(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】トルクツール
(51)【国際特許分類】
B25B 23/142 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
B25B23/142
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562949
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 DE2022100196
(87)【国際公開番号】W WO2022223068
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】202021102127.6
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507079356
【氏名又は名称】ハツエト - ヴエルク ヘルマン ツエルフエル ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフトウング ウント コンパニー コマンデイートゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】クラット・パトリック
(72)【発明者】
【氏名】バルズィーパー・クリスチャン
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA01
3C038BC01
3C038BC06
3C038CC08
3C038EA06
(57)【要約】
【解決手段】 本発明は、トルクツール、特にトルクドライバーに関し、このトルクツールが、把手2と、この把手2の長手方向軸線Lを中心として回転可能な、回転トルクの調節のための調節体7とを有しており、その際、前記調節体7が、ロック本体9によって、前記把手2に対してロック解除可能およびロック可能であり、その際、前記ロック本体9に切替リング18が割り当てられており、その際、この切替リング18が、前記ロック本体9に対して相対的に、直線的に移動可能であり、且つ、前記切替リング18に、少なくとも1つの切替ピン19が設けられており、前記切替ピンが、前記調節体7内における制御軌道20に支持されており、且つ、前記切替リング18と前記ロック本体9との間に、ロック円盤21と、このロック円盤21を負荷するばね要素22とが配置されており、その際、前記ロック円盤21が、ロック部本体30を有しており、これらロック部本体が、前記把手2内におけるロック部収容部31と協働し、その際、前記ロック本体9の回転によって、前記切替ピン19が前記制御軌道20に沿って移動し、且つ、前記把手2に対して相対的な、前記切替リング18と前記ロック円盤21との軸線方向移動が生起可能であり、このことによって、前記ロック部本体30が、前記調節体7のロック解除のために、前記ロック部収容部31から外へと移動可能であり、且つ、前記調節体7のロックのために、前記ロック部収容部31との係合状態にされ得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクツール、特にトルクドライバーであって、このトルクツールが、
把手(2)と、この把手(2)の長手方向軸線(L)を中心として回転可能な、回転トルクの調節のための調節体(7)とを有しており、
前記調節体(7)が、ロック本体(9)によって、前記把手(2)に対してロック解除可能およびロック可能である上記トルクツールにおいて、
前記ロック本体(9)に切替リング(18)が割り当てられており、
この切替リング(18)が、前記ロック本体(9)に対して相対的に、直線的に移動可能であり、且つ、
前記切替リング(18)に、少なくとも1つの切替ピン(19)が設けられており、前記切替ピンが、前記調節体(7)内における制御軌道(20)に支持されており、且つ、
前記切替リング(18)と前記ロック本体(9)との間に、ロック円盤(21)と、このロック円盤(21)を負荷するばね要素(22)とが配置されており、
前記ロック円盤(21)が、ロック部本体(30)を有しており、これらロック部本体が、前記把手(2)内におけるロック部収容部(31)と協働し、
前記ロック本体(9)の回転によって、前記切替ピン(19)が前記制御軌道(20)に沿って移動し、且つ、前記把手(2)に対して相対的な、前記切替リング(18)と前記ロック円盤(21)との軸線方向移動が生起可能であり、
