(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】高さ/直径の比が高い擬似移動床分離のためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
B01D 15/00 20060101AFI20240311BHJP
G01N 30/46 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
B01D15/00 101A
G01N30/46 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558393
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-11-13
(86)【国際出願番号】 EP2022056646
(87)【国際公開番号】W WO2022200119
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】ヴォナー アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ラインクーゲル-ル-コック ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】ブランケ ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】オージエ フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ロヨン-ルボー オード
(72)【発明者】
【氏名】フラティ マネル
(72)【発明者】
【氏名】アフマディ-モトラグ アミール ホセイン
【テーマコード(参考)】
4D017
【Fターム(参考)】
4D017AA03
4D017BA05
4D017CA05
4D017CB01
4D017DA02
4D017EA01
4D017EB02
(57)【要約】
本発明は、上昇流および下降流の構成で交互配列された複数個の直列吸着器(1、2)を含んでいる擬似移動床分離デバイスおよび方法であって、各吸着器(1、2)は、n個の吸着チャンバに分割され、それぞれは、吸着剤床を含み、n個の吸着剤床は、少なくとも供給原料および脱着剤を注入し、少なくともエキストラクトおよびラフィネートを抜き出すためのn枚のプレートによって分離されている、デバイスおよび方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
擬似移動床による分離のためのデバイスであって、複数基の吸着器(1、2)を含み、該吸着器(1、2)は、直列に配置され、かつ、上昇流および下降流について交互に配列され、各吸着器(1、2)は、n個の吸着チャンバに分割され、各チャンバは、1個の吸着剤床を含んでおり、n個の吸着剤床は、フィードおよび脱着剤を注入しかつエキストラクトおよびラフィネートを抜き出すためのn枚のプレートによって分離されている、デバイス。
【請求項2】
吸着器の数mは、3~15である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
吸着器の数mは、偶数である、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
吸着器(1、2)当たりの吸着剤床の数nは、1~4、好ましくは1~3、非常に好ましくは1~2である、請求項1~3のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項5】
吸着剤床の総数tは、6~24、好ましくは8~19、非常に好ましくは12~15である、請求項1~4のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項6】
吸着剤床が有する高さH対直径Dの比H/Dは、1以上、好ましくは1.5以上、非常に好ましくは2以上である、請求項1~5のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項7】
吸着剤床が有する高さH対直径Dの比H/Dは、1~12、好ましくは1.5~10、非常に好ましくは2~8である、請求項1~6のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項8】
少なくとも1基の吸着器(1、2)をバイパスするように適合した少なくとも1本のバイパスライン(3)をさらに含んでいる、請求項1~7のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項9】
バイパスライン(3)は、隣接する2基の吸着器(1、2)をバイパスするように適合させられている、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
