(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】水蒸気分解によりエチレンおよび/または他のオレフィンを製造するための方法およびプラント
(51)【国際特許分類】
C07C 4/00 20060101AFI20240311BHJP
C07C 11/04 20060101ALI20240311BHJP
C07C 11/02 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C07C4/00
C07C11/04
C07C11/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023547829
(86)(22)【出願日】2022-02-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2022053626
(87)【国際公開番号】W WO2022171894
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521329305
【氏名又は名称】リンデ ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】523112002
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,ベネディクト
(72)【発明者】
【氏名】ブレーム,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】プルナー,クレメンス
(72)【発明者】
【氏名】レイネケ,ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】カマン,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ガルベ,ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】ケック,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シーテカット,カール
(72)【発明者】
【氏名】シュペルバー,アクセル
(72)【発明者】
【氏名】ヴェック,アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC26
4H006BD81
4H006BD84
(57)【要約】
水蒸気分解によりエチレンおよび/または他のオレフィンを製造する方法(100)であって、1つまたは複数の分解装置(10)は、パラフィン含有供給原材料が充填され、粗ガスは1つまたは複数の分解装置(10)から回収され、粗ガスは、C2冷媒およびC3冷媒を用いて粗ガス圧縮(22)および熱分離(23)を含む処理(20)に少なくとも部分的に供され、粗ガスコンプレッサー(CGC)は、粗ガス圧縮(22)のために使用され、エチレン冷媒は、C2冷媒コンプレッサー(ERC)を用いて圧縮され、およびプロピレン冷媒は、C3冷媒コンプレッサー(PRC)を用いて圧縮される、方法。この場合、粗ガスコンプレッサー(CGC)は、2つの連続コンプレッサートレインを含み、その前記コンプレッサートレインにおいては、C2冷媒コンプレッサー(ERC)およびC3冷媒コンプレッサー(PRC)はそれぞれ、少なくとも部分的に電気駆動装置(M)を用いて稼働され、該電気駆動装置は、少なくとも部分的に同一の性能特徴を有し、構造上同一の可変速度駆動装置として提供され、それぞれ周波数変換器(FU)を介して提供される。本発明は、対応するプラントにも関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気分解によりエチレンおよび/または他のオレフィンを製造する方法(100)であって、1つまたは複数の分解装置(10)は、パラフィン含有供給原材料が充填され、粗ガスは1つまたは複数の分解装置(10)から回収され、前記粗ガスは、C2冷媒およびC3冷媒を用いて粗ガス圧縮(22)および熱分離(23)を含む処理(20)に少なくとも部分的に供され、粗ガスコンプレッサー(CGC)は、前記粗ガス圧縮(22)のために使用され、前記C2冷媒は、C2冷媒コンプレッサー(ERC)を用いて圧縮され、および前記C3冷媒は、C3冷媒コンプレッサー(PRC)を用いて圧縮され、前記粗ガスコンプレッサー(CGC)は、2つの連続コンプレッサートレインを含むこと、ならびに、これらのコンプレッサートレインのそれぞれにおいて、前記C2冷媒コンプレッサー(ERC)および前記C3冷媒コンプレッサー(PRC)は、それぞれ、少なくとも部分的に電気駆動装置(M)を用いて稼働され、該電気駆動装置(M)は、少なくとも部分的に同一の性能特徴を有し、特に、それぞれ、構造上同一の可変速度駆動装置として提供され、および周波数変換器(FU)を介してそれぞれ動力を供給されることを特徴とする方法。
【請求項2】
廃熱を用いて、超高圧蒸気が提供され、前記粗ガスコンプレッサー(RGC)、前記C2冷媒コンプレッサー(ERC)および前記C3冷媒コンプレッサー(PRC)を駆動するために使用されることなしに、他の方法ステップの熱源として、少なくとも部分的に搬出および/または使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記超高圧蒸気は、搬出および/または前記意図される使用のために、適合ユニット(50)中で、圧力および/または温度に関して適合される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記適合ユニット(50)で得られた凝縮熱を使用する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
高圧蒸気ボイラーを用いることなしに稼働される、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
4つの周波数変換器(FU)が提供され、これらの2つまたは4つは、いつでも電気駆動装置を提供するために使用され、特に、5つ目の周波数変換器は、冗長性の理由のために直ぐに使用できる状態に保持される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記4つの周波数変換器(FU)および前記5つ目の周波数変換器(FU)は、周波数変換器配置の一部としてそれぞれ提供され、その周波数変換器配置を有する前記5つ目の周波数変換器(FU)は、前記方法の実行中は稼働可能状態で保持される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記周波数変換器配置はそれぞれ、入力変圧器ならびに入力および出力を備え、前記入力および出力は、切替装置を介して電流源および前記それぞれの駆動装置に接続される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記粗ガスコンプレッサー(CGC)、前記C2冷媒コンプレッサー(ERC)および前記C3冷媒コンプレッサー(PRC)は、地表面に設置される、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
中間冷却は、外部冷却を用いて、少なくとも一時的に前記粗ガスコンプレッサーにおいて実施される、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記外部冷却は、前記C2冷媒および/または前記C3冷媒の少なくとも一部を用いて、前記中間冷却のために提供される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記中間冷却は、冷却水温度および/または水注入が不十分である、および/または機能していないと認識される場合に、外部冷却を用いて実施される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記粗ガスコンプレッサー(CGC)、前記C2冷媒コンプレッサー(ERC)および前記C3冷媒コンプレッサー(PRC)の電気駆動装置の駆動出力は、エチレン冷媒が使用されるエチレン冷媒回路と、プロピレン冷媒が使用されるプロピレン冷媒回路との間の冷却出力を変えることにより、および/またはプロピレン冷却を前記粗ガスコンプレッサー(CGC)の追加の中間冷却として組み込むことにより、調節される、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
