(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】抗ウイルス組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5377 20060101AFI20240311BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240311BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240311BHJP
A61K 38/55 20060101ALI20240311BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20240311BHJP
A61K 31/24 20060101ALI20240311BHJP
A61K 31/235 20060101ALI20240311BHJP
A61K 31/4425 20060101ALI20240311BHJP
A61K 31/4168 20060101ALI20240311BHJP
A61K 31/16 20060101ALI20240311BHJP
A61K 31/661 20060101ALI20240311BHJP
A61K 31/7024 20060101ALI20240311BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61K45/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K38/55
A61K31/137
A61K31/24
A61K31/235
A61K31/4425
A61K31/4168
A61K31/16
A61K31/661
A61K31/7024
A61P31/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557292
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-09-15
(86)【国際出願番号】 US2022020326
(87)【国際公開番号】W WO2022197667
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523353362
【氏名又は名称】エイアイ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ヤング ピーター アール.
(72)【発明者】
【氏名】ランドレット ショーン
(72)【発明者】
【氏名】スピルリ カルロ
(72)【発明者】
【氏名】ファンドリック キース
(72)【発明者】
【氏名】ギュネル ミュラ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA19
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4C084BA26
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4C086GA14
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086MA66
4C086ZC20
4C086ZC41
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA31
4C206FA44
4C206HA16
4C206HA31
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4C206MA57
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4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、ウイルス性疾患を治療又は予防するための、アピリモドなどのPIKfyve阻害剤をセリンプロテアーゼ阻害剤と組み合わせて使用する組成物及び関連する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アピリモド又はその薬学的に許容される塩と、セリンプロテアーゼ阻害剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項2】
前記アピリモドが、遊離塩基の形態である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記アピリモドが塩の形態であり、前記薬学的に許容される塩が、塩化物、フマル酸塩、グリコール酸塩、D又はL-乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、1-ヒドロキシ-2-ナフトアート、リン酸塩、コハク酸塩、及びL-酒石酸塩からなる群から選択される単塩(monosalt)である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記アピリモドが塩の形態であり、前記薬学的に許容される塩が、メシル酸塩、塩化物、及び臭化物からなる群から選択される二塩(disalt)である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記アピリモドが、ジメシル酸塩の形態である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が、アクチノニン、アミロライド、アピキサバン、アプロチニン、アルガトロバン、アスパルテーム、アトロピン、バチマスタット、ベトリキサバン、ブロムヒキシン、ブピバカイン、カモスタット、セフィキシム、クレアチニン、ダビガトラン、ダンシル-D-フェニルアラニン、ダラプラジブ、ダレキサバン、ジゾシルピン、ドキソルビシン、ドキシサイクリン、エコプラジブ、エドキサバン、エフィプラジブ、エピクロルテトラサイクリン、エピデメクロサイクリン、エリバキサバン、ガベキセート、ジンセノシド、ジリプラディブ、イロマスタット、レタキサバン、ロイペプチン、ルテオリン、マリマスタット、ナファモスタット、ネオスティグミン、ノルアドレナリン、オタミキサバン、ホスホラミドン、プリノマスタット、リバロキサバン、セピモスタット、シベレスタット、スラミン、タノマスタット、チオルファン、トラネキサム酸、トロケード、トロピカミド、バレスプラディブ、バリアビリン、及びキシメラガトランからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が、アプロチニン、ブロムヒキシン、カモスタット、ガベキセート、ナファモスタット、オタミキサバン、及びセピモスタットからなる群から選択される、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が、II型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)の阻害剤である、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記TMPRSS2阻害剤が、アプロチニン、ブロムヒキシン、カモスタット、マリマスタット、ナファモスタット、ホスホラミドン、セピモスタット、及びタンニン酸からなる群から選択される、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記セリンプロテアーゼ阻害剤が、カモスタット又はナファモスタットである、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記組成物が、経口剤形又は静脈内剤形の形態である、請求項1~10のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
その必要のある対象においてウイルス性疾患を治療又は予防するための方法であって、アピリモド又はその薬学的に許容される塩と、セリンプロテアーゼ阻害剤とを含む、薬学的組成物を、前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項13】
前記アピリモドが、遊離塩基の形態である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アピリモドが塩の形態であり、前記薬学的に許容される塩が、塩化物、フマル酸塩、グリコール酸塩、D又はL-乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、1-ヒドロキシ-2-ナフトアート、リン酸塩、コハク酸塩、及びL-酒石酸塩からなる群から選択される単塩である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記アピリモドが塩の形態であり、前記薬学的に許容される塩が、メシル酸塩、塩化物、及び臭化物からなる群から選択される二塩である、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年3月16日に出願された米国仮出願第63/161,663号の優先権及び利益を主張するものであり、その内容は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、ウイルス性疾患を治療又は予防するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
