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特表2024-511746電力発生システムのための中間電力貯蔵体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】電力発生システムのための中間電力貯蔵体
(51)【国際特許分類】
   H02J 15/00 20060101AFI20240308BHJP
   F03G 6/00 20060101ALI20240308BHJP
   F03G 4/00 20060101ALI20240308BHJP
   B01D 61/00 20060101ALI20240308BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20240308BHJP
   B01D 61/06 20060101ALI20240308BHJP
   B01D 61/12 20060101ALI20240308BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
H02J15/00 Z
F03G6/00
F03G4/00
B01D61/00 500
B01D61/02
B01D61/06
B01D61/12
H02J7/34 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555783
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 EP2022057377
(87)【国際公開番号】W WO2022200288
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】102021107575.0
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520345184
【氏名又は名称】テクニシエ ユニベルシテイト ダルムシュタット
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファラハ、アロバイド
(72)【発明者】
【氏名】コシュヴィッツ、パスカル
(72)【発明者】
【氏名】イープル、ベルント
【テーマコード(参考)】
4D006
5G503
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA14
4D006JA53Z
4D006JA55Z
4D006JA67Z
4D006KA14
4D006PA10
4D006PB12
4D006PC80
5G503AA06
5G503AA07
5G503BA07
5G503DA04
(57)【要約】
本発明は、浸透デバイス110と、透過液貯蔵体120と、濃縮液貯蔵体130と、制御デバイス140とを備える、少なくとも1つの電力発生システム50のための中間電力貯蔵体に関係する。浸透デバイス110は、充電動作において、充電圧力P1を伴う液体混合物10を透過液20及び濃縮液30へと分離するように、又は、放電動作において、液体混合物10に浸透圧を与えながら透過液20を濃縮液30と混合するように設計される。透過液貯蔵体120は、浸透デバイス110に流体的に接続され、透過液20を貯蔵するように設計される。濃縮液貯蔵体130は、浸透デバイス110に流体的に接続され、濃縮液30を貯蔵するように設計される。制御デバイス140は、後に続く機能:少なくとも1つの電力発生システム50からの電気電力を使用する充電動作、又は、電気電力を提供しながらの放電動作を制御するように設計される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間変動エネルギー源からの少なくとも1つの電力発生プラント(50)のためのエネルギー・バッファであって、
負荷付与プロセスにおいて、負荷付与圧力(P1)を伴う混合液体(10)を透過液(20)及び濃縮液(30)へと分離すること、又は、
負荷除去プロセスにおいて、前記混合液体(10)を形成するために、浸透圧を提供しながら前記透過液(20)を前記濃縮液(30)と混合すること
のために構成される浸透デバイス(110)と、
前記浸透デバイス(110)と流体的に連通し、前記透過液(20)を貯蔵するように構成される透過液貯留体(120)と、
前記浸透デバイス(110)と流体的に連通し、前記濃縮液(30)を貯蔵するように構成される濃縮液貯留体(130)と、
後に続く機能:
前記少なくとも1つの電力発生プラント(50)からのエネルギーの利用を伴う前記負荷付与プロセス、又は、
電気エネルギーを提供しながらの前記負荷除去プロセス
を制御するように構成される制御デバイス(140)と
を含む、エネルギー・バッファ。
【請求項2】
前記浸透デバイス(110)の前記負荷付与圧力(P1)を発生させるために、前記濃縮液(30)についての前記浸透デバイス(110)の出口圧力(P2)を部分的に利用するように構成される圧力交換器(150)
をさらに備える、請求項1に記載のエネルギー・バッファ。
【請求項3】
前記濃縮液貯留体(130)は、前記透過液(20)の静水圧を前記濃縮液(30)の静水圧よりも低く維持するために、前記透過液貯留体(120)よりも上に配置構成される、請求項1又は2に記載のエネルギー・バッファ。
【請求項4】
後に続くもの:
前記圧力交換器(150)を通る前記混合液体(12)をポンプ作用で押し出すように、及び、前記負荷付与プロセス中、前記混合液体(12)についての前記浸透デバイス(110)における前記負荷付与圧力(P1)を、前記浸透圧よりも上のあらかじめ決定された値に至らせるように構成される第1のポンプ(161)、
前記負荷除去プロセス中、前記濃縮液(30)を前記濃縮液貯留体(130)から前記浸透デバイス(110)に、あらかじめ決定された濃縮液圧力(P4)において送るように構成される第2のポンプ(162)、
前記圧力交換器(150)を迂回する前記混合液体(11)をポンプ作用で押し出すように、及び、前記負荷付与プロセス中、前記混合液体(11)についての前記浸透デバイス(110)における前記負荷付与圧力(P1)を、前記浸透圧よりも上のあらかじめ決定された値に至らせるように構成される第3のポンプ(163)、
後に続く流れ:混合液体(10、11、12)の流れ、透過液(20)の流れ、濃縮液(30)の流れのうちの1つ又は複数を制御するように構成される複数の弁ユニット(170)、
閉じられた液体回路を可能にするための、前記混合液体(10)のための貯留体(180)
のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項2又は3に記載のエネルギー・バッファ。
【請求項5】
前記制御デバイス(140)は、後に続く機能:
電気エネルギーの過剰を指示する負荷付与信号に応答して、前記負荷付与プロセスを開始すること、
電気エネルギーの不足を指示する負荷除去信号に応答して、前記負荷除去プロセスを開始すること、