パラフィン含有供給原材料が充填され、粗ガスを製造するように構成された1つまたは複数の分解装置(10)を有する水蒸気分解によりエチレンおよび/または他のオレフィンを製造するように構成されたプラントであって、前記プラントは、C2冷媒およびC3冷媒を用いて、前記粗ガスを、圧縮(22)および熱分離(23)を含む処理(20)に少なくとも部分的に供するように構成され、粗ガスコンプレッサー(CGC)は、前記粗ガス圧縮(22)のために提供され、C2冷媒コンプレッサー(ERC)は、C2冷媒圧縮のために提供され、およびC3冷媒コンプレッサー(PRC)は、C3冷媒圧縮のために提供され、前記粗ガスコンプレッサー(CGC)は、2つの連続コンプレッサートレインを含むこと、ならびに、それぞれの場合で、前記粗ガスコンプレッサー(CGC)、前記C2冷媒コンプレッサー(ERC)および前記C3冷媒コンプレッサー(PRC)の電気駆動装置(M)の前記2つのコンプレッサートレインの駆動出力の少なくとも一部をそれぞれの場合に提供し、これは、少なくとも部分的に同一の性能特徴を有し、特に、構造上同一の可変速度駆動装置として提供され、およびそれぞれ、周波数変換器(FU)を介して提供可能であることを特徴とするプラント。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成される、請求項14に記載のプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれの独立請求項のプリアンブルに記載の水蒸気分解によりエチレンおよび/または他のオレフィンを製造するための方法およびプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素の水蒸気分解のための方法およびプラントは、例えば、ウルマン工業化学百科事典(非特許文献1)、2009年4月15日オンライン版、DOI 10.1002/14356007.a10_045.pub2中の「エチレン」の項に記載されている。水蒸気分解は、主に、エチレンおよびプロピレンなどの短鎖オレフィン、ブタジエンなどのジオレフィン、または芳香族化合物を得るために使用されるが、このような化合物を得ることに限定されない。
【0003】
水蒸気分解では、成分混合物(分解ガスまたは粗ガスとも呼ばれる)が得られ、これは、目的とする個別の成分を得るために好適な製造シーケンスに供される。典型的には、当該製造シーケンスの第1の部分(前端部)では、重質化合物が存在する場合にはこれが除去され、その後、いわゆる粗ガス圧縮、酸性ガスの除去、および乾燥が行われる。前端部での処理に続いて、精留が行われ、ここで、エチレンまたはC2冷媒およびプロピレンまたはC4冷媒を用いた熱分離工程で留分が形成され、必要に応じ更に分離される。詳細のために、ウルマン工業化学百科事典(非特許文献1)中の前述の項「エチレン」、特に、節5.3.2.1、「前端部」、および節5.3.2.2、「炭化水素精留部」の参照がなされる。
【0004】
本発明の場合にも使用できる、当該精留の一実施形態では、精留は、最初に、3個の炭素原子およびより高い沸点化合物を有する炭化水素から、メタンおよび水素などの2個の炭素原子およびより低い沸点成分を有する炭化水素を分離することを含む。このようなステップは通常、脱エタン化とも呼ばれ、当該精留の構成は、「脱エタン塔第1」法または「前端脱エタン塔」法と呼ばれる。
【0005】
脱エタン化によりガス状で得られた2個の炭素原子およびより低い沸点成分を有する炭化水素の留分は、さらなる分離に提供され、そこで、2個の炭素原子を有する炭化水素は、一緒に含有されているより低い沸点成分から分離される。このようなステップは、脱メタン化とも呼ばれる。「脱エタン塔第1」法または「前端脱エタン塔」法では、従って、脱メタン化は、脱エタン化の下流にある
【0006】
別法では、脱エタン化および脱メタン化のステップは、逆順にも実施できる。従って、これは、「脱エタン塔第1」法または「前端脱メタン塔」法と呼ばれる。さらなる別法は、前記技術文献中に記載されている。
【0007】
当該処理シーケンスの一部として、コンプレッサーが種々の位置で使用される。特に、粗ガス圧縮は、分解ガスコンプレッサー(CGC)を用いて実施され、いわゆるエチレン冷媒コンプレッサー(ERC)およびいわゆるプロピレン冷媒コンプレッサー(ERC)は、エチレンまたはC2冷媒およびプロピレンまたはC3冷媒が供給される場合に使用される。これらの用語は、以降で使用されるが、場合により、エタンはまた、エチレン冷媒コンプレッサーで、および場合により、プロパンはプロピレン冷媒コンプレッサーで圧縮されることもある。熱分離の製品留分は、いわゆる製品コンプレッサーと呼ばれるさらなるコンプレッサーを用いて圧縮に供され得る。
【0008】
欧州特許出願公開第3730592号明細書(特許文献1)は、オレフィン合成プラントについて記述している。これは、供給流を前処理するように構成された供給前処理部、および分解ガス流を生成するための希釈剤の存在下で、入力流中の炭化水素を分解するように構成された1つまたは複数の熱分解反応器を含む熱分解部を含む。分解ガス流から熱を回収して、分解ガス流をクエンチし、分解ガス流から一定の成分を除去し、分解ガス流を圧縮し、それにより、圧縮分解ガス流を得るように構成された一次精留および圧縮部が提供される。代わりにまたは追加して、圧縮分解ガス流から製品オレフィン流を分離するように構成された製品分離部が提供され得る。このオレフィン合成プラントは、従来のオレフィン合成プラントに比べて、オレフィン合成プラントおよび/またはそれらの1つまたは複数の部分により必要とされるエネルギーおよび/または正味エネルギーのより多くの部分が、非炭素系および/または再生可能エネルギー源および/または電気により得られるように構成される。
【0009】
本発明の目的は、当該方法およびプラントを改善することであり、特に、プラント現場でそれぞれのエネルギー範囲に適合可能であるように構成することでもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3730592号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】ウルマン工業化学百科事典、2009年4月15日オンライン版、DOI 10.1002/14356007.a10_045.pub2
【発明の概要】
【0012】
この目的は、それぞれの独立請求項の特徴を有する水蒸気分解によるエチレンおよび/または他のオレフィンを製造するための方法およびプラントにより達成される。それぞれの実施形態は、従属請求項および以下の記述の主題である。
【0013】
総じて、本発明は、水蒸気分解によるエチレンおよび/または他のオレフィンの製造方法を提案し、この方法では、対流および放射帯を備えた通常の方式により具現化できる1つまたは複数の分解装置、すなわち、分解炉に、ナフサまたはエタンまたはこれらの混合物または当該技術分野において既知または好都合な任意の他の供給原材料などのパラフィン含有供給原材料が充填され、また、この方法では、粗ガスが1つまたは複数の分解装置から回収され、この粗ガスは、少なくとも部分的に、エタンおよび/またはエチレン冷媒(C2冷媒)およびプロパンおよび/またはプロピレン冷媒(C3冷媒)を用いて、粗ガス圧縮および熱分離を含む処理に供せられる。言及した冷媒は、特に、ガス混合物を凝縮させるために、分離塔のサンプ蒸発器を沸騰させるために、または対応するヘッド冷却器において使用できる。
【0014】
「エタンおよび/またはエチレン冷媒」または「C2冷媒」または「プロパンおよび/またはプロピレン冷媒」または「C3冷媒」が本明細書で言及される場合、それらは、言及された成分の対応する純粋な物質または混合物であり得る。それぞれの場合で、他の成分はまた、典型的には、10%未満の小量で含有され得る。
【0015】
粗ガスコンプレッサーは、本発明の範囲内で、粗ガスを圧縮するために使用され、C2冷媒は、C2冷媒コンプレッサーを用いて圧縮され、C3冷媒は、C3冷媒コンプレッサーを用いて圧縮される。以降で例示により説明される当該方法のさらなる詳細のために、冒頭で前述した先行技術に明示的に参照がなされる。前述のように、C2冷媒コンプレッサーおよびC3冷媒コンプレッサーはまた、C2冷媒コンプレッサー(ERC)またはC3冷媒コンプレッサー(PRC)として簡略形で呼ばれる。
【0016】
本発明では、粗ガスコンプレッサーは、2つの連続コンプレッサートレインを有し、それぞれのこれらのコンプレッサートレイン、C2冷媒コンプレッサーおよびC3冷媒コンプレッサーは、それぞれの場合で、少なくとも部分的に電気駆動装置を用いて稼働される。誤解を避けるために、特定のコンプレッサーまたはコンプレッサートレインが電気駆動装置を用いて、「それぞれ」駆動されるという記載は、1つのコンプレッサートレインは1つ目の電気駆動装置により駆動され、他のコンプレッサートレインは2つ目の電気駆動装置により駆動され、C2冷媒コンプレッサーは、3つ目の電気駆動装置により駆動され、およびC3冷媒コンプレッサーは、4つ目の電気駆動装置により駆動されることが指摘される。本発明では、1つの粗ガスコンプレッサーのコンプレッサートレイン、特に上流コンプレッサートレインは、特に2つのコンプレッサー段階を含み、他のコンプレッサートレインは、特に3つのコンプレッサー段階を含む。より一般的には、コンプレッサートレインは、特に異なる数のコンプレッサー段階を含む。本発明によりわかるように、本発明により提案される動作モードは、例えば、API 612などに従った凝縮蒸気タービンを使用することにより、先行技術による既知の駆動装置に比べて特別な利点を提供する。下記の従来の動作モードの記述は、多少なりとも本発明を限定する意図を有するものではないが、このような従来の動作モードでは、例えば、廃熱を使用する分解装置が提供され、分解装置は、超高圧蒸気(HHP蒸気)、即ち、90~130バールの圧力レベルの蒸気および450~540℃のレベルの温度を備え、粗ガスコンプレッサーを駆動するために使用される。超高圧蒸気は通常、粗ガスコンプレッサーの駆動タービンの高圧部を介して膨張させられる。蒸気のかなりの部分は、その後、高圧蒸気(HP蒸気)、すなわち、35~50バールの圧力レベルで、250~400℃の温度レベルの蒸気として抽出され、C2冷媒コンプレッサーおよびC3冷媒コンプレッサーの駆動タービンに供給される。さらなる消費装置の要求に応じて、中圧蒸気(MP蒸気)または低圧蒸気(LP蒸気)、すなわち、15~25バールの圧力レベルで、200~250℃の温度レベル、または3~8バールの圧力レベルで、150~190℃の温度レベルの蒸気も生成される。総エネルギーバランスを高めるために、追加の蒸気が高圧蒸気発生器から、または外部源から導入され得る。この場合、バランス調整のための蒸気の搬出は、プラント境界域を介しても提供される。
