(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】淋菌感染症の治療のための方法および材料
(51)【国際特許分類】
A61K 31/365 20060101AFI20240311BHJP
A61K 31/4525 20060101ALI20240311BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240311BHJP
A61K 31/404 20060101ALI20240311BHJP
A61K 31/41 20060101ALI20240311BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20240311BHJP
A61K 31/4725 20060101ALI20240311BHJP
A61K 31/443 20060101ALI20240311BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
A61K31/365
A61K31/4525
A61K31/5377
A61K31/404
A61K31/41
A61K31/4709
A61K31/4725
A61K31/443
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555485
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 US2022021467
(87)【国際公開番号】W WO2022204231
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598063203
【氏名又は名称】パーデュー・リサーチ・ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】ラマチャンドラン,パディンジャーレマドホム ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】セレーム,モハメド
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA17
4C086BC17
4C086BC21
4C086BC28
4C086BC30
4C086BC73
4C086BC78
4C086CA01
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA10
4C086GA12
4C086GA16
4C086HA01
4C086HA04
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB35
(57)【要約】
本発明は、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)によって引き起こされる感染症を含む様々な感染症を有する対象を治療するための、新しい抗生物質としての一連の化合物を開示する。特に、これらの化合物は、α-メチレンならびにα-アミノメチルラクトン、ラクタム、イミノラクトン、およびイミノラクタム、チオラクトン、チオノラクトン、チオラクタム、およびチオノラクタムを含む。これらの感染症を治療するための医薬組成物および方法は、本発明の範囲内である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染症の患者を治療するための方法であって、前記感染症の緩和を必要とする患者に、治療有効量の1種または複数の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、1種または複数の担体、希釈剤または賦形剤とともに投与するステップを含む、方法。
【化1】
(式中、
X=O、NH、NR、Sであり;Y=O、NH、NR、Sであり;n=1、2、3、4であり、
R1~R6は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が、場合により置換されている。)
【請求項2】
前記感染症が、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
感染症の患者を治療するための方法であって、前記感染症の緩和を必要とする患者に、治療有効量の1種または複数の式(II)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、1種または複数の担体、希釈剤または賦形剤とともに投与するステップを含む、方法。
【化2】
(式中、
X=O、NH、NR、Sであり;Y=O、NH、NR、Sであり;n=1、2、3、4であり、
R1~R6は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が、場合により置換されており、
R7~R8は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が場合により置換されているか、またはR7~R8は、1個または複数のヘテロ原子を有するかまたは有しない環系の一部である。)
【請求項4】
前記感染症が、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)によって引き起こされる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
感染症の患者を治療するための方法であって、前記感染症の緩和を必要とする患者に、治療有効量の1種または複数の式(III)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、1種または複数の担体、希釈剤または賦形剤とともに投与するステップを含む、方法。
【化3】
(式中、
n=1、2、3、4であり、
R1~R6は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が、場合により置換されている。)
【請求項6】
前記感染症が、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)によって引き起こされる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物が、下記式を有する、請求項5に記載の方法。
【化4】
【請求項8】
前記化合物が、下記式を有する、請求項5に記載の方法。
【化5】
【請求項9】
感染症の患者を治療するための方法であって、前記感染症の緩和を必要とする患者に、治療有効量の1種または複数の式(IV)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、1種または複数の担体、希釈剤または賦形剤とともに投与するステップを含む、方法。
【化6】
(式中、
n=1、2、3、4であり、
R1~R6は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が、場合により置換されており、
R7~R8は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が場合により置換されているか、またはR7~R8は、1個または複数のヘテロ原子を有するかまたは有しない環系の一部である。)
【請求項10】
前記感染症が、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)によって引き起こされる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
感染症の患者を治療するための下記式を有する化合物、
【化7】
またはその薬学的に許容される塩。
(式中、
X=O、NH、NR、Sであり;Y=O、NH、NR、Sであり;n=1、2、3、4であり、
R1~R6は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が、場合により置換されている。)
【請求項12】
前記感染症が、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)によって引き起こされる、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
感染症の患者を治療するための下記式を有する化合物、
【化8】
またはその薬学的に許容される塩。
(式中、
X=O、NH、NR、Sであり;Y=O、NH、NR、Sであり;n=1、2、3、4であり、
R1~R6は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が、場合により置換されており、
