IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2024-511869N,N’-ジアルキル-p-フェニレンジアミンを含むゴム混合物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】N,N’-ジアルキル-p-フェニレンジアミンを含むゴム混合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 7/00 20060101AFI20240308BHJP
   C08K 5/18 20060101ALI20240308BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240308BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240308BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20240308BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C08L7/00
C08K5/18
C08K3/013
C08K3/04
C08K5/00
B60C1/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560689
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2022058458
(87)【国際公開番号】W WO2022207729
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】21166705.0
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22155332.4
(32)【優先日】2022-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オラフ・ハレ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン-ヨーゼフ・ヴァイデンハウプト
(72)【発明者】
【氏名】メラニー・ヴィーデマイヤー-ヤラト
(72)【発明者】
【氏名】アヒム・シュナイダー
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131AA06
3D131AA07
3D131AA11
3D131AA14
3D131BA07
3D131BA08
3D131BA20
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB11
3D131BC02
3D131LA28
4J002AC011
4J002DA038
4J002DJ007
4J002DJ017
4J002DJ037
4J002EN076
4J002ER009
4J002ER029
4J002EU007
4J002EU009
4J002EU019
4J002EV119
4J002EV129
4J002EV279
4J002EV329
4J002EW169
4J002EX039
4J002FD017
4J002FD018
4J002FD036
4J002FD159
4J002GN01
(57)【要約】
天然ゴム及びN,N-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミンをベースとする新規なゴム混合物が、改良された使用性能を有する、加硫ゴム及びそれらから得ることが可能な成形部品、特にタイヤ、タイヤ部品、又は産業用ゴム物品を製造するのに、極めて好適である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の天然ゴム及びN,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミンを含むことを特徴とする、ゴム混合物。
【請求項2】
N,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミンを、0.5~4.0phr、好ましくは0.5~3.0phr、より好ましくは0.5~2.5phrの量で含むことを特徴とする、請求項1に記載のゴム混合物。
【請求項3】
少なくとも1種のヒドロキシル基を含む酸化物系充填剤を、0.1~200phr、好ましくは20~160phr、より好ましくは25~140phr、最も好ましくは30~120phrの量で含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のゴム混合物。
【請求項4】
少なくとも1種のカーボンブラックを、0.1~200phr、好ましくは20~160phr、より好ましくは25~140phr、最も好ましくは30~120phrの量で含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項5】
少なくとも1種の架橋剤、好ましくは硫黄、硫黄供与体、及び金属酸化物の群からの架橋剤を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項6】
少なくとも1種の加硫促進剤、好ましくはメルカプトベンズチアゾール、チオカルバメート、ジチオカルバメート、チウラム、チアゾール、スルフェンアミド、チアゾールスルフェンアミド、キサントゲネート、二環若しくは多環アミン、チオホスフェート、ジチオホスフェート、カプロラクタム、チオ尿素誘導体、グアニジン、環状ジスルファン、及びアミン、特には亜鉛ジアミンジイソシアネート、ヘキサメチレンテトラミン、1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンの群からの加硫促進剤を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項7】
硫黄含有有機シラン、特にはアルコキシシラン基を含む硫黄含有シランの群からの少なくとも1種の補強性添加剤を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項8】