バイパスライン(3)は、下降流吸着器(1)を上昇流吸着器(2)に接続する、請求項8または9に記載のデバイス。
【請求項11】
吸着器(1、2)は、吸着器(1、2)を通って流れる流体の実質的に垂直な分配のために垂直位置に配列されている、請求項1~10のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項12】
吸着器(1、2)は、吸着器(1、2)を通って流れる流体の実質的に水平な分配のために水平位置に配列されており、吸着器(1、2)を通る流れは、水平面において2つの反対方向に起こる、請求項1~10のいずれか1つに記載のデバイス。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1つに記載の擬似移動床による分離のためのデバイスを用いる擬似移動床による分離のための方法であって、以下の工程を含んでいる方法:
- 吸着器(1、2)に、少なくとも1種のフィードおよび脱着剤を給送し、少なくとも1種のエキストラクトおよび少なくとも1種のラフィネートを、前記吸着器(1、2)から抜き出し、吸着剤床を、閉ループで相互接続し、吸着器(1、2)中の給送点および抜き出し点を、時間の経過とともに、1個の吸着剤床に相当する量だけ切り替え時間によりシフトし、擬似移動床による分離のためのデバイスの以下の主要なゾーンを含む複数個所の操作ゾーンを決定する:
- ゾーンI;分離対象の生成物の脱着のためののであり、脱着剤Dの注入とエキストラクトEの抜き出しとの間にある;
- ゾーンII;分離対象の生成物の異性体の脱着のためのものであり、エキストラクトEの抜き出しと、フィードFの注入との間にある;
- ゾーンIII;分離対象の生成物の吸着のためのものであり、フィードFの注入と、ラフィネートRの抜き出しとの間にある;および
- ゾーンIV;ラフィネートRの抜き出しと、脱着剤Dの注入との間にある。
【請求項14】
吸着剤床を、a/b/c/dタイプの構成と呼ばれる以下の構成に従ってゾーンI~IV中に分配する、請求項13に記載の方法:
- aは、ゾーンI中の床の数である;
- bは、ゾーンII中の床の数である;
- cは、ゾーンIII中の床の数である;および
- dは、ゾーンIV中の床の数である;および
- a=(t*0.2)*(1±0.2);
- b=(t*0.4)*(1±0.2);
- c=(t*0.27)*(1±0.2);および
- d=(t*0.13)*(1±0.2)
ここで、tは、6~24、好ましくは8~15の自然整数である。
【請求項15】
吸着剤床を、a/b/c/dタイプの構成と呼ばれる以下の構成に従ってゾーンI~IV中に分配する、請求項13に記載の方法:
- aは、ゾーンI中の床の数である;
- bは、ゾーンII中の床の数である;
- cは、ゾーンIII中の床の数である;および
- dは、ゾーンIV中の床の数である、および
- a=(t*0.17)*(1±0.2);
- b=(t*0.42)*(1±0.2);
- c=(t*0.25)*(1±0.2);および
- d=(t*0.17)*(1±0.2)、および
ここで、tは、6~24、好ましくは8~15の自然整数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似移動床による分離、とりわけ、8個の炭素原子を含んでいる芳香族化合物の混合物(オルトキシレン、メタキシレンおよびエチルベンゼン)からのパラキシレンの分離のためのデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
擬似移動床(simulated moving bed:本文の残りの部分ではSMBと略されることもある)による分離のための現行技術は、所定数の共通の以下の特徴を有するユニットを用いる:
- 1個または2個の吸着器(または分離カラム)は、それぞれ、複数個の吸着チャンバを含んでおり、吸着チャンバは、分配ダクトと収集ダクトとの間に配置され、前記吸着チャンバは、吸着剤床を含んでおり、この吸着剤床内に流体が流れる、
- 注入システム、とりわけ、フィードおよび脱着剤を注入するための注入システム、および抜出システム、とりわけ、エキストラクトおよびラフィネートと呼ばれる生じた流出物を抜き出すための抜出システム、
- 収集・再分配システム;床間ゾーンと呼ばれ、1つの床から次の床に通過させるためのものである。
【0003】
SMBによる分離のための現行技術による問題は、複数基の吸着器が、高さH対直径Dの比が低い(典型的には1よりはるかに低い)大多数の床(典型的には12床以上)を含み、吸着器の高さが足りないために、セットアップ、使用および維持が困難であることにある。
【0004】
