(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】抗原とアルミニウム金属有機構造体(Al-MOF)を含むアジュバントとを含む免疫原性組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/39 20060101AFI20240308BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20240308BHJP
A61K 39/02 20060101ALI20240308BHJP
A61K 39/002 20060101ALI20240308BHJP
A61K 39/08 20060101ALI20240308BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20240308BHJP
A61K 39/13 20060101ALI20240308BHJP
A61K 39/10 20060101ALI20240308BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240308BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240308BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240308BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240308BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
A61K39/39
A61K39/12
A61K39/02
A61K39/002
A61K39/08
A61K39/215
A61K39/13
A61K39/10
A61P37/04
A61P31/12
A61P31/14
A61P31/04
A61P33/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561006
(86)(22)【出願日】2022-04-01
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 EP2022058789
(87)【国際公開番号】W WO2022207922
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523374105
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ド ヴェルサイユ-サン-クエンタン-アン-イヴリン
(71)【出願人】
【識別番号】500531141
【氏名又は名称】セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】523374116
【氏名又は名称】ビュロー デチュード ビオロジック サイエンティフィーク エ メディカル
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】ジャック アンリ マックス,コーエン
(72)【発明者】
【氏名】シカール,クレマンス
(72)【発明者】
【氏名】グカニアツォ,エフロシニ
【テーマコード(参考)】
4C085
【Fターム(参考)】
4C085AA38
4C085BA02
4C085BA07
4C085BA12
4C085BA16
4C085BA21
4C085BA51
4C085BA53
4C085BA71
4C085CC07
4C085CC08
4C085CC31
4C085DD01
4C085DD86
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF11
4C085FF17
4C085GG01
(57)【要約】
本発明は、免疫原性組成物であって、該免疫原性組成物が、少なくとも1つの抗原及び少なくとも1つのアジュバントを含み、ここで、前記アジュバントが、少なくとも1つの金属有機構造体、すなわちMOF、を含み、該金属有機構造体が、アルミニウムをベースとする無機部分と、少なくとも1つの多座配位子をベースとする有機部分とを含み、該多座配位子が、フマレート、ムコネート、メサコネート、オキサレート、オキサロアセテート、スクシネート、マレート、シトレート、アコニテート、イソフタレート、置換されたイソフタレート、2,5-チオフェンジカルボキシレート、2,5-フランジカルボキシレート、トリメセート、トリメリテート、及びピロメリテートから選択され、並びに、ここで、前記抗原が、少なくとも前記金属有機構造体内に固定化されている、上記の免疫原性組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫原性組成物であって、該免疫原性組成物が、少なくとも1つの抗原及び少なくとも1つのアジュバントを含み、
ここで、前記アジュバントが、少なくとも1つの金属有機構造体、すなわちMOF、を含み、該金属有機構造体が、アルミニウムをベースとする無機部分と、少なくとも1つの多座配位子をベースとする有機部分とを含み、該多座配位子が、フマレート、ムコネート、メサコネート、オキサレート、オキサロアセテート、スクシネート、マレート、シトレート、アコニテート、イソフタレート、置換されたイソフタレート、2,5-チオフェンジカルボキシレート、2,5-フランジカルボキシレート、トリメセート、トリメリテート、及びピロメリテートから選択され、並びに、
ここで、前記抗原が、少なくとも前記金属有機構造体内に固定化されている、
前記免疫原性組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの金属有機構造体が結晶化されている、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの金属有機構造体が多孔性である、請求項1又は2に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記多座配位子に基づく前記金属有機構造体の有機部分が、少なくとも1つのフマレートを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
前記免疫原性組成物が、タンパク質、ポリオシド、脂質、核酸、ウイルス、細菌、寄生生物、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの抗原を含み、特には、前記免疫原性組成物が、破傷風トキソイド、SARS-CoV-2ウイルスに由来するタンパク質、不活化大腸菌、不活化灰白髄炎ウイルス、及び髄膜炎菌多糖、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの抗原を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記アジュバントが吸収性である、請求項1~5のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記金属有機構造体内に固定化されていない少なくとも1つの抗原を更に含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
抗原をワクチンアジュバント中に固定化する為に使用する為の金属有機構造体であって、該金属有機構造体が、アルミニウムをベースとする無機部分と、多座配位子をベースとする有機部分とを含み、該多座配位子が、フマレート、ムコネート、メサコネート、オキサレート、オキサロアセテート、スクシネート、マレート、シトレート、アコニテート、イソフタレート、置換されたイソフタレート、2,5-チオフェンジカルボキシレート、2,5-フランジカルボキシレート、トリメセート、トリメリテート、及びピロメリテートから選択され、ここで、前記抗原が少なくとも前記金属有機構造体内に固定化されている、前記金属有機構造体。
【請求項9】
前記アジュバントが吸収性である、請求項8に記載の金属有機構造体。
【請求項10】
多座配位子をベースとする前記有機部分が、少なくとも1つのフマレートを含む、請求項8又は9に記載の金属有機構造体。
【請求項11】
抗原をワクチンアジュバント中に固定化する為に金属有機構造体を使用する方法であって、該金属有機構造体が、アルミニウムをベースとする無機部分と、多座配位子をベースとする有機部分とを含み、該多座配位子が、フマレート、ムコネート、メサコネート、オキサレート、オキサロアセテート、スクシネート、マレート、シトレート、アコニテート、イソフタレート、置換されたイソフタレート、2,5-チオフェンジカルボキシレート、2,5-フランジカルボキシレート、トリメセート、トリメリテート、及びピロメリテートから選択され、ここで、前記抗原が少なくとも前記金属有機構造体内に固定化されている、前記方法。
【請求項12】
前記アジュバントが吸収性である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
多座配位子をベースとする前記有機部分が、少なくとも1つのフマレートを含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか1項に記載の免疫原性組成物を調製する方法であって、
少なくとも1つのアルミニウム化合物を、フマル酸、ムコン酸、メサコン酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、アコニット酸、イソフタル酸、置換されたイソフタル酸、2,5-チオフェンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、若しくはピロメリット酸から選択される少なくとも1つのポリカルボン酸、及び/又はフマレート、ムコネート、メサコネート、オキサレート、オキサロアセテート、スクシネート、マレート、シトレート、アコニテート、イソフタレート、置換されたイソフタレート、2,5-チオフェンジカルボキシレート、2,5-フランジカルボキシレート、トリメセート、トリメリテート、及びピロメリテートから選択される少なくとも1つのポリカルボキシレートと、少なくとも1つの抗原の存在下で反応させて、該抗原を固定化する少なくとも1つのAl-ポリカルボキシレート金属有機構造体を形成させること
からなる工程を少なくとも含む、前記方法。
【請求項15】
前記アルミニウム化合物が硫酸アルミニウムである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリカルボン酸が、少なくともフマル酸である、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記反応が、水性媒体中、特に水のみからなる水性媒体中、で行われる、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記反応が塩基、好ましくは、1つのアルカリ金属水酸化物又は複数の異なるアルカリ金属水酸化物の混合物、より特には水酸化ナトリウム、の存在下で行われる、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記反応が、4℃~75℃、好ましくは10℃~45℃、の温度で行われる、請求項14~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
ポリカルボン酸及び/又はポリカルボキシレートに対する、前記反応の為に使用されるアルミニウム化合物のモル比が、0.001~2.5、好ましくは0.1~1、である、請求項14~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記反応の最後に遠心分離工程、そして次に、任意的に再分散工程、を更に含む、請求項14~20のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、免疫原性組成物、特にはワクチンアジュバント、の分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、抗原送達ビヒクル(antigen delivery vehicle)並びに強力な免疫応答を誘発する為のアジュバントとしての、特定のアルミニウム金属有機構造体(Al-MOF:aluminum metal-organic framework)系の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ワクチンの分野は、その部門の特異性が原因で、製薬産業の他の部門と区別されている。実際、有効性要件だけでなく、健康な集団に又は更に集団全体に投与される製品に対して、はるかに高い安全性要件があることから、製造業者自体によってではなく、公的検査を行う試験所による、バッチ及びそれらの販売(release)についての体系的検証が行われる。
【0004】
アジュバント製剤は、標的とされる病原体に対する長期防御を付与する目的で免疫応答を増強する為に、ワクチン組成物において長年にわたって使用されてきた。従って、ワクチン用のアジュバントは、免疫応答をトリガーし、そして、強く且つ持続的な防御免疫化を得る為に、しばしば必須である。アジュバントはまた、ワクチンに対する免疫応答の効率的なレベルを維持しながら、所与の抗原の必要量を減少させる為に、非常に有用である。最後に、一部のアジュバントは特定の抗原に対してのみ好都合であるのに対し、他のアジュバント(others)は、より広範囲の作用を有し、及び種々の化学的性質の抗原と組み合わせて、種々の種類の疾患に対して有効であることがまた知られている。
【0005】
既に利用可能なアジュバントのうちで、アルミニウム塩は、代替物についての熱心な研究にもかかわらず、それらの優れた炎症/免疫賦活剤比、及び様々な抗原に対する免疫応答をブーストするそれらの独特な能力のおかげで、非生ワクチンの為の基準アジュバントである。
【0006】
しかしながら、リスク対利益比が優れてはいるが、これらのアジュバントは吸収性ではなく、従って、イン・ビボ(in vivo)で分解されず、消えない沈着物を残す。アルミニウム塩は、ヒトにおいて使用されることができる最良且つほぼ唯一の効率/少ない局所反応の妥協案である為、沈着物が残ることは、特に残念である。
【0007】
更に、このようなアジュバントの場合、抗原は塩表面に吸着され、このことは、全ての抗原にとって適切であるわけでない。
【0008】
他の代替物が既に開発されている(スクアレン、リポソーム等)が、これまでのところ、アルミニウムアジュバントほど満足のいくものではなかった。それ故に、ほとんどの不活化ワクチンについて、アルミニウムアジュバントの使用に代わる実用的な代替物はない。
【0009】
ヒト又は動物によって使用されることが意図されるアジュバントを製剤化する場合の別の懸念は、調製工程が、保健機関(Health Agencies)によって一般的に認められている低毒性の製品を用いて実施されなくてはならないこと、である。例えば、毒性溶媒、例えばDMF、は避けられるべきであり、薬学的立場から見てより良好な許容性を有する他の溶媒が好まれるべきである。
【0010】
それ故に、現行のアルミニウムアジュバントの代替物としての新たなワクチンアジュバントが、依然として必要とされている。特には、プロセシング後に徐々に消失する新規なアルミニウムベースの材料が必要とされ、従って、吸収性である新規なアルミニウムベースの材料が必要とされている。
【0011】
言い換えると、アルミニウムベースのアジュバントであって、アジュバントとして及び抗原のカーゴとしての役割を果たした後にそれ自体を分解することができる該アルミニウムベースのアジュバントが、必要とされている。
【0012】
また、免疫応答増強の点で、市場で入手可能な製剤と少なくとも同程度に有効である、及び更に、より有効であり、従って、抗原の提示に有利に働きうる、新しい製剤、例えばアジュバント組成物、が引き続き必要とされている。
【0013】
また、広範囲の抗原に対して、及びまた、抗原と免疫オリエンタ(orienter)との組み合わせに対して、実行し易い固定化を可能にする、アジュバント製剤も、必要とされている。
【0014】
更に、免疫原の用量を減少させる為のアジュバントは、免疫原が大規模で生産するには高価又は複雑である場合に、有利であることができる。より良好で、より強烈で、とりわけ、より持続的な抗体応答が、より良好な防御の為に及び望ましい追加免疫の回数を制限する為に、常に望ましい。
【0015】
また、ほとんどの保健当局(Health Authorities)によって安全とみなされている原料、製造中間体、及び方法を含む、とりわけ工業規模で製造するのが容易であるアジュバント製剤が、必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、これらの必要性の全て又は一部を満たすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
従って、本発明は、少なくとも1つの抗原及び少なくとも1つのアジュバントを含む免疫原性組成物であって、該アジュバントが、少なくとも1つの金属有機構造体、すなわちMOF(Metal-Organic Framework)、を含み、該金属有機構造体(MOF)が、アルミニウムをベースとする無機部分と少なくとも1つの多座配位子をベースとする有機部分とを含み、並びに、該抗原が、少なくとも該金属有機構造体内に固定化されている、上記の免疫原性組成物に向けられている。
【0018】
それ故に、本発明は、その観点の1つに従うと、免疫原性組成物であって、該免疫原性組成物が、少なくとも1つの抗原及び少なくとも1つのアジュバントを含み、ここで、該アジュバントが、少なくとも1つの金属有機構造体、すなわちMOF、を含み、該金属有機構造体(MOF)が、アルミニウムをベースとする無機部分と少なくとも1つの多座配位子をベースとする有機部分とを含み、該多座配位子が、フマレート、ムコネート、メサコネート、オキサレート、オキサロアセテート、スクシネート、マレート、シトレート、アコニテート、イソフタレート、置換されたイソフタレート、2,5-チオフェンジカルボキシレート、2,5-フランジカルボキシレート、トリメセート、トリメリテート、及びピロメリテートから選択され、並びに、ここで、該抗原が、少なくとも該金属有機構造体内に固定化されている、上記の免疫原性組成物に向けられている。
【0019】
好ましくは、本発明は、免疫原性組成物であって、該免疫原性組成物が、少なくとも1つの抗原及び少なくとも1つのアジュバントを含み、ここで、該アジュバントが、少なくとも1つの金属有機構造体、すなわちMOF、を含み、該金属有機構造体(MOF)が、アルミニウムをベースとする無機部分とフマレートを少なくとも含む有機部分とを含み、並びに、ここで、該抗原が、少なくとも該金属有機構造体内に固定化されている、上記の免疫原性組成物に向けられている。
【0020】
本明細書において使用される場合、語「固定化された」は、該抗原が該金属有機構造体と結合し、且つ少なくとも該金属有機構造体内にあり、そして、該抗原がもはや流体相中に存在しないことを意味すると意図される。固定化は、種々のやり方で起こりうる。固定化は、MOF形成及び固定化が同時に起こっていることを意味する、単一工程プロセスを用いて、行われうる。該金属有機構造体は、該抗原を、取り囲むか又は封入することによって、捕捉しうる。他の幾つかの状況において、該抗原はまた、該金属有機構造体の孔中に含められてもよく、又は該抗原は、該金属有機構造体の外表面上に吸着されてもよい。該抗原はまた、とりわけ共有結合によって、該金属有機構造体に連結されることができる。抗原固定化は、これらのタイプの固定化に限定されず、同じ金属有機構造体において種々のやり方で行われることができることが、理解される。
【0021】
該抗原は、該MOF内に固定化されてもよく、このことは、該抗原は該MOFの孔内に必ずしも配置されないが、MOF粒子間に捕捉されて不溶性相を形成することを意味する。
【0022】
全ての抗原又は一部の抗原が、該金属有機構造体内に固定化されることが、理解される。従って、1つの実施態様に従うと、全ての抗原が、該金属有機構造体内に固定化される。別の実施態様に従うと、一部の抗原は、該金属有機構造体内に固定化され、他の抗原は、該金属有機構造体によって、例えば該金属有機構造体の表面に、固定化されうる。
【発明の効果】
【0023】
予想外に、本発明者等は、アルミニウムと結合された、金属有機構造体、すなわちMOF、と呼ばれる特殊な配位ポリマーが、本明細書において上で詳述された不十分な点を克服し、従って、より良好で強力な免疫応答を実現することを可能にする、特に効率的なアジュバントであるらしいことを発見した。
【発明を実施するための形態】
【0024】
金属有機構造体(MOF)は、医薬品のベクター化及び制御放出の為の大きな可能性を既に示しており、且つイン・ビボで分解されることができる、ハイブリッド材料である。特には、幾つかのMOFベースの材料は、その中に幾つかの抗原を捕捉する為のマトリックスとして使用されてきたが、ワクチンの製剤化の為の唯一のアジュバントとして使用されたことは一度もない。実際、ワクチンアジュバントに関して、本発明者等の知る限りでは、単一のアジュバント分子として使用されるアルミニウムベースのMOF内に、抗原が固定化されたことはなかった。
【0025】
特には、本発明は、アルミニウムベースの配位ポリマー(金属有機構造体)(Al-MOFと表される)と、任意の抗原(Agと表される)、特にプロ抗原、すなわち、本明細書において免疫原と呼ばれる予防的又は治療的なワクチンに対する特異的免疫応答を生物において直接的又は間接的に喚起することができるような生物学的分子又は化学的分子、との結合に基づいている。この為に、該免疫原は、該免疫原の又は該免疫原によって誘発される抗原性特性を保持するように選択される物理化学的条件下で、単一工程プロセスにおいて、Al-MOFネットワーク内に固定化される。
【0026】
既知のアルミニウムアジュバントとは違って、本発明に従うアルミニウムベースのMOFは、吸収性であり、任意のタイプの抗原の固定化を可能にする。更に、本発明に従うアジュバントは、既知のアルミニウムアジュバントよりも良好な免疫応答を示す。
【0027】
事実、以下の実施例に示されているように、本発明のアルミニウム-金属有機構造体をベースとするアジュバントは、参照製品とは異なり、その役割を果たしつつ分解する。アルミニウム多座配位子MOFは、アルミニウムのアジュバント特徴を保持するが、材料がその化学成分、外因性有機配位子、及び可溶性Al3+イオンに徐々に分解されるという利点を有する。それ故に、アルミニウムは溶解されて、注射部位に一時的に存在することが可能になる。
【0028】
加えて、本発明に従って考慮されるものとしてのMOFは、非常に大きな提示表面によって、多量の抗原を固定化することが可能であり、それ故に、必要とされる免疫原及びアジュバントの量を減らすことを可能にする、マトリックスである。
【0029】
国際公開第2021/097194号パンフレットは、とりわけ亜鉛をベースとする金属有機構造体内に封入された治療剤を記載している。このような文献は、アルミニウム-金属有機構造体を記載していない。更に、本出願の発明者等は、そのようなMOFが全ての抗原の固定化に適しているわけでないことを示した。
【0030】
本発明は、その観点のもう1つに従うと、抗原を、免疫原性組成物中に、好ましくはワクチンアジュバント中に、固定化する為に使用する為の金属有機構造体であって、該金属有機構造体は、アルミニウムをベースとする無機部分と、少なくとも1つの多座配位子をベースとする有機部分とを含み、該多座配位子が、フマレート、ムコネート、メサコネート、オキサレート、オキサロアセテート、スクシネート、マレート、シトレート、アコニテート、イソフタレート、置換されたイソフタレート、2,5-チオフェンジカルボキシレート、2,5-フランジカルボキシレート、トリメセート、トリメリテート、及びピロメリテートから選択され、ここで、該抗原が少なくとも該金属有機構造体内に固定化されている、上記の金属有機構造体に向けられている。
【0031】
本発明は、その観点のもう1つに従うと、免疫原性組成物中に、好ましくはワクチンアジュバント中に、抗原を固定化する為に金属有機構造体を使用する方法であって、該金属有機構造体は、アルミニウムをベースとする無機部分と、多座配位子をベースとする有機部分とを含み、該多座配位子は、フマレート、ムコネート、メサコネート、オキサレート、オキサロアセテート、スクシネート、マレート、シトレート、アコニテート、イソフタレート、置換されたイソフタレート、2,5-チオフェンジカルボキシレート、2,5-フランジカルボキシレート、トリメセート、トリメリテート、及びピロメリテートから選択され、ここで、該抗原が少なくとも該金属有機構造体内に固定化されている、上記の方法に向けられている。
【0032】
幾つかの好ましい実施態様において、このような免疫原性組成物は、ワクチン組成物として使用されうる。好ましくは、該免疫原性組成物、特にワクチン組成物、は吸収性である。
