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特表2024-511977抗ILT3抗体によるがんの治療方法
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  • 特表-抗ILT3抗体によるがんの治療方法 図1A
  • 特表-抗ILT3抗体によるがんの治療方法 図1B
  • 特表-抗ILT3抗体によるがんの治療方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】抗ILT3抗体によるがんの治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240311BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240311BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240311BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240311BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240311BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240311BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20240311BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240311BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240311BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20240311BHJP
【FI】
A61K39/395 E
A61P35/00
A61P35/04
A61P1/18
A61P11/00
A61K39/395 T
A61K39/395 Y
A61P43/00 121
A61K31/337
A61P25/00
C07K16/28 ZNA
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556755
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 US2022020714
(87)【国際公開番号】W WO2022197900
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】63/163,779
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522242018
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ブランディッシュ,フィリップ・イー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,メイ
(72)【発明者】
【氏名】ロボダ,アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】ネボジン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ウ,カイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ダピン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-フーバー,ジエ
【テーマコード(参考)】
4B064
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4C085AA13
4C085AA14
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG04
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントと抗PD1抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントとを3週間ごと(Q3W)に患者に投与することを含む、転移性トリプルネガティブ乳癌、神経膠芽腫、転移性膵管腺癌、転移性軟部組織肉腫または転移性非扁平上皮非小細胞肺癌を有すると確認された患者における固形腫瘍の治療方法に関する。

【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.02mg~2250mgの抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項2】
請求項1記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、癌の治療を要する対象における癌の治療方法。
【請求項3】
抗PD1抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの治療的有効量を、該医薬組成物と共に、連続してまたは同時に対象に投与することを更に含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
癌が転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC)である、請求項2~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
投与工程の前に、対象を、
a)PD-L1に富む腫瘍(ここで、PD-L1に富む腫瘍は、1以上のCPSスコアを有するものとして確認された腫瘍である)を有する、および
b)mTNBCに対する事前の全身療法を受けていない
ものとして確認する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
癌が再発性手術不能多形神経膠芽腫(GBM)である、請求項2~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
投与工程の前に、対象を、
a)GBMの組織学的に確認された診断を有する、ならびに
b)化学療法の存在下または非存在下の手術および放射線療法を含むGBMに対する標準的な第1選択治療を受けており、磁気共鳴イメージング(MRI)による疾患再発または腫瘍進行の証拠を有する
ものとして確認する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
癌が転移性膵管腺癌(mPDAC)である、請求項2~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
投与工程の前に、対象を、
a)mPDACの組織学的に確認された診断を有する、および
b)mPDACに対する事前の全身療法を受けていない
ものとして確認する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
癌が転移性軟部組織肉腫(mSTS)である、請求項2~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
投与工程の前に、対象を、
a)局所進行性または転移性mSTSの組織学的に確認された診断を有する、および
b)進行性mSTSに対する1つの事前の全身治療を受けた後に進行している
ものとして確認する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
癌が転移性非扁平上皮非小細胞肺癌(mNSCLC)である、請求項2~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
投与工程の前に、対象を、
a)ステージIVまたは再発性手術不能非扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)の組織学的に確認された診断を有する、
b)一次療法として適応となる上皮増殖因子受容体(EGFR)、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)またはc-ros癌遺伝子1(ROS1)に向けられた療法を受けていない、および
c)転移性NSCLCに対する事前の全身治療を受けていない
ものとして確認する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
投与工程の前に、対象を、
a)ステージIVまたは再発性手術不能非扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)の組織学的に確認された診断を有する、
b)承認された標的療法に適格でない、
c)単独療法としてまたは他のチェックポイントインヒビターもしくは他の療法と組合せて投与される抗PD-(L)1モノクローナル抗体(mAb)での治療の後で進行している、および
d)プラチナダブレット化学療法中/後に進行性疾患(PD)を有する
ものとして確認する、請求項12記載の方法。
【請求項15】
投与工程の前に、対象を、
a)ステージIVまたは再発性手術不能非扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)の組織学的に確認された診断を有する、
b)一次療法として適応となる上皮増殖因子受容体(EGFR)、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)またはc-ros癌遺伝子1(ROS1)に向けられた療法を受けていない、
c)転移性NSCLCに対する事前の全身治療を受けていない、および
d)PD-L1に富む腫瘍(ここで、PD-L1に富む腫瘍は、1以上のCPSスコアを有すると確認された腫瘍である)を有する
ものとして確認する、請求項12記載の方法。
【請求項16】
対象がヒトである、請求項2~15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが抗ILT3抗体または抗原結合性フラグメントである、請求項2~16のいずれか1項記載の方法または請求項1の医薬組成物。
【請求項18】
ヒト免疫グロブリン様転写物3(ILT3)に結合する抗体または抗原結合性フラグメントが、配列番号20、47、55、63、71、79、87、95および103からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、または配列番号20、47、55、63、71、79、87、95および103からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して3、2もしくは1個の相違を有するアミノ酸配列を有する、相補性決定領域(HC-CDR)3を含む可変重鎖ドメイン(VH)を有する重鎖(HC)を含む、請求項17記載の方法または医薬組成物。
【請求項19】
抗ILT3抗体または抗原結合性フラグメントが、
(a)配列番号15、45、53、61、69、77、85、93または101に示されているアミノ酸配列を有する相補性決定領域(HC-CDR)1、配列番号16、46、54、62、69、78、86、94または102に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR2、および配列番号21、47、55、63、71、79、87、95または103に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR3、および、それらの変異体であって、該HC-CDRの1以上が、1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを有する該変異体、を含む可変重鎖ドメイン(VH)を有する重鎖(HC)、ならびに
(b)配列番号25、48、56、64、72、80、88、96または104に示されているアミノ酸配列を有する相補性決定領域(LC-CDR)1、配列番号41、49、57、65、73、81、89、97または105に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR2、および配列番号42、50、58、66、74、82、90、98または106に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR3、および、それらの変異体であって、該LC-CDRの1以上が、1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを有する該変異体、を含む可変軽鎖ドメイン(VL)を有する軽鎖(LC)
を含む、請求項17記載の方法または医薬組成物。
【請求項20】
(a)HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR2が、配列番号17、18または19に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を有し、そして
(b)LC-CDR1が、配列番号32、33、34、35、36、37、38、39または40に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を有する、請求項19記載の方法または医薬組成物。
【請求項21】
(a)HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR2が、配列番号18に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を有し、そして
(b)LC-CDR1が、配列番号39に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を有する、請求項20記載の方法または医薬組成物。
【請求項22】
が、ヒトV1、V2、V3、V4、V5およびV6、ならびに、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを有するそれらの変異体、からなる群から選択されるフレームワークを含み、Vが、ヒトVκ1、Vκ2、Vκ3、Vκ4、Vκ5、Vκ6、Vλ1、Vλ2、Vλ3、Vλ4、Vλ5、Vλ6、Vλ7、Vλ8、Vλ9およびVλ10、ならびに、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを有するそれらの変異体、からなる群から選択されるフレームワークを含む、請求項19~21のいずれか1項記載の方法または医薬組成物。
【請求項23】
抗体が、ヒトIgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4 HC定常ドメイン、またはそれらの変異体であって、天然IgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4アイソタイプ定常ドメインのアミノ酸配列と比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個のアミノ酸置換、付加、欠失もしくはそれらの組合せを有する該変異体を有するHCを含む、請求項19~22のいずれか1項記載の方法または医薬組成物。
【請求項24】
抗体が、ヒトカッパもしくはラムダLC定常ドメイン、またはそれらの変異体であって、天然ヒトカッパもしくはラムダ軽鎖定常ドメインのアミノ酸配列と比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個のアミノ酸置換、付加、欠失もしくはそれらの組合せを含む該変異体を有するLCを含む、請求項22または23記載の方法または医薬組成物。
【請求項25】
抗体が、
(i)ヒトV1、V2、V3、V4、V5およびV6から選択されるフレームワークを有するV、ならびに、ヒトIgG1もしくはIgG4 HC定常ドメイン、またはそれらの変異体であって、天然IgG1もしくはIgG4アイソタイプHC定常ドメインのアミノ酸配列と比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個のアミノ酸置換、付加、欠失もしくはそれらの組合せを含む該変異体、ならびに
(ii)ヒトVκ1、Vκ2、Vκ3、Vκ4、Vκ5、Vκ6、Vλ1、Vλ2、Vλ3、Vλ4、Vλ5、Vλ6、Vλ7、Vλ8、Vλ9およびVλ10から選択されるフレームワークを有するV、ならびに、ヒトカッパもしくはラムダLC定常ドメイン、またはそれらの変異体であって、天然ヒトカッパもしくはラムダLC定常ドメインのアミノ酸配列と比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個のアミノ酸置換、付加、欠失もしくはそれらの組合せを含む該変異体
を含む、請求項21記載の方法または医薬組成物。
【請求項26】
抗体または抗原結合性フラグメントが、それぞれ配列番号13および配列番号14、それぞれ配列番号43および配列番号44、それぞれ配列番号51および配列番号52、それぞれ配列番号59および配列番号60、それぞれ配列番号67および配列番号68、それぞれ配列番号75および配列番号76、それぞれ配列番号83および配列番号84、それぞれ配列番号91および配列番号92、またはそれぞれ配列番号99および配列番号100に示されているアミノ酸配列を有するVおよびVを含む、請求項22記載の方法または医薬組成物。
【請求項27】
抗体または抗原結合性フラグメントが、配列番号115、116、117、121、122または123に示されているアミノ酸配列を有するVと、配列番号124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138または139に示されているアミノ酸配列を有するVとを含む、請求項22記載の方法または医薬組成物。
【請求項28】
抗体または抗原結合性フラグメントが、配列番号116に示されているアミノ酸配列を有するVと、配列番号138に示されているアミノ酸配列を有するVとを含む、請求項27記載の方法または医薬組成物。
【請求項29】
抗体が、配列番号7、8、9、10または11に示されているアミノ酸配列を含む重鎖(HC)定常ドメインを含む、請求項25~28のいずれか1項記載の方法または医薬組成物。
【請求項30】
抗体が、配列番号12に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)定常ドメインを含む、請求項23~26のいずれか1項記載の方法または医薬組成物。
【請求項31】
抗体が、配列番号140、141、142、146、147、148、165、166、167、168、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、189、190または191のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)を含む、請求項25~28のいずれか1項記載の方法または医薬組成物。
【請求項32】
抗体が、配列番号149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163または164に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)を含む、請求項25~31のいずれか1項記載の方法または医薬組成物。
【請求項33】
抗体が、配列番号141に示されているアミノ酸配列を含む重鎖(HC)、および配列番号163に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)、および、HCがC末端リジン残基またはC末端グリシン-リジンを欠いているその変異体を含む、請求項25記載の方法または医薬組成物。
【請求項34】
抗PD1抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが抗PD-1抗体または抗原結合性フラグメントである、請求項2~33のいずれか1項記載の方法。
【請求項35】
抗PD-1抗体または抗原結合性フラグメントが、
(a)配列番号224、225および226に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(CDR)、ならびに、配列番号227、228および229に示されているアミノ酸配列を含む重鎖CDR、または
(b)配列番号230、231および232に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖CDR、ならびに、配列番号233、234および235に示されているアミノ酸配列を含む重鎖CDR
を含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
抗PD-1抗体または抗原結合性フラグメントが、
(a)配列番号236に示されているアミノ酸配列または配列番号236の変異体を含む重鎖可変領域、および
(b)(i)配列番号237に示されているアミノ酸配列もしくは配列番号237の変異体、
(ii)配列番号238に示されているアミノ酸配列もしくは配列番号238の変異体、または
(iii)配列番号239に示されているアミノ酸配列もしくは配列番号239の変異体
を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項34または35のいずれか1項記載の方法。
【請求項37】
抗PD-1抗体または抗原結合性フラグメントが、配列番号236に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号237に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、請求項34~36のいずれか1項記載の方法。
【請求項38】
抗PD-1抗体または抗原結合性フラグメントが、
(a)配列番号28に示されているアミノ酸配列または配列番号240の変異体を含む重鎖、および
(b)配列番号241に示されているアミノ酸配列、配列番号241の変異体、配列番号242に示されているアミノ酸配列、配列番号242の変異体、配列番号243に示されているアミノ酸配列または配列番号243の変異体を含む軽鎖
を含むモノクローナル抗体である、請求項34~37のいずれか1項記載の方法。
【請求項39】
抗PD-1抗体または抗原結合性フラグメントが、配列番号240に示されているアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号241に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖とを含むモノクローナル抗体である、請求項34~38のいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
抗PD1抗体または抗原結合性フラグメントが、重鎖可変ドメイン相補性決定領域(HC-CDR)1、2および3と、軽鎖可変ドメイン相補性決定領域(LC-CDR)1、2および3とを含み、
HC-CDR1が、配列番号249に示されているアミノ酸配列を含み、HC-CDR2が、配列番号250に示されているアミノ酸配列を含み、HC-CDR3が、配列番号251に示されているアミノ酸配列を含み、
LC-CDR1が、配列番号244に示されているアミノ酸配列を含み、LC-CDR2が、配列番号245に示されているアミノ酸配列を含み、LC-CDR3が、配列番号246に示されているアミノ酸配列を含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
抗PD1抗体または抗原結合性フラグメントが、配列番号252に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号247に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを有する、請求項39記載の方法。
【請求項42】
抗PD-1抗体または抗原結合性フラグメントが、配列番号253に示されているアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号248に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖とを含むモノクローナル抗体である、請求項39記載の方法。
【請求項43】
抗ILT3抗原結合性タンパク質の治療的有効量が約7.5mg~約2250mgであり、抗PD1抗原結合性タンパク質の治療的有効量が約200mgである、請求項2~42のいずれか1項記載の方法または医薬組成物。
【請求項44】
抗ILT3抗原結合性タンパク質の治療的有効量が約750mgであり、抗PD1抗原結合性タンパク質の治療的有効量が約200mgである、請求項2~43のいずれか1項記載の方法または医薬組成物。
【請求項45】
抗PD-1抗体または抗原結合性フラグメントと抗ILT3抗体または抗原結合性フラグメントとを21日サイクルの3週間ごと(Q3W)に投与する、請求項2~44のいずれか1項記載の方法。
【請求項46】
タキサンを投与することを含む、請求項4~45のいずれか1項記載の方法。
【請求項47】
タキサンがパクリタキセルである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
パクリタキセルを28日サイクルの第1日、第8日および第15日に投与することを含む、請求項47記載の方法。
【請求項49】
各投与日に投与されるパクリタキセルの量が約90mg/mである、請求項47または48のいずれか1項記載の方法。
【請求項50】
nab-パクリタキセルおよびゲムシタビンを投与することを含む、請求項6~45のいずれか1項記載の方法。
【請求項51】
28日サイクルの第1日、第8日および第15日に、IV注入による約125mg/mの量のnab-パクリタキセルおよびIV注入による約1000mg/mの量のゲムシタビンを投与することを含む、請求項50記載の方法。
【請求項52】
a)3週間ごと(Q3W)のIV注入による約500mg/mの量のペメトレキセド、
b)(最大約3か月間の)4回の投与に関してQ3WでIV注入により投与される曲線下面積の所望の用量のカルボプラチン、および
c)(最大約3か月間の)4回の投与に関してQ3WでIV注入により投与される約500mg/mの量のペメトレキセド、およびそれに続くIV注入による約500mg/mの量のペメトレキセドでの維持療法
を投与することを含む、請求項8~45のいずれか1項記載の方法。
【請求項53】
抗ILT3抗体または抗原結合性フラグメントを静脈内投与によって患者に投与する、請求項2~52のいずれか1項記載の方法。
【請求項54】
抗PD-1抗体または抗原結合性フラグメントを静脈内投与または皮下投与によって患者に投与する、請求項2~53のいずれか1項記載の方法。
【請求項55】
医薬組成物が、7.5mg、25mg、75mg、225mg、750mgおよび2250mgからなる群から選択される量の抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントを含む、請求項2~54のいずれかの1項記載の方法または医薬組成物。
【請求項56】
抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの量が7.5mgである、請求項55記載の方法または医薬組成物。
【請求項57】
抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの量が25mgである、請求項55記載の方法または医薬組成物。
【請求項58】
抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの量が75mgである、請求項55記載の方法または医薬組成物。
【請求項59】
抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの量が225mgである、請求項55記載の方法または医薬組成物。
【請求項60】
抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの量が750mgである、請求項55記載の方法または医薬組成物。
【請求項61】
抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの量が2250mgである、請求項55記載の方法または医薬組成物。
【請求項62】
抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが、重鎖可変ドメイン相補性決定領域(HC-CDR)1、2および3と、軽鎖可変ドメイン相補性決定領域(LC-CDR)1、2および3とを含み、ここで、
(a)HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を含み、HC-CDR2が、配列番号17に示されているアミノ酸配列を含み、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を含み、LC-CDR1が、配列番号36に示されているアミノ酸配列を含み、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を含み、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を含み、
(b)HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR2が、配列番号18に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR1が、配列番号37に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を有し、
(c)HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR2が、配列番号19に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR1が、配列番号38に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を有し、
