(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】エタノールとアセトアルデヒドとの混合物から1,3-ブタジエンを生産するための断熱的に実施されるプロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 1/207 20060101AFI20240308BHJP
C07C 11/167 20060101ALI20240308BHJP
B01J 38/12 20060101ALI20240308BHJP
B01J 23/20 20060101ALI20240308BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240308BHJP
【FI】
C07C1/207
C07C11/167
B01J38/12 B
B01J23/20 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560552
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 EP2022058731
(87)【国際公開番号】W WO2022207893
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319007860
【氏名又は名称】シントス ドボリ 7 スプウカ ズ オグラニザツィーノン オトゥポビエジャルノシチョン
【氏名又は名称原語表記】SYNTHOS DWORY 7 SPOLKA Z OGRANICZONA ODPOWIEDZIALNOSCIA
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ヤンコヴィアク、エヴェリナ
(72)【発明者】
【氏名】スコフロネク、シモン
(72)【発明者】
【氏名】シトコ、マグダレナ
(72)【発明者】
【氏名】グルガチュ、ヴォイチェフ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA10
4G169AA15
4G169BA01A
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA07A
4G169BA10A
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC22A
4G169BC50A
4G169BC51A
4G169BC52A
4G169BC55A
4G169BC56A
4G169BC56B
4G169CB21
4G169CB25
4G169CB63
4G169DA05
4G169FC08
4G169GA06
4H006AA02
4H006AA04
4H006AB46
4H006AB84
4H006AC10
4H006AC12
4H006AC29
4H006BA10
4H006BA11
4H006BA12
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC18
4H006BC31
4H006BD84
4H039CA20
4H039CF90
4H039CL25
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの断熱反応ゾーンを有する1,3-ブタジエン生産反応器においてエタノールおよびアセトアルデヒドを含む供給物を反応させることを含む、1,3-ブタジエンの生産プロセスに関する。さらに、本発明は、i.アセトアルデヒド生産反応器においてエタノールからアセトアルデヒドを生産するステップと、ii.1,3-ブタジエン生産反応器においてエタノールおよびアセトアルデヒドから1,3-ブタジエンを生産するステップとを含む、エタノールから1,3-ブタジエンを生産するプロセスに関する。本発明はさらに、エタノールおよびアセトアルデヒドから1,3-ブタジエンを生産する少なくとも1つの1,3-ブタジエン生産反応器を含む、1,3-ブタジエンを生産するためのプラントに関する。最後に、本発明は、i.セトアルデヒド生産反応器と、ii.1,3-ブタジエン生産反応器とを含む、エタノールから1,3-ブタジエンを生産するためのプラントに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの断熱反応ゾーンを有する1,3-ブタジエン生産反応器中でエタノールおよびアセトアルデヒドを含む供給物を反応させることを含む1,3-ブタジエンの生産プロセスであって、前記断熱反応ゾーンが担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する、プロセス。
【請求項2】
前記供給物が、前記供給物の総重量に基づいて少なくとも40重量%のエタノールを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記供給物が、前記供給物の総重量に基づいて少なくとも12.5重量%のアセトアルデヒドを含む、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記担持触媒が、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、チタン、およびスズのうちの1つ以上、特にタンタルを含み、
好ましくは、前記担持触媒は、Ta
2O
5として計算され、前記担持触媒の総重量に基づいて、0.1~10重量%、好ましくは0.5~5重量%、より好ましくは2~3重量%の量のタンタルを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記供給物中のアセトアルデヒドに対するエタノールのモル比が、1~7、好ましくは1.5~5、より好ましくは2~4、特に2.5~3.5の範囲、例えば約3である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記担持触媒と接触する前の前記供給物の温度が、320~430℃の範囲である、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する前記断熱反応ゾーンが、0~1MPaG(0~10barg)、好ましくは100kPaG~500kPaG(1~5barg)、より好ましくは100kPaG~300kPaG(1~3barg)の圧力で操作される、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記プロセスは、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産するn個(nは2以上の整数である)の断熱反応ゾーンにおいて実施され、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する各第(n-1)の断熱反応ゾーンからの流出物の少なくとも一部は、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第nの断熱反応ゾーンに供給され、
好ましくは、アセトアルデヒドを含む追加の供給物は、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産するn個の断熱反応ゾーンのいずれかに供給され、
より好ましくは、アセトアルデヒドを含む追加の供給物が、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産するn個の断熱反応ゾーンの各々に供給される、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第nの断熱反応ゾーンへの供給物中のアセトアルデヒドに対するエタノールのモル比が、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第(n-1)の断熱反応ゾーンへの供給物中のアセトアルデヒドに対するエタノールのモル比の85~115%に等しくなるように、前記追加の供給物の組成および流量が調整される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する断熱反応ゾーンにおけるWHSVは、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産するこの断熱反応ゾーンからの流出物中のアセトアルデヒドに対するエタノールのモル比が、この断熱反応ゾーンへの供給物中のアセトアルデヒドに対するエタノールのモル比よりも少なくとも20%高くなるように調整され、
好ましくは、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する各断熱反応ゾーンにおけるWHSVは、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産するこの断熱反応ゾーンからの流出物中のアセトアルデヒドに対するエタノールのモル比が、この断熱反応ゾーンへの供給物中のアセトアルデヒドに対するエタノールのモル比よりも少なくとも30%高くなるように調整される、請求項8または9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記1,3-ブタジエン生産反応器は、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第1の断熱反応ゾーンと、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第2の断熱反応ゾーンとを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する前記第1の断熱反応ゾーンと、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する前記第2の断熱反応ゾーンとが、非反応ゾーンによって仕切られており、
