IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レム・インターナショナル・エスエイの特許一覧

<>
  • 特表-フラックスゲート電流変換器 図1
  • 特表-フラックスゲート電流変換器 図2a
  • 特表-フラックスゲート電流変換器 図2b
  • 特表-フラックスゲート電流変換器 図2c
  • 特表-フラックスゲート電流変換器 図3a
  • 特表-フラックスゲート電流変換器 図3b
  • 特表-フラックスゲート電流変換器 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】フラックスゲート電流変換器
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/04 20060101AFI20240311BHJP
   G01R 15/18 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
G01R33/04
G01R15/18 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558190
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2022056763
(87)【国際公開番号】W WO2022200135
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】21164001.6
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520011360
【氏名又は名称】レム・インターナショナル・エスエイ
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】ミレー・ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】トロンベルト・ステファン
【テーマコード(参考)】
2G017
2G025
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AB09
2G017AC09
2G017AD42
2G017BA03
2G017BA08
2G025AA14
2G025AB14
2G025AC04
(57)【要約】
フラックスゲート電流変換器(2)であって、制御回路(3)と、フラックスゲート磁場検出器(4)を含むフラックスゲート測定装置(7)と、を含み、フラックスゲート磁場検出器は、励磁コイルによって取り囲まれた可飽和軟磁性コアを含み、制御回路は、励磁コイルに接続された励磁コイル駆動回路(14)と、軟磁性コアを交互に飽和させるために交流励磁電流Ifxを生成するように構成された励磁コイル駆動回路に接続されたコントローラ(18)と、を含む、フラックスゲート電流変換器。コントローラは、励磁コイルによって出力される測定信号(19)を受信するために、励磁コイルに接続された1ビットシグマデルタアナログ-デジタル変換器(ADC)(21)を含む少なくとも1つの入力を含むFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)の形態である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラックスゲート電流変換器(2)であって、
制御回路(3)と、
フラックスゲート磁場検出器(4)を含むフラックスゲート測定装置(7)と、
を含み、
前記フラックスゲート磁場検出器は、励磁コイルによって取り囲まれた可飽和軟磁性コアを含み、
前記制御回路は、前記励磁コイルに接続された励磁コイル駆動回路(14)と、前記軟磁性コアを交互に飽和させるために交流励磁電流Ifxを生成するように構成された前記励磁コイル駆動回路に接続されたコントローラ(18)と、を含み、
前記コントローラは、複数の入力回路部分を含むFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)の形態であり、各入力回路部分は、前記励磁コイルによって出力される測定信号(19)を受信するために前記励磁コイルに接続された1ビットシグマデルタアナログ-デジタル変換器(ADC)(21)を含み、各入力回路部分は、前記FPGAのLVDS(低電圧差動信号)コンパレータ入力を含み、前記1ビットシグマデルタアナログ-デジタル変換器(21)のビットストリーム出力信号は、デジタルフィルタ(32)に供給される前に追加されることを特徴とする、フラックスゲート電流変換器。
