(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】電解槽のセルの構造アセンブリ、電解槽、およびそのような構造アセンブリの製造方法
(51)【国際特許分類】
C25B 13/02 20060101AFI20240308BHJP
C25B 9/73 20210101ALI20240308BHJP
【FI】
C25B13/02 302
C25B9/73
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559827
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 EP2022058305
(87)【国際公開番号】W WO2022207654
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516042103
【氏名又は名称】ヒタチ ゾウセン イノバ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファンディーノ, ヴィセンテ
(72)【発明者】
【氏名】ヘゲレ, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヘリング, アルフレッド
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー, アドリアン
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021DB04
4K021DB47
4K021DB48
4K021EA02
(57)【要約】
本発明は、軸方向に積層された複数のセルを有するステープル型の電解槽のセルの構造アセンブリであって、加圧フレーム装置と、前記シート面に当接し、前記軸方向において前記メインフレームと前記加圧フレーム装置との間に挟まれる膜装置とを備え、ここで前記膜装置と前記加圧フレーム装置との組み立て状態における共通の軸方向延在量が、前記取付面と前記シート面との間の軸方向距離によって設定され、前記組み立て工程において加えられる軸方向の圧力によって達せられ、前記共通の軸方向延在量の減少が、前記加圧フレーム装置の軸方向延在量の減少によって主にもたらされる、構造アセンブリに関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に積層された複数のセルを有するステープル型の電解槽のセルの構造アセンブリ(100)であって、前記構造アセンブリが、
取付面(14)とシート面(57)とを有するメインフレーム(10)と、加圧フレーム装置(30)と、前記シート面に当接し、前記軸方向において前記メインフレームと前記加圧フレーム装置との間に挟まれる膜装置(20)とを備え、ここで前記膜装置と前記加圧フレーム装置との組み立て状態における共通の軸方向延在量(Hp+Hm)が、前記取付面と前記シート面との間の軸方向距離(Ho)によって設定され、前記組み立て工程において加えられる軸方向の圧力によって達せられ、
前記共通の軸方向延在量の減少が、前記加圧フレーム装置の軸方向延在量の減少によって主にもたらされることを特徴とする、構造アセンブリ。
【請求項2】
前記主な軸方向延在量の減少は、主に前記加圧フレーム装置の幾何学的形状(32、33、34、35)によってもたらされる、請求項1に記載の構造アセンブリ。
【請求項3】
前記加圧フレームアセンブリの断面の表面積が、その軸方向の延在部にわたって変化し、特に軸方向の中間ゾーンにおいてより小さい、請求項1又は2に記載の構造アセンブリ。
【請求項4】
前記幾何学的形状の幾何学的特徴が、U字形又はV字形の軸方向断面(32, 33, 34)を含む、請求項1から3のいずれかに記載の構造アセンブリ。
【請求項5】
前記加圧フレーム装置が、円周方向に複数のセグメントを備え、特に環状体の及び/又は円周方向に閉じたトポロジーである、請求項1から4のいずれかに記載の構造アセンブリ。
【請求項6】
