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特表2024-511848引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼と溶融亜鉛めっき二相鋼及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼と溶融亜鉛めっき二相鋼及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20240308BHJP
   C22C 38/38 20060101ALI20240308BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C22C38/00 301T
C22C38/38
C21D9/46 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560361
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 CN2022084537
(87)【国際公開番号】W WO2022206915
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】202110360135.9
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110360561.2
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110360130.6
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110360526.0
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】302022474
【氏名又は名称】宝山鋼鉄股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 俊
(72)【発明者】
【氏名】王 健
(72)【発明者】
【氏名】王 駿 飛
(72)【発明者】
【氏名】王 超
(72)【発明者】
【氏名】張 宝 平
(72)【発明者】
【氏名】劉 華 飛
(72)【発明者】
【氏名】戴 競 舸
(72)【発明者】
【氏名】劉 益 民
(72)【発明者】
【氏名】路 鳳 智
(72)【発明者】
【氏名】楊 洪 林
【テーマコード(参考)】
4K037
【Fターム(参考)】
4K037EA01
4K037EA05
4K037EA06
4K037EA11
4K037EA15
4K037EA17
4K037EA19
4K037EA23
4K037EA25
4K037EA27
4K037EA31
4K037EA32
4K037EB05
4K037EB11
4K037FC07
4K037FE02
4K037FE03
4K037FG01
4K037FJ01
4K037FJ05
4K037FK02
4K037FK03
4K037FK08
4K037FL01
4K037FL05
4K037GA05
4K037JA07
(57)【要約】
引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼及びその急速熱処理製造方法を提供し、当該鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.04~0.12%、Si:0.1~0.5%、Mn:1.0~2.0%、P≦0.02%、S≦0.015%、Al:0.02~0.06%であり、さらにCr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、かつCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物である。その製造方法は、製錬、鋳造、熱間圧延、冷間圧延と急速熱処理工程を含む。本発明は急速熱処理過程における急速加熱、短時間保温と急冷過程を制御することにより、変形組織の回復、再結晶及びオーステナイト変態過程を変化させ、核形成速度を増加させ、結晶粒の成長時間を短縮し、結晶粒を微細化し、材料の強度とn値を高め、材料性能区間の範囲を拡張する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学成分は、質量百分率で、C:0.04~0.12%、Si:0.1~0.5%、Mn:1.0~2.0%、P≦0.02%、S≦0.015%、Al:0.02~0.06%であり、さらにCr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、かつCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物であることを特徴とする引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼;
好ましくは、前記の高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼では、Cの含有量は0.045~0.105%、0.04~0.10%または0.05~1.2%である;好ましくは、前記の高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼では、Cの含有量は0.06~0.08%である;好ましくは、前記の高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼では、Cの含有量は0.065~0.085%である;好ましくは、前記の高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼では、Cの含有量は0.07~0.1%である;
好ましくは、前記の高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼では、Siの含有量は0.1~0.4%または0.1~0.3%、好ましくは、0.15~0.25%である;
好ましくは、前記の高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼では、Mnの含有量は1.0~1.6%、1.0~1.5%または1.2~2.0%である;好ましくは、Mnの含有量1.2~1.4%、1.2~1.35%または1.5~1.8%である;
好ましくは、前記の高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼では、Cr+Mo+Ti+Nb+V≦0.3%である;
好ましくは、前記の引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.04~0.105%、Si:0.1~0.4%、Mn:1.0~1.6%、P≦0.02%、S≦0.015%、Al:0.02~0.06%であり、さらにCr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、かつCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物である。
【請求項2】
前記の二相鋼または溶融亜鉛めっき二相鋼の降伏強度は340~560MPa、引張強度は620~880MPa、伸び率は19~30.5%、強伸度積は15.5~20.5GPa%、ひずみ硬化指数n90値は0.20超である;及び/又は
前記の二相鋼または溶融亜鉛めっき二相鋼の微細組織は、平均結晶粒サイズは2~10μmであるフェライトとマルテンサイト二相組織である
ことを特徴とする請求項1に記載の引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼。
【請求項3】
前記の引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼は、以下のプロセスで得られる:
5)製錬、鋳造
上記の化学組成に従って、スラブを製錬・鋳造する;
6)熱間圧延、巻取り
熱間圧延の圧延終了温度≧Ar3;巻取り温度550~680℃;
7)冷間圧延
冷間圧延の圧下率は、40~85%である;
8)急速熱処理
冷間圧延された鋼板を、750~845℃まで急速加熱し、前記の急速加熱には、一段式または二段式を採用する;一段式の急速加熱を採用する際に、加熱速度は50~500℃/sである;二段式の急速加熱を採用する際に、一段目では、15~500℃/sの加熱速度で室温から550~650℃まで加熱し、二段目では、30~500℃/s(例えば50~500℃/s)の加熱速度で550~650℃から750~845℃まで加熱する;その後、均熱を行い、均熱温度は750~845℃であり、均熱時間は、10~60sである;
均熱終了後、5~15℃/sの冷却速度で、670~770℃まで徐冷し、その後、50~200℃/sの冷却速度で、670~770℃から室温まで急冷する;
または、670~770℃から50~200℃/sの冷却速度で230~280℃まで急冷し、当該温度区間では、過時効処理を行い、過時効処理時間が、200s以下であり、最後に、30~50℃/sの冷却速度で室温まで冷却する
ことを特徴とする請求項1-2のいずれか一つに記載の引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼。
【請求項4】
前記のプロセスは、以下の一つ又は複数の特徴を有する:
ステップ4)に記載の急速熱処理の全過程時間は、41~300s、好ましくは、41~296sである;
ステップ2)では、前記の巻取り温度は、580~650℃である;
ステップ3)では、前記の冷間圧延の圧下率は、60~80%である;
ステップ4)では、前記の急速加熱には、一段式加熱を採用する際に、加熱速度は50~300℃/sである;
ステップ4)では、前記の急速加熱には、二段式加熱を採用し、一段目では、15~300℃/sの加熱速度で室温から550~650℃まで加熱し、二段目では、50~300℃/sの加熱速度で550~650℃から750~845℃まで加熱する;好ましくは、一段目では、50~500℃/sの加熱速度で室温から550~650℃まで加熱し、二段目では、80~300℃/sの加熱速度で550~650℃から750~845℃まで加熱する;
ステップ4)では、前記の均熱時間は、10~40sである;
ステップ4)では、前記の鋼板の急冷速度は、50~150℃/sである;及び
過時効処理時間は、20~200sである
ことを特徴とする請求項3に記載の引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼。
【請求項5】
前記の低炭素低合金高成形性二相鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.04~0.10%、Si:0.1~0.3%、Mn:1.0~1.6%、P≦0.02%、S≦0.015%、Al:0.02~0.06%であり、さらにCr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、かつCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物であることを特徴とする請求項1-4のいずれか一つに記載の引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼;
好ましくは、当該二相鋼のC含有量は0.06~0.08%である;
好ましくは、当該二相鋼のSi含有量は0.15~0.25%である;
好ましくは、当該二相鋼のMn含有量は1.2%~1.4%である;
好ましくは、当該二相鋼の微細組織は、平均結晶粒サイズは4~10μmであるフェライトとマルテンサイト二相組織である;
好ましくは、当該二相鋼の降伏強度は350~410MPa、引張強度は620~710MPa、伸び率は24.0~30.5%、強伸度積は17~20.5GPa%、ひずみ硬化指数n90値は0.20超である;好ましくは、当該二相鋼の降伏強度は350~405MPa、引張強度は624~706MPa、伸び率は24.4~30.4%、強伸度積は17~20.1GPa%、ひずみ硬化指数n90値は0.20超である;
好ましくは、当該二相鋼の製造過程では、ステップ4)に記載の急速熱処理の全過程時間は、41~300sである。
【請求項6】
前記の低炭素低合金高成形性二相鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.05~0.12%、Si:0.01~0.5%、Mn:1.2~2.0%、P≦0.015%、S≦0.003%、Al:0.02~0.055%であり、さらにCr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、かつCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物であることを特徴とする請求項1-4のいずれか一つに記載の引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼;
好ましくは、当該二相鋼の引張強度≧780MPaである;
好ましくは、当該二相鋼のC含有量は0.07~0.1%である;
好ましくは、当該二相鋼のSi含有量は0.1~0.4%である;
好ましくは、当該二相鋼のMn含有量は1.5%~1.8%である;
好ましくは、当該二相鋼の微細組織は、平均結晶粒サイズは2~8μmであるフェライトとマルテンサイト二相組織である;
好ましくは、当該二相鋼の降伏強度は400~540MPa、引張強度は780~880MPa、伸び率は19~24.5%、強伸度積は16.0~19.5GPa%、ひずみ硬化指数n90値は0.20超である;好ましくは、当該二相鋼の降伏強度は400~533MPa、引張強度は781~878MPa、伸び率は19.5~24.1%、強伸度積は16.3~19.3GPa%、ひずみ硬化指数n90値は0.20超である;
好ましくは、当該二相鋼の製造過程では、ステップ4)に記載の急速熱処理の全過程時間は、41~296sである。
【請求項7】
前記の低炭素低合金高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.045~0.12%、Si:0.1~0.5%、Mn:1.0~2.0%、P≦0.02%、S≦0.006%、Al:0.02~0.055%であり、さらにCr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、かつCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物であることを特徴とする請求項1-4のいずれか一つに記載の引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼。
【請求項8】