【0017】
ちょうど今述べた従来の方法のエネルギーバランス調整は、3つの大きな消費装置、すなわち、粗ガスコンプレッサー、C2冷媒コンプレッサーおよびC3冷媒コンプレッサーの電力需要から生じる制約を考慮して行われる必要がある。これは通常、エネルギーバランス調整のために超高圧および高圧蒸気需要の接続を切り離すために、対応する蒸気ボイラーを含む高圧蒸気発生器の導入を必要とする。これは、構造的複雑さを増大する。加えて、蒸気の凝縮熱がほとんど未使用のまま残され、一方、代わりに、タービンからの廃棄蒸気は通常、装置の観点から高い出費を伴う冷却水により凝縮される。超高圧および高圧蒸気発生器は、多くの二酸化炭素放出を伴う;コンプレッサーを駆動するための代替(必要に応じて、カーボンニュートラル)エネルギーの組み込みは通常、提供されないか、または可能ではない。
【0018】
本発明の使用は、電気駆動装置の使用から生ずるコンプレッサーの動作の間の極めて大きい独立性のために、蒸気および二酸化炭素バランス調整に関して、エチレン製造または他のオレフィン製造の柔軟化をもたらす。特に、粗ガス圧縮における高圧蒸気利用と、それに続く、冷媒の圧縮における高圧蒸気利用との堅固な接続は、本発明の場合には、最早、柔軟化に対する障害にならない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態による方法を、簡略化された工程系統図の形式で示し、全体を100により表す。
【
図3】本発明のさらなる実施形態による配置300を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の特に好ましい実施形態では、超高圧蒸気は、依然として、1つまたは複数の分解装置からの廃熱を用いて供給される。しかし、これは、好都合にも、粗ガスコンプレッサー、C2冷媒コンプレッサーおよびC3冷媒コンプレッサーを駆動するために使用されることなしに、プラントから少なくとも部分的に搬出され、かつ/または少なくとも部分的に他の方法ステップのための熱源として使用される。
【0021】
本発明の特に好ましい実施形態では、または本発明により提案される手段の代わりとして、上述の搬出および/または意図される使用のために、超高圧蒸気が圧力および/または温度の観点で、適合ユニット、いわゆる、減圧ステーションで適合させることができる。適合ユニットでは、特に、生じた全ての凝縮熱を他の目的のために、例えば、地域熱供給ネットワークへの供給のために使用できる。
【0022】
特に好ましい実施形態では、本発明により使用される方法は、高圧蒸気ボイラーを用いることなしに、実施できる。換言すれば、本発明の使用は、当該高圧蒸気ボイラーを省略可能にし、それにより、化石エネルギー担体に対する需要が低減され、従って、二酸化炭素バランスが改善される。原理的に、本発明の場合には、どの時点でもカーボンニュートラルエネルギーを取り込むことが可能であり、二酸化炭素排出量に関してかなりの柔軟化をもたらす。前述のように、本発明による粗ガスコンプレッサーは、2つの連続コンプレッサートレイン、すなわち、個別に駆動可能な構造単位を含み、粗ガスコンプレッサーおよびC2冷媒コンプレッサーおよびC3冷媒コンプレッサーのそれぞれのコンプレッサートレインは、それぞれ、少なくとも部分的に同一の性能特徴を有する電気駆動装置により稼働される。好都合にも、駆動装置はまた、実質的に構造上同一であり得る。このように、共通部品の数は増大し、当該プラントの作成は、標準化概念の意義の範囲内で、顕著に改善される。
【0023】
少なくとも部分的に同一の性能特徴を有する電気駆動装置は、特に、構造上同一の可変速度駆動装置として提供され、これらはそれぞれ、周波数変換器を介して提供できる。このように、回転速度において、同時に柔軟性を有する対応する標準化が達成できる。特に、4つの周波数変換器をここで提供でき、それらの2つ、あるいは4つ全てを使用して、プラントが動作中のいつの時点でも電気駆動装置を提供できる。冗長性の理由、特に、必要なメンテナンスおよび/または修復作業のために、5つ目の周波数変換器を直ぐに使用できる状態に保持できる。
【0024】
本発明の使用は、構造上同一の装置、特に、駆動装置を予備装置とすることを可能にし、特に、これらの装置およびメンテナンスに必要な(共通)部品の保管が単純化される。本発明は、構造上同一の駆動装置の使用が、やはり可能であり、それに伴う困難および技術者の間での関連する懸念にも関わらず好都合であるという知識に基づいている。従って、本発明は特に、当該プラントの作成および動作における改善を達成し、本発明または本発明の実施形態により提案される手段は、先行技術から明らかではなかった。
【0025】
粗ガスコンプレッサー、エチレンおよびプロピレンコンプレッサーは、かなりの性能差異を示すので、駆動装置の性能の整合は自明ではない。さらに、エチレンコンプレッサーとプロピレンコンプレッサーの性能の比率は、特に、供給原材料および工程実施(特に、5個またはそれを超える炭素原子を有する、より重い炭化水素の分離)に応じて、変動する。粗ガスコンプレッサーは通常、5段階を含み、これは、分割が難しいように見える。個別の段階の高圧条件は高温に繋がる可能性があり、従って、焼き付きのリスクに繋がる可能性があるので、粗ガスコンプレッサーの圧力条件は限られた程度にのみ変化させることができる。本発明の実施形態の知識がなければ、当業者は、当該解決策を考慮することを中止するであろう。
【0026】
本発明の実施形態の場合、特に、粗ガスコンプレッサーは、上記で説明した方式で2つおよび3つの段階に分割できる。また、所与の制限の範囲内での圧力条件の変更、さらに、本発明の実施形態により提供されるように、特に、外部冷却の使用が可能である。これは次に、特に、それにより使用されるプロピレンコンプレッサーの望ましい負荷にも繋がり、従って、プロピレンおよびエチレンコンプレッサーの整合にも繋がる。
【0027】
構造上同一の可変速度駆動装置の使用はまた、本発明または本発明の対応する実施形態の知識なしには明らかではない。理由は、出力のみではなく、トルクもさらに整合される必要があるためである。これは、コンプレッサーは類似の速度で回転するか、または歯車機構(速度とトルクの変換)を使用しなければならないことを意味する。トルクの整合なしでは、モーターは、たとえ同じ出力でも、標準化できない。従って、本発明の場合、特に、1つまたは複数の歯車機構が使用される。
【0028】
本発明の実施形態の利点は、追加の周波数変換器の使用に伴う、特に、冗長性n+1の提供からもたらされる。本発明の他の実施形態では、これは、異なる周波数変換器および/または駆動装置でも達成できるが、その場合、効率、予備部品の在庫および寸法という観点での対応する調整を受け入れることになる。追加の周波数変換器は、ここで、定期的に使われる4つの周波数変換器のうち最大のものに対応する必要があり、負荷整合がなければ、これは、必然的に4つの駆動装置が同一の場合の平均出力より大きくなるであろう。
【0029】
4つの周波数変換器は、完全冗長性(2x100%)を有する対として導入でき、各対の2つの周波数変換器は、部分的負荷動作で同時に(2x50%)または切り替えモード(交互に)において全負荷(それぞれの場合で、1x100%)で稼働できる。2つの独立した供給ネットワークの場合には、周波数変換器は、好都合にも、2つのネットワークに連結できる。この冗長性概念は、供給ネットワークの電圧降下/故障が予測され、プラントの可用性を高めるために切り替え時間が最小化されるべき場合に、特に、好適である。
【0030】
周波数変換器の性能限界を超える強力な駆動装置に対して、3x50%冗長性概念も想定でき、この場合、同時に稼働される2つの周波数変換器は、100%の総出力を供給する。
【0031】
本発明による方法の一実施形態では、4つの周波数変換器および5つ目の周波数変換器は、周波数変換器配置の一部としてそれぞれ提供され、5つ目の周波数変換器の周波数変換器配置は、方法の実行中は稼働状態、特に、ホットスタンバイ状態、即ち、少なくとも部分的に電圧を印加した状態で保持され、これについては下記で説明される。
【0032】
一実施形態では、周波数変換器配置はそれぞれ、入力変圧器、特にVSD変圧器および入力および出力を含み、入力および出力(特に入力変圧器を介した入力)は、切替装置により電流源およびそれぞれの駆動装置に接続される。出力での切替装置の選択的起動により、それぞれの周波数変換器は、任意ではなく特定の駆動装置に選択的に接続できる。