R7~R8は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が場合により置換されているか、またはR7~R8は、1個または複数のヘテロ原子を有するかまたは有しない環系の一部である。)
【請求項14】
前記感染症が、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)によって引き起こされる、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
感染症の患者を治療するための下記式を有する化合物、
【化9】
またはその薬学的に許容される塩。
(式中、
n=1、2、3、4であり、
R1~R6は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が、場合により置換されている。)
【請求項16】
前記感染症が、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)によって引き起こされる、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
下記式を有する、請求項15に記載の化合物。
【化10】
【請求項18】
下記式を有する、請求項15に記載の化合物。
【化11】
【請求項19】
感染症の患者を治療するための下記式を有する化合物、
【化12】
またはその薬学的に許容される塩。
(式中、
n=1、2、3、4であり、
R1~R6は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が、場合により置換されており、
R7~R8は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が場合により置換されているか、またはR7~R8は、1個または複数のヘテロ原子を有するかまたは有しない環系の一部である。)
【請求項20】
前記感染症が、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)によって引き起こされる、請求項17に記載の化合物。
【請求項21】
請求項11から19に記載の1種または複数の化合物を、1種または複数の薬学的に許容される希釈剤、賦形剤または担体とともに含む、医薬組成物。
【請求項22】
請求項11から19に記載の1種または複数の化合物のナノ粒子を、1種または複数の希釈剤、賦形剤または担体とともに含む、医薬組成物。
【請求項23】
対象の淋菌(Neisseria gonorrhoeae)感染症を治療するための医薬の製造における、請求項11から19に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項24】
請求項11から19に記載の化合物の、特定の異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、またはその薬学的に許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本米国特許出願は、2021年3月26日に出願された米国仮特許出願第63/166,309号に関連し、その優先権の利益を主張するものであり、その内容はここで参照によりその全体が本開示に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、細菌感染症の患者の治療のための化合物および方法に関し、特に、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)によって引き起こされる感染症の治療のためのα-メチレンならびにα-アミノメチルラクトン、ラクタム、イミノラクトン、およびイミノラクタム、チオラクトン、チオノラクトン、チオラクタム、およびチオノラクタムに関する。
【背景技術】
【0003】
本項では、本開示のより良い理解を促す手助けとなり得る態様を紹介する。したがって、これらの記述はこのような観点から読まれるべきであり、何が先行技術であるか、または何が先行技術でないかの承認として理解されるべきではない。
【0004】
性感染症(STI)である淋疾は、世界的に注目すべき緊急の公衆衛生上の問題となっている[1]。毎年、推定7800万人が淋疾に感染している。ほぼ80年間、淋疾は抗菌薬の使用によって治療/制御するのに成功してきた[2]。淋疾の病原菌である淋菌(Neisseria gonorrhoeae)(gonococcus)は、制御不能なスーパーバグへと進化している。最近では、感染症の治療に使用されるスルホンアミド系、ペニシリン系、初期セファロスポリン系、テトラサイクリン系、マクロライド系、およびフルオロキノロン系など、大半の抗菌薬に耐性である淋菌(N. gonorrhoeae)株が蔓延している。米国保健社会福祉省疾病対策予防センター(CDC)は、3つの優先レベル、すなわち緊急、深刻、および懸念の中で、淋疾を3つの緊急な細菌の脅威のうちの1つに指定した[3]。また、淋疾は英国およびカナダで同様の抗菌薬耐性(AMR)優先リストに含まれている。大手製薬会社は、非営利性を理由に抗生物質の研究プロジェクトを継続的に放棄しており、状況をさらに悪化させている[4]。新しい抗菌薬の探求は、依然としてCDCの最優先事項であるが、淋疾に対して承認された抗生物質は多くない。予防対策が講じられなければ、抗菌薬耐性淋菌はすぐに公衆衛生上の危機となり、すでに急増している医療費に大きな負担となるであろうと予測される。新しいクラスの低価格で安全な抗淋疾薬が切実に必要とされている。ほとんど、またはまったく副作用なく淋疾を治療するために、有効性が向上した選択的で費用対効果の高い抗生物質を開発することが、依然として切実に必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、概して、感染症の治療に有用な化合物に関する。いくつかの例示的な実施形態では、本発明は、下記式を有する化合物
【0006】
【化1】
またはその薬学的に許容される塩に関し、式中、
X=O、NH、NR、Sであり;Y=O、NH、NR、Sであり;n=1、2、3、4であり、一般式中のR1~R6は、同一または異なり、独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、および任意の数の炭素(1~30)原子を含む他の任意の直鎖状、分岐状、または環状の脂肪族基であってもよい。これらの基は、酸素、硫黄、または窒素などのヘテロ原子を1個または複数含むことができる。また、代表的な基は、これらに限定されないが、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール(例えば、オルト-、および/またはメタ-、および/またはパラ-置換フェニル)、ヘテロアリール、および置換ヘテロアリールを含む。代表的な置換基は、これらに限定されないが、アルコキシ、アルキルチオ、ハロ、ヒドロキシル、フェノキシ、アリールオキシ、シアノ、イソシアノ、カルボニル、カルボキシル、アミノ、アミド、スルホニル、置換複素環などを含む。アミノメチル基R7およびR8は、独立して、水素原子、および他の任意の直鎖状、分岐状、もしくは環状の脂肪族基、またはアリール基、もしくはヘテロアリール基、もしくは置換アリール基であり得る。R7およびR8は、2個以上の炭素を含む環、例えばアジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジンなどの一部であり得る。これらの環は、他のヘテロ原子、例えばNまたはSなどを含むことができ、これらはそれぞれモルホリン、チオモルホリンに見られる。これらの化合物は、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)によって引き起こされる感染症の治療に特に有用である。
【0007】
他のいくつかの実施形態では、本発明は、対象における感染症を治療するための医薬の製造における、本明細書に開示される化合物またはその薬学的に許容される塩の使用の方法に関する。
【0008】
他のいくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に開示される化合物を、1種または複数の薬学的に許容される希釈剤、賦形剤または担体とともに含む医薬組成物に関する。
