(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】装置性能監視システム
(51)【国際特許分類】
G06F 11/34 20060101AFI20240311BHJP
G06F 11/07 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
G06F11/34 147
G06F11/07 151
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558371
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2022057423
(87)【国際公開番号】W WO2022200309
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520089657
【氏名又は名称】エリプティック ラボラトリーズ エーエスエー
【氏名又は名称原語表記】ELLIPTIC LABORATORIES ASA
【住所又は居所原語表記】Hausmanns gate 21, 0182 Oslo, Norway
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ストラット,グエナエル トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ルイス,スティーブン ポール
【テーマコード(参考)】
5B042
【Fターム(参考)】
5B042GB09
5B042JJ29
5B042MA08
5B042MA14
5B042MC08
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの電子装置の性能を改善するためのシステムおよび対応する方法、ならびにコンピュータに実装されたソフトウェアに関する。装置は、少なくとも1つのセンサと、少なくとも1つのセンサによって生成されたデータに応答して装置の反応を定義するモデルと、を含む。システムは、センサによって生成されたデータ、およびそのデータに対する反応を分析し、意図された反応と比較した反応におけるエラーを登録するように構成されたモデル生成部を含む。モデル生成部は、少なくとも1つの電子装置に記録されたサンプルのセットに基づいて、装置のモデルの実際の出力とモデルの所望の出力との間におけるエラーを最小限に抑えることで、モデルを調整するように構成される。記録されたサンプルは、エラーが発生したときに多数の所定の状態のうちのどの状態に装置があるかに関する情報、エラーが発生した時間に関する方法、および指定された時間および/または状態におけるエラーの数に関する情報を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電子装置の性能を改善するためのシステムであって、前記装置は、少なくとも1つのセンサと、前記少なくとも1つのセンサによって生成されたデータに応答して前記装置の反応を定義するモデルと、を含み、
前記システムは、前記センサによって生成された前記データ、およびそのデータに対する反応を分析し、意図された反応と比較した前記反応におけるエラーを登録するように構成されたモデル生成部を含み、
前記モデル生成部は、前記少なくとも1つの装置に記録されたサンプルのセットに基づいて、前記装置の前記モデルの実際の出力と前記モデルの所望の出力との間におけるエラーを最小限に抑えることで、前記モデルを調整するように構成され、
前記記録されたサンプルは、
前記エラーが発生したときに多数の所定の状態のうちのどの状態に前記装置があるかに関する情報、
前記エラーが発生した時間に関する方法、および
指定された前記時間および/または前記状態における前記エラーの数に関する情報
を含む、
システム。
【請求項2】
前記所定の状態は、移行に関連し、定常状態、移行前状態、移行状態、および移行後状態を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
