測定すること、を含む。
【0148】
本開示の別の態様は、試料中の元素の検出および測定のためのキットを提供することであり、測定される元素は、非リン酸化基質および金属イオン配位化合物に付着された元素タグを含み、キットは、非リン酸化基質に直接にタグ付けするための元素タグ;非リン酸化基質;固体担体;金属イオン配位化合物;および場合により、キナーゼ、キナーゼ緩衝剤およびATPを含む。
【0149】
酵素の薬理学的調節は、可能な治療薬を特定することにおける主要素になってきている。プロテアーゼは、シグナル伝達経路で重要な役割を果たすことが最近示されたサブクラスのタンパク質分解酵素であり、そのシグナル伝達経路の調節不全は、癌、心臓血管疾患、および神経障害をもたらす可能性がある。約400種の既知のプロテアーゼのうち、数ダースが潜在的薬物候補として調査されている。プロテアーゼの小分子阻害剤は今日では、変性疾患の治療、癌の治療のための有用な治療薬のリード化合物、および抗菌薬、抗ウィルス薬および抗真菌薬として考えられている。マスサイトメトリーのためのビーズ系プロテアーゼアッセイは、米国特許出願公開第20170023583号で考察されており、この特許文献は、参照により本明細書に組み込まれ、下に要約される。しかし、このようなビーズ系アッセイは、試料およびアッセイバーコーディングの両方のために提案されたことはなく、これは、スクリーニングのための利点を提供し、かつマスサイトメトリーの高い複雑性により独自に可能にされる。
【0150】
複数の酵素反応の同時測定を可能とする強力で、高感度で、定量的な酵素アッセイが必要とされている。このようなアッセイは、有用な生体試料および試薬の保存を可能にし、高スループットで短縮されたアッセイ時間、および酵素分析の全体コストの低減を達成できる。
【0151】
本発明の一態様は、生体液中のプロテアーゼ活性を検出する方法である。方法は、固定化されたペプチド基質を形成するためにコード化されたビーズをペプチド基質の第1のアミノ酸に付着させることであって、ペプチド基質が、第1のアミノ酸および最後のアミノ酸を含みかつプロテアーゼ酵素の基質である、付着させること;タグ付きペプチド基質を形成するために元素タグをペプチド基質の最後のアミノ酸に付着させること;固定化されたタグ付きペプチド基質を生体液とインキュベートすること;および元素分析により生体液中の元素タグおよびコード化されたビーズを検出すること、を含み得る。
【0152】
コード化されたマイクロビーズは、本明細書で考察されるように、アッセイおよび試料のバーコード化の両方がなされ得る。
【0153】
プロテアーゼアッセイキットは、ペプチド基質(固定化ペプチド基質)の第1のアミノ酸に付着されたアッセイコード化されたビーズを含み、ペプチド基質は、第1のアミノ酸および最後のアミノ酸を含み、かつプロテアーゼ酵素の基質であり得る。元素タグは、ペプチド基質の最後のアミノ酸またはその近くに付着されて、タグ付きペプチド基質を形成し得る。コード化されたマイクロビーズは、本明細書で考察されるように、アッセイおよび試料のバーコード化の両方がなされ得る。
【0154】
アッセイビーズの混合物は、少なくとも5、10、20、50、100、200、500、1000個のまたはそれを超える分析物(試料生体分子)をまとめて標的にし得る。特定の態様では、試料バーコードは、少なくとも5、10、20、50、または100個の試料から、アッセイバーコードビーズおよび/または細胞を識別し得る。
【0155】
細胞のための試料バーコーディング試薬は、元素タグ付き抗体(試料中の複数の細胞型または大部分の細胞にわたり結合する)、細胞に非特異的に結合するように(例えば、共有結合相互作用により)機能化された元素タグ、および/または溶液中の金属を含み得る。細胞のための試料バーコーディング試薬は、細胞中に試料バーコードを入れるための試薬(例えば、DMSO、洗浄剤またはアルコールなどの細胞透過処理試薬、など)をさらに含み得る。アッセイバーコード化ビーズのための試料バーコーディング試薬は、ビーズ内、ビーズの表面上に存在し得るか、またはビーズに塗布され得る。ビーズへの塗布の場合、試料バーコーディング試薬は、ビーズの表面上に結合するために(例えば、ビーズにより提示される官能基に結合するために、またはビーズ表面上に存在するブロッキング試薬に結合するために)本明細書で記載の官能基を含み得る。所与の試料のための試料バーコーディング試薬は、その試料に対する特異的な同位体の特有の組み合わせを含み得る。特定の態様では、同じ試料(例えば、個別の血液試料)由来の細胞およびアッセイバーコード化ビーズは、同じアッセイバーコードで標識され得る。細胞およびビーズの標識のために使用される同じアッセイバーコードは、同位体の同じ組み合わせ、および/または付着の同じ手段(例えば、官能基)を含み得る。
【0156】
試料バーコーディング試薬は、凍結乾燥抗体パネルなどの抗体パネルとの混合物として、またはそれと一緒に、提供され得る。試料バーコーディング試薬は、アッセイバーコード化ビーズとの混合物でまたはそれと一緒に、提供され得る。アッセイバーコード化ビーズは、抗体パネルとの混合物として、またはそれと一緒に、提供され得る。アッセイバーコード化ビーズおよび試料バーコーディング試薬は、凍結乾燥抗体パネルとの混合物として、またはそれと一緒に提供され得る(例えば、試料バーコーディング試薬が試料中のアッセイバーコード化されたビーズおよび細胞の両方を結合する場合)。上記の特定の実施形態では、試料バーコーディング試薬は、試料および/またはアッセイバーコード化されたビーズ中に、その上に存在し得る、または試料および/またはアッセイバーコード化されたビーズと一緒に提供され得る。
場合によっては、バーコーディング試薬は、バーコーディング試薬をアッセイバーコードと試料バーコードの多数の特有の組み合わせにより調製することにより事前設定された形態で、提供できる。このような場合には、各特有のバーコーディング試薬は、ウェルプレートの別個のウェルなどの別個の容器中に貯蔵できる。一例として、ウェルプレートは、特定の縦列(または横列)に沿った全てのウェルが同じアッセイバーコードを共有し、一方で特定の横列(または縦列)に沿った全てのウェルが同じ試料バーコードを共有するように、設定できる。別の例では、ウェルプレートは、各充填ウェルが特定のユニークな試料バーコードと多数のアッセイバーコードの種々の組み合わせを有するバーコーディング試薬を含むように設定できる。従って、第1のウェルは、全て第1の試料バーコードを有するが、それぞれ異なるアッセイバーコードを有するバーコーディング試薬を含み、第2のウェルは、全て第2のバーコードを有するが、それぞれ異なるアッセイバーコードを有するバーコーディング試薬を含み得る。場合によっては、事前設定されたバーコーディング試薬は、数千の群のユニークなビーズの製造を必要とし得る。
場合によっては、バーコーディング試薬(例えば、ビーズ)は、ユニークなアッセイバーコードおよび試料バーコードを結合するように機能化された表面を有するバーコーディング試薬を調製することによりセミ設定された形態で提供できる。このような場合、各群のバーコーディング試薬は、その群のバーコーディング試薬のアッセイバーコードと関連するアッセイに関連する標的化機能を有する生体分子(例えば、抗体)に結合され得る。
【0157】
セミ設定されたバーコーディング試薬が提供される場合、試料バーコードは、バーコーディング試薬と試料を組み合わせる前にバーコーディング試薬に結合され得る。一例では、異なるバーコーディング試薬を一緒に混合し、その後、一連の容器(例えば、ウェルプレートのウェル)全体にわたり配置できる。その後、ユニークな試料バーコードを、それぞれの容器に加えることができ、その産物を、ユニークな試料と混合して、その試料に対しアッセイバーコードを特定をできるアッセイを実施でき、同時にその試料を試料バーコードで標識できる。
【0158】
セミ設定されたバーコーディング試薬が提供される場合、試料バーコードは、バーコーディング試薬と試料を組み合わせた後でバーコーディング試薬に結合され得る。一例では、セミ設定されたバーコーディング試薬は、一緒に提供され得る、あるいは一緒に混合され得る。その後、バーコーディング試薬は、一連の試料のそれぞれに添加され得る。別々に、バーコーディング試薬が添加される前にまたは後で、ユニークな試料バーコードは、一連の試料のそれぞれと混合されてよい。試料バーコードは、バーコーディング試薬および/または試料の細胞または粒子を標識できる。
【0159】
1つの事例では、バーコーディング試薬は、捕捉抗体の付着のためにポリドーパミンで機能化されたアッセイバーコード化ビーズを含み得る。別の分子(例えば、アビジン)を、捕捉抗体と一緒に加えることができる。捕捉抗体がアッセイバーコード化ビーズに添加された後で、ビーズは、混合され、各試料のために一定分量に分けられてよい。試料バーコードの場合、分子を結合するように機能化された(例えば、ビオチンで)元素タグのユニークな組み合わせを、添加できる。
場合によっては、元素分析は、粒子元素分析として知られる、個別の粒子基準で行われ得る。粒子元素分析は、質量分析計系フローサイトメーターなどを用いて、個別の粒子(例えば、細胞毎)の元素組成を測定することを含む。本開示の特定の態様は、細胞毎基準で粒子元素分析を利用し、これは、サイトメトリー元素分析として知られ得る。場合によっては、元素分析は、バルク元素分析または溶液元素分析として知られる、バルク基準で行うことができる。バルク元素分析は、試料の全体積の元素組成を測定することを含む。
【0160】
元素分析は、生体試料などの試料を調べるために使用できる。試料が既知の元素タグで標識される場合、元素分析中の元素タグの検出は、元素タグに関連する試料の特性を示し得る。
【0161】
本明細書で示すように、マスサイトメトリーは、複数の識別可能な単一細胞解像度を有する質量タグを同時に検出することなどの、生体試料中の元素タグ(質量タグ)を検出するいずれかの方法である。マスサイトメトリーは、細胞から分離した、または細胞に加えた、質量タグ付きビーズの分析を含み得る。いずれかの本キットおよび方法が、マスサイトメトリーを含み得るか、またはマスサイトメトリーに適合され得る。マスサイトメトリーは、懸濁液マスサイトメトリーおよびイメージングマスサイトメトリー(IMC)を含む。
【0162】
懸濁液マスサイトメトリーは、質量分析による(例えば、原子質量分析による)懸濁元素タグ付き細胞および/またはビーズの分析を含み、米国特許出願公開第20050218319号、同20150183895号、同20150122991号を含む米国特許出願公開広報に記載されている。これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0163】
イメージングマスサイトメトリー(IMC)は、組織切片または細胞塗抹標本などの、元素タグ付き生体試料のいずれかのイメージング質量分析(例えば、イメージング原子質量分析)を含む。IMCは、レーザー照射、イオンビーム照射、電子ビーム放射、および/または誘導結合プラズマの1種または複数により細胞試料の質量タグの微粒化およびイオン化を行い得る。マスサイトメトリーは、例えば飛行時間(TOF)または磁気セクター質量分析(MS)により、単一細胞から別個の質量タグを同時に検出し得る。マスサイトメトリーの例は、細胞が流入する懸濁液マスサイトメトリーならびに細胞試料(例えば、組織切片)が、例えばレーザアブレーション(LA-ICP-MS)によりまたは一次イオンビーム(例えば、SIMSの場合)によりサンプリングされるICP-MSおよびイメージングマスサイトメトリーを含む。レーザー系IMCは、米国特許出願公開第20160131635号、同20170148619号、同20180306695号および同20180306695号に記載されており、これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる。特定の態様では、試料がIMCによる分析のための細胞塗抹標本の場合、細胞は、例えば凍結乾燥パネルでの染色、試料バーコーディング、および/またはアッセイバーコーディングにより本明細書で記載のように処理され得る。同様に、本明細書で記載のアッセイビーズは、IMCにより、別々に、または細胞との混合物中で分析され得る。
【0164】
質量タグは、元素分析の前に、サンプリングされ、微粒化されおよびイオン化され得る。例えば、生体試料中の質量タグは、レーザービーム、イオンビームまたは電子線などの照射により、サンプリングされ、微粒化されおよび/またはイオン化され得る。代わりにまたは追加して、質量タグは、誘導結合プラズマ(ICP)などのプラズマにより微粒化されおよびイオン化され得る。懸濁液マスサイトメトリーでは、質量タグを含むホールセルが、ICP-TOF-MSなどのICP-MS中に流し込まれ得る。イメージングマスサイトメトリーでは、ある種の照射は、質量タグを含む組織試料などの固体生体試料の一部(例えば、目的のピクセル、領域)を除去(および場合により、イオン化および微粒化)し得る。IMCの例は、質量タグ付き試料のLA-ICP-MSおよびSIMS-MSを含む。特定の態様では、イオン光学が、質量タグの同位体以外のイオンを枯渇させ得る。例えば、イオン光学は、より軽いイオン(例えば、C、N、O)、有機分子イオンを除去し得る。ICP適用では、イオン光学は、例えば、高域通過タイプの四重極フィルターなどにより、Arおよび/またはXeなどのガスを除去し得る。特定の態様では、IMCは、細胞のまたは亜細胞の解像度を有する質量タグ(例えば、質量タグと結合された標的)のイメージを提供し得る。
【0165】
本開示はまた、次の実施形態を提供する:
実施形態1.
