(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】CD22及びCD79Bを標的とする抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/63 20060101AFI20240311BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240311BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240311BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240311BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240311BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240311BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240311BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240311BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240311BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240311BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240311BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240311BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240311BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240311BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240311BHJP
A61P 5/38 20060101ALI20240311BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240311BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240311BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240311BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20240311BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240311BHJP
A61P 15/08 20060101ALI20240311BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240311BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240311BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20240311BHJP
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A61P 17/00 20060101ALI20240311BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20240311BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240311BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240311BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240311BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240311BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240311BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C12N15/63 Z
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K47/68
A61P37/06
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P3/10
A61P5/38
A61P7/06
A61P1/16
A61P1/18
A61P1/14
A61P13/12
A61P15/08
A61P27/02
A61P11/00
A61P5/14
A61P25/00
A61P17/00
A61P21/04
A61P25/28
A61P9/00
A61P37/02
A61P7/00
A61P43/00 105
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558396
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 IB2022052645
(87)【国際公開番号】W WO2022201052
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】ベッドナー,カイル
(72)【発明者】
【氏名】クマール,ナレシュ
(72)【発明者】
【氏名】シン,サンジャヤ
(72)【発明者】
【氏名】ガネサン,ラジクマール
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ダンリン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC15
4B064CC24
4B064CE03
4B064CE06
4B064DA01
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD15
4B065BD18
4B065CA25
4B065CA44
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC01
4C076CC07
4C076CC09
4C076CC10
4C076CC11
4C076CC14
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC18
4C076CC21
4C076CC26
4C076CC30
4C076EE59
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB41
4C085BB42
4C085BB43
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C085GG08
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045BA50
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA10
4H045GA15
4H045GA45
(57)【要約】
本明細書では、CD79b及びCD22に結合する多重特異性抗体、それらをコードするポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、それらを作製及び使用する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重特異性抗体又は多重特異性結合断片であって、
a)分化抗原群79Bタンパク質(CD79B)に結合する第1の抗原結合アームであって、第1の重鎖可変ドメイン(VH1)を含み、第1の軽鎖可変ドメイン(VL1)を更に含む、第1の抗原結合アームと、
b)分化抗原群22(CD22)に結合する第2の抗原結合アームであって、第2の重鎖可変ドメイン(VH2)を含み、第2の軽鎖可変ドメイン(VL2)を更に含む、第2の抗原結合アームと、を含む、多重特異性抗体又は多重特異性結合断片。
【請求項2】
(a)前記VH1が、配列番号9のHCDR1、配列番号10のHCDR2、及び配列番号11のHCDR3を含み、前記VL1が、配列番号12のLCDR1、配列番号13のLCDR2、及び配列番号14のLCDR3を含む、
(b)前記VH1が、配列番号17のHCDR1、配列番号18のHCDR2、及び配列番号19のHCDR3を含み、前記VL1が、配列番号20のLCDR1、配列番号21のLCDR2、及び配列番号22のLCDR3を含む、
(c)前記VH1が、配列番号25のHCDR1、配列番号26のHCDR2、及び配列番号27のHCDR3を含み、前記VL1が、配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2、及び配列番号30のLCDR3を含む、
(d)前記VH1が、配列番号33のHCDR1、配列番号34のHCDR2、及び配列番号35のHCDR3を含み、前記VL1が、配列番号36のLCDR1、配列番号37のLCDR2、及び配列番号38のLCDR3を含む、
(e)前記VH1が、配列番号41のHCDR1、配列番号42のHCDR2、及び配列番号43のHCDR3を含み、前記VL1が、配列番号44のLCDR1、配列番号45のLCDR2、及び配列番号46のLCDR3を含む、
(f)前記VH1が、配列番号49のHCDR1、配列番号50のHCDR2、及び配列番号51のHCDR3を含み、前記VL1が、配列番号52のLCDR1、配列番号53のLCDR2、及び配列番号54のLCDR3を含む、又は
(g)前記VH1が、配列番号57のHCDR1、配列番号58のHCDR2、及び配列番号59のHCDR3を含み、前記VL1が、配列番号60のLCDR1、配列番号61のLCDR2、及び配列番号62のLCDR3を含む、
請求項1に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片。
【請求項3】
CD79bに結合する前記第1の抗原結合アームが、以下:
a)配列番号15のVH及び配列番号16のVL、
b)配列番号23のVH及び配列番号24のVL、
c)配列番号31のVH及び配列番号32のVL、
d)配列番号39のVH及び配列番号40のVL、
e)配列番号47のVH及び配列番号48のVL、
f)配列番号55のVH及び配列番号56のVL、
g)配列番号63のVH及び配列番号64のVL、並びに
h)配列番号80のVH及び配列番号81のVL
からなる群から選択されるVH及びVLを含む、請求項1又は2に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片。
【請求項4】
CD79bに結合する前記抗原結合アームが、配列番号9のHCDR1、配列番号10のHCDR2、及び配列番号11のHCDR3を含むVH1、並びに配列番号12のLCDR1、配列番号13のLCDR2、及び配列番号14のLCDR3を含むVL1を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片。
【請求項5】
CD79bに結合する前記抗原結合アームが、配列番号80の前記VH1及び配列番号81の前記VL1を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片。
【請求項6】
CD22に結合する前記第2の抗原結合アームが、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含むVH2、並びに配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含むVL2を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片。
【請求項7】
前記VH2が、配列番号7を含み、前記VL2が、配列番号8を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片。
【請求項8】
前記第1又は第2の抗原結合アームが、一本鎖可変断片(scFv)、(scFv)
2、抗原結合断片(Fab)、F(ab’)
2、Fd、Fv、VHH、及びdABからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片。
【請求項9】
前記第1の抗原結合アームが、scFvを含み、前記第2の抗原結合アームが、Fabを含む、請求項8に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片。
【請求項10】
前記第1の抗原結合アームが、配列番号82のアミノ酸配列を有するscFvを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片。
【請求項11】
CD79bに結合する前記第1の抗原結合アームが、第1の断片結晶化可能(Fc)ドメインを含むか、又はそれに作動可能に連結されており、CD22に結合する前記第2の抗原結合アームが、第2のFcドメインを含むか、又はそれに作動可能に連結されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片。
【請求項12】
前記第1及び第2のFcドメインのうちの少なくとも1つが、1つ又は2つ以上の変異を含み、前記1つ又は2つ以上の変異が、前記Fcドメインのヘテロ二量体化を促進するか、Fcγ受容体へのFc結合を低減させるか、プロテインAへのFc結合を低減させるか、前記多重特異性抗体若しくは多重特異性結合断片の半減期を延長するか、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項11に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片。
【請求項13】
前記Fcドメインのヘテロ二量体化を促進する前記1つ又は2つ以上の変異が、T366S、L368A、T366W、及びY407V(EU番号付け)から選択される、請求項12に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片。
【請求項14】
前記第1のFcドメインが、変異T366Wを含み、前記第2のFcドメインが、変異T366S、L368A、及びY407Vを含む、請求項13に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片。
【請求項15】
Fcγ受容体へのFc結合を低減させる前記1つ又は2つ以上の変異が、L234A、L235A、及びD265S(EU番号付け)から選択される、請求項12~14のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片。
【請求項16】
前記第1のFcドメイン及び前記第2のFcドメインの両方が、変異L234A、L235A、及びD265Sを含む、請求項15に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片。
【請求項17】
プロテインAへのFc結合を低減させる前記1つ又は2つ以上の変異が、H435R及びY436F(EU番号付け)から選択される、請求項12~16のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片。
【請求項18】
前記第2のFcドメインが、変異H435R及びY436Fを含む、請求項17に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片。
【請求項19】
前記多重特異性抗体又は多重特異性結合断片の半減期を延長する前記1つ又は2つ以上の変異が、M252Y、S254T、及びT256E(EU番号付け)から選択される、請求項12~18のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片。
【請求項20】
前記第1のFcドメイン及び前記第2のFcドメインの両方が、変異M252Y、S254T、及びT256Eを含む、請求項19に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片。
【請求項21】
前記第1のFcドメインが、配列番号89を含み、前記第2のFcドメインが、配列番号90を含む、請求項11~20のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片。
【請求項22】
配列番号79、配列番号83、及び配列番号84のアミノ酸配列を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片。
【請求項23】
治療剤又は造影剤にコンジュゲートされた、請求項1~22のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片を含む、免疫コンジュゲート。
【請求項24】
請求項1~22のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片と、医薬的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項25】
請求項1~22いずれか一項に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項26】
請求項25に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項27】
請求項27に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項28】
対象における自己免疫性疾患を治療する方法であって、治療有効量の請求項1~22のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片を、前記自己免疫性疾患を治療するのに十分な時間にわたって、前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項29】
