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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】潮流堰
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/26 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
F03B13/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558382
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 GB2022050730
(87)【国際公開番号】W WO2022200789
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】2104198.3
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523291329
【氏名又は名称】ヴァーダーグ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ,ピーター
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA06
3H074AA08
3H074BB03
3H074CC02
3H074CC10
3H074CC18
(57)【要約】
間隔を置いて配置されている複数の塔体と、塔体同士の間にある、堰を通過する水流を制御するための複数のバリアと、1つまたは複数のタービン装置と、を備え、塔体は少なくとも第1の塔体、第2の塔体、および第3の塔体を備え、第1の塔体は第2の塔体と第3の塔体との間に配置され、タービンのうちの1つまたは複数を収容しており、第1の塔体と第2の塔体との間には1つまたは複数の第1のバリアが設けられており、第1の塔体と第3の塔体との間には1つまたは複数の第2のバリアが設けられており、バリアは、1つまたは複数の第1のバリアおよび1つまたは複数の第2のバリアが第1の配置構成にあるとき、堰の第1の側から堰の第2の側へと堰を通過する第1の流路が画定され、1つまたは複数の第1のバリアおよび1つまたは複数の第2のバリアが第2の配置構成にあるとき、堰の第2の側から堰の第1の側へと堰を通過する第2の流路が画定されるように構成されており、第1の流路および第2の流路を通って流れる水は第1の塔体内に収容されている1つまたは複数のタービンを通って同じ方向へと流れ、バリアのうちの1つまたは複数が、水不透過性の柔軟な膜体と、浮力部材と、1つまたは複数のテザーと、を備える、潮流堰。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を置いて配置されている複数の塔体と、
前記塔体同士の間にある、堰を通過する水流を制御するための複数のバリアと、
1つまたは複数のタービン装置と、を備え、
前記塔体は少なくとも第1の塔体、第2の塔体、および第3の塔体を備え、
前記第1の塔体は前記第2の塔体と前記第3の塔体との間に配置され、前記タービン装置のうちの1つまたは複数を収容しており、
前記第1の塔体と前記第2の塔体との間には1つまたは複数の第1のバリアが設けられており、前記第1の塔体と前記第3の塔体との間には1つまたは複数の第2のバリアが設けられており、
前記バリアは、前記1つまたは複数の第1のバリアおよび前記1つまたは複数の第2のバリアが第1の配置構成にあるとき、前記堰の第1の側から前記堰の第2の側へと前記堰を通過する第1の流路が画定され、前記1つまたは複数の第1のバリアおよび前記1つまたは複数の第2のバリアが第2の配置構成にあるとき、前記堰の前記第2の側から前記堰の前記第1の側へと前記堰を通過する第2の流路が画定されるように構成されており、前記第1の流路および前記第2の流路を通って流れる水は前記第1の塔体内に収容されている前記1つまたは複数のタービンを通って同じ方向へと流れ、
前記バリアのうちの1つまたは複数が、水不透過性の柔軟な膜体と、浮力部材と、1つまたは複数のテザーと、を備える、
潮流堰。
【請求項2】
前記第1の塔体と前記第2の塔体との間に設けられている前記1つまたは複数の第1のバリアは、水不透過性の柔軟な膜体と、浮力部材と、1つまたは複数のテザーとを備える単一の双方向バリアを備える、請求項1に記載の潮流堰。
【請求項3】
前記第1の塔体と前記第3の塔体との間に設けられている前記1つまたは複数の第2のバリアは、1対の一方向バリアを備える、請求項1または2に記載の潮流堰。
【請求項4】
前記第2のバリアは各々が、水不透過性の柔軟な膜体と、浮力部材と、1つまたは複数のテザーと、を備える、請求項3に記載の潮流堰。
【請求項5】
前記塔体は、前記第3の塔体の前記第1の塔体とは反対側に配置されている第4の塔体と、前記第3の塔体と前記第4の塔体との間に設けられている1つまたは複数の第3のバリアと、を更に備え、前記第3の塔体には前記タービン装置のうちの更なる1つまたは複数が収容されており、前記バリアは、前記1つまたは複数の第3のバリアが第1の配置構成にあるとき、前記堰の第1の側から前記堰の第2の側へと前記堰を通過する第3の流路が画定され、前記1つまたは複数の第3のバリアが第2の配置構成にあるとき、前記堰の前記第2の側から前記堰の前記第1の側へと前記堰を通過する第4の流路が画定されるように構成されており、前記第3の流路および前記第4の流路を通って流れる水は前記第3の塔体内に収容されて堰いる前記1つまたは複数のタービンを通って同じ方向へと流れる、請求項1から4のいずれか一項に記載の潮流堰。
【請求項6】
前記第1の塔体と前記第2の塔体との間に設けられている前記1つまたは複数の第3のバリアは、水不透過性の柔軟な膜体と、浮力部材と、1つまたは複数のテザーとを備える単一の双方向バリアを備える、請求項5に記載の潮流堰。
【請求項7】