このことによって、前記ロック部本体(30)が、前記調節体(7)のロック解除のために、前記ロック部収容部(31)から外へと移動可能であり、且つ、前記調節体(7)のロックのために、前記ロック部収容部(31)との係合状態にされ得る、
ことを特徴とするトルクツール。
【請求項2】
前記ロック部本体(30)は、長手方向スリット(32)を通って、前記調節体(7)のスリーブ部分(33)内に係合していることを特徴とする請求項1に記載のトルクツール。
【請求項3】
前記ロック本体(9)と前記切替リング(18)とは、案内要素(34、35)を用いて、互いに相対的に直線的に移動可能であり、
有利には、前記ロック本体(9)における案内要素(34)が、このロック本体(9)のソケット(29)における案内凸部の形態で形成されており、且つ、
前記切替リング(18)における案内要素(35)が、前記切替リング(18)の内側周囲(36)における案内凹部の形態で形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のトルクツール。
【請求項4】
前記制御軌道(20)は、前記調節体(7)の内側のリム(37)において、周囲に延在して形成されており、
交互に、隆起部(38)と窪み部(39)とが設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のトルクツール。
【請求項5】
それぞれの前記隆起部(38)は、1つの切替位置を形成し、この切替位置において前記調節体(7)がロック解除されており、且つ、
それぞれの前記窪み部(39)が、1つの切替位置を形成し、この切替位置において前記調節体(7)がロックされていることを特徴とする請求項4に記載のトルクツール。
【請求項6】
前記調節体(7)のリング部分(41)の周囲に、前記調節体(7)のロック状態の表示部のための覗き窓(17)が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のトルクツール。
【請求項7】
前記周囲において互いに位置ずれされた状態で配置された、複数の覗き窓(17)が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のトルクツール。
【請求項8】
前記リング部分(41)は、化粧リングを把持しており、
この化粧リングが、前記ロック本体(9)に回転不能に割り当てられており、および、
この化粧リングが、前記調節体(7)のロック解除状態およびロック状態の視覚化のためのシンボルを有しており、これらシンボルが、少なくとも1つの前記覗き窓(17)を通して目視可能である、
ことを特徴とする請求項6または7に記載のトルクツール。
【請求項9】
前記ばね要素(22)は、保持体構造部材(23)において位置決めされていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載のトルクツール。
【請求項10】
前記保持体構造部材(23)は、底部分(24)と係止要素(25)とを有しており、
これら係止要素(25)が、前記調節体(7)における係止部収容部(27)内へと係合していることを特徴とする請求項9に記載のトルクツール。
【請求項11】
トルクツール、特にトルクドライバーであって、このトルクツールが、
把手(2)と、この把手(2)の長手方向軸線(L)を中心として回転可能な、回転トルクの調節のための調節体(7)とを有しており、
前記調節体(7)が、ロック本体(9)によって、前記把手(2)に対してロック解除可能およびロック可能である上記トルクツールにおいて、
前記ロック本体(9)に切替リング(18)が割り当てられており、
前記切替リング(18)に、少なくとも1つの切替ピン(19)が設けられており、前記切替ピンが、前記調節体(7)内における制御軌道(20)に支持されており、
前記制御軌道(20)が、360°まで前記調節体(7)内において周囲に延在して形成されており、且つ、
ロック解除からロックへの前記調節体(7)の切替状態の変化、および、ロックからロック解除への前記調節体(7)の切替状態の変化が、前記長手方向軸線(L)を中心としての、前記ロック本体(9)の旋回によって行われ、
前記切替ピン(19)と前記制御軌道(20)とが、
