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特表2024-512031混合プラスチックポリプロピレンブレンド
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  • 特表-混合プラスチックポリプロピレンブレンド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】混合プラスチックポリプロピレンブレンド
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20240311BHJP
   C08F 10/06 20060101ALI20240311BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C08L23/10
C08F10/06
C08L23/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558390
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2022057950
(87)【国際公開番号】W WO2022200587
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】21165397.7
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21189650.1
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】トラン トゥアン アン
(72)【発明者】
【氏名】ロペス フィリペ スザンナ
(72)【発明者】
【氏名】ナグル アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】マチル ドリス
(72)【発明者】
【氏名】レスラー-チェルマク アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BB11W
4J002BB11X
4J002GB00
4J002GC00
4J002GG01
4J002GG02
4J100AA02Q
4J100AA03P
4J100CA01
4J100CA03
4J100DA09
4J100DA42
4J100JA51
4J100JA57
4J100JA58
(57)【要約】
主にポリプロピレンを含み、ベンゼンを含まず、明確なCIELAB色を有する混合プラスチックポリプロピレンブレンド。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合プラスチックポリプロピレンブレンドであって、
(i)86.0~94.0重量%の範囲のCRYSTEX QC分析に従って決定された結晶部(CF)含有量と、
(ii)6.0~14.0重量%の範囲のCRYSTEX QC分析に従って決定された可溶部(SF)含有量と
を有し、
(iii)前記結晶部(CF)は、95.0~99.0重量%、好ましくは96.0~98.0重量%の範囲の定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたプロピレン含有量(C3(CF))を有し、
(iv)前記結晶部(CF)は、1.0~5.0重量%、好ましくは2.0~4.0重量%、より好ましくは2.5~3.5重量%の範囲の定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレン含有量(C2(CF))を有し、
(v)前記可溶部(SF)は、1.10~1.50未満dl/g、好ましくは1.25~1.45dl/gの範囲の固有粘度(iV(SF))を有し、
(vi)前記混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、前記混合プラスチックポリプロピレンブレンドに対して0.05~3.0重量%、好ましくは0.05~2.5重量%、任意選択で1.0~2.5重量%のDIN ISO1172:1996に従って焼成分析(TGA)によって測定された無機残渣を有し、
(vii)前記混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、HS GC-MS 80℃/2hの検出限界を超えてベンゼンを含有せず、
(viii)前記混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、
72.0~97.0、好ましくは80.0~97.0のL
-5.0~0.0のa
0.0~22.0未満のb
のCIELAB色空間(L)を有する
混合プラスチックポリプロピレンブレンド。
【請求項2】
2.0~100g/10分、好ましくは5.0~80g/10分、より好ましくは10~60g/10分、最も好ましくは12~55g/10分のメルトフローレート(ISO1133、2.16kg;230℃)を有する請求項1に記載の混合プラスチックポリプロピレンブレンド。
【請求項3】
リサイクル材料である請求項1又は請求項2に記載の混合プラスチックポリプロピレンブレンド。
【請求項4】
以下の物質、
e)ポリスチレン
f)ポリアミド-6
g)固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を使用することによって決定されたリモネン
h)固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を使用することによって決定された脂肪酸
のうちの1種以上を含有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の混合プラスチックポリプロピレンブレンド。
【請求項5】
前記CRYSTEX QC分析によって得られる可溶部(SF)は、12.0~32.0重量%、好ましくは12.0~20.0重量%の範囲の定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレン含有量(C2(SF))を有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の混合プラスチックポリプロピレンブレンド。
【請求項6】
4以下、好ましくは3以下の臭気(VDA270-B3)を有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の混合プラスチックポリプロピレンブレンド。
【請求項7】
2.3超、好ましくは2.7超の大振幅振動剪断-非線形ファクタ[LAOS-NLF](190℃、1000%)を有し、
【数1】
式中、
’は1次フーリエ係数であり、
’は3次フーリエ係数である
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の混合プラスチックポリプロピレンブレンド。
【請求項8】
少なくとも1200PMa、好ましくは少なくとも1250MPa、より好ましくは少なくとも1300MPa、さらにより好ましくは少なくとも1350MPa、最も好ましくは少なくとも1390MPaの、EN ISO1873-2に記載される射出成形試験片(ドッグボーン形状、4mmの厚さ)を使用する引張弾性率(1mm/分のクロスヘッド速度でのISO527-2;23℃)を有する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の混合プラスチックポリプロピレンブレンド。
【請求項9】
少なくとも8.0kJ/m、好ましくは8.3kJ/mの、EN ISO1873-2に従って調製された80×10×4mmの射出成形試験片に対するISO179-1 eAに従う+23℃でのノッチ付きシャルピー衝撃強さ(NIS)(1eA)(非計装化、+23℃でのISO179-1)を有し、さらに好ましくは前記CRYSTEX QC分析によって得られる可溶部(SF)は、12.0~20.0重量%の範囲の定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレン含有量(C2(SF))を有し、さらに好ましくは前記混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、
72.0~97.0、好ましくは80.0~97.0のL
-5.0~0.0のa
0.0~22.0未満のb
のCIELAB色空間(Lb)、
を有し
さらに、91.0~94.0重量%の範囲のCRYSTEX QC分析に従って決定された結晶部(CF)含有量、及び6.0~9.0重量%のCRYSTEX QC分析に従って決定された可溶部(SF)含有量を有する請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の混合プラスチックポリプロピレンブレンド。
【請求項10】
ペレットの形態にある請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の混合プラスチックポリプロピレンブレンド。
【請求項11】
過酸化物によってビスブレーキングされたものである請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の混合プラスチックポリプロピレンブレンド。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の混合プラスチックポリプロピレンブレンドから作製された成形品。
