(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】フィルムを作製するのに適したポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/12 20060101AFI20240308BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20240308BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20240308BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C08L23/12
C08L23/08
C08F4/6592
C08J5/18 CES
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560601
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2022058468
(87)【国際公開番号】W WO2022207738
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジンボー
(72)【発明者】
【氏名】ガーライトナー,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ベルンライトナー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】レスキネン,パウリ
(72)【発明者】
【氏名】フリードリヒ,カールハインツ
(72)【発明者】
【氏名】ナムミラ-パカリネン,アウリィ
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J128
【Fターム(参考)】
4F071AA20
4F071AA84
4F071AA88
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4J128AD11
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4J128BC12B
4J128BC25B
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4J128EB02
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4J128ED01
4J128ED02
4J128FA09
4J128GA19
4J128GB01
(57)【要約】
本発明は、ポリマー組成物に関し、当該ポリマー組成物は少なくとも以下の成分:(A)当該ポリマー組成物の総重量に基づき30.0から80.0wt%のシングルサイト触媒により生成されたC2C3異相共重合体(HECO)であって、それによって、該共重合体は、ISO 11357-3に従って示差走査熱量測定によって決定される150から162℃の範囲の融点;5.0から40.0g/10minの範囲のISO 1133に従って決定されるMFR2(230℃、2.16kg);成分(A)の総重量に基づき1から10wt%の範囲の総C2含有量;及び、本明細書において記載されるようにCRYSTEX QC,Polymer Charに従って決定される10から50wt%の範囲の成分(A)の総重量に基づく可溶性画分(SF)を有する、シングルサイト触媒により生成されたC2C3異相共重合体と、(B)当該ポリマー組成物の総重量に基づき20.0から70.0wt%のプロピレンホモポリマーであって、それによって、該プロピレンホモポリマーは、1.0から20.0g/10minの範囲のISO 1133に従って決定されるMFR2(190℃、2.16kg);及び少なくとも10cNのISO 16790に従って決定されるF30溶融強度;を有する、プロピレンホモポリマーと、を含み、ここで、成分(A)及び(B)の重量比率を合計すると100wt%になる。さらに、本発明は、本発明によるポリマー組成物を含むフィルム、及び当該ポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含むコーティングされた物品に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、当該ポリマー組成物は少なくとも以下の成分、
(A) 当該ポリマー組成物の総重量に基づき30.0から80.0wt%のシングルサイト触媒により生成されたC
2C
3異相共重合体であり、それによって、前記共重合体は、
- ISO 11357-3に従って示差走査熱量測定によって決定される150から162℃の範囲の融点、
- 5.0から40.0g/10minの範囲のISO 1133に従って決定されるMFR
2(230℃、2.16kg)、
- 成分(A)の総重量に基づき1.0から10.0wt%の範囲の総C2含有量、及び
- 本明細書において記載されるようにCRYSTEX QC,Polymer Charに従って決定される10.0から50.0wt%の範囲の成分(A)の総重量に基づく可溶性画分、
を有する、シングルサイト触媒により生成されたC
2C
3異相共重合体と、
(B) 当該ポリマー組成物の総重量に基づき20.0から70.0wt%のプロピレンホモポリマーであり、それによって、前記プロピレンホモポリマーは、
- 1.0から20.0g/10minの範囲のISO 1133に従って決定されるMFR
2(190℃、2.16kg)、及び
- 少なくとも10cNのISO 16790に従って決定されるF
30溶融強度、
を有する、プロピレンホモポリマーと、
を含み、ここで、成分(A)及び(B)の重量比率を合計すると100wt%になる、ポリマー組成物。
【請求項2】
成分(A)は、151から160℃の範囲、好ましくは151から155℃の範囲、より好ましくは151から154℃の範囲の、ISO 11357-3に従って示差走査熱量測定によって決定される融点を有し、及び/又は
成分(A)は、10.0から30.0g/10minの範囲、好ましくは15.0から25.0g/10minの範囲、より好ましくは20.0から23.0g/10minの範囲の、ISO 1133に従って決定されるMFR
2(230℃、2.16kg)を有し、及び/又は
成分(A)は、成分(A)の総重量に基づき1.0から8.0wt%の範囲、好ましくは1.5から6.0wt%の範囲、より好ましくは2.5から4.0wt%の範囲の総C2含有量を有し、及び/又は
成分(A)は、本明細書において記載されるようにCRYSTEX QC,Polymer Charに従って決定される15.0から40.0wt%の範囲、好ましくは20.0から30.0wt%の範囲、より好ましくは24.0から28.0wt%の範囲の成分(A)の総重量に基づく可溶性画分を有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
成分(A)は、本明細書において記載されるようにCRYSTEX QC,Polymer Charに従って決定される5から40wt%の範囲、好ましくは8から30wt%の範囲、より好ましくは8から25wt%の範囲、さらにより好ましくは9から12wt%の範囲の可溶性画分の総重量に基づく可溶性画分のC2含有量を有し、及び/又は
成分(A)は、本明細書において記載されるようにCRYSTEX QC,Polymer Charに従って決定される4wt%未満、好ましくは2wt%未満、より好ましくは0から1wt%の範囲、さらにより好ましくは0wt%の結晶画分の総重量に基づく結晶画分のC2含有量を有し、及び/又は
成分(A)は、本明細書において記載されるようにCRYSTEX QC,Polymer Charに従って決定される1.0から5.0dl/gの範囲、好ましくは2.0から4.0dl/gの範囲、より好ましくは2.2から3.4dl/gの範囲、さらにより好ましくは3.0から3.3dl/gの範囲の可溶性画分の固有粘度を有し、及び/又は