【0033】
現行基準による可変速度電気駆動装置の、故障まで、または修復間の平均稼働時間(平均故障間隔、MTBFまたは平均修復時間、MTTR)は約10年である。しかし、3つ全てのコンプレッサー(CGC、ERCおよびPRC)は、プラント稼働のために同時に必要であるので、可用性が低減し(例えば、信頼性ブロック図を使って)、そのため、業界基準である5年間の中断のないプラント稼働は実現が困難である。しかし、駆動装置の標準化により、いずれにしても必要になるときがある主要予備部品を、「コールドスタンバイ」または「ホットスタンバイ」の状態で導入することが可能になる。従って、万一故障の場合には、対応する装置の間で(大きな)遅延なしに切り替えることが可能であることは有利である。その結果、MTBFまたはMTTRは、本発明の場合には、例えば、最大20年まで延長できる。
【0034】
説明された本発明の実施形態では、好都合には周辺装置(冷却装置、変圧器、切替装置)を含む5つ目の周波数変換器は、従って、4つの既存の周波数変換器のそれぞれに対し冗長性として使用できるように、直ぐに使用および相互接続できる状態で導入される。切り替えのために、装置の一時的シャットダウンまたは停止を考慮に入れることができる(「コールドスタンバイ」)。あるいは、切り替えは、稼働中に実施でき、その場合、駆動トルクの中断は最小化され得る。500ms未満の切り替え時間は、技術的に可能であり、望ましい;制御技術の観点では、切り替えシーケンスは、必要に応じ、コンプレッサーのポンプ保護制御(耐サージ制御装置に対するフィードフォワードシグナル)に接続され得る。
【0035】
本発明の実施形態では、対応する変圧器および周波数変換器は、特に、いわゆる「主要予備部品」であり、すなわち、それらは、当該プラントの導入の間に既に提供されており、稼働中に、継続的に準備状態で保持されている。それらは、従って、投資コスト中に含まれる。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態で提供されるように、これらの予備部品が倉庫にないが、その代わりに「取り付けられた」予備部品として提供される場合、それらは、極めて短時間で、例えば、上述の500ms以内に使用できる状態にある。
【0037】
また、本発明の特定の利点は、テーブル基礎を必要とする蓄電器が必要でないので、粗ガスコンプレッサー、C2冷媒コンプレッサー、およびC3冷媒コンプレッサーを地表面に設置できることである。
【0038】
好都合にも、中間冷却は、外部冷却を用いて、例えば、プロパンまたはプロピレン冷気(C3冷却)を用いることにより、少なくとも一時的に、粗ガスコンプレッサーにおいて実施できる。原理的には、この中間冷却は、各段階の前に実施できる。特に、第4段階の予備冷却は、結果として、一方で、第1から第3段階の同じ性能、および他方で、第4と第5段階の同じ性能が達成され、同時に、許容できない高い出口温度が回避されるので、特に好ましい。この状況では、上記の例で説明したものとは異なる、駆動装置に対するコンプレッサー段階の分布が提供できる。これは、記載した標準化の意義の範囲内で特に好都合である。本発明の場合、中間冷却のための外部冷却は、対応する冷媒がそれぞれの冷媒回路から組み合わされることで、C2冷媒および/またはC3冷媒の少なくとも一部を用いて提供できる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態では、上述の中間冷却は、冷却水温度および/または水注入が不十分である、および/または機能していないと認識される場合に(のみ)、持続的に、または外部冷却を用いて、実施できる。これにより、操業コストの最適化が可能になる。
【0040】
本発明の場合、出力要件を可能な限り均一化するために、C2冷媒が使用されるC2冷媒回路と、C3冷媒が使用されるC3冷媒回路との間の冷却出力を変えることにより、および/または説明したように、粗ガスコンプレッサーの追加の中間冷却としてC3冷却を組み込むことにより、粗ガスコンプレッサー、C2冷媒コンプレッサーおよびC3冷媒コンプレッサーの電気駆動装置の駆動出力を調節することが、特に好ましい実施形態において想定されている。
【0041】
本発明はまた、パラフィン含有供給原材料を充填し、粗ガスを得るように構成された1つまたは複数の分解装置を有する、水蒸気分解によるエチレンおよび/または他のオレフィンの製造のためのプラントにまで及び、プラントは、C2冷媒およびC3冷媒を用いて粗ガスを少なくとも部分的に粗ガス圧縮および熱分離を含む処理に供するように構成され、粗ガスコンプレッサーは、粗ガス圧縮のために提供され、C2冷媒コンプレッサーは、C2冷媒を圧縮するために提供され、およびC3冷媒コンプレッサーは、C3冷媒を圧縮するために提供される。本発明では、粗ガスコンプレッサー(CGC)は、2つの連続コンプレッサートレインを含み、粗ガスコンプレッサー、C2冷媒コンプレッサーおよびC3冷媒コンプレッサーの2つのコンプレッサートレインの駆動出力の少なくとも一部を提供するために、いくつかの電気駆動装置が提供され、該電気駆動装置は少なくとも部分的に同一の性能特性を有し、特に、同一に構成された可変速度駆動装置として提供され、周波数変換器(FU)を介してそれぞれ提供される。
【0042】
対応するプラントおよび有利なその実施形態の特徴および利点に対し、参照は、本発明により提案された方法に関する上記説明およびその実施形態に対し、明示的になされる。理由は、これらは、プラントおよびその実施形態に対する対応により、同様に適用されるためである。これは、特に、別の実施形態において上記で説明したように、方法を実施するように設計されるプラントにおける場合でも同じことが言える。
【0043】
本発明は、本発明の実施形態を例示する添付図面を参照しながら、以下でより詳細に記述される。
【0044】
図1は、本発明の実施形態による方法を、簡略化された工程系統図の形式で示し、全体を100により表す。以下の説明は、方法および対応する方法ステップに関するが、それらは、対応するプラントおよびその構成要素に対しても同様に当てはまる。
方法100では、1つまたは複数の分解装置(分解炉)10が使用され、これは、供給原材料A(ならびに蒸気、ここでは別途図示されていない)が充填され、それから、粗ガスBが回収される。
粗ガスBは、ここでは、全体として20と示された処理に少なくとも部分的に供され、これは、それ自体既知である方法によって、熱分解油Cの分離を伴うクエンチングステップ21および圧縮(粗ガス圧縮)ステップ22およびC2冷媒およびC3冷媒を用いた熱分離ステップ23を含む。クエンチングステップ21では、蒸気Dが提供され、1つまたは複数の分解装置10中に再循環できる。圧縮ステップ22では、熱分解ガソリンEが分離でき、例えば、クエンチングステップ21中に再循環できる。クエンチングステップ21では、3個以上の炭素原子を有する炭化水素Fがさらに分離でき、対応する処理ステップ24中に移され、そこで、対応する炭化水素Gも熱分離ステップ23から供給される。熱分離ステップ23では、エタン流Hが提供でき、1つまたは複数の分解炉10中に再循環できる。エチレン流Iは製品として実現できる。特に、メタンおよび水素を含む、いわゆるテールガスKが排出される。全体としてLで表される、さらなる製品流が、さらなる処理ステップ24で提供される。
図1の下段領域で記号により示されるように、CGCにより表されるコンプレッサーは、粗ガス圧縮ステップ22のために使用され、エチレン冷媒は、ERCにより表されるC2冷媒コンプレッサーを用いて圧縮され、プロピレン冷媒は、PRCで表されるC3冷媒コンプレッサーを用いて圧縮される。粗ガスコンプレッサーCGC、C2冷媒コンプレッサーERCおよびC3冷媒コンプレッサーPRCは、それぞれ、少なくとも部分的に1つまたは複数の電気駆動装置Mを用いて稼働される。
より正確には、ここで示す本発明の実施形態では、粗ガスコンプレッサーCGCは、2つの連続コンプレッサートレイン(別途図示していない)を含み、粗ガスコンプレッサーCGC、冷媒コンプレッサーERCおよびC3冷媒コンプレッサーPRCのコンプレッサートレインのそれぞれは、それぞれの場合で、少なくとも部分的に同一の性能特徴を有する電気駆動装置を用いて稼働される。前記電気駆動装置は、ここでは、構造上同一の可変速度駆動装置として提供でき、それぞれ、周波数変換器FUを介して提供できる。全体として、ここで示した例では、5つの周波数変換器FUが提供され、これらの2つ(対を形成した全負荷交互稼働)または4つ(対を形成した部分負荷稼働)は、いつでも電気駆動装置Mを提供するために使用され、1つは、冗長性の理由のために直ぐに使用できる状態に保持される。ここで図示した例では、周波数変換器FUは、図示した方式で、異なるネットワークまたは動力源N1、N2に接続される。本発明は、ここで図示した例に限定されない。
この方法で提供される蒸気Dまたは他の蒸気は、特に、超高圧蒸気を含み、これは、粗ガスコンプレッサーRGC、C2冷媒コンプレッサーERCおよびC3冷媒コンプレッサーPRCを駆動するために使用されることなしに、他の方法ステップのための熱源として少なくとも部分的に搬出、および/または使用される。搬出および/または意図された使用のための圧力および/または温度の観点では、超高圧蒸気は、ここで一般に50で示した適合ユニットに対して適合され得る。適合ユニット50で蓄積している凝縮熱は、説明したように使用できる。