構造モノマー、および
金属およびキレート化剤を含む金属キレートモノマー
を含むコポリマーであって;
キレート化剤は、少なくとも3つの部位で金属を配位し;および
構造モノマーは、キレート化剤を含まない、コポリマー
を含む金属コード化されたマイクロビーズ。
実施形態2.構造モノマーは、置換もしくは非置換スチレン、α-メチルスチレン、アクリル酸およびエステルならびにこれらのアミド、メタクリル酸およびエステルならびにこれらのアミド、ならびにこれらの誘導体から選択され、場合により構造モノマーは、スチレンである、実施形態1に記載のマイクロビーズ。
実施形態3.金属キレートモノマーは、重合の前に式(I):
【化8】
の構造を有し、式中、リガンドは、キレート化剤であり、Lは、リンカーであり、Xは、重合可能な末端基であり、Mは、金属であり、nは、1または2以上の整数であり、金属キレートモノマーは、重合の前に中性電荷である、実施形態1または2に記載のマイクロビーズ。
実施形態4.Lは、結合、C3-C8アルキルアミン、C3-C8アルキレン、C3-C8シクロアルキル、C3-C8ヘテロシクロアルキル、5員または6員アリールまたはヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルへテロアリール、C3-C8シクロアルキルアリール、C3-C8シクロアルキルヘテロアリール、C(O)、-C(O)O、またはこれらの混合物から選択され、場合によりアルキレン、アリール、アルキルアリール、アルキルへテロアリール、シクロアルキル、シクロアルキルアリール、およびシクロアルキルヘテロアリールのそれぞれは独立に、非置換であるか、またはC1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C3-C8シクロアルキル、C3-C8ヘテロシクロアルキル、アミド、エステル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルへテロアリール、C3-C8シクロアルキルアリール、C3-C8シクロアルキルヘテロアリール、CN、またはこれらの混合物から選択される1個または複数の置換基により置換される
、実施形態3に記載のマイクロビーズ。
実施形態5.Lは、アミドまたはエステルを介してキレート化剤に付着される、実施形態3または4に記載のマイクロビーズ。
実施形態6.重合可能な末端基は、アリルビニル、スチレン、α-メチルスチレン、アクリル酸塩エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、2-メチルアクリルアミド、およびこれらの混合物から選択され、場合により重合可能な末端基は、アリルビニルまたはスチレンである、実施形態3~5のいずれか1つに記載のマイクロビーズ。
実施形態7.キレート化剤は、4座配位、5座配位、6座配位、7座配位、または8座配位であり、場合によりキレート化剤は、6座配位または8座配位である、実施形態1~6のいずれか1つに記載のマイクロビーズ。
実施形態8.キレート化剤は、アミノポリ酸部分、またはその誘導体を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のマイクロビーズ。
実施形態9.アミノポリ酸部分は、アミノポリカルボン酸、アミノポリホスホン酸、またはこれらの組み合わせから選択される、実施形態8に記載のマイクロビーズ。
実施形態10.アミノポリ酸部分は、エチレンイミン、プロピレンアミン、またはこれらの混合物の1種または複数の置換されたオリゴマーであり、オリゴマーは、2個以上のカルボン酸および/またはホスホン酸で置換されており、場合によりオリゴマーは、クラウンエーテルまたはアザクラウンエーテルである、実施形態8または9に記載のマイクロビーズ。
実施形態11.オリゴマーは、C1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C3-C8シクロアルキル、C3-C8ヘテロシクロアルキル、アミド、エステル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルへテロアリール、C3-C8シクロアルキルアリール、C3-C8シクロアルキルヘテロアリール、CN、またはこれらの混合物から選択される1個または複数の置換基によりさらに置換される、実施形態10に記載のマイクロビーズ。
実施形態12.キレート化剤は、DFO、EDTA、DTPA、EGTA、EDDS、EDDHA、BAPTA、H4neunpa、H6phospa、H4CHXoctapa、H4octapa、H2CHXdedpa、H5decapa、Cy-DTPA、Ph-DTPA、TACNタイプキレート化剤、TACDタイプキレート化剤、サイクレンタイプキレート化剤、サイクラムタイプキレート化剤、(13)aneN4タイプキレート化剤、1,7-ジアザ-12-クラウン-4タイプキレート化剤、1,10-ジアザ-18-クラウン-6タイプキレート化剤、またはこれらの誘導体から選択される、実施形態1~11のいずれか1つに記載のマイクロビーズ。
実施形態13.TACNタイプキレート化剤は、NOTA、NOPO、TRAP、またはこれらの誘導体から選択される、実施形態12に記載のマイクロビーズ。
実施形態14.サイクレンタイプキレート化剤は、DOTAまたはその誘導体から選択される、実施形態12に記載のマイクロビーズ。
実施形態15.サイクラムタイプキレート化剤は、TETA、架橋TETA、DiAmSar、またはこれらの誘導体から選択される、実施形態12に記載のマイクロビーズ。
実施形態16.(13)aneN4タイプキレート化剤は、TRITAまたはその誘導体から選択される、実施形態12に記載のマイクロビーズ。
実施形態17.1,10-ジアザ-18-クラウン-6タイプキレート化剤は、MACROPAまたはその誘導体から選択される、実施形態12に記載のマイクロビーズ。
実施形態18.キレート化剤は、DTPA、Cy-DTPA、Ph-DTPA、またはこれらの誘導体から選択される、実施形態12に記載のマイクロビーズ。
実施形態19.DTPAの誘導体は、2個の隣接する炭素原子がそれらの間の原子と一緒に結合して5員または6員環、場合によりシクロアルキル環、アリールまたはヘテロアリール環を形成するDTPAを含む、実施形態18に記載のマイクロビーズ。
実施形態20.重合の前に、金属キレートモノマーは:
【化9】
であり、式中、LおよびXは、実施形態4~6のいずれか1つで定義される通りである、実施形態18に記載のマイクロビーズ。
実施形態21.金属キレートモノマーは:
【化10】
、またはこれらの混合物から選択される、実施形態20に記載のマイクロビーズ。
実施形態22.キレート化剤は、ポルフィリンまたはフタロシアニンを含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載のマイクロビーズ。
実施形態23.キレート化剤は、置換されたまたは置換されないポルフィリンである、実施形態22に記載のマイクロビーズ。
実施形態24.重合の前に金属キレートモノマーは:
【化11】
、またはこれらの混合物から選択され、nは、1~4の整数である、実施形態22または23に記載のマイクロビーズ。
実施形態25.Lは、アニリンである、実施形態24に記載のマイクロビーズ。
実施形態26.nは、少なくとも2である、実施形態24または25に記載のマイクロビーズ。
実施形態27.金属キレートモノマーは:
【化12】
から選択される、実施形態3に記載のマイクロビーズ。
実施形態28.立体安定剤をさらに含み、場合により立体安定剤は、PVP、ポリビニルアルコール、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、アクリル酸エステルの水溶性ホモポリマー、メタクリル酸エステルの水溶性ホモポリマー、アクリルアミドの水溶性ホモポリマー、メタクリルアミドのホモポリマー、水溶性コポリマー立体安定剤、またはこれらの混合物から選択される、実施形態1~27のいずれか1つに記載のマイクロビーズ。
実施形態29.水溶性コポリマー立体安定剤は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミドまたはメタクリルアミドと、メチルアクリレートおよび/またはエチルアクリレート、またはこれらの混合物とのコポリマーから選択される、実施形態28に記載のマイクロビーズ。
実施形態30.コポリマーは、架橋される、実施形態1~29のいずれか1つに記載のマイクロビーズ。
実施形態31.金属は、複数の金属である、実施形態1~30のいずれか1つに記載のマイクロビーズ。
実施形態32.複数の金属は、1種または複数の濃縮された同位体を含む、実施形態31に記載のマイクロビーズ。
実施形態33.複数の金属は、少なくとも2種の金属、少なくとも3種の金属、または少なくとも4種の金属を含む、実施形態31または32に記載のマイクロビーズ。
実施形態34.複数の金属の各金属の量は、複数の金属の別の金属の量の約20%または約10%以内である、実施形態31~33いずれか1つに記載のマイクロビーズ。
実施形態35.金属は、インジウム、ビスマス、または希土類金属を含み、場合により希土類金属は、ランタニド金属、イットリウム、またはこれらの混合物から選択される、実施形態1~34のいずれか1つに記載のマイクロビーズ。
実施形態36.金属は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、これらのそれぞれの同位体、およびこれらの混合物から選択される希土類金属を含む、実施形態35に記載のマイクロビーズ。
実施形態37.希土類金属は、89Y、139La、136Ce、138Ce、140Ce、142Ce、141Pr、142Nd、143Nd、145Nd、146Nd、148Nd、145Pm、144Sm、149Sm、150Sm、152Sm、154Sm、151Eu、153Eu、154Gd、155Gd、156Gd、157Gd、158Gd、160Gd、152Gd、159Tb、156Dy、158Dy、160Dy、161Dy、162Dy、163Dy、164Dy、165Ho、162Er、164Er、166Er、167Er、168Er、170Er、169Tm、168Yb、170Yb、171Yb、172Yb、173Yb、174Yb、176Yb、175Lu、またはこれらの混合物から選択される、実施形態36に記載のマイクロビーズ。
実施形態38.金属は、マイクロビーズ全体にわたり分散される、実施形態1~37のいずれか1つに記載のマイクロビーズ。
実施形態39.マイクロビーズは、約60℃もしくは60℃超、場合により約70℃もしくは70℃超、約80℃もしくは80℃超、約90℃もしくは90℃超、約100℃もしくは100℃超、約115℃もしくは115℃超、約125℃もしくは125℃超、または約135℃もしくは135℃超のガラス転移温度を有する、実施形態1~38のいずれか1つに記載のマイクロビーズ。
実施形態40.マイクロビーズは、約0.6μm~約20μm、約1μm~約15μm、約2μm~約10μm、約2μm~約6μmの直径を有する、実施形態1~39のいずれか1つに記載のマイクロビーズ。
実施形態41.マイクロビーズは、水中でコロイド的に安定である、実施形態1~40のいずれか1つに記載のマイクロビーズ。
実施形態42.マイクロビーズの表面は、生体分子への付着のための機能化を含む、実施形態1~41のいずれか1つに記載のマイクロビーズ。
実施形態43.付着は、共有的付着である、実施形態42に記載のマイクロビーズ。
実施形態44.生体分子は、タンパク質、オリゴヌクレオチド、小分子、脂質、炭水化物、またはこれらの混合物から選択される、実施形態42または43に記載のマイクロビーズ。
実施形態45.生体分子は、親和性試薬であり、場合により親和性試薬は、抗体である、実施形態42または43に記載のマイクロビーズ。
実施形態46.抗体は、サイトカイン、場合によりケモカイン、インターフェロン、リンホカイン、モノカイン、IL-1~36などのインターロイキン、腫瘍壊死因子およびコロニー刺激因子に特異的である、実施形態45に記載のマイクロビーズ。
実施形態47.抗原は、ウィルス抗原である、実施形態44に記載のマイクロビーズ。
実施形態48.機能化は、マイクロビーズの表面上の二酸化ケイ素のコーティングを含み、場合により機能化は、二酸化ケイ素のコーティングを官能化することをさらに含む、実施形態42~47のいずれか1つに記載のマイクロビーズ。
実施形態49.生体分子への付着は、非共有的付着である、実施形態42に記載のマイクロビーズ。
実施形態50.マイクロビーズの表面は、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、またはこれらの混合物により機能化される、実施形態42~49のいずれか1つに記載のマイクロビーズ。
実施形態51.マイクロビーズの表面は、生体分子にコンジュゲートされる、実施形態42~50のいずれか1つに記載のマイクロビーズ。
実施形態52.金属は、生体分子を特定するバーコードを提供する、実施形態42~51のいずれか1つに記載のマイクロビーズ。
実施形態53.実施形態1~52のいずれか1つで定義されるマイクロビーズの集団。
実施形態54.集団は、約10%または10%未満の変動係数(CV)を有する粒度分布を有する、実施形態53に記載のマイクロビーズの集団。
実施形態55.変動係数は、5%未満である、実施形態54に記載のマイクロビーズの集団。
実施形態56.各マイクロビーズは、複数の金属を含み、複数の金属の各金属のマイクロビーズの集団にわたる平均量は、複数の金属の別の金属の平均量の約10%または10%以内である、実施形態53~55のいずれか1つに記載のマイクロビーズの集団。
実施形態57.複数の金属は、1種または複数の濃縮された同位体を含む、実施形態56に記載のマイクロビーズの集団。
実施形態58.マイクロビーズの集団の1つのマイクロビーズの各金属の量は、マイクロビーズの集団の別のマイクロビーズの同じ金属の量の約20%もしくは20%以内または約10%もしくは10%以内または約5%もしくは5%以内である、実施形態53~57のいずれか1つに記載のマイクロビーズの集団。
実施形態59.マイクロビーズの集団の各金属の量は、約20%または20%未満の変動係数の分布を有する、実施形態53~57のいずれか1つに記載のマイクロビーズの集団。
実施形態60.マイクロビーズの集団の各金属の量は、約10%または10%未満の変動係数の分布を有する、実施形態59に記載のマイクロビーズの集団。
実施形態61.マイクロビーズの集団のマイクロビーズは、実質的に同じ量の同じ金属を含む、実施形態58~60のいずれか1つに記載のマイクロビーズの集団。
実施形態62.同じ金属は、複数の金属であり、かつマイクロビーズは、実質的に同じ量の複数の金属の各金属を含む、実施形態61に記載のマイクロビーズの集団。
実施形態63.実施形態53~62のいずれか1つで定義されるマイクロビーズの複数の別個の集団を含むキット。
実施形態64.マイクロビーズの各集団は、マイクロビーズの金属または複数の金属に基づいてマイクロビーズの別の集団から識別できる、実施形態63に記載のキット。
実施形態65.マイクロビーズの少なくとも1つの集団のマイクロビーズは、マイクロビーズの別の集団のマイクロビーズの金属または複数の金属とは異なる金属または複数の金属を含む、実施形態63または64に記載のキット。
実施形態66.マイクロビーズの少なくとも1つの集団のマイクロビーズは、マイクロビーズの別の集団のマイクロビーズとは異なる比率で複数の金属を含む、実施形態63または64に記載のキット。
実施形態67.マイクロビーズの各集団のマイクロビーズは、異なる生体分子にコンジュゲートされる、実施形態64~66のいずれか1つに記載のキット。
実施形態68.
重合構造モノマー、非重合構造モノマー、および立体安定剤を含む第1の混合物を得るために核生成段階で立体安定剤の存在下にて構造モノマーを重合すること、
第2の混合物を得るために第1の混合物を金属および少なくとも1種の重合可能な末端基に付着されたキレート化剤を含む金属キレートモノマーと組み合わせることであって、
キレート化剤は、少なくとも3つの部位で金属を配位し;および金属キレートモノマーは、構造モノマーと重合可能である、組み合わせること;および
マイクロビーズのコポリマーを形成するために第2の混合物を重合することであって、
構造モノマーは、キレート化剤を含まない、重合すること、
を含む、金属コード化されたマイクロビーズを調製する方法。
実施形態69.金属は、複数の金属である、実施形態68に記載の方法。
実施形態70.構造モノマーは、構造モノマーに基づき約5%~約20%完結へと核生成段階で重合される、実施形態68または69に記載の方法。
実施形態71.第2の混合物の重合は、構造モノマーに基づき75%~約100%完結、約80%~約99%完結、約85%~約95%完結、約85%~約93%完結まで起こる、実施形態68~70のいずれか1つに記載の方法。
実施形態72.構造モノマーは、実施形態2または3で定義される通りである、実施形態68~71のいずれか1つに記載の方法。
実施形態73.金属キレートモノマーは、実施形態2、および4~26のいずれか1つで定義される通りである、実施形態68~72のいずれか1つに記載の方法。