好ましくは、前記非反応ゾーンが加熱され、
より好ましくは、加熱された前記非反応ゾーンが不活性充填物を含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する前記第1の断熱反応ゾーンと、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する前記第2の断熱反応ゾーンとが、非反応ゾーンによって仕切られており、
担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する前記第1の断熱反応ゾーンからの流出物の少なくとも一部は、熱交換器を通過し、次いで担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する前記第2の断熱反応ゾーンに供給される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項14】
アセトアルデヒドを含む追加の供給物が、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する前記第1の断熱反応ゾーンの後で前記反応器に供給され、
好ましくは、前記追加の供給物は、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する前記第1の断熱反応ゾーンからの流出物と混合され、次いで担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する前記第2の断熱反応ゾーンに供給される、請求項11~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記追加の供給物は、エタノールをさらに含み、前記追加の供給物中のアセトアルデヒドに対するエタノールのモル比は、0.1~5、好ましくは1~2、より好ましくは1.4~1.8の範囲である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する少なくとも第1の断熱反応ゾーンを有する第1の1,3-ブタジエン生産反応器と、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する少なくとも第2の断熱反応ゾーンを有する第2の1,3-ブタジエン生産反応器とが直列につながれ、前記第1の1,3-ブタジエン生産反応器からの流出物の少なくとも一部が前記第2の1,3-ブタジエン生産反応器に供給され、より好ましくは、アセトアルデヒドを含む追加の供給物が前記第2の反応器に供給される、請求項1~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記第1の1,3-ブタジエン生産反応器からの流出物が加熱され、次いで前記第2の1,3-ブタジエン生産反応器に供給される、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
エタノールから1,3-ブタジエンを生産するプロセスであって、
i.反応ゾーンを有するアセトアルデヒド生産反応器においてエタノールからアセトアルデヒドを生産するステップであって、前記アセトアルデヒド生産反応器の前記反応ゾーンが、担持触媒または非担持(バルク)触媒を含む、ステップと、
ii.請求項1~17のいずれか一項に記載のプロセスに従って1,3-ブタジエンを生産するステップと、を含み、
好ましくは、前記アセトアルデヒド生産反応器の前記反応ゾーンは等温反応ゾーンである、プロセス。
【請求項19】
1,3-ブタジエンを生産するための少なくとも1つの反応器を含む、1,3-ブタジエンを生産するためのプラントであって、1,3-ブタジエンを生産するための前記反応器が
a)1,3-ブタジエンを生産するための少なくとも1つのゾーンであって、エタノールおよびアセトアルデヒドから1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒を含むゾーンと、
b)1,3-ブタジエンを生産するための前記反応器にエタノールおよびアセトアルデヒドを含む供給物を供給するための手段とを含み、
1,3-ブタジエンを生産するための前記反応器は、1,3-ブタジエンを生産するための前記担持触媒と接触する前にエタノールおよびアセトアルデヒドを含む前記供給物を加熱するための反応物加熱手段を有し、前記反応物加熱手段は、断熱条件下でエタノールおよびアセトアルデヒドを反応させるのに十分であり、
1,3-ブタジエンを生産するための前記反応器は
c)1,3-ブタジエンを生産するための前記担持触媒を再生するための手段であって、好ましくは1,3-ブタジエンを生産するための前記担持触媒を再生するための手段は、
x)1,3-ブタジエンを生産するための前記反応器に不活性ガスを含む流れを供給するための手段、および
y)1,3-ブタジエンを生産するための前記反応器に酸素を含む流れを供給するための手段
を含む前記担持触媒を再生するための手段をさらに有し、
1,3-ブタジエンを生産するための前記反応器は、不活性ガスおよび酸素を含む流れを、1,3-ブタジエンを生産するための前記担持触媒と接触する前に加熱するための再生剤加熱手段を有し、前記再生剤加熱手段は、断熱条件下で前記担持触媒を再生するのに十分である、プラント。
【請求項20】
エタノールから1,3-ブタジエンを生産するためのプラントであって
i.エタノールからアセトアルデヒドを生産するための少なくとも1つの反応器であって、エタノールからアセトアルデヒドを生産するための前記反応器が
a)エタノールからアセトアルデヒドを生産するための少なくとも1つのゾーンであって、アセトアルデヒドを生産するための担持触媒または非担持(バルク)触媒を含むゾーン、および
b)アセトアルデヒドを生産するための前記反応器にエタノールを含む供給物を供給するための手段
を含む、エタノールからアセトアルデヒドを生産するための少なくとも1つの反応器と、
ii.1,3-ブタジエンを生産するための少なくとも1つの反応器であって、1,3-ブタジエンを生産するための前記反応器が
a)1,3-ブタジエンを生産するための少なくとも1つのゾーンであって、エタノールおよびアセトアルデヒドから1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒を含むゾーン、および
b)1,3-ブタジエンを生産するための前記反応器にエタノールおよびアセトアルデヒドを含む供給物を供給するための手段
を含む、1,3-ブタジエンを生産するための少なくとも1つの反応器とを含み、
1,3-ブタジエンを生産するための前記反応器は、1,3-ブタジエンを生産するための前記担持触媒と接触する前にエタノールおよびアセトアルデヒドを含む前記供給物を加熱するための反応物加熱手段を有し、前記反応物加熱手段は、断熱条件下でエタノールおよびアセトアルデヒドを反応させるのに十分であり
1,3-ブタジエンを生産するための前記反応器は
c)1,3-ブタジエンを生産するための前記担持触媒を再生するための手段であって、好ましくは1,3-ブタジエンを生産するための前記担持触媒を再生するための手段は、
x)1,3-ブタジエンを生産するための前記反応器に不活性ガスを含む流れを供給するための手段、および
y)1,3-ブタジエンを生産するための前記反応器に酸素を含む流れを供給するための手段
を含む、前記担持触媒を再生するための手段をさらに有し、
1,3-ブタジエンを生産するための前記反応器は、不活性ガスおよび酸素を含む流れを、1,3-ブタジエンを生産するための前記担持触媒と接触する前に加熱するための再生剤加熱手段を有し、前記再生剤加熱手段は、断熱条件下で前記担持触媒を再生するのに十分であり、
好ましくは、前記アセトアルデヒド生産反応器の前記反応ゾーンは等温反応ゾーンである、プラント。
【請求項21】
エタノールおよびアセトアルデヒドから1,3-ブタジエンを生産するための前記担持触媒が、タンタル、ニオブ、ハフニウム、およびスズのうちの1つ以上を含み、
好ましくは、エタノールおよびアセトアルデヒドから1,3-ブタジエンを生産するための前記担持触媒は、タンタルを含む、請求項19または20に記載のプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの断熱反応ゾーンを有する1,3-ブタジエン生産反応器においてエタノールおよびアセトアルデヒドを含む供給物を反応させることを含む、1,3-ブタジエンの生産プロセスに関する。さらに、本発明は、i.アセトアルデヒド生産反応器においてエタノールからアセトアルデヒドを生産するステップ、およびii.1,3-ブタジエン生産反応器においてエタノールおよびアセトアルデヒドから1,3-ブタジエンを生産するステップを含む、エタノールから1,3-ブタジエンを生産するプロセスに関する。本発明はさらに、エタノールおよびアセトアルデヒドから1,3-ブタジエンを生産する少なくとも1つの1,3-ブタジエン生産反応器を含む、1,3-ブタジエンを生産するためのプラントに関する。最後に、本発明は、i.エタノールからアセトアルデヒドを生産するアセトアルデヒド生産反応器、およびii.エタノールおよびアセトアルデヒドから1,3-ブタジエンを生産する1,3-ブタジエン生産反応器を含む、エタノールから1,3-ブタジエンを生産するためのプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