前記の均熱ステップ終了かつ670~770℃まで徐冷した後、50~200℃/sの冷却速度で460~470℃まで急冷し、そして亜鉛ポットに浸入しれ溶融亜鉛めっきを行い、前記の溶融亜鉛めっき二相鋼を得る;好ましくは、溶融亜鉛めっき後、30~150℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、溶融純亜鉛めっきGI製品を得ることを特徴とする請求項7に記載の引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼。一部の実施の形態において、溶融亜鉛めっき後、30~200℃/sの加熱速度で480~550℃まで加熱して合金化処理を行い、合金化処理時間は10~20sである;合金化処理後、30~250℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、合金化された溶融亜鉛めっきGA製品を得る。
【請求項9】
前記の溶融亜鉛めっき二相鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.045~0.105%、Si:0.1~0.4%、Mn:1.0~1.5%、P≦0.02%、S≦0.006%、Al:0.02~0.055%であり、さらにCr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、かつCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.3%、残部はFeおよび不可避不純物であることを特徴とする請求項1-4と7~8のいずれか一つに記載の引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼;
好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼では、C含有量は0.065~0.085%である;
好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼では、Si含有量は0.15~0.25%である;
好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼では、Mn含有量は1.2%~1.35%である;
好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼では、Cr+Mo+Ti+Nb+V≦0.2%である;
好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼の降伏強度は340~410MPa、引張強度は620~710MPa、伸び率は22~30.5%、強伸度積15.5~20.0GPa%、ひずみ硬化指数n90値は0.21超である;より好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼の降伏強度は347~405MPa、引張強度は624~709MPa、伸び率は22.2~30.3%、強伸度積15.7~19.6GPa%、ひずみ硬化指数n90値は0.21超である。
【請求項10】
前記の溶融亜鉛めっき二相鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.05~0.12%、Si:0.01~0.5%、Mn:1.2~2.0%、P≦0.015%、S≦0.003%、Al:0.02~0.055%であり、さらにCr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、かつCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物であることを特徴とする請求項1-4と7~8のいずれか一つに記載の引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼;
好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼の降伏強度≧780MPaである;
好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼では、C含有量は0.07~0.1%である;
好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼では、Si含有量は0.1~0.4%である;
好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼では、Mn含有量は1.5%~1.8%である;
好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼の降伏強度は400~560MPa、引張強度は790~870MPa、伸び率は19.0~25.0%、強伸度積16.0~20.0GPa%、ひずみ硬化指数n90値は0.20超である;より好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼の降伏強度は400~552MPa、引張強度は798~862MPa、伸び率は19.5~24.6%、強伸度積16.3~19.9GPa%、ひずみ硬化指数n90値は0.20超である。
【請求項11】
前記の高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼は、以下のプロセスで得られる:
a)製錬・鋳造
上記の化学組成に従って、スラブを製錬・鋳造する;
b)熱間圧延、巻取り
熱間圧延の圧延終了温度≧Ar3;巻取り温度550~680℃;
c)冷間圧延
冷間圧延の圧下率は、40~85%である;
d)急速熱処理、溶融亜鉛めっき
冷間圧延された鋼板を、750~845℃まで急速加熱し、前記の急速加熱には、一段式または二段式を採用する;
一段式の急速加熱を採用する際に、加熱速度は50~500℃/sである;
二段式の急速加熱を採用する際に、一段目では、15~500℃/sの加熱速度で室温から550~650℃まで加熱し、二段目では、30~500℃/s(例えば50~500℃/s)の加熱速度で550~650℃から750~845℃まで加熱する;その後、均熱を行い、均熱温度:750~845℃、均熱時間:10~60s;
均熱終了後、5~15℃/sの冷却速度で、670~770℃まで徐冷し、その後、50~200℃/s(例えば50~150℃/s)の冷却速度で460~470℃まで急冷し、亜鉛ポットに浸入し、溶融亜鉛めっきを行う;
溶融亜鉛めっき後、30~150℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、溶融純亜鉛めっきGI製品を得る;
または、溶融亜鉛めっき後、30~200℃/sの加熱速度で480~550℃まで加熱して合金化処理を行い、合金化処理時間は10~20sである;合金化処理後、30~250℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、合金化された溶融亜鉛めっきGA製品を得る
ことを特徴とする請求項9または10に記載の引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼。
【請求項12】
前記のプロセスは、以下の一つ又は複数の特徴を有する:
ステップd)に記載の急速熱処理、溶融亜鉛めっきの全過程時間は、30~142sである;
ステップb)では、前記の巻取り温度は、580~650℃である;
ステップc)では、前記の冷間圧延の圧下率は、60~80%である;
ステップd)では、前記の急速加熱には、一段式加熱を採用する際に、加熱速度は50~300℃/sである;
ステップd)では、前記の急速加熱には、二段式加熱を採用し、一段目では、15~300℃/sの加熱速度で室温から550~650℃まで加熱し、二段目では、50~300℃/sの加熱速度で550~650℃から750~845℃まで加熱する;好ましくは、一段目では、30~500℃/sの加熱速度で室温から550~650℃まで加熱し、二段目では、80~300℃/sの加熱速度で550~650℃から750~845℃まで加熱する;
ことを特徴とする請求項11に記載の引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼。
【請求項13】
以下のステップを含むことを特徴とする請求項1-6のいずれか一つに記載の引張強度≧590MPa級の低炭素低合金高成形性二相鋼の製造方法:
1)製錬・鋳造
上記の化学組成に従って、スラブを製錬・鋳造する;
2)熱間圧延、巻取り
熱間圧延の圧延終了温度≧Ar3;巻取り温度550~680℃;
3)冷間圧延
冷間圧延圧下率40~85%で、圧延硬質帯鋼または鋼板を得る;
4)急速熱処理
a)急速加熱
冷間圧延された帯鋼又は鋼板を、750~845℃まで急速加熱し、前記の急速加熱には、一段式または二段式を採用する;一段式の急速加熱を採用する際に、加熱速度は50~500℃/sである;二段式の急速加熱を採用する際に、一段目では、15~500℃/sの加熱速度で室温から550~650℃まで加熱し、二段目では、30~500℃/s(例えば50~500℃/s)の加熱速度で550~650℃から770750~845℃まで加熱する;
b)均熱
帯鋼または鋼板を、オーステナイトとフェライトの二相領域目標温度750~845℃で均熱し、均熱時間10~60sである;
c)冷却
均熱された帯鋼または鋼板を、5~15℃/sの冷却速度で、670~770℃まで徐冷する;その後、670~770℃から50~200℃/sの冷却速度で室温まで急冷する;
または、670~770℃から50~200℃/sの冷却速度で230~280℃まで急冷し、過時効処理を行い、過時効処理時間が、200s以下である;過時効処理後、30~50℃/sの冷却速度で室温まで冷却する。
【請求項14】
以下のステップを含むことを特徴とする請求項1~2と7~10のいずれか一つに記載の引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼の急速熱処理製造方法:
A)製錬・鋳造
上記の化学組成に従って、スラブを製錬・鋳造する;
B)熱間圧延、巻取り
熱間圧延の圧延終了温度≧Ar3;巻取り温度550~680℃;
C)冷間圧延
冷間圧延圧下率40~85%で冷間圧延後、圧延硬質帯鋼または鋼板を得る;
D)急速熱処理、溶融亜鉛めっき
a)急速加熱
冷間圧延された帯鋼または鋼板を、室温から750~845℃のオーステナイトとフェライトの二相領域目標温度まで急速加熱し、前記の急速加熱は、一段式または二段式を採用する;
一段式の急速加熱を採用する際に、加熱速度は50~500℃/sである;
二段式の急速加熱を採用する際に、一段目では、15~500℃/sの加熱速度で室温から550~650℃まで加熱し、二段目では、30~500℃/s(例えば50~500℃/s)の加熱速度で550~650℃から750~845℃まで加熱する;
b)均熱
オーステナイトとフェライトの二相領域目標温度750~845℃で均熱し、均熱時間10~60sである;
c)冷却、溶融亜鉛めっき
帯鋼または鋼板の均熱を終了した後に、5~15℃/sの冷却速度で670~770℃まで徐冷する;その後、50~150℃/sの冷却速度で460~470℃まで急冷し、帯鋼または鋼板を、亜鉛ポットに浸入して溶融亜鉛めっきを行う;
d)帯鋼または鋼板の溶融亜鉛めっき後、50~150℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、溶融純亜鉛めっきGI製品を得る;
あるいは、
帯鋼または鋼板の溶融亜鉛めっき後、30~200℃/sの加熱速度で480~550℃まで加熱して合金化処理を行い、合金化処理時間は10~20sである;合金化処理後、30~250℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、合金化された溶融亜鉛めっきGA製品を得る。
【請求項15】
上記の方法は、以下の一つ又は複数の特徴を有することを特徴とする請求項13または14に記載の方法:
前記のステップ4)では、前記の急速熱処理の全過程時間は、41~300s、例えば、41~296sである;前記のステップd)では、前記の急速熱処理、溶融亜鉛めっきの全過程時間は、30~142sである;
前記のステップ2)またはステップB)では、前記の巻取り温度は、580~650℃である;
前記のステップ3)またはステップC)では、前記の冷間圧延の圧下率は、60~80%である;
前記のステップ4)またはステップD)では、前記の急速加熱には、一段式加熱を採用する際に、加熱速度は50~300℃/sである;
前記のステップ4)またはステップD)では、前記の急速加熱には、二段式加熱を採用し、一段目では、15~300℃/sの加熱速度で室温から550~650℃まで加熱し、二段目では、50~300℃/sの加熱速度で550~650℃から750~845℃まで加熱する;好ましくは、一段目では、50~500℃/sの加熱速度で室温から550~650℃まで加熱し、二段目では、80~300℃/sの加熱速度で550~650℃から750~845℃まで加熱する;
前記のステップ4)またはステップD)では、前記の急速加熱の最終温度は、770~830℃または790~830℃である;
前記のステップ4)またはステップD)では、前記の帯鋼または鋼板の急冷速度は、50~150℃/sである;
前記のステップ4)またはステップD)では、均熱過程では、帯鋼または鋼板を、前記オーステナイトとフェライトの二相領域目標温度まで加熱し後、温度を保持して均熱を行う;
前記のステップ4)またはステップD)では、均熱過程では、均熱時間帯には、帯鋼または鋼板を、小幅昇温または小幅降温を行い、昇温後の温度は845℃を超えず、降温後の温度は750℃を下回らない;
前記の均熱時間は、10~40sである;
過時効処理時間は、20~200sである;
前記のステップD)では、前記の帯鋼または鋼板を合金化処理した後、30~200℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、合金化された溶融亜鉛めっきGA製品を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の急速熱処理技術分野に属し、特に、引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼と高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼及びその急速熱処理製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネやマテリアルサービスの安全性に対する人々の意識が徐々に向上するにつれ、多くの自動車メーカーが、自動車用材料として高強度鋼板を選択している;自動車産業では、高強度鋼板を使用して鋼板の厚さを薄肉化しつつ、車の耐デント性、耐久強度、大きな変形衝撃靱性、衝突安全性を向上させ、したがって、自動車用鋼板は、必然的に、高強度、高靱性、容易な成形性の方向に発展する。
【0003】
自動車用高強度鋼の中で、二相鋼は、最も広く使用され、最も優れた用途の見通しを持つ。低炭素低合金二相鋼は、降伏比が小さく、初期加工硬化率が高く、強度と可塑性の良好なシナジーという特徴があり、高強度と良好な成形性を備えた自動車構造用プレス用鋼として広く使用される。
【0004】