前記切替状態の変化が当接無しに且つ前記ロック本体(9)の回転方向に依存せずに、従って左回転によってと同様に右回転によっても行われ得るように、形成されており、且つ、協働することを特徴とするトルクツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念内における特徴に従う、トルクツール、特にトルクドライバーに関する。
【背景技術】
【0002】
トルクツールは、手動操作される工具であり、これらトルクツールによって、回転トルクが、加工材料、通常はねじまたはナットに対して作用され得る。結合されるべき構造部材の間の、必要な締付け力、もしくは、組付け予負荷力を保証するために、調節可能なトルクツールによって、所定の締付けトルクが作用され得る。
【0003】
トルクドライバーにおいて、解除機構は、通常、把手内において格納されている。他のトルクツールにおいて、解除機構が、同様にこのトルクツールのレバー管体内において設けられていることも可能である。
【0004】
調節可能なトルクドライバーは、特許文献1内において開示されている。
【0005】
トルクツールの把手内において、または、把手において、調節装置も、調節されるべき回転トルクの表示部と共に設けられている。把手における調節機構、特に、ねじ付きスピンドルと結合された調節体が、この把手の固定状態の部分に対して相対的に回転されることによって、所望された回転トルクは、圧縮ばねの圧縮によって調節される。
それぞれに調節された回転トルクを、トルクツールの使用の際に、予期せぬ調節に対して保護するために、調節装置は、ロック部材を用いて固定され、このロック部材が、ロック本体を介して操作される。回転トルクの調節のために、ロック装置は、ロック解除される。
【0006】
種々の調節ユニットおよびロックユニットは、従来技術において公知である。これら調節ユニットおよびロックユニットは、それら調節ユニットおよびロックユニットの課題を、それぞれの実施形態により満足させる状態で満たし、且つ、実際に有用であることが実証されている。
それにも関わらず、これらの操作性は、使用者にとって、大抵の場合、ひと目見て明らかではない。同様に操作性および使用利便性も、改善に値すると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2013/143258 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の根底をなす課題は、トルクツールを、使用技術的に改善すること、および、ロックもしくはロック解除を、機能的に、および、使い勝手が良く改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題の解決策は、本発明により、トルクツール、特に請求項1に従うトルクドライバーにある。
【0010】
本発明に従うトルクツールの有利な実施形態および更なる構成は、従属請求項の対象である。
【発明の効果】
【0011】
トルクツール、ここで、特にトルクドライバーは、把手と、この把手の長手方向軸線を中心として回転可能な、回転トルクの調節のための調節体とを有している。前記調節体は、ロック本体を備えるロック装置(Verriegelung)によって、前記把手に対してロック解除可能およびロック可能である。
このロック装置は、調節体の所望された固定もしくはブロックを生起する。ロックされたロック装置において、回転トルクの調節のための調節体の操作は、可能ではない。ロック解除されたロック装置において、調節体は操作され得、特に、調節機構もしくは調節装置が、所定の回転トルクの調節のために使用(vorgenommen)され得る。このことは、本発明に従うトルクツールにおいて、把手の長手方向軸線を中心としての、調節体の旋回もしくは回転移動によって行われる。
【0012】
本発明に従い、前記ロック本体に切替リングが割り当てられている。
この切替リングは、前記ロック本体に対して相対的に、直線的に移動可能である。前記切替リングに、少なくとも1つの切替ピンが設けられており、前記切替ピンは、前記調節体内における制御軌道に支持されている。前記切替リングと前記ロック本体との間に、ロック円盤と、このロック円盤を負荷するばね要素とが配置されている。
前記ロック円盤は、ロック部本体を有している。これらロック部本体は、有利には、半径方向に、側方で、ロック円盤に対して突出している。これらロック部本体は、前記把手内におけるロック部収容部と協働する。前記ロック本体の回転によって、この、もしくは、これら切替ピンは、前記制御軌道に沿って移動する。