1,3-ブタジエンは、ポリマー産業における重要な化学物質の1つであり、主に合成ゴムを製造するために使用される。古典的なアプローチでは、1,3-ブタジエンは、ナフサの水蒸気分解によって工業的規模で生産され、抽出蒸留によって流出物から分離される。しかしながら、このプロセスの主な欠点は、高いエネルギー消費および化石燃料供給原料への依存である。化石燃料枯渇のリスクならびに環境保護に対する要求の高まりにより、好ましくはバイオマスなどの再生可能資源に基づく、オレフィン生産のためのより低いエネルギー消費でより環境に優しい経路の探索が活発になっている。
【0003】
持続可能な1,3-ブタジエンは、発酵によって得られるブタンジオールから生産され得る(特許文献1、特許文献2)。
特許文献3は、予熱された2,3-ブタンジオールからの1,3-ブタジエンおよびメチルエチルケトンの同時生産を開示している。エタノールまたはエタノール-アセトアルデヒド混合物から1,3-ブタジエンを生産するのに直接適した触媒は開示されていない。
【0004】
また、Global BioenergiesならびにGenomicaおよびBraskemは、微生物が糖を1,3-ブタジエンに変換する傾向があることを発見した(特許文献4~6)。しかしながら、これらのプロセスにおける1,3-ブタジエンの生産性は、工業規模で重要性を得るには低すぎる。
【0005】
特許文献7は、ブテンの酸化的(発熱的)脱水素による1,3-ブタジエンの生産を教示している。
経済的および環境的考慮から、エタノールは1,3-ブタジエン生産のための最も有望な持続可能な供給原料の1つとして導かれている。エタノールの1,3-ブタジエンへの化学変換のための2つの経路が存在する:いわゆる1段階(レベデフ(Lebedev))プロセスおよび2段階(オストロミスレンスキー(Ostromislensky))プロセス。1段階プロセスは、ガス状エタノールの1,3-ブタジエンへの直接触媒変換を含む。2段階プロセスは、反応を、i)エタノールのアセトアルデヒドへの部分脱水素化、およびii)エタノールとアセトアルデヒドとの混合物の1,3-ブタジエンへの変換の2つの段階に分ける。
【0006】
エタノールとアセトアルデヒドとの混合物の1,3-ブタジエンへの変換は吸熱反応である。基質の1,3-ブタジエンへの最適な変換のために十分なエネルギーを送達する反応器内の温度を維持することが不可欠である。したがって、エタノールとアセトアルデヒドとの混合物の1,3-ブタジエンへの変換を、専用の触媒上での等温プロセスによって行うことは、文献において周知であり、等温プロセスの多くの改変が報告されている。エタノールとアセトアルデヒドとの混合物の1,3-ブタジエンへの変換が等温条件下で行われる場合、反応器およびその中の触媒は、エタノール/アセトアルデヒド混合物の1,3-ブタジエンへの吸熱変換が起こることを可能にするのに十分高い比較的一定の温度を維持するために、熱伝達媒体によって加熱される。しかしながら、特に再生のために必要とされる高い反応温度を提供するための、溶融塩流体などの熱伝達媒体の使用は高価であり、反応器のセットアップをより複雑にする。550℃までの温度での再生は、典型的には、(少なくとも部分的に)酸化条件下で触媒をリフレッシュ(回復)するために必要とされ、一方、エタノールとアセトアルデヒドとの1,3-ブタジエンへの反応は、典型的には、320~420℃、例えば約350℃の温度で行われる。さらに、等温反応器は、多管式反応器であることが多いので、構造が複雑であることが多い。また、等温プロセスに使用される典型的な設備を使用する場合には、熱伝達装置が存在するため、反応器の保守がより困難である。これは、1,3-ブタジエンの生産のための典型的な触媒、例えばタンタル触媒の寿命が比較的短く、触媒負荷を定期的に、例えば約1~2年後に変更する必要があるので、特に面倒である。
【0007】
したがって、より経済的であり、より単純な反応器のセットアップおよび保守を可能にする、エタノールとアセトアルデヒドとの混合物から1,3-ブタジエンを生産するためのプロセスを提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2009/151342号
【特許文献2】国際公開第2017/198503号
【特許文献3】米国特許第9884800号明細書(米国特許出願公開第2017/0342009号明細書としても公開されている)
【特許文献4】米国特許第9169496号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2016/0369306号明細書
【特許文献6】豪国特許出願公告第2012212118号明細書
【特許文献7】中国特許第103772117号明細書
【発明の概要】
【0009】
本発明によれば、驚くべきことに、エタノールとアセトアルデヒドとの混合物の1,3-ブタジエンへの変換を断熱条件下で行うことができ、これはより経済的であり、より単純な反応器のセットアップおよび保守を可能にすることが見出された。
【0010】
エタノールとアセトアルデヒドとの混合物の1,3-ブタジエンへの変換の吸熱性のために、反応ゾーンへの効率的で均一で容易に制御可能な熱の供給は、適切な反応器設計のための重要な要因の1つである。これらの要件を満たすために、反応器は、反応容積に対する伝熱面積の高い比によって特徴付けられなければならない。したがって、そのような用途のための典型的な反応器設計は、シェルアンドチューブ熱交換器タイプの多管式固定床反応器であり、加熱媒体はシェルを通って流れ、反応物は(触媒粒子が装填された)小径管を通って流れる。このような多管式反応器は、特に、触媒を再生するのに必要な高温に適した加熱媒体が必要とされる場合、設計が非常に困難である。さらに、このような種類の反応器は、特に使用済み触媒を新しい触媒と交換しなければならない場合に、操作および維持することが困難である。エタノールとアセトアルデヒドとの混合物の1,3-ブタジエンへの変換は、本発明に従って断熱モードで行われるので、熱供給は反応器設計とは別に考慮され、反応器およびその中の触媒ゾーンはより短く、より大きな直径を有することができる。例えば、本発明に従って使用される断熱管状固定床タイプの反応器は、単純な設計を提供し、単純な構造であり、容易な操作および保守を可能にする。
【0011】
したがって、第1の態様では、本発明は、少なくとも1つの断熱反応ゾーンを有する1,3-ブタジエン生産反応器においてエタノールおよびアセトアルデヒドを含む供給物を反応させることを含む1,3-ブタジエンの生産プロセスであって、断熱反応ゾーンが担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する、プロセスに関する。
【0012】
第2の態様では、本発明は、エタノールから1,3-ブタジエンを生産するプロセスであって
i.反応ゾーンを有するアセトアルデヒド生産反応器においてエタノールからアセトアルデヒドを生産するステップであって、アセトアルデヒド生産反応器の反応ゾーンが、担持触媒または非担持(バルク)触媒を含む、ステップと
ii.(本発明の第1の態様に関して)本明細書に記載されるプロセスに従って1,3-ブタジエンを生産するステップとを含み、
好ましくは、アセトアルデヒド生産反応器の反応ゾーンは等温反応ゾーンである、プロセスに関する。
【0013】
さらに、第3の態様では、本発明は、1,3-ブタジエンを生産するための少なくとも1つの反応器を含む、1,3-ブタジエンを生産するためのプラントであって、1,3-ブタジエンを生産するための反応器が
a)1,3-ブタジエンを生産するための少なくとも1つのゾーンであって、エタノールおよびアセトアルデヒドから1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒を含むゾーンと
b)1,3-ブタジエンを生産するための反応器にエタノールおよびアセトアルデヒドを含む供給物を供給するための手段とを含み、
1,3-ブタジエンを生産するための反応器は、1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒と接触する前にエタノールおよびアセトアルデヒドを含む供給物を加熱するための反応物加熱手段を有し、反応物加熱手段は、断熱条件下でエタノールおよびアセトアルデヒドを反応させるのに十分であり、
1,3-ブタジエンを生産するための反応器は、
c)1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒を再生するための手段であって、好ましくは1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒を再生するための手段は、
x)1,3-ブタジエンを生産するための反応器に不活性ガスを含む流れを供給するための手段、および
y)1,3-ブタジエンを生産するための反応器に酸素を含む流れを供給するための手段
を含む、担持触媒を再生するための手段をさらに含み、
1,3-ブタジエンを生産するための反応器は、不活性ガスおよび酸素を含む流れを、1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒と接触させる前に加熱するための再生剤加熱手段を有し、再生剤加熱手段は、断熱条件下で担持触媒を再生するのに十分である、プラントに関する。