SMBによる分離のための現行技術による別の問題は、吸着剤床中の流体の流れが頂部から底部へのものであり、吸着器の底部からの流体は、吸着器または次の吸着器の頂部に上昇し、これは、約10メートルを超える高さまで数千m3/hの流体を押し出すためにエネルギーおよび設備(バルブ、ポンプ等)の点で多額の投資を必要とすることにある。
【0005】
SMBによる分離のための現行技術による別の問題は、吸着器が、床間ゾーンと呼ばれる大容積のゾーンを含み、これが、分離容量を制限しかつ重設備を用いる必要性を増大させることにある。
【0006】
SMBによる分離のための現行技術による別の問題は、吸着器の所定のセクションを維持または修理するために吸着器の全ての床(例えば、12床)を停止する必要があることにある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の概要)
上記の関連において、本明細書の第1の目的は、従来技術の課題を克服することおよびセットアップ、使用および維持することがより簡単であるSMBによる分離のためのデバイスおよび方法を提供することにある。
【0008】
本明細書の第2の目的は、エネルギーおよび設備の点で節約がなされることを可能にするSMBによる分離のためのデバイスおよび方法を提供することにある。
【0009】
本明細書の第3の目的は、床の一部のみ(例えば、1床または1対の床)が隔離されることを可能にし、残りのデバイスを停止することがないSMBによる分離のためのデバイスおよび方法を提供することにあり、これは、フォールバック様式で操作することができ、満足のいく性能を有している。
【0010】
本発明の第1の態様によると、上記の目的、並びに、他の利点は、直列に配置された複数基の吸着器を含んでいる擬似移動床による分離のためのデバイスによって得られ、該吸着器は、上昇流および下降流に対して交互に配列され、各吸着器は、n個の吸着チャンバに分割され、各チャンバは、1個の吸着剤床を含んでおり、n個の吸着剤床は、フィードおよび脱着剤を注入しかつエキストラクトおよびラフィネートを抜き出すためのn枚のプレートによって分離されている。
【0011】
1つまたは複数の実施形態によると、吸着器の数mは、3~15、好ましくは4~12、非常に好ましくは5~10である。
【0012】
1つまたは複数の実施形態によると、吸着器の数mは、偶数である。
【0013】
1つまたは複数の実施形態によると、吸着器当たりの吸着剤床の数nは、1~4、好ましくは1~3、非常に好ましくは1~2である。
【0014】
1つまたは複数の実施形態によると、吸着剤床の総数tは、6~24、好ましくは8~19、非常に好ましくは12~15である。
【0015】
1つまたは複数の実施形態によると、吸着剤床が有する高さH対直径Dの比H/Dは、1以上、好ましくは1.5以上、非常に好ましくは2以上である。
【0016】
1つまたは複数の実施形態によると、吸着剤床が有する高さH対直径Dの比H/Dは、1~12、好ましくは1.5~10、非常に好ましくは2~8である。
【0017】
1つまたは複数の実施形態によると、デバイスは、少なくとも1基の吸着器をバイパスするように適合した少なくとも1本のバイパスラインをさらに含む。
【0018】
1つまたは複数の実施形態によると、バイパスラインは、2基の隣接の吸着器をバイパスするように適合している。
【0019】
1つまたは複数の実施形態によると、バイパスラインは、下降流吸着器を上昇流吸着器に接続している。
【0020】
1つまたは複数の実施形態によると、吸着器は、吸着器を通って流れる流体を実質的に垂直に分配するように垂直位置に配列されている。
【0021】
1つまたは複数の実施形態によると、吸着器は、吸着器を通って流れる流体を実質的に水平に分配するように水平位置に配列される。有利には、吸収器中の流れ(上昇流/下降流)は、水平面において2つの反対方向に従って起こってよい。
【0022】
本発明の第2の態様によると、上述の目的、並びに他の利点は、第1の態様による擬似移動床による分離のためのデバイスを用いる擬似移動床による分離のための方法によって得られ、当該方法は、以下の工程を含んでいる:
- 吸着器に、少なくとも1種のフィードおよび脱着剤を給送し、少なくとも1種のエキストラクトおよび少なくとも1種のラフィネートを、前記吸着器から抜き出し、吸着剤床を、閉ループで相互接続し、吸着器中の給送および抜き出しのポイントを、時間の経過とともに、1個の吸着剤床に相当する量だけ切り替え時間によりシフトし、擬似移動床による分離のためのデバイスの複数の操作ゾーン、とりわけ、以下の主要なゾーンを決定する:
- ゾーンI;分離対象の(目的の)生成物(例えば、パラキシレン)の脱着のためのものであり、脱着剤Dの注入とエキストラクトEの抜き出しとの間にある;
- ゾーンII;分離対象の生成物の異性体の脱着のためのものであり、エキストラクトEの抜き出しと、フィードFの注入との間にある;
