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▶ エステーツェー シュピンツヴィルン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】糸製造設備
(51)【国際特許分類】
   D02J 1/22 20060101AFI20240308BHJP
   D01D 5/16 20060101ALI20240308BHJP
   D01D 7/00 20060101ALI20240308BHJP
   D01D 11/00 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
D02J1/22 302
D01D5/16
D01D7/00
D01D11/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561017
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 IB2022052099
(87)【国際公開番号】W WO2022208199
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】102021107995.0
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523374518
【氏名又は名称】エステーツェー シュピンツヴィルン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】STC Spinnzwirn GmbH
【住所又は居所原語表記】Zwickauer Strasse 247, 09116 Chemnitz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ペーター シュタインケ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シュレーター
(72)【発明者】
【氏名】マルセル エーアラー
【テーマコード(参考)】
4L036
4L045
【Fターム(参考)】
4L036AA01
4L036MA33
4L036PA01
4L036PA03
4L036PA12
4L036RA03
4L036RA13
4L036UA21
4L045AA05
4L045BA03
4L045DA11
4L045DA19
4L045DA41
4L045DB01
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの作業ユニットを備えた糸製造設備であって、作業ユニットが、処理経路上でそれぞれ相前後して、ノズル列の長手方向に配置された複数の溶融ノズルを備えた溶融紡糸装置と、糸走入セクションと、この糸走入セクションの端部に位置する走入ゴデット対と、糸製造設備の延伸フレームに配置された少なくとも2つの高温ゴデット対を備えた糸延伸装置と、少なくとも1つの巻取パッケージとを有しており、糸延伸装置の、処理経路上で第1の高温ゴデット対の自由なゴデット端部が、走入ゴデット対の自由なゴデット端部と同一の第1の空間半部内に突出している糸製造設備に関する。走入ゴデット対の、処理経路で最初のゴデットの回転軸線が、ノズル列の長手方向に対して0°~45°の角度で方向付けされている。本発明によれば、この糸製造設備において、処理経路上で延伸領域フレームの下流側に配置された緩和フレームに、加熱された緩和ゴデット対が配置されており、延伸領域フレームと緩和フレームとの間に通路が形成されており、緩和ゴデット対の自由端が、第1の空間半部とは反対側に位置する第2の空間半部内に突出する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの作業ユニット(2)を備えた糸製造設備(1)であって、
前記作業ユニット(2)は、
処理経路上でそれぞれ相前後して、ノズル列(31)の長手方向(L)に配置された複数の溶融ノズル(32)を備えた溶融紡糸装置(3)と、
糸走入セクション(4)と、
前記糸走入セクション(4)の端部に位置する走入ゴデット対(5)と、
前記糸製造設備(1)の延伸領域フレーム(60)に配置された少なくとも2つの高温ゴデット対(61,62)を備えた糸延伸装置(6)と、
少なくとも1つの巻取パッケージ(7)と
を有しており、
前記糸延伸装置(6)の、前記処理経路上で第1の高温ゴデット対(61)の自由なゴデット端部(611)は、前記走入ゴデット対(5)の自由なゴデット端部(511)と同一の第1の空間半部(R1)内に突出しており、前記走入ゴデット対(5)の、前記処理経路上で最初のゴデット(51)の回転軸線は、前記ノズル列(31)の前記長手方向(L)に対して0°~45°の角度で方向付けされている、糸製造設備(1)において、
前記処理経路上で前記延伸領域フレーム(60)の下流側に配置された緩和フレーム(80)に、加熱された緩和ゴデット対(8)が配置されており、前記延伸領域フレーム(60)と前記緩和フレーム(80)との間に通路(9)が形成されており、前記緩和ゴデット対(8)の自由端(81)は、前記第1の空間半部(R1)とは反対側に位置する第2の空間半部(R2)内に突出することを特徴とする、糸製造設備(1)。
