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特表2024-511817電動自転車を制御するための方法並びに電動自転車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】電動自転車を制御するための方法並びに電動自転車
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/45 20100101AFI20240308BHJP
【FI】
B62M6/45
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560050
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 EP2022057272
(87)【国際公開番号】W WO2022207378
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】102021203172.2
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ワインマン,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】バウムゲルトナー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ウィーンス,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】レック,ヨーゼフ
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】本発明は、モータ動力および/またはペダル踏力で駆動可能な電動自転車を制御するための方法に関し、惰性走行モードの作動をリリースするためのトリガ信号を前記電動自転車のコントロールユニットに提供する方法ステップと、前記電動自転車の特性および/または前記電動自転車に含まれる構成部材に関するセンサ装置の測定信号を前記コントロールユニットに提供する方法ステップと、前記提供された測定信号を用いて前記トリガ信号の妥当性を検知する方法ステップと、前記トリガ信号の妥当性の検知に依存して、前記惰性走行モードの作動をリリースすることで、前記電動自転車を制御する方法ステップと、を有している。さらに、モータ動力および/またはペダル踏力で駆動可能な車両、特に電動自転車が提案されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ動力および/またはペダル踏力で駆動可能な電動自転車を制御するための方法において、
-惰性走行モードの作動をリリースするためのおよび/または前記惰性走行モードを作動させるための少なくとも1つのトリガ信号を前記電動自転車のコントロールユニットに提供する方法ステップと、
-前記電動自転車の特性および/または前記電動自転車に含まれる構成部材に関するセンサ装置の測定信号を前記コントロールユニットに提供する方法ステップと、
-前記提供された測定信号を用いて前記トリガ信号の妥当性を検知する方法ステップと、
-前記トリガ信号の妥当性の検知に依存して、前記惰性走行モードの作動をリリースすることによりおよび/または前記惰性走行モードを作動させることにより、前記電動自転車を制御する方法ステップと、
を有する、電動自転車を制御するための方法。
【請求項2】
前記測定信号が前記電動自転車の状態に関し、前記電動自転車が直立に位置決めされているときに前記トリガ信号の妥当性を検知する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記測定信号が、前記電動自転車の運動状態、特に速度および/または加速度に関し、前記運動状態が予め定められた条件を満たすときに前記トリガ信号の妥当性を検知する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記測定信号が前記電動自転車のクランク機構に加えられた運転者トルクに関し、前記運転者トルクがゼロであるときに前記トリガ信号の妥当性を検知する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記測定信号がユーザの踏み込み周波数に関し、前記踏み込み周波数がゼロであるときに前記トリガ信