前記第1の塔体に収容されている前記1つまたは複数のタービンは、前記第3の塔体に収容されている前記1つまたは複数のタービンと対向している、請求項5または6に記載の潮流堰。
【請求項8】
前記第2の塔体には、前記第1の塔体に収容されている前記1つもしくは複数のタービンから離れる方に向いている1つまたは複数のタービンが収容されている、および/または、前記第4の塔体には、前記第3の塔体に収容されている前記1つまたは複数のタービンから離れる方に向いている1つまたは複数のタービンが収容されている、請求項7に記載の潮流堰。
【請求項9】
前記第1の塔体および前記第3の塔体、これらに収容されている前記1つまたは複数のタービン装置、ならびに前記1つまたは複数の第1、第2、および第3のバリアは発電モジュールを定めており、前記堰は互いに隣り合って設けられている複数の前記発電モジュールを備える、請求項5から8のいずれか一項に記載の潮流堰。
【請求項10】
前記塔体は平面視したとき長手軸線に沿って延びている、請求項1から9のいずれか一項に記載の潮流堰。
【請求項11】
前記長手軸線は、互いに概ね平行に配置されている、および/または、概ね潮流の方向に配置されている、請求項10に記載の潮流堰。
【請求項12】
前記1つまたは複数のタービン装置の流れ軸線は前記長手軸線に対して実質的に垂直である、請求項10または11に記載の潮流堰。
【請求項13】
前記塔体は平面視して実質的に矩形である、請求項1から12のいずれか一項に記載の潮流堰。
【請求項14】
隣り合う塔体は、実質的に平面状の互いに対向する平行な面を備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の潮流堰。
【請求項15】
使用時に、前記膜体は下縁部分と上縁部分とを備え、前記下縁部分は前記堰が設置されている水域の底に対して固定されており、前記膜体および前記浮力部材は前記上縁部分において互いに付着されており、前記1つまたは複数のテザーの各々は、前記上縁部分において前記浮力部材におよび/または前記膜体に付着されている第1の端部部分と、錨体に付着されている第2の端部部分と、を備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の潮流堰。
【請求項16】
前記浮力部材は水を前記浮力部材の内部へと導入および/またはそこから排出可能なマニホールドを備える、請求項1から15のいずれか一項に記載の潮流堰。
【請求項17】
前記マニホールドはポンプに接続されている、請求項16に記載の潮流堰。
【請求項18】
前記1つまたは複数のタービン装置の各々が、
混合チャンバの第1の端部に接続されている集束セクションであって、前記集束セクションの前記端部と前記混合チャンバとの間にベンチュリが定められるようになっている、前記集束セクションと、
前記混合チャンバの第2の端部に接続されている拡散器セクションであって、使用時に前記拡散器の出口における圧力が前記ベンチュリにおける圧力よりも大きくなるように構成される、前記拡散器セクションと、
前記集束セクションに配置されているチューブの少なくとも一部であって、前記チューブと前記集束セクションとの間に環状部が画定されて第1の流路を形成しており、前記チューブは前記チューブ内に第2の流路を画定している、前記チューブの少なくとも一部と、
前記チューブ内に配置されている、発電機に接続可能なタービンと、を備える、請求項1から17のいずれか一項に記載の潮流堰。
【請求項19】
前記塔体の各々に前記タービン装置のアレイが収容されている、請求項1から18のいずれか一項に記載の潮流堰。
【請求項20】
前記タービン装置のうちの1つまたは複数が、前記タービン装置を通る流れを選択的に遮断するためのタービン装置バリアを備える、請求項17に記載の潮流堰。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は潮流堰に関する。特に、一方向タービン発電機を使用して双方向の流れの両相から発電することのできる潮流堰に関する。
【背景技術】
【0002】
重力式ダムと同じ原理で建設された海岸保護に使用される従来型の潮流堰(または防潮堤)が、例えばオランダでは一般的である。それらを更に使用して、設置されたタービンを潮流が通過する際に発電を行うことが、やはり従来のダムと同様に、それほど一般的ではないが実際に行われている。フランスのランス川の河口を横断して設置されているものが良く知られた一例である。しかしながらそれらを不経済で環境破壊的であると見なす論者も存在する。
【0003】
本開示は、これらの従来の潮差技術と同じ目的を達成する、比較してはるかに軽量で、複雑でなく、コストがかからず、更に設置および保守も比較して著しく容易、かつ低コストである方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、海洋土木工事を大幅に削減し、迅速な設置が可能で、完全な双方向または引き潮での発電、洪水緩和、沿岸保護、更にレクリエーションや交通の便を提供するために容易に構成できる、シンプルで、環境に配慮した、費用対効果の高い、目立たない潮流堰を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、第1の態様において、間隔を置いて配置されている複数の塔体と、塔体同士の間にある、堰を通過する水流を制御するための複数のバリアと、1つまたは複数のタービン装置と、を備え、塔体は少なくとも第1の塔体、第2の塔体、および第3の塔体を備え、第1の塔体は第2の塔体と第3の塔体との間に配置され、タービンのうちの1つまたは複数を収容しており、第1の塔体と第2の塔体との間には1つまたは複数の第1のバリアが設けられており、第1の塔体と第3の塔体との間には1つまたは複数の第2のバリアが設けられており、バリアは、1つまたは複数の第1のバリアおよび1つまたは複数の第2のバリアが第1の配置構成にあるとき、堰の第1の側から堰の第2の側へと堰を通過する第1の流路が画定され、1つまたは複数の第1のバリアおよび1つまたは複数の第2のバリアが第2の配置構成にあるとき、堰の第2の側から堰の第1の側へと堰を通過する第2の流路が画定されるように構成されており、第1の流路および第2の流路を通って流れる水は第1の塔体内に収容されている1つまたは複数のタービンを通って同じ方向へと流れ、バリアのうちの1つまたは複数が、水不透過性の柔軟な膜体と、浮力部材と、1つまたは複数のテザーと、を備える、潮流堰が提供される。