実施形態74.立体安定剤は、実施形態27で定義される通りである、実施形態68~73のいずれか1つに記載の方法。
実施形態75.金属は、実施形態29~35のいずれか1つで定義される通りである、実施形態68~74のいずれか1つに記載の方法。
実施形態76.方法は、マイクロビーズ機能化することをさらに含む、実施形態68~75のいずれか1つに記載の方法。
実施形態77.マイクロビーズの機能化は、
第3の混合物を得るために重合された第2の混合物を第3のモノマーと混合することであって、第3のモノマーが、反応性官能基を含む、混合すること;および
第3の混合物を重合すること、
を含む、実施形態76に記載の方法。
実施形態78.反応性官能基は、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、エポキシド、ビニル、アルキン、マレイミド、またはまたはこれらの混合物から選択される、実施形態77に記載の方法。
実施形態79.マイクロビーズの機能化は、二酸化ケイ素でマイクロビーズをコートすることを含む、実施形態76に記載の方法。
実施形態80.マイクロビーズの機能化は、二酸化ケイ素コーティングを機能化することをさらに含む、実施形態76に記載の方法。
実施形態81.生体分子にマイクロビーズをコンジュゲートすることをさらに含む、実施形態68~80のいずれか1つに記載の方法。
実施形態82.生体分子は、実施形態44~47のいずれか1つで定義される通りである、実施形態81に記載の方法。
実施形態83.マイクロビーズは、約0.6μm~約20μm、約1μm~約15μm、約2μm~約10μm、約2μm~約6μmの直径を有する、実施形態68~82のいずれか1つに記載の方法。
実施形態84.マイクロビーズは、実施形態1~52のいずれか1つで定義される通りである、実施形態68~83のいずれか1つに記載の方法。
実施形態85.実施形態68~83のいずれか1つの方法により調製されるマイクロビーズ。
実施形態86.マイクロビーズの内部構造は、コポリマーを含む、実施形態1~52のいずれか1つに記載のマイクロビーズ。
実施形態87.金属キレートモノマーは、単一金属原子をキレート化し、複数の金属原子をキレート化しない、実施形態1~52、および86のいずれか1つに記載のマイクロビーズ。
実施形態88.マイクロビーズは、金属キレートモノマーを含まないポリマーシードを含む、実施形態1~52、および86および87のいずれか1つに記載のマイクロビーズ。
実施形態89.ポリマーシードは、構造モノマーを含み、場合によりポリマーシードの構造モノマーは、コポリマーの構造モノマーと構造において同一である、実施形態88のマイクロビーズ。
実施形態90.マイクロビーズの内部構造は、コポリマーを含む、実施形態68に記載の方法。
実施形態91.金属コード化されたマイクロビーズを調製する方法であって、
膨潤可能なシード粒子およびアニオン性界面活性剤の水性分散液を提供すること;
水性分散液を構造モノマーと金属キレートモノマーを含むモノマーと接触させることであって、金属キレートモノマーは、金属および少なくとも1種の重合可能な末端に付着されたキレート化剤を含み、キレート化剤は、少なくとも3つの部位で金属を配位し、構造モノマーは、キレート化剤を含まない、接触させること;
膨潤したシード粒子の水性分散液を形成するためにシード粒子中にモノマーを拡散させること;および
膨潤したシード粒子の水性分散液中でモノマーの重合を開始すること、
を含む、方法。
実施形態92.構造モノマーは、アクリルモノマー、メタクリレートモノマーおよびスチレン、ジビニルベンゼン(DVB)、エチルビニルベンゼン、ビニルピリジン、アミノスチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、エチルメチルスチレン、p-クロロスチレンおよび2,4-ジクロロスチレンからなる群より選択されるビニルモノマーからなる群より選択される、実施形態91に記載の方法。
実施形態93.膨潤したシード粒子の水性分散液は、立体安定剤をさらに含む、実施形態91または92に記載の方法。
実施形態94.立体安定剤は、ポリビニルピロリドンである、実施形態93に記載の方法。
実施形態95.膨潤可能なシード粒子の水性分散液を提供することは、乳化重合により単分散の膨潤可能なシード粒子を調製することを含む、実施形態91~94のいずれか1つに記載の方法。
実施形態96.膨潤可能なシード粒子の水性分散液は、5000ダルトン未満の分子量および25℃で10
-2g/L未満の水溶性を有する有機化合物;および、場合によりその中で上記有機化合物が可溶である有機溶媒をさらに含む、実施形態91~95のいずれか1つに記載の方法。
実施形態97.膨潤可能なシード粒子は、単分散の膨潤可能な種オリゴマー粒子である、実施形態91~96のいずれか1つに記載の方法。
実施形態98.アニオン性界面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウムである、実施形態91~97のいずれか1つに記載の方法。
実施形態99.構造モノマーは、実施形態2で定義される通りである、実施形態91~98のいずれか1つに記載の方法。
実施形態100.金属キレートモノマーは、実施形態1、および3~27のいずれか1つで定義される通りである、実施形態91~99のいずれか1つに記載の方法。
実施形態101.質量タグを含むレポーターをさらに含み、レポーターは、少なくとも1種の異なる生体分子により特異的に結合される試料生体分子を特異的に結合する、実施形態67に記載のキット。
実施形態102.試料生体分子は、オリゴヌクレオチドであり、少なくとも1つの異なる生体分子は、試料生体分子に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドである、実施形態101に記載のキット。
実施形態103.レポーターは、ハイブリダイズして試料生体分子に複数の質量タグ付きオリゴヌクレオチドを間接的に結合させる複数のオリゴヌクレオチドを含む、実施形態102に記載のキット。
実施形態104.少なくとも1つの異なる生体分子は、抗体などの親和性試薬である、実施形態101~103のいずれか1つに記載のキット。
実施形態105.試料生体分子は、ウィルス粒子であり、少なくとも1つの異なる生体分子は、ウィルス粒子を特異的に結合する第1の抗体であり、レポーターは、ウィルス粒子を特異的に結合する第2の抗体を含む、実施形態104に記載のキット。
実施形態106.試料生体分子は、サイトカインであり、少なくとも1つの異なる生体分子は、サイトカインを特異的に結合する第1の抗体であり、レポーターは、サイトカインを特異的に結合する第2の抗体を含む、実施形態104に記載のキット。
実施形態107.試料生体分子は、癌バイオマーカーであり、少なくとも1つの異なる生体分子は、癌バイオマーカーを特異的に結合する第1の抗体であり、レポーターは、癌バイオマーカーを特異的に結合する第2の抗体を含む、実施形態104に記載のキット。
実施形態108.少なくとも1つの異なる生体分子は、ウィルス抗原を含み、試料生体分子は、ウィルス抗原を特異的に結合する抗体であり、レポーターは、試料生体分子に結合する二次抗体を含む、実施形態101~107のいずれか1つに記載のキット。
実施形態109.複数の異なるレポーターをさらに含み、それぞれの異なるレポーターは、異なる生体分子により特異的に結合される試料生体分子を結合する、実施形態101~108のいずれか1つに記載のキット。
実施形態110.複数の異なるレポーターはそれぞれ、同じ質量タグを含む、実施形態109に記載のキット。
実施形態111.質量タグは、金属ナノ粒子を含む、実施形態101~110のいずれか1つに記載のキット。
実施形態112.質量タグは、金属キレートポリマーを含む、実施形態101~110のいずれか1つに記載のキット。
実施形態113.少なくとも1つの生体分子は、試料生体分子に対し酵素基質である、実施形態67に記載のキット。
実施形態114.酵素基質が試料生体分子により修飾されている場合それに特異的に結合するレポーターをさらに含む、実施形態113に記載のキット。
実施形態115.酵素基質が試料生体分子により修飾されていない場合それに特異的に結合するレポーターをさらに含む、実施形態113に記載のキット。
実施形態116.酵素基質は、酵素基質が試料生体分子により修飾されると除去される質量タグを含む、実施形態115に記載のキット。
実施形態117.複数の異なる集団からのマイクロビーズは、マイクロビーズの第1の混合物中に存在する、実施形態101~116のいずれか1つに記載のキット。
実施形態118.マイクロビーズの第1の混合物と同じ生体分子を含むマイクロビーズの第2の混合物をさらに含み、第1の混合物のマイクロビーズは、第2の混合物のマイクロビーズとは異なる試料バーコードを含む、実施形態117に記載のキット。
実施形態119.試料バーコードは、マイクロビーズの内部に存在する、実施形態118に記載のキット。
実施形態120.試料バーコードは、第1のおよび第2の混合物のマイクロビーズの金属キレートモノマーによりキレート化された金属のサブセットである、実施形態119に記載のキット。
実施形態121.試料バーコードは、第1のおよび第2の混合物のマイクロビーズの表面上に存在する、実施形態118に記載のキット。
実施形態122.複数の異なる集団からのマイクロビーズの表面に結合するように機能化される別の区分中の複数の試料バーコードをさらに含む、実施形態118に記載のキット。
実施形態123.相互の混合物中の質量タグ付き抗体のパネルをさらに含み、パネルの少なくともいくつかの抗体は、細胞表面マーカーに特異的である、実施形態101~122のいずれか1つに記載のキット。
実施形態124.複数の抗体は、キットのマイクロビーズと混合されている、実施形態123に記載のキット。
実施形態125.質量タグ付き抗体の少なくとも一部は、キットのマイクロビーズの金属キレートモノマーによりキレート化された金属と同一の金属を含む、実施形態123または124に記載のキット。
実施形態126.キットのマイクロビーズと混合された立体安定剤をさらに含む、実施形態101~125のいずれか1つに記載のキット。
実施形態127.立体安定剤は、ポリビニルピロリドンである、実施形態126に記載のキット。
実施形態128.キットのマイクロビーズは、5および9または5~9のpHで緩衝化された溶液中に存在する、実施形態101~127のいずれか1つに記載のキット。
実施形態129.マイクロビーズは、凍結乾燥される、実施形態101~125のいずれか1つに記載のキット。
実施形態130.マイクロビーズは、固体担体に融合される、実施形態101~125のいずれか1つに記載のキット。
実施形態131.固体担体は、顕微鏡スライドである、実施形態130に記載のキット。
実施形態132.固体担体は、接着膜である、実施形態130に記載のキット。
実施形態133.1種または複数の緩衝剤、抗凝固剤、固定試薬、および透過処理試薬をさらに含む、実施形態101~132のいずれか1つに記載のキット。
実施形態134.実施形態53~62のいずれか1つに記載のマイクロビーズの集団を検出することを含む方法。
実施形態135.マイクロビーズから得られた質量スペクトルに基づきマイクロビーズを検出するために使用される質量分析計を較正することをさらに含む、実施形態134に記載の方法。
実施形態136.マイクロビーズから得られた質量スペクトルに基づき複数の質量タグから得られた質量分析シグナルを正規化することをさらに含む、実施形態134に記載の方法。
実施形態137.
実施形態53~62のいずれか1つに記載のマイクロビーズの別個の集団を試料と混合することであって、マイクロビーズのそれぞれの集団のマイクロビーズは、異なる生体分子に結合され、マイクロビーズのそれぞれの集団は、マイクロビーズの金属または複数の金属に基づいてマイクロビーズの別の集団から識別される、混合すること;
試料の異なる試料生体分子を、マイクロビーズの別個の集団の異なる生体分子に結合させること;
異なる試料生体分子のそれぞれにレポーターを、直接にまたは間接的に、結合させることであって、異なる試料生体分子のそれぞれに結合されるレポーターは、質量タグを含む、結合させること;および
質量分析により個別のマイクロビーズの金属および質量タグを検出すること、
を含む、質量分析の方法。
実施形態138.マイクロビーズの別個の集団を試料と混合するステップの前に、マイクロビーズの別個の集団のマイクロビーズに異なる生体分子を付着させることをさらに含む、実施形態137に記載の方法。
実施形態139.異なる試料生体分子は、オリゴヌクレオチドを含む、実施形態137または138に記載の方法。
実施形態140.異なる試料生体分子は、抗体を含む、実施形態137~139のいずれか1つに記載の方法。
実施形態141.異なる試料生体分子は、サイトカインを含む、実施形態137~140のいずれか1つに記載の方法。
実施形態142.異なる試料生体分子は、癌バイオマーカーを含む、実施形態137~141のいずれか1つに記載の方法。
実施形態143.
マイクロビーズの別個の集団を試料と混合することであって、マイクロビーズのそれぞれの集団のマイクロビーズは、異なる生体分子に結合され、マイクロビーズのそれぞれの集団は、マイクロビーズの金属または複数の金属に基づきマイクロビーズの別の集団から識別される、混合すること;
試料の異なる試料生体分子をマイクロビーズの別個の集団の異なる生体分子に結合させること;
異なる試料生体分子のそれぞれにレポーターを、直接にまたは間接的に、結合させることであって、異なる試料生体分子のそれぞれに結合されるレポーターは、質量タグを含む、結合させること;および
質量分析により個別のマイクロビーズの金属および質量タグを検出すること、
を含む、実施形態101~133のいずれか1つに記載のキットを用いる質量分析の方法。
実施形態144.
複数の質量タグ付き抗体を提供することであって、質量タグ付き抗体の各抗体が、金属またはそれらの濃縮された同位体の複数原子をキレート化するポリマー質量タグに結合される、提供すること;
試料を複数の質量タグ付き抗体と接触させること;
質量分析により試料およびマイクロビーズに結合された質量タグ付き抗体を検出すること、
を含む、実施形態63~74のいずれか1つに記載のマイクロビーズを用いる細胞試料の質量分析の方法。
実施形態145.検出のステップで用いられる質量分析計を較正することをさらに含み、較正することが、マイクロビーズから得られた質量分析シグナルに基づく、実施形態144に記載の方法。
実施形態146.マイクロビーズから得られた質量分析シグナルに基づき質量タグから得られた質量分析シグナルを正規化することをさらに含む、実施形態144に記載の方法。
実施形態147.それぞれの質量タグ付き抗体に対する金属原子の平均数ならびに質量タグ付き抗体およびマイクロビーズからの検出された質量分析シグナルに基づき質量タグ付き抗体を定量化することをさらに含む、実施形態144に記載の方法。
実施形態148.マイクロビーズおよび質量タグ付き抗体は、同じ金属を含む、実施形態146または147に記載の方法。
実施形態149.検出するステップは、イメージングマスサイトメトリーを含む、実施形態134~148のいずれか1つに記載の方法。
実施形態150.マイクロビーズから検出された質量分析シグナルに基づき個別のピクセルでの、または個別の細胞に結合された質量タグ付き抗体を定量化するまたは正規化することをさらに含む、実施形態149に記載の方法。
実施形態151.マイクロビーズは、検出するステップの前に、固体表面に対し融解される、実施形態149または151に記載の方法。
実施形態152.検出するステップは、懸濁液マスサイトメトリーを含む、実施形態134~151のいずれか1つに記載の方法。
実施形態153.検出するステップは、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を含む、実施形態134~152のいずれか1つに記載の方法。
実施形態154.検出するステップは、レーザアブレーションICP-MSまたは二次イオン質量分析法(SIMS)を含む、実施形態149~151のいずれか1つに記載の方法。
実施形態155.質量分析は、飛行時間質量分析(TOF-MS)である、実施形態134~154のいずれか1つに記載の方法。
上記開示は、本開示を広く記載する。より完全な理解は、以下の特定の実施例への参照により得ることができる。これらの実施例は、本開示の例示の目的のためのみに記載されており、本発明の範囲を限定する意図はない。状況により示唆される、または好都合になる場合は、形態の変更および等価物の置換が想定される。本明細書では特定の用語が使用されているが、このような用語は、説明的な意図であり、限定を目的としたものではない。
【0166】
実施例
下記の非限定的実施例は、本開示の実例である。
実施例1
DTPAによりキレート化された1個または複数のランタニドを有するポリスチレン(PS)マイクロビーズ
金属コード化されたマイクロビーズは、第2段階の一定分量としてエタノール中のスチレンの分散重合反応中に重合可能な金属-DTPA錯体を導入することにより合成された。成分およびマイクロビーズの合成ならびに使用した材料が、記載される。
【0167】
材料
