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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】濃厚物質搬送システムの動作監視
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/04 20060101AFI20240311BHJP
   F04B 15/02 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
E04G21/04
F04B15/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555592
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2022057353
(87)【国際公開番号】W WO2022200275
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】102021107139.9
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519044656
【氏名又は名称】プツマイスター エンジニアリング ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PUTZMEISTER ENGINEERING GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー, アンスガル
【テーマコード(参考)】
2E172
3H075
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172CA35
2E172CA44
2E172CA47
2E172CA51
3H075AA13
3H075BB03
3H075BB24
3H075CC40
3H075DA04
3H075DA30
(57)【要約】
本発明は、特に、濃厚物質ポンプ(16)によって搬送される濃厚物質を分配する濃厚物質分配マスト(18)であって、垂直軸を中心に最大回転速度で回転可能な旋回ギア(19)を有する、濃厚物質分配マスト(18)と、少なくとも第1のマストアーム(41)と第2のマストアーム(42)とを有するマストアセンブリ(40)であって、第1のマストアーム(41)41)はマストアセンブリ(40)の近位端部で旋回ギア(19)に接続され、マストアーム(41、42)はそれぞれ最大動作範囲を有する、マストアセンブリ(40)と、マストアセンブリ(40)を横切って延び、濃厚物質ポンプの出口(28)に接続可能な近位端部と、遠位端部とを備える、搬送ライン(17)であって、搬送ライン(17)の遠位端部は、マストアセンブリ(40)の遠位端部で端部ホース(45)に移行する、搬送ライン(17)と、動作情報の少なくとも1つのデータ項目を受信する受信ユニット(11)と、第1のマストアーム(41)および第2のマストアーム(42)のそれぞれの現在許容可能な動作範囲を決定する為の、さらに/または、それぞれ、少なくとも1つの受信された動作情報のデータ項目に応じて、現在許容可能な旋回ギア速度を決定する為の処理ユニット(12)と、第1のマストアーム(41)および第2のマストアーム(42)の決定された現在許容可能な動作範囲のいずれかがそれぞれの最大動作範囲以下である場合には、対応するマストアーム(41、42)の動作範囲をそれぞれの現在許容可能な動作範囲に制限し、決定された現在許容可能な回転速度が最大回転速度以下である場合には、旋回ギア(19)の回転速度を制限する制御ユニット(13)と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃厚物質ポンプ(16)によって搬送される濃厚物質を分配する為の濃厚物質分配マスト(18)であって、
垂直軸を中心に最大回転速度で回転可能な旋回ギア(19)と、
少なくとも第1のマストアーム(41)と第2のマストアーム(42)とを有するマストアセンブリ(40)であって、前記第1のマストアーム(41)は前記マストアセンブリ(40)の近位端部で前記旋回ギア(19)に接続され、前記マストアーム(41、42)はそれぞれ最大動作範囲を有する、マストアセンブリ(40)と、
前記マストアセンブリ(40)を横切って延び、濃厚物質ポンプの出口(28)に接続可能な近位端部と、遠位端部とを備える、搬送ライン(17)であって、前記搬送ライン(17)の前記遠位端部は、前記マストアセンブリ(40)の遠位端部で端部ホース(45)に移行する、搬送ライン(17)と、
動作情報の少なくとも1つのデータ項目を受信する受信ユニット(11)と、
前記第1のマストアーム(41)および前記第2のマストアーム(42)のそれぞれの現在許容可能な動作範囲を決定する為の、さらに/または、それぞれ、少なくとも1つの受信された動作情報のデータ項目に応じて、現在許容可能な旋回ギア速度を決定する為の処理ユニット(12)と、
前記第1のマストアーム(41)および前記第2のマストアーム(42)の決定された現在許容可能な動作範囲のいずれかがそれぞれの最大動作範囲以下である場合には、対応するマストアーム(41、42)の前記動作範囲をそれぞれの現在許容可能な動作範囲に制限し、前記決定された現在許容可能な回転速度が最大回転速度以下である場合には、前記旋回ギア(19)の回転速度を制限する制御ユニット(13)と、
を有する、濃厚物質分配マスト(18)。
【請求項2】
マストアセンブリ(40)は、更なるマストアーム(43,44)、好ましくは、更なる2つのマストアームを備える、請求項1に記載の濃厚物質分配マスト(18)。
【請求項3】
前記処理ユニット(12)は、動作情報の少なくとも1つの受信された項目に応じて、各々の場合、好ましくは、各々の更なるマストアーム(43,44)の現在許容可能な動作範囲を決定するように更に構成され、前記制御ユニット(13)は、更なるマストアーム(43、44)の前記決定された現在許容可能な動作範囲のうちの1つが、対応するマストアーム(43、44)の前記動作範囲のそれぞれの最大動作作範囲よりも小さい場合に、前記動作範囲をそれぞれの現在許容可能な動作範囲に制限するように更に構成されている、請求項2に記載の濃厚物質分配マスト(18)。
【請求項4】
前記旋回ギア(19)と前記マストアセンブリ(40)の第1のマストアーム(41)と、2つの前記マストアーム(41、42、43、44)とは、それぞれ関節接合部によって互いに接続され、処理ユニット(12)は、マストアーム(41,42,43,44)の近位端部における前記関節接合部の現在許容可能な開放角度の設定に基づいて、マストアーム(41,42,43,44)の現在許容可能な動作範囲を決定するように更に構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の濃厚物質分配マスト(18)。
【請求項5】
前記制御ユニット(13)は、前記マストアーム(41,42,43,44)の旋回能力を現在許容可能な開放角度に制限することによって前記動作範囲を制限するように更に構成されている、請求項4に記載の濃厚物質分配マスト(18)。
【請求項6】
濃厚物質分配マスト(18)の搬送ライン(17)を介して濃厚物質を搬送する為の濃厚物質ポンプ(16)において、
最大ポンプ速度を有する二重ピストン式コアポンプ(15)と、
最大切換速度で切換可能であり、一端が、前記濃厚物質ポンプ(16)の出口(28)に配列され、搬送ライン(17)に接続可能であるS型パイプ(24)と、
動作情報の少なくとも1つの項目を受信する為の受信ユニットと、
現在許容可能なポンプ速度を決定する為の、更に/又は、現在許容可能な切換速度を決定する為の処理ユニットであって、各々が、動作情報の少なくとも1つの受信された項目に依存する、処理ユニットと、
決定された現在許容可能なポンプ速度が前記最大ポンプ速度より小さい場合、前記ポンプ速度を前記現在許容可能なポンプ速度に制限する為の、および/または、
決定された現在許容可能な切換速度より小さい場合、前記切換速度を制限する為の制御ユニット(13)と、
を有する、濃厚物質ポンプ(16)。
【請求項7】
濃厚物質搬送システム(10)において、
搬送される濃厚物質を分配する為の濃厚物質分配マストと、
前記濃厚物質分配マストの搬送ライン(17)を介して前記濃厚物質を搬送する為の濃厚物質ポンプと、
前記濃厚物質分配マスト及び前記濃厚物質ポンプが配置された下部構造体(30)と、
を有し、
前記下部構造体(30)は、
前記下部構造体(30)を支持する為の支持構造体(31)と、動作情報の少なくとも1つの項目を受信する為の受信ユニット(11)と、処理ユニット(12)と、制御ユニット(13)とを備え、
前記支持構造体(31)は、第1の閾値を有する安定性範囲を有し、前記安定性範囲は、最大安定性パラメータによって規定される上限を有し、
前記処理ユニット(12)は、動作情報の前記少なくとも1つの受信された項目に応じて、現在の安定性パラメータを決定する為の、更に、動作情報の前記少なくとも1つの受信された項目と予測情報の少なくとも1つの項目とに応じて、予測される将来の安定性パラメータを決定する為の処理ユニットであって、後者は、前記濃厚物質分配マストおよび/または前記濃厚物質ポンプの少なくとも1つの構成要素の秩序ある動作における前記安定性パラメータの予測された変化を特徴とし、
前記制御ユニット(13)は、前記濃厚物質分配マストおよび/または前記濃厚物質ポンプの少なくとも1つの構成要素の動作パラメータを制御する為の制御ユニット(13)であり、前記制御ユニット(13)は、前記決定された現在の安定性パラメータが前記第1の閾値よりも大きく、かつ、予測される前記決定された将来の安定性パラメータが、前記決定された現在の安定性パラメータよりも前記最大安定性パラメータに近い場合には、前記構成要素の前記動作が低速で起こるように、前記動作パラメータを制御するように構成されている、濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項8】
前記制御ユニット(13)は、前記決定された現在の安定性パラメータが前記第1の閾値より大きく、かつ、予測される前記決定された将来の安定性パラメータが、前記決定された現在の安定性パラメータよりも前記最大安定性パラメータから離れている場合には、前記構成要素が不変の速度で動作されるように、前記動作パラメータを制御するように更に構成されている、請求項7に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項9】
前記支持構造体(31)の前記安定性範囲は、前記第1の閾値よりも前記最大安定性パラメータに近い第2の閾値を含み、前記制御ユニット(13)は、前記決定された現在の安定性パラメータが前記第2の閾値より大きく、かつ、予測される前記決定された将来の安定性パラメータが、前記決定された現在の安定性パラメータよりも前記最大安定性パラメータに近い場合には、前記構成要素の秩序ある動作が停止されるように、前記動作パラメータを制御するように構成されている、請求項7~8のいずれか一項に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項10】