【0033】
更に、本発明は、アルミニウム化合物と標的抗原に接触している多座配位子との配位反応によってMOFを合成する為の簡単且つ生物学的に適合性のある方法を提案する。
【0034】
従って、本発明は、その観点のもう1つに従うと、上記で定義された免疫原性組成物を調製する方法であって、少なくとも1つのアルミニウム化合物を、フマル酸、ムコン酸、メサコン酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、アコニット酸、イソフタル酸、置換されたイソフタル酸、2,5-チオフェンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、若しくはピロメリット酸から選択される少なくとも1つのポリカルボン酸、及び/又はフマレート、ムコネート、メサコネート、オキサレート、オキサロアセテート、スクシネート、マレート、シトレート、アコニテート、イソフタレート、置換されたイソフタレート、2,5-チオフェンジカルボキシレート、2,5-フランジカルボキシレート、トリメセート、トリメリテート、及びピロメリテートから選択される少なくとも1つのポリカルボキシレートと、少なくとも1つの抗原の存在下で反応させて、該抗原を固定化する少なくとも1つのAl-ポリカルボキシレート金属有機構造体を形成させることからなる工程を少なくとも含む、上記の方法に向けられている。
【0035】
合成は、穏やか且つ持続可能な条件下で有利に起こるので、合成(it)をスケールアップすることは、特に困難を引き起こさない。加えて、MOFの生産コストは、有利なことに依然として低い(低コストの合成前駆体、水中及び室温での工程(process))。
【0036】
従って、本発明者等はまた、具体的には、生物学的実体を変性させることなく該生物学的実体を固定化することを可能にする、前述の多座配位子及びアルミニウムをベースとするMOFを物理化学的条件下で製造する方法を開発した。
【0037】
予想外に、本発明に従って得られるMOF構造物中に固定化された抗原の提示表面は、有利なことに、現在使用されているタンパク質及びアルミニウム塩からなる準巨視的(quasi-macroscopic)沈殿物の提示表面よりもかなり大きい。更に、以下の実施例に示されているように、Al-MOFの固定化能力は100重量%であり、添加された抗原の全部を固定化した。この可能性によって、非常に大きな提示表面によって、多量の抗原を固定化することが可能になる。
【0038】
以下の実施例において開示されているように、生理学的条件下でのAl-MOFの段階的分解はまた、イン・ビボ(in vivo)においても証明されている。
【0039】
免疫原性組成物
本開示は、免疫原性組成物に関する。幾つかの好ましい実施態様において、このような免疫原性組成物は、ワクチン組成物として使用されうる。
【0040】
本明細書において使用される場合、語「ワクチン」は、病原体因子(pathogen agent)によって引き起こされる疾病から対象を保護又は治療する意図で免疫応答を誘発する為に対象に投与される、直接的又は間接的な免疫原性組成物を意味することが意図される。
【0041】
従って、ワクチン組成物は、所与の抗原に対する防御免疫応答を引き起こす為に使用される組成物である。ワクチンは、通常、予防ツールとして使用されるが、特定の場合において、治療薬としても使用されうる。
【0042】
ワクチンとしては、予防的ワクチン及び治療的ワクチンが挙げられうる。予防的ワクチンは、感染症の予防の為に投与される、及びこれらの疾患の原因である病原体に曝露される前に対象を免疫化する、ワクチンである。治療的ワクチンは、例えば、癌細胞を拒絶するか又は特異的免疫応答を再現するように免疫系を誘導することによって該免疫系を刺激することが意図された、ワクチンである。本質的に予防的である予防的ワクチンとは違って、治療的ワクチンは、特定の疾患、例えば癌又はAIDS、に既に罹患している対象への治療薬として、主に投与される。
【0043】
本開示に従う免疫原性組成物又はワクチン組成物は、免疫を誘発する為の抗原及びアルミニウムベースの金属有機構造体(MOF)を含む。該MOFは、抗原の固定化及び保持における役割と共に、該組成物中でアジュバントとして主に機能する。
【0044】
アジュバント
本発明に従うと、アジュバントは、ワクチンアジュバントである。
【0045】
本開示内で、語「アジュバント」又は「アジュバント効果」は、抗原を含む免疫原性組成物又は抗原を含むワクチン組成物に添加された場合に、例えば、抗原特異的免疫細胞に対する抗原提示を増強することによって、及び/又は標的とされた病原体に対する長期防御を付与する目的でこれらの細胞を活性化することによって、該抗原に対する免疫応答を効率的にトリガー又は増強する、化合物又は組成物を称する為に使用される。
【0046】
好ましくは、本発明に従うアジュバントは吸収性である。吸収性とは、免疫原が吸収されやすく、従って、注射部位から経時的に消失又は消滅することを意味する。
【0047】
特には、注射されたアルミニウムの40重量%未満、好ましくは30重量%未満、好ましくは25重量%未満が、1ヶ月後に注射部位に残存する。
【0048】
より特には、注射されたアルミニウムの30重量%未満、好ましくは25重量%未満、好ましくは10重量%未満が、2ヶ月後に注射部位に残存する。
【0049】
より特には、注射されたアルミニウムの20重量%未満、好ましくは15重量%未満、好ましくは6重量%未満が、3ヶ月後に注射部位に残存する。
【0050】
本発明に従うアジュバントは、アルミニウムをベースとする無機部分と多座配位子をベースとする有機部分とを含む少なくとも1つの金属有機構造体を含む。
【0051】
特定の実施態様に従うと、本発明に従う免疫原性組成物は、少なくとも1つの金属有機構造体を含むアジュバント以外のアジュバントを含みうる。
【0052】
金属有機構造体(MOF)
配位ポリマーとも名付けられた金属有機構造体(MOF)は、無機単位及び有機配位子を含むハイブリッド固体である。MOFは、典型的には、金属と多座配位子との組み合わせによって、構造物、好ましくは多孔性構造物、を形成する。
【0053】
本発明に従うと、該MOFは、イン・ビボで分解するように構成される。
【0054】
アルミニウムをベースとする無機部分と前述の少なくとも1つの多座配位子をベースとする有機部分とを含む任意の種類のMOFが、該免疫原性組成物において使用されることができる。
【0055】
アルミニウムイオンのタイプ及び配位数と、多座配位子のタイプ及びトポロジーとを適切に組み合わせることにより、所望の構造を有するMOFが得られる。
【0056】
該MOFは、結晶質又は非晶質であることができる。
【0057】
好ましくは、該金属有機構造体は、結晶化されている。
【0058】
好ましくは、該金属有機構造体は、多孔性である。
【0059】
該MOFを形成する該アルミニウム化合物と該配位子との組み合わせは、期待される機能及び所望の孔径に応じて、適切に決定されることができる。
【0060】
従って、本発明のMOFは、孔、特にミクロ孔(micropore)及び/又はメソ孔(mesopore)、を含みうる。IUPACで又はPure Applied Chem.57(1985),pages 603-619で与えられる定義に対応する各場合において、ミクロ孔は、2nm未満の直径を有する孔と定義され、及びメソ孔は、2~50nmの直径に基づいて定義される。
【0061】
ミクロ孔及び/又はメソ孔の存在は、収着測定によって確認されることができる。
【0062】
該MOFは、粉末形態で又は凝集物として存在することができる。
【0063】
好ましい実施態様に従うと、本発明に従うMOFは、別個のビヒクル(vehicle)において実現されず(implemented)、好ましくは酵母において実現されない。
【0064】
アルミニウムをベースとする無機部分
アルミニウムをベースとする無機部分は、好ましくは、アルミニウム塩、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、及びアルミニウムアルコキシド、又はそれらの組み合わせから選択されるアルミニウム化合物である。
【0065】
好ましくは、該アルミニウム化合物は、アルミニウム塩、酸化アルミニウム、及び水酸化アルミニウム、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0066】
アルミニウム塩は、無機アルミニウム塩及び有機アルミニウム塩を包含する。
【0067】
無機アルミニウム塩は、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、ハロゲン化アルミニウム、及び過塩素酸アルミニウムから選択されうる。
【0068】
ハロゲン化アルミニウムは、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、フッ化アルミニウム、又はヨウ化アルミニウムでありうる。
【0069】
有機アルミニウム塩は、シュウ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、及びクエン酸アルミニウムから選択されうる。
【0070】
酢酸アルミニウムは、塩基性一酢酸アルミニウム、塩基性二酢酸アルミニウム、又は中性三酢酸アルミニウムでありうる。
【0071】
アルミニウムアルコキシドは、とりわけ、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、及びアルミニウムブトキシドを包含する。
【0072】
上記の様々なアルミニウム化合物の配合物を使用することを想定することが可能であることは、明らかである。
【0073】
無水物又は水和物のいずれかとしての硫酸アルミニウム、特にはその十八水和物又は十四水和物の形態の硫酸アルミニウム、が、特に好ましい。
【0074】
少なくとも1つのアルミニウム化合物として、アルミン酸塩を使用することがまた可能である。
【0075】
例えば、アルカリ金属アルミン酸塩は、特にNaAlO2でありうる。NaAlO2は塩基性特性を有するので、反応における塩基の存在が退けられることができる。しかしながら、追加の塩基を使用することがまた可能である。
【0076】
好ましくは、アルミニウムをベースとする無機部分は、硫酸アルミニウムから形成される。
【0077】
1つの実施態様に従うと、抗原/アルミニウムの質量比は、該抗原が破傷風トキソイドである場合、10-5から1まで、好ましくは10-2から10-1まで、変動する。
【0078】
このような抗原/アルミニウム比は、選択される抗原に依存することが理解される。
【0079】
本発明のMOFは、金属イオンとして少なくともアルミニウムイオンを含む。
【0080】
1つの実施態様において、アルミニウムイオンは、MOFフレームワーク中の唯一の金属イオンである。
【0081】
別の実施態様において、複数の金属イオンが、該MOF中に存在する。
【0082】
アルミニウム以外のこれらの1以上の金属イオンは、該MOFの孔中に配置されることができるか、又は該フレームワークの格子の形成に関与することができる。後者の場合、少なくとも1つの多座有機化合物が、同様にそのような金属イオンに結合されるであろう。
【0083】
複数の金属イオンが該MOF中に含まれる場合、該複数の金属イオンは、化学量論量又は非化学量論量で存在することができる。
【0084】
好ましくは、該MOFは、ただ1つの金属イオン、より好ましくはアルミニウム、を有する。
【0085】
多座配位子をベースとする有機部分
本明細書において使用される場合、「多座配位子」は、2つ以上の配位結合を形成することができる配位子を意味し、IUPACによって定義されるように理解される。
【0086】
有機多座配位子の例は、国際公開第2010/075610号パンフレットで列挙されている配位子を包含する。
【0087】
好ましくは、使用される配位子は非毒性である。
【0088】
該MOF中の該多座配位子は、典型的には、有機配位子であり、その例は、カルボン酸陰イオン及び複素環式化合物を包含する。カルボン酸陰イオンの例は、ジカルボン酸陰イオン及びトリカルボン酸陰イオンを包含する。
【0089】
これらの1以上のさらなる、少なくとも多座の有機化合物は、例えば、ジカルボン酸、トリカルボン酸、又はテトラカルボン酸から誘導される。他の少なくとも多座の有機化合物がまた、フレームワークの形成に関与することができる。しかしながら、少なくとも多座でない有機化合物がフレームワーク中に含まれることが同様にまた可能である。少なくとも多座でない有機化合物は、例えば、モノカルボン酸から誘導されることができる。
【0090】
本発明の目的の為に、語「誘導された」は、ジカルボン酸、トリカルボン酸、又はテトラカルボン酸が、部分的に脱プロトン化された形態又は完全に脱プロトン化された形態でフレームワーク中に存在できることを意味する。更に、ジカルボン酸、トリカルボン酸、又はテトラカルボン酸は、置換基又は複数の独立した置換基を含むことができる。このような置換基の非限定的な例は、-OH、-NH2、-OCH3、-CH3、-NH(CH3)、-N(CH3)2、-CN、及びハライドである。更に、本発明の目的の為に使用される語「誘導された」は、ジカルボン酸、トリカルボン酸、又はテトラカルボン酸がまた、対応する硫黄類似体の形態で存在できることを意味する。硫黄類似体は、官能基-C(=O)SH及びその互変異性体並びにC(=S)SHであり、これらは、1以上のカルボン酸基の代わりに使用されることができる。更に、本発明の目的の為に使用される語「誘導された」は、1以上のカルボン酸官能基(function)がスルホン酸基(-SO3H)によって置換されることができることを意味する。加えて、2個、3個、又は4個のカルボン酸官能基に加えてスルホン酸基が同様に存在することができる。更に、本発明の目的の為に使用される語「誘導された」は、1以上のカルボン酸官能基が、塩、例えばカルボン酸ナトリウム塩又はカルボン酸カリウム塩、の形態であることができることを意味する。
【0091】
ジカルボン酸、トリカルボン酸、又はテトラカルボン酸は、上記の官能基に加えて、これらの官能基が結合されている有機骨格又は有機化合物を有してもよい。ここで、上記の官能基は、原則として、任意の適切な有機化合物に結合されることができ、ただし、これらの官能基を有する有機化合物が、フレームワークを生じる為の配位結合を形成する為に適していることが保証されることをその条件とする。
【0092】
有機化合物は、飽和若しくは不飽和の脂肪族化合物、又は芳香族化合物、或いは脂肪族であり芳香族である化合物から誘導されうる。
【0093】
脂肪族化合物又は脂肪族であり芳香族である化合物の脂肪族部分は、直鎖状及び/又は分岐状及び/又は環状であることができ、その際、化合物1つにつき複数の環がまた可能である。脂肪族化合物又は脂肪族であり芳香族である化合物の脂肪族部分は、例えば、1~18個、より好ましくは1~14個、より好ましくは1~13個、より好ましくは1~12個、より好ましくは1~11個、特に好ましくは1~10個、の炭素原子、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個の炭素原子、を含む。特には、該脂肪族化合物又は該脂肪族部分は、メタン、アダマンタン、アセチレン、エチレン、又はブタジエンであることができる。
【0094】
芳香族化合物又は芳香族であり脂肪族である化合物の芳香族部分は、1以上の環、例えば2個、3個、4個、又は5個の環、を有することができ、その際、該環は互いから離れて存在することができ、及び/又は少なくとも2個の環は縮合された形態で存在することができる。芳香族化合物又は脂肪族であり芳香族である化合物の芳香族部分は、特には、1個、2個、又は3個の環を有し、1個又は2個の環が特に好ましい。該化合物の各環は、独立して、N、O、S、B、P、Si等の少なくとも1つのヘテロ原子、例えばN、O、及び/又はS、を含むことができる。芳香族化合物又は芳香族であり脂肪族である化合物の芳香族部分は、1個又は2個のC6環を含み得、その際、該2個の環は、離れて又は縮合された形態で、存在する。芳香族化合物として、ベンゼン、ナフタレン、及び/又はビフェニル及び/又はビピリジル及び/又はピリジルが、特に挙げられうる。
【0095】
多座有機化合物は、例えば、1~18個、好ましくは1~10個、特には6個、の炭素原子を有し、且つ官能基として2個、3個、又は4個のカルボキシル基のみを有する、脂肪族又は芳香族の、非環式又は環式の、炭化水素である。
【0096】
例えば、多座有機化合物は、ジカルボン酸、例えば、フマル酸、シュウ酸、コハク酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタル酸、酒石酸、1,4-ブタンジカルボン酸、1,4-ブテンジカルボン酸、4-オキソピラン-2,6-ジカルボン酸、1,6-ヘキサンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、1,8-ヘプタデカンジカルボン酸、1,9-ヘプタデカンジカルボン酸、ヘプタデカンジカルボン酸、アセチレンジカルボン酸、1,2-ベンゼンジカルボン酸、1,3-ベンゼンジカルボン酸、2,3-ピリジンジカルボン酸、ピリジン-2,3-ジカルボン酸、1,3-ブタジエン-1,4-ジカルボン酸、1,4-ベンゼンジカルボン酸、p-ベンゼンジカルボン酸、イミダゾール-2,4-ジカルボン酸、2-メチルキノリン-3,4-ジカルボン酸、キノリン-2,4-ジカルボン酸、キノキサリン-2,3-ジカルボン酸、6-クロロキノキサリン-2,3-ジカルボン酸、4,4'-ジアミノフェニルメタン-3,3'-ジカルボン酸、キノリン-3,4-ジカルボン酸、7-クロロ-4-ヒドロキシキノリン-2,8-ジカルボン酸、ジイミドジカルボン酸、ピリジン-2,6-ジカルボン酸、2-メチルイミダゾール-4,5-ジカルボン酸、チオフェン-3,4-ジカルボン酸、2-イソプロピルイミダゾール-4,5-ジカルボン酸、テトラヒドロピラン-4,4-ジカルボン酸、ペリレン-3,9-ジカルボン酸、ペリレンジカルボン酸、3,6-ジオキサオクタンジカルボン酸、3,5-シクロヘキサジエン-1,2-ジカルボン酸、オクタンジカルボン酸、ペンタン-3,3-カルボン酸(pentane-3,3-carboxylic acid)、4,4'-ジアミノ-1,1'-ビフェニル-3,3'-ジカルボン酸、4,4'-ジアミノビフェニル-3,3'-ジカルボン酸、ベンジジン-3,3'-ジカルボン酸、1,4-ビス(フェニルアミノ)ベンゼン-2,5-ジカルボン酸、1,1’-ビナフチルジカルボン酸、7-クロロ-8-メチルキノリン-2,3-ジカルボン酸、1-アニリノアントラキノン-2,4’-ジカルボン酸、ポリテトラヒドロフラン250-ジカルボン酸、1,4-ビス(カルボキシメチル)ピペラジン-2,3-ジカルボン酸、7-クロロキノリン-3,8-ジカルボン酸、1-(4-カルボキシ)フェニル-3-(4-クロロ)フェニルピラゾリン-4,5-ジカルボン酸、1,4,5,6,7,7-ヘキサクロロ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、1,3-ジベンジル-2-オキソイミダゾリジン-4,5-ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレン-1,8-ジカルボン酸、2-ベンゾイルベンゼン-1,3-ジカルボン酸、1,3-ジベンジル-2-オキソイミダゾリジン-4,5-cis-ジカルボン酸、2,2’-ビキノリン-4,4’-ジカルボン酸、ピリジン-3,4-ジカルボン酸、3,6,9-トリオキサウンデカンジカルボン酸、ヒドロキシベンゾフェノンジカルボン酸、市販の化合物(Pluriol E 200-ジカルボン酸、Pluriol E 300-ジカルボン酸、Pluriol E 400-ジカルボン酸、及びPluriol E 600-ジカルボン酸)、ピラゾール-3,4-ジカルボン酸、2,3-ピラジンジカルボン酸、5,6-ジメチル-2,3-ピラジンジカルボン酸、ビス(4-アミノフェニル)エーテルジイミド-ジカルボン酸、4,4’-ジアミノジフェニルメタンジイミド-ジカルボン酸、ビス(4-アミノフェニル)スルホンジイミド-ジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレン-ジカルボン酸、1,3-アダマンタンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、8-メトキシ-2,3-ナフタレンジカルボン酸、8-ニトロ-2,3-ナフタレンカルボン酸(8-nitro-2,3-naphthalenecarboxylic acid)、8-スルホ-2,3-ナフタレンジカルボン酸、アントラセン-2,3-ジカルボン酸、2’,3’-ジフェニル-p-テルフェニル-4,4″-ジカルボン酸、(ジフェニルエーテル)-4,4’-ジカルボン酸、イミダゾール-4,5-ジカルボン酸、4(1H)-オキソチオクロメン-2,8-ジカルボン酸、5-tert-ブチル-1,3-ベンゼンジカルボン酸、7,8-キノリンジカルボン酸、4,5-イミダゾールジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、ヘキサトリアコンタンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、1,7-ヘプタンジカルボン酸、5-ヒドロキシ-1,3-ベンゼンジカルボン酸、2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゼンジカルボン酸、ピラジン-2,3-ジカルボン酸、フラン-2,5-ジカルボン酸、1-ノネン-6,9-ジカルボン酸、エイコセンジカルボン酸、4,4’-ジヒドロキシ-ジフェニルメタン-3,3’-ジカルボン酸、1-アミノ-4-メチル-9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-2,3-ジカルボン酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、シクロヘキセン-2,3-ジカルボン酸、2,9-ジクロロフルオルビン-4,11-ジカルボン酸、7-クロロ-3-メチルキノリン-6,8-ジカルボン酸、2,4-ジクロロベンゾフェノン-2’,5’-ジカルボン酸、1,3-ベンゼンジカルボン酸、2,6-ピリジンジカルボン酸、1-メチルピロール-3,4-ジカルボン酸、1-ベンジル-1H-ピロール-3,4-ジカルボン酸、アントラキノン-1,5-ジカルボン酸、3,5-ピラゾールジカルボン酸、2-ニトロベンゼン-1,4-ジカルボン酸、ヘプタン-1,7-ジカルボン酸、シクロブタン-1,1-ジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、5,6-デヒドロノルボルナン-2,3-ジカルボン酸、5-エチル-2,3-ピリジンジカルボン酸、又はカンファージカルボン酸、から誘導される。
【0097】
多座有機化合物は、例えば、そういうものとして例として上に言及されたジカルボン酸の1つ、でありうる。
【0098】
例えば、多座有機化合物は、トリカルボン酸、例えば、2-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸、7-クロロ-2,3,8-キノリントリカルボン酸、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、2-ホスホノ-1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、1-ヒドロキシ-1,2,3-プロパントリカルボン酸、4,5-ジヒドロキシ-4,5-ジオキソ-1H-ピロロ[2,3-F]キノリン-2,7,9-トリカルボン酸、5-アセチル-3-アミノ-6-メチルベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸、3-アミノ-5-ベンゾイル-6-メチルベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、又はアウリントリカルボン酸、から誘導されることができる。
【0099】
多座有機化合物は、例えば、そういうものとして例として上に言及されたトリカルボン酸の1つ、でありうる。
【0100】
テトラカルボン酸から誘導される多座有機化合物の例は、1,1-ジオキシドペリロ[1,12-BCD]チオフェン-3,4,9,10-テトラカルボン酸、ペリレンテトラカルボン酸(例えば、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸若しくは(ペリレン-1,12-スルホン)-3,4,9,10-テトラカルボン酸)、ブタンテトラカルボン酸(例えば、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸若しくはメソ-1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸)、デカン-2,4,6,8-テトラカルボン酸、1,4,7,10,13,16-ヘキサオキサシクロオクタデカン-2,3,11,12-テトラカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,11,12-ドデカンテトラカルボン酸、1,2,5,6-ヘキサンテトラカルボン酸、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,9,10-デカンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、又はシクロペンタンテトラカルボン酸(例えばシクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸)である。