制御軌道の幾何学的な構成により、前記把手に対して相対的な、前記切替リングと前記ロック円盤との軸線方向移動が生起され、このことによって、前記ロック部本体が、前記調節体のロック解除のために、前記ロック部収容部から外へと移動され、もしくは、前記ロック部収容部から外へと移動可能であり、且つ、前記調節体のロックのために、ロック部収容部との係合状態にされる、もしくは、され得る。
【0013】
本発明に従う実施形態は、トルクドライバーに関してと同様に、トルクレンチに関しても適用され得る。本発明に従い構成されたトルクツール、および、調節される回転トルクのロック部材が、使用者による直観的な操作を可能にすることは、特に有利である。
【0014】
トルクツールを、所望された回転トルク値へと調節するために、このトルクツールは、把手において保持され、且つ、調節体の回転によって、所望された回転トルク値へと調節される。ロックされた状態において、把手と調節体とは、半径方向の移動、即ち、調節体の回転を防止するために、互いに連結されている。
調節体内における、周囲に位置する少なくとも1つの覗き窓内において、現在のロック状態もしくはロック解除状態は表示され得る。覗き窓の数は、構造的な所与の要件の考慮のもとで、ほぼ適宜に増大され得る。
【0015】
ロック本体の回転によって、切替位置の調節、および、これに伴って、それぞれのロック状態もしくはロック解除状態の調節は行われる。その際、回転が時計方向または反時計方向に行われるかどうかは、全く関係ない。
ロックは、従って、操作者によって、ロック本体の両方の回転方向に、高い信頼性で行われ得る。このことは、操作者のために、この操作者が右利きの人か左利きの人かどうかに依存せずに、使い勝手が良い。トルクツールのロックおよびロック解除は、極めて簡単に、且つ、高い信頼性で実現され得る。
【0016】
ロック本体の回転の際に、切替ピンは、半径方向に、調節体内における制御軌道をトレースし、且つ、その際、軸線方向移動を発生させる。切替ピンは、切替リングの周囲に配置されている。
切替ピンの数とピッチ、並びに、制御軌道の周期的な、もしくは、交互の繰り返しは、互いに相対的な構造部材の旋回によって切替位置が交番されるように形成されている。従って、ロック解除とロックとの切替位置は、交番において交互に起こる。
その際、制御軌道、および、この制御軌道の幾何学的形状が、切替位置の交番が同じ大きさの回転角度間隔を介して1つの回転の周囲にわたって生起されるように構成されることは可能である。切替位置の交番は、その際、例えば、それぞれに、30°、45°、60°の、または、同様に90°の回転角度によって行われ得る。
【0017】
切替位置、および、これに伴って切替状態を変化するために、回転方向は、当接無しに、右側または左側へと行われ得る。
調節体内において360°まで周囲に延在して配置されている制御軌道は、切替状態の当接の無い変化を可能にする。何故ならば、切替リングにおいて配置された切替ピンが、制御軌道をトレース可能であるからである。
この工程における回転方向は、完全に適宜であり、且つ、当接無しに行われる。設けられている隆起部と窪み部とは、相応する切替点を見出すために有益である。制御軌道のトレースの際に変化された、ロック円盤の軸線方向位置は、調節体の相応するロックのための働きをする。
【0018】
有利には、前記ロック部本体は、長手方向スリットを通って、前記調節体のスリーブ部分内に係合している。
ロック部本体が、ウェブまたは凸部によって形成されていることは可能である。これらロック部本体は、長手方向スリットを通って、前記調節体のスリーブ部分内に係合しており、且つ、このスリーブ部分の周囲に対して半径方向に突出している。これら長手方向スリット内において、ロック部本体は、リニアに、即ち直線的に、および、把手の長手軸線方向において案内されている。
【0019】
更に、有利な観点は、前記ロック本体と前記切替リングとが、案内要素を用いて、互いに相対的に直線的に移動可能であることにある。
有利には、前記ロック本体における案内要素は、このロック本体のソケットにおける案内凸部の形態で形成されており、且つ、前記切替リングにおける案内要素が、前記切替リングの内側周囲における案内凹部の形態で形成されている。
【0020】