【請求項2】
前記高温ゴデット対(61,62)のうちの、前記処理経路上で直接に相前後して配置された少なくとも2つの高温ゴデット対(61,62)は、それらのそれぞれ自由なゴデット端部(611)が互いに逆向きの空間半部(R1,R2)内に突出するように、配置されていることを特徴とする、請求項1記載の糸製造設備。
【請求項3】
前記延伸領域フレーム(60)に配置された前記高温ゴデット対(61,62,63)の全ては、前記高温ゴデット対(61,62,63)のうちの、前記処理経路上で直接に相前後して配置された高温ゴデット対(61,62,63)のそれぞれ自由なゴデット端部(611,631)が互いに逆向きの空間半部(R1,R2)内に突出するように、それぞれ配置されていることを特徴とする、請求項2記載の糸製造設備。
【請求項4】
前記延伸領域フレーム(60)の最も上側の高温ゴデット対(64)の自由なゴデット端部(641)だけは、該最も上側の高温ゴデット対(64)の下に配置された高温ゴデット対(63)の自由なゴデット端部(631)と同一の空間半部(R1)内に突出し、前記最も上側の高温ゴデット対(64)は、そのゴデットのうち一方のゴデットのゴデット周壁長さの少なくとも半分だけ、該最も上側の高温ゴデット対(64)の下に配置された前記高温ゴデット対(63)の前記自由なゴデット端部(631)を越えて、その都度同一の前記空間半部(R1)内に突出することを特徴とする、請求項2記載の糸製造設備。
【請求項5】
前記走入ゴデット対(5)は、下側かつ少なくとも部分的に前記糸走入セクション(4)の前に配置された駆動モジュール(10)に取り付けられていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の糸製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの作業ユニットを備えた糸製造設備であって、該作業ユニットが、処理経路上でそれぞれ相前後して、ノズル列の長手方向に配置された複数の溶融ノズルを備えた溶融紡糸装置と、糸走入セクションと、この糸走入セクションの端部に位置する走入ゴデット対と、糸製造設備の延伸領域フレームに配置された少なくとも2つの高温ゴデット対を備えた糸延伸装置と、少なくとも1つの巻取パッケージとを有しており、糸延伸装置の、処理経路上で第1の高温ゴデット対の自由なゴデット端部が、走入ゴデット対の自由なゴデット端部と同一の第1の空間半部内に突出しており、走入ゴデット対の、処理経路で第1のゴデットの回転軸線が、ノズル列の長手方向に対して0°~45°の角度で配置されている、糸製造設備に関する。
【0002】
溶融紡糸プロセスに基づいて合成糸を製造する糸製造設備は、押出機および紡糸ヘッドを備えた溶融紡糸装置を有しており、紡糸ヘッド自体は、ノズル列に配置されている複数の溶融ノズルを有している。溶融ノズルからは、それぞれ高温のプラスチックフィラメントが押し出される。
【0003】
溶融ノズルにより形成されたフィラメントは、その落下時に典型的には落下縦孔ならびにフィラメント処理部を通過し、このフィラメント処理部においてフィラメントは、例えば油剤付与により纏められて糸を形成する。次いで、個別の糸は糸走入セクションに走入し、この糸走入セクションにおいて個別の糸は、纏められて帯状の糸群を形成し、この糸群の幅方向は、当初はノズル列の長手方向に一致する。糸走入セクションは、典型的には、以下では走入セクション壁と呼ばれる垂直な機械壁により形成され、この機械壁の前で、糸は、糸走入セクションの下端部に位置する走入ゴデット対上に乗り上げるまで沿うように走行する。
【0004】
走入ゴデット対によって、糸には予荷重が加えられる。付加的に、走入ゴデット対によって、後で糸製造設備において行われる糸延伸および糸巻取からの溶融紡糸プロセスの切離しが行われる。
【0005】
処理経路上で走入ゴデット対に続く糸延伸装置は、典型的には、加熱された複数のゴデット対を有している。糸製造設備の保持壁からそれぞれ突出しているゴデットは、大抵の場合、電動モータにより駆動される。これらのゴデット対を用いて、糸が引き出されて延伸される。従来技術に基づいて公知の糸延伸装置は、糸を緩和するために、それほど強く加熱されていない最も上側のゴデット対を有していることが多い。
【0006】
糸が糸延伸装置を通過した後に、糸は、少なくとも1つの巻取パッケージ上に巻き取られる。
【0007】
糸は、糸製造設備の大部分を、平坦な帯状の糸群として通過する。この糸群は、糸製造設備のゴデットを介してガイドされる。ゴデットを離れてようやく、糸はそれぞれ個別にそれぞれの巻取パッケージ上に巻き取られる。
【0008】
したがって円筒形のゴデット周壁の他に、糸製造設備において帯状の糸群をガイドし、変向し、かつ支持するためには、ころ、ローラおよびロッドのような円筒形の別の物体が必要である。
【0009】
例えば独国特許出願公開第19909073号明細書から公知であるように、糸群は、延伸のために、ゴデット対のゴデット周壁の周面に沿ってガイドされ、ゴデット対は、糸群によって複数回巻き掛けられる。ゴデット対の周囲を糸群がこのように複数回循環するときに、糸は加熱されたゴデットにより加熱される。次いで糸群は、より高い循環速度を有する次のゴデット対に達する。より高い循環速度によって、延伸のために必要となる糸張力が形成される。したがって、処理経路上に相前後して配置されたこのような2つのゴデット対の間の領域は、糸群の糸が延伸される延伸ゾーンを形成する。