特定の前記時間は、状態の最初、状態の途中、状態の最後、状態全体、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記エラーのカウントは、ブール値カウントおよび集計カウント、または継続時間比率を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記モデル生成部は、多数の前記装置と通信するネットワークシステムである、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記モデル生成部は、前記装置の初期モデルおよび予想される性能を提供する製造業者と通信するように適合される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記装置は、前記装置のユーザからエラー報告を受け取るように構成されたユースインターフェースが設けられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記エラーは、前記装置の予想される反応と測定された前記反応との間の測定されたずれで登録される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
所定のルールセットに基づいて、サンプリングされた前記データにおけるエラー検出および関連する測定値を分析するように構成され、前記エラー検出の数を低減させるように前記モデルを反復的に再構成するように構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記センサは、カメラ、音響センサ、慣性センサ、レーダー、または光学測定のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
特定のタイプの装置の性能を改善するための方法であって、
少なくとも1つの装置において、エラー検出およびそのエラー検出に関する測定値に関連する情報をサンプリングするステップであって、前記エラー検出は、ユーザからの報告または前記装置のソフトウェアによって検出されたエラーを含む、ステップと、
モデル生成部において、前記装置によってサンプリングされた前記情報を受け取るステップであって、前記モデル生成部は、前記装置のソフトウェアおよび性能に関する情報、ならびに前記装置の性能を指定するモデルを含むストレージ手段を含む、ステップと、
前記モデル生成部において、報告された前記エラーおよび関連する測定値に基づいて前記モデルを調整するステップと、
調整された前記モデルを前記装置に送信するステップであって、前記装置は、前記調整された前記モデルに対応するように前記ソフトウェアを更新する、ステップと、
を含み、
前記モデル生成部は、前記少なくとも1つの装置に記録されたサンプルのセットに基づいて、前記装置の前記モデルの実際の出力と前記モデルの所望の出力との間のエラーを最小限に抑えることで、前記モデルを調整し、
前記記録されたサンプルは、
前記エラーが発生したときに多数の所定の状態のうちのどの状態に前記装置があるかに関する情報、
前記エラーが発生した時間に関する方法、および
指定された前記時間および/または前記状態における前記エラーの数に関する情報
を含む、
方法。
【請求項12】
前記所定の状態は、移行に関連し、定常状態、移行前状態、移行状態、および移行後状態を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
特定の前記時間は、状態の最初、状態の途中、状態の最後、状態全体、またはそれらの組み合わせを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記エラーのカウントは、ブール値カウントおよび集計カウント、または継続時間比率を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
請求項11~14のいずれか1項に記載のステップを実施するように構成された、コンピュータに実装されるソフトウェア製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置の性能を分析するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高度な電子装置は、特定の用途のために作られることが多い。この場合、装置は、実際の状況に対応することができるように適合されている。これには、携帯電話や音声認識装置のように、関連する信号を強化し、バックグラウンドノイズなどの他の信号を抑制するために特定の仮定がなされた装置が含まれる場合があり、あるいは異なる使用モード間の移行に対応することができる自動機能が含まれる場合がある。これらのパラメータは、可能な限り現実的であるように選択されているが、バックグラウンドノイズや音声コマンドが想定された現実的な状況とは異なる状況が生じる場合がある。多くの電子装置にはソフトウェアを更新するシステムがあるが、装置の性能に関する良好な情報を十分に得ることは困難であり、更新が不十分になる可能性がある。
【0003】