1,6-ビス(N,N-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、及びジチオホスフェートの群からの少なくとも1種の二次促進剤を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項9】
0.4phr以下、好ましくは0.1~0.2phr、より好ましくは0.05~0.1phr、最も好ましくは0.001~0.04phrの、ジフェニルグアニジン及び/又は置換されたジフェニルグアニジンの含量を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項10】
1種又は複数の合成ゴムを含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のゴム混合物。
【請求項11】
N,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミンの使用であって、天然ゴムをベースとするゴム混合物及びゴム加硫物のための老化安定剤としての使用。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載のゴム混合物を製造するための方法であって、任意選択的に少なくとも1種の合成ゴム、任意選択的に少なくとも1種の充填剤、任意選択的に少なくとも1種の架橋剤、任意選択的に少なくとも1種の加硫促進剤、任意選択的に少なくとも1種の補強性添加剤、及び任意選択的に1種又は複数のゴム助剤の存在下に、少なくとも1種の天然ゴムとN,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミンとを、40~150℃の範囲の温度で、相互に混合することを特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載のゴム混合物を加硫させることによって得ることが可能な、ゴム加硫物。
【請求項14】
ゴム加硫物を製造するための方法であって、少なくとも1種の、請求項1~10のいずれか一項に記載のゴム混合物を、150~200℃、好ましくは160~180℃の範囲の温度にまで加熱することを特徴とする方法。
【請求項15】
成形体、特にはタイヤ、タイヤ部品、又は産業用ゴム物品であって、少なくとも1種の、請求項13に記載のゴム加硫物を含むことを特徴とする、成形体。
【請求項16】
少なくとも1種の、請求項1~10のいずれか一項に記載のゴム混合物と、レソルシノール、ホルムアルデヒド、及びシリカをベースとする少なくとも1種の接合剤とを含む、接合混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ゴム及びN,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミンをベースとする新規なゴム混合物、それらを製造するための方法、及び加硫プロセスによるゴム加硫物を製造するためのそれらの使用、並びにそれらから得ることが可能な成形物体、特にはタイヤ、タイヤ部品、及び産業用ゴム物品、並びに天然ゴムをベースとするゴム混合物及びゴム加硫物のための老化安定剤としてのN,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ゴム及び合成ゴムを加硫する発明が、ユニークな性能プロファイルを有する新規な材料を提供し、現代科学技術発展に実質的に貢献してきた。
【0003】
しかしながら、天然ゴム及び合成のジエンゴムは、二重結合を含んでいる。具体的には、アリル位にあるその反応性サイトが、オゾン又は酸素のような酸化剤との反応を促進させる。たとえば酸素との接触による、老化と呼ばれている過程においては、そのゴム物品の全容積が酸化され、それには、その物品の表面での硬化、脆化、及び分解が伴い、最終的にはその物品の完全な崩壊にいたる可能性がある。
【0004】
したがって、老化安定剤の手段によって、ゴム加硫物を破壊的な環境の影響から保護することが、一般的に実施されている。たとえば、公知のフェノール系、アミン系、硫黄含有、又はリン含有の老化安定剤が、ゴム加硫物の酸素、オゾン、熱、及び貯蔵安定性を改良するのに適している。
【0005】
天然ゴム及び合成ゴム両方から作成された加硫物のための、最適な公知の老化安定剤は、N,N’-ジアルキル-p-フェニレンジアミン及びN-アリール-N’-アルキルフェニレンジアミンのクラスからの化合物である。特に天然ゴムで使用するためには、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)及びN,N’-ビス(1,4-ジメチル)ペンチル-p-フェニレンジアミン(77PD)が、市場を確立してきた。
【0006】
(特許文献1)には、N,N’-ジシクロヘキシルフェニレンジアミン及び、特にN-フェニル-N’-アルキルフェニレンジアミンの相乗的混合物を用いて、SBRゴムをベースとする加硫物を、オゾンの影響から保護することができることが開示されている。
【0007】
それら公知の老化安定剤の欠点は、ゴム混合物の加硫の際の、それらの高い揮発性である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,304,285号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、天然ゴムをベースとするゴム加硫物のための、良好な作用スペクトルを有し、それと同時に天然ゴムの加工の際に低い揮発性を有する、それらに代わる老化安定剤が必要とされてきた。
【0010】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服する、天然ゴムのための代替の老化安定剤を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
酸素及びオゾンが作用することが原因の老化プロセスに対して、天然ゴムをベースとする加硫物を保護するのに、N,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミンが優れた適合性を有していることが見出された。
【0012】