あらかじめ決定された前記負荷付与圧力(P1)、及び/又は、前記あらかじめ決定された濃縮液圧力(P4)を達成するように、前記第1のポンプ(161)、及び/又は前記第2のポンプ(162)、及び/又は前記第3のポンプ(163)、及び/又は前記弁ユニット(170)を作動させることであって、前記負荷除去プロセス中の前記あらかじめ決定された濃縮液圧力(P4)は、前記浸透圧以下である、又は、浸透圧の半分に等しい、作動させること
のうちの少なくとも1つを制御するようにさらに構成される、請求項4に記載のエネルギー・バッファ。
【請求項6】
前記浸透デバイス(110)は、少なくとも3%、又は、少なくとも5%の濃度における前記混合液体(10)を、前記透過液(20)及び前記濃縮液(30)へと分離するように構成される膜(115)を備える、請求項1から5までのいずれかに記載のエネルギー・バッファ。
【請求項7】
前記膜(115)は、少なくとも10%の、又は、少なくとも20%の前記濃縮液(30)の濃度による動作を可能とするように構成される、請求項6に記載のエネルギー・バッファ。
【請求項8】
前記混合液体(10)は、純粋な塩溶液であり、前記エネルギー・バッファは、環境との質量移行を伴わない閉じられたシステムである、請求項1から7までのいずれかに記載のエネルギー・バッファ。
【請求項9】
時間変動エネルギー源からの電力発生プラント(50)であって、
請求項1から8までのいずれかに記載のエネルギー・バッファ
を備える、風力電力プラント、又は太陽光発電電力プラント、又は水力電気電力プラント、又は地熱電力プラント、又は、前記風力電力プラント、前記太陽光発電電力プラント、前記水力電気電力プラント、及び前記地熱電力プラントの組み合わせである、電力発生プラント(50)。
【請求項10】
前記エネルギー・バッファは、
機械的揚水貯蔵との浸透エネルギー貯蔵の組み合わせとしてのハイブリッド・エネルギー貯蔵を達成するための、
前記透過液貯留体(120)が、風力タービンの塔において、又は、太陽光発電システムを伴う家屋において、前記濃縮液貯留体(130)よりも下に場所を定められ、
前記混合液体(10)のための前記貯留体(180)が、地表面若しくは水表面よりも上に、地表面若しくは水表面上に、又は、地表面若しくは水表面よりも下に配置構成される、
ハイブリッド貯蔵デバイスである、請求項9に記載の電力発生プラント(50)。
【請求項11】
電気電力発生のために、前記浸透デバイス(110)により発生させられる前記混合液体(10)の前記浸透圧を利用するように構成される少なくとも1つのタービン(200)をさらに備える、請求項9又は10に記載の電力発生プラント(50)。
【請求項12】
前記制御デバイス(140)は、制御信号を受信し、前記制御信号に基づいて、前記負荷付与プロセス又は前記負荷除去プロセスを開始するようにさらに構成され、前記制御信号は、後に続くもの:
エネルギー欠乏、とりわけ、風欠乏又は日光欠乏の期間、
エネルギー余剰、とりわけ、風余剰又は日光余剰の局面、
電力システムにおける電力供給の不足の局面、
電力グリッドにおける過剰電力供給の局面
のうちの1つを指示する、請求項5に戻って参照されるときの、請求項9から11までのいずれか一項に記載の電力発生プラント(50)。
【請求項13】
時間変動エネルギー源からの少なくとも1つの電力発生プラント(50)のためにエネルギーをバッファリングする方法であって、
負荷付与圧力(P1)を伴う混合液体(10)が、逆浸透により透過液(20)及び濃縮液(30)へと分離される、負荷付与プロセスにおいて浸透デバイス(110)を動作させるステップ(S110)、
透過液貯留体(120)内に前記透過液(20)を貯蔵するステップ(S120)、
濃縮液貯留体(130)内に前記濃縮液(30)を貯蔵するステップ(S130)
を含み、
前記少なくとも1つの電力発生プラント(50)のエネルギーが利用される、方法。
【請求項14】
少なくとも1つの電力発生プラント(50)からの生産される電気エネルギーの欠乏について補償するための、又は、電力グリッドにおける電気の欠乏について補償するための方法であって、
透過液(20)及び濃縮液(30)が、混合液体(10)を形成するために正浸透により混合される、負荷除去プロセスにおいて浸透デバイス(110)を動作させるステップ(S210)、
前記浸透デバイス(110)からの前記混合液体(10)によってタービン(200)を駆動するステップ(S220)、
前記タービン(200)により駆動される発生機(210)により電気電力を発生させ提供するステップ(S230)
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギーをバッファリングするためのエネルギー・バッファ及び方法に、並びに、より詳しくは、風力電力プラントのための、又は、太陽光発電(photovoltaic)電力発生プラント、若しくは、時間変動形式のエネルギーからの他の電力発生プラントのための、ハイブリッド浸透揚水貯蔵システムに関係する。
【背景技術】
【0002】
将来において再生可能エネルギーから100%の電気及び熱を発生させることへの大いなる関心が存する。しかしながら、これらの形式のエネルギーは、場所及び時間の見地において揺動し、そのことは、エネルギー供給の平滑化を達成するために、エネルギー貯蔵システムの展開を促進し、必要なものとする。
【0003】
エネルギー貯蔵デバイスは、化学的、熱的、機械的、又は電気的と分類され得る。ハイブリッド・エネルギー貯蔵システムは、4つのカテゴリーのうちの2つ以上と分類され得る貯蔵システムである。大部分の貯蔵システムは、容量、再変換/貯蔵効率、経済的効率、取り出し及び注入時間、長期貯蔵としての適性、サイクル安定性、場所依存性、ライフタイム、重量測定及び体積測定貯蔵密度、並びに、ライフ・サイクル・アセスメントなどの貯蔵特性の見地における、利点及び不利点の両方を含む。
【0004】
蓄電池(再充電可能バッテリ)における最近の進歩にもかかわらず、そのような貯蔵システムの特異的なコストは、それらのシステムを、とりわけ、より長い貯蔵持続のために、小規模の用途に依然として制限する。熱的貯蔵システムは、ほとんど常に損失と関連付けられ、なぜならば、熱が発生させられると、その熱は、電気的仕事へと戻るように完全には変換され得ないからである。同じことは、化学的貯蔵システムについて真であり、なぜならば、化学反応は、さらには、少なくとも部分的に失われる熱を発生させるからである。
【0005】
それゆえに、代替的なエネルギー貯蔵システムについての、及びとりわけ、個々の概念の個別の不利点を回避するために異なる概念を組み合わせるハイブリッド・システムについての必要性が存する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題のうちの少なくとも一部は、請求項1に記載のエネルギー・バッファにより、並びに、請求項13及び14に記載の方法により克服される。従属請求項は、独立請求項の主題の有利なさらなる実施例に関係する。
【0007】