【0006】
第1の塔体と第2の塔体との間に設けられている1つまたは複数の第1のバリアは好ましくは、水不透過性の柔軟な膜体と、浮力部材と、1つまたは複数のテザーとを備える、単一の双方向バリアを備える。
【0007】
第1の塔体と第2の塔体との間に画定された取水路に双方向浮力式バリアを設けることによって独自の受動制御を行うことができ、このバリアは外部から制御しなくても、変化する流れ方向に応じて方向を反転させる。
【0008】
第1の塔体と第3の塔体との間に設けられている1つまたは複数の第2のバリアは好ましくは、1対の一方向バリアを備える。第2のバリアは各々が、水不透過性の柔軟な膜体と、浮力部材と、1つまたは複数のテザーと、を備え得る。
【0009】
好ましくは、塔体は、第3の塔体の第1の塔体とは反対側に配置されている第4の塔体と、第3の塔体と第4の塔体との間に設けられている1つまたは複数の第3のバリアと、を更に備え、第3の塔体にはタービン装置のうちの更なる1つまたは複数が収容されており、バリアは、1つまたは複数の第3のバリアが第1の配置構成にあるとき、堰の第1の側から堰の第2の側へと堰を通過する第3の流路が画定され、1つまたは複数の第3のバリアが第2の配置構成にあるとき、堰の第2の側から堰の第1の側へと堰を通過する第4の流路が画定されるように構成されており、第3の流路および第4の流路を通って流れる水は、第3の塔体内に収容されている1つまたは複数のタービンを通って同じ方向へと流れる。
【0010】
第1の塔体と第2の塔体との間に設けられている1つまたは複数の第3のバリアは好ましくは、水不透過性の柔軟な膜体と、浮力部材と、1つまたは複数のテザーとを備える、単一の双方向バリアを備える。
【0011】
塔体のうちの2つの間に1対のバリアが設けられる場合、バリアの一方が1つまたは複数のタービンのいずれかの側に設けられることになる。単一のバリアが設けられる場合、これは、1つまたは複数のタービンの一方側の第1の位置と、1つまたは複数のタービンの反対側の第2の位置との間で移動可能となる。
【0012】
潮流堰は、潮汐のある河口を横断して、および、海岸線から外に広がる、または沖合に位置する自己完結型の閉じた囲い込み構造物としての、潮流ラグーンにおいても、永続的に利用することが可能であり、その目的としては、発電、洪水の防止および緩和、ウォータースポーツ用のレクリエーション施設の創出、または海岸浸食保護の改善が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
適切であれば、限定するものではないが、保守、ウォーキング、またはサイクリング、ならびに鉄道および/または車両の通行ならびに送電または光ファイバなどのケーブル敷設などの目的で、潮汐バリアの高水標よりも高いところに、アクセスを可能にするための橋梁構造物が支持され得る。
【0014】
塔体は平面視したとき実質的に矩形または菱形の形態であり得る。塔体は直線状または曲線状のアレイとして配備されてもよく、これらの塔体の間でアレイを迂回可能とならないように潮流の流れが制約される。隣り合う塔体の各対の互いに対向する面は好ましくは、実質的に平行な、平坦で滑らかな表面を有する。
【0015】
検討したように、バリアのうちの1つまたは複数は、水不透過性の柔軟な膜体と、浮力部材と、1つまたは複数のテザーと、を備える。使用時、膜体は下縁部分と上縁部分とを備えることができ、下縁部分は堰が設置されている水域の底に対して固定されてもよく、膜体および浮力部材は上縁部分において互いに付着されてもよく、テザーは、上縁部分において浮力部材におよび/または膜体に付着されている第1の端部部分と、錨体に付着されている第2の端部部分と、を備えてもよい。
【0016】
浮力部材は、浮力部材の内部へと水を導入可能なマニホールドを備え得る。マニホールドはポンプに接続されてもよい。
【0017】
浮力部材を備えるバリアは、更に開示されているように、引き潮発電または双方向流発電に使用される潮流堰の機能に、ならびに、以下の更なる、洪水の防止および緩和、ウォータースポーツのためのレクリエーション施設の創出、または海岸浸食保護の改善を含むがこれらに限定されない機能のいずれかまたは全てに合わせた様々な配置構成で配備され得る、浮力補助堰を実現する。
【0018】
塔体は、加工鋼材、石材、キャストコンクリートの建築物を含むがこれらに限定されない、任意の好適な材料で製作され得る。塔体は互いに独立していてもよく、堰は、塔体の好適なアレイを設け、続いて塔体間に適切なバリアを設けることによって形成される。塔体はプレハブ式の浸水可能なユニットを備えてもよく、これらのユニットは、費用対効果の高い浮力式堰をそれらの間に設置する前に、所定位置に個別の要素として互いに独立させて設置することができる。
【0019】
タービンを互いに間隔を置いて配置されている塔体内に収容し、塔体間に浮力式堰を備える1つまたは複数のバリアを設けることで、先行技術の構成の何分の1かの費用で設置できる、非常に費用対効果の高い堰を提供することが可能である。
【0020】
それぞれの塔体の下部に、一方向タービン装置のアレイを横断方向に配置することができる。タービン装置は、潮流の方向に対して実質的に直角に配置することができる。
【0021】
タービン装置の各々は、好ましくは、混合チャンバの第1の端部に接続されている集束セクションであって、集束セクションの端部と混合チャンバとの間にベンチュリが定められるようになっている、集束セクションと、混合チャンバの第2の端部に接続されている拡散器セクションであって、使用時に拡散器の出口における圧力がベンチュリにおける圧力よりも大きくなるように拡散器が構成されている、拡散器セクションと、集束セクション内に配置されているチューブの少なくとも一部であって、チューブと集束セクションとの間に環状部が画定されて第1の流路を形成しており、チューブはチューブ内に第2の流路を画定している、チューブの少なくとも一部と、発電機に接続可能なタービンと、を備え、タービンはチューブ内に配置されている。