【0101】
多座有機化合物は、例えば、そういうものとして例として上に言及されたテトラカルボン酸の1つ、でありうる。
【0102】
多座有機化合物は、例えば、1個、2個、3個、4個、又はそれ以上の環を有する、任意的に少なくとも一置換された、芳香族ジカルボン酸、芳香族トリカルボン酸、又は芳香族テトラカルボン酸、から選択され得、ここで、該環のそれぞれは、少なくとも1つのヘテロ原子を含むことができ、この場合、2個以上の環は、同一のヘテロ原子又は異なるヘテロ原子を含むことができる。多座有機化合物は、例えば、単環式ジカルボン酸、単環式トリカルボン酸、単環式テトラカルボン酸、二環式ジカルボン酸、二環式トリカルボン酸、二環式テトラカルボン酸、三環式ジカルボン酸、三環式トリカルボン酸、三環式テトラカルボン酸、四環式ジカルボン酸、四環式トリカルボン酸、及び/又は四環式テトラカルボン酸、から選択されうる。適切なヘテロ原子は、例えば、N、O、S、B、P、であり、特には、N、S、及び/又はOである。ここで、適切な置換基は、とりわけ、-OH、ニトロ基、アミノ基、又はアルキル基若しくはアルコキシル基、である。
【0103】
多座有機化合物は、例えば、アセチレンジカルボン酸(ADC)、カンファージカルボン酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタル酸、ベンゼンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸(例えば4,4’-ビフェニルジカルボン酸(BPDC))、ピラジンジカルボン酸(例えば2,5-ピラジンジカルボン酸)、ビピリジンジカルボン酸(例えば2,2’-ビピリジンジカルボン酸(例えば2,2’-ビピリジン-5,5’-ジカルボン酸))、ベンゼントリカルボン酸(例えば、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、若しくは1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(BTC))、ベンゼンテトラカルボン酸、アダマンタンテトラカルボン酸(ATC)、アダマンタンジベンゾエート(ADB)、ベンゼントリベンゾエート(BTB)、メタンテトラベンゾエート(MTB)、アダマンタンテトラベンゾエート、又はジヒドロキシテレフタル酸(例えば2,5-ジヒドロキシテレフタル酸(DHBDC))、から選択されうる。
【0104】
多座有機化合物は、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、又は1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸、から選択されうる。
【0105】
具体的な例は、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタル酸、トリメシン酸、及びそれらの誘導体の陰イオンを包含する。複素環式化合物の例は、ビピリジン、イミダゾール、アデニン、及びそれらの誘導体を包含する。代替的には、該配位子は、アミン化合物、スルホン酸陰イオン、又はリン酸陰イオンでありうる。
【0106】
多座配位子の例は、2,3-ピラジンジカルボン酸(pzdc);ピラジン;トリメシン酸(BTC);テレフタル酸(BDC);1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(dabco);イミダゾール;1,3,5-ベンゼントリカルボン酸;クエン酸;リンゴ酸;イソフタル酸;2,5-ジヒドロキシテレフタル酸(HBDC);4,4’-オキソビス安息香酸(4,4'-oxobisbenzoic acid)(OBA);1,3,5-トリ(4’-カルボキシ-4,4’-ビフェニル)ベンゼン(BTB);4,4’-4’’-ベンゼン-1,3,5-トリイル-トリ-ビフェニルカルボン酸(BBC);アゼライン酸;ゾレドロン酸;o-ブロモテレフタル酸(o-Br-BDC);2-アミノテレフタル酸(H2N-BDC);[C3H7O]2-BDC;[C5H11O]2-BDC;[C2H4]-BDC;1,4-ナフタレンジカルボン酸(1,4-NDC);2,6-ナフタレンジカルボン酸(2,6-NDC);4,4’-ビフェニルジカルボン酸(BPDC);テトラヒドロピレン-2,7-ジカルボン酸(HPDC);ピレンジカルボン酸(PDC);テルフェニルジカルボン酸(TPDC);ギ酸;m-BDC;BzPDC;5,5’-(9,10-アントラセンジイル)ジイソホスフェート;1,1’-ビナフチル-4,4’-ジカルボン酸(BNDC);4,4’-ビフェニルジカルボン酸(BPDC);ジベンジルホスフェート(DBP);1,3,5,7-アダマンタンテトラカルボン酸(ATC);アセチレンジカルボン酸(ADC);アダマンタンテトラ安息香酸(ATB);メタンテトラ安息香酸(MTB);シュウ酸;1,4-ジフェニルジアクリル酸(PDAC);4,4’-スチルベンジカルボン酸(SDBC);1,3,5-トリ(4’-カルボキシ-4,4’-ビフェニル)ベンゼン(BTB);4,4’,4’’-[ベンゼン-1,3,5-トリイル-トリス(エチン-2,1-ジイル)]トリ安息香酸(BTE);1,2,4,5-テトラキス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン(TCPB);1,4-ジカルボキシルベンゼン-2,3-ジチオレート(DCBDT);苛性酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸)、の陰イオンを包含する。
【0107】
例えば、多座有機化合物は、ジカルボン酸、例えば、フマル酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、又はグルタル酸、から誘導されうる。
【0108】
MOFは、少なくとも1つの単座配位子を更に含みうる。
【0109】
本発明に従うと、該多座配位子は、フマレート、ムコネート、メサコネート、オキサレート、オキサロアセテート、スクシネート、マレート、シトレート、アコニテート、イソフタレート、置換されたイソフタレート、2,5-チオフェンジカルボキシレート、2,5-フランジカルボキシレート、トリメセート、トリメリテート、及びピロメリテートから選択されるか、又はフマル酸、ムコン酸、メサコン酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、アコニット酸、イソフタル酸、置換されたイソフタル酸、2,5-チオフェンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、若しくはピロメリット酸から誘導される。
【0110】
特には、該多座配位子は、フマレート、ムコネート、メサコネート、スクシネート、マレート、イソフタレート、置換されたイソフタレート、2,5-チオフェンジカルボキシレート、2,5-フランジカルボキシレート、トリメセート、トリメリテート、及びピロメリテートから選択されるか、又はフマル酸、ムコン酸、メサコン酸、コハク酸、リンゴ酸、イソフタル酸、置換されたイソフタル酸、2,5-チオフェンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、若しくはピロメリット酸から誘導される。
【0111】
より特には、該多座配位子は、フマレート、ムコネート、イソフタレート、2,5-チオフェンジカルボキシレート、2,5-フランジカルボキシレート、及びトリメセートから選択されるか、又はフマル酸、ムコン酸、イソフタル酸、2,5-チオフェンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、若しくはトリメシン酸から誘導される。
【0112】
特には、該多座配位子は、フマレート、ムコネート、2,5-フランジカルボキシレート、トリメセート、及びピロメリテートから選択されるか、又はフマル酸、ムコン酸、2,5-フランジカルボン酸、トリメシン酸、若しくはピロメリット酸から誘導される。
【0113】
好ましくは、該多座配位子は、フマレート、ムコネート、2,5-チオフェンジカルボキシレート、2,5-フランジカルボキシレート、及びトリメセートから選択されるか、又はフマル酸、ムコン酸、2,5-チオフェンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、若しくはトリメシン酸から誘導される。
【0114】
好ましくは、該多座配位子は、フマレート、ムコネート、トリメセート、及びピロメリテートから選択されるか、又はフマル酸、ムコン酸、2酸(2 acid)、トリメシン酸、若しくはピロメリット酸から誘導される。
【0115】
より好ましくは、該多座配位子は、フマレート、ムコネート、及びトリメセートから選択されるか、又はフマル酸、ムコン酸、若しくはトリメシン酸から誘導される。
【0116】
より好ましくは、使用される配位子は、フマレートであるか、又はフマル酸から誘導される。
【0117】
MOF構造物
有機配位子及び/又は合成条件に応じて、異なる構造物が得られることができ、従って、多数のAl-MOF構造物が報告されている。幾つかの例が後述される。
【0118】
特には、ジカルボン酸配位子を有するAl-MOFとして、フマレート配位子を有するAl-MOF、ムコネート配位子を有するAl-MOF、メサコネート配位子を有するAl-MOF、オキサレート配位子を有するAl-MOF、オキサロアセテート配位子を有するAl-MOF、スクシネート配位子を有するAl-MOF、マレート配位子を有するAl-MOF、イソフタレート配位子(1,3-ベンゼンジカルボキシレート)を有するAl-MOF、置換されたイソフタレート配位子を有するAl-MOF、2,5-チオフェンジカルボキシレート配位子を有するAl-MOF、及び2,5-フランジカルボキシレート配位子を有するAl-MOFが、挙げられうる。
【0119】
ジカルボン酸Al-MOF構造物の典型的な例は、MIL-53(Al)(MIL=「Materiaux Institut Lavoisier de Versailles」)の等構造(類似のトポロジーであるが、異なる有機配位子を有する)系列である。MIL-53(Al)構造物は、直鎖状ジカルボキシレート(フマレート、ムコネート等)によって互いに連結された、頂点を共有するAl(III)八面体の1次元(1D)のAlO4(OH)2鎖によって構成される。該配位子はまた、ペンディング(pending)官能基がMOFチャネル中に存在することにより多孔性が低められたMIL-53(Al)構造物をもたらす官能基で、置換されることができる。
【0120】
ジカルボキシレートが(フマル酸から誘導される)フマレート配位子である場合、該構造物は、Al-フマレート(又はMIL-53(Al)-FA若しくはBasolite A520)、すなわち、5.7×6.0Å2のフリーアパーチャー(free aperture)の一次元(1D)チャネルを有する微孔性構造物、である。
【0121】
ジカルボキシレートが(ムコン酸から誘導される)ムコネート配位子である場合、該構造物は、MIL-53(Al)-muc、すなわち、9.0Åのフリーアパーチャーの一次元(1D)チャネルを有する微孔性構造物、であることができる。
【0122】
別のAl-MOF構造物は、(イソフタル酸から誘導される)イソフタレート配位子(1,3-ベンゼンジカルボキシレート)が、シス型で頂点を共有するAlO6八面体のらせん鎖と結合される場合に、得られる。例えば、CAU-10-H(CAU=Christian-Albrechts-Universitat)は、3.6Å2のフリーアパーチャーの正方形状一次元チャネルを有する、三次元(3D)微孔性構造物を示す。
【0123】
代替的には、2,5-チオフェンジカルボキシレートを用いると、CAU-23構造物が得られ、これは、連続した、トランス型で頂点を共有するAlO6多面体及びシス型で頂点を共有するAlO6多面体、を有し、その結果、7.6Åのフリーアパーチャーの正方形チャネルのミクロ孔を生じる。
【0124】
2,5-フランジカルボキシレート配位子を用いて得られるMOFの典型的な例は、MIL-160(Al)である。MIL-160(Al)は、AlO4(OH)2八面体の鎖と2,5-フランジカルボキシレート配位子との結合の結果として生じる。このことにより、直径約5~6Åの正方形状で正弦曲線状の一次元(1D)チャネルを有する三次元(3D)構造物がもたらされる。
【0125】
トリカルボン酸配位子を有するAl-MOFとして、トリメセート配位子を有するAl-MOF、トリメリテート(1,2,4ベンゼントリカルボキシレート)配位子を有するAl-MOF、シトレート配位子を有するAl-MOF、及びアコニテート配位子を有するAl-MOFが、挙げられうる。
【0126】
同じ構成単位、すなわちアルミニウム及びトリメセート(1,3,5-ベンゼントリカルボキシレート)、に基づいて、種々の三次元(3D)フレームワーク、例えばMIL-96(Al)、MIL-100(Al)、及びMIL-110(Al)、が得られることができる。MIL-96(Al)は、トリメセート配位子に配位結合され、そして、アルミニウム八面体の鎖によって構築される付加的な六角形の18員環サブユニットに結合された、アルミニウム三量体、の集合の結果として生じる。MIL-96(Al)の微細孔性は、3つのタイプの空洞からなる:約11Åの空洞のない直径を有する球状ケージ、9.5×12.6×11.3Åの寸法を有する長い空洞、及び3.6×4.5Åの寸法を有する細い空洞。MIL-100(Al)は、トリメセート配位子とAl(III)三量体との結合の結果として生じて、メソ孔構造物をもたらし、これは、異なる直径(24Å及び29Å)の2種の空洞を有し、ミクロ孔ウィンドウ(5.2Å及び8.8Å)を通して到達可能である。MIL-110(Al)は、ミクロ孔構造物を形成するようにトリメセート配位子を介して連結された8個のアルミニウム八面体から構成された、16Å幅の六角形チャネルを有する、三次元フレームワークを有する。
【0127】
テトラカルボン酸配位子を有するAl-MOFとして、ピロメリテート(1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボキシレート)配位子を有するAl-MOFが挙げられうる。
【0128】
種々のフレームワーク、例えばMIL-118(Al)又はMIL-120(Al)、が得られることができる。MIL-118(Al)は、トランス型で結合された、アルミニウムを中心とする八面体であって、ピロメリテート配位子を介して互いに連結された該八面体、の無限鎖からなる。該フレームワークは、水和/乾燥状態に応じて、3種の異なる相を示すことができる。MIL-120(Al)は、ピロメリテート配位子を介して互いに結合された、八面配位体中のアルミニウム中心の無限鎖からなり、結果として、5.4×4.7Å2のチャネルの形成が起こる。
【0129】
好ましくは、ポリカルボキシレートはフマレートを含む。
【0130】
該MOFは、2つ以上のタイプの配位子を含みうる。
【0131】
ただ1つのタイプのMOFが使用されてもよく、又は2つ以上のタイプのMOFが組み合わせて使用されてもよい。
【0132】
該MOFは、ポリマー又は他の修飾物質(modifier)で表面修飾されることができる。
【0133】
該免疫原性組成物中の該MOFの含有量は、例えば、90~99.9質量%、好ましくは95~99.8質量%、より好ましくは99~99.6質量%、である。このような含有量は、溶媒を含有しないワクチン組成物において、理解される。
【0134】
該免疫原性組成物中の該MOFの含有量は、とりわけ抗原の性質、とりわけその重量及び/又はその純度、に依存しうる。
【0135】
それ故に、別の実施態様に従うと、該免疫原性組成物中の該MOFの含有量は、例えば、70~99.9質量%、好ましくは75~99.8質量%、より好ましくは85~99.6質量%、でありうる。
【0136】
別の実施態様に従うと、該免疫原性組成物中の該MOFの含有量は、例えば細菌が使用される(implemented)場合、例えば、3~99.9質量%、好ましくは4~99.8質量%、より好ましくは5~99.6質量%、でありうる。
【0137】
本発明の1つの実施態様に従う免疫原性組成物は、該MOF以外の他の1以上のアジュバント又は免疫オリエンタ(orienter)を更に含んでいてもよい。
【0138】
該免疫原性組成物はまた、1以上の免疫賦活剤、例えば、TLRリガンド、RLRリガンド、NLRリガンド、環状ジヌクレオチド、又はサイトカイン、を含みうる。
【0139】
抗原
本発明に従う免疫原性組成物は、少なくとも該金属有機構造体内に固定化された少なくとも1つの抗原を含む。
【0140】
ある実施態様に従うと、本発明に従う免疫原性組成物は、該金属有機構造体内に固定化されていない少なくとも1つの抗原を更に含みうる。
【0141】
免疫原性組成物中又はワクチン組成物中で使用されうる好適な抗原は、以下に記載されている。
【0142】
語「抗原」は、免疫応答を引き起こす及び/又は免疫応答が向けられる少なくとも1つのエピトープを含む、任意の分子、例えば、ペプチド、タンパク質、多糖、又は複合多糖、を含む。例えば、抗原は、例えば該抗原又は該抗原を発現する細胞に特異的である、免疫応答を、任意的にプロセシング後に、誘発する分子である。
【0143】
実際、本発明に従うと、「抗原」は、抗原を産生できる及び/又は抗原を産生する能力がある任意の化合物を意味する。特には、抗原は、タンパク質、多糖及びそれらの脂質誘導体、例えばポリオシド(polyosides)、脂質、アミノ酸の重合によって得られる分子、抗原をコードする核酸(天然又は修飾されたもの);抗原、ウイルス、疑似ウイルス、ワクチン、プラスミド、ファージ等をコードするか、又はそれらに対する免疫応答を改変する、複製的核酸又は非複製的核酸、から選択されうる。
【0144】
本開示に従うと、免疫応答の為の候補である任意の適切な抗原が、想定されうる。抗原は、天然に存在する抗原に相当してもよく、又はそれに由来してもよい。このような天然に存在する抗原は、アレルゲン、ウイルス、細菌、真菌、寄生生物、及び他の感染性病原体及び病原体を含んでもよく、若しくはそれらに由来してもよく、又は抗原はまた、腫瘍抗原であってもよい。該抗原は、タンパク質又はペプチド抗原、多糖抗原又は複合多糖抗原でありうる。
【0145】
言い換えると、本発明に従う語「抗原」は、抗原、プロ抗原、抗原誘発分子、若しくは複数の抗原の結合物(association)、又は免疫応答を所与のタイプに至らせることができる分子を包含する。従って、本発明に従う抗原は、任意の直接的又は間接的な特異的免疫応答誘発物質として作用しうる。
【0146】
本開示の、抗原を含む組成物は、結合価が異なりうる。結合価は、該組成物中の抗原性構成要素の数を指す。幾つかの実施態様において、該組成物は、一価である。該組成物はまた、複数の結合価を含む組成物、例えば、二価組成物、三価組成物、又は多価組成物、でありうる。
【0147】
本開示の、抗原を含む組成物は、感染性病原体、例えば、細菌、ウイルス、真菌、原生動物、及び寄生生物、との接触に起因する感染症を防御、治療、又は治癒する為に、免疫原性組成物として、特にワクチン組成物として、使用されうる。
【0148】
1つの実施態様に従うと、本明細書において適切な抗原は、細菌抗原、原生動物抗原、ウイルス抗原、真菌抗原、寄生生物抗原、又は腫瘍抗原からなる群において選択されうる。
【0149】
別の実施態様において、野生型抗原若しくは組換え抗原又はそれらの断片若しくはサブユニットが、使用されうる。該抗原は、タンパク質、ペプチド、多糖、及び/又は複合多糖でありうる。
【0150】
好ましくは、該抗原は、タンパク質、ポリオシド、脂質、核酸、ウイルス、細菌、寄生生物、及びそれらの組み合わせから選択され、特には破傷風トキソイド、SARS-CoV-2ウイルスに由来するタンパク質、不活化大腸菌(inactivated Escherichia coli)、不活化灰白髄炎ウイルス(inactivated poliomyelitis virus)、及び髄膜炎菌多糖、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0151】
細菌抗原
細菌抗原は、グラム陽性菌又はグラム陰性菌に由来しうる。細菌抗原は、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、枯草菌(Bacillus subtilis)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ブルセラ・アボルタス(Brucella abortus)、ブルセラ・カニス(Brucella canis)、ブルセラ・メリテンシス(Brucella melitensis)、ブルセラ・スイス(Brucella suis)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)、クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)、クラミドフィラ・シッタシ(Chlamydophila psittaci)、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase Negative Staphylococcus)、コリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diphtheria)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、大腸菌(Escherichia coli)、毒素原性大腸菌(enterotoxigenic Escherichia coli)(ETEC)、腸管病原性大腸菌(enteropathogenic E.coli)、大腸菌(E.coli)O157:H7、エンテロバクター属の種(Enterobacter sp.)、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)、ヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarralis)、マイコバクテリウム・レプラ(Mycobacterium leprae)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリア・メニンギティデス(Neisseria meningitides)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス属の種(Proteus sps.)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcesens)、シゲラ・フレックスネリ(Shigella flexneri)、シゲラ・ソンネイ(Shigella sonnei)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミデス(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・サプロフィチカス(Staphylococcus saprophyticus)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、トレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)、又はエルシニア・ペスティス(Yersinia pestis)から得られうる。
【0152】
ウイルス抗原