【0009】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲を参照することにより、より良く理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の概念は、本明細書の説明において詳細に図示および記載されているが、本明細書における結果は、例示的なものであり、その性質において制限的なものではないとみなされるべきであり、例示的な実施形態のみが示され記載されており、本開示の精神の範囲内にあるすべての変更および修正が保護されることが望まれると理解される。
【0011】
本発明は、概して、感染症の治療に有用な化合物に関する。これらの疾病を治療するための医薬組成物および方法は、本発明の範囲内である。
【0012】
いくつかの例示的な実施形態では、本発明は、感染症の患者を治療するための方法であって、前記感染症の緩和を必要とする患者に、治療有効量の1種または複数の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、1種または複数の担体、希釈剤または賦形剤とともに投与するステップを含む、方法に関する。
【0013】
【化2】
(式中、
X=O、NH、NR、Sであり;Y=O、NH、NR、Sであり;n=1、2、3、4であり、
R1~R6は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が、場合により置換されている。)
【0014】
いくつかの例示的な実施形態では、本発明は、感染症の患者を治療するための方法であって、治療有効量の1種または複数の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含み、前記感染症は、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)によって引き起こされる、方法に関する。
【0015】
いくつかの例示的な実施形態では、本発明は、感染症の患者を治療するための方法であって、前記感染症の緩和を必要とする患者に、治療有効量の1種または複数の式(II)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、1種または複数の担体、希釈剤または賦形剤とともに投与するステップを含む、方法に関する。
【0016】
【化3】
(式中、
X=O、NH、NR、Sであり;Y=O、NH、NR、Sであり;n=1、2、3、4であり、
R1~R6は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が、場合により置換されており、
R7~R8は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が場合により置換されているか、またはR7~R8は、1個または複数のヘテロ原子を有するかまたは有しない環系の一部である。)
【0017】
いくつかの例示的な実施形態では、本発明は、感染症の患者を治療するための方法であって、前記感染症の緩和を必要とする患者に、治療有効量の1種または複数の式(II)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、1種または複数の担体、希釈剤または賦形剤とともに投与するステップを含み、前記感染症は、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)によって引き起こされる、方法に関する。
【0018】
いくつかの例示的な実施形態では、本発明は、感染症の患者を治療するための方法であって、前記感染症の緩和を必要とする患者に、治療有効量の1種または複数の式(III)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、1種または複数の担体、希釈剤または賦形剤とともに投与するステップを含む、方法に関する。
【0019】
【化4】
(式中、
n=1、2、3、4であり、
R1~R6は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が、場合により置換されている。)
【0020】
いくつかの例示的な実施形態では、本発明は、感染症の患者を治療するための方法であって、前記感染症の緩和を必要とする患者に、治療有効量の1種または複数の式(III)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、1種または複数の担体、希釈剤または賦形剤とともに投与するステップを含み、前記感染症は、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)によって引き起こされる、方法に関する。
【0021】
いくつかの例示的な実施形態では、本発明は、感染症の患者を治療するための方法であって、前記感染症の緩和を必要とする患者に、治療有効量の1種または複数の式(IV)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、1種または複数の担体、希釈剤または賦形剤とともに投与するステップを含む、方法に関する。
【0022】
【化5】
(式中、
n=1、2、3、4であり、
R1~R6は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が、場合により置換されており、
R7~R8は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が場合により置換されているか、またはR7~R8は、1個または複数のヘテロ原子を有するかまたは有しない環系の一部である。)
【0023】
いくつかの例示的な実施形態では、本発明は、感染症の患者を治療するための方法であって、前記感染症の緩和を必要とする患者に、治療有効量の1種または複数の式(IV)の化合物またはその薬学的に許容される塩を、1種または複数の担体、希釈剤または賦形剤とともに投与するステップを含み、前記感染症は、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)によって引き起こされる、方法に関する。
【0024】
いくつかの例示的な実施形態では、本発明は、治療有効量の下記式の化合物を投与するステップを含む、感染症の患者を治療するための方法に関する。
【0025】
【0026】
いくつかの例示的な実施形態では、本発明は、治療有効量の下記式の化合物を投与するステップを含む、感染症の患者を治療するための方法に関する。
【0027】
【0028】
いくつかの例示的な実施形態では、本発明は、感染症の患者を治療するための下記式を有する化合物
【0029】
【化8】
またはその薬学的に許容される塩に関する。
(式中、
X=O、NH、NR、Sであり;Y=O、NH、NR、Sであり;n=1、2、3、4であり、
R1~R6は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が、場合により置換されている。)
【0030】
いくつかの例示的な実施形態では、本発明は、感染症の患者を治療するための下記式を有する化合物
【0031】
【化9】
またはその薬学的に許容される塩に関する。
(式中、
X=O、NH、NR、Sであり;Y=O、NH、NR、Sであり;n=1、2、3、4であり、
R1~R6は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が、場合により置換されており、
R7~R8は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が場合により置換されているか、またはR7~R8は、1個または複数のヘテロ原子を有するかまたは有しない環系の一部である。)
【0032】
いくつかの例示的な実施形態では、本発明は、感染症の患者を治療するための下記式を有する化合物
【0033】
【化10】
またはその薬学的に許容される塩に関する。
(式中、
n=1、2、3、4であり、
R1~R6は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が、場合により置換されている。)
【0034】
いくつかの例示的な実施形態では、本発明は、感染症の患者を治療するための下記式を有する化合物
【0035】
【化11】
またはその薬学的に許容される塩に関する。
(式中、
n=1、2、3、4であり、
R1~R6は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が、場合により置換されており、
R7~R8は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニルからなる群より独立して選択される置換基であり、各々が場合により置換されているか、またはR7~R8は、1個または複数のヘテロ原子を有するかまたは有しない環系の一部である。)
【0036】
