(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】細胞内存在タンパク質と細胞の外部に分泌されるタンパク質を同時発現する二重発現ベクターを含むがんの予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7088 20060101AFI20240308BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240308BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240308BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20240308BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20240308BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240308BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20240308BHJP
C12N 15/869 20060101ALI20240308BHJP
A23L 33/18 20160101ALI20240308BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240308BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240308BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240308BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20240308BHJP
A61K 35/763 20150101ALI20240308BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240308BHJP
A61K 38/44 20060101ALN20240308BHJP
A61K 38/21 20060101ALN20240308BHJP
A61K 38/19 20060101ALN20240308BHJP
A61K 38/20 20060101ALN20240308BHJP
【FI】
A61K31/7088
C12N15/12 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12N15/867 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/861 Z
C12N15/869 Z
A23L33/18
A61K48/00
A61P35/00
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
A61P43/00 111
A61K38/44
A61K38/21
A61K38/19
A61K38/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559785
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 KR2022004224
(87)【国際公開番号】W WO2022203451
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0039575
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518424431
【氏名又は名称】ワイディー ライフ サイエンス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YD LIFE SCIENCE CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】No.909,148,Sagimakgol-ro,Jungwon-gu,Seongnam-si,Gyeonggi-do 13207,Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】505448855
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー
【氏名又は名称原語表記】KOREA RESEARCH INSTITUTE OF BIOSCIENCE AND BIOTECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユ、インチョル
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ダウン
(72)【発明者】
【氏名】アン、シヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン ホン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユンソン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ガンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヒョンスン
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ドン-オ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ミョンウ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン、ミソン
(72)【発明者】
【氏名】イム、ジュ-ヨン
【テーマコード(参考)】
4B018
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB08
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
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4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC02
(57)【要約】
本発明は、二重発現ベクターを含むがんの予防または治療用組成物に関し、より詳しくは、HIF-1α抑制剤および抗がんサイトカインを同時に発現する二重発現ベクターを用いることによって、代謝抗がん剤と免疫抗がん剤の作用を同時に誘導し、効果的にがんを治療する方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低酸素誘導因子-1α(hypoxia-inducible factor-1α)抑制剤をコードするポリヌクレオチド、2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド、および抗がんサイトカイン(anticancer cytokine)をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターを有効成分として含む、がんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記組換えベクターは、低酸素誘導因子-1α抑制剤をコードするポリヌクレオチド配列と抗がんサイトカインをコードするポリヌクレオチドとの間に2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド配列が挿入された形態であることを特徴とする請求項1に記載のがんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項3】
前記低酸素誘導因子-1α抑制剤は、シトクロムb5還元酵素3(cytochrome b5 reductase)であることを特徴とする請求項1に記載のがんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項4】
前記シトクロムb5還元酵素3は、配列番号1で表されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項3に記載のがんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項5】
前記2Aペプチドは、配列番号5で表されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1に記載のがんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項6】
