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特表2024-511825低速でのプレイグニッション事象を軽減するための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】低速でのプレイグニッション事象を軽減するための組成物
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/223 20060101AFI20240308BHJP
   C10L 1/224 20060101ALI20240308BHJP
   C10L 1/232 20060101ALI20240308BHJP
   C10L 1/188 20060101ALI20240308BHJP
   C10L 1/183 20060101ALI20240308BHJP
   C10L 1/228 20060101ALI20240308BHJP
   C10L 1/185 20060101ALI20240308BHJP
   C10M 133/06 20060101ALI20240308BHJP
   C10M 133/08 20060101ALI20240308BHJP
   C10M 133/16 20060101ALI20240308BHJP
   C10M 133/38 20060101ALI20240308BHJP
   C10M 133/22 20060101ALI20240308BHJP
   C10M 133/36 20060101ALI20240308BHJP
   C10M 129/26 20060101ALI20240308BHJP
   C10M 129/10 20060101ALI20240308BHJP
   C10M 129/54 20060101ALI20240308BHJP
   C10M 129/68 20060101ALI20240308BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20240308BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20240308BHJP
【FI】
C10L1/223
C10L1/224
C10L1/232
C10L1/188
C10L1/183
C10L1/228
C10L1/185
C10M133/06
C10M133/08
C10M133/16
C10M133/38
C10M133/22
C10M133/36
C10M129/26
C10M129/10
C10M129/54
C10M129/68
C10N40:25
C10N30:00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560202
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 IB2022052715
(87)【国際公開番号】W WO2022208250
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】63/168,447
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598037547
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シー、ジウン - レ
(72)【発明者】
【氏名】クォ、チャン - ハオ
(72)【発明者】
【氏名】レーパー、チャールズ ポール
【テーマコード(参考)】
4H013
4H104
【Fターム(参考)】
4H013CD02
4H104BA02A
4H104BA07A
4H104BB05C
4H104BB14C
4H104BB24C
4H104BB31C
4H104BE02C
4H104BE04C
4H104BE05C
4H104BE11C
4H104BE16C
4H104BE24C
4H104BE26C
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104LA20
4H104PA44
(57)【要約】
火花点火内燃機関での低速プレイグニッション事象を防止または軽減するための燃料組成物を提供する。燃料組成物は、ガソリンまたはディーゼル範囲で沸騰する炭化水素燃料と、(I)により示される構造を有する一次添加剤またはその塩と、を含む。
【化1】

Aは環部分であり、R及びRは独立してH、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、またはヒドロキシル基である。R及びRは独立してH、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、アミノ、もしくはヒドロキシル基であるか、または、R及びRは、環状基の一部である。RはC-C100ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、またはヒドロキシル基であり、pは0~2であり、nは1~3であり、mは1~3であり、p+n+mは5未満である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガソリンまたはディーゼル範囲で沸騰する炭化水素燃料と、
【化1】

により表される構造を有する一次添加剤またはその塩と、を含む燃料組成物
[式中、Aは環部分であり、
及びRは独立してH、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、またはヒドロキシル基であり、
及びRは独立してH、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、アミノ、もしくはヒドロキシル基であるか、または、R及びRは、環状基の一部であり、Rは、C-C100ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、またはヒドロキシル基であり、pは0~2であり、
nは1~3であり、mは1~3であり、p+n+mは5未満である]。
【請求項2】
前記カルボキシル基がカルボン酸、エステル、アミドまたはケトンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Aが芳香環または複素環式環である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記環状基が、1つ以上の窒素、または1つ以上の酸素を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
二次添加剤またはその塩をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記二次添加剤が酸、フェノール、1,3-ジカルボニル、ヒドロキシアミド、酸化防止剤、サリチレート、アミジンまたはグアニジンである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記二次添加剤が2-エチルヘキサン酸、または1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-ウンデカ-7-エンである、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
及びRが共に水素である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
及びRの少なくとも1つが、エチルまたはブチル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
火花点火内燃機関における、低速でのプレイグニッション事象を防止または軽減する方法であって、
ガソリンまたはディーゼル範囲で沸騰する炭化水素燃料と、
【化2】

により表される構造を有する一次添加剤またはその塩と、を含む燃料組成物を前記機関に供給することを含む、前記方法
[式中、Aは環部分であり、
及びRは独立してH、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、またはヒドロキシル基であり、
及びRは独立してH、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、アミノ、もしくはヒドロキシル基であるか、または、R及びRは、環状基の一部であり、Rは、C-C100ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、またはヒドロキシル基であり、pは0~2であり、
nは1~3であり、mは1~3であり、p+n+mは5未満である]。
【請求項11】
前記組成物が、二次添加剤またはその塩をさらに含み、前記二次添加剤が酸、フェノール、1,3-ジカルボニル、ヒドロキシアミド、酸化防止剤、サリチレート、アミジンまたはグアニジンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記カルボキシル基がカルボン酸、エステル、アミド、またはケトンである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
Aが芳香環または複素環式環である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記環状基が、1つ以上の窒素、または1つ以上の酸素を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記二次添加剤が2-エチルヘキサン酸、または1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-ウンデカ-7-エンである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
及びRが共に水素である、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
及びRの少なくとも1つが、エチルまたはブチル基である、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
潤滑油組成物であって、
潤滑化粘度を有する基油と、
【化3】