前記自己免疫性疾患が、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、シェーグレン症候群(SjS)、リウマチ性関節炎、自己免疫ミオパシー、1型糖尿病、アジソン病、悪性貧血、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、自己免疫性膵炎、セリアック病、巣状糸球体硬化症、原発性膜性腎症、卵巣機能不全、自己免疫精巣炎、乾性眼疾患、特発性間質性肺炎、甲状腺疾患(例えば、グレーブス病)、全身性硬化症(強皮症)、筋無力症症候群、自己免疫脳炎、水疱性皮膚疾患、TTP、ITP、AIHA、Anca血管炎、心筋炎/拡張型CM、NMOSD、母体-胎児同種免疫、母体-胎児自己免疫、抗カルジオリピン/抗リン脂質抗体症候群、高ガンマグロブリン血症、移植関連ID、又は多巣性運動ニューロパチーである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
対象におけるB細胞活性化を調節するか、又は異常なB細胞活性化を阻害する方法であって、有効量の請求項1~22のいずれか一項に記載の多重特異性抗体若しくは多重特異性結合断片を、B細胞活性化を調節するか、又は異常なB細胞活性化を阻害するのに十分な時間にわたって、前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項31】
対象におけるB細胞活性化を調節するか、異常なB細胞活性化を阻害するか、又は自己免疫性疾患を治療するための多重特異性抗体又は多重特異性結合断片の使用であって、有効量の請求項1~22のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片を、前記対象に投与することを含む、使用。
【請求項32】
対象におけるB細胞増殖を減少させるか、サイトカイン産生を減少させるか、又はB細胞活性化を低減させる方法であって、有効量の請求項1~22のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片を、B細胞増殖を減少させるか、サイトカイン産生を減少させるか、又はB細胞活性化を低減させるのに十分な時間にわたって、前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項33】
対象におけるB細胞増殖を減少させるか、サイトカイン産生を減少させるか、又はB細胞活性化を低減させるための多重特異性抗体又は多重特異性結合断片の使用であって、有効量の請求項1~22のいずれか一項に記載の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片を、前記対象に投与することを含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年3月24日に出願された米国特許仮出願第63/165,416号に対する優先権を主張するものであり、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(ASCIIテキストファイルとして提出された「配列表」、表、又はコンピュータプログラムリストの付録への参照)
配列表は、ASCIIテキストファイル:206389-0044-00US_SequenceListing.txtに書かれており、2022年3月15日に作成され、80,036バイトのファイルサイズを有し、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
(技術分野)
本開示は、分化抗原群79Bタンパク質(cluster of differentiation 79B、CD79B)及び分化抗原群22(cluster of differentiation 22、CD22)に結合する多重特異性抗体、多重特異性抗体をコードするポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、並びに多重特異性抗体を作製及び使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
自己免疫性疾患の有病率は、一般集団の3~5%であると推定され、B細胞の調節不全、自己反応性B細胞、及び自己抗体の存在は、多くの自己免疫性疾患の共通の特徴である(Wang et al.,2015,J Intern Med 2015;278:369-395)。
【0005】
B細胞又はBリンパ球は、適応免疫の中心的な構成要素であり、抗体を産生し、抗原提示細胞の役割を果たし、サイトカインを分泌し、活性化後にメモリB細胞へと発達することにより、異なる病原体に反応する(Packard and Cambier,2013,F1000Prime Rep,5:40)。B細胞は、血液及びリンパ系で循環する。リンパ器官では、B細胞は、その同族抗原に遭遇し、Tヘルパー細胞からの追加シグナルと共に、エフェクター形質細胞に分化することができる。これらの細胞は、血液中を循環して、抗原又は病原体を標的とし排除する、特定の抗体を分泌する(Puri et al.,2013,Int Rev Immunol,32(4):397-427)。
【0006】
健康な個体において、免疫寛容は、免疫系が自己抗原を認識することを妨げ、したがって、B、T、及び骨髄細胞による健康な細胞及び組織の標的化及び破壊を制限する。しかしながら、自己免疫性疾患は、免疫細胞が自己抗原を認識して反応する寛容の破壊を特徴とする。そのような場合、B細胞は、自己抗原に対する抗体(「自己抗体」)を認識して産生し、これは、次いで、補体、細胞傷害性T細胞、及び骨髄細胞などの免疫系の他の成分による破壊のために細胞及び組織を標的とすることができる。
【0007】
病原体由来又は自己抗原のいずれかの抗原を検出するために、B細胞は、膜貫通免疫グロブリン分子(mIg)並びにCD79a(Igα)及びCD79b(Igβ)のジスルフィド結合ヘテロ二量体から構成される多成分受容体である細胞表面受容体(BCR)を発現する(Chu et al.,2001,Appl Immunohistochem Mol Morphol,Jun;9(2):97-106)。CD79bは、B細胞の多くの分化状態にわたってB細胞系列内で選択的に発現される。BCRの活性化は、B細胞分化、抗体及び自己抗体産生、サイトカイン産生、並びにT細胞への抗原提示を含む複数の免疫活性化結果をもたらす。
【発明の概要】
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明は、多重特異性抗体又は多重特異性結合断片であって、
a)分化抗原群79Bタンパク質(CD79B)に結合する第1の抗原結合アームであって、第1の重鎖可変ドメイン(VH1)を含み、第1の軽鎖可変ドメイン(VL1)を更に含む、第1の抗原結合アームと、
b)分化抗原群22(CD22)に結合する第2の抗原結合アームであって、第2の重鎖可変ドメイン(VH2)を含み、第2の軽鎖可変ドメイン(VL2)を更に含む、第2の抗原結合アームと、を含む、多重特異性抗体又は多重特異性結合断片を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態では、CD79bに結合する第1の抗原結合アームは、
a)配列番号9、17、25、33、41、49、若しくは57の重鎖相補性決定領域(heavy chain complementarity determining region、HCDR)1、
b)配列番号10、18、26、34、42、50、若しくは58のHCDR2、
c)配列番号11、19、27、35、43、51、若しくは59のHCDR3、
d)配列番号12、20、28、36、44、52、若しくは60の軽鎖相補性決定領域(light chain complementarity determining region、LCDR)1、
e)配列番号13、21、29、37、45、53、若しくは61のLCDR2、又は
f)配列番号14、22、30、38、46、54、及び62のLCDR3を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、CD79bに結合する第1の抗原結合アームは、
(a)配列番号9のHCDR1、配列番号10のHCDR2、及び配列番号11のHCDR3、並びに配列番号12のLCDR1、配列番号13のLCDR2、及び配列番号14のLCDR3、
(b)配列番号17のHCDR1、配列番号18のHCDR2、及び配列番号19のHCDR3、並びに配列番号20のLCDR1、配列番号21のLCDR2、及び配列番号22のLCDR3、
(c)配列番号25のHCDR1、配列番号26のHCDR2、及び配列番号27のHCDR3、並びに配列番号28のLCDR1、配列番号29のLCDR2、及び配列番号30のLCDR3、
(d)配列番号33のHCDR1、配列番号34のHCDR2、及び配列番号35のHCDR3、並びに配列番号36のLCDR1、配列番号37のLCDR2、及び配列番号38のLCDR3、
(e)配列番号41のHCDR1、配列番号42のHCDR2、及び配列番号43のHCDR3、並びに配列番号44のLCDR1、配列番号45のLCDR2、及び配列番号46のLCDR3、
(f)配列番号49のHCDR1、配列番号50のHCDR2、及び配列番号51のHCDR3、並びに配列番号52のLCDR1、配列番号53のLCDR2、及び配列番号54のLCDR3、又は
(g)配列番号57のHCDR1、配列番号58のHCDR2、及び配列番号59のHCDR3、並びに配列番号60のLCDR1、配列番号61のLCDR2、及び配列番号62のLCDR3を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、CD79bに結合する第1の抗原結合アームは、以下:
a)配列番号15のVH及び配列番号16のVL、
b)配列番号23のVH及び配列番号24のVL、
c)配列番号31のVH及び配列番号32のVL、
d)配列番号39のVH及び配列番号40のVL、
e)配列番号47のVH及び配列番号48のVL、
f)配列番号55のVH及び配列番号56のVL、
g)配列番号63のVH及び配列番号64のVL、又は
h)配列番号80のVH及び配列番号81のVLのVH及びVLを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、CD79bに結合する抗原結合アームは、配列番号9のHCDR1、配列番号10のHCDR2、及び配列番号11のHCDR3を含むVH1、並びに配列番号12のLCDR1、配列番号13のLCDR2、及び配列番号14のLCDR3を含むVL1を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、CD79bに結合する抗原結合アームは、配列番号80のVH1及び配列番号81のVL1を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、CD22に結合する第2の抗原結合アームは、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含むVH2、並びに配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含むVL2を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、VH2は、配列番号7を含み、VL2は、配列番号8を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、CD79bに結合する第1の抗原結合アームは、
a)配列番号9、17、25、33、41、49、若しくは57の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、
b)配列番号10、18、26、34、42、50、若しくは58のHCDR2、
c)配列番号11、19、27、35、43、51、若しくは59のHCDR3、
d)配列番号12、20、28、36、44、52、若しくは60の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、
e)配列番号13、21、29、37、45、53、若しくは61のLCDR2、又は
f)配列番号14、22、30、38、46、54、及び62のLCDR3を含み、
CD22に結合する第2の抗原結合アームは、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含むVH2、並びに配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含むVL2を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、CD79bに結合する第1の抗原結合アームは、配列番号9のHCDR1、配列番号10のHCDR2、及び配列番号11のHCDR3、並びに配列番号12のLCDR1、配列番号13のLCDR2、及び配列番号14のLCDR3を含むVL1を含み、CD22に結合する第2の抗原結合アームは、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含むVH2、並びに配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含むVL2を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、CD79bに結合する第1の抗原結合アームは、配列番号80のVH1及び配列番号81のVL1を含み、CD22に結合する第2の抗原結合アームは、配列番号7のVH2及び配列番号8のVL2を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1又は第2の抗原結合アームは、単鎖可変断片(single-chain variable fragment、scFv)、(scFv)2、抗原結合断片(Fab)、F(ab’)2、Fd、Fv、VHH、又はdABを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合アームは、scFvを含み、第2の抗原結合アームは、Fabを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1の抗原結合アームは、配列番号82のアミノ酸配列を有するscFvを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、CD79bに結合する第1の抗原結合アームは、第1の断片結晶化可能(Fragment crystallizable、Fc)ドメインを含むか、又はそれに作動可能に連結され、CD22に結合する第2の抗原結合アームは、第2のFcドメインを含むか、又はそれに作動可能に連結される。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1及び第2のFcドメインのうちの少なくとも1つは、1つ又は2つ以上の変異を含み、1つ又は2つ以上の変異は、Fcドメインのヘテロ二量体化を促進するか、Fcγ受容体へのFc結合を低減させるか、プロテインAへのFc結合を低減させるか、多重特異性抗体若しくは多重特異性結合断片の半減期を延長するか、又はこれらの任意の組み合わせである。
【0024】
いくつかの実施形態では、Fcドメインのヘテロ二量体化を促進する1つ又は2つ以上の変異は、T366S、L368A、T366W、及びY407V(EU番号付け)から選択される。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1のFcドメインは、変異T366Wを含み、第2のFcドメインは、変異T366S、L368A、及びY407V(EU番号付け)を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、Fcγ受容体へのFc結合を低減させる1つ又は2つ以上の変異は、L234A、L235A、及びD265S(EU番号付け)から選択される。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1のFcドメイン及び第2のFcドメインの両方が、変異L234A、L235A、及びD265S(EU番号付け)を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、プロテインAへのFc結合を低減させる1つ又は2つ以上の変異は、H435R及びY436F(EU番号付け)から選択される。
【0029】
いくつかの実施形態では、第2のFcドメインは、変異H435R及びY436F(EU番号付け)を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、多重特異性抗体又は多重特異性結合断片の半減期を延長する1つ又は2つ以上の変異は、M252Y、S254T、及びT256E(EU番号付け)から選択される。
【0031】
いくつかの実施形態では、第1のFcドメイン及び第2のFcドメインの両方が、変異M252Y、S254T、及びT256Eを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1のFcドメインは、配列番号89を含み、第2のFcドメインは、配列番号90を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、多重特異性抗体又は多重特異性結合断片は、配列番号79、配列番号83、及び配列番号84のアミノ酸配列を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、本発明は、治療剤又は造影剤にコンジュゲートされた、本開示による多重特異性抗体又は多重特異性結合断片を含む免疫コンジュゲートを提供する。いくつかの実施形態では、免疫コンジュゲートは、配列番号79、配列番号83、及び配列番号84のアミノ酸配列を含み、配列番号79、配列番号83、及び配列番号84のうちの少なくとも1つは、治療剤又は造影剤にコンジュゲートされている。
【0035】
