(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】低電圧犠牲電極
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20240308BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240308BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240308BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240308BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240308BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240308BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240308BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240308BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240308BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240308BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20240308BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20240308BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20240308BHJP
H01M 50/107 20210101ALI20240308BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240308BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20240308BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20240308BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/052
H01M4/66 A
H01M4/13
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/48
H01M4/38 Z
H01M4/587
H01M4/485
H01M4/80 C
H01M10/0587
H01M50/107
H01M50/103
H01M10/0567
H01M50/119
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560179
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 US2021065097
(87)【国際公開番号】W WO2022211866
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517182778
【氏名又は名称】アメリカン・リシアム・エナジー・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】American Lithium Energy Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ジアン
(72)【発明者】
【氏名】コンペラ,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】フー, リンファー
【テーマコード(参考)】
5H011
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H011AA02
5H011CC06
5H017AA03
5H017AS02
5H017CC01
5H017CC05
5H017CC25
5H017EE01
5H017EE06
5H029AJ13
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK04
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029DJ07
5H029DJ13
5H029EJ01
5H029EJ04
5H050AA18
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA10
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA03
5H050DA04
5H050DA07
5H050FA05
5H050FA13
(57)【要約】
電池セルは、正極集電体と結合される正電極と、負極集電体に結合される負電極とを含んでもよい。電池セルは、正電極ではなく負電極に結合される犠牲電極を更に含んでもよい。犠牲電極は、負極集電体を形成する第2の材料よりも分解電圧が低い第1の材料から形成されてもよい。このように、電池セルが該電池セルの最小電圧未満で放電される間に、負極集電体の代わりに犠牲電極が分解されてもよい。そうすることで、犠牲電極は、電池セルが低電圧状態又はゼロ電圧状態に放電される場合でも、電池セルの容量及びサイクル寿命を維持してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルであって、
正極集電体に結合される正電極と、
負極集電体に結合される負電極と、
前記負電極に結合されるが、前記正電極には結合されない犠牲電極であって、前記電池セルが該電池セルの最小電圧未満で放電される間に前記負極集電体の代わりに前記犠牲電極が分解するように、前記負極集電体を形成する第2の材料よりも分解電圧が低い第1の材料から形成される、犠牲電極と、
を備える電池セル。
【請求項2】
前記負極集電体が銅(Cu)を含む、請求項1に記載の電池セル。
【請求項3】
前記犠牲集電体は、クロム(Cr)、鉄(Fe)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、リチウム(Li)合金、マグネシウムアルミニウム合金(MgAl)、マグネシウムチタン(MgTi)、カルシウムマグネシウム(CaMg)、リチウム化シリカ酸化物、導電性ポリマー、又は導電性ポリマー複合材料のうちの1つ以上を含む、請求項1又は2に記載の電池セル。
【請求項4】
前記犠牲電極は、前記正電極を備える第1の材料層、前記負電極を備える第2の材料層、及び前記第1の材料層と前記第2の材料層との間に介在するセパレータを備える第3の材料層を巻き付けることによって形成されるジェリーロールの中心にあるキャビティ内に配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項5】
前記犠牲電極を備える前記第1の材料は、前記負極集電体を備える前記第2の材料の第1の部分にコーティングされ、一方、前記負電極を備える第3の材料が、前記負極集電体を備える前記第2の材料の第2の部分にコーティングされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項6】
前記犠牲電極を備える前記第1の材料は、前記負極集電体を備える前記第2の材料にコーティングされる混合物を形成するように前記負電極を備える第3の材料と混合される、請求項1~5のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項7】
前記犠牲電極の分解によって前記犠牲電極から枯渇される金属イオンを受けるように構成される補助電極
を更に備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の電池セル。
【請求項8】
前記補助電極を備える第3の材料が、前記正極集電体を備える第4の材料の第1の部分にコーティングされ、前記正電極を備える第5の材料が、前記正極集電体を備える前記第4の材料の第2の部分にコーティングされる、請求項7に記載の電池セル。
【請求項9】
前記補助電極は、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化銅(CuO)、酸化鉄、酸化マンガン(MnO
2)、酸化スズ(例えば、SnO、SnO
2など)、硫化鉄(FeS)、又はニッケルリン(NiP)のうちの1つ以上を含む、請求項7又は8に記載の電池セル。
【請求項10】
前記正電極は、高ニッケルリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、ドープされたリチウムニッケル酸化物、ドープされた又は純粋なリチウムマンガン酸化物、リチウム鉄、リン酸バナジウム、ドープされた又は純粋なリチウムコバルト酸化物(LiCoO
2)、リチウムバナジウム酸化物、又はリチウムフッ素のうちの1つ以上を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項11】
前記負電極は、ケイ素、酸化ケイ素、グラファイト、炭素、スズ、酸化スズ、ゲルマニウム、硝酸塩、又はリチウムチタン酸化物のうちの1つ以上を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項12】
前記正極集電体及び/又は前記負極集電体が多孔質材料から形成される、請求項1~11のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項13】
前記多孔質材料は、エキスパンド金属箔、有孔箔、又は複合炭素系箔のうちの1つ以上を含む、請求項12に記載の電池セル。
【請求項14】
角形電池セル又は円筒形電池セルを備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項15】
電解質と、
前記正電極と前記負電極との間に介在するセパレータと、
前記正極集電体と結合される前記正電極と、前記負極集電体と結合される前記負電極と、前記セパレータと、前記電解質とを収容するケースと、
前記正電極と結合され、前記電池セルのヘッダに溶接される正極タブと、
前記負電極と結合され、前記ケースに溶接される負極タブと、
を更に備える、請求項1~14のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項16】
固体電解質界面(SEI)安定剤を更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項17】
前記固体電解質界面(SEI)安定剤がフッ素系化合物を含む、請求項17に記載の電池セル。
【請求項18】
前記犠牲電極を備える前記第1の材料は、前記負電極を備える前記第2の材料の表面に溶接される、請求項1~17のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項19】
前記犠牲電極を備える前記第1の材料は、前記負電極を備える前記第2の材料の1つ以上の端部に溶接される、請求項1~18のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項20】