【請求項13】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の混合プラスチックポリプロピレンブレンドと少なくとも1種のバージンポリオレフィンとを含有するブレンド。
【請求項14】
異相ポリプロピレンである請求項13に記載のブレンド。
【請求項15】
包装用の及び/又は医療分野における請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の混合プラスチックポリプロピレンブレンドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、典型的にはリサイクル物に由来する混合プラスチックポリプロピレンブレンドに関する。
【背景技術】
【0002】
使用済みごみに由来するリサイクル流を精製するための多くの試みがなされてきた。それらの手段の中でも、洗浄、スクリーニング(ふるい分け)、通気、蒸留等が挙げられてもよい。例えば、国際公開第2018046578号パンフレットは、包装廃棄物を含む混合着色ポリオレフィン廃棄物からポリオレフィンリサイクル物を製造するプロセスであって、廃棄物を水で冷間洗浄し、続いて60℃でアルカリ媒体で洗浄し、続いてフレーク色選別を行い、色選別された(白色、透明、他の色)モノポリオレフィンに富む画分を受け取ることを含むプロセスを開示する。次いで、これらの画分は50~155℃で処理される。米国特許第5767230A号明細書は、揮発性不純物を含有するPCRポリオレフィンチップを、臭気活性物質等の揮発性不純物を実質的に低減するのに充分な空塔速度(表面速度)で加熱ガスと接触させることを含むプロセスを記載する。しかしながら、これまでは残留量のベンゼンによる汚染が問題となっていた。使用済みリサイクル物における残留量のベンゼンの起源は、依然として曖昧であるが、医療用包装、食品包装等の分野における最終用途の障害となる。残留量、すなわち微量のベンゼンは、嗅ぎ実験による臭気試験が不可能になるので、特に問題となる。従って、臭気に関してある程度の要求を有する最終使用が阻止される。色は依然として、完全には対処されていない問題として残っている。多くの再使用用途は、通常白色と表されるものに近い材料を必要とする。さらなる問題として、公知のリサイクル物は、射出成形製品に生じる表面汚染によって反映されるように、高くない均質性に悩まされる。投与キャップ、化粧品類(トイレタリー)、スクリューキャップ、キャップ及びクロージャのための射出成形に適したリサイクル物に対する特定の需要が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018046578号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5767230A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、より価値のあるポリプロピレンブレンドを提供するという課題が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、混合プラスチックポリプロピレンブレンドであって、
(i)86.0~94.0重量%の範囲のCRYSTEX QC分析に従って決定された結晶部(結晶性画分)(CF)含有量と、
(ii)6.0~14.0重量%の範囲のCRYSTEX QC分析に従って決定された可溶部(可溶性画分)(SF)含有量と
を有し、
(iii)上記結晶部(CF)は、95.0~99.0重量%、好ましくは96.0~98.0重量%の範囲の定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたプロピレン含有量(C3(CF))を有し、
(iv)上記結晶部(CF)は、1.0~5.0重量%、好ましくは2.0~4.0重量%、より好ましくは2.5~3.5重量%の範囲の定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレン含有量(C2(CF))を有し、
(v)上記可溶部(SF)は、1.10~1.50未満dl/g、好ましくは1.25~1.45dl/gの範囲の固有粘度(iV(SF))を有し、
(vi)当該混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、この混合プラスチックポリプロピレンブレンドに対して0.05~3.0重量%、好ましくは0.05~2.5重量%、任意選択で1.0~2.5重量%のDIN ISO1172:1996に従って焼成分析(TGA)によって測定された無機残渣を有し、
(vii)当該混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、HS GC-MS 80℃/2hの検出限界を超えてベンゼンを含有せず、
(viii)当該混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、
・72.0~97.0、好ましくは80.0~97.0のL
・-5.0~0.0のa
・0.0~22.0未満のb
のCIELAB色空間(L)を有する
混合プラスチックポリプロピレンブレンドを提供する。
【0006】
本発明は、ペレット形態の混合プラスチックポリプロピレンブレンド及び過酸化物によってビスブレーキングされた(粘性破壊された、visbroken)混合プラスチックポリプロピレンブレンドにも関する。本発明はさらに、当該混合プラスチックポリプロピレンブレンドから作製された物品、並びに包装用及び/又は医療分野における使用を提供する。なおさらなる態様において、本発明は、当該混合プラスチックポリプロピレンブレンドと少なくとも1種のバージン(未使用の、virgin)ポリオレフィンとのブレンドに関する。
【0007】
混合プラスチックは、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、木材、紙、リモネン、アルデヒド、ケトン、脂肪酸、金属、及び/又は安定剤の長期分解生成物等の、バージンのポリプロピレンブレンドには通常見出されない少量の化合物の存在として定義される。バージンのポリプロピレンブレンドは、中間使用なしで製造プロセスに直接由来するブレンドを表す。
定義の問題として、「混合プラスチック」は、検出可能な量のポリスチレン及び/又はポリアミド-6及び/又はリモネン及び/又は脂肪酸と同等と考えることができる。
【0008】
当業者であれば、1.10~1.50未満dl/gの範囲の固有粘度(iV(SF))を有する、CRYSTEX QC分析によって得られる可溶部(SF)が、典型的には、リサイクル流からの材料中に見出されることを理解するであろう。本発明の好ましい態様では、CRYSTEX QC分析によって得られる可溶部(SF)は、1.25~1.45未満dl/gの範囲の固有粘度(iV(SF))を有する。
【0009】
驚くべきことに、本発明に係る混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、多くの要求の厳しい最終用途を可能にするより良好な表面特性を提供することが見出された。
【0010】
第1の実施形態において、CRYSTEX QC分析における結晶部(CF)及び可溶部(SF)の量は、
87.0~90.0重量%の結晶部(CF)含有量、及び
10.0~13.0重量%の可溶部(SF)含有量
であることが好ましい。
第2の実施形態では、CRYSTEX QC分析における結晶部(CF)及び可溶部(SF)の量は、
91.0~94.0重量%の結晶部(CF)含有量、及び
6.0~9.0重量%の可溶部(SF)含有量
である。
【0011】
第1の実施形態では、当該混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、
・85.0~97.0のL
・-5.0~0.0のa
・0.0から8.0未満のb
のCIELAB色空間(L)を有する。
【0012】
第2の実施形態では、当該混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、
・72.0~97.0、好ましくは80.0~97.0のL
・-5.0~0.0のa
・0.0~22.0未満、通常、8.0超~22.0未満のb
のCIELAB色空間(L)を有する。
CIELAB色は、選別プロセスによって影響される可能性がある。より黄色がかった材料が許容できるほど、bはより高い。
【0013】
本発明に係る混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、典型的には、2.0~100g/10分のメルトフローレート(ISO1133、2.16kg;230℃)を有する。メルトフローレートは、例えば、限定されないが、拡大生産者責任スキームに、例えばドイツのDSDに由来するか、又は都市固形廃棄物から多数の事前選別画分に選別され、適切な方法でそれらから再び組み合わされた、使用済みプラスチック廃棄物流を分割することによって影響される可能性がある。最終混合プラスチックポリプロピレンブレンドのメルトフローレートを改変するさらなる方法として、過酸化物を最終ペレット化工程において導入することができる。通常、MFRは2.0~100g/10分、好ましくは5.0~80g/10分、より好ましくは10~60g/10分、最も好ましくは12~55g/10分の範囲にある。
【0014】
第2の実施形態のMFRは、好ましくは2.0~12g/10分(ISO1133、2.16kg;230℃)の範囲にある。このMFR範囲は、特に非ビスブレーキング混合プラスチックポリプロピレンブレンドに当てはまる。ビスブレーキングは、第2の実施形態についても30g/10分までのMFRの増加を可能にする。