前記抗がんサイトカインは、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、インターロイキン2、インターロイキン7、インターロイキン12、インターロイキン15、インターロイキン18、インターロイキン21、インターロイキン37、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子からなる群から選ばれたいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載のがんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項7】
前記組換えベクターは、線状DNA、プラスミドDNAまたはウイルス性ベクターであることを特徴とする請求項1に記載のがんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項8】
前記ウイルス性ベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウィルス、ワクシニアウイルス、ミクソーマウイルス、単純ヘルペスウイルス、およびレンチウイルスからなる群から選ばれたいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項7に記載のがんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項9】
前記がんは、黒色腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、神経膠腫、肝がん、甲状腺腫瘍、胃がん、前立腺がん、乳がん、卵巣がん、膀胱がん、肺がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん、膠芽細胞腫、子宮内膜がん、腎臓がん、結腸がん、膵臓がん、食道がん、頭頸部がん、中皮腫、肉腫、胆管がん、小腸腺がん、小児悪性腫瘍および表皮がんからなる群から選ばれたいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載のがんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項10】
低酸素誘導因子-1α(hypoxia-inducible factor-1α)抑制剤をコードするポリヌクレオチド、2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド、および抗がんサイトカイン(anticancer cytokine)をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターを有効成分として含む、がんの予防または改善用食品組成物。
【請求項11】
低酸素誘導因子-1α(Hypoxia-inducible factor-1α)抑制剤をコードするポリヌクレオチド、2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド、および抗がんサイトカイン(anticancer cytokine)をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターを有効成分として含む組成物を個体に投与する段階を含むがんの予防または治療方法。
【請求項12】
低酸素誘導因子-1α(Hypoxia-inducible factor-1α)抑制剤をコードするポリヌクレオチド、2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド、および抗がんサイトカイン(anticancer cytokine)をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターを有効成分として含む組成物のがん予防または治療用途。
【請求項13】
低酸素誘導因子-1α(Hypoxia-inducible factor-1α)抑制剤をコードするポリヌクレオチド、2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド、および抗がんサイトカイン(anticancer cytokine)をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターのがんに用いられる薬剤を生産するための用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重発現ベクターを含むがんの予防または治療用組成物に関し、より詳細には、細胞内のHIF-1α抑制剤および細胞の外部に分泌が可能な抗がんサイトカインを同時に発現する二重発現ベクターを用いることによって、代謝抗がん剤と免疫抗がん剤の作用を同時に誘導し、効果的にがんを治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人類の去る数十年間の絶え間ない努力にもかかわらず、がんは、難治性疾患であり、代表的な満たされていない医療ニーズの1つとして依然として残っている。がんの発生に関連した様々な生物化学的機序が糾明され、このような知識を基に数多くの抗がん剤が開発されたが、まだ効果的な治療方法が提示されていない。最近、早期診断法の発達および普遍化に伴い、初期にがんが診断された場合には、完治に近い治療効果を示しているが、社会環境的要因によってがん患者の数が着実な増加傾向を示しており、自覚症状を感じ始めたときには、すでにがんがかなり進行している場合が多く、現在までがん治療率生存率が高くない。実際に2015年世界保健機構の報告によれば、全世界172ヶ国のうち、91ヶ国の70歳前の死因の第1位と第2位ががんである。
【0003】
がんは、遺伝的・環境的要因による細胞内突然変異遺伝子の累積で細胞が無制限に増殖し、異常な組織を形成することによって発生する。特に、最近最も大きな問題となっている突然変異は、EGFRのエクソン(exon)18、19、20または21などで発生するものであり、エクソン19におけるヌクレオチド欠損、エクソン21におけるL858R突然変異などが問題となっている。また、KRASのG12C突然変異、BRAFのV900E突然変異、ROS1の染色体再配列による突然変異なども、大きな原因の1つとして指摘されている。
【0004】
がんの治療方法としては、手術および放射線のような外科的施術だけでなく、抗がん剤を用いた治療も多く行われている。例えば、Vinca Alkaloid系(Vincristine、Vinblastine、Vinorelbine)、Taxol系(Paclitaxel、Docetaxel)、Platinum系(Cisplatin、Carboplatin)、Doxorubicin、Etoposide、Gemcitabine、Pemetrexedなどの第1世代化学抗がん剤は、細胞分裂を抑制する方式の抗がん剤として用いられてきたが、がん細胞だけでなく、正常細胞にも大きな影響を及ぼすので、全身疲労感、脱毛、吐き気、嘔吐、食欲減退、下痢、口腔炎症、血球の減少、特定臓器の損傷など深刻な副作用を招いた。
【0005】
このような短所を克服するために、1990年代半ば以降に開発された標的抗がん剤は、特定の突然変異遺伝子などがんに関連した遺伝子を標的としてがんを治療しようとする目的で開発された。代表的な標的抗がん剤としては、EGFR突然変異、ALK突然変異、BRAF突然変異などをターゲットとするGefitinib、Erlotinib、Afatinib、Osimertinib、Crizotinib、Ceritinib、Alectinib、Brigatinib、Dabrafenibなどがある。このような標的抗がん剤は、化学抗がん剤より毒性による副作用が低くなったという長所があるが、投薬後8~14ヶ月内に標的抗がん剤の作用機序を避けることができる耐性がん細胞の出現が頻繁であることが知られていて、がんの治療効果が低下するだけでなく、その後、がんの再発率も高くなる問題点を持っている。例えば、EGFR阻害剤に対する薬物耐性EGFR T790M突然変異の出現などを代表的な事例として挙げることができる。
【0006】
その後、がん組織内で抑制されている免疫システムを活性化させることによって、身体内で自体的にがん細胞の死滅を誘導することができるように助ける免疫抗がん剤が従来抗がん剤の限界を克服できる代案として提示された。理論的に、免疫抗がん剤は、特定の遺伝子の変異と関係なく、がんの大部分に適用可能であり、従来の抗がん剤と比較して副作用が少ないことが期待された。しかしながら、予想外に免疫抗がん剤の治療効果が大きくなかった。例えば、免疫チェックポイント阻害剤であるPD-1/PD-L1をターゲットとする免疫抗がん剤Keytrudaは、実質的に治療に適用したとき、反応性が非常に低かった。特に、非小細胞性肺がんの場合には、20~30%の患者にのみ治療効果が現れ、残りの70~80%の患者ではほとんど反応を示さなかった。したがって、様々ながんに効果的な抗がん剤の開発が切実な状況である。
