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特表2024-511995がん治療における第一選択療法としてのsEphB4-HSA融合タンパク質の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】がん治療における第一選択療法としてのsEphB4-HSA融合タンパク質の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20240311BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240311BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20240311BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240311BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240311BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20240311BHJP
   C07K 14/46 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
A61K38/17
A61P35/00
A61K31/337
A61P43/00 121
A61K39/395 T
A61K47/64
C07K14/46 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557284
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-11-13
(86)【国際出願番号】 US2022020878
(87)【国際公開番号】W WO2022198001
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】63/162,691
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523353579
【氏名又は名称】クラスノペロフ,ヴァレリー
【氏名又は名称原語表記】KRASNOPEROV,Valery
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】クラスノペロフ,ヴァレリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA94
4C076BB11
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA41
4C084MA66
4C084NA03
4C084NA12
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4H045AA30
4H045BA09
4H045EA20
(57)【要約】
本明細書で開示されるのは、現在の療法が有効でない、再発という結果になる、又はがん及び関連する腫瘍の種類に起因して使用が考慮もされないがんに対する有効な第一選択療法としてsEphB4-HSAを使用する方法である。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
EphB4又はエフリンB2を介した機能を阻害するポリペプチド剤の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含むがんを治療するための方法であって、前記ポリペプチド剤が前記治療における第一選択療法として使用される、方法。
【請求項2】
前記がんが、頭頸部の扁平上皮がん(HNSCC)、肝細胞がん(HCC)、Kras変異非小細胞肺腺がん(NSCLC)、カポジ肉腫(KS)、膀胱、及び胆管がん(CCA)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記がんが、免疫療法、化学療法剤による治療、特異的腫瘍抗原に対する除去抗体を用いた治療、共刺激分子又は共抑制分子に対するアゴニスト抗体、アンタゴニスト抗体、又はブロッキング抗体に用いた治療、任意選択で免疫チェックポイント阻害剤、特異的腫瘍抗原に対する除去抗体及び細胞毒性剤を含む免疫複合体、抗体薬物複合体(ADC)、融合分子を用いた標的治療、低分子キナーゼ阻害剤による標的治療、手術を用いた治療、幹細胞移植を用いた治療、並びに放射線を用いた治療から選択される抗がん療法に不応である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記がんが、免疫チェックポイント阻害剤による治療に不応である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記がんが、放射線療法による治療に不応である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記がんが、白金製剤ベースの化学療法による治療に不応である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記がんが、エフリンB2を発現する腫瘍を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリペプチド剤が、前記EphB4タンパク質のリガンド結合部分であり、血清中半減期を増加させる改変を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリペプチド剤が、ヒト血清アルブミン(HSA)(「sEphB4-HSA」)及びウシ血清アルブミン(BSA)(「sEphB4-BSA」)から選択されるアルブミンと共有結合的又は非共有結合的に結合した、配列番号1のアミノ酸1~197、16~197、29~197、1~312、16~312、29~312、1~321、16~321、29~321、1~326、16~326、29~326、1~412、16~412、29~412、1~427、16~427、29~427、1~429、16~429、29~429、1~526、16~526、29~526、1~537、16~537及び29~537(「sEphB4ポリペプチド」)の配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記sEphB4-HSAが、配列番号2の残基25~609に直接融合した配列番号1の残基16~326を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記sEphB4-HSAが、配列番号2の残基25~609に直接融合した配列番号1の残基16~537を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
抗EGFR抗体又はその抗体断片、任意選択でセツキシマブを投与することをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
タキサン、任意選択でパクリタキセル(タキソール)又はドセタキセル(タキソテール)を投与することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
がんを治療するための方法であって、
(i)配列番号1のアミノ酸16~537の配列を含むEphB4タンパク質のリガンド結合部分及び
(ii)配列番号2のアミノ酸25~609の配列を含むヒト血清アルブミン(HSA)
を含むポリペプチド剤の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含み、
前記ポリペプチド剤が、前記治療における第一選択療法として使用される、且つ/又は
前記がんが、再発性、抵抗性、若しくは難治性のがんである
方法。
【請求項15】
前記がんが、頭頸部の扁平上皮がん(HNSCC)、肝細胞がん(HCC)、Kras変異非小細胞肺腺がん(NSCLC)、カポジ肉腫(KS)、膀胱、及び胆管がん(CCA)から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記がんが、免疫チェックポイント阻害剤、放射線療法、及び/又は化学療法に抵抗性又は不応である、請求項14又は15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一部には、可溶性エフリン-HSA融合タンパク質を含む組成物及び方法、並びにがんの治療方法を含むそれらの使用を提供する。
【0002】
関連出願
本出願は、2021年3月18日に出願された米国仮出願第63/162,691号の利益及び優先権を主張するものであり、該仮出願の内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
配列表
本明細書とともに電子的に提出されたテキストファイルの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:配列表のコンピュータ読み取り可能フォーマットのコピー(ファイル名:「VAS-002PC_ST25.txt」、記録日:2022年3月17日、ファイルサイズ:14,127バイト)。
【背景技術】
【0004】
今日、数多くの高度な診断法及び治療法が開発されているにもかかわらず、がんは依然として世界中で主な死因となっている。ヒトにおいて、がんは、一次的な遺伝的イベントの後に、細胞の代謝及び増殖速度の増加、血管新生の刺激による腫瘍への血液供給の増加、並びにシグナル伝達経路及び腫瘍抑制因子の調節不全を含むが、それらに限定されない多くの機序によって形成する。臨床腫瘍学における根治的治療プロトコールは、依然として外科的切除、電離放射線、及び細胞毒性化学療法の組み合わせに依存している。がんの治療と予防を成功させる上で大きな障害となっているのは、依然として多くのがんが現在の化学療法及び免疫療法の介入に反応しないという事実であり、積極的な治療を行っても多くの人が再発又は死亡を経験する。さらに、腫瘍は、薬物の細胞からの排出、薬物の標的への結合を妨げる変異の発生、及び薬物標的とは関係のない遺伝子やそのタンパク質産物におけるさらなる変異の発生を含むが、それらに限定されない多くの機序によって、抗がん剤に対して抵抗性になる可能性がある。これらの欠点に対処するために、がんにおいて調節不全となっているシグナル伝達軸を調節できる標的療法を開発しようという創薬のトレンドが存在している。現在では、無数の臨床的に重要な標的の治療的にコントロールできるFDA承認抗体及び低分子が多数存在する。
【0005】
Eph(エリスロポエチン産生肝細胞がん)受容体及びリガンドは、受容体型チロシンキナーゼ(RTK)の最も大きいファミリーの一部である。そのファミリーは、配列相同性及び2つの異なるタイプの膜アンカー型エフリンリガンドに対する結合親和性に基づいて、クラスAとクラスBに細分される。各Eph受容体及びリガンドは、複数のリガンドや受容体に結合することができ、ある特定の受容体は推定腫瘍抑制因子と仮定され、他の受容体は腫瘍促進因子と仮定されている(Vaught et al.Breast Cancer Res,10(6):217-224,2008)。エフリンB2とその高親和性同族受容体であるEphB4は、腫瘍血管で誘導され、免疫細胞の輸送を調節する膜貫通タンパク質である。エフリンB2-EphB4相互作用の阻害は、インビトロ及び生体外において腫瘍細胞の増殖に直接的な阻害作用を示す。
【発明の概要】
【0006】
態様において、本開示は、EphB4又はエフリンB2を介した機能を阻害するポリペプチド剤の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含むがんを治療するための方法であって、ポリペプチド剤が治療における第一選択療法として使用される方法に関する。
【0007】
態様において、本開示は、がんを治療する際の第一選択療法として使用するための医薬を調製する際の、EphB4又はエフリンB2を介した機能を阻害するポリペプチド剤の使用に関する。実施形態において、がんは、頭頸部の扁平上皮がん(HNSCC)、肝細胞がん(HCC)、Kras変異非小細胞肺腺がん、及びカポジ肉腫(KS)から選択されるが、これらに限定されない。
【0008】
実施形態において、対象は、以前に抗がん治療が奏効したが、治療を止めると再発を経験した(以下「再発性がん」)。実施形態において、対象は、抵抗性又は難治性のがんを有する。実施形態において、がんは、白金製剤ベースの化学療法に不応である。実施形態において、がんは、免疫療法に不応である。実施形態において、がんは、化学療法剤による治療に不応である。実施形態において、がんは、特異的腫瘍抗原に対する除去抗体を用いた治療に不応である。実施形態において、がんは、共刺激分子又は共抑制分子(免疫チェックポイント)に対するアゴニスト抗体、アンタゴニスト抗体、又はブロッキング抗体を用いた治療に不応である。実施形態において、がんは、特異的腫瘍抗原に対する除去抗体及び細胞毒性剤を含む免疫複合体、抗体薬物複合体(ADC)、又は融合分子による標的治療に不応である。実施形態において、がんは、低分子キナーゼ阻害剤による標的治療に不応である。実施形態において、がんは、手術を用いた治療に不応である。実施形態において、がんは、幹細胞移植を用いた治療に不応である。実施形態において、がんは、放射線を用いた治療に不応である。実施形態において、がんは、例えば、免疫療法、白金製剤ベースの化学療法剤による治療、腫瘍抗原特異的除去抗体による治療、腫瘍抗原特異的除去抗体及び細胞毒性剤を含む免疫複合体、ADC、又は融合分子による治療、低分子キナーゼ阻害剤による標的治療、手術を用いた治療、幹細胞移植を用いた治療、並びに放射線を用いた治療のうちの2つ以上を伴う併用療法に不応である。実施形態において、対象は、様々な抗がん療法の使用が考慮もされないと判断されたがんの形態を有する。
【0009】
実施形態において、本発明の使用は、対象における頭頸部の扁平上皮がん(HNSCC)を治療する方法であって、対象に治療有効量のsEphB4-HSAポリペプチドを第一選択療法として投与することを含む方法に関する。実施形態において、HNSCCは、白金製剤ベースの化学療法及び/又は放射線療法を用いた治療に不応である。実施形態において、HNSCCは、チェックポイント阻害剤を用いた治療に不応である。実施形態において、対象は、再発したHNSCCを有する。
【0010】
実施形態において、本発明の使用は、対象における肝細胞がん(HCC)を治療する方法であって、対象に治療有効量のsEphB4-HSAポリペプチドを第一選択療法として投与することを含む方法に関する。実施形態において、HCCは、白金製剤ベースの化学療法及び/又は放射線療法を用いた治療に不応である。実施形態において、HCCは、チェックポイント阻害剤を用いた治療に不応である。実施形態において、対象は、再発したHCCを有する。