組み立てられた状態での前記膜装置に対する前記軸方向の応力が、前記加圧フレーム装置の弾性復元力によって、少なくとも局所的に、少なくとも部分的に、特に主に又は全体的に与えられる、請求項1から5のいずれかに記載の構造アセンブリ。
【請求項7】
前記加圧フレーム装置が、軸方向延在量の減少の間、円周方向の伸長量を減少させるためのリリースキャビティ(36)を有する、請求項1から6のいずれかに記載の構造アセンブリ。
【請求項8】
前記膜装置の軸方向の変形が、少なくとも局所的に、前記加圧フレームアセンブリの変形の80%未満、好ましくは60%未満、特に40%未満である、請求項1から7のいずれかに記載の構造アセンブリ。
【請求項9】
前記膜装置(20)は、前記シート面(57)上の位置決めピン(59)に合致する位置決め孔を有する、請求項1から8のいずれかに記載の構造アセンブリ。
【請求項10】
ステープル型の電解槽であって、軸方向に積層された複数のセルを有し、そのうちの1つ以上、特にその全てが、請求項1から9のいずれかに記載の構造アセンブリを有する電解槽。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の構造アセンブリの加圧フレーム装置。
【請求項12】
請求項11に記載の加圧フレーム装置を製造する方法であって、特に鋳造又は射出成形によって加圧フレーム部品のための外形を提供するステップと、成形ステップ及び/又は追加の材料除去ステップ内で形状によって弾性を提供する幾何学的形状を提供するステップとを含む、方法。
【請求項13】
メインフレームを製造するステップと、前記共通の軸方向延在量の減少が、主に前記加圧フレーム装置の軸方向延在量の減少によってもたらされるように、前記メインフレームの前記取付面と前記シート面との間の軸方向距離、特に前記膜装置の軸方向延在量に応じて加圧フレーム装置を製造するステップとを含む、請求項1から9のいずれかに記載の構造アセンブリの製造方法。
【請求項14】
ステープル型の電解槽を組み立てる方法であって、複数の電解槽セルを用意するステップと、軸方向の圧力を加えることにより前記電解槽の2つの端板の間にセルを組み立てるステップと、これにより、軸方向における加圧フレーム装置と膜との共通の軸方向延在量を減少させるステップとを備え、ここで前記共通の軸方向延在量の減少が、前記加圧フレーム装置の軸方向延在量の減少によって主にもたらされる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向に積層された複数のセルを有するステープル型の電解槽の分野に関し、特に、そのような電解槽のセルの構造アセンブリに関し、その構造アセンブリは、取付面とシート面とを有するメインフレームと、加圧フレーム装置と、シート面に当接し、軸方向においてメインフレームと加圧フレーム装置との間に挟まれる膜装置とを備え、膜装置と加圧フレーム装置との組み立て状態における共通の軸方向の延在量は、シート面と取付面との間の軸方向距離によって設定され、組み立て工程において加えられる軸方向の圧力によって達せられる。
【背景技術】
【0002】
電解槽の構造アセンブリは、例えば独国特許出願公開第10 2014 010 813号明細書により公知である。この文献では、メインフレームのための内側補強リングが提案されているが、このような補強は、本発明にとって必須ではなく、メインフレームに関して、補強を有する又は有さないメインフレーム、若しくは外側補強を有するメインフレームが想定される。
【0003】
当然ながら、膜(装置)はメインフレームに固定される必要がある。この目的のために、いくつかの方法がこの部分で使用されてきた。これらは、適切なワッシャー付きのネジによる膜のねじ留めや、メインフレームに対するシール配置になど多岐にわたる。他の方法は、メインフレームの半径方向内方の突起部分とカウンターフレーム部分との間に膜を挟み、これにより、膜全体に締め付け力をより均一に配分し、カウンターフレームは、例えばネジによりメインフレームに固定される方法であった。
【0004】