成分(A)は、本明細書において記載されるようにCRYSTEX QC,Polymer Charに従って決定される0.5から4.0dl/gの範囲、好ましくは0.8から2.0dl/gの範囲、より好ましくは1.0から1.2dl/gの範囲の結晶画分の固有粘度を有する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
成分(B)は、1.0から15.0g/10minの範囲、好ましくは3.0から15.0g/10minの範囲、より好ましくは6.0から14.0g/10minの範囲、さらにより好ましくは8.0から12.0g/10minの範囲のISO 1133に従って決定されるMFR
2(230℃、2.16kg)を有し、及び/又は
成分(B)は、少なくとも20cN、好ましくは少なくとも30cN、より好ましくは30から60cNの範囲のISO 16790に従って決定されるF
30溶融強度を有し、及び/又は
成分(B)は、少なくとも200mm/s、好ましくは少なくとも250mm/s、より好ましくは250から300mm/sの範囲のISO 16790に従って決定されるv
30溶融伸展性を有し、及び/又は
成分(B)は、895から920kg/m
3の範囲、好ましくは900から910kg/m
3の範囲、より好ましくは904から906kg/m
3の範囲のISO 1183に従って決定される密度を有する、
ことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
当該ポリマー組成物は、4.0から30.0g/10minの範囲、好ましくは8.0から20.0g/10minの範囲、より好ましくは12.0から16.0g/10minの範囲のISO 1133に従って決定されるMFR
2(230℃、2.16kg)を有し、及び/又は
当該ポリマー組成物は、少なくとも2cN、好ましくは少なくとも3cN、より好ましくは3から5cNの範囲のISO 16790に従って決定されるF
30溶融強度を有し、及び/又は
当該ポリマー組成物は、少なくとも200mm/s、好ましくは少なくとも230mm/s、より好ましくは240から300mm/sの範囲、さらにより好ましくは240から260mm/sの範囲のISO 16790に従って決定されるv
30溶融伸展性を有し、及び/又は
当該ポリマー組成物は、12.0から16.0g/10minの範囲のISO 1133に従って決定されるMFR
2(230℃、2.16kg)、及び、3から5cNの範囲のISO 16790に従って決定されるF30を有する、
ことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
成分(A)は、メタロセン触媒の存在下で生成されたことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
当該ポリマー組成物は、好ましくはスリップ剤、酸スカベンジャー、UV安定剤、顔料、抗酸化物質、添加剤キャリア、核形成剤、及びそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの添加剤(C)を含み、それによって、これらの添加剤は、好ましくは、当該ポリマー組成物の総重量に基づき0.1から5.0wt%、より好ましくは0.1から4.0wt%で存在することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のポリマー組成物を含み、好ましくはこのポリマー組成物から成るフィルム。
【請求項9】
当該フィルムは、200から1000MPaの範囲、好ましくは300から700MPaの範囲、より好ましくは400から500MPaの範囲の、縦方向並びに横方向において50μmの厚さを有するキャストフィルム上で23℃においてISO 527-3に従って決定される引張係数を有することを特徴とする、請求項8に記載のフィルム。
【請求項10】
当該フィルムは、100℃から140℃未満の範囲、好ましくは120℃から135℃の範囲、より好ましくは120℃から132℃の範囲、さらにより好ましくは128から130℃の範囲の、50μmの厚さを有するキャストフィルム上で本明細書において記載されるように決定される封止開始温度を有することを特徴とする、請求項8又は9に記載のフィルム。
【請求項11】
当該フィルムは、5から20%未満の範囲、好ましくは8から16%の範囲、より好ましくは10から15%の範囲の、50μmの厚さを有するキャストフィルム上でASTM D1003-00に従って決定されるヘーズを有することを特徴とする、請求項8乃至10のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項12】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含むコーティングされた物品であって、好ましくは、前記層はこのポリマー組成物から成る、コーティングされた物品。
【請求項13】
当該物品は、押出コーティングされた物品であることを特徴とする、請求項12に記載のコーティングされた物品。
【請求項14】
押出コーティングステップを含む、請求項12に記載のコーティングされた物品を製造するプロセス。
【請求項15】
包装材料としての、好ましくは食品及び/又は医療製品のための耐熱性包装材料としての、請求項12又は13に記載のコーティングされた物品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のC2C3異相共重合体及び特定のプロピレンホモポリマーを含むポリマー組成物、並びに該ポリマー組成物を含む層を含むフィルム及びコーティングされた物品に関する。
【背景技術】
【0002】
コーティング、特に押出コーティングに適したポリプロピレン組成物は、当技術分野において既に知られている。
【0003】
特許文献1は、約12dg/minから120dg/minの流速を有する、約40から99重量%の混合物の大部分のポリプロピレンと、約1dg/minから15dg/minのメルトインデックス、約0.912g/ccより大きい密度、及び50%より大きいメルトインデックスリカバリーを有する、約1から60重量%のポリエチレンとを含む、様々な物品の押出、コーティング、及び成形のためのポリオレフィン組成物に関する。
【0004】
特許文献2は、押出コーティング組成物として有用な分解された結晶性のポリプロピレン又はプロピレン含有共重合体を含有する混合物に言及している。その後、これらのコーティングされた基板は、バッグの作製及び他の包装用途に使用することができる。特に、これらのコーティングは、分解された結晶性のポリプロピレン又はプロピレン含有共重合体と低密度のポリエチレンとの混合物である。
【0005】
特許文献3は、シングルサイト触媒により触媒される重合によって生成され、且つコモノマーとしてエチレン及び少なくとも2つのC4~12アルファオレフィンを含むポリエチレンを含むコーティングを有する押出コーティングされた基板に関する。
【0006】
特許文献4は、照射された第1のプロピレンポリマーと非照射された第2のプロピレンポリマーとの混合物を押出するプロセスに言及しており、第1のプロピレンポリマーは非フェノールの安定剤を含む。第1のプロピレンポリマー押出物の照射は、低酸素環境下で実行され、照射された第1のプロピレンポリマー及び非照射された第2のプロピレンポリマーは、それぞれの融点を下回る温度で混合される。混合物は、20から35%の粘度保持率を有する。
【0007】
特許文献5は、高い溶融強度及び引抜性、優れた加工性、低いゲル含有量を有し、且つ高温に耐えることができる幅広い種類の基板のための押出コーティング又は押出発泡に適したポリプロピレン組成物、そのようなポリプロピレン組成物及び押出コーティングされた又は押出発泡成形された物品を提供するプロセスに関する。ポリプロピレン組成物は、ポリプロピレンベースの樹脂を含み、それによって、ポリプロピレンベースの樹脂は、40℃のチルロール温度で生成されたフィルム厚70μmの薄いキャストフィルム上でOCSゲル計数装置を用いて測定された、1000以下のオプティカルゲル指数及び5から35g/10minのMFR2(2.16kg、230℃、ISO 1133)を有し、それによって、ポリプロピレンベースの樹脂は、3.0s-1のひずみ速度及び2.5のHenckyひずみで測定された場合に2.3から7.0のひずみ硬化係数(SHF)を有する。そのようなポリプロピレン組成物を生成するプロセスは、6.0g/10min以下のMFR2(2.16kg、230℃、ISO 1133)を有するシングルサイト触媒により得られるポリプロピレン中間体ベースの樹脂が、ペルオキシドのマスターバッチ組成物及びオリゴマージエンのマスターバッチ組成物と混合されて、予め混合された材料が形成され;さらに、予め混合された材料は、180から300℃の範囲のバレル温度で溶融混合装置において溶融混合されることを特徴とする。