【0011】
実施形態において、本発明の使用は、対象におけるKras変異非小細胞肺腺がんを治療する方法であって、対象に治療有効量のsEphB4-HSAポリペプチドを第一選択療法として投与することを含む方法に関する。実施形態において、チェックポイント阻害剤はPD-1阻害剤である。実施形態において、腺がんは、白金製剤ベースの化学療法及び/又は放射線療法を用いた治療に不応である。実施形態において、腺がんは、チェックポイント阻害剤を用いた治療に不応である。実施形態において、対象は、再発した腺がんを有する。
【0012】
実施形態において、本発明の使用は、対象におけるカポジ肉腫(KS)を治療する方法であって、対象に治療有効量のsEphB4-HSAポリペプチドを第一選択療法として投与することを含む方法に関する。実施形態において、KSは、白金製剤ベースの化学療法及び/又は放射線療法を用いた治療に不応である。実施形態において、KSは、チェックポイント阻害剤を用いた治療に不応である。実施形態において、対象は、再発したKSを有する。
【0013】
実施形態において、アルブミンに融合したEphB4の可溶性細胞外断片(sEphB4-HSA)は、エフリン-B2とEphB4の相互作用を遮断し、双方向のシグナル伝達を遮断し、結果として免疫細胞輸送を促進し、様々ながんにおける抗腫瘍免疫応答を誘導する。したがって、本開示は、様々な実施形態において、様々ながんの治療のためのエフリンB2-EphB4阻害剤、「sEphB4-HSA」(ヒト血清アルブミンに融合したEphB4チロシンキナーゼ受容体の可溶性細胞外断片)を提供した。sEphB4-HSAは、ヒト血清アルブミン(HSA)とインフレームで(in frame)融合したヒトEphB4受容体(sEphB4)の細胞外ドメインからなる。このHSAとの融合はsEphB4の薬物動態を増強する。sEphB4-HSAは、EphB4チロシンキナーゼ受容体のリガンドである膜貫通タンパク質エフリン-B2に結合する。この結合によって、内在性のEphBチロシンキナーゼ受容体がエフリンB2と相互作用するのを阻止する。データが示すところによると、sEphB4-HSAは、腫瘍の血管新生を低減し、結果として、腫瘍の血液を飢餓状態にし、腫瘍へのT細胞の動員を抑制するエフリンB2の能力を阻害し、その結果T細胞の増加を増加させる。
【0014】
実施形態において、がんの治療に使用するためのsEphB4のポリペプチド剤は、抗EGFR抗体若しくはその抗体断片又はタキサンの使用をさらに含む。態様において、可溶性EphB4-HSA融合タンパク質(sEphB4-HSA)及び、がんの治療に使用するための抗EGFR抗体又はその断片を含む組成物。実施形態において、抗EGFR抗体はセツキシマブである。
【0015】
実施形態において、本発明の方法は、タキサン、任意選択でパクリタキセル(タキソール)又はドセタキセル(タキソテール)との併用療法を提供する。実施形態において、本発明の方法は、抗EGFR抗体、任意選択でセツキシマブとの併用療法を提供する。
【0016】
本明細書で示されたデータは、sEphB4-HSAが、現在の療法が有効でない、再発という結果になる、又はがん及び関連する腫瘍の種類に起因して使用が考慮もされない多くのがんに対する有効な第一選択療法である可能性が示している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、10mg/kgのsEphB4-HSAの投与を毎週受けた扁桃SCC患者のスキャンを示す。スキャンでは、治療の8週目に部分奏効が見られ、16週目に腫瘍の徴候は見られない。
図2図2は、10mg/kgのsEphB4-HSAの投与を毎週受けた喉頭SCC患者のスキャンを示す。スキャンでは、治療の8週目に部分奏効が見られる。
図3図3は、10mg/kgのsEphB4-HSAの投与を毎週受けた扁桃SCC(HPV-)患者のスキャンを示す。スキャンでは、治療の8週目に部分奏効が見られ、16週目に腫瘍の徴候は見られない。患者は奏効中に試験を止め、安定であった。
図4図4は、10mg/kgのsEphB4-HSAの投与を毎週受けた肝がん(HCC)患者のスキャンを示す。スキャンはでは、治療の16週目に部分奏効が見られ、週目に腫瘍の徴候は見られない。患者は8+か月間無治療で無病のままである。
図5図5は、10mg/kgのsEphB4-HSAで毎週治療された肝がん(HCC)患者のスキャンを示す。スキャンでは、治療の16週目に部分奏効が見られる。患者は奏効中に試験を止め、安定であった。治験登録から18+か月経過した時点で、患者は依然として治療を受け、安定している。
図6図6は、全脳照射による前治療から進行した後、10mg/kgのsEphB4-HSA投与を毎週受け、その後カルボプラチン、パクリタキセル、アバスチンの投与を3サイクル受けた、Kras変異多巣性腺がんの肺及び脳転移をもつ患者のスキャンを示す。患者はsEphB4-HSA療法から11+か月の時点で安定である。
図7図7は、10mg/kgのsEphB4-HSAの投与を毎週受けたカポジ肉腫(KS)患者の写真を示す。患者は腫瘍が完全に消失し、下肢の浮腫も完全に消失した。
図8図8は、新たに診断され、sEphB4-アルブミン融合タンパク質を含むレジメンで治療された進行膀胱がんの全生存期間をグラフで表したものを示す。
図9図9は、筋層浸潤性膀胱がんに対するネオアジュバント療法、化学療法なしのsEphB4-アルブミンを含むレジメンをグラフで表したものを示す。
図10図10は、sEphB4-HSA投与に対する生体内自然発生乳房腫瘍マウスモデル(MMTV-neu/Her2)の反応を示す。マウスに7.5mg/kgを週3回、IP注射で5週間投与した。腫瘍組織を、Her2/ERBB2の総タンパク質発現及びリン酸化について分析した。肺を転移について分析した。
図11図11は、sEphB4療法に対する例示的なERBB2エクソン20重複の反応を示す。
図12図12は、どのようにEphB4がEGFRと結合し安定化するかを示すウェスタンブロット分析である。EphB4はEGFRと結合する;EphB4のノックダウンはEGFRを低下させる;EphB4はEGFRを増加させる。
図13図13は、sEphB4-HSA及びEGFR抗体の生体内有効性試験を示す。対照マウスは、42日目にsEphB4+抗EGFR抗体(セツキシマブ)の投与を受けし、相乗効果を示した。
図14図14は、ヒト患者(JG 64F)における胆管がんの生体内腫瘍退縮を示す。sEpHB4-HSAは15mg/kgで2週間毎に15か月間投与された。患者の生存期間は、sEphB4-HSA治療開始から24+か月である。
図15図15A~15Fは、細胞株に対するチロシンキナーゼのmRNAを介したノックダウンの効果(図15A)、6つの細胞株に対するKras除去の効果(図15B)、Kas介在細胞株に対するEphB4の効果(図15C)を示すヒートマップによって、EphB4発現がKras変異細胞に増殖優位性を与えることを示す。EphB4タンパク質はKrasによって用量依存的に増強され(図15D)、EphB4及びそのリガンドエフリンB2はともに腫瘍において増加し(図15E)、EphB4及びエフリンB2の過剰発現も腫瘍において観察された(図15F)。
図16図16A~16Dは、EphB4の遺伝子破壊除去が、Kras変異マウスにおいて生存率を増加させることを示し、その変異体は、creを介した組換え(図16A)及びEphB4の再構成(図16B)の後、ephB4遺伝子に中途停止コドンを作る。図16Cは、K14KB4(n=9)マウスは腫瘍増殖が有意に少なく、生存期間が延びたことを示す。肺腺がんの発がんはAdKPB4において劇的に減少していた(図16D)。
図17図17A~17Dは、Krasによって引き起こされる腫瘍におけるAKT及びERKシグナル伝達を弱めるEphB4のノックダウンの効果を示す。p-ERK1/2を除くシグナル伝達指標は、口腔乳頭腫(図17A)で検出されたが、肺腺がんのEphB4ノックアウトマウスの組織では検出されなかった(図17B)。図17Cは、インサイチュ染色及び免疫蛍光染色により、腫瘍内で過剰発現したEphB4 mRNA及びタンパク質をそれぞれみられたことを示す。図17DはAd-Creマウスのタンパク質発現を示す。
図18図18A~18Gは、生体内で、EphB4の薬理学的阻害がKrasによって引き起こされる腫瘍形成を効果的に阻害することを示す。図18Aは、sEphB4投与腫瘍におけるEphB4のp-Tyrシグナルのウェスタンブロットを示す。図18Bは、対照のK14Kマウスの生存率と比較した両sEphB4投与群の生存率を示す。図18Cは、腫瘍形成及び生存に対する、K14KPへのsEphB4の予防投与の効果を示す。図18Dはタキソール及びsEphB4併用投与の効果を示す。図18E及び図18Fは、腫瘍のアポトーシス及び細胞増殖に対するsEphB4投与の効果をTUNEL及びKi67染色で示す。図18Gは、EphB4投与後のP-AKT及びP-S6の存在量を示す。
図19図19A~19Fは、β-TrCP1を介したKrasのユビキチン化及び分解に対するEphB4の効果を示す。図19Aは、siRNAによるEphB4のノックダウンが内在性Krasタンパク質の半減期を減少させたことを示す。図19Bは、sEphB4投与後のK14Kマウスの腫瘍におけるKrasレベルを示す。図19Cは、Krasのユビキチン化に対するEphB4のsiRNAノックダウン及びEphB4過剰発現の効果を示す。図19Dは、Krasのユビキチン化に対するβ-TrCP1のsiRNAノックダウン及びβ-TrCP1過剰発現の効果を示す。図19Eは、β-TrCPを介したKrasポリユビキチン化に対する過剰発現EphB4の効果のIP/ウェスタンブロット分析を示す。図19Fは、Krasとβ-TrCP1の間、EphB4とβ-TrCP1の間、及びEphB4とKrasの間のタンパク質間相互作用のco-IP試験を示す。
図20図20A~20Fは、C末端EphB4断片の存在がβ-TrCP1リガーゼ活性を調節し、Cys118位でのKrasのモノユビキチン化を促進することを示す。図20Aは、HEK293細胞溶解物から免疫沈降させたb-TrCP1-GFPを用いて、図に示されているインビトロで転写及び翻訳されたEphB4のC末端断片の存在下又は非存在下で、インビトロユビキチン化に供した細菌精製Hisタグ付きKrasタンパク質(野生型、WT又はG12V変異体)を示す。2時間のインキュベーション後、サンプルローディング色素を加えることによって反応を停止させ、図に示されている抗体を用いてイムノブロットに供した。図20Bは、KrasのCys118のユビキチン化を明らかにするペプチドのMS/MSスペクトルである。ゲル内消化で単離したペプチドを逆相カラムで分離し、Orbitrap XL質量分析計を用いて衝突誘起解離スペクトルを得た。図20Cは、C118モノユビキチン化の重要性の検証を示し、G12D変異体バックグラウンドのKrasのCys118Ser変異体(GC変異体と命名)を、パネル(a)に記載したようにWT及びG12D(GD)変異体とともにインビトロユビキチン化に供し、図に示されている抗体を用いた免疫ブロットを用いて処理/分析した。図20Dは、EphB4過剰発現の存在及び非存在のいずれかにおける、異なるKRAS(野生型、WT;G12D、GD;C118S、CS、及びG12D+C118S、GC)変異体の定常状態レベルを示す。相対バンド強度(任意単位)は、野生型Krasレベルを「1」としてImage Jを用いて定量した。上記の-TrCP1についても上記のように相対バンド強度を計算した。図20Eは、WT、GD、CS及びGC Kras変異体のタンパク質半減期を、シクロヘキシミド(CHX、50μg/ml)を加えることによって、EphB4の存在下及び非存在下で計算したものを示す。図に示されている時点で試料を集め、バンド強度を計算し、時間とともにプロットした。図20Fは、変異型Krasの過剰活性化に必要なC118のモノユビキチン化を促進するEphB4の重要性を示す仮説的モデルを示す。EphB4の標的化、あるいはC118部位のセリン(S)への遺伝子改変は、変異Krasの発がん活性を弱めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
態様において、EphB4又はエフリンB2、例えばsEphB4を阻害するポリペプチド剤の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、がんを治療する方法であって、その治療が第一選択療法である方法が提供される。
【0019】
態様において、EphB4又はエフリンB2、例えばsEphB4を阻害するポリペプチド剤の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、がんを治療する方法であって、その患者が別の抗がん剤による治療を受けたことがない方法が提供される。
【0020】
態様において、がんを治療する際に第一選択療法として使用するための医薬の調製に使用するための、EphB4又はエフリンB2を介した機能を阻害するポリペプチド剤が提供される。態様において、がんを治療する際に第一選択療法として使用するためのEphB4又はエフリンB2を介した機能を阻害するポリペプチド剤が提供される。
【0021】
EphB4-エフリンB2阻害剤
本開示の方法は、第一選択療法として、EphB4又はエフリンB2を介した機能を阻害するポリペプチド剤を投与することによって、原発腫瘍の増殖若しくは原発がんの形成、又はがんの転移を治療、低減、又は予防することを含む。
【0022】
1型受容体チロシンキナーゼEphB4及び膜局在性リガンドエフリンB2は、双方向性シグナル伝達(受容体発現細胞では順方向、リガンド発現細胞では逆シグナル伝達)を誘導する。EphB4は受容体型チロシンキナーゼの最大のファミリーに属し、エフリンB2リガンドと相互作用すると、神経細胞の移動、骨のリモデリング、血管新生、がんの進行、転移を調節することが報告されている(Pasquale EB,Cell,133:38-52,2008)。EphB4及びエフリンB2の発現は、成人の正常組織の大部分では、早ければ生後発育でもダウンレギュレートされているが、EphB4は肺がんや、膀胱がん、頭頸部がん、膵がんを含む複数の上皮性がんで過剰発現している(Ferguson BD,et el.,Growth Factors,32:202-6,2014)。変異型KrasやPTENの欠損を含むがん遺伝子はEphB4発現を誘導する。EphB4のノックダウンはアポトーシスによる細胞死につながるので、EphB4の発現は、病期、悪性度、及び生存と相関する。リガンドであるエフリンB2の過剰発現と予後不良との相関は、いくつかのがん種で報告されている。ICTは腫瘍血管(及び腫瘍)においてエフリンB2を増加させ、高レベルのエフリンB2は免疫細胞の動員を妨げ、したがって治療に対する抵抗性が生じる。
