(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】子宮内膜症の非侵襲的診断のための血液バイオマーカーとしてのPSP94
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
G01N33/68
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560673
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2022058378
(87)【国際公開番号】W WO2022207685
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】アルヨシャ ミヒャエル フローア
(72)【発明者】
【氏名】エカテリーニ ゲオルゴポウロウ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン フント
(72)【発明者】
【氏名】マルティン クラマー
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045CA25
2G045CA26
2G045DA36
2G045FB03
(57)【要約】
本発明は、患者の試料におけるPSP94の量又は濃度を決定し、決定された量又は濃度を基準と比較することによって、患者が子宮内膜症を有するか又は子宮内膜症を発症するリスクがあるかどうかを評価する方法、並びに、特に初期段階において、治療法について患者を選択する方法、及び子宮内膜症に罹患しているか又は子宮内膜症に対する処置を受けている患者において疾患進行をモニタリングするための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が子宮内膜症を有するか又は子宮内膜症を発症するリスクがあるかどうかを評価する方法であって、
(a)前記患者の試料中の前立腺分泌タンパク質94(PSP94)の量又は濃度を決定することと、
(b)前記決定された量又は濃度を基準と比較することと
を含む、患者が子宮内膜症を有するか又は子宮内膜症を発症するリスクがあるかどうかを評価する方法。
【請求項2】
子宮内膜症の治療法について患者を選択する方法であって、
(a)前記患者の試料中の前立腺分泌タンパク質94(PSP94)の量又は濃度を決定することと、
(b)前記決定された量又は濃度を基準と比較することと
を含む、子宮内膜症の治療法について患者を選択する方法。
【請求項3】
前記患者が、薬物ベースの治療法について選択されている、かつ/又は外科的処置(腹腔鏡検査)について選択されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
子宮内膜症に罹患しているか、又は子宮内膜症に対する処置を受けている患者における疾患進行をモニタリングするための方法であって、前記方法が、
(a)前記患者の第1の試料中のPSP94のレベルを決定することと、
(b)前記第1の試料の後に得られた前記患者の第2の試料中のPSP94のレベルを決定することと、
(c)前記第1の試料中のPSP94の前記レベルを前記第2の試料中のPSP94の前記レベルと比較することと、
(d)工程c)の結果に基づいて、子宮内膜症に罹患しているか、又は子宮内膜症に対する処置を受けている患者における疾患進行をモニタリングすることと
を含む、子宮内膜症に罹患しているか、又は子宮内膜症に対する処置を受けている患者における疾患進行をモニタリングするための方法。
【請求項5】
疾患モニタリング及び予後についての子宮内膜症の前記評価が、改訂米国生殖医学会(rASRM)分類体系に従ってステージIVで検出される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記患者の前記試料中のPSP94の量又は濃度の上昇が、前記患者における子宮内膜症の存在を示す、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
子宮内膜症ステージIII~IV(後期)への前記疾患進行を予測するため、以前のPSP94値を基準点として使用し、次いで、PSP94を再測定する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記試料が、血液、血清、又は血漿の試料である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記評価が、rASRMステージ分類とは無関係に行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
子宮内膜症が、rASRMステージ分類によるステージIの子宮内膜症、rASRMステージ分類によるステージIIの子宮内膜症、rASRMステージ分類によるステージIIIの子宮内膜症、rASRMステージ分類によるステージIVの子宮内膜症からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
子宮内膜症の早期検出のための子宮内膜症の前記評価が、rASRM分類体系に従ってステージIで検出される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
子宮内膜症が、腹膜子宮内膜症、子宮内膜腫、深部浸潤性子宮内膜症、及び腺筋症からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
視覚的アナログスケール(VASスケール)による月経困難症及び/又は視覚的アナログスケール(VASスケール)による下腹部痛の評価を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
CA-125の量又は濃度を決定することを更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
i)PSP94の前記量若しくは濃度とCA-125の前記量若しくは濃度との比、又は
ii)PSP94の前記量若しくは濃度と月経困難症との比、又は
iii)PSP94の前記量若しくは濃度とCA-125の前記量若しくは濃度と月経困難症との比、又は
iv)PSP94の前記量若しくは濃度とVASスケールによる下腹部痛の比
を計算することを含む、請求項1又は14に記載の方法。
【請求項16】
子宮内膜症が疑われる患者を評価するためのコンピュータ実装方法であって、
(a)前記対象の試料中の第1のバイオマーカーの量又は濃度についての値を受信する工程であって、前記第1のバイオマーカーがPSP94である、前記対象の試料中の第1のバイオマーカーの量又は濃度についての値を受信する工程、
(b)任意に、前記対象の試料中の第2のバイオマーカーの量又は濃度についての値を受信する工程であって、前記第2のバイオマーカーがCA125である、前記対象の試料中の第2のバイオマーカーの前記量又は濃度についての値を受信する工程、
(c)任意に、VASスケールによる月経困難症の量又は濃度、及び/又はVASスケールによる下腹部痛についての値を受信する工程、
(d)工程(a)~(c)の前記量若しくは濃度についての前記値を前記バイオマーカーの基準及び月経困難症の量若しくは濃度と比較する工程、及び/又は前記バイオマーカーの前記量若しくは濃度及び月経困難症の前記量に基づいて子宮内膜症が疑われる前記対象を評価するためのスコアを計算する工程、並びに
(e)工程(d)で行われた前記比較及び/又は前記計算に基づいて前記対象を評価する工程
を含む、子宮内膜症が疑われる患者を評価するためのコンピュータ実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者が子宮内膜症を有するか又は子宮内膜症を発症するリスクがあるかどうかを評価する方法、治療のために患者を選択する方法、及び患者の試料中のPSP94の量又は濃度を決定し、決定された量又は濃度を基準と比較することによって子宮内膜症に罹患しているか又は子宮内膜症に対する処置を受けている患者の疾患進行をモニタリングするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
子宮内膜症は、子宮内膜腺及び子宮外の間質様病変の存在として定義される。病変は、腹膜病変、卵巣上の表在性インプラント若しくは嚢胞、又は深部浸潤性疾患であり得る。子宮内膜症は、生殖可能年齢の全女性の5~8%及び慢性骨盤痛を有する女性の70%が罹患する。子宮内膜症の有病率は、世界中で1億7600万人の女性であると推定されている(Adamson et al.J Endometr.2010;2:3-6)。これらの女性の多くでは、子宮内膜症の診断が遅れることが多く、その結果、不必要な苦痛及び生活の質の低下がもたらされる。18~45歳の患者では、7~10年の遅れがある。子宮内膜症を有する女性のほとんどが青年期に症候の発症を報告するため、早期の紹介、診断、疾患の同定及び処置は、疼痛を軽減し、疾患進行を防ぎ得る。早期診断に対する障壁には、青年期患者における診断及び処置の高コスト、並びに周期的及び非周期的な疼痛などの交絡症候の現れが含まれる(Parasar et al.Curr Obstet Gynecol Rep.2017;6:34-41)。
【0003】
子宮内膜症の診断のゴールドスタンダードは、腹腔鏡による視覚化及びその後の組織学的確認である。これまで、子宮内膜症の診断のための非侵襲的な方法は存在しない(Hsu et al.Clin Obstet Gynecol 2010:53:413-419)。診断的腹腔鏡術の間、子宮内膜症のための腹腔鏡手術における訓練及び技能を有する婦人科医は、骨盤の体系的検査を行うべきである(NICEガイドラインNG73、2017)。外科的視覚化には、信頼できる診断のために十分な専門知識、訓練及び技能が必要である。腹腔鏡手術が診断のために必要とされる(医師によって可能な限り回避される)という事実は、7~10年の診断の遅れにつながる。非侵襲的な診断試験の欠如は、症候の発症と子宮内膜症の確定診断との間の長い遅れの重大な原因となっている(Signorile及びBaldi、J Cell Physiol 2014;229:1731~1735)。したがって、子宮内膜症の診断のための、特に早期、最小及び軽度の子宮内膜症(米国生殖医学会rASRM改訂ステージI~II)の診断のための非侵襲的検査に対する満たされていない医学的必要性がある。
【0004】
子宮内膜症の非侵襲的診断は、より早期の診断及び処置を可能にし、生活の質を改善し、子宮内膜症に関連する社会的費用を削減する可能性があり、よって、世界子宮内膜症学会(WES)及び世界子宮内膜症研究財団(WERF)によって研究優先事項として選択されている(Fassbender et al.,Springer,Peripheral Blood Biomarkers for Endometriosis.2017)。したがって、子宮内膜症を診断するための非侵襲的ツールは、最終的に生活の質を改善し、妊孕性を維持することができる、より早期の診断及び介入を容易にすることができる(Parasar et al.Curr Obstet Gynecol Rep.2017;6:34-41)。
【0005】
血液バイオマーカーは、腹腔鏡術を必要とする子宮内膜症の診断の時間的遅れを減少させるために不可欠である。CA-125は最も一般的に使用される血液バイオマーカーの1つであるが、その診断有用性は子宮内膜症rASRMステージIII及びIVに限定されている(Nisenblat et al.,Cochrane Database of Systematic Reviews.2016;5:CD012179)。
【0006】
β-インヒビン又はβ-ミクロセミノタンパク質(MSMB)としても知られる前立腺分泌タンパク質94(PSP94)は、10.7KDaのタンパク質であり、免疫グロブリン結合因子ファミリーのメンバーである。これは、前立腺の管腔細胞によって産生される、ヒト精液中で2番目に豊富なタンパク質である[Lilja H,Abrahamsson PA(1988)Prostate 12:29-38]。RNA転写物はまた、子宮内膜、子宮筋層及び卵巣などの女性生殖組織においても同定されている[Baijal-Gupta M et al(2000)J Endocrinol 165:425-433]。PSP94の発現低下は、前立腺癌患者の転帰悪化と関連しており、これにより、PSP94は前立腺癌の早期検出及び前立腺癌の進行の予測のための有望なバイオマーカー候補となっている[Luebke A.et al(2018)Cancer Biol Med 16(2):10.20892/j.issn.2095-3941.2018.0384]。進行した卵巣癌を有する患者においても、PSP94の発現低下が報告されている[Yan,B.,Ma,J.,Zhang,J.et al.(2014)Onco 33:5288-5294]。
【0007】
しかしながら、子宮内膜症の徴候及び症候を示す患者の信頼できる早期の評価を可能にするバイオマーカーを使用することによる子宮内膜症の非侵襲的診断の必要性が高い。
【0008】
したがって、本発明は、これらの必要性に適合する手段及び方法を提供する。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様では、本発明は、患者が子宮内膜症を有しているか、又は子宮内膜症を発症するリスクがあるかどうかを評価する方法であって、患者の試料中のPSP94の量又は濃度を測定すること、及び測定した量又は濃度を基準と比較することを含む、方法に関する。