前記犠牲電極は、前記第1の材料を前記負極集電体の第1の表面及び/又は前記電池セルのケースの第2の表面に噴射することによって形成される、請求項1~19のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項21】
前記犠牲電極は、前記負電極に結合される前記電池セルの金属ケースに結合されることによって前記負電極に結合される、請求項1~20のいずれか一項に記載の電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2021年3月29日に出願された「低電圧犠牲電極」と題される米国仮出願第63/167,570号、2021年11月12日に出願された「低電圧犠牲電極」と題される米国仮出願第63/279,019号、及び2021年11月30日に出願された「低電圧犠牲電極」と題される米国仮出願第63/284,438号の優先権を主張し、これらの仮出願の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に記載の主題は、一般に電池技術に関し、より具体的には、低電圧曝露又はゼロ電圧曝露を受ける電池セルのための保護機構に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム(Li)イオン電池セルなどの金属イオン電池セルの高エネルギー密度及び高電流出力は、金属イオン電池セルが様々な高エネルギー及び高出力用途に適してもよいことを意味する。しかしながら、金属イオン電池セルは、金属イオン電池セルの充電及び放電中に生じる寄生反応によって引き起こされる内部形態学的変形を受けやすくてもよい。内部形態学的変形の発生は、金属イオン電池セルの容量及びサイクル寿命を低下させてもよい。更に、金属イオン電池セルの電極上のデンドライトの形成などの幾つかの内部形態学的変形は、重大な安全上の危険を引き起こしてもよい。
【発明の概要】
【0004】
電池及び電池構成要素を含むシステム、方法、及び物品が提供される。本主題の幾つかの実施では、低電圧犠牲電極を有する電池が提供される。電池は、正極集電体に結合される正電極と、負極集電体に結合される負電極と、負電極に結合されるが、正電極には結合されない犠牲電極であって、電池セルが該電池セルの最小電圧未満で放電される間に負極集電体の代わりに犠牲電極が分解するように、負極集電体を形成する第2の材料よりも分解電圧が低い第1の材料から形成される、犠牲電極とを含んでもよい。
【0005】
幾つかの変形例において、以下の特徴を含む本明細書に開示される1つ以上の特徴は、任意選択的に、任意の実行可能な組み合わせに含めることができる。負極集電体は銅(Cu)を含んでもよい。
【0006】
幾つかの変形例において、犠牲集電体は、クロム(Cr)、鉄(Fe)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、リチウム(Li)合金、マグネシウムアルミニウム合金(MgAl)、マグネシウムチタン(MgTi)、カルシウムマグネシウム(CaMg)、リチウム化シリカ酸化物、導電性ポリマー、又は導電性ポリマー複合材料のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0007】
幾つかの変形例において、犠牲電極は、正電極を備える第1の材料層、負電極を備える第2の材料層、及び第1の材料層と第2の材料層との間に介在するセパレータを備える第3の材料層を巻き付けることによって形成されるジェリーロールの中心にあるキャビティ内に配置されてもよい。
【0008】
幾つかの変形例において、犠牲電極を備える第1の材料は、負極集電体を備える第2の材料の第1の部分にコーティングされてもよく、負電極を備える第3の材料が、負極集電体を備える第2の材料の第2の部分にコーティングされる。
【0009】
幾つかの変形例において、犠牲電極を備える第1の材料は、負極集電体を備える第2の材料にコーティングされる混合物を形成するように負電極を備える第3の材料と混合されてもよい。
【0010】
幾つかの変形例において、電池セルは、犠牲電極の分解によって犠牲電極から枯渇される金属イオンを受けるように構成される補助電極を更に備えてもよい。
【0011】
幾つかの変形例において、補助電極を備える第3の材料が、正極集電体を備える第4の材料の第1の部分にコーティングされてもよく、正電極を備える第5の材料が、正極集電体を備える第4の材料の第2の部分にコーティングされる。
【0012】
幾つかの変形例において、補助電極は、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化銅(CuO)、酸化鉄、酸化マンガン(MnO2)、酸化スズ(例えば、SnO、SnO2など)、硫化鉄(FeS)、又はニッケルリン(NiP)のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0013】
幾つかの変形例において、正電極は、高ニッケルリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、ドープされたリチウムニッケル酸化物、ドープされた又は純粋なリチウムマンガン酸化物、リチウム鉄、リン酸バナジウム、ドープされた又は純粋なリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムバナジウム酸化物、又はリチウムフッ素のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0014】
幾つかの変形例において、負電極は、ケイ素、酸化ケイ素、グラファイト、炭素、スズ、酸化スズ、ゲルマニウム、硝酸塩、又はリチウムチタン酸化物のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0015】
幾つかの変形例において、正極集電体及び/又は負極集電体が多孔質材料から形成されてもよい。
【0016】
幾つかの変形例において、多孔質材料は、エキスパンド金属箔、有孔箔、又は複合炭素系箔のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0017】
幾つかの変形例において、電池セルは、角形電池セル又は円筒形電池セルであってもよい。
【0018】
幾つかの変形例において、電池セルは、電解質と、正電極と負電極との間に介在するセパレータと、正極集電体と結合される正電極、負極集電体と結合される負電極、セパレータ、及び電解質を収容するケースと、正電極と結合され、電池セルのヘッダに溶接される正極タブと、負電極と結合され、ケースに溶接される負極タブとを更に含んでもよい。
【0019】
幾つかの変形例において、電池セルは、固体電解質界面(SEI)安定剤を更に含んでもよい。
【0020】
幾つかの変形例において、固体電解質界面(SEI)安定剤は、フッ素系化合物を含んでもよい。
【0021】
幾つかの変形例において、犠牲電極の第1の材料は、負電極の第2の材料の表面に溶接されてもよい。
【0022】
幾つかの変形例において、犠牲電極の第1の材料は、負電極の第2の材料の1つ以上の端部に溶接されてもよい。
【0023】
幾つかの変形例において、犠牲電極は、第1の材料を負極集電体の第1の表面及び/又は電池セルのケースの第2の表面に噴射することによって形成されてもよい。
【0024】
幾つかの変形例において、犠牲電極は、負電極に結合される電池セルの金属ケースに結合されることによって負電極に結合されてもよい。
【0025】
本明細書に記載の主題の1つ以上の変形の詳細は、添付図面及び以下の説明に記載される。本明細書に記載の主題の他の特徴及び利点は、説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになる。現在開示されている主題の特定の特徴は例示目的で記載されているが、そのような特徴は限定することを意図するものではないことを容易に理解すべきである。本開示に続く特許請求の範囲は、保護される主題の範囲を規定することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本明細書に開示された主題の特定の態様を示し、説明と共に、開示された実装形態に関連する原理の幾つかを説明するのに役立つ。図面において、
【0027】
【
図1A】本主題の実施と一致する電池セルの一例の水平断面図を示す。
【0028】
【
図1B】本主題の実施と一致する電池セルの一例の垂直断面図を示す。
【0029】
【
図1C】本主題の実施と一致する電池セルの一例の透過図を示す。
【0030】
【
図2A】本主題の実施と一致する電池セルの別の例の水平断面図を示す。
【0031】
【
図2B】本主題の実施と一致する電池セルの別の例の断面の斜視図を示す。
【0032】
【
図2C】本主題の実施と一致する電池セルの別の例の垂直断面図を示す。
【0033】
【
図3A】本主題の実施と一致するジェリーロールの例の斜視図を示す。
【0034】
【
図3B】本主題の実施と一致するジェリーロールの別の例の斜視図を示す。
【0035】
【
図4A】本主題の実施と一致する正電極及び負電極の例を示す。
【0036】
【
図4B】本主題の実施と一致する正電極及び負電極の別の例を示す。
【0037】
【
図4C】本主題の実施と一致する正電極及び負電極の別の例を示す。
【0038】
【
図5】本主題の実施と一致する多孔質集電体を有する電極の一例の断面図を示す。
【0039】
【
図6A】本主題の実施と一致する拡散経路の一例を示す電池セルの断面図を示す。
【0040】
【
図6B】本主題の実施と一致する拡散経路の別の例を示す電池セルの断面図を示す。
【0041】
【
図7】本主題の実施と一致する電池セルを組み立てるためのプロセスを示すフローチャートを示す。
【0042】
【
図8A】本主題の実施と一致するゼロ電圧曝露前後の電池セルの一例の容量及び直流抵抗(DCR)を示すグラフを示す。
【0043】
【
図8B】本主題の実施と一致するゼロ電圧曝露を受けた電池セルの一例の電圧プロファイルを示すグラフを示す。
【0044】
【
図8C】本主題の実施と一致するゼロ電圧曝露を受けた電池セルの一例のライフサイクルを示すグラフを示す。
【0045】
【
図9A】本主題の実施と一致するゼロ電圧曝露前後の電池セルの別の例の容量及び直流抵抗(DCR)を示すグラフを示す。
【0046】
【
図9B】本主題の実施と一致するゼロ電圧曝露を受けた電池セルの別の例の電圧プロファイルを示すグラフを示す。
【0047】
【
図9C】本主題の実施と一致するゼロ電圧曝露を受けた電池セルの別の例のライフサイクルを示すグラフを示す。
【0048】
【
図10】本主題の実施と一致する犠牲電極を伴う及び伴わない電池セルの例における容量対電圧の導関数解析を示すグラフを示す。
【0049】
【
図11A】本主題の実施と一致する高ニッケルリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物粉末のエネルギー分散分光法(EDS)スペクトルを示すグラフを示す。
【0050】
【
図11B】本主題の実施と一致するゼロ電圧曝露及びサイクルを受けた電池セルの正電極のエネルギー分散分光法(EDS)スペクトルを示すグラフを示す。
【0051】
【
図11C】本主題の実施と一致するゼロ電圧曝露及びサイクルを受けた電池セルの負電極のエネルギー分散分光法(EDS)スペクトルを示すグラフを示す。
【0052】
【
図11D】本主題の実施と一致するゼロ電圧曝露及びサイクルを受けた電池セルのセパレータのエネルギー分散分光法(EDS)スペクトルを示すグラフを示す。