いくつかの実施形態では、本発明は、本開示による多重特異性抗体又は免疫コンジュゲート分子、及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、配列番号79、配列番号83、及び配列番号84のアミノ酸配列を含む多重特異性抗体又は免疫コンジュゲート分子、並びに医薬的に許容される担体を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、本発明は、本開示による多重特異性抗体又は免疫コンジュゲート分子の抗原結合アーム又はその断片をコードする少なくとも1つの核酸分子を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、核酸分子の組み合わせを提供し、その核酸分子の組み合わせは、配列番号79、配列番号83、及び配列番号84の各々をコードする。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明は、本開示による多重特異性抗体又は免疫コンジュゲート分子の抗原結合アーム又はその断片をコードする核酸分子を含む少なくとも1つのベクターを提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、核酸分子の組み合わせを含むベクターの組み合わせを提供し、その核酸分子の組み合わせは、配列番号79、配列番号83、及び配列番号84の各々をコードする。
【0038】
いくつかの実施形態では、本発明は、本開示による多重特異性抗体又は免疫コンジュゲート分子の少なくとも1つの抗原結合アーム又は断片をコードする核酸分子を含む少なくとも1つのベクターを含む少なくとも1つの宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、核酸分子の組み合わせを含むベクターの組み合わせを提供し、その核酸分子の組み合わせは、配列番号79、配列番号83、及び配列番号84の各々をコードする。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象における自己免疫性疾患を治療する方法であって、治療有効量の本開示による多重特異性抗体又は多重特異性結合断片又は免疫コンジュゲートを、自己免疫性疾患を治療するのに十分な時間にわたって、対象に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、対象における自己免疫性疾患を治療する方法であって、治療有効量の、配列番号79、配列番号83、及び配列番号84を含む多重特異性抗体又は多重特異性結合断片又は免疫コンジュゲートを投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、対象における自己免疫性疾患を治療する方法であって、治療有効量の、配列番号79、配列番号83、及び配列番号84を含み、かつ医薬的担体を更に含む、多重特異性抗体又は多重特異性結合断片又は免疫コンジュゲートを投与することを含む、方法を提供する。
【0040】
いくつかの実施形態では、自己免疫性疾患は、全身性紅斑性狼瘡(Systemic lupus erythematosus、SLE)、シェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome、SjS)、リウマチ性関節炎、自己免疫ミオパシー、1型糖尿病、アジソン病、悪性貧血、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎(Primary biliary cholangitis、PBC)、自己免疫性膵炎、セリアック病、巣状糸球体硬化症、原発性膜性腎症、卵巣機能不全、自己免疫精巣炎、乾性眼疾患、特発性間質性肺炎、甲状腺疾患(例えば、グレーブス病)、全身性硬化症(強皮症)、筋無力症症候群、自己免疫脳炎、水疱性皮膚疾患、TTP、ITP、AIHA、Anca血管炎、心筋炎/拡張型CM、NMOSD、母体-胎児同種免疫、母体-胎児自己免疫、抗カルジオリピン/抗リン脂質抗体症候群、高ガンマグロブリン血症、移植関連ID、又は多巣性運動ニューロパチーである。
【0041】
いくつかの実施形態では、本発明は、B細胞活性化を調節するか、又は異常なB細胞活性化を阻害する方法であって、本開示による多重特異性抗体又は多重特異性結合断片又は免疫コンジュゲートを、対象に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、B細胞活性化を調節するか、又は異常なB細胞活性化を阻害する方法であって、配列番号79、配列番号83、及び配列番号84を含む多重特異性抗体又は多重特異性結合断片、又は免疫コンジュゲートを投与することを含む、方法を提供する。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象におけるB細胞活性化を調節するか、又は異常なB細胞活性化を阻害する方法であって、有効量の本開示による多重特異性抗体又は多重特異性結合断片又は免疫コンジュゲートを、B細胞活性化を調節するか、又は異常なB細胞活性化を阻害するのに十分な時間にわたって、対象に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、対象におけるB細胞活性化を調節するか、又は異常なB細胞活性化を阻害する方法であって、有効量の、配列番号79、配列番号83、及び配列番号84を含む多重特異性抗体又は多重特異性結合断片又は免疫コンジュゲートを、B細胞活性化を調節するか、又は異常なB細胞活性化を阻害するのに十分な時間にわたって、対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0043】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象におけるB細胞活性化を調節するか、異常なB細胞活性化を阻害するか、又は自己免疫性疾患を治療するための、有効量の、本開示による多重特異性抗体又は多重特異性結合断片又は免疫コンジュゲートの使用に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、対象におけるB細胞活性化を調節する、異常なB細胞活性化を阻害する、又は自己免疫性疾患を治療するための、有効量の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片又は免疫コンジュゲートの使用であって、当該多重特異性抗体又は多重特異性結合断片又は免疫コンジュゲートが、配列番号79、配列番号83、及び配列番号84を含む、使用に関する。
【0044】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象におけるB細胞増殖を減少させるか、サイトカイン産生を減少させるか、又はB細胞活性化を低減させる方法であって、有効量の、本開示による多重特異性抗体又は多重特異性結合断片又は免疫コンジュゲートを、B細胞増殖を減少させるか、サイトカイン産生を減少させるか、又はB細胞活性化を低減させるのに十分な時間にわたって、対象に投与することを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、対象におけるB細胞増殖を減少させるか、サイトカイン産生を減少させるか、又はB細胞活性化を低減させる方法であって、有効量の、配列番号79、配列番号83、及び配列番号84を含む多重特異性抗体又は多重特異性結合断片又は免疫コンジュゲートを投与することを含む、方法を提供する。
【0045】
いくつかの実施形態では、本発明は、B細胞増殖を減少させるか、サイトカイン産生を減少させるか、又はB細胞活性化を低減させるための、有効量の、本開示による多重特異性抗体又は多重特異性結合断片又は免疫コンジュゲートの使用に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、B細胞増殖及びサイトカイン産生を減少させるか、又はB細胞活性化を低減させるための、有効量の多重特異性抗体又は多重特異性結合断片又は免疫コンジュゲートの使用であって、その多重特異性抗体又は多重特異性結合断片又は免疫コンジュゲートが、配列番号79、配列番号83、及び配列番号84を含む、使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】CD22×CD79b二重特異性抗体の非枯渇能力を実証する実験結果を示す。PBMCを、培地単独、CD22×CD79b二重特異性抗体(C192B30)、CD22×アイソタイプ二重特異性抗体(C192B36)、アイソタイプ×CD79b二重特異性抗体(C192B2)、又は抗CD20枯渇mAbと共に48時間培養した。48時間後、細胞を生細胞(Zombie Dye Aqua)、T細胞(CD3)、及びB細胞(CD22、CD20、CD19)について染色した。次いで、b細胞のパーセントを、培地単独ウェルと比較して計算した。二重特異性抗体は、いずれの二重特異性フォーマットにおいてもB細胞の枯渇をほとんど又は全く有さなかったが、抗CD20枯渇mAbの陽性対照は、PBMCにおけるB細胞の有意な減少を示した。
【
図2】B細胞近位シグナル(p-Syk、p-PLCγ2)がCD22×CD79b二重特異性抗体によって阻害されたことを実証する実験結果を示す。精製されたB細胞を、刺激前に以下のものと共に30分間培養した:培地単独、CD22×CD79b二重特異性抗体(C192B30)、CD22×アイソタイプ二重特異性抗体(C192B36)、及びアイソタイプ×CD79b二重特異性抗体(C192B2)。30分が経過した後、B細胞を抗IgM F(ab)’2(20μg/mL)で刺激して、FcγR結合に関与している可能性があるあらゆる交絡因子を回避した。次いで、B細胞を所定の時点(0、5、8、10、15及び30分)で固定した。固定後、細胞を、B細胞受容体(B-cell receptor、BCR)複合体の下流リンタンパク質シグナル伝達分子(p-Syk、p-PLCγ2)について染色した。CD22×CD79b二重特異性抗体は、刺激対照又はアイソタイプ対照アーム対照と比較して、p-Syk及びp-PLCγ2を阻害することによって、BCR複合体を介してシグナル伝達するB細胞の能力に有意に影響を与えた。
【
図3】B細胞遠位リードアウト(増殖、サイトカイン分泌)がCD22×CD79b二重特異性抗体によって著しく阻害されたことを実証する実験結果を示す。精製されたB細胞を、刺激前に以下のものと共に30分間培養した:CD22×CD79b二重特異性抗体(C192B30)、CD22×アイソタイプ二重特異性抗体(C192B36)、及びアイソタイプ×CD79b二重特異性抗体(C192B2)。30分後、B細胞を相乗用量の抗IgM F(ab)’2(2.5μg/mL)及びCPG(0.3125μM)で刺激した。示されるように、CD22×CD79b抗体は、アイソタイプ対照アームと比較して、BCR+TLR刺激に応答してB細胞増殖を著しく低減させることができた。更に、B細胞IL-6産生は、著しく影響を受けたが、ここでもアイソタイプ対照アームは、ほとんど又は全く効果を示さなかった。
【
図4】CD22×CD79b二重特異性抗体が、NSG-ヒトPBMC移入モデルからのIgM抗体産生をインビボで阻害したことを実証する実験結果を示す。ヒトPBMCを、照射された免疫不全マウス-NSG(NOD-scid IL2Rガンマ
null)に移入した。次いで、マウスを、様々な用量のCD22×CD79b二重特異性抗体(0.2mg/kg、1mg/kg、及び5mg/kg)又はアイソタイプ対照抗体(5mg/kg)で処置した。次いで、細胞を7時間生着させた。この間に、B細胞は、ヒト抗体をインビボで産生し始めた。7日後、動物を屠殺し、フローサイトメトリーのための脾細胞、及び分析のために血清を採取した。血清は、対照(PBS及びアイソタイプ)と比較して、CD22×CD79b二重特異性抗体で処置した5mg/kg群においてヒトIgMの有意な低減を示した。
【
図5】CD79b-scFvアームのステープリングが凝集を軽減したことを実証する実験結果を示す。
【
図6】ステープルされた二重特異性分子がB細胞機能を阻害したことを実証する実験結果を示す。
【
図7】活性化マーカーCD69及びCD83の発現の減少によって実証されるように、CD22×CD79b二重特異性抗体がB細胞活性化を低減させたことを実証する実験結果を示す。
【発明の詳細な説明】
【0047】
開示される方法は、以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解され得る。本開示の方法は、本明細書に記載及び/又は示される特定の方法に限定されないこと、更に、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を例によって説明することのみを目的とし、特許請求された方法に限定することを意図しないことを理解されたい。
【0048】
本明細書に引用される全ての特許、公開された特許出願及び刊行物は、あたかも本明細書に完全に記載されているように参照により組み込まれる。
【0049】
リストが提示される場合、特に指定されない限り、そのリストの各個々の要素及びそのリストの全ての組み合わせは別個の実施形態であることを、理解されたい。例えば、「A、B、又はC」として提示される実施形態のリストは、実施形態「A」、「B」、「C」、「A又はB」、「A又はC」、「B又はC」、又は「A、B、又はC」を含むと解釈されるべきである。
【0050】
本発明の広い範囲を説明する数値範囲及びパラメータは近似値であるが、特定の実施例に記載された数値は、可能な限り正確に報告される。ただし、任意の数値は、各試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を本質的に含有する。
【0051】
定義
本明細書及び添付の「特許請求の範囲」において使用されるとき、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、その内容について特に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「細胞(a cell)」という言及には、2つ又は3つ以上の細胞の組み合わせなどが含まれる。
【0052】
「備える/含む(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」、及び「からなる(consisting)」という移行句は、特許用語において概ね受け入れられている意味を含意することを意図しており、すなわち、(i)「備える/含む(comprising)」は、「含む」、「含有する」、又は「特徴とする」と同義であり、包括的又は非制限的なものであり、追加の列挙されていない要素又は方法工程を除外するものではなく、(ii)「からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲において特定されていない、あらゆる要素、工程、又は成分を除外し、並びに(iii)「から本質的になる」は、特定される材料又は工程、並びに、特許請求される発明の「基本的かつ新しい特徴に実質的に影響しないもの」に、特許請求の範囲を制限する。語句「備える/含む」(又はその同義語)を伴って記載される実施形態はまた、「からなる」及び「から本質的になる」を伴って独立して記載される実施形態として提供する。
【0053】
「約」は、当業者によって求められた特定の値について許容される誤差範囲内であることを意味し、これは、その値が測定又は決定される方法、すなわち、測定システムの制限事項にある程度依存する。特定のアッセイ、結果、又は実施形態の文脈において、実施例又は明細書の他の箇所に別途明示的に記載されない限り、「約」は、当該技術分野の実施につき1つの標準偏差、又は5%までの範囲のうちのいずれか大きい方の範囲内であることを意味する。
【0054】
「活性化」又は「刺激」又は「活性化された」、又は「刺激された」は、活性化マーカーの発現、サイトカイン産生、増殖、又は標的細胞の細胞傷害の媒介をもたらす、細胞の生物学的状態の変化の誘導を指す。細胞は、一次刺激シグナルによって活性化され得る。共刺激シグナルは、一次シグナルの大きさを増幅し、初期刺激後の細胞死を抑制することができ、その結果、より耐久性のある活性化状態、ひいてはより高い細胞傷害能をもたらす。「共刺激シグナル」は、TCR/CD3ライゲーションなどの一次シグナルと組み合わせて、T細胞及び/若しくはNK細胞の増殖、並びに/又は鍵となる分子の上方制御若しくは下方制御を引き起こすシグナルを指す。
【0055】
「代替スカフォールド」は、立体配座許容度が高い可変ドメインに会合する構造化コアを含有する、単鎖タンパク質フレームワークを指す。可変ドメインは、スカフォールドの完全性を損なうことなく導入されるバリエーションを許容するため、可変ドメインは、特異的抗原に結合するように操作及び選択され得る。
【0056】
「抗体依存性細胞傷害」、「抗体依存性細胞介在性細胞傷害」、又は「ADCC(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity)」は、抗体でコーティングされた標的細胞と、NK細胞、単球、マクロファージ、及び好中球などの溶解活性を有するエフェクター細胞との、エフェクター細胞上で発現するFcガンマ受容体(Fc gamma receptor、FcgR)を介した相互作用に依存する細胞死を誘導する機序を指す。
【0057】
「抗体依存性細胞貪食作用」又は「Antibody-dependent cellular phagocytosis、ADCP」は、マクロファージ、又は樹状細胞などの貪食細胞による内在化によって、抗体でコーティングされた標的細胞を排除する機序を指す。
【0058】
「抗原」は、抗原結合ドメインによって結合されることが可能な任意の分子(例えば、タンパク質、ペプチド、多糖、糖タンパク質、糖脂質、核酸、その部分、又はそれらの組み合わせ)を指す。抗原は、組織サンプル、腫瘍サンプル、細胞、又は他の生物学的成分を有する流体、生物、タンパク質/抗原のサブユニット、及び死滅若しくは不活性化された全細胞又は溶解物などの生体サンプルからの遺伝子によって発現し得る、サンプルから合成され得る、又はサンプルから精製され得る。
【0059】