- ゾーンIII;分離対象の生成物の吸着のためのものであり、フィードFの注入と、ラフィネートRの抜き出しとの間にある;および
- ゾーンIV;ラフィネートRの抜き出しと、脱着剤Dの注入との間にある。
【0023】
1つまたは複数の実施形態によると、吸着剤床は、a/b/c/dタイプの構成と呼ばれる以下の構成に従ってゾーンI~IV中に分配される:
- aは、ゾーンI中の床の数である;
- bは、ゾーンII中の床の数である;
- cは、ゾーンIII中の床の数である;および
- dは、ゾーンIV中の床の数である;および
- a=(t*0.2)*(1±0.2);
- b=(t*0.4)*(1±0.2);
- c=(t*0.27)*(1±0.2);および
- d=(t*0.13)*(1±0.2)
ここで、tは、6~24、好ましくは8~15の自然整数である。
【0024】
1つまたは複数の実施形態によると、吸着剤床は、a/b/c/dタイプの構成と呼ばれる以下の構成に従ってゾーンI~IV中に分配される:
- aは、ゾーンI中の床の数である;
- bは、ゾーンII中の床の数である;
- cは、ゾーンIII中の床の数である;
- dは、ゾーンIV中の床の数である、および
- a=(t*0.17)*(1±0.2);
- b=(t*0.42)*(1±0.2);
- c=(t*0.25)*(1±0.2);および
- d=(t*0.17)*(1±0.2)
ここで、tは、6~24、好ましくは8~15の自然整数である。
【0025】
1つまたは複数の実施形態によると、本方法は、以下の操作条件の少なくとも1つを含む:
- 脱着剤は、ジエチルベンゼンおよびトルエンの1種または複数種の異性体からなる群から選ばれる;
- 用いられる吸着剤は、BaX、BaKXおよびBaLSXからなる群から選ばれるフォージャサイトを含む/からなる;
- フィードは、本質的にC8芳香族化合物の混合物からなる群から選ばれる;
- 吸着剤床中の温度は、140℃~189℃である;
- 圧力は、デバイスの全てのポイントにおいて液相が維持されるようにコントロールされる;
- 切り替え時間STは、20秒~90秒である;および
- 床の間の流れの平均速度は、1000~5000m3/hである。
【0026】
前述の態様による本発明の他の特徴および利点は、以下の記載および非限定的な例示の実施形態を、以下に説明される添付の図面を参照しながら読む際に明らかになることになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、SMBによる分離のための参照デバイスを図式的な形態で示し、図中、吸着器は、下降流吸着器である。
【
図2】
図2は、本発明の1つまたは複数の実施形態によるSMBによる分離のためのデバイスを図式的な形態で示し、図中、吸着器は、交互式に下降流および上昇流の吸着器である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(実施形態の説明)
本発明は、擬似移動床による分離、とりわけ、パラキシレンの分離のためのデバイスおよび方法に関する。
【0029】
前述の態様によるデバイスおよび方法の実施形態がここから詳細に説明されることになる。以下の詳細な説明において、多くの具体的な詳細が開示されるのは、本方法のより深い理解を提供するためである。しかしながら、本方法がこれらの具体的な詳細なしで行われ得ることは、当業者に明らかであるだろう。他のケースにおいて、周知の特徴が詳細には説明されないのは、説明が不必要に複雑になることを回避するためである。
【0030】
本特許出願において、用語「を含むこと(to comprise)」は、「を含むこと(to include)」および「を含有すること(to contain)」と同義(同じ意味)であり、包括的またはオープンであり、述べられていない他の要素を排除しない。用語「を含むこと(to comprise)」は、排他的かつクローズドな用語「からなる(to consist)」を含むことが理解される。さらに、本説明において、用語「本質的に(essentially)」または「実質的に(substantially)」は、±5%、好ましくは±1%、大いに好ましくは±0.5%の近似に対応する。例えば、化合物Aを本質的に含んでいるかまたはそれからなる流出物は、最低95重量%の化合物Aを含んでいる流出物に対応する。
【0031】
本発明は、化合物(例えば、キシレン)の擬似移動床による分離のために直列に配置された複数基の吸着器(または分離カラム)を含んでいるデバイスまたはユニットとして定義されてよく、それぞれの吸着器は、n個の吸着チャンバに分割され、それぞれ、1個の吸着剤床を含んでおり、n個の吸着剤床は、n枚のプレートまたは床間ゾーン(すなわち、n個の分配ゾーンおよびn個の収集ゾーン)によって分離され、吸着器は、上昇流および下降流に交互に配列されている。分配および収集のゾーンは、1つの床から次の床に吸着器中に流れる流体を通すための収集および分配のシステムを含む。