多くのウイルスは、エンドサイトーシスを介して細胞に侵入し、細胞に浸潤して複製する手段としてエンドソームネットワークを利用する。例えば、細胞へのウイルス侵入はウイルス糖タンパク質(GP)によって媒介され得、これは、ウイルス粒子を細胞表面に付着させ、それらをエンドソームに送達し、及びウイルス膜とエンドソーム膜との間の融合を触媒する。Rab9 GTPaseは、HIV-1、フィロウイルス(エボラウイルス及びマールブルグウイルスなど)、及び麻疹ウイルスの複製に必要であることが示された。(Murray et al.2005 J.Virology 79:11742-11751(非特許文献1))。Rab9発現をサイレンシングすることは、TIP47、p40、及びPIKfyveをコードする宿主遺伝子をサイレンシングすることと同様に、HIV複製を劇的に阻害し、これはまた、後期エンドソーム-トランス-ゴルジ小胞輸送を促進する。Rab9発現の低下はまた、エンベロープ型エボラ及びマールブルグフィロウイルスの複製並びに麻疹ウイルスの複製を阻害したが、非エンベロープ型レオウイルスは阻害しなかった。Murray et al.2005 J.Virology 79:11742-11751(非特許文献1)。
【0004】
コロナウイルスは、呼吸器疾患、肝疾患、及び神経疾患を引き起こすエンベロープ型RNAウイルスである(Weiss et al,(2011) Adv Virus Res 81:85-164(非特許文献2);Cui et al.,2019 Nat Rev Microbiology 17:181-192(非特許文献3))。重症急性呼吸器症候群(SARS)及び中東呼吸器症候群(MERS)の最近のアウトブレイクは、高い病原性の可能性を明らかにしている(Cui et al.,(2019) Nat Rev Microbiology 17:181-192(非特許文献3))。コロナウイルスの高い有病率、広範な分布、遺伝的多様性、組換え、及び頻繁なクロス種感染は、新しい病原性株の出現を手助けする(Cui et al.,(2019) Nat Rev Microbiology 17:181-192(非特許文献3)、Wong et al.,(2015) Cell Host and Microbe 18(4):398-401(非特許文献4))。実際、肺炎及び高い死亡率を引き起こす新しい病原性コロナウイルス、SARS-CoV-2が2019年に出現し、世界的なパンデミックをもたらした(Zhu et al.,2020,N Engl J Med 382:727-733(非特許文献5)、Huang et al.(2020)、Lancet Infect Dis,2020:1010-1011(非特許文献6))。結果として生じる疾患はCOVID-19と命名された。
【0005】
承認された抗ウイルス薬及び免疫調節剤でSARS及びMERSを治療する試みは、初期の臨床試験ではほとんど効果がないことが証明されている(Zumla et al., (2016), Nat Rev Drug Discov.15(5):327-47(非特許文献7))。より最近では、感染を予防するためのワクチンの同定においていくつかの進歩がなされているが、これらのワクチンの世界人口のかなりの割合への投与には時間がかかり、その間、ウイルスは循環し続け、罹患及び死亡を引き起こすだけでなく、効力、感染性、並びに現在承認されているワクチン及び療法に対する耐性の可能性が増加したウイルスの変異型の発生につながる(Na et al.(2021)J Microbiol 59:332-340(非特許文献8))。また、これらのワクチンが提供する保護期間は不明であり、新しく出現したコロナウイルスによる感染を予防することができるものはない。故に、疾患負担を軽減し、症状を低減し、入院率及び死亡率を低下させる予防的及び治療的治療の必要性が存在する。一部の既存の薬物は、入院患者の治療に有望であることを示しており、レムデシビル、バラシチニブ、及びデキサメタゾンを含め、規制当局から承認を受けているが、外来治療の必要性は満たされていない(Khani et al.(2021)J Clin Pharmacol Jan.doi 10.1002/jpch.1822(非特許文献9))。したがって、コロナウイルス感染症の治療及び予防は、臨床的必要性が満たされていないままである。
【0006】
本発明は、ウイルス性感染症、特にコロナウイルス感染症を治療及び予防するための新しい療法の必要性に対応する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Murray et al.2005 J.Virology 79:11742-11751
【非特許文献2】Weiss et al,(2011) Adv Virus Res 81:85-164
【非特許文献3】Cui et al.,2019 Nat Rev Microbiology 17:181-192
【非特許文献4】Wong et al.,(2015) Cell Host and Microbe 18(4):398-401
【非特許文献5】Zhu et al.,2020,N Engl J Med 382:727-733
【非特許文献6】Huang et al.(2020)、Lancet Infect Dis,2020:1010-1011
【非特許文献7】Zumla et al., (2016), Nat Rev Drug Discov.15(5):327-47
【非特許文献8】Na et al.(2021)J Microbiol 59:332-340
【非特許文献9】Khani et al.(2021)J Clin Pharmacol Jan.doi 10.1002/jpch.1822
【発明の概要】
【0008】
本発明は、コロナウイルス感染症の治療及び予防を必要とする対象、好ましくはヒト対象においてコロナウイルス感染症を治療及び予防するための、少なくとも1つのセリンプロテアーゼ阻害剤と組み合わせたPIKfyve阻害剤の使用に関する組成物及び方法を提供する。
【0009】
したがって、本発明は、アピリモド又はその薬学的に許容される塩と、セリンプロテアーゼ阻害剤とを含む、薬学的組成物を提供する。実施形態では、アピリモドは、その遊離塩基の形態である。実施形態では、アピリモドは塩の形態であり、薬学的に許容される塩は、塩化物、フマル酸塩、グリコール酸塩、D又はL-乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、1-ヒドロキシ-2-ナフトアート、リン酸塩、コハク酸塩、及びL-酒石酸塩からなる群から選択される単塩(monosalt)、又はメシル酸塩、塩化物、及び臭化物からなる群から選択される二塩(disalt)である。実施形態では、アピリモドは、ジメシル酸塩の形態である。
【0010】
本明細書に記載される薬学的組成物の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、アクチノニン、アミロライド、アピキサバン、アプロチニン、アルガトロバン、アスパルテーム、アトロピン、バチマスタット、ベトリキサバン、ブロムヒキシン、ブピバカイン、カモスタット、セフィキシム、クレアチニン、ダビガトラン、ダンシル-D-フェニルアラニン、ダラプラジブ、ダレキサバン、ジゾシルピン、ドキソルビシン、ドキシサイクリン、エコプラジブ、エドキサバン、エフィプラジブ、エピクロルテトラサイクリン、エピデメクロサイクリン、エリバキサバン、ガベキセート、ジンセノシド、ジリプラディブ、イロマスタット、レタキサバン、ロイペプチン、ルテオリン、マリマスタット、ナファモスタット、ネオスティグミン、ノルアドレナリン、オタミキサバン、ホスホラミドン、プリノマスタット、リバロキサバン、セピモスタット、シベレスタット、スラミン、タノマスタット、チオルファン、トラネキサム酸、トロケード、トロピカミド、バレスプラディブ、バリアビリン、及びキシメラガトランからなる群から選択される。実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、アプロチニン、ブロムヒキシン、カモスタット、ガベキセート、ナファモスタット、オタミキサバン、及びセピモスタットからなる群から選択される。
【0011】
本明細書に記載の薬学的組成物の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、II型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)の阻害剤である。実施形態では、TMPRSS2阻害剤は、アプロチニン、ブロムヒキシン、カモスタット、マリマスタット、ナファモスタット、ホスホラミドン、セピモスタット、及びタンニン酸からなる群から選択される。
