(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】改変血漿凝固第VIII因子およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240308BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20240308BHJP
C07K 14/755 20060101ALI20240308BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240308BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240308BHJP
A61K 38/37 20060101ALI20240308BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240308BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240308BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240308BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C07K14/00
C07K14/755
C12N15/864 100Z
C12N5/10
A61K38/37
A61K35/76
A61K35/12
A61K31/7088
A61P7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560378
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 US2021024916
(87)【国際公開番号】W WO2022211791
(87)【国際公開日】2022-10-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523370945
【氏名又は名称】エーエーブイネルジーン インク.
【氏名又は名称原語表記】AAVNERGENE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チージャオ
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ダオジャン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93Y
4B065AB10
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084CA53
4C084DC15
4C084NA14
4C084ZA53
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA53
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA12
4C087CA20
4C087NA14
4C087ZA53
4H045AA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA66
4H045EA24
4H045FA74
(57)【要約】
増強された第VIII因子の活性を有する、改変ヒト第VIII因子ポリペプチドを記載する。一部の実施形態において、改変ヒト第VIII因子ポリペプチドは、A20、T21、F57、L69、I80、L178、R199、H212、I215、R269、I310、L318、S332、R378、I610および/またはI661位に1以上のアミノ酸置換を含む。そのようなポリペプチドおよびそのようなポリペプチドをコードするウイルスベクターは、血友病AなどのFVIII欠乏症の処置のために使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A20、T21、F57、L69、I80、L178、R199、H212、I215、R269、I310、L318、S332、R378、I610およびI661からなる群から選択される位置に1以上のアミノ酸置換を含む、単離された改変ヒト第VIII因子(mhFVIII)。
【請求項2】
表1に記載のアミノ酸置換からなる群から選択される1以上のアミノ酸置換を含む、請求項1に記載の単離されたmhFVIII。
【請求項3】
A20K、T21I、T21V、F57L、L69V、I80V、L178F、R199K、H212Q、I215V、R269K、I310V、L318F、S332P、R378S、I610MおよびI661Vからなる群から選択される1以上のアミノ酸置換を含む、請求項1または2に記載の単離されたmhFVIII。
【請求項4】
(1)A20KおよびT21I、または
(2)A20KおよびT21V、または
(3)T21I、L69VおよびI80V、または
(4)T21I、L69V、I80およびL178F、または
(5)T21I、L69V、I80V、およびI661V、または
(6)T21I、L69V、I80、L178FおよびI661V、または
(7)R199K、H212Q、I215V、R269K、I310V、L318FおよびS332P、または
(8)T21I、L69V、I80V、L178F、H212Q、I215V、R269K、L318FおよびI661V、または
(9)A20K、T21I、L69V、I80V、L178F、H212Q、I215V、R269K、L318FおよびI661V、または
(10)T21I、L69V、I80V、L178F、R199K、H212Q、I215V、R269K、I310V、L318F、S332PおよびI661V、または
(11)A20K、T21V、L69V、I80V、L178F、R199K、H212Q、I215V、R269K、I310V、L318F、S332PおよびI661V
のアミノ酸置換を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のmhFVIII。
【請求項5】
単一ポリペプチドからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載のmhFVIII。
【請求項6】
トランケートされたBドメインを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のmhFVIII。
【請求項7】
(1)野生型hFVIIIまたはmhFVIIIのA1およびA2ドメイン、ならびに(2)非ヒト種由来のFVIIIのA3、C1およびC2ドメインを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のmhFVIII。
【請求項8】
A3、C1およびC2ドメインが、イヌ第VIII因子由来である、請求項7に記載のmhFVIII。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のmhFVIIIをコードする単離されたポリヌクレオチドであって、任意に、ポリヌクレオチドに動作可能に連結された調節配列を含有する、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項9に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項11】
ウイルスベクターである、請求項10に記載の発現ベクター。
【請求項12】
ウイルスベクターが、AAVベクターである、請求項11に記載の発現ベクター。
【請求項13】
請求項10に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項14】
(1)請求項1~8のいずれか一項に記載の単離されたmhFVIII、請求項10~12のいずれか一項に記載の発現ベクター、または請求項13に記載の宿主細胞;および
(2)薬学的に許容される担体
を含む医薬組成物。
【請求項15】
医薬における使用のための、請求項14に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般に、医学的処置、特に、改変血漿凝固第VIII因子ポリペプチド、および血友病Aの処置におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
血友病Aは、機能的血漿凝固第VIII因子(hFVIII)の欠乏によって引き起こされるX連鎖劣性障害である。血友病Aを有する患者において、血液は、適切に凝固せず、負傷した時に過剰の出血をもたらす。出血表現型は、一般に、残留因子活性に関係する:重度の疾患を有する人々(因子活性が正常の<1%)は、頻繁に突発的に出血する;中等度の疾患を有する人々(因子活性が正常の1%~5%)は、軽い外傷により出血するが、稀に突発的に出血する;および軽度の疾患を有する人々(因子活性が正常の5%~40%)は、侵襲的手順または外傷の間に出血する。
【0003】
重度の血友病A(<1%の第VIII因子活性)のための現在の処置は、組換え第VIII因子(rFVIII)または血漿濃縮第VIII因子の定期的な静脈内注入を必要とする。中等度および軽度の血友病Aを有する個体は、定期的な予防的スケジュールなく、必要な場合に処置され得る。注入処置は、高価で、感染性疾患のリスクを導く。rFVIII療法は、産生、精製および製剤化の費用に起因してコストがかかることが判明している。rFVIII療法は、他の送達経路からの限定的な生物学的利用率に起因して、送達のための静脈内アクセスが依然必要である。rFVIIIのコストおよび限定的な利用率のため、この処置戦略を広く実行することが妨げられている。
【0004】
遺伝子療法は、注入処置に対する代替案を提供する。しかしながら、現在の遺伝子療法は、高ウイルスベクター用量が必要であり、処置関連費用が増加する。しかしながら、遺伝子療法技法を実行するうえでの困難としては、ベクターの毒性および第VIII因子の不十分な発現レベルが挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、分泌の増加、特異的活性の増加、またはその両方を反映する、改善された凝固活性のために生物工学によって作られたFVIIIは、細胞培養製造またはトランスジェニック動物におけるrFVIII産生を大幅に改善するだけでなく、血友病Aに対する遺伝子療法戦略の成功可能性を高める。そのため、FVIII産生を増加させるか、またはウイルスベクターの必要な用量を許容されるレベルに低減するために十分な量のhFVIIIタンパク質を効率的に発現することができる、改善されたベクターおよび構築物が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の一態様は、野生型hFVIIIポリペプチドまたは参照ポリペプチドと比較して、1以上の変異を含有する改変hFVIIIポリペプチド(mhFVIII)に関する。
【0007】
一部の実施形態において、mhFVIIIは、A20、T21、F57、L69、I80、L178、R199、H212、I215、R269、I310、L318、S332、R378、I610および/またはI661位に1以上のアミノ酸置換を含む。
【0008】
一部の実施形態において、mhFVIIIは、表1に記載のアミノ酸置換からなる群から選択される1以上のアミノ酸置換を含む。
【0009】
一部の実施形態において、mhFVIIIは、A20K、T21I、T21V、F57L、L69V、I80V、L178F、R199K、H212Q、I215V、R269K、I310V、L318F、S332P、R378S、I610MおよびI661Vからなる群から選択される位置に1以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、mhFVIIIは、単一のアミノ酸置換を含有する。
【0010】
一部の実施形態において、mhFVIIIは、アミノ酸A20KおよびT21Iのそれぞれにおけるアミノ酸置換を含む。
【0011】
一部の実施形態において、mhFVIIIは、アミノ酸置換A20KおよびT21Vを含む。
【0012】
一部の実施形態において、mhFVIIIは、アミノ酸置換T21I、L69V、およびI80Vを含む。
【0013】
一部の実施形態において、mhFVIIIは、アミノ酸置換T21I、L69V、I80、およびL178Fを含む。
【0014】
一部の実施形態において、mhFVIIIは、アミノ酸置換T21I、L69V、I80V、およびI661Vを含む。
【0015】
一部の実施形態において、mhFVIIIは、アミノ酸置換T21I、L69V、I80、L178F、およびI661Vを含む。
【0016】
一部の実施形態において、mhFVIIIは、アミノ酸置換R199K、H212Q、I215V、R269K、I310V、L318F、およびS332Pを含む。
【0017】
一部の実施形態において、mhFVIIIは、アミノ酸置換T21I、L69V、I80V、L178F、H212Q、I215V、R269K、L318F、およびI661Vを含む。
【0018】
一部の実施形態において、mhFVIIIは、アミノ酸置換A20K、T21V、L69V、I80V、L178F、H212Q、I215V、R269K、L318F、およびI661Vを含む。
【0019】
一部の実施形態において、mhFVIIIは、アミノ酸置換T21I、L69V、I80V、L178F、R199K、H212Q、I215V、R269K、I310V、L318F、S332PおよびI661Vを含む。
【0020】
一部の実施形態において、mhFVIIIは、アミノ酸置換A20K、T21V、L69V、I80V、L178F、R199K、H212Q、I215V、R269K、I310V、L318F、S332PおよびI661Vを含む。
【0021】
一部の実施形態において、mhFVIIIは、hFVIIIのA1、A2、A3、C1およびC2ドメインを含む単一ポリペプチドからなる。
【0022】
一部の実施形態において、mhFVIIIは、(1)hFVIIIのA1、A2、A3、C1およびC2ドメイン;および(2)hFVIIIのトランケートされたBドメインを含む単一ポリペプチドからなる。
【0023】
