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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】感染のインビトロ診断法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/542 20060101AFI20240308BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240308BHJP
   C12Q 1/37 20060101ALI20240308BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240308BHJP
   C07K 2/00 20060101ALN20240308BHJP
【FI】
G01N33/542 A
G01N21/64 F
C12Q1/37
C12M1/34 E
C07K2/00
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023557697
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 NL2022050149
(87)【国際公開番号】W WO2022197186
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】2027785
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523356868
【氏名又は名称】オリジナル ジー ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】ORIGINAL G B.V.
【住所又は居所原語表記】Hoekstraat 14 9712AN Groningen (NL)
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 満
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】ガゼンダム,ヨースト アレクサンダー クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】バートン,マシュー フランシス
【テーマコード(参考)】
2G043
4B029
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043CA03
2G043DA02
2G043EA01
2G043KA01
2G043KA02
4B029AA07
4B029BB16
4B029FA12
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ36
4B063QR48
4B063QS28
4B063QX02
4H045AA30
4H045AA40
4H045BA12
4H045BA70
4H045DA89
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、体液試料中の感染をインビトロ診断する方法、試薬及び炭水化物を含む凍結乾燥ビーズ、酵素アッセイにおける試薬及び炭水化物を含む凍結乾燥ビーズの使用、体液中の感染の存在を検出するためのシステム及び体液中の感染の存在を検出するためのキットに関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を用いて体液試料中の感染をインビトロ診断する方法であって、式中、
[a]は、発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、吸収波長650~900nmの非蛍光剤であり、
[b]は、切断部位を含むペプチドであり、前記切断部位は細菌バイオマーカーに対して特異的であり、
前記方法が、
i) 体液、好ましくはヒト体液の試料と試料容器内の前記試薬とを接触させる工程と、
ii) 工程i)の前記容器内の前記試料からの650~900nmの範囲の蛍光発光をモニターする工程であって、650~900nmの範囲の蛍光発光の増加が、前記体液試料中の感染の存在を示す、該工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記体液試料は、羊水、尿、漿液、滑液、腹膜透析液、精液、皮脂及び脳脊髄液からなる群から選択され、好ましくは、前記体液は、滑液、腹膜透析液及び脳脊髄液からなる群から選択され、より好ましくは、前記体液は、滑液及び腹膜透析液からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
[b]:([a]+[c])の質量比が少なくとも1:2、好ましくは[b]:([a]+[c])の質量比が少なくとも1:3、より好ましくは[b]:([a]+[c])の質量比が少なくとも1:4、さらにより好ましくは[b]:([a]+[c])の質量比が少なくとも1:5である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記試薬が、一般式[a]-[リンカー-[b]-[-リンカー-[c]を有し、式中、nが0、1又は2であり、mが0、1又は2であり、[リンカー]及び[リンカー]が、任意に置換されたヒドロカルビル基及び非タンパク質分解性ヒドロカルビル基の群から独立して選択され、好ましくはnが0又は1であり、mが1であり、リンカーが非タンパク質分解性ヒドロカルビル基である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、前記試料を第一試薬及び第二試薬と接触させる工程を含み、前記第一試薬が一般式[a]-[b]-[c](I)を有し、及び[b]が切断部位(b’)を含むペプチドであり、前記第二試薬が式[a]-[d]-[c](III)を有し、式中[d]が切断部位(d’)を含むペプチドであり、前記切断部位d’は前記切断部位b’とは異なる、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
工程i)が、希釈剤を添加する工程を含み、好ましくは、前記希釈剤が、MOPS、リン酸塩、クエン酸塩、HEPES TRIS-HCl、リン酸緩衝生理食塩水からなる群から選択される緩衝剤を含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
試料に対する希釈剤の容積比が0.1~100の範囲、より好ましくは0.5~75の範囲、さらにより好ましくは1~50の範囲である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記試料、及び任意で希釈剤の添加後の前記試料容器内の試薬の濃度が、0.01~10uM、好ましくは0.02~8uM、より好ましくは0.05~5uM、さらにより好ましくは0.1~2.5uMの範囲にある、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
発光波長650~900nmの前記蛍光剤が、シアニン部分、好ましくはスルホ-シアニン部分を含み、吸収波長650~900nmの前記非蛍光剤が、シアニン部分、好ましくはスルホ-シアニン部分を含む、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
700~850nmの範囲、より好ましくは750~850nmの範囲の蛍光発光の増加が感染の指標である、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記細菌バイオマーカーが、細菌膜結合プロテアーゼ、細菌膜結合トランスペプチダーゼ、細胞内細菌プロテアーゼ又は細胞外細菌プロテアーゼであり、より好ましくは前記細菌バイオマーカーが細菌膜結合トランスペプチダーゼ又は細胞外細菌プロテアーゼである、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記切断部位が、セレウス菌(Bacillus cereus)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(Escherichia coli)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される細菌種に対する細菌バイオマーカーに対して特異的であり、好ましくは、前記切断部位が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)及びセレウス菌(Bacillus cereus)に対して特異的であり、より好ましくは、前記切断部位が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対して特異的である、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
[b]が3~8個のアミノ酸を含み、より好ましくは3~7個のアミノ酸を含み、さらにより好ましくは3~6個のアミノ酸を含む、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
[b]は一般式Xaa1,Xaa2,Xaa3を有し、式中、
aa1は、小さな疎水性のアミノ酸であり、好ましくはXaa1は、アラニン、グリシン、ロイシン、バリン、ノルロイシン、ノルバリン、イソロイシン、イソバリン、アロイソロイシンからなる群より選択され、
aa2は、好ましくは、小さな又は芳香族の疎水性アミノ酸であり、好ましくはXaa2は、アラニン、グリシン、ロイシン、バリン、ノルロイシン、ノルバリン、イソロイシン、イソバリン、アロイソロイシン及びフェニルアラニンからなる群より選択され、
aa3は、アラニン、グリシン、ロイシン、バリン、ノルロイシン、ノルバリン、イソロイシン、イソバリン、アロイソロイシンからなる群より選択され、より好ましくは、Xaa3は、アラニン、グリシン、ロイシン、バリンからなる群より選択される、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記試料を容器内の前記試薬と接触させ、前記試薬によって発せられる蛍光を、前記容器を受け入れるように適合させたハンドヘルド又はベンチトップ蛍光分光計によってモニターする、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記試薬が表面に付着していない、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記試料に、前記試薬と接触させる前又は接触させた後のいずれかにおいて、20~40℃の温度範囲で細菌培養のエキソビボ工程を施さない、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
工程i)の前記試薬が炭水化物を含む凍結乾燥ビーズの形態で提供される、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記ビーズが、ビーズ炭水化物の重量に対して5~95重量%含み、ビーズの総重量に対して好ましくは10~90重量%、より好ましくは15~85重量%、さらにより好ましくは20~80重量%の炭水化物を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記炭水化物が、ポリオール、単糖類、二糖類、多糖類及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
炭水化物及び構造[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を含む凍結乾燥ビーズであって、式中、
[a]は、発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、吸収波長650~900nmの非蛍光剤であり、
[b]は、切断部位を含むペプチドであり、前記切断部位はバイオマーカー、好ましくは細菌バイオマーカーに対して特異的である、凍結乾燥ビーズ。
【請求項22】
前記ビーズが、ビーズ炭水化物の重量に対して5~95重量%含み、ビーズの総重量に対して好ましくは10~90重量%、より好ましくは15~85重量%、さらにより好ましくは20~80重量%の炭水化物を含む、請求項21に記載の凍結乾燥ビーズ。
【請求項23】
前記炭水化物が、ポリオール、単糖類、二糖類、多糖類及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項21又は22に記載の凍結乾燥ビーズ。
【請求項24】
前記ポリオールが、(2R,3S)-ブタン-1,2,3,4-テトロール(エスリトール)、4-O-β-D-ガラクトピラノシル-D-グルシトール(ラクチトール)、(2S,3S,4S,5S)-ヘキサン-1,2,3,4,5,6-ヘキソール(L-マンニトール)、(2R,3R,4R,5R)-ヘキサン-1,2,3,4,5,6-ヘキソール(D-マンニトール)、4-O-α-D-グルコピラノシル-D-グルシトール(マルチトール)、(2R,3R,4R,5S)-ヘキサン-1,2,3,4,5,6-ヘキソール(ソルビトール)、(2R,3r,4S)-ペンタン-1,2,3,4,5-ペントール(キシリトール)、ポリエチレングリコール及びそれらの組合せからなる群より選択され、好ましくは、前記ポリオールは、(2S,3S,4S,5S)-ヘキサン-1,2,3,4,5,6-ヘキソール(L-マンニトール)、(2R,3R,4R,5R)-ヘキサン-1,2,3,4,5,6-ヘキソール(D-マンニトール)及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項21~23のいずれかに記載の凍結乾燥ビーズ。
【請求項25】
前記単糖類がグルコース、フルクトース、ガラクトース及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項21~24のいずれかに記載の凍結乾燥ビーズ。
【請求項26】
前記二糖類が、スクロース、マルトース、ラクトース、トレハロース及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項21~25のいずれかに記載の凍結乾燥ビーズ。
【請求項27】
前記多糖類が、アルギン酸塩、キトサン、ヒアルロン酸、セルロース誘導体、デキストラン及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項21~26のいずれかに記載の凍結乾燥ビーズ。
【請求項28】
前記試薬が、請求項21~27のいずれか1以上に記載の試薬である、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
炭水化物及び構造[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を含む凍結乾燥ビーズの酵素アッセイにおける使用であって、式中、
[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[b]は切断部位を含むペプチドであって、前記切断部位はバイオマーカー、好ましくは細菌バイオマーカーに対して特異的であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、吸収波長650~900nmの非蛍光剤である、使用。
【請求項30】
体液試料中の感染をインビトロ診断するためのキットであって、
a) 構造[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を含む容器であって、式中、
[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[b]は切断部位を含むペプチドであり、前記切断部位は細菌バイオマーカーに対して特異的であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、吸収波長650~900nmの非蛍光剤である、該容器と、
b) 請求項1~20の方法を実施するための一連の説明書と、
c) 任意に、希釈剤を含有する容器と、を含むキット。
【請求項31】
前記試薬及び前記希釈剤が、容器の2つの区画に存在し、好ましくは、前記区画が圧力活性化可能な膜によって分離されている、請求項30に記載のキット。
【請求項32】
前記試薬が、請求項21~27のいずれか1以上に記載のものである、請求項30又は31に記載のキット。
【請求項33】
a)構造[a]-[b]-[c](I)であって、
[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は蛍光剤の発光を消光するための吸収波長が650~900nmの非蛍光剤であり、
[b]は切断部位を含むペプチドであり、切断部位は細菌のバイオマーカーに特異的である、前記構造[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を含む容器と、
b)容器を受け入れて、試薬を用いて滑液、腹水又は脳脊髄液の試料の存在下で、試薬から発せられる蛍光シグナルを監視するように構成された装置を有するシステムであって、請求項1~20に記載の方法を実施するように構成されたシステム。
【請求項34】
前記システムが、ポイントオブケアシステム又は患者ビサイドシステムである、請求項33に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液試料中の感染をインビトロ診断する(又は、体外診断する/in vitro diagnosing)方法、試薬及び炭水化物を含む凍結乾燥ビーズ、酵素アッセイにおける試薬及び炭水化物を含む凍結乾燥ビーズの使用、体液中の感染の存在を検出するためのシステム、及び体液中の感染の存在を検出するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