【0007】
最近になって、がん細胞特異的な代謝過程、特に低酸素状態でがん細胞のミトコンドリア代謝、自己捕食作用の活性化、外部から栄養素を無作為で吸収する過程をターゲットとする代謝抗がん剤の開発が試みられているが、第1世代化学抗がん剤の高毒性、第2世代標的抗がん剤の頻繁な耐性発生、第3世代免疫抗がん剤の低い反応率を克服できると期待されている。特に、がん組織の低酸素状態と関連して、低酸素誘導因子-1(Hypoxia-inducible factor-1;HIF-1)は、低酸素症(hypoxia)で誘導される転写因子であり、低酸素状態に対してがん細胞の適応を調節するのに最も重要な分子として知られており、特にHIF-1αタンパク質の量は、がん患者の予後と密接な相関関係を有することが知られている。HIF-1は、がん細胞成長因子の刺激、低酸素条件、発がん遺伝子(oncogene)の活性化またはpVHLのようながん抑制遺伝子の不活性化によって活性化し、活性化したHIF-1は、ヘキソキナーゼ2(hexokinase 2)、グルコース伝達体1(glucose transporter 1)、エリスロポエチン(erythropoietin)、IGF-2、エンドグリン(endoglin)、VEGFA、MMP-2、uPARおよびMDR1のような遺伝子の発現を誘導し、細胞死(apoptosis)に対する耐性、血管新生能力の向上、細胞増殖能力の増加、細胞移動(cell migration、metastasis)および浸潤(invasion)能の増加のような形質を獲得することになり、結局、がん細胞を悪性化させることが知られている。したがって、HIF-1αを抑制することによってがんを治療するのに使用しようとする多数の試みが行われたが、実質的に商業化されて使用されるほどの効果的な治療剤が開発されていないのが現況である(韓国公開特許10-2015-0039264)。
【0008】
したがって、本発明者らは、HIF-1α抑制剤を効果的ながん治療剤として使用するために鋭意研究した結果を基に、HIF-1α抑制剤によるがん特異的代謝を調節すると同時に、抗がんサイトカインによる免疫抗がん効果を示すことができる効果的な二重発現ベクターを開発した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述のような従来技術上の問題点を解決するためになされたものであって、細胞内のHIF-1α抑制剤および細胞の外部に分泌が可能な抗がんサイトカインを同時に発現する二重発現ベクターを有効成分として含むがんの予防または治療用組成物などを提供することをその目的とする。
【0010】
しかしながら、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、下記の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、低酸素誘導因子-1α(hypoxia-inducible factor-1α)抑制剤をコードするポリヌクレオチド、2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド、および抗がんサイトカイン(anticancer cytokine)をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターを有効成分として含む、がんの予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、低酸素誘導因子-1α(hypoxia-inducible factor-1α)抑制剤をコードするポリヌクレオチド、2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド、および抗がんサイトカイン(anticancer cytokine)をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターを有効成分として含む、がんの予防または改善用食品組成物を提供する。
【0013】
本発明の一具体例において、前記組換えベクターは、低酸素誘導因子-1α抑制剤をコードするポリヌクレオチドと抗がんサイトカインをコードするポリヌクレオチドとの間に2Aペプチドをコードするポリヌクレオチドが挿入された形態であってもよく、前記組換えベクターは、低酸素誘導因子-1α抑制剤をコードするポリヌクレオチド、2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド、および抗がんサイトカインをコードするポリヌクレオチドの順に作動可能に順次に連結されたり、または抗がんサイトカインをコードするポリヌクレオチド、2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド、および低酸素誘導因子-1α抑制剤をコードするポリヌクレオチドの順に作動可能に順次に連結された形態であってもよいが、低酸素誘導因子-1α抑制剤と抗がんサイトカインが同時に発現することができる形態の二重発現ベクターであれば、これらに制限されない。
【0014】
本発明の他の具体例において、前記低酸素誘導因子-1α抑制剤は、好ましくは、低酸素誘導因子-1αの発現または活性を抑制できるタンパク質であってもよく、より好ましくは、シトクロムb5還元酵素3(cytochrome b5 reductase)、von Hippel Lindau tumour suppressor protein(pVHL)、arrest-defective-1(ARD-1)、hypoxia-inducible factor(HIF)Prolyl-Hydroxylase,Kelch-like ECH-associated protein 1(Keap1)-NF-E2-related factor 2(Nrf2)などであってもよい。または、HIF-1αに結合し、直接的に発現または活性を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO,antisenseoligonucleotide)、siRNA(small interfering RNA)、miRNA(microRNA)、アプタマー(aptamer)、抗体(antibody)などであってもよい。しかしながら、本発明の二重発現ベクターは、体内で低酸素誘導因子-1αを抑制し、代謝的にがん細胞の死滅、移動、転移、増殖などを抑制する機序として作用するので、低酸素誘導因子-1αの発現または活性を抑制できるタンパク質であれば、これらに制限されない。前記シトクロムb5還元酵素3は、最も好ましくは、配列番号1で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質であってもよいが、好ましくは、配列番号1のアミノ酸配列と80%以上、より好ましくは、90%以上、さらに好ましくは、95%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。アミノ酸配列に対する「配列相同性の%」は、最適に配列された配列と比較領域を比較することによって確認され、比較領域でアミノ酸配列の一部は、配列の最適配列に対する参考配列(追加または削除を含まない)に比べて追加または削除(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。
【0015】
本発明のさらに他の具体例において、前記2Aペプチドは、配列番号5で表されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0016】
本発明のさらに他の具体例において、前記抗がんサイトカインは、好ましくは、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、インターロイキン2、インターロイキン7、インターロイキン12、インターロイキン15、インターロイキン18、インターロイキン21、インターロイキン37、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子などであってもよく、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(natural killer cell;NK cell)などを活性化させて、がん細胞特異的に免疫反応を起こすことが知られている抗がんサイトカインであれば、制限がない。
【0017】
本発明のさらに他の具体例において、前記組換えベクターは、線状DNA、プラスミドDNA、ウイルス性ベクターであってもよく、前記ウイルス性ベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウィルス、ワクシニアウイルス、ミクソーマウイルス、単純ヘルペスウイルス、レンチウイルスなどであってもよいが、体内で低酸素誘導因子-1α抑制剤と抗がんサイトカインを同時に発現できる二重発現ベクターに使用できる種類であれば、これらに制限されない。
