(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】安定化電極
(51)【国際特許分類】
H01M 4/485 20100101AFI20240308BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240308BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240308BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240308BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240308BHJP
【FI】
H01M4/485
H01M4/58
H01M4/36 C
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559681
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 EP2022057760
(87)【国際公開番号】W WO2022207449
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】102021108464.4
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500449008
【氏名又は名称】ライプニッツ-インスティトゥート フィア ノイエ マテリアーリエン ゲマインニュッツィゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクタ ハフトゥンク
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プレッサー フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】ワン レイ
(72)【発明者】
【氏名】パッタラチャイ スリムック
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050DA09
5H050EA08
5H050GA16
5H050HA02
(57)【要約】
本発明は、液体媒体から元素イオンを抽出する電極材料であって、元素イオンを保持又は放出することができる少なくとも1つのイオンふるい、又はかかるイオンふるいの混合物を含む少なくとも1つの電極材料を含み、イオンふるい(複数の場合もある)が炭素で被覆されている、電極材料に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体媒体から元素イオンを抽出する電極材料であって、元素イオンをインターカレート又は放出することができる少なくとも1つのイオンふるい、又はかかるイオンふるいの混合物を含む少なくとも1つの電極材料を含み、前記イオンふるい(複数の場合もある)が炭素で被覆されている、電極材料。
【請求項2】
前記元素イオンがリチウムイオンであることを特徴とする、請求項1に記載の電極材料。
【請求項3】
前記元素イオンの取り込み後の前記イオンふるいが、リチウム含有金属酸化物又はリチウム含有金属リン酸塩であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電極材料。
【請求項4】
前記イオンふるいが、リチウムと、Co、Mg、Cr、Mn、Ni、Fe、Al、Mo、V、W若しくはTiから選択される少なくとも1種の更なる元素とを含有する複合酸化物、又はリン酸鉄リチウムであることを特徴とする、請求項3に記載の電極材料。
【請求項5】
前記リン酸鉄リチウムが、LiFePO
4、Li
xMe
yFePO
4、LiFeMe
yPO
4、又はこれらの混合物から選択され、Meが、Mn、Co、Mo、Ti、Al、Ni、Nb、又はこれらの混合物であり、0<x<1かつ0<y<1であることを特徴とする、請求項4に記載の電極材料。
【請求項6】
前記炭素層が、炭化により得られることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項7】
前記イオンふるいが、粒子の形態であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の電極材料。
【請求項8】
液体媒体から元素イオンを抽出する電極であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の電極材料を含む、電極。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の少なくとも1種の電極材料を用いて液体媒体から元素イオンを抽出する方法であって、前記元素イオンのインターカレーション及び放出が、電圧を印加することによって制御される、方法。
【請求項10】
a)電気透析セルを備える、電気透析用装置を用意し、陰イオン交換膜を用いて、前記電気透析セルをリチウム塩チャンバとアルカリチャンバとに分割し、前記アルカリチャンバを塩ブラインで満たし、前記リチウム塩チャンバを支持電解質溶液で満たす工程と、
b)カソードとして作用するように前記アルカリチャンバ内に枯渇イオンふるいで被覆された導電性基板を配置し、アノードとして作用するように前記リチウム塩チャンバ内にリチウムインターカレートイオンふるいで被覆された導電性基板を配置する工程であって、前記2つの導電性基板のうちの少なくとも一方、好ましくは両方が、電極材料として請求項1~7のいずれか一項に記載のイオンふるいを含み、前記電気透析の実施中に、前記イオンふるいは、外部電位下で別のリチウムインターカレートイオンふるいへの変換に付すために、前記アルカリチャンバ内にLi
+をインターカレートすることができ、前記リチウムインターカレートイオンふるいは、前記外部電位下で別のイオンふるいへの変換に付すためにLi
+を導電性溶液中に放出することができ、前記枯渇イオンふるい及び前記リチウムインターカレートイオンふるいによるLi
+のインターカレーション及び放出のそれぞれの後で、リチウム塩チャンバ内で濃縮が起こり、リチウム濃縮溶液を得る、工程と、
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記媒体中に溶解した酸素の濃度を、前記元素イオンのインターカレーションの間、好ましくは前記媒体を窒素でパージすることにより低下させることを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか一項に記載の方法を実施する装置。
【請求項13】
液体媒体から元素イオンを抽出するプロセスにおける、請求項1~7のいずれか一項に記載の電極材料の使用。
【請求項14】
少なくとも1つのイオンふるいを用いて液体媒体から元素イオンを抽出する方法であって、前記元素イオンのインターカレーション及び放出が、電圧を印加することによって制御され、前記媒体中に溶解した酸素の濃度が、前記媒体を非酸化性ガスでパージすることによって低下される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体媒体から元素イオンを抽出する電極材料に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池を動力源とするモバイル電子機器及び電気自動車の使用が急増すると予想される結果、リチウムイオンベースの充電式エネルギー貯蔵の需要が急増している。2015年から2050年の間に、陸上で入手可能な総リチウム埋蔵量の3分の1超である500万トンのリチウムが消費され、リチウム埋蔵量が2080年までに使い果たされる可能性があると予測されている。現在、ほとんどのリチウムは、鉱物資源と比較して比較的低コストで豊富な埋蔵量のためにブラインから抽出される。リチウムを迅速かつ大量に生産することができる低コストで環境に優しい方法に対する大きな需要がある。ブラインからリチウムを抽出するため、天日蒸発、吸着、及び電気分解等の多くの方法が存在する。天日蒸発法が最も普及しているが、時間がかかり、場所もとる。吸着法は再生に大量の酸を必要とし、電気分解プロセスは比較的低いリチウム回収効率及び膜ファウリングに悩まされる。したがって、高度で持続可能で効果的なリチウム回収技術を開発する必要がある。
【0003】
電気化学的プロセスは、プロセスの単純さ、エネルギー効率、及び高いリチウム選択性のために、リチウム抽出に特に有望である。Kanoh et al.による1993年の研究では、リチウム抽出用の電極としてλ-MnO2(リチウム抽出)及びPt(O2生成)が導入された(非特許文献1)。2012年にPasta et al.は、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)及び銀がそれぞれカソード及びアノードとして機能する新たなセルコンセプトを導入した(非特許文献2)。このセルでは、1サイクルが捕捉及び放出の2つの半サイクルプロセスを含む。充電中、リチウムイオン及び塩化物イオンはそれぞれリン酸鉄及び銀によって捕捉され、放電中、イオンは電極から溶液中に放出される。その後の数年間で、ブラインからのリチウム抽出に関する多くの研究の結果が報告され、LiFePO4の高い選択性及びグリーン製造プロセス(green production process)のために、ほぼ全ての場合で手順はLiFePO4に基づいている。例えば、Trocoli et al.(非特許文献3)は、アタカマ(Atacama)におけるブラインからのリチウム抽出用電極としてLiFePO4及びNiHCFeを有するセルの使用について報告し、給水中のリチウム濃度は4%から11%に増加し、エネルギー消費量は8.7Wh/molであった。Kim et al.は、I-/I3
-に浸漬したポリドーパミン被覆LiFePO4及びPtを電極として使用したところ、このセルは、Li/Naイオン選択性の4000倍超の増加を達成した(非特許文献4)。これらの研究では、電子の安定性はほとんど調査されなかった。また、リチウムに加えて存在する陽イオン、例えばNa+、Ca2+、及びMg2+がLiFePO4の安定性に悪影響を及ぼすかどうかも知られていない。
【0004】
しかしながら、電極の有効利用、特に水処理には、より低い容量低下に加えてより高いサイクル安定性が必要である。既知の電極材料の安定性は、これには不十分である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kanoh, H.; Ooi, K.; Miyai, Y.; Katoh, S., Electrochemical recovery of lithium ions in the aqueous phase. Separation Science and Technology 1993, 28, (1-3), 643-651.
