(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】カルボジイミドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 267/00 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
C07C267/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561069
(86)(22)【出願日】2022-04-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 EP2022059638
(87)【国際公開番号】W WO2022223352
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム・ラウファー
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC59
4H006AD11
4H006AD15
4H006BA53
4H006BC10
(57)【要約】
本発明は、a)触媒の存在下でイソシアネートをカルボジイミド化するステップ、b)蒸留又は抽出によって、カルボジイミドから触媒及び/又は単量体イソシアネートを分離して、単量体イソシアネートを含む未精製(粗製)カルボジイミドを得るステップ、c)1種以上のアルコールを添加し、かつ、アルコールと未精製(粗製)カルボジイミドの単量体イソシアネートを部分的又は完全に反応させるステップを含む、カルボジイミドの新規な製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
R
III-(-N=C=N-R
I-)
n-N=C=N-R
II (I)
(式中、
nは、1~500、好ましくは2~50、きわめて特に好ましくは4~20の数であり、
R
Iは、C
1~C
24アルキレン及び/又はC
5~C
12シクロアルキレン、C
1~C
12-アルキル-置換又はC
1~C
24-オキシアルキル-置換シクロアルキレン、C
1~C
12-アルキル-置換アリーレン、C
1~C
24-オキシアルキル-置換アリーレン、C
7~C
18-アルキルアリール-置換アリーレン、並びに、C
1~C
8アルキレン基を介して架橋されており且つ合計で8~30個の炭素原子を有する、任意選択によりC
1~C
12-アルキル-置換されていてもよいアリーレン、並びにアリーレンであり、かつ
R
II、R
IIIは、同一であるか、又は、互いに独立に、C
1~C
24-アルキル-及び/又はC
5~C
24-シクロ-又はC
1~C
12-アルキル-置換又はC
1~C
24-オキシアルキル-置換シクロアルキル、C
1~C
12-アルキル-置換又はC
1~C
24-オキシアルキル-置換アリール、C
7~C
18-アルキルアリール-置換アリール、並びに、C
1~C
8アルキレン基を介して架橋され且つ合計で8~30個の炭素原子を有する、任意選択によりC
1~C
12-アルキル-置換されていてもよいアリール、並びにアリールである)
のカルボジイミドの製造方法であって、
a)触媒の存在下におけるイソシアネートのカルボジイミド化により、カルボジイミド及び単量体イソシアネートを含む反応混合物を得るステップ、
b)蒸留又は抽出による、カルボジイミド及び単量体イソシアネートを含む前記反応混合物からの前記触媒及び/又は単量体イソシアネートの少なくとも部分的な分離によって、単量体イソシアネートを含む未精製カルボジイミドを得るステップ、
c)単量体イソシアネートを含む上記未精製カルボジイミドに1種以上のアルコールを添加し、かつ、前記アルコールと未精製カルボジイミドの単量体イソシアネートとを部分的又は完全に反応させるステップ、
を含む、製造方法。
【請求項2】
ステップc)において、存在するカルボジイミドの量に基づいて、0.1質量%~5質量%、好ましくは0.2質量%~2質量%、特に好ましくは0.3質量%~0.5質量%のアルコールが添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップc)における前記アルコールの添加及び/又は反応が、140~200℃、特に好ましくは160~180℃の範囲内の温度において行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
使用される前記アルコールが、脂肪族及び/又は芳香族アルコール、好ましくは直鎖状、分岐状、及び/又は環状の脂肪族C
6~C
18アルコール、特に好ましくはn-オクタノール、イソオクタノール、ドデカノール、2-エチルヘキサノール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、及び/又はシクロヘキサノールである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップa)からの反応生成物が、ステップa)及びステップb)の間でろ過される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップc)における前記添加及び/又は反応が、撹拌しながら行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記カルボジイミドは、下記式(II):