「抗原結合断片」又は「抗原結合ドメイン」は、抗原に結合するタンパク質の一部分を指す。抗原結合断片は、合成ポリペプチド、酵素的に入手可能なポリペプチド、又は遺伝的に操作されたポリペプチドであってもよく、これには、抗原に結合する免疫グロブリンの部分、例えば、VH、VL、VH及びVL、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd及びFv断片、1つのVHドメイン又は1つのVLドメインからなるドメイン抗体(domain antibody、dAb)、サメ可変IgNARドメイン、ラクダ化VHドメイン、VHHドメイン、FR3-CDR3-FR4部分などの抗体のCDRを模倣するアミノ酸残基からなる最小認識ユニット、HCDR1、HCDR2、及び/又はHCDR3、並びにLCDR1、LCDR2、及び/又はLCDR3、抗原に結合する代替スカフォールド、並びに抗原結合断片を含む多重特異性タンパク質が挙げられる。抗原結合断片(VH及びVLなど)は、合成リンカーを介して互いに連結して、VH及びVLドメインが別個の一本鎖により発現された場合にVH/VLドメインが分子内又は分子間で対合して一価の抗原結合ドメイン、例えば一本鎖Fv(single chain Fv、scFv)又はダイアボディを形成することができる、様々な種類の一本鎖抗体設計を形成することができる。抗原結合断片はまた、二重特異性及び多重特異性タンパク質を操作するために、単一特異性又は多重特異性であり得る他の抗体、タンパク質、抗原結合断片、又は代替スカフォールドにコンジュゲートされてもよい。
【0060】
「抗体」は、広義の意味を有し、マウス、ヒト、ヒト化、及びキメラモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体、抗原結合断片、二重特異性、三重特異性、四重特異性などの多特異性抗体、二量体、四量体、又は多量体抗体、一本鎖抗体、ドメイン抗体、及び必要とされる特異性の抗原結合部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された形態を含む免疫グロブリン分子を含む。「完全長抗体」は、ジスルフィド結合により相互接続された、2本の重鎖(heavy chain、HC)及び2本の軽鎖(light chain、LC)、並びにこれらの多量体(例えばIgM)から構成される。各HCは、重鎖可変領域(VH)、及び重鎖定常領域(ドメインCH1、ヒンジ、CH2、及びCH3から構成される)から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(light chain constant region、CL)から構成される。VH領域及びVL領域は、フレームワーク領域(framework region、FR)が散在しており相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)と呼称される超可変領域に更に細分化され得る。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4で配置された、3つのCDR及び4つのFRセグメントで構成される。免疫グロブリンは、重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、5つの主要なクラス、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMに割り当てられ得る。IgA及びIgGは、アイソタイプのIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4として更に細分類される。あらゆる脊椎動物種の抗体軽鎖も、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、2つの明確に異なるタイプ、すなわち、カッパ(κ)及びラムダ(λ)のうちの一方に割り当てることができる。
【0061】
「二重特異性」は、同じ抗原内の2つの異なる抗原、又は2つの異なるエピトープに特異的に結合する分子(抗体など)を指す。二重特異性分子は、他の関連抗原、例えば、ヒト若しくはサル、例えば、カニクイザル(Macaca cynomolgus)(cynomolgus、cyno)若しくはチンパンジー(Pan troglodytes)などの他の種に由来する同じ抗原(ホモログ)に対して交差反応性を有し得るか、又は2つ若しくは3つ以上の異なる抗原間で共有されているエピトープに結合し得る。
【0062】
本明細書で使用されるとき、「キメラ」という用語は、非ヒト哺乳動物、げっ歯動物、又は爬虫類の抗体アミノ酸配列に由来する少なくとも1つの可変ドメインの少なくともいくらかの部分を有するものの、抗体又はその抗原結合断片の残りの部分は、ヒトに由来する、抗体又はその抗原結合断片を指す。
【0063】
本明細書で使用される、「キメラ抗原受容体」(chimeric antigen receptor、CAR)は、細胞外標的結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞表面受容体として定義され、全て天然では単一のタンパク質において一緒に見られることのない組み合わせである。これには、細胞外ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインが天然では単一の受容体タンパク質において一緒に見られることのない受容体が含まれる。CARは、主に、T細胞及びNK細胞などのリンパ球との使用が意図される。
【0064】
「クローン」は、有糸分裂により、単一の細胞又は共通する祖先から得られる細胞集団である。「細胞株」は、インビトロにおいて何代にもわたって安定して成長させることができる初代細胞のクローンである。本明細書で提供された一部の例では、細胞は、細胞をDNAで遺伝子導入することにより、形質転換される。
【0065】
「補体依存性細胞傷害」又は「complement-dependent cytotoxicity、CDC」は、標的に結合したタンパク質のFcエフェクタードメインが補体成分C1qに結合し、これを活性化し、次に、補体カスケードを活性化し、標的細胞死をもたらす、細胞死を誘導する機序を指す。補体の活性化はまた、標的細胞表面に対する補体成分の沈着をもたらし得、白血球への補体受容体(例えば、CR3)の結合によって、CDCを容易にする
【0066】
「相補性決定領域」(CDR)は、抗原に結合する抗体の領域である。VHには3つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3)が存在し、VLには3つのCDR(LCDR1、LCDR2、LCDR3)が存在する。CDRは、以下のものなどの様々な記述を使用して定義することができる:Kabat(Wu et al.(1970)J Exp Med 132:211-50、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991)、Chothia(Chothia et al.(1987)J Mol Biol 196:901-17)、IMGT(Lefranc et al.(2003)Dev Comp Immunol 27:55-77)、及びAbM(Martin and Thornton J Bmol Biol 263:800-15,1996)。様々な記述と、可変領域の付番との対応が記載されている(例えば、Lefranc et al.(2003)Dev Comp Immunol 27:55-77、Honegger and Pluckthun,J Mol Biol(2001)309:657-70、International ImMunoGeneTics(International ImMunoGeneTics、IMGT)データベース、ウェブリソース、http://www_imgt_orgを参照されたい)。UCL Business PLCによるabYsisなどの利用可能なプログラムを使用して、CDRを描写することができる。本明細書で使用される場合、「CDR」、「HCDR1」、「HCDR2」、「HCDR3」、「LCDR1」、「LCDR2」、及び「LCDR3」という用語は、本明細書で別途明示的に記載のない限り、上述したKabat、Chothia、IMGT、又はAbMの方法のいずれかにより定義されるCDRを含む。
【0067】
典型的には、CDRは、カノニカル構造として分類され得るループ構造を形成する。「カノニカル構造」という用語は、抗原結合(CDR)ループによって採用される主鎖立体構造を意味する。比較構造の研究から、6つの抗原結合ループのうちの5つは利用可能な立体構造のレパートリーがごく限られていることが判明している。各カノニカル構造は、ポリペプチド主鎖のねじれ角によって特徴付けられ得る。したがって抗体間で対応するループは、ループの大部分において高度のアミノ酸配列可変性が見られるにもかかわらず、非常によく似た三次元構造を有し得る(Chothia et al.,「Canonical Structures For the Hypervariable Regions of Immunoglobulins」,J.Mol.Biol.196:901(1987);Chothia et al.,「Conformations of Immunoglobulin Hypervariable Regions」,I 342:877(1989);Martin and Thornton,「Structural Families in Loops of Homologous Proteins:Automatic Classification,Modelling and Application to Antibodies」,J.Mol.Biol.263:800(1996)、その文献の各々は、参照によりその全体が組み込まれる)。更に、とられるループ構造とその周囲のアミノ酸配列との間には関係がある。特定のカノニカルクラスの立体構造は、ループの長さと、ループ内の重要な位置並びに保存されたフレームワーク(すなわち、ループの外側)内にあるアミノ酸残基とによって決定される。したがって、これらの重要なアミノ酸残基の存在に基づいて、特定のカノニカルクラスへの割り当てを行うことができる。
【0068】
「減少する」、「低下する」、「低くする」、「低減させる」、又は「軽減する」は、一般に、対照又はビヒクルによって媒介される応答と比較した場合に、試験分子が低減された応答(すなわち、下流効果)を媒介する能力を指す。例示的な応答は、T細胞拡大、T細胞活性化、又はT細胞媒介性腫瘍細胞死滅、又はタンパク質のその抗原若しくは受容体への結合、並びにFcγへの増強された結合、又は増強されたADCC、CDC及び/若しくはADCPなどの増強されたFcエフェクター機能である。減少は、試験分子と対照(又はビヒクル)との間の測定された応答の統計的に有意な差、又は約1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、若しくは30倍若しくはそれ以上、例えば、500、600、700、800、900、若しくは1000倍若しくはそれ以上(1を上回る全ての整数及びその間の小数点、例えば、1.5、1.6、1.7.1.8などを含む)の増加などの、測定された応答の増加であってもよい。
【0069】
「ドメイン抗体」、「dAb」、又は「dAb断片」は、抗体の単一のアームからのVHドメイン及びVLドメインのいずれかで構成される抗体断片を指す。
【0070】
「分化」は、細胞の能力若しくは増殖を減少させるか、又は細胞をより発達的に制限された状態に移動させる方法を指す。
【0071】
「コードする」又は「コードすること」は、定義されたヌクレオチドの配列(例えば、rRNA、tRNA、及びmRNA)か、又は定義されたアミノ酸の配列のいずれかを有する、生物学的プロセスにおける他のポリマー及び巨大分子の合成のためのテンプレートとして機能する、遺伝子、cDNA、又はmRNAなどのポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特異性配列の固有の特性、並びにそれから生じる生物学的特性を指す。したがって、細胞又は他の生物系において、遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳がタンパク質を産生する場合、その遺伝子、cDNA、又はRNAは、タンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であるコード鎖と、遺伝子又はcDNAの転写のテンプレートとして使用される非コード鎖とはいずれも、その遺伝子又はcDNAのタンパク質又は他の産物をコードするとして言及され得る。
【0072】
「増強する」、「促進する」、「増加させる」、「拡大する」、又は「改善する」は、一般に、対照又はビヒクルによって媒介される応答と比較した場合に、より大きな応答(すなわち、下流効果)を媒介する試験分子の能力を指す。例示的な応答は、T細胞拡大、T細胞活性化、又はT細胞媒介性腫瘍細胞死滅、又はタンパク質のその抗原若しくは受容体への結合、並びにFcγへの増強された結合、又は増強されたADCC、CDC及び/若しくはADCPなどの増強されたFcエフェクター機能である。増強は、試験分子と対照(又はビヒクル)との間の測定された応答の統計的に有意な差、又は約1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、若しくは30倍若しくはそれ以上、例えば、500、600、700、800、900、若しくは1000倍若しくはそれ以上(1を上回る全ての整数及びその間の小数点、例えば、1.5、1.6、1.7.1.8などを含む)の増加などの、測定された応答の増加であってもよい。
【0073】
「拡大」は、細胞分裂及び細胞死の結果を指す。
【0074】
「発現する」及び「発現」は、細胞内又はインビトロで起こる周知の転写及び翻訳を指す。したがって、発現産物、例えば、タンパク質は、細胞によって又はインビトロで発現し、細胞内、細胞外、又は膜貫通タンパク質であってもよい。
【0075】
「発現ベクター」は、発現ベクター中に存在するポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドの翻訳を指示するために、生物系又は再構成された生物系で利用することができるベクターを指す。発現ベクターは、発現に十分なシス作用要素を含み、発現のための他のエレメントは、宿主細胞によって、又はインビトロ発現系において供給され得る。発現ベクターとしては、組換えポリヌクレオチドを組み込んだコスミド、プラスミド(例えば、裸の、又はリポソームに含有されるもの)、及びウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)を含む、当該技術分野において既知の全てのベクターが挙げられる。
【0076】
「dAb」又は「dAb断片」は、VHドメインで構成される抗体断片を指す(Ward et al.,Nature 341:544 546(1989))。
【0077】
「Fab」又は「Fab断片」は、VH、CH1、VL、及びCLドメインで構成される抗体断片を指す。
【0078】
「F(ab’)2」又は「F(ab’)2断片」は、ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋によって接続された2つのFab断片を含有する抗体断片を指す。
【0079】
「Fd」又は「Fd断片」は、VH及びCH1ドメインで構成される抗体断片を指す。
【0080】
「Fv」又は「Fv断片」は、抗体の単一のアームからのVH及びVLドメインで構成される抗体断片を指す。
【0081】
「完全長抗体」は、ジスルフィド結合によって相互に接続された、2本の重鎖(HC)及び2本の軽鎖(LC)、並びにそれらの多量体(例えば、IgM)で構成される。各重鎖は、重鎖可変ドメイン(VH)及び重鎖定常ドメインで構成され、重鎖定常ドメインは、サブドメインCH1、ヒンジ、CH2及びCH3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変ドメイン(VL)及び軽鎖定常ドメイン(CL)で構成される。VH及びVLは、フレームワーク領域(FR)が散在している、相補性決定領域(CDR)と呼称される超可変性の領域に更に細分化され得る。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4で配置された、3つのCDR及び4つのFRセグメントで構成される。
【0082】
「遺伝子修飾」は、宿主細胞が、導入された遺伝子又は配列を発現して、所望の物質、典型的には、導入された遺伝子又は配列によってコードされるタンパク質又は酵素を産生するように、「外来」(すなわち、外因性又は細胞外)遺伝子、DNA又はRNA配列を宿主細胞に導入することを指す。導入された遺伝子又は配列はまた、「クローニングされた」又は「外来」遺伝子又は配列と呼ばれる場合もあり、開始、終止、プロモータ、シグナル、分泌、又は細胞の遺伝機序によって使用される他の配列などのキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチドに操作可能に連結した調節配列又は制御配列を含んでもよい。遺伝子又は配列は、既知の機能を有さない非機能的配列を含んでもよい。導入されたDNA又はRNAを受け取って発現する宿主細胞は、「遺伝的に操作されている」。宿主細胞に導入されたDNA又はRNAは、宿主細胞と同じ属若しくは種の細胞を含む任意の起源、又は異なる属若しくは種に由来し得る。
【0083】
「異種」は、自然界では互いに対して同じ関係で見られない、2つ若しくは3つ以上のポリヌクレオチド又は2つ若しくは3つ以上のポリペプチドを指す。
【0084】
「異種ポリヌクレオチド」は、本明細書に記載される2つ又は3つ以上のネオ抗原をコードする、天然には存在しないポリヌクレオチドを指す。
【0085】
「異種ポリペプチド」は、本明細書に記載される2つ又は3つ以上のネオ抗原ポリペプチドを含む、天然には存在しないポリペプチドを指す。
【0086】
「宿主細胞」は、異種核酸を含有する任意の細胞を指す。例示的な異種核酸は、ベクター(例えば、発現ベクター)である。
【0087】
