(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】正極材料およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20240308BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240308BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563298
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 CN2022101702
(87)【国際公開番号】W WO2023093034
(87)【国際公開日】2023-06-01
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522152256
【氏名又は名称】北京当升材料科技股▲フン▼有限公司
【住所又は居所原語表記】BUILDING 21, ZONE 18 OF ABP, NO. 188 SOUTH 4TH RING ROAD WEST, FENGTAI DISTRICT, BEIJING 100160, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲競▼▲鵬▼
(72)【発明者】
【氏名】胡 ▲軍▼涛
(72)【発明者】
【氏名】金 玉▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】倪 ▲闖▼▲将▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 学全
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲亜▼▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 彦彬
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA08
5H050AA15
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB11
5H050DA02
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA14
5H050GA27
5H050HA06
5H050HA09
5H050HA10
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、正極材料と、その調製方法と、に関する。本発明による正極材料は、コアとシェルとを有する二次粒子の形態であり、コアの空隙率が、シェルの空隙率よりも大きい。二次粒子のコア中により大きな粒子間の空隙を形成することにより、本発明は、リチウムイオンのインターカレーション/脱インターカレーション中の体積変形による応力集中を軽減し、前記材料の安定性、レート特性、安全性、およびサイクル寿命を向上させる可能性がある。よって、前記材料は、エネルギー密度の高いリチウムイオン電池に特に好適である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアとシェルとを有する二次粒子の形態である、リチウムイオン電池のための正極材料であって、
コアの空隙率が、シェルの空隙率よりも大きい、正極材料。
【請求項2】
コアの空隙率が、50~90%であり、
シェルの空隙率が、10~50%であり、
シェルの空隙率に対するコアの空隙率の比率が、1.2よりも大きい、請求項1に記載の正極材料。
【請求項3】
コアが、孔径が50~500nmのマクロ孔を含み、コア中のマクロ孔の空隙率が、60~80%であり、
シェルが、孔径が50~500nmのマクロ孔を含み、シェル中のマクロ孔の空隙率が、20~40%である、請求項1に記載の正極材料。
【請求項4】
前記正極材料の孔容積が、正極材料に印加される圧力が増加するにしたがって増加し、
好ましくは、
前記正極材料中の、孔径が50~110nmの孔の、加圧下の孔容積が、PV
iとして記録され、
ここで、iは、0、1、2、3、および4であり、それぞれ、0トン、1.5トン、2.5トン、3.5トン、および4.5トンの圧力が正極材料に印加された時の前記孔の孔容積に対応し、
前記加圧下の孔容積が、1<PV
1/PV
0<1.5、1<PV
2/PV
0<4.0、1<PV
3/PV
0<6.0、および1<PV
4/PV
0<8の式を満足する、請求項1に記載の正極材料。
【請求項5】
前記正極材料の平均的な組成が、Li
0.6+δ[(Ni
x1Co
y1M
1-x1-y1D
η1)
z・(Ni
x2Co
y2M
1-x2-y2G
η2)
1-z]O
2、0≦δ≦0.6、0.6≦x1≦1、0.6≦x2≦1、0≦y1≦0.4、0≦y2≦0.4、0<z<1、0≦η1≦0.1、0≦η2≦0.1であり、
ここで、
Mは、MnおよびAlのうちの1つまたは2つであり、
Dは、Mo、Ti、Y、W、Ta、Nb、Cr、Sm、Sb、V、La、Ca、Hf、およびZrのうちの1つまたは複数であり、
Gは、Mo、Ta、Zn、Ti、Y、Zr、W、Nb、Cr、Sm、Al、V、La、Ca、Sb、Hf、Mg、およびBのうちの1つまたは複数である、請求項1に記載の正極材料。
【請求項6】
Dの濃度が、コアの中心からコアの表面に径方向に向かうにしたがって次第に減少し、
Gの濃度が、コアの表面からシェルの表面に径方向に向かうにしたがって次第に増加する、請求項5に記載の正極材料。
【請求項7】
コアとシェルとを有する二次粒子の形態である、リチウムイオン電池のための正極材料を調製するための方法であって、
(1)Ni、Co、およびMを含有する可溶塩の溶液と、Dを含有する分散液と、を第1共沈に供して、二次粒子のコアを形成する工程と、
(2)Ni、Co、およびMを含有する可溶塩の溶液と、Gを含有する分散液と、を工程(1)のコアの存在下に第2共沈に供して、コア上にシェルを形成することで、コアとシェルとを有する二次粒子を得る工程であって、
第1共沈は、第2共沈のpHよりも低いpHかつ第2共沈の温度よりも低い温度で実施され、
コアの空隙率は、シェルの空隙率よりも大きい、工程と、
(3)工程(2)で得られた二次粒子を300~900℃でリチウム原料物質に接触させて前記正極材料を得ることを含む、工程(2)で得られた二次粒子を正極材料に転化する工程であって、
前記リチウム原料物質は、Li
2O、LiOH、LiOH・H
2O、LiNO
3、およびLi
2CO
3のうちの1つまたは複数である、工程と、を含み、
ここで、
Mは、MnおよびAlのうちの1つまたは2つであり、
Dは、Mo、Ti、Y、W、Ta、Nb、Cr、Sm、Sb、V、La、Ca、Hf、およびZrのうちの1つまたは複数であり、
Gは、Mo、Ta、Zn、Ti、Y、Zr、W、Nb、Cr、Sm、Al、V、La、Ca、Sb、Hf、Mg、およびBのうちの1つまたは複数である、方法。
【請求項8】
Dの分散液の濃度または流速が、Dの濃度がコアの中心からコアの表面に径方向に向かうにしたがって次第に減少するように、工程(1)で制御され、
Gの分散液の濃度または流速が、Gの濃度がコアの表面からシェルの表面に径方向に向かうにしたがって次第に増加するように、工程(2)で制御される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(1)が、錯化剤の存在下、好ましくは5~12mol/Lの錯化剤の存在下に、第1共沈を実施することを含み、
工程(2)が、錯化剤の存在下、好ましくは0.1~5mol/Lの錯化剤の存在下に、第2共沈を実施することを含み、
好ましくは、錯化剤が、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、および硝酸アンモニウム、からなる群から選択される1つまたは複数である、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池に関し、特に、コアとシェルとを有する二次粒子の形態である正極材料と、その調製方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