【0014】
最後に、第4の態様では、本発明は、エタノールから1,3-ブタジエンを生産するためのプラントであって、
i.エタノールからアセトアルデヒドを生産するための少なくとも1つの反応器であって、エタノールからアセトアルデヒドを生産するための反応器が、
a)エタノールからアセトアルデヒドを生産するための少なくとも1つのゾーンであって、アセトアルデヒドを生産するための担持触媒または非担持(バルク)触媒を含むゾーン、および
b)アセトアルデヒドを生産するための反応器にエタノールを含む供給物を供給するための手段
を含む、エタノールからアセトアルデヒドを生産するための少なくとも1つの反応器と、
ii.1,3-ブタジエンを生産するための少なくとも1つの反応器であって、1,3-ブタジエンを生産するための反応器が、
a)1,3-ブタジエンを生産するための少なくとも1つのゾーンであって、エタノールおよびアセトアルデヒドから1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒を含むゾーン、および
b)1,3-ブタジエンを生産するための反応器にエタノールおよびアセトアルデヒドを含む供給物を供給するための手段
を含む、1,3-ブタジエンを生産するための少なくとも1つの反応器とを含み、
1,3-ブタジエンを生産するための反応器は、1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒と接触する前にエタノールおよびアセトアルデヒドを含む供給物を加熱するための反応物加熱手段を有し、反応物加熱手段は、断熱条件下でエタノールおよびアセトアルデヒドを反応させるのに十分であり、
1,3-ブタジエンを生産するための反応器は、
c)1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒を再生するための手段であって、好ましくは1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒を再生するための手段は、
x)1,3-ブタジエンを生産するための反応器に不活性ガスを含む流れを供給するための手段、および
y)1,3-ブタジエンを生産するための反応器に酸素を含む流れを供給するための手段
を含む、担持触媒を再生するための手段をさらに含み、
1,3-ブタジエンを生産するための反応器は、不活性ガスおよび酸素を含む流れを、1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒と接触させる前に加熱するための再生剤加熱手段を有し、再生剤加熱手段は、断熱条件下で担持触媒を再生するのに十分であり、
好ましくは、アセトアルデヒド生産反応器の反応ゾーンは等温反応ゾーンである、プラントに関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による1,3-ブタジエンの生産のための例示的なプロセスのスキーム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1)1,3-ブタジエンの生産プロセス
本発明の第1の態様によれば、1,3-ブタジエンの生産プロセスは、少なくとも1つの断熱反応ゾーンを有する1,3-ブタジエン生産反応器中でエタノールおよびアセトアルデヒドを含む供給物を反応させるステップを含み、断熱反応ゾーンが担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する。
【0017】
本発明によれば、1,3-ブタジエンを得るためのエタノールとアセトアルデヒドとの混合物の(吸熱)反応に必要な熱エネルギーは、断熱反応ゾーンに供給される供給物によってのみ断熱反応ゾーンに供給される。したがって、断熱反応ゾーンに供給される当該供給物は、断熱反応ゾーンに供給される供給物と担持触媒との接触が起こる前に、加熱手段によって適切な温度に加熱される。
【0018】
断熱反応ゾーンに供給される供給物の温度を上昇させるための加熱手段は、例えば、熱交換器、または1つの反応器内の2つの断熱反応ゾーンを仕切る加熱された不活性充填物であってもよい。
【0019】
本発明によれば、熱交換器列は、熱担体として作用する供給物に熱を供給するように特に設計され、反応器設計は熱損失の減少に焦点を当てている:
反応段階a)では、エタノールおよびアセトアルデヒドを含む供給物は、断熱条件下で1,3-ブタジエンへの吸熱反応を行うための熱担体として作用する。反応物加熱手段は、エタノールおよびアセトアルデヒドを含む加熱された供給物が1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒と接触するとき、断熱条件下でエタノールとアセトアルデヒドとを反応させるのに十分である。
【0020】
再生段階b)では、それぞれの加熱されたガス流は、断熱条件下で担持触媒を再生するための熱担体として作用する。再生剤加熱手段は、加熱されたガス流が、担持触媒と接触するときに、断熱条件下で担持触媒を再生するのに十分である。
【0021】
断熱反応ゾーンに供給される供給物は、エタノールおよびアセトアルデヒドを含む供給物、ならびに任意選択でアセトアルデヒドを含む追加の供給物を含む。
反応ゾーンからの流出物、またはいくつか(n個)の反応ゾーンが使用される場合、第nの反応ゾーンからの流出物は、分離され、エタノールおよびアセトアルデヒドは、それらをリサイクルする前に、ある純度レベルまで精製される。流出物からのエタノールは、アセトアルデヒドを生産する反応ゾーンに、または1,3-ブタジエンを生産する(第1のまたは任意の後続の)反応ゾーンに、またはアセトアルデヒドを生産する反応ゾーンおよび1,3-ブタジエンを生産する(第1のまたは任意の後続の)反応ゾーンの両方にリサイクルされ得る。流出物からのアセトアルデヒドは、1,3-ブタジエンを生産する(第1のまたは任意の後続の)反応ゾーンにリサイクルされ得る。
【0022】
本発明によるプロセスでは、1,3-ブタジエンを得るためのエタノールとアセトアルデヒドとの混合物の吸熱反応に必要な熱エネルギーは、反応ゾーンに供給される供給物によって断熱反応ゾーンに供給されるので、断熱反応ゾーンへの追加の熱供給は必要ない。驚くべきことに、反応の吸熱効果によって断熱反応ゾーンに沿って温度が低下するとしても、エタノールおよびアセトアルデヒドを含む供給物が、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する断熱反応ゾーンに入るときに適切な高温を有する限り、反応ゾーンにおいて一定温度を維持するための追加の加熱手段を設けることなく、エタノールおよびアセトアルデヒドの1,3-ブタジエンへの変換を効率的に行うことができることが見出された。本発明による方法は、はるかに単純で経済的な反応器のセットアップを可能にするので、有利である。
【0023】
好ましくは、1,3-ブタジエンを生産し、断熱条件下で稼働する反応ゾーンまたはいくつかの反応ゾーンは、各個々の反応ゾーンにおいて観察される温度低下に関して、各個々の反応ゾーンが1,3-ブタジエンに対する良好な活性、変換率、および選択率を提供する温度範囲内で稼働するように設計される。
【0024】
本明細書に記載の本発明によるプロセスを用いて、エタノールとアセトアルデヒドとの混合物を、約35~45%の変換率および70~75%の1,3-ブタジエンへの選択率で1,3-ブタジエンに変換することができる。
【0025】
好ましくは、本発明によるプロセスにおいて、断熱反応ゾーンへの供給物は、供給物の総重量に基づいて少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも70重量%のエタノールを含む。
【0026】
好ましい実施形態によれば、本発明によるプロセスにおいて使用されるエタノール出発材料は、水性エタノールであり、好ましくは、エタノール出発材料の総重量に基づいて、少なくとも80重量%の水性エタノール、より好ましくは少なくとも90重量%の水性エタノールである。
【0027】
別の好ましい実施形態によれば、本発明によるプロセスにおいて使用されるエタノール出発材料は、エタノール出発材料の総重量に基づいて、90重量%超、好ましくは95重量%超、より好ましくは97重量%超、最も好ましくは98重量%超のエタノールを含む。
【0028】
好ましくは、供給物は、供給物の総重量に基づいて少なくとも12.5重量%、より好ましくは少なくとも20重量%のアセトアルデヒドを含む。
1,3-ブタジエン生産反応器に供給されるアセトアルデヒドは、本明細書において以下でさらに説明するように、エタノールからアセトアルデヒドを生産するアセトアルデヒド生産反応器によって生産されてもよい。あるいは、アセトアルデヒドは、1,3-ブタジエンを生産する反応ゾーンまたは反応器からの流出物のワークアップ(workup)から得ることができる。
【0029】
本発明によるプロセスの好ましい実施形態によれば、担持触媒は、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、チタン、およびスズのうちの1つ以上、特にタンタルを含む。
【0030】
好ましくは、担持触媒は、Ta2O5として計算され、担持触媒の総重量に基づいて、0.1~10重量%、好ましくは0.5~5重量%、より好ましくは2~3重量%の量のタンタルを含む。
【0031】
好ましくは、担持触媒は、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、およびハフニウムの1つ以上を含む。