さらなる技術では、ネジによってもたらされる締め付け力は、組み立ての間に加えられる面圧力(セル相互間及び隣接するセルに対するセルの経路を適切にシールするために、シールの弾性反力に抗して作用する)によって置き換えられた。それによって、剛性のカウンターフレームは、組み立てプロセス中に挟み込み領域内で膜を圧縮するための加圧フレームとして機能する。もちろん、加圧フレームの軸方向寸法は、組み立てた状態で、十分な挟み込み加圧力を維持することによって組み立て工程が可能となるように、調整される。
【0005】
本発明の目的は、一方では満足できる製造の容易さと、そのような構造アセンブリを有する電解槽の動作の信頼性との組み合わせに関して改良された、最初に紹介したような構造アセンブリを提供することである。
【発明の概要】
【0006】
この目的のために、本発明は、最初に導入されたような構造アセンブリを提供し、これは、共通の軸方向延在量の減少が、加圧フレーム装置の軸方向延在量の減少によって主にもたらされることを本質的に特徴とする。
【0007】
すなわち、本発明者らは、加圧フレームを含む従来技術の構造アセンブリにおいて、メインフレーム及び加圧フレームの機械加工における公差が完全には満たされないか、又は完全には満たされないリスクがあるほど近くに設定されている可能性があること、若しくは、単一の部品に対して満たされているものの、合計として理想的な軸方向寸法ではないという不都合な特性がある可能性があることに起因する隠れたリスクがあることを見出した。このような欠陥は、組み立て工程では検出されずに残るか、又は組み立てプロセスでは検出不可である場合さえあるが、組み立て後の不十分な残圧を引き起こす可能性があり、その結果、電解槽の動作の欠陥につながる可能性がある。
【0008】
さらに、発明者らは、そのような問題は、適切に組み立てられたセル構造に対する公差を、少なくとも部分的には、加圧フレームの(静的な)軸方向寸法の考慮から、構造アセンブリの単一部品の公差を考慮するための追加のリザーバとして加えられる軸方向圧力によって引き起こされる、加圧フレーム装置の軸方向延在量の減少(効果的な変形)を有する加圧フレームの(動的な)変形の態様に、効果的にシフトさせる、との本発明の特徴的な特性によって、減少又は回避できることを見出した。「主に」とは、加圧フレームによって生じる軸方向延在量の減少の割合を指す。ただし、円周方向についても、固定するための他の追加手段があってもよく、ただし圧力フレーム装置によって生じる軸方向延在量の減少に伴い、全周の好ましくは180°以上、より好ましくは240°以上、特に300°以上とする。膜装置はセルの膜を含み、特にセルの膜から構成され得る(すなわち、この装置は単なる膜であり得る)。
【0009】
好ましい実施形態では、前記主な軸方向延在量の減少は、主に加圧フレーム装置の幾何学的形状によってもさらされる。すなわち、一般に材料のヤング率のような材料特性が対処されうるが、加圧フレームアセンブリは、幾何学的形状によってより弾力的になり、特に軸方向の圧力に対する弾性が増加している。この関係では、加圧フレームアセンブリの断面の表面積が、その軸方向延在部にわたって変化し、特に軸方向の中間ゾーンにおいて小さいことが好ましい。すなわち、加圧フレームは、その外形によって規定される塊状体によって構成されているのではなく、軸方向の圧力に対する弾性を大きくする幾何学的形状を提供する空洞、凹部、及び/又は刻み目を有している。
【0010】
好ましい実施形態として、幾何学的形状の幾何学的特徴は、U字形又はV字形の軸方向断面を含むことができる。しかしながら、クランプスプリング、トーションスプリング、又はウェーブスプリングのような、いくつかのタイプのスプリング機構に従ったスプリングの加圧フレーム特性を与えるなど、他の種類の幾何学的形状も想定することができる。すなわち、ビームを曲げる、又はトルクに抗してレバー状部を移動させる弾性を、加圧フレーム装置の幾何学的形状に組み込むことができる。
【0011】
加圧フレームアセンブリは、単一の一体部品から作製することができるが、前記加圧フレーム装置は、円周方向に複数のセグメントを備え、特に環状体の、及び/又は円周方向に閉じたトポロジーであることが好ましい。環状体のこのようなトポロジーは形状を与え、円周方向における加圧フレーム装置のセグメントに対応する複数の環状体セグメントを含みうることを理解されたい。これは、特により大きな有効面積を有するより大型の電解槽の製造を容易にする。