本発明は、時間変動エネルギー源からの少なくとも1つの電力発生プラントのためのエネルギー・バッファに関係する。エネルギー・バッファは、浸透デバイスと、透過液貯留体と、濃縮液貯留体と、制御デバイスとを含む。浸透デバイスは、負荷付与(loading)プロセスにおいて、負荷付与圧力を伴う混合液体を透過液及び濃縮液へと分離する、並びに/又は、負荷除去(unloading)プロセスにおいて、混合液体を形成するために、浸透圧を提供しながら透過液を濃縮液と混合するように構成される。透過液貯留体は、浸透デバイスと流体連通しており、透過液を貯蔵するように構成される。濃縮液貯留体は、浸透デバイスと流体的に連通しており、濃縮液を貯蔵するように構成される。制御デバイスは、後に続く機能:少なくとも1つの電力発生プラントからの電気エネルギーを利用する負荷付与プロセス、及び/又は、電気エネルギーを提供しながらの負荷除去プロセスを制御するように構成される。提供される浸透圧は、例えば、電気を発生させるために利用され得る。利用されるエネルギーは、さらには、電力グリッドから生まれることがある。
【0008】
実施例によれば、電力発生プラントは、風力電力プラント、又は太陽光発電プラント、又は水力電気プラント、又は地熱電力の熱的電力プラント、又は、それらの風力電力プラント、太陽光発電プラント、水力電気プラント、及び地熱電力の熱的電力プラントの組み合わせである。風力電力プラント及び太陽光発電プラントの組み合わせが、例えば、時間変動エネルギーにおける変動性を低減するために利用され得る。
【0009】
負荷付与プロセスにおいて、混合水(とりわけ塩水)が、例えば、貯留体から、負荷付与圧力において、浸透デバイスに、電力発生プラント(又は電力グリッド)のエネルギーを使用してポンプ作用で押し出され、その浸透デバイスは、次いで、逆浸透モードにおいて動作させられる。負荷除去プロセスにおいて、機器は、正浸透において動作させられ、混合された濃縮液及び透過液の浸透圧が、電力発生に対して提供される。
【0010】
任意選択で、エネルギー・バッファは、浸透デバイス充電(charging)圧力を発生させるために、濃縮液についての浸透デバイス出口圧力を部分的に利用するように構成される圧力交換器を含む。
【0011】
任意選択で、濃縮液貯留体は、透過液の静水圧を濃縮液の静水圧よりも低く保つために、透過液貯留体よりも上に配置構成される。そのことは、濃縮液貯留体が可能な限り高く場所を定められるならば有利であり、なぜならば、この手立てにおいて、高いエネルギー密度が含まれ得るものであり、又は、可能な限り多くの負荷圧力が、上へのポンプ作用での押し出しのために利用され得るからである。
【0012】
任意選択で、エネルギー・バッファは、後に続くもの:第1のポンプ、第2のポンプ、第3のポンプ、1つ又は複数の弁ユニット、貯留体のうちの少なくとも1つを含む。第1のポンプ及び/又は第3のポンプは、負荷付与プロセス中、混合液体浸透デバイスにおける負荷付与圧力を、浸透圧よりも上のあらかじめ決定された値に至らせるように構成される。第2のポンプは、負荷除去プロセス中、濃縮液を濃縮液貯留体から浸透デバイスに、あらかじめ決定された濃縮液圧力において送るように構成される。1つ又は複数の弁ユニットは、後に続く流れ:混合液体流れ、透過液流れ、濃縮液流れのうちの1つ又は複数を制御するように構成される。貯留体は、閉じられた液体ループをもたらすように、混合液体を貯蔵する。
【0013】
任意選択で、制御デバイスは、後に続く機能:
電気エネルギーの過剰を指示する負荷付与信号に応答して、負荷付与プロセスを開始すること、
電気エネルギーの不足を指示する負荷除去信号に応答して、負荷除去プロセスを開始すること、
あらかじめ決定されたブースト圧力、及び/又は、あらかじめ決定された濃縮液圧力を達成するように、第1のポンプ、及び/又は第2のポンプ、及び/又は第3のポンプ、及び/又は弁ユニットを作動させること
のうちの少なくとも1つを制御するようにさらに構成される。
【0014】
電気エネルギーの余剰/不足は、揺動する電力発生プラントそれ自体から、又は、他のプラントから、又は、電力グリッドから生まれ得るものであり、適切な信号(負荷信号、負荷除去又は放電(discharge)信号)の出力により制御される。特に、いくつかのエネルギー貯蔵ユニットが組み合わされ得る。目標は、1つ又は複数の電力発生プラントが、可能な限り一定に電気エネルギーを供給することである。
【0015】
負荷付与プロセス中、第1のポンプ及び/又は第3のポンプは、負荷付与圧力を発生させるように活動化され得る。負荷付与圧力は、濃縮液及び透過液の分離を達成するために、浸透圧よりも高くあるべきである。負荷除去プロセス中、正浸透に起因して、過圧が濃縮液側で確立され、その過圧は、浸透圧により規定され、例えば膜をまたいだ濃度差に依存する、少なからぬ値を含み得る。逆流を防止し、浸透デバイスを通る効果的な流体流れを達成するために、濃縮液圧力が最小値(例えば、負荷除去中の浸透圧の半分)を超過することが、有利であることが見いだされた。浸透圧は、本質的には、例えば、濃度、液体、含有物、温度からの物理化学的結果であるということが理解される。特定の条件に依存して、濃縮液圧力は、エネルギー供給の見地における最適化により決定され得る。
【0016】
浸透デバイスは、少なくとも3%、又は、少なくとも5%の濃度における混合液体を、透過液及び濃縮液へと分離するように構成される少なくとも1つの膜を備えることがある。浸透デバイスは、さらには、漸次の分離を実行するための複数個の段を備えることがある。漸次進展させることにより、例えば、膜への機械的圧力は制限され得る。
【0017】
任意選択で、(少なくとも1つの)膜は、少なくとも10%の、又は、少なくとも20%の濃縮液の濃度による動作を可能とするように構成される。
【0018】
任意選択で、混合液体は、純粋な塩溶液(例えば、食塩、NaClを伴う、水、H2O)であり、エネルギー・バッファは、環境との質量移行を伴わない閉じられたシステムである。しかしながら、本発明は、ある決まった混合液体に制限されることを意図されない。原理的には、糖又は他の液体が、さらには、純水と解され得る。しかしながら、そのことは、混合液体が可能な限り純粋であるならば有利である。
【0019】
さらなる実施例は、先に説明されたようなエネルギー・バッファを備える、風力電力プラント、太陽光発電電力プラント、水力電気電力プラント、地熱電力の熱的電力プラント、又は、それらの風力電力プラント、太陽光発電電力プラント、水力電気電力プラント、及び地熱電力の熱的電力プラントの組み合わせなどの電力発生プラントに関係する。
【0020】
任意選択で、例示的な風力タービンにおけるエネルギー・バッファは、透過液貯留体が、任意選択で、風力タービンの塔において、濃縮液貯留体よりも下に場所を定められ、混合液体のための濃縮液貯留体が、地球表面若しくは水表面上に、又は、地球表面若しくは水表面よりも下に配置構成される、ハイブリッド・エネルギー貯蔵システムである。このエネルギー・バッファは、機械的揚水貯蔵との浸透エネルギー貯蔵の組み合わせとしてのハイブリッド・エネルギー貯蔵システムを達成する。同じ概念は、太陽光発電システムについて実現され得る。例えば、太陽光発電システムが家屋上に設置されるならば、(例えば、地階と比較される屋根の)高さ差が、風力タービンの塔に類して利用され得る。
【0021】
任意選択で、電力発生プラント又はエネルギー・バッファは、電気電力を発生させるために、浸透デバイスにより発生させられる混合液体の浸透圧を利用するように構成されるタービンを含む。
【0022】
