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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】汚損制御コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 5/16 20060101AFI20240311BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20240311BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20240311BHJP
   C09D 143/04 20060101ALI20240311BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240311BHJP
【FI】
C09D5/16
C09D133/14
C09D183/04
C09D143/04
C09D7/65
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558318
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-10-11
(86)【国際出願番号】 EP2022058360
(87)【国際公開番号】W WO2022207681
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】21166072.5
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500286643
【氏名又は名称】アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】グラント,ジョアンナ
(72)【発明者】
【氏名】マギー,エロディー オデット ジゼル
(72)【発明者】
【氏名】ライリー,キャスリン エム.
(72)【発明者】
【氏名】コンウェイ,マリア
(72)【発明者】
【氏名】サンソー-ブランチャード,アナ ジュリー
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG121
4J038CH111
4J038CJ181
4J038DL022
4J038DL031
4J038GA03
4J038GA07
4J038GA09
4J038GA15
4J038JC34
4J038JC35
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA08
4J038NA05
4J038PA18
4J038PB05
4J038PC03
4J038PC04
4J038PC06
(57)【要約】
本発明は、官能性ポリシロキサン、官能化アクリレート系ポリマー、及び非硬化性オリゴマー又はポリマー流体を含む汚損制御コーティング組成物に関し、官能性ポリシロキサン及び官能化アクリレート系ポリマーは、式-Si(OR(R3-aのシリル部分を含み、式中、aは1~3であり、Rは、H、又は場合によっては置換されているC1~12アルキル、フェニル、及び1つ若しくはそれ以上のC1~6アルキル基を含むフェニルから選択され、Rは、H、並びに場合によっては置換されているC1~20脂肪族ヒドロカルビル、C6~12アリール、及び1つ又はそれ以上のC1~6脂肪族ヒドロカルビル基を含むC6~12アリールから選択される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)官能性ポリシロキサンと、
(ii)官能化アクリレート系ポリマーと、
(iii)25℃且つ大気圧にて液体である非硬化性ポリマー又はオリゴマー流体と
を含み、
前記官能性ポリシロキサン及び前記官能化アクリレート系ポリマーはそれぞれ、式-Si(R3-a(ORのシラン部分を含み、式中、
各Rは、独立して、H、並びにC1~12アルキル、フェニル、及び1つ又はそれ以上のC1~6アルキル置換基を有するフェニルから選択され、各R基は、場合によっては、ハロゲン化物、OR、及びNR から選択される1つ又はそれ以上の置換基を含み、
各Rは、独立して、H及びRから選択され、
各Rは、独立して、C1~20脂肪族ヒドロカルビル基、C6~12アリール基、及び1つ又はそれ以上のC1~6アルキル基を有するC6~12アリール基から選択され、各Rは、場合によっては、ハロゲン化物、-OR、-NR 、-NCO、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-C(O)NR 、-OC(O)NR 、-NRC(O)NR 、-OC(O)OR、-([CR E-)、-E-([CR E-)、及び-(CR [O(CR [CR(O)CR ]から選択される1つ又はそれ以上の置換基を含み、式中、[CR(O)CR ]はエポキシ部分を表し;
各Rは、独立して、H、C1~6アルキル、及びC1~6ハロアルキルから選択され;
各Eは、-O-及び-NRから独立して選択され;
aは、1~3の範囲内の整数であり;
jは、1~6の範囲内であり;
kは、2~3の範囲内であり;
mは、0~3の範囲内であり;且つ
pは、1~20の範囲内である、
汚損制御コーティング組成物。
【請求項2】
前記官能化アクリレート系ポリマーが、式(3):
【化1】
によって表されるモノマーに由来する1つ又はそれ以上のアクリレート系モノマー単位を含み、
式中:
Zは、-OR及び-NR から選択され;
各Rは、H、C1~20脂肪族ヒドロカルビル、C6~12アリール、1つ又はそれ以上のC1~6脂肪族ヒドロカルビル置換基を有するC6~12アリールから選択され;且つ
各Rは、独立して、H及びC1~20アルキルから選択され;R及びRはそれぞれ、場合によっては、ハロゲン化物、-OR、-NR 、-NCO、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-C(O)NR 、-OC(O)NR 、-NRC(O)NR 、-OC(O)OR、-([CR E-)、-E-([CR E-)、及び-(CR [O(CR [CR(O)CR ]から選択される1つ又はそれ以上の置換基を含み;
式中、R、j、k、m、及びpは、請求項1に定義されるとおりである、
請求項1に記載の汚損制御コーティング組成物。
【請求項3】
前記官能化アクリレート系ポリマーが、式(3)のモノマーに由来する1つ又はそれ以上のモノマー単位を含み、式中、ZはORから選択され、且つRは、請求項1に定義されるシラン部分で置換されたC1~12アルキルから選択される、請求項2に記載の汚損制御組成物。
【請求項4】
前記官能化アクリレート系ポリマーが、式R C=CRの1つ又はそれ以上のスチレンコモノマーを含み、式中、各Rは、H、ハロゲン化物、及びC1~6アルキルから選択され、Rは、フェニル、1つ又はそれ以上の1~6アルキル基を有するフェニルから選択され、各R及びRは、場合によっては、ハロゲン化物、OR、及びNR で置換されており、式中、Rは、請求項1に定義されるとおりである、請求項1から3のいずれか一項に記載の汚損制御コーティング組成物。
【請求項5】
アクリレート系モノマー単位が、モル基準で前記官能化アクリレート系ポリマーの10%以上を構成する、請求項1から4のいずれか一項に記載の汚損制御コーティング組成物。
【請求項6】
前記官能性ポリシロキサンが、式:
【化2】
によって表され、
式中;
各Rは、独立して、H及びRから選択され;
各Rは、独立して、C1~6アルキル、フェニル、及び1つ又はそれ以上のC1~6置換基を有するフェニルから選択され;
各Rは、独立して、C6~10アリール、C6~20脂肪族ヒドロカルビル、及び1つ又はそれ以上のC1~6脂肪族ヒドロカルビル置換基を有するC6~10アリールから選択され;
式中、各R、R、及びRは、場合によっては、ハロゲン化物、-OR、-NR 、-NCO、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-C(O)NR 、-OC(O)NR 、-NRC(O)NR 、-OC(O)OR、-([CR E-)、-E-([CR E-)、及び-(CR [O(CR [CR(O)CR ]から選択される1つ又はそれ以上の置換基を含み、
、E、j、k、m、及びpは、請求項1に定義されるとおりであり、
は、全てのR基及びR基とは異なり;
dは1~100の範囲内であり;
eは0~99の範囲内であり;
d+eの合計は、5~100の範囲内である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の汚損制御組成物。
【請求項7】
全てのR及びRがC1~6アルキルであり、且つRがフェニル又はC1~6アルキル置換フェニルである、請求項6に記載の汚損制御組成物。
【請求項8】
前記非硬化性オリゴマー又はポリマー流体が、非官能性ポリシロキサン、非官能性ポリエーテル、非官能性パーフルオロポリエーテル、及び非官能性ハロゲン化炭化水素ポリマーから選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の汚損制御組成物。
【請求項9】
前記非硬化性オリゴマー又はポリマー流体が、非官能性ポリシロキサンであり、式:
【化3】
のものから選択され、
式中、
各Rは、独立して、H、C1~4アルキル、及びC1~4ハロアルキルから選択され、
各Rは、独立して、C1~20アルキル、フェニル、及び1つ又はそれ以上のC1~6アルキル置換基を有するフェニルから選択され、各Rは、場合によっては、-OR、-NR 、-C(O)R、-([CR E-)、-E-([CR E-)Rから選択される1つ又はそれ以上の置換基を含み;
、E、j、及びpは、請求項1に定義されるとおりであり、
q及びrは、非官能性ポリシロキサン内での個々のシロキサン単位の相対モル比であり、q:rの比率は、以下の範囲:0.1:1~100:1、1:1~70:1、及び2:1~35:1から選択される、
請求項8に記載の汚損制御組成物。
【請求項10】
(i)前記官能性ポリシロキサン、非硬化性ポリマー又はオリゴマー流体、及び前記官能化アクリレート系ポリマーが、ハロゲン化物置換基を含まず、且つハロゲン化物含有置換基を含まず;
(ii)前記官能化アクリレート系ポリマーが、1つ又はそれ以上のスチレンコモノマーを含み、各Rは、H及びメチルから選択され、Rは、フェニル又はC1~4アルキル置換フェニルであり;
(iii)前記官能化アクリレート系ポリマー上の少なくとも1つのシラン部分が、請求項2に定義される式(3)のアクリレート系モノマー単位の基Z上にあり;
(iv)前記官能性ポリシロキサン上の少なくとも1つのシラン部分が、末端位置にあり;
(v)前記官能化アクリレート系ポリマーが、アクリレート系モノマーに由来する少なくとも20モル%のモノマー単位を含み;
(i)前記コーティング組成物はさらに、1つ又はそれ以上の架橋剤を0.1~30重量%の濃度にて含み;
(ii)前記コーティング組成物は、1つ又はそれ以上の追加の硬化性樹脂を20重量%以下の濃度にて含み;
(iii)前記コーティング組成物は、固形分が50重量%以上、又は70重量%以上であり;
(iv)前記コーティング組成物は、15重量%以下の殺海洋生物剤を含み;
(v)前記コーティング組成物は、5重量%以下の水を含み;