【0010】
どのような糸特性が目指されるかに応じて、往々にして処理経路上で相前後して配置された加熱されたゴデット対の間に複数の延伸ゾーンが設けられており、これらの延伸ゾーンにおいて糸が段階的に延伸される。したがって、糸製造時に、糸を延伸するために、3つ以上の高温ゴデット対を使用することも完全に可能である。
【0011】
通常、互いに異なって加熱された高温ゴデット対が、断熱性のハウジング内に位置しており、このハウジングは、糸群がゴデット周壁に走入することができる少なくとも1つのスリットと、糸群が再び走出することができる別のスリットとを有している。
【0012】
溶融紡糸プロセスに従って作業する糸製造設備は、複数の作業ユニットを有していることが多く、これらの作業ユニットはそれぞれ、溶融紡糸装置、溶融紡糸装置下流側に配置された糸走入セクション、糸走入セクションの下流側に配置された糸延伸装置および糸延伸装置の下流側に配置された巻取装置を有している。
【0013】
冒頭で述べた形式の、糸を製造するための装置は、例えば独国特許出願公開第102010015215号明細書に基づいて公知である。この装置では、紡績ユニット毎に、駆動される複数のゴデットを備えた引出し装置と、複数の巻取ユニットを備えた巻取装置とが設けられており、引出し装置と巻取装置とは、一緒に1つの作業ユニットを形成する。隣り合う作業ユニットは、互いに独立して駆動可能であり、それぞれ1つの固有の給電部を有している。さらに、引出し装置と巻取装置とは、互いに独立して交換可能であるように構成されている。これにより、個別の作業ユニットの引出し装置および巻取装置の迅速かつ確実な運転開始が保証されることが望ましい。
【0014】
糸破断の場合、該当する作業ユニットにおける糸製造を中断しなければならない。次いでオペレータのタスクは、糸を新たに処理方向で、全糸製造設備全体の個別の構成要素を通して、もしくは介してガイドすることであり、その後に糸製造を再び開始することができる。
【0015】
それぞれの始動運転時あるいは故障除去後、ゴデット周壁のメンテナンスおよびクリーニング後または組替え後の再始動運転時にも、オペレータが糸を、糸製造設備全体を通してガイドすることが必要であり、その後に糸製造を再び開始することができる。
【0016】
したがって、例えばメンテナンス作業および/またはクリーニング作業を容易にするために、またはしかしながら糸製造設備のフレキシビリティを高めるために、糸製造設備の作業ユニットの個別の構成要素へのアクセス性および交換可能性を改善するための努力がなされてきた。
【0017】
独国特許出願公開第102014017620号明細書は、フレーム壁に保持されている複数のゴデットユニットを備えた、合成糸を引き出しかつ延伸するための装置を開示している。ゴデットの可能な限りコンパクトな配置時にゴデット周壁のクリーニングを容易にするために、フレーム壁に設けられた少なくとも1つのゴデット周壁は、このゴデット周壁が、隣接するゴデット周壁に対して突出するメンテナンス位置へと移行され得るように、軸方向で移動可能である。
【0018】
独国特許出願公開第102017011183号明細書に基づいて、ゴデット壁に配置された複数のゴデットを備えた、合成糸群を引き出し、延伸し、かつ巻き取るための装置が公知である。ゴデット壁は、機械フレームの鉛直方向の開口内に交換可能に保持されており、これにより、複数のゴデットのアセンブリ全体を一度に交換することができる。
【0019】
独国特許出願公開第102018001274号明細書は、糸群をガイドするための、溶融紡糸プロセスにおける引出し装置を開示している。引出し装置のゴデットは、挿入ユニットとして形成されていて、挿入接続部内で保持壁に保持され得る。
【0020】
独国特許出願公開第102004039510号明細書に基づいて、複数の合成糸を溶融紡糸により形成し、引き出し、処理し、かつ巻き取るための装置が公知である。この装置の1つの例は、紡糸ビームに相並んで配置された8つの紡糸ノズルを備えた紡糸ノズル装置を有している。紡糸ノズルには、冷却縦孔を備えた冷却装置が対応配置されている。この冷却装置の下側には、油剤供給ユニットが位置しており、この油剤供給装置の油剤供給糸ガイドにおいて、紡糸ノズルから押し出されたフィラメント群が、一緒にガイドされてそれぞれ1本の糸を形成する。油剤供給装置の下側には、それぞれ1つのゴデットと、自由に回転可能な空転ローラとを備えた2つの引出し機構が配置されている。油剤供給装置には、処理方向で、2つの延伸ゴデットデュオを備えた延伸領域が接続する。延伸後に、糸は巻取ユニットによりそれぞれ巻き取られてパッケージを形成する。
【0021】