【0012】
本明細書に記載の薬学的組成物の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、カモスタット、ナファモスタット、及びセピモスタットからなる群から選択されるTMPRSS2阻害剤である。本明細書に記載の薬学的組成物の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、カモスタット又はナファモスタットである。
【0013】
本明細書に記載の薬学的組成物の実施形態では、組成物は、経口剤形又は静脈内剤形の形態である。
【0014】
本発明はまた、その必要のある対象においてウイルス性疾患を治療又は予防するための方法であって、アピリモド又はその薬学的に許容される塩と、セリンプロテアーゼ阻害剤とを含む、薬学的組成物を、対象に投与することを含む、方法を提供する。実施形態では、アピリモドは、遊離塩基の形態である。実施形態では、アピリモドは塩の形態であり、薬学的に許容される塩は、塩化物、フマル酸塩、グリコール酸塩、D又はL-乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、1-ヒドロキシ-2-ナフトアート、リン酸塩、コハク酸塩、及びL-酒石酸塩からなる群から選択される単塩、又はメシル酸塩、塩化物、及び臭化物からなる群から選択される二塩である。実施形態では、アピリモドは、ジメシル酸塩の形態である。
【0015】
本明細書に記載の方法の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、アクチノニン、アミロライド、アピキサバン、アプロチニン、アルガトロバン、アスパルテーム、アトロピン、バチマスタット、ベトリキサバン、ブロムヒキシン、ブピバカイン、カモスタット、セフィキシム、クレアチニン、ダビガトラン、ダンシル-D-フェニルアラニン、ダラプラジブ、ダレキサバン、ジゾシルピン、ドキソルビシン、ドキシサイクリン、エコプラジブ、エドキサバン、エフィプラジブ、エピクロルテトラサイクリン、エピデメクロサイクリン、エリバキサバン、ガベキセート、ジンセノシド、ジリプラディブ、イロマスタット、レタキサバン、ロイペプチン、ルテオリン、マリマスタット、ナファモスタット、ネオスティグミン、ノルアドレナリン、オタミキサバン、ホスホラミドン、プリノマスタット、リバロキサバン、セピモスタット、シベレスタット、スラミン、タノマスタット、チオルファン、トラネキサム酸、トロケード、トロピカミド、バレスプラディブ、バリアビリン、及びキシメラガトランからなる群から選択される。実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、アプロチニン、ブロムヒキシン、カモスタット、ガベキセート、ナファモスタット、オタミキサバン、及びセピモスタットからなる群から選択される。
【0016】
本明細書に記載の方法の実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、II型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)の阻害剤である。セリンプロテアーゼ阻害剤が、カモスタット又はナファモスタットから選択される、請求項3に記載の方法。実施形態では、TMPRSS2阻害剤は、アプロチニン、ブロムヒキシン、カモスタット、マリマスタット、ナファモスタット、ホスホラミドン、セピモスタット、及びタンニン酸からなる群から選択される。実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、カモスタット及びナファモスタットからなる群から選択されるTMPRSS2阻害剤である。
【0017】
本明細書に記載の方法の実施形態では、対象はヒトである。
【0018】
本明細書に記載の方法の実施形態では、治療を必要とする対象は、喉の痛み、鼻詰まり及び/又は鼻汁、息切れ、呼吸困難、並びに発熱のうちの1つ以上を含む、ウイルス性感染症、好ましくは呼吸器ウイルス性感染症の症状を有する者である。実施形態では、ウイルス性疾患は、コロナウイルスによって引き起こされる。実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV-1、MERS-CoV、及びSARS-CoV-2から選択される。実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV-2である。
【0019】
本明細書に記載の方法の実施形態では、アピリモドは、セリンプロテアーゼ阻害剤とは別個の剤形又は同じ剤形で投与される。
【0020】
本明細書に記載の方法の実施形態では、アピリモド及びセリンプロテアーゼ阻害剤は、1つ以上の追加の活性剤又は抗ウイルス剤を含み得る抗ウイルスレジメンの一部として投与され得る。
【0021】
本発明は、別個の容器又は単一の容器中に、単位用量のアピリモドと、単位用量のセリンプロテアーゼ阻害剤とを含む、薬学的パック又はキットを更に提供する。実施形態では、薬学的パック又はキットは、アピリモドと同じ又は別個の容器中に、単位用量のアピリモド、又はその薬学的に許容される塩、及び単位用量のカモスタット又はナファモスタットを含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】それぞれ単剤としてのアピリモド(円)及びカモスタット(正方形)の、Caco-2細胞におけるウイルス力価(したがって感染性)に対する用量応答曲線を示す折れ線グラフである。各点は、各単剤治療の8用量の各々についての2つの単一実験の平均である。生存率(三角形)も示される。
【
図2】Caco-2細胞におけるSARS-CoV-2感染の予防における、アピリモド、カモスタット、及び例示的な相乗的組み合わせであるアピリモド(62.5nM)とカモスタット(562.5nM)(「Combo」)の活性を示す棒グラフである。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
本発明は、インビトロでのSARS-CoV-2感染の予防における、PIKfyve阻害剤であるアピリモドと、セリンプロテアーゼ阻害剤、特にセリンプロテアーゼ、II型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)の阻害剤との予期しない相乗活性の発見に部分的に基づいている。
【0024】
新たな証拠は、コロナウイルスによる細胞の感染が2つの異なる経路によって進行する可能性があることを示している(Hoffman et al(2020)Cell 181 1-10)。1つの経路は、エンドソームを介したウイルスエンドサイトーシスを伴い、これは、リソソームへと向かい、かつそれと融合する。酸性リソソームに侵入すると、ウイルススパイクタンパク質が切断されてウイルスのコンフォメーション変化をもたらし、これが、リソソーム膜へのウイルスの挿入、及び細胞質へのウイルスRNAの注入を可能にする。第2の経路は、細胞表面に発現するセリンプロテアーゼである細胞酵素TMPRSS2によるスパイクタンパク質の切断を伴う。この切断は、形質膜から細胞質へのウイルスRNAの直接挿入をもたらす。最近、TMPRSS2阻害剤は、ウイルス性感染症を阻害する能力を実証している(Breining et al.(2021)Basic Clin Pharmacol Toxicol 128:204-212、Hoffman et al.(2020)Antimicrobial Agents and Chemotherapy 64:e00754-20)。
【0025】
本発明は、インビトロでのSARS-CoV-2感染の予防における、PIKfyve阻害剤であるアピリモドと、セリンプロテアーゼ阻害剤、特にTMPRSS2の阻害剤との間の予期しない相乗活性の発見に部分的に基づいている。したがって、本発明は、コロナウイルス感染症の治療又は予防を必要とする対象、好ましくはヒト対象において、コロナウイルス感染症を治療又は予防するための、セリンプロテアーゼ阻害剤と組み合わせたPIKfyve阻害剤の使用に関する組成物及び方法を提供する。
【0026】
