(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】自由視モードと制限視モードのための照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20240308BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240308BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20240308BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240308BHJP
【FI】
F21S2/00 435
F21S2/00 415
F21S2/00 414
F21S2/00 434
F21Y115:10
F21Y115:15
F21Y115:30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560666
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 EP2022058264
(87)【国際公開番号】W WO2022207639
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】102021108112.2
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516243364
【氏名又は名称】ジオプティカ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SIOPTICA GMBH
【住所又は居所原語表記】Moritz-von-Rohr-Strasse 1a, 07745 Jena, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ ヘーバー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス クリップシュタイン
【テーマコード(参考)】
3K244
【Fターム(参考)】
3K244AA01
3K244BA15
3K244BA16
3K244BA22
3K244BA48
3K244CA02
3K244CA03
3K244DA01
3K244DA02
3K244EA02
3K244EA12
3K244EA16
3K244EA22
3K244EA34
3K244ED03
3K244ED13
(57)【要約】
本発明は、自由視モードB1と、自由視モードと比較して制限された角度範囲で照明装置から光が放射される制限視モードB2の少なくとも2つの動作モードで動作可能な、画面(1)用の照明装置(1a)に関する。照明装置は、制限された角度範囲に光を放射する面状に広がったバックライト(2)と、観察方向でバックライト(2)の前方に位置し、2つの主要面、及び主要面をそれらの縁部で接続している幅の狭い側面を備えたプレート状導光板(3)と、を含んでおり、導光板(3)は、少なくとも1つの主要面上及び/又はその容積内に出射素子(6)を有しており、導光板(3)はバックライト(2)から出る光に対して少なくとも50%透明であり、各出射素子(6)は、定義された光の出射のための少なくとも1つの機能面を有し、この機能面で光が導光板(3)から出射される。照明装置はまた、導光板(3)の幅の狭い側面の横に配置された光源(4)を含んでいる。動作モードB2ではバックライト(2)が投入され、光源(4)が遮断されており、動作モードB1では少なくとも光源(4)が投入されている。本発明によれば、出射素子(6)の少なくとも一部は特別な構造を有しており、その結果として導光板(3)は所定の優先方向においてこれに垂直な方向よりも少なくとも1.2倍強い散乱特性を有しており、したがって散乱特性は全体として異方性である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自由視モードB1と、自由視モードと比較して制限された角度範囲で照明装置から光が放射される制限視モードB2の少なくとも2つの動作モードで動作可能な、画面(1)用の照明装置(1a)において、
制限された角度範囲に光を放射する面状に広がったバックライト(2)と、
観察方向でバックライト(2)の前方に位置し、2つの主要面、及び主要面をそれらの縁部で接続している幅の狭い側面を備えたプレート状導光板(3)であって、ここで、導光板(3)は、少なくとも1つ主要面上及び/又はその容積内に出射素子(6)を有しており、導光板(3)はバックライト(2)から出る光に対して少なくとも50%透明であり、各出射素子(6)は、定義された光の出射のための少なくとも1つの機能面を有し、この機能面で光が導光板(3)から出射される、プレート状導光板(3)と、
導光板(3)の幅の狭い側面に横方向に配置された光源(4)と、を含んでおり、
動作モードB2ではバックライト(2)が投入され、光源(4)が遮断されており、動作モードB1では少なくとも光源(4)が投入されているものにおいて、
出射素子(6)の少なくとも部分において、光が進出する主要面に平行な各機能面の方向ベクトルは、優先方向と最大45°の角度をなし、ここで、方向ベクトルは、このベクトルと機能面の位置依存法線ベクトルとのスカラー積の積分を最大化するベクトルであり、各法線ベクトルは、当該主要面と5°~85°の角度をなし、これにより導光板(3)は優先方向において優先方向に直角な方向よりも少なくとも1.2倍強い散乱特性を有しており、そのため両主要面を貫通して導光板(3)を透過する光に対して全体として異方性散乱特性を有することを特徴とする、照明装置(1a)。
【請求項2】
出射素子(6)の部分が全出射素子の少なくとも30%を含んでいること、及び/又は全出射素子の平均で方向ベクトルが優先方向と最大45°の角度をなすことを特徴とする、請求項1に記載の照明装置(1a)。
【請求項3】
導光板(3)は優先方向においてその反対方向よりも強い散乱特性を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の照明装置(1a)。
【請求項4】
観察者が照明装置(1a)を見る際の優先方向は垂直方向に対応しているため、導光板(3)の散乱特性は水平方向よりも垂直方向で大きく、水平方向は観察者の目と目の間の線に平行であることを特徴とする、請求項3に記載の照明装置(1a)。
【請求項5】
主要面の面積に対する出射素子の部分の機能面の面積の前記比は、優先方向における出射素子(6)の散乱特性が、優先方向に直角な方向における散乱特性よりも少なくとも2倍又は3倍だけ大きくなるように決定されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の照明装置(1a)。
【請求項6】