従来の二相鋼は、冷間圧延された低炭素鋼または低合金高強度鋼を、臨界域で均熱焼鈍し、その後急冷処理または熱間圧延・制御圧延・制御冷却によって得られ、その微細構造は、主にフェライトとマルテンサイトである。二相鋼は、「複合材料」の原理を利用し、鋼中の各相(フェライトとマルテンサイト)の利点をできるだけ発揮させるとともに、ある相の欠点を、他の相の存在によって軽減又は解消させる。
【0005】
二相鋼の機械的特性は、主に、以下の三つの方面に依存する:
一、マトリックス相の結晶粒の大きさ、合金元素の分布;
二、第二相の大きさ、形状、分布と体積分率;
三、マトリックスと第二相の両者が結合する特徴。
【0006】
そのため、どのように低コスト、高性能で良好な強度・可塑性シナジーを持つ二相鋼製品を獲得するかは、各鉄鋼企業の追求する目標となり、鉄鋼企業と自動車ユーザーの広範な関心を集めている。
【0007】
冷間圧延二相鋼は、臨界域温度均熱後の急冷処理プロセスにより得られ、当該プロセスは、主に、三つのステップを含む:
ステップ1:帯鋼を、フェライトとオーステナイトの二相臨界域温度まで加熱し、均熱保温する;
ステップ2:サンプルを、臨界冷却速度より高い冷却速度でM~Mの間のある温度まで冷却し、一定の量のマルテンサイトとフェライトの二相組織を得る;
ステップ3:帯鋼を保温するか、又はM以下の温度まで加熱して保温し、焼戻し処理を行い、硬質相マルテンサイトと軟質相フェライトの良好の組織シナジーを得、最終的に、マルテンサイトとフェライトの二相組織を得る。
【0008】
目前、従来の連続焼鈍方式で生産された590MPa級の冷間圧延二相鋼は、その加熱速度が遅く、その加熱時間と均熱時間がどちらも相対的に長いので、連続焼鈍周期全体が5-8minかかる;その加熱過程中の再結晶及び変態過程は、それぞれに順番に行い、一般的にオーバラップしないので、そのフェライト再結晶粒及びオーステナイト結晶粒は、それぞれに核形成と十分生長し、最終的に、得られたフェライトとマルテンサイト二相結晶粒組織のサイズは、相対的に大きく、通常、10-20μm前後である。
【0009】
従来技術における二相鋼に対する主な制御手段は、合金元素を添加し、焼鈍プロセスにおける均熱温度、焼入れ及び焼戻し過程の温度及び時間を調整することにより、二相鋼の相組織比率及び分布を変化させ、相対的に最適化された製品性能を得ることである。
【0010】
中国特許出願CN10961805Aが、「590MPa級自動車軽量化冷間圧延二相鋼及びその生産方法」を開示し、当該発明の鋼の化学成分は、重量百分率で、C:0.06~0.08%、Si:0.05~0.10%、Mn:1.7~1.8%、P≦0.01%、S≦0.005%、Al:0.02~0.05%、Cr:0.20~0.30%である。それは、従来の連続焼鈍方式で得られた。二相鋼の機械的特性は、降伏強度374-406MPa、引張強度630-653MPa、伸び率24-26%である。この発明の鋼に含まれる比較的高い合金はコストを増加させるとともに、製造過程に困難をもたらし、材料溶接性能などの使用性能を低下させる。
【0011】
中国特許出願CN106011643Bが、「引張強度590MPa級冷間圧延二相鋼及び製造方法」を開示し、当該発明の鋼の化学成分は、重量百分率で、C:0.06~0.1%、Si:0.26~0.6%、Mn:1.2~1.6%、Cr:0.10~0.45%、Al:0.02~0.06%、P≦0.02%、S≦0.015%、N≦0.006%であり、残部は、Feと他の不可避不純物である。当該発明の方法には、従来の連続焼鈍方式を採用し、焼入れ性を保証するために、Mn元素の代わりに、少量のCr元素を添加した。当該発明の二相鋼の機械的特性は、降伏強度290-330MPa、引張強度600-650MPa、伸び率23-27%である。当該発明には、Mn含有量を低下するために、貴金属であるCr元素を添加したので、製造コストも製造の難度も増加し、しかも合金含有量が比較的に高いので、その焼鈍温度も高い。
【0012】
中国特許出願CN105543674Bが、「高局所成形性能冷間圧延超高強度二相鋼の製造方法」を開示し、当該発明の高強度二相鋼の化学成分は、重量百分率で、C:0.08~0.12%、Si:0.1~0.5%、Mn:1.5~2.5%、Al:0.015~0.05%であり、残部は、Feと他の不可避不純物である。当該化学成分により原料を選択配合し、ビレットに溶融する;ビレットを、1150~1250℃で1.5~2時間加熱した後、熱間圧延を行い、熱間圧延の圧延開始温度は1080~1150℃で、圧延終了温度は880~930℃である;圧延後、50~200℃/sの冷却速度で450~620℃まで冷却し、巻取りを行い、ベイナイトを主な組織タイプとする熱間圧延鋼板を得た;熱間圧延鋼板に、冷間圧延を行い、その後、50~300℃/sの速度で740~820℃に加熱し、焼鈍を行い、保温時間30s~3min、2~6℃/sの冷却速度で620~680℃まで冷却し、その後、30~100℃/sの冷却速度で250~350℃まで冷却し、3~5min過時効処理し、フェライト+マルテンサイト二相組織の超高強度二相鋼を得た。当該超高強度二相鋼の降伏強度は650~680MPaであり、引張強度は1023~1100MPaであり、伸び率は12.3~13%であり、圧延方向に沿って180曲げても割れない。
【0013】
当該特許の最も主な特徴は、熱間圧延後の冷却条件の制御と連続焼鈍過程における急速加熱を結合し、即ち、熱間圧延後冷却プロセスを制御することで、帯状組織を除去し、組織の均一化を実現することである;後続の連続焼鈍過程中に、急速加熱を採用し、組織の均一性を保証した上、組織の微細化を実現した。当該特許技術が、急速加熱焼鈍を採用し、その前提は、熱間圧延後、ベイナイトを主要組織とする熱間圧延原材料を得ることであり、その目的は、主に組織の均一性を保証し、帯状組織による局所的な変形と不均一を回避することである。
【0014】
当該特許の欠点は、主に以下である:
第一に、ベイナイト組織を有する熱間圧延原材料を得る必要がある;当該熱間圧延原材料は、強度が高く、変形抵抗力が大きく、後続の酸洗いと冷間圧延の生産に大きな困難をもたらす;
第二に、急速加熱に対する理解は、加熱時間の短縮や、結晶粒の微細化に限られ、その加熱速度は、異なる温度段階にある材料組織構造の変化に応じて区分されておらず、代わりにすべて50-300℃/sの速度で加熱し、そして、急速加熱生産コストの高騰を招いた;
第三に、均熱時間は30s-3minである;均熱時間の増加は、必然的に部分的に急速加熱による結晶粒微細化効果を弱め、材料強度と靭性の向上に不利である;
第四に、当該方法には、3~5分間の過時効処理を行う必要があるが、これは、実際に急速熱処理DP鋼にとって時効時間が長すぎ、必要がない。また、均熱時間と過時効時間の増加は、どちらもエネルギー節約、機械設備投資と機械の敷地面積の低減に不利であり、さらに炉内での帯鋼の高速安定運転にも不利であり、厳密な意味での急速熱処理過程でもないことは明らかである。
【0015】
中国特許出願201711385126.5が、「780MPa級低炭素低合金TRIP鋼」を開示し、その化学成分は、質量百分率で、C:0.16-0.22%、Si:1.2-1.6%、Mn:1.6-2.2%であり、残部はFeおよび不可避不純物であり、それが、以下の急速熱処理プロセスで得た:帯鋼を、室温から790~830℃のオーステナイトとフェライト二相領域まで急速加熱し、加熱速度は40~300℃/sである;二相領域加熱目標温度区間の滞留時間は60~100sである;帯鋼を、二相領域温度から410~430℃まで急冷し、冷却速度は40~100℃/sであり、かつ当該温度区間に200~300s滞留した;帯鋼を410~430℃から室温まで急冷した。その特徴は、前記のTRIP鋼の金属組織は、ベイナイト、フェライト、オーステナイトの三相組織である;前記のTRIP鋼の平均結晶粒サイズは、明らかに微細化された;引張強度は950~1050MPaである;伸び率は21~24%である;強伸度積は、最大24GPa%に達することができる。
【0016】
当該特許の欠点は、主に以下である:
第一に、当該特許は、780MPa級低炭素低合金TRIP鋼製品及びそのプロセス技術を開示したが、当該TRIP鋼製品の引張強度は950~1050MPaであり、この強度は、780MPa級の製品の引張強度としては高すぎ、ユーザーの使用効果が良い訳が無いが、980MPa級の引張強度としてはまた低すぎて、ユーザーの強度要求を十分に満たすことができない;
第二に、当該特許は、一段式急速加熱を採用し、加熱温度区間全体で同一の急速加熱速度を採用し、異なる温度段階にある材料組織構造の変化に応じて、区別処理を行わず、代わりにすべて40~300℃/sの速度で急速加熱し、これは必然的に急速加熱過程の生産コストの高騰をもたらす;
第三に、当該特許の均熱時間は、60~100sに設定され、従来の連続焼鈍の均熱時間に近い;均熱時間の増加は、必然的に部分的に急速加熱による結晶粒微細化効果を弱め、材料強度と靭性の向上に非常に不利である;
第四に、当該特許は、200~300sのベイナイト等温処理時間を行わなければならず、これは、実際に急速熱処理製品にとって、等温処理時間が長すぎて、あるべき役割を果たすことができず、必要がない。また、均熱時間と等温処理時間の増加は、どちらもエネルギー節約、機械設備投資と機械の敷地面積の低減に不利であり、さらに炉内での帯鋼の高速安定運転にも不利であり、厳密な意味での急速熱処理過程でもないことは明らかである。
【0017】
中国特許出願CN108774681Aが、「高強度鋼の急速熱処理方法」を開示し、当該方法には、セラミックシート電気加熱装置を採用し、最大値が400℃/sに達する加熱速度を得られ、1000~1200℃まで加熱した後、送風機で吹付け冷却し、3000℃/sに近い最大の冷却速度で室温まで冷却する。当該発明方法において、セラミックシートの電気加熱を用いた熱処理装置の処理速度は、50cm/minである。当該発明にかかる鋼の特徴は、その炭素含有量が0.16~0.55%と高く、かつ、同時にSi、Mn、Cr、Moなどの合金元素を含む;当該方法は、主に鋼線、線材コイル又は5mm以下の鋼帯に適する。当該特許が、セラミックシート電気加熱による急速熱処理方法を述べた;当該発明の主な目的は、高強度鋼線や線材コイルなどの製品の熱処理効率が低く、エネルギーの浪費及び環境汚染の問題を解決することである;材料の組織性能に対する急速加熱の影響及び作用については言及していない;当該発明が、鋼種の番号と成分及び組織的な特点に関わらず、送風機による吹付け冷却の方式を採用した;ただし、最大冷却速度が3000℃/sに近いことは、高温セグメントでの瞬間冷却速度を指すべきで、周知のように吹付け冷却の平均冷却速度は、3000℃/sに達する訳がない;同時に、高温セグメントで高すぎる冷却速度を用いて幅薄帯鋼を生産すると、内部応力が大きすぎ、鋼板の板型不良などの問題を招き、幅薄鋼板の大規模な工業化連続熱処理生産には適用されない。
【0018】
中国特許出願CN106811698Bが、「組織の精密制御による高強度鋼板及びその製造方法」を開示し、当該高強度二相鋼の化学成分は、重量百分率で、C:0.08~0.40%、Si:0.35~3.5%、Mn:1.5~7.0%、P:≦0.02%、S:≦0.02%、Al:0.02~3.0%であり、さらに、Cr:0.50~1.5%、Mo:0.25~0.60%、Ni:0.5~2.5%、Cu:0.20~0.50%、B:0.001~0.005%、V:0.10~0.5%、Ti:0.02~0.20%、Nb:0.02~0.20%からの少なくとも一つを含み、残部は、Feと他の不可避不純物である。その機械的特性:引張強度Rが1000MPa超、伸び率A50mmが28%超である。当該発明には、成分C、Si、Mnの含有量はいずれも比較的に高く、従来の連続焼鈍生産ラインで無均熱焼鈍を行うことにより、均熱保温セグメントを除去する方式を用いて、異なる成分の鋼帯を、再結晶焼鈍する。具体的な焼鈍パラメータの範囲は、20℃/s以上で、800~930℃に急速加熱した後、すぐに40℃/s以上の冷却速度でM-M点に冷却し、その後、M~M点+100℃の温度に、30s~30min保温し、最後に室温まで冷却する。
【0019】
当該発明の主な特徴は、マルテンサイト強化相の形態と構造を制御することにより、細かい針状と短い棒状を有する微細マルテンサイト組織を得、再加熱により、C原子を残留オーステナイト中に拡散させ、最終的には比較的に安定した残留オーステナイトを得て、一定の変形能力を持たせ、それにより高強度鋼の可塑性と靭性を高めることである。
【0020】
この発明のいわゆる急速加熱とは、実際に加熱速度が低く、加熱速度は20~60℃/sであり、中程度の加熱速度に属し、冷却速度は40~100℃/sである。急速加熱、急冷及び均熱セグメントの省略に対する考慮は、高強度鋼の高温セグメントでの滞留時間を短縮し、鋼のオーステナイト化過程における結晶粒が微細で、組織と化学成分が完全に均一化されていないことを確保するためであり、そして、冷却後に大量の大サイズのラス状マルテンサイトが生成されないことを保証するとともに、一定量の膜状残留オーステナイト組織を得るためである。しかし、これにより、必然的に加熱温度の制御が難しくなり、組織構造と性能の変動も大きくなる。
【0021】
この方法は、依然として、従来の連続焼鈍ユニットによる加熱技術と冷却技術に基づいて、均熱セグメントを省略し(均熱時間を0まで短縮し)、合金含有量を増加し、焼入れ、焼戻し処理を行った後、最終的に、一定の強度と靭性のシナジーを備えた高強度鋼製品を獲得し、当該発明は、各強度レベルの鋼種番号に対して具体的に細分化研究開発していない。また、加熱速度は、中程度の加熱速度に属し、急速加熱ではなく、均熱時間がないため、本当の意味での急速熱処理方法と完全な焼鈍サイクルを体現できず、商業化応用の将来性がない。
【0022】
中国特許出願CN107794357Bと米国特許出願US2019/0153558A1が、「超急速加熱プロセスによる超高強度マルテンサイト冷間圧延鋼板を生産する方法」、当該高強度二相鋼の化学成分は、重量百分率で、C:0.10~0.30%、Mn:0.5~2.5%、Si:0.05~0.3%、Mo:0.05~0.3%、Ti:0.01~0.04%、Cr:0.10~0.3%、B:0.001~0.004%、P≦0.02%、S≦0.02%であり、残部は、Feと他の不可避不純物である。当該二相鋼の機械的特性:降伏強度Rp0.2が1100MPa超、引張強度R=1800-2300MPa、伸び率が最大12.3%、均一伸び率5.5~6%である。当該発明が、超高強度マルテンサイト冷間圧延鋼板の超急速加熱生産プロセスを提供し、そのプロセスの特徴は、まず、冷間圧延鋼板を1~10℃/sで300~500℃まで加熱し、そして、100~500℃/sの加熱速度で、単相オーステナイト領域850~950℃まで再加熱した;その後、鋼板は、5sを超えない保温後すぐに室温まで水冷し、超高強度冷間圧延鋼板を得た。
【0023】
当該特許に記載のプロセスの欠点は、以下を含む:
第一に、当該発明には、鋼の焼鈍温度は、オーステナイト単相領域の超高温温度範囲に入り、しかも合金元素を多く含み、降伏強度と引張強度はいずれも1000MPaを超えているため、これは熱処理本工程、熱処理前工程製造及び後続ユーザ使用に大きな困難をもたらした。
【0024】
