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特表2024-512032エナンチオマー富化形態での(2Z)-2-(フェニルイミノ)-1,3-チアゾリジンE-4-オン-スルホキシド誘導体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】エナンチオマー富化形態での(2Z)-2-(フェニルイミノ)-1,3-チアゾリジンE-4-オン-スルホキシド誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 277/54 20060101AFI20240311BHJP
   C07B 53/00 20060101ALI20240311BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20240311BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240311BHJP
【FI】
C07D277/54
C07B53/00 B
B01J31/22 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558391
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2022057479
(87)【国際公開番号】W WO2022200344
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】21165202.9
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】313006625
【氏名又は名称】バイエル・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ヒムラー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ハーン,ユーリア・ヨハンナ
(72)【発明者】
【氏名】ガレンカンプ,ダニエル
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA21A
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC29A
4G169BC50A
4G169BC51A
4G169BC59A
4G169BC62A
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BD01A
4G169BD01B
4G169BD02A
4G169BD02B
4G169BD04A
4G169BD04B
4G169BD06A
4G169BD06B
4G169BD11A
4G169BD12A
4G169BD12B
4G169BD13B
4G169BD15B
4G169BE08A
4G169BE11A
4G169BE11B
4G169BE19A
4G169BE20A
4G169BE20B
4G169BE33A
4G169BE33B
4G169BE34B
4G169BE45A
4G169CB07
4G169CB57
4G169CB61
4G169DA02
4H006AA02
4H006AC62
4H006AC81
4H006BA07
4H006BA10
4H006BA14
4H006BA16
4H006BA19
4H006BA46
4H006BA60
4H006BB11
4H006BB12
4H006BB15
4H006BB17
4H006BB20
4H006BB25
4H006BE32
4H039CC90
(57)【要約】
本発明は、エナンチオマー的に純粋な又はエナンチオマー富化形態での式(I)の2-(フェニルイミノ)-1,3-チアゾリジン-4-オン-スルホキシド誘導体の触媒による製造方法[式(I)中、Y、Y、R、R及びRは明細書中で示された意味を有する。]に関する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エナンチオマー的に純粋な又はエナンチオマー富化形態で下記式(I)の2-(フェニルイミノ)-1,3-チアゾリジン-4-オンスルホキシド誘導体:
【化1】
[式中、
及びYはそれぞれ独立に、フッ素、塩素又は水素であり、
及びRはそれぞれ独立に、水素、(C-C12)アルキル、(C-C12)ハロアルキル、シアノ、ハロゲン又はニトロであり、
は、水素又は置換されていても良いC-C10-アリール、(C-C12)アルキル又は(C-C12)ハロアルキルであり、当該置換基はハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C10)シクロアルキル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、(C-C)アルコキシ、(C-C)ハロアルキル及び(C-C)ハロアルコキシから、特にはフッ素、塩素、(C-C)アルキル、(C-C)シクロアルキル、シクロプロピル、シアノ、(C-C)アルコキシ、(C-C)ハロアルキル及び(C-C)ハロアルコキシから選択される。]
を製造する方法であって、エナンチオマー富化キラル触媒、有機酸の塩及び酸化剤である添加剤の存在下、下記式(II)のスルフィド:
【化2】
[式中、Y、Y、R、R及びRは上記で定義の通りである。]
を反応させることを含む方法。
【請求項2】
エナンチオマー比が50.5:49.5~100:0(R):(S)又は(S):(R)エナンチオマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
及びYがそれぞれ独立に、フッ素、塩素又は水素であり、
及びRがそれぞれ独立に、フッ素、塩素、(C-C)アルキル又は水素であり、
が水素又は置換されていても良いフェニル、(C-C)アルキル又は(C-C)ハロアルキルであり、前記置換基がハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C10)シクロアルキル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、(C-C)アルコキシ、(C-C)ハロアルキル及び(C-C)ハロアルコキシから選択される、請求項1又は2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
及びYがそれぞれ独立に、フッ素又は水素であり、
及びRがそれぞれ独立に、フッ素、塩素、水素又はメチルであり、
が水素、(C-C)アルキル又は(C-C)ハロアルキルである、請求項1~3のいずれか1項の記載の方法。
【請求項5】
及びYがフッ素であり、
及びRがそれぞれ独立に、フッ素又はメチルであり、
が(C-C)ハロアルキルである、請求項1~4のいずれか1項の記載の方法。
【請求項6】
及びYがフッ素であり、Rがメチルであり、Rがフッ素であり、RがCHCFである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記使用される酸化剤が有機又は無機過酸化物から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記使用されるキラル触媒がキラル金属-配位子錯体であり、前記金属が遷移金属又は遷移金属誘導体である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記配位子が下記式(III)の化合物である、請求項8に記載の方法。
【化3】
[式中、
及びRはそれぞれ独立に、水素、(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキル、(C-C)アルキルフェニル、フェニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、シアノ(C-C)アルキル、ヒドロキシ(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシカルボニル(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、(C-C)ハロアルコキシ又は(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルであり、
は(C-C)アルキル、ハロゲン-、シアノ-、ニトロ-、アミノ-、ヒドロキシ-又はフェニル-置換された(C-C)アルキル、カルボキシル、カルボニル(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシカルボニル(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ又はジ(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルであり、
は水素、(C-C)アルキル、(C-C)アルキルフェニル、アリール又はアリール(C-C)アルキルであり、
キラル炭素原子はによって識別される。]
【請求項10】
前記配位子が下記式(IIIa)の化合物である、請求項8に記載の方法。
【化4】
[式中、
及びRはそれぞれ独立に、水素、(C-C)アルキル、(C-C)アルキルフェニル、フェニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、シアノ(C-C)アルキル、ヒドロキシ(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシカルボニル(C-C)アルキル又は(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルであり、