(vi)前記コーティング組成物中の官能性ポリシロキサンの総含有量は、3~50重量%の範囲であり;
(vii)前記コーティング組成物中の官能化アクリレート系ポリマーの総含有量は、5~70重量%の範囲であり;
(viii)前記コーティング組成物中の非硬化性オリゴマー又はポリマー流体の総含有量は、2~40重量%の範囲内である、
ことの1つ又はそれ以上が当て嵌まる、請求項1から9のいずれか一項に記載の汚損制御コーティング組成物。
【請求項11】
人工構造物の表面に、請求項1から10のいずれか一項に記載の汚損抑制コーティング組成物を塗布する工程を含む、人工物体上での水生生物汚損を制御する方法。
【請求項12】
前記汚損制御コーティング組成物が、乾燥且つ/又は硬化している、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか一項に記載の汚損制御コーティング組成物のコーティングを含む基材又は物品。
【請求項14】
前記汚損制御コーティング組成物が、乾燥且つ/又は硬化されている、請求項13に記載の基材又は物品。
【請求項15】
人工構造物の水生生物汚損を制御するための、請求項1から10のいずれか一項に記載の汚損制御コーティングの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚損制御コーティング組成物、そのような汚損制御コーティング組成物でコーティングした基材又は物品、及びそのようなコーティングを使用して人工物体上での水生生物汚損を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水生生物による船殻及び他の水上に浮かぶ物体の汚損は、継続的な問題である。汚損は、水中でのボートの摩擦抵抗を増大させて、燃料コストを増大させる可能性がある。静止構造物、例えば掘削リグでは、支持脚の周りの水流を変える可能性があるので、応力が予測不能となり、且つ増大するリスクがある。汚損はまた、欠陥及び亀裂を不明瞭にすることによって検査をより困難にする虞がある。汚損はさらに、配管、例えば、冷却水又はバラストタンクの取入れ口の断面積を狭くして、流量を引き下げる虞がある。
【0003】
コーティングを使用して、汚損を引き下げることができる。そのようなコーティングは、表面上での水生生物の増殖を制御するための殺生物剤を含有し得る。コーティングは典型的に、2つの広範なカテゴリー、すなわち、殺生物剤がコーティングから経時的に徐々に浸出する「硬質」防汚コーティング、及びコーティングが徐々に腐食して殺生物剤を放出する「浸食」防汚コーティング(自己研磨コーティングと呼ばれることもある)に分類される。しかしながら、殺生物剤は、特に出荷活動が激しい地域では、環境リスクを伴う虞がある。したがって、コーティングは、ますます厳しくなる環境立法の対象である。
【0004】
殺生物剤を含まないコーティングが利用可能であり、これはしばしば「汚損制御」又は「ファウルリリース」コーティングと呼ばれ、汚損生物の付着を阻害するだけでなく、汚損生物を表面からより容易に洗い流させる「低表面エネルギー」表面をもたらす。
【0005】
殺生物剤を含まないコーティングの例として、コーティングがシリコーンゴムに基づく、英国特許第1307001号及び米国特許第3702778号に記載されているものが挙げられる。国際公開第93/13179号には、硬化性オルガノハイドロジェンポリシロキサン又はポリジオルガノシロキサン、及び官能基を含むポリマーを含む保護コーティングが記載されており、ポリマーの繰返し単位の大部分は、シロキサン単位ではない。国際公開第2012/146023号には、シラン末端ポリウレタン及びシラン末端ポリシロキサンを含む低表面エネルギーコーティング組成物が記載されている。国際公開第2013/107827号には、硬化性ポリシロキサン及びシラン末端ポリウレタンを含むファウルリリース組成物が記載されている。国際公開第2014/131695号には、硬化性オルガノシロキサンポリマー及びフッ素化オキシアルキレン含有ポリマー又はオリゴマーを含むコーティング組成物が記載されている。国際公開第99/33927号には、硬化性ポリシロキサン又はフッ素含有ポリマーを含むコーティング層を、硬化性ケイ素含有官能基を有するフィルム形成ポリマーを含むコーティングに塗布することによって、基材上の汚損を抑制するプロセスが記載されている。欧州特許第1518905号には、Si結合ヒドロキシル基又は加水分解性基を有するジオルガノポリシロキサン、1分子あたり少なくとも2つの加水分解性基を有するシラン、及びSiに結合した非反応性炭化水素基を有するジオルガノポリシロキサンを含む防汚組成物が記載されている。欧州特許第2143766号には、硬化性有機樹脂、並びにポリエーテル、長鎖アルキル、及びアリールアルキル基を有するシリコーン油を含む防汚コーティング組成物が記載されている。米国特許第6187447号には、加硫性ポリオルガノシロキサン組成物、及びシラノールを含まないポリオルガノシロキサンを含む、ファウルリリースコーティングとして使用することができる縮合硬化性コーティング組成物が記載されている。米国特許第8921503号には、硬化性ポリシロキサンポリアルキレンオキシドブロックコポリマーを含むコーティングを塗布することによって、水性環境において基材からの汚損を物理的に抑止するプロセスが記載されている。米国特許第9822220号には、ベースコーティング、並びにヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン及び硬化性ポリエーテル含有シランを含む防汚コーティング組成物を含む防汚コーティング系が記載されている。国際公開第2020/011839号は、縮合性シラン基を有する樹脂を含むファウルリリースコーティング組成物と共に使用することができるタイコート組成物に関する。
【0006】
ポリシロキサン系組成物の欠点は、これに、他の多くのコーティングが接着しないことである。このことは、偶発的な漏出又は不適切なマスキングにより、他のコーティング層を塗布する必要が依然としてある場合にポリシロキサンコーティングが表面に塗布されるか、又は表面を汚染するならば、問題となる。表面が清浄化されていないか、又はそれを別にすれば汚染を除去するように処理されていなければ、悪影響、例えば、ブリスタリング、ピンホール、及びフィッシュアイが、その後に塗布されるコーティングに現れる虞がある。これは、他のコーティング組成物に使用される前にコーティング装置が完全に清浄化されていなくても、起こり得る。装置は、事前に完全に清浄化されるか、又は別個の専用装置が使用されなければならない。
【0007】
国際公開第2019/115020号及び国際公開第2019/15021号が、以前にこの問題に対処している。それらには、硬化性ポリシロキサンを本質的に含まず、且つアルコキシシリル基で修飾されたポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、又はポリカーボネート樹脂を使用する非水性ファウルリリースコーティング組成物又は層が記載されている。しかしながら、後に塗布されるコーティング組成物に接着することができる、更なる殺生物剤を含まないファウルリリース組成物が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】英国特許第1307001号
【特許文献2】米国特許第3702778号
【特許文献3】国際公開第93/13179号
【特許文献4】国際公開第2012/146023号
【特許文献5】国際公開第2013/107827号
【特許文献6】国際公開第2014/131695
【特許文献7】国際公開第99/33927号
【特許文献8】欧州特許第1518905号
【特許文献9】欧州特許第2143766号
【特許文献10】米国特許第6187447号
【特許文献11】米国特許第8921503号
【特許文献12】米国特許第9822220号
【特許文献13】国際公開第2020/011839号
【特許文献14】国際公開第2019/115020号
【特許文献15】国際公開第2019/15021号
【発明の概要】
【0009】
本発明は、官能性ポリシロキサン、官能化アクリレート系ポリマー、及び非硬化性ポリマー又はオリゴマー流体を含む汚損制御コーティング組成物である。コーティングは、場合によっては、加えて、架橋剤及び/又は架橋触媒を含み得る。官能性ポリシロキサン及び官能化アクリレート系ポリマーはそれぞれ、式-Si(R3-a(ORのシラン部分を含む。
【0010】
各Rは、独立して、H、C1~12アルキル、フェニル、及び1つ又はそれ以上(例えば1~4つ)のC1~6アルキル基で置換されたフェニルから選択される。
【0011】
各Rは、独立して、H及びRから選択される。
【0012】
各Rは、独立して、場合によっては置換されているC1~20脂肪族ヒドロカルビル基、場合によっては置換されているC6~12アリール基、及び1つ又はそれ以上のC1~6アルキル基を有する、場合によっては置換されているC6~12アリール基から選択される。
【0013】
aは、1~3の範囲内の整数である。
【0014】
、R、及びRはそれぞれ、場合によっては、節「任意選択の置換基」に記載される1つ又はそれ以上の置換基又は追加の置換基を含み得る。
【0015】
本発明はまた、人工物体上での水生生物汚損を制御する方法であって、人工構造物の表面上に上記コーティング組成物を塗布することを含む方法に関する。
【0016】
本発明はさらに、乾燥且つ/又は硬化の前及び後の双方の、上述の汚損制御コーティング組成物でコーティングされた基材又は物品に関する。
【0017】
本発明は加えて、人工構造物の水生生物汚損を制御するための、そのようなコーティング組成物の使用に関する。
【0018】
上記の組成物は、他のコーティング層に対する接着特性が向上するだけでなく、高い汚損制御活性、特に長期汚損制御活性も有することが見出された。加えて、コーティング組成物は、コーティング硬度が向上する(耐摩耗性及び損傷抵抗の向上と相関する)。さらに、コーティング組成物は、基材又はプライマーコートに直接接着することができるので、タイコートを必要とせずに使用することができることで、塗布スキームの複雑性を減らすのに役立つ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の考察において、コーティング組成物全体における成分の量への言及は、特に明記しない限り、未硬化又は未乾燥の組成物へのものである。また、特に明記しない限り、与えられる濃度は、総コーティング組成物の重量%である。コーティング組成物が別々の部分(例えば、結合剤含有部分及び架橋剤含有部分)に提供される場合、総コーティング組成物中の成分の量は、異なる部分を組み合わせた後の、例えば混合直後の総量に基づく。
【0020】
樹脂、ポリマー、又はオリゴマーにおける「末端(terminal)」基への言及は、末端(end,terminal)位置にてオリゴマー/ポリマー鎖又は「骨格」に結合した基へのものである。「ペンダント」基への言及は、末端位置以外の位置にてオリゴマー/ポリマー鎖に取り付けられた基へのものである。
【0021】
「脂肪族ヒドロカルビル」基又は置換基への言及は、飽和及び不飽和ヒドロカルビル基(例えば、アルキル基又はアルケニル基)を含み、これらは、環状、直鎖状、又は分岐状であってもよいし、環状部分及び非環状部分の混合物を含んでもよい。同様に、「アルキル」又は「アルケニル」基又は置換基への言及は、環状、直鎖状、若しくは分岐状基、又は環状部分及び非環状部分の混合物を含む基を含む。