いくつかの例示的な実施形態では、本発明は、治療有効量の下記式の化合物
【0037】
【化12】
またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む、感染症の患者を治療するための方法に関する。
【0038】
いくつかの例示的な実施形態では、本発明は、治療有効量の下記式の化合物
【0039】
【化13】
またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む、感染症の患者を治療するための化合物に関する。
【0040】
いくつかの例示的な実施形態では、本発明は、本明細書に開示される1種または複数の化合物を、1種または複数の薬学的に許容される希釈剤、賦形剤または担体とともに含む医薬組成物に関する。
【0041】
いくつかの例示的な実施形態では、本発明は、本明細書に開示される1種または複数の化合物のナノ粒子を、1種または複数の希釈剤、賦形剤または担体とともに含む医薬組成物に関する。
【0042】
いくつかの例示的な実施形態では、本発明は、対象における淋菌(Neisseria gonorrhoeae)感染症を治療するための医薬の製造における、本明細書に開示される1種または複数の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0043】
他のいくつかの実施形態では、本発明は、対象における感染症を治療するための医薬の製造における、本明細書に開示される化合物またはその薬学的に許容される塩の使用の方法に関する。
【0044】
本明細書では、以下の用語および語句は、以下に記載する意味を有するものとする。別段に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者に一般的に理解されているのと同一の意味を有する。
【0045】
本開示において、「約」という用語は、値または範囲のばらつきの程度を許容することができ、例えば、記載された値または記載された範囲の限界値の10%以内、5%以内、または1%以内である。本開示において、「実質的に」という用語は、値または範囲のばらつきの程度を許容することができ、例えば、記載された値または記載された範囲の限界値の90%以内、95%以内、99%以内、99.5%以内、99.9%以内、99.99%以内、または少なくとも約99.999%以上である。
【0046】
本文書では、「a」、「an」、または「the」という用語は、文脈が別段に明らかに定めない限り、1つまたは2つ以上を含むために使用される。「または」という用語は、別段に指示のない限り、非排他的な「または」を指すために使用される。さらに、本明細書で採用され、別段に定義されていない語句および術語は、説明のためだけのものであり、限定するためのものではないことが理解されよう。項の見出しの使用は、いずれも文書の読解を助けることを意図するものであり、限定として解釈されるべきものではない。さらに、項の見出しに関連する情報は、その特定の項内に存在しても、項外に存在してもよい。さらに、本文書で言及されているすべての刊行物、特許、および特許文書は、参照により個別に組み込まれるかのごとく、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本文書と、参照により組み込まれた文書との間で用法に矛盾がある場合、組み込まれた参照文献の用法は本文書の用法を補足するものとみなされるべきであり、対立する矛盾については本文書の用法が支配的である。
【0047】
本明細書では「置換されている」という用語は、官能基に含まれる1個または複数の水素原子が、1個または複数の非水素原子で置換されている官能基を指す。本明細書では「官能基」または「置換基」という用語は、分子上で置換可能であるか、または置換されている基を指す。置換基または官能基の例としては、これらに限定されないが、ハロゲン(例えば、F、Cl、BrおよびI);ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、オキソ(カルボニル)基、カルボン酸、カルボン酸塩およびカルボン酸エステルを含むカルボキシル基などの基における酸素原子;チオール基、アルキルおよびアリールスルフィド基、スルホキシド基、スルホン基、スルホニル基、およびスルホンアミド基などの基における硫黄原子;アミン基、アジド基、ヒドロキシルアミン基、シアノ基、ニトロ基、N-オキシド、ヒドラジド、およびエナミンなどの基における窒素原子;ならびに他の様々な基における他のヘテロ原子が挙げられる。
【0048】
本明細書では「アルキル」という用語は、1から約20個の炭素原子(C1~C20)、1~12個の炭素原子(C1~C12)、1~8個の炭素原子(C1~C8)、またはいくつかの実施形態では、1から6個の炭素原子(C1~C6)を有する置換または非置換の直鎖および分枝アルキル基ならびにシクロアルキル基を指す。直鎖アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、およびn-オクチル基などの1から8個の炭素原子を有するものが挙げられる。分岐アルキル基の例としては、これらに限定されないが、イソプロピル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、および2,2-ジメチルプロピル基が挙げられる。本明細書では、「アルキル」という用語は、n-アルキル基、イソアルキル基、およびアンテイソアルキル基、ならびに他の分枝鎖形態のアルキルを包含する。代表的な置換アルキル基は、本明細書に列挙した基、例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボキシ基、ニトロ基、チオ基、アルコキシ基、およびハロゲン基のいずれかで1回または複数回置換されていてもよい。
【0049】
本明細書では「アルケニル」という用語は、2から20個の炭素原子(C2~C20)、2~12個の炭素原子(C2~C12)、2~8個の炭素原子(C2~C8)、または、いくつかの実施形態では、2から4個の炭素原子(C2~C4)および少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する置換または非置換の直鎖および分枝二価アルケニル基ならびにシクロアルケニル基を指す。直鎖アルケニル基の例としては、-CH=CH-、-CH=CHCH2-などの2から8個の炭素原子を有するものが挙げられる。分岐アルケニル基の例としては、これらに限定されないが、-CH=C(CH3)-などが挙げられる。
【0050】
アルキニル基は、三重結合した炭素に結合した水素原子がアルキンの分子から除去された場合に形成される、炭素原子上の結合の開放点を含む断片である。本明細書では「ヒドロキシアルキル」という用語は、少なくとも1つのヒドロキシル(-OH)基で置換された本明細書で定義されるアルキル基を指す。
【0051】
本明細書では「シクロアルキル」という用語は、これらに限定されないが、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、およびシクロオクチル基などの置換または非置換の環状アルキル基を指す。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は、3から約8~12個の環員を有することができるが、他の実施形態では、環炭素原子の数は3から4、5、6、または7個の範囲である。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は、3~6個の炭素原子(C3~C6)を有し得る。シクロアルキル基は、これらに限定されないが、ノルボルニル基、アダマンチル基、ボルニル基、カンフェニル基、イソカンフェニル基、およびカレニル基などの多環式シクロアルキル基、これらに限定されないが、デカリニルなどの縮合環をさらに含む。
【0052】
本明細書では「アシル」という用語は、基がカルボニル炭素原子を介して結合しているカルボニル部分を含む基を指す。また、カルボニル炭素原子は別の炭素原子に結合しており、この炭素原子は置換または非置換のアルキル基、アリール基、アラルキルシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ヘテロシクリル基、ヘテロシクリルアルキル基、ヘテロアリール基、ヘテロアリールアルキル基などの一部であり得る。カルボニル炭素原子が水素に結合している特別な場合、この基は「ホルミル」基であり、その用語が本明細書で定義されているアシル基である。アシル基は、カルボニル基に結合した0から約12~40個、6~10個、1~5個または2~5個の追加の炭素原子を含むことができる。アクリロイル基は、アシル基の1例である。アシル基はまた、ここでの意味の範囲内でヘテロ原子を含むことができる。ニコチノイル基(ピリジル-3-カルボニル)は、本明細書の意味の範囲内でアシル基の1例である。他の例としては、アセチル基、ベンゾイル基、フェニルアセチル基、ピリジルアセチル基、シンナモイル基、およびアクリロイル基などが挙げられる。カルボニル炭素原子に結合している炭素原子を含む基がハロゲンを含む場合、その基は「ハロアシル」基と呼ばれる。1例としては、トリフルオロアセチル基が挙げられる。