前記制御ユニット(13)は、前記決定された現在の安定性パラメータが前記第2の閾値より大きく、かつ、予測される前記決定された将来の安定性パラメータが、前記決定された現在の安定性パラメータよりも前記最大安定性パラメータから離れている場合には、前記構成要素の前記動作が低速で起こるように、前記動作パラメータを制御するように構成されている、請求項9に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項11】
前記速度の低下の程度は、前記構成要素の動作速度に依存する、請求項7~10のいずれか一項に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項12】
前記濃厚物質分配マストおよび/または前記濃厚物質ポンプの少なくとも1つの構成要素の前記動作パラメータは、
垂直軸を中心に回転可能な前記濃厚物質分配マストの旋回ギアの回転速度、
前記濃厚物質分配マストのマストアーム接合部の操縦速度、
前記濃厚物質分配マストのマストアームのアクチュエータの動作速度、
前記濃厚物質ポンプのコアポンプ(15)のポンプ速度またはポンプ周波数、および/または、
前記濃厚物質ポンプの切換可能なS型パイプ(24)の切換速度または切換周波数、
である、請求項7~11のいずれか一項に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項13】
前記処理ユニット(12)は、前記濃厚物質分配マストおよび/または前記濃厚物質ポンプの複数の、好ましくは全ての構成要素の秩序ある動作における動作情報の前記項目の予測された変化に特徴的な予測情報の項目に応じて、予測される前記将来の安定性パラメータを決定するように構成されている、請求項7~12のいずれか一項に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項14】
前記安定性パラメータをできるだけ大きくする前記構成要素の影響が前記安定性パラメータの予測変化であると仮定する、請求項7~13のいずれか一項に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項15】
予測情報の前記項目は、予測期間における秩序ある動作のために前記制御ユニットが出力する制御信号を考慮して算出される、請求項7~14のいずれか一項に記載の濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項16】
各受信ユニット(11)は、マストアーム(41,42,43,44)の関節トルク、マストアーム(41,42,43,44)のシリンダ力および/またはマスト接合部(47)の開放角度を示す動作情報の項目を受信するように構成されている、前記請求項のいずれか一項に記載の濃厚物質分配マスト(18)、濃厚物質ポンプ(16)または濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項17】
前記処理ユニット(12)は、全マストアーム(41)の関節トルクを示す動作情報の記録項目に基づいて負荷トルクを算出し、算出された負荷トルクに応じて、各々の場合において、前記第1のマストアーム(41)および前記第2のマストアーム(42)のそれぞれの前記現在許容可能な動作範囲、前記現在許容可能な旋回ギア速度、前記現在許容可能なポンプ速度、前記現在許容可能な切換速度、前記現在の安定性パラメータおよび/または予測される前記将来の安定性パラメータを決定するように構成されている、請求項16に記載の濃厚物質分配マスト(18)、濃厚物質ポンプ(16)または濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項18】
前記処理ユニット(12)は、現在許容可能な理論最大負荷トルクを示す動作情報の項目に応じて、それぞれの場合において、前記第1のマストアーム(41)および前記第2のマストアーム(42)のそれぞれの前記現在許容可能な動作範囲、前記現在許容可能な旋回ギア速度、前記現在許容可能なポンプ速度、前記現在許容可能な切換速度、前記現在の安定性パラメータおよび/または予測される前記将来の安定性パラメータを決定するように構成されている、請求項17に記載の濃厚物質分配マスト(18)、濃厚物質ポンプ(16)または濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項19】
それぞれの前記受信ユニット(11)は、
搬送される濃厚物質の型式、
搬送される濃厚物質の密度、
端部ホース(45)上の負荷、
端部ホース(45)の型式、
の特性を示す動作情報の項目を受信するように構成されている、前記請求項のいずれか一項に記載の濃厚物質分配マスト(18)、濃厚物質ポンプ(16)または濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項20】
それぞれの前記受信ユニット(11)は、予想される風速、特に最大風速を示す動作情報の項目を受信するように構成されている、前記請求項のいずれか一項に記載の濃厚物質分配マスト(18)、濃厚物質ポンプ(16)または濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項21】
それぞれの前記受信ユニット(11)は、最大地上負荷容量を示す動作情報の項目を受信するように構成されている、前記請求項のいずれか一項に記載の濃厚物質分配マスト(18)、濃厚物質ポンプ(16)または濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項22】
前記受信ユニット(11)は、負荷付加点(46)および/または負荷重量の位置を示す動作情報の項目を受信するように構成されている、前記請求項のいずれか一項に記載の濃厚物質分配マスト(18)、濃厚物質ポンプ(16)または濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項23】
コンクリート分配マストとして構成された、前記請求項のいずれか一項に記載の濃厚物質分配マスト(18)、または、コンクリートポンプとして構成された、請求項1~22のいずれか一項に記載の濃厚物質ポンプ(16)。
【請求項24】
請求項7~22のいずれか一項に記載の濃厚物質搬送システムにおいて、前記支持構造体(31)は、水平および垂直に変位可能な少なくとも1つの支持脚部(32)を更に備え、前記受信ユニット(11)は、
垂直軸を中心に回転可能な濃厚物質分配マストの旋回ギアのトルク、
少なくとも1つの支持脚部(32)の水平脚力、
前記少なくとも1つの支持脚部(32)の垂直脚力、
の特性を示す動作情報を受信するように構成されている、濃厚物質搬送システム。
【請求項25】
前記請求項のいずれか一項に記載の濃厚物質分配マスト(18)、濃厚物質ポンプ(16)または濃厚物質搬送システム(10)において、
それぞれの前記受信ユニットは、
動作情報の項目を記録する為のセンサユニット、
動作情報の項目を記録する為の通信インターフェース、または、
動作情報の項目を記録するためのユーザインターフェース、
を更に備える、濃厚物質分配マスト(18)、濃厚物質ポンプ(16)または濃厚物質搬送システム(10)。
【請求項26】
濃厚物質搬送システムにおいて、
濃厚物質分配マスト(18)及び濃厚物質ポンプ(16)を配列可能な下部構造体(30)と、
前記請求項のいずれか一項に記載の濃厚物質分配マスト(18)と、
さらに/または、
前記請求項のいずれか一項に記載の濃厚物質ポンプ(16)と、
を有する、濃厚物質搬送システム。
【請求項27】
請求項7~25のいずれか一項に記載の濃厚物質搬送システムにおいて、
前記濃厚物質分配マスト(18)は、前記請求項のいずれか一項に記載されるように構成され、さらにび/または、前記濃厚物質ポンプ(16)は、前記請求項のいずれか一項に記載されるように構成される、濃厚物質搬送システム。
【請求項28】
前記下部構造体(30)は、車両(33)に配列されている、前記請求項のいずれか一項に記載の濃厚物質搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃厚物質分配マスト、濃厚物質ポンプおよび濃厚物質搬送システムに関する。
【0002】
従来技術から知られているのは、一般的な濃厚物質分配マスト、濃厚物質ポンプおよび濃厚物質搬送システムである。これらは、典型的には、特定の種類の濃厚物質、たとえば、ある密度のものを搬送するように設計されているので、この目的のために考えられていない濃厚物質分配マスト、濃厚物質ポンプおよび濃厚物質搬送システムを使用しながら、より重く、すなわち、より密度の高い濃厚物質を搬送するときに、濃厚物質分配マストおよび濃厚物質ポンプの構成要素に過負荷および損傷を与える危険性がある。これは、たとえば、濃厚物質分配マストのマストアームに提供された動作範囲を超える場合であり得る。さらに、トラックに装着されたコンクリートポンプの場合のように、下部構造体とともに使用される場合、転覆の危険性があり、したがって、システム全体にかなりの損傷を与える。同様に、より重い濃厚物質の搬送においては、典型的には濃厚物質分配マストのマストアセンブリに接続された旋回ギアの回転中の高い回転速度は、特に濃厚物質分配マストの構成要素の過負荷をもたらす可能性がある。コアポンプおよびS型パイプの過剰なポンプ速度および切換速度についても同じことが言え、後者は通常の濃厚物質ポンプの構成要素である。
【0003】
また、風の影響のような可変の周囲条件は、濃厚物質を搬送しながら、濃厚物質分配マストおよび濃厚物質ポンプの構成要素の設計限界を超える原因となり得る。これを考慮に入れるために、基本設計では通常、保守的な許容範囲が与えられるので、構成要素の動作は、典型的な条件での使用中に不必要に制限される。
【0004】
したがって、基本設計に対応するものよりも重いものを含めて、重量の異なる濃厚物質に対する濃厚物質分配マストおよび濃厚物質ポンプの柔軟で状況に適応した使用は、容易には不可能である。そのため、このような特に重い濃厚物質を搬送するために、クレーンで吊り上げるバケットが常用されている。代わりに、濃厚物質分配マストは、用途に適合するように機械的に修正され、より短いマストアセンブリを装着することができるが、これは複雑であり、濃厚物質分配マストの最大動作範囲を永久的に制限する。
【0005】
同様に、濃厚物質分配マストおよび濃厚物質ポンプの動作は、特に重い濃厚物質を搬送するとき、または濃厚物質搬送システム全体の安定性が限界にある可変周囲条件下では問題がある。この限界は、通常、濃厚物質搬送システムによって自動的に考慮されることはないが、ユーザによって認識されることが可能であり、これはユーザの経験に依存する。このため、濃厚物質搬送システムで搬送しようとする濃厚物質よりも重い濃厚物質を搬送する場合には、基本的に濃厚物質搬送システムの動作時の安定性が保証されない。したがって、原則として、このような過度に重い濃厚物質の搬送は禁止されている。
【発明の概要】
【0006】
そのため、本発明の目的は、改良された濃厚物質分配マスト、改良された濃厚物質ポンプおよび改良された濃厚物質搬送システムを提供することである。本発明による解決手段は、独立クレームの特徴にある。有利な改良は、従属クレームの主題である。
【0007】