第二に、当該発明の超急速加熱焼鈍方法は、5sを超えない保温時間を採用し、加熱温度の制御性が悪いだけでなく、最終製品中の合金元素の分布の不均一、製品組織性能の不均一と不安定を招く;
第三に、最後の急冷には、水焼入れによって室温まで冷却し、必要な焼戻し処理を行わなかったため、得られた最終製品組織性能及び最終組織構造中の合金元素分布プロファイルは製品に最適な強靭性をもたらせず、最終製品の強度が過剰に残り、可塑性と靭性が不足した;
第四に、当該発明の方法は、水焼入れによる冷却速度が高すぎるので、鋼板の板型不良や表面酸化などの問題を引き起こすため、当該特許技術は実用価値がないか、実用価値が低い。
【0025】
現在、従来の連続焼鈍炉生産ラインの設備能力に制限されており、冷間圧延二相鋼製品及び焼鈍プロセスに関する研究は、既存の工業装備の加熱速度(5~20℃/s)に基づいて帯鋼を低速加熱し、順番に回復、再結晶とオーステナイト化変態を完成させるため、加熱と均熱時間は比較的に長く、エネルギー消費が高いとともに、従来の連続焼鈍生産ラインには、帯鋼が高温炉セグメントに滞在する時間が長く、通過するローラーの数が多いなどの問題がある。従来の連続焼鈍ユニットは、製品大綱と生産能力の要求に基づき、一般的に、1~3minの均熱時間を有し、ユニットの速度が180メートル/分程度である従来の生産ラインに対して、その高温炉セグメント内のローラーの数は、一般的に20~40本であり、帯鋼表面の品質制御の難度を増大させた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明の目的としては、引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼及び高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼及びその急速熱処理製造方法を提供し、急速熱処理により変形組織の回復、再結晶及びオーステナイト変態過程を変えて、核形成速度(再結晶核形成速度とオーステナイト変態核形成速度を含む)を向上し、結晶粒生長時間を短縮し、結晶粒を微細化し、得られた二相鋼の降伏強度≧340MPa、引張強度≧620MPa、伸び率≧19%、強伸度積≧15.5GPa%、ひずみ硬化指数n90値が0.20超である;材料強度を向上するとともに良い可塑性と靭性を得る;急速熱処理プロセスにより生産効率を向上し、生産コスト及びエネルギー消費を低減し、炉ローラーの数を著しく減らし、鋼板の表面品質を高める。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記目的を果たすために、本発明の技術方案は:
引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼または引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼、その化学成分は、質量百分率で、C:0.04~0.12%、Si:0.1~0.5%、Mn:1.0~2.0%、P≦0.02%、S≦0.015%、Al:0.02~0.06%であり、さらにCr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、かつCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物である。
【0028】
一部の実施の形態において、前記の高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼では、Cの含有量は、0.045~0.105%、0.04~0.10%または0.05~1.2%である。一部の実施の形態において、前記の高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼では、Cの含有量は0.06~0.08%である。一部の実施の形態において、前記の高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼では、Cの含有量は、0.065~0.085%である。一部の実施の形態において、前記の高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼では、Cの含有量は、0.07~0.1%である。
【0029】
一部の実施の形態において、前記の高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼では、Siの含有量は、0.1~0.4%或0.1~0.3%である。一部の実施の形態において、前記の高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼では、Siの含有量は、0.15~0.25%である。
【0030】
一部の実施の形態において、前記の高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼では、Mnの含有量は、1.0~1.6%、1.0~1.5%または1.2~2.0%である。一部の実施の形態において、前記の高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼では、Mnの含有量は、1.2~1.4%である。一部の実施の形態において、前記の高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼では、Mnの含有量は、1.2~1.35%である。一部の実施の形態において、前記の高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼では、Mnの含有量は、1.5~1.8%である。
【0031】
一部の実施の形態において、前記の高成形性二相鋼または高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼では、Cr+Mo+Ti+Nb+V≦0.3%である。
【0032】
一部の実施の形態において、前記の引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.04~0.105%、Si:0.1~0.4%、Mn:1.0~1.6%、P≦0.02%、S≦0.015%、Al:0.02~0.06%であり、さらにCr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、かつCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物である。
【0033】
一部の実施の形態において、前記の引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼は、下記のプロセスで得られる:
1)製錬、鋳造
上記の化学組成に従って、スラブを製錬・鋳造する;
2)熱間圧延、巻取り
熱間圧延の圧延終了温度≧Ar3、巻取り温度550~680℃;
3)冷間圧延
冷間圧延の圧下率は、40~85%である;
4)急速熱処理
冷間圧延された鋼板を、750~845℃まで急速加熱し、前記の急速加熱には、一段式または二段式を採用する;一段式の急速加熱を採用する際に、加熱速度は50~500℃/sである;二段式の急速加熱を採用する際に、一段目では、15~500℃/sの加熱速度で室温から550~650℃まで加熱し、二段目では、30~500℃/s(例えば50~500℃/s)の加熱速度で550~650℃から750~845℃まで加熱する;その後、均熱を行い、均熱温度は750~845℃であり、均熱時間は、10~60sである;
均熱終了後、5~15℃/sの冷却速度で、670~770℃まで徐冷し、その後、50~200℃/sの冷却速度で、670~770℃から室温まで急冷する;
または、670~770℃から50~200℃/sの冷却速度で230~280℃まで急冷し、当該温度区間では、過時効処理を行い、過時効処理時間が、200s以下であり、最後に、30~50℃/sの冷却速度で室温まで冷却する。
【0034】
好ましくは、ステップ4)に記載の急速熱処理の全過程時間は30~300sである。一部の実施の形態において、ステップ4)に記載の急速熱処理の全過程時間は41~300sである。一部の実施の形態において、ステップ4)に記載の急速熱処理の全過程時間は41~296sである。
【0035】
好ましくは、ステップ2)では、前記の巻取り温度は、580~650℃である。
好ましくは、ステップ3)では、前記の冷間圧延の圧下率は、60~80%である。
【0036】
好ましくは、ステップ4)では、前記の急速加熱には、一段式加熱を採用する際に、加熱速度は50~300℃/sである。
【0037】
好ましくは、ステップ4)では、前記の急速加熱には、二段式加熱を採用する:一段目では、15~500℃/sの加熱速度で室温から550~650℃まで加熱し、二段目では、50~300℃/sの加熱速度で550~650℃から750~845℃まで加熱する。
【0038】
好ましくは、ステップ4)では、前記の急速加熱には、二段式加熱を採用する:一段目では、50~300℃/sの加熱速度で室温から550~650℃まで加熱し、二段目では、80~300℃/sの加熱速度で550~650℃から750~845℃まで加熱する。
【0039】
好ましくは、ステップ4)では、前記の均熱時間は、10~40sである。
好ましくは、ステップ4)では、前記の鋼板の急冷速度は、50~150℃/sである。
【0040】
好ましくは、過時効処理時間は、20~200sである。
本発明に記載の二相鋼または溶融亜鉛めっき二相鋼の微細組織は、平均結晶粒サイズが2~10μmであるフェライトとマルテンサイト二相組織である。一部の実施の形態において、本発明に記載の二相鋼または溶融亜鉛めっき二相鋼の微細組織は、平均結晶粒サイズが2~8μmまたは4~10μmであるフェライトとマルテンサイト二相組織である。
【0041】
一部の実施の形態において、本発明に記載の二相鋼または溶融亜鉛めっき二相鋼の降伏強度は340~560MPa、引張強度は620~880MPa、伸び率は19~30.5%、強伸度積は15.5~20.5GPa%、ひずみ硬化指数n90値は0.20超である。
【0042】
一部の実施の形態において、本発明に記載の二相鋼の降伏強度は340~410MPa、引張強度は640~710MPa、伸び率は22~30.5%、強伸度積は15.5~20.5GPa%、ひずみ硬化指数n90値は0.20超である。
【0043】
一部の実施の形態において、本発明に記載の引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.04~0.10%、Si:0.1~0.3%、Mn:1.0~1.6%、P≦0.02%、S≦0.015%、Al:0.02~0.06%であり、さらにCr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、かつCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物である。好ましくは、当該二相鋼のC含有量は0.06~0.08%である;好ましくは、当該二相鋼のSi含有量は0.15~0.25%である;好ましくは、当該二相鋼のMn含有量は1.2%~1.4%である。好ましくは、当該二相鋼の微細組織は、平均結晶粒サイズが4~10μmであるフェライトとマルテンサイト二相組織である。好ましくは、当該二相鋼の降伏強度は350~410MPa、引張強度は620~710MPa、伸び率は24.0~30.5%、強伸度積は17~20.5GPa%、ひずみ硬化指数n90値は0.20超である;好ましくは、当該二相鋼の降伏強度は350~405MPa、引張強度は624~706MPa、伸び率は24.4~30.4%、強伸度積は17~20.1GPa%、ひずみ硬化指数n90値は0.20超である。好ましくは、当該二相鋼は、本明細書のいずれか一つの実施方式に記載の方法で製造して得た。好ましくは、当該二相鋼の製造過程では、ステップ4)に記載の急速熱処理の全過程時間は、41~300sである。
【0044】
一部の実施の形態において、本発明に記載の引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.05~0.12%、Si:0.01~0.5%、Mn:1.2~2.0%、P≦0.015%、S≦0.003%、Al:0.02~0.055%であり、さらにCr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、かつCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物である。好ましくは、当該二相鋼の引張強度≧780MPaである。好ましくは、当該二相鋼のC含有量は0.07~0.1%である;好ましくは、当該二相鋼のSi含有量は0.1~0.4%である;好ましくは、当該二相鋼のMn含有量は1.5~1.8%である。好ましくは、当該二相鋼の微細組織は、平均結晶粒サイズが2~8μmであるフェライトとマルテンサイト二相組織である。好ましくは、当該二相鋼の降伏強度は400~540MPa、引張強度は780~880MPa、伸び率は19~24.5%、強伸度積は16.0~19.5GPa%、ひずみ硬化指数n90値は0.20超である。好ましくは、当該二相鋼の降伏強度は400~533MPa、引張強度は781~878MPa、伸び率は19.5~24.1%、強伸度積は16.3~19.3GPa%、ひずみ硬化指数n90値は0.20超である。好ましくは、当該二相鋼は、本明細書のいずれか一つの実施方式に記載の方法で製造して得た。好ましくは、当該二相鋼の製造過程では、ステップ4)に記載の急速熱処理の全過程時間は、41~296sである。
【0045】
一部の実施の形態において、前記の引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.045~0.12%、Si:0.1~0.5%、Mn:1.0~2.0%、P≦0.02%、S≦0.006%、Al:0.02~0.055%であり、さらにCr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、かつCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物である。
【0046】
一部の実施の形態において、前記の二相鋼は、本明細書のいずれか一つの実施方式に記載の溶融亜鉛めっき二相鋼であり、ただし、前記の均熱ステップ終了かつ670~770℃まで徐冷した後、50~200℃/sの冷却速度で460~470℃まで急冷し、そして亜鉛ポットに浸入しれ溶融亜鉛めっきを行い、前記の溶融亜鉛めっき二相鋼を得る。一部の実施の形態において、溶融亜鉛めっき後、30~150℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、溶融純亜鉛めっきGI製品を得る。一部の実施の形態において、溶融亜鉛めっき後、30~200℃/sの加熱速度で480~550℃まで加熱して合金化処理を行い、合金化処理時間は10~20sである;合金化処理後、30~250℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、合金化された溶融亜鉛めっきGA製品を得る。