【0010】
第2の態様では、本発明は、子宮内膜症の治療(特に薬物ベースの治療法又は外科的治療法(腹腔鏡術))のために患者を選択する方法であって、患者の試料におけるPSP94の量又は濃度を決定することと、決定された量又は濃度を基準と比較することとを含む、方法に関する。
【0011】
第3の態様では、本発明は、子宮内膜症に罹患しているか又は子宮内膜症に対する処置を受けている患者の疾患進行をモニタリングするための方法であって、患者の試料中のPSP94の量又は濃度を決定することと、決定された量又は濃度を基準と比較することと、を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】(A)対照対子宮内膜症症例のステージIにおけるPSP94のROC曲線分析。(B)対照対子宮内膜症症例のステージIにおけるCA-125のROC曲線分析。
図1(A~B):単一バイオマーカー(A)PSP94及び(B)CA-125についての受信者操作曲線(ROC)分析。 x軸=特異度、y軸=感度
【
図1B】(A)対照対子宮内膜症症例のステージIにおけるPSP94のROC曲線分析。(B)対照対子宮内膜症症例のステージIにおけるCA-125のROC曲線分析。
図1(A~B):単一バイオマーカー(A)PSP94及び(B)CA-125についての受信者操作曲線(ROC)分析。 x軸=特異度、y軸=感度
【
図2A】子宮内膜症ステージI、II、III、IV及び対照(ステージ0)におけるPSP94の箱ひげ図(A)、並びに子宮内膜症ステージI、II、III、IV及び対照(段階0)(B)におけるCA-125の箱ひげ図。
【
図2B】子宮内膜症ステージI、II、III、IV及び対照(ステージ0)におけるPSP94の箱ひげ図(A)、並びに子宮内膜症ステージI、II、III、IV及び対照(段階0)(B)におけるCA-125の箱ひげ図。
【
図3A】子宮内膜症を有する女性及び子宮内膜症を有さない健常女性からの血清試料中のPSP94及びCA-125の箱ひげ分析(近接伸長アッセイ技術による)。
図3.(A)対照(ステージ0)、並びに子宮内膜症ステージI、II、III及びIVにおけるPSP94の箱ひげ分析。子宮内膜症を有さない対照に対するステージI/IIの子宮内膜症のROC分析のAUC値は0.80である。
図3.(B)対照(ステージ0)並びに子宮内膜症ステージI、II、III及びIVにおけるCA-125の箱ひげ分析。子宮内膜症を有さない対照に対するステージI/IIの子宮内膜症のROC分析のAUC値は0.676であった。
【
図3B】子宮内膜症を有する女性及び子宮内膜症を有さない健常女性からの血清試料中のPSP94及びCA-125の箱ひげ分析(近接伸長アッセイ技術による)。
図3.(A)対照(ステージ0)、並びに子宮内膜症ステージI、II、III及びIVにおけるPSP94の箱ひげ分析。子宮内膜症を有さない対照に対するステージI/IIの子宮内膜症のROC分析のAUC値は0.80である。
図3.(B)対照(ステージ0)並びに子宮内膜症ステージI、II、III及びIVにおけるCA-125の箱ひげ分析。子宮内膜症を有さない対照に対するステージI/IIの子宮内膜症のROC分析のAUC値は0.676であった。
【0013】
表の一覧
表1.子宮内膜症を有する女性及び対照におけるバイオマーカーPSP94、及びバイオマーカーの組み合わせの診断性能
表2.OLINK技術を使用したCA-125と比較したバイオマーカーPSP94の診断性能。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本発明者らは、血液中で測定されたPSP94が、対照と比較して、子宮内膜症を有する女性において増加することを初めて示す。本発明者らは、PSP94レベルが子宮内膜症ステージI(最小の子宮内膜症)において特異的に増加することを観察した。子宮内膜症ステージII及びIIIではPSP94のレベルが低下したが、子宮内膜症ステージIVでは再び上昇した。
【0015】
子宮内膜症、特に早期子宮内膜症の確実な診断のための非侵襲的検査に対する医学的要求性は満たされていない。血清PSP94の測定は、早期子宮内膜症を有する女性、特に、侵襲的腹腔鏡検査(手術)を必要としない非侵襲的検査では現在不可能であるrASRM基準に基づくステージIの女性を同定する非侵襲的血液ベース検査の利点を有する。さらに、本発明者らは、上述のデータの比較及び/又は計算に基づいて、当該患者を評価するため、PSP94と、任意にCA125などの第2のバイオマーカーとを測定することによって、子宮内膜症が疑われる患者を評価するためのコンピュータ実装方法を同封し、これらのデータを、任意に、VASスケールによる月経困難症及び/又はVASスケールによる下腹部痛の量若しくは濃度についての値などの更なるデータと組み合わせる。
【0016】
定義
単語「含む(comprise)」、並びに「含む(comprises)」及び「含むこと(comprising)」のような変形は、記載された整数若しくはステップ又は整数若しくはステップのグループの包含を意味するが、いかなる他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップのグループの除外を意味しないことが理解されよう。
【0017】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」、及び「the(その)」は、別途内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0018】
濃度、量、及び他の数値データは、本明細書では「範囲」の形式で表現又は提示され得る。このような範囲の形式は、便宜上及び簡潔にするために単に使用されているにすぎないことが理解され、したがって、その範囲の境界として明示的に列挙されている数値を含むだけではなく、各数値及び部分範囲があたかも明示的に列挙されているかのごとく、その範囲内に包含される個々の数値又は部分範囲の全てを含むことを柔軟に解釈するべきである。例示として、「150mgから600mg」の数値範囲は、150mgから600mgの明示的に列挙された値を含むだけでなく、示された範囲内の個々の値及び部分範囲も含むと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲には、150、160、170、180、190、・・・580、590、600mg等の個々の値、及び150から200、150から250、250から300、350から600等の部分範囲が含まれる。この同じ原理は、1つの数値のみを列挙する範囲にも適用される。さらに、このような解釈は、その範囲の幅又は記載されている特性にかかわらず、適用すべきである。
【0019】
「約」という用語は、数値に関連して使用される場合、示された数値よりも5%小さい下限値を有し、かつ示された数値よりも5%大きい上限値を有する範囲内の数値を包含することを意味する。
【0020】
本明細書で使用される場合、「指標」という用語は、症状に対する徴候又はシグナルを指すか、又は症状をモニタリングするために使用される。そのような「症状」は、細胞、組織若しくは器官の生物学的状態を指すか、又は個体の健康及び/若しくは疾患状態を指す。指標は、これらに限定されないが、ペプチド、タンパク質、及び核酸を含む分子の存在又は非存在であり得るか、細胞、又は組織、器官若しくは個体におけるそのような分子の発現レベル又はパターンの変化であり得る。指標は、個体における疾患の発生、発症若しくは存在に対する徴候であるか、又はそのような疾患の更なる進行に対する徴候であり得る。指標はまた、個体において疾患を発症するリスクに対する徴候であり得る。
【0021】
本発明の文脈において、「バイオマーカー」という用語は、生物系の生物学的状態の指標として使用される当該系内の物質を指す。当技術分野では、「バイオマーカー」という用語は、当該内因性物質(例えば、抗体、核酸プローブなど、イメージングシステム)の検出手段にも適用されることがある。本発明の文脈において、「バイオマーカー」という用語は、検出手段ではなく物質にのみ適用されるものとする。したがって、バイオマーカーは、生体内に存在する任意の種類の分子、例えば核酸(DNA、mRNA、miRNA、rRNAなど)、タンパク質(細胞表面受容体、サイトゾルタンパク質など)、代謝産物若しくはホルモン(血糖、インスリン、エストロゲンなど)、別の分子の特定の修飾に特徴的な分子(例えば、タンパク質上の糖部分又はホスホリル残基、ゲノムDNA上のメチル残基)、又は生物によって内在化された物質若しくはそのような物質の代謝産物であり得る。
【0022】
前立腺分泌タンパク質94(PSP94)は、β-インヒビン又はβ-ミクロセミノタンパク質、又はミクロセミノタンパク質-ベータ(MSMB)、ミクロセミノタンパク質(MSP)又はミクロセミノタンパク質ベータ(MSPB)、ベータ-インヒビチン、プロスチレンインヒビンペプチド(PIP)、インヒビチン様物質(ILM)、HPC13、IGBF、PN44、PRPS、PSP、PSP-94及びPSP57としても知られている。PSP94は、10.7KDaタンパク質であり、免疫グロブリン結合因子ファミリーのメンバーである。さらに、PSP94は、前立腺の上皮細胞によって分泌される3つの主要なタンパク質の1つである。これは、前立腺の管腔細胞によって産生される、ヒト精液中で2番目に豊富なタンパク質である[Lilja H,Abrahamsson PA(1988)Prostate 12:29-38]。これは、多くの他の器官:肝臓、肺、乳房、腎臓、結腸、胃、膵臓、食道、十二指腸、唾液腺、卵管、子宮体部、尿道球腺及び子宮頸部の上皮細胞によって分泌される。ヒトPSP94のアミノ酸配列は、UniProtを介してアクセスすることができる(UniProtKB-P08118を参照)。PSP94の発現低下は、前立腺癌患者の転帰悪化と関連しており、これにより、PSP94は前立腺癌の早期検出及び前立腺癌の進行の予測のための有望なバイオマーカー候補となっている[Luebke A.et al(2018)Cancer Biol Med 16(2):10.20892/j.issn.2095-3941.2018.0384]。進行した卵巣癌を有する患者においても、PSP94の発現低下が報告されている[Yan,B.,Ma,J.,Zhang,J.et al.(2014)Onco 33:5288-5294]。
【0023】
異なるアイソフォームをコードする2つの選択的にスプライシングされた転写物バリアントが、PSP94遺伝子について記載されている。RNA転写物はまた、子宮内膜、子宮筋層及び卵巣などの女性生殖組織においても同定されている[Baijal-Gupta M et al(2000)J Endocrinol 165:425-433]。本明細書で使用されるPSP94は、前述の特定のPSP94ポリペプチドのバリアントも包含する。そのようなバリアントは、特定のPSP94ポリペプチドと少なくとも同じ本質的な生物学的及び免疫学的特性を有する。特に、それらが本明細書で言及される同じ特異的アッセイによって、例えば当該PSP94ポリペプチドを特異的に認識するポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を使用するELISAアッセイによって検出可能である場合、それらは同じ本質的な生物学的及び免疫学的特性を共有する。好ましいアッセイは、添付の実施例に記載されている。さらに、本発明に従って言及されるバリアントは、少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失及び/又は付加のために異なるアミノ酸配列を有するものとし、バリアントのアミノ酸配列は、依然として、好ましくは少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%、特定のPSP94ポリペプチドのアミノ酸配列、好ましくはヒトPSP94のアミノ酸配列、より好ましくは特定のPSP94、例えばヒトPSP94の全長にわたって同一であると理解されるべきである。2つのアミノ酸配列間の同一性の程度は、上記のように決定することができる。上記で言及したバリアントは、対立遺伝子バリアント又は任意の他の種特異的ホモログ、パラログ若しくはオルソログであり得る。さらに、本明細書で言及されるバリアントは、特定のPSP94ポリペプチドの断片、又はこれらの断片が上記で言及される本質的な免疫学的及び生物学的特性を有する限り、上述の種類のバリアントを含む。そのような断片は、例えば、PSP94ポリペプチドの分解産物であり得る。リン酸化又はミリスチル化などの翻訳後修飾のために異なるバリアントが更に含まれる。
【0024】
