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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】低侵襲手術を行うためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20240311BHJP
【FI】
A61B34/35
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556769
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-11-08
(86)【国際出願番号】 US2022071218
(87)【国際公開番号】W WO2022198236
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】63/162,609
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521555616
【氏名又は名称】ヴィルトゥオーソ サージカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100138760
【弁理士】
【氏名又は名称】森 智香子
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリック、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ブルム、エヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ディロン、ニール
(72)【発明者】
【氏名】ブランズ、トレバー
(72)【発明者】
【氏名】アマック、ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】ブランコム、ローレン
【テーマコード(参考)】
4C130
【Fターム(参考)】
4C130AA02
4C130AA04
4C130AA13
4C130AA22
4C130AA33
4C130AA34
4C130AA42
4C130AB01
4C130AD01
4C130AD04
(57)【要約】
低侵襲手術を行うためのシステム10は、保持アーム12と、保持アームインターフェース30と、保持アームインターフェース30上に着脱可能に配置された作動ユニット20と、作動ユニット20の反対側の保持アームインターフェース30上に配置された内視鏡シースアセンブリとを含む。作動ユニット20は、カメラ22、レンズおよび第1および第2の取り外し可能な使い捨てカートリッジ410を受けるように構成されたコンポーネントベイ210を含む。各カートリッジ410は、そこから延びる同心チューブアレイ414を含み、各アレイ414は、少なくとも1つのガイドチューブと、ガイドチューブ内に配置された手術具46とを含む。システム10の様々なコンポーネントには、フェイルセーフ動作を保証し、機器の損傷または患者への危害を防止するための多数のセーフティ機能および通信機能が配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持アームと、
前記保持アームに着脱可能に固定された保持アームインターフェースと、
前記保持アームインターフェースに着脱可能に固定された作動ユニットと、
前記作動ユニットの反対側の前記保持アームインターフェースに着脱可能に固定された、インナーシースおよびアウターシースを備える内視鏡シースアセンブリと、を備える、手術を行うための器具。
【請求項2】
前記保持アームが多関節保持アームを備える、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記作動ユニット上に配置された取り外し可能なカートリッジであって、前記取り外し可能なカートリッジが、前記保持アームインターフェースを通って前記内視鏡シースアセンブリの中へと延伸する同心チューブアレイを備える、取り外し可能なカートリッジをさらに備える、請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記インナーシースの内側に配置されたチャネルであって、前記同心チューブアレイが前記チャネルの内側に位置づけられる、チャネルをさらに備える、請求項3に記載の器具。
【請求項5】
前記保持アームインターフェース上のインターフェースマウントであって、前記インターフェースマウントが、前記保持アームと前記保持アームインターフェースとの間の接続を提供する、インターフェースマウントをさらに備える、請求項4に記載の器具。
【請求項6】
前記作動ユニットが、長手方向軸に沿って前記保持アームインターフェースに対して着脱可能である、請求項4に記載の器具。
【請求項7】
前記内視鏡シースアセンブリが、前記長手方向軸に沿って前記保持アームインターフェースに対して着脱可能である、請求項6に記載の器具。
【請求項8】
前記同心チューブアレイが、
前記長手方向軸に沿って軸方向に可動であるか、または、
前記長手方向軸を中心として角度的に可動であるうちの少なくとも一方である、請求項7に記載の器具。
【請求項9】
前記保持アームインターフェースが、ベースプレートおよびシェルを備え、前記ベースプレートが、回転ジョイントにおいて前記長手方向軸を中心としてシェルに対して角度的に可動である、請求項8に記載の器具。
【請求項10】
前記作動ユニットが、前記回転ジョイントを介して前記保持アームインターフェースに対して角度的に可動である、請求項9に記載の器具。
【請求項11】
前記保持アームインターフェース上に配置されたブレーキであって、前記ブレーキが、前記作動ユニットを前記保持アームインターフェースに対して所望の角度配向で選択的に角度的なロックをするように構成される、ブレーキをさらに備える、請求項10に記載の器具。
【請求項12】
前記保持アームインターフェース上のハンドルをさらに備える、請求項11に記載の器具。
【請求項13】
前記ハンドル上の第1のボタンであって、前記第1のボタンが、前記システムの機能を選択的に動作させるように構成される、第1のボタンをさらに備える、請求項12に記載の器具。
【請求項14】
前記カートリッジが、複数のカートリッジ継手をさらに備える、請求項3に記載の器具。
【請求項15】
前記作動ユニットが、複数の作動継手をさらに備え、各々の作動継手がカートリッジ継手に対応する、請求項14に記載の器具。
【請求項16】
前記カートリッジ上に画定された線形カートリッジスロットと、
各々の作動継手から突出している継手フランジと、をさらに備え、
各々の継手フランジが、前記カートリッジが前記作動ユニットの中に挿入されると、前記線形カートリッジスロット内に受け入れられる、請求項15に記載の器具。
【請求項17】
各々のカートリッジ継手に画定された線形継手スロットをさらに備え、各々のカートリッジ継手が、前記カートリッジが前記作動ユニットの中に完全に挿入されると、対応する継手フランジを受け入れる、請求項16に記載の器具。
【請求項18】
前記作動ユニット上に配置された複数の駆動モータであって、各々の駆動モータが作動継手に連結され、各々の駆動モータが、対応するカートリッジ継手の回転を制御するように動作する、駆動モータをさらに備える、請求項17に記載の器具。
【請求項19】
前記カートリッジ上に配置されたチップセットであって、前記チップセットが、前記カートリッジに関する情報を記憶するように構成されたメモリを備える、チップセットをさらに備える、請求項18に記載の器具。
【請求項20】
前記作動ユニット上のラッチであって、前記ラッチが、前記カートリッジを前記作動ユニットに固定するか、またはそこから取り外すように選択的に動作可能である、ラッチをさらに備える、請求項19に記載の器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術を行うための手術装置および関連する方法に関する。より特定的には、本発明は、同心チューブアセンブリを用いた低侵襲手術のためのツールおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機械ロボットを用いた低侵襲手術は、医学における発展している分野である。低侵襲手術を行うための従来の装置、たとえば内視鏡および切除鏡は、一般的には患者の体内の切開部または自然の開口部から挿入される遠位先端部を含む。遠位先端部は光学レンズを含み、これが体内に置かれると、外科医は遠位先端部に近接した視野を目視することができる。内視鏡は通常、手術室のモニタに視野を表示するためにレンズに取り付けられたカメラを有する。いくつかの用途では、内視鏡は、内視鏡の遠位先端部に設置されたカメラを含む。該装置はまた、装置を通って延伸する狭窄した作業チャネルを含む。1以上の細長い手術具を、作業チャネルを通して挿入し得る。切開装置、バスケット、またはレーザー光学系等の器具が、手術具に含まれ得る。手術具の遠位端は、装置の遠位先端部から突出し、それによって、外科医が手術中に患者の体内におけるツールの操作を視覚的に観察することが可能になる。
【0003】
過去数十年にわたり、手術中にできるだけ最も低侵襲な方法で体内に進入することが、患者に多大な利点をもたらすことがますます明らかになってきている。低侵襲手術とは、大きく開く切開なしに体内に進入するあらゆる外科処置を表現する一般的な用語である。
【0004】
低侵襲手術は腹腔鏡手術を含み、これは、可視化をもたらし、術野を目視するためのチューブ(内視鏡)、および体内の小さなポートを通過する長尺の硬性器具を用いる。従来の腹腔鏡手術では、内視鏡は通常、術野を視覚化するためだけに使用され、ツールはその中を通過しない。ツールは体外で、切開ポートを通して向きを変えられ、手術部位における機器操作を提供する。腹腔鏡下手術におけるツール操作は、体内のポートを通して長尺で硬性のシャフトを旋回させることによって行われる。気腹部、胸腔、骨盤、またはあらゆる他の解剖学的に十分な空間を有する作業容積における手術については、本概念は機器操作を与えるための優れた低侵襲ソリューションを提供することが多い。しかしながら、手術部位が細長いチャネルの下にある場合、これらの長尺で硬性のシャフトを旋回させる能力は低下する。アクセスチャネルがより長く、および/または狭くなると、ツールの操作能力は急激に低くなる。
【0005】
低侵襲手術は、内視鏡手術をさらに含む。腹腔鏡手術では、内視鏡を用いて可視化をもたらすのに対し、内視鏡手術は、手術機器を内視鏡チューブ自体の作業チャネルに通す点において異なる。内視鏡手術中に用いることができる手術機器の例は、はさみ、鉗子、レーザーファイバ、モノポーラ/バイポーラ焼灼術等である。内視鏡には硬性内視鏡および軟性内視鏡の両方があり、硬性内視鏡は、体外から手術部位まで直線状の経路を通る手術に用いられ、軟性内視鏡は、湾曲した解剖学的組織を通る曲がりくねった経路が必要とされる手術に用いられる。硬性内視鏡は現在、神経外科、胸部外科、整形外科、泌尿器科、婦人科等を含むがこれらに限定されないほとんどすべての手術分野で用いられている。硬性内視鏡は現在、全身の手術で用いられているが、欠点がないわけではない。硬性内視鏡の作業チャネルを通して操作するツールは、通常、直線状で硬性のツールであるという点で、腹腔鏡道具に類似している。一般的には、これらのツールもまた、内視鏡に対して2自由度の動作に制限され、これらは軸方向への挿入/後退および回転が可能である。場合によっては、外科医が体外で内視鏡を旋回/傾斜させる能力を有し得るが、これは、内視鏡が動くと内視鏡の視野もそれに伴って動くため、作業を特に困難にさせる。また、外科医は、内視鏡の作業チャネルの大きさの制約に起因して、ほとんどの時間、手術部位に一度に1つの機器しか到達させることができず、両手による双手作業の能力が事実上排除される。このように、一度に1つのツールのみという制限、常に変化する視野、限られた自由度、および内視鏡先端部における機器巧緻性の欠如により、内視鏡手術は特に困難なタイプの低侵襲手術となっている。