【0018】
本発明のさらに他の具体例において、前記がんは、好ましくは、黒色腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、神経膠腫、肝がん、甲状腺腫瘍、胃がん、前立腺がん、乳がん、卵巣がん、膀胱がん、肺がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん、膠芽細胞腫、子宮内膜がん、腎臓がん、結腸がん、膵臓がん、食道がん、頭頸部がん、中皮腫、肉腫、胆管がん、小腸腺がん、小児悪性腫瘍、表皮がんなどであってもよいが、低酸素誘導因子-1αを抑制することによって治療できるがんの種類であれば、これらに制限されない。
【0019】
また、本発明は、低酸素誘導因子-1α(Hypoxia-inducible factor-1α)抑制剤をコードするポリヌクレオチド、2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド、および抗がんサイトカイン(anticancer cytokine)をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターを有効成分として含む組成物を個体に投与する段階を含むがんの予防または治療方法を提供する。
【0020】
また、本発明は、低酸素誘導因子-1α(Hypoxia-inducible factor-1α)抑制剤をコードするポリヌクレオチド、2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド、および抗がんサイトカイン(anticancer cytokine)をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターを有効成分として含む組成物のがん予防または治療用途を提供する。
【0021】
また、本発明は、低酸素誘導因子-1α(Hypoxia-inducible factor-1α)抑制剤をコードするポリヌクレオチド、2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド、および抗がんサイトカイン(anticancer cytokine)をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターのがんに用いられる薬剤を生産するための用途を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるHIF-1α抑制剤および抗がんサイトカインを同時に発現する二重発現ベクターは、HIF-1αを抑制できる物質、すなわち、代謝抗がん剤によってがんの増殖、移動、転移などを効果的に抑制すると同時に、抗がんサイトカイン、すなわち、抗がん免疫抑制剤によってT細胞、B細胞、NK細胞などを活性化させてがん特異的な免疫反応を誘導することによって、代謝抗がん剤の治療効果を向上させることができ、1つのベクターを投与することによって投与回数を減少させて、患者の苦痛および費用を減少させることができる。また、免疫抗がん剤と代謝抗がん剤が同時に発現するので、少量でも高い治療効果を示し、副作用を減少させることができるだけでなく、体内で発生する抗がん剤に対する耐性の発生をも減少させることができる。したがって、本発明の二重発現ベクターは、様々ながんの治療に効果的に適用できることが期待される。また、抗がん治療は、がん発病の遺伝的原因または原因因子によって治療法を異ならせなければならないという点から、本発明は、様々な代謝抗がん剤・免疫抗がん剤の治療オプションを提供できるので、抗がん治療率を顕著に高めることができることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例による二重発現ベクターの構造および前記二重発現ベクターによって製造されたタンパク質およびその存在位置、およびがんに対する効果を簡略に示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例による二重発現ベクターの模式図を簡略に示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例による二重発現ベクターのタンパク質発現の有無をウェスタンブロッティングで確認した結果を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例による二重発現ベクターの抗がん効果を確認した結果を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例によるアデノウイルスに注入された二重発現ベクターの抗がん効果を確認した結果を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例による二重発現ベクターで分泌されたサイトカインによるNK免疫細胞の活性化を確認した結果を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施例による二重発現ベクターの抗がんサイトカインの免疫活性化効果を確認した結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明のHIF-1α抑制剤および抗がんサイトカインを同時に発現する二重発現ベクターは、1回投与を通じてHIF-1α抑制剤と抗がんサイトカインを同時に発現させることができ、発現したタンパク質が正常に作動し、正常細胞では毒性を示さないが、がん細胞特異的にapoptosisを誘発することによって、効果的にがんを治療できることを確認した。したがって、本発明のHIF-1α抑制剤および抗がんサイトカインを同時に発現する二重発現ベクターは、耐性が発生した多数のがんに効果的な治療剤として適用可能なものと期待される。
【0025】
本明細書において、「組換えベクター(recombinant vector)」とは、ベクター内に挿入された異種の核酸によりコード化されるペプチドまたはタンパク質を発現できるベクターを指すものであり、好ましくは、HIF-1α抑制剤遺伝子および抗がんサイトカイン遺伝子を含むように製造されたベクターを意味する。前記「ベクター」は、試験管内、生体外または生体内で宿主細胞への塩基の導入および/または転移のための任意の媒介物を言い、他のDNA断片が結合し、結合した断片の複製をもたらすことができる複製単位(replicon)であってもよく、「複製単位」とは、生体内でDNA複製の自己ユニットとして機能する、すなわち、自らの調節によって複製可能な、任意の遺伝的単位(例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルスなど)を言う。本発明の組換え発現ベクターは、好ましくは、RNA重合酵素が結合する転写開始因子であるプロモーター(promoter)、転写を調節するための任意のオペレーター配列、好適なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列と転写および翻訳の終結を調節する配列、ターミネーターなどを含んでもよいし、より好ましくは、組換えタンパク質の生産量を増加させるためのタグ用遺伝子、組換えタンパク質の構造的安定性を維持するためのタグ用遺伝子、組換えタンパク質を容易に分離するためのタグ用遺伝子、形質転換体を選別するための抗生剤耐性遺伝子などの選別用マーカー遺伝子などをさらに含んでもよいし、容易な分離のためのタグとしては、代表的にAviタグ、Calmodulinタグ、polyglutamateタグ、Eタグ、FLAGタグ、HAタグ、Hisタグ、Mycタグ、Sタグ、SBPタグ、IgG-Fcタグ、CTBタグ、Softag 1タグ、Softag 3タグ、Strepタグ、TCタグ、V5タグ、VSVタグ、Xpressタグ、FLAGタグなどを含んでもよいし、前記選別用マーカー遺伝子には、代表的にカナマイシン(kanamycin)、G418、ブレオマイシン(bleomycin)、ハイグロマイシン(hygromycin)、クロラムフェニコール(chloramphenicol)、アンピシリン(ampicillin)、テトラサイクリン(tetracycline)などのような抗生剤耐性遺伝子などを含んでもよいし、前記プロモーターには、代表的にpEMUプロモーター、MASプロモーター、ヒストンプロモーター、Clpプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス(cauliflower mosaic virus)由来35Sプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス(cauliflower mosaic virus)由来19S RNAプロモーター、ユビキチンタンパク質プロモーター、CMV(cytomegalovirus)プロモーター、SV40(Simian virus 40)プロモーター、RSV(respiratory syncytial virus)プロモーター、EF-1α(elongation factor-1 alpha)プロモーターなどを含んでもよいし、前記ターミネーターは、代表的にノパリンシンターゼ(NOS)、パセオリンターミネーター、アグロバクテリウムツメファシエンスのオクトパイン(octopine)遺伝子のターミネーター、大腸菌のrrnB1/B2ターミネーターなどであるが、前記追加される遺伝子の種類は、従来組換えタンパク質の製造に使用されている種類であれば、制限がない。