本明細書で言及されるバイオマーカー(1つ以上のPSP94ペプチド等)は、当該技術分野で一般的に知られている方法を使用して検出することができる。検出方法は一般的に、試料中のバイオマーカーのレベルを定量する方法(定量的方法)を包含する。以下の方法のいずれがバイオマーカーの定性的及び/又は定量的検出に適しているかは、当業者に概して公知である。試料は、例えば、ウエスタン法並びにELISA、RIA、蛍光及び発光に基づく免疫学的検定法のような免疫学的検定法、並びに市販されている近接伸長法を使用して、タンパク質について簡便にアッセイすることができる。バイオマーカーを検出するための更に適切な方法は、ペプチド又はポリペプチドに特異的な物理的又は化学的特性、例えば、その正確な分子量又はNMRスペクトル等を測定することを含む。当該方法は、例えば、バイオセンサー、免疫学的検定法と連関した光学装置、バイオチップ、質量分析計、NMR分析機、又はクロマトグラフィー装置等の分析装置を含む。さらに、方法には、マイクロプレートELISAに基づく方法、完全自動化した又はロボットによる免疫学的検定(Elecsys(商標)分析装置で利用可能)、CBA(酵素によるCobalt Binding Assay、例えば、Roche-Hitachi(商標)分析装置で利用可能)、及びラテックス凝集アッセイ(例えば、Roche-Hitachi(商標)分析装置で利用可能)が含まれる。
【0025】
癌抗原125又は腫瘍抗原125と呼ばれることもある炭水化物抗原125である「CA-125」は、MUC16遺伝子によって産生され、細胞膜に会合するムチン型糖タンパク質である。CA-125は、子宮内膜、卵管、卵巣及び腹膜を含む体腔上皮に由来する上皮細胞卵巣癌のバイオマーカーである。CA-125の診断的使用は、中程度の感度の子宮内膜症ステージIII及びIV(中等度及び重度の子宮内膜症)に限定される。
【0026】
疾患の「症候」は、そのような疾患を有する組織、器官又は生物によって顕著な疾患の暗示であり、以下に限定されないが、組織、器官又は個体の疼痛、脱力感、圧痛、緊張、硬直及び痙攣を含む。疾患の「兆候」又は「シグナル」には、以下に限定されないが、バイオマーカー若しくは分子マーカー等の特定のインジケータの有無、増加若しくは上昇、減少若しくは低下等の変化(change)若しくは変化(alteration)、又は症候の発症、存在若しくは悪化が含まれる。疼痛の症候には、以下に限定されないが、持続性又は様々な灼熱痛、拍動痛、かゆみ又は刺痛として感じられ得る不快な感覚が含まれる。
【0027】
「疾患」及び「障害」という用語は、本明細書では互換的に使用され、異常な症状、特に組織、器官又は個体がもはやその機能を効率的に果たすことができない病気又は損傷などの異常な医学的症状を指す。必ずしもそうとは限らないが、典型的には、疾患は、そのような疾患の存在を示す特定の症候又は兆候に関連する。したがって、そのような症候又は兆候の存在は、疾患に罹患している組織、器官又は個体を示し得る。これらの症候又は兆候の変化は、そのような疾患の進行を示し得る。疾患の進行は、典型的には、疾患の「悪化」又は「好転」を示し得る、そのような症候又は兆候の増加又は減少を特徴とする。疾患の「悪化」は、組織、器官又は生物がその機能を効率的に果たす能力の減少を特徴とするのに対して、疾患の「好転」は、典型的には、組織、器官又は個体がその機能を効率的に果たす能力の増加を特徴とする。疾患を「発症するリスク」にある組織、器官又は個体は、健康な状態にあるが、疾患が顕在化する可能性を示す。典型的には、疾患を発症するリスクは、そのような疾患の早期又は弱い兆候又は症候に関連する。そのような場合、疾患の発症は依然として処置によって予防され得る。疾患の例には、炎症性疾患、感染性疾患、皮膚症状、内分泌疾患、腸疾患、神経障害、関節疾患、遺伝性障害、自己免疫疾患、外傷性疾患、及び様々な種類の癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
「子宮内膜症」は、子宮外の子宮内膜様組織の病変を特徴とする慢性のホルモン依存性炎症性疾患である。子宮内膜症の臨床所見は、患者によって大きく異なる。子宮内膜症患者は、月経間出血、有痛期間(月経困難症)、有痛性性交(性交疼痛症)、有痛性排便(排便障害)及び有痛性排尿(排尿障害)などの症候を呈することが多い。子宮内膜症に起因する骨盤痛は通常慢性的であり(6ヶ月以上持続する)、月経困難症(症例の50~90%において)、性交疼痛症、骨盤深部痛、並びに背部痛及び腰部痛を伴う又は伴わない下腹部痛に関連する。疼痛は、月経周期全体にわたって予測不能かつ断続的に起こり得るか、又は連続的であり得、鈍く、拍動し、又は鋭く、身体活動によって悪化し得る。膀胱及び腸に関連する症候(悪心、膨満、及び早期満腹)は、典型的には周期的である。疼痛はしばしば経時的に悪化し、性質が変化し得、まれに、女性は、神経障害性成分を示唆する症候である灼熱感又は過敏症を訴える。多くの場合、子宮内膜症は無症候性であり得、不妊症の評価中にのみ臨床医の注意を引く(Sinaiiら、Fertil Steril.2008;89(3):538~545)。子宮内膜症を有する女性では、受精能力のあるカップル(15~20%)と比較して、月経周期ごとの妊娠率が低下する(2~10%)。子宮内膜症は妊孕性を損なうが、通常、受胎を完全に妨げるわけではない(Fadhlaoui et al.Front Surg.2014;1:24)。
【0029】
子宮内膜症を最も一般的に罹患する部位は骨盤器官及び腹膜であるが、肺などの身体の他の部分が時折罹患する。疾患の程度は、他の点では正常な骨盤器官上の少数の小さな病変から大きな卵巣子宮内膜症性嚢胞(子宮内膜腫)及び/又は骨盤の解剖学的構造の著しい歪みを引き起こす広範囲の線維症及び癒着形成まで様々である。位置に基づいて、子宮内膜病変は、腹膜子宮内膜症、卵巣子宮内膜症性嚢胞(子宮内膜腫)、及び深部結節(深部浸潤性子宮内膜症)に分類することができる(Kennedyら、Hum Reprod.2005;20(10):2698~2704)。
【0030】
「rASRMステージ」又は「rASRMステージ分類」という用語は、米国生殖医学会(ASRM)によって確立された、外科(腹腔鏡術)での所見に基づく子宮内膜症の重症度を記載する改訂分類系を指す。分類は、赤色、白色及び黒色の病変などの腹膜及び骨盤インプラントの形態に基づき、各病変の関与の割合を含めるべきである。子宮内膜インプラント、プラーク、子宮内膜腫及び癒着の数、サイズ及び位置に留意すべきである。腸、尿路、卵管、膣、頸部、皮膚、又は他の場所の子宮内膜症は、ASRMガイドラインに従って記録されるべきである。ASRMガイドラインによる子宮内膜症のステージは、ポイントスコアに基づいて決定されたステージI、II、III及びIVであり、最小、軽度、中程度及び重度の子宮内膜症に対応する。rASRMステージI及びIIの子宮内膜症(最小から軽度の子宮内膜症)は、表在性腹膜子宮内膜症、小さな深い病変の存在の可能性、子宮内膜腫の非存在及び/又は軽度の膜状癒着によって定義されるrASRMステージIII及びIVの子宮内膜症(中等度から重度の子宮内膜症)は、表在性腹膜子宮内膜症、子宮と腸との間に中程度から広範囲の癒着を伴う深部浸潤性子宮内膜症、及び/又は卵巣と管とを含む中程度から広範囲の癒着を伴う子宮内膜腫性嚢胞の存在によって定義される。
【0031】
視覚的アナログスケールである「VAS」という用語は、疼痛の強度を評価するための道具である。VASは、長さ10cmの水平線からなり、その端部は「疼痛なし」及び「考えられる最大の疼痛」としてマークされている。各患者はライン上で自分の疼痛レベルをチェックし、一番左の「疼痛なし」からチェックしたマークまでの距離をセンチメートルで測定し、0~10の疼痛スコアを得る。「疼痛なし」は疼痛スコア0に対応し、「考えられる最大の疼痛」は疼痛スコア10に対応する。子宮内膜症を有する女性では、月経困難症は約6の平均VASスコアで疼痛の最も高い知覚に関連付けられる(Cozzolino et al.Rev Bras Ginecol Obstet 2019;41(3):170-175)。
【0032】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物、より典型的にはヒトを指す。患者は、好ましくはヒト女性である。子宮内膜症は、月経開始時から発症するため、若年時に診断する必要がある。したがって、患者は、好ましくは12~24歳の若齢又は青年期のヒト女性である。本発明の実施形態では、患者は、若齢又は青年期のヒト女性である。
【0033】
「試料」又は「目的の試料」という用語は、本明細書において互換的に使用され、組織、器官若しくは個体の部分又は片を指し、通常、組織、器官又は個体の全体を表すことが意図されているこのような組織、器官又は個体よりも小さい。分析に際して、試料は、組織の状態、又は器官若しくは個体の健康若しくは疾患状態に関する情報をもたらす。試料の例は、限定されるものではないが、血液、血清、血漿、滑液、尿、唾液、及びリンパ液などの流体試料、又は組織抽出物、軟骨、骨、滑膜、及び結合組織などの固形試料を含む。試料の分析は、視覚的又は化学的に達成され得る。視覚的分析には、試料の形態学的評価を可能にする組織、器官又は個体の顕微鏡イメージング又は放射線スキャニングが含まれるが、これらに限定されない。化学的分析には、特定のインジケータの有無又はそれらの量、濃度若しくはレベルの変化の検出が含まれるが、これらに限定されない。試料は、in vitroでの試料であり、in vitroで分析されることになり、体内に戻されることはない。
【0034】
「量」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書で言及されるバイオマーカーの絶対量、当該バイオマーカーの相対量又は濃度、及びそれらと相関する又はそれらから導き出され得る任意の値又はパラメータを包含する。このような値又はパラメータは、直接的な測定により当該ペプチドから得られる、全ての具体的な物理的又は化学的特性に由来する強度シグナル値、例えば、質量スペクトル又はNMRスペクトルにおける強度値を含む。さらに、本明細書の別の箇所で明示される間接測定により得られる値又はパラメータ(例えば、ペプチドに応答して生物学的読み出しシステムにより測定される応答量、又は特異的に結合したリガンドから得られる強度シグナル)は全て包含される。上述の量又はパラメータと相関する値は、全ての標準的な数学的演算によっても得ることができるということを理解されたい。
【0035】
「比較する」という用語は、本明細書で使用される場合、対象からの試料におけるバイオマーカーの量を、本明細書の別の箇所で明示されるバイオマーカーの基準量と比較することを指す。本明細書で使用される場合の比較することは、通常、対応するパラメータ又は値の比較を指し、例えば、絶対量は基準の絶対量と比較されるのに対し、濃度は基準の濃度と比較され、又は試料中のバイオマーカーから得られた強度シグナルは基準試料から得られた同じ種類の強度シグナルと比較されることを理解されたい。比較は、手作業又はコンピュータを利用して実施してもよい。したがって、比較は、コンピューティングデバイスによって実施することができる。対象からの試料におけるバイオマーカーの測定量又は検出量、及び基準量の値は、例えば、互いに比較することができ、また当該比較は、比較のためのアルゴリズムを実行するコンピュータプログラムにより自動的に実施され得る。当該評価を実施するコンピュータプログラムは、適切な出力形式で、所望の評定を提供する。コンピュータを利用した比較において、測定量の値は、コンピュータプログラムにより、データベースに保存されている好適な基準に相当する値と比較されてもよい。コンピュータプログラムは、比較の結果を更に評価してもよく、すなわち、適切な出力形式で所望の評定を自動的に提供してもよい。コンピュータを利用した比較において、測定量の値は、コンピュータプログラムにより、データベースに保存されている好適な基準に相当する値と比較されてもよい。コンピュータプログラムは、比較結果を更に評価してもよく、すなわち、好適なアウトプット様式で所望の評定を自動的に提供してもよい。
【0036】
表現「決定された量又は濃度を基準と比較すること」とは、いずれにせよ、当業者に明らかなことを更に説明するために使用されているにすぎない。基準濃度は対照試料において確立される
【0037】
「基準試料」又は「対照試料」という用語は、本明細書で使用される場合、目的の試料と実質的に同一の様式で分析され、その情報が目的の試料の情報と比較される試料を指す。これにより、基準試料により、目的の試料から入手された情報の評価を可能にする基準が提供される。対照試料は、健常な又は正常な組織、器官、又は個体に由来し、それにより、組織、器官、又は個体の健康状態の基準が提供される。正常な基準試料の状態と目的の試料の状態との間の差は、疾患発症のリスク又はそのような疾患若しくは障害の存在若しくは更なる進行を示し得る。対照試料は、異常な又は疾患を有する組織、器官、又は個体に由来し得、それにより、組織、器官、又は個体の病的状態の基準が提供される。異常な基準試料の状態と目的の試料の状態との間の差は、疾患発症のリスクの低下又はそのような疾患若しくは障害の欠如若しくは改善を示し得る。基準試料はまた、目的の試料と同じ組織、器官、又は個体に由来し得るが、より早い時点で採取されている。以前に採取された基準試料の状態と目的の試料の状態との間の差は、疾患の進行、すなわち経時的な疾患の改善又は悪化を示し得る。
【0038】
対照試料は、内部又は外部対照試料であり得る。内部の対照試料を使用して、すなわち、試験試料並びに同じ対象から採取した1つ以上の他の試料で、マーカーレベルを評価して、当該マーカーのレベルに変化があるかどうかを判定する。外部の対照試料については、個体に由来する試料中のマーカーの存在又は量を、所与の症状に罹患していることが知られている、若しくはそのリスクがあることが知られている個体;又は所与の症状がないことが知られている個体(すなわち「正常な個体」)中のマーカーの存在又は量と比較する。
【0039】