特許出願公開第10120551号明細書には、合成糸を溶融紡糸により形成し、巻き取るための装置が記載されている。装置は、機械フレームを有していて、この機械フレームには、紡糸装置が配置されている。紡糸装置は、紡糸ヘッドと、この紡糸ヘッドの下に配置された紡糸ノズルとを有している。紡糸ノズルによって形成されたフィラメント束は、冷却装置を通過し、次いで油剤供給ユニットによって纏められて1本の糸を形成する。紡糸装置の下側には搬送機構が配置されており、この搬送機構は、駆動されるゴデットと、駆動されない空転ローラとを備えたゴデットユニットとして形成されている。1つの実施例において、搬送機構には、モジュール収容装置に配置された複数の処理モジュールが続いている。処理モジュールは、それぞれ1つのゴデットデュオを含んでいる。処理モジュールに続いて、糸は別の搬送機構へと乗り上げ、この別の搬送機構は、第1の搬送機構とは対角線方向に配置されている。別の搬送機構は、加熱されたゴデットおよび加熱されていないゴデットから成っており、これらのゴデットは両方とも駆動されている。この別の搬送機構は、巻取装置による糸の巻取前に糸を収縮処理するための緩和を可能にする。
【0022】
独国特許出願公開第102015016800号明細書も、合成糸を溶融紡糸により形成し、引き出し、延伸し、緩和し、かつ巻き取るための装置を開示している。この装置は、4つの紡糸ノズルを備えた紡糸装置を含んでいる。これらの紡糸ノズルは、紡糸ビームに配置されている。それぞれの紡糸ノズルから押し出されたフィラメント群は、冷却縦孔を通過し、次いで集合糸ガイドにおいて束ねられて1本の糸を形成する。糸は、次いでコーム糸ガイドにより所定の間隔にされる。この間隔で、糸は引き続き、引出しユニットの第1の引出しゴデットデュオ上に乗り上げる。第1の引出しゴデットデュオは、2つの引出しゴデットを有している。この引出し装置は、同様に2つの引出しゴデットを備えた第2の引出しゴデットデュオを有している。最後の引出しゴデットから、糸は第1の延伸ゴデットへと乗り上げ、この第1の延伸ゴデットには、互いに上下に配置された別の延伸ゴデットが続いている。延伸ゴデットは、加熱されていて、加熱ボックス内に配置されている。延伸ゴデットは、単に1回だけ糸により巻き掛けられている。最後の延伸ゴデットには、処理方向で、同様に加熱された2つの緩和ゴデットを備えた、加熱された緩和ゴデットデュオが続く。装置は、巻取装置をさらに有している。巻取装置は、糸をそれぞれ巻き取ってパッケージを形成する。引出し装置の第1の引出しゴデットデュオの回転軸線は、4つの紡糸ノズルを有するノズル列の長手方向に方向付けられている。
【0023】
多くの場合、特に設備のクリーニングまたはメンテナンスを実施するために、糸製造設備の個別の構成要素へのアクセス性を改善することは、設備全体のコンパクトな構造を犠牲にしてしか成功しない。現在の糸製造設備において、糸製造設備の個別の構成要素へのアクセス可能な配置を実現することができるように、典型的には、糸延伸ユニットは側方で糸走入セクションの隣に配置されていて、これにより糸が下方に向かって走入ゴデット対の方向へと走行する走入セクションの正面が、糸延伸装置のゴデットの自由なゴデット端部と同じ空間方向半部に面しているようになっている。したがって、糸群が、糸走入セクションから、その隣に位置する糸延伸装置のゴデット上に乗り上げることができるようにするために、現在の糸製造装置では、糸走入セクションの端部における糸群の幅方向を90°回転させることが必要である。これは、例えば、糸走入セクションから垂直に突出する走入ゴデット対によって行われる。糸走入セクションと糸延伸装置とのこのような隣り合った配置は、結果として極めて広幅の設備を形成し、この設備では、糸をガイドする全ての構成要素に、オペレータは単に一方の側から到達可能である。高さおよび幅が大きく寸法設定されていることにより、この設備における操作および作業は困難にされる。
【0024】
したがって本発明の課題は、冒頭に述べた形式のコンパクトな糸製造設備を改良して、糸交換のための、かつ糸製造設備のクリーニングおよびメンテナンスのためのアクセス性を改善することにある。
【0025】
この課題は、本発明によれば、本発明は、少なくとも1つの作業ユニットを備えた糸製造設備であって、作業ユニットが、処理経路上でそれぞれ相前後して、ノズル列の長手方向に配置された複数の溶融ノズルを備えた溶融紡糸装置と、糸走入セクションと、この糸走入セクションの端部に位置する走入ゴデット対と、糸製造設備の延伸フレームに配置された少なくとも2つの高温ゴデット対を備えた糸延伸装置と、少なくとも1つの巻取パッケージとを有しており、糸延伸装置の、処理経路上で第1の高温ゴデット対の自由なゴデット端部が、走入ゴデット対の自由なゴデット端部と同一の第1の空間半部内に突出しており、走入ゴデット対の、処理経路で最初のゴデットの回転軸線が、ノズル列の長手方向に対して0°~45°の角度で方向付けされている糸製造設備において、処理経路上で延伸領域フレームの下流側に配置された緩和フレームに、加熱された緩和ゴデット対が配置されており、延伸領域フレームと緩和フレームとの間に通路が形成されており、緩和ゴデット対の自由端が、第1の空間半部とは反対側に位置する第2の空間半部内に突出する、糸製造設備により解決される。
【0026】
走入ゴデット対の有利な配置および方向付けにより、作業ユニット全体のコンパクトな構造形式を維持しながら、糸交換のためのアクセス性が改善される。
【0027】
