(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】異なる挙動ゾーンを有する圧縮性補助材
(51)【国際特許分類】
A61B 17/072 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
A61B17/072
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560602
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 IB2022052795
(87)【国際公開番号】W WO2022208276
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506157570
【氏名又は名称】シラグ・ゲーエムベーハー・インターナショナル
【氏名又は名称原語表記】Cilag GMBH International
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】シェルトン・ザ・フォース・フレデリック・イー
(72)【発明者】
【氏名】ハリス・ジェイソン・エル
(72)【発明者】
【氏名】ベンデリー・マイケル・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ソウ・クリストファー・キュー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160CC09
4C160CC23
4C160CC36
(57)【要約】
ステープルカートリッジとともに使用するための圧縮性補助材が提供される。例示的な一実施形態では、圧縮性補助材は、少なくとも1つの溶融生体吸収性ポリマーから形成された非繊維性補助材料を含む。補助材料は、ステープルカートリッジ上に解放可能に保持されるように構成され、カートリッジ内のステープルの配備によって組織に運搬されるように構成されている。補助材料は、内部に収容された少なくとも1つの薬物を有する格子マクロ構造を含む。格子マクロ構造は、複数の単位セルから形成され、各単位セルは、補助材料から所定量の薬物を放出するように構成され、薬物の所定量は、それぞれの単位セルの圧縮プロファイルの関数である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステープルカートリッジとともに使用するための圧縮性補助材であって、前記圧縮性補助材は、
少なくとも1つの溶融生体吸収性ポリマーから形成され、ステープルカートリッジ上に解放可能に保持されるように構成され、前記カートリッジ内のステープルの配備によって組織に運搬されるように構成された非繊維性補助材料であって、前記補助材料は、内部に収容された少なくとも1つの薬物を有する格子マクロ構造を備え、前記格子マクロ構造は、複数の単位セルから形成され、各単位セルは、前記補助材料から所定量の薬物を放出するように構成され、前記薬物の前記所定量は、前記それぞれの単位セルの圧縮プロファイルの関数である、非繊維性補助材料を備える、圧縮性補助材。
【請求項2】
前記複数の単位セルは、第1の圧縮プロファイルを有する第1の単位セルと、前記第1の圧縮プロファイルとは異なる第2の圧縮プロファイルを有する第2の単位セルと、を含む、請求項1に記載の補助材。
【請求項3】
各単位セルは複数の圧縮ゾーンを備える、請求項1に記載の補助材。
【請求項4】
前記複数の圧縮ゾーンは、第1の圧縮強度を有する第1の圧縮ゾーンと、前記第1の圧縮強度とは異なる第2の圧縮強度を有する第2の圧縮ゾーンと、を備える、請求項3に記載の補助材。
【請求項5】
前記第1の圧縮ゾーンは、第1の非圧縮高さから第1の圧縮高さまで圧縮するように構成され、前記第2の圧縮ゾーンは、第2の非圧縮高さから前記第1の圧縮高さとは異なる第2の圧縮高さまで圧縮するように構成されている、請求項4に記載の補助材。
【請求項6】
各単位セルは、内部に形成され、前記補助材料が圧縮されているときに前記それぞれの単位セルの変形挙動を制御するように構成された複数の副構造を含む、請求項1に記載の補助材。
【請求項7】
前記複数の副構造は、第1の副構造及び第2の副構造を含み、前記第1の副構造は、前記単位セルの壁から内側に延在する突出部であり、前記第2の副構造は、前記単位セルの壁に形成された凹部である、請求項6に記載の補助材。
【請求項8】
前記複数の副構造は、少なくとも1つの内部停止部材を含む、請求項6に記載の補助材。
【請求項9】
前記複数の単位セルは、シュワルツP構造を備える、請求項1に記載の補助材。
【請求項10】
前記格子マクロ構造は、隣接するシュワルツP構造の間に延在し、それらを互いに接続する複数の接続構造を備える、請求項9に記載の補助材。
【請求項11】
前記複数の単位セルのうちの少なくとも1つの単位セルは、可変壁厚を有する、請求項1に記載の補助材。
【請求項12】
ステープルカートリッジとともに使用するための圧縮性補助材であって、前記圧縮性補助材は、
少なくとも1つの溶融生体吸収性ポリマーから形成され、ステープルカートリッジ上に解放可能に保持されるように構成され、前記カートリッジ内のステープルの配備によって組織に運搬されるように構成された非繊維性補助材料であって、前記補助材料は、内部に収容された少なくとも1つの薬物を有する格子主構造を備え、前記格子主構造は、前記格子主構造の少なくとも1つの第1の部分に形成された第1の副構造と、前記格子主構造の少なくとも1つの第2の部分に形成された第2の副構造と、を含み、前記第1の副構造及び前記第2の副構造は、前記補助材料が圧縮されて組織配備状態にあるときに、前記補助材料からの前記少なくとも1つの薬物の第1の放出速度及び第2の放出速度をそれぞれ制御するように構成され、前記第1の放出速度は前記第2の放出速度とは異なる、非繊維性補助材料を備える、圧縮性補助材。
【請求項13】
前記格子主構造の前記第1の部分は、第1の壁厚を有し、前記格子主構造の前記第2の部分は、前記第1の壁厚とは異なる第2の壁厚を有する、請求項12に記載の補助材。
【請求項14】
前記格子主構造の前記第1の部分は、第1の非変形状態から第1の変形状態に変形するように構成されている、請求項12に記載の補助材。
【請求項15】
前記格子主構造の前記第2の部分は、第2の非変形状態から、前記第1の変形状態とは異なる第2の変形状態に変形するように構成されている、請求項14に記載の補助材。
【請求項16】
前記第1の副構造は、前記格子主構造の壁から内側に延在する第1の突出部と、前記格子主構造の壁に形成された第1の凹部と、のうちの少なくとも1つを備える、請求項12に記載の補助材。
【請求項17】
前記第2の副構造は、前記格子主構造の壁から内側に延在する第2の突出部と、前記格子主構造の壁に形成された第2の凹部と、のうちの少なくとも1つを備える、請求項12に記載の補助材。
【請求項18】
前記第1の副構造及び前記第2の副構造のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの内部停止部材を含む、請求項12に記載の補助材。
【請求項19】
前記格子主構造は、複数のシュワルツP構造を備える、請求項12に記載の補助材。
【請求項20】
前記格子主構造は、隣接するシュワルツP構造の間に延在し、それらを互いに接続する複数の接続構造を備える、請求項19に記載の補助材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、圧縮性補助材及び圧縮性補助材を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
手術用ステープラは、外科的処置において、組織、血管、導管、シャント又は特定の処置に関連する他の対象物若しくは身体部位の開口部を閉鎖するために使用される。開口部は、血管内又は胃のような内臓内の通路など、自然に存在するものであり得るか、あるいはバイパス若しくは吻合を形成するために、組織若しくは血管を穿刺すること、又はステープル留め処置中の組織切開などによって、外科的処置中に外科医によって形成されるものであり得る。
【0003】
ほとんどのステープラは、細長いシャフトを備えるハンドルを有し、シャフトはその端部に形成された一対の移動可能な対向する顎部を有し、一対の移動可能な対向する顎部は、それらの間にステープルを保持し、それらの間でステープルを成形するためのものである。ステープルは典型的にはステープルカートリッジに収容され、そのステープルカートリッジは、複数の列のステープルを収めることができ、2つの顎部のうちの1つ内に、手術部位へのステープルの放出のために配設されることが多い。使用中、顎部は、ステープル留めされるべき対象物が顎部の間に配設されるように位置付けられ、顎部が閉じて装置が作動されると、ステープルが放出されて成形される。ステープラによっては、ステープルカートリッジ内のステープルの列の間を移動し、ステープル留めされた列の間で、ステープル留めされた組織を長手方向に切開及び/又は開口するように構成されたナイフを含むものがある。
【0004】
手術用ステープラは何年にもわたって改良されてきたが、それ自体にはいまだにいくつかの問題が存在する。よく見られる問題の1つは、ステープルは、ステープルが配設される組織又は他の対象物を貫通するときに孔を形成するため、漏出が起こり得ることである。血液、空気、消化管液、及び他の流体が、ステープルが完全に成形された後でも、ステープルによって形成された開口部を通してしみ出ることがある。処置される組織は、ステープル留めによる外傷のために炎症を起こすこともある。
【0005】
ステープル留め組織と組み合わせて使用するために様々な植込み可能な材料が開発されてきたが、前述の問題のうちのいくつかに対処する改善された材料が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ステープルカートリッジとともに使用するための圧縮性補助材が提供される。例示的な一実施形態では、圧縮性補助材は、少なくとも1つの溶融生体吸収性ポリマーから形成された非繊維性補助材料を含む。補助材料は、ステープルカートリッジ上に解放可能に保持されるように構成され、カートリッジ内のステープルの配備によって組織に運搬されるように構成されている。補助材料は、内部に収容された少なくとも1つの薬物を有する格子マクロ構造を含む。格子マクロ構造は、複数の単位セルから形成され、各単位セルは、補助材料から所定量の薬物を放出するように構成され、薬物の所定量は、それぞれの単位セルの圧縮プロファイルの関数である。
【0007】
複数の単位セルは、様々な構成を有することができる。いくつかの実施形態では、複数の単位セルのうちの少なくとも1つの単位セルは、可変壁厚を有することができる。いくつかの実施形態では、複数の単位セルは、第1の単位セル及び第2の単位セルを含むことができる。第1の単位セルは、第1の圧縮プロファイルを有することができ、第2の単位セルは、第1の圧縮プロファイルとは異なる第2の圧縮プロファイルを有することができる。いくつかの実施形態では、各単位セルは、複数の圧縮ゾーンを有することができる。複数の圧縮ゾーンは、第1の圧縮ゾーン及び第2の圧縮ゾーンを含むことができる。第1の圧縮ゾーンは第1の圧縮強度を有することができ、第2の圧縮ゾーンは、第1の圧縮強度とは異なる第2の圧縮強度を有することができる。第1の圧縮ゾーンは、第1の非圧縮高さから第1の圧縮高さまで圧縮するように構成することができる。第2の圧縮ゾーンは、第2の非圧縮高さから、第1の圧縮高さとは異なる第2の圧縮高さまで圧縮するように構成することができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、各単位セルは、内部に形成された複数の副構造を含むことができる。複数の副構造は、補助材料が圧縮されているときにそれぞれの単位セルの変形挙動を制御するように構成され得る。複数の副構造は、第1の副構造及び第2の副構造を含むことができる。第1の副構造は、単位セルの壁から内側に延在する突出部であってもよく、第2の副構造は、単位セルの壁に形成された凹部であってもよい。特定の実施形態では、複数の副構造は、少なくとも1つの内部停止部材を含むことができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、複数の単位セルは、シュワルツP構造を含むことができる。そのような実施形態では、格子マクロ構造は、複数の接続構造を備えることができる。複数の接続構造は、隣接するシュワルツP構造の間に延在し、それらを互いに接続することができる。
【0010】
別の実施形態では、ステープルカートリッジとともに使用するための圧縮性補助材は、少なくとも1つの溶融生体吸収性ポリマーから形成された非繊維性補助材料を含む。補助材料は、ステープルカートリッジ上に解放可能に保持され、カートリッジ内のステープルの配備によって組織に運搬されるように構成されている。補助材料は、内部に収容された少なくとも1つの薬物を有する格子主構造を含む。格子主構造は、格子主構造の少なくとも1つの第1の部分に形成された第1の副構造と、格子主構造の少なくとも1つの第2の部分に形成された第2の副構造と、を含むことができる。第1の副構造及び第2の副構造は、補助材料が圧縮されて組織配備状態にあるときに、補助材料からの少なくとも1つの薬物の第1の放出速度及び第2の放出速度をそれぞれ制御するように構成され、第1の放出速度は第2の放出速度とは異なる。
【0011】
格子主構造の第1及び第2の部分は、様々な構成を有することができる。いくつかの実施形態では、格子主構造の第1の部分は、第1の壁厚を有することができ、格子主構造の第2の部分は、第1の壁厚とは異なる第2の壁厚を有することができる。特定の実施形態では、格子主構造の第1の部分は、第1の非変形状態から第1の変形状態に変形するように構成され得る。そのような実施形態では、格子主構造の第2の部分は、第2の非変形状態から、第1の変形状態とは異なる第2の変形状態に変形するように構成され得る。
【0012】
第1の副構造及び第2の副構造は、様々な構成を有することができる。いくつかの実施形態では、第1の副構造は、格子主構造の壁から内側に延在する第1の突出部と、格子主構造の壁に形成された第1の凹部と、のうちの少なくとも1つを含むことができる。いくつかの実施形態では、第2の副構造は、格子主構造の壁から内側に延在する第2の突出部と、格子主構造の壁に形成された第2の凹部と、のうちの少なくとも1つを含むことができる。特定の実施形態では、第1の副構造及び第2の副構造のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの内部停止部材を含むことができる。
【0013】
格子主構造は、様々な構成を有することができる。いくつかの実施形態では、格子主構造は、複数のシュワルツP構造を含むことができる。そのような実施形態では、格子主構造は、複数の接続構造を含むことができる。接続構造は、隣接するシュワルツP構造の間に延在し、それらを互いに接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、以下の発明を実施するための形態を添付図面と併せて読むことで、より完全に理解されるであろう。
【
図1】従来の手術用ステープル留め及び切断器具の例示的な一実施形態の斜視図である。
【
図2】
図1の手術用ステープル留め及び切断器具と共に使用するためのステープルカートリッジの上面図である。
【
図3】
図1の手術用ステープラの発射バーの斜視図である。この発射バーは、その遠位端にE-ビームを有する。
【
図4】手術用ステープラの別の実施形態の斜視図である。
【
図5】手術用ステープラの更に別の実施形態の斜視図である。
【
図6】ステープルカートリッジの上面又はデッキ面に取り付けられた例示的な補助材を有するステープルカートリッジの例示的な実施形態の長手方向断面図である。
【
図7】組織配備状態の
図6の補助材を示す部分概略図である。
【
図8】アンビル及びステープル留めアセンブリを有する手術用エンドエフェクタの例示的な実施形態の断面正面図であり、ステープル留めアセンブリは、ステープルカートリッジ上に解放可能に保持された補助材の例示的な実施形態を有し、アンビルとステープル留めアセンブリとの間に組織が位置付けられていない閉鎖位置にある手術用エンドエフェクタを示す。
【
図9】
図8の手術用エンドエフェクタの正面断面図であり、アンビルとステープル留めアセンブリとの間にクランプされた組織と、圧縮可能な非繊維性補助材にステープル留めされている組織と、を示す。
【
図10】
図8のステープル留めアセンブリのみの断面正面図である。
【
図11】補助材の別の実施形態の一部の部分切り欠き斜視図である。
