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特表2024-511822高純度水酸化リチウム一水和物を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】高純度水酸化リチウム一水和物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/16 20060101AFI20240308BHJP
   C25B 11/052 20210101ALI20240308BHJP
   C25B 11/063 20210101ALI20240308BHJP
   C25B 11/081 20210101ALI20240308BHJP
   C25B 1/34 20060101ALI20240308BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240308BHJP
   C01D 15/02 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C25B1/16
C25B11/052
C25B11/063
C25B11/081
C25B1/34
C25B9/00 E
C01D15/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560175
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 RU2022050104
(87)【国際公開番号】W WO2022211681
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】2021108817
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520370522
【氏名又は名称】エコスター-ノーテック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Ecostar-Nautech Co., Ltd
【住所又は居所原語表記】ul. B.Khmelnitskogo, d. 2, g. Novosibirsk, Novosibirskaia oblast, Russian Federation
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リャブツェフ アレクサンドル ドミトリエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ネムコフ ニコライ ミハイロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ティタレンコ ヴァレリー イヴァノヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】クラコフ アンドレイ アレクサンドロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】レトゥエフ アレクサンドル ヴィクトロヴィッチ
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA21
4K011AA31
4K011AA32
4K011AA36
4K021AA01
4K021AA03
4K021AB01
4K021BA02
4K021BA17
4K021BB03
4K021CA10
4K021CA15
4K021DB31
(57)【要約】
LiSO、LiCl、LiCO又はそれらの混合物から選択されるリチウム塩を含有する材料から高純度水酸化リチウム一水和物を製造するための方法であって、陽イオン交換膜及びニッケルめっきステンレス鋼陰極を用いて指定のリチウム塩水溶液を膜電解することを含む。陰極液を循環流から引き出し、蒸発させ、水酸化リチウム一水和物の結晶を得て、これを母液から分離し、水で洗浄し、乾燥させて、最終的な高純度水酸化リチウム一水和物を得る。使用済み洗浄溶液の一部を陰極液蒸発プロセスに供給する。水酸化リチウム一水和物の結晶の分離後に形成された母液の一部を陰極液蒸発プロセスに戻す。逆流する陽極液に、元のリチウム塩から調製された濃縮リチウム塩溶液を補充する。蒸発プロセスから引き出した使用済み陰極液の一部をLiCOの製造に誘導する。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸リチウム、塩化リチウム、塩化リチウム一水和物、炭酸リチウム又はそれらの混合物から選択されるリチウム塩を含有する材料から高純度水酸化リチウム一水和物を製造するための方法であって、
電磁セルの陰極回路と陽極回路とを隔てる膜として陽イオン交換膜を用いて前記リチウム塩水溶液を膜電解し、前記膜電解を、水酸化リチウム溶液の形態の陰極液と、リチウム塩溶液の形態の陽極液とを循環させる様式で実施し、前記膜電解のための陰極がニッケルめっきステンレス鋼製であり、前記陽イオン交換膜が、アルカリ及び酸に対して耐性を示す膜から選択されるものであり、
循環陰極液流から任意容量の前記陰極液を引き出し、引き出した前記容量の前記陰極液を蒸発させて、水酸化リチウム一水和物の結晶を得、
得られた結晶を母液から分離し、水で洗浄し、乾燥させて、最終的な高純度水酸化リチウム一水和物を得る
ことを含み、さらに以下の工程:
電解中に形成された陰極ガス及び陽極ガスを除去する工程と、
前記除去の結果として得られた使用済み洗浄溶液流の一部を陰極液蒸発プロセスに供給し、前記陰極液蒸発プロセスに供給された前記使用済み洗浄溶液の一部を、引き出した使用済み陽極液流の再利用に使用する工程と、
水酸化リチウム一水和物の結晶の分離後に形成される母液の一部を前記陰極液蒸発プロセスに戻す工程と、
前記蒸発プロセスから引き出した、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムを添加物として含む水酸化リチウムの濃縮溶液である使用済み陰極液流の一部を再利用して、炭酸リチウムを得る工程と、
前記リチウム塩の元の供給源から調製されたリチウム塩の濃縮溶液と、引き出した前記使用済み陽極液流の再利用の結果として得られたリチウム塩の溶液とを、循環陽極液流に補充する工程と、
を特徴とする、方法。
【請求項2】
水酸化ナトリウムと水酸化カリウムを添加物として含む濃縮水酸化リチウム溶液である、前記蒸発プロセスから引き出した前記使用済み陰極液流を、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素リチウムを含有する水溶液流と混合することによって、前記陰極液流の再利用を行い、炭酸リチウムの固相と、NaCO、KCO、LiCOを含有する炭酸塩溶液との混合物である、前記再利用の結果得られたパルプから水を除去することによって濃縮し、前記炭酸リチウムの固相を液相から分離し、前記液相を二酸化炭素と直接接触させることによって炭素付与して、前記炭酸塩溶液を、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素リチウムの溶液中の炭酸水素ナトリウムの固相と炭酸水素カリウムの固相との混合物である炭酸水素塩懸濁液に変換し、得られた懸濁液を濾過して、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素リチウムを含有する溶液から前記炭酸水素ナトリウムの固相及び炭酸水素カリウムの固相を分離し、これを水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを含有する前記蒸発プロセスから引き出した前記使用済み陰極液流との混合に誘導する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
引き出した前記使用済み陽極液流の再利用における前記陰極液蒸発プロセスに供給する前記使用済み洗浄溶液の一部を、前記リチウム塩溶液を不純物から化学的に精製する工程におけるアルカリ試薬として、及び/又はイオン交換精製の工程においてイオン交換体をH形態からLi形態に変換するための再生溶液として使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記リチウム塩水溶液の直流電流密度が1kA/m~4kA/mであり、前記膜電解用の陽イオン交換膜がNafion-438、CTIEM-3、MF-4SK-100タイプ又はそれと同等の膜であり、Lewatit 208-TPイオン交換体を前記イオン交換精製の工程で使用する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記リチウム塩含有材料として硫酸リチウムを使用するとき、白金、イリジウム、ルテニウム又はタンタルから選択される貴金属で被覆されたチタンを膜電解プロセスにおける陽極として使用して、LiSOの枯渇及びHSOの富化を受けた前記循環陽極液流から陽極液流を常に引き出し、引き出した前記陽極液流をHSOが完全に中和されるまでCaO又はCa(OH)又はCaCOと接触させ、得られたCaSO・2HOの固相をLiSO溶液から分離し、前記LiSO溶液を初期硫酸リチウム塩と接触させてそれを溶解して硫酸リチウム溶液を得、得られた溶液に前記使用済み洗浄溶液を添加し、続いて前記溶液に含まれるカルシウム及びマグネシウムが不溶性化合物であるCaCO及びMg(OH)・3MgCO・3HOに変換されるまで、前記引き出した陽極液流を中和するプロセスに由来する二酸化炭素で前記溶液に炭素付与し、得られた懸濁液を濾過して、沈殿物を前記LiSO溶液から分離し、化学的に精製された前記LiSO溶液を、Li形態のLewatit 208-TPイオン交換体又はLi形態の同等のイオン交換体の層に通すことによるイオン交換精製に誘導し、イオン交換によって精製された前記LiSO溶液を、前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流の補充溶液として使用し、使用済みイオン交換体を2.0Nの硫酸溶液での処理である第1の工程と、2.0NのLiOH溶液での処理である第2の工程の2つの工程で再生し、イオン交換プロセスからの使用済み再生液を化学的精製の前に前記使用済み陽極液流と混合し、電解の副生成物である陰極水素を電解ユニットの陰極ガス分離装置から天然ガス流とともに排出し、溶液を、特に前記陰極液と、蒸発させるプロセスにおいて熱媒体として使用する加熱蒸気を生成するための燃料として、排出されたガス状混合物を蒸気発生装置に誘導する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