本発明では、糸群が、その幅方向において45°よりも大きく捩じられることなく、走入ゴデット対上へと乗り上げる。特に好適には、溶融ノズルにより形成された糸群は、走入ゴデット対の第1のゴデットへの乗上げ時に全く捩じられない。したがって、糸走入セクションに面したオペレータは、下方に向かって走行する溶融紡糸された糸も、走入ゴデット対のゴデットの周囲における糸の巻付きも監視することができ、オペレータが向きを変える必要なしに、またはその位置から離れる必要なしに、走入ゴデット対を介して糸をガイドすることができる。さらに、オペレータは、糸群が規定通り、例えば振動なしに走入ゴデット対上に乗り上げているか否かを良好に点検することができる。
【0028】
ノズル列の長手方向に配置された溶融ノズルにより形成された糸群は、オペレータにより、例えばサクションガンにより収容され、まず糸走入セクションの端部に位置している走入ゴデット対のゴデットの周囲にガイドされ得る。走入ゴデット対の、処理経路上で最初のゴデットの回転軸線は、溶融ノズルが相並んで配置されているノズル列の長手方向に対して実質的に平行に、つまり0°~45°の角度で方向付けされている。これにより、溶融ノズルにおいて押し出された糸群は、走入ゴデット対上への最初の巻付き時に最大で45°しか回転させられない。好適には、走入ゴデット対の最初のゴデットの回転軸線がノズル列の長手方向に対して30°未満の角度で、もしくはノズル列の長手方向に対して平行に方向付けされていることによって、糸群は30°未満だけ回転させられるか、特に好適には全く回転させられない。
【0029】
処理経路上で走入ゴデット対に続いて、糸群は、作業ユニットの延伸領域フレームに配置された少なくとも2つの高温ゴデット対の周囲に巻き掛けられる。この場合、糸延伸装置の、処理経路上で第1の高温ゴデット対の自由なゴデット端部は、走入ゴデット対の自由なゴデット端部と同じ空間半部内に突出する。したがって糸群は、糸製造設備の糸延伸装置内に走入し、この場合に、糸群が、溶融ノズルからの押出し以降、その幅方向において、合計で最大45°よりも大きく回転させられることはない。好適には、糸群は、糸延伸装置への走入時に、30°未満だけ回転させられるか、特に好適には全く回転させられない。
【0030】
糸ガイドおよび/または糸交換を容易にするために、溶融ノズルにおいて押し出された糸群が、コンパクトでかつ良好にアクセス可能な糸製造設備における処理時に、その幅方向においてできるだけ僅かにしか回転させられないか、またはそれどころか全く回転させられないと有利である。
【0031】
このことは本発明では、処理経路上で延伸領域フレームの下流側に配置された緩和フレームに、加熱された緩和ゴデット対が配置されており、延伸領域フレームと緩和フレームとの間に通路が形成されており、緩和ゴデット対の自由端が、第1の空間半部とは反対側に位置する第2の空間半部内に突出していることにより達成される。
【0032】
糸延伸装置は、加熱された付加的な緩和ゴデット対を有している。この緩和ゴデット対は、延伸領域フレームに配置されているのではなく、処理経路上で延伸領域フレームの下流側に配置されている別個の緩和フレームに配置されている。
【0033】
緩和フレームと延伸領域フレームとの間には、通路がある。この通路に、オペレータが立って、向きを変え、かつこの通路に沿って歩くことができる。この通路から、操作オペレータは、延伸領域フレームにも緩和フレームにもアクセスを有しているので、この通路から、延伸領域フレームおよび緩和フレームのそれぞれのゴデット対における糸交換がオペレータによって特に有利に実行される。
【0034】
オペレータが糸群を糸走入セクションの端部において走入ゴデット対の周囲に巻き付けた後に、オペレータは、糸群を、列に従って延伸領域フレームの少なくとも2つの高温ゴデット対の周囲にガイドすることができる。これらの高温ゴデット対は、処理経路上で直接に走入ゴデット対に続いている。延伸領域フレームと緩和フレームとの間の通路は、オペレータが糸群を快適かつ確実に処理経路に沿ってガイドすることができるようにするために、十分な自由空間を残している。
【0035】
延伸領域フレームの最後の高温ゴデット対から、糸群は通路を越えて緩和ゴデット対へとガイドされ得る。
【0036】
緩和ゴデット対の自由端が、第1の空間半部とは反対側に位置する第2の空間半部内に突出していることにより、緩和ゴデット対の自由端はオペレータにとって通路から直接にアクセス可能であるので、緩和ゴデット対は通路から快適かつ確実に糸群により巻き掛けられ得る。
【0037】
緩和ゴデット対が別個の緩和フレーム上に取り付けられていることにより、全てのゴデット対が同一のフレームに設けられている場合よりも、緩和フレームおよび延伸領域フレームのためにそれぞれ低い構造高さが生じる。このことは、高温ゴデット対および緩和ゴデット対へのアクセス性および操作性を付加的に改善する。
【0038】
さらに、延伸領域フレームと緩和フレームとの間の通路から、高温ゴデット対もしくは緩和ゴデット対に対するメンテナンス作業、クリーニング作業および修理作業を危険なく、かつ快適に実施することができる。
【0039】
加熱された緩和ゴデット対の自由なゴデット端部が、第1の空間半部とは逆向きに方向付けられた第2の空間半部内に突出していることによって、延伸領域フレームおよび緩和フレームは、全体的にコンパクトな配置で作業ユニットに配置される。
【0040】
緩和ゴデット対の他に、例えば少なくとも1つの付加的なゴデット、ローラ、結節ノズル等のような糸を処理するための別の装置が緩和フレームに配置されていてよく、これにより緩和フレームにおいて、糸の別の処理を行うことができる。
【0041】