【0053】
【
図12A】ゼロ電圧曝露前後の市販の3.5Ah 18650電池セルの一例の電圧、容量、及び直流抵抗(DCR)を示すグラフを示す。
【0054】
【
図12B】ゼロ電圧曝露を受けた市販の3.5Ah 18650電池セルの一例の電圧プロファイルを示すグラフを示す。
【0055】
【
図12C】ゼロ電圧曝露を受けた市販の3.5Ah 18650電池セルの一例のライフサイクルを示すグラフを示す。
【0056】
実用的な場合、同様の参照番号は、同様の構造、特徴、又は要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
リチウム(Li)イオン電池セルなどの金属イオン電池セルは、金属イオン電池セルが最小電圧を超えて放電されると過放電になってもよい。従来の金属イオン電池セルを過放電(又は深放電)にさらすと、金属イオン電池セルが不安定になってもよい。例えば、従来の金属イオン電池セルが低電圧状態又はゼロ電圧状態に放電されると、金属イオン電池セル内に存在する固体電解質界面(SEI)が分解し始めてもよい。固体電解質界面(SEI)は、電子の輸送及び電解質と負電極との間の更なる反応を遮断しながら金属イオン(例えば、リチウム(Li)イオンなど)の輸送を可能にすることによって、電解質分解を防止し、金属イオン電池セル内の電気化学反応を持続させてもよい。このように、劣化した固体電解質界面(SEI)は、金属イオン電池セルにおける不可逆的な容量損失に寄与してもよい。更に、劣化した固体電解質界面(SEI)を有する金属イオン電池セルは、より多くの電力が金属イオン電池セルの内部抵抗によって熱として放散されるので、より高いインピーダンスを示してもよく、したがってその負荷に供給する電力をより少なくすることができる。
【0058】
従来の金属イオン電池セルを低電圧状態又はゼロ電圧段階に放電すると、金属イオン電池セルの負極集電体が陽極腐食を受け、負極集電体から金属イオンが枯渇してもよい。負極集電体からの金属イオンは、金属イオン電池セルの電解質に溶解し、セパレータを通って移動し、金属イオン電池セルの正電極に蓄積してもよい。一方、その後の電池セルの再充電中、枯渇した金属イオンは、負電極の表面に堆積する前に電解質に再び溶解してもよい。負電極上の金属イオンの蓄積によって形成された金属デンドライトを含む金属イオン電池セルの内部形態の結果として生じる変化は、金属イオン電池セルの容量を低下させてもよい。また、負電極の表面に形成された金属デンドライトがセパレータを突き破って金属イオン電池セルの正電極に接触すると、金属イオン電池セル内で内部短絡が発生してもよい。
【0059】
低電圧又はゼロ電圧での不安定性は、金属イオン電池セルが長期貯蔵を受けてもよい用途にとって有害である。例えば、能動的使用がない場合でも、金属イオン電池セルの電圧は、自己放電、電池管理システムによる電力消費、及び/又は寄生負荷に起因して低下してもよい。他の場合では、金属イオン電池セルの直列接続されたクラスタ内の不均衡は、クラスタ内の金属イオン電池セルの1つ以上を不注意に過放電してもよい。リチウム(Li)イオン電池セルの負電極をプレリチウム化するなどの幾つかの手段は、製造プロセス中に起こるリチウムの損失を打ち消すだけである。しかしながら、負電極の表面にリチウム粉末を塗布するなどの従来のプレリチウム化技術は、負電極を高反応性にし、したがって不活性製造環境(例えば、ドライルーム)を必要とする。更に、製造の複雑さ及び安全上の危険にもかかわらず、リチウムイオン電池セルの負電極をプレリチウム化しても、リチウムイオン電池セルが長期間にわたって低電圧又はゼロ電圧状態にあるとき、負電極は陽極腐食から保護されない。例えば、リチウムイオン電池セルは、最初の充放電サイクル中に失われるリチウムを補償するために、20%未満の追加のリチウムでプレリチウム化されてもよい。最初の充放電サイクル中に失われる可能性があるより多くのリチウムでリチウムイオン電池セルをプレリチウム化すると、リチウムイオン電池セルがリチウム金属電池セルに変換されるリスクが生じてもよい。しかしながら、最初の充放電サイクル中に失われ得るリチウムのみでリチウムイオン電池セルをプレリチウム化すると、残留リチウムが消費された後、負極集電体は保護されないままになる。このように、リチウムイオン電池セルを単独でプレリチウム化することは、最初の充放電サイクル後に負電極を腐食から保護するのに十分ではない。
【0060】
本主題の幾つかの実装形態では、金属イオン電池セルは、低電圧状態又はゼロ電圧状態で金属イオン電池セルの安定性を改善するように構成された1つ以上の犠牲電極を含んでもよい。例えば、1つ以上の犠牲電極は、金属イオン電池セルの負極集電体を形成する第2の材料よりも低い分解電圧を有する第1の材料から形成されてもよい。金属イオン電池セルの負極集電体が銅(Cu)から形成される一例では、犠牲電極は、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、リチウム(Li)合金、酸化物などのうちの1つ以上から形成されてもよい。
【0061】
本主題の幾つかの実装形態では、1つ以上の犠牲電極は、金属イオン電池セルの正電極ではなく負電極に電気的に結合されることによって、金属イオン電池セルに組み込まれてもよい。例えば、1つ以上の犠牲電極は、金属イオン電池セルの金属ケースが負電極と結合されている場合、金属イオン電池セルの負電極又は金属イオン電池セルの金属ケースと結合されてもよい。犠牲電極は、金属イオン電池セルが低電圧状態又はゼロ電圧状態にあるときに、負極集電体及び/又は固体電解質界面(SEI)の分解を防止してもよい。例えば、金属イオン電池セルが低電圧状態又はゼロ電圧状態にあるとき、犠牲電極は、負極集電体及び/又は固体電解質界面(SEI)の代わりに分解し、それによって負極集電体、したがって金属イオン電池セルの内部形態を維持してもよい。溶解した犠牲電極が正電極の表面(電池セルの放電時)や負電極の表面(電池セルの再充電時)に堆積した場合でも、犠牲電極を構成する材料がより均一に堆積してもよく、したがって、電極表面にデンドライトが形成されにくくなる。このように、犠牲電極は、電池セルの形態を保存してもよく、したがって、金属イオン電池セルが長期間の貯蔵にさらされる場合など、金属イオン電池セルが低電圧状態又はゼロ電圧状態に放電された場合でも、金属イオン電池セルの容量及びサイクル寿命を維持することができる。
【0062】
本主題の幾つかの実装形態では、金属イオン電池セルは、1つ以上の多孔質集電体を含んでもよい。例えば、金属イオン電池セルの負極集電体及び/又は正極集電体は、エキスパンドメタル箔、有孔箔、複合炭素系箔(例えば、炭素繊維、グラフェンなど)等の多孔質材料から形成されていてもよい。1つ以上の犠牲電極は、例えば、金属イオン電池セルの正電極、負電極、及びセパレータを巻くことによって形成された円筒状又は平坦なジェリーロールを中心に配置することを含む様々な方法で金属イオン電池セルに組み込まれてもよい。これに代えて及び/又は加えて、犠牲電極は、金属イオン電池セルの負極集電体上にコーティングされてもよい。集電体の多孔性は、少なくとも犠牲電極からの金属イオンが集電体及び電極の長さに沿って拡散させられるのではなく、集電体及び電極の層にわたって拡散することができるため、拡散長を数桁減少させてもよい。
【0063】
図1A~
図1Cは、本主題の実装と一致する電池セル100の一例を示す。電池セル100は、例えば、リチウム(Li)イオン電池セル、ナトリウム(Na)イオン電池セル、マグネシウム(Mg)イオン電池セル、アルミニウム(Al)イオン電池セルなどを含む金属イオン電池セルであってもよい。
図1A~
図1Cを参照すると、電池セル100は、ケース120の内側に配置されたジェリーロール110を含んでもよい。
図1A~
図1Cに示す例では、電池セル100は円筒形電池セルであってもよい。したがって、ジェリーロール110は、実質的に円筒形の形状であってもよい。ジェリーロール110は、それぞれが電池セル100の構成要素に対応する材料の複数の層を巻くことによって形成されてもよい。例えば、
図1A~
図1Cに示すように、ジェリーロール110は、正電極114と負電極116との間に介在するセパレータ112を含んでもよい。典型的には金属製であるケース120と正電極114と負電極116との間の不用意な接触が電池セル100内で内部短絡を形成してもよいため、ジェリーロール110の表面は、ケース120の内部側壁に直接接触しなくてもよい。代わりに、
図1Aは、ジェリーロール110の外側面とケース120の内側側壁との間の間隙125を示す。更に、ジェリーロール110とケース120との間の不用意な接触を防止するために、絶縁体118がジェリーロール110とケース120との間に配置されてもよい。
【0064】
本主題の幾つかの実装形態では、電池セル100は、例えば犠牲電極130などの1つ以上の犠牲電極を含んでもよい。
図1A~
図1Cに示す例では、犠牲電極130は、ジェリーロール110の中心のキャビティ135内に配置されてもよい。セパレータ112、正電極114及び負電極116を巻回してゼリーロール110を形成した後、キャビティ135を生成してもよい。例えば、セパレータ112、正電極114及び負電極116をマンドレルに巻き付けてジェリーロール110を形成してもよい。マンドレルは、ジェリーロール110の中心から取り外されて、犠牲電極130を挿入するためのキャビティ135を生成してもよい。或いは、セパレータ112、正電極114及び負電極116を犠牲電極130に巻き付けて、ジェリーロール110を形成してもよい。
【0065】
本主題の幾つかの実装形態では、犠牲電極130は、電池セル100の負電極116と結合されてもよい。或いは、
図1Bに示すように、犠牲電極130は、例えば、ケース120に溶接されることによってケース120と結合されてもよく、次いで、負電極116と結合される。いずれの構成においても、犠牲電極130は、電池セル100の正電極114ではなく負電極116と電気的に結合されてもよい。例えば、セパレータ112は、犠牲電極130が正電極114に接触することを防止する絶縁をもたらしてもよい。これに代えて及び/又は加えて、犠牲電極130が正電極114に接触するのを防止するために、保護層(例えば、ポリマーフィルム、セラミックコーティングなど)を犠牲電極130の外面及び/又はキャビティ135の内面の周りに配置してもよい。
【0066】
図1Cを参照すると、本主題の幾つかの実装形態では、犠牲電極130は犠牲電極アセンブリ140の一部であってもよい。
図1Cに示すように、犠牲電極アセンブリ140は、1つ以上のフィラー145(例えば、電解質など)によって囲まれた犠牲電極130を含んでもよい。更に、電池セル100は、
図1A~
図1Cに示す犠牲電極130(又は犠牲電極アセンブリ140)よりも追加の犠牲電極を含んでもよい。例えば、ジェリーロール110の中心に配置された犠牲電極130(又は犠牲電極アセンブリ140)に加えて、電池セル100は、ジェリーロール110の外面及び/又はケース120の内面に塗布された犠牲電極を含んでもよい。幾つかの角形セル及び大型円筒形セルのように、ケース120が中性である場合、この構成は、ユーザが排出される犠牲電極130の量並びに犠牲電極130が排出される時間を制御することを可能にする三電極セルをもたらすことができる。
【0067】