【0022】
更に、好ましい特徴は従属請求項に提示されている。
【0023】
ここで本発明について、添付の図面を参照して例として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】引き潮配置構成における第1の構成に係る潮流堰の概略平面図である。
図2】逆転した内向きの流れの配置構成における図1の構成を示す図である。
図3】引き潮配置構成における図1の潮流堰の1つのモジュールの概略平面図である。
図4】逆方向の流れの配置構成における図3のモジュールの概略平面図である。
図5】橋梁構造物を支持している高架の潮流堰の立面図である。
図6図1の潮流堰に使用するのに適した塔体の平面図および立面図である。
図7】任意選択的な設置補助装置を備えた、図1の潮流堰に使用するのに適した代替の塔体の平面図および立面図である。
図8図1の潮流堰におけるバリアとして使用するのに適した例示的な浮力式堰の側面図である。
図9図4に示したものと類似しているがバリアの構成が修正されているモジュールの概略平面図である。
図10図1の潮流堰におけるバリアとして使用するのに適した双方向堰の側方立面図である。
図11】直線的に配列した例示的な一方向および双方向の浮力式堰の膜体の、展開形状を示す図である。
図12図11と同じ形状の膜体を有する、湾曲させて配列した台形の塔体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ここで本発明について、添付の図面を参照して例として記載する。
【0026】
図1および図2は、潮汐のある水域内にそれぞれ引き潮配置構成および内向きの流れの配置構成で設置された、例示的な構成に係る潮流堰(潮流バラージ)1の概略平面図を示す。図3および図4は、やはり引き潮配置構成および内向きの流れの配置構成における、図1および図2の堰(バラージ)の1つの好ましい発電モジュールの理想的な概略平面図を示す。
【0027】
潮流堰(潮流バラージ)1は、非常に大まかに言えば、間隔を置いて配置されている複数の塔体2と、塔体間で堰(バラージ)を通過する水流を制御するための複数のバリア3と、1つまたは複数のタービン装置4(図6を参照)と、を備える。塔体は、少なくとも第1の塔体2a、第2の塔体2b、および第3の塔体2cで構成され、第1の塔体2aは第2の塔体2bと第3の塔体2cとの間に配置され、タービン装置4のうちの1つまたは複数を収容している。第1の塔体2aと第2の塔体2bとの間には、1つまたは複数の第1のバリア3aが設けられている。第1の塔体2aと第3の塔体2cとの間には、1つまたは複数の第2のバリア3bが設けられている。バリア3は、図1および図3に示すように、1つまたは複数の第1のバリア3aおよび1つまたは複数の第2のバリア3bが第1の配置構成にあるとき、(流れの矢印が示すように)堰の第1の側から堰1の第2の側へと堰を通過する第1の流路が画定され、図2および図4に示すように、1つまたは複数の第1のバリア3aおよび1つまたは複数の第2のバリア3bが第2の配置構成にあるとき、(やはり流れの矢印が示すように)堰の第2の側から堰の第1の側へと堰を通過する第2の流路が画定されるように構成される。明確に示されているように、この配置構成では、第1および第2の流路を通って流れる水が、第1の塔体に収容されている1つまたは複数のタービンを通って同じ方向へと流れるようになっている。
【0028】
本構成では、好ましいものとして、塔体は、第3の塔体2cの第1の塔体2aとは反対側に配置されている第4の塔体2dと、第3の塔体2cと第4の塔体2dとの間に設けられている1つまたは複数の第3のバリア3cと、を更に備える。第3の塔体2cにはタービン装置のうちの更なる1つまたは複数が収容されており、バリア3は、図1および図3に示すように、1つまたは複数の第3のバリア3cが第1の配置構成にあるとき、(やはり流れの矢印が示すように)堰の第1の側から堰の第2の側へと堰を通過する第3の流路が画定され、図2および図4に示すように、1つまたは複数の第3のバリア3cが第2の配置構成にあるとき、(やはり流れの矢印が示すように)堰の第2の側から堰の第1の側へと堰を通過する第4の流路が画定されるように構成される。やはり明確に示されているように、第3および第4の流路を通って流れる水は、第3の塔体に収容されている1つまたは複数のタービンを通って同じ方向へと流れるようになっている。
【0029】
第1の塔体2aおよび第3の塔体2c、これらに収容されている1つまたは複数のタービン装置4、ならびにこれらの間の1つまたは複数の第1のバリア3a、第2のバリア3b、および第3のバリア3cは、図3および図4に概略的に描かれているように、発電モジュールを定めるものと考えることができ、堰は好ましくは複数の発電モジュールを備える。第1の塔体2aに収容されている1つまたは複数のタービン装置4は好ましくは、示されているように、発電モジュールの第3の塔体2cに収容されている1つまたは複数のタービンに面している。このことにより、第1の塔体2aおよび第3の塔体2cを通る流れは、図3および図4に明確に示されているように、第1の塔体と第3の塔体との間の領域で合流し、第1の塔体2aと第3の塔体2cとの間から堰を出る。
【0030】
図1および図2に見られるように、発電モジュールは互いに隣り合って設けられてもよい。その場合、発電モジュールにおいて、第2の塔体2bには、第1の塔体2aに収容されている1つもしくは複数のタービンから離れる方に向いている1つもしくは複数のタービンが収容されている、および/または、第4の塔体2dには、第3の塔体2cに収容されている1つもしくは複数のタービンから離れる方に向いている1つもしくは複数のタービンが収容されている。
【0031】