ジエチレントリアミン五酢酸二無水物(DTPA酸二無水物、98%)、2,2-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN、98%)、ポリビニルピロリドン(PVP、Mw 約55kDa)、トリトンX305(TX305、70%水溶液)、ベンジルアミン(BA、99%)、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩(APMAm、98%)、トリエチルアミン(TEA、99%)、酢酸ナトリウム(無水、≧99%)、酢酸アンモニウム(≧98%)、炭酸ナトリウム(≧99%)、過酸化水素溶液(H2O2、H2O中30%)、およびイットリウム(III)クロリド・六水和物(YCl3・6H2O)、セリウム(III)クロリド・七水和物(CeCl3・7H2O、)、ユウロピウム(III)クロリド・六水和物(EuCl3・6H2O)、ホルミウム(III)クロリド・六水和物(HoCl3・6H2O)、ルテチウム(III)クロリド・六水和物(LuCl3・6H2O)を含む純度≧99.99%の金属塩(微量金属基準)、ならびに重水(D2O、99.9%)は、Sigma-Aldrichから購入された。4-ビニルベンジルアミン(VBA、≧92%)は、TCI Americaにより提供された。無水エタノール(EtOH)は、市販のアルコールから製造された。硝酸(微量金属グレード、68~69%)、硫酸(微量金属グレード)、水酸化ナトリウムおよびリン酸緩衝食塩水(1xPBS溶液、Fisher BioReagents)は、Fisher Scientificから購入された。全ての上記化学物質は、さらに精製することなく使用された。スチレン(St、Sigma-Aldrich、≧99%)は、アルミナ(Sigma-Aldrich、活性化、中性充填カラム)充填カラムを通過させることにより精製された。誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)較正用の単一元素標準溶液は、PerkinElmer(Pure Plus)から購入された。ビーズ当り、平均で89Y(69x106)、115In(43x106)、140Ce(17x106)、151Eu(10x106)、153Eu(11x106)、165Ho(5.8x106)、175Lu(7.5x106)、および209Bi(5.8x106)を含む、マスサイトメトリー(MC)較正および正規化用の7元素コード化マイクロビーズは、Liuら、202015に記載される通りであった。EQ(商標)4元素(EQ4)マスサイトメトリー(MC)用較正ビーズは、Fluidigm Canadaにより厚意で提供された。18MΩ・cmの最小抵抗率を有する脱イオン水は、Millipore精製システムにより生成された。圧縮窒素(99.998%、Praxair)が、重合反応のための保護雰囲気として使用された。
【0168】
機能的DTPA-ビス(アミド)誘導体の合成
DTPA金属錯体をポリスチレン(PS)マイクロビーズ中に組み込むために、DTPAを最初に、1:2化学量論的比率で4-ビニルベンジルアミン、ベンジルアミン、アリルアミンまたはアミノプロピルメタクリルアミド(R-NH2=VBA、BA、ALAまたはAPMAm)とDTPA二無水物を反応させることにより機能化した。合成法を、いくつかの修正を加えてDTPA-ビス(ビニルベンジルアミド)(DTPA-VBAm2)についてZhangら16により、DTPA-ビス(ベンジルアミド)(DTPA-BAm2)についてAimeら17により、およびDTPA-ビス(アリルアミド)(DTPA-ALAm2)についてShuhendlerら18により報告されたプロトコルから開発した。
DTPA-VBAm2を調製するための典型的実験では、DTPA二無水物(1mmol)を、室温にて無水DMSO(5.0mL)中で4-ビニルベンジルアミン(2mmol)と混合し、一晩撹拌した。エタノール中のNaOH(1M、3当量)を、反応系に加えて、DTPA-VBAm2の三ナトリウム塩を形成し、続いて反応混合物を45mLのアセトンで希釈して、DTPA塩を析出させた。沈殿したDTPA塩を次に、沈降により収集し、エタノールに再溶解した。3サイクルの溶解-析出-沈降を実施して、生成物を精製した。生成物を、減圧下、室温で一晩乾燥して、残留溶媒を除去し、室温にてD2O溶液中でVarian 500MHz測定器(Agilent)を用いるプロトン核磁気共鳴(1H-NMR)により特徴づけた。
【0169】
DTPA-ビス(アミド)誘導体の金属錯体の合成
ビーズ合成のために使用されるDTPA-ビス(アミド)誘導体(M(DTPA-R2))の金属錯体を、水溶液中で金属イオンをDTPA-R2にロードすることにより調製した。典型的金属キレート化実験では、0.30mmolのDTPA-R2三ナトリウム塩および等モル量の金属クロリド(0.30mmol)を、水(3mL)中で別々に溶解した。金属塩溶液を次に、DTPA誘導体溶液に加え、同時にpHを監視し、0.01MのHClおよび0.01MのNaOH溶液で5.0~6.0に調節した。Ce3+イオンのDTPA-VBAm2へのキレート化の間に、混合物の透明溶液は、金属クロリド溶液の添加によりゆっくりと不透明になった。実験中に、1~2mLのエタノールを、混合物に加えて、溶液を透明に保持した。各混合物を、室温で3時間撹拌した。M(DTPA-R2)錯体を、アセトン析出および沈降により単離した。キレート化されない金属イオンはアセトン-水混合物中で可溶であり、一方でDTPA誘導体の金属錯体はアセトン中で低溶解度であることに留意されたい。析出物をその後、エタノール中に溶解し、さらなる精製のためにアセトンで析出させた。金属錯体の最終生成物を、沈降により収集し、減圧下にて室温で一晩乾燥した。1H-NMRを用いて、金属錯体の特性を明らかにした。
【0170】
2段階分散重合
2段階分散重合(2段階DisP)を用いて、立体安定剤としてポリビニルピロリドン(PVP)および金属リガンドとしてDTPA誘導体金属錯体の存在下で、金属コード化ポリスチレン(PS)マイクロビーズを調製した。PVPの存在下にてエタノール中でスチレンの重合を開始した後、エタノール中の目的の量のDTPA金属錯体の温溶液を、2時間で第2段階一定分量として導入した。反応を、開始後24時間で停止し、90%を超えるスチレン転化率を有した。表1は、マイクロビーズの調製に使用されたこの2段階DisPの典型的な配合を記載する。
【表1】
【0171】
実施例2
12バッチのビーズ合成を、実施例1の方法および材料ならびに第2段階での供給原料として種々の量のM(DTPA-R
2)錯体を用いて行った。これらの錯体を、表2に記載のように、異なる官能基で修飾し、異なるタイプの金属イオンをロードした。
【表2】
反応を終了させた後、マイクロビーズ分散液を、2回の無水エタノールおよび4回の水を用いる沈降-再分散サイクルにより洗浄して、遊離安定剤、未反応モノマー、および全てのより小さい直径粒子を除去した。これらの洗浄されたマイクロビーズの分散液を、MCキャラクタリゼーションに使用し、一定分量を、固形分含有量を測定するために凍結乾燥した。
【0172】
実施例3
表面修飾および二次抗体付着
マイクロビーズを、シリカシェルでコートし、二次抗体にコンジュゲートした。
【0173】
シリカコーティングおよびバイオコンジュゲーションのための材料
テトラエチルオルトシリケート(TEOS、99%)、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES、99%)、無水コハク酸(99%)、無水ジメチルスルホキシド(DMSO、99.9%)は、Sigma-Alderichから購入された。アンモニア溶液25%(NH4OH)、MES緩衝液(0.5M、pH5.5)、リン酸緩衝食塩水(1xPBS、pH7.4)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、ニュートラアビジン(NeutraAvidin)(NAv)、ビオチン-xx-ヤギ抗マウス(H+L IgG)およびウシ血清アルブミン(BSA)は、Thermofisher Scientificに注文した。MaxPar(登録商標)175Lu-標識マウス抗抗TNFα(ヒト)(クローンMAb11)、細胞染色緩衝剤および細胞取得溶液は、Fluidigm Canadaにより厚意で提供された。
【0174】
シリカコーティングによりヤギ抗マウス(抗体)で機能化された金属コード化マイクロビーズの調製
金属コード化マイクロビーズ(Eu-1)を最初に、Stober法によりシリカ(SiO2)でコートした。典型的には、50mgのビーズ(固体)を含むビーズ分散液の一定分量を、遠心管中で5mLのエタノール-アンモニア溶液(エタノール:アンモニア=99:1体積)を用いる沈降-再分散サイクルにより洗浄した。TEOS(75μL)を、ビーズ分散液へ添加して、シリカ縮合反応を開始した。反応系を、試料回転装置で20分間撹拌(40rpm、周囲温度)し、98体積%のエタノール(5mL)を用いる4回の沈降-再分散サイクルによりクエンチした。一定分量のシリカコートEu-1ビーズ(Eu-1/SiO2)分散液(1mL、約10mgの固体)を、超音波処理浴中で5分間処理し、Eu-1/SiO2ビーズ分散液にAPTES(5μL)を加えることによりアミノ基(NH2)でさらに機能化した。NH2コーティング反応を、オーブン中にて40℃で20時間撹拌し、無水エタノール(1mL)を用いる4サイクルの沈降-再分散洗浄によりクエンチした。NH2修飾マイクロビーズ(Eu-1/NH2)上の官能基をカルボキシル基(COOH)に変換するために、一定分量の新たに調製したEu-1/NH2マイクロビーズ分散液(800μL、約8mgの固体)を、エタノール-TEA溶液(1mL、0.2体積%のTEA含有)で4回の沈降-再分散サイクルにわたり洗浄し、続いて新たに調製したDMSO(100μL、10重量%無水コハク酸)中の無水コハク酸溶液を加えた。COOH改質反応物を、試料回転装置(40rpm)上で40℃にて一晩撹拌し、その後、水(800μL)を用いる4サイクルの沈降-再分散洗浄により終結させた。
【0175】
次に、NAvを、EDC/NHSカップリングによりCOOH修飾Eu-1ビーズ(Eu-1/COOH)にコンジュゲートした。コンジュゲーション反応では、Eu-1/COOH分散液の一定分量(100μL、約1%の固体)を、MES緩衝液(100μL。0.1M、pH5.5)で4回洗浄して、溶媒を交換した。EDC/NHS活性化反応を、洗浄されたEu-1/COOH分散液に、MES緩衝液中にEDC(8mg)およびNHS(12mg)を含むEDC/NHS溶液(100μL)を添加することにより開始した。15分間のインキュベーションの後、反応溶液を、2サイクルの遠心洗浄により1xPBS緩衝液(100μL;pH7.4)へと素早く切り替え、その後NAv溶液(50μL、2mg/mL)を添加した。NAvコンジュゲーション反応物を、4時間インキュベートし、続いてPBS緩衝液(100μL)を用いる4サイクルの遠心洗浄により非結合NAvを除去した。
【0176】
ヤギ抗マウス(GAM)二次抗体を、2時間ビオチン-xx-GAM(20μg)含有BSA-PBS溶液(100μL、PBS中の0.5重量%BSA)中でNAv修飾Eu-1ビーズ(約2百万個のビーズ)をインキュベートすることによりEu-1マイクロビーズに付着させた。過剰GAMをその後、BSA-PBS溶液(100μL)を用いる4サイクルの遠心洗浄により除去した。
【0177】
実施例4
実施例1および2の方法および材料を用いて調製されたマイクロビーズのサイズおよび粒度分布ならびに金属および金属分布の特性を、解析した。
【0178】
マイクロビーズのサイズおよび粒度分布のキャラクタリゼーション
マイクロビーズ分散液の走査電子顕微鏡(SEM)像を、日立S-5200顕微鏡を用いて収集して、マイクロビーズ直径および直径分布の特性を明らかにした。典型的には、2μLの希釈したビーズ分散液を、300メッシュのホルムバール/炭素コート銅グリッド上に滴下し、乾燥させた。マイクロビーズの直径を、複数SEM像からImageJソフトウェアを用いてマニュアルで測定した。平均直径、標準偏差(SD)および変動係数(CV、式2参照)を、少なくとも300個の測定に基づいて計算した。
【数1】
【0179】
マイクロビーズの酸消化
マイクロビーズ分散液を、ICP-MS測定の前に、硫酸およびH2O2で消化した。典型的な消化実験では、硫酸(500μL)およびマイクロビーズ分散液(100μL、0.5~2%固体含量)を、20mLのガラスバイアル中で混合した。硫酸中のマイクロビーズ分散液をその後、ホットプレート上で250℃に加熱し、磁気撹拌しながら40分間保持し、続いて30%のH2O2溶液(50μL)を添加した。ICP-MS分析のために、消化溶液をその後、2%HNO3で希釈した。
【0180】
計測装置
誘導結合プラズマ-質量分析(ICP-MS)。ICP-MS(iCAP-Q、Thermo Scientific)を使用して、試料中の金属イオン濃度を定量した。試料を、運動エネルギー弁別(KED)測定モードで分析した。元素標準溶液を、較正溶液として、2%HNO3で40、20、10、1および0.1ppbの一連の濃度に系列希釈した。較正フィッティング曲線に基づき、各溶液試料中の金属含量を、決定した。目的の元素の検出限界を、10ppt未満であると推定した。
【0181】
マスサイトメトリー(MC)。マイクロビーズの金属含量を、マスサイトメトリーシステム(Helios(登録商標)CyTOF,Fluidigm)によりビーズ毎に特徴づけた。Liuら、202015により報告された、7元素コードマイクロビーズ(7E1)の試料を、内部標準として採用し、希釈したマイクロビーズ分散液試料と混合した。7E1基準ビーズおよびマイクロビーズ試料からなる混合物をその後、30μL/分の速度でMCシステムに導入し、ビーズを、個別に、しかし確率論的にICP中に導入した。シグナル取得後に、シングレットイベントを、特定し、MCにより生成されたドットプロット上でゲートした。シングレットシグナルの平均、中央値、ロバスト標準偏差(RSD)およびロバスト変動係数(RCV)を、非正規化生データとして報告した。ロバスト統計は、平均、SD、およびCVなどの古典的統計推定器に対する代替手法を提供する。
【0182】
結果
実施例1~3の方法を用いて調製したマイクロビーズのスチレン転化率は、90%超であった。
下記スキーム1に示すように、4種の異なるタイプのDTPA誘導体を、調製した。この組み込み効率を、以下に記載するようにCe(III)-DTPA錯体を用いて試験した。
【0183】
機能的DTPA-R2誘導体の合成
DTPAの金属錯体をPSマイクロビーズ中に共有結合により組み込むために、DTPAを、DisPの間にスチレンと反応できる官能基で修飾した。この設計では、DTPA上の5個のカルボキシレートのうちの2個が、官能基で置換され、そのため機能化されたDTPA誘導体中の残りの3個のカルボキシレートは、ランタニド(III)イオンと電荷中性錯体を形成でき、これは、結合安定性およびDisPにおけるそれらの金属錯体のエタノール溶解性を促進する。
【0184】
金属錯体を、スキーム1で概要を示した手法により合成した。DTPA二無水物は、一級アミンと効率的に反応して、DTPAビスアミドを産生する
21、22。DTPAのビス(アミド)誘導体は、ランタニドイオンと強力に結合する8座配位キレート化剤である。金属イオンとDTPAビスアミドの間の結合は、DTPA-ビスアミドの異なるタイプの金属錯体が反応において混合される場合、ビーズ合成中の金属解離および交換に対し高度に安定であることが想定される。
スキーム1 2段階分散重合のためのDTPA誘導体-金属錯体の合成。金属キレート剤DTPAを、DMSO中でDTPA無水物を官能性分子含有アミンと反応させることにより機能化した。異なるタイプの金属イオンを、pH5~6でDTPA誘導体上にロードした。
【化13】
【0185】
DPTA-ビスベンジルアミド(DTPA-BAm2)のベンジル炭素から、またはDTPA-ビスアリルアミン(DTPA-ALAm2)のアリル炭素25、26から、水素引き抜きを介して、連鎖移動反応によりスチレンと反応できる2種のDTPA-ビスアミドを、調製した。結果を、4-ビニルフェニル基がスチレンと類似の反応性を有すると予測され得る、DPTA-ビス-4-ビニルベンジルアミド(DTPAアリルAm2)との共重合で得られたものと比較した27-29。得られた生成物を、1H-NMRにより特徴づけて、それらの構造を確認した。
【0186】
図1は、Na
3(DTPA-VBAm
2)の
1H-NMRスペクトルであり、5.3(b,2H)、5.8(a,2H)、および6.8(c,2H)でビニル基中のプロトンの明確に異なる化学シフトを示す。4.4ppm(f,4H)での化学シフトは、アミド結合の形成を示す。ビニル、ベンジル、およびDTPA部分からのプロトンの組み込みは、各DTPA分子中のビニルベンジル基のビス置換を確証する。
図8AおよびBで示される
1H-NMRスペクトルは、文献
18、19、30で報告されたDTPA-BAm
2およびDTPA-ALAm
2のスペクトルにそれぞれ一致し、これらの2種のDTPA-ビス(アミド)誘導体の良好な合成を立証する。
【0187】
Ce(DTPA-R
2)金属錯体を有するPSマイクロビーズ中への金属組み込みの試験
Ce(DTPA-R
2)金属錯体の合成。異なるDTPA誘導体の組み込み活性を調べるために、Ce(DTPA-VBAm
2)、Ce(DTPA-BAm