装置の音響構成におけるばらつきにより、一貫した性能を確保するには各装置を手動で調整および較正する必要がある。当然ながら、これは時間とコストのかかるプロセスである。したがって、本発明の目的は、このプロセスを簡素化することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、電子装置の性能を改善するためのシステムを提供することである。この目的は、添付の特許請求の範囲に従って達成される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、装置は、装置固有の情報を好ましくはクラウドベースのプラットフォームに送信することができ、プラットフォームには、特定の製品仕様が提供される。この情報に基づいて、システムは、機械学習技術を使用して機械学習モデルを生成することができる。プラットフォームは、サンプリングされた性能情報を装置から受け取り、製造業者から提供された仕様と比較し、モデルを調整する。これは、更新として装置にフィードバックされる。このようにして、装置の性能は、機械学習手順を使用してプラットフォームで調整され得る。
【0006】
例えば、装置固有のソフトウェアは、装置の環境において測定された超音波活動を報告してもよい。装置の製造業者から提供された仕様は、想定アクティビティに基づいている。これは、装置が実際の環境に十分に適合されていない可能性があることを意味している。例えば、装置は、近傍で同じ超音波測定を使用する装置の数が少ない場合に対応できるように適合されている可能性があるが、コンサートなど一部の状況では、バックグラウンドのサウンドプロファイルが大幅に異なっていて、干渉によって装置の性能が低減する可能性がある。
【0007】
別の実施例が、スマートスピーカシステムで再生に使用される装置に関するものであってもよい。ここで、別の領域に移動したときにシステムが自動的に別のスピーカに切り替わる必要がある。報告されたエラーは、ソフトウェアアプライアンスの特性を調整し、移行を改善するために使用されてもよい。
【0008】
さらに別の実施例が、携帯電話をユーザの耳に近付けたときの画面、マイクロフォン、および/またはスピーカの性能、ならびに機能の変化に関するものである。
【0009】
装置は、その瞬間を表す測定値を報告してもよく、分析は、装置の設計を変更する必要があると結論づけ、製造業者にそれを報告する。
【0010】
好ましくは、分析は、装置と通信可能なクラウドベースのシステムで実行される。これらは、製造業者から情報を受け取り、また、製造業者に情報を報告する。
【0011】
また、本発明は、ユーザによるジェスチャーで制御される携帯電話などの装置で使用されてもよい。装置によって解釈される予めプログラムされたジェスチャーと、1人または複数の特定のユーザの実際の動きとの間の測定されたずれを報告することで、システムは、それらに適合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【
図2】本発明の好ましい実施形態をより詳細に示す図である。
【
図3】本発明による機械学習シーケンスにおけるプロセスステップを示す図である。
【
図4】システムによって使用される記録されたエラーの定義を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、装置の製造業者およびアプリケーション開発者は、音響処理や信号処理の専門知識がなくても、存在感知機能およびジェスチャー感知機能を利用することができる。これは、クラウドベースの機械学習プラットフォームを介して実行されてもよく、高度な機械学習技術を使用してユーザの存在を検出し、室内の占有率を推定し、ジェスチャー認識を提供する。
【0014】
図1は、好ましくはクラウドベースの機械学習サービスプラットフォーム2と通信する装置の製造業者1および装置3に関する技術のアーキテクチャを示す。装置の製造業者1は、自社製品の動作環境(例えば、メモリ、ストレージ、計算能力、消費電力、機械的セットアップ、およびコンポーネント特性)を定義し、ソフトウェアの範囲と感度の点で所望の性能を選択するだけでよい。次に、本発明は、その装置固有のソフトウェア統合パッケージと、システムから提供される機械学習分類子のセットとを提供する。各分類子は、反射された超音波信号をカテゴリ(例えば近くにいる1人のユーザ、近くにいる2人のユーザ、またはユーザの不在)のセットにマップングするために使用されるパラメータのセットである。これらの分類子は、わずかな処理能力しか必要としないため、あらゆるスマートデバイスで実行可能である。
【0015】