任意選択で、制御デバイスは、制御信号を受信し、その制御信号に基づいて、負荷付与プロセス及び/又は負荷除去プロセスを開始するようにさらに構成される。制御信号は、風の不足(又は、グリッドにおける電力の不足)の局面、又は、過剰風(又は、グリッドにおける過剰電力)の局面を指示することがある。この制御信号は、負荷付与又は負荷除去信号であり得るものであり、さらには、例えば、他のプラントが、そこでの風に依存して、あまりにもわずかな、又は、あまりにも多い電力を発生させるならば、それらのプラントから生まれ得る。概して言えば、電力発生における均衡が達成されることになり、そのことにより、本発明は、単一の電力発生プラントに制限されることになるのではなく、さらには、プラントのパーク全部分(例えば、ウィンド・パーク、又は、太陽光発電パーク、又は、太陽光発電プラントを伴う多数の家屋、又は、電力グリッド全部分)を含むことになる。
【0023】
実施例は、さらには、少なくとも1つの電力発生プラントのためにエネルギーをバッファリングする方法に関係する。方法は、
- 混合液体が、負荷付与圧力において逆浸透により透過液及び濃縮液へと分離される、負荷付与プロセスにおいて浸透デバイスを動作させるステップ、
- 透過液貯留体内に透過液を貯蔵するステップ、
- 濃縮液貯留体内に濃縮液を貯蔵するステップ
を含み、
電力グリッドからの電気エネルギー(例えば、過剰エネルギー)、又は、少なくとも1つの電力発生プラントの電気エネルギーが利用される。
【0024】
実施例は、さらには、少なくとも1つの電力発生プラントからの生産される電気エネルギーの欠乏(不足)(又は、電力グリッドにおける電気の欠乏)について補償するための方法に関係する。方法は、
- 透過液及び濃縮液が、混合液体を形成するために正浸透により混合される、負荷除去プロセスにおいて浸透デバイスを動作させるステップ、
- 浸透デバイスからの混合液体によってタービンを駆動するステップ、
- タービンにより駆動される発生機によって電気電力を発生させ提供するステップ
を含む。
【0025】
実施例は、複数の利点を含む。
【0026】
それらの固有の特質は、特に、現代の電気市場におけるエネルギー貯蔵システムにかけられるすべての要件を満たす。ここで提示されるタイプの実施例によって、気候中立社会への道筋上の重大なハードルが克服されることが可能になる。実施例は、例えば、グリッド・サービス・プロバイダ(すなわち、負荷及び供給ピークを均衡させるための)として、又は、分散型エネルギー貯蔵のために使用され得る。
【0027】
実施例は、3つの技術:2つの貯蔵技術、及び、再生可能風力、ソーラ、水力発電、又は地熱電力を組み合わせる。2つの貯蔵技術は、機械的揚水貯蔵、及び、溶媒内の溶質の浸透効果(半透膜を通しての圧力差)を活用することによる化学的貯蔵である。両方の貯蔵技術は、ハイブリッド貯蔵システムを形成するために組み合わされ、有利には、風力タービンの塔において、又は、太陽光発電システムを伴う家屋において、局所的に統合される。同じように、既存のダム又は地下空洞が、元からの高さ差として利用され得る。新しい、追加的な空間は要されない。
【0028】
風力タービンの塔において統合されるとき、容量のみが、風力タービンのサイズにより制限される。しかしながら、貯蔵概念が設置され得るすべての風力タービンの総数に起因して、総合的な貯蔵容量は十分に大きい。例示的には、このハイブリッド貯蔵システムの2つの利点は、(i)貯蔵場が、電気が発生させられるところに密接に近接して場所を定められ、そのことが、移送損失を最小化するということ、及び、(ii)風力塔の内側の、以前は使用されていない空間の有用な利用である。以前は使用されていない空間が、代わって、一方では、ハイブリッド貯蔵システムのためのインフラストラクチャを提供し、そのことが、なぜ貯蔵システムの投資コストが低いかのわけである。他方では、貯蔵システムの設置は、加えて、自然に対して干渉しない。
【0029】
同じことは、家屋上に装着される太陽光発電システムに当てはまる。ここでもまた、統合が、屋根上又は地階内の利用可能な空間の中で遂行され得るものであり、そのことによって、高さにおける、元から既存の差が、浸透効果の利用のための所望される圧力の高まりのために利用可能である。
【0030】
本発明の実施例は、後に続く詳細な説明への参照により、及び、様々な実施例の付随する図面により、より良好に理解されることになり、しかしながら、それらの様々な実施例は、本開示を特定の実施例に制限すると解釈されるべきであるのではなく、単に解説及び理解のためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施例による、風力タービンのためのエネルギー・バッファを示す図である。
図2A】実施例による、負荷付与プロセスの、それが制御デバイスにより制御され得る際の概略的表現を示す図である。
図2B】実施例による、負荷除去プロセスの、それが制御デバイスにより制御され得る際の概略的表現を示す図である。
図3A】例示的な風力タービンにおける負荷付与プロセスを示す図である。
図3B】例示的な風力タービンにおける負荷除去プロセスを示す図である。
図4A】実施例による方法のステップを示す図である。
図4B】実施例による方法のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明の実施例による、電力発生プラント50のためのエネルギー・バッファを示す。エネルギー・バッファは、浸透デバイス110と、透過液貯留体120と、濃縮液貯留体130と、制御デバイス140とを含む。浸透デバイス110は、膜115を含み、混合液体10を透過液20及び濃縮液30へと分離するように構成される。透過液貯留体120は、浸透デバイス110と流体連通しており、透過液20を貯蔵するように構成される。濃縮液貯留体130は、浸透デバイス110と流体連通しており、濃縮液30を貯蔵するように構成される。
【0033】
後に続く説明において、本発明は、風力タービンを基にして解説される。この風力タービンは、単に1つの実施例であるということが理解される。風力電力プラントの代わりに、任意の他の電力発生プラント、特に、1つ又は複数の、太陽光発電プラント、水力電気プラント、又は地熱プラントが使用され得る。説明の分かりやすさを助長するために、このことへのさらなる言及はなされない。
【0034】
制御デバイス140は、エネルギー・バッファの動作、例えば、浸透デバイス110が正浸透モードにおいて動作させられるか、それとも逆浸透モードにおいて動作させられるかを制御する。正浸透(負荷除去又は放電プロセス)において、混合液体10を形成するための、濃縮液30及び透過液20の混合が、浸透圧の利用/発生によって生起し、一方で、逆浸透(負荷付与プロセス)において、その混合液体10の分離が、圧力の印加によって生起する。圧力のこの印加は、貯蔵され、正浸透モードにおいて回収され得る、エネルギーを表す。
【0035】
示されるエネルギー・バッファは、混合液体10のための貯留体180と、タービン200とを含む。タービン200は、例えば、負荷除去プロセス中に、混合液体10における確動的な圧力に基づいて電気電力を発生させるための、電力発生機210に結合する水タービンである。
【0036】