【非特許文献2】Pasta, M.; Battistel, A.; La Mantia, F., Batteries for lithium recovery from brines. Energy & Environmental Science 2012, 5, (11), 9487
【非特許文献3】Trocoli, R.; Battistel, A.; La Mantia, F., Nickel hexacyanoferrate as suitable alternative to Ag for electrochemical lithium recovery. ChemSusChem 2015, 8, (15), 2514-2519
【非特許文献4】Kim, J.-S.; Lee, Y.-H.; Choi, S.; Shin, J.; Dinh, H.-C.; Choi, J. W., An electrochemical cell for selective lithium capture from seawater. Environmental Science & Technology 2015, 49, (16), 9415-9422
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、特に水溶液中での使用について改善された安定性を有する電極材料、またかかる電極材料の使用、及び水処理方法を特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、独立項の特徴を有する発明によって達成される。本発明の有利な発展形態は、従属項において特徴付けられる。全ての特許請求の範囲の文言は、引用することにより本明細書の内容の一部をなす。本発明はまた、全ての合理的な組み合わせ、特に独立項及び/又は従属項の全ての列挙された組み合わせを包含する。
【0008】
本発明は、液体媒体から元素イオンを抽出する電極材料であって、元素イオンをインターカレート又は放出することができる少なくとも1つのイオンふるい、又はかかるイオンふるいの混合物を含む少なくとも1つの電極材料を含み、イオンふるい(複数の場合もある)が炭素で被覆されている、電極材料に関する。
【0009】
電極材料は、CDI(容量性脱イオン化)又はFDI(ファラデー脱イオン化(faradaic deionization))に驚くほど適している。
【0010】
驚くべきことに、イオンふるいのかかるコーティングは、抽出損失を何ら伴うことなく、イオンふるいの安定性、ひいては電極材料の安定性も著しく高めることがわかった。コーティングはまた、液体媒体中の他の陽イオン、例えばカリウムイオン、ナトリウムイオン又はマグネシウムイオンの許容性を改善する。
【0011】
抽出は、好ましくは脱塩、特にCDI又はFDIである。
【0012】
ここでの脱塩とは、電極を取り囲む媒体からのイオンが電極内でインターカレーションを受けることを意味する。
【0013】
好ましい実施の形態において、この元素イオンはリチウムイオンである。
【0014】
イオンふるいは、枯渇イオンふるい(リチウムの場合は脱リチウム化イオンふるい)又はリチウムインターカレートイオンふるいの形態であり得る。リチウムインターカレート形態では、リチウム含有金属酸化物であることが好ましく、またこれは複合酸化物、又はリチウム含有金属リン酸塩であってもよい。リチウムと、Co、Mg、Cr、Mn、Ni、Fe、Al、Mo、V、W又はTiから選択される少なくとも1種の更なる元素とを含有する複合酸化物であることが好ましい。LiNiO2、LiCoO2、LiMn2O4、LiNi0.34Mn0.33Co0.33O2、若しくはリン酸鉄リチウム又はこれらの混合物であってもよい。
【0015】
リン酸鉄リチウム、LiMn2O4又はこれらの混合物であることが好ましい。リン酸鉄リチウムは、LiFePO4、LixMeyFePO4、LiFeMeyPO4、又はこれらの混合物から選択されることが好ましく、Meは、Mn、Co、Mo、Ti、Al、Ni、Nb、又はこれらの混合物であり、0<x<1かつ0<y<1である。
【0016】
用途によっては、イオンふるいをリチウムインターカレート形態から枯渇形態に変換する必要がある場合もある。
【0017】
リチウムインターカレートイオンふるいは、炭素層で被覆される。この層は、好ましくは、炭化、特に、アルキルエステル及び特に架橋ポリアルキルエステルの炭化によって得られる。ここで好ましい電極材料は、LiFePO4/C、LixMeyFePO4/C、及びLiFexMeyPO4/C、特にLiFePO4/Cである。炭化は、薄く、同時に透過性の層を与える。該層は、好ましくは、グラファイト状炭素を含む。炭素は完全にグラファイト状であってもよい。
【0018】
少なくとも2nm(TEMで測定)の層厚が好ましい。
【0019】
被覆イオンふるいは、好ましくは、少なくとも10m2/gの比表面積を有するイオンふるいの炭化によって得られる。炭化は、好ましくは、リチウムインターカレート形態を用いて行う。
【0020】
好ましい実施の形態において、イオンふるいは粒子の形態である。好ましくは最大寸法が2μm、好ましくは1μm(TEMで測定)、より好ましくは700μmである。粒子の最小寸法は、それとは独立して少なくとも10nm、特に少なくとも20nmである。
【0021】
イオンふるいは、結晶形態であることが好ましい。
【0022】
好ましい実施の形態において、粒子は炭素層で被覆される。
【0023】
本発明はまた、液体媒体から元素イオンを抽出する電極であって、電極材料として、元素イオンをインターカレート又は放出することができる少なくとも1つのイオンふるい、又はかかるイオンふるいの混合物を含み、イオンふるい(複数の場合もある)が炭素で被覆されている、電極に関する。
【0024】
電極はまた、担体材料又はマトリックス材料等の更なる要素を含み得る。
【0025】
液体媒体は、好ましくは水である。少なくとも1つのイオンふるいは、好ましくは、電極について記載されるイオンふるいである。
【0026】
本発明はまた、本発明の少なくとも1つの電極材料を用いて元素イオンを抽出する方法に関する。元素イオンは、好ましくは、リチウムイオンである。
【0027】
個々の方法工程は、本明細書においてより詳しく以下に記載される。工程は必ずしも記載された順序で実施される必要はなく、記載される方法はまた、言及されていない更なる工程を有してもよい。
【0028】
この方法では、元素イオンのインターカレーション及び放出は、特定の電圧を印加することによって制御することができる。これにより、元素イオンを周囲の媒体、特に水から選択的に抽出し、また媒体中に放出して戻すこともできる。これが異なる媒体中で起こる場合、一方の媒体において元素イオンを枯渇させ、他方の媒体において放出することが可能である。例えば、これは、特に水性媒体からこの元素イオンを選択的に枯渇させることを可能にする。ここでのインターカレーション及び放出は、何度も繰り返されるサイクルに対応する。