一部の実施形態において、mhFVIIIは、hFVIIIのA1およびA2ドメインを含む重鎖ポリペプチド、ならびにhFVIIIのA3、C1およびC2ドメインを含む軽鎖ポリペプチドからなる。一部の実施形態において、重鎖ポリペプチドは、hFVIIIのトランケートされたBドメインをさらに含み、軽鎖ポリペプチドは、hFVIIIのA3、C1およびC2ドメインを含む。
【0024】
一部の実施形態において、mhFVIIIは、ヒトFVIIIの重鎖、および異なる種由来のFVIIIの軽鎖、例えば、イヌFVIIIの軽鎖を含む。
【0025】
本出願の別の態様は、本出願のmhFVIIIをコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。
【0026】
本出願の別の態様は、本出願のポリヌクレオチド;およびポリヌクレオチドに動作可能に連結された調節配列を含む発現カセットに関する。
【0027】
本出願の別の態様は、本出願のポリヌクレオチドを含む発現ベクターに関する。一部の実施形態において、発現ベクターは、プラスミドである。一部の実施形態において、発現ベクターは、ウイルスベクターである。一部の実施形態において、発現ベクターは、AAVベクターである。
【0028】
本出願の別の態様は、本出願の発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0029】
本出願の別の態様は、本出願のmhFVIIIおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0030】
本出願の別の態様は、本出願の発現ベクターおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0031】
本出願の別の態様は、第VIII因子欠乏症を有する対象を処置する方法に関する。該方法は、有効量の本出願のmhFVIII、発現ベクター、または宿主細胞を対象に投与する工程を含む。
【0032】
本出願の別の態様は、mhFVIIIをコードするヌクレオチドを含む組換えAAVベクターであって、mhFVIIIが、A20K、T21I、T21V、F57L、L69V、I80V、L178F、R199K、H212Q、I215V、R269K、I310V、L318F、S332P、R378S、I610MおよびI661Vからなる群から選択される位置に1以上のアミノ酸置換を含み、AAVベクターが、宿主細胞中でmhFVIIIを発現することができる、組換えAAVベクターに関する。一部の実施形態において、mhFVIIIは、hFVIIIのトランケートされたBドメインを含む。
【0033】
本出願の別の態様は、mhFVIIIを発現させる方法に関する。該方法は、(a)シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列およびmhFVIIIをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、mhFVIIIが、A20K、T21I、T21V、F57L、L69V、I80V、L178F、R199K、H212Q、I215V、R269K、I310V、L318F、S332P、R378S、I610MおよびI661Vからなる群から選択される位置に1以上のアミノ酸置換を含む、ポリヌクレオチド;およびポリヌクレオチドに作動可能に連結された調節配列を含む発現ベクターを宿主細胞に導入する工程;(b)mhFVIIIの発現および分泌に好適な条件下で宿主細胞を成長させる工程;(c)宿主細胞から培養培地を採取する工程、および(d)採取された培養培地からmhFVIIIを精製する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】Bドメイン中に欠失を有する野生型ヒトFVIII(hBDDF8)をコードする発現プラスミド(pANG-CAG-hBDDF8)を示す図である。hBDDF8コード配列(重鎖および軽鎖を含む)は、本出願のさまざまな改変hBDDF8タンパク質(「変異型hFVIII」または「hFVIII変異体」とも称される)の機能活性をアッセイするために利用されたCAGプロモーターの制御下にある。
【
図2】hFVIII変異体活性の分析のための、hBDDF8重鎖(hBDDF8-HC)と、16のアミノ酸位置に17の置換変異を含有する改変hBDDF8重鎖(qwBDDF8-HC)との間のアライメントを示す図である。それらのさまざまな単一、二重および多重置換を含有する追加の構築物を、
図3および実施例1にさらに記載する。そのような変異体の相対機能活性のさらなる分析を、下記にさらに記載するように、
図4~9に示す。
【
図3】hFVIII機能活性の分析のためのhBDDF8-HCにおける例示的な置換変異体を要約する。
【
図4】hFVIII(すなわち、未改変hBDDF8タンパク質)の機能活性と比較した、HuH7細胞における単一アミノ酸置換hFVIII変異体(すなわち、改変hBDDF8タンパク質)の相対機能活性を示す。
【
図5】hFVIII(すなわち、未改変hBDDF8タンパク質)の機能活性と比較した、HEK 293T細胞における単一アミノ酸置換hFVIII変異体(すなわち、改変hBDDF8タンパク質)の相対機能活性を示す。
【
図6】hFVIII(すなわち、未改変hBDDF8タンパク質)の機能活性と比較した、HEK 293T細胞におけるhFVIII重鎖のアミノ酸21における特異的な単一アミノ酸置換変異(すなわち、アミノ酸21位で改変されたhBDDF8タンパク質)の相対機能活性を示す。
【
図7】非変性hBDDF8タンパク及び単一アミノ酸置換変異体T21Iと同様、互いと比較した、HRK 293細胞におけるhFVIII重鎖(すなわち、アミノ酸21位における改変)のアミノ酸20における様々な置換と組み合わせた、T21Iを含む二重アミノ酸置換の相対的機能活性を表す。
【
図8】トランスフェクション後24時間または48時間での、pANG-CAG-hBDDF8におけるhBDDF8 cDNAと比較した、HuH7細胞における単一または多重変異(示される通り)を有するさまざまなhFVIII-HC変異体の機能活性を示す。
【
図9】トランスフェクション後24時間、48時間および72時間での、hFVIII(すなわち、未改変hBDDF8タンパク質)の機能活性と比較した、HEK 293T細胞における単一および多重変異(示される通り)を有するものを含むさまざまなhFVIII-HC変異体の機能活性を示す。
【
図10】トランスフェクション後24時間または48時間での、hFVIII(すなわち、未改変hBDDF8タンパク質)の機能活性と比較した、CHO細胞における単一または多重変異(示される通り)を有するものを含むさまざまなhFVIII-HC変異体の機能活性を示す。
【
図11A】選択されたhFVIII変異体(および野生型)およびヒト/イヌハイブリッドFVIII変異体の構造ドメインを示すグラフである。
【
図11B】トランスフェクション後48時間での、hFVIII(すなわち、未改変hBDDF8タンパク質)の機能活性と比較した、
図11AにおけるBドメインなしのhFVIII変異体(および野生型)およびヒト/イヌハイブリッドFVIII変異体のHEK 293T細胞における機能活性を示すグラフである。
【
図12】CAGプロモーターがTTRプロモーターによって置換されていることを除いて、
図1における発現プラスミドに類似する発現プラスミド(pANG-TTR-hBDDF8)を示す図である。
【
図13】
図13は、トランスフェクション後72時間での、rAAV2ベクターからHuH7細胞において発現したhBDDF8およびさまざまなmhFVIII構築物の機能活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
I.定義
本出願の生体分子に関係するさまざまな用語が、本明細書において上記、ならびに明細書および特許請求の範囲全体を通して使用される。
【0036】
「活性が増強されたFVIII(actFVIIIまたはactF8)」という語句は、コードされるタンパク質が、未改変野生型hFVIIIと比較した場合に、活性の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%の増加を示すように遺伝子的に変更されている改変hFVIII(hF8)を指す。未改変野生型hFVIIIについてのヌクレオチド配列は、配列番号1に示され、これは、19アミノ酸のシグナルペプチド(MQIELSTCFFLCLLRFCFS(配列番号2))をコードするヌクレオチド配列を含有する。シグナルペプチドを含む未改変野生型hFVIIIについてのアミノ酸配列は、配列番号3に示される。シグナルペプチドなしの未改変野生型hFVIIIについてのアミノ酸配列は、配列番号4に示される。
【0037】
「hBDDF8タンパク質」、「hBDDF8ポリペプチド」または「hBDDF8」という用語は、Bドメイン中に欠失を有する野生型hFVIIIタンパク質を指す。一部の実施形態において、欠失は、Bドメインの大部分を包含し、野生型Bドメイン内の複数の切断に応答性の配列を含む。例示的なhBDDF8ポリペプチドは、配列番号5(シグナルペプチドあり)、または配列番号6(シグナルペプチドなし)に示されるアミノ酸配列を有し、これは、hFVIII重鎖(配列番号7)、トランケートされたBドメイン(配列番号8)およびhFVIII軽鎖(配列番号9)を含有する。
【0038】
要素または種のリストの後の「1以上」という語句は、リスト中の要素または種の任意の並べ替えを包含することを意図する。したがって、例えば、「A、B、C、D、EおよびFからなる群から選択される1以上の置換変異」という語句は、A、B、C、D、Eおよび/またはFを含有する置換変異の任意の組合せを含み得る。
【0039】
本明細書において、範囲は、ある特定の整数値から別の特定の整数値までを表し得る。そのような範囲が表される場合、その範囲内のありとあらゆる整数値が、本出願の別々の実施形態を定義すること、および範囲内に含まれる実施形態の完全な範囲が、初期範囲内の整数値の任意の対間のありとあらゆる下位範囲をさらに含むことが理解されるべきである。
【0040】
本出願の核酸に関して、「単離された核酸」という用語は、DNAに適用される場合、それが起源とする生物の天然に存在するゲノム中で(5’および3’方向で)直ぐ隣接している配列から分離されたDNA分子を指す。例えば、「単離された核酸」は、プラスミドもしくはウイルスベクターなどのベクターに挿入されたDNAもしくはcDNA分子を含んでいてもよく、または原核生物または真核生物のDNAに組み込まれてもよい。核酸コドンは、哺乳動物細胞における増強された発現のために最適化され得る。
【0041】
本出願のRNA分子に関して、「単離された核酸」という用語は、上記に定義される単離されたDNA分子によってコードされるRNA分子を主に指す。あるいは、この用語は、それが「実質的に純粋な」形態で存在するように、その天然の状態で(すなわち、細胞または組織中で)関連するであろうRNA分子から十分に分離されているRNA分子を指し得る(「実質的に純粋な」という用語は、下記に定義する)。
【0042】
タンパク質に関して、「単離されたタンパク質」または「単離および精製されたタンパク質」という用語は、本明細書において、本出願の単離された核酸分子の発現によって産生されるタンパク質に関連して使用される。あるいは、この用語は、「実質的に純粋な」形態で存在するように、それが天然で関連するであろう他のタンパク質から十分に分離されているタンパク質を指し得る。
【0043】
「hFVIIIポリペプチド」という用語は、全長ヒトFVIIIタンパク質、ヒトFVIIIタンパクの断片、hFVIIIの生物学的機能を実質的に維持しているヒトFVIIIタンパクのドメインおよびドメインの組合せを指す。
【0044】
「変異型hFVIIIポリペプチド」または「改変hFVIIIポリペプチド」という用語は、1以上のアミノ酸(例えば、1以上のアミノ酸置換)によって参照hFVIIIポリペプチドとは異なるポリペプチドを指す。参照hFVIIIポリペプチドは、シグナルペプチドありまたはなしの野生型hFVIIIタンパク質、改変を有する野生型hFVIIIタンパク質、例えば、Bドメイン中に欠失を有する野生型hFVIIIタンパク質(例えば、hBDDF8)またはBドメインなしのhFVIII、hFVIIIの断片、さらなる改変ありもしくはなしのhFVIIIのドメインまたはドメインの組合せであり得る。一部の実施形態において、「改変hFVIIIポリペプチド」の「参照hFVIIIポリペプチド」は、改変前のhFVIIIポリペプチドを指す。一部の実施形態において、「変異型hFVIIIポリペプチド」または「改変hFVIIIポリペプチド」という用語は、ヒトFVIII重鎖、およびイヌFVIII由来の軽鎖などの異なる種由来のFVIII軽鎖を含むハイブリッドFVIIIポリペプチドを指す。
【0045】
「hFVIIIバリアント」という用語は、本明細書において、hFVIIIの生物学的機能を実質的に維持している「変異型hFVIIIタンパク質」または「改変hFVIIIタンパク質」を指す。
【0046】
「保存的アミノ酸置換」は、機能的に類似する残基によるアミノ酸残基の置換である。保存的置換の例としては、イソロイシン、バリン、ロイシンもしくはメチオニンなどの非極性(疎水性)残基の別のものとの置換;アルギニンとリジンとの間、グルタミンとアスパラギンとの間、もしくはトレオニンとセリンとの間などの荷電もしくは極性(親水性)残基の別のものとの置換;リジンもしくはアルギニンなどの塩基性残基の別のものと置換;アスパラギン酸もしくはグルタミン酸などの酸性残基と別のものとの置換;フェニルアラニン、チロシンもしくはトリプトファンなどの芳香族残基の別のものとの置換;またはアラニンもしくはグリシンの置換が挙げられる。本出願の変異型FVIIIタンパク質は、参照タンパク質に対して1以上の保存的に置換されたアミノ酸を含み、本明細書に記載されるように、参照タンパク質の活性の一部または全部を維持し得る。
【0047】
「発現カセット」という用語は、本明細書において、目的のポリヌクレオチドの発現に十分な核酸エレメントを含む核酸構築物を指す。典型的には、発現カセットは、プロモーターおよびエンハンサーなどの調節配列に作動可能に連結された目的のポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、発現カセットは、追加のエレメント、例えば、イントロン、ポリアデニル化部位、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後応答エレメント(WPRE)、分泌シグナル配列、および/またはコード配列の発現レベルに影響を及ぼすことが公知の他のエレメントを含んでいてもよい。