本発明によれば、濃厚物質ポンプによって搬送される濃厚物質を分配する濃厚物質分配マストにおいて、最大回転速度で垂直軸周りに回転可能な旋回ギアと、少なくとも第1のマストアームおよび第2のマストアームを有するマストアセンブリであって、第1のマストアームがマストアセンブリの近位端部で旋回ギアに接続され、マストアームがそれぞれ最大動作範囲を有する、マストアセンブリと、マストアセンブリを横切って延び、濃厚物質ポンプの出口に接続可能な近位端部と、遠位端部とを備え、搬送ラインの遠位端部は、マストアセンブリの遠位端部で端部ホースに移行する、搬送ラインと、動作情報の少なくとも1つの項目を受信する受信ユニットと、第1のマストアームおよび第2のマストアームのそれぞれの現在許容可能な動作範囲を決定し、さらに/または、動作情報の少なくとも1つの受信された項目に応じて現在許容可能な旋回ギア速度を決定する処理ユニットと、第1のマストアームおよび第2のマストアームの決定された現在許容可能な動作範囲の1つがそれぞれの最大動作範囲よりも小さい場合には、対応するマストアームの動作範囲をそれぞれの現在許容可能な動作範囲に制限するための、さらに/または、決定された現在許容可能な回転速度が最大回転速度よりも小さい場合には、旋回ギアの回転速度を制限するための制御ユニットと、を有する、濃厚物質分配マストが開示される。
【0008】
さらに、本発明によれば、濃厚物分配マストの搬送ラインを介して濃厚物質を搬送する濃厚物質ポンプにおいて、最大ポンプ速度を有する二重ピストン式コアポンプと、最大切換速度で切換可能であり、一端部が濃厚物質ポンプの出口に配列され、搬送ラインに接続可能なS型パイプと、動作情報の少なくとも1つの項目を受信する受信ユニットと、現在許容可能なポンプ速度を決定し、さらに/または、現在許容可能な切換速度を決定する処理ユニットであって、それぞれが、動作情報の少なくとも1つの受信された項目に依存する、処理ユニットと、決定された現在許容可能なポンプ速度が最大ポンプ速度より小さい場合には、現在許容可能なポンプ速度にポンプ速度を制限するための、さらに/または、決定された現在許容可能な切換速度が最大切換速度より小さい場合には、切換速度を制限するための制御ユニットと、を有する、濃厚物質ポンプが開示される。ポンプ速度の代わりに、ポンプ周波数も考慮することができ、切換速度の代わりに、切換周波数も考慮することができる。典型的には、ポンプ周波数および切換周波数の値はこの例では同じである。
【0009】
さらに、本発明によれば、濃厚物質搬送システムにおいて、搬送されるべき濃厚物質を分配する濃厚物質分配マストと、濃厚物質分配マストの搬送ラインを介して濃厚物質を搬送する濃厚物質ポンプと、濃厚物質分配マストおよび濃厚物質ポンプが配列された下部構造体と、を有し、下部構造体は、下部構造体を支持する為の支持構造体と、動作情報の少なくとも1つの項目を受信する為の受信ユニットと、処理ユニットと、制御ユニットとを備え、支持構造体は、第1の閾値および最大安定性パラメータによって規定される上限を有する安定性範囲を有し、前記処理ユニットは、動作情報の少なくとも1つの受信された項目に応じて、現在の安定性パラメータを決定する為の、更に、動作情報の前記少なくとも1つの受信された項目と予測情報の少なくとも1つの項目とに応じて、予測される将来の安定性パラメータを決定する為の処理ユニットであって、後者は、濃厚物質分配マストおよび/または濃厚物質ポンプの少なくとも1つの構成要素の秩序ある動作における安定性パラメータの予測された変化を特徴とし、制御ユニットは、濃厚物質分配マストおよび/または濃厚物質ポンプの少なくとも1つの構成要素の動作パラメータを制御する為の制御ユニットであり、制御ユニットは、決定された現在の安定性パラメータが第1の閾値よりも大きく、かつ、予測される決定された将来の安定性パラメータが、決定された現在の安定性パラメータよりも最大安定性パラメータに近い場合には、構成要素の動作が低速で起こるように、動作パラメータを制御するように構成される、濃厚物質搬送システムが開示される。
【0010】
本発明による濃厚物質分配マストおよび本発明による濃厚物質ポンプは、固定式または可動式の下部構造体上に配列することができる。本発明による濃厚物質搬送システムの下部構造体はまた、移動式でも据付式でもよい。本発明に係る濃厚物質分配マスト、本発明に係る濃厚物質ポンプ及び本発明に係る濃厚物質搬送システムは、たとえば、トラックに装着されたコンクリートポンプとして構成される。
【0011】
本発明は、関与する構成要素の許容可能な動作パラメータを動的かつ状況依存的にリアルタイムに決定することにより、濃厚物質分配マスト、濃厚物質ポンプおよび濃厚物質搬送システムの特に有利な設計実施形態である。このようにして、考慮中の個々の構成要素は、許容可能な動作パラメータまで秩序正しく動作させることができるので、濃厚物質搬送システムを損傷するリスクを有することなく、従来の濃厚物質搬送システムを安全かつ効率的に使用することが全く不可能であるか、または、たとえば、組立作業などの複雑な方法によってのみ可能であるシナリオにおいても、濃厚物質搬送システムを使用することが可能である。ここでは、濃厚物質分配マストと濃厚物質ポンプの両方の構成要素が考慮される。たとえば、この点に関しては、マストアセンブリが下部構造体よりも多くの負荷トルクを発生できる使用シナリオが典型的である。そのような場合には、マストアセンブリの個々の各マストアームの動作範囲は、システム全体の安定性が依然として維持されるように制限することができる。個々の構成要素の過負荷を回避できる。これはまた、たとえば、マストアセンブリが実際には大きな高さに達することができるが、完全に伸張された状態では使用することができず、それに対してより小さな下部構造体で十分であるという特殊な用途のための濃厚物質搬送システムを可能にする。その結果、濃厚物質搬送システムをより小型軽量に構成することができる。本発明はまた、構成要素の速度が低下すると、作用する力が低くなるという事実を利用する。従って、速度を、たとえば、予め定められた係数だけ、徐々に又は残りの安定性に応じて系統的に減少させることにより、周辺状況において安定性の上限に接近しているとき、即ち、最大安定性に近い極端な動作条件下であっても、これらの周辺状況においても可能な限り効率的に且つ最大の可能な範囲及び作用強度で構成要素を使用することが可能である。
【0012】
このように、本発明によれば、重量コンクリートを搬送する工事現場においても、濃厚物質搬送を行うことができる。特に安定性の上限に近い周辺状況では、設計負荷を超える負荷、たとえば、それに対応して高い端部ホースの負荷(例えば200kgを超える負荷)を伴う安全動作も行うことができる。超長端ホースも同様に使用することができる。同時に、風速または最大地上負荷容量のような安全動作に影響する要因を考慮に入れることができ、それにより、必要に応じて一つ又は複数の構成要素の動作が制限される。これは、濃厚物質搬送システムの使用のための新しい適用分野を開く。また、クレーン機能に対応した追加負荷を有する濃厚物質搬送システムを使用することも容易に可能である。
【0013】
まず、幾つかの用語を以下に説明する。
【0014】
濃厚物質は、搬送しにくい媒体の総称である。濃厚物質は、たとえば、粗粒成分を有する物質、アグレッシブ成分を有する物質等であってよい。濃厚物質は、バルク物質であってもよい。一実施形態において、濃厚物質は生コンクリートである。生コンクリートは30mm以上の粒子を含み、結合し、空隙に堆積物を形成することがあり、これらの理由から搬送が困難である。さらなる実施形態において、濃厚物質は、2300kg/mを超える密度を有する重いコンクリートである。
【0015】
濃厚物質分配マスト又は濃厚物質ポンプの構成要素は、特に、独立クレームに列挙されている要素であると理解されるべきである。実施例としては、濃厚物質分配マスト用の旋回ギアとマストアーム、および濃厚物質ポンプ用のコアポンプとS型パイプがある。構成要素は、それぞれの構成要素を動作させるための動作パラメータを有するべきものとする。動作パラメータは、たとえば、旋回ギアの回転速度、マストアーム接合部の操縦速度、マストアームのアクチュエータの動作速度、コアポンプのポンプ速度またはポンプ周波数、またはS型パイプの切換速度または切換周波数を含むことができる。
【0016】
旋回ギアは、垂直軸、たとえば、旋回ギアの中心軸を中心に、たとえば、360度回転可能である。旋回ギアは、液圧または空気圧シリンダまたは電気機械アクチュエータのような少なくとも1つのアクチュエータ、または異なるタイプの複数のアクチュエータの組合せを備えることができ、それによって、旋回ギアは回転によって下部構造体に対してその位置を変化させることができる。この目的のために、旋回ギアは、典型的には、液圧モータと、プラネタリギアボックスを備えたピニオンとを備える。
【0017】
マストアセンブリは、少なくとも2個のマストアームを備えるが、3個、4個、または5個のマストアームを備えることもできる。典型的には、マストアセンブリは3個から7個のマストアームを備える。第1のマストアームは、その近位端部において、旋回ギアに接続され、その遠位端部において、隣接するマストアームの近位端部に接続される。他のマストアームは連続しており、それぞれの場合に近位端部で隣接するマストアームの遠位端部に接続されている。マストアセンブリの遠位端部は、後続の最後のマストアームの遠位端部に対応し、さらに、その遠位端部においてそれ以上の接続を有しない。
【0018】
マストアセンブリ内のマストアームは、それぞれ、マスト接合部を介して、少なくとも、たとえば、排他的に、1つの次元において、少なくとも他のマストアームから独立して移動できるように互いに接続されている。各マストアームは、前者の近位端部にあるマスト接合部に割り当てられている。
【0019】
第1のマストアームは、旋回ギアがその垂直軸を中心に回転するときに、第1のマストアームおよび実施形態ではマストアセンブリ全体もまたこの軸を中心に回転するように、前者のマスト接合部を介して旋回ギアに接続される。たとえば、マストアームは、たとえば、旋回ギアとは独立して専ら垂直方向に移動可能であり、たとえば、マスト接合部を介して回転可能であるように、旋回ギアに取り付けられている。また、マストアームが伸縮機能を有し、その長手方向軸に沿って伸縮自在かつ無限に伸縮可能であることも考えられる。たとえば、マストアームは、マストアームの少なくとも遠位端部が3つの空間方向(x、y、z方向)の少なくとも1つに移動できるように調整可能である。代替的または追加的に、マストアームは、その長手方向軸を中心に回転可能である。たとえば、マストアームは、液圧若しくは空気圧シリンダ、若しくは電気機械アクチュエータのようなそのマスト接合部のための少なくとも1つのアクチュエータ、又は異なるタイプの複数のアクチュエータの組合せを備え、それにより、該マストアームは、少なくとも1つの他のマストアーム、特に近位端部で接続されたマストアームに対してその位置を変化させることができる。アクチュエータは、たとえば、マストアームを水平軸の周りに回転可能に旋回させるように構成することができ、水平軸は、たとえば、そのマストアーム接合部を通って走行し、さらに/または、1つ、2つ、または全ての空間方向に並進的に前記マストアームを移動させるように構成することができる。代替的または追加的に、マストアームは、更なるアクチュエータを有してもよく、それによって、前記マストアームを、たとえば伸縮自在に、伸長、短縮または回転させることができる。
【0020】