【0006】
電気機械手術ロボットは、精度、空間的推論、巧緻性に特に長けているため、手術機器操作を支援する大きな可能性を有し、急速に発展している医療分野である。手術ロボットは世界中で広く適合され、数十万件の手術に利用されてきた。これまでに設計された手術用ロボットシステムのほとんどが、機器操作を補助するものであり、概して旋回式ツールおよび可撓性ツールに分類することができる。旋回式の腹腔鏡式システム、たとえば広範に用いられているda Vinci Xiロボット(Intuitive Surgical社製)は、腹腔鏡ツールと同様に、体内のポートを介して傾けることによって機器操作を得る。体外でツールを傾けたり回転させたりすることが可能ではない手術用途のために、研究コミュニティーのいくつかのグループが、可撓性要素ベースのロボットシステムを開発している。これらのシステムは、多くの場合連続体ロボット、あるいは連続的に曲がる、弾性構造を持つロボットと称される。また、同心弾性チューブで構成された、針サイズの小型連続体ロボットの一種である同心チューブマニピュレータも存在する。同心チューブロボットは、体内において関節を有する小径ロボットを必要とする多くの種類の低侵襲外科的介入において有望視されている。眼球、耳、副鼻腔、肺、前立腺、脳等におえる手術が例として含まれる。これらの用途の多くでは、一般的に、ロボットが人体内で「より狭いコーナー」を曲がり、手術部位で巧緻に作業することを可能にするために、より高い曲率が望ましい。内視鏡手術の文脈において、同心チューブの予備曲率は、マニピュレータが内視鏡の先端にどの程度近づいて作業を行うことができるかを決定し、これは内視鏡手術中には非常に重要である。
【0007】
従来の内視鏡手術では、外科医は通常、一方の手に内視鏡を保持し、他方の手に内視鏡機器を保持するが、このことは外科医が2つの器具を同時に操作することを一般的に不可能するものである。ヒューマンエラーという側面に起因して、外科医が内視鏡機器を別のものと交換する必要があるときは、結果として常に注意を要し、潜在的に危険な内視鏡の動きになる可能性がある。しかしながら、外科医は、特定の状況において、特に物質を精密に把持、操作、および切断しようとする場合、2つの器具を同時に正確に操作する能力を必要とする場合が多い。内視鏡が同時に2つ以上のツールに対応することができる場合であっても、ツールは直線状で互いに対して平行な方向にしか向けることができないため、ツール間の真の協働が妨げられる。外科医は、ロボット手術システムが提供する向上された精度、巧緻性、視覚から多大な恩恵を受けることができるが、そのような従来のシステムでは操作性に限界がある。
【0008】
腹腔鏡および内視鏡処置を行うための従来の手術ロボットは一般的に、その遠位端に配置された手術具を操作するように構成された電気機械アクチュエータに結合されたロボットアームを含む。実際には、ロボットアームおよびアクチュエータは、電子インターフェースを介して制御可能でなければならない。そのようなシステムはソフトウェアベースであり、異なる可動範囲内で動作するようにプログラムされ得る。組織の作業空間は、そのようなロボットシステムの全体的なサイズと比較してかなり小さいため、機器の破損または患者を傷つけることを防止する防護策を確実なものにすることは、ロボット手術システムの設計および動作において非常に重要である。多くの従来の手術ロボットは、十分な安全システムが欠如している。
【0009】
加えて、手術ロボット全体の複雑さ、およびそのようなシステムに伴う個々の部品数に起因して、ロボットシステムと手術野との間に無菌の境界面を維持することが不可欠である。従来の手術ロボットは、動作の容易さおよび無菌環境の両方を確保するための十分な無菌機能が欠落している場合が多い。
【0010】
ロボット手術の別の複雑さは、ロボットを制御する外科医とハードウェアとの間の通信を伴う。たとえば、ロボット手術システムの個々のコンポーネントは、異なるモードで動作し得るが、装置がどのモードにあるかを迅速に識別し、必要に応じて変更を加えることが外科医にとって重要である。多くの従来のロボット手術システムは、そのような情報を操作パネル上でしか提供せず、このことは、外科医は術野から目を離すことを必要とする。
【0011】
そこで、ロボット手術を行うための装置および方法、特に安全システム、無菌アプローチ、電子インターフェースおよびステータスインジケータの改良が要求されている。
【発明の概要】
【0012】
本概要は、以下の詳細な説明でさらに説明される概念の一部を簡略化して提示するために提供される。本概要は、クレームにおける主題の重要な特徴または本質的な特徴を特定することは意図されておらず、クレームにおける主題の範囲の決定を補助するものとして用いられることも意図されていない。
【0013】
低侵襲手術を行うための装置は、保持アームと、保持アームに着脱可能に装着された保持アームインターフェースと、保持アームインターフェースに着脱可能に装着された作動ユニットと、作動ユニットの反対側の保持アームインターフェースに着脱可能に装着されたシースアセンブリと、を含む。
【0014】
該システムは、ロバストな動作を提供し、機器の破損または患者を傷つけることを防止するための多数の安全かつ動作可能な機能を含む。
【0015】
当業者においては、本開示の多数の他の目的、利点および特徴が、以下の図面および好ましい実施形態の説明を検討することにより容易に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】低侵襲手術を行うためのシステムの一実施形態の斜視図である。
図2】低侵襲手術を行うためのシステムの一実施形態の斜視図である。
図3】低侵襲手術を行うためのシステムの一実施形態の部分分解斜視図である。
図4】本開示による保持アームインターフェースの一実施形態の正面斜視図である。
図5図4の保持アームインターフェースの実施形態の背面斜視図である。
図6】本開示による保持アームインターフェースおよびシースアセンブリの一実施形態の部分分解図である。
図7】本開示による保持アームインターフェースの一実施形態の部分分解図である。
図8】本開示による保持アームインターフェースのためのブレーキの一実施形態の部分分解図である。
図9】本開示による保持アーム器具上のハンドルおよびインターフェースマウントの一実施形態の詳細斜視図である。
図10】本開示による保持アームインターフェースの一実施形態の正面詳細斜視断面図である。
図11】本開示による保持アームインターフェースの一実施形態の後面詳細斜視断面図である。
図12】本開示によるシステムの一実施形態の後面斜視図である。
図13】本開示によるカートリッジの一実施形態の斜視図である。
図14】本開示によるシステムの一実施形態の後面斜視図である。
図15】本開示によるシステムの一実施形態の斜視図である。
図16】本開示による医師入力コンソールの一実施形態の斜視図である。
図17】本開示による医師入力コンソールの上部トレイの一実施形態の斜視図である。
図18】本開示による医師入力コンソール上に表示されたグラフィカルユーザインターフェースの一実施形態のブロック図である。
図19A】本開示による、ユーザに位置合わせ不良後の入力制御の再位置合わせ方法を指示するグラフィカルユーザインターフェースの一実施形態の平面図である。
図19B】本開示による、ユーザに位置合わせ不良後後の入力制御の再位置合わせ方法を指示するグラフィカルユーザインターフェースの一実施形態の平面図である。
図20A】本開示による医師入力コンソールハンドルの一実施形態の側面斜視図である。
図20B】本開示による医師入力コンソールハンドルの一実施形態の別の側面斜視図である。
図21】本開示による作動ユニットの一実施形態の上面斜視図である。
図22】本開示による作動ユニットの一実施形態の底面斜視図である。
図23A】本開示による入力制御ハンドルの一実施形態の斜視図である。
図23B】本開示による入力制御ハンドルの別の実施形態の斜視図である。
図24】入力制御の外科医グリップの様々な実施形態を描画する側面図である。
図25】本開示による入力制御ハンドルの一実施形態の断面側面図である。
図26】本開示による入力制御ハンドルの一実施形態の斜視断面図である。
図27A】本開示によるドレープで覆われた医師入力コンソールの斜視図である。
図27B】本開示によるドレープで覆われた入力制御の一実施形態の斜視図である。
図28】本開示による多関節保持アームベースの一実施形態の斜視図である。
図29】本開示による手術台設置型構成での多関節保持アームベースの一実施形態の斜視図である。
図30】本開示による安全管理者のための制御システムの一実施形態の概略ブロック図である。
図31】本開示によるカートリッジ感知サブシステムのある作業要素の一実施形態の概略ブロック図である。
図32】本開示によるドレープで覆われた作動ユニットの斜視図である。
図33A】本開示による本開示による同心チューブマニピュレータの先端部の一実施形態の斜視図である。
図33B】本開示による同心チューブマニピュレータの先端部の別の実施形態の斜視図である。
図34】本開示による光学サポートガイドの一実施形態の斜視図である。
【0017】
本発明の様々な実施形態の製造および使用を以下に詳細に説明するが、本発明は、多種多様な特定の文脈で具現化される多くの適用可能な発明概念を提供することを理解するべきである。本明細書で説明する具体的な実施形態は、単に本発明を製造および用いる具体的な方法を例示するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。当業者においては、本明細書に記載された特定の装置および方法に対する多数の等価物を認識するであろう。そのような等価物は、本発明の範囲内にあり、特許請求の範囲に包含されると考えられる。
【0018】
図中では、明瞭化のため、各図面にすべての参照番号が含まれてはいない。加えて、「上部(upper)」、「下部(lower)」、「側部(side)」、「頂部(top)」、「底部(bottom)」等の位置に関する用語は、図中に示された向きにおける器具を指す。当業者においては、使用時に器具が異なる向きになることを前提とする可能性があることを認識するであろう。
システム全体
【0019】
図1および2を参照すると、本開示は、低侵襲手術を行うためのロボットシステム10を提供する。システム10は、ベース14上に装着された保持アーム12を含む。保持アーム12は多関節保持アームを含み得る。保持アーム12は、ロボットアームを含んでもよく、または受動アームを含んでもよい。保持アーム12は、保持アーム12の操作における補助を提供し得る。たとえば、システム10は、受動的なカウンターバランスを含んでもよく、または重力もしくは動的補償を提供し得る1以上のモータを含んでもよい。いくつかの実施形態では、保持アーム12は、ベース14上ではなく、手術台50に直接取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、ベース14は、垂直/調整可能な自由度を提供し得、それによって、保持アーム12が患者の位置付け方向の配列に補正可能であり得るようにされる。保持アーム12は、手術野の三次元空間、たとえば図1に示すような手術台50の上方における手術器具の位置および角度配向を制御するための複数の自由度を提供するように構成される。保持アーム12は、少なくとも本開示で述べる用途向けに特に構成される。いくつかの実施形態では、保持アーム12は、ベース14に固定された傾斜したウェッジ16に装着される。いくつかの実施形態では、ウェッジ16は、手術台50上での手術器具の位置付けを向上させる。他の実施形態では、保持アーム12は、ベース14に直接装着される。ベース14は定置型であってもよく、または可動であってもよい。