【0022】
ポリマー又はオリゴマーのモノマー(又はモノマー単位)含有量は、重量%又はモル%のいずれかで表され、それぞれ、ポリマー又はオリゴマーを調製するために使用されるモノマーの重量分率又はモル分率から計算することができる。
【0023】
用語「モノマー単位」は、ポリマーの構成モノマーを、すなわちポリマー中に組み込まれた後のモノマーに由来する部分を指す。
【0024】
[シラン部分]
官能性ポリシロキサン及び官能化アクリレート系ポリマーはそれぞれ、先で定義される一般式-Si(R3-a(ORのシラン部分を含む。
【0025】
当該シラン部分のいずれかにおいて、Rは、先で定義されるR基であり得る。更なる実施形態において、あらゆるR基を、(場合によっては置換されている)C1~6脂肪族ヒドロカルビル、フェニル、及び1つ又はそれ以上のC1~6脂肪族ヒドロカルビル基を有するフェニルから選択することができる。更なる実施形態において、Rは、C1~6アルキル、フェニル、及び1つ又はそれ以上のC1~6アルキル置換基で置換された(場合によっては置換されている)フェニルから選択することができる。
【0026】
当該シラン部分のいずれかにおいて、あらゆるR基を、H及びC1~6アルキルから選択することができる。更なる実施形態において、シラン部分内の全てのR基は、互いに同じであり得る。
【0027】
実施形態において、シラン部分上にハロゲン化物又はハロゲン化物含有基は存在しない。
【0028】
[官能性ポリシロキサン]
組成物は、硬化性であり、且つ先で定義される1つ又はそれ以上のシラン部分を有する、1つ又はそれ以上の官能性ポリシロキサンを含む。当該部分は、官能性ポリシロキサンのペンダント若しくは末端位置に、又はペンダント及び末端位置の双方にあり得る。そのような部分は、コーティング組成物を基材に塗布すると、互いに反応してより大きなポリシロキサン分子を形成することができ、又は他の成分上の、例えばアクリレート系ポリマー上の部分と反応することができる。
【0029】
ポリシロキサンはまた、以下の節「任意選択の置換基」に記載されるような他の置換基を含み得る。
【0030】
好ましくは、官能性ポリシロキサン内に少なくとも2つのシラン部分が存在する。ポリシロキサンは、直鎖状、分岐状、又は環状であってもよいし、環状及び非環状部分又は領域の混合物を含んでもよい。実施形態において、官能性ポリシロキサンは、式(1)によって表すことができる:
【化1】
【0031】
各Aは、[O-Si(R-O]である。
【0032】
各Gは、R及び-Si(R3-a(ORから選択される。実施形態において、いずれか、又は全てのR基がRであり得る。実施形態において、G-A-Si-A-G単位のいずれか、又は全てがR-A-Si-A-R単位である。更なる実施形態において、R-A-Si-A-R内のいずれか、又は全てのRがRである。
【0033】
bは、4~100の範囲内である。
【0034】
各cは、独立して、0~5、例えば0~3の範囲内である。
【0035】
実施形態において、官能性ポリシロキサンは、式(2)によって表すことができる:
【化2】
【0036】
そのような分子では、末端位置はシラン部分を含む。
【0037】
実施形態において、各Gは、R又はRであり得る。更なる実施形態において、R基は、(場合によっては置換されている)脂肪族ヒドロカルビル及びフェニルから選択することができる。
【0038】
更なる実施形態において、官能化ポリシロキサンは、式(3)によって表される:
【化3】
【0039】
式(3)において、繰返し単位(その相対モル比は、d及びeによって表される)は、ランダム、交互、又はブロック配置で配置され得る。
【0040】
各Rは、独立して、H及びRから選択される。
【0041】
各Rは、独立して、C1~6アルキル、フェニル、及び1つ又はそれ以上のC1~6アルキル置換基で置換されたフェニルから選択される。各アルキル基、アルキル置換基、及びフェニル基は、節「任意選択の置換基」に記載されるように、場合によっては置換され得る。
【0042】
各Rは、独立して、C6~10アリール、C6~20脂肪族ヒドロカルビル、及び1つ又はそれ以上(例えば1~4個)のC1~6脂肪族ヒドロカルビル基で置換されたC6~10アリールから選択される。いずれの脂肪族ヒドロカルビル基及び置換基、並びにいずれのアリール基も、以下で節「任意選択の置換基」において示されるように、場合によっては置換され得る。
【0043】
dは、1~100の範囲内である。
【0044】
eは、0~99の範囲内である。
【0045】
d+eの和は、4~100の範囲内である。実施形態において、e/dの比率は、1以下、例えば0.01~1.00、例えば0.05~0.50、又は0.08~0.30の範囲内である。
【0046】
は、全てのR及びR基とは異なる。実施形態において、式(3)において、R及びRの全存在は、Rよりも少ない炭素原子を有する。実施形態において、R及びRの全存在は同じである。実施形態において、R及びRは、場合によっては置換されているC1~2アルキルであり、Rは、場合によっては置換されているC4~10アルキル及び場合によっては置換されているフェニルから選択される。
【0047】
実施形態において、式(1)、(2)、及び(3)のいずれか、又は全てにおいて、b、又はd+eの合計は、10~80の範囲内であり得る。官能化ポリシロキサン全体について、b(又はd+e)の平均値は、4~100、例えば10~80の範囲内である。
【0048】
実施形態において、式(1)、(2)、及び/又は(3)のいずれか、又は全てにおいて、ハロゲン化物又はハロゲン化物含有置換基は存在しない。
【0049】
実施形態において、R内の場合によっては置換されているC6~12アリール基は、場合によっては置換されているフェニル基である。
【0050】
官能性ポリシロキサンの重量平均分子量(Mw)は、500~10000、例えば700~5000、又は800~3000の範囲内であり得る。
【0051】
実施形態において、官能性ポリシロキサンの粘度(25℃)は、30~500cP、例えば50~400cP、例えば70~250cPの範囲内である。
【0052】
コーティング組成物中の官能性ポリシロキサンの含有量は、実施形態において、3重量%~50重量%、例えば5重量%~35重量%の範囲内である。
【0053】
[官能化アクリレート系ポリマー]
コーティング組成物は、節「シラン部分」において先で定義されるシラン部分を含む1つ又はそれ以上の官能化アクリレート系ポリマーを含む。当該部分は、コーティング組成物を基材に塗布すると、官能性ポリシロキサン上の対応する部分と反応することができる。実施形態において、官能化アクリレート系ポリマー分子あたり2つ又はそれ以上のそのようなシラン部分が存在する。
【0054】
実施形態において、官能化アクリレート系ポリマーは、節「任意選択の置換基」において以下で定義されるように、1つ又はそれ以上の更なる任意選択の置換基を含み得る。
【0055】
シラン部分及びの他の任意選択のあらゆる置換基は、官能化アクリレート系ポリマー上のどこにでも存在することができ、例えばアクリレート系モノマー単位又は非アクリレート系コモノマー単位上に存在することができる。実施形態において、シラン部分又は少なくとも1つのシラン部分は、アクリレート系モノマー単位上にある。
【0056】
「アクリレート系」ポリマーとは、1つ又はそれ以上のアクリレート系モノマー単位を含むポリマー、すなわち、例えばアクリル酸、アクリル酸エステル、及びアクリルアミドにおいて見出されるように、C=C二重結合がカルボニル(C=O)基に直接結合しているアクリレート部分を有するモノマーに由来するポリマーを意味する。
【0057】
実施形態において、官能化アクリレート系ポリマーは、式(4)によって表される1つ又はそれ以上のモノマーに由来する:
【化4】
【0058】
Zは、-OR及び-NR から選択される。実施形態において、基ZはORから選択される。
【0059】
各Rは、独立して、H、並びにC1~20脂肪族ヒドロカルビル(例えばアルキル)、C6~12アリール、及び1つ又はそれ以上(例えば1~4個)のC1~6脂肪族ヒドロカルビル基で置換されたC6~12アリールから選択される。各脂肪族ヒドロカルビル置換基、脂肪族ヒドロカルビル基、及びアリール基は、節「任意選択の置換基」の下でさらに記載されるように、場合によっては置換され得る。実施形態において、C1~20脂肪族ヒドロカルビルは、C1~10又はC1~6脂肪族ヒドロカルビル基、例えばC1~10又はC1~6アルキル基から選択することができる。実施形態において、各Rは、水素及びメチルから選択される。
【0060】
各Rは独立して、H、及び節「任意選択の置換基」においてさらに記載されるように、場合によっては置換されているC1~20アルキルから選択される。実施形態において、C1~20アルキルは、C1~10又はC1~6アルキルである。
【0061】
官能化アクリレート系ポリマー内の少なくとも1つのモノマー単位は、シラン部分を含む。官能化アクリレート系ポリマーがコポリマーである場合、モノマー単位の1つ又はそれ以上が、シラン部分を有し得る。実施形態において、シラン部分は、基R又はR上の置換基であり、更なる実施形態において、R上の置換基である。シラン部分において、各RはRであり得る。更なる実施形態において、各R及びRは、C1~4アルキルから選択され、aは2又は3である。
【0062】
実施形態において、官能化アクリレート系ポリマーが由来するモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、並びにそれらのエステル及びアミド、例えば、Zが、先で定義される-OR及び-NR から選択されるものから選択される。実施形態において、R基は、H及び場合によっては置換されているC1~6アルキルから選択される。更なる実施形態において、ポリマーが由来するモノマーの少なくとも1つは、Rが、シラン部分で置換されたC1~6アルキル、すなわち-Si(R3-a(OR基(例えば-Si(R3-a(OR基)から選択される、先に列挙される酸のエステルから選択される。
【0063】
実施形態において、少なくとも1つのモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸のエステル及び置換アミド、アクリルアミド、並びにメタクリルアミドから選択され、少なくとも1つのRは、Hでない。実施形態において、官能化アクリレート系ポリマーは、アクリル酸のエステル及びメタクリル酸のエステルから選択される1つ又はそれ以上のモノマーに基づく。実施形態において、これらは、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、及びメタクリル酸ラウリルから選択することができる。
【0064】
官能化アクリレート系ポリマーは、式(4)のモノマーのみのコポリマーであり得る。他の実施形態において、官能化アクリレート系ポリマーは、例えば式(4)の1つ又はそれ以上のアクリレート系モノマー及び1つ又はそれ以上の他のモノマーから形成されたコポリマーであり得る。
【0065】