混合液体10は、例えば、可能な限り純粋な塩水溶液(純水内に溶解された塩化ナトリウム)、又は、可能な限り純粋な別の塩液体を含む。塩の代わりに、糖又は別の可溶性物質が、さらには利用されることがある。本発明は、さらには、溶媒としての水に制限されることを必ずしも意図されない。そのことは、可能な限り高い浸透圧が達成されるならば有利であるが、膜115は、可能な限り耐久性があるべきであり、好ましくは(例えば、水内の不純物により)詰まらされた様態になるべきではない。この理由のために、混合液体10としての海水、又は、透過液20としての淡水などの自然水は、おそらくは不適である。
【0037】
浸透デバイス110は、入口111と、透過液出口112と、濃縮液出口113とを含む。入口111は、圧力交換器150、第1のポンプ161、第3のポンプ163、及びタービン200によって、貯留体180と流体連通している。要素Mは、ポンプを駆動するモータである。貯留体180は、入口181と、出口182とを含む。浸透デバイス110の透過液出口112は、透過液貯留体120の入口121及び出口122と流体的に連通している。濃縮液貯留体130は、入口131と、出口132とを含む。入口131は、分岐点V1によって、浸透デバイス110の濃縮液出口113と流体連通している。濃縮液貯留体130の出口132は、さらには、分岐点V1によって、浸透デバイス110の濃縮液出口113と流体連通している。
【0038】
エネルギー・バッファは、圧力交換器150をさらに含む。圧力交換器150は、混合液体10のための入口151と、混合液体10のための出口152とを含む。さらに、圧力交換器150は、濃縮液30のための入口153と、濃縮液30のための出口154とを含む。圧力交換器150は、第1のポンプ161流体によって貯留体180の出口182と連通している、その圧力交換器150の入口151を有する。貯留体180の出口182と、第1のポンプ161との間で、混合液体10は、分岐V3(分離点)において、任意の割合の混合液体11及び混合液体12に分離される。このプロセスにおいて、混合液体11は、第3のポンプ163を通って進み、混合液体12は、第1のポンプ161及び圧力交換器150を通って進む。混合液体11及び混合液体12は、負荷付与圧力P1において、分岐V4(混合点)において混ぜ合わされる。混合液体10のための出口152は、混合点V4によって、浸透デバイス110の入口111と流体連通している。浸透デバイス110の濃縮液出口113は、濃縮液30のための圧力交換器150の入口153と流体連通している。圧力交換器150の濃縮液30のための出口154は、濃縮液貯留体130の入口131と流体連通している。
【0039】
分離点V3と、圧力交換器150の入口151との間に、あらかじめ決定された負荷付与圧力P1を浸透デバイス110の入口111において提供するように構成される第1のポンプ161がある。圧力交換器150において、圧力P3が、濃縮液30に伝達され、負荷付与圧力P1の一部分が、混合液体12に伝達される。
【0040】
濃縮液貯留体130の出口132と、浸透デバイス110の濃縮液出口113との間に、あらかじめ決定された濃縮液圧力P4を(負荷除去プロセス中)浸透デバイス110の濃縮液出口113において提供するように構成される第2のポンプ162がある。
【0041】
分離点V3と、混合点V4との間に、負荷付与圧力P1を混合液体11に対して(さらには)提供するように構成される第3のポンプ163が存する。
【0042】
エネルギー・バッファの、前に述べられた構成要素どうしの間の流体接続に沿って、複数の弁ユニット170(171、172、…)が、それぞれの流体の流れを制御するために、それぞれの接続を閉じること、又は開くこと、又はなおも、部分的にスロットルで調整することのいずれかを行うために設けられる。
【0043】
そうして、第1の弁ユニット171が、濃縮液貯留体130の出口132において構成される。第2の弁ユニット172が、濃縮液貯留体130の入口131と、圧力交換器150の濃縮液出口154との間に配置構成される。第3の弁ユニット173が、浸透デバイス110の濃縮液出口113と、濃縮液貯留体130の出口132との間に配置構成される。第4の弁ユニット174が、浸透デバイス110の濃縮液出口113と、圧力交換器150における濃縮液の入口151との間に配置構成される。第5の弁ユニット175が、透過液貯留体120の入口121において配置構成される。第6の弁ユニット176が、透過液貯留体120の出口122において配置構成される。第7の弁ユニット177が、圧力交換器150の混合液体出口152と、浸透デバイス110の入口111との間に配置構成される。第8の弁ユニット178が、浸透デバイス110の入口111と、タービン200との間に配置構成される。第9の弁ユニット179が、分離点V3と、第1のポンプ161との間に配置構成される。第10の弁ユニット1710が、分離点V3と、第3のポンプ163との間に配置構成される。
【0044】
すべての弁ユニット170は、対応する流れ経路を制御するように配置構成されるということが理解される。複数個の分岐が可能である場合でも、1つの弁ユニット170のみが、流れ経路に沿って存在することを必要とする。任意選択で、三方弁が、交差点において構成されることがある。例えば、三方弁が、浸透デバイス110の濃縮液出口113を、濃縮液貯留体130の入口131に、又は出口132に任意選択で接続するために、第1の接合点V1において設けられることがある。別の任意選択の三方弁が、浸透デバイス110の入口113を、貯留体180に、又はタービン200に任意選択で接続するために、第2の分岐点V2において存在することがある。別の三方弁が、混合水10を、第1及び第3のポンプ161、163それぞれの間で分割するために、分離点V3において存在することがある。第4の三方弁が、圧力交換器出口152からの混合水、及び、第3のポンプ163からの混合水11を混ぜ合わせるために、混合点V4において存在することがある。
【0045】
第1及び第2の分岐点V1、V2は、迂回(安全)導管をもたらす。第1の分岐点V1によって、濃縮液30の一部又はすべてが、浸透デバイス110と濃縮液貯留体130との間で直接的に(例えば、圧力交換器150を迂回して)流れることが可能となる。同様に、第2の分岐点V2によって、混合液体10の一部又はすべてが、浸透デバイス110と貯留体180との間で直接的に(例えば、タービン200又は圧力交換器150を迂回して)流れることが可能となる。それゆえに、第1及び第2の分岐点V1、V2それぞれにおける三方弁は、圧力比率を精密に制御するために、すなわち、負荷付与圧力P1及び濃縮液圧力P4の最も正確なセッティングを達成するために、並びに、安全リスクを表す、負荷付与圧力P1及び濃縮液圧力P4の圧力サージを低減することができるために、利用され得る。
【0046】
任意選択の圧力交換器150は、貯留体180からの混合液体10の圧力を、浸透デバイス110の入口111において負荷付与圧力P1に至らせるために、浸透デバイス110の濃縮液出口113における出口圧力P2の部分又はすべてを利用するように構成される。そうして、この圧力交換器150は、第1又は第3のポンプ161、163について負荷を除去するために、浸透デバイス110の濃縮液出口113における出口圧力P2におけるエネルギーを利用するように働く。換言すれば、第1又は第3のポンプ161、163は、より少ないエネルギーを必要とし、なぜならば、それらのポンプは、混合液体10全体に対して、入口111において、あらかじめ決定された負荷付与圧力P1を提供する必要がないからである。