光が進出する主要面が所定の大きさの部分領域に分割されており、それぞれの部分領域の面積に対する部分領域における機能面の面積の比が、様々な部分領域で異なるため、導光板(3)の散乱特性は、光が進出する主要面にわたって変化することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の照明装置(1a)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年、液晶ディスプレイにおいて視野角の拡張が大きく進展した。しかしながら、この画面の視野範囲が非常に広いことが欠点となり得る状況も多い。また、ますますノートブックやタブレットPCなどのモバイル端末で、銀行データやその他個人情報及び機密情報などの情報も利用できるようになっている。
【0002】
そのため人々はこれらの機密データを見ることができる者をコントロールする必要がある。例えば休暇の写真を見るとき、或いは宣伝目的のためにも、ディスプレイ上の情報を他人と共有するために広い関し視野角を選択しなければならない。他方、画像情報を秘匿したい場合は、視野角を狭くする必要がある。
【0003】
自動車製造においても類似の問題がある。運転手はエンジンがかかっている間はデジタルエンターテインメントプログラムなどの画像内容に気を取られてはならないが、同乗者自身は運転中もそれらを楽しみたいと思う。したがって表示モードを相応に切り替えられる画面が必要になる。
【0004】
既にモバイルディスプレイではその視覚的データ保護を達成するために、マイクロルーバーに基づく追加フィルムが使用された。しかしながらこれらのフィルムは(再)切替不能であり、常にまず手で装着してから、再び取り外す必要があった。また、これは必要のないときでもディスプレイと別に持ち運ばなければならない。更に、このようなルーバーフィルムの使用は、光損失という重大な欠点を伴う。
【背景技術】
【0005】
米国特許出願US5,956,107A号は、画面を複数のモードで動作させることができる切替可能な光源を開示している。ここでの欠点は、すべての光の出射が散乱に基づくため、低い効率と最適でない光方向効果しか得られないことである。特に、集光された光円錐の達成については、詳細に開示されていない。
【0006】
中国特許出願CN107734118A号には、2つのバックライトを用いて画面の視野角をコントロールできるように設計された画面が記載されている。両バックライトのうち上側のバックライトは、このために集光された光を発することになっている。そのための構成として、特に不透明部と透明部を持つグリッドが挙げられている。しかしこれは、第1のバックライトをLCDパネルに向かって透過しなければならない第2のバックライトの光も集光されるため、本来広い視野角のために設けられているパブリックビューイングモードで視野角が著しく狭くなることが推測される。
【0007】
米国特許出願US2007/030240A1号には、バックライトから出る光の伝搬方向をコントロールするための光学素子が記載されている。この光学素子は、例えばPDLCの形態の液晶を必要とするが、これは一方では高価であるが、他方ではPDLC液晶は通常その回路に60Vより高い電圧を必要とするので、特にエンドユーザー用途で安全上の懸念がある。
【0008】
中国特許出願CN1987606A号にも、2つのバックライトを用いて画面の視野角をコントロールできるように設計された画面が記載されている。ここでは特に、「第1のライトプレート」が使用されており、このライトプレートは意図するように集光された光の出射を可能にするために楔形でなければならない。相応の角度条件で集光された光の出射を達成することに関する正確な詳細は開示されていない。
【0009】
更に、米国特許出願US2018/0267344A1号には、2つの平坦な照明モジュールを有する構造が記載されている。ここでは、観察方向で後方に位置する照明モジュールの光は、別個の構造によって集光される。光は集光された後にも、散乱素子を有する前方の照明モジュールを通過しなければならない。したがって覗き見防止のための強い集光は最適に実施できない。
【0010】
最後に、米国特許出願US2007/0008456A1号は、発光角度を少なくとも3つの領域に分割することを開示しており、そのうち2つの領域は通常照明される。その結果、このように照明されたディスプレイが使用される覗き見防止画面は、一方向からのみではなく観察することができる。
【0011】
本出願人の国際特許出願WO2015/121398A1号には、冒頭に記載した種類の画面が記載されている。そこでは、動作モードを切り替えるために、対応する導光板の容積内に本質的に散乱粒子が存在する。しかしながら、そこで選択された重合体からなる散乱粒子は、原則として光が両主要面から出射され、それにより有効な光の約半分が誤った方向に、即ちバックライトに向かって放射され、そこでは構造により十分にリサイクルできないという欠点を有する。その上、導光板の容積内に分布する重合体からなる散乱粒子は、特定の状況で、特に高濃度では散乱効果を招き、保護された動作モードでの覗き見防止効果を低下させる可能性がある。
【0012】
米国特許出願US2020/012129A1号は、狭視野モードと広視野モードを切り替えるための2つの導光板を記載する照明装置と画面を開示している。一方では、導光板の1つはファイバーで形成されている。他方では、導光板の散乱出射構造は投影方向で特定のストライプに局限される。このことは、均質な画像照明には不利であり、通常、例えばその上にあるLCDパネルの画素列若しくは画素行との相互作用により、構造に望ましくないモアレ効果を引き起こす。
【0013】
上述した方法及び配置に原則として共通している欠点は、基本画面の明るさを著しく低下させ、及び/又はモード切替のために能動的な、しかし少なくとも1つの特別な光学素子を必要とし、及び/又は複雑で高価な製造を要求し、及び/又は自由に観察できるモードでの解像度を低下させることである。
【発明の概要】
【0014】
したがって本発明の課題は、画面と協働して、選択的に制限された視野角によって情報の安全な表示を実現することができる一方、別の動作モードで視野角が可能な限り制限されない自由視が可能になる照明装置を記載することである。本発明は、簡単な手段で、可能な限り低コストに実現可能であるべきである。両動作モードにおいて、可能な限り高い解像度、特に好適には使用される画面のネイティブ解像度を利用できるべきである。更に、この解決策は、可能な限りわずかな光損失しかもたらさず、制限された視野角は可能な限り広範囲の覗き見防止効果を達成すべきである。
【0015】