【0053】
本明細書では「アリール」という用語は、環内にヘテロ原子を含まない置換または非置換の環状芳香族炭化水素を指す。したがって、アリール基は、これらに限定されないが、フェニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニル基、インダセニル基、フルオレニル基、フェナントレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ナフタセニル基、クリセニル基、ビフェニレニル基、アントラセニル基、およびナフチル基を含む。いくつかの実施形態では、アリール基は、その基の環部分に約6~約14個の炭素(C6~C14)または6から10個の炭素原子(C6~C10)を含む。アリール基は、本明細書で定義されるように、置換されていなくても置換されていてもよい。代表的な置換アリール基は、一置換されていてもよいか、または2回以上置換されていてもよく、例えば、これらに限定されないが、2-、3-、4-、5-または6-置換フェニル基または2~8-置換ナフチル基などであり得、本明細書に列挙したものなどの炭素基または非炭素基で置換されていてもよい。
【0054】
本明細書では「アラルキル」および「アリールアルキル」という用語は、本明細書で定義されるアルキル基を指し、アルキル基の水素結合または炭素結合が、本明細書で定義されるアリール基への結合で置換されている。代表的なアラルキル基としては、ベンジル基、およびフェニルエチル基、および4-エチル-インダニルなどの縮合(シクロアルキルアリール)アルキル基が挙げられる。アラルケニル基は、本明細書で定義されるアルケニル基であり、アルキル基の水素結合または炭素結合が、本明細書で定義されるアリール基への結合で置換されている。
【0055】
本明細書では「ヘテロシクリル」という用語は、3つ以上の環員を含む置換または非置換の芳香族および非芳香族環状化合物を指し、環員のうち1つまたは複数は、これらに限定されないが、B、N、O、およびSなどのヘテロ原子である。したがって、ヘテロシクリルは、シクロヘテロアルキル、もしくはヘテロアリールであり得るか、または多環式である場合、それらの任意の組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリル基は、3~約20個の環員を含むが、他のそのような基は3~約15個の環員を有する。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリル基は、3~8個の炭素原子(C3~C8)、3~6個の炭素原子(C3~C6)、または6~8個の炭素原子(C6~C8)を含むヘテロシクリル基を含む。
【0056】
ヘテロアリール環は、ヘテロシクリル基の一実施形態である。「ヘテロシクリル基」という語句は、縮合芳香族基および非芳香族基を含むものを含む縮合環種を含む。代表的なヘテロシクリル基は、これらに限定されないが、ピロリジニル基、アゼチジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、クロマニル基、インドリノニル基、イソインドリノニル基、フラニル基、ピロリジニル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チオフェニル基、テトラヒドロフラニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ベンズオキサゾリニル基、ベンズチアゾリニル基、およびベンズイミダゾリニル基を含む。
【0057】
本明細書では「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、本明細書で定義されるアルキル基を指し、本明細書で定義されるアルキル基の水素結合または炭素結合が、本明細書で定義されるヘテロシクリル基への結合で置換されている。代表的なヘテロシクリルアルキル基は、これらに限定されないが、フラン-2-イルメチル、フラン-3-イルメチル、ピリジン-3-イルメチル、テトラヒドロフラン-2-イルメチル、およびインドール-2-イルプロピルを含む。
【0058】
本明細書では「ヘテロアリールアルキル」という用語は、本明細書で定義されるアルキル基を指し、アルキル基の水素結合または炭素結合が、本明細書で定義されるヘテロアリール基への結合で置換されている。
【0059】
本明細書では「アルコキシ」という用語は、本明細書で定義されるシクロアルキル基を含むアルキル基に結合した酸素原子を指す。直鎖アルコキシ基の例としては、これらに限定されないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどが挙げられる。分岐アルコキシの例としては、これらに限定されないが、イソプロポキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、イソペンチルオキシ、イソヘキシルオキシなどが挙げられる。環状アルコキシの例としては、これらに限定されないが、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどが挙げられる。アルコキシ基は、二重結合または三重結合をさらに含むことができ、またヘテロ原子を含むことができる。例えば、アリルオキシ基は、本明細書の意味の範囲内のアルコキシ基である。メトキシエトキシ基はまた、構造の2個の隣接する原子がそれらで置換されている状況におけるメチレンジオキシ基と同様に、本明細書の意味の範囲内でアルコキシ基である。
【0060】
本明細書では「アミン」という用語は、例えば、各基が独立して、Hまたは非H、例えば、アルキル、アリールであり得る式N(基)3を有する第一級、第二級および第三級アミンを指す。アミンは、これらに限定されないが、例えば、R-NH2、例えば、アルキルアミン、アリールアミン、アルキルアリールアミン;各Rが独立して選択されるR2NH、例えば、ジアルキルアミン、ジアリールアミン、アラルキルアミン、ヘテロシクリルアミン;および各Rが独立して選択されるR3N、例えば、トリアルキルアミン、ジアルキルアリールアミン、アルキルジアリールアミン、トリアリールアミンを含む。「アミン」という用語はまた、本明細書で使用されるアンモニウムイオンを含む。
【0061】
本明細書では「アミノ基」という用語は、各Rが独立して選択される-NH2、-NHR、-NR2、-NR3+の形態の置換基を指し、プロトン化され得ない-NR3+を除いて、それぞれのプロトン化された形態を指す。したがって、アミノ基で置換された化合物は、いずれもアミンと考えることができる。本明細書の意味の範囲内の「アミノ基」は、第一級、第二級、第三級、または第四級アミノ基であり得る。「アルキルアミノ」基は、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、およびトリアルキルアミノ基を含む。
【0062】
本明細書では「ハロ」、「ハロゲン」、または「ハロゲン化物」基という用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、別段に明記しない限り、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味する。
【0063】
本明細書では「ハロアルキル」基という用語は、モノハロアルキル基、すべてのハロ原子が同一でも異なっていてもよいポリハロアルキル基、およびすべての水素原子がフルオロなどのハロゲン原子で置換されているペルハロアルキル基が含まれる。ハロアルキルの例としては、トリフルオロメチル、1,1-ジクロロエチル、1,2-ジクロロエチル、1,3-ジブロモ-3,3-ジフルオロプロピル、ペルフルオロブチル、-CF(CH3)2等が挙げられる。
【0064】
本明細書では「場合により置換されている」または「場合による置換基」という用語は、当該の基が非置換であるか、または指定された1つまたは複数の置換基で置換されているかのいずれかであることを意味する。当該の基が2つ以上の置換基で置換される場合、置換基は同一でも異なっていてもよい。「独立して」、「独立して~である」、「独立して~から選択される」という用語を使用する場合、当該の基は同一でも異なっていてもよいことを意味する。本明細書で定義された用語のいくつかは、本構成の中で2回以上出現する可能性があり、そのような場合、各用語は他の用語から独立して定義されるものとする。