電気車両の急速な発展に伴って、その走行距離、耐用年数、および安全性に関する要求は、ますます厳しくなっている。したがって、電気車両における重要な構成要素の1つである電池も、非常に大きな課題に直面している。電気車両のための電池の性能および安全性は、その正極材料と密接に関わっており、正極材料に研究が集中している。
LiNixCoyMn1-x-yO2等の三元材料は、広く使用されている正極材料の1つである。電池のエネルギー密度に関する要求が高まるにつれて、三元材料中のニッケルの含有量は、絶えず増加している。
【0003】
ニッケル含有量の多い正極材料は、容量が急速に減少することや、安全性に乏しいこと等の問題に直面する可能性がある。主な理由には、以下が含まれている可能性がある。
(1)ニッケル含有量の多い正極材料中での脱リチウム化の間、様々な相転移が起こり、これが、粒子中の内部応力および歪みに繋がる可能性があり、その結果、粒子が破損する、材料中の崩壊部位が増加する、構造が崩壊する、等が起こる。
(2)正極材料中のリチウムイオンの不均等な分布およびLi/Niの不規則化によって、リチウムイオンを輸送するチャネルが悪影響を受け、材料のサイクル寿命および安全性も悪影響を受ける。
(3)ニッケル含有量の多い正極材料を充電する際、表面のNi4+が電解質を酸化させ、ガスを発生させる可能性があり、これによって、電池の安全性に著しい影響がある。
【0004】
先行技術では様々な方法が提案され、ニッケル含有量の多い正極材料の内部結晶構造および界面の安定性を向上させることによって、材料のレート特性、サイクル特性、および安全性の向上を図ってきた。それらの方法には、被膜、不純物のドープ、粒径の制御等が含まれる可能性がある。
【0005】
中国特許第108269970号明細書は、勾配ドープした正極活物質に関し、界面の安定性が良好であることに加えて、大容量とサイクル特性の延長との間でバランスが取れている。中国特許第110422889号明細書は、勾配ドープした正極活物質に関し、大放電容量および良好なサイクル特性等の利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許第108269970号明細書
【特許文献2】中国特許第110422889号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気性能の向上は、先行技術において、正極材料の組成を改変することによって実現してきた。しかしながら、正極材料を別の方法で改変して、その性能をさらに向上させたいという要求が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記要求を満たすために、本発明では、コアとシェルとを有する二次粒子の形態である正極材料であって、コアの空隙率が、シェルの空隙率よりも大きい、正極材料と、その調製方法と、を提供する。前記構造によって、コア中の一次粒子同士の間の空隙が、シェル中の一次粒子同士の間の空隙よりも大きいことを、少なくとも確実にする。本発明の構造によって、正極材料の電池性能および安全性を効果的に向上させることができ、よって、エネルギー密度の高いリチウムイオン電池に特に好適である。さらに、正極材料を調製するための前記方法は、簡便である。
【0009】
ある態様において、本発明は、
コアとシェルとを有する二次粒子の形態である、リチウムイオン電池のための正極材料であって、
コアの空隙率が、シェルの空隙率よりも大きい、正極材料を提供する。
【0010】
他の態様において、本発明は、コアとシェルとを有する二次粒子の形態である、リチウムイオン電池のための正極材料を調製するための方法を提供し、本方法は、
【0011】
(1)Ni、Co、およびMを含有する可溶塩の溶液と、Dを含有する分散液と、を第1共沈に供して、二次粒子のコアを形成する工程と、
(2)Ni、Co、およびMを含有する可溶塩の溶液と、Gを含有する分散液と、を工程(1)のコアの存在下に第2共沈に供して、コア上にシェルを形成することで、コアとシェルとを有する二次粒子を得る工程であって、
第1共沈は、第2共沈のpHよりも低いpHかつ第2共沈の温度よりも低い温度で実施され、
コアの空隙率は、シェルの空隙率よりも大きい、工程と、
(3)工程(2)で得られた二次粒子を300~900℃でリチウム原料物質に接触させて前記正極材料を得ることを含む、工程(2)で得られた二次粒子を前記正極材料に転化する工程であって、
前記リチウム原料物質は、Li2O、LiOH、LiOH・H2O、LiNO3、およびLi2CO3のうちの1つまたは複数である、工程と、を含み、
ここで、
Mは、MnおよびAlのうちの1つまたは2つであり、
Dは、Mo、Ti、Y、W、Ta、Nb、Cr、Sm、Sb、V、La、Ca、Hf、およびZrのうちの1つまたは複数であり、
Gは、Mo、Ta、Zn、Ti、Y、Zr、W、Nb、Cr、Sm、Al、V、La、Ca、Sb、Hf、Mg、およびBのうちの1つまたは複数である。
【発明の効果】
【0012】
先行技術と比較して、本発明は、以下の有利な効果を有している。
【0013】
(1)正極材料の空隙率は、材料が多孔質の構造を有していることを意味し、これが、リチウムイオンの輸送を容易にし、結果として、レート特性等の電池性能を向上させる。
(2)正極材料中のコアの空隙率は、シェルの空隙率よりも大きいが、これは、コア中の一次粒子同士の間の空隙と、シェル中の一次粒子同士の間の空隙と、が異なることを示す。これにより、材料中の応力および歪みによって亀裂が生じる可能性が低減され、結果として、材料構造を安定化させるという目的が達成される。
(3)正極材料中のコアの空隙率は、シェルの空隙率よりも大きいが、これは、シェルが比較的高密度であることをさらに示す。これにより、材料の構造的な安定性が向上し、結果として、材料のサイクル特性および安全性が向上する。
(4)本発明の好ましい実施形態によると、正極材料中のいくつかの細孔は、圧力下で、圧力が増加するにしたがって、孔容積が増加する。これは、圧力によって正極材料中の閉じた細孔が開き、新たな細孔を露出するという事実に帰せられる可能性がある。これは、本発明による正極材料が、電池の作動中に生成される圧力によって正極材料が崩壊することから起こる問題を軽減し、結果として、電池のサイクル特性を向上させることができることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
添付の図面は、本発明をよりよく理解するために提供されており、本明細書の一部となっている。以下の詳細な記載とともに、本発明を説明するためものであり、その範囲を制限することを意図するものではない。
【
図2】実施例1の正極材料の局所的な断面のSEM画像を示す。
【
図3】実施例1の正極材料の局所的な断面のSEM画像を示す。
【
図4】実施例1、比較例1、および比較例2の正極材料を用いて作製したコインセルのサイクル特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施例以外は、本明細書中のパラメータの数値はすべて、「約」という用語が数値の前に実際にあるかどうかに関わらず、すべての場合において、「約」によって修飾されていると理解するべきである。
【0016】
一実施形態において、本発明は、コアとシェルとを有する二次粒子の形態である、リチウムイオン電池のための正極材料であって、コアの空隙率が、シェルの空隙率よりも大きい、正極材料に関する。
【0017】
明細書中で使用する「二次粒子」という用語は、複数の一次粒子の凝集によって形成される粒子を指す。一実施形態において、本発明による二次粒子は、球状の形状、または楕円体等のほぼ球状の形状を有する。ある変形例において、本発明による二次粒子は、1~100マイクロメートル等の、マイクロメートルオーダーの粒径を有する。