(d)HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR2が、配列番号18に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR1が配列番号39に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を有し、
(e)HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR2が、配列番号17に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR1が、配列番号40に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を有する、
請求項2~61のいずれかの1項記載の方法または医薬組成物。
【請求項63】
抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが、重鎖可変ドメイン相補性決定領域(HC-CDR)1、2および3と、軽鎖可変ドメイン相補性決定領域(LC-CDR)1、2および3とを含み、ここで、HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を含み、HC-CDR2が、配列番号17に示されているアミノ酸配列を含み、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を含み、LC-CDR1が、配列番号36に示されているアミノ酸配列を含み、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を含み、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を含む、
請求項62記載の方法または医薬組成物。
【請求項64】
抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが、重鎖可変ドメイン相補性決定領域(HC-CDR)1、2および3と、軽鎖可変ドメイン相補性決定領域(LC-CDR)1、2および3とを含み、ここで、HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR2が、配列番号18に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR1が、配列番号37に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を有する、
請求項62記載の方法または医薬組成物。
【請求項65】
抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが、重鎖可変ドメイン相補性決定領域(HC-CDR)1、2および3と、軽鎖可変ドメイン相補性決定領域(LC-CDR)1、2および3とを含み、ここで、HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR2が、配列番号19に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR1が、配列番号38に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を有する、
請求項62記載の方法または医薬組成物。
【請求項66】
抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが、重鎖可変ドメイン相補性決定領域(HC-CDR)1、2および3と、軽鎖可変ドメイン相補性決定領域(LC-CDR)1、2および3とを含み、ここで、HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR2が、配列番号18に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR1が、配列番号39に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を有する、
請求項62記載の方法または医薬組成物。
【請求項67】
抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが、重鎖可変ドメイン相補性決定領域(HC-CDR)1、2および3と、軽鎖可変ドメイン相補性決定領域(LC-CDR)1、2および3とを含み、ここで、HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR2が、配列番号17に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR1が、配列番号40に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を有する、
請求項62記載の方法または医薬組成物。
【請求項68】
抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが、
(a)配列番号140の重鎖および配列番号149の軽鎖、
(b)配列番号146の重鎖および配列番号151の軽鎖、
(c)配列番号141の重鎖および配列番号150の軽鎖、
(d)配列番号141の重鎖および配列番号163の軽鎖、
(e)配列番号144の重鎖および配列番号150の軽鎖
を含む、請求項2~61のいずれか1項記載の方法または医薬組成物。
【請求項69】
抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが配列番号146の重鎖および配列番号151の軽鎖を含む、請求項68記載の方法または医薬組成物。
【請求項70】
抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが配列番号146の重鎖および配列番号151の軽鎖を含む、請求項68記載の方法または医薬組成物。
【請求項71】
抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが配列番号141の重鎖および配列番号150の軽鎖を含む、請求項68記載の方法または医薬組成物。
【請求項72】
抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが配列番号141の重鎖および配列番号163の軽鎖を含む、請求項68記載の方法または医薬組成物。
【請求項73】
抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが配列番号144の重鎖および配列番号150の軽鎖を含む、請求項68記載の方法または医薬組成物。
【請求項74】
請求項2~73のいずれか1項記載の方法における使用のための、0.02mg~2250mgの抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項75】
請求項2~73のいずれか1項記載の方法における使用のための医薬の製造における、0.02mg~2250mgの抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されている配列表を含み、その全体を参照により本明細書に組み入れることとする。2022年3月11日付作成の前記ASCIIコピーは25212-WO-PCT_SL.txtと称され、410,136バイトのサイズを有する。
【0002】
本開示は、抗体または抗原結合性フラグメントを含む抗ILT3抗原結合性タンパク質を単独でまたは組合せて対象に投与することを含む、対象におけるがん(以下、「癌」と表記される)の治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
PD-1系を標的とする免疫チェックポイント療法は複数のヒト癌における臨床応答の画期的な改善をもたらしている(Brahmerら,N Engl J Med 2012,366:2455-65;Garonら,N Engl J Med 2015,372:2018-28;Hamidら,N Engl J Med 2013,369:134-44;Robertら,Lancet 2014,384:1109-17;Robertら,N Engl J Med 2015,372:2521-32;Robertら,N Engl J Med 2015,372:320-30;Topalianら,N Engl J Med 2012,366:2443-54;Topalianら,J Clin Oncol 2014,32:1020-30;Wolchokら,N Engl J Med 2013,369:122-33)。PD-1系を標的とする免疫療法には、PD-1受容体に対するモノクローナル抗体[KEYTRUDA(商標)(ペンブロリズマブ(pembrolizumab)),Merck and Co.,Inc.Kenilworth,NJおよびOPDIVO(ニボルマブ(nivolumab)),Bristol-Myers Squibb Company,Princeton,NJ,USA]、およびPD-L1リガンドに結合するもの[MPDL3280A;TECENTRIQ(アテゾリズマブ(atezolizumab)),Genentech,San Francisco,CA,USA;IMFINZI(デュルバルマブ(durvalumab)),AstraZeneca Pharmaceuticals LP,Wilmington,DE;BAVENCIO(アベルマブ(avelumab)),Merck KGaA,Darmstadt,Germany]が含まれる。どちらの治療アプローチも多数の癌型において抗腫瘍効果を示している。
【0004】
しかし、ある癌の適応症はPD-1またはPD-L1インヒビターでの治療に抵抗性である。ペンブロリズマブを含むチェックポイントインヒビターに対する抵抗性の分子疫学における骨髄細胞の役割が報告されており、ILT3はその骨髄の特徴に強く関連している。研究は、骨髄細胞への腫瘍の浸潤、ならびにその特徴と免疫抑制およびチェックポイントインヒビターに対する抵抗性との関連性を実証している(Kumarら,The Nature of Myeloid-Derived Suppressor Cells in the Tumor Microenvironment.Trends Immunol.2016 Mar;37(3):208-220;Solitoら,Myeloid-derived suppressor cell heterogeneity in human cancers.Ann N Y Acad Sci.2014;1319:47-65;Messmerら,Tumor-induced myeloid dysfunction and its implications for cancer immunotherapy.Cancer Immunol Immunother.2015;64:1-13)。以前に治療された転移性膀胱癌を有する患者においては、高いベースライン循環単球性骨髄由来抑制細胞(MDSC)数は、低いMDSC数を有する患者と比較して、ニボルマブでの治療の後の、より短い全生存期間に関連していた[Sharma,P.ら,Nivolumab in metastatic urothelial carcinoma after platinum therapy(CheckMate 275):a multicentre,single-arm,phase 2 trial.Lancet Oncol.2017 Mar;18(3):312-322]。更に、De Goejeらは、循環MDSC上のILT3発現レベルとNSCLCにおける患者の生存性との間に逆相関性を観察している(de Goeje,P.L.ら)。したがって、免疫チェックポイントインヒビターでの治療に対して抵抗性である癌の治療において、追加的な療法が必要とされている。
【0005】
CD85kと称され、白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー4(LILRB4)および白血球免疫グロブリン様受容体5(LIR-5)としても公知である免疫グロブリン様転写物3(ILT3)は、細胞質免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)モチーフを含有するI型膜タンパク質であり、免疫応答のダウンレギュレーションに関与している(Cellaら,J Exp Med.185(10):1743-51(1997);Samaridisら,Eur J Immunol.27(3):660-665(1997))。ILT3の発現は免疫寛容原性樹状細胞においてアップレギュレーションされる。この遺伝子は白血球免疫グロブリン様受容体(LIR)ファミリーのメンバーであり、これは染色体領域19q13.4における遺伝子クラスターに見出される。コード化タンパク質はLIR受容体のサブファミリーBクラスに属し、これは2個または4個の細胞外免疫グロブリンドメイン、膜貫通ドメインおよび2~4個のITIMを含有する。
【0006】
ILT3は骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)によって発現され、非小細胞肺癌患者の生存と相関する(Oncoimmunology.2015;4(7):e1014242)。NOD scidガンマヒト化マウスモデル系統における抗ILT3抗体のマウス研究は、それが腫瘍負荷を低減し、細胞表現型をより活性化状態へと移行させうることを示している(WO2019/099597を参照されたい)。
【0007】
ILT3経路は、腫瘍免疫寛容の誘導および維持をもたらす重要な調節要素でありうる。ILT3のインヒビターは、単独で、またはPD-1/PD-L1系のインヒビターと組合せて、悪性腫瘍を治療するための革新的で扱いやすい方法を提供しうる。
【発明の概要】
【0008】
実施形態1:本開示は、0.02mg~2250mgの抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0009】
実施形態2:本開示は、0.02mg~2250mgの抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物の治療的有効量を対象に投与することを含む、癌の治療を要する対象における癌の治療方法を提供する。
【0010】
実施形態3:抗PD1抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの治療的有効量を、該医薬組成物と共に、連続してまたは同時に対象に投与することを更に含む、実施形態2記載の方法。
【0011】
実施形態4:癌が転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC)である、実施形態2および3のいずれかに記載の方法。
【0012】
実施形態5:投与工程の前に、対象を、a)PD-L1に富む腫瘍(ここで、PD-L1に富む腫瘍は、1以上のCPSスコアを有するものとして確認された腫瘍である)を有するものとして確認する、実施形態4記載の方法。
【0013】
実施形態5.1:投与工程の前に、対象を、
a)PD-L1に富む腫瘍(ここで、PD-L1に富む腫瘍は、1以上のCPSスコアを有するものとして確認された腫瘍である)を有する、および
b)mTNBCに対する事前の全身療法を受けていない
ものとして確認する、実施形態4記載の方法。
【0014】
実施形態6:癌が再発性手術不能多形神経膠芽腫(GBM)である、実施形態2~3のいずれかに記載の方法。
【0015】
実施形態7:投与工程の前に、対象を、
a)GBMの組織学的に確認された診断を有する、
b)化学療法の存在下または非存在下の手術および放射線療法を含むGBMに対する標準的な第1選択治療を受けており、磁気共鳴イメージング(MRI)による疾患の再発または進行の証拠を有する、
c)事前の治療から時間が経過している、
d)研究治療開始前7日以内に80以上のカルノフスキー・パフォーマンス・ステータス(KPS)を有する、
e)神経学的に安定している、ならびに
f)O6-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)メチル化およびイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)の既知状態を有する
ものとして確認する、実施形態6記載の方法。
【0016】
実施形態7.1:投与工程の前に、対象を、
a)GBMの組織学的に確認された診断を有する、ならびに
b)化学療法の存在下または非存在下の手術および放射線療法を含むGBMに対する標準的な第1選択治療を受けており、磁気共鳴イメージング(MRI)による疾患の再発または進行の証拠を有する
ものとして確認する、実施形態6記載の方法。
【0017】
実施形態8:癌が転移性膵管腺癌(mPDAC)である、実施形態2~3のいずれかに記載の方法。
【0018】
実施形態9:投与工程の前に、対象を、
a)mPDACの組織学的に確認された診断を有し、mPDACに対する事前の全身療法を受けていない、および
b)血清サンプルにおいて3.0g/dL以上のアルブミンレベルを有する
ものとして確認する、実施形態8記載の方法。
【0019】
実施形態9.1:投与工程の前に、対象を、
a)mPDACの組織学的に確認された診断を有し、mPDACに対する事前の全身療法を受けていない、および
b)mPDACに対する事前の全身療法を受けていない
ものとして確認する、実施形態8記載の方法。
【0020】
実施形態10:癌が転移性軟部組織肉腫(mSTS)である、実施形態2~3のいずれかに記載の方法。
【0021】
実施形態11:投与工程の前に、対象を、進行性mSTSに対する1つの事前の全身治療を受けた後に進行しているものとして確認する、実施形態10記載の方法。
【0022】
実施形態11.1:投与工程の前に、対象を、
a)局所進行性または転移性mSTSの組織学的に確認された診断を有する、および
b)進行性mSTSに対する1つの事前の全身治療を受けた後に進行している
ものとして確認する、実施形態10記載の方法。
【0023】
実施形態12.癌が転移性非扁平上皮非小細胞肺癌(mNSCLC)である、実施形態2~3のいずれかに記載の方法。
【0024】
実施形態13:投与工程の前に、対象を、
a)ステージIVまたは再発性手術不能非扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)の組織学的に確認された診断を有する、
b)一次療法として適応となる上皮増殖因子受容体(EGFR)、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)またはc-ros癌遺伝子1(ROS1)に向けられた療法を受けていない、および
c)転移性NSCLCに対する事前の全身治療を受けていない
ものとして確認する、実施形態12記載の方法。
【0025】
実施形態13.1:投与工程の前に、対象を、
a)ステージIVまたは再発性手術不能非扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)の組織学的に確認された診断を有する、
b)承認された標的療法に適格でない、
c)単独療法(単剤療法)としてまたは他のチェックポイントインヒビターもしくは他の療法と組合せて投与される抗PD-(L)1モノクローナル抗体(mAb)での治療の後で進行している、および
d)プラチナダブレット化学療法中/後に進行性疾患(PD)を有する
ものとして確認する、実施形態12記載の方法。
【0026】
実施形態13.2:投与工程の前に、対象を、
a)ステージIVまたは再発性手術不能非扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)の組織学的に確認された診断を有する、
b)一次療法として適応となる上皮増殖因子受容体(EGFR)、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)またはc-ros癌遺伝子1(ROS1)に向けられた療法を受けていない、
c)転移性NSCLCに対する事前の全身治療を受けていない、および
d)PD-L1に富む腫瘍(ここで、PD-L1に富む腫瘍は、1以上のCPSスコアを有すると確認された腫瘍である)を有する
ものとして確認する、実施形態12記載の方法。
【0027】
実施形態14:対象がヒトである、実施形態2~13のいずれかに記載の方法。
【0028】
実施形態15:抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが抗ILT3抗体または抗原結合性フラグメントである、実施形態2~14のいずれかに記載の方法または実施形態1の医薬組成物。
【0029】
実施形態16:ヒト免疫グロブリン様転写物3(ILT3)に結合する抗体または抗原結合性フラグメントが、配列番号20、47、55、63、71、79、87、95および103からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、または配列番号20、47、55、63、71、79、87、95および103からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して3、2もしくは1個の相違を有するアミノ酸配列を有する相補性決定領域(HC-CDR)3を含む可変重鎖ドメイン(VH)を有する重鎖(HC)を含む、実施形態15記載の方法または医薬組成物。
【0030】
実施形態17:抗ILT3抗体または抗原結合性フラグメントが、
(a)配列番号15、45、53、61、69、77、85、93または101に示されているアミノ酸配列を有する相補性決定領域(HC-CDR)1、配列番号16、46、54、62、69、78、86、94または102に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR2、および配列番号21、47、55、63、71、79、87、95または103に示されているアミノ酸配列を有するHC-CDR3、およびそれらの変異体であって、該HC-CDRの1以上が、1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを有する該変異体を含む可変重鎖ドメイン(VH)を有する重鎖(HC)、ならびに
(b)配列番号25、48、56、64、72、80、88、96または104に示されているアミノ酸配列を有する相補性決定領域(LC-CDR)1、配列番号41、49、57、65、73、81、89、97または105に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR2、および配列番号42、50、58、66、74、82、90、98または106に示されているアミノ酸配列を有するLC-CDR3、およびそれらの変異体であって、該LC-CDRの1以上が、1、2または3個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを有する該変異体を含む可変軽鎖ドメイン(VL)を有する軽鎖(LC)
を含む、実施形態15記載の方法または医薬組成物。
【0031】
実施形態18:
(a)HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR2が、配列番号17、18または19に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を有し、
(b)LC-CDR1が、配列番号32、33、34、35、36、37、38、39または40に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を有する、実施形態17記載の方法または医薬組成物。
【0032】
実施形態19:
(a)HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR2が、配列番号18に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を有し、
(b)LC-CDR1が、配列番号39に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を有する、実施形態18記載の方法または医薬組成物。
【0033】
実施形態20:Vが、ヒトV1、V2、V3、V4、V5およびV6ならびに1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを有するそれらの変異体からなる群から選択されるフレームワークを含み、Vが、ヒトVκ1、Vκ2、Vκ3、Vκ4、Vκ5、Vκ6、Vλ1、Vλ2、Vλ3、Vλ4、Vλ5、Vλ6、Vλ7、Vλ8、Vλ9およびVλ10ならびに1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸置換、付加、欠失またはそれらの組合せを有するそれらの変異体からなる群から選択されるフレームワークを含む、実施形態17~19のいずれかに記載の方法または医薬組成物。
【0034】
実施形態21:抗体が、ヒトIgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4 HC定常ドメイン、またはそれらの変異体であって、天然IgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4アイソタイプ定常ドメインのアミノ酸配列と比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個のアミノ酸置換、付加、欠失もしくはそれらの組合せを有する該変異体を有するHCを含む、実施形態17~20のいずれかに記載の方法または医薬組成物。
【0035】
実施形態22:抗体が、ヒトカッパもしくはラムダLC定常ドメイン、またはそれらの変異体であって、天然ヒトカッパもしくはラムダ軽鎖定常ドメインのアミノ酸配列と比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個のアミノ酸置換、付加、欠失もしくはそれらの組合せを含む該変異体を有するLCを含む、実施形態20または21記載の方法または医薬組成物。
【0036】
実施形態23:抗体が、
(i)ヒトV1、V2、V3、V4、V5およびV6から選択されるフレームワークを有するV、ならびにヒトIgG1もしくはIgG4 HC定常ドメイン、またはそれらの変異体であって、天然IgG1もしくはIgG4アイソタイプHC定常ドメインのアミノ酸配列と比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個のアミノ酸置換、付加、欠失もしくはそれらの組合せを含む該変異体、ならびに
(ii)ヒトVκ1、Vκ2、Vκ3、Vκ4、Vκ5、Vκ6、Vλ1、Vλ2、Vλ3、Vλ4、Vλ5、Vλ6、Vλ7、Vλ8、Vλ9およびVλ10から選択されるフレームワークを有するV、ならびにヒトカッパもしくはラムダLC定常ドメイン、またはそれらの変異体であって、天然ヒトカッパもしくはラムダLC定常ドメインのアミノ酸配列と比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10個のアミノ酸置換、付加、欠失もしくはそれらの組合せを含む該変異体
を含む、実施形態19記載の方法または医薬組成物。
【0037】
実施形態24:抗体または抗原結合性フラグメントが、それぞれ配列番号13および配列番号14、それぞれ配列番号43および配列番号44、それぞれ配列番号51および配列番号52、それぞれ配列番号59および配列番号60、それぞれ配列番号67および配列番号68、それぞれ配列番号75および配列番号76、それぞれ配列番号83および配列番号84、それぞれ配列番号91および配列番号92、またはそれぞれ配列番号99および配列番号100に示されているアミノ酸配列を有するVおよびVを含む、実施形態20記載の方法または医薬組成物。
【0038】
実施形態25:抗体または抗原結合性フラグメントが、配列番号115、116、117、121、122または123に示されているアミノ酸配列を有するVと、配列番号124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138または139に示されているアミノ酸配列を有するVとを含む、実施形態20記載の方法または医薬組成物。
【0039】
実施形態26:抗体または抗原結合性フラグメントが、配列番号116に示されているアミノ酸配列を有するVと、配列番号138に示されているアミノ酸配列を有するVとを含む、実施形態25記載の方法または医薬組成物。
【0040】
実施形態27:抗体が、配列番号7、8、9、10または11に示されているアミノ酸配列を含む重鎖(HC)定常ドメインを含む、実施形態23~26のいずれかに記載の方法または医薬組成物。
【0041】
実施形態28:抗体が、配列番号12に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)定常ドメインを含む、実施形態23~26のいずれかに記載の方法または医薬組成物。
【0042】
実施形態29:抗体が、配列番号140、141、142、146、147、148、165、166、167、168、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、189、190または191のアミノ酸配列を含む重鎖(HC)を含む、実施形態23~26のいずれかに記載の方法または医薬組成物。
【0043】
実施形態30:抗体が、配列番号149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163または164に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)を含む、実施形態23~29のいずれかに記載の方法または医薬組成物。
【0044】