ウイルス抗原は、アデノウイルス;単純ヘルペス、1型;単純ヘルペス、2型;脳炎ウイルス、パピローマウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス;エプスタイン・バーウイルス;ヒトサイトメガロウイルス(CMV);ヒトヘルペスウイルス、8型;ヒトパピローマウイルス;BKウイルス;JCウイルス;天然痘;ポリオウイルス(polio virus)、B型肝炎ウイルス;ヒトボカウイルス;パルボウイルスB19;ヒトアストロウイルス;ノーウォークウイルス;コクサッキーウイルス;A型肝炎ウイルス;ポリオウイルス(poliovirus);ライノウイルス;重症急性呼吸器症候群ウイルス;C型肝炎ウイルス;黄熱病ウイルス;デングウイルス;西ナイルウイルス;風疹ウイルス;E型肝炎ウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(HIV);インフルエンザウイルス、A型又はB型;グアナリトウイルス;フニンウイルス;ラッサウイルス;マチュポウイルス;サビアウイルス;クリミア・コンゴ出血熱ウイルス;エボラウイルス;マールブルグウイルス;麻疹ウイルス;ムンプスウイルス;パラインフルエンザウイルス;呼吸器合胞体ウイルス(RSV);ヒトメタニューモウイルス;ヘンドラウイルス;ニパウイルス;狂犬病ウイルス;D型肝炎;ロタウイルス属;オルビウイルス属;コルチウイルス属;ハンタウイルス属、中東呼吸器コロナウイルス;SARS-Cov-2ウイルス;チクングニアウイルス;ジカウイルス;パラインフルエンザウイルス;ヒトエンテロウイルス;ハンタウイルス;日本脳炎ウイルス;小水疱性発疹ウイルス;東部ウマ脳炎;又はバンナウイルスから得られうる。
【0153】
ある実施態様において、該抗原は、A型インフルエンザウイルス若しくはB型インフルエンザウイルスの株又はそれらの組み合わせに由来する。A型インフルエンザ又はB型インフルエンザの該株は、トリ、ブタ、ウマ、イヌ、ヒト、又は非ヒト霊長類に関連しうる。
【0154】
核酸は、赤血球凝集素タンパク質又はその断片をコードしうる。該赤血球凝集素タンパク質は、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H111、H12、H13、H14、H15、H16、H17、H18、又はそれらの断片でありうる。該赤血球凝集素タンパク質は、ヘッドドメイン(HA1)を含んでも含まなくてもよい。代替的には、該赤血球凝集素タンパク質は、細胞質内ドメインを含んでも含まなくてもよい。
【0155】
特定の実施態様において、該赤血球凝集素タンパク質は、切断型赤血球凝集素タンパク質である。該切断型血球凝集素タンパク質は、膜貫通ドメインの一部分を含みうる。
【0156】
幾つかの実施態様において、該ウイルスは、H1N1ウイルス、H3N2ウイルス、H7N9ウイルス、H5N1ウイルス、及びH10N8ウイルス、又はB株ウイルスからなる群から選択されうる。
【0157】
別の実施態様において、該抗原は、CMVに由来しうる。特には、抗原は、五量体(gH/gL/pUL128/pUL130/pUL131)とgBとの組み合わせであってもよい。
【0158】
別の実施態様において、該抗原は、コロナウイルス、例えばSARS-Cov-1ウイルス、SARS-Cov-2ウイルス、又はMERS-Covウイルス、に由来する。
【0159】
別の実施態様において、該抗原は、RSVに由来しうる。該抗原は、PreF-フェリチンであってもよい。適切な融合前RSV F抗原は、国際公開第2014/160463号(A1)パンフレット又は国際公開第2019/195316号(A1)パンフレットに開示されているとおりであってもよい。
【0160】
真菌抗原
真菌抗原は、子嚢菌門(Ascomycota)(例えば、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、ニューモシスチス・ジロビエシ(Pneumocystis jiroviecii)、アスペルギルス属の種(Aspergillus spp.)、コクシジオイデス・イミチス/ポサダシ(Coccidioides immitis/posadasii)、カンジダ・アルビシアンス(Candida albicians)、担子菌門(Basidiomycota)(例えば、フィロバジエラ・ネオフォルマンス(Filobasidiella neoformans)、トリコスポロン属(Trichosporon))、微胞子虫門(Microsporidia)(例えば、エンセファリトゾーン・クニクリ(Encephalitozoon cuniculi)、エンテロシトゾーン・ビエヌーシ(Enterocytozoon bieneusi))、又はケカビ亜門(Mucoromycotina)(例えば、ムーコル・シルシネロイデス(Mucor circinelloides)、リゾープス・オリザエ(Rhizopus oryzae)、リクテイミア・コリムビフェラ(Lichtheimia corymbifera))から得られうる。
【0161】
原生動物抗原
原生動物抗原は、エントアメーバ・ヒストリチカ(Entamoeba histolytica)、ランブル鞭毛虫(Giardia lambila)、トリコモナス・バギナリス(Trichomonas vaginalis)、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、トリパノソーマ・クルージ(T. cruzi)、リーシュマニア・ドノバニ(Leishmania donovani)、大腸バランチジウム(Balantidium coli)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、プラスモジウム属の種(Plasmodium spp.)、又はネズミバベシア(Babesia microti)から得られうる。
【0162】
寄生生物抗原
寄生生物抗原は、アカントアメーバ(Acanthamoeba)、アニサキス(Anisakis)、回虫(Ascaris lumbricoides)、ウマバエ、大腸バランチジウム(Balantidium coli)、トコジラミ、条虫類(Cestoda)、ツツガムシ、ラセンウジバエ(Cochliomyia hominivorax)、エントアメーバ・ヒストリチカ(Entamoeba histolytica)、肝蛭(Fasciola hepatica)、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、鉤虫、リーシュマニア属(Leishmania)、イヌシタムシ(Linguatula serrata)、肝吸虫、ロア糸状虫(Loa loa)、肺吸虫属(Paragonimus)、ぎょう虫、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、住血吸虫属(Schistosoma)、糞線虫(Strongyloides stercoralis)、ダニ、サナダムシ、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、トリパノソーマ属(Trypanosoma)、鞭虫、又はバンクロフト糸状虫(Wuchereria bancrofti)から得られうる。
【0163】
腫瘍抗原
1つの実施態様において、抗原は、腫瘍抗原、すなわち、癌細胞の構成物質、例えば、癌細胞において発現されるタンパク質又はペプチド、でありうる。語「腫瘍抗原」は、正常な条件下では、限られた数の組織及び/又は器官において又は特定の発生段階において特異的に発現され、且つ1以上の腫瘍又は癌組織において発現されるか又は異常に発現される、タンパク質に関する。腫瘍抗原は、例えば、分化抗原(例えば細胞型特異的分化抗原、すなわち、正常な条件下では、特定の細胞型において特定の分化段階で特異的に発現されるタンパク質)及び生殖系列特異的抗原を包含する。例えば、腫瘍抗原は、該腫瘍抗原(it)が発現される癌細胞によって提示されている。
【0164】
例えば、腫瘍抗原は、癌胎児性抗原、a1-フェトプロテイン、イソフェリチン、及び胎児性スルホ糖タンパク質、cc2-H-鉄タンパク質、及びγ-フェトプロテインを包含する。
【0165】
本発明において有用でありうる腫瘍抗原の他の例は、p53、ART-4、BAGE、β-カテニン/m、Bcr-abL CAMEL、CAP-1、CASP-8、CDC27/m、CD 4/m、CEA、クローディンファミリーの表面タンパク質(例えば、CLAUDIN-6、CLAUDIN-18.2、及びCLAUDIN-12)、c-MYC、CT、Cyp-B、DAM、ELF2M、ETV6-AML1、G250、GAGE、GnT-V、Gapl OO、HAGE、HER-2/neu、HPV-E7、HPV-E6、HAST-2、hTERT(又はhTRT)、LAGE、LDLR/FUT、MAGE-A(例えば、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、又はMAGE-A12)、MAGE-B、MAGE-C、MART-1/Melan-A、MC1 R、ミオシン/m、MUC1、MUM-1、MUM-2、MUM-3、NA88-A、NF1、NY-ESO-1、NY-BR-1、pl 90マイナー(minor)BCR-abL、Pml/RARa、PRAME、プロテイナーゼ3、PSA、PSM、RAGE、RUl又はRU2、SAGE、SART-1又はSART-3、SCGB3A2、SCP1、SCP2、SCP3、SSX、SURVrVIN、TEL/AML1、TPI/m、TRP-1、TRP-2、TRP-2/1NT2、TPTE、及びWT(例えばWT-1)である。
【0166】
ただ1つのタイプの抗原が使用されてもよく、又は2つ以上のタイプの抗原が組み合わせて使用されてもよい。
【0167】
該ワクチン組成物中の該抗原の含有量は、例えば、0.1~10質量%、好ましくは0.2~5質量%、より好ましくは0.4~1質量%、である。このような含有量は、溶媒を含有しないワクチン組成物において、理解される。
【0168】
該ワクチン組成物中の該抗原の含有量は、とりわけ抗原の性質、とりわけその重量及び/又はその純度、に依存しうる。
【0169】
1つの実施態様において、本明細書において開示されている免疫原性組成物は、サブユニット免疫原性組成物、例えばサブユニットワクチン組成物、である。
【0170】
本明細書において開示されている免疫原性組成物又はワクチン組成物は、固体形態、半固体形態、液体形態の製剤、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、エアロゾル、ニードル剤、ナノニードル剤、懸濁剤、又は乳剤、に製剤化されうる。このような組成物を投与する典型的な経路は、非限定的に、経口、局所、経皮、吸入、非経口、舌下、口腔内、鼻腔内を包含する。本明細書において使用される語「非経口」は、皮下注射、静脈内、筋肉内、皮内、胸骨内の注射技術又は注入技術を包含する。幾つかの実施態様において、本明細書において開示されているワクチン組成物は、経皮経路、皮下経路、皮内経路、又は筋肉内経路によって投与されうる。本開示の組成物は、送達様式に基づいて製剤化され、例えば、非経口送達(例えば、筋肉内注射、皮内注射、又は皮下注射)による送達の為に製剤化された組成物、を包含する。
【0171】
本明細書において開示されている免疫原性組成物は、任意の適切な経路を介して、例えば、粘膜投与(例えば、鼻腔内若しくは舌下)、非経口投与(例えば、筋肉内経路、皮下経路、経皮経路、若しくは皮内経路)、又は経口投与によって、投与されうる。当業者によって理解されるように、免疫原性組成物は、意図される投与経路と適合するように、適切に製剤化されうる。1つの実施態様において、本明細書において開示されている免疫原性組成物は、筋肉内経路、又は皮内経路、又は皮下経路を介して投与されるように製剤化されうる。1つの実施態様において、免疫原性組成物は、筋肉内経路を介して投与されるように製剤化されうる。
【0172】
本明細書において開示されている組成物は、その中に含有される活性成分が、対象に該組成物を投与すると生物学的に利用可能となるように、製剤化される。
【0173】
このような剤形を調製する実際の方法は、当業者に、知られているか又は明らかになるであろう;例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition(Philadelphia College of Pharmacy and Science,2000)を参照されたい。
【0174】
本明細書において開示されている免疫原性組成物は、任意の医薬的に許容される担体とともに製剤化されうる。該組成物は、少なくとも1つの不活性な希釈剤又は担体を含みうる。1つの例示的な医薬的に許容されるビヒクル(vehicle)は、生理食塩水緩衝液である。他の生理学的に許容されるビヒクル(vehicle)は、当業者に知られており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(18th edition),ed.A.Gennaro,1990,Mack Publishing Company,Easton,Pa.に記載されている。本明細書に記載される免疫原性組成物は、生理学的条件に似せる為に必要とされる医薬的に許容される補助物質(例えば、pH調整剤及び緩衝剤、浸透圧調整剤、及び湿潤剤等)、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン、ヒト血清アルブミン、必須アミノ酸、非必須アミノ酸、L-アルギニン塩酸塩、サッカロース、D-トレハロース脱水物、ソルビトール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、及び/又は尿素、を任意的に含みうる。加えて、該ワクチン組成物は、例えば、希釈剤、結合剤、安定化剤、及び保存剤、を包含する、医薬的に許容される添加剤を、任意的に含みうる。
【0175】
1つの実施態様において、該組成物は、液体、例えばエマルジョン又は懸濁物、の形態でありうる。該液体は、注射による送達用でありうる。注射によって投与されることが意図される組成物は、以下のうちの少なくとも1つを含みうる:界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定化剤、及び等張化剤が含まれうる。本明細書において開示されている液体組成物は、以下のうちの少なくとも1つを含みうる:滅菌希釈剤(例えば、注射用水、食塩水(例えば生理食塩水)、リンガー溶液、等張性塩化ナトリウム)、不揮発性油(例えば、溶媒又は懸濁媒の役割を果たしうる合成モノグリセリド又は合成ジグリセリド)、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の溶媒;抗細菌剤(例えば、ベンジルアルコール又はメチルパラベン);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウム);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸);緩衝剤(例えば、酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩)、及び張性の調整の為の剤(例えば、塩化ナトリウム又はデキストロース);凍結保護物質として作用する剤(例えば、スクロース又はトレハロース)。
【0176】
本明細書において開示されている免疫原性組成物のpHは、約5.5~約8、例えば約6.5~約7.5、でありうるか、又は約7.4でありうる。安定なpHは、緩衝液の使用によって維持されうる。存在し得る使用可能な緩衝液として、トリス緩衝液、HEPES緩衝液、又はヒスチジン緩衝液を挙げることができる。本明細書において開示されている免疫原性組成物は、一般的に、緩衝液を含みうる。免疫原性組成物は、哺乳動物、例えばヒト、に対して等張性でありうる。免疫原性組成物はまた、1つ又は幾つかの追加の塩、例えばNaCl、を含みうる。
【0177】
非経口製剤は、ガラス製又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、又は複数回投与用バイアル、経皮高圧注射器中に入れられることができる。注射用組成物は、例えば、滅菌されている。
【0178】
本明細書において開示されている組成物は、製薬分野において周知の方法によって調製されうる。例えば、注射によって投与されることが意図される組成物は、本明細書において開示されている組成物を滅菌蒸留水又は他の担体と組み合わせて、滅菌溶液又は滅菌懸濁物を形成させることによって、調製されることができる。界面活性剤が、均質な溶液又は懸濁物の形成を容易にする為に、添加されうる。
【0179】
本明細書において開示されている組成物は、治療有効量で投与され、該治療有効量は、使用される個々の治療剤の活性;該治療剤の代謝安定性及び作用の長さ;患者の年齢、体重、全体的健康状態、性別、及び食生活;投与の様式及び時間;排泄速度;薬物の組み合わせ;個々の障害又は病態の重篤度;並びに治療法を受けている対象を包含する様々な因子に依存して、変動する。
【0180】
1つの実施態様において、本明細書において開示されている免疫原性組成物は、任意の保存プロセスによって、例えば、凍結乾燥された組成物等の乾燥形態で、又は国際公開第2009/109550号パンフレットに記載される小球化プロセスを介して得られるマイクロペレットとして、容器に入れられ、そして保管されうる。
【0181】
乾燥組成物は、安定化剤(例えば、マンニトール、スクロース、又はドデシルマルトシド)、並びにそれらの組み合わせ、例えば、ラクトース/スクロース混合物、スクロース/マンニトール混合物等、を含みうる。
【0182】
免疫原性組成物を調製する方法
本発明に従う免疫原性組成物を調製する方法は、少なくとも1つのアルミニウム化合物を、フマル酸、ムコン酸、メサコン酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、アコニット酸、イソフタル酸、置換されたイソフタル酸、2,5-チオフェンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、若しくはピロメリット酸から選択される少なくともポリカルボン酸、及び/又はフマレート、ムコネート、メサコネート、オキサレート、オキサロアセテート、スクシネート、マレート、シトレート、アコニテート、イソフタレート、置換されたイソフタレート、2,5-チオフェンジカルボキシレート、2,5-フランジカルボキシレート、トリメセート、トリメリテート、及びピロメリテートから選択される少なくともポリカルボキシレートと、少なくとも1つの抗原の存在下で反応させて、該抗原を固定化する少なくとも1つのAl-ポリカルボキシレート金属有機構造体を形成させることからなる工程を少なくとも含む。
【0183】
好ましくは、該アルミニウム化合物は、硫酸アルミニウムである。
【0184】
本発明に従うと、該アルミニウム化合物は、該少なくともポリカルボン酸と、及び/又は該少なくともポリカルボキシレートと、反応することができる。従って、該反応は、別個に脱プロトン化されたポリカルボキシレートを用いて、又はアルミニウム前駆体を用いて、実施されることができる。従って、このような工程は、本発明に従う方法の前又は間に実施されうる。
【0185】
好ましくは、本発明に従う方法は、少なくとも1つのアルミニウム化合物を、フマル酸、ムコン酸、メサコン酸、シュウ酸、オキサロ酢酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、アコニット酸、イソフタル酸、置換されたイソフタル酸、2,5-チオフェンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、又はピロメリット酸から選択される少なくともポリカルボン酸、好ましくは少なくともフマル酸、と反応させることからなる工程を少なくとも含む。
【0186】
好ましくは、ポリカルボン酸及び/又はポリカルボキシレートに対する、該反応の為に使用される該アルミニウム化合物のモル比は、0.001~2.5、好ましくは0.1~1.5、好ましくは0.1~1、好ましくは0.4~0.8、より好ましくは0.4~0.6、である。
【0187】
0.5のモル比が、特に好ましい。
【0188】
本発明の方法における該反応は、水性溶媒(水性媒体)の存在下で行われる。
【0189】
ここで、混合物が使用される場合、含水量は、好ましくは50重量%超、より好ましくは60重量%超、更により好ましくは70重量%超、更により好ましくは80重量%超、更により好ましくは90重量%超、更により好ましくは95重量%超、更により好ましくは99重量%超、である。特には、水性溶媒は、水のみからなる。
【0190】
それに加えて又は代替として、塩基が、該反応において使用されることができる。
【0191】
該反応は典型的には、塩基の存在下で、溶媒としての水中で、行われる。
【0192】
1つのアルカリ金属水酸化物又は複数の異なるアルカリ金属水酸化物の混合物を塩基として使用することが好ましい。例は、特には、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムである。しかしながら、別の無機水酸化物若しくは炭酸塩、又は有機塩基、例えばアミン、がまた考えられる。水酸化ナトリウムが、特に好ましい。
【0193】
好ましくは、該反応は、塩基、好ましくは1つのアルカリ金属水酸化物又は複数の異なるアルカリ金属水酸化物の混合物、より好ましくは水酸化ナトリウム、の存在下で行われる。
【0194】
特には、該反応は1~2バールの絶対圧力下で行われ、好ましくは、該反応は大気圧下で行われる。しかしながら、大気圧をわずかに超える圧力又は大気圧より低い圧力が、装置が原因で生じる可能性がある。それ故に、本発明の目的の為に、語「大気圧」は、実際の一般的大気圧1013ミリバールによって与えられる圧力範囲を指す。
【0195】
別の実施態様に従うと、該反応は、2バールで実施されうる。
【0196】
適切な圧力は、選択された抗原に応じて当業者によって選択され、どんな場合でも、媒体の完全性、特には抗原の完全性、を保持する。
【0197】
該反応は、室温(20℃)で行われることができる。しかしながら、該反応は、室温を上回る温度で行われることができる。
【0198】
好ましくは、該反応は、4℃~75℃、特には4℃~70℃、例えば4℃~65℃、特には10℃~70℃、好ましくは10℃~45℃、より好ましくは10℃~40℃、の温度で行われる。
【0199】
しかしながら、該方法は、媒体組成物が凍結を回避するならば、マイナスの温度で実施されることができる。
【0200】
更に、該反応が、反応混合物を混合しながら行われることが、有利である。それ故に、該反応は撹拌しながら行われることができ、このことはまた、スケールアップの場合に有利である。より効果的な混合は、反応の間、ポンプにより循環させることによって、行われることができる。このことにより、本発明の方法の連続的操作が可能になる。
【0201】
高い空時収量を実現する為に、該反応は、1分~96時間、行われる。該反応は、好ましくは2時間~48時間行われる。該反応は、より好ましくは5時間~24時間、行われる。該反応は、より好ましくは8時間~16時間、行われる。
【0202】
使用される塩基に対する、該反応の為に使用されるポリカルボン酸及び/又はポリカルボキシレートのモル比は、ポリカルボキシレートが使用される場合に好ましくは、0.05~2であり、0.1~1.5がより好ましく、0.2~1が更により好ましい。
【0203】
好ましくは、本発明に従う方法は、該反応の最後に遠心分離工程、そして次に、任意的に再分散工程、を更に含む。
【0204】
本発明に従う方法はまた、該反応の最後に、少なくとも1つの慣用的な洗浄工程を含みうる。
【0205】
本発明は、以下の実施例及び図面を参照することによって、より良く理解されるが、これらは単に例示的目的の為に提供され、いかなる様式においても本発明を限定するものとして解釈されるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【
図1】Al-フマレートの典型的な特性決定技術を示す;(a)PXRD、(b)FT-IR、及び(c)TGA。
【
図2】HEPES緩衝液(20mM、pH7.4)中のAl-フマレートの安定度を示す;(a)4日間にわたるPXRD、(b)2ヶ月間にわたる、ICP-OESによって定量されたAl
3+浸出、(c)2ヶ月間にわたる、HPLCによって定量されたフマル酸浸出、及び(d)2ヶ月間にわたる、HPLCデータに基づくAl-フマレート分解の重量パーセンテージ。
【
図3】Al-フマレートバイオコンポジットのPXRD図を示し、ここで、生体分子は、配位子/塩基溶液中、金属塩溶液中、又は反応混合物に直接的に、添加された;(a)BSA、(b)ラッカーゼ(laccase)、及び(c)Cyt c。
【
図4】モデル生体分子としてBSA及びCyt cを用いて、それぞれの上清中に見出される生体分子の量に基づいて定量された、4日間の保存後のAl-フマレートアジュバント及びアルハイドロゲル
(登録商標)アジュバントの(a)固定化能力及び(b)タンパク質浸出を示す。
【
図5】M0(a、b)濃度及びM1(c、d)濃度の破傷風トキソイド(TT:Tetanus Toxoid)(Al-フマレート添加)ワクチン(TT@Al-fumarate vaccines)の特性決定(a、c)PXRD、(b、d)FT-IRを示す。
【
図6】(a)microBCAタンパク質測定アッセイ法を用いて、上清中に検出されたTT(吸着されたTTでない)の量に基づいて定量された、M0製剤及びM1製剤のTT固定化効率を示し、(b)microBCAタンパク質測定アッセイ法を用いて、上清中に検出されたTT(吸着されたTTでない)の量に基づいて定量された、ワクチン製剤の製造から1週間後の、TT(Al-フマレート添加)(TT@Al-fumarate)及びTT(アルハイドロゲル