【請求項2】
前記1ビットシグマデルタアナログ-デジタル変換器(ADC)は、前記LVDSの第1の入力(23)に直列に接続された第1の抵抗器(R1)と、基準電位と前記第1の入力との間に接続された第1のコンデンサ(C1)と、前記LVDSの出力(25)および前記第1の入力からのフィードバックループと、を含み、前記フィードバックループは、1ビットDAC(27d)および第2の抵抗器(R2)を含む、請求項1に記載の電流変換器。
【請求項3】
前記FPGAは、電圧制御信号を供給するためにRCフィルタ(31a)を介して前記励磁コイルに接続された1ビットシグマデルタデジタル-アナログ(DAC)出力(27a)を含み、前記電圧制御信号は、前記フラックスゲート検出器の前記励磁コイルに交流励磁電流を供給するために前記励磁コイル駆動回路の増幅器(20)に供給される、請求項1に記載の電流変換器。
【請求項4】
補償コイルをさらに含み、前記制御回路は、前記フラックスゲート測定装置の前記補償コイルに、一次電流Ipの磁場を打ち消そうとする補償電流Isを供給する補償コイル駆動回路(13)を含み、前記FPGAは、前記補償コイル駆動回路に電圧制御信号を供給するために、RCフィルタ(31b)を介して前記補償電流コイルに接続された1ビットシグマデルタデジタル-アナログ(DAC)出力(27b)を含む、請求項1に記載の電流変換器。
【請求項5】
リップルキャンセルコイル(26)をさらに含み、前記制御回路は、前記フラックスゲート測定装置の前記補償コイルに、一次電流Ipの磁場を打ち消そうとする補償電流Isを供給するリップルキャンセルコイル駆動回路(28)を含み、前記FPGAは、前記リップルキャンセルコイル駆動回路に電圧制御信号を供給するために、RCフィルタ(31c)を介して前記リップル電流キャンセルコイルに接続された1ビットシグマデルタデジタル-アナログ(DAC)出力(27c)を含む、請求項1に記載の電流変換器。
【請求項6】
前記FPGAは、角が丸みを帯びた台形状の波形を有する前記励磁コイルのための励磁電圧制御信号Veを生成するように構成された励磁電圧制御回路部分(22)を含む、請求項1に記載の電流変換器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のフラックスゲート電流変換器(2)を動作させる方法であって、
前記フラックスゲート磁場検出器の前記励磁コイルのための励磁信号を、角が丸みを帯びた台形状の波形として生成することを含むことを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記台形状の波形は、前記FPGAのメモリに格納されたフラックスゲート励磁ルックアップテーブル(29)を使用して生成される、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックスゲート検出器を備えた電流変換器、特にフラックスゲート検出器を備えた閉ループ電流変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
フラックスゲート電流変換器は、周知であり、多くの電流感知用途に使用されている。フラックスゲート電流変換器は、通常、励磁コイル6に囲まれた可飽和軟磁性コア4を有する磁場検出器を含む。多くのフラックスゲート変換器では、測定される電流を搬送する一次導体が、磁場検出器の中央通路を通って延びる。閉ループ変換器では、磁場検出器に磁気的に結合され、フィードバック回路において信号処理回路に接続された補償コイルがあり、補償コイルは、一次導体によって発生する磁場を打ち消そうとする。このような配置は周知である。補償コイルがなく、測定される電流を搬送する一次導体のみがある開ループ方式でフラックスゲートを使用することも可能である。しかし、フラックスゲート磁場検出器の感度が高いことを考慮すると、それらは、主に閉ループ構成で使用される。
【0003】
フラックスゲート検出器を備えた閉ループ電流変換器が、米国特許第10126332号に記載されている。前述の特許に記載されるようなフラックスゲート検出器を備えた電流変換器は、有利には、磁気回路コアに囲まれた変換器の中央領域を通って延びる1つ以上の一次導体に流れる電流または差動電流を非常に正確な測定を提供する。フラックスゲート検出器は、広く使用されているホール効果検出器と比較して、高い感度および低いオフセットを有する。フラックスゲート検出器の磁性コアを飽和させるための励磁電流を駆動するだけでなく、補償電流およびリップル補償電流を駆動するために必要な電子機器により、このような電流変換器は、ホール効果検出器を備えた従来の開ループ電流変換器に比べて、高価になり、コンパクトではなくなる。