そのような外部の対照試料は、単一の個体から得られてもよく、又は年齢が一致し、交絡疾患がない基準集団から得られてもよいことが当業者には理解されよう。典型的には、適切な基準集団からの十分に特徴付けられた100名の個体からの試料を使用して、「基準値」を設定する。しかしながら、基準集団はまた、20、30、50、200、500又は1000名の個体からなるように選択され得る。健康な個体は、対照値を設定するための好ましい基準集団を表す。
【0040】
例えば、患者試料中のマーカー濃度を、特定の疾患の特定の経過に関連することが知られている濃度と比較し得る。通常、試料のマーカー濃度は、診断と直接的又は間接的に相関し、マーカー濃度は、例えば、個体が特定の疾患のリスクがあるかどうかを判定するために使用される。あるいは、試料のマーカー濃度は、例えば、特定の疾患における治療に対する応答、特定の疾患の診断、特定の疾患の重症度の評価、特定の疾患に対する適切な薬物を選択するためのガイダンス、疾患進行のリスクを判定する際、又は患者のフォローアップにおいて関連することが知られているマーカー濃度と比較し得る。意図する診断用途に応じて、適切な対照試料が選択され、その中にマーカーについての対照値又は基準値が設定される。当業者にも明らかなように、対照試料で設定された絶対マーカー値は、使用されるアッセイに依存する。
【0041】
本明細書で使用される場合、「評価する」という用語は、患者が子宮内膜症に罹患しているか、又は子宮内膜症を発症するリスクがあるかどうかを評価することを指す。したがって、本明細書で使用される評価には、子宮内膜症を診断すること、子宮内膜症を発症するリスクを予測すること、子宮内膜症の治療法を選択すること、患者の試料中のPSP94の量又は濃度を決定することによって、子宮内膜症に罹患しているか又は子宮内膜症に対する処置を受けている患者をモニタリングすること、及び決定された量又は濃度を基準と比較することが含まれる。典型的には、本発明に従って言及される評価は、子宮内膜症を発症するリスクの評価、したがって子宮内膜症を発症するリスクの予測である。
【0042】
さらに、子宮内膜症を発症するリスク又は健康状態の悪化のリスクが予測される場合、典型的には、予測は6ヶ月及び2年の予測ウィンドウ内で行われることが理解されよう。より典型的には、当該予測ウィンドウは、骨盤痛などの症候に依存する非侵襲的試験の約6ヶ月~12ヶ月の時間ウィンドウである。
【0043】
当業者によって理解されるように、本発明に従って行われる評価は、調査された対象の100%について正しいことが好ましいが、通常は100%正しくない場合がある。この用語は、典型的には、対象の統計学的に有意な部分が正確に評価され得ることを必要とする。部分が統計的に有意であるかどうかは、様々な周知の統計評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントt検定、マン-ホイットニー検定などを使用して、当業者によって更に難なく決定されることができる。詳細は、Dowdy and Wearden,Statistics for Research,John Wiley&Sons,New York 1983に見出すことができる。典型的に想定される信頼区間は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%である。p値は、典型的には、0.2、0.1、0.05である。
【0044】
指標の「低下した」又は「減少した」レベルという用語は、基準又は基準試料と比較して減少している、試料中のそのような指標のレベルを指す。
【0045】
インジケータの「上昇した」又は「増加した」レベルという用語は、基準又は基準試料と比較してより高い試料中のそのようなインジケータのレベルを指す。例えば、所与の疾患に罹患している1個体の流体試料中で、当該疾患に罹患していない個体の同じ流体試料中よりも高い量で検出可能なタンパク質は、上昇したレベルを有する。
【0046】
「測定」、「測定する」又は「決定する」という用語は、好ましくは定性的、半定量的又は定量的測定を含む。
【0047】
「免疫グロブリン(Ig)」という用語は、本明細書で使用される場合、免疫グロブリンスーパーファミリーの糖タンパク質を付与する免疫を指す。「表面免疫グロブリン」は、それらの膜貫通領域によってエフェクター細胞の膜に付着しており、以下に限定されないが、B細胞受容体、T細胞受容体、クラスI及びII主要組織適合複合体(MHC)タンパク質、ベータ2ミクログロブリン(約2M)、CD3、CD4及びCDS等の分子を包含する。
【0048】
典型的には、「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、膜貫通領域を欠き、したがって血流及び体腔に放出され得る分泌型免疫グロブリンを指す。ヒト抗体は、それらが保有する重鎖に基づいて異なるアイソタイプに分類される。ギリシャ文字により示される5種類のヒトIg重鎖:α、γ、δ、ε及びμが存在する。存在する重鎖の種類は、抗体のクラス(すなわち、これらの鎖は、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM抗体にそれぞれ見られる)を定義し、それぞれ異なる役割を果たし、異なる種類の抗原に対する適切な免疫応答を指示する。異なる重鎖は、サイズ及び組成が異なり、約450個のアミノ酸を含み得る(Janeway et al.(2001)Immunobiology,Garland Science)。IgAは、腸、気道及び泌尿生殖路などの粘膜領域、並びに唾液、涙及び母乳中に見出され、病原体によるコロニー形成を防止する(Underdown及びSchiff(1986)Annu.Rev.Immunol.4:389-417)。IgDは主に、抗原に曝露されていないB細胞上の抗原受容体として機能し、好塩基球及び肥満細胞を活性化して抗微生物因子を産生することに関与している(Geisberger et al.(2006)Immunology 118:429-437;Chen et al.(2009)Nat.Immunol.10:889-898)。IgEは、肥満細胞及び好塩基球からのヒスタミン放出を引き起こすアレルゲンへの結合を介してアレルギー反応に関与する。IgEは、寄生虫からの保護にも関与する(Pier et al.(2004)Immunology,Infection,and Immunity,ASM Press)。IgGは、侵入病原体に対する抗体ベースの免疫の大部分を提供し、胎盤を通過して胎児に受動免疫を与え得る唯一の抗体アイソタイプである(Pier et al.(2004)Immunology,Infection,and Immunity,ASM Press)。ヒトでは4つの異なるIgGサブクラス(IgGl、2、3、及び4)があり、血清中の存在量の順に命名され、IgGlが最も多く(約66%)、IgG2(約23%)、IgG3(約7%)、及びIgG(約4%)がこれに続く。異なるIgGクラスの生物学的プロファイルは、それぞれのヒンジ領域の構造によって決定される。IgMは、単量体形態、及び非常に高いアビディティーを有する分泌型五量体形態でB細胞の表面に発現される。IgMは、十分なIgGが産生される前のB細胞媒介(体液性)免疫の初期段階で病原体を排除することに関与する(Geisberger et al.(2006)Immunology 118:429-437)。抗体は、単量体として見出されるだけでなく、2つのIgユニットの二量体(例えばIgA)、4つのIgユニットの四量体(例えば、硬骨魚のIgM)、又は5つのIgユニットの五量体(例えば哺乳動物IgM)を形成することもよく知られている。抗体は、典型的には、ジスルフィド結合を介して連結される、2つの同一の重鎖及び2つの同一の軽鎖を含む4つのポリペプチド鎖から作製され、「Y」形状の巨大分子に類似する。鎖の各々は、いくつかの免疫グロブリンドメインを含み、そのうちのいくつかは定常ドメインであり、他のものは可変ドメインである。免疫グロブリンドメインは、2~シート状に配置された7~9本の逆平行~鎖の2層サンドイッチからなる。典型的には、抗体の重鎖は4つのIgドメインを含み、そのうちの3つは定常(CHドメイン:CHI.CH2.CH3)ドメインであり、そのうちの1つは可変ドメイン(VH)である。軽鎖は、典型的には、1つの定常Igドメイン(CL)及び1つの可変Igドメイン(VL)を含む。例示すると、ヒトIgG重鎖は、N末端からC末端にVwCH1-CH2-CH3の順序(VwCyl-Cy2-Cy3とも称される)で連結された4つのIgドメインで構成されており、一方、ヒトIgG軽鎖は、N末端からC末端にVL-CLの順序で連結された2つの免疫グロブリンドメインで構成されており、カッパ型又はラムダ型のいずれか(VK-CK又はVA-CA)である。例示すると、ヒトIgGの定常鎖は447個のアミノ酸を含む。本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、免疫グロブリンのアミノ酸位置のナンバリングは、Kabat,E.A.,Wu,T.T.,Perry,H.M.,Gottesman,K.S.,and Foeller,C.,(1991)Sequences of proteins of immunological interest,5thed.U.S.Department of Health and Human Service,National Institutes of Health,Bethesda,MDにおけるような「EUインデックス」のナンバリングである。「KabatにおけるようなEUインデックス」とは、ヒトIgG lEU抗体の残基ナンバリングを指す。したがって、IgGの文脈におけるCHドメインは以下の通りである:「CH1」は、KabatにおけるようなEUインデックスによるアミノ酸位置118~220位を指し;「CH2」は、KabatにおけるようなEUインデックスによるアミノ酸位置237~340位を指し;「CH3」は、KabatにおけるようなEUインデックスによるアミノ酸位置341~44 7位を指す。
【0049】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、以下に定義の抗体断片ではない、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すために、本明細書で互換的に使用される。これらの用語は、具体的には、Fc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0050】
抗体のパパイン消化により、各々単一の抗原結合部位を有する「Fab断片」(「Fab部分」又は「Fab領域」とも称される)と、容易に結晶化するその能力を反映して命名された残りの「Fc断片」(「Fc部分」又は「Fc領域」とも称される)と呼ばれる、2つの同一の抗原結合断片が産生される。ヒトIgG Fe領域の結晶構造は決定されている(Deisenhofer(1981)Biochemistry 20:2361-2370)。IgG、IgA及びIgDアイソタイプでは、Fe領域は、抗体の2つの重鎖のCH2及びCH3ドメインに由来する2つの同一のタンパク質断片から構成され、IgM及びIgEアイソタイプでは、Fe領域は、各ポリペプチド鎖に3つの重鎖定常ドメイン(CH2~4)を含む。さらに、より小さい免疫グロブリン分子が天然に存在するか、又は人工的に構築されている。「Fab’断片」という用語は、Ig分子のヒンジ領域を追加で含むFab断片を指し、一方で「F(ab’)2断片」は、化学的に連結されているか又はジスルフィド結合を介して結合されている2つのFab’断片を含むと理解される。「単一ドメイン抗体(sdAb)」、(Desmyter et al.(1996)Nat.Structure Biol.3:803-811))及び「ナノボディ」は単一のVHドメインのみを含むが、「一本鎖Fv(scFv)」断片は、短いリンカーペプチドを介して軽鎖可変ドメインに連結された重鎖可変ドメインを含む(Huston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85,5879-5883)。二価の一本鎖可変断片(di-scFv)は、2つのscFv(scFvA-scFvB)を連結することによって操作することができる。これは、2つのVH領域及び2つのVL領域を有する単一のペプチド鎖を生成することによって行われ得、「タンデムscFv」(VHA-VLA-VHB-VLB)を得る。別の可能性は、2つの可変領域が一緒に折り畳まれるには短すぎるリンカーを有するscFvの作製であり、scFvを強制的に二量体化させる。通常、5残基の長さを有するリンカーが、これらの二量体を生成するために使用される。この種類は、「ダイアボディ」として公知である。VHドメインとVLドメインとの間の更に短いリンカー(1個又は2個のアミノ酸)は、単一特異性三量体、いわゆる「トリアボディ」又は「トリボディ」の形成をもたらす。二重特異性ダイアボディは、それぞれ配列VHA-VLB及びVHB-VLA又はVLA-VHB及びVLB-VHAを有する鎖に発現させることによって形成される。一本鎖ダイアボディ(scDb)は、12~20個のアミノ酸、好ましくは14個のアミノ酸のリンカーペプチド(P)によって連結されたVHA-VLB及びVHB-VLA断片(VHA-VLB-P-VHB-VLA)を含む。「二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)」は、異なる抗体の2つのscFvからなる融合タンパク質であり、scFvの一方はCD3受容体を介してT細胞に結合し、他方は腫瘍特異的分子を介して腫瘍細胞に結合する(Kufer et al.(2004)Trends Biotechnol.22:238-244)。二重親和性再標的化分子(「DART」分子)は、C末端ジスルフィド架橋によって更に安定化されたダイアボディである。