号の妥当性を検知する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記測定信号が前記トリガ信号の提供時間長さに関し、この時間長さが所定の閾値を下回るときに前記トリガ信号の妥当性を検知する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記トリガ信号を、前記電動自転車のユーザにより操作ユニットを用いて提供する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記トリガ信号の妥当性が検知されていないときに前記惰性走行モードの作動のリリースおよび/または前記惰性走行モードの作動を、前記トリガ信号の妥当性が検知されるまで停止する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
妥当性が検知されていない、提供されたトリガ信号の数に依存して、および/または提供されたトリガ信号の時間長さに依存して、特に前記トリガ信号の妥当性の検知とは無関係に、前記電動自転車の機能を実行または終了または変更する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記トリガ信号を、前記惰性走行モードの作動のリリースに追加して、前記惰性走行モードを作動させるためにも使用する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
モータ動力および/またはペダル踏力で駆動可能な電動自転車であって、電気駆動装置と、クランク機構と、運転者によって前記クランク機構に加えられたトルクを検出するように設計された少なくとも1つのトルクセンサと、コントロールユニットとを有しており、前記コントロールユニットは、検出された前記トルクに依存して前記電気駆動装置を制御するように設計されている形式のものにおいて、
前記コントロールユニットがさらに、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法を実行するように設計されていることを特徴とする、電動自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ動力および/またはペダル踏力で駆動可能な、電気駆動装置を有する電動自転車を制御するための方法に関する。また本発明はこのような電動自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、検出された電動自転車の傾斜角度に依存して電動自転車の惰性走行アシストを調整するための電動機の制御方法が開示されている。
【0003】
さらに、惰性走行アシストを保護するための方法は既に提案されている。惰性走行アシストの最新の実装では、惰性走行アシストの計画通りのスイッチオンが2段階式のコンセプトにより保護されるようになっている。この場合、まず操作エレメントが一度押され、それによって惰性走行アシストが作動され、この際にさらに、惰性走行アシストをスイッチオンするために、所定の時間だけ別の操作エレメントを保持していなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第3251936号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明は、モータ動力および/またはペダル踏力で駆動可能な電動自転車を制御するための方法に関し、惰性走行モードの作動をリリースするための少なくとも1つのトリガ信号および/または惰性走行モードを作動させるための少なくとも1つのトリガ信号を電動自転車のコントロールユニットに提供する方法ステップと、電動自転車の特性および/または電動自転車に含まれる構成部材に関する、センサ装置の測定信号をコントロールユニットに提供する方法ステップと、提供された測定信号を用いて、惰性走行モードの作動をリリースするためのトリガ信号および/または惰性走行モードを作動させるためのトリガ信号の妥当性を検知する方法ステップと、惰性走行モードの作動をリリースするためのトリガ信号の妥当性の検知に依存して惰性走行モードの作動をリリースすることにより、および/または惰性走行モードを作動させるためのトリガ信号の妥当性の検知に依存して惰性走行モードを作動させることにより、電動自転車を制御する方法ステップとを有している。
【0006】