【0047】
第1のポンプ161は、分離点V3と、圧力交換器150の混合液体入口151との間に配置構成されることがある。第2のポンプ162は、濃縮液貯留体130の出口132と、第1の分岐点V1との間に配置構成されることがある。第3のポンプ163は、分離点V3と、混合点V4との間に配置構成されることがある。
【0048】
任意選択で、エネルギー・バッファは、流れ経路に沿う流体流れを検出するための体積測定センサ、又は、様々な貯留体(透過液貯留体120、濃縮液貯留体130、貯留体180)における流体液位を検出するための液位センサなどの、追加的なセンサ190を含む。透過液貯留体120、濃縮液貯留体130、及び貯留体180は、さらには、空気が動作中に内及び外に流れることを可能とするための弁を含む。
【0049】
制御デバイス140は、弁ユニット170の少なくとも一部又はすべてを制御するように、並びに、監視及び最適化のために利用され得る、さらなるセンサ190によるセンサ・データを受信するように構成される。加えて、制御デバイス140は、上昇圧力P3(低減された出口圧力)、又は、浸透デバイス110の入口111における負荷付与圧力P1を制御するために、負荷付与プロセス中に第1のポンプ161又は第3のポンプ163を制御するように、及び、浸透デバイス110の濃縮液出口113における濃縮液圧力P4を制御するために、負荷除去プロセス中に第2のポンプ162を制御するように構成されることがある。
【0050】
エネルギー・バッファの構成要素は、パイプ接続により相互接続され、弁、測定、制御、及び安全デバイスは、永続的な制御を可能とするように構成されるということが理解される。
【0051】
図2Aは、実施例による、制御デバイス140により制御され得る負荷付与プロセスの概略的表現を示す。
【0052】
負荷付与プロセス中、混合液体10は、第1のポンプ161又は第3のポンプ163によって貯留体180から取り出され、任意選択で、圧力交換器150によりサポートされ、負荷付与圧力P1において浸透デバイス110の入口111に送られる。浸透デバイス110内で、膜115の利用によって、濃縮液出口113を経て排出される濃縮液30が、透過液出口112を経て排出される透過液20から分離される。透過液20は、透過液出口112を経て透過液タンク120に送られる。濃縮液30は、出口圧力P2において、濃縮液出口113から圧力交換器150に進む。圧力交換器150は、出口圧力P2を、低減された出口圧力P3に低減し、一方で同時的に、第1のポンプ161及び/又は第3のポンプ163の負担を軽くするために、圧力(又は、対応するエネルギー)を利用し、そのことによって、部分的に、出口圧力P2は、混合液体12について負荷付与圧力P1を高めるために利用される。圧力交換器150の後、濃縮液30は、低減された出口圧力P3によって、濃縮液タンク130の入口131に達する。
【0053】
制御は、やはり、制御デバイス140により、図1において示されるようなセンサ190に基づく。特に、制御デバイス140は、エネルギーの過剰が、風力タービンによる、又は、他の電力発生機による、電気エネルギーの生産の平滑化を達成するために、(例えば、エネルギー・ピークとして)利用可能であるときに、負荷付与プロセスをトリガする。
【0054】
図2Bは、実施例による、制御デバイス140により制御され得る負荷除去プロセスの概略的表現を示す。ここでは、流れ方向が逆にされる。濃縮液30は、濃縮液貯留体130の出口132から、第2のポンプ162によって、浸透デバイス110の濃縮液出口113に、濃縮液圧力P4によってポンプ作用で押し出される。
【0055】
さらに、透過液20は、透過液貯留体120から、浸透デバイス110の透過液出口112に指向される。浸透デバイス110内で、透過液20及び濃縮液30の混合が、浸透圧を利用して、正浸透によって生起する。それゆえに、混合液体10は、過圧(タービン入口圧力P5)において浸透デバイス110を離れ、そのことが、引き続いて、タービン200を駆動する。発生機210が、電気を発生させるために、タービン200によって駆動される。タービン200の下流で、展開された混合液体10が、貯留体180に送られる。
【0056】
負荷除去プロセス及び負荷付与プロセスは、制御デバイス140により制御され、その制御デバイス140は、対応する方向において、あらかじめ決定された圧力P1、P2、…によって、対応する流れを発生させるために、第2のポンプ162、タービン200、及び、様々な弁ユニット171、172、…(図1を確認されたい)を制御する。図における矢印は、流れ方向を指示する。
【0057】
図3Aは、すでに図2Aにおいて概略的に示されたような、例示的な風力タービン50における負荷付与プロセスを示す。矢印を伴う線は、負荷付与プロセス中の遮断されない線を示し、一方で、より細い線は、閉じられた線を示す。この目的のために開かれた弁は、塗りつぶされず、一方で、閉じられた弁は、黒で塗りつぶされている。具体的には、後に続く弁ユニット:
第1の弁ユニット171、第3の弁ユニット173、第6の弁ユニット176、第8の弁ユニット178、及び分岐点V2
が、負荷付与中に閉じられることがある。
【0058】
よって、後に続く弁ユニット:
第2の弁ユニット172、第4の弁ユニット174、第5の弁ユニット175、第7の弁ユニット177、第9の弁ユニット179、及び第10の弁ユニット1710
は開いている。
【0059】
混合液体10、透過液20、及び濃縮液30の流れは、第1のポンプ161及び第3のポンプ163により生出され、一方で、第2のポンプ162は、締められることがある。先に説明されたように、圧力交換器150は、低減された出口圧力P3が、濃縮液30が濃縮液貯留体130に進入することを可能とするのに十分にちょうど高いように、エネルギーを回収するために利用され得る。
【0060】
弁ユニット171、172、…の開くこと、又は閉じること、及び、第1/第2/第3のポンプ161、162、163の動作は、すでに解説されたように、制御デバイス140により制御される。明確さのために、対応する制御線又は制御信号は、図において示されない。
【0061】
図3Bは、具体的には例示的な風力タービン50における、すでに図2Bにおいて概略的に例解されたような負荷除去プロセスを示す。矢印を伴う線は、やはり、負荷除去プロセス中の開かれた線を示し、一方で、細い線は、閉じられた接続を示す。この目的のために開かれた弁は、塗りつぶされずに描かれ、一方で、閉じられた弁は、黒で塗りつぶされている。よって、動作のこのモードにおいて、後に続く弁ユニット:
第2の弁ユニット172、第4の弁ユニット174、第5の弁ユニット175、第7の弁ユニット177、及び分岐点V2
が閉じられる。
【0062】
後に続く弁ユニット:
第1の弁ユニット171、第3の弁ユニット173、第6の弁ユニット176、第8の弁ユニット178
は開いている。
【0063】
第9の弁ユニット179及び第10の弁ユニット1710は、開いていてもよく、又は閉じられてもよい。第1のポンプ161及び第3のポンプ163は、このモードにおいてポンプ作用で押し出さないので、混合水10は、貯留体180と圧力交換器150との間で流れない。