により表される構造を有する一次添加剤またはその塩と、を含む、前記潤滑油組成物
[式中、Aは環部分であり、
及びRは独立してH、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、またはヒドロキシル基であり、
及びRは独立してH、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、アミノ、もしくはヒドロキシル基であるか、または、R及びRは、環状基の一部であり、Rは、C-C100ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、またはヒドロキシル基であり、pは0~2であり、
nは1~3であり、mは1~3であり、p+n+mは5未満である]。
【請求項19】
二次添加剤またはその塩をさらに含み、前記二次添加剤が酸、フェノール、1,3-ジカルボニル、ヒドロキシアミド、酸化防止剤、サリチレート、アミジンまたはグアニジンである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記カルボキシル基がカルボン酸、エステル、アミドまたはケトンである、請求項18に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直接噴射エンジンにおける、低速でのプレイグニッション事象を防止または軽減するための組成物、及び、当該組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージ型、または過給型エンジン(即ち、ブースト型内燃機関)は、確率的なプレイグニッション、または、低速でのプレイグニッション(即ち、「LSPI」)として知られる、異常な燃焼現象を示し得る。LSPIは、高いシリンダー内圧、及び先行した燃焼位相化をもたらす可能性があり、これらは、深刻なノッキング強度を引き起こす可能性がある。最悪の場合の状況では、LSPIは、壊滅的なエンジン損傷を引き起こす可能性がある。しかし、LSPI事象は散発的、かつ、非制御下でのみ生じるため、本現象の原因を特定し、当該現象を抑制するための解決策を開発することは困難である。
【0003】
LSPIの、可能性のある1つの説明は、当該事象が、少なくとも部分的には、エンジンが低速で作動しており、圧縮行程時間が最大である期間の間に、高圧下でピストンの隙間から、エンジン燃焼室に入るエンジンオイルの油滴に自動的に点火することにより引き起こされるということである。
【0004】
LSPIに対処しようと試みている、電子制御及びノックセンサーなどの、新規のエンジン技術が積極的に調査され、開発されているものの、LSPIを軽減する、または取り除くことができる、燃料及び/または潤滑油組成物もまた必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、ガソリンまたはディーゼル範囲で沸騰する炭化水素燃料と、
【化1】

により表される構造を有する一次添加剤またはその塩と、を含む燃料組成物を提供し、式中、Aは環部分であり、R及びRは独立してH、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、またはヒドロキシル基であり、R及びRは独立してH、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、アミノ、もしくはヒドロキシル基であるか、または、R及びRは、環状基の一部であり、Rは、C-C100ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、またはヒドロキシル基であり、pは0~2であり、nは1~3であり、mは1~3であり、p+n+mは5未満である。
【0006】
別の態様では、火花点火内燃機関における、低速でのプレイグニッション事象を防止または軽減する方法であって、ガソリンまたはディーゼル範囲で沸騰する炭化水素燃料と、
【化2】

により表される構造を有する一次添加剤またはその塩と、を含む燃料組成物をエンジンに供給することを含む、上記方法を提供し、式中、Aは環部分であり、R及びRは独立してH、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、またはヒドロキシル基であり、R及びRは独立してH、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、アミノ、もしくはヒドロキシル基であるか、または、R及びRは、環状基の一部であり、Rは、C-C100ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、またはヒドロキシル基であり、pは0~2であり、nは1~3であり、mは1~3であり、p+n+mは5未満である。
【0007】
さらに別の態様では、潤滑化粘度を有する基油と、
【化3】

