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特表2024-511858異なる膨張領域を有する、組織厚さ補償補助材
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】異なる膨張領域を有する、組織厚さ補償補助材
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/072 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
A61B17/072
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560596
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 IB2022052804
(87)【国際公開番号】W WO2022208285
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】17/217,736
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506157570
【氏名又は名称】シラグ・ゲーエムベーハー・インターナショナル
【氏名又は名称原語表記】Cilag GMBH International
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】シェルトン・ザ・フォース・フレデリック・イー
(72)【発明者】
【氏名】ベンデリー・マイケル・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ハリス・ジェイソン・エル
(72)【発明者】
【氏名】アニム・ジャクリーン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160CC09
4C160CC23
4C160CC37
(57)【要約】
ステープル留めアセンブリは、カートリッジと、アンビルと、補助材と、を含む。カートリッジは、組織内に配備されるために内部に配設されたステープルの列を有する。カートリッジは、組織を切断するためのナイフを受容するために、列間を通って延在するナイフスロットを含む。アンビルは、カートリッジの反対側に位置付けられている。補助材は、カートリッジ又はアンビル上に解放可能に保持される。補助材は、ステープルの配備によってカートリッジから組織に送達され得る。補助材は第1の形状を有し得、第1の補助材部分は、ある体積の流体の受容に応答して第1の膨張挙動を示し得、第2の補助材部分は、補助材が第2の形状をとるように、当該体積の流体の受容に応答して第2の膨張挙動を示し得る。第1の膨張挙動と第2の膨張挙動との間の差異は、補助材がステープル留めされている組織の異なる部分に異なる圧力を加える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステープル留めアセンブリであって、
内部に配設された複数のステープルを有するステープルカートリッジであって、前記複数のステープルは、ステープル列に配列され、組織内に配備されるように構成されており、前記カートリッジは、切断線に沿って組織を切断するためのナイフを受容するために前記ステープル列の間で前記カートリッジを通って延在するナイフスロットを含む、ステープルカートリッジと、
前記ステープルカートリッジの反対側に位置付けられたアンビルと、
前記ステープルカートリッジ及び前記アンビルのうちの1つの上に解放可能に保持されるように構成され、前記ステープルカートリッジからの前記複数のステープルの配備によって組織に送達されるように構成された補助材であって、前記補助材は、第1の形状を有する生体適合性多孔質ポリマー材料を含み、前記補助材の少なくとも1つの第1の部分は、単位体積の流体の受容に応答して第1の膨張挙動を示すように構成されており、前記補助材の少なくとも1つの第2の部分は、前記補助材が前記第1の形状とは異なる第2の形状をとるように、前記単位体積の流体の受容に応答して、前記第1の膨張挙動とは異なる第2の膨張挙動を示すように構成されており、前記第1の膨張挙動と前記第2の膨張挙動との間の差異は、前記補助材がステープル留めされている組織の異なる部分に異なる圧力を加えるように構成されている、補助材と、を備える、ステープル留めアセンブリ。
【請求項2】
前記補助材の膨張量は、前記切断線において止血を提供するように構成されている、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項3】
前記補助材の膨張量は、前記ステープルが組織内へと射出されたときに前記複数のステープルによって前記組織に形成された孔を封止するように構成されている、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項4】
前記補助材の前記少なくとも1つの第2の部分は、前記ナイフスロットに隣接して位置付けられており、前記補助材の前記少なくとも1つの第1の部分は、前記ナイフスロットからある距離を離間され、前記第2の形状は、前記第1の形状よりも大きい圧力を加えるように構成されている、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第2の部分は、前記生体適合性多孔質ポリマー材料とは異なる膨潤性材料を含む、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項6】
前記膨潤性材料は、ヒドロゲル、30,000kD未満の平均分子量を有するポリマーを含む、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項7】
前記膨潤性材料は多孔質固体材料を含み、前記膨潤性材料は流体可溶性カプセル内に圧縮状態で収容されている、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項8】
前記カプセルは、前記流体との接触から所定の期間後に前記膨潤性材料を放出するように構成されている、請求項7に記載の外科用システム。
【請求項9】
前記単位体積の流体の受容に応答した、前記補助材の前記少なくとも1つの第2の部分の膨張率は、前記単位体積の流体の受容に応答した、前記補助材の前記少なくとも1つの第1の部分の膨張率よりも大きい、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項10】
前記複数のステープルのうちの少なくとも1つのステープルは、複数の返し部を含む、少なくとも1つの脚部を含み、前記複数のステープルが前記補助材及び前記組織内へと射出されるとき、前記複数の返し部は、第1の方向での前記補助材の膨張を可能にし、前記第1の方向と反対の第2の方向での前記補助材の後退を阻害するように構成されている、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの第2の部分は、前記補助材の表面を覆うフィルムを含む、請求項10に記載の外科用システム。
【請求項12】
前記補助材は、前記補助材の膨張中に色を変化させる色遷移染料を更に含む、請求項1に記載の外科用システム。
【請求項13】
前記色遷移染料は、流体及び脂質のうちの少なくとも1つとの接触に応答して色を変化させるように構成されたハイドロクロミックインクである、請求項12に記載の外科用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、圧縮性補助材及び圧縮性補助材を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外科用ステープル留め器具は、外科的処置において、組織、血管、導管、シャント又は特定の処置に関連する他の対象物若しくは身体部位の開口部を閉鎖するために使用される。開口部は、血管内又は胃のような内臓内の通路など、自然に存在するものであってもよく、又は組織若しくは血管穿刺でバイパス若しくは吻合を形成することによって、若しくはステープル留め処置中の組織切開によってなど、外科的処置中に外科医によって形成されることがある。
【0003】
ほとんどのステープラは、細長いシャフトを備えるハンドルを有し、シャフトはその端部に、それらの間でステープルを保持して成形するために形成された一対の移動可能な対向する顎部を有する。ステープルは典型的にはステープルカートリッジに収められ、そのステープルカートリッジは、ステープルの複数の列を収納することができ、2つの顎部のうちの1つ内に、手術部位へのステープルの放出のために配置されることが多い。使用中、顎部は、ステープルされるべき対象物が顎部の間に配置されるように位置決めされ、顎部が閉じて装置が作動されると、ステープルが放出されて成形される。ステープラによっては、ステープルカートリッジ内のステープルの列の間を移動し、ステープル留めされた列の間で、ステープル留めされた組織を長手方向に切開及び/又は開口するように構成されたナイフを含むものがある。
【0004】
手術用ステープラは何年にもわたって改良されてきたが、それ自体にはいまだに多くの問題が存在する。よく見られる問題の1つは、ステープルは、ステープルが配置される組織又は他の対象物を貫通するときに孔を形成するため、漏出が起こり得ることである。血液、空気、消化管液、及び他の流体が、ステープルが完全に成形された後でも、ステープルによって形成された開口を通してしみ出ることがある。処置される組織は、ステープリングによる外傷のために炎症を起こすこともある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
様々なステープル留め組織と組み合わせて使用するために様々な植え込み可能な材料が開発されているが、前述の問題のうちのいくつかに対処する、改良された材料の必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概して、組織を修復するための圧縮性補助材及び方法が提供される。一実施形態では、ステープルカートリッジと共に使用するための圧縮性補助材キットが提供され、このキットは、生体適合性補助材料と、前処理流体と、を含む。生体適合性補助材料は、ステープルカートリッジ上に解放可能に保持されるように構成されており、ステープルカートリッジ内のステープルの配備によって組織に送達されるように構成されている。補助材料は、多孔質ポリマー体の形態であり得る。前処理流体は、補助材料に塗布されて、補助材料を未処理状態から処理済み状態に変化させるように構成されている。未処理状態の補助材料は、組織に送達されたときに第1の分解プロファイルを示すように構成されている。処理済み状態の補助材料は、組織に送達されたときに、第1の分解プロファイルとは異なる、第2の分解プロファイルを示すように構成されている。
【0007】
前処理流体は、様々な構成を有し得る。一実施形態では、前処理流体は、第1の分解プロファイルに対して、第2の分解プロファイルの分解率を増加させるように構成され得る。別の実施形態では、前処理流体は、組織に送達されたときに、処理済み状態の補助材が、補助材に隣接するpHを増加させるように構成され得る。他の態様では、前処理流体は、処理済み状態の補助材の親水性の程度を増加させるように構成され得る。別の実施形態では、前処理流体は、第1の分解プロファイルに対して、第2の分解プロファイルの分解率を減少させるように構成され得る。別の実施形態では、前処理流体は、処理済み状態の補助材の少なくとも一部に堆積されるコーティングを形成するように構成され得る。更に別の実施形態では、前処理流体は、補助材料と反応して、処理済み状態の多孔質ポリマー体を形成するポリマー鎖の少なくとも一部の末端官能基を変化させるように構成され得る。他の態様では、前処理流体は、処理済み状態の補助材の疎水性の程度を、未処理状態と比較して増加させるように構成され得る。更に別の実施形態では、前処理流体は、多孔質ポリマー体内の細孔の少なくとも一部を封止するシーラントを形成するように構成され得る。他の態様では、前処理流体は、処理済み状態のポリマー体の複数のポリマー鎖の平均長が、未処理状態のポリマー体の複数のポリマー鎖の平均長よりも短くなるように、多孔質ポリマー体の複数のポリマー鎖の少なくとも一部を終端させるように構成され得る。
【0008】
別の実施形態では、外科的方法が提供され、この方法は、多孔質ポリマー体を含む未処理の生体適合性補助材料を処理して、未処理の補助材料に対して変化した分解プロファイルを有する、処理済み補助材料を産生することを含む。この方法はまた、処理済み補助材料をステープルカートリッジ上に解放可能に保持することと、ステープルカートリッジ及びその上の処理済み補助材料を有する外科用ステープル留めデバイスを作動させて、処理済み補助材料を組織にステープル留めすることと、を含む。
【0009】
一実施形態では、生体適合性補助材料を処理することは、補助材料を前処理流体内に浸漬させることを含む。変化した分解プロファイルは、未処理の補助材料の分解プロファイルよりも大きい分解率を有し得る。他の実施形態では、補助材料を処理することにより、補助材料は、組織に送達されたときに、処理済み補助材料に隣接するpHを増加させる。別の実施形態では、補助材料を処理することにより、処理済み補助材料の親水性の程度を、未処理の補助材料と比較して増加させる。別の実施形態では、変化した分解プロファイルは、未処理の補助材料の分解プロファイルよりも小さい分解率を有する。
【0010】
別の実施形態では、補助材料を処理することにより、補助材料の少なくとも一部にコーティングを塗布する。別の実施形態では、補助材料を処理することは、補助材料の多孔質ポリマー体と反応し、ポリマー体を形成するポリマー鎖の末端官能基を変化させる前処理流体を塗布することを含む。別の実施形態では、補助材料を処理することにより、処理済み補助材料の疎水性の程度を、未処理の補助材料と比較して増加させる。別の実施形態では、補助材料を処理することは、多孔質体の細孔の少なくとも一部を封止するシーラントを形成する前処理流体を塗布することを含む。
【0011】
別の実施形態では、補助材料を処理することは、処理済み補助材料のポリマー体のポリマー鎖の平均長が未処理の補助材料のポリマー体のポリマー鎖の平均長よりも短くなるように、ポリマー体のポリマー鎖の少なくとも一部を終端させる前処理流体を塗布することを含む。第2の分解プロファイルの分解率は、第1の分解プロファイルに対して増加する。
【0012】
別の実施形態では、ステープルカートリッジと共に使用するための圧縮性補助材が提供され、この圧縮性補助材は、ステープルカートリッジ上に解放可能に保持されるように構成され、ステープルカートリッジ内のステープルの配備によって組織に送達されるように構成された生体適合性補助材料を含む。補助材料は、多孔質ポリマー体で形成され、組織との接触から第1の期間中ほぼ一定である、第1の圧縮剛性を示すように構成されている。補助材料は、第1の期間に続く第2の期間中に第2の圧縮剛性を示すように更に構成されている。第2の剛性は、第1の剛性よりも小さく、酸化、酵素触媒加水分解、及び組織の治癒進行中に組織から放出された少なくとも1つの生理的要素との相互作用から生じたpHの変化のうちの少なくとも1つに応じて経時的に減少するように構成されている。
【0013】
一実施形態では、補助材は、活性酸素種を含む生理的要素との反応から生じた酸化に応答して第2の剛性をとるように構成されている。別の実施形態では、補助材は、成熟血液細胞又は線維細胞(fybrocyte)によって放出される活性酸素種との反応に応答して酸化するように構成されている。活性酸素種は、スーパーオキシドを含み得る。別の実施形態では、補助材は、炎症細胞によって放出された活性酸素種との反応に応答して酸化するように構成されている。炎症細胞は、白血球、好中球、好塩基球、好酸球、リンパ球、単球、及びマクロファージのうちの少なくとも1つであり得る。別の実施形態では、活性酸素種は、酸素含有酵素、フリーラジカル、スーパーオキシド、及び過酸化物のうちの少なくとも1つである。別の実施形態では、活性酸素種は、O 、H、NO、及びHOClのうちの少なくとも1つである。
【0014】
別の実施形態では、補助材は、酵素によって触媒される加水分解に応答して第2の剛性をとるように構成されている。酵素は、リゾチームであり得る。別の実施形態では、補助材は、少なくとも1つの生理的要素の存在に起因したpHの低下に応答して第2の剛性をとるように構成されている。
【0015】
他の態様では、ステープル留めアセンブリが提供され、このステープル留めアセンブリは、ステープルカートリッジと、アンビルと、補助材と、を含む。ステープルカートリッジは、ステープル列に配置され、組織内に配備されるように構成されている、内部に配設された複数のステープルを有する。ステープルカートリッジはまた、切断線に沿って組織を切断するためのナイフを受容するために、ステープル列の間でステープルカートリッジを通って延在するナイフスロットを含む。アンビルは、ステープルカートリッジの反対側に位置付けられている。補助材は、ステープルカートリッジ又はアンビル上に解放可能に保持されるように構成されている。補助材は、ステープルカートリッジからの複数のステープルの配備によって組織に送達されるように構成された、生体適合性多孔質ポリマー材料の形態であり得る。補助材は、第1の形状を有し得、補助材の少なくとも1つの第1の部分は、単位体積の流体の受容に応答して第1の膨張挙動を示すように構成され得、補助材の少なくとも1つの第2の部分は、補助材が第1の形状とは異なる第2の形状をとるように、単位体積の流体の受容に応答して、第1の膨張挙動とは異なる第2の膨張挙動を示すように構成され得る。第1の膨張挙動と第2の膨張挙動との間の差異は、補助材がステープル留めされている組織の異なる部分に異なる圧力を加えるように構成され得る。
【0016】
一実施形態では、補助材の膨張量は、切断線において止血を提供するように構成されている。別の実施形態では、補助材の膨張量は、ステープルが組織内へと射出されたときに複数のステープルによって組織(issue)に形成された孔を封止するように構成されている。
【0017】
別の実施形態では、補助材の少なくとも1つの第2の部分はナイフスロットに隣接して位置付けられ、補助材の少なくとも1つの第1の部分は、ナイフスロットからある距離を離間され、第2の形状は、第1の形状よりも大きい圧力を加えるように構成され得る。
【0018】
別の実施形態では、少なくとも1つの第2の部分は、生体適合性多孔質ポリマー材料とは異なる膨潤性材料を含む。膨潤性材料は、ヒドロゲルを含み得る。別の実施形態では、膨潤性材料は多孔質固体材料を含み、膨潤性材料は流体可溶性カプセル内に圧縮状態で収容されている。カプセルは、流体との接触から所定の期間後に膨潤性材料を放出するように構成され得る。
【0019】
別の実施形態では、単位体積の流体の受容に応答した、補助材の少なくとも1つの第2の部分の膨張率は、単位体積の流体の受容に応答した、補助材の少なくとも1つの第1の部分の膨張率よりも大きい。
【0020】
別の実施形態では、複数のステープルのうちの少なくとも1つのステープルは、複数の返し部を含む少なくとも1つの脚部を含む。複数のステープルが補助材及び組織内へと射出されるとき、複数の返し部は、第1の方向への補助材の膨張を可能にし、第1の方向と反対の第2の方向への補助材の後退を阻害するように構成されている。
【0021】
別の実施形態では、少なくとも1つの第2の部分は、補助材の表面を覆うフィルムを含む。
【0022】