上記の課題は、本発明によれば、この課題は、自由視モードB1と、自由視モードと比較して制限された角度範囲で照明装置から光が放射される制限視モードB2の少なくとも2つの動作モードで動作可能な、画面用の照明装置によって解決される。この場合、照明装置は、制限された角度範囲に光を放射する面状に広がったバックライトと、観察方向でバックライトの前方に位置し、2つの主要面、及び主要面をそれらの縁部で接続している幅の狭い側面を備えたプレート状導光板とを含んでいる。導光板は、少なくとも1つの主要面上及び/又はその容積内に出射素子を有し、バックライトから出る光に対して少なくとも50%、しかし好適には少なくとも70%透明である。導光板の幅の狭い側面に横方向に光源が配置されているが、これは光源が導光板の片側のみに配置されていることも含意している。動作モードB2ではバックライトが投入され、光源が遮断されているのに対し、動作モードB1では少なくとも光源が投入されている。出射素子の形状、単位面積当たりの数、向き及び/又は延長は、導光板が、出射素子又は少なくともその一部によって、主要面を貫通して導光板を透過する光に対して異方性散乱特性を有するように選択されている。
【0016】
これは具体的には、各出射素子が、定義された光の出射のための少なくとも1つの機能面を有し、そこで光が導光板から相応に出射されることを意味する。これらの機能面は、最も単純なケースでは平坦であり、又は少なくとも平坦な表面部分を有し、しかしまた1つの方向又は2つの独立した直線方向に湾曲した面であることもできる。ここで、機能面に対して、光が進出する主要面に平行な、即ち上記の主要面に平行な平面内に位置する方向ベクトルが定義される。この方向ベクトルは、このベクトルと機能面の位置依存法線ベクトルとのスカラー積を機能面について最大化するベクトルである。平坦な面の場合、法線ベクトルは言うまでもなく機能面の各位置で一定であるが、湾曲した面の場合は変化し、それぞれの位置での接平面の法線ベクトルである。具体的には、方向ベクトル
【数1】
は積分
【数2】
を最大化する。ここで、
【数3】
は機能面Aの座標xとyの位置依存法線ベクトルである。この方向ベクトルは、このとき所定の優先方向と最大45°の角度をなす。この場合、法線ベクトルは、光が進出する当該主要面と最小5°~最大85°の角度をなすが、好適には下限値は30°及び/又は上限値は60°である。
【0017】
出射素子がこのように設計されていると、その結果として導光板は優先方向において優先方向に直角な方向よりも少なくとも1.2倍強い散乱特性を有し、そのため両主要面を貫通して導光板を透過する光に対して全体として異方性散乱特性を有する、優先方向において、優先方向に直角な方向よりも少なくとも1.2倍強い散乱特性を有し、そのため両主要面を貫通して導光板を透過する光に対して全体として異方性散乱特性を有する。
【0018】
基本的にバックライトの前方の半空間より小さいすべての領域は、制限された角度範囲として考慮することができる。しかしここで好適には、バックライト上の面法線若しくは選択可能な方向ベクトルを中心として水平方向及び/又は垂直方向に±20°又は±30°の角度範囲又は円錐が意味されている。制限された角度範囲の定義において、最大輝度1%~5%未満の少量の光は無視することができる
【0019】
照明装置は更に、例えばプレート状導光板の上方又は下方のレンチキュラー又はプリズムルーバなど、構造内の適切な位置にコリメートフィルムを含むことができる。
【0020】
有利には、出射素子の当該部分は、全出射素子の少なくとも30%、好適には全出射素子の少なくとも50%、70%又は90%を含む。追加的又は代替的に、方向ベクトルは全出射素子の平均で優先方向と最大45°、即ち-45°~+45°の角度をなす。
【0021】
導光板は、優先方向においてその反対方向よりも強い散乱特性を有することが好適である。これは相応に非対称的な形状の出射素子によって達成される。より正確に言えば、出射素子の断面は、出射素子のない散乱特性が優先方向とそれに垂直な方向で同じである限り、優先方向に平行な断面において非対称であるべきである。優先方向においてより強い散乱特性を別の方法で実現する場合は、対称断面を持つ出射素子を使用することもできる。優先方向とその反対方向で異なる散乱特性を実現するには、好ましい方向の断面が非対称であることも前提となる。
【0022】
出射素子の異方性散乱特性は、散乱特性が測定される少なくとも2つの互いに直角な方向、即ち優先方向とこれに垂直な方向に関する散乱特性の測定に基づいて特徴付けられる。この場合、光が導光板をほぼ垂直方向に通過する際に出射素子によって引き起こされる散乱特性を考慮すべきである。
【0023】
有利には、観察者が照明装置を見る際の優先方向は垂直方向に対応しているため、導光板の散乱特性は水平方向よりも垂直方向で大きい。この場合、「垂直」及び「水平」という用語は、まず一般にバックライトの表面又は導光板の主要面上で互いに直角な2つの方向を指し、これらは動作時に照明装置と共に使用され一般に固定されている画面の向きに応じて、実際に観察者の位置、ひいては地表面を基準とする水平方向又は垂直方向に対応する。水平方向は一般的な場合、観察者の目と目を結ぶ線に平行の延びており、結局のところ空間における観察者の向きによって決まる。
【0024】
特に好適には、主要面の面積に対する出射素子の上記の部分の機能面の面積の比は、優先方向における出射素子の散乱特性が、優先方向に直角な方向における散乱特性よりも少なくとも2倍又は3倍だけ大きくなるように決定されている。しかしながら、この異方性はプレート状導光板の面にわたって変化することができる。出射素子の密度が高い個所では、異方性は典型的には密度が低い個所よりも高い。このために光が進出する主要面は所定の大きさの部分領域に分割されており、それぞれの部分領域の面積に対する部分領域における機能面の面積の比が様々な部分領域で異なるため、導光板の散乱特性は、光が進出する主要面にわたって変化する。
【0025】
照明装置の好ましい実施形態において、少なくとも動作モードB2においてバックライトから放射される光は、水平方向で制限された角度範囲に放射されるので、導光板を通過する際に光が被る散乱は垂直方向よりも水平方向でより少ない。それにより、制限された角度範囲に放射される光は、典型的には上記の制限された角度範囲の外側ではせいぜいわずかに散乱するだけであり、このことは覗き見防止効果にとって有益である。これは本発明の本質的な利点である。
【0026】
「わずかに」とは、例えば散乱特性が少ないため、水平方向に沿って測定した、例えば面法線又はその他の所定の方向から水平方向に40°の角度において、照明装置が0°の角度で発する導光板に基づく散乱によって光度が最大3%増すことを意味する。第1の実施形態と組み合わせることができる別の実施形態において、「わずかに」とは、優先方向に±20°、優先方向に直角な方向に±10°の立体角範囲で光の10%未満が散乱することを意味する。ヘイズ値も15%未満であることが好ましい。
【0027】