【0032】
本特許出願において、第1の吸着剤床の第1の分配ゾーンおよび最後の吸着剤床の最後の収集ゾーンは、一緒に単一の床間ゾーンを形成しているとみなされる。
【0033】
(デバイス)
本発明による擬似移動床による分離のためのデバイスは、例えば、クロマトグラフィーカラムまたは吸着カラムであり、擬似移動床として操作する。擬似移動床による分離は、周知技術である。原則として、擬似移動床として操作するカラムは、少なくとも3個のゾーン、一般的には4個、場合によっては5個のゾーンを含み、これらのゾーンのそれぞれは、所定数の連続の吸着剤床(例えば、固定床)を含み、各ゾーンは、給送点と抜き出し点との間のその位置によって画定される。典型的には、擬似移動床カラムは、分画されるべき少なくとも1個のフィードF(キシレンの混合物)および脱着剤D(溶離剤と呼ばれることもある)を給送され、少なくとも1個のラフィネートR(パラキシレンに枯渇したキシレンの混合物)およびエキストラクトE(脱着剤およびパラキシレン)が、前記カラムから抜き出される。給送点および抜き出し点は、時間の経過とともに変更され、典型的には、同一の方向に、1個の吸着剤床に対応する量だけシフトされる。
【0034】
有利には、本発明によるデバイスおよび方法の吸着器の上昇流/下降流についての交互配列により、ユニットの組み立てを改善すること、必要な設備を簡略化および制限すること、流体の分離を改善すること、および床間ゾーンと呼ばれるゾーンの容積を低減させることによって操作のためのエネルギーコストを低減させることが可能となる。さらに、本発明により、一対の床のみを完全に隔離する場合があるがユニットの残りを停止させることなく、ユニットを維持することが可能となり、これは、フォールバック様式で操作することができ、時には低下するものの満足のいく性能を有している。
【0035】
従来技術には、擬似移動床によってフィードの分離を達成することを可能にする種々のデバイスが詳細に記載されている。特に言及がなされてよいのは、特許US 2,985,589、US 3,214,247、US 3,268,605、US 3,592,612、US 4,614,204、US 4,378,292、US 5,200,075、US 5,316,821である。
【0036】
1つまたは複数の実施形態によると、分配および収集のゾーンは、注入のためのシステム、とりわけ、フィード(例えば、キシレンの混合物)および脱着剤(例えば、トルエンまたはパラジエチルベンゼン)の注入のためのシステム、および抜き出しのためのシステム、とりわけ、エキストラクト(例えば、パラキシレンおよび脱着剤の混合物)およびラフィネート(例えば、オルトキシレン、メタキシレン、脱着剤および場合によるエチルベンゼンの混合物)と呼ばれる生成流出物の抜き出しのためのシステムを含む。
【0037】
流体を擬似移動床による分離のためのデバイスに給送するおよび擬似移動床による分離のためのデバイスから流体を抜き出すためのコントロールされる手段/デバイスは、例えば、以下の2つの主要なタイプの技術のうちのいずれか1つである:
- 各プレートについて、流体を給送または抜き出すための複数個のコントロールされるオン/オフバルブ(場合によっては、流れをレギュレートする要素を有する);これらのバルブは、典型的には、対応するプレートのすぐ近くに位置する。各プレートは、典型的には、少なくとも4個の二方バルブを含み、オン/オフベースでコントロールされて、それぞれ、フィードおよび脱着剤を給送し、エキストラクトおよびラフィネートを抜き出す;または
- プレートの全てにわたって流体を給送または抜き出すための多方ロータリーバルブ。
【0038】
本発明は、とりわけ、種々の流体を給送および抜き出すために複数個のバルブを使用する擬似移動床様式で操作するカラムの関連の範囲に入る。
【0039】
好ましくは、吸着器の数mは、3~15、好ましくは4~12、非常に好ましくは5~10である。好ましくは、吸着器の数mは、偶数である。
【0040】
好ましくは、吸着器当たりの吸着剤床の数nは、1~4、好ましくは1~3、非常に好ましくは1~2である。
【0041】
好ましくは、吸着剤床の総数tは、6~24、好ましくは8~19、非常に好ましくは12~15である。
【0042】
本発明の1つまたは複数の実施形態によると、吸着剤床が有している高さH対直径Dの比H/Dは、最低1(好ましくは1超)、好ましくは最低1.5、非常に好ましくは最低2、例えば、最低3または4である。本発明の1つまたは複数の実施形態によると、吸着剤床が有している高さH対直径Dの比H/Dは、1~12、好ましくは1.5~10、非常に好ましくは2~8である。
【0043】
本発明によるデバイスおよび方法のさらなる利点は、従来技術におけるのより大きい高さH対直径Dの比H/Dを有する吸着剤床を用いる可能性にあり、ラジアル床の使用に接近でき、改善された分離を許容する。