【0064】
よって、さらには分岐点V1において、濃縮液貯留体130の出口132からの流れは、すなわち、浸透デバイス110の濃縮液出口113に進むように切り替えられている。それゆえに、負荷除去プロセス中、濃縮液30は、濃縮液圧力P4において、第2のポンプ162により、濃縮液貯留体130から浸透デバイス110の濃縮液出口113にポンプ作用で押し出される。同時的に、透過液20は、透過液貯留体120から浸透デバイス110の透過液出口112に重力送りされる。浸透デバイス110内で、濃縮液30及び透過液20の混合が生起し、一方で、浸透圧及び濃縮液圧力P4が、浸透デバイス110からのタービン圧力P5を形成するために組み合わさる。混合物は、電力を(例えば、発生機を使用して電気を)発生させるためにその混合物が利用されるタービン200に指向される。その後、混合液体10は、再び貯留体180内に貯蔵される。
【0065】
図4Aは、少なくとも1つの風力タービン50のためにエネルギーをバッファリングする方法のための概略的フロー線図を示す。方法は、
逆浸透が、負荷付与圧力P1を有する混合液体10を透過液20及び濃縮液30へと分離するために使用される、負荷付与プロセスにおいて浸透デバイス110を動作させるステップS110、
透過液貯留体120内の透過液20の貯蔵するステップS120、
濃縮液貯留体130内の濃縮液30の貯蔵するステップS130
を含み、
電力グリッドからの過剰エネルギー、又は、少なくとも1つの風力タービン50の電気エネルギーが利用される。
【0066】
図4Bは、電力グリッドにおける、又は、少なくとも1つの風力タービン50からの、生産される電気エネルギーの欠乏について補償する方法のための概略的フロー線図を示す。この方法は、
透過液20及び濃縮液30が、混合液体10を形成するために正浸透により混合される、負荷除去プロセスにおいて浸透デバイス110を動作させるステップS210、
浸透デバイス110からの混合液体10によってタービン200を駆動するステップS220、
タービン200により駆動される発生機210により電気電力を発生させ提供するステップS230
を含む。
【0067】
すでに書き記されたように、塩水が、特に、混合液体10として利用され得るものであり、塩化ナトリウムが、可能な限りの最も純粋な水に加えられる。後記において、混合液体10は塩水であるということが、実例として想定される。例えば、混合液体10は、(質量百分率において)貯留体180内で少なくとも3%、又は、より多い5%の塩濃度を、及び、濃縮液貯留体130内で少なくとも20%、又は、最高30%の濃度を含むことがあり、一方で、ほぼ純粋な水が、透過液貯留体110内に存在する。上限は、濃縮液30が依然として塩を溶解すべきであるという条件から結果的に生じる。沈殿する塩に起因する詰まりは、回避されるべきである。しかしながら、このことは、主として、使用される塩、及び、周囲条件(例えば、温度)に依存する。
【0068】
実施例によれば、エネルギー・バッファの負荷付与プロセス及び負荷除去プロセスは、さらには、後に続くように約言され得る。
【0069】
A.負荷付与プロセス
負荷付与プロセス中、第1のポンプ161及び/又は第3のポンプ163は、例示的な塩水10を、膜115を伴う浸透デバイス110内へと送り出す。第1及び/又は第3のポンプ161、163における圧力比率は、膜(強度)に依存して選択され、0バールから1000バールの間であり得る。膜115は、入来する塩水10を、2つの流動、非常に純粋な水の流動(透過液20)、及び、高い濃度の可溶性成分を伴う流動(濃縮液30)へと分離する。膜115は、第1及び/又は第3のポンプ161、163についての克服されるべき圧力差を含む。このことは、浸透原理に基づく。膜115は、半透過性であり、すなわち、理想的には、両方の方向において水に対して透過性であるのみである。透過液20が、膜115の一方の側に存在し、濃縮液30が、他方の側に存在するならば、透過液20は、膜115を通って進み、濃縮液30と混合することに努める。この進行力が、浸透圧と呼ばれる圧力差を引き起こす。この圧力は、塩水10を透過液20及び濃縮液30へと分離するために、第1及び/又は第3のポンプ161、163により克服される。
【0070】
膜115を退出する濃縮液30は、圧力交換器150を通って流れ、その圧力交換器150は、濃縮液30の圧力を低減し、一方で、混合流体12の圧力を増大する。濃縮液30の圧力は、浸透デバイス150の入口151から出口152まで、混合液体12の圧力を増大するために利用される。濃縮液30の圧力は、濃縮液30が、圧力交換器150を通って流れる後に、濃縮液貯留体130までの高さ差をそれでもなお克服し得るほど、十分に低減される。
【0071】
供給貯留体180と濃縮液貯留体130との間の高さにおけるこの差が、静水圧を引き起こす。圧力交換器150と連係している第1のポンプ161、及び、第3のポンプ163は、この圧力差を、膜115における圧力差に加えて克服する。濃縮液30の高所貯蔵は、揚水貯蔵電力プラントの原理に対応する。実施例は、具体的には、風力タービン50における高さ差を利用するので、エネルギー・バッファは、浸透エネルギー貯蔵をもたらすのみではなく、さらには、揚水貯蔵システムの利点を活かす、ハイブリッド・エネルギー貯蔵システムと考えられ得る。
【0072】
膜115を通って進む透過液20は、透過液貯留体120内に貯蔵される。透過液貯留体120が、さらには、塔の上部において場所を定められるならば、別のポンプが、透過液20を上部に送り出すために利用される(図3Aにおいて示されない)。
【0073】
ポンプ161、162、163、弁171、172…、並びに、負荷付与プロセス中に制御されることになる他の弁及び構成要素を制御するために、制御デバイス140が、塔の内側に設けられる(図3Aを確認されたい)。
【0074】
負荷付与プロセスは、濃縮液タンク130及び透過液タンク120が満杯にされるときに完了される。
【0075】
述べられた構成要素による説明された負荷付与プロセスは、ハイブリッド蓄電池の1つの可能な構成を表す。他の実施例において、さらなる膜、ポンプ、圧力交換器、弁、その他の追加、及び、これらの構成要素の適した相互接続が、中でも、要される負荷付与電力及び時間を低減する。
【0076】
B.負荷除去プロセス
エネルギー・バッファを放電させるとき、第2のポンプ162は、濃縮液30を濃縮液貯留体130から浸透デバイス110に送り出す。送り出し圧力は、0バールから浸透圧の間であり得る。例えば選択された濃度に依存して、例えば、浸透圧の半分、浸透圧を利用することが、有利であることが見いだされた。
【0077】
透過液貯留体120からの透過液20が、さらには、膜115に流れ、膜115をまたいだ浸透圧降下に起因して、濃縮液側に達し、その濃縮液側において、その透過液20は、濃縮液30と混合し、塩水10として浸透デバイス110を離れる。塩水10は、次いで、タービン200内に展開され、再び貯留体180内に貯蔵される。タービン200は、電気を発生させる発生機210を駆動する。
【0078】
負荷除去プロセスは、貯留体180が満杯にされるときに仕上げられる。
【0079】
