(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】血液希釈式検出器
(51)【国際特許分類】
A61B 5/026 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
A61B5/026 120
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556749
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 US2022021048
(87)【国際公開番号】W WO2022198111
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597025806
【氏名又は名称】ワシントン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】Washington University
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン、クリスティーン
(72)【発明者】
【氏名】シュムイロビッチ、レオニード
(72)【発明者】
【氏名】アキレフ、サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ボネッタ-ミステリ、フランチェスカ
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA11
4C017AA20
4C017AB03
4C017AC26
4C017BC11
4C017BD04
4C017CC01
4C017DD14
4C017DD17
(57)【要約】
本開示によれば、対象(患者)の分娩後出血(PPH)をモニタするためのシステム、装置、方法が提供される。本開示のシステムは、対象の末梢灌流をモニタするレーザスペックル血流指標センサと、対象の血管内ヘモグロビン濃度をモニタするマルチスペクトルHbセンサと、を備える。レーザスペックル血流指標センサは、末梢皮膚及び筋肉組織のレーザスペックルイメージングを用いて、末梢灌流をモニタする。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の出血をモニタするためのシステムであって、
(a)前記対象の末梢灌流をモニタするレーザスペックル血流指標センサと、
(b)前記対象の血管内ヘモグロビン濃度をモニタするマルチスペクトルHbセンサと、を備える、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記レーザスペックル血流指標センサは、
前記対象の検査領域に近赤外線光(NIR光)を照射するスペックルレーザ光源と、
前記近赤外線光(NIR光)が照射された前記検査領域のレーザスペックルコントラスト画像を取得するビデオカメラと、を含む、システム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、
前記スペックルレーザ光源は、785nmの波長のレーザダイオードを含む、システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のシステムであって、
前記マルチスペクトルHbセンサは、
前記対象の検査領域に2つの異なる波長の光を照射する少なくとも2つのレーザ光源と、
前記光が照射された前記検査領域の前記光の強度を検出する少なくとも2つの光検出器と、を含む、システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムであって、
前記少なくとも2つのレーザ光源は、800nmの波長の発光ダイオード(LED)と、1340nmの波長の発光ダイオード(LED)とを含む、システム。
【請求項6】
請求項4に記載のシステムであって、
前記少なくとも2つのレーザ光源は、800nmの波長の発光ダイオード(LED)と、1340nmの波長の発光ダイオード(LED)とを含む、システム。
【請求項7】
請求項4に記載のシステムであって、
前記少なくとも2つの光検出器は、InGaAsフォトダイオード検出器を含む、システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のシステムであって、
前記レーザスペックル血流指標センサ及び前記マルチスペクトルHbセンサは、透過モードまたは反射モードで動作するように構成されている、システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のシステムであって、
当該システムは、前記対象が装着可能に構成されている、システム。
【請求項10】
対象の出血をモニタする方法であって、
(a)前記対象の末梢灌流をモニタするレーザスペックル血流指標センサ、及び前記対象の血管内ヘモグロビン濃度をモニタするマルチスペクトルHbセンサを備える装置を提供するステップと、
(b)前記装置を動作させて前記対象の前記末梢灌流及び前記血管内ヘモグロビン濃度をモニタするステップと、
(c)前記対象の前記末梢灌流、前記血管内ヘモグロビン濃度、またはその両方が閾値以下である場合に、前記対象が出血していると判定するステップと、を含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記出血は、分娩後出血(PPH)である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年3月18日出願の米国仮特許出願第63/162,864号に基づく優先権を主張する。上記出願の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載)
本発明は、米国国立衛生研究所から交付された助成金番号CA171651の下に、米国政府の支援を受けてなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
(技術分野)
本開示は、概して、対象(患者)の血液関連早期指標を非侵襲的にモニタするためのシステム、装置、及び方法に関する。
【背景技術】
【0004】
分娩後出血(PPH)は、分娩後24時間以内に1L以上の血液が失われることと定義されており、世界中での産婦の死亡原因の第1位であり、毎年1400万例が発生し、13万人が死亡していると推定されている。重要なことには、PPHは、産婦死亡の最も予防可能な原因として注目されている。PPHの主な原因は、診断及び治療の遅れである。PPHの予防は、輸血のための血液貯蔵量が少ないためにPPHの早期薬物治療に主に依存する低資源環境では、特に重要である。米国は先進国の中で最も産婦死亡率が高く、PPHの診断に最も一般的に用いられている方法は目視による出血量の推定であるが、この方法は出血量を過小評価することが知られている。そのため、PPHを早期かつ正確に検出することができるシステムが、緊急に求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示によれば、対象(患者)の分娩後出血(PPH)をモニタするためのシステム、装置、方法が提供される。本開示のシステムは、対象の末梢灌流をモニタするレーザスペックル血流指標センサと、対象の血管内ヘモグロビン濃度をモニタするマルチスペクトルHbセンサと、を備える。レーザスペックル血流指標センサは、末梢の皮膚組織や筋肉組織のレーザスペックルイメージングを用いて、末梢灌流をモニタする。
【0006】
他の目的及び特徴は、以下で、一部は明らかになり、一部は示されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
当業者であれば、以下に説明する図面は説明のみを目的としていることを理解するであろう。以下に説明する図面は、本教示の範囲をいかなる形でも限定することを意図していない。
【0008】
【
図1A】
図1Aは、人間の指からのレーザスペックル血流指標(LSFI)画像の取得を示す概略図である。
【
図1B】
図1Bは、中指及び薬指の左側の指に輪ゴムを巻いた場合(左側図)、または、中指及び薬指の右側の指に輪ゴムを巻いた場合(右側図)のレーザスペックル血流指標(LSFI)画像を示す。
【
図2A】
図2Aは、ブタ全血、及び、PBS対照で10%または20%に希釈したブタの希釈血における、880~1700nmでの吸収を測定した分光画像である。
【
図2B】