図1に示す方法100で同様に使用できる本発明の実施形態の全てに対し、上記説明に、再度、明示的に参照がなされる。
【0045】
図2は、本発明の実施形態による配置200を示す。それぞれの場合で、複数の好ましくは同一の構成要素が図示されているため、対応する参照記号はそれぞれ1回のみ示されている。
入力変圧器(特に、VSD変圧器)は、切替装置2を介して、バスバー1に接続され、各入力変圧器は、ここでは4で表される周波数変換器により、特に、中間回路(VSI)において、DC電圧を備えた間接的変換器として具体化される。それぞれの駆動装置は、再度、切替装置5を介して接続される。図の左側に示される切替装置2aおよび5aおよび入力変圧器3aおよび周波数変換器4aの群は、駆動装置Mが対応する切替装置5を介して元々接続していた周波数変換器から切り離された場合、切替装置6の1つを使って、駆動装置Mの1つに選択的に接続できる。切替装置2aは、稼働中閉じたままでよく、そのために、入力変圧器3aおよび周波数変換器4aは、「ホットスタンバイ」状態を保持できる。
【0046】
図3は、本発明のさらなる実施形態による配置300を示す。ここでも同様に、それぞれの場合で、複数の好ましくは同一の構成要素が図示されているため、対応する参照番号はそれぞれ1回のみ与えられている。
図2に示す配置200と対照的に、
図3に示される配置300では、異なる冗長性概念が示され、この場合、それぞれの駆動装置Mは、別の選択肢として、切替装置2および5、入力変圧器3および周波数変換器4(または2a、5a、3a、および4a、左側の駆動装置M上にのみ表記)の2つのトレインの1つに接続できる。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれの独立請求項のプリアンブルに記載の水蒸気分解によりエチレンおよび/または他のオレフィンを製造するための方法およびプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素の水蒸気分解のための方法およびプラントは、例えば、ウルマン工業化学百科事典(非特許文献1)、2009年4月15日オンライン版、DOI 10.1002/14356007.a10_045.pub2中の「エチレン」の項に記載されている。水蒸気分解は、主に、エチレンおよびプロピレンなどの短鎖オレフィン、ブタジエンなどのジオレフィン、または芳香族化合物を得るために使用されるが、このような化合物を得ることに限定されない。
【0003】
水蒸気分解では、成分混合物(分解ガスまたは粗ガスとも呼ばれる)が得られ、これは、目的とする個別の成分を得るために好適な処理シーケンスに供される。典型的には、当該処理シーケンスの第1の部分(前端部)では、重質化合物が存在する場合にはこれが除去され、その後、いわゆる粗ガス圧縮、酸性ガスの除去、および乾燥が行われる。前端部での処理に続いて、精留が行われ、ここで、エチレンまたはC2冷媒およびプロピレンまたはC4冷媒を用いた熱分離工程で留分が形成され、必要に応じ更に分離される。詳細のために、ウルマン工業化学百科事典(非特許文献1)中の前述の項「エチレン」、特に、節5.3.2.1、「前端部」、および節5.3.2.2、「炭化水素精留部」の参照がなされる。
【0004】
本発明の場合にも使用できる、当該精留の一実施形態では、精留は、最初に、3個の炭素原子およびより高い沸点化合物を有する炭化水素から、メタンおよび水素などの2個の炭素原子およびより低い沸点成分を有する炭化水素を分離することを含む。このようなステップは通常、脱エタン化とも呼ばれ、当該精留の構成は、「脱エタン塔第1」法または「前端脱エタン塔」法と呼ばれる。
【0005】
脱エタン化によりガス状で得られた2個の炭素原子およびより低い沸点成分を有する炭化水素の留分は、さらなる分離に提供され、そこで、2個の炭素原子を有する炭化水素は、一緒に含有されているより低い沸点成分から分離される。このようなステップは、脱メタン化とも呼ばれる。「脱エタン塔第1」法または「前端脱エタン塔」法では、従って、脱メタン化は、脱エタン化の下流にある
【0006】
別法では、脱エタン化および脱メタン化のステップは、逆順にも実施できる。従って、これは、「脱エタン塔第1」法または「前端脱メタン塔」法と呼ばれる。さらなる別法は、前記技術文献中に記載されている。
【0007】
当該処理シーケンスの一部として、コンプレッサーが種々の位置で使用される。特に、粗ガス圧縮は、分解ガスコンプレッサー(CGC)を用いて実施され、いわゆるエチレン冷媒コンプレッサー(ERC)およびいわゆるプロピレン冷媒コンプレッサー(ERC)は、エチレンまたはC2冷媒およびプロピレンまたはC3冷媒が供給される場合に使用される。これらの用語は、以降で使用されるが、場合により、エタンはまた、エチレン冷媒コンプレッサーで、および場合により、プロパンはプロピレン冷媒コンプレッサーで圧縮されることもある。熱分離の製品留分は、いわゆる製品コンプレッサーと呼ばれるさらなるコンプレッサーを用いて圧縮に供され得る。
【0008】
欧州特許出願公開第3730592号明細書(特許文献1)は、オレフィン合成プラントについて記述している。これは、供給流を前処理するように構成された供給前処理部、および分解ガス流を生成するための希釈剤の存在下で、入力流中の炭化水素を分解するように構成された1つまたは複数の熱分解反応器を含む熱分解部を含む。分解ガス流から熱を回収して、分解ガス流をクエンチし、分解ガス流から一定の成分を除去し、分解ガス流を圧縮し、それにより、圧縮分解ガス流を得るように構成された一次精留および圧縮部が提供される。代わりにまたは追加して、圧縮分解ガス流から製品オレフィン流を分離するように構成された製品分離部が提供され得る。このオレフィン合成プラントは、従来のオレフィン合成プラントに比べて、オレフィン合成プラントおよび/またはそれらの1つまたは複数の部分により必要とされるエネルギーおよび/または正味エネルギーのより多くの部分が、非炭素系および/または再生可能エネルギー源および/または電気により得られるように構成される。
【0009】
本発明の目的は、当該方法およびプラントを改善することであり、特に、プラント現場でそれぞれのエネルギー範囲に適合可能であるように構成することでもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3730592号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】ウルマン工業化学百科事典、2009年4月15日オンライン版、DOI 10.1002/14356007.a10_045.pub2
【発明の概要】
【0012】
この目的は、それぞれの独立請求項の特徴を有する水蒸気分解によるエチレンおよび/または他のオレフィンを製造するための方法およびプラントにより達成される。それぞれの実施形態は、従属請求項および以下の記述の主題である。
【0013】
総じて、本発明は、水蒸気分解によるエチレンおよび/または他のオレフィンの製造方法を提案し、この方法では、対流および放射帯を備えた通常の方式により具現化できる1つまたは複数の分解装置、すなわち、分解炉に、ナフサまたはエタンまたはこれらの混合物または当該技術分野において既知または好都合な任意の他の供給原材料などのパラフィン含有供給原材料が充填され、また、この方法では、粗ガスが1つまたは複数の分解装置から回収され、この粗ガスは、少なくとも部分的に、エタンおよび/またはエチレン冷媒(C2冷媒)およびプロパンおよび/またはプロピレン冷媒(C3冷媒)を用いて、粗ガス圧縮および熱分離を含む処理に供せられる。言及した冷媒は、特に、ガス混合物を凝縮させるために、分離塔のサンプ蒸発器を沸騰させるために、または対応するヘッド冷却器において使用できる。
【0014】
「エタンおよび/またはエチレン冷媒」または「C2冷媒」または「プロパンおよび/またはプロピレン冷媒」または「C3冷媒」が本明細書で言及される場合、それらは、言及された成分の対応する純粋な物質または混合物であり得る。それぞれの場合で、他の成分はまた、典型的には、10%未満の小量で含有され得る。
【0015】
粗ガスコンプレッサーは、本発明の範囲内で、粗ガスを圧縮するために使用され、C2冷媒は、C2冷媒コンプレッサーを用いて圧縮され、C3冷媒は、C3冷媒コンプレッサーを用いて圧縮される。以降で例示により説明される当該方法のさらなる詳細のために、冒頭で前述した先行技術に明示的に参照がなされる。前述のように、C2冷媒コンプレッサーおよびC3冷媒コンプレッサーはまた、C2冷媒コンプレッサー(ERC)またはC3冷媒コンプレッサー(PRC)として簡略形で呼ばれる。
【0016】