「ヒト抗体」は、ヒト対象に投与されたときに免疫応答が最小限になるように最適化されている抗体を指す。ヒト抗体の可変領域は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体が定常領域又は定常領域の一部分を含む場合、その定常領域もまた、ヒト免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体は、ヒト抗体の可変領域がヒト生殖系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られた場合、ヒト起源の配列に「由来する」重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。このような例示的な系は、ファージにディスプレイされたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリ、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座を保有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばマウス又はラットである。「ヒト抗体」は、典型的には、ヒト抗体及びヒト免疫グロブリン遺伝子座を得るために使用した系の違い、フレームワーク若しくはCDRへの体細胞変異の導入若しくは置換の意図的な導入、又はこれらの両方により、ヒトで発現した免疫グロブリンと比較したときにアミノ酸の違いを含有する。典型的には、「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子によってコードされているアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列が少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である。場合によっては、「ヒト抗体」は、例えばKnappik et al.,(2000)J Mol Biol 296:57-86に記載されるヒトフレームワーク配列分析に由来するコンセンサスフレームワーク配列、又は例えばShi et al.,(2010)J Mol Biol 397:385-96及び国際特許公開第2009/085462号に記載される、ファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリに組み込まれた合成HCDR3を含有し得る。少なくとも1つのCDRが非ヒト種に由来する抗体は、「ヒト抗体」の定義には含まれない。
【0088】
「ヒト化抗体」は、少なくとも1つのCDRが非ヒト種に由来し、少なくとも1つのフレームワークがヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体を指す。ヒト化抗体は、フレームワークに置換を含むことができるため、フレームワークは、発現したヒト免疫グロブリン又はヒト免疫グロブリン生殖細胞系列遺伝子配列の厳密なコピーではない場合がある。
【0089】
「~と組み合わせて」は、2つ又は3つ以上の治療剤を、混合物の状態で一緒に、単剤として同時に、又は単剤として任意の順序で順次に、対象に投与することを意味する。
【0090】
「単離された」は、組換え細胞などにおいて分子が産生される系の他の成分から離して実質的に分離及び/又は精製されている分子の均質な集団(例えば、合成ポリヌクレオチド又はポリペプチド)に加えて、少なくとも1つの精製又は単離工程に供されているタンパク質を指す。「単離された」は、他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まない分子を指し、より高い純度、例えば80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の純度まで単離された分子を包含する。「単離された」核酸、ペプチド、及びタンパク質は、組成物の一部であることができ、このような組成物が核酸、ペプチド、又はタンパク質の本来の環境の一部ではない場合であっても単離されている。また、この用語は、宿主細胞中での組換え発現により調製された核酸、ペプチド、及びタンパク質、並びに化学合成された核酸も包含する。本明細書で使用されるとき、「単離された」抗体又は抗原結合断片は、種々の抗原特異性を有する他の抗体又は抗原結合断片を実質的に含まない抗体又は抗原結合断片を指すことを意図している(例えば、CD79bに特異的に結合する単離された抗体は、CD79b以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。ただし、CD79bのエピトープ、アイソフォーム、又はバリアントに特異的に結合する単離された抗体は、例えば、他の種に由来する他の関連抗原(例えば、CD79b種間ホモログ)に対する交差反応性を有し得る。
【0091】
「分化抗原群CD22タンパク質」又は「CD22」は、CD22とも呼ばれる既知のタンパク質を指す。様々なアイソフォームのアミノ酸配列は、GenBankから検索可能であり、例えば、GenBankアクセッション番号NP_001762.2、NP_001172028.1、NP_001172029.1、NP_001172030.1、及びNP_001265346.1が含まれる。
【0092】
「分化抗原群CD79Bタンパク質」又は「CD79b」は、CD79bとも呼ばれる既知のタンパク質を指す。様々なアイソフォームのアミノ酸配列は、GenBankから検索可能であり、例えば、GenBankアクセッション番号AAH32651.1、EAW94232.1、AAH02975.2、NP_000617.1、及びNP_001035022.1が含まれる。完全長CD79b配列のアミノ酸配列を以下に示す。配列は、細胞外ドメイン(残基29~159)及び細胞質ドメイン(残基181~229)を含む。
【0093】
MARLALSPVPSHWMVALLLLLSAEPVPAARSEDRYRNPKGSACSRIWQSPRFIARKRGFTVKMHCYMNSASGNVSWLWKQEMDENPQQLKLEKGRMEESQNESLATLTIQGIRFEDNGIYFCQQKCNNTSEVYQGCGTELRVMGFSTLAQLKQRNTLKDGIIMIQTLLIILFIIVPIFLLLDKDDSKAGMEEDHTYEGLDIDQTATYEDIVTLRTGEVKWSVGEHPGQE(配列番号:126)
【0094】
「調節する」は、対照又はビヒクルによって媒介される応答と比較したときに、より多い又はより少ない応答を媒介する(すなわち、下流効果)試験分子の増強した又は減少した能力のいずれかを指す。
【0095】
「モノクローナル抗体」は、抗体重鎖からC末端リジンを除去する、又はアミノ酸の異性化若しくは脱アミド、メチオニンの酸化、又はアスパラギン若しくはグルタミンの脱アミドなどの翻訳後修飾といった、可能な周知の改変を除いて同一である、抗体分子の実質的に均質な母集団から得られた抗体、すなわち、集団を構成する個別の抗体を指す。モノクローナル抗体は、典型的には、1つの抗原性エピトープに結合する。二重特異性モノクローナル抗体は、2つの異なる抗原性エピトープに結合する。モノクローナル抗体は、抗体集団内で不均一なグリコシル化を有し得る。モノクローナル抗体は、単一特異性であってもよく、又は、二重特異性などの多重特異性であってもよく、一価、二価、又は多価であってもよい。
【0096】
「ミニボディ」は、CH3ドメインを介して連結されたscFv断片を指す。
【0097】
「多重特異性」は、2つ若しくは3つ以上の異なる抗原、又は同じ抗原内の2つ若しくは3つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する、抗体などの分子を指す。多重特異性分子は、他の関連抗原、例えば、ヒト若しくはサル、例えば、カニクイザル(Macaca fascicularis)(cynomolgus、cyno)若しくはチンパンジー(Pan troglodytes)などの他の種に由来する同じ抗原(ホモログ)に対して交差反応性を有し得るか、又は2つ若しくは3つ以上の異なる抗原間で共有されているエピトープに結合し得る。
【0098】
「ナチュラルキラー細胞」及び「NK細胞」は、本明細書では互換的かつ同義的に使用される。本明細書で使用するとき、NK細胞は、CD16+CD56+及び/又はCD57+TCR-表現型を有する分化リンパ球を指す。NK細胞は、特定の細胞溶解性酵素の活性化によって「自己」MHC/HLA抗原を発現できない細胞に結合し、死滅させる能力、腫瘍細胞又はNK活性化受容体のリガンドを発現する他の疾患細胞を死滅させる能力、及び免疫応答を刺激又は阻害するサイトカインと呼ばれるタンパク質分子を放出する能力を特徴とする。
【0099】
「動作可能に連結された」及び類似の語句は、核酸又はアミノ酸に関して使用される場合、それぞれ、互いに機能的な関係で配置された核酸配列又はアミノ酸配列の動作上の連結を指す。例えば、動作可能に連結されたプロモータ、エンハンサエレメント、オープンリーディングフレーム、5’及び3’UTR、並びにターミネータ配列は、核酸分子(例えば、RNA)の正確な産生をもたらし、場合によっては、ポリペプチドの産生(すなわち、オープンリーディングフレームの発現)をもたらす。「動作可能に連結されたペプチド」は、ペプチドの機能ドメインが互いに適切な距離で配置されて、各ドメインの意図された機能を付与するペプチドを指す。
【0100】
「医薬的組み合わせ」は、一緒に又は別個にのいずれかで投与される、2つ又は3つ以上の活性成分の組み合わせを指す。
【0101】
「医薬組成物」は、活性成分と医薬的に許容される担体とを組み合わせて得られる組成物を指す。
【0102】
「医薬的に許容される担体」又は「賦形剤」は、対象に対して毒性のない、活性成分以外の医薬組成物中の成分を指す。例示的な医薬的に許容される担体は、緩衝液、安定剤、又は防腐剤である。
【0103】
「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、糖-リン酸骨格又は他の同等の共有結合化学によって共有結合されたヌクレオチド鎖を含む、合成分子を指す。cDNAは、ポリヌクレオチドの典型例である。ポリヌクレオチドは、DNA又はRNA分子であり得る。「ポリヌクレオチド」には、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であるDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、並びに一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であるRNA、DNA及びRNAを含むハイブリッド分子(一本鎖、又はより典型的には、二本鎖、又は一本鎖及び二本鎖の領域の混合物であってもよい)が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、「ポリヌクレオチド」は、RNA若しくはDNA、又はRNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。ポリヌクレオチドという用語はまた、1つ若しくは2つ以上の修飾された塩基を含有するDNA又はRNA、及び安定性若しくは他の理由により修飾された骨格を有するDNA又はRNAも含む。「修飾された」塩基は、例えば、トリチル化塩基及び異常な塩基、例えば、イノシンを含む。様々な修飾が、DNA及びRNAになされてもよく、したがって、「ポリヌクレオチド」は、典型的には天然に認められるポリヌクレオチドの化学的、酵素的又は代謝的に修飾された形態、並びにウイルス及び細胞のDNA及びRNAの特徴を有する化学的形態を包含する。「ポリヌクレオチド」はまた、比較的短い核酸鎖(多くの場合、オリゴヌクレオチドと称される)も包含する。
【0104】
疾患又は障害を「予防する」、「予防すること」、「予防」、又は「予防法」は、対象において障害が発生するのを防ぐことを意味する。
【0105】
「増殖」は、細胞の対称的又は非対称的な分裂のいずれかである細胞分裂の増加を指す。
【0106】
「プロモータ」は、転写を開始させるために必要な最小配列を指す。プロモータはまた、それぞれ、転写を増強又は抑制するエンハンサ又はリプレッサエレメントを含み得る。
【0107】
本明細書では互換的に使用される「タンパク質」又は「ポリペプチド」は、各々がペプチド結合によって連結された少なくとも2つのアミノ酸残基で構成された1つ又は2つ以上のポリペプチドを含む分子を指す。タンパク質は、モノマーであり得るか、又は同一若しくは異なる2つ若しくは3つ以上のサブユニットのタンパク質複合体であり得る。50個未満のアミノ酸からなる小分子ポリペプチドは、「ペプチド」と称され得る。タンパク質は、異種融合タンパク質、糖タンパク質、又はリン酸化、アセチル化、ミリストイル化、パルミトイル化、グリコシル化、酸化、ホルミル化、アミド化、シトルリン化、ポリグルタミル化、ADP-リボシル化、ペグ化又はビオチン化などの翻訳後修飾によって修飾されたタンパク質であり得る。タンパク質は、組換え発現され得る。
【0108】
「組換え体」は、組換え手段によって調製、発現、創出、又は単離されているポリヌクレオチド、ポリペプチド、ベクター、ウイルス、及び他の巨大分子を指す。
【0109】
「調節エレメント」は、核酸配列の発現のある側面を制御する任意のシス又はトランス作用性遺伝要素を指す。
【0110】
「再発性」は、治療法による以前の治療後の改善期間後に疾患又は疾患の徴候及び症状が再開することを指す。
【0111】
「難治性」は、治療に応答しない疾患を指す。難治性疾患は、治療前若しくは治療開始時に治療に抵抗性であり得るか、又は難治性疾患は、治療中に抵抗性疾患となり得る。
【0112】
「一本鎖Fv」又は「scFv」は、軽鎖可変領域(VL)を含む少なくとも1つの抗体断片と、重鎖可変領域(VH)を含む少なくとも1つの抗体断片と、を含む融合タンパク質を指し、VL及びVHは、ポリペプチドリンカーを介して連続的に連結され、一本鎖ポリペプチドとして発現することができる。特に指定されない限り、本明細書で使用される場合、scFvは、VL及びVH可変領域をいずれの順序で有していてもよく、例えば、ポリペプチドのN末端及びC末端に関して、scFvは、VL-リンカー-VHを含んでいてもよく、又はVH-リンカー-VLを含んでいてもよい。scFvは、実施例2のように、ステープルされた単鎖Fvであってもよい。
【0113】
「特異的に結合する」、「特異的結合」、「特異的に結合している」、又は「結合する」は、タンパク質性分子が、抗原又は抗原内のエピトープに、他の抗原に対する親和性よりも高い親和性で結合することを指す。典型的には、タンパク質性分子は、約1×10-7M以下、例えば約5×10-8M以下、約1×10-8M以下、約1×10-9M以下、約1×10-10M以下、約1×10-11M以下、又は約1×10-12M以下の平衡解離定数(KD)で抗原又は抗原内のエピトープに結合し、典型的には、KDは、非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合についてのKDよりも少なくとも100倍小さい。本明細書に記載のCD79b抗原の文脈において、「特異的結合」は、タンパク質性分子が、CD79b抗原がそのバリアントである野生型タンパク質に検出可能に結合することなく、CD79b抗原に結合することを指す。
【0114】
「対象」は、任意のヒト又は非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」としては、あらゆる脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などの哺乳類及び非哺乳類が挙げられる。「対象」及び「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用され得る。
【0115】
「実質的に同じ」の意味は、この用語が使用される文脈に応じて異なる場合がある。重鎖及び軽鎖並びにこれらをコードする遺伝子中には天然の配列バリエーションが存在し得ることから、本明細書に記載されたアミノ酸配列又は抗体若しくは抗原結合断片をコードする遺伝子内には、固有の結合特性(例えば、特異的及び親和性)にはほとんど影響しない、又は影響しない、ある程度のバリエーションが見られることが予測される。このような予測は、部分的には、遺伝暗号の縮重及び保存的アミノ酸配列バリエーションの進化的成功により、同バリエーションは、コードされたタンパク質の性質を認識され得るほどには改変させない。したがって、核酸配列の文脈において、「実質的に同じ」は、2つ又は3つ以上の配列間での少なくとも65%の同一性を意味する。好ましくは、この用語は、2つ又は3つ以上の配列間での少なくとも70%の同一性、より好ましくは、少なくとも75%の同一性、より好ましくは、少なくとも80%の同一性、より好ましくは、少なくとも85%の同一性、より好ましくは、少なくとも90%の同一性、より好ましくは、少なくとも91%の同一性、より好ましくは、少なくとも92%の同一性、より好ましくは、少なくとも93%の同一性、より好ましくは、少なくとも94%の同一性、より好ましくは、少なくとも95%の同一性、より好ましくは、少なくとも96%の同一性、より好ましくは、少なくとも97%の同一性、より好ましくは、少なくとも98%の同一性、及びより好ましくは、少なくとも99%又はそれ以上の同一性を意味する。2つの配列間の同一性パーセントは、ギャップ数及び各ギャップの長さを考慮して、配列により共有される同一の位置の数の関数であり(すなわち、相同性の割合(%)=同一位置数/位置の総数×100)同考慮は、2つの配列の最適なアライメントを導くのに必要である。2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の同一性パーセントは、例えば、E.Meyers and W.Miller,Comput.Appl.Biosci 4,11-17(1988)のアルゴリズムを使用して決定されてもよく、同アルゴリズムは、PAM120重み付け残基テーブル、ギャップ長ペナルティ12、及びギャップペナルティ4を使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。加えて、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48,444-453(1970)のアルゴリズムを使用して決定されてもよい。
【0116】