体液試料中の感染を検出するための改良された診断法に対する臨床的必要性が増加している。抗生物質耐性の上昇に伴い、バイオフィルムが発生する前の早期段階で感染を診断することがますます重要になってきている。バイオフィルムは、細胞が互いに付着し、しばしば医療機器の表面にも付着する微生物の任意の栄養共生体(syntrophic consortium)を含む層である。このような層は抗生物質で治療するのが難しい。感染の早期診断を可能にすることで、バイオフィルム形成を遅らせ、抗生物質治療の効果を向上させ得る。
【0003】
迅速な感染診断が特に必要とされるのは、埋め込み型医療機器の分野である。例えば、ジョイント置換術に伴う感染症。世界で年間約150万件の人工股関節全置換術(total hip arthroplasty-THA)を行っている。これは今後10年以内に世界で年間約300万人に増加する可能性が高い。さらに、膝、肩、足、足首、手、手首、肘、頭蓋-顎顔面及び歯科などの他のタイプのインプラント及びジョイント置換も増加しつつある。世界的には、THAの感染率は1~16%であり、典型的には米国及びヨーロッパでは感染率は3~12%であるが、高齢患者群ではTHAの感染率は24%に上昇する。感染症の治療や再置換術が難しくなることを避けるために、埋め込み型医療機器の感染の術後早期診断が望まれる。
【0004】
さらに、人工関節周囲感染などの感染の存在を同定することを目的としたSynovaure(登録商標)(Zimmer Biomet)などの既知の検査では、感染に対する宿主(ヒト)の免疫系応答のバイオマーカーが測定されるため、感染(細菌)を直接検出することはない。宿主(ヒト)免疫系反応に向けた間接試験のマイナス面は、急性期(手術後最初の数週間)では、宿主(ヒト)免疫系炎症反応及び宿主(ヒト)免疫系感染反応との鑑別が不可能であることである。
【0005】
同様に、脊椎に埋め込まれた医療機器も感染しやすい。術後脊椎感染は、短期的にも長期的にも脊椎手術後の破壊的な合併症となりうる。感染により、患者は偽ジョイント、慢性疼痛、手術室への帰室、有害な神経学的後遺症、長期転帰の悪化、さらには死亡のリスクが高くなる。実施されている脊椎手術の種類によって、感染の発生率には大きなばらつきがあり、報告されている範囲は最大18%である。頚椎後方手術は、腰椎後方手術や脊椎前方手術に比べ感染率が高い。
【0006】
迅速な感染診断が必要な別の臨床グループは、腹膜透析を受けている患者である。腹膜透析(PD)は血液透析よりも有利である。例えば、腹膜透析の提供は一般に費用が安く、マイナスの副作用(悪心、嘔吐、痙攣、体重増加など)が少ない。しかし、PDの欠点は腹膜炎である。腹膜炎は腹膜透析の一般的な合併症である。重大な病的状態、カテーテルの喪失、血液透析への移行、限外濾過の一過性喪失、永続的な膜損傷の可能性、及びときに死亡と関連している。腹膜炎は、腹膜透析に直接関連することもあれば、透析に関連しない腹腔内又は全身のプロセスに続発することもある。ほとんどの症例は腹膜透析関連である。腹膜透析関連腹膜炎は、交換時の病原性皮膚細菌による汚染(すなわち、接触汚染)、又は出口部又はトンネル感染のいずれかによる。続発性腹膜炎は、胃腸管の基礎的な病理により、またときに(まれではあるが)血行性の拡がり(すなわち、歯科処置後)により引き起こされる。続発性腹膜炎の原因には、胆のう炎、虫垂炎、憩室破裂、重度の便秘の治療、腸穿孔、腸管虚血、嵌頓ヘルニアなどがある。腹膜炎の迅速な診断は、できるだけ早期に抗生物質治療を開始するために重要である。
【0007】
現在、体液試料は、複雑で、時間のかかる分析技術又は微生物学的アッセイの対象とされる必要があり、これは、迅速な診断がケアの現場で実施できないことを意味する。側方流装置の使用は、試料の不均質性及び外傷性サンプルにおける血液による汚染によって妨げられる。
【0008】
WO2016/076707には、第一切断部位の切断により、第一蛍光剤の発光が検出できるように、対象物表面被膜からの第一非消光剤の放出が同時に生じる対象物表面被膜が開示されている。WO2016/076707は、インビボ(in vivo)で感染を検出するための不均一なシステムを教示している。WO2016/076707は、インビトロ診断法に関係しない。
【0009】
WO2018-224561は、以下の工程を含む食品腐敗微生物を検出する方法を教示する:
a) 第一pH調整剤を食品サンプルに添加して、pH1~5の範囲のpHを有する食品サンプルを提供し、pH調整済食品サンプル中に存在する任意の固体沈殿物を分離して、pH調整済食品サンプルを提供し、第二pH調整剤をpH調整済食品サンプルに添加して、工程b)において使用されるpH6.5~9の範囲のpHを有する食品サンプルを提供する工程、及び、
b) 食品サンプルとペプチド基質とを接触させる工程。
WO2018-224561では、食品の腐敗は「食品の官能特性における不満足な変化」と定義されている。WO2018-224561は、体液のインビトロ診断法とは異なる分野に関するものである。
【0010】
WO2018-085895は、UHT及び生乳中のプロテアーゼを検出するための化学発光BRETベースのセンサーを開示しており、その実施例は、UHT及び生乳のみを示す。検出されたプロテアーゼは食品腐敗微生物シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)から抽出される。WO2018-085895は、食品腐敗の分野、特に乳汁中のシュードモナス・フルオレッセンスを検出するためのバイオセンサーに関するものである。さらに、WO2018-085895は、体液のインビトロ診断法とは異なる分野に関連し、波長410/515nmにおけるRLuc2/Clz400a/GFP2システムを用いた検出を教示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
体液試料中の感染を同定し、好ましくはケアの現場で実施することができる迅速なインビトロ診断法が求められている。さらに、表面効果なしに実施できる迅速なインビトロ診断法が求められている。
【0012】
また、血液で汚染された試料で実施できる迅速なインビトロ診断法がある。
【0013】
特に、手術後の急性期の滑液、腹膜液又は脳脊髄液試料の試料において、人工関節感染、腹膜透析関連腹膜炎及び/又は脳脊髄関連感染の存在を同定し得る迅速な診断方法も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、一般式[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を用いて、体液試料中の感染をインビトロ診断する方法を提供し、式中、
[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、650~900nmの吸収波長を有する非蛍光剤であり、
[b]は切断部位を含むペプチドであり、切断部位は細菌バイオマーカー(bacterial biomarker)に特異的であり、
上記方法が以下の工程を含む:
i) 体液、好ましくはヒト体液の試料と試料容器内の試薬とを接触させる工程、及び
ii) 工程i)の試料からの650~900nmの範囲の蛍光発光をモニターする工程であって、650~900nmの範囲の蛍光発光の増加が、体液試料における感染の存在を示す、該工程。
【0015】
本明細書で定義する方法によれば、体液試料中の感染の迅速なインビトロ診断は、体液試料の存在下で試薬からの650~900nmの範囲の蛍光発光を分析することによって可能となる。標的細菌バイオマーカーが体液中に存在する場合、細菌バイオマーカーは、試薬中の切断部位を認識して切断し、蛍光剤と非蛍光剤との間の距離を増加させ、その結果、蛍光シグナルが発せられ、これが適当な検出器によって検出され得る。
【0016】
驚くべきことに、本方法は、例えば、細菌濃縮工程によって細菌細胞総数(count)を濃縮する必要なく、体液試料中で直接実施し得ることが見出された。その結果、本方法は、試薬と試料を接触させた後、例えば30分以内、好ましくは15分以内に細菌感染を迅速に検出し得る。
【0017】
本方法のさらなる利点は、本方法が試料中で直接実行され得ること、すなわち、紫外線波長に基づく検出方法を妨害する赤血球のような成分の存在が、本方法に干渉を引き起こさないので、試料のクリーンアップ工程なしで実行され得ることである。
【0018】
第二態様において、炭水化物及び構造[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を含む凍結乾燥ビーズが提供され、式中、
[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、650~900nmの吸収波長を有する非蛍光剤であり、
[b]は、切断部位を含むペプチドであり、切断部位は、細菌バイオマーカーに対して特異的である。
【0019】
第三態様において、炭水化物及び構造[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を含む凍結乾燥ビーズの酵素アッセイにおける使用が提供され、式中、
[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、650~900nmの吸収波長を有する非蛍光剤であり、
[b]は、切断部位を含むペプチドであり、切断部位は、バイオマーカー、好ましくは細菌バイオマーカーに特異的である。
【0020】
第四態様において、炭水化物及び構造[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を含む凍結乾燥ビーズを製造する方法が提供され、
[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、吸収波長が650~900nmの非蛍光剤であり、
[b]は切断部位を含むペプチドであり、切断部位は細菌バイオマーカーに特異的であり、
以下の工程を含む前記方法:
i) 試薬の水溶液と炭水化物とを混合して、炭水化物を含む試薬の水溶液を提供する工程、及び
ii) 炭水化物を含む試薬の水溶液を凍結乾燥して、試薬及び炭水化物を含む乾燥ビーズを得る工程。
【0021】
第五態様において、以下を含む、体液におけるインビトロ感染用キットが提供される:
a) [a]-[b]-[c](I)構造を有する試薬を含む容器であって、式中、
[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、吸収波長が650~900nmの非蛍光剤であり、
[b]は切断部位を含むペプチドであり、切断部位は細菌バイオマーカーに特異的である、該容器、
b) 本明細書に記載の方法を実施するための一連の説明書、及び
c) 必要に応じて、希釈剤を入れた容器。
【0022】
第6の態様において、
a) 構造[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を含む容器であって、式中、
[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、吸収波長が650~900nmの非蛍光剤であり、
[b]は切断部位を含むペプチドであり、切断部位は細菌バイオマーカーに特異的である、該容器と、
b) 上記容器を受け入れ、試薬を用いて体液の試料の存在下で(又は、試薬とともに体液の試料の存在下で)、試薬から発せられる蛍光シグナルをモニターするように構成された装置と、を含むシステムであって、本明細書に記載の方法を実施するように構成されているシステム。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書中で使用される用語「被験体」とは、感染のリスクがあるか、又は感染が疑われる動物又はヒトの個体を意味する。用語「患者」、「被験体」、「個体」などは、ここでは互換的に使用され、本明細書に記載された方法に適用可能な任意の動物又はヒトを指す。ある非限定的な実施形態では、患者、被験体又は個体はヒトである。
【0024】
本明細書で使用される「体液試料」という用語は、流体状態の、被験体から単離された生体物質を意味する。
【0025】
本明細書で使用される用語「バイオマーカー」とは、細胞又は微生物に結合しているか、又はそれらから排出される酵素、トランスペプチダーゼ、ペプチダーゼ又はプロテアーゼを意味し、バイオマーカーは、特定の分析物又は被験体の状態を示すものであり、例えば、バイオマーカーは、特定の細菌の存在を示すか、又は特定の臨床状況を示すものであり、例えば、臨床状況は、感染、病態又は代謝状態であり得る。
【0026】
本明細書中で使用される用語「細菌バイオマーカー」とは、細菌又は細菌群に結合し、又はそれらから排泄されるトランスペプチダーゼ、ペプチダーゼ又はプロテアーゼを意味する。細菌バイオマーカーは、体液、好ましくは人工関節周囲感染、腹膜透析関連腹膜炎及び/又は脳脊髄関連感染における感染の存在を示す。
【0027】
本明細書中で使用される用語「プロテアーゼ」及び「ペプチダーゼ」は、細菌中に存在するか、細菌によって分泌されるか、又は細菌の膜に存在する、アミノ酸モチーフを切断し得るタンパク質を意味する。
【0028】
本明細書中で使用される用語「トランスペプチダーゼ」とは、第一タンパク質のアミノ酸モチーフを切断し、切断されたアミノ酸モチーフを第二タンパク質に共有結合させ得る、細菌の膜に存在するタンパク質を意味する。
【0029】
本明細書中で用いる「ペプチド」という用語は、少なくとも3個のアミノ酸を含む試薬を意味する。好ましくは、ペプチドは20個以下のアミノ酸を含む。使用されるアミノ酸は、任意のアミノ酸であってよく、好ましくは、天然に存在するアミノ酸の群又は合成アミノ酸の群から選択され、特に天然アミノ酸の誘導体である。
【0030】
本明細書中で使用される「切断部位」という用語は、特定の化合物によって切断されるアミノ酸モチーフを意味し、それによって切断部位は1つ以上のアミド結合を含む。好ましくは、切断部位は3個のアミノ酸を含む。好ましくは、切断部位はプロテアーゼ又はトランスペプチダーゼの作用によって切断される。
【0031】
本明細書中で用いられる「試料」又は「生物学的試料」とは、個体から単離された生体物質を意味する。生物学的試料は、所望のバイオマーカーを検出するのに適した任意の生体物質を含み得、個体から得られた細胞性及び/又は非細胞性物質を含み得る。
【0032】
本明細書中で使用される用語「モニタリング(又は、監視)」、「計測」、「測定」、「検知」又は「検出」は、そのような物質の定性的又は定量的な濃度レベルの導出を含めて、臨床又は被験体由来の試料中の所与の物質の存在、不在、数又は量(有効量であり得る)を評価すること、又はそうでなければ被験体の臨床パラメータの値又は分類を評価することを意味する。
【0033】
本明細書中で使用される用語「感染」とは、感染の臨床的徴候を示す被験体を示す臨床的に適切な量の細菌を意味する。
【0034】
本明細書中で使用される「臨床的に適切な量の細菌」とは、細菌コロニー数が0.1CFU/mLを超える、1CFU/mLを超える、1x10CFU/mLを超える、1x10CFU/mLを超える、好ましくは1x10CFU/mLを超える、より好ましくは1x10CFU/mLを超える、さらに好ましくは1x10CFU/mL、さらに好ましくは1x10CFU/mL、さらにより好ましくは1x10CFU/mL、さらにより好ましくは1x10CFU/mLである。
【0035】
第一態様において、一般式[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を用いて体液試料中の感染をインビトロ診断する方法が提供され、式中、
[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、650~900nmの吸収波長を有する非蛍光剤であり、
[b]は切断部位を含むペプチドであり、切断部位は細菌バイオマーカーに特異的であり、
前記方法が以下の工程を含む:
i) 体液、好ましくはヒト体液の試料と試料容器内の試薬とを接触させる工程、及び
ii) 工程i)の容器内の試料からの650~900nmの範囲の蛍光発光をモニターする工程であって、650~900nmの範囲の蛍光発光の増加が、体液試料中の感染の存在を示す、該工程。
【0036】
好ましくは、体液試料は、歯肉液、羊水、尿、漿液、滑液、腹膜透析液、精液、皮脂及び脳脊髄液からなる群から選択され、好ましくは、体液は、滑液、腹膜透析液及び脳脊髄液からなる群から選択され、より好ましくは、体液は、滑液及び腹膜透析液からなる群から選択される。
【0037】
好ましくは、試料は、脳脊髄液、滑液及び腹膜液からなる群から選択される。
【0038】
好ましくは、体液試料は、胸水、心膜液、腹膜液及びそれらの組合せからなる群から選択される漿液である。
【0039】
本発明の文脈において、「漿液」とは、胸膜腔、心膜腔、及び腹膜腔に存在する液体を意味する。これらの腔は、それぞれ漿膜と呼ばれる2つの膜で裏打ちされている(lined)。一方の膜は腔壁(壁膜)を裏打ちし、もう一方は腔内の臓器(内臓膜)を覆っている。膜の間の液体は漿液と呼ばれる。
【0040】
漿液の試料は、それぞれの腔から針吸引により採取する。これらの吸引手技は、胸腔穿刺(胸膜)、心膜穿刺(心膜)、及び穿刺(腹膜)と呼ばれる。
【0041】
漿液は血漿の限外濾液として形成されることが知られている。正常な状態では、血清蛋白による膠質浸透圧は膜の両側の毛細血管で同じである。したがって、頭頂毛細血管と内臓毛細血管の静水圧によって、体液が膜の間に入る。血漿限外濾液の濾過によって毛細血管内の膠質浸透圧が上昇し、毛細血管内への体液の再吸収が促進される。これにより、漿液が連続的に交換され、膜間の正常な体液量が維持される。漿液の例は、胸水、心膜液及び腹膜液である。
【0042】
好ましくは、本明細書に記載される方法は、漿液中の感染のインビトロ診断に関する。
【0043】
胸壁を覆う壁側胸膜と肺を覆う臓側胸膜の間に位置する胸膜腔内に認められる体液は、胸水と呼ばれる。好ましくは、本明細書に記載される方法は、胸水中の感染のインビトロ診断に関するものであり、より好ましくは、本明細書に記載される方法は、細菌性肺炎及び/又は結核のインビトロ診断に関するものである。
【0044】
心膜液は心臓周囲の漿膜(又は、漿膜性心膜/pericardial serous membrane)の間にみられる。心膜液が感染することがある。好ましくは、本明細書に記載された方法は、心膜液における感染のインビトロ診断、より好ましくは細菌性心内膜炎及び心膜炎の診断に関する。
【0045】