【0008】
特許文献6は、分岐ポリプロピレンを含むポリプロピレン組成物を提供するプロセスに言及しており、このプロセスにおいて、1.0g/10minを超えるメルトフローレートMFR2(230℃)を有するポリプロピレンは、熱分解フリーラジカル形成剤及び任意選択的で二官能性不飽和モノマーと反応させられ、それによって、分岐ポリプロピレンが得られ、このポリプロピレン組成物は、5.8cNを超えるF30溶融強度及び200mm/sを超えるv30溶融伸展性(melt extensibility)を有する。
【0009】
フィルム及びコーティングの用途では、高い溶融強度が必要であり、加えて、多くの用途では、封止特性及び光学特性の優れたバランスが必要である。さらに、食品用途では、ヘキサン中で抽出可能な材料の含有量が低いことが要求される。従来技術から知られている組成物は、これらの特性の組み合わせを提供せず、及び/又は、ヘキサン抽出可能物質の含有量が高い。一般に、低いヘーズ及び低い封止開始温度(SIT)を与える組成物が好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US3,418,396 A
【特許文献2】US4,378,451 A
【特許文献3】EP1638695 A1
【特許文献4】US2014/031462 A1
【特許文献5】EP2492293 A1
【特許文献6】EP2877535 A1
【特許文献7】EP0887379 A1
【特許文献8】WO92/12182 A1
【特許文献9】WO2004/000899 A1
【特許文献10】WO2004/111095 A1
【特許文献11】WO99/24478 A1
【特許文献12】WO99/24479 A1
【特許文献13】WO00/68315 A1
【特許文献14】EP2520425
【特許文献15】WO2019/179959
【特許文献16】WO2016/066453 A2
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Chemical Reviews 2000, 100(4), pages 1316 to 1327
【非特許文献2】Zhou, Z., Kuemmerle, R., Qiu, X., Redwine, D., Cong, R., Taha, A., Baugh, D. Winniford, B., J. Mag. Reson. 187 (2007) 225
【非特許文献3】Busico, V., Carbonniere, P., Cipullo, R., Pellecchia, R., Severn, J., Talarico, G., Macromol. Rapid Commun. 2007, 28, 1128
【非特許文献4】Cheng, H. N., Macromolecules 17 (1984), 1950
【非特許文献5】L. Resconi, L. Cavallo, A. Fait, F. Piemontesi, Chem. Rev. 2000, 100 (4), 1253
【非特許文献6】W-J. Wang and S. Zhu, Macromolecules 2000, 33 1157
【非特許文献7】Kakugo, M., Naito, Y., Mizunuma, K., Miyatake, T. Macromolecules 15 (1982) 1150
【非特許文献8】“Rheotens-Mastercurves and Drawability of Polymer Melts”, M. H. Wagner, Polymer Engineering and Science, Vol. 36, pages 925 to 935
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、高い溶融強度を有し、封止特性、特に低いSIT、及び光学特性、特に低いヘーズの優れた組み合わせを示すポリマー組成物を提供することが本発明の1つの目的であった。さらに、ヘキサン抽出可能物質の含有量が低いフィルム及びコーティングされた物品を生成するのを可能にする組成物を提供することが本発明の目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的は、請求項1に記載のポリマー組成物によって解決され、当該ポリマー組成物は、少なくとも以下の成分:
(A) 当該ポリマー組成物の総重量に基づき30.0から80.0wt%のシングルサイト触媒により生成されたC2C3異相共重合体(HECO)であり;それによって、該共重合体は、
- ISO 11357-3に従って示差走査熱量測定によって決定される150から162℃の範囲の融点;
- 5.0から40.0g/10minの範囲のISO 1133に従って決定されるMFR2(230℃、2.16kg);
- 成分(A)の総重量に基づき1から10wt%の範囲の総C2含有量;及び
- 本明細書において記載されるようにCRYSTEX QC,Polymer Charに従って決定される10から50wt%の範囲の成分(A)の総重量に基づく可溶性画分(SF)、
を有する、シングルサイト触媒により生成されたC2C3異相共重合体(HECO)と、
(B) 当該ポリマー組成物の総重量に基づき20.0から70.0wt%のプロピレンホモポリマーであり、それによって、該プロピレンホモポリマーは、
- 1.0から20.0g/10minの範囲のISO 1133に従って決定されるMFR2(190℃、2.16kg);及び
- 少なくとも10cNのISO 16790に従って決定されるF30溶融強度;
を有する、プロピレンホモポリマーと、
を含み、ここで、成分(A)及び(B)の重量比率を合計すると100wt%になる。
【0014】
本発明によるポリマー組成物の有利な実施形態は、従属請求項2乃至7において特定されている。本発明の請求項8は、本発明によるポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含むフィルムに関し、請求項8乃至11は、当該フィルムの好ましい実施形態に関する。請求項12乃至13は、当該ポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含むコーティングされた物品に関し、請求項14は、該物品を生成するプロセスに関し、請求項15は、特定の最終用途のためのコーティングの使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
量の表示
本発明によるポリマー組成物は、必須的に成分(A)及び(B)、並びに任意的に添加剤(C)を含む。成分(A)及び(B)、並びに存在する場合は添加剤(C)の合計が100wt%になるという要件がここでは適用される。個々の成分(A)及び(B)、並びに任意的に添加剤(C)に対する量の表示の固定範囲は、成分(A)、(B)並びに任意的に添加剤(C)全ての合計が100wt%になるという厳格な規定が満たされるという条件で、個々の成分の各々に対して任意の量を特定の範囲内で選択することができるように理解されることになる。
【0016】
レジオ欠陥
プロピレンポリマーの領域欠陥は、3つの異なるタイプのもの、すなわち2,1-エリスロ(2,le)、2,1-スレオ(2,It)、及び3,1欠陥のものであり得る。ポリプロピレンにおけるレジオ欠陥の構造及び形成機構の詳細な記述は、非特許文献1において見つけることができる。これらの欠陥は、以下により詳細に記載されるように13C NMRを使用して測定される。
【0017】
本発明において使用される場合「2,1レジオ欠陥」という用語は、2,1-エリスロレジオ欠陥及び2,1-スレオレジオ欠陥の和を定義する。本発明のプロピレン組成物において必要とされる多数のレジオ欠陥を有するプロピレンランダム共重合体又はポリプロピレンホモポリマーは、通常及び好ましくは、シングルサイト触媒の存在下で調製される。