【
図12】初期状態(t=0)にある補助材を示す、補助材の別の実施形態の拡大側断面図である。
【
図13】部分的に分解された状態(t>0)の補助材を示す、
図12の補助材である。
【
図14】多層単位セルの例示的な実施形態の断面図である。
【
図15】補助材の別の実施形態の一部の断面図であり、非圧縮状態の補助材を示す。
【
図17】アンビル及びステープル留めアセンブリを有する手術用エンドエフェクタの他の実施形態の断面正面図であり、ステープル留めアセンブリは、ステープルカートリッジ上に解放可能に保持された補助材の別の実施形態を有し、アンビルとステープル留めアセンブリとの間に組織が位置付けられていない閉鎖位置にある手術用エンドエフェクタを示す。
【
図18】アンビル及びステープル留めアセンブリを有する手術用エンドエフェクタの他の実施形態の断面正面図であり、ステープル留めアセンブリは、ステープルカートリッジ上に解放可能に保持された補助材の別の実施形態を有し、アンビルとステープル留めアセンブリとの間に組織が位置付けられていない閉鎖位置にある手術用エンドエフェクタを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで、本明細書で開示する装置及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理の全体的な理解が得られるように、特定の例示的な実施形態を説明する。これらの実施形態の1つ又は2つ以上の実施例が、添付の図面に例解されている。当業者であれば、本明細書で具体的に説明され、かつ添付の図面に図示される装置及び方法が、非限定的な例示的な実施形態であること、並びに本発明の範囲が、特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。例示的な一実施形態に関連して例解又は記載される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。このような改変及び変形は、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0016】
更に、本開示においては、実施形態の同様の名称の構成要素は概して同様の特徴を有するものであり、したがって、特定の実施形態において、同様の名称の各構成要素の各特徴については必ずしも完全に詳しく述べることはしない。追加的に、開示されるシステム、デバイス、及び方法の説明で直線寸法又は円寸法が使用される限りにおいて、そのような寸法は、そのようなシステム、デバイス、及び方法と組み合わせて使用することができる形状の種類を限定しようとするものではない。当業者には、そのような直線寸法及び円寸法に相当する寸法を、任意の幾何学的形状について容易に決定することができる点が認識されるであろう。システム及びデバイス、並びにその構成要素のサイズ及び形状は、少なくとも、システム及びデバイスが内部で使用される対象の解剖学的構造、システム及びデバイスが使用される構成要素のサイズ及び形状、並びにシステム及びデバイスが使用される方法及び手術に依存し得る。
【0017】
「近位」及び「遠位」という用語は、本明細書では、器具のハンドルを握っている臨床医などのユーザを基準として使用されることが認識されるであろう。「前方」及び「後方」といった他の空間的用語は、同様に、遠位及び近位にそれぞれ対応する。便宜上、かつ明瞭さのために、本明細書では「垂直」及び「水平」などの空間的用語が、図面に対して使用される点も更に理解されるであろう。しかしながら、手術用器具は、多くの配向及び位置で使用されるものであり、これらの空間的用語は、限定的かつ絶対的なものであることを意図するものではない。
【0018】
外科的処置を行うための、様々な例示的な装置及び方法が提供される。いくつかの実施形態において、切開外科的処置のための装置及び方法が提供され、他の実施形態において、腹腔鏡下、内視鏡的、及び他の低侵襲的外科的処置のための装置及び方法が提供される。これらの装置は、人間のユーザによって直接発射されるか、又はロボット若しくは類似の操作ツールの直接制御下でリモート発射されてよい。しかしながら、当業者は、本明細書に開示される様々な方法及び装置が、多数の外科的処置及び用途で用いられ得ることを理解するであろう。本明細書で開示される様々な器具が、例えば、自然開口部を通して、組織に形成された切開又は穿刺孔を通して、又はトロカールカニューレなどのアクセス装置を使用してなどの、何らかの方法で体内へ挿入され得ることを当業者は更に認識するであろう。例えば、これらの器具の作動部分、すなわちエンドエフェクタ部分は、患者の体内に直接に挿入できる、又は、手術用器具のエンドエフェクタ及び細長いシャフトを通過させることが可能な作業用チャンネルを有するアクセス装置を介して挿入され得る。
【0019】
本明細書で「補助材」と呼ぶ1つ又は2つ以上の生体材料及び/又は合成材料を、手術用器具と共に使用して、外科的処置の改善を支援することは望ましいことであり得る。「補助材」は、本明細書において、「補助材料」とも呼ばれる。種々の異なる手術用エンドエフェクタが、補助材の使用によって利益を得ることがあり、いくつかの例示的実施形態では、エンドエフェクタは、手術用ステープラであり得る。手術用ステープラと共に使用されるときには、補助材(複数可)は、ステープラの顎部の間及び/又はその上に配設されても、顎部に配設されたステープルカートリッジに組み込まれても、又はそうでなければ、ステープルの近位に置かれてもよい。ステープルが配備されると、補助材(複数可)は、ステープルと共に施療部位に残ってもよく、その結果、いくつかの利益を提供することができる。例えば、補助材(複数可)は、施療部位の組織を増強して、施療部位において、ステープルにより裂かれる又は引き裂かれるのを防止することができる。組織増強は、組織が病変している場合、治癒している及び/又は別の組織特性を変更する状況を経験している場合に、ステープルが組織を裂かないようにするために必要なことがある。いくつかの場合において、補助材(複数可)は、ステープル留め後に生じる組織変形(例えば、肺膨張、消化管膨張など)から生じ得る、ステープル穿刺部位及びその周りにおける組織の移動を最小化することができる。当業者は、ステープル穿刺部位は応力集中部となることがあり、ステープルによって形成された孔の寸法は、その付近の組織が張力下に置かれると増大することを認識するであろう。これらの穿刺部位周りでの組織の移動を制限することは、張力下で増大し得る孔の寸法を最小化できる。いくつかの場合において、補助材(複数可)は、例えば、シーラント、血液、接着剤など、更に治癒を促進する有益な流体を吸い上げる(wick)、又は吸収するように構成され得る。また、いくつかの場合において、補助材は、分解して、例えば、シーラントなど、更に治癒を促進するゲルを形成するように構成され得る。いくつかの場合には、補助材(複数可)が、組織、血管、及び種々の他の対象物又は身体部位に植え込みされるときに、ステープルによって形成される孔の封止の支援に使用されてもよい。
【0020】
他の実施形態では、補助材は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第10,172,611号に記載されているように、ステープルを使用せずに(例えば、RF又は超音波などのエネルギーを使用することによって)組織を封止するように構成された手術用器具と共に使用することができる。
【0021】
場合によっては、補助材(複数可)は、補助材(複数可)が組織にステープル留めされるときに、組織厚さの変動を補償するように構成され得る。このような場合、補助材はまた、「組織厚さコンペンセータ」と呼ぶことができる。組織厚さコンペンセータは、形成された構成にあるステープルの高さよりも大きい、圧縮されていない(変形していない)、又は配備前の高さを有する。例示的な組織厚さコンペンセータに関する更なる詳細は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,864,007号に見出すことができる。組織厚さコンペンセータは、例えば、米国特許第9,272,406号、及び同第10,136,890号(これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているように、様々な方法でステープルカートリッジに取り付けられ、そこから解放され得る。
【0022】
本明細書の開示に加えて、補助材(複数可)及び他の例示的な補助材に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第10,172,611号及び同第10,433,846号、並びに2020年9月1日に出願され、「Compressible Non-Fibrous Adjuncts」と題された米国特許出願第17/009,769号に見出すことができ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0023】
代替的又は追加的に、補助材は、組織の内部成長を促進するように構成され得る。様々な状況において、治療される組織(例えば、ステープル留め及び/又は切開される組織)の治癒を促進するため、かつ/又は患者の回復を加速するために、植込み可能な補助材の中への組織の内部成長を促進することが望ましい。より具体的には、植込み可能な補助材への組織の内部成長により、手術部位での炎症の発生率、程度、及び/又は期間が減少し得る。植込み可能な補助材への、かつ/又はその周辺での組織の内部成長は、例えば、手術部位での感染の拡大を管理し得る。例えば植込み可能な補助材への及び/又はその周辺での、血管、特に白血球の内部成長は、植込み可能な補助材及び隣接組織の中で及び/又はそれらの周辺で感染に対抗し得る。組織の内部成長はまた、患者の身体による異物(例えば、植込み可能な補助材及びステープル)の受容を助成し得、また患者の身体が異物を拒絶する可能性を低減し得る。異物の拒絶により、手術部位では感染及び/又は炎症が生じ得る。
【0024】
代替的又は追加的に、補助材は、その上及び/又はその内部に、薬物を有することができる。薬物は、周囲の組織への薬剤の所望の効果に応じて変更することができる。非限定例として、薬物は、止血、炎症、マクロファージ、及び/又は線維芽細胞に影響を及ぼすのに提供され得る。薬物は、混合され、又は、任意の組み合わせで組み合わせられることができ、あるいは、薬物は、再度、組織に対する所望の効果に応じて、単独で提供されることができる。薬物は、種々の異なる方法で、補助材から溶出され得る。非限定例として、補助材上のコーティングが、異なるタイミングで吸収されることにより、異なるタイミングで薬物を放出するのに変更され得ること、補助材は、可変速度で補助材間の薬物の拡散を可能にするように変更され得ること、補助材は、異なるタイミングで薬物を放出させるために、分子量及び/又は物理的特徴を変更し得ること、本明細書の開示に加えて、薬物溶出補助材に関する更なる詳細は、米国特許第9,232,941号及び同第10,569,071号に見出すことができ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0025】
手術用ステープル留め器具
様々な手術用器具が、本明細書で開示された補助材及び/又は薬物と共に使用され得る。手術用器具は、手術用ステープラを含み得る。様々な手術用ステープラ、例えば、線状手術用ステープラ及び円形ステープラが使用され得る。概して、線状ステープラは長手方向ステープルラインを形成するように構成されることができ、長手方向ステープル列を収容するカートリッジが結合される細長い顎部を含むことができる。細長い顎部は、顎部内に保持された組織に沿ってステープル列の間に切断部を形成することができるナイフ又は他の切断部材を含むことができる。概して、輪状ステープラは、環状ステープルラインを形成するように構成されることができ、環状ステープル列を収容するカートリッジを有する輪状顎部を含むことができる。輪状顎部は、顎部内に保持された組織を貫通する開口部を画定するために、ステープルの列の内側に切断部を形成することができるナイフ又は他の切断部材を含むことができる。ステープラは、様々な異なる外科的処置において、例えば、胸部手術又は胃部手術において、様々な組織に対する様々な異なる外科的処置に使用され得る。
【0026】
図1は、1種又は2種以上の補助材及び/又は薬物と共に使用するに適した線状手術用ステープラ10の一例を図示する。ステープラ10は、概して、ハンドルアセンブリ12と、ハンドルアセンブリ12の遠位端12dから遠位に延在するシャフト14と、シャフト14の遠位端14dにあるエンドエフェクタ30と、を含む。エンドエフェクタ30は、対向する下部顎部32及び上部顎部34を有するが、他の種類のエンドエフェクタを、シャフト14、ハンドルアセンブリ12、及びそれらに付随する構成要素と共に使用してもよい。下部顎部32は、ステープルカートリッジ40を支持するように構成されているステープルチャネル56を有する。上部顎部34は、下部顎部32に面し、ステープルカートリッジ40のステープル(ステープルは、
図1及び
図2において隠れている)を配備するのを支援するように、アンビルとして動作するように構成されているアンビル面33を有する。対向する下部顎部32及び上部顎部34の少なくとも一方は、それらの間に配設された組織及び/又は他の物体をクランプするために、他方の下部顎部32及び上部顎部34に対して移動可能である。いくつかの実装形態では、対向する下部顎部32及び上部顎部34の一方は、固定されるか、又は別の方法で移動不能であってよい。いくつかの実装形態では、対向する下部顎部32及び上部顎部34の両方が移動可能であってよい。発射システムの構成要素は、ステープルをクランプされた組織内に放出するために、エンドエフェクタ30の少なくとも一部を通過するように構成され得る。様々な実装形態では、ナイフブレード36又は他の切断部材は、発射システムに関連付けられて、ステープル留め処置中に組織を切開し得る。
【0027】
エンドエフェクタ30の作動は、ハンドルアセンブリ12での、例えば、臨床医、外科医などのユーザからの入力によって開始され得る。ハンドルアセンブリ12は、それに連結されるエンドエフェクタ30を操作して作動させるように設計された多くの異なる構成を有してもよい。図示した実施例では、ハンドルアセンブリ12は、器具10の多様な特徴部を操作するための様々な機械的及び/又は電気的構成要素が内部に配設されている、ピストルグリップ型のハウジング18を有している。例えば、ハンドルアセンブリ12は、ハンドルアセンブリ12に対する、シャフト14の長手方向軸Lの周りでのシャフト14及び/又はエンドエフェクタ30の回転を促進し得る、その遠位端12dに隣接して取り付けられた回転ノブ26を含み得る。ハンドルアセンブリ12は、クランプトリガ22によって作動されるクランプシステムの一部としてのクランプ構成要素と、発射トリガ24によって作動される発射システムの一部としての発射構成要素と、を更に含み得る。クランプトリガ22及び発射トリガ24は、例えば、トーションばねによって、静止ハンドル20に対して開放位置に付勢され得る。静止ハンドル20に向けたクランプトリガ22の移動は、以下に記載のクランプシステムを作動させることができ、これにより、顎部32、34を互いに向けて倒し、それによって、それらの間に組織をクランプすることができる。発射トリガ24の移動は、以下に記載の発射システムを作動させることができ、これにより、内部に配設されたステープルカートリッジ40からステープルを放出させることができ、及び/又は、ナイフブレード36を前進させて、顎部32、34の間に捕捉された組織を切断することができる。当業者であれば、機械、油圧、空気圧、電気機械、ロボット、又はその他の発射システムの構成要素の様々な構成が、ステープルの放出及び/又は組織の切開に使用され得ることを認識するであろう。
【0028】
図2に示すように、図示した実装形態のエンドエフェクタ30は、カートリッジアセンブリ又はキャリアとして機能する下部顎部32と、アンビルとして機能する、対向する上部顎部34と、を有する。内部に複数のステープルを有するステープルカートリッジ40は、ステープルトレイ37内に支持され、次に、ステープルトレイ37は、下部顎部32のカートリッジチャネル内に支持される。上部顎部34は、複数のステープル形成ポケット(図示せず)を有し、ステープル形成ポケットの各々は、ステープルカートリッジ40内に収容される複数のステープルからの対応するステープルの上に位置付けられる。上部顎部34は、様々な方法で下部顎部32に接続され得るが、図示した実装形態では、上部顎部34は、シャフト14との係合部のすぐ遠位の、ステープルチャネル56の近位端56p内に枢動可能に受容される近位枢動端34pを有している。上部顎部34が下向きに枢動すると、上部顎部34は、アンビル面33を移動させ、アンビル面33上に形成されているステープル形成ポケットが、対向するステープルカートリッジ40に向かって移動する。