しかし、これとは正反対の場合もある。即ちバックライトに由来する光の水平方向に制限された角度範囲への集光が強すぎる場合、光を的確に扇状に広げることによって、(垂直方向と比較して)水平方向でより強い散乱特性が有用である。更に、出射素子の少なくとも一部(又は全部)の異方性散乱特性は、照明装置の構成要素が互いに及び/又は画面と相互作用する際に発生し得る目に見えるオーバーレイ(例えばモアレ効果)を回避するために有用である。
【0028】
2つの優先軸に沿った散乱特性を定量化するために、「双方向透過率分布関数」(BTDF)が利用される。BTDFは、光が特定の入射角(H_i、V_i)でどのように透過するかを定量化する。5°以上偏向する光はすべて散乱光に数えられる。それゆえ水平散乱SH(即ち水平散乱特性)の尺度を決定するために、測定されたBTDFを相応に積分する。同様に、垂直散乱SV(即ち垂直散乱特性)の尺度が決定される。BTDF測定は通常4°の発散角を持つレーザービームで実行できるので、下限積分値、即ちそれ以上で光が散乱すると見なされる角度は、ヘイズ測定の通常の1.8°よりも大きく選択する必要がある。
【0029】
以下に、尺度S
H及びS
Vを決定するための積分を掲げる。
【数4】
【数5】
ここで、Hは透過率が測定される水平方向の角度であり、Vは透過率が測定される垂直方向の角度であり、H
i、V
iはそれぞれ光線が測定対象物に入射する角度(ここではそれぞれ0°)である。それゆえこの式では、本発明に従って要求される散乱特性の異方性S
V/S
Hは、以下のように定式化できる:S
V/S
H≠1若しくは頻繁な用途の場合S
V/S
H>1。
【0030】
以下の表1は、(プレート状導光板上の様々な測定点P1~P5における正規化された散乱S
H及びS
V(即ち散乱特性)の例示的な値である。
【表1】
【0031】
異方性SV/SHHは、垂直方向に沿って散乱特性がどれだけ強いかを示す。上述したように、ここで散乱は5°を超える偏向と理解される。この例において異方性散乱特性は明白である。
【0032】
出射素子は、導光板の製造中に光の出射のための適応可能、且つ設定可能な条件に従い、様々な方法で導光板内又は導光板上に配置することができる。出射素子は、導光板の容積内及び/又は表面上の局所的に限定された構造変化である。したがって導光板の表面に取り付ける追加の光学層、即ち例えば拡散層、反射層、(二重)輝度上昇層、コリメート層(輝度上昇フィルム-BEF)又は偏光リサイクル層、例えば偏光選択ブラッグミラー((二重)輝度上昇フィルム-(D)BEF)又はワイヤグリッド偏光板は、明示的に「出射素子」という用語には含まれない。「出射素子」という用語に該当しないこれらの追加層は、導光板と接続されるとしても縁部でのみ接続されて、主要面の領域ではたいてい導光板に緩く載っているだけで、導光板と物理的な統一体を形成することはない。これに対して、主要面に塗布されて導光板と化学反応やその他の力(例えばファンデルワールス力)によって結合するラッカーは、物理的な統一体を形成し、もはや互いに分離することはできない。それゆえこのようなラッカーは上記の意味での追加層には数えられない。
【0033】
出射素子の構造は、上述したように上記の基準に従って設定され、各出射素子の効果は少なくともほぼ既知であり、導光板若しくは導光板から出る光の特性は、出射素子の設定可能な構造及び分布によって的確に決定することができ、この場合光が出射される主要面の全表面の面積に対する機能領域の面積の合計の比が特に重要である。
【0034】
単位面積当たりの数、形状、3次元の向き及び延長、並びに少なくとも1つの主要面の上及び/又は導光板の容積内における分布に関して、本発明に必要不可欠な出射素子に特性は、例えばシノプシス社の「ライトツール」、又は他のプロバイダーから出ている光学シミュレーションソフトウェアを用いて決定し、次いで相応に物理的に実装できる。
【0035】
有利には、導光板の少なくとも1つの主要面上及び/又は容積内における出射素子の分布は、出射した光が導光板の表面の少なくとも70%において70%の輝度均質性を達成するように設定されている。このために輝度均質性は、LV
min/LV
maxとして、即ちある面の輝度の最大値に対する最小値の比として定義することができる。輝度均質性を測定するための他の適用可能な基準は、「ドイツ自動車OEM作業部会ディスプレイ」による「ディスプレイの均一性測定基準V1.3」に定義されている。
【0036】
両動作モードB1及びB2が異なるのは、結局のところ動作モードB2ではバックライトが投入され、(導光板の幅の狭い側の)光源が遮断されており、動作モードB1では少なくとも(導光板の幅の狭い側の)光源が投入されているという点である。この場合、元々光源から導光板に入射され、次いでそこから再び出射素子を介して放射された光のみが考慮され、放射はほとんど専ら出射素子を介して行われる。
【0037】
出射素子を、両主要面上に及び/又は任意選択で追加的に容積内に取り付けることが可能である。
【0038】
導光板は、好ましくは透明な熱可塑性又は熱弾性ポリマー、例えばプラスチック又はガラスで作られる。例えば導光板若しくはその基体は、その重量を基準として少なくとも40重量%のポリメチルメタクリレート、好ましくは少なくとも60重量%のポリメチルメタクリレートからなることができる。代替的に、例えばポリカーボネート(PC)であってもよい。
【0039】
更に、上記の制限された角度範囲がバックライトの面法線に対して非対称に形成されていることは若干の用途にとって有利である。非対称な形成は、優先方向の1つで行われることが好ましい。このことは車両用途で、例えば本発明による照明装置と組み合わされる画面が、いわゆるセンター情報ディスプレイとして、運転者と同乗者の間のほぼ中央のダッシュボードに配置される場合に非常に有用である。この場合、動作モードB2において専ら同乗者に対して解放される制限された視野角範囲は、非対称に、即ち同乗者に向けて設計されなければならない。ここで、非対称性が形成される優先方向は、水平方向に対応数る。
【0040】
導光板の少なくとも1つの主要面で光を出射するための出射素子は、好適にはマイクロレンズ及び/又はマイクロプリズム及び/又は回折構造及び/又は3次元構造要素及び/又は散乱要素からなり、それらの最大寸法における最大延長は100マイクロメートルより小さく、好適には50マイクロメートルより小さい。回折構造の場合、これは例えばホログラム若しくは格子/回折格子であることができる。
【0041】
しかしまた、出射素子自体は、マイクロレンズ、マイクロプリズム、散乱要素及び/又は回折構造の外形のみを有することができる。これらは特に中空部として設計することができ、導光板の容積に形成されている。中空部は真空であることができるが、好適には気体、液体又は固体材料で充填される。この材料は、導光板に使用される材料の屈折率とは異なる屈折率を有し、好ましくはより小さい。材料を充填することにより、及び材料の選択により、導光板若しくは光の出射に影響を与えることができる。代替的又は追加的に、材料のヘイズ値も好適には導光板に使用される材料のヘイズ値とは異なり、好ましくはより高い。これらの設計の利点は、光の出射における効率が高いことである。