【0051】
したがって、「抗体断片」という用語は、インタクトな抗体の、好ましくはその抗原結合領域を含む部分を指す。抗体断片には、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片;ダイアボディ;sdAb、ナノボディ、scFv、di-scFv、タンデムscFv、トリアボディ、ダイアボディ、scDb、BiTE、及びDARTが含まれるが、これらに限定されない。
【0052】
「結合親和性」という用語は、一般に、分子(例えば抗体)の単一の結合部位と、その結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有相互作用の合計の強度を指す。別段示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原との)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性のことを指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は一般に、解離定数(Kd)によって表され得る。親和性は、限定されないが、表面プラズモン共鳴に基づくアッセイ(例えば、PCT出願公開WO2005/012359号に記載されているようなBIAcoreアッセイ);酵素結合免疫吸着測定法(ELISA);及び競合アッセイ(例えば、RIA)を含む、当技術分野で公知の一般的な方法によって測定し得る。低親和性抗体は、一般に、抗原とゆっくり結合し、容易に解離する傾向にあるが、高親和性抗体は、一般に、抗原と迅速に結合し、より長く結合したままの傾向にある。結合親和性の種々の測定方法が当技術分野で公知であり、これらのいずれも、本発明の目的に対して使用することができる。
【0053】
「サンドイッチイムノアッセイ」は、目的の分析物の検出に広く使用されている。そのようなアッセイでは、分析物は、第1の抗体と第2の抗体との間に「サンドイッチされる」。典型的には、サンドイッチアッセイは、捕捉及び検出抗体が目的の分析物上の重複しない異なるエピトープに結合することを必要とする。適切な手段によって、そのようなサンドイッチ複合体が測定され、それにより分析物が定量される。典型的なサンドイッチ型アッセイでは、固相に結合した、又は固相に結合することができる第1の抗体、及び検出可能に標識された第2の抗体は各々、重複しない異なるエピトープで分析物に結合する。第1の分析物に特異的な結合剤(例えば、抗体)は、固体表面に共有結合しているか又は受動結合している(passively bound)かのいずれかである。固体表面は、典型的にはガラス又はポリマーであり、最も一般的に使用されるポリマーは、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はポリプロピレンである。固体支持体は、チューブ、ビーズ、マイクロプレートのディスク、又はイムノアッセイの実施に好適な任意の他の表面であっても良い。結合プロセスは、当技術分野でよく知られており、一般に、架橋共有結合、又は物理的吸着からなり、ポリマー-抗体複合体は、試験試料に備えて洗浄される。次いで、試験される試料のアリコートを固相複合体に添加し、第1の抗体又は捕捉抗体と対応する抗原との間の結合を可能にするのに十分な期間(例えば2~40分又はより好都合であれば一晩)及び適切な条件下(例えば、室温~40℃、例えば25℃~37℃(両端を含む))でインキュベートする。インキュベーション期間に続いて、第1の抗体又は捕捉抗体、及び抗体に結合した抗原を含む固相を洗浄し、抗原上の別のエピトープに結合する二次抗体又は標識抗体と共にインキュベートすることができる。第2の抗体は、第1の抗体と目的の抗原との複合体に対する第2の抗体の結合を示すために使用するレポーター分子に結合される。
【0054】
非常に用途の広い代替サンドイッチアッセイ形式には、結合対の第1のパートナーでコーティングされた固相、例えば、常磁性ストレプトアビジンでコーティングした微粒子の使用が含まれる。このような微粒子を、結合対の第2のパートナー(例えば、ビオチン化抗体)に結合した分析物に特異的な結合剤、結合対の当該第2のパートナーが当該分析物に特異的な結合剤に結合している分析物を含むと疑われる又は含んでいる試料、及び検出可能に標識された第2の分析物に特異的な結合剤と共にインキュベートする。当業者には明らかなように、これらの成分は、適切な条件下で、分析物、結合対の第2のパートナー(に結合した)分析物に特異的な結合剤、及び結合対の第1のパートナーを介して標識抗体を固相微粒子に結合させるのに十分な期間インキュベートされる。適宜、このようなアッセイは、1つ又は複数の洗浄工程を含んでもよい。
【0055】
「検出可能に標識した」という用語は、直接的又は間接的に検出することができる標識を包含する。
【0056】
直接的に検出可能な標識が、検出可能なシグナルを提供するか、又は標識が、第2の標識と相互作用するかのいずれかをして、第1又は第2の標識によってもたらされる検出可能なシグナルを改変して、例えば、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を与える。蛍光色素及び発光(化学発光及び電気化学発光を含む)色素等の標識(Briggs et al“Synthesis of Functionalised Fluorescent Dyes and Their Coupling to Amines and Amino Acids,”J.Chem.Soc.,Perkin-Trans.1(1997)1051-1058)は、検出可能なシグナルを提供し、一般に、標識化に適用可能である。一実施形態では、検出可能に標識されたとは、検出可能なシグナル、すなわち蛍光標識、発光標識(例えば、化学発光標識又は電気化学発光標識)、放射性標識又は金属キレート系標識をそれぞれ提供するか又は提供するように誘導可能な標識を指す。
【0057】
多数の標識(色素とも称する)が利用可能であり、これらは概して、以下の区分に分類することができ、区分は全てまとまっており、及びその各々が本開示による実施形態を表している。
【0058】
(a)蛍光色素
蛍光色素は、例えば、Briggs et al“Synthesis of Functionalized Fluorescent Dyes and Their Coupling to Amines and Amino Acids,”J.Chem.Soc.,Perkin-Trans.1(1997)1051-1058)によって記載されている。
【0059】
蛍光標識又は蛍光体には、希土類キレート(ユーロピウムキレート)、フルオレセイン型標識(FITC、5-カルボキシフルオロセイン、6-カルボキシフルオロセインを含む)、ローダミン型標識(TAMRAを含む)、ダンシル、リサミン、シアニン、フィコエリトリン、テキサスレッド、及びこれらの類似体が含まれる。蛍光標識は、本明細書に開示される技術を使用して、標的分子内に含まれるアルデヒド基に結合させることができる。蛍光色素及び蛍光標識試薬には、Invitrogen/Molecular Probes(Eugene,Oregon,USA)及びPierce Biotechnology,Inc.(Rockford,Ill.)から市販されるものが含まれる。
【0060】
(b)発光色素
発光色素又は標識は、化学発光色素及び電気化学発光色素に更に下位分類することができる。
【0061】
化学発光標識の異なるクラスには、ルミノール、アクリジニウム化合物、セレンテラジン及び類似体、ジオキセタン、ペルオキシシュウ酸及びペルオキシシュウ酸誘導体に基づく系が含まれる。免疫診断手順のためには、主にアクリジニウム系標識が使用される(詳細な概要は、Dodeigne C.et al.,Talanta51(2000)415-439において付与されている)。
【0062】
電気化学発光標識として使用される主な関連性のある標識は、それぞれルテニウム及びイリジウム系の電気化学発光錯体である。
【0063】
電気化学発光(ECL)は、高感度で選択的な方法として分析用途に非常に有用であることが証明された。ECLは、化学発光分析の分析上の利点(背景光信号の非存在)を、電極電位を適用することによる反応制御の容易さと組み合わせている。概して、ルテニウム錯体、特に液相又は液固界面においてTPA(トリプロピルアミン)を用いて再生する[Ru(Bpy)3]2+(約620nmで光子を放出)がECL標識として使用される。
【0064】
電気化学発光(ECL)アッセイは、目的の分析物の存在及び濃度の高感度かつ正確な測定を提供する。このような技法は、適切な化学的環境において電気化学的に酸化又は還元したときに発光するように誘導することができる標識又は他の反応物を使用する。このような電気化学発光は、特定の時間に特定の様式で作用電極に印加される電圧によって引き起こされる。標識によって生成された光は、測定され、分析物の存在又は量を示す。このようなECL技法のより完全な説明については、米国特許第5,221,605号、米国特許第5,591,581号、米国特許第5,597,910号、PCT出願公開WO90/05296、PCT出願公開WO92/14139、PCT出願公開WO90/05301、PCT出願公開WO96/24690、PCT出願公開US95/03190、PCT出願US97/16942、PCT出願公開US96/06763、PCT出願公開WO95/08644、PCT出願公開WO96/06946、PCT出願公開WO96/33411、PCT出願公開WO87/06706、PCT出願公開WO96/39534、PCT出願公開WO96/41175、PCT出願公開WO96/40978、PCT/US97/03653及び米国特許出願08/437,348(米国特許第5,679,519号)が参照される。また、Knight,et al.(Analyst,1994,119:879-890)によるECLの分析用途に関する1994年の総説及び総説に引用されている参考文献も参照される。一実施形態では、本明細書による方法は、電気化学発光標識を使用して実施される。
【0065】
近年、イリジウム系ECL標識も記載されている(WO2012107419)。
【0066】
(c)放射性標識は、放射性同位体(放射性核種)、例えば、3H、11C、14C、18F、32P、35S、64Cu、68Gn、86Y、89Zr、99TC、111In、123I、124I、125I、131I、133Xe、177Lu、211At、又は131Biを採用する。
【0067】
(d)イメージング及び治療目的のための標識として適切な金属キレート錯体は当技術分野でよく知られている(米国特許出願公開第2010/0111861号;米国特許第5,342,606号;米国特許第5,428,155号;米国特許第5,316,757号;米国特許第5,480,990号;米国特許第5,462,725号;米国特許第5,428,139号;米国特許第5,385,893号;米国特許第5,739,294号;米国特許第5,750,660号;米国特許第5,834,461号;Hnatowich et al,J.Immunol.Methods 65(1983)147-157;Meares et al,Anal.Biochem.142(1984)68-78;Mirzadeh et al,Bioconjugate Chem.1(1990)59-65;Meares et al,J.Cancer(1990),Suppl.10:21-26;Izard et al,Bioconjugate Chem.3(1992)346-350;Nikula et al,Nucl.Med.Biol.22(1995)387-90;Camera et al,Nucl.Med.Biol.20(1993)955-62;Kukis et al,J.Nucl.Med.39(1998)2105-2110;Verel et al.,J.Nucl.Med.44(2003)1663-1670;Camera et al,J.Nucl.Med.21(1994)640-646;Ruegg et al,Cancer Res.50(1990)4221-4226;Verel et al,J.Nucl.Med.44(2003)1663-1670;Lee et al,Cancer Res.61(2001)4474-4482;Mitchell,et al,J.Nucl.Med.44(2003)1105-1112;Kobayashi et al Bioconjugate Chem.10(1999)103-111;Miederer et al,J.Nucl.Med.45(2004)129-137;DeNardo et al,Clinical Cancer Research 4(1998)2483-90;Blend et al,Cancer Biotherapy&Radiopharmaceuticals18(2003)355-363;Nikula et al J.Nucl.Med.40(1999)166-76;Kobayashi et al,J.Nucl.Med.39(1998)829-36;Mardirossian et al,Nucl.Med.Biol.20(1993)65-74;Roselli et al,Cancer Biotherapy&Radiopharmaceuticals,14(1999)209-20)。