当然ながら、機械学習分類子は、最大限の精度を得るために大量の装置固有のデータを必要とする。その訓練は、サービスプラットフォーム2で実施される。サービスプラットフォーム2は、分類子の訓練に使用されるデータをホストし、機械学習訓練センターにアップロードされた新しい情報に基づいて更新を提供する。また、クラウドには、高度な信号処理ライブラリ(音響データを前処理し、分類に必要なメモリの量と処理能力を低減させる)と、ハードウェアの性能に関する経験的データ(すなわち、様々な音響コンポーネントの性能特性や機械的設計による特定の影響を示す超音波記録データベース)とが含まれる。これらのライブラリは、互いに連携し、システム全体の性能を最適化する。
【0016】
本発明によるシステムがスマートデバイスにインストールされるか、あるいはシステムと通信するように構成されると、アプリケーションプログラミングインターフェース(API)を介して(製造業者またはエンドユーザによって)その範囲、視野、および性能をさらに調整することができる。また、装置は、存在判定の精度を決定するために他の入力(戦術的相互作用など)と結果を相関させて、それ自体を最適化することができてもよい。これにより、ユーザの経験をユーザの環境に合わせて本質的にカスタマイズし、将来の応答を改善させることができる。
【0017】
本発明は、機械学習アルゴリズム、記録データベース、および信号処理ツールを含むクラウドベースのプラットフォームを提供する。これらは、標準的なオーディオおよび音響構成に必要な展開時間を短縮し、より「プラグ・アンド・プレイ」を実現するために協働する。
【0018】
図2には、より詳細なシステムの概要が示されている。
【0019】
製造業者1は、まず、装置3に含まれるセンサからの特定のセンサ出力に対して装置がどのように反応すべきかの指示をシステムに提供する。また、製造業者は、機械学習システムに必要なコンピュータコード、センサの特性、モデル調整の限界値、および機械学習システムが装置と通信するための通信プロトコルを提供する。製造業者は、モデル調整のための所定の限界値、および例えば評価目的または開発目的のために機械学習システムに通信されるデータと同じデータを装置から受け取るための装置との直接通信を提供してもよい。
【0020】
また、製造業者1は、モデルやそのモデルの範囲内での調整可能性、および装置内のセンサ出力に対する予想される反応など、必要な情報を機械学習プラットフォーム2に提供する。これには、各装置との通信に必要がコードも含まれる。
【0021】
また、製造業者1は、機械学習サービスモデル生成部2bから更新されたモデルを受け取ることができてもよい。これにより、装置3から受け取ったデータに関連してモデルを評価することができる。
【0022】
装置3は、装置からデータを収集するように適合されたソフトウェアアプリケーション3aと、プロセッサ/エンジン3bとを含む2つの異なるユニット3aおよび3bを備えてもよい。記録されるデータは、センサからのものであってもよく、例えば、同じ状況の中で登録された異なるデータタイプを比較することで得られる他の性能測定値からのものであってもよく、測定値または状況に関する適切なユーザインターフェースを介して受け取ったユーザフィードバックであってもよい。これらのデータは、さらなる処理と評価のために、クラウドベースのストレージ設備2aに報告される。また、装置3から受け取ったデータに加えて、ストレージ設備2aは、関連する条件下で他の同様の装置から収集されたデータを含んでもよい。
【0023】
装置の使用から測定されたデータに加えて、装置内のエンジンまたはプロセッサ3bは、その性能をクラウドベースの機械学習プラットフォーム2に報告してもよい。
【0024】
エンジン3bは、システムから提供される新しいモデルおよびパラメータの統合を可能にするコードを含む。これは、システムの学習プロセスを通じて、特定の動作における装置性能の改善を目指すものである。
【0025】
クラウドベースのシステム2は、ストレージ設備2aに格納された情報および装置内のモデルに関する情報を使用して、モデル生成部2bにおいて、装置の特性および性能、または装置からの反応、ならびに製造業者から受け取った同様の装置から取得した可能性のある情報から、更新されたモデルを構築するように適合される。その後、得られたモデルは、装置3の性能を調整するように、例えばソフトウェア更新として装置エンジン3bに供給されてもよい。
【0026】
また、モデルは、シミュレートされてもよく、さらなる評価のために、ビジュアルユーザインターフェースを介して製造業者1に報告されてもよい。
【0027】
また、本発明によるシステムは、装置の性能を確認するため、例えば、ソフトウェア3aまたはハードウェア3bのエラーを検出するために、製造業者1が装置にテストケースを送信するためのテスト手段を提供してもよい。