【0018】
触媒は、特にポリマーの微細構造に影響を及ぼす。従って、シングルサイトメタロセン触媒を使用することによって調製されるポリプロピレンは、Ziegler-Natta(ZN)触媒を使用することによって調製されるものと比較して異なる微細構造を提供する。最も顕著な違いは、Ziegler-Natta(ZN)触媒によって作製されるポリプロピレンの場合とは異なり、メタロセンで作製したポリプロピレンにおけるレジオ欠陥の存在である。
【0019】
「シングルサイト触媒により生成される」ポリマーは、シングルサイト触媒の存在下で生成されたポリマーである。
【0020】
本明細書及び特許請求の範囲において「含む」という用語が使用される場合、それは、主要又は軽微な機能的重要性を有する他の特定されていない要素を除外しない。本発明の目的のために、「~から成る」という用語は、「~を含む」という用語の好ましい実施形態であると考慮される。以下において、群が少なくとも一定数の実施形態を含むと定義される場合、これは、好ましくはこれらの実施形態のみから成る群を開示するとも理解されることになる。
【0021】
「含んでいる」又は「有している」という用語が使用されるときはいつでも、これらの用語は、上記の「含む」と同等であることを意味する。
【0022】
例えば「a」、「an」、又は「the」等、単数名詞を参照するときに不定冠詞又は定冠詞が使用される場合、これは、何か別のことが具体的に記載されていない限り、その名詞の複数形を含む。
【0023】
成分(A)
本発明によるポリマー組成物は、成分(A)として、当該ポリマー組成物の総重量に基づき30.0から80.0wt%のシングルサイト触媒により生成されたC2C3異相共重合体(HECO)であって;それによって、該共重合体は、ISO 11357-3に従って示差走査熱量測定によって決定される150から162℃の範囲の融点;5.0から40.0g/10minの範囲のISO 1133に従って決定されるMFR2(230℃、2.16kg);成分(A)の総重量に基づき1から10wt%の範囲の総C2含有量;及び、実験の項において記載されるようにCRYSTEX QC,Polymer Charに従って決定される10から50wt%の範囲の成分(A)の総重量に基づく可溶性画分(SF)を有する、シングルサイト触媒により生成されたC2C3異相共重合体を含む。
【0024】
成分(A)の好ましい実施形態が以下において議論される。
【0025】
本発明の好ましい実施形態は、成分(A)が、151から160℃の範囲、好ましくは151から155℃の範囲、より好ましくは151から154℃の範囲の、ISO 11357-3に従って示差走査熱量測定によって決定される融点を有することを規定する。
【0026】
本発明による別の好ましい実施形態によると、成分(A)は、10.0から30.0g/10minの範囲、好ましくは15.0から25.0g/10minの範囲、より好ましくは20.0から23.0g/10minの範囲の、ISO 1133に従って決定されるMFR2(230℃、2.16kg)を有する。
【0027】
さらに、本発明によるさらなる好ましい実施形態は、成分(A)が、成分(A)の総重量に基づき1.0から8.0wt%の範囲、好ましくは1.5から6wt%の範囲、より好ましくは2.5から4.0wt%の範囲の総C2含有量を有することを規定する。
【0028】
本発明の別の好ましい実施形態において、成分(A)は、実験の項において記載されるようにCRYSTEX QC,Polymer Charに従って決定される15から40wt%の範囲、好ましくは20から30wt%の範囲、より好ましくは24から28wt%の範囲の成分(A)の総重量に基づく可溶性画分(SF)を有する。
【0029】
本発明によるさらなる実施形態によると、成分(A)は、実験の項において記載されるようにCRYSTEX QC,Polymer Charに従って決定される5から40wt%の範囲、好ましくは8から30wt%の範囲、より好ましくは8から25wt%の範囲、さらにより好ましくは9から12wt%の範囲の可溶性画分の総重量に基づく可溶性画分(SF)のC2含有量を有する。
【0030】
本発明によるさらに別の好ましい実施形態は、成分(A)が、実験の項において記載されるようにCRYSTEX QC,Polymer Charに従って決定される4wt%未満、好ましくは2wt%未満、より好ましくは0から1wt%の範囲、さらにより好ましくは0wt%の結晶画分の総重量に基づく結晶画分(CF)のC2含有量を有することを規定する。
【0031】
本発明による別の好ましい実施形態によると、成分(A)は、実験の項において記載されるようにCRYSTEX QC,Polymer Charに従って決定される1.0から5.0dl/gの範囲、好ましくは2.0から4.0dl/gの範囲、より好ましくは2.2から3.4dl/gの範囲、さらにより好ましくは3.0から3.3dl/gの範囲の可溶性画分(SF)の固有粘度(IV)を有する。
【0032】
さらに、本発明によるさらなる好ましい実施形態は、成分(A)が、実験の項において記載されるようにCRYSTEX QC,Polymer Charに従って決定される0.5から4.0dl/gの範囲、好ましくは0.8から2.0dl/gの範囲、より好ましくは1.0から1.2dl/gの範囲の結晶画分(CF)の固有粘度(IV)を有することを規定する。
【0033】
本発明による別の好ましい実施形態によると、成分(A)は、-10から10℃の範囲、好ましくは-5から5℃の範囲、より好ましくは-2から2℃の範囲の、ISO 6721-7による動的機械分析(DMA)によって決定されるTg1を有する。
【0034】
本発明による別の好ましい実施形態によると、成分(A)は、-70から-10℃の範囲、好ましくは-45から-20℃の範囲、より好ましくは-26から-22℃の範囲の、ISO 6721-7による動的機械分析(DMA)によって決定されるTg2を有する。
【0035】
さらに、本発明によるさらなる好ましい実施形態は、成分(A)が、250から600MPaの範囲、好ましくは300から550MPaの範囲、より好ましくは420から470MPaの範囲の、ISO 6721-7による動的機械分析(DMA)によって決定される貯蔵弾性率G´を有することを規定する。
【0036】
ガラス転移温度Tg及び貯蔵弾性率G´(23℃)は、ISO 6721-7による動的機械分析(DMA)によって決定した。
【0037】
本発明による別の好ましい実施形態において、成分(A)は、メタロセン触媒のシングルサイト触媒の存在下で生成されている。
【0038】
好ましいメタロセン触媒は、以下に示されている式(I)
【0039】
【化1】
を有し、
MtはHf又はZrであり;
各Xはシグマリガンドであり、
各R
1は独立して同じであるか又は異なることがあり、CH
2-R
7基であり、R
7はH又は直鎖又は分岐C
1~6-アルキル基、C
3~8シクロアルキル基、C
6~10アリール基であり、
各R
2は独立して-CH=、-CY=、-CH
2-、-CHY-、又は-CY
2-基であり、ここで、YはC
1~10ヒドロカルビル基であり、nは2~6であり、
各R
3及びR
4は独立して同じであるか又は異なることがあり、水素、直鎖又は分岐C
1~C
6-アルキル基、OY基、又はC
7~20アリールアルキル、C
7~20アルキルアリール基、又はC
6~20アリール基であり、それによって、フェニル基あたり少なくとも1つのR
3及び少なくとも1つのR
4は水素ではなく、任意的に、2つの隣接するR
3又はR
4基は、それらが結合しているフェニル炭素を含む環の一部であってもよく、
R
5は、直鎖又は分岐C
1~C
6-アルキル基、C
7~20アリールアルキル、C
7~20アルキルアリール基、又はC
6~C
20-アリール基であり、
R
6はC(R
8)
3基であり、R
8は直鎖又は分岐C
1~C
6アルキル基であり、
各Rは独立してC
1~C
20-ヒドロカルビル、C
6~C
20-アリール、C
7~C
20-アリールアルキル、又はC
7~C
20-アルキルアリールである。