【0029】
様々なクランプ構成要素を使用して顎部32、34の開放及び閉鎖をもたらして、それらの間に組織を選択的にクランプすることができる。図示するように、上部顎部34の枢動端34pは、ステープルチャネル56とのその枢動的な取り付け部より遠位に閉鎖機構34cを含む。したがって、その遠位端部に、閉鎖機構34cと係合する馬蹄形開口部46aを含む閉鎖管46は、クランプトリガ22に応じて、閉鎖管46の近位長手方向運動中に上部顎部34に対して開放運動を、及び、閉鎖管46の遠位長手方向運動中に上部顎部34に対して閉鎖運動を、選択的に与える。上記のように、様々な実装形態では、エンドエフェクタ30の開閉は、上部顎部34に対する下部顎部32の相対運動、下部顎部32に対する上部顎部34の相対運動、又は互いに対する両方の顎部32、34の運動によってもたらされてよい。
【0030】
図示した実装形態の発射構成要素は、
図3に示すように、遠位端にEビーム38を有する発射バー35を含む。発射バー35は、シャフト14内、例えば、シャフト14の長手方向発射バースロット14s内に包含され、ハンドル12からの発射運動によって誘導される。発射トリガ24の作動は、エンドエフェクタ30の少なくとも一部を通るEビーム38の遠位運動に影響を与え、それによって、ステープルカートリッジ40内に収容されたステープルを発射させ得る。図示したように、Eビーム38の遠位端から突出しているガイド39は、
図2に示したウェッジスレッド47と係合し得る。次に、ウェッジスレッド47は、ステープルカートリッジ40内に形成されたステープル空洞41を通ってステープルドライバ48を押し上げ得る。ステープルドライバ48の上向きの移動は、カートリッジ40内の複数のステープルの各々に上向きの力を加え、それによって上部顎部34のアンビル面33に対してステープルを上向きに押し、成形されたステープルを作り出す。
【0031】
ステープルを発射させることに加えて、Eビーム38は、顎部32、34の閉鎖、ステープルカートリッジ40からの上部顎部34の引き離し、及び/又は、顎部32、34間に捕捉された組織の切断を促進するように構成され得る。具体的には、一対の頂部ピン及び一対の底部ピンは、上部顎部32及び下部顎部34の一方又は両方と係合して、発射バー35がエンドエフェクタ30を通って前進するときに、顎部32、34を互いに向けて圧迫し得る。同時に、頂部ピンと底部ピンとの間に延在するナイフ36は、顎部32、34の間に捕捉された組織を切断するように構成され得る。
【0032】
使用中、手術用ステープラ10は、カニューレ又はポート内に配設され、手術部位に配設され得る。切開されてステープル留めされる組織は、手術用ステープラ10の顎部32、34の間に定置されてもよい。ステープラ10の機構が、ユーザによって望みどおりに操作され、顎部32、34に関する手術部位と組織において、顎部32、34の所望の場所として実現され得る。適切な位置決めを達成した後に、クランプトリガ22を静止ハンドル20に向けて引いて、クランプシステムを作動させ得る。トリガ22は、閉鎖管46が、シャフト14の少なくとも一部を通過して遠位方向に進んで、顎部32、34の少なくとも一方を他方に向かって倒し、これらの間に配設された組織をクランプするように、クランプシステムの構成要素を作動させ得る。その後、発射バー35及び/又はEビーム38が、エンドエフェクタ30の少なくとも一部を通って遠位方向に進んで、ステープルの発射をもたらし、任意選択的に、顎部32、34の間で捕捉された組織を切断するように、トリガ24を、静止ハンドル20に向けて引いて、発射システムの構成要素を作動させ得る。
【0033】
線状手術用ステープラ50の形態における手術用器具の別の例を、
図4に図示する。ステープラ50は、一般に、
図1のステープラ10同様に、構成され、使用され得る。
図1の手術用器具10と同様に、手術用器具50は、シャフト54を備えるハンドルアセンブリ52を含み、シャフト54はハンドルアセンブリ52から遠位に延在し、かつ、組織を処置するために遠位端にエンドエフェクタ60を有している。エンドエフェクタ60の上部顎部64及び下部顎部62は、間に組織を捕捉すること、下部顎部62内に配設されたカートリッジ66からステープルを発射することによって組織をステープル留めすること、及び/又は、組織に切開部を形成することを行うように構成され得る。この実装形態において、シャフト54の近位端にある取り付け部67は、シャフト54及びエンドエフェクタ60をハンドルアセンブリ52に取り外し可能に取り付け可能にするように構成することができる。具体的には、取り付け部67の嵌合機構68は、ハンドルアセンブリ52の補助嵌合機構71と嵌合できる。嵌合機構68、71は、例えば、スナップフィット結合、バヨネット式結合などによって互いに連結するように構成され得るが、シャフト54をハンドルアセンブリ52に着脱可能に連結するために、任意の数の補助嵌合機構及び任意の種類の結合を使用することができる。図示した実装形態のシャフト54の全体は、ハンドルアセンブリ52から分離可能に構成されているが、いくつかの実装形態では、取り付け部67は、シャフト54の遠位部分のみを取り外すことができるように構成され得る。シャフト54及び/又はエンドエフェクタ60の分離可能な連結は、特定の処置のための所望のエンドエフェクタ60の選択的な取り付け、及び/又は、多数の異なる処置のためのハンドルアセンブリ52の再利用を可能にできる。
【0034】
ハンドルアセンブリ52は、エンドエフェクタ60を操作して作動させるための1つ又は2つ以上の機構をその上に有していてもよい。非限定例として、ハンドルアセンブリ52の遠位端に取り付けられた回転ノブ72は、ハンドルアセンブリ52に対するシャフト54及び/又はエンドエフェクタ60の回転を促進し得る。ハンドルアセンブリ52は、移動可能なトリガ74によって作動されるクランプシステムの一部としてのクランプ構成要素と、これもトリガ74によって作動され得る発射システムの一部としての発射構成要素と、を含み得る。したがって、いくつかの実装形態では、第1運動範囲を通る、静止ハンドル70に向けたトリガ74の移動は、クランプ構成要素を作動させて、対向する顎部62、64を互いに向けて閉鎖位置に近づけさせ得る。いくつかの実装形態では、対向する顎部62、64の一方のみが、顎部62、64に向けて閉鎖位置に移動し得る。静止ハンドル70に向けた、第2運動範囲を通るトリガ74の更なる移動は、発射構成要素を作動させて、ステープルカートリッジ66からステープルを放出させることができ、及び/又は、ナイフ若しくは他の切断部材(図示せず)を前進させて、顎部62、64の間に捕捉された組織を切断することができる。
【0035】
環状手術用ステープラ80の形態の手術用器具の一例を、
図5に図示する。ステープラ80は、一般に、
図1及び
図4の線状ステープラ10、50と同様に構成され、使用され得るが、一部の特徴が、輪状ステープラとしてのその機能に適応している。手術用器具10、50と同様に、手術用器具80は、シャフト84を備えるハンドルアセンブリ82を備え、シャフト84は、手術用器具80から遠位に延在し、組織を処置するためのエンドエフェクタ90をその遠位端に有している。エンドエフェクタ90は、略円形の形状を有する、組織接触面をそれぞれが有するカートリッジアセンブリ92及びアンビル94を含み得る。カートリッジアセンブリ92とアンビル94とは、ステープラ80のアンビル94からハンドルアセンブリ82まで延在するシャフト98を介して結合させることができ、ハンドルアセンブリ82上のアクチュエータ85を操作すると、シャフト98を後退及び前進させて、カートリッジアセンブリ92に対してアンビル94を移動させることができる。アンビル94及びカートリッジアセンブリ92は、様々な機能を行うことができ、それらの間に組織を捕捉すること、カートリッジアセンブリ92のカートリッジ96からステープルを発射することにより組織をステープル留めすること、及び/又は、組織に切開を形成することを行うように構成することができる。一般的に、カートリッジアセンブリ92は、ステープルを収容しているカートリッジを収めることができ、ステープルをアンビル94に対して配備することにより、円形のステープルパターンを形成し、例えば、管状体内臓器の外周の周りをステープル留めすることができる。
【0036】
1つの実装形態において、シャフト98は、アンビル94をカートリッジアセンブリ92から分離することができるように解放可能に互いに連結されるように構成された第1及び第2の部分(図示せず)で構成することができ、これにより、アンビル94及びカートリッジアセンブリ92を患者の体内に位置付けるのに、より高い柔軟性を与えることができる。例えば、シャフトの第1の部分は、カートリッジアセンブリ92の内部に配設され、遠位方向にカートリッジアセンブリ92の外部へと延在して、遠位嵌合機構において終端することができる。シャフトの第2の部分は、アンビル94の内部に配設され、近位方向にカートリッジアセンブリ92の外部へと延在して、近位嵌合機構において終端することができる。使用に際しては、近位嵌合機構と遠位嵌合機構とを互いに連結することにより、アンビル94とカートリッジアセンブリ92とを互いに対して動かすことができる。
【0037】
ステープラ80のハンドルアセンブリ82には、ステープラの動作を制御することができる様々なアクチュエータを配設することができる。例えば、ハンドルアセンブリ82には、回転によってエンドエフェクタ90の位置決めを容易にする回転ノブ86、及び/又は、エンドエフェクタ90を作動させるためのトリガ85を配設することができる。第1の運動範囲を通るトリガ85の静止ハンドル87に向かう運動によって、クランプシステムの構成要素を顎部に近づける(例えば、カートリッジアセンブリ92に向かってアンビル94を動かす)ように作動させることができる。第2の運動範囲を通るトリガ85の静止ハンドル87に向かう運動によって、発射システムの構成要素を作動させて、ステープルをステープルカートリッジアセンブリ92から配備させ、かつ/又は、カートリッジアセンブリ92とアンビル94との間に捕捉された組織を切断するためにナイフを前進させることができる。
【0038】
手術用ステープル留め器具10、50、及び80の図示した例は、多くの異なる構成及び関連する使用方法のうちのごく一部の例を提供するものであり、これらは本明細書で提供される開示と共に使用され得る。図示した実施例は、全て低侵襲処置で使用するように構成されているが、切開外科的処置で使用するように構成されている器具、例えば、米国特許第8,317,070号(発明の名称「Surgical Stapling Devices That Produce Formed Staples Having Different Lengths」、2007年2月28日付けで出願)に記載されているようにオープン線状ステープラを、本明細書で提供される開示と共に使用できることが理解されるであろう。図示した実施例の更なる詳細、並びに、手術用ステープラ、その構成要素、及びその関連する使用方法の更なる実施例は、米国特許出願公開第2013/0256377号(発明の名称「Layer Comprising Deployable Attachment Members」、2013年2月8日付けで出願)、米国特許第8,393,514号(発明の名称「Selectively Orientable Implantable Fastener Cartridge」、2010年9月30日付けで出願)、米国特許第8,317,070号(発明の名称「Surgical Stapling Devices That Produce Formed Staples Having Different Lengths」、2007年2月28日付けで出願)、米国特許第7,143,925号(発明の名称「Surgical Instrument Incorporating EAP Blocking Lockout Mechanism」、2005年6月21日付けで出願)、米国特許出願公開第2015/0134077号(発明の名称「Sealing Materials For Use In Surgical Stapling」、2013年11月8日付けで出願)、第2015/0134076号(発明の名称「Hybrid Adjunct Materials for Use in Surgical Stapling」、2013年11月8日付けで出願)、米国特許出願公開第2015/0133996号(発明の名称「Positively Charged Implantable Materials and Method of Forming the Same」、2013年11月8日付けで出願)、米国特許出願公開第2015/0129634号(発明の名称「Tissue Ingrowth Materials and Method of Using the Same」、2013年11月8日付けで出願)、米国特許出願公開第2015/0133995号(発明の名称「Hybrid Adjunct Materials for Use in Surgical Stapling」、2013年11月8日付けで出願)、米国特許出願第14/226,142号(発明の名称「Surgical Instrument Comprising a Sensor System」、2014年3月26日付けで出願)、及び米国特許出願第14/300,954号(発明の名称「Adjunct Materials and Methods of Using Same in Surgical Methods for Tissue Sealing」、2014年6月10日付けで出願)に提供される。これらの文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
植え込み可能な補助材
上記されたように、様々な植え込み可能な補助材が、手術用ステープル留め器具と共に使用するために提供される。手術用ステープラと共に使用されるときには、補助材(複数可)は、ステープラの顎部の間及び/又はその上に配設されても、顎部上に配設されたステープルカートリッジに組み込まれても、又はそうでなければ、ステープルの近位に置かれてもよい。例えば、
図6に示すように、補助材104は、ステープルカートリッジ102に対して位置付けられる。簡略化のために、補助材104は、
図6に概略的に示されており、補助材の様々な構造的構成が、以下でより詳細に説明される。
図6では部分的に遮られているが、ステープルカートリッジ102は、ステープル106を含み、これは組織内に配備されるように構成される。ステープル106は任意の好適な未成形(配備前)高さを有することができる。例えば、ステープル106は、約2mm~4.8mmの未形成高さを有することができる。配備前に、ステープルのクラウンが、ステープルドライバ(図示せず)によって支持されることができる。
【0040】
図示された実施形態では、補助材104は、ステープルカートリッジ102の上面又はデッキ面108の少なくとも一部分に解放可能に嵌合されることができる。いくつかの実施形態では、ステープルカートリッジ102の上面108は、1つ又は2つ以上の表面特徴部を含むことができる。代替的又は追加的に、1つ又は2つ以上の接着剤を使用して、補助材をステープルカートリッジ102に解放可能に嵌合させることができる。1つ又は2つ以上の表面特徴部及び/又は1つ又は2つ以上の接着剤は、補助材104と係合して、ステープルカートリッジ102に対する補助材104の望ましくない移動を回避するために、かつ/又はステープルカートリッジ102からの補助材104の早期解放を防止するように構成されることができる。例示的な表面特徴は、米国特許出願公開第2016/0106427号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。器具への一時的な取り付けのための接着剤及び他の例示的な接着剤に関する更なる詳細は、米国特許第9,282,962号、米国特許第10,172,617号、米国特許第10,172,618号、米国特許第10,258,332号、米国特許第10,517,592号、米国特許第10,548,593号、米国特許第10,568,621号、及び米国特許第10,588,623号に見出すことができ、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。取り付け方法及び他の例示的な方法についての更なる詳細は、米国特許第10,166,023号及び米国特許第10,349,939号、並びに、2020年9月16日に出願され、「Method of Applying Buttress to End Effector of Surgical Stapler」 と題する米国特許出願第17/022,520号に見出すことができ、それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0041】