【化1】
(式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、同一であるか、又は、互いに独立に、H、C
1~C
20アルキル、C
3~C
20シクロアルキル、C
6~C
15アリール、及び/又はC
7~C
15アラルキルであり、
R
7=C
1~C
18アルキレン、C
5~C
18シクロアルキレン、C
1~C
20-アルキル-置換アリーレン、及び/又はC
7~C
18アラルキレン、好ましくはC
1~C
8-アルキル-置換アリーレン及び/又はC
7~C
18アラルキレンであり、かつ、nは1~500の範囲内の数である)
に対応する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
nは、1~50、好ましくは3~20の範囲内の数である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップb)における蒸留が、140℃~200℃、好ましくは160℃~180℃の温度において行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップb)における蒸留が、0.1~50mbar、好ましくは1~30mbar、特に好ましくは10~20mbarの圧力において実施される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップa)における触媒が、ホスホレンオキシド、ホスホリジン、ホスホリンオキシド、及び、そのスルフィド、第三級アミン、塩基性金属化合物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルコキシド、フェノキシド、金属カルボン酸塩、及び非塩基性有機金属化合物、好ましくは、アルキルホスホレンオキシド、及び、特に好ましくはメチルホスホレンオキシドからなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
カルボジイミド化が、溶媒の存在下、好ましくはベンジン、ベンゼン、及び/又はアルキルベンゼンの存在下で行われる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
使用される前記イソシアネートが、1,3,5-トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TRIDI)、2,6-ジイソプロピルフェニルイソシアネート(DIPI)、及び/又は2,4,6-トリイソプロピルフェニルイソシアネート(TRIPI)である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップc)に続いて、過剰量のアルコールが蒸留によって除去される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップc)の後、又は、ステップc)に続いて任意選択により場合によって実施される蒸留の後で、1000ppm未満、好ましくは750ppm未満、特に好ましくは500ppm未満、より好ましくは300ppm未満、及び、もっとも好ましくは100ppm未満の単量体イソシアネート含有量を有するカルボジイミドが得られる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残存イソシアネートモノマー含有量が低減されたカルボジイミドを調製するための新規なプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
カルボジイミドは、多くの用途において、例えば、熱可塑性プラスチック、ポリオール、ポリウレタン、トリグリセリド、及び潤滑油等の加水分解阻害剤として有用であることが証明されている。
【0003】
従来技術によるカルボジイミドの合成は、典型的には、イソシアネートから、これが塩基性又は複素環式触媒下でCO2の除去を伴ってカルボジイミド化されて進行する。これにより、単官能性又は多官能性イソシアネートを、単量体又は高分子カルボジイミドに変換することが可能となる。
【0004】
典型的に使用される触媒は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属化合物及、びリンを含有するヘテロ環式化合物である。対応する触媒は、例えば(非特許文献1)及び(非特許文献2)に記載されている。
【0005】
カルボジイミド化後の、生成物からの、原料として使用されたイソシアネートの除去は、特に高分子カルボジイミドを調製する場合には、非常に複雑である。生成物の品質(特にカラーナンバー)を損ねることなしに、残存イソシアネートモノマー含有量を実質的に0.1重量%未満に低減するという目標は、通常、収率の大きな損失を伴う反復結晶化操作によってのみ達成される。代替として、(特許文献1)に記載されているとおり、イソシアネート基及びウレタン基を含有し且つ低い残存イソシアネートモノマー含有量を有するカルボジイミドは、短路蒸発器によってモノマーを繰り返し留去することによって調製可能であるが、しかしながら、これには時間とコストがかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Angew.Chem.1962,74,801-806