LiSOの枯渇及びHSOの富化を受けている前記循環陽極液流から常に引き出される任意容量の前記陽極液を空気-アンモニア混合物と接触させてHSOを中和し、LiSOと(NHSOとの混合溶液を得、これを蒸発させて(NHSOを塩析させ、蒸発溶液中のLiSOの濃度を増加させ、残りの(NHSOを含む前記蒸発溶液を任意容量の使用済みアルカリ洗浄溶液と混合し、混合溶液を、前記使用済み陽極液流と前記アンモニア-空気混合物とを接触させるプロセスに由来する空気流と接触させて、残りのアンモニアを前記LiSO溶液から除去し、気体アンモニアを含有する前記空気流に対してアンモニア源からのアンモニアで富化し、前記使用済み陽極液流を中和するプロセスに誘導し、アンモニアを含まない前記LiSO溶液に対して、初期LiSO塩を溶解してLiSOで強化し、且つ不純物からの精製を実施した後に、前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流の補充溶液として使用する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記リチウム塩含有材料として塩化リチウム又は塩化リチウム一水和物を使用するとき、酸化ルテニウムで被覆されたチタン陽極を前記膜電解プロセスに使用し、任意容量の前記陽極液を、LiClの枯渇が行われている前記循環陽極液流から常に引き出し、引き出した前記陽極液流を初期塩化リチウム塩と接触させて、引き出した前記陽極液流中のLiCl濃度を所定の値とし、引き出してLiClを富化した前記陽極液流に対して、金属陽イオン不純物からの化学的精製に加えて、硫酸イオンからの精製を塩化バリウムの添加による硫酸イオンの不溶性BaSO沈殿物への変換によって実施し、液相を前記沈殿物から分離し、イオン交換精製後に、前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流の補充溶液として使用し、前記ガス分離装置から引き出した陰極水素及び陽極塩素を混合して火炎燃焼に供し、得られた塩化水素を脱塩水に吸収させて36%濃塩酸を生成する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
ガス分離装置から引き出した前記陽極塩素をアンモニア水に吸収させて、NH:Clのモル比が8:3の条件でNHCl溶液、NH:Clのモル比が2:3の条件で6NのHCl溶液をそれぞれ生成し、得られたNHCl溶液を蒸発させ、NHClを結晶化及び乾燥させ、前記ガス分離装置から引き出した前記陰極水素を前記加熱蒸気の生成のための熱媒体として利用する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ガス分離装置から引き出した全ての陽極塩素をNaOH溶液に吸収させて次亜塩素酸ナトリウムの消毒溶液を生成するか、又は引き出した塩素の体積流量の0.5をNaOH溶液に吸収させて、次亜塩素酸ナトリウムで飽和した溶液を生成し、引き出した陽極塩素の体積流量の残りの0.5をCa(OH)懸濁液に吸収させて、次亜塩素酸カルシウムで飽和した溶液を生成し、生成した前記溶液を混合して中性次亜塩素酸カルシウムを塩析させ、これを母液から分離し、乾燥させ、得られた母液に初めに所定量のNaOHを添加し、次いでNaCOを添加することによってカルシウムを沈殿させ、添加物としてのCaCOおよびCa(OH)を含有する沈殿物を溶液から分離して、次亜塩素酸イオンの形態で活性塩素を含有するCa(OH)懸濁液の調製に誘導し、前記溶液を2等分し、一方をNaOHと混合して塩素化プロセスに誘導し、次亜塩素酸ナトリウム溶液を得、もう一方をCa(OH)と混合して同様に塩素化プロセスに誘導し、次亜塩素酸カルシウム溶液を得る、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記リチウム塩含有材料として炭酸リチウムを使用するとき、LiCOを高溶解性のリチウム塩である塩化リチウム又は硫酸リチウムに変換することによって炭酸リチウム塩を陽極液の再生成に使用し、炭酸リチウム塩を陽極液として電解ユニットの陽極回路内を循環させ、膜電解中にLiCl又はLiSOの枯渇を行う、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記陽極液として塩化リチウムの水溶液を使用するとき、酸化ルテニウムで被覆されたチタン陽極を前記膜電解プロセスに使用し、前記陰極水素及び前記陽極の塩素を混合後に燃焼させて高温の塩化水素蒸気を生成し、前記塩化水素蒸気を冷却し、段階的向流様式で脱塩水に吸収させて、HCl蒸気の経路に沿って第1の吸収工程から引き出された36%濃塩酸流を得、得られた濃塩酸流と、硫酸イオンからの精製のために前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流から引き出し、BaClを試薬として用いて硫酸イオンを除いた精製流とを混合し、前記濃塩酸と、硫酸イオンから精製した前記陽極液との混合流を初期炭酸リチウム及び脱塩水と接触させてLiCl溶液流を得て、これをカルシウム及びマグネシウムの不純物から精製した後に、前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流の補充溶液として使用する、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
NH:Clのモル比が2:3となるアンモニアの存在下で前記陽極塩素を脱塩水に吸収させて6Nの塩酸溶液を得、これを硫酸イオンからの精製のために前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流から引き出して化学的に精製した陽極液流と混合し、前記塩酸溶液と、硫酸イオンから精製した前記陽極液との混合流を前記初期炭酸リチウムと接触させてLiCl溶液流を得、これをカルシウム及びマグネシウムの不純物から精製した後に、前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流の補充溶液として使用し、前記陰極水素を前記加熱蒸気の生成のための燃料として使用する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記陽極塩素を、塩素吸収時の吸収剤が外来の陽イオン及び陰イオンで汚染されるのを防ぐ材料組成の元素状塩素の還元剤の存在下で炭酸リチウムの水性パルプに吸収させて吸収生成物として塩化リチウム溶液を得、これをカルシウム及びマグネシウムの不純物から精製した後に、前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流の補充溶液として使用し、ここで、前記陽極塩素の吸収のための前記水性パルプは、脱塩水、前記使用済み陰極液から得られた炭酸リチウム、初期塩の形態の炭酸リチウム、還元剤、及び硫酸イオンから精製するために前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流から引き出して、試薬を用いて硫酸イオンから精製した前記陽極液流から調製され、前記陰極水素は前記加熱蒸気の生成のための燃料として使用する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記陽極液として硫酸リチウムの水溶液を使用するとき、白金、イリジウム、タンタル又はルテニウムから選択される貴金属で被覆されたチタンを前記電解プロセスにおける前記陽極として使用し、前記陽極液循環回路から引き出し、硫酸リチウムを枯渇させ、硫酸を富化した前記陽極液流を前記初期炭酸リチウムと接触させて硫酸リチウム溶液を得、これを不純物から精製した後に前記陽極液循環回路の補充溶液として使用する、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
前記リチウム塩含有材料としてリチウム塩である硫酸リチウム及び炭酸リチウムの混合物を使用するとき、LiSOの枯渇及びHSOの富化を受けた前記循環陽極液流から所定容量の前記陽極液流を常に引き出し、引き出した前記陽極液流をLiSO塩とLiCO塩との初期混合物と接触させて残留量のHSOを含有する硫酸リチウム溶液を得、得られた溶液を前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流の補充に適したLiSO溶液に再利用する、請求項4に記載の方法。
【請求項16】
前記リチウム塩含有材料として塩化リチウム塩と炭酸リチウム塩との混合物を使用するとき、塩化リチウム塩と炭酸リチウム塩との初期混合物を、塩酸溶液、及び電解中にLiClの枯渇を受けた前記循環陽極液流から引き出した前記陽極液流と接触させて、所定濃度の塩化リチウム溶液を生成し、得られた塩化リチウム溶液を不純物から精製した後に、前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流の補充溶液として使用する、請求項4に記載の方法。
【請求項17】
前記リチウム塩含有材料として硫酸リチウム塩と塩化リチウム塩との混合物を使用するとき、白金、イリジウム、タンタル又はルテニウムから選択される貴金属で被覆されたチタンを前記膜電解プロセスにおける前記陽極として使用し、硫酸リチウム及び塩化リチウムの枯渇並びにHSOの富化を受けた前記循環陽極液流から前記陽極液流を引き出して、HSOが完全に中和されるまで所定量のCaO又はCa(OH)又はCaCOと接触させ、得られたLiSOとLiClとの混合溶液をCaSO・2HO沈殿物から分離し、LiSO塩とLiCl塩との初期混合物と接触させて溶解し、所定濃度のリチウムを含むLiSOとLiClの混合溶液を得て、これを不純物から精製した後に前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流の補充溶液として使用し、陰極水素を加熱蒸気として利用する、請求項4に記載の方法。
【請求項18】
再利用後にLiSO及びLiClの枯渇を受けた前記循環陽極液流から常に引き出す前記陽極液の容量を、前記循環陽極液流にLiSO及びLiClを補充するための混合溶液として使用し、前記ガス分離装置から引き出した前記陽極塩素を36%塩酸又はNHCl又は次亜塩素酸ナトリウム溶液又は中性次亜塩素酸カルシウムに再利用する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記リチウム塩含有材料として硫酸リチウム塩、塩化リチウム塩及び炭酸リチウム塩の混合物を使用するとき、LiSO及びLiClの枯渇並びにHSOの富化を受けた前記循環陽極液流から任意容量の前記陽極液を常に引き出し、これを初めにLiSO塩、LiCl塩及びLiCO塩の初期混合物と接触させて所定のリチウム濃度の混合溶液を生成し、生成した混合溶液を、前記膜電解プロセスにおける前記陽極液循環流の補充溶液として使用するLiSOとLiClとの混合溶液に再利用する、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機物質の化学技術の分野に属し、特にリチウム塩含有材料から高純度水酸化リチウム一水和物を製造する方法に属する。
【背景技術】
【0002】
固体の炭酸塩含有リチウム廃棄物を水と接触させ、得られたパルプを沈降させ、清澄な液相をデカントし、続いてこれを濾過し、得られたリチウム含有溶液を電気透析ユニットの中央室に通して再循環させ、陰極室に水酸化リチウム溶液、陽極室に混合酸溶液、中央室に脱塩液を得て、これを固体の炭酸塩含有リチウム廃棄物からリチウムを浸出させるプロセスに戻すことによって固体の炭酸塩含有リチウム廃棄物から水酸化リチウム溶液を製造することが知られている[1]。
【0003】
この方法の不利な点は、低濃度(最大でも25kg/m)のLiOH溶液の製造、及び最大でも2A/dm(0.2kA/m)の電流密度での操作によるプロセスの低い製造効率、低いLiCO濃度(最大でも10kg/m)による再利用LiCO溶液の高い電気抵抗、ひいては製造される生成物の単位当たりの高い比エネルギー消費である。