【0018】
通常、ニッケルを含有する正極材料は、薄片の形態であり、一次粒子内に蓄積する。一次粒子は、細長い形状を有しており、最大次元の大きさは、300~500nmである。
【0019】
一次粒子それ自体は、多孔質であり得る。同時に、一次粒子からなる二次粒子は、多孔質であり得る。二次粒子を構成する一次粒子同士の間には、空隙がある。したがって、全体として、正極材料は、多孔質の構造である。多孔質の構造は、マクロ孔(直径50~500nm)、メソ孔(20~50nm)、およびミクロ孔(2~20nm)を含む。本発明による正極材料の空隙率は、主にマクロ孔に起因する。このマクロ孔は、主に一次粒子同士の間の空隙である。
【0020】
本発明による正極材料の多孔質の構造は、「空隙率」によって定義することができる。本発明において、空隙率=(1-ρ1/ρ2)×100%であり、ここで、ρ1は、締固め密度であり、ρ2は、真密度である。締固め密度は、外力によって圧縮されて、正極材料中の一次粒子同士の間の空隙(マクロ孔)が塞がれた時の、正極材料の密度の測定値を指す。真密度は、完全に圧縮されて、すべての孔が除かれた時の、正極材料の密度の測定値を指す。締固め密度および真密度は、それぞれ、締固め密度計および真密度計を使用して直接的に測定することができる。
【0021】
本発明による締固め密度を試験するプロセスでは、正極材料は、30分間、20kNまで均一に加圧する。
【0022】
ある変形例において、コアの空隙率は、50~90%、好ましくは60~80%であり、シェルの空隙率は、10~50%、好ましくは20~40%である。好ましくは、シェルの空隙率に対するコアの空隙率の比率は、1.2よりも大きく、好ましくは1.5よりも大きく、例えば1.5~5.0、好ましくは2.0~2.5である。
【0023】
ある変形例において、コアは、孔径が50~500nmのマクロ孔を含み、コア中のマクロ孔の空隙率は、60~80%、好ましくは65~75%であり、シェルは、孔径が50~500nmのマクロ孔を含み、シェル中のマクロ孔の空隙率は、20~40%、好ましくは25~35%である。
【0024】
変形例において、正極材料の孔容積は、正極材料に印加される圧力が増加するにしたがって増加する。好ましくは、正極材料中の、孔径が50~110nmの孔の、加圧下の孔容積は、PViとして記録されてもよく、ここで、iは、0、1、2、3、および4であり、それぞれ、0トン、1.5トン、2.5トン、3.5トン、および4.5トンの圧力が正極材料に印加された時の孔の孔容積に対応する。加圧下の孔容積は、1<PV1/PV0<1.5、1<PV2/PV0<4.0、1<PV3/PV0<6.0、および1<PV4/PV0<8の式、好ましくは1<PV1/PV0<1.4、1<PV2/PV0<3.5、1<PV3/PV0<5.5、および1<PV4/PV0<7.5の式を満足する。
【0025】
本発明の正極材料の組成に特定の制限はない。本技術において一般に使用されている、ドープ型ニッケル含有正極材料であってもよい。変形例において、正極材料の平均的な組成は、Li0.6+δ[(Nix1Coy1M1-x1-y1Dη1)z・(Nix2Coy2M1-x2-y2Gη2)1-z]O2、0≦δ≦0.6、0.6≦x1≦1、0.6≦x2≦1、0≦y1≦0.4、0≦y2≦0.4、0<z<1、0≦η1≦0.1、0≦η2≦0.1であり、ここで、Mは、MnおよびAlのうちの1つまたは2つであり、Dは、Mo、Ti、Y、W、Ta、Nb、Cr、Sm、Sb、V、La、Ca、Hf、およびZrのうちの1つまたは複数であり、Gは、Mo、Ta、Zn、Ti、Y、Zr、W、Nb、Cr、Sm、Al、V、La、Ca、Sb、Hf、Mg、およびBのうちの1つまたは複数である。好ましくは、正極材料中、0.7≦x1<1、0.7≦x2<1、0<y1≦0.3、0<y2≦0.3、0<η1≦0.05、0<η2≦0.05、0.4≦z≦0.5であり、1-x1-y1-η1は0ではなく、1-x2-y2-η2は0ではない。
【0026】
ある変形例において、DおよびGは、それぞれ、正極材料のコアおよびシェル中、濃度勾配を有する。好ましくは、正極材料中、Dの濃度は、コアの中心からコアの表面に径方向に向かうにしたがって次第に減少し、Gの濃度は、コアの表面からシェルの表面に径方向に向かうにしたがって次第に増加する。正極材料中、ニッケル、コバルト、およびM(すなわち、マンガンおよび/またはアルミニウム)は、それぞれ濃度勾配を有していてもよい。例えば、マンガンの濃度は、コアの中心からコアの表面に径方向に向かうにしたがって次第に増加し、ニッケルの濃度は、コアの表面からシェルの表面に径方向に向かうにしたがって次第に減少する。
【0027】
さらなる実施形態において、本発明は、コアとシェルとを有する二次粒子の形態である、リチウムイオン電池のための正極材料を調製するための方法を提供し、本方法は、
(1)Ni、Co、およびMを含有する可溶塩の溶液と、Dを含有する分散液と、を第1共沈に供して、二次粒子のコアを形成する工程と、
(2)Ni、Co、およびMを含有する可溶塩の溶液と、Gを含有する分散液と、を工程(1)のコアの存在下に第2共沈に供して、コア上にシェルを形成することで、コアとシェルとを有する二次粒子を得る工程であって、
第1共沈は、第2共沈のpHよりも低いpHかつ第2共沈の温度よりも低い温度で実施され、
コアの空隙率は、シェルの空隙率よりも大きい、工程と、
(3)工程(2)で得られた二次粒子を300~1000℃でリチウム原料物質に接触させて前記正極材料を得ることによって、工程(2)で得られた二次粒子を前記正極材料に転化する工程であって、
リチウム原料物質は、Li2O、LiOH、LiOH・H2O、LiNO3、およびLi2CO3のうちの1つまたは複数である、工程と、を含み、
ここで、
Mは、MnおよびAlのうちの1つまたは2つであり、
Dは、Mo、Ti、Y、W、Ta、Nb、Cr、Sm、Sb、V、La、Ca、Hf、およびZrのうちの1つまたは複数であり、
Gは、Mo、Ta、Zn、Ti、Y、Zr、W、Nb、Cr、Sm、Al、V、La、Ca、Sb、Hf、Mg、およびBのうちの1つまたは複数である。
【0028】
ある変形例において、工程(1)は、pH9~12.5、好ましくは10~12で、第1共沈を実施することを含み、工程(2)は、pH10~13、好ましくは11~13で、第2共沈を実施することを含む。好ましくは、第1共沈におけるpHは、0.5~2だけ、好ましくは0.5~1だけ、第2共沈におけるpHよりも低い。好ましくは、工程(1)は、45~65℃、好ましくは50~60℃で、第1共沈を実施することを含み、工程(2)は、50~70℃、好ましくは55~65℃で、第2共沈を実施することを含む。
【0029】
ある変形例において、工程(1)は、錯化剤の存在下、第1共沈を実施することを含み、工程(2)は、錯化剤の存在下、第2共沈を実施することを含む。好ましくは、第1共沈に使用する錯化剤は、濃度が5~12mol/L、好ましくは7~10mol/Lであり、第2共沈に使用する錯化剤は、濃度が0.1~5mol/L、好ましくは0.5~4.5mol/Lである。好ましくは、第1共沈に使用する錯化剤は、濃度が、第2共沈に使用する錯化剤よりも高く、例えば、3.0~9.0mol/Lだけ、より高い。第1共沈に使用する錯化剤は、第2共沈に使用する錯化剤と同一であるか、第2共沈に使用する錯化剤とは異なっている。錯化剤は、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、および硝酸アンモニウム、からなる群から選択される1つまたは複数である。
【0030】
ある変形例において、ニッケルの可溶塩は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、および酢酸ニッケル、からなる群から選択される1つまたは複数である。コバルトの可溶塩は、硫酸コバルト、塩化コバルト、硝酸コバルト、および酢酸コバルト、からなる群から選択される1つまたは複数である。Mがマンガンであるとき、マンガンの可溶塩は、硫酸マンガン、塩化マンガン、硝酸マンガン、および酢酸マンガン、からなる群から選択される1つまたは複数である。Mがアルミニウムであるとき、アルミニウムの可溶塩は、アルミン酸ナトリウムおよびアルミナゾル、からなる群から選択される1つまたは複数である。