【0015】
通常、本発明に係る混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、リサイクル材料ということになる。
【0016】
典型的には、リサイクルの性質は、以下の物質の1種以上の存在によって評価することができる。
a)ポリスチレン、
b)ポリアミド-6、
c)固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を使用することによって決定されたリモネン、
d)固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を使用することによって決定された脂肪酸。
【0017】
存在は、検出可能な限界を意味する。固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)におけるリモネン及び脂肪酸の検出限界は0.1ppm未満であり、すなわち、微量のこれらの物質は、リサイクルの性質を確認することを容易に可能にする。
【0018】
以下の量が好ましい。
a)ポリスチレン:0~2.0重量%、より好ましくは0~0.5重量%
b)ポリアミド-6:0~1.5重量%、より好ましくは0~0.5重量%
c)固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を使用することによって決定されたリモネン:0.1ppm~50ppm
d)固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を使用することによって決定された脂肪酸:0.1ppm~200ppm、より好ましくは50ppm。
【0019】
言うまでもなく、a)、b)、c)及びd)の量はできるだけ少なくすべきである。特に好ましい実施形態では、混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、ポリスチレンを含まず、ポリアミドを含まず、これは、両方のポリマーが検出限界未満であることを意味する。
【0020】
本発明に係る混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、好ましくは、12.0~32.0重量%の範囲の定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレンの含有量(C2(SF))を有する、CRYSTEX QC分析によって得られる可溶部(SF)を有する。
【0021】
第1の実施形態では、本発明に係る混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、好ましくは、25.0~32.0重量%の範囲の定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレンの含有量(C2(SF))を有する、CRYSTEX QC分析によって得られる可溶部(SF)を有する。
【0022】
第2の実施形態では、本発明に係る混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、好ましくは、10.0~25.0重量%、より好ましくは12.0~25.0重量%、さらにより好ましくは12.0~20.0重量%、最も好ましくは14.0~19.0重量%の範囲の、定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレンの含有量(C2(SF))を有する、CRYSTEX QC分析によって得られる可溶部(SF)を有する。
【0023】
本発明に係る混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、好ましくは、臭気(VDA270-B3)が4.0以下、好ましくは3.0以下であることを特徴とする。臭気を報告しない多くの商業的リサイクルグレードは、問題のある物質の存在に起因してVDA270下での臭気試験が禁じられているので、実際にはさらに悪いということを理解されたい。
【0024】
さらなる態様では、本発明に係る混合プラスチックポリプロピレンブレンド、特に第1の実施形態の混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、2.7超、好ましくは3.3超の大振幅振動剪断-非線形ファクタ(Large Amplitude Oscillatory Shear - Non-Linear Factor、LAOS-NLF)(190℃;1000%)を有し、
【数1】
式中、
’は1次フーリエ係数であり、
’は3次フーリエ係数である。
【0025】
第2の実施形態では、大振幅振動剪断-非線形ファクタ(LAOS-NLF)(190℃;1000%)は、2.3より単に高い。
【0026】
理論に束縛されることを望むものではないが、ポリマーの処理は、封入された汚染物質(混入物質)によって誘発される分岐に寄与すると考えられる。LAOS-NLFは、材料の約10重量%が軟質ポリプロピレンであるように供給原料を選択することによって影響されてもよい。いくつかの地域は、高度消費者事前選別プラスチックを収集する収集ステーションを運転することを理解されたい。このような非常に価値のあるプラスチック流は市販されており、他の廃棄物処理資源からの他の低品質流(例えば、より軟質のポリプロピレン混合物による)の品質向上を可能にする。より高い量の結晶部(CF)、すなわち、91.0~94.0重量%の結晶部(CF)含有量及び6.0~9.0重量%の可溶部(SF)含有量を有する第2の実施形態は、より限定的であり、これにより、大振幅振動剪断-非線形ファクタ(LAOS-NLF)(190℃;1000%)は、いくらか低い。
なおさらなる態様では、本発明の第1の実施形態に係る混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、少なくとも1300MPa、好ましくは少なくとも1350MPa、最も好ましくは少なくとも1390MPaの、EN ISO1873-2に記載される射出成形試験片(ドッグボーン形状、4mmの厚さ)を使用する引張弾性率(1mm/分のクロスヘッド速度でのISO527-2;23℃)を有する。このような比較的高い曲げ弾性率は、比較的少量のゴム状材料及びプラストマー状材料に起因する。通常、第1の実施形態の引張弾性率(1mm/分のクロスヘッド速度でのISO527-2;23℃)は、1500MPaを超えない。
【0027】
本発明の第2の実施形態に係る混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、少なくとも1200MPa、好ましくは少なくとも1250MPaの、EN ISO1873-2(ドッグボーン形状、4mmの厚さ)に記載される射出成形試験片を使用する引張弾性率(1mm/分のクロスヘッド速度でのISO527-2;23℃)を有する。通常、第2の実施形態の引張弾性率(1mm/分のクロスヘッド速度でのISO527-2;23℃)は、1400MPaを超えない。
【0028】
驚くべきことに、本発明の第1の実施形態に係る混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、メルトフローレート、η(eta)(2.7kPa)及びη(300rad/s)に関して、例外的な時間安定性をもたらす。なおさらなる驚くべき利点として、非常に高い溶融強度が観察された。さらに驚くべきことに、本発明に係る混合プラスチックポリプロピレンブレンドの非常に良好な均質性があることが判明した。例えば、1つのバッチの異なる(選択された)ペレットは、別々に分析した場合、本質的に同じメルトフローレート、η(2.7kPa)及びη(300rad/s)の値を示した。リサイクルされた材料では実質的な変動が予想されるので、これは例外的な知見である。
【0029】
第2の実施形態に係る混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、13.0超のη0.05とη300との比であるずり流動化係数(shear thinning factor、STF)によって反映される、優れた加工性を有することが判明した。
【0030】
本発明に係る混合プラスチックポリプロピレンブレンドのノッチ付きシャルピー衝撃強さ(非計装化、+23℃でISO179-1)は、好ましくは4.0kJ/mより高く、より好ましくは4.5kJ/mよりも高い。第2の実施形態に係る混合プラスチックポリプロピレンブレンドのノッチ付きシャルピー衝撃強さ(非計装化、+23℃でのISO179-1)は、好ましくは6.0kJ/mより高く、より好ましくは8.0kJ/mより高く、最も好ましくは8.3kJ/mより高い。
【0031】
特に好ましい実施形態では、本発明に係る混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、少なくとも8.0kJ/m、好ましくは8.3kJ/mの、EN ISO1873-2に従って調製された80×10×4mmの射出成形試験片に対する+23℃でのISO179-1eAに従うノッチ付きシャルピー衝撃強さ(NIS)(1eA)(非計装化、+23℃でISO179-1)を有し、これに関してさらに、CRYSTEX QC分析によって得られる上記可溶部(SF)は、12.0~20.0重量%の範囲の、定量的13C-NMR分光法によって較正されたFT-IR分光法によって決定されたエチレン含有量(C2(SF))を有し、さらにより好ましくは、当該混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、