【0004】
リチウム化合物を含有する材料、特に廃リチウムイオン電池から水酸化リチウム溶液を製造する別の既知の方法[2]は、廃棄物から高溶解性の硫酸リチウムの形態でリチウムを抽出し、陰極コンパートメントと陽極コンパートメントとを隔てるNafion 350陽イオン交換膜を用いて硫酸リチウム溶液を膜電解することを含む。電解は、20A/dmの直流電流密度及び5.3Vの電圧で行い、陰極コンパートメントからLiOH溶液(陰極液)、陽極コンパートメントから陽極で形成された硫酸を含むLiSO枯渇陽極液を常に引き出す。引き出した陽極液流をリチウム浸出プロセスに誘導し、硫酸を中和し、同時に陽極液流を硫酸リチウムで強化する。LiSOで強化された陽極液を電解プロセスに戻す。
【0005】
この陽極液は、不純物で汚染されたLiOH溶液の製造に限定されるという点で不利である。この方法を用いてLiOH・HOの形態で高純度の生成物を製造することはできない。
【0006】
還元剤の存在下で天然ブラインから回収した塩化リチウム及び炭酸リチウムを含有する水溶液の膜電解によって、高純度水酸化リチウムを製造することが知られている[3]。引き出した陰極液を蒸発させ、LiOH・HOを結晶化させる。母液からの分離後に、LiOH・HOを脱塩水で洗浄し、乾燥させ、高純度のLiOH・HOを得る。ここで、陰極水素は、陰極液蒸発プロセスに利用される加熱蒸気を生成するための熱媒体の製造に使用され、陽極塩素は、塩素と、臭化物イオンに富む天然ブラインとを直接接触させることによって臭化物イオンを酸化し、元素状臭素にするために使用される。
【0007】
この方法の不利な点としては、LiCl選択的吸着剤によってリチウムを含む天然ブラインから初めに回収される低濃度LiCl溶液が、電気化学的変換のための供給材料として使用されること、及び低濃度LiCl溶液の電解中に陽極コンパートメント内でオキシ塩化物種が形成されるリスクを排除するために、還元剤を使用する必要があることが挙げられる。
【0008】
炭酸リチウム含有材料から高純度リチウム一水和物を製造する方法[4]は、上記の方法の不利な点の殆どを克服する。この方法は、電解ユニットの陽極液回路を循環する、LiSOの枯渇及びHSOの富化を受けている陽極液の溶液を補充するために供給される高溶解性硫酸リチウムの水溶液の再生成に基づく。この目的で、リチウム枯渇陽極液の一部を陽極液回路から常に引き出し、同量の炭酸リチウムと接触させて、陽極硫酸を硫酸リチウムに変換する。この方法はまた、LiOH溶液と、陽極液中の炭酸塩の中和によって放出されるCOとを用いた炭酸塩-アルカリ法によって、再生成されたLiSO溶液をCa、Mgの不純物及び重金属から化学的に精製することを提供する。
【0009】
この方法は、膜電解プロセスにおいて機械的安定性及び化学的安定性が低い陽イオン交換膜MK-40を使用するという点が不利である。この方法のさらに不利な点としては、液体廃棄物による水の汚染、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムによる炭酸リチウム溶液の汚染、並びに補充のために陽極液回路に供給されるLiSO溶液の化学的精製が不十分であること、すなわち、カルシウム及びマグネシウムの陽イオンで汚染された膜から酸を回収する必要性について定期的に確認しなければならないことが挙げられる。
【0010】
ブラインからリチウム一水和物を製造する方法及びその実施のための装置[5]は、上記の方法の不利な点を克服する。LiOH・HOの蒸発、結晶化、洗浄及び乾燥のために供給されるLiOH溶液は、炭酸塩-アルカリ法による化学的精製と、続くLi形態のLewatit-208-TPイオン交換体によるイオン交換精製に供した濃縮LiCl溶液から得られる。この方法はまた、富化(pregnant)LiClの溶液を得るための試薬として、NaOH及びKOHを含有するLiOH溶液の形態で蒸発プロセスから引き出した使用済み陰極液流を用いることを含み、それにより、ナトリウム及びカリウムがNaCl結晶及びKCl結晶の形態でプロセスから除去される。リチウム塩含有材料から水酸化リチウム一水和物を製造するこの方法は、その技術的本質及び達成されるパラメーターにより、特許請求される方法に最も近いため、最も近い従来技術として選択した。
【0011】
この方法の不利な点は、以下の通りである:
1)LiOH・HOの製造に使用され得る原料の範囲が、リチウムを含む天然ブラインから製造される塩化リチウムの水溶液に限定される、
2)陰極液中に蓄積したナトリウム及びカリウムの不純物は、NaCl及びKClの形態でしか除去することができず、LiOH・HOの製造プロセスは、LiCl選択的吸着剤を用いてリチウムを含む天然ブラインから製造された一次リチウム濃縮物の形態の低濃度のLiCl原料から不純物を濃縮及び除去することによる、富化(pregnant)リチウム濃縮物(LiCl・HO及びLiClの製造に適したリチウム濃縮物)の調製により制限される、
3)陽極塩素の利用によって、生成する副生成物の範囲が限られる、
4)陰極水素を利用するための解決策の欠如。
【0012】
上記の欠点は、特許請求される方法の基礎を構成する以下の技術的解決策の実施によって克服することができる。
LiSO若しくはLiCl若しくはLiCO、又はこれらの塩の様々な混合物の形態でリチウム塩を含有する材料から製造されるLiSOの水溶液、LiClの水溶液又はLiSOとLiClとの混合溶液の膜電解により、LiOH溶液を得ること、
陰極液蒸発プロセス(使用済み陽イオン交換体)から引き出されるナトリウム及びカリウム富化流を固相炭酸リチウム並びに固相炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムに再利用すること、
陰極としてニッケルめっきステンレス鋼を使用することで、陰極での水素吸収(水素化)と腐食のリスクとの両方を排除すること、
LiOH・HO結晶の洗浄後に残る使用済み洗浄溶液を、膜電解の前に水性リチウム塩を前処理するプロセスにアルカリ試薬として使用すること、
リチウム塩水溶液の膜電解の陰極副生成物及び陽極副生成物を利用するための新たな解決策を用いること。
【0013】
提供される技術的解決策の実施により、水酸化リチウム一水和物の製造に適した原料の範囲を拡大し、膜電解プロセスの信頼性を高め、生成する副生成物の範囲を拡大し、液体及び気体の廃棄物の形成を排除し、その結果として、製造プロセスの環境性能を改善することが可能となる。
【発明の概要】
【0014】
リチウム塩含有材料として硫酸リチウム若しくは塩化リチウム若しくは炭酸リチウム、又はこれらの塩の様々な混合物を使用すること、リチウム塩水溶液の膜電解のプロセスにおいてニッケルめっきステンレス鋼製の陰極を使用すること、及び陽イオン交換膜としてNafion-348、CTIEM-3、MF-4SK-100タイプの膜又はそれと同等の膜を使用することによって、技術的効果の達成がもたらされる。
【0015】
陰極液蒸発プロセスに供給される使用済み洗浄溶液を、電解前に所定濃度にしたリチウム塩溶液を前処理するプロセスにおけるアルカリ試薬として、初めにこの塩溶液を不純物から化学的に精製する工程で部分的に使用し、次いでイオン交換精製の工程でイオン交換体をH形態からLi形態に変換するための再生溶液として部分的に使用することによって、技術的効果の達成がもたらされる。
【0016】
水酸化ナトリウムと水酸化カリウムを添加物として含む水酸化リチウム溶液である使用済み陰極液流を、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素リチウムを含有する水溶液流と混合することによって再利用し、炭酸リチウムの固相とNaCO、KCO及びLiCOを含有する溶液との混合物である、再利用の結果得られたパルプから所定量の水を除去することによって濃縮し、炭酸リチウムの固相を液相から分離し、液相を二酸化炭素と接触させることによって炭素付与(carbonized)して、炭酸塩溶液を炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素リチウムの溶液中の炭酸水素ナトリウムの固相と炭酸水素カリウムの固相との混合物である炭酸水素塩懸濁液に変換し、得られた懸濁液を濾過して、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素リチウムを含有する溶液から炭酸水素ナトリウムの固相及び炭酸水素カリウムの固相を分離し、これを水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを含有する蒸発プロセスから引き出した使用済み陰極液流との混合に誘導することによって、技術的効果の達成がもたらされる。
【0017】
リチウム塩含有材料として硫酸リチウムを使用するとき、貴金属(白金、ルテニウム、イリジウム、タンタル)で被覆されたチタンを膜電解プロセスにおける陽極として使用して、LiSOの枯渇及びHSOの富化を受けた循環陽極液流から所定容量の陽極液流を所定速度で常に引き出し、引き出した陽極液流をHSOが完全に中和されるまでCaO又はCa(OH)又はCaCOと接触させ、得られたCaSO・2HOの固相をLiSO溶液から分離し、LiSO溶液を所定の質量量(mass quantity)の初期LiSO塩と接触させてそれを溶解し、所定濃度のLiSO溶液を得、得られた溶液に所定容量の洗浄溶液を添加し、続いて溶液に含まれるカルシウム及びマグネシウムが不溶性化合物であるCaCO及びMg(OH)・3MgCO・3HOに変換されるまで、引き出した陽極液流を中和するプロセスに由来する二酸化炭素で当該溶液に炭素付与し、得られた懸濁液を濾過して沈殿物をLiSO溶液から分離し、化学的に精製されたLiSO溶液を、Li形態のLewatit-208-TPイオン交換体又はLi形態の同等のイオン交換体の層に通すことによるイオン交換精製に誘導し、イオン交換によって精製されたLiSO溶液を、膜電解プロセスにおける循環陽極液流の補充溶液として使用し、使用済みイオン交換体を2.0Nの硫酸溶液での処理である第1の工程と、使用済み洗浄溶液から調製された2NのLiOH溶液での処理である第2の工程の2つの工程で再生し、使用済み再生液を化学的精製の前に使用済み陽極液流と混合し、電解の副生成物である陰極水素を電解ユニットの陰極ガス分離装置から天然ガス流とともに排出して得られたガス状混合物を、溶液を、特に陰極液と、蒸発させるプロセスにおいて熱媒体として使用される加熱蒸気を生成するための燃料として蒸気発生装置に誘導することによって、技術的効果の達成がもたらされる。
【0018】
リチウム塩含有材料として硫酸リチウムを使用するとき、LiSOの枯渇及びHSOの富化を受けている循環陽極液流から所定の体積流量で常に引き出される所定容量の陽極液を空気-アンモニア混合物と接触させてHSOを中和し、LiSOと(NHSOとの混合溶液を得、これを蒸発させて(NHSOを塩析させ、残りの(NHSOを含む蒸発溶液を所定容量の使用済み洗浄溶液と混合する一方で、使用済みアルカリ陽極液流とアンモニア-空気混合物とを接触させるプロセスに由来する空気流と接触させて、残りのアンモニアをLiSO溶液から除去し、気体アンモニアを含有する空気流に対してアンモニア源からのアンモニアで富化し、使用済み陽極液流を中和するプロセスに誘導し、アンモニアを含まないLiSO溶液に対する、所定の質量量の初期硫酸リチウム塩の溶解によるLiSOの所定の強化と、不純物からの化学的精製及びイオン交換精製との後に得られる溶液を、膜電解プロセスにおける循環陽極液流の補充溶液として使用することによって、技術的効果の達成がもたらされる。