電動自転車はクランク機構を有しており、このクランク機構は、標準的な形式で2つのクランクに接続されており、これらのクランクのそれぞれに、電動自転車の運転者によって加えられた力を受けるためのそれぞれ1つのペダルが配置されている。クランク機構、クランクおよびペダルは、運転者によって加えられた力をクランク機構に作用する運転者トルクに変換するために用いられる。運転者トルクは、電動自転車を駆動するために、電動自転車の少なくとも1つの車輪に作用する被駆動トルクに変換され得る。電動自転車は、1つの運転状態で、1つのモータを有する電気駆動装置によって少なくとも部分的に駆動される。このために、運転者トルクは、被駆動トルクへの変換時に、電気駆動装置によって生ぜしめられた駆動トルクに重畳される。
【0007】
高価値の電動自転車では、一般的に、運転者トルクを検出するために少なくとも1つのトルクセンサが使用される。次いで、検出された運転者トルクは、運転者のアシスト要求時に、電気駆動装置によって特に比例的に増幅される。トルクセンサを用いて検出することによって、運転者にとって自然な走行感覚が得られる。何故ならば、力を増幅してもたらすことによって、同時に最大アシストまで高められたアシストが得られるからである。
【0008】
惰性走行モードを作動させるための、コンピュータにより実施される方法、特に惰性走行モードを制御するための制御法は、従来技術に従って2段階式の作動コンセプトを有しており、この場合、第1の段階は作動のリリースであり、第2の段階は惰性走行モードの作動である。惰性走行モード、特に惰性走行モードを制御するための制御法を作動させるためのリリースは、電動自転車の操作ユニットにおいて別個のリリースキーを介してまたは検出されたリリース入力によって行われ得る。リリースが行われると、惰性走行モードを作動させるための所定の時間長さが経過する。この所定の時間長さの経過中に、電動自転車のユーザは作動入力を操作することによって、電気駆動装置を用いて電動自転車の惰性走行時のパワーアシストを作動させることができる。この作動入力は、電動自転車の操作ユニットの別個の作動キーを用いて検出される。次いで、電気駆動装置を用いて電動自転車を惰性走行させるためのモータトルクが生ぜしめられる。一般的に、惰性走行時にモータトルクを連続的に発生させるために、ユーザは作動入力を持続的に操作しなければならない。2段階式の作動コンセプトによって、惰性走行モードの予期しない作動は避けられる。
【0009】
コントロールユニットは、電動自転車の少なくとも電気駆動装置の機能的な構成部材を制御するために用いられ、少なくとも1つのトルクセンサによって提供される少なくとも1つのトルク測定信号に依存して、電気駆動装置を制御するための制御信号を発生させ、この制御信号を駆動装置に転送するように設計、つまり接続および/またはプログラミングされている。コントロールユニットはさらに、電動自転車を運転するための提案された前記方法を実行するように設計されている。この場合、コントロールユニットは、提供されたトリガ信号および提供された測定信号を受信し、処理し、かつ測定信号に依存してトリガ信号の妥当性を検知し、並びにトリガ信号の妥当性の検知に依存して電動自転車の惰性走行モードの作動をリリースするかまたは惰性走行モードを作動させるように構成されている。「作動をリリースする」とは、リリース後に惰性走行モードが作動されることができ、ひいてはこの機能がロック若しくは遮断されていない、と解釈されてよい。「作動する」とは、惰性走行モードが実行される、と解釈されてよい。
【0010】
「提供する」とは、この方法を実行するコントロールユニット、特にプロセッサ装置または、コントロールユニットのコンピュータ装置に、相応の値および/または量、特に情報が引き渡されるかまたは信号技術的に伝送される、と解釈されてよい。提供は、基本的にどんな形で生ぜしめられてもよく、好適には、提供は、センサ装置の少なくとも1つのトリガ信号および測定信号をコントロールユニットに信号技術的に転送することによって行われる。
【0011】
「作動をリリースするためのトリガ信号」は、2段階式の作動コンセプトの特に第1の部分、特に作動要求を意味する。トリガ信号は、この方法の1実施形態において、電動自転車のユーザによって例えば操作ユニットが操作されることで生ぜしめられる。この方法の選択的なまたは追加的な実施形態によれば、トリガ信号を、例えば電動自転車の運転状態に依存して自動的に発生させ、コントロールユニットに提供することも考えられる。