好ましい実施形態によれば、担持触媒の担体は、規則性多孔質シリカ担体および非規則性多孔質シリカ担体、酸化アルミニウム担体、アルミノケイ酸塩担体、粘土、他の多孔質酸化物担体、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0032】
好ましくは、担持触媒の担体はシリカ担体であり、より好ましくは規則性多孔質シリカ担体または非規則性多孔質シリカ担体である。
好ましくは、担持触媒の担体は、130~550m2/gの範囲、より好ましくは190~350m2/gの範囲の比表面積(SSA)を有する。本明細書の枠組み内で、「比表面積」という用語は、ISO9277:2010(該当する場合、ISO18757:2003によって補完される)によるBET一点法によって決定されるBET比表面積(m2/g単位)を意味する。
【0033】
好ましくは、担持触媒の担体は、30~300Åの範囲の平均細孔径(Barrett、Joyner、およびHalendaの方法によって決定される)を有する。
好ましくは、担持触媒の担体は、0.2~1.5ml/gの範囲の細孔容積(Barrett、Joyner、およびHalendaの方法によって決定される)を有する。
【0034】
より好ましくは、担持触媒の担体は、130~550m2/g、最も好ましくは190~350m2/gの範囲の比表面積、30~300Åの範囲の平均細孔径、および0.2~1.5ml/gの範囲の細孔容積を有するシリカ担体である。
【0035】
最も好ましくは、担持触媒の担体は、130~550m2/g、最も好ましくは190~350m2/gの範囲の比表面積、30~300Åの範囲の平均細孔径、および0.2~1.5ml/gの範囲の細孔容積を有する規則性多孔質シリカ担体または非規則性多孔質シリカ担体である。
【0036】
本発明によるプロセスの好ましい実施形態によれば、断熱反応ゾーンへの供給物中のアセトアルデヒドに対するエタノールのモル比は、1~7、好ましくは1.5~5、より好ましくは2~4、特に2.5~3.5の範囲、例えば約3である。
【0037】
好ましくは、断熱反応ゾーンにおける重量毎時空間速度(WHSV)は、0.5~10h-1、より好ましくは1.5~4h-1、最も好ましくは2~3h-1の範囲である。
最も好ましくは、WHSVは、断熱反応ゾーンからの流出物中のアセトアルデヒドに対するエタノールのモル比が、供給物中のアセトアルデヒドに対するエタノールのモル比よりも少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%高くなるように調整される。
【0038】
上で概説したように、1,3-ブタジエンを得るためのエタノールとアセトアルデヒドとの混合物の(吸熱)反応に必要な熱エネルギーは、断熱反応ゾーンに供給される供給物によってのみ断熱反応ゾーンに供給される。温度低下は、変換および反応器の断熱:熱損失に依存する。典型的には、エタノールとアセトアルデヒドとの混合物の1,3-ブタジエンへの吸熱変換の進行は、変換および反応条件に応じて、断熱反応ゾーンの長さに沿って約30~100℃の温度低下を引き起こす。高い効率を維持するために、供給物は予熱され、エタノールおよびアセトアルデヒドの1,3-ブタジエンへの最適な変換のために断熱反応ゾーンに必要なエネルギーを供給する熱担体として作用しなければならない。
【0039】
したがって、本発明によるプロセスの好ましい実施形態によれば、担持触媒と接触させる前の供給物の温度は、320~430℃、より好ましくは350~410℃、最も好ましくは380~390℃の範囲である。
【0040】
本発明によるプロセスにおいて、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する断熱反応ゾーンは、好ましくは0~1MPaG(0~10barg)、より好ましくは100~500kPaG(1~5barg)、最も好ましくは100~300kPaG(1~3barg)の圧力で操作される。
【0041】
好ましくは、断熱反応ゾーンに沿ったあまりに激しい温度低下は回避される。
したがって、本発明によるプロセスの好ましい実施形態では、本プロセスは、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産するn個(nは2以上の整数である)の断熱反応ゾーンにおいて実施され、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する各第(n-1)の断熱反応ゾーンからの流出物の少なくとも一部は、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第nの断熱反応ゾーンに供給される。
【0042】
好ましくは、アセトアルデヒドを含む追加の供給物は、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産するn個の断熱反応ゾーンのいずれかに供給される。
より好ましくは、アセトアルデヒドを含む追加の供給物が、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産するn個の断熱反応ゾーンの各々に供給される。
【0043】
担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産するn個の断熱反応ゾーンは、好ましくは直列につながれる。
好ましくは、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第(n-1)の断熱反応ゾーンからの全流出物は、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第nの断熱反応ゾーンに供給される。
【0044】
より好ましくは、追加の供給物は、存在する場合、アセトアルデヒドおよびエタノールを含む。
アセトアルデヒドは、1,3-ブタジエンを生産する反応ゾーンまたは反応器からの流出物のワークアップから得ることができる。
【0045】
担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産するn個の断熱反応ゾーンのいずれかに供給されるか、または担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産するn個の断熱反応ゾーンの各々に供給される追加の供給物は、同じ組成を有していてもよく、異なる組成を有していてもよい。具体的には、アセトアルデヒドに対するエタノールのモル比が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0046】
好ましい実施形態によれば、追加の供給物が、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産するn個の断熱反応ゾーンの各々に導入される。
本発明の全ての実施形態において、少なくとも2つの反応ゾーンが存在すること、すなわちnが少なくとも2であることが好ましい。
【0047】
追加の供給物の後続の反応ゾーンへの直接注入は、供給物(先行する反応ゾーンからの流出物と追加の供給物と)の良好な混合の欠如により不利であり、追加の供給物の供給点のすぐ下で副反応をもたらす可能性がある。したがって、いくつかの反応ゾーンが加熱された不活性充填物の層によって仕切られている場合、追加の供給物を加熱された不活性充填物の上部で添加し、次いで加熱された不活性充填物中で先行する反応ゾーンからの流出物と混合し、次いで後続の反応ゾーンに入れることが好ましい。あるいは、先行する反応ゾーンからの流出物および追加の供給物は、反応器の外側で、すなわちパイプ中で混合されてもよく、次いで混合物は熱交換器に進んでもよく、または例えば最初にスタティックミキサーを通過し、次いで熱交換器に進んでもよい。
【0048】
好ましくは、アセトアルデヒドを含む追加の供給物は、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第(n-1)の断熱反応ゾーンからの流出物(の少なくとも一部)と混合され、次いで、混合物は、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第nの断熱反応ゾーンに供給される。
【0049】
担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する断熱反応ゾーンへの供給物(すなわち、エタノールおよびアセトアルデヒドを含む供給物、またはアセトアルデヒドを含む追加の供給物との混合物)は、好ましくは、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産するそれぞれの断熱反応ゾーンに入る前に、加熱手段によって適切な温度に加熱される。
【0050】
好ましくは、供給物の温度は、担持触媒と接触する前に、165℃より高く、好ましくは200℃より高く、より好ましくは250℃より高い。
本発明の好ましい実施形態によれば、供給物の温度は、担持触媒と接触する前に、320~430℃、より好ましくは350~410℃、最も好ましくは380~390℃の範囲である。
【0051】
理想的かつ好ましくは、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産するn個の断熱反応ゾーンは、直列につなげられ、同じ圧力(上で定義した通り)で操作される。しかしながら、実際には、発生する流れ抵抗により、わずかな圧力低下が、一連のn個の断熱反応ゾーンに沿って観察されることが多い。