(登録商標)添加)(TT@Alhydrogel
(登録商標))から浸出したTTのパーセンテージを示す。
【
図7】4種の異なる濃度(C0~C3)で使用された2種のワクチン製剤、すなわちTT(Al-フマレート添加)及びTT(アルハイドロゲル
(登録商標)添加)、の場合の、Ig抗TT及びIgG抗TTの指数を示す;(a)IgG 抗TT抗体(Ab)並びに(b)全長Ig抗TT Ab及びIgG抗TT Ab(抗軽鎖Elisa)。Elisa光学濃度(OD)は、指数(index)、例えば、免疫化されたマウスから得られた値を、免疫化されていない対照ナイーブマウスに由来する血清中で観察された値で割った値、として表される。マウスは、30日目(D30)に採血された。
【
図8】全てのサブグループ(S-TT(Al-フマレート添加)、M-TT(アルハイドロゲル
(登録商標)添加)、及びTT)並びに対照グループの場合の、平均体重及び個々のマウスの体重の経時変化(evolution)を示す。
【
図9】TT(アルハイドロゲル
(登録商標)添加)又はTT(Al-フマレート添加)のいずれかを用いて免疫化された10ペアのマウスにおいて観察された、14日目(D14)又は32日目(D32)のIgG抗TT応答を示す。ELISAにおいて観察された直接ODが示されている。
【
図10】7日目、14日目、32日目、60日目の血清の200~3200の段階希釈を用いた、TT(Al-フマレート添加)Ig応答及びTT(アルハイドロゲル
(登録商標)添加)Ig応答の比較を示す。a)国際単位での検量線、b)は、希釈曲線を示し、c)及びd)は、それぞれ32日目(D32)及び60日目(D60)の血清から得られた曲線の比較。
【
図11】左から右へ、9ヶ月経過したTT(Al-フマレート添加)、初期TT(Al-フマレート添加)(9ヶ月前に使用されたものと同じ調製物、同じ免疫化)、及び新たに調製されたTT(Al-フマレート添加)による免疫化後32日目のIgG抗TT応答を示す。
【
図12】(a)microBCAタンパク質測定アッセイ法を用いて、上清中に検出されたTT(吸着されたTTでない)の量に基づいて定量された、Al-フマレートの表面におけるTT固定化効率、(b)microBCAタンパク質測定アッセイ法を用いて、上清中に検出されたTT(吸着されたTTでない)の量に基づいて定量された、ワクチン製剤の製造から1週間後の、TT(Al-フマレート添加-表面)及びTT(アルハイドロゲル
(登録商標)添加)から浸出したTTのパーセンテージを示す。
【
図13】H
2O中のTT(Al-フマレート添加)製剤、及びTT(Al-フマレート添加-表面)製剤、Al-フマレートのζ電位測定値、並びにTTのζ電位測定値を示す。
【
図14】左から右へ、TT、TT(アルハイドロゲル
(登録商標)添加)、TT(Al-フマレート添加)(TT@Alhydrogel
(登録商標))(TT@Al-fumarate)、又はTT(Al-フマレート添加-表面)(TT@Al-fumarate-Surf)による免疫化後32日目のIgG抗TT応答を示す。
【
図15】ICP-OESによって定量された、注射後7日目~60日目のマウスの注射部位(右肢)に存在するAl
3+の量、並びにICP-OESデータから推定された、注射部位に存在するAl
3+の重量%を、log x軸を用いて示す。
【
図16】ICP-OESデータから定量及び推定された、注射後7日目~60日目のマウスの注射部位(右肢)に存在するAl
3+の重量%を、線形x軸を用いて示す。
【
図17】蛍光-TT(Al-フマレート添加)のPXRD図を示す。
【
図18】蛍光-TT及び蛍光-TT(Al-フマレート添加)を注射されたマウスの、ある期間にわたる、注射部位での初期蛍光放射輝度に対する%を示す。各点は、3匹のマウスの平均値を表す。
【
図19】ナイーブマウス(上の列)及びTT(Al-フマレート添加)を注射されたマウス(下の列)の器官に由来する組織のHES染色を示す。スケールバーは500μmを表す。
【
図20】TT(ZIF-8添加)の実験値のPXRD及びZIF-8の実験値のPXRD図並びに計算された値のPXRD図を示す。
【
図21】TT、TT(Al-フマレート添加)、及びTT(ZIF-8添加)の場合の、免疫化後1ヶ月目に得られたIg抗TTを示す。
【
図22】ホルムアルデヒド不活化大腸菌(Al-フマレート添加)(formaldehyde inactivated E.coli@Al-fumarate)、Al-フマレートの実験値のPXRDパターン及び計算された値(CCDCから入手、寄託番号:1051975、データベース識別子:DOYBEA)のPXRDパターンを示す。
【
図23】染色された不活化大腸菌(stained inactivated E.coli)(固定化されていない、上側の画像)及び不活化大腸菌(Al-フマレート添加)(inactivated E.coli@Al-fumarate)(下側の画像)のTEM画像を示す。
【
図24】ホルムアルデヒド不活化大腸菌(Al-フマレート添加)(formaldehyde inactivated E.coli@Al-fumarate)上のAl及びOのSTEM-EDXマッピングを示す。
【
図25】不活化大腸菌(固定化されていない、左)、不活化大腸菌(Al-フマレート添加)(中央)、大腸菌(E.coli)(Al-フマレート添加)から放出された不活化大腸菌(右)についてのフローサイトメトリー解析を示す;上側の列:BD LSR Fortessa
(商標)装置を用いて得られた軸方向散乱及び側方散乱、並びに下側の列:散乱に基づいてゲートをかけられた細菌及び/又は細菌DNAを検出するSYTO9蛍光体に対してThermo Fisher Attune
(商標)Cytpix
(商標)を用いて実施された直接的ビデオイメージング。
【
図26】不活化大腸菌(Al-フマレート添加)(inactivated E.coli@Al-fumarate)、不活化大腸菌、又は不活化大腸菌(アルハイドロゲル
(登録商標)添加)(inactivated E.coli@Alhydrogel
®)で免疫化されたマウス中のIg抗大腸菌(E.coli)を示す。順位付けされた値が、マウス5匹からなる各群において、Ig応答の低い方から高い方へ、同じ順序で示されている。
【
図27】不活化ポリオウイルス(Al-フマレート添加)(inactivated-poliovirus@Al-fumarate)、Al-フマレートの実験値のPXRDパターン及び計算された値(CCDCから入手、寄託番号:1051975、データベース識別子:DOYBEA)のPXRDパターンを示す。
【
図28】a)IMOVAX POLIO溶液、Al-フマレートの対照反応の上清、及び不活化ポリオウイルス(Al-フマレート添加)の上清中の、microBCAタンパク質測定アッセイ法を用いて検出されたタンパク質の量、b)該上清中で見出された量から推定された、不活化ポリオウイルス(Al-フマレート添加)の固定化効率、を示す。
【
図29】グリカン(Al-フマレート添加)のPXRDパターン及び計算されたPXRDパターン(CCDCから入手、寄託番号:1051975、データベース識別子:DOYBEA)を示す。
【
図30】Al-フマレート及びグリカン(Al-フマレート添加)の
13C NMRスペクトルを示す。
【
図31】CpG1018(Al-フマレート添加)、Al-フマレートの実験値のPXRDパターン及び計算された値(CCDCから入手、寄託番号:1051975、データベース識別子:DOYBEA)のPXRDパターンを示す。
【
図32】CpG1018+TT(Al-フマレート添加)、Al-フマレートの実験値のPXRDパターン及び計算された値(CCDCから入手、寄託番号:1051975、データベース識別子:DOYBEA)のPXRDパターンを示す。
【
図33】実施例25のBSA(Al-ムコネート添加)のPXRDパターン及びAl-ムコネートのPXRDパターンを示す。
【
図34】実施例26のMIL-160のPXRDパターンを示す。
【
図35】実施例27のBSA(Al-トリメセート添加)のPXRDパターン及びAl-トリメセートのPXRDパターンを示す。
【
図36】実施例28のBSA(Al-ピロメリテート添加)のPXRDパターンを示す。
【0207】
実施例
【0208】
材料及び方法
全ての生体分子及び化学物質は、商業的供給業者から購入され、別段の指定が無い限り、更に精製することなく使用された。
【0209】
破傷風トキソイドタンパク質2.8mg/mL、1428Lf/mL、5712UI/mLは、Creative Biolabsから購入された。
【0210】
アルハイドロゲル(登録商標)アジュバント2%は、InvivoGenから購入された。
【0211】
ウシ血清アルブミン、標準グレード、Zeba(商標)スピン脱塩カラム(7k MWCO、2mL)は、Thermo Fisher Scientificから購入された。
【0212】
ウマ心臓由来のシトクロムC(95%以上)、カワラタケ(Trametes versicolor)由来のラッカーゼ(0.5U/mg以上)、硫酸アルミニウム(USP試験規格)、フマル酸(USP/NF規格)、水酸化ナトリウム(Ph.Eur.、BP、NF、E524、98~100.5%規格)、ICP用アルミニウム標準物質(995mg/L)、QuantiPro(商標)アッセイ法キット、リン酸緩衝生理食塩水タブレット、HEPES緩衝溶液(H2O中1M)、塩酸(1mol/L、Ph.Eur.、UPS規格)、硝酸70%(99.999%以上)、ICP用亜鉛標準物質(1000mg/L)、ICP用リン標準物質(1000mg/L)、37%ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド(95~100%)、2-メチルイマダゾール(methylimadazole)(Ph.Sec.Std.)、トリメシン酸(95%)、2,5-フランジカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼン-テトラカルボン酸は、Sigma-Aldrichから購入された。
【0213】
酢酸亜鉛は、Flukaから入手された。
【0214】
酢酸アルミニウム(塩基性)90%は、Acros Organicsから入手された。
【0215】
硝酸52.5%、AnalaR NORMAPUR(登録商標)分析試薬はVWRから購入された。
【0216】
塩化ナトリウム、ムコン酸は、Alfa Aesarから購入された。
【0217】
解析ISOの為の塩酸37%は、Carlo Erbaから購入された。
【0218】
マウス抗破傷風トキソイドELISAキット、全長Ig(IgG、IgA、IgM)マウス抗大腸菌(E coli)ELISAキット(レファレンス500-100ECP)は、Alpha Diagnostics Internationalから購入された。
【0219】
InVivoTag(登録商標)680XLタンパク質標識キットは、Perkin Elmerから購入された。
【0220】
IMOVAX(登録商標)は、Sanofi Pasteurから入手された。
【0221】
PNEUMOVAX(登録商標)ワクチンは、MSDから得られた。
【0222】
CpG 1018はProteogenixから入手された。
【0223】
マウス研究
全ての研究において、マウスは、21±3℃の管理された温度下、30%~70%の湿度下、12時間の明期/12時間の暗期からなる光サイクルを用いて、換気されたラック中の標準的な使い捨てケージに、まとめて収容された。ろ過水及びげっ歯動物用の高圧滅菌処理された標準的な実験用飼料が、自由に与えられた。投与前に、マウスは、揮発性麻酔(イソフルラン及びキャリアガスとしての酸素)下で麻酔された。
【0224】
全ての研究において、冷たい溶液を投与しない為に、動物投与の直前に、ワクチンは室温で数分間、保存された。
【0225】
注射前の、シリンジを充填する直前に、各ワクチンは、別段の指定が無い限り、ボルテックスすること(3回、それぞれ約5秒)によって注意深く再懸濁された。
【0226】
全ての研究において、注射は、50μL容ハミルトンシリンジに装着された26G使い捨て針を用いて行われた。
【0227】
全ての研究において、全血がサンプル採取され、そして、標準プロトコールに従う血清調製の為に使用された。
【0228】
中間のサンプル採取の場合、全血が、(抗凝固剤でコーティングされていない)毛細管を用いて、後眼窩洞経路によってサンプル採取された。最終のサンプル採取の場合、安楽死の直前に、全血が、揮発性麻酔(イソフルラン及びキャリアガスとしての酸素)下で心臓内穿刺によってサンプル採取された。
【0229】
機器
粉末X線ディフラクトグラムは、別段の指定が無い限り、CuKα放射線を使用することによって、ブラッグ・ブレンターノ(Bragg-Brentano)配置[(θ-2θ)モード]で作動するSiemens D5000回折計によって測定された。
【0230】
誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)は、Agilent 720 Seriesを用いて、プラズマを軸方向から観測して、行われた。全てのサンプルは、別段の指定が無い限り、機器に注入する前にろ過された。
【0231】
フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)は、ThermoScientificNicolet 6700 FT-IRにおいて実施された。
【0232】
熱重量分析(TGA)は、Mettler ToledoのTGA/DSC 1、STAR(登録商標)システム装置において、酸素(O2)フロー下で実施された。
【0233】
ELISAキットの光学濃度は、二波長Tecan Spark装置において単一のマイクロタイタープレート上で測定された。
【0234】
Originが、統計ソフトウェアとして使用された。
【0235】
略語の一覧
PXRD:粉末X線回折(Powder X-ray diffraction)
FT-IR:フーリエ変換赤外分光法(Fourier-transform infrared spectroscopy)
TGA:熱重量分析(Thermogravimetric analysis)
ICP-OES:誘導結合プラズマ発光分光分析法(Inductively coupled plasma optical emission spectroscopy)
BSA:ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin)
Cyt c:シトクロムc(Cyt c)
HEPES:4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)
PBS:リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate buffered Saline)
BCA:ビシンコニン酸(Bicinchoninic acid)
SEM:走査型電子顕微鏡法(Scanning electron microscopy)
TEM:透過型電子顕微鏡法(Transmission electron microscopy)
STEM-EDS:エネルギー分散X線分光法と組み合わせられた走査透過型電子顕微鏡法(Scanning transmission electron microscopy coupled with energy dispersive X-ray spectroscopy)
HPLC:高速液体クロマトグラフィー(High-performance liquid chromatography)
RT:室温(Room temperature)
PFA 4%:パラホルムアルデヒド4%溶液(Paraformaldehyde 4% solution)
Ab:抗体(Antibodies)
Ig:免疫グロブリン(Immunoglobulin)
IgG:免疫グロブリンG(Immunoglobulin G)
OD:光学濃度(Optical Density)
CCDC:ケンブリッジ結晶学データセンター(The Cambridge Crystallographic Data Centre)
NIR:近赤外線(Near Infra-Red)
IQR:四分位数間範囲(Interquartile range)
SD:標準偏差(Standard Deviation)
BKG:バックグラウンド(Background)
IU:国際単位(International Units)
【0236】
実施例1
Al-フマレートMOFの合成
Al-フマレートMOFの合成の為に、700mgのAl2(SO4)3・xH2O(xは約18)が、10mLのmilliQ H2Oに溶解された。
【0237】
10mLのmilliQ H2O中に243mgのフマル酸及び256mgのNaOHを含む別の溶液が調製され、該金属塩溶液に添加された。
【0238】
即座に白色沈殿が観察され、そして、該混合物は、大気圧下、室温で8時間、撹拌しながら放置された。
【0239】
生成物は、遠心分離(3分、24500g)によって回収され、100℃で一晩乾燥させられ、そして、
図1に示されているように、典型的な特性決定技術(PXRD、FT-IR、TGA)を用いて解析された。Al-フマレート(Basolite
(登録商標)A520)の計算されたPXRDパターンは、ケンブリッジ結晶学データセンター(CCDC)から入手された;寄託番号:1051975、データベース識別子:DOYBEA。
【0240】
これらの特性決定の結果は、Al-フマレートの形成と合致していた。
【0241】
必要に応じて、milliQ H2O又はHEPES(20mM、pH7.4)を用いる洗浄工程が、実施されることができる。
【0242】
実施例2
HEPES中のAl-フマレートの安定性
濃度20mM及びpH7.4のHEPES緩衝液が、Al-フマレートアジュバント製剤の為の注射媒体として選択された。該緩衝液中でのAl-フマレートの安定性が、0日~2ヶ月の期間にわたって研究された。
【0243】
より正確には、HEPES緩衝液(20mM、pH7.4)中8.5mg/mLのAl-フマレート濃度を有する懸濁物が調製され、解析するまで4℃で保存された。輸送条件をシミュレートする為に、該懸濁物は、様々な長さの時間、手動で振盪された。指定された安定性試験時点に、Al-フマレートは、遠心分離(20分、24500g)によって回収され、そして、解析の為に100℃で3時間乾燥させられた。製剤の安定性は、該緩衝液によって誘発される可能性のある構造変化を特定することを可能にする典型的な特性決定技術(PXRD)を用いて、4日間評価された。更に、ICP-OES解析技術及びHPLC解析技術が、溶液(上清)中に浸出されたAl3+及びフマル酸の量を定量することによって該緩衝液中のAl-フマレートの溶解を評価する為に、それぞれ最長で2ヶ月間、使用された。各時点において、別個のサンプルが解析されたことに、留意されたい。
【0244】
4日間の期間にわたって構造変化が観察されなかったため、Al-フマレートはHEPES緩衝液(20mM、pH7.4)中で安定であることが判明した。非常に少量のAl
3+及びフマル酸が、2ヶ月にわたって上清中で検出された(
図2)ことから、HEPES緩衝液(20mM、pH=7.4)中のAl-フマレートが少なくとも2ヶ月間安定であることが裏付けられた。
【0245】
実施例3
Al-フマレート合成時の生体分子添加の影響
Al-フマレート合成時の生体分子添加は、異なる構造的特徴、等電点、及びサイズを有するモデル生体分子、すなわちウシ血清アルブミン(BSA)、ラッカーゼ、及びシトクロムc(Cyt c)、を用いて実施された。
【0246】
Al-フマレート反応における該生体分子の添加のやり方はまた、金属塩溶液、配位子/塩基溶液、又は全ての反応物を混合した数秒後の反応物のいずれかに、それぞれの生体分子を添加することによって調べられた。
【0247】
得られた結果は、Al-フマレートの合成における生体分子は、PXRDパターンに影響を与えず(
図3)、その際、添加のやり方ともそれぞれの生体分子の構造的特徴とも無関係であることを示した。
【0248】
実施例4
Al-フマレートアジュバント及びアルハイドロゲル
(登録商標)
アジュバントの固定化能力
Al-フマレート及びアルハイドロゲル(登録商標)の固定化能力が、モデル生体分子、すなわち牛血清アルブミン(BSA)及びシトクロムc(Cyt c)、を用いて調査された。
【0249】
追加的に、両方のアジュバントとのバイオコンポジットの安定性が、4日間、調べられて、溶液中に浸出される生体分子の量が測定された。
【0250】
Al-フマレートアジュバントの場合、BSA又はCyt cは、金属塩及び配位子/塩基溶液を混合した数秒後に、反応物に添加された。
【0251】
アルハイドロゲル(登録商標)アジュバントの場合、BSA又はCyt cは、該アジュバントの懸濁物と5分間混合された。
【0252】
それぞれの手順の最後に、生成物が遠心分離され(3分、10500g)、そして、上清が採取されて、溶液中に残存する生体分子(該アジュバントによって吸着されていない)の量が、microBCAタンパク質測定アッセイ法によって定量された(
図4a)。
【0253】
更に、該アジュバントからの該生体分子の起こり得る浸出を調べる為に、該生成物は、Al-フマレート及びアルハイドロゲル
(登録商標)について、それぞれHEPES(20mM、pH7.4)及びPBS(10mM、pH7.4)中に再分散され、そして、4℃で保管された。様々な期間(0~4日間)において、サンプルが遠心分離され(3分、10500g)、そして、それらの上清が採取されて、浸出された任意の生体分子が(microBCAを介して)定量された。該サンプルは、再びそれぞれの緩衝液に再分散され、そして、次の測定まで最長4日間、4℃で保管された。それぞれの上清において検出されたBSA及びCyt cの、4日目までの累積量が、
図4bに示されている。
【0254】
本発明に従うAl-フマレートは、試験された両方の生体分子に対して優れた固定化能力を示した(BSAの場合は98重量%及びCyt cの場合は99重量%)が、アルハイドロゲル
(登録商標)は、Cyt c(49重量%)の固定化よりもBSA(99重量%)の固定化において、はるかに効率的であった(
図4a)。
【0255】
更に、タンパク質浸出研究は、最小限の生体分子量がAl-フマレートから脱着されることを示した(
図4b)。
【0256】
この研究は、Al-フマレートが様々な特徴の生体分子の固定化に適しており、種々のワクチンの製造に広く使用できることを強調する。
【0257】
実施例5
Al-フマレートにおける破傷風トキソイドの固定化
異なる濃度の2種のTT(Al-フマレート添加)ワクチン(M0及びM1)が調製され、その際、モデルヒト破傷風ワクチンに合わせて、TT/Al3+の比は、0.08IU/Al(μg)に一定に保たれた。
【0258】
破傷風トキソイドはまた、同じ濃度(S0及びS1)及び比(0.08IU/Al(μg))で、市販のアジュバントアルハイドロゲル(登録商標)に吸着させられ、そして、両方のワクチングループが、イン・ビボ研究の為に使用された。
【0259】
図5は、2種のTT(Al-フマレート添加)ワクチンのPXRDデータ及びFT-IRデータを、対照反応物のデータと比較して示し、該対照反応物では、Al-フマレートが、M0/M1の場合と全く同じ反応条件を用いて、抗原の非存在下で形成された。
【0260】
図から分かるように、TTはMOFの形成に影響を与えず、このことは、他の生体分子(BSA、ラッカーゼ、及びCyt c)を用いて実施例3において上で示された以前の研究と合致した。
【0261】
最後に、破傷風トキソイドが、microBCAタンパク質測定アッセイ法を用いてM0及びM1の上清中で検出されなかったことから、該ワクチンにおける該抗原の全部の固定化が裏付けられた(
図6a)。
【0262】
実施例6
Al-フマレート又はアルハイドロゲル
(登録商標)
を用いた破傷風トキソイド(TT)抗原ワクチン組成物の調製、及びそれらの用量の調整
種々のワクチン組成物及び用量は、破傷風トキソイド一価ヒトワクチンに基づいた。これらは、下記の表1に示されている。
【0263】
【0264】
両方のアジュバント系(Al-フマレート及びアルハイドロゲル(登録商標))について、C0ワクチン及びC1ワクチンが調製され、そして、C1が、C2希釈ワクチン及びC3希釈ワクチンのストックとして使用された。
【0265】
Al-フマレートにおける破傷風トキソイド(TT)抗原の固定化
Al-フマレート-アジュバントワクチンについて、2種のTT(Al-フマレート添加)ワクチン、すなわちM0及びM1、が調製され、そして、M1が、M2希釈ワクチン及びM3希釈ワクチンのストックとして使用された。使用された全ての溶液(反応物質、緩衝液、及びMilliQ溶液)は、孔径0.2μmの膜を備えたシリンジフィルターを用いて、使用前に滅菌された。
【0266】
使用された厳密な量は、TT(Al-フマレート添加)ワクチンの調製についての実験詳細を示す、下記の表2に示されている。