本主題の幾つかの実装形態では、犠牲電極130は、電池セル100が最小電圧を超えて放電されるときに起こってもよい、低電圧又はゼロ電圧状態での電池セル100の安定性を改善してもよい。例えば、犠牲電極130は、電池セル100の負極集電体を構成する第2の材料よりも分解電圧が低い第1の材料から形成されてもよい。金属イオン電池セルの負極集電体が銅(Cu)から形成される一例では、犠牲電極130は、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、リチウム(Li)合金、酸化物などから形成されてもよい。犠牲電極130はまた、リチウム化ケイ素(Si)、プレリチウム化黒鉛I、チタン酸リチウム酸化物(LTO)、リチウムスズ酸化物(LiSnO2)などを含んでもよい。
【0068】
本主題の幾つかの実装形態では、犠牲電極130は、電池セル100が低電圧状態又はゼロ電圧状態にあるときに、例えば酸化によって分解してもよい。犠牲電極130は、電池セル100の負極集電体及び/又は固体電解質界面(SEI)の代わりに分解してもよく、したがって、電池セル100が長期間の貯蔵を受けるときなど、電池セル100が低電圧状態又はゼロ電圧状態に放電されたときでも、電池セル100の容量及びサイクル寿命を維持する。
【0069】
再び
図1Bを参照すると、電池セル100は、電池セル100の一端に正極キャップ142を、電池セル100の反対側の端部に負極キャップを更に含んでもよい。正電極114は、正極キャップ142を介して正電極114を外部回路に結合するように構成された正極タブ152を含んでもよい。更に、負電極116は、負極キャップを介して負電極116を外部回路に結合するように構成された負極タブ154を含んでもよい。
【0070】
本主題の幾つかの実施態様では、電池セル100は、金属イオン拡散に対して透過性であるプライマー層を含んでもよい。例えば、プライマー層は、犠牲電極130からの金属イオンのより速い拡散のためのイオン伝導性を与えるために、電解質を吸収することができるポリマーを含んでもよい。このプライマー層は、特に電池セル100が多孔質集電体を含む場合、電池セル100の製造を更に容易にしてもよい。例えば、正電極114及び/又は負電極116を形成するスラリーが対応する集電体上にコーティングされるコーティングプロセス中、プライマー層は集電体に存在する細孔を遮断し、したがってコーティングプロセス中にスラリーが細孔を通って漏れるのを防いでもよい。プライマー層はまた、電池セル100における過剰な電圧、圧力、及び/又は温度に応答するように構成された1つ以上の保護成分又は材料を含んでもよい。
【0071】
再び
図1Bを参照すると、電池セル100は、ベントプレート144と、さもなければ電池セル100を爆発させる可能性があるガスを放出することによって電池セル100内の過剰な圧力蓄積を緩和するように構成されたガスケット146とを更に含んでもよい。電池セル100はまた、その導電率が電池セル100の温度に反比例する正温度係数(PTC)素子162を含んでもよい。例えば、熱感抵抗素子162は、例えば、ポリエチレン(PE)及びカーボンブラック、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びカーボンブラック、無機導電性セラミック(例えば、酸化バリウムチタン(BaTiO
3)など)及びポリエチレン(PE)などの1つ以上の熱感抵抗材料を含んでもよい。正温度係数素子162の導電性は、電池セル100が温度上昇を受けると低下するため、正温度係数素子162は、電池セル100が温度上昇を受けると、電池セル100内の電流の流れを低減するように機能してもよい。電池セル100の温度が正規化されると、正温度係数素子162は高い導電性に戻ってもよい。これに代えて及び/又は加えて、電池セル100は、電池セル100が過剰な電流、圧力、及び/又は電圧にさらされたときに電池セル100内の電流の流れを恒久的に遮断することができるヒューズであってもよい電流遮断器164を含んでもよい。
【0072】
本主題の幾つかの実装形態では、犠牲電極130は、犠牲電極130を形成する1つ以上の材料(例えば、金属、金属合金など)を負極集電体の表面及び/又はケース120の内面に噴射することによって形成されてもよい(犠牲電極130がケース120を介して負電極116と結合されている場合)。金属溶射は、溶融金属(又は金属合金)を表面に溶射してコーティングを形成するプロセスである。例えば、溶融金属(又は金属合金)は、圧縮空気の吹き出しを受けてもよく、圧縮空気は、金属の小さな液滴を生成し、それらをコーティングされる表面に向かって突出させる共同効果を有する。最終結果は、集電体の表面及び/又はケース120の内面上の固体金属コーティングである。金属コーティングの厚さは、塗布される層の量に依存してもよい。例えば、犠牲電極130は、良好で硬いバリアを形成するが、穏やかな腐食条件では受動的になってもよいアルミニウム(Al)、又は浸食もしくは機械的損傷に対する不十分なバリアを形成する亜鉛(Zn)の1つ以上の層を噴射することによって形成されてもよく、ほぼ常に犠牲的に挙動する。幾つかの例では、犠牲電極130は、アルミニウム(Al)及び亜鉛(Zn)のそれぞれの利点を示すアルミニウム-亜鉛-インジウム(Al-Zn-In)合金などの金属合金の1つ以上の層を噴射することによって形成されてもよい。合金は、合金が亜鉛(Zn)よりもはるかに低密度(例えば、亜鉛(Zn)の密度の40%)であるように、高濃度アルミニウム系(例えば、95%アルミニウム(Al))であってもよい。犠牲反応は、純粋なアルミニウム(Al)と同様に3つの電子の損失を伴ってもよく、アルミニウム-亜鉛-インジウム(Al-Zn-In)合金は、既に亜鉛(Zn)よりも硬い純粋なアルミニウム(Al)よりもはるかに硬い。少量の亜鉛(Zn)及びインジウム(In)を含むことにより、電池セル100の腐食環境(例えば、塩化物イオンの存在下で)において合金の犠牲を維持する。
【0073】
図2A~
図2Cは、本主題の実装と一致する電池セル100の別の例を示す。電池セル100は、例えば、リチウム(Li)イオン電池セル、ナトリウム(Na)イオン電池セル、マグネシウム(Mg)イオン電池セル、アルミニウム(Al)イオン電池セルなどを含む金属イオン電池であってもよい。
図2A~
図2Cを参照すると、電池セル100は、ケース120の内側に配置されたジェリーロール110を含んでもよい。
図2A~
図2Cに示す例では、電池セル100は角形電池セルであってもよい。このように、ジェリーロール110は、平坦なジェリーロール、例えば、実質的に楕円形の円筒形状であるジェリーフラットであってもよい。ジェリーロール110は、それぞれが電池セル100の構成要素に対応する材料の複数の層を巻くことによって形成されてもよい。例えば、
図2A~
図2Cに示すように、ジェリーロール110は、正電極114と負電極116との間に介在するセパレータ112を含んでもよい。
【0074】
本主題の幾つかの実装形態では、電池セル100はまた、ジェリーロール110の中心のキャビティ135に配置された犠牲電極130などの、1つ以上の犠牲電極を含んでもよい。セパレータ112、正電極114及び負電極116を巻回することにより、ジェリーロール110内にキャビティ135を形成してもよい。例えば、セパレータ112、正電極114及び負電極116をマンドレルに巻き付けてジェリーロール110を形成してもよい。マンドレルを除去すると、犠牲電極130を挿入するためのキャビティ135が形成される。或いは、犠牲電極130の周囲に、セパレータ112、正電極114及び負電極116を巻回してもよい。
【0075】
本主題の幾つかの実装形態では、犠牲電極130は、電池セル100の負電極116と結合されてもよい。例えば、
図2Cに示す例では、犠牲電極130は、負電極116の負極タブ154と結合されてもよい。或いは、
図2Bに示すように、犠牲電極130は、例えば、ケース120に溶接されることによって、ケース120と結合されてもよく、次いで、負電極116と結合される。いずれの構成においても、犠牲電極130は、電池セル100の正電極114ではなく負電極116と電気的に結合されてもよい。更に、犠牲電極130は、電池セル100が最小電圧を超えて放電されるときに起こってもよい低電圧又はゼロ電圧状態での電池セル100の安定性を改善してもよい。例えば、犠牲電極130は、電池セル100が低電圧状態又はゼロ電圧状態にあるときに、例えば酸化によって分解してもよい。犠牲電極130は、電池セル100の負極集電体及び/又は固体電解質界面(SEI)の代わりに分解してもよく、したがって、電池セル100が長期間の貯蔵にさらされる場合など、電池セル100が低電圧状態又はゼロ電圧状態に放電された場合でも、電池セル100の容量及びサイクル寿命を維持する。
【0076】
図2A~
図2Cには示されていないが、電池セル100はまた、電池セル100における過剰な電圧、圧力、及び/又は温度に応答するための1つ以上の保護機構を含んでもよい。例えば、電池セル100は、そうでなければ電池セル100を爆発させてもよいガスを放出することを含む、電池セル100内の過剰な圧力蓄積を緩和するように構成された通気プレート及びガスケットと同様にプライマー層を含んでもよい。電池セル100はまた、その導電率が電池セル100の温度に反比例する正温度係数(PTC)素子を含んでもよい。正温度係数素子の導電性は、電池セル100が温度上昇を受けると低下するため、正温度係数素子は、電池セル100が温度上昇を受けると、電池セル100内の電流の流れを低減するように機能してもよい。熱感抵抗素子は、電池セル100の温度が正規化すると、高い導電性に戻ってもよい。これに代えて及び/又は加えて、電池セル100は、電池セル100が過剰な電流、圧力、及び/又は電圧にさらされたときに電池セル100内の電流の流れを恒久的に遮断してもよいヒューズであり得る電流遮断器を含んでもよい。
【0077】
図3A~
図3Bは、本主題の実装と一致する電池セル100のジェリーロール110の例を示す。例えば、
図3Aに示すジェリーロール110の例は、実質的に楕円形の円筒形状であるジェリーフラットであるのに対して、
図3Bに示すジェリーロール110の例は、実質的に円筒形状である。
図3A~
図3Bに示すように、ジェリーロール110は、それぞれが電池セル100の構成要素に対応する材料の複数の層を巻くことによって形成されてもよい。例えば、ジェリーロール110は、正電極114と負電極116との間に介在するセパレータ112を含んでいてもよい。更に、
図3A~
図3Bに示すように、ジェリーロール110は、犠牲電極130及び補助電極150を含んでもよい。
【0078】
本主題の幾つかの実装形態では、犠牲電極130は、電池セル100の負電極116と結合されてもよい。
図3A~
図3Bに示すジェリーロール110の例では、犠牲電極130に対応する第1の材料層を、電池セル100の負極集電体に対応する第2の材料層の表面に直接塗布してもよい。更に、補助電極150に対応する第3の材料層は、犠牲電極130に対応する第1の材料層との直接的界面であってもよい。しかしながら、補助電極150は、電池セル100の正電極114及び負電極116から隔離されていてもよい。補助電極150は、例えば、電池セル100が低電圧状態又はゼロ電圧状態にあるときに、犠牲電極130から枯渇した金属イオンを受け入れるように構成されてもよい。補助電極150を構成する材料としては、例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化銅(CuO)、酸化鉄、酸化マンガン(MnO2)、酸化スズ(例えば、SnO、SnO2など)、硫化鉄(FeS)、ニッケルリン(NiP)等が挙げられる。