腹膜の間の液体は腹水と呼ばれ、その液体は一般に腹水又は腹膜液と呼ばれる。好ましくは、本明細書に記載される方法は、腹水(腹膜液)中の感染のインビトロ診断、より好ましくは腹膜炎の診断に関する。
【0046】
ある状況では、腹膜液は、医師に容易になじみのある従来の経腹腔的技術による腹膜洗浄又は腹腔洗浄によって供給される。
【0047】
本願の文脈において、「腹膜透析液」とは、連続携行式腹膜透析(CAPD)又は連続循環式腹膜透析(CCPD;自動腹膜透析(APD)又は他の類似技術としても知られる)として知られる技術の一部として腹膜(腹部)腔に注入された液体を意味する。これらの技術では、代謝性老廃物や過剰な電解質などの物質が、透析膜として腹膜を用いて、一般に滞留時間と呼ばれる期間を経て、体内から腹腔に注入された体液中に移行する。透析用の液体は、経腹腔的接続によって腹腔内に導入される。腹腔へのこの人工接続の導入により、これらの患者は、一般的に腹膜炎と呼ばれる、増加したリスク又は腹膜炎症又は腹膜感染に曝される。
【0048】
好ましくは、本明細書に記載される方法は、腹膜透析液中の感染のインビトロ診断、より好ましくは腹膜透析に関連する腹膜炎の診断に関する。
【0049】
腹膜透析液試料は、任意の便利な手段によって提供し得る。患者がCAPD患者の場合、腹腔から老廃物(使用済)液を除去する際に、透析液の試料を採取し得る。あるいは、腹膜透析液試料は、規定の滞留時間が経過した後に、腹膜透析液を収集するための廃棄バッグのサンプルポートを介して試料を取り出すことによって提供され得る。このような廃棄バッグから試料を採取することは、標準的な方法を用いて行うことができる。
【0050】
本願の文脈において、「滑液」とは、対面する関節表面の軟骨と滑膜との間の関節の滑膜腔に見出される生体液を意味する。滑液は軟骨に栄養を供給し、関節の潤滑剤としても働くことが知られている。軟骨と滑膜の細胞は液体を分泌し、液体は潤滑し、関節表面間の摩擦を減らす。
【0051】
好ましくは、滑液はヒト又は動物被験体由来であり、より好ましくはヒト被験体由来である。
【0052】
典型的なヒト滑液は、溶解したタンパク質、グルコース、ミネラルイオン、ホルモンなどに加えて、約85%の水を含む。タンパク質、アルブミン及びグロブリンは、典型的には滑液中に存在し、関節領域の潤滑に重要な役割を果たすと考えられている。他のタンパク質もまたヒトの滑液中に見出され、例えばα-1-酸性糖タンパク質(AGP)、α-1-アンチトリプシン(A1AT)及びルブリシンのような糖タンパク質が含まれる。ヒトの滑液中に存在するもう一つの化合物はヒアルロン酸である。ヒアルロン酸もまた、潤滑に役割を果たすと考えられている。ヒト滑液には、多糖類やリン脂質などの他の化合物がさらに含まれる。リン脂質であるジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)もヒト滑液中に存在する。DPPCは一般に界面活性剤とみなされており、関節の潤滑にも役割を果たしていると考えられている。
【0053】
滑液の細菌汚染は、化膿性関節炎を引き起こすことがある。好ましくは、本明細書に記載される方法は、滑液中の感染のインビトロ診断、より好ましくは、化膿性関節炎の診断に関する。
【0054】
関節置換術の存在下で滑液が細菌汚染された場合、これが人工関節周囲の感染につながる可能性がある。好ましくは、本明細書に記載される方法は、滑液(腹水)における感染のインビトロ診断、より好ましくは腹膜炎、人工関節周囲感染(PJI)の診断に関する。
【0055】
本発明の文脈において、「精液」は、雄性生殖器官の一片(section)を意味する。精液に関連する感染症は細菌性前立腺症である。好ましくは、本明細書に記載される方法は、精液中の感染のインビトロ診断、より好ましくは細菌性前立腺の診断に関する。
【0056】
羊水とは、胎児を取り囲む液体のことである。羊水に関連する感染症は羊膜内感染である。好ましくは、本明細書に記載される方法は、羊水中の感染のインビトロ診断、より好ましくは羊膜内感染の診断に関する。
【0057】
尿はヒト及び他の多くの動物における代謝の液体副産物である。尿は腎臓から尿管を通って膀胱に流れる。排尿の結果、尿道を介して尿が体外に排出される。尿中の細菌感染は、典型的には尿路感染症(UTI)と呼ばれる。好ましくは、本明細書に記載される方法は、尿中の感染のインビトロ診断、より好ましくは尿路感染の診断に関する。
【0058】
脳脊髄液は、クモ膜と軟膜の間の空間を満たす透明な水様の液体である。好ましくは、本明細書に記載される方法は、脳脊髄液における感染のインビトロ診断に関する。
【0059】
好ましくは、体液は歯肉滲出液である。好ましくは、本明細書に開示された方法は、歯肉炎のインビトロ診断に有用である。
【0060】
好ましくは、一般式[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を用いて、人工関節周囲感染、腹膜透析関連腹膜炎及び/又は脳脊髄関連感染をインビトロ診断する方法が提供され、式中、
[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、650~900nmの吸収波長を有する非蛍光剤であり、
[b]は切断部位を含むペプチドであり、切断部位は細菌バイオマーカーに特異的であり、
前記方法が、以下の工程を含む:
i) 滑液、腹水又は脳脊髄液の試料と試料容器内の試薬とを接触させる工程、及び
ii) 工程i)の試料からの650~900nmの範囲の蛍光発光をモニターする工程であって、650~900nmの範囲の蛍光発光の増加が、人工関節周囲感染、腹膜透析関連腹膜炎及び/又は脳脊髄関連感染の存在を示す、該工程。
【0061】
従って、一般式[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を用いて、被験体における腹膜透析関連腹膜炎をインビトロ診断する方法が提供され、
式中、
[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、650~900nmの吸収波長を有する非蛍光剤であり、
[b]は切断部位を含むペプチドであり、切断部位は細菌バイオマーカーに特異的であり、
前記方法が、以下の工程を含む:
i) 腹腔液の試料と試料容器内の試薬とを接触させる工程、及び
ii) 工程i)の試料からの650~900nmの範囲の蛍光発光をモニターする工程であって、650~900nmの範囲の蛍光発光の増加が、腹膜透析関連腹膜炎の存在を示す、該工程。
【0062】
本明細書に記載される方法のさらに別の利点は、腹膜透析関連腹膜炎が、腹膜透析液の試料からの650~900nmの範囲の蛍光発光をモニタリングすることによって診断され、前記方法を、必要な滞留時間後に採取された腹膜透析液上で直接実施することが可能となることである。
【0063】
細菌バイオマーカーによる切断部位の切断によって発生される蛍光発光に関連する利点は、測定された蛍光発光が細菌感染を示すことである。現在の臨床現場では、患者又は医療従事者が細菌の存在をチェックするための標準的な方法は、透析廃液が濁っているかどうかを観察することである。しかし、白血球数や赤血球数の上昇など、腹膜透析液中の細胞成分又は非細胞成分のいずれかの濃度が上昇することによっても、混濁した透析廃液が引き起こされる可能性があるため、いわゆる混濁バッグ試験(cloudy bag test)は偽陽性結果を生じやすい。したがって、本明細書に記載する方法は、650~900nmの範囲の蛍光発光が細菌バイオマーカーの存在を示すので、腹膜透析に関連する細菌感染(腹膜炎)と炎症(非感染)病態とを区別し得る。
【0064】
従って、一般式[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を用いて、被験体における人工関節周囲感染をインビトロ診断する方法が提供され、式中、
[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、650~900nmの吸収波長を有する非蛍光剤であり、
[b]は切断部位を含むペプチドであり、切断部位は細菌バイオマーカーに特異的であり、
前記方法が以下の工程を含む:
i) 滑液の試料と試料容器を接触させる工程、及び
ii) 工程i)の試料からの650~900nmの範囲の蛍光発光をモニターする工程であって、650~900nmの範囲の蛍光発光の増加が、人工関節周囲感染の存在を示す、該工程。
【0065】
本明細書に記載された方法のさらに別の利点は、滑液の試料からの650~900nmの範囲の蛍光発光をモニタリングすることによって人工関節周囲感染を診断することができ、採取された滑液上で直接この方法を行うことが可能になることである。
【0066】
細菌バイオマーカーによる切断部位の切断によって発生される蛍光発光に関連する利点は、測定された蛍光発光が細菌感染を示すことである。PJIを検出する最新の方法は、典型的には、細菌感染に関連する炎症性バイオマーカーの上昇を検出する。しかし、炎症性バイオマーカーに基づくこのような方法は、外傷性イベント又は手術直後の期間には、この期間に炎症性バイオマーカーが上昇するため、使用できない。従って、炎症性バイオマーカーに基づく方法は、偽陽性結果を生じやすい。本明細書に記載された方法は、650~900nmの範囲の蛍光発光が細菌バイオマーカーの存在を示すので、細菌感染(PJI)と外傷又は手術(例えば、関節置換)に対する炎症とを区別し得る。その結果、本明細書に記載の方法は、外傷又は手術後、8週間以内、好ましくは6週間以内、好ましくは4週間以内、好ましくは2週間以内、好ましくは1週間以内に行うことができる。
【0067】
従って、一般式[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を用いて、被験体における脳脊髄関連感染をインビトロ診断する方法が提供され、式中、
[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、650~900nmの吸収波長を有する非蛍光剤であり、
[b]は切断部位を含むペプチドであり、切断部位は細菌バイオマーカーに特異的であり、
前記方法が以下の工程を含む:
i) 脳脊髄液試料と試料容器を接触させる工程、及び
ii) 工程i)の試料からの650~900nmの範囲の蛍光発光をモニタリングする工程であって、650~900nmの範囲の蛍光発光の増加が、脳脊髄関連感染の存在を示す、該工程。
iii) 本明細書に記載された方法のさらに別の利点は、滑液の試料からの650~900nmの範囲の蛍光発光をモニタリングすることによってCSF中の感染を診断することができ、前記方法を収集されたCSF上で直接実施することが可能になることである。
iv) 細菌バイオマーカーによる切断部位の切断によって発生される蛍光発光に関連する利点は、測定された蛍光発光が細菌感染を示すことである。CSF中の感染を検出する最新の方法は、典型的には、細菌感染に関連する炎症性バイオマーカーの上昇を検出する。しかし、炎症性バイオマーカーに基づくこのような方法は、外傷性イベント又は手術直後の期間には、この期間に炎症性バイオマーカーが上昇するため使用できない。従って、炎症性バイオマーカーに基づく方法は、偽陽性結果を生じやすい。本明細書に記載された方法は、細菌感染と外傷又は手術(例えば、脊椎インプラントの配置)に対する炎症とを区別し得る。なぜなら、650~900nmの範囲の蛍光発光は、細菌バイオマーカーの存在を示すからである。その結果、本明細書に記載の方法は、外傷又は手術後、8週間以内、好ましくは6週間以内、好ましくは4週間以内、好ましくは2週間以内、好ましくは1週間以内に行うことができる。
【0068】
本明細書に記載される方法のさらに別の利点は、滑液の試料からの650~900nmの範囲の蛍光発光をモニタリングすることによって、人工関節周囲感染が、前記方法を採取された滑液上で直接実施することを可能にすることである。
【0069】
好ましくは、体液試料は、試料の乾燥重量を基準にして、少なくとも70重量%の水、より好ましくは少なくとも85重量%の水を含む。好ましくは、体液試料は、少なくとも70重量%の水とタンパク質を含む。好ましくは、体液は、少なくとも70重量%の水とタンパク質を含み、乳清及びカゼインタンパク質が存在する場合、これらは、90:10~50:50の範囲の比で存在する。好ましくは、乳清:カゼイン比は少なくとも25:75、好ましくは少なくとも30:70、より好ましくは少なくとも40:60である。
【0070】
好ましくは、工程ii)は、700~850nmの範囲、より好ましくは750~850nmの範囲の蛍光発光をモニタリングすることを含む。好ましくは、700~850nmの範囲の、より好ましくは750~850nmの範囲の蛍光発光の増加は、感染を示す。
【0071】
好ましくは、700~850nmの範囲、より好ましくは750~850nmの範囲の蛍光発光の増加は、人工関節周囲感染、腹膜透析関連腹膜炎及び/又は脳脊髄関連感染を示す。
【0072】
発光波長650~900nmの蛍光剤は、シアニン部分(色素)が好ましい。好ましくは、650~900nmの発光波長を有する非蛍光剤は、シアニン部分(色素)である。
【0073】
好ましくは、650~900nmの発光波長を有する蛍光剤は、シアニン部分、好ましくはスルホ-シアニン部分を含み、650~900nmの吸収波長を有する非蛍光剤は、シアニン部分、好ましくはスルホ-シアニン部分を含む
【0074】
好ましくは、蛍光剤は650~900nmの発光波長を有するシアニン色素であり、非蛍光剤は650~900nmの吸収波長を有するシアニン色素である。
式I
【0075】
一実施形態では、第一蛍光剤は、式Iに示される一般式を有するシアニン色素であり、式中、Rは、H、ハロ、置換フェニル(R18-Ph-)からなる群から選択され、ここで、R18は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基又はチオール基と直接的に反応しない官能基(FG)、及び
を含む。
【0076】
好ましくは、R18は(CH19FG部分であり、ここでR19は任意に置換されたヒドロカルビル又はアミジル部分であり、FGはカルボキシル、ヒドロキシル、アミノ、又はチオール基と直接反応しない官能基であり、qは0~6の整数であり、好ましくは1~5であり、より好ましくは2~4である。R19は、好ましくは、(CHCONH(CHCONHFGからなる群から選択され、FGは、SOH基(または、基-SOH)、トリアジン、シルコオクチン(cylcooctyne)、アジド、アルキン、テトラジン、アルケン、アルケン及びテトラゾールから選択される官能基である。好ましくは、R19FGはCHCONH(CHCONH-ジベンゾシクロオクチンである。
【0077】
Xは、O、S、NH及びN-ヒドロカルビルからなる群より選択される;式中、R17は、カルボキシル、アミノ及びスルファナト(sulfanato)からなる群より選択される;R,R,R,R10は、各々、H及びヒドロカルビルからなる群より独立に選択される;R,R,R11,R12は、各々、H、ヒドロカルビル及びスルファナトからなる群より独立に選択され、又は、それらが結合する原子とともに芳香環を形成する;R,R,R13,R14は、各々、H及びヒドロカルビルからなる群より独立に選択される;R及びR15は、各々、ヒドロカルビル、(CH)qFG又は(CHLNからなる群より独立に選択され、R及びR15のうち少なくとも1つは(CH)qFGであり、ここでqは、1~20までの整数であり、FGは、カルボキシル、アミノ又はチオール基と直接的に反応しない官能基であり、ここで、pは、1~20までの整数であり、及びLNはカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基又はチオール基と反応するリンカー基(linker group)であり、R16はH又はヒドロカルビルである。好ましくは、上記官能基は、基-SOH、トリアジン、シルコオクチン、アジド、アルキン、テトラジン、アルケン、アルケン及びテトラゾールから選択される官能基を含む。
好ましくは、リンカーは、メルカプト、アミノ、ハロアルキル、ホスホラミジチル、N-ヒドロキシスクシニジルエステル、スルホN-ヒドロキシスクシニジルエステル、イソチオシアナト、ヨードアセトアミジル、マレイミジル及び活性化カルボン酸からなる群より選択される。
【0078】
好ましくは、蛍光剤は、R
(式中、XがOであり、R17がSONaである)、R,R,R,R10がヒドロカルビル、好ましくはメチル、R及びR11がHであり、かつR及びR12がH又はスルファナトであり、R,R,R13,R14がHであり、R8が(CH)qFG(式中、qが4であり、FGがスルファナトである)であり、R15が(CHLN(式中pが5であり、LNがカルボキシルである)であり、R16がHである、薬剤である。
【0079】
さらにより好ましくは、蛍光剤は、R
(式中、XがOであり、R17がSONaであり、R,R,R,R10がメチルであり、R及びR11がHであり、R及びR12がスルファナトであり、R,R,R13,R14がHであり、R8が(CH)qFG(式中、qが4であり、FGがスルファナトである)であり、R15が(CHLN(式中、pが5であり、LNがカルボキシルである)であり、R16がHである、薬剤である。
【0080】
好ましくは、蛍光剤は式IIに対応する薬剤である。
式II
【0081】
最も好ましくは、蛍光剤は、式Vに示されるような、RがR18Ph(式中、R18はN-[3-(11,12-ジデヒドロジベンゾ[b,f]アゾシン-5(6H)-イル)-3-オキソプロピル]プロパニル部分である)であり、R16はH、R及びR11はH、R及びR12はSOH、R12は(CHSOH、R,R,R13,R14はHである、薬剤である。
式III
【0082】
好ましくは、蛍光剤はスルホシアニン部分を含む。
【0083】
650~900nmの吸収波長を有する非蛍光剤は、固有の蛍光をほとんど又は全く有さない化合物であり、バックグラウンドほとんど無しで近接のフルオロフォアからの蛍光を効率的に消光し得る。一実施形態では、非蛍光剤はシアニン分子である。シアニン色素とも呼ばれるシアニン分子は、ポリメチン鎖によって結合された2つの置換又は非置換窒素含有複素環を有する化合物を含む。
【0084】
好ましくは、非蛍光剤はスルホシアニン部分を含む。