【0040】
別の好ましい実施形態によると、メタロセン触媒は、以下に示されている式(II)
【0041】
【0042】
好ましくは、成分(A)は、少なくとも2つの重合反応器(R1)及び(R2)を含む逐次重合プロセスにおいて調製され、それによって、第1の重合反応器(R1)において第1のポリマー画分(a1)が生成され、これは、その後第2の重合反応器(R2)に移される。次に、第2の重合反応器(R2)において、第2のポリマー画分(a2)が第1のポリマー画分(a1)の存在下で生成される。
【0043】
成分(A)を生成するのに適した重合プロセスは、一般的に、少なくとも2つの重合段階を含み、各段階は、溶液、スラリー、流動層、バルク、又は気相中で実施することができる。
【0044】
成分(A)を製造するための好ましい多段階プロセスは、例えば特許文献7、8、9、10、11、12、又は13等の特許文献等において記載されている(BORSTAR(登録商標)技術として知られる)Borealisによって開発されたもの等の「ループ気相」プロセスである。さらなる適したスラリー気相プロセスは、BasellのSpheripol(登録商標)プロセスである。
【0045】
成分(B)
本発明によるポリマー組成物は、成分(B)として、当該ポリマー組成物の総重量に基づき20.0から70.0wt%のプロピレンホモポリマーであり、それによって、該プロピレンホモポリマーは、1.0から20.0g/10minの範囲のISO 1133に従って決定されるMFR2(190℃、2.16kg);及び、少なくとも10cNのISO 16790に従って決定されるF30を有する、プロピレンホモポリマーを含む。
【0046】
成分(B)の好ましい実施形態が以下において議論される。
【0047】
本発明による1つの好ましい実施形態によると、成分(B)は、1.0から15.0g/10minの範囲、好ましくは3.0から15.0g/10minの範囲、より好ましくは6.0から14.0g/10minの範囲、さらにより好ましくは8.0から12.0g/10minの範囲のISO 1133に従って決定されるMFR2(230℃、2.16kg)を有する。
【0048】
本発明によるさらに別の好ましい実施形態は、成分(B)が、少なくとも20cN、好ましくは少なくとも30cN、より好ましくは30から60cNの範囲のISO 16790に従って決定されるF30を有することを規定する。
【0049】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、成分(B)は、少なくとも200mm/s、好ましくは少なくとも250mm/s、より好ましくは250から300mm/sの範囲のISO 16790に従って決定されるv30溶融伸展性を有する。
【0050】
さらに、本発明によるさらなる好ましい実施形態は、成分(B)が、895から920kg/m3の範囲、好ましくは900から910kg/m3の範囲、より好ましくは904から906kg/m3の範囲のISO 1183に従って決定される密度を有することを規定する。
【0051】
ポリマー組成物
本発明による1つの好ましい実施形態によると、ポリマー組成物は、4.0から30.0g/10minの範囲、好ましくは8.0から20.0g/10minの範囲、より好ましくは12.0から16.0g/10minの範囲のISO 1133に従って決定されるMFR2(230℃、2.16kg)を有する。
【0052】
別の好ましい実施形態は、ポリマー組成物が、少なくとも2cN、好ましくは少なくとも3cN、より好ましくは3から5cNの範囲のISO 16790に従って決定されるF30を有することを規定する。
【0053】
さらに、本発明によるさらなる好ましい実施形態は、ポリマー組成物が、少なくとも200mm/s、好ましくは少なくとも230mm/s、より好ましくは240から300mm/sの範囲、さらにより好ましくは240から260mm/sの範囲のISO 16790に従って決定されるv30溶融伸展性を有することを規定する。
【0054】
本発明によるさらなる好ましい実施形態によると、ポリマー組成物は、12.0から16.0g/10minの範囲のISO 1133に従って決定されるMFR2(230℃、2.16kg)、及び、3から5cNの範囲のISO 16790に従って決定されるF30を有する。
【0055】
本発明によるさらなる実施形態は、ポリマー組成物が、10から20wt%の範囲、好ましくは12から18wt%の範囲、より好ましくは14から16wt%の範囲の、ISO 16152に沿って決定されるキシレン可溶性(XCS)画分を有することを規定する。
【0056】
本発明によるさらなる好ましい実施形態によると、ポリマー組成物は、1000から1600MPaの範囲、好ましくは1100から1400MPaの範囲、より好ましくは1200から1300MPaの範囲の、ISO 178に従って決定される曲げ弾性率を有する。
【0057】
本発明によるさらに別の好ましい実施形態は、ポリマー組成物が、2.5から3.6dl/gの範囲、好ましくは2.7から3.3dl/gの範囲、より好ましくは3.05から3.15dl/gの範囲の、DIN ISO 1628/1及び/3に従って測定されるXCSの固有粘度を有することを規定する。
【0058】
本発明によるさらなる好ましい実施形態によると、ポリマー組成物は、4から20kJ/m2の範囲、好ましくは4.5から8kJ/m2の範囲、より好ましくは5から6kJ/m2の範囲の、23℃でISO 179 1eAに従って決定されるシャルピーノッチ衝撃強度を有する。
【0059】
本発明によるさらに別の好ましい実施形態は、ポリマー組成物が、5から60%未満の範囲、好ましくは40から55%の範囲、より好ましくは45から51%の範囲の、実験の項において記載されるように1mmの厚さを有する試験片上で決定されるヘーズを有することを規定する。
【0060】
本発明によるさらなる好ましい実施形態によると、ポリマー組成物は、2.1wt%未満、好ましくは0.5から2.0wt%の範囲、より好ましくは0.5から1.8wt%の範囲、さらにより好ましくは1.2から1.6wt%の範囲の、FDAセクション177.1520に従って決定されるヘキサン熱可溶物(C6FDAwt%)の含有量を有する。さらに、C6FDA/XCSの比が0.20未満であることが好ましく、より好ましくは0.10未満である。
【0061】
本発明の別の好ましい実施形態は、ポリマー組成物が、好ましくはスリップ剤、酸スカベンジャー、UV安定剤、顔料、抗酸化物質、添加剤キャリア、核形成剤、及びそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの添加剤(C)を含み、それによって、これらの添加剤は、好ましくは、当該ポリマー組成物の総重量に基づき0.1から5.0wt%、より好ましくは0.1から4.0wt%で存在することを規定する。
【0062】
フィルム
本発明はまた、本発明によるポリマー組成物を含むフィルムに関し、1つの好ましい実施形態によると、当該フィルムはポリマー組成物から成る。
【0063】
本発明のさらに別の好ましい実施形態は、フィルムが、200から1000MPaの範囲、好ましくは300から700MPaの範囲、より好ましくは400から500MPaの範囲の、縦方向並びに横方向において50μmの厚さを有するキャストフィルム上で23℃においてISO 527-3に従って決定される引張係数を有することを規定する。
【0064】
本発明の別の好ましい実施形態によると、フィルムは、100℃から140℃未満の範囲、好ましくは120℃から135℃の範囲、より好ましくは120℃から132℃の範囲、さらにより好ましくは128から130℃の範囲の、50μmの厚さを有するキャストフィルム上で実験の項において記載されるように決定される封止開始温度を有する。
【0065】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、フィルムは、5から20%未満の範囲、好ましくは8から16%の範囲、より好ましくは10から15%の範囲の、50μmの厚さを有するキャストフィルム上でASTM D1003-00に従って決定されるヘーズを有する。
【0066】