【0042】
代替的に、且つ技術的により簡単に、導光板を互いに接合された2つの基体層から形成する場合も中空部を形成することができ、これらの基体層は同種のものであることが好ましい。接合は化学的、物理的、又は接着によって行うことができる。中空部は、基体層の少なくとも1つの界面に材料の切欠きとして形成されている。
【0043】
出射素子が導光板の少なくとも1つの主要面に取り付けられる場合、これらの出射素子は有利には工具によって構造を刻印されたプラスチック又はガラスから形成される。これは、例えば大量生産においては、ラッカー、モノマーなどのUV硬化材料を導光板の基体に塗布することによって可能であり、材料が工具によって構造化され、UV放射線によって硬化され、例えば重合される。放射線によって硬化する他の材料も使用できる。出射素子を実現するための切欠きの形成は、例えば機械的に、リソグラフィによって、又は印刷によって、或いはまた材料の塗布、変換、除去又は溶解によっても実現することができる。
【0044】
このようにして、例えば格子構造、マイクロプリズム(プラスチック部分が表面上で凸状に外側に向いているか、構造化されたプラスチックの表面層内の凹状の刻印若しくは切欠きである)、他の形状の3次元構造要素、或いはマイクロレンズも、コスト効率よく大量生産に適した形で実現することができる。凹状に形成された構造も凸状に形成された構造も等しく使用できる。
【0045】
バックライトは、例えば面状発光体、好ましくは横方向又は背面に別の光源を配置した別の導光板と、面状発光体に一体化され及び/又はその前方に配置された少なくとも1つの光コリメータ、例えば少なくとも1つのプリズムフィルム及び/又は少なくとも1つの覗き見防止フィルター(ラメラフィルター)からなる。更に、いわゆる集光バックライトユニットをバックライトとして使用することができ、(他の)導光板から出た光は既に制限された角度範囲に出射されており、場合によっては更に方向付けられ、転向若しくは偏向される。
【0046】
したがって、バックライトは、基本的にLEDバックライトのように、例えばいわゆる直下型LEDバックライト、エッジ型LEDバックライト、OLED、又はその他の面発光体として構成することができ、その上に例えば少なくとも1つの恒久的な覗き見防止フィルター(マイクロラメラ付き)が取り付けられている。
【0047】
上述した照明装置のすべての変形例で、照明装置が画面として更に観察方向で照明装置の前方に配置された透過型画面を、好ましくはLCDパネルの形態で含み、この画面が照明装置に基づいて自由視モードB1と制限視モードB2の少なくとも2つの動作モードで動作可能であると特に有利である。
【0048】
この場合、若干の例において、画面もその主要面を通して画面を透過する光に対して異方性散乱特性を有していると有用であり得る。この場合、画面の散乱特性がよい強い優先方向は、導光板もより強い散乱特性を優先方向に対応しているべきである。これは多くの場合に垂直方向である。更に、例えば導光板上の光学的アーチファクトを覆い隠すために、画面と導光板の間に異方性散乱層を配置することも可能であり、覗き見防止効果にできるだけ影響を与えないか、全く影響を与えないようにする。異方性散乱層は従来技術より、例えばホログラフィックディフューザーやバイナリ(コンピュータ生成)ホログラムなどが知られている。
【0049】
画面の上側及び/又は導光板の少なくとも1つの主要面上に、及びまた少なくとも1つ覗き見防止フィルター(ある場合)に、反射低減又は反射制御のための手段、例えば反射防止コーティングを施すことができる。
【0050】
画面によって拡張された照明装置の別の設計は、観察方向で画面の前方に、光を出射するための手段を有する別の導光板(例えばガラス製又はプラスチック製)が配置されており、この導光板には光源から横方向に光を供給することができるというものである。ここで使用される出射のための手段は、例えば上述した又は従来技術で公知の、例えば国際特許出願WO2015/121398A1号及び国際特許出願WO2017/089482A1号に記載されているような、適切なサイズと量の二酸化チタン、硫酸バリウムなどのナノ粒子であり、これらは導光板の容積内に均一に分布している。この設計によって、動作モードB2でなおも意図せずに存在する可能性のある残留光は、本来覗き見が防止されている角度範囲に、コントラストがもはや知覚できないように重ねて放射することができ、したがって別の導光板に対応する光源は着色光又は白色光を放射するように設計されている。この場合、光源は透過画面によって表示される画像に現れる色又は現れない色で光を放射することができる。その結果として、許容されない角度から画像を知覚することは決して可能ではない。
【0051】
特に有利には、本発明による画面を備えた照明装置は、車両において画像コンテンツを選択的に動作モードB2では同乗者のみに表示し、動作モードB1では運転者と同乗者に同時に表示するために使用される。前者は、例えば同乗者が運転者の注意をそらす可能性のある娯楽コンテンツを見ている場合に有用である。
【0052】
本発明による画面を備えた照明装置は、例えばATM、決済端末又は携帯端末で、PIN暗証番号、電子メール、SMS、パスワードなどの機密データを入力又は表示するために使用することができる。
【0053】
前述したすべての実施形態において、上記の光源は、LED又はLEDライン又はレーザーダイオードであることができる。これ以外の変形例も考えられ、本発明の範囲に含まれる。
【0054】
更に、制限視モードB2に対する所望の制限された角度範囲は、水平方向と垂直方向について互いに独立に定義して実施することができる。例えばATMで大きさの異なる人々が1つの画像を見ることになる場合、水平方向よりも垂直方向の角度が大きい(又は場合によっては全く制限がない)が、側方ビューは強く又は完全に制限されたままであることが有意味であろう。これに対し、POS決済端末の場合は、セキュリティ規定に基づき、モードB2での制限視は水平方向と垂直方向の両方で必要な場合が多い。
【0055】
基本的には、上述したパラメータを特定の限界内で変化させても、本発明の性能は維持される。
【0056】
上述し及び以下に説明する特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、記載された組み合わせだけでなく、他の組み合わせや単独でも使用できることは自明である。
【0057】