【0029】
炭素コーティングにより、このコーティングがない場合よりも、電極のインターカレーション容量の低下を大幅に抑えることが可能となる。これが、かかる方法において本発明のイオンふるいを経済的に使用することを間違いなく可能にするものである。
【0030】
リチウムインターカレートイオンふるいは、炭素層で被覆される。この層は、好ましくは、炭化、特に、アルキルエステル及び特に架橋ポリアルキルエステルの炭化によって得られる。炭化は、好ましくは、イオンふるいをエステルにおいてコーティングし、次いで600℃を超える温度で炭化することによって達成され得る。イオンふるいは、好ましくはヒドロキシル化合物及びカルボン酸の混合物中に分散され、好ましくはエステルの形成後、100℃超、好ましくは101℃~300℃、特に150℃~250℃、好ましくは200℃に加熱され、存在する可能性のある水を全て除去する。1時間~5時間後、混合物を500℃超、好ましくは501℃~900℃、特に550℃~800℃、非常に特に600℃~800℃、非常に特に700℃に加熱する。これは、好ましくは4時間超、好ましくは4時間~7時間にわたって行われる。この炭化、好ましくは両者の熱処理は、低酸素下、好ましくは無酸素条件下、好ましくは窒素又はアルゴン等の不活性ガス下で行われる。イオンふるいとヒドロキシル化合物及びカルボン酸の混合物との質量比は、好ましくは3:1と1:3との間、好ましくは2:1~1:2、非常に好ましくは1.2:1と1:1.2との間、特に1.1:1と1:1.1との間である。ヒドロキシル化合物及びカルボン酸は、好ましくは、400g/mol未満の分子質量を有する化合物である。ヒドロキシル化合物は、ここでは、ヒドロキシル基とカルボン酸基との比率に基づいて、カルボン酸に対して過剰に使用され得る。好ましいヒドロキシル化合物は、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジオール、例えばエチレングリコール、プロパン-1,3-ジオール、ポリエチレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、オクタン-1,8-ジオール、及びグリセロール等のトリオールであり、好ましくは2個以上のヒドロキシル基を有するアルコール、特にジオールである。
【0031】
好ましくは1個~24個の炭素原子を含むカルボン酸の例は、モノカルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、カプリン酸、ステアリン酸、フェニル酢酸、安息香酸)、2個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、フタル酸、トリメシン酸、トリメリット酸)、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、及びオレイン酸)、及びヒドロキシカルボン酸(例えば、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、及びクエン酸)である。
【0032】
2個以上のカルボン酸基を有する1つ以上のカルボン酸と、特に2個以上のヒドロキシル基を有するヒドロキシル化合物との組み合わせが好ましい。これは、中間体として架橋ポリエステル化合物を与え、次いでこれが炭化され、クエン酸等のトリカルボン酸と、特にエチレングリコール等のジオールとの組み合わせが特に好ましい。カルボン酸は、好ましくは、無水形態で使用される。
【0033】
エステルの形成のため、組成物を100℃まで、好ましくは90℃まで、特に30℃~100℃、特に50℃~90℃に加熱する必要があり得る。この処理は、好ましくは少なくとも1時間、特に少なくとも2時間、好ましくは1時間~10時間、好ましくは2時間~8時間、特に3時間~5時間行われる。この処理により、エステルで被覆されたイオンふるいが得られる。
【0034】
また、金属化合物、例えばフェロセン等の他の触媒を用いることもできる。しかしながら、これは好ましくない。
【0035】
この炭化により、イオンふるい上に特に均質で薄く、十分に多孔質の炭素層が得られる。
【0036】
一実施の形態において、本発明は、水溶液からリチウムを選択的に抽出し、塩ブライン中のリチウムを回収及び濃縮する方法であって、
a)塩ブラインを収容するセルを備える装置を用意し、セルを塩ブラインで満たす工程と、
b)セル内にイオンふるいで被覆された導電性基板を配置し、セル内に更に導電性基板を配置する工程であって、2つの導電性基板のうちの少なくとも1つと(プロセスの実施中に)イオンふるいとがLi+をインターカレート又は放出することが可能である、工程と、
を含む方法に関する。方法の手順及び使用される導電性基板の性質に応じて、方法の手順は、塩ブラインの置換、及びセルの、任意に膜によって隔てられるサブセルへの分割に関して異なってもよい。これは、追加の導電性基板がイオンふるいではなく、活性炭等の化学的に中性の電極である場合に特に当てはまる。これにより、セルの構造を単純化することができる。
【0037】
電極は、好ましくは、容量性脱イオン(CDI)用のセル、特にスルーフローセルにおいて使用することができる。
【0038】
一実施の形態において、本発明は、水溶液からリチウムを選択的に抽出し、塩ブライン中のリチウムを回収及び濃縮する方法であって、
a)電気透析セルを備える、電気透析用装置を用意し、陰イオン交換膜を用いて、電気透析セルをリチウム塩チャンバとアルカリチャンバとに分割し、アルカリチャンバを塩ブラインで満たし、リチウム塩チャンバを、支持電解質溶液、例えばNaCl、KCl、NH4Cl、Na2SO4、K2SO4、NaNO3又はKNO3の溶液で満たす工程と、
b)カソードとして作用するようにアルカリチャンバ内に枯渇イオンふるいで被覆された導電性基板を配置し、アノードとして作用するようにリチウム塩チャンバ内にリチウムインターカレートイオンふるいで被覆された導電性基板を配置する工程であって、2つの導電性基板のうちの少なくとも一方、好ましくは両方が、電極材料として本発明のイオンふるいを含み、電気透析の実施中に、イオンふるいは、外部電位下で別のリチウムインターカレートイオンふるいへの変換に付すために、アルカリチャンバ内にLi+をインターカレートすることができ、リチウムインターカレートイオンふるいは、外部電位下で別のイオンふるいへの変換に付すためにLi+を導電性溶液中に放出することができ、枯渇イオンふるい及びリチウムインターカレートイオンふるいによるLi+のインターカレーション及び放出のそれぞれの後で、リチウム塩チャンバ内で濃縮が起こり、リチウム濃縮溶液を得る、工程と、