【0047】
好ましくは、一部の実施の形態において、前記の溶融亜鉛めっき二相鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.045~0.105%、Si:0.1~0.4%、Mn:1.0~1.5%、P≦0.02%、S≦0.006%、Al:0.02~0.055%であり、さらに、Cr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、かつCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.3%、残部はFeおよび不可避不純物である。好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼では、C含有量は0.065~0.085%である;好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼では、Si含有量は0.15~0.25%である;好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼では、Mn含有量は1.2%~1.35%である。好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼では、Cr+Mo+Ti+Nb+V≦0.2%である。好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼の降伏強度は340~410MPa、引張強度は620~710MPa、伸び率は22~30.5%、強伸度積15.5~20.0GPa%、ひずみ硬化指数n90値は0.21超である;より好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼の降伏強度は347~405MPa、引張強度は624~709MPa、伸び率は22.2~30.3%、強伸度積15.7~19.6GPa%、ひずみ硬化指数n90値は0.21超である。
【0048】
一部の実施の形態において、前記溶融亜鉛めっき二相鋼の化学成分は、質量百分率で、C:0.05~0.12%、Si:0.01~0.5%、Mn:1.2~2.0%、P≦0.015%、S≦0.003%、Al:0.02~0.055%であり、さらにCr、Mo、Ti、Nb、Vからの一つ又は二つを含んでも良く、かつCr+Mo+Ti+Nb+V≦0.5%、残部はFeおよび不可避不純物である。好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼の降伏強度≧780MPaである。好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼では、C含有量は0.07~0.1%である;好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼では、Si含有量は0.1~0.4%である;好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼では、Mn含有量は1.5%~1.8%である。好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼の降伏強度は400~560MPa、引張強度は790~870MPa、伸び率は19.0~25.0%、強伸度積16.0~20.0GPa%、ひずみ硬化指数n90値は0.20超である;より好ましくは、当該溶融亜鉛めっき二相鋼の降伏強度は400~552MPa、引張強度は798~862MPa、伸び率は19.5~24.6%、強伸度積16.3~19.9GPa%、ひずみ硬化指数n90値は0.20超である。
【0049】
一部の実施の形態において、本発明に記載の高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼は、以下のプロセスで得られる:
a)製錬、鋳造
上記の化学組成に従って、スラブを製錬・鋳造する;
b)熱間圧延、巻取り
熱間圧延の圧延終了温度≧Ar3、巻取り温度550~680℃;
c)冷間圧延
冷間圧延の圧下率は、40~85%である;
d)急速熱処理、溶融亜鉛めっき
冷間圧延された鋼板を、750~845℃まで急速加熱し、前記の急速加熱には、一段式または二段式を採用する;
一段式の急速加熱を採用する際に、加熱速度は50~500℃/sである;
二段式の急速加熱を採用する際に、一段目では、15~500℃/sの加熱速度で室温から550~650℃まで加熱し、二段目では、30~500℃/s(例えば50~500℃/s)の加熱速度で550~650℃から750~845℃まで加熱する;その後、均熱を行い、均熱温度:750~845℃、均熱時間:10~60s;
均熱終了後、5~15℃/sの冷却速度で、670~770℃まで徐冷し、その後、50~200℃/s(例えば50~150℃/s)の冷却速度で460~470℃まで急冷し、亜鉛ポットに浸入し、溶融亜鉛めっきを行う;
溶融亜鉛めっき後、30~150℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、溶融純亜鉛めっきGI製品を得る;
または、溶融亜鉛めっき後、30~200℃/sの加熱速度で480~550℃まで加熱して合金化処理を行い、合金化処理時間は10~20sである;合金化処理後、30~250℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、合金化された溶融亜鉛めっきGA製品を得る。
【0050】
好ましくは、ステップd)に記載の急速熱処理、溶融亜鉛めっきの全過程時間は、30~142sである。
【0051】
好ましくは、ステップb)では、前記の巻取り温度は、580~650℃である。
好ましくは、ステップc)では、前記の冷間圧延の圧下率は、60~80%である。
【0052】
好ましくは、ステップd)では、前記の急速加熱には、一段式加熱を採用する際に、加熱速度は50~300℃/sである。
【0053】
好ましくは、ステップd)では、前記の急速加熱には、二段式加熱を採用する:一段目では、15~500℃/sの加熱速度で室温から550~650℃まで加熱し、二段目では、50~300℃/sの加熱速度で550~650℃から750~845℃まで加熱する。
【0054】
好ましくは、ステップd)では、前記の急速加熱には、二段式加熱を採用する:一段目では、30~500℃/sの加熱速度で室温から550~650℃まで加熱し、二段目では、80~300℃/sの加熱速度で550~650℃から750~845℃まで加熱する。
【0055】
本発明に記載の溶融亜鉛めっき二相鋼の金属組織は、均一に分布するフェライトとマルテンサイト二相組織であり、平均結晶粒サイズは、1~3μmである。
【0056】
本発明にかかる鋼の成分とプロセスの設計において:
C:炭素は、鋼の中で最も見られる強化元素であり、炭素は、鋼の強度を増加させ、可塑性を低下させるが、成形用鋼にとって、低い降伏強度、高い均一伸び率と総伸び率は必要であるので、炭素の含有量は、高すぎるべきではない。炭素の含有量が鋼の機械的特性に非常に大きな影響を与え、炭素の含有量の上昇に伴い、パーライトの数が増加し、鋼の強度と硬度が大幅に向上するが、その可塑性と靭性は明らかに低下し、炭素の含有量が高すぎると、鋼の中に、明らかな網状炭化物が出現し、網状炭化物の存在は、その強度、可塑性と靭性を明らかに低下させ、鋼の中の炭素含有量の上昇による強化効果も顕著に弱まる。また、鋼のプロセス性能を低下させるため、強度を保証する上に、炭素含有量をできるだけ低下させるべきである。
【0057】
二相鋼にとって、炭素元素は、主に焼鈍過程で形成されたオーステナイトの体積分率に影響し、オーステナイトの形成過程において、オーステナイトまたはフェライト中の炭素元素の拡散過程は、実際にオーステナイト結晶粒の成長過程を制御する役割を果たす。炭素の含有量の上昇または臨界域の加熱温度の上昇に伴い、オーステナイト体積分率が増加し、さらに冷却後に形成されるマルテンサイト相組織が増加し、材料の強度が増加するため、材料の強度と靭性のシナジー、急速焼鈍過程における強度の向上を総合的に考慮すると、本発明には、炭素の含有量を0.04~0.12%の範囲に限定する。
【0058】
Mn:マンガンは、鉄と固溶体を形成することができ、さらに、炭素鋼中のフェライトとオーステナイトの強度と硬度を高め、鋼材において熱間圧延後の冷却過程で比較的に微細で強度の高いパーライトを得ることができ、パーライトの含有量もMn含有量の増加に伴い増加することができる。マンガンは、同時に炭化物の形成元素であり、マンガンの炭化物は、セメンタイトに溶解することができ、それによって、間接的に、パーライトの強度を増強することができる。マンガンはまた、鋼の焼入れ性を強く増強し、その強度をさらに高めることができる。
【0059】
二相鋼にとって、マンガン元素は、臨界域の焼鈍時のオーステナイト形成動力学に顕著に影響する元素の一つであり、マンガンは、主にオーステナイト生成後のフェライトへの変態と成長の過程及びオーステナイトとフェライトの最終平衡過程に影響する。オーステナイト中のマンガン元素の拡散速度は、フェライト中のそれの拡散速度よりはるかに小さいため、マンガン拡散に制御されるオーステナイト結晶粒の成長時間は長く、マンガン元素が、オーステナイト内で均一な分布に達する時間はさらに長くなる。臨界域で加熱する場合、保温時間が短いと、マンガン元素は、オーステナイト内で均一分布に達しず、その後冷却速度が不足し、均一なマルテンサイト島組織が得られなくなる。急速熱処理プロセスを用いて生産された二相鋼(例えば水焼入れ連続焼鈍生産ライン)において、マンガン含有量は、通常に高く、オーステナイト生成後に高いマンガン含有量を有し、オーステナイト島の焼入れ性を保証し、冷却後に、均一なマルテンサイト島組織と比較的に均一な性能を得る。また、マンガン元素は、γ相領域を拡大し、AcとAc温度を低下させるので、マンガン含有鋼は、同じ熱処理条件下で低炭素鋼よりも高いマルテンサイト体積分率を得ることができる。しかし、マンガン含有量が高い場合、鋼中の結晶粒を粗大化する傾向があり、鋼の過熱感受性を増加させる;溶融鋳造と熱間鍛造圧延後の冷却が不十分な場合、炭素鋼に白点が発生しやすい。以上の点を総合して、本発明には、マンガン含有量を1.0~2.0%の範囲内に設計する。
【0060】
Si:ケイ素は、フェライトまたはオーステナイト中に固溶体を形成し、それによって、鋼の降伏強度と引張強度を強化し、しかも、ケイ素は、鋼の冷間加工変形硬化率を増大することができ、合金鋼中の有益元素である。また、ケイ素はケイ素マンガン鋼の結晶断面に沿って明らかな偏在現象があり、ケイ素の結晶粒界位置での偏在は炭素とリンの結晶粒界に沿った分布を緩和し、さらに結晶粒界の脆化状態を改善することができる。ケイ素は、鋼の強度、硬度、耐摩耗性を高めることができ、しかも鋼の可塑性を明らかに低下させることはない。ケイ素は、脱酸素の能力が強く、製鋼時によく使われる脱酸素剤であり、ケイ素は、また溶鋼の流動性を増大させることができるため、一般的な鋼には、ケイ素が含まれているが、鋼中のケイ素の含有量が高すぎると、その可塑性と靭性が著しく低下する。
【0061】
二相鋼にとって、ケイ素の主な影響は焼鈍時間を下げることであり、最終平衡時のオーステナイト体積分率に影響する。ケイ素は、オーステナイト成長速度に明らかな影響を与えないが、オーステナイトの形成形態と分布に明らかな影響を与える。そのため、本発明には、ケイ素含有量は0.1~0.5%の範囲内にある。
【0062】
Cr:鋼におけるクロムの主な作用は、焼入れ性を高めることであり、鋼を焼入れ・焼戻しした後に比較的に良い総合機械的性能を持たせる。クロムと鉄は連続固溶体を形成し、オーステナイト相領域を縮小し、クロムと炭素は多種の炭化物を形成し、炭素との親和力は鉄とマンガン元素より大きい。クロムと鉄は、金属間化合物であるσ相(FeCr)を形成することができ、クロムは、パーライト中の炭素の濃度及びオーステナイト中の炭素の限界溶解度を減少させる;クロムは、オーステナイトの分解速度を遅くし、鋼の焼入れ性を著しく向上させる。しかし、鋼の焼戻し脆性傾向も増す。クロム元素は、鋼の強度と硬度を高め、他の合金元素と同時に使用すると、効果が顕著である。Crは、空冷時の鋼の焼入れ能力を高めるため、鋼の溶接性能に不利な影響を与える。しかし、クロム含有量が0.3%未満の場合、溶接性への悪影響は無視できる;当該含有量を超えると、溶接時に、クラックやスラグ挟みなどの欠陥が生じやすくなる。Crが他の合金元素と同時に存在する(例えばVと共存する)と、Crの溶接性への悪影響は大幅に減少する。例えば、Cr、Mo、Vなどの元素が同時に鋼中に存在する場合、Cr含有量が1.7%に達しても、鋼の溶接性能に顕著な不利な影響はない。本発明には、クロム元素は有益で不必要な元素であり、コスト増加などの要素を考慮すると、その添加量が多すぎることは望ましくない。いくつかの実施形態では、Crの含有量は≦0.30%である。
【0063】
Mo:モリブデン元素は、鉄の自己拡散と他の元素の拡散速度を抑制することができる。Mo原子半径はα-Fe原子より大きく、Moがα固溶体に溶解すると、固溶体に強い格子歪みが発生すると同時に、Moは格子原子結合引力を増加させ、αフェライトの再結晶温度を高めることができる。パーライト型、フェライト型、マルテンサイト型鋼には、ひいては高合金オーステナイト鋼にも、Moの強化作用も明らかである。鋼におけるMoの良好な作用は、鋼中の他の合金元素との相互作用にも依存する必要がある。鋼に強炭化物形成元素であるV、Nb、Tiを添加すると、Moの固溶強化作用がより顕著になる。これは、強炭化物形成元素がCと結合して安定した炭化物を形成すると、Moの固溶体へのより効果的な溶解が促進され、鋼の熱強度の向上に有利になるからである。Moの添加は、さらに鋼の焼入れ性を向上することができる。Moは、パーライト領域の変態を抑制し、中温領域の変態を加速させるので、Mo含有鋼は、冷却速度が大きい場合でも一定数のベイナイトを形成し、フェライトとパーライトの形成を排除することができ、これは、Moが低合金耐熱鋼の熱強度に有利な影響を与える原因の一つである。Moは、鋼の熱脆性傾向を顕著に低下させ、パーライト球状化速度を減少させることもできる。Mo含有量が0.15%以下の場合、鋼の溶接性能に悪影響を与えない。本発明には、モリブデン元素は有益で不必要な元素であり、コスト増加などの要素を考慮すると、その添加量が多すぎることは望ましくない。いくつかの実施形態では、Moの含有量は≦0.20%である。
【0064】