【0085】
好ましい実施例では、非蛍光剤は、Rがクロロであり、R,R,R,R10がメチルであり、RがHであり、RがN-ヒドロカルビル、好ましくはN[(CHSONa]であり、R11及びR12は、スルファナト基でモノ置換された(又は、一置換された/monosubsituted)芳香環を形成し、R,R,R13,R14はHであり、Rは(CH)qFG(式中、qは3であり、FGはスルファナトである)であり、R15は(CHLN(式中、pは5であり、LNはカルボキシルである)であり、R16はHである、薬剤である。
【0086】
別の実施形態では、蛍光剤及び非蛍光剤は同じ薬剤であり、好ましくは、R
(式中、XはOであり、R17はSONaである)であり、R,R,R,R10はヒドロカルビル、好ましくはメチルであり、R,R,R11,R12はHであり、R,R,R13,R14はHであり、Rは(CH)qFG(式中、qは4及びFGはスルファナトである)であり、R15は(CH)PLN(式中、pは5及びLNはカルボキシルである)であり、R16はHである。
【0087】
非蛍光剤はまた、消光部分、例えばBHQ3(Biosearch)、QC-1(Li-COR.com)、又はそのような化合物を含む粒子、例えば金ナノ粒子及びフェロナノ粒子であり得る。一実施形態では、試薬は、本明細書に定義されるペプチドを含むナノ粒子である。
【0088】
本発明で使用できる蛍光剤の例としては、特に、Alexa Fluor(登録商標) 660、Alexa Fluor(登録商標) 700、Alexa 25 Fluor(登録商標) 750 ATTO 680、ATTO 700、DY-647、DY-650、DY-673、DY-675、DY-676、DY-680、DY-681、DY-682、DY-690、DY-700、DY-701、DY-730、DY-731、DY-732、DY-734、DY-750、DY-751、DY-752、DY-776、DY-781、DY-782、DY-831、La Jolla Blue、Cy5、Cy5.5、Cy7、IRDye(登録商標) 800CW、IRDye(登録商標) 38、IRDye(登録商標) 800RS、IRDye(登録商標) 700DX、IRDye(登録商標) 680、TF7WS、TF8WS、TideDye又はTideQuencherが挙げられるが、これらに限定されない。「Alexa Fluor」色素は、Molecular Peptides Inc.,Eugene,OR,U.S.A.(www.peptides.com)から入手できる。ATTO-tec GmbH,Siegen,Germany(www.atto-tec.com)から「ATTO」色素が入手可能である。「DY」色素はDyomics GmbH,Jena,Germany(www.dyomics.com)から入手できる。La Jolla Blueは、Hyperion Inc.から入手可能である。「Cy」色素は、Amersham Biosciences,Piscataway,NJ,U.S.A.(www.amersham.com)から入手可能である。「IRDye(登録商標)赤外線色素」は、LI-COR(登録商標) Bioscience,Inc.Lincoln,N E,U.S.A(www.licor.com)社から入手し得る。
【0089】
好ましくは、蛍光剤はCy7、Cy7.5、TF7WS、TF8WS及びIRDye800CWからなる群より選択される。
【0090】
好ましくは、650~900nmの発光波長を有する非蛍光剤は、シアニン部分、好ましくはQC-1である。
【0091】
最も好ましくは、試薬は、Cy7、Cy7.5、TQ7WS及びIRDye800CWからなる群より選択される蛍光剤、ならびにQC-1である650~900nmの発光波長を有する非蛍光剤を含む。
【0092】
試薬は、好ましくは、Cy7、Cy7.5、TF7WS及びIRDye800CWからなる群から選択される蛍光剤と、QC-1である650~900nmの発光波長を有する非蛍光剤と、少なくとも3つのアミノ酸を含む切断部位とを含む。
【0093】
体液試料はヒト又は動物の体液試料であり、より好ましくは体液はヒトの体液である。
【0094】
好ましくは、試料は、10μl~3000μL、より好ましくは50μL~2500μL、さらにより好ましくは100~2000μL、さらにより好ましくは150~1500μL、及び最も好ましくは200~1000μLの範囲の容量を有する。
【0095】
好ましくは、試料、及び任意に希釈剤の添加後の試料容器中の試薬濃度は、0.01~10uM、好ましくは0.02~8uM、より好ましくは0.05~5uM、さらに好ましくは0.1~2.5uMの範囲にある。
【0096】
好ましくは、工程i)は、希釈剤を添加する工程を含む。好ましくは、希釈剤は水溶液である。
【0097】
希釈剤が、MOPS、リン酸塩、クエン酸塩、HEPES TRIS-HCl、リン酸緩衝生理食塩水からなる群から選択される緩衝剤を含むことが好ましい。緩衝剤を含む水性溶液の調製は、当業者に知られている。
【0098】
好ましくは、希釈剤は5~9の範囲のpHを有し、より好ましくは5.5~8.5の範囲のpHを有し、さらに好ましくは5.75~8.25、さらに好ましくは6~8の範囲のpHを有する。
【0099】
好ましくは、試料に対する希釈剤の容積比は、0.1~100の範囲、より好ましくは0.5~75の範囲、さらにより好ましくは1~50の範囲である。
【0100】
好ましくは、試料をアッセイ緩衝液中で希釈し、好ましくは、試料を1:10~1:10000、より好ましくは1:100~1:1000の範囲のファクタ(又は、因子/factor)で希釈する。
【0101】
好ましくは、アッセイ緩衝液は、pHを5~9、好ましくは約6~約8、より好ましくは約6.5~約7.5の範囲に維持することができ、好ましくは緩衝液は、HEPES、PIPES、Tris-Hydrochloride(Tris-HCl)、リン酸塩、リン酸塩緩衝生理食塩水、又はMOPSを含む。好ましくは、緩衝液はリン酸緩衝液及びリン酸緩衝生理食塩水の群から選択される。好ましくは、リン酸緩衝液はナトリウム及び/又はカリウムイオンを含む。
【0102】
好ましくは、緩衝液は、体液試料中の細胞物質を溶解し得る界面活性剤を含有する。
【0103】
好ましくは、緩衝液は、以下からなる群から選択される1つ又は複数の非イオン性界面活性剤を含む:N-オクチル- -D-グルコピラノシド、N-オクチル-D-マルトシド、ZWITTERGENT 3.14、デオキシコール酸塩、n-ドデカノイルスクロース、n-ドデシル- -Dグルコピラノシド、n-ドデシル- -D-マルトシド、n-オクチル- -D-グルコピラノシド、n-オクチル-p-Dマルトピラノシド、n-オクチル-p-D-チオグルコピラノシド、n-デカノイルスクロース、n-デシル-p-D-マルトピラノシド、n-デシル-p-D-チオマルトシド、n-へプチル- -D-グルコピラノシド、n-へプチル- -D-グルコピラノシド、n-へプチル-p-D-チオグルコピラノシド、n-ヘキシル- -D-グルコピラノシド、n-ノニル-p-D-グルコピラノシド、n-オクタノイルスクロース、n-オクチル- -グルコピラノシド、n-ウンデシル- -D-マルトシド、APO-10、APO12、Big CHAP、Big CHAP,Deoxy、BRIJ(登録商標) 35、d2E5、d2E6、Ci2E8、Ci2E9、シクロヘキシル-nエチル-p-D-マルトシド、シクロヘキシル-n-ヘキシル-p-D-マルトシド、シクロヘキシル-n-メチル- -D-マルトシド、ジギトニン、ELUGENT(登録商標)、GENAPOL(登録商標) C-100、GENAPOL(登録商標) X-080、GENAPOL(登録商標) X-100、HECAMEG、MEGA-10、MEGA-8、MEGA-9、NOGA、NP-40、PLURONIC(登録商標) F-127、TRITON(登録商標) X-100、TRITON(登録商標) X-I 14、TWEEN(登録商標) 20、又はTWEEN(登録商標) 80、及びそれらの混合物。
【0104】
緩衝液は、好ましくは、BATC、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ケノデオキシコール酸、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、グリコデオキシコール酸、グリコリトコール酸、ラウロイルサルコシン、タウロケノデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデヒドロコール酸、タウロリトコール酸、タウロウルソデオキシコール酸、TOPPA及びそれらの混合物からなる群から選択されるイオン性界面活性剤を含む。
【0105】
好ましくは、緩衝液は、アミドスルホベタイン、CHAPS、CHAPSO、カルボキシベタイン、及びメチルベタインからなる群より選択される双性イオン性界面活性剤を含む。
【0106】
好ましくは、緩衝液は、SDS、N-ラウリルサルコシン、デオキシコール酸ナトリウム、アルキル-アリールスルホン酸塩、長鎖(脂肪)アルコール硫酸塩、オレフィン硫酸塩及びスルホン酸塩、αオレフィン硫酸塩及びスルホン酸塩、硫酸化モノグリセリド、硫酸化エーテル、スルホコハク酸塩、アルカンスルホン酸塩、リン酸エステル、アルキルイセチオン酸塩、スクロースエステル及びそれらの混合物からなる群から選択されるアニオン性界面活性剤を含む。
【0107】
本明細書において、緩衝剤は、緩衝液及び/又は試料の組合せのpHを調節し得る化学種である。
【0108】
好ましくは、体液の試料を、直接試薬と接触させる。本明細書中で使用される用語「直接」とは、試料が試薬と接触する前に遠心分離工程又は他の試料クリーンアップ工程を施さないことを意味する。
【0109】
好ましくは、体液の試料を、直接試薬と接触させる。
【0110】
任意的に、本方法は、試料を遠心分離して、凝集した細菌物質及び/又は沈殿した生体物質を上清から分離し得る遠心分離工程を含む。好ましくは、遠心分離は1,000g~25,000gの範囲、好ましくは3,000g~20,000gの範囲、より好ましくは3,700g~18,000gの範囲の力で行うことができる。遠心分離時間は、好ましくは、1分~30分の範囲、2~20分の範囲、より好ましくは3~10分の範囲である。遠心分離から得られる上清又は凝集した細菌細胞を試薬と接触させるのが好ましい。好ましい実施形態では、遠心分離からの上清は、試薬と接触させることが好ましい。別の好ましい実施形態において、遠心分離から得られる凝集した細菌物質細胞は、好ましくは試薬と接触される。
【0111】
好ましくは、本方法は、試料を試薬と接触させる前に試料を遠心分離する工程を含む。例えば、血液によるサンプルの多少の汚染がある場合には、アッセイで処理する前に、サンプルを遠心分離することが望ましい。
【0112】
任意的に、試料に試薬を加えた後、混合物を攪拌する。混合物は、ピペットで吸引、渦流又は振盪することにより攪拌することが望ましい。
【0113】
好ましくは、試薬はペプチド、タンパク質又はナノ粒子である。好ましくは、試薬はペプチドである。ペプチドは、リンカーを介して、タンパク質、ナノ粒子又は磁気ビーズに連結され得る。ペプチドは、好ましくは3~10アミノ酸、より好ましくは4~9アミノ酸、さらにより好ましくは5~8アミノ酸を含む。
【0114】
好ましくは、[b]は、3~8アミノ酸、より好ましくは3~7アミノ酸、さらにより好ましくは3~6アミノ酸を含む。
【0115】
切断部位は、好ましくは限られた数のアミノ酸、例えば少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも4個のアミノ酸、さらにより好ましくは少なくとも5個のアミノ酸を含む。
【0116】
好ましくは、切断部位は、2~5個のアミノ酸、より好ましくは3~5個のアミノ酸からなる。
【0117】
[b]は一般式Xaa1,Xaa2,Xaa3を有することが好ましい。換言すれば、切断部位は、好ましくは、3個のアミノ酸Xaa1,Xaa2,Xaa3を含み、
-Xaa1は、好ましくは、小さな疎水性アミノ酸であり、より好ましくは、Xaa1は、アラニン、グリシン、ロイシン、バリン、ノルロイシン、ノルバリン、イソロイシン、イソバリン、アロイソロイシンからなる群より選択され、
-Xaa2は、好ましくは、小さな又は芳香族の疎水性アミノ酸であり、好ましくは、Xaa2は、アラニン、グリシン、ロイシン、バリン、ノルロイシン、ノルバリン、イソロイシン、イソバリン、アロイソロイシン及びフェニルアラニンからなる群より選択され、
-Xaa3は、好ましくは、アラニン、グリシン、ロイシン、バリン、ノルロイシン、ノルバリン、イソロイシン、イソバリン、アロイソロイシンからなる群より選択され、より好ましくは、Xaa3は、アラニン、グリシン、ロイシン、バリンからなる群より選択される。
【0118】
特定の好ましい態様において、Xaa1は、アラニン、バリン、ノルロイシン、ノルバリン、イソロイシン、イソバリン、アロイソロイシンからなる群から選択され、Xaa2は、アラニン、ロイシン、バリン、ノルロイシン、ノルバリン、イソロイシン、イソバリン、アロイソロイシン及びフェニルアラニンからなる群から選択され、Xaa3は、アラニン、ロイシン、バリンからなる群から選択される。
【0119】
好ましくは、切断部位は、3つのアミノ酸Xaa1,Xaa2,Xaa3を含み、
-Xaa1は、好ましくは、小さな疎水性アミノ酸であり、より好ましくは、Xaa1は、アラニン、グリシン、ロイシン、バリン、ノルロイシン、ノルバリン、イソロイシン、イソバリン、アロイソロイシンからなる群から選択され、より好ましくは、アラニン、ロイシン、バリン、ノルロイシン、ノルバリン、イソロイシン、イソバリン、アロイソロイシンからなる群より選択され、
-Xaa2は、好ましくは、小さな又は芳香族の疎水性アミノ酸であり、好ましくは、Xaa2は、アラニン、グリシン、ロイシン、バリン、ノルロイシン、ノルバリン、イソロイシン、イソバリン、アロイソロイシン及びフェニルアラニンからなる群より選択され、より好ましくは、Xaa2は、アラニン、ロイシン、バリン、ノルロイシン、イソロイシン、イソバリン、アロイソロイシン及びフェニルアラニンからなる群より選択され、
-Xaa3は、好ましくは、アラニン、ロイシン、バリン、ノルロイシン、ノルバリン、イソロイシン、イソバリン、アロイソロイシンからなる群より選択され、より好ましくは、Xaa3は、アラニン、グリシン、ロイシン、バリンからなる群より選択され、
切断部位は、細菌バイオマーカーによって切断され、細菌バイオマーカーは、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカス・ワーネリ(Staphylococcus warneri)、スタフィロコッカス・カピティス(Staphylococcus capitis)、スタフィロコッカス・カプラエ(Staphylococcus caprae)、ストレプトコッカス・ミティ(Streptococcus mitis)、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・アンギノサス(Streptococcus anginosus)、ストレプトコッカス・ゴルドニ(Streptococcus gordonii)、大腸菌(Escherichia coli)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、グラヌリカテラ・アディアセンス(Granulicatella adjacens)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、アビオトロフィア・ディフェクティヴァ(Abiotrophia defective)、コリネバクテリウム・ストリアトゥム(Corynebacterium striatum)、コリネバクテリウム・ミヌティシマム(Corynebacterium minutissimum)、パルビモナス マイクラ(Parvimonas micra)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、及びカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)からなる群より選択される細菌によって製造され、より好ましくは、原因物質(細菌)は、バチルス属、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、シュードモナス属、大腸菌及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、最も好ましくはバチルス属及びシュードモナス属の群から選択される。
【0120】
好ましくは、切断部位は、3つのアミノ酸Xaa1,Xaa2,Xaa3を含み、
-Xaa1は、好ましくは、小さな疎水性アミノ酸であり、より好ましくは、Xaa1は、アラニン、グリシン、ロイシン、バリン、ノルロイシン、ノルバリン、イソロイシン、イソバリン、アロイソロイシンからなる群から選択され、より好ましくは、アラニン、ロイシン、バリン、ノルロイシン、ノルバリン、イソロイシン、イソバリン、アロイソロイシンからなる群より選択され、
-Xaa2は、好ましくは荷電アミノ酸であり、好ましくは、Xaa2はアスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニンからなる群から選択され、
-Xaa3は、好ましくは、アラニン、ロイシン、バリン、ノルロイシン、ノルバリン、イソロイシン、イソバリン、アロイソロイシンからなる群から選択され、より好ましくは、Xaa3は、アラニン、グリシン、ロイシン、バリンからなる群から選択され、