【0026】
本明細書において、「作動可能に連結された(operably linked)」とは、一般的機能を行うように核酸発現調節配列と目的するタンパク質またはRNAをコードする核酸配列が機能的に連結(functional linkage)されている状態を意味する。例えば、プロモーターとタンパク質またはRNAをコードする核酸配列が作動可能に連結され、コーディング配列の発現に影響を及ぼすことができる。発現ベクターとの作動的連結は、当該技術分野においてよく知られた遺伝子組換え技術を用いて製造することができ、部位特異的DNA切断および連結は、当該技術分野において一般的に知られた酵素などを使用することができる。
【0027】
本明細書において、「抗がんサイトカイン(anticancer cytokine)」とは、体内でT細胞、B細胞、NK細胞などを活性化させてがん細胞およびがん特異的な免疫反応を誘導することが知られているサイトカインを総称し、自己免疫を通じてがん細胞を死滅させる役割をする。一例として、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、インターロイキン2、インターロイキン7、インターロイキン12、インターロイキン15、インターロイキン18、インターロイキン21、インターロイキン37、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子などがありえ、IL-2は、T細胞、NK細胞、B細胞、monocytesの成長と活性を調節し、高濃度でがん細胞特異的な免疫反応を誘導することが知られており、IL-7は、T細胞、B細胞などに作用し、T細胞生存(survival)、B細胞発達(development)、およびこれら細胞の増殖および恒常性(homeostasis)の維持に関与することが知られている。また、CD56BrightNK細胞などの生存を増大させて、免疫作用を増大させることが知られている。IL-12(p70)は、naive T-helper細胞をTh1細胞への分化を誘導することによって抗がん効果を起こし、cytotoxic T細胞の活性を増大させ、B細胞の生存を増やすことが知られている。IL-15は、T細胞とNK細胞に作用し、これらの細胞の増殖と活性を調節し、これらの免疫細胞でapoptosisが誘導されることを抑制することが知られている。IL-21は、NK細胞、T細胞、B細胞に作用し、これらの細胞の成長を促進し、活性を増大させることが知られている。IL-37は、IL-1 familyに属するサイトカインであり、濃度と他の単位体との相互作用によって様々ながん腫に対して抗腫瘍効果を示し、特に、がん細胞に作用してp-STAT3およびVEGFの発現を増加させて、がん細胞の死滅を誘導したり、Tumor angiogenesisを抑制し、Macrophageに作用してTumor-promoting inflammationなどを抑制することによって、腫瘍微小環境を調節できることが知られている。GM-CSFは、myeloid細胞の分化を誘導して抗がん効果を示すことができ、特に、dendritic cellなどの成熟(maturation)を促進し、tumor-specific antigenをpresentingする過程を促進させることによって、CTL-mediated tumor lysisを誘導できることが知られている。
【0028】
本明細書において、「がん(cancer)」とは、浸潤によって局部的にかつ転移を通じて体系的に拡張できる低酸素骨髄にある幹細胞から発生した各種血液がんと共に、無限成長が予告される悪性の固形腫瘍をいう。特にこれらに制限されないが、がんの具体的な例としては、副腎がん、骨がん、脳がん、乳がん、気管支がん、結腸がんおよび/または直腸がん、胆のうがん、消化管がん、頭頸部がん、腎臓がん、喉頭がん、肝がん、肺がん、神経組織がん、膵臓がん、前立腺がん、副甲状腺がん、皮膚がん、胃がん、および甲状腺がんが含まれる。がんの他の例としては、腺がん、腺腫、基底細胞がん、子宮頸部異形成および上皮内がん、ユーイング(Ewing)肉腫、扁平上皮がん腫、液腺細胞がん、悪性脳腫瘍、母細胞がん、腸の神経節細胞腫、過形成角膜神経がん、島細胞がん、カポジ(Kaposi)肉腫、平滑筋種、白血病、リンパ腫、悪性がん様腫、悪性黒色腫、悪性高カルシウム血症、マルファン体型(marfanoid habitus)がん、髄様がん、転移性皮膚がん、粘膜神経種、骨髄異形成症候群、骨髄腫、菌状息肉症、神経芽細胞腫、骨肉腫、骨原性およびその他肉腫、卵巣がん、クロム親和性細胞腫、真性赤血球増加症、原発性脳腫瘍、小細胞性肺がん、潰瘍性および乳頭状扁平上皮がん、精上皮腫、軟組織肉腫、網膜芽腫、横紋筋芽細胞腫、網状細胞性肉腫、およびウィルムス腫瘍が含まれる。がんの具体的な例としては、また、星細胞腫、胃腸基底腫瘍(gastrointestinal stromal tumor,GIST)、神経膠腫または神経膠芽腫、腎細胞がん(renal cell carcinoma,RCC)、肝細胞がん(hepatocellular carcinoma,HCC)、膵臓神経内分泌がんなどが含まれる。
【0029】
本明細書において、「予防(prevention)」とは、本発明による組成物の投与によってがんなどの疾患を抑制させたり発病を遅延させるすべての行為を意味する。
【0030】
本明細書において、「治療(treatment)」とは、本発明による組成物の投与によってがんなどの症状が好転したり有益に変更されるすべての行為を意味する。
【0031】
本明細書において、「改善(improvement)」とは、治療される状態と関連したパラメーター、例えば、症状の程度を少なくとも減少させる行為を意味する。この際、前記本発明の組成物をがんの予防または改善のために治療のための薬剤と同時にまたは個別的に使用できる。
【0032】
本明細書において、「個体(individual)」とは、本発明の組成物が投与され得る対象を言い、その対象には制限がない。
【0033】
本明細書において、「薬学的組成物(pharmaceutical composition)」とは、カプセル、錠剤、顆粒、注射剤、軟こう剤、粉末または飲料の形態であることを特徴とし、前記薬学的組成物は、ヒトを対象とすることを特徴とする。本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体を含んでもよい。薬学的に許容可能な担体は、経口投与時には、結合剤、滑沢剤、崩解剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用することができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを混合して使用するこができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用することができる。本発明の薬学的組成物の剤形は、上述したような薬学的に許容可能な担体と混合して多様に製造することができる。例えば、経口投与時には、錠剤、トローチ、カプセル、エリクシール(elixir)、サスペンション、シロップ、ウェハーなどの形態で製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アンプルまたは多回投薬形態で製造することができる。その他、糖衣錠、ゲル、丸剤、散剤、顆粒剤、坐剤、外用剤、溶液、懸濁液、徐放性製剤、スラリーなどに剤形化して使用することもできる。なお、製剤化に適した担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシ安息香酸、プロピルヒドロキシ安息香酸、タルク、マグネシウムステアレート、鉱物油などが使用できる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などをさらに含んでもよい。
【0034】
本発明による薬学的組成物の投与経路は、これらに限定されるものではないが、経口または非経口投与が好ましく、例えば、口腔、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮内、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下、直腸、胸骨内、病巣内、頭蓋骨内などが含まれる。
【0035】