【非特許文献2】Angew.Chem.1981,93,855-866
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の対象は、従って、従来技術に係る上記欠点を非常に大きく回避すると共に、経済的に実現可能な高い収率と高い生成物の品質を達成する、低減されたイソシアネート含有量を有するカルボジイミドを調製するための改善されたプロセスを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、前述の目的は、下記式(I);
RIII-(-N=C=N-RI-)n-N=C=N-RII (I)
(式中、
nは、1~500、好ましくは2~50、きわめて特に好ましくは4~20の数であり、
RIは、C1~C24アルキレン及び/又はC5~C12シクロアルキレン、C1~C12-アルキル-置換又はC1~C24-オキシアルキル-置換シクロアルキレン、C1~C12-アルキル-置換アリーレン、C1~C24-オキシアルキル-置換アリーレン、C7~C18-アルキルアリール-置換アリーレン、並びに、C1~C8アルキレン基を介して架橋され且つ合計で8~30個の炭素原子を有する、任意選択によりC1~C12-アルキル-置換されていてもよいアリーレン、並びにアリーレンであり、かつ、
RII、RIIIは、同一であるか、又は、互いに独立に、C1~C24-アルキル-及び/又はC5~C24-シクロ-又はC1~C12-アルキル-置換又はC1~C24-オキシアルキル-置換シクロアルキル、C1~C12-アルキル-置換又はC1~C24-オキシアルキル-置換アリール、C7~C18-アルキルアリール-置換アリール、並びに、C1~C8アルキレン基を介して架橋され且つ合計で8~30個の炭素原子を有する、任意選択によりC1~C12-アルキル-置換されていてもよいアリール、並びにアリールである)
のカルボジイミドの調製プロセスであって、以下のステップ:
a)触媒の存在下におけるイソシアネートのカルボジイミド化により、カルボジイミド及び単量体イソシアネートを含む反応混合物を得るステップ、
b)蒸留又は抽出による、カルボジイミド及び単量体イソシアネートを含む反応混合物からの触媒及び/又は単量体イソシアネートの少なくとも部分的な分離によって、単量体イソシアネートを含む未精製(粗製)カルボジイミドを得るステップ、
c)単量体イソシアネートを含む上記未精製カルボジイミドに1種以上のアルコールを添加し、かつ、アルコールと未精製カルボジイミドの単量体イソシアネートとを部分的又は完全に反応させるステップ
を含む調製プロセスによって達成されることを発見した。
【0010】
ここで、ステップa)において使用されるイソシアネートは、式OCN-RI-NCO、OCN-RII、及びOCN-RIIIの単量体化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
代替の実施形態においては、ステップa)において、既にオリゴマー化された又は重合された形態にある式OCN-RI-NCOの化合物(すなわち、式OCN-RI-(-N=C=N-RI-)(n-1)-NCOの化合物として)は、式OCN-RII及びOCN-RIIIの化合物と一緒にカルボジイミド化される。
【0012】
さらなる代替の実施形態において、ステップa)において、式OCN-RI-NCOの化合物は、既にオリゴマー化された又は重合された形態で、及び、既に一端で封止された形態で用いられる。これらの事例において、すなわち、式RIII-(-N=C=N-RI-)n-NCOの化合物は、式OCN-RIIの化合物とカルボジイミド化され、又は、式RII-(-N=C=N-RI-)n-NCOの化合物は式OCN-RIIIの化合物とカルボジイミド化される。
【0013】
任意選択により場合によってアルキレン基を介して架橋されており且つ合計で8~30個の炭素原子を有するC1~C12-アルキル-置換C6~C10アリーレンは、一般構造-アルキレン-アリーレン-アルキレン-を有し、ここで、アルキレンは直鎖又は分岐鎖であることでき、かつ、アリーレン基は4個以下のC1~C12アルキル置換基を有していてよく、ただし、炭素原子の総数は30個以下であることを条件とする。
【0014】
ここで、アルキレン基を介して架橋されており且つアリーレン基上にアルキル基を有さず、且つ、各場合において2つのアルキレン基が1~6個の炭素原子を有するC6~C10アリーレンが好ましい。
【0015】
好ましい実施形態において、RIは、C1~C12-アルキル-置換C6~C12アリーレン、好ましくはC1~C4-アルキル-置換C6~C12アリーレン、特に好ましくはモノ-からトリ-C1~C4-アルキル-置換C6アリーレン、そして、きわめて特に好ましくはジ-及び/又はトリイソプロピルフェニレンである。