本明細書に記載の実施形態のいずれかのとおり、コロナウイルス感染症は、重症急性呼吸器系ウイルス(SARS-CoV)、SARS-CoV-2、中東呼吸器症候群ウイルス(MERS-CoV)、アルファコロナウイルス229E、アルファコロナウイルスNL63、ベータコロナウイルスOC43、及びベータコロナウイルスHKU1からなる群から選択されるコロナウイルスによって引き起こされ得る。これらの実施形態のいずれかのとおり、PIKfyve阻害剤は、アピリモド、APY0201、YM201636、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択され得る。これらの実施形態のいずれかのとおり、セリンプロテアーゼ阻害剤は、アクチノニン、アミロライド、アピキサバン、アプロチニン、アルガトロバン、アスパルテーム、アトロピン、バチマスタット、ベトリキサバン、ブロムヒキシン、ブピバカイン、カモスタット、セフィキシム、クレアチニン、ダビガトラン、ダンシル-D-フェニルアラニン、ダラプラジブ、ダレキサバン、ジゾシルピン、ドキソルビシン、ドキシサイクリン、エコプラジブ、エドキサバン、エフィプラジブ、エピクロルテトラサイクリン、エピデメクロサイクリン、エリバキサバン、ガベキセート、ジンセノシド、ジリプラディブ、イロマスタット、レタキサバン、ロイペプチン、ルテオリン、マリマスタット、ナファモスタット、ネオスティグミン、ノルアドレナリン、オタミキサバン、ホスホラミドン、プリノマスタット、リバロキサバン、セピモスタット、シベレスタット、スラミン、タノマスタット、チオルファン、トラネキサム酸、トロケード、トロピカミド、バレスプラディブ、バリアビリン、及びキシメラガトランからなる群から選択され得る。これらの実施形態のいずれかのとおり、セリンプロテアーゼ阻害剤は、アプロチニン、ブロムヒキシン、カモスタット、ガベキセート、ナファモスタット、オタミキサバン、及びセピモスタットから選択され得る。
【0027】
本明細書に開示される実施形態のいずれかのとおり、コロナウイルス感染症は、重症急性呼吸器系ウイルス(SARS-CoV)、SARS-CoV-2、中東呼吸器症候群ウイルス(MERS-CoV)、アルファコロナウイルス229E、アルファコロナウイルスNL63、ベータコロナウイルスOC43、及びベータコロナウイルスHKU1、好ましくはSARS-CoV-2からなる群から選択されるコロナウイルスによって引き起こされ得る。PIKfyve阻害剤は、アピリモド、APY0201、YM201636、及びその薬学的に許容される塩、好ましくはアピリモドからなる群から選択され得る。セリンプロテアーゼ阻害剤は、アプロチニン、ブロムヒキシン、カモスタット、マリマスタット、ナファモスタット、ホスホラミドン、セピモスタット、及びタンニン酸からなる群から選択されるか、又は特定の実施形態では、カモスタット若しくはナファモスタットから選択される、TMPRSS2の阻害剤であり得る。
【0028】
本明細書に記載の組成物及び方法の特定の特定の実施形態では、コロナウイルス感染症は、SARS-CoV-2によって引き起こされ、PIKfyve阻害剤は、アピリモド、又はその薬学的に許容される塩であり、セリンプロテアーゼ阻害剤は、TMPRSS2の阻害剤であり、好ましくは、アプロチニン、ブロムヒキシン、カモスタット、マリマスタット、ナファモスタット、ホスホラミドン、セピモスタット、及びタンニン酸から選択され、最も好ましくは、カモスタット及びナファモスタット、並びにその薬学的に許容される塩である。
【0029】
アピリモドは、PIKfyveの選択的阻害剤である(Cai et al.2013 Chem.& Biol.20:912-921)。IL-12/23産生を抑制する能力に基づき、アピリモドは、関節リウマチ、敗血症、クローン病、多発性硬化症、乾癬、又はインスリン依存性糖尿病などの炎症性疾患及び自己免疫疾患、並びにこれらのサイトカインが増殖促進的役割を果たすと考えられた癌の治療に有用であることが示唆されている。
【0030】
本明細書で使用される場合、「アピリモド」という用語は、式Iに示される構造を有するアピリモド遊離塩基を指す。
【0031】
アピリモドの化学名は、2-[2-ピリジン-2-イル)-エトキシ]-4-N′-(3-メチル-ベンジリデン)-ヒドラジノ]-6-(モルホリン-4-イル)-ピリミジン(IUPAC名:(E)-4-(6-(2-(3-メチルベンジリデン)ヒドラジニル)-2-(2-(ピリジン-2-イル)エトキシ)ピリミジン-4-イル)モルホリン)であり、CAS番号は541550-19-0である。アピリモドは、例えば、米国特許第7,923,557号、及び同第7,863,270号、並びにWO2006/128129に記載される方法に従って調製することができる。
【0032】
実施形態では、アピリモドは、APY0201及びYM-201636から選択される少なくとも1つの追加のPIKfyve阻害剤と組み合わせて投与されてもよい。APY0201の化学名は、(E)-4-(5-(2-(3-メチルベンジリジン)ヒドラジンリル)-2-(ピリジン-4-イル)ピラゾロール[1,5-a]ピリミジン-7-イル)モルホリンである。APY0201は、選択的PIKfyve阻害剤である(Hayakawa et al.(2014) Bioorg.Med.Chem.22:3021-29)。APY0201は、PIKfyveキナーゼのATP結合部位と直接相互作用し、PI(3,5)P2合成の抑制につながり、IL-12/23の産生を抑制する。YM201636の化学名は、6-アミノ-N-(3-(4-モルホリノピリド[3’,2’:4,5]フロ[3,2-d]ピリミジン-2-イル)フェニル)ニコチンアミド(CAS番号は371942-69-7である)である。YM201636は、PIKfyveの選択的阻害剤である(Jefferies et al.EMBO rep.(2008)9:164-170)。NIH3T3細胞におけるエンドソーム輸送を可逆的に損ない、siRNAでPIKfyveを枯渇させることによって生じる効果を模倣する。YM201636はまた、おそらくエンドソーム輸送選別複合体(ESCRT)機構に干渉することによって、細胞からの出芽によるレトロウイルスの放出を妨害する。脂肪細胞において、YM-201636はまた、基底及びインスリン活性化2-デオキシグルコース取り込みを阻害する(IC50=54nM)。
【0033】
カモスタットは、標的がTMPRS22を含むセリンプロテアーゼ阻害剤である。本明細書で使用される場合、「カモスタット」という用語は、式IIに示される構造を有するカモスタット遊離塩基を指す。
【0034】
カモスタットの化学名は、[4-[2-[2-(ジメチルアミノ)-2-オキソエトキシ]-2-オキソエチル]フェニル]4-(ジアミノメチリデンアミノ)安息香酸塩であり、CAS番号は59721-28-7である。カモスタットの分子式は、C20H22N4O5であり、カモスタットの分子量は398.4g/molである。
【0035】
ナファモスタットは、標的がTMPRS22を含むセリンプロテアーゼ阻害剤である。本明細書で使用される場合、「ナファモスタット」という用語は、式IIIに示される構造を有するナファモスタット遊離塩基を指す。
【0036】
ナファモスタットの化学名は、(6-カルバムイミドイルナフタレン-2-イル)4-(ジアミノメチリデンアミノ)安息香酸塩であり、CAS番号は81525-10-2である。カモスタットの分子式は、C19H17N5O2であり、ナファモスタットの分子量は347g/molである。
【0037】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、例えば、化合物の酸及び塩基性基から形成される塩である。例示的な塩としては、これらに限定されないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、L-乳酸塩、D-乳酸塩、DL-乳酸塩、サリチル酸塩、酸クエン酸塩、L-酒石酸塩、D-酒石酸塩、DL-酒石酸塩、オレイン酸塩、タンネート、パントテン酸塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ベシル酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、及びパモ酸塩(例えば、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトアート))塩が挙げられる。実施形態では、アピリモドの薬学的に許容される塩の形態は、メタンスルホン酸塩の形態であり、代替的に、メシル酸塩と称される。
【0038】
「薬学的に許容される塩」という用語はまた、カルボン酸官能基などの酸性官能基、及び薬学的に許容される無機又は有機塩基を有する化合物から調製される塩を指す。
【0039】
「薬学的に許容される塩」という用語はまた、アミノ官能基などの塩基性官能基、及び薬学的に許容される無機又は有機酸を有する化合物から調製される塩を指す。
【0040】
実施形態では、塩は、ブレンステッド酸が、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、メタンスルホン酸、フォルフォリック酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、ハロゲン化アルキルスルホン酸、ハロゲン化アリールスルホン酸、ハロゲン化アルキルスルホン酸、ハロゲン化酢酸、ピクリン酸、シュウ酸、クエン酸、ギ酸、アスコルビン酸、安息香酸、及びアピリモドの結晶性二塩を形成するのに十分な酸性を有する他の塩からなる群から選択される、二塩を含む。一実施形態では、アピリモドの塩形態は、ジメシル酸塩である。
【0041】