【0079】
図4A~
図4Cは、本主題の実装と一致する電池セル100の正電極114及び負電極116の例を示す。
図4A~
図4Bに示す負電極116の例では、負電極116に対応する第1の材料と犠牲電極130に対応する第2の材料(シート状)とを、電池セル100の負極集電体に対応する第3の材料の表面に交互に超音波溶接又はコーティングしてもよい。場合によっては、犠牲電極130に対応する第1の材料(例えば、粉末形態で)は、混合物が電池セル100の負極集電体に対応する第3の材料の表面にコーティングされる前に、負電極116に対応する第2の材料と混合されてもよい。一方、
図4Bには、電池セル100の正極集電体に相当する第3の材料の表面に、正電極114に相当する第1の材料と、補助電極150に相当する第2の材料とが交互に塗布された正電極114の例が示されている。
【0080】
ここで
図4Cを参照すると、電池セル100の負電極116に対応する第1の材料は、電池セル100の負極集電体に対応する第3の材料の片面又は両面にコーティングされてもよい。
図4Cに示す例では、負極集電体を構成する第3の材料は銅(Cu)であってもよく、負極タブ154はニッケル(Ni)から形成されてもよい。なお、電池セル100の正電極114に対応する第1の材料は、電池セル100の正極集電体に対応する第3の材料のいずれかの面に塗布されていてもよい。
図4Cに示す例では、正極集電体を構成する第3の材料はアルミニウム(Al)であってもよく、正極タブ152もアルミニウム(Al)から形成されてもよい。
【0081】
幾つかの典型的な実施形態において、犠牲電極130を形成する第2の材料は、一種類以上の金属及び/又は金属合金を含んでいてもよい。第2の材料としては、例えば、リチウム塩など、負電極を構成する金属よりも分解電圧が低い化合物(例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)など)が挙げられる。例えば、第2の材料は、クロム(Cr)、鉄(Fe)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム(Al)、リチウム化酸化シリカ(例えば、Li2Si2O5、Li2SiO3、LiSiO4、Li2O、Li12Si3、Li13Si4、LiSnO3など)、マグネシウムアルミニウム合金(MgAl)、マグネシウムチタン(MgTi)、カルシウムマグネシウム(CaMg)、亜鉛(Zn)、及びマグネシウム(Mg)系合金、並びに銅(Cu)よりも低い分解電圧を有する幾つかの潜在的な導電性ポリマー又は複合材料のうちの1つ以上を含んでもよい。導電性高分子の例には、ポリアセチレン(PA)、ポリアニリン(PANI)、ポリピロール(PPy)、ポリチオフェン(PTH)、ポリ(パラ-フェニレン)(PPP)、ポリ(フェニレンビニレン)(PPV)、及びポリフラン(PF)が含まれる。
【0082】
図5は、本主題の実装と一致する多孔質集電体を有する電極500の一例の断面図を示す。
図5に示すように、電極500は、電極材料510の2つの層の間に配置された集電体520を含んでもよい。電極500は、例えば、
図1A~
図1C及び
図2A~
図2Cに示される電池セル100の例の正電極114及び/又は負電極116を実装してもよい。
【0083】
本主題の幾つかの実装形態では、集電体520は多孔質集電体であってもよい。すなわち、集電体520は、少なくとも集電体520を通る通路を設けることによって金属イオン(例えば、リチウム(Li)イオンなど)の拡散経路を短くする複数の細孔を有する金属箔(例えば、銅(Cu)箔、アルミニウム(Al)箔など)であってもよい。更に説明するために、
図6A~
図6Bは、本主題の実装と一致する拡散経路の異なる例を示す電池セル100の断面図を示す。
図6Aは、非多孔質集電体を含むように形成された電池セル100の変形例における金属イオンの拡散経路(破線で示す)を示す。対照的に、
図6Bは、例えば集電体520などの多孔質集電体を含むように形成された電池セル100の別の変形例における金属イオンの拡散経路(破線で示す)を示す。
【0084】
図6A~
図6Bを参照すると、多孔質集電体を含むことにより、金属イオンの拡散経路を短くしてもよい。例えば、非多孔質集電体は、金属イオンをジェリーロール110の各螺旋に沿って移動させてもよいが、多孔質集電体は、金属イオンがジェリーロール100の層を貫通することを可能にしてもよい。そうすることで、多孔質集電体は、不釣り合いに高い濃度の金属イオンがジェリーロール110の中心に向かって凝集する勾配の形成を防止してもよい。代わりに、多孔質集電体を用いて、例えば犠牲電極130からの金属イオンは、ジェリーロール110の中心から外側に均一に放射してもよい。
【0085】
それにもかかわらず、集電体520の多孔性は、集電体520を、例えば電極材料510を形成するスラリーを含む他の物質に浸透させてもよい。したがって、
図5に示す例では、電極500は、電極材料510を形成するスラリーを塗布する前に集電体520上に配置され得るプライマー層530を更に含んでもよい。プライマー層530は、集電体520に存在する細孔を通るスラリーの漏れを少なくとも防止するように構成されてもよい。
【0086】
本主題の幾つかの実装形態では、プライマー層530は、過剰な電圧、圧力、及び/又は温度に応答するように構成された1つ以上の保護成分及び/又は材料を更に含んでもよい。例えば、プライマー層530は、導電率が電池セル100の温度に反比例する正温度係数材料(例えば、ポリエチレン(PE)及びカーボンブラック、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びカーボンブラック、無機導電性セラミック(例えば、酸化バリウムチタン(BaTiO3)など)及びポリエチレン(PE))を含んでもよい。或いは、プライマー層530は、集電体520と電極材料510の1つ以上の層との間に非導電性ギャップを作り出すことによって、過剰な電圧、圧力、及び/又は温度に応答する材料を含んでもよい。例えば、プライマー層530は、過剰な電圧、圧力、及び/又は温度にさらされたときにガスに更に遷移するガス及び/又は液体を生成してもよい。ガスは、少なくとも電極材510と集電体520との間に剥離を生じさせることにより、非導電性の隙間を生じさせてもよい。これに代えて及び/又は加えて、ガス及び/又は液体は、電極材料510の少なくとも一部を少なくとも分解することによって非導電性ギャップを生成してもよい。
【0087】
【0088】
電池セルの負電極及び正電極は、電極材料のシートを適切な形状及び/又はサイズの片に打ち抜くことによって形成されてもよい(702)。例えば、正電極材料及び/又は負電極材料のシートは、電極タブを使用して適切な形状及び/又はサイズの片に打ち抜かれてもよい。電池セルの負電極及び正電極を乾燥させてもよい(704)。例えば、電池セルの正電極を125
で10時間乾燥させ、電池セルの負電極を140
で10時間乾燥させてもよい。
【0089】
正電極と負電極との間にセパレータの層を介在させてシートを形成してもよい(706)。例えば、電池セルの正電極と負電極とを積層してシート状にしてもよい。正電極と負電極との間に介在するセパレータを含むシートは、巻回されて、1つ以上の犠牲電極及び/又は補助電極を有するジェリーロールを形成してもよい(708)。本主題の幾つかの実装形態では、犠牲電極は、電池セルのキャビティ内に配置されてもよい。例えば、正電極と負電極との間にセパレータを介在させたシートを、マンドレルに巻き付けてもよい。マンドレルは、ジェリーロールの中心から取り外されて、犠牲電極を挿入するためのキャビティを形成してもよい。或いは、犠牲電極は、電池セルの負極集電体の表面に被覆されていてもよい。例えば、負電極に対応する第1の材料及び犠牲電極に対応する第2の材料は、電池セルの負極集電体に対応する第3の材料の表面上に交互にコーティングされる。なお、電池セルの正極集電体に相当する第3の材料の表面に、正電極に相当する第1の材料と補助電極に相当する第2の材料とを交互に塗布してもよい。どちらの構成でも、電池セルが低電圧状態又はゼロ電圧状態に放電されると、犠牲電極が分解して、電池セルの負電極で負極集電体及び固体電解質界面(SEI)を保存してもよいように、犠牲電極は、電池セルの正電極ではなく電池セルの負電極と結合されてもよい。
【0090】
ジェリーロールは、ケース内に配置されてもよい(710)。例えば、工程708で形成された平坦なジェリーロールは、金属製(例えば、アルミニウム(Al))のケースの内部に配置されてもよい。ジェリーロールは、ケースの内部で乾燥されてもよい(712)。例えば、ケース内の平らなゼリーロールを70
で10時間乾燥させてもよい。ケースを電解質で満たし、密閉して、電池セルの組み立てを完了してもよい(714)。
【0091】
組み立てられた電池セルをエージングしてもよい(716)。例えば、動作714で形成された電池セルは、36時間エージングすることができる。組み立てられてエージングした電池セルを作動させてもよい(718)。例えば、電池セルは、電池セルの化学成分を活性化するように構成された制御された充放電サイクルを受ける形成プロセスを受けることによって活性化されてもよい。この形成プロセスは、電池セル内の電圧の蓄積が漸進的であるように、定電流ではなく漸進的に増加する電流にさらされることによって電池セルを充電することを必要としてもよい。
【0092】
サンプルセルI
【0093】
サンプルセルIの正電極は、一定量のポリフッ化ビニリデン(PVDF)をN-メチルピロリドン(NMP)に溶解して8%ポリマー溶液を調製することによって形成されてもよい。一定量のカーボンブラックを8%ポリマー溶液に添加し、毎分6500回転で30分間混合してスラリーを形成してもよい。一定量の高ニッケルリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物をスラリーに添加し、粘度を調整するために追加のN-メチルピロリドン(NMP)を添加して毎分6500回転で30分間混合して流動性スラリーを得てもよい。N-メチルピロリドン(NMP)を蒸発させるために、第1のヒートゾーンを約80°Cに設定し、第2のヒートゾーンを約130°Cに設定した自動コーティング機を使用して、流動性スラリーをアルミニウム(Al)箔(例えば、15μmのアルミニウム箔)上にコーティングしてもよい。次いで、スラリーでコーティングされたアルミニウム(Al)箔を目標の厚さに圧縮し、目標の幅(例えば、56ミリメートル)に切断することによって、サンプルセルIの正電極を形成してもよい。正極タブは、例えば、正電極の中心において、マスフリーゾーンに溶接されてもよい。
【0094】
サンプルセルIの負電極は、一定量のバインダーを脱イオン水に溶解し、次いで導電性添加剤を添加し、毎分6500回転で30分間混合することによって形成されてもよい。シリコン(Si)/酸化シリカ(SiO)及び炭素複合体を得られた溶液に添加し、毎分6500回転で60分間混合してもよい。追加の水を添加して粘度を調整し、流動性スラリーを形成してもよい。次いで、自動コーターを使用して、スラリーを銅(Cu)箔(例えば、厚さ9μmの銅箔)上にコーティングしてもよい。サンプルセルIの負電極は、スラリーで被覆された銅(Cu)箔を目標の厚さに圧縮し、目標の幅(例えば、58ミリメートル)に切断することによって形成されてもよい。犠牲電極に対応する亜鉛(Zn)箔(例えば、(約0.025ミリメートルの亜鉛箔)を、サンプルセルIの所望の構成に応じて、負電極のマスフリーゾーン(又は負極集電体Cu箔)のヘッダ又はテールに溶接(例えば、超音波溶接によって)してもよい。1つ以上の負極タブを、サンプルセルIの負電極のマスフリー領域に溶接してもよい。