は(C-C)アルキル、ハロゲン-、シアノ-、ニトロ-、アミノ-、ヒドロキシ-又はフェニル-置換された(C-C)アルキル、カルボキシル、カルボニル(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシカルボニル(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ又はジ(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルであり、
は、水素、(C-C)アルキル、(C-C)アルキルフェニル、アリール又はアリール(C-C)アルキルであり、
キラル炭素原子はによって識別される。]
【請求項11】
及びRがそれぞれ独立に、水素又は塩素であり、Rがヒドロキシ-置換されたC-アルキルを表し、Rがtert-ブチルである、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記遷移金属がモリブデン、ジルコニウム、鉄、マンガン若しくはチタン又はこれらの金属のうちの一つの誘導体である、請求項8~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記遷移金属が鉄又は鉄誘導体である、請求項8~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記遷移金属がチタン又はチタン誘導体である、請求項8~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記遷移金属誘導体がチタン若しくは鉄のハロゲン化物、チタン若しくは鉄のカルボン酸塩、又はチタン若しくは鉄のアセチルアセトネートである、請求項8~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記キラル金属-配位子錯体を、式(II)のスルフィドに対して0.01~20mol%の量で用いる、請求項8~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記添加剤が、有機酸のアルカリ金属塩、特にはそのリチウム塩、ナトリウム塩若しくはカリウム塩である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記添加剤が、下記式(IV)の一つである、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【化5】
[式(IV)において、
、R、R10、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素、(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキル、(C-C)ハロアルコキシ、(C-C)アルキルフェニル、フェニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、(C-C)アルコキシ、シアノ(C-C)アルキル、ヒドロキシ(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシカルボニル(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ(C-C)アルキル又はアミノジ(C-C)アルキルであり、
Aはリチウム、ナトリウム、カリウム又はNR13141516基であり、
13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素、ベンジル又は(C-C)アルキルである。]
【請求項19】
、R、R11及びR12が水素であり、
10が水素又はメトキシ又はジメチルアミノであり、
Aがリチウム、ナトリウム又はカリウムである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記添加剤を、式(II)のスルフィドに対して0.1~20mol%の量で用いる、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、アセトニトリル、アセトン、トルエン、アニソール、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、エタノール及びこれらの混合物からなる群から選択される溶媒の存在下で行われる、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
有機溶媒又は有機溶媒+水の混合物からの式(I)の化合物の結晶化を、さらなる工程段階で行う、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
酸化剤:式(II)のスルフィドの前記モル比が0.9:1~5:1の範囲である、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記酸化剤が過酸化水素である、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか1項に記載の方法によって製造可能な請求項1又は請求項3又は請求項4又は請求項5又は請求項6で定義の式(I)のエナンチオマー的に純粋な又はエナンチオマー富化2-(フェニルイミノ)-1,3-チアゾリジン-4-オンスルホキシド誘導体であって、前記エナンチオマー比が50.5:49.5~100:0(R):(S)エナンチオマーである誘導体。
【請求項26】
請求項1~24のいずれか1項に記載の方法によって製造可能な請求項1又は請求項3又は請求項4又は請求項5又は請求項6で定義の式(I)のエナンチオマー的に純粋な又はエナンチオマー富化2-(フェニルイミノ)-1,3-チアゾリジン-4-オンスルホキシド誘導体であって、前記エナンチオマー比が50.5:49.5~100:0(S):(R)エナンチオマーである誘導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エナンチオマー的に純粋な又はエナンチオマー富化形態での2-(フェニルイミノ)-1,3-チアゾリジン-4-オンスルホキシド誘導体の触媒による製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2-(フェニルイミノ)-1,3-チアゾリジン-4-オンスルホキシド誘導体の化学合成は基本的に公知であり、例えば国際特許出願(WO2013/092350)に記載されている。
【0003】
キラルスルホキシド及び相当する誘導体は、医薬産業及び農薬産業において非常に重要である。製造工程における廃棄物を回避するだけでなく、エナンチオマー的に純粋なキラルスルホキシドの製造は、望ましくないエナンチオマーから生じる有害であり得る副作用をも回避するものである(Nugent et al., Science 1993, 259, 479; Noyori et al., CHEMTECH 1992, 22, 360)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2013/092350
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Nugent et al., Science 1993, 259, 479
【非特許文献2】Noyori et al., CHEMTECH 1992, 22, 360)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
キラルスルホキシドのエナンチオマー選択的合成は、文献に記載されている。この方法について説明している総論は、例えばH. B. Kagan and I. Ojima (ed.) ″Catalytic Asymmetric Synthesis (2nd Edition)″ Wiley-VCH: New York 2000, 327-356; M. Beller and C. Bolm (ed.) ″Transition Metals for Organic Synthesis: Building Blocks and Fine Chemicals, Second Revised and Enlarged Ed.″ Wiley-VCH 2004, 479-495; E. Wojaczynska and J. Wojaczynski in Chem. Rev. 2010, 110, 4303-4356; G. E. O’Mahony in ARKIVOC 2011, 1-110に見ることができる。エナンチオマー富化キラルスルホキシドの従来の金属触媒合成方法に加えて、文献には酵素法も記載されている(K. Faber in ″Biotransformations in Organic Synthesis (6th Edition)″, Springer: Berlin Heidelberg 2011; H. L. Holland, Nat. Prod. Rep., 2001, 18, 171-181)。酵素法は主として基質特異的であり、工業的に実施するには非常にコストがかかり複雑である。例えば、モノオキシゲナーゼ及びペルオキシダーゼが重要な種類の酵素であり、それらは多様なスルフィドについて、相当するスルホキシドへのその酸化を触媒することができる(S. Colonna et al., Tetrahedron Asymmetry 1993, 4, 1981)。しかしながら、酵素的酸化の立体化学的結果はスルフィド構造に大きく依存することが明らかになっている。
【0007】