本発明の薬学的組成物の投与量は、使用された特定化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康、性別、食事、投与時間、投与経路、排出率、薬物配合および予防または治療される特定疾患の重症を含む様々な要因によって多様に変わることができ、患者の状態、体重、病気の程度、薬物形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者によって適切に選択することができ、1日に0.0001~500mg/kgまたは0.001~500mg/kgで投与することができる。投与は、1日に1回投与することもでき、数回に分けて投与することもできる。または、二重発現ベクターをベースにウイルス性ベクターを通じて薬学的組成物を作成するとき、ウイルスの感染性による基本単位であるプラーク形成程度(PFU)を基準として1~10100PFUまたはIFUおよびそれ以上の範囲を単回または数回に分けて投与することもできる。その他、ウイルスの種類および確保可能な力価によって1~10100およびそれ以上の感染性ウイルス粒子(VPまたはVG)を単回または数回に分けて投与することもできる。前記投与量は、いかなる面においても本発明の範囲を限定するものではない。
【0036】
本明細書において、「食品組成物(food composition)」は、各種食品類、例えば、飲料、ガム、お茶、ビタミン複合剤、健康補助食品類などに使用することができ、丸剤、粉末、顆粒、浸剤、錠剤、カプセルまたは飲料の形態で使用することができる。前記食品組成物は、健康機能食品組成物を含む。この際、食品または飲料中の前記二重発現ベクターの量は、一般的に本発明の食品組成物の場合、全体食品重量に対し0.01~30重量%で加えることができ、健康飲料組成物の場合、100mLを基準として0.02~10g、好ましくは、0.3~1gの割合で加えることができる。
【0037】
本発明の食品組成物は、必須成分として前記二重発現ベクターの他に添加される成分には、特別な制限はなく、当業界において使用される通常の食品添加剤、例えば、天然炭水化物、香味剤、風味剤、着色剤、充填剤、安定化剤、様々な栄養剤、ビタミン、ミネラル(電解質)などを含んでもよい。前記天然炭水化物の例としては、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロースなど;ポリサッカライド、例えば、デキストリン、シクロデキストリン;などのような通常の糖およびキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールを使用することができる。前記香味剤の例としては、天然香味剤(ソーマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウディオサイドA、グリチルリチンなど))および合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に使用することができる。風味剤の例としては、蜜、D-マンニトール、マルチトール液、クリル濃縮液などを使用することができる。その他にも、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。このような成分は、独立して、または組み合わせて使用することができる。このような添加剤の割合は、そんなに重要なものではないが、本発明の組成物100重量部当たり0~約20重量部の範囲で選択されることが一般的である。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、ただ本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0039】
[実施例]
実施例1:HIF-1α抑制剤および抗がんサイトカインを同時に発現する二重発現ベクターの製作
代謝抗がん剤(metabolic anticancer)および免疫抗がん剤(cancer immunotherapy)を同時に発現する二重発現ベクター(dual expression vector)を製作するために、代謝抗がん剤の例としては、低酸素誘導因子-1α(hypoxia-inducible factor-1α;HIF-1α)の発現を抑制することが知られているシトクロムb5還元酵素3(cytochrome b5 reductase;CYB5R3、配列番号1)遺伝子を用いた。また、免疫抗がん剤であるサイトカインの例としては、インターロイキン2(Interleukin 2;IL2、配列番号9)、インターロイキン7(Interleukin 7;IL7、配列番号11)、インターロイキン12A(Interleukin 12A;IL12A、配列番号15)、インターロイキン12B(Interleukin 12B;IL12B、配列番号13)、インターロイキン15(Interleukin 15;IL15、配列番号17)、インターロイキン21(Interleukin 21;IL21、配列番号19)、インターロイキン37(Interleukin 37;IL37、配列番号21)、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(granulocyte-macrophage colony-stimulating factor;GM-CSF、配列番号23)を用いた。より詳細には、配列番号25の塩基配列を含んでいるpDE1ベクター内のmulti-cloning site(MCS)をNheI制限酵素とXbal制限酵素を用いて切断し、C末端にHA epitope(配列番号3)が結合しているCYB5R3タンパク質(配列番号1)、2A peptide(porcine teschovirus-1 2A;CS peptide、配列番号5)、およびC末端にFLAG peptide(配列番号7)が結合しているサイトカインをそれぞれコードしている遺伝子を順に挿入した。
【0040】
このように製作された二重発現ベクターは、発現時にベクター内のプロモーターによってC末端にHA epitopeが結合しているCYB5R3タンパク質-2A peptide-C末端にFLAG peptideが結合しているサイトカインを発現するmRNAに転写(transcription)し、転写したmRNAは、リボソーム(ribosome)によってタンパク質に翻訳(translation)される。この際、ribosome skippingによって2A peptide配列の以前配列と以後配列、二つのタンパク質に別々に翻訳され、CYB5R3タンパク質は、タンパク質のN末端に含まれている膜貫通ドメイン(transmembrane domain 1;TM1)によってplasma membraneまたはendoplasmic reticulum(ER)membraneに結合し、細胞質内に存在し、サイトカインタンパク質は、タンパク質内に含まれているシグナルペプチド(signal peptide;SP)配列によってmature form(表1の最終タンパク質配列)で細胞外に分泌される。本発明の二重発現ベクターの構造および前記二重発現ベクターによって製造されたタンパク質の存在位置は、
図1に簡略に示した。
【0041】
製作されたベクターの構造とヌクレオチド配列の要約は、
図2および表1に示した。
【0042】
【0043】
実施例2:二重発現ベクターのタンパク質発現の有無の確認
実施例1と同じ方法で製作した二重発現ベクターが正常にHIF-1α抑制剤とサイトカインを発現するかを確認するために、一次的にHEK293T細胞株を4×105cellsとなるように10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum;FBS)が添加されたDMEM(4.5g/LのD-glucoseを含む)にシーディングし、24時間培養した。その後、培地を除去し、リン酸塩緩衝溶液(phosphate buffered saline;PBS)を用いて1回洗浄した後に、血清が添加されていないOPTI-MEM media 2mLを添加した。次に、3μgの二重発現ベクターと0.1μgのpEGFP-C1ベクターをLipofectamine 2000を用いて4時間形質感染(transfection)させた後に、20%ウシ胎児血清が添加されたOPTI-MEM media 2mLを添加し、16時間培養した。次に、既存培地を除去し、10%ウシ胎児血清が添加されたDMEM培地を添加し、24時間さらに培養した。
【0044】