典型的には、アクリレート系モノマー単位は、モル基準で官能化アクリレート系ポリマーの10%以上、例えば20%以上を構成する。更なる実施形態において、アクリレート系モノマーは、官能化アクリレート系ポリマーを形成するために使用されるモノマーの総量に基づいて、20重量%以上、例えば30重量%以上を構成する。
【0066】
他の種類のコモノマー(すなわち、非アクリレート系モノマー)として、重合性不飽和炭素-炭素結合を有するものが挙げられ、これは、上述の官能化アクリレート系モノマーとの連鎖伝搬反応に関与し得る。
【0067】
そのような他の種類のコモノマーは、実施形態において、式(5)によって表される:
【化5】
【0068】
各Rは、独立して、H、ハロゲン化物(例えば、F及びClから選択される)、及びC1~6アルキルから選択される。Rは、R、シラン部分(「シラン部分」の下で先で定義される)、C2~6アルケニル、C6~12アリール、及び1つ又はそれ以上のC1~6脂肪族ヒドロカルビル基で置換されたC6~12アリールから選択することができる。実施形態において、R及びRの一方のみが、ハロゲン化物であり得るか、又はハロゲン化物含有置換基を含み得る。実施形態において、コモノマーは、節「任意選択の置換基」において以下で記載されるような、1つ又はそれ以上の任意選択の置換基(例えば、R又はR内のアルキル、アルケニル、又はアリール基上の置換基である)を含み得る。
【0069】
コモノマーは、例えばR若しくはR基上の置換基として、又はR基の選択肢であるシラン部分を含み得る。
【0070】
スチレンモノマーは、式(5)の範囲に入り、例えば、Rは、場合によっては置換されているフェニル基又はアルキルフェニル基である。実施形態において、スチレンモノマーについて、Rは、H、ハロゲン化物、及びC1~6アルキルから選択され、Rは、フェニル、又は1つ若しくはそれ以上のC1~6アルキル基を有するフェニルから選択され、各R及びRは、場合によっては、ハロゲン化物、OR、及びNR で置換されており、Rは、H、C1~6アルキル、及びC1~6ハロアルキルから選択される。スチレンモノマーの更なる実施形態において、Rは、H及びメチルから選択され、Rは、フェニル又はC1~4アルキル置換フェニルである。
【0071】
実施形態において、式(5)のモノマーは、塩化ビニル、エチレン、プロピレン、ブタジエン、及びスチレンから選択され、これらはいずれも、場合によっては置換され得る。
【0072】
官能化アクリレート系ポリマー内のモノマー単位の平均数は、5~500、例えば10~200の範囲内であり得る。
【0073】
官能化アクリレート系ポリマーが、例えばスチレン系コモノマー単位内に、Rとしてアリール基を含む場合、官能化アクリレート系ポリマー内のスチレン系コモノマー単位の量は、モル基準で最大80%、例えば10~80%(ポリマーを調製するために使用されるモノマーの総量に基づく)の範囲内であり得る。Rがアリール基を含まない他の実施形態において、アクリレート系モノマーの含有量は、モル基準で80%以上、例えば90%以上、95%以上、又は99%以上の範囲内である。
【0074】
実施形態において、コーティング組成物中の官能化アクリレート系ポリマーの総含有量は、コーティング組成物全体に基づいて、5~70重量%、例えば7~60重量%、又は10~55重量%の範囲内である。
【0075】
官能化アクリレート系ポリマーがコポリマーである場合、モノマー単位は、ランダム、交互、又はブロック配置で分布し得る。
【0076】
実施形態において、シラン官能化アクリレート系ポリマーは、式(6)及び(7)のそれぞれから選択されるモノマーを含むコポリマーである:
【化6】
【化7】
【0077】
fは0~20の範囲内にあり、gは1~6の範囲内にある。実施形態において、官能化アクリレート系ポリマーは、それぞれfの値が異なる式(6)の2つ又はそれ以上のモノマー単位を含む。
【0078】
各R及び各Rは、H及びC1~4アルキル、例えば、H及びC1~2アルキルから選択される。実施形態において、各RはHであり、各RはH又はメチルである。
【0079】
式(6)のモノマー単位は、官能化アクリレート系ポリマー内のモノマー単位の総量の20mol%又はそれ以上を表し得る。式(6)に従うアクリレートモノマーは、ポリマーを調製するために使用されるモノマーの総量に基づいて、官能化アクリレート系ポリマーの30重量%又はそれ以上を構成し得る。
【0080】
官能化アクリレート系ポリマー(又はコポリマー)の重量平均分子量(Mw)は、実施形態において、500~10000の範囲内、例えば1000~6000の範囲内、例えば2000~4500である。
【0081】
[架橋剤]
組成物は、場合によっては、アクリレート系ポリマー及び官能性ポリシロキサンの架橋を促進することができる1つ以上の架橋剤を含む。典型的には、乾燥及び硬化プロセス中に官能性ポリシロキサン及び/又は官能化アクリレート系ポリマーと架橋を形成することができる少なくとも2つの部分を含む。
【0082】
架橋剤は、実施形態において、式Si(R4-h(ORの架橋剤から選択することができ、式中、hは、1~4の範囲内の整数である。R及びRは、「シラン部分」について先で定義されるとおりである。hが4未満である場合、少なくとも1つのRは、不飽和脂肪族ヒドロカルビル基を含むか、又は節「任意選択の置換基」に記載される置換基を含む。実施形態において、シラン部分は、ハロゲン化物又はハロゲン化物含有置換基を含まない。
【0083】
複数の架橋剤が存在することができるが、好ましくは少なくとも1つの架橋剤は、少なくとも2のh値を有する。
【0084】
実施形態において、R内の脂肪族ヒドロカルビル基及び/又は置換基は飽和しており(すなわち、アルキルである)、少なくとも1つのRは、節「任意選択の置換基」に記載される追加の置換基の1つ又はそれ以上を含む。
【0085】
実施形態において、式Si(R4-h(ORの架橋剤は、部分的に加水分解又は縮合された形態であり得、例えば、2つ又はそれ以上のケイ素原子がSi-O-Si結合を介して結合しているダイマー又はオリゴマーの形態である。実施形態において、部分的に加水分解又は縮合された形態は、2~20個のケイ素原子を含む。
【0086】
実施形態において、少なくとも1つのR基は、C1~6アルキル、フェニル、及びC1~6アルキル置換フェニルから選択され、この中に、先で言及した追加の置換基の1つ又はそれ以上が存在する。
【0087】
実施形態において、全てのR基は、H及びC1~4アルキルから選択される。他の実施形態において、各R基は、H及び置換C1~4アルキルから選択される。更なる実施形態において、架橋剤は、式Si(ORのものであり得、各Rは、H及びC1~4アルキルから選択される。
【0088】
実施形態において、架橋剤は、アミン含有置換基又はエポキシ含有置換基で置換されたC1~4アルキルから選択されるR基を含む。実施形態において、少なくとも1つのRは、エポキシ含有置換基を含む。hが3未満である場合、他のR基は、非置換C1~20脂肪族ヒドロカルビル基、例えばC1~6アルキル基から選択される。
【0089】
がアミン置換基を含有する場合、Rは、式-(CR [NR(CR NR のものであり得、式中、jは1~6、例えば2~4であり、kは2~3であり、mは0~3、例えば0~2である。実施形態において、全てのRは、H及びC1~2アルキルから選択され、更なる実施形態において、1つのR基のみが、H以外である。
【0090】
がエポキシ基を含有する場合、Rは、式-(CR [O(CR [CR(O)CR ]のものであり得る。実施形態において、全てのRは、H及びC1~2アルキルから選択され、更なる実施形態において、1つのR基のみが、H以外であり、jは1~6、例えば2~4であり、kは2~3であり、nは1~3、例えば1~2である。
【0091】
架橋剤の例として、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、(N,N-ジエチルアミノメチル)トリエトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、及びテトラエトキシシラン(TEOS)、並びにそれらの部分的に加水分解された形態が挙げられる。
【0092】
実施形態において、架橋剤は、アルキルシリケート、例えば、C1~6アルキルシリケート、例えば部分的に加水分解されたテトラエチルオルトシリケート(TEOS)の縮合物である。そのような縮合物は、例えばSi-O-Si結合を介して連結された2~20個のケイ素原子を含む、ダイマー又はオリゴマーであり得る。
【0093】
実施形態において、コーティング組成物中の架橋剤の総含有量は、コーティング組成物全体に基づいて、0.1重量%~30重量%の範囲内、例えば、0.5重量%~25重量%又は1重量%~20重量%の範囲内である。
【0094】
[非硬化性ポリマー又はオリゴマー流体]
組成物は、非硬化性ポリマー又はオリゴマー流体を含む。当該流体は、典型的には不揮発性物質であり、これは、標準的な温度及び圧力(25℃及び大気圧、すなわち1.013バール)にて液相であり、基材へのコーティングの塗布後に蒸発しないので、乾燥及び硬化プロセス後に、コーティング中に残る。したがって、当該流体は、コーティング組成物の「不揮発性」又は「固体」部分の構成要素として正式に分類される。当該流体は、硬化プロセス中に組成物の他の成分との架橋反応を受けないため、本質的に、組成物の非反応性成分である。
【0095】
非硬化性ポリマー又はオリゴマー流体は、1つ又はそれ以上のモノマーの重合又はオリゴマー化から形成される。当該流体は、大きな分子を含み得るが、重合又はオリゴマー化反応に由来しない流体、例えば、原油留分から抽出されたか、又はこれに由来する炭化水素流体とは異なる。
【0096】
非硬化性ポリマー又はオリゴマー流体は、不揮発性流体であり、実施形態において、この融点は、大気圧(すなわち、1.013バール)にて、0℃未満、例えば-10℃未満又は-20℃未満であり、そして沸点は、150℃超、例えば175℃超又は190℃超である。
【0097】
実施形態において、非硬化性オリゴマー又はポリマー流体は、非硬化性(しばしば非官能性と呼ばれる)ポリシロキサン流体である。実施形態において、非官能性ポリシロキサンは、重量平均分子量(M)が500~8000の範囲内である。実施形態において、分子量(M)は、1000~7000、又は2000~6000である。実施形態において、粘度(25℃)は、10~40000cPの範囲内、例えば20~10000、例えば30~1000cPの範囲内である。
【0098】
非硬化性オリゴマー又はポリマー流体は、硬化性又は反応性成分の架橋から生じるポリマーマトリックスと実質的に非反応性であり、そして防汚活性を高めるのに役立ち、且つ殺生物性成分の必要性を回避することができる。
【0099】
実施形態において、非硬化性オリゴマー又はポリマー流体は、式(8)によって表される非官能性ポリシロキサン流体である:
【化8】
【0100】
各Rは、独立して、C1~20アルキル基、C6~12アリール基、及び1つ又はそれ以上(例えば1~4個)のC1~6アルキル基で置換されたC6~12アリール基から選択される。各アルキル基、アルキル置換基、及びアリール基は、節「任意選択の置換基」に記載されるように、場合によっては置換され得る。
【0101】
実施形態において、任意選択の置換基は、ハロゲン化物及びORから選択され得る。
【0102】