以下に、本発明を、同様に本発明の本質的な特徴を開示している添付の図面を参照しながら実施例によって詳細に説明する。これらの実施例は、単に具体的に説明するためのものであり、発明を制限するものと解釈されてはならない。例えば多数の要素又は部材を有する実施例の説明は、これらすべての要素又は部材が実装に必要であると解釈されるべきではない。むしろ、他の実施例は代替的な要素や部材、より少ない要素や部材、又は追加の要素や部材を含むことができる。異なる実施例の要素又は部材は、特に断りのない限り、互いに組み合わせることができる。ある実施例について説明された修正及び変形は、他の実施例にも適用可能である。重複を避けるために、異なる図中の同一の又は対応する要素には同一の参照符号を付し、繰り返し説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1は、導光板に横方向に入射する光を、出射素子がある導光板の下部主要面から出射するための原理図であり、光は上部主要面で導光板から出る。
【0059】
【
図2】
図2は、導光板に横方向に入射する光を、出射素子がある導光板の上部主要面から出射するための原理図であり、光は上部主要面で導光板から出る。
【0060】
【
図3】
図3は、自由視モードに対するモードB1で画面と相互作用する第1の実施形態による照明装置の原理図である。
【0061】
【
図4】
図4は、制限視モードに対するモードB2で画面と相互作用する第1の実施形態による照明装置の原理図である。
【0062】
【
図5A】
図5Aは、異方性散乱特性を具体的に説明するための、光線が主要面を透過する導光板の上面の原理図である。
【0063】
【0064】
【
図6A】
図6A-6Cは、出射素子の様々な構成の原理図である。
【
図6B】
図6A-6Cは、出射素子の様々な構成の原理図である。
【
図6C】
図6A-6Cは、出射素子の様々な構成の原理図である。
【0065】
【
図7A】
図7Aは、光線経路を略示した出射素子の上面図である。
【0066】
【
図7B】
図7Bは、導光板と出射素子を透過する光の光線経路を示した、
図7Aの出射素子の断面図である。
【0067】
【
図7C】
図7Cは、導光板と出射素子を透過する光の光線経路を示した、別の出射素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1には、導光板3に横方向に入射する光を、出射素子がある導光板の下部主要面から出射するための原理図が示されている。しかしながら、出射される光は、主として、即ち50%以上が上部主要面で導光板3から出ている。ここでは光は水平方向(ここでは図示の面内に位置して右から左へ延びているのに対し、垂直方向は図面内を指している)で、導光板3の上部主要面から60°以上の広い角度で出射される。出射素子6の位置は番号6で示されているが、本来の出射素子6は顕微鏡的に小さいためここでは記入されていない。したがって、光は光源4、例えばLEDから横方向に導光板3に入射する。入射した光の光線(太字で示された光線)は、全反射により外壁で導光板3内にはね返され、最終的に(場合によっては繰り返し)所望の出力のための出射素子6に当たる。出射は細い光線で略示されている。
図1の表現は、認識しやすくするために著しく簡略化されているが、実際には非常に多数の光線経路が導光板3内に実現される。また、屈折率遷移面における屈折は考慮されていない。
【0069】
図2は、導光板3に横方向に入射する光を、出射素子6がある導光板3の上部主要面から出射するための原理図を示している。ここでも光は主として上部主要面を貫通して導光板3から出る。ここでは
図1に関する説明を準用する。ここで技術的に異なるのは、単に出射素子6の位置と、場合によってはその構成であり、このとき出射素子6は導光板3の上側に位置しており、そのため光は直接上方に出射する。出射した光は、
図1の状況とは異なり、導光板3を再度透過する必要はない。
【0070】
図3及び
図4は、自由視モードB1と、自由視モードと比較して制限された角度範囲で照明装置から光が放射される制限視モードB2の少なくとも2つの動作モードで動作可能な照明装置1aを示している。この場合、照明装置1aは、制限された角度範囲に光を放射する面状に広がったバックライト2と、観察方向でバックライトの前方に位置し、2つの主要面、及び主要面をそれらの縁部で接続している幅の狭い側面を備えたプレート状導光板3とを含んでいる。導光板3は、少なくとも1つ主要面上及び/又はその容積内に出射素子6を有しており、バックライト2から出る光に対して少なくとも50%、しかし好適には70%透明である。導光板の幅の狭い側面に横方向に光源が配置されているが、これは光源が導光板の片側のみに配置されていることも含意している。動作モードB2ではバックライトが投入され、光源が遮断されているのに対し、動作モードB1では少なくとも光源が投入されている。
【0071】
出射素子6の形状、単位面積当たりの数、向き及び/又は延長は、導光板3が、出射素子6又は少なくともその一部によって、主要面を貫通して導光板を透過する光に対して異方性散乱特性を有するように選択されている。
【0072】
これは具体的には、各出射素子6が、定義された光の出射のための少なくとも1つの機能面を有し、ここで光が導光板から相応に出射されることを意味する。これらの機能面5は最も単純なケースでは平坦であり、又は少なくとも平坦な表面部分を有し、しかしまた1つの方向又は2つの独立した直線方向に湾曲した面であることもできる。このとき、機能面5に対して、光が進出する主要面に平行な、即ち上記の主要面に平行な平面内に位置する方向ベクトルが定義される。この方向ベクトルは、このベクトルと機能面5の位置依存法線ベクトルとのスカラー積を機能面5について最大化するベクトルである。平坦な面の場合、法線ベクトルは言うまでもなく機能面5の各位置で一定であるが、湾曲した面の場合は変化し、それぞれの位置での接平面の法線ベクトルである。具体的には、方向ベクトル
【数1】
は積分
【数2】
を最大化する。ここで、
【数3】
は機能面Aの座標xとyの位置依存法線ベクトルである。この方向ベクトルは、このとき所定の優先方向と最大45°の角度をなす。この場合、法線ベクトルは、光が進出する当該主要面と最小5°~最大85°の角度をなすが、好適には下限値は30°及び/又は上限値は60°である。計算された方向ベクトルは、優先方向に対する出射素子6の機能面5の回動に対する尺度であるが、場合により機能面5上に存在するすべての面法線の「平均」若しくは導光板3の主要面の1つへの投影に必ずしも対応しない。
【0073】
出射素子6がそのように設計されていると、その結果として導光板3は、優先方向において優先方向に直角な方向よりも少なくとも1.2倍、好適には少なくとも2倍又は3倍強い散乱特性を有しており、そのため両主要面を貫通して導光板3を透過する光に対して全体として異方性散乱特性を有する。
【0074】
光が進出する主要面は、所定の大きさの部分領域に分割することもでき、それぞれの部分領域の面積に対する部分領域における機能面の面積の比が様々な部分領域で異なるため、導光板3の散乱特性は、光が進出する主要面にわたって変化する。
【0075】