驚くべきことには、N,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミンを用いて保護されたゴム加硫物は、たとえば引張強度及び破断時伸び、並びにより高速な完全加硫のような、改良された性能特性も特徴としている。老化安定剤のN,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミンを用いた加硫物の製造においては、揮発性成分の放出が、極めて低減される。
【0013】
単位の「phr」は、以後においては、そのゴム混合物の中に存在しているゴムの合計量、すなわち存在している天然ゴム及び各種の合成ゴムの合計量の100重量部を基準にした重量部を表している。
【0014】
本発明は、少なくとも1種の天然ゴム、及びN,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミンを含むゴム混合物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のゴム混合物には、N,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミンが、0.5~4.0、好ましくは0.5~3.0、より好ましくは0.5~2.5phrの量で含まれる。
【0016】
本発明のゴム混合物には、少なくとも1種の天然ゴムが含まれる。
【0017】
天然ゴムは、広く各種のゴム植物のラテックスの中に生成するゴム状の物質である。このものは、モノマーのイソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)の、ほとんど均質にcis-1,4結合状態にあるポリマーである。天然ゴムの平均モル質量は、約500,000~2百万g・mol-1である。
【0018】
cis-1,4-ポリイソプレンで構成される天然ゴムは主として、以下の植物の樹皮の樹液から得られる:ヘベア・ブラジリエンシス(Hevea basiliensis)、又はメキシコのグアユールゴム低木からのランドルフィア・オワリエンシス(Landolphia owariensis)、又はロシアタンポポ植物(タラキサクム・コクサギツ(taraxacum koksaghyz))。それに加えて、trans-1,4-ポリイソプレンも存在する。このものは、パラキウムの木(パラキウム・グッタ(Palaquium gutta))から得られる。
【0019】
同様にtrans-1,4-ポリイソプレンから構成されているのがバラタであり、このものは高い樹脂含量を有し、バラタの木(マニルカラ・ビデンタータ(Manilkara bidentata))から得られる。
【0020】
本発明においては、すべての種類の天然ゴム及びそれらの混合物を使用することができる。好ましい天然ゴムは、たとえば、技術的に格付けされた天然ゴム(TSR)、たとえば標準マレーシアゴム(SMR)、及びリブドスモークドシート(RSS)である。
【0021】
また別の実施態様においては、本発明のゴム混合物には、天然ゴムとは別に、1種又は複数の合成ゴムがさらに含まれる。
【0022】
好ましい極性及び非極性の合成ゴムとしては、たとえば、以下のものが挙げられる;
BR:ポリブタジエン
ABR:ブタジエン/アクリル酸C1~C4-アルキルコポリマー
CR:ポリクロロプレン
IR:ポリイソプレン
SBR:スチレン/ブタジエンコポリマー(スチレン含量が、重量で1~60%、好ましくは20~50%)
IIR:イソブチレン/イソプレンコポリマー
NBR:ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー(アクリロニトリル含量が、重量で5~60%、好ましくは10~50%)
HNBR:部分水素化又は完全水素化NBRゴム
EPDM:エチレン/プロピレン/ジエンコポリマー
SIBR:スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム
ENR:エポキシ化天然ゴム
SNBR:アクリロニトリル-スチレン/ブタジエンゴム
HNBR:水素化アクリロニトリル/ブタジエンゴム
XNBR:カルボキシル化アクリロニトリル/ブタジエンゴム
HXNBR:水素化カルボキシル化アクリロニトリル/ブタジエンゴム。
【0023】
また別の実施態様においては、本発明のゴム混合物には、天然ゴムとは別に、好ましくはSBR、BR、IR、SIBR、IIR、ENR、及びEPDMからなる群より選択される、より好ましくはSBR、BR、IIR、及びEPDMからなる群より選択される1種又は複数の非極性合成ゴム、最も好ましくはBR及び/又はSBRがさらに含まれるが、ここで、そのゴム混合物の中のそれらの非極性ゴムの合計含量は、一般的には10~90phr、好ましくは20~80phr、より好ましくは30~60phrである。
【0024】
本発明のゴム混合物には、1種又は複数の充填剤が含まれていてよい。原理的には、好適な充填剤は、この目的で従来技術から公知のもの全てであるが、好ましいのは、活性充填剤又は補強性充填剤である。
【0025】
本発明のゴム混合物には、一般的には0.1~200phr、好ましくは20~160phr、より好ましくは25~140phrの少なくとも1種の充填剤が含まれる。
【0026】
本発明のゴム混合物が、少なくとも1種のヒドロキシル基を含む酸化物系(oxidic)充填剤及び/又は少なくとも1種のカーボンブラックを含んでいるのが好ましい。
【0027】
本発明のゴム混合物の中でのヒドロキシル基を含む酸化物系充填剤の含量は、一般的には0.1~200phr、好ましくは20~160phr、より好ましくは25~140phr、最も好ましくは30~120phrである。
【0028】
好ましいヒドロキシル基を含む酸化物系充填剤は、好ましくは以下の群からのものである;
- 5~1000、好ましくは20~400m/gの比表面積(BET)を有し、100~400nmの一次粒径を有するシリカ(ここでそのシリカは、任意選択的にさらに、他の金属酸化物、たとえば、Al、Mg、Ca、Ba、Zn、Zr、Tiの酸化物との混合酸化物の形態であってもよい)、
- 合成ケイ酸塩、たとえばケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルカリ土類金属、たとえば、ケイ酸マグネシウム若しくはケイ酸カルシウムで、20~400m/gの比表面積(BET)及び10~400nmの一次粒子直径を有するもの、
及び
- 天然のケイ酸塩たとえば、カオリン及びその他の天然産のシリカ、並びにそれらの混合物。