【0044】
1つまたは複数の実施形態によると、本発明によるデバイスは、デバイスの少なくとも1基の吸着器、例えば2基の吸着器をバイパスするように適合されたバイパスラインをさらに含む。有利には、メンテナンスのために吸着剤床の一部のみを隔離することが、例えば、1基または連続する2基の吸着器を隔離し、分離方法を継続することによって、例えば、12床を有する吸着器を停止させることと比較して改善された満足な性能でもって可能である。
【0045】
1つまたは複数の実施形態によると、バイパスラインは、上流の吸着器i(iは1~mである)を、下流の吸着器i+2または下流の吸着器i+3に接続する。1つまたは複数の実施形態によると、バイパスラインは、例えばバイパスバルブによって、吸着器i+1および/または吸着器i+2を、吸着器iを離れる流れを吸着器i+2または吸着器i+3に送ることによってバイパスするように適合される。1つまたは複数の実施形態によると、バイパスラインは、下降流吸着器iを上昇流吸着器i+3に接続する。
【0046】
1つまたは複数の実施形態によると、吸着器は、垂直配列に配列される。本発明は、吸着器の水平配置の場合にも適用される。流れは、水平面において2つの反対方向に発生する。その概念は、上昇流/下降流と同一のままであり、関連する利点も同一である。
【0047】
図1を参照すると、SMBによる分離のための参照デバイスは、複数個の下降流吸着器(1)を含み、それぞれの吸着器は、シェルを含んでおり、このシェルは、上部ドームと下部ドームとの間に位置している。参照デバイスの下降流配列は、吸着器iの底部を次の吸着器i+1の頂部に接続するラインによって、全ての吸着器において一般的には下降流としての流体の流れに対応する。一般的には、参照デバイスは、24床を有するユニットであり、この床は、2基の下降流吸着器を含んでおり、下降流吸着器は、それぞれ、12床を含有している。
【0048】
図2を参照すると、本発明の1つまたは複数の実施形態によるSMBによる分離のためのデバイスは、上昇流と下降流について交互に配列された複数個の吸着器を含み、各吸着器は、シェルを含んでおり、このシェルは、上部ドームと株ドームとの間に位置付けられている
本発明によるデバイスの下降流吸着器(1)と上昇流吸着器(2)の交互配列は、吸着器i、i+2、i+4等において一般的には上昇流である流体の流れおよび吸着器i+1、i+3、i+5等において一般的には下降流である流体の流れに対応し、吸着器iの頂部は、次の吸着器i+1の頂部に接続され、吸着器i+1の底部は、次の吸着器i+2の頂部に接続されている。本発明の1つまたは複数の実施形態によるSMBによる分離のためのデバイスは、複数本のバイパスライン(3)をさらに含み、各バイパスライン(3)は、(流れの方向で)上流の下降流吸着器(1)を下流の上昇流吸着器(2)に接続しており、それ故に、2基の吸着器をパイパスしている。
【0049】
(方法)
本明細書の残りの部分において、用語「工程」は、所与の流れに対して、本方法の所定の点において行われる操作または一群の類似の操作を表すために用いられる。本方法は、流れまたは生成物の流れの順序で実行されるその種々の工程において記載される。
【0050】
SMBによる分離のための方法は、以下の工程を含む:吸着器に少なくとも1種のフィードFおよび脱着剤Dを給送し、少なくとも1種のエキストラクトEおよび少なくとも1種のラフィネートRを前記吸着器から抜き出し、吸着剤固体の1個または複数個の床を含んでいる前記吸着器を、閉ループにおいて相互接続し(すなわち、最後の吸着器の最後の床が、流れている流れを第1の吸着器の第1の床に送るように適合させ)、吸着器中の給送点および抜き出し点を、時間の経過とともに、1つの吸着剤床に対応している容積だけ、切り替え時間(STで表される)によりシフトし、SMBデバイスの複数箇所の操作ゾーン、とりわけ、以下の主要なゾーンを決定する:
定義上、操作ゾーンのそれぞれを、数によって表す:
- ゾーンI;パラキシレンの脱着のためのものであり、脱着剤Dの注入と、エキストラクトEの抜き出しとの間にある;
- ゾーンII;異性体の脱着のためのものであり、エキストラクトEの抜き出しと、フィードFの注入との間にある;
- ゾーンIII;パラキシレンの吸着のためのものであり、フィードFの注入と、ラフィネートRの抜き出しとの間にある;および
- ゾーンIV;ラフィネートRの抜き出しと、脱着剤Dの注入との間にある。
【0051】
1つまたは複数の実施形態によると、吸着剤床は、a/b/c/dタイプの構成と呼ばれる構成に従ってゾーンI~IVに分配される。すなわち、床の分配は、以下の通りである:
- aは、ゾーンIにおける床の数である;
- bは、ゾーンIIにおける床の数である;
- cは、ゾーンIIIにおける床の数である;および
- dは、ゾーンIVにおける床の数である。