緩和フレームから糸群は、少なくとも1つの巻取パッケージへとさらに延びており、この巻取パッケージにおいて糸が巻き取られてパッケージを形成する。
【0042】
さらに、高温ゴデット対のうちの、処理経路上で直接に相前後して配置された少なくとも2つの高温ゴデット対は、それらのそれぞれ自由なゴデット端部が互いに逆向きの空間半部に突出するように、配置されていると有利であることが判った。
【0043】
高温ゴデット対のうちの、処理経路上で直接に相前後して配置された少なくとも2つの高温ゴデット対のそれぞれ自由なゴデット端部が、反対側に位置する空間半部内に、つまり互いに逆向きの空間方向領域内に突出することによって、これらの少なくとも2つの高温ゴデット対は、極めてコンパクトに、しかし極めて良好にアクセス可能に、共通の延伸領域フレームに取り付けられる。この延伸領域フレーム自体には、好適には、高温ゴデット対がそれぞれ取り付けられている両方の側からアクセス可能である。
【0044】
この特別な配置は、高温ゴデット対における糸交換のためにも、クリーニング作業およびメンテナンス作業のためにも特に有利である。
【0045】
従来、処理経路上で相前後して連続する高温ゴデット対を配置するために、取付け平面の間、すなわち、それぞれ1つの高温ゴデット対が保持壁に取り付けられている鉛直方向の平面の間にずれが生じる。このことは、高温ゴデット対上への糸走入領域が、ゴデット周壁の駆動端部の近傍に、つまり保持壁の近傍に位置していることに起因する。ゴデット対のガイド周壁の周囲における各糸の循環により、糸群は自由なゴデット端部の方向にさらに走行し、このゴデット端部は、保持壁から離れる方向に向けられている。次のゴデット対への糸群の引渡し時の真っ直ぐな糸ガイドのために、次のゴデット対の糸走入領域は、先行して循環されたゴデット対の糸走出領域のちょうど上に配置されていなければならない。このことは、従来、次のゴデット対の取付け平面が、先行して循環されたゴデット対の取付け平面に対して水平方向でずらされていることによってのみ可能である。ずれの大きさは、先行して循環されたゴデット対の巻掛け回数と、糸群の幅とにより規定される。したがって、複数の糸と、このような糸群によるゴデット対の複数回の巻掛け時には、保持壁から突出するゴデットのために比較的大きな構造長さが生じる。この構造長さは、相前後して糸群によって通過されるゴデット対の取付け平面間における対応して大きな水平方向のずれを必要とする。
【0046】
この問題は、本発明の特に有利な別の実施形態において、延伸領域フレームに配置された高温ゴデット対の全ては、高温ゴデット対のうちの、処理経路上で直接に相前後して配置された高温ゴデット対のそれぞれ自由なゴデット端部が互いに逆向きの空間半部内に突出するように、それぞれ配置されていることにより解決される。
【0047】
このことは、2つよりも多くの高温ゴデット対が延伸領域フレームに配置されることが望ましい場合に有利であることが判った。
【0048】
例えば3つの高温ゴデット対が延伸領域フレームに配置されている場合、処理経路上で第1の高温ゴデット対は、糸走入セクションの端部に設けられた走入ゴデット対と同一の第1の空間半部内に突出する。同様に延伸領域フレームに配置されている、処理経路上の第2の高温ゴデット対は、第1の空間半部とは反対側に位置する第2の空間半部内に突出する。したがって、糸群は、第1の高温ゴデット対の自由なゴデット端部から垂直に走出することができ、第2の高温ゴデット対の保持壁の近傍において、再び垂直に第2の高温ゴデット対の第1のゴデットのゴデット周壁上に乗り上げることができる。処理経路上で第3の高温ゴデット対は再び、延伸領域フレームに設けられた走入ゴデット対および第1の高温ゴデット対と同一の第1の空間半部内に突出する。
【0049】
この有利な配置では、別の高温ゴデット対が延伸領域フレームに、自由なゴデット端部のそれぞれ交互の方向付けを伴って、特にコンパクトかつ良好にアクセス可能に延伸領域フレームに取り付けられる。
【0050】
本発明の同様に有利な別の実施形態では、延伸領域フレームに設けられた高温ゴデット対の下側の複数のゴデット対は、上述のように、それらのそれぞれ自由なゴデット端部の互いに交互の方向付けを伴って方向付けされており、延伸領域フレームの最も上側の高温ゴデット対においてのみ、その自由なゴデット端部が、この最も上側の高温ゴデット対の下に配置された高温ゴデット対の自由なゴデット端部と同一の空間半部内に突出する。最も上側の高温ゴデット対は、そのゴデットのうち一方のゴデットのゴデット周壁長さの少なくとも半分だけ、その最も上側の高温ゴデット対の下に配置された高温ゴデット対の自由なゴデット端部を越えて、その都度同一の空間半部内に突出する。
【0051】
本発明のこの実施形態では、延伸領域フレームが、最も上側の高温ゴデット対分だけ拡張されていて、この高温ゴデット対の自由なゴデット端部は、その下に配置された高温ゴデット対と同一の空間半部内に突出する。このように配置された最も上側の任意の高温ゴデット対は、作業ユニットにおいて組替えを実施する必要なしに、糸製造設備の作業ユニットで種々異なる糸を製造することを可能にするように、糸製造設備のフレキシビリティを向上させる。
【0052】