【0012】
さらに好ましい実施形態では、膜/膜装置への軸方向応力(軸方向圧力)は、組み立てられた状態で膜をメインフレームに対して保持する十分な保持力を提供するために、弾性復元力によって部分的に、主に、又は全体的に与えられる。前記軸方向応力は、6N/mm2より大きく、好ましくは9N/mm2より大きく、特に12N/mm2より大きくてもよい。
【0013】
さらに好ましい実施形態では、加圧フレーム装置は、軸方向延在量の減少の間、円周方向の伸長量を減少させるためのリリースキャビティを有していてもよい。これにより、円周方向の力による変形を部分的に抑制でき、着座安定性に対する悪影響を抑制することができる。
【0014】
さらに好ましい実施形態では、膜の軸方向の(圧縮)変形は、8%未満、好ましくは6%未満、特に4%未満、及び/又は0. 1mm未満、好ましくは0. 07mm未満、特に0. 05mm未満である。
【0015】
これは、複合システムの軸方向延在量の減少が加圧フレーム装置の幾何学的形状によって引き起こされるもので決まるように、加圧フレーム装置の幾何学的形状による弾性を膜のヤング率に適合させることによって達成可能である。これにより、加圧フレーム装置の軸方向延在量の減少により、システムの軸方向延在量の全体の減少が効果的に提供され、その結果、非可撓性の膜(ダイアフラム)であっても使用可能になる。これはまた、構造アセンブリの単一部品を構成する際の多様性を増加させ、特に、硬い膜(ダイアフラム)を可能にする。
【0016】
シート面に対する膜(ダイアフラム)の当接は、直接的、又は中間部品を介して間接的であり得る(しかしながら、直接当接が好ましい)ことを理解されたい。
【0017】
これに関連して、軸方向における加圧フレーム装置の有効ヤング率は、軸方向における膜アセンブリのヤング率よりも、少なくとも1. 1倍、好ましくは少なくとも1. 2倍、特に少なくとも1. 3倍低いことが好ましい。加圧フレームの有効ヤング率は加圧フレームの材料のそれではなく、組み立て工程で加えられる軸方向圧力における加圧フレーム装置の幾何学的形状による効果を含む、軸方向延在量の減少によって決定されるものである。
【0018】
さらに好ましい実施形態では、膜/膜装置は、シート面上の位置決めピンに合致する位置決め孔を有する。これは、組み立て工程におけるステープル方向に直交する延在平面でのより正確な位置決めを提供する。
【0019】
さらに好ましい実施形態では、加圧フレームアセンブリの要素は、ヒンジ結合を介して結合され、円周方向にチェーンを形成することができる。この結合のための軸方向ピンは、チェーン要素上に形成されるか、及び/又はシート面にピンを配置することで形成されうる。
【0020】
組み立てられた状態での残留応力を提供する圧力は、軸方向圧力の下で一方のセルを他方のセルに積み重ねる組み立て工程(組み合わせられた配置の緩和された所定の軸方向寸法を伴う)において加えられた外部軸方向圧力によって(のみ)引き起こされることが好ましいが、そのようなただ一つの組み立て圧力の提供に限定されないことは理解されるべきである。例えば、特に、ある加圧フレームセグメントから他の加圧フレームセグメントへの交差部の近くに、例えばネジによる追加の固定を行うことができる。次いで、その場合、例えば追加の固定の前記部分において、軸方向の全体延在量がシート面と取付面との間の設定された軸方向距離よりもいずれにせよ小さくなるようにすることによって、そのような追加の固定を軸方向圧力の考慮から切り離すことが好ましい。
【0021】
さらに、本発明は、軸方向に積み重ねられた複数のセルを有するステープル型の電解槽も提供し、そのうちの1つ又は複数は、特に、その全てが、前述の態様のいずれかによる構造アセンブリを有する。
【0022】
本発明はまた、特に、その軸方向延在量の減少が、主にその幾何学的形状、すなわち幾何学的形状による上述の弾性によって引き起こされる、上記態様のいずれかによる構造アセンブリの加圧フレーム装置を提供する。