切断部位は、細菌バイオマーカーによって切断され、細菌バイオマーカーは、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカス・ワーネリ(Staphylococcus warneri)、スタフィロコッカス・カピティス(Staphylococcus capitis)、スタフィロコッカス・カプラエ(Staphylococcus caprae)、ストレプトコッカス・ミティ(Streptococcus mitis)、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・アンギノサス(Streptococcus anginosus)、ストレプトコッカス・ゴルドニ(Streptococcus gordonii)、大腸菌(Escherichia coli)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、グラヌリカテラ・アディアセンス(Granulicatella adjacens)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、アビオトロフィア・ディフェクティヴァ(Abiotrophia defective)、コリネバクテリウム・ストリアトゥム(Corynebacterium striatum)、コリネバクテリウム・ミヌティシマム(Corynebacterium minutissimum)、パルビモナス・マイクラ(Parvimonas micra)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、及びカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)からなる群より選択される細菌によって製造され、好ましくは、原因物質(細菌)は、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、大腸菌(Escherichia coli)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0121】
好ましくは、[b]は、AAA、ALA、AAL、LAA、FAA、AFA、AAF、FGG、GFG、GGF、GGG、LGG、GLG、GGL及びGGAからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。より好ましくは、[b]はFGG、GFG、GGF、GGG、LGG、GLG、GGL及びGGAからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。さらに好ましくは、[b]は、AAA、ALA、AAL、LAA、FAA、AFA、AAFからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。さらに好ましくは、[b]は、FAA、AFA及びAAFからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0122】
好ましくは、[b]は、AVA、AAV、VAA、YAA、AYA、AAY、YGG、GFG、GGY、GGV、VGG、GVG、GAG及びAGGからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。より好ましくは、[b]は、YGG、GFG、GGY、GGV、VGG、GVG、GAG及びAGGからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。さらにより好ましくは、[b]は、AVA、AAV、VAA、YAA、AYA及びAAYからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0123】
好ましくは、[b]は、AEA、AAE、EAA、DAA、ADA、AAD、EGG、GEG、GGE、GGD、DGG、GDG、GRG及びRGGからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。より好ましくは、[b]は、KGG、GKG、GGK、AKA、AAK、KAA、KAA、AKA及びAAKからなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0124】
好ましくは、[b]:([a]+[c])の質量比は少なくとも1:2であり、好ましくは[b]:([a]+[c])の質量比は少なくとも1:3であり、より好ましくは[b]:([a]+[c])の質量比は少なくとも1:4であり、[b]:([a]+[c])の質量比は少なくとも1:5であることがさらに好ましい。
【0125】
好ましくは、試薬は一般式[a]-[リンカー1]n-[b]-[b]-[-リンカー2]m-[c]を有し、ここで、nは0、1又は2であり、mは0、1又は2であり、[リンカー1]及び[リンカー2]は、任意に置換されたヒドロカルビル基及び非タンパク質分解性ヒドロカルビル基の群から独立して選択され、好ましくは、nは0又は1であり、mは1であり、リンカー2は非タンパク質分解性ヒドロカルビル基であり、より好ましくは、nは0であり、mは1であり、リンカー2は非タンパク質分解性ヒドロカルビル基である。
【0126】
好ましくは、前記リンカーは、非タンパク質分解性ヒドロカルビル基である。
【0127】
好ましくは、リンカーは、β-アラニニル、4-アミノブチロール、2-(アミノエトキシ)アセチル、3-(2-アミノエトキシ)プロパニル、5-アミノバレリル、6-アミノヘキシル、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタニル及び12-アミノ-4,7,10-トリオキサドデカニルからなる群から選択され、好ましくは6-アミノヘキシルである。
【0128】
好ましくは、試薬は、一般公式[a]-[リンカー]-[b]-[-リンカー]-[c](II)を有し、[リンカー]及び[リンカー]は、任意に置換されたハイドカルバイル基及び非タンパク質分解性ヒドロカルビル基の群から独立に選択される。本明細書で使用されるヒドロカルビルは、任意に置換されたC1-C6アルキルを意味する。好ましくは、任意に置換されたC1-C6アルキルは、O、N及びSで置換される。
【0129】
より好ましくは、試薬は、一般式[a]-[リンカー1]-[b]-[リンカー2]-[c]であり、式中、[b]は、AAA、ALA、AAL、LAA、FAA、AFA、AAF、FGG、GFG、GGF、GGG、LGG、GLG、GGL及びGGAからなる群から選択されるアミノ酸配列であり、nは1であり、mは1であり、[リンカー1]及び[リンカー2]は、β-アラニニル、4-アミノブチル、2-(アミノエトキシ)アセチル、3-(2-アミノエトキシ)プロパニル、5-アミノバレリル、6-アミノヘキシルからなる群から独立して選択される。
【0130】
より好ましくは、試薬は一般式[a]-[b]-[リンカー]-[c]であり、式中、bはAAA、ALA、AAL、LAA、FAA、AFA、AAF、FGG、GFG、GGF、GGG、LGG、GLG、GGL及びGGAからなる群から選択されるアミノ酸配列であり、nは0であり、mは1であり、[リンカー]はβ-アラニニル(beta-alaninyl)、4-アミノブチリル(aminobutyrl)、2-(アミノエトキシ)アセチル、3-(2-アミノエトキシ)プロパニル、5-アミノバレリル、6-アミノヘキシルからなる群から選択される。
【0131】
より好ましくは、試薬は、一般式[a]-[リンカー]-[b]-[c]であり、式中、bは、AAA、ALA、AAL,LAA、FAA、AFA、AAF、FGG、GFG、GGF、GGG、LGG、GLG、GGL及びGGAからなる群より選択されるアミノ酸配列であり、nは1であり、mは0であり、[リンカー]は、β-アラニニル、4-アミノブチリル、2-(アミノエトキシ)アセチル、3-(2-アミノエトキシ)プロパニル、5-アミノバレリル、6-アミノヘキシルからなる群より選択される。
【0132】
好ましくは、本方法は、試料を第一試薬及び第二試薬と接触させる工程を含み、第一試薬が一般式[a]-[b]-[c](I)を有し、[b]が切断部位(b’)を含むペプチドであり、第二試薬が式[a]-[d]-[c](III)を有し、[d]が切断部位(d’)を含むペプチドであり、切断部位d’は切断部位b’とは異なる。
【0133】
本明細書中に開示される方法の利点は、それが多重化アプローチを可能にし、それによって、異なる切断部位を含む異なる試薬が、単一の試料容器内で組み合わされて、異なる細菌バイオマーカーの検出を可能にし得ることである。
【0134】
好ましくは、細菌バイオマーカーが細菌膜結合プロテアーゼ、細菌膜結合トランスペプチダーゼ、細胞内細菌プロテアーゼ又は細胞外細菌プロテアーゼであり、より好ましくは細菌バイオマーカーが細菌膜結合トランスペプチダーゼ又は細胞外細菌プロテアーゼである。
【0135】
好ましくは、本方法は、宿主の炎症反応よりも細菌感染に対する特異性を有する。
【0136】
本出願の文脈において、「宿主炎症反応」とは、宿主炎症バイオマーカー、例えば宿主炎症プロテアーゼを意味する。本出願の文脈において、宿主の炎症反応にまさる感染に対する「特異性」とは、宿主の炎症反応の存在下での650~900nmの範囲の蛍光発光に対する細菌バイオマーカーの存在下での650~900nmの範囲の蛍光発光の比が、少なくとも1.05:1、好ましくは少なくとも1.5~1、より好ましくは少なくとも2:1、さらに好ましくは少なくとも5:1、さらに好ましくは少なくとも10:1、さらにより好ましくは少なくとも25:1、最も好ましくは少なくとも50:1であることを意味する。
【0137】
好ましくは、宿主炎症反応の存在下での650~900nmの範囲における蛍光発光に対する細菌バイオマーカーの存在下での650~900nmの範囲における蛍光発光の比は、1.05:1~500:1の範囲、好ましくは2:1~400:1の範囲、より好ましくは5:1~300:1の範囲である。
【0138】
好ましくは、細菌バイオマーカーを含まない体液の試料における650~900nmの範囲の蛍光発光に対する細菌バイオマーカーを含む体液の試料における650~900nmの範囲の蛍光発光の比は、1.05:1~500:1の範囲、好ましくは2:1~400:1の範囲、より好ましくは5:1~300:1の範囲である。
【0139】
好ましくは、細菌バイオマーカーを含まない体液の試料中の650~900nmの範囲における蛍光発光に対する細菌バイオマーカーを含む体液の試料中の650~900nmの範囲における蛍光発光の比率は、1.05:1~500:1の範囲、好ましくは2:1~400:1の範囲、より好ましくは5:1~300:1の範囲であり、体液試料は、歯肉液、羊水、尿、漿液、滑液、腹膜透析液、精液、皮脂及び脳脊髄液からなる群から選択され、好ましくは、体液は、滑液、腹膜透析液及び脳脊髄液からなる群から選択され、より好ましくは、体液は、滑液及び腹膜透析液からなる群から選択される。
【0140】
好ましくは、本方法は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の細菌感染に対する特異性を有する。
【0141】
本出願の文脈において、用語「特異性パーセンテージ」は、以下の式に従って決定される:
特異性%=a/b x 100
式中、aは、650~900nmの範囲の蛍光発光>650~900nmの範囲の閾蛍光発光(threshold fluorescence emission)を有する、本明細書に記載された方法に従って測定された試料の数である;
bは、標的条件について臨床的に陽性の試料の数であり、ここで、臨床的に陽性の試料は、関連する既知の参照方法によって、条件についての陽性であると判定される。典型的には、体液試料中の感染の決定のための参照方法は、当業者に公知の関連する臨床ガイドラインである。
【0142】
閾蛍光発光は、陰性試料からの陽性試料の識別のためのカットオフ値であると決定されている蛍光発光の値である。典型的には、閾蛍光は以下の式に従って決定される:
閾値=y・x・LOD
式中、yは1以上10以下の範囲の整数であり、好ましくは2以上9以下の範囲の整数であり、より好ましくは3以上8以下の範囲の整数であり、さらに好ましくは4以上7以下の範囲の整数である;及び
LODは検出の限界であり、ここで、LODは標的分析物の最低検出可能量として決定される。LODの決定は、David A Armbruster and Terry Pry, Clin Biochem Rev. 2008 Aug 29Suppl 1/ S49-S52に記載されているように、当業者の能力に十分収まっている。
【0143】
特定の実施形態では、閾値は以下の式に従って決定される:
閾値=LOB+LOD
式中、LOBは平均ブランク蛍光発光であり、
LODは検出限界であり、LODは標的分析物の最低検出可能量として決定される。当業者は、閾値が特定の体液について決定されることを理解する。言い換えると、当業者は、試薬が、例えば、腹膜透析液及び滑液において異なる閾値を有するであろうことを理解する。当業者は既知の方法を用いて閾値を決定し得る。LODの決定は、David A Armbruster and Terry Pry, Clin Biochem Rev. 2008 Aug 29Suppl 1/ S49-S52に記載されているように、当業者の能力に十分収まっている。
【0144】
特定の実施形態では、閾値は以下の式に従って決定される:
閾値=LOB+1.645(標準偏差低濃度試料)、
式中、LOBは平均ブランク蛍光発光であり、LODは検出限界であり、LODは標的分析物の最低検出可能量として決定される。LODの決定は、David A Armbruster and Terry Pry, Clin Biochem Rev. 2008 Aug 29Suppl 1/ S49-S52に記載されているように、とう者の能力に十分収まっている
【0145】
好ましくは、本方法はグラム陽性菌に対して選択性を有する。本出願の文脈において、グラム陽性細菌に対する「選択性」とは、グラム陽性細菌からの細菌バイオマーカーの存在下における650~900nmの範囲の蛍光発光と、非グラム陽性炎症バイオマーカーの存在下における650~900nmの範囲の蛍光発光との比が、少なくとも1.05:1、好ましくは少なくとも1.5:1、より好ましくは少なくとも2:1、さらに好ましくは少なくとも5:1、さらに好ましくは少なくとも10:1、さらにより好ましくは少なくとも25:1、最も好ましくは少なくとも50:1であることを意味する。
【0146】
好ましくは、本方法はグラム陰性菌に対して選択性を有する。本出願の文脈において、グラム陰性細菌に対する「選択性」とは、グラム陰性細菌からの細菌バイオマーカーの存在下における650~900nmの範囲の蛍光発光の、非グラム陰性炎症バイオマーカーの存在下における650~900nmの範囲の蛍光発光に対する比が、少なくとも1.05:1、好ましくは少なくとも1.5:1、より好ましくは少なくとも2:1、さらに好ましくは少なくとも5:1、さらに好ましくは少なくとも10:1、さらにより好ましくは少なくとも25:1、最も好ましくは少なくとも50:1であることを意味する。
【0147】
本出願の文脈において、「特異性」及び「選択性」は互換的に使用される。
【0148】
好ましくは、本方法は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%のグラム陽性細菌に対する特異性を有する。
【0149】
好ましくは、本方法は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%のグラム陰性細菌に対する特異性を有する。
【0150】
好ましくは、本方法は、細菌(原因物質)が、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカス・ワーネリ(Staphylococcus warneri)、スタフィロコッカス・カピティス(Staphylococcus capitis)、スタフィロコッカス・カプラエ(Staphylococcus caprae)、ストレプトコッカス・ミティ(Streptococcus mitis)、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・アンギノサス(Streptococcus anginosus)、ストレプトコッカス・ゴルドニ(Streptococcus gordonii)、大腸菌(Escherichia coli)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、グラヌリカテラ・アディアセンス(Granulicatella adjacens)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、アビオトロフィア・ディフェクティヴァ(Abiotrophia defective)、コリネバクテリウム・ストリアトゥム(Corynebacterium striatum)、コリネバクテリウム・ミヌティシマム(Corynebacterium minutissimum)、パルビモナス マイクラ(Parvimonas micra)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、及びカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)からなる群より選択され、より好ましくは、原因物質(細菌)は、バチルス属、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、シュードモナス属、大腸菌及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、最も好ましくは、バチルス属、スタフィロコッカス属、及びシュードモナス属の群から選択される。切断部位は、好ましくは、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(Staphylococcus lugdunensis)、スタフィロコッカス・ワーネリ(Staphylococcus warneri)、スタフィロコッカス・カピティス(Staphylococcus capitis)、スタフィロコッカス・カプラエ(Staphylococcus caprae)、ストレプトコッカス・ミティ(Streptococcus mitis)、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・アンギノサス(Streptococcus anginosus)、ストレプトコッカス・ゴルドニ(Streptococcus gordonii)、大腸菌(Escherichia coli)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、グラヌリカテラ・アディアセンス(Granulicatella adjacens)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、アビオトロフィア・ディフェクティヴァ(Abiotrophia defective)、コリネバクテリウム・ストリアトゥム(Corynebacterium striatum)、コリネバクテリウム・ミヌティシマム(Corynebacterium minutissimum)、パルビモナス マイクラ(Parvimonas micra)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、及びカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)からなる群より選択される細菌バイオマーカーに対し特異的であり、より好ましくは、原因物質(細菌)は、バチルス属、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、シュードモナス属、大腸菌及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、最も好ましくは、バチルス属、スタフィロコッカス属、及びシュードモナス属の群から選択される。