【0068】
実施形態
第1の態様では、本発明は、患者が子宮内膜症を有するか又は子宮内膜症を発症するリスクがあるかどうかを評価する方法であって、
a)患者の試料におけるPSP94の量を決定することと、
b)決定された量を基準と比較することと
を含む、患者が子宮内膜症を有するか又は子宮内膜症を発症するリスクがあるかどうかを評価する方法に関する。
【0069】
実施形態では、患者の試料におけるPSP94の量の上昇は、患者における子宮内膜症の存在又は発症のリスクを示す。特に、患者の試料におけるPSP94の量は、患者の試料におけるPSP94の量が基準又は基準試料中のPSP94の量よりも高い場合、患者における子宮内膜症の存在又は発症のリスクを示す。特に、PSP94は、子宮内膜症に罹患していない又は子宮内膜症を発症するリスクがない個体からの同じ流体試料中よりも、子宮内膜症の存在又は発症のリスクについて評価された患者からの流体試料中でより多くの量で検出可能である。
【0070】
特に、50%以上上昇したPSP94の量は、子宮内膜症の存在又は発症のリスクを示す。特に、100%以上上昇したPSP94の量は、子宮内膜症の存在又は発症のリスクを示す。特に、150%以上上昇したPSP94の量は、子宮内膜症の存在又は発症のリスクを示す。特に、200%以上上昇したPSP94の量は、子宮内膜症の存在又は発症のリスクを示す。
【0071】
実施形態では、患者の試料は体液試料である。特定の実施形態では、試料は、全血、血清又は血漿試料である。実施形態では、試料はin vitroでの試料である、すなわち、それはin vitroで分析され、体内に戻されない。
【0072】
特定の実施形態では、患者はヒト患者である。特定の実施形態では、患者はヒトの女性患者である。特定の実施形態では、患者は、若齢又は青年期のヒト女性である。
【0073】
実施形態では、評価される子宮内膜症は、rASRMステージ分類によるステージIの子宮内膜症、rASRMステージ分類によるステージIIの子宮内膜症、rASRMステージ分類によるステージIIIの子宮内膜症、rASRMステージ分類によるステージIVの子宮内膜症からなる群から選択される。特定の実施形態では、評価される子宮内膜症は、ステージI、ステージII、ステージIII、又はステージIVの子宮内膜症である。実施形態では、子宮内膜症は、早期子宮内膜症、特に、rASRMステージ分類によるステージIの子宮内膜症又はrASRMステージ分類によるステージIIの子宮内膜症である。特定の実施形態では、評価される子宮内膜症は、ステージIII又はステージIVの子宮内膜症である。
【0074】
実施形態では、評価される子宮内膜症は、腹膜子宮内膜症、子宮内膜腫、及び深部浸潤性子宮内膜症(DIE)からなる群から選択される。
【0075】
特定の実施形態では、評価される子宮内膜症は、rASRMステージ分類によるステージI又はIIの腹膜子宮内膜症である。
【0076】
実施形態では、評価は、rASRMステージ分類とは無関係に行われる。特に、評価は、腹腔鏡術を行うことなく行われる。特に、評価は、腹腔鏡術及び/又はrASRMステージ分類を使用して患者における子宮内膜症の存在又は重症度を評価することなく行われる。
【0077】
実施形態では、本発明の方法はin vitroでの方法である。
【0078】
実施形態では、PSP94の量は、抗体を使用して、特にモノクローナル抗体を使用して決定される。実施形態では、患者の試料におけるPSP94の量を決定する工程a)は、イムノアッセイを行うことを含む。実施形態では、イムノアッセイは、直接的又は間接的形式のいずれかで実施される。実施形態では、そのようなイムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、又は発光、蛍光、化学発光若しくは電気化学発光の検出に基づくイムノアッセイからなる群から選択される。
【0079】
特定の実施形態では、患者の試料におけるPSP94の量を決定する工程a)は、
i)患者の試料を、PSP94に特異的に結合する1つ以上の抗体とインキュベートし、それによって抗体とPSP94との複合体を生成する工程、及び
ii)工程i)で形成された複合体を定量し、それにより、患者の試料におけるPSP94の量を定量する工程を含む。
【0080】
特定の実施形態では、工程i)において、試料は、PSP94に特異的に結合する2つの抗体とインキュベートされる。当業者に明らかなように、試料は、第1の抗PSP94抗体/PSP94/第2の抗PSP94抗体複合体を形成するのに十分は時間及び条件下で、いずれかの所望の順序で、すなわち、最初に第1の抗体、次いで第2の抗体と、又は最初に第2の抗体、次いで第1の抗体と、又は同時に第1の抗体及び第2の抗体と接触させ得る。当業者であれば容易に理解するように、特異的抗PSP94抗体とPSP94抗原/分析物(=抗PSP94複合体)との間の複合体の形成、又は第1の抗PSP94抗体、PSP94(分析物)及び第2の抗PSP94抗体(=抗PSP94抗体/PSP94/第2の抗PSP94抗体複合体)を含む二次複合体若しくはサンドイッチ複合体の形成のいずれかのために適切又は十分である時間及び条件を確立することは、日常的な実験にすぎない。
【0081】
抗PSP94抗体/PSP94複合体の検出は、任意の適切な手段によって実施され得る。第1の抗PSP94抗体/PSP94/第2の抗PSP94抗体の複合体の検出は、任意の適切な手段によって実施され得る。当技術分野の当業者は、このような手段/方法に完全に精通している。
【0082】
特定の実施形態では、PSP94に対する第1の抗体、PSP94(分析物)及びPSP94に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識されている。
【0083】
一実施形態では、PSP94に対する第1の抗体、PSP94(分析物)及びPSP94に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識化され、第1の抗PSP94抗体は固相に結合することができるか、又は固相に結合されている。
【0084】
実施形態では、第2の抗体は、直接的又は間接的に検出可能に標識されている。特定の実施形態では、第2の抗体は、発光色素、特に化学発光色素又は電気化学発光色素で検出可能に標識されている。
【0085】
実施形態では、方法は、患者における月経困難症及び/又は下腹部痛の存在の評価を更に含む。実施形態では、月経困難症及び/又は下腹部痛の存在は、VASスケールにより評価される。実施形態では、月経困難症VASスコアが4以上であることは、中程度又は重度の月経困難症を示した。実施形態では、3以下のスコアは、月経困難症がないこと又は軽度であることを示す。実施形態では、方法は、CA-125の量又は濃度を決定することを更に含む。
【0086】
実施形態では、方法は、PSP94の量若しくは濃度と月経困難症との比、PSP94の量若しくは濃度とVASスケールに従う下腹部痛との比、又はPSP94の量若しくは濃度及びCA-125の量若しくは濃度を計算することを含む。
【0087】
第2の態様では、本発明は、子宮内膜症の治療のために患者を選択する方法であって、
a)患者の試料中のPSP94の量又は濃度を決定することと、
b)決定された量又は濃度を基準と比較することと
を含む、子宮内膜症の治療法について患者を選択する方法に関する。
【0088】
実施形態では、患者の試料におけるPSP94の量の上昇が判定された場合、患者は子宮内膜症の治療のために選択される。特に、患者の試料におけるPSP94の量が基準又は基準試料中のPSP94の量よりも多い場合、患者は子宮内膜症の治療のために選択される。特に、PSP94の量が、子宮内膜症に罹患していない若しくは子宮内膜症を発症するリスクがない、又は子宮内膜症の治療のために選択されていない個体からの流体試料中よりも、患者からの同じ流体試料中で多い場合、患者は子宮内膜症の治療のために選択される。
【0089】
特に、PSP94の量が50%以上上昇する場合、患者は子宮内膜症の治療のために選択される。特に、PSP94の量が100%以上上昇する場合、患者は子宮内膜症の治療のために選択される。特に、PSP94の量が150%以上上昇する場合、患者は子宮内膜症の治療のために選択される。特に、PSP94の量が200%以上上昇する場合、患者は子宮内膜症の治療のために選択される。
【0090】
実施形態では、患者は、薬物ベースの治療又は外科的治療からなる群から選択される子宮内膜症の治療のために選択される。実施形態では、子宮内膜症の外科的治療は、腹腔鏡術又は神経温存術である。実施形態では、子宮内膜症の薬物ベースの治療は、神経性炎症を阻害又は標的化すること及び/又は鎮痛薬及び/又はホルモン療法(例えば、ホルモン避妊薬又はGnRHアゴニスト)である。
【0091】
実施形態では、患者の試料は体液試料である。特定の実施形態では、試料は、全血、血清又は血漿試料である。実施形態では、試料はin vitroでの試料である、すなわち、それはin vitroで分析され、体内に戻されない。
【0092】
特定の実施形態では、患者はヒト患者である。特定の実施形態では、患者はヒトの女性患者である。特定の実施形態では、患者は、若齢又は青年期のヒト女性である。
【0093】
実施形態では、子宮内膜症は、rASRMステージ分類によるステージIの子宮内膜症、rASRMステージ分類によるステージIIの子宮内膜症、rASRMステージ分類によるステージIIIの子宮内膜症、rASRMステージ分類によるステージIVの子宮内膜症からなる群から選択される。特定の実施形態では、子宮内膜症は、ステージI、ステージII、ステージIII、又はステージIVの子宮内膜症である。実施形態では、子宮内膜症は、早期子宮内膜症、特に、rASRMステージ分類によるステージIの子宮内膜症又はrASRMステージ分類によるステージIIの子宮内膜症である。特定の実施形態では、評価される子宮内膜症は、ステージIII又はステージIVの子宮内膜症である。
【0094】
実施形態では、子宮内膜症は、腹膜子宮内膜症、子宮内膜腫、及び深部浸潤性子宮内膜症(DIE)からなる群から選択される。
【0095】
特定の実施形態では、評価される子宮内膜症は、rASRMステージ分類によるステージI又はIIの腹膜子宮内膜症である。
【0096】
実施形態では、本発明の方法はin vitroでの方法である。
【0097】
実施形態では、PSP94の量は、抗体を使用して、特にモノクローナル抗体を使用して決定される。実施形態では、患者の試料におけるPSP94の量を決定する工程a)は、イムノアッセイを行うことを含む。実施形態では、イムノアッセイは、直接的又は間接的な形式のいずれかで行われる。実施形態では、そのようなイムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、又は発光、蛍光、化学発光若しくは電気化学発光の検出に基づくイムノアッセイからなる群から選択される。
【0098】
特定の実施形態では、患者の試料におけるPSP94の量を決定する工程a)は、
i)患者の試料を、PSP94に特異的に結合する1つ以上の抗体とインキュベートし、それによって抗体とPSP94との複合体を生成する工程、及び
ii)工程i)で形成された複合体を定量し、それにより、患者の試料におけるPSP94の量を定量する工程を含む。
【0099】
特定の実施形態では、工程i)において、試料は、PSP94に特異的に結合する2つの抗体とインキュベートされる。当業者に明らかなように、試料は、第1の抗PSP94抗体/PSP94/第2の抗PSP94抗体複合体を形成するのに十分は時間及び条件下で、いずれかの所望の順序で、すなわち、最初に第1の抗体、次いで第2の抗体と、又は最初に第2の抗体、次いで第1の抗体と、又は同時に第1の抗体及び第2の抗体と接触させ得る。当業者であれば容易に理解するように、特異的抗PSP94抗体とPSP94抗原/分析物(=抗PSP94複合体)との間の複合体の形成、又は第1の抗PSP94抗体、PSP94(分析物)及び第2の抗PSP94抗体(=抗PSP94抗体/PSP94/第2の抗PSP94抗体複合体)を含む二次複合体若しくはサンドイッチ複合体の形成のいずれかのために適切又は十分である時間及び条件を確立することは、日常的な実験にすぎない。
【0100】
抗PSP94抗体/PSP94複合体の検出は、任意の適切な手段によって実施され得る。第1の抗PSP94抗体/PSP94/第2の抗PSP94抗体の複合体の検出は、任意の適切な手段によって実施され得る。当技術分野の当業者は、このような手段/方法に完全に精通している。
【0101】
特定の実施形態では、PSP94に対する第1の抗体、PSP94(分析物)及びPSP94に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識されている。
【0102】
一実施形態では、PSP94に対する第1の抗体、PSP94(分析物)及びPSP94に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識化され、第1の抗PSP94抗体は固相に結合することができるか、又は固相に結合されている。
【0103】