【0023】
EphB4-エフリンB2相互作用の阻害は、インビトロ及び細胞外において腫瘍細胞の増殖に直接的な阻害作用を示す。EphB4又はエフリンB2を介した機能を阻害するポリペプチド剤は、本発明の発明者らによって以前に記載されている(例えば、米国特許第7,381,410号、米国特許第7,862,816号、米国特許第7,977,463号、米国特許第8,063,183号、米国特許第8,273,858号、米国特許第8,975,377号、米国特許第8,981,062号、米国特許第9,533,026号を参照されたい;それらはそれぞれ、すべての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。sEphB4-HSAは、123.3kDaの単一のシームレスなタンパク質として発現すると、C末端でアルブミンと融合した可溶性EphB4細胞外ドメインから構成される完全ヒト融合タンパク質である。sEphB4-HSAはエフリンB2に特異的に結合する。腫瘍モデルにおけるsEphB4-HSAの予備的研究では、T細胞及びNK細胞の腫瘍への遊走の増加が示されている。これは腫瘍血管におけるICAM-1の誘導を伴う。ICAM-1はインテグリンであり、T細胞及びNK細胞の内皮への接着を促進し、それに続いて細胞の腫瘍への遊出を促進する。sEphB4-HSAはまた、腫瘍細胞及び腫瘍血管におけるEphB-エフリンB2相互作用を遮断することによって、PI3Kシグナル伝達のダウンレギュレーションを示す。sEphB4-HSAは、PI3K経路をダウンレギュレートすることによって、シグナル伝達を遮断し、免疫細胞の腫瘍内への輸送を促進し、腫瘍細胞の生存シグナルを阻害する。
【0024】
EphB4-エフリンB2を標的とすることは、治験の検証を乗り越えてきた治療戦略である。複数の治験において、毒性が最小限であるか、全くなく、安全であることが示されており、(A.El-Khoueiry BG,et al.,Eur J Cancer,69,2016)、これは正常組織での発現レベルが低いためと考えられる。がん関連免疫反応におけるEphB4-エフリンB2相互作用を示唆する直接的な証拠はないが、動脈硬化や創傷治癒などの炎症モデルにおいて、Eph/エフリン遺伝子ファミリーのメンバーが免疫細胞のプロセスを調節することが複数の論文で報告されている(Braun J,et al.,Arterioscler Thromb Vasc Biol,31:297-305,2011;Poitz DM,et al.,Mol Immunol,68:648-56,2015;Yu G,et al.,J Immunol,171:106-14,2003;Funk SD, et al.,Arterioscler Thromb Vasc Biol,32:686-95,2012)。また、Eph-エフリン相互作用は、単球の血管壁への接着、経上皮遊走、T細胞の走化性、活性化、増殖及びアポトーシス、骨髄類洞細胞からの造血細胞の動員を調節することが報告されている。
【0025】
本開示の実施形態において、EphB4又はエフリンB2を介した機能を阻害するポリペプチド剤は、EphB4タンパク質若しくはエフリンB2タンパク質の単量体リガンド結合部分、又はEphB4若しくはエフリンB2に結合し、影響を及ぼす抗体である。実施形態において、ポリペプチド剤は、エフリンB2ポリペプチドに特異的に結合し、EphB4タンパク質の細胞外ドメインのアミノ酸配列を含む可溶性EphB4(sEphB4)ポリペプチドである。実施形態において、sEphB4ポリペプチドは、EphB4タンパク質の球状ドメインを含む。
【0026】
実施形態において、sEphB4ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列の残基1~522と少なくとも90%同一である配列、残基1~412と少なくとも90%同一である配列、及び残基1~312と少なくとも90%同一である配列から選択される配列を含む。実施形態において、sEphB4ポリペプチドは、球状(G)ドメイン(配列番号1のアミノ酸29~197)、及び任意選択で、システインリッチドメイン(配列番号1のアミノ酸239~321)や、第1のフィブロネクチン3型ドメイン(配列番号1のアミノ酸324~429)、第2のフィブロネクチン3型ドメイン(配列番号1のアミノ酸434~526)などのさらなるドメインを包含する配列を含むことができる。実施形態において、sEphB4ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1~537を含むことになる。実施形態において、sEphB4ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1~427を含むことになる。実施形態において、sEphB4ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1~326を含むことになる。実施形態において、sEphB4ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1~197、29~197、1~312、29~132、1~321、29~321、1~326、29~326、1~412、29~412、1~427、29~427、1~429、29~429、1~526、29~526、1~537及び29~537を含むことになる。実施形態において、sEphB4ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸16~197、16~312、16~321、16~326、16~412、16~427、16~429、16~526を含むことになる。実施形態において、sEphB4ポリペプチドは、エフリンB2結合活性を保持しつつ、前述のアミノ酸配列のいずれかと少なくとも90%、任意選択で95%又は99%同一なアミノ酸配列を含むものであることができる。実施形態において、実施形態において、配列番号1に示される配列からのアミノ酸配列の変形は、特に表面ループ領域において、1、2、3、4又は5つを超えないアミノ酸の保存的変化又は欠失である。
【0027】
実施形態では、可溶性ポリペプチドは、例えば、Fc融合タンパク質として発現させること又は別の多量体化ドメインと融合させることによって、多量体の形態で調製することができる。
【0028】
実施形態において、sEphB4ポリペプチドは、エフリンB2結合活性を保持しつつ、血清中の半減期の延長をもたらすさらなる成分をさらに含むことになる。実施形態において、sEphB4ポリペプチドは単量体であり、1つ又は複数のポリオキシアクリレン基(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)に共有結合している。実施形態において、sEphB4ポリペプチドは、単一のポリエチレングリコール(PEG)基に共有結合している(以下「sEphB4-PEG」)。実施形態において、sEphB4ポリペプチドは2つ、3つ、又はそれより多くのPEG基に共有結合している。
【0029】
実施形態において、1つ又は複数のPEGは、約1kDa~|約100kDa、約10~|約60kDa、及び約10~|約40kDaの範囲の分子量を有することができる。PEG基は、直鎖PEGでもよく、分岐PEGでもよい。実施形態において、可溶性の単量体EphB4複合体は、例えばsEphB4リジンのs-アミノ基又はN末端アミノ基を介して、約10~約40kDa(モノPEG化EphB4)又は約15~約30kDaの1つのPEG基に共有結合したsEphB4ポリペプチドを含む。実施形態において、sEphB4は、sEphB4リジンのs-アミノ基及びN末端アミノ基のうちの1つのアミノ基でランダムにPEG化される。
【0030】
実施形態において、sEphB4ポリペプチドは、エフリンB2結合を実質的に減少させることなく半減期を改善する第2の安定化ポリペプチドと安定に結合している。実施形態において、安定化ポリペプチドはヒト患者(又は獣医学的使用が企図される場合には動物の患者)と免疫適合性があり、有意な生物活性をほとんど有しない、又は有しないことになる。実施形態において、sEphB4ポリペプチドは、ヒト血清アルブミン(HSA)(以下「sEphB4-HSA」)及びウシ血清アルブミン(BSA)(以下「sEphB4-BSA」)から選択されるアルブミンと共有結合的又は非共有結合的に結合している。
【0031】
実施形態において、共有結合は、ヒト血清アルブミンとの共翻訳融合体としてのsEphB4ポリペプチドの発現によって達成することができる。アルブミン配列は、N末端、C末端、又はsEphB4ポリペプチド内の中断のない(non-disruptive)内部位置で融合することができる。sEphB4の露出したループはアルブミン配列の挿入に適した位置と思われる。アルブミンは、例えば化学的架橋によってsEphB4ポリペプチドに翻訳後結合することもできる。実施形態において、sEphB4ポリペプチドは、2つ以上のアルブミンポリペプチドと安定的に結合することもできる。
【0032】
実施形態において、sEphB4-HSA融合は、エフリンB2とEphB4の間の相互作用、エフリンB2若しくはEphB4のクラスター化、エフリンB2若しくはEphB4のリン酸化、又はそれらの組み合わせを阻害する。実施形態において、sEphB4-HSA融合は、改変されていない野生型ポリペプチドと比較して、生体内安定性が増強されている。
【0033】
実施形態において、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609に直接融合した配列番号1の残基16~197を含む。実施形態において、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609に直接融合した配列番号1の残基16~312を含む。実施形態において、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609に直接融合した配列番号1の残基16~321を含む。実施形態において、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609に直接融合した配列番号1の残基16~326を含む。実施形態において、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609に直接融合した配列番号1の残基16~412を含む。実施形態において、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609に直接融合した配列番号1の残基16~427を含む。実施形態において、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609に直接融合した配列番号1の残基16~429を含む。実施形態において、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609に直接融合した配列番号1の残基16~526を含む。実施形態において、sEphB4-HSAは、配列番号2の残基25~609に直接融合した配列番号1の残基16~537を含む。
【0034】
頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)
実施形態において、本開示は、例えば、第一選択療法として;且つ/又は過去に抗がん療法による治療に反応したが、治療を止めると再発性がんを経験した対象の治療として;且つ/又は抵抗性若しくは難治性のがんの対象の治療としてHNSCCを治療するための方法及び使用に関する。
【0035】
頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)は、上部気道消化管(UADT)に関わるがんのほぼ90%を占める。米国では、2005年、口腔、咽頭、喉頭のがんは、罹患(incident)がんのほぼ3%、がんによる死亡の2%を占めると予想されている。世界中で毎年約50万人が新たに診断されている。男性は女性の2倍超罹患している。これらのがんの半数超は口腔に発生する。残りは喉頭と咽頭に等分される。頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)を含むヒトのがんにおいて、数多くの臨床試験が免疫療法の有益性を検証している。客観的奏効率は6~20%であり(Szturz P,et al.,BMC Med,15:110,2017;Ferris RL,et al.,Oral Oncol,81:45-51,2018;Postow MA,et al.,J Clin Oncol,33:1974-82,2015;Chow LQM,et al.,J Clin Oncol,34:3838-45,2016;Siu LL,et al.,JAMA Oncol 2018)、大多数の患者は免疫療法に対して自然(innate)耐性又は獲得耐性を示す。より多くの免疫チェックポイント阻害剤を単に併用する試みも、患者に対する毒性が増し、追加しても有益性が得られないために期待外れであることが証明されている(治験番号NCT02205333)。HNSCCの同所性マウスモデルにおいて、最近、抗PDL1抗体と放射線療法(RT)の併用療法後でも腫瘍の再増殖が起こることが示されている(Oweida A,et al.,Clin Cancer Res,2018;Messenheimer DJ,et al.,Clin Cancer Res,23:6165-77,2017)。
【0036】
放射線療法は、依然として局所進行HNSCC患者の根治的管理における標準治療であり、免疫療法のアジュバント療法として機能しうるが、RTに反応して生じるいくつかの望ましくない影響があり、その結果として免疫療法薬の有効性を損なう。RTは後期(修復期)におけるTregなどの免疫抑制性の集団の蓄積を克服することはできない。したがって、有害な副作用、治療抵抗性、及び腫瘍の再増殖を克服するためには、RTと相乗的に作用し、その悪影響を打ち消す他の治療法を見つけることが重要である。
【0037】