別の実施形態では、補助材は、補助材の膨張中に色を変化させる色遷移染料(color transition dye)を更に含む。色遷移染料は、流体及び脂質のうちの少なくとも1つとの接触に応答して色を変化させるように構成されたハイドロクロミックインクであり得る。
【0023】
別の実施形態では、ステープルカートリッジと共に使用するための補助材が提供される。補助材は、ステープルカートリッジ本体上に解放可能に保持されるように構成され、カートリッジ本体内のステープルの配備によって組織に送達されるように構成された生体適合性補助材を含む。補助材は、第1のポリマー及び第2のポリマーを含む多孔質体として形成されている。第1のポリマーは、水との相互作用に応答した加水分解及び生理的温度への加熱のうちの少なくとも1つに応じて、第1の分解プロファイルに従って分解するように構成されている。第2のポリマーは、酸化、酵素触媒加水分解、及び組織の治癒進行中に組織から放出された少なくとも1つの生理的要素との相互作用から生じたpHの変化のうちの少なくとも1つに応じて、第2の分解プロファイルに従って分解するように構成されている。
【0024】
一態様では、第1のポリマーは、水の吸収に応答して膨張し、第1の分解プロファイルに依存する大きさを有する第1の圧縮圧力を組織に及ぼすように構成されており、第2のポリマーは、第1のポリマーの分解に応答して膨張し、第1の分解プロファイル及び第2の分解プロファイルに依存する大きさを有する第2の圧縮圧力を組織に及ぼすように構成されており、第2の圧縮圧力の最大の大きさは、第1の圧縮圧力の最大の大きさよりも小さい。
【0025】
別の実施形態では、第1のポリマーは、第2のポリマーと少なくとも1つの生理的要素の少なくとも一部との相互作用を阻害するように構成されている。第1のポリマーは、第2のポリマーに重なり合い得る。
【0026】
別の実施形態では、第1の分解プロファイルによる第1のポリマーの分解率は、第2の分解プロファイルによる第2のポリマーの分解率よりも大きい。
【0027】
別の実施形態では、第1のポリマーは、吸湿性粉末又は発泡体である。
【0028】
別の実施形態では、少なくとも1つの生理的要素は、活性酸素種を含む。活性酸素種は、酸素含有酵素、フリーラジカル、スーパーオキシド、及び過酸化物のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0029】
別の実施形態では、補助材は、第1のポリマーによって保持され、第1のポリマーの分解中に放出されるように構成された第1の薬物を含む。第1の薬物は、止血剤を含み得る。補助材は、第2のポリマーによって保持され、第2のポリマーの分解中に放出されるように構成された第2の薬物を更に含み得る。第2の薬物は、組織再構築を促進するように構成され得る。別の実施形態では、第2の薬物は、第2のポリマーの幾何学的形状に基づいて、ボーラス放出及び徐放のうちの少なくとも1つのために構成されている。
【0030】
ある実施形態では、組織を治療するための方法が提供される。この方法は、1つ以上のステープルによって、多孔質生体適合性補助材を組織にステープル留めすることを含む。補助材は、第1のポリマーと、第2のポリマーと、を含み得る。補助材は、水、及び補助材の温度を生理的温度まで上昇させるのに十分な熱のうちの少なくとも1つを受容し、それによって、第1の分解プロファイルに従って第1のポリマーを分解させる。補助材は、組織の治癒進行中に組織から放出された、少なくとも1つの生理的要素を受容し、それによって、酸化、酵素触媒加水分解、及び少なくとも1つの生理的要素との相互作用から生じたpHの変化のうちの少なくとも1つに応じて、第2の分解プロファイルに従って第2のポリマーを分解させる。
【0031】
一実施形態では、第1のポリマーは、水の受容に応答して膨張し、第1の分解プロファイルに依存する大きさを有する第1の圧縮圧力を組織に及ぼし、第2のポリマーは、第1のポリマーの分解に応答して膨張し、少なくとも第1の分解プロファイル及び第2の分解プロファイルに依存する大きさを有する第2の圧縮圧力を組織に及ぼす。第2の圧縮圧力の最大の大きさは、第1の圧縮圧力の最大の大きさよりも小さい。
【0032】
別の実施形態では、第2の圧縮圧力は、第1の分解プロファイル及び第2の分解プロファイルに依存する。
【0033】
別の実施形態では、第1のポリマーは、第2のポリマーと少なくとも1つの生理的要素の少なくとも一部との相互作用を阻害する。少なくとも1つの生理的要素は、活性酸素種を含み得る。
【0034】
別の実施形態では、第1のポリマーは第2のポリマーに重なり合う。別の実施形態では、第1のポリマーは、吸湿性粉末及び発泡体のうちの少なくとも1つである。
【0035】
別の実施形態では、第1の分解プロファイルによる第1のポリマーの分解率は、第2の分解プロファイルによる第2のポリマーの分解率よりも大きい。
【0036】
別の実施形態では、補助材は、第1のポリマーの分解中に放出される、第1のポリマーによって保持された第1の薬物を更に含む。第1の薬剤は、止血剤であり得る。
【0037】
別の実施形態では、補助材は、第2のポリマーの分解中に放出される、第2のポリマーによって保持された第2の薬物を更に含む。第2の薬物は、組織再構築を促進し得る。
【0038】
別の実施形態では、方法は、第2のポリマーの幾何学的形状に基づいて、第2の薬物のボーラス放出及び徐放のうちの少なくとも1つを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明は、以下の発明を実施するための形態を添付図面と併せて読むことで、より完全に理解されるであろう。
図1】従来の外科用ステープル留め及び切断器具の例示的な一実施形態の斜視図である。
図2図1の外科用ステープル留め及び切断器具と共に使用するためのステープルカートリッジの上面図である。
図3図1の手術用ステープラの発射バーの斜視図である。この発射バーは、その遠位端にE-ビームを有する。
図4】手術用ステープラの別の実施形態の斜視図である。
図5】外科用ステープラの更に別の実施形態の斜視図である。
図6】上面、すなわちデッキ面に取り付けられた、例示的な補助材を有するステープルカートリッジの例示的な実施形態の長手方向断面図である。
図7】組織配備状態の図6の補助材を示す部分概略図である。
図8】未処理状態及び前処理流体塗布後の処理済み状態の補助材料の例示的な分解プロファイルを示すプロットである。
図9】ステープル線に沿ってステープルを封止するように構成された非変形状態、すなわち配備前状態の組織厚さ補償補助材の1つの例示的な実施形態の上部組織接触面の上面図を示す概略図である。
図10】非変形状態、すなわち非配備状態の図9の組織厚さ補償補助材の端面図を示す概略図である。
図11】変形状態、すなわち配備状態の図9の組織厚さ補償補助材の端面図を示す概略図であり、補助材の膨張部分は、内部を通って延在するステープルに接触して封止圧力を及ぼす。
図12】組織切断線に沿って圧力を加えるように構成された補助材の別の例示的な実施形態の上部組織接触面の上面図を示す概略図である。
図13】非変形状態、すなわち非配備状態の図12の組織厚さ補償補助材の端面図を示す概略図である。
図14】変形状態、すなわち配備状態の図13の組織厚さ補償補助材の端面図を示す概略図である。
図15】アンビル及びステープルカートリッジを含む発射前構成のステープル留めアセンブリの側断面図を示す概略図であり、組織補償補助材の別の実施形態がアンビル上に取り付けられており、補助材は、ステープルカートリッジから発射されたステープルと組み合わせて機能して、ステープル発射後に補助材が後退して組織と接触することを阻害するように構成されている。
図16】ステープルカートリッジからステープルを発射し、補助材及び組織を通り、ステープル留めアセンブリから補助材及び組織を解放した直後の、図15のステープル留めアセンブリ及び補助材を示す概略図である。
図17】水及び/又は身体からの他の生理液を吸収した後の図16のステープル留めアセンブリ及び補助材を示す概略図である。
図18】第1のポリマー及び第2のポリマーを含む複合補助材の例示的な実施形態を含む、発射前構成のステープル留めアセンブリの側断面図を示す概略図である。
図19図18の複合補助材の側断面図を示す概略図である。
図20】ステープル留めアセンブリの発射直後にステープルによって組織に連結された、図19の複合補助材の側断面図を示す概略図である。
図21図20の複合補助材の拡大側断面図を示す概略図である。
図22】ステープル留めアセンブリの発射後の所定の期間においてステープルによって組織に連結された、図19の複合補助材の側断面図を示す概略図である。
図23図22の複合補助材の側断面図を示す概略図である。
図24】Aは、複合補助材に連結された組織内の治癒事象を、時間に応じて示すプロットである。Bは、図19の複合補助材の第1のポリマー及び第2のポリマーによって組織に加えられる圧縮圧力を、それぞれ時間に応じて示すプロットである。Cは、図19の複合補助材の第1のポリマー及び第2のポリマーによって保持される第1の薬物及び第2の薬物の放出率を、それぞれ時間に応じて示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
ここで、本明細書で開示する装置及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理の全体的な理解が得られるように、特定の例示的な実施形態を説明する。これらの実施形態の1つ又は2つ以上の実施例が、添付の図面に例解されている。当業者であれば、本明細書で具体的に説明され、かつ添付の図面に図示される装置及び方法が、非限定的な例示的な実施形態であること、並びに本発明の範囲が、特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。例示的な一実施形態に関連して例解又は記載される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。このような改変及び変形は、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0041】
更に、本開示においては、実施形態の同様の名称の構成要素は概して同様の特徴を有するものであり、したがって、特定の実施形態において、同様の名称の各構成要素の各特徴については必ずしも完全に詳しく述べることはしない。追加的に、開示されるシステム、デバイス、及び方法の説明で直線寸法又は円寸法が使用される限りにおいて、そのような寸法は、そのようなシステム、デバイス、及び方法と組み合わせて使用することができる形状の種類を限定しようとするものではない。当業者には、そのような直線寸法及び円寸法に相当する寸法を、任意の幾何学的形状について容易に決定することができる点が認識されるであろう。システム及びデバイス、並びにその構成要素のサイズ及び形状は、少なくとも、システム及びデバイスが内部で使用される対象の解剖学的構造、システム及びデバイスが使用される構成要素のサイズ及び形状、並びにシステム及びデバイスが使用される方法及び手術に依存し得る。
【0042】
「近位」及び「遠位」という用語は、本明細書では、器具のハンドルを握っている臨床医などのユーザを基準として使用されることが認識されるであろう。「前方」及び「後方」といった他の空間的用語は、同様に、遠位及び近位にそれぞれ対応する。便宜上、かつ明瞭さのために、本明細書では「垂直」及び「水平」などの空間的用語が、図面に対して使用される点も更に理解されるであろう。しかしながら、外科用器具は、多くの向き及び位置で使用されるものであり、これらの空間的用語は、限定的かつ絶対的なものであることを意図するものではない。
【0043】
外科的処置を行うための、様々な例示的な装置及び方法が提供される。いくつかの実施形態において、切開外科的処置のための装置及び方法が提供され、他の実施形態において、腹腔鏡下、内視鏡的、及び他の低侵襲的外科的処置のための装置及び方法が提供される。これらの装置は、人間のユーザによって直接発射されるか、又はロボット若しくは類似の操作ツールの直接制御下でリモート発射されてよい。しかしながら、当業者は、本明細書に開示される様々な方法及び装置が、多数の外科的処置及び用途で用いられ得ることを理解するであろう。本明細書で開示される様々な器具が、例えば、自然開口部を通して、組織に形成された切開又は穿刺孔を通して、又はトロカールカニューレなどのアクセス装置を使用してなどの、何らかの方法で体内へ挿入され得ることを当業者は更に認識するであろう。例えば、これらの器具の作動部分、すなわちエンドエフェクタ部分は、患者の体内に直接に挿入できる、又は、手術用器具のエンドエフェクタ及び細長いシャフトを通過させることが可能な作業用チャネルを有するアクセス装置を介して挿入され得る。
【0044】
本明細書で「補助材」と呼ばれる1つ以上の生体材料及び/又は合成材料を、手術用器具と共に使用して、外科的処置の改善を支援することは望ましいことであり得る。「補助材」は、本明細書において、「補助材料」とも呼ばれる。種々の異なる手術用エンドエフェクタが、補助材の使用によって利益を得ることがあり、いくつかの例示的実施形態では、エンドエフェクタは、手術用ステープラであり得る。手術用ステープラと共に使用されるときには、補助材(複数可)は、ステープラの顎部の間及び/又はその上に配置されても、顎部上に配置されたステープルカートリッジに組み込まれても、又はそうでなければ、ステープルの近位に置かれてもよい。ステープルが配備されると、補助材(複数可)は、ステープルと共に施療部位に残ってもよく、その結果、多くの利益を提供することができる。例えば、補助材(複数可)は、施療部位の組織を増強して、施療部位において、ステープルにより裂かれる又は引き裂かれるのを防止することができる。組織増強は、組織が病変している場合、組織が治癒している場合、又は他の組織特性を変更する状況を経験している場合に、ステープルが組織を裂かないようにするために必要なことがある。いくつかの場合において、補助材は、ステープル留め後に生じる組織変形(例えば、肺膨張、消化管膨張など)から生じ得る、ステープル穿刺部位及びその付近における組織の移動を最小化することができる。当業者は、ステープル穿刺部位は応力集中部となることがあり、ステープルによって形成された孔の寸法は、その付近の組織が張力下に置かれると増大することを認識するであろう。これらの穿刺部位付近での組織の移動を制限することは、張力下で増大し得る孔の寸法を最小化できる。いくつかの場合において、補助材は、例えば、シーラント、血液、接着剤など、更に治癒を促進する有益な流体を吸い上げる、又は吸収するように構成され得る。また、いくつかの場合において、補助材は、分解して、例えば、シーラントなど、更に治癒を促進するゲルを形成するように構成され得る。いくつかの場合には、補助材(複数可)が、組織、血管、及び種々の他の対象物又は身体部位に植え込みされるときに、ステープルによって形成される孔の封止の支援に使用されてもよい。
【0045】
他の実施形態では、補助材は、例えば、米国特許第10,172,611号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、ステープルを使用せずに(例えば、RF又は超音波などエネルギーを使用することによって)組織を封止するように構成されている外科用器具と共に使用することができる。
【0046】
いくつかの場合において、補助材は、補助材が組織にステープル留めされるときに、組織厚さの変動を補償するように構成され得る。このような場合、補助材は、「組織厚さ補償材」とも呼ばれ得る。組織厚さ補償材は、形成構成にあるステープルの高さよりも高い、非圧縮(非変形)、すなわち配備前高さを有する。例示的な組織厚さ補償材に関する更なる詳細は、米国特許第8,864,007号に見出すことができ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。組織厚さ補償材は、例えば、米国特許第9,272,406号、及び同第10,136,890号(これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているように、様々な方法でステープルカートリッジに取り付けられ、そこから解放され得る。
【0047】
本明細書の開示に加えて、補助材及び他の例示的な補助材に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第10,172,611号及び同第10,433,846号、並びに米国特許出願第17/009,769号(発明の名称「Compressible Non-Fibrous Adjuncts」、2020年9月1日付けで出願)に見出すことができ、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0048】
代替的に又は追加的に、補助材は、組織の内殖を促進するように構成され得る。様々な状況において、治療される組織(例えば、ステープル留め及び/又は切開される組織)の治癒を促進するため、かつ/又は患者の回復を加速させるために、植え込み可能な補助材への組織の内殖を促進することが望ましい。より具体的には、植え込み可能な補助材への組織の内殖により、手術部位での炎症の発生率、程度、及び/又は期間が減少し得る。植え込み可能な補助材への、かつ/又はその周辺での組織の内殖は、例えば、手術部位での感染の拡大を管理し得る。例えば植え込み可能な補助材への及び/又はその周辺での、血管、特に白血球の内殖は、植え込み可能な補助材及び隣接組織の中で及び/又はそれらの周辺で感染に対抗し得る。組織の内殖はまた、患者の身体による異物(例えば、植え込み可能な補助材及びステープル)の受容を助成し得、また患者の身体が異物を拒絶する可能性を低減し得る。異物の拒絶により、手術部位では感染及び/又は炎症が生じ得る。
【0049】
代替的に又は追加的に、補助材は、その上及び/又はその内部に、薬剤を有することができる。薬剤は、周囲の組織への薬剤の所望の効果に応じて変更することができる。非限定例として、薬剤は、止血、炎症、マクロファージ、及び/又は線維芽細胞に影響を及ぼすのに提供され得る。薬剤は、混合され、又は、任意の組み合わせで組み合わせられることができ、あるいは、薬剤は、再度、組織に対する所望の効果に応じて、単独で提供されることができる。薬剤は、種々の異なる方法で、補助材から溶出され得る。非限定例として、補助材上のコーティングが、異なるタイミングで吸収されることにより、異なるタイミングで薬剤を放出するのに変更され得ること、補助材は、可変速度で補助材間の薬剤の拡散を可能にするように変更され得ること、補助材は、異なるタイミングで薬剤を放出させるために、分子量及び/又は物理的特徴を変更し得ること、などが可能である。本明細書の開示に加えて、薬物溶出補助材に関する更なる詳細は、米国特許第9,232,941号及び同第10,569,071号に見出すことができ、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0050】
手術用ステープル留め器具
様々な手術用器具が、本明細書で開示された補助材及び/又は薬剤と共に使用され得る。手術用器具は、手術用ステープラを含み得る。様々な手術用ステープラ、例えば、線状手術用ステープラ及び円形ステープラが使用され得る。概して、線状ステープラは長手方向ステープルラインを形成するように構成されることができ、長手方向ステープル列を収容するカートリッジが結合される細長い顎部を含むことができる。細長い顎部は、顎部内に保持された組織に沿ってステープル列の間に切断部を形成することができるナイフ又は他の切断部材を含むことができる。概して、輪状ステープラは、環状ステープルラインを形成するように構成されることができ、環状ステープル列を収容するカートリッジを有する輪状顎部を含むことができる。輪状顎部は、顎部内に保持された組織を貫通する開口部を画定するために、ステープルの列の内側に切断部を形成することができるナイフ又は他の切断部材を含むことができる。ステープラは、様々な異なる外科的処置において、例えば、胸部手術又は胃部手術において、様々な組織に対する様々な異なる外科的処置に使用され得る。