により表される構造を有する一次添加剤またはその塩と、を含む潤滑油組成物を提供し、式中、Aは環部分であり、R及びRは独立してH、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、またはヒドロキシル基であり、R及びRは独立してH、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、アミノ、もしくはヒドロキシル基であるか、または、R及びRは、環状基の一部であり、Rは、C-C100ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、またはヒドロキシル基であり、pは0~2であり、nは1~3であり、mは1~3であり、p+n+mは5未満である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
概要
本明細書において、以下の単語及び表現は、使用される場合、及び使用されるとき、以下に付与される意味を有する。
【0009】
「ガソリン」、または「ガソリン沸点範囲構成成分」とは、少なくとも主にC-C12炭化水素を含有する組成物を意味する。一実施形態では、ガソリンまたはガソリン沸点範囲構成成分とは、少なくとも主にC-C12炭化水素を含有し、さらに、約100°F(37.8℃)~約400°F(204℃)の沸点範囲を有する組成物を意味するようにさらに定義される。代替の実施態様では、ガソリンまたはガソリン沸点範囲構成成分とは、少なくとも主にC-C12炭化水素を含有し、約100°F(37.8℃)~約400°F(204℃)の沸点範囲を有し、さらに、ASTM D4814を満たすように定義される組成物を意味するように定義される。
【0010】
「油溶性」という用語は、所与の添加剤に関して、所望のレベルの活性または性能を付与するのに必要な量が、潤滑化粘度を有する油に溶解、分散、または懸濁させることにより組み込むことができることを意味する。通常、「油溶性」とは、添加剤の少なくとも0.001重量%を、潤滑油組成物に組み込むことができることを意味する。「燃料可溶性」という用語は、燃料に溶解、分散、または懸濁した添加剤に対する類似表現である。
【0011】
「少量」という用語は、記載された添加剤に関して、及び組成物の総重量に関して表されており、添加剤の有効成分として計算される組成物の50重量%未満を意味する。
【0012】
「エンジン」または「燃焼機関」とは、燃料の燃焼が燃焼室内で生じる、熱機関である。「内燃機関」とは、燃料の燃焼が密閉空間(「燃焼室」)内で生じる、熱機関である。「火花点火機関」とは、燃焼が、通常点火プラグから生じる火花により点火される熱機関である。これは、燃料の注入と共に圧縮により生じる熱が、外部点火を必要とせずに燃焼を開始するのに十分である「圧縮点火機関」、通常ディーゼルエンジンとは対照的である。
【0013】
低速でのプレイグニッション(LSPI)
低速でのプレイグニッション(LSPI)とは、操作時に、1500~2500rpmのエンジン速度、例えば、1500~2000rpmのエンジン速度において、1000kPa(10バール)を超えるブレーキ平均有効圧を生み出す、直接注入式のブースト型(ターボチャージ型または過給型)・火花点火(ガソリン)内燃機関において生じる可能性が最も、またはより高い。「ブレーキ平均有効圧」(BMEP)は、エンジンの行程容積で除した、エンジン回転中に達成される作業量、即ち、エンジンの移動により正規化されるエンジントルクと定義される。「ブレーキ」という言葉は、動力計で測定した、エンジンフライホイールで入手可能な実際のトルクまたは仕事率を意味する。したがって、BMEPは、エンジンの有用なエネルギー出力の尺度である。
【0014】
高圧火花点火内燃機関で特に有用であり、高圧火花点火内燃機関で用いられる場合の、本開示の燃料添加剤または潤滑油添加剤は、エンジンのノッキング及びプレイグニッション問題を防止する、または最小限に抑えることが、今では判明している。
【0015】
フェノールアミン
本発明の燃料または潤滑剤添加剤は、以下の一般構造1を有するフェノールアミン組成物、またはその塩を含む:
【化4】

