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特表2024-511761動力車両を作動させる方法、システム
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  • 特表-動力車両を作動させる方法、システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】動力車両を作動させる方法、システム
(51)【国際特許分類】
   B62J 45/00 20200101AFI20240308BHJP
   B62J 27/00 20200101ALI20240308BHJP
   B62J 45/42 20200101ALI20240308BHJP
【FI】
B62J45/00
B62J27/00
B62J45/42
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557384
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-03
(86)【国際出願番号】 EP2022054306
(87)【国際公開番号】W WO2022207188
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】102021203112.9
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】コザン,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】メルベ,マティアス
(57)【要約】
本発明は、動力車両(2)を作動させる方法に関する。前記動力車両(2)のドライバー(9)の現在の運転位置(PIst)と前記ドライバー(9)の目標基準運転位置(PRef)とのずれを検出し、検出した前記ずれに依存して前記動力車両(2)を制御することが設けられている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力車両(2)を作動させる方法において、前記動力車両(2)のドライバー(9)の現在の運転位置(PIst)と前記ドライバー(9)の目標基準運転位置(PRef)とのずれを検出し、検出した前記ずれに依存して前記動力車両(2)を制御する方法。
【請求項2】
検出した前記ずれに依存して前記動力車両(2)の駆動装置、ブレーキ装置、表示装置、および/または、通信モジュールを制御することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ドライバー(9)に付設されるユーザーデバイス(8)の現在位置を検出することによって前記現在の運転位置(PIst)を検出することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記現在の運転位置(PIst)が前記動力車両(2)の前進方向(11)において前記基準運転位置(PRef)の後方にあることを検出した場合、前記駆動装置によって提供される駆動トルクが減少または制限されるように前記駆動装置を制御することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記現在の運転位置(PIst)が前記動力車両(2)の前進方向(11)において前記基準運転位置(PRef)の前方にあることを検出した場合、前記ブレーキ装置によって提供されるブレーキトルクが減少または制限されるように前記ブレーキ装置を制御することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
一方では前記ずれに依存して、他方では前記動力車両(2)のバンク角に依存して、現時点で前記ドライバー(9)によって使用されるコーナリング技術を検出すること、検出した前記コーナリング技術に依存して前記動力車両(2)を制御することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
検出した前記コーナリング技術に依存して、前記動力車両(2)の少なくとも1つのアシストシステムを選択的に解放または遮断することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記動力車両(2)の前記表示装置および/または前記動力車両(2)の前記通信モジュールを、前記表示装置および/または前記通信モジュールが前記ドライバー(9)に検出した前記コーナリング技術に関する情報を提供するように制御することを特徴とする、請求項6および7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
