(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】直流給電による超伝導スイッチのない超伝導閉回路の充電及び/又は放電及び/又は充電の反転のための方法、該方法と共に使用するための超伝導スイッチのない超伝導閉回路、超伝導磁石、並びに該超伝導回路を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
H01F 6/00 20060101AFI20240308BHJP
H10N 60/00 20230101ALI20240308BHJP
【FI】
H01F6/00 150
H10N60/00 Z ZAA
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023560212
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 EP2022057510
(87)【国際公開番号】W WO2022207413
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591148048
【氏名又は名称】ブルーカー スウィッツァーランド アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Bruker Switzerland AG
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ナルデリ
(72)【発明者】
【氏名】マテオ アレッサンドリーニ
【テーマコード(参考)】
4M113
【Fターム(参考)】
4M113AC44
4M113AC50
4M113AD01
4M113CA17
(57)【要約】
第1のインダクタンスL1を有する第1の分岐(1)と第2のインダクタンスL2を有する第2の分岐(2)とにサブ回路を分割する入口接続領域(6a)及び出口接続領域(6b)を備えるサブ回路と、電流リード(3)とを用いて、超伝導スイッチのない超伝導閉回路を充電するための方法であって:第1のインダクタンスL1が第2のインダクタンスL2よりも低くなるように、接続領域(6a,6b)の位置及び/又は分岐(1,2)の幾何学的形状及び/又は分岐(1,2)の断面を選択するステップと、以下のステップ:
(a)1つの分岐における第1の部分電流が臨界電流に達するまで供給電流を増大させるステップと、
(b)供給電流を、他方の分岐に第2の部分電流をもたらすΔaまで更に増大させるステップと、
(c)供給電流Iinを、0Aまで減少させて、回路内に残留回路電流をもたらすステップと、
で、回路に供給電流Iinを供給することによって初期電流I0(I0≧0)を変更するステップと
を含む方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導スイッチのない超伝導閉回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)の充電及び/又は放電及び/又は充電の反転を行うための方法であって、
○ 閉じた超伝導経路を伴う少なくとも1つの超伝導サブ回路(4;4’)であって、前記サブ回路(4;4’)に電流を供給するための入口接続領域(6a)と、前記サブ回路(4;4’)から電流を供給するための出口接続領域(6b)とを備え、前記接続領域(6a,6b)は、前記対応するサブ回路(4;4’)を第1の分岐(1)と少なくとも第2の分岐(2)とに分割し、前記第1の分岐(1)は第1のインダクタンスL1及び第1の臨界電流Ic1を有し、前記第2の分岐(2)は第2のインダクタンスL2及び第2の臨界電流Ic2を有し、前記接続領域(6a,6b)の位置及び/又は前記分岐(1,2)の幾何学的形状及び/又は前記分岐(1,2)の断面が、前記第1の分岐(1)の前記第1のインダクタンスL1が前記第2の分岐(2)の前記第2のインダクタンスL2よりも低くなるように選択されている、という少なくとも1つの超伝導サブ回路(4;4’)と、
○ 前記回路を電源(12、12’)に接続するための電流リード(3;3’)と、
を用いる方法であって、
前記方法は:
・前記回路の、一方の入口接続領域(6a)及び一方の出口接続領域(6b)を、前記電流リード(3;3’)を介して前記電源(12)に電気的に接続するステップと、
・以下のステップ:
(a)前記2つの分岐(1,2)のうちの一方を通過する第1の部分電流がその分岐の前記臨界電流に達するまで前記供給電流Iinを増大させるステップ
(b)前記供給電流Iinを、他方の分岐に入る第2の部分電流をもたらすΔaまで更に増大させるステップ
(c)前記供給電流Iinを0Aまで減少させて、前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)内に残留回路電流Icircuitをもたらすステップを用いて前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)に供給電流Iinを供給することによって、前記超伝導回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)内の初期電流I0(I0≧0)を変更するステップと、
を含む方法において、
前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)を充電するために(Icircuit>I0)、ステップ(b)において、前記供給電流IinがΔaまで増大される、ここで:
Δa/Ic1>0
h*k<1の場合:(k+1)<Δa/Ic1≦(h+1)/h
h*k>1の場合:(k+1)/(h*k)<Δa/Ic1≦(h+1)/h
ただし、0<k=L1/L2<1、かつh=Ic1/Ic2>0、かつh*k≠1、である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
超伝導スイッチのない超伝導閉回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)の充電及び/又は放電及び/又は充電の反転を行うための方法であって、
○ 閉じた超伝導経路を伴う少なくとも1つの超伝導サブ回路(4;4’)であって、前記サブ回路(4;4’)に電流を供給するための入口接続領域(6a)と、前記サブ回路(4;4’)から電流を供給するための出口接続領域(6b)とを備え、前記接続領域(6a,6b)は、前記対応するサブ回路(4;4’)を第1の分岐(1)と少なくとも第2の分岐(2)とに分割し、前記第1の分岐(1)は第1のインダクタンスL1及び第1の臨界電流Ic1を有し、前記第2の分岐(2)は第2のインダクタンスL2及び第2の臨界電流Ic2を有し、前記接続領域(6a,6b)の位置及び/又は前記分岐(1,2)の幾何学的形状及び/又は前記分岐(1,2)の断面が、前記第1の分岐(1)の前記第1のインダクタンスL1が前記第2の分岐(2)の前記第2のインダクタンスL2よりも低くなるように選択されている、という少なくとも1つの超伝導サブ回路(4;4’)と、
○ 前記回路を電源(12、12’)に接続するための電流リード(3;3’)と、
を用いる方法であって、
前記方法は:
・前記回路の、一方の入口接続領域(6a)及び一方の出口接続領域(6b)を、前記電流リード(3;3’)を介して前記電源(12)に電気的に接続するステップと、
・前記第1の分岐(1)の前記第1のインダクタンスL1が前記第2の分岐(2)の前記第2のインダクタンスL2よりも低くなるように、前記接続領域(6a,6b)の位置及び/又は前記分岐(1,2)の幾何学的形状及び/又は前記分岐(1,2)の断面を選択するステップと、
・以下のステップ:
(d)2つの分岐のうちの一方(1,2)を通過する第1の部分電流がその分岐の臨界電流に達するまで前記供給電流Iinを増大させるステップ
(e)前記供給電流Iinを、他方の分岐に入る第2の部分電流をもたらすΔaまで更に増大させるステップ
(f)前記供給電流Iinを0Aまで減少させて、前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)内に残留回路電流Icircuitをもたらすステップを用いて前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)に供給電流Iinを供給することによって、前記超伝導回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)内の初期電流I0(I0≧0)を変更するステップと、
を含む方法において、
前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)を少なくとも部分的に放電するために、又は前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)を循環する前記電流の極性を反転させるために、前記供給電流Iinは、ステップ(b)におけるΔaの極性とは反対の極性でΔbまで増大され:
Δb/Ic1>0
h*k<1の場合:2*(k+1)-Δa/Ic1<Δb/Ic1≦(h+1)/h
h*k>1の場合:2*(k+1)/(h*k)-Δa/Ic1<Δb/Ic1≦(h+1)/h
ここで、k=L1/L2、h=Ic1/Ic2である、
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
前記回路(10’’’’)は、前記第1の分岐(1)を共有する少なくとも2つのサブ回路(4)を備え、ここで前記回路電流Icircuitは、前記2つのサブ回路(4)に前記電流を古典的に分割することによって前記2つ以上のサブ回路(4)間で共有されている、又は、前記2つ以上のサブ回路(4)の取り得る状態ψ
1、ψ
2の重ね合わせによって量的に、前記2つ以上のサブ回路(4)間で共有されており、ここで、
【数13】
【数14】
であり、
それにより、システム状態
【数15】
がもたらされ、a及びbは前記2つのサブ回路(4)の幾何学的及び物理的特性に依存するものであって、
前記回路(10’’’’)を放電するために、前記供給電流を増大させる前に、以下が行われる:
・調査中の前記サブ回路(4)である前記サブ回路(4)のうちの1つの前記第2の分岐(2)に、追加のリード(9)を介してプローブ電流Iprobeが一時的に供給される、ここで、Iprobeは、調査中の前記サブ回路の前記臨界電流よりも小さい;
・前記追加のリード(9)間の電圧は、前記プローブ電流Iprobeの供給中に測定される;
・電圧が0に等しくないことが検出される場合に、調査中の前記サブ回路の初期電流I0(古典的に)又は状態(量子力学的に)を決定して、それによってシステム全体の状態を決定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記超伝導回路(10’’’)と共に極低温環境(CRYO)に配置された内部インダクタ(13)と、好ましくは前記極低温環境(CRYO)の外側に配置された更なるインダクタ(14)と、を備える電流電源(12)を使用して、前記供給電流は前記回路(10’’’)に供給される、ここで、前記電流リード(3)は前記内部インダクタ(13)に電気的に接続され、電流が前記更なるインダクタ(14)から前記内部インダクタ(13)に誘導され、前記電流リード(3)を介して前記超伝導回路(10’’’)に供給される
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)に供給される前記供給電流Iinは、ステップ電流ランプ及び/又は電流対時間ランプ及び/又は高周波パルス及び/又は波パケット/電磁波のうちの少なくとも1つを使用することによって変更される
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記供給電流Iinを供給する前に、前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)の少なくとも1つのサブ回路(4;4’)、好ましくは前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)全体が、前記臨界電流Ic1、Ic2を低減するために予熱される
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法で使用するための超伝導スイッチのない超伝導閉回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)であって、前記回路は:
○ 超伝導経路を有する少なくとも1つの超伝導サブ回路(4;4’)と、
○ 前記サブ回路(4;4’)に電流を供給するための入口接続領域(6a)と、前記サブ回路(4;4’)から電流を供給するための出口接続領域(6b)とを備える少なくとも1つのサブ回路(4;4’)であって、前記接続領域(6a,6b)は、前記対応するサブ回路(4;4’)を第1の分岐(1)と少なくとも第2の分岐(2)とに分割し、前記第1の分岐(1)は第1のインダクタンスL1及び第1の臨界電流Ic1を有し、前記第2の分岐は第2のインダクタンスL2を有する、少なくとも1つのサブ回路(4;4’)と、
○ 前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)を電源(12、12’)に接続するための電流リード(3、3’)と、
を備え、
前記接続領域(6a,6b)の位置及び/又は前記分岐(1,2)の幾何学的形状及び/又は前記分岐(1,2)の断面は、前記第1の分岐(1)の前記第1のインダクタンスL1が前記第2の分岐(2)の前記第2のインダクタンスL2よりも低くなるように選択される
ことを特徴とする、超伝導スイッチのない超伝導閉回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)。
【請求項8】
前記第2の分岐(2)は、前記第1の臨界電流Ic1に等しい第2の臨界電流Ic2を有することを特徴とする、請求項7に記載の超伝導回路(10;10’;10’’;10’’’)。
【請求項9】
前記回路(10’;10’’;10’’’)が2つ以上のサブ回路(4;4’)を備え、1つの前記サブ回路(4;4’)の前記出口接続領域(6b)が他方の前記サブ回路(4;4’)の前記入口接続(6a)領域に接続され、前記回路(10’;10’’;10’’’)の1つの入口接続領域(6a)及び1つの出口接続領域(ab)が前記電流リード(3)に接続されることを特徴とする、請求項7又は8に記載の超伝導回路(10;10’;10’’;10’’’)。
【請求項10】
前記電流リード(3)の前記位置及び/又は前記分岐(1,2)の前記幾何学的形状は、前記サブ回路(4)のうちの少なくとも1つの前記第1の分岐(1)の前記経路であって、それぞれの前記サブ回路(4)の前記入口接続領域(6a)から前記出口接続領域(6b)まで延びる前記経路が、少なくとも1つの他のサブ回路(4)の前記第1の分岐(1)の前記経路とは反対向きに、少なくとも部分的に延びるように選択されることを特徴とする、請求項9に記載の超伝導回路(10)。
【請求項11】
幾つかのサブ回路(4;4’)を入れ子にするか又は積み重ねて、サブ回路アセンブリ(5;5’)を形成することを特徴とする、請求項9又は10に記載の超伝導回路(10;10’;10’’;10’’’)。
【請求項12】
幾つかのサブ回路アセンブリ(5;5’)が設けられ、前記サブ回路アセンブリは、入れ子状にされ、オフセットされ、又は並んで配置されていることを特徴とする、請求項11に記載の超伝導回路(10’;10’’;10’’’)。
【請求項13】
前記サブ回路の前記臨界電流及び/又は前記サブ回路の互いの距離が、軸方向及び/又は径方向で変化することを特徴とする、請求項9から12のいずれか一項に記載の超伝導回路(10;10’;10’’;10’’’)。
【請求項14】
前記回路(10’’’’)が2つ以上のサブ回路(4)を備え、少なくとも2つのサブ回路(4)がそれらの第1の分岐(1)を共有しており、それにより、前記初期電流I0は、前記2つのサブ回路(4)に前記初期電流I0を古典的に分割することによって前記2つのサブ回路(4)間で共有されている、又は、前記2つのサブ回路(4)の前記取り得る状態ψ
1、ψ
2の重ね合わせによって量子力学的に前記2つのサブ回路(4)間で共有されており、ここで、
【数16】
【数17】
であり、それにより、システム状態
【数18】
がもたらされ、a及びbは、前記2つのサブ回路(4)の前記幾何学的及び物理的特性に依存することを特徴とする、請求項7又は8に記載の超伝導回路(10’’’’)。
【請求項15】
特には、前記それぞれの分岐内の電流の流れをチェックするため、又は、制御された方法で前記回路(10’’’’)を充電又は放電するために、追加の電流リード(9)が前記分岐(1,2)の少なくとも一方に接続されることを特徴とする、請求項14に記載の超伝導回路(10’’’’)。
【請求項16】
前記サブ回路(4’)が管状であることを特徴とする、請求項7から15のいずれか一
項に記載の超伝導回路(10、10’’’)。
【請求項17】
サブ回路アセンブリ(5;5’)の前記サブ回路(4;4’)、特に回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)全体の前記サブ回路(4;4’)は、特に超伝導層又は超伝導バルク材料から作られた超伝導材料の単一部品であり、前記サブ回路(4;4’)は、それらの接続領域を除いて互いに超伝導的に絶縁されていることを特徴とする、請求項11から16のいずれか一項に記載の超伝導回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)。
【請求項18】
特に磁気共鳴用途に使用するための、請求項7から17のいずれか一項に記載の少なくとも1つの超伝導回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)を備える超伝導磁石。
【請求項19】
請求項7から17のいずれか一項に記載の超伝導回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)を製造するための方法であって、
回路キャリア(8;8’)を用意するステップと、
前記回路キャリア(8;8’)上に超伝導経路を作成するステップであって、前記経路が少なくとも1つの超伝導サブ回路(4;4’)を形成する、ステップと、
前記超伝導サブ回路(4;4’)が異なるインダクタンスL1、L2を有する分岐(1,2)に少なくとも分割されるように、前記サブ回路(4;4’)に接続領域(6a,6b)を設けるステップであって、各サブ回路(4;4’)の前記接続領域(6a,6b)が、他のサブ回路(4;4’)の接続領域(6a,6b)に又は電流リード(3;3’)に電気的に接続される、ステップと、
を含む方法。
【請求項20】