【0065】
本明細書に記載の化合物は、1つまたは複数のキラル中心を含むか、またはさもなくば複数の立体異性体として存在することができる。一実施形態では、本明細書に記載の本発明は、いかなる特定の立体化学的要件にも限定されず、それらを含む化合物、および組成物、方法、使用、ならびに医薬は、光学的に純粋であってもよいか、またはラセミ体およびエナンチオマーの他の混合物、ジアステレオマーの他の混合物などを含む種々の立体異性体混合物のいずれであってもよいことが理解されよう。また、このような立体異性体の混合物は、1つまたは複数のキラル中心における単一の立体化学的配置を含み、一方、1つまたは複数の他のキラル中心における立体化学的配置の混合物を含み得ることが理解されよう。
【0066】
同様に、本明細書に記載の化合物は、cis、trans異性体、ジアステレオマー、エナンチオマー、ならびにEおよびZ二重結合などの幾何学的中心を含んでいてもよい。別の実施形態では、本明細書に記載の本発明は、いかなる特定の幾何異性体要件にも限定されず、それらを含む化合物、および組成物、方法、使用、ならびに医薬は、純粋であってもよく、または種々の幾何異性体混合物のいずれであってもよいことが理解されよう。また、このような幾何異性体の混合物は、1つまたは複数の二重結合およびキラル炭素における単一の配置を含み、一方、1つまたは複数の他の二重結合およびキラル炭素における幾何配置の混合物を含み得ることが理解されよう。
【0067】
本明細書では、「塩」および「薬学的に許容される塩」という用語は、親化合物がその酸性塩または塩基性塩を作製することによって改変された、開示化合物の誘導体を指す。薬学的に許容される塩の例としては、これらに限定されないが、アミンなどの塩基性基の無機塩または有機酸塩、およびカルボン酸などの酸性基のアルカリ塩または有機塩が挙げられる。薬学的に許容される塩は、従来の非毒性塩、または、例えば非毒性の無機酸もしくは有機酸から形成される親化合物の第四級アンモニウム塩を含む。例えば、このような従来の無毒性塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、および硝酸などの無機酸から誘導されるもの;ならびに酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、およびイセチオン酸などの有機酸から調製される塩を含む。
【0068】
薬学的に許容される塩は、塩基性または酸性部分を含む親化合物から従来の化学的方法により合成することができる。いくつかの例では、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸または遊離塩基形態を、化学量論的量の適切な塩基または酸と水中、または有機溶媒中、またはこの2つの混合物中で反応させることによって調製することができ、概して、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。好適な塩の列挙は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985に見られ、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
「溶媒和物」という用語は、非共有結合性の分子間力によって結合した化学量論的または非化学量論的量の溶媒をさらに含む化合物またはその塩を意味する。溶媒が水の場合、溶媒和物は水和物である。
【0070】
「プロドラッグ」という用語は、加水分解、酸化、またはさもなくば生物学的条件下(インビトロまたはインビボ)で反応を起こし、活性化合物、特に本発明の化合物を提供することができる化合物の誘導体を意味する。プロドラッグの例としては、これらに限定されないが、生体加水分解性アミド、生体加水分解性エステル、生体加水分解性カルバメート、生体加水分解性カーボネート、生体加水分解性ウレイド、および生体加水分解性ホスフェート類似体などの生体加水分解性部分を含む本発明の化合物の誘導体および代謝産物が挙げられる。カルボキシル官能基を持つ化合物の特定のプロドラッグは、カルボン酸の低級アルキルエステルである。カルボン酸エステルは、好都合には、分子上に存在するカルボン酸部分のいずれかをエステル化することによって形成される。プロドラッグは、典型的には、Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery 6th ed.(Donald J. Abraham ed., 2001, Wiley)およびDesign and Application of Prodrugs(H. Bundgaard ed., 1985, Harwood Academic Publishers GmbH)に記載されているものなどの周知の方法を使用して調製することができる。
【0071】
さらに、前述および下記の実施形態のそれぞれでは、式は、化合物のすべての薬学的に許容される塩を含み、かつ表すだけでなく、化合物の式またはその塩の任意のおよびすべての水和物および/または溶媒和物も含むことが理解されよう。ヒドロキシ基、アミノ基などの特定の官能基は、化合物の様々な物理的形態において、水および/または様々な溶媒とともに錯体および/または配位化合物を形成することが理解されよう。したがって、上記の式は、それらの様々な水和物および/または溶媒和物を含み、かつ表すものと理解されたい。前述および下記の実施形態のそれぞれでは、式は、立体異性体および幾何異性体などの各可能な異性体を、個々に、ならびに任意のおよびすべての可能な混合物の両方に含み、かつ表すことも理解されたい。前述および下記の実施形態のそれぞれでは、式は、化合物の任意のおよびすべての結晶形態、部分結晶形態、ならびに非結晶形態および/または非晶質形態を含み、かつ表すことも理解されたい。
【0072】
「薬学的に許容される担体」という用語は、当技術分野で認識されており、任意の対象組成物またはその成分の運搬または輸送に関与する、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材料などの薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを指す。各担体は、対象組成物およびその成分と適合性があり、患者に有害でないという意味で「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として機能し得る材料のいくつかの例としては、以下のものが挙げられる:(1)糖類、例えば、ラクトース、グルコース、およびスクロース;(2)デンプン、例えば、トウモロコシデンプン、およびジャガイモデンプン;(3)セルロース、およびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えば、ココアバターおよび坐剤用ワックス;(9)油、例えば、落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油;(10)グリコール類、例えば、プロピレングリコール;(11)ポリオール類、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール;(12)エステル類、例えば、オレイン酸エチル、およびラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸、(16)発熱物質を含まない水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;ならびに(21)医薬製剤に採用される他の非毒性の適合物質。
【0073】
本明細書では、「投与する」という用語は、本明細書に記載の化合物および組成物を患者に導入するすべての手段を含み、これらに限定されないが、経口(po)、静脈内(iv)、筋肉内(im)、皮下(sc)、経皮、吸入、口腔、点眼、舌下、経膣、経直腸などを含む。本明細書に記載の化合物および組成物は、単位剤形および/または従来の非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバントおよびビヒクルを含む製剤で投与することができる。
【0074】
経口投与のための例示的な形式は、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、シロップ剤などを含む。非経口投与の例示的な経路は、静脈内、動脈内、腹腔内、硬膜外、尿道内、胸骨内、筋肉内および皮下、ならびに非経口投与の他の任意の当技術分野で認識されている経路を含む。