制御デバイス140が、やはり、ポンプ、弁、タービン、発生機、その他、並びに、負荷除去プロセス中に制御されることになる他の取り付け物及び構成要素を制御するために使用される。
【0080】
述べられた構成要素による説明された負荷除去プロセスは、ハイブリッド蓄電池の最も単純な構成を表す。さらなる膜、ポンプ、圧力交換器、タービン、発生機、弁、その他を追加すること、及び、これらの構成要素の適した相互接続により、到達される放電電力及び時間が、中でも増大され得る。
【0081】
制御デバイス140によりセットされる圧力は、特に浸透圧により規定される。負荷付与プロセス中、少なくとも、浸透圧は、圧力交換器150と連係している第1のポンプ161により、及び、第3のポンプ163により、負荷付与圧力P1として発生させられる。負荷除去プロセス中、例えば、浸透圧の半分が、第2のポンプ162により、濃縮液圧力P4として発生させられる。3.5パーセントのみの塩濃度を伴う濃縮液30について、淡水と比較して、10℃における浸透圧は、例えば、約28から32バールである。より高い濃度において、その浸透圧は、有意に、より高い。他方では、混合水10が、35パーセント塩溶液であるならば、少なくとも、200~500バールの浸透圧が、分離のために要される。よって、体積流量に依存して、たくさんのエネルギーが、要される、又は、正浸透の事例において獲得され得る。そうして、制御デバイス140は、エネルギー・ピーク/エネルギー下降に対して柔軟に反応し得る。
【0082】
例えば、負荷付与プロセス中、約3.5%の混合水濃度、約0%の透過液濃度、及び、20%の濃縮液濃度において、負荷付与圧力P1及び出口圧力P2は、150バールから250バールの間であり、低減された出口圧力P3は、0バールから50バールの間である。
【0083】
例えば、負荷付与プロセス中、約3.5%の混合水濃度、約0%の透過液濃度、及び、30%の濃縮液濃度において、負荷付与圧力P1及び出口圧力P2は、200バールから500バールの間であり、低減された出口圧力P3は、0バールから50バールの間である。
【0084】
例えば、負荷除去プロセス中、近似的に3.5%の混合水濃度、近似的に0%の透過液濃度、及び、20%の濃縮液濃度において、濃縮液圧力P4及びタービン入口圧力P5は、0バールから250バールの間である。
【0085】
例えば、負荷除去プロセス中、近似的に3.5%の混合水濃度、近似的に0%の透過液濃度、及び、30%の濃縮液濃度において、濃縮液圧力P4及びタービン入口圧力P5は、0バールから500バールの間である。
【0086】
実施例は、特定の圧力比率に制限されることを意図されない。それらの圧力比率は、さらには、異なって選定され、一方では、選定される流体又は濃度に、ただしさらには、使用される膜115、及び、貯留体120、130についての利用可能な高さに依存し得る。濃縮液貯留体130は、任意選択で、透過液貯留体120よりも上に場所を定められ、風力タービン50の上側区域内に、可能な限り遠く設置されるべきである。透過液貯留体120のサイズは、例えば、貯留体180のサイズの90%から10%の間であることがあり、濃縮液貯留体130は、よって、例えば、貯留体180のサイズの10%から90%の間であることがある。
【0087】
ハイブリッド・エネルギー貯蔵システムの主要な利点は、追加的な圧力の各バールが、約10mの水柱に対応する(すなわち、100バールは、約1,000mの高さに対応する)ということである。同じ貯蔵容量が、純水揚水貯蔵施設において達成されるべきであるならば、その施設は、高さが何倍かの、利用可能な最も大きい風力タービンを備えなければならないことになる。又は、別の言い方をすれば、大きい量のエネルギーが、相対的に小さい体積の液体によって貯蔵され得る。
【0088】
実施例は、高い貯蔵容量を、柔軟な制御システムと組み合わせ、そのことにより、制御システムは、さらには、複数個の風力タービン(又は、ウィンド・ファーム若しくは電力グリッド)について、協調させられた様式で実現され得る。そうして、実施例によれば、制御ユニット140が、他の風力タービンから、逆性浸透を使用してそれらの風力タービンの過剰エネルギーを貯蔵するために、対応する信号を受信することが可能である。この手立てにおいて、エネルギー・バッファは、それぞれの風力タービンそれ自体からのエネルギーによってのみではなく、さらには、(他の風力タービン、又はさらには、他の電気源、すなわち、電力グリッドからの)外部エネルギー供給によって動作させられ得る。
【0089】
この目的のために、制御デバイス140は、電力システムにおいて、電力貯蔵についての必要性が存するか、それとも、電力の不足が存するかを指示する(外部)制御信号を受信することがある。この(外部)信号に基づいて、制御デバイス140は、負荷除去プロセスにおいて、若しくは、負荷付与プロセスにおいてのいずれかで、エネルギー・バッファを動作させ、又は、エネルギー・バッファを、必要とされるときにそのエネルギー・バッファを動作の様態へと戻るように至らせるように、(例えば、すべての弁を閉じることにより)完璧にシャット・ダウンする。
【0090】
風力タービンは、陸上に、又は海において(沖合に)場所を定められ得るものであり、そのことにより、後者の事例において、貯留体180は、さらには、例えば、水表面よりも下に、又は、海底上に配置構成され得る。この手立てにおいて、高さ差は、さらに増大され得る。タービン200は、例えば、混合液体10についての可能な限りの最も高い入口圧力P5を達成するために、貯留体180と近似的に同じ高度において場所を定められ得る。
【0091】
上記で解説されたように、他の電力発生プラントが、説明された風力タービンの代わりに、又は、その風力タービンに加えて利用され得る。任意の電力発生プラントを組み合わせることが、さらには可能である。
【0092】
本説明、特許請求の範囲、及び図において開示される本発明の特徴は、個々に、又は、任意の組み合わせにおいてのいずれかで、本発明の現実化に不可欠であることがある。
【符号の説明】
【0093】
10 混合液体
20 透過液
30 濃縮液(保持液)
50 風力タービン
110 浸透デバイス
111 浸透デバイス入口
112 透過液出口
113 濃縮液出口
120 透過液貯留体
121、122 透過液貯留体の入口、出口
130 濃縮液貯留体
131、132 濃縮液貯留体の入口、出口
140 制御デバイス
150 圧力交換器
151、152 圧力交換器における混合液体のための入口、出口
153、154 圧力交換器における濃縮液のための入口、出口
161、162、163 ポンプ
170、171、…、1710 弁ユニット、弁
180 貯留体
190 センサ(体積、圧力、液位、その他を測定するための)
200 タービン
210 発生機
P1 負荷付与又は充電圧力
P2 負荷付与中の濃縮液の膜の出口圧力
P3 圧力交換器を通って流れる後の濃縮液の低減された出口圧力
P4 放電中の膜入口における濃縮液圧力
P5 タービン入口圧力
V1 負荷除去中の安全(三方)弁
V2 負荷付与中の安全(三方)弁
V3 混合液体11への、及び混合液体12への、混合液体10の分離点
V4 混合液体10への混合液体11及び混合液体12の混合点
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
【国際調査報告】