チオエーテルのエナンチオマー選択的酸化で多く用いられる方法は、キラルチタン錯体を用いる公知のシャープレスエポキシ化のケーガンによる変法である(J. Am. Chem. Soc. 1984, 106, 8188-8193)。Ti(OPr)及び(+)-又は(-)-酒石酸ジエチル(DET)からなるキラルチタン錯体を1当量の水で「失活させ」、アリールアルキルスルフィドのエナンチオマー選択的スルフィド酸化を触媒させる。しかしながら、ケーガンの試薬は、高い割合のDET(例えば、Ti(OPr)/DET/HOの混合比=1:2:1)及び有機過酸化物(例えばtert-ブチルヒドロペルオキシド)によってのみ良好な結果を与えた。記載されているチタン錯体の良好なエナンチオマー選択性は、低い触媒活性を伴うものであり、それは基質と触媒の間の必要なモル比を説明するものである。このプロセスは、簡単なアリールアルキルスルフィド、例えばアリールメチルスルフィドの直接酸化を行って光学活性スルホキシドを得ることを可能にするものである。例えば、官能化アルキルスルフィドの不斉酸化は、これらの条件下での中等度のエナンチオマー選択性で進行することが認められている。
【0008】
Pasiniらは、少量のキラルオキソチタン(IV)錯体及び過酸化水素によってフェニルメチルスルフィドを酸化することができたが、これでは、エナンチオマー過剰率が低くee<20%であった(Gaz. Chim. Ital. 1986, 116, 35-40)。さらに、チタン触媒プロセスには、非常にコストが高く複雑な後処理が伴い、それは工業的規模での経済的プロセスには非常に不利である。
【0009】
別の方法は、スルフィド酸化のための効率的触媒としてのバナジウム(IV)/鉄(III)錯体に基づくものである。キラル触媒は、シフ塩基とともに前駆体としてのVO(acac)(Synlett 1998, 12, 1327-1328; Euro. J. Chem. 2009, 2607-2610)又はFe(acac)(Angew. Chem. Int. Ed. 2003, 42, 5487-5489; Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 4225-4228)からイン・サイツで製造される。しかしながら、この方法は、例えばp-トリルメチルスルフィドなどの簡単で非フッ素化アリールアルキルチオエーテルに限定される。
【0010】
過酸化水素を用いる鉄(III)錯体のスルフィド酸化については、エナンチオマー的に純粋なキラルシフ塩基配位子の使用によって、エナンチオマー富化キラルスルホキシドが得られることがさらに報告されている(Chem. Eur. J. 2005, 11, 1086-1092)。その配位子における置換基は、キラル誘導において極めて重要であるが、これらの効果は、合理的に説明することができず、予測もできない。
【0011】
過酸化水素を用いる鉄(III)錯体のスルフィド酸化において、化学変換及びキラル誘導の両方を、添加剤を用いて増加させることができることも同様にすでに知られるようになっている(Chem. Eur. J. 2005, 11, 1086-1092)。記載されている添加剤には、カルボン酸及び特にはそれらの相当するアルカリ金属塩及びアンモニウム塩などがある。特に、パラ位に電子供与基を有する安息香酸、例えばp-メトキシ-又はp-ジメチルアミノ安息香酸、及び立体障害安息香酸、例えば2,4,6-トリメチル安息香酸によって収率が改善され、チオアニソールの酸化におけるエナンチオマー過剰率が高くなり得る。しかしながら、これらの効果を正確に予測することはできない。
【0012】
文献法によってラセミ混合物として得られる(2Z)-2-(フェニルイミノ)-1,3-チアゾリジン-4-オンスルホキシド誘導体のエナンチオマーは、これまでは、キラル相でのHPLCを用いる高コストで複雑な分離によって得られてきた。しかしながら、キラル固定相でのエナンチオマーのクロマトグラフィー分離は概して、比較的多量の有効成分には適さず、単に比較的少量を提供するのに役立つものである。キラル相でのHPLCの利用は、これらの材料のコストが高く、特に分取規模ではかなりの時間を要することから、さらに極端にコストの高いものとなる。工業的及び経済的見地からやはり効率的に実行可能である2-(フェニルイミノ)-1,3-チアゾリジン-4-オンスルホキシド誘導体の触媒によるエナンチオマー選択的製造方法は、先行技術から導き出せるものではない。
【0013】
国際特許出願WO2011/006646は、特に、鉄(III)触媒を用いるエナンチオマー富化3-(1H-1,2,4-トリアゾリル)スルホキシド誘導体の製造を可能とする触媒プロセスを提供する。しかしながら、その文書は、これらの反応のための特に好適な溶媒として塩化メチレンを開示しており、この溶媒は工業的規模での使用にはあまり適していない。エナンチオマー富化2-(フェニルイミノ)-1,3-チアゾリジン-4-オンスルホキシド誘導体の製造に良好に利用できるということを具体的に示す記載はなく、添加剤及び/又はそれに好適な溶媒についての記載もない。
【0014】
国際特許出願WO2013/092350は、特に、エナンチオマー富化N-アリールアミジン-置換されたトリフルオロエチルスルホキシド誘導体の製造を可能とする触媒プロセスを提供する。クロロホルム中のバナジウム(IV)系触媒系が特に好適であると記載されている。しかしながら、この文書は、Fe(III)その他の遷移金属系の使用について言及しておらず、工業的規模での使用にはむしろ適さないクロロホルムに代わり得る別の溶媒や溶媒混合物についても言及していない。
【0015】
したがって、確認された先行技術を考慮すると、2-(フェニルイミノ)-1,3-チアゾリジン-4-オンスルホキシド誘導体の、特に置換されたフッ素化2-(フェニルイミノ)-1,3-チアゾリジン-4-オンスルホキシド誘導体のエナンチオマー選択的製造のための簡略化された工業的かつ経済的に実行可能な触媒プロセスが現在もなお必要とされていた。この求められているプロセスによって得ることができる2-(フェニルイミノ)-1,3-チアゾリジン-4-オンスルホキシド誘導体は、好ましくは、高収率、高化学純度及び高光学純度、すなわち好ましくはee値として表現される高エナンチオマー過剰率で得られるべきである。特に、求められているプロセスは、キラルクロマトグラフィーなどの複雑な精製方法を必要とせずに、所望の標的化合物が得られるようにするべきである。求められているプロセスはさらに、好ましくは、工業的規模に適した溶媒の使用を可能とすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くべきことに、好適な添加剤を用いる遷移金属触媒プロセス、特にFe(III)触媒プロセスで、2-(フェニルイミノ)-1,3-チアゾリジン-4-オンスルホキシド誘導体をエナンチオマー富化形態で製造可能であることが認められた。2-(フェニルイミノ)-1,3-チアゾリジン-4-オンスルホキシド誘導体を用いるFe(III)触媒プロセスはこれまで全く報告されたことがなく、当業者であれば、これらの化合物にあるチアゾリジノン基がFe(III)配位子錯体と非生産的に相互作用することで、満足できる収率及び/又は光学純度が達成されないことは間違いないと予想したであろうことから、このことはなおさら驚くべきことである。さらに、配位子の(R)エナンチオマーが所望の(R)スルホキシドの立体選択的合成に必要であり、WO2011/006646に記載のように、配位子の(S)エナンチオマーが必要ないことは予見できるものではなかった。
【0017】
したがって、本発明は、エナンチオマー的に純粋な又はエナンチオマー富化形態で下記式(I)の2-(フェニルイミノ)-1,3-チアゾリジン-4-オンスルホキシド誘導体:
【化1】
[式中、
及びYはそれぞれ独立に、フッ素、塩素又は水素であり、
及びRはそれぞれ独立に、水素、(C-C12)アルキル、(C-C12)ハロアルキル、シアノ、ハロゲン又はニトロであり、
は、水素又は置換されていても良いC-C10-アリール、(C-C12)アルキル又は(C-C12)ハロアルキルであり、当該置換基はハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C10)シクロアルキル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、(C-C)アルコキシ、(C-C)ハロアルキル及び(C-C)ハロアルコキシから、特にはフッ素、塩素、(C-C)アルキル、(C-C)シクロアルキル、シクロプロピル、シアノ、(C-C)アルコキシ、(C-C)ハロアルキル及び(C-C)ハロアルコキシから選択される。]を製造する方法であって、エナンチオマー富化キラル触媒、有機酸の塩及び酸化剤である添加剤の存在下、下記式(II)のスルフィド:
【化2】
[式中、Y、Y、R、R及びRは上記で定義の通りである。]を反応させることを含む方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
式(I)及び(II)の化合物は、E-異性体若しくはZ-異性体として又はこれらの異性体の混合物として存在し得る。これは、式(I)及び(II)の交差した二重結合によって示されている。本発明の個々の実施形態において、化合物は各場合で、E-異性体の形態である。本発明の別の個々の実施形態において、化合物は各場合でZ-異性体の形態である。本発明の別の個々の実施形態において、化合物はE-異性体及びZ-異性体の混合物の形態である。
【0019】
上記で言及した式(I)及び(II)にある基Y、Y、R、R及びRの好ましい、特に好ましい及び非常に特に好ましい定義について、下記で説明する。
【0020】
及びYがそれぞれ独立に、フッ素、塩素又は水素であり、
及びRがそれぞれ独立に、フッ素、塩素、(C-C)アルキル又は水素であり、
が水素又は置換されていても良いフェニル、(C-C)アルキル又は(C-C)ハロアルキルであり、前記置換基がハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C10)シクロアルキル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、(C-C)アルコキシ、(C-C)ハロアルキル及び(C-C)ハロアルコキシから、特にはフッ素、塩素、(C-C)アルキル、(C-C)シクロアルキル、シクロプロピル、シアノ、(C-C)アルコキシ、(C-C)ハロアルキル及び(C-C)ハロアルコキシから選択される場合が好ましい。