【0267】
【0268】
どちらのワクチンの場合も、10mLのmilliQ H2O中Al2(SO4)3・xH2O(700mg)及び10mLのmilliQ H2O中フマル酸(243mg)/NaOH(256mg)からなる貯蔵溶液が使用された。
【0269】
Creative Biolabsから購入された2.8mg/mLの破傷風トキソイド溶液が、該ワクチンの調製に直接的に使用された。
【0270】
詳細には、金属塩又は配位子/塩基のいずれかをそれぞれ含む、2つの別個の溶液(109μL及び136μLのM0及びM1)が、調製された。該2つの溶液を混合した数秒後に、破傷風トキソイド溶液が、反応物に添加された(M0の場合8.4μL及びM1の場合10.5μL)。最終混合物は、室温で8時間、撹拌しながら放置された。
【0271】
続いて、該ワクチンは、10500gで3分間遠心分離され、上清が除去され、そして、300μL(M0の場合)又は750μL(M1の場合)のHEPES緩衝液(20mM、pH7.4)で置き換えられた。
【0272】
該TT(Al-フマレート添加)ワクチンは、イン・ビボ研究まで約2日間、4℃で保存された。
【0273】
Al-フマレートにおけるTTの固定化量は、microBCAタンパク質測定アッセイ法によってM0上清及びM1上清中に見出されるTTの量に基づいて、定量された。M0上清及びM1上清中のTTの量はごくわずかであったことから、TTの全部の固定化が裏付けられた(
図6a)。該ワクチン及びそれらの対照のAl
3+含有量は、ICP-OESによっても確認され、該Al
3+含有量は、予測値に対して大きな差異を示さなかった。表3は、ICP-OESによって定量された、TT(Al-フマレート添加)ワクチン及びそれらの対照のAl
3+含有量を示す。
【0274】
ICP-OESの為の無機化手順:全てのサンプルは、処理前に100℃で16時間、加熱された。1mLのHCl(1M)が、乾燥させられた全ての生成物に添加され、次に、これは、密閉容器中で、80℃で16時間加熱された。
【0275】
サンプルの完全な無機化後、該サンプルは、ICP-OES解析の為にmilliQ H2Oで40mLに希釈された。1000~10,000ppbのAlの検量線が、解析の為に使用された。
【0276】
【0277】
アルハイドロゲル
(登録商標)
における破傷風トキソイド(TT)抗原の固定化
アルハイドロゲル(登録商標)アジュバントワクチンについて、2種のTT(アルハイドロゲル(登録商標)添加)ワクチン、すなわちS0及びS1、が調製され、そして、S1が、S2希釈ワクチン及びS3希釈ワクチンのストックとして使用された。使用された緩衝溶液は、孔径0.2μmの膜を備えたシリンジフィルターを用いて、使用前に滅菌された。
【0278】
使用された厳密な量は、TT(アルハイドロゲル(登録商標)添加)ワクチンの調製についての実験詳細を詳しく示す、下記の表4に示されている。
【0279】
【0280】
Creative Biolabsから購入された2.8mg/mLの破傷風トキソイド溶液及びInvivoGenから購入されたアジュバント2%が、該ワクチンの調製に直接的に使用された。
【0281】
詳細には、8.4μL(S0の場合)又は10.5μL(S1の場合)の破傷風トキソイド溶液が、それぞれのPBS緩衝液分量(10mM、pH7.4)で希釈され、続いて、指定の分量のアルハイドロゲル(登録商標)懸濁物が添加された。
【0282】
該混合物は、抗原を吸着させる為に、5分間上下にピペッティングされ、そして最後に、残りの量のPBS緩衝液が添加された。
【0283】
該TT(アルハイドロゲル(登録商標)添加)ワクチンは、イン・ビボ研究まで約2日間、4℃で保存された。
【0284】
市販のアルハイドロゲル(登録商標)のAl3+含有量がまた調査された。下記の表5は、ICP-OESによって定量された、アルハイドロゲル(登録商標)のAl3+含有量を示す。
【0285】
【0286】
実施例7
抗原浸出の観点からの、TT(Al-フマレート添加)製剤及びTT(アルハイドロゲル
(登録商標)
添加)製剤の安定性
抗原浸出の観点からのTT(Al-フマレート添加)製剤の安定性が、4℃での1週間の保管後の溶液(上清)中に浸出されたTTの量を測定することによって、調査された。TTの浸出は観察されず、該製剤の安定性が裏付けられた(
図6b)。
【0287】
TT(アルハイドロゲル
(登録商標)添加)製剤は、4℃での1週間の保管後の溶液(上清)中に浸出された、約8重量%のTTを示した(
図6b)。
【0288】
実施例8
実施例6のワクチンによって誘発される免疫応答のイン・ビボ評価
約18gの7週齢のBalb/c雌マウスが、TT(Al-フマレート添加)又はTT(アルハイドロゲル(登録商標)添加)のいずれか20μLを後肢の四頭筋に筋肉内注射することによって免疫化された。
【0289】
Al-フマレートアジュバント及びアルハイドロゲル(登録商標)アジュバントのどちらの場合も、TT/Al3+=0.08IU/Al(μg)の一定比で、4種の濃度が試験された。
【0290】
各濃度について、アジュバントグループ1つにつき2匹のマウスが使用され、そして、ワクチン注射を全く受けない2匹の追加のマウス(ナイーブマウス)が、対照グループとして研究に含められた。
【0291】
注射部位において、局所反応は観察されなかった。全てのマウスにおいて、免疫化後1ヶ月の間に体重が増加した。
【0292】
該免疫化マウス及び該2匹の対照マウス(ナイーブマウス)は、1ヶ月目に犠死させられ、採血された。
【0293】
血清は、抗マウス軽鎖Elisaを用いて全長抗体(Ab)応答について、及び抗マウスIgG特異的Elisaを用いてIgG Ab応答について、解析された。Elisaは、製造業者の説明書に従って実施された。
【0294】
読取り値は、プレート(plaque)バックグラウンド差異を補正する為に、2種の波長450nm及び630nmで記録された。血清は、Ig検出の為には1:10希釈及び1:100希釈で、並びにIgG検出の為には1:100希釈、1:1000希釈で、試験された。最も高い抗原(Ag)濃度では、1:2500希釈物がまた、IgGについて試験された。タンパク質及び界面活性剤の濃度は、使用された全ての血清希釈物に対して標準化された。
【0295】
各キットは、結果をAbのkU/mLで表すことを可能にする、較正されたサンプルの参照曲線を含んだ。
【0296】
抗体(Ab)応答の指数(Index of antibodies responses)は、該免疫化マウスから観察された値を、該ナイーブマウス由来の血清の値によって、キットの希釈剤のバックグラウンドを両方の値から差し引いた後に、割ることによって計算された(
図7)。全長Ig Ab応答及びIgG Ab応答は、Al-フマレートアジュバント及びアルハイドロゲル
(登録商標)アジュバントの両方を用いて、評価された。これらの応答は、使用されたTT濃度及びアジュバント濃度に比例した。試験された全濃度で、Al-フマレートは、アルハイドロゲル
(登録商標)よりも統計学的に有意に強いAb応答を誘発した。
【0297】
実施例9
実施例6の2種のアジュバント添加ワクチン及び遊離抗原によってトリガーされる免疫応答の動態研究
約18gの7週齢のBalb/c雌マウスが、TT(Al-フマレート添加)、TT(アルハイドロゲル(登録商標)添加)、又はTTのいずれか20μLを後肢の四頭筋に筋肉内注射することによって免疫化された。
【0298】
Al-フマレートアジュバント及びアルハイドロゲル(登録商標)アジュバントの両方についてはC1濃度(1.6IU TT/20μg Al3+)が使用され、アジュバント添加製剤を用いないマウスには、1.6IUが注射された。
【0299】
各製剤(TT(Al-フマレート添加)、TT(アルハイドロゲル(登録商標)添加)、及びTT)について、グループ1つにつき24匹のマウスが使用され、そして、ワクチン注射を全く受けない2匹の追加のマウス(ナイーブマウス)が、対照グループとして研究に含められた。
【0300】
注射部位において、局所反応は観察されなかった。全てのマウスにおいて、免疫化後1ヶ月の間に体重が増加した(
図8)。
【0301】
各グループの6匹のマウスが、注射後7日目、14日目、32日目、及び60日目に犠死させられ、そして、ELISA解析の為に血清が採取された。
【0302】
2匹のナイーブマウスは、14日目及び60日目に犠死させられた。
【0303】
14日目の5ペアのマウス及び32日目の5ペアのマウスから得られたデータが
図9に示され、これは、TT(Al-フマレート添加)注射マウスにおける、TT(アルハイドロゲル
(登録商標)添加)注射マウスよりも良好なAb応答を示す。
【0304】
7日目、14日目、32日目、60日目の血清の200~3200段階希釈物中のAb含有量が、解析された(
図10)。0.6(50U)のODにおいて、TT(Al-フマレート添加)Ig又はTT(アルハイドロゲル
(登録商標)添加)Igは、それぞれ、32日目(D32)に3(20kU/60kU)及び60日目(D60)に2.5(40kU/100kU)の、TT(Al-フマレート添加)対TT(アルハイドロゲル
(登録商標)添加)の希釈比をもたらした。
【0305】
実施例10
免疫原性効力(efficiency)の観点からの、TT(Al-フマレート添加)の長期安定性
免疫原性の観点からTT(Al-フマレート添加)ワクチンの長期安定性を実証する為に、濃度M1(1.6IU TT/20μg Al3+)のTT(Al-フマレート添加)製剤が、実施例9で使用された製剤と同時に調製され、4℃で保管され、そして、9ヶ月後に試験された。安定剤/保存添加剤は、該製剤に添加されなかった。
【0306】
約19gの7週齢のBalb/cByJ雌マウスが、新たに調製されたTT(Al-フマレート添加)又は9ヶ月経過後のTT(Al-フマレート添加)(該溶液の調製は、実施例6に記載されている)のいずれか20μLを右後肢に筋肉内注射することによって免疫化された。
【0307】
全てのワクチンは、1.6IU TT/注射される20μL Al、を含んだ。サンプル間のAl含有量の差異が、ICP-OESによって調べられ、8%未満であることが判明した。
【0308】
各製剤(新たに調製されたTT(Al-フマレート添加)又は9ヶ月経過後のTT(Al-フマレート添加))について、グループ1つにつき6匹のマウスが使用された。
【0309】
この研究は32日間続き、全てのマウスについて、注射後32日目(D32)に血清が採取された。
【0310】
注射部位において、局所反応は観察されなかった。全てのマウスにおいて、免疫化後1ヶ月の間に体重が増加し、これは、実施例8及び実施例9の以前の研究と合致した。
【0311】
この研究に由来する血清、及び時間経過(aging)前の同じ免疫原調製物を用いて9ヶ月前に得られた血清(実施例9)が、Ig抗マウスELISAキットを用いて、全長抗体(Ab)応答について解析された。ELISAは、製造業者の説明書に従って実施された。
【0312】
読取り値は、プレート(plaque)バックグラウンド差異を補正する為に、2種の波長450nm及び630nmで記録された。血清は、IgG検出の為に1:1000希釈で試験された。タンパク質及び界面活性剤の濃度は、使用された全ての血清希釈物に対して標準化された。
【0313】
各キットは、結果をAbのkU/mLで表すことを可能にする、較正されたサンプルの参照曲線を含んだ。
【0314】
Ab応答は、ODとして直接的に表された。全てのサンプルが3つのプレート上で試験され、その際、未加工の参照曲線データは、ほぼ同一であった(それぞれ1%及び5%の差異)けれども、OD値を補正することが可能になるように各プレートにおいて同一の参照曲線が用いられた。
【0315】
図11に示されているように、9ヶ月経過後のTT(Al-フマレート添加)は、その免疫原性特性のいかなる減少も示さなかった。IgGレベルは、時間経過させたサンプル、新たに調製されたもの、及び時間経過前の同じ免疫原調製物を用いて9ヶ月前に採取された血清から得られたものの間で、同程度であった。
【0316】
同様の実験が、添加剤なしで4℃にて15ヶ月間保管されたTT(Al-フマレート添加)調製物を用いて行われた。15ヶ月経過した調製物の免疫原性特性は、新たに調製されたTT(Al-フマレート添加)の95%以上の有効性の範囲のままであった。
【0317】
この研究は、Al-フマレートが安定なワクチン製剤の設計に適していることを強調する。
【0318】
実施例11
Al-フマレート上に破傷風トキソイド(TT)が表面固定化された破傷風トキソイド(TT)抗原ワクチンの調製(TT(Al-フマレート添加-表面))
Al-フマレートが、製剤についてM1濃度を用いて、TTの表面吸着について試験された。使用された全ての溶液(反応物質、緩衝液、及びMilliQ溶液)は、孔径0.2μmの膜を備えたシリンジフィルターを用いて、使用前に滅菌された。
【0319】
使用された厳密な量は、TT(Al-フマレート添加-表面)ワクチンの調製についての実験詳細を示す、下記の表6に示されている。
【0320】
【0321】
Al-フマレート合成の為に、10mLのmilliQ H2O中Al2(SO4)3・xH2O(700mg)及び10mLのmilliQ H2O中フマル酸(243mg)/NaOH(256mg)からなる貯蔵溶液が使用された。詳細には、金属塩又は配位子/塩基のいずれかを含む、136μLの2つの別個の溶液が、互いに混合された。該2つの溶液を混合した数秒後に、TT(Al-フマレート添加)製剤を調製する場合に普段なら添加されるであろうTT溶液の体積に相当する、10.5μLのH2Oが反応物に添加された。最終混合物は、室温で8時間、撹拌しながら放置された。
【0322】
続いて、生成物は、10500gで3分間遠心分離され、そして、上清が除去された。Al-フマレートは、272μLのmilliQ H2O中に再分散され、10.5μLのTT溶液(2.8mg/mL、Creative Biolabsから購入)が、固定化手順の為に添加された。
【0323】
固定化プロセス(16時間)の最後に、該TT(Al-フマレート添加-表面)ワクチンは、10500gで3分間遠心分離され、上清が除去され、そして、750μLのHEPES緩衝液(20mM、pH7.4)で置き換えられた。
【0324】
該TT(Al-フマレート添加-表面)ワクチンは、以降の研究の為に、4℃で保存された。
【0325】
Al-フマレートの表面におけるTTの固定化量は、microBCAタンパク質測定アッセイ法によって上清中に見出されるTTの量に基づいて、定量された。
図12aに示されているように、TTの全部が、該MOFの表面に固定化された。
【0326】
TT固定化後のAl-フマレートの表面電荷についての任意の変化を調査する為に、H
2O中のTT(Al-フマレート添加)、TT(Al-フマレート添加-表面)、Al-フマレート、及びTTに対して、ζ電位測定が行われた。
図13に示されているように、両方の製剤及び該MOFは、正のζ電位を有するが、TTは、約-8mVのζ電位を有する。しかしながら、TT(Al-フマレート添加)及びAl-フマレートは同様のζ電位値(それぞれ、約9mV及び10mV)を示すが、TT(Al-フマレート添加-表面)は約6mVという低いζ電位を有する。この差は、TT(Al-フマレート添加)製剤の場合は、抗原がMOF粒子の間に捕捉されるが、TT(Al-フマレート添加-表面)製剤の場合は、抗原がMOFの外部表面に固定化されて、TTの負電荷が原因で該製剤の(its)ζ電位値を低下させること、を示す。
【0327】
抗原浸出の観点からのTT(Al-フマレート添加-表面)製剤の安定性は、4℃で1週間保管された後の溶液(上清)中に浸出されたTTの量を測定することによって、調査された。TT(Al-フマレート添加-表面)からは、TTの浸出は観察されず、該製剤の安定性が裏付けられたのに対し、アルハイドロゲルアジュバントの表面からは、約8重量%のTTが浸出された(
図12b)。
【0328】
実施例12
実施例7のワクチン(TT(Al-フマレート添加-表面))の評価
約19gの7週齢のBalb/cByJ雌マウスが、TT、TT(アルハイドロゲル(登録商標)添加)、TT(Al-フマレート添加)、又はTT(Al-フマレート添加-表面)のいずれか20μLを右後肢に筋肉内注射することによって免疫化された。
【0329】
全てのワクチンは、1.6IU TT/注射される20μL、を含んだ(実施例6及び実施例11を参照されたい)。
【0330】
該3種のアルミニウムアジュバントのAl3+含有量が、ICP-OESによって確認された。ICP-OESの為の無機化手順:200μLの、TT(アルハイドロゲル(登録商標)添加)ワクチン懸濁物、TT(Al-フマレート添加)ワクチン懸濁物、又はTT(Al-フマレート添加-表面)ワクチン懸濁物は、処理前に100℃で一晩、加熱された。1mLのHCl(37%)が、乾燥させられた全ての生成物に添加され、次に、これは、密閉容器中で、80℃で16時間加熱された。サンプルのの完全な無機化後、該サンプルは、ICP-OES解析の為にmilliQ H2Oで5mLに希釈された。サンプルは、機器に注入する前にろ過されなかった。
【0331】
下記の表7に示されているように、該3種のワクチンは、同様のアルミニウム含有量を示した。
【0332】
【0333】
各製剤(TT、TT(アルハイドロゲル(登録商標)添加)、TT(Al-フマレート添加)、又はTT(Al-フマレート添加-表面))について、グループ1つにつき6匹のマウスが使用され、そして、ワクチン注射を全く受けない2匹の追加のマウス(ナイーブマウス)が、対照グループとして研究に含められた。
【0334】
この研究は32日間続き、全ての動物について、注射後32日目(D32)に血清が採取された。
【0335】
注射部位において、局所反応は観察されなかった。全てのマウスにおいて、免疫化後1ヶ月の間に体重が増加し、これは、実施例8、実施例9、及び実施例10の以前の研究と合致した。
【0336】
血清は、抗マウス軽鎖Elisaを用いて全長抗体(Ab)応答について、及び抗マウスIgG特異的Elisaを用いてIgG Ab応答について、解析された。Elisaは、製造業者の説明書(Alpha Diagnostics International)に従って実施された。
【0337】
読取り値は、プレート(plaque)バックグラウンド差異を補正する為に、2種の波長450nm及び630nmで記録された。血清は、Ig検出及びIgG検出の為に1:1000で試験された。
【0338】
各キットは、結果をAbのkU/mLで表すことを可能にする、較正されたサンプルの参照曲線を含んだ。
【0339】
IgG Ab応答が、TT、TT(アルハイドロゲル
(登録商標)添加)、TT(Al-フマレート添加)、又はTT(Al-フマレート添加-表面)を用いて評価された(
図14)。実施例8及び実施例9の研究に合致して、TT(Al-フマレート添加)を用いて得られたIgGレベルは、TT(アルハイドロゲル
(登録商標)添加)を用いて得られたIgGレベル及びアジュバント無しのTTを用いて得られたIgGレベルよりも、有意に高かった。TT(Al-フマレート添加-表面)を用いて得られたIgGレベルは、TT(Al-フマレート添加)を用いて得られたレベルよりも低く、参照アジュバントであるTT(アルハイドロゲル
(登録商標)添加)を用いて得られたレベルと同様であった。
【0340】
実施例13
イン・ビトロ(in vitro)でのAl-フマレートの吸収特徴の研究:血清及び血漿における研究
この研究は、血清及び血漿におけるMOFの溶解を調べることによって行われた。
【0341】
より正確には、8.76mgのAl-フマレートが、1.7mLの血清又は血漿のいずれかに分散され、そして、二次元連続撹拌(60×60rpm)しながら、37℃で1ヶ月間、インキュベートされた。1ヶ月の最後に、Al-フマレートが、遠心分離(12000g、20分)によって回収され、そして、上清(血清又は血漿)が、ICP-OESによるAl3+含有量測定の為に採取された。
【0342】
上清のAl3+-ICP-OES解析は、下記の表8に詳述されているように、導入されたAl-フマレートの25.1重量%及び24.0重量%が、それぞれ血清及び血漿中で、1ヶ月後に分解されていたことを示した。
【0343】
【0344】
実施例14
イン・ビボでのAl-フマレートの吸収特徴の評価
TT(Al-フマレート添加)製剤の吸収特徴が、マウスの注射部位(右肢)及び血液循環において残存するAl3+の量を定量することによって評価され、そして、非吸収性TT(アルハイドロゲル(登録商標)添加)の吸収特徴と比較された。
【0345】
マウスの注射部位(右肢)及び血液循環における(該2種のアジュバントに由来する)Al3+の存在が、ICP-OESによって調査された。全てのサンプルについての左肢、並びにTTのみを注射された全てのマウスの両肢、及びナイーブマウスの両肢がまた、陰性対照としてICP-OESによって解析された。
【0346】
肢サンプルの消化手順:全ての肢サンプルは、それらの保存媒体(HEPES緩衝液(20mM pH7.4)中のPFA 4%又は無水エタノール(EtOH abs.)若しくはHEPES緩衝液(20mM pH7.4))から取り出され、処理前に100℃で5時間、脱水された。脱水後、該肢は、2.5mLのHNO3(70%、分析グレード)によって室温(RT)で3日間、前消化され、続いて50℃で3時間、全面的に消化された。ICP解析の為に、全ての消化されたサンプルは、milliQ H2Oを用いて、最終体積が20mLになるまで希釈された。50~5,000ppbのAlの検量線が、解析の為に使用された。
【0347】
血液サンプルの消化手順:全ての血液サンプルは、処理前に100℃で5時間、脱水された。脱水後、該血液サンプルは、300μLのHNO3(70%、分析グレード)によって室温(RT)で3日間、前消化され、続いて50℃で3時間、全面的に消化された。ICP-OES解析の為に、全ての消化されたサンプルは、milliQ H2Oを用いて、最終体積が5mLになるまで希釈された。50~5,000ppbのAlの検量線が、解析の為に使用された。
【0348】
図15及び
図16は、TT(Al-フマレート添加)グループ及びTT(アルハイドロゲル
(登録商標)添加)グループのマウスの消化された右肢に由来する、ICP-OESによって定量されたAl
3+の量、並びに注射部位に残っている推定のAl
3+重量%を示す。どちらのアジュバントの場合も、7日目の時点で、注射されたAl
3+の量の半分未満(約9μg)のみが、注射部位に残っていた。しかしながら、14日目から、TT(Al-フマレート添加)からのアルミニウムの徐々の分解が観察されることができ、一方、TT(アルハイドロゲル
(登録商標)添加)からのアルミニウムは、検出されるAl
3+の量が未変化であることによって示されているように、注射部位に残っている。60日目に、TT(アルハイドロゲル
(登録商標)添加)を注射されたマウスは、TT(Al-フマレート添加)を注射されたマウスよりも3.6倍多いAl
3+を示した。TT(Al-フマレート添加)からのアルミニウムの半減期は25日の範囲であったが、TT(アルハイドロゲル添加)からのアルミニウムはほぼ一定であり、220日を超える見かけの半減期を示す。この研究は、TT(Al-フマレート添加)製剤の吸収特徴を裏付ける。
【0349】
TT(Al-フマレート添加)及びTT(アルハイドロゲル(登録商標)添加)を注射されたマウスの左肢(注射されていない肢)では、Al3+は検出されなかった。
【0350】
TTを注射されたマウスの右肢においても左肢においても、及びナイーブマウスの右肢においても左肢においても、Al3+は検出されなかった。
【0351】
いずれのマウスグループ(TT(Al-フマレート添加)若しくはTT(アルハイドロゲル(登録商標)添加)又はTTを注射されたマウス、又はナイーブマウス)の血液循環においても、Al3+は検出されなかった。
【0352】
同様の研究が、より多い注射量(後肢1本につき50μgのアルミニウム)を用いて行われた。ICP-OESによって検出された、90日目の注射部位におけるAl3+の量が、下記の表9に示されている。90日目に、TT(Al-フマレート添加)を注射されたマウスの場合、注射されたAl3+の5%のみが注射部位に残っていたのに対し、TT(アルハイドロゲル(登録商標)添加)を注射されたマウスは、10倍多いAl3を示した。
【0353】
【0354】
実施例15
蛍光標識されたTT(Al-フマレート添加)のイン・ビボ動態
TT(Al-フマレート添加)からのTTの局所的体内分布及び注射部位での存続性を評価する為に、蛍光プローブ、すなわちInVivo Tag 680 NHS蛍光色素(PerkinElmer)、で標識されたTTを用いる時間依存的イン・ビボNIRイメージングによって、調査が行われた。
【0355】
蛍光-TT(Al-フマレート添加)の調製
蛍光-TTは、製造者の説明書に従って、InVivo Tag 680 XL NHS蛍光体をTTに結合させることによって、調製された。Zebaカラム精製後に遊離の残存色素が存在しないことが、蛍光-TT封入前に調べられた。
【0356】