動力車両(2)と、前記動力車両(2)に配置される少なくとも1つの車両通信手段(3)と、前記動力車両(2)とは別個に操作可能で、前記動力車両(2)のドライバー(9)に付設される少なくとも1つのユーザーデバイス(8)と、評価装置(13)とを備えたシステムにおいて、前記車両通信手段(3)は、前記ユーザーデバイス(8)によって送出された信号を受信するために形成され、前記評価装置(7)は、受信した前記信号に依存して、前記ドライバー(9)の現在の運転位置(PIst)と前記ドライバー(9)の目標基準運転位置(PRef)とのずれを検出するために形成されているシステム。
【請求項10】
前記動力車両(2)を制御するための制御装置(7)が設けられ、前記制御装置(7)は、検出した前記ずれに依存して前記動力車両(2)を制御するために形成されていることを特徴とする、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
少なくとも1つの他の車両通信手段(4)が設けられ、前記車両通信手段(3)と前記他の車両通信手段(4)とが互いに間隔をもって前記動力車両(2)に配置されていることを特徴とする、請求項9および10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記車両通信手段(3,4)のうちの少なくとも1つがブルートゥース・ロー・エネルギー・モジュール(BLEモジュール)として形成されていること、および/または、前記車両通信手段(3,4)のうちの少なくとも1つが超広帯域モジュール(UWBモジュール)として形成されていることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記ユーザーデバイス(8)がスマートフォンとして、または、スマートウォッチとして形成されていることを特徴とする、請求項9~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記ユーザーデバイス(8)が前記ドライバー(9)用衣類(10)の中に組み込まれていることを特徴とする、請求項9~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
少なくとも1つの他のユーザーデバイスが設けられ、前記ユーザーデバイスと前記他のユーザーデバイスとがそれぞれ前記衣類の異なる袖の中に組み込まれていることを特徴とする、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力車両を作動させる方法に関するものである。
【0002】
さらに、本発明は動力車両を備えたシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
技術水準から、動力車両の周辺域での利用者の現在位置に依存して動力車両を選択的にロック解除またはロックするようにした複数の方法が知られている。この種の1つの方法は、たとえば特許文献1から公知である。本願の出願前から知られているこの方法では、車両側の通信手段配置部と利用者に付設されるユーザーデバイスとの通信によって利用者の現在位置が検出される。
【0004】
特許文献2は、動力車両の周辺域での利用者の現在位置に依存して動力車両が選択的にロック解除またはロックされる他の方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018206418A1号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2020002392A1号パンフレット
【発明の概要】
【0006】
動力車両を作動させる方法を提供する。請求項1の構成を備えた本発明による方法は、動力車両のドライバーの現在の運転位置と前記ドライバーの目標基準運転位置とのずれを検出すること、検出した前記ずれに依存して前記動力車両を制御することを特徴としている。すなわち、ずれに依存して動力車両の少なくとも1つの構成要素を制御する。たとえば、ずれが所定の閾値を越えていれば、動力車両の制御を変更または適合させる。現在の運転位置とは、本開示の範囲内では、動力車両で走行している間のドライバーの身体部分の現在位置と理解すべきである。対応的に、目標基準運転位置とは、動力車両でドライバーが走行している間に当該身体部分が通常占める位置と理解すべきである。本発明には、本発明による処置によりたとえば走行安全性および/または走行快適性を向上させることができるという認識が基本的にある。