【0021】
及びYがそれぞれ独立に、フッ素又は水素であり、
及びRがそれぞれ独立に、フッ素、塩素、水素又はメチルであり、
が水素、(C-C)アルキル又は(C-C)ハロアルキルである場合が特に好ましい。
及びYがフッ素であり、
及びRがそれぞれ独立に、フッ素又はメチルであり、
が(C-C)ハロアルキルである場合が非常に特に好ましい。
及びYがフッ素であり、
がメチルであり、
がフッ素であり、
がCHCFである場合が格別に好ましい。
【0022】
驚くべきことに、本発明による方法によって、良好な収率及び高い化学純度及び光学純度及び結果的に高いエナンチオマー過剰率(好ましくは、ee値として表現される)で式(I)のキラル(2-(フェニルイミノ)-1,3-チアゾリジン-4-オンスルホキシド誘導体を製造することが可能となることが見出された。本発明による方法によってさらに、工業的規模に適した溶媒を用いることが可能となる。さらなる利点は、本発明による方法によって、キラルクロマトグラフィーなどの複雑な精製方法の必要なく、所望の標的化合物を得ることが可能になることである。
【0023】
製造条件に応じて、本発明による方法は、エナンチオマー比50.5:49.5~100:0(R):(S)エナンチオマー又は(S):(R)エナンチオマーで式(I)の化合物を提供する。式(I)の化合物の(R)エナンチオマーが本発明によれば好ましい。
【0024】
エナンチオマー純度は、必要な場合、各種方法によって高めることができる。そのような方法は当業者には知られており、特には有機溶媒又は有機溶媒と水との混合物又は有機溶媒の混合物からの好ましい結晶化などがある。
【0025】
本発明による方法は、下記の図式(I)によって描くことができる。
図式(I)
【化3】
式中、Y、Y、R、R及びRは上記で定義の通りである。
【0026】
一般的定義
本発明の文脈において、「ハロゲン」(Hal)という用語は、別段の定義がない限り、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択される元素を包含し、フッ素、塩素及び臭素を使用することが好ましく、フッ素及び塩素を使用することが特に好ましい。
【0027】
置換されていても良い基は、単一又は複数置換されていてもよく、複数置換されている場合、置換基は同一であっても異なっていてもよい。関連する位置で別段の記載がない限り、置換基は、ハロゲン、(C-C)アルキル、(C-C10)シクロアルキル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、(C-C)アルコキシ、(C-C)ハロアルキル及び(C-C)ハロアルコキシから、特にはフッ素、塩素、(C-C)アルキル、(C-C)シクロアルキル、シクロプロピル、シアノ、(C-C)アルコキシ、(C-C)ハロアルキル及び(C-C)ハロアルコキシから選択される。
【0028】
1以上のハロゲン原子(Hal)で置換されたアルキル基は、例えば、トリフルオロメチル(CF)、ジフルオロメチル(CHF)、CFCH、ClCH又はCFCClから選択される。
【0029】
本発明の文脈におけるアルキル基は、別断の定義がない限り、直鎖、分岐又は環状の飽和炭化水素基である。
【0030】
-C12-アルキルの定義は、アルキル基について本明細書で定義される最も広い範囲を包含する。具体的には、その定義は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル及びt-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、1,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、n-ヘプチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシルを包含する。
【0031】
本発明の文脈におけるアリール基は、別段の定義がない限り、一つ、二つ又はそれ以上のヘテロ原子(O、N、P及びSから選択される)を含み得る芳香族炭化水素基である。
【0032】
具体的には、この定義は、例えば、シクロペンタジエニル、フェニル、シクロヘプタトリエニル、シクロオクタテトラエニル、ナフチル及びアントラセニル;2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル、5-ピラゾリル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、1,2,4-オキサジアゾール-3-イル、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル、1,2,4-チアジアゾール-3-イル、1,2,4-チアジアゾール-5-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル及び1,3,4-トリアゾール-2-イル;1-ピロリル、1-ピラゾリル、1,2,4-トリアゾール-1-イル、1-イミダゾリル、1,2,3-トリアゾール-1-イル、1,3,4-トリアゾール-1-イル;3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、2-ピラジニル、1,3,5-トリアジン-2-イル及び1,2,4-トリアジン-3-イルを包含する。
【0033】
本発明の文脈におけるアルキルアリール基は、異なって定義されていない限り、アルキル基で置換されたアリール基であり、それは、一つのアルキレン鎖を有し、アリール骨格中に1以上のヘテロ原子(O、N、P及びSから選択される)を有してもよい。
【0034】
エナンチオマー富化という用語は、その化合物の特定のエナンチオマーがこの化合物の他のエナンチオマーと比較して比較的多量に存在するそのような化合物のエナンチオマー混合物の存在を意味すると理解されるべきである。化合物の可能なエナンチオマーが二つ存在する場合、エナンチオマー混合物はしたがって、一つのエナンチオマーが50%超で含まれている。エナンチオマー富化混合物におけるエナンチオマーの割合は、好ましくは50%超であり、さらに好ましくは60%、65%、70%、75、80%、85%、90%、92.5%、95%、96%、97%、98%、98.5%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%及び99.75%超となるに連れて好ましさが高くなり、いずれの場合も化合物の両方のエナンチオマーの合計量に基づく。この点に関して、本特許出願の文脈では、エナンチオマー混合物は、前記エナンチオマー混合物中に99%超の一つのエナンチオマーが存在する場合、エナンチオマー的に純粋であるとも称される。
【0035】
したがって、エナンチオマー過剰率は、0%ee~100%eeの間であることができる。エナンチオマー過剰率は、化合物のエナンチオマー純度の間接的な尺度であり、混合物中の純粋なエナンチオマーの割合を示しており、残りの部分は化合物のラセミ体である。
【0036】
エナンチオマー過剰率を求めるための好適な方法は、当業者にはよく知られている。例としては、キラル固定相でのHPLCやキラルシフト試薬を使用したNMR分析などがある。
【0037】
本発明による方法のキラル触媒は、キラル金属-配位子錯体である。このキラル金属-配位子錯体は、キラル配位子と遷移金属又は好ましくは遷移金属誘導体から調製される。遷移金属誘導体は、好ましくはモリブデン、ジルコニウム、鉄、マンガン及びチタン誘導体から選択され、特に好ましくは鉄誘導体である。これらの誘導体は、非常に特に好ましくは、遷移金属(II)又は(III)ハロゲン化物、遷移金属(II)又は(III)カルボン酸塩、又は遷移金属(II)又は(III)アセチルアセトン酸塩の形態で使用される。
【0038】
遷移金属誘導体は、より好ましくは鉄又はチタン誘導体、特にはチタン及び鉄のハロゲン化物、カルボン酸塩及びアセチルアセトン酸塩から選択され、鉄(II)及び鉄(III)アセチルアセトン酸塩が非常に特に好ましい。
【0039】
キラル配位子は、遷移金属誘導体とキラル金属配位子錯体を形成することができる化合物である。このような配位子は好ましくは、金属と錯体を形成するのに適した少なくとも二つのヘテロ原子(例えば、O、N、P、S)を有する化合物から選択される。好ましいキラル配位子は、下記式(III)のものである。
【化4】
【0040】
式(III)において、
及びRはそれぞれ独立に、水素、(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキル、(C-C)アルキルフェニル、フェニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、シアノ(C-C)アルキル、ヒドロキシ(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシカルボニル(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、(C-C)ハロアルコキシ又は(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルであり、
は(C-C)アルキル、ハロゲン-、シアノ-、ニトロ-、アミノ-、ヒドロキシ-又はフェニル-置換された(C-C)アルキル、カルボキシル、カルボニル(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシカルボニル(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ又はジ(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルであり、