【0019】
リチウム塩含有材料として塩化リチウム又は塩化リチウム一水和物を使用するとき、酸化ルテニウムで被覆されたチタン陽極を膜電解プロセスに使用し、所定容量の陽極液を、LiClの枯渇が行われている循環陽極液流から所定の体積流量で常に引き出し、引き出した陽極液流を塩化リチウムを含有する初期塩と接触させて、引き出した陽極液流中のLiCl濃度を所定の値とし、引き出してLiClを富化した陽極液流に対して、金属陽イオン不純物からの化学的精製に加えて、硫酸イオンからの精製を所定量の塩化バリウムの添加による硫酸イオンの不溶性BaSO沈殿物への変換によって実施し、液相を沈殿物から分離し、イオン交換精製後に、膜電解プロセスにおける循環陽極液流の補充溶液として使用し.ガス分離装置から引き出した陰極水素及び陽極塩素を混合して火炎燃焼に供し、得られた塩化水素を脱塩水に吸収させて36%濃塩酸を生成することによって、技術的効果の達成がもたらされる。
【0020】
リチウム塩含有材料として塩化リチウム又は塩化リチウム一水和物を使用するとき、ガス分離装置から引き出した陽極塩素をアンモニア水に吸収させて、NH:Clのモル比が8:3の条件でNHCl溶液、NH:Clのモル比が2:3の条件で6NのHCl溶液を生成し、得られたNHCl溶液を蒸発させ、NHClを結晶化させ、結晶を乾燥させ、この場合に引き出した水素を加熱蒸気の生成のための熱媒体として利用することによって、技術的効果の達成がもたらされる。
【0021】
リチウム塩含有材料として塩化リチウム又は塩化リチウム一水和物を使用するとき、ガス分離装置から引き出した陽極塩素をNaOH溶液に完全に吸収させて次亜塩素酸ナトリウムの消毒溶液を生成するか、又は引き出した塩素の体積流量の0.5をNaOH溶液に吸収させて、次亜塩素酸ナトリウムで飽和した溶液を生成し、引き出した陽極塩素の体積流量の残りの0.5をCa(OH)懸濁液に吸収させて、次亜塩素酸カルシウムで飽和した溶液を生成し、生成した溶液を混合して中性次亜塩素酸カルシウムを塩析させ、これを母液から分離して乾燥させ、得られた母液に初めに所定量のNaOHを添加することによってCa(OH)の形態でカルシウムを沈殿させ、次いで所定量のNaCOを添加することによってCaCOの形態でカルシウムを沈殿させ、Ca(OH)を含有し、CaCOが添加された沈殿物を、次亜塩素酸イオンの形態で活性塩素を含有する溶液から分離し、次に溶液を2等分して一方を所定量のNaOHと混合し、塩素化に誘導して次亜塩素酸ナトリウム溶液を得、もう一方を所定量のCa(OH)と混合し、同様に塩素化プロセスに誘導して次亜塩素酸カルシウム溶液を得、さらに陰極水素を加熱蒸気の生成のための熱媒体として利用することによって、技術的効果の達成がもたらされる。
【0022】
リチウム塩含有材料として炭酸リチウムを使用するとき、水溶液の形態で電解ユニットの陽極回路内を循環し、膜電解中にLiCl又はLiSOの枯渇を受ける塩化リチウム又は硫酸リチウムの高溶解性の塩の再生成に炭酸リチウム塩を使用することによって、技術的効果の達成がもたらされる。ここで、陽極液として塩化リチウムの水溶液を使用するとき、酸化ルテニウムで被覆されたチタン陽極を膜電解プロセスに使用し、第1の選択肢によると、引き出した陰極水素及び陽極塩素を混合後に燃焼させて高温の塩化水素蒸気を生成し、塩化水素蒸気を冷却し、段階的向流様式で脱塩水に吸収させて、第1の吸収工程からHCl蒸気の経路に沿って濃(36%)塩酸流を得、得られた濃塩酸流と、硫酸イオンからの精製のために膜電解プロセスにおける循環陽極液流から引き出し、BaClを試薬として用いて硫酸イオンを除いた陽極液流とを混合し、濃塩酸と硫酸イオンから精製した陽極液との混合流を所定量の初期炭酸リチウム及び脱塩水と接触させ、所定濃度のLiCl溶液流を得て、これをカルシウム及びマグネシウムの不純物から精製した後に、膜電解プロセスにおける循環陽極液流の補充溶液として使用する。第2の選択肢によると、NH:Clモル比が2:3となるアンモニアの存在下で引き出した陽極塩素を脱塩水に吸収させ、6Nの塩酸溶液を得、これを硫酸イオンからの精製のために膜電解プロセスにおける循環陽極液流から引き出して、BaClを試薬として用いて硫酸イオンから精製した陽極液流と混合し、塩酸溶液と、硫酸イオンから精製した陽極液との混合流を所定量の初期炭酸リチウムと接触させ、LiCl塩溶液流を得て、ここからカルシウム及びマグネシウムの不純物を精製した後に、膜電解プロセスにおける循環陽極液流の補充溶液として使用し、陰極水素を加熱蒸気の生成のための燃料として使用する。第3の選択肢によると、陽極塩素を、吸収剤が外来の陽イオン及び陰イオンで汚染されるのを防ぐ材料組成の所定量の元素状塩素の還元剤、例えばアンモニア、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、カルバミド、ギ酸又はそれと同等の還元剤の存在下で、所定のLiCO含有量を有する炭酸リチウムの水性パルプに吸収させて吸収生成物として所定のLiCl濃度を有する塩化リチウム溶液を得、これを膜電解プロセスにおける循環陽極液流の補充溶液として使用する。ここで、陽極塩素の吸収のための水性パルプは、脱塩水、使用済み陰極液から得られた炭酸リチウム、初期LiCO塩の形態の炭酸リチウム、還元剤、及び膜電解プロセスにおいて所定の体積流量循環陽極液流から引き出して、BaClを試薬として用いて硫酸イオンから精製した陽極液流から調製し、陰極水素を加熱蒸気の生成のための燃料として使用すること。
【0023】
陽極液として硫酸リチウムの水溶液を使用するとき、貴金属(白金、ルテニウム、イリジウム、タンタル)で被覆されたチタン陽極を膜電解プロセスに使用し、陽極液循環回路から所定速度で引き出し、硫酸リチウムが枯渇し、硫酸が富化された所定容量の陽極液流を所定量の初期炭酸リチウムと接触させ、所定濃度の硫酸リチウム溶液を得、これを不純物から精製した後に陽極液循環回路の補充溶液として使用することによって、技術的効果の達成がもたらされる。
【0024】
リチウム塩含有材料としてリチウム塩である硫酸リチウム及び炭酸リチウムの混合物を使用するとき、貴金属(白金、ルテニウム、イリジウム、タンタル)で被覆されたチタンを膜電解プロセスにおける陽極として使用し、陽極液循環回路から所定速度で引き出し、硫酸リチウムを枯渇させ、硫酸を富化した所定容量の陽極液流を、所定量のLiSO塩とLiCO塩との初期混合物と接触させて、HSOの残留物を含む所定濃度の硫酸リチウム溶液を得、得られたLiSO溶液から残留硫酸を除き、不純物から精製した後に、膜電解プロセスにおける循環陽極液流の補充液として使用することによって、技術的効果の達成がもたらされる。
【0025】
リチウム塩含有材料としての塩化リチウム塩と炭酸リチウム塩との混合物を使用するとき、酸化ルテニウムで被覆されたチタンを膜電解プロセスにおける陽極として使用し、塩化リチウム塩と炭酸リチウム塩との初期混合物を所定容量で所定濃度の塩酸、及び循環陽極液流から引き出し、膜電解中にLiClが枯渇した所定の体積流量の陽極液と接触させて、塩化リチウム溶液を生成し、得られた塩化リチウム溶液を不純物からの精製後に、膜電解プロセスにおける循環陽極液流の補充溶液として使用するすることによって、技術的効果の達成がもたらされる。
【0026】
リチウム塩含有材料としてリチウム塩である硫酸リチウム及び塩化リチウムの混合物を使用するとき、貴金属(白金、ルテニウム、イリジウム、タンタル)で被覆されたチタンを膜電解プロセスにおける陽極として使用し、硫酸リチウム及び塩化リチウムの枯渇並びにHSOの富化を受けた循環陽極液流から所定容量の陽極液流を所定の速度で引き出して、これをアンモニア-空気混合物に含まれる所定量のアンモニアと接触させ、続いてLiSOと(NHSOとの混合亜硫酸塩溶液を濃縮し、LiSO溶液が得られるまで(NHSO塩を塩析させるか、又はHSOが完全に中和されてLiSO溶液が得られるまで、所定量のCa(OH)若しくはCaCOのいずれかと接触させて、CaSO・2HO沈殿物から分離する。いずれかの方法で得られたLiSO溶液を所定量のLiSO塩とLiCl塩との初期混合物と接触させて溶解し、所定濃度のリチウムを含むLiSOとLiClとの混合溶液を得て、これを不純物からの精製後に、膜電解プロセスにおける循環陽極液流の補充溶液として使用する。さらにガス分離装置から引き出した陽極塩素を36%塩酸又はNHCl塩又は次亜塩素酸ナトリウム溶液又は中性次亜塩素酸カルシウムに再利用することによって、技術的効果の達成がもたらされる。
【0027】
リチウム塩含有材料として硫酸リチウム塩、塩化リチウム塩及び炭酸リチウム塩の混合物を使用するとき、貴金属で被覆されたチタンを膜電解プロセスにおける陽極として使用し、LiSO及びLiClの枯渇並びにHSOの富化を受けた循環陽極液流から所定の体積流量で所定容量の陽極液を常に引き出し、これを初めに所定量のLiSO塩、LiCl塩及びLiCO塩の初期混合物と接触させて、所定濃度のリチウムを含むLiSO、LiCl、HSOの混合溶液を生成し、得られた混合溶液をLiSOとLiClとの混合溶液に変換し、これを膜電解プロセスにおける陽極液循環流の補充溶液として使用することによって、技術的効果の達成がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】LiSO塩の形態でリチウム塩を含有する材料からのLiOH・HOの製造を示す流れ図である。
図2】LiCl塩の形態でリチウム塩を含有する材料からのLiOH・HOの製造を示す流れ図である。
図3】LiCO塩の形態でリチウム塩を含有する材料からのLiOH・HOの製造を示す流れ図である。
図4】LiSO塩とLiCO塩との混合物の形態でリチウム塩を含有する材料からのLiOH・HOの製造を示す流れ図である。
図5】LiCl塩とLiCO塩との混合物の形態でリチウム塩を含有する材料からのLiOH・HOの製造を示す流れ図である。
図6】LiSO塩とLiCl塩との混合物の形態でリチウム塩を含有する材料からのLiOH・HOの製造を示す流れ図である。
図7】LiSO塩、LiCl塩及びLiCO塩の混合物の形態でリチウム塩を含有する材料からのLiOH・HOの製造を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
提供する発明は、図1図7に示されるような、リチウム塩又はその混合物を含有する材料から水酸化リチウム一水和物を製造する流れ図に従って実施され、これは提供する実施例によって支持される。
【0030】
LiSO塩の形態でリチウム塩を含有する材料からLiOH・HOを製造するプロセスの流れ図を図1に示す。この技術は、LiSO溶液からLiOH溶液への電気化学的変換を可能にする膜電解プロセスに基づく。ここで、電気化学的変換のプロセスは、直流電流の印加によって起こり、LiOH溶液(陰極液)及びLiSO溶液(陽極液)がそれぞれ常に循環する電解ユニットの陰極コンパートメントと陽極コンパートメントとを隔てる、アルカリ溶液及び酸溶液中で安定した陽イオン交換膜が用いられる。溶液は、循環中に電極との接触によって電極プロセスを受ける。これにより、陽極で水の電気化学的酸化が起こり、以下の反応に従って酸素ガス及びHイオンが生じる。