「T細胞」及び「Tリンパ球」は、互換的であり、本明細書では同義的に使用される。T細胞には、胸腺細胞、ナイーブTリンパ球、メモリT細胞、未成熟Tリンパ球、成熟Tリンパ球、静止Tリンパ球、又は活性化Tリンパ球が含まれる。T細胞は、Tヘルパー(T helper、Th)細胞、例えば、Tヘルパー1(Th1)又はTヘルパー2(Th2)細胞であり得る。T細胞は、ヘルパーT細胞(HTL、CD4+T細胞)、CD4+T細胞、細胞傷害性T細胞(CTL、CD8+T細胞)、腫瘍浸潤細胞傷害性T細胞(TIL、CD8+T細胞)、CD4+CD8+T細胞、又はT細胞の任意の他のサブセットであり得る。また、「NKT細胞」も含まれ、これは、セミインバリアントなαβT細胞受容体を発現するだけでなく、NK1.1などの典型的にはNK細胞に関連する様々な分子マーカーも発現する、T細胞の特殊な集団を指す。NKT細胞には、NK1.1+及びNK1.1-、並びにCD4+、CD4-、CD8+、及びCD8-細胞が含まれる。NKT細胞のTCRは、MHC I様分子CD Idによって提示される糖脂質抗原を認識するという点で独特である。NKT細胞は、炎症又は免疫寛容のいずれかを促進するサイトカインを産生する能力により、保護効果又は有害効果のいずれかを有し得る。また、「ガンマデルタT細胞(γδT細胞)」も含まれ、これは、それらの表面に異なるTCRを有するT細胞の小さなサブセットの特殊な集団を指し、TCRがα及びβ-TCR鎖と表記される2つの糖タンパク質鎖から構成されるT細胞の大部分とは異なり、γδT細胞におけるTCRは、γ鎖及びδ鎖から構成される。γδT細胞は、免疫監視及び免疫調節においてある役割を果たすことができ、IL-17の重要な供給源であること、及び強力なCD8+細胞傷害性T細胞応答を誘導することが見出された。また、「調節性T細胞」又は「Treg」も含まれ、これは、異常又は過剰な免疫応答を抑制し、免疫寛容における役割を果たす、T細胞を指す。Tregは、典型的には、転写因子Foxp3陽性CD4+T細胞であり、かつ、IL-10産生CD4+T細胞である転写因子Foxp3陰性調節性T細胞も含み得る。
【0117】
本明細書において互換的に使用される「治療有効量」又は「有効量」は、所望の治療結果を達成するのに必要な投薬量及び期間で有効な量を指す。治療有効量は、個体の病態、年齢、性別、及び体重などの要因、並びに個体において所望の応答を引き出す治療法又は治療法の組み合わせの能力によって様々であってもよい。有効な治療法又は治療法の組み合わせの例示的な指標としては、例えば、患者の健康状態の改善、腫瘍量の低減、腫瘍の成長の停止若しくは鈍化、及び/又は体内の他の場所へのがん細胞の転移の非存在が含まれる。
【0118】
「形質導入」は、ウイルスベクターを使用する、外来核酸の細胞への導入を指す。
【0119】
がんなどの疾患又は障害を「治療する」、「治療すること」、又は「治療」は、以下:障害の重症度及び/若しくは期間を低減する、治療される障害の特徴的な症状の悪化を阻害する、以前障害を有していた対象における障害の再発を制限若しくは予防する、又は以前に障害の症状を有していた対象における症状の再発を制限若しくは予防する、のうちの1つ又は2つ以上を達成することを指す。
【0120】
「バリアント」、「変異体」、又は「改変された」は、1つ又は2つ以上の修飾、例えば、1つ又は2つ以上の置換、挿入、又は欠失によって、参照ポリペプチド又は参照ポリヌクレオチドとは異なる、ポリペプチド又はポリヌクレオチドを指す。
【0121】
本明細書全体を通して、抗体定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、本明細書に別途明示的に記載のない限り、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)に記載のEUインデックスに従う。
【0122】
Ig定常領域の変異は、以下のように称される:L351Y_F405A_Y407Vは、1つの免疫グロブリン定常領域におけるL351Y、F405A及びY407V変異を指す。L351Y_F405A_Y407V/T394Wは、1つの多量体タンパク質中に存在する、第1のIg定常領域におけるL351Y、F405A、及びY407V変異並びに第2のIg定常領域におけるT394W変異を指す。
【0123】
したがって、CD79Bを標的とする抗体又は抗原結合ドメインは、BCR複合体に薬剤を送達することができる。したがって、CD79B標的化分子は、天然に存在する阻害タンパク質をBCR複合体に動員して、異常なB細胞活性化を阻害するための二重特異性薬剤の生成において有用である。例えば、CD79B及び阻害性Fcガンマ受容体CD32Bの両方を認識する抗原結合ドメインを有する二重特異性二重親和性再標的化(dual-affinity retargeting、DART)分子は、B細胞活性化を阻害し、B細胞増殖及び免疫グロブリン分泌の低減によってモニタリングされる。CD79b及びCD32Bの両方を認識する同様の二重特異性分子は、自己免疫性関節炎の前臨床モデルにおいて発症を遅延させ、疾患重症度を低減させ、BCRへの阻害性タンパク質のCD79b媒介性動員が、自己免疫性疾患を有する患者に治療的利益を提供し得ることを示した(Veri et al.,2010,Arthritis&Rheumatism,62:1933-1943)。CD79B標的化二重特異性抗体又は抗原結合ドメインは、CD22又はSiglec-10などのSiglecファミリーのメンバーを含む、B細胞の表面上に発現される他の阻害性分子を標的とすることもでき、これは、BCR媒介性シグナル伝達を阻害することも実証されている(Duan&Paulson 2020,Ann.Rev Immunol 38(1):365-369)。
【0124】
CD79B標的化抗体又は抗原結合ドメインは、様々な形態のがんの治療にも有用であり得る。例えば、ポラツズマブベドチン、抗CD79b抗体薬物コンジュゲートは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者(diffuse large B-cell lymphoma、DLBCL)の治療のために承認されている(Walji 2020、PMID:32700586;DOI:10.1080/17474086.2020-1795828に概説されている)。加えて、CD79Bに結合するキメラ抗原受容体を発現する操作されたT細胞(CAR T細胞)は、CD79B発現B細胞リンパ腫細胞をインビトロ及びインビボで排除した(Ding 2020,PMID:32495161 DOI:10.1007/s11523-020-00729-7;Jiang 2020,PMID:31624374 DOI:10.1038/s41375-019-0607-5;Ormhoj2019,PMID:31439577 PMCID:PMC6891163 DOI:10.1158/1078-0432.CCR-19-1337)。
【0125】
抗体
いくつかの実施形態では、本開示は、CD79bに結合する抗体、その結合断片、前述のものをコードするポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、並びに前述のものを作製及び使用する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、CD22に結合する抗体、その結合断片、前述のものをコードするポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、並びに前述のものを作製及び使用する方法を提供する。いくつかの実施形態では、抗体は、CD79b又はCD22に結合する抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、scFv(ステープルされたscFv(spFv)を含む)、Fab、F(ab’)2、Fd、又はFvフォーマットに操作され得る。
【0126】
一態様では、本開示は、CD22に結合する抗原結合ドメインを含む組成物を提供する。例えば、ある特定の実施形態では、本開示は、CD22に結合する抗原結合ドメイン(すなわち、CD22結合ドメイン)を含む抗体を含む。いくつかの実施形態では、CD22結合ドメインは、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、HCDR2、及びHCDR3を含む。一実施形態では、CD22結合アームは、配列番号1のHCDR1を含む。一実施形態では、CD22結合ドメインは、配列番号2のHCDR2を含む。一実施形態では、CD22結合ドメインは、配列番号3のHCDR3を含む。一実施形態では、CD22結合ドメインは、それぞれ配列番号1、2及び3のHCDR1、HCDR及びHCDR3を含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、CD22結合ドメインは、軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、LCDR2、及びLCDR3を含む。一実施形態では、CD22結合ドメインは、配列番号4のLCDR1を含む。一実施形態では、CD22結合ドメインは、配列番号5のLCDR2を含む。一実施形態では、CD22結合ドメインは、配列番号6のLCDR3を含む。一実施形態では、CD22結合ドメインは、それぞれ配列番号4、5及び6のLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、CD22結合ドメインは、それぞれ配列番号1、2、3、4、5、及び6のHCDR1、HCDR、HCDR3、LCDR1、LCDR、及びLCDR3を含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、CD22結合ドメインは、配列番号7の重鎖可変ドメイン(VH)を含む。いくつかの実施形態では、CD22結合ドメインは、配列番号8の軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、CD22結合ドメインは、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、及び配列番号8のVLを含む。いくつかの実施形態では、CD22結合ドメインは、配列番号7のVH、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、CD22結合ドメインは、配列番号7のVH及び配列番号8のVLを含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、CD22結合ドメインを含む抗体は、scFvである。
【0133】
いくつかの実施形態では、CD22結合ドメインを含む抗体は、(scFv)2である。
【0134】
いくつかの実施形態では、CD22結合ドメインを含む抗体は、Fvである。
【0135】
いくつかの実施形態では、CD22結合ドメインを含む抗体は、Fabである。
【0136】
いくつかの実施形態では、CD22結合ドメインを含む抗体は、F(ab’)2である。
【0137】
いくつかの実施形態では、CD22結合ドメインを含む抗体は、Fdである。
【0138】
いくつかの実施形態では、CD22結合ドメインを含む抗体は、dAbである。
【0139】
いくつかの実施形態では、CD22結合ドメインを含む抗体は、VHHである。
【0140】
一態様では、本開示は、CD79bに結合する抗原結合ドメインを含む組成物を提供する。例えば、ある特定の実施形態では、本開示は、CD79bに結合する抗原結合ドメイン(すなわち、CD79b結合ドメイン)を含む抗体を含む。いくつかの実施形態では、CD79b結合ドメインは、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む。一実施形態では、CD79b結合ドメインは、配列番号9、17、25、33、41、49又は57のHCDR1を含む。一実施形態では、CD79b結合ドメインは、配列番号10、18、26、34、42、50又は58のHCDR2を含む。一実施形態では、CD79b結合ドメインは、配列番号11、19、27、35、43、51又は59のHCDR3を含む。
【0141】
一実施形態では、CD79b結合ドメインは、配列番号9、17、25、33、41、49又は57のHCDR1、配列番号10、18、26、34、42、50又は58のHCDR2、及び配列番号11、19、27、35、43、51又は59のHCDR3を含む。一実施形態では、CD79b結合ドメインは、以下:
それぞれ配列番号9、10、及び11、
それぞれ配列番号17、18、及び19、
それぞれ配列番号25、26、及び27、
それぞれ配列番号33、34、及び35、
それぞれ配列番号41、42、及び43、
それぞれ配列番号49、50、及び51、又は
それぞれ配列番号57、58、及び59のHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、CD79b結合ドメインは、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。一実施形態では、CD79b結合ドメインは、配列番号12、20、28、36、44、52又は60のLCDR1を含む。一実施形態では、CD79b結合ドメインは、配列番号13、21、29、37、45、53又は61のLCDR2を含む。一実施形態では、CD79b結合ドメインは、配列番号14、22、30、38、46、54又は62のLCDR3を含む。一実施形態では、CD79b結合ドメインは、以下:
それぞれ配列番号12、13、及び14、
それぞれ配列番号20、21、及び22、
それぞれ配列番号28、29、及び30、
それぞれ配列番号36、37、及び38、
それぞれ配列番号44、45、及び46、
それぞれ配列番号52、53、及び54、又は
それぞれ配列番号60、61、及び62のLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、CD79b結合ドメインは、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。一実施形態では、CD79b結合ドメインは、配列番号9、17、25、33、41、49又は57のHCDR1を含む。一実施形態では、CD79b結合ドメインは、配列番号10、18、26、34、42、50又は58のHCDR2を含む。一実施形態では、CD79b結合ドメインは、配列番号11、19、27、35、43、51又は59のHCDR3を含む。一実施形態では、CD79b結合ドメインは、配列番号12、20、28、36、44、52又は60のLCDR1を含む。一実施形態では、CD79b結合ドメインは、配列番号13、21、29、37、45、53又は61のLCDR2を含む。一実施形態では、CD79b結合ドメインは、配列番号14、22、30、38、46、54又は62のLCDR3を含む。一実施形態では、CD79b結合ドメインは、以下:
それぞれ配列番号9、10、11、12、13、及び14、
それぞれ配列番号17、18、19、20、21、及び22、
それぞれ配列番号25、26、27、28、29、及び30、
それぞれ配列番号33、34、35、36、37、及び38、
それぞれ配列番号41、42、43、44、45、及び46、
それぞれ配列番号49、50、51、52、53、及び54、又は
それぞれ配列番号57、58、59、60、61、及び62のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む。
【0144】
一実施形態では、CD79b結合ドメインは、VHを含む。一実施形態では、CD79b結合ドメインは、配列番号15、23、31、39、47、55、63又は80のVHを含む。一実施形態では、CD79b結合ドメインは、VLを含む。一実施形態では、CD79bドメインは、配列番号16、24、32、40、48、56、64又は81のVLを含む。
【0145】
一実施形態では、CD79b結合ドメインは、配列番号9、17、25、33、41、49又は57のHCDR1、配列番号10、18、26、34、42、50又は58のHCDR2、配列番号11、19、27、35、43、51又は59のHCDR3及び配列番号16、24、32、40、48、56、64又は81のVLを含む。
【0146】
一実施形態では、CD79bドメインは、配列番号15、23、31、39、47、55、63又は80のVH、配列番号12、20、28、36、44、52又は60のLCDR1、配列番号13、21、29、37、45、53又は61のLCDR2、及び配列番号14、22、30、38、46、54、又は62のLCDR3を含む。
【0147】
一実施形態では、CD79b結合ドメインは、VH及びVLを含む。一実施形態では、CD79b結合ドメインは、以下:
それぞれ配列番号15及び16、
それぞれ配列番号23及び24、
それぞれ配列番号31及び32、
それぞれ配列番号39及び40、
それぞれ配列番号47及び48、
それぞれ配列番号55及び56、
それぞれ配列番号63及び64、又は
それぞれ配列番号80及び81のVH及びVLを含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、CD79b結合ドメインを含む抗体は、scFvである。
【0149】
いくつかの実施形態では、CD79b結合ドメインを含む抗体は、(scFv)2である。
【0150】
いくつかの実施形態では、CD79b結合ドメインを含む抗体は、Fvである。
【0151】
いくつかの実施形態では、CD79b結合ドメインを含む抗体は、Fabである。
【0152】
いくつかの実施形態では、CD79b結合ドメインを含む抗体は、F(ab’)2である。
【0153】
いくつかの実施形態では、CD79b結合ドメインを含む抗体は、Fdである。
【0154】
いくつかの実施形態では、CD79b結合ドメインを含む抗体は、dAbである。
【0155】
いくつかの実施形態では、CD79b結合ドメインを含む抗体は、VHHである。
【0156】
いくつかの実施形態では、CD79b結合ドメインを含む抗体は、ステープルされたscFv(spFv)である。
【0157】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、以下:
それぞれ配列番号9、10、11、12、13、及び14、
それぞれ配列番号17、18、19、20、21、及び22、
それぞれ配列番号25、26、27、28、29、及び30、
それぞれ配列番号33、34、35、36、37、及び38、
それぞれ配列番号41、42、43、44、45、及び46、
それぞれ配列番号49、50、51、52、53、及び54、又は
それぞれ配列番号57、58、59、60、61、及び62のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む、scFvである。