各Rは、独立して、C1~12アルキルから選択され、これは場合によっては、ハロゲン化物、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルコキシ、-([CR O-)、及び-([CR O-)C(O)Rから選択される1つ又はそれ以上の基で置換されている。pは1~20である。
【0103】
各Rは、実施形態において、H及びC1~2アルキルから選択され得る。
【0104】
実施形態において、bは、4~100、例えば10~80の範囲内である。
【0105】
実施形態において、非官能性ポリシロキサンは、ポリエーテル基、そしてまたアルキル基を含む。例として、式(9)によって表されるものが挙げられる:
【化9】
【0106】
式(9)において、繰返し単位(その相対モル比は、q及びrによって表される)は、ランダム、交互、又はブロック配置で配置され得る。q:rの比率は、0.1:1~100:1、例えば1:1~70:1の範囲内である。更なる実施形態において、比率は、2:1~35:1の範囲内である。
【0107】
各Rは、独立して、C1~20アルキル、フェニル、及び1つ又はそれ以上のC1~6アルキル置換基で置換されたフェニルから選択され、これらは、場合によっては、節「任意選択の置換基」に記載されるように置換され得る。
【0108】
非官能性ポリシロキサンの更なる例が、式(10)によって表され得る:
【化10】
【0109】
式(10)において、繰返し単位(その相対モル比は、q、r、及びsによって表される)は、ランダム、交互、又はブロック配置で配置され得る。
【0110】
各Rは、C1~4アルキル、例えばC1~2アルキル又はメチルから選択される。各Rは、C6~10アリール、C5~20アルキル、及び1つ又はそれ以上のC1~6アルキル基で場合によっては置換されているC6~10アリールから選択される。R及びR内のいずれのアルキル基、アルキル置換基、又はアリール基も、場合によっては、ハロゲン(例えば、F又はCl)、ヒドロキシ、C1~6アルコキシ、及びC1~6ハロアルコキシ(例えば、各ハロゲン化物は、F及びClから選択される)から選択される1つ又はそれ以上の基で置換され得る。
【0111】
q、r、及びsは、それぞれのシロキサン単位のモル量を表す。実施形態において、モル比q:r:sは、10.0:0.0~8.0:0.0~8.0の範囲内であり、r又はsの少なくとも一方は、0よりも大きく、例えば少なくとも0.5である。
【0112】
実施形態において、r及びsの一方は、0である。実施形態において、q:r:sのモル比の範囲は、10.0:0.0:1.0~5.0及び10:0.3~2.0:0.0から選択される。rが0である場合、Rは、C6~10アリール、例えばフェニルから選択され得る。
【0113】
他の実施形態において、r及びsは双方とも、0よりも大きく、例えば、q:r:sは、10.0:0.5~4.0:1.0~6.0の範囲内である。そのような実施形態において、Rは、場合によっては置換されているC5~20アルキルから選択され得る。
【0114】
実施形態において、Rの全存在はメチルであり、sは0であり、モル比範囲q:rは10.0:0.5~2.0であり、基(CR O([CR O)は、-(CHO(CHCHO)C(O)Me、-(CHO(CHCHO)C(O)Et、及び-(CHO(CHCHO)Hから選択され、式中、jは2~4の範囲内であり、pは6~14の範囲内である。
【0115】
実施形態において、Rの全存在はメチルであり、rは0であり、モル比範囲q:sは10.0:1.0~6.0であり、Rは、Ph又はC8~14アルキルである。
【0116】
実施形態において、Rの全存在はメチルであり、q:r:sのモル比範囲は10.0:0.5~4.0:1.0~6.0であり、RはC8~14アルキルから選択され、(CR O([CR O)は(CHO([CHCHO)Hであり、式中、jは2~4の範囲内であり、pは6~14の範囲内である。
【0117】
ポリシロキサン流体内に異なる種類のモノマー単位が存在する場合、ポリマー又はオリゴマー鎖内にランダム、交互、又はブロック配置で分布し得る。ゆえに、式(9)及び(10)において、異なるモノマーは必ずしも、先で示されるのと同じ位置順序で現れるとは限らず、式は単に、存在する様々な種類のモノマー単位、及びそれらの相対量を表す簡便な方法にすぎない。
【0118】
非官能性ポリシロキサン流体の例として、親水性変性ポリシロキサン油、例えばメチルフェニルポリシロキサン及びポリ(オキシアルキレン)変性ポリシロキサンが挙げられる。例として、Dow Corning製品DC5103、DC Q2-5097、DC193、DC Q4-3669、DC Q4-3667、DC57、及びDC2-8692が挙げられる。他の例として、Siltech製のSilube(商標)J208及びBYK製のBYK333が挙げられる。
【0119】
他の非硬化性流体として、ポリエーテル、パーフルオロポリエーテル、及びハロゲン化炭化水素ポリマー、例えば、フルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、及びハイドロクロロフルオロカーボンが挙げられる。そのような流体の例として、トリフルオロメチルフッ素末端キャップペルフルオロポリエーテル、例えば、Fomblin(商標)Y、Krytox(商標)K、Demnum(商標)S、Fomblin(商標)Z DOL、及びFluorolink(商標)E流体が挙げられる。
【0120】
更なる例として、フッ素化アルキレン及びオキシアルキレン含有ポリマー又はオリゴマー、例えば国際公開第2014/131695号に記載されるものが挙げられる。また、挙げられるのは、ポリクロロトリフルオロエチレン、例えばDaifloil(商標)CTFE流体がある。
【0121】
使用することができる更なる非硬化性流体として、ステロール及びステロール誘導体、例えばステロールエステルが挙げられる。例として、ラノリン及びアセチル化ラノリンが挙げられる。
【0122】
実施形態において、コーティング組成物中の非硬化性オリゴマー又はポリマー流体の総含有量は、コーティング組成物全体に基づいて、2~40重量%の範囲内、例えば3~30重量%又は3~20重量%、例えば4~15重量%の範囲内である。
【0123】
[任意選択の成分]
コーティング組成物は、場合によっては、他の成分、例えば、他の硬化性樹脂、反応性希釈剤、防食添加剤、顔料、光沢添加剤、ワックス、ロジン、フィラー及びエクステンダ、チキソトロピー剤、可塑剤、無機及び有機脱水剤(安定剤)、UV安定剤、触媒、防汚剤、殺海洋生物剤、消泡剤、不揮発性非反応性流体、連鎖移動剤、並びにそれらのあらゆる組合せから選択される1つ又はそれ以上の物質を含有してもよい。
【0124】
そのような更なる任意選択の成分の総量は、コーティング組成物の総含有量に基づいて、0~65重量%の範囲内であり得る。
【0125】
これらの成分は、当業者に周知であるが、一部の例では、いくつかの例を以下に提供する。
【0126】
[追加の硬化性樹脂]
コーティング組成物は、場合によっては、1つ又はそれ以上の追加の硬化性樹脂を含み得るが、官能性ポリシロキサン樹脂及び/又は官能化アクリレート系樹脂と比較して、少量(重量基準)である。実施形態において、コーティング組成物全体における他の硬化性樹脂の総量は、20重量%以下である。
【0127】
樹脂は、あらゆる種類のオリゴマー又はポリマー骨格に基づき得るが、これは、コーティング組成物の他の硬化性成分と反応することを可能にするように官能化されている。実施形態において、そのようなポリマー又は樹脂は、飽和していても不飽和であってもよく、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、ケトン及びアルデヒド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイソシアネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン、ポリハロカーボン、アルキド樹脂、並びにゴム系樹脂から選択され得る。
【0128】
また、これらの様々なポリマー/オリゴマー型のいずれか2つ又はそれ以上に基づくハイブリッド系、例えば、炭素系ポリマー及びシリコーン系ポリマーのハイブリッドが挙げられる。
【0129】
追加の硬化性樹脂は、コーティング組成物中の官能性シロキサン及び/又は官能化アクリレート系ポリマーと反応して架橋を形成することができる1つ又はそれ以上の官能基を含む。
【0130】
追加のいずれの硬化性樹脂の官能基も、-OR、-NR 、-NCO、-C(O)OR、-OC(O)R、-C(O)NR 、-OC(O)NR 、-NRC(O)NR 、-OC(O)OR、及び-[CR(O)CR ]基から選択され得る。実施形態において、これらの部分上のR基のいずれか又は全てが、H及びC1~2アルキルから選択され得る。実施形態において、官能基上にハロゲン化物又はハロゲン化物含有置換基は存在しない。
【0131】
樹脂が、先で定義した官能性ポリシロキサン又は官能化アクリレート系樹脂でない場合、任意選択の追加の硬化性樹脂は、シラン部分、例えば-Si(OR(R3-a基を含み得る。
【0132】
実施形態において、ハイブリッドシリコーン/ポリエポキシドポリマーを使用することができる。当該ポリマーは、例えば、官能基、例えばシラン部分(例えば、アルコキシ基がC1~6アルコキシ基又はC1~4アルコキシ基であるトリアルコキシシラン基)、及びエポキシド基、例えば-[CR(O)CR]基、例えば-[CH(O)CH]基の混合物を含み得る。そのようなハイブリッド樹脂の例として、Evonik製のSilikopon(商標)材料ED、EF、及びEW、Wacker製のSLM 43226、並びにShinEtsu製のES-1002及びES-1001Tが挙げられる。
【0133】
[任意選択の置換基]
先で言及した任意選択の置換基は、以下のとおりである:ハロゲン化物が言及される場合、F及びClから選択され得る。
【0134】
について、任意選択の置換基は、ハロゲン化物、-OR、及び-NR から選択される。
【0135】
は、H、C1~6アルキル、及びC1~6ハロアルキルから選択される。実施形態において、Rは、H及びC1~4アルキルから選択される。実施形態において、R上の任意選択の置換基は、-OH及び-NHから選択される。
【0136】
、R、R、R、R、R、R、R、及びRについて、任意選択の置換基は、ハロゲン化物、-OR、-NR 、-NCO、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-C(O)NR 、-OC(O)NR 、-NRC(O)NR 、及び-OC(O)ORから選択される。追加の任意選択の置換基として、ポリエーテル、ポリアミン、ポリエーテル/アミン、並びに-([CR E-)、-E-([CR E-)、及び-(CR [O(CR [CR(O)CR ]から選択されるエポキシ含有基が挙げられ、式中、[CR(O)CR ]はエポキシ部分を表す。
【0137】
各Eは、独立して、O及びNRから選択される。実施形態において、全てのEがOであるか、又は全てのEがNRである。
【0138】
、R、及びRについて、任意選択の置換基は、ハロゲン化物、-OR、-NR 、-C(O)R、-([CR E-)、-E-([CR E-)から選択される。
【0139】
及びRについて、任意選択の置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、C1~6アルコキシ、及びC1~6ハロアルコキシから選択される。