・72.0~97.0、好ましくは80.0~97.0のL
・-5.0~0.0のa
・0.0~22.0未満のb
のCIELAB色空間(Lb)を有する。
【0032】
第2の実施形態のこの特に好ましい態様では、CRYSTEX QC分析に従って決定された結晶部(CF)含有量は、好ましくは91.0~94.0重量%の範囲にあり、CRYSTEX QC分析に従って決定された可溶部(SF)含有量は、好ましくは6.0~9.0重量%の範囲にある。
【0033】
本発明、すなわち第1及び第2の実施形態に係る混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、好ましくはペレットの形態で存在する。ペレット化は、少量の揮発性物質に寄与する。
【0034】
一実施形態では、本発明に係る混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、1種以上の過酸化物によってビスブレーキングされる。当該混合プラスチックポリプロピレンブレンドは、任意の他のバージンポリプロピレンブレンドのようにビスブレーキング(visbreaking)に供することができる。本発明に係る混合プラスチックポリプロピレンブレンドがビスブレーキングに供された場合、ビスブレーキングプロセスの分解生成物が、得られたブレンド中に見出される可能性がある。(バージン材料に関して当該技術分野で通常使用されるような)ビスブレーキングプロセスの分解生成物は、不純物とはみなされないことを理解されたい。ビスブレーキングは、第1及び第2の実施形態で行うことができる。
【0035】
さらなる態様では、本発明は、本明細書に記載される混合プラスチックポリプロピレンブレンドから作製された成形品に関する。これは、第1及び第2の実施形態について当てはまる。
【0036】
なおさらなる態様では、本発明は、本明細書に記載される混合プラスチックポリプロピレンブレンドと少なくとも1種のバージンポリオレフィンとを含有するブレンドに関する。再度、これは、第1及び第2の実施形態に当てはまる。例えば、異相ポリプロピレンに含有されるバージンのポリプロピレンホモポリマーは、本明細書に記載される混合プラスチックポリプロピレンブレンドによって置換することができる。
【0037】
本発明は、包装用の及び/又は医療分野における、本発明、すなわち第1及び第2の実施形態に係る混合プラスチックポリプロピレンブレンドの使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】欠陥評価の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明に係る混合プラスチックポリプロピレンブレンドを提供するためのプロセスは、非常に厳しい。このプロセスは、以下の
a)使用済みプラスチックゴミを提供する工程と、
b)ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレン、金属、紙及び木材から作られた物品を選別し、これにより、使用済みプラスチック材料を提供する工程と、
c)着色した物品を選別し、これにより、主に白色のボトル、主に白色のヨーグルトカップ、主に白色の缶、主に無色のパネル、主に無色の部品等を含む使用済みプラスチック材料を提供する工程と、
d)主に白色を有するか又は無色である選択された使用済みプラスチック材料を粉砕し、様々な洗剤を含む水溶液中で洗浄し、続いて乾燥させ、風力選別(ウィンドシフティング、windsifting)し、スクリーニング(ふるい分け)する工程と、
e)前処理された使用済みプラスチック材料を、非ポリオレフィン及び着色部分を除去するためのさらなる選別に供する工程と、
f)上記材料を押し出し、本発明に係るポリプロピレンブレンドをペレットの形態で得る工程と、
g)任意選択で、通気する工程であって、この通気は、好ましくは、少なくとも100℃の温度を有する空気流を使用して、使用済みプラスチック材料を100~130℃の範囲の温度に予熱することによって、そのような温度で実施される、工程と
を含む。
【0040】
都市ごみ収集システムからのいくつかの可能な供給原料が市販されており、使用済みプラスチックごみの提供を可能にしている。消費者の参加に応じて、これらの供給原料の純度は異なり、これは通常、収集システムによって示される。明らかに非常に古い(「古びた(ancient)」)主に無色/本来の(色の)プラスチック物品の存在について、工程b)後に中間体をスクリーニングすることがさらに可能である。主に無色/本来のプラスチック物品の変色(例えば、顕著な黄変)及び/又は顕著な引っ掻き傷は、選別(仕分け)を可能にする。このような工程により、いわゆる高懸念物質を取り除くことができる。Pb、Hg、ポリ臭素化ジフェニルエーテル等のこれらの物質は、かなりしばらくの間禁止されているが、依然として現実世界に存在している。というのは、消費者は、例えばプラスチック玩具の形態のプラスチック物品を長年保管し、最終的にそれらを収集システムに廃棄する傾向があるためである。追加のスクリーニング工程は、上記高懸念物質の分析対照によって支援することができる。
【0041】
臭気制御及び評価は、いくつかの方法によって可能である。概要は、とりわけ、Demets,Rubenら、「Development and application of an analytical method to quantify odour removal in plastic waste recycling processes」、Resources,Conservation and Recycling 161(2020):104907によって提供される。この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0042】
実験
以下の実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の特定の態様及び実施形態を実証するために含まれる。しかしながら、以下の説明は例示に過ぎず、決して本発明を限定するものとして解釈されるべきではないということは、当業者には理解されるはずである。
【0043】
試験方法
a)CRYSTEX
結晶部及び可溶部並びにそれらのそれぞれの特性(IV及びエチレン含有量)の決定
ポリプロピレン(PP)組成物の結晶部(CF)及び可溶部(SF)、並びにそれぞれの画分のコモノマー含量及び固有粘度を、CRYSTEX装置、Polymer Char(ポリマー・チャー)(バレンシア(Valencia)、スペイン)の使用によって分析した。技術及び方法の詳細は、文献(Ljiljana Jeremic、Andreas Albrecht、Martina Sandholzer、及びMarkus Gahleitner (2020) Rapid characterization of high-impact ethylene-propylene copolymer composition by crystallization extraction separation:comparability to standard separation methods、International Journal of Polymer Analysis and Characterization、25:8、581-596)に見出すことができる。
結晶部及び非晶質部を、160℃での溶解、40℃での結晶化及び160℃での1,2,4-トリクロロベンゼン中での再溶解の温度サイクルによって分離する。SF及びCFの定量化及びエチレン含有量(C2)の決定は、統合赤外線検出器(IR4)によって達成され、固有粘度(IV)の決定のために、オンライン2毛細管粘度計が使用される。
【0044】
IR4検出器は、2つの異なる帯域(エチレン-プロピレンコポリマー中の濃度及びエチレン含有量の決定に役立つCH3伸張振動(約2960cm-1を中心とする)及びCH伸張振動(2700~3000cm-1))でIR吸光度を測定する多波長検出器である。IR4検出器は、2重量%~69重量%の範囲の既知のエチレン含量(13C-NMRにより測定)を有する一連の8種のEPコポリマーを用い、それぞれ2~13mg/mlの範囲の様々な濃度で較正される。Crystex分析中に予想される様々なポリマー濃度について、両方の特徴、濃度及びエチレン含有量に同時に遭遇するために、以下の較正方程式を適用した。
【0045】
Conc=a+b×Abs(CH)+c×(Abs(CH))+d×Abs(CH)+e×(Abs(CH+f×Abs(CH)×Abs(CH) (式1)
CH/1000C=a+b×Abs(CH)+c×Abs(CH)+d×(Abs(CH)/Abs(CH))+e×(Abs(CH)/Abs(CH)) (式2)
【0046】
式1の定数a~e及び式2の定数a~fは、最小二乗回帰分析を用いて決定した。
CH/1000Cは、以下の関係を使用してエチレン含有量(重量%)に変換される。
重量%(EPコポリマー中のエチレン)=100-CH/1000TC×0.3 (式3)
可溶部(SF)及び結晶部(CF)の量を、XS較正によって、それぞれ「冷キシレン可溶部」(XCS)量及び冷キシレン不溶部(XCI)画分と相関させ、ISO16152による標準的な重量測定法に従って決定する。XS較正は、2~31重量%の範囲のXS含有量を有する様々なEPコポリマーを試験することによって達成される。決定されたXS較正は線形である。
重量%XS=1.01×重量%SF (式4)
【0047】