2)、およびCe(DTPA-ALAm
2)のCe錯体を、調製した。金属錯体を、1:1のモル比でpH5.0~6.0にて水中のDTPA-R
2にCeCl
3の水溶液を加えることにより合成した。Ce(DTPA-R
2)錯体を、アセトンの添加により沈殿させ、
1H-NMRにより特徴づけて、金属キレート化を検証した。これらのCe錯体の
1H-NMRスペクトルを、
図9A~Cに示す。Ce
3+は常磁性NMRシフト試薬であるので、これらのCe錯体からのプロトンの化学シフトは、ある程度ずれて広がり、Ce
3+のキレート化相互作用を示す。いくつかのM(DTPA-BAm
2)錯体(M=In、YおよびLu)の結晶構造は、何人かの研究者により、錯体中の金属配位を確認するためにX線回折を用いて報告された
17、30。本明細書で記載のDTPA-R
2キレート化剤に対する金属配位は、材料特性の類似性のために、報告されたM(DTPA-BAm
2)錯体と類似であり得る。
【0188】
Ce(DTPA-R
2)金属錯体を用いた2-DisP。3種のCe(DTPA-R
2)錯体のPSマイクロビーズ中への組み込み効率を、調査した。表2に記載されるように、等モル量のCe(DTPA-VBAm
2)、Ce(DTPA-BAm
2)およびCe(DTPA-ALAm
2)を、エタノールに溶解し、第2段階の一定分量として、それぞれ、Ce-1、Ce-2およびCe-3ビーズ合成に導入した。これらの合成のそれぞれから、水中でそれらのコロイド状態の安定性を保持したコロイド的に安定なマイクロビーズを得た。Ce-1マイクロビーズの平均直径は、
図2で示されるように、2.9μmであり、狭い粒度分布(CV=1.2%)を有した。Ce-2およびCe-3マイクロビーズもまた、表3で要約されるように、均一のサイズ(CV<1.5%)であったが、わずかにより小さい平均直径(それぞれ、d=2.1および2.5μm)を有し、おそらく、PSの連鎖成長を抑制するベンジルおよびアリル基の連鎖移動効果によるものであろう
31。
【0189】
反応中の金属イオン組み込みを、ICP-MSにより測定した。反応物中の総金属イオン含量を、H2SO4+H2O2による試料の消化後に決定した。反応ストック中のマイクロビーズを、遠心沈降により分離した。上清中の金属含量も同様に、ICP-MSにより分析して、溶液中に残存する金属イオンを定量した。Liuら、202015により記載されるように、ビーズ合成の金属組み込み効率を、上清中の非組み込み金属含量と反応物中の総金属含量の間の差異に基づき計算した。このメタル組み込み効率は、PSビーズ中へのCe錯体組み込みを反映する。理由は、Ceは、Ce-DTPA錯体として反応に供給され、3種全てのCe錯体中のCeイオンは、それらの相対的に高い結合安定性のためにビーズ合成中にDTPA誘導体とキレート化して残ると予測されるためである23。
【0190】
3種のマイクロビーズ合成のCe組み込み効率を、表3に示す。Ce-1合成では、反応に添加されたCe(DTPA-VBAm2)錯体の74%が、PSビーズに組み込まれた。しかし、97%のCe(DTPA-BAm2)およびCe(DTPA-ALAm2)が、反応後に溶液中に残存した。換言すれば、Ce-2およびCe-3に添加された2.7%のCe(DTPA-BAm2)および2.8%のCe(DTPA-ALAm2)錯体のみが、それぞれ組み込まれた。
【0191】
Ce含量の補足的測定として、Ce-1、Ce-2およびCe-3マイクロビーズを、定量化標準として既知の量の140Ceを含む較正マイクロビーズを用いて、ビーズ毎基準でMCにより調査した。試料ビーズ中のCe含量を、異なるマイクロビーズからのMCシグナル強度は同じ測定における金属含量に比例すると仮定して、試料ビーズと較正ビーズの間のシグナル強度を比較することにより評価した15。表3は、MCにより測定されたこれら3種のバッチのマイクロビーズのCe含量を要約する。
【0192】
MCでは、Ce-1マイクロビーズは、ビーズ当り6000カウントの強度中央値および6.2%のRCV(
図11A参照)を有する、鋭く、強い
140Ceシグナルを生成した(
図11参照)。Ce-1マイクロビーズ中のCe含量を、ビーズ当り、5.44x10
7個のCeイオンであると推定した(表3参照)。対照的に、Ce-2およびCe-3マイクロビーズは、遙かに弱い
140Ceシグナル強度を示した(それぞれ、
図11BおよびC)。Ce-2およびCe-3マイクロビーズ試料についてのCe含量は、1.6x10
6個および1.6x10
6個のCeイオン/ビーズで実質的に同一であった。
【0193】
ビーズ合成中の重合可能なCe錯体の組み込み機序を確認するために、別のCe錯体、Ce(DTPA-AmPMAm
2)を、スチレンと共重合できる官能基としてメタクリルアミドを採用して調製した。Ce(DTPA-VBAm
2)の調製でのように、Ce(DTPA-AmPMAm
2)錯体を、DTPA二無水物をDMSO中のAPMAmと最初に反応させること、および次いでpH5~6で水中にてCe
3+イオンをキレート化することにより、合成した。
図8(c)および
図9(d)中の
1H-NMRスペクトルは、それぞれ、Na
3(DTPA-AmPMAm
2)およびCe(DTPA-AmPMAm
2)の構造を確証した。Ceキレート化実験の間、Ce(DTPA-AmPMAm
2)は、Ce(DTPA-VBAm
2)より親水性であるように見えた。理由は、Ce(DTPA-AmPMAm
2)は、エタノールの添加なしで、キレート化溶液中で完全に可溶であったためである。Ce-4マイクロビーズを、Ce-1、Ce-2およびCe-3合成と類似の条件下でリガンドとして等量のCe(DTPA-AmPMAm
2)錯体を用いて調製した。結果として、Ce-4マイクロビーズはまた、狭い粒度分布(CV=1.3%)で2.9μmの平均直径を有し、ビーズ当り4000カウントでの強度中央値および5.7%のRCVを有する、明るい
140Ceシグナルを生成した(
図11D参照)。
【0194】
Ce(DTPA-VBAm
2)およびCe(DTPA-AmPMAm
2)の両錯体は、ビニルベンジルアミド/メタクリルアミドとスチレンの間の反応性共重合に起因して、DisPの間にPSビーズ中に効率的に組み込まれた。Ce(DTPA-BAm
2)およびCe(DTPA-ALAm
2)錯体の遙かに低い効率の組み込みは、ビーズ合成条件下での連鎖移動剤としてのベンジルアミド/アリルアミドとスチレンの間の低反応性に起因する。
【表3】
DTPA-VBAm
2キレート化剤を、他のランタニド金属イオンのPSマイクロビーズ中への組み込みについて評価した。
【0195】
M(DTPA-VBAm
2)金属錯体を使用する金属コード化されたマイクロビーズの調製
4種の他の金属イオン(Y
3+、Eu
3+、Ho
3+およびLu
3+)を有するDTPA-VBAm
2の錯体を、調製した。これらの合成は、Ce(DTPA-VBAm
2)について上で記載されたものに類似の方法を採用した。Y(DTPA-VBAm
2)、Eu(DTPA-VBAm
2)、Ho(DTPA-VBAm
2)およびLu(DTPA-VBAm
2)の
1H-NMRスペクトルを、
図10A~Dにそれぞれ示す。Eu
3+およびHo
3+は、常磁性NMRシフト試薬である。Eu(DTPA-VBAm
2)およびHo(DTPA-VBAm
2)のNMRスペクトルの化学シフトは、Ce(DTPA-VBAm
2)のスペクトルに類似のシフトプロファイルを示す。対照的に、Y
3+およびLu
3+は、反磁性であり、
図10SおよびD中のY(DTPA-VBAm
2)およびLu(DTPA-VBAm
2)のスペクトルは、シフト効果を示さない。これらのスペクトル中のビニルベンジル官能基のプロトンの化学シフト(5~8ppm)は、キレート化剤のものに類似しているが、一方で脂肪族領域のDTPAのプロトンの化学シフト(1~4ppm)は広がり、これはおそらく、金属キレート化に関連する異なるDTPA-VBAm
2異性体の相互転換によるものであろう
30、32。金属キレート化実験において、Ho(DTPA-VBAm
2)およびLu(DTPA-VBAm
2)は、エタノール中でそれほど可溶でなかったが、水中ではCe(DTPA-VBAm
2)より可溶であったことに留意されたい。理論に束縛されることを意図するものではないが、この観察は、Ho(DTPA-VBAm
2)およびLu(DTPA-VBAm
2)錯体の極性がCe(DTPA-VBAm
2)の極性より高く、おそらくHoおよびLuのDTPAキレート化剤に対するより強力な結合
23が理由であることを示唆した。全ての金属錯体は、ビーズ合成中の第2段階の一定分量中で完全に溶解されることが好ましいことが、理解される。
【0196】
マイクロビーズ中のこれらの金属錯体の組み込みを調査するために、それぞれのこれらの異なるM(DTPA-VBAm
2)錯体を用いて、表2に記載されるように、それぞれの合成において、単一金属元素(それぞれ、Y、Eu、HoおよびLu)を含む一連のマイクロビーズ(Y-1、Eu-1、Ho-1およびLu-1)を調製した。Y-1、Eu-1、Ho-1およびLu-1の合成から得られたマイクロビーズは、均一であり、類似のサイズであった(表4参照)。これらのマイクロビーズからのコード化元素のMCシグナル強度は、
図12に示すように、強力で、狭い分布であった。同じ測定における試料マイクロビーズおよび較正ビーズからのMCシグナル強度を比較することにより評価された金属含量は、表4で要約されるように、多数の元素が各マイクロビーズ中に組み込まれたことを確証した。上述のように評価されたこれらのビーズ合成での金属の組み込み効率は、全て65~72%の範囲にあり、より大きなイオン半径を有するランタニド金属イオンについて、この範囲のわずかな増加があった。(
図3A参照)。
【0197】
5元素コード化されたマイクロビーズ(5E1)のバッチを、DisP反応のための第2段階の一定分量として5mgの各M(DTPA-VBAm2)錯体(M=Y、Ce、Eu、HoおよびLu)を15gのエタノール中に溶解することにより合成した。異なる元素を一度の反応で混合する場合の異なる元素間の組み込み妨害を調査するために、ビーズ合成での個別の金属の組み込み効率を、ICP-MSにより特徴づけた。
【0198】
5E1マイクロビーズの平均直径は2.7μmであり、狭い粒度分布(CV=1.2%)を有した。
図3Aで示されるこれらの5種の金属の組み込み効率は、5E1反応に導入された63~70%の金属錯体がビーズ中に組み込まれたことを示す。5E1ビーズ反応に添加された異なる金属イオンは、類似の効率でマイクロビーズ中に組み込まれた。5E1ビーズ中のコード化同位体のMCシグナル強度を、較正標準としての7元素コード化マイクロビーズ
15と一緒に測定した。
図4Aは、5E1ビーズのMCシグナル強度中央値を要約し、エラーバーは、シグナル強度のRSDを表す。
140Ce、
151、153Eu、
165Hoおよび
175Luのシグナル強度は、狭いシグナル分布(RCV<10%)を有する最適MC感度範囲(>300カウント/ビーズ)であった。5E1ビーズからの
89Yシグナル強度は、MC
14中の89amuチャネルの低い伝送係数のため、100カウント未満/ビーズであった。較正ビーズからのMCシグナル強度を用いて、5E1ビーズ当りの金属含量を計算した。結果を
図4Bに示す。5E1ビーズ中のCe、Eu、HoおよびLuは、ビーズ当り、3.4~4.0x10
6個のイオンの類似の範囲内であった。Y含量は、5mgのY(DTPA-VBAm
2)中に5mgの他のLn(DTPA-VBAm
2)試料中より多いY原子が存在する結果として、わずかにより高い(5.7x10
6個のイオン/ビーズ)。
【0199】
マイクロビーズ合成における金属イオン組み込みの制御
図3Aは、リガンドとしてM(DTPA-VBAm
2)金属錯体を用いる表2に記載のビーズ合成バッチ(Y-1、Ce-1、Eu-1、Ho-1、Lu-1および5E1)中の金属組み込み効率結果を要約する。
図3のx軸は、組み込まれた金属イオンのイオン半径である。ビーズのこれらのバッチにおける異なる金属の組み込み効率は、これらのビーズ合成において金属供給量が変化したにも関わらず、62~74%の非常に狭い範囲で重なり合った。4-ビニルベンジルアミド基の反応性は、キレート化剤に結合された金属イオンとは無関係であるように見える。結果として、ビーズ合成における金属組み込み効率は、リガンドとしてM(DTPA-VBAm
2)金属錯体が採用された場合、一貫していた。
【0200】
M(DTPA-VBAm
2)錯体の供給量と得られたマイクロビーズの金属含量の間の関係を、調査した。
図5で、マイクロビーズ中で検出された金属含量が、塗りつぶした記号で合成に供給された金属錯体に対しプロットされている。マイクロビーズサイズにおける軽微なバッチ毎の変化を考慮して、
図5のy軸として示されるマイクロビーズ中の金属濃度として、各マイクロビーズ中の金属含量を、ビーズの体積により除算した。
図5の塗りつぶしたデータポイントは、ビーズ合成における金属錯体の供給量に対するマイクロビーズ中の金属含量の線形依存性を示す。これらのデータの線形回帰モデルフィット性は、各反応で導入されるM(DTPA-VBAm
2)の量を変えることにより、金属コード化マイクロビーズ中の金属含量のレベルを設計するための簡便なガイドとして機能する。この状況は、金属含有PSマイクロビーズ調製の手段としての金属塩+アクリル酸の使用と比較して、実験計画および実行における顕著な改善である。この新しい方法を用いて、MCビーズ系バイオアッセイのための分類子ビーズとして個別に特定され得る、種々のレベルの金属含量を有する金属コード化マイクロビーズのライブラリーを調製できる。
【0201】
異なるレベルの金属含量を有する一連の金属コード化された分類子マイクロビーズの調製
最大変動まで分類子ビーズのライブラリーを調製するために、種々の金属含量のマイクロビーズがMCで個別に分離され得るように、精密に制御された金属含量を有するマイクロビーズ中に複数金属同位体をコード化しなければならない。実施例2で記載されるようなベースライン分離を有する3種の別々の金属イオンレベルを含む分類子ビーズの合成を可能にする、一連の反応条件を提供する。3倍異なる強度レベルを、選択した。しかし、他の強度レベルが選択されてよい。例えば、2倍または2.5倍異なる強度レベルが選択されてよい。
【0202】
Y(DTPA-VBAm2)(70μmol)は、おそらくその高い極性のために、エタノール(15g)中に溶解するためにより長い時間を要する。従って、Yイオン以外のイオンを、これらの反応で使用した。しかし、Yは本開示のマイクロビーズのために好適な金属であり得ることが理解される。例えば、Yは、異なる金属キレートモノマーと共に使用できる。例えば、Yは、異なる濃度で使用できる。Ce、Eu、Ho、およびLu含有4元素PSマイクロビーズの3種の試料を、3倍異なる濃度レベルで合成した。これらの試料は、表2に示すように、4E1、4E2および4E3と表記される。目的は、7元素コード化マイクロビーズ15のMC強度レベルに対して、それぞれ、0.2、0.6および1.8倍である140Ce、151Eu、153Eu、165Hoおよび175LuのMCシグナル強度レベルを生成するマイクロビーズを得ることであった。
【0203】
4E1、4E2および4E3の合成から得られたマイクロビーズは、反応ストック中でコロイド的に安定であり、凝塊を含まなかった。沈降-再分散による洗浄後にこれらのマイクロビーズの平均直径は、表4に示すように、2.8~3.0μmの範囲であり、狭い粒度分布(CV<1.5%)を有した。
図3Bに示すように、これら3種のビーズ合成における異なる金属イオンの組み込み効率は、一貫しており、
図3Aに記載される合成で観察されたレベルに近かった。
【0204】
マイクロビーズのこれらの3種のバッチからの5種のコード化されたランタニド同位体のMCシグナル強度を、元素によりソートしたパネルで
図6に示す。4E3ビーズからの
140Ce、
151Eu、
153Eu、
165Hoおよび
175Luの平均MCシグナル強度は、ビーズのこれらの3種のバッチ中で最も高く、類似のレベルで、それぞれ、2560、2053、2590、2540および2530カウント/ビーズあった。4E3ビーズのシグナル強度分布は、狭く、9%未満のRCV値を有し、ビーズ中のコード化されたランタニド元素の狭い分布を示した。4E1および4E2ビーズもまた、シャープで狭いMCシグナル分布を生成し、すべてのコード化同位体で、それぞれ、約200および700カウント/ビーズの強度を有した。
図6のヒストグラムは、マイクロビーズのこれらの3種のバッチの間の明確なベースライン分離を示す。ビーズのこれらの3種のバッチのシグナル強度は、4E1から4E3ビーズへ約3倍増大した。
【0205】
MCシグナル強度を7元素較正ビーズのシグナル強度と比較することにより、これらの3種のマイクロビーズ中の金属含量を、評価した。値を、
図5に示す白抜き記号としてビーズ合成における金属供給量に対しプロットした。これらの白抜き記号データ点は、
図5に示される以前のビーズ合成から観察された直線の傾向線に従った。
【0206】
これらの3種のマイクロビーズの合成は、ビーズ合成において共重合可能な金属錯体としてM(DTPA-VBAm
2)を用いる3種の異なる濃度レベルで5種のタイプのランタニド同位体でコード化されたビーズのライブラリーの調製の利便性を実証する例として役立つ。式1により、