特定の例では、補助材は、補助材が様々な高さに圧縮されて、それによって配備されたステープル内に捕捉される異なる組織の厚さを補うことができるように、圧縮可能であり得る。例えば、
図6に示すように、補助材104は、未圧縮(未変形)又は配備前の高さを有し、複数の圧縮(変形)又は配備の高さのうちの1つに変形するように構成されている。このように、補助材104は、ステープルカートリッジ102内に配設されたステープル106の発射後高さ(例えば、
図7の発射済みステープル106aの高さ(H))よりも高い未圧縮高さを有することができる。すなわち、補助材104は、補助材104の最大限の高さが発射済みステープルの最大限の高さ(例えば、成形構成にあるステープル)よりも高い、未変形状態を有することができる。このような場合、補助材は、「組織厚さコンペンセータ」と呼ぶことができる。一実施形態では、補助材104の未圧縮高さは、ステープル106が発射後高さよりも、約10%高く、約20%高く、約30%高く、約40%高く、約50%高く、約60%高く、約70%高く、約80%高く、約90%高く、又は約100%高くすることができる。特定の実施形態では、補助材104の未圧縮高さは、例えば、ステープル106の発射後高さよりも、100%超高くすることができる。
【0042】
補助材は、様々な構成を有することができ、様々な材料から形成されることができる。概して、補助材は、フィルム、発泡体、射出成形熱可塑性材料、真空熱成形材料、繊維性構造、付加製造材料及びそれらのハイブリッドの1つ又は2つ以上から形成され得る。また、補助材は、1つ又は2つ以上の生物由来材料及び1つ又は2つ以上の薬物も含み得る。これらの材料はそれぞれ、以下により詳細に検討される。
【0043】
補助材は、発泡体、例えば、独立気泡発泡体、連続気泡発泡体、又はスポンジから形成され得る。このような補助材を製造することができる方法の例は、動物由来コラーゲン、例えば、ブタの腱からのものであり、次いで、これが処理され、凍結乾燥されて、発泡構造を得ることができる。様々な発泡補助材の例は、先で言及された米国特許第8,393,514号(発明の名称「Selectively Orientable Implantable Fastener Cartridge」、2010年9月30日付けで出願)に更に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0044】
また、補助材は、以下で検討される任意の適切な材料又はその組み合わせから形成されたフィルムから形成され得る。フィルムは、1つ又は2つ以上の層を含むことができ、これら層はそれぞれ、異なる分解速度を有することができる。更に、フィルムは、内部に形成された様々な領域、例えば、多くの異なる形態の1種以上の薬物を内部に放出可能に保持することができるリザーバを有することができる。内部に配設された少なくとも1種の薬物を有するリザーバは、吸収性又は非吸収性ポリマーを含み得る、1つ又は2つ以上の異なるコーティング層を使用して封止され得る。フィルムは、様々な方法で形成され得る。例えば、フィルムは、押出しフィルム又は圧縮成形フィルムであり得る。
【0045】
また、補助材は、射出成形熱可塑性材料又は真空熱成形材料から形成され得る。様々な成形補助材の例は、米国特許出願公開第2013/0221065号(発明の名称「Fastener Cartridge Comprising A Releasably Attached Tissue Thickness Compensator」、2013年2月8日付けで出願)に更に記載されている。同文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。また、補助材は、ファイバベース格子であることもできる。同格子は、織布、編地、又は、メルトブロー、ニードルパンチ、若しくは熱構成ルーズ織布などの不織布であることができる。補助材は、多くの異なる方法で共に補助材を形成し得る、同じ種類の格子又は異なる種類の格子から形成され得る、複数の領域を有し得る。例えば、ファイバは、規則的又は不規則な構造を形成するために、織られ、編み組まれ、編まれ、又は他の方法で相互に結び付けられ得る。得られた補助材が比較的緩くなるように、ファイバは、相互に結び付けられ得る。あるいは、補助材は、密に相互に結び付けられたファイバを含み得る。補助材は、シート、チューブ、螺旋、又は、柔らかい部分及び/若しくはより硬い補強部分を含み得る任意の他の構造の形態であり得る。補助材は、補助材の特定の領域がより密なファイバを有することができ、一方で、他の領域がより密でないファイバを有するように構成され得る。ファイバ密度は、補助材の意図した用途に基づいて、補助材の1つ又は2つ以上の次元に沿った異なる方向で変わり得る。
【0046】
他の実施形態では、補助材は、吸収性ポリマーと適合する3D印刷プロセス(複数可)を使用して形成することができる。好適な3D印刷プロセスの非限定的な例としては、当業者によって理解されるように、ステレオリソグラフィ(SLA又はSL)、材料噴射、選択的レーザ焼結(SLS)、及び溶融フィラメント製造が挙げられる。
【0047】
また、補助材は、積層複合材又はメルトロック相互結合ファイバなどのハイブリッド構造であることもできる。様々なハイブリッド構造補助材の例は、米国特許出願公開第2013/0146643号(発明の名称「Adhesive Film Laminate」、2013年2月8日付けで出願)及び米国特許第7,601,118号(発明の名称「Minimally Invasive Medical Implant And Insertion Device And Method For Using The Same」、2007年9月12日付けで出願)に更に記載されている。これらの文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
材料
記載された技術に基づく補助材は、様々な材料から形成され得る。材料は、異なる目的のための様々な実施形態に使用され得る。材料は、組織内部成長を促進するために、組織に提供されるべき所望の治療に従って選択され得る。以下に記載された材料は、任意の所望の組み合わせで補助材を形成するのに使用され得る。
【0049】
材料は、ホモポリマー及びコポリマーを含めた、生体吸収性及び生体適合性ポリマーを含み得る。ホモポリマー及びコポリマーの非限定的な例としては、p-ジオキサノン(PDO又はPDS)、ポリグリコール酸(PGA)(例えば、Dexon及びNeoveil)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリグリコリド(PGL)、トリメチレンカーボネート(TMC)、ポリ乳酸(PLA)(例えば、Linvatec Bioscrew及びBionx Implants Smart Screw)、ポリ(トリメチレンカーボネート(PTMC)、ポリエチレングリコールジグリコレート(PEDG)、ポリプロピレンフマレート(PPF)、ポリエチレンエーテル(PEE)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド、ポリ(アミノ酸)、ポリ(epoxycarbonate)、ポリ(2-オキシプロピレンカーボネート)、ポリ(ジオールシトレート)、ポリメタクリル酸無水物、ポリ(エトキシエチレンジグリコレート)、ポリ(グリコール酸-co-乳酸)(PLA/PGA)(例えばVicryl、Vicryl Rapide、PolySorb、及びBiofixにおいて使用されるPLA/PGA材料)、ポリウレタン(例えば、Elastane、Biospan、Tecoflex、Bionate、及びPellethane繊維)、ポリオルトエステル、ポリ無水物(例えばGliadel及びBiodelポリマー)、ポリオキサエステル、ポリエステルアミド(例えばREVA ReZolveステント)、及びチロシンベースのポリエステルアミド(例えばTYRX)が挙げられる。コポリマーはまた、ポリ(乳酸-co-ポリカプロラクトン)(PLA/PCL)(例えば16~18ヶ月加水分解された)、ポリ(L-乳酸-co-ポリカプロラクトン)(PLLA/PCL)、ポリ(グリコール酸-co-トリメチレンカーボネート)(PGA/TMC)(例えばMaxon)、ポリ(グリコール酸-co-カプロラクトン)(PCL/PGA)(例えばMonocryl及びCapgly)、PDS/PGA/TMC(例えばBiosyn)、PDS/PLA、PGA/PCL/TMC/PLA(例えばCaprosyn)、LPLA/DLPLA(例えばOptima)、PLGA-PCL(例えば15:85(PCL:50%D,L-ラクチド:50%グリコリド)、40:60(PCL:50%D,L-ラクチド:50%グリコリド)、及び40:60(PCL:85%D,L-ラクチド:15%グリコリド)、PLGA-PCL-PLGA、及びPLGA-PEG-PLGAを含み得る。
【0050】
補助材はまた、(メタ)アクリレート及び有機的に誘導されたポリマーを含む特別なポリマー末端を含むことができる。有機的に誘導されたポリマーの非限定的な例としては、コラーゲンに由来するものが挙げられる(例えば、Avitene、Endoavitene、Instat、Integran、Veritas、及びMicrofibrillar Collagen(MFC))。
【0051】
また、補助材は、活性剤、例えば、活性な細胞培養物(例えば、ダイス状の自家組織、幹細胞療法に使用される作用剤(例えば、Biosutures及びCellerix S.L.)、止血剤、及び組織治癒剤も含み得る。止血剤の非限定例は、セルロース、例えば、酸化再生セルロース(ORC)(例えば、Surgicel及びInterceed)、フィブリン/トロンビン(例えば、Thrombin-JMI、TachoSil、Tiseel、Floseal、Evicel、TachoComb、Vivostat、及びEverest)、自家血小板血漿、ゼラチン(例えば、Gelfilm及びGelfoam)、ヒアルロン酸、例えば、マイクロファイバ(例えば、ヤーン及び織物)若しくはヒアルロン酸に基づく他の構造物、又はヒアルロン酸ベースのヒドロゲルを含み得る。また、止血剤は、ポリマーシーラント、例えば、ウシ血清アルブミン及びグルタルアルデヒド、ヒト血清アルブミン及びポリエチレン架橋剤、並びに、エチレングリコール及びトリメチレンカーボネートなども含み得る。ポリマー封止剤としては、Focal Inc.により開発されたFocalSeal手術用封止剤を挙げることができる。
【0052】
本明細書で記載された補助材は、内部に、少なくとも1種の薬物を放出可能に保持し得る。同薬物は、多数の異なる薬物から選択され得る。薬物としては、所望の機能を有する、補助材内に含まれ、又は、同補助材に関連付けられた薬物又は他の作用剤が挙げられるが、これらに限定されない。薬物としては、例えば、抗菌剤、例えば、抗菌剤及び抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、成長因子、鎮痛薬、麻酔剤、組織マトリックス変性阻害剤、抗がん剤、止血剤、並びに生物学的応答を引き起こす他の作用剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
抗菌剤の非限定例は、銀イオン、アミノ配糖体、ストレプトマイシン、ポリペプチド、バシトラシン、トリクロサン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、デメクロサイクリン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、ニトロフラン、フラゾリドン、ニトロフラントイン、ベータ-ラクタム、ペニシリン、アモキシシリン、アモキシシリン+、クラブラン酸、アズロシリン、フルクロキサシリン、チカルシリン、ピペラシリン+タゾバクタム、タゾシン、Biopiper TZ、ゾシン、カルバペネム、イミペネム、メロペネム、エルタペネム、ドリペネム、ビアペネム、パニペネム/ベタミプロン、キノロン、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、スルホンアミド、マフェニド、スルファセトアミド、スルファジアジン、銀スルファジアジン、スルファジメトキシン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファサラジン、スルフィソキサゾール、バクトリム、プロントシル、アンサマイシン、ゲルダナマイシン、ヘルビマイシン、フィダキソマイシン、グリコペプチド、テイコプラニン、バンコマイシン、テラバンシン、ダルババシン、オリタバンシン、リンコサミド、クリンダマイシン、リンコマイシン、リポペプチド、ダプトマイシン、マクロライド、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、テリスロマイシン、スピラマイシン、オキサゾリジノン、リネゾリド、アミノ配糖体、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシン、パロマイシン、パロモマイシン、セファロスポリン、セフトビプロール、セフトロザン、セフクリジン、フロモキセフ、モノバクタム、アズトレオナム、コリスチン、及びポリミキシンBを含む。
【0054】
抗真菌剤の非限定例は、トリクロサン、ポリエン、アムホテリシンB、カンジシジン、フィリピン、ハマイシン、ナタマイシン、ナイスタチン、リモシジン、アゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアゾール、アリルアミン、アモロルフィン、ブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィン、エキノカンジン、アニデュラファンジン、カスポファンジン、ミカファンジン、シクロピロックス、及び安息香酸を含む。
【0055】
抗ウイルス剤の非限定例は、脱殻阻害剤、例えば、アマンタジン、リマンタジン、プレコナリルなど;逆転写阻害剤、例えば、アシクロビル、ラミブジン、アンチセンス、フォミビルセン、モルホリノ、リボザイム、リファンピシンなど;及び抗ウイルス薬、例えば、シアノビリン-N、グリフィスシン、シトビリン、α-ラウリル-L-アルギニンエチルエステル(LAE)、並びに銀イオンを含む。
【0056】
抗炎症剤の非限定例は、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、サリチル酸塩、アスピリン、ジフルニサール、プロピオン酸誘導体、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、及びロキソプロフェン)、酢酸誘導体(例えば、トルメチン、スリンダク、及びジクロフェナク)、エノール酸誘導体(例えば、ピロキシカム、メロキシカム、ドロキシカム、及びロルノキシカム)、アントラニル酸誘導体(例えば、メフェナム酸、メクロフェナム酸、及びフルフェナム酸)、選択的COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ(セレブレックス)、パレコキシブ、ロフェコキシブ(Vioxx)、スルホンアニリド、ニメスリド、及びクロニキシン)、免疫選択的抗炎症誘導体、副腎皮質ホルモン(例えば、デキサメタゾン)、及びiNOS阻害剤を含む。
【0057】
成長因子の非限定例は、細胞の成長、治癒、再形成、増殖、及び分化を刺激する細胞シグナル伝達分子である因子を含む。例示的な成長因子は、短い範囲(パラクリン)、長い範囲(エンドクリン)、又は自己刺激(オートクリン)であり得る。成長因子の更なる例は、成長ホルモン(例えば、組換え成長因子、ニュートロピン、ヒューマトロープ、ゲノトロピン、ノルディトロピン、サイゼン、オムニトロープ、及び生合成成長因子)、表皮成長因子(EGF)(例えば、阻害剤、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、及びセツキシマブ)、へパリン結合EGF様成長因子(例えば、エピレグリン、ベタセルリン、アンフィレグリン、及びエピジェン)、トランスフォーミング成長因子アルファ(TGF-a)、ニューロレグリン1-4、線維芽細胞成長因子(FGF)(例えば、FGF-1-2、FGF2、FGF11-14、FGF18、FGF15/19、FGF21、FGF23、FGF7、又はケラチノサイト成長因子(KGF)、FGF10、又はKGF2、及びフェニトイン)、インスリン様成長因子(IGF)(例えば、IGF-1、IGF-2、及び血小板由来成長因子(PDGF))、血管内皮成長因子(VEGF)(例えば、阻害剤、ベバシズマブ、ラニビズマブ、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、及びベカプレルミン)を含む。