【0028】
上述したように、クラウドベースのシステムは、装置3から収集されたデータおよび装置から提供された測定データおよび性能を含む、装置の製造業者のデータベースおよびデータストレージからのエンジンコードおよび制御パラメータに基づいて、異なるタイプの装置に対するサポートサービスを提供するように適合されてもよい。ここで、製造業者および装置の両方には、システムと通信するための適切な通信インターフェースのためのインターフェースが提供される。
【0029】
このようなデータを監視することで、機械学習の基礎を提供することができる。ここで、システムは、装置および製造業者から受け取った新しいデータに基づいて装置の性能をモデル化および更新することができる。これには、製造業者から提供された初期パラメータに対してモデル内の制御パラメータを調整することが含まれてもよい。これにより、動作を制御する装置エンジンまたはプロセッサに新しいモデルおよびパラメータを実装することで、装置の性能を変更することができる。上述したように、これは、装置を改善するための合理的で費用効果の高い方法を提供する。
【0030】
プロセスの一例を以下に示す。
【0031】
クラウドベースのシステム2で実施される本発明による典型的なプロセスが
図3に示されている。ここで、該プロセスは、
(10)装置3内の任意の数のセンサのうちの装置ソフトウェア3aからクラウドストレージにデータを収集するステップであって、そのセンサのタイプは、例えば、カメラ、音響センサ、慣性センサ、レーダー、または光学測定から選択されてもよい、ステップと、
(11)クラウドデータストレージ2aに、データタイプや時間などのタグ付けされたデータの詳細をタグ付けするステップと、
(12)製造業者が定義したスクラビングルーチンを使用して、格納されたデータをスクラビングするステップと、
(13)サンプリングされたデータをモデリングのために前処理するステップと、
(14)前処理されたデータに基づいて、データを現すモデルを構築するステップと、
(15)反復プロセスを介して、装置性能に基づいて最適なモデルを選択するステップと、
(16)得られた新しいモデルを装置に導入するステップと、
を含む。
【0032】
ステップ15におけるモデルを選択するステップは、ユーザの統計情報の分析、ユーザフィードバックの登録、または既知の状況下で予想される性能と測定された反応との比較などのソフトウェアルールによって実施されてもよい。また、このステップは、例えば他のセンサからの追加のデータを測定または選択するステップを含んでもよい。
【0033】
データがどのように使われるかの一例が
図4に示されている。
【0034】
図4は、2つの状態21aと21bとの間の移行を示している。これらは、携帯電話のユーザが携帯電話をテーブルから持ち上げる状況と耳に近づけるように把持する状況のような、装置が異なる反応を示すべき異なる状況である。この場合、スピーカとマイクロフォンを作動させることで、または画面のタッチ感度を解除することで、携帯電話は反応することができる。これは、携帯電話の運動センサおよび方位センサを使用して実現することができる。
【0035】
状態21aにおいて、センサは、携帯電話がテーブルの上にある定常状態期間22aの状況を、高い確実性で、且つ携帯電話の状態を報告する際に生じるエラーの確率が低い状態で感知することができる。同様に、携帯電話を耳に近づけるように把持するなど、状態21bのような携帯電話のアクティブな使用は、誤った報告の数が少ない定常状態期間22eになる。しかしながら、携帯電話を耳に近づける過程では、センサが正しい状態を報告することが困難な移行状態期間22cがあり、ここでは移行を定義する正しい瞬間や位置を正確に調整することが困難である。この移行状態期間は、既知の長さまたは所定の長さを有してもよい。
【0036】
また、本発明によれば、最初の状態21aから次の状態21bへの移行は、移行前状態期間22bおよび移行後状態期間22dを含む。移行前状態および移行後状態は、想定される移行状態期間22cまでの距離、または移行状態期間22cが発生する前後の時間に従って定義されてもよい。言うまでもなく、具体的な時間および距離は、移行のタイプによって異なる。また、移行前後の時間および距離は、移行状態期間22cの前後で異なっていてもよい。以下では、期間22a~22eを「スライス」とも呼ぶ。
【0037】
上述した実施例を参照すると、携帯電話がテーブルから耳に向けて持ち上げられ、携帯電話が実質的に垂直位置になった瞬間に移行が定義されてもよい。移行前の時間は、携帯電話が動きを測定する想定時間の前半を表し、移行後の時間は、後半を表す。移行前と移行後の期間において、エラーの数は少なくなるはずであるが、想定される移行までの例えば時間的(または位置的)距離が大きくなるにつれて、実際のエラーである可能性が大きくなる。