前記経路は、前記回路キャリア(8;8’)の表面上に超伝導材料を直接引き込むことによって作成されることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導スイッチのない超伝導閉回路の充電及び/又は放電及び/又は充電の反転を行うための方法であって、閉じた超伝導経路を伴う少なくとも1つの超伝導サブ回路であって、サブ回路に電流を供給する(feed into)ための入口接続領域と、サブ回路から電流を供給する(feed out of)ための出口接続領域とを備え、接続領域が、対応するサブ回路を第1の分岐と少なくとも第2の分岐とに分割し、第1の分岐が第1のインダクタンスL1及び第1の臨界電流Ic1を有し、第2の分岐が第2のインダクタンスL2及び第2の臨界電流Ic2を有する、という少なくとも1つの超伝導サブ回路と、回路を電源に接続するための電流リードとを用いて超伝導スイッチのない超伝導閉回路の充電及び/又は放電及び/又は充電の反転を行うための方法に関し、該方法は、電流リードを介して回路の1つの入口接続領域及び1つの出口接続を、電源に電気的に接続することを含む。
【0002】
本発明は更に、本発明の方法と共に使用するための超伝導スイッチのない超伝導閉回路、そのような回路を備える磁石、及び本発明の回路を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
SCスイッチを使用せずに閉じた超伝導回路を充電するための方法は、特許文献1に記載されている。
【0004】
特許文献2は、直流給電によって超伝導ループを充電する方法であるが、標準的な超伝導スイッチの概念を利用する方法であり、これはすなわち、閉じた超伝導回路の分岐が、それを抵抗性にするために臨界温度に近づけるか又はそれを超えるように加熱され、したがって電流を他方の分岐に向け直す(redirecting)ことを意味する。特に小型回路において超伝導スイッチを使用することの欠点は、その近傍に他の超伝導要素又は構成要素を備え得る極低温環境の残り全体の熱状態を変化させることなく、回路の一部のみに加熱を局在化させ、回路の残りの部分を完全な超伝導状態に保つことが困難であることである。実際、特に、液体ヘリウム温度(4.2ケルビン)から40ケルビン以上までの範囲である、使用される通常の極低温と比較して比較的高い臨界温度(100ケルビン近く又はそれを超える)を有するいわゆる「高温超伝導体」を扱う場合、超伝導材料を通常の状態にするのに必要な電力入力は無視できないものとなる可能性がある。例えば幾つかのループ又は回路を備えるような複雑なデバイスが構築される場合に問題は更に重くなるが、これはなせならば、極低温環境内で運ばれなければならない超伝導スイッチに供給される電力が合計され、(より高い磁場のような)より高い性能を得るために、個々のループ又は回路が比較的密に詰め込まれなければならないためである。これは、個々のループ又は回路のうちの1つの超伝導スイッチを加熱する電力が、他の組み立てられた回路の状態に影響を及ぼし、その逆もまた同様であることを意味する。
【0005】
閉じた超伝導回路は、例えばMR磁石配置のシムコイルとして極低温環境で使用されることが多いため、直流給電が熱を極低温システムに伝達するという別の問題があり、これはシステムの残りの部分にとって致命的であり得るため望ましくない。
【0006】
このようなコイルは、例えば、特許文献3に開示されており、これには、環状コイルの一般的なアセンブリのコイル構造が示されており、特定の接続や充電方法は記載されていない。特許文献4は、リング形状の超伝導コイルのアセンブリを、同様に記載している。
【0007】
極低温システムへの熱伝達を回避するために、誘導結合が提案されている(例えば、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、非特許文献1(Mark D Ainslieら)を参照されたい)。充電されるコイルは、所望の磁場強度を有する外部磁石のボア内に配置され、この磁場は所望の値まで増大し、次いでアセンブリはコイルの超伝導体の臨界温度未満に冷却される。あるいは、コイルを外部磁石のボアに挿入し、外部磁場をコイルの飽和磁場を超えて増大させ、次いで外部磁石を取り除く、ということもできる。あるいは、典型的には磁場をパルス化してより高い磁場を達成することによって、磁場を外部磁石のボア内に生成することもできる。しかしながら、この場合、コイルとの結合はあまり効率的ではなく、その結果、コイルの磁化の程度が低く(lower magnetization)、磁化の均一性が低下したものとなってしまう。いずれにしても、誘導充電には、高い技術的努力と、まだ商用化されておらず完全には利用できない特別な非標準ツールとを必要である。
【0008】
特許文献9は、パルス磁化法で超伝導ディスクを充電する方法を記載している。ディスクは、隣接する導体素子同士を接続するための2つの接触点を有する複数の(several)導体素子(リング)を備える。各導体素子には、その2つの接触点を介して搬送電流インパルスが供給される。輸送電流パルスは2つの部分電流、すなわち、導体素子の一方のアームを通って他方の接点までいくもの(one)と、導体素子の他方の接点アームを通って他方の接点までいくもの(another)の2つの部分電流に分離される。この2つの接触点は、2つのアームのうちの短い方の長さが導体素子の全周の最大35%を占めるように配置される。このようにして、電流の非対称性が確立される。しかし、この方法は効率が悪い。
【0009】
特許文献1は、SCスイッチを使用せずに閉じた超伝導回路を充電する方法を記載している。この目的のために、回路が同一のインダクタンスを有する2つの分岐に分割されるように電力線が回路に接続され、一方の分岐は「歪み加工」され(strained)、次いでエッチングされ、他方の分岐は「歪み加工」のみがなされる。分岐の処理が異なることで、異なる分岐において異なる超伝導電流容量(すなわち、異なる臨界電流)がもたらされる。
【0010】
結果として生じる効果として、第1の分岐の臨界電流を超える電流が回路に供給される場合、電流の50%を超える電流部分が第2の分岐に流れ、50%未満が第1の分岐に流れる。電流が減少して0になると、2つの電流間の差は、持続モードでサブ回路に残る。システムを充電することができる最大電流は、第1の分岐の臨界電流Ic1程度に制限される、すなわちこれは、第2の分岐の臨界電流が、充電目的のためだけに第1の分岐の臨界電流よりもはるかに高くなければならないことを意味する。したがって、公知の方法は効率が悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第3546541号明細書(米国特許第3,546,541号明細書)
【特許文献2】米国特許第8965468号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2019172619号明細書
【特許文献4】米国特許第4467303号明細書
【特許文献5】欧州特許第2511917号明細書
【特許文献6】米国特許第5633588号明細書
【特許文献7】米国特許第8228148号明細書
【特許文献8】米国特許第20160380526号明細書
【特許文献9】米国特許第6,762,664号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Mark D Ainslie,Mykhaylo Filipenko,「バルク超伝導体:用途へのロードマップ(Bulk superconductors: a roadmap to applications)」、Par.4:「次世代輸送・電力用途向け超軽量超電導回転機(Ultra-light superconducting rotating machines for next-generation transport & power applications)」, Supercond.Sci.Technol.31(2018)103501
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、低い技術的努力で、しかし高い効率で、SCスイッチのない回路を充電(充電及び/又は放電及び/又は充電の反転)するための方法と、該充電方法と共に使用するSCスイッチのない回路(SC-switch free circuit)、並びに、そのような充電方法を利用するそのような回路及びデバイスを製造するための方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、請求項1及び2に記載の充電方法、請求項7に記載の超伝導スイッチのない超伝導閉回路、請求項18に記載の磁石、及び請求項19に記載の製造方法によって、本発明にしたがって解決される。
【0015】
本発明によれば、第1の分岐の第1のインダクタンスL1が第2の分岐の第2のインダクタンスL2よりも低くなるように、接続領域の位置及び/又は分岐の幾何学的形状(geometry)及び/又は分岐の断面及び/又は分岐と隣接環境内の他の要素との間の相対的相互作用が選択される。すなわち、本発明は、異なるインダクタンスを伴う分岐を有する回路を使用する。
【0016】
サブ回路又は回路のより複雑なアセンブリでは、それらの間における相互作用、並びにサブ回路又は回路(デバイスのインダクタンス又は特徴を変更するという目的のために、最終的に意図的に追加又は取り付けられるものも)を備える1つ又は複数のデバイスの、中、周囲、又は一般には近傍にあり得る他の物理的要素及び材料との相互作用が存在してもよく、例えば、強磁性要素又は他の超伝導要素、あるいは、磁場分布に影響を及ぼしてインダクタンスを増強し、相互作用を遮蔽し、又はそれらを変更し得る任意のものもまた、一般に飽和する強誘電材料又は超伝導材料の場合と同様に、最終的には非線形となる。
【0017】
i番目の分岐のインダクタンスLiは、一般式との相互作用を考慮して、より一般的に計算されると考えることができ、以下の通りである:
【数1】
ここで、Nは、第i番目の分岐と相互作用する要素/分岐の数であり、M
ilは、第i番目の分岐と第l番目の要素/分岐との間の相互インダクタンスである(M
iiは、それ自身と見なされる分岐の自己インダクタンスである)。
【0018】
充電、放電、又は一般には、回路内を循環する残留電流を変更するために、超伝導回路内の初期電流I0(I0≧0)は、以下のステップ、すなわち:
(a)少なくとも1つのサブ回路の分岐を通過する第1の部分電流が1つの分岐の臨界電流に達するまで供給電流Iinを増大させるステップと、
(b)供給電流Iinを、他方の分岐に入る第2の部分電流をもたらすΔaまで更に増大させるステップと、
(c)供給電流Iinを0Aまで減少させて、回路内に残留回路電流Icircuitをもたらすステップと、
を用いて回路に供給電流Iinを供給することによって、変更される。
【0019】
ステップ(b)において、供給電流Iinの更なる増大は、供給電流のうちの第1の分岐の臨界電流を超える部分を他方の分岐に方向転換させ、結果として、(2つの分岐のインダクタンス比に対して)不均衡な電流分布をもたらす。
【0020】
初期電流I0は、充電又は放電プロセスの開始時に回路内を流れる電流である。初期電流は、0であっても(放電させた回路から開始する方法)、又は0に等しくなくても(充電/部分充電された回路から開始する方法)よい。回路電流Icircuitは、充電又は放電プロセスから生じる回路内を流れる電流である。
【0021】
供給電流は、電源を使用して回路に供給される電流である。
【0022】
正の第1/第2の部分電流は、入口接続領域から出口接続領域に流れると言われる。したがって、正の第1の部分電流及び正の第2の部分電流は、サブ回路内で反対向きに流れる。この定義によれば、プロセスの終わりにおいて、第1の部分電流と第2の部分電流とは、同じ絶対値を有するが符号が異なる。
【0023】
供給電流を増大させることは、供給電流の絶対値を増大させることを意味する。すなわち、充電目的と放電目的のいずれにおいても、供給電流は増大するが、符号は異なる。
【0024】
接続領域は、電流リード又は他のサブ回路の接続領域を接続することができる超伝導経路の部分のことである。
【0025】
超伝導サブ回路は、少なくとも2つの接続領域(接続領域は、別のサブ回路の接続領域に接合されているか、又は電流リードを介して電源に接続されている)を備える。各サブ回路は2つの分岐に分割され、それらはそれらの接続領域において互いに接触する。
【0026】
超伝導閉回路は、1つ以上のサブ回路を備えていてもよい。サブ回路が1つのみの場合、サブ回路は回路を形成する。サブ回路が2つ以上の場合、それらサブ回路は、接続領域において直列又は並列のいずれかで接続され、回路は、最終的に、電流リードと接続される1つの入口接続領域及び1つの出口接続領域を有する。
【0027】
「SCスイッチのない」超伝導回路とは、超伝導(SC)スイッチ(加熱装置を含む)を持たない回路を意味する。超伝導スイッチは典型的に、超伝導材料、典型的には超伝導導体で作られたデバイスであって、デバイスが通常の状態になるように、局所的又は全体的に臨界温度に近い温度又は通常は臨界温度より高い温度までスイッチデバイスを加熱する抵抗ヒータも備える(スイッチが抵抗素子になる)。通常、SCスイッチは超伝導閉回路(インダクタ)の一部である。本発明によれば、回路はSCスイッチがないものであり、これにより、加熱領域を回路の残りの部分から適切に画定/分離するために必要な労力を回避することができる。
【0028】
本発明の方法は、異なるインダクタンスを有するサブ回路を使用する。分岐のインダクタンスは、接続領域の位置によって影響を受ける可能性があり、それによって分岐の長さを決定することができ、並びに/若しくは、分岐に異なる断面を提供することによって及び/若しくは分岐によって形成される設計/形状によって、及び/又は、異なる要素との相互作用を提供することができる。電流リード接続及び経路及び分岐の幾何学的形状は、
非対称インダクタンス分布、すなわち2つの分岐の異なるインダクタンスが達成されるように、互いに適合される。
【0029】
異なるインダクタンスに起因して、供給電流は、分岐のうちの1つの臨界電流に達するまで、誘導がより低い分岐(第1の分岐)に主に供給される。通常、必須ではないけれども、小型化、充電、及び設計効率の点でより効率的な回路設計を行うために、まず第1の分岐の臨界電流に到達するように、第1の分岐は、より高いインダクタンスを有する分岐(第2の分岐)と同じ臨界電流を有するか、又は、より低い臨界電流を有する。したがって、この場合、ステップ(a)において、第1の分岐を通過する部分電流がその臨界電流に達するまで供給電流が増大される。本発明によれば、分岐には非対称/不均一に電流が供給される。これにより、例えば、標準的な電流供給(すなわち、標準的な超伝導コイルを充電するために通常使用される電流供給を意味する)を使用して、システムに超伝導スイッチ技術を適用することなく、回路を所望の回路電流Icircuitで充電することができる。これにより、多くの設計及び技術的制約がなくなる。
【0030】
サブ回路の幾何学的非対称性(分岐の異なる長さ及び/又は幅、異なる形状)は、異なる分岐において異なるインダクタンスを達成するための好ましい方法である。各分岐は、同じ超伝導材料で作ることができる(しかし、そうする必要があるわけではない)。幅の差は、インダクタンス及び臨界電流の差につながり得る。サブ回路自体は対称であってもなくてもよい。分岐の非対称性は、サブ回路の経路の幾何学的形状及び必要なインダクタンス比を考慮に入れて接続領域の位置を選択することによって達成される。すなわち、接続領域は、分岐の幾何学的形状、特に長さ及び/又は幅及び/又は設計(分岐にもたらされる形状)が互いに異なるように、もしくは、それら分岐が異なる隣接要素と相互作用するように、サブ回路を第1の分岐と第2の分岐とに分割する。したがって、サブ回路自体は、幾何学的に対称、特には軸対称であるもの(例えば、円形、正方形)であってもよいが、分岐はそうではない。本発明による方法によって提供できる回路の特別な実施形態を以下に説明する。
【0031】
本発明によれば、直流給電が使用される、すなわち、電流が電流リードを介して回路に供給される。超伝導(SC)スイッチは使用されず、これにより回路の部品の加熱や、関連する極低温及び設計上の複雑さが回避される。回路内への電流の充電は、誘導によって行われるわけでも、誘導法や磁気法(外部生成磁場内で回路を臨界温度未満に冷却するような方法であって、典型的には、回路と結合するか、又は回路をホストすることができる外部磁気デバイスを用いて行われるもの)を用いて、その後、磁場が超伝導回路内に捕捉されたままになるように外部磁場を除去することによっても、又は、回路が既にその臨界温度未満に冷却された状態で外部生成磁場を上昇させた後、回路をクエンチしてその結果、磁場は超伝導回路に侵入し、回路温度が再び臨界温度未満に戻った後に外部磁場を除去することになる、あるいは、パルス磁場法のような磁場誘導によって電流を誘導することになるというものによっても、行われない。
【0032】
代わりに、本発明は、異なるインダクタンスを有する分岐を有する回路を使用した直流給電によるヒステリシス充電方法を提案し、これによって異なる分岐の非対称充電を効果的に可能にする。
【0033】
本明細書では、超伝導要素(分岐又は回路又は他の要素である)の臨界電流は、それを超えると材料又は要素が純粋な超伝導通電状態(電圧なし、を意味する)から通常状態(電圧あり、を意味する)に移行する電流として定義される。
【0034】
これは、材料が完全な急峻な遷移(すなわち、超伝導状態から通常の伝導状態への遷移)を有するか、又は典型的な電圧-電流モデル関係に従って挙動すると仮定されていることを意味する、すなわち:
I≦Icでは、(V/Vc)=(I/Ic)^n
I>Icでは、 V=I*Rns
ここで、
・Vは、考慮される超伝導要素の両端に発生する電圧である
・Vcは臨界電圧であり、特定の用途に従って選択される離散パラメータである(通常は0.1又は1μV/cm)
・Iは、素子に流れる電流である
・Icは、V=Vcである臨界電流である
・nは指数値である
・Rnsは、通常状態の抵抗率である
これは、nが無限大であると見なされることを意味する。
【0035】
説明を簡単にするための理論的仮定であり、実際にはn値は有限であるが、比較的大きくすることができる(例として30~100)。したがって、この仮定は比較的現実的であると考えることができる。
【0036】
また、閉じた超伝導回路内の電流の持続性及び減衰は、超伝導要素の臨界電流に対する動作電流(閉じた超伝導回路の内部を流れる電流)の比とn値とに強く関連し、超伝導要素を備える回路の充電時間は、回路内のインダクタンス(1又は複数)の値と超伝導要素(1又は複数)の通常状態抵抗(Rsn)との比に関連する。
【0037】
したがって、超伝導要素(特に、第1の分岐及び第2の分岐のもの)の臨界電圧(したがって、臨界電流)は、値、特に、本発明が使用される特定の用途に必要な、電流の持続及び/又は減衰及び/又は充電時間の値に一致するように選択されることが好ましく、記載されたモデルはそれに応じて考慮されなければならない。
【0038】
概念をより簡単に説明する目的で、幾つかの特徴及びパラメータは以下のように定義される:
・回路又はサブ回路は、2つの接続領域(入口接続領域及び出口接続領域)によって分割される。電流リード(主電流リード)は接続領域で超伝導経路に接続されるため、1つのサブ回路のみを備える回路は、2つの主電流リード接続によって少なくとも2つの分岐(第1の分岐及び第2の分岐)に分割される。
・h=Ic1/Ic2、ここで、Ic1(>0)は第1の分岐の臨界電流であり、Ic2(>0)は第2の分岐の臨界電流である。
・k=L1/L2、ここで、L1は第1の分岐のインダクタンスであり、L2は第2の分岐のインダクタンスである。
・Iinは回路に供給される電流(供給電流)であり、ΔIinは変化、特にその1つの増加又は減少である。