図2Bは、ブタ全血、及び、PBS対照で希釈したブタの希釈血における、1020~1350nmでの吸収の比であり、これにより、グループ間で有意差があることが明らかになった。
【
図3】
図3は、出血中の皮膚及び筋肉の灌流をモニタするために、光源-検出器オフセットを用いたブタの手首からのレーザスペックル血流指標の測定の概略図である。
【
図4】
図4は、ブタの手首に装着され、ブタの出血実験中に使用される一態様のウェアラブルレーザスペックルセンサの写真である。
【
図5A】
図5Aは、生理食塩水中のヘモグロビンの様々な濃度における短波赤外線スペクトルを示す。
【
図5B】
図5Bは、
図5Aのスペクトルから得られた1020:1350nmの比対ヘモグロビン濃度を示す。
【
図6】
図6は、一態様のウェアラブル血液希釈センサのCAD図及び写真を示す。
【
図7A】
図7Aは、晶質輸液プロトコールの前後におけるブタの出血量を示すグラフである。90分~115分の期間ではレーザスペックルセンサの位置がずれたため、スプリアス信号(灰色)が生じた。
【
図7B】
図7Bは、
図7Aに示したブタの出血試験のレーザスペックル血流指標(LSFI)結果を示すグラフであり、出血量と晶質輸液との相関関係を示す。90分~115分の期間ではレーザスペックルセンサの位置がずれたため、スプリアス信号(灰色)が生じた。
【
図7C】
図7Cは、
図7Aの出血試験を通して正規化されたLSFI結果を示すグラフである。90分~115分の期間ではレーザスペックルセンサの位置がずれたため、スプリアス信号(灰色)が生じた。
【
図8A】
図8は、1の正方行列の畳み込み(上段)または単位行列の畳み込み(下段)のいずれかを用いて、フル画像サイズ、半分画像サイズ、または4分の1画像サイズのクロッピング(12の異なる畳み込みを含む)を使用して、毎秒10フレームまたは毎秒100フレームで計算したLSFI対時間を示す一連のグラフである。
【
図8B】
図8は、1の正方行列の畳み込み(上段)または単位行列の畳み込み(下段)のいずれかを用いて、フル画像サイズ、半分画像サイズ、または4分の1画像サイズのクロッピング(12の異なる畳み込みを含む)を使用して、毎秒10フレームまたは毎秒100フレームで計算したLSFI対時間を示す一連のグラフである。
【
図9A】
図9Aは、出血プロトコール前後のブタの出血量を示すグラフである。
【
図9B】
図9Bは、出血プロトコール前後のブタの出血量を示すグラフである。
【
図9C】
図9Cは、
図9Aのブタ出血試験から得られた非平滑化レーザスペックル血流指標(LFSI)を示すグラフであり、出血量と晶質輸液との相関関係を示す。
【
図9D】
図9Dは、
図9Cのブタ出血試験から得られた平滑化レーザスペックル血流指標(LSFI)を示すグラフであり、出血量と晶質輸液との相関関係を示す。
【
図9E】
図9Eは、非平滑化LSFIデータからの静脈虚脱前の出血対LSFIを示すグラフである。
【
図9F】
図9Fは、平滑化LSFIデータからの静脈虚脱前の出血対LSFIを示すグラフである。
【
図9G】
図9Gは、非平滑化LSFIデータからの静脈虚脱後の出血対LSFIを示すグラフである。
【
図9H】
図9Hは、平滑化LSFIデータからの静脈虚脱後の出血対LSFIを示すグラフである。
【
図9I】
図9Iは、非平滑化LSFIデータからの晶質輸液対LSFIを示すグラフである。
【
図9J】
図9Jは、平滑化LSFIデータからの晶質輸液対LSFIを示すグラフである。
【
図10A】
図10は、ブタの出血試験中の収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)、脈圧(SBP-DBP)、体温、心拍数(HR)、及び呼吸数を経時的に示す一連のグラフ(上側の図)と、それらに対応する正規化されたバイタルサイン(中央の図)及び血液量(下側の図)を示す。バイタルサインのパラメータは、体温以外は、出血に伴い減少し(青)、晶質輸液に伴い増加した(赤)。
【
図10B】
図10は、ブタの出血試験中の収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)、脈圧(SBP-DBP)、体温、心拍数(HR)、及び呼吸数を経時的に示す一連のグラフ(上側の図)と、それらに対応する正規化されたバイタルサイン(中央の図)及び血液量(下側の図)を示す。バイタルサインのパラメータは、体温以外は、出血に伴い減少し(青)、晶質輸液に伴い増加した(赤)。
【
図11A】
図11は、正規化したバイタルサインと出血量との相関関係を示す一連のグラフを含む。上側のグラフは全ての時点を含み、下側のグラフは静脈虚脱前の時点を含む。
【
図11B】
図11は、正規化したバイタルサインと出血量との相関関係を示す一連のグラフを含む。上側のグラフは全ての時点を含み、下側のグラフは静脈虚脱前の時点を含む。
【
図12】
図12は、ブタの出血中のLSFIとバイタルサインとの相関関係を示すヒートマップである。
【
図13】
図13は、ブタの出血試験から得られたスペックルプレチスモグラフィ(SPG)、及び、フォトプレチスモグラフィ(PPG)を示すグラフである。SPG信号はPPGに比べてSNRが高いが、どちらの波形もデータが豊富である。SPG及びPPGのピーク間の時間遅延(Δt)は、全身血管抵抗に対応することが分かっており、本開示のウェアラブルレーザスペックルセンサを使用して容易に計算することができる。
【
図14】
図14は、一態様における完全にウェアラブルなレーザスペックルセンサのCAD図である。
【0009】
図面には、現在説明されている構成が示されているが、本実施形態は図示した構成に限定されるものではなく、示された手段であることを理解されたい。様々な実施形態が開示されているが、本開示の例示的な態様を示す以下の詳細な説明から、本発明のさらなる別の実施形態が当業者に明らかになるであろう。理解されるように、本発明は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な態様で改変が可能である。したがって、図面及び詳細な説明は、本質的に例示的なものであり、限定的なものではないと見なされるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の様々な態様では、対象(患者)の出血、これに限定しないが、例えば分娩後出血(PPH)をモニタするためのシステム、装置、及び方法が開示される。
【0011】
出血時には、2つの重要な代償機構が働く。(1)末梢血管を収縮させることにより、血液を末梢から重要臓器に送る代償機構と、(2)間質液を血管内に移動させて血液量を維持するとともに、ヘモグロビン(Hb)濃度及びヘマトクリット(Hct)を効果的に低下させる代償機構とである。これらの代償機構は、患者を安定させるに役立つとともに、血圧や心拍数などの全体的な血管指標が影響を受けるまでの時間を遅らせるのにも役立つ。したがって、末梢灌流や血液成分をモニタすることにより、出血の早期指標となるHbとHctの比較的わずかな低下を検出することができる。
【0012】
光学技術は、血流量や血液成分を非侵襲的に測定するのに適している。レーザスペックルイメージングは流れる血球を直接測定し、レーザスペックル血流指標(LSFI:laser speckle flow index)は流速に比例する。光学分光法は、血液や組織の酸素化の定量化(近赤外領域)と、水の定量化(赤外領域)とを提供し、これにより、出血時の血管系への水の移動の観察を可能にする。光学モニタリング技術は、非イオン化、無標識、かつ高速であり、人間工学に基づいた連続的なセンシングシステムを提供するべく、小型で装着可能な装置(小型ウェアラブルデバイス)を使用して実施することができる。下記の実施例で説明される予備実験では、レーザスペックルイメージングを用いてインビトロでの灌流低下に対する感度を実証し、光学分光法は、生理食塩水で希釈した血液サンプルと、分娩後出血(PPH)で見られる生理学的レベルとの間の有意差を測定する。
【0013】
血流量や血液成分の光学的モニタリングには、使用する光波長に応じて様々な固有の生物学的発色団(メラニン、デオキシヘモグロビン、オキシヘモグロビン、脂質、タンパク質、水)を検出できること、血流量を検出し定量化できること、小型でシンプルなウェアラブルハードウェアの高い可能性、結果を迅速に得られること、などの多くの利点がある。このような利点が患者のモニタリングに理想的であることは、患者のモニタリングに世界的に使用されている光学デバイスであるパルスオキシメータから明らかである。インビトロまたはインビボでのヘモグロビンの測定のために、光学分光法に基づくツールが開発されており、循環血液量減少によって引き起こされるヘモグロビン濃度の変化をモニタするために、継続的かつ非侵襲的な光学分光法ツールが救急患者において広く使用されている。灌流指標は偏りがあり、患者によってばらつきが大きいことが知られているが、これまでの結果は有望であり、非侵襲的な光学的測定によって分娩後出血の初期徴候を検出できることを示している。