【0051】
図1は、1種又は2種以上の補助材及び/又は薬剤と共に使用するに適した線状手術用ステープラ10の一例を図示する。ステープラ10は、概して、ハンドルアセンブリ12と、ハンドルアセンブリ12の遠位端12dから遠位に延在するシャフト14と、シャフト14の遠位端14dにあるエンドエフェクタ30とを含む。エンドエフェクタ30は、対向する下部顎部32及び上部顎部34を有するが、他の種類のエンドエフェクタを、シャフト14、ハンドルアセンブリ12、及びそれらに付随する構成要素と共に使用してもよい。下部顎部32は、ステープルカートリッジ40を支持するように構成されたステープルチャネル56を有する。上部顎部34は、下部顎部32に面し、ステープルカートリッジ40のステープル(ステープルは、図1及び図2において隠されている)の配備を支援するように、アンビルとして動作するように構成されているアンビル面33を有する。対向する下部顎部32及び上部顎部34の少なくとも一方は、それらの間に配置された組織及び/又は他の物体をクランプするために、他方の下部顎部32及び上部顎部34に対して移動可能である。いくつかの実装形態では、対向する下部顎部32及び上部顎部34の一方は、固定されるか、又は別の方法で移動不能であってよい。いくつかの実装形態では、対向する下部顎部32及び上部顎部34の両方が移動可能であってよい。発射システムの構成要素は、ステープルをクランプされた組織内に放出するために、エンドエフェクタ30の少なくとも一部を通過するように構成され得る。様々な実装形態では、ナイフブレード36又は他の切断部材は、発射システムに関連付けられて、ステープル留め処置中に組織を切開し得る。
【0052】
エンドエフェクタ30の作動は、ハンドルアセンブリ12での、例えば、臨床医、外科医などのユーザからの入力によって開始され得る。ハンドルアセンブリ12は、それに連結されるエンドエフェクタ30を操作して作動させるように設計された多くの異なる構成を有してもよい。図示した実施例では、ハンドルアセンブリ12は、器具10の多様な特徴部を操作するための様々な機械的及び/又は電気的構成要素が内部に配設されている、ピストルグリップ型のハウジング18を有している。例えば、ハンドルアセンブリ12は、ハンドルアセンブリ12に対する、シャフト14の長手方向軸線Lの周りでのシャフト14及び/又はエンドエフェクタ30の回転を促進し得る、その遠位端12dに隣接して取り付けられた回転ノブ26を含み得る。ハンドルアセンブリ12は、クランプトリガ22によって作動されるクランプシステムの一部としてのクランプ構成要素と、発射トリガ24によって作動される発射システムの一部としての発射構成要素と、を更に含み得る。クランプトリガ22及び発射トリガ24は、例えば、トーションばねによって、静止ハンドル20に対して開放位置に付勢され得る。静止ハンドル20に向けたクランプトリガ22の移動は、以下に記載のクランプシステムを作動させることができ、これにより、顎部32、34を互いに向けて倒し、それによって、それらの間に組織をクランプすることができる。発射トリガ24の移動は、以下に記載の発射システムを作動させることができ、これにより、内部に配置されたステープルカートリッジ40からステープルを放出させることができ、及び/又は、ナイフブレード36を前進させて、顎部32、34の間に捕捉された組織を切断することができる。当業者であれば、機械、油圧、空気圧、電気機械、ロボット、又はその他の発射システムの構成要素の様々な構成が、ステープルの放出及び/又は組織の切開に使用され得ることを認識するであろう。
【0053】
図2に示すように、図示した実装形態のエンドエフェクタ30は、カートリッジアセンブリ又はキャリアとして機能する下部顎部32と、アンビルとして機能する、対向する上部顎部34とを有する。内部に複数のステープルを有するステープルカートリッジ40は、ステープルトレイ37内に支持され、次に、ステープルトレイ37は、下部顎部32のカートリッジチャネル内に支持される。上部顎部34は、複数のステープル形成ポケット(図示せず)を有し、ステープル形成ポケットの各々は、ステープルカートリッジ40内に収容される複数のステープルからの対応するステープルの上に位置付けられる。上部顎部34は、様々な方法で下部顎部32に接続され得るが、図示した実装形態では、上部顎部34は、シャフト14との係合部のすぐ遠位の、ステープルチャネル56の近位端56p内に枢動可能に受容される近位枢動端34pを有している。上部顎部34が下向きに枢動すると、上部顎部34は、アンビル面33を移動させ、アンビル面33上に形成されているステープル形成ポケットが、対向するステープルカートリッジ40に向かって移動する。
【0054】
様々なクランプ構成要素を使用して顎部32、34の開放及び閉鎖をもたらして、それらの間に組織を選択的にクランプすることができる。図示するように、上部顎部34の枢動端34pは、ステープルチャネル56とのその枢動的な取り付け部より遠位に閉鎖機構34cを含む。したがって、その遠位端に、閉鎖機構34cと係合する馬蹄形開口部46aを含む閉鎖管46は、クランプトリガ22に応じて、閉鎖管46の近位長手方向運動中に上部顎部34に対して開放運動を、及び、閉鎖管46の遠位長手方向運動中に上部顎部34に対して閉鎖運動を、選択的に与える。上記のように、様々な実装形態では、エンドエフェクタ30の開閉は、上部顎部34に対する下部顎部32の相対運動、下部顎部32に対する上部顎部34の相対運動、又は互いに対する両方の顎部32、34の運動によってもたらされてよい。
【0055】
図示した実装形態の発射構成要素は、図3に示すように、遠位端にEビーム38を有する発射バー35を含む。発射バー35は、シャフト14内、例えば、シャフト14の長手方向発射バースロット14s内に包含され、ハンドル12からの発射運動によって誘導される。発射トリガ24の作動は、エンドエフェクタ30の少なくとも一部を通るEビーム38の遠位運動に影響を与え、それによって、ステープルカートリッジ40内に収容されたステープルを発射させ得る。図示したように、Eビーム38の遠位端から突出しているガイド39は、図2に示したウェッジスレッド47と係合し得る。次に、ウェッジスレッド47は、ステープルカートリッジ40内に形成されたステープル空洞41を通ってステープルドライバ48を押し上げ得る。ステープルドライバ48の上向きの移動は、カートリッジ40内の複数のステープルの各々に上向きの力を加え、それによって上部顎部34のアンビル面33に対してステープルを上向きに押し、成形されたステープルを作り出す。
【0056】
ステープルを発射させることに加えて、Eビーム38は、顎部32、34の閉鎖、ステープルカートリッジ40からの上部顎部34の引き離し、及び/又は、顎部32、34間に捕捉された組織の切断を促進するように構成され得る。具体的には、一対の頂部ピン及び一対の底部ピンは、上部顎部32及び下部顎部34の一方又は両方と係合して、発射バー35がエンドエフェクタ30を通って前進するときに、顎部32、34を互いに向けて圧迫し得る。同時に、頂部ピンと底部ピンとの間に延在するナイフ36は、顎部32、34の間に捕捉された組織を切断するように構成され得る。
【0057】
使用中、手術用ステープラ10は、カニューレ又はポート内に配置され、手術部位に配置され得る。切開されてステープル留めされる組織は、手術用ステープラ10の顎部32、34の間に定置されてもよい。ステープラ10の特徴部は、ユーザによって望みどおりに操作されて、顎部32、34に関する手術部位と組織において、顎部32、34の所望の位置を達成し得る。適切な位置決めを達成した後に、クランプトリガ22を静止ハンドル20に向けて引いて、クランプシステムを作動させ得る。トリガ22は、閉鎖管46が、シャフト14の少なくとも一部を通過して遠位方向に進んで、顎部32、34の少なくとも一方を他方に向かって倒し、これらの間に配置された組織をクランプするように、クランプシステムの構成要素を作動させ得る。その後、発射バー35及び/又はEビーム38が、エンドエフェクタ30の少なくとも一部を通って遠位方向に進んで、ステープルの発射をもたらし、任意選択的に、顎部32、34の間で捕捉された組織を切断するように、トリガ24を、静止ハンドル20に向けて引いて、発射システムの構成要素を作動させ得る。
【0058】
線状手術用ステープラ50の形態における手術用器具の別の例を、図4に図示する。ステープラ50は、一般に、図1のステープラ10同様に、構成され、使用され得る。図1の手術用器具10と同様に、手術用器具50は、シャフト54を備えるハンドルアセンブリ52を含み、シャフト54はハンドルアセンブリ52から遠位に延在し、かつ、組織を処置するために遠位端にエンドエフェクタ60を有している。エンドエフェクタ60の上部顎部64及び下部顎部62は、間に組織を捕捉すること、下部顎部62内に配置されたカートリッジ66からステープルを発射することによって組織をステープル留めすること、及び/又は、組織に切開部を形成することを行うように構成され得る。この実装形態において、シャフト54の近位端にある取り付け部67は、シャフト54及びエンドエフェクタ60をハンドルアセンブリ52に取り外し可能に取り付け可能にするように構成することができる。具体的には、取り付け部67の嵌合機構68は、ハンドルアセンブリ52の補助嵌合機構71と嵌合できる。嵌合機構68、71は、例えば、スナップフィット結合、バヨネット式結合などによって互いに連結するように構成され得るが、シャフト54をハンドルアセンブリ52に着脱可能に連結するために、任意の数の補助嵌合機構及び任意の種類の結合を使用することができる。図示した実装形態のシャフト54の全体は、ハンドルアセンブリ52から分離可能に構成されているが、いくつかの実装形態では、取り付け部67は、シャフト54の遠位部分のみを取り外すことができるように構成され得る。シャフト54及び/又はエンドエフェクタ60の分離可能な連結は、特定の処置のための所望のエンドエフェクタ60の選択的な取り付け、及び/又は、多数の異なる処置のためのハンドルアセンブリ52の再利用を可能にできる。
【0059】
ハンドルアセンブリ52は、エンドエフェクタ60を操作して作動させるための1つ又は2つ以上の機構をその上に有していてもよい。非限定例として、ハンドルアセンブリ52の遠位端に取り付けられた回転ノブ72は、ハンドルアセンブリ52に対するシャフト54及び/又はエンドエフェクタ60の回転を促進し得る。ハンドルアセンブリ52は、移動可能なトリガ74によって作動されるクランプシステムの一部としてのクランプ構成要素と、これもトリガ74によって作動され得る発射システムの一部としての発射構成要素とを含み得る。したがって、いくつかの実装形態では、第1運動範囲を通る、静止ハンドル70に向けたトリガ74の移動は、クランプ構成要素を作動させて、対向する顎部62、64を互いに向けて閉鎖位置に近づけさせ得る。いくつかの実装形態では、対向する顎部62、64の一方のみが、顎部62、64に向けて閉鎖位置に移動し得る。静止ハンドル70に向けた、第2運動範囲を通るトリガ74の更なる移動は、発射構成要素を作動させて、ステープルカートリッジ66からステープルを放出させることができ、及び/又は、ナイフ若しくは他の切断部材(図示せず)を前進させて、顎部62、64の間に捕捉された組織を切断することができる。
【0060】
環状手術用ステープラ80の形態の手術用器具の一例を、図5に図示する。ステープラ80は、概して、図1及び図4の線状ステープラ10、50と同様に構成され、使用され得るが、一部の機構が、輪状ステープラとしてのその機能に適応している。手術用器具10、50と同様に、手術用器具80は、シャフト84を備えるハンドルアセンブリ82を備え、シャフト84は、手術用器具80から遠位に延在し、組織を処置するためのエンドエフェクタ90をその遠位端に有している。エンドエフェクタ90は、略円形の形状を有する、組織に接触する表面をそれぞれが有するカートリッジアセンブリ92及びアンビル94を含み得る。カートリッジアセンブリ92とアンビル94とは、ステープラ80のアンビル94からハンドルアセンブリ82まで延在するシャフト98を介して結合させることができ、ハンドルアセンブリ82上のアクチュエータ85を操作すると、シャフト98を後退及び前進させて、カートリッジアセンブリ92に対してアンビル94を移動させることができる。アンビル94及びカートリッジアセンブリ92は、様々な機能を行うことができ、それらの間に組織を捕捉すること、カートリッジアセンブリ92のカートリッジ96からステープルを発射することにより組織をステープル留めすること、及び/又は、組織に切開を形成することを行うように構成することができる。一般的に、カートリッジアセンブリ92は、ステープルを収容しているカートリッジを収納することができ、ステープルをアンビル94に対して配備することにより、円形のステープルパターンを形成し、例えば、管状体内臓器の外周の周りをステープル留めすることができる。
【0061】
1つの実装形態において、シャフト98は、アンビル94をカートリッジアセンブリ92から分離することができるように解放可能に互いに連結されるように構成された第1及び第2の部分(図示せず)で構成することができ、これにより、アンビル94及びカートリッジアセンブリ92を患者の体内に配置するのに、より高い柔軟性を与えることができる。例えば、シャフトの第1の部分は、カートリッジアセンブリ92の内部に配置され、遠位方向にカートリッジアセンブリ92の外部へと延在して、遠位嵌合機構において終端することができる。シャフトの第2の部分は、アンビル94の内部に配設され、近位方向にカートリッジアセンブリ92の外部へと延在して、近位嵌合機構において終端することができる。使用に際しては、近位嵌合機構と遠位嵌合機構とを互いに連結することにより、アンビル94とカートリッジアセンブリ92とを互いに対して動かすことができる。
【0062】
ステープラ80のハンドルアセンブリ82には、ステープラの動作を制御することができる様々なアクチュエータを配設することができる。例えば、ハンドルアセンブリ82には、回転によってエンドエフェクタ90の位置決めを容易にする回転ノブ86、及び/又は、エンドエフェクタ90を作動させるためのトリガ85を配設することができる。第1の運動範囲を通るトリガ85の静止ハンドル87に向かう運動によって、クランプシステムの構成要素を顎部に近づける(例えば、カートリッジアセンブリ92に向かってアンビル94を動かす)ように作動させることができる。第2の運動範囲を通るトリガ85の静止ハンドル87に向かう運動によって、発射システムの構成要素を作動させて、ステープルをステープルカートリッジアセンブリ92から配備させ、かつ/又は、カートリッジアセンブリ92とアンビル94との間に捕捉された組織を切断するためにナイフを前進させることができる。
【0063】
手術用ステープル留め器具10、50、及び80の図示した例は、多くの異なる構成及び関連する使用方法のうちのごく一部の例を提供するものであり、これらは本明細書で提供される開示と共に使用され得る。図示した実施例は、全て低侵襲処置で使用するように構成されているが、切開外科的処置で使用するように構成されている器具、例えば、米国特許第8,317,070号(発明の名称「Surgical Stapling Devices That Produce Formed Staples Having Different Lengths」、2007年2月28日付けで出願)に記載されているようにオープン線状ステープラを、本明細書で提供される開示と共に使用できることが理解されるであろう。図示した実施例の更なる詳細、並びに、手術用ステープラ、その構成要素、及びその関連する使用方法の更なる実施例は、米国特許出願公開第2013/0256377号(発明の名称「Layer Comprising Deployable Attachment Members」、2013年2月8日付けで出願)、米国特許第8,393,514号(発明の名称「Selectively Orientable Implantable Fastener Cartridge」、2010年9月30日付けで出願)、同第8,317,070号(発明の名称「Surgical Stapling Devices That Produce Formed Staples Having Different Lengths」、2007年2月28日付けで出願)、同第7,143,925号(発明の名称「Surgical Instrument Incorporating EAP Blocking Lockout Mechanism」、2005年6月21日付けで出願)、米国特許出願公開第2015/0134077号(発明の名称「Sealing Materials For Use In Surgical Stapling」、2013年11月8日付けで出願)、(発明の名称「Sealing Materials for Use in Surgical Procedures、2013年11月8日付けで出願)、同第2015/0134076号(発明の名称「Hybrid Adjunct Materials for Use in Surgical Stapling」、2013年11月8日付けで出願)、同第2015/0133996号(発明の名称「Positively Charged Implantable Materials and Method of Forming the Same」、2013年11月8日付けで出願)、同第2015/0129634号(発明の名称「Tissue Ingrowth Materials and Method of Using the Same」、2013年11月8日付けで出願)、同第2015/0133995号(発明の名称「Hybrid Adjunct Materials for Use in Surgical Stapling」、2013年11月8日付けで出願)、同第14/226,142号(発明の名称「Surgical Instrument Comprising a Sensor System」、2014年3月26日付けで出願)、及び同第14/300,954号(発明の名称「Adjunct Materials and Methods of Using Same in Surgical Methods for Tissue Sealing」、2014年6月10日付けで出願)に提供される。これらの文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
植え込み可能な補助材
上記されたように、様々な植え込み可能な補助材が、手術用ステープルリング器具と共に使用するために提供される。手術用ステープラと共に使用されるときには、補助材(複数可)は、ステープラの顎部の間及び/又はその上に配置されても、顎部上に配置されたステープルカートリッジに組み込まれても、又はそうでなければ、ステープルの近位に置かれてもよい。例えば、図6に示すように、補助材104は、ステープルカートリッジ102に接触して位置付けられる。簡略化のために、補助材104は、図6に概略的に示されており、補助材の様々な構造的構成が、以下でより詳細に説明される。図6では部分的に遮られているが、ステープルカートリッジ102は、組織内に配備されるように構成されているステープル106を含む。ステープル106は、任意の好適な非成形(配備前)高さを有し得る。例えば、ステープル106は、約2mm~4.8mmの非形成高さを有し得る。ステープルのクラウン部は、配備前にステープルドライバ(図示せず)によって支持され得る。