HNSCCの5年生存率は低く、数十年(several decades)、改善していない。さらに、この疾患の患者は、外貌醜状、発話障害、嚥下障害及び呼吸障害を含む重度の病的状態を経験する。診断の晩期化及び再発傾向は、これらの患者の転帰を改善する努力を妨げる課題である。ペムブロリズマブは、PD-1とそのリガンドであるPD-L1及びPD-L2との相互作用を直接阻害するように設計された、IgG4/κアイソタイプの強力でかつ選択性の高いヒト化モノクローナル抗体(mAb)である。米国食品医薬品局(FDA)は2016年8月5日に、ペムブロリズマブ(キイトルーダ(登録商標))を、一部の進行した形態の頭頸部がん患者に対する治療用に承認した。この承認は、化学療法による標準治療にもかかわらず進行が続いている再発性又は転移性の頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)をもつ患者を対象としている。FDAの承認概要によると、28名の患者(16%)がペムブロリズマブによる治療後に腫瘍の反応を経験した。これらの患者のうち23名(82%)では、腫瘍の反応が6か月以上持続し、数名は2年を超えて持続した。腫瘍がヒトパピローマウイルス(HPV)陽性のHNSCC患者は、典型的に、腫瘍がHPV陰性の患者よりも化学療法による治療後の転帰が良好である。FDAの承認概要によれば、HPV陰性腫瘍の患者だけでなく、HPV陽性腫瘍の患者でも奏効が見られた(それぞれ24%と16%)。
【0038】
再発性、局所進行性、又は転移性の頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)は生命を脅かす疾患である。頭頸部の扁平上皮がんは、発生部位によって予後が異なる不均一な腫瘍である。口腔/咽頭と喉頭の2つのカテゴリーがある。HPV陰性腫瘍は高いリスクを伴う一方で、HPVは口腔咽頭の低リスク群となる。米国では2016年に、新たに48,000例を超える口腔がん及び咽頭がん、13,000例を超える喉頭がんが診断され、これらのがんが原因で約13,000名が死亡した。初診時に、口腔/咽頭がんの患者の約18%、喉頭がんの患者の約19%に遠隔転移が存在する。さらに、初診時に、口腔/咽頭がんの患者の約47%、喉頭がんの患者の約22%に所属リンパ節病変(遠隔転移を伴わない)が存在する;そのような局所的に進行した疾患の患者では、20%~30%が局所に再発することになり、さらなる10%~15%が遠隔転移を起こすことが予想されうる。ほとんどの臨床シリーズにおいて、再発性又は転移性のHNSCCの患者の生存期間中央値は6~10か月である。
【0039】
局所進行HNSCCの標準治療には、放射線(例えば、導入療法として、放射線との同時併用療法として、又は外科的切除後の放射線によるアジュバント療法の一部として)と併用する白金製剤を含む化学療法が含まれる。転移性HNSCCに対する第一選択化学療法は、シスプラチン又はカルボプラチン+5-フルオロウラシル+セツキシマブなどの多剤白金製剤含有化学療法レジメンからなる。最近では、PD1抗体が、白金製剤及びセツキシマブが失敗した後に再発した又は難治性のHNSCC患者に対して承認された。PD1抗体単独の奏効率は16%であり、DORは2.4+か月から27.7+か月の範囲であり、持続的奏効を示している。しかし、化学療法、セツキシマブ、及びPD1抗体が失敗した、又はそれらに対して許容できない毒性を経験した患者のための新しい治療法の必要性が依然として残っている。
【0040】
肝細胞がん(HCC)
実施形態において、本開示は、例えば、第一選択療法として;且つ/又は過去に抗がん療法による治療に反応したが、治療を止めると再発性がんを経験した対象の治療として;且つ/又は抵抗性若しくは難治性のがんの対象の治療としてHCCを治療するための方法及び使用に関する。
【0041】
肝がんは年間85万人を超える新規がん症例を占め、それらの約90%が肝細胞がん(HCC)である。C型肝炎ウイルス(HCV)又はB型肝炎ウイルス(HBV)による慢性感染は、HCCの一番の原因である。HCCは、世界の特定の地域で最も頻度の高いがんであり、世界で5番目に多いがんである。世界的には、男性のがんによる死亡の主な原因の第2位、女性のがんによる死亡の主な原因の第6位である(例えば、Parkin D.M.,Lancet Oncology,2:533-43,2001を参照)。HCCは臨床症状の経過の後期に診断されることが多いので、根治手術の候補となる患者は10~15%にすぎない。局所療法には複数の治療法が利用可能であり、手術、化学的アブレーション、放射線アブレーション、化学塞栓術などが挙げられ、かなりの患者集団で局所病勢コントロールを伴う。大多数のHCC患者では、全身化学療法又は支持療法が主力治療選択肢である。HCCは一般に、治療に対する反応が極めて乏しく、ほとんどの化学療法剤は有効性(effectiveness)が限られ、患者の生存を改善することができていない(例えば、Gish R.G.et al.,J.of Clinical Oncology 25:3069-75,2007;Ramanathan R.K.et al.,J.of Clinical Oncology 24:4010,2006を参照)。
【0042】
ソラフェニブは低分子マルチキナーゼ阻害剤であり、進行肝細胞がんに対して承認された最初の全身療法であった。ソラフェニブに忍容性を示したが、別治療中に進行した一部の患者において、別のマルチキナーゼ阻害剤であるレゴラフェニブが承認され、プラセボ対照と比較して延命効果をもたらした(10.6か月対7.8か月)。最近では、第一選択治療として、アテゾリズマブとベバシズマブの併用がソラフェニブよりも優れていることが示された。中央値8.6か月の追跡調査の後、ソラフェニブ群の13.2か月と比較して、併用群では全生存期間中央値は達されなかった。全奏効率は併用群で27%であったのに対し、ソラフェニブ群では12%であった。
【0043】
プログラム死(Programmed Death)1(PD-1)抗体ニボルマブ(オプジーボ(登録商標))を評価する最近の研究では、約10~20%の奏効率が示された。奏効期間はCRでは14~17+か月、PRでは<1~8+か月、安定(SD)では1.5~17+か月であった。6か月時点での全生存率(OS)は72%である。ニボルマブは管理可能なAEプロファイルを示し、すべての投与量レベル及びHCCコホートにわたって持続的な奏効を示し、6か月OS率は良好であった。PD-1抗体は第二選択治療においても迅速承認されている。現在承認されている治療法が失敗する患者にはさらなる治療法が必要である。
【0044】
非小細胞性肺がん(NSCLC)
実施形態において、本開示は、例えば、第一選択療法として;且つ/又は過去に抗がん療法による治療に反応したが、治療を止めると再発性がんを経験した対象の治療として;且つ/又は抵抗性若しくは難治性のがんの対象の治療としてNSCLCを治療するための方法及び使用に関する。
【0045】
NSCLCは最も一般的なタイプの肺がんである。扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんはいずれもNSCLCのサブタイプである。NSCLCは全肺がんの約85%を占める。クラスとしては、NSCLCは小細胞がんと比較して化学療法に比較的感受性が低い。可能であれば、第一に根治を目的とした外科的切除によって治療されるが、術前(ネオアジュバント化学療法)と術後(アジュバント化学療法)の両方で化学療法が用いられることが多くなっている。2015年10月2日、FDAはペムブロリズマブを、腫瘍がPD-L1を発現し、他の化学療法剤による治療が失敗した患者の転移性非小細胞肺がん(NSCLC)の治療に対して承認した。2016年10月、ペムブロリズマブは、がんがPDL1を過剰発現し、がんがEGFRにもALKにも変異を有しない場合に、NSCLCの治療の第一選択として使用される最初の免疫療法となった;既に化学療法が施されている場合には、ペムブロリズマブを第二選択治療として使用できるが、がんがEGFR変異又はALK変異を有する場合、それらの変異を標的とした薬剤が最初に使用されるべきである。PDL1の評価は、有効性が確認され承認されたコンパニオン診断薬を用いて行われなければならない。Keynote-001試験(NTC01295827)では、進行非小細胞肺がんをもつ患者において、ペムブロリズマブによるプログラム細胞死(programmed cell death)1(PD-1)阻害の有効性及び安全性が評価された。すべての患者の客観的奏効率は19.4%、奏効期間の中央値は12.5か月であった。無増悪生存期間の中央値は3.7か月、全生存期間の中央値は12.0か月であった。腫瘍細胞の少なくとも50%のPD-L1発現をトレーニング群(training group)からカットオフ値として選択した。検証群の割合スコアが少なくとも50%の患者では、奏効率は45.2%であった。プロポーションスコアが少なくとも50%のすべての患者では、無増悪生存期間の中央値は6.3か月であった;全生存期間の中央値に達しなかった。少なくとも50%の腫瘍細胞のPD-L1の発現は、ペムブロリズマブの有効性(efficacy)の改善と相関した(Garon et al.,N Engl J Med,372:2018-2028,2015)。非小細胞肺がんの30%を占めるKRAS変異肺腺がんは、臨床的意義が明らかになりつつある高度な不均一性を示す。腫瘍の不均一性は、KRASと同時に発生する遺伝的及び/又はエピジェネティックな変化に影響されうる一方で、不均一な腫瘍サブセットは、異なる起源の細胞の産物である可能性もある。発がん性Krasの空間的及び時間的活性化に基づく遺伝子組換えマウスモデルは、これらの問題に対処するのに役立っている。実際、肺を除くほとんどの組織がKrasG12V発がんシグナルに抵抗性であるという観察から、発がん性Krasによって引き起こされる形質転換の精巧な(exquisite)細胞型依存性が強調される。
【0046】
カポジ肉腫(KS)
実施形態において、本開示は、例えば、第一選択療法として;且つ/又は過去に抗がん療法による治療に反応したが、治療を止めると再発性がんを経験した対象の治療として;且つ/又は抵抗性若しくは難治性のがんの対象の治療としてKSを治療するための方法及び使用に関する。
【0047】
カポジ肉腫(KS)は血管内皮の多巣性血管増殖性疾患であり、ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8)としても知られるカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)の感染に最も関連している。KSは多くの疫学的及び病態生理学的因子と関連している。KSは、古典的地中海性KS、アフリカ風土病型KS、免疫抑制薬関連型KS、HIV関連型KSの4つの臨床型に分類される。HIV及びAIDSの時代以前には稀な疾患であったHIV関連型KSは、HIV感染患者において最も頻度の高い悪性腫瘍である。KSは多くの臓器に影響を及ぼしうる。KSは最も頻繁に皮膚の疾患として現れる。多くの進行症例では、KSは肺、肝臓、消化管などの臓器を侵す。現時点では、KSは不治である。利用可能な治療法は緩和のためのものである。全身化学療法は一般に、より進行した疾患又は疾患の急速な進行の証拠がある患者に用いられる。治療の主な目標は、症状の緩和、疾患進行の予防、及びリンパ浮腫、臓器障害、心理的ストレスを和らげるための腫瘍量の軽減である。内臓型又は進行した皮膚KSの標準的な治療法には、リポソームアントラサイクリンやパクリタキセルなどの細胞毒性化学療法が含まれる。リポソームドキソルビシンは、非リポソームドキソルビシン、ビンクリスチン、及びブレオマイシンの併用と比較して、優れた有効性並びに良好な忍容性及び毒性を有し、HIV患者において全奏効率は59%である。古典的KSでは、リポソームドキソルビシンに対する奏効率がより高くなりうる。しかし、完全奏効率はまれであり、治療法はない。現時点では、KSに対する標的療法は十分に開発されていない。
【0048】
実施形態において、がんは、頭頸部の扁平上皮がん(HNSCC)、肝細胞がん(HCC)、Kras変異非小細胞肺腺がん、及びカポジ肉腫(KS)から選択されるが、これらに限定されない。
【0049】
実施形態において、患者は、過去に抗がん療法による治療に反応したが、治療を止めると再発(以下「再発性増殖性疾患」)を経験した。
【0050】
実施形態において、患者は抵抗性又は難治性のがんを有する。実施形態において、がんは、免疫療法に不応である。実施形態において、がんは、化学療法剤による治療に不応である。実施形態において、がんは、特異的腫瘍抗原に対する除去抗体を用いた治療に不応である。実施形態において、がんは、共刺激分子又は共抑制分子(免疫チェックポイント)に対するアゴニスト抗体、アンタゴニスト抗体、又はブロッキング抗体を用いた治療に不応である。実施形態において、がんは、特異的腫瘍抗原に対する除去抗体及び細胞毒性剤を含む免疫複合体、抗体薬物複合体(ADC)、又は融合分子による標的治療に不応である。実施形態において、がんは、低分子キナーゼ阻害剤による標的治療に不応である。実施形態において、がんは、例えば、免疫療法、化学療法剤による治療、特異的腫瘍抗原に対する除去抗体を用いた治療、共刺激分子又は共抑制分子(免疫チェックポイント)に対するアゴニスト抗体、アンタゴニスト抗体、又はブロッキング抗体を用いた治療、特異的腫瘍抗原に対する除去抗体及び細胞毒性剤を含む免疫複合体、ADC、又は融合分子を用いた治療、低分子キナーゼ阻害剤による標的治療、手術を用いた治療、幹細胞移植を用いた治療、並びに放射線を用いた治療のうちの2つ以上を伴う併用療法に不応である。
【0051】
膀胱がん
実施形態において、本開示は、例えば、第一選択療法として;且つ/又は過去に抗がん療法による治療に反応したが、治療を止めると再発性がんを経験した対象の治療として;且つ/又は抵抗性若しくは難治性のがんの対象の治療として膀胱がんを治療するための方法及び使用に関する。
【0052】
実施形態において、膀胱(balder)がんは、新たに診断された、(膀胱又は排尿系、尿管、腎盂を越えて)局所的に進行した膀胱がん及び尿路上皮がんである。実施形態において、膀胱がん患者は、全身療法を受けていない、又はネオアジュバント全身化学療法から12か月以内である。
【0053】
実施形態において、膀胱がん患者はシスプラチンを含む標準的なレジメンを受けるのに不適格である。
【0054】
実施形態において、膀胱がん腫瘍は、TP53、ARID-1、BAP-1、RAS、PBRM1、PI3K、及び/又はPIK3CAの変異を有する。実施形態において、膀胱がん腫瘍はHER2及び/又はEGFR2の変異を有する。
【0055】
実施形態において、膀胱がんは筋層浸潤性膀胱がんである。
【0056】
胆管がん(CCA)
実施形態において、本開示は、例えば、第一選択療法として;且つ/又は過去に抗がん療法による治療に反応したが、治療を止めると再発性がんを経験した対象の治療として;且つ/又は抵抗性若しくは難治性のがんの対象の治療としてCCAを治療するための方法及び使用に関する。
【0057】