実務のために特に有利な実施形態は、前記制御軌道が、前記調節体の内側のリムにおいて、周囲に延在して形成されており、交互に、隆起部と窪み部とが設けられていることを意図している。制御軌道が、傾倒部、傾倒部部分を有する、または、同様に曲線部分をも有することは可能である。
制御軌道、および、この制御軌道に沿って移動される切替ピンが、調節体の回転の際に、相対的な軸線方向移動を発生させ、この軸線方向移動によって、この、もしくは、これらロック部本体が、ロック部収容部から移動される、もしくは、ロック部収容部内へと移動可能であることは、重要である。
【0021】
効果に従い、制御軌道のそれぞれの前記隆起部は、1つの切替位置を形成し、この切替位置において前記調節体がロック解除されており、他方、この制御軌道のそれぞれの前記窪み部が、1つの切替位置を形成し、この切替位置において前記調節体がロックされている。
選択的に、個々の切替位置において、係止部、または、類似に形成された固定輪郭が設けられていることは可能であり、この係止部、または、類似に形成された固定輪郭内に、切替ピンが、位置決め可能であり、且つ、制限されて、摩擦による係合状態で制動されている。
【0022】
前記調節体のリング部分の周囲に、前記調節体のロック状態の表示部のための、少なくとも1つの覗き窓が設けられている。
【0023】
有利には、前記周囲において互いに位置ずれされた状態で配置された、複数の覗き窓が設けられている。
【0024】
有利な実施形態において、前記リング部分は、化粧リングを把持している。この化粧リングは、前記ロック本体に回転不能に割り当てられている。この化粧リングは、前記調節体のロック状態の視覚化のためのシンボルを有しており、これらシンボルが、それぞれに、少なくとも1つの前記覗き窓を通して目視可能である。
そのようなシンボルが、ピクトグラム、例えば開放された状態における錠または閉鎖された状態の錠であることは可能であり、これらピクトグラムが、ロック状態に関する相応する情報を示唆する。
【0025】
本発明に従うトルクツールの有利な実施形態は、前記ばね要素が、保持体構造部材において位置決めされていることを意図している。このことは、構造的並びに組み付け技術的に有利である。
【0026】
前記保持体構造部材は、底部分と係止要素とを有しており、これら係止要素が、前記調節体における係止部収容部内へと係合している。
【0027】
ロック本体と切替リングとは、案内要素を用いて、特に凹部-凸部案内を介して、単に半径方向にだけ連結されており、これに伴って、この切替リングが、制御軌道のトレースの際に、軸線方向に移動可能である。ロック本体と切替リングとは、案内要素を用いて、互いに相対的に、直線的に移動可能である。他方で、ばね負荷されたロック円盤は、切替ピンに対して接線方向に支持されている。切替リングのそれぞれの軸線方向の移動は、同期的に、ロック円盤に対して伝達される。
ロック円盤の周囲において、有利には2つの、場合によっては同様に多数の、ロック部本体が設けられており、これらロック部本体が、長手方向スリットを通って、調節体のスリーブ部分内へと係合し、且つ、それぞれの長手方向スリットから、突出している。
ロックされたもしくは連結された状態において、ロック部本体は、ロック円盤に対して作用するばね力を介して、把手内において設けられたロック部収容部内へと組み込まれる。ロック部収容部は、有利には、把手の長手方向軸線に整向された、短い溝部として形成されている。ロック部本体がロック部収容部内へと組み込まれている場合、把手と調節体との、回転不能な結合は、保証されている。
ロック部収容部とロック部本体とが相互に重なり合った状態にない場合、これらロック部収容部とロック部本体とは、第1に自動的にもしくはばね力によって移動されて、これらロック部収容部とロック部本体とが相互に重なり合った状態にあるもしくは一致している際に、組み込まれ得る。次いで、ロック部本体は、ばね要素の軸線方向力によって、自動的に、ロック部収容部内へとロックされる。
ロック解除の際に、制御軌道の上の切替ピンは、ばね要素のばね力に抗して移動される。その際に伝達された軸線方向移動によって、ロック部本体は、把手内におけるロック部収容部から外へと移動される。ロックは、解除されており、且つ、調節体が、ロック解除される。調節体を介して、回転トルクは、調節され得る。
所望された回転トルクの調節の後、ロック本体は、機構のロックのための切替位置に移動される。ロック部本体は、ロック部収容部内へと係合状態にされ、且つ、トルクツールもしくはトルク調節装置が、トルクツールの意図しない調節に対して保護されている。