【化1】
【0031】
したがって、陰極では水の電気化学的分解が起こり、以下の反応に従って水素ガス及びOHイオンが生じる。
【化2】
【0032】
一般的な形態においては、LiSOからLiOHへの電気化学的変換のプロセスは、以下の反応によって表すことができる。
【化3】
【0033】
陽イオン交換膜は、陽極コンパートメントから陰極コンパートメントへの陽イオンの障害のない移動を可能にする。その際、陽極コンパートメントから陰極コンパートメントへのSO 2-イオンの移動及び陰極コンパートメントからのOHイオンの移動は、陽イオン交換膜の独自の特徴によって妨げられる。陽極液では常にLiSOが枯渇してHSOが富化し、陰極液では常にLiOHが富化するため、循環陽極液には常に新たなLiSO溶液を補充する。電流密度の最適範囲は、2kA/m~4kA/mであり、循環陽極液中のリチウムの濃度は、20kg/m~25kg/mの範囲に維持される。循環陰極液中の水酸化リチウムの最適濃度は、50kg/m~80kg/mの範囲である。Nafion-434、Nafion-438、Nafion-324、CTIEM-3、MF-4SK-100タイプの膜、並びにアルカリ及び酸に対して耐性を示す他の同等の膜を陽イオン交換膜として使用することができる。陰極には、ニッケルめっきステンレス鋼製の多孔板を使用することが望ましく、これにより、陰極水素による陰極の構造材料の水素化のリスクと、緊急停止時及び電流負荷の中断時の陰極の腐食のリスクとの両方が排除される。硫酸塩溶液の電解において最も耐久性のある陽極は、白金めっきチタン製の陽極である。加えて、イリジウム-酸化ルテニウム被覆を有するチタンを陽極として使用することができる。膜電解によって生成したLiSO溶液を含む循環陰極液から所定容量の陰極液流を常に引き出し、蒸発及びLiOH・HOの結晶化のプロセスに送る。LiOH・HO結晶を、通常は遠心分離によって蒸発時に母液から分離し、分離された結晶を脱塩水で残りの母液から洗浄し、乾燥させて、LGO-1 GOST 8595-83グレードの要件を満たすLiOH・HO生成物を得る。蒸発及び結晶の分離後に形成された母液を蒸発に戻す。ナトリウム及びカリウムは、リチウムとともに電解に供される硫酸リチウム塩中に不純物として含まれ、陰極液に移行するため、蒸発した陰極液中に徐々に蓄積し、LGO-1グレードの要件を満たす生成物を製造することができないレベルの濃度に達する。この理由から、LiOH・HO結晶の分離後に形成された、陰極液蒸発プロセスに戻されるアルカリ溶液から所定容量を常に引き出し、再利用に誘導することでリチウムを確実に製造プロセスに戻す。使用済み陰極液の再利用は、化合物LiCO、LiHCO、NaCO、NaHCO、KCO、KHCOの溶解性の大きな差に基づいてアルカリ金属不純物からリチウムを分離することである。ここで、所与のリストにおいて、炭酸リチウムが最も溶解性が低い化合物であり、KCOが最も溶解性が高い化合物である。また、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムは、それらの炭酸塩よりも溶解性がはるかに低く、逆に、炭酸水素リチウムの溶解性は、炭酸リチウムの溶解性よりもはるかに高い。再利用の最初の工程では、KHCO、NaHCO及びLiHCOで飽和した混合炭酸水素塩溶液を調製し、その溶液流を再利用する使用済み陰極液流と混合する。これらの液流の混合によって以下の反応が起こり、その結果、難溶性の炭酸リチウムが沈殿し、炭酸水素カリウム及び炭酸水素ナトリウムが、対応する炭酸水素塩よりも顕著に溶解性が高い炭酸塩に変換される。
【化4】
【0034】
混合プロセスを、使用済み陰極液流に同伴する過剰な水を除去するプロセスと組み合わせる。水の除去は、得られた懸濁液を、100℃を超える温度に加熱された所定流と直接接触させることによって行われる。加熱空気と懸濁液との接触の結果として、水が懸濁液から蒸発する一方、空気は湿式温度計の温度まで冷却される。また、懸濁液からの水の除去により、LiCOから固相への変換度が増加する。同時に、液相が使用済み陰極液に由来するナトリウム及びカリウムで富化される。得られたLiCOの固相を遠心分離によって炭酸塩溶液から分離し、使用済み陽極液を中和するプロセスに誘導し、得られた炭酸塩溶液を、以下の反応に従って二酸化炭素での処理により炭酸水素塩溶液に変換する。
【化5】
【0035】
使用済み陰極液に由来するナトリウム及びカリウムでの富化によるNaHCO溶液及びKHCO溶液の過飽和のために、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムの一部が固相に留まるが、溶解したLiCOから形成される炭酸水素リチウムは、より高い溶解性故に固相に留まることはない。得られた炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムの固相を濾過によって炭酸水素塩溶液から分離する。炭酸水素塩溶液を使用済み陰極液の次のバッチとの混合に誘導する。
【0036】
膜電解中に循環陽極液がLiSOの枯渇及びHSOの富化を受けるため、所定の陽極液流を循環陽極液流から常に引き出し、初めに使用済み陰極液の再利用によって得られた炭酸リチウムと接触させ、以下の反応に従って硫酸の一部を中和する。
【化6】
【0037】
炭酸リチウムによる酸中和の間に、使用済み陽極液は、LiSOで部分的に強化される。その後、電解用の中和陽極液の調製には2つの可能な選択肢がある。第1の選択肢(選択肢A)によると、炭酸リチウムでの中和後の使用済み陽極液の溶液を酸化カルシウム若しくは水酸化カルシウム若しくは炭酸カルシウム、又はそれらの混合物と接触させ、以下の反応に従って硫酸をCaSO・2HOの固相に変換する。
【化7】
【0038】
沈殿物からの分離後に、硫酸が完全に除かれたLiSOの溶液である使用済み陽極液を、溶液が所定のLiSO含有量を有するように溶解した後、所定の質量量の初期LiSO塩と接触させる。次に、得られたLiSO溶液を、必要に応じてカルシウム及びマグネシウムから化学的に精製する。初期LiSO塩中のカルシウム及びマグネシウムのレベルが高い場合、化学的精製のプロセスが必要である。使用済み洗浄溶液の所定部分(NaOH及びKOHを0.1kg/mの総レベルで含有する120kg/mのLiOH溶液)及び二酸化炭素を試薬として使用する。精製プロセスは、以下の化学反応式によって表される。
【化8】
【0039】
概して、化学的精製により、分析溶液中のカルシウム及びマグネシウムの総含有量の残りを10g/m~15g/mのレベルにすることが可能である。沈殿物の分離後に、LiSO溶液をイオン交換精製に誘導する。この目的で、Li形態のLewatit 208 TPイオン交換体又は同様にLi形態のその陽極液を使用する。イオン交換精製プロセスは、以下の反応式によって表される。
【化9】
【0040】
イオン交換精製により、LiSO溶液中のカルシウム及びマグネシウムの残留総濃度を、0.1g/mを超えないレベルにすることが可能であり、この溶液を膜電解プロセスにおける循環陽極液流の補充溶液に使用する。
【0041】
別の選択肢(選択肢B)によると、引き出した陽極液流を、初めに使用済み陰極液の再利用の段階で得られた炭酸リチウムで部分的に中和し、次いで部分的に中和された使用済み陽極液を空気-アンモニア混合物と直接接触させることによってアンモニアで部分的に中和して、以下の反応に従って残りの硫酸を硫酸アンモニウムに変換する。
【化10】
【0042】
使用済み陽極液の完全な中和によって得られたLiSO及び(NHSOの混合溶液を、混合溶液から(NHSOを塩析させることによって蒸発させる。母液ブライン(mother brine)から洗浄し、乾燥させた後の硫酸アンモニウムが市販される販売肥料となる。(NHSOの残留物を含む使用済み陽極液から得られたLiSO溶液を、次にLiOH・HO結晶の洗浄プロセス中に形成された使用済み洗浄溶液の一部を用いてアルカリ化する。
【0043】
アルカリ化後に、溶液を大気流による曝気によって脱アンモニアする(deammonized)。脱アンモニアプロセスは、以下の化学反応式によって表される。
【化11】
【0044】
気体アンモニアを含有する空気流を所定量のアンモニアで富化し、使用済みの部分的に中和された陽極液の次の部分の中和に誘導する。
【0045】
脱アンモニア工程に供したLiSO溶液を、所定の質量量の初期LiSO塩を溶解することによる付加的な強化に送り、化学的精製及びイオン交換精製後に、循環陽極液流の補充溶液として使用する。
【0046】
膜電解の副生成物である陰極水素を、天然ガス流とともに陰極ガス分離装置から排出する。得られたガス状混合物を、加熱蒸気の生成のための燃料として利用する。加熱蒸気は蒸発プロセスに使用される。蒸発プロセス中に形成されるジュース蒸気凝縮液(juice vapor condensate)を、溶液の蒸発によって得られた結晶を洗浄するプロセスにおいて脱塩水として使用する。
【0047】
LiCl塩又はLiOH・HO塩の形態でリチウム塩を含有する材料からのLiOH・HOの製造のプロセス流れ図を図2に示す。この場合、この技術は、LiCl溶液からLiOH溶液への電気化学的変換を可能にする膜電解プロセスに基づく。ここで、LiCl溶液の膜電解の条件下で起こる陰極プロセスは、LiSO溶液の膜電解の条件下で起こる陰極プロセスと同様である。一方、LiCl溶液の膜電解の条件下での陽極プロセスには、以下の反応に従って塩素ガスを生じる塩化物イオンの電気化学的酸化を伴うため、大きな差がある:
【化12】
【0048】
この場合、酸は形成されず、陽極液のLiClの枯渇のみが電解中に起こる。
【0049】
一般的な形態においては、LiCl塩溶液からLiOH溶液への電気化学的変換のプロセスは、以下の全体的な反応によって表すことができる:
【化13】
【0050】
LiSO塩溶液の電解の条件と同じ陰極及び陽イオン交換膜をLiCl塩溶液の膜電解の条件に使用する。可溶性塩の膜電解のプロセスの主要パラメーターは、実質的に同じである。しかしながら、硫酸リチウム溶液の電解に通常使用される、白金めっきチタン製又は他の貴金属で被覆されたチタン製の高価な陽極の代わりに、酸化ルテニウムで被覆されたチタン陽極(酸化ルテニウム-チタン陽極(ORTA))を塩化リチウム溶液の電解に首尾よく使用することができる。但し、塩化物陽極液をpH2まで酸性化する。塩化物を含有する陽極液の酸性化により、循環陽極液中に塩素酸塩が形成されるリスクも排除される。リチウムの硫酸塩溶液及び塩化物溶液の電気化学的変換のための最終LiOH・HOへの陰極液の引出し及び処理のスキームは、同じである。使用済み(LiClが枯渇した)陽極液の電解のための引出し及び前処理は、使用済み塩化物陽極液の前処理が中和プロセスを必要とせず、所定のリチウム濃度への使用済み陽極液の強化が、所定量の初期LiCl塩を溶解することによって行われることを除き、硫酸塩陽極液のスキーム及び前処理と同様である。このプロセスで使用される初期塩化リチウムに含まれる不純物として導入される硫酸イオンは、循環陽極液流に蓄積する可能性があるため、LiClで強化された使用済み陽極液の化学的精製では、カルシウム及びマグネシウムからの精製とともに、沈殿剤としてBaClを用いて硫酸イオンを不溶性BaSO塩に変換することによる硫酸イオンからの精製を行う。LiClで強化された塩化リチウム溶液のイオン交換精製のプロセス中に、2N塩酸溶液による酸再生工程を行う。