【0014】
様々な態様では、分娩後出血(PPH)のモニタリング及び/または早期発見のためのHb濃度及び末梢灌流を追跡する多機能センシングシステムが開示される。本開示のシステムは、LSFI(レーザスペックル血流指標)センサとマルチスペクトルHbセンサとを備える。様々な態様では、本開示のシステムは、血液灌流を測定するためのレーザスペックルイメージングと、ヘモグロビン(Hb)をモニタリングするための近赤外(NIR)/短波赤外線(SWIR)分光法とを相乗的に組み合わせて、分娩後出血(PPH)の2つの別々の独立した代償機構の追跡を提供する。
【0015】
LSFI(レーザスペックル血流指標)センサは、末梢の皮膚組織や筋肉組織のレーザスペックルイメージングを用いて、末梢灌流をモニタする。LSFIセンサは、血流速度に比例した末梢灌流モニタリングを行い、灌流指標と比べてより直接的な灌流の測定を提供する。一態様では、LSFIセンサは、785nmの波長のレーザダイオードと、レーザスペックルコントラスト画像を取得するためのビデオカメラとを含む。レーザスペックルコントラスト画像は、確立されたアルゴリズムを用いて処理され、これにより、末梢灌流を示すレーザスペックルフ血流指標画像が得られる。いくつかの態様では、LSFIセンサは、ウェアラブルなLSFIセンサであり、皮膚及び筋肉の両方の血流量を測定するために筋肉上に配置され、バンドで優しく固定される。
【0016】
本開示のシステムのマルチスペクトルHbセンサは、ヘモグロビン(Hb)の近赤外線(NIR)吸収と、水の短波赤外線(SWIR)吸収とを利用する。短波赤外線(SWIR)範囲における水による吸収は、既存の装置で使用されるスペクトル範囲内よりも強力であるため、本開示のシステムを使用して得られる水測定の感度及び特異性が向上する。いくつかの態様では、本開示のシステムのマルチスペクトルHbセンサは、血液成分をモニタするために使用される異なる波長の2つの発光ダイオード(LED)を含む。一態様では、800nmの波長のLED(L1)がヘモグロビン(Hb)の測定に使用される。800nmの波長は、オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンとが同じ割合で吸収される波長であり、ヘモグロビン(Hb)の酸素飽和度による変動を排除してヘモグロビンの総数のみに焦点を当てるためである。水の測定には、高コントラストと皮下浸透深度とのバランスをとるために、1340nmの波長のLED(L2)が用いられる。マルチスペクトルHbセンサは、LED光を検出するための2つのフォトダイオードをさらに含み、一方のフォトダイオード(D1、シリコン検出器)は、NIRのHb信号に感応し、他方のフォトダイオード(D2、InGaAs検出器)は、SWIRの水信号に感応する。パルスオキシメータで使用されるアルゴリズムと同様のアルゴリズムを使用して、レシオメトリック計算と、室内光汚染の計算による除去とが行われる。いくつかの態様では、マルチスペクトルHbセンサは、データキャプチャを通してノイズ除去及びレシオメトリック計算を実行するためのマイクロプロセッサをさらに含む。拍動血流については、標準的なパルスオキシメータで使用されるアルゴリズムと同様のアルゴリズムを使用して、レシオメトリック計算と、室内照明の除去とが行われ、Hbと水との比率が抽出される。
【0017】
様々な態様では、本開示のマルチスペクトルHbセンサを使用して得られたデータは、Bluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)無線ネットワークを使用して安全なクラウドストレージに転送される。
【0018】
本開示のシステム、装置、及び方法のさらなる説明は、以下の実施例に記載される。
【0019】
コンピュータシステム及びコンピュータ装置
【0020】
上述の本明細書の記載に基づいて理解されるように、本開示の上述の態様は、コンピュータソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、またはそれらの任意の組み合わせまたはサブセットを含むコンピュータプログラミングまたはエンジニアリング技術を用いて実施することができる。コンピュータ可読コード手段を有する、任意のそのようなプログラムは、1以上のコンピュータ可読媒体内に具現化または提供され、それによって、本開示の説明された態様にしたがって、コンピュータプログラム製品(すなわち、製造品)を製造することができる。コンピュータ可読媒体は、これに限定しないが、例えば、固定(ハード)ドライブ、ディスケット、光ディスク、磁気テープ、読み出し専用メモリ(ROM)などの半導体メモリ、及び/または、インターネットまたは他の通信ネットワーク若しくはリンクなどの任意の送信/受信媒体であり得る。コンピュータコードを含む製造品は、或る媒体から直接コードを実行することによって、或る媒体から別の媒体にコードをコピーすることによって、または、ネットワークを介してコードを送信することによって、製造及び/または使用することができる。
【0021】
これらのコンピュータプログラム(「プログラム」、「ソフトウェア」、「ソフトウェアアプリケーション」、「アプリケーション」、「コード」とも呼ばれる)は、プログラマブルプロセッサ用の機械命令を含み、高レベルの手続き型及び/またはオブジェクト指向のプログラミング言語、及び/またはアセンブリ/機械言語によって実装することができる。本明細書で使用するとき、「機械可読媒体」、「コンピュータ可読媒体」という用語は、機械命令及び/またはデータをプログラマブルプロセッサに提供するために使用される任意のコンピュータプログラム製品、装置、及び/またはデバイス(例えば、磁気ディスク、光ディスク、メモリ、プログラマブルロジックデバイス(PLD))を指し、機械命令を機械可読信号として受信する機械可読媒体を含む。ただし、「機械可読媒体」及び「コンピュータ可読媒体」には、一過性の信号は含まれない。「機械可読信号」という用語は、プログラマブルプロセッサに機械命令及び/またはデータを提供するために使用される任意の信号を指す。
【0022】
本明細書中で使用するとき、プロセッサは、マイクロコントローラ、縮小命令セット回路(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、論理回路、及び本明細書中に記載される機能を実行することができる任意の他の回路またはプロセッサを使用するシステムを含む任意のプログラマブルシステムを含み得る。上記の例は単なる例示であり、したがって、「プロセッサ」という用語の定義及び/または意味をいかなる形でも限定することを意図していない。
【0023】
本明細書で使用するとき、「ソフトウェア」及び「ファームウェア」という用語は互換的に使用され、例えば、RAMメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、及び不揮発性RAM(NVRAM)メモリなどの、プロセッサによる実行のためにメモリに格納された任意のコンピュータプログラムを含む。上記のメモリの種類は単なる例示であり、したがって、コンピュータプログラムの格納に使用可能なメモリの種類を限定するものではない。
【0024】
一態様では、コンピュータプログラムが提供され、そのプログラムはコンピュータ可読媒体により具現化される。一態様では、本システムは、サーバコンピュータへの接続を必要とせず、単一のコンピュータシステム上で実行される。別の態様では、本システムは、Windows(登録商標)環境で実行される(Windows(登録商標)は、米国ワシントン州レッドモンド所在のマイクロソフト社(Microsoft Corporation)の登録商標である)。さらに別の態様では、本システムは、メインフレーム環境及びUNIX(登録商標)サーバ環境で実行される(UNIX(登録商標)は、英国バークシャー州レディング所在のエックス・オープン社(X/Open Company Limited)の登録商標である)。このアプリケーションはフレキシブルであり、主要な機能を損なうことなく、様々な環境で実行することができるように設計されている。
【0025】