本発明では、粗ガスコンプレッサーは、2つの連続コンプレッサートレインを有し、それぞれのこれらのコンプレッサートレイン、C2冷媒コンプレッサーおよびC3冷媒コンプレッサーは、それぞれの場合で、少なくとも部分的に電気駆動装置を用いて稼働される。誤解を避けるために、特定のコンプレッサーまたはコンプレッサートレインが電気駆動装置を用いて、「それぞれ」駆動されるという記載は、1つのコンプレッサートレインは1つ目の電気駆動装置により駆動され、他のコンプレッサートレインは2つ目の電気駆動装置により駆動され、C2冷媒コンプレッサーは、3つ目の電気駆動装置により駆動され、およびC3冷媒コンプレッサーは、4つ目の電気駆動装置により駆動されることが指摘される。本発明では、1つの粗ガスコンプレッサーのコンプレッサートレイン、特に上流コンプレッサートレインは、特に2つのコンプレッサー段階を含み、他のコンプレッサートレインは、特に3つのコンプレッサー段階を含む。より一般的には、コンプレッサートレインは、特に異なる数のコンプレッサー段階を含む。本発明によりわかるように、本発明により提案される動作モードは、例えば、API 612などに従った凝縮蒸気タービンを使用することにより、先行技術による既知の駆動装置に比べて特別な利点を提供する。下記の従来の動作モードの記述は、多少なりとも本発明を限定する意図を有するものではないが、このような従来の動作モードでは、例えば、廃熱を使用する分解装置が提供され、分解装置は、超高圧蒸気(HHP蒸気)、即ち、90~130バールの圧力レベルの蒸気および450~540℃のレベルの温度を備え、粗ガスコンプレッサーを駆動するために使用される。超高圧蒸気は通常、粗ガスコンプレッサーの駆動タービンの高圧部を介して膨張させられる。蒸気のかなりの部分は、その後、高圧蒸気(HP蒸気)、すなわち、35~50バールの圧力レベルで、250~400℃の温度レベルの蒸気として抽出され、C2冷媒コンプレッサーおよびC3冷媒コンプレッサーの駆動タービンに供給される。さらなる消費装置の要求に応じて、中圧蒸気(MP蒸気)または低圧蒸気(LP蒸気)、すなわち、15~25バールの圧力レベルで、200~250℃の温度レベル、または3~8バールの圧力レベルで、150~190℃の温度レベルの蒸気も生成される。総エネルギーバランスを高めるために、追加の蒸気が高圧蒸気発生器から、または外部源から導入され得る。この場合、バランス調整のための蒸気の搬出は、プラント境界域を介しても提供される。
【0017】
ちょうど今述べた従来の方法のエネルギーバランス調整は、3つの大きな消費装置、すなわち、粗ガスコンプレッサー、C2冷媒コンプレッサーおよびC3冷媒コンプレッサーの電力需要から生じる制約を考慮して行われる必要がある。これは通常、エネルギーバランス調整のために超高圧および高圧蒸気需要の接続を切り離すために、対応する蒸気ボイラーを含む高圧蒸気発生器の導入を必要とする。これは、構造的複雑さを増大する。加えて、蒸気の凝縮熱がほとんど未使用のまま残され、一方、代わりに、タービンからの廃棄蒸気は通常、装置の観点から高い出費を伴う冷却水により凝縮される。超高圧および高圧蒸気発生器は、多くの二酸化炭素放出を伴う;コンプレッサーを駆動するための代替(必要に応じて、カーボンニュートラル)エネルギーの組み込みは通常、提供されないか、または可能ではない。
【0018】
本発明の使用は、電気駆動装置の使用から生ずるコンプレッサーの動作の間の極めて大きい独立性のために、蒸気および二酸化炭素バランス調整に関して、エチレン製造または他のオレフィン製造の柔軟化をもたらす。特に、粗ガス圧縮における高圧蒸気利用と、それに続く、冷媒の圧縮における高圧蒸気利用との堅固な接続は、本発明の場合には、最早、柔軟化に対する障害にならない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態による方法を、簡略化された工程系統図の形式で示し、全体を100により表す。
【
図3】本発明のさらなる実施形態による配置300を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の特に好ましい実施形態では、超高圧蒸気は、依然として、1つまたは複数の分解装置からの廃熱を用いて供給される。しかし、これは、好都合にも、粗ガスコンプレッサー、C2冷媒コンプレッサーおよびC3冷媒コンプレッサーを駆動するために使用されることなしに、プラントから少なくとも部分的に搬出され、かつ/または少なくとも部分的に他の方法ステップのための熱源として使用される。
【0021】
本発明の特に好ましい実施形態では、または本発明により提案される手段の代わりとして、上述の搬出および/または意図される使用のために、超高圧蒸気が圧力および/または温度の観点で、適合ユニット、いわゆる、減圧ステーションで適合させることができる。適合ユニットでは、特に、生じた全ての凝縮熱を他の目的のために、例えば、地域熱供給ネットワークへの供給のために使用できる。
【0022】
特に好ましい実施形態では、本発明により使用される方法は、高圧蒸気ボイラーを用いることなしに、実施できる。換言すれば、本発明の使用は、当該高圧蒸気ボイラーを省略可能にし、それにより、化石エネルギー担体に対する需要が低減され、従って、二酸化炭素バランスが改善される。原理的に、本発明の場合には、どの時点でもカーボンニュートラルエネルギーを取り込むことが可能であり、二酸化炭素排出量に関してかなりの柔軟化をもたらす。前述のように、本発明による粗ガスコンプレッサーは、2つの連続コンプレッサートレイン、すなわち、個別に駆動可能な構造単位を含み、粗ガスコンプレッサーおよびC2冷媒コンプレッサーおよびC3冷媒コンプレッサーのそれぞれのコンプレッサートレインは、それぞれ、少なくとも部分的に同一の性能特徴を有する電気駆動装置により稼働される。好都合にも、駆動装置はまた、実質的に構造上同一であり得る。このように、共通部品の数は増大し、当該プラントの作成は、標準化概念の意義の範囲内で、顕著に改善される。
【0023】
少なくとも部分的に同一の性能特徴を有する電気駆動装置は、構造上同一の可変速度駆動装置として提供され、これらはそれぞれ、周波数変換器を介して提供される。粗ガス圧縮のそれぞれの連続コンプレッサートレイン、C2冷媒コンプレッサーおよび冷媒コンプレッサーは、それらのトルクの観点から相互に適合される。このように、回転速度において、同時に柔軟性を有する対応する標準化が達成できる。特に、4つの周波数変換器をここで提供でき、それらの2つ、あるいは4つ全てを使用して、プラントが動作中のいつの時点でも電気駆動装置を提供できる。冗長性の理由、特に、必要なメンテナンスおよび/または修復作業のために、5つ目の周波数変換器を直ぐに使用できる状態に保持できる。
【0024】
本発明の使用は、構造上同一の装置、特に、駆動装置を予備装置とすることを可能にし、特に、これらの装置およびメンテナンスに必要な(共通)部品の保管が単純化される。本発明は、構造上同一の駆動装置の使用が、やはり可能であり、それに伴う困難および技術者の間での関連する懸念にも関わらず好都合であるという知識に基づいている。従って、本発明は特に、当該プラントの作成および動作における改善を達成し、本発明または本発明の実施形態により提案される手段は、先行技術から明らかではなかった。
【0025】
粗ガスコンプレッサー、エチレンおよびプロピレンコンプレッサーは、かなりの性能差異を示すので、駆動装置の性能の整合は自明ではない。さらに、エチレンコンプレッサーとプロピレンコンプレッサーの性能の比率は、特に、供給原材料および工程実施(特に、5個またはそれを超える炭素原子を有する、より重い炭化水素の分離)に応じて、変動する。粗ガスコンプレッサーは通常、5段階を含み、これは、分割が難しいように見える。個別の段階の高圧条件は高温に繋がる可能性があり、従って、焼き付きのリスクに繋がる可能性があるので、粗ガスコンプレッサーの圧力条件は限られた程度にのみ変化させることができる。本発明の実施形態の知識がなければ、当業者は、当該解決策を考慮することを中止するであろう。
【0026】
本発明の実施形態の場合、特に、粗ガスコンプレッサーは、上記で説明した方式で2つおよび3つの段階に分割できる。また、所与の制限の範囲内での圧力条件の変更、さらに、本発明の実施形態により提供されるように、特に、外部冷却の使用が可能である。これは次に、特に、それにより使用されるプロピレンコンプレッサーの望ましい負荷にも繋がり、従って、プロピレンおよびエチレンコンプレッサーの整合にも繋がる。
【0027】
構造上同一の可変速度駆動装置の使用はまた、本発明または本発明の対応する実施形態の知識なしには明らかではない。理由は、出力のみではなく、トルクもさらに整合される必要があるためである。これは、コンプレッサーは類似の速度で回転するか、または歯車機構(速度とトルクの変換)を使用しなければならないことを意味する。トルクの整合なしでは、モーターは、たとえ同じ出力でも、標準化できない。従って、本発明の場合、特に、1つまたは複数の歯車機構が使用される。
【0028】
本発明の実施形態の利点は、追加の周波数変換器の使用に伴う、特に、冗長性n+1の提供からもたらされる。本発明の他の実施形態では、これは、異なる周波数変換器および/または駆動装置でも達成できるが、その場合、効率、予備部品の在庫および寸法という観点での対応する調整を受け入れることになる。追加の周波数変換器は、ここで、定期的に使われる4つの周波数変換器のうち最大のものに対応する必要があり、負荷整合がなければ、これは、必然的に4つの駆動装置が同一の場合の平均出力より大きくなるであろう。
【0029】