好ましくは、ずれとして、現在の運転位置と基準運転位置との間の距離を検出する。たとえばドライバーの現在の運転位置として、走行中のドライバーの頭部の現在位置を検出すると、このときのずれは、頭部の現在位置と頭部の目標基準運転位置との間の距離である。好ましくは、ずれとして、所定の方向における現在の運転位置と基準運転位置との間の距離、たとえば動力車両の縦軸線方向での前記距離を検出する。これによって、動力車両の制御を特に精確に適合させることができる。好ましくは、特定の現在の運転位置を選定して、基準運転位置としてずれの検出の基礎とする。たとえば、走行開始直後の、または、少なくとも実質的に走行開始直後の現在の運転位置を選定する。これとは択一的に、基準運転位置として、好ましくは、ドライバーが所定の運転状況で占めている運転位置、たとえば所定の速度で直線走行しているときの運転位置を選定する。好ましくは、動力車両は自動二輪車、四輪バイク、スノーモービル、または、ジェットスキーとして形成されている。この種の動力車両では、前述した利点および以下に説明する利点が特に強く際立っている。
【0007】
有利な実施形態では、検出したずれに依存して動力車両の駆動装置、ブレーキ装置、表示装置、および/または、通信モジュールを制御することが設けられている。検出したずれに依存して動力車両のこれらの構成要素を制御することにより、前述した利点を達成できる。
【0008】
好ましくは、ドライバーに付設されるユーザーデバイスの現在位置を検出することによって現在の運転位置を検出する。ユーザーデバイスとは、たとえばドライバーのスマートウォッチまたはスマートフォンである。この種のユーザーデバイスの位置は、ドライバーがユーザーデバイスを走行中に通常は同じ位置に保有または担持しているので、走行中ドライバーに対し相対的に一定であるのが通常である。この限りでは、ユーザーデバイスの位置はドライバーの特定の身体部分の位置に相当している。加えて、この種のユーザーデバイスの現在位置は技術的に簡単に検知可能であり、たとえば車両側の通信手段配置部を用いて検知可能である。その後、ユーザーデバイスの現在位置は、たとえば、ユーザーデバイスによる信号の送出と、通信手段配置部の1つまたは複数の通信手段による送出信号の受信との間の時間差に依存して検出される。
【0009】
有利な実施形態によれば、現在の運転位置が動力車両の前進方向において基準運転位置の後方にあることを検出した場合、駆動装置によって提供される駆動トルクが減少または制限されるように駆動装置を制御することが設けられている。現在の運転位置が前進方向において基準運転位置の後方にあれば、現在提供されている駆動トルクの上昇により、または、現在提供されているすでに高い駆動トルクの維持により、ドライバーがそのバランスを失う可能性がある。これは、駆動トルクを減少または制限することにより回避される。好ましくは、現在の運転位置が基準運転位置の上方にあることを検出した場合、駆動装置によって提供される駆動トルクが減少または制限されるように駆動装置を制御する。現在の運転位置が基準運転位置の上方にあれば、ドライバーが起立して運転しているという前提から出発すべきである。この場合も、高い駆動トルクのためにドライバーがそのバランスを失う可能性がある。
【0010】
有利な実施形態によれば、現在の運転位置が動力車両の前進方向において基準運転位置の前方にあることを検出した場合、ブレーキ装置によって提供されるブレーキトルクが減少または制限されるようにブレーキ装置を制御することが設けられている。現在の運転位置が前進方向において基準運転位置の前方にあれば、現在提供されているブレーキトルクの上昇により、または、現在提供されているすでに高いブレーキトルクの維持により、ドライバーがそのバランスを失う可能性がある。これは、ブレーキトルクを減少または制限することにより回避される。好ましくは、現在の運転位置が基準運転位置の上方にあることを検出した場合、駆動装置によって提供される駆動トルクが減少または制限されるようにブレーキ装置を制御する。
【0011】