【0029】
本発明のゴム混合物の中に存在させ、そしてシリカの群からの、ヒドロキシル基を含む酸化物系充填剤は、好ましくは、たとえば、ケイ酸塩の溶液から沈降させるか、又はケイ素のハロゲン化物を火炎加水分解させることから製造できるものである。
【0030】
本発明のゴム混合物が、0.1~200phr、好ましくは20~160phr、より好ましくは25~140phr、最も好ましくは30~120phrの量の、20~400/gの範囲の比表面積(BET)を有するシリカの群からの、少なくとも1種の、ヒドロキシル基を含む酸化物系充填剤を含んでいるのが好ましい。
【0031】
BETの数値は全て、DIN 66131に従って測定した比表面積に関連する。一次粒径の数値は、走査電子顕微鏡によって確認された数値に関連する。
【0032】
本発明のゴム混合物には、少なくとも1種のカーボンブラックを充填剤としてさらに含んでいてもよい。
【0033】
本発明のゴム混合物が、少なくとも1種のカーボンブラックを、0.1~200phr、好ましくは20~160phr、より好ましくは25~140phr、最も好ましくは30~120phrの量で含んでいるのが好ましい。
【0034】
本発明において好ましいのは、ランプブラック、ファーネスブラック又はガスブラック法によって得ることが可能で、20~200m/gの範囲の比表面積(BET)を有するカーボンブラック、たとえば、SAF、ISAF、IISAF、HAF、FEF、又はGPFカーボンブラックである。本発明のゴム混合物が、20~200m/gの範囲の比表面積(BET)を有する、少なくとも1種のカーボンブラックを含んでいるのが好ましい。
【0035】
本発明のゴム混合物の中に存在する充填剤が、上述のカーボンブラックの少なくとも1種、及び上述のシリカの少なくとも1種であるのが、より好ましい。
【0036】
本発明のゴム混合物の中の、カーボンブラックとシリカベースの充填剤との合計量は、好ましくは40~320phr、より好ましくは50~280phr、最も好ましくは60~240phrである。
【0037】
本発明のゴム混合物には、1種又は複数の架橋剤が含まれていてよい。
【0038】
本発明のゴム混合物が、硫黄及び硫黄供与体、並びに金属酸化物、たとえば酸化マグネシウム及び/又は酸化亜鉛の群からの少なくとも1種の架橋剤を含んでいるのが好ましい。
【0039】
硫黄は、元素状で、可溶性又は不溶性の形態で使用してもよい。
【0040】
本発明のゴム混合物が、少なくとも1種の硫黄供与体及び/又は硫黄、特には硫黄を含んでいるのがより好ましい。
【0041】
有用な硫黄供与体の例としては、以下のものが挙げられる:ジモルホリルジスルフィド(DTDM)、2-モルホリノジチオベンゾチアゾール(MBSS)、カプロラクタムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、及びテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTB)。
【0042】
本発明のゴム混合物が、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTB)を硫黄供与体として含んでいるのが、最も好ましい。
【0043】
本発明のゴム混合物には、一般的には0.1~20phr、好ましくは0.5~10phr、より好ましくは1.0~8phrの少なくとも1種の上述の架橋剤を含んでいる。
【0044】
本発明のゴム混合物には、1種又は複数の加硫促進剤が含まれていてよい。
【0045】
本発明のゴム混合物が、少なくとも1種の加硫促進剤、より好ましくは以下の群からのものを含んでいるのが好ましい:メルカプトベンゾチアゾール、チオカルバメート、ジチオカルバメート、チウラム、チアゾール、スルフェンアミド、チアゾールスルフェンアミド、キサントゲネート、二環若しくは多環アミン、チオホスフェート、ジチオホスフェート、カプロラクタム、チオ尿素誘導体、グアニジン、環状ジスルファン、及びアミン、特には亜鉛ジアミンジイソシアネート、ヘキサメチレンテトラミン、1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、最も好ましくはスルフェンアミド、最も好ましくはN-シクロヘキシルベンゾチアゾールスルフェンアミド(CAS No.:95-33-0)の群からのもの。
【0046】
本発明のゴム混合物には、一般的には0.1~20phr、好ましくは0.5~10phr、より好ましくは1.0~5phrの少なくとも1種の上述の加硫促進剤を含んでいる。
【0047】
本発明のゴム混合物が、少なくとも1種の架橋剤及び少なくとも1種の加硫促進剤を含んでいるのが好ましい。
【0048】
本発明のゴム混合物が、硫黄、酸化亜鉛、及び酸化マグネシウムの群からの、少なくとも1種の架橋剤、並びにメルカプトベンゾチアゾール、チアゾールスルフェンアミド、チウラム、ジチオカルバメート、キサントゲネート、及びチオホスフェートの群から、より好ましくはスルフェンアミドからの少なくとも1種の加硫促進剤、最も好ましくはN-シクロヘキシルベンゾチアゾールスルフェンアミド(CAS No.:95-33-0)を含んでいるのが、より好ましい。
【0049】
それらの架橋剤及び加硫促進剤は、それぞれの場合において、本発明のゴム混合物の中で、それらの成分の総合計を基準にして、0.1~15phr、より好ましくは2.0~10phrの量で使用されるのが好ましい。
【0050】
本発明のゴム混合物には、1種又は複数の補強性添加剤が含まれていてよい。
【0051】
本発明のゴム混合物が、硫黄含有有機シランの群から、特にはアルコキシシリル基を含む硫黄含有シランから、最も好ましくはトリアルコキシシリル基を含む硫黄含有有機シランからの、少なくとも1種の補強性添加剤を含んでいるのが好ましい。
【0052】
本発明のゴム混合物が、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルファン、及び3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンチオールの群からの、1種又は複数の硫黄含有シランを含んでいれば、より好ましい。本発明のゴム混合物には、一般的には0.1~20phr、好ましくは0.5~15phr、より好ましくは1.0~10phrの少なくとも1種の補強性添加剤が含まれる。