【0052】
好ましくは、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する断熱反応ゾーン(またはn個の断熱反応ゾーンの最後)からの流出物(流出物n)は、生産物1,3-ブタジエンを得るためにワークアップされる。
【0053】
Kampmeyerら(Industrial and Engineering Chemistry,1949,41,3,550)は、エタノールおよびアセトアルデヒドから1,3-ブタジエンを生産するための等温プロセスにおける側流または補助供給物(多点添加およびスポット添加)の使用を開示している。反応チャンバは、絶縁され電気加熱されたステンレス鋼ブロックを含んでいた。触媒温度は、炉ブロックの触媒セクションの全長に沿って数度しか変動しないように制御され、350℃に設定された。側流または補助供給物は、最初に流れ予熱器に入り、次いで、わずか165℃に維持された電気加熱されたマニホールドに入った。この温度は、それ自体でエタノールおよびアセトアルデヒドの1,3-ブタジエンへの効率的な変換を支持するには低すぎる。
【0054】
本発明の基礎となる研究において、驚くべきことに、追加の供給物を使用して、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する断熱反応ゾーンのいずれかに熱エネルギーを送達することができるので、本発明によるプロセスにおける1つ以上の追加の供給物の使用が特に有利であることが見出された。
【0055】
本発明によるプロセスにおける1つ以上の追加の供給物の使用は、断熱反応ゾーンからの流出物から分離されたアセトアルデヒド(および任意選択でエタノール)画分の、担持触媒を含み必要に応じて追加の供給物を介して1,3-ブタジエンを生産する断熱反応ゾーンのいずれかへのリサイクルを可能にするので、さらに有利である。
【0056】
さらに、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産するn個(nは2以上の整数である)の断熱反応ゾーン、および1つ以上の追加の供給物の存在は、必要に応じて、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する断熱反応ゾーンへの供給物の組成の正確な調整を可能にするので、さらに有利である。したがって、例えば、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第1の断熱反応ゾーンの後に追加の供給物を介してより多くのアセトアルデヒド(および任意選択でエタノール)を添加することができるので、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第1の断熱反応ゾーンへの供給物が、特に大量のアセトアルデヒドを含む必要はない。結果として、1,3-ブタジエン生産反応器において、コークス前駆体への凝縮を受ける局所的に過剰なアセトアルデヒドが回避される。したがって、非常に望ましくない重い副生産物への選択率の低下、ならびに担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産するn個の断熱反応ゾーンにおける担持触媒のより均一ではるかに遅い失活が達成される。これは、担持触媒についてのより大きな安定性、すなわちより長いオンストリーム時間(time on stream;TOS)、より穏やかな再生条件、ならびに触媒再生手順中のホットスポットの回避をもたらす。
【0057】
したがって、本発明によるプロセスにおける追加の供給物の添加は、触媒活性を維持し、すなわち、オンストリーム時間を延長し、その結果、断熱反応ゾーンの再生は、触媒反応が行われる時間の1/6~1/2の範囲の時間にわたって行う必要があるだけである。これは、触媒反応の持続時間の1/2の時間にわたって再生を実施しなければならないとするWO2020/126920A1およびWO2020/126921A1の教示とは対照的である。
【0058】
好ましくは、再生は以下の後続のステップ:
i.担持触媒と不活性ガスを含むガス流とを接触させることによって300~400℃の範囲の温度で実施されるストリッピングステップであって、ガス流が0.02体積%(200体積ppm)以下の酸素含有量を有する、ストリッピングステップ、
ii.担持触媒をと不活性ガスを含むガス流とを接触させることによって350~400℃の範囲の温度で実施される第1の燃焼ステップであって、ガス流が0.2~8体積%の範囲の酸素含有量を有する、第1の燃焼ステップ、
iii.担持触媒と不活性ガスを含むガス流とを接触させることによって400~550℃の範囲の温度で実施される第2の燃焼ステップであって、ガス流が0.2~8体積%の範囲の酸素含有量を有する、第2の燃焼ステップ、
iv.担持触媒と不活性ガスを含むガス流とを接触させることによって550~300℃の範囲の温度で実施されるストリッピングステップであって、ガス流が0.02体積%(200体積ppm)より少ない酸素含有量を有する、ストリッピングステップ
を含み、
再生ステップb)iからb)ivの各々についてガス流は、最初に加熱され、次に担持触媒と接触させる。
【0059】
本発明の全ての実施形態において、酸素の供給を含むこれらの再生ステップ(すなわち、第1の燃焼ステップii、または第2の燃焼ステップiii、または第1の燃焼ステップiiおよび第2の燃焼ステップiiiの両方)のガス流に酸素を組み込むために使用されるガスは、空気であるように好都合に選択される。空気は、不活性ガスおよび酸素の両方を含み、酸素を含むガス流、すなわち再生ステップiおよびiiにおけるガス流に所望の量の酸素を供給するために必要に応じて、酸素をガス流に都合よく投与することができるという利点を有する。
【0060】
断熱反応ゾーンにおける担持触媒の再生に関するさらなる詳細は、「Adiabatically Conducted Process for the production of 1,3-butadiene from mixtures of ethanol and acetaldehyde with catalyst regeneration」と題する出願(PCT出願番号PCT/EP2022/058716、代理人整理番号SH1657-02WO、本出願と同日出願)に記載されており、この出願の開示は、その全体が本明細書に援用される。「Adiabatically conducted process for the production of 1,3-butadiene from mixtures of ethanol and acetaldehyde with catalyst regeneration」と題された当該出願は、欧州特許出願EP21461531.2(本出願が優先権を主張する)の出願日でもある2021年4月1日に出願された欧州特許出願EP21461530.4からの優先権を主張する。
【0061】
本発明によるプロセスは、好ましくは、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する2つ以上の断熱反応ゾーンにおいて実施される。
本発明によるプロセスの好ましい実施形態では、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第nの断熱反応ゾーンへの供給物中のアセトアルデヒドに対するエタノールのモル比が、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第(n-1)の断熱反応ゾーンへの供給物中のアセトアルデヒドに対するエタノールのモル比の85~115%に等しくなるように、追加の供給物の組成および流量を調整する。
【0062】
好ましくは、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する断熱反応ゾーンにおけるWHSVは、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産するこの断熱反応ゾーンからの流出物中のアセトアルデヒドに対するエタノールのモル比が、この断熱反応ゾーンへの供給物中のアセトアルデヒドに対するエタノールのモル比よりも少なくとも20%高くなるように調整される。
【0063】
より好ましくは、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する各断熱反応ゾーンにおけるWHSVは、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産するこの断熱反応ゾーンからの流出物中のアセトアルデヒドに対するエタノールのモル比が、この断熱反応ゾーンへの供給物中のアセトアルデヒドに対するエタノールのモル比よりも少なくとも30%高くなるように調整される。
【0064】
好ましい実施形態によると、1,3-ブタジエン生産反応器は、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第1断熱反応ゾーンと、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第2断熱反応ゾーンとを含む。
【0065】
別の好ましい実施形態によれば、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第1の断熱反応ゾーンと、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第2の断熱反応ゾーンとは、非反応ゾーンによって仕切られ、好ましくは非反応ゾーンが加熱され、より好ましくは加熱された非反応ゾーンは不活性充填物を含む。