いくつかの態様では、本システムは、複数のコンピュータ装置間に分散された複数のコンポーネント(構成要素)を含む。1以上のコンポーネントは、コンピュータ可読媒体により具現化されたコンピュータ実行可能命令の形態であってよい。本システム及びプロセスは、本明細書に記載された特定の態様に限定されない。加えて、各システム及びプロセスのコンポーネントは、本明細書に記載された他のコンポーネント及びプロセスから独立して別個に実施することができる。各コンポーネント及びプロセスは、他のアセンブリパッケージ及びプロセスと組み合わせて使用してもよい。本発明の態様は、コンピュータ及び/またはコンピュータシステムの機能を向上させることができる。
【0026】
本明細書に記載された定義及び方法は、本開示をより良く定義し、本開示の実施において当業者を導くために提供される。特に断りのない限り、用語は、関連分野の当業者による従来の使用法にしたがって理解されるべきである。
【0027】
いくつかの実施形態では、本開示の所定の実施形態を説明及び請求するために使用される、成分の量、特性、例えば分子量、反応条件などを表す数は、いくつかの例では、「約」という用語により修飾されるものとして理解されるべきである。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、或る値が、その値を決定するために用いられている装置または方法についての平均の標準偏差を含むことを示すために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、特定の実施形態によって得ようとする所望の特性に応じて変更可能な近似値である。いくつかの実施形態では、数値的パラメータは、報告された有効桁数を考慮して、通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。本開示のいくつかの実施形態の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるとはいえ、特定の実施例に示される数値は、実行可能な限り正確に報告される。本開示のいくつかの実施形態で示される数値は、それらの各試験測定値において見られる標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を含み得る。本明細書における値の範囲の記載は、その範囲内に入る個別の値を個々に指定するため簡略化された方法としての役割を果たすことを単に意図している。本明細書において特に指定しない限り、個々の値は、本明細書において個々に記載されているかのように明細書に組み込まれる。離散的な値の列挙は、各値の間の範囲を含むと理解される。
【0028】
いくつかの実施形態では、「a」、「an」、「the」という用語、並びに、特定の実施形態を説明する文脈において(とりわけ、以下の特許請求の範囲の特定の文脈において)使用される同様の用語は、特に断りのない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈することができる。いくつかの実施形態では、特許請求の範囲を含めて、本明細書で使用される「または」という用語は、選択肢のみを指すか、または選択肢が相互に排他的であると明示的に示されない限り、「及び/または」を意味するために使用される。
【0029】
「含む(comprise)」、「有する(have)」、及び「含む(include)」という用語は、オープンエンドの連結動詞である。これらの動詞の1以上の任意の変化形または時制、例えば「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「有する(has)」、「有している(having)」、「含む(includes)」、及び「含んでいる(including)」もまた、オープンエンドである。例えば、1以上のステップを「含む(comprises)」、「有する(has)」、または「含む(includes)」任意の方法は、それらの1以上のステップのみを有することに限定されず、他の挙げられていないステップも包含し得る。同様に、1以上の特徴を「含む(comprises)」、「有する(has)」または「含む(includes)」任意の組成物または装置は、それらの1以上の特徴のみを有することに限定されず、他の挙げられていない特徴を包含し得る。
【0030】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書中で特に断りのない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書の特定の実施形態に関して提供される任意の及び全ての実施例、または例示的な言語(例:「例えば~など」)の使用は、単に、本開示をより良く明らかにすることを意図しており、特に請求項に記載されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる文言も、請求項に記載されていない任意の要素が本開示の実施に必須であることを示すと解釈されるべきではない。
【0031】
本明細書に開示された本開示の代替要素または実施形態のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各グループのメンバーは、個々に、またはグループの他のメンバーまたは本明細書に記載されている他の要素との任意の組み合わせで言及及び請求することができる。グループの1以上のメンバーは、利便性または特許性の理由から、グループに包含するか、またはグループから削除することができる。そのような包含または削除が行われた場合、本明細書は、修正されたグループを含むものと見なされ、したがって、添付の特許請求の範囲において使用される全てのマーカッシュグループの記述を満たす。
【0032】
本出願において引用された全ての刊行物、特許、特許出願、及び他の文献は、それらの個々が具体的かつ個別に示された場合と同じ程度に、全ての目的のためにその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書における文献の引用は、それが本開示の先行技術であることを認めるものと解釈されるべきではない。
【0033】
本開示を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲に定義される本開示の範囲を逸脱することなく、修正、変形、及び同等の実施形態が可能であることは明らかであろう。さらに、本開示における全ての実施例が、非限定的な実施例として提供されていることを理解されたい。
【0034】
実施例
【0035】
以下の実施例は、本開示の様々な態様を示す。
【0036】
実施例1:分娩後出血モニタリングシステムの開発及び検証
【0037】
分娩後出血(PPH)モニタリングシステムを開発及び検証するため、以下の実験を行った。
【0038】
レーザスペックルイメージング
【0039】
図1Aに示すように、785nmの波長のレーザダイオードとビデオカメラとを使用したレーザスペックルイメージングシステムを組み立てた。このシステムの血流量減少を測定する能力を試験するために、被験者の中指を輪ゴムできつく巻いて血流を妨げ、輪ゴムを巻いた中指とそれに隣接する輪ゴムを巻いていない薬指とをカメラで測定した(
図1A)。この実験を、輪ゴムを巻いた薬指と、輪ゴムを巻いていない中指とに対して繰り返した。レーザスペックルコントラスト画像を確立されたアルゴリズムを用いて処理し、得られたレーザスペックル血流指標画像を
図1Bに示す。
【0040】
短波赤外線(SWIR)分光法
【0041】
ハイパースペクトルイメージングシステムを用いたSWIR分光法によってHb(ヘモグロビン)の濃度を識別する能力を、PBSで希釈したブタの血液を使用して試験した。全血、10%希釈血液、20%希釈血液、PBSの各ウェルを3回測定した(
図2A)。ハイパースペクトルイメージングシステムを用いて、880~1700nmの波長での吸収を画像化した。1020nm及び1350nmの波長での画像の比を計算し、
図2Aに示した。各ウェルの強度比を定量化し、3回の測定値の平均値及び標準偏差を
図2Bにまとめた。ボンフェローニの多重比較検定を用いたANOVAで測定したところ、全てグループで統計的に有意な増加が観察され、水とHbとの比率(1020nm:1330nm)を用いて測定されたHb濃度の差を定量化するこの手法の有効性が実証された。
【0042】
ウェアラブルレーザスペックルセンサ・デザインV1及びその構成要素
【0043】
レーザスペックルセンサは、反射モードで構成された光学センサであり、光源と検出器とが同じ側に配置されているが、透過モードに構成することも可能である。