【0004】
典型的には、前述のフラックスゲートタイプの電流変換器では、十分に高い性能を保証するために、2つのコアを備えたマイクロコントローラ(デジタル信号プロセッサDSP)が一般に必要であり、1つのコアはフラックスゲートを連続的に励磁し、フラックスゲート電流情報をリアルタイムで取得するために使用され、もう1つのコアは、計算を管理し、通信し、実行するために使用される。また、マイクロコントローラは、典型的には、16ビットの差動アナログ-デジタルADC変換器を有し、例えば10メガヘルツで動作する高分解能パルス幅変調(PWM)信号を生成する。しかし、このようなDSPのコストはかなり高く、典型的には、フラックスゲート検出器を備えた電流変換器により必要とされる信号処理機能専用に使用するために厳密に必要とされるものを超える、あるサイズの回路基板上に実装する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、非常に正確で、製造および実装するのにコスト効率のよい、フラックスゲート検出器を備えた電流変換器を提供することである。
【0006】
ユーザーの要求に応じて容易に調整または較正され得るフラックスゲート検出器を備えた電流変換器を提供することが有利である。
【0007】
非常に正確で、低いオフセットを有し、実装が容易であり、かつコスト効率がよく信頼性の高い方法で異なる電流測定範囲に合わせて容易に設定され得る、電流変換器を提供することが有利である。
【0008】
設置および操作が簡単なフラックスゲート電流変換器を提供することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、請求項1に記載のフラックスゲート電流変換器および請求項7に記載のフラックスゲート電流変換器を動作させる方法を提供することによって達成された。
【0010】
本明細書に開示されるのは、制御回路と、フラックスゲート磁場検出器を含むフラックスゲート測定装置と、を含む、フラックスゲート電流変換器であり、フラックスゲート磁場検出器は、励磁コイルによって取り囲まれた可飽和軟磁性コアを含み、制御回路は、励磁コイルに接続された励磁コイル駆動回路と、軟磁性コアを交互に飽和させるために交流励磁電流Ifxを生成するように構成された励磁コイル駆動回路に接続されたコントローラと、を含み、コントローラは、励磁コイルによって出力される測定信号を受信するために励磁コイルに接続された1ビットシグマデルタアナログ-デジタル変換器(ADC)を含む少なくとも1つの入力を含むFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)の形態であることを特徴とする。
【0011】
前記少なくとも1つの入力は、FPGAのLVDS(低電圧差動信号)入力またはコンパレータ入力を含む。LVDS入力はコンパレータとして作用することもでき、また、コンパレータとして指定された入力回路は本発明のシグマデルタ(ΣΔ)変調器回路にも使用され得ることに留意されたい。
【0012】
FPGAは、それぞれ1ビットシグマデルタアナログ-デジタル変換器(ADC)を含む複数の入力を含み、複数の1ビットシグマデルタアナログ-デジタル変換器のビットストリーム出力信号は、デジタルフィルタに供給される前に追加される。
【0013】
有利な実施形態では、1ビットシグマデルタアナログ-デジタル変換器(ADC)は、LVDSの第1の入力に直列に接続された第1の抵抗器(R1)と、基準電位と第1の入力との間に接続された第1のコンデンサ(C1)と、LVDSの出力および第1の入力からのフィードバックループと、を含み、フィードバックループは、1ビットDACおよび第2の抵抗器(R2)を含む。
【0014】
有利な実施形態では、FPGAは、電圧制御信号を供給するためにRCフィルタを介して励磁コイルに接続された1ビットシグマデルタデジタル-アナログ(DAC)出力を含み、電圧制御信号は、フラックスゲート検出器の励磁コイルに交流励磁電流を供給するため励磁コイル駆動回路の増幅器に供給される。
【0015】