タービン装置4を備えず単に堰1の周囲の流れを遮断するために機能するモジュールとともに提供される堰のセクションが存在してもよく、これは任意の好適な構造をとり得る。また更に、1つまたは複数のバリア3によって閉鎖される、船舶が堰を通過するのを可能にする開口部が設けられていてもよい。図1および図2に示すように、例えば、満潮時に船舶がバリア3を通過できるように、2つの航路を可能にする開口部5が設けられてもよい。バリア3は、潮汐発電中は所定位置にあり、妨げのない通過経路が船舶に開かれたままとなるように、開放または撤去される。
【0032】
図1および図2の潮流堰は、純粋に非限定的な例として、5つの発電モジュールと航路5とを備える。
【0033】
図1図4のバリア3は概略的に示されており、例えば水門またはケーソンを含むがこれらに限定されない、任意の好適な既知の形態をとることができる。ただし、以下に詳細に検討するように、これらが浮力式バリアを備えるのが好ましい。それらの具体的な形態に関わらず、1つまたは複数の第1のバリア3a、1つまたは複数の第2のバリア3b、および1つまたは複数の第3のバリア3cのうちの、1つまたは複数または全部が、バリアの一方が1つまたは複数のタービンのいずれかの側に設けられている、1対のバリアを備えてもよい。これは、作用しているバリアのみが示されている、図3および図4の構成の場合である。別法として、1つまたは複数の第1のバリア3a、1つまたは複数の第2のバリア3b、および1つまたは複数の第3のバリア3cのうちの、1つまたは複数または全部が、図3および図4に描かれている様式で流れが適切に制御されるように、1つまたは複数のタービンの一方側の第1の位置と、1つまたは複数のタービンの反対側の第2の位置との間で移動可能な、単一のバリアを備えてもよい。
【0034】
塔体2の形は特に限定されない。これらは平面視で長手軸線に沿って延びていることが好ましく、この長手軸線は、互いに概ね平行に配置されていること、および/または、潮流の方向と実質的に一致している潮流の方向に概ね配置されていることが好ましい。本構成では、明確に示されているように、塔体2は平行であり、かつ潮流の方向と実質的に一致させてある。塔体は、示されているように、平面視したとき実質的に矩形であってもよい。隣り合う塔体は、やはり示されているように、実質的に平面状の対向する平行な面を備え得る。
【0035】
1つまたは複数のタービン装置4の流れの軸線は好ましくは、潮流に対してある角度を成して配置される。それらは好ましくは、本構成の場合のように、長手軸線に対して実質的に垂直に配置される。
【0036】
図5は、塔体2が橋脚としての任意選択的な追加の機能を有する、図1および図2の潮流堰の立面図を示す。航路5を任意選択的により深い水中に設置できる様子も例示的に図示されている。橋梁6は上で検討した目的のうちのいずれかを果たし得る。必要に応じて、例示的に示されているように、航路の上の橋梁のより高い高さに対応することができる。
【0037】
次に、図6および図7を参照して、好ましいタービン装置と、タービン装置を備えた塔体の例示的な構造とについて考察する。
【0038】
タービン装置4の各々が、混合チャンバ4bの第1の端部に接続されている集束セクション4aであって、集束セクション4aの端部と混合チャンバ4bとの間にベンチュリが定められるようになっている、集束セクション4aと、混合チャンバ4bの第2の端部に接続されている拡散器セクション4cであって、使用時に拡散器の出口における圧力がベンチュリにおける圧力よりも大きくなるように拡散器4cが構成されている、拡散器セクション4cと、を備えることが好ましい。集束セクション4a内にチューブの少なくとも一部(図示せず)が配置されており、チューブと集束セクションとの間に環状部が画定されて第1の流路を形成しており、チューブはチューブ内に第2の流路を画定しており、チューブ内に発電機に接続可能なタービンが配置されていることが、更に好ましい。タービン装置はEP2864627の教示に従って構成することができ、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。ただし、タービン装置4が任意の好適な代替の形態をとり得ることに留意されたい。
【0039】
タービン装置4は好ましくはアレイ状に設けられ、所望に応じて構成され得る。タービン装置4は例えば、示されているように、いくつかの列として設けられてもよい。任意のアレイにおけるタービン装置4のうちの1つまたは複数は、タービン装置を通る流れを選択的に遮断するためのタービン装置のバリア(図示せず)を備え得る。このような目的のために、流れを遮断できる任意の好適なバリアが実装され得る。
【0040】
図6を特に参照すると、平面図および立面図で、タービン装置4のバンクを備える例示的な塔体が示されており、タービン装置の各々は上記の考察に従って構成されている。一つの好ましいオプションは、集束セクション4aおよび拡散器セクション4cを塔体に一体に鋳造することである。別の好ましいオプションでは、発電セクションの喫水線上方のアクセスエリア内に、ハウジング内にタービンおよび発電機を備え機械的な電力取出し部を含む関連機器を更に備える、垂直方向の濡れの回復のための設備を設けることができる。この場合、従来の水門または類似の従来の装置を発電セクションの上流にタービン装置を横切るように設置して、同じタービン装置バンク内のその他のタービン装置を大きな流れが迂回するのを回避してもよい。更に、発電セクションのハウジングに濡れずに到達できる必要のある場合は、発電セクションの下流側に第2の水門を設置してもよい。
【0041】
1つの好ましいオプションでは、塔体2は、現場から離れて乾ドックまたは他の好適な場所で製造され、塔体全体が浮力を有し、浸水させて所定位置へと下降させる前に、従来の様式で曳航用および抑止用のタグボートを用いて定位置まで浮遊させることができるように、実質的に水密な浸水可能な内部区画を有するように設計される。
【0042】