【0058】
成長因子の更なる非限定例は、サイトカイン、例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)(例えば、炎症応答を阻害する阻害剤並びに組換えDNA技術を使用して及び組換え酵母由来ソースにより製造されたGM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)(例えば、フィルグラスティム、レノグラスティム、及びニューポジェン)、組織成長因子ベータ(TGF-B)、レプチン、及びインターロイキン(IL)(例えば、IL-1a、IL-1b、カナキヌマブ、IL-2、アルデスロイキン、インテルキング、デニロイキン、ジフチトックス、IL-3、IL-6、IL-8、IL-10、IL-11、及びオプレルベキン)を含む。成長因子の非限定例は、エリスロポエチン(例えば、ダルベポエチン、エポセプト、ダイネポ、エポマックス、ネオレコルモン、シラポ、及びレタクリット)を更に含む。
【0059】
鎮痛薬の非限定例は、麻酔剤、オピオイド、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、ブプレノルフィン、トラマドール、非麻酔剤、パラセタモール、アセトアミノフェン、NSAID、及びフルピルチンを含む。
【0060】
麻酔剤の非限定例は、局所麻酔剤(例えば、リドカイン、ベンゾカイン、及びロピバカイン)及び全身麻酔剤を含む。
【0061】
メタロプロテイナーゼ(MMP)及び他のプロテアーゼの作用を阻害する組織マトリックス分解阻害剤の非限定例は、MMP阻害剤(例えば、外来性MMP阻害剤、ヒドロキシメート系MMP阻害剤、バチマスタット(BB-94)、イロマスタット(GM6001)、マリマスタット(BB2516)、チオール、ペリオスタット(ドキシサイクリン)、スクアリン酸、BB-1101、ヒドロキシ尿素、ヒドラジン、内在性、カルバモイルリン酸塩、ベータラクタム、及びMMPの組織阻害剤(TIMP))を含む。
【0062】
抗がん剤の非限定的な例には、モノクローナル抗体、ベバシズマブ(アバスチン)、細胞/化学誘引剤、アルキル化剤(例えば、二官能性、シクロホスファミド、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、単官能性、ニトロソ尿素及びテモゾロミド)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン及びバルルビシン)、細胞骨格破壊剤(例えば、パクリタキセル及びドセタキセル)、微細管機能を阻害することによって細胞分裂を制限するエポチロン剤、細胞分裂又は特定の細胞機能に必要な様々な酵素をブロックする阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えば、ボリノスタット及びロミドプシン)、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、イリノテカン及びトポテカン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド、テニポシド及びタフルポシド)、キナーゼ阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ベムラフェニブ及びビスモデギブ)、ヌクレオチド類似体(例えば、アザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、ドキシフルリジン、フルオロウラシル、5-FU、アドルシル、カラク、エフディックス、エフデックス、フルオロプレックス、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン及びチオグアニン)、DNAを切断し、DNAの巻き戻し/巻き戻しを破壊するペプチド抗生剤(例えば、ブレオマイシン及びアクチノマイシン)、DNAの修復及び/又は合成を阻害するDNAを架橋する白金系抗新生物剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン及びエロキサチン)、レチノイド(例えば、トレチノイン、アリトレチノイン、及びベキサロテン)、有糸分裂及び微細管形成を阻害するビンカアルカロイド剤(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン)、細胞増殖又は細胞増殖を阻害する血管新生阻害剤(例えば、アキシチニブ(Inlyta)、ベバシズマブ(Avastin)、カボザンチニブ(Cometriq)、エベロリムス(アフィニトール、Zortress)レナリドミド(Revlimid)、パゾパニブ(Votrient)、ラムシルマブ(Cyramza)、レゴラフェニブ(Stivarga)、ソラフェニブ(Nexavar)、スニチニブ(Sutent)、サリドマイド(シノビル、タロミド)、バンデタニブ(Caprelsa)、Zib-アフリベルセプト(Zaltrap)、抗血管新生多糖類、アプリジン(デヒドロジデモニンB)、サポゲニン、すなわち、20(S)-プロトパナキサジオール及び20(S)-プロトパナキサトリオール)、抗回腸剤、運動性剤、免疫抑制剤(例えば、タクロリムス)、免疫抑制剤が含まれる、血液態様調整剤(例えば、イリノテカン及びトポテカン)、3-ヒドロキシ-3-メチル-グルタリル-CoA(HMG CoA)レダクターゼ阻害剤(例えば、エトポシド、テニポシド及びタフルポシド)及び抗血管新生剤が含まれる。
【0063】
また、例示的な薬物は、創傷治癒に受動的に寄与する作用剤、例えば、栄養、酸素排除剤、アミノ酸、コラーゲン合成剤、グルタミン、インスリン、ブチレート、及びデキストランなども含む。また、例示的な薬物は、抗癒着剤も含む。その非限定例は、ヒアルロン酸/カルボキシメチルセルロース(seprafilm)、酸化再生セルロース(Interceed)、及びイコデキストリン4%(Extraneal、Adept)も含む。
【0064】
例示的な薬物はまた、冠動脈疾患(CAD)(例えばVEGF165タンパク質、AdVEGF165、AdVEGF121、及びVEGF165プラスミド)又は末梢動脈疾患(PAD)(例えばVEGF165プラスミド、AdVEGF121、SB-509(SFP-VEGFプラスミド)、AdVEGF165、及びAd2-HIF1α-VP16(WALK試験))後の血液供給再生を促進する薬物を含む。
【0065】
薬物放出
記載された技術に基づく補助材は、例えば、組織内部成長に対して、所望の様式で所望の効果を提供するために、多くの異なる方法で、少なくとも1種の薬物と関連付けられ得る。少なくとも1種の薬物は、施療部位において所望の治癒プロセスをトリガするために、複数の空間的及び時間的パターンで補助材から放出されるように構成され得る。薬物は、補助材内に配設され、補助材に結合され、補助材内に組み込まれ、補助材内に分散され、又は補助材と他の方法で関連付けられ得る。例えば、補助材は、内部に、1種又は2種以上の異なる薬物を放出可能に保持している、1つ又は2つ以上の領域を有し得る。これらの領域は、様々なサイズ及び形状の、様々な方法で内部に薬物を保持する、別個のリザーバであるか、又は、補助材内の他の別個の若しくは連続した領域であることができる。いくつかの態様では、補助材の特定の構成により、1種の薬物又は2種以上の異なる薬物を、内部に放出可能に保持することができる。
【0066】
薬物が補助材内に配設される方法に関わらず、有効量の少なくとも1種の薬物が、容器、例えば、マイクロカプセル、マイクロビーズ、又は任意の他の容器の形態であることができるペレット内に封入され得る。この容器は、生体吸収性ポリマーから形成され得る。
【0067】
補助材からの少なくとも1種の薬物の標的化運搬及び放出は、様々な要因に応じた多くの方法において達成され得る。一般的に、少なくとも1種の薬物は、補助材料が組織に運搬された実質的に直後に薬物が放出されるように、ボーラス投与量として補助材料から放出され得る。あるいは、少なくとも1種の薬物は、数分、数時間、数日、又はそれ以上であり得る特定の期間にわたって、補助材料から放出され得る。タイミングを合わせた放出(timed release)の速度及び放出される薬物量は、様々な要因、例えば、薬物が放出される領域の分解速度、補助材内に薬物を保持するのに使用される1つ又は2つ以上のコーティング又は他の構造の分解速度、施療部位の環境条件、及び様々な他の要因により決まり得る。いくつかの態様では、補助材が内部に配設された2つ以上の薬物を有する場合、第1の薬物のボーラス投与量放出は、第1の薬物が放出された後に放出し始めるように、第2の薬物の放出を調節し得る。補助材は、複数の薬物を含み得る。同薬物はそれぞれ、1種又は2種以上の他の薬物の放出に、任意の適切な方法で影響を及ぼし得る。
【0068】
ボーラス投与量として又はタイミングを合わせた放出としての少なくとも1種の薬物の放出は、補助材料が組織に運搬された実質的に直後に生じても若しくは開始してもよいし、又は、所定の時間まで遅延されてもよい。遅延は、補助材又は1つ若しくは2つ以上のその領域の構造及び性質により決まり得る。
【0069】
補助材料は、補助材内に保持された有効量の1種以上の薬物の分配を促進する構造を有し、所望の効果をもたらすように構成され得る。例えば、薬物の標的化運搬は、薬物の特定の空間的分布をその運搬に基づいて可能にするパターンで形成された補助材内の領域(例えば、リザーバ、例えば、孔又は他の構造)に、薬物を組み込むことにより達成され得る。リザーバ内に配設された薬物は、別個の容器内に組み込まれ得る。リザーバは、2種類以上の異なる薬物を含み得る。1種以上の薬物は、均質な様式又は異質な空間的及び/若しくは時間的様式において、補助材から溶出され、所望の治療を提供し得る。補助材の構造及び薬物がそれから放出される様式は、組織再成長に影響を及ぼし、又は、制御するのに使用され得る。更に、組織再成長は、施療部位の特定の位置において亢進させ、施療部位の他の位置では抑制することができる。
【0070】
薬物放出特徴部
特定の実施形態では、補助材は、補助材が組織配備状態にあるとき(例えば、インビボで組織にステープル留めされているとき)、補助材を通って補助材から出る薬物の移動を制御するように設計された構成を有し得る。以下に説明するように、補助材は、能動的薬物放出特徴部を含むことができ、この能動的薬物放出特徴部は、このような特徴部が活性化されると(例えば、熱及び/又は機械的活性化)、制御及び調整された方法で補助材から薬物放出を行うように設計されている。すなわち、活性化されない限り、能動的薬物放出特徴部は、薬物を封入し、したがって薬物が補助材から放出されるのを阻害するように構成される。このようにして、能動的薬物放出特徴部は、補助材からの時期尚早な薬物放出を防止するのに役立ち得る。
【0071】
補助材は、全体的に、ステープルカートリッジ上に解放可能に保持されるように構成され、カートリッジ内のステープルの配備によって組織に運搬されるように構成された、少なくとも1つの溶融生体吸収性ポリマーから形成され得る。例示的な実施形態では、補助材料は、格子マクロ構造を含むことができ、格子マクロ構造は、格子マクロ構造内に形成された薬物運搬微細構造を有し、各薬物運搬微細構造は、各薬物運搬微細構造の中に配設された薬物を有することができる。薬物運搬微細構造は、複数の薬物運搬微細構造が体温の変化に応答して熱的に破裂し、並びに/又は補助材料のクランプ、ステープル留め、及び切断のうちの少なくとも1つに応答して機械的に破裂するまで(例えば、機械的破損)、薬物を封入し、それによって薬物放出を防止するように構成することができる。特定の実施形態では、薬物運搬微細構造は、薬物運搬微細構造の中に画定された内部空洞(例えば、マイクロリザーバ)を有することができる。本明細書で使用される場合、用語「格子マクロ構造」は、用語「格子主構造」と同義的に使用される。
【0072】
マクロ及びマイクロ構造の形成を可能にするために、補助材は非繊維性補助材であり得る。従来の補助材(例えば、発泡補助材及び織布/不織布繊維補助材などの、三次元的に印刷されていない補助材)とは異なり、非繊維性補助材は、三次元的に(3D)印刷されており、したがって、一貫性があり再現可能な微細構造(ユニット)を用いて形成することができる。すなわち、他の製造方法とは異なり、3D印刷は、要素の配置及び接続などの微細構造特徴部の制御を著しく改善する。その結果、従来の補助材と比較して、本補助材の微細構造及び付随する特性の両方におけるばらつきが減少する。更に、3D印刷は、他の方法では従来の補助材内に形成又は生成することができなかった微細構造特徴部を有する補助材を作製することができる。本非繊維性補助材は、様々なステープル及び組織タイプと共に使用するように適合させることもできる。
【0073】
特定の実施形態では、薬物運搬微細構造は、様々な温度関連事象(例えば、温度上昇又は低下)に応答して熱的に破裂することができる。いくつかの実施形態では、薬物運搬微細構造は、温度の上昇に応答して熱的に破裂するように構成され得る。
【0074】
温度の上昇は、ステープル留めされた組織の感染に応じたものであり得る。すなわち、補助材が組織配備状態(例えば、インビボで組織にステープル留めされた)になると、ステープル留めされた補助材があるところ又はその付近の温度は、感染組織(例えば、腫れ及び/又は血流の局所的増加によるもの)に起因して上昇する可能性がある。結果として、この温度上昇は、薬物運搬微細構造のうちの1つ又は2つ以上からの薬物の放出を開始することができる。例えば、いくつかの実施形態では、薬物運搬微細構造は、上昇した体温(例えば、約37℃を超える)で分解又は液化するように構成された材料で封止された微細容器の形態であり得る。微細容器が開封されると、薬物は、補助材から放出されることができ、特定の実施形態では、この薬物(例えば、抗生物質)は、感染を治療するために使用されることができる。特定の実施形態では、微細容器は、前述の材料から形成されたプラグで封止される。代替的又は追加的に、薬物の初期放出において、1つ又は2つ以上の薬物運搬微細構造が既に熱的に破裂している場合、温度上昇を使用して、薬物運搬微細構造からの薬物の放出を加速することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、薬物運搬微細構造は、補助材料が活性化温度以上になったとき、熱的に破裂するように構成され得る。活性化温度は、体温(例えば、約37℃)と関連付けることができる。結果として、体温は、薬物運搬微細構造のうちの1つ又は2つ以上からの薬物の放出を開始することができる開閉する鍵として使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、薬物運搬微細構造は、体温に曝露されたとき及び/又は湿度の存在下で分解又は液化するように構成された材料で封止された微細容器の形態であり得る。特定の実施形態では、微細容器は、上述の材料から形成されたプラグで封止され得る。他の実施形態では、薬物運搬微細構造は、最初は封止された細孔を有する構造から形成され得(例えば、形状記憶材料から形成される)、いったん補助材が組織配備状態になると、体温への曝露が封止された細孔を開放させ、そこから薬物を放出させ得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、ステープル留めされた組織又はその近傍の日々の温度変化を使用して、薬物運搬微細構造からの薬物放出速度を制御することができる。例えば、時間及び温度依存性放出特徴部の組み合わせは、複数日にわたってほぼ同じ時間に患者に薬物を投与することを可能にし得る。一実施形態では、温度活性化放出特徴部(複数可)は、異なる厚さの時間依存性放出材料に封入することができる。別の実施形態では、薬物運搬微細構造は、体温で放出するように構成された異なる材料(複数可)又は材料厚さで封止された微細容器の形態であり得る。これらの微細容器は、互いに対して異なる厚さを有し、及び/又は異なる材料から形成されたプラグで封止することができる。一実施形態では、第1の微細容器は第1のプラグで封止することができ、第2の微細容器は、材料及び/又は厚さが第1のプラグとは異なる第2のプラグで封止することができる。
【0077】