【0158】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、VHを含むscFvである。一実施形態では、scFv CD79b結合アームは、配列番号15、23、31、39、47、55、63、又は80のVHを含む。一実施形態では、scFv CD79b結合アームは、VLを含む。一実施形態では、scFv CD79b結合アームは、配列番号16、24、32、40、48、56、64又は81のVLを含む。
【0159】
一実施形態では、scFv CD79b結合アームは、配列番号9、17、25、33、41、49又は57のHCDR1、配列番号10、18、26、34、42、50又は58のHCDR2、配列番号11、19、27、35、43、51又は59のHCDR3、及び配列番号16、24、32、40、48、56、64又は81のVLを含む。
【0160】
一実施形態では、scFv CD79b結合アームは、配列番号15、23、31、39、47、55、63又は80のVH、配列番号12、20、28、36、44、52又は60のLCDR1、配列番号13、21、29、37、45、53又は61のLCDR2、及び配列番号14、22、30、38、46、54、又は62のLCDR3を含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、VH及びVLを含むステープルされたscFv(spFv)である。一実施形態では、spFv CD79b結合アームは、配列番号80のVH及び配列番号81のVLを含む。一実施形態では、spFv CD79b結合アームは、配列番号82のVH及びVL並びにリンカーを含む。一実施形態では、spFv CD79b結合アームは、配列番号79を含む。
【0162】
一実施形態では、本開示は、CD79b及びCD22に結合する多重特異性抗体、その多重特異性結合断片、前述のものをコードするポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、並びに前述のものを作製及び使用する方法を提供する。このような抗体又は抗体断片は、これらの標的のうちの1つのみを標的とする抗体と比較して、細胞の特定のサブセットへのより特異的な標的化を可能にし得る。
【0163】
いくつかの実施形態では、CD79b及びCD22に結合する二重特異的抗体、並びにその二重特異的結合断片が本明細書に提供される。これは、CD79bに特異的に結合する第1の領域及びCD22に特異的に結合する第2の結合領域を含む分子を作製することにより達成される。抗原結合領域は、標的の特異的な認識を可能にする任意の形態をとることができ、例えば、結合領域は、重鎖可変ドメイン、Fv(重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインの組み合わせ)、一本鎖Fv(scFv)、Fab、フィブロネクチンIII型ドメインに基づいた結合ドメイン(Janssen Biotech,Inc.のCentyrin分子など、フィブロネクチンからか若しくはフィブロネクチンからのIII型ドメインのコンセンサスに基づいたもの、又はテネイシンからか若しくはテネイシン由来のIII型ドメインのコンセンサスに基づいたもの、例えば、国際公開第2010/051274号及び国際公開第2010/093627号を参照されたい)であっても、これらを含んでいてもよい。したがって、それぞれCD79b及びCD22に結合する2種類の異なる抗原結合領域を含む二重特異性分子が提供される。
【0164】
いくつかの実施形態では、CD79b×CD22多重特異性抗体は、第1の抗原に結合する第1の抗原結合部位を含む第1の抗原結合アームと、第2の抗原に結合する第2の抗原結合部位を含む第2の抗原結合アームと、を含む。第1及び第2の抗原結合アームは各々、CH2-CH3ドメインを含む断片結晶化可能(Fc)ドメインを含み得る。
【0165】
いくつかの実施形態では、CD79b×CD22二重特異性抗体は、CD79bに結合する第1の抗原結合部位を含む第1の抗原結合アームを含むCD79b特異的アームと、CD22に結合する第2の抗原結合部位を含む第2の抗原結合アームを含むCD22特異的アームと、を含む。いくつかの実施形態では、CD79b×CD22二重特異性抗体は、CD22に結合する抗原結合部位を含むCD22特異的アームと、CD79bに結合する抗原結合部位を含むCD79b特異的アームと、を含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、第1の抗体結合部位は、一本鎖可変断片(single-chain variable fragment、scFv)を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部位は、ステープルされた一本鎖可変断片(stapled single-chain variable fragment、spFv)を含む。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合部位は、抗原結合断片(Fab)を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部位は、抗原結合断片(Fab)を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部位は、一本鎖可変断片(single-chain variable fragment、scFv)を含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合部位は、ステープルされた一本鎖可変断片(stapled single-chain variable fragment、spFv)を含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、CD79b×CD22多重特異性抗体は、第1の抗原に結合する抗原結合部位を形成する重鎖可変(VH1)及び軽鎖可変(VL1)ドメインを含むscFvを含む第1の抗原結合アームと、第2の抗原に結合する第2の抗原結合部位を形成する重鎖可変(VH2)及び軽鎖可変(VL2)ドメインを含むFabを含む第2の抗原結合アームと、を含む。第1及び第2の抗原結合アームは各々、断片結晶化可能Fc)ドメインを含み得る。
【0168】
一実施形態では、CD79b結合アームは、抗原結合断片(Fab)を含み、CD22結合アームは、一本鎖可変断片(scFv)を含む。
【0169】
一実施形態では、CD22結合アームは、抗原結合断片(Fab)を含み、CD79b結合アームは、一本鎖可変断片(scFv)を含む。
【0170】
一実施形態では、CD22結合アームは、抗原結合断片(Fab)を含み、CD79b結合アームは、ステープルされた一本鎖可変断片(spFv)を含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、本発明の多重特異性抗体は、完全長の抗体構造を有する抗体を含む。本明細書で使用されるとき、「完全長の抗体」は、2本の完全長の抗体重鎖と2本の完全長の抗体軽鎖とを有する抗体を意味する。完全長の抗体重鎖(HC)は、重鎖可変ドメイン及び定常ドメイン、VH、CH1、CH2、及びCH3を含む。完全長の抗体軽鎖(LC)は、軽鎖可変ドメイン及び定常ドメイン、VL及びCLを含む。完全長抗体は、一方又は両方の重鎖のいずれかにおいて、C末端リジン(K)を欠いていてもよい。「Fabアーム」又は「半分子」という用語は、抗原に結合する一対の重鎖-軽鎖を指す。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインのうちの1つは、非抗体ベースの結合ドメイン、例えば、フィブロネクチン3型ドメインに基づいた結合ドメイン、例えば、Centyrinである。
【0172】
CD22結合アーム
一実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、CD22に特異的な抗原結合部位を含む。いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、ヒトCD22に結合する。いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、CD22細胞外ドメイン(extracellular domain、ECD)からの1つ又は2つ以上の残基を含むエピトープに結合する。そのようなCD22結合アームは、5×10-7M以下、例えば、1×10-7M以下、5×10-8M以下、1×10-8M以下、5×10-9M以下、1×10-9M、又は5×10-10M以下の親和性でCD22に結合し得る。一実施形態では、CD22結合アームは、約1×10-11M~1×10-9Mの親和性でCD22に結合する。一実施形態では、CD22結合アームは、約1×10-11M、約2×10-11M、約3×10-11M、約4×10-11M、約5×10-11M、約6×10-11M、約7×10-11M、約8×10-11M、約9×10-11M、1×10-10M、約2×10-10M、約3×10-10M、約4×10-10M、約5×10-10M、約6×10-10M、約7×10-10M、約8×10-10M、約9×10-10M、又は約1×10-9Mの親和性でCD22に結合する。
【0173】
いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、HCDR2、及びHCDR3を含む。一実施形態では、CD22結合アームは、配列番号1のHCDR1を含む。一実施形態では、CD22結合アームは、配列番号2のHCDR2を含む。一実施形態では、CD22結合アームは、配列番号3のHCDR3を含む。一実施形態では、CD22結合アームは、それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR、及びHCDR3を含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、LCDR2、及びLCDR3を含む。一実施形態では、CD22結合アームは、配列番号4のLCDR1を含む。一実施形態では、CD22結合アームは、配列番号5のLCDR2を含む。一実施形態では、CD22結合アームは、配列番号6のLCDR3を含む。一実施形態では、CD22結合アームは、それぞれ配列番号4、5、及び6のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、それぞれ配列番号1、2、3、4、5、及び6のHCDR1、HCDR、HCDR3、LCDR1、LCDR、及びLCDR3を含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、配列番号7の重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、配列番号8の軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0177】
いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、及び配列番号8のVLを含む。いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、配列番号7のVH、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、配列番号7のVH及び配列番号8のVLを含む。
【0179】
いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、scFvである。
【0180】
いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、(scFv)2である。
【0181】
いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、Fvである。
【0182】
いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、Fabである。
【0183】
いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、F(ab’)2である。
【0184】
いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、Fdである。
【0185】
いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、dAbである。
【0186】
いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、VHHである。
【0187】
いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、ヒト化抗原結合断片を含む。ヒト化抗体結合断片は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最少配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、その免疫グロブリン鎖若しくは断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、又は抗体の他の抗原結合配列)に由来してもよい。ほとんどの場合、ヒト化抗体又は抗体結合断片は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)、例えば、マウス、ラット、又はウサギのCDRからの残基により置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一般的には、ヒト化抗体結合断片は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むこととなり、全て又は実質的に全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、全て又は実質的に全てのフレームワーク領域がヒト免疫グロブリン配列のフレームワーク領域である。ヒト化抗体抗原結合断片は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的には、ヒト免疫グロブリンのそれを含み得る。
【0188】
いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、scFvを含む。いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、(scFv)2を含む。いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、Fvを含む。いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、Fabを含む。いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、F(ab’)2を含む。いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、Fdを含む。いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、dAbを含む。いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、VHHを含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、IgG又はその誘導体である。いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4である。CD22結合アームがIgG4アイソタイプを有するいくつかの実施形態では、それは、そのFc領域中にS228P、L234A、L235A、F405L、及びR409K置換を含有する。
【0190】
いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、Fcドメインを含む。一実施形態では、Fcドメインは、ヘテロ二量体化を促進する、Fcγ受容体へのFc結合を低減させる、プロテインAへのFc結合を低減させる、多特異性結合分子の半減期を延長する、又はそれらの任意の組み合わせのための少なくとも1つの変異を含む。ヘテロ二量体化を促進するための例示的な変異としては、T366W、T366S、L368A、及びY407Vが挙げられるが、これらに限定されない。Fcγ受容体へのFc結合を低減させるための例示的な変異としては、L234A、L235A、及びD265Sが挙げられるが、これらに限定されない。プロテインAへのFc結合を低減させるための例示的な変異としては、H435R及びY436Fが挙げられるが、これらに限定されない。半減期を延長するための例示的な変異としては、M252Y、S254T、及びT256Eが挙げられるが、これらに限定されない。
【0191】
いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、配列番号85又はその誘導体を含むFcドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、L234A、L235A、D265S、M252Y、S254T、T256E、T366S、L368A、Y407V、H435R、及びY436F置換のうちの少なくとも1つを含むFcドメインの誘導体を含む。いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、L234A、L235A、D265S、M252Y、S254T、T256E、T366S、L368A、Y407V、H435R、及びY436F置換の各々を含むFcドメインの誘導体を含む。一実施態様では、多重特異性抗体は、配列番号90に記載のバリアントIgGを含む。
【0192】
CD79b結合アーム