図6で示されるこのビーズライブラリーの最大変動は、1023個である。
【0207】
7元素ビーズの合成に対しLiu 2020で以前に使用された方法と比較して、異なる金属間にわたる組み込み効率は、より一貫していることが示された。Liu 2020では、組み込み効率は異なる金属間で劇的に変化し、マイクロビーズの制御された標識を困難にした。例えば、Liu 2020では、Lu3+は、7元素全ての中で約50%の最大の組み込みを有し、一方でCe3+は、最小の効率を有した。反応混合物に添加されたCe3+の約15%のみが、ビーズに組み込まれた。ランタニドの組み込み効率は一般に、より小さいイオンはより大きい組み込み効率を有するという傾向を示した。
【0208】
本明細書で示されるように、構造M(DTPA-VBAm2)の金属錯体は、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)の存在下でエタノール中の2段階分散重合反応においてスチレンと効率的に共重合する。この反応は、2μmのオーダーの直径および非常に狭い粒度分布(CV≒1~2%)を有するPSマイクロビーズをもたらす。金属錯体の組み込み効率は、60~70%のオーダーであり、より大きなイオン半径を有するランタニド金属イオンについては、この範囲はわずかに増加する。この効率は、試験した濃度の範囲では、反応中に導入された金属錯体の量に無関係であるように見える。この反応の特徴は、PSマイクロビーズの試料について特定の金属含量を調節可能にする。これは、例えば実施例6で記載される、ビーズ系MCアッセイのためのMCの較正ビーズおよび分類子ビーズの両方の調製のための有用な戦略である。その表面に結合されたヤギ抗マウス抗体を有するEu標識ビーズは、Lu標識マウスIgGの検出において効果的であった。
【0209】
実施例5
マイクロビーズからの金属漏出
水性媒体への金属イオンの浸出に関して、実施例1および2に従って調製されたマイクロビーズの安定性を、いくつかの実験条件下で評価した。M(DTPA-VBAm2)を用いて2段階DisPにより調製した試料4E3ビーズを、この試験に使用した。洗浄したマイクロビーズ(0.5%固体)の試料を、1%のPVPも含んだ30mLの3種の異なる緩衝液:酢酸ナトリウム(50mM、pH3.0)、酢酸アンモニウム(10mM、pH7.0)、炭酸ナトリウム(200mM、pH10.5)中に懸濁した。試料を、4℃で貯蔵した。種々の時間間隔で、各試料を、最初にボルテックスし、その後2mLの一定分量を、採取した。これらの一定分量を、遠心分離し、上清を収集して、ICP-MSにより金属含量を測定した。ビーズから浸出した金属の割合を、ビーズ分散液中の金属含量と比較して、上清中の金属含量に基づきICP-MSにより測定した。並行して、2段階DisP AA手法により調製したマイクロビーズのバッチも、同じ実験条件に供した。
【0210】
貯蔵中および典型的適用条件中の金属浸出に対するM(DTPA-VBAm
2)コード化されたビーズ(4E3)のバッチの安定性を、試験した。これらのDTPAビーズは、
図13に記載されるように、3~10の範囲のpH値の緩衝液中での貯蔵時の金属イオンの損失(<1.5%)に対し安定であった。
【0211】
組み込まれた金属の浸出安定性
MCに使用される金属コード化マイクロビーズは、貯蔵中および典型的な適用条件下で金属イオン浸出に対して安定でなければならない。0.5重量%のこれらのマイクロビーズの試料を、3種の緩衝水溶液(酢酸ナトリウム、pH3.0;酢酸アンモニウム、pH7.0;炭酸ナトリウム、pH10.5)中に分散させ、4℃で貯蔵した。並行して、別のセットのマイクロビーズ試料を、同じ緩衝液中で試験したが、これらのビーズを、Abdelrahmanら、20099で報告されたように、金属イオンを組み込むためのリガンドとしてアクリル酸(AA)使用する2段階DisPにより調製した。4E3ビーズからの各元素の漏出を、ICP-MSにより時間の関数として、これらの溶液中で監視した。
1重量%のPVPの存在下の非緩衝水中で貯蔵されたM(DTPA-VBAm2)コード化マイクロビーズからの金属浸出もまた、監視した。
【0212】
図13は、金属浸出実験の結果を示し、塗りつぶした記号は、DTPAビーズ(4E3)を指し、白抜き記号は、比較としてのAAビーズを指す。あらゆる組み込まれた元素の極めて小さい検出可能な漏出(<0.06%)が、
図13Bに記載されるように、100日を超える期間にpH7緩衝液中の両方のマイクロビーズから観察された。4℃でPVP溶液中に貯蔵された4E3 DTPAビーズの場合、金属元素のごくわずかな放出(最大0.3%)が100日にわたり検出され、一方でAAビーズは、同じ条件下での貯蔵時に、わずかに多い金属イオン(Ce
3+で約1.3%)を失った。酸性(pH3)および塩基性(pH10.5)の緩衝液中で熟成されたマイクロビーズは、より高いレベルのイオン喪失を示した。ここで元素のイオンの漏出は、20日でプラトー値に到達し、次の80日間にわたりさらなる損失はなかった。DTPAビーズからのEu
3+、Ho
3+およびLu
3+の損失は、pH3緩衝液中では小さかった(<0.2%)が、一方でそれは、Ce
3+でより高く(約1.5%)、おそらくCe
3+とDTPAキレート化剤の間のより弱い結合安定性によると思われる。概して、DTPAビーズは、4種の試験条件下でより少ない金属イオン漏出およびより強力な安定性を示す。
【表4】
【0213】
実施例6
分類子ビーズ
表面修飾および抗体結合
実施例3で記載されるヤギ抗マウス(GAM)二次抗体(Ab)で機能化されたM(DTPA-VBAm2)コード化ビーズを、MCにより175Lu標識Abレポーターを用いてGAM修飾Eu-1マイクロビーズ間の特異的結合に関し調査した。
【0214】
マスサイトメトリーによる分類子ビーズとレポーター間の特異的結合の試験
特異的結合実験のために、分類子としてGAM修飾マイクロビーズ(Eu-1/GAM)を最初に、BSAブロッキング溶液(50μL、PBS中の3%BSA)中に分散させた。30分のインキュベーション後に、レポーターとして175Lu標識マウスIgG(6.25μg)を含む細胞染色溶液(50μL)を、Eu-1/GAM分散液に導入した。分類子およびレポーターの分散液を、2時間インキュベートし、続いて細胞取得溶液(100μL)で2サイクルの遠心洗浄を行って非結合レポーターを除去した。分類子ビーズ上へのレポーターの結合を、MCにより調べた。非特異的結合を試験するために、NAv修飾Eu-1ビーズ(GAMの結合なし)を、同じ結合実験条件に陰性対照として採用し、またMCにより試験した。
【0215】
図14は、マイクロビーズ試料の表面を機能化し、その後マイクロビーズ表面にAbを付着させるために使用される方策を示す。実施例3に記載されるように、マイクロビーズを最初に、薄いシリカシェルでコートし、続いてAbdelrahman
33により報告されるように、2段階シリカゾルゲル反応でアミノ基を導入した。TEOSおよびAPTESを、シリカコーティング法に採用した。約10nm厚みのシリカシェルおよび表面アミノ基を有するNH
2修飾Eu-1マイクロビーズを、得た。マイクロビーズ表面上のアミノ基を次に、DMSO中で無水コハク酸と反応させることにより、カルボキシル基(COOH)に変換した。カルボキシレート基は、生物親和薬剤を付着するための官能基として機能し、マイクロビーズ表面へのレポーターの非特異的結合を低減することを支援する。ニュートラアビジン(NAv)を、EDC/NHSカップリングによりマイクロビーズ表面上のCOOH基に共有的にコンジュゲートした。最終的に、ビオチン化GAMを、強力なビオチン-アビジン親和性によりNAv修飾マイクロビーズ表面に付着した。
【0216】
分類子としてのGAM修飾Eu-1マイクロビーズの官能性を検証するために、レポーターとして
175Lu標識マウスIgGを選択し、Eu-1/GAMビーズとインキュベートした。二次Abとして、GAMは、
図7(a)に示すように、レポーター中のマウスIgGに対する特異的に高い反応性を有する。抗原認識を試験するために、GAM修飾マイクロビーズ(Eu-1/GAM)の懸濁液を最初に、ウシ血清アルブミン含有ブロッキング溶液(50μL、PBS中の3%BSA)中に分散させた。30分のインキュベーション後、レポーターとして
175Lu標識マウスIgG(6.25μg)を含む、細胞染色溶液(50μL)を、導入し、23℃で2時間インキュベートし、続いて細胞取得溶液(100μL)で2サイクルの遠心洗浄を行って非結合レポーターを除去した。試料を、MCにより調べた。
図7Bに示すように、460カウント/ビーズ(RCV=15%)の強度を有するEu-1/GAMマイクロビーズ上のシャープな
175Luシグナルピークは、GAM修飾マイクロビーズとレポーターの間の強力な特異的結合を示す。対照的に、GAM結合なしのEu-1/NAvマイクロビーズの試料について得られたシグナルは、ゼロへと統計的に最小化されたシグナルを与えた。
【0217】
実施例7
メタクリルアミド誘導体Ce(DTPA-AmPMAm2)を用いるCe/DTPAによるコード化されたマイクロビーズ
メタクリルアミドで機能化されたDTPAキレート化剤を調製するために、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩(APMAm)(2mmol)を、無水DMSO(5.0mL)に溶解し、続いてトリエチルアミン(TEA、5.5mmol)を加えて、アミン塩酸塩を脱プロトン化した。DTPA二無水物(1mmol)を次に、APMAm-DMSO溶液に導入し、反応系を、室温で一晩撹拌した。エタノール中のNaOH(1M、3当量)を、反応系に加えて、DTPA-AmPMAm2の三ナトリウム塩を形成し、続いてシリンジフィルター(0.2μm)で濾過した。濾液を、45mLのアセトンで希釈して、生成物を析出させた。析出したDTPA塩を次に、沈降により収集し、エタノールに溶解した。3サイクルの溶解-析出-沈降を実施して、生成物を精製した。生成物を、減圧下にて室温で一晩乾燥して、残留溶媒を除去した。1H-NMRを用いて生成物の構造を確認した。
【0218】
DTPA-AmPMAm2のCe錯体を調製するために、DTPA-AmPMAm2(0.3mmol)およびCeCl3・7H2O(0.3mmol)を、それぞれ、5mLおよび1mLのDI・H2Oに別々に溶解した。Ce溶液を次に、DTPA-AmPMAm2溶液に加え、その間、pHを監視し、0.01MのNaOH溶液で、6.0に調節した。混合物を、室温で3時間撹拌した。Ce(DTPA-AmPMAm2)錯体を、アセトンによる析出および沈降により単離した。析出物をその後、エタノール中に溶解し、さらなる精製のためにアセトンで2度目の析出を行なった。最終生成物もまた、1H-NMRにより特徴づけた。
【0219】
典型的2段階分散重合を用いて、Ce(DTPA-AmPMAm2)錯体でコード化されたポリスチレン(PS)マイクロビーズを調製した。PVP-55(1.00g)、AIBN(0.25g)、トリトンX305(0.35g)を、フラスコに加え、スチレン(6.25g)およびエタノール(18.75g)の混合物中で完全に溶解した。溶液を、フラスコ中で密閉し、オーバーヘッドミキサーで撹拌した。室温で30分間の窒素パージ後に、重合反応を、フラスコを70℃の湯浴中に浸漬することにより開始した。第2段階の一定分量として、エタノール(15.0g)中のCe(DTPA-AmPMAm2)錯体(54mg、約70μmol)の温溶液を、反応の開始の2時間後に反応系中に注入した。反応を、開始後24時間に停止した。安定な凝塊不含マイクロビーズ分散液を、得て、4℃で貯蔵した。
【0220】
この実施例で得た粒子は、凝塊を含まず、狭い粒度分布(CV=1.3%)および2.9μmの平均直径を有した。マスサイトメトリーにより測定したマイクロビーズ中のCe含量は、約2.7x107イオン/ビーズであった。ICP-MSにより評価して、反応において加えたCeの49%が、反応停止後に溶液中に残った。従って、マイクロビーズ中のCe(DTPA-AmPMAm2)錯体の組み込み効率は、51%であると推定された。
【0221】
類似の方法が、他のLnイオンに対し使用されてよい。
スキーム2 2段階分散重合のためのDTPA誘導体-金属錯体の合成。金属キレート剤DTPAを、DMSO中でDTPA無水物を官能性分子含有アミンと反応させることにより機能化した。異なるタイプの金属イオンを、pH5~6でDTPA誘導体上にロードした。
【化14】
M=Y、Ce、Eu、HoおよびLuなどのLnイオン
【0222】
実施例8
マイクロビーズ-核酸のバイオコンジュゲーション
核酸またはオリゴヌクレオチドは当該技術分野で利用できる方法を用いてマイクロビーズにコンジュゲートできることが、理解される。例えば、3’-ヒドロキシル基が、機能化マイクロビーズ上のカルボン酸(コハク酸など)官能基にコンジュゲートされ得る。例えば、ヌクレオチドのホスホラミダイト誘導体が、コンジュゲーションのために使用され得る。オリゴヌクレオチドは、(例えば、本明細書で記載のマイクロビーズまたは生体分子に対する)コンジュゲーションのために機能化されてよく、例えばIntegrated DNA Technologies(IDT)から、市販品として容易に入手可能である。例えば、ビオチン(例えば、デスチオビオチン(desthiobiotin))、アミン、アルキン修飾剤、チオール修飾剤、アクリダイト(Acrydite)、またはアジドなどのNHSエステルで機能化されたオリゴヌクレオチドは、本明細書でさらに記載されるように、コンジュゲートされ得る。
【0223】
実施例9 MCによる多重化ビーズ系アッセイ
実験
材料
この実施例で採用された金属コード化されたマイクロビーズの合成およびキャラクタリゼーションを、実施例10で示す。この実施例で使用された緩衝液は、Life Technologiesから購入された。抗体(Ab)、ビオチン化Ab、およびサイトカイン標準は、BioLegendおよびR&D Systemsから購入された(表5参照)。ストレプトアビジン結合金ナノ粒子(AuNP、10nm、10OD)は、Abcamから購入された。凍結ヒト末梢血単核球(PBMC)は、Immunospot(CTL,LP-188 HHU20130715)から購入された。NanoGold(登録商標)-ストレプトアビジン(Nanoprobe)、EQ(商標)4元素較正ビーズ(EQ4)およびCell-ID(商標)Pdバーコーディングキットは、Fluidigm Canadaにより厚意で提供された。
【表5】
【0224】
一連の金属コード化された分類子ビーズの調製
MCでのビーズ系アッセイを開発するために、MCにより個別に特定できる種々の金属イオンで標識されたマイクロビーズのライブラリーを、調製した。2段階分散重合(DisP)反応で構造M(DTPA-VBAm2)の重合可能な金属錯体を導入することによる、制御されたレベルの金属イオンを有するマイクロビーズをコード化する方法が、本明細書で記載される。金属コード化された分類子ビーズの製剤および処理の実験詳細は、実施例10で見出される。11種の2元金属コード化された3μmのポリスチレン(PS)マイクロビーズのパネルを、実施例10に記載される本開示の方法を採用して調製した。
【0225】
免疫アッセイにおいて標的分析物を捕捉できる分類子ビーズを調製するために、各タイプの金属コード化されたビーズを、サイトカイン分析物に特異的なAbの1種で修飾した。
【0226】
サイトカイン分泌のためのPBMCの刺激
凍結された市販ヒトPBMC試料(CTL Immunospot)を、解凍し、0.5mLのCTL抗凝集洗浄サプリメント(20x)を含有する予め温めたRPMI無血清培地(10mL)に加えた。試料中のPBMCを、遠心分離(8分、300rpm)により遠心沈降させた。上清を、遠心分離後に吸引した。PBMCをその後、温かい血清含有完全RPMI(10mL)で再懸濁した。RPMI(4.8mL、4.8x106個細胞)中のこのPBMC懸濁液の一定分量を、PSチューブに移し、酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA、25nmol)およびイオノマイシン(100nmol)を含むPBS溶液(100μL)で刺激した。刺激剤を含む試料を、5%CO2下、37℃で5時間インキュベートした。刺激されたPBMC懸濁液を次に、遠心分離して細胞を沈降させた。上清を、刺激された試料として収集し、ビーズ系アッセイの前に-80℃で貯蔵した。RPMI培地中のPBMC懸濁液の別の一定分量を、刺激剤の添加を除き(PBSのみ)並行して同じ条件下で処理した。非刺激試料を、この実験では対照として収集した。
【0227】
マスサイトメトリーのためのビーズ系サンドイッチ免疫アッセイ法
アッセイ条件を最適化するために、いくつかの多重化ビーズ系アッセイを、標準試料として既知の濃度のサイトカインおよびケモカインの混合物を含む一連の溶液を用いて実施した。これらの混合物を、MCにより分析して、検量線をプロットした。
図16は、この試験で開発したアッセイ手順を示す。
【0228】