ウェスタンブロッティングを実施するために、細胞培養液を4℃で2,000xgで10分間遠心分離した後に、上澄み液を新しいチューブに移して入れた。次に、上澄み液200μLを同一体積の2X Laemmli sample bufferと混合した後に、95℃で5分間沸かし、冷まして、media sample(Growth media)を準備した。次に、cell sample(Total cell extracts)は、プレートの表面をcell lifterでかいて細胞を収集した後に、4℃で3,000xgで5分間遠心分離して上澄み液を除去し、protease inhibitor cocktailが添加された200μLのNP-40 Lysisを添加し、sonicatorを用いて細胞を破砕した。破砕した細胞に同一体積の2X Laemmli sample bufferを混合した後に、95℃で5分間沸かし、冷まして、cell sampleを準備した。
【0045】
準備したcell sampleとmedia sampleを用いてウェスタンブロッティングを実施した。cell sampleは、mouse anti-FLAG M2抗体、mouse anti-HA抗体、mouse anti-GFP抗体、mouse anti-β-actin抗体をそれぞれ用いてウェスタンブロッティングを実施し、media sampleは、mouse anti-FLAG M2抗体とそれぞれのendogenousサイトカインと結合できる特定抗体を用いてウェスタンブロッティングを実施した。すべての抗体は、Abcam、Sigma、Cell Signaling Technologyからそれぞれ購入した。その結果を
図3に示した。
【0046】
図3に示されたように、cell sampleで形質感染効率を確認するために、対照群で一緒に形質感染させたGFPベクターによってGFPがすべての試料において類似のレベルで発現し、正常に形質感染が誘導されたことを確認した。次に、FLAG抗体を用いてサイトカインの発現を確認してみた結果、pDE1-CYB5R3ベクターは、サイトカインが観察されず、残りのそれぞれのベクターに挿入されたFLAGが結合しているサイトカインドゥルが正常に発現することを確認した。また、HA抗体を用いて確認した結果、HAが結合しているCYB5R3タンパク質がすべてのベクターで正常に発現することを確認した。
【0047】
また、media sampleでは、FLAG抗体を用いて確認した結果、FLAGが結合しているサイトカインが正常に発現し、それぞれのサイトカインと結合できる特定抗体を用いて確認した結果でも、サイトカインが正常に発現することを確認した。GM-CSF-FLAGの場合には、細胞内では、サイズ20kDaのタンパク質が主に確認されるが、media sampleでは、サイズ25~35kDaのタンパク質が確認され、これを通じて、二重発現ベクターによって発現したGM-CSFが正常にglycosylationなどpost-translational modificationが行われたことを確認することができた。IL-2の場合には、FLAG抗体で検出した結果を見れば、細胞内での検出は弱いが、細胞培養液では高濃度で検出されることを観察できるが、これは、細胞内で作成されたIL-2がほぼ大部分細胞の外部に迅速に高効率で分泌されることを意味する。
【0048】
実施例3:二重発現ベクターの抗がん効果の確認
実施例1と同じ方法で製作した二重発現ベクターの抗がん効果を確認するために、正常細胞であるHEK293T細胞株とがん細胞であるA549細胞株を用いて実験を進めた。より詳しくは、それぞれの細胞株を4×10
5cellsになるように10%ウシ胎児血清が添加されたDMEM(4.5g/LのD-glucoseを含む)または10%ウシ胎児血清が添加されたRPMI1640(4.5g/LのD-glucoseを含む)にシーディングし、24時間培養した。その後、培地を除去し、リン酸塩緩衝溶液(phosphate buffered saline;PBS)を用いて1回洗浄した後に、血清が添加されていないOPTI-MEM media 2mLを添加した。次に、4μgの二重発現ベクターをLipofectamine 3000およびP3000 reagentを用いて4時間形質感染(transfection)させた後に、培地をきれいに除去し、10%ウシ胎児血清が添加されたDMEM(1g/LのD-glucoseを含む)または10%ウシ胎児血清が添加されたRPMI1640(2g/LのD-glucoseを含む)を3mLずつ添加した後に、2日間培養した。2日後に、細胞培養液を新しいチューブに移して入れ、細胞は、3mLのice-cold PBSを用いて洗浄し、培地をきれいに除去した後に、新しいチューブに移した後に、1mLのTrypsin-EDTAを添加し、37℃で5分間反応させた。次に、4℃で200xgで5分間遠心分離して上澄み液を除去した後に、cell pelletをice-cold PBSを用いて3回洗浄し、400μLの1X Annexin V Binding Bufferを用いて細胞をほぐした後に、細胞数を測定した。次に、1×10
5 cellsを新しいチューブに入れ、1X Annexin V Binding Bufferを用いて最終体積が200μLになるように調節した後に、Propidium iodideとAnnexin V-APCを添加し、常温暗室状態で20分間反応させた。次に、300μLの1x Annexin V Binding Bufferを添加し、Novocyte Cell Analyzerを用いてPropidium iodide染色程度とAnnexin V-APC染色程度を定量的に分析し、これを用いてapoptosis誘導程度を確認した。分析のために、10,000個の細胞をCountingし、これらのうち、apoptotic cellの個数をパーセント割合で換算した。次に、対照群に使用したpDE1を形質感染させた細胞におけるapoptotic cellパーセントを1に計算して、他の二重発現ベクターのapoptotic cellの割合を相対的に計算した。残っている細胞は、実施例2と同じ方法でウェスタンブロッティングを実施して、タンパク質が正常に発現したかを確認した。以下、すべての実験は、3回行い、統計的有意性は、Student’s t-testで確認した。*は、P<0.05であり、**は、P<0.01である。その結果を
図4に示した。
【0049】
図4に示されたように、ウェスタンブロッティングを通じて正常にCYB5R3-HAとサイトカイン-FLAGタンパク質が発現することを確認した(左図)。次に、それぞれのベクターは、正常細胞ではapoptosisを誘導せず、これを通じて、低い細胞毒性を示すことを確認した。また、CYB5R3タンパク質を単独で発現するベクターおよびサイトカインを共に発現する二重発現ベクターは、いずれも、apoptotic cellを顕著に増加させることを確認した(右図)。
【0050】
実施例4:ウイルスを用いた二重発現ベクターの抗がん効果の確認
実施例1と同じ方法で製作した二重発現ベクターをウイルスに注入した後に、抗がん効果を確認した。より詳しくは、一次的に二重発現ベクターをアデノウイルス(TaKaRa)に形質感染させ、肺がん細胞株であるH1299細胞株に22、50、100、または200MOIの濃度になるようにウイルスをそれぞれ処理した後に、72時間培養した。次に、培養された細胞をリン酸塩緩衝溶液を用いて2回洗浄し、100%メタノールを添加し、-20℃で15分間安定化させた。その後、リン酸塩緩衝溶液を用いて3回洗浄し、メタノールをきれいに除去した後に、1%Acetic Acidが含まれた0.4%Sulforhodamine Bを細胞に処理し、常温で30分間反応させて細胞を染色し、1%Acetic Acidを用いて4回洗浄して、残存の染色溶液をきれいに除去した。次に、最終的に細胞に10mM Tris溶液を追加し、565nmで吸光度を測定することによって、残っている細胞量を測定し、抗がん効果を確認した。その結果を
図5に示した。
【0051】
図5に示されたように、ウイルスに注入されたベクターを用いた抗がん効果の実験においても、cyb5R3遺伝子のみを挿入したAd-R3と比較して、cyb5R3とIL-21遺伝子を共に挿入した二重発現ベクターの場合には、少量のMOIを処理したときにも、顕著な抗がん効果を示すことを確認した。前記結果を通じて、ウイルスを用いて本発明の二重発現ベクターを処理した場合にも、抗がん効果を示すことを確認することができた。
【0052】
実施例5:二重発現ベクターのNK免疫細胞活性化効果の確認
実施例1と同じ方法で製作した二重発現ベクターのNK免疫細胞活性化効果を確認するために、一次的に二重発現ベクターをアデノウイルスに形質感染させ、HEK293T細胞株に50MOIの濃度になるようにウイルスを処理した後に72時間培養し、培養液(上澄み液)を獲得した。また、獲得した培養液をH1299細胞株およびヒトNK細胞株であるNK-92細胞株にそれぞれの培養液を同量処理し、4時間追加培養した。対照群(control)としては、cyb5R3遺伝子のみを挿入したベクターから分泌されたサイトカインが含まれている培地を使用した。次に、実施例4と同じ方法で細胞を染色し、残っている細胞量を測定し、NK免疫細胞による抗がん効果を確認した。その結果を
図6に示した。
【0053】