各マストアームは、移動可能な最大動作範囲を有する。マストアームの場合、開放角度は、マストアームの長手方向軸と、近位端部に固定されたマストアームの長手方向軸との間に規定することができ、この開放角度は、マストアームのマスト接合部の開放角度に対応する。開放角度は、たとえば、各マストアームの傾斜角度を比較することにより決定することができる。マストアームの傾斜角度は、傾斜センサにより記録できる。第1のマストアームの場合には、そのマスト接合部の最大または最小の開放角度を、その長手方向軸と旋回ギアの垂直軸に垂直な平面との間に設けることができる。また、代替的または追加的に、マストアームの近位端部と遠位端部との間の最大水平距離および/または最大垂直距離が、各場合において、それぞれのマストアームを移動させることができる最大動作範囲として提供されることも考えられる。たとえば、それぞれの特定の最大動作範囲は、マストアセンブリの個々のマストアームに対して、またはマストアセンブリ全体に対して規定される。
【0021】
濃厚物質分配マストの搬送ラインはマストアームに取り付けることができる。たとえば、搬送ラインは、少なくともマストアセンブリの遠位端部でマストアームに接続される。その時、締結の場所は、負荷取付け位置に対応する。マストアセンブリの遠位端部における端部ホースへの搬送ラインの移行は、搬送ラインがマストアセンブリを越えて延び、端部ホースを介して、マストアセンブリに対するいかなる固定もない区域を有することを意味すると理解されるべきである。従って、端部ホースは、マストアセンブリの遠位端部に自由に吊り下げることができる。端部ホースおよび搬送ラインは、別個のものであってもよいし、一体のものであってもよく、搬送されるべき濃厚物質が搬送ラインから端部ホース内にできるだけ損失なく搬送されるように構成されていてもよい。さらに、端部ホースは、濃厚物質の流量を制御するための端部ホースピンチ弁を有してもよい。
【0022】
濃厚物質分配マスト、濃厚物質ポンプおよび濃厚物質搬送システムは、それぞれ、本発明に係る方法を実行または制御する手段を備える。これらの手段は、特に、受信ユニット、処理ユニット、および制御ユニットを含み、様々な方法で分離または結合されるハードウェアおよび/またはソフトウェア構成要素として構成することができる。この手段は、たとえば、コンピュータプログラムのプログラム命令を有する少なくとも1つのメモリと、少なくとも1つのメモリからプログラム命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサとを備える。
【0023】
濃厚物質分配マスト、濃厚物質ポンプおよび濃厚物質搬送システムの受信ユニットは、それぞれの場合において、動作情報の少なくとも1つの項目を受信するように構成される。動作情報の項目は、濃厚物質分配マスト、濃厚物質ポンプ、及び濃厚物質搬送システム又はそれらの構成要素の種々の可能な特性の1つの特性を表し、かつ代表するものである。したがって、構成要素に動作情報の項目を割り当てることができるはずである。このような特性は、動作パラメータと同様に、たとえば、測定された変数によって特徴付けることができる。これらは、搬送が開始される前に既に明らかになっている特性であってもよいし、搬送が開始された後にのみ明らかになっている特性であってもよい。たとえば、動作情報の項目の受信は、この動作情報の項目の特徴である測定変数を測定することによって行うことができる。同様に、受信ユニットから受信される動作情報の項目は、たとえば、1つ又は複数の測定された変数が順に含まれる上流計算を規定するか、またはその結果とすることができる。このような上流計算は、濃厚物質分配マスト、濃厚物質ポンプおよび濃厚物質搬送システムの対応する構成ユニット内の現場で直接実行されることが考えられるが、外部、たとえば、サーバ装置上で実行されてもよく、このようにして計算された動作作情報の項目は受信ユニットによって受信される。
【0024】
濃厚物質分配マスト、濃厚物質ポンプおよび濃厚物質搬送システムの処理ユニットは、それぞれの場合において、現在許容可能な動作範囲、現在許容可能な動作パラメータおよび/または現在の安定性パラメータおよび予想される将来の安定性パラメータを決定するように構成されていると理解されるべきである。これは、少なくとも部分的に、特に、動作情報の受信した項目の全てに依存するべきである。この目的のために、前記処理ユニットは、たとえば、受信ユニットによって受信された情報にアクセスすることができ、また受信された動作情報の項目に応じて、それらの質量またはそれらの空間的膨張のような一定であると規定されかつ仮定される濃厚物質分配マスト、濃厚物質ポンプおよび/または濃厚物質搬送システムの構成要素の特性を考慮しながら、現在許容可能な動作範囲、現在許容可能な動作パラメータおよび/または現在の安定性パラメータおよび予想される将来の安定性パラメータを有することができる。マストアームの現在許容可能な動作範囲の決定は、代替的にまたは追加的に、たとえば、マストアセンブリの隣接する他のマストアームの既に決定された動作範囲に依存することも考えられる。たとえば、第2のマストアームの現在許容可能な動作範囲の決定は、第1のマストアームの許容可能な動作範囲が決定された後に行われ、第1のマストアームについて決定された動作範囲に依存する。予測される将来の安定性パラメータを決定するために、少なくとも濃厚物質搬送システムの処理ユニットは、濃厚物質分配マストおよび/または濃厚物質ポンプの一つ又は複数の構成要素の秩序ある動作時に、安定性パラメータの予測される変化の特徴である予測情報の項目の計算を実行するように構成される。たとえば、予測情報の項目を算出する場合、残りの構成要素の動作状態は、予測期間中、たとえば、1秒、2秒、3秒のように変化しないものとすることができる。変化しない動作状態とは、たとえば、初期近似において、予測期間中に別の制御信号を受信することなく維持される動作状態を意味するものと理解される。代替的または追加的に、保存されたデフォルト値または経験値を使用して、予測情報の項目を計算することができる。このようにして決定された予測情報の項目を用いて、処理ユニットは、制御ユニットが行う制御において、動作情報の現在の項目に加えて考慮可能な、考慮中の安定性の傾向を決定することができる。
【0025】
濃厚物質分配マスト、濃厚物質ポンプおよび濃厚物質搬送システムの制御ユニットは、それぞれの場合において、構成要素の動作範囲または動作パラメータを現在許容可能な動作範囲または現在許容可能な動作パラメータに制限するための適切な手段を含む。それぞれの制御ユニットは、追加的にまたは代替的に、処理ユニットによって決定された現在の安定性パラメータが、たとえば、規定された最大安定性パラメータよりも小さい場合、構成要素の動作パラメータを現在許容可能な動作パラメータに制限する手段を備えてもよい。一つ又は複数の構成要素の動作範囲を制限することは、それぞれの構成要素の動作パラメータが制限され、その制限された動作パラメータに従って構成要素が動作するようにされることを意味すると理解されたい。これは、それぞれの動作パラメータが、決定された動作情報の項目または決定された安定性パラメータに応じて、依然として許容可能な作用範囲、依然として許容可能な作用速度、または依然として許容可能な構成要素の作用周波数に制限できることを意味する。特に、構成要素が許容可能な動作範囲外で動作しないようにする。作用の範囲、作用の速度又は制限後の作用の周波数は、各場合の構成要素に対して基本的に与えられる作用の最大範囲、作用の最大強度及び作用の最大周波数よりも小さい。たとえば、制御ユニットは、現在許容可能なマストアームの動作範囲の上限値を決定することができ、また、マストアームがその上限値以下にしか撓まないようにして、濃厚物質分配マストの動作を果たすことができる。従って、マストアームの開放角度またはアクチュエータ力が、たとえば、対応して決定された限界を超えることを防止することができる。その目的のために、各アクチュエータは、たとえば、制御ユニットによって出力される適切な制御信号を受信することができる。たとえば、制御ユニットは、アクチュエータによるマストアームの撓みを制限することができる。これにより、濃厚物質分配マストの構成要素の過負荷または濃厚物質搬送システムの安定性の損失、およびそれに関連するそれぞれの損傷を防止することができる。
【0026】
濃厚物質分配マスト、濃厚物質ポンプおよび濃厚物質搬送システムのそれぞれの受信ユニット、処理ユニットおよび制御ユニットは、類似の構成または同一の構成であってもよい。これらは、それぞれ異なる受信ユニット、処理ユニット、制御ユニットとすることができるが、濃厚物質分配マスト、濃厚物質ポンプ、および、濃厚物質搬送システムの受信ユニット、処理ユニット、制御ユニットをそれぞれユニット全体のモジュールとして構成することも考えられる。次いで、このような全体的なユニットは、濃厚物質分配マストおよび濃厚物質ポンプを含む濃厚物質搬送システムの特別な区域内に空間的に結合されるように配列可能である。
【0027】
濃厚物質ポンプは、2つの、例えば正確に2つの搬送シリンダを有するコアポンプを備えることができる。この場合には、第1の搬送シリンダから第2の搬送シリンダへの切り換えと、第2の搬送シリンダから第1の搬送シリンダへの切り換えとが交互に行われる。S型パイプは、搬送シリンダ間で周期的に切り換えることができる。さらに、補助シリンダは、各移行を橋渡しするように構成することができる。
【0028】
S型パイプはパイプの可動区間であり、これを介して供給シリンダが濃厚物質ポンプの出口に交互に接続される。パイプ区間および補助シリンダは、濃厚物質ポンプに解放可能に接続されるアセンブリの要素とすることができる。これにより、濃厚物質ポンプの保守および洗浄を容易にすることができる。
【0029】
下部構造体は、基本フレーム、たとえば、シャーシであり、その上に濃厚物質分配マストおよび/または濃厚物質ポンプを配列することができる。たとえば、濃厚物質分配マストおよび/または濃厚物質ポンプが下部構造体に締結される。下部構造体は、据付け構成(例えば、プラットフォーム)または可動構成(例えば、車両)とすることができる。下部構造体は、支持のための支持構造体を含むことができる。このような下部構造体に濃厚物質分配マストと濃厚物質ポンプを装備すれば、濃厚物質搬送システム全体を支持することができ、動作中の安定性を向上させることができる。
【0030】
接触面の傾斜縁部から濃厚物質搬送システムに作用する全ての力を考慮した作用ラインの間隔が大きいほど、支持構造体の安定性、従って濃厚物質搬送システム全体の安定性は高くなる。しかしながら、安定性に関する信頼できる陳述は、少なくとも濃厚物質搬送システムに作用する重量力を考慮に入れた作用ラインに基づいて、既になされている。考慮される作用ラインにおいて実際に作用する力が多ければ多いほど、より正確にこのステートメントを出すことができる。従って、接触面の傾斜縁部からの作用ラインの間隔を表す安定性パラメータによって、濃厚物質搬送システムの安定性を特に有利に特徴付けることができる。安定性パラメータは、規定された又は動的に決定可能な安定性範囲内に位置し、その範囲内では、各傾斜縁部からの作用ラインの間隔は0以上であり、この場合、安全マージンも考慮されることが好ましい。支持構造体、ひいては濃厚物質搬送システムの安定性は、安定性範囲内で確保される。安定性範囲の上限は、最大安定性パラメータによって規定される。最大安定性パラメータは、傾斜縁部の1つからの作用ラインの間隔が0である場合に存在する。従って、安定性パラメータが増加するにつれて、傾斜縁部の少なくとも1つからの作用ラインの間隔は減少する。上限を超えると、間隔は0未満になり、安定性は保証されなくなる。たとえば、検討中の濃厚物質搬送システムの構成要素の特性が一定であると仮定してその特性を考慮することにより、濃厚物質搬送システムの各動作状況に対する安定性範囲を規定又は決定することが考えられる。たとえば、この目的のために、接触面は、たとえば、支持脚部の特定の設定によって、支持構造体の各可能な配置に対して規定できるか、または決定可能である。安定性範囲はさらに、第1の閾値および任意選択的に第2の閾値も含む。たとえば、第2の閾値は、第1の閾値よりも最大安定性パラメータに近く、従って安定性の上限に近くすることができる。従って、濃厚物質分配マストのマストアセンブリが周辺状況に向かって撓む間、結果として生じるモーメントが支持構造体に作用するために、最初に第1の閾値を超え、次に第2の閾値を超え、次に上限を超える。