構造1に関して、nは1~3であり、pは0~2であり、mは1~3であり、ここで、p+m+n<5である。
【0016】
部分Aは、芳香環または複素環式環などの環である。
【0017】
各Rは独立して、水素、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基(例えば、カルボン酸、エステル、アミド、ケトンなど)、エーテル、またはヒドロキシル基である。
【0018】
各Rは独立して、水素、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基(例えば、カルボン酸、エステル、アミド、ケトンなど)、エーテル、またはヒドロキシル基である。
【0019】
各Rは独立して、水素、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基(例えば、カルボン酸、エステル、アミド、ケトンなど)、エーテル、アミノ、またはヒドロキシル基である。
【0020】
各Rは独立して、水素、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基(例えば、カルボン酸、エステル、アミド、ケトンなど)、エーテル、アミノ、またはヒドロキシル基である。
【0021】
いくつかの実施形態では、R及びRは、環状基を形成し得る。いくつかの実施形態では、環状基は、1つ以上の窒素、または1つ以上の酸素を含む。
【0022】
は、C-C100ヒドロカルビル基、カルボキシル基(例えば、カルボン酸、エステル、アミド、ケトンなど)、エーテル、またはヒドロキシル基である。
【0023】
一実施形態に従うと、R及びRは共に水素である。いくつかの実施形態では、R及びRの少なくとも1つはメチル基である。いくつかの実施形態では、RはC-Cヒドロカルビル基である。
【0024】
フェノールアミンの好適例としては、1,3-ビス((ジメチルアミノ)メチル)ナフタレン-2-オール(構造2A)、2,4-ビス(モルホリノメチル)ナフタレン-1,3-ジオール(構造2B)、5,7-ビス((ジメチルアミノ)メチル)キノリン-8-オール(構造2C)、4,6-ビス((ジメチルアミノ)メチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-オール(構造2D)、及び、4-((ジへキシルアミノ)メチル)-1-フェニル-2-(フェニルアミノ)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-5-オール(構造2E)が挙げられる。
【化5】
【0025】
本発明のフェノールアミン組成物は、商業的に入手することができる、または、任意の既知の方法により合成することができる。例えば、本発明の1種以上のフェノールアミン添加剤は、アルデヒドによる、カルボニル官能基のアミノアルキル化を通常伴う、マンニッヒ反応により合成することができる。マンニッヒ反応の詳細な説明は、例えば、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第7,351,864号に見出すことができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、フェノールアミンは塩形態で存在することができる。フェノールアミンの塩は通常、プロトン化形態(即ち、アンモニウム)である。フェノールアミン添加剤が塩形態で存在する場合、当該添加剤は、1種以上の二次LSPI還元添加剤と協調することができる。フェノールアミンと二次添加剤の相互作用は相乗的であり、予想を上回るLSPIの低下をもたらすことができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、フェノールアミンは、1種以上の二次添加剤と相乗的に相互作用し得、ここで、フェノールアミンと1種以上の二次添加剤は、非塩(中性)形態である。好適な二次添加剤としては、酸(脂肪酸、不飽和酸、アルキル芳香族酸、芳香族酸、ヒドロキシ酸、アミノ酸、サリチル酸)、フェノール、1,3-ジカルボニル(例えば、1,3-ジケトン、1,3-ケトエステル)、ヒドロキシアミド、酸化防止剤(例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸)、アミジン、グアニジン、及びトリアジンが挙げられる。
【0028】
以下は、LSPI活性を低下させるための燃料または潤滑化添加剤として利用可能な二次添加剤の説明である。二次LSPI低下添加剤、置換二次LSPI低下添加剤、またはこれらの誘導体を、それらの塩または中性形態で使用し、そして、塩または中性形態の一次添加剤と組み合わせて使用し、LSPI活性を低下させる。例えば、フェノールアミン及び脂肪酸(二次添加剤)を組み合わせて、LSPI添加剤として利用することができる。
【0029】
酸添加剤
脂肪酸
脂肪酸は、非芳香族カルボン酸である。好適な脂肪酸としては、以下の構造を有するモノカルボン酸が上げられる:
【化6】

式中、Rは、2~20個の炭素原子を有する脂肪族基である。脂肪族基は、直鎖または分枝鎖であってよく、ヘテロ原子を含有してよい。
【0030】
好適な脂肪酸としては、ヘキサン酸(構造3A)、ヘプタン酸(構造3B)、オクタン酸(構造3C)、ノナン酸(構造3D)、デカン酸(構造3E)、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、2-エチル酪酸(構造3F)、3,3-ジメチル酪酸、2-メチルペンタン酸(C)、2-メチルヘキサン酸(C)、4-メチルヘキサン酸(C)、5-メチルヘキサン酸(C)、2,2-ジメチルペンタン酸(C)、2-プロピルペンタン酸(C)、2-エチルヘキサン酸(構造3G)、2-メチルヘプタン酸(C)、イソオクタン酸(C)、3,5,5-トリメチルヘキサン酸(C)、4-メチルオクタン酸(C)、4-メチルノナン酸(C10)、イソデカン酸(C10)、2-ブチルオクタン酸(C12)、イソトリデカン酸(C13)、2-ヘキシルデカン酸(C16)、イソパルミチン酸(C16)、イソステアリン酸(構造3H)、3-シクロヘキシルプロピオン酸、4-シクロヘキシル酪酸(構造31)、及びシクロヘキサンペンタン酸が挙げられる。例示的な構造を以下に示す。
【化7】
【0031】
不飽和酸
好適な不飽和酸としては、二重または三重炭素-炭素結合を含有する、任意の有機酸が挙げられる。例示的な不飽和酸としては、マレイン酸(構造4A)、フマル酸(構造4B)、加えて、パルミトレイン酸(構造4C)及びオレイン酸(構造4D)などの不飽和脂肪酸が挙げられる。例示的な構造を以下に示す。
【化8】
【0032】
アルキル芳香族酸
好適なアルキル芳香族酸としては、モノカルボン酸とジカルボン酸の両方が挙げられる。アルキルカルボン酸は、6個以上の炭素原子(例えば、6~24個の炭素原子、6~20個の炭素原子、8~24個の炭素原子、8~20個の炭素原子、またはさらに、8~18個の炭素原子)を有することができる。アルキル部分は任意選択で、ヒドロキシ、アルコキシ、及びカルボニル(例えば、アルデヒドまたはケトン)基などの1種以上の置換基で置換されてよい。アルキル芳香族酸の好適例としては、メチル安息香酸(構造5A)、及びエチル安息香酸(構造5B)が挙げられる。例示的な構造を以下に示す。
【化9】
【0033】
芳香族酸
好適な芳香族酸としては、モノカルボン酸とジカルボン酸の両方が挙げられる。アルキルカルボン酸は、6個以上の炭素原子(例えば、6~24個の炭素原子、6~20個の炭素原子、8~24個の炭素原子、8~20個の炭素原子、またはさらに、8~18個の炭素原子)を有することができる。アルキル部分は任意選択で、ヒドロキシ、アルコキシ、及びカルボニル(例えば、アルデヒドまたはケトン)基などの1種以上の置換基で置換されてよい。好適な芳香族酸としては、安息香酸(構造6A)、ヒドロキシ安息香酸(構造6B)、及びテトラリンカルボン酸(構造6C)が挙げられる。例示的な構造を以下に示す。
【化10】
【0034】
ヒドロキシ酸
好適なヒドロキシ酸としては、以下の一般式により表すことができるものが挙げられる:
【化11】