【0020】
作動ユニット20は、低侵襲手術処置を行うための1以上の機器の制御を提供するように、システム10上に位置づけられる。いくつかの実施形態では、作動ユニット20は、内視鏡手術用に構成された同心チューブアセンブリ24を含む。作動ユニット20は、同心チューブアセンブリ24およびそれらに取り付けられたツールを制御し得る挿入可能かつ交換可能な機器カートリッジ410を受容し得る。また、作動ユニット20上には、手術中に同心チューブアセンブリ24の遠位端における術野をディスプレイ60でリアルタイムに観察するためのカメラ22が配置されている。光学系またはテレスコープ260は、同心チューブアセンブリ24および接眼レンズにおけるカメラ22取り付けのためのインターフェースを通して、手術部位への光路および光を提供し得る。さらなる実施形態では、本明細書に開示された特徴は、低侵襲腹腔鏡手術を行うためのロボットシステムに容易に実装され得る。
【0021】
保持アームインターフェース(HAI)30は、保持アーム12に作動ユニット20を接続する。保持アームインターフェース30は、作動ユニット20と保持アーム12との間の機械的連結を含む。いくつかの実施形態では、インターフェースマウント36は、保持アームインターフェース30の上端に配置される。インターフェースマウント36は、保持アーム12の遠位端に位置づけられた対応するアームマウント18と機械的に係合する。いくつかの実施形態では、インターフェースマウント36とアームマウント18との間の係合は、機械的および電気的インターフェースの両方を含む。
【0022】
医師入力コンソール40は、直接または間接的に作動ユニット20に接続される。医師入力コンソール40は、作動ユニット20上に配置された1以上の手術具を制御するように構成された第1および第2の入力制御部42、44を含む。また、いくつかの実施形態では、保持アームインターフェース30は、作動ユニット20と医師入力コンソール40とを連結する1以上の電子インターフェースを含み得る。
【0023】
システム10は、外科手術を行うための精密な制御、安全性、無菌性、および通信を提供するための多数の機能を含む。安全機能の多くは、システムのコンポーネントが使用中または移送中に損傷しないことを保証するために設けられ、他の安全機能は、手術前、手術中、または手術後に患者および医療従事者を保護するために設けられる。本明細書に記載された安全機能は独立しており、個別の機能として、または包括的な手術システムの一部として互いに組み合わせられて採用されてもよい。
【0024】
図2を参照すると、保持アームインターフェース30に装着された作動ユニット20の一実施形態が示される。作動ユニット20は、第1の側壁204と、第1の側壁204から間隔を置いて配置された第2の側壁206とを有するベース202を含む。プラットフォーム208は、第1および第2の側壁204、206の間にわたり、U字型のフレームを形成している。第1および第2の側壁204、206間のプラットフォーム208の上方には、コンポーネントベイ210が画定される。プラットフォームハンドル212は、プラットフォーム208から後方に延伸し、ユーザが使用中に作動ユニット20を手動で再度位置づけることを可能にしている。プラットフォームハンドル212はまた、作動ユニット20と保持アームインターフェース30との係合または係合解除のためにも使用され得る。
【0025】
図3に示すように、保持アームインターフェース30は、本体32と、本体32から上方に延びるブラケット34とを含む。インターフェースマウント36は、保持アーム12上のアームマウント18の取り付けのために、保持アームインターフェース30の上端に配置される。いくつかの実施形態では、インターフェースハンドル38は、本体32とインターフェースマウント36との間の保持アームインターフェース30上に位置づけられる。インターフェースハンドル38は、ユーザに対し、組織作業スペースに対して同心チューブアセンブリ24を手動で操縦するために保持アームインターフェース30を把持するための場所を提供する。
【0026】
保持アームインターフェース(HAI)スライドアウトフェイルセーフ
図2および図3に示すように、作動ユニット20と保持アームインターフェース30との間に、着脱可能なジョイント214が設けられている。このように、作動ユニット20は、保持アームインターフェース30から選択的に切り離され得る。そのような切り離しは、保持アームインターフェース30が保持アーム12にしっかりと固定されたときに生じ得る。このモジュール構成により、作動ユニット20は、輸送中、あるいは外科手術中であっても、保持アームインターフェース30から物理的に係合解除されることが可能になる。たとえば、手術中、患者の組織作業空間から1以上の構造をすばやく引き抜く必要があるかもしれない。作動ユニット20と保持アームインターフェース30との間に解除可能なアタッチメントを設けることによって、作動ユニット20をそのサブアセンブリとともに、患者から離れる方向にすばやく引き出し得る。一実施形態では、作動ユニット20は、ユーザラッチリリース315(図22参照)を含み得る。ユーザラッチリリース315は、作動ユニット20の底部に配置され得る。ユーザは、ユーザラッチリリース315を引いてラッチを解除し、作動ユニット20から保持アームインターフェース30を結合解除し得る。
【0027】
本開示の別の特徴は、長手方向挿入軸26に沿って取り付けまたは切り離しされる作動ユニット20を提供し、これは、チューブアセンブリ24に収容された内視鏡ツールの移動軸と共線的である。作動ユニット20およびその構成部品を、内視鏡軸と同じ長手方向軸に沿って挿入または取り外すことにより、組織作業空間内での左右の動きが最小限になり、周辺組織に対する外傷の可能性が大幅に減少するため、安全性が向上する。長手方向挿入軸26への移動を制限しないあらゆる他の結合解除設計は、より危険である場合があり、患者に対する許容できない危険、または機器の損傷につながる可能性がある。
【0028】
本開示の別の特徴は、電力の有無にかかわらずシステムから係合解除され得る作動ユニット20を提供する。着脱可能なジョイント214は、電力が損失するか、または誤動作が生じた場合に機械的に解除され得る機械的な切断を利用する。この付加的な安全機能は、電力損失中に1以上の手術具が意図せず患者の体内の適当な位置に保持され得るケースを防止することを助ける。
【0029】
いくつかの実施形態では、解除スイッチ216がプラットフォームハンドル212上に位置づけられる。ユーザは、解除スイッチ216を操作して、作動ユニット20と保持アームインターフェース30との間の機械的係合を解除し得る。さまざまな実施形態では、解除スイッチ216は、機械的スイッチまたは電気的スイッチを含み得る。
【0030】
保持アームインターフェース30および作動ユニット20はまた、着脱可能なジョイント214の分離中に、これら二つの間の電気的インターフェースが容易に接続解除され得るように構成される。たとえば、いくつかの実施形態では、保持アームインターフェース30は、作動ユニット20の遠位端上の対応するコネクタを受けるように位置づけられた1以上のピンソケットを形成する電気コネクタ344を含む。作動ユニット20が保持アームインターフェース30から切り離されると、保持アームインターフェース30上の電気コネクタ344は、係合解除動作と同じ移動方向に沿って、作動ユニット20上の対応するコネクタから係合解除される。
【0031】
保持アームインターフェース(HAI)セーフティクリティカル信号
図4~6を参照すると、保持アームインターフェース30は、保持アーム12と作動ユニット20との間に電気機械的な連結を提供する。保持アームインターフェース30は、作動ユニット20を受けるように構成されたインターフェース本体32を含む。ブラケット34はインターフェース本体32から上方に延伸し、インターフェースマウント36は保持アームインターフェース30の上端に配置される。インターフェースマウント36は、アーム12上の対応するアームマウント18に取り付けられる。インターフェースマウント36は、アームマウント18との機械的係合を含み、保持アーム12の遠位端における適所で保持アームインターフェース30を確実に固定する。
【0032】
いくつかの実施形態では、保持アーム12は、インターフェースマウント36との係合を検出するように構成された、アームマウント18上またはその付近に位置づけられた1以上のセンサを含む。そのようなセンサは、保持アームインターフェース30との接触または係合を検出するための、当技術分野で周知の任意の適切な機械的または電気的センサを含み得る。さらなる実施形態では、保持アームインターフェース30は、インターフェースマウント36上またはその付近に位置づけられた1以上のセンサを含む。そのようなセンサは、保持アーム12との接触または係合を検出するための、当技術分野で周知の任意の適切なセンサを含み得る。さらなる実施形態では、第1のセンサが保持アーム12上に配置され、第2のセンサが保持アームインターフェース30上に配置される。第1のセンサは、保持アームインターフェース30との係合を検出するように構成され、第2のセンサは、保持アーム12との係合を検出するように構成される。このように、システム10は、各々が対向構造の存在を独立して検出し得る冗長なセーフティセンサを含む。
【0033】
保持アームインターフェース30、保持アーム12、またはその両方が、保持アームインターフェース30と保持アーム12との間の係合を検出すると、保持アームインターフェースセーフティ信号が生成される。HAIセーフティ信号は、ロボット保持アーム12上の1以上のセーフティリレーによって受信される。保持アーム12がHAIセーフティ信号を検出すると、保持アーム12上のセーフティリレーは、保持アーム12の自律的な動きを防止する。このことは、保持アーム12上の多様な異なる方法で達成され得、保持アーム12の動きを限定するための電気的、ソフトウェアおよび/または機械的操作を含む。このセーフティ機能は、HAIセーフティ信号を利用して、保持アームインターフェース30が保持アーム12に取り付けられたときの状態を検出する。そのような状態が検出された場合、保持アームインターフェース30が取り付けられているかぎりは、保持アーム12は一時的に自律移動が可能ではないようにされる。保持アームインターフェース30が接続解除され、HAIセーフティ信号がそのような切り離しを示すと、保持アーム12は自律移動を再開し得る。
【0034】
加えて、保持アームインターフェース30が保持アーム12に取り付けられていることが検出されているような期間の間、保持アームインターフェース30上の第1および第2の制御ボタン314、316は、インピーダンスモード間で交互に変動する。これらのボタンは、同様に保持アーム12のセーフティコントローラおよびセーフティリレーに直接つなげられている。このことはまた、システム全体のセーフティ機能をもたらす。
【0035】
図5を参照すると、保持アームインターフェース30は、内視鏡の長手方向軸を含み得る第1の平坦面318に対し平行方向への動きを可能にし得る第1の平坦面318を含み得る。保持アーム12の嵌合継手は、同様に平坦な雌型レセプタクルを含み得る。内視鏡は、保持アーム12から結合解除されている間、長手方向軸に沿って移動し得、これによって保持アーム12からの保持アームインターフェース30の安全な結合解除を可能にし得、同時に内視鏡は依然として患者の体内にあり得る。保持アーム12は、たとえば電力が失われている間、停止してブレーキがかかる場合があるため、保持アーム12の動きを必要としないかまたは受動的な方法で、患者の体内から内視鏡を安全に取り外すことが可能であること有利であり得る。保持アームインターフェース30は、第2の平坦面(たとえば、マウントフランジ308上)を含み得、これは、ユーザが保持アーム12から保持アームインターフェース30を結合解除することを可能にし、保持アーム12を、作動ユニット20の重量を保持させることなく重力下でこの第二の平坦面上に静止することを可能にする。この機能は、安全性を向上させ、使いやすさという利益をもたらす。