【0053】
計量性及び/又は分散性を改良するために、液状の硫黄含有シランをキャリヤの上に吸収させてもよい(乾燥液体(dry liquid))。それらの乾燥液体の中の硫黄含有シランの含量は、乾燥液体の100重量部あたり、好ましくは30~70重量部の間、好ましくは40~60重量部の間である。
【0054】
本発明のゴム混合物には、1種又は複数のゴム助剤がさらに含まれていてよい。有用なゴム助剤の例としては、以下のものが挙げられる;老化安定剤、接合剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、加工助剤、耐衝撃性向上剤、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、エクステンダー、有機酸、遅延剤、金属酸化物、及び活性剤、特にはトリエタノールアミン、ポリエチレングリコール、ヘキサントリオール、並びに加硫戻り安定剤。
【0055】
それらのゴム助剤は、それら助剤で慣用されている量(その量は、それから製造される加硫物の最終用途によっても規定される)で、本発明のゴム混合物に添加してよい。慣用される量は、たとえば、0.1~30phrである。
【0056】
N,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミンは別にして、本発明のゴム混合物には、1種又は複数のさらなる老化安定剤がさらに含まれていてもよい。好適な老化安定剤としては、以下のものが挙げられる;アミン系老化安定剤、たとえば、ジアリール-p-フェニレンジアミン(DTPD)の混合物、オクチル化ジフェニルアミン(ODPA)、フェニル-α-ナフチルアミン(PAN)、フェニル-β-ナフチルアミン(PBN)、好ましくはフェニレンジアミンをベースとするもの、たとえば、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N-1,4-ジメチルペンチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(7PPD)、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(77PD)、並びにホスファイトたとえば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ポリマー化2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)、メチル-2-メルカプトベンズイミダゾール(MMBI)、及び亜鉛メチルメルカプトベンゾイミダゾール(ZMMBI)。
【0057】
加工助剤は、ゴム粒子の間で活性を有しているべきであり、混合、可塑化、及び成形の際の摩擦力に抵抗可能であるべきである。本発明によるゴム混合物の中に存在させうる加工助剤としては、プラスチックの加工で慣用されるすべての潤滑剤、たとえば以下のものが挙げられる:炭化水素たとえば、オイル、パラフィン及びPEワックス、6~20個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、ケトン、カルボン酸たとえば脂肪酸及びモンタン酸、酸化させたPEワックス、カルボン酸の金属塩、カルボキサミド、及びたとえばアルコールのエタノール、脂肪族アルコール、グリセロール、エタンジオール、ペンタエリスリトールと酸成分としての長鎖カルボン酸とからのカルボン酸エステル。
【0058】
燃焼の際の、燃焼性を抑制し、発煙を抑制する目的で、本発明のゴム混合物には、難燃剤をさらに含ませてもよい。この目的のために使用される化合物の例としては、以下のものが挙げられる:三酸化アンチモン、リン酸エステル、クロロパラフィン、水酸化アルミニウム、ホウ素化合物、亜鉛化合物、三酸化モリブデン、フェロセン、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウム。
【0059】
架橋させる前に、本発明のゴム混合物に対してさらなる熱可塑性樹脂を添加してもよいが、それらは、たとえばポリマー性の加工助剤又は耐衝撃性改良剤として機能する。それらの熱可塑性樹脂は、好ましくは、以下のものからなる群より選択される:エチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、分岐状若しくは非分岐状のC1~C10アルコールのアルコール成分を有するアクリレート及びメタクリレートをベースとするホモポリマー及びコポリマー、特に好ましいのは、C4~C8アルコール、特にブタノール、ヘキサノール、オクタノール及び2-エチルヘキサノールの群からの同一又は異なったアルコール基を有するポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル・コポリマー、メタクリル酸メチル-メタクリル酸ブチル・コポリマー、エチレン-酢酸ビニル・コポリマー、塩素化ポリエチレン、エチレン-プロピレン・コポリマー、エチレン-プロピレン-ジエン・コポリマー。
【0060】
公知の接合剤は、レソルシノール、ホルムアルデヒド、及びシリカをベースとする、いわゆるRFS直接接合系(RFS direct adhesion system)である。それらの直接接合系は、本発明のゴム混合物の中へ、各種所望の量で、本発明のゴム混合物の中への組み込みの各種のタイミングで使用することができる。
【0061】
タイヤ製造のために使用されるシリカベースのゴム混合物の中で、ジフェニルグアニジン(DPG)又は構造的に類似の芳香族グアニジンが、典型的には、混合プロセスの中での架橋速度及び混合物粘度を制御調節するための二次促進剤として使用される。しかしながら、DPGの使用に伴う、極めて重要な逆効果は、加硫に際してそれがアニリンを放出することであって、アニリンは、発がん性の疑いがある。驚くべきことには、本発明のゴム混合物においては、DPGを、有利なことには、1,6-ビス(N,N-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(商品名:Vulcuren(登録商標))で置き換えることが可能であるということが今や見出された。二次促進剤たとえば、TBzTD(テトラベンジルチウラムジスルフィド)又はジチオホスフェートで、DPGを置き換えることもまた可能である。