を含む、方法に関する。
【0039】
工程2)の後、アルカリチャンバ内で、Li+は、イオンふるいへのインターカレーションを受け、それによってリチウムインターカレートイオンふるいに変換され、リチウム塩チャンバ内で、リチウムインターカレートイオンふるいはLi+を導電性溶液に放出し、イオンふるいへと変換される。したがって、2つの電極は、それらの位置を逆にすることによって再利用することができる。
【0040】
したがって、工程2)の後に、リチウムインターカレーション後にアルカリチャンバから液体を排出し、アルカリチャンバを塩ブラインで再び満たし、カソードとアノードの位置を逆にして、電気透析を継続する工程を実施することができる。
【0041】
任意に、工程2)の後に、カソードとアノードの位置を逆にすることを避けるために、次の工程を実施してLi+を他の陽イオンから分離し、Li+を濃縮することができる:
カソードとアノードの位置を維持し、リチウムインターカレーション後にアルカリチャンバから液体を排出し、リチウム塩チャンバからアルカリチャンバにリチウム溶液を移して、リチウム塩チャンバを塩ブラインで再び満たし、すなわち、アルカリチャンバとリチウム塩チャンバの機能を切り替えて、電気透析を継続する工程。したがって、上記プロセスを繰り返すと、アルカリチャンバとリチウム塩チャンバの機能が切り替わる。
【0042】
電極をイオンふるいとして機能させる場合、電極が何サイクルにもわたって高い安定性を達成するために、その中に本発明の電極材料のみを採用することが好ましい。これにより、リチウムのより良好な抽出が達成される。Mg2+、Ca2+、又はNa+等の他の陽イオンの存在もまたより良好に許容される。
【0043】
塩ブラインは、リチウムイオンを含有する溶液、一次塩ブライン、蒸発塩ブライン、カリウム抽出後の蒸発塩ブライン、又はこれらの混合物から選択される。塩ブラインは地熱エネルギー生成による液体又は同様の処理液であってもよい。
【0044】
導電性基板は、ルテニウム被覆チタンメッシュ、グラファイト板、白金族金属若しくはその合金箔、炭素織物、又はグラファイト箔である。
【0045】
プロセスパラメータは次のとおりである:溶液温度:0℃~80℃;pH:2~12;及び2つの電極間の電圧:0.5V~2V。
【0046】
本発明の一実施の形態において、好ましくは元素イオンのインターカレーション中に培体中に溶解した酸素の濃度を低下させる。これは、好ましくは、非酸化性ガス、好ましくは窒素で媒体をパージすることによって達成される。これにより、媒体から酸素が排出される。酸素含有量の低下は、電極の安定性を更に高める。このプロセスは、未炭化イオンふるいのサイクル安定性を高めるためにも採用することができる。
【0047】
したがって本発明はまた、液体媒体から元素イオンを抽出する方法に関し、液体媒体は、本発明に従って記載される電極材料を含み、材料が炭素層を有さない場合でも可能であり、媒体の酸素含有量は非酸化性ガスでパージすることによって低下されている。このガスは、好ましくは窒素である。この方法は、好ましくは、本発明の電極材料を用いて行われる。
【0048】
本発明はまた、本発明の方法を実施するための装置に関する。かかる電気透析装置は、陰イオン交換膜を用いてリチウム塩チャンバとアルカリチャンバとに分割された少なくとも1つの電気透析セルと、少なくとも1つのカソード及び少なくとも1つのアノードとを備え、カソード及びアノードは、2つのチャンバにそれぞれ配置され、カソード及びアノードは、対応する形態の本発明のイオンふるいを電極材料として含む。
【0049】
本発明の更なる態様は、液体媒体、好ましくは水性媒体、特に水から元素イオンを抽出するプロセスにおける本発明のイオンふるいの使用を含む。
【0050】
本発明の更なる態様は、媒体、好ましくは水性媒体から元素イオンを抽出するプロせずにおける本発明の電極の使用を含む。
【0051】
元素イオン、特にリチウムを抽出するための媒体として特に適しているのは、産業廃水、又は電池リサイクル液若しくはリンス液等の処理液、又は鉱水等の鉱業からの廃水である。媒体はまた、ボーリング孔から、例えば熱水源から、又は地熱エネルギー生成若しくはヒートポンプから得られる液体であり得る。
【0052】
更なる詳細及び特徴は、従属項と併せて好ましい例示的な実施形態の以下の説明から明らかである。それぞれの特徴は、単独で、又は互いに組み合わせて実現することができる。目的を達成するための選択肢は、例示的な実施形態に限定されない。
【0053】
したがって、例えば、示された範囲は常に、言及されていない全ての中間値及び考えられる全ての部分区間を含む。
【0054】
例示的な実施形態を図にて概略的に示す。個々の図における同一の参照符号は、同一若しくは機能的に同一の要素、又はそれらの機能的に関して互いに対応する要素を示す。より詳細には図にて示す。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】
図1A~
図1Fは、LiFePO
4(A及びB)及びLiFePO
4/C(C及びD)の透過型電子顕微鏡写真、LiFePO
4及びLiFePO
4/Cの(E)X線回折図、及び(F)ラマンスペクトルである。
【
図2】
図2A/
図2Bは、(A)2つのチャネルにおける導電率の変化、及び(B)10mM LiCl水溶液中での24サイクルにおけるセル全体の塩化リチウム除去容量(左軸、四角形)及びエネルギー消費量(右軸、円)の図である。
【
図3】
図3A~
図3Fは、1M(A)、100mM(B)、及び10mM(C)の濃度のLiCl、NaCl、MgCl
2、及びCaCl
2を有する水性電解質中のLiFePO
4のサイクリックボルタモグラム(1mV/s)である。(D及びE)0.1A/gで記録された選択されたLiCl混合物に対するLiFePO
4の比容量(D:絶対値;E:相対値)である。(F)混合電解質系のシステムについてのナイキストプロット及び等価回路である。
【
図4】
図4A/
図4Bは、様々な電解質中で100サイクル後の脱リチウム化LiFePO
4の(A)事後X線回折パターン及び(B)ラマンスペクトルである。
【
図5】
図5A~
図5Fは、(A)0.1A/gの3電極配置で操作された、N
2パージあり、O
2パージあり、又は前処理なしの5mM LiCl+50mM NaCl中でのLiFePO
4の安定性の比較の図である。(B~D):(B)処理なし、(C)O
2パージあり、又は(D)N
2パージありの5mM LiCl+50mM NaCl中のLiFePO
4電極を使用したリチウム及びナトリウムの流出濃度の図である。(E)処理なし、O