【0052】
1つまたは複数の実施形態によると:
- a=(t*0.2)*(1±0.2);
- b=(t*0.4)*(1±0.2);
- c=(t*0.27)*(1±0.2);および
- d=(t*0.13)*(1±0.2)
であり、式中、tは、6~24、好ましくは8~15(例えば12)の自然整数である。
【0053】
1つまたは複数の実施形態によると:
- a=(t*0.17)*(1±0.2);
- b=(t*0.42)*(1±0.2);
- c=(t*0.25)*(1±0.2);および
- d=(t*0.17)*(1±0.2)
であり、式中、tは、6~24、好ましくは8~15(例えば12)の自然整数である。
【0054】
通常操作(例えば、吸着器をバイパスすることがない)において、給送および抜き出しは、ゾーンI~IVにおいて操作している吸着剤床の数の所定の割合により行われる。例えば、通常操作でのゾーンIにおける吸着剤床の割合は、a/tに等しく、ここで、tは、吸着剤床の総数である。1つまたは複数の実施形態によると、数xの吸着器がバイパスされる場合、給送および抜き出しのためにコントロールされるデバイス(例えば、複数のオール・オア・ナッシング型バルブ、多方向ロータリーバルブを備えたシステム)は、給送点および抜き出し点の位置を改変してゾーンI~IVにおいて操作している吸着剤床の平均数の所定の割合がおよそ±20%、好ましくは±10%、大いに好ましくは±5%内に維持されるように適合される。例えば、バイパス操作の間のゾーンI中の吸着剤床の割合は、a/(t-x)に等しい。
【0055】
本説明において、「平均数」の吸着剤床を含んでいるゾーンは、第1の(自然)数Xの吸着剤床をきっちり含んでよい、および第2の(自然)数X-1またはX+1の吸着剤床をきっちり含んでよいゾーンに対応する。例えば、2.5床を含んでいるゾーンIは、2個の吸着剤床をきっちり含み、3個の吸着剤床をきっちり含む。
【0056】
1つまたは複数の実施形態によると、置換期間STの第1部の間に(例えば、給送点および抜き出し点の置換が非同時性である場合)、少なくとも1個のゾーンは、第1の数Xの吸着剤床を含む;置換期間STの第2部の間に、少なくとも1個のゾーンは、第2の数X+1またはX-1の吸着剤床を含む。
【0057】
1つまたは複数の実施形態によると、第1のサイクル時間、またはサイクル時間の第1部の間に、少なくとも1個のゾーンは、第1の数Xの吸着剤床を含む;第2のサイクル時間、またはサイクル時間の第2部の間に、少なくとも1個のゾーンは、第2の数X+1またはX-1の吸着剤床を含む。本説明において、サイクル時間は、デバイスの注入点および抜き出し点がそれらの初期位置に戻るまでそれらが展開する間の時間に対応する。
【0058】
1つまたは複数の実施形態によると、数xの吸着器がバイパスされる場合、給送および抜き出しは、以下の構成a/b/c/dによるバイパス操作の間に行われる:
- a=((t-x)*0.2)*(1±0.2);
- b=((t-x)*0.4)*(1±0.2);
- c=((t-x)*0.27)*(1±0.2);および
- d=((t-x)*0.13)*(1±0.2)
式中、tは、6~24、好ましくは8~15(例えば、12)の自然整数である。
【0059】
1つまたは複数の実施形態によると、数xの吸着器がバイパスされる場合、給送および抜き出しは、以下の構成a/b/c/dによるバイパス操作の間に行われる:
- a=((t-x)*0.17)*(1±0.2);
- b=((t-x)*0.42)*(1±0.2);
- c=((t-x)*0.25)*(1±0.2);および
- d=((t-x)*0.17)*(1±0.2)
式中、tは、6~24、好ましくは8~15(例えば12)の自然整数である。
【0060】
好ましくは、バイパスされた吸着器の数xは。1または2に等しく、より好ましくは、xは、2に等しい。
【0061】
例えば、参照の擬似移動床の分離デバイス、例えば、生成物、例えば、キシレンの分離のための同一のシェル中に重ねられた12床を含んでいる塔を考えてみよう。12床の塔上の床の故障(漏れ、破損等)の場合には、塔全体が、停止させられ、積載物が降ろされ、再積載させられるべきであり、その後に再スタートする。デバイスがシャットダウンされる場合にはこれには長期間が必要であり、生産がない。
【0062】
今ここで、生成物、例えば、キシレンの分離のために例えば12基の吸着器を含んでいるが、床に欠陥がある本発明によるデバイスを考えてみよう。床は、バイパスラインを用いて、好ましくは、隣接の床と共に隔離され得る。バイパスは、好ましくは、吸着器の底部からなされ、それ故に、断熱された吸着器の頭部をオープンにして、負荷を解き、それらを修理することが可能となる。メンテナンス操作の間に、擬似移動床は、残りの10床により操作を継続することができる。
【0063】