【0095】
サンプルセルIのゼリーロールは、例えば、捲回機を用いて正電極、セパレータ及び負電極を捲回することにより形成されてもよい。ジェリーロールは、例えば金属ケース、軟質パウチなどであってもよいケースに挿入されてもよい。負極タブの1つは、ケースに溶接されてもよく、正極タブは、例えばレーザ溶接によってサンプルセルIのヘッダに溶接されてもよい。未完成のサンプルセルIを80°Cで少なくとも12時間乾燥させてから、乾燥させたサンプルセルIを電解質で満たし、捲縮してもよい。サンプルセルIは、形成プロセスを受ける前に、室温で24時間エージングされてもよい。例えば、1キロヘルツ(KHz)でのサンプルセルIの平均開回路電圧(OCV)及びインピーダンスは、それぞれ約0.70ボルト及び約19ミリオームであってもよい。サンプルセルIは、300ミリアンペア時(mAh)をC/40で充電し、次いで比較的高い速度で4.2Vまで充電した後、室温で7日間エージングすることによって形成されてもよい。
【0096】
サンプルセルIは、その容量、直流抵抗(DCR)、及びゼロ電圧曝露前後のサイクル寿命について試験されてもよい。サンプルセルIの容量及び直流抵抗(DCR)を試験するために、サンプルセルIを2時間休止させた後、C/5から4.4ボルトでC/20まで定電流定電圧(CC-CV)で充電してもよい。充電後、サンプルセルIを10分間休止させた後、C/2の定電流(CCD)で5分間~約95%の充電状態(SOC)まで放電してもよい。最初の電圧測定
及び電流測定
は、放電の終了の10秒前に行うことができる。2回目の電圧測定
及び電流測定
を2回目の放電の10秒後に行うことができる前に、サンプルセルIを再びC/5で1分間の定電流放電(CCD)に供してもよい。95%充電状態(SOC)におけるサンプルセルIの直流抵抗(DCR)は、
に対応してもよい。
【0097】
サンプルセルIは、約50%の充電状態(SOC)に達するために、C/2で54分間の定電流放電(CCD)に再び供されてもよい。放電が終了する10秒前に、3回目の電圧測定
及び電流測定
を行ってもよい。サンプルセルIは、C/5で1分間の定電流放電(CCD)を行った後、この放電の10秒後に4回目の電圧測定
及び電流測定
を行ってもよい。50%充電状態(SOC)におけるサンプルセルIの直流抵抗は、
に対応してもよい。
【0098】
サンプルセルIを再びC/2で36分間の定電流放電(CCD)に供して、約20%の充電状態(SOC)にしてもよい。この放電の終了の10秒前に、5回目の電圧測定
及び電流測定
を行ってもよい。次いで、サンプルセルIをC/5で1分間の定電流放電(CCD)に供してから、この放電の約10秒後に6回目の電圧測定
及び電流測定
を行なってもよい。20%の充電状態におけるサンプルセルIの直流抵抗(DCR)は、
に対応してもよい。サンプルセルIの放電容量/エネルギー、クーロン/エネルギー効率、及び直流抵抗(DCR)を記録してもよい。
【0099】
サンプルセルIの40%放電深度(DOD)におけるサイクル寿命は、2時間の最初の休止サンプルセルIによって決定されてもよい。サンプルセルIは、C/5~4.4ボルトで<C/20まで定電流定電圧(CC-CV)で充電されてもよい。充電されたサンプルセルIは、C/1.5で35分間の定電流放電(CCD)を受けて、40%の放電深度(DOD)に達してもよい。この時点で、サンプルセルIは、定電流で放電される前に、C/2.25で65分間定電流で再び充電されてもよい。サンプルセルIの充電及び放電は、サンプルセルIが2.5ボルトの放電終止電圧(EODV)を示すまで繰り返されてもよい。20°CでのサンプルセルIの容量及びその直流抵抗(DCR)は、200サイクルごとに試験されてもよい。
【0100】
サンプルセルIの100%放電深度(DOD)でのサイクル寿命は、最初の2時間の休止によって決定されてもよい。サンプルセルIは、C/3~4.4ボルトで<C/20まで定電流定電圧(CC-CV)で充電され、10分間休止され、C/5~2.5ボルトで定電流(CCD)で放電され、30分間休止されてもよい。サンプルセルIは、80%容量になるまで充放電を繰り返してもよい。
【0101】
ゼロ電圧曝露(ZVE)に対するサンプルセルIの応答は、サンプルセルIの初期20°C容量及び直流抵抗(DCR)を測定することによって決定されてもよい。次いで、サンプルセルIは、C/5~4.4ボルトで<C/20まで定電流定電圧(CC-CV)で放電され、10分間休止され、C/5~2.5ボルトで定電流(CCD)で放電され、30分間休止され、C/5~0ボルトで定電流(CCD)で放電され、0ボルトで7日間更に20オーム放電されてもよい。その後、サンプルセルIは、24時間休止する前に、C/5で3.8ボルトまで定電流定電圧(CC-CV)で充電されてもよい。この時点で、サンプルセルIの20°C容量及び直流抵抗(DCR)を決定してもよい。以下の表1は、ゼロ電圧曝露(ZVE)前後のサンプルセルIの容量及び直流抵抗(DCR)の比較解析を示す。
図8Aは、ゼロ電圧曝露(ZVE)前後のサンプルセルIの容量及び直流抵抗(DCR)を示すグラフ800を示す。表1及び
図8Aに示すように、サンプルセルIの容量-時間プロファイルは、ゼロ電圧露光(ZVE)の前後で実質的に同じである。サンプルセルIの放電容量は、ゼロ電圧曝露(ZVE)前では3.717アンペア時であり、ゼロ電圧曝露(ZVE)後では3.713アンペア時であり、約0.123%の損失を表す。95%、50%、及び20%の充電状態における直流抵抗(DCR)も、ゼロ電圧曝露(ZVE)後にほとんど変化を示さない。
【0102】
【0103】
図8Bは、サンプルセルIが20オームで7日間のゼロ電圧曝露に供されている間のサンプルセルIの電圧-時間プロファイルを示すグラフ825を示す。サンプルセルIの放電容量は、4.4ボルト~2.5ボルトで3.749アンペア時、2.5ボルト~0ボルトで0.425アンペア時、0ボルトで0.396アンペア時である。サンプルセルIの深放電は0.821アンペア時を放出し、総放電容量は4.57アンペア時となった。したがって、ゼロ電圧曝露は、サンプルセルIの放電容量の約21.89%の変化に寄与した。
図8Cは、サンプルセルIを20オームで7日間ゼロ電圧曝露(ZVE)に供した後のサンプルセルIのサイクル寿命を示すグラフ850を示す。
図8Cに示すように、サンプルセルIの放電エネルギー保持率は、270サイクル後に98.7%である。更に、サンプルセルIは、サイクル後にわずか1.3%のエネルギー損失を示した。
【0104】
サンプルセルII
【0105】
サンプルセルIIは、サンプルセルIIが低電圧状態又はゼロ電圧状態にある間、その容量及びサイクル寿命を維持するための犠牲電極のないベースライン電池セルである。サンプルセルIIの正電極は、一定量のポリフッ化ビニリデン(PVDF)をN-メチルピロリドン(NMP)に溶解して、8%ポリマー溶液を調製することを含む、サンプルセルIの正電極と同様にしてもよい。一定量のカーボンブラックを8%ポリマー溶液に添加し、毎分6500回転で30分間混合してスラリーを形成してもよい。一定量の高ニッケルリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物をスラリーに添加し、粘度を調整するために追加のN-メチルピロリドン(NMP)を添加して毎分6500回転で30分間混合して流動性スラリーを得てもよい。N-メチルピロリドン(NMP)を蒸発させるために、第1のヒートゾーンを約80°Cに設定し、第2のヒートゾーンを約130°Cに設定した自動コーティング機を使用して、流動性スラリーをアルミニウム(Al)箔(例えば、15μmのアルミニウム箔)上にコーティングしてもよい。次いで、スラリーでコーティングされたアルミニウム(Al)箔を目標の厚さに圧縮し、目標の幅(例えば、56ミリメートル)に切断することによって、サンプルセルIIの正電極を形成してもよい。正極タブは、例えば、正電極の中心において、マスフリーゾーンに溶接されてもよい。
【0106】
サンプルセルIIの負電極は、一定量のバインダーを脱イオン水に溶解し、次いで導電性添加剤を添加し、毎分6500回転で30分間混合することによって形成されてもよい。ケイ素(Si)/酸化シリカ(SiO)及び炭素複合体を得られた溶液に添加し、毎分6500回転で60分間混合してもよい。追加の水を添加して粘度を調整し、流動性スラリーを形成してもよい。次いで、自動コーターを使用して、スラリーを銅(Cu)箔(例えば、厚さ9μmの銅箔)上にコーティングしてもよい。サンプルセルIの負電極は、スラリーで被覆された銅(Cu)箔を目標の厚さに圧縮し、目標の幅(例えば、58ミリメートル)に切断することによって形成されてもよい。1つ以上の負極タブを、サンプルセルIIの負電極のマスフリー領域に溶接してもよい。前述のように、サンプルセルIIは、サンプルセルIに存在する犠牲電極なしで形成されるベースラインセルである。
【0107】
サンプルセルIIのゼリーロールは、例えば、捲回機を用いて正電極、セパレータ及び負電極を捲回することにより形成されてもよい。ジェリーロールは、例えば金属ケース、軟質パウチなどであってもよいケースに挿入されてもよい。負極タブの1つは、ケースに溶接されてもよく、正極タブは、例えばレーザ溶接によってサンプルセルIIのヘッダに溶接されてもよい。未完成のサンプルセルIIを80°Cで少なくとも12時間乾燥させてから、乾燥させたサンプルセルIIを電解質で満たし、捲縮してもよい。サンプルセルIIは、形成プロセスを受ける前に、室温で24時間エージングされてもよい。例えば、1キロヘルツでのサンプルセルIIの開回路電圧(OCV)及びインピーダンスは、それぞれ約0.7ボルト及び約19ミリオームであってもよい。サンプルセルIIは、300ミリアンペア時(mAh)でC/40に充電した後、室温で7日間エージングすることによって形成されてもよい。
【0108】
サンプルセルIIは、サンプルセルIと同じ方法で、ゼロ電圧曝露(ZVE)前後の容量、直流抵抗(DCR)、及びサイクル寿命について試験されてもよい。以下の表2は、ゼロ電圧曝露(ZVE)前後のサンプルセルIIの容量及び直流抵抗(DCR)の比較解析を示す。
図9Aは、ゼロ電圧露光(ZVE)の前後のサンプルセルIIの電圧、容量、及び直流抵抗(DCR)を示すグラフ900を示す。表2及び
図9Aに示すように、サンプルセルIIの容量、電圧-時間プロファイルは、ゼロ電圧曝露(ZVE)の前後で実質的に同じままであった。サンプルセルIIの放電容量は、ゼロ電圧曝露(ZVE)前では3.932アンペア時であり、ゼロ電圧曝露後では3.891アンペア時であり、約1.06%の損失を表す。一方、サンプルセルIIの直流抵抗(DCR)は、95%、50%、20%の充電状態(SOC)でわずかな変化を示した。
【0109】
【0110】
図9Bは、サンプルセルIIが20オームで7日間のゼロ電圧曝露に供されている間のサンプルセルIIの電圧-時間プロファイルを示すグラフ925を示す。サンプルセルIIの放電容量は、4.4ボルト~2.5ボルトで3.967アンペア時、2.5ボルト~0ボルトで0.466アンペア時、0ボルトで0.346アンペア時である。サンプルセルIIの深放電は0.812アンペア時放出し、総放電容量は4.779アンペア時となった。したがって、ゼロ電圧曝露(ZVE)は、サンプルセルIIの放電容量の約20.46%の変化に寄与した。
