(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】燃料電池システムを作動させる方法、燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04701 20160101AFI20240308BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20240308BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20240308BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20240308BHJP
H01M 8/04029 20160101ALI20240308BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240308BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240308BHJP
【FI】
H01M8/04701
H01M8/04225
H01M8/04302
H01M8/04014
H01M8/04029
H01M8/04746
H01M8/04 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557742
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2022056175
(87)【国際公開番号】W WO2022207267
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】102021203106.4
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ケマー,ヘラーソン
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127AC09
5H127BA02
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127BB39
5H127DA02
5H127DC36
5H127DC38
5H127DC79
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】
本発明は燃料電池システム(1)を作動させる方法に関し、該方法では、燃料電池スタック(2)に空気流入経路(3)を介して空気が供給され、燃料電池スタック(2)から出る排気が排気経路(4)を介して排出され、冷却回路(5)の冷却剤が廃熱の排出のために燃料電池スタック(2)を通って案内される。本発明によると、始動の場合に、特に燃料電池システム(1)の凍結始動のときに、冷却剤が燃料電池スタック(2)に入る前に少なくとも1つの熱交換器(6,7)によって加熱され、熱源として、燃料電池スタック(2)から出る排気が利用される。さらに、本発明は本方法を実施するための燃料電池システム(1)に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システム(1)を作動させる方法であって、燃料電池スタック(2)に空気流入経路(3)を介して空気が供給され、前記燃料電池スタック(2)から出る排気が排気経路(4)を介して排出され、冷却回路(5)の冷却剤が廃熱の排出のために前記燃料電池スタック(2)を通って案内される、方法において、
始動の場合に、特に前記燃料電池システム(1)の凍結始動のときに、冷却剤が前記燃料電池スタック(2)に入る前に少なくとも1つの熱交換器(6,7)によって加熱され、熱源として、前記燃料電池スタック(2)から出る排気が利用されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記冷却回路(5)に配置される熱交換器(6)、特にガス・水熱交換器が利用され、始動の場合に、特に凍結始動のときに、前記排気経路(4)に組み込まれた少なくとも1つのバルブ(8)によって、前記燃料電池スタック(2)から出る排気が前記熱交換器(6)へと方向転換されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記排気経路(4)に配置される熱交換器(6)、特にガス・水熱交換器が利用され、始動の場合に、特に凍結始動のときに、前記冷却回路(5)に組み込まれた少なくとも1つのバルブ(9)によって冷却剤が前記熱交換器(6)へと方向転換されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記冷却回路(5)に配置される熱交換器(7)、特に水・水熱交換器、ならびに前記排気経路(4)に配置される熱交換器(6)が利用され、これらの熱交換器が少なくとも1つのバルブ(10,11)の切換位置に依存して別の冷却回路(12)を介して接続され、ないしは接続可能であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