【0028】
このロック装置は、固有に、もしくは、自動的に係止する。ロック円盤がばね要素によって、永続的に、軸線方向力によって付加されるので、ロック部本体は、固有に、ロック部収容部内へと係止可能である。
【0029】
本発明を、以下で、図に基づいて、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】解放されたロック部材における、トルクドライバーの形態の、本発明に従うトルクツールの図である。
【
図2】線A-Aに沿っての、
図1の図示の長手方向断面図である。
【
図3】閉鎖されたロック部材における、1つの眺望における、
図1に相応するトルクドライバーの図である。
【
図4】線B-Bに沿っての、
図3の図示の断面図である。
【
図5】透視分解図における、ロック部材およびと調節体との構造部材の図である。
【
図6】側面図における、ロック部材と調節体との構造部材の図である。
【
図7】線C-Cに沿っての、
図6の図示の断面図である。
【
図8】線E-Eに沿っての、
図6の図示の断面図である。
【
図9】線D-Dに沿っての、
図6の図示の断面図である。
【
図10】傾斜しての上方からの図示における、トルクドライバーの把手の透視図である。
【
図11】トルクツールの更に別の実施形態の構造部材の透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1から10並びに11に基づいて、トルクドライバーの形態の、本発明に従うトルクツール1を説明する。
【0032】
トルクツール1は、把手2、並びに、調節された回転トルクのための表示部3、および、従動部4を有している。
把手2内において、所定の回転トルクもしくは規定された締付トルクの調節のための調節装置5が組み込まれている。調節装置5は、ここでより詳細には説明されていない調節機構を備えており、この調節機構でもって、圧縮ばね6の圧縮によって、所望された回転トルクが調節される。
【0033】
調節装置5とこの調節装置の調節機構とは、把手2における調節体7と協働する。調節体7は、把手2に対して相対的に、この把手2の長手方向軸線Lを中心として回転可能である。把手2の固定状態の部分に対して相対的な調節体7の旋回によって、回転トルクは調節される。
それぞれに調節された回転トルクを予期せぬ調節に対して保護するために、調節体7は、ロック部材8を用いて固定され、このロック部材が、ロック本体9を介して操作される。
【0034】
トルクツール1の従動部4は、端面側で、把手2内において配置されている。従動部4は、交換可能な差込み工具の収容のために形成されている。異なる差込み工具の交換可能な収容のために、従動部4は、このために規定された保持システム10を備えている。
【0035】
調節された回転トルクのための表示部3は、相前後して配置された複数の数字ローラー12を備える数字ローラー計数機構11を有しており、これら数字ローラーが、把手2内における貫通開口部13によって読取り可能である。
【0036】
調節体7は、ロック本体9によって、把手2に対してロック解除可能およびロック可能である。トルクツール1を1つの調節値にするために、調節体7のロック部材8は解離される。このことは、後方のグリップ端部14における、ロック本体9の回転によって生起される。
【0037】
ロック本体9の操作は、手動で行われる。この目的のために、ロック本体9は、後方のグリップ端部14において、グリップ部片15とグリップ凹部16とを備えている。ロック本体9は、長手方向軸線Lを中心として、両方の方向に回転され得る。
ロック本体9の旋回によって、調節体7の切替位置の交番、もしくは、ロック解除された状態からロックされた状態へおよびロックされた状態からロック解除された状態への、ロック状態の交番は生起される。
【0038】
それぞれに、現実に調節されたロック状態もしくはロック解除状態は、ロック状態の表示のための覗き窓17内において、目視可能である。
図1は、トルクツール1、もしくは、このトルクツールの調節体7を、ロック解除された状態において示している。覗き窓17内において、解放された南京錠の形態のシンボルが認識され得る。調節体7のロック状態もしくはロック解除状態は、切替位置において「ロック解除」されている。このロック状態において、調節体7の回転によって、回転トルク値は低減または増大され得る。目標値が達成されている場合、調節体7は再びロックされ、これに伴って、調節値が、意図的で無しに調節され得ない。