【0062】
したがって、本発明には、実質的にDPGフリーのゴム混合物も包含される。
【0063】
本発明のゴム混合物が、1,6-ビス(N,N-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン(商品名:Vulcuren(登録商標))、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、及びジチオホスフェートの群からの、少なくとも1種の二次促進剤を含んでいるのが好ましい。
【0064】
本発明のゴム混合物には、一般的には0.1~5.0phr、好ましくは0.2~2.5phrの、少なくとも1種の上述の二次促進剤が含まれる。
【0065】
したがって、本発明はさらに、ジフェニルグアニジン及び/又は置換されたジフェニルグアニジンを実質的に含まない本発明のゴム混合物、特にはジフェニルグアニジン及び/又は置換されたジフェニルグアニジンの含量が、0.4phr以下、好ましくは0.1~0.2phr、より好ましくは0.05~0.1phr、最も好ましくは0.001~0.04phrであるものも提供する。
【0066】
好ましいのは、以下のものを含む本発明のゴム混合物である;
- 少なくとも1種の天然ゴム、
- 20~160phrの少なくとも1種のシリカ、特には、5~1000m/g、好ましくは20~400m/gの比表面積(PET)を有し、100~400nmの一次粒径を有するもの、
及び/又は
- 20~160phrの、少なくとも1種のカーボンブラック、特には、20~200m/gの範囲の比表面積(BET)を有するもの、
及び
- 0.5~4.0phrのN,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミン。
【0067】
特に好ましいのは、以下のものを含む本発明のゴム混合物である;
- 少なくとも1種の天然ゴム、
- 25~140phrの少なくとも1種のシリカ、特には、5~1000m/g、好ましくは20~400m/gの比表面積(BET)を有し、100~400nmの一次粒径を有するもの、
- 25~140phrの、少なくとも1種のカーボンブラック、特には、20~200m/gの範囲の比表面積(PET)を有するもの、
- 0.5~20phrの、少なくとも1種の架橋剤、特には硫黄供与体及び/又は硫黄の群からのもの、
- 0.5~20phrの、少なくとも1種の加硫促進剤、特にはスルフェンアミドの群からのもの、
- 1.0~20phrの、少なくとも1種の補強性添加剤、特には硫黄含有シランの群からのもの、
及び
- 0.5~4.0phrのN,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミン。
【0068】
また別の実施態様においては、好ましいのは同様に、以下のものを含む本発明のゴム混合物である;
- 少なくとも1種の天然ゴム、
- 5~100phrの、少なくとも1種の合成ゴム、特にはBRゴム及び/又はSBRゴム、
- 20~160phrの少なくとも1種のシリカ、特には、5~1000m/g、好ましくは20~400m/gの比表面積(BET)を有し、100~400nmの一次粒径を有するもの、
- 20~160phrの、少なくとも1種のカーボンブラック、特には、20~200m/gの範囲の比表面積(PET)を有するもの、
及び
- 0.5~4.0phrのN,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミン。
【0069】
また別の実施態様においては、特に好ましいのは同様に、以下のものを含む本発明のゴム混合物である;
- 少なくとも1種の天然ゴム、
- 5~100phrの、少なくとも1種の合成ゴム、特にはBRゴム及び/又はSBRゴム、
- 20~160phrの少なくとも1種のシリカ、特には、5~1000m/g、好ましくは20~400m/gの比表面積(BET)を有し、100~400nmの一次粒径を有するもの、
- 20~160phrの、少なくとも1種のカーボンブラック、特には、20~200m/gの範囲の比表面積(PET)を有するもの、
- 0.5~20phrの、少なくとも1種の架橋剤、特には硫黄供与体及び/又は硫黄の群からのもの、
- 0.5~20phrの、少なくとも1種の加硫促進剤、特にはスルフェンアミドの群からのもの、
- 1.0~20phrの、少なくとも1種の補強性添加剤、特には硫黄含有シランの群からのもの、
そして
- 0.5~4.0phrのN,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミン。
【0070】
本発明はさらに、本発明のゴム混合物を製造するための方法も提供し、それは、以下のこと特徴としている:少なくとも1種の天然ゴム及びN,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミンが、任意選択的に少なくとも1種の合成ゴム、任意選択的に少なくとも1種の充填剤、任意選択的に少なくとも1種の架橋剤、任意選択的に少なくとも1種の加硫促進剤、任意選択的に少なくとも1種の補強性添加剤、及び任意選択的に1種又は複数の上述のゴム助剤の、それらの添加剤で特定される一般的で好ましい量での存在下に、40~150℃、より好ましくは40~120℃の範囲の温度で相互に混合される。
【0071】
本発明のゴム混合物は、公知の混合装置たとえば、ローラー、インターナルミキサー、下流側の混合ロールシステム、及び混合エクストルーダーの中で、1~1000sec-1の剪断速度で製造される。
【0072】
通常、2段の混合プロセスが採用される。これには、最初に、インターナルミキサー(ニーダー)の中で、そのゴムの中に、充填剤、及びN,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミン、及びさらには各種の上述の添加剤を組み入れることが含まれる。インターナルミキサーの中での混合温度が120℃よりも高い温度に達するようにするのがよい。したがって、硫黄、酸化亜鉛のような架橋剤及び加硫促進剤は、初期の加硫を回避する目的で、低い温度、好ましくは30~100℃で混合する。
【0073】
その混ぜ込みは、ローラーシステムで実施することが可能であるが、その場合、水を用いてその温度を制御している大面積のロールにより、顕著に低い混合温度が可能となる。