親EPコポリマー並びにその可溶部及び結晶部の固有粘度(IV)は、オンライン2毛細管粘度計を用いて決定し、ISO1628-3に従ってデカリン中で標準的な方法によって決定された対応するIVと相関する。較正は、IV=2~4dL/gの様々なEPPPコポリマーを用いて達成される。決定された較正曲線は線形である。
IV(dL/g)=a×Vsp/c (式5)
【0048】
分析する試料を10mg/ml~20mg/mlの濃度で秤量する。PET及びPAのように160℃でTCBに溶解しない存在しうるゲル及び/又はポリマーの注入を回避するために、秤量した試料をステンレス鋼メッシュMW0.077/D0.05mmに充填した。
酸化防止剤として250mg/l 2,6-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を含有する1,2,4-TCBをバイアルに自動充填した後、試料を、400rpmで絶えず撹拌しながら、完全な溶解が達成されるまで、通常60分間、160℃で溶解する。試料の劣化を回避するために、溶解中は、ポリマー溶液をN2雰囲気で覆う。
規定体積の試料溶液を、試料の結晶化及び結晶部分からの可溶部の分離が行われる不活性担体を充填したカラムに注入する。このプロセスを2回繰り返す。第1の注入中、試料全体を高温で測定し、PP組成物のIV[dl/g]及びC2[重量%]を決定する。第2の注入中に、結晶化サイクルで可溶部(低温で)及び結晶部(高温で)を測定する(重量%SF、重量%C2、IV)。
【0049】
b)NMR分光法による微細構造の定量化(較正のみ)
定量的核磁気共鳴(NMR)分光法を較正に使用した。
【0050】
定量的13C{1H}NMRスペクトルは、1H及び13Cについてそれぞれ400.15及び100.62MHzで動作するBruker Avance Neo 400 NMR分光計を用いて、溶液状態で記録した。すべてのスペクトルを、125℃の13Cに最適化した10mm拡張温度プローブヘッドを使用し、すべての空気圧について窒素ガスを用いて記録した。およそ200mgの材料を、およそ3mgのBHT(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、CAS128-37-0)及び、G.Singh、A.Kothari、V.Gupta、Polymer Testing 2009、28(5)、475に記載されているように、溶媒中の緩和剤の60mM溶液を与えるクロム(III)アセチルアセトネート(Cr(acac)3)と共に約3mlの1,2-テトラクロロエタン-d2(TCE-d2)に溶解した。
【0051】
均一溶液を確保するために、ヒートブロック中での最初の試料調製のあと、そのNMRチューブを回転式オーブンの中で少なくとも1時間さらに加熱した。磁石の中へ挿入したあと、チューブを10Hzで回転させた。正確なエチレン含有量の定量のために必要である高分解能及び定量性を主な理由としてこの設定を選んだ。最適化した先端角(tip angle)、1sの繰り返し時間(recycle delay)、及びバイレベルWALTZ16デカップリングスキーム(Z.Zhou、R.Kuemmerle、X.Qiu、D.Redwine、R.Cong、A.Taha、D.Baugh、B.Winniford、J.Mag.Reson. 187(2007)225及びV.Busico、P.Carbonniere、R.Cipullo、C.Pellecchia、J.Severn、G.Talarico、Macromol.Rapid Commun. 2007、28、1128に記載されているとおり)を使用して、NOEを伴わない標準的なシングルパルス励起を採用した。1スペクトルあたり全部で6144(6k)の過渡信号を取得した。
【0052】
定量的13C{1H}NMRスペクトルを処理し、積分し、関連の定量的特性を積分値から求めた。すべての化学シフトは、溶媒の化学シフトを使用して、30.00ppmのエチレンブロック(EEE)の中央のメチレン基を間接的に基準とした。このアプローチにより、この構造単位が存在しない場合でも比較可能な基準設定が可能になった。
【0053】
エチレンの組み込みに対応する特徴的なシグナルを観察し(Cheng,H.N.、Macromolecules 1984、17、1950に記載されているとおり)、コモノマー分率を、ポリマー中のすべてのモノマーに対するポリマー中のエチレンの分率として算出した。
fE=(E/(P+E)
【0054】
コモノマー分率は、W-J.Wang及びS.Zhu、Macromolecules 2000、33 1157の方法を使用して、13C{1H}スペクトルの全スペクトル領域にわたる複数のシグナルの積分を通して定量した。積分領域は、直面するコモノマー含有量の全範囲にわたる適用性を高めるためにわずかに調整した。
【0055】
モルパーセントでのコモノマー組み込みはモル分率から計算した。
E[モル%]=100×fE
重量パーセントでのコモノマー組み込みはモル分率から計算した。
E[重量%]=100×(fE×28.06)/((fE×28.06)+((1-fE)×42.08))
【0056】
c)引張弾性率及び引張破断ひずみは、EN ISO1873-2に記載の射出成形試験片(ドッグボーン形状、厚さ4mm)を用いてISO527-2(クロスヘッド速度=1mm/分;試験速度50mm/分、23℃)に従って測定した。測定は、試験片の96時間(h)のコンディショニング時間後に行う。
【0057】
d)衝撃強さは、EN ISO1873-2に従って調製した80×10×4mmの射出成形試験片に対して+23℃でのISO179-1eAに準拠したノッチ付きシャルピー衝撃強さ(1eA)(非計装化、+23℃でのISO179-1)として決定した。
【0058】
e)無機残渣:Perkin Elmer(パーキンエルマー) TGA8000を使用するDIN ISO1172:1996に準拠したTGA。約10~20mgの材料を白金パンに入れた。温度を50℃で10分間平衡化し、その後、20℃/分の加熱速度で、窒素下で950℃まで上昇させた。灰分は、850℃における重量%として評価した。
【0059】
f)MFR:メルトフローレートは、230℃、2.16kgの荷重(MFR)下で測定した。メルトフローレートは、ISO1133に規格化された試験装置が2.16kgの荷重の下で230℃の温度で10分以内に押し出す、グラム単位のポリマーの量である。
【0060】
g)金属の量
x線蛍光(XRF)によって決定した。
【0061】
h)紙、木材の量(対照目的のためのみ)
紙及び木材は、粉砕、浮選、顕微鏡観察及び熱重量分析(TGA)を含む従来の実験室法によって決定することができる。
【0062】
i)ベンゼン含有量
以下に記載されるHS GC-MS 80℃/2hによる。
静的ヘッドスペース分析
適用した静的ヘッドスペース(スタティックヘッドスペース)ガスクロマトグラフィー質量分析(HS/GC/MS)法のパラメータをここに記載する。
【0063】
4.000±0.100gの試料を20mlのHSバイアル中で秤量し、PTFEキャップで密封した。
【0064】
質量分析計をスキャンモードで操作し、全イオンクロマトグラム(TIC)を各分析について記録した。適用可能な方法パラメータ及びデータ評価に関するより詳細な情報を以下に示す。
【0065】
・HSパラメータ(Agilent(アジレント) G1888ヘッドスペースサンプラー)
バイアル平衡化時間: 120分
オーブン温度: 80℃
ループ温度: 205℃
トランスファーライン温度:210℃
低振盪
・GCパラメータ(Agilent 7890A GCシステム)
カラム: ZB- WAX 7HG-G007-22(30m×250μm×1μm)
キャリアガス: ヘリウム 5.0
流量: 2ml/分
スプリット: 5:1
GCオーブンプログラム:35℃、0.1分
10℃/分で250℃まで
250℃で1分
・MSパラメータ(Agilent 5975C inert XL MSD)
取得モード: スキャン
スキャンパラメータ:
Low mass(低質量): 20
High mass(高質量):200
Threshold(閾値): 10
・ソフトウェア/データ評価
MSD ChemStation E.02.02.1431
MassHunter GC/MS Acquisition B.07.05.2479
AMDIS GC/MS Analysis バージョン2.71
NIST Mass Spectral Library バージョン 2.0 g
・AMDISデコンボリューションパラメータ
Minimum match factor(最小合致ファクタ): 80
Threshold(閾値): Low(低)
Scan direction(スキャン方向): High to Low(高→低)
Data file format(データファイル形式): Agilent files(アジレントファイル)
Instrument type(装置タイプ): Quadrupole(四重極)
Component width(成分幅): 20
Adjacent peak subtraction(隣接ピーク引き算): Two(2)
Resolution(分解能): High(高)
Sensitivity(感度): Very high(非常に高い)
Shape requirements(形状要件): Medium(中)
Solvent tailing(溶媒テーリング): 44 m/z
Column bleed(カラムブリード): 207 m/z
Min.model peaks(最小モデルピーク): 2
Min.S/N(最小S/N): 10
Min.certain peaks(最小特定ピーク): 0.5
【0066】
データ評価