【0065】
図示された実施形態では、補助材104は、ステープルカートリッジ102の上面、すなわちデッキ面108の少なくとも一部に解放可能に嵌合され得る。いくつかの実施形態では、ステープルカートリッジ102の上面108は、1つ以上の表面特徴を含み得る。代替的に、又は追加的に、1つ以上の接着剤を使用して、補助材をステープルカートリッジ102に解放可能に嵌合させることができる。1つ以上の表面特徴及び/又は1つ以上の接着剤は、補助材104と係合して、ステープルカートリッジ102に対する補助材104の望ましくない移動を回避するために、かつ/又はステープルカートリッジ102からの補助材104の早期解放を阻止するように構成されることができる。例示的な表面特徴は、米国特許出願公開第2016/0106427号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。器具への一時的な取り付けのための接着剤及び他の例示的な接着剤に関する更なる詳細は、米国特許第9,282,962号、同第10,172,617号、同第10,172,618号、同第10,258,332号、同第10,517,592号、同第10,548,593号、同第10,568,621号、及び同第10,588,623号に見出すことができ、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。取り付け方法及び他の例示的な方法に関する更なる詳細は、米国特許第10,166,023号及び同第10,349,939号、並びに米国特許出願第17/022,520号(発明の名称「Method of Applying Buttress to End Effector of Surgical Stapler」、2020年9月16日付けで出願)に見出すことができ、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0066】
特定の場合には、補助材は圧縮可能であり、補助材が様々な高さに圧縮されて、それによって配備されたステープル内に捕捉される異なる組織の厚さを補償することができる。例えば図6に示されるように、補助材104は、非圧縮(非変形)高さ、すなわち配備前高さを有し、複数の圧縮(変形)高さ、すなわち配備高さのうちの1つに変形するように構成されている。したがって、補助材104は、ステープルカートリッジ102内に配設されたステープル106の発射後高さ(例えば、図7の発射済みステープル106aの高さ(H))よりも高い非圧縮高さを有し得る。すなわち、補助材104は、補助材104の最大の高さが発射済みステープル(例えば、形成構成のステープル)の最大の高さよりも高い、非変形状態を有し得る。このような場合、補助材は、「組織厚さ補償材」と呼ばれ得る。一実施形態では、補助材104の非圧縮高さは、ステープル106が発射後高さよりも、約10%高く、約20%高く、約30%高く、約40%高く、約50%高く、約60%高く、約70%高く、約80%高く、約90%高く、又は約100%高くすることができる。特定の実施形態では、補助材104の非圧縮高さは、例えば、ステープル106の発射後高さよりも、100%を超えて高くすることができる。
【0067】
補助材は、様々な構成を有することができ、様々な材料から形成されることができる。概して、補助材は、フィルム、発泡体、射出成形熱可塑性材料、真空熱成形材料、繊維性構造体、積層造形材料、及びそれらのハイブリッドの1つ以上で形成され得る。また、補助材は、1つ又は2つ以上の生物由来材料及び1つ又は2つ以上の薬物も含み得る。これらの材料はそれぞれ、以下により詳細に検討される。
【0068】
補助材は、発泡体、例えば、独立気泡発泡体、連続気泡発泡体、又はスポンジから形成され得る。このような補助材を製造することができる方法の例は、動物由来コラーゲン、例えば、ブタの腱からのものであり、次いで、これが処理され、凍結乾燥されて、発泡構造を得ることができる。様々な発泡補助材の例は、前述の米国特許第8,393,514号(発明の名称「Selectively Orientable Implantable Fastener Cartridge」、2010年9月30日付けで出願)に更に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0069】
また、補助材は、以下で検討される任意の適切な材料又はその組み合わせから形成されたフィルムから形成され得る。フィルムは、1つ又は2つ以上の層を含むことができ、これら層はそれぞれ、異なる分解速度を有することができる。更に、フィルムは、内部に形成された様々な領域、例えば、多くの異なる形態の1種以上の薬剤を内部に放出可能に保持することができるリザーバを有することができる。内部に配置された少なくとも1種の薬剤を有するリザーバは、吸収性又は非吸収性ポリマーを含み得る、1つ又は2つ以上の異なるコーティング層を使用して封止され得る。フィルムは、様々な方法で形成され得る。例えば、フィルムは、押出しフィルム又は圧縮成形フィルムであり得る。
【0070】
また、補助材は、射出成形熱可塑性材料又は真空熱成形材料から形成され得る。様々な成形補助材の例は、米国特許出願公開第2013/0221065号(発明の名称「Fastener Cartridge Comprising A Releasably Attached Tissue Thickness Compensator」、2013年2月8日付けで出願)に更に記載されている。同文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。また、補助材は、ファイバベース格子であることもできる。同格子は、織布、編地、又は、メルトブロー、ニードルパンチ、若しくは熱構成ルーズ織布などの不織布であることができる。補助材は、多くの異なる方法で共に補助材を形成し得る、同じ種類の格子又は異なる種類の格子から形成され得る、複数の領域を有し得る。例えば、ファイバは、規則的又は不規則な構造を形成するために、織られ、編み組まれ、編まれ、又は他の方法で相互に結び付けられ得る。得られた補助材が比較的緩くなるように、ファイバは、相互に結び付けられ得る。あるいは、補助材は、密に相互に結び付けられたファイバを含み得る。補助材は、シート、チューブ、螺旋、又は、柔らかい部分及び/若しくはより硬い補強部分を含み得る任意の他の構造の形態であり得る。補助材は、特定の領域がより密なファイバを有することができ、一方で、他の領域がより密でないファイバを有するように構成され得る。ファイバ密度は、補助材の意図した用途に基づいて、補助材の1つ又は2つ以上の次元に沿った異なる方向で変わり得る。
【0071】
他の実施形態では、補助材は、吸収性ポリマーと適合する3D印刷プロセスを使用して形成され得る。好適な3D印刷プロセスの非限定例としては、当業者によって理解されるように、ステレオリソグラフィ(SLA又はSL)、材料噴射、選択的レーザ焼結(SLS)、及び溶融フィラメント製造が挙げられる。
【0072】
また、補助材は、積層複合材又はメルトロック相互結合ファイバなどのハイブリッド構造であることもできる。様々なハイブリッド構造補助材の例は、米国特許出願公開第2013/0146643号(発明の名称「Adhesive Film Laminate」、2013年2月8日付けで出願)及び米国特許第7,601,118号(発明の名称「Minimally Invasive Medical Implant And Insertion Device And Method For Using The Same」、2007年9月12日付けで出願)に更に記載されている。これらの文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
材料
記載された技術に基づく補助材は、様々な材料から形成され得る。材料は、異なる目的のための様々な実施形態に使用され得る。材料は、組織内方成長を促進するために、組織に提供されるべき所望の治療に従って選択され得る。以下に記載された材料は、任意の所望の組み合わせで補助材を形成するのに使用され得る。
【0074】
材料は、ホモポリマー及びコポリマーを含めた、生体吸収性及び生体適合性ポリマーを含み得る。ホモポリマー及びコポリマーの非限定例としては、p-ジオキサノン(PDO又はPDS)、ポリグリコール酸(PGA)(例えば、Dexon及びNeoveil)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリグリコリド(PGL)、トリメチレンカーボネート(TMC)、ポリ乳酸(PLA(例えば、Linvatec Bioscrew及びBionx Implants Smart Screw)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリエチレンジグリコレート(PEDG)、ポリ(プロピレンフマレート)(PPF)、ポリエチレンエーテル(PEE)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド、ポリ(アミノ酸)、ポリ(エポキシカーボネート)、ポリ(2-オキシプロピレンカーボネート)、ポリ(ジオールシトレート)、ポリメタクリレート無水物、ポリ(エトキシエチレンジグリコレート)、ポリ(グリコール酸-co-乳酸)(PLA/PGA)(例えば、Vicryl、Vicryl Rapide、PolySorb、及びBiofixで使用されるPLA/PGA材料)、ポリウレタン(例えば、Elastane、Biospan、Tecoflex、Bionate、及びPellethane繊維)、ポリオルトエステル、ポリ無水物(例えば、Gliadel及びBiodelポリマー)、ポリオキサエステル、ポリエステルアミド(例えば、REVA ReZolveステント)、及びチロシンベースのポリエステルアミド(例えば、TYRX)が挙げられる。コポリマーとしてはまた、ポリ(乳酸-co-ポリカプロラクトン)(PLA/PCL)(例えば、16~18か月間加水分解されたもの)、ポリ(L-乳酸-co-ポリカプロラクトン)(PLLA/PCL)、ポリ(グリコール酸-co-トリメチレンカーボネート)(PGA/TMC)(例えば、Maxon)、ポリ(グリコール酸-co-カプロラクトン)(PCL/PGA)(例えば、Monocryl及びCapgly)、PDS/PGA/TMC(例えば、Biosyn)、PDS/PLA、PGA/PCL/TMC/PLA(例えば、Caprosyn)、LPLA/DLPLA(例えば、Optima)、PLGA-PCL(例えば、15:85(PCL:50% D,L-ラクチド:50%グリコリド)、40:60(PCL:50% D,L-ラクチド:50%グリコリド)、及び40:60(PCL:85% D,L-ラクチド:15%グリコリド)、PLGA-PCL-PLGA、及びPLGA-PEG-PLGAが挙げられ得る。
【0075】
補助材はまた、(メタ)アクリレート及び有機的に誘導されたポリマーなど特別なポリマー末端を含み得る。有機的に誘導されたポリマーの非限定例としては、コラーゲンに由来するもの(例えば、Avitene、Endoavitene、Instat、Integran、Veritas、及びMicrofibrillar Collagen(MFC))が挙げられる。
【0076】
また、補助材は、活性剤、例えば、活性な細胞培養物(例えば、ダイス状の自家組織、幹細胞療法に使用される作用剤(例えば、Biosutures及びCellerix S.L.)、止血剤、及び組織治癒剤も含み得る。止血剤の非限定例としては、セルロース、例えば、酸化再生セルロース(ORC)(例えば、Surgicel及びInterceed)、フィブリン/トロンビン(例えば、Thrombin-JMI、TachoSil、Tiseel、Floseal、Evicel、TachoComb、Vivostat、及びEverest)、自家血小板血漿、ゼラチン(例えば、Gelfilm及びGelfoam)、ヒアルロン酸、例えば、マイクロファイバ(例えば、ヤーン及び織物)若しくはヒアルロン酸ベースの他の構造物、又はヒアルロン酸ベースのヒドロゲルが挙げられ得る。また、止血剤は、ポリマーシーラント、例えば、ウシ血清アルブミン及びグルタルアルデヒド、ヒト血清アルブミン及びポリエチレン架橋剤、並びに、エチレングリコール及びトリメチレンカーボネートなども含み得る。ポリマー封止剤としては、Focal Inc.により開発されたFocalSeal手術用封止剤を挙げることができる。
【0077】
本明細書で記載された補助材は、内部に、少なくとも1種の薬剤を放出可能に保持し得る。同薬剤は、多数の異なる薬剤から選択され得る。薬剤としては、所望の機能を有する、補助材内に含まれ、又は、同補助材に関連付けられた薬物又は他の作用剤が挙げられるが、これらに限定されない。薬剤としては、例えば、抗菌剤、例えば、抗菌剤及び抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、成長因子、鎮痛薬、麻酔剤、組織マトリックス変性阻害剤、抗ガン剤、止血剤、並びに生物学的応答を引き起こす他の作用剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
抗菌剤の非限定例としては、銀イオン、アミノ配糖体、ストレプトマイシン、ポリペプチド、バシトラシン、トリクロサン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、デメクロサイクリン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、ニトロフラン、フラゾリドン、ニトロフラントイン、ベータ-ラクタム、ペニシリン、アモキシシリン、アモキシシリン+クラブラン酸、アズロシリン、フルクロキサシリン、チカルシリン、ピペラシリン+タゾバクタム、タゾシン、Biopiper TZ、ゾシン、カルバペネム、イミペネム、メロペネム、エルタペネム、ドリペネム、ビアペネム、パニペネム/ベタミプロン、キノロン、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、スルホンアミド、マフェニド、スルファセトアミド、スルファジアジン、銀スルファジアジン、スルファジメトキシン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファサラジン、スルフィソキサゾール、バクトリム、プロントシル、アンサマイシン、ゲルダナマイシン、ヘルビマイシン、フィダキソマイシン、グリコペプチド、テイコプラニン、バンコマイシン、テラバンシン、ダルババシン、オリタバンシン、リンコサミド、クリンダマイシン、リンコマイシン、リポペプチド、ダプトマイシン、マクロライド、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、テリスロマイシン、スピラマイシン、オキサゾリジノン、リネゾリド、アミノ配糖体、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシン、パロマイシン、パロモマイシン、セファロスポリン、セフトビプロール、セフトロザン、セフクリジン、フロモキセフ、モノバクタム、アズトレオナム、コリスチン、及びポリミキシンBが挙げられる。
【0079】
抗真菌剤の非限定例は、トリクロサン、ポリエン、アムホテリシンB、カンジシジン、フィリピン、ハマイシン、ナタマイシン、ナイスタチン、リモシジン、アゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、アリルアミン、アモロルフィン、ブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィン、エキノカンジン、アニデュラファンジン、カスポファンジン、ミカファンジン、シクロピロックス、及び安息香酸を含む。
【0080】
抗ウイルス剤の非限定例は、脱殻阻害剤、例えば、アマンタジン、リマンタジン、プレコナリルなど;逆転写阻害剤、例えば、アシクロビル、ラミブジン、アンチセンス、フォミビルセン、モルホリノ、リボザイム、リファンピシンなど;及び抗ウイルス薬、例えば、シアノビリン-N、グリフィスシン、シトビリン、α-ラウリル-L-アルギニンエチルエステル(LAE)、並びに銀イオンを含む。
【0081】
抗炎症剤の非限定例としては、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、サリチル酸塩、アスピリン、ジフルニサール、プロピオン酸誘導体、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、及びロキソプロフェン)、酢酸誘導体(例えば、トルメチン、スリンダク、及びジクロフェナク)、エノール酸誘導体(例えば、ピロキシカム、メロキシカム、ドロキシカム、及びロルノキシカム)、アントラニル酸誘導体(例えば、メフェナム酸、メクロフェナム酸、及びフルフェナム酸)、選択的COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ(セレブレックス)、パレコキシブ、ロフェコキシブ(Vioxx)、スルホンアニリド、ニメスリド、及びクロニキシン)、免疫選択的抗炎症誘導体、副腎皮質ホルモン(例えば、デキサメタゾン)、及びiNOS阻害剤が挙げられる。
【0082】
成長因子の非限定例は、細胞の成長、治癒、再形成、増殖、及び分化を刺激する細胞シグナル伝達分子である因子が挙げられる。例示的な成長因子は、短い範囲(パラクリン)、長い範囲(エンドクリン)、又は自己刺激(オートクリン)であり得る。成長因子の更なる例として、成長ホルモン(例えば、組み換え成長因子、ニュートロピン、ヒューマトロープ、ゲノトロピン、ノルディトロピン、サイゼン、オムニトロープ、及び生合成成長因子)、表皮成長因子(EGF)(例えば、阻害剤、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、及びセツキシマブ)、へパリン結合EGF様成長因子(例えば、エピレグリン、ベタセルリン、アンフィレグリン、及びエピジェン)、トランスフォーミング成長因子α(TGF-a)、ニューロレグリン1~4、線維芽細胞成長因子(FGF)(例えば、FGF-1-2、FGF2、FGF11~14、FGF18、FGF15/19、FGF21、FGF23、FGF7、又はケラチノサイト成長因子(KGF)、FGF10、又はKGF2、及びフェニトイン)、インスリン様成長因子(IGF)(例えば、IGF-1、IGF-2、及び血小板由来成長因子(PDGF))、血管内皮成長因子(VEGF)(例えば、阻害剤、ベバシズマブ、ラニビズマブ、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、及びベカプレルミン)が挙げられる。
【0083】
成長因子の更なる非限定例としては、サイトカイン、例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)(例えば、炎症応答を阻害する阻害剤並びに組み換えDNA技術を使用して及び組み換え酵母由来ソースにより製造されたGM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)(例えば、フィルグラスティム、レノグラスティム、及びニューポジェン)、組織成長因子ベータ(TGF-B)、レプチン、及びインターロイキン(IL)(例えば、IL-1a、IL-1b、カナキヌマブ、IL-2、アルデスロイキン、インテルキング、デニロイキン、ジフチトックス、IL-3、IL-6、IL-8、IL-10、IL-11、及びオプレルベキン)が挙げられる。成長因子の非限定例としては、エリスロポエチン(例えば、ダルベポエチン、エポセプト、ダイネポ、エポマックス、ネオレコルモン、シラポ、及びレタクリット)が更に挙げられる。