【0140】
実施形態において、場合によっては置換されている基は、1~4つの置換基、例えば1又は2つの置換基を含み得る。
【0141】
実施形態において、任意選択の置換基が存在する場合、当該置換基は、いわゆる「反応性対」で、(例えば)官能性ポリシロキサンが反応性対の一方のメンバーを含み、且つアクリレート系ポリマーが他方のメンバーを含むように存在し得る。実施形態において、当該置換基は、結合、例えば、エステル結合、アミド結合、尿素結合、又はカルバメート結合を形成するように選択され得る。
【0142】
実施形態において、官能性ポリシロキサン若しくはアクリレート系ポリマー、又はそれらの双方上の任意選択の置換基は、ハロゲン化物(例えば、F及びClから選択される)、-OH、-C1~6アルコキシ、-C1~6ハロアルコキシ、及び-O-([CHCHR-O-)から選択され、各Rは、H及びC1~2アルキルから選択される。
【0143】
実施形態において、ハロゲン化物又はハロゲン化物含有置換基は存在しない。
【0144】
[有機溶媒]
1つ又はそれ以上の有機溶媒が存在し得る。これらは、典型的には、沸点が大気圧(すなわち、101.3kPa)にて250℃以下である有機液体である。コーティング組成物が乾燥又は硬化すると、有機溶媒はもはや組成物中に存在しない。
【0145】
有機溶媒が存在する場合、有機溶媒は、炭化水素化合物及びヘテロ原子含有有機化合物から選択され得、ヘテロ原子は、O、S、及びNから選択され、例えばOである。
【0146】
有機溶媒の例として、アルキル芳香族炭化水素(例えば、キシレン、トルエン、及びトリメチルベンゼン)、脂肪族炭化水素(例えば、C4~20アルカンから選択される環状及び非環状炭化水素、又はそれらのいずれか2つ若しくはそれ以上の混合液)、アルコール(例えば、ベンジルアルコール、オクチルフェノール、レゾルシノール、n-ブタノール、イソブタノール、及びイソプロパノール)、エーテル(例えばメトキシプロパノール)、ケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びメチルイソペンチルケトン)、及びエステル(例えば酢酸ブチル)が挙げられる。実施形態において、有機溶媒は、2~20個の炭素原子、例えば3~15個の炭素原子を含む。いずれか2つ又はそれ以上の有機溶媒の混合液を使用することができる。
【0147】
有機溶媒が使用される場合、その総量は、コーティング組成物の総重量の最大65重量%、例えばコーティング組成物全体の最大50重量%、30重量%、20重量%、又は10重量%を構成し得る。実施形態において、総量は、1~65重量%又は1~50重量%、例えば5~45重量%の範囲内である。他の実施形態において、有機溶媒含有量は5~30重量%である。
【0148】
有機溶媒含有量は、含水量とは別個である。コーティング組成物は、典型的には、非水性組成物である。水は存在し得るが、典型的には低濃度である。存在するならば、水は、典型的には、コーティング組成物全体に基づいて、5重量%以下、例えば1重量%以下、例えば0.5重量%以下の濃度である。
【0149】
[殺海洋生物剤]
コーティング組成物は、実施形態において、1つ又はそれ以上の殺海洋生物剤を含み得る。殺海洋生物剤は、海洋生物又は淡水生物に対して化学的又は生物学的殺菌活性を有することが公知の化学物質である。
【0150】
本明細書中に記載されるコーティング組成物は、追加のいずれの殺海洋生物剤も有効であることを必要としないが、必要に応じて組み込まれ得る。殺海洋生物剤が存在する実施形態において、殺海洋生物剤は、15重量%以下、例えば10重量%以下、例えば5重量%以下の濃度にて含まれる。実施形態において、殺海洋生物剤の含有量は、コーティング組成物全体に基づいて、1重量%以下、例えば0.5重量%以下である。
【0151】
実施形態において、組成物中に殺海洋生物剤は添加されていない。
【0152】
使用されるならば、適切な殺海洋生物剤の例は、当分野において周知であり、無機、有機金属、金属-有機又は有機系殺生物剤が挙げられる。
【0153】
無機系殺生物剤の例として、銅化合物、例えば、酸化銅、チオシアン酸銅、青銅(copper bronze)、炭酸銅、塩化銅、銅ニッケル合金、及び銀塩、例えば塩化銀又は硝酸銀が挙げられる。
【0154】
有機金属系殺生物剤及び金属-有機系殺生物剤として、亜鉛ピリチオン(2-ピリジンチオール-1-オキシドの亜鉛塩)、銅ピリチオン、ビス(N-シクロヘキシル-ジアゼニウムジオキシ)銅、亜鉛エチレン-ビス(ジチオカルバメート)(すなわちジネブ)、亜鉛ジメチルジチオカルバメート(ジラム)、及び亜鉛塩と錯化されたマンガンエチレン-ビス(ジチオカルバメート)(すなわち、マンコゼブ)が挙げられる。
【0155】
有機系殺生物剤として、ホルムアルデヒド、ドデシルグアニジン一塩酸塩、チアベンダゾール、メデトミジン、N-トリハロメチルチオフタルイミド、トリハロメチルチオスルファミド、N-アリールマレイミド、例えばN-(2,4,6-トリクロロフェニル)マレイミド、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア(ジウロン)、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)ピリジン、2-メチルチオ-4-ブチルアミノ-6-シクロプロピルアミノ-s-トリアジン、3-ベンゾ[b]チエン-イル-5,6-ジヒドロ-1,4,2-オキサチアジン-4-オキシド、4,5-ジクロロ-2-(n-オクチル)-3(2H)-イソチアゾロン、2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル、トリルフルアニド、ジクロフルアニド、ジヨードメチル-p-トシルスルホン、カプサイシン及び置換カプサイシン、N-シクロプロピル-N’-(1,1-ジメチルエチル)-6-(メチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート、メデトミジン、1,4-ジチアアントラキノン-2,3-ジカルボニトリル(ジチアノン)、ボラン、例えばピリジントリフェニルボラン、5位及び場合によっては1位において置換されている2-トリハロゲノメチル-3-ハロゲノ-4-シアノピロール誘導体、例えば、2-(p-クロロフェニル)-3-シアノ-4-ブロモ-5-トリフルオロメチルピロール(トラロピリル)、フラノン、例えば3-ブチル-5-(ジブロモメチリデン)-2(5H)-フラノン、大環状ラクトン、例えばアベルメクチン、例えば、アベルメクチンB1、イベルメクチン、ドラメクチン、アバメクチン、アマメクチン、及びセラメクチン、並びに第四級アンモニウム塩、例えば、ジデシルジメチルアンモニウム塩化物及びアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩化物が挙げられる。
【0156】
殺生物剤は、実施形態において、全体的又は部分的にカプセル化、吸着、捕捉、支持、又は結合され得る。特定の殺生物剤は、有利には、取扱いが困難又は危険であり、カプセル化された形態、捕捉された形態、吸着された形態、支持された形態、又は結合された形態で使用される。殺生物剤のカプセル化、捕捉、吸着、支持、又は結合は、よりいっそう緩やかな放出及び持続性の効果を達成するような、コーティング系からの殺生物剤浸出を制御するための二次機構を提供することができる。殺生物剤のカプセル化、捕捉、吸着、支持、又は結合の方法は、特に限定されない。例として、単層及び二層アミノ-ホルムアルデヒド、又は国際公開第2006/032019号に記載されるような加水分解ポリ酢酸ビニル-フェノール樹脂カプセル若しくはマイクロカプセルの使用が挙げられる。適切なカプセル化殺生物剤の例として、Dow Microbial ControlによってSea-Nine CR2 Marine Antifouling Agentとして市販されているカプセル化4,5-ジクロロ-2-(n-オクチル)-3(2H)-イソチアゾロンがある。吸収又は支持又は結合された殺生物剤が調製され得る方法の例には、ホスト-ゲスト錯体、例えばEP0709358号に記載のクラスレート、EP0880892号に記載のフェノール樹脂、炭素系吸着剤、例えばEP1142477号に記載されているもの、又は微孔性無機担体、例えば国際公開第00/11949号に記載される非晶質シリカ、非晶質アルミナ、擬ベーマイト、若しくはゼオライトの使用が含まれる。
【0157】
[反応性希釈剤]
コーティング組成物は、場合によっては1つ又はそれ以上の反応性希釈剤を含み得る。反応性希釈剤は、組成物の粘度を引き下げる際に溶媒のように挙動するが、その溶媒又はVOC含有量に寄与しない。なぜなら、コーティング樹脂に結合するか、又は主硬化反応とは無関係に化学反応を受けることを可能にする反応性基を有するためである。反応性希釈剤は、典型的には、他の結合剤成分(例えば、官能化アクリレート系樹脂及び官能性ポリシロキサン樹脂)よりも粘度が低く、一般に、樹脂の不在下で、機械的にロバストなコーティングを形成しない。
【0158】
実施形態において、反応性希釈剤の粘度は、80cP以下(25℃)、例えば、0.1~80の範囲内である。バインダー樹脂(例えば、官能化アクリレート系ポリマー又は他の任意選択の追加のあらゆる硬化性樹脂)は、粘度がより高い、例えば81cP以上、例えば81~50000cP、200~30000、又は1000~20000cPの範囲内である傾向がある。
【0159】
実施形態において、反応性希釈剤を、脂肪族であるか、又は1つ若しくはそれ以下の芳香族若しくはヘテロ芳香族基を含むエポキシ含有樹脂から選択することができる。反応性希釈剤の具体例として、フェニルグリシジルエーテル、C1~30アルキルフェニルグリシジルエーテル(例えばC1~12又はC1~5アルキルフェニルグリシジルエーテル、例えば、メチルフェニルグリシジルエーテル、エチルフェニルグリシジルエーテル、プロピルフェニルグリシジルエーテル、及びパラt-ブチルフェニルグリシジルエーテル)、及びカルボン酸のグリシジルエステル(例えば、脂肪酸又はバーサチック酸、例えばピバル酸又はネオデカン酸のグリシジルエステル)が挙げられる。
【0160】
更なる例として、アルキルグリシジルエーテル、例えばC1~16アルキルグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、mは2~6である。例として、二価及び多価脂肪族アルコールのグリシジルエーテル、例えば、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、及びソルビトールグリシジルエーテルが挙げられる。
【0161】
また、不飽和脂肪及び油、例えば、C4~30脂肪酸又は脂肪酸エステル基を有する不飽和脂肪酸、ジグリセリド、又はトリグリセリドのエポキシ化によって調製することもできる。一例として、Cardolite(商標)NC-513があり、これは、エピクロロヒドリンをカシューナッツの殻から得られる油と反応させることによって調製される。
【0162】