有利な実施形態では、変換器は補償コイルをさらに含み、制御回路は、フラックスゲート測定装置の補償コイルに、一次電流Ipの磁場を打ち消そうとする補償電流Isを供給する補償コイル駆動回路を含み、FPGAは、補償コイル駆動回路に電圧制御信号を供給するために、RCフィルタを介して補償電流コイルに接続された1ビットシグマデルタデジタル-アナログ(DAC)出力を含む。
【0016】
有利な実施形態では、電流変換器は、リップルキャンセルコイルをさらに含み、制御回路は、フラックスゲート測定装置の補償コイルに、一次電流Ipの磁場を打ち消そうとする補償電流Isを供給するリップルキャンセルコイル駆動回路を含み、FPGAは、リップルキャンセルコイル駆動回路に電圧制御信号を供給するために、RCフィルタを介してリップル電流キャンセルコイルに接続された1ビットシグマデルタデジタル-アナログ(DAC)出力を含む。
【0017】
有利な実施形態では、FPGAは、角が丸みを帯びた台形状の波形を有する励磁コイルのための励磁電圧制御信号Veを生成するように構成された励磁電圧制御回路部分を含む。
【0018】
有利な実施形態では、FPGAは、それぞれ1ビットシグマデルタアナログ-デジタル変換器(ADC)を含む複数の入力を含み、各ADCの1ビットストリームは、デジタルフィルタへの入力前に追加される。
【0019】
有利な実施形態では、前記請求項は、方法が、フラックスゲート磁場検出器の励磁コイルのための励磁信号を、角が丸みを帯びた台形状の波形として生成することを含むことを特徴とする。励磁信号を、ノイズを低減するために立ち上がりエッジと立ち下がりエッジをやわらげた(softened rising and falling edges)実質的に矩形の波と見ることもできる。エッジをやわらげる方法は、エッジを正弦波の立ち上がり部分のような低減された高調波波形(reduced harmonic waveform)で置き換えることを含むことができる。
【0020】
有利な実施形態では、台形波形は、FPGAのメモリに格納されたフラックスゲート励磁ルックアップテーブルを使用して生成される。
【0021】
本発明のさらなる目的および有利な特徴は、特許請求の範囲、詳細な説明および添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態によるフラックスゲート検出器を備えた電流変換器の概略ブロック図である。
図2a】本発明の一実施形態による変換器制御回路のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)への入力回路の一部の概略回路図である。
図2b】変形例の図2aと同様の図である。
図2c】さらに別の変形例の図2bと同様の図である。
図3a】先行技術による励磁コイルドライバの正弦波励磁電圧および関連する励磁電流のプロットの概略グラフ表示である。
図3b】先行技術による励磁コイルドライバの方形励磁電圧および関連する励磁電流のプロットの概略グラフ表示である。
図4】本発明の一実施形態によるハイブリッド励磁電圧および関連する励磁電流信号のプロットの概略グラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1を参照すると、一次導体1に流れる一次電流Iを測定するための電流変換器2は、フラックスゲート測定装置7と、制御回路3と、を含む。
【0024】
フラックスゲート測定装置は、フラックスゲート磁場検出器4と、二次コイル6と、を含む。
【0025】
当技術分野でそれ自体周知のように、二次コイルは、フラックスゲート検出器4に接続されたフィードバックループ12において、電流Iを供給される補償コイルとして作用し、この補償コイルは、測定される電流Iを搬送する一次導体1によって発生する磁場を打ち消そうとするものであり、一次導体は、変換器の中央通路10を通って延びている。
【0026】
フラックスゲート磁場検出器4は、励磁コイル駆動回路14に接続された励磁コイルに囲まれた可飽和軟磁性コアを含み、励磁コイル駆動回路14は、軟磁性コアを交互に飽和させるように構成された交流励磁電流Ifxを発生する。
【0027】
電流変換器は、例えばWO2016/016038からそれ自体既知である、リップル補償機能を実行するために、リップル補償コイル26に接続されたリップル補償回路28をさらに含むことができる。
【0028】
リップル補償回路28は、フラックスゲート検出器4の励磁電流Ifxによって引き起こされるリップル信号を打ち消そうとするリップル補償電流Iを生成するように構成されている。
【0029】