【0075】
非経口投与の例示的な手段は、針(マイクロニードルを含む)注射器、無針注射器、および注入技術、ならびに当技術分野で認識されている他の任意の非経口投与手段を含む。非経口製剤は、典型的には水溶液であり、塩、炭水化物、および緩衝剤などの賦形剤(好ましくは約3から約9の範囲のpH)を含んでもよいが、いくつかの用途によっては、滅菌非水溶液として、または滅菌した発熱物質を含まない水などの好適なビヒクルとともに使用する乾燥形態として、より好適に製剤化することができる。無菌条件下での非経口製剤の調製は、例えば凍結乾燥により、当業者に周知の標準的な製薬技術を使用して容易に達成することができる。化合物の非経口投与は、例示的には、生理食塩水の形態で、または化合物をリポソームに組み込んで実施する。化合物自体が溶解するのに十分可溶性でない場合、エタノールなどの可溶化剤を適用することができる。
【0076】
請求されている組み合わせの各化合物の投与量は、投与方法、治療される状態、状態の重症度、状態が治療されるべきか予防されるべきか、ならびに治療される人の年齢、体重、および健康状態を含むいくつかの要因に依存する。さらに、特定の患者に関するファーマコゲノミクス(遺伝子型が治療用物質の薬物動態学的、薬力学的、または有効性プロファイルに及ぼす影響)情報は、使用する投与量に影響を及ぼす可能性がある。
【0077】
本明細書に記載の方法では、共投与、または組み合わせの個々の成分は、任意の好適な手段により、同時に、並行して、順次、別々に、または単一の医薬製剤で投与され得ることが理解されよう。共投与化合物または組成物が別々の剤形で投与される場合、各化合物の1日当たりに投与される投与量の数量は、同一でも異なっていてもよい。化合物または組成物は、同一かまたは異なる投与経路で投与してもよい。化合物または組成物は、同時かまたは交互のレジメンに従って、治療経過中の同一かまたは異なる時期に、分割または単一の形態で同時に投与してもよい。
【0078】
本明細書では「治療有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師、または他の臨床医が求めている組織系、動物、またはヒトにおける生物学的または薬物応答を誘発する活性化合物または医薬剤の量を指し、これには治療される疾病または障害の症状の緩和が含まれる。一態様では、治療有効量とは、任意の医学的治療に適用可能な妥当な利益/リスク比で、疾病または疾病の症状を治療または緩和する可能性がある量である。しかしながら、本明細書に記載の化合物および組成物の1日当たりの総使用量は、適切な医学的判断の範囲内で主治医によって決定され得ることが理解されよう。任意の特定の患者に対する特定の治療上有効な用量レベルは、治療される障害および障害の重症度;採用される特定の化合物の活性;採用される特定の組成物;患者の年齢、体重、全体的な健康状態、性別および食事;採用される特定の化合物の投与時間、投与経路および排泄の速度;治療の期間;採用される特定の化合物と組み合わせて、または同時に使用される薬物;ならびに当業者である研究者、獣医師、医師または他の臨床医に周知であるような要因を含む、種々の要因に依存する。
【0079】
投与経路に応じて、約1μg/kgから約1g/kgの範囲にある用量を含む、広範囲の許容投与量が、本明細書では企図される。投与量は単一でも分割でもよく、q.d.(1日1回)、b.i.d.(1日2回)、t.i.d.(1日3回)、または隔日、週1回、月1回、四半期に1回など、多種多様なプロトコールに従って投与してもよい。これらの各場合において、本明細書に記載の治療有効量は、投与例に対応するか、または代替的に、投薬プロトコールによって決定される、1日、週、月、または四半期ごとの総用量に対応することが理解される。
【0080】
本明細書に記載の例示的な投与量および投薬プロトコールに加えて、本明細書に記載の化合物のいずれか1種または混合物の有効量は、既知の技術の使用および/または類似の状況下で得られた結果の観察により、担当診断医または医師が決定できることが理解されよう。有効量または用量を決定する際には、これらに限定されないが、ヒトを含む哺乳動物の種、大きさ、年齢、および全体的な健康状態、関与する特定の疾病または障害、疾病もしくは障害の程度または関与または重症度、個々の患者の反応、投与される特定の化合物、投与様式、投与される調合剤の生物学的利用能特性、選択される用量レジメン、併用薬の使用、および他の関連する状況を含む多くの要因が、担当診断医または医師によって考慮される。
【0081】
「患者」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物、例えば伴侶動物(犬および猫など)ならびに家畜動物を含む。家畜動物は、食料生産のために飼育される動物である。治療される患者は、好ましくは哺乳動物、特にヒトである。
【0082】
淋疾に対する医薬品の研究および開発パイプラインは比較的欠けており、臨床開発の様々な段階にある3種類の新薬候補[5]、すなわち最近第III相試験が終了したソリスロマイシン(Cempra Inc.による)、第II相試験が終了したゾリフロダシン(Entasis Therapeuticsによる)、同じく第II相試験が終了したゲポチダシン(GlaxoSmithKline)のみである。
【0083】
天然に存在する化学予防剤および細胞保護剤の多くは、求電子性のα、β-不飽和カルボニル基を含む(
図4、丸印)[13]。セスキテルペンラクトンなどのアルファ-メチレンガンマ-ブチロラクトン(AMGBL)を含む天然に存在する化合物は、抗がん特性により研究者らの関心を集めている[14]。パルテノリドは、そのようなラクトンの1例であり、最近大きな注目を集めている[15]。ジメチルアミノパルテノリド(DMAPT)は、パルテノリドをジメチルアミンでアミノ化することにより容易に得られるが、脱アミノ化を経て生理活性AMGBLであるパルテノリドになると考えられている[16]。最近、Crooksおよび共同研究者らは、一連のアミノパルテノリドの調製および抗がん特性について報告した[17]。合成AMGBLおよびα-アミノメチル-γ-ブチロラクトン(AAGBL)もまた、強力な抗がん特性を持つことが示されている[18]。しかし、天然のAMGBLを抗菌薬として調査した報告はほとんどなく[19,20]、合成AMGBLを調査した報告はない。
【0084】
本発明は、α-メチレンラクトンおよびα-アルキルアミノラクトン、特にγ-ラクトンの合成により、細菌感染症の治療のための新規なクラスの分子が得られるという予期に基づいている。
【0085】
本発明は以下に示す一般構造式を有し、性感染症である淋疾を治療するためのものである、β,γ-二置換α-メチレン-γ-ヒドロキシエステル(AMGHE、A)、β,γ-二置換α-メチレンラクトン(AMGBL、B)およびβ,γ-二置換-α-アミノメチルラクトン(AAMLA、C)、ラクタム、チオラクトン、チオノラクトン、チオラクタム、イミノラクトンおよびイミノラクタムの使用に関する。現在、本発明は、淋疾を治療するための有効かつ選択的で強力な薬物の候補として、α-およびβ-二置換α-メチレン-γ-ヒドロキシエステル(AMGHE)、α-メチレン-β-またはγ-またはβ,γ-置換-γ-ラクトン(AMGBL)、およびα-アミノメチル-β-またはγ-またはβ,γ-置換-γ-ラクトン(AAMLA)に特に焦点を当てている。
【0086】
【0087】
一般構造式Vの一連のγ-ヒドロキシ-α-メチレンエステルを、公表されている手順[21~25]に従って調製した。これらを前述のように対応するAMGBL(一般構造式VII)に変換した。式VIIの分子は、[26]に記載されているように、対応するα-アミノメチルラクトン(一般構造式VI)に変換した。式Vの分子は、[27]に既述のように直接分子VIに変換した。
【0088】
合成をスキーム1に示す。
【0089】
【0090】
式V、VI、およびVIIの化合物の合成のための、代表的な手順を以下に示す。
【0091】
1.cis-γ-ヒドロキシエステル(式Vの化合物)の調製のための一般的な手順[21]。
【0092】
【0093】
適当なアルデヒドまたはケトン(1.5当量)を、ブロモメタアクリル酸アルキル(1.0当量)のTHFおよび水の混合物溶液に添加した。溶液を室温で素早く撹拌し、インジウム粉末(1.2当量)を一度に添加した。懸濁液を、TLC分析で判定して、反応が完了するまで撹拌した。混合物を水と酢酸エチルの間で分配し、有機層を除去した。粗生成物を水層から酢酸エチルでさらにもう1回抽出した。合わせた有機層を水、次いでブラインで洗浄し、次いでNa2SO4で乾燥させた。ろ過後、生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、所望のcis-γ-ヒドロキシエステルを得た。