図3は、調節体7のロック状態における、トルクツール1を示している。利用者は、このロック状態を、覗き窓17内において認識する。
【0039】
ロック本体9に切替リング18が割り当てられており、その際、この切替リング18は、このロック本体9に対して相対的に、直線的に移動可能である。切替リング18に、切替ピン19が設けられており、これら切替ピンは、調節体7内における制御軌道20に支持されている。
切替リング18とロック本体9との間に、ロック円盤21と、このロック円盤21を負荷するばね要素22とが配置されている。
【0040】
ばね要素22は、圧縮ばねである。ばね要素22は、保持体構造部材23内において位置決めされている。保持体構造部材23は、底部分24と係止要素25とを有している。
これら係止要素25は、ばねアーム26に設けられており、これらばねアームが、底部分24から、調節体7への方向に突出している。これら係止要素25は、係止部を有している。これら係止要素25は、調節体7内における係止部収容部27内へと係合する。
保持体構造部材23は、中心の案内部分28でもって、ロック本体9のソケット29を把持する。
【0041】
ロック円盤21は、ロック部本体30を有しており、これらロック部本体が、把手2内におけるロック部収容部31と協働する。これらロック部本体30は、それぞれに長手方向スリット32を通って、調節体7のスリーブ部分33内へと係合する。
【0042】
ロック本体9と切替リング18とは、案内要素34、35を用いて、互いに相対的に直線的に移動可能である。
ロック本体9における案内要素34は、このロック本体9のソケット29における案内凸部として形成されている。切替リング18における案内要素35は、切替リング18の内側周囲36における案内凹部の形態で形成されている。
【0043】
ロック本体9の回転によって、切替ピン19は、制御軌道20に沿って、周囲方向に移動され、且つ、把手の長手方向軸線Lにおける、この把手2に対して相対的な、切替リング18とロック円盤21との軸線方向移動が生起される。
この軸線方向移動によって、ロック部本体30は、調節体7のロック解除のために、ロック部収容部31から外へと移動され、他方、調節体7のロックのために、ロック部本体30が、ロック部収容部31との係合状態にされる。
【0044】
制御軌道20は、調節体7の内側のリム37において、周囲に延在して形成されており、
その際、交互に、隆起部38と窪み部39とが設けられている。この目的のために、特に
図8および9内における図示を参照されたい。
それぞれの隆起部38は、1つの切替位置を形成し、この切替位置において調節体7がロック解除されている。それぞれの窪み部39は、1つの切替位置を形成し、この切替位置において調節体7がロックされている。
【0045】
切替ピン19の数およびピッチは、一方では、調節体7において設けられた覗き窓17の数およびピッチに相応しており、
他方では、制御軌道20の周期的な繰返し、および、この制御軌道20において形成され且つ交互に繰り返される切替位置に相応している。
【0046】
ロック本体9と切替リング18とは、案内要素34、35を介して、即ち案内凹部と案内凸部とを介して、半径方向に位置固定されており、しかしながら、軸線方向に、互いに相対的に、直線的に移動可能であり、これに伴って、この切替リング18が、制御軌道20のトレースの際に、軸線方向に移動可能である。
他方で、ロック円盤21は、ばね要素22によってばね負荷された状態で、切替ピン19に対して接線方向に支持されている。切替リング18のそれぞれの軸線方向の移動は、同期的に、ロック円盤21に対して伝達される。
【0047】
ロック円盤21の周囲において、2つのロック部本体30が設けられている。これらロック部本体30は、ウェブ部分として形成されている。これらロック部本体は、長手方向スリット32を通って、調節体7のスリーブ部分33内へと係合し、且つ、半径方向に、スリーブ部分33の周囲に対して突出している。
ロックされた状態において、ロック部本体30は、ロック円盤21に対して作用する、ばね要素22のばね力を介して、把手2内において位置するロック部収容部31内へと係合する。特に