【0038】
定常状態、移行前状態、移行後状態、および移行状態が確立されると、ユーザによる手動によって、または信号の分析によって動作エラーが検出されてもよく、所定のエラー値が決定されてもよい。エラー値は、以下のような、サイズおよび/または継続時間に基づいて細分化された3つの異なるタイプのものであってもよい。
[エラーカウント(ブール値)]
・ エラーブール値(エラーのサイズ/継続時間に関係なく検出されたエラー)
・ エラーブール値(所定のサイズよりも小さいか、所定の継続時間よりも短いエラー)
・ エラーブール値(所定のサイズよりも大きいか、所定の継続時間よりも長いエラー)
[エラーカウント(集計)]
・ エラーカウント(エラーのサイズ/継続時間に関係なく検出されたエラー)
・ エラーカウント(所定のサイズよりも小さいか、所定の継続時間よりも短いエラー)
・ エラーカウント(所定のサイズよりも大きいか、所定の継続時間よりも長いエラー)
また、エラーが発生した状態に基づいて、エラーのタイプを見つけることができる。その後、これらの検出されたエラーは、機械学習で使用されてもよい。
【0039】
エラーのタイプに加えて、スライス22a~22e内のエラーの存在または位置が、経験したエラーに関する情報を得るために使用されてもよい。例えば、以下のようなものがある;
・ スライス内の任意の時点
・ スライス全体
・ スライスの最初
・ スライスの最後
・ スライスの途中で、最初と最後のエラーとは無関係
また、スライスの最初でエラーが発生し、途中や最後ではエラーが発生しないなど、他の組み合わせが定義されてもよい。
【0040】
これらの検出されたエラーに基づいて、以下の例のように異なる状況を定義することが可能である:
[例1]
技術的定義:
・ スライス:ステータス0(検出なし)からステータス1(検出)への移行後22d
・ エラー値:ブール値
・ エラータイプ:スライス全体のエラー
解釈:
・ システムはステータス0からステータス1への移行を十分な時間内に検出しなかった。
これは:
・ 電話を耳に近づけたときに近いことを検出できなかったことを示す可能性がある。
・ 領域が多数の定義された検出領域を含む場合、例えばスマートスピーカシステムを使用して装置から再生する場合など、ユーザが新しい領域に進入したときに、新しい領域への進入を検出できなかったことを示す可能性がある。
[例2]
技術的定義:
・ スライス:ステータス0(検出なし)からステータス1(検出)への移行前22b
・ エラー値:継続時間
・ エラータイプ:スライスの最後にエラーがある。
解釈:
・ システムはステータス0からステータス1への移行を少し早く検出した。どの程度かは継続時間によって示される。
これは:
・ 携帯電話を耳に近づけたときに早期検出の継続時間を示す。
[例3]
技術的定義:
・ スライス:定常状態22a
・ エラー値:カウント
・ エラータイプ:スライスの途中で、最初と最後のエラーとは無関係
解釈:
・ 遅い検出(カウントがステータス1に到達してから開始される)と早い移行(スライスの最後に発生した場合にカウントが別の状態への移行を無視する)を除き、システムは少なくとも1回ステータス1を失った。エラーカウントは数を提供する。
これは:
・ 通話中のちらつきなど、携帯電話が機能を何度か失ったことを示す。
・ スマートスピーカ装置からの再生を使用すると、再生が領域内に留まったまま他の領域にジャンプしたことを示す。
【0041】
クラウドベースのストレージシステム2aに格納されたエラーメッセージの数およびエラーの発生に関する登録データ、ならびに製造業者のデータベースから提供されたクラウドベースのシステム内の関連パラメータをもつモデル2bに基づいて、機械ベースの学習は、シミュレーションおよび評価プロセスにおいて、エラーの数を最も減らすことができるモデルおよび関連パラメータを見つけるために、モデルを提案および比較するように適合される。このようにして、例えば、携帯電話を耳に近づけたときに、携帯電話のモード切り替えが遅いとエラーが多数登録された場合、対応する動作が登録されていれば、より早く切り替えるようにモデルを調整することができる。
【0042】
その後、選択されたモデルは、評価のために製造業者に送られる。このようにして、製造業者には、変化する条件下で改善された性能をもたらす装置の実際の使用に従って、調整された新しいモデルが提供される。
【0043】