CCAは胆道系に発生する多様な悪性腫瘍群を構成する。CCAは、解剖学的な発生部位に応じて、肝内(iCCA)、肺門部(pCCA)、及び遠位(dCCA)の3つのサブタイプに分けられる。HCC-CCA混合腫瘍は独立実体(independent entity)と考えられており、iCCAとHCCの両方の特徴を共有し、侵襲性の強い疾患経過及び予後不良を示す稀なタイプの肝悪性腫瘍である。iCCAは二次胆管の上方に生じるが、pCCAとdCCAの間の解剖学的な区別のポイントは、胆嚢管の挿入である。pCCAとdCCAをまとめて「肝外」(eCCA)と呼ぶこともある。米国では、pCCAがCCA全体の約50~60%を占める単一の最大のグループであり、次いでdCCA(20~30%)、iCCA(10~20%)となっている。CCAは肝細胞がん(HCC)に次いで2番目に頻度の高い原発性肝悪性腫瘍であり、すべての原発性肝腫瘍の約15%、消化器がんの3%を占める。CCAは通常、早期では無症状であり、したがって疾患が既に進行した段階で診断されることが多く、治療選択肢が大きく狭まり、結果として予後不良となる。CCAは稀ながんであるが、その発生率(住民10万人あたり年間0.3~6人)及び死亡率(韓国や、中国、タイなど、発生率が人口10万人あたり>6人の特定の地域を考慮せず、世界的に住民10万人あたり年間1~6人)は、ここ数十年、世界中で増加しており、世界的な健康問題となっている。CCAに対する認識、知識、診断及び治療法の進歩にもかかわらず、患者の予後は過去10年間で実質的に改善されておらず、5年生存率(7~20%)及び切除後の腫瘍再発率は依然として期待外れである。大胆管iCCAでは、pCCA及びdCCAと同様に、KRAS及び/又はTP53遺伝子の高頻度の変異がみられる。実施例1~2で議論されるように、変異がTP53、ARID-1、BAP-1、RAS、PBRM1、PI3K、PIK3CAにある腫瘍は、sEphB4-HSA療法に対する反応を妨げなかった。さらに、sEphB4-HSA+抗EGFR(セツキシマブ)の共投与は、例えばHER2の過剰発現などの要因におそらく起因して、特に抗EGFR抵抗性のがんなどにおいて相乗的な抗腫瘍効果を有しうる。
【0058】
実施形態において、CCA患者は、シスプラチン及び/又はゲムシタビンに抵抗性である。
【0059】
他のがん種のなかでもとりわけ、胆管がんを治療するための組成物には、sEphB4-HSA融合タンパク質と、抗EGFR抗体又はその抗体断片(例えばVHH、ナノボディ、scFvなど)の併用投与が含まれる。実施形態において、抗EGFR抗体は、モノクローナル抗体(mAb)であるセツキシマブであることができる。抗体は、他の抗体フォーマットのなかでもとりわけ、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体であることができる。
【0060】
HER2/EGFR2変異がん
実施形態において、本開示は、例えば、第一選択療法として;且つ/又は過去に抗がん療法による治療に反応したが、治療を止めると再発性がんを経験した対象の治療として;且つ/又は抵抗性若しくは難治性のがんの対象の治療としてHER2/EGFR2変異がんを治療するための方法及び使用に関する。
【0061】
実施形態において、HER2/EGFR2変異がんは、肺がん、頭頸部がん又は膀胱がんである。
【0062】
実施形態において、HER2/EGFR2変異がん患者は、化学療法及び/又はキナーゼ阻害剤治療及び/又はHer2抗体治療(例えばADCを含む)が失敗している。
【0063】
実施形態において、HER2/EGFR2変異がん患者は、エクソン20 p^772_A775重複Her2変異を有する。実施形態において、HER2/EGFR2変異がん患者は、RB1 エクソン20 pL700X、TP53 エクソン4 p.S116fsの同時変異を有する。
【0064】
実施形態において、HER2/EGFR2変異がん患者はERBB2 エクソン17 V659E変異を有する。実施形態において、HER2/EGFR2変異がん患者は、PIK3CA E 545K、TP53、エクソン5、R158fs、及びATM G2891D NF1 E2143変異を同時に有する。
【0065】
実施形態において、HER2/EGFR2変異がん患者はERBB2変異を有する。実施形態において、HER2/EGFR2変異がん患者は、ATM、RICTOR、CCNE1、CDKN18、IRS2、PMS2、TERT、及びTP53変異を同時に有する。
【0066】
実施形態において、EGFR変異がん、例えば頭頸部がん、肺がん、結腸(colon)がん、及び膀胱がんは、高いEGFRレベルを示す。
【0067】
KRAS変異がん
実施形態において、本開示は、例えば、第一選択療法として;且つ/又は過去に抗がん療法による治療に反応したが、治療を止めると再発性がんを経験した対象の治療として;且つ/又は抵抗性若しくは難治性のがんの対象の治療としてkras変異がんを治療するための方法及び使用に関する。
【0068】
実施形態において、kras変異がんは、肺、結腸直腸(colorectal)及び膵臓がんから選択される。実施形態において、kras変異がんは、膵管腺がん(PDAC)及び非小細胞肺がん(NSCLC)から選択される。
【0069】
実施形態において、krasの変異は、G12C、G12D及びG12Rから選択される。
【0070】
実施形態において、本発明の方法は、Kras核酸又はタンパク質レベルの低下又は阻害を引き起こす。実施形態において、本発明の方法は、Krasタンパク質のタンパク質分解の増加を引き起こす。
【0071】
実施形態において、本発明の方法は、例えば未治療の状態(untreated state)と比較して、Krasによって引き起こされる腫瘍形成の減少又は阻害を引き起こす。
【0072】
医薬組成物
実施形態において、本開示のポリペプチド治療剤は、活性治療剤、すなわち、及び(i.e.,and)他の様々な薬学的に許容される成分を含む医薬組成物として投与されることが多い(Remington’s Pharmaceutical Science,15th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1980を参照)。好ましい形態は、意図する投与の方法及び治療への応用によって決まる。組成物には、所望の製剤に応じて、動物又はヒトへの投与のための医薬組成物を製剤化するために一般的に使用されるビヒクルとして定義される、薬学的に許容される無毒の担体又は希釈剤を含めることもできる。希釈剤は、組み合わせたもの(combination)の生物学的活性に影響を与えないように選択される。そのような希釈剤の例は、蒸留水、生理的リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、ブドウ糖液、及びハンク液である。さらに、医薬組成物又は製剤は、他の担体、アジュバント、又は非毒性、非治療的、非免疫原性の安定剤などを含むこともできる。
【0073】
実施形態において、原発性又は転移性がんの治療のための医薬組成物は、非経口、局所、静脈内、腫瘍内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内、又は筋肉内の手段によって投与することができる。
【0074】
非経口投与の場合、開示の医薬組成物は、水や、油、生理食塩水、グリセロール、エタノールなどの無菌の液体でありうる医薬担体を用いて、生理的に許容される希釈剤中の物質の溶液又は懸濁液の注射可能な用量として投与することができる。さらに、湿潤剤又は乳化剤、界面活性剤、pH緩衝物質などの補助物質を組成物中に存在させることができる。医薬組成物の他の成分は、石油、動物、植物、又は合成由来のもの、例えばピーナッツ油、大豆油、及び鉱油である。一般に、プロピレングリコールやポリエチレングリコールなどグリコールは、特に注射可能な溶液に好ましい液体担体である。抗体及び/又はポリペプチドは、有効成分の徐放を可能にするような方法で製剤化されたデポ注射剤又はインプラント製剤の形態で投与することができる。典型的には、医薬組成物は、液体溶液又は懸濁液のいずれかとして注射剤として調製される;注射前に液体ビヒクルへの溶解又は懸濁に適した固体形態も調製することができる。この製剤は、前述のように、アジュバント効果を高めるために、リポソーム又はポリラクチドや、ポリグリコリド、コポリマーなどの微粒子に乳化又はカプセル化することもできる。Langer,Science 249:1527,1990及びHanes,Advanced Drug Delivery Reviews 28:97-119,1997。本開示のポリペプチド剤は、有効成分の持続的又はパルス放出を可能にするような方法で製剤化できるデポ注射剤又はインプラント製剤の形態で投与することができる。
【0075】
他の投与方法に適したさらなる製剤としては、経口、鼻腔内、及び肺用製剤、坐剤、並びに経皮適用が挙げられる。
【0076】
実施形態において、本開示の方法は、治療を必要とする患者に、本開示のsEphB4-HSAポリペプチドの治療有効量又は有効量を投与することを含む。実施形態において、例えば、原発性又は転移性がんの治療のための、本明細書に記載の本開示のポリペプチドの有効量は、投与の手段、標的部位、患者の生理的状態、患者がヒトであるか動物であるか、施される他の薬物療法(medications)、及び治療が予防的か治療的かを含む多くの様々な因子に応じて異なる。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳類を含むヒト以外の哺乳類も治療することができる。治療投与量は、安全性及び有効性を最適化するように量を決める必要がある。
【0077】
実施形態において、投与量は、約0.0001~100mg/kgの宿主体重、より通常は0.01~10mg/kgの範囲であることができる。例えば、投与量は1mg/kg体重若しくは10mg/kg体重、又は1~10mg/kgの範囲内であることができる。実施形態において、患者に投与されるポリペプチドの投与量は、約0.5、約1.0、約1.5、約2.0、約2.5、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約6.0、約7.0、約8.0、約9.0、及び約10.0mg/kgから選択される。実施形態において、治療計画(regime)は週1回の投与を伴う。実施形態において、治療計画は2週間に1回又は1か月に1回又は3か月~6か月に1回の投与を伴う。本開示の治療実体(Therapeutic entities)は、通常、複数回にわたって投与される。単回投与の間隔は、毎週、隔週、毎月、又は毎年であることができる。また、間隔は、適応があれば、患者の治療実体の血中レベルを測定することによって不規則であることもできる。代替的に、本開示の治療実体は、徐放性製剤として投与でき、その場合、投与回数が少なくてすむ。投与量及び頻度は、患者におけるポリペプチドの半減期によって異なる。
【0078】
本明細書に記載のポリペプチドの毒性は、例えば、LD50(集団の50%を致死させる投与量)又はLD100(集団の100%を致死させる投与量)を測定することによって、細胞培養又は実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性と治療効果の投与量比が治療指数である。細胞培養アッセイ及び動物試験で得られたデータは、ヒトでの使用に毒性のない投与量範囲を処方する際に使用することができる。本明細書に記載のポリペプチドの投与量は、好ましくは、毒性がほとんど又は全くない有効量を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、採用される剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変わりうる。正確な製剤、投与経路及び投与量は、患者の状態を考慮して、対象の医師(subject physician)によって選択されうる(例えば、Fingl et al.,1975,In:The Pharmacological Basis of Therapeutics,Ch.1を参照)。
【0079】
実施形態において、本発明の方法は、免疫療法、化学療法、標的特異的腫瘍抗原に対する除去抗体を用いた治療、標的共刺激分子又は共抑制分子(免疫チェックポイント)に対するアゴニスト抗体、アンタゴニスト抗体、又はブロッキング抗体を用いた治療、特異的腫瘍抗原に対する除去抗体及び細胞毒性剤を含む免疫複合体、ADC、又は融合分子を用いた標的治療、低分子キナーゼ阻害剤標的治療、手術、放射線療法、並びに幹細胞移植から選択される1つ又は複数のさらなる抗がん療法を含む。併用は相乗効果がある可能性がある。併用は、抗がん療法の治療指数を高める可能性がある。
【0080】
実施形態において、免疫療法は、PD-1や、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、OX-40、CD137、GITR、LAG3、TIM-3、VISTAなど共刺激分子又は共抑制分子(免疫チェックポイント)に対するアゴニスト抗体、アンタゴニスト抗体、又はブロッキング抗体を用いた治療;ブリナツモマブなどの二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE(登録商標))用いた治療:IL-2や、IL-12、IL-15、IL-21、GM-CSF、IFN-α、IFN-β、IFN-γなどの生物学的反応修飾物質の投与を伴う治療;シプロイセルTなどの治療ワクチンを用いた治療;樹状細胞ワクチン又は腫瘍抗原ペプチドワクチンを用いた治療;キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞を用いた治療;CAR-NK細胞を用いた治療;腫瘍浸潤リンパ球腫瘍(TIL)を用いた治療;養子移入抗腫瘍T細胞(生体外増殖及び/又はTCRトランスジェニック)を用いた治療;TALL-104細胞を用いた治療;並びにToll様受容体(TLR)アゴニストCpGやイミキモドなどの免疫刺激剤を用いた治療から選択される。実施形態において、免疫療法は、共刺激分子又は共抑制分子に対するアゴニスト抗体、アンタゴニスト抗体、又はブロッキング抗体を用いた治療;キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞を用いた治療;CAR-NK細胞を用いた治療;及び二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE(登録商標))を用いた治療から選択される。実施形態において、免疫療法は、共刺激分子又は共抑制分子に対するアゴニスト抗体、アンタゴニスト抗体、又はブロッキング抗体を用いた治療である。実施形態において、免疫療法は、キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞を用いた治療である。実施形態において、免疫療法は、CAR-NK細胞を用いた治療である。実施形態において、免疫療法は、二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE(登録商標))をも用いた治療である。