は、水素、(C-C)アルキル、(C-C)アルキルフェニル、アリール又はアリール(C-C)アルキルであり、
キラル炭素原子はによって識別される。
及びRがそれぞれ独立に、水素、(C-C)アルキル、(C-C)アルキルフェニル、フェニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、シアノ(C-C)アルキル、ヒドロキシ(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシカルボニル(C-C)アルキル又は(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルであり、
が(C-C)アルキル、ハロゲン-、シアノ-、ニトロ-、アミノ-、ヒドロキシ-又はフェニル-置換された(C-C)アルキル、カルボキシル、カルボニル(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシカルボニル(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ又はジ(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルであり、
が水素、(C-C)アルキル、(C-C)アルキルフェニル、アリール又はアリール(C-C)アルキルである場合が好ましい。
【0041】
及びRがそれぞれ独立に、水素、(C-C)アルキル、フェニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシカルボニル(C-C)アルキル又は(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルであり、
がハロゲン-、シアノ-、ニトロ-、アミノ-、ヒドロキシ-又はフェニル-置換された(C-C)アルキル又はカルボキシルであり、
がtert-ブチル、イソプロピル、ベンジル又はフェニルである場合が特に好ましい。
【0042】
及びRが独立に水素、塩素、臭素、ヨウ素又はtert-ブチルであり、
がヒドロキシ-置換されたC-アルキルであり、
がtert-ブチル又はイソプロピルである場合が非常に特に好ましい。
及びRがそれぞれ独立に、水素又は塩素であり、
がヒドロキシ-置換されたC-アルキルであり、
がtert-ブチルである場合が特別に好ましい。
【0043】
式(III)のキラル配位子をエナンチオマー富化化合物として用いる。ee値(エナンチオマー過剰率=(過剰に存在するエナンチオマー-欠乏して存在するエナンチオマー)÷(過剰に存在するエナンチオマー+欠乏して存在するエナンチオマーエナンチオマー)×100)として表現される配位子の光学純度がee=40%~ee=100%、特に好ましくはee=80%~ee=100%である場合が好ましい。
【0044】
より好ましいキラル配位子は、下記式(IIIa)のものである。
【化5】
【0045】
式(IIIa)において、
及びRはそれぞれ独立に、水素、(C-C)アルキル、(C-C)アルキルフェニル、フェニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、シアノ(C-C)アルキル、ヒドロキシ(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシカルボニル(C-C)アルキル又は(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルであり、
は、(C-C)アルキル、ハロゲン-、シアノ-、ニトロ-、アミノ-、ヒドロキシ-又はフェニル-置換された(C-C)アルキル、カルボキシル、カルボニル(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシカルボニル(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ又はジ(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルであり、
は水素、(C-C)アルキル、(C-C)アルキルフェニル、アリール又はアリール(C-C)アルキルであり、
キラル炭素原子はによって識別される。
【0046】
及びRがそれぞれ独立に、水素、(C-C)アルキル、(C-C)アルキルフェニル、フェニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、シアノ(C-C)アルキル、ヒドロキシ(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシカルボニル(C-C)アルキル又は(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルであり、
が、(C-C)アルキル、ハロゲン-、シアノ-、ニトロ-、アミノ-、ヒドロキシ-又はフェニル-置換された(C-C)アルキル、カルボキシル、カルボニル(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシカルボニル(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ又はジ(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルであり、
が、水素、(C-C)アルキル、(C-C)アルキルフェニル、アリール又はアリール(C-C)アルキルである場合が好ましい。
【0047】
及びRがそれぞれ独立に、水素、(C-C)アルキル、フェニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシカルボニル(C-C)アルキル又は(C-C)アルコキシ(C-C)アルキルであり、
が、ハロゲン-、シアノ-、ニトロ-、アミノ-、ヒドロキシ-又はフェニル-置換された(C-C)アルキル又はカルボキシルであり、
がtert-ブチル、イソプロピル、ベンジル又はフェニルである場合が特に好ましい。
【0048】
及びRがそれぞれ独立に、水素、塩素、臭素、ヨウ素又はtert-ブチルであり、
がヒドロキシ-置換されたC-アルキルであり、
がtert-ブチル又はイソプロピルである場合が非常に特に好ましい。
【0049】
及びRがそれぞれ独立に、水素又は塩素であり、
がヒドロキシ-置換されたC-アルキルであり、
がtert-ブチルである場合が特別に好ましい。
【0050】
式(IIIa)のキラル配位子は、エナンチオマー富化化合物として用いられる。ee値(エナンチオマー過剰率=(過剰に存在するエナンチオマー-欠乏して存在するエナンチオマー)÷(過剰に存在するエナンチオマー+欠乏して存在するエナンチオマーエナンチオマー)×100)として表現される配位子の光学純度がee=40%~ee=100%、特に好ましくはee=80%~ee=100%である場合が好ましい。
【0051】
本発明の別の実施形態において、式(III)又は式(IIIa)のキラル配位子を、豊富形態での式(I)の化合物のRエナンチオマーを得るために(R)配置で用いる。
【0052】
本発明のさらに別の実施形態において、式(III)又は式(IIIa)のキラル配位子を、豊富形態での式(I)の化合物のSエナンチオマーを得るために(S)配置で用いる。
【0053】
本発明のさらに別の実施形態において、式(III)又は式(IIIa)のキラル配位子を、豊富形態での式(I)の化合物のSエナンチオマーを得るために(R)配置で用いる。
【0054】
本発明のさらに別の実施形態において、式(III)又は式(IIIa)のキラル配位子を、豊富形態での式(I)の化合物のRエナンチオマーを得るために(S)配置で用いる。
【0055】
キラル金属-配位子錯体は、別個に又はスルフィドの存在下での遷移金属誘導体及びキラル配位子の反応によって得られる。遷移金属誘導体:キラル配位子の比は、10:1~1:10の範囲、好ましくは1:1~1:10の範囲、特に好ましくは1:1~1:5の範囲、非常に特に好ましくは1:1~1:3の範囲である。当該配位子は、公知の方法によって調製することができる(例えば、Adv. Synth. Catal. 2005, 347, 1933-1936)。
【0056】
式(II)のスルフィドに対するキラル金属配位子錯体の使用量は、好ましくは0.01~20mol%の範囲、好ましくは0.1~10mol%の範囲、特に好ましくは0.5~7mol%の範囲、非常に特に好ましくは0.5~5mol%の範囲である。キラル金属-配位子錯体のより高い使用量が可能であるが、経済的には賢明ではない。キラル金属-配位子錯体/その構成成分は、反応開始時にすでに存在していても良いか、所期の合計量が得られるまで反応時に部分的に加えることができる。
【0057】
添加剤は、有機酸の塩である。その塩は特にはアルカリ金属塩又はアンモニウム塩であり、そしてそれらの中ではリチウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩が好ましい。
【0058】
好ましい添加剤は、下記式(IV)のものである。
【化6】
【0059】
式(IV)において、
、R、R10、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素、(C-C)アルキル、(C-C)ハロアルキル、(C-C)ハロアルコキシ、(C-C)アルキルフェニル、フェニル、ハロゲン、シアノ、ニトロ、(C-C)アルコキシ、シアノ(C-C)アルキル、ヒドロキシ(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシカルボニル(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ(C-C)アルキル又はアミノジ(C-C)アルキルであり、