図10の図示内において認識されるように、ロック部収容部31は、溝部によって形成されている。そのような溝形状の複数のロック部収容部31は、把手2の内側周囲における内側のリム部分40に設けられている。
ロック部本体とロック部収容部とが、合同に、重なり合った状態にある場合、これらロック部本体30は、ばね要素22のばね力によって負荷をかけられて、ロック部収容部31内へと組み込まれる。ロック部収容部31内に組み込まれたロック部本体30の際に、調節体7は、把手2と連結されており、且つ、回転不能に結合されている。調節体7の調節は、ロック部材8のロックされた状態において可能ではない。
【0048】
ロック解除のために、ロック本体9が操作され、且つ、切替位置は、調節体7のロック状態から、この調節体7のロック解除状態に交番される。このことは、把手2の長手方向軸線Lを中心としての、ロック本体9の回転移動によって行われる。この回転移動によって、制御軌道20の上の切替ピン19は、ばね要素22のばね力に抗して移動される。
伝達された軸線方向移動によって、ロック部本体30は、把手2内におけるロック部収容部31から外へと移動し、従って、調節体7が、把手2に対して相対的に回転され得、且つ、回転トルク調節が行われ得る。
【0049】
調節体7内において360°まで周囲に延在する制御軌道20は、調節体7の切替状態もしくはロック状態の、当接の無い変化を可能にする。何故ならば、切替リング18において配置された切替ピン19が、制御軌道20をトレース可能であるからである。この工程における回転方向は、完全に適宜であり、且つ、当接無しに行われる。
隆起部38と窪み部39とは、相応する切替点、もしくは、ロック状態/ロック解除状態を規定する。制御軌道20のトレースの際に変化された、ロック円盤21の軸線方向位置は、調節体7の相応するロックもしくはロック解除のための働きをする。
【0050】
ロック部本体30は、固有もしくは自動的に、ロック部収容部31内へと係止する。このことは、ロック円盤21がばね要素22によって、永続的に、軸線方向力によって負荷されていることによって生起される。
【0051】
調節体7のロック状態の表示部3のための覗き窓17は、この調節体7のリング部分41の周囲に設けられている。その際、周囲において互いに位置ずれされた状態で配置された、複数の覗き窓17は、調節体7のリング部分41内における貫通開口部として形成されている。
【0052】
リング部分41が、化粧リングを把持していることは可能であり、その際、この化粧リングは、ロック本体9に回転不能に割り当てられている。この化粧リングは、調節体7のロック解除状態およびロック状態の視覚化のためのシンボルを有しており、これらシンボルが、それぞれに、覗き窓を通して目視可能である。
【0053】
化粧リング42を有するトルクツール1の1つの実施形態は、
図11の図示を示している。化粧リング42の周囲に、調節体7のロック解除状態およびロック状態の視覚化のためのシンボル43が、分配されて附設されている。化粧リング42は、ロック本体9に、回転不能に割り当てされており、且つ、このロック本体9のソケット部分44の上に装着されている。
化粧リング42は、調節体7のリング部分41によって取り囲まれる。覗き窓17を通して、調節体7のロック状態もしくはロック解除状態のためのシンボル43は見て取れる。
【0054】
その他の点では、この実施形態は、先の説明に相応し、従って、前記の説明および参照符号を有する相応する説明を参照されたい。
【符号の説明】
【0055】
1 トルクツール
2 把手
3 表示部
4 従動部
5 調節装置
6 圧縮ばね
7 調節体
8 ロック部材
9 ロック本体
10 保持システム
11 数字ローラー計数機構
12 数字ローラー
13 トルクツール2内における貫通開口部
14 グリップ端部
15 グリップ部片1
16 グリップ凹部
17 覗き窓
18 切替リング
19 切替ピン
20 制御軌道
21 ロック円盤
22 ばね要素
23 保持体構造部材
24 底部分
25 係止要素
26 ばねアーム
27 係止部収容部
28 案内部分
29 ソケット
30 ロック部本体
31 ロック部収容部
32 長手方向スリット
33 スリーブ部分
34 ロック本体9の案内要素
35 切替リング18の案内要素
36 内側周囲
37 リム
38 隆起部
39 窪み部
40 リム部分
41 リング部分
42 化粧リング
43 シンボル
44 ソケット部分
L 把手2の長手方向軸線
【国際調査報告】