【0081】
併用療法の性質に応じて、本開示のポリペプチド治療剤の投与は、他の療法が投与されている間に、かつ/又はその後に継続することができる。ポリペプチド治療剤は、さらなる抗がん療法の前、同時、又は後に、通常、少なくとも約1週間以内、少なくとも約5日以内、少なくとも約3日以内、少なくとも約1日以内に投与することができる。ポリペプチド治療剤は、単回投与で送達してもよく、複数回投与に分割してもよく、例えば、毎日、隔日、半週(semi-weekly)、毎週を含む一定期間にわたって送達してもよい。有効量は、投与経路、特定の薬剤、抗がん剤の投与量などによって異なることになり、当業者が経験的に決定することができる。
【0082】
本開示をさらに詳細に説明するために以下の実施例を示す。
【実施例
【0083】
実施例1:頭頸部SCCにおけるsEphB4-HSA単剤療法の第I/II相試験
この研究では、用量漸増コホート7名と拡大コホート11名を含む18名のHNSCC患者が登録された。8名の患者がHPV陰性、10名の患者がHPV陽性であった。耳下腺の腺嚢胞がん患者1名は解析から除外された。1名の患者は治療の最初の3週間内に治療を中止した。
【0084】
16名の患者の反応を評価した。患者は毎週、静注sEphB4-HSAを10mg/kgで受けた。15名の患者は過去に根治的放射線療法及び化学療法を受けていた。10名の患者は診断時又は再発時のいずれかに手術を受けたことがあった。患者は全員、再発したHNSCCに対する化学療法を受けた。前全身療法は2~6つの異なるレジメンであった。さらに、12名の患者が以前にセツキシマブの投与を受け、1名の患者がPD1抗体の投与を受けた。結果を下の表1並びに図1図2及び図3に示す。
【0085】
これらの患者のなかでの全奏効は、PRが2名、腫瘍退縮が2名、混合奏効が1名、4か月を超える安定が5名で見られた。6名の患者は進行であった。奏効した患者のなかで1名が生検を受けたが、生存腫瘍の証拠はなかった(図1)。1名の患者は10か月後に治療を止めることを決め、それから16か月間無病状態のままであった。図2は、10mg/kgのsEphB4-HSAで毎週治療した喉頭SCCの患者のスキャンを示す。スキャンでは、治療の8週目に部分奏効がみられる。
【0086】
腫瘍反応又は病勢コントロールを示す患者の例を、図1図2、及び図3並びに表2~4に示す。
【0087】
本研究により、sEphB4-HSAが単剤で再発した難治性HNSCCに活性を有することが示され、sEphB4-HSAがHNSCCの治療の第一選択療法として使用できることが示唆されている。
【0088】
実施例2:肝細胞がんにおけるsEphB4-HSA単剤療法
組織学的に進行肝細胞がんと確認されたHCC(≧18歳)のコホートを調べた。過去にソラフェニブ及び/又はPD1抗体による治療を受けた患者を適格とした。主要評価項目は、安全性及び忍容性及び客観的奏効率(固形腫瘍における治療効果評価基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)バージョン1.1、奏効期間、安定の期間、並びに無増悪期間であった。患者は毎週、10mg/kgのsEphB4-HSAの静脈内投与を受けた。15名の適格患者が試験に登録された。患者のほとんどはアジア人の男性で、ほとんどの患者のECOGパフォーマンスステータスは1であった。患者全員が過去に全身療法を受けたことがあり、PD1抗体が10例、ネクサバールが9例、手術が6例、放射線が5例であった。ほとんどの患者は以前に2つ以上のレジメンを受けていた。これまでのところ、客観的奏効率は15名の患者のうち1名(7%)、4か月を超える安定が8名(20+か月超は2名)であった。結論として、sEphB4-HSAは安全に長期間投与することができる。グレード3の毒性は、疲労1名、悪心1名、好中球減少1名、及び高血圧6名である。高血圧では5名で、減量が必要であった。ネクサバール及びPD-1が失敗した後の持続的な客観的奏効及び長期安定は、単剤及びPD-1抗体との併用での開発を支持する。
【0089】
全部で、8名の患者が4か月以上続く安定を、2名の患者が20か月を超えて安定であった。グレード3/4の治療関連有害事象は7名の患者(47%)に認められ、うち6名の患者は高血圧であった。2名の患者は減量が必要であった。高血圧による合併症が起きた患者はいなかった。
【0090】
1名の患者(FN)はHCV関連HCCの79歳の女性で、過去に15か月間TACEによる治療を受け、部分奏効を得た。次いで、PD1抗体による治療を受け、5か月後に進行した。その後、11か月間sEphB4-HSAによる治療を受け、2つの小さな残存結節を定位放射線療法で治療した。その患者は現在、8か月+の間(又は最初の試験登録から22+か月)無治療で無病状態のままである(図4)。
【0091】
別の患者(BW)は、HCV関連HCCの男性で、過去にTACEによる治療を受け、7か月間安定であった。次いで、PD1抗体の投与を受け、腫瘍が退縮した。その後、肺転移を含む疾患進行が認められた。PD1抗体は18か月間継続したが、最初の8か月以降は徐々に進行した。sEphB4-HSAを20+か月の間使用しており、安定している。3例目の患者(TN)は、肝移植を受け、再発性HCCを発症した。過去にネクサバール、TACE、ジェムザール、オキサリプラチン、イットリウム90の投与を受けた。8か月間安定であった(図5)。
【0092】
この第2相試験は、ネクサバール及びPD1抗体が失敗した後、sEphB4-HSAによる治療は、腫瘍の退縮及び持続的な病勢コントロールをもたらし、奏効、奏効期間及び生存の改善が得られ、sEphB4-HSAはHCCの治療に第一選択療法として使用できることを示している。
【0093】
実施例3:Kras変異非小細胞肺腺がんにおけるsEphB4-HSA単剤療法
Kras変異肺腺がん患者のコホートを単剤sEphB4-HSA試験で評価した。患者は、KRAS変異肺がんの診断歴があり、以前の治療が失敗で、進行性の疾患の証拠がある場合に組み入れられた。9名の患者が登録された。9名中2名の患者は治療4週間以内に試験から抜け、反応は評価されなかった。患者の概要は臨床概要データにも含まれている。5症例をそれぞれ以下にまとめる。
【0094】
患者AC:Kras変異多巣性肺腺がん及び脳転移。患者は脳照射を受け、その後カルボプラチン、パクリタキセル、アバスチンを3サイクル投与された。患者は不耐であり、7か月で進行した。sEphB4-HSAの治療を受け、11か月間安定していた(図6)。
【0095】
患者TC:Kras変異右上肺腺がん、アリムタ及びカルボプラチンの投与を受け、10か月後に進行した。次いで、ナノスフィアドセタキセルを6か月間投与して安定し、タキソテールを4か月間投与して進行した。sEphB4-HSAに進み、右肩痛は消失し、8か月間安定していた。
【0096】
患者PS:Kras変異肺がんに対し、アリムタ、カルボプラチン及びアバスチンを6サイクルによる治療、続いてアリムタを計21か月間維持。再発時には、タキソテールによる8か月間の治療を受け、アバスチンで進行、ノベルビンとアバスチンに不耐性、アバスチン単独での進行、エトポシド+シスプラチン+ゲムシタビンで進行であった。次いで、ゲムシタビンとアバスチンの投与を6か月間受けた。進行でsEphB4-HSA試を受けた。4か月間安定している。
【0097】
患者JC:右上肺Kras変異中等度分化型肺腺がんをもつ76歳女性、手術を受け、シスプラチン及びアリムタのアジュバント療法を4サイクル行った。患者の疾患は進行していた。腫瘍はPD-L1陽性(70%)であったので、ペムブロリズマブの治験に進んだ。腫瘍は3か月後に進行した。sEphB4-HSAの治験を受け、4か月間安定であった。
【0098】
患者HW:Kras変異肺がん患者はアバスチン、アリムタ、及びカルボプラチンの投与を受けた。6か月後に進行し、患者はsEphB4-HSA治験に入った。患者は32週間安定(table disease)であった。
【0099】
奏効を評価できた9名の患者中7名で、5名の患者がEphB4-HSA単剤療法でそれぞれ11か月、8か月、8か月、4か月、及び4か月間安定を示した。
【0100】
実施例4:カポジ肉腫におけるsEphB4-HSA単剤療法
3名のKS患者を試験対象とした。2名はHIVに感染し、1名はHIV陰性であった。3名の患者は全員、過去に複数の前治療を受けていた。6つの前治療を受けた2名のHIV KS患者のうちの1名は、脚全体で疾患が進行し、3つの前治療で完全には消失しなかった長期にわたる広範な関連浮腫があった。
【0101】
別の患者は、以前に細胞毒性化学療法及び複数の治験薬による治療を受けていた。sEphB4-HSAを投与した。腫瘍は完全に消失し、脚の浮腫も完全に消失した(図7)。2年を超えて寛解が続いている。治療頻度は、2週間に1回、10mg/kgに減らされ、6か月を超えて寛解が維持されている。前臨床試験、腫瘍での標的発現、及び臨床での反応に基づき、現在NCI-CTEP-AMC(AIDS悪性腫瘍コンソーシアム(AIDS Malignancy Consortium))を通じて第II相試験が進行中である。
【0102】
実施例5:sEphB4-HSA膀胱がんの第一選択又はフロントライン療法
進行した疾患:全身療法の使用前又はネオアジュバント全身化学療法の12か月以内に新しく診断された、(膀胱又は排尿系、尿管、腎盂を越えて)局所的に進行した膀胱がん及び尿路上皮がん(図8)。8名の患者は標準的なシスプラチン含有レジメンを受けるのに不適格で、結果として生存率は非常に低かった。10名の患者は、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、メトトレキサートなどの細胞毒性化学療法を受けずに、毎週10mg/kgのsEphB4-アルブミンを含むレジメンで治療されていた。6人の患者は、最初の6週間の治療を完了し、放射線学的方法(コンピュータ断層撮影)による腫瘍評価を1回又は複数回受けた。6人の患者はそれぞれ、RECIST治療効果基準(response criteria)(バージョン1.0)によって定義された奏効を示した。さらに、6人の患者はそれぞれ、完全寛解を達成した。さらに、4~16か月の追跡調査後に再発した患者はいなかった。最初の3週間内に無関係な理由で治療を中止した2人の患者が死亡した。8人の患者が生存している。
【0103】
TP53、ARID-1、BAP-1、RAS、PBRM1、PI3K、PIK3CAに変異がある腫瘍は、治療への反応を妨げなかった。
【0104】
標準治療の化学療法では、一般にゲムシタビンと併用されるシスプラチンが含まれる。最良の治療レジメンにより、症例の約40%で全奏効が得られ、無増悪生存期間は6~7か月、全生存期間中央値は約16か月であった。シスプラチンの投与を受けることができなかった患者(一般に40~60%)の予後は、はるかに悪かった。
【0105】
実施例6:筋層浸潤性膀胱がん
図8は、新たに診断され、sEphB4-アルブミン融合タンパク質を含むレジメンで治療された進行膀胱がんの全生存率をグラフ化したものである。
【0106】
新たに膀胱がんと診断された患者は、標準治療のシスプラチン+ゲムシタビンによる化学療法を受け、根治手術(根治的膀胱全摘術)の時点で30%近くの病理学的完全寛解が得られ、長期無病生存が予測された。再発までの期間の中央値は約14~17か月であった。新たに筋層浸潤性膀胱がんと診断された17名の患者を、sEphB4-アルブミン融合タンパク質で治療した(図9)。薬剤の標的であるエフリンB2を発現した10名の患者の病理学的完全寛解率は70%であった。これら7人の患者のうち、最長36か月の追跡期間中に再発したものはいなかった。さらに、膀胱摘出術を拒否した2名の患者は、2年を超える追跡調査の後も無病のままであり、バイオマーカー陽性膀胱がん患者では臓器温存が達成できることを示している。これらの結果は非常に想定外であった。さらに、7名のバイオマーカーエフリンB2陰性患者は、最長36か月までの追跡調査後に再発した患者はいなかったが、病理学的完全寛解を達成した患者は2名だけであった。これらのデータは、エフリンB2が治療中に誘導され、生物学的な利益、さらには記憶反応(memory response)を生み出すことにつながる可能性を示唆した。
【0107】
実施例7:筋層非浸潤性膀胱がん又は表在がん
筋層浸潤性膀胱がんなどのバイオマーカー陽性患者の腫瘍は、筋層浸潤性膀胱がん及び転移性膀胱がんよりも、免疫療法に反応する腫瘍を有し、持続的な反応を得る可能性がさらに高い。とりわけ、BCGは筋非浸潤性膀胱がんに高い活性を示す。様々な臓器:肺、頭頚部、膀胱のHER2/EGFR2変異がん、Her2変異腫瘍は治癒不能である。標準的な療法としては、化学療法、キナーゼ阻害剤、及びHer2抗体薬物複合体が挙げられる。それらの治療は、部分的な患者集団に部分奏効をもたらした。
【0108】
Her2はEphB4とともに細胞膜に局在する。Her2はEphB4を誘導する。Her2特異的抗体はEphB4レベルを低下させた。研究により、EphB4がHer2の下流シグナル伝達及びリン酸化を調節することが示された。まず、EphB4の発現が予想通り高いHer2トランスジェニックマウスを調べた。トランスジェニックマウスに可溶性EphB4を投与すると、腫瘍形成及び肺を含む転移が阻止された(図10)。マウスに7.5mg/kgの投与量を週3回IP注射で5週間投与した。腫瘍組織のHer2/ERBB2総タンパク質及びタンパク質のリン酸化を分析した。組織分析では、蛍光共焦点顕微鏡染色分析によりHer2リン酸化の減少が示された。したがって、化学療法が失敗したHer2過剰発現腫瘍を治療した。迅速で且つしばしば完全な寛解が観察され、長期間持続した。マウスにおけるsEphB4-HSA投与は、腫瘍体積の統計的に有意な減少(p=0.005)とマウス1頭当たりの腫瘍量の有意な減少(p<0.005)を示した。sEphB4-HSA投与後、マウス1頭当たりの平均腫瘍数の統計的に有意な減少が観察された(p<0.01)。さらに、観察された肺転移の量は大きく減少した。
【0109】
ヒトでは、Her2変異腫瘍はさらに大きな課題となる。標準治療化学療法及びキナーゼ阻害剤が失敗したHer2変異がんの患者を治療した。疾患のこの状態は、アンメットニーズを表している。治療への抵抗性を示すエクソン20 p^772_A775重複、RB1 エクソン20 pL700X、TP53 エクソン4 p.S116fs;ERBB2 エクソン17 V659Eの同時変異、同時PIK3CA E 545K、TP53、エクソン5、R158fs、ATM G2891D NF1 E2143を含むHer2変異をもつ5名の患者を治療した。別の症例では、ERBB2変異はATM、RICTOR、CCNE1、CDKN18、IRS2、PMS2、TERT、TP53を同時に有する。患者は完全寛解し、2年後、無病で無治療のままであった。図11は、sEphB4療法に対するERBB2 エクソン20重複の奏効を示した。