図6に示されたように、対照群と比較して二重発現ベクターから分泌されたIL-21がNK細胞のがん細胞特異的死滅効果を増加させることを確認した。前記結果を通じて、本発明の二重発現ベクターで発現した抗がんサイトカインがNK免疫細胞の活性化程度を増加させて抗がん効果を増加させることを確認することができた。
【0054】
実施例6:二重発現ベクターの抗がん免疫活性化効果の確認
実施例1と同じ方法で製作した二重発現ベクターの抗がん免疫活性化効果を確認した。
より詳しくは、NK-92細胞株に二重発現ベクターで形質感染されたアデノウイルス50MOIとhuman rIL21(Thermo Fisher)をそれぞれ処理した後に、24時間および48時間にIL21によるIFN-gammaの分泌能をELISAを用いて確認した。次に、二重発現ベクターによって発現したIL21の分泌量も細胞培養液を用いてELISAを実施して測定した。その結果を
図7に示した。
【0055】
図7に示されたように、rIL21を直接処理した場合には、10ng/mLを処理した場合にも、48時間まで最大3ng/mLのIFN-gammaが分泌されるが、二重発現ベクターを処理した場合には、同量のIL21が発現しても、48時間後に5ng/mL以上のIFN-gammaが分泌されることを確認した。前記結果を通じて、本発明の抗がんサイトカインと代謝抗がん剤であるHIF-1α抑制剤が共に挿入されている二重発現ベクターを用いる場合、単独で処理された抗がんサイトカインと比較して、NK細胞など免疫細胞の免疫活性化効果をさらに顕著に増加させることができることを確認することができた。
【0056】
前記結果を通じて、本発明の二重発現ベクターは、HIF-1αを抑制できるタンパク質と抗がんサイトカインを同時に発現させることによって、HIF-1αを抑制できるタンパク質、すなわち、代謝抗がん剤によってがんの増殖、移動、転移などを効果的に抑制すると同時に、抗がんサイトカイン、すなわち、免疫抗がん剤によってT細胞、B細胞、NK細胞などを活性化させてがん特異的な免疫反応を誘導して副作用を減少させ、治療効果を向上させることができることを確認することができた。それだけでなく、同量の抗がんサイトカインを処理しても、単独で処理した場合と比較して、ベクターに挿入されて発現した場合に、免疫抗がん活性化効果をさらに向上させることができるので、単に抗がんサイトカインと代謝抗がん剤を併用投与した場合と比較して、抗がん治療効果をさらに顕著に高めることができるだけでなく、様々な種類のがんの治療に効果的に適用できることを確認することができた。
【0057】
上述した本発明の説明は例示のためのもので、本発明が属する技術分野において通常の知識を有した者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更しなくても他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解できる。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的ではないものと理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によるHIF-1α抑制剤および抗がんサイトカインを同時に発現する二重発現ベクターは、免疫抗がん剤と代謝抗がん剤が同時に発現するので、抗がん治療率を顕著に高めることができるだけでなく、様々な代謝抗がん剤・免疫抗がん剤の治療オプションを提供できるので、様々な種類のがんの治療に制限なしに効果的に適用することができる。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-09-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低酸素誘導因子-1α(hypoxia-inducible factor-1α)抑制剤をコードするポリヌクレオチド、2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド、および抗がんサイトカイン(anticancer cytokine)をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターを有効成分として含む、がんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記組換えベクターは、低酸素誘導因子-1α抑制剤をコードするポリヌクレオチド配列と抗がんサイトカインをコードするポリヌクレオチドとの間に2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド配列が挿入された形態であることを特徴とする請求項1に記載のがんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項3】
前記低酸素誘導因子-1α抑制剤は、シトクロムb5還元酵素3(cytochrome b5 reductase)であることを特徴とする請求項1に記載のがんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項4】
前記シトクロムb5還元酵素3は、配列番号1で表されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項3に記載のがんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項5】
前記2Aペプチドは、配列番号5で表されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項1に記載のがんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項6】
前記抗がんサイトカインは、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、インターロイキン2、インターロイキン7、インターロイキン12、インターロイキン15、インターロイキン18、インターロイキン21、インターロイキン37、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子からなる群から選ばれたいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載のがんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項7】
前記組換えベクターは、線状DNA、プラスミドDNAまたはウイルス性ベクターであることを特徴とする請求項1に記載のがんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項8】
前記ウイルス性ベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウィルス、ワクシニアウイルス、ミクソーマウイルス、単純ヘルペスウイルス、およびレンチウイルスからなる群から選ばれたいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項7に記載のがんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項9】
前記がんは、黒色腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、神経膠腫、肝がん、甲状腺腫瘍、胃がん、前立腺がん、乳がん、卵巣がん、膀胱がん、肺がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん、膠芽細胞腫、子宮内膜がん、腎臓がん、結腸がん、膵臓がん、食道がん、頭頸部がん、中皮腫、肉腫、胆管がん、小腸腺がん、小児悪性腫瘍および表皮がんからなる群から選ばれたいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載のがんの予防または治療用薬学的組成物。
【請求項10】
低酸素誘導因子-1α(hypoxia-inducible factor-1α)抑制剤をコードするポリヌクレオチド、2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド、および抗がんサイトカイン(anticancer cytokine)をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターを有効成分として含む、がんの予防または改善用食品組成物。
【請求項11】
低酸素誘導因子-1α(Hypoxia-inducible factor-1α)抑制剤をコードするポリヌクレオチド、2Aペプチドをコードするポリヌクレオチド、および抗がんサイトカイン(anticancer cytokine)をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターのがんに用いられる薬剤を生産するための用途。
【国際調査報告】