【0084】
鎮痛薬の非限定例は、麻酔剤、オピオイド、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、ブプレノルフィン、トラマドール、非麻酔剤、パラセタモール、アセトアミノフェン、NSAID、及びフルピルチンを含む。
【0085】
麻酔剤の非限定例としては、局所麻酔剤(例えば、リドカイン、ベンゾカイン、及びロピバカイン)及び全身麻酔剤が挙げられる。
【0086】
メタロプロテイナーゼ(MMP)及び他のプロテアーゼの作用を阻害する組織マトリックス分解阻害剤の非限定例としては、MMP阻害剤(例えば、外来性MMP阻害剤、ヒドロキシメート系MMP阻害剤、バチマスタット(BB-94)、イロマスタット(GM6001)、マリマスタット(BB2516)、チオール、ペリオスタット(ドキシサイクリン)、スクアリン酸、BB-1101、ヒドロキシ尿素、ヒドラジン、内在性、カルバモイルリン酸塩、ベータラクタム、及びMMPの組織阻害剤(TIMP))が挙げられる。
【0087】
抗癌剤の非限定例としては、モノクローナル抗体、ベバシズマブ(アバスチン)、細胞/化学誘引物質、アルキル化剤(例えば、二官能性、シクロホスファミド、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、単官能性、ニトロソ尿素、及びテモゾロミド)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、及びバルルビシン)、細胞骨格破壊剤(例えば、パクリタキセル及びドセタキセル)、微小管機能を阻害することによって細胞分裂を制限するエポチロン剤、細胞分裂又は特定の細胞機能に必要な様々な酵素を遮断する阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えば、ボリノスタット及びロミデプシン)、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、イリノテカン及びトポテカン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド、テニポシド、及びタフルポシド)、キナーゼ阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブ、及びビスモデギブ)、ヌクレオチド類自体(例えば、アザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、ドキシフルリジン、フルオロウラシル、5-FU、アドルシル、Carac、Efudix、Efudex、Fluoroplex、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、及びチオグアニン)、DNAを切断し、DNAの巻き戻し/巻き付きを妨害するペプチド抗生剤(例えば、ブレオマイシン及びアクチノマイシン)、DNA修復及び/又は合成を阻害するDNAを架橋する白金系抗腫瘍薬(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、及びエロキサチン)、レチノイド(例えば、トレチノイン、アリトレチノイン、及びベキサロテン)、有糸分裂及び微小管形成を阻害するビンカアルカロイド剤(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン)、細胞増殖(cell growth)又は細胞増殖(cell expansion)を阻害する血管新生阻害剤(例えば、アキシチニブ(Inlyta)、ベバシズマブ(Avastin)、カボザンチニブ(Cometriq)、エベロリムス(Afinitor、Zortress)、レナリドマイド(Revlimid)、パゾパニブ(Votrient)、ラムシルマブ(Cyramza)、レゴラフェニブ(Stivarga)、ソラフェニブ(Nexavar)、スニチニブ(Sutent)、サリドマイド(Synovir、Thalomid)、バンデタニブ(Caprelsa)、Zib-アフリベルセプト(Zaltrap)、抗血管新生多糖、アプリジン(デヒドロジデムニンB)、サポゲニン、すなわち、20(S)-プロトパナキサジオール、及び20(S)-プロトパナキサトリオール)、抗イレウス剤、運動促進剤、免疫抑制剤(例えば、タクロリムス)、血液態様修飾剤(blood aspect modifier agent)(例えば、血管拡張薬、バイアグラ、及びニフェジピン)、3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル-CoA(HMG CoA)レダクターゼ阻害剤(例えば、アトルバスタチン)、及び抗血管新生剤が挙げられる。
【0088】
また、例示的な薬剤は、創傷治癒に受動的に寄与する作用剤、例えば、栄養、酸素排除剤、アミノ酸、コラーゲン合成剤、グルタミン、インスリン、ブチレート、及びデキストランなども含む。また、例示的な薬剤は、抗癒着剤も含む。その非限定例は、ヒアルロン酸/カルボキシメチルセルロース(seprafilm)、酸化再生セルロース(Interceed)、及びイコデキストリン4%(Extraneal、Adept)も含む。
【0089】
例示的な薬剤としてはまた、冠動脈疾患(CAD)(例えば、VEGF165タンパク質、AdVEGF165、AdVEGF121、及びVEGF165プラスミド)又は末梢動脈疾患(PAD)(例えば、VEGF165プラスミド、AdVEGF121、SB-509(SFP-VEGFプラスミド)、AdVEGF165、及びAd2-HIF1α-VP16(WALK試験))後の血液供給再生を促進する薬剤が挙げられる。
【0090】
薬物放出
記載された技術に基づく補助材は、例えば、組織内方成長に対して、所望の様式で所望の効果を提供するために、多くの異なる方法で、少なくとも1種の薬剤と関連付けられ得る。少なくとも1種の薬剤は、施療部位において所望の治癒プロセスをトリガするために、複数の空間的及び時間的パターンで補助材から放出されるように構成され得る。薬剤は、補助材内に配置され、補助材に結合され、補助材内に組み込まれ、補助材内に分散され、又は補助材と他の方法で関連付けられ得る。例えば、補助材は、内部に、1種又は2種以上の異なる薬剤を放出可能に保持している、1つ又は2つ以上の領域を有し得る。これらの領域は、様々なサイズ及び形状の、様々な方法で内部に薬剤を保持する、別個のリザーバであるか、又は、補助材内の他の別個の若しくは連続した領域であることができる。いくつかの態様では、補助材の特定の構成により、1種の薬剤又は2種以上の異なる薬剤を、内部に放出可能に保持することができる。
【0091】
薬剤が補助材内に配置される方法に関わらず、有効量の少なくとも1種の薬剤が、容器、例えば、マイクロカプセル、マイクロビーズ、又は任意の他の容器の形態であることができるペレット内に封入され得る。この容器は、生体吸収性ポリマーから形成され得る。
【0092】
補助材からの少なくとも1種の薬剤の標的化運搬及び放出は、様々な要因に応じた多くの方法において達成され得る。一般的に、少なくとも1種の薬剤は、補助材料が組織に運搬された実質的に直後に薬剤が放出されるように、ボーラス投与量として補助材料から放出され得る。あるいは、少なくとも1種の薬剤は、数分、数時間、数日、又はそれ以上であり得る特定の期間にわたって、補助材料から放出され得る。タイミングを合わせた放出(timed release)の速度及び放出される薬剤量は、様々な要因、例えば、薬剤が放出される領域の分解速度、補助材内に薬剤を保持するのに使用される1つ又は2つ以上のコーティング又は他の構造の分解速度、施療部位の環境条件、及び様々な他の要因により決まり得る。いくつかの態様では、補助材が内部に配置された2つ以上の薬剤を有する場合、第1の薬剤のボーラス投与量放出は、第1の薬剤が放出された後に放出し始めるように、第2の薬剤の放出を調節し得る。補助材は、複数の薬剤を含み得る。同薬剤はそれぞれ、1種又は2種以上の他の薬剤の放出に、任意の適切な方法で影響を及ぼし得る。
【0093】
ボーラス投与量として又はタイミングを合わせた放出としての少なくとも1種の薬剤の放出は、補助材料が組織に運搬された実質的に直後に生じても若しくは開始してもよいし、又は、所定の時間まで遅延されてもよい。遅延は、補助材又は1つ若しくは2つ以上のその領域の構造及び性質により決まり得る。
【0094】
補助材料は、補助材内に保持された有効量の1種以上の薬剤の分配を促進する構造を有し、所望の効果をもたらすように構成され得る。例えば、薬剤の標的化送達は、薬剤の特定の空間的分布をその送達に基づいて可能にするパターンで形成された補助材内の領域(例えば、リザーバ、例えば、細孔又は他の構造)に、薬剤を組み込むことにより達成され得る。リザーバ内に配置された薬剤は、別個の容器内に組み込まれ得る。リザーバは、2種類以上の異なる薬剤を含み得る。1種以上の薬剤は、均質な様式又は異質な空間的及び/若しくは時間的様式において、補助材から溶出され、所望の治療を提供し得る。補助材の構造及び薬剤がそれから放出される様式は、組織再成長に影響を及ぼし、又は、制御するのに使用され得る。更に、組織再成長は、施療部位の特定の位置において亢進させ、施療部位の他の位置では抑制することができる。
【0095】
調整可能な分解プロファイルを有する、植え込み可能な補助材
上述したように、補助材の実施形態は、治療部位での組織の増強、ステープル穿刺部位内及びその付近における組織移動の最小化、組織厚さ補償など様々な機能のために使用することができる。この機能は、強度(例えば、圧縮強度、引張強度)、弾性率/剛性など補助材の1つ以上の機械的特性に依存し、補助材の機能が達成されることを確実にするために、植え込み後に所定のレベル以上に留まる。しかしながら、植え込み後、補助材は、体液(例えば、水及び/又は含水流体)を吸収し得る。体液は、補助材料と(例えば、加水分解を介して)化学的に反応し、補助材料を経時的に分解させ、補助材の機械的特性の変化をもたらし得る。
【0096】
所与の補助材については、時間に応じた機械的特性の変化を、分解プロファイルの形態で特徴付けることができる。しかしながら、外科医が、植え込み位置、手術の種類など考慮事項に基づいて補助材の分解プロファイルを調整することを望む場合があることは理解されるであろう。したがって、以下で詳細に説明するように、本開示の実施形態は、調整可能な分解プロファイルを有する圧縮性補助材を提供する。
【0097】
一実施形態では、ステープルカートリッジと共に使用するための圧縮性補助材キットが提供され、このキットは、生体適合性補助材料と、前処理流体と、を含み得る。補助材料は、ステープルカートリッジ本体又はアンビル上に解放可能に保持されるように構成されており、カートリッジ本体内のステープルの配備によって組織に送達されるように構成されている。補助材料は、多孔質ポリマー体の形態であり得る。植え込み前に、前処理流体を補助材料に塗布して、組織に送達されたときに第1の分解プロファイルを示すように構成されているストック、すなわち未処理状態から、組織に送達されたときに第2の分解プロファイルを示すように構成されている処理済み状態に補助材料を変化させることができる。第1の分解プロファイル及び第2の分解プロファイルは、互いに異なり得る。
【0098】
図8は、いくつかの例示的な分解プロファイルを示すプロットであり、1つは未処理の補助材のプロットであり、2つは処理済み補助材のプロットである。分解プロファイルは、時間に応じて所与の補助材の機械的特性の値を表す曲線の形態である。示されるように、分解プロファイルの傾きによって表される、処理済み補助材の分解率は、未処理の補助材の分解率より大きくても小さくてもよい。キットの実施形態は、分解率を増減させるように構成された、少なくとも1つの前処理流体を含み得る。特定の実施形態では、キットは、分解率を所定の分解率まで増減させるように構成された複数の前処理流体を含み得、したがって、ユーザが、所望の分解率を生成するように構成された前処理流体を選択することを可能にする。
【0099】
以下でより詳細に論じるように、前処理流体は種々の機構を使用して、組織に送達されたときに補助材料の分解率を増減させることができる。一態様では、前処理流体は、未処理の補助材と比較して、水を含有する体液と処理済み補助材材料との間の化学反応(例えば、加水分解)の速度を増減させることができる。別の態様では、前処理流体は、補助材料による体液の吸収を促進又は阻害して、体液と接触し、したがって化学的に反応することができる補助材料の表面積をそれぞれ増減させるように構成され得る。未処理の補助材と比較して、体液と接触する処理済み補助材の表面積を増減させることによって、処理済み補助材の分解率を、未処理の補助材に対して増減させることができる。
【0100】
更なる実施形態では、ステープルカートリッジ又はアンビルへの取り付け前に、補助材料に圧縮力を加えて、補助材料の細孔間の接続性、したがって流体の補助材料の内部への流れ込みの相対的な容易さを変更することができる。上述のように、補助材料の細孔は、開放又は閉鎖のいずれかに分類することができる。開放細孔は、内部を通る流体の流れを可能にすることができるが、閉鎖細孔は可能にすることができない。一実施形態では、補助材料に加えられた圧縮力は、隣接する細孔間にチャネル(例えば、クラック)を形成して、閉鎖細孔を開放細孔に変換することができる。このように多孔性を開放することにより、補助材料を通る流体の流れを促進し、体液との接触に利用可能な補助材料の表面積を増加させ、したがって、補助材料の分解率を増加させることができる。他の実施形態では、補助材料に加えられる圧縮力は、隣接する細孔間のチャネルを閉鎖して、開放細孔を閉鎖細孔に変換することができる。このように多孔性を閉鎖することにより、補助材料を通る流体の流れを阻害し、体液との接触に利用可能な補助材料の表面積を減少させ、したがって、補助材料の分解率を減少させることができる。
【0101】
前処理流体は、様々な方法で補助材料に塗布することができる。一態様では、補助材料は、前処理流体を含有する容器に浸漬され得る。別の態様では、前処理流体は、送達装置(例えば、ピペット、点眼器など)を使用して補助材料に塗布することができる。特定の実施形態では、前処理流体は、補助材がステープルカートリッジから分離されるときに補助材に塗布される。他の実施形態では、前処理流体は、補助材がステープルカートリッジ又はアンビル上に保持されているときに補助材に塗布される。
【0102】
前処理流体の特定の実施形態は、様々な機構を使用して、未処理の補助材と比較して処理済み補助材の分解率を増加させるように構成され得る。一態様では、前処理流体は、植え込まれると、補助材料に隣接する任意の含水組織又は含水流体のpHを変化させる(例えば、上昇させる)ように構成されている。一例として、前処理流体は、補助材と接触する流体に含まれる水及び/又は補助材に隣接する含水流体と混合され得る。補助材の位置でpHを上昇させることによって、補助材料の加水分解率を増加させることができ、それによって、処理済み補助材の分解率を増加させる。pHを増加させるのに有効な前処理流体の例としては、1種以上の塩、重炭酸塩、又は他の緩衝態様を含む流体が挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態では、前処理流体は、塩化ナトリウムと水との溶液(例えば、生理食塩水)である。
【0103】
別の態様では、前処理流体は、補助材料をより親水性にするように構成されている。一例として、前処理流体は、補助材料の表面(例えば、細孔の外側表面、内側表面など)の少なくとも一部の上にコーティング又はフィルムを形成することができる。概して、親水性である材料の表面に水が接触すると、水は表面に広がる、すなわち表面を「濡らす」傾向がある。表面の親水性の程度が増加するにつれて、所与の体積の水と表面との間の接触面積が増加する。したがって、補助材の親水性を増加させることは、補助材料と水及び/又は含水体液との間の接触面積の増加に起因して、補助材料の分解率を増加させ得る。補助材料の親水性を増大させるのに有効な前処理流体の例としては、湿潤剤又は緩く架橋したポリマーなど界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
更なる実施形態では、架橋を用いて、単独で又は前処理流体と組み合わせて、補助材料の親水性を増加させることができる。例えば、補助材料は、物理的に架橋され得るか(例えば、紫外線(UV)及びガンマ線による照射、並びに脱水熱処理)、又は化学的に架橋され得る(例えば、ゲニピン及びグルタルアルデヒドなど化学架橋剤の使用)。特定の実施形態では、前処理流体は、1種以上の化学架橋剤を含み得る。化学的架橋剤の非限定例としては、隣接するポリマー分子(例えば、グルタルアルデヒド、ポリエポキシド、及びイソシアネート)間の遊離カルボン酸基、アミノ基、及びヒドロキシル基を架橋する二官能性/多官能性分子、硫酸クロム、アルデヒド、及びイソシアネートが挙げられる。
【0105】
代替的な実施形態では、前処理流体は、様々な機構を使用して、未処理の補助材と比較して補助材材料の分解率を減少させるように構成され得る。一態様では、前処理流体は、補助材料をより親水性にするように構成され得る。一例として、前処理流体は、補助材料の表面(例えば、細孔の外側表面、内側表面など)の少なくとも一部の上にコーティング又はフィルムを形成することができる。概して、疎水性である材料の表面に水が接触すると、表面に広がる、すなわち表面を「濡らす」のではなく、ビーズを形成する傾向がある。表面の疎水性の程度が増加するにつれて、所与の体積の水と表面との間の接触面積が増加する。したがって、補助材の疎水性を増加させることは、補助材料と水及び/又は含水体液との間の接触面積の減少に起因して、補助材料の分解率を減少させ得る。このような前処理流体の例としては、シリコーン、及び補助材料の表面の疎水性を増加させるのに好適な他の材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
別の態様では、前処理流体は、処理済み状態の補助材の表面(例えば、細孔の外側表面、内側表面など)の少なくとも一部に堆積されるコーティングを形成するように構成され得る。コーティングは、補助材料と水及び/又は含水体液との間の接触を阻害するバリアを形成する。すなわち、水又は含水流体は、補助材料と反応して補助材料を分解する前に、コーティングに浸透する(例えば、拡散によって)必要がある。コーティングの浸透は瞬間的ではなく、達成にいくらかの時間を必要とするので、コーティングの存在は、加水分解の開始を遅らせ、所与の量の分解を達成するための時間を増加させ、それによって分解率を減少させる。そのような前処理流体の例としては、油(例えば、鉱油、食品用油)、グリース、生体適合性潤滑剤、及びペルフルオロポリエーテル(PFPE))が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0107】