4つの周波数変換器は、完全冗長性(2x100%)を有する対として導入でき、各対の2つの周波数変換器は、部分的負荷動作で同時に(2x50%)または切り替えモード(交互に)において全負荷(それぞれの場合で、1x100%)で稼働できる。2つの独立した供給ネットワークの場合には、周波数変換器は、好都合にも、2つのネットワークに連結できる。この冗長性概念は、供給ネットワークの電圧降下/故障が予測され、プラントの可用性を高めるために切り替え時間が最小化されるべき場合に、特に、好適である。
【0030】
周波数変換器の性能限界を超える強力な駆動装置に対して、3x50%冗長性概念も想定でき、この場合、同時に稼働される2つの周波数変換器は、100%の総出力を供給する。
【0031】
本発明による方法の一実施形態では、4つの周波数変換器および5つ目の周波数変換器は、周波数変換器配置の一部としてそれぞれ提供され、5つ目の周波数変換器の周波数変換器配置は、方法の実行中は稼働状態、特に、ホットスタンバイ状態、即ち、少なくとも部分的に電圧を印加した状態で保持され、これについては下記で説明される。
【0032】
一実施形態では、周波数変換器配置はそれぞれ、入力変圧器、特にVSD変圧器および入力および出力を含み、入力および出力(特に入力変圧器を介した入力)は、切替装置により電流源およびそれぞれの駆動装置に接続される。出力での切替装置の選択的起動により、それぞれの周波数変換器は、任意ではなく特定の駆動装置に選択的に接続できる。
【0033】
現行基準による可変速度電気駆動装置の、故障まで、または修復間の平均稼働時間(平均故障間隔、MTBFまたは平均修復時間、MTTR)は約10年である。しかし、3つ全てのコンプレッサー(CGC、ERCおよびPRC)は、プラント稼働のために同時に必要であるので、可用性が低減し(例えば、信頼性ブロック図を使って)、そのため、業界基準である5年間の中断のないプラント稼働は実現が困難である。しかし、駆動装置の標準化により、いずれにしても必要になるときがある主要予備部品を、「コールドスタンバイ」または「ホットスタンバイ」の状態で導入することが可能になる。従って、万一故障の場合には、対応する装置の間で(大きな)遅延なしに切り替えることが可能であることは有利である。その結果、MTBFまたはMTTRは、本発明の場合には、例えば、最大20年まで延長できる。
【0034】
説明された本発明の実施形態では、好都合には周辺装置(冷却装置、変圧器、切替装置)を含む5つ目の周波数変換器は、従って、4つの既存の周波数変換器のそれぞれに対し冗長性として使用できるように、直ぐに使用および相互接続できる状態で導入される。切り替えのために、装置の一時的シャットダウンまたは停止を考慮に入れることができる(「コールドスタンバイ」)。あるいは、切り替えは、稼働中に実施でき、その場合、駆動トルクの中断は最小化され得る。500ms未満の切り替え時間は、技術的に可能であり、望ましい;制御技術の観点では、切り替えシーケンスは、必要に応じ、コンプレッサーのポンプ保護制御(耐サージ制御装置に対するフィードフォワードシグナル)に接続され得る。
【0035】
本発明の実施形態では、対応する変圧器および周波数変換器は、特に、いわゆる「主要予備部品」であり、すなわち、それらは、当該プラントの導入の間に既に提供されており、稼働中に、継続的に準備状態で保持されている。それらは、従って、投資コスト中に含まれる。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態で提供されるように、これらの予備部品が倉庫にないが、その代わりに「取り付けられた」予備部品として提供される場合、それらは、極めて短時間で、例えば、上述の500ms以内に使用できる状態にある。
【0037】
また、本発明の特定の利点は、テーブル基礎を必要とする蓄電器が必要でないので、粗ガスコンプレッサー、C2冷媒コンプレッサー、およびC3冷媒コンプレッサーを地表面に設置できることである。
【0038】
好都合にも、中間冷却は、外部冷却を用いて、例えば、プロパンまたはプロピレン冷気(C3冷却)を用いることにより、少なくとも一時的に、粗ガスコンプレッサーにおいて実施できる。原理的には、この中間冷却は、各段階の前に実施できる。特に、第4段階の予備冷却は、結果として、一方で、第1から第3段階の同じ性能、および他方で、第4と第5段階の同じ性能が達成され、同時に、許容できない高い出口温度が回避されるので、特に好ましい。この状況では、上記の例で説明したものとは異なる、駆動装置に対するコンプレッサー段階の分布が提供できる。これは、記載した標準化の意義の範囲内で特に好都合である。本発明の場合、中間冷却のための外部冷却は、対応する冷媒がそれぞれの冷媒回路から組み合わされることで、C2冷媒および/またはC3冷媒の少なくとも一部を用いて提供できる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態では、上述の中間冷却は、冷却水温度および/または水注入が不十分である、および/または機能していないと認識される場合に(のみ)、持続的に、または外部冷却を用いて、実施できる。これにより、操業コストの最適化が可能になる。
【0040】
本発明の場合、出力要件を可能な限り均一化するために、C2冷媒が使用されるC2冷媒回路と、C3冷媒が使用されるC3冷媒回路との間の冷却出力を変えることにより、および/または説明したように、粗ガスコンプレッサーの追加の中間冷却としてC3冷却を組み込むことにより、粗ガスコンプレッサー、C2冷媒コンプレッサーおよびC3冷媒コンプレッサーの電気駆動装置の駆動出力を調節することが、特に好ましい実施形態において想定されている。
【0041】
本発明はまた、パラフィン含有供給原材料を充填し、粗ガスを得るように構成された1つまたは複数の分解装置を有する、水蒸気分解によるエチレンおよび/または他のオレフィンの製造のためのプラントにまで及び、プラントは、C2冷媒およびC3冷媒を用いて粗ガスを少なくとも部分的に粗ガス圧縮および熱分離を含む処理に供するように構成され、粗ガスコンプレッサーは、粗ガス圧縮のために提供され、C2冷媒コンプレッサーは、C2冷媒を圧縮するために提供され、およびC3冷媒コンプレッサーは、C3冷媒を圧縮するために提供される。本発明による特徴に関して、対応する独立請求項に対し参照がなされる。
【0042】
対応するプラントおよび有利なその実施形態の特徴および利点に対し、参照は、本発明により提案された方法に関する上記説明およびその実施形態に対し、明示的になされる。理由は、これらは、プラントおよびその実施形態に対する対応により、同様に適用されるためである。これは、特に、別の実施形態において上記で説明したように、方法を実施するように設計されるプラントにおける場合でも同じことが言える。
【0043】
本発明は、本発明の実施形態を例示する添付図面を参照しながら、以下でより詳細に記述される。
【0044】
図1は、本発明の実施形態による方法を、簡略化された工程系統図の形式で示し、全体を100により表す。以下の説明は、方法および対応する方法ステップに関するが、それらは、対応するプラントおよびその構成要素に対しても同様に当てはまる。
方法100では、1つまたは複数の分解装置(分解炉)10が使用され、これは、供給原材料A(ならびに蒸気、ここでは別途図示されていない)が充填され、それから、粗ガスBが回収される。
粗ガスBは、ここでは、全体として20と示された処理に少なくとも部分的に供され、これは、それ自体既知である方法によって、熱分解油Cの分離を伴うクエンチングステップ21および圧縮(粗ガス圧縮)ステップ22およびC2冷媒およびC3冷媒を用いた熱分離ステップ23を含む。クエンチングステップ21では、蒸気Dが提供され、1つまたは複数の分解装置10中に再循環できる。圧縮ステップ22では、熱分解ガソリンEが分離でき、例えば、クエンチングステップ21中に再循環できる。クエンチングステップ21では、3個以上の炭素原子を有する炭化水素Fがさらに分離でき、対応する処理ステップ24中に移され、そこで、対応する炭化水素Gも熱分離ステップ23から供給される。熱分離ステップ23では、エタン流Hが提供でき、1つまたは複数の分解炉10中に再循環できる。エチレン流Iは製品として実現できる。特に、メタンおよび水素を含む、いわゆるテールガスKが排出される。全体としてLで表される、さらなる製品流が、さらなる処理ステップ24で提供される。
図1の下段領域で記号により示されるように、CGCにより表されるコンプレッサーは、粗ガス圧縮ステップ22のために使用され、エチレン冷媒は、ERCにより表されるC2冷媒コンプレッサーを用いて圧縮され、プロピレン冷媒は、PRCで表されるC3冷媒コンプレッサーを用いて圧縮される。粗ガスコンプレッサーCGC、C2冷媒コンプレッサーERCおよびC3冷媒コンプレッサーPRCは、それぞれ、少なくとも部分的に1つまたは複数の電気駆動装置Mを用いて稼働される。
より正確には、ここで示す本発明の実施形態では、粗ガスコンプレッサーCGCは、2つの連続コンプレッサートレイン(別途図示していない)を含み、粗ガスコンプレッサーCGC、冷媒コンプレッサーERCおよびC3冷媒コンプレッサーPRCのコンプレッサートレインのそれぞれは、それぞれの場合で、少なくとも部分的に同一の性能特徴を有する電気駆動装置を用いて稼働される。前記電気駆動装置は、ここでは、構造上同一の可変速度駆動装置として提供でき、それぞれ、周波数変換器FUを介して提供できる。全体として、ここで示した例では、5つの周波数変換器FUが提供され、これらの2つ(対を形成した全負荷交互稼働)または4つ(対を形成した部分負荷稼働)は、いつでも電気駆動装置Mを提供するために使用され、1つは、冗長性の理由のために直ぐに使用できる状態に保持される。ここで図示した例では、周波数変換器FUは、図示した方式で、異なるネットワークまたは動力源N1、N2に接続される。本発明は、ここで図示した例に限定されない。