本明細書に記載される化合物の塩は、Pharmaceutical Salts: Properties,Selection,and Use,P.Hemrich Stalil(Editor),Camille G.Wermuth(Editor),ISBN:3-90639-026-8,August 2002に記載される方法など、従来の化学的方法による親化合物から合成することができる。一般に、そのような塩は、親化合物を、水中若しくは有機溶媒中、又はその2つの混合物中で適切な酸と反応させることによって調製することができる。
【0042】
本明細書に記載される化合物の1つの塩形態は、当業者に周知の方法によって遊離塩基に変換することができ、任意選択で別の塩形態に変換することができる。例えば、遊離塩基は、塩溶液を、アミン固定相を含有するカラム(例えば、Strata-NH2カラム)に通すことによって形成することができる。代替的に、水中の塩の溶液を重炭酸ナトリウムで処理して、塩を分解し、遊離塩基を沈殿させることができる。遊離塩基は、次いで、ルーチンの方法を使用して別の酸と組み合わせることができる。
【0043】
本明細書に記載される組成物及び方法の実施形態において、薬学的組成物は、予防的又は治療的に有効な量のPIKfyve阻害剤及びセリンプロテアーゼ阻害剤を含む。治療的に有効な量は、対象又は患者を治療するのに有効な量である。本明細書で使用される場合、「治療」、「治療すること」、及び「治療する」という用語は、ウイルス性疾患と戦う目的での対象又は患者の管理及びケアを説明し、ウイルス性疾患の1つ以上の症状又は合併症を軽減、低減、又は排除することを含む。予防的に有効な量は、対象又は患者においてウイルス性疾患を予防するのに有効な量である。本明細書で使用される場合、「予防」、「予防すること」、及び「予防する」という用語は、ウイルス性疾患の症状若しくは合併症の発症を低減若しくは排除すること、又はウイルスに曝露された対象若しくは患者におけるウイルス性疾患の発症を低減若しくは排除することを説明する。予防的又は治療的に有効な量の文脈における「有効量」という用語は、ウイルス性疾患を予防又は治療するのに十分な量を指す。実施形態では、有効量は、以下のうちの1つ以上を達成するのに有効な量である:PIKfyve若しくはTMPRSS2の細胞活性を阻害すること、対象の細胞へのウイルス侵入を実質的に予防すること、対象の細胞への侵入を得るウイルス粒子の量を低減すること、対象の細胞内のウイルス複製を低減すること、対象のウイルス性感染症に関連する1つ以上の症状を改善すること、又は対象のウイルス性感染症に関連する1つ以上の症状の重症度を低減すること。
【0044】
実施形態では、治療的に有効な量は、ウイルス量を低減させるのに十分な量である。実施形態では、ウイルス量は、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、又は75%以上低減する。実施形態では、ウイルス量は、少なくとも0.5log単位、少なくとも1log単位、少なくとも2log単位、少なくとも3log単位、少なくとも4log単位、少なくとも10log単位、少なくとも15log単位、又は少なくとも20log単位低減する。
【0045】
実施形態では、予防的に有効な量は、ウイルスに曝露した対象におけるウイルスの感染性又は細胞毒性を実質的に低減するか、又はウイルス性感染症に関連する1つ以上の症状若しくは合併症の重症度を実質的に低減するか、若しくは除去するのに十分な量である。
【0046】
実施形態では、本明細書に記載のセリンプロテアーゼ阻害剤と組み合わせてヒト対象に投与される場合のアピリモドの予防的又は治療的に有効な量は、約1~250mg/日、約10~250mg/日、約20~250mg/日、約30~250mg/日、約40~250mg/日、約50~250mg/日、約60~250mg/日、又は約70~250mg/日である。実施形態では、本明細書に記載のセリンプロテアーゼ阻害剤と組み合わせてヒト対象に投与される場合のアピリモドの予防的又は治療的に有効な量は、約1~200mg/日、約10~200mg/日、約20~200mg/日、約30~200mg/日、約40~200mg/日、約50~200mg/日、約60~200mg/日、又は約70~200mg/日である。実施形態では、本明細書に記載のセリンプロテアーゼ阻害剤と組み合わせてヒト対象に投与される場合のアピリモドの予防的又は治療的に有効な量は、約1~150mg/日、約10~150mg/日、約20~150mg/日、約30~150mg/日、約40~150mg/日、約50~150mg/日、約60~150mg/日、又は約70~150mg/日である。実施形態では、本明細書に記載のセリンプロテアーゼ阻害剤と組み合わせてヒト対象に投与される場合のアピリモドの予防的又は治療的に有効な量は、約1~100mg/日、約10~100mg/日、約20~100mg/日、約30~100mg/日、約40~100mg/日、約50~100mg/日、約60~100mg/日、又は約70~100mg/日である。
【0047】
実施形態では、アピリモドの予防的又は治療的に有効な量は、150~250mg/日、又は75~125mgを1日2回である。実施形態では、アピリモドの予防的又は治療的に有効な量は、対象におけるアピリモドの血漿濃度を50~1000nMの範囲内で達成するのに有効な量である。
【0048】
実施形態では、ヒトにおけるカモスタットメシル酸塩の予防的又は治療的に有効な量は、約70~2000mg/日、約70~1000mg/日、約70~800mg/日、約70~600mg/日、約70~300mg/日、約70~200mg/日である。実施形態では、カモスタットメシル酸塩の予防的又は治療的に有効な量は、10~500ng/mlの範囲の単回投与後に、対象においてその活性代謝物4-(4-グアニジノベンゾイルオキシ)フェニルアセテートの血漿濃度を達成するのに有効な量である。
【0049】
実施形態では、ヒト対象にアピリモドと組み合わせて投与される場合のカモスタットメシル酸塩の予防的又は治療的に有効な量は、約70~500mg/日、約70~400mg/日、約70~300mg/日、又は約70~200mg/日である。
【0050】
治療方法
本発明は、その必要のある対象においてウイルス性疾患、好ましくはコロナウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患を予防又は治療するための方法であって、対象に、予防的又は治療的に有効な量のPIKfyve阻害剤を、本明細書に記載のセリンプロテアーゼ阻害剤と組み合わせて投与することを含む、方法を提供する。実施形態では、PIKfyve阻害剤は、アピリモド、APY0201、YM-201636、又はその薬学的に許容される塩、及びそれらの組み合わせから選択される。実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、アクチノニン、アミロライド、アピキサバン、アプロチニン、アルガトロバン、アスパルテーム、アトロピン、バチマスタット、ベトリキサバン、ブロムヒキシン、ブピバカイン、カモスタット、セフィキシム、クレアチニン、ダビガトラン、ダンシル-D-フェニルアラニン、ダラプラジブ、ダレキサバン、ジゾシルピン、ドキソルビシン、ドキシサイクリン、エコプラジブ、エドキサバン、エフィプラジブ、エピクロルテトラサイクリン、エピデメクロサイクリン、エリバキサバン、ガベキセート、ジンセノシド、ジリプラディブ、イロマスタット、レタキサバン、ロイペプチン、ルテオリン、マリマスタット、ナファモスタット、ネオスティグミン、ノルアドレナリン、オタミキサバン、ホスホラミドン、プリノマスタット、リバロキサバン、セピモスタット、シベレスタット、スラミン、タノマスタット、チオルファン、トラネキサム酸、トロケード、トロピカミド、バレスプラディブ、バリアビリン、及びキシメラガトランからなる群から選択される。実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、アプロチニン、ブロムヒキシン、カモスタット、ガベキセート、ナファモスタット、オタミキサバン、及びセピモスタットからなる群から選択される。
【0051】
更なる実施形態では、本発明は、その必要のある対象においてウイルス性疾患、好ましくはコロナウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患を予防又は治療するための方法であって、対象に、予防的又は治療的に有効な量のPIKfyve阻害剤を、セリンプロテアーゼ阻害剤と組み合わせて投与することを含み、PIKfyve阻害剤が、アピリモド、APY0201、YM-201636、又はその薬学的に許容される塩、及びそれらの組み合わせ、好ましくは、アピリモド又はアピリモドを含む組み合わせから選択され、セリンプロテアーゼ阻害剤が、アプロチニン、ブロムヒキシン、カモスタット、マリマスタット、ナファモスタット、ホスホラミドン、セピモスタット、及びタンニン酸からなる群から選択されるTMPRSS2の阻害剤であり、好ましくはカモスタット及びナファモスタットから選択されるTMPRSS2の阻害剤である、方法を提供する。本明細書に記載の方法の特定の具体的な実施形態では、PIKfyve阻害剤は、アピリモド、又はその薬学的に許容される塩であり、セリンプロテアーゼ阻害剤は、好ましくは、カモスタット及びナファモスタット、並びにその薬学的に許容される塩、好ましくはメシル酸塩から選択される、TMPRSS2の阻害剤である。