【0151】
切断部位は、好ましくは、バチルス属菌(Bacillus spp)、スタフィロコッカス属菌(Staphylococcus spp)、ストレプトコッカス属菌(Streptococcus spp)、シュードモナス属菌(Pseudomonas spp)、大腸菌(Escherichia coli)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される細菌のための細菌バイオマーカーに対して特異的である。切断部位は、好ましくは、セレウス菌(Bacillus cereus)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(Escherichia coli)及びそれらの組み合わせからなる群からの細菌のための細菌バイオマーカーに対して特異的であり、最も好ましくは、バチルス属菌(Bacillus spp)、スタフィロコッカス属菌(Staphylococcus spp)、及びシュードモナス属菌(Pseudomonas spp)の群からなる。
【0152】
好ましくは、切断部位は、セレウス菌(Bacillus cereus)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(Escherichia coli)及びそれらの組合せからなる群から選択される細菌種のための細菌バイオマーカーに対して特異的であり、好ましくは、切断部位が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)及びセレウス菌(Bacillus cereus)に対して特異的であり、より好ましくは、切断部位が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対して特異的である。
【0153】
好ましくは、切断部位は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(Escherichia coli)及びそれらの組合せからなる群から選択される細菌種のための細菌バイオマーカーに対して特異的であり、好ましくは、切断部位が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対して特異的であり、より好ましくは、切断部位が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対して特異的である。
【0154】
特に好ましい態様において、試料を試薬と接触させる前に、試料に細菌細胞濃縮工程を施さない。「細菌細胞濃縮工程を施さない」とは、試料の光学濃度(濁度、600nmで測定した吸光度)を増加させるために、ある期間、例えば、数時間の間、10~37℃の範囲の温度で試料を培養する(エキソビボ/ex vivo)工程がないことを意味する。
【0155】
好ましくは、試料は、試薬と接触させる前に、又は接触させた後に、20~40℃の温度範囲で細菌濃縮のエキソビボ工程を施さない。
【0156】
工程iii)における蛍光の増加をモニターする工程は、好ましくは、試料及び試薬を含む容器を受け入れるように構成された検出器で行われる。好ましくは、試料を容器内の試薬と接触させ、試薬によって発せられる蛍光を、容器を受け入れるように適合させたハンドヘルド又はベンチトップ蛍光分光計によってモニターする。検出器は、好ましくは、相対蛍光単位(RFU)での読み取り値を提供する。ユーザは、読み取り値を対照と比較することができ、対照と試料ルとの間でのRFUの相対的増加は、細菌感染を指示する。
【0157】
好ましくは、工程iii)における蛍光の増加をモニターする工程は、試料を試薬と接触させることによって実施されることが好ましく、試薬によって発せられる蛍光は、ベンチトップ蛍光分光計、好ましくはプレートリーダーによってモニターされる。好ましくは、試料は、好ましくは試料チューブ内で試薬と接触され、試料及び試薬を含む混合物は、マルチウェルプレート、好ましくは96ウェルプレートに移される。
【0158】
蛍光(発光)の増加は、CCDカメラ、ビデオカメラ、写真フィルム、レーザー走査装置、蛍光光度計、フォトダイオード、量子計、エピ蛍光顕微鏡、走査顕微鏡、フローサイトメーター、蛍光マイクロプレートリーダーのいずれかの使用により、又は光増幅管のような信号を増幅する手段により、任意に検出される。試料がフローサイトメーターを用いて検査される場合、試料の検査は、任意的に、それらの蛍光応答に従って試料の仕分け部分(又は、試料を部分に仕分ける工程/sorting portions of the sample)を含む。
【0159】
好ましくは、試薬は表面に付着していない。表面に共有結合していない形態で試薬を提供することにより、非特異的相互作用が予想外に減少することが見出されている。
【0160】
好ましくは、工程i)における試薬は、炭水化物を含む凍結乾燥ビーズの形態である。
【0161】
好ましくは、ビーズは、15~95重量%のビーズ炭水化物、好ましくは20~90重量%、より好ましくは25~85重量%、さらに好ましくは30~80重量%のビーズ炭水化物を含む。
【0162】
好ましくは、炭水化物は、ポリオール、単糖類、二糖類、多糖類及びそれらの組合せからなる群より選択される。
【0163】
第二態様において、炭水化物及び構造[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を含む凍結乾燥ビーズが提供され、
式中、
[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、650~900nmの吸収波長を有する非蛍光剤であり、
[b]は、切断部位を含むペプチドであり、切断部位は、細菌バイオマーカーに対して特異的である。
【0164】
試薬を炭水化物を備えた凍結乾燥ビーズとして配合することは、試薬の臨床性能を増加させるという予想外の利点を有することが見出されている。驚くべきことに、細菌バイオマーカーの存在下での650~900nmの範囲の波長での蛍光発光と、細菌バイオマーカーの非存在下での650~900nmの範囲の波長での蛍光発光との比は、試薬が凍結乾燥ビーズを含む炭水化物の形態である場合に増加する。
【0165】
理論に拘束されることを望まないが、凍結乾燥ビーズ中に炭水化物を含有させることにより、ビーズ中の試薬分子間の疎水性相互作用を最小とし、その結果、改善されたデクェンチング(dequenching)が観察され、細菌バイオマーカーの存在下及び非存在下での比が改善され、ひいては臨床性能が改善されるようになると仮定される。
【0166】
凍結乾燥されたビーズは、典型的には、1~5mm、好ましくは2~4mmの範囲のサイズを有する。
【0167】
好ましくは、ビーズは、5~95重量%のビーズ炭水化物、好ましくは10~90重量%、より好ましくは15~85重量%、さらにより好ましくは20~80重量%のビーズ炭水化物を含む。
【0168】
好ましくは、炭水化物は、ポリオール、単糖類、二糖類、多糖類及びそれらの組合せからなる群より選択される。炭水化物は、好ましくは、ポリオール、単糖類、二糖類又は多糖類である。炭水化物の同一性(identity)は、本明細書中に開示される方法における凍結乾燥ビーズの相対活性を観察することによって、当業者によって選択され得る。ある態様において、好ましくは、炭水化物の組み合わせが使用され得る。
【0169】
好ましくは、ポリオールは、(2R,3S)-ブタン-1,2,3,4-テトロール(エスリトール/ethyritol)、4-O-β-D-ガラクトピラノシル-D-グルシトール(ラクチトール)、(2S,3S,4S,5S)-ヘキサン-1,2,3,4,5,6-ヘキソール(L-マンニトール)、(2R,3R,4R,5R)-ヘキサン-1,2,3,4,5,6-ヘキソール(D-マンニトール)、4-O-α-D-グルコピラノシド-D-グルシトール(マルチトール)、(2R,3R,4R,5S)-ヘキサン-1,2,3,4,5-ヘキソール(ソルビトール)、(2R,3r,4S)-ペンタン-1,2,3,4,5-ペントール(キシリトール)、ポリエチレングリコール及びそれらの組み合わせからなる群より選択され、好ましくは、ポリオールは、(2S,3S,4S,5S)-ヘキサン-1,2,3,4,5,6-ヘキソール(L-マンニトール)、(2R,3R,4R,5R)-ヘキサン-1,2,3,4,5,6-ヘキソール(D-マンニトール)及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0170】
好ましくは、ポリエチレングリコールは、50~5000、より好ましくは100~2500、さらにより好ましくは250~1000の範囲の分子量を有する。
【0171】
好ましくは、単糖類は、グルコース、フルクトース、ガラクトース及びそれらの組合せからなる群より選択される。単糖類は一般式(CHO)をもつ。
【0172】
単糖類は、カルボニル基の位置、含有する炭素原子の数、キラルな性質の3つの異なる特徴によって分類される。カルボニル基がアルデヒドであれば、単糖類はアルドースである。カルボニル基がケトンであれば、単糖類はケトースである。三つの炭素原子をもつ単糖類はトリオースとよばれ、これらはジヒドロキシアセトンやd-及びl-グリセルアルデヒドのような最小の単糖類である。四つの炭素原子からなるものはテトロース、五つの炭素をもつものはペントース、六つの炭素のものはヘキソースなどとよばれる。その他の少量の単糖類には、マンノース、ガラクトース、キシロース、アラビノースなどがある。最も一般的に検出されるペントースは、アラビノース及びキシロースである。
【0173】
好ましくは、二糖類は、スクロース、マルトース、ラクトース、トレハロース及びそれらの組合せからなる群より選択される。二糖類は2つの単糖単位からなり、α又はβ配向のグリコシド結合と結合している。好ましくは、二糖類はショ糖である。ショ糖はα-グルコースとβ-フルクトースが結合した分子からなる。好ましくは、二糖類はラクトースである。ラクトースはβ-1,4-グリコシド結合で連結されたガラクトースとグルコースからなる。好ましくは、二糖類はマルトースである。マルトースは典型的には澱粉の部分的加水分解によって生成され、α-1,4-グリコシド結合によって連結された2つのグルコース単位からなる。
【0174】
好ましくは、多糖類は、アルギン酸、キトサン、ヒアルロン酸、セルロース誘導体、デキストラン及びそれらの組合せからなる群より選択される。理論に束縛されることを望まないが、多糖類炭水化物の存在は、最適な消光が凍結乾燥ビーズにおいて得られるように、凍結乾燥ビーズ中の試薬分子間の分子内相互作用を安定化すると考えられる。
【0175】
好ましくは、多糖類はデキストランである。デキストランはアンヒドログルコースの重合体である。典型的には、デキストランは約95%のα-D-(1-6)結合を含み、残りのa(1-3)結合がデキストランの分岐を占める(又は、説明する/account for)。典型的には、平均分枝長は1~50、より好ましくは5~40、さらに好ましくは10~30の範囲である。好ましくは、平均分枝長(average branch length/average branch less”)が3グルコース単位未満である。
【0176】
好ましくは、デキストランの分子量(MW)は2000~5億の範囲である。典型的には、より低いMWデキストランは、わずかに少ない分枝を示し、より狭い範囲のMW分布を有する。10,000を超えるMWを有するデキストランは、典型的には、高分岐であるかのように振る舞う。MWが増加すると、デキストラン分子はより大きな対称性を獲得する。2,000~10,000個のデキストラン分子のMWをもつデキストランは、拡張可能なコイルの特性を示す。2,000デキストラン未満のMWではより棒状である。好ましくは、デキストランの分子量は2000~20000の範囲にあり、より好ましくは3000~15000の範囲にあり、さらに好ましくは4000~10000の範囲にある。
【0177】
デキストランのMWは、当業者に周知の方法によって測定され、その多くは、低角レーザー光散乱、サイズ排除クロマトグラフィー、銅錯体形成、及びアントロン試薬比色還元末端糖定量及び粘度(anthrone reagent colorimetric reducing-end sugar determination and viscosity)を含むが、これらに限定されない。
【0178】
好ましくは、本明細書に記載の方法の工程i)は、体液、好ましくはヒト体液の試料を、試料容器内の試薬と接触させる工程を含み、前記試薬が本明細書に記載の凍結乾燥ビーズである。
【0179】
好ましくは、工程i)において、試薬は、チューブ内の凍結乾燥ビーズとして提供される。いくつかの実施形態において、凍結乾燥ビーズは希釈剤中に溶解されて、適切な容器内の希釈剤の溶液中の試薬を提供し、次いで、希釈剤の溶液中の試薬を、試料と接触させる。好ましくは、希釈剤は水溶液である。好ましくは、水溶液は、水及び任意に1以上の緩衝剤及び/又はpH調節剤を含む。
【0180】
本方法に関して本明細書に記載される実施態様は、凍結乾燥ビーズに関して本明細書に記載される実施態様に同様に適用される。
【0181】
第三態様において、炭水化物及び[a]-[b]-[c](I)構造を有する試薬を含む凍結乾燥ビーズの製造方法が提供され、
式中:
[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、蛍光剤の発光を消光するための、吸収波長が650~900nmの非蛍光剤であり、
[b]は切断部位を含むペプチドであり、切断部位は細菌バイオマーカーに特異的であり、
前記方法は、以下の工程を含む:
i)前記試薬の水溶液を炭水化物と混合して、炭水化物を含む試薬の水溶液を提供する工程、
ii)炭水化物を含む試薬の水溶液を凍結乾燥して、試薬及び炭水化物を含む乾燥ビーズを提供する工程。
【0182】
凍結乾燥ビーズに関して本明細書に記載される実施態様は、凍結乾燥ビーズの製造方法に関して本明細書に記載される実施態様に同様に適用される。
【0183】
好ましくは、炭水化物を含む試薬の水溶液は、凍結乾燥の前にフラッシュ凍結(flash-freezing)の工程を施される。
【0184】
好ましくは、凍結乾燥工程ii)は、24~96時間、好ましくは30~90時間、より好ましくは36~84時間の範囲の持続時間を有する。
【0185】
第四態様において、炭水化物及び構造[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を含む凍結乾燥ビーズの酵素アッセイにおける使用が提供され、
式中:
[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光させるための、吸収波長が650~900nmの非蛍光剤であり、
[b]は切断部位を含むペプチドであり、切断部位はバイオマーカーに特異的である。
【0186】
炭水化物を、発光波長650~900nmの蛍光剤と、吸収波長650~900nmの非蛍光剤とを含む試薬とともに含有することが、酵素アッセイに予想外の利点を提供することが見出されている。
【0187】
酵素アッセイの分析性能の予想外の改善は、試薬が凍結乾燥ビーズ中に炭水化物と共に配合される場合に観察される。
【0188】
さらに、酵素アッセイの臨床性能の予想外の改善が、試薬が凍結乾燥ビーズ中に炭水化物と共に配合される場合に観察される。
【0189】
方法に関して本明細書に記載される実施形態は、酵素アッセイにおける凍結乾燥ビーズの使用に関して本明細書に記載される実施形態に準用される。
【0190】
好ましくは、酵素アッセイは、細胞アッセイ、臨床アッセイ、阻害アッセイ、免疫アッセイ及び微生物学的アッセイからなる群から選択される酵素活性の検出のためのアッセイである。
【0191】
第五態様において、以下を含む、体液試料中の感染のインビトロ診断用キットが提供される:
a) 構造[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を含む容器であって、
式中、[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、吸収波長が650~900nmの非蛍光剤であり、
[b]は切断部位を含むペプチドであり、切断部位は細菌バイオマーカーに特異的である、該容器、及び
b) 本明細書に定義される方法を実施するための一連の説明書。
【0192】
好ましくは、試薬及び希釈剤は、容器の2つの区画に存在し、好ましくは、区画は、圧力活性化可能な膜によって分離される。
【0193】
本明細書に記載される方法の好ましい実施態様は、本明細書に記載されるキットにも同様に適用される。
【0194】
本明細書に記載された凍結乾燥ビーズの好ましい実施形態は、本明細書に記載されたキットに同様に適用される。
【0195】