【0031】
傾斜縁部の1つからの作用ラインの間隔および作用ラインの方向は、それぞれ、少なくとも、濃厚物質搬送システムの重量力に依存し、例えば、処理ユニットによって計算することができる。作用ラインの方向は、垂直方向成分および水平方向成分を有してもよく、作用方向および/または複数の力の値に依存してもよい。たとえば、この点に関して考慮されるべき一つ又は複数の力は、ユーザによって(例えば、適切なユーザインターフェースによって)規定できるか、選択できる。たとえば、濃厚物質搬送システムの重量力だけを考慮すると、作用ラインは重心全体を通る鉛直線に相当する。この場合、作用ラインの方向は鉛直線の位置と同一である。作用ラインの方向がさらに、濃厚物質搬送システムの側部に作用する風力のような水平成分を有する力に依存する場合、作用ラインの方向はまた、少なくとも1つの水平成分を含み、その方向は鉛直線の方向と同一ではない。作用ラインの方向は、処理ユニットが位置を徐々に、好ましくは、たとえば規定された方向のそれぞれの規定された量だけ徐々に適応させることができるように、たとえば、濃厚物質搬送システムの動作において優勢な風力より上の一つ又は複数の特定条件の発生に応じて、一つ又は複数の追加の力に依存することが考えられる。また、作用ラインの方向は、作用の方向および/または受信ユニットによって受信され、力を示す一つ又は複数の、好ましくは全ての動作情報の項目の値に依存することも考えられる。
【0032】
たとえば、安定性範囲は、支持構造体の安定性が最早提供されない最小値を有する距離マージンとして説明することができる。従って、構成要素のいかなる運動も、たとえば、濃厚物質分配マストのマストアームが遠位方向に撓んだ場合には、距離マージンを減少させることができ、また、たとえば、マストアームが近位方向に撓んだ場合には、距離マージンを増加させることができる。距離マージンが使用された場合、最大安定性パラメータが存在し、安定性範囲の上限に達している。検討中の構成要素の動作が距離マージンを増大させることが予想される場合、そのような動作は、任意選択的に低速で行うことができる。
【0033】
構成部品の秩序ある動作とは、構成要素に対して基本的かつ通常の工業的慣行において意図されているような動作を意味するものと理解されるべきであり、構成要素は、典型的に一般的な条件下で考えられる。たとえば、ある構成要素が秩序正しく動作している場合には、その構成要素の特定の動作速度が与えられる。
【0034】
濃厚物質分配マスト、濃厚物質ポンプおよび濃厚物質搬送システムの実施形態において、動作情報の項目は、マストアームの接合部トルク、マストアームのシリンダ力、および/またはマストアームの開放角度を示す。
【0035】
マストアームの関節トルクは、マスト接合部に作用するモーメントである。これは、特に、マストアセンブリの総重量、風負荷、搬送されるべき濃厚物質の重量、またはマストのピーク負荷に対応してマストアセンブリの第1のマストアームの遠位端部に作用する重量に依存するモーメントを表す。接合トルクに関する結論は、たとえば、それぞれの接合角度の測定のような一つ又は複数の他の測定と関連して、それぞれのマストアームのアクチュエータに作用するシリンダ力またはマストアームのアクチュエータに作用するシリンダ圧力を測定することによって引き出すことができる。たとえば、マストアームの接合部トルクは、伝達関数、すなわち、各マストアームのマスト接合部のシリンダ力および接合角度から計算することができる。開放角度は、たとえば、隣接するマストアームの傾斜角度を比較することによって決定することができる。
【0036】
処理ユニットは、記録された全てのマストアームの接合部トルクを示す動作情報の項目に基づいて負荷トルクを計算し、計算された負荷トルクに応じて、第1のマストアームおよび第2のマストアームのそれぞれの現在許容可能な動作範囲、現在許容可能な旋回ギア速度、現在許容可能なポンプ速度、現在許容可能な切換速度、現在の安定性パラメータおよび/または予想される将来の安定性パラメータを決定するように構成することができる。マストアームのそれぞれの傾斜角を考慮に入れると、処理ユニットはこのようにして、リアルタイムで安定性パラメータを特に正確に決定することができる。
【0037】
さらに、処理ユニットは、現在許容可能な理論最大負荷トルクを示す動作情報の項目に応じて、第1のマストアームおよび第2のマストアームのそれぞれの現在許容可能な動作範囲、現在許容可能な旋回ギア速度、現在許容可能なポンプ速度、現在許容可能な切換速度、現在の安定性パラメータおよび/または予想される将来の安定性パラメータを決定するように設定することができる。
【0038】
さらに、動作情報の項目は、搬送される濃厚物質の種類、搬送される濃厚物質の密度、端部ホースへの負荷および/または端部ホースの種類を示すことができる。動作情報の項目は、同様に、たとえば、その下部構造体のような濃厚物質搬送システムの傾斜角度、少なくとも1つのマストアームの傾斜角度、マストアームのアクチュエータのアクチュエータ力、またはマストアームのアクチュエータの動作速度を示すことができる。たとえば、濃厚物質搬送システムの傾斜角度は、旋回ギアの回転軸と鉛直線の方向との間の角度に対応する。
【0039】
特に、受信ユニットは、端部ホースの対応するRFIDタグを走査することにより、当該端部ホースの種類に特有の動作情報の項目を受信するように構成されていることが考えられる。濃厚物質の種類とは、例えば、搬送される濃厚物質の材料組成や粘度をいう。マストアームの傾斜角度は、絶対傾斜角度、即ち、マストアームの位置を鉛直線の方向に対して決定する角度、又は相対傾斜角度、即ち、2つの、特に隣接するマストアームの傾斜角度間の差分角度とすることができる。
【0040】
これらの特性を考慮して、濃厚物質分配マストおよび/または濃厚物質ポンプの動作パラメータおよび/または濃厚物質搬送システムの安定性パラメータを決定することにより、より重い濃厚物質を搬送する場合に安全かつ効率的に利用することができる。たとえば、受信ユニットが、特に高いシリンダ力に特徴的な動作情報の項目を受信した場合、処理ユニットは、このマストアームに対して現在許容可能な動作範囲を、最大動作範囲よりも小さいものとして決定することができ、その結果、マストアームまたは濃厚物質分配マスト全体の過負荷を回避することができる。これに関連し得る安定性の劣化に関しても同様である。これは、たとえば、端部ホースが長すぎるために端部ホースの負荷が特に高い場合や、重いコンクリートを搬送する場合などである。
【0041】
しかしながら、濃厚物質分配マストや濃厚物質ポンプや濃厚物質搬送システムを計画した設計通りに動作しても、現在許容可能な最大動作範囲よりも小さい動作範囲を決定することができる。この場合、第1の閾値を超える安定性パラメータを同様に決定することができる。したがって、動作情報の項目は、予想される、特に最大風速または最大地上負荷容量の指標として有利である。その結果、予想される可変風力または個別の地面特性を、濃厚物質分配マストの動作のために考慮することができ、現在許容可能な動作パラメータをそれに応じて適応させることができる。予想される低い最大風速または固体地盤は、強風または下層の緩い地盤の場合よりも広範囲でより広範な動作パラメータを決定することを可能にする。対応する動作情報の項目が受信ユニットによって受信される場合、処理ユニットは、マストアームの最大動作範囲を使用して実際に搬送可能な濃厚物質に拘わらず、一つ又は複数のマストアームに対して現在許容可能な最大動作範囲より低い動作範囲を決定することができる。
【0042】
別の実施形態において、動作情報の項目は、負荷取付け点および/または負荷重量の位置を示す。たとえば、旋回ギアの垂直軸からの水平間隔は、負荷取付け点の位置として理解されるべきである。負荷重量は、負荷取付け点に作用する重量力を示す必要がある。
【0043】
これらの特性により、動作パラメータおよび安定性パラメータは、搬送されるそれぞれの濃厚物質およびその特性に対して個別かつ正確に決定することができ、その特性は、たとえば、材料関連である。
【0044】
動作情報の更なる例示的な項目は、充填されたコンベヤラインおよび/または充填されていないコンベヤラインを有する全てのマストアームの重量;全てのマストアームの重心の位置;追加の負荷の重量;追加の重量取付け点の位置;マストアームに作用する風力;全てのマストアームの風重心の位置;下部構造体の重量;下部構造体の重心の位置;後退および/または展開状態における支持脚部の接触面の位置;および/または脚力を示す。
【0045】
さらに、処理ユニットは、濃厚物質分配マスト用の旋回ギアの現在許容可能な旋回ギア速度を代替的または追加的に決定することができ、これもまた、受信ユニットによって受信された動作情報の項目に応じて実行される。たとえば、マストアームのマスト接合部のシリンダ力は、旋回ギアの回転による遠心力によって大きく増加することがあり、マストアームを損傷するおそれがある。受信ユニットが、そのような高いシリンダ力を示す動作情報の項目を受信した場合、処理ユニットは、現在許容可能な旋回ギア速度が最大旋回ギア速度よりも小さくなるように決定することができる。この場合、制御ユニットは、旋回ギアの回転速度を処理ユニットが決定した現在許容可能な回転速度に制限する。
【0046】
一実施形態において、マストアセンブリは、さらなるマストアームを含む。全体として、この場合、マストアセンブリ内のマストアームの数は3つである。さらに2つまたは3つのマストアームがマストアセンブリ内に設けられ、この場合のマストアセンブリは4つまたは5つのマストアームを備えることも考えられる。
【0047】
追加のマストアームにより、濃厚物質分配マストの最大作用範囲を容易に増加させることができる。特に、個々のマストアームを互いに接続するために関節接合が行われる場合には、マストアセンブリの設計は、依然として特にコンパクトである。
【0048】
任意選択的に、処理ユニットは、動作情報の少なくとも1つの受信された項目に応じて、各々の場合において、好ましくは各々の更なるマストアームに対して現在許容可能な動作範囲を決定するように構成することができ、制御ユニットは、更なるマストアームの決定された現在許容可能な動作範囲の1つが、対応するマストアームの各々の最大動作範囲よりも小さい場合に、動作範囲を各々の現在許容可能な動作範囲に制限するように更に構成される。
【0049】