・I1は、最初にその臨界電流に達した分岐を流れる電流であり、ΔI1は変化、特にその1つの増加又は減少である。
・I2は、別の分岐に流れる電流であり、ΔI2は変化、特にその1つの増加又は減少である。
・Δaは、第1の充電段階において電流供給(current supply)によって回路に供給される電流であり、
・-Δbは、回路内の電流を変化させるために、例えば放電のために、又は電流を反転させるために後続の充電段階中に電流供給(current supply)によって回路に供給される電流であり、ここで、Δbの向きはΔaと同じである(したがって、-Δbの向きはΔaに対して反転する)。
・全ての電流値はIc1によって正規化され、モデルは任意の回路にも汎用される(generalized)(そして最終的に電流にIc1を乗算することによって特定の回路に反映される(reported))。
【0039】
充電プロセスでの回路及びその挙動のモデル化がここで提案される:
h*k<1の場合:
|I1|<Ic1の場合:
ΔI1/Ic1=(1/(k+1))*ΔIin/Ic1
ΔI2/Ic1=(k/(k+1))*ΔIin/Ic1
|I1|=Ic1の場合:
I1/Ic1=±1
I2/Ic1=±k
|I1|>Ic1の場合:
I1/Ic1=±1
I2/Ic1=±(Iin/Ic1-1)
h*k>1の場合:
|I1|<Ic2の場合:
ΔI1/Ic1=(1/(k+1))*ΔIin/Ic1
ΔI2/Ic1=(k/(k+1))*ΔIin/Ic1
|I1|=Ic2の場合:
I1/Ic1=±1/(h*k)
I2/Ic1=±1/h
|I1|>Ic2の場合:
I1/Ic1=±(Iin/Ic1-1/h)
I2/Ic1=±1/h
h*k=1の場合:
Iinは、I1及びI2が正確にI1=Ic1及びI2=Ic2に同時に達するように分割され、これはすなわち、超伝導状態から常伝導状態への遷移が全ての分岐に対して同時に起こることを意味し、したがって、分岐間に不均衡な電流が確立されるのを防止する。したがって、この条件下では、回路を充電することができない。
【0040】
回路を充電するために(Icircuit>I0)、ステップ(b)において、供給電流IinをΔaまで増大させることが非常に好ましく:
Δa/Ic1>0
h*k<1の場合:(k+1)<Δa/Ic1≦(h+1)/h
h*k>1の場合:(k+1)/(h*k)<Δa/Ic1≦(h+1)/h
であって、
ここで、0<k=L1/L2<1、かつh=Ic1/Ic2>0、かつh*k≠1、である。
【0041】
電流増大(供給電流)は、回路の並列分岐の臨界電流の合計を超えることはなく(したがって、Δa/Ic1≦(h+1)/h)、そうでなければ、通常状態への遷移が起こるため、システムのどの部分ももはや超伝導状態ではなくなる。
【0042】
この状況は、この状態の間、すなわち回路が通常の状態の導通状態である状態の間に散逸される電力が回路のクエンチを引き起こすこと、又は一般に、回路が焼損している不可逆的な状況、又は充電手順中にある回路の状態がもはや制御できない状況、を防ぐのに十分にシステムが熱的に安定化されている場合に、最終的に強制され得る。
【0043】
電流が上述の状況を超えて増大した後、システムがクエンチ又は燃焼しない場合、Iinを減少させてIin≦(h+1)/hの状態に戻して、充電プロセスに他の主な影響を与えずに充電手順を続けることが依然として可能である。
【0044】
他方では、電流の増大は、第1の部分電流が2つの分岐のうちの1つの臨界電流に達するのに十分な高さでなければならない。
【0045】
これは、回路の特定のパラメータに従って得ることができる:
h*k<1の場合:(k+1)<Δa/Ic1
h*k>1の場合:(k+1)/(h*k)<Δa/Ic1
特に有利かつ効率的な特定の実施形態は、h≦1(Ic1≦Ic2)を考慮するとき、より具体的にはh=1(Ic1=Ic2)であり、k->0(L1<<L2)であるときに実現される。
【0046】
この状況では、実際には、次のようになる:
h*k->0(したがって、h*k<1):(k+1)<Δa/Ic1->1<Δa/Ic1
これは、既に1をわずかに上回る電流Iin/Ic1で回路の充電を開始することが可能であることを意味する。
【0047】
これは、第1の分岐と第2の分岐との間のインダクタンスの強い非対称性(L1<<L2)に起因して、電流はほとんどが第1の分岐に向けられ、kがより大きい場合よりも早く第1の臨界電流Ic1に到達する、という事実に起因する。
【0048】
回路を少なくとも部分的に放電するために、若しくは、回路内を循環する電流の極性を反転させるために、供給電流はステップ(b)において増大されてΔbになる、ここで:k=L1/L2であり、h=Ic1/Ic2≦1、である。
Δb/Ic1>0
h*k<1の場合:2*(k+1)-Δa/Ic1<Δb/Ic2≦(h+1)/h
h*k>1の場合:2*(k+1)/(h*k)-Δa/Ic1<Δb/Ic2≦(h+1)/h
ここで、k=L1/L2<1かつh=Ic1/Ic2>0、である。
【0049】
回路を部分的に放電するということは、回路内の電流が減少することを意味する:Icircuit<I0。電流の極性を反転するということは、回路内の電流が減少して0になり、その後逆向き(負の値)に増大することを意味し、これはすなわち初期電流I0と回路電流Icircuitとが反対の向きに流れることを意味する。回路を完全に放電するということは、充電プロセスIcircuit=0を意味する。
【0050】
充電プロセス(及び既に述べた例外を伴う)の場合と同様に、放電プロセスにおける電流増大(供給電流の最大値)は、第1の臨界電流と第2の臨界電流の合計を超えるべきではない(したがって、Δb/Ic2≦(h+1)/h)。
【0051】
電流増大(すなわち、少なくとも部分的に放電するために、充電電流の反対向き(充電プロセス後の残留回路電流=放電プロセスの初期電流)は、第1の部分電流が放電プロセスの開始時の初期電流と同じ符号を有する第1の臨界電流に達するのに十分に高くなければならない。
【0052】
必要とされる電流増大Δbは、Δa/Ic1での以前の充電に起因して、回路の特定のパラメータと回路内を循環する既に存在する電流(初期電流)とに依存する:
h*k<1の場合:2*(k+1)-Δa/Ic1<Δb/Ic2
h*k>1の場合:2*(k+1)/(h*k)-Δa/Ic1<Δb/Ic2
である。
【0053】
前の場合と同様に、h≦1(Ic1≦Ic2)を考慮する場合、より具体的にはh=1(Ic1=Ic2)であり、k->0(L1<<L2)である場合に、特に有利かつ効率的な特定の実施形態が実現される。
【0054】
この状況では、実際には:
h*k->0(したがって、h*k<1):2*(k+1)-Δa/Ic1<Δb/Ic2->2-Δa/Ic1<Δb/Ic2
となる。
【0055】
これはすなわち、先に説明したように、この条件内でΔa/Ic1が(回路を充電するために)1をわずかに上回ることができるため、充電の場合に対して負の方向に既に1をわずかに上回るΔb/Ic2で回路の放電又は逆充電を開始することができる、ということを意味する。
【0056】
これは、第1の分岐と第2の分岐との間のインダクタンスの強い非対称性(L1<<L2)に起因して、電流は大部分が第1の分岐に向けられ、kがより大きい場合よりも早く-Ic1に到達する、ということに起因している。
【0057】
このプロセスは無期限に継続することができ、相対電流の向きを同じにして又は反転させて繰り返して、それにより、循環する残留電流を連続的に又は異なるタイミングで(at different times)上昇、減少及び/又は反転させることができる。
【0058】
量子効果が発生した場合、例えば、回路の1つ以上の寸法が回路経路に使用される超伝導体のコヒーレンス長と同程度(超伝導コヒーレンス長又は超伝導侵入深さの約1~100倍、を意味する)になる場合に(たとえそれだけでなくても)起こり得る量子効果が発生した場合、回路内を循環する電流の変更(特に充電、放電)は、以下に説明するように行うことができる:
特別な変形形態では、並列に接続された幾つかのサブ回路を有する回路が提供される。すなわち、少なくとも2つのサブ回路は共通の第1の分岐を有して(第1の分岐を共有して)おり、Icircuitは、その2つのサブ回路に電流を古典的に分割することによって少なくとも2つのサブ回路間で共有されている、又は、2つ以上のサブ回路の取り得る状態ψ
1、ψ
2の重ね合わせによって量子力学的に少なくとも2つのサブ回路間で共有されており、ここで、
【数2】
【数3】
であり、それにより、システム状態
【数4】
がもたらされ、a及びbは2つのサブ回路の幾何学的及び物理的特性に依存する(両方のサブ回路が等しい場合:a=b=1/√(2))。
【0059】
この特別な実施形態に係る回路(共通の第1の分岐を有するサブ回路)を放電するために、ステップ(a)の前に以下の手順ステップが実行される:
・調査中のサブ回路であるサブ回路のうちの1つの第2の分岐に、追加のリードを介してプローブ電流Iprobeが一時的に供給される、ここで、Iprobeは、調査中のサブ回路の臨界電流よりも小さい;
・追加のリード間の電圧は、プローブ電流の供給中に測定される;
・電圧が0に等しくないことが検出される場合には、調査中のサブ回路の充電電流(古典的に)又は状態(量子力学的に)を決定して、それによってシステム全体の状態を決定する。
【0060】
したがって、追加のリード又は(主)電流リードにも上述のような方法を適用することによって、サブ回路及びシステム全体の状態を放電又は変更することが可能である。
【0061】
分岐を共有することにより、各サブ回路は相互作用することができ、例えば、2つのサブ回路が第1の分岐(充電部)を共有する場合、各サブ回路は同時に充電され、したがってそれらの間に相互作用が生じる。
【0062】
本発明の方法の好ましい変形例では、標準電源又は電気信号供給を使用して、電流リードをワイヤのみを介して標準電源に電気的に接続することによって、供給電流が回路に供給される。
【0063】
あるいは、電源に加えて、超伝導回路と共に極低温環境に配置された内部インダクタと更なるインダクタとを備える電流電源を使用して、供給電流が回路に供給される、ここで、電流リードが内部インダクタに電気的に接続され、電流が更なるインダクタから内部インダクタに誘導され、電流リードを介して超伝導回路に供給されるという場合に、有利であり得る。この場合、電源は、部分的に室温環境にあり、部分的に極低温環境にあり得る。
【0064】
この変形例ではインダクタが使用されるが、電流は回路内に誘導されず、電流リードを介して更なるインダクタから回路に供給される。むしろ、誘導は電流電源内で起こる。外部インダクタに時変電流を供給することにより、電流が更なるインダクタに誘導され、次いで回路に供給される。
【0065】
これにより、回路の設計とは無関係であるが、電源(変圧器)の設計によって決定される任意の電流強度を選択することが可能になる。
【0066】
更なるインダクタは、好ましくは極低温環境の外側に配置される。
【0067】
この変形例の利点は、超伝導回路に供給される電流が本質的に高すぎて電流リードを介して室温から極低温に伝達することができないというのであれば、特に顕著である、というのも、伝達される電流によって極低温に過度に多くの熱が運ばれるためである。例:回路が、機械的強度のために、寸法をある値よりも物理的/機械的に小さくすることができないバルク材料で作られている場合、臨界電流は依然として高すぎて電流リードを通って伝達することができない。外部インダクタに磁気的に結合された極低温環境内の超伝導インダクタにおいて電流を生成することにより、この問題が解決される。
【0068】
あるいは、更なるインダクタを極低温環境の内部に配置することができる。
【0069】
回路に供給される供給電流Iinは、ステップ電流ランプ(step current
ramp)及び/又は電流対時間ランプ及び/又は高周波パルス及び/又は波パケット(wave packet)/電磁波のうちの少なくとも1つを使用することによって変更することができる。給電方法の組み合わせが可能であり、例えば、低周波又は定電流を最初に注入して回路内の電流に好ましい方向を与え、次いで電流ランプ又はパルス及び/又は電磁波/電磁波パケットを重畳することができる。
【0070】
電流が段階的に増大するステップ電流ランプを使用することが最も簡単な選択肢である。
【0071】
電流対時間ランプを使用する場合、電流は時間の関数(例えば、線形関数、放物線対数関数、又は時変関数)として増大し、システム応答(回路/回路アセンブリの応答)をより良好に制御し、システム応答をシステム要件に適合させる。
【0072】
システム電流を迅速に変更する必要があり、システムの特徴が物理的に適合している場合、高周波電流パルスを使用して、迅速にシステムと相互作用することが有利である。
【0073】
回路の寸法が小さい場合、又は第1の分岐のインダクタンスが非常に小さい場合、又は量子力学がシステムに影響を及ぼし始める場合、例えば回路の特定の部分と相互作用するために、必要なエネルギーを提供するべく波パケット/電磁波を使用してシステムと相互作用することが可能である。
【0074】
更に、以前の選択肢の幾つかを重ね合わせることが可能である:例えば、まず、電流ランプを使用して回路を予備分極させることによってステップでいくらかの電流を供給し、次いで、パルス又は波パケットを重ね合わせてシステムの応答を変更して、例えば優先充電方向を達成するか、又はシステムを充電するために電磁波によって必要とされるエネルギーを低減することが可能である。
【0075】
特別な変形形態では、供給電流を供給する前に、磁石の少なくとも1つのサブ回路、好ましくは回路全体が、臨界電流を低減するために予熱される。
【0076】
これにより、より低い供給電流で臨界電流に達することが可能になる。これは、臨界電流が高すぎて、利用可能な供給電力/電流/電圧では到達できない場合、回路に初期電流がなく(I0=0)、したがって、システムによって生成される磁場が0又は低く、対応する臨界電流がより高く、このために充電手順がより困難になる場合、に特に有利である。サブ回路又は回路全体の臨界電流を低減することにより、サブ回路/回路を部分的に充電することが可能になる。これにより、システム自体によって生成される磁場が強化される。次に、増強された磁場は、臨界電流を減少させ、サブ回路/回路を更に充電することを可能にし、最終的に加熱温度を下げることを可能にする。このサイクルを繰り返すことにより、最初はシステムの臨界電流が高すぎて、一般的な発電機又は転送線の電流リードによって供給することができない場合であっても、可能な限り最高の電流(電場)でシステムを完全に充電し、可能な限り最低の値に温度を維持することが可能になる。
【0077】
また、本発明は、先の請求項に係る方法と共に使用するための超伝導回路にも関連しており、該回路は以下を備える:
すなわち、超伝導経路を有する少なくとも1つの超伝導サブ回路であって、サブ回路に電流を供給するための入口接続領域と、サブ回路から電流を供給するための出口接続領域とを備え、接続領域が、対応するサブ回路を第1の分岐と少なくとも第2の分岐とに分割するものであって、第1の分岐が第1のインダクタンスL1及び第1の臨界電流Ic1を有し、第2の分岐が第2のインダクタンスL2を有するものである、という少なくとも1つの超伝導サブ回路と、回路を電源に接続するための電流リードとを備える。本発明によれば、接続領域の位置及び/又は分岐の幾何学的形状及び/又は分岐の断面は、第1の分岐の第1のインダクタンスL1が第2の分岐の第2のインダクタンスL2よりも低くなるように選択される。
【0078】
サブ回路の分岐は、好ましくは互いに幾何学的に非対称であり、特に、異なる長さ及び/又は幅及び/又は設計/形状(分岐によって形成される幾何学的形状)を有する。例えば、分岐の経路は、同じ長さ及び幅を有し得るが、異なる形状を形成し、したがって異なるインダクタンスを有する。
【0079】
特別な実施形態において、第2の分岐は、第1の臨界電流Ic1に等しい第2の臨界電流Ic2を有する。この変形例では、充電挙動は主にインダクタンスの影響を受ける。
【0080】
あるいは、第2の臨界電流Ic2は、第1の臨界電流Ic1よりも高く選択することができる。あるいは、第2の分岐が第1の臨界電流Ic1よりも高い第2の臨界電流Ic2を有するサブ回路を設けることができる。この変形例では、充電挙動は、インダクタンス並びに臨界電流によって影響を受ける。原理的には、本発明の着想によれば、第2の臨界電流が第1の臨界電流よりも低いことさえも可能になる。重要なのは、第1の部分電流の増大が第2の部分電流の増大よりもはるかに速いため、第1の分岐における第1の臨界電流が第2の分岐における第2の臨界電流よりも早く達成されるように、インダクタンス比を十分に高く選択しなければならないことである。
【0081】
非常に好ましい実施形態では、幾つかのサブ回路が電気的に直列に接続される。すなわち前記回路は、2つ以上のサブ回路を備え、1つのサブ回路の前記出口接続領域は、他方のサブ回路の前記入口接続領域に接続され、前記回路の1つの入口接続領域及び1つの出口接続領域は、前記電流リードに接続される。
【0082】
この実施形態では、回路は、幾つかの直列接続されたサブ回路を備え、1つのサブ回路のみを充電するのに必要な電流を運ぶ2つの電流リードのみを介して充電される。これと比較すると、各々がただ1つの単一のサブ回路しか持たない幾つかの回路では、回路の数と同数の電流リード対が必要となる。
【0083】
異なるサブ回路の接続領域の接続は、隣接するサブ回路の接続領域に直接接触すること(直接接合)又はブリッジ素子を使用すること(間接接合)によって実現することができる。サブ回路を異なる基板上に組み立てる場合、超伝導接合部の製造が複雑であるため、非超伝導架橋要素に電流を流すことが有利であり得る。
【0084】
特別な実施形態では、電流リードの位置及び/又は分岐の幾何学的形状は、サブ回路のうちの少なくとも1つのサブ回路の第1の分岐の経路であって、それぞれのサブ回路の入口接続領域から出口接続領域まで延びる経路が、少なくとも1つの他のサブ回路の第1の分岐の経路とは反対向きに、少なくとも部分的に延びるように選択される。この実施形態により、逆向きに充電されたサブ回路が得られる。これにより、結果として生じる磁場及び回路の特性の変更が可能になる、これは例えば、外部フリンジ磁場を低減するか又は空間内のある位置に局在化させるか、あるいは、結果として生じる回路のインダクタンスを低減させる、などである。
【0085】
サブ回路の相対的な幾何学的配置は、それらの組み合わせ全体にわたって、空間を最適化するように、及び/又は磁気的特徴が得られるように、行われる。したがって、幾つかのサブ回路を入れ子にするか又は積み重ねてサブ回路アセンブリを形成することが非常に好ましい。
【0086】
積層サブ回路を伴うサブ回路アセンブリは「積層サブ回路設計」、すなわち、サブ回路が互いに重なり合って配置される(サブ回路を通って流れる電流に対して斜めの方向、特に垂直な方向に、互いに隣接している、すなわち電流平面から外れている)ことを意味する「積層サブ回路設計」を有する。積層サブ回路設計のサブ回路は、(サブ回路を備える磁石が生成するように設計されている磁場の主成分の方向に沿って)(軸方向に)オフセットされ、同じ幾何学的寸法を有し得る。
【0087】