【0048】
「調節配列」という用語は、遺伝子の転写調節配列を指し、これは、コード領域の3’もしくは5’側、またはコード領域内、またはイントロン内で見出され得る。調節配列の例としては、限定されるものではないが、プロモーターおよびエンハンサーが挙げられる。
【0049】
「プロモーター」という用語は、本明細書において、コード配列または機能的RNAの発現を制御することができるヌクレオチド配列を指す。一般に、目的のポリヌクレオチドは、プロモーター配列の3’に位置する。一部の実施形態において、プロモーターは、その全体が、ネイティブ遺伝子に由来する。一部の実施形態において、プロモーターは、異なる天然に存在するプロモーターに由来する異なるエレメントから構成される。一部の実施形態において、プロモーターは、合成ヌクレオチド配列を含む。異なるプロモーターが、異なる組織または細胞型の、あるいは異なる発達の段階で、あるいは異なる環境条件または薬物もしくは転写補助因子の存在もしくは非存在に応答して、遺伝子の発現を指示することが当業者に理解されるであろう。遍在性プロモーター、細胞型特異的プロモータープロモーター、組織特異的プロモーター、発生段階特異的プロモーター、および条件的プロモーター、例えば、薬物応答性プロモーター(例えば、テトラサイクリン応答性プロモーター)が当業者に周知である。プロモーターの例としては、限定されるものではないが、ホスホグリセリン酸(phophoglycerate)キナーゼ(PKG)プロモーター、CAG、NSE(ニューロン特異的エノラーゼ)、シナプシンまたはNeuNプロモーター、SV40初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルスLTRプロモーター;アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP);単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えば、CMV前初期プロモーター領域(CMVIE)、SFFVプロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、合成プロモーター、ハイブリッドプロモーターなどが挙げられる。プロモーターは、ヒト起源のもの、またはマウス由来を含む他の種由来のものであり得る。加えて、マウスメタロチオネイン遺伝子プロモーターなどの非ウイルス遺伝子に由来する配列も、本明細書において使用される。一部の実施形態において、プロモーターは、異種プロモーターである。一部の実施形態において、プロモーター配列は、近位およびより遠位の上流エレメントからなり、エンハンサーエレメントを含むことができる。
【0050】
「異種プロモーター」という用語は、本明細書において、天然で所与のコード配列に作動可能に連結されていることが見出されていないプロモーターを指す。
【0051】
「エンハンサー」という用語は、プロモーター活性を刺激することができ、プロモーターの生得的エレメント、またはプロモーターのレベルもしくは組織特異性を増強するために挿入された異種エレメントであり得る、ヌクレオチド配列を指す。
【0052】
「作動可能に連結された」または「動作可能に連結された」という用語は、その機能が他のものによって影響を受けるような、単一の核酸断片上の2つ以上の核酸断片の関連を指す。例えば、プロモーターは、そのコード配列の発現に影響を及ぼすことができる(例えば、コード配列は、プロモーターの転写制御下にある)場合に、コード配列に作動可能に連結されている。コード配列は、センスまたはアンチセンスの方向で、調節配列に作動可能に連結され得る。
【0053】
本明細書において、「分泌シグナル配列」、「シグナルペプチド」という用語、またはその変形形態は、ネイティブポリペプチドで見られる分泌のレベルと比較して、動作可能に連結されたポリペプチドの細胞からの分泌を増強するように(上記に定義された通り)機能するアミノ酸配列を指すことを意図する。上記で定義されたように、「増強された」分泌とは、細胞から分泌される細胞によって合成されたポリペプチドの相対割合が増加することを意味し、分泌されたタンパク質の絶対量も増加する必要はない。一部の実施形態において、本質的にすべて(すなわち、少なくとも95%、97%、98%、99%またはそれ以上)のポリペプチドが分泌される。しかしながら、分泌のレベルが、ネイティブポリペプチドと比較して増強されている限り、本質的にすべてのまたはさらにほとんどのポリペプチドが分泌される必要はない。一般に、分泌シグナル配列は、小胞体内で切断され、一部の実施形態において、分泌シグナル配列は、分泌の前に切断される。しかしながら、細胞からのポリペプチドの分泌が増強され、ポリペプチドが機能的である限り、分泌シグナル配列が切断される必要はない。したがって、一部の実施形態において、分泌シグナル配列は、部分的にまたは全体的に保持される。分泌シグナル配列は、分泌されたポリペプチドの分泌シグナルに(すなわち、前駆体に)全体的にもしくは部分的に由来し得、および/または全体的にもしくは部分的に合成であり得る。分泌シグナル配列の長さは重要ではなく、一般に、公知の分泌シグナル配列は、約10~15から50~60アミノ酸長である。さらに、分泌されたポリペプチド由来の公知の分泌シグナルは、得られた分泌シグナル配列が、動作可能に連結されたポリペプチドの分泌を増強するように機能する限り、変更または改変され得る(例えば、アミノ酸の置換、欠失、トランケーションまたは挿入によって)。本発明の分泌シグナル配列は、天然に存在する分泌シグナル配列もしくはその改変(上記に記載される通り)を含み得るか、本質的にそれからなり得るか、またはそれからなり得る。多数の分泌されたタンパク質、および細胞からの分泌を指示する配列が、当技術分野において公知である。本発明の分泌シグナル配列は、さらに、全体的にまたは部分的に、合成または人工であり得る。合成または人工分泌シグナルペプチドは、当技術分野において公知あり、例えば、その開示が、その全体的が本明細書に組み込まれるBarashら、「Human secretory signal peptide description by hidden Markov model and generation of a strong artificial signal peptide for secreted protein expression」、Biochem.Biophys.Res.Comm 294:835~42ページ(2002)を参照されたい。「動作可能に連結された」という用語は、コード配列の発現のために必要な調節配列が、コード配列の発現を生じるように、コード配列に対して適切な位置でDNA分子中に置かれていることを意味する。この同じ定義は、発現ベクターにおけるコード配列および転写制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、および終結エレメント)の配列に適用される場合がある。この定義はまた、ハイブリッド核酸分子が作製される第1および第2の核酸分子の核酸配列の配置にも適用される場合がある。
【0054】
「実質的に純粋な」という用語は、少なくとも50~60重量%の目的の化合物(例えば、核酸、オリゴヌクレオチド、タンパク質など)を含む調製物を指す。より好ましくは、該調製物は、少なくとも75重量%、最も好ましくは90~99重量%の目的の化合物を含む。純度は、目的の化合物について適切な方法(例えば、クロマトグラフィー法、アガロースまたはポリアクリルアミドゲル電気泳動、HPLC分析など)によって測定される。
【0055】
特定のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を指す場合の「本質的に~からなる」という語句は、所与の配列番号の性質を有する配列を意味する。例えば、アミノ酸配列への言及において使用される場合、この語句は、それ自体の配列、および配列の基本的および新規の特徴に影響を及ぼさないであろう分子改変を含む。
【0056】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、本明細書において、本出願のプライマーおよびプローブを指し、2つ以上のリボまたはデオキシリボヌクレオチド、好ましくは3つ超のリボまたはデオキシリボヌクレオチドから構成される核酸分子として定義される。オリゴヌクレオチドの正確なサイズは、さまざまな要因、およびオリゴヌクレオチドが使用される特定の適用に左右される。「プローブ」という用語は、本明細書において、核酸をプローブに相補的な配列とアニーリングまたは特異的にハイブリダイズすることができる、精製された制限酵素消化において天然に存在するか、または合成的に産生されたかに関わらず、R AまたはDNAいずれかの、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは核酸を指す。プローブは、一本鎖または二本鎖のいずれかであり得る。プローブの正確な長さは、温度、プローブの起源および使用の方法を含む多くの要因に依存する。例えば、診断的適用のために、標的配列の複雑さに応じて、オリゴヌクレオチドプローブは、典型的には、15~25またはそれ以上のヌクレオチドを含有するが、これは、より少ないヌクレオチドを含有していてもよい。
【0057】
「同一パーセント」という用語は、本明細書において、核酸またはアミノ酸配列の間での比較に関して使用される。核酸およびアミノ酸配列は、多くの場合、例えば、国立医学図書館のBLASTアライメントプログラムにおけるコンピュータープログラムを使用して比較される。
【0058】
いずれかの「対応する」核酸またはアミノ酸または配列は、本明細書において、別の種のFVIII分子における部位と同じ構造および/または機能を有するが、核酸もしくはアミノ酸数は同一でなくてもよい、FVIIIもしくは変異型FVIII分子、またはその断片における部位に存在するものである。別のFVIII配列「に対応する」配列は、そのような配列に実質的に対応し、ストリンジェントな条件下で配列番号1と指定されたヒトFVIII DNA配列とハイブリダイズする。別のFVIII配列「に対応する」配列はまた、FVIIIまたは特許請求の範囲に係る凝固促進ハイブリッドFVIIIまたはその断片の発現をもたらし、遺伝コードの冗長性を別にすれば、配列番号1を含む核酸分子にハイブリダイズするであろう、配列を含む。
【0059】
「固有の」アミノ酸残基または配列は、本明細書において、別の種のFVIII分子における相同残基または配列とは異なる、ある種のFVIII分子におけるアミノ酸配列または残基を指す。
【0060】
「特異的活性」は、本明細書において、ヒト第VIII因子欠乏症の血漿の凝固の欠陥を修正する活性を指す。特異的活性は、ヒトFVIII欠乏症の血漿の凝固時間を正常なヒト血漿のものと比較する標準的なアッセイにおいて、総FVIIIタンパク質 1ミリグラムあたりの凝固活性の単位で測定される。FVIII活性の1つの単位は、正常ヒト血漿1ミリリットル中に存在する活性である。このアッセイにおいて、血塊形成のための時間が短くなると、アッセイされるFVIIIの活性が高くなる。ハイブリッドヒト/ブタFVIIIは、ヒトFVIIIアッセイにおいて凝固活性を有する。この活性だけでなく、他のハイブリッドFVIII分子もしくはハイブリッド等価FVIII分子、またはその断片の活性は、血漿由来または組換えヒトFVIIIのいずれかの活性よりも低くあり得るか、それと等しくあり得るか、またはそれよりも高くあり得る。
【0061】
ヒトまたは動物FVIIIの「サブユニット」は、本明細書において、タンパク質の重鎖および軽鎖である。FVIIIの重鎖は、A1、A2およびBの3つのドメインを含有する。FVIIIの軽鎖も、A3、CIおよびC2の3つのドメインを含有する。
【0062】
「エピトープ」、「抗原性部位」および「抗原決定基」という用語は、本明細書において、同義的に使用され、抗体によって特異的に認識される、ヒト、動物、ハイブリッドもしくはハイブリッド等価FVIIIの部分、またはその断片として定義される。これは、任意の数のアミノ酸残基からなり得、タンパク質の一次、二次または三次構造に依存し得る。本開示の少なくとも1つのエピトープを含む、ハイブリッドFVIII、ハイブリッドFVIII等価体、またはいずれかの断片は、下記に記載される診断アッセイにおける試薬として使用され得る。一部の実施形態において、ハイブリッドFVIIIもしくはハイブリッド等価FVIII、またはその断片は、交差反応性ではないか、またはヒトもしくはブタFVIIIよりもすべての天然に存在する阻害性FVIII抗体との交差反応性が低い。
【0063】
「免疫原性部位」という用語は、本明細書において、本明細書に記載される、イムノアッセイ、例えば、ELISA、またはベセスダアッセイなどのルーチンプロトコールによって測定される、ヒトまたは動物におけるFVIII、ハイブリッド、ハイブリッド等価体、またはその断片に対する抗体の産生を特異的に誘発する、ヒトまたは動物のFVIII、ハイブリッド、もしくはハイブリッド等価FVIII、またはその断片の領域として定義される。これは、任意の数のアミノ酸残基からなり得、タンパク質の一次、二次または三次構造に依存し得る。一部の実施形態において、ハイブリッドもしくはハイブリッド等価FVIII、またはその断片は、ヒトまたはブタFVIIIよりも、動物またはヒトにおいて免疫原性ではないか、または免疫原性が低い。
【0064】
「FVIII欠乏症」は、本明細書において、(1)欠陥のあるFVIIIの産生;(2)FVIIIの不十分な産生または産生なし;または(3)FVIIIの部分的なもしくは全体的な阻害によって引き起こされる凝固活性における欠乏症を指す。血友病Aは、X連鎖性遺伝子の欠損、およびそれがコードするFVIIIタンパク質の非存在または欠乏から生じるFVIII欠乏症の一種である。
【0065】
II.改変hFVIIIポリペプチド(mhFVIII)
本出願の一態様は、野生型hFVIIIポリペプチドまたは未改変参照ポリペプチドと比較して、1以上の変異を含有する改変hFVIIIポリペプチド(mhFVIII)に関する。一部の実施形態において、mhFVIIIは、宿主細胞において発現される場合、同じ条件下で同じ種類の宿主細胞において発現される野生型hFVIIIまたは参照タンパク質(hBDDF8など)と比較して、宿主細胞における増加したhFVIII活性をもたらす。