【0016】
好ましい実施形態において、RII及びRIIIは、互いに独立に、C1~C12-アルキル-置換C6~C12アリール、好ましくはC1~C4-アルキル-置換C6~C12アリール、特に好ましくはモノ-からトリ-C1~C4-アルキル-置換C6アリール、並びに、きわめて特に好ましくはジ-及び/又はトリイソプロピルフェニルである。
【0017】
さらに好ましい実施形態において、RIはC1~C12-アルキル-置換C6~C12アリーレンであり、かつ、RII及びRIIIは、互いに独立に、C1~C12-アルキル-置換C6~C12アリールである。
【0018】
さらに好ましい実施形態において、RIはC1~C4-アルキル-置換C6~C12アリーレンであり、かつ、RII及びRIIIは、互いに独立に、C1~C4-アルキル-置換C6~C12アリールである。
【0019】
さらに好ましい実施形態において、RIはモノ-からトリ-C1~C4-アルキル-置換C6アリーレンであり、かつ、RII及びRIIIは、互いに独立に、モノ-からトリ-C1~C4-アルキル-置換C6アリールである。
【0020】
さらに好ましい実施形態において、RIは、ジ-及び/又はトリイソプロピルフェニレンであり、かつ、RII及びRIIIは、互いに独立に、ジ-及び/又はトリイソプロピルフェニルである。
【0021】
好ましい実施形態において、カルボジイミドは、下記式(II):
【化1】
(式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、同一であるか、又は、互いに独立に、H、C
1~C
20アルキル、C
3~C
20シクロアルキル、C
6~C
15アリール、及び/又はC
7~C
15アラルキルであり、
R
7=C
1~C
18アルキレン、C
5~C
18シクロアルキレン、C
1~C
20-アルキル-置換アリーレン及び/又はC
7~C
18アラルキレン、好ましくはC
1~C
8-アルキル-置換アリーレン及び/又はC
7~C
18アラルキレンであり、かつ
nは、1~500の範囲内の数である)
に対応する。
【0022】
好ましくは、nは、1~50、好ましくは3~20の範囲内の数である。
【0023】
本発明の上記の実施形態において、nについて異なる値を有する式(I)及び/又は(II)の化合物の混合物も生じ得る。この場合、平均値を決定する場合、nについて分数も生じ得る。
【0024】
本発明によるプロセスのステップa)における触媒の存在下でのイソシアネートのカルボジイミド化は、典型的には、CO2の脱離を伴う縮合反応において行われ、それは、例えば、Angew.Chem.93,pp.855-866(1981)又は独国特許出願公開第A-11 30 594号明細書又はTetrahedron Letters 48(2007),pp.6002-6004に記載されているとおり行われる。
【0025】
カルボジイミド化は、物質中又は溶剤中において実施可能である。同様に、最初に物質中においてカルボジイミド化を開始し、反応の最中に溶媒を添加することも可能である。好適な溶媒は、当業者により容易に決定されうる。このような溶媒の例として、石油エーテル、ベンゼン、及び/又はアルキルベンゼンが挙げられる。
【0026】
使用されるイソシアネートは、特に好ましくは、1,3,5-トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TRIDI)、2,6-ジイソプロピルフェニルイソシアネート(DIPI)、又は2,4,6-トリイソプロピルフェニルイソシアネート(TRIPI)である。
【0027】
本発明の一実施形態において、ステップa)におけるイソシアネートの式(I)のカルボジイミドへのカルボジイミド化のために好ましい触媒は、強塩基又はリン化合物である。ホスホレンオキシド、ホスホリジン、又はホスホリンオキシド、及び、対応するスルフィドを使用することが好ましい。使用し得るさらなる触媒は、第三級アミン、塩基性金属化合物、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、アルコキシド又はフェノキシド、金属カルボン酸塩、及び非塩基性有機金属化合物である。触媒としては、アルキルホスホレンオキシド、例えば、メチルホスホレンオキシドが特に好ましい。
【0028】
この反応(カルボジイミド化)は、140℃~200℃、特に好ましくは160℃~180℃の範囲の温度で実施されることが好ましい。
【0029】
本発明のさらなる実施形態において、ステップa)からの反応生成物は、ステップa)及びステップb)の間においてろ過される。
【0030】
ステップb)における触媒及び/又は単量体イソシアネートの少なくとも部分的な分離は、これらの物質の大部分の除去を達成することを目的としている。プロセス効率を考慮すると、ここでは、単量体イソシアネートが完全には分離されていないことが許容される。この分離は、蒸留又は抽出によって行うことが可能であり、蒸留が好ましい。カルボジイミド化において使用することができる任意の溶剤もまた、単に蒸留において分離し得る。ステップb)における蒸留は、140℃~200℃、特に好ましくは160℃~180℃の温度で行われることが好ましい。蒸留は、0.1~50mbar、好ましくは1~30mbar、特に好ましくは10~20mbarの圧力において減圧下で一般に実施される。好ましい実施形態において、蒸留は、撹拌反応器中においてバッチ式で行われる。