有利な実施形態によれば、一方ではずれに依存して、他方では動力車両のバンク角に依存して、現時点でドライバーによって使用されるコーナリング技術を検出すること、検出したコーナリング技術に依存して動力車両を制御することが設けられている。この実施形態によれば、動力車両は好ましくは単軌道動力車両として形成されている。単軌道動力車両の場合、基本的にはコーナリング技術「寝かせ」と、「プッシュ」と、「ハングオフ」とが区別される。基本的には、動力車両のバンク角に基づいて、カーブを走行しているかいないかを判定する。ドライバーがコーナリング技術「寝かせ」を使用していれば、動力車両の高さ方向軸線はドライバーの矢状面内にあり、現在の運転位置は基準運転位置に相当している。すなわち、バンク角が所定の閾値を越えていて、ずれが所定の閾値を下回っていれば、ドライバーがコーナリング技術「寝かせ」を使用していると決定する。ドライバーがコーナリング技術「プッシュ」を使用していれば、ドライバーは動力車両を必要な傾斜位置へプッシュし、自身は車道に対し垂直を維持し、その結果動力車両の高さ方向軸線とドライバーの矢状面との間に角度が形成される。この角度は、現在の運転位置と基準運転位置との間のずれと同時に発生する。ドライバーがコーナリング技術「ハングオフ」(“Hanging-Off”)を利用していれば、ドライバーはその身体を車両中心からコーナー内側の方向に傾斜させる。この場合も、動力車両の高さ方向軸線とドライバーの矢状面との間に角度が形成される。この角度は、現在の運転位置と基準運転位置との間の、コーナリング技術「プッシュ」の使用時とは異なるずれと同時に発生する。
【0012】
好ましくは、検出したコーナリング技術に依存して、動力車両の少なくとも1つのアシストシステムを選択的に解放または遮断する。これも動力車両の制御と理解すべきである。たとえば、ドライバーがコーナリング技術「ハングオフ」を使用していると決定された場合、アシストシステムを遮断する。コーナリング技術「ハングオフ」の場合こそ、ドライバーに対するアシストシステムの介入は思いがけないものであり、或いは、望ましいものではない。たとえば、アシストシステムACC(Adaptive Cruise Control)および/またはアシストシステムAEB(Automatic Emergency Brake)を遮断する。
【0013】
有利な実施形態によれば、動力車両の表示装置および/または動力車両の通信モジュールを、表示装置および/または通信モジュールがドライバーに検出したコーナリング技術に関する情報を提供するように制御することが設けられている。これも動力車両の制御と理解すべきである。たとえば、ドライバーには、そのコーナリング技術が最適なコーナリング技術からずれているという情報、または、そのコーナリング技術が最適なコーナリング技術からどの程度ずれているかの情報が提供される。すなわち、もっとも広い意味でドライビングインストラクタ機能が提供される。
【0014】
本発明によるシステムは、動力車両と、前記動力車両に配置される少なくとも1つの車両通信手段と、前記動力車両とは別個に操作可能で、前記動力車両のドライバーに付設される少なくとも1つのユーザーデバイスと、評価装置とを有している。本発明によるシステムは、請求項9の構成により以下の点を特徴としており、すなわち前記車両通信手段は、前記ユーザーデバイスによって送出された信号を受信するために形成されていること、前記評価装置は、受信した前記信号に依存して、前記ドライバーの現在の運転位置と前記ドライバーの目標基準運転位置とのずれを検出するために形成されていることを特徴としている。これから、すでに述べた利点が得られる。たとえば、検出したずれに依存して動力車両の制御を適合または変更させることができる。加えて、ずれに基づいてドライバーの運転スタイルに関する情報を検出してドライバーに提供することができる。更なる有利な構成要件および構成要件の組み合わせは、本説明および特許請求の範囲から明らかである。
【0015】
好ましくは、システムは動力車両を制御するための制御装置を有し、この場合制御装置は、検出したずれに依存して動力車両を制御するために形成されている。たとえば、制御装置は、検出したずれに依存して動力車両の駆動装置、ブレーキ装置、表示装置、および/または、通信モジュールを制御するために形成されている。
【0016】
好ましくは、システムは少なくとも1つの他の車両通信手段を有し、この場合前記車両通信手段とこの他の車両通信手段とは互いに間隔をもって動力車両に配置されている。互いに間隔をもって配置されている2つの車両通信手段により、ずれとして特定の方向における距離を検出することができる。この種のずれに依存して、動力車両の制御を特に精確に適合または変更することができる。たとえば、車両通信手段の一方は動力車両の前端の領域に配置され、他方の車両通信手段は動力車両の後端の領域に配置されている。この種の配置の場合、ずれとして縦軸線方向における距離を検出することができる。これとは択一的に、両車両通信手段は動力車両のステアリングハンドルの異なる端部に配置されている。この種の配置の場合、ずれとして動力車両の横軸線方向における距離を検出することができる。更なる実施形態によれば、システムはただ1つの車両通信手段のみを有している。ただ1つの車両通信手段によって、ずれとしてこの車両通信手段からの距離を検出することができる。その際、好ましくは、車両通信手段の位置を基準運転位置として用いる。