実施形態31:抗体が、配列番号141に示されているアミノ酸配列を含む重鎖(HC)、および配列番号163に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)、およびHCがC末端リジン残基またはC末端グリシン-リジンを欠いているその変異体を含む、実施形態23記載の方法または医薬組成物。
【0045】
実施形態32:抗PD1抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが抗PD-1抗体または抗原結合性フラグメントである、実施形態2~31のいずれかに記載の方法。
【0046】
実施形態33:抗PD-1抗体または抗原結合性フラグメントが、
(a)配列番号224、225および226に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域(CDR)、ならびに配列番号227、228および229に示されているアミノ酸配列を含む重鎖CDR、または
(b)配列番号230、231および232に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖CDR、ならびに配列番号233、234および235に示されているアミノ酸配列を含む重鎖CDR
を含む、実施形態32記載の方法。
【0047】
実施形態34:抗PD-1抗体または抗原結合性フラグメントが、
(a)配列番号236に示されているアミノ酸配列または配列番号236の変異体を含む重鎖可変領域、および
(b)(i)配列番号237に示されているアミノ酸配列もしくは配列番号237の変異体、
(ii)配列番号238に示されているアミノ酸配列もしくは配列番号238の変異体、または
(iii)配列番号239に示されているアミノ酸配列もしくは配列番号239の変異体
を含む軽鎖可変領域
を含む、実施形態32~33のいずれかに記載の方法。
【0048】
実施形態35:抗PD-1抗体または抗原結合性フラグメントが、配列番号236に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号237に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、実施形態32~34のいずれかに記載の方法。
【0049】
実施形態36:抗PD-1抗体または抗原結合性フラグメントが、
(a)配列番号28に示されているアミノ酸配列または配列番号240の変異体を含む重鎖、および
(b)配列番号241に示されているアミノ酸配列、配列番号241の変異体、配列番号242に示されているアミノ酸配列、配列番号242の変異体、配列番号243に示されているアミノ酸配列または配列番号243の変異体を含む軽鎖
を含むモノクローナル抗体である、実施形態32~35のいずれかに記載の方法。
【0050】
実施形態37:抗PD-1抗体または抗原結合性フラグメントが、配列番号240に示されているアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号241に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖とを含むモノクローナル抗体である、実施形態32~36のいずれかに記載の方法。
【0051】
実施形態38:抗PD1抗体または抗原結合性フラグメントが、重鎖可変ドメイン相補性決定領域(HC-CDR)1、2および3と、軽鎖可変ドメイン相補性決定領域(LC-CDR)1、2および3とを含み、
HC-CDR1が、配列番号249に示されているアミノ酸配列を含み、HC-CDR2が、配列番号250に示されているアミノ酸配列を含み、HC-CDR3が、配列番号251に示されているアミノ酸配列を含み、
LC-CDR1が、配列番号244に示されているアミノ酸配列を含み、LC-CDR2が、配列番号245に示されているアミノ酸配列を含み、LC-CDR3が、配列番号246に示されているアミノ酸配列を含む、実施形態37記載の方法。
【0052】
実施形態39:抗PD1抗体または抗原結合性フラグメントが、配列番号252に示されているアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号247に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを有する、実施形態37記載の方法。
【0053】
実施形態40:抗PD-1抗体または抗原結合性フラグメントが、配列番号253に示されているアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号248に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖とを含むモノクローナル抗体である、実施形態37記載の方法。
【0054】
実施形態41:抗ILT3抗原結合性タンパク質の治療的有効量が約7.5mg~約2250mgであり、抗PD1抗原結合性タンパク質の治療的有効量が約200mgである、実施形態2~40のいずれかに記載の方法または医薬組成物。
【0055】
実施形態42:抗ILT3抗原結合性タンパク質の治療的有効量が約750mgであり、抗PD1抗原結合性タンパク質の治療的有効量が約200mgである、実施形態2~41のいずれかに記載の方法または医薬組成物。
【0056】
実施形態43:抗PD-1抗体または抗原結合性フラグメントと抗ILT3抗体または抗原結合性フラグメントとを21日サイクルの3週間ごと(Q3W)に投与する、実施形態2~42のいずれかに記載の方法。
【0057】
実施形態44:タキサンを投与することを含む、実施形態4~43のいずれかに記載の方法。
【0058】
実施形態45:タキサンがパクリタキセルである、実施形態44記載の方法。
【0059】
実施形態46:パクリタキセルを28日サイクルの第1日、第8日および第15日に投与することを含む、実施形態45記載の方法。
【0060】
実施形態47:各投与日に投与されるパクリタキセルの量が約90mg/mである、実施形態45~46のいずれかに記載の方法。
【0061】
実施形態48:nab-パクリタキセルおよびゲムシタビンを投与することを含む、実施形態6~43のいずれかに記載の方法。
【0062】
実施形態49:28日サイクルの第1日、第8日および第15日に、IV注入による約125mg/mの量のnab-パクリタキセルおよびIV注入による約1000mg/mの量のゲムシタビンを投与することを含む、実施形態48記載の方法。
【0063】
実施形態50:
a)3週間ごと(Q3W)のIV注入による約500mg/mの量のペメトレキセド、
b)(最大約3か月間の)4回の投与に関してQ3WでIV注入により投与される曲線下面積の所望の用量のカルボプラチン、および
c)(最大約3か月間の)4回の投与に関してQ3WでIV注入により投与される約500mg/mの量のペメトレキセド、およびそれに続くIV注入による約500mg/mの量のペメトレキセドでの維持療法
を投与することを含む、実施形態8~43のいずれかに記載の方法。
【0064】
実施形態51:抗ILT3抗体または抗原結合性フラグメントを静脈内投与によって患者に投与する、実施形態2~50のいずれかに記載の方法。
【0065】
実施形態52:抗PD-1抗体または抗原結合性フラグメントを静脈内投与または皮下投与によって患者に投与する、実施形態2~51のいずれかに記載の方法。
【0066】
実施形態53:医薬組成物が、7.5mg、25mg、75mg、225mg、750mgおよび2250mgからなる群から選択される量の抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントを含む、実施形態2~52のいずれかに記載の方法または医薬組成物。
【0067】
実施形態54:抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの量が7.5mgである、実施形態53記載の方法または医薬組成物。
【0068】
実施形態55:抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの量が25mgである、実施形態53記載の方法または医薬組成物。
【0069】
実施形態56:抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの量が75mgである、実施形態53記載の方法または医薬組成物。
【0070】
実施形態57:抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの量が225mgである、実施形態53記載の方法または医薬組成物。
【0071】
実施形態58:抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの量が750mgである、実施形態53記載の方法または医薬組成物。
【0072】
実施形態59:抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの量が2250mgである、実施形態53記載の方法または医薬組成物。
【0073】
実施形態60:抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが、重鎖可変ドメイン相補性決定領域(HC-CDR)1、2および3と、軽鎖可変ドメイン相補性決定領域(LC-CDR)1、2および3とを含み、ここで、
(a)HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を含み、HC-CDR2が、配列番号17に示されているアミノ酸配列を含み、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を含み、LC-CDR1が、配列番号36に示されているアミノ酸配列を含み、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を含み、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を含み、
(b)HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR2が、配列番号18に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR1が、配列番号37に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を有し、
(c)HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR2が、配列番号19に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR1が、配列番号38に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を有し、
(d)HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR2が、配列番号18に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR1が配列番号39に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を有し、
(e)HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR2が、配列番号17に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR1が、配列番号40に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を有する、実施形態2~59のいずれかに記載の方法または医薬組成物。
【0074】
実施形態61:抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが、重鎖可変ドメイン相補性決定領域(HC-CDR)1、2および3と、軽鎖可変ドメイン相補性決定領域(LC-CDR)1、2および3とを含み、ここで、HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を含み、HC-CDR2が、配列番号17に示されているアミノ酸配列を含み、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を含み、LC-CDR1が、配列番号36に示されているアミノ酸配列を含み、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を含み、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を含む、実施形態60記載の方法または医薬組成物。
【0075】
実施形態62:抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが、重鎖可変ドメイン相補性決定領域(HC-CDR)1、2および3と、軽鎖可変ドメイン相補性決定領域(LC-CDR)1、2および3とを含み、ここで、HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR2が、配列番号18に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR1が、配列番号37に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を有する、実施形態60記載の方法または医薬組成物。
【0076】
実施形態63:抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが、重鎖可変ドメイン相補性決定領域(HC-CDR)1、2および3と、軽鎖可変ドメイン相補性決定領域(LC-CDR)1、2および3とを含み、ここで、HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR2が、配列番号19に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR1が、配列番号38に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を有する、実施形態60記載の方法または医薬組成物。
【0077】
実施形態64:抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが、重鎖可変ドメイン相補性決定領域(HC-CDR)1、2および3と、軽鎖可変ドメイン相補性決定領域(LC-CDR)1、2および3とを含み、ここで、HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR2が、配列番号18に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR1が、配列番号39に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を有する、実施形態60記載の方法または医薬組成物。
【0078】
実施形態65:抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが、重鎖可変ドメイン相補性決定領域(HC-CDR)1、2および3と、軽鎖可変ドメイン相補性決定領域(LC-CDR)1、2および3とを含み、ここで、HC-CDR1が、配列番号15に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR2が、配列番号17に示されているアミノ酸配列を有し、HC-CDR3が、配列番号21に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR1が、配列番号40に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR2が、配列番号41に示されているアミノ酸配列を有し、LC-CDR3が、配列番号42に示されているアミノ酸配列を有する、実施形態60記載の方法または医薬組成物。
【0079】
実施形態66:抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが、
(a)配列番号140の重鎖および配列番号149の軽鎖、
(b)配列番号146の重鎖および配列番号151の軽鎖、
(c)配列番号141の重鎖および配列番号150の軽鎖、
(d)配列番号141の重鎖および配列番号163の軽鎖、
(e)配列番号144の重鎖および配列番号150の軽鎖
を含む、実施形態2~59のいずれかに記載の方法または医薬組成物。
【0080】
実施形態67:抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが配列番号140の重鎖および配列番号149の軽鎖を含む、実施形態66記載の方法または医薬組成物。
【0081】
実施形態68:抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが配列番号146の重鎖および配列番号151の軽鎖を含む、実施形態66記載の方法または医薬組成物。
【0082】
実施形態69:抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが配列番号141の重鎖および配列番号150の軽鎖を含む、実施形態66記載の方法または医薬組成物。
【0083】
実施形態70:抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが配列番号141の重鎖および配列番号163の軽鎖を含む、実施形態66記載の方法または医薬組成物。
【0084】
実施形態71:抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントが配列番号144の重鎖および配列番号150の軽鎖を含む、実施形態66記載の方法または医薬組成物。
【0085】
実施形態72:実施形態2~71のいずれかに記載の方法における使用のための、0.02mg~2250mgの抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【0086】
実施形態73:実施形態2~71のいずれかに記載の方法における使用のための医薬の製造における、0.02mg~2250mgの抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントと薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物の使用。
【0087】
前記技術の概要は非限定的なものであり、該技術の他の特徴および利点は以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1A図1Aは、用量漸増およびコホート拡大研究デザインを示す概略図である。参加者は、単独療法および併用療法の両方のアーム(arm;群)において、最大35サイクルの抗ILT3抗体の投与を受けうる。事前にMTD/MADに達していない限り、新鮮な腫瘍生検における目標飽和が達成されるまで、より高い用量レベルを試験する。詳細は表1を参照されたい。参加者は、単独療法において疾患進行が見られた場合、ならびにスポンサーとの協議およびスポンサーによる承認の後、アーム(Arm)2に移行しうる。併用療法にクロスオーバー(cross-over)する参加者は、単独療法において受けた抗ILT3抗体のサイクル数または用量に無関係に、最大35サイクルの併用療法を受けるのに適格である。
図1B図1Bは、抗PD-1抗体との併用療法を受けるようにクロスオーバーする抗ILT3抗体単独療法患者に関する研究デザインを示す概略図である。アーム1(抗ILT3 mAb単独療法)の参加者が疾患進行を経験した場合、彼らは併用療法(アーム2)へのクロスオーバーに適格となりうる。参加者は、アーム1のDLT期間を完了した場合にのみクロスオーバーすることが可能であり、クロスオーバーの際には、クロスオーバーの時点でアーム2(併用)におけるDLT評価期間を合格している最高用量の抗ILT3 mAbの投与を受けうる。クロスオーバーは随意的なものであり(すなわち、行っても行わなくてもよい)、研究者の裁量に委ねられ、スポンサーの承認を要する。疾患進行、毒性または35回の投与(24か月間の治療):併用治療にクロスオーバーする参加者は、単独療法において受けた抗ILT3 mAbのサイクル数または用量に無関係に、最大35サイクルの併用治療を受けるのに適格である。
図2図2は、ILT3抗体およびPD-1抗体で治療される特定の固形腫瘍適応症のコホートを示す概略図である。IAは、最初の15名の参加者(コホートB、CおよびD)または20名の参加者(コホートA)が2回目のベースライン後イメージング評価を受けた後に行われうる。8以下の応答(コホートA)、3以下の応答(コホートC)または1以下の応答(コホートBおよびD)が観察された場合、コホートへの登録は早期に中止されうる。mTPIデザインは、化学療法併用の安全性および忍容性を決定するために適用される。
【0089】
開示の詳細な説明
定義および略語
本明細書および添付の特許請求の範囲の全体において、以下の略語が適用される。
【0090】
1L: 第1選択
2L: 第2選択
AE: 有害事象
ATD: 加速漸増デザイン
AUC: 濃度-時間曲線下の面積
BICR: 盲検独立中央判定
C: サイクル
CDR: 相補性決定領域
CI: 信頼区間
CPS: 総合陽性スコア
D: 日
Discon: 中止
DL: 用量レベル
DLT: 用量制限毒性
DOR: 応答の持続期間
ECOG: Eastern Cooperative Oncology Group
FFPE: ホルマリン固定パラフィン包埋
FR: フレームワーク領域
FU: 追跡(フォローアップ)
GBM: 多形神経膠芽腫
IA: 中間分析
IgG: 免疫グロブリンG
IHC: 免疫組織化学または免疫組織化学的
IA: 中間分析
IV: 静脈
mAb: モノクローナル抗体
MAD: 最大投与量
MDSC: 骨髄系由来サプレッサー細胞
MPS: 修正比率スコア
MRI: 磁気共鳴イメージング
MTD: 最大耐用量
mTPI: 修正毒性発現確率区間デザイン
NSCLC: 非小細胞肺癌
NCICTCAE: National Cancer Institute-有害事象共通用語規準
ORR: 奏功率
OS: 全生存期間
PD :進行性疾患
PDAC :膵管腺癌
PD-1: プログラム死1(別名:プログラム細胞死1およびプログラム死受容体1)
PD-L1: プログラム細胞死1リガンド1
PD-L2: プログラム細胞死1リガンド2
Pembro: ペンブロリズマブ
PFS: 無増悪生存期間
PK: 薬物動態
Q2W: 2週間に1回の投与
Q3W: 3週間に1回の投与
Q6W: 6週間に1回の投与
Q9W: 9週間に1回の投与
Q12W: 12週間に1回の投与
SAE: 重篤有害事象
SC: 皮下
STS: 軟部組織肉腫
TNBC: トリプルネガティブ乳癌
VH: 免疫グロブリン重鎖可変領域
VL: 免疫グロブリン軽鎖可変領域
本発明がより容易に理解されうるように、特定の科学技術用語を以下に具体的に定義する。本明細書中の他の箇所で特に定義されていない限り、本明細書中で用いる全ての他の科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解される意味を有する。
【0091】
「または」なる語は、示されている可能性の一方を文脈が明らかに定める場合を除き、一方または両方の可能性を示す。幾つかの場合には、一方または両方の可能性を強調するために「および/または」を用いた。
【0092】
本明細書中で用いる単数形は、その対応する1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指す。例えば、「要素」は1つの要素または複数の要素を意味する。更に、「含む」なる語ならびに例えば「含み」、「含んで」および「含まれる」のような他の形態の使用は限定的なものではない。
【0093】
物質もしくは組成物の量(例えば、mg)または方法における工程を特徴付けるパラメーターの値などを修飾する場合の「約」なる語は、例えば、該物質または組成物の製造、特徴づけおよび/または使用に伴う典型的な測定、取り扱いおよびサンプリング操作により生じうる数量における変動;これらの操作における偶発的エラーにより生じうる数量における変動;該組成物を製造または使用するために或いは該操作を行うために使用される成分の製造、起源または純度における差異により生じうる数量における変動などを意味する。特定の実施形態においては、「約」は±10%の変動を意味する。
【0094】
本明細書中で用いる「含む」なる語は、「からなる」および「から本質的になる」実施形態を含みうる。本明細書中で用いる「含む」、「包含する」、「有する」、「有し」、「しうる」、「含有する」なる語およびそれらの変形は、挙げられている成分/工程の存在を要する、および他の成分/工程の存在を許容する非限定的な移行句、用語または単語であると意図される。しかし、そのような記載は、挙げられている成分「からなる」および「から本質的になる」組成物またはプロセスをも記載していると解釈されるべきであり、これは、いずれかの許容される担体または流体と共に、挙げられている成分または化合物のみの存在を許容し、他の成分または組成物を除外する。
【0095】
本明細書および特許請求の範囲の全体にわたって用いる「から本質的になる」およびその変形表現、例えば「から実質的になり」または「から実質的になっており」は、挙げられている要素または要素群の包含、および特定されている投与レジメン、方法または組成物の基本的または新規特性を実質的に変化させない、挙げられている要素と類似した又は異なる性質の他の要素の随意的包含(すなわち、包含されても包含されなくてもよいこと)を示す。非限定的な一例として、挙げられているアミノ酸配列から本質的になる抗PD-1抗原結合性フラグメントは、結合性化合物の特性に実質的な影響を及ぼさない、1以上のアミノ酸残基の置換を包含する1以上のアミノ酸をも含みうる。
【0096】
「投与」および「治療」(「処置」)は、動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、器官または生物学的流体に適用される場合、外因性の医薬、治療用物質、診断用物質または組成物と、動物、ヒト、対象、細胞、組織、器官または生物学的流体との接触を意味する。本明細書中で用いる、癌を「治療する」または癌の「治療」は、例えば癌細胞数の減少、腫瘍サイズの減少、末梢器官への癌細胞浸潤速度の低下または腫瘍転移もしくは腫瘍成長の速度の低下のような少なくとも1つの正の治療効果を得るために、抗ILT3抗原結合性タンパク質(例えば、抗体)または抗原結合性フラグメントを、単独でまたは抗PD-1抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントと組合せて、固形腫瘍[例えば、転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC)、再発性手術不能神経膠芽腫(GBM)、転移性膵管腺癌(mPDAC)、転移性軟部組織肉腫(mSTS)、転移性非扁平上皮非小細胞肺癌(mNSCLC)](これらに限定されるものではない)を含む癌を有する対象、または固形腫瘍疾患(例えば、mTNBC、GBM、mPDAC、mSTSまたはmNSCLC)を有すると診断された対象に投与することを意味する。「治療」は以下のものの1以上を含みうる:抗腫瘍免疫応答の誘導/増強、1以上の腫瘍マーカーの数値の減少、腫瘍または血液癌の成長の停止または遅延、あるいはILT-3に関連した疾患、または抗PD-1抗原結合性タンパク質もしくは抗原結合性フラグメントと組合せて投与される場合にはPD-1のそのリガンドPD-L1および/もしくはPD-L2への結合に関連した疾患(「PD-1関連疾患」)、例えば癌の進行の停止または遅延、ILT-3関連疾患またはPD-1関連疾患(抗PD-1抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントと組合せて投与される場合)の安定化、腫瘍細胞の成長または生存の抑制、1以上の癌性病変または腫瘍の排除またはそのサイズの縮小、1以上の腫瘍マーカーのレベルの低下、ILT-3関連疾患またはPD-1関連疾患(抗PD-1抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントと組合せて投与される場合)の臨床症状の改善または抑制、ILT-3関連疾患またはPD-1関連疾患(抗PD-1抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントと組合せて投与される場合)、例えば癌の臨床症状の重症度または持続期間の低減、類似した未治療患者の予想生存期間と比較した場合の患者の生存期間の延長、ならびに癌性状態または他のILT-3関連疾患もしくはPD-1関連疾患(抗PD-1抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントと組合せて投与される場合)の完全または部分的な寛解の誘導。
【0097】
癌における正の治療効果は幾つかの方法で測定されうる(W.A.Weber,J.Nucl.Med.50:1S-10S(2009)を参照されたい)。例えば、腫瘍成長抑制に関しては、NCI標準に従い、T/C≦42%が抗腫瘍活性の最小レベルである。T/C<10%は高い抗腫瘍活性レベルとみなされ、ここで、T/C(%)=治療された腫瘍体積中央値/対照の腫瘍体積中央値×100である。幾つかの実施形態においては、治療的有効量によって達成される治療は無進行生存(PFS)、無疾患生存(DFS)または全生存(OS)のいずれかである。PFSは「腫瘍進行までの時間」とも称され、癌が成長(増殖)しない、治療中または治療後の時間の長さを示し、完全な応答または部分的な応答を患者が経験した時間の長さ、および安定な疾患を患者が経験した時間の長さを含む。DFSは、患者が無疾患状態のままである、治療中または治療後の時間の長さを意味する。OSは、無処置または未治療の個体または患者と比較した場合の寿命の延長を意味する。本発明の方法、組成物および使用の実施形態は、全ての患者において正の治療効果を達成するのに有効でありうるとは限らないが、当技術分野で公知のいずれかの統計的検定、例えばスチューデントt検定、カイ2乗検定、マンおよびホイットニーによるU検定、クラスカル・ウォリス検定(H検定)、ヨンケーレ-テルプストラ検定およびウィルコクソン検定により判定された場合に、統計的に有意な数の対象において有効であるべきである。