【0066】
ヒトFVIIIは、2351アミノ酸のタンパク質(19アミノ酸のシグナルペプチドおよび2332アミノ酸の成熟タンパク質を有する)をコードする。これは、一連の構造「ドメイン」:NH2-SP-A1-al-A2-a2-B-a3-A3-Cl-C2-COOHで配置される。本明細書において、FVIII「ドメイン」は、例えば、構造的に関連するドメインに対する内部アミノ酸配列同一性によって、およびトロンビンによるタンパク質分解的切断の部位によって特徴付けられるアミノ酸の連続配列によって定義される。さらに、「ドメインなし」または「ドメインを欠いている」という用語は、少なくとも95%または100%のドメインが欠失していることを意味することが理解されるべきである。他に規定されない限り、FVIIIドメインは、以下の通り、アミノ末端からカルボキシ末端に、hFVIIIにおいて配置された以下のアミノ酸残基によって定義される(配列番号3で示す通り):SP、アミノ酸残基1~19;Alドメイン、アミノ酸残基20~354;a1ドメイン、アミノ酸残基355~391、A2ドメイン、アミノ酸残基392~728;a2ドメイン、アミノ酸残基729~760、Bドメイン、アミノ酸残基761~l667;a3ドメイン、アミノ酸残基1668~l708;A3ドメイン、アミノ酸残基1709~2039;C1ドメイン、アミノ酸残基2040~2192;およびC2ドメイン、アミノ酸残基2193~2351。
【0067】
A1-a1-A2-a2-B(aa 20~1667)配列またはA1-a1-A2-a2(aa 1~740)配列は、通常、hFVIII重鎖と称される。a3-A3-C1-C2配列(aa l668~2351)は、通常、hFVIII軽鎖と称される。FVIIIは、トロンビンまたは第Xa因子によってタンパク分解的に活性化され、これは、それをフォン・ヴィルブランド因子から解離させ、凝固促進機能を有するFVIIIaを形成する。FVIIIaの生物学的機能は、第X因子の活性化に対する第IXa因子の触媒効率を数桁増加させることである。トロンビン活性化FVIIIaは、血小板または単球の表面上で第IXa因子および第X因子と複合体を形成する、160kDaのA1-a1/A2-a2/a3-A3-C1-C2ヘテロ三量体である。
【0068】
野生型ヒトFVIIIをコードするcDNA配列は、配列番号1で示されるヌクレオチド配列を有する。配列番号1において、FVIIIオープンリーディングフレームの最初の57ヌクレオチドは、成熟FVIIIタンパク質から典型的には切断されるシグナルペプチド配列(配列番号2)をコードする。
【0069】
一部の実施形態において、本出願の改変hFVIIIポリペプチドは、配列番号3で示される野生型hFVIIIアミノ酸配列のアミノ酸残基20~171に対応する領域において1以上のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、本出願の改変hFVIIIポリペプチドは、A20、T21、F57、L69、I80、L178、R199、H212、I215、R269、I310、L318、S332、R378、I610、およびI661位に1以上の置換を含む。
【0070】
本明細書に記載される変異体または改変に関して、アミノ酸の1文字コードとそれに続く数値によって表される位置の命名法は、野生型hFVIII(配列番号3)におけるアミノ酸残基およびその位置を指す。例えば、命名法「A20」は、野生型hFVIII配列(配列番号3)の20位におけるアミノ酸残基アラニン(A)を指す。同様に、第1のアミノ酸の1文字コード、それに続く数値、それに続く第2のアミノ酸の1文字コードによって表される置換の命名法は、第2のアミノ酸を有する野生型hFVIII(配列番号3)における数値で示される位置での元のアミノ酸残基の置換を指す。例えば、命名法「A20K」は、野生型hFVIII配列(配列番号3)の20位におけるアミノ酸残基アラニン(A)のアミノ酸残基リジン(K)による置換を指す。アミノ酸の位置の命名法および置換の命名法はまた、hFVIIIのドメイン、hFVIIIの重鎖および軽鎖、hFVIIIの断片、hFVIIIと共通配列を共有するポリペプチド、ならびに/またはhBDDF8などの他のhFVIII由来の配列にも適用される。
【0071】
一部の実施形態において、本出願は、A20、T21、F57、L69、I80、L178、R199、H212、I215、R269、I310、L318、S332、R378、I610およびI661からなる群から選択される1以上のアミノ酸残基におけるアミノ酸置換を含むmhFVIIIを提供する。mhFVIIIは、これらの16のアミノ酸部位を包含する変異の任意の並び替えを含んでいてもよい。本出願における使用のための例示的なmhFVIIIは
図3に記載されており、これは、ボックスを埋める単一および複数の変異を特定する。
【0072】
一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、A20K、T21I、T21V、F57L、L69V、I80V、L178F、R199K、H212Q、I215V、R269K、I310V、L318F、S332P、R378S、I610MおよびI661Vからなる群から選択される1以上のアミノ酸置換を含む。
【0073】
一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、T21位にアミノ酸置換を含む。好ましい置換としては、T21IおよびT21Vが挙げられる。一部の実施形態において、mhFVIIIは、A20、F57、L69、I80、L178、R199、H212、I215、R269、I310、L318、S332、R378、I610およびI661からなる群から選択される位置に1以上のアミノ酸置換をさらに含む。
【0074】
一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、A20およびT21位にアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、アミノ酸置換A20KおよびT21I(2M1変異体)、またはアミノ酸置換A20KおよびT21V(2M2変異体)を含む。
【0075】
一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、T21、L69およびI80位にアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、アミノ酸置換T21I、L69V、およびI80V(3M1変異体)を含む。
【0076】
一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、T21、L69、I80、およびL178位にアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、アミノ酸置換T21I、L69V、I80、およびL178F(4M1変異体)を含む。
【0077】
一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、T21、L69、I80およびI661位にアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、アミノ酸置換T21I、L69V、I80VおよびI661V(4M3変異体)を含む。
【0078】
一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、T21、L69、I80、L178およびI661位にアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、アミノ酸置換21I、L69V、I80V、L178FおよびI661V(5M4変異体)を含む。
【0079】
一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、R199、H212、I215、R269、I310、L318およびS332位にアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、アミノ酸置換R199K、H212Q、I215V、R269K、I310V、L318FおよびS332P(7M2変異体)を含む。
【0080】
一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、T21、L69、I80、L178、H212、I215、R269、L318およびI661位にアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、アミノ酸置換T21I、L69V、I80V、L178F、H212Q、I215V、R269K、L318FおよびI661V(9M1変異体)を含む。
【0081】
一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、A20、T21、L69、I80、L178、H212、I215、R269、L318およびI661位にアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、アミノ酸置換A20K、T21V、L69V、I80V、L178F、H212Q、I215V、R269K、L318FおよびI661V(10M1変異体)を含む。
【0082】
一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、T21、L69、I80、L178、R199、H212、I215、R269、I310、L318、S322およびI661位にアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、アミノ酸置換T21I、L69V、I80V、L178F、R199K、H212Q、I215V、R269K、I310V、L318F、S322PおよびI661V(12M1変異体)を含む。
【0083】
一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、A20、T21、L69、I80、L178、R199、H212、I215、R269、I310、L318、S332およびI661位にアミノ酸置換を含む。一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、アミノ酸置換A20K、T21V、L69V、I80V、L178F、R199K、H212Q、I215V、R269K、I310V、L318F、S332PおよびI661V(13M1変異体)を含む。
【0084】
一部の実施形態において、上記のアミノ酸置換に対応するアミノ酸位置は、他の保存的置換で置換されていてもよい。表1は、アミノ酸A20、T21、L69、I80、L178、R199、H212、I215、R269、I310、L318、S332およびI661位の例示的なアミノ酸置換のリストを提供する。
【0085】
【0086】
一部の実施形態において、上記のmhFVIIIは、Bドメインの欠失(「Bドメインなし」)を含む。Bドメインの欠失を含むhFVIIIポリペプチドの例は、米国特許第6,800,461号、米国特許第6,780,614号、米国特許出願公開第2004/0197875号に記載されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、単鎖ポリペプチドを含む。一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、トランケートされたまたは欠失したBドメインを有する単鎖hFVIIIポリペプチドを含む。一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、A1ドメインおよびA2ドメインを含む重鎖(HC)、ならびにA3ドメイン、C1ドメインおよびC2ドメインを含む軽鎖(LC)のヘテロ二量体を含む。一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、A1ドメイン、A2ドメイン、および全長またはトランケートされたBドメインを含む重鎖(HC)、ならびにA3ドメイン、C1ドメインおよびC2ドメインを含む軽鎖(LC)のヘテロ二量体を含む。一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、A1ドメインを含むポリペプチド、A2ドメインを含むポリペプチド、ならびにA3ドメイン、C1ドメインおよびC2ドメインを含むポリペプチドのヘテロ三量体を含む。
【0088】
一部の実施形態において、上記のmhFVIIIは、配列番号5で示されるネイティブhFVIIIシグナルペプチドを有するBドメインの欠失を含有する野生型hBDDF8に由来する。mhFVIIIの分泌形態は、配列番号2で示されるシグナルペプチド配列を含有しない。
【0089】
一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、イン・ビトロまたはイン・ビボで発現される場合、野生型hFVIIIまたはそれが由来する参照ポリペプチドの5%~100倍、10%~50倍、50%~25倍、2~100倍、2~80倍、2~60倍、2~40倍、2~20倍、2~10倍、2~5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍または少なくとも100倍のFVIII活性の増加をもたらす。イン・ビトロFVIII活性は、mhFVIIIを発現する細胞からの組織培養培地を分析することによって決定され得る。イン・ビボFVIII活性は、mhFVIIIまたはmhFVIIIを発現する発現ベクターの注入を受けている個体から収集された血漿を分析することによって決定され得る。
【0090】
一部の実施形態において、上記の本出願のmhFVIIIは、抗原性の低減、安定性の増加、血清結合タンパク質への結合を介した循環半減期の増加、タンパク質分泌の増加、第IXa因子および/もしくは第X因子に対する親和性の増加、フォン・ヴィルブランド因子に対する親和性の減少、グリコシル化の増加、不活性化切断の変更、少なくとも1つのカルシウム結合部位の変更、ならびに/または有効期間の増加のような他の所望の性質を付与するために、他のFVIII配列を追加して含み、欠失し、または改変するように、さらに改変されていてもよい。
【0091】