式中、n=1~3である。ヒドロキシ酸の好適例としては、グリコール酸(構造7A)、乳酸(構造7B)、リンゴ酸(構造7C)、酒石酸(構造7D)、及びクエン酸(構造7E)が挙げられる。例示的な構造を以下に示す。
【化12】
【0035】
フェノール添加剤
フェノール
好適なフェノールとしては、チモール(構造8A)、オイゲノール(構造8B)、ヒドロキノン(構造8C)、レゾルシノール(構造8D)、p-クレゾール(構造8E)、2-メチルキノリン-8-オール(「8-ヒドロキシキナルジン」)(構造8G)、フロログルシノール(構造8H)、m-クレゾール(構造8I)、オルトクレゾール(構造8J)、カテコール(構造8K)、及び8-キノリノール(構造8L)が挙げられる。例示的な構造を以下に示す。
【化13】
【0036】
1,3-ジカルボニル添加剤
1,3-ジケトン
1,3-ジケトン化合物の好適例としては、アセチルアセトン(構造9A)、及びクルクミン(構造9B)が挙げられる。例示的な構造を以下に示す。
【化14】
【0037】
1,3-ケトエステル
好適な1,3-ケトエステルを以下に示す。
【化15】
【0038】
ヒドロキサミド添加剤
ヒドロキサミドは、アミドのヒドロキシ誘導体である。有用なヒドロキサミドとしては、以下の一般式により表すことができるものが挙げられる:
【化16】

式中、R及びRはそれぞれ独立して、水素またはC-C20(例えば、C-C12)アルキル基から選択される。好適なヒドロキサミドとしては、ヒドロキシメチルアセトアミド(式21A)が挙げられる。他の好適な構造を以下に示す。
【化17】
【0039】
酸化防止添加剤
好適な酸化防止剤としては、モノカルボン酸とジカルボン酸の両方が挙げられる。アルキルカルボン酸は、6個以上の炭素原子(例えば、6~24個の炭素原子、6~20個の炭素原子、8~24個の炭素原子、8~20個の炭素原子、またはさらに、8~18個の炭素原子)を有することができる。アルキル部分は任意選択で、ヒドロキシ、アルコキシ、及びカルボニル(例えば、アルデヒドまたはケトン)基などの1種以上の置換基で置換されてよい。好適な酸化防止剤としては、以下が挙げられる。
【化18】
【0040】
サリチル酸添加剤
サリチル酸
好適なサリチル酸としては、2-ヒドロキシ-5-(テトラコサ-1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23-ドデカイン-1-イル)安息香酸-ニ水素(構造13E)が挙げられる。好適なサリチル酸を以下に示す。
【化19】
【0041】
アミジン
有用なアミジンとしては、以下の一般式により表すことができるものが挙げられる:
【化20】

式中、R、R、R、及びRはそれぞれ独立して、水素、一価の有機基、一価のヘテロ有機基(例えば、炭素原子を介して結合し、カルボキシルまたはスルホンなどの酸性官能基を含有しない基または部分の形態で、窒素、酸素、硫黄、またはリンを含む)、及びこれらの組み合わせから選択され、R、R、R、及びRのいずれか2つ以上は任意に、互いに結合して環状構造(例えば、五、六、または七員環)を形成することができる。環状構造は芳香族または非芳香族であってよく、加えて、完全飽和から完全不飽和まで、様々であってよい。有機及びヘテロ有機基は、1~10個の炭素原子(例えば、1~6個の炭素原子)を有することができる。
【0042】
好適なアミジンとしては、1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン(構造14A)、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン(構造14B)、1,2-ジエチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン(構造14C)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-ノナ-5-エン(DBN;構造14D)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-ウンデカ-7-エン(DBU;構造14E)、ベンズアミジン(構造14F)、ベンズイミダゾール(構造14G)、及び、2-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール(構造14M)が挙げられる。例示的な構造を以下に示す。
【化21】
【0043】
グアニジン添加剤
好適なグアニジンの代表的な例としては、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(構造15A)、2-tert-ブチル-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(構造15B)、フェニルグアニジン(構造15C)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4,4,0]デカ-5-エン(構造15D)、1,5,7-トリアザビシクロ[4,4,0]デカ-5-エン(構造15E)、1,3-ジフェニルグアニジン(構造15F)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン(構造15G)、1,2,3-トリフェニルグアニジン(構造15H)、N-ベンジルグアニジン(構造体15I)、N-シクロヘキシルグアニジン(構造15J)、アミノグアニジン(構造15K)、1,3-ジアミノグアニジン(構造15L)、N,N’,N’’-トリアミノグアニジン(構造15M)、及び、1-フェニルビグアニド(構造15N)が挙げられる。
【化22-1】