また、反応性希釈剤は、ジエン及びポリジエンが挙げられるエポキシ化オレフィンから選択することもできる。エポキシ化オレフィンは、C2~30、C6~28、C6~18、C14~16、又はC6~12エポキシ化オレフィンであり得る。エポキシ化オレフィンは、1~4つのエポキシ基、例えば1又は2つのエポキシ基、例えば2つのエポキシ基を含み得る。具体例として、ジエポキシオクタン及びエポキシ化ポリブタジエンが挙げられる。エポキシ化ポリジエン、例えばポリブタジエンは、分子量が500~100000の範囲内、例えば1000~50000又は2000~20000の範囲内であり得る。
【0163】
反応性希釈剤の更なる例として、ジアルキルカーボネート、例えばC1~16ジアルキルカーボネート又はC1~6ジアルキルカーボネート、例えばジメチルカーボネートが挙げられる。
【0164】
実施形態において、反応性希釈剤は、2成分コーティング組成物の第1の部分(A)内に、すなわち、硬化性エポキシバインダーと共に存在する。
【0165】
コーティング組成物全体において、反応性希釈剤は、1.0~15.0重量%、例えば2.0~12.0重量%の量で存在し得る。当該量は、コーティング組成物の粘度を低下させるのに役立ち得、これは、高固体及び低溶媒組成物に有利である。
【0166】
実施形態において、反応性希釈剤の粘度は、23℃、50%RHにて、50cP未満、例えば30cP未満、又は20cP未満である。粘度は、ASTM D4287に記載のコーンプレート法を用いて測定することができる。
【0167】
[触媒]
コーティング組成物は、場合によっては、例えばシラノール基間の、縮合反応を触媒するのに適した1つ又はそれ以上の触媒を含み得る。触媒として、種々の金属、例えばスズ、亜鉛、鉄、鉛、バリウム、及びジルコニウムのカルボン酸塩が挙げられる。カルボキシレートアニオンは、実施形態において、脂肪酸、例えばジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクトエート、ステアリン酸鉄、オクタン酸スズ(II)、及びオクタン酸鉛から誘導することができる。他の例として、有機ビスマス化合物、有機チタン化合物、及び有機ホスフェート、例えばビス(2-エチルヘキシル)水素ホスフェートが挙げられる。他の考えられる触媒として、キレート、例えばデュブチルスズアセトアセトネート、又はアミン配位子、例えば1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンを含む化合物が挙げられる。触媒はさらに、カルボキシル基に対してアルファ及び/若しくはベータ位において炭素原子上に少なくとも1つのハロゲン置換基を有するハロゲン化有機酸、又は縮合反応の条件下で加水分解してそのような酸を形成する誘導体から選択することができる。他の触媒が、国際公開第2007/122325号、国際公開第2008/055985号、国際公開第2009/106717号、及び国際公開第2009/106718号に記載されている。
【0168】
[顔料、フィラー、及びエクステンダ]
実施形態において、1つ又はそれ以上の顔料をコーティング組成物中に含めることができる。顔料は、例えば、体質顔料、着色顔料、及びバリア顔料から選択することができる。
【0169】
適切な体質顔料(フィラーと呼ばれることもある)の例として、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、シリカ、又はケイ酸塩(例えば、タルク、長石、及び陶土)(焼成シリカ、ベントナイト、及び他の粘土が挙げられる)が挙げられる。一部の体質顔料、例えばフュームドシリカは、コーティング組成物に及ぼすチキソトロピー効果を有し得る。
【0170】
体質顔料の割合は、コーティング組成物の総重量に基づいて、0~25重量%の範囲内であり得る。好ましくは、粘土は、コーティング組成物の総重量に基づいて、0~1重量%の量で存在し、好ましくはチキソトロープ剤は、0~5重量%の量で存在する。
【0171】
着色顔料の例として、黒色酸化鉄、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、二酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、グラファイト、赤色モリブデン酸塩、黄色モリブデン酸塩、硫化亜鉛、酸化アンチモン、スルホケイ酸アルミニウムナトリウム、キナクリドン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、インダントロンブルー、酸化アルミニウムコバルト、カルバゾールジオキサジン、酸化クロム、イソインドリンオレンジ、ビス-アセトアセト-トリジオール(bis-acetoaceto-tolidiole)、ベンズイミダゾロン、キナフトロンイエロー、イソインドリンイエロー、テトラクロロイソインドリノン、キノフタロンイエロー、及び金属フレーク材料、例えばアルミニウムフレークが挙げられる。
【0172】
バリア顔料(防食顔料と呼ばれることもある)の例として、亜鉛粉末及び亜鉛合金、並びにいわゆる易滑顔料、例えば、グラファイト、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、及び窒化ホウ素が挙げられる。
【0173】
コーティング組成物の顔料体積濃度は、好ましくは、コーティング組成物の総重量に基づいて、0~25重量%の範囲内である。顔料が含まれる実施形態において、顔料は、コーティング組成物の総重量に基づいて、コーティング組成物の0.5~25重量%を構成する。
【0174】
[コーティング組成物の特性]
実施形態におけるコーティング組成物は、不揮発性物質含有量が、コーティング組成物の全重量に基づいて、35重量%以上である。更なる実施形態において、不揮発性物質含有量は、50重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上、又は95重量%以上である。溶媒又は水が使用されない実施形態において、不揮発性物質含有量は100重量%であり得る。不揮発性物質含有量は、ASTM D2697、例えばD2697-03(2014)に従って求めることができる。
【0175】
実施形態において、23℃、50%相対湿度でのコーティング組成物のタッチドライ時間は、0.7~4時間の範囲内、例えば1~3時間の範囲内である。タッチドライ時間とは、指で軽く押してもべたつきがなく、コーティングに跡が残らない時間である。
【0176】
実施形態において、ハードドライ時間は、23℃、50%相対湿度にて1~30時間、例えば2~20時間の範囲内である。ハードドライ時間とは、親指を表面に強く押して180°捻った際に、膜破壊や跡が生じない時間である。
【0177】
実施形態において、コーティング組成物のポットライフは、23℃、50%相対湿度にて1~15時間、例えば、2~10時間又は3~8時間の範囲内である。ポットライフは、方法ISO 9514を使用して求めることができる。
【0178】
[コーティング組成物の調製]
コーティング組成物は、適切ないかなる技術によっても調製され得る。
【0179】
実施形態において、構成要素は、例えば、高速分散機、ボールミル、パールミル、3本ロールミル、又はインラインミキサーを使用して、機械的に混合される。
【0180】
組成物は、例えば、バッグフィルタ、パトロンフィルタ、ワイヤギャップフィルタ、ウェッジワイヤフィルタ、金属エッジフィルタ、EGLM tumocleanフィルタ(例えばCuno)、DELTA strainフィルタ(例えばCuno)、及びJenag Strainerフィルタ(例えばJenag)を使用して、又は振動濾過によって濾過することができる。
【0181】
実施形態において、組成物は、別々の部分に調製且つ提供され、一方の部分は末端官能化ポリシロキサン樹脂及びアクリレート系樹脂を含有し、他方の部分は架橋剤を別に含む。多くの場合、これらは、2パック(2K)システムの形態で提供される。
【0182】
一実施形態において、樹脂含有部(A部)及び架橋剤含有部成分(B部)が混合されて、均一になるまで撹拌され得る。次いで、混合物は、場合によっては先の誘導時間の後に、基材に塗布され得る。
【0183】
[コーティング組成物の塗布]
コーティング組成物は、公知の方法、例えば従来のエアスプレー、エアレススプレー若しくはエアミックススプレー装置、又は2Kエアレススプレーポンプによって基材に塗布することができる。これ以外にも、例えばストライプコートとして使用される場合、ブラシ又はローラーを使用して塗布することができる。組成物は、コーティング組成物を予熱することなく周囲条件にて塗布することができる。スプレー塗布では、従来の圧力、例えば3~6bara(絶対バール)を使用することができる。
【0184】
コーティングは、典型的には、100~1000μm、例えば100~500μm又は150~350μmの総乾燥膜厚が得られるように塗布される。適用される膜厚は、コーティングされることとなる基材の性質、及びこれが曝されることとなる環境に応じて変動し得る。
【0185】
[コーティング系]
コーティング組成物は、単独で使用することもできるし、複数のコーティング組成物を含むコーティング系の一部とすることもできる。コーティング組成物は、基材表面又は予めコーティングされた表面に直接塗布することができる。例えば、プライマー、又は中間コート、例えばタイコート上に塗布することができる。
【0186】
上述のコーティング組成物の特定の利点は、アンダーコート又はタイコートへの良好な接着性という望ましい属性を組み合わせる一方、依然として高度に効果的な汚損制御特性を有する能力である。
【0187】
実施形態において、コーティング組成物は、下塗りされた表面に直接塗布される。更なる実施形態において、コーティング組成物は、タイコート層に塗布される。タイコートは、プライマー層の上にあってもよいし、基材表面上に直接あってもよい。
【0188】
いくつかの実施形態において、コーティング組成物は、裸の基材に直接塗布される。他の実施形態において、コーティング組成物は、1つ又はそれ以上の既存の予備硬化され、且つ/又は乾燥したコーティング層を含むように、予めコーティングされた基材に塗布される。
【0189】
実施形態において、コーティング組成物は、基材上のプライマー層に塗布される。
【0190】
実施形態において、コーティング組成物は、基材上のタイコート層に塗布され、タイコート層は、場合によっては、基材上のプライマー層上にある。
【0191】
実施形態において、コーティング組成物は、プライマー及び/又はタイコートを追加的に含むマルチコート系の一部を形成する。
【0192】
プライマー層の起源は、特に限定されず、典型的な例として、エポキシ樹脂系又はポリウレタン系のプライマー組成物が挙げられる。
【0193】
タイコート層が使用される場合、典型的にはプライマー層に塗布される。実施形態において、タイコート組成物の結合剤は、例えば式-Si(OR(R3-aの、先で定義される1つ又はそれ以上のシラン部分を含む。タイコートのバインダーポリマーは、実施形態において、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエポキシ、又はポリ(メタ)アクリレート結合剤から選択することができる。更なる実施形態において、タイコート結合剤は、ポリ(メタ)アクリレート結合剤である。実施形態において、ポリ(メタ)アクリレート結合剤は、少なくとも1つが-Si(OR(R3-a官能基を有するアクリレートモノマー及び/又は(メタ)アクリレートモノマーを含むモノマー混合物のラジカル重合又はオリゴマー化によって調製されるものから選択される。実施形態において、aは3であり、Rは、メチル及びエチルから選択される。モノマー混合物は、実施形態において、メチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、及びトリメトキシシリルメチルメタクリレートを含み得るか、又はこれらからなり得る。実施形態において、タイコートのバインダーポリマーは、シラン部分以外の官能基を含まない。