燃料電池スタック(2)と、前記燃料電池スタック(2)に空気を供給可能である空気流入経路(3)と、前記燃料電池スタック(2)から出る排気を排出可能である排気経路(4)とを含み、さらに、前記燃料電池スタック(2)の廃熱を排出するために冷却剤を案内する冷却回路(5)を含む、燃料電池システム(1)において、
前記排気経路(4)または接続可能な排気副経路(14)に熱交換器(6)が組み込まれ、この熱交換器を通って前記冷却回路(5)、前記冷却回路(5)の接続可能な拡張部(13)、または別の冷却回路(12)が案内され、この別の冷却回路は別の熱交換器(7)を介して前記第1の冷却回路(5)と熱伝達方式で接続されることを特徴とする、燃料電池システム。
【請求項6】
前記排気経路(4)にバルブ(8)が組み込まれ、このバルブによって前記排気副経路(14)を接続可能であり、好ましくは前記排気副経路(14)に別のバルブ(15)、特に遮蔽弁が組み込まれることを特徴とする、請求項5に記載の燃料電池システム(1)。
【請求項7】
前記第1の冷却回路(5)にバルブ(9)が組み込まれ、このバルブによって前記拡張部(13)を接続可能であることを特徴とする、請求項5に記載の燃料電池システム(1)。
【請求項8】
前記冷却回路(5)の前記拡張部(13)に、または前記別の冷却回路(12)に、前記排気経路(4)に組み込まれた前記熱交換器(6)を迂回するための少なくとも1つのバルブ(10,11)が組み込まれることを特徴とする、請求項5に記載の燃料電池システム(1)。
【請求項9】
少なくとも1つの前記バルブ(10,11)の切換位置に依存して、前記冷却回路(5)の前記拡張部(13)または前記別の冷却回路(12)が、空気の温度調節のために前記空気流入経路(3)に組み込まれた少なくとも1つの熱交換器(16,17)を通ることを特徴とする、請求項8に記載の燃料電池システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブルの構成要件を有する、燃料電池システムを作動させる方法に関する。これに加えて本発明は、この方法を実施するのに適した、ないしはこの方法に基づいて作動可能である、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素ベースの燃料電池は、水素と酸素を電気エネルギー、廃熱、および水に変換する。酸素供給源としての役目は、通常、周囲から取り出される空気が果たす。電気出力を向上させるために、通常、「スタック」とも呼ばれる燃料電池スタックをなすように多数の燃料電池がつなぎ合わされる。これに複数の供給通路が通っていて、個々の燃料電池に必要な反応ガスを供給する。これに加えて燃料電池スタックは、冷却回路の冷却剤により負荷可能である冷却通路を有している。冷却剤を通じて、燃料電池での電気化学反応のもとで発生する排熱が排出される。さらに発生する水は、燃料電池スタックを通って延びる別の通路を通じて排出される。
【0003】
燃料電池システムの始動時には、特に0°を下回る温度のもとでは、燃料電池スタックがまず加熱されなくてはならない。できる限り迅速な加熱は、始動プロセスに支障をもたらす、あるいは全面的に妨げさえする、水および/または氷の堆積が形成され得ないように作用する。しかし凍結の危険が初めて払拭されるのは、燃料電池スタックに導入される冷却剤が0℃を上回る温度に達したときである。したがって冷却剤は凍結始動のもとではスタック外部で、またはスタック内での電気化学反応によって、加熱される。しかしこの両者は、始動プロセスが長くかかることにつながる。さらに、0℃を下回る常時の冷却に基づき、たとえばアイスバッファを組み込むことで、燃料電池の凍結耐性を向上させなければならない。その代替または補足として、ヒータをシステムに設けることができる。しかし、このことは追加のコストと結びついている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明が従事する課題は、ヒータの形態の追加の熱出力をできる限り使わずに、燃料電池システムの凍結始動能力を改善することにある。それと同時にコストが削減されるものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために、請求項1の構成要件を有する方法、ならびに請求項5の構成要件を有する燃料電池システムが提案される。好ましい実施形態は、それぞれの従属請求項から読み取ることができる。