図4に示す反射モード装置は、50mW、780nm波長のレーザモジュール(レーザーランド社製(Laserland)、11071013)と、2レンズ系カメラセンサ(ラズベリー・パイ社製(Raspberry Pi))とを含む。2レンズ系カメラセンサは、ラズベリー・パイ社製のカメラモジュールV2(Camera Module V2)から構成され、このカメラモジュールは、最大焦点距離を持つように回転可能な第1のレンズと、第1のレンズの表面に、第1のレンズの向きとは反対の向きで直接取り付けられた第2のレンズとを有する。第2のレンズには0.4mmのサファイアウィンドウ(エドモンドオプティクス社製(Edmund Optics)、43-628)が取り付けられており、そのサファイアウィンドウ上に直接載置されたまたは接触している物体にセンサの焦点が合わせられる。レーザモジュール及び2レンズ系カメラセンサは、3D印刷されたホルダによって、被写体と直接接触する位置に保持される。3D印刷されたホルダは調整可能であり、信号強度及びコントラストを最適化するために、レーザモジュール及びセンサ間の距離を指定された距離に変化させ、その距離に固定することができる。レーザモジュールは、3.3Vの壁電源(コンセント電源)で駆動されるが、バッテリで駆動させてもよい。カメラセンサは、ラズベリー・パイ社製のモデル4(Model 4)コンピュータボードから電力供給され、制御される。この装置の概略図及び写真をそれぞれ
図3及び
図4に示す。
【0044】
血液希釈式センサ及びその構成要素
【0045】
血液希釈式センサで使用する波長は、4.8~13.84g/dLの濃度範囲のヘモグロビンのサンプルでのスペクトル変化を短波長赤外線分光計で測定した予備データに基づいて選択された(
図5A)。その結果、850~1020nmの範囲での有意な増加(ヘモグロビンに起因する)と、1300~1350nmの範囲での一定の反応(水に起因する)とが明らかになった。これらの帯域の2つの波長、1020nm及び1350nmにおける強度の比をヘモグロビン濃度に対してプロットしたところ、R
2=0.98が得られた(
図5B)。これらの帯域のレーザが、ウェアラブル血液希釈式センサに使用するために選択された。血液希釈式センサ(
図6)は、800~1700nmの感度を有する2つのInGaAsフォトダイオード検出器(ソーラブス社製、FGA01)から構成されており(なお、両検出器は互いに一体化させてもよい)、904nm波長レーザ光源(ソーラブス社製(Thorlabs)、L904P010)と1310nm波長レーザ光源(ソーラブス社製、ML725B8F)との真向かいに配置されている。904nm波長レーザ光源及び1310nm波長レーザ光源は、それぞれレーザドライバ(ICハウズ(IC Haus)社製、WK2D)に接続されており、定電流、したがって一定の光出力を維持している(
図6)。上記の2つのレーザ光源は、Arduino Unoのデジタルピンを使って20ms間隔で交互に25Hzで変調され、ヘモグロビン及び水の相対的変化を検出するように選択された。フォトダイオードは、10ビットのADCを搭載したArduino Unoのアナログピンを介して送信された光信号を検出した。Arduinoのコードは光源の変調を制御し、900nm信号と1310nmの信号とを別々のチャネルに分離し、その出力をリアルタイムでプロットした。Arduinoは、USB/USBB接続でノートパソコンに接続された。フォトダイオードのバイアス電圧は、12Vの壁電源を使用して供給したが、バッテリで電力を供給してもよい。本構成は透過モードであるが、反射モードで構成してもよい。
【0046】
ブタの出血プロトコール
【0047】
12週齢のオスの白色ヨークシャー×ランドレースのブタに麻酔をかけ、大腿静脈及び動脈をそれぞれ切断して採血ポートを形成し、動脈血圧カテーテルを挿入した。推定血液量(EBV、58~74mL/kg)は、ブタの体重(34.5kg)に基づいて算出した(2100~2500mL)。カテーテルを設置した後、血液希釈式センサ(
図6)をブタの耳の上に配置し、レーザスペックルセンサを電気毛切り機(
図3)で毛を除去した左臀部に配置した。センサでベースライン値を15分間にわたって記録した後、5分毎に1.5%の血液量(33mL)を除去し、その後、2mLの生理食塩水でフラッシュした。これを2.5時間にわたって続け、合計800mLの血液を除去した。これは、約31~38%の失血と推定される。これと並行して、心拍数、収縮期血圧、拡張期血圧、体温、血中酸素飽和度、呼吸数、ヘマトクリットを、処置中の15分毎に測定した。出血量が800mLに達した後、ブタに5分毎に33mLの晶質を輸液し、35分間で合計264mLの晶質を輸液した。晶質輸液の完了後、塩化カリウムの静脈内過量投与によってブタを安楽死させた。
【0048】
ブタの出血のレーザスペックルイメージング法
【0049】
データは、ラズベリー・パイ社製のPythonスクリプトを用いて収集した。出血プロトコール開始の15分前から最終的な晶質輸液の5分後まで、毎分10秒間、ビデオデータ(動画データ)を収集した。ビデオデータは、出血プロトコールの開始15分前から最終的な晶質輸液の5分後まで、毎分10秒間にわたって動画で収集した。ビデオデータは、ラズベリー・パイ社製のハードドライブに直接保存した。ビデオデータは、試験後、経時的なスペックル指標の移動平均として処理した。カメラは、毎秒100フレーム、露光時間5msで動画を撮影するように設定した。
【0050】
レーザスペックル血流指標アルゴリズム
【0051】
レーザスペックルコントラストイメージングでは、生のスペックル画像上に配された矩形のスライディングウィンドウに空間平均アルゴリズムを適用することによってコントラストが生成される。具体的には、所与のピクセル(x、y)でのスペックルコントラストを求めるために、(x、y)を中心とする矩形のスライディングウィンドウを定義し、その矩形スライディングウィンドウ内のピクセル強度の標準偏差を矩形スライディングウィンドウ内のピクセル強度の平均で割る。スペックルビデオデータのリアルタイム処理では、このアルゴリズムを全てビデオフレームに適用する必要があり、最大100fpsのフレームレートでは、効率的なスペックルコントラストアルゴリズムが極めて重要である。各矩形スライディングウィンドウ内のピクセル強度の標準偏差は、ピクセル強度の分散に関連しており、生画像のピクセル強度の二乗の平均と、生画像のピクセル強度の平均の二乗との差を取ることによって求められる。これらの移動平均化された画像を効率的に決定するための確立されたアプローチは、1の正方行列を、生画像の二乗と生画像自体との両方で畳み込むことであり、その結果、スペックルコントラスト画像のピクセル強度(k)について下記の式1が得られる。
【0052】
【0053】
ここで、矩形スライディングウィンドウはn×nの寸法を有し(一般性を失うことなくnは奇数とする)、Isは生画像の強度であり、1の正方行列は矩形スライディングウィンドウと同じ寸法を有する。本開示の出血モニタリングシステムは、ビデオストリームをキャプチャし、各フレームの生画像の強度を求める。末梢血管の血流量を検出するために、各フレームを上記の式1に従って解析してスペックルコントラスト画像kを生成し、次いで、画像全体((n-1)/2の幅の矩形境界を除く)の平均ピクセル強度<k>を計算し、フレーム毎に保存する。したがって、出力信号は、経時的な、単一の平均化されたスペックルコントラスト値である。
【0054】
キャプチャされたフレーム毎に、平均スペックルコントラスト<k>を、Numpy.mean()、Numpy.ones()、Scipy.signal.convolve2d()、または、Scipy.signal.ftconvolve()などの一般公開されているソフトウェアライブラリのメソッドを使用して、pythonで実施することができる。しかしながら、モニタリングに関連する出力信号は平均スペックルコントラストの尺度であり、スペックルコントラスト画像そのものではないため、処理時間を大幅に短縮する別のアプローチが考えられる。別のスペックルコントラスト指標k´を考えてみる。
【0055】
【0056】
ここで、式1の1の正方行列をn×nの単位行列に置き換える(nは奇数)。このスペックルコントラスト指標k´は、生のスペックル画像の強度の平均と、矩形スライディングウィンドウの対角線に沿った生画像の強度の二乗の平均に基づく(矩形スライディングウィンドウは、各ピクセル(x、y)を、(x、y)を中心とする対角線に沿ったn個のピクセルの和に効果的に置き換える)。