【0012】
「作動させるためのトリガ信号」は、2段階式の作動コンセプトの特に第2の部分、特に作動を意味する。トリガ信号は、この方法の1実施形態では電動自転車のユーザによって、例えば操作ユニットを操作することによって生ぜしめられる。この方法の選択的または追加的な実施形態では、トリガ信号を、例えば電動自転車の運転状態に依存して自動的に発生させ、コントロールユニットに提供することも考えられる。
【0013】
この文書中で「トリガ信号」とは、どのトリガ信号に該当するかと明確に言及されていない限り、作動をリリースするためのトリガ信号であり、また作動させるためのトリガ信号でもあると解釈されてよい、ということを指摘しておく。
【0014】
「電動自転車の特性および/または電動自転車に含まれる構成部材に関する測定信号」は、これに基づいてトリガ信号を提供するために、特にトリガ信号の有効性若しくは妥当性を検査するために、電動自転車の状態を特徴付けるために適した測定信号の形を有している。「妥当である」とは、トリガ信号を提供することが、電動自転車および/若しくは電動自転車の構成部材の状況および/若しくは状態、特に運転状態に矛盾しないか、またはこの状況および/若しくはこの状態が有意義に調和し得ると、このトリガ信号が判断されるときである、と解釈されてよい。測定信号は、センサ装置によって検出され、特に測定される。この場合、センサ装置とは、例えば物理的または化学的な法則性を用いて電動自転車および/または電動自転車に含まれる構成部材の特性を算出する測定技術的な装置である、と解釈されてよい。
【0015】
本発明は、冒頭に述べた従来技術の欠点を克服することを可能にする。特に本発明は、電動自転車のユーザにとってしばしば直感的に理解しにくく、かつ実行に移すことが困難である、現在用いられている2段階式の作動コンセプトを改善することができる。
【0016】
本発明の1実施例によれば、操作ユニットの操作エレメントを操作(例えば2秒だけ押すことによって)に続いて、作動をリリースするためのトリガ信号をコントロールユニットに提供することができる。新しい作動コンセプトの保護として、この実施例では、測定信号に基づいて電動自転車の内側または外側に配置された別のセンサ装置が、例えば惰性走行方向での電動自転車の加速が検出された場合のために、惰性走行モードの実行を作動、特に制御または調整することができる。本発明は好適には、惰性走行モードの誤ったおよび/または意図しない作動を避けるために、惰性走行モードの作動のリリースが既に第1段階で追加的な妥当性に基づいて可能である。したがって、このような直感的なやり方が惰性走行モードの作動後若しくは実行後のユーザの要求にもはや明確に対応され得ない場合でも、これ以後は非常に直感的なやり方で惰性走行モードを自動的に作動、特に制御または調整することができる。
【0017】
別の実施例では、操作ユニットの操作エレメントを操作(例えば長押し)することにより、惰性走行モードを作動させるためのトリガ信号をコントロールユニットに提供することができ、この場合、操作エレメントを操作することによって、同様に作動をリリースするためのトリガ信号がコントロールユニットに提供される。惰性走行モードの作動をリリースするためのトリガ信号の妥当化および/または惰性走行モードを作動させるためのトリガ信号の妥当化は、電動自転車の内側または外側に配置されたセンサ装置を用いて提供される測定信号によって、好適には個別の操作エレメントを再び使用するにも拘わらず惰性走行モードの作動コンセプトがより確実に実装され得ることを可能にする。この場合、妥当化は、特に作動コンセプトの第2段階として用いられる。例えば妥当化は、電動自転車の惰性走行方向での加速度または速度を評価することによって行うことができる。したがって、ここでも惰性走行モードの作動のリリースおよび/または惰性走行モードの作動を非常に直感的なやり方で実現することができる。
【0018】
したがって、高い安全性、それと同時にユーザによる直感的な操作を可能にする電動自転車が得られる。そのこととは別にさらに、特に様々な製造業者の様々な操作ユニットを電動自転車に使用することができ、この場合、これらの操作ユニットの正しい機能性が予め保証される必要はない。特に、提案された方法を実装することにより、操作ユニットを用いて必要な入力だけを使用して、惰性走行モードを作動させるための作動コンセプトの、より確実な実装を可能にする。好適な2段階、つまり保護、作動が、別のセンサ信号を用いて電動自転車の直感的な運動(例えば惰性走行)の範囲内で実現され得る。