【0006】
燃料電池システムを作動させる方法が提案され、該方法では、燃料電池スタックに空気流入経路を介して空気が供給され、燃料電池スタックから出る排気が排気経路を介して排出される。さらに本方法では、冷却回路の冷却剤が廃熱の排出のために燃料電池スタックを通って案内される。本発明によると、始動の場合に、特に燃料電池システムの凍結始動のときに、冷却剤が燃料電池スタックに入る前に少なくとも1つの熱交換器によって加熱され、熱源として、燃料電池スタックから出る排気が利用される。
【0007】
燃料電池スタックから出る排気の熱ないし排気エンタルピーの利用は、システムでのヒータの使用を不要にする。すなわち冷却剤を追加の熱出力なしに、燃料電池へ入る前に加熱することができる。さらに、たとえば燃料電池でのアイスバッファの使用などの着氷耐性の向上に資する方策を減らすことができる。これらすべては、コスト削減の効果を表す。これに加えて、入口領域での燃料電池の凍結を防止するために通常は行われる冷却剤容積流量の低減をしなくてすむので、迅速な凍結始動を具体化することができる。迅速な始動はひいては水素消費量を削減し、このことも同じくコスト削減の効果を表す。
【0008】
本発明の第1の好ましい実施形態では、冷却回路に配置される熱交換器が冷却剤の加熱のために利用される。始動の場合に、特に凍結始動のときに、排気経路に組み込まれた少なくとも1つのバルブによって、燃料電池スタックから出る排気が熱交換器へと方向転換される。冷却剤の加熱が必要でないケースでは、排気経路に組み込まれたバルブを開いたままに保つことができ、それにより、排気が熱交換器へと方向転換されることがない。排気経路から熱交換器への排気の逆流を防ぐために、排気経路のバイパスに配置される別のバルブが設けられていてよい。そしてこのバルブが閉じられる。
【0009】
冷却回路に組み込まれる熱交換器は、特にガス・水熱交換器であってよい。それというのも排気はガスであり、冷却回路の冷却剤は好ましくは水だからである。熱交換器は向流熱交換器として構成されるのが好ましい。しかしながら、直交流熱交換器としての実施も同じく可能である。
【0010】
本発明の第2の好ましい実施形態では、排気経路に配置される熱交換器が冷却剤の加熱のために利用される。始動の場合に、特に凍結始動のときに、冷却回路に組み込まれた少なくとも1つのバルブによって冷却剤が熱交換器へと方向転換される。この場合にも、冷却剤が熱交換器で排気のそばを通過するので、この熱交換器は特にガス・水熱交換器であってよい。熱交換器は向流熱交換器として構成されるのが好ましい。しかしながら、直交流熱交換器の使用も同じく可能である。
【0011】
本発明の第3の好ましい実施形態では、冷却回路に配置される熱交換器ならびに排気経路に配置される熱交換器が利用される。これらが少なくとも1つのバルブの切換位置に依存して別の冷却回路を介して接続され、ないしは接続可能である。すなわち、冷却剤が排気によって直接的に加熱されるのではなく、別の冷却回路の冷却剤を通じて間接的に加熱される。別の冷却回路は、特に、システムの通常動作では燃料電池スタックの入口側で空気の温度調節の役目を果たす冷却回路であってよい。そして相応の配管のもとで、始動の場合に、特にシステムの凍結始動のときに、第1の冷却回路の冷却剤の加熱のために別の冷却回路を利用することができる。適切な配管は、たとえば3方向制御弁および/または4方向制御弁などのバルブによって具体化することができる。
【0012】
冷却回路ないし両方の冷却回路に組み込まれる熱交換器は、水・水熱交換器であるのが好ましい。排気経路に組み込まれる熱交換器は、このケースではガス・水熱交換器である。熱交換器はそれぞれ向流熱交換器として、または直交流熱交換器として、構成されていてよい。
【0013】
これに加えて提案される燃料電池システムは、燃料電池スタックと、燃料電池スタックに空気を供給可能である空気流入経路と、燃料電池スタックから出る排気を排出可能である排気経路とを含む。さらに燃料電池システムは、燃料電池スタックの廃熱を排出するために冷却剤を案内する冷却回路を含む。本発明によると、排気経路または接続可能な排気副経路に熱交換器が組み込まれ、この熱交換器を通るように冷却回路、冷却回路の接続可能な拡張部、または別の冷却回路が案内され、この別の冷却回路は別の熱交換器を介して第1の冷却回路と熱伝達方式で接続される。