【0194】
[基材]
コーティングが塗布され得る基材は、水中に恒久的又は断続的に浸漬されるものであり得る。基材として、金属、コンクリート、木材、又はポリマー表面が挙げられる。
【0195】
ポリマー表面は、ポリ塩化ビニル(PVC)、又は繊維強化樹脂の複合材料を含む。また、可撓性ポリマーキャリアフォイル、例えばPVCキャリアフォイルを含み、コーティングされていない側が、異なる表面に接着されているか、又は接着され得る。
【0196】
実施形態において、基材は、例えば、船殻(又は船殻の少なくとも喫水部分)、プロペラ、舵、及びバラストタンクの1つ又はそれ以上から選択される、ボート又は船の水面下表面である。
【実施例
【0197】
次に、本発明を、以下の非限定的な実施例を参照して説明する。
【0198】
[材料]
以下の成分を実施例において使用した:
【0199】
官能性ポリシロキサン:
(a)Dowsil(商標)3074-メトキシ官能性メチルフェニルポリシロキサン、重量平均分子量Mw 1200~1700。
(b)Silres(商標)IC 232-メトキシ官能性メチルフェニルポリシロキサン。
【0200】
シラン官能化アクリレート系ポリマー:
(a)6.0モル%トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、59.5モル%メチルメタクリレート、及び34.5モル%t-ブチルアクリレートのモノマー混合物の重合から調製した、重量平均分子量Mw2600のトリメトキシプロピルシラン官能化アクリルターポリマー。
(b)18.0モル%トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、70.0モル%メチルメタクリレート、及び12モル%ラウリルメタクリレートを含むモノマー混合物の重合によって調製した、重量平均分子量(Mw)4400、及び25℃での粘度300cPのトリメトキシプロピルシラン官能化アクリルターポリマー。
(c)32.0モル%ブチルアクリレート、60.8モル%スチレン、及び7.2モル%トリメトキシプロピルシランを含むモノマー混合物から調製したトリメトキシプロピルシラン官能化スチレン/アクリルターポリマー。
【0201】
非硬化性ポリマー流体:
(a)以下の代表的な式を有する、ラウリルPEG-8ジメチコンに基づくSiltech製Silube(商標)812:
【化11】
(b)E-10パーフルオロポリエーテル
【0202】
他の硬化性樹脂
(a)Laropal(商標)A81尿素-アルデヒド樹脂
(b)Silikopon(商標)EFシリコーンエポキシ樹脂
【0203】
架橋剤:
(a)Dynasylan(商標)AMEO(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)
(b)Silquest(商標)A-1100(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)
(c)Dynasylan(商標)GLYMO(グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
【0204】
フィラー及び顔料:
(a)Kronos(商標)2064二酸化チタン
(b)Bayferrox(商標)Red 140M
(c)Micafort(商標)SC3000微粉化白雲母
(d)Blanc Fixeマイクロ硫酸バリウム
(e)Portaryte(商標)B4バライト
(f)Micafort(商標)SX300微粉化白雲母
(g)Tiona(商標)836二酸化チタン
(h)Omya Hydrocarb(商標)95T
【0205】
溶媒:
(a)キシレン
(b)1-メトキシ-2-プロピルアセタート
(c)石油ナフサ芳香族100
(d)イソプロピルアルコール
【0206】
その他:
(a)消泡剤-BYK(商標)-077(ポリメチルアルキルシロキサン)
(b)チキソトロープ-Garamite(商標)1958
(c)チキソトロープ-Crayvallac(商標)PA4 X 20
(d)消泡剤-BYK(商標)9076
(e)分散剤-Disperbyk(商標)111
(f)チキソトロープ-Disparlon(商標)6700
(g)消泡剤-BYK(商標)085
(h)UV安定剤-Tinuvi(商標)292
(i)K-Kat(商標)670-触媒
【0207】
種々の実施例及び比較例のコーティングを、以下のように製剤化した。
【0208】
[比較例1]
Intershield(商標)300-汚損制御活性のないInternational Paints Ltd.からの市販の防食プライマー。
【0209】
[比較例2]
Intersleek(商標)1100SR-フッ素化非官能性ポリマー流体を含む、International Paints Ltdからの市販の殺生物剤を含まない汚損リリースコーティング。
【0210】
[比較例3~5]
これらの組成を表1に示す。
【0211】
【表1】
【0212】
[実施例1~5]
これらは、比較コーティング3、4、及び5に基づくが、以下に示す追加の流体を含む。
実施例1-比較例3+10重量%Silube(商標)812。
実施例2-比較例4+10重量%Silube(商標)812。
実施例3-比較例5+10重量%Silube(商標)812。
実施例4-比較例5+3.5重量%Silube(商標)812。
実施例5-比較例5+5.0重量%Fluorolink(商標)E10/6
【0213】
[比較例6]
これは、比較コーティング5に基づくが、追加的に2.9重量%ワセリンを含む。
【0214】
[実験1-汚損試験]
6又は12回のコーティングを、60cm×60cmの木製ボードに「ラテンスクエア」レイアウトで施した。次いで、これらをゴムボートで、以下に指定する海岸の場所にて完全に浸した。ボードの写真を一定間隔で撮影した。次いで、写真から、1から100の評価(1が低く、100が高い)に基づいて、汚損された各矩形面積を評価した。表2及び表3は、週単位で指定された期間にわたる、様々な場所での平均汚損カバー率の結果を示す。
【0215】
【表2】
【0216】
【表3】
【0217】
これらの結果は、本発明の試料の防汚活性が、高性能ベンチマーク組成物(Intersleek(商標)1100SR、比較例2)に匹敵するか、又はそれよりもさらに良好であることを示す。
【0218】
[実験2-汚損試験]
実験1と同じプロトコルに従って、実施例4、5、及び比較例6のコーティングを、シンガポール、Changiにおいて5週間浸漬した。結果を表4に示す。
【0219】
【表4】
【0220】
これらの結果は、粗油由来炭化水素混合物に基づく非ポリマー/オリゴマー流体と比較して、本発明に従うポリマー又はオリゴマー流体を使用した場合の汚損制御性能の明らかな向上を示す。
【0221】
[実験3-過剰噴霧シミュレーション]
本実験は、後に塗布されるコーティング層に及ぼす比較例及び実施例のコーティング組成物の効果を示すことを意図した。本実験は、過剰噴霧が発生する状況、すなわち、後に塗布されるコーティングに影響を及ぼし得る非標的領域上の少量の塗料を模倣する。
【0222】
実施例又は比較例のコーティング組成物(5g)を一緒に混合して、キシレン(95g)中に溶解させた。この溶液を、50μmドローダウンバーを使用してガラス試験パネルに塗布して、周囲条件下で24時間乾燥且つ硬化させた。次いで、ポリウレタン系化粧品コーティングを、プレコーティングされたガラスパネル上に塗布して、150μmの湿潤コーティング厚を得た。次いで、周囲条件下で24時間乾燥させた。
【0223】
次いで、トップ化粧コーティングの表面欠陥の量を視覚的に評価して、以下のようにスコアをつけた。結果を表5に示す。
1-トップコーティングは影響を受けない
2-トップコート表面の1~20%にわたって欠陥が見える
3-トップコート表面の21~50%にわたって欠陥が見える
4-トップコート表面の50%超にわたって欠陥が見える
【0224】
【表5】
【0225】
これらの結果は、本発明のコーティングが、後に塗布したコーティングにおいて実質的にあまり欠陥を引き起こさないことを明らかに実証しており、これは、表面の部分の過剰噴霧又は意図しない汚染の結果が、比較ファウルリリースコーティングよりも損傷が少ないことを意味する。これはまた、意図されるファウルリリース特性を損なうことなく達成される。
【0226】
[実験4-コーティング硬度]
コーティングを、乾燥且つ硬化後の硬度について試験した。ハーネスの増加に付随して、より良好な稼働中の摩耗損傷耐性が示される。
【0227】
各コーティングを、2枚のガラスパネルに塗布して、225μmの湿潤膜厚を得てから、周囲条件にて3日間乾燥且つ硬化させた。次いで、これらを、硬度について、ISO14577に従ってFischer Microhardness装置を使用して評価した。本試験は、パネル表面に対して垂直な硬度プローブに圧力を加えて圧痕を作ることによって、各パネルにわたって9回の読取りを行うようにプログラムされたシーケンスを使用することを伴った。
【0228】
プローブ貫通距離及び関与する力を記録して、表6に示すデータを生成するのに使用した。
【0229】
【表6】
【0230】
これらの結果は、市販のファウルリリース基準コーティングと比較して、本発明のコーティングがより硬く、より低い弾性特性を有し、向上した耐摩耗性及び損傷抵抗を示すことを実証している。これは、向上した、又は少なくとも匹敵するファウルリリース性能によって達成可能である。
【0231】
[実験5-接着性]
本実験は、長期間水又は海水に曝された場合のコーティングの接着寿命を調べることを意図した。
【0232】
エポキシプライマー、タイコート、及びトップコートに基づいて、表5に記載のコーティング層を基材に塗布した。トップコートは、上記の比較例又は実施例のコーティングである。使用したプライマー及びタイコートは、市販のグレードであった。最後のコーティングを塗布してから24時間後に、試験片を海水又は真水に3ヶ月間浸漬した。次いで、これらをコーティング接着性について試験した。
【0233】
本試験は、全てのコーティング層に十字形を切ってから、切った領域を、手袋をはめた指で擦って、コーティング層がどの程度容易に分離するかを評価することを伴った。試験時のコーティング温度は23℃であった。結果を表7に示す。接着評価は、0~5のスコアに基づいており、5が最高の性能スコア(最大の接着)であり、0が最低の性能スコア(非常に不十分な接着)である。3~5のスコアを「合格」と見なし、0~2を「不合格」と見なす。
【0234】
結果は、本発明のコーティング組成物が、タイコートを必要とせずに、一般的に使用されるプライマーに直接且つ効率的に接着することができることを実証している。このことは、ファウルリリース基準材料(比較例2)と比較して、必要とするコーティング層がより少ない、より容易な塗布スキームを使用することができことを意味する。
【0235】
【表7】
【国際調査報告】