一連の4プレックスアッセイを実施して、10種の標準試料中のIL-4、IL-6、TNFαおよびIFNγを分析した。これらの実験では、4種の捕捉Abコート金属コード化分類子マイクロビーズを、BSA溶液中にてほぼ等しい数(PBS中の0.5%BSA)で最初に混合した。分類子ビーズ分散液を次に、96ウェルフィルタープレート(フィルターカットオフ:0.45μm)の10個のウェルに移した。分散液(50μL)中に約2百万個のビーズを含む各ウェルは、1種の標準試料を分析できる。0、0.31、1.22、4.88、19.5、78.1、313、1250、5000、20000pg/mLの4種の分析物からなる一連の10種の標準溶液(各50μL)を、それぞれ、各ウェルに加えた。各ウェル中の標準溶液および分類子ビーズの混合物を、ピペットを用いて最初に撹拌し、その後室温でマイクロプレート震盪機(1200rpmで30秒、その後900rpmで2時間)上でインキュベートした。インキュベーション後に、混合物中の溶液を、ウェルの底部で組み込み型フィルターを通す減圧濾過により除去した。それらの表面上に捕捉された分析物を有する分類子ビーズを、洗浄緩衝液(200μL、PBS中の0.025%ツイーン(登録商標)20)を用いる2回の再分散-濾過サイクルにより洗浄して、存在する可能性のある非捕捉分析物を除去した。洗浄緩衝液を濾過によりウェルから除去すると、4種のビオチン化Ab(各Abに対し、2.5μg/mL)を含む検出Abカクテル(100μL、PBS中の0.5%BSA)を、各ウェルに移した。分類子ビーズを、ピペットによる撹拌により検出Abで再分散した。分類子ビーズと検出Abの混合物を、マイクロプレート震盪機(900rpm)上で室温にて1時間インキュベートした。インキュベーション後に、混合物を、濾過し、洗浄緩衝液による2回の再分散-濾過サイクルにより洗浄して、分類子ビーズ上の非結合検出Abを除去した。フィルター上の分類子ビーズを次に、レポーターとしてのストレプトアビジン-コンジュゲート金ナノ粒子(AuNP)の分散液(100μL)で再分散させた。レポーター分散液を、0.5%BSA緩衝液で供給業者からのAuNP分散液を希釈する(例えば、200倍)ことにより調製した。分類子ビーズとAuNPレポーターの混合物を、震盪機(900rpm)上で1時間インキュベートし、洗浄溶液による2回の、およびPBS緩衝液(100μL)による2回の濾過-再分散サイクルにより洗浄した。1回のMC実験で多数のアッセイを測定するために、各ウェル中のアッセイ試料(100μL)を、ユニークなパラジウムバーコーディング溶液(40μL、Cell-ID(商標)Pdバーコーディングキット中のストック溶液の3x希釈)で染色した。バーコーディング染色反応系を、攪拌しながら30分間インキュベートし、0.5%のBSA溶液(200μL)による2回の、および水(100μL)による2回の濾過-再分散サイクルによりクエンチした。合計10種のバーコード化されたアッセイ試料を、1つの試験管中で混合し、較正標準としてEQ4ビーズを用いてMCにより試験した。
【0229】
未知の分析物濃度の試料の典型的マルチプレックスアッセイにおいて、標的分析物を捕捉できる異なるタイプの金属コード化分類子ビーズを、BSA溶液中で同数で最初に混合し、その後96ウェルフィルタープレートに移した。各ウェル中で、分類子ビーズ分散液(50μL)は、ウェルに一定分量(50μL)の試料溶液を加えることにより1種の未知の試料を分析できる。アッセイをその後、標準試料の上のアッセイで記載されるものと類似の手順でインキュベートし、洗浄し、検出Abおよび検出AuNPレポーターにより染色した。
【0230】
計測装置
マスサイトメトリー(MC)。マイクロビーズ試料を、マスサイトメトリー(Helios(商標)CyTOF(登録商標)system,Fluidigm)によりビーズ毎に特徴付けた。典型的MC測定では、バーコード化免疫アッセイ法試料および内部標準としてのEQ4ビーズを、試験チューブ中にプールし、30μL/分の速度でMCシステム中に導入した。シグナル取得後に、MCシグナルを、EQ4ビーズからのシグナルを用いて正規化し、脱バーコード化して異なるアッセイからの結果を分離した。1つのアッセイ試料のMC結果を分析するために、アッセイに含まれた全ての分類子ビーズのシングレットを、最初に特定し、140Ce-142Ceドットプロットでゲートした。各タイプの分類子ビーズをその後、それらの金属コード化のシグネチャーシグナルに基づきゲートした。レポーター、例えばAuNPの197Auのシグナル強度中央値を、結果として報告する。
【0231】
結果
MCにおいて多重化ビーズ系免疫アッセイ法が、開発された。金属コード化されたマイクロビーズが、免疫アッセイ法のための固体担体として、および金(Au)NPが、レポーターとして採用された。各免疫アッセイ法の捕捉Abは、マイクロビーズセットの1つに結合され、それらのそれぞれは、均一で、別々の重金属同位体含量を有するマイクロビーズから構成された。捕捉Abと結合されると、分類子としての異なるセットからのマイクロビーズは、多重化アッセイのために一緒にプールされ、データ取得後に分離され得る。データは、MCで取得され、FlowJo(商標)ソフトウェアにより解析された(実験計画については、
図16参照)。免疫アッセイ法は、各マイクロビーズの表面に結合された分析物の量に比例する、Au NPレポーターの可変性の
197Auシグナル強度をもたらした。MCは各マイクロビーズ中の異なる重金属同位体の量を定量化するので、マイクロビーズのプールは、各ビーズセットに対するNPレポーターの
197Auシグナル強度中央値を有する個別のビーズセットへと分離され得る。この特徴のために、多くのアッセイが、同時に実施され得、1回の測定で複数の分析物の多重定量化を可能にする。加えて、試料中の分析物の濃度は、内部標準からの外挿により決定され得る。
【0232】
分散重合による金属コード化された分類子ビーズの合成
合成を、0または約1000(±20%)カウント/ビーズの強度レベルを有する5種のタイプのランタニド金属イオン(La3+、Pr3+、Tb3+、Ho3+、およびTm3+)の組み込みを変化させることによる32タイプ(25=32)の2元コード化される分類子マイクロビーズについて想定した。加えて、Ce3+イオンを、類似のレベルでそれぞれのビーズ中に組み込むことができる。セリウム同位体140Ceおよび142Ceは、MC結果の分類子シグナルのゲーティングの便宜のためのマイクロビーズ識別子として機能し得る。示したように、ビーズ系アッセイのための一連の11種の2元金属コード化された3μmポリスチレン(PS)マイクロビーズを、本明細書の実施例4で記載のビーズ合成プロトコルに従い一連の2段階分散重合(DisP)により合成した。
【0233】
ビーズ合成およびキャラクタリゼーションを、実施例10で記載する。ビーズ試料C-1(表6参照)の走査電子顕微鏡像を、
図22のパネル(a)に示す。それは、これらのマイクロビーズが均一であり、3.0μmの平均直径および1%のCVを有することを示す。コード化された同位体のMCシグナルの強度レベル中央値は、1000~1200カウント/ビーズの範囲であった。表は、調製されたビーズ、それらの平均直径(およびCV値)ならびにMC検出での標識パターンおよびシグナル強度の要約を提供する。これらの11タイプのマイクロビーズは、均一(CV 約1%)であり、2.8~3.0μmの範囲の平均直径を有する小さいサイズを共有する。抗体結合のために、ビーズを、抗体でコートし、それぞれの分類子ビーズに付着されたAbを、表に列挙する。
【表6】
【0234】
加えて、これらのマイクロビーズ中の組み込まれた金属イオンは、800~1200カウント/ビーズの類似の強度レベルでMCシグナルを生成した。全てのマイクロビーズ(C1~C11)はMCで類似のレベルでCeシグナルを生成するCe
3+を保持したので、全てのビーズの混合物を、一回のMC測定で分析し、
140Ce-
142Ceドットプロットから1つのゲーティングで11タイプのマイクロビーズのシングレットを分離した。
図17(b-k)でのドットプロットは、金属コード化のそれらのシグネチャーシグナルに基づき各タイプの分類子マイクロビーズを個別に特定するゲーティング方策を示す。このセットの分類子ビーズ中のマイクロビーズは類似のレベルでMCシグナル強度を有し均一であったので、ゲーティングテンプレートを、マルチプレックスアッセイのデータ解析過程を単純化するために、このマイクロビーズゲーティング方策に基づきFlowJoソフトウェアで作成した。
【0235】
ビーズ系サンドイッチ免疫アッセイ条件の初期最適化
多重化サンドイッチ免疫アッセイ法で使用される試薬および条件を試験しおよび最適化するために、これらの免疫アッセイを用いて、標準溶液として既知のサイトカイン濃度を有する一連の溶液中のサイトカインレベルを測定した。分析結果に対する異なるアッセイ試薬および条件の影響を、これらの測定値からの検量線を調べることにより評価した。アッセイ開発の第一段階で、標準溶液の一連の4プレックスアッセイを用いて、商業的に入手できるストレプトアビジンがコンジュゲートされたナノサイズAuレポーターであった、候補レポーターを試験し、アッセイ中のレポーター濃度を最適化した。アッセイをその後、アッセイ性能に対する検出Ab濃度の影響を調査するために、9プレックスアッセイに拡張した。
【0236】
代表的実験では、標準溶液を、0.5%のBSA緩衝液(PBS中の0.5%BSA)で希釈することにより、既知の濃度の標的サイトカインを含む一連の溶液を調製した。これらの標準溶液(50μL)のそれぞれを、フィルタープレート中で、Ab修飾分類子ビーズ(50μL)と混合した。インキュベーションの間、アッセイ中のAb修飾分類子ビーズに、試料中のそれらの標的分析物を捕捉させた。1時間のインキュベーション後に、これらの分類子ビーズを、濾過により洗浄して、試料中の非結合分子を除去した。ビオチン化検出Ab(100μL)のカクテルを次に、アッセイに加え、続いて分類子ビーズを再分散させた。このステップでは、カクテル中のビオチン化Abは、分類子ビーズ表面上に捕捉された検体分子を認識できる。アッセイ中のこれらの分類子ビーズをその後、フィルター上で洗浄して、非結合検出Abを除去した。次に、ストレプトアビジン結合Au質量タグ分散液(100μL)を、レポーターとしてアッセイに適用した。これらの質量タグは、ストレプトアビジン-ビオチン相互作用により、分類子ビーズ上のビオチン化検出Abに付着できた
47。非結合レポーター粒子を洗い流した後に、アッセイ試料を、個別のマイクロビーズイベントにおける金属含量についてMCにより検査した。このビーズ系サンドイッチ免疫アッセイ法の代表的設計を、
図16に示す。
【0237】
シグナル取得後、分析結果を、それらのドットプロットダイアグラムによりFlowJoソフトウェアで解析した。
図17は、この試験で採用されたゲーティング方策を示す。全ての分類子ビーズのシングレットイベントを、
図17のパネル(a)で最初に分離した。ゲーテッドシングレットイベント中の各分類子ビーズをその後、
図17のパネル(b-k)に示されるドットプロットダイアグラムの一連のゲーティングステップを介して個別に特定した。各分類子イベント中の
197Auシグナルをその後、検査し、アッセイシグナルとして報告した。
【0238】
レポーターの選択。分類子ビーズ上の分析物結合を報告するための適切な金属標識質量タグを見つけるために、2種のタイプの商業的に入手できるストレプトアビジン-コンジュゲートレポーター:小さい直径の金クラスター(NanoGold(登録商標)、d≒1.4nm)および幾分より大きな直径の金ナノ粒子(AuNP、d≒10nm)を、調査した。これらを、12種の濃度の4種の分析物からなる標準溶液を分析する一連の4プレックスアッセイでレポーターとして採用した。
【0239】
図18に示されるヒストグラムは、4プレックスアッセイでのIL-4-分類子上のレポーターのシグナル強度を示す。AuNPを、
図18(a-c)に示されるアッセイでのレポーターとして採用した。少数の陽性
197Auシグナルが、ブランク対照溶液中にIL-4が存在しなかった
図18(a)で記録された。このプロットでの全てのイベントの中央値を、分類子ビーズに対するレポーターNPの非特異的結合を反映するために、バックグラウンドノイズ対照として報告した。IL-4分類子ビーズ上の
197Auシグナルの強度ピークは、IL-4濃度が1.2から20pg/mLに増大したので、
図18のパネル(b)および(c)で高磁場にシフトした。1.2pg/mLで、ビーズ当りほぼ0カウントの
197Auシグナル強度を有するいくつかのイベントが、
図18(b)に記録された。これらの「0」イベントは、シグナル取得過程中のアーチファクトによる、またはMC検出限界未満であった小数のレポーターを保持するいくつかの分類子ビーズによる測定器ノイズであり得る。不確実性を取り除きかつデータ分析過程を単純化するために、陽性試料中の陽性イベント(レポーターシグナル強度>1カウント/ビーズ)の強度中央値を、この試験で報告しプロットした。
【0240】
図18のパネル(d)、(e)、および(f)に示されるヒストグラムでは、NanoGold(登録商標)をレポーターとして採用して、それぞれ、0、1.2、および20pg/mLの濃度のIL-4を含む標準溶液を分析した。IL-4分類子ビーズ上のNanoGold(登録商標)の
197Auに対するレポーターシグナルの遙かに弱い強度が、AuNPをレポーターとして用いた分析の結果に比べて、観察された。約0のシグナル強度を有するさらに多くのくイベントが、
図18のパネル(b)に比べて、パネル(e)で示されるヒストグラムにおいて示された。
【0241】
ビーズ系アッセイの典型的なlog-log検量線は、分析物濃度が低い場合、低く、平坦な領域で始まる。曲線はその後、分析物濃度の増大と共に上昇し、より高い濃度でのプラトーが続く41、43、48。この実施例では、アッセイの検出範囲を、検量線の傾斜領域に基づき推定した。この傾斜内で、分析物濃度は通常、測定可能である。
【0242】
図19は、異なる分析物濃度で分類子ビーズに付着された異なるタイプのNPのMCシグナル強度中央値の要約である。低い濃度領域(最大約1pg/mL)では、両タイプのレポーターのシグナル強度は、低く(約10カウント/ビーズ)、分析物濃度の増大に対し非感受性であった。1~1000pg/mLの範囲の、より高い分析物濃度では、これらのレポーターのシグナル強度は、分析物濃度の増大と共に顕著に高くなった。AuNPのシグナル強度は、分析物の濃度が1000pg/mLを超えるとプラトーに近づき、一方でレポーターとしてNanoGold(登録商標)を用いるアッセイの曲線は、類似の傾向を示したが、レポーターとしてAuNPを用いた場合と比較して、遙かに低い強度であった。遙かにより高い強度がこれらのアッセイにおいてより低い分析物濃度で得られたので、AuNPを、検出下限を最適化するためのこの試験における次のビーズ系アッセイのためのレポーター候補として選択した。
【0243】
レポーター濃度の最適化。アッセイシグナル強度レベルに対するNP濃度の影響を次に、調査した。この試験では、ストックAuNP分散液を、0.5%BSA緩衝液で200、400および800倍に希釈した。これらの希釈液をその後、3セットの4プレックスアッセイで、レポーター溶液として用いて、標準溶液を分析した。
図23は、異なるAuNP濃度下で実施された4プレックスアッセイの検量線を示す。全ての3種の希釈でのAuNPのシグナル強度は、20pg/mLを超える分析物濃度で最小限の差異を示した。200x希釈AuNP分散液で染色されたアッセイの検出限界は、IL-4、IL-6およびTNFαの場合、0.3pg/mL程度に低かったが、IFNγの検出限界は、1.2pg/mLでわずかにより高かった。200xAuNP希釈を、この試験でのビーズ系アッセイに使用するために選択した。
【0244】
検出Ab濃度の最適化(9プレックスアッセイにおける)。概念実証実験として一連の4プレックスアッセイを使用した後で、アッセイの多重化能力を、パネルにIL-1β、IL-10、IL-18、CD163、およびCXCL-9の分析を追加することにより、9種の分析物に拡張した。4プレックスアッセイで開発された実験条件を、9種の分析物を含む一連の標準溶液の分析に適合した。第1のセットの9プレックスアッセイでは、検出Abカクテル中の各タイプのビオチン化Abの濃度は、2.5μg/mLであった。結果を、
図20で塗りつぶした円(●)としてプロットする。低い分析物濃度(≦1.22pg/mL)での全てのタイプの分類子ビーズ上のAuNPシグナルの強度中央値レベルは、4プレックスアッセイに比べて、より高い(約100カウント/ビーズ)ことが観察された。理論に束縛されることを意図するものではないが、低い分析物濃度でのこれらの相対的により高いレベルのシグナル強度は、おそらく非特異的結合の結果と思われる、アッセイ中のバックグラウンドノイズが原因であろう。
【0245】
9プレックスアッセイでの非特異的結合を最小化するために、3セットの9プレックスアッセイを実施し、このアッセイでは、ビオチン化抗CD163および抗CXCL-9の濃度を、2.0、1.0および0.5μg/mLに低減し、一方で他の検出Abの濃度を、検出Abカクテル中で2.5μg/mLにて維持した。検出抗CD163および抗CXCL-9の濃度を、これらのアッセイでは低減した。それは一部には、高いAb濃度でのCXCL-9およびCD163に対する検出Abのインターロイキン(IL)との起こり得る交差反応性および干渉が、より多くの非特異的結合をもたし得るからである。これらの9プレックスアッセイの検量線を、