【0036】
図4~6をさらに参照すると、保持アームインターフェース30は、操作性および安全性を向上させる数多くの特徴を含む。図4に示すように、保持アームインターフェース30は、保持アーム12との機械的および電気的接続を提供するインターフェースマウント36を含む。いくつかの実施形態では、インターフェースマウント36は、ねじ構成304を有する回転カラー302を含む。電気的インターフェース310は、ねじマウントの上方に、保持アーム12上の対応する電気接点と係合するように位置づけられる。いくつかの実施形態におけるマウントフランジ308は、いくつかの実施形態におけるアームマウント18上の対応する構造との機械的な係合を提供するためにマウントから横方向に延伸する。
【0037】
いくつかの実施形態では、インターフェースハンドル38は、インターフェースマウント36の下方に位置し、指溝317を有するグリップ領域を含む。いくつかの実施形態では、インターフェースハンドル38は、緩衝材料、たとえばプラスチック、発泡体またはゴムのグリップを含む。インターフェースハンドル38は、保持アームインターフェース30の手動操作または再位置づけを可能にするためのアーム12の解除等の異なる制御機能のために構成され得る第1および第2の制御ボタン314、316を含む。また、異なる実施形態では、第1および第2のボタン314、316は、本装置の他の機能を制御し得る。ブラケット34は、インターフェースハンドル38を本体32に接続する。
【0038】
シース着脱
本体32は、その近位側で作動ユニット20と着脱可能に係合し、患者に面するその遠位側でチューブアセンブリ24と着脱可能に係合するように構成される。シースマウント320は、本体32の遠位側において、患者に面し、かつ作動ユニット20から離れるように配置される。シースマウント320は、保持アームインターフェース30と、内視鏡チューブおよび機器、インナーシースおよびアウターシースの挿入および後退を案内する内視鏡チャネルを収容するチューブアセンブリ24との間に着脱可能なジョイントを提供する。シースマウント320は、すばやく解除され得る解放可能な機械的係合を提供し、チューブアセンブリを長手方向挿入軸26に沿って切り離し、かつ取り外すことを可能にする。
【0039】
図6を参照すると、インナーシース80は、保持アームインターフェース30上のシースマウント320と機械的に係合するインナーシースラッチ82を含む。いくつかの実施形態では、インナーシースラッチ82は、シースマウント320上にスライドし、ロック位置内へと回転する。このように、インナーシースラッチ82は、シースマウント320とインナーシース80との間に堅固な連結および封止を形成する。インナーシース80は、長手方向挿入軸26に沿ってシースマウント320上に挿入され、これによって、構成要素の移動が共通軸に制限されるため、付加的なセーフティ対策を提供する。
【0040】
アウターシース90はインナーシース80上をスライドし、アウターシースラッチ92は、インナーシースラッチ82に係合してアウターシース90をインナーシース80に固定し、これによって、いくつかの実施形態では、インナーシース80とアウターシース90との間に堅固な連結および封止が形成される。一実施形態では、内視鏡シースアセンブリは、インナーシース80とアウターシース90とを含む。
【0041】
チャネルアセンブリ70は、内視鏡機器を収容する同心チューブアセンブリ24を各々受ける第1および第2のチューブ状チャネル76を含む。チャネルアセンブリ70は、近位端72および遠位端74を含む。チャネルアセンブリ70は、長手方向挿入軸26に沿って、保持アームインターフェース30の通路を通ってインナーシース80に挿入され得る。これによって、構成要素の移動が共通軸に制限されるため、付加的なセーフティ対策を提供する。
【0042】
シースと保持アームインターフェース30との間に着脱可能なインターフェースを設けることにより、より安全な構成が達成される。シースが作動ユニット20または保持アームインターフェース30に永続的に固定されていると、ロボットおよび作動ユニット20のさらなる大きさに起因して、患者へのツールの挿入はより危険かつ困難なものとなるであろう。本開示は、アウターシースの手動による挿入と、作動ユニット20の残部からのインナーシースの結合解除とを許す実施形態を提供する。また、シースの結合解除は、無外傷挿入中、既存の従来の機器の使用を可能にし得、ロボットシステム10を患者に挿入するための特別なツールの必要性を取り除き得る。
【0043】
回転自由度
本開示の別の特徴は、長手方向挿入軸26を中心とした回転自由度を有するロボット手術を行うためのシステムを提供する。図7を参照すると、保持アームインターフェース30は、本体32、ブラケット34、インターフェースハンドル38およびインターフェースマウント36に対する作動ユニット20の回転を可能にする回転ジョイント324を含む。言い換えると、作動ユニット20およびチューブアセンブリ24は、長手方向挿入軸26を中心として回転させ得、一方で保持アームインターフェース30の残部は保持アーム12に堅固に固定されたままである。この回転自由度により、内視鏡を長手方向軸を中心として回転させることが可能であり、外科医はロッドレンズ上の視野方向が非ゼロである状態で解剖学的構造を見回すことが可能になる。
【0044】
回転ジョイント324は、保持アームインターフェース30の近位側にベースプレート330を含む。ベースプレート330は、本体32上のアウターシェル350に対して回転し得る。アウターシェル350は、平坦な後面を有する円錐形状を含む。硬性のファンネルハウジング352が本体32の内側に位置づけられ、ベースプレート330は、1以上の留め具を用いてファンネルハウジング352に取り付けられる。ファンネルハウジング352とアウターシェル350との間には、第1のベアリング352が配置され、それによって、ファンネルハウジング352がアウターシェル350の内側で長手方向挿入軸26を中心として回転し得ると同時に、アウターシェル350が静止を維持するようにされる。このように、ベースプレート330がファンネルハウジング352に固定されると、ベースプレート330もまた、ファンネルハウジング352の回転と同時に長手方向挿入軸26を中心として双方向27に回転し得る。作動ユニット20およびその対応するコンポーネントが、マウントポスト340a、340bおよび底部ラッチ346を介してベースプレート330に固定されると、作動ユニット20もまた、ベースプレート330およびファンネルハウジング352とともに回転し、これによって、チューブアセンブリを通って組織作業空間に延伸するカメラレンズおよび内視鏡同心チューブアレイの回転が可能になる。
【0045】
オペレータが、保持アームインターフェース30上の回転ジョイント324を介して、作動ユニット20を所望の角度配向に回転させる場合、新たな角度配向を一定時間の間維持することが所望される場合がある。これを達成するために、本開示は、ベースプレート330を本体32に対して所望の角度配向でロックすることを可能にするブレーキ334を設ける。ブレーキ334は、図8に示すブレーキピン339に取り付けられたブレーキノブ336を含む。ブレーキハウジング338はベースプレート330に固定され、ブレーキピンオリフィス337は、ブレーキピン339がベースプレート330に面する本体32の表面351上に画定された対応するブレーキピンソケット358に係合するように選択的に延伸させることを可能にする。ブレーキ334が係合されると、ブレーキピン339はブレーキピンソケット358内に延伸し、これによって、ベースプレート330が所望の角度配向でロックされる。ブレーキ334は、ブレーキノブ336を押して捻る動きで操作し、それによって、ブレーキピン339をブレーキピンソケット358から引き抜くことによって解除され得る。
【0046】
いくつかの用途では、作動ユニット20の自由な回転を制限し、それによって、ブレーキ334が係合解除されたときに装置が長手方向挿入軸26を中心として自由に旋回し得ないようにすることが望ましい。ベースプレート330の自由な角度回転に対してある程度の抵抗を与えるために、角度付き回り止めアセンブリが設けられる。角度付き回り止めアセンブリは、本体32の後方指向面351上に画定された複数の角度付き回り止め凹部359を含む。いくつかの実施形態では、各々の角度付き回り止め凹部359は、ブレーキピンソケット358と角度的に位置合わせされ、それによって、ブレーキピン339が各角度位置でブレーキピンソケット358と位置合わせされて偏るようにされる。
【0047】
図10及び図11を参照すると、角度付き回転止めアセンブリ374は、本体32の外周の周りに円周方向に配置され、多数の所定の角度止めを画定している。ベースプレート330がシェル350に対して回転すると、回転止めボールまたは回転止めポストがシェル350に向かって偏り、対応する凹部359の中にスライドする。回転止め構造によって付与される力は、ベースプレート330をシェル350に対してロックするのではなく、むしろアセンブリの非限定的な回転を制限する一方で、ブレーキピン339とブレーキピンソケットとの容易な位置合わせを可能にするように動作させる一時的な係合を提供するように構成される。
【0048】
いくつかの実施形態では、角度ロックプランジャが、ソレノイドまたは別の作動機構によって提供され得る。角度ロックプランジャが作動する実施形態では、この角度自由度をロックまたはロック解除するためのユーザの入力部が、作動ユニット20上に遠隔配置されてもよい。一実施形態では、図21を参照すると、角度回転自由度をロック解除するための1以上のボタン300a、300bは、作動ユニット20の側壁204、206上に位置し得る。いくつかの実施形態では、制御アルゴリズムは、この自由度をロック解除するために、複数のボタン300a、300bが同時に押し下げられること、たとえばボタン300aおよび300bが同時に押圧されることを必要とする場合がある。これにより、使用中に誤ってこの自由度が解除されることがないようなさらなる安全対策がもたらされる。
【0049】
また、図10および11に示すように、回転ジョイント324は、ファンネルハウジング352が、本体32の近位側の第1のベアリング354によって支持され、かつ本体32の近位側の第2のベアリング370によっても支持されるように構成される。このように、ファンネルハウジング352は、揺れまたは横方向の動きなしに、長手方向挿入軸26を中心として軸対称に回転し得る。
【0050】
ファンネル360は、図5に示すベースプレート330上のアクセス開口部332を介して、長手方向挿入軸26に沿ってファンネルハウジング352の中に挿入される。ファンネル360は、第1および第2のテーパ状チャネルを含み得、これは手術具を収容する同心チューブアセンブリを、長手方向に向かってチャネルアセンブリ70の中へと挿入させ、患者に向かってチューブアセンブリ24の長さに沿って挿入されることを可能にする。第1および第2のチャネル362、364は、チャネルが患者に向かって進むにしたがって狭くなり、それによって、各同心チューブアセンブリ24を対応するチャネルに中心合わせさせるテーパを各々含む。ファンネル360の遠位端は、各々が対応するチューブ状チャネルアセンブリ70を受けるように寸法決めされた第1および第2のチャネルソケット366、368を含む。インナーシース80は、ファンネル360の遠位端上にスライドし、シースマウント320に係合するように構成される。シースマウント320は、ファンネルハウジング352の前方端に堅固に固定され、それによって、ベースプレート330がシェル350に対して回転すると、前方の回転ジョイント372においてシースマウント320がファンネルハウジング352の回転とともに回転するようにされる。ファンネル360の後端にはファンネルラッチ361が配置され、ファンネル360を保持アームインターフェース30に対して軸方向に固定する。