図9Cは、サンプルセルIIを20オームで7日間のゼロ電圧曝露(ZVE)に供した後のサンプルセルIIのサイクル寿命を示すグラフ950を示す。図示のように。
図9Cに示すように、サンプルセルIIの放電エネルギー保持率は、260サイクル後に86.3%である。したがって、サンプルセルIIは13.7%のエネルギー損失を示し、これは270サイクル後のサンプルセルIに存在するエネルギー損失のほぼ10倍である。サンプルセルI(亜鉛(Zn)箔犠牲電極を有する)とサンプルセルII(犠牲電極を有しない)との比較は、サンプルセルIが0ボルトに過放電されたときに負極集電体を保護することによって、犠牲金属箔の存在がサンプルセルIの容量を保存したことを示す。
【0111】
サンプルセルIII
【0112】
サンプルセルIIIの正電極は、一定量のポリフッ化ビニリデン(PVDF)をN-メチルピロリドン(NMP)に溶解して8%ポリマー溶液を調製することを含む、サンプルセルIIの正電極と同様に形成されてもよい。一定量のカーボンブラックを8%ポリマー溶液に添加し、毎分6500回転で30分間混合してスラリーを形成してもよい。一定量の高ニッケルリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物をスラリーに添加し、粘度を調整するために追加のN-メチルピロリドン(NMP)を添加して毎分6500回転で30分間混合して流動性スラリーを得てもよい。N-メチルピロリドン(NMP)を蒸発させるために、第1のヒートゾーンを約80°Cに設定し、第2のヒートゾーンを約130°Cに設定した自動コーティング機を使用して、流動性スラリーをアルミニウム(Al)箔(例えば、15μmのアルミニウム箔)上にコーティングしてもよい。次いで、スラリーでコーティングされたアルミニウム(Al)箔を目標の厚さに圧縮し、目標の幅(例えば、56ミリメートル)に切断することによって、サンプルセルIIIの正電極を形成してもよい。正極タブは、例えば、正電極の中心において、マスフリーゾーンに溶接されてもよい。
【0113】
サンプルセルIIIの負電極は、一定量のバインダーを脱イオン水に溶解し、次いで、導電性添加剤を添加し、毎分6500回転で30分間混合することを含む、サンプルセルIIの負電極と同様に形成されてもよい。ケイ素(Si)/酸化シリカ(SiO)及び炭素複合体を得られた溶液に添加し、毎分6500回転で60分間混合してもよい。追加の水を添加して粘度を調整し、流動性スラリーを形成してもよい。次いで、自動コーターを使用して、スラリーを銅(Cu)箔(例えば、厚さ9μmの銅箔)上にコーティングしてもよい。サンプルセルIIIの負電極は、スラリーを塗布した銅(Cu)箔を目的の厚さに圧縮し、目的の幅(例えば、58ミリメートル)に切断することにより形成されてもよい。
【0114】
サンプルセルIIIは、サンプルセルIIと同じ方法で組み立てられてもよい。サンプルセルIIIのゼリーロールは、例えば、捲回機を用いて正電極、セパレータ及び負電極を捲回することにより形成されてもよい。ジェリーロールは、例えば金属ケース、軟質パウチなどであってもよいケースに挿入されてもよい。負極タブの1つは、ケースに溶接されてもよく、正極タブは、例えばレーザ溶接によってサンプルセルIIIのヘッダに溶接されてもよい。未完成のサンプルセルIIIを80°Cで少なくとも12時間乾燥させた後、乾燥させたサンプルセルIIIを電解質で満たし、捲縮してもよい。サンプルセルIIIは、形成プロセスを受ける前に、室温で24時間エージングされてもよい。例えば、1キロヘルツ(KHz)でのサンプルセルIIIの開回路電圧(OCV)及びインピーダンスは、それぞれ約1.1ボルト及び約23ミリオームであってもよい。サンプルセルIIIは、300ミリアンペア時で100ミリアンペアで形成され、室温で7日間エージングされる前に4.2ボルトに充電されてもよい。
図10は、容量対電圧の導関数解析を示すグラフ1000を示す。
図10に示すように、サンプルセルIII(例えば、ALE24-1、ALE24-2、ALE24-3、ALE24-5、及びALE24-6)は、その初期充電中に約3.172ボルト、約3.256ボルト、及び3.309ボルトに3つのピークを示す。
【0115】
サンプルセルIV
【0116】
サンプルセルIVの正電極は、一定の品質のポリフッ化ビニリデン(PVDF)をN-メチルピロリドン(NMP)に溶解して8%ポリマー溶液を調製することを含む、サンプルセルIの正電極と同様に形成されてもよい。一定量のカーボンブラックを8%ポリマー溶液に添加し、毎分6500回転で30分間混合してスラリーを形成してもよい。一定量の高ニッケルリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物をスラリーに添加し、粘度を調整するために追加のN-メチルピロリドン(NMP)を添加して毎分6500回転で30分間混合して流動性スラリーを得てもよい。N-メチルピロリドン(NMP)を蒸発させるために、第1のヒートゾーンを約80°Cに設定し、第2のヒートゾーンを約130°Cに設定した自動コーティング機を使用して、流動性スラリーをアルミニウム(Al)箔(例えば、15μmのアルミニウム箔)上にコーティングしてもよい。次いで、スラリーでコーティングされたアルミニウム(Al)箔を目標の厚さに圧縮し、目標の幅(例えば、56ミリメートル)に切断することによって、サンプルセルIVの正電極を形成してもよい。正極タブは、例えば、正電極の中心において、マスフリーゾーンに溶接されてもよい。
【0117】
サンプルセルIVの負電極は、一定量のバインダーを脱イオン水に溶解し、次いで、導電性添加剤を添加し、毎分6500回転で30分間混合することを含む、サンプルセルIの負電極と同様に形成されてもよい。ケイ素(Si)/酸化シリカ(SiO)及び炭素複合体を得られた溶液に添加し、毎分6500回転で60分間混合してもよい。追加の水を添加して粘度を調整し、流動性スラリーを形成してもよい。次いで、自動コーターを使用して、スラリーを銅(Cu)箔(例えば、厚さ9μmの銅箔)上にコーティングしてもよい。サンプルセルIVの負電極は、スラリーを塗布した銅(Cu)箔を目的の厚さに圧縮し、目的の幅(例えば、58ミリメートル)に切断することにより形成されてもよい。犠牲電極に対応する純粋な亜鉛(Zn)の箔は、サンプルセルVIの所望の構成に応じて、負電極のヘッダ又はテールに溶接(例えば、超音波溶接によって)されてもよい。1つ以上の負極タブを、サンプルセルVIの負電極のマスフリー領域に溶接してもよい。
【0118】
サンプルセルIVは、サンプルセルIと同じ方法で組み立てられてもよい。サンプルセルIVのジェリーロールは、例えば、捲回機を用いて正電極、セパレータ及び負電極を捲回することにより形成されてもよい。ジェリーロールは、例えば金属ケース、軟質パウチなどであってもよいケースに挿入されてもよい。負極タブの1つは、ケースに溶接されてもよく、正極タブは、例えばレーザ溶接によってサンプルセルIVのヘッダに溶接されてもよい。未完成のサンプルセルIVを80°Cで少なくとも12時間乾燥させてから、乾燥させたサンプルセルIVを電解質で満たし、捲縮してもよい。サンプルセルIVは、形成プロセスを受ける前に、室温で24時間エージングされてもよい。容量対電圧の導関数解析を示す再び
図10を参照すると、サンプルセルIV(例えば、ALE25-1、ALE25-2、ALE25-3、及びALE25-5)は約3.240ボルト及び約3.323ボルトに2つのピークを示し、サンプルセルIIIは3つのピークを示す。サンプルセルIVによって示される電圧ピークの減少は、純粋な亜鉛(Zn)犠牲電極の存在に起因してもよい。
【0119】
サンプルセルV
【0120】
サンプルセルVの正電極は、一定量のポリフッ化ビニリデン(PVDF)をN-メチルピロリドン(NMP)に溶解して8%ポリマー溶液を調製することによって形成されてもよい。一定量のカーボンブラックを8%ポリマー溶液に添加し、毎分6500回転で30分間混合してスラリーを形成してもよい。一定量の高ニッケルリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物をスラリーに添加し、粘度を調整するために追加のN-メチルピロリドン(NMP)を添加して毎分6500回転で30分間混合して流動性スラリーを得てもよい。N-メチルピロリドン(NMP)を蒸発させるために、第1のヒートゾーンを約80°Cに設定し、第2のヒートゾーンを約130°Cに設定した自動コーティング機を使用して、流動性スラリーをアルミニウム(Al)箔(例えば、15μmのアルミニウム箔)上にコーティングしてもよい。次いで、スラリーでコーティングされたアルミニウム(Al)箔を目標の厚さに圧縮し、目標の幅(例えば、56ミリメートル)に切断することによって、サンプルセルVの正電極を形成してもよい。正極タブは、例えば、正電極の中心において、マスフリーゾーンに溶接されてもよい。
【0121】
サンプルセルVの負電極は、負電極の第3の材料に、負極集電体の第2の材料よりも分解電圧が低い第1の材料を直接組み込むことによって形成されてもよい。SampleCellVの負電極は、一定量のバインダーを脱イオン水に溶解した後、導電助剤を添加し、毎分6500回転で30分間混合することにより形成されてもよい。少量の亜鉛(Zn)粉末(例えば、1マイクロメートル~5マイクロメートル)(負電極の全固体中に重量で2%)を得られたスラリーに添加し、毎分3000回転で混合してもよい。シリカ(Si)/酸化シリカ(SiO)及び炭素複合体を亜鉛(Zn)スラリーに添加し、6500回転/分で60分間混合して流動性スラリーを形成し、水を添加して滑らかなコーティングを達成するのに必要な粘度を調整してもよい。得られたスラリーを、自動コーターを使用して銅(Cu)箔(例えば、厚さ8μmのCu箔)上にコーティングしてもよい。サンプルセルVの負電極は、所望の厚さに圧縮され、目標の幅(例えば、58ミリメートル)にスライスされてもよい。1つ以上の負極タブは、サンプルセルVの負電極のマスフリー領域に溶接されてもよい。
【0122】
サンプルセルVの組み立ては、例えば、捲回機を用いて正電極、セパレータ及び負電極を捲回することにより、ジェリーロールを形成することを含む。ジェリーロールは、例えば金属ケース、軟質パウチなどであってもよいケースに挿入されてもよい。負極タブのうちの1つは、ケースに溶接されてもよく、正極タブは、例えばレーザ溶接によってサンプルセルVのヘッダに溶接されてもよい。未完成のサンプルセルVは、80°Cで少なくとも12時間乾燥させてから、乾燥させたサンプルセルVを電解質で満たし、捲縮してもよい。サンプルセルVは、形成プロセスを受ける前に、室温で24時間エージングされてもよい。例えば、1KHzでのサンプルセルVの開回路電圧(OCV)及びインピーダンスは、約0.765ボルト及び19ミリオームであってもよい。サンプルセルVは、300ミリアンペア時でC/40で形成された後、室温で7日間エージングされてもよい。
【0123】
サンプルセルVI
【0124】