図7には、塔体と一体に配備され得る任意選択的な追加の設置補助装置が開示されている。これらは省略してもよい。含まれる場合、当業者には容易に明らかとなるように、これらは単独で、または互いに組み合わせて採用することができる。
【0043】
例えば、現場から離れての塔体の製作中、その基部に、設置中の位置安定性の迅速な達成を支援するための、1つまたは複数の洗掘防止スカート7を取り付けることができる。河口底の状態によっては、塔体を浸水させてそれらの自重を増加させ、以て河口底内での塔体の一時的な位置安定性を提供することによって、塔体の自重を活用して、洗掘防止スカート7の迅速な部分的侵入を達成することができる。
【0044】
更に、縦杭ガイド管8を設けてもよい。これらは塔体基部に開かれたままとしてもよく、その場合、ガイド菅を通して河口底に杭を打ち込んで、塔体基部の位置を固定してもよい。塔体ごとの打ち込まれる杭の数は、当業者には容易に理解されるように、水深、風および波の到達、河口底の形態、ならびに杭のサイズなどの一般的な環境条件を含むが、これらに限定されない、いくつかの現場固有の条件に依存することになる。好ましいケースでは、塔体1基につき少なくとも3本の杭が打ち込まれることになるが、その理由は、これらによって、塔体の設置中に塔体基部を真垂直の姿勢に維持するための便利な機構が提供されるためである。
【0045】
洗掘防止スカート7の海底内への更なる侵入は、洗掘防止スカート7の周縁部内側でその基部にある好適な注水導管9を通して塔体の下に水を注入し、生じたスラリーを一組の排水導管10の選択された部材を通して汲み出す、従来の技術によって達成され得る。注水導管9を閉じた状態でのこの排水ポンピングの単独使用を活用して、塔体の下にある水の圧力を下げることで、塔体の自重を実質的に増加させ、河口底内への侵入の更なる制御を実現することもできる。設置は、最初に、縦杭ガイド管7の内面と杭の外側表面との間の環状空間内にグラウトを注入し、グラウトが固化して塔体基部が杭に固定されたら、次いで2番目に、塔体基部のインバートの下、洗掘防止スカート7の周縁部の内側に、注水導管を通してグラウトを、この空間から排水導管を通して全ての水が排出され、未希釈のグラウトが排水導管を通して流出し始めるまで注入することによって、完了され得る。
【0046】
図7にはまた好ましいオプションも開示されており、このオプションでは、洗掘防止スカート7が各々区画化されており、このことにより、選択された注水導管9を通してある区画内に水を送り込む一方、選択された排水導管10を通して別の区画から水を汲み出すことにより、設置中の塔体基部の選択的水平化が可能になる。図7には、単に多くの可能な配置構成の一例として、3つの区画および3つの縦杭ガイド管が図示されており、これらは設置中に塔体基部の両平面軸線に関する垂直方向のトリムを維持することを可能にするが、このプロセスはまた、1つまたは複数の杭を対応する縦杭ガイド管内に選択的に打ち込んで、塔体基部上のそのような箇所を垂直方向に関して固定したままにしながら、1つまたは複数の他の箇所の高さを引き続き調整することによっても支援され得る。
【0047】
図7にはまた、同じ場所の河口底に浸出バリアがすでに事前設置されている場合に採用され得る、洗掘防止スカートの配置構成の更なる任意選択的な特徴も開示されている。基部を横断する間隙11により、塔体基部を、物理的な干渉を受けずに浸出バリアを跨いで設置することが可能になる。適切に位置付けられた注水導管9を活用して、砂およびシルトを間隙から脇へと流し出し、次いでこの間隙を、同じ注水導管9を通したグラウト注入によって、浸出バリアに対して封止することができる。
【0048】
上で検討したように、バリア3のうちの1つまたは複数が浮力式バリアを備えることが好ましい。このような浮力式バリアは、英国特許出願第2102604.2号の開示に従って配置することができ、その内容は本明細書に組み込まれる。図3および図4のバリアが全て浮力式バリアであることが好ましい。
【0049】
例示的な浮力式バリアが図8に示されており、このバリアは、水不透過性の柔軟な膜体12と、浮力部材13と、テザー14と、を備える。好ましくは、示されているように、使用時、膜体12は下縁部分12aと上縁部分12bとを備え、下縁部分12aは堰1が設置されている水域16の底15に対して固定されており、膜体12および浮力部材13は上縁部分12bにおいて互いに付着されており、テザー14は、上縁部分12bにおいて浮力部材13におよび/または膜体12に付着されている第1の端部部分14bと、錨体17に付着されている第2の端部部分14bと、を備える。水位は16aおよび16bで示されている。任意選択的な浸出バリアが18で示されている。浸出バリア18は、構成によっては、任意選択的に錨体17としても機能し得る。代替の構成では、例えば、膜体の下縁部分12aは底に接して設けられ、バラスト適用またはその他の方法で固定され得る。
【0050】
浮力部材13は好ましくは、浮力部材13の内部へと水を導入可能なマニホールド(図示せず)を備える。マニホールドは好ましくはポンプに接続される。
【0051】
浮力式バリアは極めて費用対効果の高い解決策である。また更に、浮力式バリアは、浮力部材13に対して水を導入または排出することにより、所望に応じて昇降させることができる。必要に応じて、降下した位置にある浮力式部材を受けるための溝21またはその他のものを設けてもよい。
【0052】
単に非限定的な例として、航路内に1つまたは複数の浮力式バリアを備えた図1および図2の構成による潮流堰は以下のように、高波による浸水を防止するように構成され得る。浮力要素13から排水することにより航路5内のバリア3が上昇する。水位が通常の満潮位を超えて上昇すると、浮力部材はこれとともに上昇し続けることになる。河口上流の水位上昇に対する特定の安全限度を設定してもよい。そのような場合、河口上流の水位が更に上昇するのを防ぐために、タービン装置を通る流れを遮断するための水門を閉じることが可能である。浮力要素13は上昇を続け、浮力式バリアの前後の水頭差を増大させ、それ以上の浸水を抑止し、最終的に、高潮および地球温暖化の海面上昇の下で推定される最高水位からであっても河口上流の沿岸地域を保護するのに十分であるとして設計段階で規定可能な上昇高さに至る。設計で規定したものすら超える極端な洪水が発生した場合、ある理論的観点からは、浮力式バリアの幾何形状が変化することによって、浮力部材の更なる高さ上昇が最終的に阻止され、例えば大津波によって引き起こされる予測不可能な海面上昇に対して対応不可能となる任意の他の形式のバリアと同様に、水が堰としての浮力部材を越えて流れ、河口上流へと遡り続けることが可能になる。