他の実施形態では、薬物運搬微細構造は、補助材のクランプ、ステープル留め、及び/又は切断に応答して機械的に破裂することができる(例えば、機械的破損)。例えば、使用時に、いったん補助材が手術用エンドエフェクタのステープルカートリッジに解放可能に保持されると、エンドエフェクタの対向する顎部の間の補助材のクランプ(例えば、トロカール導入前の補助材の第1の顎部(例えば、アンビル)圧縮、又は顎部間の組織による第1の圧縮)は、薬物運搬微細構造の少なくとも一部分を破裂させる(例えば、せん断するか、破砕するか、又は別様に開く)ことができる。破裂すると、破裂しなければこれらの薬物運搬微細構造内に封入されていた薬物を放出することができる。封入された薬物は、様々な形態、例えば、粉末間形態(例えば、乾燥又は凍結乾燥されたもの)、ポリマー相互作用形態(例えば、ポリマー鎖上のペンダント分子)、又は液体形態(例えば、液体、補助材のベースポリマーと相互作用する液体(例えば、加水分解ポリマーの場合は油系、又は酵素分解性ポリマーの場合は水系)であり得る。代替的又は追加的に、いったん補助材がカートリッジ上に解放可能に保持されると、カートリッジ内に配設されたステープルと重なる任意の薬物運搬微細構造は、補助材のステープル留め中に穿孔され得る。結果として、重複する薬物運搬微細構造からの薬物放出は、補助材を通るステープル前進によってもたらされ得る。代替的又は追加的に、いったん補助材がカートリッジ上に解放可能に保持されると、切断要素を受容するように構成されたカートリッジのスロットと重なる任意の薬物運搬微細構造は、切断要素が補助材の切断中にスロットを通って前進する際に、切断要素によって切断され得る。結果として、重なり合う薬物運搬微細構造からの薬物放出は、補助材を通して切断要素を前進させることによって達成され得る。
【0078】
薬物は、様々な方法で、異なる時間に補助材に組み込むことができる。いくつかの実施形態では、補助材がステープルカートリッジ及び/又はアンビル上に解放可能に保持される前に、薬物を補助材に組み込むことができる。他の実施形態では、補助材がステープルカートリッジ及び/又はアンビル補助材上に解放可能に保持された後に、薬物を補助材に組み込むことができる。例えば、一実施形態では、(例えば、補助材アプリケータを介して)補助材がステープルカートリッジ及び/又はアンビルに適用されると、使用者は、薬物運搬装置(例えば、補助材に取り外し可能に結合された、薬物、例えば液体の形態の薬物を含有するスポンジ)をクランプして、少なくとも1つの薬物を補助材に適用することができる。別の実施形態では、薬物運搬装置は、内部に配設された少なくとも1つの薬物を有する3D印刷されたボトル又は容器であり得る。3D印刷された容器は、補助材に取り付けることができ、3D印刷された容器の圧縮(例えば、圧搾)の際に補助材に薬物を運搬するように構成することができる。特定の実施形態では、3D印刷された容器は、補助材に取り付けられ、補助材が組織にステープル留めされるときに取り付けられたままとなる。一実施形態では、3D印刷された容器は、少なくとも1つの薬物を3D印刷された容器内に保持し、3D印刷された容器が圧縮されたときにのみ少なくとも1つの薬物が出ることを可能にする一方向弁を含む。代替的又は追加的に、3D印刷された容器は、切断要素がステープルカートリッジを通って前進する際に切断要素によって切断されるように構成されたキャップを含み得る。代替的又は追加的に、3D印刷された容器の圧縮は、治癒中又は感染中の、補助材にステープル留めされた組織の腫れによってもたらされ得る。
【0079】
薬物運搬微細構造は、様々な構成を有することができる。特定の実施形態では、薬物運搬微細構造は、鋭い角又は角度の存在によって特徴付けられる支柱ベースの単位セル、湾曲した表面によって特徴付けられる非支柱ベースの単位セル、又はそれらの組み合わせであり得る。非支柱ベースの単位セルでは、単位セルは、例えば、三重周期最小曲面(triply periodic minimal surface、TPMS)をベースとすることができる。TPMSは、三次元で繰り返される最小曲面である。本明細書で使用される「最小曲面」という用語は、数学で知られている最小曲面を指す。したがって、いくつかの実施形態では、単位セルは、内部を通って延在する通路を有する三重周期最小曲面構造(例えば、シュワルツP、シュワルツダイヤモンドなど)であり得る。例えば、非支柱ベースの単位セルは、中空構造であり得る。シュワルツP構造などの三重周期最小曲面構造に関する更なる詳細は、前述の2020年9月1日に出願され、「Compressible Non-Fibrous Adjuncts」と題された米国特許出願第17/009,740号に見出すことができ、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。特定の実施形態では、格子主構造は、ストラットベースの単位セル(例えば、中空支柱)と非支柱ベースの単位セル(例えば、1つ又は2つ以上の三重周期最小曲面構造)との組み合わせを含むことができる。一実施形態では、非支柱ベースの単位セルは、接続構造を介して互いに相互接続される。これらの接続構造は、中空管又は支柱の形態をとることができる。特定の実施形態では、単位セルは、接続構造を含むことができる。
【0080】
以下に説明するように、各例示的な補助材は、部分的な形態(例えば、長さ全体ではない)で示されており、したがって、当業者は、各実施形態で特定されるように、補助材が長さにおいてより長い、例えば、その長手方向軸(LA)に沿っていてもよいことを理解する。長さは、ステープルカートリッジ又はアンビルの長さに基づいて変化し得る。幅も必要に応じて変えることができる。更に、各々の例示的な補助材は、各補助材の長手方向軸Lがカートリッジ又はアンビルの長手方向軸(LA)と整列してこれに沿って延在するように、カートリッジ又はアンビル表面の上部に位置付けられるように構成される。これらの補助材は、圧縮力(例えば、応力又は負荷)に曝されたときに圧縮するように構造化される。
【0081】
図8及び
図9は、アンビル2002及びステープル留めアセンブリ2004を有する手術用エンドエフェクタ2000の例示的な実施形態を示す。ステープル留めアセンブリ2004は、ステープルカートリッジ2008の上面又はデッキ表面2007(例えば、アンビルに面するカートリッジ表面)上に解放可能に保持された補助材2006を含む。カートリッジ2008は、ステープルカートリッジ2008内に配設された2組の3列のステープル(各組からの3つのステープル2010a、2010b、2010c、2012a、2012b、2012cのみが示されている)と、切断要素2016(
図9参照)を受容するように構成されたステープルカートリッジ2008内に画定されたスロット2014と、を有する。
図8は、完全に閉じた位置にある手術用エンドエフェクタ2000、したがってアンビル2002を示し、
図9は、アンビル2002とステープル留めアセンブリ2004との間にクランプされ、ステープル2010a、2010b、2010c、2012a、2012b、2012cを介して補助材2006にステープル留めされている組織Tと、切断要素2016を介して切断されている組織T及び補助材2006と、を示す。図示されていないが、アンビル2002は、細長いステープルチャネルに枢動可能に結合され、ステープル留めアセンブリ2004は、細長いステープルチャネル内に位置付けられ、細長いステープルチャネルに結合される。
【0082】
補助材2006は、
図8に示され、
図10により詳細に示されるように、様々な構成を有することができるが、補助材2006は、内部に形成された薬物運搬微細構造を有する格子マクロ構造2019を有する(9つの薬物運搬微細構造2020a、2020b、2020c、2020d、2022a、2022b、2022c、2024a、2024bのみが示されている)。薬物運搬微細構造2020a、2020b、2020c、2020d、2022a、2022b、2022c、2024a、2024bは様々な構成を有することができるが、この図示された実施形態では、格子マクロ構造2019は、各々が内部に配設された第1の薬物2026を有する第1の薬物運搬微細構造2020a、2020b、2020c、2020dと、各々が内部に配設された第2の薬物2028を有する第2の薬物運搬微細構造2022a、2022b、2022c、2024a、2024bと、を含む。第1及び第2の薬物運搬微細構造2020a、2020b、2020c、2020d、2022a、2022b、2022c、2024a、2024bは各々、第1及び第2の薬物運搬微細構造2020a、2020b、2020c、2020d、2022a、2022b、2022c、2024a、2024bが機械的に破裂する(
図9)まで、それぞれの第1及び第2の薬物2026、2028を内部に封入するように構成される(
図8及び
図10)。いくつかの実施形態では、第1の薬物及び第2の薬物は異なり得るが、他の実施形態では、第1の薬物及び第2の薬物は同じであり得る。更に、第1及び第2の薬物が異なる実施形態では、第1の薬物運搬微細構造及び/又は第2の薬物運搬微細構造の一部分は第1の薬物を含むことができ、第1の薬物運搬微細構造及び/又は第2の薬物運搬微細構造の別の部分は第2の薬物を含むことができる。
【0083】
第1及び第2の薬物運搬微細構造2020a、2020b、2020c、2020d、2022a、2022b、2022c、2024a、2024bは、様々な構成を有することができる。この図示された実施形態では、第1の薬物運搬微細構造2020a、2020b、2020c、2020dは、各々が内部に画定された内部空洞(例えば、マイクロリザーバ)を有する中空単位セルの形態である。第2の薬物運搬微細構造は、内部空洞(例えば、マイクロリザーバ)を各々有する内部中空管(薬物運搬微細構造2022a、2022b、2022c)及び外部中空管(薬物運搬微細構造2024a、2024b)の形態である。内部中空管2022a、2022b、2022cは、隣接する中空単位セルの間に延在し、それらを互いに接続するが、外部中空管2024a、2024bは、最も外側の中空単位セル(薬物運搬微細構造2020a、2020d)から外向きに延在する。結果として、中空単位セル(薬物運搬微細構造2020a、2020b、2020c、2020d)は、経路の連続ネットワークが補助材2006内に存在するように、互いに流体連通している。当業者であれば、第1及び第2の薬物運搬微細構造の構造的構成及び数は、少なくとも、格子マクロ構造のサイズ及び形状、並びに補助材がそこに解放可能に保持されるステープルカートリッジの構造的構成に依存し得、したがって、補助材は、図に示される薬物運搬微細構造の構造及び数に限定されないことを理解するであろう。更に、2つの異なる薬物運搬微細構造が図示されているが、他の実施形態では、格子マクロ構造は、任意の適切なタイプ及び数の薬物運搬微細構造を含むことができる。
【0084】
第1及び第2の薬物運搬微細構造2020a、2020b、2020c、2020d、2022a、2022b、2022c、2024a、2024bは、微細構造からの薬物放出が、異なる作動機構(例えば、補助材のクランプ、ステープル留め、及び/又は切断)によってもたらされ得るように、補助材2006の異なる領域内に位置付けられ得る。この図示された実施形態では、第1の薬物運搬微細構造2020a、2020b、2020c、2020dは、ステープルカートリッジ2008の内側及び外側ステープル列2010a、2010c、2012a、2012cと重なる補助材2006の領域に位置付けられる。より具体的には、最も外側の中空単位セル(第1の薬物運搬微細構造2020a、2020d)は、最も外側のステープル列2010a、2012aとそれぞれ重なり、最も内側の中空単位セル(第1の薬物運搬微細構造2020b、2020c)は、最も内側のステープル列2010c、2012cとそれぞれ重なる。更に、最も外側の内部中空管(第2の薬物運搬微細構造2022a、2022c)は、中間ステープル列2010b、2012bとそれぞれ重なる。結果として、
図9に示されるように、ステープル2010a、2010b、2010c、2012a、2012b、2012cが、それぞれの重なり合う薬物運搬微細構造2020a、2020b、2020c、2020d、2022a、2022b、2022cを通って前進すると、ステープルは穿刺し、したがってこれらの薬物運搬微細構造の機械的破裂を引き起こす。したがって、薬物は、次いで、
図9に示されるように、これらの薬物運搬微細構造2020a、2020b、2020c、2020d、2022a、2022b、2022cから組織内に(例えば、組織内に形成されたステープル孔に、又はその周囲に)放出され得る。更に、ステープル配備中のアンビル2002とステープルカートリッジ2008との間の補助材2006のクランプは、穿孔された薬物運搬微細構造2022a、2022b、2020c、2020d、2022a、2022b、2022cからの薬物放出を容易にするのに役立ち得る。
【0085】
図8及び
図10に更に示されるように、最も内側の内部中空管(薬物運搬微細構造2022b)は、ステープルカートリッジ2008のスロット2014と重なる補助材2006の領域内に位置付けられる。その結果、使用時には、
図9に示すように、切断要素2016がスロット2014を通って前進するにつれて、重なり合う薬物運搬微細構造2022bが切断され、したがって機械的に破裂する。したがって、薬物は、次いで、
図9に示されるように、薬物運搬微細構造2022bから組織内に放出され得る(例えば、組織Tの切断された縁部T
Eに沿って)。
【0086】
更に、この図示される実施形態では、外部中空管(薬物運搬微細構造2024a、2024b)は、補助材の最も外側の領域内に位置付けられ、したがって、最も外側のステープル列2010a、2012aに隣接する。結果として、使用中、
図9に示されるように、補助材2006及び組織Tがアンビル2002とステープルカートリッジ2008との間にクランプされると、結果として補助材2006に加えられる力は、それによって、外部中空管(薬物運搬微細構造2024a、2024b)内に配設された薬物をそこから組織T内に放出させることができる。当業者であれば、他の実施形態では、補助材のクランプは、それ自体が補助材内の薬物運搬微細構造のいずれかの機械的破裂を引き起こし得ることを理解するであろう。
【0087】
いくつかの実施形態では、補助材は、補助材が組織配備状態にあるときに補助材からの薬物の投与量放出を制御するように構成され得る薬物放出特徴部を含み得る。例えば、特定の実施形態では、薬物放出特徴部は、補助材が組織配備状態にある間に、計量された薬物用量を経時的にもたらすように構成され得る。他の実施形態では、薬物放出特徴部は、補助材が組織配備状態にある間、経時的に可変薬物投薬量をもたらすように構成され得る。例えば、薬物放出特徴部は、薬物の初期ボーラス投与量、続いて、(例えば、補助材にステープル留めされる組織の予想される治癒プロファイルに対する時間枠に基づいて)薬物の後続の定量投与量を可能にすることができる。代替的又は追加的に、補助材は、補助材に形成された通路内に位置付けられる1つ又は2つ以上の材料(例えば、ヒドロゲル)を含むことができる。これらの材料は、所定の期間にわたってそれぞれの通路を通る薬物の移動を阻止するように構成された一種の薬物放出特徴部(複数可)として機能することができる。
【0088】
例えば、例示的な一実施形態では、補助材は、少なくとも1つの溶融生体吸収性ポリマーから形成することができ、格子マクロ構造内に形成された第1及び第2のマイクロリザーバを有する格子マクロ構造を有することができる。一次マイクロリザーバ及び二次マイクロリザーバは、互いにサイズが異なり、内部に配設された薬物を含有することができる。一次マイクロリザーバは、活性化時にそこから薬物を放出するように構成することができ、二次マイクロリザーバは、少なくとも1つの溶融生体吸収性ポリマーのうちの少なくとも1つの分解時にそこから薬物を放出するように構成することができ、それにより、一次マイクロリザーバと二次マイクロリザーバとの組み合わせは、補助材が組織配備状態にあるときに補助材から放出されている薬物の投与量を制御する。したがって、一次マイクロリザーバは、能動的薬物放出特徴部として機能することができ、二次マイクロリザーバは、受動的薬物放出特徴部として機能することができる。
【0089】
一次マイクロリザーバの活性化(例えば、機械的破損)は、様々な方法で起こり得る。例えば、一次リザーバは、(例えば、上述のように補助材をステープル留めすることによって)穿刺される、(例えば、上述のように補助材をクランプされることによって)破砕される、(例えば、上述のように補助材を切断することによって)切断される、又はこれらの任意の組み合わせとなるように構成され得る。
【0090】