【0057】
【0058】
7×7の矩形スライディングウィンドウの場合、この対角平均は、畳み込みを適用することなく、生画像と生画像の二乗とに対して直接、下記のように書くことができる。
【0059】
【0060】
【0061】
ここで、生画像Isの寸法は、h×wである。次に、上記の式2は次のように書き換えることができる。
【0062】
【0063】
100fpsのビデオストリームを試験した結果、式6は式1よりも3~5倍高速であることが分かった。さらに、このハードコードされたアプローチは、効率的な畳み込みを実施するためのScipyなどのサードパーティのPythonライブラリを必要としないため、単純であるという付加価値を持っている。
【0064】
処理速度のさらなる向上は、ビデオストリームデータを、例えば、640×480から、320×240、160×120、またはそれ以下にクロッピング(cropping)することによって実現することができる。加えて、フレームレートを、30fps、10fps、またはそれ以下に下げてもよい。さらに、キャプチャされたビデオストリームは、RGBモードではなくYUVモードでキャプチャしてもよい。YUVモードでは、フルフレームバイトの最初の3分の1だけを使用すればよい(「Y」チャネル)。「Y」チャネルにはピクセル強度が含まれており、「U」チャネル及び「V」チャネルにはピクセルカラーが含まれているからである。対照的に、RGBビデオモードでは、フレーム毎にYUVモードの3倍のデータを読み込み、キャプチャしたフレーム毎にグレースケールに変換する必要がある。
【0065】
結果
【0066】
出血(及び/または分娩後出血)をモニタするために、スペックルコントラスト指標の逆二乗からレーザスペックル血流指標(LSFI:laser speckle flow index)を導出することができる。
【0067】
【0068】
ここで、<k>は、平均化されたスペックルコントラスト指標であり、様々な方法で定義することができる。平均スペックルコントラスト指標<k>は、所与の時点における、その時点でキャプチャされた処理済みのスペックルビデオフレーム内の全てピクセルの平均値として定義することができる。また、複数のフレームを平均して、例えば、10秒間の平均スペックルコントラスト指標を得ることもできる。本願発明者は、ブタの実験モデルを用いて、生理学的代償機構による出血誘発末梢血管収縮を非侵襲的に検出するレーザスペックル血流指標(LSFI)の能力を試験した。大腿静脈にアクセスした後、約800mLの血液(血液量の約30%)を2時間かけて除去した(5分毎に33mLの血液を除去)。その後、231mLの晶質を35分間かけて投与した(5分毎に33mLの晶質を投与)(
図7)。注目すべきは、実験開始から113分後に、静脈が虚脱したことである(縦の点線)。
【0069】
出血モニタリングシステムをブタの手首に装着し、実験中は1分毎に、320×240の100fpsのスペックル画像を10秒間記録した。10秒間のスペックル画像毎に、1の正方行列の畳み込みに基づく従来のスペックルコントラストアルゴリズム(<k>)(式1)、及び、単位正方行列の畳み込みに基づく改良家のスペックルコントラストアルゴリズム(<k´>
Identity)(式6)を用いて、フレーム毎に<k>を計算した。各計算において、フル画像サイズ<k>
FULLを定義するために、320×240のフル画像サイズを使用した。加えて、1/2画像サイズ(半分画像サイズ)にクロッピングされた160×120画像と、1/4画像サイズにクロッピングされた80×60画像とを使用して、半分画像サイズ(<k>
HALF)と1/4画像サイズ(<k>
QUARTER)とのスペックルクロップ指標を抽出した。これらのフルサイズ画像及びクロッピング画像のアプローチを、<k>と<k´>との両方に適用した。そして、100fpsのビデオストリーム<k>
FPS_100と、時間的に10倍にダウンサンプリングした(実効10fps)ビデオストリーム<k>
FPS_010とを使用して、全フレームの平均値を計算した。畳み込みの種類、画像クロッピングの種類、及び、データ処理に使用される有効フレームレートの種類に基づいて、10秒のビデオストリーム毎に12の異なる値を計算した(
図8)。これらにより、式7に従って各10秒間のビデオのLSFI値を計算するための下記の12の異なるアプローチが定義された。LSFI
Ones、FULL、FPS_100、LSFI
Ones、HALF、FPS_100、LSFI
Ones、QUARTER、FPS_100、LSFI
Ones、FULL、FPS_010、LSFI
Ones、HALF、FPS_010、LSFI
Identity、QUARTER、FPS_010、LSFI
Identity、FULL、FPS_100、LSFI
Identity、HALF、FPS_100、LSFI
Identity、QUARTER、FPS_100、LSFI
Identity、FULL、FPS_010、LSFI
Identity、HALF、FPS_010、及び、LSFI
Identity、QUARTER、FPS_010の12のアプローチである。
【0070】
非侵襲的に導出されたLSFI信号は、採血前15分間は安定したベースラインを維持し、血液量の減少とともに減少し、晶質の添加とともに増加した(
図7)。90分から115分の期間ではスペックルセンサの位置がずれたため、LSFI信号にエラーが発生した(
図7の灰色の部分)。LSFI信号の経時的な形状は、畳み込みの種類、画像クロッピングの程度、または有効フレームレートに関係なく一貫していた(
図8)。LSFIの12のバリエーションを相互に相関させると、相関係数Rは0.99~1.00となった。このことは、フレームレートを下げ、クロッピングされた画像を分析し、完全な正方行列ではなく対角正方行列で平均化することによって、LSFI信号の完全性を損なうことなく、処理負荷の大幅な削減が達成できることを示す。
【0071】
非平滑化及び平滑化(10点移動平均)LSFI信号と正味流体量との間の線形回帰を、各LSFI変動について求めた(
図9)。LSFIは、実験全体を通して、流体量変化と強い線形相関を示した(ピアソンR=0.88)。しかしながら、血液量が減少した最初の2時間におけるLSFIと流体量変化との間の回帰は、血液量が一定で晶質を加えた最後の35分間におけるLSFIと流体量との間の回帰とは異なっていた。具体的には、静脈虚脱前におけるLSFI
Ones、FULL、FPS_100と出血量との間の回帰は、非平滑化データでR=0.97、平滑化データでR=0.98を示し、傾きはそれぞれ4.14/mL、4.24/mLであった(
図9E、
図9F)。静脈虚脱後の出血では、LSFI
Ones、FULL、FPS_100と出血量との回帰係数は、非平滑化データでR=-0.9、平滑化データでR=0.99であり、傾きはそれぞれ-0.74/mL、1.21/mLであった(
図9G、
図9H)。一方、LSFI
Ones、FULL、FPS_100と晶質輸液量との回帰は、非平滑化データではR=.97、平滑化データではR=0.99であり、傾きはそれぞれ6.66/mL、6.79/mLであった(
図9I、
図9J)。LSFI対出血量及びLSFI対晶質輸液量の同様の強い相関が、LSFI処理の他の11のバリエーションでも認められた。
【0072】
収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧、体温、心拍数、呼吸数などのバイタルサインを15分間隔で非侵襲的に記録したところ、出血とともに同様の下降傾向を示し、その後、晶質の投与とともに上昇傾向を示した(
図10)。バイタルサインは晶質輸液中の3つの時点でしか得られなかったため、バイタルサインと晶質輸液量との線形相関の解釈は困難であった。中央の図は、各値を初期値で割って正規化したバイタルサインを示す。
【0073】
図11は、出血量と、測定された各正規化バイタルサインとの相関を示し、上側の図は全て時点を含み、下側の図は静脈虚脱前と晶質輸液前の時点を含む。LSFIとは異なり、体温は、血液量減少と最も強い相関を示したが、晶質輸液によって上昇しなかった(
図11)。実際には、体温は、出血の結果ではなく、麻酔の結果として時間とともに徐々に低下した可能性がある。今後の研究では、麻酔による経時的変化を追跡するために、出血プロトコールと同じ期間にわたって麻酔した対照ブタを用いるとよい。LSFIは、追跡した全てバイタルサインのうち、出血(R=0.97)及び晶質輸液(R=0.97)と最も高い相関を示し(