この方法で提供される蒸気Dまたは他の蒸気は、特に、超高圧蒸気を含み、これは、粗ガスコンプレッサーRGC、C2冷媒コンプレッサーERCおよびC3冷媒コンプレッサーPRCを駆動するために使用されることなしに、他の方法ステップのための熱源として少なくとも部分的に搬出、および/または使用される。搬出および/または意図された使用のための圧力および/または温度の観点では、超高圧蒸気は、ここで一般に50で示した適合ユニットに対して適合され得る。適合ユニット50で蓄積している凝縮熱は、説明したように使用できる。
図1に示す方法100で同様に使用できる本発明の実施形態の全てに対し、上記説明に、再度、明示的に参照がなされる。
【0045】
図2は、本発明の実施形態による配置200を示す。それぞれの場合で、複数の好ましくは同一の構成要素が図示されているため、対応する参照記号はそれぞれ1回のみ示されている。
入力変圧器(特に、VSD変圧器)は、切替装置2を介して、バスバー1に接続され、各入力変圧器は、ここでは4で表される周波数変換器により、特に、中間回路(VSI)において、DC電圧を備えた間接的変換器として具体化される。それぞれの駆動装置は、再度、切替装置5を介して接続される。図の左側に示される切替装置2aおよび5aおよび入力変圧器3aおよび周波数変換器4aの群は、駆動装置Mが対応する切替装置5を介して元々接続していた周波数変換器から切り離された場合、切替装置6の1つを使って、駆動装置Mの1つに選択的に接続できる。切替装置2aは、稼働中閉じたままでよく、そのために、入力変圧器3aおよび周波数変換器4aは、「ホットスタンバイ」状態を保持できる。
【0046】
図3は、本発明のさらなる実施形態による配置300を示す。ここでも同様に、それぞれの場合で、複数の好ましくは同一の構成要素が図示されているため、対応する参照番号はそれぞれ1回のみ与えられている。
図2に示す配置200と対照的に、
図3に示される配置300では、異なる冗長性概念が示され、この場合、それぞれの駆動装置Mは、別の選択肢として、切替装置2および5、入力変圧器3および周波数変換器4(または2a、5a、3a、および4a、左側の駆動装置M上にのみ表記)の2つのトレインの1つに接続できる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気分解によりエチレンおよび/または他のオレフィンを製造する方法(100)であって、1つまたは複数の分解装置(10)は、パラフィン含有供給原材料が充填され、粗ガスは1つまたは複数の分解装置(10)から回収され、前記粗ガスは、C2冷媒およびC3冷媒を用いて粗ガス圧縮(22)および熱分離(23)を含む処理(20)に少なくとも部分的に供され、粗ガスコンプレッサー(CGC)は、前記粗ガス圧縮(22)のために使用され、前記C2冷媒は、C2冷媒コンプレッサー(ERC)を用いて圧縮され、および前記C3冷媒は、C3冷媒コンプレッサー(PRC)を用いて圧縮され、前記粗ガスコンプレッサー(CGC)は、2つの連続コンプレッサートレインを含むこと、ならびに、これらのコンプレッサートレインのそれぞれにおいて、前記C2冷媒コンプレッサー(ERC)および前記C3冷媒コンプレッサー(PRC)は、それぞれ、少なくとも部分的に電気駆動装置(M)を用いて稼働され、該電気駆動装置(M)は、少なくとも部分的に同一の性能特徴を有し、それぞれ、周波数変換器(FU)を介して動力を供給され、それぞれ、構造上同一の可変速度駆動装置として提供され、前記粗ガス圧縮(22)の前記連続コンプレッサートレイン、前記C2冷媒コンプレッサー(ERC)および前記C3冷媒コンプレッサー(PRC)のそれぞれは、それらのトルクに関して、相互に整合されること、を特徴とする方法。
【請求項2】
廃熱を用いて、超高圧蒸気が提供され、前記粗ガスコンプレッサー(RGC)、前記C2冷媒コンプレッサー(ERC)および前記C3冷媒コンプレッサー(PRC)を駆動するために使用されることなしに、他の方法ステップの熱源として、少なくとも部分的に搬出および/または使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記超高圧蒸気は、搬出および/または前記意図される使用のために、適合ユニット(50)中で、圧力および/または温度に関して適合される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記適合ユニット(50)で得られた凝縮熱を使用する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
高圧蒸気ボイラーを用いることなしに稼働される、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
4つの周波数変換器(FU)が提供され、これらの2つまたは4つは、いつでも電気駆動装置を提供するために使用され、特に、5つ目の周波数変換器は、冗長性の理由のために直ぐに使用できる状態に保持される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記4つの周波数変換器(FU)および前記5つ目の周波数変換器(FU)は、周波数変換器配置の一部としてそれぞれ提供され、その周波数変換器配置を有する前記5つ目の周波数変換器(FU)は、前記方法の実行中は稼働可能状態で保持される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記周波数変換器配置はそれぞれ、入力変圧器ならびに入力および出力を備え、前記入力および出力は、切替装置を介して電流源および前記それぞれの駆動装置に接続される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記粗ガスコンプレッサー(CGC)、前記C2冷媒コンプレッサー(ERC)および前記C3冷媒コンプレッサー(PRC)は、地表面に設置される、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
中間冷却は、外部冷却を用いて、少なくとも一時的に前記粗ガスコンプレッサーにおいて実施される、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記外部冷却は、前記C2冷媒および/または前記C3冷媒の少なくとも一部を用いて、前記中間冷却のために提供される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記中間冷却は、冷却水温度および/または水注入が不十分である、および/または機能していないと認識される場合に、外部冷却を用いて実施される、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記粗ガスコンプレッサー(CGC)、前記C2冷媒コンプレッサー(ERC)および前記C3冷媒コンプレッサー(PRC)の電気駆動装置の駆動出力は、エチレン冷媒が使用されるエチレン冷媒回路と、プロピレン冷媒が使用されるプロピレン冷媒回路との間の冷却出力を変えることにより、および/またはプロピレン冷却を前記粗ガスコンプレッサー(CGC)の追加の中間冷却として組み込むことにより、調節される、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
パラフィン含有供給原材料が充填され、粗ガスを製造するように構成された1つまたは複数の分解装置(10)を有する水蒸気分解によりエチレンおよび/または他のオレフィンを製造するように構成されたプラントであって、前記プラントは、C2冷媒およびC3冷媒を用いて、前記粗ガスを、圧縮(22)および熱分離(23)を含む処理(20)に少なくとも部分的に供するように構成され、粗ガスコンプレッサー(CGC)は、前記粗ガス圧縮(22)のために提供され、C2冷媒コンプレッサー(ERC)は、C2冷媒圧縮のために提供され、およびC3冷媒コンプレッサー(PRC)は、C3冷媒圧縮のために提供され、前記粗ガスコンプレッサー(CGC)は、2つの連続コンプレッサートレインを含むこと、ならびに、およびそれぞれの場合で、少なくとも部分的に同一の性能特徴を有し、それぞれ、周波数変換器(FU)を介して提供され、および構造上同一の可変速度駆動装置として提供される、前記粗ガスコンプレッサー(CGC)、前記C2冷媒コンプレッサー(ERC)および前記C3冷媒コンプレッサー(PRC)の電気駆動装置(M)の前記2つのコンプレッサートレインの駆動出力の少なくとも一部をそれぞれの場合に提供し、前記粗ガス圧縮(22)の前記連続的コンプレッサートレイン、前記C2冷媒コンプレッサー(ERC)および前記C3冷媒コンプレッサー(PRC)のそれぞれは、それらのトルクの観点から、相互に整合されることを特徴とするプラント。
【国際調査報告】