特定の実施形態では、格子マクロ構造は、各一次マイクロリザーバ内に形成された少なくとも1つの内部停止部材を含むことができる。少なくとも1つの内部停止部材は、補助材料が圧縮されているときにそれぞれの主マイクロリザーバの変形量を制限するように構成することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの内部停止部材は、補助材料が組織配備状態にある間に経時的に分解し、それによって補助材料が圧縮されているときにそれぞれの一次マイクロリザーバのより大きな変形を可能にするように構成され得る。特定の実施形態では、一次マイクロリザーバは、第1の溶融生体吸収性ポリマーから形成することができ、少なくとも1つの内部停止部材は、第1の溶融生体吸収性ポリマーよりも速く分解する第2の溶融生体吸収性ポリマーから形成することができる。
【0091】
一次マイクロリザーバ内に配設される薬物の形態に依存して、一次マイクロリザーバは、封止され得るか、又は別の方法でキャップを外され得る。例えば、薬物が液体形態である実施形態では、補助材から薬物が時期尚早に放出されるのを防止するように、一次マイクロリザーバを封止することができる。一次マイクロリザーバは、任意の好適な様式で封止する(例えば、封止は、3D印刷又は噴射/押出/圧延(BAM:rolled into place)であり得る)することができる。薬物が粉末形態である実施形態では、一次マイクロリザーバは、開封され得るか、又は別様に開放され得る。更に、特定の実施形態では、一次マイクロリザーバは、薬物が有毒な液体形態であるときに開封することができる。
【0092】
一次及び二次マイクロリザーバは各々、格子マクロ構造内に形成されるそれぞれの微細構造によって画定することができる。いくつかの実施形態では、一次マイクロリザーバは、それぞれの中空単位セル又は中空管によって画定され得る。すなわち、中空単位セル又は中空管の内部空洞は、一次マイクロリザーバとして機能することができる。いくつかの実施形態では、二次マイクロリザーバは、格子マクロ構造の壁内に画定される空隙又は開口部であり得る。
【0093】
図11は、接続構造2106を介して互いに接続された単位セル2104(例えば、シュワルツP構造)から形成される格子マクロ構造2102を有する補助材2100の別の実施形態を示す。簡略化のために、1つの単位セル2104及び2つの接続構造2106の一部のみが示されている。単位セル2104及び2つの接続構造2106は様々な構成を有することができるが、この図示された実施形態では、単位セル2104は、内部空洞2105が内部に画定された中空構造であり、2つの接続構造2106は各々中空管である。結果として、単位セル2104は、経路の連続ネットワークが補助材2100内に存在又は形成され得るように、互いに流体連通している。
【0094】
示されるように、第1の薬物(ハッチマーキングとして描写される)は、単位セル2104の内部空洞2105(例えば、一次マイクロリザーバ)内に配設される。単位セル2104は、単位セルが活性化されるまで、その内部空洞2105内に第1の薬物を封入するように構成され得る。したがって、使用中、単位セル2104が作動されると(例えば、非圧縮状態から圧縮状態に圧縮されるか、又は補助材2100のクランプ、ステープル留め、及び切断のうちの少なくとも1つに応答して破裂すると)、第1の薬物は、そこから組織内に放出され得る。
【0095】
図11に更に示されるように、空隙2010(例えば、二次マイクロリザーバ)は、格子マクロ構造2102の壁2108内に画定される。各空隙2010は、内部に配設された第2の薬物を有し、各空隙2010は、それぞれの壁2108の画定部分の少なくとも部分的な分解又は浸食に応答して、そこから第2の薬物を放出するように構成される。別の言い方をすれば、各空隙2010は、第2の薬物を封入するように構成され、それにより、画定壁2108の少なくとも一部の構造的分解まで、空隙からの薬物放出を防止する。結果として、単位セル2104の内部空洞2105(例えば一次マイクロリザーバ)と格子マクロ構造2102の壁2108内の空隙2010(例えば、二次マイクロリザーバ)との組み合わせは、補助材2100が組織配備状態にあるときに補助材2100から放出されている薬物の投与量を制御することができる。
【0096】
内部空洞2105(例えば、一次マイクロリザーバ)及び空隙2110(例えば、二次マイクロリザーバ)は、示されるように、種々の形状及びサイズを有することができるが、内部空洞2105は、サイズがより大きく、したがって、空隙2110のものと比較して、より大きい薬物装填容量を有する。これは、単位セル2104の活性化の際に第1の薬物の大きなボーラスが放出され、続いて格子マクロ構造2102の壁2108の構造的分解の際に第2の薬物のより少ない用量が放出されることを可能にすることができる。
【0097】
更に、図示されていないが、補助材2100は、単位セル2104内に形成された少なくとも1つの内部停止部材(例えば、
図14に示される内部停止部材2314、2316のような)を含むことができる。少なくとも1つの内部停止部材は、補助材が圧縮されているときにそれぞれの単位セルの変形量を制限するように構成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの内部停止部材が適所にある状態で、単位セルの各作動は、第1の薬物のより小さいボーラスを放出することができる。他の実施形態では、少なくとも1つの内部停止部材は、補助材が組織配備状態にある間に経時的に分解するように構成され得る。結果として、単位セルの1つ又は2つ以上のその後の活性化の間に、この分解は、より多くの量の薬物が放出されることを可能にし得る(例えば、分解前の薬物の量と比較して)。換言すれば、分解が進行するにつれて、薬物放出が増加し得る。したがって、補助材2100から放出される薬物のボーラスは、活性化中の単位セルの幾何学的形状の変化に応じて変化し得る。特定の実施形態では、補助材2100は、所定の期間にわたってそこを通る流れを阻害するように機能し得る1つ又は2つ以上のヒドロゲル(例えば、補助材の1つ又は2つ以上の通路内に配設される)を含み得る。
【0098】
特定の実施形態では、補助材は、格子マクロ構造の壁の異なる領域内に位置付けられる第1及び第2の空隙(例えば、二次マイクロリザーバ)を含み得る。例えば、
図12は、補助材2200が、第1の薬物2204が内部に配設された第1の空隙2202と、第2の薬物2208が内部に配設された第2の空隙2206と、を含むことを除いて、
図11の補助材2100と同様である補助材2200の単位セルのコネクタの一部分を示す。
【0099】
図12に示すように、第1の空隙2202は、壁2210の外面2212に近接して位置付けられ、第2の空隙2206は、壁2210の内面2214に近接して位置付けられる。この図示された実施形態では、第1の空隙2202(例えば、外側空隙)は、第2の空隙2206(例えば、内側空隙)を取り囲む。更に、図示のように、第1の空隙2202と壁2210の外面2212との間の距離D
1は、第2の空隙2206と壁2210の内面2214との間の距離D
2よりも大きい。結果として、
図13に示されるように、壁2210が分解するにつれて、第2の薬物2208は、第1の薬物の前に補助材2100から放出される。すなわち、第1及び第2の空隙2202、2206からの薬物放出は、したがって、壁2210内のそれぞれの位置の関数であり得る(例えば、内壁表面又は外壁表面に対する)。いくつかの実施形態では、第1及び第2の薬物は、補助材からの計量放出と同じであってもよい。他の実施形態では、第1及び第2の薬物は、補助材が組織にステープル留めされている間の異なる期間又は事象(例えば、ステープル留めされた組織の予想される治癒プロファイルに対する期間)に基づいて異なる必要性を満たすように異なり得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、補助材は、薬物投薬量が単位セルの1つ又は2つ以上の層のポリマー浸食に応答して変動し得るように、多層単位セルから形成され得る。例えば、
図14は、本明細書に記載の任意の補助材を形成するために使用することができる多層単位セル2300の例示的な実施形態を示す。単位セル2300は様々な構成を有することができるが、この図示された実施形態では、単位セル2300は、内層2302及び外層2304を有するシュワルツP構造である。示されるように、図示されたシュワルツP構造は、内層2302がシュワルツP構造の内部空洞2306を画定する中空である。
【0101】
内層2302及び外層2304は、様々な材料から形成することができる。内層2302は、第1の溶融生体吸収性ポリマー2308と薬物2310とのブレンドから形成され得る。いくつかの実施形態では、
図14に示されるように、薬物2310は、内層2302の部分内に離散的に埋め込まれることができる。他の実施形態では、薬物は、第1の溶融生体吸収性ポリマー全体に均一に分散され得る。いずれの実施形態においても、第1の溶融生体吸収性ポリマー2308は、補助材が組織にステープル留めされたときに分解を受けて、単位セル2300の内部空洞2305内に離散量の薬物を経時的に放出するように構成され得る。
【0102】
外層2304は、第1の溶融生体吸収性ポリマー2308とは異なる第2の溶融生体吸収性ポリマー2312から形成され得る。いくつかの実施形では、第2の溶融生体吸収性ポリマー2312は、第1の溶融生体吸収性ポリマー2308の分解速度よりも遅い分解速度で分解するように構成することができる。このような実施形態では、外層2304は、内層2302が劣化する間に、単位セル2300全体の構造的完全性を維持することができる。結果として、単位セル2300は、補助材が圧縮されているときにポンプとして機能することができる。すなわち、補助材に力が加えられると、単位セル2300は、補助材が組織配備状態にあるときに、内部空洞2306内に存在する薬物の少なくとも一部を補助材の外へ、隣接する組織に追い出すように(例えば、内層2302の少なくとも一部の浸食に起因して)変形又は圧縮するように構成され得る。
【0103】
図14に更に示されるように、単位セル2300は、内部に形成され、内部空洞2306内に延びる内部停止部材2314、2316を含むことができる。これらの内部停止部材2314、2316は、単位セル2300が圧縮されているときに互いに接触して、単位セル2300の変形量を制限するように構成される。単位セル2300は、任意の数の内部停止部材を含むことができるが、この図示された実施形態では、単位セル2300は、1組の内部停止部材2314、2316を含む。
【0104】
内部停止部材2314、2316は、様々な構成を有することができる。更に、内部停止部材は、同じ又は異なる構造的構成を有することができる。
図14に示すように、1組の部材は、第1及び第2の対向する停止部材2314、2316を含み、各々がV字形構成を有し、第1の停止部材2314は、単位セル2300の上部2318に近接して位置付けられ、第2の停止部材2316は、単位セル2300の底部2320に近接して位置付けられる。当業者であれば、内部停止部材の数及び構造的構成は、少なくとも単位セルの構造的構成及びサイズに依存し、したがって、他の実施形態では、単位セルは、異なる数の内部停止部材及び/又は他の適切な形状及びサイズを有する内部停止部材を有することができることを理解するであろう。
【0105】
他の実施形態では、微細構造内に形成された副構造を有する微細構造(ユニット)を有する補助材が提供され、それによって、補助材が組織配備状態にあるときに補助材内に異なる機械的挙動を示す異なるゾーンを作り出す。例えば、微細構造の相互接続又は幾何形状は、所定の屈曲ゾーン、屈曲形状、偏向停止部、伸長ゾーン、又は他の可変幾何形状を有し、それによって補助材の第1の部分が他の部分(複数可)とは異なるように移動又は変形することを促すことができる。したがって、微細構造の構造的構成は、そこから放出される薬物の流れ(例えば、体積及び/又は流量)を制御するそれぞれの圧縮プロファイルを有するように調整することができる。結果として、微細構造は、補助材の異なる部分において異なる薬物放出応答を作り出すことができる。
【0106】
例えば、例示的な一実施形態では、補助材は、少なくとも1つの溶融生体吸収性ポリマーから形成することができ、少なくとも1つの薬物が含有された格子マクロ構造を有することができる。格子マクロ構造は、単位セルから形成することができ、各単位セルは、補助材から所定量の薬物を放出するように構成することができ、薬物の所定量は、それぞれの単位セルの圧縮プロファイルの関数である。したがって、薬物運搬は、単位セルの圧縮プロファイルによって制御することができる。
【0107】
単位セルは、様々な構成を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、単位セルはシュワルツP構造である。一実施形態では、シュワルツP構造は中空である。特定の実施形態では、格子微細構造は、隣接するシュワルツP構造の間に延在し、隣接するシュワルツP構造を互いに接続する接続構造を含む。一実施形態では、接続構造は中空管の形態である。このような実施形態では、シュワルツP構造は、経路の連続ネットワークが補助材内に存在するか又は形成されるように、互いに流体連通することができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、補助材は、第1の圧縮プロファイルを有する第1の単位セルと、第1の圧縮プロファイルとは異なる第2の圧縮プロファイルを有する第2の単位セルと、を含むことができる。したがって、補助材の異なる部分は、異なる薬物放出速度を有することができる。例えば、第1の単位セルから形成される補助材の部分は、第1の圧縮プロファイルの関数である第1の薬物放出速度を有することができ、第2の単位セルから形成される補助材の部分は、第2の圧縮プロファイルの関数である第2の薬物放出速度を有することができる。
【0109】
補助材の単位セルのうちの1つ又は2つ以上は、異なる圧縮ゾーンを有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、単位セルは2つの圧縮ゾーンを含むことができ、第1の圧縮ゾーンは第1の圧縮強度を有し、第2の圧縮ゾーンは、第1の圧縮強度とは異なる第2の圧縮強度を有する。第1の圧縮ゾーンは、第1の非圧縮高さから第1の圧縮高さまで圧縮するように構成することができる。第2の圧縮ゾーンは、第2の非圧縮高さから、第1の圧縮高さとは異なる第2の圧縮高さまで圧縮するように構成され得る。当業者は、単位ゾーンのそれぞれの圧縮ゾーンの圧縮強度が、少なくとも補助材内の単位セルの場所(例えば、補助材の意図された切断線に対する)及び/又は意図された薬物運搬部位に依存し得ることを理解するであろう。
【0110】
いくつかの実施形態では、補助材の変形特性は、1つ又は2つ以上の単位セル内に形成された副構造によって制御され得る。例えば、副構造は、補助材の異なる部分において異なる機械的応答を生成するように、補助材の意図されたステープル線(複数可)及び/又は意図された切断線に対する単位セルの変形特性、変形限界、体積弾性率などを変更するように構成され得る。したがって、これは、補助材にステープル留めされる組織に対する不均一な圧力分布を可能にすることができる。更に、薬物が1つ又は2つ以上の単位セル内に含有されるので、これは、補助材の意図された切断線に対して横方向に異なる薬物放出特性を作り出すことができる。切断線から組織の拘束されていない部分までの治癒ゾーンは、適切な治癒を誘導するために異なる薬物及び用量を必要とし得る。一実施形態では、単位セルは、サイズ、放出機構(例えば、ボーラス対段階的放出)、及び/又は薬物若しくは薬物の組み合わせが異なり得る(例えば、単位セルは、補助材に沿ってy方向に横方向に異なり得る)。
【0111】
一実施形態では、副構造は、補助材が圧縮するときに互いに接触するように構成され得る。この結果として生じる接触は、補助材の付勢(例えば、剛性)を増加させるか、あるいは補助材の任意の更なる圧縮又は圧潰を阻止又は停止させることができる。代替的又は追加的に、単位セルの全体的な幾何学的形状は、補助材の変形特性に影響を与え得る。例えば、一実施形態では、1つ又は2つ以上の単位セルは、可変壁厚を有することができる。別の実施形態では、1つ又は2つ以上の単位セルは、より薄い壁厚を有することができ、所定の場所で屈曲を誘発するように構成される一体構造(例えば、リビングヒンジ又は同様の構造)を有することができる。
【0112】
図15及び