2パージあり、又はN
2パージありの5mM LiCl+50mM NaCl中のLiFePO
4のリチウム抽出容量及び対応する容量保持率の比較の図である。(F)処理なし、O
2パージあり、及びN
2パージありの5mM LiCl+50mM NaCl中のLiFePO
4のエネルギー消費量の図である。
【
図6】
図6A~
図6Fは、0.1A/gの3電極システムにおける、(A)1M LiCl及び(B)5mM LiCl+50mM NaCl溶液中のLiFePO
4及びLiFePO
4/Cの安定性の比較の図である。(C)1M LiCl及び5mM LiCl+50mM NaCl溶液中での100サイクル後のLiFePO
4及びLiFePO
4/Cの事後X線回折図である(1:5mM LiCl+50mM NaCl中で100サイクル後のLiFePO
4、2:5mM LiCl+50mM NaCl中で100サイクル後のLiFePO
4/C、3:1M LiCl中で100サイクル後のLiFePO
4、4:1M LiCl中で100サイクル後のLiFePO
4C、5:LiFePO
4電極、6:LiFePO
4/C粉末、8:C PDF 89-8487、7:LiFePO
4 PDF 81-1173、9:NaCl PDF 05-0628)。(D)N
2パージありの5mM LiCl+50mM NaCl中のLiFePO
4/C電極を使用したリチウム及びナトリウムの流出濃度の図である。(E)N
2パージありの5mM LiCl+50mM NaCl中のLiFePO
4/C又はLiFePO
4のリチウム分離容量及び容量保持率の図である。(F)LiFePO
4/C又はLiFePO
4からの5mM LiCl+50mM NaClにおけるエネルギー消費量の図である。
【
図7】
図7A/
図7Bは、リチウム(A)及びナトリウム(B)に対する検量線(イオン濃度と特性ピーク強度との関係)である。
【
図8】試料中の様々な点での脱リチウム化LiFePO
4のラマンスペクトルである。
【
図9】N
2パージあり、O
2パージあり、及び前処理なしの5mM LiCl+50mM NaCl中で100サイクル後のLiFePO
4の事後X線回折図である(7:C PDF 89-8487、8:LiFePO
4 PDF 81-1173、9:NaCl PDF 05-0628)。
【発明を実施するための形態】
【0056】
材料及び方法
LiFePO4、LiFePO4/Cの合成、及び電極の作製
16m2/gの比表面積を有する市販のLiFePO4(Sued-Chemie)を使用した。LiFePO4/Cを、Ma, Z.; Fan, Y.; Shao, G.; Wang, G.; Song, J.; Liu, T., In situ catalytic synthesis of high-graphitized carbon-coated LiFePO4nanoplates for superior Li-ion battery cathodes. ACS Applied Materials & Interfaces 2015, 7, (4), 2937-2943に類似する方法で2段階の手順によって合成した。まず、供給されるLiFePO4(0.4g)及び0.21gのエチレングリコールを、10mLのクエン酸溶液(10mLの蒸留水に0.18gの無水クエン酸)に撹拌しながら分散させた。LiFePO4を最後に添加した。懸濁液を+80℃に3時間加熱し、アルキルエステル化合物で被覆されたLiFePO4を得た。次いで、アルキルエステルコーティングをアルゴン中で2つの加熱工程で炭化した。まず、試料を+200℃に2時間加熱して材料中の水分を除去し、次いで試料を+700℃に加熱してこの温度で6時間保持してLiFePO4-炭素ハイブリッドを得た。
【0057】
活物質(LiFePO4又はLiFePO4/C)、アセチレンブラック、及びポリフッ化ビニリデン(Sigma-Aldrich)を1-メチル-2-ピロリジノン(Sigma-Aldrich)中、質量比8:1:1で混合及び粉砕してスラリーを形成することによって電極を製造した。スラリーをグラファイト紙(SGL、厚さ300μm)にドクターブレード(厚さ200μm)で塗布し、フード内で室温にて一晩放置した。次いで、電極を真空オーブン内で+80℃で24時間乾燥させた。
【0058】
電気化学測定
LiFePO4及びLiFePO4/Cの電気化学的挙動を、3電極システムのオーダーメードのセルで調査した。LiFePO4、LiFePO4/C又は活性炭電極(YP-80F、Kuraray)製の直径12mmの電極を、作用電極(LiFePO4、LiFePO4/C)又は対極(活性炭)として使用した。電極をサンドイッチ状に配置し、ガラス繊維マット(直径13mm、GF/A、Whatman)によってセル本体において分離した。Ag/AgCl参照電極(3M KCl、BASi)をセル本体に横方向に取り付けた。試験の前に、組み立てたセルを様々な電解質で満たした。単一塩電解質については、1M LiCl、1M MgCl2、1M CaCl2、及び1M NaClを使用した。混合塩電解質については、5mM LiCl及び50mM MeClX(Me=Na、Ca、Mgであり、XはMe電荷に対応するものである)を用いた。
【0059】
セルをVSP300ポテンショスタット/ガルバノスタット(Bio-Logic)に接続し、0.1mV/sのスキャンレートと-0.4V~+0.8Vのカットオフ電位でAg/AgClに対してサイクリックボルタモグラムを適用した。LiFePO4及びLiFePO4/Cの性能安定性を試験するために、電位制限されたガルバノスタット充放電測定を実施した。電気化学的操作の前に、電解質を窒素ガスで1時間連続的にパージして、電解質中の溶存酸素を除去した(酸素の影響を調べる場合のみ)。ガスパージ後の溶存酸素濃度を表2に示す。
【0060】
さらに、LiFePO4及びLiFePO4/C充電プロセスの結果として、電解質中のリチウム濃度が上昇するのを防ぐために、電気化学的試験の前に電極を脱リチウム化した。電極を脱リチウム化するため、電極を、1M LiCl電解質中の3電極システムにおいて、Ag/AgClに対して0.1A/gの電流及び+0.4Vのカットオフ電圧で充電した。1MHzから10MHzの周波数範囲の式量電位において励起電圧5mVでAg/AgClに対して、電気化学インピーダンス分光法(EIS)測定を行った。
【0061】
様々な濃度でのLiCl、MgCl
2、CaCl