【0019】
この方法の1実施形態では、測定信号が電動自転車の状態に関し、電動自転車が直立に位置決めされているときに、トリガ信号の妥当性が検知されるようになっている。電動自転車の状態は、三次元空間内での電動自転車の位置方向(「横になっている」、「直立している」その他)を表し、例えば位置センサ、特に少なくとも3つの位置センサによって検出され得る。位置センサとして、例えば当業者により公知の慣性センサ、特に6D慣性センサ装置を有する加速度センサおよび/または回転角度センサが適している。「直立に位置決めされている」とは、特に、自転車が車輪で直立して位置決めされている、つまり横転しているかまたは逆さまになっていない、と解釈されてよい。このような形式で、惰性走行モードの作動をリリースするために電動自転車に設けられた操作エレメントが操作される、例えば整備工程の範囲でまたは事故によりトリガ信号が誤ってまたは間違って生ぜしめられることは排除され得る。
【0020】
この方法の1実施形態では、測定信号が、電動自転車の運動状態、特に速度および/または加速度に関し、運動状態が予め定められた条件を満たすときにトリガ信号の妥当性が検知されるようになっている。1実施例では、予め定められた条件が閾値として実装されている。したがって、トリガ信号は、特に追加的に加速度が無視されてよい場合に電動自転車の送り速度が6km/hであるときにだけ、妥当であると評価されてよい。速度測定および加速度測定のためのセンサ装置は、当業者にとって基本的に公知である。このような形式で、トリガ信号が、走行中、特に電動自転車のユーザによって誤ってまたは間違って生ぜしめられることは排除され得る。
【0021】
この方法の1実施形態では、測定信号が電動自転車のクランク機構に加えられた運転者トルクに関し、運転者トルクが「概ねおよび公差の範囲内で」ゼロであるときにトリガ信号の妥当性が検知されるようになっている。さらに、運転者トルクがほとんどゼロである時間間隔を妥当性基準として利用することが考えられる。「概ねおよび公差の範囲内で」とは、測定信号が正確にゼロである必要はなく、例えば5Nmまでの僅かな偏差または測定信号ノイズの範囲内で、同様にトリガ信号の妥当化が得られる、と解釈されてよい。このような形式で、トリガ信号は、電動自転車のユーザが電動自転車を自転車走行の範囲内で運転しない状況においてのみ妥当であると評価されるように保証され得る。
【0022】
この方法の1実施形態では、測定信号がユーザの踏み込み周波数に関し、踏み込み周波数が(概ねおよび公差の範囲内で)ゼロであるときにトリガ信号の妥当性が検知されるようになっている。踏み込み周波数は、時間単位毎のクランク機構の回転数、例えば毎分60回転を示し、様々な形式で、例えばケーデンスセンサ“Kadenzsensor”を用いてまたは電気駆動装置のモータの回転数から算出することができる。さらに、踏み込み周波数がほとんどゼロとなる時間間隔を妥当性基準として利用することが考えられる。「概ねおよび公差の範囲内で」とは、測定信号が正確にゼロである必要はなく、例えば5回転/分までの僅かな偏差または測定信号ノイズの範囲内で、同様にトリガ信号の妥当化が得られる、と解釈されてよい。このような形式で、トリガ信号は、電動自転車のユーザが電動自転車を自転車走行の範囲内で運転しない状況においてのみ妥当であると評価されるように保証され得る。
【0023】
この方法の1実施形態では、測定信号がトリガ信号の提供時間長さに関し、この時間長さが所定の閾値を下回るときにトリガ信号の妥当性が検知されるようになっている。このような形式で、トリガ信号の生成が、実際に一回だけの(単独)操作、例えば操作エレメントの一回だけの操作に割り当てられるように保証され得る。例えば機械的に締め付けられた操作エレメントに基づいてトリガ信号が誤って発生されないように、特に比較的長時間発生されないように保証され得る。1実施例では、閾値は、10秒、特に5秒または1秒、非常に稀に0.5秒であってよい。したがって、電動自転車の安全性を脅かす挙動を生ぜしめ得る状況は避けることができる。少なくとも1つのセンサ装置の測定信号に基づく妥当化は、実際の走行状況における要求が、運転者により要求されているかまたは要求する機器例えば操作ユニットの故障に基づいて行われているかを決定することを可能にする。