図16は、所定量の薬物(図示せず)を放出するように構成することができる単位セル2400(例えば、微細構造)の例示的な実施形態を示す。単位セル2400は様々な構成を有することができるが、この図示された実施形態では、単位セル2400は中空であり、第1及び第2の側部構造2404、2406を有する基部構造2402を有する。第1及び第2の側部構造2404、2406は、基部構造2402の両側から外向きに延在する。基部構造2402並びに第1及び第2の側部構造2404、2406の構造的構成は、変動することができるが、本図示の実施形態では、基部構造2402は、略球形形状を有し、第1及び第2の側部構造2404、2406は、各々、略円筒形形状を有する。更に、単位セル2400は、可変壁厚を有することができ、基部構造2402は、第1の側部構造2404の最大壁厚W
S1及び第2の側部構造2406の最大壁厚W
S2より大きい最大壁厚W
Bを有する。
【0113】
更に示されるように、単位セル2400は、単位セル2400の異なるセクションに形成される副構造を含む。より具体的には、単位セル2400は、基部構造2402に形成された第1の副構造2408a、2408b、第2の副構造2410a、2410b、及び第3の副構造2412a、2412bと、第1の側部構造2404に形成された第4の副構造2414a、2414b、2414cと、第2の側部構造2406に形成された第5の副構造2416a、2416b、2416cと、を含む。これらの副構造は、単位セル2400が圧縮されているとき(
図16参照)、単位セル2400内で異なる機械的挙動をもたらすように構成される。その結果、単位セル2400は、各々が異なる圧縮強度を有する3つの異なる圧縮ゾーンZ1、Z2、Z3を有する。これらの3つの圧縮ゾーンZ1、Z2、Z3は共に、単位セル2400の圧縮プロファイルを画定する。したがって、それぞれの圧縮ゾーンZ1、Z2、Z3によって経験される圧縮の量が、その中に保持される薬物に加えられる駆動力を決定することが理解され得る。したがって、圧縮プロファイルを使用して、単位セル2400からの薬物の放出速度を制御することができる。
【0114】
副構造は、様々な構成を有することができる。この図示された実施形態では、第1、第2、及び第3の副構造2408a、2408b、2410a、2410b、2412a、2412bは各々内部停止部材であり、第4の副構造2414a、2414b、2414cは第1の側部構造2404の壁2404a内に画定された凹部であり、第5の副構造2416a、2416b、2416cは第2の側部構造2406の壁2406aから部分的に内側に延在する突出部である。内部停止部材は、単位セルが圧縮されているときに基部構造の圧縮量を制限するように構成される。使用時には、
図16に示すように、第1の内部停止部材2408a、2408bが互いに接触し、第2の内部停止部材2410a、2410b、及び第3の内部停止部材2412a、2412bが互いに接触し、それによって、基部構造2402が非圧縮高さH
1(
図15)から圧縮高さH
2に圧縮されるときに、基部構造の剛性が増加する。凹部2414a、2414b、2414cは、壁2406a内に弱化部分を形成し、したがって、第1の側部構造2404の剛性を減少させるように構成される。使用時、
図16に示すように、第1の側部構造2404は、非圧縮高さH
3(
図15)から圧縮高さH
4まで完全に圧縮される。第2の側部構造2406内の突出部2416a、2416b、2416cは、単位セル2400が圧縮されているときに第2の側部構造2406の圧縮量を制限するように構成された部分壁を形成する。使用時、
図16に示すように、突出部2416a、2416b、2416cの自由端2418a、2418b、2418cは、壁2406aのそれぞれの対向部分と接触する。したがって、突出部2416a、2416b、2416cは、それによって、第2の側部構造2406が非圧縮高さH
5(
図15)から圧縮高さH
6に圧縮されるときに、第2の側部構造の剛性を増加させる。
【0115】
特定の実施形態では、補助材は、速度依存性圧縮特性を有するように設計することができる。例えば、補助材は、例えば圧縮中に体積を一方から他方に移動させ、それによって組織流を克服又は阻止するように構成される、一連の相互接続された流体ポケット(流体充填された)を含むことができる。一実施形態では、異なる剛性を呈する2つの相互接続ポケットは、組織圧縮中に、より剛性の低いポケットからより剛性の高いポケットに体積を移動させることができる。この体積移動は、補助材及び組織が切断されているときに、組織が切断要素から流れ去ることを防止するために使用され得る。特定の実施形態では、隣接するポケット間の一方向弁は、逆流を防止するように構成されることができる。
【0116】
図17は、アンビル2502及びステープル留めアセンブリ2504を有する手術用エンドエフェクタ2500の別の例示的な実施形態を示す。ステープル留めアセンブリ2504は、ステープルカートリッジ2510の上面又はデッキ表面2508(例えば、アンビルに面するカートリッジ表面)上に解放可能に保持された補助材2506を含む。示されるように、カートリッジ2510は、カートリッジ2510内に画定され、切断要素(図示せず)を受容するように構成される、スロット2512を有する。図示されていないが、アンビル2502は、細長いステープルチャネルに枢動可能に結合され、ステープル留めアセンブリ2504は、細長いステープルチャネル内に位置付けられ、細長いステープルチャネルに結合される。
【0117】
補助材2506は、様々な構成を有することができる。この図示された実施形態では、補助材2506は、第1の長手方向セグメント2514と、対向する第2の長手方向セグメント2516と、を有し、これらは、それらの間に延在する接続構造2518を介して互いに相互接続される。
図17に示されるように、第1の長手方向セグメント2514は、スロット2512の第1の側面2520上に位置付けられ、第2の長手方向セグメント2516は、スロット2512の対向する第2の側面2522上に位置付けられ、接続構造2518は、スロット2512と重複する。
【0118】
第1の長手方向セグメント2514及び第2の長手方向セグメント2516は、様々な構成を有することができる。この図示された実施形態では、第1の長手方向セグメント2514は、その中に画定された第1及び第2の相互接続ポケット2525、2526を含み、第2の長手方向セグメント2516は、その中に画定された第3及び第4の相互接続ポケット2528、2530を含む。第1及び第2の相互接続ポケット2525、2526は、流体が充填されており、補助材2506(例えば、クランプ、ステープル留め、及び/若しくは切断中、並びに/又は補助材が組織配備状態にあるとき)の圧縮中に流体の体積を互いに移動するように構成されている。結果として、第1の相互接続ポケット2525と第2の相互接続ポケット2526との間の流体移動は、望ましくない方向への(例えば、スロット2512及び/又は切断要素から離れる方向への)組織の流れを抑制又は阻止することができる。
【0119】
同様に、第3及び第4の相互接続ポケット2528、2530は、流体充填されており、補助材2506の圧縮中に(例えば、クランプ、ステープル留め、及び/若しくは切断中に、並びに/又は補助材が組織配備状態にあるときに)、互いの間で流体の体積を移動するように構成されている。その結果、第3の相互接続ポケット2528と第4の相互接続ポケット2530との間の流体移動は、望ましくない方向への(例えば、スロット2512及び/又は切断要素から離れる方向への)組織の流れを抑制又は阻止することができる。
【0120】
特定の実施形態では、第1及び第2の相互接続ポケット2525、2526は、異なる剛性を示すように構成することができる。例えば、
図17に示されるように、第1の相互接続ポケット2525は、第1の材料(点描によって示される)及び第2の材料(ハッチングによって示される)から形成される第1の壁2532によって境界付けられ、一方、第2の相互接続ポケット2526は、第2の材料(ハッチングによって示される)のみから形成される第2の壁2534によって境界付けられる。いくつかの実施形態では、第1の材料は第2の材料よりも剛性が高く、他の実施形態では、第2の材料は第1の材料よりも剛性が高い。この図示された実施形態では、第2の材料は第1の材料よりも硬い。更に、逆流を防止するために、一方向弁2536(例えば、フラッパ弁、ダックビル弁等)が、第1及び第2の相互接続ポケットの間に位置付けられることができる。示されるように、一方向弁2532は、流体が第2の相互接続ポケット2526のみから第1の相互接続ポケット2525に移動することを可能にするように構成される。
【0121】
同様に、特定の実施形態では、第3及び第4の相互接続ポケット2528、2530は、異なる剛性を示すように構成され得る。例えば、
図17に示されるように、第3の相互接続ポケット2528は、第1の材料(点描によって示される)及び第2の材料(ハッチングによって示される)から形成される第3の壁2538によって境界付けられ、一方、第4の相互接続ポケット2530は、第2の材料(ハッチングによって示される)のみから形成される第4の壁2540によって境界付けられる。いくつかの実施形態では、第1の材料は第2の材料よりも剛性が高く、他の実施形態では、第2の材料は第1の材料よりも剛性が高い。この図示された実施形態では、第2の材料は第1の材料よりも硬い。更に、逆流を防止するために、一方向弁2542(例えば、フラッパ弁、ダックビル弁等)が、第1及び第2の相互接続ポケットの間に位置付けられることができる。示されるように、一方向弁2542は、流体が第4の相互接続ポケット2530のみから第3の相互接続ポケット2528に移動することを可能にするように構成される。
【0122】
補助材は、圧縮中に組織の流れを制御するための機構として使用することができる速度依存圧縮特性を示すように構成することができる。例として、
図18は、以下に説明する相違点を除いて、
図17の手術用エンドエフェクタ2500と同様である手術用エンドエフェクタ2600を示す。
【0123】
図18に示すように、速度依存圧縮特性を有する第1の補助材2602は、スロット2606の第1の側2604上に配設され、速度依存圧縮特性を有さない第2の補助材2608は、スロット2606の対向する第2の側2609上に示されている。第1の補助材2602は、
図17の補助材2506の第1の長手方向セグメント2414と構造的に類似しており、したがって、共通の特徴は本明細書では詳細に説明されない。示されるように、組織Tがアンビル2610と第1の補助材2602との間にクランプされるとき、第1の補助材2602の速度依存圧縮可能特性は、スロット2606から離れる組織の流れを最小限にする。より具体的には、圧縮時に、第2の相互接続ポケット2614から第1の相互接続ポケット2612への流体移動が起こり、それによって第1の相互接続ポケット2612を膨張させる。結果として、組織の流れ(破線の矢印として示される)は、スロット2606に向かって戻るように部分的に方向転換され得る。比較として、
図18に示すように、第2の補助材2608の圧縮時に、組織流の方向転換(例えば、スロット2606に向かって)は、他の方法では生じない。
【0124】
本発明には従来の低侵襲性及び開放手術用器具における用途、並びにロボット支援手術における用途があることを当業者は認識するであろう。
【0125】
当業者には、上で説明される実施形態に基づいて本発明の更なる特徴及び利点が認識されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によって示される場合を除き、具体的に示され説明された内容により限定されるものではない。本明細書で引用される全ての刊行物及び参考文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0126】
〔実施の態様〕
(1) ステープルカートリッジとともに使用するための圧縮性補助材であって、前記圧縮性補助材は、
少なくとも1つの溶融生体吸収性ポリマーから形成され、ステープルカートリッジ上に解放可能に保持されるように構成され、前記カートリッジ内のステープルの配備によって組織に運搬されるように構成された非繊維性補助材料であって、前記補助材料は、内部に収容された少なくとも1つの薬物を有する格子マクロ構造を備え、前記格子マクロ構造は、複数の単位セルから形成され、各単位セルは、前記補助材料から所定量の薬物を放出するように構成され、前記薬物の前記所定量は、前記それぞれの単位セルの圧縮プロファイルの関数である、非繊維性補助材料を備える、圧縮性補助材。
(2) 前記複数の単位セルは、第1の圧縮プロファイルを有する第1の単位セルと、前記第1の圧縮プロファイルとは異なる第2の圧縮プロファイルを有する第2の単位セルと、を含む、実施態様1に記載の補助材。
(3) 各単位セルは複数の圧縮ゾーンを備える、実施態様1に記載の補助材。
(4) 前記複数の圧縮ゾーンは、第1の圧縮強度を有する第1の圧縮ゾーンと、前記第1の圧縮強度とは異なる第2の圧縮強度を有する第2の圧縮ゾーンと、を備える、実施態様3に記載の補助材。
(5) 前記第1の圧縮ゾーンは、第1の非圧縮高さから第1の圧縮高さまで圧縮するように構成され、前記第2の圧縮ゾーンは、第2の非圧縮高さから前記第1の圧縮高さとは異なる第2の圧縮高さまで圧縮するように構成されている、実施態様4に記載の補助材。
【0127】
(6) 各単位セルは、内部に形成され、前記補助材料が圧縮されているときに前記それぞれの単位セルの変形挙動を制御するように構成された複数の副構造を含む、実施態様1に記載の補助材。
(7) 前記複数の副構造は、第1の副構造及び第2の副構造を含み、前記第1の副構造は、前記単位セルの壁から内側に延在する突出部であり、前記第2の副構造は、前記単位セルの壁に形成された凹部である、実施態様6に記載の補助材。
(8) 前記複数の副構造は、少なくとも1つの内部停止部材を含む、実施態様6に記載の補助材。
(9) 前記複数の単位セルは、シュワルツP構造を備える、実施態様1に記載の補助材。
(10) 前記格子マクロ構造は、隣接するシュワルツP構造の間に延在し、それらを互いに接続する複数の接続構造を備える、実施態様9に記載の補助材。
【0128】
(11) 前記複数の単位セルのうちの少なくとも1つの単位セルは、可変壁厚を有する、実施態様1に記載の補助材。
(12) ステープルカートリッジとともに使用するための圧縮性補助材であって、前記圧縮性補助材は、
少なくとも1つの溶融生体吸収性ポリマーから形成され、ステープルカートリッジ上に解放可能に保持されるように構成され、前記カートリッジ内のステープルの配備によって組織に運搬されるように構成された非繊維性補助材料であって、前記補助材料は、内部に収容された少なくとも1つの薬物を有する格子主構造を備え、前記格子主構造は、前記格子主構造の少なくとも1つの第1の部分に形成された第1の副構造と、前記格子主構造の少なくとも1つの第2の部分に形成された第2の副構造と、を含み、前記第1の副構造及び前記第2の副構造は、前記補助材料が圧縮されて組織配備状態にあるときに、前記補助材料からの前記少なくとも1つの薬物の第1の放出速度及び第2の放出速度をそれぞれ制御するように構成され、前記第1の放出速度は前記第2の放出速度とは異なる、非繊維性補助材料を備える、圧縮性補助材。
(13) 前記格子主構造の前記第1の部分は、第1の壁厚を有し、前記格子主構造の前記第2の部分は、前記第1の壁厚とは異なる第2の壁厚を有する、実施態様12に記載の補助材。
(14) 前記格子主構造の前記第1の部分は、第1の非変形状態から第1の変形状態に変形するように構成されている、実施態様12に記載の補助材。
(15) 前記格子主構造の前記第2の部分は、第2の非変形状態から、前記第1の変形状態とは異なる第2の変形状態に変形するように構成されている、実施態様14に記載の補助材。
【0129】
(16) 前記第1の副構造は、前記格子主構造の壁から内側に延在する第1の突出部と、前記格子主構造の壁に形成された第1の凹部と、のうちの少なくとも1つを備える、実施態様12に記載の補助材。
(17) 前記第2の副構造は、前記格子主構造の壁から内側に延在する第2の突出部と、前記格子主構造の壁に形成された第2の凹部と、のうちの少なくとも1つを備える、実施態様12に記載の補助材。
(18) 前記第1の副構造及び前記第2の副構造のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの内部停止部材を含む、実施態様12に記載の補助材。
(19) 前記格子主構造は、複数のシュワルツP構造を備える、実施態様12に記載の補助材。
(20) 前記格子主構造は、隣接するシュワルツP構造の間に延在し、それらを互いに接続する複数の接続構造を備える、実施態様19に記載の補助材。
【国際調査報告】