TICデータを、AMDISソフトウェアを用いてさらにデコンボリューションし(上記のパラメータを参照)、質量スペクトルライブラリ(NIST)に基づくカスタム標的ライブラリと比較した。このカスタム標的ライブラリには、選択した物質(例えばベンゼン)のそれぞれの質量スペクトルが含まれていた。認識されたピークが80のminimum match factorを示し、経験豊富な質量分析担当者が合致を確認した場合のみ、物質は「仮同定された」として認められた。
この研究において、「検出限界未満(<LOD)」という記述は、match factorが80未満(AMDIS)であるか又はピーク自体が認識さえされなかったかのいずれかである条件を指す。結果は、測定された試料、測定時刻、及び適用されたパラメータのみに言及する。
【0067】
j)CIELAB色空間(L
DIN EN ISO11664-4に従って測定されるCIE L均等色空間において、色座標は以下の通りである:L-明度座標;a-赤/緑座標であり、+aは赤を示し、-aは緑を示す;b-黄色/青色座標であり、+bは黄色を示し、-bは青色を示す。L、a、及びbの座標軸は、3次元CIE色空間を定義する。標準コニカミノルタColorimeter CM-3700A。
【0068】
k)臭気VDA270-B3
VDA270は、自動車におけるトリム材料の臭気特性の決定である。この研究では、臭気は、VDA270(2018)変法B3に従って決定する。それぞれの試料の臭気は、瓶の蓋をできるだけ低く持ち上げた後、VDA270スケールに従って各評価者によって評価される。6段階スケールは、以下の等級からなる:等級1:知覚できない、等級2:知覚できるが、不快ではない、等級3:明らかに知覚できるが不快ではない、等級4:不快である、等級5:強く不快である、等級6:許容できない。評価者らは、評価中は静かなままであり、試験中に個々の結果を議論することによって互いに偏ることは許されない。評価者らは、その評価を別の試料を試験した後に調整することもできない。統計的理由から(及びVDA270によって受け入れられるように)、評価者らは、評価において工程全体を使用することを強いられる。従って、臭気等級は、すべての個々の評価の平均に基づき、整数に丸められる。
【0069】
l)リモネン検出
リモネンの定量は、標品添加による固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を使用して行うことができる。
50mgの粉砕試料を20mLのヘッドスペースバイアル中で秤量し、異なる濃度のリモネン及びガラスコーティングされた磁気撹拌子を加えた後、シリコーン/PTFEで裏打ちされた磁気キャップでバイアルを閉じる。マイクロキャピラリー(10pL)を使用して、既知の濃度の希釈リモネン標品を試料に加える。0ng、2ng、20ng及び100ngの添加は、0mg/kg、0.1mg/kg、1mg/kg及び5mg/kgのリモネンに等しく、加えて6.6mg/kg、11mg/kg及び16.5mg/kgのリモネンの標品量を、本願において試験した試料のいくつかと組み合わせて使用する。定量にはSIMモードで得られるイオン93を用いる。揮発性画分の濃縮は、2cmの安定フレックス50/30pm DVB/Carboxen/PDMS繊維を用いたヘッドスペース固相マイクロ抽出によって60℃で20分間行う。脱着は、GCMSシステムの加熱した注入ポート中で270℃で直接行う。
GCMSパラメータ:
カラム:30m HP 5 MS 0.25×0.25
注入器:スプリットレス、0.75mm SPMEライナー、270℃
温度プログラム:-10℃(1分)
キャリアガス:ヘリウム5.0、31cm/秒線速度、定流量
MS:シングル四重極型、直接インターフェース、280℃インターフェース温度
取得:SIMスキャンモード
スキャンパラメータ:20~300amu
SIMパラメータ:m/Z93、100msの滞留時間
【0070】
m)脂肪酸検出
脂肪酸の定量は、標品添加によるヘッドスペース固相マイクロ抽出(HS-SPME-GC-MS)を使用して行う。
50mgの粉砕試料を20mLのヘッドスペースバイアル中で秤量し、異なる濃度のリモネン及びガラスコーティングされた磁気撹拌子を加えた後、シリコーン/PTFEで裏打ちされた磁気キャップでバイアルを閉じる。10μLのマイクロキャピラリーを使用して、既知の濃度の希釈遊離脂肪酸混合物(酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸及びオクタン酸)標品を3つの異なるレベルで試料に添加する。0ng、50ng、100ng及び500ngの添加は、0mg/kg、1mg/kg、2mg/kg及び10mg/kgの各個々の酸に等しい。定量化のために、SIMモードで得られるイオン60を、プロパン酸を除くすべての酸に使用し、プロパン酸の場合にはイオン74を使用する。
GCMSパラメータ:
カラム:20m ZB Wax plus 0.25×0.25
注入器:ガラス裏打ちスプリットライナーで250℃で5:1に分割する
温度プログラム:40℃(1分)、6℃/分で120℃まで、15℃で245℃まで(5分)
キャリア:ヘリウム5.0、40cm/秒線速度、定流量
MS:シングル四重極型、直接インターフェース、220℃インターフェース温度
取得:SIMスキャンモード
スキャンパラメータ:46~250amu 6.6スキャン/秒
SIMパラメータ:m/z60、74、6.6スキャン/秒
【0071】
n)ポリアミド-6及びポリスチレンの存在
FTIR分光法によって、1601cm-1(PS)及び3300cm-1(PA6)におけるバンドの吸収を使用する。
【0072】
o)小板上の汚染の決定
小板(プラーク)を150×80×2mmの寸法で射出成形する。次いで、高解像度画像(写真)を、5つの小板上で撮影する(それらを互いに近接して配置する)。次いで、画像を、汚染に起因する視覚的欠陥(肉眼による)の数の自動計数を可能にするソフトウェアによって分析する。
【0073】
p)動的剪断測定(η(2.7kPa)及びη(300rad/s))
ポリマーの融液(melt)の動的剪断測定による特性解析は、ISO規格6721-1及び6721-10に従う。測定は、25mm平行平板の配置を備えるAnton Paar(アントンパール) MCR501応力制御型回転レオメータで実施した。測定は、窒素雰囲気を使用し、歪みを線形粘弾性領域内に設定して圧縮成形平板で行った。振動剪断試験は、0.01~600rad/sの周波数範囲を適用し、ギャップを1.3mmに設定して230℃で行った。
【0074】
動的剪断実験では、正弦波的に変化する剪断歪み又は剪断応力(それぞれ歪み及び応力を制御したモード)でプローブを均一な変形に供する。制御歪み実験では、下記式で表すことができる正弦波歪みにプローブを供する。
γ(t)=γsin(ωt) (1)
加えた歪みが線形粘弾性領域の範囲内にあれば、得られる正弦波応力応答は下記式で与えられうる。
σ(t)=σsin(ωt+δ) (2)
上記式中、
σ及びγはそれぞれ応力振幅及び歪み振幅であり、
ωは角周波数であり、
δは位相差(加えた歪みと応力応答との間の損失角)であり、
tは時間である。
【0075】
動的試験結果は、典型的にはいくつかの異なるレオロジー関数、つまり剪断貯蔵弾性率G’、剪断損失弾性率G”、複素剪断弾性率G、複素剪断粘度η、動的剪断粘度η’、複素剪断粘度の異相成分η”及び損失正接tanδによって表され、上記レオロジー関数は以下のとおりに表すことができる。
【0076】
【数2】
【0077】
η(xkPa)は、式9に従って決定される。
η(xkPa)=(G=xkPa)に対するη[Pa.s] (9)
【0078】
例えば、η(2.7kPa)は、2.7kPaに等しい複素弾性率の値に対して決定される複素粘度の値によって定められる。
η(xrad/s)は、式10に従って決定される。
η(xrad/s)=(ω=xrad/s)に対するη[Pa.s] (10)
例えば、η(300rad/s)は、300rad/sの周波数掃引で決定される複素粘度の値によって定められる。
【0079】
q)ずり流動化係数(STF)は、以下のように定義される。
【数3】
値は、Rheoplusソフトウェアによって定義される単点補間手順によって決定する。所与のG値に実験的に到達しない状況では、値は、前と同じ手順を使用して、外挿によって決定する。両方の場合(補間又は外挿)において、Rheoplusからのオプション「- Interpolate y-values to x-values from parameter(y値をパラメータからのx値に補間する)」及び「logarithmic interpolation type(対数補間タイプ)」を適用した。
【0080】
参考文献:
[1] 「Rheological characterization of polyethylene fractions」、Heino,E.L.、Lehtinen, A.、Tanner J.、Seppala,J.、Neste Oy、ポルヴォー(Porvoo)、フィンランド、Theor.Appl.Rheol.、Proc.Int.Congr.Rheol、11th(1992)、1、360-362
[2] 「The influence of molecular structure on some rheological properties of polyethylene」、Heino,E.L.、Borealis Polymers Oy、ポルヴォー、フィンランド、Annual Transactions of the Nordic Rheology Society、1995.)