【化22-2】

トリアジン添加剤
【0044】
好適なトリアジンとしては、N,N,N-トリフェニル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン(構造16A)、2,4,6-トリモルホリノ-1,3,5-トリアジン(構造16B)、2,4,6-トリス(4-メチルピペラジン-1-イル)-1,3,5-トリアジン(構造16C)、及び、N,N,N,N,N,N-ヘキサブチル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン(構造16D)が挙げられる。
【化23】
【0045】
アミノ酸
有用なアミノ酸としては、以下の一般式により表すことができるものが挙げられる:
【化24】

式中、Rは「脂肪族」または「芳香族」側鎖である。アミノ酸側鎖は、芳香族または脂肪族として大別することができる。芳香族側鎖としては、芳香環が挙げられる。芳香族側鎖を備えるアミノ酸の例としては、例えば、ヒスチジン(構造17A)、フェニルアラニン(構造17B)、チロシン(構造17C)、トリプトファン(構造17D)などが挙げられる。非芳香族側鎖は「脂肪族」として大きく分類され、例えば、アラニン(構造17E)、グリシン(構造17F)、システイン(構造17G)などが挙げられる。
【0046】
アミノ酸(複数可)は、天然及び/または非天然のαアミノ酸であることができる。天然アミノ酸は、遺伝暗号によりコードされるアミノ酸、加えて、これに由来するアミノ酸である。これらとしては、例えば、ヒドロキシプロリン(構造17H)、γ-カルボキシグルタメート(構造17I)、及びシトルリン(構造17J)が挙げられる。本明細書では、「アミノ酸」という用語は、アミノ酸類似体及び模倣物もまた含む。類似体とは、R基が天然アミノ酸で見いだせないものである点を除いて、天然アミノ酸と同じ一般的構造を有する化合物である。
【0047】
自然に存在するアミノ酸の類似体の代表的な例としては、ホモセリン(構造17K)、ノルロイシン(構造17L)、ホモプロリン(構造17M)、及びプロリン(構造17N)が挙げられる。アミノ酸模倣物とは、αアミノ酸の一般的化学構造とは異なる構造を有するが、αアミノ酸と同様の機能を有する化合物である。アミノ酸は、L-またはD-アミノ酸である。好適な構造を以下に示す。
【化25-1】