【0031】
ある変形例において、Dの分散液は、元素としてのDを含有するゾルであってもよく、Dの可溶塩を含有する溶液、例えば、Dの硫酸塩、塩酸塩、および硝酸塩、からなる群から選択される1つまたは複数の溶液、であってもよい。
【0032】
ある変形例において、Gの分散液は、元素としてのGを含有するゾルであってもよく、Gの可溶塩を含有する溶液、例えば、Gの硫酸塩、塩酸塩、および硝酸塩、からなる群から選択される1つまたは複数の溶液、であってもよい。
【0033】
変形例において、Dの分散液の濃度または流速は、Dの濃度がコアの中心からコアの表面に径方向に向かうにしたがって次第に減少するように、工程(1)で制御される。Gの分散液の濃度または流速は、Gの濃度がコアの表面からシェルの表面に径方向に向かうにしたがって次第に増加するように、工程(2)で制御される。好ましくは、Dの分散液は、工程(1)において、濃度を次第に減少させながら添加し、Gの分散液は、工程(2)において、濃度を次第に増加させながら添加する。好ましくは、Dの分散液は、工程(1)において、流速を次第に減少させながら添加し、Gの分散液は、工程(2)において、流速を次第に増加させながら添加する。
【0034】
変形例において、沈殿剤、酸化防止剤、および加工助剤のうちの1つまたは2つを、第1および第2共沈に添加する。沈殿剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウム、からなる群から選択される1つまたは複数である。酸化防止剤は、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム、および茶ポリフェノール類、からなる群から選択される1つまたは複数である。加工助剤は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、およびドデシル硫酸ナトリウム、からなる群から選択される1つまたは複数である。沈殿剤、酸化防止剤、および加工助剤の添加量は、当業者には周知である。
【0035】
変形例において、第1および第2共沈は、保護雰囲気下で実施してもよい。保護雰囲気は、窒素および不活性ガスからなる群から選択される1つまたは複数である。不活性ガスは、例えばアルゴンであってもよい。
【0036】
変形例において、工程(2)で得られた二次粒子を正極材料に転化する工程(3)は、工程(2)で得られた二次粒子を、リチウム原料物質とともに、300~1000℃、好ましくは500~900℃で、1~36時間、好ましくは6~24時間、か焼することを含んでいてもよい。好ましくは、リチウム原料物質は、Li2O、LiOH、LiOH・H2O、LiNO3、およびLi2CO3のうちの1つまたは複数、好ましくはLiOHまたはLiOH・H2Oである。好ましくは、か焼は、酸素を含有する雰囲気下、例えば、空気または酸素の存在下、実施する。
【0037】
本発明による正極材料は、リチウムイオン電池等の二次電池で使用してもよい。リチウムイオン電池は、負極、正極、セパレータ、および電解質を含んでいてもよい。
【0038】
正極は、正の集電体上に正極材料層を含み、正極材料層は、本発明による正極材料を含む。正極材料層は、結合剤および導電剤をさらに含んでいてもよい。結合剤は、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)等から選択される樹脂材料であってもよい。導電剤は、炭素系材料または導電性高分子を含んでいてもよい。炭素系材料は、例えば、グラファイト、アセチレンブラック、炭素繊維、ナノチューブ、グラフェン、およびカーボンブラックを含んでいてもよい。導電性高分子は、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、およびポリピロール等を含んでいてもよい。集電体は、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、銅、スズ、または当業者に知られている他の任意の導電材料、のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。いくつかの変形例において、集電体は、炭素で予備被覆されたアルミニウム箔等の、予備被覆されたものであってもよい。
【0039】
本発明の負極の組成に特定の制限はない。リチウム金属シート等の、本技術において一般に使用されている負極であってもよい。
【0040】
本発明のセパレータの組成に特定の制限はない。本技術において一般に使用されているセパレータであってもよい。例えば、セパレータは、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレン等のポリオレフィンからなる多孔質膜であってもよい。
【0041】
電解質は、非水電解質等の、従来の様々な電解質であってもよい。非水電解質は、電解質リチウム塩を含む非水溶媒によって形成される溶液である。当業者に知られている、従来の任意の非水電解質を使用してもよい。例えば、電解質は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、およびヘキサフルオロケイ酸リチウム(LiSiF6)、からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。非水溶媒は、線状エステル、環状エステル、およびこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。線状エステルは、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸メチルプロピル(MPC)、および炭酸ジプロピル(DPC)、からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。環状エステルは、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、および炭酸ビニレン(VC)、からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【実施例】
【0042】
本発明の特徴および利点は、以下の実施例から明らかである。実施例は、本発明について実証することを意図しており、本発明を制限することは意図していない。
【0043】
試験方法
1.走査型電子顕微鏡による試験
試料の形態は、走査型電子顕微鏡を使用して特徴付けした。具体的には、Hitachi High Tech Group製のSmartlab試験機を使用して試験を行い、拡大率は、3000倍および10000倍であった。
【0044】
2.締固め密度の試験
試料の締固め密度は、締固め密度計を使用して特徴付けした。具体的には、三菱化学(日本)製のMCP-PD51試験機を使用した。試料は、30分間、20kNまで均一に加圧し、試験結果は、試験用ソフトウェアから得た。
【0045】
3.真密度の試験
試料の真密度は、真密度計を使用して特徴付けした。具体的には、マイクロメリティックス(米国)製のAccuPyc 1340試験機を使用した。試験結果は、試験用ソフトウェアから得た。
【0046】
4.孔径および孔容積の試験
試料の吸着曲線は、マイクロメリティックス(米国)製のTri-star 3020比表面積分析器を使用して得た。試料は、加熱温度を300℃、脱気時間を120分間とする条件で前処理した。試料の孔径は、BJH法によって算出し、試料の孔容積は、BET法によって算出した。
【0047】
5.加圧下の孔容積の変化の試験