当該組成物に対する上記の全ての好ましい態様及び実施形態は、本発明によるフィルムに対しても当てはまるものとする。
【0067】
コーティングされた物品
本発明はまた、本発明によるポリマー組成物を含む少なくとも1つの層を含むコーティングされた物品に関し、好ましくは、該層は、このポリマー組成物から成る。
【0068】
本発明による1つの好ましい実施形態によると、コーティングされた物品は、押出コーティングされた物品である。当該物品は、押出コーティングステップを含む各プロセスによって生成されてもよい。
【0069】
押出コーティングプロセスは、従来の押出コーティング技術を使用して実施することができる。従って、本発明による組成物は、典型的にはペレットの形態で、押出装置に供給することができる。押出機から、ポリマー溶融物は、好ましくはフラットダイを通って、コーティングされることになる基板まで渡される。コーティングされた基板は、チルロール上で冷却され、その後、エッジトリマーまで渡され、巻き上げられる。
【0070】
ダイ幅は、典型的には、使用される押出機のサイズに依存する。従って、90mm押出機では、幅は、適切に、600から1,200mmの範囲内、115mm押出機では900から2,500mmの範囲内、150mm押出機では1,000から4,000mmの範囲内、200mm押出機では3,000から5,000mmの範囲内であってもよい。ライン速度(ドローダウン速度)は、好ましくは75m/min以上、より好ましくは少なくとも100m/minである。ほとんどの商業的に動作する機械では、ライン速度は、好ましくは300m/minを超えるか又は500m/minを超える。最近の機械は、例えば300から800m/min等、1,000m/minまでのライン速度で動作するように設計されている。
【0071】
ポリマー溶融物の温度は、典型的には、240から330℃である。本発明のポリプロピレン組成物は、単層コーティングとして、又は共押出プロセスにおいて1つ又はいくつかの層として、好ましくは外層として、基板上に押出することができる。多層押出コーティングにおいて、上記のポリマー層構造体、及び任意的に他のポリマー層が共押出されてもよい。所望又は必要に応じて、既知の方法でオゾン及び/又はコロナ処理をさらに行うことが可能である。
【0072】
当該組成物に対する上記の全ての好ましい態様及び実施形態は、本発明によるコーティングされた物品に対しても当てはまるものとする。
【0073】
使用
本発明はまた、包装材料として、好ましくは食品及び/又は医療製品用の耐熱性包装材料として、本発明によるポリマー組成物、フィルム、又はコーティングされた物品を使用することに関する。
【0074】
次に、本発明は、以下の非限定的な例を参照して記載される。
【0075】
実験部分
A.測定方法
以下の用語の定義及び測定方法は、別段の定めがない限り、上記の本発明の一般的な説明並びに以下の実施例に適用される。
【0076】
メルトフローレート
メルトフローレート(MFR)は、ISO 1133-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレート(MFR)及びメルトボリュームフローレート(MVR)の決定--パート1:標準法に従って決定され、g/10minで示される。MFRは、ポリマーの流動性、従って加工性の指標である。メルトフローレートが高いほど、ポリマーの粘度は低くなる。ポリプロピレンのMFR2は、230℃の温度、及び2.16kgの荷重で決定される。
【0077】
NMR分光法による微細構造の定量化(コモノマー含有量及びレジオ欠陥)
定量核磁気共鳴(NMR)分光法をさらに使用して、ポリマーのコモノマー含有量及びコモノマー配列分布を定量化した。定量13C{1H}NMRスペクトルを、1H及び13Cに対してそれぞれ400.15及び100.62MHzで動作するBruker Advance III 400 NMRスペクトロメータを使用して溶液状態で記録した。全てのスペクトルを、全ての空気圧に対して窒素ガスを使用して125℃において、13C最適化10mm拡張温度プローブヘッドを使用して記録した。約200mgの材料を、クロム-(III)-アセチルアセトナート(Cr(acac)3)と共に3mlの1,2-テトラクロロエタン‐d2(TCE‐d2)に溶解し、溶媒(Singh, G.,Kothari, A.,Gupta, V.,Polymer Testing 28 5 (2009)、475)中弛緩剤の65mM溶液が結果として生じた。均一な溶液を確実にするために、ヒートブロックにおける最初の試料調製後、NMRチューブを回転オーブン中で少なくとも1時間さらに加熱した。磁石への挿入後、チューブを10Hzで回転させた。このセットアップは、主に高分解能のために選び、正確なエチレン含有量定量化に対して定量的に必要であった。最適化チップ角度、1sリサイクル遅延、及びバイレベルWALTZ16デカップリングスキームを使用して、標準的な単一パルス励起を、NOEなしで利用した(非特許文献2;非特許文献3)。合計6144(6k)の過渡応答を、スペクトル当たり得た。
【0078】
定量13C{1H}NMRスペクトルを処理及び積分し、関連する定量的特性を、プロプライエタリコンピュータプログラムを使用して、積分から決定した。全ての化学シフトは、溶媒の化学シフトを使用して30.00ppmでエチレンブロック(EEE)の中央のメチレン基に間接的に関連させた。このアプローチは、この構造単位が存在しない場合でさえも比較可能な基準を可能にした。エチレンの取り込みに対応する特徴的な信号を観察した(非特許文献4)。
【0079】
(非特許文献5、非特許文献4、及び非特許文献6において記載されているように)2,1-エリスロレジオ欠陥に対応する特徴的な信号が観察され、決定された特性に対するレジオ欠陥の影響についての補正が必要であった。他のタイプのレジオ欠陥に対応する特徴的な信号は観察されなかった。
【0080】
13C{1H}スペクトルにおけるスペクトル領域全体にわたる複数の信号の積分を介して、コモノマー画分を、Wang等の方法(非特許文献6)を使用して定量化した。この方法は、そのロバストな性質、及び必要に応じてレジオ欠陥の存在を説明する能力に対して選んだ。積分領域を、遭遇したコモノマーの含有量の全範囲にわたる適用性を高めるためにわずかに調整した。
【0081】
PPEPP配列中の単離されたエチレンのみを観察したシステムでは、Wang等の方法を、存在しないことが知られている部位の非ゼロ積分の影響を減らすように修正した。このアプローチは、そのようなシステムに対するエチレン含有量の過大評価を減らし、絶対的なエチレン含有量を決定するために使用される部位の数を以下のように
E=0.5(Sββ+Sβγ+Sβδ+0.5(Sαβ+Sαγ))
減らすことによって達成された。
【0082】
この部位のセットの使用を介して、対応する積分方程式は次のようになり:
E=0.5(IH+IG+0.5(IC+ID))
Wang等の文献(非特許文献6)において使用されているのと同じ記号を使用している。絶対的なプロピレンの含有量に対して使用される式は修正しなかった。
【0083】
モル%のコモノマー取り込みは、以下のように
E[mol%]=100*fE
モル分率から計算した。
【0084】
重量パーセントのコモノマー取り込みは、モル分率から計算した:E[wt%]=100*(fE*28.06)/((fE*28.06)+((1-fE)*42.08))。
【0085】
三連構造レベルでのコモノマー配列分布は、Kakugo等の分析方法(非特許文献7)を使用して決定した。この方法は、そのロバストな性質、及びより広い範囲のコモノマーの含有量への適用性を高めるためにわずかに調整された積分領域に対して選んだ。
【0086】
キシレン可溶物(XCS、wt%)
本発明において定義及び記載されるキシレン可溶性(XCS)画分は、以下のようにISO 16152に沿って決定した:2.0gのポリマーを、撹拌下で135℃において250mlのp-キシレンに溶解した。30分後、溶液が周囲温度で15分間冷却するのを可能にし、次に25+/-0.5℃で30分間沈殿するのを可能にした。溶液を、ろ紙を用いてろ過し、2つの100mlフラスコに入れた。第1の100ml容器からの溶液を窒素流中で蒸発させ、残留物を、一定重量に達するまで90℃の真空下で乾燥させた。次に、キシレン可溶性画分(パーセント)を以下ように:
XCS%=(100*m*V0)/(m0*v)
m0=最初のポリマー量(g);
m=残留物の重量(g);
V0=最初の体積(ml);
v=分析された試料の体積(ml)
決定することができる。
【0087】
DSC分析、溶融温度(Tm)及び結晶化温度(Tc)
データを、5から7mgの試料においてTA Instrument Q2000示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定した。DSCは、ISO 11357/パート3/方法C2に従って、-30から+225℃の温度範囲において10℃/minの走査速度で加熱/冷却/加熱サイクルにおいて実行した。
【0088】
結晶化温度(Tc)及び結晶化エンタルピー(Hc)を冷却ステップから決定し、溶融温度(Tm)及び溶融エンタルピー(Hm)を、第2の加熱ステップから決定した。
【0089】
封止開始温度(SIT)
当該方法は、ポリプロピレンフィルム、特にブローフィルム又はキャストフィルムの封止温度範囲(封止範囲)を決定する。封止温度範囲は、以下に記載の条件に従ってフィルムを封止することができる温度範囲である。下限値(熱封止開始温度(SIT))は、5+/-0.5Nの封止強度が達成される封止温度である。フィルムが封止装置に付着すると、上限値(封止終了温度(SET))に達する。封止範囲は、以下において記載されるように三層キャストフィルム共押出ラインで生成された50μmの厚さのフィルムで、J&BUniversal Sealing Machine Type 3000において、以下のさらなるパラメータ:
試料幅:25mm
シール圧力:0.67N/mm2
シール時間:1sec
冷却時間:30sec
剥離速度:42mm/sec
開始温度:80℃
終了温度:150℃
増分:5℃
を用いて決定した。
【0090】
試料は、各シールバー温度でAからAまでシールされ、シール強度(力)が各ステップにおいて決定される。シール強度が5+/-0,5Nに達する温度が決定される。
【0091】
引張係数(TM)
縦方向(MD)及び横方向(TD)における引張係数を、以下において記載されるように生成した50μmのキャストフィルムにおいて23℃でISO 527‐3に従って決定した。試験を、線形係数範囲では1mm/minのクロスヘッド速度、より高い変形では10mm/minにおいて行った。
【0092】
ヘーズ
ヘーズは、ヘーズ(フィルム)として報告された、50μmの厚さを有する以下において記載されるように生成されたキャストフィルムにおいて、又は、ヘーズ(1mm)として報告された、1mmの射出成形された試料においてASTM D1003-00に従って決定した。使用した60×60×1mm3の試料は、EN ISO 1873-2に従って調製した。
【0093】
F30溶融強度及びv30溶融伸展性
本明細書において記載される試験は、ISO 16790:2005に従っている。ひずみ硬化挙動は、非特許文献8において記載されている方法によって決定した。ポリマーのひずみ硬化挙動は、規定の加速度を用いて伸ばすことによってメルトストランドが伸長されるRheotens装置(Gottfert, Siemensstr.2, 74711 Buchen, Germanyの製品)を用いて分析されている。Rheotensの実験は、工業的紡糸及び押出プロセスをシミュレートする。原理上は、溶融物がラウンドダイを介してプレス又は押出され、結果として生じるストランドが引っ張られる。押出物にかかる応力が、溶融特性及び測定パラメータ(特に出力と引取速度との比、実質的には伸長率に対する尺度)の関数として記録される。以下に示される結果に対して、材料を、ラボ押出機HAAKE Polylabシステム及び円筒ダイ(L/D=6.0/2.0mm)を有するギアポンプを用いて押出した。ギアポンプは、5mm/sのストランド押出速度に予め調整し、溶融温度は200℃に設定した。ダイとRheotensホイールとの間のスピンライン長さは80mmであった。実験の開始時に、Rheotensホイールの巻き取り速度を、押出されるポリマーストランドの速度(引張力ゼロ)に調整した。次に、ポリマーフィラメントが切れるまで、Rheotensホイールの巻き取り速度をゆっくりと増加させることによって実験を開始した。ホイールの加速度は十分に小さかったため、引張力を準定常条件下で測定した。メルトストランドドローダウンの加速度は120mm/sec2である。Rheotensは、PCプログラムEXTENSと組み合わせて動作させた。これは、リアルタイムデータ取得プログラムであり、引張力及びドローダウン速度の測定されたデータを表示及び保存する。Rheotens曲線の終点(力対プーリー回転速度)が、F30溶融強度及び引抜値として得られる。
【0094】
結晶画分、可溶性画分、コモノマー含有量、及び固有粘度
ポリプロピレン(PP)組成物の結晶画分(CF)及び可溶性画分(SF)、並びに、それぞれの画分のコモノマー含有量及び固有粘度(IV)を、CRYSTEX QC, Polymer Char(Valencia, Spain)によって分析した。結晶及び非晶質画分を、160℃での溶解、40℃での結晶化、及び160℃での1,2,4トリクロロベンゼン(1、2,4-TCB)における再溶解の温度サイクルを介して分離した。SF及びCFの定量化、並びにエチレン含有量(C2)の決定を、赤外検出器(IR4)、及び固有粘度(IV)の決定に使用したオンライン2キャピラリー粘度計によって達成した。IR4検出器は、エチレン-プロピレン共重合体中の濃度及びエチレン含有量の決定のための2つの異なるバンド(CH3及びCH2)でのIR吸光度を検出する多波長検出器である。IR4検出器は、(13C-NMR分光法によって決定される)2wt%から69wt%の範囲の既知のエチレン含有量を有する一連の8EP共重合体、及び較正に使用する各使用されるEP共重合体について2から13mg/mlの様々な濃度を用いて較正される。可溶性画分(SF)及び結晶画分(CF)の量を、XS較正を介して、ISO 16152により標準重量法に従って決定した「冷キシレン可溶分」(XCS)の量及びそれぞれの冷キシレン不溶性(XCI)画分と相関させた。XCS較正は、2から31wt%の範囲のXS含有量を有する様々なEP共重合体を試験することによって達成した。親EP共重合体の固有粘度(IV)、並びにその可溶性画分及び結晶画分を、オンライン2キャピラリー粘度計を使用することによって決定し、ISO 1628に従ってデカリン中の標準法により決定した対応するIV´と相関させた。較正は、IV=2から4dL/gの様々なEP PP共重合体を用いて達成した。分析されることになるPP組成物の試料を、10mg/mlから20mg/mlの濃度で検量した。抗酸化物質として250mg/lの2,6-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を含有する1,2,4-TCBをバイアルに自動充填した後、試料を、完全溶解が達成されるまで、通常60分間、800rpmの一定撹拌で160℃において溶解した。規定量の試料溶液を、試料の結晶化及び結晶部分からの可溶性画分の分離が行われる不活性支持体で満たされたカラムに注入した。このプロセスを2回繰り返した。第1の注入の間、試料全体が高温で測定され、PP組成物のIV[dl/g]及びC2[wt%]が決定される。第2の注入の間、結晶化サイクルを用いて(高温にて)結晶画分及び(低温にて)可溶性画分が測定される(wt%C2、wt%SF、IV)。EPはエチレンプロピレン共重合体を意味する。PPはポリプロピレンを意味する。
【0095】
ヘキサン熱可溶物(C6FDA、wt%)
FDAセクション177.1520
実験部分において記載した厚さ50μmのポリマーフィルム1gを、リフラックス冷却器を用いて撹拌しながら2時間50℃で400mlのヘキサンに添加した。2時間後、混合物を直ちにろ紙N°41でろ過した。沈殿物をアルミニウム受容器に集め、残留ヘキサンをN2流下の蒸気浴上で蒸発させた。
【0096】
ヘキサン可溶物の量を以下の式:
((wt.試料+wt.るつぼ)-(wt.るつぼ))/(wt.試料)・100
によって決定した。
【0097】
ガラス転移温度(Tg)及び貯蔵弾性率(G´)