有利には、ゾーン毎に吸着剤の床または篩いの同一の分配を維持するように配列を調節することが可能である。例えば、構成3/6/4/2における通常の操作について。メンテナンスは、2.6/5.2/3.5/1.7構成でのバイパス操作の間に行われ得る。有利には、本発明による方法は、入口/出口のパイプの同期ムーブメントを実施してよいが、本発明によるデバイスにおいて入口/出口バルブの非同期ムーブメントを実施してもよく、非同期ムーブメントは、VARICOLとしても知られているものである。有利には、生成は、望みの純度に維持されてよい。操作の収率は、より低い容積の利用可能な篩いによって多少影響を受ける可能性がある。
【0064】
1つまたは複数の実施形態によると、脱着剤は、ジエチルベンゼンおよびトルエンの1種または複数種の異性体からなる群から選ばれる。1つまたは複数の実施形態によると、脱着剤は、パラジエチルベンゼンまたはトルエンである。1つまたは複数の実施形態によると、脱着剤は、トルエンである。
【0065】
1つまたは複数の実施形態によると、用いられる吸着剤は、BaX、BaKXおよびBaLSXからなる群から選ばれるフォージャサイトを含む/からなる。
【0066】
1つまたは複数の実施形態によると、フィードは、本質的にC8の芳香族化合物(例えば、キシレンおよびエチルベンゼン)の混合物からなる群から選ばれる。1つまたは複数の実施形態によると、混合物は、最低95%、好ましくは最低97%(例えば、最低99%)の本質的にC8の芳香族化合物を含む。1つまたは複数の実施形態によると、フィードは、フィードの全重量に相対して最低15重量%のパラキシレンおよび/または30重量%のメタキシレンを含む。
【0067】
工業的に非常に重要なSMB分離方法の1つの例は、C8芳香族フラクションを分離して、市販純度、典型的には、最低99.7重量%の純度のパラキシレン、およびエチルベンゼン、オルトキシレンおよびメタキシレンに豊富なラフィネートを生じさせることである。
【0068】
生じたエキストラクトは、脱着剤、パラキシレンを含有し、場合によっては、痕跡量の異性体を含有している(パラキシレン純度95%超、好ましくは98%超)。このエキストラクトは、脱着剤を(例えば蒸留によって)分離するように処理され、次いで、結晶化または擬似移動床による吸着のいずれかによって精製されて、パラキシレンの純度を増大させ得る。
【0069】
1つまたは複数の実施形態によると、吸着剤床中の温度は、140℃~189℃、好ましくは155℃~185℃、特に好ましくは170℃~180℃である。
【0070】
圧力は、本発明による方法の全ての点において液相が維持されるように調節される。1つまたは複数の実施形態によると、吸着剤床中の圧力は、1MPa~10MPa、好ましくは2MPa~4MPa、より好ましくは2MPa~3MPaである。
【0071】
1つまたは複数の実施形態によると、用いられる切り替え時間ST(給送/抽出の2回の連続する切り替えの間の時間)は、20秒~90秒である。好ましくは、用いられる切り替え時間STは、30秒~70秒(例えば、50±10秒)である。
【0072】
1つまたは複数の実施形態によると、床の間の流れの平均速度は、1000m3/h~5000m3/h、好ましくは2000m3/hまたは2500m3/h~4000m3/h、非常に好ましくは3000m3/h~4000m3/hである。
【0073】
(実施例)
(参照デバイス)
SMBによる分離のための参照デバイスを考える。この参照デバイスは、12基の吸着器からなり、それぞれ、1個の吸着剤床を含有しており、吸着剤床は、容積45.9m3および高さH対直径Dの比H/D 4を有している。
【0074】
流れは、各吸着器において下降流である。
【0075】
各吸着器の直径は、3mであり。ドームの接線間の高さ(4)は、12mである。
【0076】
床の間の流れの平均速度は、3850m3/hである。
【0077】
ユニットの床間容積は、177.7m3であると推定される。
【0078】
(本発明に合致するデバイス)
本発明に合致するSMBによる分離のためのデバイスを考える。このデバイスは、12基の吸着器からなり、吸着器は、それぞれ、1個の吸着剤床を含有しており、この吸着剤床の容積は、45.9m3であり、高さH対直径Dの比H/Dは4である。
【0079】
流れは、連続する吸着器において交互に上昇流および下降流である。
【0080】
各吸着器の直径は、3mであり、ドームの接線間の高さ(4)は、12mである。
【0081】
床の間の流れの平均速度は、3500m3/hである。
【0082】
ユニットの床間容積は、125.2m3であると推定される。
【0083】
この実施例は、とりわけ、床間容積における利得を例証しており、これは、ユニット中の流れの速度に関する利得、したがって、操作コスト並びにユニットを構築するコストに関する操作上の利得(金属の質量が低減する)をもたらす。
【国際調査報告】