入れ子状サブ回路を有するサブ回路アセンブリは、サブ回路が互いの中に(電流平面内で、特に同心円状に、互いに隣接して)配置されていることを意味する「入れ子状サブ回
路設計」を有する。入れ子状サブ回路は径方向にオフセットされている。「入れ子状」とは、外側サブ回路が内側サブ回路を取り囲むことを意味する。入れ子状配置は、異なるサイズのサブ回路を必要とする。異なる「サイズ」とは、特に、リング形状又は曲線形状の回路の場合は異なる直径及び/又は円周、又は多角形形状の回路(長方形など)の各辺の長さを意味する。入れ子状サブ回路は、好ましくは同じ形状、例えば円形、長方形、を有する。
【0088】
積層サブ回路と入れ子状サブ回路との組み合わせも可能である。
【0089】
平坦又は円筒形のサブ回路の場合、サブ回路は、異なるオフセット平面上に積み重ねられる、及び/又は同心配置で入れ子にされるのが都合がよい。
【0090】
回路は、一対の電流導体が接続される単一のサブ回路アセンブリを備えることができる。あるいは、回路は、直列に接続された複数のサブ回路アセンブリを備えてもよい。好ましい実施形態によれば、幾つかのサブ回路アセンブリが設けられ、サブ回路アセンブリは、入れ子にされ、オフセットされ、又は並べられている。
【0091】
好ましい実施形態では、サブ回路の臨界電流及び/又はサブ回路間の距離は、軸方向及び/又は径方向で変化する。これは、例えば、断面又は超伝導特性及び経路の配置を変えることによって達成することができる。特に、断面及び/又は距離は「段階的(graded)」にすることができる。
【0092】
すなわち、この実施形態では、例えば、より高い磁場にさらされたサブ回路内では臨界電流が減少するような磁場変化に回路を適合させる必要がある場合などに、回路内又はサブ回路アセンブリ内の磁場変化に起因する臨界電流密度変化を考慮するために、サブ回路の経路幅は「段階的」になっている。
【0093】
電界が高いほど臨界電流密度は低くなる。したがって、全てのサブ回路について同じ臨界電流を得るためには、使用される超伝導材料の特定の特性に応じて、より高い磁場にさらされるサブ回路の断面積ほど大きくしなければならない(又は、より低い断面積にさらされるサブ回路の断面積ほど小さくしなければならない)。
【0094】
より具体的には、REBCOテープやシートなどの異方性材料を扱う場合、磁場強度は、それが平行である場合よりも表面に対して垂直に配向されている場合の方が、より臨界電流密度を低下させる。磁場は、軸に近いほど強くなるが、中心面に近いほど軸に平行になる。
【0095】
したがって、表面に垂直な磁場を有する入れ子状サブ回路の段階的な経路幅の場合、経路幅は、それぞれのサブ回路の磁石中心(サブ回路を備える磁石の磁場の中心)までの径方向距離が増大するにつれて減少する。すなわち、通常、閉回路では最も内側のサブ回路が最も高い磁場にさらされるため、中央のサブ回路はより広いことが好ましい。これにより、より高い磁場に対する固有の感度に起因する超伝導体の臨界電流の減少を補償することができる。
【0096】
より広い表面に平行な磁場を生成する積層サブ回路の平坦、矩形又はシート状の超伝導材料(なお、超伝導導体の幾何学的形状は、一方の表面が他方の表面よりも広く、且つ/若しくは、超伝導性能は、例えばコーティングされた導体で起こるように、より大きな表面に対する磁場の向きに依存する)上の段階的な経路幅の場合、経路幅は、それぞれのサブ回路の磁石中心までの軸方向距離が増大するにつれて、増大する。軸方向端部のサブ回路は、磁石の軸方向中央位置のサブ回路よりも大きく/厚くなっている。REBCOコーティングされた導体の場合、例えば、磁場が表面に平行であるとき、超伝導体ははるかに多くの電流を運ぶ(これはすなわち、磁場が超伝導フィルムの結晶学的ab面(例えばYBCO材料の結晶面であって、膜堆積に平行であり、すなわち、HTSシートの「平坦」面に対応するもの)に平行である場合に、より多くの電流を運ぶことを意味する)。磁石/回路の端部に径方向成分がある(すなわち、チューブの表面に対して垂直である)ため、端部の巻線/サブ回路の臨界電流が低減される。したがって、この例では、より高い径方向(垂直)成分に起因する臨界電流の損失を補償するために、端部のサブ回路をより大きくしている。
【0097】
これに代えて、又はこれに加えて、回路に使用される導体の断面積を変更する必要性を低減又は最終的に回避するために、磁場中における異なる挙動を伴う材料又は磁場中における異なる挙動を伴う異なる材料を使用することも可能である。
【0098】
好ましい実施形態では、サブ回路は、共通のキャリア、特にシート状キャリア/基板上に設けられる。キャリア/基材は、鋼又はハステロイのような金属又は合金で作ることができ、通常、様々なセラミック材料の層である幾つかのいわゆる「緩衝層」で覆われていてもよい。
【0099】
特別な実施形態では、少なくとも1つのサブ回路が回路キャリア、特にHTS基板の一方の面に配置され、少なくとも別のサブ回路が回路キャリアの他方の面に配置される。
【0100】
特別な実施形態では、回路は2つ以上のサブ回路を備え、少なくとも2つのサブ回路はそれらの第1の分岐を共有しており、それにより、初期電流I0は、その2つのサブ回路に初期電流I0を古典的に分割することによって2つのサブ回路間で共有されている、又は、2つのサブ回路の取り得る状態ψ
1、ψ
2の重ね合わせによって量子力学的に2つのサブ回路間で共有されており、ここで、
【数5】
【数6】
であり、それにより、システム状態
【数7】
がもたらされ、a及びbは2つのサブ回路の幾何学的及び物理的特性に依存する。
【0101】
特には、それぞれの分岐内の電流の流れをチェックするため、又は、制御された方法で回路を充電又は放電するために、追加の電流リードが分岐の少なくとも1つに接続されることが好ましい。したがって、個々のサブ回路の状態をチェックし、回路全体の状態を定義することができ、また量子状態であっても、所定の初期状態にする(すなわち、両方のサブ回路が完全に放電される)又は所定の組み合わせの初期状態にすることができる。すなわち、状態の重ね合わせの確率を課すことができる。したがって、システム内にどのような重ね合わせが存在すべきかを選択することが可能である。
【0102】
好ましい実施形態では、サブ回路は管状であり、すなわちサブ回路の経路は中空円筒を形成する。これにより、省スペースの管状サブ回路アセンブリを製造することが可能になる。
【0103】
特別な実施形態では、サブ回路アセンブリのサブ回路、特に回路全体のサブ回路は、特に超伝導層又は超伝導バルク材料から作られた超伝導材料(超伝導ユニット)の単一部品であり、サブ回路は、それらの接続領域を除いて互いに超伝導的に絶縁されている。
【0104】
これにより、サブ回路の非常にコンパクトで有利な直列化が可能になる。特に、電流リードと電流リード自体との接続のための接続領域は、これらの構成では何らかの形で「吸収」され、その結果、それらはほぼ消失し、デバイスの設計、構成、及び実現に対するそれらの影響はほぼ消失する。
【0105】
超伝導ユニットは、例えば、平坦、管状、バルク超伝導体又は超伝導コーティングされた基板であり得る。
【0106】
サブ回路は、最終的には接続領域を除いて、互いに超伝導的に絶縁される(これはすなわち、何らかの通常の導電性電気接続が依然として存在し得ることを意味する)。絶縁は、特に、もはや超伝導でなくなるか、又は超伝導性が低くなるように、サブ回路間の材料を劣化することによって実現することができ、及び/若しくは、サブ回路間の材料の除去によって、及び/又は、超伝導ユニットの材料を非超伝導材料で置換することによって実現することができる。劣化、除去又は置換は、機械的及び/又は化学的処理によって実現することができる。
【0107】
好ましくは、電流リードもまた、回路、特に回路の超伝導経路と一体的に形成される(この場合、電流リードは超伝導である)。これは、例えば、HTS基板上のレーザパターニングによって行うことができる。
【0108】
あるいは、電流リードは、後から取り付けられてもよい(後者の場合、電流リードは通常導電性であってもよい)。
【0109】
特別な実施形態では、電流リードは、充電手順後に取り外せるように、取り外し可能である。
【0110】
本発明の回路は、異なる超伝導材料から作られてよい。各超伝導サブ回路は超伝導経路を備え、各超伝導経路は好ましくは単一の超伝導材料を備える。あるいは、幾つかの異なる超伝導材料を一緒に接合して超伝導回路を形成することができ、又は回路は同じ超伝導材料で構成されるが、異なる固有の超伝導特性(異なる臨界電流密度又は臨界温度又は臨界磁場など)を有することができる。超伝導材料は、HTS、LTS、又は他のいかなる類型(銅酸塩超伝導体、ペロブスカイト、プニクタイド、Nb3Sn及び他のA3B化合物、NbTi、Bi2212、Bi2223、REBCO材料、YBCO、鉛及び合金、他の超伝導要素及び化合物及び合金、バルク、導体、膜の形態、又は閉じた超伝導回路を実現することを可能にする他の形状及び構造)であってもよい。
【0111】
特別な変形形態では、第1の分岐及び第2の分岐は、同じ方法で機械的及び化学的に処理される。すなわち、回路は、化学的及び/又は機械的に処理され得るが、異なる分岐間で、化学的及び物理的処理方法に違いはない。
【0112】
本発明はまた、特に磁気共鳴(MR)用途に使用するための、前述のような少なくとも1つの超伝導回路を備える超伝導磁石に関する。
【0113】
回路は、一対の電流リードが接続される単一のサブ回路アセンブリを備えることができ、本発明の磁石は、そのような回路を複数備えることができる。あるいは、磁石は、直列に接続された複数のサブ回路アセンブリを有する回路を備える。後者の場合、それぞれの回路の全てのサブ回路アセンブリに電力を供給するために1対の電流リードのみが必要とされる。
【0114】
特別な変形例では、少なくとも2つの回路が互いに入れ子になっている。
【0115】
これに代えて、又は加えて、少なくとも2つの回路が積層される。
【0116】
また、本発明は、前述のような超伝導回路を製造するための方法に関し、該方法は、回路キャリアを用意するステップと、回路キャリア上に超伝導経路を作成するステップであって、経路が少なくとも1つの超伝導サブ回路を形成する、ステップと、超伝導サブ回路が異なるインダクタンスL1、L2を有する分岐に少なくとも分割されるように、サブ回路に接続領域を設けるステップであって、各サブ回路の接続領域が、他のサブ回路の接続領域又は電流リードに電気的に接続される、ステップとを含む。
【0117】
キャリアは、平坦であるもの、曲げられたもの、又はチューブもしくは固体バルク材料のような他の形状を有することができる。
【0118】
好ましい変形形態では、経路は、回路キャリアの表面上に超伝導材料を直接引き込むことによって形成される。これにより、切断及びはんだ付けを回避することができ、より少ない電力入力及び非常にコンパクトなアセンブリを達成することができる。回路を引き込むことは、経路のために設けられた領域に超伝導材料を直接適用する(例えば、堆積)ことによって、又は、超伝導であってはならない超伝導層の部分を除去/劣化させ、超伝導経路のみを残すことによって(経路を完全にコーティングされた超伝導シート上にレーザパターニングすることのように)行うことができる。
【0119】
前述のような超伝導回路を製造するための別の方法は:超伝導ユニット、特に超伝導コーティングされた基板又は超伝導バルク材料を用意するステップと、超伝導ユニットから超伝導材料を局所的に破壊又は除去することによって超伝導ユニットから超伝導経路を作成するステップであって、経路が少なくとも1つの超伝導サブ回路を形成する、ステップと、超伝導サブ回路が異なるインダクタンスL1、L2を有する分岐に少なくとも分割されるように、サブ回路に接続領域を設けるステップであって、各サブ回路の接続領域が、他のサブ回路の接続領域又は電流リードに電気的に接続される、ステップとを含む。
【0120】
したがって、超伝導ユニットを起点として、異なるサブ回路を互いに画定/分離することができる。
【0121】
好ましくは、超伝導層の局所的な破壊又は除去は、スクラッチ、エッチング、又はウォータージェットパターニングのレーザーによって行われる。あるいは、任意の他の化学的及び機械的方法を使用することができる。
【0122】
好ましくは、少なくとも2つのサブ回路が形成され、超伝導材料は、サブ回路が超伝導的に相互接続される接続領域に保持される。
【0123】
あるいは、少なくとも2つのサブ回路が形成され、サブ回路の接続領域は架橋によって電気的に相互接続される。超伝導又は通常の導電性架橋要素を使用することができる。
【0124】
本発明の更なる利点は、説明及び図面から得られる。同様に、上述した特徴及び更に特定された特徴は、任意の所望の方法で個別に又は互いに組み合わせて使用することができる。図示及び説明された実施形態は、網羅的なリストとして理解されるべきものではなく、むしろ本発明の説明のための例示的な特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【
図1】異なる臨界電流を有する分岐を伴う、SCスイッチのない超伝導回路、及び回路を充電するための方法ステップを示す。
【
図2】非対称電流リード接続に起因する異なるインダクタンスを有する分岐を伴う、本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路、及び回路を充電するための方法ステップを示す。
【
図3】本発明に係るSCスイッチのない超伝導サブ回路の回路図を示す。
【
図4a】本発明の方法の異なる変形例(具体的にはh*k<1)における供給電流の関数としての部分電流の図を示す。
【
図4b】本発明の方法の異なる変形例(具体的にはh*k<1)における供給電流の関数としての部分電流の図を示す。
【
図4c】本発明の方法の異なる変形例(具体的にはh*k<1)における供給電流の関数としての部分電流の図を示す。
【
図4d】本発明の方法の異なる変形例(具体的にはh*k<1)における供給電流の関数としての部分電流の図を示す。
【
図4e】本発明の方法の変形例(具体的にはh*k>1)における供給電流の関数としての部分電流の図を示す。
【
図5a】異なるインダクタンス及び異なる臨界電流を有する分岐を伴う1つのサブ回路を備える、本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路を示す。
【
図5b】異なるインダクタンス及び異なる臨界電流を有する分岐を伴う1つのサブ回路を備える、本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路を示す。
【
図5c】異なるインダクタンス及び異なる臨界電流を有する分岐を伴う1つのサブ回路を備える、本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路を示す。
【
図6a】非対称電流リード接続と異なるSC材料とに起因して異なるインダクタンスを有する分岐を伴う1つのサブ回路を備える、本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路を示す。
【
図6b】非対称電流リード接続と異なるSC材料とに起因して異なるインダクタンスを有する分岐を伴う1つのサブ回路を備える、本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路を示す。
【
図7a】異なる電流リード構成を伴う1つのサブ回路を備える、本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路を示す。
【
図7b】異なる電流リード構成を伴う1つのサブ回路を備える、本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路を示す。
【
図7c】異なる電流リード構成を伴う1つのサブ回路を備える、本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路を示す。
【
図8a】幾つかの直列接続された入れ子状サブ回路を備える、本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路を示す。
【
図8b】幾つかの直列接続された入れ子状サブ回路を備える、本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路を示す。
【
図9a】異なる経路幅又は一般に異なる臨界電流を伴う幾つかの直列接続された入れ子状サブ回路を備える、本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路を示す。
【
図9b】異なる経路幅又は一般に異なる臨界電流を伴う幾つかの直列接続された入れ子状サブ回路を備える、本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路を示す。
【
図9c】互いに不等間隔に配置される幾つかの直列接続された入れ子状サブ回路を備える、本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路を示す。
【
図10】直列に接続された2つの入れ子状サブ回路を備える、本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路を示す図であって、サブ回路の第1の分岐が対向する周方向に配向され(oriented)ることで対向する磁場を生成するものを示す。
【
図11】異なる経路断面を有する分岐を伴う幾つかの直列に接続された入れ子状サブ回路を備える、本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路を示す。
【
図12a】幾つかの直列接続された入れ子状サブ回路を備える、本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路の異なる幾何学的形状を示す。
【
図12b】幾つかの直列接続された入れ子状サブ回路を備える、本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路の異なる幾何学的形状を示す。
【
図12c】幾つかの直列接続された入れ子状サブ回路を備える、本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路の異なる幾何学的形状を示す。
【
図13】
図12cに示される回路内に入れ子になっている追加の回路を備える、本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路アセンブリを示す図であって、各回路が幾つかの直列に接続された入れ子状サブ回路を有するものを示す。
【
図14】並べて配置されて最終的に共通のキャリア上に設けられた幾つかの回路を備える、SCスイッチのない超伝導回路アセンブリを示す図であって、各回路が幾つかの直列に接続された入れ子状サブ回路を有するものを示す。
【
図15】並べて配置されて最終的に共通のキャリア上に設けられた幾つかの回路を備える、SCスイッチのない超伝導回路アセンブリを示す図であって、各回路が幾つかの直列に接続された入れ子状サブ回路を有するものを示す。
【
図16a】並べて配置されて最終的に共通のキャリア上に設けられた幾つかの回路を備える、SCスイッチのない超伝導回路アセンブリを示す図であって、各回路が幾つかの直列に接続された入れ子状サブ回路を有するものを示す。