図3には、自由視モードに対するモードB1で画面1と相互作用する第1の実施形態による照明装置1aの原理図が示されている。基本的にバックライトの前方の半空間より小さいすべての領域は、制限された角度範囲として考慮することができる。しかしここで好適にはバックライト2上の面法線若しくは選択可能な方向ベクトルを中心として水平方向及び/又は垂直方向に±20°又は±30°の角度範囲又は円錐が意味されている。制限された角度範囲の定義において、最大輝度1%~5%未満の少量の光は無視することができる。
【0076】
【0077】
これに対して
図4は、制限視モードに対するモードB2で画面と相互作用する第1の実施形態による照明装置の原理図を示す。太い矢印は、角度範囲が制限された光を示す一方、破線の細い矢印は、バックライト2から出る光に比べて光は水平方向にごくわずかしか散乱しないことを表している。その結果、導光板3上の出射素子6の異方性散乱特性は、水平方向よりも垂直方向で強くなるが、これについては以下に
図5A~
図5Cに関連して詳細に説明する。
【0078】
照明装置1aの好ましい実施形態では、少なくとも動作モードB2においてバックライト2から放射される光は、水平方向で制限された角度範囲に放射されるので、
図4に示されているように、上記の光が導光板3を通過する際に被る散乱は垂直方向よりも水平方向でより少ない。それにより、制限された角度範囲に放射される光は、上記の制限された角度範囲の外側ではわずかに散乱するにすぎない。
【0079】
両動作モードB1及びB2が異なるのは、結局のところ動作モードB2ではバックライトが投入され、(導光板3の1つ以上の幅の狭い側で)光源4が遮断されており、動作モードB1では少なくとも(導光板の幅の狭い側で)光源が投入されているという点である。光源4は導光板3内に光を放射する。次いで出射素子6が導光板3から光を出射し、放射はほとんど出射素子6を介して行われる。
【0080】
バックライト2は、例えば面状発光体、好ましくは横方向又は背面に別の光源を配置した別の導光板と、面状発光体に一体化され及び/又はその前方に配置された少なくとも1つの光コリメータ、例えば少なくとも1つのプリズムフィルム及び/又は少なくとも1つの覗き見防止フィルター(ラメラフィルター)からなる。
【0081】
したがって、バックライト2は、基本的にLEDバックライトのように、例えばいわゆる直下型LEDバックライト、エッジ型LEDバックライト、OLED、又はその他の面発光体として構成することができ、その上に例えば少なくとも1つの恒久的な覗き見防止フィルター(例えばマイクロラメラ付き)及び/又は他の光コリメータが取り付けられ又は配置されている。
【0082】
導光板3は、好ましくは透明な熱可塑性又は熱弾性ポリマー、例えばプラスチック又はガラスで作られる。例えば導光板3は、ポリカーボネート製であることができる。
【0083】
有利には、出射素子6の上記の部分は、出射素子6の少なくとも30%、好適には少なくとも50%、特に好適には90%以上を含み、これらの出射素子は、その形状、表面当たりの数、向き及び/又はその延長において、主要面を貫通して導光板3を透過する光に対して異方性散乱特性を有するように選択されている。代替的又は追加的に、方向ベクトルは優先方向と、すべての出射素子の平均で最大45°の角度をなす。特に、導光板3は優先方向において、これに垂直な方向よりも強い散乱特性を有することができる。
【0084】
出射素子6の異方性散乱特性は、散乱特性が測定される少なくとも2つの互いに直角な方向、即ち優先方向とこれに垂直な方向に関する散乱特性の測定に基づいて特徴付けられる。この場合、特に例えば光が導光板3をほぼ垂直に通過する際に出射素子6によって引き起こされる散乱特性を考慮すべきである。しかしまた、導光板3上の垂直方向以外の基準方向も考慮することができる。
【0085】
「垂直」及び「水平」という用語は、まず一般に優先方向と、バックライトの表面又は導光板の主要面上でこれに直角な方向を指す。有利には、観察者が照明装置1aを見る際の優先方向は垂直方向に対応し、これと直角な方向は水平方向に対応しており、出射素子6の散乱特性は水平方向よりも垂直方向で大きくなる。原則として水平方向は、少なくともこの点で向きを変えない導光板を備えた画面の場合、地表面上の水平線にも対応している。しかしながら、一般に水平方向は、視聴者の目と目を結ぶ線に平行な方向として理解されるべきであり、例えば携帯端末の場合のように観察者若しくはこの線が動くと、観察されている画面の位置も変化することを前提とする。モバイル画面の座標系に関して、いずれの方向を水平とし、いずれの方向を垂直とするかは最終的には任意であり、両方向は直交してさえいればよい。
【0086】
この点に関して、
図5Aは、異方性散乱特性を具体的に説明するために、光線が主要面を透過する導光板3の上面の原理図を示す。円内の点で、導光板3に下方から垂直に入射する光線を表しており、この光線は導光板3を主要面から主要面へと透過し、その際に(図示されていない)出射素子6にも当たる。水平方向の短い破線矢印は、垂直方向の長い破線矢印と比較して、対応する出射素子6の異方性散乱特性に基づき、散乱特性は垂直方向よりも水平方向の方が小さいことを表している。
【0087】
図5Bは、優先方向に直角な方向、即ちここでは水平方向における導光板3の断面図を示す。これに対して
図5Cは、優先方向、即ちここでは垂直方向における導光板3の断面図を示す。それぞれ出射素子は記入されていない。太い矢印はそれぞれ、ここでは図示されていないバックライト2から放射されて、両主要面(ここでは上側と下側)を貫通して導光板3を透過する光を表している。破線の矢印は、最大散乱角度範囲を示しており、これは
図5Cの優先方向の方が
図5Bのこれに直角な方向よりも明らかに大きい。
【0088】
導光板の少なくとも1つの主要面で光を出射するための出射素子は、好適にはマイクロレンズ及び/又はマイクロプリズム及び/又は回折構造及び/又は3次元構造要素及び/又は散乱要素からなり、それらの最大寸法における延長は最大100マイクロメートル、好適には最大50マイクロメートである。
【0089】
図6Aは、ここではマイクロプリズムの形態の出射素子6の例示的な形状の原理図を示す。このタイプの出射素子は、例えば空気で満たされた切欠きとして、導光板3の一方又は両方の主要面上に及び/又は容積内に均一に又は好適には不均一に(即ち例えば(例外を除いて)光源4からの距離が大きくなるほど面積当たりの数が多くなるように)分布させることができる。もちろん他の形態の出射素子6も可能であり、
図6B及び
図6Cに示されている。機能面は、それぞれ斜め上方を向く面である。
図6Aに示す出射素子6は、単純化された形状を有する。原則としてここで平坦に表現されている機能面は、その上縁部と下縁部がやや丸みを帯びており、
図6B及び
図6Cに示すように、その全輪郭でも1次元又は2次元の曲率を有することができる。典型的な寸法は、各空間次元において1μm~100μm、好適には2μm~40μmであり、高さ(図示の面で垂直方向)は好適には20μmを超えない。