更なる態様では、前処理流体は、多孔質ポリマー体の細孔の少なくとも一部を封止するシーラントを形成するように構成されており、補助材料のバルク内への水又は含水体液の侵入を阻害する。一例として、前処理流体によって形成されるシーラントは、補助材料の表面から補助材料のバルク内の細孔に至るそれぞれの流路を部分的に及び/又は完全に塞ぐように、補助材料の表面及び/又は内部に位置付けられ得る。したがって、シーラントは、補助材料と水及び/又は含水体液との間の接触面積の減少に起因して、補助材料の分解率を減少させ得る。このような前処理流体の例としては、油(例えば、鉱油、食品用油)、グリース、生体適合性潤滑剤、及び補助材料の細孔内への流体の流れを遮断することができる他の高粘性材料、並びにペルフルオロポリエーテル(PFPE)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0108】
別の態様では、前処理流体は、補助材料と反応して(例えば、置換反応によって)処理済み状態の多孔質ポリマー体を形成するポリマー鎖の少なくとも一部の末端官能基を、未処理状態と比較して変化させるように構成されている。末端官能基の差異は、ポリマー補助材料と水又は含水体液との間の接触を阻害する。したがって、末端官能基は、補補助材料と水及び/又は含水体液との間の接触面積の減少に起因して、補助材料の分解率を減少させ得る。このような前処理流体の例としては、生理食塩水及び酸(例えば、炭酸)が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0109】
更なる例として、前処理流体は、多孔質ポリマー体の複数のポリマー鎖の少なくとも一部を終端させるように構成され得る。結果として、処理済み状態のポリマー体の複数のポリマー鎖の平均長は、未処理状態のポリマー体の複数のポリマー鎖の平均長よりも短い。平均鎖長の減少は、ポリマー補助材料と水との間の接触面積を減少させ、それによって補助材料の分解率を減少させる。
【0110】
上述したように、補助材は、組織を治療するためにステープルカートリッジ又はアンビルと共に使用することができる。植え込み前に、補助材料は、例えば、図6に示されるステープルカートリッジ102などステープルカートリッジ又は図2に示されるアンビル(例えば、上部顎表面34など)への取り付けの前又は後のいずれかに、前処理流体で処理され得る。結果として、前処理流体は、少なくとも補助材料の表面上に存在し得る。特定の実施形態では、前処理流体はまた、開放細孔を介して補助材料の表面から補助材料の内部又はバルクに流れることができる。適切に処理されると、処理済み補助材料がアンビル又はステープルカートリッジ上に解放可能に保持され、カートリッジがステープラ10又は図1など外科用ステープルの顎部内に配設された状態で、例えば図7に示されるように、装置を操作して顎部32、34間の組織に係合させ、装置を作動させ、それによって補助材料及び組織を通してステープルを発射し、補助材料を組織に固定することができる。
【0111】
植え込まれると、前処理された補助材料は、補助材料に隣接する水と相互作用し得る。このような水は、水単独又は他の体液との混合物の形態であり得る。加えて、水は、補助材料の表面に、及び補助材料の内部の少なくとも一部内に位置し得る(例えば、補助材料の表面と流体連通している開放細孔など流体通路を通る流れを介して)。
【0112】
前処理流体の構成は、前処理流体が補助材料の分解率を増加させるか、又は減少させるかを決定する。補助材料の分解率を増加させるように構成されている前処理材料の実施形態は、補助材料と水との間の化学反応率(例えば、加水分解)を増加させることによって、又は水と補助材料との接触面積を増加させることによって増加させることができる。一例では、前処理流体は、補助材の表面(例えば、細孔の外側表面又は内側表面)に接触する水と混合され得る。前処理流体と水との混合物は、水単独よりも高いpHを有し、補助材料との加水分解反応率を増加させることができる。別の例では、前処理流体は、補助材料の表面(例えば、細孔の外側表面又は内側表面)に、これらの表面の親水性を増加させるコーティング又はフィルムを形成することができる。親水性の増加により、これらの表面に接触する水が広がって表面を濡らし、補助材料と水との接触表面積を増加させ、それによって補助材料の分解率を増加させる。
【0113】
補助材料の分解率を増加させるように構成されている前処理材料の実施形態は、物理的又は化学的機構を介して、水と補助材料との接触面積を減少させることによって、分解率を増加させることができる。接触面積を物理的に減少させる前処理流体は、コーティング又はシーラントを含み得る。前処理流体のコーティングは、補助材料の表面(例えば、細孔の外側表面又は内側表面)への前処理流体の流れによって形成され得る。コーティングが補助材料の表面上に存在するようになると、水と補助材料との間の相互作用に対する物理的バリアを形成することができる。前処理流体は、補助材料の外側表面と補助材料の内部との間の流体通路として機能する、補助材料の隣接する表面へと流れ、それらの間に存在することによって、シーラントを形成することができる。シーラントが流れ通路内に存在するようになると、そこを通る水の流れを遮断し、補助材料の内部領域を水との相互作用から隔離することができる。あるいは、前処理流体は、補助材料を形成するポリマー鎖と反応して、これらのポリマー鎖を切断し、ポリマー鎖長を物理的に減少させ、したがって、水と接触し得る補助材料の面積を減少させることができる。接触面積を化学的に減少させる前処理流体は、疎水剤及び置換剤を含み得る。疎水剤は、補助材料の表面(例えば、細孔の外側表面又は内側表面)に、これらの表面の疎水性を増加させるコーティング又はフィルムを形成することができる。疎水性が増加すると、これらの表面に接触する水を、広がって表面を濡らすのではなく、球状にさせる。置換剤は、補助材料を形成するポリマー鎖と化学的に反応して、ポリマー鎖の末端基を、水との相互作用を阻害する官能基に変更することができる。
【0114】
治癒進行に基づいて分解する、圧縮特性を有する植え込み可能な補助材
切断された組織に隣接して補助材を植え込むとき、補助材の1つの機能は、治癒プロセス(例えば、止血)を促進するために組織にステープル留めされたときに、組織(例えば、切断線)に圧力を加えることであり得る。治癒が進行するにつれて、血管の形成(血管新生)を促進するために、組織に加えられる圧力(圧縮圧力)を低減することが更に望ましい場合がある。既存の補助材は、時間に応じて分解し、したがって、水との化学反応(加水分解)に起因する分解によって、組織に加えられる圧力を減少させるように構成され得る。しかしながら、そのような分解及び圧力の減少は、組織治癒に直接相関しない。したがって、所与の時点で既存の分解性補助材によって維持される圧力のレベルは、当該時点における治癒進行の程度にとって不適切であり、実際には治癒プロセスを促進するのではなく阻害する場合がある。
【0115】
したがって、更なる実施形態では、植え込み後に剛性の低下を示すように構成され得る、植え込み可能な補助材が提供される。剛性の低下は、治癒プロセス中に放出される生理的要素との化学反応による補助材料の分解から生じ得る。組織にステープル留めされると、剛性の減少は更に、補助材によって組織に加えられる圧力の減少をもたらす。このようにして、加えられた圧力は、単に水に曝された時間ではなく、組織の治癒進行の進捗と相関する。
【0116】
一実施形態では、生体適合性補助材料は、ステープルカートリッジ上に解放可能に保持されるように構成されており、ステープルカートリッジ内のステープルの配備によって組織に送達されるように構成されている。補助材料は、組織との接触から第1の期間中にほぼ一定である第1の圧縮剛性を示す多孔質ポリマー体の形態であり得る。多孔質ポリマー体は、第1の期間後に、第1の圧縮特性よりも小さい第2の圧縮剛性を更に示し得る。第2の圧縮特性は、組織の治癒進行中に組織から放出される少なくとも1つの生理的要素との相互作用(例えば、化学反応)に起因して、経時的に減少し得る。換言すれば、治癒プロセスが進行するにつれて、治癒プロセスの異なる段階中に組織から放出される生理的要素は、補助材と相互作用し、それによって、補助材の圧縮特性を変化させ得る。以下でより詳細に論じるように、多孔質ポリマー体と少なくとも1つの生理的要素との相互作用の例としては、酸化、酵素触媒加水分解、及び補助材に隣接するpHの変化を挙げることができる。
【0117】
第1の期間は、多孔質ポリマー体が少なくとも1つの生理的要素と実質的に反応する前の期間を表す。すなわち、第1の圧縮剛性の任意の変化がごくわずか(例えば、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満など)な期間である。対照的に、第2の期間は、多孔質ポリマー体と少なくとも1つの生理的要素との反応が生じる期間を表し得る。
【0118】
一実施形態では、多孔質ポリマー体と少なくとも1つの生理的要素との相互作用は、治癒反応の進行、及び創傷が再構築されるときの治癒部位への少なくとも1つの生理的要素の身体の導入に起因する酵素分解をもたらす。
【0119】
上述したように、一実施形態では、多孔質ポリマー体と少なくとも1つの生理的要素との間の相互作用は酸化反応であり、少なくとも1つの生理的要素は酸素含有酵素である。概して、創傷治癒は、止血、炎症、増殖、及び再構築の4段階に分けることができ、創傷治癒プロセスにおけるほぼ全ての段階は、以下に概説するように、酸素を必要とし得る。
【0120】
治癒組織は、グルコースの酸化的代謝から生成されるエネルギーを必要とする。グルコースの好気性代謝では、細胞は酸素を使用してアデノシン三リン酸(ATP)を生成し、創傷治癒中の細胞プロセスの大部分に燃料を供給する。したがって、治癒組織では、酸素必要量が増加する。酸素消費の増加は、次に低酸素症を引き起こし、活性酸素種の活性を高めることによって治癒プロセスの初期段階を活性化する。
【0121】
治癒進行の炎症段階中、炎症領域は、活性酸素種の有意な産生のための部位である。一態様では、この産生は、食作用、感染に対する防御としての食細胞による細胞又は他の物質の摂取、及び異物による侵入の発生に起因する。活性酸素種の存在は、創傷部位における白血球(leukocyte)(白血球(white blood cell))など炎症細胞の動員及び活性化、並びに線維芽細胞の活性化など創傷修復に必要な他の機能を更に刺激する。白血球の例としては、好中球、好塩基球、好酸球、リンパ球、単球、及びマクロファージが挙げられる。これらの炎症細胞はまた、高活性酸素種の形態で少なくとも1つの生理的要素を産生することができる。高活性酸素種のクラスの例としては、酸素含有酵素、フリーラジカル、スーパーオキシド、及び過酸化物のうちの少なくとも1つが挙げられ得る。活性酸素種の具体例としては、O2-、H、NO、及びHOClの少なくとも1つが挙げられ得る。この時点で、創傷治癒の成分(例えば、創傷白血球及び線維芽細胞)を刺激し、誘引する、一組の増殖因子が放出され得る。過酸化水素(H)は、これらの相互作用のメディエータであり得る。創傷治癒が進行するにつれて、活性酸素種の酸化還元シグナル伝達に起因して細胞増殖及び移動が生じる。創傷治癒の最後のステップ、すなわち段階は再構築である。再構築中、創傷は引張強度を獲得し、コラーゲン線維が収縮するので、創傷は収縮する。コラーゲンプロセスの最も顕著なメディエータは、マクロファージ、ケラチノサイト、内皮細胞、及び線維芽細胞/線維芽細胞によって放出される化合物であり、これらの全てが酸素に依存する。
【0122】
更なる実施形態では、活性酸素種は、身体内の他の領域から創傷治癒部位に方向付けられ得る。概して、細胞は、典型的には、その機能中に酸素を消費する。身体は、細胞を生きたままに保つために、典型的にはヘモグロビン輸送など生物学的プロセスを介して酸素を提供する。身体には、ある領域により多くの細胞が存在するため、血管新生は、当該部位への血液経路を成長させて、当該部位に栄養素及び酸素を供給し、細胞集団を維持する。
【0123】
上記から、治癒プロセスは、創傷治癒部位に活性酸素種の産生及び/又は誘引をもたらすことが理解され得る。これらの活性酸素種は、ポリマー補助材料との酸化反応に関与してポリマー鎖切断を引き起こし、補助材の分解に寄与し得る。具体的には、O2-は、求核攻撃によるエステル結合の切断によって脂肪族ポリエステルなどポリマーの分解を加速することができる。酸素誘導性分解は、ポリマー補助材料を化学的に分解し、ポリマー補助材料を脆弱化させ、剛性が低下し、したがって、組織に加えられる加圧力(例えば、圧縮力)を変化させる。ポリマー補助材料との反応に利用可能な活性酸素種の濃度は治癒プロセスに応じるため、ポリマー補助材料の酸素誘導分解の程度、したがって補助材料によって組織に加えられる圧力も、治癒プロセスに応じる。
【0124】
更なる実施形態では、酵素触媒加水分解は、ポリマー体の分解及びそれに伴う補助材料の剛性の低下に寄与し得る。一例として、加水分解反応の吸着及び速度は、(i)ポリマー体の生理化学的特性(例えば、分子量、化学組成、結晶化度、表面積など)、(ii)特定酵素の特性(例えば、活性、安定性、局所濃度、アミノ酸組成、及び三次元立体配座など)、並びに(iii)pH及び温度など培地条件の影響を受け得る。補助材に隣接する局所環境における安定剤、活性剤、及び/又は阻害生成物(例えば、補助材料の分解又は加工添加物の浸出から生じる)の存在はまた、酵素吸着及び活性に影響を及ぼすことによって、酵素触媒反応に影響を及ぼし得る。このような酵素の例としては、プロテアーゼ、エステラーゼ、グリコシダーゼ、ホスファターゼ、及び他の適切な加水分解酵素など加水分解酵素を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0125】
更なる実施形態では、ポリマー体の化学修飾(例えば、架橋、ポリマー鎖への化学基の除去又は導入)は、酵素分解率に影響を及ぼし得る。特に、化学修飾の程度に応じて、修飾されたポリマー体を認識する酵素の能力を損なう可能性がある。例として、ペプチドグリカン及びキチン材料の分解に関与する酵素であるリゾチームは、高度に脱アセチル化されたキトサン又は架橋キトサンに対して低活性を示す。そのような酵素の例としては、リゾチームが挙げられるが、これに限定されない。
【0126】
他の実施形態では、分解は、原位置における他の生理学的化学変化に関連し得る。例えば、pHは、感染の発症の治癒進行に起因して局所化学環境内で最も影響を受ける変化の1つである。創傷に隣接するpH値は、創傷治癒のプロセスで生じる生化学反応の少なくとも一部、最大で全体に直接的及び間接的に影響を及ぼす。一例として、創傷の表面pHは、感染の制御、並びに抗菌活性、酸素放出、血管新生、プロテアーゼ活性、及び生物学的毒性の増加を支援するので、創傷治癒において重要な役割を果たす。したがって、pH値は、創傷治癒における通常の細胞事象に影響を及ぼし得る。
【0127】
更に、高アルカリ性pHを有する創傷は、中性に近いpHを有する創傷と比較して低い治癒率を、急性及び慢性創傷の両方において有する。すなわち、pHがアルカリレベルに上昇すると、創傷治癒の進行は低下する。急性創傷並びに慢性創傷の環境は、治癒が開始すると、アルカリ性状態から中性状態に、次いで酸性状態へと進行する。
【0128】
したがって、補助材の実施形態は、少なくとも1つの生理的要素の存在に起因した、ポリマー体に隣接する局所環境におけるpHの低下に応答して、第2の剛性をとるように構成され得る。上述したように、加水分解反応に関与する水又は含水生物学的材料のpHは、加水分解率に影響を及ぼし得る。具体的には、加水分解率は、pHの低下と共に低下し得る。創傷の局所環境におけるpHは治癒進行と共に低下するので、pHの低下は、補助材料との加水分解反応に関与する水及び含水流体によっても経験されることが予想され得る。したがって、補助材料の加水分解率、及び補助材料の分解に対する加水分解の相対的寄与は、補助材料の分解に対する酸化の相対的寄与と比較して、経時的に減少し得る。しかしながら、酸化プロセスと加水分解プロセスとの組み合わせから生じる、補助材料の全体的な分解率は、酸化のみによる分解率を上回り得ることが理解され得る。
【0129】
上述したように、補助材は、例えば、図6に示されるステープルカートリッジ102などステープルカートリッジ又は図2に示されるアンビル(例えば、上部顎部表面34など)を治療するために外科用ステープラ10のステープルカートリッジ又はアンビルと共に使用することができる。植え込み中、補助材料は、ステープルカートリッジ本体内のステープルを配備し、補助材料を組織に固定し、補助材料が創傷(例えば、切断線)に圧力(例えば、圧縮圧力)を加えるようにさせることによって、組織に送達され得る。
【0130】
使用中、治癒プロセスは、補助材料に連結された組織内で生じる。治癒プロセスは、創傷からの血流が停止する止血から始まる。概して、止血を促進するために、補助材が比較的高い圧力(圧縮圧力)を創傷に加えることが有益である。上述したように、補助材は、ステープルの配備によって組織に送達されるときに(例えば、上部顎部22及び下部顎部34によって圧縮され、解放されるときに膨張し得る。したがって、補助材料は、補助材が配備されると、組織に接触して膨張したときに補助材によって及ぼされる圧縮圧力が組織の止血を補助するのに十分に高いように、圧縮状態で第1の剛性を示すように構成され得る。
【0131】
補助材は、組織との接触から第1の期間中に、第1の剛性をほぼ一定レベルに維持するように更に構成され得る。すなわち、補助材料は、第1の期間中に、水又は含水流体など体液との反応(例えば、酸化、酵素触媒加水分解など)による分解をほとんど又は全く経験しないことがあり得る。第1の期間中に第1の剛性をほぼ一定レベルに維持することによって、補助材料によって組織に加えられる圧縮圧力もほぼ一定レベルに維持される。
【0132】
補助材料は、様々な方法で、第1の期間にわたって第1の剛性を維持するように構成され得る。上述のように、一態様では、補助材料は、補助材料の分解率を低減するために、上述のように前処理流体で処理され得る。別の態様では、補助材料は、機械的に圧縮されて、補助材料の多孔性の少なくとも一部を閉鎖し、体液の流れを阻害することができる。補助材料の分解率を低減するための1つ以上の他の機構を、単独で、又は上述の機構との任意の組み合わせで使用することができ、制限なく使用することができることが理解され得る。
【0133】
治癒の進行が炎症、増殖、及び再構築段階へと続くにつれて、血管の形成を促進するために、補助材料によって組織に加えられる圧縮圧力を低減することが望ましい場合がある。したがって、補助材料は、第1の期間に続く第2の期間中に、第1の剛性よりも低い第2の剛性を示すように構成され得る。
【0134】
一例として、第2の期間中に、これらの後期治癒段階が生じ得、組織は、治癒を促進するために少なくとも1つの生理的要素を放出し得る。例えば、少なくとも1つの生理的要素としては、活性酸素種が挙げられ得る。活性酸素種は、治癒プロセスのためのエネルギーを提供するために産生されるが、補助材料と相互作用して分解を引き起こすこともあり得る。このような相互作用の例としては、活性酸素種との反応を介した酸化、酵素(例えば、酸素含有酵素)によって触媒される加水分解、及び補助材料に局所的な流体環境内の少なくとも1つの生理的要素の存在に起因するpHの変化が挙げられ得る。酸化は、ポリマー鎖切断による補助材料の分解に寄与し得るが、酵素触媒加水分解は、ポリマー補助材料の化学分解による分解に寄与し得る。pHは、分解率に影響を及ぼすことによって分解に寄与し得、分解率の増加は、pHが比較的高い場合(例えば、治癒プロセス内の比較的初期にアルカリ性である場合)に最大となり得る。最小酸化は、治癒中に産生される活性酸素種の濃度に依存するため、治癒プロセスに応じ得る。結果として、補助材料の分解は、治癒の進行に応じ得、その結果、補助材料は、治癒プロセスの進行と共に減少する、第1の剛性よりも小さい第2の剛性を示す。有益なことに、上述したように、第1の剛性から第2の剛性への補助材料の剛性の低減は、血管新生を促進し得る。