【0014】
このように、提案される燃料電池システムは、上に説明した本発明による方法を実施するために必要となるコンポーネントをすべて有している。すなわち提案される燃料電池システムは、上に説明した本発明による方法に基づいて作動可能である。したがって同じ利点を実現することができる。特に、迅速な凍結始動を追加のヒータの使用なしに具体化することができる。システムの凍結耐性を向上させるべき方策を減らすことができ、または、完全に省略することさえできる。それに応じてコストが削減される。それと同時に水素消費量を削減することができる。
【0015】
始動の場合に、特にシステムの凍結始動のときに、燃料電池スタックから出る熱い排気を、冷却回路の冷却剤の加熱のために利用できることによって、利点が得られる。そのために、燃料電池システムの具体的な実施形態に依存して、排気の熱が冷却回路の冷却剤へ直接的に放出されるか、または、別の冷却回路の冷却剤を通じて間接的に放出される。熱が直接的に伝達される場合、そのために設けられる熱交換器は冷却回路または排気経路に組み込まれていてよい。別の冷却回路が間に介在する場合には、少なくとも2つの熱交換器が設けられる。
【0016】
本発明の1つの好ましい実施形態では、排気経路にバルブが組み込まれ、このバルブによって排気副経路を接続可能である。すなわちバルブが開くことで、燃料電池スタックから出る熱い排気が排気副経路へと案内される。そしてこれを通じて、冷却回路に組み込まれた熱交換器に排気を供給することができる。そして熱交換器の下流側で、排気を排気副経路から再び排気経路へと導入することができる。熱交換器への排気の逆流を防ぐために、排気副経路には別のバルブ、特に遮蔽弁が組み込まれるのが好ましい。
【0017】
本発明の別の好ましい実施形態では、第1の冷却回路にバルブが組み込まれ、このバルブによって冷却回路の拡張部を接続可能である。すなわちバルブが開くことで冷却回路を拡張し、排気経路に組み込まれた熱交換器に冷却剤を供給することができる。このことは排気流の迂回を不要にする。さらに、拡張された冷却回路は適切な配管のもとで、燃料電池スタックの入口側での空気の温度調節のために利用することができる。このように冷却回路の拡張部は、燃料電池スタックの入口側での空気の温度調節のための別の冷却回路の代替となることができる。このことは、冷却媒体を送出するために1つの冷却剤ポンプしか必要ないという利点をもたらす。
【0018】
さらに、冷却回路の拡張部に、または別の冷却回路に、排気経路に組み込まれた熱交換器を迂回するための少なくとも1つのバルブが組み込まれることが提案される。排気経路に組み込まれた熱交換器の迂回が可能なことにより、システムの通常動作のときには排気による冷却剤の加熱を回避することができ、それにより冷却剤の冷却作用が向上する。このことが特に利点であるのは、冷却剤が同時に燃料電池スタックの入口側での空気の温度調節のために利用される場合である。その場合に、冷却剤を用いてこの空気をいっそう効率的に冷却することができる。
【0019】
さらに、燃料電池スタックの入口側での空気の温度調節のために第1の冷却回路または別の冷却回路の冷却剤を利用するために、-排気経路に組み込まれた熱交換器を迂回するための少なくとも1つのバルブの切換位置に依存して-冷却回路の拡張部または別の冷却回路が、空気の温度調節のために空気流入経路に組み込まれた少なくとも1つの熱交換器を通ることが提案される。
【0020】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付の図面を参照しながら詳しく説明する。図面は次のものを示す:
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による第1の燃料電池システムのカソード領域を示す模式図である。
【
図2】本発明による第2の燃料電池システムのカソード領域を示す模式図である。
【