微量合金元素Ti、Nb、V:鋼に微量の微量合金元素Nb、V、Tiを添加すると、鋼が炭素当量が低い場合、それらの炭化物/窒化物の粒子(サイズが5nm未満)の分散析出及びNb、V、Tiの固溶により、結晶粒を微細化し、鋼の強度、靭性(特に低温靭性)を大幅に向上し、鋼に良好な溶接可能性などの使用性能を持たせることができる。Nb、V、Tiは、炭化物と窒化物の形成元素であり、これらの元素は、比較的低い濃度でこのような要求を満たすことができる;Nb、V、Tiは、強炭化物形成元素であり、常温時、鋼中で、大部は炭化物、窒化物、炭窒化物の形で存在し、ごく一部はフェライト中に固溶する。Nb、V、Tiを添加すると、オーステナイト結晶粒の成長を阻止し、鋼材の結晶粒の粗大化温度を高めることができる。これは、それらの炭化物、窒化物が分散した小粒子がオーステナイト結晶粒界に固定作用を発揮し、オーステナイト結晶粒界の移動を阻害し、オーステナイト再結晶温度を高め、未再結晶域を拡大することができ、すなわち、オーステナイト結晶粒の成長を阻止することができるためである。鋼に微量のNb、V、Tiを添加すると、一方、炭素当量含有量を減少させると同時に鋼の強度、溶接性能を高めることができ、他方、酸素、窒素、硫黄などの不純物を固定し、鋼の溶接可能性を改善することができる;そのミクロ粒子の作用、例えばTiNの高温下での未溶解性により、熱影響領域の結晶粒の粗大化を阻止し、熱影響領域の靭性を高め、それにより、鋼の溶接性能を改善することができる。本発明には、微量合金元素は有益で不必要な元素であり、コスト増加などの要素を考慮すると、それらの添加量が多すぎることは望ましくない。いくつかの実施形態では、Tiの含有量は≦0.035%である。いくつかの実施形態では、Nbの含有量は≦0.025%である。いくつかの実施形態では、Vの含有量は≦0.030%である。
【0065】
本発明は、急速加熱、短時間保温と急冷の急速熱処理プロセスを通じて、連続熱処理プロセスにおける変形組織の回復、再結晶、オーステナイト相と変態過程を制御し、最終的に、微細なフェライト組織及び多形態の強化相組織を獲得し、材料に、良い強度と靭性のシナジーを獲得させ、合金コストと各工程の製造難度を下げ、同じ強度レベルの鋼種の溶接性能などの使用性能を高める。
【0066】
具体的な原理は、加熱過程の異なる温度段階で、異なる加熱速度を採用し、低温セグメントでは、主に変形組織の回復が発生し、比較的低い加熱速度を採用してエネルギー消費を下げることができる;高温セグメントでは、主に異なる相組織の再結晶と結晶粒成長が発生し、比較的高い加熱速度と短い均熱時間を用いて材料の高温区間での滞留時間を短縮しなければ、結晶粒の成長が小さいか大きくならないことを確保できない。加熱過程における加熱速度を制御することにより、加熱過程における変形組織の回復及びフェライト再結晶過程を抑制し、再結晶過程とオーステナイト変態過程をオーバラップさせ、再結晶粒とオーステナイト結晶粒の核形成点を増加させ、最終的に、結晶粒を微細化する。短時間保温と急冷により、均熱過程における結晶粒の成長時間を短縮し、結晶粒組織の微細と均一的な分布を確保する。
【0067】
中国特許出願CN10681168Bに開示された熱処理プロセスは、加熱プロセス全体を区分処理しておらず、その加熱プロセスに採用されている加熱速度は20~60℃/sで、中程度の加熱速度であり、従来の連続焼鈍ユニットの加熱技術に基づき実現されたものであり、材料組織の変態の必要に応じて広範囲の調整を行うことはできない。
【0068】
中国特許出願CN107794357B及び米国特許出願US2019/0153558A1に開示された熱処理プロセスにおいて、加熱プロセスは、段階別に処理されている:まず、1~10℃/sの加熱速度で300~500℃に加熱し、その後100~500℃/sの加熱速度で単相オーステナイト領域850~950℃まで加熱し、5sを超えない保温後に、水焼入れによって室温まで冷却する。この処理方法には、鋼板を、単相オーステナイトの高温域に加熱しなければならず、これは、設備の耐高温要求を高め、製造難度を増加し、かつ水冷の冷却方式を採用するので、冷却速度は極めて高く、結晶粒組織の高温区間での成長時間を大幅に減少することができるが、最終製品中の合金元素分布の不均一をもたらし、製品の組織性能の不均一と不安定を招くことも避けられない;なお、冷却速度が高すぎると、鋼板の板型不良や表面酸化などの一連の問題を引き起こすこともある。
【0069】
熱処理プロセス全体(急速加熱(段階別に加熱速度を制御する)、短時間均熱、急冷プロセスを含む)を総合的に制御することによって、精密制御された最適な結晶粒サイズ、合金元素と各相組織の均一分布を得ることができ、最終的に最適な強度と靭性のシナジーを有する製品を得ることができる。
【0070】
本発明の急速熱処理方法により得られたフェライトとマルテンサイトの二相組織の平均結晶粒サイズは、4~10μmであり、従来技術で生産された製品の結晶粒サイズ(通常10~20μm)と比較すると50~60%減少し、結晶粒の微細化により、材料の強度を高めることができ、同時に、良好な可塑性と靭性を得て、材料の使用性能を高めることができる;また、本発明で得られたフェライト及びマルテンサイト組織は、塊状、ストリップ状、顆粒状などの多種の形態を有し、両者の分布がより均一であることにより、より良い強度・可塑性を得ることができる。
【0071】
本発明に記載の引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性二相鋼の急速熱処理製造方法は、以下のステップを含む:
1)製錬、鋳造
上記の化学組成に従って、スラブを製錬・鋳造する;
2)熱間圧延、巻取り
熱間圧延の圧延終了温度≧Ar3;巻取り温度550~680℃;
3)冷間圧延
冷間圧延圧下率40~85%で、圧延硬質帯鋼または鋼板を得る;
4)急速熱処理
a)急速加熱
冷間圧延された帯鋼又は鋼板を、750~845℃まで急速加熱し、前記の急速加熱には、一段式または二段式を採用する;一段式の急速加熱を採用する際に、加熱速度は50~500℃/sである;二段式の急速加熱を採用する際に、一段目では、15~500℃/sの加熱速度で室温から550~650℃まで加熱し、二段目では、30~500℃/s(例えば50~500℃/s)の加熱速度で550~650℃から750~845℃まで加熱する;
b)均熱
帯鋼または鋼板を、オーステナイトとフェライトの二相領域目標温度750~845℃で均熱し、均熱時間10~60sである;
c)冷却
均熱された帯鋼または鋼板を、5~15℃/sの冷却速度で、670~770℃まで徐冷する;その後、670~770℃から50~200℃/sの冷却速度で室温まで急冷する;
または、670~770℃から50~200℃/sの冷却速度で230~280℃まで急冷し、過時効処理を行い、過時効処理時間が、200s以下である;過時効処理後、30~50℃/sの冷却速度で室温まで冷却する。
【0072】
好ましくは、前記急速熱処理の全過程時間は、41~300s、例えば41~296sである。
【0073】
好ましくは、ステップ2)では、前記の巻取り温度は、580~650℃である。
好ましくは、ステップ3)では、前記の冷間圧延の圧下率は、60~80%である。
【0074】
好ましくは、ステップ4)では、前記の急速加熱には、一段式加熱を採用する際に、加熱速度は50~300℃/sである。
【0075】
好ましくは、ステップ4)では、前記の急速加熱には、二段式加熱を採用し、一段目では、15~500℃/sの加熱速度で室温から550~650℃まで加熱し、二段目では、50~300℃/sの加熱速度で550~650℃から750~845℃まで加熱する。
【0076】
好ましくは、ステップ4)では、前記の急速加熱には、二段式加熱を採用し、一段目では、50~500℃/sの加熱速度で室温から550~650℃まで加熱し、二段目では、80~300℃/sの加熱速度で550~650℃から750~845℃まで加熱する。
【0077】
好ましくは、ステップ4)では、前記の急速加熱の最終温度は、790~830℃である。
【0078】
好ましくは、ステップ4)では、前記の帯鋼または鋼板の急冷速度は、50~150℃/sである。
【0079】
好ましくは、ステップ4)の均熱過程では、帯鋼または鋼板を、前記オーステナイトとフェライトの二相領域目標温度まで加熱し後、温度を保持して均熱を行う。
【0080】
好ましくは、ステップ4)の均熱過程では、均熱時間帯には、帯鋼または鋼板を、小幅昇温または小幅降温を行い、昇温後の温度は845℃を超えず、降温後の温度は750℃を下回らない。
【0081】
好ましくは、前記の均熱時間は、10~40sである。
好ましくは、過時効処理時間は、20~200sである。
【0082】
好ましくは、前記の二相鋼は、本明細書のいずれか一つの実施方式に記載の溶融亜鉛めっき二相鋼であり、ただし、前記の均熱ステップ終了かつ670~770℃まで徐冷した後、50~200℃/sの冷却速度で460~470℃まで急冷し、そして亜鉛ポットに浸入しれ溶融亜鉛めっきを行い、前記の溶融亜鉛めっき二相鋼を得る。一部の実施の形態において、溶融亜鉛めっき後、30~150℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、溶融純亜鉛めっきGI製品を得る。一部の実施の形態において、溶融亜鉛めっき後、30~200℃/sの加熱速度で480~550℃まで加熱して合金化処理を行い、合金化処理時間は10~20sである;合金化処理後、30~250℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、合金化された溶融亜鉛めっきGA製品を得る。
【0083】
一部の実施の形態において、本明細書に記載の引張強度≧590MPaの低炭素低合金高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼の急速熱処理製造方法は、以下のステップを含む:
A) 製錬・鋳造
上記の化学組成に従って、スラブを製錬・鋳造する;
B) 熱間圧延、巻取り
熱間圧延の圧延終了温度≧Ar3;巻取り温度550~680℃;
C) 冷間圧延
冷間圧延圧下率40~85%で冷間圧延後、圧延硬質帯鋼または鋼板を得る;
D) 急速熱処理、溶融亜鉛めっき
a) 急速加熱
冷間圧延された帯鋼または鋼板を、室温から750~845℃のオーステナイトとフェライトの二相領域目標温度まで急速加熱し、前記の急速加熱は、一段式または二段式を採用する;
一段式の急速加熱を採用する際に、加熱速度は50~500℃/sである;
二段式の急速加熱を採用する際に、一段目では、15~500℃/sの加熱速度で室温から550~650℃まで加熱し、二段目では、30~500℃/s(例えば50~500℃/s)の加熱速度で550~650℃から750~845℃まで加熱する;
b) 均熱
オーステナイトとフェライトの二相領域目標温度750~845℃で均熱し、均熱時間10~60sである;
c) 冷却、溶融亜鉛めっき
帯鋼または鋼板の均熱を終了した後に、5~15℃/sの冷却速度で670~770℃まで徐冷する;その後、50~150℃/sの冷却速度で460~470℃まで急冷し、帯鋼または鋼板を、亜鉛ポットに浸入して溶融亜鉛めっきを行う;
d) 帯鋼または鋼板の溶融亜鉛めっき後、50~150℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、溶融純亜鉛めっきGI製品を得る;
あるいは、
帯鋼または鋼板の溶融亜鉛めっき後、30~200℃/sの加熱速度で480~550℃まで加熱して合金化処理を行い、合金化処理時間は10~20sである;合金化処理後、30~250℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、合金化された溶融亜鉛めっきGA製品を得る。
【0084】
好ましくは、ステップD)に記載の急速熱処理、溶融亜鉛めっきの全過程時間は、30~142sである。
【0085】
好ましくは、ステップB)では、前記の巻取り温度は、580~650℃である。
好ましくは、ステップC)では、前記の冷間圧延の圧下率は、60~80%である。
【0086】
好ましくは、ステップD)では、前記の急速加熱には、一段式加熱を採用する際に、加熱速度は50~300℃/sである。
【0087】
好ましくは、ステップD)では、前記の急速加熱には、二段式加熱を採用し、一段目では、15~500℃/sの加熱速度で室温から550~650℃まで加熱し、二段目では、50~300℃/sの加熱速度で550~650℃から750~845℃まで加熱する。
【0088】
好ましくは、ステップD)では、前記の急速加熱には、二段式加熱を採用し、一段目では、30~500℃/sの加熱速度で室温から550~650℃まで加熱し、二段目では、80~300℃/sの加熱速度で550~650℃から750~845℃まで加熱する。
【0089】
好ましくは、ステップD)では、前記の急速加熱の最終温度は、770~830℃または790~830℃である。
【0090】
好ましくは、ステップD)の均熱過程では、帯鋼または鋼板を、前記オーステナイトとフェライトの二相領域目標温度まで加熱し後、温度を保持して均熱を行う。
【0091】
好ましくは、ステップD)の均熱過程では、均熱時間帯には、帯鋼または鋼板を、小幅昇温または小幅降温を行い、昇温後の温度は845℃を超えず、降温後の温度は750℃を下回らない。
【0092】
好ましくは、前記の均熱時間は、10~40sである。
好ましくは、ステップD)では、前記の帯鋼または鋼板を合金化処理した後、30~200100℃/sの冷却速度で室温まで急冷し、合金化された溶融亜鉛めっきGA製品を得る。
【0093】
本発明に記載の590MPa級低炭素低合金高成形性二相鋼及び高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼の急速熱処理製造方法において:
1、加熱速度の制御
連続加熱過程の再結晶動力学は、加熱速度に影響される関係式によって定量的に記述することができ、連続加熱過程におけるフェライト再結晶体積分率と温度Tの関数関係式は:
【0094】
【数1】
【0095】
であり、ただし、X(t)は、フェライト再結晶体積分率である;nは、Avrami指数であり、変態機構と関連し、再結晶核形成率の減衰周期に依存して、一般的に、1~4の範囲内で値をとる;Tは、熱処理温度である;Tstarは、再結晶開始温度である;βは、加熱速度である;b(T)は、以下の式により得られる:
【0096】
【数2】
【0097】
以上の式及び関連実験データから、加熱速度の増加に伴い、再結晶開始温度(Tstar)及び終了温度(Tfin)が、どちらも上昇する;加熱速度が50℃/s以上の場合、オーステナイト変態と再結晶過程がオーバラップし、再結晶温度が、二相領域温度まで上昇し、加熱速度が速いほど、フェライト再結晶温度が高くなることを知られる。
【0098】
従来の熱処理過程では、加熱技術の制限により、すべては低速加熱であり、当該条件で、変形マトリックスには、順番に、回復、再結晶及び結晶粒成長が発生し、その後、フェライトのオーステナイトへの変態が発生し、しかも変態核形成は、主に、成長したフェライト結晶粒界にあり、核形成速度は、比較的に低い。そのため、最後に得られた二相鋼の結晶粒組織は、比較的に粗大である。
【0099】
超急速加熱条件下では、変形マトリックスは、再結晶が完了したばかりか、または再結晶が完了していない(十分に回復していないことさえある)かのうちに、フェライトのオーステナイトへの変態が発生し始め、再結晶が完了したばかりか、または再結晶が完了していない場合、結晶粒が微細で、結晶粒界面積が大きいので、核形成速度が著しく向上し、オーステナイト結晶粒は明らかに微細化した。この時、フェライト再結晶とオーステナイト変態過程がオーバラップし、フェライト結晶内に大量の転位などの結晶欠陥が残っているため、オーステナイトに大量の核形成点を提供し、オーステナイトの核形成には、爆発的核形成を呈するため、オーステナイト結晶粒はさらに微細化した。同時に残された高密度転位線欠陥も、炭素原子の高速拡散の通路となり、炭素原子の拡散時間を短縮し、各オーステナイト結晶粒がいずれも急速に生成して成長できるようにしたため、オーステナイト結晶粒は小さく、体積分率が増大した。