このモデルに基づいて、製造業者は、装置のソフトウェアアプリケーション3aおよび/またはハードウェア3bに送られたハードウェアまたはソフトウェアのテストに使用することができ、あるいは新しいモデルに従ってハードウェアまたはファームウェアによって装置を再プログラムすることができる。
【0044】
したがって、本発明の一態様は、装置性能を最適化するためのコンピュータシステムおよび対応する方法を提供するものであると結論付けられてもよい。システムは、データストレージを含む。ここで、データストレージは、装置のプロセッサ性能に関する所定の情報、および現実的な条件下での装置の使用および性能を示す、音響検出装置および運動センサなどの装置内のセンサから収集されたデータを受け取るように適合される。
【0045】
より具体的には、本発明は、少なくとも1つの電子装置の性能を改善するためのコンピュータシステムに関する。装置は、センサと、装置で実施される選択された動作に関する所定の情報、および所定の状況における装置の反応を特定する所定のモデルをサンプリングするソフトウェアと、を含む。センサは、カメラ、音響センサ、慣性センサ、レーダー、または光学測定などの測定器を含んでもよい。モデルは、特定の条件下での装置の計画された性能を指定する製造業者から最初に提供される。
【0046】
また、コンピュータシステムは、装置からのサンプリングされた情報および製造業者からの装置に関する装置の情報(モデルを含む)を受け取って格納するように構成される。
【0047】
また、装置によってサンプリングされた情報は、報告されたエラーおよび/またはサンプリングされた情報に関するモデル性能からのずれを含む。エラーは、装置ソフトウェアによって検出されてもよく、適切なインターフェースを介してユーザによって報告されてもよい。
【0048】
コンピュータシステムは、報告されたエラーおよびセンサによる測定値、ならびに以前のモデルに基づいて、調整されたモデルを生成し、初期モデルと測定された性能との間のずれに基づいて、更新されたモデルを生成するように適合される。更新されたモデルは、装置に送信され、また、ファームウェア、または例えばアプリケーションなどのソフトウェアの更新を介して装置で更新およびテストされる前に、モデルの性能をさらに再プログラムおよび/またはテストすることができる製造業者に報告されてもよい。
【0049】
好ましくは、サンプリングされた情報は、サンプリングされた情報と報告された情報との間の関係を確保するために、データタイプ、時間、および/または位置タグでタグ付けされる。
【0050】
また、サンプリングされた情報におけるエラー検出および関連する測定値を分析するために、システムは、所定のルールセットを使用してもよい。ここで、システムは、エラー検出の数を低減させるようにモデルを反復的に再構成するように構成される。
【0051】
所定のルールセットは、所定の定常状態および移行状態、ならびに移行前状態および移行後状態に従ったエラーの分類を含んでもよい。ここで、反復は、定常状態、移行前状態、および移行後状態におけるエラーを低減させるように構成される。
【0052】
好ましくは、コンピュータシステムは、クラウドベースのコンピュータシステムである。システムは、装置からの測定されたデータおよび装置の性能特性に関する情報を受け取るためのデータストレージと、製造業者から提供された初期モデル、およびデータストレージに格納されたデータに基づいて、調整されたモデルを生成するためのモデル生成部と、生成されたモデルを評価し、モデルを製造業者に送信するためのモデル評価ユニットと、を備える。
【0053】
評価ユニットおよびモデル生成部は、改善されたモデルを生成するためにモデルを反復的に再生成し、評価する。
【0054】
本発明による方法およびコンピュータに実装されたソフトウェアは、
・ 少なくとも1つの装置において、エラー検出およびそのエラー検出に関する測定値に関連する情報をサンプリングするステップであって、この検出は、ユーザからの報告または装置ソフトウェアによって検出されたエラーを含む、ステップと、
・ コンピュータネットワークにおいて、装置によってサンプリングされた情報を受け取るステップであって、このネットワークは、装置ソフトウェアおよび性能に関する情報、ならびに装置性能を指定するモデルを含むストレージ手段を含む、ステップと、
・ ネットワークにおいて、報告されたエラーおよび関連する測定値に基づいてモデルを調整するステップと、
・ 調整されたモデルを装置に送信するステップであって、装置は、調整されたモデルに対応するソフトウェアを更新する、ステップと、
を含む。
【0055】