実施形態では、第2の抗体は、直接的又は間接的に検出可能に標識されている。特定の実施形態では、第2の抗体は、発光色素、特に化学発光色素又は電気化学発光色素で検出可能に標識されている。
【0104】
実施形態では、方法は、患者における月経困難症及び/又は下腹部痛の存在の評価を更に含む。実施形態では、月経困難症及び/又は下腹部痛の存在は、VASスケールにより評価される。実施形態では、月経困難症VASスコアが4以上であることは、中程度又は重度の月経困難症を示した。実施形態では、3以下のスコアは、月経困難症がないこと又は軽度であることを示す。
【0105】
実施形態では、方法は、CA-125の量又は濃度を決定することを更に含む。
【0106】
実施形態では、方法は、PSP94の量若しくは濃度と月経困難症との比、PSP94の量若しくは濃度とVASスケールに従う下腹部痛との比、又はPSP94の量若しくは濃度及びCA-125の量若しくは濃度を計算することを含む。
【0107】
第3の態様では、本発明は、子宮内膜症に罹患しているか又は子宮内膜症に対する処置を受けている患者における疾患進行をモニタリングするための方法であって、当該方法が、
(a)患者の第1の試料中のPSP94のレベルを決定することと、
(b)第1の試料の後に得られた患者の第2の試料中のPSP94のレベルを決定することと、
(c)第1の試料中のPSP94のレベルを第2の試料中のPSP94のレベルと比較することと、
(a)工程c)の結果に基づいて、子宮内膜症に罹患しているか、又は子宮内膜症に対する処置を受けている患者における疾患進行をモニタリングすることと
を含む、子宮内膜症に罹患しているか又は子宮内膜症に対する処置を受けている患者における疾患進行をモニタリングするための方法に関する。
【0108】
実施形態では、子宮内膜症に罹患している患者をモニタリングして、患者の試料におけるPSP94の量又は濃度が経時的に変化しているかどうかを判定する。特に、子宮内膜症に罹患している患者をモニタリングして、PSP94の量又は濃度が経時的に増加しているか、減少しているか、又は変化していないかを判定する。実施形態では、子宮内膜症に罹患している患者の試料におけるPSP94の量の上昇が判定された場合、その患者をモニタリングする。
【0109】
実施形態では、子宮内膜症に対する処置を受けている患者をモニタリングして、患者の試料におけるPSP94の量又は濃度が変化しているかどうかを判定する。特に、子宮内膜症に対する処置を受けている患者をモニタリングして、PSP94の量又は濃度が増加しているか、減少しているか、又は変化していないかを判定する。特に、子宮内膜症に対する処置を受けている患者をモニタリングして、PSP94の量又は濃度が、適用された治療に起因して増加しているか、減少しているか、又は変化していないかを判定する。実施形態では、子宮内膜症に対する処置を受けている患者におけるPSP94の量又は濃度の減少は、治療が有効であることを示す。実施形態では、子宮内膜症に対する処置を受けている患者の試料におけるPSP94の量又は濃度の不変又は増加は、治療が無効であることを示し、すなわち、子宮内膜症に対する処置を受けている患者の試料におけるPSP94の量又は濃度の不変又は増加は、持続した又は再発した子宮内膜症を示す。特に、PSP94の量が50%以上に増加している場合、子宮内膜症の処置は無効である。特に、PSP94の量が100%以上に増加している場合、子宮内膜症の処置は無効である。特に、PSP94の量が150%以上に増加している場合、子宮内膜症の処置は無効である。特に、PSP94の量が200%以上に増加している場合、子宮内膜症の処置は無効である。
【0110】
特定の実施形態では子宮内膜症に対する処置を受けている患者の試料中のPSP94の量又は濃度が変化しないか又は増加することが判定された場合に、治療が適用される。
【0111】
実施形態では、患者は、異なる時点で数回モニタリングされる。実施形態では、患者は、数週間、数ヶ月又は数年の時間フレーム内で数回モニタリングされる。特定の実施形態では、患者は、月に1回又は年に1回モニタリングされる。実施形態では、子宮内膜症に罹患している患者は、子宮内膜症の診断後、月に1回又は年に1回モニタリングされる。実施形態では、子宮内膜症に対する処置を受けている患者は、治療後に1回、特に外科的治療後に1回モニタリングされる。特に、子宮内膜症に対する処置を受けている患者は、処置の有効性及び/又は子宮内膜症の再発を判定するために、月に1回又は年に1回モニタリングされる。
【0112】
実施形態では、子宮内膜症の治療は、薬物ベースの治療又は外科的治療からなる群から選択される。実施形態では、子宮内膜症の外科的治療は、腹腔鏡術又は神経温存術である。実施形態では、子宮内膜症の薬物ベースの治療は、神経性炎症を阻害又は標的化すること及び/又は鎮痛薬及び/又はホルモン療法である。実施形態では、患者の試料は体液試料である。特定の実施形態では、試料は、全血、血清又は血漿試料である。実施形態では、試料はin vitroでの試料である、すなわち、それはin vitroで分析され、体内に戻されない。
【0113】
特定の実施形態では、患者はヒト患者である。特定の実施形態では、患者はヒトの女性患者である。特定の実施形態では、患者は、若齢又は青年期のヒト女性である。
【0114】
実施形態では、子宮内膜症は、rASRMステージ分類によるステージIの子宮内膜症、rASRMステージ分類によるステージIIの子宮内膜症、rASRMステージ分類によるステージIIIの子宮内膜症、rASRMステージ分類によるステージIVの子宮内膜症からなる群から選択される。特定の実施形態では、子宮内膜症は、ステージI、ステージII、ステージIII、又はステージIVの子宮内膜症である。実施形態では、子宮内膜症は、早期子宮内膜症、特に、rASRMステージ分類によるステージIの子宮内膜症又はrASRMステージ分類によるステージIIの子宮内膜症である。特定の実施形態では、評価される子宮内膜症は、ステージIII又はステージIVの子宮内膜症である。
【0115】
実施形態では、子宮内膜症は、腹膜子宮内膜症、子宮内膜腫、及び深部浸潤性子宮内膜症(DIE)からなる群から選択される。
【0116】
特定の実施形態では、評価される子宮内膜症は、rASRMステージ分類によるステージI又はIIの腹膜子宮内膜症である。
【0117】
実施形態では、本発明の方法はin vitroでの方法である。
【0118】
実施形態では、PSP94の量は、抗体を使用して、特にモノクローナル抗体を使用して決定される。実施形態では、患者の試料におけるPSP94の量を決定する工程a)は、イムノアッセイを行うことを含む。実施形態では、イムノアッセイは、直接的又は間接的な形式のいずれかで行われる。実施形態では、そのようなイムノアッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、又は発光、蛍光、化学発光若しくは電気化学発光の検出に基づくイムノアッセイからなる群から選択される。
【0119】
特定の実施形態では、患者の試料におけるPSP94の量を決定する工程a)は、
i)患者の試料を、PSP94に特異的に結合する1つ以上の抗体とインキュベートし、それによって抗体とPSP94との複合体を生成する工程、及び
ii)工程i)で形成された複合体を定量し、それにより、患者の試料におけるPSP94の量を定量する工程を含む。
【0120】
特定の実施形態では、工程i)において、試料は、PSP94に特異的に結合する2つの抗体とインキュベートされる。当業者に明らかなように、試料は、第1の抗PSP94抗体/PSP94/第2の抗PSP94抗体複合体を形成するのに十分は時間及び条件下で、いずれかの所望の順序で、すなわち、最初に第1の抗体、次いで第2の抗体と、又は最初に第2の抗体、次いで第1の抗体と、又は同時に第1の抗体及び第2の抗体と接触させ得る。当業者であれば容易に理解するように、特異的抗PSP94抗体とPSP94抗原/分析物(=抗PSP94複合体)との間の複合体の形成、又は第1の抗PSP94抗体、PSP94(分析物)及び第2の抗PSP94抗体(=抗PSP94抗体/PSP94/第2の抗PSP94抗体複合体)を含む二次複合体若しくはサンドイッチ複合体の形成のいずれかのために適切又は十分である時間及び条件を確立することは、日常的な実験にすぎない。
【0121】
抗PSP94抗体/PSP94複合体の検出は、任意の適切な手段によって実施され得る。第1の抗PSP94抗体/PSP94/第2の抗PSP94抗体の複合体の検出は、任意の適切な手段によって実施され得る。当業者は、このような手段/方法に完全に精通している。
【0122】
特定の実施形態では、PSP94に対する第1の抗体、PSP94(分析物)及びPSP94に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識されている。
【0123】
一実施形態では、PSP94に対する第1の抗体、PSP94(分析物)及びPSP94に対する第2の抗体を含むサンドイッチが形成され、第2の抗体は検出可能に標識化され、第1の抗PSP94抗体は固相に結合することができるか、又は固相に結合されている。
【0124】
実施形態では、第2の抗体は、直接的又は間接的に検出可能に標識されている。特定の実施形態では、第2の抗体は、発光色素、特に化学発光色素又は電気化学発光色素で検出可能に標識されている。
【0125】
実施形態では、方法は、患者における月経困難症及び/又は下腹部痛の存在の評価を更に含む。実施形態では、月経困難症及び/又は下腹部痛の存在は、VASスケールにより評価される。実施形態では、月経困難症VASスコアが4以上であることは、中程度又は重度の月経困難症を示した。実施形態では、3以下のスコアは、月経困難症がないこと又は軽度であることを示す。
【0126】
実施形態では、方法は、CA-125の量又は濃度を決定することを更に含む。
【0127】
実施形態では、方法は、PSP94の量若しくは濃度とCA-125の量若しくは濃度との比、PSP94の量若しくは濃度と月経困難症との比、PSP94の量若しくは濃度及びCA-125の量若しくは濃度と月経困難症との比、又はPSP94の量若しくは濃度とVASスケールに従う下腹部痛との比を計算することを含む。
【0128】
第4の態様では、本発明は、子宮内膜症が疑われる患者を評価するためのコンピュータ実装方法であって、
(a)対象の試料中の第1のバイオマーカーの量又は濃度についての値を受信する工程であって、当該第1のバイオマーカーがPSP94である、対象の試料中の第1のバイオマーカーの量又は濃度についての値を受信する工程、
(b)対象の試料中の第2のバイオマーカーの量又は濃度についての値を受信する工程であって、当該第2のバイオマーカーがCA125である、対象の試料中の第2のバイオマーカーの量又は濃度についての値を受信する工程、
(c)VASスケールによる月経困難症の量又は濃度、及び/又はVASスケールによる下腹部痛についての値を受信する工程、
(d)工程(a)~(c)の量若しくは濃度についての値を当該バイオマーカーの基準及び月経困難症の量若しくは濃度と比較する工程、及び/又はバイオマーカーの量若しくは濃度及び月経困難症の量に基づいて子宮内膜症が疑われる対象を評価するためのスコアを計算する工程、並びに
(e)工程(d)で行われた比較及び/又は計算に基づいて当該対象を評価する工程
を含む、子宮内膜症が疑われる患者を評価するためのコンピュータ実装方法に関する。
【0129】
本明細書で使用される場合、「コンピュータ実装」という用語は、方法が、典型的には、コンピュータ又は同様のデータ処理装置に含まれるデータ処理ユニット上で自動化された方法で実行されることを意味する。データ処理ユニットは、バイオマーカーの量についての値を受け取るものとする。そのような値は、量、相対量、又は本明細書の他の箇所で詳細に説明される量を反映する任意の他の計算値であり得る。したがって、上述の方法は、バイオマーカーの量の決定を必要とせず、むしろ既に予め定められた量についての値を使用することを理解されたい。
【0130】
本発明はまた、原則として、コンピュータプログラム、コンピュータプログラム製品、又は当該コンピュータプログラムが有形的に組み込まれたコンピュータ可読記憶媒体も企図し、コンピュータプログラムは、データ処理装置又はコンピュータで実行されると上記のような本発明の方法を実行する、命令を含む。具体的には、本開示は、以下を更に包含する:
- 少なくとも1つのプロセッサを備えており、プロセッサは、本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するように構成されているコンピュータ又はコンピュータネットワーク、
- データ構造がコンピュータ上で実行されている間に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つによる方法を実行するように適合されたコンピュータロード可能データ構造、
- コンピュータスクリプトであって、コンピュータプログラムが、プログラムがコンピュータ上で実行されている間に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つの方法を実行するように適合されている、コンピュータスクリプト、
- コンピュータ上又はコンピュータネットワーク上で実行されているときに、本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するためのプログラム手段を備えるコンピュータプログラム、