【0051】
膜電解の副生成物である水素(陰極ガス)及び塩素(陽極ガス)の利用は、様々な方法で行うことができる。選択肢Aによると、ガス分離装置から引き出した水素及び塩素を混合し、高温燃焼に供して、以下の反応に従って塩化水素ガスを生成する。
【化14】
【0052】
得られた高温の塩化水素流を強制冷却に供し、脱塩水を初期吸収剤として用いる段階的向流吸収に誘導する。これは、蒸発プロセスの副生成物であるジュース蒸気凝縮液として表すことができる。選択肢Bは、溶液蒸発プロセスに使用される加熱蒸気を生成するための燃料として陰極水素を使用することを含む。この選択肢によると、NH:Clのモル比を8:3としたNH及びClのガス状混合物の下記反応に従う水分吸収によってNHCl溶液を得、それを蒸発させることにより、塩素をNHCl塩として利用することができる。
【化15】
あるいは、NH:Clのモル比を2:3としたNH及びClのガス状混合物の下記反応に従う水吸収によって、塩素を6NのHCl溶液として利用することができる。
【化16】
あるいは、下記反応に従ってNaOHの水溶液に塩素を吸収させることで、塩素を次亜塩素酸ナトリウム溶液(消毒殺菌溶液)として利用することができる。
【化17】
あるいは、下記反応に従って、濃NaOH溶液に陽極塩素の半分を吸収させてNaOClを得、
【化18】
得られたNaOClで飽和した次亜塩素酸ナトリウム溶液と、下記反応に従って、陽極塩素の半分を水酸化カルシウムパルプに吸収させてCa(OCl)を得、
【化19】
得られたCa(OCl)で飽和した溶液との交換反応によって単離された、Ca(OCl)塩を乾燥させることにより、塩素を中性次亜塩素酸カルシウムとして利用することができる。
【0053】
交換反応を行うことによって得られ、Ca2+イオン、Naイオン、Clイオン、OClイオンを含み、活性塩素を含有する母液から、所定量のNaOHを溶液に導入することによって、以下の反応に従って主要量のカルシウムを沈殿させる。
【化20】
【0054】
以下の反応に従って所定量のNaCOを添加することによって、残留量のカルシウムを溶液から除去する。
【化21】
【0055】
CaCOの混合物を含む得られたCa(OH)沈殿物をCa(OH)パルプの塩素化のプロセスに誘導する。カルシウム沈殿後に形成され、同じ割合の活性塩素を含有する溶液を、NaOH溶液及びCa(OH)パルプの塩素化のプロセスに戻す。
【0056】
LiCO塩の形態でリチウム塩を含有する材料からLiOH・HOを製造するためのプロセス流れ図を図3に示す。スキームから分かるように、LiOH・HOの調製へのLiCO塩の利用は、LiSO溶液の形態(選択肢A)又はLiCl溶液の形態(選択肢B、選択肢C)のいずれかで循環する、膜電解プロセスにおいてリチウムが枯渇した陽極液の再生成のための試薬としてこの塩を使用することである。ここで、選択肢Aによると、使用済み陽極液は硫酸の完全な中和と同時にリチウムで強化され、中和は、蒸発に供した使用済み陰極液の再利用によって得られた炭酸リチウムを含む、所定量の初期炭酸リチウム塩と混合することによって行われる。この選択肢によると、陰極水素は、加熱蒸気の生成のための燃焼ガス成分として使用される。製造プロセスが選択肢Bに従う場合、濃塩酸を得るために陰極水素と陽極塩素を使用し、これらの混合物を燃焼させ、水による塩化水素の吸収を行うことによって濃塩酸を得る(反応23)。得られた酸を、硫酸イオンから精製された陽極液流と混合し、ここで陽極液流は、電解中に硫酸イオンが富化された循環陽極液流から所定の体積流量で引き出したものである。濃塩酸と、硫酸イオンから精製された陽極液との混合溶液を、所定量の初期LiCO塩及び脱塩水と接触させて、所定濃度のLiCl溶液を生成し、これをカルシウム及びマグネシウムからの精製後に、膜電解プロセスにおける循環陽極液流にLiClを補充する溶液として使用する。選択肢Bによると、NH:Clのモル比を2:3とした条件でアンモニアと混合して、陽極塩素を脱塩水に吸収させて、6Nの塩酸溶液を生成する(反応25)。得られた酸を、硫酸イオンから精製された陽極液流と混合し、ここで陽極液流は、電解中に硫酸イオンが富化された循環陽極液流から所与の体積流量で引き出したものである。塩酸と硫酸イオンから精製された陽極液との混合溶液を所定量の初期LiCO塩と接触させて、所定濃度のLiCl溶液を生成し、これをカルシウム及びマグネシウムからの精製後に、膜電解プロセスにおける循環陽極液の補充溶液として使用する。この選択肢による陰極水素は、加熱蒸気の生成のための燃料として使用される。選択肢Bによると、吸収剤の汚染を防ぐ材料組成の所定量の還元剤、例えばアンモニア、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、カルバミド、ギ酸の存在下で、以下の反応に従ってLiCl溶液を生成する。
【化22】
【0057】
陽極塩素の吸収のための水性パルプは、脱塩水、初期LiCO塩の形態で使用済み蒸発リチウム陰極液から得られた炭酸リチウム、適切な還元剤、及び電解中に硫酸イオンが富化された循環陽極液流から所定の体積流量で引き出した、硫酸イオンから精製された陽極液流から調製される。この選択肢による陰極水素は、加熱蒸気の生成のための燃料として使用される。
【0058】
LiSOとLiCOとの混合物の形態でリチウム塩を含有する材料からLiOH・HOを製造するプロセス流れ図を図4に示す。この流れ図は、図1に示す流れ図と実質的に同じである。その違いは、使用済み陽極液の所定のリチウム濃度への強化(リチウムの富化)を、硫酸の完全中和の手順を行う前に、所定量の、LiSOとLiCOとの初期混合塩を溶解することによって行う点である。他の点では、流れ図は同一である。
【0059】
LiClとLiCOとの混合物の形態でリチウム塩を含有する材料からLiOH・HOを製造するプロセス流れ図を図5に示す。この流れ図は、図2に示す流れ図と実質的に同じである。その違いは、使用済み(リチウム富化)陽極液の強化を、LiClとLiCOとの初期混合塩の塩酸による脱炭素化によって得られた濃縮LiCl溶液と、使用済み蒸発陰極液の再利用によって得られた炭酸塩とを混合することによって行う点である。他の点では、流れ図は同一である。
【0060】
LiSOとLiClとの混合物の形態でリチウム塩を含有する材料からLiOH・HOを製造するプロセス流れ図を図6に示す。この技術の顕著な特徴は、2種の高溶解性リチウム塩である塩化リチウム及び硫酸リチウムが、同時に陽極プロセスに関与し、反応(1)及び反応(21)が陽極で同時に起こり、陽極コンパートメントにおいてHSO、Cl及びOが同時に形成される点にある。この理由から、白金めっきチタン製の陽極による混合塩の膜電解プロセスの信頼性が確実となる。ここで、陰極プロセスは変化しないままであり、高溶解性のLiSO塩及びLiCl塩の溶液の膜電解の場合と全く同様に起こる。
【0061】
LiSOとLiClとの混合溶液の電気化学的変換に基づくLiOH・HOの調製は、陽極液を硫酸イオンから精製する特別なプロセスを必要としない。他の点では、図6に記載される技術は、図1及び図2の流れ図のプロセス工程の組合せである。
【0062】
LiSO、LiCl及びLiCOの混合物の形態でリチウム塩を含有する材料からLiOH・HOを製造のプロセス流れ図を図7に示す。この流れ図は、LiSOとLiClとの混合塩の処理の流れ図(図6)とは、使用済み陽極液の強化のプロセスが硫酸中和の手順の前に行われる点でのみ異なる。他の点では、流れ図は同一である。
【実施例1】
【0063】
膜電解ユニットと、陰極液をLiOH・HOに処理するユニットと、循環陽極液に供給するための補充リチウム塩溶液を前処理及び精製するユニットと、使用済み蒸発陰極液を処理するユニットと、陽極ガス利用ユニットとを備える実験室規模の装置を使用して、様々なリチウム塩:硫酸リチウム、塩化リチウム、硫酸塩と塩化リチウムとの混合物からLiOH・HOを製造する技術プロセスの比較試験を行った。実験室装置で再現された技術プロセスを図1図2に示す流れ図に基づいて行った。ここで、硫酸塩を含有する陽極液を、この目的で消石灰を使用する選択肢に従って中和し、塩化物を含有する陽極液を、予め塩酸に溶解した炭酸リチウムで強化し、陽極塩素を中性次亜塩素酸カルシウムとして利用した。以下のリチウム塩を試験に使用した:テクニカルグレードの硫酸リチウム一水和物(組成を表1に示す)及びTU2152-017-07622236-2015に準拠した塩化リチウム(組成を表2に示す)。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
硫酸を中和し、陽極塩素を中性次亜塩素酸カルシウムとして利用するために使用される水酸化カルシウムは、水和したテクニカルグレードのCaCl・6HO塩を溶解することによって生成したCaClの溶液からの沈殿(沈殿剤としてNaOHを用いる)によって得た。
【0067】
特許請求される方法による様々なリチウム塩からのLiOH・HO製造技術の主要な比較パラメーター及び特性を表3に示す。それぞれの得られたLiOH・HOサンプルの組成を表4に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
結果から分かるように、特許請求される方法は、試験したリチウム塩からLGO-1 GOST 8595-83グレードの要件を満たす高品質のLiOH・HO生成物を製造することができる。ここで、高溶解性リチウム塩の溶液からLiOH溶液への膜電解変換プロセスの電気化学的パラメーターは、ほぼ同様の特性を有する。
【0071】
試験から、陽極塩素を中性次亜塩素酸カルシウムに再利用することを含む、特許請求される方法において提案される選択肢に従って陽極塩素を利用した場合、生成した生成物のサンプル中の活性塩素の含有量が62重量%~63重量%であり、水不溶性不純物の含有量が4.3%を超えないことも示された。陽極塩素の利用度は99.7%である。
【0072】
また、試験により、使用済み硫酸陽極液中の硫酸の中和を、化学量論量のCa(OH)を添加することによって行うべきであることが示されたが、但し、この操作は、過剰なCa(OH)を導入する必要なしに陽極液中のHSOを完全に中和するために2工程で行われる。
【0073】
ここで、第1の工程では、初期使用済み陽極液と、CaSO・2HO及びCa(OH)の混合物である第2の工程からの使用済み沈殿物との接触は、全ての遊離Ca(OH)からCaSO・2HOへの確実な変換及び得られたCaSO・2HO沈殿物の濾過による引出しとともに行われる。未反応のHSO残渣を含有する濾液を、第1の中和工程に供給された初期使用済み陽極液に含まれるHSOに化学量論比で取り込まれたCa(OH)と接触させる。第2の工程での相の接触時に、CaSO・2HO及びCa(OH)の混合沈殿物が形成され、硫酸の完全な中和が確実となる。陽極液とCa(OH)との接触は、激しい混合の条件下で行われる。
【実施例2】
【0074】