【0051】
作動ユニット20が回転ジョイント324を中心として、保持アームインターフェース30に対して回転したとき、外科医がつねに角度回転の方向および度合いを理解するように、角回転の度合いを指標化することが望ましい。このことを達成するために、本開示は、いくつかの実施形態において、保持アームインターフェース30上に、シェル350に対するベースプレート330の角度位置を検出する角度センサを設ける。角度センサは回転信号を提供し、回転信号を表すグラフィックインジケータがディスプレイ60上に表示される。いくつかの実施形態では、インジケータは、保持アームインターフェース30に対する作動ユニット20の回転の方向および度合いを示すコンパスを含む。
【0052】
平頭カートリッジインターフェース
図12~13を参照すると、本開示は、カートリッジ410の遠位端から延伸する同心チューブアレイ414を含む取り外し可能な機器カートリッジ410を提供する。各々の同心チューブアレイ414は、手術具を方向づけるための1以上のチューブと、手術中にチューブを通してチューブアセンブリ24の遠位端から患者の体内へと延伸する1以上の手術具46とを含む。各々のカートリッジ410は、同心チューブアレイ414内に収容された固有の手術具46を備えて構成される。手術具46および同心チューブアレイ414内の1以上の同心チューブは、各カートリッジ410内の一組のギア連結部を介して個々に操作され得る。たとえば、同心チューブアレイ414内のガイドチューブは、カートリッジ410に対して軸方向に並進され得、またカートリッジ410に対してその長手方向軸を中心として回転させ得る。同様に、ガイドチューブの内側に収容された手術具46は、独立して軸方向に並進させ得、また回転させ得る。
【0053】
各々のカートリッジ410は、第1、第2、第3、第4および第5のカートリッジ継手インターフェース420、422、424、426、428を含む複数の独立したカートリッジ継手インターフェースを含む。各カートリッジ継手インターフェースを回転させて、同心チューブアレイ414の個々の自由度を制御し得る。たとえば、第1のカートリッジ継手インターフェース420を用いて、ガイドチューブの軸方向の並進を制御し得る。第2のカートリッジ継手インターフェース422を用いて、ガイドチューブの回転を制御し得る。第3のカートリッジ継手インターフェース424を用いて、手術具46の軸方向の並進を制御し得る。第4のカートリッジ継手インターフェース426を用いて、手術具46の回転を制御し得る。これらは単なる例であり、各カートリッジ410は、同心チューブアレイ414において採用される手術具46のタイプによって、カスタマイズされた用途向けに構成されてもよい。
【0054】
各カートリッジ継手インターフェースは継手スロット432を含み、カートリッジ410はカートリッジスロット430を含む。各々の継手スロット432がカートリッジスロット430と位置合わせされると、カートリッジ410の長さに沿って連続的な線形スロットが形成される。しかしながら、個々の継手スロット432がカートリッジスロット430に対し位置合わせ不良である場合、カートリッジ410の長さに沿った連続的な線形スロットが遮断される。
【0055】
使用中、各々のカートリッジ継手インターフェースは回転によって制御される。図12を参照すると、作動ユニット20は、コンポーネントベイ210内に第1のカートリッジスロット220と第2のカートリッジスロット230とを含む。第1のカートリッジスロット220は、図13に示す、各カートリッジ外面に1以上のカートリッジフランジ438を含む対応するダブテールトラック436に係合するように構成されたダブテールトラックを含む第1のカートリッジトラック222を含む。使用中、カートリッジ410は、その同心チューブアレイ414が第1のファンネル362の中へと挿入されて前進するように位置合わせされ、同心チューブアレイ414をファンネル360の中へと供給させ、長手方向軸に沿って組織作業空間に向かってチューブアセンブリ24内に供給させるようにされ得る。カートリッジ410およびチューブアレイ414が前進すると、カートリッジ410上のダブテールトラック436は、第1のカートリッジスロット220の第1のトラック222の中へとスライドする。
【0056】
カートリッジ継手スロット432がカートリッジスロット430と位置合わせされている場合、カートリッジ410は、この位置から所望の位置へと前進のみを続け、カートリッジの長さ方向に沿って遮るものがないスロットを形成し得る。これは、作動ユニット20が、カートリッジ継手420、422、424、426、428に各々対応する複数の作動継手226を含むためである。たとえば、第1の作動継手226は、第1のカートリッジスロット220の中へと突出している線形フランジ228を含む。平頭の線形フランジ228は、カートリッジ410がそのトラックに沿って前進すると、カートリッジスロット430内をスライドし、さらに各カートリッジ継手スロット432内をスライドするような寸法にされる。しかしながら、線形フランジ228が、位置合わせ不良であるカートリッジ継手に到達した場合、カートリッジ410は、それ以上トラックに沿って進むことが許されない。この安全機能が、同心チューブアレイ414に対する初期状態に向けて正しく構成されていないカートリッジの挿入を防止する。たとえば、各同心チューブアレイ414は、遠位端に対し所望される初期状態を有する。このことは、同心チューブアレイ414が引っ掛かったり損傷したりすることなくチューブアセンブリ24を通して挿入されることができることを確実にするためであり、また、あらゆる手術具46がその初期状態において後退位置にあることを確実にすることによって患者の安全を確実にするためである。しかしながら、カートリッジ継手が不注意で回転させられた場合、そのような回転は、同心チューブアレイ414のその所望される初期状態からの位置合わせ不良を生じさせるおそれがある。本開示は、カートリッジ継手と作動継手との間の平頭なフランジの位置合わせを提供し、いずれかの継手側が、初期状態から位置合わせ不良が生じた何らかの部材を1つでも有する場合、挿入できないようにする。
【0057】
図12をさらに参照すると、いったんカートリッジ410がそのカートリッジスロット内に完全に挿入されると、カートリッジ前方端部416は、さらなる前方への移動を制限する移動停止位置に達し、カートリッジは、カートリッジラッチ418を用いて適所にロックされる。カートリッジラッチ418は、第1のトラック222上の対応するラッチに係合し、それによって、カートリッジを適所に機械的に固定する。手術中、カートリッジ410は、カートリッジラッチ418を解放し、カートリッジを作動ユニット20から後方に引っ張って離すことによって、作動ユニット20から後退させ得る。
【0058】
図14を参照すると、各カートリッジスロット220、230は、隣接する側壁204、206で収容された対応するモータパックを含む。カートリッジ410が作動ユニット20に正しく設置されると、各々の作動継手が対応するカートリッジ継手に係合し、それによって、各々の継手フランジ228がカートリッジ410上の対応するカートリッジ継手スロット432に受けられるようにされる。この位置から、第1および第2の側壁204、206上の第1および第2のモータパックの各々において独立した駆動モータを動作させて、係合された継手の回転を開始させ得る。一例として、図14では、カートリッジ410は、第2のカートリッジスロット430に設置されている。第2の側壁206内部に収容されたモータパック446は、別個の駆動モータを含み、各々の駆動モータは個々の継手に対応する。各駆動モータは、特定の継手を制御するように独立して動作し得る。各継手は、ギアアセンブリ448を介して、同心チューブアレイ414内のコンポーネントを駆動する。作動継手226の回転を精密に制御することによって、カートリッジ継手の精密制御が達成され、このことは、ギアを介して、同心チューブアレイ414内部の個々のコンポーネントの所望かつスケールダウンされた動きにつながる。
【0059】
電気外科インターフェース
一実施形態では、機器カートリッジ410は、同心チューブアセンブリ414を通して電気外科用プローブを送出し、手術部位で組織を切除および凝結させることができる。これらのプローブは、単極または双極であってもよく、流体媒体または空気媒体中で動作し得る。バイポーラプローブは、回路の両側が同じ機器に設けられた生理食塩水中でバイポーラとして作動してもよく、または2つの機器がバイポーラ回路の片側を各々備えてもよく、それによって切除経路が機器の間にあるようにされ得る。電気外科用機器は、電気外科ジェネレータに直接取り付けられたフットペダルを用いて作動させることができる。このジェネレータは、ロボットシステム10の外部にあってもよく、またはシステム10に含まれていてもよい。フットペダルは、ベース14または医師入力コンソール40に取り付けられていてもよい。フットペダルは、ケーブルを経由して電気外科ジェネレータに伝わる制御信号を生成し得る。システム10は、第1または第2の入力制御42、44を通して、あるいはシステム10に取り付けられたフットペダルを介して、あるいは電気外科ジェネレータに直接取り付けられたフットペダルを介して、電気外科手術を作動させることができるように構成され得る。
【0060】
平頭インターフェースのフェイルセーフ使用
カートリッジスロット平頭インターフェースの使用に関連する1つの問題は、カートリッジ継手のいずれかがカートリッジスロット430と位置合わせ不良である場合、カートリッジが取り除かれない場合があることである。使用中、継手が回転されると、作動ユニット20に対する電力損失が、継手がカートリッジスロット430と位置合わせされず、カートリッジを取り外す必要があるというシナリオを引き起こす可能性がある。このことが外科手術中に発生した場合、患者にとって危険である可能性がある。
【0061】
本開示は、継手が位置合わせされていない場合であっても、各カートリッジの取り外しを可能にするフェイルセーフ機構を提供する。たとえば、各カートリッジトラックは、着脱可能なダブテールベース450を含む。カートリッジ410が、その対応するカートリッジトラック222、232に設置されると、カートリッジ410が継手を位置合わせさせることなく直ちに取り外されなければならない場合、トラック解放スイッチ452を動作させて、作動ユニット20から着脱可能なベース450を直ちに解放し得る。各カートリッジがベース450とダブテール構造で係合しているため、カートリッジ410およびベース450は、1つの取り付けユニットとして一緒に解放される。この安全機能は、作動ユニット20に対する電力が失われ、カートリッジを取り外さなければならないケースにおけるフェイルセーフをもたらす。
【0062】
カートリッジ識別