例えば、一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、R503A、R503G、P504A、L505S、Y506L、Y506A、S507A、S507L、R508A、R508S、R509G、L510S、P511L、P511A、K512A、G513S、V514A、K515M、H516L、L517S、K518M、D519A、F520A、P521L、I522M、L523M、P524A、G525A、E526G、I527M、I528A、M2218I、F2219L、V2242A、K2246E、L2271Fまたはそれらの任意の組合せなどの米国特許第5,859,204号、米国特許第6,770,744号、および米国特許出願公開第2003/0166536号に記載されるような、ヒトFVIIIの免疫原性および/または抗原性の原因となるアミノ酸置換を追加して含むように改変されてもよい。
【0092】
他の実施形態において、上記の本出願のmhFVIIIは、I105V、Y124F、A127S、D134E、Q136H、F148L、G151K、H153Q、M166TおよびL171Pまたはそれらの任意のみ合せなどの米国特許出願第2016/102133号に記載されるような、分泌の増加を提供するアミノ酸置換を追加して含むように改変されてもよい。
【0093】
他の実施形態において、上記の本出願のmhFVIIIは、融合されたA2およびA3ドメインのおかげで活性化されたFVIIIのより高い安定性を付与するアミノ酸置換を追加して含むように改変されてもよい。特に、FVIIIを、683および1845位のシステイン残基を置換することによって(すなわち、Y683C、T1845C)改変して、A2およびA3ドメインを共有結合的に連結するC683-Cl845ジスルフィド結合を形成する変異型FVIIIをもたらし得る。
【0094】
他の実施形態において、上記の本出願のmhFVIIIは、不活性化切断部位の変更を付与するアミノ酸置換を追加して含むようにさらに改変されてもよい。例えば、A355またはA581は、野生型FVIIIを通常不活性化する切断酵素に対する変異型FVIIIの感受性を減少させるために、置換し、使用される。
【0095】
他の実施形態において、上記の本出願のmhFVIIIは、第IXa因子に対する増強された親和性を付与するアミノ酸置換を追加して含むようにさらに改変されてもよい。
【0096】
他の実施形態において、上記の本出願のmhFVIIIは、増加した循環半減期を付与するアミノ酸置換を追加して含むようにさらに改変されてもよい。これは、限定されないが、ヘパラン硫酸との相互作用を低減することによってを含むさまざまなアプローチにより達成され得る。
【0097】
他の実施形態において、上記の本出願のmhFVIIIは、アスパラギン残基でのグリコシル化のための認識配列を付与するアミノ酸置換を追加して含むようにさらに改変されてもよい。そのような改変は、既存の阻害性抗体によって(低抗原性FVIII)、および阻害性抗体を発生する可能性を減少させることによって(低免疫原性FVIII)、検出の回避に有用であり得る。代表的な一実施形態において、改変FVIIIは、N-X--S/TなどのN連結グリコシル化のためのコンセンサスアミノ酸配列を組み込むように変異される。
【0098】
他の実施形態において、上記の本出願のmhFVIIIは、(i)フォン・ヴィルブランド因子結合部位を欠失させる、(ii)A759の変異を追加する、および/または(iii)A2およびA3ドメインの間にアミノ酸配列スペーサーを追加する変異を追加して含むようにさらに改変されていてもよく、アミノ酸スペーサーは、活性化の際に凝固促進活性FVIIタンパク質がヘテロ二量体になるような十分な長さのものである。
【0099】
一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、ヒトFVIII重鎖、および異なる種由来のFVIII軽鎖、例えば、イヌFVIII由来の軽鎖を含むハイブリッドFVIIIである。一部の実施形態において、ヒトFVIII重鎖は、本出願に記載される1以上のアミノ酸置換をさらに含む。一部の実施形態において、ハイブリッドFVIIIは、トランケートされたBドメインを含む。一部の実施形態において、ハイブリッドFVIIIは、(1)野生型ヒトFVIII重鎖配列または改変ヒトFVIII重鎖配列、および(B)異なる種由来のFVIII軽鎖配列、例えば、イヌFVIII由来の軽鎖を含む単一ポリペプチドからなる。一部の実施形態において、改変ヒトFVIII重鎖配列は、本出願に記載されるアミノ酸置換の1以上を含む。一部の実施形態において、改変ヒトFVIII重鎖配列は、本出願に記載されるアミノ酸置換の1以上を有するhBDDF8配列または改変hBDDF8配列を含む。
【0100】
III.mhFVIIIをコードするポリヌクレオチド、発現カセットおよび発現ベクター
本出願の別の態様は、本明細書に記載される置換の幅および/または他の変異をコードするすべての可能な核酸を含む、本出願のmhFVIIIをコードする単離されたポリヌクレオチドに関する。単離された核酸は、RNAまたはDNAであり得る。
【0101】
ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、さまざまなヒト、霊長類、または哺乳動物細胞、例えば、HuH7、HEK293TまたはCHO細胞における発現のためにコドン最適化されているmhFVIIIポリペプチドをコードする。本出願のmhFVIIIをコードするポリヌクレオチドは、コードされるアミノ酸配列を変更することなく、宿主細胞における活性、安定性または発現を改善するようにコドン最適化されていてもよい。
【0102】
コドンは、3つのヌクレオチドのセットからなり、特定のアミノ酸をコードするか、または翻訳の終結をもたらす(すなわち、停止コドン)。遺伝コードは、複数のコドンが、同じアミノ酸を規定する、すなわち、20個のアミノ酸をコードする合計で61のコドンが存在する点で、重複している。コドン最適化は、ポリヌクレオチド配列中に存在するコドンを、同じアミノ酸をコードする好ましいコドン、例えば、哺乳動物発現のために好ましいコドンで置換する。そのため、アミノ酸配列は、プロセスの間に変更されない。コドン最適化は、遺伝子最適化ソフトウェアを使用して行うことができる。コドン最適化されたヌクレオチド配列は、翻訳され、元のタンパク質配列と整列させて、アミノ酸配列に対して変化が行われていないことが確認される。コドン最適化の方法は、当技術分野において公知であり、例えば、米国出願公開第2008/0194511号および米国特許第6,114,148号に記載されている。
【0103】
一部の実施形態において、mhFVIIIタンパク質は、単鎖のBドメインなしのmhFVIIIの形態で発現される。一部の実施形態において、mhFVIIIタンパク質は、hFVIIIの重鎖(HC)および軽鎖(LC)を含む二重鎖(DC)タンパク質の形態で、1以上の核酸から発現される。一部の実施形態において、mhFVIIIタンパク質は、A1ドメインを含むポリペプチド、A2ドメインを含むポリペプチド、ならびにA3、C1およびC2ドメインを含むポリペプチドのヘテロ三量体の形態で、1以上の核酸から発現される。
【0104】
一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIをコードするポリヌクレオチドは、野生型hFVIIIアミノ末端シグナルペプチド(配列番号2)を発現するためのコード配列を含み、これは、成熟タンパク質から除去される。一部の実施形態において、本出願のmhFVIIIは、配列番号5(シグナルペプチドあり)または配列番号6(シグナルペプチドなし)のアミノ酸配列を有するhBDDF8タンパク質に由来する。シグナルペプチド配列は、発現のレベルに影響を及ぼし得るので、mhFVIIIをコードするポリヌクレオチドは、当技術分野において公知の各種の異種N末端シグナルペプチドのいずれかを持つmhFVIIIを発現するために操作されていてもよい。
【0105】
一部の実施形態において、上記の本出願のmhFVIIIをコードするポリヌクレオチドは、上にさらに記載されているように、抗原性の低減、安定性の増加、血清結合タンパク質への結合を介した循環半減期の増加、タンパク質分泌の増加、第IXa因子および/もしくは第X因子に対する親和性の増加、フォン・ヴィルブランド因子に対する親和性の減少、グリコシル化の増加、不活性化切断の変更、1つもしくは複数のカルシウム結合部位の変更、ならびに/または有効期間の増加のような他の所望の性質を付与する、他のFVIII配列を追加して含み、欠失し、または改変するように、改変されていてもよい。
【0106】
本出願のさらなる態様は、本明細書に記載されるmhFVIIIを発現するための発現カセットに関する。一部の実施形態において、発現カセットは、本出願のmhFVIIIをコードするヌクレオチド配列、およびヌクレオチド配列に動作可能に連結された調節配列を含む。一部の実施形態において、調節配列は、プロモーターを含む。
【0107】
本出願のさらなる態様は、イン・ビトロおよび/またはイン・ビボで本出願のmhFVIIIを発現することができる発現ベクターに関する。一部の実施形態において、発現ベクターは、非ウイルスベクター、例えば、プラスミドである。一部の実施形態において、発現ベクターは、ウイルスベクター、例えば、AAVベクターまたはレンチウイルスベクターである。
【0108】
本出願のmhFVIIIを発現するための発現ベクターは、典型的には、発現されるポリヌクレオチド配列に動作可能に連結された1以上の調節配列を含む。発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現のレベルなどのような要因に依存し得ることは、当業者によって認識されるであろう。本出願の発現ベクターは、宿主細胞に導入されて、それによって本明細書に記載されるmhFVIIIを産生することができる。
【0109】
哺乳動物細胞における発現を指示するための好適な発現ベクターは、一般に、プロモーター、ならびに当技術分野において公知の他の転写および翻訳制御配列を含む。ある特定の実施形態において、哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞型において優先的にポリヌクレオチドの発現を指示することができる(例えば、組織特異的調節エレメントを使用して、ポリヌクレオチドが発現される)。組織特異的調節エレメントは、当技術分野において公知であり、例えば、肝臓細胞特異的プロモーターおよび/またはエンハンサー(例えば、アルブミンプロモーター、a-1アンチトリプシンプロモーター、apoEエンハンサー)が含まれ得る。あるいは、事実上任意の細胞型において活性な構成的プロモーター(例えば、HCMV)が使用されてもよい。
【0110】
ある特定の好ましい実施形態において、発現ベクターは、ウイルスベクターである。ウイルスベクターは、典型的には、除去された1以上のウイルス遺伝子を有し、本明細書に記載される変異型FVIII遺伝子を含む外因性導入遺伝子の挿入のためにウイルスゲノム挿入部位に挿入された遺伝子/プロモーターカセットを含む。除去された遺伝子の必要な機能は、トランスで初期遺伝子の遺伝子産物を発現するように操作されている細胞株によって供給され得る。例示的なウイルスベクターとしては、限定されるものではないが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、およびアルファウイルスベクターが挙げられる。他のウイルスベクターとしては、アストロウイルス、コロナウイルス、オルソミクソウイルス、パポーバウイルス、パラミクソウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、トガウイルスのウイルスベクターなどが挙げられる。ウイルスベクターは、任意の好適な核酸構築物、例えば、DNAまたはRNA構築物を含んでいてもよく、一本鎖、二本鎖、または二重であってもよい。
【0111】
本出願のDNA構築物が調製されたら、これは、宿主細胞に組み込まれる準備ができている。したがって、本出願の別の態様は、mhFVIII核酸を含む組換え細胞を作製する方法に関する。基本的に、これは、形質転換、形質導入、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、リポソームなどを介してDNA構築物を細胞に導入すること、および宿主ゲノムにDNAがエピソーム導入または組み込まれた細胞について選択することを伴う。一部の実施形態において、mhFVIIIを発現する細胞は、血友病の処置のために、対象に移植される。
【0112】
一部の実施形態において、mhFVIIIタンパク質は、血友病を有する患者への投与のために、ウイルスベクターから発現される。一部の実施形態において、ウイルスベクターは、AAVベクターである。一部の実施形態において、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。一部の実施形態において、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクターである。一部の実施形態において、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクターである。一部の実施形態において、ウイルスベクターは、ヘルペスウイルスベクターである。一部の実施形態において、mhFVIIIをコードする1以上のAAVベクターの投与方法が提供される。
【0113】
組換えAAVおよびレンチウイルスベクターは、各種の遺伝子療法適用に対する幅広い有用性が見出されている。そのような適用に対するそれらの有用性は、各種の器官の文脈において達成されるイン・ビボ遺伝子移入の高い効率に大いに起因する。AAVおよびレンチウイルス粒子は、有効な遺伝子送達のためのビヒクルとしての利益をもたらすために使用され得る。そのようなビリオンは、分裂および非分裂細胞のための向性を含む、そのような適用のためのいくつかの所望の特性を持つ。これらのベクターを用いる初期の臨床実験は、持続的な毒性がないことも実証し、免疫応答は、最小限であったか、または検出不能であった。AAVは、受容体媒介エンドサイトーシスによってまたはトランスサイトーシスによって、イン・ビトロおよびイン・ビボで、多種多様な細胞型に感染することが公知である。これらのベクター系は、ヒトにおいて、網膜上皮、肝臓、骨格筋、気道、脳、関節、および造血幹細胞の標的化が試験されている。プラスミドDNAまたはミニサークルに基づく非ウイルスベクターが、FVIIIをコードするもののような大きな遺伝子のための好適な遺伝子移入ベクターでもある可能性がある。