【0023】
一般に、軸方向延在量の減少に関しては、加圧フレーム装置の変形が塑性変形の影響なしに弾性的のみであることは要求されない。しかしながら、変形の弾性的な寄与が、好ましくは主であるべきであり、構造アセンブリを分解し、構造アセンブリを再組み立てすることを可能にし、これにより再組み立て状態において十分な保持力を提供する。
【0024】
さらに、本発明は、上述の態様による加圧フレーム装置を製造する方法であって、特に鋳造又は射出成形によって加圧フレーム部品の外形を提供するステップと、成形ステップ及び/又は追加の材料除去ステップ内で形状によって弾性を提供する幾何学的形状を提供するステップとを含む方法を提供する。
【0025】
さらに、本発明は、これらの態様のいずれかに係る構造アセンブリを製造する方法を提供し、この方法は、メインフレームを製造するステップと、共通の軸方向延在量の減少が主に前記加圧フレーム装置の軸方向延在量の減少によってもたらされるように、メインフレームの取付面とシート面との間の軸方向距離、特に膜/膜装置の軸方向延在量に応じて加圧フレーム装置を製造するステップとを含む。
【0026】
さらに、本発明は、ステープル型の電解槽を組み立てる方法を提供し、この方法は、複数の電解槽セルを用意するステップと、軸方向の圧力を加えることにより電解槽の2つの端板の間にセルを組み立てるステップと、これにより、軸方向における加圧フレーム装置及び膜の共通の軸方向延在量を減少させるステップとを備え、ここで共通の軸方向延在量の減少は、加圧フレーム装置の軸方向軸方向延在量の減少によって主にもたらされる。
【0027】
これらの方法の利点は、上記及び後続の説明から得られ、交差がそれほど厳しくないとの観点から製造を容易にする、特に、構造アセンブリの単一部品を互いに独立して、特に別々の製造場所においての製造を可能にすることが理解できる。
【0028】
本発明のさらなる特徴、詳細、及び利点は、添付の図面を参照した後続の説明から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、電解槽のセルの構造アセンブリを斜視図で模式的に示す。
【
図2】
図2は、
図1の構造アセンブリの軸方向断面を、加圧フレーム装置と共に組み立てられた状態で示す。
【
図3】
図3は、緩めた状態の加圧フレーム装置の軸方向断面を示す。
【
図4】
図4は、加圧フレーム装置の一部を斜視図で示す。
【
図5】
図5は、オプションである追加の局部固定の別の軸方向断面を示す。
【
図6】
図6は、加圧フレーム要素のチェーンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1の斜視図では、理解できるように、本質的に環状の外形と内部50とを有するメインフレーム10が、概略的に描かれている。外側境界には、電解槽の動作中に半径方向の圧力に対してさらなる安定性を与えるために、例えばメインフレーム10に巻き付けられた補強材の巻線によって形成されうる補強部11が設けられている。内部空間50は、電解槽のステープル軸に直交する延在面においてシート面57を形成するように段階状(
図2)で形成された内部境界53、54によって限定されている。さらに、フレーム10は、膜20によって分割された内部空間50のハーフセル51、52内に電解質を運ぶのに役立つ、いくつかの軸方向貫通孔12とそこからマニホールドの内部50への接続部とを有する。
【0031】
膜20は、シート面57上に敷設され、シート面57と加圧フレーム装置30とを有するメインフレーム10の半径方向突出部分によって挟まれる。本実施形態では、加圧フレーム装置30は、全体として一体的に形成されるものとして示されているが、円周方向に隣接する多数の加圧フレーム部品を含み、これにより環状体のトポロジーの360°配置を形成していてもよい。
【0032】
このように、膜20は、メインフレーム10のシート面57と加圧フレームの下側37との間に挟まれる。図示されていないが、膜装置の一部として、膜20と面57との間に追加のシールを設けることができる。
【0033】