このようにして、現在許容可能な動作範囲を決定する際に、更なるマストアームを考慮に入れることができる。同様に、別のマストアームの現在許容可能な動作範囲も、制御ユニットによって任意に制限することができる。
【0050】
有利には、マストアセンブリの旋回ギアおよび第1のマストアームの両方、ならびに各々の場合において2つのマストアームが、関節接合部を介して互いに接続され、処理ユニットはさらに、マストアームの近位端部において関節接合部の現在許容可能な開放角度を確立することによってマストアームの現在許容可能な動作範囲を決定するように構成される。さらに、制御ユニットは、マストアームの旋回能力を現在許容可能な開放角度に制限することによって動作範囲を制限するように構成することができる。さらに、全ての関節接合部が互いに平行な関節軸を有することが考えられる。さらに、関節接合部は、それぞれ120度、好ましくは、150度、特に好ましくは、180度の最大開放角度を有することができる。ただし、180度から235度、270度まで、または360度までの開放角度も考えられる。
【0051】
これは、マストアーム間またはマストアームと旋回ギアとの間の接続の特に実施が容易で機能的な実施形態であり、そこでは、濃厚物質分配マストに対する大きな作用範囲が依然として維持され、負荷取付け点の全ての空間方向における位置決めが、作用範囲内で必要に応じて実行できる。
【0052】
濃厚物質搬送システムの一実施形態において、制御ユニットは、決定された現在の安定性パラメータが第1の閾値を超え、かつ予測される決定された将来の安定性パラメータが決定された現在の安定性パラメータよりも最大安定性パラメータから離れている場合に、構成要素が不変の速度で動作するように、動作パラメータを制御するように構成される。
【0053】
好ましくは、支持構造体の安定性範囲は、第1の閾値よりも最大安定性パラメータに近い第2の閾値を含み、制御ユニットは、さらに、決定された現在の安定性パラメータが第2の閾値を超え、予測される決定された将来の安定パラメータが、決定された現在の安定性パラメータよりも最大安定性パラメータに近い場合に、構成要素の秩序ある動作が中断されるように動作パラメータを制御するように構成される。
【0054】
追加として、制御ユニットは、決定された現在の安定性パラメータが第2の閾値を超え、かつ予測される決定された将来の安定性パラメータが、決定された現在の安定性パラメータよりも最大安定性パラメータから離れている場合に、構成要素の動作が低速で行われるように、動作パラメータを制御するように構成することができる。
【0055】
安定性は周辺状況において危険にさらされる可能性があるが、それにも拘わらず、安定性が改善されると予想される場合に、予想される安定性パラメータの変化を考慮に入れることによって、秩序ある動作を行うことができる。これは、オプションとして、少なくとも第1の閾値と第2の閾値との間の安定性範囲に適用することができる。決定された現在の安定性パラメータが第2の閾値を超えており、従って、安定性の上限に更に近い場合には、予想される改善の場合、秩序ある動作を完全に中断することはできないが、構成要素の動作を低速で行うことができる。ある場合には、安定性範囲の上限付近で動作しているにも拘わらず、このように動作を継続することができるので、濃厚物質搬送システムを周辺状況において更に効果的に使用することができる。
【0056】
濃厚物質搬送システムの一実施形態において、制御ユニットは、決定された現在の安定性パラメータおよび予測される決定された将来の安定性パラメータに応じて、信号出力を行うように更に構成することができる。
【0057】
たとえば、第1の信号出力は、決定された現在の安定性パラメータが第2の閾値を超えており、かつ予測される決定された将来安定性パラメータが、決定された現在の安定性パラメータよりも最大安定性パラメータに近い場合に影響を受けることができ、さらに/または、第2の信号出力は、決定された現在の安定性パラメータが第1の閾値を超えており、予測される決定された将来の安定性パラメータが、決定された現在の安定性パラメータよりも最大安定性パラメータから遠い場合に影響を受けることができ、さらに/または、第3の信号出力は、決定された現在の安定性パラメータが第2の閾値を超えており、予測される決定された将来の安定性パラメータが、決定された現在の安定性パラメータよりも最大安定性パラメータから遠い場合に影響を受けることができる。
【0058】
このようにして、制御ユニットは、たとえば、ディスプレイの形態で、特に濃厚物質搬送システムの構成要素の照明された動作要素の輝度の形態で、濃厚物質搬送システムの適切なユーザインターフェースに対応する信号出力を行うことができる。可変サイズの照明領域を用いた対応するディスプレイも可能である。第1の信号出力は、最大の輝度またはサイズを引き起こし、第2の信号出力は、減少された輝度またはサイズを引き起こし、さらに/または、第3の信号出力は、最小の輝度またはサイズを引き起こすことが考えられる。しかしながら、音響形態で出力される信号(例えば、警告トーン)または触覚信号(例えば、動作要素の振動)が影響を受けることも可能である。これにより、濃厚物質搬送システムの使い勝手をさらに向上させることができる。
【0059】
速度低下の程度は、構成要素の動作速度に依存することが有利である。その程度は、さらに、最大安定性パラメータから予想される将来の安定性パラメータの距離がどれだけ大きいかに依存すると考えられる。たとえば、速度低下の程度は、距離が小さくなるにつれて、たとえば、直線的に、または距離の二乗に伴って、増加すると規定することができる。
【0060】
このようにして、状況に応じた適切な応答が、濃厚物質搬送システムの安定性の急速な又は緩慢な変化に対して提供可能である。
【0061】
好ましくは、処理ユニットは、予測情報の項目に応じて、予測される将来の安定性パラメータを決定するように特定され、後者は、濃厚物質分配マストおよび/または濃厚物質ポンプの複数の、好ましくは全ての構成要素の秩序ある動作に基づく動作情報の項目における予測される変化の特徴である。
【0062】
ここで、予測される将来の安定性パラメータを決定する際には、1つだけでなく複数の構成要素の動作による影響が考慮される。たとえば、予測される複数の将来のサブパラメータは、それぞれが、たとえば、濃厚物質搬送システムの傾斜縁部の1つからの間隔を特徴付けるものであり、この目的のために決定することもでき、予測される将来の安定性パラメータは、決定されたサブパラメータから選択することができる。たとえば、最大安定性パラメータに最も近いサブパラメータを選択することができる。特に、脚力、旋回ギアに作用するトルク、又は好ましくは全てのマストアームの負荷トルクを考慮に入れることができる。これにより、安定性パラメータのより意味のある推定が予想され、したがって、周辺状況における濃厚物質搬送システムのより効果的かつ安全な動作が予想される。
【0063】
一実施形態において、安定性パラメータの予測される変化は、安定性パラメータに対して構成要素の可能な最大の増加する影響であると仮定される。
【0064】
これにより、予測情報の項目の特に単純で保守的な推定が可能になり、時間のかかる計算を省くことができる。
【0065】
代替的または追加的に、予測情報の項目は、予測期間における秩序ある動作のために制御ユニットによって出力される制御信号を考慮に入れて計算することができる。
【0066】
したがって、制御ユニットは、濃厚物質搬送システムの秩序ある動作に関連して一つ又は複数の制御信号を出力することが規定されることが考えられる。たとえば、これは、たとえば、濃厚物質搬送システムの一つ又は複数のアクチュエータの濃厚物質搬送システムの特定の制御動作のために、濃厚物質搬送システムに課せられた要件に起因し得る。このような要求は、たとえば、濃厚物質搬送システムの適切なユーザインターフェース上のユーザ入力(例えば、ハンドヘルド制御装置上のジョイスティック運動)によって、例えば、受信ユニットで受信することができる。このようにして、制御ユニットによる制御信号の出力もまた、予想される将来の安定性パラメータを決定する際に考慮に入れることができる。更なる実施形態において、支持構造体は、少なくとも1つの水平および垂直に変位可能な支持脚部を更に備える。濃厚物質搬送システムの支持脚部は、濃厚物質搬送システムの安定性を増加させるのに役立つ支持構造体の構成要素を表す。支持構造体の安定性への影響は、特に支持脚部の個々の配置および設定に依存する。この目的のために、支持脚部は、支持板によって地面に支持されてもよい。通常、支持構造体のために4つの支持脚部が設けられる。さらに任意選択的に、ここでの受信ユニットは、垂直軸の周りに回転可能な濃厚物質分配マストの旋回ギアのトルク、少なくとも1つの支持脚部の水平脚力、または少なくとも1つの支持脚部の垂直脚力を示す動作情報の項目を受信するように構成される。
【0067】
水平または垂直の脚力は、支持脚部に作用する水平または垂直の力であると理解される。予想される将来の安定性パラメータと同様に現在の安定性パラメータを決定する際に上述の特性を考慮することによって、支持構造体の安定性に関して、更には静的負荷に関して、特に信頼できる結論を引き出すことが可能である。
【0068】
一実施形態によれば、濃厚物質搬送システムの処理ユニットは、動作情報の受信された複数の項目から濃厚物質搬送システムの全重心の現在位置を計算し、計算された全重心の現在位置に応じて安定性パラメータを決定するように構成される。たとえば、処理ユニットは、接触面の傾斜縁部から濃厚物質搬送システムに作用する少なくとも1つの力の作用ラインのそれぞれの距離を計算し、計算された距離に応じて安定性パラメータを決定するように構成することができ、ここで、濃厚物質搬送システムに作用する少なくとも1つの力は、濃厚物質搬送システムの重心全体の現在位置に作用する濃厚物質搬送システムの重量力を含む。
【0069】
一実施形態によれば、濃厚物質分配マスト、濃厚物質ポンプまたは濃厚物質搬送システムのそれぞれの受信ユニットは、動作情報の項目を記録するためのセンサユニット、動作情報の項目を記録するための通信インターフェース、または動作情報の項目を記録するためのユーザインターフェースを備える。
【0070】
センサユニットを使用することにより、受信ユニットは、ユーザ入力とは独立して自動的に動作情報の項目を取得することができる。センサユニットは、同じタイプまたは異なるタイプの一つ又は複数のセンサを備えることができる。例示的なセンサは、(例えば、マストアームのマスト接合部のシリンダ力、マストアームのアクチュエータに作用する力、または端部ホースの負荷を記録するための)力および圧力センサ、位置センサ(例えば、GPS、GLONASS、またはGalileoのような衛星ベースの位置システムのセンサ)、位置センサ(例えば、マストアームの傾斜角度を記録するための精神レベルまたは傾斜センサ)、電気センサ(例えば、誘導センサ)、光学センサ(例えば、搬送される濃厚物質のタイプを記録するためのレーザセンサまたは2Dスキャナ)、または音響センサ(例えば、搬送される濃厚物質の密度を記録するための超音波センサ、または振動センサ)を含む。予想される風速を決定するための風の測定および予測装置もまた、適切なセンサである。同様に、センサユニットの複数のセンサの相互作用によっても、動作情報の項目を取得することができる。
【0071】