【0135】
異なる膨張領域を有する、組織厚さ補償補助材
上述したように、特定の実施形態では、補助材は、組織にステープル留めされたときに組織厚さの変動を補償するために構成され得、補助材は、非圧縮(非変形)高さ、すなわち配備前高さを示し、複数の圧縮(変形)高さ、すなわち配備済み高さのうちの1つに変形するように構成されている。ステープルが補助材及び組織を貫通するときに、体液(例えば、血液、空気、胃腸液など)の漏出が生じ得ることが理解され得る。特に、補助材を貫通することにより、ステープルは、ステープル脚部の直径よりも大きい孔を補助材に形成し得る。更に、止血の開始前に組織が切断されるとき、血液は切断線に沿って流れ得る。したがって、ステープル穿刺孔を封止するために補助材料を使用すること、及び/又は止血を容易にするためにステープル線に圧力を加えることが望ましい場合がある。
【0136】
以下で詳細に説明する更なる実施形態では、水分に曝露されると膨潤する材料で形成され、補助材内の位置に応じて厚さ及び/又は圧力が変化する構造を有する組織厚さ補償補助材が提供される。一例として、補助材の所定の部分は、補助材の膨張を可能にするか、又は抑制するように構成されており、したがって、補助材のこれらの所定の部分において組織に加えられる封止圧力を変更する。一態様では、ステープル脚部が補助材を貫通することが意図される、それぞれの初期ステープル線に隣接する補助材の部分は、初期ステープル線から離れた補助材の部分と比較して、水分に曝露されたときに膨張するように構成され得る。補助材のこの膨張は、補助材材料をステープル脚部と接触させ、ステープル孔を封止し得る。別の態様では、ナイフが通過して組織及び補助材を切断することが予想される初期切断線に隣接する補助材の部分は、初期切断線から離れた補助材の部分と比較して、水分に曝露されたときに膨張するように構成され得る。補助材のこの膨張は、補助材が切断線及び/又は切断線に隣接する組織の領域に圧縮圧力を加えて、止血を促進することを可能にし得る。
【0137】
図9は、非変形状態、すなわち配備前状態にある組織厚さ補償補助材3000の1つの例示的な実施形態の上部組織接触面の上面図(例えば、x-y平面)を示す概略図である。補助材3000は、1つ以上の第1の部分3002と、1つ以上の第2の部分3004と、を含む。補助材3000は、ステープル留めアセンブリのステープルカートリッジ又はアンビル上に解放可能に保持されるように構成されているが、補助材3000は、明確にするために分離して示されている。
【0138】
補助材3000の第1の部分3002は、単位体積の流体の受容に応答して第1の膨張挙動を示すように構成されている第1の材料で形成され得る。補助材3000の第2の部分3004は、単位体積の流体の受容に応答して、第1の膨張挙動とは異なる第2の膨張挙動を示すように構成され得る。膨張挙動としては、膨張体積及び膨張率が挙げられ得るが、これらに限定されない。特定の実施形態では、第2の材料の第2の膨張挙動による膨張体積及び/又は膨張率は、第1の材料の第1の膨張挙動による、対応する膨張体積及び/又は膨張率よりも大きい。
【0139】
第1の部分3002は、上述したように、生体適合性多孔質ポリマーで形成され得る。対照的に、第2の部分3004は、第1の部分3002の生体適合性多孔質ポリマー材料とは異なる膨潤性材料で形成され得る。膨潤性材料の例としては、ヒドロゲル、低分子量ポリマー(例えば、約30,000kDa未満など、患者の身体から除去されるのに十分な平均分子量を有するポリマー)、比較的低い架橋度を有するポリマーが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0140】
補助材の代替的な実施形態は、第1及び第2の部分の相対的な膨張特性(例えば、膨張体積、膨張率など)を上述の膨張特性から変更するように構成され得ることが理解され得る。例えば、補助材の第1の部分の膨張体積及び/又は膨張率は、ほぼ同体積の水分の受容に応答して、第2の部分の膨張体積及び/又は膨張率よりも大きくなり得る。更に、図示されていないが、補助材の更なる実施形態は、3領域以上を含み得、各領域は、ほぼ同体積の水分の受容に応答して、異なるそれぞれの量を膨潤するように構成されている。
【0141】
上述したように、補助材と共に外科用ステープルを使用するときに遭遇する共通の問題は、ステープルの完全な形成後であっても、1つ以上の流体(例えば、水、血液、空気、胃腸液など)が、ステープルによって形成された開口部を通って浸出することである。したがって、補助材3000の更なる実施形態では、第1の部分3002及び第2の部分3004の相対的配置は、ステープル線に沿ってステープルに圧力を加えて、ステープルによって補助材内に形成された孔を封止するように構成され得る。図9の上面図に示すように、初期ステープル線3006は、補助材3000の長さに沿って(例えば、長手方向、すなわちx方向)に延在する。第2の部分3004は、初期ステープル線3006とほぼ整列しており(例えば、ほぼ平行であり)、初期ステープル線3006よりも大きい幅を有する。複数の初期ステープル線3006が存在する状況下では、これらのステープル線3006は、第1の部分3002によって幅方向(例えば、y方向)に互いから分離し、補助材の長手方向(例えば、x方向に)に延在し、それぞれのステープル線3006と整列し得る。
【0142】
図10は、図9の補助材3000の端面図(例えば、y-z平面)である。示されるように、第2の部分3004は、補助材3000の厚さ(例えば、z方向)全体にわたって延在し得る。
【0143】
配備前及び水又は他の生理液の受容前には、補助材3000は第1の形状を有する。植え込まれ、水又は他の流体を受容すると、図11に示されるように、第2の部分3004が膨張して、対応する、膨張した第2の部分3004’’を形成し、第1の形状と異なる第2の形状をとる。結果として、第2の部分3004の膨張(the of expansion, the second portions 3004)は、ステープル3010に圧縮力、すなわち圧力(矢印3012)を及ぼし、それによって、補助材3000を貫通して形成された孔を、ステープル3010が内部を通って通過することによって部分的に又は実質的に完全に封止する。それぞれの膨張した第2の部分3004’の膨張挙動は、ステープル線3006に沿った位置に応じて(例えば、x方向に沿って)同一であり得る、又は異なり得る。
【0144】
別の実施形態では、第1の部分3002及び第2の部分3004の相対的配置は、第1の部分3002及び第2の部分3004のうちの少なくとも一方の膨張が、止血をもたらすために十分な圧力を組織切断線に沿って及び/又は隣接して及ぼすように構成され得る。図12は、非変形状態、すなわち配備前状態にある組織厚さ補償補助材3020の別の例示的な実施形態の上部組織接触面の上面図を示す概略図である。図13は、図12の補助材3020の端面図である。図14は、変形状態、すなわち配備状態の補助材3020の端面図である。補助材3000は、ステープル留めアセンブリのステープルカートリッジ又はアンビル上に解放可能に保持されるように構成されているが、補助材3020は、明確にするために分離して示されている。
【0145】
図12及び図13に示されるように、補助材3000と同様に、補助材3020は、第1の部分3002と、第2の部分3004と、を含む。しかしながら、補助材3000とは対照的に、第2の部分3004は、初期組織切断線3022上で、及び/又はそれに隣接して少なくとも第1の部分3002に重なり合っている。他の実施形態では、第2の部分は、第1の部分の実質的に全体に重なり合い得る。補助材3020は、ステープル留めアセンブリのステープルカートリッジ上に位置付けられ得、第1の部分3022は、図3に示されるように、初期組織切断線3022を画定するナイフ36の予想経路からある距離を離間され、第2の部分3004は、ナイフ経路/初期組織切断線3022上に又はそれに隣接して位置付けられる。そのように構成されると、補助材3020が水又は他の流体を受容すると(矢印3024)、図14に示されるように、第1の部分3002に対して第2の部分3004が膨張して、膨張した第2の部分3004’を形成する。膨張した第2の部分3004’は、切断線3022に沿って圧力(矢印3026)を及ぼし、止血を促進する。それぞれの膨張した第2の部分3004’の膨張挙動は、ナイフ経路/初期組織切断線3022に沿った位置に応じて同一であり得る、又は異なり得る。
【0146】
補助材3000、3020の更なる実施形態では、第2の部分3004は、多孔質固体材料で形成され、流体可溶性カプセル内に圧縮状態で収容され得る。カプセルは、そこから第2の部分を放出するための所定の期間(例えば、およそ数秒~数分)後に、水及び/又は他の生理液との接触に応答して比較的迅速に分解するように構成され得る。有益なことに、そのような封入は、補助材3000、3020によって組織に加えられる圧力のタイムリリース制御を提供する。
【0147】
他の実施形態では、組織厚さ補償補助材は、経時的に分解するように構成され得、組織圧縮のための短期機構を提供する。以下でより詳細に論じるように、そのような補助材は、比較的長期の圧縮を提供する他の機構(例えば、ステープル)と組み合わせることができる。合わせて、これらの短期圧縮機構及び長期圧縮機構は、組織治癒を促進することができる。
【0148】
概して、生体吸収性補助材料の機械的特性は、補助材の分解の程度が増加するにつれて経時的に変化する(例えば、減少する)。一実施形態では、補助材3020は、身体が、切断線3022の領域内で出血を凝固させる(coagulate)/凝固させる(clot)ことを可能にするのに十分な圧縮(例えば、膨張した第2の部分3004’による)を維持する速度で分解するように構成され得る。ステープルによって提供される圧縮圧力は、補助材によって提供されるものと比較して、より長期間かつより低程度で切断線を更に補強するように提供され得る。有益なことに、補助材3020によって短期的に提供される比較的高い圧縮圧力は凝固を促進し、ステープルによって長期的に提供される比較的低い圧縮圧力は、切断線3022への血流を制限することなく補強する。
【0149】
別の実施形態では、組織厚さ補償補助材3030が提供され、ステープル3036と組み合わせて機能して、膨張後に補助材3030が後退して組織3038と接触することを阻害するように構成されている。図15は、複数のステープル(1つのステープル3036のみが示される)を収容するステープルカートリッジ3044の反対側にアンビル3042(部分的に示される)を有する第1の顎部を含む、発射前構成のステープル留めアセンブリ3040の側断面図を示す概略図である。補助材3020は、アンビル3042上に位置付けられ、1つ以上の第2の部分3034の下にある、1つ以上の第1の部分3032を含む。第1の部分3032はアンビル3042に接触し、第2の部分3034はアンビル3042から離間され、組織に面する。補助材3030は、この発射前構成で総初期厚さsを有する。示されるように、第1の部分3032及び第2の部分3034は、概して平面である。しかしながら、他の非平面構成が制限なく使用され得る。加えて、図15の実施形態は、アンビル上に位置付けられた補助材を示しているが、代替的な実施形態では、補助材は、ステープルカートリッジ上に位置付けられ得る。
【0150】
動作中、図16に示されるように、組織3038は、アンビル3042とステープルカートリッジ3044との間にクランプされ、1つ以上のステープル3036は、ステープルカートリッジから、補助材330を通って、組織3038内へと発射され、それによって、補助材3030を組織3038にステープル留めする。図17に更に示されるように、補助材3030及び組織3038は、その後、ステープルの発射後にステープル留めアセンブリ3040から解放される。ステープル留めアセンブリ3040から解放された後の補助材3030の総厚は、ステープル留めアセンブリ3040によって加えられたクランプ力の除去に起因して、初期厚さsから植え込み済み厚さsに増加する。組織3038は厚さtを有する。
【0151】
組織3038にステープル留めされた後、補助材は、単位体積の流体(例えば、水及び/又は他の生理液)を受容する。第1の部分3032及び第2の部分3034のうちの少なくとも一方は、水及び/又は他の生理液の受容に応答して膨張するように構成されたポリマーで形成される。特定の実施形態では、第1の部分3032は、水分吸収性の膨潤性ポリマーで形成され得る。第2の部分3034は、半多孔質フィルムで形成され得る。第1の部分3032は、単位体積の流体の受容に応答して、第1の膨張挙動に従って膨張するように構成されている。第2の部分3034は、単位体積の流体の受容に応答して、第1の膨張挙動とは異なる第2の膨張挙動に従って膨張するように構成され得る。第2の部分3034は、第1の部分3032に更に重なり合うことができ、(例えば、生体適合性接着剤又は他の固定機構によって)第1の部分3032に機械的に連結することができる。第2の部分3034は半多孔質であるため、第2の部分3034で受容され、吸収されなかった水及び/又は他の生理液の一部は、第1の部分3032で受容されるために第2の部分3034を通って(例えば、開放多孔性を介して)流れることができる。
【0152】
第1の部分3032の膨張は、第1の圧力(例えば、圧縮圧力)を組織3038に加え、第2の部分3034の膨張は、組織3038に第2の圧力を加える。補助材3030が膨張し、補助材3030が組織3038に圧力を加えた結果として、図17に示すように、補助材の厚さは第3の厚さsに増加し、組織3038の厚さtは減少する。代替的な実施形態では、第2の部分は、水及び/又は他の生理液を受容するときに実質的に膨張しないか、又は第1の部分の程度よりも著しく小さい程度に膨張する。
【0153】
他の実施形態では、ステープル3036は、第1の方向例えば、組織3038に向かう方向)での補助材3030の膨張を可能にし、第1の方向と反対の第2の方向(例えば、組織3038から離れる方向)での補助材3030の後退を阻害するように構成された、1つ以上の特徴部3046を含み得る。図16及び図17に示されるように、1つ以上の特徴部3046は、ステープル3036の脚部のうちの1つ以上に沿って延在する、複数の返し部を含み得る。複数の返し部は、補助材内へと発射された後に、組織3038内に向かうステープルの挿入方向とは反対に、返し部がステープルの基部に向かって延在するように位置付けられている。補助材3030が膨張するときに(例えば、第1の部分3032及び/又は第2の部分3034の膨張によって)、複数の返し部は、少なくとも第2の部分3034に係合する。第2の部分3034は第1の部分3032に機械的に連結されるので、第2の部分3034との返し部の係合は、補助材3030の膨張後に組織3038から離れようとする補助材3030の後退を阻害するラチェットのような効果をもたらす。
【0154】
補助材3000、3020、3030のいずれかの任意の部分の実施形態は、膨張に応答して色の変化を示すように構成され得る。一例として、色変化を示す補助材3000、3020、3030の部分は、色遷移染料を含み得る。色遷移染料の例としては、水及び脂質など少なくとも1つの流体に応答して色を変化させるように構成されているハイドロクロミックインクが挙げられ得る。更なる実施形態では、水又は脂質感受性ポリマーで形成された補助材3030、3020、3030の膨張可能部分は、未配備時は薄い、乾燥状態であり得、配備され、水和されると、より高い状態に膨張し得る。
【0155】
補助材3000、3020、3030の選択部分の、膨張時に色変化を示す能力は、膨張挙動の迅速な視覚的識別を可能にし得る。これは、補助材3000、3020、3030の選択部分が実際に膨張しており、したがって、時間のかかる測定を必要とすることなく、ステープルの封止又は切断線に圧力を加えることなど膨張によって可能になる機能が達成されることを確認するのに有益であり得る。
【0156】
補助材3000、3020、3030の部分の膨張のそのような視覚的識別は、ステープルを封止するために使用され得ることが理解され得る。色変化を示す補助材3000、3020、3020の部分の質量は一定であるため、膨張から生じる体積の増加は、これらの部分の密度を減少させることが理解され得る。
【0157】
複数の異なる機構を介して分解する複合補助材
上述したように、組織に加えられる圧縮量を、組織治癒を促進するのに最適な圧縮量と相関させるために、治癒プロセスに応じて分解する、圧縮特性を示す補助材を使用することが望ましい場合がある。一態様では、分解は、治癒プロセス中に組織から放出される、少なくとも1つの生理的要素との反応に応答して分解する補助材料を使用することによって、治癒プロセスに相関させることができる。一例では、活性酸素種を含む生理的要素は、補助材料との酸化反応に関与することによって分解を促進することができる。別の例では、治癒プロセス中に放出される酵素は、加水分解反応を触媒し、加水分解によって補助材料の分解率を増加させることができる。この概念は、それぞれが異なる機構によって分解する2種以上のポリマーで形成される複合補助材に関連して更に用いることができる。このようにして、補助材の分解率及び付随する機械特性の変化は、単一の機構ではなく、2つの機構を介して制御することができ、より大きな機能性を提供する。
【0158】
図18は、複数のステープル3056を収容するステープルカートリッジ3054の反対側にアンビル3052を有する第1の顎部を含む、発射前構成のステープル留めアセンブリ3050の側断面図を示す概略図である。示されるように、複合材補助材3060の例示的な実施形態は、アンビル3052上に解放可能に保持され、厚さSを有する。代替的な実施形態(図示せず)では、複合補助材3060は、ステープルカートリッジ内のステープルの配備によって組織に送達するために、ステープルカートリッジ又はアンビルのいずれか又は両方の上に解放可能に保持され得る。
【0159】
複合補助材3060は、図19により詳細に示されている。複合補助材3060は、第1のポリマー3064と、第2のポリマー3066と、を含む多孔質ポリマー体3062として形成される。第1のポリマー3064は第2のポリマー3066に重なり合っており、第2のポリマー3066は第1のポリマー3064の下で圧縮されている。第1のポリマー3064及び第2のポリマー3066が示されているが、補助材は、任意の数のポリマーを含み得る。特定の実施形態では、第1のポリマー3064は、少なくとも1種の第1の薬物3070を内部に保持する。特定の実施形態では、少なくとも1種の第1の薬物3070は止血剤である。更なる実施形態では、第2のポリマー3066は、組織再構築を促進するように構成された、少なくとも1種の第2の薬物3074を内部に保持する。第1のポリマー3064及び第2のポリマー3066の圧縮応答、並びに放出された第1の薬物3070及び第2の薬物3074の対応する量は、それぞれ図24B及び図24Cに図示されており、以下でより詳細に論じる。時間に応じて生じる治癒メカニズムが、図24Aに更に示される。
【0160】
第1のポリマー3064は、水3072との相互作用に応答した加水分解及び生理的温度への加熱のうちの少なくとも1つに応じて、第1の分解プロファイルに従って分解するように構成され得る。第1のポリマー3064は更に、水3072及び/又は他の生理液の吸収に応答して膨張するように構成され得る。第1ポリマー3064の例は、吸湿性粉末及び吸湿性発泡体のうちの少なくとも1つを含む。