試料3gに、0トン、1.5トン、2.5トン、3.5トン、および4.5トンの圧力を印加し、圧縮試料を得た。孔径および孔容積の前記試験を各圧縮試料について繰り返し、孔径が90±10nmの細孔の孔容積、すなわち、PV0、PV1、PV2、PV3、およびPV4のデータを得た。PV0に対するPV1、PV2、PV3、およびPV4の比率をそれぞれ算出して、孔径が90±10nmの細孔の加圧下の孔容積の変化を特徴付けした。
【0048】
6.電池性能の試験
6.1 電池試料の作製
正極活物質の試料9.2gと、アセチレンブラック0.4gと、フッ化ポリビニリデン(PVDF)0.4gとを混合して、正極スラリーを生成した。正極スラリーをアルミニウム箔に塗布し、乾燥させ、100Mpaの圧力で加圧して、直径12mm、厚さ120μmの形状とし、その後、真空乾燥炉で、12時間、120℃で乾燥させて、正極板を得た。
【0049】
直径が17mm、厚さが1mmのLi金属シートを負極として使用した。厚さ25μmのポリエチレンの多孔質フィルムをセパレータとして使用した。1.0mol/LのLiPF6溶液を電解質として使用し、等量の炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)との混合物を溶媒として使用した。
【0050】
正極板、セパレータ、負極板、および電解質を使用して、2025コインセルを組み立てた。
【0051】
6.2 セル試料の性能評価
(1)初期の比放電容量
作製したコインセル試料を24時間置いておいた。試料は、電流密度20mA/gでカットオフ電圧4.3Vまで充電し、定電圧4.3Vで30分間、充電した。その後、電流密度20mA/gでカットオフ電圧3.0Vまで放電した。放電時間を記録した。セル試料の初期の比放電容量=電流密度×放電時間とした。
【0052】
(2)サイクル特性
セル試料を、電流密度20mA/g、カットオフ電圧3.0~4.3Vで、2回、充電し、放電して、セル試料の活性化を完了させた。活性化したセル試料を、電流密度1C、電圧範囲3.0~4.3V、45℃で、特定の数の充放電サイクル(例えば、80サイクル)に供した。上述したように、各サイクルの比放電容量は、各サイクルの電流密度および放電時間から得た。セル試料のサイクル特性は、高温での容量保持率によって特徴付けし、高温での容量保持率=特定のサイクルの比放電容量/初期の比放電容量×100%とした。
【0053】
比較例1
硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンとを、0.88:0.05:0.07のモル比で混合して、1.5mol/Lの遷移金属塩の水溶液を生成した。ナノZrO2を水と混合して、0.5mol/LのZrドーパントの溶液を生成した。遷移金属塩の水溶液と、Zrドーパントの溶液と、6.0mol/LのNaOHと、3.0mol/LのNH3・H2Oと、を攪拌下、反応器にゆっくりと添加した。N2雰囲気下、pH12.0、55℃で、共沈を実施した。70時間の反応後、総粒径(total particle size)14.2μmの二次粒子を得た。
【0054】
Li/(Ni+Co+Mn)=1.04の比率に対応して、二次粒子を水酸化リチウムと混合し、酸素雰囲気下、735℃で、15時間か焼して、比較用正極材料CC-1を得た。組成は、Li1.04Ni0.88Co0.05Mn0.06Zr0.01O2であった。
【0055】
比較用正極材料CC-1の性能を上述のように試験した。試験結果によると、比較用正極材料CC-1は、コア-シェル構造を有しておらず、空隙率は65%であった。比較用正極材料CC-1の加圧下の孔容積の変化は、90±10nmの孔径に対応する孔容積について、PV1/PV0=0.1、PV2/PV0=0.3、PV3/PV0=0.6、およびPV4/PV0=0.7であった。
【0056】
比較例1の比較用正極材料CC-1を使用して作製したコインセルのサイクル特性を、
図4に示した。
【0057】
比較例2
硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンとを、0.88:0.05:0.07のモル比で混合して、1.5mol/Lの遷移金属塩の水溶液を生成した。ナノZrO2を水と混合して、0.5mol/LのZrドーパントの溶液を生成した。遷移金属塩の水溶液と、Zrドーパントの溶液と、6.0mol/LのNaOHと、3.0mol/LのNH3・H2Oと、を攪拌下、反応器にゆっくりと添加した。N2雰囲気下、pH12.5、60℃で、第1共沈を実施した。40時間の第1共沈の後、N2雰囲気下、8.0mol/LのNH3・H2Oとともに、pH11.0、55℃で、第2共沈を実施した。30時間の第2共沈の後、総粒径14.1μmの二次粒子を得た。
【0058】
Li/(Ni+Co+Mn)=1.04の比率に対応して、二次粒子を水酸化リチウムと混合し、酸素雰囲気下、735℃で、15時間か焼して、比較用正極材料CC-2を得た。組成は、Li1.04Ni0.88Co0.05Mn0.06Zr0.01O2であった。
【0059】
比較用正極材料CC-2の性能を上述のように試験した。試験結果によると、比較用正極材料CC-2は、コア-シェル構造を有しており、走査型電子顕微鏡による試験の結果に示すように、コアの半径は1.5μmであった。孔径、空隙率、および孔容積の試験の結果によると、シェルの空隙率は71%であり、コアの空隙率は30%であった。比較用正極材料CC-1の加圧下の孔容積の変化は、90±10nmの孔径に対応する孔容積について、PV1/PV0=0.05、PV2/PV0=0.1、PV3/PV0=0.6、およびPV4/PV0=1.233であった。
【0060】
比較例2の比較用正極材料CC-2を使用して作製したコインセルのサイクル特性を、
図4に示した。
【0061】
比較例3
硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンとを、0.97:0.02:0.01のモル比で混合して、1.5mol/Lの遷移金属塩の水溶液(1)を生成した。硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンとを、0.94:0.02:0.04のモル比で混合して、1.5mol/Lの遷移金属塩の水溶液(2)を生成した。ナノNb2O5を水と混合して、0.5mol/LのNbドーパントの溶液(3)と、0.01mol/LのNbドーパントの溶液(4)と、を生成した。遷移金属塩の水溶液(2)を、遷移金属塩の水溶液(1)に、流速0.2L/hで添加して、遷移金属塩の混合水溶液を生成した。Nbドーパントの溶液(4)を、Nbドーパントの溶液(3)に、流速0.1L/hで添加して、Nbドーパントの混合溶液を生成した。同時に、遷移金属塩の混合水溶液と、Nbドーパントの混合溶液と、6.0mol/LのNaOHと、3.0mol/LのNH3・H2Oと、を攪拌下、反応器にゆっくりと添加した。N2雰囲気下、pH12.0、55℃で、第1共沈を実施した。第1共沈は、40時間実施した。
【0062】
硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンとを、0.86:0.05:0.09のモル比で混合して、1.5mol/Lの遷移金属塩の水溶液(5)を生成した。ナノZrO2を水と混合して、0.01mol/LのZrドーパントの溶液(6)と、1.0mol/LのZrドーパントの溶液(7)と、を生成した。Zrドーパントの溶液(7)を、Zrドーパントの溶液(6)に、流速0.1L/hで添加して、Zrドーパントの混合溶液を生成した。同時に、攪拌下、遷移金属塩の水溶液(2)と、Zrドーパントの混合溶液と、6.0mol/LのNaOHと、3.0mol/LのNH3・H2Oと、を第1共沈がちょうど終了した反応器にゆっくりと添加した。N2雰囲気下、pH12、55℃で、第2共沈を実施した。30時間の第2共沈の後、遷移金属塩の水溶液(5)の添加を停止した。さらに0.5時間の反応後、総粒径14.0μmの二次粒子を得た。
【0063】