いくつかの実施形態では、各カートリッジ410は、カートリッジの適切な位置づけおよび識別を検証するための1以上の装置を含む。たとえば、図13に示すように、カートリッジ410は、カートリッジに固有の情報がプログラムされた組み込み型カートリッジチップセット441を含む。カートリッジチップセット441は、特定のカートリッジを識別する情報を含み、カートリッジID番号、カートリッジ製造情報、カートリッジ滅菌情報、手術具46およびガイドチューブ構成等の同心チューブアレイ414に関する情報等を含むがこれらに限定されない。また、各カートリッジチップセット441は、カートリッジの先行使用に関する情報を含んでもよい。いくつかの実施形態では、各カートリッジチップセット441は読み取り専用メモリを含んでもよく、他の実施形態では、各カートリッジチップセット441は読み取りおよび書き込み機能を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、各カートリッジチップセット441は、カートリッジに関する情報を記憶するように構成された無線周波数識別(RFID)、(電気的消去可能プログラマブル読出し専用メモリ)EEPROM、または近距離無線通信(NFC)タグ装置を含む。各カートリッジチップセット441に記憶された情報は、1以上の通信インターフェース440を介して、作動ユニット20に通信され得る。たとえば、いくつかの実施形態では、カートリッジ410は、第1および第2のカートリッジ通信インターフェース440a、440bを含む。各通信インターフェースは、作動ユニット20上の対応する回路との通信を可能にする。各カートリッジチップセット441から得られた情報は、作動ユニット20または遠隔したプロセッサによって処理される。そのような情報は、カートリッジが適切に設置されているか、または適切なカートリッジが設置されているかを判断するために用いられることができる。カートリッジ通信インターフェースを通して得られた情報がエラーを明らかにした場合、システム障害が発生するおそれがあり、障害が修正されるまでシステムは動作可能にならない。
【0064】
いくつかの用途では、各カートリッジ410は、カートリッジが一度のみ用いられて廃棄され得るように、チップセット441を介してプログラムされる。以前に使用されたことがあるカートリッジが作動ユニット20に設置された場合、システム障害が発生し、カートリッジを使用し得ない。
【0065】
光学サポートガイド
図12および図14を再度参照すると、保持アームインターフェース30およびチューブアセンブリ24とロッドレンズとの正しい位置合わせを確実にするために、光学サポートガイド260が設けられている。光学サポートガイド260は、チューブアセンブリ24の長さに沿って移動するロッドレンズ266の挿入場所を画定し、組織作業空間および手術具46の観察をリアルタイムで提供する。光学ガイドサポート260は、第1および第2のカートリッジスロット220、230の間に位置する。光学ガイドサポート260は、作動ユニット20上のプラットフォーム208に固定された剛性スタンドオフに装着された中空のチューブを含む。第1および第2のカートリッジトラック222、232は角度を有し、トラック間に間隙空間を形成している。第1および第2のカートリッジトラックの角度を有する向きによって提供されるこの間隙は、カメラおよびレンズを位置づけるための空間を提供する。第1および第2のカートリッジトラック222、232が角度を有する向きを有していない場合、カメラおよびレンズを位置づけるための十分な余地が取れないであろう。しかしながら、第1および第2のカートリッジトラック222、232が平行な構成で間隔を置かれている場合、各同心チューブアレイをその対応するファンネルチャネルに向けて挿入することはほぼ不可能であろう。いくつかの実施形態では、第1および第2のカートリッジトラック222、232は各々、中心長手方向軸に対して約5~約30°の間の角度を有する。図14に示すように、レンズ開口部264はファンネル内に画定され、ロッドレンズは、光学サポートガイド260を通ってレンズ開口部264の中へと挿入され得る。光学サポートガイド260の口径は、レンズ開口部264と、ファンネルを通して画定された対応する線形レンズチャネルとに軸方向に位置合わせされる。図34を参照すると、いくつかの実施形態では、光学サポートガイド260には、光学系を手動で調整し、適所にロックすることを可能にする手動調整機能200が設けられている。いくつかの実施形態では、この調整機能200は、光学サポートガイド260上に締め付ける蝶ネジを含み得る。
【0066】
視覚制御および調整
いくつかの実施形態では、光学系システムは、一体型の照明を有するCMOSまたはCCD技術等の「チップ先端」撮像センサを利用し得、これにより、カメラ22またはテレスコープ260を取り除き得る。1以上の実施形態では、撮像センサは、同心チューブアセンブリ24の先端に取り付けら得、それによって、処置中に外科医の視野を動的に変えることが可能になる。これは、第3の同心チューブマニピュレータによって行われてもよい。いくつかの実施形態では、ロボットシステム10は、光学系システム、すなわちテレスコープ260または画像センサのいずれかの作動を提供し得、それによって、外処置中に科医の視野を動的に変え得るようにされる。外科医の視野を変えることは、医師入力コンソール40における入力を介した外科医の直接制御の下であってもよいし、または制御アルゴリズムが、第1または第2の入力制御42、44において伝達する外科医の機器の移動に応答して、画像センサを動かしてもよい。これは、機器、または機器間の点もしくは領域の追跡を可能にする「アイ・イン・ハンド」技術を含み得る。
【0067】
ステータスライト
いくつかの実施形態では、作動ユニット20および保持アームインターフェース30は、光パターン、光色、光持続時間に基づいてユーザに情報を提供するステータスライトを各々含む。たとえば、図14に示すように、第1のステータスライト272は、第1のカートリッジスロット220が第1のカートリッジを受ける準備ができていることを示し得、第2のステータスライト274は、第2のカートリッジスロット230が第2のカートリッジを受ける準備ができていることを示し得る。また、そのような光は、カートリッジ、モータ、または継手に関して障害が発生した場合を示し得る。
【0068】
図15を参照すると、保持アーム12上のアームマウント18上には、アームライト280が配置されている。アームライト280は、いくつかの実施形態では、アームマウント18の周縁に向けられたライトのリングを含む。アームライト280は、システムの異なる動作状態または故障状態を示すように、異なる色で点灯し得る。アームライト280の場所に起因して、オペレータは、システムの状態に関し即座の理解を得るように、アームライト280を視覚的に観察し得る。いくつかの実施形態では、アームライト280は、保持アーム12のインピーダンスモードを示すように構成される。そのようなモードは、内視鏡軸モードを示す第1の色、安定した保持モードを示す第2の色、および自由運動モードを示す第3の色を含むことができる。そのような視覚的フィードバック機構は、さらなる人的要因の安全機能を提供する。
【0069】
いくつかの実施形態では、ステータスライト272、274はまた、作動ユニット20を患者の体から安全に取り外すことが可能であるときを示すためにも用いられてもよい。外科医または手術室のスタッフが、患者から作動ユニット20および内視鏡の全体を取り外す前に、マニピュレータを完全に後退させることを忘れてしまう可能性がある。マニピュレータを後退させていなかった場合、この工程中に患者を負傷させる可能性がある。作動ユニット20上の1以上のステータスライト272、274は、作動ユニット20を安全に取り外すことができるタイミングを示し得る。この情報は、手術室のスタッフおよび外科医のトレーニングの一部として含まれてもよい。さらに、(図17に描画されているように)作動ユニット20上のステータスライト272、274または医師入力コンソール40のライトインジケータ106は、いったん挿入された機器カートリッジ410がロボットシステム10によって認識されると、挿入された機器カートリッジ410の色と一致するように色を変えてもよい。機器カートリッジ410の色は、ツール固有であってもよく、このステータスライト272、274またはインジケータライト106の変更は、システム10が正しい機器を認識したフィードバックをユーザに提供し得る。最終的には、電気外科用機器カートリッジ410の作動中に、ステータスライト272、274またはインジケータライト106が黄色または青色に変化させてもよい。黄色は、電気外科的切除について認識される色であってもよく、青色は、電気外科的凝結について認識される色であってもよい。1以上の実施形態では、他の色が使用されてもよい。これは、システム10が期待されているように挙動しており、システムのあらゆる不正な動作のユーザによる検出をより容易にすることを可能にするフィードバックを提供し得る。いくつかの実施形態では、これらのステータスライト機能は、より安全なシステム10を提供し、システムの状態についてユーザのさらなる認識を可能にする。
【0070】
埋め込み型モータ制御
図14を再度参照すると、本開示の別の特徴は、作動ユニット20の統合型モータ制御およびオンボードの安全コントローラハードウェアを有する作動ユニット20を含むシステムを提供する。手術を行うためのいくつかの従来のロボットシステムは、通信ケーブルを介してアクチュエータに接続される遠隔モータ制御および安全コントローラハードウェアを含む。しかしながら、本システムでは、各カートリッジに対して複数の自由度制御が提示されることに起因して、そのような従来の構成は実現不可能である。本開示は、アクチュエータにオンボードで収容されたモータ制御および安全制御装置ハードウェアを含むシステムを提供する。
【0071】
グリップツール解放
いくつかのカートリッジは、組織をグリップまたは把持するために作動させることができる手術具46を採用し得る。そのような機器は、切除装置、グリッパ装置、鉗子、またはバスケットを含む。グリップツール46が組織と係合し、動力損失が生じた場合、グリップツール46を組織から手動で解放し、それによって、外傷を引き起こすことなくツール46を後退させることができるようにする必要があるであろう。本開示は、電力を失った場合にグリップを解放することができるような機械的グリップ解放を含むグリップ機構カートリッジを提供する。いくつかの実施形態におけるグリップ解放は、グリップを解放する手動で引き込み可能なピンを含む。グリップツール46カートリッジをグリップするための多数の他の好適な機械的グリップ解放機構が採用されてもよい。
【0072】
保持アームインターフェース
上述のように、保持アームインターフェース30は、保持アーム12と作動ユニット20との間の機械的および電気的連結を含む。保持アームインターフェース30は、手術システムにおいて単独で、または他の機能と組み合わせて用いられ得る数多くの特徴で構成される。また、保持アームインターフェース30は、内視鏡シースアセンブリおよび作動ユニット20を含むさまざまなコンポーネントのモジュラー取り付けを可能にすることにより、手術野における無菌性を提供するように構成される。
【0073】
継手制限およびツール先端安全制限
本開示は、患者の負傷または装置の損傷のリスクを低減するための多数の安全機能を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、手術具46および同心チューブアレイ414の可動範囲に対するソフトウェアベースの制限を利用するシステムを提供する。そのようなソフトウェアベースの制限は、実際に装置によって機械的に達成され得る可動範囲が、プログラムされたフィールドを超えて拡張しているにもかかわらず、駆動継手が、組織作業空間内の任意のチューブアレイ414またはツール46を所定の範囲を超えて過度に拡張させることを防止する。制御ソフトウェアを作業空間内のチューブアレイ414およびツール46の可動範囲に制限を加えるようにプログラムすることによって、手術中の周辺組織への不注意による損傷を防止するための安全係数が得られ得る。
【0074】
ソフトウェアベースの制限に加えて、カートリッジ自体が、チューブアレイ414およびツール46に利用可能な移動範囲に対するハードウェアベースの制約を含む。たとえば、ギア駆動部448は、各チューブアレイ414およびツール46に加えられ得る可動範囲の制限のために、駆動ギア上に機械的な停止部を含む。
【0075】