代替的または追加的に、それぞれの受信ユニットは、一つ又は複数の(例えば、無線)通信インターフェースを備えてもよく、これらのインターフェースを介して(例えば、外部に)記録された動作情報の項目が、当業者に既知の方法で受信ユニットによって受信される。
【0072】
動作情報の項目を記録するためにユーザインターフェースが提供される場合、このユーザインターフェースは、例えば、少なくとも1つのボタン、キーパッド、キーボード、マウス、ディスプレイユニット(例えばディスプレイ)、マイクロフォン、タッチセンシティブディスプレイユニット(例えばタッチスクリーン)、カメラおよび/またはタッチセンシティブ表面(例えばタッチパッド)として構成することができる。たとえば、動作情報の項目は、ユーザインターフェースでのユーザ入力を記録することによって受信される。
【0073】
さらに開示されているのは、本発明に係る更なる濃厚物質搬送システムであって、本発明に係る濃厚物質分配マスト、本発明に係る濃厚物質ポンプおよび/または本発明に係る濃厚物質搬送システムを備える。さらなる説明のために上記の説明を参照する。本発明による更なる濃厚物質搬送システムは、一実施例として、トラック装着型ポンプとして構成することもできる。
【0074】
更に開示されているのは、本発明に係る厚物分配マストの動作方法において、垂直軸を中心に最大回転速度で回転可能な旋回ギアと、少なくとも第1のマストアームおよび第2のマストアームを有するマストアセンブリであって、第1のマストアームがマストアセンブリの近位端部で旋回ギアに接続され、マストアームがそれぞれ最大動作範囲を有する、マストアセンブリと、マストアセンブリを横切って延び、濃厚物質ポンプの出口に接続可能な近位端部と、遠位端部とを備える、搬送ラインであって、搬送ラインの近位端部は、マストアセンブリの遠位端部で端部ホースに移行する搬送ラインと、受信ユニットと、処理ユニットと、制御ユニットとを有し、この方法は受信ユニットによって、動作情報の少なくとも1つの項目を受信するステップと、処理ユニットによって、第1のマストアームおよび第2のマストアームのそれぞれの現在許容可能な動作範囲を決定するステップ、および/または、処理ユニットによって、それぞれの場合において、動作情報の少なくとも1つの受信された項目に応じて、現在許容可能な旋回ギア速度を決定するステップと、第1のマストアームおよび第2のマストアームの決定された現在許容可能な動作範囲の1つがそれぞれの最大動作範囲よりも小さい場合には、制御ユニットによって、対応するマストアームの動作範囲をそれぞれの現在許容可能な動作範囲に制限するステップと 、および/または、決定された現在の許容可能な回転速度が最大回転速度未満である場合には、制御ユニットによって、旋回ギアの回転速度を制限するステップと、を含む。
【0075】
同様に、二重ピストン式コアポンプを有する濃厚物質ポンプの動作方法が開示されており、この二重ピストン式コアポンプは、最大ポンプ速度と、最大切換速度で切換可能であり、一端が濃厚物質ポンプの出口に配列され、搬送ラインに接続可能なS型パイプと、受信ユニットと、処理ユニットと、制御ユニットとを有し、この方法は、受信ユニットによって、動作情報の少なくとも1つの項目を受信するステップと、処理ユニットによって現在許容可能なポンプ速度を決定するステップ、および/または、処理ユニットによって現在許容可能な切換速度を決定するステップであって、各々の場合において、動作情報の少なくとも1つの受信された項目に応じて決定するステップと、決定された現在許容可能なポンプ速度が最大ポンプ速度よりも小さい場合には、制御ユニットによって、ポンプ速度を現在許容可能なポンプ速度に制限し、さらに/または、決定された現在許容可能な切換速度が最大切換速度よりも小さい場合には、制御ユニットによって、切換速度を制限する、ステップと、を含む。ポンプ速度の代わりに、ポンプ周波数も考慮することができ、切換速度の代わりに、切換周波数も考慮することができる。
【0076】
更に開示されているのは、濃厚物質搬送システムの動作方法であって、この濃厚物質搬送システムは、濃厚物質分配マストと、濃厚物質ポンプと、濃厚物質分配マストおよび濃厚物質ポンプが配列可能な下部構造体と、を有し、下部構造体は、下部構造を支持する支持構造体を備え、支持構造体は、第1の閾値を有し、最大安定性パラメータで規定される上限を有する安定性範囲を有し、受信ユニットと、処理ユニットと、制御ユニットとを有し、この方法は、受信ユニットによって、動作情報の少なくとも1つの項目を受信するステップと、処理ユニットによって、動作情報の少なくとも1つの受信された項目に応じて、現在の安定性パラメータを決定するステップと、処理ユニットによって、動作情報の少なくとも1つの受信された項目および濃厚物質分配マストおよび/または濃厚物質ポンプの少なくとも1つの構成要素の秩序ある動作時の安定性パラメータの予測された変化の特徴である予測情報の項目に応じて、予測されるべき将来の安定性パラメータを決定するステップと、決定された現在の安定性パラメータが第1の閾値よりも大きく、かつ決定された予測される将来の安定性パラメータが、決定された現在の安定性パラメータよりも最大安定性パラメータに近い場合には、構成要素の動作が低速で行われるように、制御ユニットによって、濃厚物質分配マストおよび/または濃厚物質ポンプの少なくとも1つの構成要素の動作パラメータを制御するステップと、を含む。
【0077】
この方法の更なるる有利な開発(developments)の更なる説明のために、濃厚物質分配マスト、濃厚物質ポンプおよび濃厚物質搬送システムの上述の開発を参照する。
【0078】
同様に開示されるのは、コンピュータプログラムがプロセッサ上で実行されるときに、プロセッサに開示された方法のうちの少なくとも1つを実行および/または制御させるプログラム命令を有するコンピュータプログラムである。たとえば、開示されたコンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能なデータキャリアに格納される。
【0079】
上述の実施形態および構成は、単に実施例として理解されるべきであり、本発明を何ら限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0080】
以下、添付の図面を参照し、有利な実施形態によって、例示的な方法で、より詳細に本発明を説明する。
図1図1は、本発明による濃厚物質分配マストの例示的な実施形態の概略図を示す。
図2図2は、本発明による濃厚物質ポンプの例示的実施形態の概略図を示す。
図3図3は、本発明による濃厚物質搬送システムの一実施形態の概略図を示す。
【詳細な説明】
【0081】
図1に示されているのは、濃厚物質ポンプによって搬送される濃厚物質を分配するための濃厚物質分配マスト18であり、旋回ギア19と、マストアセンブリ40と、搬送ライン17とを有する。
【0082】
マストアセンブリ40は、第1のマストアーム41と、第2のマストアーム42と、更なる第1のマストアーム43と、更なる第2のマストアーム44とを備える。ここで、第1のマストアーム41の近位端部がマストアセンブリ40の近位端部に相当し、第2のマストアーム42の遠位端部がマストアセンブリ40の遠位端部に相当する。旋回ギア19は、垂直軸、即ち、画像面内の軸を中心に最大回転速度で回転可能である。
【0083】
第1のマストアーム41は、その近位端部でマストアーム接合部を介して旋回ギア19に接続されている。ここでのマストアーム接合部による接続は、関節接合部による固定として構成される。更なる第1のマストアーム43は、その近位端部において、同様に関節接合部として構成されたマストアーム接合部を介して、第1のマストアーム41の遠位端部に接続される。同様に、更なる第2のマストアーム44は、更なる第1のマストアーム43に関節接合部を介して同様に接続されている。第2のマストアーム42は、その近位端部で関節接続された接合部を介して、更なる第2のマストアーム44の近位端部に接続される。
【0084】
ここで、マストアセンブリ40のマストアーム41、42、43、44の各々は、動作範囲を有する。図1の実施例において、個々のマストアームは、その近位端部において、それぞれの場合において、互いにまたは旋回ギア19に関節接合によって接続されており、各マストアームの最大動作範囲は、その最小または最大開放角度として特徴付けられる。実施例によりプロットされているのは、第2のマストアーム42の開放角度47であり、これは、マストアーム42の長手方向軸と、その近位端部に接続されたマストアーム44の長手方向軸とによって囲まれる角度として規定される。この場合の第2のマストアーム42の最大動作範囲は、本実施例では、180°の開放角度47に対応する。同様にして、他の各マストアームに対して(最大)開放角度、従って(最大)動作範囲が規定される。第1のマストアーム41の場合、開放角度は、マストアーム41の長手方向軸と旋回ギア19の垂直軸に垂直な平面とによって囲まれる角度を意味するものと理解されるべきである。
【0085】
さらに、濃厚物質分配マスト18が配列される下部構造体30が破線で示されている。ここでの下部構造体30は、一実施例として、車両33上に点線で配列されている。
【0086】
搬送ライン17は近位端部を有しており、近位端部は濃厚物質ポンプ(図示せず)に接続されており、株構造体30から旋回ギア19に沿って延び、かつマストアセンブリ40の近位端部からマストアセンブリ40の遠位端部まで延びている。ここで、搬送ライン17は端部ホース45に移行する。ここでの移行部の場所は、たとえば、マストアセンブリ40が追加的にアイレットを有することができる負荷取付け点46を特定する。
【0087】
さらに、濃厚物質分配マスト18は、受信ユニット11と、処理ユニット12と、制御ユニット13とを有する。
【0088】
受信ユニット11は、複数のセンサを備えたセンサユニットを備え、それぞれの場合、複数のセンサはマストアーム41,42,43,44のマスト接合部にそれぞれ配列される。従って、受信ユニット11は、センサ部から少なくとも1つの動作情報を受信するように構成されている。図1の実施例において、センサは、それぞれの場合において、各マストアームのマスト接合部のシリンダ力の形で動作情報の項目を記録するように構成されていると理解されるべきである。
【0089】
動作情報の受信された項目に基づいて、処理ユニット12は、各マストアーム41、42、43、44の現在許容可能な動作範囲を決定する。このそれぞれの決定された現在許容可能な動作範囲を現在許容可能な開放角度と規定する。現在許容可能な開放角度は、最大開放角度以下の角度に対応することができる。
【0090】
受信ユニット11が特に高いシリンダ力に特徴的な動作情報を受信した場合、処理ユニット12は、現在許容可能な開放角度、従って現在許容可能な動作範囲を最大開放角度よりも小さく決定する。これは、たとえば、第2のマストアーム42又は濃厚物質分配マスト18全体の過負荷を回避するために行われる。このようなシナリオは、たとえば、負荷取付け点46内の端部ホース45に特に高い負荷がかかっている場合に発生する可能性があり、これは通常、重いコンクリートを搬送するとき、または高い型枠を充填するときに発生する。
【0091】