【化25-2】
【0048】

本開示の塩は、従来の手段により、例えば、中性溶媒中で、一次添加剤を好適な二次添加剤と混合することにより調製することができる。一方の添加剤を他方に加える順序は、重要ではない。一次添加剤と二次添加剤は通常、ほぼ等モル比で互いに混合される。過剰の一次または二次添加剤構成成分を用いてよい。例えば、アルキルカルボン酸に対する塩基のモル比は、約1.05:1~2:1(例えば、1.1:1~1.5:1)であってよい。
【0049】
燃料組成物
本開示の化合物は、火花点火内燃機関において、エンジンノックまたはプレイグニッション事象を防止または軽減するために、炭化水素燃料中で添加剤として用いることができる。
【0050】
炭化水素燃料中での、本開示の化合物の濃度は、25~5000重量百万分率(例えば、50~1000ppm)の範囲であってよい。
【0051】
本開示の化合物は、65℃~205℃の範囲で沸騰する、不活性で安定した親油性(即ち、炭化水素燃料に溶解する)有機溶媒を用いる濃縮物として配合することができる。ベンゼン、トルエン、キシレン、またはより高い沸点の芳香族化合物または芳香族希釈剤などの、脂肪族または芳香族炭化水素溶媒を用いてよい。炭化水素溶媒と組み合わせた、エタノール、イソプロパノール、メチルイソブチルカルビノール、n-ブタノールなどといった、2~8個の炭素原子を含有する脂肪族アルコールもまた、本添加剤と共に用いるのに好適である。濃縮物中では、添加剤の量は10~70重量%(例えば、20~40重量%)であってよい。
【0052】
ガソリン燃料においては、酸素添加剤(例えば、エタノール、メチル=tert-ブチルエーテル)、他のアンチノック剤、及び、洗浄剤/分散剤(例えば、ヒドロカルビルアミン、ヒドロカルビルポリ(オキシアルキレン)アミン、スクシンイミド、マンニッヒ反応生成物、ポリアルキルフェノキシアルカノールの芳香族エステル、または、ポリアルキルフェノキシアミノアルカン)を含む、他の周知の添加剤を用いることができる。さらに、摩擦調整剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、及び乳化破壊剤が存在してよい。
【0053】
ディーゼル燃料では、流動点降下剤、流動性向上剤、セタン向上剤などといった、他の周知の添加剤を用いることができる。
【0054】
燃料可溶性の不揮発性キャリア流体または油もまた、本開示の化合物と共に用いてよい。キャリア流体とは、要求オクタン価の増加を幾分かは助長するが、燃料添加剤組成物の、不揮発性残留物(NVR)または溶媒非含有流体留分を実質的に増加させる化学的に不活性な炭化水素可溶性液状ビヒクルである。キャリア流体は、米国特許第3,756,793号;同第4,191,537号;及び同第5,004,478号;ならびに、欧州特許出願公開第356,726号及び同第382,159号に記載されているものなどの、水素添加及び非水素添加ポリアルファオレフィン、合成ポリオキシアルキレン由来の油を含む、鉱油、精製石油、合成ポリアルカン及びアルケンなどの、天然または合成油であってよい。
【0055】
キャリア流体は、炭化水素燃料の35~5,000重量ppm(例えば、燃料の50~3000ppm)の範囲の量で用いてよい。燃料濃縮物中で用いる場合、キャリア流体は、20~60重量%(例えば、30~50重量%)の範囲の量で存在してよい。
【0056】
潤滑油組成物
本開示の化合物は、火花点火内燃機関において、エンジンノックまたはプレイグニッション事象を防止または軽減するために、潤滑油中で添加剤として用いることができる。
【0057】
潤滑油組成物中での、本開示の化合物の濃度は、潤滑油組成物の総重量を基準にして、0.01~15重量%(例えば、0.5~5重量%)の範囲であってよい。
【0058】
潤滑粘度の油(時には「ベースストック」または「基油」として称される)は、潤滑剤の一次液体構成物であり、その中へ添加剤及び場合によっては他の油がブレンドされて、例えば最終的な潤滑剤(または潤滑剤組成物)を生成する。濃縮物を作製するため、及びそこから潤滑油組成物を作製するために有用な基油は、天然(植物性、動物性、または鉱物性)及び合成潤滑油ならびにそれらの混合物から選択されてもよい。
【0059】
本開示におけるベースストック及び基油の定義は、American Petroleum Institute(API)Publication 1509 Annex E(「API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils,」December 2016)に記載されているものと同じである。グループIのベースストックは、表E-1に定める試験方法を使用して、90%未満の飽和分及び/または0.03%を超える硫黄を含有し、80以上120未満の粘度指数を有する。グループIIのベースストックは、表E-1に定める試験方法を使用して、90%以上の飽和分及び0.03%以下の硫黄を含有し、80以上120未満の粘度指数を有する。グループIIIのベースストックは、表E-1に定める試験方法を使用して、90%以上の飽和分及び0.03%以下の硫黄を含有し、120以上の粘度指数を有する。グループIVのベースストックは、ポリアルファオレフィン(PAO)である。グループVのベースストックには、グループI、II、III、またはIVに含まれないすべての他のベースストックが含まれる。
【0060】
天然油としては、動物油、植物油(例えば、ヒマシ油及びラード油)、ならびに鉱油が挙げられる。好ましい熱酸化安定性を有する動物油及び植物油を使用することができる。天然油のうち、鉱油が好ましい。鉱油は、それらの原油源に関して、例えば、パラフィン系、ナフテン系、または混合パラフィン系-ナフテン系であるかどうかに関して、大きく異なる。石炭または頁岩由来の油も有用である。天然油はまた、それらの生成及び精製に使用される方法、例えば、それらの蒸留範囲、ならびにそれらが直留であるか、分解されているか、水素精製されているか、または溶媒で抽出されたかによっても異なる。