[3] Definition of terms relating to the non-ultimate mechanical properties of polymers、Pure & Appl.Chem.、第70巻、第3巻、701-754頁、1998.
【0081】
r)大振幅振動剪断(LAOS)
剪断流下での非線形粘弾性挙動の検討は、大振幅振動剪断に依って行った。この方法は、所与の時間tの間、所与の角周波数ωで課される正弦波歪み振幅γ0の印加を必要とする。印加される正弦波歪みが充分に高いならば、非線形応答が生成される。この場合、応力σは、印加された歪み振幅、時間及び角周波数の関数である。これらの条件下では、非線形応力応答は、依然として周期関数である。しかしながら、それはもはや単一の高調波正弦波(harmonic sinusoid)で表すことができない。非線形粘弾性応答から生じる応力[0-0]は、高調波寄与を含むフーリエ級数によって表すことができる。
σ(t,ω,γ)=γ.Σ[G’(ω,γ).sin(nωt)+G”(ω,γ).cos(nωt)] (1)
上記式中、
σは応力応答であり、
tは時間であり、
ωは周波数であり、
γは歪み振幅であり、
nは高調波数(harmonic number)であり、
G’はn次の弾性フーリエ係数であり、
G”はn次の粘性フーリエ係数である。
【0082】
非線形粘弾性応答を、大振幅振動剪断(LAOS)を適用して分析した。時間掃引測定は、標準双円錐ダイと連結したAlpha Technologies(アルファテクノロジーズ)製のRPA2000レオメータで行った。測定の過程の間、試験チャンバーを密封し、約6MPaの圧力を加える。LAOS試験は、190℃の温度、0.628rad/sの角周波数及び1000%の歪みを適用して行う。定常状態条件に達することを確実にするために、非線形応答は、測定あたり少なくとも20サイクルが完了した後にのみ決定する。大振幅振動剪断非線形ファクタ(LAOS_NLF)は、
【数4】
によって定義され、上記式中、
’は1次フーリエ係数であり、
’は3次フーリエ係数である。
【0083】
[1] J.M.Dealy、K.F.Wissbrun、Melt Rheology and Its Role in Plastics Processing:Theory and Applications、Van Nostrand Reinhold編、ニューヨーク(1990)
[2] S.Filipe、Non-Linear Rheology of Polymer Melts、AIP Conference Proceedings 1152、168-174頁(2009)
[3] M.Wilhelm、Macromol.Mat.Eng. 287、83-105(2002)
[4] S.Filipe、K.Hofstadler、K.Klimke、A.T.Tran、Non-Linear Rheological Parameters for Characterisation of Molecular Structural Properties in Polyolefins、Proceedings of Annual European Rheology Conference、135(2010)
[5] S.Filipe、K.Klimke、A.T.Tran、J.Reussner、Proceedings of Novel Non-Linear Rheological Parameters for Molecular Structural Characterisation of Polyolefins、Novel Trends in Rheology IV、ズリーン(Zlin)、チェコ共和国(2011)
[6] K.Klimke、S.Filipe、A.T.Tran、Non-linear rheological parameters for characterization of molecular structural properties in polyolefins、Proceedings of European Polymer Conference、グラナダ(Granada)、スペイン(2011)
【0084】
実施例
使用済みプラスチックゴミを、ポリマーの性質及び色に関して粗く選別した。さらなる工程において、白色及び無色の部分を選択した。選択した部分を粉砕し、様々な洗剤を含む水溶液中で洗浄し、続いて乾燥させ、スクリーニングした。この前処理した使用済みプラスチック材料をさらに選別し、これにより着色した部分を減少させた。ペレットに押し出した後、そのペレットを通気に供した(通気はIE3のみで行った;通気条件:120℃の空気で、予熱基板)。
【0085】
実施例IE4については、同じプロセスに従った。しかしながら、ポリマーの性質及び色に関して粗く選別した後、使用済みプラスチックゴミを、主に無色/本来のプラスチック物品の変色(例えば、顕著な黄変)及び/又は顕著な引っ掻き傷によって認識可能な、明らかに非常に古い(「古びた」)主に無色/本来のプラスチック物品に関してスクリーニングした。このような非常に古い(「古びた」)主に無色/本来のプラスチック物品を選別し、これにより、厳密な標準に従い、すなわち疑義がある場合、問題の物品を選別して除外した。これは、多くの国で約10年を超えて禁止されているポリ臭素化ジフェニルエーテルの組み込みを排除するために行った。中間体を、高懸念物質に関してもスクリーニングした。部分的な整経(warping)は不要であることが判明した。
【0086】
すべての例をCRYSTEX QC分析に供した。
【0087】
【表1(1)】
【表1(2)】
【表1(3)】
【表1(4)】
【0088】
先行技術は、本発明のリサイクル組成物によって富化されていることが分かる。本発明のリサイクル組成物は、バージン組成物及びバージンのビスブレーキングした組成物と比較した場合、衝撃に関してわずかな欠点のみを示した。さらに、高いLAOS-NLFによって反映される加工性は、IE2及びIE3について実際に良好であった。VOC(VDA)は、IE3及びIE4について驚くほど良好であった。
比較例CE3は、バージンランダム異相ポリプロピレンコポリマーであった。従って、引張弾性率は、エチレンの総量(C2(CF)及びC2(SF)並びにCF及びSFの量によって反映される)にしては比較的高かった。しかしながら、これはリサイクル物ではなく、LAOS-NLFによって反映される加工性は、7.1kJ/mのシャルピーNISで比較的悪い。
比較例CE4は、(メルトフローレートをIE4とほぼ同じ値に適合させるために)ビスブレーキングに供したバージンランダムコポリマーであった。CE4は、CE3と比較して著しく低剛性であり、7.6kJ/mのシャルピーNISを有していた。
発明例IE4は、CE3よりもわずかに高い剛性を有し、同時に、8.5kJ/mの最良の全体シャルピーNISを有していた。発明例IE1~3はすべて、著しく高い剛性を有し、同時に、中程度のシャルピーNISという欠点のみを有した。
【0089】
上記例を、射出成形した試験物品における表面欠陥の評価に供した。市販されている最良の市販グレード(CE1及びCE2)を比較した。結果を図1に示す。
【0090】
CE1:920kg/mの密度及び24g/10分のMFR(230℃/2.16kg)を有するVan Werven(ファン・ヴェルフェン)からのPPオフホワイト製品である。
【0091】
CE2:Morssinkhof-Rymoplast(モルシンクホフ・リモプラスト)は、921kg/mの密度及び27g/10分のMFR(230℃/2.16kg)を有する、名称MOPRYLENE(登録商標)のリグラインド(粉砕再生材料)及びリグラニュレート(造粒再生材料)を供給する。