Aはリチウム、ナトリウム、カリウム又はNR13141516基であり、
13、R14、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素、ベンジル又は(C-C)アルキルである。
、R、R11及びR12がそれぞれ独立に、水素、(C-C)アルキル又は(C-C)アルコキシであり、
10が水素、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ又はアミノジ(C-C)アルキルであり、
Aがリチウム、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムである場合が好ましい。
【0060】
、R、R11及びR12がそれぞれ独立に、水素又はメトキシであり、
10が水素、メトキシ又はジメチルアミノであり、
Aがリチウム、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムである場合が特に好ましい。
【0061】
、R、R11及びR12が水素であり、
10が水素又はメトキシ又はジメチルアミノであり、
Aがリチウム、ナトリウム又はカリウムである場合が非常に特に好ましい。
【0062】
式(II)のスルフィドに対する添加剤の使用量は、0.1~20mol%の範囲、特に好ましくは0.5~10mol%の範囲、非常に特に好ましくは1~8mol%の範囲である。添加剤のより高い使用量が可能であるが、経済的に賢明ではない。
【0063】
好ましい、特に好ましい及び非常に特に好ましい添加剤(IV)[A=リチウム、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムである。]は、別個に調製し、これらの塩として反応混合物に供給することができるか、A=水素である添加剤(IV)を用い、好適な量のリチウム塩基、ナトリウム塩基、カリウム塩基又はアンモニアを加えることで、その塩をイン・サイツで調製する。この点において特に好ましいものは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又はアンモニアである。
【0064】
式(I)の化合物を与えるための式(II)のスルフィドの反応は好ましくは、溶媒の存在下で行う。好適な溶媒には特別には、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジグライム、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、tert-アミルメチルエーテル(TAME)、ジメチルエーテル(DME)、2-メチル-THF、アセトニトリル(ACN)、アセトン、ブチロニトリル、トルエン、アニソール、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、メチルイソブチルケトン、アルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン、ヒドロハロカーボン類及び芳香族炭化水素類、特にはヒドロクロロカーボン類、例えばテトラクロロエチレン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン、塩化メチレン(ジクロロメタン、DCM)、ジクロロブタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ペンタクロロエタン、ジフルオロベンゼン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼンなどがあり、特には1,2-ジクロロベンゼン、クロロトルエン、トリクロロベンゼン;4-メトキシベンゼン、フッ素化脂肪族及び芳香族、例えばトリクロロトリフルオロエタン、ベンゾトリフルオリド、4-クロロベンゾトリフルオリド及び水などがある。溶媒混合物を用いることも可能である。
【0065】
好ましい溶媒は、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、アセトニトリル、アセトン、トルエン、アニソール、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、テトラヒドロフラン(THF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、エタノール又はこれらの混合物である。
【0066】
特に好ましい溶媒は、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、アニソール、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン又はこれらの混合物である。
【0067】
非常に特に好ましい溶媒は、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、アニソール及び塩化メチレン又はこれらの混合物である。
【0068】
特別に好ましい溶媒は、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン及び塩化メチレン又はo-キシレン、m-キシレン、p-キシレン及びエチルベンゼン(工業用キシレン)の混合物である。
【0069】
この反応に用いることができる酸化剤には特定の制限はない。スルホキシドの製造のための好適な酸化剤は、例えば、無機過酸化物、例えば過酸化水素、又は有機過酸化物、例えばアルキルヒドロペルオキシド及びアリールアルキルヒドロペルオキシドである。好ましい酸化剤は過酸化水素である。酸化剤:式(II)のスルフィドのモル比は、0.9:1~5:1の範囲、好ましくは1.2:1~3.5:1の範囲である。
【0070】
その反応は通常、-80℃~100℃、好ましくは-10℃~60℃、非常に特に好ましくは-5℃~30℃の温度で実施する。
【0071】
その反応は代表的には、標準圧で行うが、高圧又は減圧下で行うこともできる。
【0072】
本発明による方法後に得られた生成物は、50.5:49.5~100:0、好ましくは75:25~100:0、特に好ましくは90:10~100:0の(R):(S)エナンチオマー又は(S):(R)エナンチオマー、非常に特に好ましくは(R):(S)エナンチオマーのエナンチオマー比を有する。本発明によれば、各場合において、(R)エナンチオマーの過剰を示すエナンチオマー比が好ましい。
【0073】
式(I)の所望の化合物は、例えば、その後の抽出及び結晶化によって単離することができる。必要であれば、その後の結晶化によってエナンチオマー過剰率を大幅に高めることができる。そのような方法は当業者には知られており、特には有機溶媒又は有機溶媒と水との混合物又は有機溶媒の混合物からの好ましい結晶化などがある。結晶化に好ましい溶媒は、3-メチル-1-ブタノール及び1-ブタノール又はそれらのメチルシクロヘキサンとの混合物である。
【0074】
以下の実施例により、本発明について詳細に説明するが、ただし、その実施例は、それらが本発明を制限するような形で解釈されるべきではない。
【0075】
製造例:
実施例1:(2Z)-2-({2-フルオロ-4-メチル-5-[(R)-(2,2,2-トリフルオロエチル)スルフィニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オンの合成
【化7】
【0076】
5リットル反応容器中、最初にトルエン1000mLを入れ、次に鉄(III)アセチルアセトネート16.1g(0.046mol)、2-[(E)-{[(2R)-1-ヒドロキシ-3,3-ジメチルブタン-2-イル]イミノ}メチル]-4,6-ジヨードフェノール43.1g(0.091mol)及び安息香酸ナトリウム13.3g(0.09mol)を加えた。次に、(2Z)-2-({2-フルオロ-4-メチル-5-[(2,2,2-トリフルオロエチル)スルファニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オン383.4g(0.012mol)のトルエン(850mL)中溶液を加えた。内部温度22℃~27℃で90分間かけて31.5%過酸化水素394g(3.649mol)を加えた。次に、反応混合物を25℃で終夜攪拌した。反応の進行をHPLCによってモニタリングした。反応混合物を5℃~10℃で水及びトルエン各400mLで希釈し、39%重亜硫酸ナトリウム水溶液200mLとともに攪拌した。相分離後、水相をトルエン400mLで抽出した。合わせた有機相を濃縮することで、暗色油状物480.4gを得た。これを塩化メチレン960mLに溶かし、シリカゲル3.5kgでのフラッシュクロマトグラフィーを行った(塩化メチレン28リットル、次に塩化メチレン(95%)+メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)(5%)25リットル)。溶媒を除去することで、固い橙赤色樹脂状物416.6gを得た。この樹脂をジイソプロピルエーテル1200mLに55℃で溶かした。ジイソプロピルエーテル300mLを蒸留除去した後、混合物を攪拌しながらゆっくり冷却した。沈澱固体を濾取し、ジイソプロピルエーテル175mLで洗浄し、乾燥させた。これによって、純度99.2HPLC fl%を有する黄色様固体352.7gを得て、それは理論値の87.9%の収率に相当した。キラル相でのHPLCによる光学純度は、ee=94.6%である。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): δ = 2.4 (s, 3H), 3.4-3.5 (m, 1H), 3.97 (s, 2H), 4.5-4.6 (m, 1H), 7.1 (d, J=10.4 Hz, 1H), 7.6 (d, J=7.8 Hz, 1H) ppm.