【0098】
「有効量」、「治療的有効量」および「治療的有効用量」なる語は、単独でまたは追加的な治療用/予防用物質と組合せて細胞、組織または対象に投与された場合に、例えば本明細書に開示されている癌、mTNBC、GBM、mPDAC、mSTSまたはmNSCLCでありうる治療される疾患または状態に関連する疾患または状態を予防するのに有効である、あるいは該疾患または状態の症状の1以上における測定可能な改善を引き起こすのに有効である、本発明の抗ILT3抗原結合性タンパク質もしくは抗原結合性フラグメント(例えば、抗ILT3抗体)および/またはPD1抗原結合性タンパク質もしくは抗原結合性フラグメント(例えば、抗PD1抗体、例えば、ペンブロリズマブ)の量を意味する。有効量は更に、単独の場合または別の化合物と組合された場合に、治療される疾患または状態の症状の少なくとも部分的な予防または改善をもたらすのに十分な、抗ILT3抗原結合性タンパク質もしくは抗原結合性フラグメントまたは抗PD1抗原結合性タンパク質もしくは抗原結合性フラグメントの量を意味する。有効量は、単独で投与される個々の有効成分に適用される場合には、その成分単独に関するものである。治療的有効量は、組合せに適用される場合には、組合せて、連続的にまたは同時に投与されるいずれの場合にも、予防効果または治療効果をもたらす有効成分の組合された量を意味する。
【0099】
本明細書に開示されている抗原結合性タンパク質または抗原結合性タンパク質は1回投与されることが可能であり、あるいは、所定の期間にわたって種々の時間間隔で幾つかの用量が投与される投与レジメンに従い投与されることが可能である。例えば、用量は1日に1回、2回、3回または4回投与されうる。用量は、所望の治療効果が達成されるまで、または所望の治療効果を維持するために無期限に投与されうる。本明細書に開示されている化合物に関する適切な投与レジメンは、当業者によって決定されうる吸収、分布および半減期のようなその化合物の薬物動態学的特性に左右される。また、本明細書に開示されている化合物に関する適切な投与レジメン(そのような投与レジメンが適用される期間を含む)は、治療される疾患または状態、疾患または状態の重症度、治療される対象の年齢および身体状態、治療される対象の病歴、同時治療の性質、所望の治療効果、ならびに当業者の知識および専門的技術の範囲内の同様の要因に左右される。更に、適切な投与レジメンは、投与レジメンに対する個々の対象の応答を考慮して、または個々の対象が変化を必要とする時間の経過につれて、調整を要することが、そのような当業者に理解されるであろう。典型的な1日投与量は、選択される個々の投与経路に応じて変動しうる。
【0100】
「対象」(あるいは、本明細書においては「患者」または「個体」とも称される)は、本発明の方法および組成物で治療されうる哺乳動物(例えば、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ)を意味し、最も好ましくはヒトである。幾つかの実施形態においては、対象は成体対象である。他の実施形態においては、対象は小児対象である。
【0101】
「化学療法剤」は、癌の治療において有用な化合物である。化学療法剤のクラスには、限定的なものではないが以下のものが含まれる:アルキル化剤、代謝拮抗剤、キナーゼインヒビター、紡錘体毒植物アルカロイド、細胞毒性/抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼインヒビター、光増感剤、抗エストロゲンおよび選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、抗プロゲステロン、エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(ERD)、エストロゲン受容体アンタゴニスト、黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト、抗アンドロゲン、アロマターゼインヒビター、EGFRインヒビター、VEGFインヒビター、異常な細胞増殖または腫瘍成長に関連した遺伝子の発現を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチド。本発明の方法において有用な化学療法剤には、静細胞剤および/または細胞毒性剤が含まれる。「化学療法」は、化学療法剤を使用する癌治療を意味する。
【0102】
「生物学的製剤」または「生物療法剤」は、腫瘍の維持および/もしくは増殖を支持する又は抗腫瘍免疫応答を抑制する任意の生物学的経路におけるリガンド/受容体シグナル伝達を遮断する、例えば抗体または融合タンパク質のような生物学的分子を意味する。「生物学的療法」または「生物療法」は、タンパク質を使用する癌治療を意味する。
【0103】
「標的化物質」または「標的療法剤」は、患者の体内における腫瘍細胞の増殖または拡散に関連する特定のタンパク質タイプまたはタンパク質クラスに影響を及ぼす治療用物質(小分子またはタンパク質のいずれか)を意味する。
【0104】
「全身療法」は、化学療法、生物学的療法および標的治療を含む、患者の全身の細胞に影響を及ぼす、患者の血流に注射される治療用物質を使用する癌治療を意味する。
【0105】
「白金含有化学療法」(プラチンとしても公知である)は、白金の配位錯体である、癌治療に使用される化学療法剤の使用を意味する。白金含有化学療法剤は、DNAを架橋してDNAミスマッチ修復を無効化して一般にアポトーシスを招くアルキル化剤である。プラチンの例には、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンが含まれる。
【0106】
本明細書中で用いる「トリプルネガティブ乳癌」(TNBC)なる語は、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体およびHER2に関して陰性の試験結果を示す癌を意味する。
【0107】
本明細書中で用いる「神経膠芽腫」(GBM)なる語は、神経組織におけるグリア細胞の癌を意味する。中枢神経系腫瘍の世界保健機関(WHO)分類では、GBMはグレードIVのびまん性神経膠腫である。
【0108】
「カルノフスキー・パフォーマンス・ステータス」(KPS)なる語は患者の機能障害の分類を意味する。これは、種々の療法の有効性を比較するため、および個々の患者における予後を評価するために使用されうる。より低いカルノフスキー・スコアは、ほとんどの重篤な疾患に関する、より劣悪な生存率を示す(O’TooleおよびGolden,West J Med.1991 Oct;155(4):384-7を参照されたい)。カルノフスキー・ステータスおよびグレードを以下の表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
「膵管腺癌」(PDAC)なる語は膵臓の管内の外分泌細胞の増殖を意味する(Haeberle,LenaおよびIrene Esposito.“Pathology of pancreatic cancer.” Translational gastroenterology and hepatology vol.4 50.27 Jun.2019を参照されたい)。
【0111】
「軟部組織肉腫」(STS)なる語は、脂肪、筋肉、神経、線維組織、血管または深部皮膚組織のような軟部組織の悪性腫瘍を意味する。
【0112】
「非扁平上皮非小細胞肺癌」(非扁平上皮NSCLC)なる語は非扁平上皮の非小細胞肺癌を意味し、大細胞癌および腺癌を含む。非扁平上皮NSCLCは全NSCLCの約50%を占める。
【0113】
癌は、腫瘍スコア(Tおよび0~4の数字;該数字は、腫瘍のサイズおよび位置、ならびに腫瘍が近傍組織内へとどの程度成長しているかを示す)、節スコア(Nおよび0~3の数字;癌を伴うリンパ節の数を示す場合が多い)および転移スコア(Mおよび数字0または1;M1は、癌が転移していることを示す)ならびに個々の癌に特有の他の要素を組合せることによって、所与の患者に関して病期分類される。ステージ0は上皮内癌、すなわち、癌発生組織内に尚も位置し近傍組織へ広がっていない癌を意味する。この段階の癌は、通常は手術で腫瘍全体を除去することによって、十分に治癒可能であることが多い。ステージIは、通常、近傍組織内に深くは成長しておらずリンパ節または他の身体部分に広がっていない小さな癌または腫瘍である。ステージIIおよびステージIIIは、近傍組織内に更に深く成長しリンパ節に広がっているかもしれないが他の身体部分へは広がっていない、より大きな癌または腫瘍を示す。ステージIVは、癌が他の器官または身体部分に広がっていることを意味する。それは進行癌または転移癌とも称されうる。
【0114】
腫瘍細胞に対する免疫応答
制御性T細胞は、自己免疫疾患および癌に対する免疫応答を抑制することによって、免疫学的自己寛容の維持において重要な役割を果たす。したがって、1つの実施形態においては、免疫応答のアップモジュレーションは、癌における免疫応答を増強するのに有益であろう。したがって、本明細書に開示されている抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントは、腫瘍の増殖または転移を抑制するために、悪性腫瘍の治療に使用されうる。本明細書に開示されている抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントは全身に、または腫瘍部位に局所的に投与されうる。
【0115】
1つの実施形態においては、ヒトILT3機能の調節(モジュレーション)は腫瘍免疫の誘導に有用でありうる。抗ILT3抗原結合性タンパク質は、対象における腫瘍特異的寛容を克服するために、腫瘍細胞(例えば、肉腫、黒色腫、リンパ腫、白血病、神経芽腫、癌腫)を有する患者に投与されうる。
【0116】
本明細書中で用いる「腫瘍性疾患」なる語は、悪性腫瘍成長によって特徴付けられ、あるいは良性の過剰増殖性および過形成性の細胞によって特徴付けられる病態におけるものである。「新形成」なる語の一般的な医学的意味は、正常な成長制御に対する応答性の喪失として生じる「新たな細胞成長」、例えば新生物細胞成長を指す。
【0117】
本明細書中で用いる「過剰増殖」、「過形成」、「悪性」および「新生物(新形成)」なる語は互換的に用いられ、急速な増殖または新形成によって特徴付けられる異常な状態または様態にある細胞を意味する。これらの用語は、組織病理学的タイプまたは浸潤段階に無関係に、全てのタイプの過剰増殖性成長、過形成性成長、癌性成長または発癌プロセス、転移組織、または悪性形質転換した細胞、組織もしくは器官を含むと意図される。「過形成」は、異常に高い速度の成長を受けている細胞に関するものである。しかし、本明細書中で用いる新形成および過形成なる語は、それらの文脈が示すとおり、互換的に用いられることが可能であり、一般に、異常な速度の細胞増殖を受けている細胞に関するものである。新形成および過形成は、良性、前癌性または悪性のいずれかでありうる「腫瘍」を含む。
【0118】
「新形成」、「過形成」および「腫瘍」なる語は、しばしば、一般に「癌」と称され、これは、無制御で異常な細胞成長によって特徴付けられる100個を超える疾患の総称である。
【0119】
1つの実施形態においては、癌は、胃腸癌、胃癌、膵臓癌、黒色腫、乳癌、肺癌(例えば、NSCLC)、頭頸部癌、気管支癌、結腸直腸癌、結腸癌、直腸癌、前立腺癌、膵癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳または中枢神経系の癌(例えば、GBM)、末梢神経系癌、食道癌、子宮頸癌、子宮または子宮内膜癌、口腔または咽頭癌、肝臓癌、腎臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸または虫垂癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫および血液組織の癌からなる群から選択される。
【0120】
1つの実施形態においては、癌は、転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC)、多形神経膠芽腫(GBM)、転移性膵管腺癌(mPDAC)、転移性軟部組織肉腫(mSTS)および転移性非扁平上皮非小細胞肺癌(mNSCLC)からなる群から選択される。1つの実施形態においては、癌はトリプルネガティブ乳癌(mTNBC)である。1つの実施形態においては、癌は多形神経膠芽腫(GBM)である。1つの実施形態においては、癌は転移性膵管腺癌(mPDAC)である。1つの実施形態においては、癌は転移性軟部組織肉腫(mSTS)である。1つの実施形態においては、癌は転移性非扁平上皮非小細胞肺癌(mNSCLC)である。
【0121】
抗体
本明細書中で用いる「抗原結合性タンパク質」なる語は、抗原、例えばILT3またはPD-1タンパク質に結合するポリペプチドまたはタンパク質を意味する。抗原結合性タンパク質には、二価抗体四量体(2H+2L)、一価抗体(H+L)、抗原と別の標的とを標的化する二重特異性抗体、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fv領域およびScFvが含まれるが、これらに限定されるものではない。特に示されていない限り、本明細書における抗原結合性タンパク質はILT3またはPD-1に結合し、それらの活性を阻害する。
【0122】
本明細書中で用いる「抗体」なる語は、所望の生物活性または結合活性を示す、抗体の任意の形態を意味する。したがって、それは最も広い意味で用いられ、特に、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、ヒト化完全ヒト抗体およびキメラ抗体(これらに限定されるものではない)を含む。「親抗体」は、意図される使用のための抗体の修飾(例えば、ヒト治療用物質として使用される抗体のヒト化)の前の、抗原への免疫系の曝露により得られる抗体である。
【0123】
一般に、基本的な抗体構造単位は四量体を含む。各四量体は、ポリペプチド鎖の、2つの同一ペアを含み、各ペアは1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識をもたらす約100~110個またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。重鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を主にもたらす定常領域を定めうる。典型的には、ヒト軽鎖はカッパおよびラムダ軽鎖として分類される。更に、ヒト重鎖は、典型的には、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファまたはイプシロンとして分類され、それぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEとしての、抗体のイソタイプを定める。軽鎖および重鎖においては、可変領域と定常領域とは約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって連結されており、重鎖は約10個以上のアミノ酸の「D」領域をも含む。全般的には、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.編,2nd 15 ed.Raven Press,N.Y.(1989))を参照されたい。
【0124】
各軽鎖/重鎖ペアの可変領域が抗体結合部位を形成する。したがって、一般に、無傷抗体は2つの結合部位を有する。二官能性または二重特異性抗体の場合を除き、2つの結合部位は一般に同じである。
【0125】
典型的には、重鎖および軽鎖の両方の可変ドメインは、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)内に位置する、相補性決定領域(CDR)とも称される3つの超可変領域を含む。CDRは、通常、特定のエピトープへの結合が可能になるように、フレームワーク領域によって整列されている。一般に、軽鎖および重鎖の両方の可変ドメインは、N末端からC末端への方向に、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の帰属は、一般に、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Kabatら;National Institutes of Health,Bethesda,Md.;5th ed.;NIH Publ.No.91-3242(1991);Kabat(1978)Adv.Prot.Chem.32:1-75;Kabatら(1977)J.Biol.Chem.252:6609-6616;Chothiaら(1987)J Mol.Biol.196:901-917またはChothiaら(1989)Nature 342:878-883の定義に基づいている。
【0126】
「超可変領域」なる語は、抗原結合をもたらす、抗体のアミノ酸残基を意味する。超可変領域は「相補性決定領域」もしくは「CDR」(すなわち、軽鎖可変ドメインにおけるCDRL1、CDRL2およびCDRL3、ならびに重鎖可変ドメインにおけるCDRH1、CDRH2およびCDRH3)からのアミノ酸残基を含む。Kabatら,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(抗体のCDRの35個の領域を配列によって定義している)を参照されたい。また、ChothiaおよびLesk(1987)J.Mol.Biol.196:901-917(抗体のCDR領域を構造によって定義している)も参照されたい。「フレームワーク」または「FR」残基なる語は、CDR残基として本明細書中で定義されている超可変領域残基以外の可変ドメイン残基を意味する。
【0127】
特に示されていない限り、「抗体フラグメント」または「抗原結合性フラグメント」は抗体の抗原結合性フラグメントを意味し、すなわち、完全長抗体によって結合される抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体フラグメント、例えば、1以上のCDR領域を保持するフラグメントを意味する。抗体結合性フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvフラグメントが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0128】
特定の標的タンパク質に「特異的に結合する」抗体は、他のタンパク質と比較してその標的への優先的結合を示す抗体であるが、この特異性は絶対的な結合特異性を要しない。抗体がその意図される標的に「特異的」だとみなされるのは、その結合が、例えば偽陽性のような望ましくない結果をもたらすことなく、サンプル中の標的タンパク質の存在を決定するものである場合である。本発明において有用な抗体またはその結合性フラグメントは、非標的タンパク質に対するアフィニティより少なくとも2倍大きな、好ましくは少なくとも10倍大きな、より好ましくは少なくとも20倍大きな、最も好ましくは少なくとも100倍大きなアフィニティで標的タンパク質に結合するであろう。本明細書中で用いる抗体が、与えられたアミノ酸配列、例えば成熟ヒトPD-1またはヒトPD-L1分子のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合すると言えるのは、それが、その配列を含むポリペプチドには結合するが、その配列を欠くタンパク質には結合しない場合である。
【0129】
「キメラ抗体」は、所望の生物活性を示す限り、重鎖および/または軽鎖の一部分が、特定の種(例えば、ヒト)に由来する又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応配列と同一または相同である一方で、該鎖の残部が、別の種(例えば、マウス)に由来する又は別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応配列と同一または相同である抗体、ならびにそのような抗体のフラグメントを意味する。
【0130】
「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を意味する。ヒト抗体は、マウスにおいて、またはマウス細胞において、またはマウス細胞由来のハイブリドーマにおいて産生された場合には、マウス炭水化物鎖を含有しうる。同様に、「マウス抗体」または「ラット抗体」は、それぞれ、マウスまたはラット免疫グロブリン配列のみを含む抗体を意味する。
【0131】
「ヒト化抗体」は、非ヒト(例えば、マウス)抗体およびヒト抗体からの配列を含有する抗体の形態を意味する。そのような抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、超可変ループの全て又は実質的に全ては非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質的に全てはヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、所望により、免疫グロブリン定常領域(Fc)(典型的にはヒト免疫グロブリンのもの)の少なくとも一部分を含んでいてもよい。接頭辞「hum」、「hu」または「h」は、ヒト化抗体を親げっ歯類抗体から区別するために、必要に応じて、抗体クローンの名称に付加される。げっ歯類抗体のヒト化形態は、一般に、親げっ歯類抗体の同一CDR配列を含むが、ヒト化抗体のアフィニティーを増強し、安定性を増強し、または他の理由により、特定のアミノ酸置換が含まれうる。
【0132】
「CDR」は免疫グロブリン可変領域内の相補性決定領域を意味する。
【0133】
本明細書中で用いる「フレームワーク領域」または「FR」はCDR領域以外の免疫グロブリン可変領域を意味する。
【0134】
「単離された抗体」および「単離された抗体フラグメント」は精製状態を意味し、そのような文脈においては、示されている分子が、他の生物学的分子、例えば核酸、タンパク質、脂質、炭水化物、または細胞残渣および増殖培地のような他の物質を実質的に含有しないことを意味する。一般に、「単離(された)」なる語はそのような物質の完全な非存在を意味するとは意図されず、また、水、バッファーまたは塩の非存在を意味するとも意図されない。ただし、それらは、本明細書に記載されている結合性化合物の実験的または治療的使用を実質的に妨げる量で存在してはならない。
【0135】
本明細書中で用いる「モノクローナル抗体」または「mAb」または「Mab」は実質的に均一な抗体の集団を意味し、すなわち、該集団を構成する抗体分子は、僅かな量で存在しうる可能な自然突然変異以外は、アミノ酸配列において同一である。対照的に、通常の(ポリクローナル)抗体調製物は、典型的には、異なるエピトープにしばしば特異的である可変ドメイン(特にCDR)内に異なるアミノ酸配列を有する多数の異なる抗体を含む。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られるという該抗体の特性を示しており、いずれかの特定の方法による該抗体の製造を要すると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従い使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerら(1975)Nature 256,495によって最初に記載されたハイブリドーマ法により製造可能であり、あるいは組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)により製造可能である。また、「モノクローナル抗体」は、例えば、Clacksonら(1991)Nature 352:624-628およびMarksら(1991)J.Mol.Biol 222:581-597に記載されている技術を用いて、ファージ抗体ライブラリーから単離されうる。Presta(2005)J.Allergy Clin.Immunol.116:731も参照されたい。
【0136】
本明細書中で用いる「可変領域」または「V領域」は、異なる抗体間で配列において可変性であるIgG鎖のセグメントを意味する。それは軽鎖におけるKabat残基109および重鎖における113まで伸長する。
【0137】
重鎖可変領域配列または完全長重鎖配列の変異体は、フレームワーク領域(すなわち、CDR以外)に最大17個の保存的アミノ酸置換を有すること以外は、参照配列と同一であり、好ましくは10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満または5個未満の保存的アミノ酸置換をフレームワーク領域に有する。軽鎖可変領域配列または完全長軽鎖配列の変異体は、フレームワーク領域(すなわち、CDRの外側)に最大5個の保存的アミノ酸置換を有すること以外は、参照配列と同一であり、好ましくは4個未満、3個未満または2個未満の保存的アミノ酸置換をフレームワーク領域に有する。
【0138】
「保存的に修飾された変異体」または「保存的置換」は、タンパク質におけるアミノ酸が、類似特性(例えば、電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、バックボーンコンホメーションおよび剛性など)を有する他のアミノ酸で置換されることを指し、この場合、該変化は、しばしば、該タンパク質の生物活性または他の所望の特性(例えば、抗原アフィニティおよび/または特異性)を変化させることなく施されうる。一般に、ポリペプチドの非必須領域における単一アミノ酸置換は生物活性を実質的に変化させない、と当業者は認識している(例えば、Watsonら(1987)Molecular Biology of the Gene,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224(4th Ed.)を参照されたい)。また、構造的または機能的に類似したアミノ酸の置換は、生物活性を損なう可能性が低い。典型的な保存的置換を以下の表2に示す。
【0139】
【表2】
【0140】
VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存された領域が中に散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に更に細分されうる。各VHおよびVLは3つのCDR領域および4つのFR領域から構成され、それらはアミノ末端からカルボキシ末端の方向に以下の順序で位置している:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合をもたらしうる。各ドメインへのアミノ酸の帰属は、一般に、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Kabatら;National Institutes of Health,Bethesda,Md.;5th ed.;NIH Publ.No.91-3242(1991);Kabat(1978)Adv.Prot.Chem.32:1-75;Kabatら(1977)J.Biol.Chem.252:6609-6616;Chothiaら(1987)J Mol.Biol.196:901-917またはChothiaら(1989)Nature 342:878-883の定義に基づいている。
【0141】
抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合をもたらしうる。典型的には、重鎖定常ドメインにおけるアミノ酸の番号付けは番号118から始まり、これはEu番号付けスキームに準拠している。Eu番号付けスキームはヒトIgG1(Eu)のアミノ酸配列に基づいており、これは、Edelmanら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.63:78-85(1969)に記載されているIgG1のアミノ酸配列のアミノ酸118位から始まる定常ドメインを有し、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4定常ドメインに関してはBerangerら(同書)に示されている。
【0142】
重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用するCDRを含む結合ドメインを含有する。抗体可変ドメインのCDR配列を定義するためには、幾つかの方法が当技術分野で利用可能である(Dondelingerら,Frontiers in Immunol.9:Article 2278(2018)を参照されたい)。一般的な番号付けスキームには以下のものが含まれる。
・Kabat番号付けスキームは配列可変性に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照されたい)(抗体のCDR領域を配列によって定義している)。
・Chothia番号付けスキームは構造ループ領域の位置に基づいている(Chothia & Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987);Al-Lazikaniら,J.Mol.Biol.273:927-948(1997)を参照されたい)。
・AbM番号付けスキームは、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用される、それらの2つの間の折衷案である(Karuら,ILAR Journal 37:132-141(1995)を参照されたい)。
・Contact番号付けスキームは、利用可能な複合結晶構造の分析に基づいている(www.bioinf.org.uk:Prof.Andrew C.R.Martin’s Group;Abhinandan & Martin,Mol.Immunol.45:3832-3839(2008)を参照されたい)。