【0110】
別の患者では、ERBB2変異にくわえて、ALKとROS1の再構成の同時変異があった。腫瘍は肺、頭頸部、骨、脳、及びリンパ節に限局していた。
【0111】
それぞれの患者において、週1回10mg/kgの治療でsEphB4-アルブミン融合タンパク質を投与すると迅速な奏効が観察された。5名の患者のうち3名で完全寛解が認められた。5名の患者のうち4名が奏効を示し、3名の患者が完全寛解を達成し、期間は6か月の持続~2年を超えて持続中である。
【0112】
実施例8:EGFR変異及び高発現が臨床上の大きな課題となる
EGFRの増加は、頭頸部がん、肺がん、結腸がん、膀胱がんなど多くのがんで認められる。単剤抗体療法に対する奏効率は比較的低く、持続期間も短い。EGFR遺伝子変異はさらに大きな課題であり、キナーゼ阻害剤が失敗するのが一般的である。特に治療初期にEGFR標的療法と併用する追加の療法が必要である。
【0113】
本発明者らはEGFRとEphB4は互いの発現を増強することを明らかにした。図12に示されるように、抗EphB4を用いた免疫沈降(IP)ではEGFRがプルダウンされ、同様に抗EGFRを用いたIPではEphB4がプルダウンされ、両者が直接的な結合を介して共局在していることが示された。EphB4のノックダウンは、細胞溶解物の免疫ブロットによって示されるように、EGFRタンパク質レベルを低下させた。薬剤をそれぞれ標的とすることが、EphB4過剰発現NSCLC細胞(KRAS変異を有するH358非小細胞肺がん(NSCLC)細胞株)において有効性であることが示され、併用すると、H661(Her2過剰発現)NSCLC細胞においてでさえも、その活性は増強された。したがって、sEphB4とEGFRを標的とする療法は強力な相乗的活性を示し、併用の根拠となった。
【0114】
図13に示されるように、sEphB4と抗EGFR抗体(セツキシマブ)を用いた生体内有効性試験では、相乗的な有効性が示された。抗EGFR治療に抵抗性の腫瘍では、sEphB4は有効であり、sEphB4+セツキシマブはどちらか単独の治療よりも有効であった。
【0115】
実施例9:胆管がんのsEphB4-HSA治療のアウトカム
胆管がんは治療に対する反応が悪い。標準的な化学療法はシスプラチン及びゲムシタビンである。新しい治療法、特に標的療法が必要である。最近、キナーゼ阻害剤によるFGFR変異胆管がんの治療で腫瘍の退縮が示されたが、奏効率は低く、完全寛解の可能性はさらに低い。新規の治療法が必要である。胆管がんをsEphB4で治療し、一部の患者は持続的な奏効を示した。これは、アンメットニーズに対する解決策であった。
【0116】
胆管がんでの奏効の例を示す図14に示されるように、例えば、過去にゲムシタビン、シスプラチン、マイトマイシンC、手術、放射線療法、及び高周波超音波による治療を受けた64歳の女性は、肺転移が進行していた。sEphB4-アルブミン融合タンパク質を15mg/kgで2週間ごとに投与する治療を受け、実質的な腫瘍退縮が1年を超えて続いた。
【0117】
実施例10:EphB4発現はKras変異細胞に増殖優位性を与える
本発明者らは、ヒトチロシンキナーゼのsiRNAライブラリー(サーモサイエンティフィック)を使用して、Kras変異がん細胞の生存の調節におけるチロシンキナーゼの役割を調べた。3つのKras変異がん細胞株(H358、H727、及びMia Paca-2)並びに2つのKras野生型細胞株(293T及びLTC)を、85個のチロシンキナーゼを標的とするSMARTpool siRNAライブラリー(遺伝子当たり4つのsiRNAの混合物)でトランスフェクトした。MTTアッセイの結果は、siRNAを介したチロシンキナーゼのノックダウンが細胞株の生存に及ぼす影響を示すヒートマップとして示した(図15A)。受容体型チロシンキナーゼEphB4の阻害は、3つのKras変異細胞において生存が最も低下し、対照(293T及びLTC)と比較して最も優れたp値(P=0.018)をもつものをもたらしたので、EphB4は対象となる標的である(図15A)。
【0118】
本発明者らは、EphB4がKras変異依存性がん細胞株における細胞の生存の重要な調節因子であることを確認した。表17に示される発がん性のKras変異を有する次の細胞株を、Kras変異依存性について分析した:非小細胞性肺がん細胞株(NSCLC)(H358、H727及びH2009)、膵臓がん細胞株(Mia Paca-2)、及び結腸がん細胞株(HCT116及びSW620)。6つの細胞株はすべて、Kras変異の除去に感受性があった(図15B)。さらに、EphB4の異なる領域を標的とする2つのshRNAによって細胞内でEphB4をノックダウンした。結果は、TP53遺伝子の異常の存在の有無にかかわらず、EphB4がKras変異細胞株の生存に必要であることを示した(図15C及び表17)。
【0119】
EphB4タンパク質の発現は様々なヒトのがんで誘導され、腫瘍の病期の進行と関連している。HCT116細胞においてKrasG12D-mycを過剰発現させ、内在性EphB4タンパク質のレベルがKrasによって用量依存的に増強されることが示された(図15D)。また、Krasによって引き起こされる2つの異なるマウスがんモデル(口腔乳頭腫及びNSCLC)の腫瘍におけるEphB4発現も検討した。K14-CreERtam;LSL-KrasG12Dマウスは、サイトケラチン14(K14)プロモーターによって誘導されるタモキシフェン誘導Creリコンビナーゼ(CreERtam)を発現する。それらのマウスはまた、Kras変異(LSL-KrasG12D)を有し、タモキシフェン誘導(変異したKrasG12Dの上流にあるloxP隣接STOPカセット(LSL)のCreを介した除去)の1か月後に口腔乳頭腫を発症する。免疫染色により、EphB4とそのリガンドエフリンB2の両方が腫瘍内で増加していることが示された(図15E)。EphB4染色の上昇が乳頭腫の基底層及び中間層で観察され、より分化した腫瘍領域ではエフリンB2リガンドがEphB4受容体と相補的に発現していた。
【0120】
NSCLCのモデルマウスにおいて、アデノウイルスを使用することによってCreリコンビナーゼ(アデノ-Cre)を、LSL-KrasG12D;P53F/Fマウスの肺細胞に送達した。マウスはアデノウイルス気管内感染後に肺腺がんを発症する。EphB4及びエフリンB2の過剰発現も腫瘍内で観察された(図15F)。これらの結果から、EphB4シグナル伝達が発がん性のKrasG12Dによって誘導されることが示唆された。
【0121】
実施例11:EphB4の遺伝子破壊除去はKras変異マウスの生存を増加させる
腫瘍発生におけるEphB4の役割を調べるため、ephB4遺伝子のエクソン2及び3を標的としたEphB4コンディショナルノックアウトマウスを作製した。この変異体は、creを介した組換え後にephB4に中途停止コドンを作り出す(図16A)。EphB4F/Fの組織特異的ノックアウトを決定するために、K14-CreERtamマウスと変異体を交配し、マウスにタモキシフェンを投与した。口唇、舌、肺、心臓のDNA試料を採取し、タモキシフェン治療の1か月後に遺伝子型を決定した。予想通り、EphB4再構成(図16BのEphB4 RA)は、K14-CreERtam;EphB4F/Fマウスの口唇及び舌でのみ検出された。K14-CreERtam;LSL-KrasG12DマウスのKras遺伝子上流のSTOPカセットの除去も口唇腫瘍で確認した。
【0122】
以前に報告された従来のEphB4ノックアウトマウスは、心臓の欠陥に起因してE10で胚致死を示す。そこで、コンディショナルEphBb4変異体を、完全な遺伝子ノックアウトを生じる遍在的発現CMV-Cre欠失マウスとクロスした。CMV-Cre;EphB4F/F胚の成長遅延がE10.5及びE11.5段階で認められた。また、EphB4F/Fとタモキシフェン誘導CMV-Cretamマウスを交配させて、成体におけるEphB4の意義を調べた。CMV-Cretam;EphB4F/Fマウスの肺、心臓、腎臓、肝臓、及び小腸を含む主要臓器の病理学的解析を、タモキシフェン誘導の1か月後に行った。誘導されたマウスは健康で生存可能であり、対照と比較して突然変異体の臓器に目立った表現型は観察されなかった。これらの結果から、EphB4は胚発生に重要であるがにもかかわらず、正常な成体では重要な機能を有しないことが示唆された。
【0123】
多くのヒトのがんにおいて過剰発現したEphB4の発がん特性にくわえて、EphB4のノックダウンはKras依存性細胞株の細胞生存度を低下させた。これらの結果に促され、EphB4が、Krasによって引き起こされるがんモデルの腫瘍形成に影響するかどうかを調べた。この目的のために、K14-CreERtam;LSL-K-rasG12D;EphB4F/F(K14KB4)マウスを作製し、K14-CreERtam;LSL-K-rasG12D(K14K)マウスと比較した。タモキシフェン治療後4週目に、口腔扁平上皮乳頭腫がK14Kマウスの100%(n=10)で検出された。その結果から、K14KB4(n=9)マウスはK14Kマウスと比較して、腫瘍増殖が有意に少なく、生存期間が延びることが示された(図16C)(P<0.005)。NSCLCマウスモデルではさらに大きな生存の差が観察された。LSL-KrasG12D;P53F/F又はLSL-K-rasG12D;p53F/F;EphB4F/FマウスにAd-Cre(それぞれAdKP及びAdKPB4)を施した。肺腺がんの発がんはAdKPB4(図16D)で劇的に減少した。AdKPB4(n=18)の半数超(56%)は、Ad-Cre感染後150日目まで生存したが、AdKP(n=11)はすべて98日目以前に死亡した(P<0.0001)。
【0124】
実施例12:EphB4のノックダウンはKrasによって引き起こされる腫瘍におけるAKT及びERKシグナル伝達を弱めた
発がん性KrasがPI3K/AKT及びMAPK/ERKシグナル伝達経路を活性化することはよく知られており、これらはいずれもがん治療において重要な治療標的として機能する。そこで我々は、マウスの口腔乳頭腫及び肺腺がんにおいて、活性化されたPI3K/AKT経路についてはp-AKT及びp-S6の発現レベルを、MAPK/ERK経路についてはp-ERK1/2の発現レベルを調べた。口腔乳頭腫では検出できないp-ERK1/2を除くすべてのシグナル伝達指標は、腫瘍領域では有意に増加したが、EphB4ノックアウトマウスの組織では増加しなかった(口腔乳頭腫については図17A、肺腺がんについては図17B)。
【0125】
EphB4F/Fは口腔乳頭腫と肺腺がんマウスモデルの両方で腫瘍形成を遅らせるが、K14KB4又はAdKPB4マウスでは様々なレベルの腫瘍が最終的には発生することが観察された。これは、腫瘍におけるEphB4の不完全なノックアウトの結果でありうるのではないかと考えた。まず、AdKPB4マウスの肺組織におけるEphB4発現を調べた。インサイチュ染色と免疫蛍光染色はともに、EphB4 mRNAとタンパク質それぞれの過剰発現を示した(図17C)。また、AdKPB4の肺凍結切片を顕微解剖したところ、再構成(RA)-Kras、RA-P53、及びRA-EphB4が腫瘍領域と非腫瘍領域の両方でPCRによって検出できることがわかり、肺全体でのAd-Cre活性が示された(図17D、上のパネル)。しかし、loxPが導入された対立遺伝子をすべて欠失させれば、loxPが導入されたEphB4のバンドは完全に失われることから、loxPが導入されたEphB4遺伝子の存在は不完全ノックアウトの証拠となった。さらに、RT-PCRにより、非腫瘍領域と比較して腫瘍においてEphB4 mRNAの過剰発現が明らかに示され、肺の特定の領域ではEphB4の発現をうまく減らすことができず、結果としてAdKPB4マウスでは、変異Kras及びP53によって誘導される腫瘍形成を阻止できないことが示唆された(図17D、下のパネル)。
【0126】
本発明者らは、インサイチュハイブリダイゼーションを用いて、口腔乳頭腫におけるEphB4及びエフリンB2のRNA発現を分析した。その結果から、EphB4及びエフリンB2のRNA発現はかなり弱かったが、K14KB4マウスの腫瘍領域では依然として検出できることが示された。免疫染色により、K14KB4の腫瘍ではEphB4タンパク質の部分的な発現が明らかになった。
【0127】
実施例13:EphB4の薬理学的阻害は生体内でKrasによって引き起こされる腫瘍形成を効果的に阻害する
sEphB4の効率(efficiency)をさらに示すために、sEphB4投与下で活性化されたEphB4タンパク質におけるチロシン自己リン酸化状態を調べた。タモキシフェン誘導K14KマウスにsEphB4(50mg/kgマウス体重)を腹腔内投与した。sEphB4投与の3日後に口腔乳頭腫を採取し、抗EphB4抗体を用いて腫瘍溶解物を免疫沈降させた。ウェスタンブロッティングにより、EphB4のp-TyrシグナルがsEphB4投与腫瘍では有意に減少したが、対照では減少しなかったことが示された(図18A)。結果は、生体内でsEphB4は自己リン酸化もEphB4受容体の活性化も阻止できることを示した。
【0128】
本発明者らは、口腔乳頭腫及びNSCLCマウスモデルを用いてsEphB4の治療上の効力(therapeutic potency)を検討した。K14KマウスにsEphB4(20mg/kg、隔日)を、タモキシフェン誘発と同時に開始する群(予防群)又は2週間後に開始する群(逆戻し群)に投与した。両sEphB4投与群の生存率は対照K14Kマウスと比較して有意に増加した(図18B)。K14Kマウス(K14KP)にさらなるP53ノックアウト変異を追加すると、腫瘍の発生が促進された。K14KPに対するsEphB4の予防投与も腫瘍形成を遅らせ、生存期間を延長させた(図18C)。
【0129】
化学療法薬のパクリタキセル(タキソール)はNSCLCの治療に広く用いられている。他のがん治療薬(cancer drugs)との相乗的な相互作用が示されている。タキソールと併用したsEphB4を用いて、NSCLCモデルマウスAdKPに投与した。タキソール及びsEphB4の単剤投与は、対照と比較して同様の有意な生存優位性を示したが、タキソール投与マウスとsEphB4投与マウスの間に有意な差は認められなかった。タキソールとsEphB4の併用投与は、それぞれの単剤療法と比較して生存をさらに大きく改善した(図18D)。
【0130】
Kras変異は腫瘍におけるアポトーシスの減少及び増殖の増加と関連することが示唆されている。Krasによって引き起こされるがんにおけるsEphB4の効果を理解するために、sEphB4を投与した、自然発生腫瘍を有するK14Kマウスのアポトーシス及び増殖の状態をそれぞれTUNELアッセイ及びKi67染色を用いて調べた。sEphB4を1日おきに20日間投与すると、アポトーシスが有意に増加し、腫瘍の増殖が減少することがわかった(図18E及び図18F)。Kras下流シグナル伝達分子p-AKT及びP-S6も、sEphB4の投与で大きく減少した(図18G)。さらに、短期(44時間)の腫瘍組織培養により、腫瘍細胞のアポトーシス誘導に対するsEphB4の顕著な効果が確認された。