【0114】
一部の実施形態において、mhFVIIIコード配列は、カプシドにパッケージングされたウイルスベクターの構成要素として提供される。一部の実施形態において、AAVベクターは、本出願のmhFVIIIのイン・ビボ送達のために使用される。この場合において、AAVベクターは、少なくとも1つのmhFVIII、およびmhFVIII配列の発現を制御するための関連する発現制御配列を含む。mhFVIII配列を発現するための例示的なAAVベクターとしては、FVIII発現のためのプロモーター-エンハンサー調節領域、ならびにプロモーターの複製およびmhFVIII核酸のAAVカプシドへのパッケージングおよびmhFVIII核酸の標的細胞のゲノムへの組込みを可能にするように機能するシス作用性ITRが挙げられ得る。好ましくは、AAVベクターは、欠失し、mhFVIII配列によって置換されたそのrepおよびcap遺伝子、ならびにその関連する発現制御配列を有する。mhFVIII配列は、典型的には、ウイルス複製のために適当な1つまたは2つのAAV TRまたはTRエレメントに隣接して(すなわち、フランキングして)挿入される。最も好ましくは、ベクターの必須部分のみ、例えば、それぞれ、ITRおよびLTRエレメントのみが含まれる。一部の実施形態において、2つ以上のAAVベクターが、本出願のmhFVIIIのイン・ビボ送達のために使用される。この場合において、それぞれのAAVベクターは、上記のようにして構築され、mhFVIIIコード配列の一部分を持つ(例えば、あるベクターは、mhFVIII重鎖についてのコード配列を持ち、別のベクターは、mhFVIII軽鎖についてのコード配列を持つ)。
【0115】
標的細胞における変異型hFVIII配列の組織特異的発現を促進するために好適な調節配列は、イン・ビトロまたはイン・ビボで、mhFVIIIの発現のために利用される。本出願の発現構築物における組織特異的調節エレメントの組込みは、mhFVIIIまたはその機能的断片の発現のための少なくとも部分的な組織向性を提供する。例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターまたはCAGプロモーターの制御下で変異型FVIIIをコードする核酸配列は、骨格筋発現のために用いることができるか、またはhAAT-ApoEなどは、肝臓特異的発現のために用いることができる。AAVおよびレンチウイルスベクターにおける造血特異的プロモーターも、イン・ビボでmhFVIIIの発現を駆動するために利用され得る。
【0116】
パッケージングされたウイルスベクターのウイルスカプシド構成要素は、パルボウイルスカプシドであってもよい。AAV Capおよびキメラカプシドが好ましい。好適なパルボウイルスカプシド構成要素の例は、パルボウイルス科(Parvoviridae family)、例えば、自律性パルボウイルスまたはディペンドウイルス由来のカプシド構成要素である。例えば、ウイルスカプシドは、AAVカプシド(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV 9、AAV10、AAV11またはAAV12カプシド;当業者には、同じまたは類似の機能を行うまだ特定されていない他のバリアントが存在する可能性があることは公知であろう)であってもよく、または2つ以上のAAVカプシド由来の構成要素を含んでいてもよい。AAV Capタンパク質の完全相補体は、VP1、VP2、およびVP3を含む。AAV VPカプシドタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むORFは、全長未満の相補的AAV Capタンパク質を含んでいてもよく、またはAAV Capタンパク質の完全相補体が提供されてもよい。
【0117】
AAV Capタンパク質の1以上は、キメラタンパク質であってもよく、これは、Rabinowitzら、米国特許第6,491,907号に記載されるように、2つ以上のウイルス、好ましくは、2つ以上のAAV由来のアミノ酸配列AAV Capを含む。例えば、キメラウイルスカプシドは、AAV1 Capタンパク質またはサブユニット、および少なくとも1つのAAV2 Capまたはサブユニットを含むことができる。キメラカプシドは、例えば、1以上のB19 Capサブユニットを有するAAVカプシドを含むことができ、例えば、AAV Capタンパク質またはサブユニットは、B19 Capタンパク質またはサブユニットによって置換することができる。例えば、AAVカプシドのVp3サブユニットは、B19のVp2サブユニットによって置換することができる。
【0118】
パッケージング細胞を培養して、本出願のパッケージングされたウイルスベクターを産生し得る。パッケージング細胞は、(1)ウイルスベクター機能、(2)パッケージング機能、および(3)ヘルパー機能を含み得る。ウイルスベクター機能は、典型的には、上記の、欠失し、変異型FVIII配列によって置換されたrepおよびcap、ならびにその関連する発現制御配列とともに、AAVゲノムなどのパルボウイルスゲノムの一部分を含む。
【0119】
ある特定の実施形態において、ウイルスベクター機能は、Samulskiらの米国特許公開第2004/0029106号に記載されているように、二重ベクター鋳型として好適に提供され得る。二重ベクターは、二量体の自己相補性(sc)ポリヌクレオチド(典型的には、DNA)である。例えば、二重ベクターのDNAは、鎖内塩基対形成に起因する二本鎖ヘアピン構造を形成するように、選択され得る。二重DNAベクターの両鎖は、ウイルスカプシド内にパッケージングされ得る。二重ベクターは、二本鎖DNAウイルスベクターと同等の機能を提供し、ウイルスによって通常カプシド形成された一本鎖ゲノムに対する相補的DNAを合成する標的細胞の必要性を軽減し得る。
【0120】
ウイルスベクターにおける使用のために選択されるTR(分解可能および分解不能)は、好ましくは、AAV配列(任意のAAV血清型由来)である。分解可能なAAV ITRは、TRが、所望の機能、例えば、ウイルスパッケージング、組込み、および/またはプロウイルスレスキューなどを媒介する限り、野生型TR配列を有する必要はない(例えば、野生型配列は、挿入、欠失、トランケーションまたはミスセンス変異によって変更され得る)。TRは、Samulskiらの米国特許第5,478,745号に記載される「ダブル-D配列」などのAAV逆位末端反復配列として機能する合成配列であってもよい。必ずしもではないが、典型的には、TRは、同じパルボウイルス由来である、例えば、両TR配列は、AAV2由来である。
【0121】
パッケージング機能は、カプシド構成要素を含む。カプシド構成要素は、好ましくは、AAVカプシドまたはキメラAAVカプシド機能などのパルボウイルスカプシド由来である。好適なパルボウイルスカプシド構成要素の例は、パルボウイルス科、例えば、自律性パルボウイルスまたはディペンドウイルス由来のカプシド構成要素である。例えば、カプシド構成要素は、AAVカプシド、例えば、AAV1~AAV12、およびまだ特定されていない、または非ヒト霊長類起源の他の新規カプシドから選択され得る。カプシド構成要素は、2つ以上のAAVカプシド由来の構成要素を含んでいてもよい。
【0122】
ある特定の実施形態において、VPカプシドタンパク質の1以上は、2つ以上のウイルス、好ましくは、2つ以上のAAV由来のアミノ酸配列を含む、キメラタンパク質を含み得る。例えば、キメラウイルスカプシドは、アデノ随伴ウイルス(AAV)由来のカプシド領域、およびB19ウイルス由来の少なくとも1つのカプシド領域を含むことができる。キメラカプシドは、例えば、1以上のB19カプシドサブユニットを有するAAVカプシドを含み、例えば、AAVカプシドサブユニットは、B19カプシドサブユニットによって置換することができる。例えば、AAVカプシドのVP1、VP2またはVP3サブユニットは、B19のVP1、VP2またはVP3サブユニットによって置換することができる。別の例として、キメラカプシドは、2型VP1サブユニットが、AAV1、3、4、5、または6型カプシド、好ましくは、3、4、または5型カプシド由来のVP1サブユニットによって置換されている、AAV2型カプシドを含んでいてもよい。あるいは、キメラパルボウイルスは、2型VP2サブユニットが、AAV1、3、4、5、または6型カプシド、好ましくは、3、4、または5型カプシド由来のVP2サブユニットによって置換されている、AAV2型カプシドを有する。同様に、AAV1、3、4、5、または6型(より好ましくは、3、4、または5型)由来のVP3サブユニットが、AAV2型カプシドのVP3サブユニットで置換されているキメラパルボウイルスが好ましい。さらなる代替として、AAV2型サブユニットの2つが、異なる血清型(例えば、AAV1、3、4、5、または6型)のAAV由来のサブユニットによって置換されているキメラパルボウイルスが好ましい。この実施形態による例示的なキメラパルボウイルスにおいて、AAV2型カプシドのVP1およびVP2、またはVP1およびVP3、またはVP2およびVP3サブユニットは、異なる血清型(例えば、AAV1、3、4、5、または6型)のAAVの対応するサブユニットによって置換されている。同様に、他の好ましい実施形態において、キメラパルボウイルスは、1つまたは2つのサブユニットが、AAV2型について上記のように、異なる血清型のAAV由来のもので置換されているAAV1、3、4、5、または6型カプシド(好ましくは、2、3または5型カプシド)を有する。
【0123】
パッケージングされたウイルスベクターは、一般に、変異型FVIII配列、ならびにベクターDNAのパッケージングおよび形質導入細胞における変異型FVIII配列のその後の発現をもたらすのに十分なTRエレメントにフランキングしている発現制御配列を含む。ウイルスベクター機能は、例えば、プラスミドまたはアンプリコンの構成要素として細胞に供給されてもよい。ウイルスベクター機能は、細胞株内で染色体外に存在していてもよく、および/または細胞の染色体DNAに組み込まれていてもよい。
【0124】
IV.mhFVIIIタンパク質産生方法および細胞株
本出願の別の態様は、本出願のmhFVIIIを作製する方法に関する。これは、宿主細胞が発現ベクターによって形質転換されて、mhFVIIIを発現する条件下で本出願の宿主細胞が成長することを伴う。次いで、発現したmhFVIIIは、単離される。
【0125】
本出願のさらなる態様は、本出願のmhFVIIIをコードする単離された核酸分子を含む宿主細胞に関する。宿主細胞は、エピソームプラスミドの形態のDNA分子として単離された核酸分子を含有することができるか、またはそれは、宿主細胞ゲノムに安定に組み込むことができる。さらに、宿主細胞は、mhFVIIIタンパク質を産生するための発現系を構成することができる。好適な宿主細胞としては、限定されないが、動物細胞(例えば、ヒトHuH7およびHEK293細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(「CHO」)、ベビーハムスター腎臓(「BHK」)細胞)、細菌細胞(例えば、大腸菌(E.coli))、昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)、真菌細胞、酵母細胞(例えば、サッカロミセス属(Saccharomyces)またはシゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces))、植物細胞(例えば、シロイヌナズナまたはタバコ細胞)、藻類細胞などであり得る。本出願を行うために好適な哺乳動物細胞としては、数ある中でも、COS(例えば、ATCC番号CRL 1650または1651)、BHK(例えば、ATCC番号CRL 6281)、CHO(ATCC番号CCL 61)、HeLa(例えば、ATCC番号CCL 2)、293(ATCC番号1573)、CHOP、HuH7、HEK293およびNS-1細胞が挙げられる。
【0126】
本出願の別の態様は、mhFVIIIを培養細胞から産生する方法に関する。一部の実施形態において、方法は、(a)シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列およびmhFVIIIをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、mhFVIIIが、A20K、T21I、T21V、F57L、L69V、I80V、L178F、R199K、H212Q、I215V、R269K、I310V、L318F、S332P、R378S、I610MおよびI661Vからなる群から選択される位置に1以上のアミノ酸置換を含む、ポリヌクレオチド;およびポリヌクレオチドに作動可能に連結された調節配列を含む発現ベクターを宿主細胞に導入する工程;(b)mhFVIIIの発現および分泌に好適な条件下で発現ベクターを保持している宿主細胞を成長させる工程;ならびに(c)宿主細胞の培養培地および/または宿主細胞を採取する工程、ならびに(d)採取された培養培地および/または宿主細胞からmhFVIIIを精製する工程を含む。
【0127】
一実施形態において、宿主細胞は、成長培地においてイン・ビトロで成長する。好適な成長培地としては、限定されないが、フォン・ヴィルブランド因子(本明細書において「VWF」と称される)を含有する成長培地が挙げられ得る。この実施形態において、宿主細胞は、VWFをコードする導入遺伝子を含有し得るか、またはVWFは、補充物として成長培地に導入され得る。成長培地中のVWFは、mhFVIIIのより高い発現レベルを可能にする。組換えFVIIIが成長培地に分泌されると、次いで、これは、関連する組換えDNAおよびタンパク質の技術分野において当業者に周知の技法(本明細書に記載されるものを含む)を使用して、成長培地から単離することができる。別の実施形態において、本出願のmhFVIIIを作製する方法は、mhFVIIIの単離の前に、宿主細胞を破壊する工程をさらに含む。この実施形態において、mhFVIIIは、細胞残屑から単離される。
【0128】