ガラス転移温度Tg及び貯蔵弾性率G´(23℃)は、ISO 6721‐7に従って動的機械分析(DMA)によって決定した。測定は、2℃/minの加熱速度及び1Hzの周波数で、-100℃から+150℃の圧縮成形された試料(40×10×1.0mm3)においてねじりモードで行った。
【0098】
固有粘度
固有粘度は、(135℃のデカリンにおいて)DIN ISO 1628/1及び/3、October 1999に従って測定した。固有粘度(IV)値は、ポリマーの分子量と共に増加する。
【0099】
曲げ弾性率
曲げ弾性率は、ISO 178に従って決定する。試験試料は、80×10×4.0mm3(長さ×幅×厚さ)の寸法を有し、EN ISO 1873-2に従って射出成形により調製する。支持体間のスパンの長さ:64mm及び試験速度2mm/min。
【0100】
シャルピーノッチ衝撃強度
シャルピーノッチ衝撃強度は、EN ISO 1873-2に沿って射出成形した80×10×4mm3のテストバーを使用して、23℃でISO 179 1eAに従って決定した。
【0101】
B.使用される材料
AOは、BASFから市販されているIrganox(登録商標)B215である(相乗的処理及び長期熱安定化システムであり、Irgafos(登録商標)168とIrganox(登録商標)1010の混合物である)。
【0102】
CaStは、ステアリン酸カルシウムであり、BarlocherからCEASIT AV FIという商品名で市販されている。
【0103】
LCB PP(成分B)に対する反応性修飾(Reactive modification)
使用したベースポリマーは、単一ループ反応器を用いてAdvant ZN180MでBorealisによって生成されたMFR2 0.23g/10minのポリプロピレンホモポリマーであった。最終的なMFR2は、当業者には良く知られた方法を適用してH2を使用することによって調整される。使用した典型的な重合設定は以下の通りであった:反応器温度70℃、125ppm H2、Teal/C3 180g/t C3、Teal/donor6/1wt%/wt%。
【0104】
ポリマー粉末の反応性修飾は、特許文献14に記載のプロセスに沿って行った。ブタジエン(BD)及びペルオキシド(POX)の両方を、65℃の温度でパドルスターラーを用いた水平混合器において溶融混合ステップに先立ちポリマー粉末と予め混ぜ合わせ、15分の平均滞留時間を維持した。予め混ぜ合わせた物を、不活性雰囲気下で、3つの混練ゾーン及び二段階脱ガス装置を有する高強度混合スクリューを備えた60mmのバレル直径及び48のL/D比を有するタイプTheyson TSK60の共回転ツインスクリュー押出機に移した。全ての温度をバレル温度として定義し、供給ゾーンにおける開始温度T1=240℃、最後の混練ゾーンにおける最高温度T2=280℃、及びダイゾーンにおける最終温度T3=230℃の溶融温度プロファイルを選択した。スクリュー速度は、350rpmに設定した。レシピは、0.45wt%のTRIGONOX BPIC-C75、0.1wt%のBD、0.13wt%のAO、及び0.1wt%のCaStであった。LCB PPは、ISO 1183に従って決定される密度=905kg/m3、ISO 1133に従って決定されるメルトフローレート(230℃/2.16kg)=10g/10min、ISO 16790に従って決定されるF30=31.2cN及びv30=266mm/sを有する。
【0105】
ポリプロピレン(PP HECO1、異相プロピレンランダム共重合体)は、以下のように調製した。
【0106】
PP HECO1に対する触媒システム
触媒錯体
IE2では特許文献15において記載されている以下のメタロセン錯体が使用されている。
【0107】
MAO-シリカ支持体の調製
メカニカルスターラー及びフィルタネットを備えた鋼反応器に窒素10を流し、反応器温度を20℃に設定した。次に、600℃で予めか焼したAGC Si-Tech CoからのシリカグレードDM-L-303(5.0kg)を、供給ドラムから添加し、続いて、手動バルブを使用して窒素で慎重に加圧及び減圧した。次に、トルエン(22kg)を添加した。混合物を15分間撹拌した。次に、Lanxessからの30wt%のトルエン(9.0kg)中MAO溶液を、70分以内に反応器の上部に供給ラインを介して添加した。次に、反応混合物を90℃まで加熱し、該温度でさらに2時間撹拌した。スラリーを沈殿させ、母液をろ過した。触媒を、90℃においてトルエン(22kg)で二度洗浄し、続いて沈殿及びろ過を行った。反応器を60℃まで冷却し、固体をヘプタン(22.2kg)で洗浄した。最後にMAOで処理したSiO2を、窒素流下で2時間60℃で乾燥させ、次に、撹拌しながら真空下(-0.5barg)で5時間乾燥させた。MAOで処理した支持体は、12.2wt%のAlを含有することが分かった流動性の白色粉末として収集した。
【0108】
シングルサイト触媒システムの調製
30wt%のトルエン(0.7kg)中MAOを、20℃でビュレットを介して鋼製窒素ブランク反応器(a steel nitrogen blanked reactor)に添加した。次に、トルエン(5.4kg)を撹拌しながら添加した。上記のメタロセン錯体(93g)を金属シリンダーから添加し、続いて1kgのトルエンを流した。混合物を20℃で60分間撹拌した。次に、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(91g)を金属シリンダーから添加し、続いて1kgのトルエンを流した。混合物を室温で1時間撹拌した。結果として生じる溶液を上記のように調製したMAO-シリカ支持体の撹拌ケーキに1時間かけて添加した。ケーキを12時間静止させ、続いて窒素流下で2時間60℃で乾燥させ、さらに撹拌しながら真空下(-0.5barg)で5時間乾燥させた。
【0109】
本発明のPP HECO1のポリマーを調製するための重合は、上記の触媒システムを使用して、3反応器装置(ループ気相反応器(GPR1)-気相反応器(GPR2)及び予備重合装置(pre-polymerizer))を用いてBorstarパイロットプラントで行った。
【0110】
表1には、PP HECO1に対する重合条件及び樹脂の最終特性が示されている。
【0111】
【表1】
ポリプロピレン(PP HECO2、異相プロピレンランダム共重合体)は、特許文献16において記載されているように調製した。PP HECO2は、特許文献16に記載されているCE2である(触媒(Ziegler-Natta触媒)については36ページ、及び、重合条件については39ページの表4を参照されたい)。ポリマー粉末(PP HECO1及びPP HECO2)を、共回転ツインスクリュー押出機のCoperion ZSK 57において、220℃で、表2において示されているレシピを用いて混合した。
【0112】
C.フィルム製造
本発明の実施例(IE1)及び比較例(CE1及びCE2)によるキャストフィルムを、240℃の溶融温度、20℃のチルロール温度で、Collin30キャストフィルムライン上で生成した。得られたフィルムは全て、50μmの全体の厚さを有していた。
【0113】
D.結果及び考察
【0114】
【表2】
表2から得られるように、シングルサイト触媒を使用することによって生成された本発明の実施例IE1によるポリマー組成物は、F
30溶融強度及びv
30溶融伸展性によって表される長鎖分枝(LCB)を明確に示す。本発明の例における成分(B)の添加によって得られる別の利点は、ポリマー組成物の剛性(1272MPa対730MPa)であり、これは、靭性のわずかな損失のみで有意に増加する(5.3kJ/m
2対5.8kJ/m
2)が、CE1によるポリマー組成物は、(B)成分の添加によって、靭性が約80%減少する(7.1kJ/m
2対33kJ/m
2、上記の特許文献16におけるCE2を参照されたい)。IEによるポリマー組成物はまた、より高い純度及びはるかに少ない抽出物を有する。これは、総抽出物(C6FDA)及びXCSに対するC6FDAの比によっても反映されている。加えて、本発明によるポリマー組成物で作製されたフィルムは、非常に低いヘーズ、非常に良好な封止開始温度、及び、溶融強度とヘーズとの間の優れたバランスを示す。
【国際調査報告】