【0031】
ステップc)におけるアルコールの添加及び/又は反応は、140℃~200℃、特に好ましくは160℃~180℃の温度で行われることが好ましい。特に好ましくは、ステップc)におけるアルコールの添加及び反応は両方とも、140℃~200℃、もっとも好ましくは160℃~180℃の範囲内の温度で行われる。
【0032】
典型的には、ステップc)において、存在するカルボジイミドの量に基づいて、0.1質量%~5質量%、好ましくは0.2質量%~2質量%、特に好ましくは0.3質量%~0.5質量%のアルコールが添加される。
【0033】
好ましくは、使用されるアルコールは、脂肪族及び/又は芳香族アルコール、好ましくは直鎖状、分岐状、及び/又は環状の脂肪族C6~C18アルコール、特に好ましくはn-オクタノール、イソオクタノール、ドデカノール、2-エチルヘキサノール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、及び/又はシクロヘキサノールである。
【0034】
ステップc)に続いて、任意選択により場合によっては、存在する過剰量のアルコールを除去するために蒸留を行ってもよい。
【0035】
本発明に係るプロセスによって得られるカルボジイミドは、典型的には、1000ppm未満、好ましくは750ppm未満、特に好ましくは500ppm未満、より好ましくは300ppm未満、及び、もっとも好ましくは100ppm未満の単量体イソシアネート含有量を有する。
【0036】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであり、限定する効果を有するものではない。
【実施例】
【0037】
<残存イソシアネートモノマー含有量の決定>
残存イソシアネートモノマー含有量は、試薬溶液(100mlのTHF中の1-ピリジル-2-ピペラジン)との反応の後に、HPLCによって決定した。使用した溶離液は、酢酸アンモニウム溶液及びメタノールの混合物だった。較正は、種々の濃度の単量体イソシアネートを用いて事前に行った。
【0038】
<カルボジイミドの例>:式(II)のカルボジイミド(式中、R7=トリイソプロピルフェニレンであり、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6=イソプロピルであり、且つn=約18である)。
【0039】
<実施例1:カルボジイミド化>
1,3,5-トリイソプロピルフェニルジイソシアネート(TRIDI)及び2,4,6-トリイソプロピルフェニルイソシアネート(TRIPI)の混合物を、約0.2%のメチルホスホレンオキシドの存在下で、160℃において、1%未満のNCO含有量が達成されるまで、カルボジイミド化した。反応生成物を、2時間、160℃及び10mbarにおいて蒸留した。
【0040】
<実施例2:バッチ蒸留>
実施例1からのカルボジイミドを、ステンレス鋼製のタンク中で、5時間、短蒸留ブリッジで蒸留した。蒸留タンク内の温度は160℃~180℃の範囲内であり、最終圧力は約10mbarだった。
【0041】
<実施例3:薄膜/短経路蒸発器による蒸留>
実施例1からのカルボジイミドを、薄膜/短経路蒸発器の組み合わせを使用して、約180℃及び1mbarにおいて蒸留した。
【0042】
<実施例4:再結晶>
実施例1からのカルボジイミドを、60℃において、ステンレス鋼製のタンク内でトルエン中に溶解し、次いで、10~20℃においてアセトンから再結晶した。ろ過した後、粉砕したカルボジイミドを、数時間、10mbarの減圧下で、乾燥器中で乾燥させた。
【0043】
<実施例5:アルコールとの反応>
実施例1からのカルボジイミドに、ステンレス鋼製のタンク中で、0.5%の2-エチルヘキサノールを添加し、その混合物を160℃において約30分間撹拌した。
【0044】
<実施例6:アルコールとの反応>
実施例1からのカルボジイミドに、ステンレス鋼製のタンク中で、2.0%の2-エチルヘキサノールを添加し、その混合物を160℃において約30分間撹拌した。
【0045】
単量体イソシアネートの残存含有量をHPLCによって決定した。その色をCIE L*a*b*法ISO 11664-4に準拠して決定した。b値を評価した。
【0046】
結果を以下の表1に列挙する。
【0047】
【0048】
表1から分かるとおり、残存イソシアネートモノマー含有量は、非常に長時間の蒸留後においてさえ、単純なバッチ蒸留法では達成することはできない。さらに、このことが、生成物の色の顕著な悪化をもたらす。所望の品質特性は、先ず再結晶によって、又は、薄膜/短経路蒸発器の組み合わせによって達成される;しかしながら、これらの方法は複雑であり、かつ、収率の損失を伴う。少量のアルコール(ここでは、2-エチルヘキサノール)との単純な反応が、公知のプロセスの欠点を回避しつつ、所望する結果をもたらす。
【国際調査報告】