【0017】
システムの有利な実施形態によれば、車両通信手段のうちの少なくとも1つがブルートゥース(登録商標)・ロー・エネルギー・モジュール(BLEモジュール)として形成され、および/または、車両通信手段のうちの少なくとも1つが超広帯域モジュール(UWBモジュール)として形成されていることが設けられている。このように形成された通信手段により、ずれを特に精確に検出することができる。たとえば、UWBモジュールは最大で数センチメートルの誤差でずれの検出を可能にさせる。特に有利には、車両通信手段のうちの1つがBLEモジュールとして形成され、他がUWBモジュールとして形成されている。
【0018】
好ましくは、ユーザーデバイスはスマートフォンとして、または、スマートウォッチとして形成されている。この種のデバイスはどのみち必要な通信手段を持っているので、車両通信手段によって検知できる信号を送出するために、ユーザーデバイスとして特に適している。加えて、ドライバーの特定の身体部分に対する走行中のドライバーのスマートフォンまたはドライバーのスマートウォッチの相対位置は通常一定である。
【0019】
好ましくは、ユーザーデバイスはドライバー用衣類の中に組み込まれている。これによっても、ドライバーの特定の身体部分に対する走行中のユーザーデバイスの相対位置が一定であることが達成される。衣類とは、たとえば運転服、手袋、上着、または、ヘルメットである。
【0020】
有利な実施形態によれば、システムは少なくとも1つの他のユーザーデバイスを有することが設けられ、この場合前記ユーザーデバイスとこの他のユーザーデバイスとはそれぞれ衣類の異なる袖の中に組み込まれている。この種の実施形態の場合、ドライバーの両手の現在の運転位置を特に精確に監視することができる。この限りでは、走行中のドライバーの手が実際にステアリングハンドルにあるかどうかをチェックすることができる。その際、好ましくは、各ユーザーデバイスに対しそれぞれ1つの現在の運転位置と基準運転位置からの1つのずれとを検出する。この実施形態によれば、好ましくは、システムは2つの車両通信手段を有し、これら2つの車両通信手段はそれぞれステアリングハンドルの異なる端部に固定されている。前記1つのずれまたは複数のずれに依存して、ドライバーがステアリングハンドルを片手だけで保持しているか、或いは、手で保持していないかどうかが確定されれば、制御装置は、好ましくは、駆動装置によって提供される駆動トルクが減少または制限されるように動力車両の駆動装置を制御する。択一的にまたは付加的に、制御装置は、好ましくは、ブレーキ装置によって提供されるブレーキトルクが減少または制限されるように動力車両のブレーキ装置を制御する。
【0021】
有利な実施形態によれば、動力車両は自動二輪車、四輪バイク、スノーモービル、または、ジェットスキーとして形成されている。この種の動力車両の場合、システムによって達成される利点は特に際立っている。
【0022】
次に、図面に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】動力車両を作動させるシステムを示す図である。
図2】動力車両を作動させる方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1はシステム1を示している。システム1は動力車両2を有している。本実施形態では、動力車両2とは自動二輪車2である。他の実施形態によれば、動力車両2とはたとえば四輪バイク、スノーモービル、または、ジェットスキーである。
【0025】
システム1は、動力車両2に配置される第1の車両通信手段3を有している。システム1は、さらに、第1の車両通信手段3から間隔をもって動力車両2に配置されている第2の車両通信手段4を有している。本実施形態では、第1の車両通信手段3は動力車両2の前端5の領域に配置されている。第2の車両通信手段4は、動力車両2の後端6の領域に配置されている。
【0026】
車両通信手段3と4は、たとえばBLEモジュールまたはUWBモジュールとして形成されている。特に有利な実施形態によれば、車両通信手段3と4のうちの1つはBLEモジュールとして形成され、他の車両通信手段3または4はUWBモジュールとして形成されている。
【0027】
システム1は、さらに、評価装置13を有している。評価装置13は、車両通信手段3および4と通信技術的に結合されている。
【0028】