第6の態様において、以下を含む、人工関節周囲感染、腹膜透析関連腹膜炎及び/又は脳脊髄関連感染のインビトロ診断用キットが提供される:
a) 構造[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を含む容器、式中
[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、吸収波長が650~900nmの非蛍光剤であり、
[b]は切断部位を含むペプチドであり、切断部位は細菌バイオマーカーに特異的である、該容器、及び
b) 本明細書に定義される方法を実施するための一連の説明書。
【0196】
本発明者らは、滑液、腹膜液又は脳脊髄液の試料を受け入れ、試料を本明細書の他の箇所で定義される試薬と接触させるための容器を受け入れるように適合された装置を備えることによって、前記試料中の感染を同定する迅速な手段が提供されることを見出した。
【0197】
好ましくは、システムは、ポイントオブケアシステム(point-of-care system)又は患者ビサイドシステム(patient beside system)である。
【0198】
好ましくは、システムは
a) 構造[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を含む容器であって、
式中、[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、吸収波長が650~900nmの非蛍光剤であり、
[b]は切断部位を含むペプチドであり、切断部位は細菌バイオマーカーに特異的である、該容器と、
b) 前記容器を受け入れ、試薬を用いて滑液、腹腔液又は脳脊髄液の試料の存在下で、試薬から発せられる蛍光シグナルをモニターするように構成された装置と、を含み、本明細書に記載された方法を実施するように構成されているシステム。
【0199】
本明細書に記載される方法の好ましい実施態様は、本明細書に記載されるシステムにも同様に適用される。
【0200】
本発明は、多数の例示的な実施形態を参照して上述した。いくつかの部分又は要素の修正及び代替実施が可能であり、添付の特許請求の範囲に定義されている保護の範囲に含まれる。
実施例
<実施例1>
【0201】
ペプチド1: ペプチド切断部位:AFA; 蛍光剤:IRDye 800CW(米国Licor Bioscience社); 非蛍光剤:QC-1(米国Licor Bioscience社)。
【0202】
(1)と同じ蛍光剤と非蛍光剤を有する対照ペプチド(A)を用いた; ペプチド切断部位:ADA。
(生体試料)
【0203】
実施例1.1
モデル滑液の組成:
2mg/mLヒアルロン酸
25mg/mLウシ血清アルブミン
4mg/mLニュートリエントブロスパウダー(Difco no. 234000)
pH7.1のリン酸緩衝生理食塩液で調製したもの
【0204】
実施例1.2
モデル脳脊髄液の組成: 150mM Na、3.0mM K、1.4mM Ca、0.8mM Mg、1.0mM P、155mM Cl(BioIVTから得た)。
【0205】
実施例1.3
腹水の組成: DIANEAL(2.27%) CAPD液2.5L(バクスター)。
(細菌)
【0206】
以下の菌株を、増殖用汎用培地を添加したモデル滑液、CSF及び腹腔液に接種した:
-緑膿菌(Ex 1)(グラム陰性)
-セレウス菌 (Ex 2) (グラム陽性)
【0207】
5mLボトルで、低(1x10-1x10)、中(1x10-1x10)、高(1x10-1x10)の3段階(CFU/mL)で接種を行った。
【0208】
接種24時間後(術後24時間の臨床状況のモデルとして)、各培養の250uL試料をエッペンドルフ(Eppendorf)チューブに入れた。ペプチド1又はペプチドAを加えて5uMの最終濃度にした。エッペンドルフチューブを、術後24時間の臨床状況のモデルとして、接種24時間後にDeNiro NIR Fluorimeter(Detact Diagnostics BV、オランダ)に留置した。
【0209】
対照試料(ペプチドのみ)のRFUを各測定値から差し引いた。ベースラインRFU測定値を超えるものを(+)で示す。ベースラインに対する変化のないものは(-)で示す。
<実施例2>
細菌バイオマーカーの位置
【0210】
Ex. 1.1及びEx.2.1における細菌バイオマーカーの位置は、細菌培養、濃縮細胞(遠心後)及び上清(遠心後)の蛍光活性(RFU)を測定することにより決定した。
<実施例3>
【0211】
ペプチド2: ペプチド切断部位:ALA; 蛍光剤:IRDye 800CW(Licor Bioscience社、米国); 非蛍光剤:QC-1(Licor Bioscience社、米国)
ペプチドB: ペプチド切断部位:AEA; 蛍光剤:EDANS; 非蛍光剤:DABCYL。
【0212】
ペプチド2の検出効率をペプチドBと比較した。
【0213】
ペプチド2及びBを用いて実施例1.1及び2.1を繰り返した。ペプチドB及びCについては、UV分光光度計を用いて検出を行った。
<実施例4>
【0214】
一晩自動腹膜透析を行っている患者の腹膜透析液を一晩透析後に採取した。透析液の滞留時間は約3時間である。廃液の試料を採取し、緑膿菌の臨床分離株の培養でスパイクした(spiked)。臨床分離株は臨床的(細菌性)腹膜炎患者から採取されていた。
【0215】
2段階で行われたスパイクのレベル: 濁った廃液袋と一致する高レベル(×10CFU/mL)、及び、治療しなければ感染につながる臨床的に問題のある菌量と一致する低レベル(×10CFU/mL)。
【0216】
固相ペプチド合成により試薬(ペプチド3)を合成した。TQ7WS及びTF7WSはAATBIO(Sunnyvale,CA,USA)amideから購入し、PEG1はBroadPharm(San Diego,CA,USA)から購入したAmino-PEG1-acidである。ペプチド3は、アッセイ管中の最終濃度が1uMであった時に使用した。
ペプチド3:
N末端:TQ7WS
C末端:TF7WS
切断部位:AFA
リンカー:PEG1
【0217】
試料は、Greiner 96平底黒壁プレート(96 Flat Black plate)を用いてTECAN SPARKプレートリーダーで分析し、以下の設定を行った:
-オートマチックミラー
-Z位置=20 000
-ゲイン=175
-振盪10秒、オービタル
-キネティックループ:
-持続時間:30分
-インターバル型:5分間固定
-蛍光強度:
-モード:トップ
-励起波長: 756nm 帯域幅: 5
-発光波長: 780nm 帯域幅: 5
【0218】
陽性結果(positive outcome)に対して、15%の相対的活性の閾値を設定した。閾値はブランクの限界値とした。ブランクの限界は、pH 8のリン酸緩衝液中のペプチド3の蛍光発光を測定することによって決定した。
【0219】
陰性試料に対する陽性試料の780nmにおける蛍光発光強度(FI)の比は下表のとおりである。
<実施例5>
【0220】
簡単に述べると、黄色ブドウ球菌(S.aureus)及び緑膿菌(P.aeruginosa)の培養物を調製し、ヒト滑液をスパイクするために使用した(Innovate Research、Novi、MI、米国)。試料を1x10-1x1010の範囲のCFU/mLにスパイクした。この範囲は、人工関節周囲感染における感染滑液中の菌量を表したものである。
【0221】
試料を細菌培養でスパイクした5分後に測定した。試料はDeNIRO蛍光光度計を用いて測定した。
【0222】
使用した試料の組成を表2に示す
【0223】
陽性試料は1.2を超える、陰性試料に対する陽性試料の780nmにおける蛍光発光強度(FI)の比を与えたが、陰性試料は5分で1以下の相対活性を与えた。
<実施例6>
【0224】
AFAモチーフを有する試薬の活性に対するリンカーの影響を腹膜透析液中で測定した。試薬の組成を表8に示す。感染モデルとして広域スペクトル細菌プロテアーゼ(P5380、Sigma Aldrich、4nM最終濃度)に対して試薬6.1~6.5をスクリーニングした。腹膜透析液の試料をリン酸ナトリウム緩衝液、pH8で50%希釈し、Eppendorfチューブ中の1uMのペプチドの最終濃度まで試薬と混合し、マイクロウェルプレート(Greiner、黒壁、チムニー平底のウェルプレート)に200uL移し、TECAN SPARKプレートリーダーを用いて蛍光発光をモニターした。
【0225】
デクェンチング効率(Dequenching efficiency)は、プロテアーゼ非存在下(FI)及び存在下(FI)で780nm(TF7WS)又は796nm(IRDye800CW)のいずれかで蛍光発光強度を測定し、式:(((FI-FI)/FI)*100を用いて強度の変化率を測定することにより測定した。
【0226】
1つ又は2つのPEG1リンカーの導入は、試薬の臨床性能の予想外の改善につながる。
<実施例7>
【0227】
AFAモチーフを有する試薬の活性に対するリンカーの影響を滑液中で測定した。試薬の組成を表8に示す。7.1~7.5の試薬を、滑液中の感染モデルとして広域スペクトル細菌プロテアーゼ(P5380、Sigma Aldrich 4nM最終濃度)に対してスクリーニングした。滑液の試料をリン酸ナトリウム緩衝液、pH8で25%希釈し、Eppendorfチューブ中の1uMのペプチドの最終濃度まで試薬と混合し、マイクロウェルプレート(Greiner、黒壁、チムニーの平底のウェルプレート)に200uL移し、TECAN SPARKプレートリーダーを用いて蛍光発光をモニターした。ペプチドの濃度は1uMであった。プロテアーゼの濃度は4nMであった。
【0228】
デクェンチング効率は、プロテアーゼ非存在下(FI)及び存在下(FI)で780nm(TF7WS)又は796nm(IRDye800CW)のいずれかで蛍光発光強度を測定し、式:(((FI-FI)/FI)*100を用いて強度の変化率を測定することにより測定した。
【0229】
1つ又は2つのPEG1リンカーの導入は、試薬の臨床性能の予想外の改善につながる。
<実施例8>
【0230】
ペプチド1を、炭水化物の存在下でペプチドを凍結乾燥することによって凍結乾燥ビーズとして処方した。簡単に言うと、25ugペプチド1をpH7.4の300uL PBSに溶解し、20%炭水化物を含むpH7.4の300uL PBSに加えた。24個のビーズを分注し、凍結乾燥した(74時間、一次温度-45℃)。
【0231】
賦形剤ごとに、2つの同一ビーズを用いて2つの測定を行った。まず、0.5mLの微量遠心管で、凍結乾燥したビーズを300uLの滅菌水に室温で溶解し、陰性試料を調製し、DeNIRO(登録商標)蛍光光度計(Detact Diagnostics、フローニンゲン、オランダ)に移し、780nmでの蛍光発光強度(TF7WS)を記録した。次に、0.5mLの微量遠心管に凍結乾燥したビーズを、スブチリシン(4nM)の滅菌水溶液300 uLに溶解し、陽性試料を調製した。混合物を短時間渦巻きにし(vortexed)、21℃で15分間培養した後、DeNIRO(登録商標)蛍光光度計を用いて780nmにおける蛍光発光強度(TF7WS)を測定した。
【0232】
陰性検体に対する陽性検体の780nmにおける蛍光発光強度(FI)の比は下表のとおりである。
【0233】
表9は、炭水化物を含む全ての製剤が、相対活性において予想外の改善を与えたことを示している。驚くべきことに、多糖類、デキストランを含む凍結乾燥ビーズは、バックグラウンドの予想外の安定化(最低の陰性FI)及び780nmでの陽性試料の陰性試料に対する最高比率を示した。
<実施例10>
【0234】
実施例9に従うデキストランを含む凍結乾燥ビーズを、200uLの体液(表11に示す腹膜透析液及び滑液)に溶解した。細菌培養物を実施例4に従って調製した。
<比較例>
【0235】
腹腔液及び滑液の臨床試料を、実施例4及び5に従って黄色ブドウ球菌(S. aureus)の培養液でスパイクし、デクェンチング効率を決定する前にWO2018/224561の実施例1により記載される酸性化工程を施した。臨床試料1mLを、10%酢酸の添加によりpH4.6に調整した。溶液は室温で15分間保持した。0.1mLの1M酢酸ナトリウム緩衝液を加え、試料を4500gで30分間遠心分離した。試料を実施例10に従って分析したとき、閾値を超える測定可能な活性は認められなかった。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を用いて体液試料中の感染をインビトロ診断する方法であって、式中、
[a]は、発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、吸収波長650~900nmの非蛍光剤であり、
[b]は、切断部位を含むペプチドであり、前記切断部位は細菌バイオマーカーに対して特異的であり、
前記細菌バイオマーカーが、細菌膜結合プロテアーゼ、細菌膜結合トランスペプチダーゼ、細胞内細菌プロテアーゼ又は細胞外細菌プロテアーゼであり、前記試薬が、単糖類、二糖類、多糖類及びそれらの組合せからなる群より選択される炭水化物を含む凍結乾燥ビーズの形態で提供され、
前記方法が、
i) 体液、好ましくはヒト体液の試料と試料容器内の前記試薬とを接触させる工程と、
ii) 工程i)の前記容器内の前記試料からの650~900nmの範囲の蛍光発光をモニターする工程であって、650~900nmの範囲の蛍光発光の増加が、前記体液試料中の感染の存在を示す、該工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記体液試料は、羊水、尿、漿液、滑液、腹膜透析液、精液、皮脂及び脳脊髄液からなる群から選択され、好ましくは、前記体液は、滑液、腹膜透析液及び脳脊髄液からなる群から選択され、より好ましくは、前記体液は、滑液及び腹膜透析液からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
[b]:([a]+[c])の質量比が少なくとも1:2、好ましくは[b]:([a]+[c])の質量比が少なくとも1:3、より好ましくは[b]:([a]+[c])の質量比が少なくとも1:4、さらにより好ましくは[b]:([a]+[c])の質量比が少なくとも1:5である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記試薬が、一般式[a]-[リンカー-[b]-[-リンカー-[c]を有し、式中、nが0、1又は2であり、mが0、1又は2であり、[リンカー]及び[リンカー]が、任意に置換されたヒドロカルビル基及び非タンパク質分解性ヒドロカルビル基の群から独立して選択され、好ましくはnが0又は1であり、mが1であり、リンカーが非タンパク質分解性ヒドロカルビル基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、前記試料を第一試薬及び第二試薬と接触させる工程を含み、前記第一試薬が一般式[a]-[b]-[c](I)を有し、及び[b]が切断部位(b’)を含むペプチドであり、前記第二試薬が式[a]-[d]-[c](III)を有し、式中[d]が切断部位(d’)を含むペプチドであり、前記切断部位d’は前記切断部位b’とは異なる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程i)が、希釈剤を添加する工程を含み、好ましくは、前記希釈剤が、MOPS、リン酸塩、クエン酸塩、HEPES TRIS-HCl、リン酸緩衝生理食塩水からなる群から選択される緩衝剤を含み、
試料に対する希釈剤の容積比が、好ましくは、0.1~100の範囲、より好ましくは0.5~75の範囲、さらにより好ましくは1~50の範囲である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記試料、及び任意で希釈剤の添加後の前記試料容器内の試薬の濃度が、0.01~10uM、好ましくは0.02~8uM、より好ましくは0.05~5uM、さらにより好ましくは0.1~2.5uMの範囲にある、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
発光波長650~900nmの前記蛍光剤が、シアニン部分、好ましくはスルホ-シアニン部分を含み、吸収波長650~900nmの前記非蛍光剤が、シアニン部分、好ましくはスルホ-シアニン部分を含み、及び/又は
700~850nmの範囲、より好ましくは750~850nmの範囲の蛍光発光の増加が感染の指標である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記細菌バイオマーカーが、細菌膜結合トランスペプチダーゼ又は細胞外細菌プロテアーゼであり、及び/又は
前記切断部位が、セレウス菌(Bacillus cereus)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(Escherichia coli)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される細菌種に対する細菌バイオマーカーに対して特異的であり、好ましくは、前記切断部位が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)及びセレウス菌(Bacillus cereus)に対して特異的であり、より好ましくは、前記切断部位が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対して特異的である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
[b]が3~8個のアミノ酸を含み、より好ましくは3~7個のアミノ酸を含み、さらにより好ましくは3~6個のアミノ酸を含み、及び/又は
[b]は一般式Xaa1,Xaa2,Xaa3を有し、式中、
aa1は、小さな疎水性のアミノ酸であり、好ましくはXaa1は、アラニン、グリシン、ロイシン、バリン、ノルロイシン、ノルバリン、イソロイシン、イソバリン、アロイソロイシンからなる群より選択され、
aa2は、好ましくは、小さな又は芳香族の疎水性アミノ酸であり、好ましくはXaa2は、アラニン、グリシン、ロイシン、バリン、ノルロイシン、ノルバリン、イソロイシン、イソバリン、アロイソロイシン及びフェニルアラニンからなる群より選択され、