【
図16b】並べて配置されて最終的に共通のキャリア上に設けられた幾つかの回路を備える、SCスイッチのない超伝導回路アセンブリを示す図であって、各回路が幾つかの直列に接続された入れ子状サブ回路を有するものを示す。
【
図16c】並べて配置されて最終的に共通のキャリア上に設けられた幾つかの回路を備える、SCスイッチのない超伝導回路アセンブリを示す図であって、各回路が幾つかの直列に接続された入れ子状サブ回路を有するものを示す。
【
図16d】幾つかのサブ回路アセンブリが互いに直列に接続されたSCスイッチのない超伝導回路を示す図であって、各サブ回路アセンブリが幾つかの直列に接続された入れ子状サブ回路を有するものを示す。
【
図16e】幾つかのサブ回路アセンブリが互いに直列に接続されたSCスイッチのない超伝導回路を示す図であって、各サブ回路アセンブリが幾つかの直列に接続された入れ子状サブ回路を有するものを示す。
【
図17】屈曲したキャリア上に
図13に示される回路アセンブリを伴う、本発明に係る超伝導磁石を示す。
【
図18a】巻かれたシート状キャリアの上に
図16d及び
図16eに係る回路を伴う、本発明に係るSCスイッチのない超伝導磁石の異なる幾何学的形状と、対応する磁場とを示す。
【
図18b】巻かれたシート状キャリアの上に
図16d及び
図16eに係る回路を伴う、本発明に係るSCスイッチのない超伝導磁石の異なる幾何学的形状と、対応する磁場とを示す。
【
図18c】巻かれたシート状キャリアの上に
図16d及び
図16eに係る回路を伴う、本発明に係るSCスイッチのない超伝導磁石の異なる幾何学的形状と、対応する磁場とを示す。
【
図18d】巻かれたシート状キャリアの上に
図16d及び
図16eに係る回路を伴う、本発明に係るSCスイッチのない超伝導磁石の異なる幾何学的形状と、対応する磁場とを示す。
【
図19】屈曲したキャリア上に幾つかの積層回路を備える、本発明に係るSCスイッチのない超伝導磁石の断面図を示す。
【
図20】本発明に係るSCスイッチのない超伝導磁石が、幾つかの重畳回路からどのように構成されるかと、異なる幾何学的形状に対応する磁場と、を示す図であって、各回路が直列に接続された幾つかのサブ回路アセンブリを備えるものを示す。
【
図21a】幾つかの積層サブ回路アセンブリを伴うSCスイッチのない超伝導回路を示す図であって、サブ回路アセンブリが、直列に接続された径方向に入れ子状になった入れ子状サブ回路を有するものを示す。各サブ回路アセンブリのサブ回路が、平坦なシート状キャリア上に配置される。
【
図21b】幾つかの積層サブ回路アセンブリを伴うSCスイッチのない超伝導回路を示す図であって、サブ回路アセンブリが、直列に接続された径方向に入れ子状になった入れ子状サブ回路を有するものを示す。各サブ回路アセンブリのサブ回路が、平坦なシート状キャリア上に配置される。
【
図22a】SCスイッチのない管状サブ回路を示す。
【
図22b】SCスイッチのない管状サブ回路を示す。
【
図22c】SCスイッチのない管状サブ回路を示す。
【
図22d】SCスイッチのない管状サブ回路を示す。
【
図22e】SCスイッチのない管状サブ回路を示す。
【
図23】積み重ねられた管状の入れ子状サブ回路を伴うSCスイッチのない超伝導管状回路を示す。
【
図24】積み重ねられた管状の入れ子状サブ回路を伴う幾つかの径方向入れ子状サブ回路アセンブリを伴う、SCスイッチのない超伝導回路を示す。入れ子状サブ回路がリング状/円筒状のキャリア上に配置される。
【
図25a】積み重ねられた管状の入れ子状サブ回路を伴う幾つかの径方向入れ子状サブ回路アセンブリを伴う、SCスイッチのない超伝導回路を示す。入れ子状サブ回路がリング状/円筒状のキャリア上に配置される。
【
図25b】積み重ねられた管状の入れ子状サブ回路を伴う幾つかの径方向入れ子状サブ回路アセンブリを伴う、SCスイッチのない超伝導回路を示す。入れ子状サブ回路がリング状/円筒状のキャリア上に配置される。
【
図26a】第1の分岐を共有して並列に接続された2つのサブ回路を伴う、本発明に係るSCスイッチのない超伝導サブ回路アセンブリを示す。
【
図26b】第1の分岐を共有して並列に接続された2つのサブ回路を伴う、本発明に係るSCスイッチのない超伝導サブ回路アセンブリを示す。
【
図26c】第1の分岐を共有して並列に接続された2つのサブ回路を伴う、本発明に係るSCスイッチのない超伝導サブ回路アセンブリを示す。
【
図26d】第1の分岐を共有して並列に接続された2つのサブ回路を伴う、本発明に係るSCスイッチのない超伝導サブ回路アセンブリを示す。
【
図27a】従来においてはワイヤのみを介して電源に接続された、
図25bに係るSCスイッチのない超伝導回路を示す。
【
図27b】電源に接続された
図25bに係るSCスイッチのない超伝導回路を示す図であって、電源が外部インダクタ及び内部インダクタを有する。
【発明を実施するための形態】
【0126】
図1に示す回路は、第1の分岐101と、第2の分岐102と、2つの電流リード103とを備える。第1の分岐101及び第2の分岐102は、サブ回路104を形成する。
【0127】
電流リードは、分岐103の長さに関して対称的にサブ回路104に接続されるが、分岐101,102は、分岐101,102の経路の幅が異なっている。この幾何学的差異により、第1の分岐102の臨界電流Ic1(第1の臨界電流Ic1)は、第2の分岐101の臨界電流Ic2(第2の臨界電流Ic2)と比較して低くなる。
【0128】
充電のための方法ステップは以下の通りである:
1.1 -電源(図示せず)から供給電流Iinがサブ回路4に供給される。供給電流Iinは、第1の部分電流が第1の分岐101の臨界電流Ic1に達するまで(Iin=2Ic1)、50%が第1の分岐101に(第1の部分電流Ip1)、50%が第2の分岐102に(第2の部分電流Ip2)分割される。
1.2 -供給電流Iinを更に増大させて(Iin=2Ic1+ΔI)とする。ここで、第1の分岐101では臨界電流Ic1に既に達しているため、追加の電流ΔIは、第2の分岐(Ip2=Ic1+ΔI)にのみ流れる。
1.3 -ここで、供給電流Iinを減少させる。供給電流Iinを減少させると、両分岐101,102の電流が等しく減少するので、両分岐1、2の電流は再びそれらの臨界電流Ic1、Ic2を下回る。
1.4 -供給電流Iinが第1の臨界電流2Ic1の2倍(Iin=ΔI)だけ減少すると、第1の部分電流Ip1は0になる。しかし、第2の分岐102には、部分電流ΔIが依然として残っている。
1.5 -次に、供給電流-Iinが、第2の部分電流Ip2が0に達するまで更に低減される。低減された電流ΔIは、各分岐101,102について等しく分割され、その結果、第1の部分電流は-ΔI/2となり、第2の部分電流はΔI/2となる。
1.6 -最後に、回路電流Icircuit=ΔI/2が回路内に残る。
【0129】
手順を逆にして(逆電流極性)、サブ回路を反対向きの電流で充電したり、又は既に充電された後に電流を減少させることで、サブ回路104を調整する又は完全に放電させることができる。
【0130】
システムを充電することができる最大電流は、ステップ1.3の第2の部分電流が2Ic1である第1の分岐101の臨界電流Ic1程度に制限される、すなわち、充電目的のためだけに第2の分岐102の臨界電流Ic2が第1の分岐1の臨界電流Ic1よりもはるかに高くなければならず、その後はそれ以上使用されない。回路内に残ることができる最大電流は、2つの分岐間の下限臨界電流によって制限されるが、それを充電するためにはその電流の最大4倍までの電流を供給する必要がある。このため、充電目的のためだけに、他方の分岐の臨界電流が1つ目のものの少なくとも3倍である必要がある。サブ回路104をIcircuitで充電するために、ステップ1.3において、サブ回路104に、供給電流Iin0 Ic1+2*Icircuitを供給しなければならない。
【0131】
発明の原理
本発明の方法は、
図3に概略的に示すように、異なるインダクタンスL1、L2を有する分岐1、2を設けることによって、非対称充電が達成される非対称充電方法に関する。
【0132】
図2は、本発明に係る方法(第1のインダクタンスL1が第2のインダクタンスL2に対して無視できるものであって、初期電流I0がI0=0であるという特殊な場合(
図2-2.0)についてのもの)を使用した、本発明のSCスイッチのない超伝導回路10/サブ回路4の一実施形態及び充電中における電流分布を示す。サブ回路4は、第1の分岐1と、第2の分岐2と、2つの電流リード3とを備える。電流リード3は、接続領域6a,6b(入口接続領域6a及び出口接続領域6b)においてサブ回路4に接続されている。分岐1,2は、両方の分岐1,2において電流が連続的に流れることができるように超伝導接続される。電流リード3は、供給電流が2つのインダクタンスL1、L2の並列接続を見るように回路10に接続される。本発明によれば、第1の分岐1は、第2の分岐2よりも低いインダクタンスL1を有する。
図2に示す実施形態では、これは、電流リード3を分岐1、2の長さに関して非対称に接続することによって達成される。第1の分岐1がより短いため、電流リード3の非対称接続によって、第1の分岐1のインダクタンスL1(第1のインダクタンスL1)が、第2の分岐2のインダクタンスL2(第2のインダクタンスL2)と比較して低くなる。ここで、分岐1,2は、同じ経路厚さ及び経路幅を有する。
【0133】
以下では、サブ回路4の両方の分岐1、2が同じ臨界電流Icを有すると仮定する。
【0134】
本発明の充電方法は以下を含む:
電源(図示せず)から供給電流Iinをサブ回路4に供給する。
(a)第1の分岐1のインダクタンスL1は第2の分岐2のインダクタンスL2よりも低いため、供給電流Iinの増大は、第2の分岐2よりも第1の分岐1において発生する誘導電圧が少なくなり、したがって、第1の部分電流I1が第1の臨界電流Ic1に達す
るまで、電流は主に第1の分岐1に流れる(
図2の2.1)。各分岐1,2に流れる部分電流の比Ip1/Ip2は、第1インダクタンスL1と第2インダクタンスL2との比L1/L2に依存する。
(b)第1の部分電流I1が第1の臨界電流Ic1に達すると、供給電流Iinは追加の電流によって更に増大する。既に第1の分岐1の臨界電流Ic1に到達しており、生じた電圧は第2の分岐2の誘導電圧に打ち勝つことができるので、追加の電流は第2の分岐2に完全に伝達され、第2の部分電流はI2=Iin-Ic1に到達する(
図2の2.2)。
(c)-ここで、供給電流Iinが0に低減される。供給電流Iinを減少させると、第1の分岐1は再びその臨界電流Ic1を下回る。第1の分岐1のより低いインダクタンスL1に起因して、主に第1の部分電流I1が減少する(
図2の2.3)。第1の部分電流は、0に降下し(
図2の2.4)、その後、第1の部分電流I1と第2の部分電流I2の絶対値が互いに一致するまで向きを変える(
図2の2.5)。その後、残留回路電流Icircuitがサブ回路内を循環する(
図2の2.6)。
図4a及び
図4bは、特別な場合におけるこの手順中における、(正規化された)供給電流Iin/Ic1の関数としての(Ic1によって正規化された)部分電流I1/Ic1、I2/Ic1の図を示すものであり、特別な場合とは以下の通りである:
・サブ回路4の両分岐1、2は同じ臨界電流を有する。
Ic1=Ic2; h=Ic1/Ic2=1
・第1のインダクタンスL1は、第2の分岐2の第2のインダクタンスL2と比較して無視できる。
L1<<L2; k=L1/L2->0
・充電のための初期電流は0である。
I0=0
【0135】
本実施例では、分岐1の第1のインダクタンスL1は、分岐2の第2のインダクタンスL2と比較して無視できると仮定しているため、部分電流I1が第1の臨界電流Ic1に達するまで、供給電流全体が最初に第1の分岐に伝達される、一方で、第1の部分電流が第1の臨界電流Ic1に達するまでは、第2の分岐内の第2の部分電流は0のままである。
【0136】
第1の部分電流が第1の臨界電流に達した後、第1の臨界電流Ic1を超えた供給電流の分配は、第2の分岐2に完全に伝達される。ここで、供給電流Iinは2Ic1まで増大され、第1の部分電流I1=Ic1及び第2の部分電流I2=Ic1となる。
【0137】
そして、供給電流Iinが減少する。供給電流Iinを減少させると、第1の分岐1は再びその臨界電流Ic1を下回る。第1の分岐1の無視できるインダクタンスL1に起因して、第1の部分電流I1のみが減少し、0まで低下し、その後I1=-Ic1に反転するが、一方、第2の分岐2では、第2の部分電流はI2=Ic1のままである。最後に、回路電流Icircuit=Ic1がサブ回路に残る。
【0138】
図4c及び
図4dは、第1のインダクタンスL1が無視できない場合という、より一般的な場合の、本発明の方法手順中での(正規化された)供給電流Iin/Ic1の関数としての部分電流I1/Ic1、I2/Ic1(Ic1によって正規化されたもの)の図を示す。一例として、kは0.5であるように選択され、これは、L1=0.5*L2を意味する。
【0139】
ステップ(a)では、供給電流が第1の分岐1と第2の分岐2との間で分割され、供給電流の大部分が、インダクタンスL1がより低いことに起因して第1の分岐1に供給されるが、無視できない部分が分岐2に向けられることが分かる。供給電流は、Icircuit=1となるためにIin=3*Ic1まで増大されなければならず、これはすなわち、最終的なIcircuitを同じにするためには、供給電流Iinを前の場合(
図4a及び
図4b)と比較して3倍増大させなければならないことを意味する。これは、第2の分岐2が、第1の分岐1と比較して2倍の臨界電流を有さなければならないことを意味する。換言すれば、比kが高いほど、充電する回路に供給されなければならない電流がより高くなり、また、回路の完全充電を可能にするために2つの分岐の臨界電流間の差がより大きくなければならず、これはすなわち、設計の効率が悪いことを意味する。
【0140】
(まだ可能ではあるが)更に効率の悪い状況が
図4eに示されており、kは依然として0.5であるが、h=5である(これは、Ic1=5*Ic2>Ic2であることを意味する)。
【0141】
この場合、第2の分岐2の通常状態への遷移が第1の分岐1の遷移よりも先に行われ、したがって電流が第1の分岐1に向け直されるので、状況は複雑である。充電プロセスの終わりに、循環内に残っている残留電流Icircuitは、先に提示した場合とは反対の向きを有する。
【0142】
回路内の初期電流が0に等しくない(I0≠0)場合、本発明の方法を使用して、回路内の電流を低減するか、反転させるか、又は回路を完全に放電させることもできる:
(a)供給電流は、第1の部分電流I1が第1の臨界電流Ic1に(第1の分岐1の初期電流Iinの極性で)達するまで(第1の分岐1の初期電流の極性で)増大される。ここでも、第1の分岐1のインダクタンスL1は第2の分岐2のインダクタンスL2よりも低いため、供給電流Iinの増大が、第2の分岐2よりも第1の分岐1に少ない誘導電圧を発生させることになり、したがって、第1の部分電流I1が第1の臨界電流Ic1に達するまで、電流は主に第1の分岐1を流れる。各分岐1,2に流れる部分電流の比Ip1/Ip2は、第1インダクタンスと第2インダクタンスとの比L1/L2に依存する。
(b)第1の部分電流I1が第1の臨界電流Ic1に達すると、供給電流Iinは追加の電流によって更に増大する。すでに第1の分岐1の臨界電流Ic1に到達しており、生成された電圧は第2の分岐2の誘導電圧に打ち勝つことができるため、追加の電流は第2の分岐2に完全に伝達される。放電開始時の第2の部分電流I2は、第1の部分電流I1及び供給電流と逆極性であるため、第2の部分電流I2は供給電流Iinの増大に起因して減少する。
(c)第2の部分電流I2の所望の値に達するとすぐに、供給電流Iinは0まで減少する。供給電流Iinを減少させると、第1の分岐1は再びその臨界電流Ic1を下回る。第1の分岐1のより低いインダクタンスL1に起因して、主に第1の部分電流I1が減少する。第1の部分電流I1は、第1の部分電流I1と第2の部分電流I2との絶対値が互いに一致するまで低下する。回路電流Icircuitがサブ回路4内で得られ、これは、初期電流I0よりも小さいか、又は初期電流I0とは反対の向きを有する。
【0143】
図4aでは、完全な放電が示されており、すなわちIcircuit=0であり、一方、
図4bでは、完全な負の充電が示されている(Icircuit=-1)。
【0144】
図1に示す従来技術の方法と比較して、本発明の概念は、サブ回路4の分岐1、2が同じ臨界電流を有することができるため、超伝導材料と利用可能な空間とをより良好に利用することができる。つまりこれは、本発明の方法では、同じ供給電流Iinを使用しながら、不均一な臨界電流を有する回路よりも高い電流で回路を充電することができることを意味する。これにより、よりコンパクトで強力な(及び場合によってはより安価な)磁石が実現可能になる。
【0145】
最適化された設計の効率は、2つの分岐1、2のインダクタンス比L1/L2によって制限される。したがって、(必要な時にいつでも)回路を完全に充電(最大残留電流)できるようにするために、回路は、(回路の挙動を記述する、上記の例に示され、上記の式によって暗示されているように)定義されたIc1/Ic2比で設計されなければならない。
【0146】
したがって、本出願の回路設計の効率「e」が、回路に充電することができる最大残留電流Icircuit(これは、臨界電流Ic1及び臨界電流Ic2の最小値に対応し、そうでなければ電流は減衰して最低値の電流となる)と、回路の完全充電を可能にするために必要な最大臨界電流との間の比として定義される場合。
【0147】
最適化された設計では、回路内で充電することができる最大電流は、回路の充電を開始するのに必要な電流の2倍であるが、これは、分岐のうちでの下限臨界電流であり、したがって、循環することができる持続電流を制限するものであるためである。
【0148】
h*k<1の場合:
(k+1)<Δa/Ic1≦(h+1)/h(「発明の説明」で述べた境界の1つの式)において、Δa/Ic1=2*(k+1)を課す必要がある、ここで、(k+1)は回路の充電を開始するための最小値である。しかし、最適化された回路を考慮するために、この値は、回路全体の遷移(transition)を超え(go above)ないように回路内で供給され得る最大値にも対応しなければならず、これは以下を意味する:
2*(k+1)=(h+1)/h
この式は、以下の条件を導く:
eoptimized=h=1/(2*k+1)
h*k>1の場合:
上記と同様の手法に従って、(k+1)/(h*k)<Δa/Ic1≦(h+1)/h(「発明の説明」で述べた境界の1つの方程式)において、
2*(k+1)/(h*k)=(h+1)/h
すなわち、
eoptimized=1/h=k/(k+2)
である。
【0149】
回路設計の効率を評価するために、例えば、以下の2つの極端な状況(特殊な場合)を考慮することが可能である:
L1=L2の状況に対応するk=1
h*k<1の場合:eoptimized=1/3=Ic1/Ic2
h*k>1の場合:eoptimized=1/3=Ic2/Ic1
L2に対してL1が無視できる状況に対応するk->0
h*k<1の場合:eoptimized->1=Ic1/Ic2->Ic1=Ic2
h*k>1の場合:eoptimized->0 興味をひくものではない!