システム1は、さらに、制御装置7を有している。制御装置7は、動力車両2の1つまたは複数の構成要素を制御するために形成されている。たとえば、制御装置7は、動力車両2の駆動装置、ブレーキ装置、表示装置、および/または、通信モジュールを制御するために形成されている。通信モジュールとは、たとえば車両通信手段3と4のうちの1つである。
【0029】
システム1は、さらに、少なくとも1つのユーザーデバイス8を有し、ユーザーデバイスは、動力車両2とは別個に操作可能で、動力車両2のドライバー9に付設されている。本実施形態では、ただ1つのユーザーデバイス8がドライバー9の背中の領域においてドライバー9の運転服10内に組み込まれている。他の実施形態によれば、ユーザーデバイス8はたとえばスマートフォンまたはスマートウォッチとして形成されている。
【0030】
ユーザーデバイス8は、信号を送出するために形成されている。車両通信手段3と4は、ユーザーデバイス8によって送出された信号を受信するために形成されている。
【0031】
評価装置13は、車両通信手段3と4によって受信された信号に依存して、ドライバー9の現在の運転位置と目標基準運転位置PRefとのずれを検出するために形成されている。ユーザーデバイス8がドライバー9の背中の領域においてドライバー9の運転服10内に組み込まれているので、ドライバー9が動力車両2で走行している間、ドライバー9の背中に対するユーザーデバイス8の相対位置は少なくとも実質的に一定である。したがって、ユーザーデバイス8の現在位置はその配置のために少なくとも実質的にドライバー9の背中の現在の運転位置に相当している。図1に図示した実施形態によれば、ユーザーデバイス8の現在位置は基準運転位置PRefに相当している。すなわち、動力車両2上のドライバー9の位置は目標位置に相当している。
【0032】
制御装置7は、検出したずれに依存して動力車両2を制御するために形成されている。次に、これを図2を参照してより詳細に説明する。図2は、フローチャートによる動力車両2の作動方法を示している。
【0033】
第1のステップS1で、ユーザーデバイス8は、車両通信手段3と4によって受信可能な信号を送出する。車両通信手段3と4がBLEモジュールとして形成されていれば、ユーザーデバイス8はブルートゥース信号を送出する。車両通信手段3と4がUWBモジュールとして形成されていれば、ユーザーデバイス8は超広帯域信号を送出する。車両通信手段の一方がBLEモジュールとして形成され、他方がUWBモジュールとして形成されていれば、ユーザーデバイス8はブルートゥース信号と超広帯域信号の双方を送出する。
【0034】
第2のステップS2で、送出信号を車両通信手段3と4によって受信し、評価装置13に提供する。このため、車両通信手段3と4は評価装置13と無線でまたは有線で通信技術的に結合されている。
【0035】
第3のステップS3で、評価装置13はユーザーデバイス8の現在位置を検出し、したがってドライバー9の背中の現在の運転位置を検出する。たとえば、評価装置13は現在の運転位置を受信信号の伝達時間に依存して検出する。図1に図示した実施形態によれば、2つの車両通信手段3と4が設けられている。この場合には、ユーザーデバイス8の現在位置の検出は一義的でない。第1の車両通信手段3によって受信する前の信号の伝達時間は、ユーザーデバイス8と第1の車両通信手段3との間の距離r1と対応している。この限りでは、ユーザーデバイス8の現在位置は球K1の外面上にあり、この場合球K1の中心は第1の車両通信手段3であり、球K1の半径は距離r1である。第2の車両通信手段4によって受信する前の信号の伝達時間は、ユーザーデバイス8と第2の車両通信手段4との間の距離r2と対応している。この限りでは、ユーザーデバイス8の現在位置は球K2の外面上にあり、この場合球K2の中心は第2の車両通信手段4であり、球K2の半径は距離r2である。対応的に、現在の運転位置として、複数の異なる可能な位置を記述する1つの交差円が得られる。この交差円は、車両通信手段3と4の配置により、少なくとも実質的に動力車両2の縦軸線に対し垂直或いは前進方向12に対し垂直に方向づけられている。
【0036】
第4のステップS4で、評価装置13は、ステップS3で検出した現在の運転位置と目標基準運転位置PRefとのずれを検出する。基準運転位置PRefは、動力車両2による走行時にドライバー9またはドライバー9の当該身体部分が通常占めている運転位置である。本実施形態では、評価装置13は、ずれとして、縦軸線方向における現在の運転位置と基準運転位置PRefとの距離を検出する。前述した交差円は少なくとも実質的に縦軸線に対し垂直に方向づけられているため、検出したずれは一義的である。
【0037】