【0094】
2.trans-ラクトン(式VIIの化合物)の調製のための一般的手順。
【0095】
(i)「クロチル」ボロネートの調製のための一般的手順[22]。
【0096】
【0097】
DMF中のCuCl(1.3当量)およびLiCl(1.3当量)の混合物を25℃で1時間N2下で撹拌し、DMFに溶解したジボロネート(ビス(ピナコラト)ジボロン)(1.3当量)を反応混合物に添加した。KOAc(1.3当量)を反応混合物に添加し、続いてDMFに溶解した酢酸アリル(1.0当量)を添加した。反応混合物を3~5時間さらに撹拌した。反応混合物を次いで水でクエンチし、エーテルで抽出した。合わせた有機層をMgSO4で乾燥させ、真空下で濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製してクロチルボロネートを得た。
【0098】
(ii)trans-ラクトンの調製のための一般的な手順[23]。
【0099】
【0100】
クロチルボロネート(1当量)をトルエンに溶解し、アルデヒド(1.2当量)を添加した。11BNMR分光法で監視された反応の完了まで、反応混合物を8~12時間還流した。次いで、反応混合物を室温に冷却し、20%のIn(OTf)3を20%のアルデヒドとともに添加し、2~4時間撹拌した。混合物を水で洗浄し、生成物をエーテル(3×5mL)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水MgSO4で乾燥させ、真空中で濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、trans-ラクトンを得た。
【0101】
3.trans-ラクトン(式VIIの化合物)の調製のための代替手順[24]。
【0102】
【0103】
トリエチルアミン(1.1当量)を、γ-ヒドロキシエステル(1.0当量)のジクロロメタン(DCM)溶液に添加した。メタンスルホニルクロリド(1.1当量)を滴加し、反応混合物をTLC分析で完了と判定されるまで撹拌した。反応混合物を飽和硫酸アンモニウム水溶液でクエンチし、次いでDCMで抽出した。合わせた有機層を真空中で濃縮した後、生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、trans-ラクトンを得た。
【0104】
4.cis-ラクトン(式VIIの化合物)の調製のための一般的手順[25]。
【0105】
【0106】
クロチルボロネート(1当量)をトルエンに溶解し、アルデヒド(1.2当量)を添加した。11BNMR分光法で監視された反応の完了まで、反応混合物を8~12時間還流した。次いで、反応混合物を室温に冷却し、20%のp-TSAを20%のアルデヒドとともに添加し、4~5時間撹拌した。混合物を水で洗浄し、生成物をエーテルで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水MgSO4で乾燥させ、真空中で濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、cis-ラクトンを得た。
【0107】
5.cis-ラクトンの調製のための代替手順[20]。
【0108】
【0109】
cis-γ-ヒドロキシエステル(1.0当量)のDCM溶液に、p-トルエンスルホン酸(0.1当量)を添加した。溶液をTLCで完了と判定されるまで撹拌した。水とジクロロメタンの間で分配した後、有機層をNa2SO4で乾燥させた。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、所望のcis-ラクトンを得た。
【0110】
6.VII(式VIの化合物)への共役付加によるアミノラクトンの調製のための一般的手順[26]。
【0111】
【0112】
cis-α-メチレンラクトン(1.0当量)のDCM溶液に、N,N-ジアルキルアミン(3.0当量)を室温で1度に添加した。溶液を、TLC分析で判定して、反応が完了するまで素早く撹拌した。粗混合物を真空中で直接濃縮し、溶媒および過剰なアミンを除去した。必要に応じて、粗反応混合物をアミン添加によるフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、所望のアミノラクトンを得た。
【0113】
7.アミノラクトン化の一般的手順。γ-ヒドロキシエステル(式Vの化合物)からのアミノラクトン(式VIの化合物)の直接合成[27]。
【0114】
【0115】
cis-γ-ヒドロキシエステル(1.0当量)のジクロルメタン溶液に、N,N-ジアルキルアミン(3.0当量)を室温で1度に添加した。溶液を、TLC分析で判定して、反応が完了するまで素早く撹拌した。粗混合物を真空中で直接濃縮し、溶媒および過剰なアミンを除去した。必要に応じて、粗反応混合物をアミン添加によるフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、所望のアミノラクトンを得た。
【0116】
バイオアッセイ
本発明は、細胞周期の停止または細胞死を引き起こすことにより、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)の細菌細胞増殖を制御するための方法を提供する。本発明は、一般構造式I、II、III、もしくはIVの化合物、またはその有機もしくは無機塩、溶媒和物、もしくは水和物で細胞を処置することを含む。
【0117】
この分子はインビトロの細胞でのみ試験されたが、本発明はインビボの細胞、すなわち淋菌(Neisseria gonorrhoeae)に罹患したヒト/動物に適用することができる。
【0118】
表1は、この出願で開示されている125種の化合物の詳細な構造を示す。臨床的に関連する淋菌(Neisseria gonorrhoeae)分離株191に対する化合物番号1~125の初期スクリーニング(表2および表3)。
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
試験化合物および対照薬であるアジスロマイシン、セフィキシム、およびテトラサイクリン(抗生物質)の最小発育阻止濃度(MIC)は、臨床的に関連する淋菌(Neisseria gonorrhoeae)株に対して、以前の報告に記載の微量液体希釈法[15]に若干の修正を加えたものを使用して測定した。株は、酵母抽出物、ネオペプトン、ヘマチン、ピリドキサール、およびNADを追加したブルセラ菌ブロス上で、5%CO2の存在下、37℃で24時間増殖させた。次いで、酵母抽出物、ネオペプトン、ヘマチン、ピリドキサール、およびNADを追加したブルセラ菌ブロスで、約1×106 CFU/mLの菌濃度が達成されるように菌を希釈した。化合物および対照薬を96ウェルプレートの1列目に添加し、細菌を含む培地で連続希釈した。次いで、5%CO2の存在下、37℃で24時間好気的にプレートをインキュベートした。表2で報告されているMICは、細菌の視覚的増殖を完全に阻害できた化合物および対照薬のものである。
【0123】
次に、最も強力な化合物を臨床淋菌(N. gonorrhoeae)株のパネルに対して試験してその活性を評価し、結果を表3に示す。
【0124】
結果の分析:化合物53は、MIC値が0.25から2μg/mLの範囲で淋菌(Neisseria gonorrhoeae)株のパネルに対して最も強力な活性を示し、化合物3および10は、MIC値が1から8μg/mLの範囲で淋菌(N. gonorrhoeae)に対して中程度の活性を示し、化合物53、3、および10は、試験菌株の中で最も強力な活性を示した最も有望で興味深い化合物である。
【0125】
当業者であれば、上述した具体的な実装形態に数多くの変更を加えることができることを認識するであろう。実装形態は、記載された特定の制限に限定されるべきではない。他の実装形態も可能であろう。
【0126】
本方法および組成物の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義されることが意図される。しかしながら、本開示は、その精神または範囲から逸脱することなく、具体的に説明および図示したのとは別の方法で行うことができることを理解しなければならない。以下の特許請求の範囲に定義される精神および範囲から逸脱することなく、特許請求の範囲を実施する際に、本明細書に記載の実施形態に対する様々な代替案を採用することができることを、当業者は理解すべきである。
【0127】
参照文献
【0128】
【0129】
【0130】
【国際調査報告】