しかしながら、濃厚物質分配マスト18を計画された設計通りに動作した場合でも、最大動作範囲よりも小さい現在許容可能な動作範囲を決定することができる。これは、たとえば、強風または未舗装の地面のような不利な周囲条件の場合であり得る。たとえば、受信ユニット11のユーザインターフェースにユーザ入力を記録することによって、動作情報の対応する項目が受信ユニット11によって受信された場合、処理ユニット12は、マストアームの最大動作範囲で実際に搬送することができる濃厚物質にも拘わらず、現在許容可能な最大動作範囲よりも低い動作範囲を決定することができる。
【0092】
マストアームの現在許容可能な動作範囲が最大動作範囲未満であることを処理ユニット12が決定した場合、制御ユニット13は、対応するマストアームの動作範囲を、決定された現在許容可能な動作範囲に制限することにより、本実施例では、最大開放角度よりも小さい現在許容可能な開放角度に制限する。この場合、対応するマストアームの撓みは、たとえば、濃厚物質分配マスト18の対応するアクチュエータによって濃厚物質分配マスト18によって行われるのではなく、たとえば、制御ユニット13の制御信号に応じて排除される。
【0093】
処理ユニット12によって決定された対応するマストアームの現在許容可能な開放角度がその最大開放角度以上である場合、マストアームの動作範囲は制限されず、その撓みは中断されない。これは、たとえば、濃厚物質分配マスト18の計画された設計に従って搬送が行われる場合であり得る。
【0094】
さらに、本実施例において、処理ユニット12は、受信ユニット11が受信した動作情報の項目、たとえば、センサユニットのセンサが記録したシリンダ力などに応じて、現在許容可能な旋回速度をさらに決定する。この場合、旋回ギア19の現在許容可能な回転速度は、秩序ある動作で使用される最大回転速度よりも低くすることができる。たとえば、旋回ギア19の回転によって生じる遠心力によって、第2のマストアーム42のマストアーム接合部47内のシリンダ力が著しく増加する可能性があり、第2のマストアーム42を損傷する危険性がある。このような高いシリンダ力が受信ユニット11のセンサによって記録される場合、処理ユニット12は、現在許容可能な旋回ギア速度が最大旋回ギア速度よりも低くなるように決定することができる。この場合、制御ユニット13は、旋回ギア19の回転速度を処理ユニット12が決定した現在許容可能な回転速度に制限する。
【0095】
図2は、濃厚物質を搬送するための濃厚物質ポンプ16を示す。濃厚物質ポンプ16は、二重ピストン式コアポンプ15および切換可能なS型パイプ24を備える。この場合、コアポンプ15は最大ポンプ速度を有し、S型パイプ24は最大切換速度を有し、この速度で、S型パイプ24の一端部がコアポンプの2つのピストンの間で前後に切り換えられる。濃厚物質ポンプ16の出口28において、S型パイプ24の他端部は、濃厚物質分配マスト(図示せず)の搬送ライン17に接続されている。さらに、濃厚物質ポンプ16は、受信ユニット11と、処理ユニット12と、制御ユニット13とを備えている。
【0096】
本実施例において、受信ユニット11は、ユーザインターフェース、たとえば、タッチパネル式の表示ユニットを備えており、ユーザ入力された動作情報の項目を記録することができる。たとえば、ユーザが搬送する厚物物質の種類を入力し、動作情報の対応する項目を受信ユニット11が受信することができる。
【0097】
処理ユニット12は、受信ユニット11が受信した動作情報の項目、即ち、現在行われるべき濃厚物質の種類に関する情報の項目に応じて、現在許容可能なポンプ速度、たとえば、現在の種類の濃厚物質を搬送するために設けられる(最大)ポンプ速度と、現在の種類の濃厚物質を搬送するために同様に設けられる(最大)切換速度とを決定する。
【0098】
特に、このようにして決定された現在許容可能なポンプ速度及び現在許容可能な切換速度は、コアポンプ15の最大ポンプ速度及びS型パイプ24の最大切換速度よりも小さくすることができる。搬送されるべき特定の種類の濃厚物質の選択された実施例の場合、制御ユニット13は、コアポンプ15のポンプ速度を、決定された現在許容可能なポンプ速度に制限し、S型パイプ24の切換速度を、決定された現在許容可能な切換速度に制限する。
【0099】
このようにして、たとえば、ある種類の濃厚物質を搬送するときに、濃厚物質ポンプ16または濃厚物質分配マスト18の構成要素の潜在的な過負荷を考慮に入れることができる。たとえば、特に高粘度の濃厚物質を搬送する場合には、濃厚物質ポンプ16の損傷を回避するために、コアポンプ15を最大ポンプ速度で動作しないようにしたり、S型パイプ24を最大切換速度で動作しないようにすることが考えられる。特に密度が高く、したがって重い濃厚物質の場合には、コアポンプ15も最大ポンプ速度で動作させず、S型パイプ24も最大切換速度で動作させないことも同様に考えられるが、これは、マストアームのそれぞれの負荷トルクが大きくなり、濃厚物質を搬送ラインに沿って搬送することによって濃厚物質分配マスト18に過負荷をかける危険があるからである。
【0100】
図3に示すように、濃厚物質搬送システム10は、その上に濃厚物質分配マスト18および濃厚物質ポンプ16が配列された下部構造体30を備える。下部構造体30は、車両33上に配列されているものとして再び例示的に示される。さらに、実施例として、濃厚物質分配マスト18の通常の構成要素として、搬送ライン17および旋回ギア19が例示される。
【0101】
下部構造体30は、下部構造体30を支持するための支持脚部32を備えた支持構造体31を備える。支持構造体31に対して規定されるのは、例えば支持脚部32の位置決めを考慮しながら、第1の閾値と第2の閾値と上限値とを有する安定性範囲であり、上限値は最大安定性パラメータによって規定される。また、下部構造体30には、受信ユニット11、処理ユニット12および制御ユニット13が設けられている。
【0102】
受信ユニット11は、動作情報の複数の項目を受信するように構成され、各動作情報項目は、例えば、各支持脚部32の水平脚力および垂直脚力を表す。このため、受信ユニット11は、センサユニットを有し、このセンサユニットは、支持脚部32にそれぞれの脚力を記録するための対応するセンサを有する。
【0103】
処理ユニット12は、このようにして受信ユニット11によって受信された動作情報のこれらの項目に応じて、支持構造体の現在の安定性およびその機械的負荷容量を特徴付ける現在の安定性パラメータを決定する。さらに、処理ユニット12はまた、それぞれの場合において、濃厚物質分配マスト18および濃厚物質ポンプ16の一つ又は複数の構成要素の秩序ある動作時の安定性パラメータの予測された変化に特徴的な予測情報の項目に応じて、予測される将来の安定性パラメータを決定する。実施例として、予測情報の項目の決定に関連して考慮される構成要素は、マストアームまたは濃厚物質分配マスト18の旋回ギア19、コアポンプまたは濃厚物質ポンプ16のS型パイプでもよい。
【0104】
制御ユニット13は、濃厚物質分配マスト18および/または濃厚物質ポンプ16の考慮される構成要素の動作パラメータを制御するように構成される。構成要素が濃厚物質分配マスト18のマストアームである場合、動作パラメータは、たとえば、対応するマストアーム接合部の関節接合部の操縦速度αの特性である。たとえば、秩序ある動作で使用される操縦速度αは±2°/sに相当する。たとえば、対象とする構成要素が濃厚物質分配マスト18の旋回ギアである場合、動作パラメータは、±6°/s以下の回転速度φとすることができる。
【0105】
ここで、制御ユニット13は、処理ユニット12により決定された現在の安定性パラメータが安定性範囲内の第1の閾値以上であり、予測される将来の安定性パラメータの決定値が最大安定性パラメータに近い場合、すなわち、対象となる構成要素を秩序正しく動作させると安定性の傾向がさらに悪化する場合には、当該構成要素の動作が低速になるように、各構成要素の動作パラメータを制御する。したがって、上述したマストアームの実施例において、制御ユニット13によって、関節接合部の動作速度αおよび/または回転速度φが、それぞれ、低減された動作速度αred<αまたは回転速度φred<φに低減される。ここで、安定性範囲を距離マージンとして記述すると、距離マージンは小さくなる。
【0106】
しかしながら、処理ユニット12によって決定された現在の安定性パラメータによって第1の閾値が超過されたときに、予想されるべき等しく決定された将来の安定性パラメータが最大安定性パラメータから遠く離れている場合、すなわち、関連する構成要素の秩序ある動作において安定性の傾向が改善される場合、制御ユニット13は、構成要素の動作が変化しない速度で行われるように構成要素の動作パラメータを制御することができる。この場合、制御ユニット13は、間接接合部の操縦速度αおよび/または回転速度φを減少させない。安定性範囲を距離マージンとして述べる場合、これは距離マージンの増加をもたらす。
【0107】
制御ユニット13は、処理ユニット12により決定された現在の安定性パラメータが既に第2の閾値を超えており、安定性の上限に近い場合、さらに、将来予測される安全性パラメータがなお最大安定性パラメータに近い場合には、構成要素の秩序ある動作を停止させるように構成要素を制御する。説明された実施例において、関節接合部の更なる動作および/または旋回ギアの回転は実施されず(α=0、φ=0)、たとえば、制御ユニット13の制御信号に応答して排除される。距離のマージンは変わらない。
【0108】
しかしながら、制御ユニット13は、処理ユニット12によって決定された現在の安定性パラメータが第2の閾値を超えた場合や、同様に処理ユニット12によって決定された予測される将来の安定性パラメータの位置が最大安定性パラメータから離れている場合には、対象構成要素の動作が低速になるように制御することができる。従って、第2の閾値を超え、従って、より低い速度、αred<α、φred<φではあるが、臨界安定性に近い状態で動作しているにも拘わらず、関節接合部の動作および/または旋回ギアの回転が行われてもよい。その結果、距離マージンがゆっくりと増加する。
【0109】
一実施例として、濃厚物質搬送システム10の構成要素は、それぞれがジョイスティックの6つの移動方向のうちの1つを表す、照明されたディスプレイを備えた3軸ジョイスティックとして構成される制御要素によって動作可能である。濃厚物質搬送システム10の構成要素の動作、したがって、動作情報の一つ又は複数の項目の変化は、ジョイスティックがユーザによって移動方向に動作された結果であると想定されるので、予想される将来の安定性パラメータの決定もまた、そのような動作に依存する。
【0110】
たとえば、制御ユニット13が各構成要素の動作パラメータを作動させる運動方向に対して、構成要素の動作が低速度で行われるように、この場合の各ディスプレイの輝度を低減することができる。これに対して、制御ユニット13が構成要素の動作パラメータを制御するような運動方向については、構成要素の動作が一定の速度で行われるように、各ディスプレィの輝度を最大にすることができる。最後に、制御ユニット13が構成要素の動作を停止する運動方向のためのこれらのディスプレイの輝度を最小にすることができる。
【0111】
本明細書に記載される本発明の実施形態、およびこの点に関して列挙される任意の特徴および特性は、他のものとの全ての組み合わせにおいても開示されるものとして理解されるべきである。特に、一実施形態によって構成される特徴の説明は、反対に明示的に述べられない限り、現時点では、一実施形態の機能にとって不可欠または不可欠であるとは理解されない。
図1
図2
図3
【国際調査報告】