チューブアレイ414およびツール46のための作業空間を画定する別の変数は、カメラ22およびロッドレンズ内視鏡の視野を含む。ロッドレンズは、チューブアセンブリ24の遠位端における視野を提供する。いくつかの実施形態では、システムは、チューブアレイ414およびツール46の動きをレンズの視野内で視認できる空間に制約するためのソフトウェアおよび/またはハードウェアベースの制限によって構成される。チューブアレイ414またはツール46が視野を越えて延伸しようとした場合、エラー障害が生成され、可動範囲が直ちに規制されて、視野外へのチューブアレイ414またはツール46の通過を防止する。
【0076】
外科医作業空間インターフェース
図16および17を参照すると、一実施形態では、医師入力コンソール40は、外科医にインターフェースを提供する。このインターフェースは、スクリーン102、1以上のボタン104、スピーカ、またはライトインジケータ106を含み得る。スクリーン102は、タッチスクリーンを含んでもよく、かつドレープを通して操作可能であってもよく、システム状態、外科処置継続時間、保持アーム12の状態を表示し得、または、いずれの機器がシステムの左側にあるか、もしくは機器の右側にあるかを示し得る。スクリーン102上に表示され得るグラフィカルユーザインターフェース108の一実施形態が図18に示される。また、このインターフェース108は、回復可能または回復不可能な障害情報、およびユーザに対する再開のための指示を表示し得る。インターフェース108は、入力制御42を再登録するためのグラフィカルな指示を提供し得る。医師入力コンソール40は、新たなマニピュレータ動作の開始前に可聴信号を発してもよく、これは、意図的なサブシステムの障害を検出して手術室スタッフに警告する安全機能として機能し得る。1以上のボタン104またはタッチスクリーン102は、手術を開始するか、手術を一時停止するか、または手術を終了することができる入力を提供し得る。スクリーン102は、正しいシステムのセットアップ、故障、動作のための指示を提供し得る。システムステップが順番通りに実行されない場合、たとえば作動ユニット20が機器カートリッジ410を取り外す前に抜かれた場合、スクリーン102またはスピーカはユーザに警告し得る。
【0077】
図17を参照すると、一実施形態では、医師入力コンソール40は、回転されたときに1以上の水平トラック112内で第1または第2の入力制御42、44の左右方向の調整を提供する入力制御アジャスタ110を提供する。この人間工学的な調整は、解剖学的なばらつきおよび好み全体にわたって、外科医に快適さを提供する。入力制御アジャスタ110は、ノブ、ダイヤル、または他のタイプの入力制御アジャスタを含み得る。
【0078】
外科医入力装置再登録プロセス
第1または第2の入力制御部42、44は、意図が検出されないとき、手術が一時停止されたとき、故障が検出されたとき、または手術が開始される前後に動かされた場合、同心チューブマニピュレータとの登録が解除される場合がある。再登録指示は、スクリーン102上に提供される。再登録指示は、第1または第2の入力制御部42、44の所望の/再登録されたポーズの上部に、第1または第2の入力制御部42、44の現在の位置または向きのリアルタイムの透明な三次元オーバレイと、再登録の進捗を表示する進捗表示とを含み得る。同様に、再登録指示は、進捗表示とともに、二次元ターゲットマーカおよび現在の二次元位置マーカを含んでもよい。グラフィカルインターフェース上の再登録指示の可能な実施形態が、図19Aおよび19Bに示される。
【0079】
外科医作業空間人間工学
いくつかの実施形態では、ロボットシステム10は、システム10を用いる外科医に1以上の解剖学的制約を加え得る。これらの解剖学的制約は、短期的または慢性的な外科医の不快感を生み出すおそれがあるが、これは、いくつかの外科的処置が長時間である場合があり、外科医がいくつかの処置を反復的に行う場合があるためである。システム10は、上部トレイ114もしくは第1または第2の入力制御部42、44の位置を調整することができる医師入力コンソール40を備え、それによって、入力制御部42、44を使用するときに外科医オペレータが立ったり座ったりすることができるようにされる。一実施形態では、四節リンケージ116がこの動きを可能にし、気体ばね118が重力補償を提供して、トレイが重力で落下しないようにする。四節リンケージ116の設計は、上部トレイ114が下方に移動すると、上部トレイ114を外科医の方に移動させ、これによって、外科医が座った位置にあるときに地面に付加的な足の空間を作り出す。いくつかの実施形態では、医師入力コンソール40は、医師入力コンソール40の外科医制御のいずれかを動作させるために外科医に特定の足位置要件を課さない場合がある。1以上の実施形態では、医師入力コンソール40のベース120は、「X」または「U」字形状として構成され、運搬中の医師入力コンソール40の安定性のために大きなホイールベースを提供しながらも、外科医のための利用可能な足の空間を増加させる。ベース120は、医師入力コンソール40を運搬するための1以上のキャスタ122または他のタイプのホイールを含み得る。外科医または他のオペレータは、サイドハンドル124の中または上部トレイ114の下部のいずれかの入力部を押し下げることによって、上部トレイ114の位置を調整し得る。いくつかの実施形態では、この入力部は、図20Aに示すように、トグル式入力部126を含み得る。他の実施形態では、入力部は、図20Bに示すように、プッシュ式入力128を含み得る。
【0080】
先行技術の手術ロボットシステムは、多くの場合、医師インターフェースにおいて特定の肘、頭、額、または前腕の位置を必要とする。多くの場合、外科医制御は、センサが肘、頭、額、または前腕の特定の位置を測定した場合にのみアクティブになる。特定の実施形態では、医師入力コンソール40は、外科医に肘や前腕の位置制約を加えない。先行技術の手術ロボットシステムは、手術室の外科医視野を限定する医師インターフェースを設ける場合がある。外科医の視野は、目前の大きなスクリーンによって、または医師インターフェースに一体化された接眼レンズを覗き込むことを要求することによって限定される場合がある。一実施形態では、医師入力コンソール40は、第1または第2の入力制御部42、44を動作させている間、手術室の視界を遮らない。先行技術の手術ロボットシステムの医師インターフェースは、典型的には、医師インターフェースによって加えられる解剖学的制約に起因して、妊娠後期の外科医が外科医制御を操作することを妨げる。医師入力コンソール40は、妊娠後期のオペレータによる使用を妨げるような解剖学的制約を課し得ない。
【0081】
外科医入力装置人間工学
以下に続く開示では、第1の入力制御部42を参照して主題を論じるが、かかる論議は第2の入力制御部44にも適用可能である。図23Aおよび図23Bを参照すると、一実施形態では、第1の制御部42ハンドルは、精密なグリップ、完全な把持、オーバーハンドグリップ、またはアンダーハンドグリップを可能にするように円筒状に形成されている。第1の入力制御部42は、人差し指または親指によるツールボタンの押し下げを可能にする形状または構成であってもよく、そのようなグリップの各々が図24に示される。円筒形状は、精密または強い/完全な把持を可能にし得る。第1の入力制御部42は、グリップ面が直径1インチ(約2.54センチメートル)および直径1.5インチ(約3.81センチメートル)の境界円筒内に包含されるような形状であり得る。第1の入力制御部42ハンドルは、1以上の平坦部130または隆起した縁132のような他の方向付け特徴を含んでもよく、それによって、外科医がハンドルを見下ろすことなく、触覚的に彼らの手の中でハンドルを方向付けることができるようにされる。これにより、外科医が手術室のディスプレイ60に視線を固定し続けることが可能になることによって、手術がより安全になる。いくつかのグリップでは、ハンドルの丸みを帯びた上部134が、外科医の手のひらに収まり得る(図24参照)。この丸みを帯びた上部134を手のひら内に固定することによって、第1の制御部42の制御のための強固かつ安定したサポート構造を外科医の手のひら内に作り出し得る。このことは、図25に描画された内部ベアリング138によって可能にされ得る。ハンドルは、主軸136の周囲にロール自由度を含んでもよい。一実施形態では、これらのセンサ140はポテンショメータを含み得、冗長な角度位置センサ140が、さらなる安全のために第1の入力制御部42に設けられ得る。ロール自由度は、1以上の角度位置センサ140によって感知され得る。第1の入力制御部42は、各自由度に減衰摩擦を与えるように構成されてもよい。第1の入力制御部42のハンドルでは、これは摩擦付加機能142を含み得る。第1の制御部42は、離したり、再度グリップしたりすることができる。第1の制御部42は、いったん解放されると動き得ないように、軽量であってもよく、または静的にバランスが取れていてもよい。
【0082】
外科医入力装置ツールボタン
図23Aから理解されるように、いくつかの実施形態では、第1の制御部42は、2つの統合されたツールボタン144a、144bを含み得る。システム10は、特に、グリップツール、バスケットもしくはスネア等の組織を取り囲んで把持するツール、またはレーザーもしくは電気外科プローブ等のエネルギ送出ツールを含むツール46のアレイを送り出すことができる。第1の入力制御部42は、これらのツール46の作動のための2つのツールボタン144aおよび144bを含み得る。延伸/後退が可能なツール46については、遠位の(すなわち、外科医から最も遠い)ボタン144aは、外科医から遠ざかる方を指す矢印を含み得る。ボタン144aは、押されて保持されると、ツール46をマニピュレータ外に延伸させ得る。近位のボタン144bは、外科医に向かって指す矢印を含み得る。ボタン144bは、押されて保持されると、ツール46をマニピュレータ先端に後退させ得る。2つのツールボタン144a、144bのうちの一方を黄色に着色し、電気外科切除入力を作動させ得る。2つのツールボタン144a、144bのうちの他方を青色に着色し、電気外科凝結入力を作動させ得る。これらのボタンの押し下げが、電気接点を開閉するか、または電気外科ジェネレータへの起動入力として機能し得る別の電気情報信号を生成してもよい。この電気外科ジェネレータは、システム10に含まれていてもよいし、システム10とインターフェースを取っていてもよい。これらのツールボタン144a、144bは、第1の入力制御部42ハンドルの端部から40~80ミリメートルの間にあってもよい。この測定値を図23Bの長さAで示す。
【0083】
外科医入力装置意図性感知
図26を参照すると、一実施形態では、第1の入力制御部42ハンドルは、長手方向軸の周囲に巻かれた内部フレキシブル回路基板184を含み、ドレープを通して、かつ手袋をはめた状態を含む接触に起因する複数のチャネル(146a、146b、146c)の静電容量変化を感知することが可能である。この静電容量感知の目的は、意図性を判断することである。一実施形態では、静電容量式タッチセンサは、長手方向軸の周囲に7つの独立したチャネルを備える。第1の入力制御部42がケーブルによって誤ってぶつけられるかまたは衝撃を受けた場合、あるいは医師入力コンソール40が誤ってぶつかった場合、これらの動きは同心チューブマニピュレータには伝えられない。意図性感知は重要な安全上の考慮事項であるが、本実施形態では、他のシステムでよく見られるような、非人間工学的な追加の制約(たとえば、肘の位置、額の位置など)を外科医に加えることがあり得ない。制御システムは、外科医の制御動作を手術部位のマニピュレータに伝達するために、複数のチャネルネル146a、146b、146cを、潜在的に隣接しないチャネルをアクティブにするために含み得る。これにより、第1の入力部42がその一側にぶつかり、両側面で把持されていない場合、動きが同心チューブマニピュレータに伝達されないようにされるさらなる安全性を提供し得る。
【0084】
無菌野における医師インターフェース