ずれが所定の閾値を下回っていれば、第5のステップS5が指示される。第5のステップS5では、このとき動力車両2をスタンダードモードで作動させる。これは、たとえば図1による現在の運転位置のケースである。図1に図示した実施形態では、現在の運転位置は基準運転位置PRefに相当している。
【0038】
しかしながら、ずれが閾値を越えていれば、第6のステップS6が指示される。第6のステップS6では、このとき検出したずれに依存して動力車両2を制御または作動させる。
【0039】
評価装置13が、たとえば検出したずれを用いて、動力車両2の前進方向12における現在の運転位置が閾値以上に基準運転位置PRefの後方にあることを確定すると、制御装置7は、駆動装置によって提供される駆動トルクが減少または制限されるようにステップS6で動力車両2の駆動装置を制御する。さもないと、駆動トルクの増大により、または、すでに高い駆動トルクの維持により、ドライバー9はそのバランスを失うことになる。
【0040】
しかしながら、評価装置13が、ずれを用いて、動力車両2の前進方向における現在の運転位置が閾値以上に基準運転位置PRefの前方にあることを確定すると、制御装置7は、ブレーキ装置によって提供されるブレーキトルクが減少または制限されるようにステップS6で動力車両2のブレーキ装置を制御する。さもないと、ブレーキトルクの増大により、または、すでに高いブレーキトルクの維持により、ドライバー9はそのバランスを失うことになる。
【0041】
システム1の他の実施形態によれば、車両通信手段3と4は動力車両2のステアリングハンドルのそれぞれ異なる端部に配置されている。
【0042】
この種の配置の場合、ずれとして、動力車両2の横軸線方向における距離を一義的に検出することができる。加えて、この実施形態の場合、一方では動力車両2の傾斜角度位置に依存して、他方ではずれに依存して、すなわち横軸線方向における距離に依存して、現在ドライバー9によって使用されるコーナリング技術を検出することができる。
【0043】
評価装置13がずれと傾斜角度位置とを用いて、ドライバー9が現在コーナリング技術「ハングオフ」を使用していると確定すると、ステップS6で動力車両2のアシストシステムを制御装置7によって遮断する。
【0044】
他の実施形態によれば、システム1は2つのユーザーデバイスを有し、この場合第1のユーザーデバイスは運転服10の第1の袖の中に組み込まれ、第2のユーザーデバイスは運転服10の第2の袖の中に組み込まれている。この実施形態でも、車両通信手段3と4は好ましくはステアリングハンドルの端部に配置されている。
【0045】
システム1のこの種の構成の場合、たとえば、ドライバー9が走行中にステアリングハンドルを両手で握っているかどうかを確認することができる。このため、各ユーザーデバイスに対しそれぞれ現在の運転位置を検出して、それぞれの基準運転位置と比較する。好ましくは、車両通信手段3と4のうちの一方はユーザーデバイスのうちの一方に付設され、このユーザーデバイスに対する基準運転位置は前記一方の車両通信手段3または4の位置に対応している。このとき、車両通信手段3と4のうちの他方はユーザーデバイスのうちの他方に付設され、このユーザーデバイスに対する基準運転位置は前記他方の車両通信手段3または4の位置に対応している。
【0046】
検出したずれを用いて、ドライバーが片手だけでステアリングハンドルを持っているか、或いは、手でもっていないかが確定されれば、制御装置7は、提供される駆動トルクが減少または制限されるようにステップS6で駆動装置を制御する。補助的に、制御装置7は提供されるブレーキトルクが減少または制限されるようにブレーキ装置を制御する。
【符号の説明】
【0047】
1 システム
2 動力車両
3 第1の車両通信手段
4 第2の車両通信手段
7 制御装置
8 ユーザーデバイス
9 ドライバー
10 ドライバーの運転服(衣類)
12 前進方向
13 評価装置
Ist ドライバーの現在の運転位置
Ref ドライバーの目標基準運転位置
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-11-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力車両(2)を作動させる方法において、前記動力車両(2)のドライバー(9)の現在の運転位置(PIst)と前記ドライバー(9)の目標基準運転位置(PRef)とのずれを検出し、検出した前記ずれに依存して前記動力車両(2)を制御する方法。
【請求項2】