【0052】
いくつかの実施形態では、方法は、特定の投与スケジュール又は治療レジメンに従って、PIKfyve阻害剤をセリンプロテアーゼ阻害剤と組み合わせて投与することを含む。例えば、PIKfyve阻害剤及びセリンプロテアーゼ阻害剤は、1日1回、2回、3回、又は4回、任意の連続したステップで投与することができる。
【0053】
組み合わせ療法の文脈において、本明細書に記載のPIKfyve阻害剤及びセリンプロテアーゼ阻害剤は、別個の剤形、又は同じ剤形で投与され得る。阻害剤が別個の剤形で投与される場合、それらは、同時に、又は異なる時間に投与され得る。
【0054】
本明細書に記載の方法によれば、「治療又は予防を必要とする対象」は、コロナウイルス感染症を有する対象、又はコロナウイルス感染症を発症するリスクが高い対象である。治療を必要とする対象は、ウイルス性疾患のための現在利用可能な療法に対して「非応答性」又は「難治性」である対象であり得る。この関連において、「非応答性」及び「難治性」という用語は、ウイルス性感染症に関連する1つ以上の症状を緩和するのに臨床的に適切ではない、治療に対する対象の応答を指す。本明細書に記載の方法の一態様において、治療を必要とする対象は、標準療法に対して難治性であるコロナウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患を有する対象である。
【0055】
「対象」は、哺乳動物を含む。哺乳動物は、例えば、任意の哺乳動物、例えば、ヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジ、又はブタであり得る。好ましくは、哺乳動物はヒトである。「患者」という用語は、ヒト対象を指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、「組み合わせ療法」又は「併用療法」は、治療的に有効な量のPIKfyve阻害剤、好ましくはアピリモドを、本明細書に記載のセリンプロテアーゼ阻害剤と組み合わせて、レジメンにおける活性剤の共作用からの有益な効果を提供することを意図した特定の治療レジメンの一部として投与することを含む。「組み合わせ療法」は、偶発的かつ恣意的に、意図されていない又は予測されていない有益な効果をもたらす別個の単剤療法レジメンの一部として、2つ以上の治療化合物の投与を包含することを意図しない。
【0057】
したがって、本発明はまた、ウイルス性疾患の治療のための抗ウイルスレジメンにおいて、PIKfyve阻害剤、好ましくはアピリモドを、本明細書に記載のセリンプロテアーゼ阻害剤と組み合わせて含む、組み合わせ療法を使用して、ウイルス性疾患又はウイルス性感染症(「ウイルス性疾患」及び「ウイルス性感染症」という用語は、本明細書において互換的に使用される)について対象を治療する方法も提供する。実施形態では、抗ウイルスレジメンは、PIKfyve阻害剤及びセリンプロテアーゼ阻害剤に加えて、1つ以上の抗ウイルス剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、抗ウイルス剤は、抗ウイルスワクチン、ウイルスポリメラーゼのヌクレオチド類似体阻害剤、サイトカイン(例えば、インターフェロン)、免疫グロブリン、JAK阻害剤(例えば、バラシチニブ)、及びそれらの組み合わせから選択される。実施形態では、抗ウイルス剤は、NPCI、VPSII、VPSI6、VPSI8、Vacuolarタンパク質選別33ホモログA(VPS33A)、Vacuolarタンパク質選別39ホモログ(VPS39)、Vacuolarタンパク質選別41ホモログ(VPS41)、BLOCISI、BLOCIS2、N-アセチルグルコサミン-1-リン酸トランスフェラーゼ、α及びβサブユニット(GNPT-AB)、ホスホイノシチドキナーゼ、FYVEフィンガー含有(PIKFYVE)、ARGHGAP23、被覆タンパク質複合体1(COPI)、被覆タンパク質複合体II(COPII)、マンノース-6-リン酸受容体結合タンパク質1(TIP47)、インターロイキン12(IL-12又はP40)、Rab GTP結合タンパク質(例えば、Rab9)、クラスリン、活性化タンパク質1(AP1)、アダプタータンパク質3(AP3)、小胞可溶性N-エチルマレイミド感受性因子付着タンパク質受容体(v-SNARE)、標的可溶性N-エチルマレイミド感受性因子付着タンパク質受容体(t-SNARE)、ADPリボシル化因子1(ARF)、Ras GTP-ase、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上の阻害剤から選択される。
【0058】
ウイルス性疾患の治療のための抗ウイルスレジメンにおいて、PIKfyve阻害剤、好ましくはアピリモドを、本明細書に記載のセリンプロテアーゼ阻害剤と組み合わせて含む、組み合わせ療法で使用され得る抗ウイルス剤の更なる非限定的な例としては、アセマンナン、アシクロビル、アシクロビルナトリウム、アデフォビル、アロブジン、アルビルセプトスドトックス、アマンタジン塩酸塩、アラノチン、アリルドン、アテビルジンメシル酸塩、アブリジン、クロロキン、シドホビル、シパムフィリン、シタラビン塩酸塩、デラビルジンメシル酸塩、デシクロビル、ディダノシン、ジソキサリル、エドキシジン、エンビラデン、エンビロキシメ、ファムシクロビル、ファモチン塩酸塩、フィアシタビン、フィアルリジン、フォサリレート、フォスカルネットナトリウム、フォスフォネットナトリウム、ガンシクロビル、ガンシクロビルナトリウム、イドクスウリジン、ケトキサール、ラミブジン、ロブカビル、塩酸メモチン、メチサゾン、ネビラピン、ペンシクロビル、ピロダビル、リバビリン、レムデシビル、塩酸リマンタジン、メシル酸サキナビル、塩酸ソマンタジン、ソリブジン、スタトロン、スタブジン、塩酸チロロン、トリフルリジン、塩酸バラシクロビル、ビダラビン、リン酸ビダラビン、リン酸ビダラビンナトリウム、ビロキシム、ザルシタビン、ジドブジン、及びジンビロキシムが挙げられる。
【0059】
実施形態では、抗ウイルスレジメンは、抗体、又は抗体の組み合わせ、好ましくはヒト抗体若しくはヒト化抗体を含んでもよいが、キメラ(例えば、マウス-ヒトキメラ)抗体も許容される。実施形態では、抗ウイルスレジメンは、低分子干渉RNA(siRNA)又はsiRNA分子の組み合わせを含み得る。実施形態では、抗ウイルスレジメンは、1つ以上のウイルスタンパク質、例えば、ポリメラーゼ、膜関連タンパク質、ポリメラーゼ複合体タンパク質、プロテアーゼ、ヘリカーゼ、エンベロープ、ヌクレオカプシド、スパイク糖タンパク質、ウイルス構造タンパク質、又はウイルスアクセサリータンパク質の活性を阻害することを標的とする抗体、siRNA、又は低有機分子を含んでもよい。実施形態では、siRNA又はsiRNAの組み合わせ、抗体又は抗体の組み合わせ、タンパク質又はタンパク質の組み合わせは、1つ以上の宿主タンパク質を標的とする。実施形態では、抗ウイルスレジメンは、1つ以上の宿主タンパク質、例えば、インターフェロン、細胞表面受容体、プロテアーゼ、又はエンドソーム輸送若しくは酸性化に関与するタンパク質の活性を阻害することを目標とする抗体、siRNA、又は小さい有機分子を含み得る。実施形態では、抗体、組換えタンパク質、又はsiRNA。
【0060】
実施形態では、抗ウイルスレジメンは、インターフェロン、レムデシビル、アジスロマイシン、ヒドロキシクロロキン及びクロロキンのうちの1つ以上を含み得る。実施形態では、抗ウイルスレジメンは、抗炎症剤を含んでもよい。実施形態では、抗炎症剤は、トシリズマブ及びサリルマブから選択される。
【0061】
ある特定の実施形態では、少なくとも1つのPIKfyve阻害剤は、本明細書に記載のセリンプロテアーゼ阻害剤と組み合わされた単一剤形で提供される。実施形態では、少なくとも1つのPIKfyve阻害剤は、本明細書に記載のセリンプロテアーゼ阻害剤とは別個の剤形で提供される。別個の剤形は、例えば、治療レジメンが用量修正、異なる頻度又は異なる条件での異なる治療薬の投与、又は異なる経路を介した投与を必要とする組み合わせ療法の文脈において望ましい。
【0062】
実施形態では、少なくとも1つのPIKfyve阻害剤及び本明細書に記載のセリンプロテアーゼ阻害剤の投与は、経口投与に好適な経口剤形を介して達成される。別の実施形態では、投与は、留置カテーテル、浸透圧ミニポンプなどのポンプ、又は例えば、対象に移植される徐放性組成物によって、又は静脈内投与によって行う。
【0063】
薬学的組成物及び製剤
本開示は、有効量のPIKfyve阻害剤、好ましくはアピリモドと、セリンプロテアーゼ阻害剤と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤又は担体とを含む、薬学的組成物を提供する。実施形態において、組成物は、カプセル又は錠剤から選択される経口剤形である。実施形態では、組成物は、経口溶解錠剤の形態である。