【0077】
実施例2:(2Z)-2-({2-フルオロ-4-メチル-5-[(R)-(2,2,2-トリフルオロエチル)スルフィニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オンの合成
【化8】
【0078】
反応容器中、最初に塩化メチレン0.75mL及び鉄(III)アセチルアセトネート10.3mg(0.029mmol)を入れた。次に、2,4-ジクロロ-6-[(E)-{[(2R)-1-ヒドロキシ-3,3-ジメチルブタン-2-イル]イミノ}メチル]フェノール17mg(0.059mmol)を加え、混合物を5分間攪拌した。次に、安息香酸ナトリウム8.4mg(0.059mmol)、(2Z)-2-({2-フルオロ-4-メチル-5-[(2,2,2-トリフルオロエチル)スルファニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オン246mg(0.585mmol)及び追加の塩化メチレン0.7mLを加えた。次に、34%過酸化水素165.9mg(1.46mmol)を20℃~22℃でゆっくり加えた。1時間の反応時間後のHPLCによる反応モニタリングによって、100%変換で93.6fl%のee=98.9%の標題化合物が明らかになった。
【0079】
実施例3~11:
実施例2で上記にて記載の合成を異なる配位子で繰り返した。結果を下記の表1に報告している。
【0080】
表1:異なる配位子存在下での実施例2による(2Z)-2-({2-フルオロ-4-メチル-5-[(2,2,2-トリフルオロエチル)スルファニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オンの酸化
【表1】
【0081】
実施例12:(2Z)-2-({2-フルオロ-4-メチル-5-[(R)-(2,2,2-トリフルオロエチル)スルフィニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オンの合成
【化9】
【0082】
反応容器中、最初に、トルエン10mL、水酸化リチウム19.2mg(0.8mmol)及び安息香酸97.7mg(0.8mmol)を入れ、20℃で10分間攪拌した。次に、鉄(III)アセチルアセトネート141.3mg(0.4mmol)及び2,4-ジクロロ-6-[(E)-{[(2R)-1-ヒドロキシ-3,3-ジメチルブタン-2-イル]イミノ}メチル]フェノール234mg(0.8mmol)を加えた。その後、トルエン2mLで洗った。反応混合物を冷却して5℃とし、次に26.0%(2Z)-2-({2-フルオロ-4-メチル-5-[(2,2,2-トリフルオロエチル)スルファニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オンのトルエン中溶液32.34g(20mmol)を加えた。次に、31.8%過酸化水素5.36g(50mmol)を5℃で30分間かけて加えた。4時間の反応時間後のHPLCによる反応モニタリングは、100%変換を示した。定量的HPLCによる標題化合物の収率は理論値の95.4%であった。標題化合物のee値は98.1%であった。
【0083】
実施例13及び14:
実施例12で上記の合成を、異なる添加剤で繰り返した。結果は、下記の表2で報告している。
【0084】
表2:2モル当量(鉄(III)アセチルアセトネート基準)の異なる添加剤の存在下での実施例12よる(2Z)-2-({2-フルオロ-4-メチル-5-[(2,2,2-トリフルオロエチル)スルファニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オンの酸化:
【表2】
【0085】
実施例15:(2Z)-2-({2-フルオロ-4-メチル-5-[(R)-(2,2,2-トリフルオロエチル)スルフィニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オンの合成
【化10】
【0086】
反応容器中、最初にトルエン15mL、水酸化リチウム24mg(1mmol)及び4-ジメチルアミノ安息香酸165.2mg(1mmol)を入れ、20℃で10分間攪拌した。次に、鉄(III)アセチルアセトネート176.6mg(0.5mmol)及び2,4-ジクロロ-6-[(E)-{[(2R)-1-ヒドロキシ-3,3-ジメチルブタン-2-イル]イミノ}メチル]フェノール292.5mg(1mmol)を加えた。次に、トルエン2mLで洗った。反応混合物を冷却して5℃とし、次に26.0%(2Z)-2-({2-フルオロ-4-メチル-5-[(2,2,2-トリフルオロエチル)スルファニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オンのトルエン中溶液40.42g(25mmol)を加えた。次に、31.8%過酸化水素6.7g(62.5mmol)を5℃で30分間かけて加えた。2.5時間の反応時間後のHPLCによる反応モニタリングは、100%変換を示した。3.5時間の反応時間後の定量的HPLCによる標題化合物の収率は、理論値の95.6%であった。標題化合物のee値は、>99.9%であった。
【0087】
実施例16及び17:
出発化合物の量基準で鉄(III)アセチルアセトネート、配位子及び4-ジメチルアミノ安息香酸/LiOHの異なるモル比で、実施例15で上記の合成を繰り返した。結果を、下記の表3で報告している。
【0088】
表3:出発化合物の量基準で異なるモル比の鉄(III)アセチルアセトネート、配位子及び4-ジメチルアミノ安息香酸/LiOH存在下での実施例15による(2Z)-2-({2-フルオロ-4-メチル-5-[(2,2,2-トリフルオロエチル)スルファニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オンの酸化
【表3】
【0089】
実施例18:(2Z)-2-({2-フルオロ-4-メチル-5-[(R)-(2,2,2-トリフルオロエチル)スルフィニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オンの合成
【化11】
【0090】
反応容器中、最初に工業用キシレン混合物9mL中の鉄(III)アセチルアセトネート265mg(0.75mmol)、2,4-ジクロロ-6-[(E)-{[(2R)-1-ヒドロキシ-3,3-ジメチルブタン-2-イル]イミノ}メチル]フェノール437mg(1.50mmol)及び安息香酸ナトリウム216mg(1.50mmol)を入れ、15℃で10分間攪拌した。次に、(2Z)-2-({2-フルオロ-4-メチル-5-[(2,2,2-トリフルオロエチル)スルファニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オン7.25gの工業用キシレン混合物(15mL)中溶液(86.9%、15.0mmol)を滴下した。30%過酸化水素溶液4.25g(37.5mmol)を15℃で1時間かけて加えた。1時間の反応時間後のHPLCによる反応モニタリングは、完全な変換を示した。反応混合物を15℃で18時間攪拌し、40%亜硫酸水素ナトリウム溶液7.81g(30.0mmol)と混合し、30分間攪拌した。追加の水15mLを加えた後、相を分離し、水相をキシレン5mLで抽出した。定量的HPLCによる合わせたキシレン相の分析は、定量的収率を示した。標題化合物のee値は>99.9%であった。
【0091】
実施例19:(2Z)-2-({2-フルオロ-4-メチル-5-[(R)-(2,2,2-トリフルオロエチル)スルフィニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オンの合成
【化12】
【0092】