・IMGT(ImMunoGeneTics)番号付けスキームは、抗体軽鎖および重鎖からの可変ドメインならびに種々の種からのT細胞受容体鎖を含む免疫グロブリンスーパーファミリーのタンパク質配列の全てに関する標準化番号付け系であり、生殖系列V配列アラインメントに基づいて残基を1から128まで連続的にカウントする(Giudicelliら,Nucleic Acids Res.25:206-11(1997);Lefranc,Immunol Today 18:509(1997);Lefrancら,Dev Comp Immunol.27:55-77(2003)を参照されたい)。
【0143】
抗体が結合する抗原におけるエピトープを含むアミノ酸と特異的に相互作用するアミノ酸を含む抗体配列におけるCDRを定義するためには、www.bioinf.org.uk:Prof.Andrew C.R.Martin’s Groupにおいて開示されており以下の表3に再掲される以下の一般則が用いられうる。これらの一般的に一貫した特徴が見出されない稀な例が存在するが、Cys残基は、最も保存された特徴である。
【0144】
【表3】
【0145】
一般に、多くの場合、重鎖のCDR3領域が抗体特異性の主要決定因子である、と最新技術で認識されており、重鎖のCDR3のみに基づく特異的抗体作製の例が当技術分野で公知である(例えば、Beiboerら,J.Mol.Biol.296:833-849(2000);Klimkaら,British J.Cancer 83:252-260(2000);Raderら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:8910-8915(1998);Xuら,Immunity 13:37-45(2000))。
【0146】
診断用抗PD-L抗体
「診断用抗PD-Lモノクローナル抗体」は、特定の哺乳類細胞の表面上で発現される示されているPD-L(PD-L1またはPD-L2)の成熟形態に特異的に結合するmAbを意味する。成熟PD-Lは、リーダーペプチドとも称される分泌前リーダー配列を欠いている。「PD-L」および「成熟PD-L」なる語は本明細書において互換的に用いられ、特に示されていない限り、または文脈からそうでないことが容易に明らかでない限り、同じ分子を意味すると理解されるものとする。
【0147】
本明細書中で用いる診断用抗ヒトPD-L1 mAbまたは抗hPD-L1 mAbは、成熟ヒトPD-L1に特異的に結合するモノクローナル抗体を意味する。成熟ヒトPD-L1分子は以下の配列のアミノ酸19~290からなる。
【0148】
MRIFAVFIFMTYWHLLNAFTVTVPKDLYVVEYGSNMTIECKFPVEKQLDLAALIVYWEMEDKNIIQFVHGEEDLKVQHSSYRQRARLLKDQLSLGNAALQITDVKLQDAGVYRCMISYGGADYKRITVKVNAPYNKINQRILVVDPVTSEHELTCQAEGYPKAEVIWTSSDHQVLSGKTTTTNSKREEKLFNVTSTLRINTTTNEIFYCTFRRLDPEENHTAELVIPELPLAHPPNERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMDVKKCGIQDTNSKKQSDTHLEET(配列番号1)。
【0149】
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織切片におけるPD-L1発現の免疫組織化学的(IHC)検出用の診断用mAbとして有用な診断用抗ヒトPD-L1 mAbの具体例は抗体20C3および抗体22C3であり、これらはWO 2014/100079に記載されている。これらの抗体は、以下の表4に示されている軽鎖および重鎖の可変領域アミノ酸配列を含む。
【0150】
【表4】
【0151】
FFPE組織切片におけるPD-L1発現のIHC検出に有用であることが報告されているもう1つの抗ヒトPD-L1 mAb(Chen,B.J.ら,Clin Cancer Res 19:3462-3473(2013))は、Sino Biological,Inc.(Beijing,P.R.China;Catalog number 10084-R015)から公に入手可能であるウサギ抗ヒトPD-L1 mAbである。
【0152】
PD-L1およびPD-L2の組織発現
「PD-L1」または「PD-L2」発現は、特に示されていない限り、細胞表面上の示されているPD-Lタンパク質または細胞もしくは組織内の示されているPD-L mRNAの任意の検出可能なレベルの発現を意味する。PD-Lタンパク質発現は、腫瘍組織切片のIHCアッセイにおける診断用PD-L抗体またはフローサイトメトリーによって検出されうる。あるいは、腫瘍細胞によるPD-Lタンパク質発現は、所望のPD-L標的、例えばPD-L1またはPD-L2に特異的に結合する結合剤(例えば、抗体フラグメント、アフィボディなど)を使用するPETイメージングによって検出されうる。PD-L mRNA発現を検出し測定するための技術には、RT-PCRおよびリアルタイム定量的RT-PCRが含まれる。
【0153】
腫瘍組織切片のIHCアッセイにおいてPD-L1タンパク質発現を定量するための幾つかのアプローチが記載されている。例えば、Thompsonら,PNAS 101(49):17174-17179(2004);Thompsonら,Cancer Res.66:3381-3385(2006);Gadiotら,Cancer 117:2192-2201(2011);Taubeら,Sci Transl Med 4,127ra37(2012);およびToplianら,New Eng.J Med.366(26):2443-2454(2012)を参照されたい。
【0154】
1つのアプローチは、PD-L1発現に関する陽性または陰性の単純な二成分(バイナリー)エンドポイントを用いるものであり、陽性結果は、細胞表面膜染色の組織学的証拠を示す腫瘍細胞の割合に関して定められる。腫瘍組織切片がPD-L1発現に関して陽性とみなされるのは、全腫瘍細胞の少なくとも1%、好ましくは5%である場合である。
【0155】
もう1つのアプローチにおいては、腫瘍組織切片におけるPD-L1発現は、リンパ球を主に含む浸潤性免疫細胞および腫瘍細胞において定量される。膜染色を示す腫瘍細胞および浸潤性免疫細胞の割合は5%未満、5~9%、そしてついで10%の増量で100%までとして別々に定量される。腫瘍細胞の場合、PD-L1発現は、スコアが5%未満のスコアであれば陰性とみなされ、スコアが5%以上であれば陽性とみなされる。免疫浸潤物におけるPD-L1発現は、補正(adjusted)炎症スコア(AIS)と称される半定量的測定値として示され、これは、膜染色細胞の百分率に浸潤物の強度を掛け算することによって決定され、これは、無し(0)、軽度(1のスコア、希少リンパ球)、中等度(2のスコア、リンパ組織球凝集物による腫瘍の病巣浸潤)または重度(3のスコア、びまん性浸潤)として評価される。AISが5以上であれば、腫瘍組織切片は免疫浸潤物によるPD-L1発現に関して陽性とみなされる。
【0156】
診断用PD-L1抗体を使用するIHCによって染色された腫瘍からの組織切片は、スコア化法を用いて組織切片における腫瘍細胞および浸潤免疫細胞の両方におけるPD-L1発現を評価することによっても、PD-L1タンパク質発現に関してスコア化されうる。WO 2014/165422を参照されたい。1つのPD-L1スコア化法は、染色に関して組織切片における各腫瘍巣を検査し、修飾Hスコア(MHS)および修飾比率スコア(MPS)の一方または両方を組織切片に割り当てることを含む。MHSを割り当てるために、被検腫瘍巣の全てにおける生存腫瘍細胞および染色単核炎症細胞の全てにわたって、以下の4つの別々の比率を推定する:(a)染色を有さない細胞(強度=0)、(b)弱い染色(強度=1+)、(c)中等度の染色(強度=2+)、および(d)強い染色(強度=3+)。細胞は、弱い、中等度または強い染色比率に含まれるためには、少なくとも部分的な膜染色を有する必要がある。ついで、合計が100%である推定比率を、1×(弱い染色細胞のパーセント)+2×(中等度の染色細胞のパーセント)+3×(強い染色細胞のパーセント)の式に代入し、結果をMHSとして組織切片に割り当てる。被検腫瘍巣の全てにおける生存腫瘍細胞および染色単核炎症細胞の全てにわたって、任意の強度の少なくとも部分的な膜染色を有する細胞の比率を推定することにより、MPSを割り当て、得られた比率をMPSとして組織切片に割り当てる。幾つかの実施形態においては、MHSまたはMPSが陽性である場合、腫瘍はPD-L1発現に関して陽性として示される。
【0157】
腫瘍におけるPD-L1発現をスコア化/定量するためのもう1つの方法は「複合陽性スコア」または「CPS」であり、これは、患者の腫瘍サンプルからPD-L1発現スコアを決定するためのアルゴリズムを意味する。CPSは、抗PD-1抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの投与を含む治療方法(この場合、PD-L1を発現しない同じ患者集団と比較して、特定の患者集団において、より高い応答率とPD-L1の発現が関連している)を含む特定の治療レジメンでの治療のための患者を選択するのに有用である。CPSは、腫瘍を有する患者の腫瘍組織における生存可能なPD-L1陽性腫瘍細胞の数、生存可能なPD-L1陰性腫瘍細胞の数、および生存可能なPD-L1陽性単核炎症細胞(MIC)の数を決定すること、ならびに以下の式を用いてCPSを計算することによって決定される。
【0158】
(PD-L1陽性腫瘍細胞数)+(PD-L1陽性MIC数)×100%
(PD-L1陽性腫瘍細胞数)+(PD-L1陰性腫瘍細胞)
【0159】
PD-L1発現に関する更にもう1つのスコア化法は「TPS」または「腫瘍比率スコア」であり、これは、細胞膜上でPD-L1を発現する腫瘍細胞の比率である。TPSには、典型的には、PD-L1を任意の強度(弱、中等度または強)で発現する腫瘍細胞の比率が含まれ、これは、診断用抗ヒトPD-L1 mAb、例えば前記の抗体20C3および抗体22C3を使用する免疫組織化学的アッセイを用いて決定されうる。部分的な膜染色を伴う細胞を含め、膜染色が存在する場合、細胞はPD-L1を発現すると見なされる。
【0160】
PD-L1 mRNA発現のレベルは、定量的RT-PCRにおいて頻繁に使用される1以上の参照遺伝子(例えば、ユビキチンC)のmRNA発現レベルと比較されうる。
【0161】
幾つかの実施形態においては、悪性細胞による及び/又は腫瘍内の浸潤性免疫細胞によるPD-L1発現(タンパク質および/またはmRNA)のレベルは、適当な対照によるPD-L1発現(タンパク質および/またはmRNA)のレベルとの比較に基づいて、「過剰発現」または「上昇」していると判定される。例えば、対照PD-L1タンパク質またはmRNA発現レベルは、同じタイプの非悪性細胞において、または釣り合わされた正常組織からの切片において定量されたレベルでありうる。幾つかの好ましい実施形態においては、腫瘍サンプルにおけるPD-L1発現は、サンプル中のPD-L1タンパク質(および/またはPD-L1 mRNA)が対照の場合より少なくとも10%、20%または30%以上大きいならば、上昇していると判定される。
【0162】
「組織切片」は、組織サンプルの単一の部分または断片、例えば、正常組織または腫瘍のサンプルから切断された組織の薄片を意味する。
【0163】
「腫瘍」は、癌を有すると診断された又は癌を有する疑いのある対象に適用される場合には、任意のサイズの悪性または潜在的に悪性の新生物または組織塊を意味し、原発腫瘍または続発性新生物を含む。固形(充実性)腫瘍は、嚢胞または液体領域を通常は含有しない、組織の異常成長または塊を意味する。種々のタイプの固形腫瘍が、それらを形成する細胞のタイプにちなんで命名されている。固形腫瘍の例としては、肉腫、癌腫およびリンパ腫が挙げられる。白血病(血液の癌)は、一般に、固形腫瘍を形成しない(National Cancer Institute,Dictionary of Cancer Terms)。
【0164】
本明細書中で用いる「RECIST 1.1応答基準」は、応答が測定されている状況に基づいて適切なものとして標的病変または非標的病変に関してEisenhauerら,E.A.ら,Eur.J.Cancer 45:228-247(2009)に記載されている定義を意味する。
【0165】
本発明において有用な抗ILT3抗体および抗原結合性フラグメント
本発明の方法、組成物および使用のいずれかにおいて有用な「抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメント」には、ヒトILT3に特異的に結合するモノクローナル抗体(mAb)またはその抗原結合性フラグメントが含まれる。ILT3の別名または同義語には、LILRB4、LIR5およびCD85Kが含まれる。ヒト個体が治療される本発明の方法、組成物および使用のいずれにおいても、抗ILT3抗原結合性タンパク質、抗体または抗原結合性フラグメントはILT3に結合し、T細胞の活性化および増殖をMDSCが抑制するの能力を低下させる。抗ILT3抗体はヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であることが可能であり、ヒト定常領域を含みうる。幾つかの実施形態においては、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4定常領域からなる群から選択され、好ましい実施形態においては、ヒト定常領域はIgG1またはIgG4定常領域である。幾つかの実施形態においては、抗原結合性フラグメントは、Fab、Fab’-SH、F(ab’)2、scFvおよびFvフラグメントからなる群から選択される。
【0166】
「抗ILT3抗原結合性タンパク質」なる語は、以下のGenPeptアクセッション番号Q8NHJ6.3の細胞外ドメイン(アミノ酸22~259)に結合するタンパク質を意味する。
【0167】
QAGPLPKPTLWAEPGSVISWGNSVTIWCQGTLEAREYRLDKEESPAPWDRQNPLEPKNKARFSIPSMTEDYAGRYRCYYRSPVGWSQPSDPLELVMTGAYSKPTLSALPSPLVTSGKSVTLLCQSRSPMDTFLLIKERAAHPLLHLRSEHGAQQHQAEFPMSPVTSVHGGTYRCFSSHGFSHYLLSHPSDPLELIVSGSLEDPRPSPTRSVSTAAGPEDQPLMPTGSVPHSGLRRHWE(配列番号6)。
【0168】
本発明の方法および使用において有用な、ヒトILT3に結合するmAbの例は、WO2019/099597(これを参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されており、以下の表5に要約する。
【0169】
【表5】
【0170】
特定の実施形態においては、本発明の方法および使用は、以下の表6に示されている抗ILT3抗体を提供する。Vの101位のトリプトファン残基の置換を含む抗体を除き、本明細書に開示されている抗体はヒトILT3に結合する。
【0171】
【表6】
【0172】
本発明の特定の実施形態においては、抗ILT3抗原結合性タンパク質またはフラグメントは、ヒトもしくはヒト化抗ILT3抗体もしくは抗原結合性フラグメント、またはキメラ抗ILT3抗体もしくは抗原結合性フラグメントであって、本明細書または以下の表7に開示されている抗ILT3抗体分子のHC-CDR1、HC-CDR2、HC-CDR3、LC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含むものである。
【0173】
【表7】
【0174】
本発明において有用な抗PD-1抗原結合性タンパク質および抗原結合性フラグメント
本発明の方法、組成物および使用のいずれかにおいて有用な「抗PD-1抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメント」には、ヒトPD-1に特異的に結合するモノクローナル抗体(mAb)またはその抗原結合性フラグメントが含まれる。PD-1およびそのリガンドの別名または同義語には、PD-1に関するPDCD1、PD1、CD279およびSLEB2;PD-L1に関するPDCD1L1、PDL1、B7H1、B7-4、CD274およびB7-H;ならびにPD-L2に関するPDCD1L2、PDL2、B7-DC、BtdcおよびCD273が含まれる。ヒト個体が治療される本発明の方法、組成物および使用のいずれにおいても、PD-1抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントは、ヒトPD-1へのヒトPD-L1の結合を遮断する、またはヒトPD-1へのヒトPD-L1およびPD-L2の両方の結合を遮断するPD-1アンタゴニストである。ヒトPD-1アミノ酸配列はNCBIローカス(Locus)番号:NP 005009において見出されうる。ヒトPD-L1およびPD-L2アミノ酸配列は、それぞれ、NCBIローカス番号NP 054862およびNP 079515において見出されうる。抗PD-1抗体はヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であることが可能であり、ヒト定常領域を含みうる。幾つかの実施形態においては、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4定常領域からなる群から選択され、好ましい実施形態においては、ヒト定常領域はIgG1またはIgG4定常領域である。幾つかの実施形態においては、抗原結合性フラグメントは、Fab、Fab’-SH、F(ab’)、scFvおよびFvフラグメントからなる群から選択される。
【0175】
ヒトPD-1に結合し、本発明の方法および使用において有用であるmAbの例はUS 7,521,051、US 8,008,449およびUS 8,354,509に記載されている。本発明の方法、組成物および使用におけるPD-1アンタゴニストとして有用である具体的な抗ヒトPD-1 mAbには、ペンブロリズマブ(pembrolizumab)(以前はMK-3475、SCH900475およびランブロリズマブとして公知であった)、WHO Drug Information,Vol.27,No.2,pp.161-162(2013)に記載されている構造を有し図1に示されている重鎖および軽鎖アミノ酸配列を含むヒト化IgG4 mAb、ならびにWO2008/156712および表8に記載されているヒト化抗体h409A11、h409A16およびh409A17が含まれる。
【0176】
本発明の方法、組成物、キットおよび使用の幾つかの実施形態においては、抗PD-1抗原結合性タンパク質、抗体または抗原結合性フラグメントは、(a)配列番号224、225および226に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖CDR、ならびに配列番号227、228および229に示されているアミノ酸配列を含む重鎖CDR、または、(b)配列番号230、231および232に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖CDR、ならびに配列番号233、234および234に示されているアミノ酸配列を含む重鎖CDRを含む。幾つかの実施形態においては、抗PD-1抗原結合性タンパク質、抗体または抗原結合性フラグメントはヒト抗体である。他の実施形態においては、抗PD-1抗原結合性タンパク質、抗体または抗原結合性フラグメントはヒト化抗体である。他の実施形態においては、抗PD-1抗原結合性タンパク質、抗体または抗原結合性フラグメントはキメラ抗体である。特定の実施形態においては、抗PD-1抗原結合性タンパク質、抗体または抗原結合性フラグメントはモノクローナル抗体である。
【0177】
本発明の方法、組成物および使用の他の実施形態においては、抗PD-1抗原結合性タンパク質、抗体または抗原結合性フラグメントはヒトPD-1に特異的に結合し、(a)配列番号236に示されているアミノ酸配列またはその変異体を含む重鎖可変領域、および(b)配列番号237またはその変異体、配列番号238またはその変異体、および配列番号239またはその変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0178】
本発明の方法、組成物および使用のもう1つの実施形態においては、抗PD-1抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントは、ヒトPD-1に特異的に結合するモノクローナル抗体であり、(a)配列番号240に示されているアミノ酸配列またはその変異体を含むまたはそれからなる重鎖、および(b)配列番号241もしくはその変異体、配列番号242もしくはその変異体、または配列番号243もしくはその変異体のアミノ酸配列を含むまたはそれからなる軽鎖を含む。
【0179】
本発明の方法、組成物および使用の更にもう1つの実施形態においては、抗PD-1抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントは、ヒトPD-1に特異的に結合するモノクローナル抗体であり、(a)配列番号240に示されているアミノ酸配列を含むまたはそれからなる軽鎖、および(b)配列番号241に示されているアミノ酸配列を含むまたはそれからなる軽鎖を含む。
【0180】
本発明の方法、組成物、キットおよび使用の幾つかの実施形態においては、抗PD-1抗原結合性タンパク質、抗体または抗原結合性フラグメントは、配列番号244、245および246に示されているアミノ酸配列を含む軽鎖CDR、ならびに配列番号249、250および251に示されているアミノ酸配列を含む重鎖CDRを含む。幾つかの実施形態においては、抗PD-1抗原結合性タンパク質、抗体または抗原結合性フラグメントはヒト抗体である。他の実施形態においては、抗PD-1抗原結合性タンパク質、抗体または抗原結合性フラグメントはヒト化抗体である。他の実施形態においては、抗PD-1抗原結合性タンパク質、抗体または抗原結合性フラグメントはキメラ抗体である。特定の実施形態においては、抗PD-1抗原結合性タンパク質、抗体または抗原結合性フラグメントはモノクローナル抗体である。
【0181】
本発明の方法、組成物および使用の他の実施形態においては、抗PD-1抗原結合性タンパク質、抗体または抗原結合性フラグメントはヒトPD-1に特異的に結合し、(a)配列番号252に示されているアミノ酸配列またはその変異体を含む重鎖可変領域、および(b)配列番号247またはその変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0182】
本発明の方法、組成物および使用のもう1つの実施形態においては、抗PD-1抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントは、ヒトPD-1に特異的に結合するモノクローナル抗体であり、(a)配列番号253に示されているアミノ酸配列またはその変異体を含むまたはそれからなる重鎖、および(b)配列番号248に示されているアミノ酸配列を含むまたはそれからなる軽鎖を含む。
【0183】
以下の表8および表9は、本発明の方法、組成物、キットおよび使用における使用のための例示的な抗PD-1 mAbのアミノ酸配列の一覧を示す。
【0184】
【表8】
【0185】
【表9】
【0186】
本明細書における抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントは、単独で、または他の療法と組合せて使用されうる。例えば、併用療法(組合せ療法)は、1以上の追加的な治療用物質、例えば1以上の抗癌剤、細胞毒性または細胞増殖抑制物質、ホルモン療法、ワクチンおよび/または他の免疫療法と共処方(共製剤化)および/または共投与される抗ILT3抗原結合性タンパク質、抗体または抗原結合性フラグメントを含む組成物を含みうる。他の実施形態においては、抗ILT3抗原結合性タンパク質、抗体または抗原結合性フラグメントは、他の治療法、例えば外科手術、放射線、凍結手術および/または温熱療法と組合せて投与される。そのような併用療法は、投与される治療用物質の、より少ない投与量を有利に利用可能であり、したがって、それらの種々の単独療法に関連した生じうる毒性または合併症を回避する。
【0187】
「と組合せて」は、療法または治療用物質が同時に投与されなければならないこと、および/または一緒に運搬(送達)されるために製剤化(処方)されなければならないことを意味するものではないが、これらの運搬方法は、本明細書に記載されている範囲に含まれる。抗ILT3抗原結合性タンパク質、抗体または抗原結合性フラグメントは、1以上の他の追加的な療法または治療用物質と同時に、またはその前に、またはその後で投与されうる。抗ILT3抗原結合性タンパク質、抗体または抗原結合性フラグメントおよびその他の物質または治療プロトコルは任意の順序で投与されうる。一般に、各物質は、その物質に関して決定された用量および/または時間スケジュールで投与される。更に、この組合せで使用される追加的な治療用物質は単一組成物において一緒に投与されうる、あるいは異なる組成物において別々に投与されうると理解されるであろう。一般に、組合せて使用される追加的な治療用物質は、それらが個別に使用されるレベルを超えないレベルで使用されると予想される。幾つかの実施形態においては、組合せて使用されるレベルは、個別に使用されるレベルよりも低くなる。
【0188】
特定の実施形態においては、本明細書に記載されている抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントは、プログラム死受容体1(PD-1)またはそのリガンドPD-L1およびPD-L2の、1以上のチェックポイントインヒビターまたはアンタゴニストと組合せて投与される。該インヒビターまたはアンタゴニストは抗原結合性タンパク質、抗体、抗原結合性フラグメント、イムノアドヘシン、融合タンパク質またはオリゴペプチドでありうる。幾つかの実施形態においては、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(OPDIVO(登録商標),Bristol Myers Squibb,New York,New York)、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標),Merck Sharp & Dohme Corp,Kenilworth,NJ USA)、セチプリマブ(Regeneron,Tarrytown,NY)またはピジリズマブ(CT-011)から選択される。幾つかの実施形態においては、PD-1インヒビターは、イムノアドヘシン[例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合したPD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合性部分を含むイムノアドヘシン]である。幾つかの実施形態においては、PD-1インヒビターはAMP-224である。幾つかの実施形態においては、PD-L1インヒビターは抗PD-L1抗体、例えばデュルバルマブ(IMFINZI(登録商標),Astrazeneca,Wilmingon,DE)、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標),Roche,Zurich,CH)またはアベルマブ(BAVENCIO(登録商標),EMD Serono,Billerica,MA)である。幾つかの実施形態においては、抗PD-L1結合性アンタゴニストは、YW243.55.S70、MPDL3280A、MEDI-4736、MSB-0010718CまたはMDX-1105から選択される。
【0189】
MDX-1105はBMS-936559としても公知であり、WO2007/005874に記載されている抗PD-L1抗体である。抗体YW243.55.S70は、WO 2010/077634に記載されている抗PD-L1(それぞれ、配列番号20および21に示されている重鎖および軽鎖可変領域配列)である。
【0190】
ニボルマブはOPDIVO(登録商標)、MDX-1106-04、ONO-4538またはBMS-936558としても公知であり、WO2006/121168および米国特許第8,008,449号に記載されている完全ヒトIgG4抗PD-1抗体である。
【0191】
ペンブロリズマブはKEYTRUDA(登録商標)、ラムブロリズマブ、MK-3475またはSCH-900475としても公知であり、米国特許第8,354,509号およびWO2009/114335に記載されており、および、例えば、Hamidら,New England J.Med.369(2):134-144(2013)に開示されているヒト化抗PD-1抗体である。ペンブロリズマブの重鎖および軽鎖は、それぞれ配列番号225および226に示されているアミノ酸配列により示される。
【0192】
ピジリズマブはCT-011(Cure Tech)としても公知であり、PD-1に結合するヒト化IgG1モノクローナル抗体である。ピジリズマブおよび他のヒト化抗PD-1モノクローナル抗体はWO2009/101611に開示されている。他の抗PD-1抗体には、とりわけ、AMP514(Amplimmune)が含まれ、例えば、米国特許第8,609,089号、米国特許出願公開番号2010028330および米国特許出願公開番号20120114649に開示されている抗PD-1抗体が含まれる。
【0193】
AMP-514(MEDI0680;MedImmune LLC,Gaithersburg,MD)は、PD-1に結合するモノクローナル抗体である。
【0194】
PDR001(スパルタリズマブ;Novartis)は、PD-1に結合するモノクローナル抗体であり、米国特許第9,683,048号に開示されている。
【0195】
BGB-A317(ティスレリズマブ;Beigene)は、PD-1に結合するモノクローナル抗体であり、米国第8,735,553号に開示されている。
【0196】
MDPL3280A(Genentech/Roche)は、PD-L1に結合するヒトFc最適化IgG1モノクローナル抗体である。MDPL3280A、およびPD-L1に対する他のヒトモノクローナル抗体は、米国特許第7,943,743号および米国特許出願公開番号20120039906に開示されている。