検出した前記ずれに依存して前記動力車両(2)の駆動装置、ブレーキ装置、表示装置、および/または、通信モジュールを制御することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ドライバー(9)に付設されるユーザーデバイス(8)の現在位置を検出することによって前記現在の運転位置(PIst)を検出することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記現在の運転位置(PIst)が前記動力車両(2)の前進方向(11)において前記目標基準運転位置(PRef)の後方にあることを検出した場合、前記駆動装置によって提供される駆動トルクが減少または制限されるように前記駆動装置を制御することを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記現在の運転位置(PIst)が前記動力車両(2)の前進方向(11)において前記目標基準運転位置(PRef)の前方にあることを検出した場合、前記ブレーキ装置によって提供されるブレーキトルクが減少または制限されるように前記ブレーキ装置を制御することを特徴とする、請求項2または4に記載の方法。
【請求項6】
一方では前記ずれに依存して、他方では前記動力車両(2)のバンク角に依存して、現時点で前記ドライバー(9)によって使用されるコーナリング技術を検出すること、検出した前記コーナリング技術に依存して前記動力車両(2)を制御することを特徴とする、請求項2、4または5に記載の方法。
【請求項7】
検出した前記コーナリング技術に依存して、前記動力車両(2)の少なくとも1つのアシストシステムを選択的に解放または遮断することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記動力車両(2)の前記表示装置および/または前記動力車両(2)の前記通信モジュールを、前記表示装置および/または前記通信モジュールが前記ドライバー(9)に検出した前記コーナリング技術に関する情報を提供するように制御することを特徴とする、請求項6および7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
動力車両(2)と、前記動力車両(2)に配置される少なくとも1つの車両通信手段(3)と、前記動力車両(2)とは別個に操作可能で、前記動力車両(2)のドライバー(9)に付設される少なくとも1つのユーザーデバイス(8)と、評価装置(13)とを備えたシステムにおいて、前記車両通信手段(3)は、前記ユーザーデバイス(8)によって送出された信号を受信するために形成され、前記評価装置(7)は、受信した前記信号に依存して、前記ドライバー(9)の現在の運転位置(PIst)と前記ドライバー(9)の目標基準運転位置(PRef)とのずれを検出するために形成されているシステム。
【請求項10】
前記動力車両(2)を制御するための制御装置(7)が設けられ、前記制御装置(7)は、検出した前記ずれに依存して前記動力車両(2)を制御するために形成されていることを特徴とする、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
少なくとも1つの他の車両通信手段(4)が設けられ、前記車両通信手段(3)と前記他の車両通信手段(4)とが互いに間隔をもって前記動力車両(2)に配置されていることを特徴とする、請求項9および10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記車両通信手段(3,4)のうちの少なくとも1つがブルートゥース・ロー・エネルギー・モジュール(BLEモジュール)として形成されていること、および/または、前記車両通信手段(3,4)のうちの少なくとも1つが超広帯域モジュール(UWBモジュール)として形成されていることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記ユーザーデバイス(8)がスマートフォンとして、または、スマートウォッチとして形成されていることを特徴とする、請求項9~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記ユーザーデバイス(8)が前記ドライバー(9)用衣類(10)の中に組み込まれていることを特徴とする、請求項9~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
少なくとも1つの他のユーザーデバイスが設けられ、前記ユーザーデバイスと前記他のユーザーデバイスとがそれぞれ前記衣類の異なる袖の中に組み込まれていることを特徴とする、請求項14に記載のシステム。
【国際調査報告】