k=1の場合は、k<1、特にk->0に対してかなり有利ではないものである。
【0150】
回路を臨界電流値まで、又は臨界電流値の近くまで完全に充電する必要がない場合でも、最適に設計された回路では、最適に設計されていない回路と比較して、より低い比(Icircuit/Ic)で同じ電流を充電することができるため、最適化された回路設計を有することはいずれにせよ有利である。
【0151】
これは、先に説明したように、回路内の電圧が比Ioperative/Icに依存し、電圧が低いほど散逸が小さくなり、回路内の電流の持続時間が長くなるため、重要である。
【0152】
図2に示すサブ回路4は、本発明の回路10の非常に基本的な実施形態とすることができる。しかしながら、本発明に係る回路10、10’、10’’、10’’’、10’’’も、より複雑になりうる。サブ回路4は、細長く(elongated)てもよく、異なる形状を有してもよく、異なる超伝導材料及び/又は形状又は材料組成で作られてもよい、ただしこれは、閉じた超伝導経路を形成しており、前述した原理に従って充電することができる超伝導材料を備えるならば、である。
【0153】
本発明の充電方法は、
図1に示す充電方法と組み合わせることができ、これはすなわち、分岐1、2がインダクタンスだけでなく臨界電流も異なることを意味する。これは、分岐3の長さに対して非対称な電流リード3の接続を設け、異なる経路厚を有する分岐を更に設けることによって実現することができる。例を
図5a、
図5b及び
図5cに示す。
【0154】
更に、異なるインダクタンスを有する分岐が閉じた超伝導回路に設けられている場合であるならば、回路/サブ回路は、異なる超伝導材料で、もしくは臨界電流密度、臨界温度、不可逆磁場などの物理的特性が異なる超伝導材料で作ることができる。
図6a及び
図6bには、第1の分岐1が超伝導材料SC2からなり、第2の分岐2が超伝導材料SC4及びSC5からなる例が示されている。
図6bに示す実施形態において、第1の分岐1はさらに、経路幅が縮小されている。更に、電流リード3は、異なる超伝導材料SC1、SC3で作ることができる。なお、電流リード3が超伝導ではない実施形態も可能である。回路10と電流リードとの間の接続は、回路10自体のサブ回路4が超伝導のままである限り、超伝導又は常伝導であり得る。
【0155】
接続領域6a、6bの位置が、異なるインダクタンスを有する分岐1、2、すなわち非対称電流リード接続を設けるために必要な幾何学的形状を尊重する限り、電流リード3、3’は異なる方向に接続することができる。
【0156】
図7a、
図7b及び
図7cは、電流リード接続変形例の、異なる幾何学的形状を示す。
図7aは、外側に向けられた電流リード3’を示し、
図7b及び
図7cでは、電流リード3、3’のうちの1つがサブ回路の中心に向けられている。
図7a及び
図7bの電流リード3’は、後からサブ回路に接続されるが、一方
図7cでは、サブ回路及び電流リード3は一体的に形成されている。
【0157】
これまでのところ、単一のサブ回路4のみを備える回路が示されている。しかしながら、より複雑なアセンブリ及びトポロジーもまた可能であり、これについては後述する。
【0158】
回路は幾つかのサブ回路4を備えることができ、幾つかのサブ回路4は、直列に接続されており、1つ以上のサブ回路アセンブリ5、5’を形成している。個々のサブ回路4’は、直径が等しく、積層され、次いで、1つのサブ回路4.4’の出口接続領域6bを隣接するサブ回路4、4’の入口接続領域6aに電気的に接続する(例えば、はんだ付け)ことによって直列に接続され得る(
図23参照)。更に、異なる直径を有するサブ回路4を実現することで、1つのサブ回路4の出口接続領域6bを隣接するサブ回路4の入口接続領域6aに電気的に接続する(例えば、はんだ付け)ことによって、それらが同心円状に(入れ子状に)取り付けられ、次いで直列に接続され得るようにすることが可能である(
図8a~
図12cを参照されたい)。回路の最も内側のサブ回路及び最も外側のサブ回路は、それぞれ電流リード3に接続される。本発明の、接続領域6a、6bの非対称配置を実現するために、個々のサブ回路4の接続領域6a、6bは周方向にずらされている。幾つかのサブ回路アセンブリ5、5’を有する1つの回路のみを備える磁石は、上記の方法を用いて、必要な電力を低減して、2つの電流リードのみで充電することができる。
【0159】
【0160】
例えば、元の材料に既に存在するか、又はサブ回路の実現中に生成されたのが理由で1つ以上の個々のサブ回路が欠陥を有する場合、既に示されている全ての実施形態及びそれに続く実施形態において、修復するか、又は少なくともその抵抗を低減するために、別の導電性(好ましくは超伝導性)材料(好ましくははんだ付けによって、しかしコーティング又は他の技術によっても)を、損傷した/低性能ゾーンに並列に適用することが可能である。これにより、直列接続されたサブ回路の残りを依然として充電することができる。これは、たとえサブ回路の局所的な損傷/低性能部分があっても、回路を、その直列接続されたサブ回路(損傷/低性能サブ回路を備える)と共に使用することを可能にするので有利である。
【0161】
図8bに示す回路10のサブ回路4間の距離は、
図8aに示すものと比較して大きくなっている。
【0162】
図9a及び
図9bは本発明のSCスイッチのない超伝導回路10の実施形態を示すものであって、サブ回路4の経路の幅が「段階的」になっている、すなわち異なるサブ回路4については経路幅が異なっている。これにより、回路10を磁場の変化に適合させることが可能になり、より高い磁場にさらされるサブ回路4の臨界電流が減少させることができる。
図11及び
図9bの一例では、閉回路10においては、典型的には最も内側のサブ回路又は材料が最高磁場にさらされるため、中央のサブ回路の経路はより広くなっている。段階的にした設計によって、より高い磁場に対する超伝導体固有の感度に起因する超伝導体のIcの減少が補償される。
図9a及び
図9bに示す実施形態は、サブ回路4が互いにどのように接続されるかが異なる:すなわち、
図9aでは、サブ回路アセンブリ5の複数のサブ回路4及び接続部が一体的に形成されているが、一方、
図9bでは、別個のサブ回路4が設けられており、続いて、これらが架橋要素7(超伝導又は常伝導)を使用して接続される。
【0163】
図9cには本発明による回路10が示され、回路10は、互いに不等間隔に配置された、直列に接続された入れ子状サブ回路4を備えている。ここで、外側サブ回路4間の空間は、内側サブ回路4間の空間よりも大きい。サブ回路アセンブリ5内のサブ回路4間の空間の変化は、回路10によって生成される磁場を成形するために使用することができる。
【0164】
図10は、2つの直列に接続された入れ子状サブ回路4を備える本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路10を示し、サブ回路4の第1の分岐1は、対向する周方向に配向され(すなわち、それぞれのサブ回路の入口接続領域から出口接続領域への方向は、
図10のより薄い平面(paler plane)で見てそれぞれ時計回り又は反時計回りに走る)、それによって、対向する磁場を生成する。それにより、例えば、外部フリンジ磁場を低減するか、又はそれを空間内のある位置に局在化するか、又は結果として生じる回路のインダクタンスを低減するなど、結果として生じる磁場及び回路の特性に対する変更を得ることができる。
【0165】
図11は、本発明の回路の、非常に省スペースの構成の一実施形態を示し、複数のサブ回路が互いに入れ子になっており、サブ回路の分岐が、長さ及び断面の両方において互いに異なっている。回路は、より短い分岐がより小さい経路断面を有する(したがって、より小さいインダクタンスも有する)サブ回路と、より長い分岐がより小さい経路断面を有するサブ回路とを交互に含む。分岐の長さと経路直径の両方が分岐のインダクタンスに影響を及ぼすため、後者の場合(断面の直径が小さい長い分岐)、通常、隣接するサブ回路よりもインダクタンスの差が小さくなる。とはいえ、少なくとも第2のサブ回路ごとに、本発明による条件を満たしている。更に、この実施形態における長さ比及び厚さ比に応じて、第2のサブ回路ごとに、インダクタンスがより小さい分岐がより長い経路となることが可能である。これにより、隣接するサブ回路は、
図10に示す回路と類似して、異なる方向に磁場を生成する。
【0166】
図12a、
図12b及び
図12cは、幾つかの直列接続された入れ子状サブ回路4を有するサブ回路アセンブリ5を伴う、本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路の更なる幾何学的形状を示す。
【0167】
本発明に係る磁石は、1つ以上の回路、すなわち回路アセンブリを備えることができる。例えば、
図13は、3つの回路10(1つの外側回路及び2つの内側回路)を有する対応する回路アセンブリを示しており、各回路は1つのサブ回路アセンブリを備える。2つの内側回路は、外側回路内に入れ子になっている。各回路は、一対の電流リード3を備え、別々に電力を供給することができる。
【0168】
スペース及び材料を節約する実施形態を提供するために、サブ回路4は、共通のキャリア(例えば、超伝導コーティングがなされた、リーフ形状(leaf-shaped)の材料又は材料のブロック)上に配置されることが好ましい。そのような回路設計は、例えば、超伝導コーティングされたキャリア(例えばREBCOコーティング)を引っ掻き(スクラッチし)、次いでツールでコーティングを引っ掻く(スクラッチする)か、又は表面をエッチングもしくはレーザパターニングすることによって製造することができる。これらの方法によって生成されたコーティング内のトラック(tracks in the
coating)は、個々のサブ回路4を互いに絶縁するために、トラック領域内の超伝導性を低減又は破壊する。あるいは、バルク材料を、サブ回路4間で劣化させ得る、又は完全に切断させ得る。異なるサブ回路4の分岐1、2間の材料が完全に除去され得る。
【0169】
複数の回路を有する回路アセンブリ-入れ子状回路
図13は、幾つかの回路10(1つの外側回路及び2つの内側回路)を有する、本発明に係るSCスイッチのない超伝導磁石を示す。2つの内側回路は、外側回路内に入れ子になっている。各回路は、一対の電流リード3を備えており、各回路に別々に電力を供給することができる。回路10は、共通の超伝導キャリア上に配置することができる。
【0170】
幾つかの回路/サブ回路アセンブリの横並び設計
図14は、本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路アセンブリを示しており、例えば基板パターニング、マスキング、エッチングなどを用いて共通のキャリア8上に並んで設けられた、幾つかの(ここでは6つの)回路10を有する。その構成は、同じ支持体上に多くの回路を作成できるという利点を有し、これは最終的に曲げられるか又はより複雑なデバイスで使用されて、異なった充電が可能なデバイスを有する単一のユニットを作成し、異なる形状の磁場を作成して、例えば、多点シム装置又はメモリデバイスを生成することができる。各回路10には、一対の電流リード3、3’が設けられ、各回路に別々に電力を供給することができる。各回路の一方の電流リード3は、回路10と一体に形成されている。他方の電流リード3’は、同じキャリア8上に形成されているが、超伝導又は常伝導架橋要素7を介して、後から内側サブ回路に接続される。これは、例えば、HTSテープ又は同様のものをはんだ付けすることによって、又は追加のHTS層又は他の材料を直接堆積することによって、行うことができる。
【0171】
図15はまた、共通のキャリア8上に並んで設けられた幾つかの(ここでは8つの)回路10を有する本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路アセンブリを示し、回路10はそれぞれ、ただ1つの単一のサブ回路4を備える。電流リード3をサブ回路4に接続するために架橋要素は必要とされない。
【0172】
あるいは、電流リード3をキャリア7上に設けるために、サブ回路4は、キャリア7に一体化されていない電流リード3’’(超伝導又は常伝導)に接続されてもよい。
図16aは、ねじれた電流リード3’’を例として示す。
【0173】
説明した全ての回路10は、例えば、回路10それぞれ内に流れる電流の状態をチェックするために、
図26c及び
図26dに示すように追加のリード9(特に、はんだ付けされたもの、超伝導又はそうでないもの)と接続することができる。これにより、電流を流し、印加電圧を確認することができる。電圧が0である場合、回路10は充電されない。
【0174】
追加のリード9を使用して、回路のどのような幾何学的又は固有の不平衡にも関係なく、すなわち、第1の分岐1と第2の分岐2との間の臨界電流又はインダクタンスの差に関係なく、回路の一部が他のものよりも先に臨界電流に達するように、追加の電流供給によって回路を不均衡化することもできる。
【0175】
図16bは、ねじられた追加のリード9を示し、
図16cは、キャリア8上に設けられ、サブ回路4と一体に接続された追加のリード9’を示す。
図16cでは、電流リード3のうちの1つを状態チェックに使用することができるため、回路10ごとに1つの追加のリード9のみが設けられている。
【0176】
極端な例として、回路を充電するために使用される両方の電流リード3を、チェックのために使用することができる。しかし、この場合、より複雑な回路及び/又は論理又はプログラミングが必要となる。
【0177】
これまでのところ、入れ子状サブ回路を有する単一のサブ回路アセンブリ5のみを備える回路について説明してきた。以下では、幾つかのサブ回路アセンブリを備える回路について説明する:すなわち、
図16d及び
図16eは、並んで配置されたサブ回路アセンブリ5を有するSCスイッチのない超伝導回路10’を示す。回路5は、互いに直列に接続されている。各サブ回路アセンブリ5は、幾つかの入れ子状サブ回路4を備える。サブ回路アセンブリ5は、架橋要素7を介して互いに接続された共通のキャリア8上に設けられている。サブ回路アセンブリ5の直列接続は、一対の電流リード3のみを介して充電される。電流リード3もまた、キャリア8上に設けられている。
図16dでは、回路10’のサブ回路アセンブリ5は同じ設計であるが、一方、
図16eでは、サブ回路アセンブリの2つの異なる設計が回路10’内に交互に配置されている。
【0178】
記載された全ての回路10、10’は、平坦なシート状キャリア又は曲げられたシート状キャリア又は他の表面上、例えばチューブもしくはバルクのようなものの表面上に実現することができる、もしくは、キャリア8は、回路作成の前又は後に曲げられて、平坦又は円形以外の最終形状を有することができる。一例として、
図17は、曲がった面を有するキャリア8上に
図13に示すような幾つかの回路10を有する回路アセンブリを示す。
【0179】
あるいは、先に示した回路10、10’は、任意のベース形状(base geometry)(例えば、
図18aに示すような円形、正方形、長方形などのもの、又は不規則であるもの)を有する円筒形磁石設計、又は3D形態(図示せず)へと巻回され得る。好ましくは、回路10、10’を有するキャリア8は、螺旋状に巻回され、これによって、サブ回路アセンブリ5の横並びの配置(回路10、10’に対する)をサブ回路アセンブリ5の積層配置(回路10、10’から生成された磁石に対する)に変換する。
図18bは、円形のベースジオメトリ及び回路10、10’のオフセット端部を有する螺旋状巻き設計を示す。この設計によりは、双極子磁場がもたらされる。
図18cは、細長い(elongated)ベース形状を有する螺旋状巻き設計を示す。この設計もまた、双極子磁場をもたらす。
図18dは、円形のベース形状と、周方向に互いに隣接する端部とを有する螺旋状巻回形態を示す。この設計は、多極磁場をもたらす。
【0180】
前述の全ての磁石の回路10、10’及びサブ回路アセンブリ5は、単一の回路10、10’によって生成された場が重畳する、特に合計するように、平坦又は湾曲した形態で積層することができる。
図19では、サブ回路/サブ回路アセンブリは、幾つかの屈曲キャリア8上に配置され、積層されて円筒磁石を形成する。積層サブ回路/サブ回路アセンブリは、架橋要素7又は接合部を介して接続され得、これにより、1対のみ又は数対の電流リードを介して、磁石を充電することができる。
図19では、全てのサブ回路/サブ回路アセンブリが直列に接続されている。したがって、一対の電流リードのみを必要とする。
【0181】
図20は、幾つかの重畳回路10’を備える本発明に係るSCスイッチのない超伝導磁石の構成を示し、また、異なる幾何学的形状について対応する磁場を示す。既に直列に接続されているサブ回路アセンブリ5を有する複数の回路10’は、重ね合わされて、個々の回路10’によって生成された磁場の重ね合わせが作成されるようになる。これは、幾つかの回路10’をz方向(磁石軸の方向を表す)にオフセットし、それらを所望の磁石設計に成形することによって行われる。この例では、オフセットされた回路10’は、円形又は長細い(elongated)ベース面を有する円筒形状に巻かれている。幾つかの回路10’を重ね合わせることにより、より大きくより複雑な磁場分布を得ることができる。
図20は、一例として、幾つかの回路10’が、特定のセクションにおいて反対向きの電流が重畳されるように重ね合わされ、その結果、これらのセクションの磁場が互いに打ち消し合い、磁場は、あたかも均一な電流が磁石の全長にわたって流れているかのようなものとなる(太い矢印で示されている)ことを示している。結果として生じる磁石、したがって結果として生じる磁場は、個々の回路10’よりもz方向に大きく延びる。例えば、
図14~
図16cに示すような回路アセンブリについても、これに対応する磁石設計が可能である。
【0182】
入れ子状サブ回路を有するサブ回路アセンブリの積層設計
図21aは本発明によるSCスイッチのない超伝導回路10’’を示し、積層体に積み重ねられた幾つかの平坦なシート状のサブ回路アセンブリ5を有するものを示す。図示の実施形態では、各サブ回路アセンブリ5は、ここでは、
図8a~
図9bに関して説明したように、径方向に入れ子状になった入れ子状サブ回路4を有する幾つかのサブ回路4(マルチサブ回路回路)を備える。とはいえ、単一のサブ回路4に対しても積層回路設計も可能である。サブ回路アセンブリ5は、架橋要素7を介して直列に接続され、架橋要素7は、サブ回路アセンブリ5の径方向内側又は外側の縁部に配置されることが好ましい。
【0183】
積層体を冷却又は安定化又は補強するために、
図21bに示すように、中間層11を幾つかの、又は更には各サブ回路アセンブリ5の間に挿入することができる。中間層11は、金属(例えば、銅板、鋼板)、及び/又は、電気的及び/又は熱的に絶縁性のある材料(例えばカプトン)で作ることができる。
【0184】
管状回路/サブ回路設計
図22a~
図22eは、管状サブ回路設計の異なる実施形態を示す。
図5a~