図3】本発明による第3の燃料電池システムのカソード領域を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、カソード24とアノード25とを有する、本発明による燃料電池システム1の燃料電池スタック2を示している。アノード25は、燃料電池システム1の作動時に、アノード回路(図示せず)を介して水素の供給をうけ、これが酸素とともに電気エネルギー、廃熱、および水に変換される。酸素供給源としての役目を果たすのは、周囲から取り出されて空気流入経路3を介してカソード24に供給される空気である。周囲から取り出される空気は、まず、空気流入経路3に組み込まれた空気フィルタ21に供給され、次いで、エアコンプレッサ22によって圧縮される。空気は圧縮されると大幅に熱せられるので、燃料電池スタック2へ入る前に冷却される。そのために空気流入経路3には熱交換器16が配置されている。燃料電池スタック2から出る空気ないし排気は、排気経路4を介して排出される。燃料電池スタック2を迂回するために、バイパス弁27が組み込まれたバイパス経路26を介して、空気流入経路3と排気経路4を接続可能である。
【0023】
燃料電池スタック2は廃熱の排出のために冷却回路5と接続されていて、これが熱を車両ラジエータ20に放出する。冷却回路5には、たとえば水などの冷却剤を送出するための冷却剤ポンプ18が組み込まれている。これに加えて冷却回路5には熱交換器6が配置されていて、さらに排気副経路14がこれを通っている。排気経路4に組み込まれたバルブ8を閉じることで、燃料電池スタック2から出る熱い排気を排気副経路14へと方向転換させることができ、それにより排気が熱交換器6を貫流する。そして熱交換器6の下流側で、排気が再び排気経路4に導入される。熱交換器6への排気の逆流を防ぐために、排気副経路14には別のバルブ15が設けられていて、その際にこれが閉じられる。
【0024】
始動の場合に、特にシステムの凍結始動のときに、バルブ8が閉じられてバルブ15が開く。すると燃料電池スタック2から出る熱い排気は、排気副経路14を介して熱交換器6を通って流れ、その際に冷却回路5の冷却剤を加熱する。このようにして、加熱された冷却剤を燃料電池スタック2に供給することができ、それによりシステムがいっそう迅速に始動する。
【0025】
図2は、本発明による別の燃料電池システム1のカソード領域を示している。ここでは、空気流入経路3を介して燃料電池スタック2に供給される空気が複数の段階で圧縮される。そのために空気流入経路3には、第1のエアコンプレッサ22と第2のエアコンプレッサ23とが組み込まれている。各々の圧縮プロセスの後に空気を冷却するために、エアコンプレッサ22,23の後にはそれぞれ熱交換器16,17が続いている。これらは冷却回路5の冷却剤によって貫流され、この冷却剤が同時に燃料電池スタック2の冷却の役目も果たす。そのために冷却回路5は、バルブ9の切換位置に依存して接続可能である拡張部13を有している。拡張部13には、バルブ10とバルブ11とがさらに設けられている。これら両方のバルブ10,11の切換位置に依存して、空気流入経路3に組み込まれた熱交換器16,17を通る代わりに、排気経路4に組み込まれた熱交換器6を通るように冷却剤を案内することができる。すなわちシステムの凍結始動のとき、排気経路4の熱い排気によって冷却回路5の冷却剤を加熱してから、燃料電池スタック2に導入することができる。
【0026】
図2のシステムの変形例が
図3に示されている。ここでは空気流入経路3の空気が同じく複数の段階で圧縮されるので、空気流入経路3には第1のエアコンプレッサ22と第2のエアコンプレッサ23が組み込まれている。各々のエアコンプレッサ22,23の下流側にはやはり熱交換器16,17が設けられている。ただしこれらは冷却回路5の冷却剤で貫流されるのではなく、別の冷却回路12の冷却剤で貫流される。したがって冷却回路12には、別の冷却剤ポンプ19が冷却剤の送出のために設けられている、始動の場合に、特に凍結始動のときに、排気エンタルピーを利用して冷却回路5の冷却剤を加熱するために、冷却回路5には別の熱交換器7が組み込まれていて、別の冷却回路12もこれに通じている。別の冷却回路12には、排気経路4に組み込まれた熱交換器6への、別の冷却回路12の冷却剤の方向転換を可能にするバルブ10,11がさらに設けられている。それに応じて排気の熱はまず冷却回路12の冷却剤を加熱し、次いで、熱交換器7で冷却回路5の冷却剤に熱を放出する。このように、ここでも排ガスエンタルピーを必要に応じて冷却剤の加熱のために利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 燃料電池システム
2 燃料電池スタック
3 空気流入経路
4 排気経路
5 冷却回路
6,7 熱交換器
8,9 バルブ
10,11 バルブ
12 別の冷却回路
13 拡張部
14 排気副経路
15 別のバルブ
16,17 熱交換器
【国際調査報告】