【0024】
この方法の1実施形態では、トリガ信号が、惰性走行モードの作動のリリースに追加して、同様に惰性走行モードの作動状態を維持するためにも(つまり作動させるためにも)使用される。この場合、トリガ信号がより長い時間間隔に亘って(例えば電動自転車の操作ユニットの操作エレメントを長押しすることによって)生ぜしめられることが考えられる。初めに、例えば測定信号によって電動自転車を押して動かしていることが検知されると、トリガ信号が測定信号を用いて妥当であると検知され、したがって電気駆動装置によってアシストがスイッチオンされる。次いで、惰性走行モードの持続的な作動によって、作動の長さに応じてアシストが生ぜしめられる。この場合、さらに、惰性走行モードを作動させるために利用されたトリガ信号の妥当性が、コントロールユニットに提供された、センサ装置および/または別のセンサ装置の測定信号を用いて検知されることが考えられる。したがって、作動させるための持続的なトリガ信号について、測定信号を用いて、例えば電動自転車の速度を特徴付ける測定信号を用いて妥当性検査が行われ、この場合、速度6km/hを超えてはならない。惰性走行モードの作動が停止されると(例えば操作エレメントを放すことによって)、惰性走行モードがスイッチオフされる。新たに作動させる(例えば操作エレメントを新たに押す)ことによって、惰性走行モードは再びスイッチオンされ得る。再スイッチオンのために時間閾値をプリセットすることが考えられ、この時間閾値を超えると惰性走行モードの作動の新たなリリースが要求される。
【0025】
この方法の複数の実施形態は有意義な組合せにまとめられてもよい、ということを指摘しておく。例えば、トリガ信号が惰性走行モードの作動のリリースに追加して、惰性走行モードの作動された状態を維持するために利用され、この場合、トリガ信号がより長い時間間隔に亘って(つまり惰性走行モードが作動されているべきである間は)生ぜしめられる前記実施形態において、作動をリリースするためのトリガ信号の妥当化も、また作動させるためのトリガ信号の妥当化も測定信号を用いて行われ、例えば電動自転車のクランク機構に加えられた運転者トルクまたは電動自転車の踏み込み周波数若しくは速度に関する測定信号を用いて行われることが考えられる。
【0026】
この方法の1実施形態では、トリガ信号が、電動自転車のユーザによって操作ユニットを用いて提供されるようになっている。特に操作エレメント(入力エレメント)を有する多様な操作ユニットが考えられ、これは当業者にとって基本的に公知である。1実施例では、操作ユニットが電動自転車のハンドルに設けられている。選択的にまたは追加的に操作ユニットは音声入力によって操作可能である。さらに、例えばコントロールユニットに信号技術的に接続可能なスマートデバイス(スマートホン、スマートウオッチ等)の形の、電動自転車とは別個の操作ユニットも考えられる。
【0027】
この方法の1実施形態では、トリガ信号の妥当性が検知されていないときに惰性走行モードの作動のリリースおよび/または惰性走行モードの作動が、トリガ信号の妥当性が検知されるまで停止されるようになっている。例えば、トリガ信号は、一度だけの発生または絶え間ない発生にも拘わらず速度が高すぎる場合(上記参照)、速度が低下して前記閾値を下回る時点まで妥当であると評価することが考えられる。選択的または追加的な実施例では、負のトリガ信号エッジを用いて操作エレメントの正常な機能を推定することができるので、負のトリガ信号エッジの検出に続いて、妥当化が行われ得る。このような形式で、特に操作しやすい実装が得られる。
【0028】
この方法の1実施形態では、妥当性が検知されていない、提供されたトリガ信号の数に依存して、および/または提供された1つ若しくは複数のトリガ信号の時間長さに依存して、特にトリガ信号の妥当性の検知とは無関係に、電動自転車の機能を実行または終了または変更するようになっている。特に、惰性走行モードの作動のリリースおよび/または惰性走行モードの作動は遮断され、したがって惰性走行モードはもはや作動され得ない。この遮断は、例えばシステムが新たに始動されるまでまたは所定の時間間隔が経過するまで維持されてよい。さらに、電動自転車のユーザに、指示(例えば警告)を与えること、特に電動自転車のディスプレイに表示することが考えられる。1実施例では、トリガ信号が10km/hよりの高い走行速度で10秒より長く発生し、10km/hを超える速度で要求が開始されたときに、および/またはトリガ信号が10km/hよりも高い走行速度で20秒よりも長く発生し、10km/hを下回る速度で要求が開始されたときに、および/またはトリガ信号が10秒より長く発生し、ユーザが十分な運転者トルクでペダリングしている(つまり、例えば運転者トルクおよび踏み込み周波数が所定の閾値を超えている)ときに、惰性走行モードの作動のリリースまたは惰性走行モードの作動を遮断することが考えられる。