図12)、これにより、末梢灌流の動的変化をモニタする本開示の技術の正確さ及び付加価値が強調された。
【0074】
アルゴリズムの開発
【0075】
レーザスペックルセンサ及び血液希釈式センサから様々な情報を抽出することができ、これらのデータを組み合わせて、出血の早期発見、分娩後出血、治療反応、一般的な血管血行動態モニタリングのための新規なアルゴリズムを開発することができる。血液希釈式センサについては、循環血液量を増加させようとする身体の働きによって、間質液から血管系に水分が引き込まれるため、出血量が増加するにつれてヘモグロビンに対する水分の比率が増加すると予想される。パルスオキシメータと同様に、交流成分と直流成分がある。血管血液希釈パラメータを抽出するために、R=(ACλ水/DCλ水)/(ACλヘモグロビン/DCλヘモグロビン)の比を計算した。血液酸素飽和度と同様に、HD=(k1-k2
*R)/(h3-k4)
*Rの式に従って血液希釈(HD)を求めた。ここで、k定数は、様々なヘモグロビン濃度での較正中に装置毎に経験的に決定される。このセンサは、補液、濃厚赤血球輸液、及び/または輸血などの様々な介入の効果を追跡することができる。これにより、医療提供者は、危険なほど低いヘモグロビン濃度を特定することができ、その結果、ヘモグロビン濃度を高めるためのケアを強化することができる。また、妊娠高血圧腎症などの病態時の浮腫モニタリングのために、血管内水分量及び血管外水分量を評価することも可能となる。また、レーザスペックルについて、レーザスペックルコントラスト(上述のk及びk´)を抽出し、平均値、標準偏差、ピーク間振幅、パルス変動、周波数成分(パルスレート、パルスの立ち上がり時間、パルスの立ち下がり時間など)を計算して、周波数成分及び高調波を含む周波数領域のデータを分析することができる。これを標準的なフォトプレチスモグラフ(PPG:photoplethysmogaph)データ(単純に強度画像の平均値の自然対数に1を乗じ、その値を経時的にプロットすることで得られる)と比較することにより、LSFIとPPGで測定されたピーク位置の時間差などの追加情報を抽出することができる(
図13)。
【0076】
診断は、出血を示す単一の測定基準またはマルチパラメータ指標に閾値を設定することによって、例えば、ベースラインのレベルからの特定の%変化、特定の傾きに達すること、時系列データの微分または二次微分における局所的な最小値または最大値の特定などによって、判定することができる。出血している状況では、LSFIの平均振幅が減少すると予想され、LSFIの経時的な変化率を分析することにより、患者が出血の代償を維持している場合や静脈が虚脱している場合などの重要なパラメータを識別するのに役立つことが期待される。
図5を見ると、静脈虚脱前の急激な減少に比べ、静脈虚脱後はLSFIの測定値が頭打ち(プラトー)になったことが分かる。この頭打ちは、患者がもはや代償することができず、例えば血液量減少性ショックに陥る可能性が高いことを示す指標となり得る。さらに、減少の傾きは、患者が出血を代償する能力だけでなく、出血率の重要な指標となり得る。このことは、出血の治療にも当てはまり、晶質輸液によってLSFI信号の急激な増加が観察された。また、比較的少量の出血で血液量減少性ショックのリスクが高いために代償機能がうまく働かない患者を特定するために、軽度の出血または液体ボーラスによって、手術または分娩前の患者に「代償チャレンジ」を実施することも可能である。さらに、患者の病歴や、身長、体重、BMI、SBP、DBP、PP、平均HR、関連する薬剤、麻酔の使用と種類(該当する場合)、開始時のヘマトクリットまたはヘモグロビン濃度などの変数を組み込むことにより、診断アルゴリズムを患者毎にパーソナライズし、これにより、早期出血の判定や治療モニタリングをより正確に行うことができるより洗練されたアルゴリズムを開発することが可能になる。多くのデータが収集されたら、機械学習技術を用いて予測をさらに改善することができる。
【0077】
ウェアラブルレーザスペックルセンサ・デザインV2の作製
【0078】
ウェアラブルレーザスペックルセンサ(
図14)は、
図4に示した構成と同じカメラ、2レンズ系、光学ウィンドウ、レーザを使用した反射モードで構成している(なお、透過モードで構成してもよい)。ただし、このシステムは完全にウェアラブルかつワイヤレスであり、ラズベリー・パイ社製のゼロ2Wコンピュータボードに接続されたラズベリー・パイ社製のシュガー電池モジュールによって駆動され、レーザ出力を安定させるカスタムウェアラブルエレクトロニクスを備える。全て構成要素は、カスタム3Dハウジングを使用して小型フォームファクタで所定の位置に保持される。この新規な構成が
図14に示されている。
【0079】
要約
【0080】
出血と晶質輸液の両方において、本開示のレーザスペックルセンサによって観察された強い相関関係は、末梢灌流と、中心血行動態を安定化する代償機構とに対する高感度を実証した。この知見は極めて重要であり、本開示のレーザスペックルセンサは、外傷患者、手術患者、及び妊婦において同様の変化を検出し、危険な出血を早期に検出する能力を有するだけでなく、末梢灌流や血管血行動態に影響を与える可能性のある治療及び/または介入に対する反応をモニタする方法を提供する。さらに、本開示のレーザスペックルセンサは、患者によって大きく異なることで有名な血液量減少の代償能力を評価するために使用することができる。また、本開示の技術は、強い代償反応を示さないために血液量減少性ショックに陥りやすい高リスク患者を特定するための手術計画や分娩計画にも役立つ。
【0081】
上記の非限定的な実施例は、本開示をさらに説明するために提供された。本実施例に開示された技術は、本願発明者が本開示の実施において良好に機能することを見出したアプローチを表すものであり、したがって、本開示の実施態様の例を構成すると考えることができることを、当業者であれば理解できるであろう。また、本開示に照らして本開示の特定の実施形態に様々な変更を加えることができ、それでも依然として、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、同様または類似の結果を得ることができることを、当業者であれば理解できるであろう。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血流をモニタするためのウェアラブルデバイスであって、
前記患者に装着可能に構成されたハウジングと、
前記ハウジングが前記患者に装着されたときに前記患者に光を照射することができるように前記ハウジング内に配置された光源と、
前記ハウジングが前記患者に装着されたときに前記患者から光を受け取ることができるように前記ハウジング内に配置された光学センサと、
前記患者から受け取った光を前記光学センサに伝えるように前記ハウジング内に配置されたレンズアセンブリであって、前記ハウジングが前記患者に装着されたときに前記光学センサに近い位置に配置された第1のレンズと、前記ハウジングが前記患者装着されたときに前記患者に近い位置に配置された第2のレンズとを含む、該レンズアセンブリと、を備える、ウェアラブルデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のウェアラブルデバイスであって、
前記第1のレンズは、前記ハウジング内で第1の向きに配向され、
前記第2のレンズは、前記ハウジング内で前記第1の向きとは異なる第2の向きに配向されている、ウェアラブルデバイス。
【請求項3】
請求項2に記載のウェアラブルデバイスであって、
前記第2のレンズは、倍率を得るために前記第1のレンズとは異なる焦点距離を有する、ウェアラブルデバイス。
【請求項4】
請求項2に記載のウェアラブルデバイスであって、
前記第1のレンズは、前記レンズアセンブリの焦点面を調整するために調整可能である、ウェアラブルデバイス。
【請求項5】
請求項1に記載のウェアラブルデバイスであって、
前記光学センサ及び前記レンズアセンブリは、前記光源から前記患者に照射され、前記患者から反射された光の少なくとも一部を前記光学センサが受け取ることができるように配置されている、ウェアラブルデバイス。
【請求項6】
請求項1に記載のウェアラブルデバイスであって、
前記光学センサ及び前記レンズアセンブリは、前記光源から前記患者に照射され、前記患者を透過した光の少なくとも一部を前記光学センサが受け取ることができるように配置されている、ウェアラブルデバイス。
【請求項7】
請求項1に記載のウェアラブルデバイスであって、
前記光学センサ及び前記光源に接続されたプロセッサをさらに備え、