【0053】
特に図9および図10を参照して以下で更に検討するように、双方向の浮力式バリアが実装されてもよい。
【0054】
図9は、潮流堰の1つの発電モジュールの例示的な配置構成を示す。この構成は、バリア3が一方向バリアと双方向バリアとで構成される点で、図3および図4を参照して検討したものとは異なっている。描かれている構成では、取水路内に双方向バリア3a、3cが設けられている。双方向バリア3a、3cは受動的であり、外部からの制御なしに、流れ方向の変化に応じて方向を反転させる。中央流出路内の2つの一方向バリア3bは、発電期間中は作用していない浮力要素13を部分的に浸水させてこれを沈ませ、その後潮が巡っている間に再び排水させて作用状態へと戻すことによって、どのような状況でも動作することができる。また、作用していないバリアが、その上を越えていく潮流による圧力で自動的に海底まで沈む場合、受動的に動作し得る。この受動的な動作がどの程度奏功するかは、プロジェクトの特定の状況によって異なる。
【0055】
一方向浮力式バリアと双方向浮力式バリアの代替の組合せ、および浮力式バリアと非浮力式バリアの様々な組合せが可能であることに留意しなければならない。多数の好適な構成が当業者には容易に諒解されるであろう。本発明はこの点に関して限定されるものではない。
【0056】
説明した構成のいずれにおいても、流入路は中央流出路よりも広くてもよく、その逆であってもよい。
【0057】
バリアについて考察すると、これらは全て従来の形態のものであってもよく、全て浮力式であってもよく、ハイブリッドな配置構成が採用されてもよい。例えば、流入路には受動的な双方向浮力式堰を装備してもよく、流出路には任意の所望の形態の従来のバリアを装備してもよい。多数の様々な配置構成が当業者には容易に企図されるであろう。
【0058】
図10は、英国特許出願第2102604.2号に開示されている形態の双方向浮力式バリアの側方立面図を示す。図10は、潮が逆転するときの浮力式バリアの完全な並進を示している。この図は断面図ではなく端面立面図を表しており、浮力式堰/バリアは描かれている構成では塔体2のうちの2つの間に延びている。右手の矢印が示すように、図10では作用している流れは右から左に向かっており、実線による詳細は堰の構成要素の作用位置を示している。破線で示す詳細は、流れの逆転が生じた場合のこれらの構成要素の位置を表している。
【0059】
膜体12は、アンカーの上方の塔体の壁の垂直中心線v上に付着されている。膜体12の縁部は壁に対して畳まれて、水位および流れ方向が変化したときに浮力部材13が自由に動けるようになっている。このように、膜体12は浮力部材の端部の各々において浮力13の下流へと短い距離だけ伸びる弛み部Bを形成し、このとき、弛み部Bにおける膜体12の頂部レベルはどの地点でも浮力部材13の頂部よりも下に下がることはなく、端壁2の表面に沿って引きずられるのではなく、膜体12の摩擦損傷を最小限にするべくそこから離れるように畳まれることに留意されたい。また、膜体12は水圧によって端壁に押し付けられて保持され、浸出損失を最小限にするべく高水標よりも上まで上昇することにも留意されたい。柔軟な膜体12にはスロット21が設けられ、タービン装置4内への流れの到達を可能にしている。
【0060】
図11は、隣り合う2つの平行な塔体2の中のタービン装置の集束器同士の間での双方向動作を意図した、例示的な柔軟な膜体12の展開形状を示している。スロット14の位置は、膜体の、隣り合う塔体の平行な面に押し付けられて垂直方向に畳まれるセクションに示されている。また、直接隣り合っている4つの一方向バリアのうちのスロット14を必要としない1つの膜体の展開形状も示されている。
【0061】
本明細書での考察から明らかなように、単一の発電モジュールが、隣り合うモジュールと共有される2つの下流セクションに挟まれた単一の中央上流セクションを備える。
【0062】
中央上流セクションは好ましくは単一の双方向浮力式堰を含み、その膜体は中央が河口底に係留されている。この単一の双方向浮力式堰は潮流が逆転するたびに自動調整される。水頭損失および/または下流の地面隆起を引き起こす可能性のある膜体の下での過度の浸出が、中央浸出バリア18および/または膜体の下の十分に長い浸出経路のいずれかまたは両方によって、防止または十分に緩和される。
【0063】
両側の2つの下流セクションの各々は好ましくは2つの一方向浮力式堰を含み、そのうちの上流側は潮の方向に応じて常に作用して、潮流堰の上流側と下流側との間の水頭差を維持する。下流の浮力式堰は作用しない状態であり、常に、部分的に浸水させることよって能動的に水没しているか、または下流の流れの越流によって受動的に水没している。過度の浸出流および結果的に生じる何らかの下流の地面隆起は、各発電モジュール中の4つの一方向浮力式バリアの各々を迂回することから防止されるのが好ましく、このことは、塔体の建設中にその下側に上記したような洗堀スカートを装備することによって、および次いで、図11の寸法「x」(河口底に接触したままの膜体の長さである)を優先的に確保して、浸出を許容可能な小さい量まで低減するのに十分な長さの浸出経路を確保すること、または必要であれば塔体の両端に膜体用の錨体としても機能する浸出バリアを設置することによって行われる。
【0064】
また、詳細な設計の問題として、環境条件および他の設計要因に応じて潮流堰の平面専有面積の全体または一部に対する岩石投下のレベルが選択されることになる、特定の潮流堰の設置があり得ることにも留意されたい。これは例えば堰の流入口や流出口での局所的な洗掘を緩和するように選択されてもよく、いずれにせよ、そのエリアにおける下流の河口底の地面隆起の生じ易さを緩和するのに役立つ。