【0029】
さらに、電気駆動装置と、クランク機構と、運転者(ユーザ)によってクランク機構に加えられたトルクを検出するように設計された少なくとも1つのトルクセンサと、コントロールユニットとを有する、モータ動力および/またはペダル踏力で駆動可能な電動自転車が提案されており、この場合、コントロールユニットは、検出されたトルクに依存して電気駆動装置を制御し、かつ本発明による方法を実行するために設計されている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の1実施例による電動自転車の概略図である。
図2】本発明による方法の1実施形態の方法フローチャートである。
図3】本発明による方法の1実施形態の拡張した方法フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に図面に示された複数の実施例を用いて本発明を詳しく説明する。図面、明細書および特許請求の範囲は、多くの特徴の組合せを含む。当業者は、これらの特徴を好適な形式で個別のものとみなしてもよいし、また有意義な別の組合せにまとめてもよい。図面中、同じ符号は同じ要素を表す。
【0032】
図1には、本発明による電動自転車10の1実施例が示されている。図1に示されているように、電動自転車10は、2つのクランク14を備えたクランク機構12と電気駆動装置16とを有している。電気駆動装置16へのエネルギ供給のために用いられるバッテリは、符号18で示されている。さらに、クランク機構12にチェーンブレード20が設けられており、このチェーンブレード20にチェーン22が噛み合い、それによって被駆動トルクが、チェーンブレード20から電動自転車10の後輪に設けられた切換え機構24のピニオンに伝達され得る。さらに電動自転車10はコントロールユニット26を有している。コントロールユニット26は電気駆動装置16に接続されていて、電気駆動装置16を以下に説明する方法に従って制御するように設計されている。コントロールユニット26は、操作ユニット28を有する操作エレメントを有している(ここには詳しく図示されていない)。さらに、電動自転車10は第1のセンサ装置30を有しており、この第1のセンサ装置30は、ここでは一例として、電動自転車10の運動状態を特徴付ける量としての速度を測定するために用いられる。さらに、電動自転車10は、詳細に示されていないセンサ装置30を有しており、このセンサ装置30は、電動自転車10の状態、電動自転車10のクランク機構12に加えられる運転者トルク、ユーザの踏み込み周波数、並びにトリガ信号の提供時間長さに関する測定信号の検出に用いられる。
【0033】
図2は、モータ動力および/またはペダル踏力で駆動可能な電動自転車10を制御するための方法100の1実施例を方法フローチャートで示す。第1の方法ステップ102で、電動自転車10の惰性走行モードの作動をリリースするためのトリガ信号が電動自転車10のコントロールユニット26に提供、つまり信号技術的に伝送される。この際に、ユーザによって操作ユニット28を用いてトリガ信号が生ぜしめられ、コントロールユニット26に提供される。方法ステップ104で、少なくとも1つのセンサ装置30の測定信号がコントロールユニット26に提供される。方法100は、コントロールユニット26に方法ステップ104で規則的にまたは必要に応じて提供される次の測定信号を考慮する:
-電動自転車10の状態に関する測定信号、
-電動自転車10の速度に関する測定信号、
-電動自転車10のクランク機構12に加えられた運転者トルクに関する測定信号、
-ユーザの踏み込み周波数に関する測定信号、
-トリガ信号の提供時間長さに関する測定信号。
【0034】
次いで方法ステップ106で、方法ステップ104で提供された測定信号を用いてトリガ信号の妥当性が分析される。
a.電動自転車10の状態に関する測定信号を用いて、電動自転車10が直立に位置決めされていると検知されると、