図20でプロットした。低い濃度(≦1.22pg/mL)の分析物を含む標準溶液のアッセイの場合、低い濃度(0.5および1.0μg/mL)のビオチン化抗CD163および抗CXCL-9 Abを用いたアッセイでのシグナル強度中央値は、より高い濃度(2.0および2.5μg/mL)の検出Abを用いて得た値より有意に低かった。高い分析物濃度(≧1250pg/mL)の標準溶液のアッセイでは、シグナル強度レベルおよびアッセイ感度は、全ての実験条件下で類似であった。全体として、低分析物濃度での検出感度および分析物に対する検出範囲は、検出Abカクテル中のビオチン化抗CD163および抗CXCL-9の濃度が0.5および1.0μg/mLに低減された場合、改善された。
図24に示すように、ブランク溶液のこれらの9プレックスアッセイでのバックグラウンドノイズもまた、ビオチン化抗CD163および抗CXCL-9 Abの濃度が2.0から0.5μg/mLに低減されると、大幅に低減された。これらの結果に基づき、分類子ビーズへのビオチン化抗CD163および抗CXCL-9の非特異的結合は、アッセイでのそれらの検出Ab濃度を減らすことにより、最小化できるようである。
【0246】
生体試料中のサイトカインのビーズ系サンドイッチ免疫アッセイ法
生体試料に対する9プレックスアッセイの性能を調査するために、市販のPBMC試料(健康なドナーからの)を使用した。細胞培養培地(RPMI)中に懸濁されたPBMCの1種の試料を、PMA/イオノマイシンで刺激し、上記の最適化されたアッセイ条件を用いて9プレックスアッセイにより刺激されたPBMC懸濁液の上清中のサイトカインの細胞外放出について分析した。PMAは、ジアシルグリセロールに類似の構造を有し、細胞膜を通って細胞質中に拡散できる。細胞質中で、PMAは、プロテインキナーゼCを活性化する。カルシウム放出を誘発するカルシウムイオノフォアであるイオノマイシンと組み合わせて使用されると、中程度のレベルのサイトカインが、細胞から放出される。非刺激試料を、非刺激PBMC懸濁液の上清から収集し、この実験での対照として分析した。アッセイの前に、刺激された試料および刺激されない試料を、アッセイのいくつかが検量線の範囲内のMC強度値を生成するように、測定中の分析物濃度を変えるためにアッセイにおける2x、4x、16x、64xおよび256xに希釈した。これらのアッセイで分類子ビーズに付着されたAuNPの
197Auシグナル強度中央値を、
図21に示す。典型的アッセイでは、希釈なし、または1:2、1:8、1:32または1:128の比率で希釈した試料溶液(50μL)を、分類子分散液(50μL)に加えた。このアッセイにおける抗CD163および抗CXCL-9の検出Ab濃度は、0.5μg/mLおよび1.0μg/mLであり、一方で他の検出Abの濃度は、カクテル中で2.5μg/mLであった。刺激されない試料からのシグナルよりも大幅により高い
197Auシグナルが、全ての希釈度で刺激された試料のアッセイにおいてIL-4、IFNγおよびTNFα分類子ビーズから検出された。この結果は、刺激過程はPBMCによるIL-4、IFNγおよびTNFαの放出の上昇をもたらし得るという事実と一致し、およびAiら
18により報告された、類似の過程により刺激された使用に関する知見と概ね一致する。
【0247】
同じアッセイ条件を用いて、既知の濃度を有する9種の標的サイトカインを含む一連の標準溶液を測定した。一連の検量線をその後、4パラメーターロジスティック回帰分析(4P-LR)モデルを用いて標準溶液のアッセイ結果をフィットさせることにより作成した(
図25参照)。これらの検量線を使用して、刺激されないおよび刺激された試料中のこれらのサイトカインの濃度を評価した。しかし、
図21のいくつかのアッセイ結果は、
図25で示された検量線の最小値より小さかった。従って、濃度は、これらの値から導かれなかった。
図26は、
図21に示された分析結果を
図25で示された検量線にフィットさせることによるサイトカイン濃度の予備的知見を要約する。希釈因子が
図26に示されたサイトカイン濃度の計算で考慮されたので、理論的には、測定された同じ試料に対する類似の濃度値が、異なる希釈から観察されなければならない。刺激された試料中のIL-4濃度の測定の場合、1:1、1:2、1:8、1:32および1:128の比率で希釈された試料は、それぞれ、刺激試料のストック溶液中の600、430、460、640、および1110pg/mLのIL-4濃度を報告し、一方で刺激されない試料の場合、いずれのアッセイも、おそらく刺激されない試料中の低いIL-4濃度により、IL-4濃度を評価するための十分なシグナル強度を生成できなかった。刺激された試料中のIFNγ濃度の測定の場合、異なる稀釈度でのアッセイは全て、極めて高いシグナル強度を報告し、これは、ほとんどの濃縮標準溶液の強度より高かった。
【0248】
結論
一連の11種のタイプのランタニドコード化されたマイクロビーズが、2段階DisPにより合成された。これらのマイクロビーズ中の6種の金属の金属含量は、約1000カウント/ビーズの強度中央値を有するMCシグナルを生成するマイクロビーズを作製するために、DisPの第2段階において金属錯体の供給量を変えることにより精密に制御された。これらのマイクロビーズは、サイズ(CV直径<2%)および金属含量(RCV<15%)において均一であり、これが、それらをビーズ系アッセイにおける分類子ビーズ用の良好な候補にする。
【0249】
MCによるこのビーズ系アッセイで、サイトカインレベルが、分析された。MCでのサイトカインおよびケモカインの多重化ビーズ系サンドイッチ免疫アッセイ法を開発するために、金属コード化されたマイクロビーズの表面は、種々のタイプのAbで修飾され、標的分析物を捕捉するために分類子ビーズとして採用された。レポーターシステムを開発し、かつアッセイ条件を最適化するために、一連のビーズ系アッセイが最初に実施されて、既知の分析物濃度を有する最大で9タイプのサイトカインおよびケモカインを含む一連の標準溶液を分析した。この実験では、レポーターNPのMCシグナル強度は、標準溶液の濃度差異に応答した。これらのアッセイは、低い分析物濃度で高感度を示した。しかし、いくつかの検出Abの非特異的結合が、バックグラウンドノイズ問題の増大をもたらした。バックグラウンドノイズは、これらのアッセイの検出限界を損なう可能性がある。さらに、2種のPBMC試料の上清が、サイトカインおよびケモカインのためにこの調査で開発された9プレックスアッセイにより分析された。分析結果は、PMA/イオノマイシン刺激試料の上清が、非刺激試料に比べて高レベルのIL-4、IFNγおよびTNFαを含むことを示した。この知見は、他のアッセイにより測定された文献で報告されたサイトカイン検出に関する結果と概ね一致した。この調査で示された結果は、MCによるビーズ系サンドイッチ免疫アッセイ法が異なる分析物の同時検出に使用できることを示す。
【0250】
実施例10 実施例9の追加の実験の詳細および考察
材料
スチレン(St、Sigma-Aldrich、≧99%)、ポリビニルピロリドン(PVP、Mw 約55kDa)、2,2-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(AIBN、98%)、トリトンX305(TX305、70%水溶液)、ジエチレントリアミン五酢酸二無水物(DTPA酸二無水物、98%)、ホルボール 12-ミリステート 13-アセテート(PMA)、イオノマイシン、過酸化水素溶液(H2O2、H2O中30%)、硫酸(微量金属グレード)、ならびにランタン(III)クロリド・七水和物(LaCl3・7H2O)、セリウム(III)クロリド・七水和物(CeCl3・7H2O、)、酢酸プラセオジム(III)水和物(Pr(OAc)3・xH2O)、テルビウム(III)クロリド・六水和物(TbCl3・6H2O)、ホルミウム(III)クロリド・六水和物(HoCl3・6H2O)およびツリウム(III)クロリド・六水和物(TmCl3・6H2O)を含む純度≧99.99%の金属塩(微量金属基準)を、Millipore-Sigmaから購入した。4-ビニルベンジルアミン(VBA、≧92%)を、TCI Americaから購入した。無水エタノール(EtOH)を、市販のアルコール(Mississauga,Ontario)から製造した。誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)較正用の単一元素標準溶液を、PerkinElmer(Pure Plus)から購入した。
【0251】
金属コード化された分類子ビーズの調製
DTPAビスビニルベンジルアミド(DTPA-VBAm2)の金属錯体を、異なるタイプの金属イオンをポリスチレン(PS)マイクロビーズ中に組み込むためのキレート化剤として採用した。重合可能なDTPA-VBAm2金属キレート剤の合成および金属ロード手順を、実施例4に記載する。La、Ce、Pr、TbおよびTmをマイクロビーズ中にコード化するためにLa(DTPA-VBAm2)、Ce(DTPA-VBAm2)、Pr(DTPA-VBAm2)、Tb(DTPA-VBAm2)およびTm(DTPA-VBAm2)を、DTPA-VBAm2をそれぞれ、LaCl3、CeCl3、Pr(OAc)3、TbCl3およびTmCl3と混合することにより水溶液中で調製した。これらの金属錯体を、1H NMRにより特徴付けた。
【0252】
ビーズ系アッセイのための分類子ビーズとしてのマイクロビーズを、表7に記載されるように一連の2段階分散重合(DisP)により合成した。典型的ビーズ合成では、無水エタノール(18.75g)中のスチレン(6.25g)の重合の第1段階を、安定剤としてのPVP(1g)およびTX305(0.35g)の存在下で70℃のAIBN(0.25g)により開始した。反応を、ガス質量制御装置(OMEGA)により制御されたN2パージ(3mL/分)で保護した。反応の開始の2時間後に、異なるタイプのDTPA-VBAm2の金属錯体を含む暖かいエタノールの一定分量(15g)を、DisP反応系に加えて、マイクロビーズ中に金属イオンを組み込んだ。第2段階の一定分量中のM(DTPA-VBAm2)の供給量を、MCにおいて設計されたレベルのシグナル強度を生成する金属イオンでコード化されたマイクロビーズを生成するように最適化した(表8参照)。反応を、開始の24時間後に、停止し、室温に冷却した。反応分散液中のマイクロビーズを、無水エタノールによる2回のおよび水による4回の沈降-再分散サイクルにより精製した。精製されたマイクロビーズの分散液を、走査電子顕微鏡(SEM)イメージング、MC測定およびさらなる表面修飾のために使用した。
【0253】
マイクロビーズの直径および直径分布を、日立S-5200顕微鏡を用いて、それらのSEM像から特徴付けた。典型的には、2μLの希釈したビーズ分散液を、300メッシュのホルムバール/炭素コート銅グリッド上に滴下し、乾燥させた。マイクロビーズの直径を、複数SEM像からImageJソフトウェアを用いてマニュアルで測定した。平均直径、標準偏差(SD)および変動係数(CV)を、少なくとも300個の測定に基づき計算した。
【0254】
最初の2回の試行において、合成混合物への金属錯体の供給量を、目的の範囲の強度を有するMCシグナルを生成できるマイクロビーズを得るために調査した。これらのマイクロビーズを、試行1および試行2として表す。試行実験で開発された供給量配合に基づき、分類子ビーズとして11種の試料を次に調製した。これらの分類子ビーズを、それぞれ、C-1、C-2、・・・C-11として表し、表に列挙する。
【0255】
マイクロビーズの酸消化
DisPの停止後に、一定分量のC-1反応分散液を、250℃でH2SO4/H2O2を用いて消化し、反応系中の総金属含量について誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)により分析した。反応分散液中のマイクロビーズの消化のために、マイクロビーズ分散液(100μL、0.5~2%固体含量)および500μlの硫酸を、20mLのグラスバイアル中で混合し、ホットプレート上で250℃に加熱し、磁気撹拌しながら40分間保持し、続いて30%のH2O2溶液(50μL)を添加した。ICP-MS分析のために、消化溶液をその後、2%HNO3で希釈した。反応分散液中の遊離金属含量を定量するために、反応ストック分散液を、シリンジフィルター(0.2μm、ナイロン)を通して濾過して、マイクロビーズを除去し、ICP-MS分析のために濾液を収集した。C-1反応中の金属組み込み効率を、実施例4で上記したように、反応混合物中の総金属含量を遊離金属含量と比較することにより推定した。
【0256】
計測装置
誘導結合プラズマ-質量分析(ICP-MS)。試料中の金属含量を定量するために、ICP-MS(iCAP-Q、Thermo Scientific)システムを、用いた。2%HNO3を用いて、校正溶液として40、20、10、1および0.1ppbの一連の濃度に元素標準溶液を系列希釈した。各溶液試料中の金属含量を、10ppt未満の検出限界を有する較正フィッティング曲線に基づき決定した。
【0257】
追加の結果および考察
分散重合による金属コード化された分類子ビーズの合成
この調査では、金属コード化されたマイクロビーズを、重合可能な金属錯体、M(DTPA-VBAm2)を用いて金属イオンをPSマイクロビーズ中に組み込むために、2段階DisPにより調製した。DTPA-VBAm2キレート化剤の合成を、無水DMSO中で、DTPA二無水物を4-ビニルベンジルアミンと反応させることにより実施した。La3+、Ce3+、Pr3+、Tb3+、Ho3+およびTm3+を、pH5~6の水溶液中でDTPA-VBAm2キレート化剤にロードした。これらの合成の生成物を、1H-NMRにより特徴付けた。キレート化剤合成および金属ロード手順の詳細を、実施例4に記載する。
【0258】
分類子ビーズ合成のための配合を開発するために、ステップは、第2段階の一定分量中のM(DTPA-VBAm2)の供給量を最適化して、これらの同位体チャネルのそれぞれについて800~1000カウント/ビーズの強度レベルを有する、MCにおいて139La、140Ce、141Pr、159Tb、165Hoおよび169Tmのシグナルを生成するマイクロビーズを調製することであった。本明細書の実施例4で考察された金属供給量と金属含量の間の直線関係に基づき、いくつかの試行合成を実施して、6種の金属錯体の供給量を設計した。試行実験で開発された供給量配合に基づき、C-1試料を、6種のタイプの金属イオンでコード化された一連の分類子ビーズとして調製した。
【0259】
加えて、C-1ビーズ中への金属イオンの金属組み込み効率を、ICP-MSにより評価した。
図22のパネル(b)に示される結果は、6種のタイプ全ての金属イオンが、63~74%の範囲の効率で効率的に組み込まれたことを示す。各金属の組み込み効率を、合成後の金属含量を反応系中の総金属含量と比較することにより評価した。効率のわずかな増大が、より大きなイオン半径を有するランタニド金属イオンについて観察され、これは、上の実施例4で記載された知見と一致する。全体として、C-1ビーズは、候補分類子ビーズとして適切である。
【0260】
DisPにより調製されたマイクロビーズのサイズは、おそらく反応条件に対する粒子核生成の感度に起因して、バッチ間で変動する。小さいバッチ毎の粒径変動を有するマイクロビーズを最適化しおよび調製するために、いくつかの制御因子を、実験条件において調査し、粒径の再現性は、N2パージおよび反応加熱の手順をバッチ間で一定に保持することにより改善できることを見出した。表6に要約されるように、均一(CV<2%)であり、かつ2.8~3.0μmの範囲の平均直径を有する小さいサイズを共有する11種のタイプのマイクロビーズ(C-1~C-11)を、調製した。
【0261】
配合の最適化後に、追加のタイプの分類子ビーズを、C-1合成のために開発した金属錯体の供給量を採用して調製した。第1セットの試料C-2~C-6では、2種のタイプの金属イオン、Ce(DTPA-VBAm
2)+第2のタイプの金属錯体を、ビーズ合成において加えた。これらの二金属ビーズ合成での各金属錯体の量は、C-1ビーズの合成の場合と同じであった。同じ原理をその後、いくつかの三金属コード化されたマイクロビーズ(C-7~C11)にもまた適用した。
【表7】
【表8】
【0262】
本開示は、現時点で好ましい実施例であると考えられるものを基準にして記載されているが、本開示は、開示される実施例に限定されるものではないことを理解されたい。むしろ、本開示は、添付の特許請求の範囲の趣旨と範囲内でさまざまな修正および等価の組み合わせ方を包含すると意図される。
全ての出版物、特許および特許出願は、あたかも、それぞれ個別の出版物、特許または特許出願が具体的に、また、個別に参照によってその全体が本明細書に組み込まれることが示されるのと同程度にその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。特に、例えば、表または別の場所で提供される受入番号および/またはバイオマーカー配列(例えば、タンパク質および/または核酸)を含む本明細書で提供される各受入番号に関連する配列は、その全体が参照により組み込まれる。
特許請求の範囲は、好ましい実施形態および実施例により限定されるべきではなく、全体としての記載と一致する最も広い解釈を与えられるべきである。
【0263】
【国際調査報告】