フラックスゲート磁場検出器4の励磁コイルのための励磁電圧信号Ifxは、制御回路3、特に励磁コイル駆動回路14に接続されたコントローラ18によって生成され、励磁コイル駆動回路14は、コントローラ18によって出力される励磁コイル制御信号17を増幅する増幅器20を含む。
【0030】
本発明の第1の態様によれば、コントローラ18は、励磁コイルに接続された少なくとも1つのLVDS(低電圧差動信号)入力を含むFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)の形態である。
【0031】
LVDS入力は、励磁コイルによって出力される測定信号19を受信するために、励磁コイルに接続された1ビットシグマデルタアナログ-デジタル変換器(ADC)21の一部を形成する。
【0032】
図1に示す実施形態では、励磁コイルに接続された2つの1ビットシグマデルタアナログ-デジタル変換器(ADC)21の一部を形成する2つのLVDS入力があるが、FPGAは、本発明の範囲内で、励磁コイルに接続された1つのみまたは3つ以上のLVDS入力を含んでもよい。好ましくは、FPGAは、励磁コイルに接続された3つ以上のLVDS入力、例えば6つ、8つ、またはそれより多いLVDS入力を含む。
【0033】
1ビットシグマデルタアナログ-デジタル変換器(ADC)21は、LVDSの第1の入力23に直列に接続された第1の抵抗器R1と、基準電位(例えば、接地)と第1の入力23との間に接続された第1のコンデンサC1と、LVDSの出力29および第1の入力23からのフィードバックループと、を含み、フィードバックループは、1ビットDAC27dおよび第2の抵抗器R2を含む。LVDSの第2の入力は、基準電圧に接続され、例えばFPGA LVDSバンクの中点を使用することができる。
【0034】
LVDSの入力ラインでは、R1-C1回路部品がシグマデルタ変換の積分器を形成し、増幅器15が、LVDS入力への電圧を調整し、低インピーダンス出力として機能し、シグマデルタ変換が適切に機能することを可能にするのに役立つ。
【0035】
基本的に、ADC21は、オーバーサンプリング変調器と、それに続くデジタル/デシメーションフィルタと、を含み、これらが一緒になって高分解能のデータストリーム出力を生成する。R1-C1およびRx-Cx回路部品は積分器として機能し、LVDS入力はコンパレータとして機能する。次に、システムのクロック周波数(例えば100MHzを超える周波数)により、デジタルフィルタ32の前に追加される、各ADC21のための1ビットストリームが生成される。複数の1ビットシグマデルタ変換器21を追加することで、ビットストリームの分解能が向上し、ノイズが減少する。
【0036】
有利なことに、FPGAのLVDS入力を使用して構成される1ビットシグマデルタアナログ-デジタル変換器(ADC)21は、典型的には100MHz超である、FPGA LVDSの高周波数動作能力、およびLVDSによって出力される後続の測定信号のデジタル信号処理により、実装するのに非常にコスト効率が良く、また、高い精度を可能にする。さらに、FPGAのLVDS入力29を使用して構成された1ビットシグマデルタアナログ-デジタル変換器(ADC)21は、フラックスゲート電流変換器の一般的な動作温度範囲において、ドリフトをほとんどまたはまったく示さず、安定した測定精度を示す。
【0037】
FPGAのもう1つの重要な利点は、DSPが約8秒を要するのに比べ、FPGAは、非常に迅速に、典型的には500ミリ秒未満で、起動することである。
【0038】
FPGAは、有利には、電圧制御信号を供給するためにローパスRCフィルタ31aを介して励磁コイルに接続された1ビットシグマデルタデジタル-アナログ(DAC)出力27aをさらに含み得、電圧制御信号は、フラックスゲート検出器の励磁コイルに交流励磁電流を供給するために励磁コイル駆動回路14の増幅器20に供給される。FPGAは、有利なことに、単純なRC回路部品を有する1次ローパスフィルタのみを使用してフィルタリングされ得る高周波数1ビットDACを可能にし、それにより、アクティブフィルタが不要になる。
【0039】
フラックスゲート励磁LUT(ルックアップテーブル)は、フラックスゲート励磁信号を生成するために専用の周波数で読み出されるN個の点のテーブルが定義されたものである。このテーブルの各出力値は、ゲイン回路31によって動的に調整され、励磁調整回路部分30によって温度または磁性材料の変動などの他のパラメータが補償され得る。
【0040】