2、及びNaClの導電率を、Pt電極を備えたマイクロセル電気化学HCセル(RHD Instruments)及びModuLab電気化学ワークステーション(Solartron Analytical)を使用して試験した。0.9mLの各電解質をシリンジで計量カップに添加し、次いで、Pt電極るつぼを閉じた。閉じたセルとベースユニットの中央に熱伝導ペースト(Eurotherm 2000)を採用し、その間の熱伝達を改善した。各温度におけるポテンショスタティックインピーダンス(potentiostatic impedance)を、温度が10分間安定してから測定した。インピーダンスを、開回路電位(OCV)で1Hzから3MHzまで、Δ10℃刻みで+10℃から+60℃までの様々な温度及び+25℃で測定した。導電率及び活性化エネルギーの値を、式1及び式2に従って計算した。
【数1】
式中、σは導電率(S/cm)、Rは抵抗(Ω)、Aは面積(cm
2)、及びlは長さ(cm)を表す。l/Aの値は、+25℃で12.880mS/cmの導電率を有する0.1M KCl水性標準物質(VWR)から得られた。
【数2】
式中、σは導電率、Tは温度(K)、Aは実験で得られたもの、kはボルツマン定数(1.380649×10
-23J/K)、及びE
aは活性化エネルギー(kJ/mol)である。
【0062】
リチウム選択性実験
リチウム抽出実験を、マルチチャネルセルで行った。ガラス繊維マット(GF/A、Whatman)を充填し、陰イオン交換膜(FAS-PET-130、Fumatech)で分離したシール(面積=6.76cm2、厚さ=500μm)を介して2つの水路を作製した。LiFePO4又はLiFePO4/C電極をチャネルの端に配置し、グラファイト集電体と接触させた。実験の前に、1つの電極を上記の方法によって脱リチウム化した。前処理された電極を有するチャネルを、「チャネル1」と呼び、他方を「チャネル2」と呼ぶ。
【0063】
LiCl(10mM)を含む10リットルのタンクを3mL/分の流量で給水として使用し、その間、VSP300ポテンショスタット/ガルバノスタットシステムを使用して-0.4V~+0.4Vのセル電圧で定電流(40mA/g)を印加した。実験全体を通して、電解質をN
2ガスで連続的にパージして溶存酸素を除去した。電極の質量は8mgであり、2つのチャネルの導電率及びpHの変化を、導電率センサー(Metrohm、PT1000)及びpHセンサー(WTW SensoLyt 900P)によってそれぞれオンラインで記録した。リチウムはサイクル全体を通して抽出され、それに応じて1サイクルにおけるセルのリチウム除去容量及びエネルギー消費量を式3及び式4に従って計算した。
【数3】
式中、vは流量(mL/分)、M
LiClはLiClの分子量(42.4g/mol)、m
合計は電極の質量(g)、tは時間(分)、並びにΔc
チャネル1及びΔc
チャネル2はそれぞれチャネル1及びチャネル2におけるLiCl濃度(mmol/L)の変化である。
【数4】
式中、ΔEはセル電圧(V)、qは電荷(A-s)、vは流量(mL/分)、tは時間(分)、並びにΔc
チャネル1及びΔc
チャネル2はそれぞれチャネル1及びチャネル2におけるLiCl濃度(mmol/L)の変化である。
【0064】
LiFePO
4及びLiFePO
4/Cの選択性及び安定性を調べるため、本発明者らは、5mM LiCl及び50mM NaClを含有し、10Lの量を有する電解質を使用した。チャネル2の出口を誘導結合プラズマ発光分析装置(inductively-coupled plasma optical emission spectrometer)(ICP-OES、ARCOS FHX22、SPECTRO Analytical Instruments)に接続し、陽イオンの濃度変化を定量化した。電極の質量は約18mgであり、ICP信号を増幅するために、30mA/gの低い比電流及び1.2mL/分の流量を使用した。検量線を、個々の波長の強度と溶液の濃度との相関関係に従って構築した(
図7A及び
図7B)。抽出された試料から測定された強度を、濃度プロファイルに変換した。充放電プロセスは逆のコースを持ち、エネルギー回収の可能性はごくわずかであったため、LiFePO
4及びLiFePO
4/Cの性能を評定するために、抽出されたリチウムの量及びエネルギー消費量を半サイクルで式5及び式6に従って計算した。
【数5】
式中、vは流量(mL/分)、M
LiはLiの分子量(6.99g/mol)、m
合計は電極の質量(g)、tはリチウム抽出工程にかかる時間(分)、及びΔc
チャネル2はチャネル2におけるLi
+濃度(mM)の変化である。
【数6】
式中、ΔEはセル電圧(V)、qは電荷(A・s)、vは流量(mL/分)、tはリチウム抽出工程にかかる時間(分)、及びc
チャネル2はチャネル2におけるLi濃度(mM)である。
【0065】
材料特性評価
LiFePO4及びLiFePO4/Cの表面形態を走査型電子顕微鏡(JEOL JSM 7500F)により1kVで調べた。X線回折測定を、銅X線源(Cu-Kα、40kV、40mA)及び点焦点(0.5mm)のゲーベルミラーを備えたD8アドバンス回折計(Bruker AXS)で実施した。ラマンスペクトルを、励起波長532nmのNd:YAGレーザーを使用したRenishaw製のinViaシステムで記録した。スペクトル分解能は1.2cm-1であり、試料上のレーザースポットの直径は約2μmであり、総消費電力は0.2mWであった。
【0066】
LiFePO
4及びLiFePO
4/Cの特性評価
図1Aは、LiFePO
4の透過型電子顕微鏡写真を示す。LiFePO
4粒子は、典型的には、長さ約300nm及び幅約150nmである。LiFePO
4の(111)面及び(021)面と整列した0.34nm~0.35nmの典型的な間隔を有する格子バンドがより高い分解能で識別可能である(
図1B)。LiFePO
4/Cは、LiFePO
4粒子を被覆する炭素の遍在を示している(
図1C及び
図1D)。
【0067】
図1Eは、LiFePO
4及びLiFePO
4/CのX線回折図を示す。LiFePO
4/Cの回折パターンは、斜方晶相として識別されるLiFePO
4の回折パターンと同じであり(PDF 81-1173)、炭素コーティングプロセスがLiFePO
4の固有の構造を破壊しないことを示す。
図1Fは、LiFePO
4及びLiFePO
4/Cのラマンスペクトルを示す。952cm
-1のバンドは、LiFePO
4のP-O結合の対称伸縮に起因する。そして、1338cm
-1及び1598cm
-1のピークは、それぞれ炭素のDバンド及びGバンドに対応する。Dバンド(乱れたピーク)はA
1g振動モードに、Gバンド(グラファイトピーク)はC-C結合伸縮のE
2g振動モードに起因する。したがって、市販のLiFePO
4とLiFePO
4/Cの両方が不完全にグラファイト炭素の存在を示し、前者の場合、炭素は少数相である。
【0068】
10mM LiCl水溶液中のLiFePO
4からのリチウム抽出
10mM LiCl水溶液中のLiFePO