【0161】
第2のポリマー3066は、以下で詳述するように、酸化、酵素触媒加水分解、及び組織の治癒進行中に組織から放出された少なくとも1つの生理的要素3076との相互作用から生じたpHの変化のうちの少なくとも1つに応じて、第2の分解プロファイルに従って分解するように構成され得る(図23)。第2のポリマー3066は、第1のポリマー3064の分解に応答して膨張するように更に構成されている。
【0162】
図19及び図21に示されるように、第1のポリマー3064は、第2のポリマー3064に重なり合っており、したがって、第2のポリマー3064を機械的に拘束する。結果として、第1の時間窓A中、第2のポリマー3064によって組織3068(図24B)に加えられる圧縮圧力は、第1のポリマー3064と比較して、比較的低く、比較的緩やかに増加する。圧縮圧力の比較的緩やかな増加率は、第1のポリマー3064の適度な分解及び第2のポリマー3064の拘束の付随する緩和に起因し得る。
【0163】
第2ポリマー3066の例としては、多孔質構造が挙げられる。少なくとも1つの生理的要素の例としては、活性酸素種が挙げられ得るが、これに限定されない。活性酸素種は、酸素含有酵素、フリーラジカル、スーパーオキシド、及び過酸化物のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0164】
特定の実施形態では、第2のポリマー3064は、第2の薬物3074を内部に保持する。少なくとも1種の第2の薬物3074の例としては、組織再構築を促進するように構成された薬物が挙げられ得るが、これに限定されない。図24Cに示されるように、発射前(条件時間窓Aには、少なくとも1種の第2の薬物3074はいずれも放出されない。
【0165】
特定の実施形態では、少なくとも1種の第2の薬物3074は、ボーラス放出又は徐放のうちの少なくとも1つのために構成され得る。一例では、図21に示されるように、第2の薬物3074は、第2の薬物3074の徐放のために構成されている材料3074a(例えば、水3072及び/又は他の生理液との相互作用に応答して比較的ゆっくりと分解する材料)によってカプセル化され得る。別の例では、徐放は、第2のポリマー内に形成された、1つ以上の比較的大型のリザーバによって提供され得、これらのリザーバは、第2のポリマーの分解中の比較的短時間の間にそこからの比較的少量の第2の薬物の放出を提供するように構成されている。一例として、流体制限装置(例えば弁)は、徐放用の比較的大型のリザーバと組み合わせて使用され得る。他の実施形態では、徐放は、複数の比較的より小容量のリザーバによって提供され得、これらのリザーバは、第2のポリマーの分解を介して経時的に比較的小量の第2の薬物を独立して放出する(例えば、互いに流体連通していない、それぞれの流体通路への第2の薬物の放出)ように構成されている。
【0166】
更なる実施形態では、第2の薬物のボーラス放出は、第2のポリマー内に形成された、1つ以上の比較的大型のリザーバによって提供され得、これらのリザーバは、第2のポリマーの分解中に比較的大量の第2の薬物の放出を提供するように構成されている。代替的な実施形態では、ボーラス収容は、複数のより小型のリザーバによって提供され得、これらのリザーバは、第2のポリマーの分解中の比較的短期間の間にそこから放出される(例えば、1つ以上の共通流体通路内への第2の薬物の放出)第2の薬物のそれぞれの量を同時に組み合わせるように構成されている。
【0167】
図20は、補助材3060及び組織3068を通してステープル3056を発射した直後(時間窓B、図24A)の補助材3060を示す概略図である。図21は、補助材3060をより詳細に示す概略図である。示されるように、第1のポリマー3064は、水3072との相互作用に応答して膨張する。この膨張の結果として、第1のポリマー3064は、第1の圧縮圧力3080を組織3068に及ぼす。
【0168】
時間窓B(図24A)の間の第1のポリマー3064の第1の分解プロファイルは、水3072との相互作用(例えば、化学反応)(加水分解)に応じる。この構成は、第1の圧縮圧力3080の、ピーク値からの比較的急速な減少率を示す第1の分解プロファイルをもたらすため、止血に有益であり得る。したがって、特定の実施形態では、第1の分解プロファイルによる第1のポリマー3064の分解率は、第2の分解プロファイルによる第2のポリマー3066の分解率よりも大きい。
【0169】
同時に、第1の薬物3070の放出率3086も比較的急速な減少を示し、第1のポリマー3064の分解の最大値から低下する。すなわち、少なくとも1種の第1の薬物3070は、比較的迅速な放出のために構成されている。上述したように、少なくとも1種の第1の薬剤3070は止血剤であり得る。したがって、少なくとも1種の第1の薬物3070の迅速な放出は、迅速な止血を更に促進することができる。
【0170】
第1のポリマー3064の下の第2のポリマー3066を圧縮することにより、第1のポリマー3064は、第2のポリマー3066の膨張を抑制することができる。これは、第2の圧縮圧力3082の比較的遅い増加率として図24Bに反映されている。しかしながら、第2のポリマー3066を拘束する第1のポリマー3064の能力は、第1のポリマー3064の継続的な分解と共に減少し、組織3068に対する第2の圧縮応力2412の増加率は、第2の時間窓B内で時間が進行するにつれて上昇する。結果として、補助材3060の厚さは、初期厚さSから第1の厚さSに増加し得る。組織厚さは、初期厚さttissue1を有する。第1の圧縮圧力3080と第2の圧縮圧力3082との組み合わせは、止血を更に促進し、凝固のために血流の制限された領域3069を提供する。
【0171】
特定の実施形態では、第1のポリマー及び第2のポリマーのうちの少なくとも一方は、周囲のポリマー材料よりも大量に膨張するように構成されている、ヒドロゲルを含み得る。このようにして、得られる複合材補助材は、様々な量の膨張を示すことができる。このようにして、補助材によって、組織の異なる領域(例えば、切断線、ステープル線など)に異なるレベルの圧縮を加えることができる。図20に示すように、複合補助材3060は、異なる領域において2つの異なるレベルの圧縮C1及びC2を加える。例えば、圧縮C2は、圧縮C1よりも大きく、切断線に近接して位置付けられ、それによって、局部圧力を増加させ、治癒するまで領域を封止することができる。
【0172】
第2の時間窓Bの間に治癒が進行するにつれて(例えば、炎症段階及び好中球の放出)、複合補助材3060において受容される、少なくとも1つの生理的要素3076の濃度が増加する。一例として、少なくとも1つの生理的要素3076のうちの対応するものと共に、好中球が放出され得る。同時に、第1のポリマー3064の分解が経時的に進行し、第2のポリマー3066と少なくとも1つの生理的要素3076との相互作用を阻害する第1のポリマー3064の能力を低下させる。したがって、第2の時間窓B内で時間が進行するにつれて、第2のポリマー3066の分解率が増加し、第2のポリマー3066からの少なくとも1種の第2の薬物3074の放出率2086の増加として反映される。
【0173】
図22は、補助材3060及び組織3068を通してステープル3056を発射した後の所定の時間(時間窓B、図24C)における補助材3060を示す概略図である。図23は、補助材3060をより詳細に示す概略図である。示されるように、第1のポリマー3064の分解は、比較的小さい第1の圧縮圧力3080、及び少なくとも1種の第1の薬物3070の比較的低い放出率3084によって、実質的に完了している。すなわち、少なくとも1種の第1の薬物3070の実質的に全てが放出されている。更に、第1の圧縮圧力3080の減少により、補助材3060の厚さは、第1の厚さSから第2の厚さSへと減少し、組織3068の厚さは、初期組織厚さttissue1から第2の組織厚さttissue2へと増加する。有益なことに、組織3068に加えられた第1の圧縮圧力3080と第2の圧縮圧力3082との組み合わせは、血管新生を可能にするのに十分なレベルである。
【0174】
同時に、治癒は、炎症段階から増殖段階及び成熟段階へと進み続け、図24Aに示されるように、マクロファージ、線維芽細胞、及びリンパ球、並びに及び少なくとも1つの生理的要素3076のうちの対応するものの放出をもたらす。時間窓Cの間の第1のポリマー3064の高度な分解により、第2のポリマー3066と少なくとも1つの生理的要素3076との相互作用を阻害する、少なくとも1つの第1のポリマー3064の能力が有意に低減される。したがって、少なくとも1つの生理的要素3076は、第2のポリマー3066の細孔に自由に流入することができる。これにより、第2のポリマー3066の分解率は増加し、第2の圧縮圧力3082は減少する。
【0175】
少なくとも1種の第2の薬物の放出率3086はピークまで増加して、第2のポリマー3066の分解が増加し、次いでピークから減少する。少なくとも1種の第2の薬物3074の比較的ゆっくりとした放出は、組織再構築を促進することができる。組織再構築を促進するように構成された薬物の例としては、疼痛又は炎症を治療するように構成された薬物が挙げられ得る。このような薬物の更なる例としては、MMP阻害剤が挙げられ得るが、これに限定されない。MMP阻害剤の例は、米国特許第10,939,911号及び同第10,569,071号、並びに米国特許出願公開第2018/0353659号、同第2018/0353175号、及び同第2018/0353174号に見出すことができ、これらのそれぞれは、参照によりその全体が組み込まれる。
【0176】
本発明には従来の低侵襲性及び開放手術用器具における用途、並びにロボット支援手術における用途があることを当業者は認識するであろう。
【0177】
本明細書に開示されるデバイスは、1回の使用後に廃棄されるように設計することができ、又は複数回使用されるように設計することができる。しかしながら、いずれの場合も、デバイスは、少なくとも1回の使用後に、再使用のために再調整することができる。再調整には、デバイスの分解ステップ、それに続く洗浄ステップ又は特定の部品の交換ステップ、及びその後の再組み立てステップの任意の組み合わせを含むことができる。具体的には、デバイスは分解することができ、デバイスの任意の数の特定の部品又は部分を、任意の組み合わせで選択的に交換するか又は取り外すことができる。特定の部分を洗浄及び/又は交換した後、デバイスを後の使用のために、再調整施設で、又は外科処置の直前に外科チームによってのいずれかで再度組み立てることができる。当業者であれば、デバイスの再調整が、分解、洗浄/交換、及び再組立のための様々な技術を利用できることを理解するであろう。このような技術の使用、及び結果として得られる再調整されたデバイスは、全て本出願の範囲内にある。
【0178】
当業者には、上で説明される実施形態に基づいて本発明の更なる特徴及び利点が認識されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によって示される場合を除き、具体的に示され説明された内容により限定されるものではない。本明細書で引用される全ての刊行物及び参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0179】
〔実施の態様〕
(1) ステープル留めアセンブリであって、
内部に配設された複数のステープルを有するステープルカートリッジであって、前記複数のステープルは、ステープル列に配列され、組織内に配備されるように構成されており、前記カートリッジは、切断線に沿って組織を切断するためのナイフを受容するために前記ステープル列の間で前記カートリッジを通って延在するナイフスロットを含む、ステープルカートリッジと、
前記ステープルカートリッジの反対側に位置付けられたアンビルと、
前記ステープルカートリッジ及び前記アンビルのうちの1つの上に解放可能に保持されるように構成され、前記ステープルカートリッジからの前記複数のステープルの配備によって組織に送達されるように構成された補助材であって、前記補助材は、第1の形状を有する生体適合性多孔質ポリマー材料を含み、前記補助材の少なくとも1つの第1の部分は、単位体積の流体の受容に応答して第1の膨張挙動を示すように構成されており、前記補助材の少なくとも1つの第2の部分は、前記補助材が前記第1の形状とは異なる第2の形状をとるように、前記単位体積の流体の受容に応答して、前記第1の膨張挙動とは異なる第2の膨張挙動を示すように構成されており、前記第1の膨張挙動と前記第2の膨張挙動との間の差異は、前記補助材がステープル留めされている組織の異なる部分に異なる圧力を加えるように構成されている、補助材と、を備える、ステープル留めアセンブリ。
(2) 前記補助材の膨張量は、前記切断線において止血を提供するように構成されている、実施態様1に記載の外科用システム。
(3) 前記補助材の膨張量は、前記ステープルが組織内へと射出されたときに前記複数のステープルによって前記組織に形成された孔を封止するように構成されている、実施態様1に記載の外科用システム。
(4) 前記補助材の前記少なくとも1つの第2の部分は、前記ナイフスロットに隣接して位置付けられており、前記補助材の前記少なくとも1つの第1の部分は、前記ナイフスロットからある距離を離間され、前記第2の形状は、前記第1の形状よりも大きい圧力を加えるように構成されている、実施態様1に記載の外科用システム。
(5) 前記少なくとも1つの第2の部分は、前記生体適合性多孔質ポリマー材料とは異なる膨潤性材料を含む、実施態様1に記載の外科用システム。
【0180】
(6) 前記膨潤性材料は、ヒドロゲル、30,000kD未満の平均分子量を有するポリマーを含む、実施態様1に記載の外科用システム。
(7) 前記膨潤性材料は多孔質固体材料を含み、前記膨潤性材料は流体可溶性カプセル内に圧縮状態で収容されている、実施態様1に記載の外科用システム。
(8) 前記カプセルは、前記流体との接触から所定の期間後に前記膨潤性材料を放出するように構成されている、実施態様7に記載の外科用システム。
(9) 前記単位体積の流体の受容に応答した、前記補助材の前記少なくとも1つの第2の部分の膨張率は、前記単位体積の流体の受容に応答した、前記補助材の前記少なくとも1つの第1の部分の膨張率よりも大きい、実施態様1に記載の外科用システム。
(10) 前記複数のステープルのうちの少なくとも1つのステープルは、複数の返し部を含む、少なくとも1つの脚部を含み、前記複数のステープルが前記補助材及び前記組織内へと射出されるとき、前記複数の返し部は、第1の方向での前記補助材の膨張を可能にし、前記第1の方向と反対の第2の方向での前記補助材の後退を阻害するように構成されている、実施態様1に記載の外科用システム。
【0181】
(11) 前記少なくとも1つの第2の部分は、前記補助材の表面を覆うフィルムを含む、実施態様10に記載の外科用システム。
(12) 前記補助材は、前記補助材の膨張中に色を変化させる色遷移染料を更に含む、実施態様1に記載の外科用システム。
(13) 前記色遷移染料は、流体及び脂質のうちの少なくとも1つとの接触に応答して色を変化させるように構成されたハイドロクロミックインクである、実施態様12に記載の外科用システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【手続補正書】
【提出日】2023-11-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステープル留めアセンブリであって、
内部に配設された複数のステープルを有するステープルカートリッジであって、前記複数のステープルは、ステープル列に配列され、組織内に配備されるように構成されており、前記カートリッジは、切断線に沿って組織を切断するためのナイフを受容するために前記ステープル列の間で前記カートリッジを通って延在するナイフスロットを含む、ステープルカートリッジと、
前記ステープルカートリッジの反対側に位置付けられたアンビルと、
前記ステープルカートリッジ及び前記アンビルのうちの1つの上に解放可能に保持されるように構成され、前記ステープルカートリッジからの前記複数のステープルの配備によって組織に送達されるように構成された補助材であって、前記補助材は、第1の形状を有する生体適合性多孔質ポリマー材料を含み、前記補助材の少なくとも1つの第1の部分は、単位体積の流体の受容に応答して第1の膨張挙動を示すように構成されており、前記補助材の少なくとも1つの第2の部分は、前記補助材が前記第1の形状とは異なる第2の形状をとるように、前記単位体積の流体の受容に応答して、前記第1の膨張挙動とは異なる第2の膨張挙動を示すように構成されており、前記第1の膨張挙動と前記第2の膨張挙動との間の差異は、前記補助材がステープル留めされている組織の異なる部分に異なる圧力を加えるように構成されている、補助材と、を備える、ステープル留めアセンブリ。
【請求項2】
前記補助材の膨張量は、前記切断線において止血を提供するように構成されている、請求項1に記載のステープル留めアセンブリ
【請求項3】
前記補助材の膨張量は、前記ステープルが組織内へと射出されたときに前記複数のステープルによって前記組織に形成された孔を封止するように構成されている、請求項1に記載のステープル留めアセンブリ
【請求項4】
前記補助材の前記少なくとも1つの第2の部分は、前記ナイフスロットに隣接して位置付けられており、前記補助材の前記少なくとも1つの第1の部分は、前記ナイフスロットからある距離を離間され、前記第2の形状は、前記第1の形状よりも大きい圧力を加えるように構成されている、請求項1に記載のステープル留めアセンブリ
【請求項5】
前記少なくとも1つの第2の部分は、前記生体適合性多孔質ポリマー材料とは異なる膨潤性材料を含む、請求項1に記載のステープル留めアセンブリ
【請求項6】
前記膨潤性材料は、ヒドロゲル、30,000kD未満の平均分子量を有するポリマーを含む、請求項1に記載のステープル留めアセンブリ
【請求項7】
前記膨潤性材料は多孔質固体材料を含み、前記膨潤性材料は流体可溶性カプセル内に圧縮状態で収容されている、請求項1に記載のステープル留めアセンブリ
【請求項8】
前記カプセルは、前記流体との接触から所定の期間後に前記膨潤性材料を放出するように構成されている、請求項7に記載のステープル留めアセンブリ
【請求項9】
前記単位体積の流体の受容に応答した、前記補助材の前記少なくとも1つの第2の部分の膨張率は、前記単位体積の流体の受容に応答した、前記補助材の前記少なくとも1つの第1の部分の膨張率よりも大きい、請求項1に記載のステープル留めアセンブリ
【請求項10】
前記複数のステープルのうちの少なくとも1つのステープルは、複数の返し部を含む、少なくとも1つの脚部を含み、前記複数のステープルが前記補助材及び前記組織内へと射出されるとき、前記複数の返し部は、第1の方向での前記補助材の膨張を可能にし、前記第1の方向と反対の第2の方向での前記補助材の後退を阻害するように構成されている、請求項1に記載のステープル留めアセンブリ
【請求項11】
前記少なくとも1つの第2の部分は、前記補助材の表面を覆うフィルムを含む、請求項10に記載のステープル留めアセンブリ
【請求項12】
前記補助材は、前記補助材の膨張中に色を変化させる色遷移染料を更に含む、請求項1に記載のステープル留めアセンブリ
【請求項13】
前記色遷移染料は、流体及び脂質のうちの少なくとも1つとの接触に応答して色を変化させるように構成されたハイドロクロミックインクである、請求項12に記載のステープル留めアセンブリ
【国際調査報告】