先行技術の手術ロボットシステムは、典型的には、医師インターフェースを無菌野外で用いることを必要とする。医師入力コンソール40は、所望の場合は無菌野内で用いられるように構成されてもよい。図16および27Aを参照すると、いくつかの実施形態では、ドレープバー150がドレープ148を第1または第2の入力部42、44の上に「張られる」ようにし、それによって、動作中にそれらがドレープ148と干渉しないようにすることが可能である。ドレープ148がドレープサポートバー150の上に張られた後、ドレープ148は床に向かって下り、上部トレイ114と床との間の約半分を覆い得る。図27Bから理解されるように、一実施形態では、ドレープ148は、第1または第2の入力制御部42、44の両方の上方に延伸してもよく、両側のハンドルと主入力制御部42、44シャフトとの間のインターフェースにおいて、引き裂きタブ152および被覆ワイヤを含んでもよい。一実施形態では、この被覆ワイヤは固定されることができ、引き裂きタブ152は、ドレープ148のハンドル部分がドレープの他の部分から独立するように引き裂くことができ、ドレープ148を束ねることなく、依然として無菌のインターフェースを維持したまま、接合の制限なく回転させることができる。
【0085】
多関節アームベース
図28を参照すると、いくつかの実施形態では、多関節アームベース154は、スクリーンまたはタッチスクリーン156上にセットアップおよび停止のための指示を提供し得る。このスクリーン156により、ユーザは、ドレープを適用するために多関節保持アーム12を延伸する命令を行うことが可能になり得る。スクリーン156はさらに、ユーザが保持アーム12の較正を命令することを可能にし、キャスターブレーキ158の適用を可能にし得る。スクリーン156は、ディスプレイ60またはスクリーン102を含み得る。いくつかの実施形態では、多関節アームベース154は、多関節保持アーム12を地面から遠ざけるかまたはより近づけて位置づけることを可能にする、作動式または受動式の垂直調整を提供し得る。多関節アームベース154は、保持アーム電子コントローラ、電源、または絶縁変圧器等の他のシステム機器用の記憶装置160を含むことができる。多関節アームベース154は、内視鏡機器および電気外科ジェネレータのための空間を含み得る。
【0086】
図29を参照すると、多関節アームベース162は、手術台50のレールに装着可能であり得る。この保持アーム12は、ブレーキ機能を備えた作動式または受動式であってもよい。この装着は、患者の位置づけおよび患者の解剖学的構造に適応するように多関節保持アーム12の垂直位置の調節を可能にし得る垂直バー164を含み得る。
【0087】
一実施形態では、多関節アームベース162は、図28のカートに類似したカートを含み得るが、手術室レールに類似した装着機能を含んでもよく、それによって、多関節保持アーム12が多くの可能な構成で切り離され、再装着されることができるようにされることができる。これにより、システム10に対する患者の位置づけおよび臨床的表示のためのさらなる多用性が可能となる。
【0088】
緊急停止装置
図17を参照すると、一実施形態では、医師入力コンソール40は、保持アーム12の動き(作動している場合)、マニピュレータの動き、または電気手術出力を即座に阻止し得る緊急停止装置166を含む。図29を参照すると、多関節アームベース154は、タッチスクリーン156の近傍に、医師入力コンソール40の緊急停止装置166と同等の機能を果たす緊急停止装置を含み得る。緊急停止装置166は、システム10が予期しないかまたは安全でない方法で挙動している場合の、手術室のスタッフまたは外科医の安全のための機能である。
【0089】
モータ制御安全監視システム
図30を参照すると、一実施形態では、作動ユニット20は安全監視システム170を含む。このシステム170の目的は、安全限界が破られた場合にモータシステム174の中の1以上のモータ172を停止させることである。この安全監視システム170は、モータの位置および速度の値を読み取り、命令された位置および速度の値と比較する冗長計算素子(安全中央処理装置176(1)および176(2)等)を備える。これらの値が安全限界内にある場合、演算素子は心拍信号を心拍モニタ集積回路チップ(心拍モニタ178(1)または178(2)など)に送信し、心拍モニタ集積回路チップは、アクチュエータへのモータ電力を制御する1以上のモータ駆動部182と通信しているセーフティリレー(セーフティリレー180(1)または180(2)など)をラッチする。演算素子が動かなくなったり、応答しなくなったりした場合、心拍モニタ178(1)または178(2)は、リレー180(1)または180(2)を動かしてモータ172を停止させる。電力がなければ、セーフティリレー180(1)または180(2)は開いているため、電力がモータ172に到達しない。この基本経路は、安全監視システム170が内部冗長性を持つように、冗長センサと並列に繰り返される。起動中、および/または動作中に断続的に、リレー180(1)または180(2)は、それらが依然として意図されたように開閉されることができることを確実にするために自己試験を行う。この安全監視システム170は、3つの独立した故障が同時に、かつ検出されることなく生じて安全性を侵害するおそれがあるが、これは起こる可能性がきわめて低い。この安全監視システム170は、作動ユニット20自体の内部に組み込まれていてもよい。
【0090】
カートリッジ感知サブシステム
図31を参照すると、一実施形態では、機器カートリッジ410は、カートリッジ磁石184とRFIDタグ186とを含み得る。RFIDタグ186は、機器カートリッジ410のツールタイプに関する情報、機器カートリッジ410が以前に使用されたかに関する情報、RFIDタグ186が第三者によって書き込まれるのを防止したり、不正な機器カートリッジ410の使用を防止したりし得るシステム10によって暗号化されたパスワードを含み得る。いったん機器カートリッジ410が挿入されると、システム10は、機器カートリッジ410が以前に使用されていないことを検証し得、挿入されたツール46のためにマニピュレータ運動学を調整し得る。さらに、カートリッジ感知サブシステムは、埋め込み型磁石およびホールセンサ188を利用して、機器カートリッジ410が完全に挿入されたことを検出し得る。機器カートリッジ410が有効であることが確認され、完全に挿入されていることが確認されるまで、アクチュエータの動きを防止し得る。RFIDモジュール190は、いずれのカートリッジ410が作動ユニット20の左側に挿入されているか、およびいずれのカートリッジ410が作動ユニット20の右側に挿入されているかを区別するために、読み取り電力を変調することができる。このサブシステムは、システム10の残部についてソフトウェアの更新を行うことのみを必要とする追加機器を構築することを可能にする。一実施形態では、カートリッジチップセット441は、カートリッジ磁石184またはRFIDタグ186を含み得る。
【0091】
ドレープを通した動き:モータパック
図12を参照すると、1以上の実施形態において、作動ユニット20は、一体型の継手228を有するドレーププレート224を含み得る。このプレート224は、無菌インターフェースを通してモータの動きを提供し得、それによって、無菌の機器カートリッジ410に組み込まれたマニピュレータを作動させることができるようにされる。ドレーププレート224は、作動ユニット20の側壁204、206にスナップ止めされているため、看護スタッフはセットアップ中に簡単に組み立てることができる。モータ出力継手は、ドレーププレート継手228のすぐ後ろに位置してもよく、ドレーププレート224がその継手をモータ継手と位置合わせさせることなく壁にスナップ止めされることを可能にする軸方向バネを含み得る。起動中、作動ユニット20は、その軸の各々を360度回転させ、これによって、モータ出力継手がドレーププレート224と正しい嵌合位置にしなることが可能になる。そして、継手は、平頭インターフェースを利用して機器カートリッジ410の挿入を可能にするように平坦に保持される。図32は、作動ユニットドレープ192に一体化されたドレーププレート224を描画する。
【0092】
多関節保持アームロック解除
一実施形態において、多関節保持アーム12は、強力なパワーグリップのためのグリップハンドルを含む。ハンドルの直径は、1~4インチ(約2.54cm~10.16cm)であってもよい。ハンドルは、ロック解除機構を含んでいてもよい。作動式の保持アーム12の場合、ロック解除機構は、保持アーム制御システムに接続され得るボタンまたはスイッチ接点を含み得る。ロック解除機構は、異なるタイプの動き、たとえば内視鏡軸に沿った動きのみ、大幅に減衰された動き、軽度に減衰された動き、並進のみ(回転なし)、回転のみ、または選択可能な回転中心を中心とする回転のみを可能にする複数のボタンを含み得る。受動式保持アーム12の場合、ロック解除機構は、多関節保持アーム12のすべての関節をロック解除する機構を含み得る。ハンドルを作動ユニット20の質量中心付近に位置させてもよく、それによって、外科手術室スタッフが彼らの手に大きなトルクを感じることなく、より容易に操作できるようにされる。
【0093】
機器カートリッジ送出可能ツールインターフェース
図14を参照すると、一実施形態では、機器カートリッジ410は、機器カートリッジ410の背面から同心チューブマニピュレータの内腔へのユーザアクセスを含み得る。移動ロッド490は、ユーザアクセスを提供し得る。この移動ロッド490は、同心チューブマニピュレータの最も内側のチューブとともに移動し得る。同心チューブマニピュレータの最も内側のチューブの遠位先端は、外科医が術野で見る機器の先端を含み得る。送達可能なツール46または器具が、このロッド490を通してマニピュレータの先端に送り出され、可動ロッド490に固定されると、この機器はマニピュレータの先端とともに移動し得る。可動ロッド490は、レーザーファイバまたは電気外科用プローブ等の送り出し可能な機器を軸方向に保持するためのコレット機構または同様の機構を備えていてもよい。これにより、機器カートリッジ410内部に、あらかじめ組み立てられて提供される必要のない既存のプローブまたは装置を使用することが可能になる。また、これらの機器が再度加工されることが可能であれば、再利用の可能性を可能にし、処置のための病院の経費を節約が可能になる。
【0094】
非環状同心チューブマニピュレータ先端部
図33Aおよび33Bを参照すると、一実施形態では、同心チューブアセンブリ24の最も内側のチューブの先端部194が示される。いくつかのツール構成では、先端部194を非環状断面に形成することが有用である。同心チューブマニピュレータは、異なる形状に温度設定されることができる材料であるニチノールを含み得る。この非環状形状は、非環状断面を有するツール46に有用であり得る。これらのツール46は、依然としてチューブ内を並進することが可能であり得るが、マニピュレータ先端部194に対して回転することは妨げられる。これは、ツール46が比較的高いねじり剛性を提供し得ることを意味し、このことは、多くの外科的状況で有用であり得る。このことは、たとえば、電気外科プローブをより硬く、より頑丈にしたり、または把持具または引き込み具をより頑丈にすることを可能にし、たわむことなく組織により大きな力を加えることが可能になり、より有用な引き込み具を可能にする。
【0095】
このように、新規かつ有用な本発明の低侵襲手術を行うためのシステムの特定の実施形態を説明してきたが、そのような言及は、以下の特許請求の範囲または本仮出願の優先権を主張する今後の出願に提供される追加の特許請求の範囲に記載されている場合を除き、本発明の範囲を限定するものとして解釈されることは意図されていない。

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【国際調査報告】