【0074】
N,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミンは、原理的には、混合の際のいかなるタイミングで添加してもよいが、その混合操作の第一のステップで、40℃~150℃の範囲の温度、好ましくは50℃未満の温度で添加するのが好ましい。
【0075】
N,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミンを、第一の混合ステップで、架橋剤及び加硫促進剤を添加するよりは前に添加するのが好ましい。N,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミンは、純粋な形態で使用してもよいし、或いはそうでなければ、その混合プロセスにおいて、不活性な有機又は無機のキャリヤ、好ましくは天然及び合成のシリケート、特には中性、酸性若しくは塩基性のシリカ、酸化アルミニウム、カーボンブラック、及び酸化亜鉛を含む群から選択されるキャリヤの上に、吸収及び/又は吸着された形態で使用してもよい。
【0076】
それから製造された本発明のゴム混合物及びゴム加硫物は、亜鉛フリーのゴム加硫物中、又は亜鉛含有ゴム加硫物中のいずれでも、有利に使用することができる。
【0077】
本発明はさらに、本発明のゴム混合物を、150~200℃、好ましくは160~180℃の溶融温度で加熱することによる、ゴム加硫物を製造するための方法にも関する。本発明のゴム混合物を製造するための方法は、広い圧力範囲で実施することが可能であるが、10~200barの範囲の圧力で実施するのが好ましい。
【0078】
本発明はさらに、本発明のゴム混合物を加硫することにより得ることが可能な、ゴム加硫物も提供する。
【0079】
本発明のゴム加硫物は、特にタイヤで使用した場合、優れた性能プロファイル及び予想もできなかった低い転がり抵抗性というメリットを有している。
【0080】
本発明はさらに、本発明のゴム混合物及び少なくとも1種の接合剤を含む、接合混合物(bonding mixture)も提供する。
【0081】
本発明の接合混合物には、好ましくは、レソルシノール、ホルムアルデヒド、及びシリカをベースとする、少なくとも1種の接合剤が含まれる。
【0082】
レソルシノール、ホルムアルデヒド、及びシリカの組合せは、RFS直接接合系として、従来技術からも公知である。本発明の接合混合物には、それらの直接接合系が、如何なる量で含まれていてもよい。
【0083】
本発明の接合混合物は、公知の方法で、本発明のゴム混合物を、レソルシノール、ホルムアルデヒド、及びシリカをベースとする少なくとも1種の接合剤と混合することにより製造することができる。
【0084】
その接合剤の中では、ホルムアルデヒドが、ホルムアルデヒド供与体の形態で存在していてもよい。好適なホルムアルデヒド供与体としては、ヘキサメチレンテトラミンのみならず、メチロールアミン誘導体も挙げられる。
【0085】
結合性を改良する目的で、たとえば、フェノール、及び/又はアミン、及び/又は、アルデヒド及び/又はアルデヒドを放出する化合物のような、合成樹脂を形成することが可能な1種又は複数の成分を、本発明の接合混合物に添加してもよい。
【0086】
本発明のゴム混合物は、たとえばタイヤの構成要素、産業用ゴム物品たとえば、制震要素、ロールカバー、コンベア用ベルトのカバー、伝動ベルト、紡糸コップ(spinning cop)、シール、ゴルフボールの芯、履物のソールのような、あらゆるタイプの成形物体を製造するのに好適であり、それらは特に、タイヤ及びタイヤの構成要素、たとえば、タイヤトレッド、サブトレッド、カーカス、タイヤのサイドウォール、ランフラットタイヤのための強化サイドウォール、及びアペックス混合物(apex mixture)を製造するのに適している。この場合、タイヤトレッドには、夏用、冬用、及びオールシーズンタイヤのトレッド、並びに乗用車及びトラックのタイヤのトレッドが含まれる。
【0087】
本発明は、本発明のゴム加硫物を含む、成形物、特にはタイヤ及びタイヤ部品も提供する。
【0088】
本発明はさらに、天然ゴムをベースとする加硫物のための老化安定剤としての、N,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミンの使用も提供する。
【0089】
以下の例を用いて本発明を説明するが、本発明がそれらに限定されることはない。
【0090】
作業例:
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
ゴム加硫物の製造
例1~3
本発明ではない例1及び2、並びに本発明の例3のゴム混合物を、表1aに記載の配合に従って作成した。
【0095】
例1~3において、例1では老化安定剤を使用しないのに対して、例2では公知のVULKANOX(登録商標)4020/LGを使用し、そして本発明の例3ではN,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミンを使用した点で違っているだけである。
【0096】
この目的のために、それぞれの場合において、第一の混合ステップで、ニーダー(GK 1.5)に、天然ゴムを追加的に仕込み、そして添加剤のCORAX(登録商標)N 220、VIVATEC 500、EDENOR(登録商標)C 18 98 MY、そして例2では、老化安定剤のVULKANOX(登録商標)4020/LG、そして例3では、N,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミンを、温度110℃、約40回転/秒で混合し、次いで、第二の混合ステップで、そのようにして作成されたゴム混合物を、それぞれ、温度制御されたローラーに加え、さらなる添加剤のZINKOXYD AKTIV(登録商標)、MAHLSCHWEFEL 90/95 CHANCEL、及びVULKACIT(登録商標)CZ/Cを添加して、そのゴム混合物の中に組み入れた。ローラー温度は40℃であった。
【0097】
そのようにして作成されたゴム混合物を、次いで、150℃で完全加硫させ、そしてロールかけして、厚み約1センチメートルの試験プラックとした。
【0098】
それらの試験プラックを、それに続く、以下で説明する性能試験に使用した。