【0100】
急速加熱中に、組織の変化、合金元素と各相成分の分布に精密に制御すると、後続の均熱過程におけるオーステナイト組織の成長、及び各合金成分の分布と急冷過程におけるオーステナイトのマルテンサイト相への変態に良好な基礎を築く。最終的には、微細化された結晶粒、合理的な元素と各相分布を有する最終製品組織を得ることができる。急速加熱と微細化結晶粒の効果、製造コスト及び製造可能性などの要素を総合的に考慮し、本発明は、一段式の急速加熱時の加熱速度を50~500℃/sとし、二段式の急速加熱時の加熱速度を15~500℃/sとする。
【0101】
異なる温度区間の範囲内では、急速加熱が材料の回復、再結晶、結晶粒成長などの組織変化過程に与える影響が異なり、最適な組織制御を得るために、異なる加熱温度区間の好ましい加熱速度も異なる:20℃から550~650℃まで、加熱速度が回復過程に与える影響は最も大きく、加熱速度を5~300℃/s、さらに好ましくは50~300℃/sに制御する;加熱温度は550~650℃からオーステナイト化温度750~845℃まで、加熱速度が核形成速度と結晶粒成長過程に与える影響は最も大きく、加熱速度を50~300℃/s、さらに好ましくは80~300℃/sに制御する。
【0102】
2、均熱速度の制御
均熱温度の選択は、加熱過程の各温度段階の材料組織の変化過程の制御と結合する必要があり、同時に、後続の急冷過程の組織の変化と制御を考慮する必要があり、それによって、最終的に好ましい組織構造と分布を得ることができる。
【0103】
通常、均熱温度は、C含有量に依存し、本発明の二相鋼中のC含有量は0.04~0.12%であり、本発明の鋼のAC1とAC3は、それぞれ730℃と870℃程度である。本発明の急速熱処理プロセスは、帯鋼の均熱温度を、AC1からAC3の間の二相領域内に制御し、急速加熱技術を利用して、材料を室温からAC1からAC3の間に急速に加熱し、材料を十分に再結晶していないフェライト中に大量の転位を保持させ、フェライトのオーステナイト相への変態に、より大きな核形成駆動力を提供するため、伝統的な連続焼鈍プロセスと比較すると、本発明の急速熱処理方法は、より微細なオーステナイト組織をより多く得ることができる。
【0104】
本発明には、均熱温度を制御する時、均熱温度が一定範囲内で上昇と低下を行うことを初めて提案する:すなわち、均熱温度の傾斜昇温と傾斜降温を行うが、均熱温度は一定範囲内に保持しなければならない。このようにする利点は、二相領域の温度範囲で温度を急速に上昇/低下させる過程は、実際には急速な変態過程を容易にするために、過熱度と過冷却度をさらに増加させることであり、昇降温度幅が十分に大きく、昇降温度速度も十分に大きい場合、繰り返しのフェライトのオーステナイト相への変態及びオーステナイトのフェライト相への変態により、結晶粒をさらに微細化することができ、同時に、炭化物形成及び合金元素の均一分布にも一定の影響を与え、最終的には、より微細な組織及び均一分布を有する合金元素を形成することができる。
【0105】
冷間圧延後の二相鋼には、溶解していない均一に分布する微細な炭化物が大量に存在し、これらの炭化物は、オーステナイトの核形成点になるだけでなく、加熱と均熱過程において、オーステナイト結晶粒の成長に機械的阻害の役割を果たすことができ、合金鋼の結晶粒度の微細化に有利である。しかし、加熱温度が高すぎると、未溶解炭化物の数を大幅に減少させ、この阻害作用を弱め、結晶粒の成長傾向を強め、さらに鋼の強度を低下させる。未溶解炭化物の数が大きすぎると、凝集を引き起こす可能もあり、局所の化学成分の不均一分布をもたらし、この凝集箇所の炭素含有量が高すぎると、局所過熱を引き起こす可能性がある。したがって、理想的には、鋼中に、少量の微細な粒子状の未溶解炭化物が均一に分布しているべきであり、これにより、オーステナイト結晶粒の異常な成長を防止することができ、かつそれに応じてマトリックス中の各合金元素の含有量を高め、合金鋼の強度と靭性などの機械的性能を改善する目的を達成することができる。
【0106】
均熱温度の選択は、さらに、冷却後に、微細なマルテンサイト組織を得ることができるという目的を達成するために、微細で均一なオーステナイト結晶粒を得ることを目的として、オーステナイト結晶粒の粗大化を回避しなければならない。高すぎる均熱温度は、オーステナイト結晶粒を粗大化させ、急冷後に、得られるマルテンサイト組織も粗大化し、鋼の機械的性能を低下させる;また、残留オーステナイトの数を増やし、マルテンサイトの数を減らし、鋼の硬度と耐摩耗性を低下させる。低すぎる均熱温度は、オーステナイトの数を減少させるだけでなく、オーステナイト中の合金元素の含有量を不足させ、オーステナイト中の合金元素の濃度分布を不均一にし、鋼の焼入れ性を大幅に低下させ、鋼の機械的性能に不利な影響を与える。亜共析鋼の均熱温度は、Ac+30~50℃であるはず。超高強度鋼では、炭化物形成元素が存在すると、炭化物の変態を阻害するため、均熱温度を適切に高めることができる。以上の要素を総合して、本発明は750~845℃を均熱温度として選択し、より理想的で合理的な最終組織を得ることを期待する。
【0107】
3、均熱時間の制御
均熱時間に影響する要素は、鋼中の炭素及び合金元素の含有量にも依存し、鋼中の炭素及び合金元素の含有量が高くなると、鋼の熱伝導性が低下するだけでなく、合金元素が炭素元素よりも拡散速度が遅くなるため、合金元素は、鋼の組織変態を明らかに遅らせることができ、当該場合には、適切に保温時間を延長しなければならない。本発明が、急速加熱を採用し、二相領域の材料に大量の転位を含有し、オーステナイト形成に大量の核形成点を提供し、かつ、炭素原子に急速拡散通路を提供するため、オーステナイトが極めて速く形成することができ、しかも、均熱保温時間が短いほど炭素原子拡散距離が短くなり、オーステナイト体内の炭素濃度勾配が大きくなり、最後に、残った残留オーステナイト炭素の含有量が多くなる;しかしながら、保温時間が短すぎると、鋼中の合金元素の分布が不均一になり、オーステナイト化が不十分になる;保温時間が長すぎると、オーステナイト結晶粒が粗大になりやすい。そのため、均熱時間の制御は、均熱温度、急冷及び急速加熱過程を厳格に結合し、総合的に考慮して確定しなければならず、最終的に理想的な組織と元素分布を得ることができない。以上より、本発明には、均熱保温時間を10~60sとする。
【0108】
4、急冷速度の制御
急冷過程の制御は、前期加熱と均熱過程における各組織の変化結果及び合金拡散分布結果などの総合要素を結合することが必要があり、最終的に、理想的な各相組織及び合理的な元素分布を有する材料組織を得ることを確保する。
【0109】
マルテンサイト強化相を得るためには、急冷時の材料の冷却速度は、臨界冷却速度より大きくなければ、マルテンサイト組織を得ることができず、臨界冷却速度は、主に材料成分に依存し、本発明では、最適化されたSi含有量は0.1~0.5%であり、Mn含有量は1.0~2.0%であり、これらの含有量は比較的に高いので、SiとMnは、二相鋼の焼入れ性を大幅に強化し、臨界冷却速度を低下させた。
【0110】
冷却速度はまた、最終的に合理的な各相組織分布及び合金元素分布を得るために、加熱過程と均熱過程の組織変化及び合金拡散分布結果を総合的に考慮する必要がある。冷却速度が低すぎると、マルテンサイト組織を得ることができず、強度が低下し、機械的性能が要求を満たすことができない;一方、冷却速度が大きすぎると、大きな焼入応力(すなわち組織応力と熱応力)が発生し、板形状に厳重な不良を引き起こし、特に、冷却不均一の場合には、板形状の不良が特に厳重で、さらに試料の厳重な変形と亀裂を招きやすい。したがって、本発明は、急冷速度を50~200℃/s、好ましくは50~150℃/sに設定する。
【0111】
5、過時効の制御
従来の熱処理後、過時効は、主に焼入硬化されたマルテンサイトを焼戻しして、二相鋼の総合性能を改善する。過時効温度と時間設定が適切でないと、マルテンサイトが分解され、二相鋼の機械的性能が直接悪化する。過時効温度と時間の設定には、マルテンサイト組織の形態と分布、元素含有量と分布及びその他の組織の大きさと分布を総合的に考慮する必要がある。そのため、過時効の制御は、前段の加熱過程、均熱過程及び冷却過程の各パラメータを統合して決定する必要がある。本発明には、急速加熱、短時間保温と急冷過程の組織変化と元素分布プロファイルを結合し、過時効温度範囲を、230~280℃に設定し、過時効時間は、200s以下に制御される。
【0112】
6、溶融亜鉛めっきと合金化制御
本発明は鋼帯の熱処理過程のパラメータを調整・制御することにより、鋼帯を、より良い温度と表面状態を維持し、溶融亜鉛めっきと合金化処理を行い、優れた溶融亜鉛めっきと合金化製品を得ることができる。帯鋼の表面品質制御能力を高めることにより、高表面品質の帯鋼製品を得ることができる。
【0113】
本発明は、急速加熱と急冷プロセスを用いて、伝統的な連続焼鈍ユニットを改造し、それに急速熱処理プロセスを実現させることができ、従来の連続焼鈍炉の加熱及び均熱セグメントの長さを大幅に短縮することができ、従来の連続焼鈍ユニットの生産効率を高め、生産コスト及びエネルギー消費を低減し、連続焼鈍炉の炉ローラー数を減少し、帯鋼の表面品質の制御能力を高め、高表面品質の帯鋼製品を獲得することができる;同時に、急速熱処理プロセス技術を採用した新型連続焼鈍ユニットを構築することにより、連続熱処理ユニットは簡素化され、材料の移行がフレキシブルで、しかも制御能力が高いなどの利点がある;材料にとって、帯鋼の結晶粒を微細化でき、材料強度をさらに高め、合金コスト及び熱処理前工程の製造難度を下げ、材料の溶接などのユーザーの使用性能を高めることができる。
【0114】
以上より、本発明は、急速熱処理プロセスを採用することにより、冷間圧延帯鋼の連続焼鈍プロセス技術の進歩に極めて大きな促進作用を生じ、冷間圧延帯鋼は、室温から最後のオーステナイト化までの過程を完成することは、数十秒、十数秒、ひいては数秒以内に完成することが期待でき、連続焼鈍炉の加熱セグメントの長さを大幅に短縮し、連続焼鈍ユニットの速度と生産効率を向上させ、連続焼鈍ユニットの炉内ローラーの数を著しく減少させ、ユニット速度が180メートル/分程度の急速熱処理ラインの場合、その高温炉セグメント内のローラーの数は10本を超えず、帯鋼表面の品質を明らかに向上させることができる。同時に、極めて短時間で完成した再結晶とオーステナイト化過程の急速熱処理プロセス方法も、よりフレキシブルで柔らかい高強度鋼組織設計方法を提供し、合金成分や圧延プロセスなどの前工程条件を変更しないまま材料組織を改善し、材料性能を向上させる。
【0115】
二相鋼を代表とする先進高強度鋼は、広い将来性があり、また、急速熱処理技術はまた巨大な開発応用価値があり、両者の結合は、二相鋼の開発と生産により大きな空間を提供する。
【発明の効果】
【0116】
従来技術に対して、本発明が、以下の利点を有する:
(1)本発明は、急速速熱処理により、熱処理過程における変形組織の回復及びフェライト再結晶過程を抑制し、再結晶過程とオーステナイト変態過程をオーバラップさせ、再結晶粒とオーステナイト結晶粒の核形成点を増加し、結晶粒の成長時間を短縮し、得られた二相鋼の微細組織を、フェライトとマルテンサイトの二相組織にし、平均結晶粒サイズは2~10μmであり、従来技術で製造された製品の結晶粒サイズ(通常10~20μm)より明らかに減少する;結晶粒の微細化により、材料の強度を高めることができ、同時に、良好な可塑性と靭性を得、材料の使用性能を高める;また、本発明で得られたフェライト及びマルテンサイト組織は、塊状、ストリップ状、顆粒状などの多種の形態を有し、両者の分布がより均一であり、より良い強度・可塑性を得ることができる。
【0117】
(2)従来の熱処理方式で得られた二相鋼に比べ、本発明で得られた二相鋼には、結晶粒組織が微細で、各相分布が均一である;そのため、材料の強靭性は明らかに向上し、二相鋼の降伏強度≧350MPaを得て、引張強度は≧620MPaという小区間の範囲内に制御でき、伸び率≧19%、強伸度積≧15GPa%で、ひずみ硬化指数n90値は0.2より大きくて、成形性能は優れている。
【0118】
(3)本発明に記載の低炭素低合金高成形性二相鋼の急速熱処理プロセスにより、熱処理の全過程時間は、41~300sに短縮でき、低炭素低合金高成形性溶融亜鉛めっき二相鋼の急速熱処理プロセスの熱処理の全過程時間は、30~142sに短縮でき、熱処理プロセス全体の時間を大幅に低減でき(伝統的な連続焼鈍プロセス時間は通常5~8min)、それによって、生産効率を高め、エネルギー消費を減少し、生産コストを低減した。
【0119】
(4)従来の二相鋼及びその熱処理プロセスに比べて、本発明の急速熱処理方法の加熱セグメントと均熱セグメントの時間は、60~80%短縮し、帯鋼の高温下での処理時間を短縮し、省エネ・排出削減・消費削減でき、炉設備の一回性投資を著しく低減し、生産運営コストと設備のメンテナンスコストを著しく低減する;なお、急速熱処理により同じ強度レベルの製品を生産すると、その合金含有量を下げ、熱処理及び前工程の生産コストを下げ、熱処理前の各工程の製造難度を下げることができる。
【0120】
(5)従来の連続焼鈍処理で得られた二相鋼に比べ、急速熱処理プロセス技術により、加熱過程と均熱過程の時間が減少し、炉の長さが短縮し、炉ローラー数が減少したため、炉内に表面欠陥が発生する確率が減少し、製品表面に欠陥が発生する確率が減少し、そして、製品の表面品質は著しく向上した;なお、製品の結晶粒の微細化と材料合金含有量の減少により、本発明の技術を用いて得られた二相鋼の成形性能、溶接性能などの使用性能も向上した。
【0121】
本発明で得られた低炭素低合金高成形性二相鋼及び溶融亜鉛めっき二相鋼は、次世代軽量化自動車、列車、船舶、航空機などの交通輸送手段の発展及び対応する工業及び先進製造業の健全な発展に重要な価値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0122】
図1図1は、本発明の実施例一にかかる試験鋼Aから実施例1に従って生産された二相鋼の微細組織画像である。
図2図2は、本発明の実施例一にかかる試験鋼Aから従来のプロセス1に従って生産された二相鋼の微細組織画像である。
図3図3は、本発明の実施例一にかかる試験鋼Fから実施例6に従って生産された二相鋼の微細組織画像である。
図4図4は、本発明の実施例一にかかる試験鋼Mから実施例12に従って生産された二相鋼の微細組織画像である。
図5図5は、本発明の実施例一にかかる試験鋼Sから実施例23に従って生産された二相鋼の微細組織画像である。
図6図6は、本発明の実施例一にかかる試験鋼Mから実施例24に従って生産された二相鋼の微細組織画像である。
図7図7は、本発明の実施例二にかかる試験鋼Aから実施例1に従って生産された二相鋼の微細組織画像である。
図8図8は、本発明の実施例二にかかる試験鋼Aから従来のプロセス1に従って生産された二相鋼の微細組織画像である。