図5cに示す平坦なサブ回路4とは対照的に、管状サブ回路4’は円筒を形成する。両方とも、すなわち管状サブ回路設計も平坦なサブ回路設計も、例えば円を形成し得るが、サブ回路4、4’の超伝導経路の表面の向きが異なる。これは、サブ回路4、4’が配置されたキャリア8が使用される場合、より明確になる:すなわち、管状サブ回路4’のキャリア8は円筒形/管状の形状を有し、一方、
図5a~
図5cによる平坦なサブ回路4のキャリア8’は平坦な/シート状の形状を有する、ということがより明確になる。
図22aは、電流リード3の両方が同じ方向に整列され、サブ回路4’と一体に形成された管状サブ回路4’を示す。
図22bは、電流リード3’の両方が同じ方向に整列しているが、後からサブ回路4’に取り付けられている(例えば、はんだ付け)、管状サブ回路4’を示す。
図22cは、反対方向に整列され、サブ回路4’と一体に形成された電流リード3を有する管状サブ回路4’を示す。
図22dは、電流リード3’が反対方向に整列しているが、後からサブ回路4’に取り付けられている、管状サブ回路4’を示す。
図22eは、反対方向に整列され、サブ回路4’と一体に形成された電流リード3を有する管状サブ回路4’を示す。電流リード3は対向して配置され、その結果、長さが等しい分岐1、2をもたらす。分岐1,2の異なるインダクタンスL1,L2は、異なる経路断面によって実現される。
【0185】
積層された管状サブ回路を有するサブ回路アセンブリの入れ子設計
単一の管状キャリア8’上の単一の管状サブ回路4’の直列化の概念は
図23に示されており、
図22cに示す単一のサブ回路4’から始まっている:
図23は、積み重ねられた管状サブ回路4’を有する1つのサブ回路アセンブリ5’を備える本発明に係るSCスイッチのない超伝導回路10を示す。サブ回路4’は、それらの接続領域6a、6bを介して直列に接続される。サブ回路4’は、管状又は円筒状のキャリア8’上に配置することができる。
図23に示す例では、積層された管状サブ回路4’は一体的に形成され(1つのピースである)、中空のシリンダ/チューブを形成し、その軸方向端部に電流リード3が取り付けられる。
【0186】
更に、サブ回路4’の経路の幅の段階づけ(グレーディング)(grading)が
図23に示されており、これにより、軸方向端部におけるサブ回路4’の経路幅は、サブ回路アセンブリ5’の中央位置におけるものよりも大きくなっている。この設計は、径方向成分を有する磁場と比較して、磁場が表面に平行である(すなわち、軸方向に位置合わせされる)場合に超伝導体がはるかに多くの電流を運ぶ、REBCOコーティング基板を使用する場合に特に有利である。管状磁石の磁場は、その軸方向端部に径方向成分(すなわち、管の表面に対して垂直である)を有するため、サブ回路アセンブリ5’の軸方向端部におけるサブ回路4’の臨界電流が低減される。
図23に示す例では、より高い径方向(垂直)磁場成分に起因する臨界電流の損失を補償するために、より大きな経路幅を有するサブ回路が軸方向端部に使用される。
【0187】
入れ子状サブ回路4を有するサブ回路アセンブリ5が積み重ねられている
図21aに類似して、
図23に示す積み重ねられた管状サブ回路4’を有するサブ回路アセンブリ5’は、磁石(
図24)によって生成された磁場を増大させるために入れ子にされ得る。入れ子状サブ回路アセンブリ5’は、それらの軸方向端部において架橋要素又は接合部を介して直列に接続され、回路10’’’を形成する。磁石を冷却又は安定化又は補強するために、中間層(図示せず)を、磁石の一部又は各管状サブ回路アセンブリ5’の間に挿入することができる。中間層は、金属(例えば、銅板、鋼板)で、及び/又は、電気的及び/又は熱的に絶縁性のある材料(例えばカプトン)で作ることができる。
【0188】
図25aはまた、入れ子状サブ回路-アセンブリ-積層サブ回路設計も示す。ここで、サブ回路4’は、同心円状に入れ子に配置されたサブ回路アセンブリ5’を形成するように積層された垂直リング状バルクである。バルク材を用いることで、
図25aに示すように、軸方向だけでなく径方向にも段階づけ(グレーディング)(grading)を施すことができる。サブ回路及びサブ回路アセンブリ5’は、架橋要素7を介して直列に接続される。
【0189】
図25bは、同様の形態を示すが、ここでは架橋要素は必要としていない。
図25bに示す回路アセンブリは、積層サブ回路4’を伴う幾つかの入れ子状サブ回路アセンブリ5’を備え、バルク材料から一体的に作製される。この目的のために、サブ回路4’及び/又はサブ回路アセンブリ5’間の対応する領域内の材料は、除去されて、サブ回路4’及び/又はサブ回路アセンブリ5’を互いに絶縁している。その後、自由空間を非超伝導材料で充填することができる。入れ子状サブ回路アセンブリ5’間の空間を充填する代わりに、中間層(図示せず)を磁石の管状サブ回路アセンブリ5’間に挿入してもよい。中間層は、金属(例えば、銅板、鋼板)で、及び/又は、電気的及び/又は熱的に絶縁性のある材料(例えばカプトン)で作ることができる。
【0190】
共有分岐設計(サブ回路の並列接続)
異なるサブ回路4は、分岐1を共通して有することができ、これにより2つのサブ回路4間の相互作用が生じる。このようにして、システムを充電し、それらが充電状態をチェックするため、又は特別な目的のためにサブ回路間の相互作用を作成する(例えば、発振回路を作る)ために、異なる方法を実現することができる。
図26a、
図26bは、それぞれがループI、IIを形成する2つのサブ回路4を有する例示的な回路10’’’’を示し、各サブ回路4は第1の分岐1及び電流リード3を共有する。このように接続されたサブ回路4は、並列接続を形成する。
【0191】
このようにして接続することができる(したがって、共通の第1の分岐1を有する)サブ回路4の数は、(技術的/物理的寸法の問題がない限り)限定されない。簡単にするために、ここでは2つのサブ回路4のセットのみを説明する。
【0192】
2つのサブ回路4が同じ幾何学的及び物理的特性を有する場合、2つのサブ回路4の電流は完全に2つの部分に分割され、両方のサブ回路4に同じ電界を生成する、ただし反対向きに、である。
【0193】
しかしながら、これらサブ回路4が異なる幾何学的及び/又は物理的特性を有することも可能である。この場合、サブ回路4の1つに、より大きな電流を流すことができる。
【0194】
非常に小さいサブ回路を考慮する場合、すなわち、1つ以上の寸法が、考慮される超伝導体の超伝導コヒーレンス長対侵入深さ(通常、超伝導コヒーレンス長及び侵入深さは10-10~10-8メートルのオーダーである)の1~100のオーダーの大きさになり始める回路を考慮する場合、特定の時点で(at a certain point)、古典的な説明及び現象はもはや有効ではなく、サブ回路4の挙動を記述するためには量子力学を考慮する必要がある。そうすると、超伝導電流は量子力学的波動(quantum
mechanical wave)で説明される。この意味で、2つのサブ回路4は、それぞれ整数個のフラクソン(fluxon、磁束量子線)だけしか保持することができない。2つのサブ回路4は第1の分岐1を共有しているため、供給電流がフラクソンを単一のサブ回路に誘導するのに適切な値に達するとすぐに、フラクソンは2つのサブ回路4のうちの1つに入るはずである。しかしながら、2つのサブ回路4が同等である(同じ幾何学的及び/又は物理的特性を有する)場合、単一のフラクソンは、2つのサブ回路4のうちの1つに割り当てることができないが、両方のサブ回路4に残る確率は同じであるため、結果、それを2つのサブ回路の各々において50%の確率で見ることができる。状態の重ね合わせがある。
【0195】
より良く説明すると:i番目のサブ回路の状態は、電流が他の意味で誘導される場合(電圧又はエネルギー伝達を、1フラクソンのみを誘導するレベルに制限した場合)、0フラクソン、+1フラクソン(この特定の状況では、+は、「右手の法則」を使用して回路内を循環する電流に関連する磁場方向として定義される)、-1フラクソンの状態でのみ特定することができる:
ψi={-1,0,+1}であり、ψiはi番目のサブ回路の可能な状態を記述する波動関数である。
【0196】
最初において、2つのサブ回路は電力なし、すなわちゼロ状態:
【数8】
である。
図26a及び
図26bに示す回路10’’’’が充電されると、可能な状態は以下の通りである:
{ψ
1=0,ψ
2=-1}及び{ψ
1=+1,ψ
2=0}、並びに、両者の重ね合わせである。
全体として、システム全体の状態は、以下:
【数9】
のように記述することができる。
【0197】
したがって、結果として生じる磁場は、それらの間の干渉がシステム全体の状態によって記述されるように存在するのであれば、2つの状態の重ね合わせによって与えられる。
【0198】
3つ以上のサブ回路が同じ分岐に接続されている場合、それらの全てが単一のフラクソンのエネルギーを共有し、これはすなわち、状態の重ね合わせに起因して、大域的状態が重み付けされた(その状態の確率に関連する係数「ai」による)状態の和によって記述されることを意味する。
【0199】
サブ回路4は同一でなくてもよく、又は個々のサブ回路4(部分I及びII)の磁場間の何らかの相互作用が考慮されてもよい(これは、幾つかの相互インダクタンスをもたらす可能性がある相対的な位置に起因する、又は望ましくないもしくは人為的に課された差に起因する、すなわち極端な例として、2つのサブ回路4が互いに曲げられて完全な結合を達成するときや、又は、正もしくは負の制御された結合、を有するために幾つかの他の構造(アーキテクチャ)を実現するときなど)ので、全体的な状態はより複雑な定式化を有する可能性が有り、一般に(しかし、それだけでなく)ai係数は異なり得る。
【0200】
量子力学を考慮しなければならない非常に小さなサブ回路を考慮する場合、
図26a及び
図26bに示す回路10’’’’からエネルギーを除去する動作は簡単ではない、なぜならば、上述したように単純に放電手順を適用することによってでは、以下の理由でフラクソンを確実に除去することができないためである。古典的な(量子力学的ではない)状況のような、上述したような放電手順の場合、サブ回路4の可能な状態は:
サブ回路Iについては{ψ1=0,ψ2=0}及び{ψ1=+1,ψ2=-1}、サブ回路IIについては{ψ1=+1,ψ2=-1}及び{ψ1=0,ψ2=0}、である。
【0201】
重ね合わせに起因して、全体として、システム(回路10’’’’)全体の状態を以下のように説明することができる:
【数10】
初期状態(エネルギー0)に達する確率は、システムの更に高いエネルギーレベル(2つのフラクソン)に達する確率と同じくらい高い。
平均して、エネルギーは依然として1つのフラクソンの存在に対応している。
単に古典的な放電手順を適用するだけでは、システムからエネルギーを除去することはできない。
【0202】
状態をリセットする(回路10’’’’を放電する)(例えば、システムを状態0、すなわち、0エネルギーにリセットする)ために、並びに/若しくは充電及び/又は状態の読み出しを制御するために、追加の電流リード9、9’を追加することができる。一例として、以下の手順を使用して、システムをリセットする(及び状態を読み出す)ことができる。
【0203】
1-プローブ電流Iprobe(<<回路10’’’’のIc)が、2つの第2の分岐2のうちの1つに供給される(相対的なサブ回路(relative sub-circuit)内を循環する既に存在すると想定される電流と同じ意味で、すなわち:どのサブ回路がテストされているかに応じて、状態ψ1=1又はψ2=-1である)
2-同じ追加の電流リード9、9’によって電圧が読み取られる:すなわち、電圧が0から上昇する場合、それは状態が1(どの部分が試験されているかに応じて、又は-1)であることを意味し、電流は分岐内で合計されるため、Icを追い越す
3-ここで2つの結合されたサブ回路4のうちの1つの状態が読み取られるため、回路全体の状態は、ちょうど読み取られた状態において崩壊する。
【0204】
例えば:サブ回路4のうちの1つ(例えば、ループI)が読み取られ、それが状態1にあることが判明した場合、これは、回路10’’’’全体の状態が:
【数11】
の状態から
【数12】
の状態になることを意味し、したがって、フラクソンは、2つの結合されたサブ回路4のうちの1つ、すなわちループI内に正確にとどまる(状態はこれ以上不確定ではない)。
【0205】
4-ここで、対応するサブ回路(ループI)内の循環電流を相殺するために追加の分岐9、9’間にIcまでの電流を供給することによって、ちょうど識別された充電サブ回路(ループI)を放電することが可能である。
【0206】
他の種類の電磁信号が回路を充電/放電するために使用される場合、例えば電磁光子のエネルギーの量子化が最終的に回路と相互作用すると考えられるため、電流に関する考慮事項以外に、より複雑な考慮事項も考慮する必要がある。
【0207】
電流供給
前述のような、本発明に係る回路を備える本発明のSCスイッチのない磁石は、標準的な電源を使用して充電することができる。
【0208】
図27aは、従来のように電源12’への接続がなされたSCスイッチのない超伝導回路を示す。電源12は、配線を介して回路10’’’の電流リード3に直接接続された電源を備える。
【0209】
磁石が極低温環境CRYOにある場合、磁石を充電するのに必要な電流が非常に高くなる可能性があり、標準電源12’を使用することができない、これはなぜならば、室温環境RTから極低温環境CRYOに大電流を伝達すると、回避されるべき熱伝達及び抵抗加熱に起因して極低温環境CRYOに多くの熱がもたらされるためである。
【0210】
この問題は電源12を使用することによって、すなわち、
図27bに示すように、電源に加えて、極低温環境CRYO内に配置された内部インダクタ13(Nint回巻き(Nint turns)を有する)と、極低温環境CRYOの外側に配置された外部インダクタ14(Next回巻き(Next turns)を有する)とを備える電源12を使用することによって、解決することができる。磁石(ここでは回路10’’’を有するもの)は、内部インダクタ13に電気的に接続された電流リード3を介して内部インダクタ13から充電される。適切な比Next/Nint、特にNext>Nintを選択することにより、室温環境RTの外部から極低温環境CRYOに電力線を介して大電流を物理的に伝達せずとも、電流リードを介して磁石に大電流を供給することが可能である。
【0211】
記載されている全ての実施形態について、電流リードは、超伝導又は常伝導であってもよく、電流リードは、サブ回路と一体的に形成されてもよく、又は、架橋要素(超伝導又は常伝導)を介して、又は接合部を介してサブ回路の接続領域に後から取り付けられて接続されてもよい。サブ回路間及び/又は回路間の直列接続は、架橋要素(超伝導又は常伝導)を介して、又はサブ回路の接続領域間の接合部を介して、実現することができる。
【0212】
サブ回路4、4’と架橋7要素7との間の接続は、超伝導又は常伝導接合部によって実現することができ、ここで「接合部」は、2つの要素間の通過領域を意味し、これは、以前に電気的に分離された2つの要素を電気的に接続する。
【0213】
要約すると、分岐のインダクタンスに関して非対称形態を有する超伝導回路を用いた直接充電方法(電流リードを介した充電)、並びに対応する回路及び製造方法が提案されている。2つの分岐1、2のインダクタンスが異なることに起因して、非対称充電プロセスが本発明に従って実現され、その結果、閉じた超伝導回路を電源によって充電可能にする新しい可能性がもたらされる。第1の分岐及び第2の分岐に異なるインダクタンスを提供することによってそれぞれのサブ回路を非対称に充電することができるが、これは、一方の分岐の臨界電流に達するまで、電流が、誘導がより低い分岐に主に供給され、ステップbでさらに電流が増大した分の電流が他方の分岐に完全に供給されるためである。
【符号の説明】
【0214】
1 第1の分岐
2 第2の分岐
3 回路の経路と一体的に形成された電流リード/主電流リード
3’ 回路の経路に後に取り付けられる電流リード/主電流リード
4 超伝導経路を備える超伝導サブ回路(平坦)
4’ 超伝導経路を備える超伝導サブ回路(管状)
5 入れ子状サブ回路を伴うサブ回路アセンブリ
5’ 積層サブ回路を有するサブ回路アセンブリ
6a 入口接続領域
6b 出口接続領域
7 架橋要素
8 平坦サブ回路形態のための回路キャリア
8’ 管状サブ回路形態のためのキャリア
9 追加のリード
10 超伝導閉回路(単一のサブ回路/サブ回路アセンブリを備えるもの)
10’ 超伝導閉回路(並んで配置された幾つかのサブ回路/サブ回路アセンブリを備えるもの)
10’’ 超伝導閉回路(積層されて配置された幾つかのサブ回路/サブ回路アセンブリを備えるもの)
10’’’ 超伝導閉回路(入れ子状に配置された幾つかの管状サブ回路/サブ回路アセンブリを備えるもの)
10’’’’ 超伝導閉回路(第1の分岐を共有して並列に接続された幾つかのサブ回路を備えるもの)
11 中間層
12 極低温環境において部分的に位置された、内部インダクタを備える電源
12’ 配線のみを介した回路への従来の接続を伴う電源
101 第1の分岐(最新技術)
102 第2の分岐(最新技術)
103 電流リード(最新技術)
104 サブ回路(最新技術)
13 内部導体
14 外部導体
CRYO 極低温環境
RT 室温環境
Iin 供給電流
Ic1 第1の分岐の臨界電流(第1の臨界電流)
Ic2 第2の分岐の臨界電流(第2の臨界電流)
Ic 同じ臨界電流を有する分岐の臨界電流
I1 第1の分岐に流れる電流(第1の部分電流)
I2 第2の分岐に流れる電流(第2の部分電流)
I0 充電/放電プロセス前の回路に流れる電流
Icircuit 充電/放電プロセス後の回路に流れる電流
【0215】
引用文献等一覧
US3546541
US8965468B2
US2019172619A1
US4467303
EP2511917A1
US5633588A1
US8228148B2
US20160380526A1
Mark D Ainslie,Mykhaylo Filipenko
「バルク超伝導体:用途へのロードマップ(Bulk superconductors: a roadmap to applications)」、Par.4:「次世代輸送・電力用途向け超軽量超電導回転機(Ultra-light superconducting rotating machines for next-generation transport & power applications)」
Supercond.Sci.Technol.31(2018)103501
US6762664B2
【手続補正書】
【提出日】2023-04-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