別の態様によれば、本発明は、少なくとも1つの電子装置の性能を改善するためのシステムに関する。ここで、装置は、少なくとも1つのセンサと、少なくとも1つのセンサによって生成されたデータに応答して装置の反応を定義するモデルと、を含む。
【0056】
システムは、センサによって生成されたデータ、およびそのデータに対する反応を分析するように構成されたモデル生成部を含む。ここで、反応は、測定された条件下での装置の性能の分析に基づいてもよく、ユーザインターフェースを介して提供されることもできる。モデルに従って、意図された反応と比較した反応におけるエラーが登録される。
【0057】
モデル生成部は、少なくとも1つの電子装置に記録されたサンプルのセットに基づいて、装置モデルの実際の出力とモデルの所望の出力との間におけるエラーを最小限に抑えることで、モデルを調整するように構成される。
【0058】
記録されたサンプルは、
・ エラーが発生したときに多数の所定の状態のうちのどの状態に装置があるかに関する情報、
・ エラーが発生した時間に関する情報、および
・ 指定された時間および/または状態におけるエラーの数に関する情報
を含む。
【0059】
好ましくは、所定の状態は、移行状況に関連し、定常状態、移行前状態、移行状態、および移行後状態を含む。
【0060】
好ましくは、特定の時間は、状態の最初、状態の途中、状態の最後、状態全体、またはそれらの組み合わせを含む。これにより、例えば、移行前状態の継続時間および/または反応が参照される状態中の時間を定義することができる。
【0061】
したがって、エラーのカウントは、ブール値カウントおよび集計カウント、または継続時間比率を含んでもよい。
【0062】
好ましくは、モデル生成部は、多数の装置と通信するネットワークシステムである。ここで、モデル生成部は、装置の初期モデルおよび予想される性能を提供する製造業者と通信するように適合されてもよい。また、装置には、装置ユーザからエラー報告を受け取るように構成されたユーザインターフェースが設けられてもよい。
【0063】
エラーは、装置の予想される反応と測定された反応との間の測定されたずれで登録されてもよく、あるいはユーザからの反応を受け取るように構成されたユーザインターフェースを介して報告されてもよい。この場合、ユーザは、例えば意図された動作モデルからのずれを報告する。
【0064】
システムは、所定のルールセットに基づいて、サンプリングされたデータにおけるエラー検出および関連する測定値を分析するように構成されてもよい。ここで、システムは、コンパイルされた反応のセットに基づいて、または最後に受け取った反応の数から構成されるセットに基づいて連続的に、エラー検出の数を低減させるようにモデルを反復的に再構成するように構成される。
【0065】
装置内のセンサは、カメラ、音響センサ、慣性センサ、レーダー、または光学測定のうちの少なくとも1つを含んでもよい。また、装置の性能の分析は、状態変化中のセンサのうちの1つまたは複数に基づいて行われてもよい。
【0066】
本発明のさらに別の態様は、特定のタイプの装置の性能を改善するための方法に関する。該方法は、
・ 少なくとも1つの装置において、エラー検出およびそのエラー検出に関する測定値に関連する情報をサンプリングするステップであって、この検出は、ユーザからの報告または装置ソフトウェアによって検出されたエラーを含む、ステップと、
・ モデル生成部において、装置によってサンプリングされた情報を受け取るステップであって、このモデル生成部は、装置ソフトウェアおよび性能に関する情報、ならびに装置性能を指定するモデルを含むストレージ手段を含む、ステップと、
・ モデル生成部において、報告されたエラーおよび関連する測定値に基づいてモデルを調整するステップと、
・ 調整されたモデルを装置に送信するステップであって、装置は、調整されたモデルに対応するようにソフトウェアを更新する、ステップと、
を含む。ここで、モデル生成部は、少なくとも1つの電子装置に記録されたサンプルのセットに基づいて、装置モデルの実際の出力とモデルの所望の出力との間のエラーを最小限に抑えることで、モデルを調整する。また、記録されたサンプルは、
・ エラーが発生したときに多数の所定の状態のうちのどの状態に装置があるかに関する情報、
・ エラーが発生した時間に関する情報、および
・ 指定された時間および/または状態におけるエラーの数に関する情報
を含む。
【0067】
好ましくは、所定の状態は、移行に関連し、定常状態、移行前状態、移行状態、および移行後状態を含む。
【0068】
好ましくは、特定の時間は、状態の最初、状態の途中、状態の最後、状態全体、またはそれらの組み合わせを含む。また、エラーのカウントは、ブール値カウントおよび集計カウント、または継続時間比率を含む。
【国際調査報告】