最も上側の高温ゴデット対は、任意には、糸群の仕掛け時に巻き付けられることにより、糸製造において使用され得る。最も上側の高温ゴデット対が、特定の糸タイプの製造時に必要ではない場合、この高温ゴデット対は、糸群の仕掛け時に除外することができる。最も上側の高温ゴデット対の、その下に位置する高温ゴデット対に対する配置に基づいて、最も上側の高温ゴデット対が糸群の仕掛け時に自由なままである場合に、糸ガイドは損なわれない。
【0053】
結果として、本発明のこの実施形態でも、糸延伸ユニット内の高温ゴデット対の数を、糸群の仕掛けのみによって、任意に1つだけ増やすか、もしくは減じることができる。これに関して、糸製造設備の個別の構成要素の組替えは、本実施形態では不要である。
【0054】
走入ゴデット対が、下側に、かつ少なくとも部分的に糸走入セクションの前に配置された駆動モジュールに取り付けられていると特に有利であることが判った。
【0055】
走入ゴデット対のこの配置は、糸群が糸走入セクションにおいて下方に向かって、好適には鉛直方向に降下し、次いで捩じられることなしに、走入ゴデット対の、処理経路で第1のゴデットのゴデット周壁の周囲に仕掛けられ得ることを可能にする。したがって、糸群は、鉛直方向にかつ捩じられずに、走入ゴデット対の第1のゴデットによって糸走入セクションを通して引き出される。
【0056】
以下に、本発明の特に好適な実施形態、本発明の構成、機能および利点を図面につき詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】2つの作業ユニットを備えた本発明に係る糸製造装置の可能な実施形態を概略的に示す正面図である。
図2図1に示した本発明に係る糸製造設備の1つの作業ユニットを概略的に示す正面図である。
図3図1および図2に示した本発明に係る糸製造設備の1つの作業ユニットを概略的に示す側面図である。
図4図1図3に示した本発明に係る糸製造設備の1つの作業ユニットを概略的に示す平面図である。
【0058】
全ての図面において、本発明の図示された実施形態もしくは本発明の詳細は必ずしも縮尺通りに図示されているわけではない。
【0059】
図1は、相並んで配置された2つの作業ユニット2を備えた、本発明に係る糸製造装置1の1つの実施形態を示している。作業ユニット2のそれぞれは、溶融紡糸装置3、この溶融紡糸装置3に続く糸走入セクション4、糸走入セクション4の端部に位置する走入ゴデット対5、糸製造設備1の処理経路上で走入ゴデット対5の下流側に配置された糸延伸装置6および巻取パッケージ7を有している。
【0060】
2つよりも多くの作業ユニット2、または単独の作業ユニット2だけを備えた本発明に係る糸製造装置1の、図1には示していない実施形態も簡単に可能である。
【0061】
溶融紡糸装置3は、図1においても、残りの図2図4においても、見易くするために著しく簡略化され、かつ不完全に図示されている。特に、押出機および充填装置は図面では省略されている。それぞれの溶融紡糸装置3の溶融ノズル32は、ノズル列31の長手方向Lにそれぞれ配置されている。
【0062】
図面に図示した本発明の実施形態をさらに説明するためには、単に糸製造設備1の単独の作業ユニット2を観察することが合理的である。
【0063】
図2図4は、図1に示した本発明に係る糸製造装置1の個別の作業ユニット2をそれぞれ、正面図(図2)、側面図(図3)および平面図(図4)で示している。
【0064】
溶融ノズル32から進出したフィラメントは、その落下時に冷却され、糸製造装置1の、図面に図示しない装置によって纏められて複数本の糸を形成する。これらの糸は、相並んで糸群として、糸製造装置1の糸走入セクション4に落下し、この糸走入セクション4の下側の端部に位置する走入ゴデット対5により下方に向かって引き出される。糸走入セクション4は、糸製造設備1の、溶融紡糸装置3の下に配置された垂直な走入セクション壁に沿って延びている。
【0065】
走入ゴデット対5は、駆動モジュール10に取り付けられていて、この駆動モジュール10は、糸走入セクション4の下に位置していて、糸走入セクション4が延びている保持壁から少なくとも部分的に側方に突出している。走入ゴデット対5の、処理経路上で第1のゴデット51の回転軸線は、ノズル列31の長手方向Lに対して平行に方向付けされている。
【0066】
したがって糸群は、図2において判るように、糸走入セクション4の前に立っているオペレータによって容易に、走入ゴデット対5の、処理経路上で第1のゴデット51の周囲にガイドされてよく、この場合に、糸群を、処理方向を巡って捩じる必要はない。
【0067】
次いで、図3において判るように、糸群は、オペレータによって、糸延伸装置6の、延伸領域フレーム60に互いに上下するように取り付けられた高温ゴデット対61,62,63,64の周囲にガイドされる。オペレータは、通路9を介して、糸走入セクション4の端部に設けられた走入ゴデット対5から、処理経路上で第1の高温ゴデット対61へと到達することができる。
【0068】
高温ゴデット対61,62,63,64は、スリット601を備えた、断熱されたハウジング内に位置しており、これらのスリット601を通って糸群が、それぞれの高温ゴデット対61,62,63,64上に乗り上げ、かつそれぞれの高温ゴデット対61,62,63,64から走出することができる。断熱されたハウジングは、全ての図面において、開かれた状態で図示されている。