反応容器中、最初に、トルエン15mL中の鉄(III)アセチルアセトネート177mg(0.50mmol)、2,4-ジクロロ-6-[(E)-{[(2R)-1-ヒドロキシ-3,3-ジメチルブタン-2-イル]イミノ}メチル]フェノール293mg(1.00mmol)、4-ジメチルアミノ安息香酸165mg(1.00mmol)及び水酸化リチウム24mg(1.00mmol)を入れた。次に、26.0%(2Z)-2-({2-フルオロ-4-メチル-5-[(2,2,2-トリフルオロエチル)スルファニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オン(25.0mmol)のトルエン中溶液40.42gを加え、その後に追加のトルエン2mLで洗った。32.7%過酸化水素溶液6.50g(62.5mmol)を5℃で30分間かけて加えた。反応混合物を5℃で2時間攪拌し、HPLCによる反応モニタリングにより、完全な変換が明らかになった。20%亜硫酸水素ナトリウム溶液32.5g(62.5mmol)を20℃でゆっくり滴下し、得られた乳濁液を終夜攪拌し、その後、相を分離した。定量的HPLCによるトルエン相の分析は、理論値の96.0%の収率を示した。標題化合物のee値は99.6%であった。
【0093】
実施例20~22:
実施例19で上記の合成を、異なる塩基で繰り返した。結果を、下記の表4で報告した。
【0094】
表4:異なる塩基存在下での実施例19による(2Z)-2-({2-フルオロ-4-メチル-5-[(2,2,2-トリフルオロエチル)スルファニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オンの酸化
【表4】
【0095】
実施例23:(2Z)-2-({4-フルオロ-2-メチル-5-[(R)-(2,2,2-トリフルオロエチル)スルフィニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オンの合成
【化13】
【0096】
2リットルリアクター中、最初に、トルエン1000mL、2,4-ジクロロ-6-[(E)-{[(2R)-1-ヒドロキシ-3,3-ジメチルブタン-2-イル]イミノ}メチル]フェノール3.335g(11.5mmol)、安息香酸ナトリウム1.656g(11.5mmol)及び鉄(III)アセチルアセトネート2.03g(5.75mmol)を150℃で入れ、1時間攪拌した。次に、(2Z)-2-({4-フルオロ-2-メチル-5-[(2,2,2-トリフルオロエチル)スルファニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オン80.5g(191.5mmol)を加え、27%過酸化水素60.3g(478.8mmol)をゆっくり加えた。165分の反応時間後、反応混合物を、40%重亜硫酸ナトリウム溶液93mL及び水240mLと混合し、20℃で30分間攪拌した。相を分離し、有機相を濃縮した。得られた残留物をシリカゲルでのクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル2:1)によって精製して、粘稠油状物76.4gを得て、それはHPLCによると、純度97%(a/a)を有しており、理論値の88.7%の収率に相当した。ee値97.2%と決定された。
1H-NMR (600 MHz, d-DMSO): δ = 2.2 (s, 3H), 4.14-4.2 (m, 1H), 4.22 (s, 2H), 4.24-4.3 (m, 1H), 4.6 (m, 2H), 7.29 (d, J=6.3 Hz, 1H), 7.4 (d, J=10.3 Hz, 1H) ppm.
【0097】
実施例24:(2Z)-2-({2-フルオロ-4-メチル-5-[(R)-(2,2,2-トリフルオロエチル)スルフィニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オンの合成
【化14】
【0098】
羽根攪拌機を取り付けた1リットル反応容器中、最初に、(2Z)-2-({2-フルオロ-4-メチル-5-[(2,2,2-トリフルオロエチル)スルファニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オンのトルエン中溶液900g(質量分率:25.4%;544mmol)を入れた。安息香酸ナトリウム10.45g(21.75mmol)、2,4-ジクロロ-6-[(E)-{[(2R)-1-ヒドロキシ-3,3-ジメチルブタン-2-イル]イミノ}メチル]フェノール6.428g(21.75mmol)及び鉄(III)アセチルアセトネート3.841g(10.88mmol)のトルエン(76g)中溶液を加えた。混合物を室温で15分間攪拌してから、冷却して5℃とした。過酸化水素水(質量分率:35%)105.7g(1.087mol)を内部温度5℃~9℃で2時間かけて加えた。反応の進行をHPLCによってモニタリングし、添加完了したら、反応混合物を5℃で4時間攪拌した。重亜硫酸ナトリウム水溶液174.1gを反応混合物に30分間かけて注意深く滴下した(質量分率:39%)。反応溶液の温度が、20℃を超えないようにした。次に、反応溶液を加熱して20℃とし、1時間攪拌した。相を分離し、有機相を40℃で水200gによって洗浄した。再度の相分離後、有機相を分析し、(2Z)-2-({2-フルオロ-4-メチル-5-[(R)-(2,2,2-トリフルオロエチル)スルフィニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オンの質量分率を22.2%と決定した。これは、理論値の95%の粗収率に相当する。キラル相でのHPLCによる光学純度はee=99.3%であった。次に、トルエンを減圧及び高温下で完全に留去した。昇温させて100℃とし、圧力を30mbarまで低下させた。得られた融解物を冷却して80℃とし、3-メチル-1-ブタノール102gを加えた。次に、混合物を冷却して40℃とし、結晶(2Z)-2-({2-フルオロ-4-メチル-5-[(R)-(2,2,2-トリフルオロエチル)スルフィニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オン1.1gのシード添加を行い、室温で1時間攪拌した。得られた懸濁液に、メチルシクロヘキサン306gを1時間かけて加えた。次に、懸濁液を冷却して2時間かけて20℃とし、この温度でさらに1時間攪拌した。懸濁液を濾過し、反応容器を多量の母液で洗った。得られたフィルターケーキをメチルシクロヘキサン及び3-メチル-1-ブタノールの3:1混合物215gで、そして純粋なメチルシクロヘキサン215gで洗浄した、両方の洗浄は20℃で置換洗浄として行った。次に、フィルターケーキを50℃及び20mbarの減圧下で乾燥させた。これによって、(2Z)-2-({2-フルオロ-4-メチル-5-[(R)-(2,2,2-トリフルオロエチル)スルフィニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オン206.8gを得た。収率は理論値の84%であった。ee値は99.9%超と決定した。3-メチル-1-ブタノールに代えて1-ブタノールを用いる結晶化を行うことも可能であった。
【0099】
比較例:
実施例2に基本的に記載されている合成を、異なる条件下で実施した。結果は表5にまとめてある。
【0100】
表5:異なる条件下での実施例2による(2Z)-2-({2-フルオロ-4-メチル-5-[(2,2,2-トリフルオロエチル)スルファニル]フェニル}イミノ)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,3-チアゾリジン-4-オンの酸化
【表5】
【国際調査報告】