特許文献9は、パルス磁化法で超伝導ディスクを充電する方法を記載している。ディスクは、隣接する導体素子同士を接続するための2つの接触点を有する複数の(several)導体素子(リング)を備える。各導体素子には、その2つの接触点を介して搬送電流インパルスが供給される。輸送電流パルスは2つの部分電流、すなわち、導体素子の一方のアームを通って他方の接点までいくもの(one)と、導体素子の他方の接点アームを通って他方の接点までいくもの(another)の2つの部分電流に分離される。この2つの接触点は、2つのアームのうちの短い方の長さが導体素子の全周の最大35%を占めるように配置される。このようにして、電流の非対称性が確立される。しかし、この方法では回路全体を通常の状態にする必要があるため、システムが加熱する傾向があり、長時間動作させ過ぎるとクエンチが発生してしまう。したがって、D1で知られている方法は、信頼性の高い効率的な、超電導回路を充電するための方法ではなく、特に、より高いインダクタンスを伴うシステム(例えば磁石など)に適合しない。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導スイッチのない超伝導閉回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)の充
電を行うための方法であって、
○ 閉じた超伝導経路を伴う少なくとも1つの超伝導サブ回路(4;4’)であって、前記サブ回路(4;4’)に電流を供給するための入口接続領域(6a)と、前記サブ回路(4;4’)から電流を供給するための出口接続領域(6b)とを備え、前記接続領域(6a,6b)は、前記対応するサブ回路(4;4’)を第1の分岐(1)と少なくとも第2の分岐(2)とに分割し、前記第1の分岐(1)は第1のインダクタンスL1及び第1の臨界電流Ic1を有し、前記第2の分岐(2)は第2のインダクタンスL2及び第2の臨界電流Ic2を有し
、前記第1の分岐(1)の前記第1のインダクタンスL1が前記第2の分岐(2)の前記第2のインダクタンスL2よりも低
い、という少なくとも1つの超伝導サブ回路(4;4’)と、
○ 前記回路を電源(12、12’)に接続するための電流リード(3;3’)と、
を用いる方法であって、
前記方法は:
・前記回路の、一方の入口接続領域(6a)及び一方の出口接続領域(6b)を、前記電流リード(3;3’)を介して前記電源(12)に電気的に接続するステップと、
・以下のステップ:
(a)前記2つの分岐(1,2)のうちの一方を通過する第1の部分電流がその分岐の前記臨界電流に達するまで前記供給電流Iinを増大させるステップ
(b)前記供給電流Iinを、他方の分岐に入る第2の部分電流をもたらすΔaまで更に増大させるステップ
であって、Δaは、前記電流供給によって前記回路に供給される電流である、ステップ
(c)前記供給電流Iinを0Aまで減少させて、前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)内に残留回路電流Icircuitをもたらすステップ
を用いて前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)に供給電流Iinを供給することによって、前記超伝導回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)内の初期電流I0(I0≧0)を変更するステップと、
を含む方法において、
前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)を充電するために(Icircuit>I0)、ステップ(b)において、前記供給電流IinがΔaまで増大される、ここで:
Δa/Ic1>0
h*k<1の場合:(k+1)<Δa/Ic1≦(h+1)/h
h*k>1の場合:(k+1)/(h*k)<Δa/Ic1≦(h+1)/h
ただし、0<k=L1/L2<1、かつh=Ic1/Ic2>0、かつh*k≠1、である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
超伝導スイッチのない超伝導閉回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)
を充電して少なくとも部分的に放電するか、又は超伝導スイッチのない超伝導閉回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’)を充電して超伝導閉回路の前記電流を反転させるための方法であって、
○ 閉じた超伝導経路を伴う少なくとも1つの超伝導サブ回路(4;4’)であって、前記サブ回路(4;4’)に電流を供給するための入口接続領域(6a)と、前記サブ回路(4;4’)から電流を供給するための出口接続領域(6b)とを備え、前記接続領域(6a,6b)は、前記対応するサブ回路(4;4’)を第1の分岐(1)と少なくとも第2の分岐(2)とに分割し、前記第1の分岐(1)は第1のインダクタンスL1及び第1の臨界電流Ic1を有し、前記第2の分岐(2)は第2のインダクタンスL2及び第2の臨界電流Ic2を有し
、前記第1の分岐(1)の前記第1のインダクタンスL1が前記第2の分岐(2)の前記第2のインダクタンスL2よりも低
い、という少なくとも1つの超伝導サブ回路(4;4’)と、
○ 前記回路を電源(12、12’)に接続するための電流リード(3;3’)と、
を用いる方法であって、
前記方法は:
・前記回路の、一方の入口接続領域(6a)及び一方の出口接続領域(6b)を、前記電流リード(3;3’)を介して前記電源(12)に電気的に接続するステップと
、
・以下のステップ:
(
a)2つの分岐のうちの一方(1,2)を通過する第1の部分電流がその分岐の臨界電流に達するまで前記供給電流Iinを増大させるステップ
(
b)前記供給電流Iinを、他方の分岐に入る第2の部分電流をもたらすΔaまで更に増大させるステップ
(
c)前記供給電流Iinを0Aまで減少させて、前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)内に残留回路電流Icircuitをもたらすステップ
を用いて
、前記超伝導スイッチのない超伝導閉回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)を充電するために、前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)に供給電流Iinを供給することによって、前記超伝導回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)内の初期電流I0(I0≧0)を変更するステップ
であって、Δaは、第1の充電段階において、前記電流供給によって前記回路に供給される電流である、ステップと、
を含む
、という方法において、
後続の充電段階中において、前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)を少なくとも部分的に放電するために、又は前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)を循環する前記電流の極性を反転させるために、前記供給電流Iinは、ステップ(b)におけるΔaの極性とは反対の極性でΔbまで増大され
、Δbは、前記後続の充電段階中に前記電流供給によって前記回路に供給される電流であり、
このとき:
Δb/Ic1>0
h*k<1の場合:2*(k+1)-Δa/Ic1<Δb/Ic1≦(h+1)/h
h*k>1の場合:2*(k+1)/(h*k)-Δa/Ic1<Δb/Ic1≦(h+1)/h
ここで、k=L1/L2、h=Ic1/Ic2である、
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
前記回路(10’’’’)は、前記第1の分岐(1)を共有する少なくとも2つのサブ回路(4)を備え、ここで前記回路電流Icircuitは、前記2つのサブ回路(4)に前記電流を古典的に分割することによって前記2つ以上のサブ回路(4)間で共有されている、又は、前記2つ以上のサブ回路(4)の取り得る状態ψ
1、ψ
2の重ね合わせによって量的に、前記2つ以上のサブ回路(4)間で共有されており、ここで、
【数13】
【数14】
であり、
それにより、システム状態
【数15】
がもたらされ、a及びbは前記2つのサブ回路(4)の幾何学的及び物理的特性に依存するものであって、
前記回路(10’’’’)を放電するために、前記供給電流を増大させる前に、以下が行われる:
・調査中の前記サブ回路(4)である前記サブ回路(4)のうちの1つの前記第2の分岐(2)に、追加のリード(9)を介してプローブ電流Iprobeが一時的に供給される、ここで、Iprobeは、調査中の前記サブ回路の前記臨界電流よりも小さい;
・前記追加のリード(9)間の電圧は、前記プローブ電流Iprobeの供給中に測定される;
・電圧が0に等しくないことが検出される場合に、調査中の前記サブ回路の初期電流I0(古典的に)又は状態(量子力学的に)を決定して、それによってシステム全体の状態を決定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記超伝導回路(10’’’)と共に極低温環境(CRYO)に配置された内部インダクタ(13)と、好ましくは前記極低温環境(CRYO)の外側に配置された更なるインダクタ(14)と、を備える電流電源(12)を使用して、前記供給電流は前記回路(10’’’)に供給される、ここで、前記電流リード(3)は前記内部インダクタ(13)に電気的に接続され、電流が前記更なるインダクタ(14)から前記内部インダクタ(13)に誘導され、前記電流リード(3)を介して前記超伝導回路(10’’’)に供給される
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)に供給される前記供給電流Iinは、ステップ電流ランプ及び/又は電流対時間ランプ及び/又は高周波パルス及び/又は波パケット/電磁波のうちの少なくとも1つを使用することによって変更される
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記供給電流Iinを供給する前に、前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)の少なくとも1つのサブ回路(4;4’)、好ましくは前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)全体が、前記臨界電流Ic1、Ic2を低減するために予熱される
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法で使用するための超伝導スイッチのない超伝導閉回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)であって、前記回路は:
○ 超伝導経路を有する少なくとも1つの超伝導サブ回路(4;4’)と、
○ 前記サブ回路(4;4’)に電流を供給するための入口接続領域(6a)と、前記サブ回路(4;4’)から電流を供給するための出口接続領域(6b)とを備える少なくとも1つのサブ回路(4;4’)であって、前記接続領域(6a,6b)は、前記対応するサブ回路(4;4’)を第1の分岐(1)と少なくとも第2の分岐(2)とに分割し、前記第1の分岐(1)は第1のインダクタンスL1及び第1の臨界電流Ic1を有し、前記第2の分岐は第2のインダクタンスL2を有する、少なくとも1つのサブ回路(4;4’)と、
○ 前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)を電源(12、12’)に接続するための電流リード(3、3’)と、
を備え、
前記接続領域(6a,6b)の位置及び/又は前記分岐(1,2)の幾何学的形状及び/又は前記分岐(1,2)の断面は、前記第1の分岐(1)の前記第1のインダクタンスL1が前記第2の分岐(2)の前記第2のインダクタンスL2よりも低くなるように選択され
、
前記回路(10’;10’’;10’’’)が2つ以上のサブ回路(4;4’)を備え、1つの前記サブ回路(4;4’)の前記出口接続領域(6b)が他方の前記サブ回路(4;4’)の前記入口接続(6a)領域に接続され、前記回路(10’;10’’;10’’’)の1つの入口接続領域(6a)及び1つの出口接続領域(ab)が前記電流リード(3)に接続される、
という超伝導閉回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)において、
前記サブ回路の前記臨界電流及び/又は前記サブ回路の互いに対する距離が軸方向及び/又は径方向で変化することを特徴とする、超伝導スイッチのない超伝導閉回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)。
【請求項8】
前記第2の分岐(2)は、前記第1の臨界電流Ic1に等しい第2の臨界電流Ic2を有することを特徴とする、請求項7に記載の超伝導回路(10;10’;10’’;10’’’)。
【請求項9】
前記電流リード(3)の前記位置及び/又は前記分岐(1,2)の前記幾何学的形状は、前記サブ回路(4)のうちの少なくとも1つの前記第1の分岐(1)の前記経路であって、それぞれの前記サブ回路(4)の前記入口接続領域(6a)から前記出口接続領域(6b)まで延びる前記経路が、少なくとも1つの他のサブ回路(4)の前記第1の分岐(1)の前記経路とは反対向きに、少なくとも部分的に延びるように選択されることを特徴とする、請求項
7又は8に記載の超伝導回路(10)。
【請求項10】
幾つかのサブ回路(4;4’)を入れ子にするか又は積み重ねて、サブ回路アセンブリ(5;5’)を形成することを特徴とする、請求項
7から9のいずれか一項に記載の超伝導回路(10;10’;10’’;10’’’)。
【請求項11】
幾つかのサブ回路アセンブリ(5;5’)が設けられ、前記サブ回路アセンブリは、入れ子状にされ、オフセットされ、又は並んで配置されていることを特徴とする、請求項
10に記載の超伝導回路(10’;10’’;10’’’)。
【請求項12】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法で使用するための超伝導スイッチのない超伝導閉回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)であって、前記回路は:
○ 超伝導経路を有する少なくとも1つの超伝導サブ回路(4;4’)と、
○ 前記サブ回路(4;4’)に電流を供給するための入口接続領域(6a)と、前記サブ回路(4;4’)から電流を供給するための出口接続領域(6b)とを備える少なくとも1つのサブ回路(4;4’)であって、前記接続領域(6a,6b)は、前記対応するサブ回路(4;4’)を第1の分岐(1)と少なくとも第2の分岐(2)とに分割し、前記第1の分岐(1)は第1のインダクタンスL1及び第1の臨界電流Ic1を有し、前記第2の分岐は第2のインダクタンスL2を有する、少なくとも1つのサブ回路(4;4’)と、
○ 前記回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)を電源(12、12’)に接続するための電流リード(3、3’)と、
を備え、
前記接続領域(6a,6b)の位置及び/又は前記分岐(1,2)の幾何学的形状及び/又は前記分岐(1,2)の断面は、前記第1の分岐(1)の前記第1のインダクタンスL1が前記第2の分岐(2)の前記第2のインダクタンスL2よりも低くなるように選択される、
という超伝導閉回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)において、
前記回路(10’’’’)が2つ以上のサブ回路(4)を備え、少なくとも2つのサブ回路(4)がそれらの第1の分岐(1)を共有しており、それにより
、初期電流I0は、前記2つのサブ回路(4)に前記初期電流I0を古典的に分割することによって前記2つのサブ回路(4)間で共有されている、又は、前記2つのサブ回路(4)の前記取り得る状態ψ
1、ψ
2の重ね合わせによって量子力学的に前記2つのサブ回路(4)間で共有されており、ここで、
【数16】
【数17】
であり、それにより、システム状態
【数18】
がもたらされ、a及びbは、前記2つのサブ回路(4)の前記幾何学的及び物理的特性に依存する
ことを特徴とする
、超伝導スイッチのない超伝導閉回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)。
【請求項13】
前記第2の分岐(2)は、前記第1の臨界電流Ic1に等しい第2の臨界電流Ic2を有することを特徴とする、請求項12に記載の超伝導回路(10;10’;10’’;10’’’)。
【請求項14】
特には、前記それぞれの分岐内の電流の流れをチェックするため、又は、制御された方法で前記回路(10’’’’)を充電又は放電するために、追加の電流リード(9)が前記分岐(1,2)の少なくとも一方に接続されることを特徴とする、
請求項12から14のいずれか一項に記載の超伝導回路(10’’’’)。
【請求項15】
前記サブ回路(4’)が管状であることを特徴とする、請求項7から
14のいずれか一項に記載の超伝導回路(10、10’’’)。
【請求項16】
サブ回路アセンブリ(5;5’)の前記サブ回路(4;4’)、特に回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)全体の前記サブ回路(4;4’)は、特に超伝導層又は超伝導バルク材料から作られた超伝導材料の単一部品であり、前記サブ回路(4;4’)は、それらの接続領域を除いて互いに超伝導的に絶縁されていることを特徴とする、請求項
10から15のいずれか一項に記載の超伝導回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)。
【請求項17】
特に磁気共鳴用途に使用するための、請求項7から
16のいずれか一項に記載の少なくとも1つの超伝導回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)を備える超伝導磁石。
【請求項18】
請求項7から
16のいずれか一項に記載の超伝導回路(10;10’;10’’;10’’’;10’’’’)を製造するための方法であって、
回路キャリア(8;8’)を用意するステップと、
前記回路キャリア(8;8’)上に超伝導経路を作成するステップであって、前記経路が少なくとも1つの超伝導サブ回路(4;4’)を形成する、ステップと、
前記超伝導サブ回路(4;4’)が異なるインダクタンスL1、L2を有する分岐(1,2)に少なくとも分割されるように、前記サブ回路(4;4’)に接続領域(6a,6b)を設けるステップであって、各サブ回路(4;4’)の前記接続領域(6a,6b)が、他のサブ回路(4;4’)の接続領域(6a,6b)に又は電流リード(3;3’)に電気的に接続される、ステップと、
を含む方法。
【請求項19】
前記経路は、前記回路キャリア(8;8’)の表面上に超伝導材料を直接引き込むことによって作成されることを特徴とする、請求項
18に記載の方法。
【国際調査報告】