【0061】
合成油としては、炭化水素油が挙げられる。炭化水素油としては、重合及び共重合化オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー、エチレン-オレフィンコポリマー及びエチレン-アルファオレフィンコポリマー)などの油が挙げられる。合成炭化水素油には、ポリアルファオレフィン(PAO)油ベースストックが一般的に使用される。例として、C~C14オレフィン、例えば、C、C10、C12、C14オレフィン、またはそれらの混合物に由来するPAOを利用してもよい。
【0062】
基油として使用するための他の有用な流体としては、高性能特性を提供するために、好ましくは触媒的に処理された、または合成された非従来型もしくは従来と異なったベースストックが挙げられる。
【0063】
非従来型または従来と異なったベースストック/基油としては、1つ以上の天然ガス液化(GTL)材料に由来するベースストック(複数可)の混合物、ならびに天然ワックスまたはワックス状供給原料に由来する異性化/イソ脱ロウ化(複数可)ベースストック、スラックワックス、天然ワックスなどの鉱物及び/または非鉱物油ワックス状供給原料ストック、ならびにガスオイル、ワックス状燃料ハイドロクラッカーボトム、ワックス状ラフィネート、ハイドロクラッケート、熱クラッケート、または他の鉱物などのワックスストック、鉱油、さらには石炭液化またはシェールオイルから受け取ったワックス状材料などの非石油由来ワックス状材料、ならびにそのようなベースストックの混合物のうちの1つ以上が挙げられる。
【0064】
本開示の潤滑油組成物で使用するための基油は、APIのグループI、グループII、グループIII、グループIV及びグループVの油、ならびにそれらの混合物、好ましくはAPIのグループII、グループIII、グループIV及びグループVの油、ならびにそれらの混合物、より好ましくは、それらの卓越した揮発性、安定性、粘度特性及び清浄度特徴により、グループIII~グループVの基油に対応する種々の油のいずれかである。
【0065】
典型的には、基油は、2.5~20mm/秒(例えば、3~12mm/秒、4~10mm/秒、または4.5~8mm/秒)の範囲で100℃での運動粘度(ASTM D445)を有する。
【0066】
本潤滑油組成物はまた、補助機能を付与するための従来の潤滑剤添加剤を含有して、これらの添加剤が分散または溶解される完成した潤滑油組成物を得てもよい。例えば、潤滑油組成物は、抗酸化剤、無灰分散剤、摩耗防止剤、金属洗剤などの洗剤、防錆剤、脱臭剤、解乳化剤、摩擦改質剤、金属非活性化剤、注入点抑制剤、粘度改質剤、消泡剤、共溶媒、パッケージ適合剤、腐食抑制剤、染料、極圧剤など、及びそれらの混合物とブレンドすることができる。種々の添加剤が既知であり、市販されている。これらの添加剤、またはそれらの類似化合物は、通常のブレンド手順によって、本発明の潤滑油組成物の調製に用いることができる。
【0067】
前述の添加剤の各々は、使用されるとき、潤滑剤に所望の特性を付与するのに機能的に有効な量で使用される。したがって、例えば、添加剤が無灰分散剤である場合、この無灰分散剤の機能的に有効な量は、潤滑剤に所望の分散特徴を付与するのに十分な量である。一般に、これらの添加剤の各々の濃度は、別段の指定がない限り、約0.001~約20重量%、例えば、約0.01~約10重量%の範囲であってもよい。
【0068】
以下の例示的な実施例は、非限定的であることが意図される。
【実施例
【0069】
エンジンテスト
LSPI試験には、4-GM 2.0-L Ecotex 4-シリンダーガソリンターボチャージ型直接噴射エンジンを用いた。このセットアップにおいて、各シリンダーには、シリンダー内圧を監視するための圧力変換器が装着された。
【0070】
6セグメント試験手順を用いて、290N-mの負荷で、2000rpmのエンジン速度にて、4つのシリンダー全てにまたがり、LSPI事象の数を測定した。各セグメントは28分で、低エンジン速度及び負荷のアイドリング期間により区切られた。2~6のセグメント中でのLSPI頻度を、比較のために報告する;そして、最初のセグメントは、エンジンオイルのコンディショニングの関係で考慮しない。一過性条件の間でのLSPI活性を考慮するために、各セグメントの初期をフィルタリングし、または取り除き、定常状態での操作中の活性のみの比較を可能にする。このように区切りを設けることで、通常、セグメント1回当たり、シリンダー当たりおよそ4,000サイクルが取り除かれ、セグメント1回当たり100,000回の測定サイクル(または、シリンダー当たり25,000サイクル)がもたらされる。
【0071】
試験中、燃焼圧力及び位相化の両方を、各シリンダーで監視した。2つの基準:1)ピークシリンダー圧力が、平均ピーク圧力から5標準偏差を超えた;及び、2)燃焼位相化(CA5、または、5%の放熱が生じるクランク角)が、平均CA5から5標準偏差を超えて進んだ、に達した際に、LSPI事象が生じた。無添加の49状態プレミアム無鉛ガソリンを用いて、LSPI軽減添加剤試験の前後での、基準LSPI活性を確立した。基本燃料情報:FR62180-49状態の無添加PUL燃料。試験中に用いたエンジンオイルは、ILSAC GF-5及びAPI SN規格を満たした。
【0072】
LSPIの頻度を、100万サイクルにわたるシリンダー1個当たりでの、平均事象の回数として報告する。LSPI頻度において報告される変化は、ベースラインでの実行前及び後に対する、百分率の差である。
【0073】
以下に示す例での処理率(treat rate)は、燃料中の1000ppmw(1:1の当量)の添加剤であり、一次添加剤は様々であり、二次添加剤はDBUである。
LSPI事象の減少結果を、下表1に示す。
【表1-1】

【表1-2】


【国際調査報告】