図9図9は、本発明の実施例二にかかる試験鋼Fから実施例6に従って生産された二相鋼の微細組織画像である。
図10図10は、本発明の実施例二にかかる試験鋼Mから実施例12に従って生産された二相鋼の微細組織画像である。
図11図11は、本発明の実施例二にかかる試験鋼Sから実施例23に従って生産された二相鋼の微細組織画像である。
図12図12は、本発明の実施例二にかかる試験鋼Mから実施例24に従って生産された二相鋼の微細組織画像である。
図13図13は、本発明の実施例三にかかる試験鋼Aから実施例1に従って生産された溶融純亜鉛めっき二相鋼(GI)の微細組織画像である。
図14図14は、本発明の実施例三にかかる試験鋼Aから従来のプロセス1の加熱速度に従って生産された溶融純亜鉛めっき二相鋼(GI)の微細組織画像である。
図15図15は、本発明の実施例三にかかる試験鋼Iから実施例17に従って生産された合金化溶融亜鉛めっき二相鋼(GA)の微細組織画像である。
図16図16は、本発明の実施例三にかかる試験鋼Dから実施例22に従って生産された溶融純亜鉛めっき二相鋼(GI)の微細組織画像である。
図17図17は、本発明の実施例三にかかる試験鋼Iから実施例34に従って生産された合金化溶融亜鉛めっき二相鋼(GA)の微細組織画像である。
図18図18は、本発明の実施例四にかかる試験鋼Aから実施例1に従って生産された溶融純亜鉛めっき二相鋼(GI)の微細組織画像である。
図19図19は、本発明の実施例四にかかる試験鋼Aから従来のプロセス1に従って生産された溶融純亜鉛めっき二相鋼(GI)の微細組織画像である。
図20図20は、本発明の実施例四にかかる試験鋼Iから実施例17に従って生産された合金化溶融亜鉛めっき二相鋼(GA)の微細組織画像である。
図21図21は、本発明の実施例四にかかる試験鋼Dから実施例22に従って生産された溶融純亜鉛めっき二相鋼(GI)の微細組織画像である。
図22図22は、本発明の実施例四にかかる試験鋼Iから実施例34に従って生産された合金化溶融亜鉛めっき二相鋼(GA)の微細組織画像である。
【発明を実施するための形態】
【0123】
以下、実施例と図面を結合して本発明をさらに説明し、本実施例は、本発明の技術案を前提に実施し、詳細な実施形態と具体的な操作過程を提供したが、本発明の保護範囲は下記の実施例に限定されない。
【0124】
実施例において、降伏強度、引張強度と伸び率は『GB/T228.1-2010 金属材料 引張試験 第1部:室温試験方法』に基づいて行い、P7号試料を用いて、横方向に沿って試験を行った。n90は、『GB/T228.1-2010 金属材料 引張試験 第1部:室温試験方法』に基づいて行い、P7号試料を用いて、横方向に沿って試験を行い、『GBT 5028-2008 金属材料薄板と薄帯の伸ひずみ硬化指数(n値)の測定方法』に基づいて、n90値を得た。
【0125】
実施例一
本発明の試験鋼の成分は表1を参照し、本実施例及び従来のプロセスの具体的なパラメータは表2と表3を参照し、表4と表5は、本実施例の試験鋼成分から実施例及び従来のプロセスで製造された鋼の主要な性能である。
【0126】
表1~表5から、本発明の急速熱処理方法により、同じレベルの鋼中の合金含有量を低減し、結晶粒を微細化し、材料組織の構成及び強度と靭性のシナジーを得ることができることがわかる。本発明の方法により得られた二相鋼の降伏強度は350~405MPa、引張強度は624~706MPa、伸び率は24.4~30.4%、強伸度積は17~20.1GPa%、ひずみ硬化指数n90値は0.20超であり、従来のプロセスで生産された二相鋼より高い。
【0127】
図1は典型成分のA鋼から実施例1で得られた組織画像であり、図2は、典型成分のA鋼から従来のプロセス例1で得られた組織画像である。画像を見ると、異なる熱処理方式で処理された組織には、非常に大きな違いがある。本発明の実施例の急速熱処理プロセスで処理されたA鋼の組織(図1)には、結晶粒が微細で、主に、フェライトマトリックス上に分散分布する微細なマルテンサイト組織及び少量の炭化物からなる。本発明のプロセスによって処理された組織:フェライト、マルテンサイト結晶粒組織及び炭化物は、いずれも非常に微細で、マトリックス中に均一に分布しており、これは、材料の強度と可塑性の向上に非常に有利である。従来のプロセスで処理されたA鋼組織(図2)は、典型的な二相鋼組織画像である。すなわち、白色のフェライト結晶粒界に、少量の黒色マルテンサイト組織が存在し、元素偏析などの原因により、従来のプロセス処理後の材料組織は、一定の配向性を呈し、そのフェライト組織は、圧延方向に沿って長尺分布を呈している。従来のプロセスで処理された組織の特徴は:結晶粒のサイズが相対的に粗大で、しかも一定の帯状組織が存在し、マルテンサイト及び炭化物は、フェライト結晶粒界に沿って網状分布を呈し、フェライト結晶粒は相対的に粗大で、フェライト及びマルテンサイトの二相組織分布は均一ではない。
【0128】
図3は典型成分のF鋼から実施例6(過時効処理)で得られた組織画像であり、図4は、典型成分のM鋼から実施例12(時効処理なし)で得られた組織画像である。図5は典型成分のS鋼から実施例23で得られた組織画像であり、図6は、典型成分のM鋼から実施例24で得られた組織画像である。実施例6、12、23、24は、いずれも熱処理サイクル全体が短いプロセスである。画像から分かるように、本発明の方法を採用すると、時効処理セグメントを除去しても非常に均一で、微細で、分散分布した各相組織を得ることができる。従って、本発明の二相鋼の製造方法は、結晶粒を微細化し、材料の各相組織をマトリックス中に均一に分布させ、材料組織を改善し、材料性能を向上させることができる。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2-1】
【0131】
【表2-2】
【0132】
【表3-1】
【0133】
【表3-2】
【0134】
【表4-1】
【0135】
【表4-2】
【0136】
【表5-1】
【0137】
【表5-2】
【0138】
実施例二
本実施例の試験鋼の成分は表6を参照し、本実施例及び従来のプロセスの具体的なパラメータは表7と表8を参照し、表9と表10は、本実施例の試験鋼成分から実施例及び従来のプロセスで製造された鋼の主な性能である。
【0139】
表6~表10から、本発明の方法により、同じレベルの鋼中の合金含有量を低減し、結晶粒を微細化し、材料組織の構成及び強度と靭性のシナジーを得ることができることがわかる。本発明の方法により得られた二相鋼の降伏強度は400~533MPa、引張強度は781~878MPa、伸び率は19.5~24.1%、強伸度積は16.3~19.3GPa%、同時にひずみ硬化指数n90値は0.20超であり、従来のプロセスで生産された二相鋼より高い。
【0140】
図7は典型成分のA鋼から実施例1で得られた組織画像であり、図8は、典型成分のA鋼から従来のプロセス例1で得られた組織画像である。画像を見ると、異なる熱処理方式で処理された組織には、非常に大きな違いがある。本発明の実施例の急速熱処理プロセスで処理されたA鋼の組織(図7)には、主に、フェライトマトリックス上に分散分布する微細で均一なマルテンサイト組織及び少量の炭化物からなる。本発明のプロセスによって処理された組織:フェライト、マルテンサイト結晶粒組織及び炭化物は、いずれも非常に微細で、マトリックス中に均一に分布しており、これは、材料の強度と可塑性の向上に非常に有利である。従来のプロセスで処理されたA鋼組織(図8)は、典型的な二相鋼組織画像である。すなわち、白色のフェライト結晶粒界に、少量の黒色マルテンサイト組織が存在し、元素偏析などの原因により、従来のプロセス処理後の材料組織は、一定の配向性を呈し、そのフェライト組織は、圧延方向に沿って長尺分布を呈している。従来のプロセスで処理された組織の特徴は:結晶粒が粗大で、しかも一定の帯状組織が存在し、マルテンサイト及び炭化物は、フェライト結晶粒界に沿って網状分布を呈し、フェライト結晶粒は相対的に粗大で、フェライト及びマルテンサイトの二相組織分布は均一ではない。
【0141】
図9は典型成分のF鋼から実施例6(過時効処理)で得られた組織画像であり、図10は、典型成分のM鋼から実施例12(時効処理なし)で得られた組織画像である。図11は典型成分のS鋼から実施例23で得られた組織画像であり、図12は、典型成分のM鋼から実施例24で得られた組織画像である。実施例6、12、23、24は、いずれも熱処理サイクル全体が短いプロセスである。画像から分かるように、本発明の方法を採用すると、時効処理セグメントを除去しても非常に均一で、微細で、分散分布した各相組織を得ることができる。従って、本発明の二相鋼の製造方法は、結晶粒を微細化し、材料の各相組織をマトリックス中に均一に分布させ、材料組織を改善し、材料性能を向上させることができる。
【0142】
【表6】
【0143】
【表7-1】
【0144】
【表7-2】
【0145】
【表8-1】
【0146】
【表8-2】
【0147】
【表9-1】
【0148】
【表9-2】
【0149】
【表10-1】
【0150】
【表10-2】
【0151】
実施例三
本実施例の試験鋼の成分は表11を参照し、本実施例及び従来のプロセスの具体的なパラメータは表12(一段式加熱)と表13(二段式加熱)を参照する;表14と表15は、本実施例の試験鋼成分から表2と表3の実施例及び従来のプロセスで製造されたGIとGA溶融亜鉛めっき二相鋼の主な性能である。
【0152】
表11~表15から、本発明の方法により、同じレベルの鋼中の合金含有量を低減し、材料組織の構成及び強度と靭性のシナジーを得ることができることがわかる。本発明の方法により得られた二相鋼の降伏強度は347~405MPa、引張強度は624~709MPa、伸び率は22.2~30.3%、強伸度積は15.7~19.6GPa%、ひずみ硬化指数n90値は0.21超である。
【0153】
図13図14は、典型成分のA鋼が、実施例1及び比較用の従来のプロセス例1を経た組織画像である。2つの図から見ると、溶融亜鉛めっき後の組織には非常に大きな違いがある。本発明の急速熱処理プロセスで処理されたA鋼の組織(図1)には、微細なフェライトマトリックス上に分散分布する微細で均一なマルテンサイト組織及び炭化物からなる。本発明のプロセスによって処理された組織:フェライト、マルテンサイト結晶粒組織及び炭化物は、いずれも非常に微細で、均一に分散分布しており、これは、材料の強度と可塑性の向上に非常に有利である。しかし、従来のプロセスで処理されたA鋼組織(図2)は、典型的な二相鋼組織画像である。すなわち、大きな白色フェライト組織結晶粒界に、少量の黒色マルテンサイト組織が存在する。従来のプロセスで処理された組織の特徴は:結晶粒が粗大で、マルテンサイト及び炭化物は、フェライト結晶粒界に沿って網状分布を呈し、かつマルテンサイト含有量が高くない。
【0154】
図15は典型成分のI鋼から実施例17(GA)で得られた組織画像であり、図16は、典型成分のD鋼から実施例22(GI)で得られた組織画像である。図17は典型成分のI鋼から実施例34(GA)で得られた組織画像である。実施例17、22、34は、いずれも熱処理サイクル全体が短いプロセスである。図から分かるように、本発明の急速熱処理溶融亜鉛めっき方法を採用すると、合金化処理を行った後も、非常に均一で、微細で、分散分布した各相組織を得ることができる(図15図17)。従って、本発明の溶融亜鉛めっき二相鋼の製造方法は、結晶粒を微細化し、材料の各相組織をマトリックス中に均一に分布させ、そして材料組織を改善し、材料性能を向上させることができる。
【0155】
【表11】
【0156】
【表12-1】
【0157】
【表12-2】
【0158】
【表12-3】
【0159】
【表13-1】
【0160】
【表13-2】
【0161】
【表13-3】
【0162】
【表14-1】
【0163】
【表14-2】
【0164】
【表15-1】
【0165】
【表15-2】
【0166】
実施例四
本実施例の試験鋼の成分は表16を参照し、本実施例及び従来のプロセスの具体的なパラメータは表17(一段式加熱)と表18(二段式加熱)を参照する;表19と表20は、本実施例の試験鋼成分から表17と表18の実施例及び従来のプロセスで製造されたGIとGA溶融亜鉛めっき二相鋼の主な性能である。
【0167】
表16~表20から、本発明の方法により、同じレベルの鋼中の合金含有量を低減し、材料組織の構成及び強度と靭性のシナジーを得ることができることがわかる。本発明の方法により得られた二相鋼の降伏強度は400~552MPa、引張強度は798~862MPa、伸び率は19.5~24.6%、強伸度積は16.3~19.9GPa%、ひずみ硬化指数n90値は0.20超である。
【0168】
図18図19は、典型成分のA鋼が、実施例1及び比較用の従来のプロセス例1を経た組織画像である。2つの図から見ると、溶融亜鉛めっき後の組織には非常に大きな違いがある。本発明の急速熱処理プロセスで処理されたA鋼の組織(図18)には、微細なフェライトマトリックス上に分散分布する微細で均一なマルテンサイト組織及び炭化物からなる。本発明のプロセスによって処理された組織:フェライト、マルテンサイト結晶粒組織及び炭化物は、いずれも非常に微細で、均一に分散分布しており、これは、材料の強度と可塑性の向上に非常に有利である。しかし、従来のプロセスで処理されたA鋼組織(図19)は、典型的な二相鋼組織画像である。すなわち、大きな白色フェライト組織結晶粒界に、少量の黒色マルテンサイト組織が存在する。元素偏析などの原因により、従来のプロセス処理後の材料組織は、一定の配向性を呈し、そのフェライト組織は、圧延方向に沿って長尺分布を呈している。従来の熱処理プロセスで処理された組織の特徴は:結晶粒が粗大で、しかも一定の帯状組織が存在し、マルテンサイト及び炭化物は、フェライト結晶粒界に沿って網状分布を呈し、フェライト結晶粒は相対的に粗大で、フェライト及びマルテンサイトの二相組織分布は均一ではない。
【0169】
図20は典型成分のI鋼から実施例17(GA)で得られた組織画像であり、図21は、典型成分のD鋼から実施例22(GI)で得られた組織画像である。図5は典型成分のI鋼から実施例34(GA)で得られた組織画像である。実施例17、22、34は、いずれも熱処理サイクル全体が短いプロセスである。図から分かるように、本発明の急速熱処理溶融亜鉛めっき方法を採用すると、合金化処理を行った後も、非常に均一で、微細で、分散分布した各相組織を得ることができる(図22);従来のプロセス9では、粗大なフェライト組織が得られ、少量のマルテンサイト組織がフェライト結晶粒界に分布し、典型的な溶融亜鉛めっき二相鋼組織である。従って、本発明の溶融亜鉛めっき二相鋼の製造方法は、結晶粒を微細化し、材料の各相組織をマトリックス中に均一に分布させ、そして材料組織を改善し、材料性能を向上させることができる。
【0170】
【表16】
【0171】
【表17-1】
【0172】
【表17-2】
【0173】
【表17-3】
【0174】
【表18-1】
【0175】
【表18-2】
【0176】
【表18-3】
【0177】
【表19-1】
【0178】
【表19-2】
【0179】
【表20-1】
【0180】
【表20-2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【国際調査報告】