加圧フレーム30は、図示されている部分はそれぞれ、この実施形態では塊状ではなく、図示されている実施形態では、加圧フレームの半径方向外側から本質的に半径方向及び円周方向に沿って延びる切り込み形状の凹部35を有しており、
図2に示すように、本質的にU字形又はV字形の軸方向断面を形成する。想定される一実施形態では、内側部分33によって接続された加圧フレーム30の下部32と上部34との間の凹部35は、全部で360°にわたって円周方向に延在する。しかしながら、これは、1つの可能な実施形態に過ぎない。別の実施例では、
図2による軸方向断面形状は、他の幾何学的形状、さらには塊状で分離可能な複数の円周方向セクションとして存在することができる。しかしながら、前記場合には、これらの連結セグメントは、特に下部の軸方向延在部によって、薄膜20に対する圧縮荷重が、凹部35を有するセグメントを介して加えられる荷重に対して本質的に増加しないという意味で、下部32に対して上部34を押す軸方向圧力下での変形を妨げないことが好ましい。
【0034】
このような中間セグメントでは、膜20に適合する所定の高さの間隔と好ましくは膜20をそれ以上変形させずに膜20を固定するのに十分な応力とを有する、加圧フレーム部品をメインフレーム10に対して円周方向に局部的に固定するネジ69によって、追加の局部的固定が可能である(
図5)。このような局所的な付加的な固定は、特に、1つの加圧フレーム部品から次の加圧フレーム部品への交差部の近くなどに、又は付加的に1つの加圧フレーム部品30のいくつかの中間位置に設けることができる。
【0035】
加圧フレーム部品の選択数は特に制限されず、一体の加圧フレームを作成する一般的な可能性を別にして、3つ以上の数が可能であることを理解されたい。ネジによる追加の固定の場合には、ネジを受け入れる内ネジを設けるために、突起59を使用することができる。代替的又は付加的に、このような突出ピン59(内ネジがなくても)は、また、アセンブリプロセス内で膜20の対応する孔を位置決めするための位置決めピンとして使用することができ、加圧フレーム30の下部32は、対応する軸方向の開口部を有する(
図3)。
【0036】
さらに、シール手段は、マニホールド12の周りの(二重)環状シールリング13、外側シールリング14(
図1)、又は必要に応じて、膜20と、メインフレーム10に面する加圧フレーム30の側面との間のシールとして、当業者に一般に知られているとおりに、適切に設けることができる。
【0037】
図3と
図2を比較すると最もよく分かるように、緩和状態では、緩和状態での最大高さ延在量である高さ延在量Haは、
図2に示す組み立て状態よりも高くなっている。これは、メインフレームの取り付け面14に対して例えばバイポーラプレート60の形態で電極を位置決めする、組み立て中の軸方向の圧力によるものであり、高さHoをシート面57と取付面14との間の軸方向距離としてセットし、これは組み立てられた状態での軸方向高さHp+Hmに対応し、Hpは加圧フレームの軸方向延在量を示し、Hmは膜の軸方向延在量を示す。
【0038】
なお、組み立て状態では、軸方向の圧力による前記共通の軸方向延在量の減少に耐えられず、膜20を間に挟んでフレーム部30をメインフレームに押し付けるに十分な応力がまだ残っているが、本実施形態では凹部35によって提供される幾何学的形状により、軸方向圧縮に対する膜の抵抗率は、軸方向延在量の減少に対する圧力部の抵抗率よりも大きく選ぶことができることを、理解されたい。このようにして、加圧フレーム30は、軸方向の圧縮に対して弾性的な、少なくとも部分的に弾性的なばねのように作用し、その弾性部分は、膜20を著しく変形させることなく、膜20に必要な保持力を提供するのに十分である。
【0039】
これにより、一方では、膜20は、より広い範囲の膜のタイプ及び構造から選択することができる。その構造に関して、膜の機能性を失うリスクなしに圧縮できると能力を膜が提供する必要はもはやなく、より堅い膜を使用することができるようになる。一方、メインフレーム10と加圧フレーム装置30との組み合わせの製造は、それほど厳密でない公差で行うことができ、そうでなければ、膜20を挟むのに十分な応力を維持しながら、取付面14とシート面57との間の段差で変形が許容範囲に収まるように、軸方向における加圧フレームのヤング率に対する圧縮率に必要な相互関係を満たす必要がある。