- 先行の実施形態によるプログラム手段を備えており、プログラム手段はコンピュータにとって読み取り可能な記憶媒体に格納されているコンピュータプログラム、
- データ構造が記憶媒体に記憶され、データ構造が、コンピュータ若しくはコンピュータネットワークの主記憶装置及び/又は作業記憶装置にロードされた後、本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するように適合された、記憶媒体、
- コンピュータ又はコンピュータネットワーク上でプログラムコード手段が実行された場合に、この明細書に記載された実施形態のうちの1つによる方法を実行するために、プログラムコード手段が記憶されることができるか、又は記憶媒体上に記憶されることができる、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品、
- 本明細書の他の箇所で定義されているパラメータのデータを含む、通常は暗号化されたデータストリーム信号、並びに
- 本発明の方法によって提供される評価を含む、典型的には暗号化されたデータストリーム信号。
【0131】
更なる実施形態では、本発明は、以下の態様に関する:
1.患者が子宮内膜症を有するか又は子宮内膜症を発症するリスクがあるかどうかを評価する方法であって、
(a)前記患者の試料中のPSP94の量又は濃度を決定することと、
(b)前記決定された量又は濃度を基準と比較することと
を含む、患者が子宮内膜症を有するか又は子宮内膜症を発症するリスクがあるかどうかを評価する方法。
【0132】
2.子宮内膜症の治療法について患者を選択する方法であって、
(a)前記患者の試料中のPSP94の量又は濃度を決定することと、
(b)前記決定された量又は濃度を基準と比較することと
を含む、子宮内膜症の治療法について患者を選択する方法。
【0133】
3.前記患者が、薬物ベースの治療法について選択されている、及び/又は外科的処置(腹腔鏡検査)について選択されている、請求項2に記載の方法。
【0134】
4.子宮内膜症に罹患しているか、又は子宮内膜症に対する処置を受けている患者における疾患進行をモニタリングするための方法であって、前記方法が、
(a)前記患者の第1の試料中のPSP94のレベルを決定することと、
(b)前記第1の試料の後に得られた前記患者の第2の試料中のPSP94のレベルを決定することと、
(c)前記第1の試料中のPSP94の前記レベルを第2の試料中のPSP94の前記レベルと比較することと、
(d)工程c)の結果に基づいて、子宮内膜症に罹患しているか、又は子宮内膜症に対する処置を受けている患者における疾患進行をモニタリングすることと
を含む、子宮内膜症に罹患しているか、又は子宮内膜症に対する処置を受けている患者における疾患進行をモニタリングするための方法。
【0135】
5.疾患モニタリング及び予後のための子宮内膜症の前記評価が、rASRM分類システムによるステージIVで検出される、請求項4に記載の方法。
【0136】
6.前記患者の前記試料中のPSP94の量又は濃度の上昇が、前記患者における子宮内膜症の存在を示す、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【0137】
7.子宮内膜症ステージIII~IV(後期)への前記疾患進行を予測するため、以前のPSP94値を基準点として使用し、次いで、PSP94を再測定する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0138】
8.前記試料が、血液、血清、又は血漿の試料である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0139】
9.前記評価が、rASRMステージ分類とは無関係に行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0140】
10.子宮内膜症が、rASRMステージ分類によるステージIの子宮内膜症、rASRMステージ分類によるステージIIの子宮内膜症、rASRMステージ分類によるステージIIIの子宮内膜症、rASRMステージ分類によるステージIVの子宮内膜症からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【0141】
11.子宮内膜症の早期検出のための子宮内膜症の前記評価が、rASRM分類体系に従ってステージIで検出される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0142】
12.子宮内膜症が、腹膜子宮内膜症、子宮内膜腫、深部浸潤性子宮内膜症、及び腺筋症からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0143】
13.前記VASスケールによる月経困難症及び/又は前記VASスケールによる下腹部痛の評価を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【0144】
14.CA-125の量又は濃度を決定することを更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【0145】
15.i)PSP94の前記量若しくは濃度とCA-125の前記量若しくは濃度との比、又は
ii)PSP94の前記量若しくは濃度と月経困難症との比、又は
iii)PSP94の前記量若しくは濃度とCA-125の前記量若しくは濃度と月経困難症との比、又は
iv)PSP94の前記量若しくは濃度とVASスケールによる下腹部痛の比
を計算することを含む、請求項1又は14に記載の方法。
【0146】
16.子宮内膜症が疑われる患者を評価するためのコンピュータ実装方法であって、
(a)前記対象の試料中の第1のバイオマーカーの量又は濃度についての値を受信する工程であって、前記第1のバイオマーカーがPSP94である、前記対象の試料中の第1のバイオマーカーの量又は濃度についての値を受信する工程、
(b)任意に、前記対象の試料中の第2のバイオマーカーの量又は濃度についての値を受信する工程であって、前記第2のバイオマーカーがCA125である、前記対象の試料中の第2のバイオマーカーの前記量又は濃度についての値を受信する工程、
(c)任意に、VASスケールによる月経困難症の量又は濃度、及び/又はVASスケールによる下腹部痛についての値を受信する工程、
(d)工程(a)~(c)の量若しくは濃度についての前記値を前記バイオマーカーの基準及び月経困難症の量若しくは濃度と比較する工程、及び/又は前記バイオマーカーの前記量若しくは濃度及び月経困難症の前記量に基づいて子宮内膜症が疑われる前記対象を評価するためのスコアを計算する工程、並びに
(e)工程(d)で行われた前記比較及び/又は前記計算に基づいて前記対象を評価する工程
を含む、子宮内膜症が疑われる患者を評価するためのコンピュータ実装方法。
【0147】
以下の実施例及び図は、本発明の理解を助けるために提供されており、本発明の真の範囲は、添付の特許請求の範囲に示されている。本発明の趣旨から逸脱することなく、記載されている手順に改変が加えられ得ることが理解される。
【実施例】
【0148】
実施例1:子宮内膜症を有する女性及び対照におけるバイオマーカーPSP94、及びバイオマーカーの組み合わせの診断性能
測定のため、ヒト女性からの合計214個の血清試料を分析した。分析物の濃度をELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)によって決定した。症例群は、その後の組織学的確認を伴う腹腔鏡による視覚化によって診断された骨盤内子宮内膜症(rASRMステージI~IV)と診断された96人の患者で構成され、対照群は118任の子宮内膜症を有さない健常女性で構成される。
【0149】
ヒト血清中のPSP94の濃度を、Merck/Sigma-Aldrich(カタログ番号:RAB1652)製のHuman PSP94 ELISAキットVer.2を使用して決定した。キットは、定量的サンドイッチELISA技法を利用する。マイクロタイタープレートを、ヒトPSP94に特異的なモノクローナル抗体でプレコーティングする。試料を50倍希釈で測定する。全ての試薬を室温にした後、各試料及び標準液100μLを添加する。試料を1連で測定し、標準を2連で測定する。650rpmに設定したマイクロプレートシェーカー上、室温での2.5時間のインキュベーションの間、存在する任意のPSP94を、マイクロタイタープレート上の固定化された捕捉抗体に結合させる。洗浄工程(4×300μL)中に、未結合物質をプレートから除去した後、PSP94に特異的な酵素結合モノクローナル抗体100μLをウェルに添加する。シェーカー上で1時間のインキュベーション及び任意の未結合検出抗体を除去するための別の洗浄工程の後、100μLの基質溶液をプレートに添加する。次の10分間に、色は最初の工程で結合したPSP94の量に比例して発現する。50μLの停止溶液を添加することによって発色を停止させ、プレートリーダーを用いて、検出のために450nm及びバックグラウンド減算のために570nmで色強度を測定する。キャリブレータ曲線の生成のために、キットと共に送達された凍結乾燥した組換えPSP94を再構成し、キャリブレータ希釈剤で希釈した。アッセイの較正範囲は、6.14pg/mL~1500pg/mLである。キャリブレータ7(1500pg/mL)を、キャリブレータ希釈剤中の原液の6倍希釈によって調製し、キャリブレータ1に対するキャリブレータ6(6.14pg/mL)を、キャリブレータ希釈剤中の連続2.5倍希釈ステップによって調製する。純粋なキャリブレータ希釈剤はブランク(0pg/mL)として機能する。検量線は、重み付けなしの4パラメータ非線形回帰(ニュートン/ラフソン)を使用してフィッティングした。
【0150】
CA-125の濃度は、cobas e 601分析装置によって決定した。cobas e 601分析装置を用いたCA 125 IIの検出は、Elecsys(登録商標)電気化学発光(ECL)技術に基づく。簡潔には、ビオチン標識及びルテニウム標識抗体をそれぞれの量の未希釈試料と合わせ、分析装置でインキュベートする。続いて、ビオチン標識免疫複合体の結合を促進するために、ストレプトアビジン被覆磁性微粒子を添加し、機器でインキュベートする。このインキュベーション工程の後、反応混合物を測定セルに移し、そこでビーズを電極の表面に磁気的に捕捉する。次いで、結合したイムノアッセイ複合体を遊離の残りの粒子から分離するために、その後のECL反応のためのトリプロピルアミン(TPA)を含有するProCell M緩衝液を測定セルに導入する。次いで、作用電極と対電極との間の電圧の誘導は、ルテニウム錯体及びTPAによる光子の放出をもたらす反応を開始させる。光電子増倍管によって得られた電気化学発光シグナルは、記録され、それぞれの分析物の濃度レベルを示す数値に変換される。
【0151】
また、独立したより小規模なコホート(健常女性からの14個の血清試料及び子宮内膜症と診断された女性からの23個の血清試料を含む)において、PSP94及びCA-125の循環レベルを決定した。測定は、qPCR読み出しを伴う高多重イムノアッセイ技術である近接伸長アッセイ(PEA)技術を使用してOLINKによって実施した。この技術を説明する論文は、このリンク:https://www.olink.com/resources-support/white-papers-from-olink/並びにLundberg M et al.による刊行物[Lundberg M et al.,Nucleic Acids Res 2011:15 e102]に見出すことができる。
【0152】
単一バイオマーカーPSP94及びCA-125(
図1を参照)について、受信者動作特性(ROC)曲線を作成した。モデル性能は、曲線下面積(AUC)を検討することによって決定される。可能性のある最も高いAUCは1であり、可能性のある最低のAUCは0.5である。最適なカットオフを、ヨーデン指数(感度+特異度の最大和-1)を使用して選択した。
【0153】
【0154】
対照及び子宮内膜症症例(ステージI、ステージII、ステージIII、ステージIV)のそれぞれについて箱ひげ図(
図3を参照)を作成した。データは、中央値(中央四分位)、四分位範囲(群のスコアの中央50%を表す)、上位四分位(スコアの75%が上位四分位を下回る)、下位四分位(スコアの25%が下位四分位を下回る)を含む箱とひげのプロットを使用して提示される。ひげは、それぞれ5パーセンタイル及び95パーセンタイルを示す。ドットは平均を表す。
【0155】
OLINK分析からのデータを使用して、対照及び子宮内膜症症例(ステージI、II、III、IV)のそれぞれについて、PSP94(
図3A)及びCA-125(
図3B)の箱ひげ図も作成した。データは、中央値(中央四分位)、四分位範囲(群のスコアの中央50%を表す)、上位四分位(スコアの75%が上位四分位を下回る)、下位四分位(スコアの25%が下位四分位を下回る)を含む箱とひげのプロットを使用して提示される。ひげは、それぞれ5パーセンタイル及び95パーセンタイルを示す。AUCはまた、対照対子宮内膜症の全てのステージ(ステージI~IV)、対照対子宮内膜症の初期ステージ(ステージI~II)及び対照対子宮内膜症の後期ステージ(ステージIII~IV)についてそれぞれPSP94及びCA-125について計算した(以下の表2を参照)。
【0156】
【国際調査報告】