4のLi除去容量を定量した。充電中に30mA/gの比電流が印加されると、チャネル1の導電率は低下し、チャネル2の導電率は増加する(
図2A)。これは、リチウムの取り込みによるカソードの還元と、給水流へのリチウムの放出によるアノードの酸化に対応する(式7)。放電プロセス中には逆のプロセスが観察される。セルのリチウム抽出容量は24サイクルの間低下せず、平均容量は79±6mg
LiCl/電極であり、13±1mg
Li/電極に相当し(
図2B)、LiFePO
4が10mM LiCl脱気水溶液中で安定であることを示唆している。セルの平均エネルギー消費量は、3Wh/mol
LiClであり、3Wh/mol
Liに相当する。
Li
1-xFePO
4+xLi
++xe
-=LiFePO
4 式7
【0069】
リチウムとの比較による他の陽イオンの効果
LiFePO
4のLi
+に対する選択性挙動を他の陽イオンとの比較により調べるため、サイクリックボルタンメトリーを行った。これは、様々な単一陽イオン電解質における電気化学的性能を比較することによって行った。
図3A、
図3B、及び
図3Cに示すように、一対の酸化還元ピークが全ての電解質タイプで発生する。測定されたピーク電流は、1M CaCl
2水性電解質を使用した場合に最も低かった。1M LiClでは、酸化還元ピーク電流が最も高く、ピーク電位は他の電解質と比較してより正の範囲にシフトするが、これは電極から浸出する溶液中のリチウムの寄与に起因すると考えることができる。
【0070】
電位シフトを更に定量化するために、式量電位(E1/2)を調べた。表3に示すように、LiCl溶液中の式量電位は濃度の低下と共に減少する。充電プロセス(サイクリックボルタンメトリー中の最初の電気化学的プロセス)中に、LiFePO4中のLi+が電解質に放出される。したがって、NaCl、MgCl2又はCaCl2等の他の陽イオンを含有する電解質における試験では、サイクリックボルタモグラムと式量電位はほぼ同一である。
【0071】
電極から電解質への追加のリチウムイオンの損失を減らし、異なる濃度を有する電解質を比較するため、LiFePO
4電極を、ガルバノスタティック充放電試験の前に脱リチウム化した。LiFePO
4の初期容量の大幅な低下が、全ての電解質で観察された(
図3D及び
図3E)。容量は、Li
+とNa
+の混合溶液で最もゆっくりと減少し、Ca
2+含有電解質で最も急速に減少し、100サイクル後の保持率はそれぞれ60%及び46%である。5mM LiCl+50mM MgCl
2溶液中の容量は、最初は増加し、次いで減少し、この増加は、微量のMg
2+のインターカレーションに起因し得るものである。他の陽イオンと比較して、Mg
2+は、LiFePO
4の構造により容易にインターカレートする。しかしながら、Mg
2+及びLi
+の両方のインターカレーションは完全に可逆的ではなく、その結果、容量は減少し続ける。LiFePO
4電極の容量がサイクル中に減少する理由を調査するため、様々な電解質において100サイクルの充放電を行った脱リチウム化LiFePO
4の事後X線回折図を求めた。
【0072】
安定性への影響に加えて、Li
+以外の陽イオンも電気化学インピーダンス測定から得られる動態に影響を与える。ナイキストプロットは、2つの半円と1本の線からなる(
図3F)。高周波数での半円は電解質の容量応答を表すため、電解質を低濃度で調査した場合にのみ、大きな振幅で発生する。中周波数での半円は、電荷移動抵抗(R
ct)を表す。低周波数での斜線は、リチウムイオンの拡散に対応するワールブルグインピーダンス(W
1)を表す。R
ct及びW
1の値は、表1に示すように模擬回路に従って計算される。Ca
2+及びMg
2+は電荷移動プロセスに悪影響を及ぼし、R
ct値はそれぞれ38.7Ω・cm
2及び37.3Ω・cm
2であり、これは純粋な5mM LiClのR
ct値(20.1Ω・cm
2)のほぼ2倍である。5mM LiCl及び50mM NaClのR
ct値は、純粋なLiCl電解質のR
ct値と同様である。ワールブルグインピーダンスに対する他の陽イオンの効果は、R
ct値で観察されたパターンに従い、Mg
2+及びCa
2+を含有する電解質のワールブルグインピーダンスは、Na
+含有LiCl及び純粋なLiClのインピーダンスよりも高い。この結果は、前者の電解質の方が後者の電解質に比べてリチウムイオンの液側への拡散が起こりにくいことを示す。種々の効果は、陽イオンの異なる導電率に由来するものである。
【0073】
図4Aに見られるように、LiFePO
4は完全に脱リチウム化されていないため、脱リチウム化されたLiFePO
4はヘテロサイトFePO
4及びLiFePO
4から構成される。この結果は、ラマンデータと一致する(
図8)。ランダムに選択された2つのポイントでラマン測定を行うと、ポイント1(952cm
-1)にピークが1つしかなく、これはLiFePO
4のラマンスペクトルと一致する(
図1F)。他の場所では、観測されたピークはFePO
4に対応する。5mM LiCl中で100サイクル後、37.4°2θ(ヘテロサイトFePO
4の(211)面)等のいくつかの回折ピークが消え、FePO
4の構造の破壊を示す。Ca
2+含有電極では100サイクル後に異なる挙動が観察され、ヘテロサイトFePO
4の(020)面に対応する18.13°2θの回折ピークが消失し、著しい容量低下を示す。
図4Bは、種々の電解質における100サイクル後の電極のラマンスペクトルを示す。NaCl、LiCl、及びCaCl
2の電解質中で充放電後、488cm
-1(Liケージ/PO
4
3-の非対称曲げ)、596cm
-1(PO
4
3-の非対称曲げ、ν
4)、652cm
-1(PO
4
3-の非対称曲げ、ν
2)、及び691cm
-1におけるピークは明らかではなく、P-O結合の切断を示し、これは、LiFePO
4の性能の低下、すなわち酸素種の損失の更なる理由となる。
【0074】
電解質中の酸素含有量の効果
給水として5mM LiCl及び50mM NaClを含む混合電極を使用して、LiFePO
4の安定性に対する酸素含有量の影響を調査した。この選択の理由(spur)は、ナトリウムイオンがLiFePO
4の安定性に最も低い影響を与えるという観察によるものであった。まず、電気化学的プロセスの前にO
2及びN
2で連続的にパージされた5mM LiCl+50mM NaCl溶液中のAg/AgClに対して-0.4V~+0.5Vの電位範囲で、100mA/gでのLiFePO
4の安定性を試験した。100サイクル後、LiFePO
4は、N
2パージされた電解質においてその初期容量の69%を保持するが、O
2パージされた電解質及び未処理電解質における容量保持率の値は、それぞれ43%及び52%である(
図5A)。これは、電解質中の溶存O