【0064】
実施形態では、PIKfyve阻害剤は、アピリモド、APY0201、YM-201636、及びその薬学的に許容される塩から選択される。実施形態では、PIKfyve阻害剤は、アピリモド、又はその薬学的に許容される塩である。
【0065】
実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、アクチノニン、アミロライド、アピキサバン、アプロチニン、アルガトロバン、アスパルテーム、アトロピン、バチマスタット、ベトリキサバン、ブロムヒキシン、ブピバカイン、カモスタット、セフィキシム、クレアチニン、ダビガトラン、ダンシル-D-フェニルアラニン、ダラプラジブ、ダレキサバン、ジゾシルピン、ドキソルビシン、ドキシサイクリン、エコプラジブ、エドキサバン、エフィプラジブ、エピクロルテトラサイクリン、エピデメクロサイクリン、エリバキサバン、ガベキセート、ジンセノシド、ジリプラディブ、イロマスタット、レタキサバン、ロイペプチン、ルテオリン、マリマスタット、ナファモスタット、ネオスティグミン、ノルアドレナリン、オタミキサバン、ホスホラミドン、プリノマスタット、リバロキサバン、セピモスタット、シベレスタット、スラミン、タノマスタット、チオルファン、トラネキサム酸、トロケード、トロピカミド、バレスプラディブ、バリアビリン、及びキシメラガトランからなる群から選択される。実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、アプロチニン、ブロムヒキシン、カモスタット、ガベキセート、ナファモスタット、オタミキサバン、及びセピモスタットからなる群から選択される。
【0066】
実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、II型膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)の阻害剤である。実施形態では、TMPRSS2阻害剤は、アプロチニン、ブロムヒキシン、カモスタット、マリマスタット、ナファモスタット、ホスホラミドン、セピモスタット、及びタンニン酸からなる群から選択される。実施形態では、セリンプロテアーゼ阻害剤は、カモスタット及びナファモスタットからなる群から選択されるTMPRSS2阻害剤である。
【0067】
「薬学的に許容される」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴わずに、合理的な利益/リスク比に見合う、ヒト及び動物の組織と接触して使用するのに好適な化合物、材料、組成物、担体、及び/又は剤形を指す。
【0068】
「薬学的に許容される賦形剤」は、一般に安全、無毒性、かつ生物学的にも他の方法でも望ましくない薬学的組成物の調製において有用な賦形剤を意味し、獣医学的使用並びにヒトの薬学的使用において許容される賦形剤を含む。薬学的に許容される賦形剤の例としては、滅菌液体、水、緩衝生理食塩水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、油、洗剤、懸濁剤、炭水化物(例えば、グルコース、ラクトース、スクロース又はデキストラン)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸又はグルタチオン)、キレート剤、低分子量タンパク質、又はそれらの好適な混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
薬学的組成物は、バルク又は投与単位剤形で提供することができる。薬学的組成物を投与単位剤形に製剤化することは、投与の容易さ及び投与の均一性のために特に有利である。本明細書で使用される「投与単位剤形」という用語は、治療される対象のための単位用量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位が、必要な薬学的担体と関連して所望の治療効果がもたらされるように計算された所定の量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形の仕様は、活性化合物及び達成されるべき特定の治療効果の独自の特徴によって左右され、かつそれらに直接依存する。投与単位剤形は、アンプル、バイアル、坐剤、糖衣錠、錠剤、カプセル、IVバッグ、又はエアロゾル吸入器上の単一のポンプであり得る。
【0070】
治療用途において、投薬量は、選択された投薬量に影響を与える他の要因の中でもとりわけ、薬剤、レシピエント患者の年齢、体重、及び臨床状態、並びに治療を投与する臨床医又は開業医の経験及び判断に応じて変化する。一般に、用量は治療的に有効な量でなければならない。投与量は、mg/kg/日の測定単位で提供することができる(この用量は、患者の体重(kg)、体表面積(m2)、及び年齢(年)について調整することができる)。ウイルス性感染症を治療する方法における組成物の例示的な用量及び用量レジメンは、上記に記載されている。
【0071】
用量は、投与単位剤形で提供され得る。例えば、投与単位剤形は、25~150mgのアピリモド遊離塩基(又は等量の薬学的に許容可能な塩形態のアピリモド)及び100~1000mgのカモスタットメシル酸塩を含むことができる。
【0072】
薬学的組成物は、任意の所望の経路(例えば、肺、吸入、鼻腔内、経口、頬、舌下、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸膜内、髄腔内、経皮、経粘膜、直腸など)による投与のために、任意の好適な形態(例えば、液体、エアロゾル、溶液、吸入剤、霧、スプレー、又は固体、粉末、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、パッチなど)を取ることができる。例えば、本発明の薬学的組成物は、吸入又は注入(口又は鼻のいずれか)によるエアロゾル投与のための水溶液又は粉末の形態であってもよく、経口投与のための錠剤又はカプセルの形態であってもよく、直接注射又は静脈内注入のための無菌注入流体への添加のいずれかによる投与に好適な無菌水溶液又は分散液の形態であってもよく、又は経皮又は経粘膜投与のためのローション、クリーム、泡、パッチ、懸濁液、溶液、又は坐剤の形態であってもよい。
【0073】
薬学的組成物は、カプセル剤、錠剤、経口溶解錠剤、口腔剤、トローチ剤、のどあめ、及びエマルション、水性懸濁液、分散液又は溶液の形態である口腔液剤を含むがこれらに限定されない、経口的に許容される剤形の形態であり得る。カプセルは、薬学的に許容されるデンプン(例えば、トウモロコシ、ジャガイモ又はタピオカデンプン)、糖、人工甘味料、結晶性及び微結晶性セルロースなどの粉末状セルロース、小麦粉、ゼラチン、ガムなどの不活性充填剤及び/又は希釈剤と本発明の化合物の混合物を含んでもよい。経口使用のための錠剤の場合、一般的に使用される担体としては、ラクトース及びトウモロコシデンプンが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も添加することができる。カプセル形態での経口投与のために、有用な希釈剤としては、ラクトース及び乾燥トウモロコシデンプンが挙げられる。水性懸濁液及び/又はエマルションが経口投与されるとき、本発明の化合物は、懸濁されてもよく、又は油性相に溶解してもよく、乳化剤及び/又は懸濁剤と組み合わせてもよい。必要に応じて、特定の甘味料及び/又は香料及び/又は着色剤を添加し得る。
【0074】
薬学的組成物は、錠剤の形態であってもよい。この錠剤は、本発明の化合物の単位用量を、糖又は糖アルコールなどの不活性希釈剤又は担体、例えば、ラクトース、スクロース、ソルビトール又はマンニトールと共に含むことができる。この錠剤は、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、カルシウムカーボナートなどの非糖由来希釈剤、又はメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース若しくはその誘導体、並びにトウモロコシデンプンなどのデンプンを更に含み得る。錠剤は、ポリビニルピロリドンなどの結合剤及び造粒剤、崩壊剤(例えば、架橋カルボキシメチルセルロースなどの膨張性架橋ポリマー)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸塩)、防腐剤(例えば、パラベン)、酸化防止剤(例えば、BHT)、緩衝剤(例えば、リン酸塩又はクエン酸塩緩衝液)、並びにクエン酸塩/重炭酸塩混合物などの発泡剤を更に含むことができる。
【0075】
錠剤は、コーティングされた錠剤であり得る。コーティングは、保護フィルムコーティング(例えば、ワックス又はワニス)又は活性剤の放出、例えば、遅延放出(摂取後の所定の遅延時間後の活性剤の放出)又は胃腸管内の特定の位置での放出を制御するように設計されたコーティングであり得る。後者は、例えば、ブランド名Eudragit(登録商標)で販売されているものなどの腸溶性フィルムコーティングを使用して達成することができる。