【0092】
図1は欠陥評価の結果を示す。本発明の混合プラスチックポリプロピレンブレンドが、最も少ない数の欠陥及びその均等な分布をもたらしたことが分かる。
【0093】
CE3は、スリップ添加剤及びブロッキング防止添加剤を含まないランダム異相コポリマーである。これは、ランダムコポリマーPPマトリクス及びC3C2ゴムを有する。
【0094】
CE3は、前重合反応器(予備重合反応器、プレポリマー化反応器)、1つのスラリーループ反応器、第1の気相反応器及び第2の気相反応器の構成を有するBorstarポリプロピレンプラントにおいて製造した。ループ反応器及び第1の気相反応器を使用してマトリクスを製造し、第2の気相反応器はゴム相用であった。
各反応器中の反応物の化学組成を調整して、所望のポリマー設計に到達させた。
【0095】
CE4は、前重合反応器、1つのスラリーループ反応器及び1つの気相反応器の構成を有するBorstarポリプロピレンプラントにおいて製造されたランダムコポリマーである。
【0096】
【表2】
【0097】
重合後、ランダムコポリマーCE4のメルトフローレートは、8.0g/10分の目標MFR2を達成するために適切な量のLuperox 101(2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン)を使用して、200~230℃の二軸押出機中での配合工程中にビスブレーキングによって改変した。
上記配合工程中に、以下の添加剤1000ppmのIrganox B215(ペンタエリスリチル-テトラキス(3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、CAS番号6683-19-8及びトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、CAS番号31570-04-4の1:2混合物、BASF SE(ビーエーエスエフ)、ドイツから市販されている)並びに酸捕捉剤(酸スカベンジャー)としての150ppmの酸化マグネシウム(CAS番号1309-48-4)を配合工程中に添加した。
【0098】
CE3及びCE4の重合プロセスで使用した触媒は、以下のように調製した。
使用した化学物質:
Chemtura(ケムチュラ)により提供されたブチルエチルマグネシウム(Mg(Bu)(Et)、BEM)の20%トルエン溶液
Amphochem(アムフォケム)により提供される2-エチルヘキサノール、
Dow(ダウ)により提供される3-ブトキシ-2-プロパノール-(DOWANOL(商標)PnB)、
SynphaBase(シンファベース)によって提供されるビス(2-エチルヘキシル)シトラコネート
Millenium Chemicals(ミレニアム・ケミカルズ)によって提供されるTiCl4、
Aspokem(アスポケム)によって提供されるトルエン、
Evonik(エボニック)によって提供されるViscoplex(登録商標)1-254
Chevron(シェブロン)によって提供されるヘプタン
【0099】
Mgアルコキシ化合物の調製
Mgアルコキシド溶液は、20Lのステンレス鋼反応器中で、20重量%のブチルエチルマグネシウム(Mg(Bu)(Et))のトルエン溶液11kgに、4.7kgの2-エチルヘキサノールと1.2kgのブトキシプロパノールとの混合物を撹拌(70rpm)しながら添加することによって調製した。添加中、反応器の内容物を45℃未満に維持した。添加が完了した後、反応混合物の混合(70rpm)を60℃で30分間続けた。室温に冷却した後、2.3kgのドナー、ビス(2-エチルヘキシル)シトラコネートを、温度を25℃未満に維持して、Mgアルコキシド溶液に添加した。撹拌(70rpm)しながら15分間混合を続けた。
【0100】
固体触媒成分の調製
20.3kgのTiCl4及び1.1kgのトルエンを20Lのステンレス鋼反応器に加えた。350rpmで混合し、温度を0℃に保ちながら、調製したMgアルコキシ化合物14.5kgを1.5時間かけて添加した。1.7LのViscoplex(登録商標)1-254及び7.5kgのヘプタンを添加し、0℃で1時間混合した後、形成されたエマルジョンの温度を1時間以内に90℃に上昇させた。30分間の混合を止めた後、触媒液滴を固化させ、形成された触媒粒子を沈降させた。沈降(1時間)後、上清液をサイホンで吸い出した。次いで触媒粒子を45kgのトルエンで、90℃で20分間洗浄し、続いてヘプタンで2回洗浄した(30kg、15分)。1回目のヘプタン洗浄中に温度を50℃まで低下させ、2回目の洗浄中に室温まで低下させた。
【0101】
あるいは、ランダムコポリマー(比較CE3、CE4)の重合のために、国際公開第2020/064673A1号パンフレットの実施例セクションに「参照触媒」として記載されるように調製したフタル酸エステルを含まないZiegler Natta(チーグラーナッタ)触媒を使用する。
【0102】
このようにして得られた触媒を、共触媒としてトリエチルアルミニウム(TEAL)及びドナーとしてジシクロペンチルジメトキシシラン(D-ドナー)とともに使用した。
IE4を、高懸念物質(SVHC)に関してさらに評価した。結果を下記表2に示す。
【0103】
【表3】
【0104】
RoHS - Restriction of Hazardous Substances in Electrical and Electronic Equipment(電気・電子機器における特定有害物質の使用制限)
RL - 報告限界(試験データは、それが≧RLである場合に示される。RLは規制限界ではない)
【0105】
SVHCについての方法(REACH規則1907/2006/EUに従う)
全分析をSGSで行った。
SGSにおける組織内方法は、ICP-OES、UV-VIS、GC-MS、HPLC-DAD/MS及び比色法によって分析するCTS-HL-114-1、CTS-HL-234-5である
【0106】
ICP-OESによるカドミウムの決定、IEC62321-5:2013-6に準拠した
ICP-OESによる鉛の決定、IEC62321-5:2013-6に準拠した
CV-AASによる水銀の決定、IEC62321-4:2013-6に準拠した
ICP-OESによるクロムの決定、IEC62321-5:2013-6に準拠した
【0107】
クロム(VI)の決定、IEC62321に準拠した、->非金属試料:
イオンクロマトグラフィーによる決定、IEC62321-7-2:2017-03に準拠した
注釈:腐食防止剤中のCr(VI)の濃度は、貯蔵時間及び条件に応じて変化する可能性がある。
【0108】
GC/MSによるPBB/PBDE(難燃剤)の決定、IEC62321-6:2015-6に準拠した
注釈:IECによれば、PBB/PBDEについての試験は、ポリマーについてのみ意図される。
【0109】
軟化剤DEHP、DBP;BBP、DIBP及びREACHによる拡張リスト(IEC62321-8:2017、GC-MS)
【0110】
THFを用いた抽出後のGC/MSによるフタル酸エステルの決定、IEC62321-8:2017-3に準拠した;認定下にない方法
注釈:IECによれば、フタル酸エステルについての試験は、ポリマーについてのみ意図される。
【0111】
CE3は、比較目的で評価したバイモーダルバージンランダムポリプロピレンである。バージンランダムポリプロピレンは、衝撃に関して驚くべき利益を有する本発明のブレンドによって置換されてもよいことが分かる。
【0112】
さらなる応用例として、射出成形バケツを標準的なプロセス設定で製造した。表面品質は、同等のバージン材料の表面品質と同程度に良好であることが判明した。厚さ分布及び機械的特性も優れていた。
図1
【国際調査報告】