b.電動自転車10の速度に関する測定信号を用いて、電動自転車の速度が予め定められた条件を満たしていることが検知されると、
c.電動自転車10のクランク機構12に加えられた運転者トルクに関する測定信号を用いて、運転者トルクがゼロであることが検知されると、
d.ユーザの踏み込み周波数に関する測定信号を用いて、踏み込み周波数がゼロであることが検知されると、または
e.トリガ信号の提供時間長さに関する測定信号を用いて、この時間長さが予め定められた閾値を下回ることが検知されると、
測定信号に応じて、提供された測定信号を用いてトリガ信号の妥当性が検知される。
【0035】
これらの条件a乃至eの1つが存在すると、トリガ信号は妥当であると評価され、次いで方法ステップ108で電動自転車10は、惰性走行モードが作動されることができ、したがって惰性走行モードがリリースされるように、制御される。次のオプション的な方法ステップ110で、別の測定信号を使用して、例えば別の入力に基づいて操作ユニットを用いてまたは電動自転車10を押して動かすことによって、作動のためにリリースされた惰性走行モードをスイッチオンさせることが考えられる。
【0036】
図3には、拡大された方法200がフローチャートとして示されている。この方法200は、基本的に任意の形式の運転状態(走行中の状態、停止中の状態、事故等の後の状態)から方法ステップ202に移行する。この方法ステップ202で、惰性走行モードの作動要求、つまり作動をリリースするためのトリガ信号の発生が待機される。方法ステップ204で、惰性走行モードを作動させるためのトリガ信号がコントロールユニット26によって検出される。次の方法ステップ206は、前記方法100の方法ステップ104および106、つまり提供された測定信号の分析およびそれに基づくトリガ信号の妥当化を含む。したがって、方法ステップ206の終了後に、トリガ信号が妥当であると評価され得るか(回路“y”)またはそうでないか(回路“n”)が分析される。トリガ信号が妥当であると検知される場合、方法ステップ208で電動自転車10は、惰性走行モードの作動がリリースされ(したがってその他の条件が満たされることによって作動、つまりスイッチオンされ得る)。惰性走行モードの作動は、方法ステップ210で別のトリガ信号の形の作動停止信号が生ぜしめられるかまたは実際の作動のためのトリガ信号が生じなくなるまで、リリースされている。この場合、再び方法ステップ202に変えられ、この方法ステップ202で、惰性走行モードの(新たな)作動要求が待機される。トリガ信号が方法ステップ206で妥当でないと検知される場合(回路“n”)、方法ステップ212で、惰性走行モードの作動がリリースされない。その代わり、方法200を実行するコントロールユニット26内でカウンターが増分式に増大(選択的に減少)される。次いで、次の方法ステップ214で、このカウンターが、妥当性が検知されていない、許容された作動要求の予め設定された数を既に上回っているかどうかが問い合わせられる。この数は、例えば3であってよい。そうであれば(回路“y”)、方法ステップ216で、惰性走行モードの作動のリリースの可能性は、少なくとも電動自転車10のコントロールユニット26が新たに始動されるまで、完全に作動停止される。したがって、この機能はコントロールユニット26が新たに始動されるまでもはや提供されない。さらに、ユーザに、情報(例えば警告)が与えられる(新たに始動される場合、カウンターは再び新たに初期化、例えばゼロに初期化されるかまたは最後に記憶された値から定数を差し引いた値に初期化される)。カウンターが、妥当性の検知されていない、許容された作動要求の予め設定された数にまだ達していない(またはこの数を上回っていない)場合(回路“n”)、方法ステップ210(この方法ステップ210で実際の作動のためのトリガ信号は発生しない)を介して、再び方法ステップ202に変えられ、この方法ステップ202で惰性走行モードの作動要求が待機される。
【符号の説明】
【0037】
10 電動自転車
12 クランク機構
14 クランク
16 電気駆動装置
18 バッテリ
20 チェーンブレード
22 チェーン
24 切換え機構
26 コントロールユニット
28 操作ユニット
30 第1のセンサ装置
100 方法
102 第1の方法ステップ
104,106,108,110 方法ステップ
200 拡大された方法
202,204,206,208,210,212、214,216 方法ステップ
図1
図2
図3
【国際調査報告】