mhFVIIIは、好ましくは、実質的に純粋な形態で産生される。特定の実施形態において、実質的に純粋な組換えFVIIIは、少なくとも約80%純粋、より好ましくは、少なくとも90%純粋、最も好ましくは、少なくとも95%純粋、98%純粋、99%純粋、または99.9%純粋である。実質的に純粋な組換えFVIIIは、当技術分野において周知の従来の技法によって得ることができる。典型的には、実質的に純粋なmhFVIIIは、組換え宿主細胞の成長培地に分泌される。あるいは、実質的に純粋なmhFVIIIは、産生されるが、成長培地に分泌されない。そのような場合、実質的に純粋なmhFVIIIを単離するために、組換えプラスミドを持つ宿主細胞は、増やされ、超音波処理によって溶解され、加熱され、または化学的処理され、ホモジネートは、遠心分離されて、細胞残屑が除去される。次いで、上清は、逐次的硫酸アンモニウム沈殿に付される。実質的に純粋なmhFVIIIを含有する画分は、適切なサイズのデキストランまたはポリアクリルアミドカラムにおけるゲル濾過に付されて、mhFVIIIが分離される。必要により、タンパク質画分(実質的に純粋なmhFVIIIを含有する)は、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)によってさらに精製されてもよい。
【0129】
V.処置方法
本出願の別の態様は、FVIII欠乏症を有する患者を処置する方法に関する。
【0130】
一部の実施形態において、本方法は、有効量の本出願のmhFVIIIをそれを必要とする患者に投与する工程を含む。一部の実施形態において、mhFVIIIは、精製形態で静脈内投与される。
【0131】
他の実施形態において、本方法は、有効量の本出願のmhFVIIIのコード配列を含む発現ベクターをそれを必要とする患者に投与する工程を含み、発現ベクターは、患者においてmhFVIIIを発現することができる。
【0132】
他の実施形態において、本方法は、有効量の本出願のmhFVIIIのコード配列を含む細胞をそれを必要とする患者に投与する工程を含み、細胞は、移植後に、患者においてmhFVIIIを発現することができる。一部の実施形態において、細胞は、皮膚線維芽細胞である。一部の実施形態において、細胞は、自家細胞である。一部の実施形態において、方法は、mhFVIIIコード配列を標的細胞の集団に導入する工程であって、標的細胞が、そのような処置を必要とする対象から単離される、工程、標的細胞においてmhFVIIIを発現する工程、および有効量のmhFVIIIを発現する細胞を対象に注入する工程を含む。
【0133】
一部の実施形態において、FVIII欠乏症は、血友病Aである。この場合、本出願のmhFVIIIの発現は、ヒトFVIIIに対する抗体を発生する血友病を含む、そうでなければFVIII欠乏症に起因する未制御の出血(例えば、関節内、頭蓋内、または胃腸の出血症状)を受けやすい患者における凝固を増強することができる。ベクターの標的細胞は、FVIII活性を有するポリペプチドを発現することができる細胞、例えば、哺乳動物の肝臓系の細胞、内皮細胞、および前駆体を処理してFVIII活性を有するタンパク質を生じる、適当な細胞機構を有する他の細胞である。
【0134】
mhFVIIIタンパク質、またはmhFVIIIをコードする発現ベクター、またはmhFVIIIを発現する細胞のFVIII欠乏症患者への投与は、凝固カスケードを機能的に再構成することができる。mhFVIIIタンパク質、またはmhFVIIIをコードする発現ベクター、またはmhFVIIIを発現する細胞は、単独で、または薬学的に許容されるもしくは生物学的に適合する組成物中で他の治療剤と組み合わせて投与することができる。
【0135】
一部の実施形態において、方法は、ヒトまたは動物FVIIIの注入のために使用される同じ手順に従って、mhFVIIIタンパク質を含む医薬組成物を患者に静脈内投与する工程を含む。好適な有効量のmhFVIIIとしては、限定されないが、約10~約500単位/患者の体重kgが挙げられ得る。
【0136】
mhFVIIIをコードする発現ベクター、またはmhFVIIIタンパク質、またはmhFVIIIを発現する細胞の処置投薬量は、FVIII欠乏症の重症度に応じて変わる。一般に、投薬量レベルは、それぞれの患者の出血エピソードの重症度および期間に沿って、頻度、期間、および単位において調節される。したがって、mhFVIIIをコードする発現ベクター、またはmhFVIIIタンパク質、またはmhFVIIIを発現する細胞は、標準的な凝固アッセイによって測定されるように、出血を停止するための治療有効量のタンパク質を患者に送達するのに十分な量で、薬学的に許容される担体、送達ビヒクル、または安定化剤に含まれる。
【0137】
FVIIIは、古典的には、血友病Aを有する個体に由来する血漿における凝固の欠陥を修正する正常な血漿中に存在する物質として定義される。精製および部分的精製形態のFVIIIのイン・ビトロでの凝固活性は、ヒト患者における注入のためのmhFVIIIの用量を算出するために使用され、患者の血漿から回収された活性およびイン・ビボの出血の欠陥の修正の信頼性のある指標である。イン・ビトロでの新規FVIII分子の標準的なアッセイとイヌ注入モデルまたはヒト患者におけるそれらの挙動との間の食い違いは報告されていない。
【0138】
通常、FVIIIの投与により患者において達成される所望の血漿FVIII活性レベルは、正常の30~200%の範囲内である。一実施形態において、治療的mhFVIIIの投与は、約5~500単位/体重kgの範囲内、および特に、10~100単位/体重kgの範囲内の好ましい投薬量、ならびにさらに特に、20~40単位/体重kgの好ましい投薬量で静脈内に与えられ;間隔の頻度は、約8~24時間(重篤な血友病において)の範囲内であり;処置の期間(日)は、1~10日の範囲内、または出血エピソードが解消されるまでである。阻害因子を有する患者は、FVIIIのそれらの以前の形態とは異なる量のmhFVIIIを必要とし得る。例えば、患者は、野生型VIIIよりも高い特異的活性およびその減少した抗体反応性を理由として、より少ないmhFVIIIを必要とし得る。ヒトまたは血漿由来FVIIIによる処置におけるように、注入される治療的mhFVIIIの量は、1段階のFVIII凝固アッセイによって定義され、選択された例において、イン・ビボ回収は、注入後の患者の血漿におけるFVIIIを測定することによって決定される。いかなる特定の対象についても、具体的な投薬レジメンが、個体の必要性および組成物を投与する者またはその投与監督者の専門的な判断に従って経時的に調節しなければならないこと、ならびに本明細書に示される濃度範囲が、単に例示的なものであって、特許請求の範囲に係るmhFVIIIの範囲またはプラクティスを限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。
【0139】
処置は、必要により、mtFVIIIの単回静脈内投与、または長期間にわたる定期的もしくは継続的投与の形態を取ることができる。あるいは、治療的mhFVIIIは、種々の時間間隔で、1用量または数用量のリポソームで、皮下または経口投与することができる。
【0140】
発現ベクターの必要とするヒト対象または動物への投与は、ウイルスベクターを投与するための当技術分野において公知の任意の手段によってであり得る。例示的な投与の方式としては、直腸、経粘膜、局部、経皮、吸入、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、筋肉内、および関節内)投与など、ならびに組織または器官への直接注射、あるいはくも膜下腔内、直接筋肉内、脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、または眼内注射が挙げられる。注射物質は、液状の溶液もしくは懸濁液、注射前に液状の溶液もしくは懸濁液に好適な固体形態、またはエマルションとしてのいずれかの従来の形態で調製することができる。あるいは、ウイルスを、全身的な様式ではなく局所的な様式、例えば、デポー製剤または持続放出製剤で投与してもよい。
【0141】
ある特定の好ましい実施形態において、発現ベクターは、筋肉内、より好ましくは、筋肉内注射、または局所投与によって投与される。本明細書に開示されるベクターは、任意の好適な手段によって対象の肺に投与されてもよいが、好ましくは、対象が吸入する、本発明のパルボウイルスベクターから構成される呼吸用粒子のエアロゾル懸濁剤を投与することによって投与される。呼吸用粒子は、液体または固体であり得る。本発明のパルボウイルスベクター(例えば、AAV)を含む液状粒子のエアロゾルは、当業者に公知であるように、任意の好適な手段、例えば、圧力駆動性エアロゾル噴霧吸入器または超音波噴霧吸入器によって生成されてもよい。例えば、米国特許第4,501,729号を参照されたい。
【0142】
mhFVIIIを発現するウイルスベクターの投薬量は、投与の方式、処置される疾患または状態、個々の対象の状態、特定のウイルスベクター、および送達される遺伝子に依存し、ルーチン的な様式で決定することができる。治療効果を達成するための例示的な用量は、少なくとも約105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014、1015形質導入単位以上、好ましくは、約108~1013形質導入単位、さらにより好ましくは、1012形質導入単位のウイルス力価である。本出願のmtFVIIIをコードするポリヌクレオチドは、標的細胞における発現のために適切な調節エレメントを有するDNA分子の構成要素として投与されてもよい。本出願のmtFVIIIをコードするポリヌクレオチドは、ウイルスプラスミドまたはウイルス粒子、例えば、AAV粒子の構成要素として投与されてもよい。ウイルス粒子は、それを必要とする対象の門脈血管への直接的なイン・ビボ直接送達によってウイルス粒子単独として、またはエクス・ビボでのウイルス粒子による細胞の形質導入と、それに続くイン・ビボでの形質導入された細胞を対象に戻す導入を含むエクス・ビボ処置として投与されてもよい。
【0143】
mtFVIIIをコードするポリヌクレオチドは、重鎖および軽鎖部分の両方を含有する単鎖分子として、または患者の宿主細胞への送達のための複数の独立したウイルスもしくは非ウイルスベクターにおいて2つもしくは複数の分子(例えば、重鎖および軽鎖)に分割して、用いることができる。
【0144】
一部の実施形態において、発現ベクターは、ウイルスベクターである。本出願において使用され得るウイルスベクターとしては、限定されるものではないが、複数の血清型のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、AAV-1~AAV-12、およびそれらのシュードタイプベクター)、ハイブリッドAAVベクター、レトロウイルスベクターが挙げられ、レンチウイルスベクターおよびシュードタイプレンチウイルスベクター(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)およびネコ免疫不全ウイルス(FIV));アデノウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、非ウイルスベクターなどを含む。加えて、ウイルスベクターのいずれも、組織特異的プロモーター/エンハンサーなどを含むように改変されていてもよい。
【0145】
VI.医薬組成物
本出願の別の態様は、(1)本出願のmhFVIIIポリペプチド、mhFVIIIをコードする発現ベクター、またはmhFVIIIを発現する細胞、および(2)薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0146】
例示的な薬学的に許容される担体としては、無菌のパイロジェンフリーの水、および無菌のパイロジェンフリーのリン酸緩衝生理食塩水が挙げられる。生理学的に許容される担体には、薬学的に許容される担体が含まれる。薬学的に許容される担体は、生物学的等の点で有害ではないもの、すなわち、材料の有利な生物学的効果を上回る有害な生物学的効果を引き起こすことなく、対象に投与され得る材料である。一部の実施形態において、医薬組成物は、注射製剤化される。
【0147】
注射について、担体は、典型的には、液体である。注射媒体として、注射溶液のために有用な添加剤、例えば、安定剤、塩もしくは生理食塩水、および/または緩衝液を含有する水を使用することが好ましい。投与の他の方法について、担体は、固体または液体のいずれかであり得る。吸入投与について、担体は、呼吸用であり、好ましくは、固体または液体の粒子形態である。
【0148】
本出願を、以下の実施例によってさらに説明するが、これらは本出願を限定するものと解釈すべきではない。本出願全体を通して引用されたすべての参考文献、特許および公開特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0149】
実施例1 第VIII因子変異体の構築、発現および特徴評価
鋳型:プラスミドpANG-CAG-hBDDF8を、複数のhFVIII変異をhFVIII重鎖のコード領域に導入するための鋳型として使用した。
図1に示すように、ヒト第VIII因子(hBDDF8)cDNAを含有するpANG-CAG-hBDDF8(配列番号15)は、CAGプロモーターの制御下にある。加えて、pANG-CAG-hBDDF8は、機能的に欠陥があるBドメインをもたらすBドメインにおける欠失を持つ。
図2は、pANG-CAG-hBDDF8において構築されたhFVIII変異を特定する。
図3は、単一アミノ酸置換およびその組合せの両方を含む、本研究において分析された両hFVIII変異を示す。
【0150】
単一の変異:GIBSON ASSEMBLY(登録商標)法を使用して、ヒト第VIII因子のA20K、T21I、T21V、F57L、L69V、I80V、L178F、R199K、H212Q、I215V、R269K、I310V、L318F、S332P、R378S、I610MおよびI661Vに対応する個々の変異を、pANG-CAG-hBDDF8プラスミドに導入した。得られたプラスミドには、pANG-CAG-hBDDF8-A20K、pANG-CAG-hBDDF8、pANG-CAG-hBDDF8-T21I、pANG-CAG-hBDDF8-T21V、pANG-CAG-hBDDF8-F57L、pANG-CAG-hBDDF8-L69V、pANG-CAG-hBDDF8-I80V、pANG-CAG-hBDDF8-L178F、pANG-CAG-hBDDF8-R199K、pANG-CAG-hBDDF8-H212Q、pANG-CAG-hBDDF8-I215V、pANG-CAG-hBDDF8-R269K、pANG-CAG-hBDDF8-I310V、pANG-CAG-hBDDF8-L318F、pANG-CAG-hBDDF8-S332P、pANG-CAG-hBDDF8-R378S、pANG-CAG-hBDDF8-I610M、pANG-CAG-hBDDF8-I661Vが含まれる。