変形例(図示せず)では、FPGAは、電圧制御信号を供給するためにローパスRCフィルタ31aを介して励磁コイルへの差動出力DACを生成するため2つの1ビットシグマデルタデジタル-アナログ(DAC)出力27aを含むことができ、電圧制御信号は、フラックスゲート検出器の励磁コイルに交流励磁電流を供給するために励磁コイル駆動回路14の増幅器20に供給される。
【0041】
FPGAは、有利には、電圧制御信号を供給するためにローパスRCフィルタを介して補償電流コイルに接続された1ビットシグマデルタデジタル-アナログ(DAC)出力27bをさらに含み得、電圧制御信号は、変換器装置7の補償コイルに、一次電流Ipの磁場を打ち消そうとする補償電流Isを供給するために補償コイル駆動回路13の増幅器20bに供給される。ADC入力はデジタルフィルタ32に供給され、CICフィルタ(カスケード積分器コムフィルタ(Cascaded-Integrator-Comb-Filter))とデシメーションフィルタによってフラックスゲート電流をデジタル化する。次に、デジタル化されたフラックスゲート電流は、調整を実行するために補償されなければならないフラックスゲート電流の偶数次高調波を簡単な計算で評価するために処理される。
【0042】
変形例(図示せず)では、FPGAは、電圧制御信号を供給するためにローパスRCフィルタを介して補償電流コイルに接続された差動出力DACを生成するため2つの1ビットシグマデルタデジタル-アナログ(DAC)出力27bを含み得、電圧制御信号は、補償コイル駆動回路13の増幅器20bに供給される。
【0043】
FPGAは、有利には、電圧制御信号を供給するためにローパスRCフィルタ31cを介してリップル電流キャンセルコイル26に接続された1ビットシグマデルタデジタル-アナログ(DAC)出力27cをさらに含み得、電圧制御信号は、変換器装置7のリップル電流キャンセルコイル26にリップルコイルキャンセル電流Irを供給するためにリップルコイル駆動回路28の増幅器20cに供給される。
【0044】
変形例(図示せず)では、FPGAは、電圧制御信号を供給するためにローパスRCフィルタ31cを介してリップル電流キャンセルコイル26に接続された差動出力DACを生成するため2つの1ビットシグマデルタデジタル-アナログ(DAC)出力27cを含み得、電圧制御信号は、リップルコイル駆動回路28の増幅器20cに供給される。
【0045】
リップル信号の生成には、励磁信号の生成に関して説明したのと同様のブロックが使用される。FPGAによって特定の周波数で読み出されるルックアップテーブルがある。出力はゲイン回路部分39で動的に調整され、温度調整回路部分37により温度が補償され得る。変換器ノイズを補償することができるよう、若干の遅延が、遅延回路部分38によりこのリップル補償に加えられて、ノイズを適切に補償する。
【0046】
図2aと図2bは、分解能とノイズを改善するために擬似差動モードで1ビットシグマデルタADCを使用する本発明の別の実施形態を示す。図2bでは、LVDS入力21bは、LVDS入力21aの逆のビットストリームを得るためにシフトされる。図2aでは、擬似差動モードを生成するためにLVDS入力が反転するのを回避するため、反転増幅器33が使用される。
【0047】
図2Cでは、擬似差動モードを生成するために使用される2つの出力を含む差動増幅器35を使用している。
【0048】
本発明の第2の態様によれば、フラックスゲート磁場検出器の励磁コイルのための励磁電圧信号の形状は、角が丸みを帯びた台形状の波形Veとして提供される(図4)。その目的は、電圧信号方形波(図3a)に比べて励磁電流信号Ieの高周波数成分を低減すると共に、同じピーク値の正弦波信号(図3b)に比べて信号半周期の平均値を高くすることである。これにより、正弦波信号を使用する際に必要とされるものよりも低いピーク電圧を用いてフラックスゲートコアを飽和させることができ、しかし、出力測定信号に悪影響を及ぼす高周波ノイズを発生させる方形電圧を使用する欠点はなくなる。FPGAは、角が丸みを帯びた台形状の波形を有する励磁コイルのための励磁電圧制御信号を生成するように構成された励磁電圧制御回路部分22を含む。台形状の波形は、FPGAのメモリに格納されたフラックスゲート励磁ルックアップテーブル29を使用して生成してもよいし、EPROMまたはフラッシュメモリを使用して外部で生成してもよい。
【0049】
〔特徴部のリスト〕
一次導体1
電流変換器2
フラックスゲート測定装置7
フラックスゲート磁場検出器4
可飽和軟磁性コア
励磁コイル
二次コイル6