【0099】
【表4】
【0100】
例4及び5
本発明ではない例4及び本発明の例5のゴム混合物を、表1bに記載の配合に従って作成した。
【0101】
例4と5は、例4においては、VULKANOX(登録商標)4020/LG(N-1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)を使用し、例5においてはそれに代えて、VULKANOX(登録商標)4060(N,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミン)を使用した点だけで異なっている。
【0102】
例4及び5のゴム混合物は、次のステップで作成した。
【0103】
第一の混合ステージ:
・ BUNA(登録商標)CB 24及びBUNA(登録商標)VSL 4526-2 HMを、最初に、インターナルミキサーに仕込み、約30秒間混合、
・ VULKASIL(登録商標)Sの2/3及びSI(登録商標)69の2/3を添加し、約60秒間混合、
・ VULKASIL(登録商標)Sの1/3、SI(登録商標)69の1/3、及びTUDALEN(登録商標)1849-TEを添加し、約60秒間混合、
・ CORAX(登録商標)N 339、PALMERA(登録商標)A9818、VULKANOX(登録商標)4020/LG又はVulkanox(登録商標)4060、VULKANOX(登録商標)HS、ZINKOXID(ROTSIEGEL)及びANTILUX(登録商標)654を添加し、約60秒間混合。この混合操作は、110℃で実施した。
【0104】
第一の混合ステージの完了時に、それぞれの混合バッチを、下流側のロールミルで受取り、成形してプラックとし、室温で24時間保存した。
【0105】
この場合の加工温度は、55℃である。
【0106】
ニーダー/インターナルミキサーの中、150℃で、さらなる混練を実施する。
【0107】
第二の混合ステージ:
・ ロール上、温度75℃で、添加剤、たとえばMAHLSCHWEFEL 90/95 CHANCEL、VULKACIT(登録商標)CZ/C、RHENOGRAN(登録商標)DPG-80を添加。
【0108】
それらの試験プラックを、それに続く、以下で説明する性能試験に使用した。
【0109】
【表5】
【0110】
【表6】
【0111】
例6及び7
本発明ではない例6及び本発明の例7の接合混合物を、表1cに記載の配合に従って作成した。
【0112】
【表7】
【0113】
接合混合物1及び2を作成するために、第一のステップにおいて、表1cの量を用いて、最初にVULKASIL(登録商標)SをCOHEDUR(登録商標)A 250と混合し、次いで、COHEDUR(登録商標)RSと接触させた。その後で、接合混合物1を、VULKANOX(登録商標)HSと、そして接合混合物2をVULKANOX(登録商標)4060と混合した。そのようにして得られた混合物を、以後においては、ベース接合混合物1及び2と呼ぶ。
【0114】
第二のステップにおいては、インターナルミキサーの中で、以下の、天然ゴム、例6ではベース接合混合物1又は例7ではベース接合混合物2、それに続けてカーボンブラック及び鉱油を連続的に添加する。そのインターナルミキサーは、90℃の温度を有し、結合成分の滞留時間は、4分40秒であった。
【0115】
次いで、ロールミル中で、それら2種のゴム混合物のそれぞれに、以下のものを、表1cに記載の量で添加した:VULKACIT(登録商標)DZ及びMAHLSCHWEFEL 90/95 CHANCEL、並びに接合混合物1及び2のためのその他の成分。
【0116】
その混合ロールミルは、40℃の温度であった。そのようにして得られたミルドシートを使用して、完全加硫時間(t95)を測定した。
【0117】
それらの混合物のさらなる一部を、電気加熱プレスの中で加硫させた。その架橋温度は、T=150℃であった。そのようにして得られたゴム加硫物を使用して、破断時伸び及び引張強度を測定した。
【0118】
技術的試験
例1~3及び4~7のゴム混合物から作成された加硫物を、以下で説明する技術的試験にかけた。それで得られた数値が、表2及び3に見ることができる。
【0119】
使用したレオメーター(加硫計)及び完全加硫時間
MDR(ムービング・ダイ・レオメーター)加硫プロファイル及びそれに伴う分析データは、ASTM D5289-95に従い、MDR 2000 Monsanto レオメーターで測定した。
【0120】
求めた完全加硫時間(t95)は、ゴムの95%が架橋したところの時間である。選択した温度は150℃であった。
【0121】
破断時伸び及び引張強度の測定
それらの測定は、例1~3について、0日、7日、14日、及び28日後に、DIN 53504(引張試験、S2試験片)を用いて実施した。それらの試験片は、60℃の温度で保存した。
【0122】
例4~7では、その測定を、0日後に、DIN 53504(引張試験、S2試験片)に従って実施した。
【0123】
【表8】
【0124】
【表9】
【0125】
【表10】
【0126】
揮発度の測定
130℃で、時間経過での質量のロスを求め、パーセントに換算した。
【0127】
【表11】
【0128】
【表12】
【0129】
結論
驚くべきことには、例3記載の本発明のゴム混合物を用いると、例1(老化安定剤なし)及び例2(N-1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)を使用)からの本発明ではないゴム混合物に比較して、低い全加硫時間(t95)、及び60℃で長時間保存したときの顕著に高い破断時伸び及び引張強度の数値が達成可能であるということが見出された。本発明のゴム混合物は、その表面上にいかなる斑点も示さず、そのため、使用した添加剤が良好に混合されたと推定することができる。例3からの本発明のゴム混合物の加工において、表3における数値からも明らかなように、例2の本発明ではないゴム混合物の加工におけるよりも少ない減量が観察された。
【0130】
例5からの本発明のゴム混合物及び例7からの本発明の接合混合物では、驚くべきことには、本発明ではないゴム混合物4又は例6からの本発明ではない接合混合物を用いた場合に比較して、より短い全加硫時間(t95)並びに、明らかに高い破断時伸びの値、又は同等若しくはより高い引張強度の値が達成された。
【国際調査報告】