【0066】
好ましくは、不活性充填物は、炭化ケイ素、不活性セラミック床(inert ceramic bed)、セラミックビーズ、押出形成物、直径2~7mmのリング、ステンレス鋼メッシュ、発泡体、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0067】
好ましくは、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第1の断熱反応ゾーンからの流出物の少なくとも一部は、非反応ゾーンを通過し、次いで担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第2の断熱反応ゾーンに供給される。
【0068】
上で概説したように、エタノールとアセトアルデヒドとの混合物の1,3-ブタジエンへの吸熱変換の進行は、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する断熱反応ゾーンに沿って温度低下を引き起こす。したがって、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第1の断熱反応ゾーンからの流出物は、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第1の断熱反応ゾーンへのエタノールおよびアセトアルデヒドを含む供給物よりも低い温度を有する。したがって、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第2の断熱反応ゾーンへの供給物が、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第2の断熱反応ゾーンにおけるエタノールおよびアセトアルデヒドの1,3-ブタジエンへの変換に必要なエネルギーを送達するのに十分に高い温度を有することを確実にするために、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第1および第2の断熱反応ゾーンを仕切る非反応ゾーンを加熱することが有利である。
【0069】
好ましい実施形態によれば、供給物の温度は、1,3-ブタジエンを生産する第1の断熱反応ゾーンの担持触媒と接触させる前に、320~430℃、より好ましくは350~410℃、最も好ましくは380~390℃の範囲である。
【0070】
別の好ましい実施形態によれば、供給物の温度は、1,3-ブタジエンを生産する第2の断熱反応ゾーンの担持触媒と接触させる前に、320~430℃、より好ましくは350~410℃、最も好ましくは380~390℃の範囲である。
【0071】
好ましくは、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第1の断熱反応ゾーンは、0~1MPaG(0~10barg)、より好ましくは100~500kPaG(1~5barg)、最も好ましくは100~300kPaG(1~3barg)の圧力で操作される。
【0072】
好ましくは、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第2の断熱反応ゾーンは、0~1MPaG(0~10barg)、より好ましくは100~500kPaG(1~5barg)、最も好ましくは100~300kPaG(1~3barg)の圧力で操作される。
【0073】
最も好ましくは、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第1および第2の断熱反応ゾーンは、同じ圧力(上で定義した通り)で操作される。
別の好ましい実施形態によれば、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第1の断熱反応ゾーンと、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第2の断熱反応ゾーンとは、非反応ゾーンによって仕切られ、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第1の断熱反応ゾーンからの流出物の少なくとも一部は、熱交換器を通過し、次いで、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第2の断熱反応ゾーンに供給される。
【0074】
好ましくは、非反応ゾーンは不活性充填物を含む。
最も好ましくは、不活性充填物は、炭化ケイ素、不活性セラミック床(inert ceramic bed)、セラミックビーズ、押出形成物、直径2~7mmのリング、ステンレス鋼メッシュ、発泡体、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0075】
第1の断熱反応ゾーンと第2の断熱反応ゾーンとの間の熱交換器は、加熱された非反応ゾーンについて上述したのと同じ機能を果たす。
好ましくは、アセトアルデヒドを含む追加の供給物は、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第1の断熱反応ゾーンの後で反応器に供給され、より好ましくは、追加の供給物は、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第1の断熱反応ゾーンからの流出物と混合され、次いで担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する第2の断熱反応ゾーンに供給される。
【0076】
好ましい実施形態によれば、追加の供給物は、アセトアルデヒドおよびエタノールを含む。
本発明によるプロセスの好ましい実施形態では、追加の供給物は、エタノールをさらに含み、追加の供給物中のアセトアルデヒドに対するエタノールのモル比は、0.1~5、好ましくは1~2、より好ましくは1.4~1.8の範囲である。
【0077】
本発明によるプロセスの好ましい実施形態によれば、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する少なくとも第1の断熱反応ゾーンを有する第1の1,3-ブタジエン生産反応器と、担持触媒を含み1,3-ブタジエンを生産する少なくとも第2の断熱反応ゾーンを有する第2の1,3-ブタジエン生産反応器とが直列につながれ、第1の1,3-ブタジエン生産反応器からの流出物の少なくとも一部が第2の1,3-ブタジエン生産反応器に供給され、より好ましくは、アセトアルデヒドを含む追加の供給物が第2の反応器に供給される。
【0078】
好ましくは、第1の1,3-ブタジエン生産反応器からの全流出物は、第2の1,3-ブタジエン生産反応器に供給される。
より好ましくは、アセトアルデヒドおよびエタノールを含む追加の供給物が第2の反応器に供給される。
【0079】
本発明によるプロセスの好ましい実施形態によれば、第1の1,3-ブタジエン生産反応器からの流出物は加熱され、次いで第2の1,3-ブタジエン生産反応器に供給される。
【0080】
したがって、本発明の好ましい実施形態によれば、第1の1,3-ブタジエン生産反応器からの流出物の少なくとも一部および任意選択で追加の供給物を含む、第2の1,3-ブタジエン生産反応器への供給物の温度は、第2の1,3-ブタジエン生産反応器に入る前に、320~430℃、より好ましくは350~410℃、最も好ましくは380~390℃の範囲である。
【0081】
本発明の第2の態様によれば、エタノールから1,3-ブタジエンを生産するためのプロセスは、
i.反応ゾーンを有するアセトアルデヒド生産反応器においてエタノールからアセトアルデヒドを生産するステップであって、アセトアルデヒド生産反応器の反応ゾーンが、担持触媒または非担持(バルク)触媒を含む、ステップと、
ii.本明細書で定義されるプロセスに従って1,3-ブタジエンを生産するステップとを含む。
【0082】
好ましくは、アセトアルデヒド生産反応器の反応ゾーンは等温反応ゾーンである。
エタノールから1,3-ブタジエンを生産するための当該プロセスは、ステップiiで必要とされるアセトアルデヒドをエタノールから生成することができ、本発明によるプロセスのための原料として購入する必要がないので、特に有利である。
【0083】
本発明によるプロセスの好ましい実施形態によれば、担持触媒または非担持(バルク)触媒は、亜鉛、銅、銀、クロム、マグネシウム、およびニッケルのうちの1つ以上、特に亜鉛および銅のうちの1つ以上を含む。
【0084】
好ましくは、アセトアルデヒド生産反応器は担持触媒を含む。
好ましい実施形態によれば、アセトアルデヒド生産反応器の担持触媒の担体は、規則性多孔質シリカ担体および非規則性多孔質シリカ担体、酸化アルミニウム担体、アルミノケイ酸塩担体、粘土、他の多孔質酸化物担体、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0085】
好ましくは、アセトアルデヒド生産反応器の担持触媒の担体はシリカ担体であり、より好ましくは規則性多孔質シリカ担体または非規則性多孔質シリカ担体である。
好ましくは、アセトアルデヒド生産反応器の担持触媒の担体は、7~550m2/gの範囲、より好ましくは190~350m2/gの範囲の比表面積(SSA)を有する。
【0086】