【0090】
図7Aは、
図6Aに例示的に示した出射素子6の上面図であり、この出射素子6は、例えば入光面、即ちバックライトから放射された光が入射する導光板の主要面に切欠きとして形成することができる。ここでは記入されていない光線は下から、即ち入光面に垂直な図示の面の下方からこれに直角に入光面に当たる。機能面5での偏向により、光は優先方向、ここでは図示の面内で上方を指す垂直方向に最大45°偏向される。機能面5は優先方向に直角に作用しないため、この方向では散乱効果は著しく少なくなる。
【0091】
図7Bは、
図7Aの出射素子の断面図であり、出射素子は導光板内の材料切欠きとして形成され、その材料は対応するハッチングで示されている。機能面5により、光は2つの矢印で示された屈折と散乱によって、優先方向(ここでは図示の面内の水平方向)に偏向される。機能面5はこれに直角に、即ち図示の面にも直角に作用しない。しかしながら、出射素子の3次元的延長の残留効果により、原理的に望ましくない散乱成分が優先方向に直角に発生する。
【0092】
最後に、
図7Cは、
図7Bの出射素子とは対照的に、2つの機能面5を持つ別の出射素子の断面図を示す。この出射素子6も、同様に材料内の切欠きとして形成されている。機能面5の作用は、
図7Bの作用に対応する。
【0093】
上述した照明装置1aのすべての変形例について、照明装置1aが引き続き、観察方向で照明装置1aの前方に画面1として配置された透過型画像表示器を、好ましくはLCDパネルの形態で含み、これが照明装置1aに基づいて自由視モードB1と制限視モードB2の少なくとも2つの動作モードで動作可能であれば、非常に有利である。
【0094】
若干のケースでは、画面1も、主要面を貫通して画面1を透過する光に対して異方性散乱特性を有するならば有用であり得る。この場合、画面1の散乱特性が少なくなる優先方向は、導光板でも散乱特性が少なくなる優先方向に対応すべきである。これは多くの場合、水平方向である。
【0095】
画面1の上側及び/又は導光板3の少なくとも1つの主要面に、更に少なくとも1つの覗き見防止フィルター(ある場合)にも、反射低減又は反射制御のための手段、例えばアンチグレア及び/又は反射防止コーティングを設けることができる。
【0096】
上述したすべての実施形態において、上記の光源4は、LED又はLEDライン又はレーザーダイオードであることができる。他の変形例も考えられ、本発明の範囲内である。
【0097】
上述した本発明による照明装置及びそれを用いて実現可能な画面は、設定された課題、即ち選択的に制限された視野角によって情報の安全な表示を実現する一方、別の動作モードで視野角が制限されない自由視が可能であるようにする、実用的に実現可能な解決策を提供する。本発明は、簡単な手段で安価に実現できる。両動作モードで、使用する画面のネイティブ解像度が利用できる。更に、この解決策は、可能な限りわずかな光損失しかもたらさず、制限された視野角は可能な限り広範囲の覗き見防止効果を達成する。
【0098】
上述した本発明は、例えばPIN入力時、或いはATMや決済端末でのデータ表示、或いはパスワード入力、携帯端末での電子メール閲覧など、機密データが表示及び/又は入力される所であればどこでも有利に使用できる。上述したように、本発明は自動車内でも使用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 画面
1a 照明装置
2 バックライト
3 導光板
4 光源
5 機能面
6 出射素子
【手続補正書】
【提出日】2022-07-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自由視モードB1と、自由視モードと比較して制限された角度範囲で照明装置から光が放射される制限視モードB2の少なくとも2つの動作モードで動作可能な、画面(1)用の照明装置(1a)において、
制限された角度範囲に光を放射する面状に広がったバックライト(2)と、
観察方向でバックライト(2)の前方に位置し、2つの主要面、及び主要面をそれらの縁部で接続している幅の狭い側面を備えたプレート状導光板(3)であって、ここで、導光板(3)は、少なくとも1つ主要面上及び/又はその容積内に出射素子(6)を有しており、導光板(3)はバックライト(2)から出る光に対して少なくとも50%透明であり、各出射素子(6)は、定義された光の出射のための少なくとも1つの機能面を有し、この機能面で光が導光板(3)から出射される、プレート状導光板(3)と、
導光板(3)の幅の狭い側面に横方向に配置された光源(4)と、を含んでおり、
動作モードB2ではバックライト(2)が投入され、光源(4)が遮断されており、動作モードB1では少なくとも光源(4)が投入されているものにおいて、
出射素子(6)の少なくとも部分において、光が進出する主要面に平行な各機能面の方向ベクトルは、優先方向と最大45°の角度をなし、ここで、方向ベクトルは、このベクトルと機能面の位置依存法線ベクトルとのスカラー積の積分を最大化するベクトルであり、各法線ベクトルは、当該主要面と5°~85°の角度をなし、これにより導光板(3)は優先方向において優先方向に直角な方向よりも少なくとも1.2倍強い散乱特性を有しており、そのため両主要面を貫通して導光板(3)を透過する光に対して全体として異方性散乱特性を有することを特徴とする、照明装置(1a)。
【請求項2】
出射素子(6)の部分が全出射素子の少なくとも30%を含んでいること、及び/又は全出射素子の平均で方向ベクトルが優先方向と最大45°の角度をなすことを特徴とする、請求項1に記載の照明装置(1a)。
【請求項3】
導光板(3)は優先方向においてその反対方向よりも強い散乱特性を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の照明装置(1a)。
【請求項4】
観察者が照明装置(1a)を見る際の優先方向は垂直方向に対応しているため、導光板(3)の散乱特性は水平方向よりも垂直方向で大きく、水平方向は観察者の目と目の間の線に平行であることを特徴とする、請求項3に記載の照明装置(1a)。
【請求項5】
主要面の面積に対する出射素子の部分の機能面の面積の
比は、優先方向における出射素子(6)の散乱特性が、優先方向に直角な方向における散乱特性よりも少なくとも2倍又は3倍だけ大きくなるように決定されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の照明装置(1a)。
【請求項6】
光が進出する主要面が所定の大きさの部分領域に分割されており、それぞれの部分領域の面積に対する部分領域における機能面の面積の比が、様々な部分領域で異なるため、導光板(3)の散乱特性は、光が進出する主要面にわたって変化することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の照明装置(1a)。
【国際調査報告】