【0151】
T21変異体:T21をPで置換することによって、AvrII制限部位を、pANG-CAG-hBDDF8に導入した。得られたプラスミドpANG-CAG-hBDDF8-T21Pを鋳型として使用して、アミノ酸21位における複数の点変異を作出した。pANG-CAG-hBDDF8-T21Pを、AvrIIによって消化し、本明細書に記載される変異体構築物のための鋳型として使用した。T21位に対応するNNNを有する19オリゴヌクレオチドを、HIFIアセンブリーによって、pANG-CAG-hBDDF8に組み換えた。変異体プラスミドには、pANG-CAG-hBDDF8-T21V、pANG-CAG-hBDDF8-T21I・・・pANG-CAG-hBDDF8-T21Gなどが含まれる。最後の文字は、その特定の位置におけるアミノ酸置換を示す。類似の戦略を使用して、本発明に従う他の置換を作製することができる。
【0152】
T21Iを有するA20変異:T21Iおよびアラニン20に対応するNNNを有する19オリゴヌクレオチドを、HIFIアセンブリーによって、AvrIIによって消化されるpANG-CAG-hBDDF8-T21Pに組み換えた。得られた変異体プラスミドには、pANG-CAG-hBDDF8-A20K/T21I(2M1)、pANG-CAG-hBDDF8-A20E/T21I・・・pANG-CAG-hBDDF8-A20V/T21Iなどが含まれる。類似の戦略を使用して、本発明に従う他の置換、例えば、pANG-CAG-hBDDF8-A20K/T21V(2M2)を作製することができる。
【0153】
変異の組合せ:複数のHC変異を有するhFVIII変異体(
図3に示される通り)を、pANG-CAG-hBDDF8において構築した。一実施形態において、置換変異A20K、T21V、L69V、I80V、L178F、R199K、H212Q、I215V、R269K、I310V、L318F、S332PおよびI661VをコードするDNA断片を化学合成し、pANG-CAG-hBDDF8中の対応する領域を置換するために使用した。得られたプラスミドpANG-CAG-BDDF8-13M1は、上記の13個の変異を有する変異型第VIII因子タンパク質(13M1)を発現する。
【0154】
別の実施形態において、置換変異T21I、L69V、I80V、L178F、R199K、H212Q、I215V、R269K、I310V、L318F、S332PおよびI661VをコードするDNA断片を化学合成し、pANG-CAG-hBDDF8の対応する領域を置換するために使用した。得られたプラスミドpANG-CAG-BDDF8-12M1は、上記の12個の変異を有する変異型第VIII因子タンパク質(12M1)を発現する。
【0155】
別の実施形態において、置換変異A20K、T21V、L69V、I80V、L178F、H212Q、I215V、R269K、L318F、およびI661VをコードするDNA断片を化学合成し、pANG-CAG-hBDDF8の対応する領域を置換するために使用した。得られたプラスミドpANG-CAG-BDDF8-10M1は、上記の10個の変異を有する変異型第VIII因子タンパク質(10M1)を発現する。
【0156】
別の実施形態において、置換変異T21I、L69V、I80V、L178F、H212Q、I215V、R269K、L318F、およびI661VをコードするDNA断片を化学合成し、pANG-CAG-hBDDF8の対応する領域を置換するために使用した。得られたプラスミドpANG-CAG-BDDF8-9M1は、上記の9個の変異を有する変異型第VIII因子タンパク質(9M1)を発現する。
【0157】
別の実施形態において、置換変異R199K、H212Q、I215V、R269K、I310V、L318F、およびS332PをコードするDNA断片を化学合成し、pANG-CAG-hBDDF8の対応する領域を置換するために使用した。得られたプラスミドpANG-CAG-BDDF8-7M2は、上記の7個の変異を有する変異型第VIII因子タンパク質(7M2)を発現する。
【0158】
別の実施形態において、置換変異T21I、L69V、I80V、L178F、およびI661VをコードするDNA断片を化学合成し、pANG-CAG-hBDDF8の対応する領域を置換するために使用した。得られたプラスミドpANG-CAG-BDDF8-5M4は、上記の5個の変異を有する変異型第VIII因子タンパク質(5M4)を発現する。
【0159】
別の実施形態において、置換変異T21V、L69V、I80VおよびI661VをコードするDNA断片を化学合成し、pANG-CAG-hBDDF8の対応する領域を置換するために使用した。得られたプラスミドpANG-CAG-BDDF8-4M3は、上記の4個の変異を有する変異型第VIII因子タンパク質(4M3)を発現する。
【0160】
別の実施形態において、置換変異T21I、L69V、I80VおよびL178FをコードするDNA断片を化学合成し、pANG-CAG-hBDDF8の対応する領域を置換するために使用した。得られたプラスミドpANG-CAG-BDDF8-4M1は、上記の4個の変異を有する変異型第VIII因子タンパク質(4M1)を発現する。
【0161】
別の実施形態において、置換変異T21I、L69VおよびI80VをコードするDNA断片を化学合成し、pANG-CAG-hBDDF8の対応する領域を置換するために使用した。得られたプラスミドpANG-CAG-BDDF8-3M1は、上記の3個の変異を有する変異型第VIII因子タンパク質(3M1)を発現する。
【0162】
変異型構築物の機能活性を試験するために、HEK 293T、HuH7およびCHO細胞を、10%のウシ胎仔血清、ペニシリン(100U/ml)およびストレプトマイシン(100μg/ml)を有するDMEM中、5%のCO2が供給された湿潤環境において、37℃で培養した。HEK 293T、HuH7およびCHO細胞を、pANG-CAG-hDDF8における野生型および変異型発現構築物でトランスフェクションした。トランスフェクション後、細胞を、2%の不活性化ウシ胎仔血清を有するRPMI-1640培地中で維持した。細胞培養培地を、トランスフェクション後の異なる時間(24時間、48時間、72時間)に収集した。分泌されたFVIIIの活性を、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)アッセイを使用して分析した。正常なヒト血漿を、標準として使用した。
【0163】
これらのアッセイの代表的な結果を、
図4~10、11Bおよび13に示す。簡潔には、
図4~6は、トランスフェクション後48時間で、野生型hFVIIIと比較した、HuH7細胞(
図4)およびHEK 293T細胞(
図5、6)における特異的な単一アミノ酸置換変異体の機能活性の増加を示す。
図6は、T21IおよびT21V変異体が、トランスフェクション後48時間で、HEK 293T細胞においてFVIII活性を有意に増加させたことを示す。
図7は、A20Kを保有する二重変異体(A20K/T21IおよびA20K/T21V)が、トランスフェクション後48時間で、T21およびT21V単一置換対応物に対して、HEK 293T細胞においてFVIII活性をさらに増加させたことを示す。
図8~10は、複数の変異の組合せが、それぞれ、トランスフェクション後24時間および48時間で、HuH7、HEK 293T、およびCHO細胞において、野生型、単一置換および二重置換変異体と比較して、FVIII機能活性を大いに増加させることができることを示す。
【0164】
実施例2 ハイブリッドヒト/イヌ第VIII因子変異体の構築、発現および機能活性
変異型hVIII重鎖(hHC)およびイヌFVIII軽鎖(cLC)からなる変異型ハイブリッドヒト/イヌFVIIIを比較して本出願の変異型hVIIIの機能活性を評価するために、
図11Aおよび11Bに示されるように、一連のBドメインなしのFVIII構築物を調製し、HEK 293T細胞において発現させた。
【0165】
簡潔には、変異型ヒトFVIII重鎖およびイヌFVIII軽鎖を含有する変異型FVIIIを構築した。簡潔には、pANG-CAG-hBDDF8を、CspCIおよびXhoIを用いて消化した。イヌ軽鎖(cLC)をコードするDNA断片を化学合成し、Gibson assemblyによって、pANG-CAG-hBDDF8において対応するヒト軽鎖(hLC)領域を置換するために使用した。得られたプラスミドpANG-CAG-hHC-cLCは、hHCおよびcLCから構成される(すなわちhHC-cLC)、Bドメインなしのハイブリッドヒト/イヌ第VIII因子ポリペプチドを発現する。配列番号10は、ネイティブhFVIIIシグナルペプチドありのhHC-cLCタンパク質のアミノ酸配列を示す。配列番号11は、配列番号10におけるタンパク質をコードするcDNA配列を示す。配列番号12は、hFVIIIシグナルペプチドなしのhHC-cLCタンパク質のアミノ酸配列を示す。配列番号13は、hHC-cLCタンパク質におけるトランケートされたBドメインのアミノ酸配列を示し、配列番号14は、イヌFVIII軽鎖(cLC)のアミノ酸配列を示す。
【0166】
類似の戦略を使用して、
図11Aに示されるように(および要約されるように)、pANG-CAG-qwHC-2M1-cLC(2M1変異体)およびpANG-CAG-qwHC-9M1-cLC(9M1変異体)プラスミドを作製した。分泌されたFVIIIの活性を、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)アッセイを使用して分析した。
図11Bは、トランスフェクション後48時間での、hFVIII(すなわち、未改変hBDDF8タンパク質)の機能活性と比較した、HEK 293T細胞におけるさまざまなヒト/イヌハイブリッドFVIII変異体の機能活性を示す。
図11Bに示されるように、この系におけるhLCのcLCによる置換は、親プラスミドhBDDF8から発現されるhFVIIIと比較して、増加したFVIII活性をもたらした。
【0167】
別の態様において、本出願の変異型hVIIIを発現するrAAVベクターの機能活性を、親hBDDF8を発現するrAAVベクターと比較した。この場合、hBDDF8タンパク質および改変hBDDF8タンパク質を発現する一連のrAAVを構築し、産生した。得られたrAAVを使用して、HuH7細胞に感染させ、感染細胞におけるhVIII活性を分析した。
【0168】
この場合、hBDDF8におけるCAGプロモーターをヒトTTRプロモーターで置換した第1の本出願の変異型hVIIIを発現する一連のrAAVを構築した。簡潔には、pANG-CAG-hBDDF8を、SnaBIおよびMluIを用いて消化した。TTRプロモーターおよびイントロンをコードするDNA断片を化学合成し、Gibson assemblyによって、pANG-CAG-hBDDF8においてCAGプロモーター領域を置換するために使用した。
【0169】
図12に示すように、得られたプラスミドpANG-TTR-hBDDF8(配列番号18)は、TTRプロモーターの制御下で、hBDDF8タンパク質を発現する。類似の戦略を使用して、pANG-TTR-qwBDDF8-2M1、pANG-TTR-qwBDDF8-2M2、pANG-TTR-qwBDDF8-9M1、pANG-TTR-qwBDDF8-10M1、pANG-TTR-qwBDDF8-12M1、pANG-TTR-qwBDDF8-13M1プラスミドを作製した。
【0170】
pANG-TTR-hBDDF8およびその改変バリアントプラスミドを、AAV2カプシドでパッケージングして、それらからrAAVを産生した。簡潔には、pAAV-RepおよびCap(血清型2)、pAdヘルパー、および導入遺伝子プラスミドを、1:1:1の比で、ローラーボトルにおいて培養されたHEK 293T細胞に共トランスフェクションした。トランスフェクションされた細胞培地からのrAAVを、トランスフェクション後72時間で採取し、2ラウンドのCsCl勾配超遠心分離によって精製した。rAAVのそれぞれを収集し、5%のD-ソルビトールを有するPBSに対して大規模に交換した。
【0171】
HuH7細胞を、10%のFBS、ペニシリン(100U/ml)、およびストレプトマイシン(100μg/ml)を有するDMEM(Invitrogen、Carlsbad、CA)中、5%のCO2が供給された湿潤環境において、37℃で成長させた。それぞれの形質導入実験のために、50,000個の生存細胞を、24ウェルプレートに、形質導入24時間前に播種した。rAAVを、100,000vg/細胞で、それぞれのウェルに直接添加した。分泌されたFVIIIの活性を、トランスフェクション後72時間で、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)アッセイを使用して分析した。
【0172】
図13に示すように、改変hBDDF8は、HuH7細胞においてrAAVベクターによって発現された場合に、未改変hBDDF8と比較して、増加したFVIII活性を示した。
【0173】
上記の実施例は、本出願の変異型第VIII因子産物が、野生型第VIII因子と比較して、増加した機能活性を示すことを表す。したがって、本明細書に記載される変異体の使用は、既存の構築物と比べて、必要な生産コストおよびFVIII発現のレベルを減少させることができる。それらはまた、より高度に活性なFVIII産物を提供することによって、投与されるより低いベクター用量を可能にする。
【0174】
上述の記載は、当業者に、本出願を実施する方法を教示する目的のためのものである。説明を読む際に当業者に明らかになるであろう、すべての自明な改変およびその変形形態を詳述することを意図するものではない。しかしながら、すべてのそのような自明な改変および変形形態が、以下の特許請求の範囲によって定義される本出願の範囲内に含まれることを意図する。特許請求の範囲は、文脈が具体的に逆のことを示さない限り、特許請求の範囲に係る構成要素および工程を、これらの意図した目的を満たすために有効な任意の順序で包含することを意図する。
【配列表】
【国際調査報告】