【0069】
処理経路上で第1の高温ゴデット対61の自由なゴデット端部611は、走入ゴデット対5の自由なゴデット端部511と同一の第1の空間半部R1内に突出している。したがって、糸群は、オペレータによって極めて有利には、走入ゴデット対5から、糸延伸装置6の第1の高温ゴデット対61の周囲へとガイドされ得る。
【0070】
処理経路上で第1の高温ゴデット対61の上に、第2の高温ゴデット対62が位置している。この第2の高温ゴデット対62の自由なゴデット端部は、第1の空間半部R1とは反対側に位置する第2の空間半部R2内に突出している。したがって、図3では第2の高温ゴデット対62を確認することすらできない。第2の高温ゴデット対62のゴデットの駆動端部が取り付けられている、ゴデット保持壁の背面だけが見える。
【0071】
糸群を、第1の高温ゴデット対61への巻付け後に第2の高温ゴデット対62の周囲にガイドするために、糸群はスリット601を通って、第1の高温ゴデット対61の断熱されたハウジングから、第2の高温ゴデット対62の断熱されたハウジング内へとガイドされる。オペレータは、延伸領域フレーム60の周りを歩いて、次いで糸群を第2の高温ゴデット対62の周囲にガイドすることができる。次いで糸群は第2の高温ゴデット対62から、かつ同様の形式で、第2の高温ゴデット対62の上の第3の高温ゴデット対63の周囲に巻き付けられ得る。
【0072】
示した実施形態では、延伸領域フレーム60に配置された、処理経路上で最初の3つの高温ゴデット対61,62,63はそれぞれ、高温ゴデット対61,62,63のうちの、処理経路上で直接に相前後して配置された高温ゴデット対61,62,63のそれぞれ自由なゴデット端部611,631が互いに逆向きの空間半部R1,R2内に突出するように、配置されている。
【0073】
糸製造設備1の、単に例示的に図示された実施形態では、延伸領域フレーム60が最も上側の高温ゴデット対64を有している。この最も上側の高温ゴデット対64は、この高温ゴデット対64の下に配置された高温ゴデット対63の自由なゴデット端部631と同一の空間半部R1内に突出している。
【0074】
オペレータは、糸群を第3の高温ゴデット対63から、別個の緩和フレーム80に配置された、加熱された緩和ゴデット対8に直接移行させるか、またはまず、延伸領域フレーム60の最も上側の高温ゴデット対64の周囲にさらに巻き付けることができる。これにより単に糸群を仕掛けることにより、糸を延伸するために使用される高温ゴデット対61,62,63,64の個数を1つだけ増加させるか、もしくは1だけ減少させることができる。したがって、本発明に係る糸製造設備1の1つの同一の作業ユニット2で、この糸製造設備1の組替えを必要とすることなしに、種々異なる形式の糸を製造することができる。つまり、最も上側の高温ゴデット対64は、糸製造時に任意に考慮することができる。
【0075】
最も上側の高温ゴデット対64は、少なくとも、そのゴデットのうちの一方のゴデット周壁長さの半分だけ、最も上側の高温ゴデットの下に配置された高温ゴデット対63の自由なゴデット端部631を越えて、それぞれ同一の空間半部R1内に突出している。これによって糸群は、第3のゴデット対63の自由なゴデット端部631から走出した後に、任意の最も上側の高温ゴデット対64の駆動端部の近傍で、最も上側の高温ゴデット対64上に乗り上げることができる。
【0076】
処理経路上で延伸領域フレーム60の高温ゴデット対61,62,63,64に続いて、糸群は、図1図4に示した本発明の実施例では、さらに、別個の緩和フレーム80に取り付けられている加熱された緩和ゴデット対8を介して走行する。
【0077】
緩和ゴデット対8の自由端81は、第1の空間半部R1とは反対側に位置する第2の空間半部R2内に突出している。つまり、緩和ゴデット対8の自由端81と走入ゴデット対5の自由端51とは、それぞれ反対の空間方向領域に突出し、したがって緩和フレーム80と延伸領域フレーム60との間に形成された通路9から良好に、オペレータによって到達され得る。オペレータは、糸群を、第3の高温ゴデット対63からも、最も上側の高温ゴデット対64からも、通路9を超えて緩和ゴデット対8へとガイドすることができる。
【0078】
第3の高温ゴデット対63からの糸走出部と、最も上側の高温ゴデット対64からの糸走出部との間の水平方向および鉛直方向のずれは、緩和ゴデット対8への糸乗上げにとって大した差異を引き起こさない。なぜならば、走入角は、緩和フレーム80と延伸領域フレーム60との間の通路9に基づく十分に大きな間隔のために、両方の場合においてほぼ同一であるからである。
【0079】
緩和フレーム80の下側には、図示した実施例では2つの巻取パッケージ7が位置している。糸群は、緩和ゴデット対8の通過後に個別の糸に個別化され、これらの糸は巻取パッケージ7上に巻き取られる。
【0080】
結果として、図1図4に示した実施形態は、コンパクトでありかつ糸交換のために良好にアクセス可能な糸製造設備1を成す。この糸製造設備1では、1つのゴデット対内における個別のゴデットの必要となる傾斜配置による僅かな捩じりを除き、糸群は糸交換時にも、糸延伸のプロセス時にも、その幅方向において一度も捩じられない。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】