2がLiFePO
4の性能の損失を著しく加速させることを示唆している。
【0075】
流出溶液を、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)を用いたオンラインモニタリングによって連続的に分析した。
図5B、
図5C、及び
図5Dに示すように、LiFePO
4は、酸素含有量に関係なく、全体を通してリチウムに対して良好な選択性を保持する。比容量の傾向(
図5A)と同様に、連続N
2パージを伴う給水中で試験されたLiFePO
4は最も安定しており、10サイクル後に70%の容量保持率を有した(
図5E)。リチウム抽出容量は、何の処理も行わない給水の初期値の約半分しかなく、連続O
2パージを伴う給水中よりもわずかに高い。酸素含有量が高いと、振幅が大きくなるにつれて容量は減少する。Li
+の抽出/回収容量とは対照的に、
図5Fに示すように、エネルギー消費量は10サイクルの間安定している。この結果は、酸素含有量がシステムのエネルギー消費量にほとんど影響しないが、LiFePO
4自体の構造的及び化学的安定性に大きな影響を与えることを示す。
【0076】
電解質中の溶存酸素がLiFePO
4の安定性にどのように影響するかを調べるため、X線回折を使用した。これにより、5mM LiCl及び50mM NaClからなる電解質中で100サイクル後の電極材料の構造変化を確認した(
図9)。粉末のみの測定とは異なり、キャスト電極はグラファイト紙からの強い反射(26.5°2θ及び54.6°2θ)を示し、その結果、回折パターンはグラファイト箔に関連しないピークに対して正規化した。LiFePO
4及びLiFePO
4電極と比較して、全ての電極は、100サイクル後に、それぞれ(200)面及び(220)面に対応する31.7°2θ及び45.5°2θに2つの追加のピークを示し、これらのピークは、高度に対称的な相(残留塩)の存在に関連する。より少ない溶存酸素(N
2パージ)を含む電解質中でサイクルを行った電極は、O
2パージを伴う試料と比較してより低いピークの拡がりを示す。溶存酸素の量が多いと、LiFePO
4材料の劣化が大きくなるようである。
【0077】
LiFePO
4の炭素コーティングによる安定性の改善
LiFePO
4の安定性を高めるため、LiFePO
4に酸素による攻撃を防ぐための炭素の層を結合させた。
図6Aは、1M LiCl水溶液中のLiFePO
4とLiFePO
4/Cの違いを示す。見てわかるように、LiFePO
4/Cの容量は、100サイクル後に115mAh/gから95mAh/gにわずかに減少し、初期容量の83%が保持される。比較として、炭素コーティングなしのLiFePO
4は、100サイクル後に初期容量の30%しか保持せず、92mAh/gから27mAh/gに減少する。低濃度(5mM LiCl+50mM NaCl)での性能は同様である(
図6B)。LiFePO
4/Cは依然として最初のサイクルにおける85%の容量を有しているが(41mAh/g及び48mAh/g)、LiFePO
4は初期値の52%しか保持していない。
【0078】
図6Cは、1M LiCl及び5mM LiCl+50mM NaCl中で試験した後のLiFePO
4/C及びLiFePO
4の電極のX線回折図を示す。
【0079】
炭素コーティングがリチウム抽出中のLiFePO
4の安定性を改善することができるかどうかを更に調査するため、10mM LiCl及び5mM LiCl+50mM NaCl溶液(連続N
2パージ)におけるLiFePO
4/Cの性能を、ロッキングチェア型セルを用いて試験した。LiFePO
4と同様に、LiFePO
4/Cもリチウムに対して良好な選択性を示す(
図6D)。しかしながら、LiFePO
4/Cは、
図6Eに示すように、リチウム抽出容量が高く(最初のサイクルにおいて、電極1g当たり17.8mg
Liと比較して、電極1g当たり21.0mg
Li)、安定性がより良好であり、炭素コーティング後の保持率は82%である。LiFePO
4/Cのより高い容量は、炭素コーティングがLiFePO
4の電子伝導性を改善することが原因であると考えられ(Li, J.; Qu, Q.; Zhang, L.; Zhang, L.; Zheng, H., A monodispersed nano-hexahedral LiFePO
4 with improved power capability by carbon-coatings. Journal of alloys and compounds 2013, 579, 377-383)、すなわち活物質は高電流で十分に利用可能である。さらに、炭素層は酸素及びOH
-による攻撃を阻止し、LiFePO
4の安定性を高めることができる(He, P.; Liu, J.-L.; Cui, W.-J.; Luo, J.-Y.; Xia, Y.-Y., Investigation on capacity fading of LiFePO
4 in aqueous electrolyte. Electrochimica Acta 2011, 56, (5), 2351-2357)。さらに、LiFePO
4/Cにナノハイブリダイズされた形態で存在する追加の炭素は、LiFePO
4の抵抗を効果的に低減し、エネルギー消費量を低下させると考えられる(
図6F)。10サイクルでのLiFePO
4/Cの平均エネルギー消費量は、3.0±0.5Wh/mol
Liである。
【0080】
LiFePO4の安定性に対する陽イオン及び溶存酸素の影響を対称セル(すなわち、LiFePO4とLiFePO4とのペア)で調査した。Na+、Mg2+、及びCa2+等のブライン中のLi+以外の陽イオンは、LiFePO4の安定性及び電気化学的特性に影響を与える。これらのうち、Ca2+が最も悪影響を有し、Na+は-0.4Vから+0.8Vまでの電位範囲において明らかな影響を示さない。LiFePO4の安定性及び電気化学的特性は、Ca2+によって損なわれる。溶存酸素も同様に、LiFePO4の減衰(fading)を悪化させる。溶存酸素濃度を下げる(N2パージ)と、5mM LiCl+50mM NaCl中での10サイクルの容量保持率が47%から70%に劇的に増加する。炭素コーティング後、保持率は更に82%に増加し、エネルギー消費量は3.0±0.5Wh/molLiに低下する。これらの2つの方法は、リチウム抽出の材料としてのLiFePO4の性能安定性を向上させる。溶存酸素を下げることは、一定の縮尺の(to-scale)用途では実用的ではないかもしれないが、LiFePO4の炭素コーティングは、大規模な使用にも単純で非常に有望なアプローチとなる。
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【国際調査報告】