【0040】
図4に示されているように、内側部分33と下端上部32、34との間の交差部分の曲げのそれぞれによる軸方向の圧縮によって生じる円周方向の伸びを減少させる、円周方向の圧力に対するリリースキャビティとして機能するように、加圧フレーム30の内側部分33の近くにも達する、特にスリットの形態の、追加のキャビティ又は開口部36を設けることができる。しかしながら、材料及び圧力の整合性によっては、これらの追加の開口部36は省略されてもよい。
図6の実施形態では、加圧フレーム装置の一部がチェーン要素30xを有するチェーンの形態であってもよいことが認識できる。その結合は、例えばピンによる、特にシート面57のピン59による、ヒンジ結合とすることができる。膜は、当技術分野で知られているような材料から形成することができる。
【0041】
加圧フレーム部品30は、鋳造可能な及び/又は射出成形可能な材料、特に樹脂から形成されうる。
【0042】
加圧フレーム部品自体の材料のヤング率は、特に膜のヤング率よりも大きくすることができる。それにもかかわらず、軸方向の弾性挙動を与える好ましい実施形態の加圧フレーム部品の幾何学的形状のため、それは、主に、特に効果的に、全体的に加圧フレーム30の軸方向延在量の減少、及び加圧フレーム30と膜20の組み合わせを決定する幾何学的構造となる。これにより、膜の若干の軸方向圧縮が考慮される可能性があるものの、通常の軸方向圧力に対するシステムのより大きな変形により、組み立てられた状態でシステムの適切な挟持締め付け力を維持するための十分な応力を維持しながら、公差を維持するための機械加工条件を改善することができる。
【0043】
加圧フレーム装置のための加圧フレーム部品を製造する好ましい方法では、加圧フレーム30又はその部品の外形は、成形ステップ内で、例えばダイカスト又は射出成形で形成することができ、一方、凹部35及び場合によっては36としての他の空洞は、機械的切断又はレーザ切断などの任意の切断プロセスとしての材料除去を介して、成形ステップによって得られる形状から離れて形成される。しかしながら、成形ステップ内で少なくとも部分的に又は全体的に加圧フレーム部品の幾何学的形状を与えることも想定され、これは製造工程の数を減らすために好ましい。
【0044】
さらに、製造プロセスに関して、とりわけ、その公差を含んだシート面57と取付面14との間の軸方向距離を含む製造パラメータに従って第1の場所にてメインフレームを形成し、第1の場所とは異なる第2の場所において、膜20の前記軸方向の距離、高さの延在量、およびその公差、好ましくはその最小ヤング率も含む製造パラメータに従って、加圧フレーム装置の加圧フレーム部品を形成することも想定される。しかし、加圧フレーム部品の第2の製造場所は、メインフレームのそれと同じであってもよい。
【0045】
さらなる好ましい実施形態では、加圧フレーム30の外形、及びオプションで加圧フレーム30の幾何学的形状によって軸方向弾性を提供する幾何学的形状の一部の形成ステップは、膜の実際のデータとは無関係に第1の製造データに従って形成され、膜のパラメータに応じて材料除去ステップのみが実行される。これにより、第1の成形ステップは、膜の最終的な選択とは無関係に統一的な方法で実行することができ、一方、材料除去のより柔軟な製造ステップでは膜が考慮されるため膜の選択の多様性が大きくなり、例えば最初に意図された膜を提供する際に問題が発生した場合には、後に再検討することも可能となる。
【0046】
ここでもまた、制約の実現が、部品の寸法に関するセンシティブな製造公差から、より大きな軸方向延在量の減少を伴う力側へ移行することは、製造をより容易にし、構造アセンブリの構成の多様性を増加させる。
【0047】
記載された実施形態の詳細は、本発明を限定するものと見なされるべきではないことを理解されたい。むしろ、上記の説明及び後続の特許請求の範囲の特徴は、単独で又は組み合わせて、その様々な実施形態において本発明に不可欠であり得る。
【国際調査報告】