脱塩及び蛍光色素結合:TTは、2mL容のZeba Spinカラム(7k MWCO)を用いて、NaCl 9:1000まで脱塩された。該カラムは、1mLのNaCl 9:1000を用いて、1000gで3分間の遠心分離により、2回洗浄された。500μLのTT(2.8mg/mL)が、170μL、次に130μLの量で添加され、最後に40μLのNaCl 9:1000が添加(loaded)され、次に1000gで3分間、遠心分離された。NHS蛍光色素が、10μLのDMSOに溶解された。4μLが、標識キットからの50μLの重炭酸塩溶液によって緩衝化された脱塩TTに、添加された。5分ごとに撹拌しながら75分間経過した後、蛍光色素が結合されたTT(蛍光-TT)が、予めNaCl 9:1000で平衡化されたキットの精製カラムを用いて遊離蛍光色素をカラム除去した後に、1000gで3分間の遠心分離を用いて、回収された。
【0357】
タンパク質濃度及び蛍光比は、キット製造業者によって提供されるモル吸光係数及び式を利用して、280nm及び668nmの波長での吸光度測定値を用いて、決定された。得られた蛍光-TT溶液は1mg/mL(510Lf/mL、2040UI/mL)であった。
【0358】
蛍光-TT(Al-フマレート添加)調製の為に、81.4μLの、Al2(SO4)3・xH2Oの貯蔵溶液(10mLのmilliQ H2O中700mg)と、81.4μLの、フマル酸及びNaOHの貯蔵溶液(10mLのmilliQ H2O中にそれぞれ243mg及び256mg)とが、混合された。該2つの溶液を混合した数秒後に、17.64μLの蛍光-TT溶液(1mg/mL)が、反応物に添加された。最終混合物は、室温で8時間、撹拌しながら放置された。懸濁物は、10000gで3分間、遠心分離された。
【0359】
次に、イン・ビボ研究の為に、上清が除去され、そして450μLのHEPES緩衝液(20mM、pH7.4)で置き換えられた。
【0360】
特性決定の為に、遠心分離後、得られた粉末が、100℃で一晩乾燥させられ、そして、上清が採取され、microBCAアッセイ法によって解析された。
【0361】
蛍光-TTの存在下でのAl-フマレートの形成が、PXRDによって確認された(
図17)。microBCAタンパク質測定アッセイ法を用いて定量される該上清中の残存蛍光-TTの量はごくわずかであることが判明し、Al-フマレートにおける蛍光-TTのほとんど全部の固定化が裏付けられた。
【0362】
このことは、Al-フマレートがInVivo Tag 680で標識されたTTの固定化に適していることを示す。
【0363】
17.64μLの蛍光-TT溶液に432μLのHEPES緩衝液(20mM、pH7.4)を添加することによって、蛍光-TTワクチンがまた調製された。
【0364】
両方の製剤が、イン・ビボ研究まで約6日間、暗所にて4℃で保存された。
【0365】
注射部位における蛍光-TT(Al-フマレート添加)の存在のイン・ビボ評価
約19gの7週齢のBalb/cByJ雌マウスが、蛍光-TT又は蛍光-TT(Al-フマレート添加)のいずれか50μLを右後肢に筋肉内注射することによって免疫化された。
【0366】
該製剤は、全てのマウスが4IU(1.96μg)の蛍光-TTを注射されるように、調製された。
【0367】
蛍光-TT製剤及び蛍光-TT(Al-フマレート添加)製剤のどちらの場合も、1グループにつき3匹のマウスが使用され、そして、ナイーブマウスがまた、バックグラウンド評価の為に研究に含まれた。
【0368】
蛍光取得は、Perkin Elmerの光学イメージングシステムIVIS Spectrumを用いて実施された。2次元(2D)蛍光イメージングは、蛍光色素(この研究ではVivoTag680色素)によって放出された光の高感度検出によって実施された。イン・ビボ蛍光取得は、イソフルラン及び酸素の混合物をキャリアガスとして用いて麻酔されたマウスに対して実施された。イン・ビボ取得の間、これらの動物は、(注射部位から発生する蛍光シグナルを取得する為に)左側を下にして置かれた。
【0369】
イン・ビボ蛍光イメージングのパラメータが、以下に記載される:
視野(FOV:Field of View):14×14cm(FOV C)
蛍光標識:InVivo Tag 680XL
励起波長:640nm
発光波長:720nm
露光時間:自動
最小カウント:6000
ビニング(Binning):16~4(蛍光シグナルの強度に応じて自動的に調整される)
F/STOP:2
被写体の高さ:1.5cm
【0370】
蛍光シグナルは、
図18の横軸に示されているように、注射後の種々の時点で評価された。
【0371】
定量:蛍光シグナルを計算する為に、関心領域(ROI:Region of Interest)は、マウスの右後肢に配置された。蛍光シグナルに対応する全放射輝度効率(Total radiance efficiency)(単位:p/s/(μW/cm2))が、各時点の各ROIについて得られた。
【0372】
第2の蛍光取得が実施された場合、全放射輝度効率は、第2の画像上で計算された。
【0373】
得られた全放射輝度効率シグナルは、その標準偏差を含む平均バックグラウンド参照シグナル(BKG+3SD)と比較された。この参照シグナル(バックグラウンド放射輝度効率レベル、すなわちBKG放射輝度効率)は、マウスの自己蛍光及び光学イメージングシステムのカメラによって放出されるノイズに相当する。参照シグナルは、BKGマウス(グループC)において、下記の式に従って計算された:
BKGレベル=平均BKGシグナル(全取得)+3*BKG標準偏差(全取得)
【0374】
BKG放射輝度効率よりも高い蛍光シグナルは全て、注射された製剤によって放出されたとみなされた。
【0375】
各マウスの蛍光シグナル(全放射輝度効率)が計算された。参照自己蛍光シグナルは、対照マウスの大腿の毛を剃られた領域において、測定された。
【0376】
MOF内の蛍光シグナルの強い消光が観察され、蛍光-TT(Al-フマレート添加)シグナルは遊離の蛍光-TTのシグナルの半分であり、このことは、Al-フマレート内で蛍光-TTが完全に捕捉されていることと合致した。
【0377】
t=0で測定された値に基づいて、放射輝度シグナルは100%に標準化された。蛍光-TT(Al-フマレート添加)及び対照バックグラウンドからの放射輝度シグナルにおける複数のLog10は、最長4週間の長期研究を可能にした。
【0378】
図18に示されているように、蛍光-TTを単独で用いた場合よりも、蛍光-TT(Al-フマレート添加)を注射されたマウスにおいて、注射部位での蛍光放射輝度の、より遅い減衰が観察された。
【0379】
50%蛍光レベルは、蛍光-TT単独の場合は約60時間後に観察され、蛍光-TT(Al-フマレート添加)の場合は、ほぼ3倍長い時間、すなわち約168時間後に、観察された。
【0380】
Al-MOFによる抗原の固定化、特にはAl-フマレートにおけるTT、は、該MOFを用いない場合よりも遅い、注射部位での該抗原の放出をもたらす。
【0381】
実施例16
TT(Al-フマレート添加)のイン・ビボ毒性の評価
先の実施例(実施例8、実施例9、実施例10、及び実施例12)に示されているように、マウスが、20μLの濃度C1のTT(Al-フマレート添加)を注射された場合、すなわち1.6IUのTT及び20μgのAl
3+、を注射された場合、全てのマウスにおいて、研究の過程で体重が増加し(
図8)、このことは、急性毒性が存在しないことを示した。
【0382】
TT(Al-フマレート添加)製剤のイン・ビボ毒性を更に評価する為に、より高用量(100倍多い)がマウス1匹当たりに注射され、そして、毒性が、マウスの体重、ICP-OESによって測定された存在し得る貯蔵器官内のアルミニウム含有量、及びこれらの器官の組織学的解析の経時変化(evolution)を通じて、評価された。
【0383】
約21gの7週齢のBalb/cByJ雌マウスが、濃度M1のTT(Al-フマレート添加)(実施例6を参照されたい)の50μLを両後肢に筋肉内注射することによって、及び100μLを右側腹部に皮下(SC)注射することによって、免疫化された。従って、該マウスは、合計で200μgのAl及び16IUのTTを注射された。
【0384】
安楽死は、注射後7日目(1匹のマウス)、並びに32日目(2匹のマウス)、60日目(2匹のマウス)、及び90日目(2匹のマウス)に施された。
【0385】
全てのマウスにおいて、免疫化後数ヶ月の間、体重が増加し、このことは、急性毒性が存在しないことを裏付けた。
【0386】
注射されていなナイーブマウスが、ICPバックグラウンドチェック及び組織の正常な組織学的外観の為に使用され、そして、安楽死が、7日目、60日目、及び90日目に施された。
【0387】
関心対象の器官(脾臓、肝臓)が摘出され、そして、ICP解析の為にHEPES緩衝液(20mM pH7.4)中PFA 4%中で固定されるか、又は組織学的評価の為に固定液AFA(アルコールホルマリン酢酸)中で固定された。
【0388】
脾臓及び肝臓への注射後60日目及び90日目のAl3+の量が、ICP-OESによって解析された。
【0389】
器官の消化手順:全ての器官は、それらの保存媒体(HEPES緩衝液(20mM pH7.4)中PFA 4%)から取り出され、処理前に100℃で5時間、脱水された。脱水後、該器官は、2.5mLのHNO3(70%、分析グレード)によって室温(RT)で3日間、前消化され、続いて50℃で3時間、全面的に消化された。ICP解析の為に、全ての消化されたサンプルは、milliQ H2Oを用いて、最終体積が20mLになるまで希釈された。
【0390】
脾臓及び肝臓への注射後7日目の組織の組織学的外観が、調べられた。50μLのAIを注射されたマウス及びナイーブマウスの腎臓がまた、注射後35日目に調べられた。
【0391】
組織学的解析の為に、組織は、AFA中で少なくとも一晩且つ最長4日間、固定された。次に、固定された器官は、エタノール、アセトン、及びキシレンの連続浴中での脱水後、パラフィン中に包埋された。各器官は、ミクロトームを用いて100μmごとに作製される、5μM切片に薄く切られ、そして、アルブミンが加えられた(albuminized)グリセリンを用いて、未処理の脱脂スライド上に接着された。パラフィン除去後、該切片は、HES染色(ヘマトキシリン、エオシンG、及びサフラニン)を用いて慣用的に染色された。該切片は、画像取得ソフトウェア(LAS V4.2)によって駆動される、デジタルカメラ(Leica DF420C)に接続された光学顕微鏡(Leica DM2000)を使用して画像化された。
【0392】
下記の表10から分かるように、注射後60日目及び90日目に脾臓内及び肝臓内で検出されたAl3+の量はごくわずかで、注射された量の0.6重量%未満であった。このことは、存在しうる貯蔵器官内でのアルミニウムの蓄積が起こっていないことを示す。
【0393】
【0394】
注射(200μgのAl)後7日目の肝臓及び脾臓、並びに注射(50μgのAl)後35日目の腎臓に由来するHES染色切片の画像は、組織切片上にいかなる異常な外観も示さなかった(
図19)。特には、細胞浸潤物も異常な細胞形態も、観察されなかった。組織学的外観は、ナイーブな健常マウス組織と十分に類似していた。腎臓組織切片は、糸球体又は尿細管の病理学的特徴を全く示さなかった。
【0395】
この研究は、生物及び保存された組織において急性毒性がないこと、アルミニウムの貯蔵がないこと、を強調する。
【0396】
実施例17
TT(Al-フマレート添加)の免疫原性におけるアルミニウムの役割の評価
アルミニウムの関連性を実証する為に、Al-フマレートが、亜鉛イミダゾレートMOF、ZIF-8(ZIF=ゼオライトイミダゾレート構造体)と、イン・ビボ破傷風トキソイド免疫原性効力(efficiency)の観点から比較された。
【0397】
TT(ZIF-8添加)の調製
TTが、ZIF-8内に固定化された。3mol/Lの2-メチルイミダゾールの貯蔵溶液及び1mol/Lの酢酸亜鉛の貯蔵溶液が、調製された。426.5μLの2-メチルイミダゾール貯蔵溶液、10.4μLのmilliQ H2O、及び23.1μLの破傷風トキソイド溶液(TT、2.8mg/mL、1428Lf/mL、5712UI/mL)が、混合され、10秒間ボルテックスされた。次に、40μLの酢酸亜鉛貯蔵溶液が添加された。この混合物は、30秒間ボルテックスされ、次に、室温で1時間、撹拌しながら放置された。
【0398】
対照実験として、23.1μLのmilliQ H2Oが、TT溶液の代わりに添加された。
【0399】
次に、イン・ビボ研究の為に、上清が除去され、そして1650μLのHEPES緩衝液(20mM、pH7.4)で置き換えられた。
【0400】
特性決定の為に、遠心分離後、得られた粉末が、100℃で一晩乾かされた。
【0401】
ZIF-8の計算されたPXRDパターンは、CCDCから入手された;寄託番号:602542、データベース識別子:VELVOY。
【0402】
PXRDパターン(
図20)は、TTを伴うZIF-8及びTTを伴わないZIF-8の形成を裏付けた。
【0403】
Alベースのアジュバント又はZnベースのアジュバントによってトリガーされる免疫応答のイン・ビボ評価
約19gの7週齢のBalb/cByJ雌マウスが、TT、TT(Al-フマレート添加)、又はTT(ZIF-8添加)のいずれか20μLを右後肢に筋肉内注射することによって免疫化された。
【0404】
TTワクチン、TT(Al-フマレート添加)ワクチンは、実施例6と同じプロトコールに従ってC1濃度で調製された。
【0405】
全てのワクチンは、1.6IU TT/注射される20μLを含むことを目指して、調製された。TT(Al-フマレート添加)及びTT(ZIF-8添加)の金属含有量は、ICP-OESによって確認された。ICP-OESの為の無機化手順:200μLの各ワクチンは、処理前に100℃で16時間、加熱された。1mLのHCl(1M)が、乾燥させられた全ての生成物に添加され、次に、これは、密閉容器中で、80℃で16時間加熱された。サンプルの完全な無機化後、該サンプルは、ICP-OES解析の為にmilliQ H2Oで5mLに希釈された。サンプルは、注入する前にろ過されなかった。
【0406】
下記の表11に示されているように、該2種のワクチンは、同様の金属含有量を示した。
【0407】
【0408】
各製剤(TT、TT(Al-フマレート添加)、又はTT(ZIF-8添加))について、グループ1つにつき6匹のマウスが使用され、そして、ワクチン注射を全く受けない2匹の追加のマウス(ナイーブマウス)が、対照グループとして研究に含められた。
【0409】
この研究は30日間続き、全ての動物について、注射後30日目(30D)に血清が採取された。
【0410】
注射部位において、局所反応は観察されなかった。全てのマウスにおいて、免疫化後1ヶ月の間に体重が増加した。
【0411】
血清は、抗マウス軽鎖Elisaを用いて全長Ig抗体(Ab)応答について、解析された。Elisaは、製造業者の説明書(Alpha Diagnostics International)に従って実施された。読取り値は、プレートバックグラウンド差異を補正する為に、2種の波長450nm及び630nmで記録された。血清は、Ig検出の為に1:1000で試験された。
【0412】
各キットは、プレート間差異を標準化すること又は結果をAbのkU/mLで表すことを可能にする、較正されたサンプルの参照曲線を含んだ。
【0413】
Ig Ab応答は、TT、TT(Al-フマレート添加)、又はTT(ZIF-8添加)を用いて評価された(
図21)。TTとTT(Al-フマレート添加)との間のIgレベルの差は、以前の研究(実施例12)と合致しており、はるかに高いIgレベルがTT(Al-フマレート添加)を用いて得られた。TT(ZIF-8添加)を用いて得られたIgレベルはごくわずかであり、免疫化がされていないことが実証された。
【0414】
この研究は、ZIF-8が全ての抗原、特にはTT、の固定化に適しているわけでないことを示す。
【0415】
実施例18
Al-フマレートにおけるホルムアルデヒド不活化大腸菌(Escherichia coli)の固定化
抗生物質抵抗性を有さない野生の尿路病原性大腸菌(E.coli)株が、CPSO寒天上の尿路病原菌から単離された。数個の大腸菌(E.coli)コロニーが回収され、そして、37%ホルムアルデヒドの1%水溶液、1%BSAを含むPBS緩衝液(0.150mM、7.4)中に再懸濁された。不活化大腸菌懸濁物は、使用するまで約4℃で保存された。
【0416】
固定化の前に、不活化大腸菌懸濁物は、NaCl 0.9%で2回洗浄された(2400g、5分)。得られた懸濁物は、9~10×106個の細菌/μL(サイトメトリーによって測定される、下記参照)を含むように調整された。
【0417】
10mLのmilliQ H2O中Al2(SO4)3・xH2O(700mg)の貯蔵溶液及び10mLのmilliQ H2O中フマル酸(243mg)/NaOH(256mg)の貯蔵溶液が、調製された。該2つの貯蔵溶液(アルミニウム前駆体及び配位子/塩基)のそれぞれの1360μLが、混合された。混合した数秒後に、不活化細菌懸濁物が、反応物に添加された(105μL、9.6×106個の細菌/μL)。最終混合物は、室温で8時間、撹拌しながら放置された。続いて、該懸濁物は、2000gで5分間遠心分離され、NaCl 0.9%溶液で2回洗浄された。
【0418】
対照実験として、同じ手順が、細菌を添加せずに同様に実施された。
【0419】
最終生成物は、100℃で一晩乾燥させられ、典型的な特性決定技術(PXRD、TEM)を用いて解析されるか、又はフローサイトメトリー解析の為に4℃で懸濁物として保存された。
【0420】
図22は、ホルムアルデヒド不活化大腸菌を用いて得られたサンプル及び用いずに得られたサンプルのPXRDパターンを示し、これらは両方とも、Al-フマレートMOFの形成と合致している。
【0421】
細菌の固定化は、TEM画像(
図23)及びTEM-EDSマッピング(
図24)によって確認された。
【0422】
イメージング手順:イメージングの前に、該サンプルは、NaClを除去する為及びイメージンググリッド上でのNaClの(its)再結晶化を回避する為に、H2Oで2回洗浄された。該サンプルは、TEMグリッド上の細菌の数を減少させる為に、希釈された。TEMグリッドの準備の為に、該サンプルの1滴が、カーボン-フォルマー(Formar)でコーティングされたCuメッシュTEMグリッド(EMC)上に置かれた。不活化細菌は、1滴の0.1%リンタングステン酸(EMC)を用いて着色された。該グリッドが乾燥させられた後に、該サンプルは、透過電子顕微鏡(TEM、Hitachi HT-7700、日本)を用いて調べられた。画像は、デジタルカメラ(Hamamatsu、日本)を用いて撮影された。STEM-EDSが、Bruker X線検出器が装備されたHitachi HT-7700電子顕微鏡において、非着色サンプルに対して実施された。
【0423】
TEM画像は、不活化細菌の周囲に粒子が存在することを明確に示す(
図23)。無染色STEM-EDSマッピングは、該サンプル中に均一に分布されたAl元素の存在を裏付けた(
図24)。
【0424】
ホルムアルデヒド不活化大腸菌は、BD LSR Fortessa(商標)装置及びThermo Fisher Attune(商標)Cytpix(商標)装置においてTrue Count(商標)Becton-Dickinsonキットを用いて細菌を計数した後に、フローサイトメトリーによって解析された。軸方向散乱及び側方散乱が、両方の装置において解析された。直接ビデオイメージングが、該散乱に基づいてゲートをかけられた細菌及び/又は細菌DNAを検出するSYTO 9蛍光体に対してThermo Fisher Attune(商標)Cytpix(商標)を用いて実施された。
【0425】
細菌は、3つの条件で解析された:MOFなし、MOF中に封入、及び500μLの懸濁物を2mLの100mM EDTA、10mM PBS(pH7.4)中で3日間インキュベートした後の、MOFの溶解後。
【0426】
図25に示されているように、封入された細菌は、封入されていない細菌とは異なる散乱プロファイルを示し、このことは、MOFマトリックスが該細菌を被覆していることを示唆した。
【0427】
その一方で、溶解されたMOFから遊離した細菌は、封入されていない細菌と同じ散乱プロファイルを示し、このことは、該細菌が形態学的損傷を受けずに放出されたことを示した。このことは、Attune(商標)Cytpix(商標)Thermo Fisher装置における直接イメージングのもとでの、封入されていない細菌と放出された細菌の画像外観が類似していることによって、更に裏付けられた。
【0428】
この研究は、Al-フマレートが、不活化細菌、特には不活化大腸菌、をそれらの形態学的外観を保持しつつ固定化する為に適していることを強調する。
【0429】
実施例19
Al-フマレート又はアルハイドロゲル
(登録商標)
を含む、ホルムアルデヒド不活化大腸菌抗原ワクチン組成物の調製
抗生物質抵抗性を有さない野生の尿路病原性大腸菌(E.coli)株が、CPSO寒天上の尿路病原菌から単離された。1つの大腸菌(E.coli)コロニーが、TSA寒天上に播種された。バルクな(bulk)細菌培養皿が回収され、そして、37%ホルムアルデヒドの1%水溶液、1%BSAを含むPBS緩衝液(0.150mM、7.4)を注ぐことによって、再懸濁された。不活化大腸菌懸濁物は、使用するまで約4℃で保存された。
【0430】
固定化の前に、不活化大腸菌懸濁物は、NaCl 0.9%で2回洗浄された(2400g、5分)。得られた懸濁物は、約7~8×106個の細菌/μL(サイトメトリーによって測定される)を含むように調整された。
【0431】
ホルムアルデヒド固定によって滅菌されていた細菌懸濁物を除いて、使用された全ての溶液(反応物質、緩衝液、及びMilliQ溶液)は、孔径0.2μmの膜を備えたシリンジフィルターを用いて、使用前に滅菌された。
【0432】
Al-フマレートにおける不活化大腸菌抗原の固定化(大腸菌(E.coli)(Al-フマレート添加))
不活化大腸菌(Al-フマレート添加)ワクチンを調製する為に、362μLの各溶液(金属塩及び配位子/塩基)が混合された。該2つの溶液を混合した数秒後に、28μLの不活化大腸菌懸濁物(約7.5×106個の細菌/μL)が、反応物に添加された。最終混合物は、室温で8時間、撹拌しながら放置された。続いて、該懸濁物は、2400gで5分間遠心分離され、上清が除去され、そして、1000μLのHEPES緩衝液(20mM、pH7.4)で置き換えられた。
【0433】
不活化大腸菌(Al-フマレート添加)ワクチンは、イン・ビボ研究まで約7日間、4℃で保存された。
【0434】
アルハイドロゲルにおける不活化大腸菌抗原の固定化
アルハイドロゲル(登録商標)アジュバントワクチンについては、InvivoGenから購入されたアジュバント2%が、該ワクチンの調製に直接的に使用された。
【0435】
28μLの不活化大腸菌懸濁物(約7.5×106個の細菌/μL)が、583μLのPBS緩衝液(10mM、pH7.4)で希釈され、続いて、194μLのアルハイドロゲル(登録商標)懸濁物が添加された。
【0436】
該混合物は、抗原を吸着させる為に、5分間上下にピペッティングされ、そして最後に、196μLのPBS緩衝液が添加された。
【0437】
不活化大腸菌(アルハイドロゲル(登録商標)添加)ワクチンは、イン・ビボ研究まで約7日間、4℃で保存された。
【0438】
大腸菌(E.coli)ワクチンのAl含有量
不活化大腸菌(Al-フマレート添加)ワクチン及び不活化大腸菌(アルハイドロゲル(登録商標)添加)ワクチンのAl3+含有量が、ICP-OESによって調査された。
【0439】
ICP-OESの為の無機化手順:200μLの不活化大腸菌(Al-フマレート添加)ワクチン及び不活化大腸菌(アルハイドロゲル(登録商標)添加)ワクチンは、処理前に100℃で16時間加熱された。1mLのHCl(37%)が、乾燥させられた全ての生成物に添加され、次に、これは、密閉容器中で、80℃で16時間加熱された。サンプルの完全な無機化後、該サンプルは、ICP-OES解析の為にmilliQ H2Oで5mLに希釈された。該サンプルは、機器に注入する前にろ過されず、デュプリケートで実行された。
【0440】
下記の表12は、ICP-OESによって定量された不活化大腸菌ワクチンのAl3+含有量を示す。表から分かるように、不活化大腸菌(Al-フマレート添加)ワクチン及び不活化大腸菌(アルハイドロゲル(登録商標)添加)ワクチンのどちらも、比較的類似したアルミニウム含有量を有した。
【0441】
【0442】
アジュバント無しの不活化大腸菌抗原
不活化大腸菌ワクチンの為に、28μLの不活化大腸菌懸濁物(約7.5×106個の細菌/μL)が、972μLのPBS緩衝液(10mM、pH7.4)で希釈された。該不活化大腸菌ワクチンは、イン・ビボ研究まで約7日間、4℃で保存された。
【0443】
実施例20
実施例19のワクチンに対するイン・ビボ免疫応答の評価