Nafion-438、CTIEM-3及びMF-4SK-100の3つの陽イオン交換膜のLiSO溶液及びLiCl溶液からLiOH溶液への電気化学的変換に対する適合性を試験するために、3つの膜電解ユニットを含む実験台を使用した。総試験時間は、219時間の作業時間であった。以下のものを陽極として試験した:LiCl溶液の電解については、酸化ルテニウムで被覆されたチタン(ORTA)、LiSO溶液の電解については、白金めっきチタン。結果を表5に示す。
【0075】
【表5】
【0076】
結果から分かるように、試験した全ての膜が、LiOH溶液の形態で陰極液を得るための硫酸リチウム溶液及び塩化リチウム溶液の膜電解に適している。ここで、試験した膜のセル電圧及びLiOH電流出力のような膜電解のパラメーターは、実質的に同等である。試験により、硫酸塩溶液の電解中の膜電解ユニットのセルの電圧が塩化物含有溶液の電解中の電圧よりも常に高いことから、LiOH溶液を得るためのLiCl溶液の電解のエネルギー消費がより少ないことも示された。この研究結果は、LiSO溶液の電気伝導率がLiCl溶液と比較して高いことに起因する。
【0077】
得られたデータから、LiSO溶液及びLiCl溶液の変換に、試験したものと同等であり、これらの媒体中で化学的に安定した他の陽イオン交換膜を使用し得ることが分かる。
【実施例3】
【0078】
図3に示す流れ図に従って作製した実験室装置を、電解プロセスから引き出したLiCl及びLiSOが枯渇した使用済み電解質から、LiCl溶液及びLiSO溶液の膜電解のプロセスに補充するために陽極液循環回路に供給されるLiCl及びLiSOの再生成に使用することによって、炭酸リチウムからLiOH・HOを製造する技術を試験するために使用した。ここで、この補充LiSO溶液の再生成は、使用済み硫酸塩含有陽極液の中和の工程で所定量のLiCOと使用済み陽極液とを直接接触させることによって行った。補充LiCl溶液の再生成は、2つの選択肢に従って行った。第1の選択肢によると、陽極塩素をアンモニアとの混合物(NH:Clのモル比=2:3)の一部として脱塩水に吸収させ、所定濃度の塩酸溶液を得て、これを所定量のLiCOと接触させ、得られた溶液を、炭酸リチウムでpH7に予め中和した使用済み陽極液と混合して、LiClで強化された塩化リチウム溶液を得て、これを膜電解プロセスにおける循環陽極液の補充に使用した。第2の選択肢によると、陽極塩素を、所定量のカルバミド還元剤の存在下で、所定のLiCO含有量を有する炭酸リチウムパルプに吸収させ、所定濃度のLiCl溶液を得て、これを炭酸リチウムでpH=7に予め中和した使用済み陽極液と混合し、LiClで強化された塩化リチウム溶液を得て、これを循環陽極液の補充に使用した。SQM社(チリ)製のテクニカルグレードの炭酸リチウムを初期炭酸塩として使用した。その組成を表6に示す。
【0079】
【表6】
【0080】
使用済み陽極液流から生成された強化及び精製したリチウムの塩溶液を、蒸発により補充溶液中のLiSO及びLiClの所定濃度に調整した。実行した試験の主要パラメーターを表7に示す。得られたそれぞれのLiOH・HOサンプルの組成を表8に示す。得られた結果から、提案される方法が、テクニカルグレードの炭酸リチウムからLGO-1グレードの要件を満たす高純度の生成物としてLiOH・HOを製造し得ることが明らかに分かる。
【0081】
【表7】
【0082】
【表8】
【0083】
ここで、固体生成物(LiOH・HO)としての変換アルカリ(LiOH溶液)の回収率は、初期炭酸リチウム中のナトリウム及びカリウムの含有量に大きく依存する。
【実施例4】
【0084】
SO塩中に存在する硫酸イオンの利用のためのアセンブリである実験台を、使用済み陽極液とアンモニアとを接触させ、(NHSO塩を陽極液中のLiSOの濃度の上昇を伴う蒸発中にLiSO及び(NHSOの混合使用済み溶液から塩析させることによって、使用済み硫酸塩陽極液に含まれる硫酸を(NHSO塩に変換することによる利用選択肢の試験に使用した。(NHSO塩の形態で使用済み陽極液に含まれる硫酸を利用する技術プロセスの選択肢を図1に示す。得られた結果を表9に示す。
【0085】
【表9】
【0086】
脱塩水による3工程の向流洗浄及び110℃での乾燥後に得られた(NHSO塩のサンプルは、(NHSOの形態で99.7重量%の主要物質を含有し、リチウム不純物の含有量は、0.002重量%未満であった。これにより、アンモニア利用度は99.84%であった。
【実施例5】
【0087】
以下の組成(g/dm):LiOH-120;NaOH-8.7;KOH-0.3を有する10dmの使用済み陰極液流を、定常状態で作業条件にした装置で、特許請求される方法(図1図7)に従って再利用した。再利用により1,850gの乾燥LiCOが得られ、主要物質の含有量は99.9%であり、ナトリウム及びカリウム不純物の総含有量は0.01%未満であった。得られたNaHCO塩及びKHCO塩の乾燥沈殿物の総重量は188.1gであり、残留リチウム含有量は0.002%未満であった。
【0088】
参照文献
1.ロシア国特許第2071819号、1997年1月20日公開
2.国際公開第9859385号、1998年公開
3.ロシア国特許第2157338号、2000年10月10日公開
4.ロシア国特許第21967335号、2003年1月20日公開
5.ロシア国特許第2656452号、2018年6月5日公開
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-11-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸リチウム、塩化リチウム、塩化リチウム一水和物、炭酸リチウム又はそれらの混合物から選択されるリチウム塩を含有する材料から高純度水酸化リチウム一水和物を製造するための方法であって、
電磁セルの陰極回路と陽極回路とを隔てる膜として陽イオン交換膜を用いて前記リチウム塩水溶液を膜電解し、前記膜電解を、水酸化リチウム溶液の形態の陰極液と、リチウム塩溶液の形態の陽極液とを循環させる様式で実施し、前記膜電解のための陰極がニッケルめっきステンレス鋼製であり、前記陽イオン交換膜が、アルカリ及び酸に対して耐性を示す膜から選択されるものであり、
循環陰極液流から任意容量の前記陰極液を引き出し、引き出した前記容量の前記陰極液を蒸発させて、水酸化リチウム一水和物の結晶を得、
得られた結晶を母液から分離し、水で洗浄し、乾燥させて、最終的な高純度水酸化リチウム一水和物を得る
ことを含み、さらに以下の工程:
電解中に形成された陰極ガス及び陽極ガスを除去する工程と、
前記除去の結果として得られた使用済み洗浄溶液流の一部を陰極液蒸発プロセスに供給し、前記陰極液蒸発プロセスに供給された前記使用済み洗浄溶液の一部を、引き出した使用済み陽極液流の再利用に使用する工程と、
水酸化リチウム一水和物の結晶の分離後に形成される母液の一部を前記陰極液蒸発プロセスに戻す工程と、
前記蒸発プロセスから引き出した、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムを添加物として含む水酸化リチウムの濃縮溶液である使用済み陰極液流の一部を再利用して、炭酸リチウムを得る工程と、
前記リチウム塩の元の供給源から調製されたリチウム塩の濃縮溶液と、引き出した前記使用済み陽極液流の再利用の結果として得られたリチウム塩の溶液とを、循環陽極液流に補充する工程と、
を特徴とする、方法。
【請求項2】
水酸化ナトリウムと水酸化カリウムを添加物として含む濃縮水酸化リチウム溶液である、前記蒸発プロセスから引き出した前記使用済み陰極液流を、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素リチウムを含有する水溶液流と混合することによって、前記陰極液流の再利用を行い、炭酸リチウムの固相と、NaCO、KCO、LiCOを含有する炭酸塩溶液との混合物である、前記再利用の結果得られたパルプから水を除去することによって濃縮し、前記炭酸リチウムの固相を液相から分離し、前記液相を二酸化炭素と直接接触させることによって炭素付与して、前記炭酸塩溶液を、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素リチウムの溶液中の炭酸水素ナトリウムの固相と炭酸水素カリウムの固相との混合物である炭酸水素塩懸濁液に変換し、得られた懸濁液を濾過して、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム及び炭酸水素リチウムを含有する溶液から前記炭酸水素ナトリウムの固相及び炭酸水素カリウムの固相を分離し、これを水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを含有する前記蒸発プロセスから引き出した前記使用済み陰極液流との混合に誘導する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
引き出した前記使用済み陽極液流の再利用における前記陰極液蒸発プロセスに供給する前記使用済み洗浄溶液の一部を、前記リチウム塩溶液を不純物から化学的に精製する工程におけるアルカリ試薬として、及び/又はイオン交換精製の工程においてイオン交換体をH形態からLi形態に変換するための再生溶液として使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記リチウム塩水溶液の直流電流密度が1kA/m~4kA/mであり、前記膜電解用の陽イオン交換膜がNafion-438、CTIEM-3、MF-4SK-100タイプ又はそれと同等の膜であり、Lewatit 208-TPイオン交換体を前記イオン交換精製の工程で使用する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記リチウム塩含有材料として硫酸リチウムを使用するとき、白金、イリジウム、ルテニウム又はタンタルから選択される貴金属で被覆されたチタンを膜電解プロセスにおける陽極として使用して、LiSOの枯渇及びHSOの富化を受けた前記循環陽極液流から陽極液流を常に引き出し、引き出した前記陽極液流をHSOが完全に中和されるまでCaO又はCa(OH)又はCaCOと接触させ、得られたCaSO・2HOの固相をLiSO溶液から分離し、前記LiSO溶液を初期硫酸リチウム塩と接触させてそれを溶解して硫酸リチウム溶液を得、得られた溶液に前記使用済み洗浄溶液を添加し、続いて前記溶液に含まれるカルシウム及びマグネシウムが不溶性化合物であるCaCO及びMg(OH)・3MgCO・3HOに変換されるまで、前記引き出した陽極液流を中和するプロセスに由来する二酸化炭素で前記溶液に炭素付与し、得られた懸濁液を濾過して、沈殿物を前記LiSO溶液から分離し、化学的に精製された前記LiSO溶液を、Li形態のLewatit 208-TPイオン交換体又はLi形態の同等のイオン交換体の層に通すことによるイオン交換精製に誘導し、イオン交換によって精製された前記LiSO溶液を、前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流の補充溶液として使用し、使用済みイオン交換体を2.0Nの硫酸溶液での処理である第1の工程と、2.0NのLiOH溶液での処理である第2の工程の2つの工程で再生し、イオン交換プロセスからの使用済み再生液を化学的精製の前に前記使用済み陽極液流と混合し、電解の副生成物である陰極水素を電解ユニットの陰極ガス分離装置から天然ガス流とともに排出し、溶液及び前記陰極液を蒸発させるプロセスにおいて熱媒体として使用する加熱蒸気を生成するための燃料として、排出されたガス状混合物を蒸気発生装置に誘導する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