Li/(Ni+Co+Mn)=1.04の比率に対応して、二次粒子を水酸化リチウムと混合し、酸素雰囲気下、735℃で、15時間か焼して、比較用正極材料CC-3を得た。組成は、Li[(Ni0.95Co0.02Mn0.02Nb0.01)0.014・(Ni0.875Co0.05Mn0.07Zr0.005)0.986]O2であった。比較用正極材料CC-3のコアにおいて、Nb含有量は、コアの中心からコアの表面に径方向に向かうにしたがって、モル含量0.02mol%から0まで減少していた。一方、Mn含有量は、コアの中心からコアの表面に径方向に向かうにしたがって、モル含量0.01mol%から0.03mol%まで増加していた。NbとMnとの総量は、0.03mol%のままであった。比較用正極材料CC-3のシェルにおいて、Zr含有量は、コアの表面からシェルの表面に径方向に向かうにしたがって、モル含量0から0.01mol%まで増加していた。一方、Ni含有量は、コアの表面からシェルの表面に径方向に向かうにしたがって、モル含量0.91mol%から0.85mol%まで減少していた。そのうえ、Mn含有量は、コアの表面からシェルの表面に径方向に向かうにしたがって、モル含量0.04mol%から0.08mol%まで増加していた。
【0064】
比較用正極材料CC-3の性能を上述のように試験した。試験結果によると、比較用正極材料CC-3は、コア-シェル構造を有しており、走査型電子顕微鏡による試験の結果に示すように、コアの半径は1.7μmであった。孔径、空隙率、および孔容積の試験の結果によると、シェルの空隙率は33%であり、コアの空隙率は33%であった。比較用正極材料CC-3の加圧下の孔容積の変化は、90±10nmの孔径に対応する孔容積について、PV1/PV0=0.1、PV2/PV0=0.3、PV3/PV0=0.6、およびPV4/PV0=0.8であった。
【0065】
比較例3の比較用正極材料CC-3を使用して作製したコインセルは、80サイクル後の容量保持率が91.5%であった。
【0066】
比較例4
N2雰囲気下、3.0mol/LのNH3・H2Oとともに、pH12.5、60℃で、第1共沈を実施し、N2雰囲気下、8.0mol/LのNH3・H2Oとともに、pH11.5、55℃で、第2共沈を実施したこと以外は、比較例3を繰り返して、比較用正極材料CC-4を得た。比較用正極材料CC-3と同一の化学組成を有していた。
【0067】
比較用正極材料CC-4の性能を上述のように試験した。試験結果によると、比較用正極材料CC-4は、コア-シェル構造を有しており、走査型電子顕微鏡による試験の結果に示すように、コアの半径は3.4μmであった。孔径、空隙率、および孔容積の試験の結果によると、シェルの空隙率は73%であり、コアの空隙率は32%であった。比較用正極材料CC-4の加圧下の孔容積の変化は、90±10nmの孔径に対応する孔容積について、PV1/PV0=0.05、PV2/PV0=0.1、PV3/PV0=0.6、およびPV4/PV0=1.2であった。
【0068】
比較例4の比較用正極材料CC-4を使用して作製したコインセルは、80サイクル後の容量保持率が89.2%であった。
【0069】
実施例1
硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンとを、0.97:0.02:0.01のモル比で混合して、1.5mol/Lの遷移金属塩の水溶液(1)を生成した。硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンとを、0.94:0.02:0.04のモル比で混合して、1.5mol/Lの遷移金属塩の水溶液(2)を生成した。ナノNb2O5を水と混合して、0.5mol/LのNbドーパントの溶液(3)と、0.1mol/LのNbドーパントの溶液(4)と、を生成した。遷移金属塩の水溶液(2)を、遷移金属塩の水溶液(1)に、流速0.2L/hで添加して、遷移金属塩の混合水溶液を生成した。Nbドーパントの溶液(4)を、Nbドーパントの溶液(3)に、流速0.1L/hで添加して、Nbドーパントの混合溶液を生成した。同時に、遷移金属塩の混合水溶液と、Nbドーパントの混合溶液と、6.0mol/LのNaOHと、8.0mol/LのNH3・H2Oと、を攪拌下、反応器にゆっくりと添加した。N2雰囲気下、pH11.0、53℃で、第1共沈を実施した。第1共沈は、60時間実施した。
【0070】
硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンとを、0.86:0.05:0.09のモル比で混合して、1.5mol/Lの遷移金属塩の水溶液(5)を生成した。ナノZrO2を水と混合して、0.01mol/LのZrドーパントの溶液(6)と、1.0mol/LのZrドーパントの溶液(7)と、を生成した。Zrドーパントの溶液(7)を、Zrドーパントの溶液(6)に、流速0.1L/hで添加して、Zrドーパントの混合溶液を生成した。同時に、攪拌下、遷移金属塩の水溶液(5)と、Zrドーパントの混合溶液と、6.0mol/LのNaOHと、3.0mol/LのNH3・H2Oと、を第1共沈がちょうど終了した反応器にゆっくりと添加した。N2雰囲気下、pH11.5、58℃で、第2共沈を実施した。40時間の第2共沈の後、遷移金属塩の水溶液(5)の添加を停止した。さらに0.5時間の反応後、総粒径14.0μmの二次粒子を得た。
【0071】
Li:(Ni+Co+Mn)=1.04の比率に対応して、二次粒子を水酸化リチウムと混合し、酸素雰囲気下、735℃で、15時間か焼して、正極材料C-1を得た。組成は、Li[(Ni0.95Co0.02Mn0.02Nb0.01)0.014・(Ni0.875Co0.05Mn0.07Zr0.005)0.986]O2であった。正極材料C-1のコアにおいて、Nb含有量は、コアの中心からコアの表面に径方向に向かうにしたがって、モル含量0.02mol%から0まで減少していた。一方、Mn含有量は、コアの中心からコアの表面に径方向に向かうにしたがって、モル含量0.01mol%から0.03mol%まで増加していた。NbとMnとの総量は、0.03mol%のままであった。正極材料C-1のシェルにおいて、Zr含有量は、コアの表面からシェルの表面に径方向に向かうにしたがって、モル含量0から0.01mol%まで増加していた。一方、Ni含有量は、コアの表面からシェルの表面に径方向に向かうにしたがって、モル含量0.91mol%から0.85mol%まで減少していた。そのうえ、Mn含有量は、コアの表面からシェルの表面に径方向に向かうにしたがって、モル含量0.04mol%から0.08mol%まで増加していた。
【0072】
正極材料C-1の性能を上述のように試験した。
【0073】
走査型電子顕微鏡による試験の結果を、
図1から
図3に示した。
図1から
図3に示すように、正極材料C-1は、コア-シェル構造を有する球状の粒子であった。コアの半径は1.7μmであり、シェルの外半径は5.3μmであった。コアとシェルとは、異なる空隙を有していた。
【0074】
孔径、空隙率、および孔容積の試験の結果によると、コアの空隙率は70%であり、シェルの空隙率は32%であった。正極材料C-1の加圧下の孔容積の変化は、90±10nmの孔径に対応する孔容積について、PV1/PV0=0.6、PV2/PV0=2.7、PV3/PV0=3.5、およびPV4/PV0=4.9であった。
【0075】
実施例1の正極材料C-1を使用して作製したコインセルのサイクル特性を、
図4に示した。
図4に示すように、比較例1および比較例2の比較用正極材料と比較して、実施例1の正極材料C-1は、同じサイクル数の後、容量保持率がより高かった。実施例1の正極材料C-1を使用して作製したコインセルは、80サイクル後の容量保持率が93.9%であった。
【0076】
実施例2
硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンとを、0.89:0.055:0.055のモル比で混合して、1.5mol/Lの遷移金属塩の水溶液(1)を生成した。ナノZrO2を水と混合して、0.5mol/LのZrドーパントの溶液(2)を生成した。ナノNb2O5を水と混合して、0.5mol/LのNbドーパントの溶液(3)を生成した。遷移金属塩の水溶液(1)と、Zrドーパントの溶液(2)と、Nbドーパントの溶液(3)と、6.0mol/LのNaOHと、8.0mol/LのNH3・H2Oと、を攪拌下、反応器にゆっくりと添加した。N2雰囲気下、pH11.5、54℃で、第1共沈を実施した。60時間の第1共沈の後、N2雰囲気下、2.5mol/LのNH3・H2Oとともに、pH12.5、58℃で、第2共沈を実施した。40時間の第2共沈の後、総粒径14.1μmの二次粒子を得た。
【0077】
Li:(Ni+Co+Mn)=1.04の比率に対応して、二次粒子を水酸化リチウムと混合し、酸素雰囲気下、735℃で、15時間か焼して、正極材料C-1を得た。組成は、Li1.05[(Ni0.95Co0.05Mn0.015Nb0.015)0.10・(Ni0.905Co0.05Mn0.035Zr0.01)0.90]O2であった。
【0078】
正極材料C-2の性能を上述のように試験した。
【0079】
走査型電子顕微鏡による試験の結果に示すように、正極材料C-2は、コア-シェル構造を有しており、コアの半径は1.5μmであり、シェルの外半径は5.6μmであった。コアとシェルとは、異なる空隙を有していた。
【0080】
孔径、空隙率、および孔容積の試験の結果に示すように、コアの空隙率は65%であり、シェルの空隙率は30%であった。正極材料C-2の加圧下の孔容積の変化は、90±10nmの孔径に対応する孔容積について、PV1/PV0=0.4、PV2/PV0=1.8、PV3/PV0=2.7、およびPV4/PV0=3.7であった。
【0081】
実施例2の正極材料C-2を使用して作製したコインセルは、80サイクル後の容量保持率が93.1%であった。
【0082】
実施例3
硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンとを、0.97:0.02:0.01のモル比で混合して、1.5mol/Lの遷移金属塩の水溶液(1)を生成した。硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンとを、0.94:0.02:0.04のモル比で混合して、1.5mol/Lの遷移金属塩の水溶液(2)を生成した。ナノNb2O5を水と混合して、2mol/LのNbドーパントの溶液(3)と、0.05mol/LのNbドーパントの溶液(4)と、を生成した。遷移金属塩の水溶液(2)を、遷移金属塩の水溶液(1)に、流速0.2L/hで添加して、遷移金属塩の混合水溶液を生成した。Nbドーパントの溶液(4)を、Nbドーパントの溶液(3)に、流速0.1L/hで添加して、Nbドーパントの混合溶液を生成した。同時に、遷移金属塩の混合水溶液と、Nbドーパントの混合溶液と、6.0mol/LのNaOHと、9.0mol/LのNH3・H2Oと、を攪拌下、反応器にゆっくりと添加した。N2雰囲気下、pH10.0、53℃で、第1共沈を実施した。第1共沈は、58時間実施した。
【0083】
硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンとを、0.89:0.055:0.055のモル比で混合して、1.5mol/Lの遷移金属塩の水溶液(5)を生成した。ナノZrO2を水と混合して、0.01mol/LのZrドーパントの溶液(6)と、2.0mol/LのZrドーパントの溶液(7)と、を生成した。Zrドーパントの溶液(7)を、Zrドーパントの溶液(6)に、流速0.1L/hで添加して、Zrドーパントの混合溶液を生成した。同時に、攪拌下、遷移金属塩の水溶液(5)と、Zrドーパントの混合溶液と、6.0mol/LのNaOHと、2.0mol/LのNH3・H2Oと、を第1共沈がちょうど終了した反応器にゆっくりと添加した。N2雰囲気下、pH11.5、56℃で、第2共沈を実施した。44時間の第2共沈の後、遷移金属塩の水溶液(5)の添加を停止した。さらに0.5時間の反応後、総粒径14.9μmの二次粒子を得た。
【0084】
Li:(Ni+Co+Mn)=1.05の比率に対応して、二次粒子を水酸化リチウムと混合し、酸素雰囲気下、740℃で、15時間か焼して、正極材料C-3を得た。組成は、Li1.05[(Ni0.95Co0.02Mn0.015Nb0.015)0.10・(Ni0.905Co0.05Mn0.035Zr0.01)0.90]O2であった。正極材料C-3のコアにおいて、Nb含有量は、コアの中心からコアの表面に径方向に向かうにしたがって、モル含量0.02mol%から0.01mol%まで減少していた。一方、Mn含有量は、コアの中心からコアの表面に径方向に向かうにしたがって、モル含量0.01mol%から0.02mol%まで増加していた。NbとMnとの総量は、0.015mol%のままであった。正極材料C-3のシェルにおいて、Zr含有量は、コアの表面からシェルの表面に径方向に向かうにしたがって、モル含量0から0.02mol%まで増加していた。一方、Ni含有量は、コアの表面からシェルの表面に径方向に向かうにしたがって、モル含量0.93mol%から0.88mol%まで減少していた。そのうえ、Mn含有量は、コアの表面からシェルの表面に径方向に向かうにしたがって、モル含量0.02mol%から0.05mol%まで増加していた。
【0085】
正極材料C-3の性能を上述のように試験した。
【0086】
走査型電子顕微鏡による試験の結果に示すように、正極材料C-3は、コア-シェル構造を有しており、コアの半径は3.5μmであり、シェルの外半径は4.0μmであった。コアとシェルとは、異なる空隙を有していた。
【0087】
孔径、空隙率、および孔容積の試験の結果に示すように、コアの空隙率は72%であり、シェルの空隙率は32%であった。正極材料C-3の加圧下の孔容積の変化は、90±10nmの孔径に対応する孔容積について、PV1/PV0=0.5、PV2/PV0=2.3、PV3/PV0=3.1、およびPV4/PV0=5.2であった。
【0088】
実施例3の正極材料C-3を使用して作製したコインセルは、80サイクル後の容量保持率が93.1%であった。
【0089】
実施例4
硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンとを、0.87:0.02:0.11のモル比で混合して、1.5mol/Lの遷移金属塩の水溶液(1)を生成した。硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンとを、0.84:0.02:0.14のモル比で混合して、1.5mol/Lの遷移金属塩の水溶液(2)を生成した。ナノNb2O5を水と混合して、2.0mol/LのNbドーパントの溶液(3)と、0.05mol/LのNbドーパントの溶液(4)と、を生成した。遷移金属塩の水溶液(2)を、遷移金属塩の水溶液(1)に、流速0.2L/hで添加して、遷移金属塩の混合水溶液を生成した。Nbドーパントの溶液(4)を、Nbドーパントの溶液(3)に、流速0.1L/hで添加して、Nbドーパントの混合溶液を生成した。同時に、遷移金属塩の混合水溶液と、Nbドーパントの混合溶液と、6.0mol/LのNaOHと、10.0mol/LのNH3・H2Oと、を攪拌下、反応器にゆっくりと添加した。N2雰囲気下、pH10.8、52℃で、第1共沈を実施した。第1共沈は、60時間実施した。
【0090】
硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンとを、0.60:0.05:0.35のモル比で混合して、1.5mol/Lの遷移金属塩の水溶液(5)を生成した。ナノZrO2を水と混合して、0.01mol/LのZrドーパントの溶液(6)と、2.0mol/LのZrドーパントの溶液(7)と、を生成した。Zrドーパントの溶液(7)を、Zrドーパントの溶液(6)に、流速0.1L/hで添加して、Zrドーパントの混合溶液を生成した。同時に、攪拌下、遷移金属塩の水溶液(5)と、Zrドーパントの混合溶液と、6.0mol/LのNaOHと、4.0mol/LのNH3・H2Oと、を第1共沈がちょうど終了した反応器にゆっくりと添加した。N2雰囲気下、pH11.5、58℃で、第2共沈を実施した。60時間の第2共沈の後、遷移金属塩の水溶液(5)の添加を停止した。さらに1.0時間の反応後、総粒径16.1μmの二次粒子を得た。