サンプルセルVIの正電極は、二酸化マンガン(MnO2)を組み込んで、サンプルセルVIがゼロ電圧曝露を受けたときの負極集電体の分解に対する追加の保護を与えてもよい。サンプルセルVIの正電極は、200グラムのコバルト酸リチウム(LiCoO2)活性物質及び3グラムのJD-600カーボンブラックを、100グラムのポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びN-メチルピロリドン(NMP)バインダー溶液(例えば、8%PVDFNMP溶液)に混合することによって形成されてもよい。二酸化マンガン(MnO2)粉末(例えば、2グラムのMnO2出力)を得られたスラリーに添加し、毎分4000回転で30分間混合してもよい。スラリーの粘度は、21mg/cm2の負荷量でアルミニウム箔(例えば、厚さ16μmのアルミニウム箔)上にコーティングする前に、N-メチルピロリドン(NMP)を添加することによって調整されてもよい。正電極を目標の厚さ(例えば、138μm)にカレンダー処理し、所望の寸法(例えば、幅56ミリメートル及び長さ700ミリメートル)にスライスする前に、逆ロールコーターを使用して溶媒を蒸発させてもよい。正極タブ(例えば、アルミニウム(Al)タブ)は、例えば、超音波溶接機を使用して正電極の中心にあるマスフリーゾーンに溶接されてもよい。
【0125】
サンプルセルVIの負電極は、負電極の第3の材料に、負極集電体の第2の材料よりも分解電圧が低い第1の材料を直接組み込むことによって形成されてもよい。サンプルセルVIの負電極は、200グラムの黒鉛負極活物質及び3グラムのカーボンブラックを150グラムのカルボキシメチルセルロース(CMC)水結合剤溶液(例えば、1.5%CMC水溶液)に混合することによって形成されてもよく、次いで、50グラムの水及び2グラムの亜鉛(Zn)粉末が添加されて毎分4000回転で30分間混合される。スラリーには、必要に応じて水の添加により粘度を調整した懸濁液(例えば、固形分48%のスチレン-ブタジエン-ゴム(SBR)懸濁液8グラム)を添加してもよい。得られたスラリーを、10mg/cm2の負荷量で銅(Cu)箔(例えば、厚さ8μmの銅箔)上にコーティングした後、逆ロールコーターを使用して乾燥させて溶媒を除去してもよい。負電極は、目標厚さ(例えば、148μm)にカレンダー加工され、所望の寸法(例えば、幅58ミリメートル及び長さ650ミリメートル)にスライスされてもよい。1つ以上の負極タブ(例えば、1つ以上のニッケル(Ni)タブ)は、負電極の無質量領域に溶接されてもよい。
【0126】
サンプルセルVIの組み立ては、例えば、捲回機を用いて正電極、セパレータ及び負電極を捲回することにより、ジェリーロールを形成することを含む。ジェリーロールは、例えば金属ケース、軟質パウチなどであってもよいケースに挿入されてもよい。負極タブの1つは、ケースに溶接されてもよく、正極タブは、例えばレーザ溶接によってサンプルセルVIのヘッダに溶接されてもよい。未完成のサンプルセルVIを80°Cで少なくとも48時間乾燥させた後、乾燥したサンプルセルVIを5.5グラムの電解質で満たし、捲縮してもよい。サンプルセルVIは、室温で24時間エージングされてもよく、サンプルセルVIをC/50~4.2ボルトで充電すること、10分間休止すること、及びサンプルセルVIをC/5~3ボルトで放電することを含む形成プロセスを受ける前にエージングされてもよい。電池セルのセパレータ、正電極及び負電極の走査型電子顕微鏡(SEM)解析を行って、電池セルが低電圧状態又はゼロ電圧状態に放電されたときに、犠牲電極が電池セルの負極集電体をアノード腐食から保護することを実証してもよい。
図11Aに示す表3及びグラフ1100は、電池セルの正電極を形成するために使用される高ニッケルリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物粉末の元素組成を示す。表3及びグラフ1100に示すように、電池セルの正電極を構成するために用いられる高ニッケルリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物粉末は、亜鉛(Zn)及び銅(Cu)を含まない。
【0127】
【0128】
図11Bに示す表4及びグラフ1125は、電池セルがゼロ電圧曝露(ZVE)及びサイクルに供された後の電池セルから収集された正電極の元素組成を示す。表4及びグラフ1125に示すように、電池セルの正電極中に約1.85%(重量基準)の亜鉛(Zn)が検出されたが、微量の銅(Cu)は見出されなかった。亜鉛(Zn)の存在及び銅(Cu)の非存在は、亜鉛(Zn)犠牲電極が分解して銅(Cu)集電体を陽極腐食から保護したことを示す。
【0129】
【0130】
図11Cに示す表5及びグラフ1150は、電池セルがゼロ電圧曝露(ZVE)及びサイクルに供された後の電池セルから収集された負電極の元素組成を示す。表5及びグラフ1150は、ゼロ電圧曝露後の電池セルの負電極において、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、又は亜鉛(Zn)の量が検出されなかったことを示している。これらの結果から、正電極の亜鉛(Zn)は電解質にあまり溶解しないため、負電極表面での還元は生じないことが分かる。亜鉛(Zn)犠牲電極は、銅(Cu)負極集電体を陽極腐食から保護するが、それ自体は負電極の表面で還元されなかった。したがって、亜鉛(Zn)犠牲電極の溶解は、少なくとも溶解した亜鉛(Zn)がリチウム(Li)又は銅(Cu)のように負電極の表面にデンドライトを形成しないので、安全性の問題を引き起こさない。
【0131】
【0132】
図11Dに示す表6及びグラフ1175は、電池セルがゼロ電圧曝露及びサイクルに供された後の電池セルから収集されたセパレータの元素組成を示す。表6及びグラフ1175に示すように、セパレータ中にニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)及び亜鉛(Zn)の量は検出されなかった。正電極に存在する亜鉛(Zn)は電解質に溶解しないため、セパレータの細孔を通って輸送されない。したがって、亜鉛(Zn)犠牲電極の溶解は、少なくとも溶解した亜鉛(Zn)がリチウム(Li)又は銅(Cu)のように負電極の表面にデンドライトを形成しないので、安全性の問題を引き起こさない。
【0133】
【0134】
サンプルセルVII
【0135】
市販の3.5Ah18650セルを、サンプルセルI及びIIにおけるゼロ電圧曝露(ZVE)についての同じ試験シーケンスに従って試験した。
【0136】
サンプルセルVIIの100%放電深度(DOD)でのサイクル寿命は、最初の2時間の休止によって決定されてもよい。サンプルセルVIIは、C/3~4.2ボルトで<C/20まで定電流定電圧(CC-CV)で充電され、10分間休止され、C/5~2.5ボルトで定電流(CCD)で放電され、30分間休止されてもよい。サンプルセルVIIは、容量保持率が約80%になるまで充放電を繰り返してもよい。
【0137】
ゼロ電圧曝露(ZVE)に対するサンプルセルVIIの応答は、サンプルセルVIIの初期20°C容量及び直流抵抗(DCR)を測定することによって決定されてもよい。次いで、サンプルセルVIIは、C/5から4.2ボルトで<C/20まで定電流定電圧(CC-CV)で放電され、10分間休止され、C/5から2.5ボルトで定電流(CCD)で放電され、30分間休止され、C/5から0ボルトで定電流(CCD)で放電され、更に0ボルトで7日間20オーム放電されてもよい。その後、サンプルセルVIIは、24時間休止する前に、C/5で3.8ボルトまで定電流定電圧(CC-CV)で充電されてもよい。この時点で、サンプルセルVIIの20°C容量及び直流抵抗(DCR)を決定してもよい。
【0138】
以下の表7は、ゼロ電圧曝露(ZVE)前後のサンプルセルVIIの容量及び直流抵抗(DCR)の比較解析を示す。
図12Aは、ゼロ電圧露光(ZVE)の前後のサンプルセルVIIの電圧、容量、及び直流抵抗(DCR)を示すグラフ1200を示す。表7及び
図12Aのグラフ1200に示すように、サンプルセルVIIの容量-時間プロファイルは、ゼロ電圧露光(ZVE)の前後で実質的に同じである。サンプルセルVIIの放電容量は、ゼロ電圧曝露(ZVE)前では3.24アンペア時であり、ゼロ電圧曝露(ZVE)後では3.16アンペア時であり、約2.46%の損失を表す。充電状態95%、50%、及び20%の直流抵抗(DCR)も、ゼロ電圧曝露(ZVE)後に約10%の変化を示す。
【0139】
【0140】
図12Bは、サンプルセルVIIが20オームで7日間のゼロ電圧曝露(ZVE)に供されている間のサンプルセルVIIの電圧-時間プロファイルを示すグラフ1225を示す。サンプルセルVIIの放電容量は、4.2ボルト~2.5ボルトで3.278アンペア時、2.5ボルト~0ボルトで0.194アンペア時、0ボルトで0.277アンペア時である。サンプルセルVIIの深放電は0.471アンペア時を放出し、総放電容量は3.749アンペア時となった。したがって、ゼロ電圧曝露(ZVE)は、サンプルセルVIIの放電容量の約14.36%の変化に寄与した。
図12Cは、サンプルセルVIIを20オームで7日間ゼロ電圧曝露(ZVE)に供した後のサンプルセルVIIのサイクル寿命を示すグラフ1250を示す。
図12Cに示すように、サンプルセルVIIの放電エネルギー保持率は、130サイクル後に約91%であり、200サイクル後にはわずか約78%である。更に、参照としてのゼロ電圧曝露のないサンプルセルVIIは、130サイクル後のサイクル後に約94.5%の容量損失を示す。ゼロ電圧曝露(ZVE)は、実際に、市販の18650セルのサイクル寿命に重大な損傷を引き起こす。
【0141】
上記の説明及び特許請求の範囲において、「~のうちの少なくとも1つ」又は「~のうちの1つ以上」などの語句が出現し、その後に連言的な要素又は特徴のリストが続いてもよい。「及び/又は」という用語も2つ以上の要素又は特徴のリストに出現してもよい。使用された文脈によって暗黙的又は明示的に矛盾しない限り、そのような語句は、列挙された要素又は特徴のいずれかを個別に、或いは列挙された要素又は特徴のいずれかを他の列挙された要素又は特徴のいずれかと組み合わせて意味することを意図している。例えば、句「A及びBのうちの少なくとも1つ」、「A及びBのうちの1つ以上」及び「A及び/又はB」はそれぞれ、「A単独、B単独、又は、AとBを一緒に」を意味することを意図している。3つ以上の項目を含むリストについても同様の解釈が意図される。例えば、語句「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、及びCのうちの1つ以上」、及び、「A、B、及び/又はC」はそれぞれ、「A単独、B単独、C単独、AとB、AとC、BとC、又は、AとBとC」を意味することが意図される。上記及び特許請求の範囲における「に基づいて」という用語の使用は、列挙されていない特徴又は要素も許容されるように、「少なくとも部分的に基づいて」を意味することを意図している。
【0142】
本明細書に記載の主題は、所望の構成に応じて、システム、装置、方法、及び/又は物品で実施することができる。前述の説明に記載された実施態様は、本明細書に記載された主題と一致する全ての実施態様を表すものではない。代わりに、それらは、記載された主題に関連する態様と一致する幾つかの例にすぎない。幾つかの変形例を上記で詳細に説明したが、他の修正又は追加も可能である。特に、本明細書に記載のものに加えて、更なる特徴及び/又は変形を提供することができる。例えば、前述した実施態様は、開示された特徴の様々な組み合わせ及び部分的組み合わせ、並びに/又は前述した幾つかの更なる特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせを対象とすることができる。更に、添付の図面に示されている、及び/又は本明細書に記載されている論理フローは、望ましい結果を達成するために、示されている特定の順序、又は連続した順序を必ずしも必要としない。他の実施態様は、以下の特許請求の範囲内であってもよい。
【国際調査報告】