リップル補償コイル26

制御回路3
フィードバックループ12
補償電流駆動回路13
励磁コイル駆動回路14
増幅器20
リップル補償回路28
FPGAコントローラ18
1ビットシグマデルタアナログ-デジタル変換器(ADC)21
LVDS入力29a
1ビットシグマデルタデジタル-アナログ(DAC)出力27a、27b、27c、27d
RCフィルタ31a、31b、31c

一次電流I
二次電流I
交流励磁電流Ifx
リップルキャンセル電流I
【0050】
〔実施の態様〕
(1) フラックスゲート電流変換器(2)であって、
制御回路(3)と、
フラックスゲート磁場検出器(4)を含むフラックスゲート測定装置(7)と、
を含み、
前記フラックスゲート磁場検出器は、励磁コイルによって取り囲まれた可飽和軟磁性コアを含み、
前記制御回路は、前記励磁コイルに接続された励磁コイル駆動回路(14)と、前記軟磁性コアを交互に飽和させるために交流励磁電流Ifxを生成するように構成された前記励磁コイル駆動回路に接続されたコントローラ(18)と、を含み、
前記コントローラは、複数の入力回路部分を含むFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)の形態であり、各入力回路部分は、前記励磁コイルによって出力される測定信号(19)を受信するために前記励磁コイルに接続された1ビットシグマデルタアナログ-デジタル変換器(ADC)(21)を含み、各入力回路部分は、前記FPGAのLVDS(低電圧差動信号)コンパレータ入力を含み、前記1ビットシグマデルタアナログ-デジタル変換器(21)のビットストリーム出力信号は、デジタルフィルタ(32)に供給される前に追加されることを特徴とする、フラックスゲート電流変換器。
(2) 前記1ビットシグマデルタアナログ-デジタル変換器(ADC)は、前記LVDSの第1の入力(23)に直列に接続された第1の抵抗器(R1)と、基準電位と前記第1の入力との間に接続された第1のコンデンサ(C1)と、前記LVDSの出力(25)および前記第1の入力からのフィードバックループと、を含み、前記フィードバックループは、1ビットDAC(27d)および第2の抵抗器(R2)を含む、実施態様1に記載の電流変換器。
(3) 前記FPGAは、電圧制御信号を供給するためにRCフィルタ(31a)を介して前記励磁コイルに接続された1ビットシグマデルタデジタル-アナログ(DAC)出力(27a)を含み、前記電圧制御信号は、前記フラックスゲート検出器の前記励磁コイルに交流励磁電流を供給するために前記励磁コイル駆動回路の増幅器(20)に供給される、実施態様1に記載の電流変換器。
(4) 補償コイルをさらに含み、前記制御回路は、前記フラックスゲート測定装置の前記補償コイルに、一次電流Ipの磁場を打ち消そうとする補償電流Isを供給する補償コイル駆動回路(13)を含み、前記FPGAは、前記補償コイル駆動回路に電圧制御信号を供給するために、RCフィルタ(31b)を介して前記補償電流コイルに接続された1ビットシグマデルタデジタル-アナログ(DAC)出力(27b)を含む、実施態様1に記載の電流変換器。
(5) リップルキャンセルコイル(26)をさらに含み、前記制御回路は、前記フラックスゲート測定装置の前記補償コイルに、一次電流Ipの磁場を打ち消そうとする補償電流Isを供給するリップルキャンセルコイル駆動回路(28)を含み、前記FPGAは、前記リップルキャンセルコイル駆動回路に電圧制御信号を供給するために、RCフィルタ(31c)を介して前記リップル電流キャンセルコイルに接続された1ビットシグマデルタデジタル-アナログ(DAC)出力(27c)を含む、実施態様1に記載の電流変換器。
【0051】
(6) 前記FPGAは、角が丸みを帯びた台形状の波形を有する前記励磁コイルのための励磁電圧制御信号Veを生成するように構成された励磁電圧制御回路部分(22)を含む、実施態様1に記載の電流変換器。
(7) 実施態様1から6のいずれかに記載のフラックスゲート電流変換器(2)を動作させる方法であって、
前記フラックスゲート磁場検出器の前記励磁コイルのための励磁信号を、角が丸みを帯びた台形状の波形として生成することを含むことを特徴とする、方法。
(8) 前記台形状の波形は、前記FPGAのメモリに格納されたフラックスゲート励磁ルックアップテーブル(29)を使用して生成される、実施態様7に記載の方法。
図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4
【国際調査報告】