【0197】
MGA012(MacroGenics,Rockville,MD)は、PD-1に結合するモノクローナル抗体である。
【0198】
AMP-224(B7-DCIg;Amplimmune;例えばWO2010/027827およびWO2011/066342に開示されている)は、PD-1とB7-H1との間の相互作用を遮断するPD-L2 Fc融合可溶性受容体である。
【0199】
他の抗PD-L1結合性物質には、YW243.55.S70(重鎖および軽鎖可変領域はWO2010/077634における配列番号20および21に示されている)およびMDX-1105(BMS-936559とも称される)が含まれる。それ及び他の抗PD-L1結合性物質はWO2007/005874に開示されている。
【0200】
用量および投与
本明細書においては、抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメント(例えば、表8におけるmAbのいずれか)、または抗ILT3抗原結合性タンパク質もしくは抗原結合性フラグメント(例えば、表8におけるmAbのいずれか)と抗PD-1抗原結合性タンパク質もしくは抗原結合性フラグメント(例えば、ペンブロリズマブ)との組合せを使用して、癌、および特定の実施形態においてはmTNBC、GBM、mPDAC、mSTSまたはmNSCLCを治療するための投与レジメンおよび投与経路を提供する。
【0201】
本明細書に開示されている抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントおよび抗PD1抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントは、連続注入によって、または例えば、毎日、週に1~7回、毎週、隔週、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、毎月、隔月、四半期ごと、半年ごと、毎年などの間隔で同時または連続的に投与されうる。投与は、例えば、静脈内、皮下、局所的、経口的、鼻腔内、直腸、筋肉内、脳内、脊髄内に、または吸入により行われうる。特定の実施形態においては、投与は静脈内に行われる。特定の実施形態においては、投与は皮下に行われる。治療間隔に関する総用量は、一般的には少なくとも0.05μg/kg体重、より一般的には少なくとも0.2μg/kg、0.5μg/kg、1μg/kg、10μg/kg、100μg/kg、0.25mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/ml、10mg/kg、25mg/kg、50mg/kgまたはそれ以上である。投与はまた、対象の血清中の抗原結合性タンパク質(例えば、抗ILT3抗体または抗PD1抗体)または抗原結合性フラグメントの所定の目標濃度、例えば0.1、0.3、1、3、0.1、0.3、1、3、10、30、100、300μg/mLまたはそれ以上が達成されるように行われうる。幾つかの実施形態においては、抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントは、毎週、隔週、週3回、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、毎月、隔月または四半期ごとに、10、20、50、80、100、200、300、400、500、1000または2500mg/対象で、静脈内に投与される。幾つかの実施形態においては、抗PD-1抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントは、毎週、隔週、週3回、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、毎月、隔月または四半期ごとに、10、20、50、80、100、200、300、400、500、1000または2500mg/対象雄で、皮下または静脈内に投与される。
【0202】
幾つかの実施形態においては、抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントは、毎週、隔週、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、毎月、隔月または四半期ごとに、10、20、50、80、100、200、500、1000または2500mg/対象で、静脈内に投与される。幾つかの特定の方法では、抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの用量は約0.01mg/kg~約50mg/kg、約0.05mg/kg~約25mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、約0.2mg/kg~約9mg/kg、約0.3mg/kg~約8mg/kg、約0.4mg/kg~約7mg/kg、約0.5mg/kg~約6mg/kg、約0.6mg/kg~約5mg/kg、約0.7mg/kg~約4mg/kg、約0.8mg/kg~約3mg/kg、約0.9mg/kg~約2mg/kg、約1.0mg/kg~約1.5mg/kg、約1.0mg/kg~約2.0mg/kg、約1.0mg/kg~約3.0mg/kg、約2.0mg/kg~約4.0mg/kgである。幾つかの特定の方法においては、抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの用量は約0.2mg~約2mgでありうる。幾つかの特定の方法においては、抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの用量は0.2mg~2mgでありうる。幾つかの特定の方法においては、抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの用量は約0.2mg~約2250mgでありうる。幾つかの特定の方法においては、抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの用量は0.2mg~2250mgでありうる。幾つかの特定の方法においては、抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの用量は約7.5mg~約2250mgでありうる。幾つかの特定の方法においては、抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの用量は7.5mg~2250mgでありうる。幾つかの特定の方法においては、抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの用量は約0.2mg、約0.7mgまたは約2mgでありうる。幾つかの特定の方法においては、抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの用量は約7.5mg、約25mg、約75mg、約225mg、約750mgまたは約2250mgでありうる。幾つかの特定の方法においては、抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの用量は0.2mg、0.7mgまたは2mgでありうる。幾つかの特定の方法においては、抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの用量は7.5mg、25mg、75mg、225mg、750mgまたは2250mgでありうる。幾つかの特定の方法においては、抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの用量は約750mgでありうる。幾つかの特定の方法においては、抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの用量は750mgでありうる。
【0203】
幾つかの実施形態においては、抗PD-1抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントは、抗ILT3抗原結合性タンパク質と同時に、または連続的に、毎週、隔週、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、毎月、隔月または四半期ごとに、10、20、50、80、100、200、500、1000または2500mg/対象で、静脈内に投与される。幾つかの特定の方法においては、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントの用量は約0.01mg/kg~約50mg/kg、約0.05mg/kg~約25mg/kg、0.1mg/kg~約10mg/kg、約0.2mg/kg~約9mg/kg、約0.3mg/kg~約8mg/kg、約0.4mg/kg~約7mg/kg、約0.5mg/kg~約6mg/kg、約0.6mg/kg~約5mg/kg、約0.7mg/kg~約4mg/kg、約0.8mg/kg~約3mg/kg、約0.9mg/kg~約2mg/kg、約1.0mg/kg~約1.5mg/kg、約1.0mg/kg~約2.0mg/kg、約1.0mg/kg~約3.0mg/kg、約2.0mg/kg~約4.0mg/kgである。幾つかの特定の方法においては、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントの用量は約10mg~約500mg、約25mg~約500mg、約50mg~約500mg、約100mg~約500mg、約200mg~約500mg、約150mg~約250mg、約175mg~約250mg、約200mg~約250mg、約150mg~約240mg、約175mg~約240mg、約200mg~約240mgである。幾つかの実施形態においては、抗PD-1抗原結合性タンパク質またはその抗原結合性フラグメントの用量は約1mg、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約30mg、約40mg、約45mg、約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、約150mg、約175mg、約200mg、約225mg、約240mg、約250mg、約300mg、約400mgまたは約500mgである。幾つかの実施形態においては、抗PD-1モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントの用量は50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、240mg、250mg、300mg、400mgまたは500mgである。
【0204】
本発明の方法および用途
本発明は、抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの有効量を対象に投与することを含む、対象における癌の治療方法を提供する。他の実施形態においては、本発明は、対象における癌を治療するのに十分な、本明細書において開示されているまたは特許請求されている抗PD-1または抗PD-L1および/もしくはPD-L2抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントならびに抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの有効量を対象に投与することを含む、対象における癌の治療方法を提供する。
【0205】
本発明は、抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントの有効量を対象に投与することを含む、対象における癌の治療方法を提供する。本発明は更に、本明細書に開示されている抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントを、PD-1、PD-L1および/またはPD-L2のインヒビターまたはアンタゴニストの1以上と組合せて同時または連続的に対象に投与することを含む、対象における癌の治療方法を提供する。1つの実施形態においては、PD-1のアンタゴニストは、ヒトPD-1に結合しヒトPD-L1およびPD-L2へのPD1の結合を遮断する抗体または抗原結合性フラグメントである。1つの実施形態においては、PD-L1またはPD-L2のアンタゴニストは、ヒトPD-L1またはPD-L2に結合しPD1へのヒトPD-L1またはPD-L2の結合を遮断する抗体または抗原結合性フラグメントである。
【0206】
もう1つの実施形態においては、抗PD1アンタゴニストは抗PD-1抗体である。1つの実施形態においては、抗PD-1抗体はニボルマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、ピジリズマブ、AMP-514、PD001、BGB-A317、MDPL3280AまたはMGA012であり、PD-L1インヒビターはデュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、YW243.55.S70、MPDL3280A、MEDI-4736、MSB-0010718CまたはMDX-1105である。
【0207】
もう1つの実施形態においては、本明細書に開示されている治療方法において治療される癌は膵臓癌、黒色腫、乳癌、肺癌、頭頸部癌、気管支癌、結腸直腸癌、前立腺癌、膵癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳または中枢神経系癌、末梢神経系癌、食道癌、子宮頸癌、子宮または子宮内膜癌、口腔または咽頭癌、肝臓癌、腎臓癌、精巣癌、胆道癌、小腸または虫垂癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉腫または軟骨肉腫である。
【0208】
幾つかの実施形態においては、癌は転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC)、再発性手術不能神経膠芽腫(GBM)、転移性膵管腺癌(mPDAC)、転移性軟部組織肉腫(mSTS)または転移性非扁平上皮非小細胞肺癌(mNSCLC)である。
【0209】
一般的方法
分子生物学における標準的な方法は、Sambrook,FritschおよびManiatis(1982 & 1989 2nd Edition,2001 3rd Edition)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;SambrookおよびRussell(2001)Molecular Cloning,3rd ed,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Wu(1993)Recombinant DNA,Vol.217,Academic Press,San Diego,CA.に記載されている。標準的な方法は、Ausbelら(2001)Current Protocols in Molecular Biology,VoIs.1-4,John Wiley and Sons,Inc.New York,NYにも記載されており、これは、細菌細胞におけるクローニングおよびDNA突然変異誘発(Vol.1)、哺乳類細胞および酵母におけるクローニング(Vol.2)、複合糖質およびタンパク質発現(Vol.3)、ならびにバイオインフォマティクス(Vol.4)を記載している。
【0210】
免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離および結晶化を含むタンパク質精製のための方法が記載されている(Coliganら(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York)。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の製造、タンパク質のグリコシル化が記載されている(例えば、Coliganら(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.2,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Ausubelら(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vol.3,John Wiley and Sons,Inc.,NY,NY,pp.16.0.5-16.22.17;Sigma-Aldrich,Co.(2001)Products for Life Science Research,St.Louis,MO;pp.45-89;Amersham Pharmacia Biotech(2001)BioDirectory,Piscataway,N.J.,pp.384-391を参照されたい)。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の製造、精製およびフラグメント化が記載されている(Coliganら(2001)Current Protcols in Immunology,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York;HarlowおよびLane(1999)Using Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;HarlowおよびLane,前掲)。リガンド/受容体相互作用を特徴付けるための標準的な技術が利用可能である(例えば、Coliganら(2001)Current Protcols in Immunology,Vol.4,John Wiley,Inc.,New Yorkを参照されたい)。
【0211】
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体およびヒト化抗体は製造可能である(例えば、SheperdおよびDean(編)(2000)Monoclonal Antibodies,Oxford Univ.Press,New York,NY;KontermannおよびDubel(編)(2001)Antibody Engineering,Springer-Verlag,New York;HarlowおよびLane(1988)Antibodies A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,pp.139-243;Carpenterら(2000)J.Immunol.165:6205;Heら(1998)J.Immunol.160:1029;Tangら(1999)J.Biol.Chem.274:27371-27378;Bacaら(1997)J.Biol.Chem.272:10678-10684;Chothiaら(1989)Nature 342:877-883;FooteおよびWinter(1992)J.Mol.Biol.224:487-499;米国特許第6,329,511号を参照されたい)。
【0212】
ヒト化に代わる手段は、ファージ上で提示されるヒト抗体ライブラリー、またはトランスジェニックマウスにおけるヒト抗体ライブラリーを使用することである(Vaughanら(1996)Nature Biotechnol.14:309-314;Barbas(1995)Nature Medicine 1:837-839;Mendezら(1997)Nature Genetics 15:146-156;HoogenboomおよびChames(2000)Immunol.Today 21:371-377;Barbasら(2001)Phage Display:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York;Kayら(1996)Phage Display of Peptides and Proteins:A Laboratory Manual,Academic Press,San Diego,CA;de Bruinら(1999)Nature Biotechnol.17:397-399)。
【0213】
抗原の精製は抗体の製造に必要ではない。関心のある抗原を含有する細胞で動物を免疫化することが可能である。ついで免疫化動物から脾細胞を単離し、脾細胞を骨髄腫細胞系と融合させてハイブリドーマを得ることが可能である(例えば、Meyaardら(1997)Immunity 7:283-290;Wrightら(2000)Immunity 13:233-242;Prestonら,前掲;Kaithamanaら(1999)J.Immunol.163:5157-5164を参照されたい)。
【0214】
抗体または抗原結合性フラグメントは例えば小薬物分子、酵素、リポソーム、ポリエチレングリコール(PEG)にコンジュゲート化されうる。抗体は治療、診断、キットまたは他の目的に有用であり、例えば色素、放射性同位体、酵素または金属、例えばコロイド金に結合した抗体を包含する(例えば、Le Doussalら(1991)J.Immunol.146:169-175;Gibelliniら(1998)J.Immunol.160:3891-3898;HsingおよびBishop(1999)J.Immunol.162:2804-2811;Evertsら(2002)J.Immunol.168:883-889を参照されたい)。
【0215】
免疫系の標準的な組織学的方法が記載されている(例えば、Muller-Harmelink(編)(1986)Human Thymus:Histopathology and Pathology,Springer Verlag,New York,NY;Hiattら(2000)Color Atlas of Histology,Lippincott,Williams,and Wilkins,Phila,PA;Louisら(2002)Basic Histology:Text and Atlas,McGraw-Hill,New York,NYを参照されたい)。例えば抗原フラグメント、リーダー配列、タンパク質フォールディング、機能的ドメイン、グリコシル化部位および配列アライメントを決定するためのソフトウェアパッケージおよびデータベースが利用可能である(例えば、GenBank,Vector NTI Suite(Informax,Inc,Bethesda,MD);GCG Wisconsin Package(Accelrys,Inc.,San Diego,CA);DECYPHER(TimeLogic Corp.,Crystal Bay,Nevada);Menneら(2000)Bioinformatics 16:741-742;Menneら(2000)Bioinformatics Applications Note 16:741-742;Wrenら(2002)Comput.Methods Programs Biomed.68:177-181;von Heijne(1983)Eur.J.Biochem.133:17-21;von Heijne(1986)Nucleic Acids Res.14:4683-4690を参照されたい)。
【0216】
実施例
代表的な抗ILT3抗体としてmAb番号46を使用する以下の実施例は例示的であると意図され、更に限定するものとして解釈されるべきではない。本出願の全体にわたって引用されている全ての参考文献、特許および公開特許出願ならびに図面の内容を参照により本明細書に明示的に組み入れることとする。
【0217】
実施例1:抗ILT3抗体の安全性、忍容性、薬物動態および薬力学を評価するための用量漸増およびコホート拡大研究
アーム1:抗ILT3抗体単独療法用量漸増・加速漸増デザイン(ATD)
用量漸増は、潜在的に治療量以下の抗ILT3抗体で治療される参加者の数を最小にするために、ATDを用いて抗ILT3抗体単独療法を評価することによって開始される。ATDにおいては、コホート当たり1~3名の参加者を、連続レベル間で最大0.5 log単位用量増加を伴う抗ILT3抗体の漸増DLで治療する(図1A図1Bを参照されたい)。
【0218】
ATDからmTPI(修正毒性発現確率区間)デザインへの移行は以下の事象の一方または両方の発生がきっかけとなって行われる:1)DLT期間(サイクル1)中の任意のDLにおける薬物に関連している、または関連している可能性が高い、または関連している可能性があると研究者によって評価された、グレード2以上の毒性;あるいは、2)ATDにおける最高DLコホートがDLT評価期間を完了しており、そのDLにおける抗ILT3抗体がこのコホートにおいて安全で高忍容性だと判断されており、そしてデータが入手可能な場合に、末梢血単核球におけるILT3受容体占有率75%以上のレベルが任意のATD DLにおいて実証されている。
【0219】
ATDにおける参加者には参加者内(intra-participant)の用量漸増が許容される。参加者は複数回の用量漸増を受けうる。これが生じるためには、参加者は、グレード2以上の治験薬関連毒性を伴うことなく、抗ILT3抗体の少なくとも1サイクル(すなわち、そのDLに関するDLT期間)を完了している必要があり、少なくとも1名の参加者において、より高いDLの安全性が既に評価されている必要がある(すなわち、より高いDLにおける参加者はDLT期間を完了している必要がある)。複数回の用量漸増を受ける参加者の場合、DLTへの彼らの寄与は、彼らが登録された最初のコホートにおいて1回だけカウントされ、生検サンプルの採集は繰り返されない。
【0220】
修正毒性発現確率区間デザイン(mTPI)
ATDフェーズの完了後、30%のDLT率を目標としてMTDおよび/またはMADを特定するために、mTPIデザイン(Ji Y,Wang S-J.Modified toxicity probability interval design:a safer and more reliable method than the 3+3 design for practical phase I trials.J Clin Oncol 2013;31:1-12)を用いて、抗ILT3抗体単独療法の用量漸増を継続する。mTPIのための抗ILT3抗体の開始用量はATDからの入手可能な安全性、PKおよび薬力学の結果に基づく。抗ILT3抗体のより低いおよび/より高い用量ならびに追加的コホートが、各DLにおいて入手可能な安全性、PKおよび薬力学のデータの組合せに応じて検討されうる。
【0221】
mTPIの用量漸増中、抗ILT3抗体単独療法を受けるために3~6名の参加者が最初に登録される。治療の割り当ては非ランダムな割り当てによって行われる。現在のDLにおける全参加者が21日間のDLT評価を完了し、用量漸増の決定がなされたら、次のDLにおけるアーム1(単独療法としての抗ILT3抗体)への登録が開始される。最初の参加者と2番目の参加者とがそれぞれの新たなDLのサイクル1における治験治療を受ける時間間隔として、少なくとも24時間が経過している必要がある。それぞれの後続のDLは同様に進行する。アーム1のmTPIフェーズにおいては、参加者内の用量漸増は許容されない。
【0222】
進行性疾患ゆえにアーム1におけるいずれかのDLにおいて抗ILT3抗体の投与を中止した参加者は、研究者の裁量により、ならびにスポンサーとの協議および承認の後、ペンブロリズマブとの併用療法を受けるのに適格となりうる(詳細は、後記の「併用療法への移行」なる小見出しを参照されたい)。
【0223】
生検が医学的に安全でないと研究者によって判断されない限り、腫瘍生検の採集(スクリーニング時およびC3D1時)はArm1において必須である。
【0224】
アーム2:併用療法用量漸増修正毒性発現確率区間デザイン
アーム2のための開始用量は、アーム1のmTPIにおいて試験されている現在の用量より2DL低くなる。したがって、アーム1の全参加者が単独療法におけるDL2のDLT評価期間を完了し、抗ILT3抗体がこのコホートにおいて安全で忍容性であると実証され、用量漸増の決定がなされたら、アーム2への登録が開始される。アーム2における開始用量は、アーム1からの入手可能な安全性、PKおよび薬力学の結果に基づいて調整されうる。ペンブロリズマブと組合された抗ILT3抗体のMTDおよび/またはMADを決定するために、mTPIデザインを用いて、用量漸増が進行する。アーム1における用量漸増が完了するまで、アーム2は常にアーム1より2DL低い。新たに得られた安全性および/または有効性の徴候に基づいて、中間的な用量レベルも検討されうる。パート1に登録される最終的な参加者数は、経験的な安全性観察(すなわち、DLT)、およびmTPIデザインを用いてMTD/MADとして最終的に特定される用量に左右される。アーム2では、腫瘍生検の採集(スクリーニング時およびC3D1時)は随意的である(すなわち、行っても行わなくてもよい)が、生検が医学的に安全でないと研究者によってみなされない限り、特にC3D1来院時に強く推奨される。
【0225】
パート1のアーム2におけるペンブロリズマブの用量は、200mg Q3Wで一定のままである。
【0226】
アーム2における用量の設定および確認は、選択された用量(これは中間的な用量を含みうる)のいずれかで最大14名の参加者が治療された後に終了する。mTPIの表が、現在の用量に留まる「S」を示していれば、用量漸増は停止する。そうでなければ、「D」もしくは「DU」が示されている場合またはより高い用量の「E」が示されている場合には、最大14名の新たな参加者が、より低い用量で登録されうる。DLT率およびDL間の単調性を仮定して、各治療アームにおける用量にわたるDLT率を推定するために、PAVA(Ji Y,Wang S-J.Modified toxicity probability interval design:a safer and more reliable method than the 3+3 design for practical phase I trials.J Clin Oncol 2013;31:1-12)を用いる。30%に最も近い推定DLT率を有する用量はMTD/MADとして扱われうる。RP2D用量を前に進めると決定する前に、データの全体性を考慮する。アーム2における抗ILT3抗体のMTD/MADは抗ILT3抗体アーム1におけるMTD/MADを超えることはないが、同等でありうる。アーム2のmTPIフェーズにおいては、参加者内の用量漸増は許容されない。