【0065】
図12には、湾曲させて配列した隣り合う2つの平行な塔体2の拡散器間での一方向動作を意図した、典型的な柔軟な膜体12の同じ展開形状が開示されている。図12にはまた、隣り合う塔体2の対向する平行な面を維持しながら、潮流堰の湾曲させた構成を実現するための、塔体の好ましい台形の平面形状も開示されている。
【0066】
例えば図1および図2に示され、上で検討した原則のいずれかに従って構成されている、潮流堰1の全体的な配置構成は、以下の望ましい設計結果の達成を可能にすることに留意されたい。
【0067】
・ 河口を横断する配列上の各地点における自然の潮流速度および体積流量のプロファイルを効果的に維持することができ、全体的な海底形態に対する何らかの環境撹乱が最小限に抑えられる。これが可能であるのは、各塔体中のタービン装置の数およびサイズを、堰上の各モジュールの位置を通過する自然な流れの速度および体積に合わせて変更できるからである。例えば、図1では、左から4番目のモジュールがより深い水路内に位置しており、この水路は、その他のモジュールが、配列全体で元の流れのプロファイルを維持しながら、全てのモジュールにおいて最適な性能を維持するために通過する必要のある水量よりも、多くの水量を運ぶと仮定している。その結果このモジュールは、より多くのおよび/またはより大型のタービン装置を搭載できるように、その他のモジュールよりも長く設計されている。
【0068】
・ 英国特許出願第2102604.2号には、一次近似として、浮力式堰/バリアの浮力要素の排水量(直径の関数である)は、膜体のうち、下流の喫水線から垂直方向上の、下に空隙を有する部分の背後で支持される水の重量にほぼ等しいことが開示されている。浮力要素自体のより小さな死荷重および膜体の死荷重は、浮力に反応をもたらす二次的な下向きの力である。これは本質的に、どのような場合でも、ロックフィル堤防などの堅固な構造の防潮堤代替物に代わる、または、バリアの上流および下流の水の間の水頭差によって作用する可能性のある最大転倒モーメントに抵抗するように設計された構造的ダムバリアに代わる、非常に軽量で低コストの代替策である。配列が長いほど資本コストの差が大きくなり、本明細書に記載したような浮力式バリアを備える堰にとって有利になる。また更に、水深が深くなるとき、同じ水頭差を達成するために必要な浮力式堰の浮揚体のサイズの増大は、必要とされるより長い柔軟な膜体のごく僅かな追加の湿重量に見合った、ごく最小限のものである。任意の所与の水頭差を達成するための浮力式堰のコストは一次近似に従い、したがって水深に依存しない。これとは全く対照的に、例えば重力式ダムのような何らかの構造的バリアの断面積は、水深の二乗に近似される係数で比例増加するため、浮力式堰の資本コスト上の利点は水深が増すにつれて高まる。
【0069】
・ 本明細書で開示する形態のタービン装置は、タービンを迂回する約80%の流れに入って通過するあらゆる魚に優しい技術を提供する。タービンを通過する20%程度の流れは、代替技術で必要とされるスクリーンよりもはるかに小型で低コストのスクリーンでスクリーニングすることができる。このスクリーンは、ブラシもしくはウォータージェットなどの機械的装置によって、またはもっと簡単に、滞潮時に動力によるタービンの逆スラストの噴射を短時間に行うことによって、容易に洗浄することができる。こうして除去されたデブリはいずれも、80%の通過流に入ってタービン装置を通過し続けることができる。
【0070】
潮流堰について潮汐のある河口を横断して設置されるものを参照して説明したが、これを他の水域に設置して、例えば、大河川を流れる一方向の流れに対して、または潮流のうちの引き潮のみでの発電において設置することも可能である。また、かなりの潮流が非常に浅い水中で発生して、おそらく干潮時には河口底が露出しさえする場合、この浅い水深によって何らかの再生可能エネルギー生成装置の最大直径が制限され、そのような装置が多数必要となり、場合によっては河口の幅に許容可能に収容できるよりも長い配列が必要となる可能性がある。より大きな直径の装置を受け入れるために配列に沿って溝を掘削することは、そのような溝が沈泥しやすく、またより大型の発電機を全て水中のより深い部分に集中させることにつながる場合があり、その結果、配列全体での速度プロファイルの自然な分布が劇的に変化し、環境を損なう結果をもたらすことになるため、満足なものとは言えない。このような場合において、開示されている構成では、潮汐バリアの配列の利用可能な長さとは無関係に、自然の流れのパターンに合わせて多数の発電装置を配備することが可能になる。
【0071】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、用語「備える、含む(comprises)」および「備える、含む(comprising)」ならびにその変形は、指定された特徴、ステップ、または整数が含まれることを意味する。この用語は、他の特徴、ステップ、または構成要素の存在を除外するものと解釈すべきではない。
【0072】
以上の説明または以下の特許請求の範囲または添付の図面において開示する特徴は、それらの詳細な形態で、あるいは開示された機能を実行するための手段または開示された結果を達成するための方法もしくはプロセスの観点から適宜表現されており、個別に、またはそのような特徴を任意に組み合わせて、本発明がその多様な形態で実現されるように利用することができる。
【0073】
本発明の特定の例示の実施形態について説明したが、添付の特許請求の範囲はこれらの実施形態のみに限定されることを意図するものではない。特許請求の範囲は、文字通りに、合目的的に、および/または等価物を包含するように、解釈されるものとする。当業者には、特許請求の範囲の範囲内において多数の代替の構成が容易に諒解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】