LiSOの枯渇及びHSOの富化を受けている前記循環陽極液流から常に引き出される任意容量の前記陽極液を空気-アンモニア混合物と接触させてHSOを中和し、LiSOと(NHSOとの混合溶液を得、これを蒸発させて(NHSOを塩析させ、蒸発溶液中のLiSOの濃度を増加させ、残りの(NHSOを含む前記蒸発溶液を任意容量の使用済みアルカリ洗浄溶液と混合し、混合溶液を、前記使用済み陽極液流と前記アンモニア-空気混合物とを接触させるプロセスに由来する空気流と接触させて、残りのアンモニアを前記LiSO溶液から除去し、気体アンモニアを含有する前記空気流に対してアンモニア源からのアンモニアで富化し、前記使用済み陽極液流を中和するプロセスに誘導し、アンモニアを含まない前記LiSO溶液に対して、初期LiSO塩を溶解してLiSOで強化し、且つ不純物からの精製を実施した後に、前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流の補充溶液として使用する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記リチウム塩含有材料として塩化リチウム又は塩化リチウム一水和物を使用するとき、酸化ルテニウムで被覆されたチタン陽極を前記膜電解プロセスに使用し、任意容量の前記陽極液を、LiClの枯渇が行われている前記循環陽極液流から常に引き出し、引き出した前記陽極液流を初期塩化リチウム塩と接触させて、引き出した前記陽極液流中のLiCl濃度を所定の値とし、引き出してLiClを富化した前記陽極液流に対して、金属陽イオン不純物からの化学的精製に加えて、硫酸イオンからの精製を塩化バリウムの添加による硫酸イオンの不溶性BaSO沈殿物への変換によって実施し、液相を前記沈殿物から分離し、イオン交換精製後に、前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流の補充溶液として使用し、前記ガス分離装置から引き出した陰極水素及び陽極塩素を混合して火炎燃焼に供し、得られた塩化水素を脱塩水に吸収させて36%濃塩酸を生成する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
ガス分離装置から引き出した前記陽極塩素をアンモニア水に吸収させて、NH:Clのモル比が8:3の条件でNHCl溶液、NH:Clのモル比が2:3の条件で6NのHCl溶液をそれぞれ生成し、得られたNHCl溶液を蒸発させ、NHClを結晶化及び乾燥させ、前記ガス分離装置から引き出した前記陰極水素を前記加熱蒸気の生成のための熱媒体として利用する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ガス分離装置から引き出した全ての陽極塩素をNaOH溶液に吸収させて次亜塩素酸ナトリウムの消毒溶液を生成するか、又は引き出した塩素の体積流量の0.5をNaOH溶液に吸収させて、次亜塩素酸ナトリウムで飽和した溶液を生成し、引き出した陽極塩素の体積流量の残りの0.5をCa(OH)懸濁液に吸収させて、次亜塩素酸カルシウムで飽和した溶液を生成し、生成した前記溶液を混合して中性次亜塩素酸カルシウムを塩析させ、これを母液から分離し、乾燥させ、得られた母液に初めに所定量のNaOHを添加し、次いでNaCOを添加することによってカルシウムを沈殿させ、添加物としてのCaCOおよびCa(OH)を含有する沈殿物を溶液から分離して、次亜塩素酸イオンの形態で活性塩素を含有するCa(OH)懸濁液の調製に誘導し、前記溶液を2等分し、一方をNaOHと混合して塩素化プロセスに誘導し、次亜塩素酸ナトリウム溶液を得、もう一方をCa(OH)と混合して同様に塩素化プロセスに誘導し、次亜塩素酸カルシウム溶液を得る、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記リチウム塩含有材料として炭酸リチウムを使用するとき、LiCOを高溶解性のリチウム塩である塩化リチウム又は硫酸リチウムに変換することによって炭酸リチウム塩を陽極液の再生成に使用し、炭酸リチウム塩を陽極液として電解ユニットの陽極回路内を循環させ、膜電解中にLiCl又はLiSOの枯渇を行う、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記陽極液として塩化リチウムの水溶液を使用するとき、酸化ルテニウムで被覆されたチタン陽極を前記膜電解プロセスに使用し、前記陰極水素及び前記陽極の塩素を混合後に燃焼させて高温の塩化水素蒸気を生成し、前記塩化水素蒸気を冷却し、段階的向流様式で脱塩水に吸収させて、HCl蒸気の経路に沿って第1の吸収工程から引き出された36%濃塩酸流を得、得られた濃塩酸流と、硫酸イオンからの精製のために前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流から引き出し、BaClを試薬として用いて硫酸イオンを除いた精製流とを混合し、前記濃塩酸と、硫酸イオンから精製した前記陽極液との混合流を初期炭酸リチウム及び脱塩水と接触させてLiCl溶液流を得て、これをカルシウム及びマグネシウムの不純物から精製した後に、前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流の補充溶液として使用する、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
NH:Clのモル比が2:3となるアンモニアの存在下で前記陽極塩素を脱塩水に吸収させて6Nの塩酸溶液を得、これを硫酸イオンからの精製のために前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流から引き出して化学的に精製した陽極液流と混合し、前記塩酸溶液と、硫酸イオンから精製した前記陽極液との混合流を前記初期炭酸リチウムと接触させてLiCl溶液流を得、これをカルシウム及びマグネシウムの不純物から精製した後に、前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流の補充溶液として使用し、前記陰極水素を前記加熱蒸気の生成のための燃料として使用する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記陽極塩素を、塩素吸収時の吸収剤が外来の陽イオン及び陰イオンで汚染されるのを防ぐ材料組成の元素状塩素の還元剤の存在下で炭酸リチウムの水性パルプに吸収させて吸収生成物として塩化リチウム溶液を得、これをカルシウム及びマグネシウムの不純物から精製した後に、前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流の補充溶液として使用し、ここで、前記陽極塩素の吸収のための前記水性パルプは、脱塩水、前記使用済み陰極液から得られた炭酸リチウム、初期塩の形態の炭酸リチウム、還元剤、及び硫酸イオンから精製するために前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流から引き出して、試薬を用いて硫酸イオンから精製した前記陽極液流から調製され、前記陰極水素は前記加熱蒸気の生成のための燃料として使用する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記陽極液として硫酸リチウムの水溶液を使用するとき、白金、イリジウム、タンタル又はルテニウムから選択される貴金属で被覆されたチタンを前記電解プロセスにおける前記陽極として使用し、前記陽極液循環回路から引き出し、硫酸リチウムを枯渇させ、硫酸を富化した前記陽極液流を前記初期炭酸リチウムと接触させて硫酸リチウム溶液を得、これを不純物から精製した後に前記陽極液循環回路の補充溶液として使用する、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
前記リチウム塩含有材料としてリチウム塩である硫酸リチウム及び炭酸リチウムの混合物を使用するとき、LiSOの枯渇及びHSOの富化を受けた前記循環陽極液流から所定容量の前記陽極液流を常に引き出し、引き出した前記陽極液流をLiSO塩とLiCO塩との初期混合物と接触させて残留量のHSOを含有する硫酸リチウム溶液を得、得られた溶液を前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流の補充に適したLiSO溶液に再利用する、請求項4に記載の方法。
【請求項16】
前記リチウム塩含有材料として塩化リチウム塩と炭酸リチウム塩との混合物を使用するとき、塩化リチウム塩と炭酸リチウム塩との初期混合物を、塩酸溶液、及び電解中にLiClの枯渇を受けた前記循環陽極液流から引き出した前記陽極液流と接触させて、所定濃度の塩化リチウム溶液を生成し、得られた塩化リチウム溶液を不純物から精製した後に、前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流の補充溶液として使用する、請求項4に記載の方法。
【請求項17】
前記リチウム塩含有材料として硫酸リチウム塩と塩化リチウム塩との混合物を使用するとき、白金、イリジウム、タンタル又はルテニウムから選択される貴金属で被覆されたチタンを前記膜電解プロセスにおける前記陽極として使用し、硫酸リチウム及び塩化リチウムの枯渇並びにHSOの富化を受けた前記循環陽極液流から前記陽極液流を引き出して、HSOが完全に中和されるまで所定量のCaO又はCa(OH)又はCaCOと接触させ、得られたLiSOとLiClとの混合溶液をCaSO・2HO沈殿物から分離し、LiSO塩とLiCl塩との初期混合物と接触させて溶解し、所定濃度のリチウムを含むLiSOとLiClの混合溶液を得て、これを不純物から精製した後に前記膜電解プロセスにおける前記循環陽極液流の補充溶液として使用し、陰極水素を加熱蒸気として利用する、請求項4に記載の方法。
【請求項18】
再利用後にLiSO及びLiClの枯渇を受けた前記循環陽極液流から常に引き出す前記陽極液の容量を、前記循環陽極液流にLiSO及びLiClを補充するための混合溶液として使用し、前記ガス分離装置から引き出した前記陽極塩素を36%塩酸又はNHCl又は次亜塩素酸ナトリウム溶液又は中性次亜塩素酸カルシウムに再利用する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記リチウム塩含有材料として硫酸リチウム塩、塩化リチウム塩及び炭酸リチウム塩の混合物を使用するとき、LiSO及びLiClの枯渇並びにHSOの富化を受けた前記循環陽極液流から任意容量の前記陽極液を常に引き出し、これを初めにLiSO塩、LiCl塩及びLiCO塩の初期混合物と接触させて所定のリチウム濃度の混合溶液を生成し、生成した混合溶液を、前記膜電解プロセスにおける前記陽極液循環流の補充溶液として使用するLiSOとLiClとの混合溶液に再利用する、請求項4に記載の方法。
【国際調査報告】