【0227】
予備的な有効性は、探索的エンドポイントとしてORR、PFSおよびOSを使用して評価される。ORRおよびPFSは、RECIST1.1およびiRECISTに基づいて研究者によって評価される。
【0228】
累積データは、ATDおよびmTPIに基づく用量設定の決定を可能にするために、ならびにスポンサーの裁量で将来の研究計画を可能にするために、継続的に吟味される。
【0229】
併用療法への移行
パート1アーム1において放射線検査で確認された進行性疾患を示す参加者は、スポンサーとの協議および承認の後、併用療法(すなわち、アーム2への「クロスオーバー」)を受けるのに適格となる。
【0230】
参加者がアーム1におけるDLT評価期間(すなわち、21日間)を完了するまでは、参加者はアーム1(単独療法)からアーム2(ペンブロリズマブとの併用療法)へとクロスオーバーすることはできない。アーム1からアーム2へのクロスオーバーに適格である参加者はスクリーニング時にアーム2に入り、最高のオープンコンビネーション(open combination)DLに割り当てられる(第6.6.3節を参照されたい)。これらの参加者は、必要に応じてペンブロリズマブのPKおよびADAの評価を追加して、彼らの予定された活動を継続する。参加者は、ペンブロリズマブとの組合せにおいて安全性および忍容性を既に示している抗ILT3抗体の最高用量(その併用用量に関してDLT評価期間が完了している)の投与を受けうる。
【0231】
アーム1において放射線検査で確認された進行性疾患ゆえに併用療法を受けるのに適格である参加者はアーム2のmTPI用量漸増決定には含まれない。なぜなら、その特定のDLコホートは安全性および忍容性を既に実証している必要があるからである。しかし、それらのデータは併用治療のRP2Dの決定において遡及的に含まれうる。これらの参加者の安全性および有効性のデータは、アーム2に登録された参加者のものとは別に分析される。
【0232】
参加者は、治験のいずれかのパートを中止したら、医師の裁量で治療される。
【0233】
併用療法にクロスオーバーする参加者は、単独療法で受けた抗ILT3抗体のサイクル数に無関係に、最大35サイクルの併用療法を受けることに適格である。
【0234】
DLTゆえにアーム1における単独療法を中止した参加者はアーム2へのクロスオーバーに適格ではない。
【0235】
コホートの拡大
図2に示されているとおり、化学療法の存在下(コホートA、CおよびE)または化学療法の非存在下(コホートBおよびD)の抗ILT3抗体 + ペンブロリズマブ200mg Q3Wを評価するために、この治験は5つの腫瘍特異的コホートを含む。
【0236】
コホートAは、ペンブロリズマブおよびパクリタキセルと組合された抗ILT3抗体の安全性および予備的有効性を評価するために、1以上のPD-L1 CPSの転移性TNBCを有する約45名の未治療参加者を登録する。コホートAは、完全な登録を続行する前に、該併用の忍容可能な安全性プロファイルを実証するために、約10名の参加者による安全性の導入試験(lead-in)を含む。
【0237】
コホートBは、ペンブロリズマブと組合された抗ILT3抗体の安全性および予備的有効性を評価するために、2L手術不能GBMを有する約25名の参加者を登録する。
【0238】
コホートCは、ペンブロリズマブ、nab-パクリタキセルおよびゲムシタビンと組合された抗ILT3抗体の安全性および予備的有効性を評価するために、1L転移性PDACを有する約35名の参加者を登録する。コホートCは、完全な登録を続行する前に、該併用の忍容可能な安全性プロファイルを実証するために、約10名の参加者による安全性の導入試験を含む。
【0239】
コホートDは、ペンブロリズマブと組合された抗ILT3抗体の安全性および予備的有効性を評価するために、2L転移性STSを有する約30名の参加者を登録する。
【0240】
コホートEは、ペンブロリズマブ、カルボプラチンおよびペメトレキセドと組合された抗ILT3抗体の忍容可能な安全性プロフィールを実証するための安全性導入試験として、転移性非扁平上皮NSCLCを有する約10名の未治療参加者を登録する。
【0241】
研究者によって評価された臨床的安定性が観察され、参加者が治験治療に忍容する場合には、スポンサーとの相談の後、治験参加者は進行後治験治療の継続が許可される。
【0242】
最初の15名の参加者(コホートB、CおよびD)または20名の参加者(コホートA)がベースライン後の2回目のイメージング評価を受けた後、中間解析(IA)が実施されうる。8つ以下の応答(コホートA)、3つ以下の応答(コホートC)または1つ以下の応答(コホートBおよびD)が観察された場合、該コホートへの登録は早期に中止されうる。
【0243】
化学療法併用に関する安全性の導入試験
コホートAおよびCにおける最初の約10名の参加者ならびにコホートEにおける全ての参加者に関して、各コホートに関する3剤または4剤併用における化学療法の意図される用量の安全性および忍容性を個別に評価するために、30%の目標用量制限毒性(DLT)率でmTPIの表(表10)を適用する。3~6名のDLT評価可能な参加者を最初に登録し、研究介入の最初の用量からのDLTに関して評価する。DLT評価可能な6名の参加者の所望のサンプルサイズを達成するために、最初に最大8名の参加者が登録されうる。mTPIの表(本明細書における表10を参照されたい)に基づく決定が継続または拡張するものである場合、コホートは、DLT評価可能な合計10名の参加者を有するように追加的な参加者を登録するように拡張される。用量漸増解除の決定がなされた場合、併用の安全性データを更に評価するために、およびコホートを拡大すべきかどうかを判断するために、コホートへの登録は遅延しうる。安全性の導入試験からのデータが、併用が、許容可能な安全性および忍容性を有することを示している場合には、コホートへの登録は継続される。安全性の導入試験からのデータが許容できない場合には、コホートへの登録は停止される。
【0244】
DLTの評価期間はコホートAおよびCに関しては28日間であり、コホートEに関しては21日間である。
【0245】
追跡(フォローアップ)
確認された進行性疾患以外の理由で治験治療を中止した参加者は、進行性疾患、新たな抗癌治療の開始、妊娠、治験参加への同意の撤回、死亡または追跡喪失までは、安全性および病態(イメージングを含む)に関する治療後の追跡を受ける。
【0246】
確認された疾患進行を示す参加者または新たな抗癌治療を開始する参加者は安全性および生存追跡フェーズに移行する。
【0247】
奏功率(ORR)
この治験は、副次的エンドポイント(副次的評価項目)として研究者によって評価されたRECIST 1.1基準(コホートBに関するRANO)に基づくORRを用いる。
【0248】
参加者における腫瘍応答は、研究者のレビューによりRECIST 1.1およびiRECIST基準を用いて評価される。腫瘍イメージングを収集し、洗浄し、保持するためには、セントラル・イメージング・ベンダー(central imaging vendor)が用いられる。イメージは、BICRによって、可能な将来の分析のために収集される。
【0249】
RECIST 1.1によって評価された応答率
RECIST 1.1は、有効性尺度に関してイメージを評価する際に研究者によって、および適格性を判断する際に現場で用いられる。伝統的なRECIST 1.1は合計で最大5個および器官当たり2個の標的病変を参照するが、このプロトコルは、合計で最大10個および器官当たり5個の標的病変が可能となるように、RECIST 1.1に対する修正を加えている。
【0250】
免疫療法に関する固形腫瘍における修正応答評価基準1.1(iRECIST)によって評価された応答率
RECIST 1.1は、ペンブロリズマブでの治療の後で見られる特有の腫瘍応答特性を考慮して適合化されている。抗ILT3抗体およびペンブロリズマブのような免疫療法剤は、内因性の癌特異的免疫応答を増強することによって抗腫瘍効果をもたらしうる。そのようなアプローチで見られる応答パターンは、細胞毒性剤で見られる応答の典型的な時間経過を超えて拡張する可能性があり、免疫療法剤で治療された患者は腫瘍量の初期増加の後または更には新たな病変の出現の後で臨床応答を示しうる。したがって、標準的なRECIST 1.1は抗ILT3抗体およびペンブロリズマブのような免疫療法剤の正確な応答評価をもたらさない可能性がある。KEYNOTE-001(KN001)に登録された黒色腫を有する参加者の分析に基づけば、評価可能な参加者の7%が、遅延した又は早期の腫瘍偽進行を経験した。注目すべきことに、RECIST 1.1による進行性疾患を有するが、免疫関連応答基準(Wolchok JDら,Guidelines for the evaluation of immune therapy activity in solid tumors:immune-related response criteria.Clin Cancer Res 2009;15(23):7412-20)による進行性疾患を有さない参加者は、両方の基準による進行性疾患を有する参加者より長い全生存期間を示した(Hodi FSら,Patterns of response in patients with advanced melanoma treated with Pembrolizumab(MK-3475)and evaluation of immune related response criteria(irRC).J Immunother Cancer.2014;2(Suppl 3):P103)。また、データは、RECIST 1.1が参加者の約15%においてペンブロリズマブの利点を過小評価している可能性があることを示唆している。これらの知見は、RECIST 1.1に対する修正を適用する必要性を支持しており、そのような修正は、免疫療法における非典型的な応答の特有のパターンを考慮し、参加者が臨床的に安定していれば、放射線検査に基づく初期進行にもかかわらず、治療を可能にするものである。
【0251】
免疫療法用修正RECIST 1.1(iRECIST)評価は、米国FDAおよび欧州医薬品庁の参加に加えて産業界および学術界の主要専門家の意見を取り入れて、RECISTワーキンググループによって開発され公開された(Seymour Lら,iRECIST:guidelines for response criteria for use in trials testing immunotherapeutics.Lancet Oncol.2017 Mar;18(3):e143-52)。標的病変の一次元測定、非標的病変の定性的評価および応答カテゴリーは、RECIST 1.1によって進行が見られるまでは、RECIST 1.1と同じである。しかし、参加者が臨床的に安定していれば、放射線検査に基づく進行を確認するために追加的なイメージングが実施されうる。iRECISTは、腫瘍の応答および進行を評価し治療決定を行うために、ならびに示されている場合には探索的有効性分析のために、研究者によって用いられる。
【0252】
神経腫瘍学における応答評価(RANO)
RANO基準は、2010年におけるその公開以来、GBM治験における応答を評価するための好ましい基準となっており(Wen PY,Macdonald DR,Reardon DAら,Updated response assessment criteria for high-grade gliomas:response assessment in neuro-oncology working group.J Clin Oncol 2010;28(11):1963-72)、ステロイド投与および参加者の機能パフォーマンスステータスに関する情報ならびに増強性疾患および非増強性疾患の両方の定性的評価と共に、造影MRIで示された腫瘍サイズの測定を含む。応答評価は研究者およびBICRによって実施される。
【0253】
RANOは、放射線療法後に頻繁に見られる偽進行にも対応する。AVAglio研究(Gilbert MRら,A randomized trial of bevacizumab for newly diagnosed glioblastoma.N Engl J Med.2014 Feb 20;370(8):699-708.)(BO21990,NCT00943826)は、T2/FLAIRイメージング、臨床評価、ならびに非造影病変、残存疾患、測定困難な病変および偽進行を補正するための全ての非インデックス(index)病変の定性的精査を用いることによって、マクドナルド(Macdonald)基準を修正した。RANOワーキンググループは更に、臨床進行に関する基準、ならびに偽進行を検出するためのスキャンのタイミング、基準および確認における基準を緩和することによって、測定を更に改良した(Chinot OLら,Response assessment criteria for glioblastoma:practical adaptation and implementation in clinical trials of antiangiogenic therapy.Curr Neurol Neurosci Rep.2013 May;13(5):347)。
【0254】
RTOGおよびACRIN(RTOG0625/ACRIN6677)は、ベバシズマブ、イリノテカンまたはテモゾロミドで治療された107名の再発性GBM患者におけるRANOの予測能力を評価した(Boxerman JLら,Early post-bevacizumab progression on contrast enhanced MRI as a prognostic marker for overall survival in recurrent glioblastoma:results from the ACRIN 6677/RTOG 0625 Central Reader Study.Neuro Oncol.2013 Jul;15(7):945-54)。この研究は、ベバシズマブ治療の第8週および第16週に2D-T1および3D-T1イメージングで観察された進行がOSの予後において非常に有意な価値を有すると結論づけている。しかし、FLAIRのみによって検出された進行はOSとは相関せず、他のイメージング技術に最小限の追加的利点を付加したに過ぎなかった。
【0255】
無増悪生存期間
この治験は、RECIST 1.1(コホートBに関するRANO)およびiRECIST基準(前記を参照されたい)[探索的エンドポイント(探索的評価項目)として最大10個の標的病変および最大5個の標的病変(器官当たり)を追跡するように修正されたもの]に従い研究者によって評価されたPFSを用いる。後期段階の治験では、PFSは臨床利益の許容尺度であり、進行固形腫瘍においてペンブロリズマブと組合された並びにペンブロリズマブおよび化学療法と組合された抗ILT3抗体の有効性の予備的尺度を得るために、このFIH研究において用いられる。
【0256】
コホートA、B、CおよびDに関するそれぞれ6か月、12か月、18か月および24か月の時点におけるPFS率も評価される。
【0257】
全生存期間(OS)
全生存期間は、ランダム化臨床研究において新規抗腫瘍療法の優位性を実証するための絶対的基準(ゴールド・スタンダード)として認識されている。この治験においては、探索的エンドポイントとしてOSを測定する。OSエンドポイントは、サンプルサイズが小さいこと及び比較のための対照群が存在しないことにより、混乱が生じる可能性があり、副次的エンドポイントとしてのその有用性が制限される。この治験は、種々のタイプの進行固形腫瘍を有する参加者を登録し、この不均一性とサルベージ手順のばらつきが組み合わさって、OS探索エンドポイントの有用性に影響を与えることになりる。
【0258】
コホートA、B、C、Dのそれぞれ6か月、12か月、18か月、24か月後のOS率も評価される。
【0259】
安全性エンドポイント
この治験の目的は、進行/転移性固形腫瘍を有する参加者におけるペンブロリズマブとの併用療法ならびにペンブロリズマブおよび化学療法との併用療法としての抗ILT3抗体の安全性および忍容性を特徴付けることである。
【0260】
一次安全性分析は、NCI CTCAEバージョン4.0基準によって定義される毒性を示した参加者に基づくものである。安全性は、単独療法としての抗ILT3抗体の投与、ならびに化学療法の存在下および非存在下のペンブロリズマブとの併用療法としての抗ILT3抗体の投与を受けた参加者が示した毒性および毒性の等級を定量することによって評価される。
【0261】
AEに関しては、薬物の属性、発生時間、事象の持続期間、その解消、および投与された併用薬が記録される。分析される有害事象には、全てのAE、SAE、致命的AEおよび検査上の変化が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0262】
参加者集団に関する理論的根拠
コホート拡大のための参加者集団は、MoffittおよびThe Cancer Genome Atlas(TCGA)データベース内のヒト腫瘍発現アレイの分析に基づいて選択された。本発明者らはILT3発現レベルおよびT細胞炎症遺伝子発現プロファイルスコア(GEPスコア;Cristecuら,Science.2018 Oct 12;362(6411):eaar3593を参照されたい)を分析した。GEP発現プロファイルは、CCL5、CD27、CD274(PD-L1)、CD276(B7-H3)、CD8A、CMKLR1、CXCL9、CXCR6、HLA-DQA1、HLA-DRB1、HLA-E、IDO1、LAG3、NKG7、PDCD1LG2(PDL2)、PSMB10、STAT1およびTIGITを含む、抗原提示、ケモカイン発現、細胞溶解活性および適応免疫耐性に関連する18個の炎症遺伝子を含む。高いGEPスコアはT細胞炎症腫瘍微小環境を示す。
【0263】
高レベルのILT3発現、高いILT3発現とGEPスコアとの間の相関性、MDSCが豊富な腫瘍微小環境およびアンメット・メディカル・ニーズ(未だ満たされていない医療ニーズ)を有する腫瘍型が特定された。驚くべきことに、発明者らは、それらの分析を通じて、他の癌型と比較して特定の癌型に関する幾つかの重要な発見をした。本発明者らは、GBM腫瘍の大部分が高レベルのILT3発現および低いGEPスコアを示すことを見出した。GBMにおける腫瘍骨髄細胞は腫瘍質量の30~50%を占め、それらの細胞の大部分は単球性MDSCである。GBMにおける免疫抑制は、ミクログリアによるものではなくマクロファージによるものであるらしい。NSCLCおよびTNBCは、高いGEPスコアと高レベルのILT3発現とを伴う大きな割合の腫瘍を示した。TNBCはペンブロリズマブ単独療法に対して限定的な応答を示すに過ぎない。PDACおよびSTSは、高いGEPスコアと高レベルのILT3発現とを伴う中等度の割合の腫瘍を示す。PDACの腫瘍環境は免疫細胞を含む。
【0264】
これらの属性を有する腫瘍における、抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントによって媒介されるILT3の阻害は、腫瘍微小環境で見られる寛容または免疫抑制を逆転させ、単独療法として用いられた場合に、あるいは抗PD-1抗原結合性タンパク質もしくは抗原結合性フラグメント(例えば、ペンブロリズマブ)と組合せて、または抗PD-1抗原結合性タンパク質もしくは抗原結合性フラグメント(例えば、ペンブロリズマブ)および標準治療化学療法と組合せて相加的または相乗的な様態で用いられた場合に、抗腫瘍活性を示しうる、と前記の本発明者らの重要な知見に基づいて仮定される。抗ILT3抗原結合性タンパク質または抗原結合性フラグメントを、単独で、または抗PD-1抗原結合性タンパク質もしくは抗原結合性フラグメントと組合せて、特に本明細書に記載されている方法で使用するこの戦略は、これらの治療困難な癌に対する治療戦略として未だ利用されていない。
【0265】
前記基準に基づいて、パート2は、1以上のPD-L1 CPSを有する未治療の転移性TNBC、2Lの手術不能GBM、未治療の転移性PDAC、2Lの転移性STSおよび未治療の転移性非扁平上皮NSCLCを有する参加者を登録する。3つの未治療集団(コホートA、CおよびE)における化学療法の併用に関する追加的な理論的根拠を以下に示す。
【0266】
コホートAは、1以上のPD-L1 CPSの転移性TNBCを有する未治療参加者において、ペンブロリズマブ+パクリタキセルと組合された抗ILT3抗体の安全性および予備的有効性を評価する。標準的な単剤化学療法(パクリタキセル、nab-パクリタキセルまたはゲムシタビン/カルボプラチン)と組合されたペンブロリズマブは、化学療法単独と比較して、ランダム化フェーズ3 KN355試験において転移性TNBCに対する1Lの治療として評価されている。ペンブロリズマブ+化学療法は、この治験において、10以上のPD-L1 CPSを有する参加者において、化学療法単独と比較してPFSの有意な改善を示した(Cortes Jら,KEYNOTE-355:randomized,double-blind,phase III study of pembrolizumab + chemotherapy versus placebo + chemotherapy for previously untreated locally recurrent inoperable or metastatic triple-negative breast cancer[abstract].Presented at:2020 American Society of Clinical Oncology(ASCO) Virtual Scientific Program;2020 May 29-31;[online meeting].J Clin Oncol.2020;38(15 suppl).Abstract no.1000)。また、この治験からの内部データはペンブロリズマブおよびパクリタキセルの併用による有望なORRを示している。パクリタキセルは1L転移性TNBCに対する広く利用可能な標準治療法であるため、コホートAにおいては標準的な用量およびスケジュールが使用され、これは、KN355において使用された開始用量およびスケジュールと同じである。
【0267】
コホートCは、PDACを有する未治療参加者において、ペンブロリズマブ、nab-パクリタキセルおよびゲムシタビンと組合された抗ILT3抗体の安全性および予備的有効性を評価する。nab-パクリタキセルおよびゲムシタビンの併用は、PDACを有する患者の第1選択治療のための標準治療レジメンであり、一般に、FOLFIRINOXより良好な忍容性を示す(Von Hoff DDら,Increased survival in pancreatic cancer with nab-paclitaxel plus gemcitabine.N Engl J Med.2013 Oct 31;369(18):1691-703;Conroy Tら,FOLFIRINOX versus gemcitabine for metastatic pancreatic cancer.N Engl J Med.2011 May 12;364(19):1817-25)。PD-1インヒビターとnab-パクリタキセルおよびゲムシタビンとの三剤併用療法も、ペンブロリズマブおよびニボルマブを使用した研究で認められるとおり、PDACにおける忍容可能な安全性プロファイルを有する(Weiss GJら,A phase Ib study of pembrolizumab plus chemotherapy in patients with advanced cancer(PembroPlus).Br J Cancer.2017 Jun 27;117(1):33-40;Wainberg ZAら,Open-label,phase I study of nivolumab combined with nab-paclitaxel plus gemcitabine in advanced pancreatic cancer.Clin Cancer Res.2020 Sep 15;26(18):4814-22)。
【0268】
コホートEは、転移性非扁平上皮NSCLCを有する未治療参加者において、ペンブロリズマブ、カルボプラチンおよびペメトレキセドの組合せに抗ILT3抗体を追加した場合の安全性を評価する。ペメトレキセドを伴うプラチナダブレットは、化学療法歴のない転移性非扁平上皮NSCLC患者に対して最も一般的に使用される1L化学療法である。KN021Gの結果に基づいて、カルボプラチンおよびペメトレキセドと組合されたペンブロリズマブは、PD-L1状態に無関係に、転移性非扁平上皮NSCLCを有する患者の1L治療としてFDAによって承認されている。これらの結果はランダム化フェーズ3 KN189研究において確認されている(Gandhi Lら,Pembrolizumab plus chemotherapy in metastatic non-small-cell lung cancer.N Engl J Med.May 31;378(22):2078-2092)。コホートEにおける参加者に対する二剤併用化学療法は非扁平上皮NSCLCに対する標準治療レジメンである。コホートEにおいて安全性および忍容性が実証されたら、該併用は更に評価されうる。
【0269】
抗ILT3抗体の開始用量および最大用量に関する理論的根拠
抗ILT3抗体のヒトでの開始用量および投与間隔は非臨床毒物学的データ、薬理学的データおよび前臨床有効性データの統合結果に基づいている。
【0270】
抗ILT3抗体の作用の潜在的免疫活性化メカニズムゆえに、0.2mg(70kgの患者では0.003mg/kgに相当)の抗ILT3抗体のFIH開始用量は、包括的な非臨床薬理学、毒物学データおよび定量的モデリングの統合結果を考慮して決定される。
【0271】
前臨床研究のための薬理学的関連種として、アカゲザルが選択された。
【0272】
アカゲザルにおける標的関与の成功は0.3mg/kg~30mg/kgの用量範囲にわたる全可溶性ILT3レベルの用量依存的増加の観察によって示された(研究17-M100-8994および18-M100-9870)。アカゲザルにおける複数回投与研究(毎週1回、合計4回投与)で観察されたNOAELは100mg/kg/週であった。SK-MEL-5腫瘍担持ヒト化マウスモデルにおいて、免疫活性化マーカーHLA-DRの増加が、0.1mg/kgの用量で血液中で全身的に、および1.0mg/kgの用量で作用部位(腫瘍)において観察された。血中HLA-DR活性化に基づくPADアプローチであるマウスとヒトとの間のPKの比較およびSK-MEL-5腫瘍担持ヒト化マウスモデルからの結果に基づいて、本発明者らは、0.03mg/kgの開始用量が適切であると判断した。しかし、ヒト化マウスモデルには完全ヒト免疫レパートリーが欠如しているため、より控えめな(conservative)用量が正当化されうる。なぜなら、マウス腫瘍モデルは患者の状況より低い感受性を示しうるからである。したがって、FIH開始用量としては、PADより10倍低い用量である0.003mg/kgが提示されている。
【0273】
ヒトPKパラメーターを、アカゲザルにおいて決定されたものから予測するために、非比例的スケーリングを用いた。ヒトにおける0.003mg/kgでの0.081μg/mLの予測Cmaxの分析に基づいて、本発明者らは、膜ILT3および可溶性ILT3のレベルならびに初代末梢血CD14単球および血漿可溶性ILT3に対する抗ILT3抗体の結合効力を考慮したメカニスティックPKモデリングアプローチに基づいて、末梢血において約70%の標的占有率が得られると予想している。FDAの研究者によって公開された免疫活性化腫瘍学製品のレビューは、最大80%の標的関与に関連するFIH用量における許容毒性を報告している(Saber Hら,An FDA oncology analysis of immune activating products and first-in human dose selection.Regul Toxicol Pharmacol.2016 Nov;81:448-456)。
【0274】
また、抗ILT3抗体の場合、0.003mg/kgにおける0.081μg/mlの予測Cmaxは、100mg/kgのNOAELにおいてアカゲザルで観察された定常状態における6770μg/mlのCmaxと比較して83,580倍の安全域をもたらす。また、インビトロサイトカイン放出アッセイにおいては、最大1000μg/ml(これは0.003mg/kgの開始用量における0.081μg/mlの予測ヒトCmaxより約12,346倍高い)の濃度のMK-0482の単独で、およびペンブロリズマブとの併用において、サイトカイン放出の全体的な誘導は観察されなかった。
【0275】
したがって、サイトカイン放出の誘導は、0.003mg/kgの用量で達成される血清濃度においては予想されない。
【0276】
70kgの患者の場合、体重に基づく0.003mg/kgの用量は0.2mgの固定用量に相当する。
【0277】
投与間隔および漸増量に関する理論的根拠
mTPIアプローチを開始する前に、潜在的に治療量以下の抗ILT3抗体で治療される参加者の数を最小にするために、ATDに従い初期用量の漸増を進める。用量漸増の加速漸増パートは抗ILT3抗体の前用量からの最大0.5 log単位の用量増分で治療する。抗ILT3抗体の前臨床安全性データと、無効でありうる用量での進行癌参加者の治療を最小限に抑えたいという要望とに基づいて、治験の開始時には、0.5 log単位増分が許容可能と見なされる。用量漸増の加速漸増パートは、抗ILT3抗体投与に関連している可能性がある、または関連している可能性が高い、または確実に関連していると研究者によって評価されたグレード2以上の非疾患関連毒性が生じたら終了する。用量漸増の加速漸増パートが終了した後、前の用量の0.5 log単位の用量増分増加を用いて、DL当たり治療される3~14名の参加者でのモデルベース用量mTPIアプローチで用量設定を進める。
【0278】
抗ILT3抗体とペンブロリズマブとの組合せで治療される参加者のコホートにおいては、抗ILT3抗体単独療法のMTD/MADが確立されるまで、ペンブロリズマブと組合せて使用される抗ILT3抗体の用量は単独療法用量より少なくとも2DL低く、単独療法に関するMTD/MADを超えない。単独療法アームに関するMTD/MADが確立されたら、ペンブロリズマブと組合された抗ILT3抗体の用量はその用量まで増量を続けうる。