【0076】
錠剤製剤は、従来の圧縮、湿式造粒又は乾式造粒方法によって作製され得、薬学的に許容される希釈剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、表面改質剤(界面活性剤を含む)、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギン酸、アカシアガム、キサンタンガム、クエン酸ナトリウム、複合ケイ酸塩、炭酸カルシウム、グリシン、デキストリン、スクロース、ソルビトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、タルク、乾燥デンプン及び粉末糖を含むがこれらに限定されない懸濁又は安定化剤を利用する。好ましい表面改質剤としては、非イオン性及びアニオン性の表面改質剤が挙げられる。表面改質剤の代表的な例としては、限定されないが、ポロキサマー188、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、及びトリエタノールアミンが挙げられる。
【0077】
薬学的組成物は、硬質又は軟質ゼラチンカプセルの形態であってもよい。この製剤によれば、本発明の化合物は、固体、半固体、又は液体の形態であってもよい。
【0078】
薬学的組成物は、非経口投与に好適な滅菌水溶液又は分散液の形態であってもよい。本明細書で使用される非経口という用語には、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、病変内、並びに頭蓋内注射又は輸注技術が含まれる。
【0079】
薬学的組成物は、直接注入又は静脈内注入のための滅菌注入流体への添加のいずれかによって投与するのに好適な滅菌水溶液又は分散液の形態であってもよく、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、それらの好適な混合物、又は1つ以上の植物油を含有する溶媒又は分散媒を含む。遊離塩基又は薬理学的に許容される塩としての本発明の化合物の溶液又は懸濁液は、界面活性剤と適切に混合した水中で調製することができる。好適な界面活性剤の例を以下に示す。分散体はまた、例えば、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及び油中のそれらの混合物中で調製することができる。
【0080】
本発明の方法で使用される薬学的組成物は、製剤中に存在する任意の担体又は希釈剤(ラクトース又はマンニトールなど)に加えて、1つ以上の添加剤を更に含むことができる。1つ以上の添加剤は、1つ以上の界面活性剤を含むか、又はそれらからなることができる。界面活性剤は、典型的には、薬物の浸透及び吸収を増強するために細胞の脂質構造に直接挿入することを可能にする脂肪酸などの1つ以上の長い脂肪族鎖を有する。界面活性剤の相対親水性及び疎水性を特徴付けるために一般的に使用される経験的パラメータは、親水性-親油性バランス(「HLB」値)である。より低いHLB値を有する界面活性剤は、より疎水性であり、油中でより高い溶解度を有するが、より高いHLB値を有する界面活性剤は、より親水性であり、水溶液中でより高い溶解度を有する。したがって、親水性界面活性剤は、一般に、約10を超えるHLB値を有する化合物であると考えられ、疎水性界面活性剤は、一般に、約10未満のHLB値を有するものである。しかしながら、これらのHLB値は、多くの界面活性剤について、HLB値を決定するために選択された経験的方法に応じて、HLB値が約8HLB単位も異なることがあるため、単なる目安に過ぎない。
【0081】
本発明の組成物で使用するための界面活性剤としては、ポリエチレングリコール(PEG)脂肪酸及びPEG脂肪酸モノ及びジエステル、PEGグリセロールエステル、アルコール-油トランスエステル化生成物、ポリグリセリル脂肪酸、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステロール及びステロール誘導体、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、糖及びその誘導体、ポリエチレングリコールアルキルフェノール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン(POE-POP)ブロックコリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、イオン性界面活性剤、脂溶性ビタミン及びそれらの塩、水溶性ビタミン及びそれらの両親媒性誘導体、アミノ酸及びそれらの塩、並びに有機酸、並びにそれらのエステル及び無水物が挙げられる。
【0082】
本発明はまた、本発明の方法で使用される薬学的組成物を含むパッケージ及びキットを提供する。キットは、ボトル、バイアル、アンプル、ブリスターパック、及び注射器からなる群から選択される1つ又は複数の容器を含むことができる。キットは、本発明の疾患、状態又は障害の治療及び/又は予防に使用するための説明書、1つ以上の注射器、1つ以上の塗布器、又は本発明の薬学的組成物を再構成するのに適した無菌溶液のうちの1つ以上を更に含むことができる。
【0083】
別段の指示がない限り、本明細書で使用されるすべてのパーセンテージ及び比率は、重量によるものである。本発明の他の特徴及び利点は、異なる実施例から明らかである。以下の実施例は、本発明を実施するのに有用な異なる構成要素及び方法を例示する。これらの実施例は、特許請求される発明を限定するものではない。本開示に基づいて、当業者は、本発明を実施するのに有用な他の構成要素及び方法を識別し、採用することができる。
【実施例】
【0084】
実施例1
インビトロ抗ウイルス活性アッセイ、細胞変性効果低減を使用して、アピリモドのコロナウイルス感染症に対する活性を、単独で、又はセリンプロテアーゼ阻害剤と組み合わせて評価した。端的には、Caco-2細胞を、成長のために最適な密度で96ウェルプレートに播種し、加湿インキュベーター(37℃、5%CO2)に入れて一晩接着させた。翌日、細胞を、単剤(アピリモド又はカモスタット)又は2剤の組み合わせのいずれかで2時間処理した。次いで、細胞を0.02のMOIでSARS-CoV-2(USA-WA1/2020)に感染させた。72時間後、上清を回収し、Vero細胞におけるエンドポイント希釈及び細胞変性効果によって決定されるウイルス力価を、比色アッセイ(ニュートラルレッド)を使用して細胞生存率を測定することによって決定した。
【0085】
単剤治療は、連続希釈によって得られた6又は7つの異なる濃度から構成された。濃度を、単剤のIC50値を上回る及び下回る範囲を提供するように選択した。表1は、試験された各薬剤について使用される濃度範囲を示す。Caco-2細胞に対する薬物細胞毒性を、ニュートラルレッドアッセイを介して並行して測定した。DMSO対照と比較して、生存率における10%を超える平均的な低減を示した組み合わせはなかった。次いで、ウイルス感染の割合を、DMSO対照と比較して、各単剤濃度(表2)又は組み合わせ(表3)について計算した。
図1は、アピリモド又はカモスタットによる各単剤治療の用量応答曲線を示し、これら2つの薬剤の抗ウイルス機能を確認する。相乗活性を、Chou T-C,(2010)Cancer Res.70(2),440-446に記載されるように、Chou-Talalay法に従って計算した組み合わせ指標(CI)値を用いて評価した。この方法を使用して、CI値は、試験した両方の薬剤のすべての組み合わせ(36又は49の組み合わせのマトリックス)にわたる、各薬物単独(単剤治療)の効果及び各薬物組み合わせの効果に基づいて計算される。2つの別々の実験を、実験ごとに2回の反復で行った。
【0086】
(表1)相乗活性を評価するために使用される薬剤及び濃度範囲
【0087】
(表2)Caco-2細胞における単剤(アピリモド又はカモスタット)の正規化されたSARS-CoV-2感染
【0088】
(表3)Caco-2細胞におけるアピリモドの49の組み合わせ治療の各々についての正規化されたSARS-CoV-2感染率(%)
【0089】
以下の表4は、表3に例示される2つの独立した実験から得られた平均CI値の要約を提供する。この方法を使用して、CI値>1の組み合わせは、拮抗的とみなされ、CI値=1は、相加的とみなされ、CI値<1は、相乗的とみなされる。
【0090】
(表4)アピリモド及びカモスタットの49(7×7)の組み合わせ治療の組み合わせ指数(CI)値
【0091】
表4に示すように、いくつかの用量の組み合わせは、相乗効果を示すCI値<1を生成した。これらの結果は、アピリモドがCaco-2細胞におけるSARS-CoV-2感染の予防においてセリンプロテアーゼ阻害剤カモスタットと相乗的であることを示す。
図2は、SARS-CoV-2感染に対する、62.5nMのアピリモドと562.5nMのカモスタット(表中で563nMに四捨五入)との例示的な相乗的組み合わせの結果を示す。
【国際調査報告】