【0091】
Li:(Ni+Co+Mn)=1.04の比率に対応して、二次粒子を水酸化リチウムと混合し、酸素雰囲気下、780℃で、15時間か焼して、正極材料C-4を得た。組成は、Li1.04[(Ni0.85Co0.02Mn0.115Nb0.015)0.18・(Ni0.675Co0.05Mn0.255Zr0.02)0.82]O2であった。正極材料C-3のコアにおいて、Nb含有量は、コアの中心からコアの表面に径方向に向かうにしたがって、モル含量0.04mol%から0まで減少していた。一方、Mn含有量は、コアの中心からコアの表面に径方向に向かうにしたがって、モル含量0.06mol%から0.1mol%まで増加していた。NbとMnとの総量は、0.1mol%のままであった。正極材料C-4のシェルにおいて、Zr含有量は、コアの表面からシェルの表面に径方向に向かうにしたがって、モル含量0から0.04mol%まで増加していた。一方、Ni含有量は、コアの表面からシェルの表面に径方向に向かうにしたがって、モル含量0.85mol%から0.6mol%まで減少していた。そのうえ、Mn含有量は、コアの表面からシェルの表面に径方向に向かうにしたがって、モル含量0.1mol%から0.31mol%まで増加していた。
【0092】
正極材料C-4の性能を上述のように試験した。
【0093】
走査型電子顕微鏡による試験の結果に示すように、正極材料C-4は、コア-シェル構造を有しており、コアの半径は4.5μmであり、シェルの外半径は3.5μmであった。コアとシェルとは、異なる空隙を有していた。
【0094】
孔径、空隙率、および孔容積の試験の結果に示すように、シェルの空隙率は32%であり、コアの空隙率は72%であった。正極材料C-4の加圧下の孔容積の変化は、90±10nmの孔径に対応する孔容積について、PV1/PV0=0.7、PV2/PV0=2.9、PV3/PV0=3.8、およびPV4/PV0=5.5であった。
【0095】
実施例4の正極材料C-4を使用して作製したコインセルは、80サイクル後の容量保持率が92.5%であった。
【0096】
最後に、前記例は、本発明の技術的な解決手法を実証するためだけに使用しており、制限するために使用してはいないことが理解される必要がある。前記例を参照して本発明を詳細に説明したが、前記例に概要を記載した技術的な解決手法を改変してもよく、記載した技術的な特徴の一部または全部を他に代替してもよいことを、当業者は理解するであろう。そのような改変または代替によって、対応する技術的な解決手法は、本発明の様々な実施形態の技術的な解決手法の範囲から実質的に離れることはない。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアとシェルとを有する二次粒子の形態である、リチウムイオン電池のための正極材料であって、
コアの空隙率が、シェルの空隙率よりも大き
く、
ドープ型ニッケル含有正極材料であり、
コアの空隙率が、50~90%であり、
シェルの空隙率が、10~50%であり、
シェルの空隙率に対するコアの空隙率の比率が、1.2よりも大きい、正極材料。
【請求項2】
コアが、孔径が50~500nmのマクロ孔を含み、コア中のマクロ孔の空隙率が、60~80%であり、
シェルが、孔径が50~500nmのマクロ孔を含み、シェル中のマクロ孔の空隙率が、20~40%である、請求項1に記載の正極材料。
【請求項3】
前記正極材料の孔容積が、正極材料に印加される圧力が増加するにしたがって増加し、
好ましくは、
前記正極材料中の、孔径が50~110nmの孔の、加圧下の孔容積が、PV
iとして記録され、
ここで、iは、0、1、2、3、および4であり、それぞれ、0トン、1.5トン、2.5トン、3.5トン、および4.5トンの圧力が正極材料に印加された時の前記孔の孔容積に対応し、
前記加圧下の孔容積が、1<PV
1/PV
0<1.5、1<PV
2/PV
0<4.0、1<PV
3/PV
0<6.0、および1<PV
4/PV
0<8の式を満足する、請求項1に記載の正極材料。
【請求項4】
前記正極材料の平均的な組成が、Li
0.6+δ[(Ni
x1Co
y1M
1-x1-y1D
η1)
z・(Ni
x2Co
y2M
1-x2-y2G
η2)
1-z]O
2、0≦δ≦0.6、0.6≦x1≦1、0.6≦x2≦1、0≦y1≦0.4、0≦y2≦0.4、0<z<1、0≦η1≦0.1、0≦η2≦0.1であり、
ここで、
Mは、MnおよびAlのうちの1つまたは2つであり、
Dは、Mo、Ti、Y、W、Ta、Nb、Cr、Sm、Sb、V、La、Ca、Hf、およびZrのうちの1つまたは複数であり、
Gは、Mo、Ta、Zn、Ti、Y、Zr、W、Nb、Cr、Sm、Al、V、La、Ca、Sb、Hf、Mg、およびBのうちの1つまたは複数である、請求項1に記載の正極材料。
【請求項5】
Dの濃度が、コアの中心からコアの表面に径方向に向かうにしたがって次第に減少し、
Gの濃度が、コアの表面からシェルの表面に径方向に向かうにしたがって次第に増加する、請求項
4に記載の正極材料。
【請求項6】
コアとシェルとを有する二次粒子の形態である、リチウムイオン電池のための正極材料
であって、ドープ型ニッケル含有正極材料である正極材料を調製するための方法であって、
(1)Ni、Co、およびMを含有する可溶塩の溶液と、Dを含有する分散液と、を第1共沈に供して、二次粒子のコアを形成する工程と、
(2)Ni、Co、およびMを含有する可溶塩の溶液と、Gを含有する分散液と、を工程(1)のコアの存在下に第2共沈に供して、コア上にシェルを形成することで、コアとシェルとを有する二次粒子を得る工程であって、
第1共沈は、第2共沈のpHよりも低いpHかつ第2共沈の温度よりも低い温度で実施され、
コアの空隙率は、シェルの空隙率よりも大き
く、コアの空隙率が、50~90%であり、シェルの空隙率が、10~50%であり、シェルの空隙率に対するコアの空隙率の比率が、1.2よりも大きい、工程と、
(3)工程(2)で得られた二次粒子を300~900℃でリチウム原料物質に接触させて前記正極材料を得ることを含む、工程(2)で得られた二次粒子を正極材料に転化する工程であって、
前記リチウム原料物質は、Li
2O、LiOH、LiOH・H
2O、LiNO
3、およびLi
2CO
3のうちの1つまたは複数である、工程と、を含み、
ここで、
Mは、MnおよびAlのうちの1つまたは2つであり、
Dは、Mo、Ti、Y、W、Ta、Nb、Cr、Sm、Sb、V、La、Ca、Hf、およびZrのうちの1つまたは複数であり、
Gは、Mo、Ta、Zn、Ti、Y、Zr、W、Nb、Cr、Sm、Al、V、La、Ca、Sb、Hf、Mg、およびBのうちの1つまたは複数である、方法。
【請求項7】
Dの分散液の濃度または流速が、Dの濃度がコアの中心からコアの表面に径方向に向かうにしたがって次第に減少するように、工程(1)で制御され、
Gの分散液の濃度または流速が、Gの濃度がコアの表面からシェルの表面に径方向に向かうにしたがって次第に増加するように、工程(2)で制御される、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
工程(1)が、錯化剤の存在下、好ましくは5~12mol/Lの錯化剤の存在下に、第1共沈を実施することを含み、
工程(2)が、錯化剤の存在下、好ましくは0.1~5mol/Lの錯化剤の存在下に、第2共沈を実施することを含み、
好ましくは、錯化剤が、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、および硝酸アンモニウム、からなる群から選択される1つまたは複数である、請求項
6に記載の方法。
【国際調査報告】