約20gの7週齢のBalb/cByJ雌マウスが、不活化大腸菌、不活化大腸菌(Al-フマレート添加)、又は不活化大腸菌(アルハイドロゲル(登録商標)添加)のいずれか50μLを右後肢に筋肉内注射することによって免疫化された。
【0444】
実施例19で記載されたように、各ワクチンは、Al-フマレートアジュバント及びアルハイドロゲル(登録商標)アジュバントのどちらの場合も、一定のAl比で、同程度の量の細菌を含むように、調製された。
【0445】
各製剤(不活化大腸菌、不活化大腸菌(Al-フマレート添加)、又は不活化大腸菌(アルハイドロゲル(登録商標)添加))について、グループ1つにつき10匹のマウスが使用され、そして、ワクチン注射を全く受けない3匹の追加のマウス(ナイーブマウス)が、対照グループとして研究に含められた。
【0446】
安楽死は、注射後21日目(D21)にマウスの半数(n=5)に対して、及び注射後42日目(D42)に残りのマウス(n=5)に対して、実施された。1匹のナイーブマウスが、注射後21日目に犠死させられ、2匹のナイーブマウスが、42日目に犠死させられた。
【0447】
注射後21日目に、各グループの残りのマウスは、右後肢の四頭筋筋肉に更に50μLの筋肉内注射を受けた。
【0448】
1グループ当たり1匹の動物について、研究の開始時(0日目(D0))に、血液が、ドライキャピラリーチューブを用いて後眼窩洞経路によってサンプル採取され、凝固させられ、次に、血清調製の為に使用された。全ての動物について、安楽死前(21日目(D21)又は42日目(D42))に、全血が、心臓内穿刺によってサンプル採取され、そして血清調製の為に使用された。
【0449】
全てのマウスにおいて、免疫化後21日間又は42日間の間に体重が増加した。
【0450】
血清中の全長Ig(IgG IgA IgM)は、Alpha Diagnostic Internationalからのマウス抗大腸菌(E coli)ELISAキット(レファレンス500-100 ECP)を用いて、検出された。プレートは、大腸菌(E.coli)株TOP10、K12、DH5α、BL21、HB101の精製された溶解物でコーティングされる。血清は、1:1000に希釈され、製造業者の指示に従って、試験された。
【0451】
21日目(D21)の血清のうちで(
図26a)、不活化大腸菌(Al-フマレート添加)を注射された5匹のマウスは全て、強いIg応答を示したのに対し、不活化大腸菌(アルハイドロゲル
(登録商標)添加)を注射されたマウス又はアジュバント無しの不活化大腸菌を注射されたマウスにおけるIgレベルは低いままであり、不活化大腸菌(Al-フマレート添加)の比指数(ratio index)は、それぞれ16.9及び1.6であった。小さい方の比は、以前の感作の証拠となる、他の非免疫化マウスよりも強い(higher)Ig応答及び2.7倍高い免疫前レベルを示した、アジュバント無しグループ中の非定型マウス、に起因した。他のアジュバント無しマウスのIgレベルは、大腸菌(E.coli)(アルハイドロゲル
(登録商標)添加)を注射されたマウスでの非常に低いレベルのままであった。
【0452】
42日目(D42)に(
図26b)、不活化大腸菌(Al-フマレート添加)グループからのマウスは、他のグループからのマウスよりも高いIgレベル、すなわち、アジュバント無しの場合よりも3倍高いレベル、及び参照アルハイドロゲル
(登録商標)アジュバントを使用した場合よりも1.63倍高いレベル、を示した。
【0453】
この研究は、Al-フマレートが、不活化細菌をそれらの免疫原性能力を保持しつつ固定化することに適しており、且つアジュバントとして作用して、裸の不活化細菌及び更には参照アルハイドロゲル(登録商標)アジュバントと比較して、増強された免疫応答をもたらすこと、を強調する。
【0454】
実施例21
Al-フマレート(不活化ポリオ(Al-フマレート添加))における、不活化ポリオウイルスの固定化
Sanofi PasteurからのIMOVAX(登録商標)POLIOワクチンが、不活化灰白髄炎ウイルスの供給源として使用された。1回量(0.5mL)は、次の不活化灰白髄炎ウイルスを含む:1型(VERO細胞において生産されたマホーニー(Mahoney)株)40D抗原単位(DU)、2型(VERO細胞でにおいて生産されたMEF-1株)8DU、3型(VERO細胞において生産されたソーケット(Saukett)株)32DU。
【0455】
10mLのmilliQ H2O中Al2(SO4)3・xH2O(700mg)の貯蔵溶液及び10mLのmilliQ H2O中フマル酸(243mg)/NaOH(256mg)の貯蔵溶液が、調製された。該2つの貯蔵溶液(アルミニウム前駆体及び配位子/塩基)のそれぞれの1554μLが、混合された。混合した数秒後に、IMOVAX(登録商標)POLIO溶液が、反応物に添加された(120μL)。最終混合物は、室温で8時間、撹拌しながら放置された。生成物(不活化灰白髄炎(polyomyelite)(Al-フマレート添加))は、遠心分離(10000g、3分)によって回収された。
【0456】
同じ手順がまた、IMOVAX(登録商標)POLIO溶液の代わりに120μLのH2Oを添加して、対照実験(Al-フマレート)として実施された。
【0457】
最終生成物は、100℃で一晩乾燥させられ、PXRD特性決定技術を用いて解析された(
図27)。
【0458】
上清が採取されて、溶液中に残存するタンパク質(吸着されていない)の量が、microBCAタンパク質測定アッセイ法によって定量された(
図28)。microBCAタンパク質測定アッセイ法の対照として、120μLのIMOVAX
(登録商標)POLIO溶液が使用された。
【0459】
得られたPXRDパターンは、不活化ポリオウイルスの存在下でのAl-フマレートの形成と合致している(
図27)。
【0460】
本発明に従うAl-フマレートは、microBCAアッセイ法による合成上清中の残存タンパク質の定量に基づくと、導入された不活化ポリオウイルス懸濁物の50%超を固定化する能力を示した(
図28)。
【0461】
この研究は、Al-フマレートが、不活化ウイルス、特にはIMOVAX(登録商標)POLIOワクチンに由来する不活化灰白髄炎ウイルス、を固定化する為に適していることを強調する。
【0462】
実施例22
Al-フマレート(グリカン(Al-フマレート添加))におけるグリカンの固定化
MSDからのPNEUMOVAX(登録商標)ワクチンが、肺炎球菌の莢膜ポリオシドの供給源として使用された。1回量(0.5mL)は、23種の肺炎球菌多糖血清型(1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19F、19A、20、22F、23F、33F)をそれぞれ25μg含む。
【0463】
使用前に、該ワクチン溶液は凍結乾燥された。サンプルは、液体窒素に数分間浸けられ、次に、24時間凍結乾燥された。得られた粉末は、50μLのMilliQ H2O中に溶解された。
【0464】
10mLのmilliQ H2O中Al2(SO4)3・xH2O(700mg)の貯蔵溶液及び10mLのmilliQ H2O中フマル酸(243mg)/NaOH(256mg)の貯蔵溶液が、調製された。653μLの、該2つの貯蔵溶液(アルミニウム前駆体及び配位子/塩基)が、混合された。混合した数秒後に、50μLのグリカン溶液(各25μg/50μL)が、反応物に添加された。最終混合物は、室温で8時間、撹拌しながら放置された。生成物(グリカン(Al-フマレート添加))は、遠心分離(10000g、3分)によって回収された。
【0465】
同じ手順がまた、グリカン溶液の代わりに50μLのH2Oを添加して、対照実験(Al-フマレート)として実施された。
【0466】
最終生成物は、100℃で一晩乾燥させられ、PXRD(
図29)及び
13C NMR分光法(
図30)を用いて解析された。PXRDは、Cu Kα1放射線(λ=1.540598Å)を選択するGe(111)モノクロメータ及びLynxEye検出器が装備された、デバイ・シェラー(Debye-Scherrer)配置を有するBruker D8 Advance回折計において、測定された。粉末は、ガラスキャピラリーに充填された。
13C NMR(フランス語でRMN)スペクトルは、
13Cのラーモア周波数126MHzに対応する、11.7Tの静磁場で動作するAdvance Bruker 500 MHz NMR分光計において記録された。
13C{1H}CPMASスペクトルは、5×0.5ミリ秒(ms)接触時間、20kHzで取得された。
【0467】
PXRDパターンは、Al-フマレートがグリカンの存在下で形成されることを示した(
図29)。
【0468】
13C NMRスペクトル(
図30)は、グリカン(Al-フマレート添加)サンプル中に糖単位のCsp
3特徴が存在することを示した(δ約71ppm)。これらの炭素はAl-フマレートサンプル中には存在しなかった。これらの結果は、MOF粉末中にグリカンが存在することを裏付け、該グリカンの固定化を示す。
【0469】
この研究は、Al-フマレートが、グリカン、特にはPNEUMOVAX(登録商標)ワクチンに由来するグリカン、を固定化する為に適していることを強調する。
【0470】
実施例23
Al-フマレートにおける核酸(CpG1018)の固定化(CpG1018(Al-フマレート添加))
CpG1018(ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、22塩基長、配列:(粉末形態で、更に精製することなく直接的に使用された)TGACTGTGAACGTTCGAGATGA、修飾:全塩基)は、Proteogenixから入手された。
【0471】
1051.83μgのCpG1018が、35μLのMilliQ H2Oに溶解された。
【0472】
10mLのmilliQ H2O中Al2(SO4)3・xH2O(700mg)の貯蔵溶液及び10mLのmilliQ H2O中フマル酸(243mg)/NaOH(256mg)の貯蔵溶液が、調製された。136μLの、該2つの貯蔵溶液(アルミニウム前駆体及び配位子/塩基)が、混合された。混合した数秒後に、CpG溶液が、反応物に添加された(10μL、30μg/μL)。最終混合物は、室温で8時間、撹拌しながら放置された。生成物は、遠心分離(10000g、5分)によって回収された。
【0473】
対照実験として、同じ手順がまた、CpG溶液の代わりに10μLのH2Oを添加して実施された。
【0474】
最終生成物は、50℃で8時間乾燥させられ、PXRD技術を用いて解析され、そして、上清が採取されて、溶液中に残存するCpG 1018(固定化されていない)の量が定量された。
【0475】
CpG 1018はリン(P)元素を含むがAl-フマレートはP元素を全く含有しないので、CpGの固定化は、ICP-OESによって調査された。
【0476】
ICP-OESの為の無機化手順:全てのサンプルは、処理前に50℃で8時間、加熱された。300μLのHCl(37%)が、乾燥させられた全ての生成物に添加され、次に、これは、密閉容器中で、80℃で16時間加熱された。サンプルの完全な無機化後、該サンプルは、ICP-OES解析の為にmilliQ H2Oで5mLに希釈された。該サンプルは、注入する前にろ過されなかった。
【0477】
図31から分かるように、PXRDパターンは、Al-フマレートがCpG 1018の存在下で形成されることを示した。
【0478】
下記の表13は、ICP-OESによって検出された、Al-フマレートサンプル及びCpG1018(Al-フマレート添加)サンプル、並びにそれらのそれぞれの上清のP含有量を示す。
【0479】
【0480】
Al-フマレートサンプル及びその上清中で検出されるPの量がごくわずかであったことから、Al-フマレート中にP元素が存在しないことが裏付けられた。
【0481】
CpG1018(Al-フマレート添加)の上清中のP元素がごくわずかであることが判明し、CpG 1018が存在しないことが示唆されたのに対し、CpG1018(Al-フマレート添加)サンプルにおいてP元素が検出されたことから、Al-フマレートによるCpG 1018の固定化が示された。
【0482】
この研究は、Al-フマレートが、核酸、特にはCpG 1018、を固定化する為に適していることを強調する。
【0483】
実施例24
Al-フマレート(CpG1018(Al-フマレート添加))における核酸(CpG1018)及び破傷風トキソイドの両方の固定化
CpG1018(ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、22塩基長、配列:TGACTGTGAACGTTCGAGATGA、修飾:全塩基)は、粉末形態でProteogenixから入手され、更に精製することなく直接的に使用された。
【0484】
1051.83μgのCpG 1018が、35μLのMilliQ H2Oに溶解された。
【0485】
Creative Biolabsから購入された2.8mg/mLの破傷風トキソイド(TT)溶液が、直接的に使用された。
【0486】
10mLのmilliQ H2O中Al2(SO4)3・xH2O(700mg)の貯蔵溶液及び10mLのmilliQ H2O中フマル酸(243mg)/NaOH(256mg)の貯蔵溶液が、調製された。136μLの、該2つの貯蔵溶液(アルミニウム前駆体及び配位子/塩基)が、混合された。混合した数秒後に、10μLのCpG 1018溶液(30μg/μL)及び10μLのTT溶液(2.8mg/mL)が、反応物に添加された。最終混合物は、室温で8時間、撹拌しながら放置された。生成物(CpG1018+TT(Al-フマレート添加))は、遠心分離(10000g、5分)によって回収された。
【0487】
対照実験として、同じ手順がまた、CpG溶液及びTT溶液(Al-フマレート)の代わりに20μLのH2Oを添加して、並びに10μLのTT溶液(TT(Al-フマレート添加))のみを添加して、実施された。
【0488】
最終生成物は、50℃で8時間乾燥させられ、PXRDを用いて解析され、そして、上清が採取されて、溶液中に残存するCpG 1018及びTT(固定化されていない)の量が定量された。
【0489】
固定化されたTTの量は、上清中の残存TT(吸着されていない)の量をmicroBCAタンパク質測定アッセイ法によって定量することにより、調査された。
【0490】
CpGはP元素を含むので、CpGの固定化は、ICP-OESによって調査された。
【0491】
ICP-OESの為の無機化手順:全てのサンプルは、処理前に50℃で8時間、加熱された。300μLのHCl(37%)が、乾燥させられた全ての生成物に添加され、次に、これは、密閉容器中で、80℃で16時間加熱された。サンプルの完全な無機化後、該サンプルは、ICP-OES解析の為にmilliQ H2Oで5mLに希釈された。該サンプルは、注入する前にろ過されなかった。
【0492】
図32から分かるように、PXRDパターンは、Al-フマレートがCpG 1018及びTTの同時存在下で形成されることを示した。
【0493】
上清中の残存TT(吸着されていない)の量をmicroBCAタンパク質測定アッセイ法によって定量することにより、CpG1018+TT(Al-フマレート添加)において固定化されたTTの量が、導入されたTTの78%超であることが判明した。
【0494】
下記の表14は、Al-フマレートサンプル、TT(Al-フマレート添加)サンプル、及びCpG1018+TT(Al-フマレート添加)サンプル、並びにそれらのそれぞれの上清のP含有量を示す。
【0495】
P元素は、CpG1018+TT(Al-フマレート添加)サンプル及びTT(Al-フマレート添加)サンプルにおいてのみ検出された。TT(Al-フマレート添加)サンプル中で検出されたP元素の量は、CpG1018+TT(Al-フマレート添加)サンプル中で検出されたP元素の量と比較してごくわずかであった。このことは、CpG1018+TT(Al-フマレート添加)サンプル中で検出されたP元素がCpG1018の存在に主に起因することを示した。
【0496】
これらの結果は、CpG 1018がTTの存在下でAl-フマレートによって固定化されたことを示す。
【0497】
【0498】
この研究は、Al-フマレートが、核酸及びタンパク質、特にはCpG1018及び破傷風トキソイド、を合わせて固定化する為に適していることを強調する。
【0499】
実施例25
Al-ムコネート内での生体分子固定化
BSA(Al-ムコネート添加)の合成の為に、700mgのAl2(SO4)3・xH2O(xは約18)が10mLのmilliQ H2Oに溶解された。10mLのmilliQ H2O中に297mgのムコン酸(trans,trans-1,3-ブタジエン-1,4-ジカルボン酸)及び256mgのNaOHを含む別の溶液が調製され、該金属塩溶液に添加された。200μLのBSA(0.15mg/μL)が該混合物に直ちに添加され、そして、該混合物は、大気圧下で、室温で20時間、撹拌しながら放置された。
【0500】
対照実験が、BSA溶液の代わりに200μLのmilliQ H2Oを添加して実施された。
【0501】
生成物は、遠心分離(20分、21200g)によって回収され、水で3回洗浄され、100℃で一晩乾燥させられ、そして、
図33に示されているように、典型的な特性決定技術(PXRD)を用いて解析された。
【0502】
上清が採取され、microBCAタンパク質測定アッセイ法によって、溶液中の残存生体分子(アジュバントによって吸着されていない)の量を定量する為に使用された。該溶液は、孔径0.2μmのPTFE膜を備えたシリンジフィルターを用いて、解析前にろ過された。
【0503】
図33に示されているように、PXRDパターンは、BSAを含む結晶構造物及びBSAを含まない結晶構造物の形成を示した。
【0504】
上清中に検出された残存BSAの量は、導入されたBSAの45%未満であり、このことは、固定化効率が55%超であることを示した。
【0505】
この研究は、Al-ムコネートが抗原、特にはBSA、の固定化に適していることを示す。
【0506】
実施例26
Al-フランジカルボキシレートMOFの合成
Al-フランジカルボキシレートMOFの合成の為に、2mLのH2Oが、324mgのAl(OH)(CH3COO)2及び312mgの2,5-フランジカルボン酸に添加された。この混合物は、室温で72時間、撹拌しながら放置された。
【0507】
生成物は、遠心分離(20分、21200g)によって回収され、水で3回洗浄され、100℃で一晩乾燥させられ、そして、
図34に示されているように、典型的な特性決定技術(PXRD)を用いて解析された。
【0508】
MIL-160(Al)_H2Oの計算されたPXRDパターンは、CCDCから入手された;寄託番号:1828694、データベース識別子:PIBZOS。
【0509】
これらの特性決定の結果は、水和MIL-160の形成と合致していた。
【0510】
実施例27
Al-トリメセートMOF内での生体分子固定化
BSA(Al-トリメセート添加)の合成の為に、700mgのAl2(SO4)3・xH2O(xは約18)が、30mL容バイアル中の20mLのH2Oに溶解された。次に、440mgのトリメシン酸(1,3,5-ベンゼントリカルボン酸)及び256mgのNaOHが該溶液に添加された。数分後、200μLのBSA(0.15mg/μL)が添加され、そして、この混合物は、大気圧下で、室温で24時間、撹拌しながら放置された。
【0511】
対照実験が、BSAを添加せずに実施された。
【0512】
生成物は、遠心分離(20分、21200g)によって回収され、水で3回洗浄され、100℃で一晩乾燥させられ、そして、
図35に示されているように、典型的な特性決定技術(PXRD)を用いて解析された。
【0513】
上清が採取され、microBCAタンパク質測定アッセイ法によって、溶液中の残存生体分子(アジュバントによって吸着されていない)の量を定量する為に使用された。該溶液は、孔径0.2μmのPTFE膜を備えたシリンジフィルターを用いて、解析前にろ過された。
【0514】
MIL-110及びMIL-96の計算されたPXRDパターンは、CCDCから入手された;寄託番号:1538658及び1558833、データベース識別子:それぞれGAWBUE及びWEVYEE。
【0515】
図35に示されているように、PXRDパターンは、微量のMIL-96構造物を含むMIL-110構造物の形成を示した。該構造物は、BSAを含むもの及び含まないものが、得られた。
【0516】
上清中に検出された残存BSAの量は、導入されたBSAの5%未満であり、このことは、固定化効率が95%超であることを示した。
【0517】
この研究は、Al-トリメセートが抗原、特にはBSA、の固定化に適していることを示す。
【0518】
実施例28
Al-ピロメリテートMOF内での生体分子固定化
BSA(Al-ピロメリテート添加)の合成の為に、700mgのAl2(SO4)3・xH2O(xは約18)が、10mLのmilliQ H2Oに溶解された。10mLのmilliQ H2O中に532mgのピロメリット酸(1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸)及び384mgのNaOHを含む別の溶液が調製され、該金属塩溶液に添加された。200μLのBSA(0.15mg/μL)が該混合物に直ちに添加され、そして、該混合物は、大気圧下で、室温で24時間、撹拌しながら放置された。
【0519】
生成物は、遠心分離(20分、21200g)によって回収され、水で3回洗浄され、100℃で一晩乾燥させられ、そして、
図36に示されているように、典型的な特性決定技術(PXRD、FT-IR、TGA)を用いて解析された。
【0520】
上清が採取され、microBCAタンパク質測定アッセイ法によって、溶液中の残存生体分子(アジュバントによって吸着されていない)の量が定量された。
【0521】
図36に示されているように、PXRDパターンは、BSAを含む半結晶構造物の形成を示した。
【0522】
上清中に検出された残存BSAの量は、導入されたBSAの10%未満であり、このことは、固定化効率が90%超であることを示した。
【0523】
この研究は、Al-ピロメリテートが抗原、特にはBSA、の固定化に適していることを示す。
【0524】
結果
Ig Ab応答及びIgG Ab応答は、Al-フマレートアジュバント及びアルハイドロゲル(登録商標)アジュバントの両方を用いて、得られた。これらの応答は、使用されたTT濃度及びアジュバント濃度に比例した。
【0525】
試験された全濃度で、Al-フマレートは、アルハイドロゲル(登録商標)よりも統計学的に有意に強いAb応答を誘発した。
【0526】
結論として、抗原が本発明に従うAl-フマレートにおいて完全に固定化されることが示された。
【0527】
更に、抗原は、Al-フマレートの合成及び構造に影響を及ぼさない。
【0528】
更に、本発明に従うAl-フマレートは、比較用のアルハイドロゲル(登録商標)よりも優れた固定化能力を有する。本発明に従うAl-フマレートを用いる固定化はまた、比較用のアルハイドロゲル(登録商標)の場合よりも安定である。
【0529】
本発明に従うAl-フマレートは、注射媒体(HEPES、20mM pH7.4)中で少なくとも2ヶ月間安定である。
【0530】
本発明に従うAl-フマレートは、濃縮された条件下の血清/血漿中では、イン・ビトロで部分的に分解される。
【0531】
本発明に従うAl-フマレートは、注射部位から再吸収される。
【0532】
本発明に従うAl-フマレートは、安定なワクチン製剤の設計に適しており、該ワクチン製剤の(its)免疫原性を少なくとも9ヶ月間保持する。
【0533】
TT(Al-フマレート添加-表面)を含む製剤が安定であることが示されている。
【0534】
Al-MOFによる抗原の固定化、特にはAl-フマレート中のTT、は、該MOFを用いない場合よりも遅い、注射部位での抗原の放出をもたらす。
【0535】
TT(Al-フマレート添加)を用いた場合に、生物及び保存された組織において急性毒性がないこと、アルミニウムの貯蔵がないことが、強調されている。
【0536】
本発明とは対照的に、亜鉛ベースのMOFは、全ての抗原の固定化に適しているわけでない。
【0537】
本発明に従うAl-フマレートは、不活化細菌、特には不活化大腸菌、をそれらの形態学的外観を保持しつつ固定化する為に適している。
【0538】
本発明に従うAl-フマレートは、不活化細菌をそれらの免疫原性能力を保持しつつ固定化することに適しており、且つアジュバントとして作用して、裸の不活化細菌及び更には参照アルハイドロゲル(登録商標)アジュバントと比較して、増強された免疫応答をもたらす。
【0539】
本発明に従うAl-フマレートは、不活化ウイルス、特にはIMOVAX(登録商標)POLIOワクチン由来の不活化灰白髄炎ウイルスの;グリカン、特にはPNEUMOVAX(登録商標)ワクチン由来のグリカンの;核酸、特にはCpG1018の;並びに核酸とタンパク質とを合わせたもの、特にはCpG1018及び破傷風毒素の;固定化に適している。
【0540】
本発明に従うAl-ムコネート、Al-トリメセート、及びAl-ピロメリテートは、抗原、特にはBSA、の固定化に適している。
【国際調査報告】