前記プロセッサは、
前記光源を制御して前記患者に光を照射し、
前記患者から受け取った光に応答して前記光学センサによって生成されたデータを受信し、
受信した前記データに基づいて出力を生成するようにプログラムされている、ウェアラブルデバイス。
【請求項8】
請求項7に記載のウェアラブルデバイスであって、
前記プロセッサは、受信した前記データに基づいてレーザスペックル血流指標を決定することによって、受信した前記データに基づいて前記出力を生成するようにプログラムされている、ウェアラブルデバイス。
【請求項9】
請求項7に記載のウェアラブルデバイスであって、
無線通信インターフェースをさらに備え、
前記プロセッサは、前記無線通信インターフェースを介して、受信した前記データに基づいて生成された前記出力を送信するようにさらにプログラムされている、ウェアラブルデバイス。
【請求項10】
請求項7に記載のウェアラブルデバイスであって、
前記光源、前記光学センサ、及び前記プロセッサに電力を供給するバッテリをさらに備える、ウェアラブルデバイス。
【請求項11】
患者の血流をモニタするためのウェアラブルデバイスであって、
前記患者に装着可能に構成されたハウジングと、
前記ハウジングが前記患者に装着されたときに前記患者に光を照射することができるように前記ハウジング内に配置された光源と、
前記ハウジングが前記患者に装着されたときに前記患者から光を受け取ることができるように前記ハウジング内に配置され、前記患者から受け取った光に基づいて複数フレームのデータを生成するカメラセンサと、
前記カメラセンサ及び前記光源に接続されたプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
前記光源を制御して前記患者に光を照射し、
前記カメラセンサで生成された前記データを受信し、
矩形スライディングウィンドウの列、行、または対角線に沿った前記データの各フレーム内の画像強度の平均と、前記矩形スライディングウィンドウの列、行、または対角線に沿った前記データの各フレーム内の画像強度の二乗の平均とに基づいて、前記データの各フレームのスペックルコントラスト指標k´を決定し、
前記データの各フレームの前記スペックルコントラスト指標k´に基づいて出力を生成するようにプログラムされている、ウェアラブルデバイス。
【請求項12】
請求項11に記載のウェアラブルデバイスであって、
前記プロセッサは、
前記スペックルコントラスト指標k´の平均の二乗の逆数としてレーザスペックル血流指標(LSFI)を計算し、前記スペックルコントラスト指標k´に基づく出力として前記レーザスペックル血流指標(LSFI)を出力することによって、前記データの各フレームの前記スペックルコントラスト指標k´に基づいて出力を生成するようにプログラムされている、ウェアラブルデバイス。
【請求項13】
請求項11に記載のウェアラブルデバイスであって、
前記データの各フレームの前記スペックルコントラスト指標k´は、下記の式を用いて計算される、ウェアラブルデバイス。
式中、
<I
S
>´は、7×7の前記矩形スライディングウィンドウの対角線に沿った前記データの各フレーム内の画像強度の平均であり、
<I
s
2
>´は、7×7の前記矩形スライディングウィンドウの対角線に沿った前記データの各フレーム内の画像強度の二乗の平均である。
【請求項14】
請求項11に記載のウェアラブルデバイスであって、
前記カメラセンサは、前記データの各フレームを第1の画像解像度で生成し、
前記プロセッサは、前記データの各フレームの前記スペックルコントラスト指標k´を決定する前に、前記データの各フレームの画像解像度を前記第1の画像解像度よりも低い第2の画像解像度に下げるようにプログラムされている、ウェアラブルデバイス。
【請求項15】
請求項11に記載のウェアラブルデバイスであって、
前記カメラセンサは、前記データの各フレームを第1の毎秒フレーム数で出力するように動作可能であり、
前記プロセッサは、前記データの各フレームを、前記第1の毎秒フレーム数よりも低い第2の毎秒フレーム数でサンプリングするようにプログラムされている、ウェアラブルデバイス。
【請求項16】
請求項11に記載のウェアラブルデバイスであって、
前記カメラセンサは、Yチャネルデータ、Uチャネルデータ、及びVチャネルデータを含むYUV形式のフレームデータを出力し、
前記プロセッサは、前記各フレームデータの前記Yチャネルデータのみを使用して、前記各フレームデータの前記スペックルコントラスト指標k´を決定するようにプログラムされている、ウェアラブルデバイス。
【請求項17】
無線レーザスペックルイメージング方法であって、
レーザスペックルイメージングのターゲットに隣接してハウジングを取り付けるステップと、
前記ハウジング内に配置された光源から前記ターゲットに光を照射するステップと、
前記ハウジング内に配置されたレンズアセンブリを使用して前記ターゲットから反射された光を集光するステップであって、前記レンズアセンブリは、前記ハウジング内に配置された光学センサに近い側に配置された第1のレンズと、前記ターゲットに近い側に配置された第2のレンズとを含み、前記第1のレンズは第1の向きに配向され、前記第2のレンズは前記第1の向きとは異なる第2の向きに配向されている、該ステップと、
前記ハウジング内に配置された前記光学センサによって、前記レンズアセンブリによって集光された光を受け取るステップと、
前記光学センサによって、前記受け取った光に基づいて複数フレームのデータを生成するステップと、
前記ハウジング内に配置されたプロセッサによって、前記データを受信するステップと、
前記プロセッサによって、前記データの各フレーム内の画像強度に基づいて、前記データの各フレームのスペックルコントラスト指標k´を決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、
前記データの各フレーム内の画像強度に基づいて、前記データの各フレームの前記スペックルコントラスト指標k´を決定する前記ステップは、
矩形スライディングウィンドウの対角線に沿った前記データの各フレーム内の画像強度の平均と、前記矩形スライディングウィンドウの対角線に沿った前記データの各フレーム内の画像強度の二乗の平均とに基づいて、前記データの各フレームの前記スペックルコントラスト指標k´を決定することを含む、方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、
前記光学センサは、前記データの各フレームを第1の画像解像度で生成するとともに、前記データの各フレームを第1の毎秒フレーム数で出力するように動作可能であり、
当該方法は、
前記データの各フレームの前記スペックルコントラスト指標k´を決定する前に、前記プロセッサによって、前記データの各フレームの画像解像度を前記第1の画像解像度よりも低い第2の画像解像度に下げるステップ、
前記データの各フレームの前記スペックルコントラスト指標k´を決定する前に、前記プロセッサによって、前記データの各フレームを、前記第1の毎秒フレーム数よりも低い第2の毎秒フレーム数でサンプリングするステップ、及び、
前記プロセッサによって、Yチャネルデータ、Uチャネルデータ、及びVチャネルデータを含むYUV形式のフレームデータを受信し、前記プロセッサによって、前記データの各フレームの前記Yチャネルデータのみを使用して、前記データの各フレームの前記スペックルコントラスト指標k´を決定するステップ、
のうちの1以上のステップをさらに含む、方法。
【請求項20】
請求項17に記載の方法であって、
前記データの各フレームの前記スペックルコントラスト指標k´に基づく出力を無線で提供するステップをさらに含む、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年3月18日出願の米国仮特許出願第63/162,864号に基づく優先権を主張する2022年3月18日出願のPCT国際特許出願第PCT/US2022/021048号の国内移行手続きである。上記出願の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
(連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載)
本発明は、米国国立衛生研究所から交付された助成金番号CA171651及びHD103954の下に、米国政府の支援を受けてなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【国際調査報告】