aa3は、アラニン、グリシン、ロイシン、バリン、ノルロイシン、ノルバリン、イソロイシン、イソバリン、アロイソロイシンからなる群より選択され、より好ましくは、Xaa3は、アラニン、グリシン、ロイシン、バリンからなる群より選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記試料を容器内の前記試薬と接触させ、前記試薬によって発せられる蛍光を、前記容器を受け入れるように適合させたハンドヘルド又はベンチトップ蛍光分光計によってモニターし、及び/又は
前記試薬が表面に付着しておらず、及び/又は
前記試料に、前記試薬と接触させる前又は接触させた後のいずれかにおいて、20~40℃の温度範囲で細菌培養のエキソビボ工程を施さない、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ビーズが、ビーズ炭水化物の重量に対して5~95重量%含み、ビーズの総重量に対して好ましくは10~90重量%、より好ましくは15~85重量%、さらにより好ましくは20~80重量%の炭水化物を含み、及び/又は
前記炭水化物が、
-単糖類のグルコース、フルクトース、ガラクトース及びそれらの組合せ、
-二糖類のスクロース、マルトース、ラクトース、トレハロース及びそれらの組合せ、及び
-多糖類のアルギン酸塩、キトサン、ヒアルロン酸、セルロース誘導体、デキストラン及びそれらの組み合わせ
からなる群より選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
単糖類、二糖類、多糖類及びそれらの組み合わせからなる群から選択される炭水化物と、
一般式[a]-[b]-[c](I)を有する試薬であって、式中、
[a]は、発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、吸収波長650~900nmの非蛍光剤であり、
[b]は、切断部位を含むペプチドであり、前記切断部位は細菌バイオマーカーに対して特異的であり、前記細菌バイオマーカーが、細菌膜結合プロテアーゼ、細菌膜結合トランスペプチダーゼ、細胞内細菌プロテアーゼ又は細胞外細菌プロテアーゼである、該試薬と、を含む、請求項1~12のいずれか一項で定義される凍結乾燥ビーズ。
【請求項14】
体液試料中の感染をインビトロ診断するためのキットであって、
a) 請求項13の凍結乾燥ビーズを含む容器と、
b) 請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を実施するための一連の説明書と、
c) 任意に、希釈剤を含有する容器と、を含み、
前記試薬及び前記希釈剤が、好ましくは、容器の2つの区画に存在し、好ましくは、前記区画が圧力活性化可能な膜によって分離されている、キット。
【請求項15】
a) 請求項13の凍結乾燥ビーズを含む容器と、
b) 前記容器を受け入れて、前記試薬を用いて滑液、腹水又は脳脊髄液の試料の存在下で、前記試薬から発せられる前記蛍光シグナルを監視するように構成された装置と、を含むシステムであって、前記システムは、請求項1-12のいずれか一項に記載の方法を実施するように適合されており、
前記システムが、好ましくは、ポイントオブケアシステム又は患者ビサイドシステムである、システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0235
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0235】
腹腔液及び滑液の臨床試料を、実施例4及び5に従って黄色ブドウ球菌(S. aureus)の培養液でスパイクし、デクェンチング効率を決定する前にWO2018/224561の実施例1により記載される酸性化工程を施した。臨床試料1mLを、10%酢酸の添加によりpH4.6に調整した。溶液は室温で15分間保持した。0.1mLの1M酢酸ナトリウム緩衝液を加え、試料を4500gで30分間遠心分離した。試料を実施例10に従って分析したとき、閾値を超える測定可能な活性は認められなかった。
下記は、本願の出願当初に記載の発明である。
<請求項1>
一般式[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を用いて体液試料中の感染をインビトロ診断する方法であって、式中、
[a]は、発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、吸収波長650~900nmの非蛍光剤であり、
[b]は、切断部位を含むペプチドであり、前記切断部位は細菌バイオマーカーに対して特異的であり、
前記方法が、
i) 体液、好ましくはヒト体液の試料と試料容器内の前記試薬とを接触させる工程と、
ii) 工程i)の前記容器内の前記試料からの650~900nmの範囲の蛍光発光をモニターする工程であって、650~900nmの範囲の蛍光発光の増加が、前記体液試料中の感染の存在を示す、該工程と、を含む方法。
<請求項2>
前記体液試料は、羊水、尿、漿液、滑液、腹膜透析液、精液、皮脂及び脳脊髄液からなる群から選択され、好ましくは、前記体液は、滑液、腹膜透析液及び脳脊髄液からなる群から選択され、より好ましくは、前記体液は、滑液及び腹膜透析液からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
<請求項3>
[b]:([a]+[c])の質量比が少なくとも1:2、好ましくは[b]:([a]+[c])の質量比が少なくとも1:3、より好ましくは[b]:([a]+[c])の質量比が少なくとも1:4、さらにより好ましくは[b]:([a]+[c])の質量比が少なくとも1:5である、請求項1又は2に記載の方法。
<請求項4>
前記試薬が、一般式[a]-[リンカー-[b]-[-リンカー-[c]を有し、式中、nが0、1又は2であり、mが0、1又は2であり、[リンカー]及び[リンカー]が、任意に置換されたヒドロカルビル基及び非タンパク質分解性ヒドロカルビル基の群から独立して選択され、好ましくはnが0又は1であり、mが1であり、リンカーが非タンパク質分解性ヒドロカルビル基である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
<請求項5>
前記方法が、前記試料を第一試薬及び第二試薬と接触させる工程を含み、前記第一試薬が一般式[a]-[b]-[c](I)を有し、及び[b]が切断部位(b’)を含むペプチドであり、前記第二試薬が式[a]-[d]-[c](III)を有し、式中[d]が切断部位(d’)を含むペプチドであり、前記切断部位d’は前記切断部位b’とは異なる、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
<請求項6>
工程i)が、希釈剤を添加する工程を含み、好ましくは、前記希釈剤が、MOPS、リン酸塩、クエン酸塩、HEPES TRIS-HCl、リン酸緩衝生理食塩水からなる群から選択される緩衝剤を含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
<請求項7>
試料に対する希釈剤の容積比が0.1~100の範囲、より好ましくは0.5~75の範囲、さらにより好ましくは1~50の範囲である、請求項6に記載の方法。
<請求項8>
前記試料、及び任意で希釈剤の添加後の前記試料容器内の試薬の濃度が、0.01~10uM、好ましくは0.02~8uM、より好ましくは0.05~5uM、さらにより好ましくは0.1~2.5uMの範囲にある、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
<請求項9>
発光波長650~900nmの前記蛍光剤が、シアニン部分、好ましくはスルホ-シアニン部分を含み、吸収波長650~900nmの前記非蛍光剤が、シアニン部分、好ましくはスルホ-シアニン部分を含む、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
<請求項10>
700~850nmの範囲、より好ましくは750~850nmの範囲の蛍光発光の増加が感染の指標である、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
<請求項11>
前記細菌バイオマーカーが、細菌膜結合プロテアーゼ、細菌膜結合トランスペプチダーゼ、細胞内細菌プロテアーゼ又は細胞外細菌プロテアーゼであり、より好ましくは前記細菌バイオマーカーが細菌膜結合トランスペプチダーゼ又は細胞外細菌プロテアーゼである、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
<請求項12>
前記切断部位が、セレウス菌(Bacillus cereus)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、化膿性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、大腸菌(Escherichia coli)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される細菌種に対する細菌バイオマーカーに対して特異的であり、好ましくは、前記切断部位が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)及びセレウス菌(Bacillus cereus)に対して特異的であり、より好ましくは、前記切断部位が緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に対して特異的である、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
<請求項13>
[b]が3~8個のアミノ酸を含み、より好ましくは3~7個のアミノ酸を含み、さらにより好ましくは3~6個のアミノ酸を含む、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
<請求項14>
[b]は一般式Xaa1,Xaa2,Xaa3を有し、式中、
Xaa1は、小さな疎水性のアミノ酸であり、好ましくはXaa1は、アラニン、グリシン、ロイシン、バリン、ノルロイシン、ノルバリン、イソロイシン、イソバリン、アロイソロイシンからなる群より選択され、
Xaa2は、好ましくは、小さな又は芳香族の疎水性アミノ酸であり、好ましくはXaa2は、アラニン、グリシン、ロイシン、バリン、ノルロイシン、ノルバリン、イソロイシン、イソバリン、アロイソロイシン及びフェニルアラニンからなる群より選択され、
Xaa3は、アラニン、グリシン、ロイシン、バリン、ノルロイシン、ノルバリン、イソロイシン、イソバリン、アロイソロイシンからなる群より選択され、より好ましくは、Xaa3は、アラニン、グリシン、ロイシン、バリンからなる群より選択される、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
<請求項15>
前記試料を容器内の前記試薬と接触させ、前記試薬によって発せられる蛍光を、前記容器を受け入れるように適合させたハンドヘルド又はベンチトップ蛍光分光計によってモニターする、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
<請求項16>
前記試薬が表面に付着していない、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
<請求項17>
前記試料に、前記試薬と接触させる前又は接触させた後のいずれかにおいて、20~40℃の温度範囲で細菌培養のエキソビボ工程を施さない、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
<請求項18>
工程i)の前記試薬が炭水化物を含む凍結乾燥ビーズの形態で提供される、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
<請求項19>
前記ビーズが、ビーズ炭水化物の重量に対して5~95重量%含み、ビーズの総重量に対して好ましくは10~90重量%、より好ましくは15~85重量%、さらにより好ましくは20~80重量%の炭水化物を含む、請求項18に記載の方法。
<請求項20>
前記炭水化物が、ポリオール、単糖類、二糖類、多糖類及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項18又は19に記載の方法。
<請求項21>
炭水化物及び構造[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を含む凍結乾燥ビーズであって、式中、
[a]は、発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、吸収波長650~900nmの非蛍光剤であり、
[b]は、切断部位を含むペプチドであり、前記切断部位はバイオマーカー、好ましくは細菌バイオマーカーに対して特異的である、凍結乾燥ビーズ。
<請求項22>
前記ビーズが、ビーズ炭水化物の重量に対して5~95重量%含み、ビーズの総重量に対して好ましくは10~90重量%、より好ましくは15~85重量%、さらにより好ましくは20~80重量%の炭水化物を含む、請求項21に記載の凍結乾燥ビーズ。
<請求項23>
前記炭水化物が、ポリオール、単糖類、二糖類、多糖類及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項21又は22に記載の凍結乾燥ビーズ。
<請求項24>
前記ポリオールが、(2R,3S)-ブタン-1,2,3,4-テトロール(エスリトール)、4-O-β-D-ガラクトピラノシル-D-グルシトール(ラクチトール)、(2S,3S,4S,5S)-ヘキサン-1,2,3,4,5,6-ヘキソール(L-マンニトール)、(2R,3R,4R,5R)-ヘキサン-1,2,3,4,5,6-ヘキソール(D-マンニトール)、4-O-α-D-グルコピラノシル-D-グルシトール(マルチトール)、(2R,3R,4R,5S)-ヘキサン-1,2,3,4,5,6-ヘキソール(ソルビトール)、(2R,3r,4S)-ペンタン-1,2,3,4,5-ペントール(キシリトール)、ポリエチレングリコール及びそれらの組合せからなる群より選択され、好ましくは、前記ポリオールは、(2S,3S,4S,5S)-ヘキサン-1,2,3,4,5,6-ヘキソール(L-マンニトール)、(2R,3R,4R,5R)-ヘキサン-1,2,3,4,5,6-ヘキソール(D-マンニトール)及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項21~23のいずれかに記載の凍結乾燥ビーズ。
<請求項25>
前記単糖類がグルコース、フルクトース、ガラクトース及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項21~24のいずれかに記載の凍結乾燥ビーズ。
<請求項26>
前記二糖類が、スクロース、マルトース、ラクトース、トレハロース及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項21~25のいずれかに記載の凍結乾燥ビーズ。
<請求項27>
前記多糖類が、アルギン酸塩、キトサン、ヒアルロン酸、セルロース誘導体、デキストラン及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項21~26のいずれかに記載の凍結乾燥ビーズ。
<請求項28>
前記試薬が、請求項21~27のいずれか1以上に記載の試薬である、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
<請求項29>
炭水化物及び構造[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を含む凍結乾燥ビーズの酵素アッセイにおける使用であって、式中、
[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[b]は切断部位を含むペプチドであって、前記切断部位はバイオマーカー、好ましくは細菌バイオマーカーに対して特異的であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、吸収波長650~900nmの非蛍光剤である、使用。
<請求項30>
体液試料中の感染をインビトロ診断するためのキットであって、
a) 構造[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を含む容器であって、式中、
[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[b]は切断部位を含むペプチドであり、前記切断部位は細菌バイオマーカーに対して特異的であり、
[c]は、前記蛍光剤の前記発光を消光するための、吸収波長650~900nmの非蛍光剤である、該容器と、
b) 請求項1~20の方法を実施するための一連の説明書と、
c) 任意に、希釈剤を含有する容器と、を含むキット。
<請求項31>
前記試薬及び前記希釈剤が、容器の2つの区画に存在し、好ましくは、前記区画が圧力活性化可能な膜によって分離されている、請求項30に記載のキット。
<請求項32>
前記試薬が、請求項21~27のいずれか1以上に記載のものである、請求項30又は31に記載のキット。
<請求項33>
a)構造[a]-[b]-[c](I)であって、
[a]は発光波長650~900nmの蛍光剤であり、
[c]は蛍光剤の発光を消光するための吸収波長が650~900nmの非蛍光剤であり、
[b]は切断部位を含むペプチドであり、切断部位は細菌のバイオマーカーに特異的である、前記構造[a]-[b]-[c](I)を有する試薬を含む容器と、
b)容器を受け入れて、試薬を用いて滑液、腹水又は脳脊髄液の試料の存在下で、試薬から発せられる蛍光シグナルを監視するように構成された装置を有するシステムであって、請求項1~20に記載の方法を実施するように構成されたシステム。
<請求項34>
前記システムが、ポイントオブケアシステム又は患者ビサイドシステムである、請求項33に記載のシステム。
【国際調査報告】