好ましくは、アセトアルデヒド生産反応器の担持触媒の担体は、10~300Åの範囲の平均細孔径(Barrett、Joyner、およびHalendaの方法によって決定される)を有する。
【0087】
好ましくは、アセトアルデヒド生産反応器の担持触媒の担体は、0.2~1.5ml/gの範囲の細孔容積(Barrett、Joyner、およびHalendaの方法によって決定される)を有する。
【0088】
より好ましくは、アセトアルデヒド生産反応器の担持触媒の担体は、7~550m2/g、最も好ましくは190~350m2/gの範囲の比表面積、10~300Åの範囲の平均細孔径、および0.2~1.5ml/gの範囲の細孔容積を有するシリカ担体である。
【0089】
最も好ましくは、アセトアルデヒド生産反応器の担持触媒の担体は、7~550m2/g、最も好ましくは190~350m2/gの範囲の比表面積、10~300Åの範囲の平均細孔径、および0.2~1.5ml/gの範囲の細孔容積を有する規則性多孔質シリカ担体または非規則性多孔質シリカ担体である。
【0090】
アセトアルデヒド生産反応器の反応ゾーンにおける担持触媒または非担持(バルク)触媒は、エタノールのアセトアルデヒドへの脱水素を触媒することができる任意の(市販の)触媒であってよい。
【0091】
2)1,3-ブタジエンを生産するためのプラント
本発明の第3の態様は、1,3-ブタジエンを生産するための少なくとも1つの反応器を含む、1,3-ブタジエンを生産するためのプラントであって、1,3-ブタジエンを生産するための反応器が
a)1,3-ブタジエンを生産するための少なくとも1つのゾーンであって、エタノールおよびアセトアルデヒドから1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒を含むゾーンと
b)1,3-ブタジエンを生産するための反応器にエタノールおよびアセトアルデヒドを含む供給物を供給するための手段とを含み、
1,3-ブタジエンを生産するための反応器は、1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒と接触する前に、エタノールおよびアセトアルデヒドを含む供給物を加熱するための反応物加熱手段を有し、反応物加熱手段は、断熱条件下でエタノールおよびアセトアルデヒドを反応させるのに十分であり、
1,3-ブタジエンを生産するための反応器は、
c)1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒を再生するための手段であって、好ましくは1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒を再生するための手段は、
x)1,3-ブタジエンを生産するための反応器に不活性ガスを含む流れを供給するための手段、および
y)1,3-ブタジエンを生産するための反応器に酸素を含む流れを供給するための手段
を含む、担持触媒を再生するための手段をさらに有し、
1,3-ブタジエンを生産するための反応器は、不活性ガスおよび酸素を含む流れを、1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒と接触させる前に加熱するための再生剤加熱手段を有し、再生剤加熱手段は、断熱条件下で担持触媒を再生するのに十分である、プラントに関する。
【0092】
本発明の第4の態様は、エタノールから1,3-ブタジエンを生産するためのプラントであって
i.エタノールからアセトアルデヒドを生産するための少なくとも1つの反応器であって、エタノールからアセトアルデヒドを生産するための反応器が
a)エタノールからアセトアルデヒドを生産するための少なくとも1つのゾーンであって、アセトアルデヒドを生産するための担持触媒または非担持(バルク)触媒を含む、エタノールからアセトアルデヒドを生産するためのゾーン、および
b)アセトアルデヒドを生産するための反応器にエタノールを含む供給物を供給するための手段
を含む、エタノールからアセトアルデヒドを生産するための少なくとも1つの反応器と、
ii.1,3-ブタジエンを生産するための少なくとも1つの反応器であって、1,3-ブタジエンを生産するための反応器が
a)1,3-ブタジエンを生産するための少なくとも1つのゾーンであって、エタノールおよびアセトアルデヒドから1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒を含むゾーン、および
b)1,3-ブタジエンを生産するための反応器にエタノールおよびアセトアルデヒドを含む供給物を供給するための手段
を含む、1,3-ブタジエンを生産するための少なくとも1つの反応器とを含み、
1,3-ブタジエンを生産するための反応器は、1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒と接触させる前に、エタノールおよびアセトアルデヒドを含む供給物を加熱するための反応物加熱手段を有し、反応物加熱手段は、断熱条件下でエタノールおよびアセトアルデヒドを反応させるのに十分であり
1,3-ブタジエンを生産するための反応器は、
c)1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒を再生するための手段であって、好ましくは1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒を再生するための手段は、
x)1,3-ブタジエンを生産するための反応器に不活性ガスを含む流れを供給するための手段、および
y)1,3-ブタジエンを生産するための反応器に酸素を含む流れを供給するための手段
を含む担持触媒を再生するための手段をさらに有し、
1,3-ブタジエンを生産するための反応器は、不活性ガスおよび酸素を含む流れを、1,3-ブタジエンを生産するための担持触媒と接触する前に加熱するための再生剤加熱手段を有し、再生剤加熱手段は、断熱条件下で担持触媒を再生するのに十分である、プラントに関する。
【0093】
好ましくは、アセトアルデヒド生産反応器の反応ゾーンは等温反応ゾーンである。
本発明による1,3-ブタジエンの生産プロセスの好ましい実施形態は、本発明によるプラントの好ましい実施形態に対応するか、またはそれから誘導することができ、逆もまた同様である。
【0094】
以下の実施例は、本発明の利点を示す。特に断りのない限り、全てのパーセンテージは重量基準である。
【実施例】
【0095】
全ての試験は、担持タンタル触媒(3重量%のTa2O5/SiO2、触媒の総重量に基づいてTa2O5として計算した酸化タンタルの重量%)を充填した52×3000mmの管状反応器(内径×長さ)で行った。実施例1~5は、2.4kgの触媒(触媒床の長さ2400mm、床体積5.1dm3)を充填した反応器中で行った。実施例6は、不活性充填物として600mmのカーボランダムによって仕切られた900mmの長さの2つの触媒床(触媒床の総重量1.8kg、床の総容積3.8dm3)を充填した反応器中で行った。反応器からの流出物をオンラインGC/MSシステムを使用して分析した。実験条件および結果を以下の表1に示す。
【0096】
WHSV、変換率、選択率、および収率を以下のように計算した:
WHSV(1つの触媒床、追加の供給物なし)=供給物の質量流量/触媒の質量
WHSV(第1の触媒床)=主供給物の質量流量/第1の触媒床における触媒の質量
WHSV(第2の触媒床)=(主供給物の質量流量+追加供給物の質量流量)/第2の触媒床における触媒の質量
変換率=(変換された反応物のモル数/供給物のモル数)・100
選択率=(1,3-ブタジエン中のCモル/全生産物中のCモル)・100
収率=(変換率・選択率)/100。
【0097】
実施例1
エタノール:アセトアルデヒドのモル比=2.2で水性エタノール(94重量%)およびアセトアルデヒドを含む供給流を加熱し、2.0h-1のWHSVで反応器に供給した。触媒床への入口における温度は410℃であった。反応器を180kPaG(1.8barg)で操作した。熱は供給物によってのみ触媒床に供給され、したがって、反応器出口での温度は300℃であった。
【0098】
実施例2
触媒床への入口での温度が390℃であった以外は、実施例1と同様に反応を行った。
実施例3
触媒床への入口での温度が380℃であった以外は、実施例1と同様に反応を行った。
【0099】
実施例4
エタノール:アセトアルデヒドのモル比=3.6で水性エタノール(94重量%)およびアセトアルデヒドを含む供給流を加熱し、2.0h-1のWHSVで反応器に供給した。触媒床への入口における温度は380℃であった。反応器を180kPaG(1.8barg)で操作した。
【0100】
実施例5
供給物中のエタノール:アセトアルデヒドのモル比が2.9であった以外は、実施例4と同様に反応を行った。
【0101】
実施例6
エタノール:アセトアルデヒドのモル比=2.9で水性エタノール(94重量%)およびアセトアルデヒドを含む主供給物を加熱し、3.0h-1のWHSVで反応器に供給した。第1の触媒床への入口における温度は380℃であった。反応器を180kPaG(1.8barg)で操作した。エタノール:アセトアルデヒドのモル比=1.6で水性エタノール(94重量%)およびアセトアルデヒドを含む予熱された追加の供給物を、2つの触媒床の間の不活性充填物の上部で反応器に添加した。混合供給物(第1の触媒床からの流出物+追加の供給物)を不活性充填物に沿って加熱して、第2の触媒床への入口で380℃の温度に到達させた。第2の触媒床のWHSVは4.1h-1であった。熱は、それぞれの供給物によってのみ触媒床に供給された。
【0102】
【国際調査報告】