【0279】
加速漸増デザイン
初期用量漸増はATDに従う。単一参加者は、用量レベル間で最大0.5 log単位増分で段階的に増加する用量レベル(例えば、0.2mg、0.7mgおよび2mg)に登録される。用量の範囲を以下の表11Aおよび11Bに概説する。計画されたATD用量における予測標的関与率は0.2mgで約70%、0.7mgで約95%、および2mgで約99%である。予測標的関与は2mgで完全飽和に近づくため、ATDからmTPIへの移行は、次の用量レベルである7.5mgで計画される。
【0280】
妥当な場合には中間的な用量レベルが評価されうる。参加者の各コホートにおいて試験される用量は、前の用量に関する用量漸増決定の後、研究者または指定された者に通知される。スポンサー・メディカル・モニター(Sponsor Medical Monitor)または指名された者の承認を得て、コホート当たり最大3名の参加者の登録が許容される。ただし、これらの参加者のそれぞれの間の間隔は少なくとも24時間である。24時間の間隔は、ペンブロリズマブの存在下または非存在下で抗ILT3抗体を使用した場合に有意なサイトカイン放出がなかったことを示している前臨床研究からの結果に基づいて決定された。各用量レベルにおいて登録された全ての参加者は、次の用量レベルが開始される前にDLT期間を完了しなければならない。
【0281】
ATDは、以下のものの少なくとも1つが生じたら終了する。
・最高用量レベルのコホートはDLT評価期間を完了しており、抗ILT3抗体はこのコホートにおいて安全で高忍容性であると判断されている。
・投与期間(サイクル1)中の任意の用量レベルにおいて抗ILT3抗体投与に関連している可能性がある、または関連している可能性が高い、または確実に関連していると研究者によって評価された、NCICTCAEバージョン4)によるグレード2以上の非疾患関連毒性の発生。
【0282】
ATD段階でDLTが発生した場合は常に、DLTが発生したコホートは、以下のmTPI指針に従い、この用量において拡大される。ATD段階でDLTが発生しない場合には、前記事由の1つが満たされたら、ATD段階はmTPI段階へと進行する。そのような場合、mTPI段階の開始用量は最後のATD用量から0.5 log単位増分だけ増加する。
【0283】
【表10A】
【0284】
【表10B】
【0285】
ペンブロリズマブの固定用量に関する理論的根拠
この治験のためのペンブロリズマブの計画用量は200mg Q3Wである。KEYTRUDA開発プログラムにおいて得られたデータ全体に基づけば、200mg Q3Wは、腫瘍型に無関係に、全ての適応症にわたって成人に対するペンブロリズマブの適切な用量である。以下に概説するとり、この用量は以下の理由によって正当化される。
・8つのランダム化治験からの臨床データが2mg/kg Q3W~10mg/kg Q2Wまでの用量-および曝露-有効性の平坦な関係を示している;
・臨床データが、複数の適応症にわたり、200mg Q3Wにおいて、全生存期間を含むベネフィット-リスクにおける有意な改善を示している;ならびに
・薬理学データが、200mg Q3Wにおいて、全身循環(PKデータから推定)と腫瘍(PBPK分析から推定)との両方で完全な標的飽和を示している。
【0286】
8つのランダム化用量比較研究のうち、黒色腫およびNSCLCを有する合計2,262名の参加者が登録され、これは、種々の疾患状況(未治療、以前に治療されている、PD-L1に富む、およびオールカマー(all-comer))および種々の治療状況(単独療法、および化学療法との併用療法)をカバーしていた。5つの研究は2mg/kg Q3Wと10mg/kg Q3Wとを比較し(KN001コホートB2、KN001コホートD、KN002、KN010およびKN021)、3つの研究は10mg/kg Q3Wと10mg/kg Q2Wとを比較した(KN001コホートB3、KN001コホートF2およびKN006)。全ての研究は、試験された用量の全体にわたって、用量-および曝露-応答の平坦な関係を示しており、これは曝露における約5~7.5倍の差を表している。
【0287】
2mg/kg(または200mgの固定用量)Q3Wは、試験された最高用量に類似した応答を示した。次いで、頭頸部癌、膀胱癌、胃癌および古典的ホジキンリンパ腫を含む他の腫瘍型においても、用量-曝露-応答の平坦な関係が観察され、これは、腫瘍型に無関係な適切な用量としての200mg Q3Wを証明している。これらの知見は、癌細胞への直接結合を介してではなく免疫細胞との相互作用によって作用するペンブロリズマブの作用メカニズムと一致している。
【0288】
また、薬理学データは200mg Q3Wでの標的飽和を明らかに示している。第1に、標的媒介性薬物動態を評価するKN001におけるPKデータは、200mg Q3Wよりもはるかに低い用量での全身循環におけるPD-1の飽和を決定的に実証した。第2に、広範囲の腫瘍浸透およびPD-1発現にわたる腫瘍PD-1飽和を予測するために、PBPK分析を実施した。この評価は、200mg Q3Wにおけるペンブロリズマブが血液と腫瘍との両方で完全なPD-1飽和を達成すると結論付けた。
【0289】
最後に、暴露に対する体重および他の参加者の共変量の影響を特徴付けした、ペンブロリズマブの集団PK分析は、固定用量の投与が、体重に基づく投与に類似したPK変動制御をもたらし、200mg Q3Wの固定用量および2mg/kg Q3Wの用量からの暴露の分布において相当な重複があることを示している。これらのPK特性によって裏付けられているため、そして固定用量が投与の複雑さの軽減および投与ミスの可能性の低減という利点を有することを考慮して、全てのペンブロリズマブプロトコールにわたる評価のために200mg Q3Wの固定用量を選択した。
【0290】
抗ILT3抗体予備的RP2Dに関する理論的根拠
抗ILT3抗体は、単独療法として、およびペンブロリズマブとの併用療法として、抗ILT3抗体の2250mg Q3Wの用量まで、十分に忍容性である。2020年11月9日の時点で、アーム1(抗ILT3抗体単独療法)における29名の参加者およびアーム2(抗ILT3抗体とペンブロリズマブの併用)における40名の参加者が少なくとも1用量の治験介入を受けている。アーム1からの6名の参加者がアーム2にクロスオーバーした。どちらのアームにおいてグレード4またはグレード5の治療関連AEは生じなかった。アーム1において1件のグレード3の治療関連AE(発熱)が生じ、アーム2において2件のグレード3の治療関連AE(AST上昇および副腎機能不全)が生じた。アーム1においてはDLTは観察されなかった。アーム2においては1件のDLTが観察され、これは、サイクル1中に抗ILT3抗体2250mg DLにおいて参加者が経験したグレード2の治療関連筋炎であった。
【0291】
この治療関連AEは治療中止につながった。ほとんどの治療関連AEはグレード1またはグレード2であり、アーム2における治療関連AEの全体的な発生率はアーム1におけるものの2倍に近かった(60.9%対34.5%)。アーム2における最も一般的(>5%)な治療関連AEには、疲労(17.4%)、甲状腺機能亢進症(10.9%)、甲状腺機能低下症(10.9%)、関節痛(10.9%)、下痢(8.7%)、インフルエンザ様疾患(6.5%)および掻痒(6.5%)が含まれ、これは、ペンブロリズマブに関して観察されたものと一致している。アーム2における2名の参加者(1名は7.5mg DL、もう1名は2250mg DL)は、それぞれ、グレード3のAST上昇およびグレード2の筋炎の治療関連AEのため、治験治療を中止した。アーム1またはアーム2のいずれにおいてもMTDは達成されなかった。
【0292】
予備的パート1 PKデータは、より低い抗ILT3抗体用量における標的媒介性薬物動態を示しているが、75mgの用量レベルを超えると直線的なPKが観察された。また、75mg以上の抗ILT3抗体で治療された参加者からの血液サンプルにおいて、ほぼ完全な受容体占有が観察された。厳しい仮定に基づいたとしても、抗ILT3抗体の750mgは腫瘍における完全な受容体占有を維持する可能性が高い。58名中13名の参加者でADAが観察されたが、PKまたは受容体占有に対するADAの明らかな影響はなかった。抗ILT3抗体の750mgの用量においてはADAは観察されなかった。血液サンプルにおいて全可溶性ILT3濃度の用量依存的増加が見られたが、スポンサーの調査に基づけば、可溶性ILT3に対する免疫抑制活性は確認されなかった。
【0293】
データの包括的評価に基づけば、ペンブロリズマブ200mg Q3Wと組合された抗ILT3抗体750mg Q3Wが、拡大コホートにおける更なる評価のための予備的RP2Dである。
【0294】
コホートAのパクリタキセル用量に関する理論的根拠
パクリタキセルは1L転移性TNBCに対する広く利用可能な標準療法である。研究KN355において使用されたのと同じ用量およびスケジュールである標準的な用量およびスケジュールをコホートAにおいて使用する。参加者は、PDまたは中止を要する許容できない毒性が生じるまで28日ごとに第1日、第8日および第15日に、IV注入によってパクリタキセル90mg/mの投与を受ける。
【0295】
コホートCのnab-パクリタキセルおよびゲムシタビンの用量に関する理論的根拠
コホートCにおける参加者に対する二剤化学療法は1L転移性PDACに対する標準治療レジメンである。参加者は、PDまたは中止を要する許容できない毒性が生じるまで28日ごとに第1日、第8日および第15日に、IV注入によるnab-パクリタキセル125mg/mのおよびそれに続くIV注入によるゲムシタビン1000mg/mの投与を受ける。
【0296】
コホートEのカルボプラチンおよびペメトレキセドの用量に関する理論的根拠
コホートEにおける参加者に対する二剤化学療法は1L非扁平上皮NSCLCに対する標準治療レジメンである。参加者は、共にIV注入によってQ3Wで4サイクルにわたって投与されるカルボプラチンAUC5およびペメトレキセド500mg/mの投与、ならびにそれに続く合計35サイクルまでのペメトレキセドでの維持療法を受ける。
【0297】
治験集団
進行性/転移性固形腫瘍を有する少なくとも18歳の男性/女性参加者がこの治験に登録される。
【0298】
募集および登録基準からのプロトコールの逸脱の将来的承認(プロトコールの放棄または免除とも称される)は許可されない。
【0299】
包含基準-コホートA:TNBC
参加者が以下の場合、参加者は治験における包含に適格である。
・最新のASCO/CAP指針によって定義されている組織学的に確認された局所再発性で手術不能なまたは転移性のTNBCを有する。
・転移性TNBCに対する事前の全身療法を受けていない。
-注:事前のステージI~IIIのTNBCからの再発疾患を有する場合、治癒目的の治療の完了(例えば、原発性乳房腫瘍手術の日または最後のネオアジュバントもしくはアジュバント全身療法の日のいずれか最後に行われた日)と最初に記録された局所または遠隔疾患再発(生検、病理報告またはイメージング報告によるもの)との間に、6か月以上が経過していなければならない。
-注:アジュバント放射線療法は、前記の6か月以上の間隔要件を計算する目的における、治癒目的の治療とはみなされない。
・指定された中央検査機関による評価で1以上のPD-L1 CPSの腫瘍を有する。
【0300】
包含基準-コホートB:GBM
参加者が以下の場合、参加者は治験における包含に適格である。
・GBM(WHOのグレードIVの悪性神経膠芽腫)の組織学的に確認された診断を有する。
・化学療法の存在下または非存在下の手術(切除)および放射線療法を含む、GBMに対する標準的な第1選択治療を受けており、MRIにより疾患再発または腫瘍進行の明白な証拠を示している。該疾患は手術不能とみなされるべきである。2L GBMを有する参加者のみが適格である。
・治験治療の開始前に、以下の行為に関して時間間隔が経過している。
-事前の外科的切除から少なくとも3週間、
-事前の定位生検から少なくとも1週間、および
-事前の放射線照射野以外での放射線検査による進行または腫瘍進行の明白な組織学的確認がない限り、放射線療法の完了から少なくとも12週間。
・治験治療開始前7日以内に80以上のKPSを有する。
・神経学的に安定しており(例えば、神経症状の進行がない、または過去2週間以内に全身ステロイド療法の増量を必要としない)、臨床的に安定している。
・MGMTメチル化(メチル化または非メチル化)およびIDH(野生型または突然変異あり)の既知状態を有する。
【0301】
包含基準-コホートC:PDAC
参加者が以下の場合、参加者は治験における包含に適格である。
・転移性PDACの組織学的に確認された診断を有する。
・化学療法、生物学的療法または標的療法を含む、転移性PDACに対する事前の全身療法を受けていない。
-注:非転移性PDACに対する事前のアジュバントまたはネオアジュバント全身療法(ゲムシタビン、nab-パクリタキセル、他の化学療法を含む)を受けている参加者は、治験治療開始前4か月以上前に治療が完了していれば、適格である。
-注:緩和放射線療法は、治験治療開始の少なくとも2週間前に完了してれば、許容される。
・3.0g/dLのアルブミンを有する。
【0302】
包含基準-コホートD:mSTS
参加者が以下の場合、参加者は治験における包含に適格である。
・局所進行性または転移性STSの組織学的に確認された診断を有する。
-注:GISTの診断を有する患者は除外される。
・進行性STSに対する1つの事前の全身治療を受けており、その後、進行している。2L STSを有する参加者のみが適格である。
【0303】
包含基準-コホートD:NSCLC
参加者が以下の場合、参加者は治験における包含に適格である。
・ステージIVまたは再発性手術不能非扁平上皮NSCLCの組織学的に確認された診断を有する。
・EGFR-、ALK-またはROS1-に向けられた療法が一次療法として適応しないという証明を有する(腫瘍活性化EGFRの非存在およびALKまたはROS1遺伝子再構成の非存在の証拠資料を要する)。
・転移性NSCLCに対する事前の全身治療を受けていない。
-注:アジュバントまたはネオアジュバント療法を受けた参加者は、局所または遠隔の疾患再発が証明される少なくとも6か月前にアジュバント/ネオアジュバント療法が完了していれば、適格である。
【0304】
他のNSCLC患者亜集団において抗ILT3抗体をペンブロリズマブと共投与する追加的なアンブレラ試験は追加的な包含基準を有する。そのようなアンブレラ試験においては、抗ILT3抗体の前に、ペンブロリズマブを、30分間のIV注入を用いて、200mgの用量でQ3Wで投与し、抗ILT3抗体を、30分間のIV注入を用いて、750mgの用量でQ3Wで、最大35サイクル(約2年間)にわたって投与する。
【0305】
最初のアンブレラ試験においては、被験者は化学療法後に難治性非扁平上皮NSCLCを有する。この試験においては、被験者が以下の場合、被験者は包含に適格である。
・ステージIVの扁平上皮または非扁平上皮NSCLCの組織学的または細胞学的に確認された診断を有する。
・非扁平上皮NSCLCを有し、承認された標的療法に適格でない。
・5年以内もしくは最後の治療の完了からスクリーニング期間に入る前の間に採取されたアーカイブ腫瘍組織サンプル、または治療開始から90日以内に採取された、事前に照射されていない腫瘍病変の新たに得られたコア生検または切除生検を提供できる。
・単独療法としてまたは他のチェックポイントインヒビターもしくは他の療法と組合せて投与される抗PD-(L)1モノクローナル抗体(mAb)での治療の後で進行している。
・プラチナダブレット化学療法中/後に進行性疾患(PD)を有する。
・35日間のスクリーニング期間内に全てのスクリーニング手順を完了できる。
・男性参加者は、治療期間中および治験治療の最終投与後少なくとも120日間は避妊し精子提供を控えることに同意する必要がある。
・女性参加者は妊娠中または授乳中ではなく、以下の条件の少なくとも1つに適合する必要がある。
-妊娠の可能性のある女性(WOCBP)ではない、または
-治療期間中および治験治療の最終投与後少なくとも120日間は避妊することに同意するWOCBPである。
・治験治療の開始から10日以内に適切な器官機能を有する。
【0306】
第2のアンブレラ試験においては、被験者は非扁平上皮NSCLCを有し、mNSCLCに対する事前の全身治療を受けていない。この試験においては、被験者が以下の場合、被験者は包含に適格である。
・ステージIVまたは再発性手術不能非扁平上皮NSCLCの組織学的に確認された診断を有する。
・EGFR-、ALK-またはROS1-に向けられた療法が一次療法として適応しないという証明を有する(腫瘍活性化EGFRの非存在およびALKまたはROS1遺伝子再構成の非存在の証拠資料を要する)。
・転移性NSCLCに対する事前の全身治療を受けていない。
・指定された中央検査機関による評価で1以上のPD-L1 CPSの腫瘍を有する。
【0307】
除外基準-全参加者
参加者が以下の場合、参加者は治験から除外されなければならない。
【0308】
医学的状態
・少なくとも2年間にわたり再発の証拠を伴うことなく潜在的根治的治療が完了している場合を除き、続発性悪性腫瘍(二次癌)の病歴を有する。
-注:この時間要件は、皮膚の基底細胞癌、皮膚の扁平上皮癌、表在性膀胱癌または上皮内癌(例えば、上皮内乳癌、上皮内子宮頸癌)の根治的切除に成功した参加者には適用されない。
・既知の活動性の中枢神経系転移(すなわち、脳および/または脊髄)および/または癌性髄膜炎を有する。以前に治療された脳転移を有する参加者は参加可能である。ただし、彼らは放射線検査によると安定かつ無症候性であること[すなわち、反復イメージングにより、少なくとも4週間、MRIによる進行の証拠がないこと(反復イメージングは治験スクリーニング中に実施されるべきであることに注意)]、新たなまたは拡大しつつある脳転移の証拠を有さないこと、治験治療開始前4週間以内に評価されていること、ならびに治験治療開始前少なくとも14日間にわたって免疫抑制用量の全身ステロイド治療を中止していることを要する。この適格基準はコホートBには適用されない。
・抗ILT3抗体またはペンブロリズマブの成分および/またはmAbによる治療に対して重度の過敏反応を起こしたことがある。
・いずれかの事前の免疫療法を受けており、グレード3以上のirAEによりその治療が中止された。
・全身療法を要する活動性の感染を有する。
・間質性肺疾患の病歴を有する。
・ステロイドを必要とした(非感染性)肺炎の病歴を有する、または肺炎を現在有する。
・白斑または消散した小児喘息/アトピーを除き、過去2年間に全身治療(すなわち、疾患修飾剤、コルチコステロイドまたは免疫抑制薬の使用による)を必要とした活動性の自己免疫疾患を有する。補充療法(例えば、副腎または下垂体機能不全に対するチロキシン、インスリンまたは生理的コルチコステロイド補充療法)は全身治療の一形態とはみなされず、許容される。
-注:内分泌不全症に対して継続的に補充ホルモン療法を受けている参加者は、治験治療の初回投与前に補充ホルモン療法により関連欠乏症がNCI CTCAEバージョン4のグレード2まで回復している場合には、治験への参加から除外されない。非全身性ステロイドの使用も許容される。
・カポジ肉腫および/または多中心性キャッスルマン病の病歴を有するHIV感染参加者。
・B型もしくはC型肝炎に感染していることが判明しており、またはB型肝炎抗原/B型肝炎ウイルスDNAもしくはC型肝炎抗体およびRNAに関して陽性であることが判明している。活動性C型肝炎は、既知のC型肝炎抗体陽性結果と、アッセイの検出下限を超える既知の定量的C型肝炎ウイルスRNA結果とによって定義される。
-注:地元の保健当局によって義務付けられていない限り、B型肝炎またはC型肝炎の検査は必要ない。
・治療を行う研究者の意見において、治験の結果を混乱させ、治験の全期間にわたる参加者の参加を妨げ、治験薬の投与を危険にし、または有害作用のモニターを困難にして、参加することが参加者の最善の利益にならないようにしうる任意の状態、療法または検査異常の既往歴または現在の証拠を有する。
・治験の要件に協力する参加者の能力を妨げる既知の精神障害または薬物乱用障害を有する。
【0309】
事前/併用療法
・治験治療開始前4週間(緩和放射線の場合は2週間)以内に、治験薬を含む事前の全身性抗癌療法、根治的放射線療法を受けている。
-注:参加者は、事前の療法による全てのAEから、グレード1以下またはベースラインまで回復している必要がある。
-注:コホートDのSTS候補者は、試験治療開始の3週間以上前に1L標準化学療法が中止された場合には、適格でありうる。
・大手術を受けたことがある(治験治療開始前3週間以内)
-注:参加者が大手術を受けた場合、彼らは、治験治療開始前に、介入からの毒性および/または合併症から適度に回復している必要がある。
・治験治療開始前30日以内に生ワクチンの投与を受けている。生ワクチンの例には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水痘/帯状疱疹(水ぼうそう)、黄熱病、狂犬病、カルメット・ゲラン桿菌(BCG)および腸チフスワクチン。注射用の季節性インフルエンザワクチンは一般に不活化ウイルスワクチンであり、許容されるが、鼻腔内インフルエンザワクチン(例えば、FLUMIST)は弱毒生ワクチンであり、許容されない。
・ILT3を標的とする別の物質での事前の治療を受けている。
【0310】
事前/同時臨床試験の経験
・治験薬の治験に現在参加中である若しくは参加している、または治験治療開始前28日以内に治験装置を使用したことがある。
-注:治験の追跡段階に入っている参加者は、前の治験薬の最終投与から4週間経過していれば、参加してもよい。
【0311】
診断評価
・免疫不全の診断を有する、または治験治療開始前7日以内に慢性全身ステロイド療法(プレドニゾン同等物の1日10mgを超える用量)もしくは任意の他の形態の免疫抑制療法を受けている。
-注:眼、吸入、鼻腔内、局所ステロイドまたは局所ステロイド注射のような非全身性ステロイドの断続的使用を要する参加者は治験から除外されない。
【0312】
他の除外事項
・過去5年間に同種異系組織/固形臓器移植を受けたことがある、または移植片対宿主病の証拠を有する。
【0313】
除外基準-コホート固有
・抗PD-1、抗PD-L1もしくは抗PD-L2剤による事前の療法、または他の免疫調節受容体もしくはメカニズムを標的とする事前の療法を受けている。
-注:前記の免疫療法のいずれかを局所性疾患(ステージI~III)に対する治癒目的のネオアジュバントまたはアジュバント療法として受けていた場合には、参加候補者は、12か月以上が経過していれば、適格でありうる。
【0314】
コホートA:TNBC
・治験治療開始の6ヶ月以内にクラスII~IVのうっ血性心不全または心筋梗塞の病歴を有する。
・パクリタキセルの任意の成分またはその賦形剤のいずれかに対する既知の感受性を有する。
・製品ラベルに記載されているパクリタキセルとの併用が禁止されている任意の薬剤の投与を受けている。ただし、治験治療開始前7日以内に投薬を中止してる場合は、除かれる。
【0315】
コホートB:GBM
・癌性髄膜炎を有する。
・最大直径が6cmを超える再発性腫瘍を有する。
・主に脳幹または脊髄に局在する腫瘍を有する。
・多巣性腫瘍、びまん性軟髄膜疾患または頭蓋外疾患の存在を有する。
・ベースラインMRIスキャンで腫瘍内または腫瘍周囲出血の証拠を有する。ただし、グレード1以下であり、少なくとも2回の連続MRIスキャンで術後安定している場合は、除かれる。
・治験治療開始の2週間以内に少なくとも連続3日間、2mg/日を超えるデキサメタゾンまたは生物学的同等物として定義される中用量または高用量の全身性コルチコステロイドによる治療を要する。
・治験治療開始の2週間以内にOPTUNE TTFieldsを受けている。
【0316】
コホートC:PDAC
・治験治療開始の6か月以内にクラスII~IVのうっ血性心不全、脳血管イベント(脳卒中または一過性虚血発作)、不安定狭心症または心筋梗塞の病歴を有する。
・症候性腹水を有する。
・nab-パクリタキセルもしくはゲムシタビンまたはそれらの賦形剤のいずれかに対する既知の過敏症を有する。
【0317】
コホートE:NSCLC
・小細胞肺癌の診断を有する。混合腫瘍の場合、小細胞要素が存在する場合、参加者は不適格である。
・症候性の腹水または胸水を有する。
-注:これらの状態に対する治療(治療用の胸腔穿刺または穿刺を含む)の後に臨床的に安定している参加者は適格である。
・治験期間中に中止できないCYP3A4またはCYP2C8の強力なまたは中等度のインヒビターおよび/または誘導物質を投与を現在受けている。CYP3A4またはCYP2C8インヒビターに関する治験治療開始前の必要な休薬期間は2週間である。CYP3A4またはCYP2C8誘導物質に関する必要な休薬期間は3週間である。
-注:CYP3A4の強力/中程度の誘導物質およびインヒビターの現在の一覧は以下のウェブサイトで見出されうる:www.fda.gov/drugs/drug-interactions-labeling/drug-development-and-drug-interactions-table-substrates-inhibitors-and-inducers。
・アスピリンまたは他のNSAID(1.3g/日以下の用量のアスピリン以外)を5日間(ペルオキシカムのような長時間作用剤の場合は8日間)中断できない。
・葉酸またはビタミンB12の補給を摂取できない、または摂取したくない。
・カルボプラチンもしくはペメトレキセドまたはそれらの賦形剤のいずれかに対する既知の過敏症を有する。
【0318】
抗ILT3抗体の投与
抗ILT3抗体は、治験薬管理手順書に従い、IV注入またはボーラス投与(Q3W)として特定のアームまたはコホートに割り当てられた用量レベルで投与される。パート1アーム2およびパート2のコホートにおいては、抗ILT3抗体は、適用可能であれば、ペンブロリズマブが投与される日に、ペンブロリズマブ注入の完了の後で投与される。プロトコールで指定された範囲外での抗ILT3抗体の投与における変動の理由は参加者のカルテに記載され、適切なCRFに記録されるべきである。治験治療は治療割り当ての3日以内に開始すべきである。全ての治験治療は、全ての投与前治験手順および評価が完了し、結果が研究者または指定された者によって精査された後、各サイクルの第1日に開始される。
【0319】
ペンブロリズマブの投与
ペンブロリズマブは、抗ILT3抗体の前に、Q3Wで30分間のIV注入を用いて200mgの用量で投与される。ペンブロリズマブおよび抗ILT3抗体の両方に関して、施設は、投与のタイミングが、治験薬管理手順書に記載されている継続期間に可能な限り近くなるように、あらゆる努力を払うべきである。
【0320】
パクリタキセルの投与
パクリタキセルの90mg/mを28日ごとの第1日、第8日および第15日にIV注入として投与する。全ての参加者には、承認された製品ラベルおよび/または標準的な慣行に従い、経口またはIVコルチコステロイドおよび抗ヒスタミン薬が事前に投与されるべきである。追加的な前投薬は標準的な慣行に従って行われるべきである。
【0321】
各21日サイクルの第1日に、ペンブロリズマブおよび抗ILT3抗体の注入が完了した後、パクリタキセルが投与される。
【0322】
nab-パクリタキセルの投与
nab-パクリタキセルの125mg/mを28日ごとの第1日、第8日および第15日にIV注入として投与する。nab-パクリタキセルは、承認された製品ラベルおよび/または標準的な慣行に従い投与されるべきである。
【0323】
各21日サイクルの第1日に、ペンブロリズマブおよび抗ILT3抗体の注入が完了した後、nab-パクリタキセルが投与される。
【0324】
ゲムシタビンの投与
ゲムシタビンの1000mg/mを28日ごとの第1日、第8日および第15日にIV注入として投与する。ゲムシタビンは、承認された製品ラベルおよび/または標準的な慣行に従い投与されるべきである。
【0325】
各21日サイクルの第1日に、ペンブロリズマブおよび抗ILT3抗体の注入が完了した後、ゲムシタビンが投与される。
【0326】
ペメトレキセドの投与
ペメトレキセドの500mg/mを35サイクルにわたってQ3WでIV注入として投与する。ペメトレキセドは、ペンブロリズマブおよび抗ILT3抗体の注入が完了した後、カルボプラチンの前に投与されるべきである。参加者は、地域の規制に従い、適切な前投薬(葉酸補給、ビタミンB12補給およびデキサメタゾン予防)を受ける。
【0327】
カルボプラチン投与
カルボプラチンのAUC5mg/mL・分を4サイクルにわたってQ3WでIV注入として投与する。カルボプラチンは、地域の慣行およびラベルに従い、ペメトレキセド投与の直後に投与されるべきである。
【0328】
開示されている内容は、本明細書に記載されている特定の実施形態および実施例によって範囲において限定されるべきではない。実際、記載されているものに加えて、本開示の種々の修飾が前記説明および添付図面から当業者に明らかとなるであろう。そのような修飾は添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれると意図される。
【0329】
本明細書中に引用されている全ての参考文献を、各個の刊行物、データベースエントリー(例えば、GenbankまたはGeneIDエントリー)、特許出願または特許が参照により本明細書に組み入れられると具体的に示されている場合と同様に、参照により本明細書に組み入れることとする。この陳述は、参照により組み入れるという宣誓陳述の直前または直後にそのような引用がない場合であっても、37 C.F.R.§1.57(b)(1)に従い、各個の刊行物、データベースエントリー(例えば、GenbankまたはGeneIDエントリー)、特許出願または特許[それらのそれぞれは37 C.F.R.§1.57(b)(2)に従い明らかに特定されるものである]に関するものであると出願人は意図している。本明細書における参考文献の引用は、該参考文献が関連先行技術であると自認するものではなく、また、それは、これらの刊行物または文書の内容または日付に関して何ら自認するものでもない。
図1A
図1B
図2
【配列表】
2024511977000001.app
【国際調査報告】