【0131】
実施例14:EphB4はβ-TrCP1を介したユビキチン化及びKrasの分解を妨げる
マウスの遺伝子組改変又はアンタゴニストであるsEphB4の投与のいずれかによるEphB4シグナルのノックダウンは、Krasによって引き起こされる腫瘍形成を効果的に消失させることが示された。一方、HCT116細胞株でEphB4をsiRNAでノックダウンは、CMVプロモーター駆動過剰発現Rasタンパク質のレベルを低下させ、EphB4がRasタンパク質の安定性に影響を及ぼしうることが示唆された。EphB4が内在性Krasタンパク質の半減期を調節するかどうかを確かめた。野生型Krasを有するヒト口腔扁平上皮がん細胞株SCC71及び発がん性KrasG12Dを有するマウスNSCLC細胞株4B-GFPを選んで、野生型と変異型KrasがともにEphB4によって調節されうるかどうかを調べた。siRNAによるEphB4のノックダウンは、内在性Krasタンパク質の半減期をSCC71では30.7時間から8.9時間に、4B-GFP細胞では41.1時間から7.1時間に減少させることがわかった(図19A)。さらに、Kras半減期の減少はプロテアソーム阻害剤MG132によって戻すことができ、ユビキチン-プロテアソーム機構がKrasタンパク質分解の制御に主要な役割を果たしていることが示唆される。K14Kマウスの腫瘍におけるKrasレベルをさらに調べ、sEphB4投与後、EphB4過剰発現細胞にあたる乳頭腫の基底層及び中間層においてKras発現が減少していることがわかった(図19B)。
【0132】
Kras半減期研究の結果に促され、理論に縛られることを望むものではないが、EphB4がKrasユビキチン化の調節を介してKrasタンパク質の安定性に影響を与えるという仮説が立てられる。Ub-Flag及びKras-mycを293T細胞に発現させ、一方でEphB4レベルをノックダウン又は過剰発現によって変化させた。抗Myc抗体を用いて免疫沈降を行い(Kras-myc)、続いて抗Flag抗体を用いた免疫ブロット(Ub-Flag)を行った。その結果から、siRNAによるEphB4のノックダウンは、安定性の低下と一致するKrasポリユビキチン化を大きく増加させたが、EphB4の過剰発現はKrasユビキチン化を減少させたことが示された(図19C)。
【0133】
Krasのポリユビキチン化は、F-boxファミリーE3リガーゼであるβトランスデューシンリピート(β-transducing repeat)含有タンパク質1(β-TrCP1)を介して調節されていることが示されている。β-TrCP1の過剰発現はKrasポリユビキチン化を促進した一方で、β-TrCP1のノックダウンはKrasユビキチン化を減少させることが確認された(図19D)。どのようにEphB4がこのプロセスに関与するかについての洞察を得るために、293T細胞においてEphB4をFlag-β-TrCP1、HA-Ub及びKras-mycの存在下で過剰発現させた。IP/ウェスタンブロット解析により、過剰発現したEphB4が、β-TrCPを介するポリユビキチン化をなくすことが示された(図19E)。共免疫沈降(Co-IP)研究により、Krasとβ-TrCP1の間のタンパク質間相互作用は、過剰発現したEphB4によって特異的に破壊されうるが、EphB4-eGFP(EphB4の細胞内ドメイン切断型)、エフリンB2又はHer2によっては破壊されないことがさらに証明された(図19F、上のパネル)。EphB4とβ-TrCP1の間のCo-IP又はEphB4とKrasの間のCo-IPから、EphB4がKrasタンパク質の代わりにβ-TrCP1に結合することによってβ-TrCP1-Kras相互作用と競合することが示された(図19F、中央のパネル)。
【0134】
実施例15:C末端EphB4断片の存在は、Cys118位でのKrasモノユビキチン化を促進するβ-TrCP1リガーゼ活性を調節する
β-TrCP1を介したKrasのポリユビキチン化をEphB4が阻害する機序を解明するため、インビトロユビキチン化アッセイを行った。図20Aに示されるように、Krasの野生型(WT)とG12V変異体の両方で、より高濃度のEphB4の存在下でのみ、モノユビキチン化の可能性を示すゆっくりと移動するKrasのバンドが確認された。次に質量分析を行い、WTとG12V変異体Krasの両方において、システイン118位のユビキチン部分の特異的な結合が認められた(118-CggDLPSR-123)(図20B)。その結果を踏まえて、G12D変異体バックグラウンドでKrasのCys118からセリン(S)への変異体を作製し、GC変異体と命名し、さらに上記のようにインビトロユビキチン化及び質量分析を行った。EphB4の存在下でのみ、KrasのWTとGD変異体の両方でC118モノユビキチン化が確認されたが、GC変異体では、モノユビキチン化を示す移動度シフトは見られず(図20C)、質量分析後のユビキチン修飾ペプチドも同定されなかった。興味深いことに、タンパク質の発現データを分析していると、一貫してEphB4の存在下でのみβ-TrCP1断片が認められた。次に、様々なKras変異体(WT、GD、CS、GC)の定常状態レベルを測定し、レベルの増加したKrasGC変異体のレベルの増加が見られた(図20D)。Krasタンパク質の安定性に対するEphB4の役割を確認するために、siRNAを介したEphB4のノックダウンを行い、様々なKrasタンパク質の半減期を測定した。EphB4の消失は、WT、GD及びCS変異体のKrasタンパク質安定性に負の影響を与えることがわかった。データから、EphB4の非存在下でさえもGC変異体タンパク質安定性の増加が示され(図20E)、EphB4を介するKras調節におけるC118の重要性が示唆された。GC変異体は、より安定であるにもかかわらず、pERK1/2レベルが低いことによって示されるように、GD Kras変異体と比較して低活性であることがわかった。この研究では、EphB4の過剰発現時のβ-TrCP1レベルの低下も認められ、EphB4-β-TrCP1軸の間に負の相関があることが示唆された。これらを総合して、EphB4の過剰発現が、変異Krasタンパク質の過剰活性化に必要なKrasのβ-TrCP1を介したモノユビキチン化の増強をもたらしうるというモデル(図20F)が提案された。結果として、KrasにおけるEphB4の欠損又はC118の部位特異的変異のいずれかが、変異体Krasの活性を弱める可能性があり、変異体KrasとEphB4の間の協同性が示唆される。
【0135】
実施例16:Ras変異ヒト腫瘍を標的としたsEphB4-HSAの臨床的有効性
前臨床データは、EphB4-エフリンB2経路ターゲッティングがヒト腫瘍においてで有効である可能性があり、保存された作用機序及びRasのすべての型(KRas、HRas、NRas)に保存された重要な残基により、それぞれのRasアイソフォーム内のすべての変異がEphB4-エフリンb2ターゲッティングを妨げる対象であることを示した。
【0136】
本発明者らはRas変異をもつ数名の患者を治療した。
1.KRas12Dに変異及びATM G2891DとPIK3CA E545Kの同時変異を有する肺腺がんの57歳女性。患者は以前に放射線療法を受け、失敗した。腫瘍はエフリンB2の発現を示した。患者はsEphB4-アルブミン融合タンパク質療法を受け、完全寛解を得た。患者には2年を超えて腫瘍がない状態である。患者は1年超治療を受けていない。
2.患者CB、KRasG12C変異、DKN2A.の同時変異をもち、肺の腺がんを有した62歳女性。患者は過去にカルボプラチン、アリムタ、アバスチンを含む化学療法を受けていた。患者は、5か月続く短期間の奏効を示した。患者の腫瘍はエフリンB2発現を示し、化学療法の追加なしにsEphB4-アルブミンを含む治療を行った。患者は6か月間治療に反応した。患者は治療を止めることを決め、最終的には進行した。
3.JK NRAS G13R変異、同時GNAS、TP53変異をもつ42歳の患者は、膀胱がんを有する。患者はシスプラチン及びエトポシドによる治療を受けたが、一次耐性を示した。腫瘍分析ではエフリンB2の発現がみられた。その後、患者はsEphB4-アルブミン融合タンパク質療法を受けた。患者は4か月続く腫瘍反応を示したが、最終的には進行した。
4.RG NRAS変異、CYLC L227fs、FBXWY R49Qの同時変異をもつ79歳男性。患者は頭頸部がんを有し、放射線療法及びEGFR抗体による治療を受け、奏効を達成し、9か月持続した。患者は、肺及びリンパ節に腫瘍が再発した。腫瘍生検ではエフリンB2の発現がみられた。患者はsEphB4-アルブミン融合タンパク質療法を受けた。患者は完全寛解を達成し、無治療で2.5か月を超えて寛解を維持した。
【0137】
配列
添付の配列表に載せたアミノ酸配列は、アミノ酸の標準的な3文字コードを使用して示されている。
【0138】
配列番号1は、ヒトエフリンB型受容体前駆体(NP_004435.3)のアミノ酸配列である。アミノ酸残基1~15はシグナル配列をコードする。
MELRVLLCWASLAAALEETLLNTKLETADLKWVTFPQVDGQWEELSGLDEEQHSVRTYEVCDVQRAPGQAHWLRTGWVPRRGAVHVYATLRFTMLECLSLPRAGRSCKETFTVFYYESDADTATALTPAWMENPYIKVDTVAAEHLTRKRPGAEATGKVNVKTLRLGPLSKAGFYLAFQDQGACMALLSLHLFYKKCAQLTVNLTRFPETVPRELVVPVAGSCVVDAVPAPGPSPSLYCREDGQWAEQPVTGCSCAPGFEAAEGNTKCRACAQGTFKPLSGEGSCQPCPANSHSNTIGSAVCQCRVGYFRARTDPRGAPCTTPPSAPRSVVSRLNGSSLHLEWSAPLESGGREDLTYALRCRECRPGGSCAPCGGDLTFDPGPRDLVEPWVVVRGLRPDFTYTFEVTALNGVSSLATGPVPFEPVNVTTDREVPPAVSDIRVTRSSPSSLSLAWAVPRAPSGAVLDYEVKYHEKGAEGPSSVRFLKTSENRAELRGLKRGASYLVQVRARSEAGYGPFGQEHHSQTQLDESEGWREQLALIAGTAVVGVVLVLVVIVVAVLCLRKQSNGREAEYSDKHGQYLIGHGTKVYIDPFTYEDPNEAVREFAKEIDVSYVKIEEVIGAGEFGEVCRGRLKAPGKKESCVAIKTLKGGYTERQRREFLSEASIMGQFEHPNIIRLEGVVTNSMPVMILTEFMENGALDSFLRLNDGQFTVIQLVGMLRGIASGMRYLAEMSYVHRDLAARNILVNSNLVCKVSDFGLSRFLEENSSDPTYTSSLGGKIPIRWTAPEAIAFRKFTSASDAWSYGIVMWEVMSFGERPYWDMSNQDVINAIEQDYRLPPPPDCPTSLHQLMLDCWQKDRNARPRFPQVVSALDKMIRNPASLKIVARENGGASHPLLDQRQPHYSAFGSVGEWLRAIKMGRYEESFAAAGFGSFELVSQISAEDLLRIGVTLAGHQKKILASVQHMKSQAKPGTPGGTGGPAPQY(配列番号1)
【0139】
配列番号2は、ヒト血清アルブミンプレプロタンパク質(NP_000468.1)のアミノ酸配列である。アミノ酸残基25~609は成熟ペプチドをコードする。
MKWVTFISLLFLFSSAYSRGVFRRDAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGL(配列番号2)
【0140】
参照による援用
特許文献米国特許第7,381,410号、米国特許第7,862,816号、米国特許第7,977,463号、米国特許第8,063,183号、米国特許第8,273,858号、米国特許第8,975,377号、米国特許第8,981,062号、米国特許第9,533,026号、国際出願2020/018160号、国際出願2020/023215号及び本明細書に開示のすべての参考文献は、すべての目的のために参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0141】
その他(MISCELLANEOUS)
本明細書において開示され、特許請求される物品及び方法はすべて、本開示に照らして過度の実験をすることなしに作製及び実行することができる。本発明の物品及び方法は実施形態の観点から説明されているが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、物品及び方法に変形を適用できることは、当業者には明らかであろう。当業者にとって明らかなそのような変形及び均等物はすべて、現存するものであれ、後に開発されるものであれ、添付の特許請求の範囲によって画定される本発明の趣旨及び範囲内にあるものとみなされる。明細書に記載の特許、特許出願、及び刊行物はすべて、本発明が関係する技術分野の当業者のレベルを示すものである。すべての特許、特許出願及び刊行物は、すべての目的のために、かつ、対象の刊行物がそれぞれ、すべての目的のために、その全体が参照により組み込まれることが具体的かつ主観的に示されているのと同じ程度に、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に例示的に記載された発明は、本明細書に具体的に開示されていない要素(複数可)がない場合にも実施することができる。採用されている用語及び表現は、限定の用語ではなく、説明の用語として使用されており、そのような用語及び表現の使用において、示され説明された特徴又はその一部の均等物を排除する意図はないが、請求された発明の範囲内で様々な変更形態が可能であることが認識される。したがって、本発明は、実施形態及び任意選択の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示の概念の変更及び変形が、当業者によって用いられる可能性があり、そのような変形及び変形は、添付の特許請求の範囲によって画定される本発明の範囲内にあると考えられることが理解されるべきである。
図1
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図20-1】
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【配列表】
2024511995000001.app
【国際調査報告】