一実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、CD79bに特異的な抗原結合部位を含む。いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、ヒトCD79bに結合する。いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、ヒトCD79b及びカニクイザルCD79bに結合する。いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、ヒトCD79bに結合するが、カニクイザルCD79bには結合しない。いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、CD79b細胞外ドメイン(ECD)からの1つ又は2つ以上の残基を含むエピトープに結合する。そのようなCD79b結合アームは、5×10-7M以下、例えば、1×10-7M以下、5×10-8M以下、1×10-8M以下、5×10-9M以下、1×10-9M、又は5×10-10M以下の親和性でCD79bに結合し得る。一実施形態では、CD79b結合アームは、約1×10-11M~1×10-9Mの親和性でCD79bに結合する。一実施形態では、CD79b結合アームは、約1×10-11M、約2×10-11M、約3×10-11M、約4×10-11M、約5×10-11M、約6×10-11M、約7×10-11M、約8×10-11M、約9×10-11M、1×10-10M、約2×10-10M、約3×10-10M、約4×10-10M、約5×10-10M、約6×10-10M、約7×10-10M、約8×10-10M、約9×10-10M、又は約1×10-9Mの親和性でCD79bに結合する。
【0193】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む。一実施形態では、CD79b結合アームは、配列番号9、17、25、33、41、49、又は57のHCDR1を含む。一実施形態では、CD79b結合アームは、配列番号10、18、26、34、42、50、又は58のHCDR2を含む。一実施形態では、CD79b結合アームは、配列番号11、19、27、35、43、51、又は59のHCDR3を含む。
【0194】
一実施形態では、CD79b結合アームは、配列番号9、17、25、33、41、49、又は57のHCDR1、配列番号10、18、26、34、42、50、又は58のHCDR2、及び配列番号11、19、27、35、43、51、又は59のHCDR3を含む。一実施形態では、CD79b結合アームは、以下:
それぞれ、配列番号9、10、及び11、
それぞれ配列番号17、18、及び19、
それぞれ配列番号25、26、及び27、
それぞれ配列番号33、34、及び35、
それぞれ配列番号41、42、及び43、
それぞれ配列番号49、50、及び51、又は
それぞれ配列番号57、58、及び59のHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む。
【0195】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。一実施形態では、CD79b結合アームは、配列番号12、20、28、36、44、52又は60のLCDR1を含む。一実施形態では、CD79b結合アームは、配列番号13、21、29、37、45、53又は61のLCDR2を含む。一実施形態では、CD79b結合アームは、配列番号14、22、30、38、46、54又は62のLCDR3を含む。一実施形態では、CD79b結合アームは、以下:
それぞれ配列番号12、13、及び14、
それぞれ配列番号20、21、及び22、
それぞれ配列番号28、29、及び30、
それぞれ配列番号36、37、及び38、
それぞれ配列番号44、45、及び46、
それぞれ配列番号52、53、及び54、又は
それぞれ配列番号60、61、及び62のLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む。
【0196】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。一実施形態では、CD79b結合アームは、配列番号9、17、25、33、41、49又は57のHCDR1を含む。一実施形態では、CD79b結合アームは、配列番号10、18、26、34、42、50又は58のHCDR2を含む。一実施形態では、CD79b結合アームは、配列番号11、19、27、35、43、51又は59のHCDR3を含む。一実施形態では、CD79b結合アームは、配列番号12、20、28、36、44、52又は60のLCDR1を含む。一実施形態では、CD79b結合アームは、配列番号13、21、29、37、45、53又は61のLCDR2を含む。一実施形態では、CD79b結合アームは、配列番号14、22、30、38、46、54又は62のLCDR3を含む。一実施形態では、CD79b結合アームは、以下:
それぞれ配列番号9、10、11、12、13、及び14、
それぞれ配列番号17、18、19、20、21、及び22、
それぞれ配列番号25、26、27、28、29、及び30、
それぞれ配列番号33、34、35、36、37、及び38、
それぞれ配列番号41、42、43、44、45、及び46、
それぞれ配列番号49、50、51、52、53、及び54、又は
それぞれ配列番号57、58、59、60、61、及び62のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む。
【0197】
一実施形態では、CD79b結合アームは、VHを含む。一実施形態では、CD79b結合アームは、配列番号15、23、31、39、47、55、63又は80のVHを含む。一実施形態では、CD79b結合アームは、VLを含む。一実施形態では、CD79b結合アームは、配列番号16、24、32、40、48、56、64又は81のVLを含む。
【0198】
一実施形態では、CD79b結合アームは、配列番号9、17、25、33、41、49又は57のHCDR1、配列番号10、18、26、34、42、50又は58のHCDR2、配列番号11、19、27、35、43、51又は59のHCDR3、及び配列番号16、24、32、40、48、56、64又は81のVLを含む。
【0199】
一実施形態では、CD79b結合アームは、配列番号15、23、31、39、47、55、63又は80のVH、配列番号12、20、28、36、44、52又は60のLCDR1、配列番号13、21、29、37、45、53又は61のLCDR2、及び配列番号14、22、30、38、46、54又は62のLCDR3を含む。
【0200】
一実施形態では、CD79b結合アームは、VH及びVLを含む。一実施形態では、CD79b結合アームは、以下:
それぞれ配列番号15及び16、
それぞれ配列番号23及び24、
それぞれ配列番号31及び32、
それぞれ配列番号39及び40、
それぞれ配列番号47及び48、
それぞれ配列番号55及び56、
それぞれ配列番号63及び64、又は
それぞれ配列番号80及び81のVH及びVLを含む。
【0201】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、scFvである。
【0202】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、(scFv)2である。
【0203】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、Fvである。
【0204】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、Fabである。
【0205】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、F(ab’)2である。
【0206】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、Fdである。
【0207】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、dAbである。
【0208】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、VHHである。
【0209】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、ステープルされたscFv(spFv)である。
【0210】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、以下:
それぞれ配列番号9、10、11、12、13、及び14、
それぞれ配列番号17、18、19、20、21、及び22、
それぞれ配列番号25、26、27、28、29、及び30、
それぞれ配列番号33、34、35、36、37、及び38、
それぞれ配列番号41、42、43、44、45、及び46、
それぞれ配列番号49、50、51、52、53、及び54、又は
それぞれ配列番号57、58、59、60、61、及び62のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む、scFvである。
【0211】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、VHを含むscFvである。一実施形態では、scFv CD79b結合アームは、配列番号15、23、31、39、47、55、63又は80のVHを含む。一実施形態では、scFv CD79b結合アームは、VLを含む。一実施形態では、scFv CD79b結合アームは、配列番号16、24、32、40、48、56、64又は81のVLを含む。
【0212】
一実施形態では、scFv CD79b結合アームは、配列番号9、17、25、33、41、49又は57のHCDR1、配列番号10、18、26、34、42、50又は58のHCDR2、配列番号11、19、27、35、43、51又は59のHCDR3、及び配列番号16、24、32、40、48、56、64又は81のVLを含む。
【0213】
一実施形態では、scFv CD79b結合アームは、配列番号15、23、31、39、47、55、63又は80のVH、配列番号12、20、28、36、44、52又は60のLCDR1、配列番号13、21、29、37、45、53又は61のLCDR2、及び配列番号14、22、30、38、46、54又は62のLCDR3を含む。
【0214】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、VHを含むステープルされたscFvである。一実施形態では、ステープルされたscFv CD79b結合アームは、配列番号80のVH及び配列番号81のVLを含む。一実施形態では、ステープルされたscFv CD79b結合アームは、配列番号82のVH及びVL並びにリンカーを含む。一実施形態では、ステープルされたscFv CD79b結合アームは、配列番号79を含む。
【0215】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、ヒト化抗原結合断片を含む。ヒト化抗体結合断片は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最少配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、その免疫グロブリン鎖、又はその断片(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、又は抗体の他の抗原結合配列)に由来してもよい。ほとんどの場合、ヒト化抗体又は抗体結合断片は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)、例えば、マウス、ラット、又はウサギのCDRからの残基により置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一般的には、ヒト化抗体結合断片は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むこととなり、全て又は実質的に全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、全て又は実質的に全てのフレームワーク領域がヒト免疫グロブリン配列のフレームワーク領域である。ヒト化抗体抗原結合断片は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的には、ヒト免疫グロブリンのそれを含み得る。
【0216】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、scFv、例えば、spFvを含む。いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、(scFv)2を含む。いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、Fvを含む。いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、Fabを含む。いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、F(ab’)2を含む。いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、Fdを含む。いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、dAbを含む。いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、VHHを含む。
【0217】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、IgG又はその誘導体である。いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4である。CD79b結合アームがIgG4アイソタイプを有するいくつかの実施形態では、アームは、そのFc領域中にS228P、L234A、L235A、F405L、及びR409K置換を含有する。
【0218】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、Fcドメインを含む。一実施形態では、Fcドメインは、ヘテロ二量体化を促進する、Fcγ受容体へのFc結合を低減させる、プロテインAへのFc結合を低減させる、多特異性結合分子の半減期を延長する、又はそれらの任意の組み合わせのための少なくとも1つの変異を含む。ヘテロ二量体化を促進するための例示的な変異としては、T366W、T366S、L368A、及びY407Vが挙げられるが、これらに限定されない。Fcγ受容体へのFc結合を低減させるための例示的な変異としては、L234A、L235A、及びD265Sが挙げられるが、これらに限定されない。プロテインAへのFc結合を低減させるための例示的な変異としては、H435R及びY436Fが挙げられるが、これらに限定されない。半減期を延長するための例示的な変異としては、M252Y、S254T、及びT256Eが挙げられるが、これらに限定されない。
【0219】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、配列番号88又はその誘導体を含む。一実施形態では、多重特異性抗体は、配列番号89に記載されるFcドメインを含む。
【0220】
抗体及び抗体断片
本開示のCD79b及び/又はCD22結合アームは、標準的な方法を使用して様々な設計の単一特異性又は多重特異性タンパク質に操作され得る。本開示はまた、本開示のCD79b及び/又はCD22に結合する抗原結合ドメインを含む単一特異性タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、単一特異性タンパク質は、抗体である。いくつかの実施形態では、多重特異性タンパク質は、抗体である。
【0221】
このアプローチによって限定されないが、一般に、多重特異性抗体として抗体を構築する場合、各標的に対する結合ドメインモジュール(第1、第2、第3など)は、任意選択で、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、可変ドメイン(例えば、VH又はVL)、ダイアボディ、ミニボディ、又は完全長抗体から構築される。例えば、各当該の結合ドメイン又はモジュールは、以下の非限定的なフォーマットのうちの1つ又は2つ以上で作製され、可変ドメイン、及び/又は完全長抗体、及び/又は抗体断片を含む結合ドメインは、多重特異性抗体を生成するように直列に作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、多重特異性タンパク質は、二重特異性である。
【0222】
一実施形態では、CD79bを標的とする少なくとも1つの第1の抗体由来結合ドメインを含み、かつCD22を標的とする少なくとも1つの第2の抗体結合ドメインに作動可能に連結されている多重特異性抗体が提供される。任意選択で、結合ドメインは、少なくとも1つ若しくは2つ以上のVH及び同族VL結合ドメイン、又は1つ若しくは2つ以上のVH-CH1-CH2-CH2及び同族VL-CL結合ドメイン、又は1つ若しくは2つ以上の抗体断片結合ドメインを含む。
【0223】
また、CD79b又はCD22に結合する本明細書で同定されたVHドメイン及びVLドメインのいずれも、Fab、F(ab’)2、Fd、又はFvフォーマットに操作され得、CD79b又はCD22へのそれらの結合は、本明細書に記載されるアッセイを使用して評価することができる。
【0224】
例えば、CD79b又はCD22に結合する本明細書で同定されたVHドメイン及びVLドメインのいずれも、VH-リンカー-VL又はVL-リンカー-VH配向のいずれかのscFvフォーマットに操作され得る。いくつかの実施形態では、scFvフォーマットは、VH-リンカー-VL又はVL-リンカー-VH配向のいずれかである。また、本明細書で同定されたVHドメイン及びVLドメインのいずれも、VH-リンカー-VL-リンカー-VL-リンカー-VH、VH-リンカー-VL-リンカー-VH-リンカー-VL、VH-リンカー-VH-リンカー-VL-リンカー-VL、VL-リンカー-VH-リンカー-VH-リンカー-VL、VL-リンカー-VH-リンカー-VL-リンカー-VH、又はVL-リンカー-VL-リンカー-VH-リンカー-VHなどのsc(Fv)2構造を生成するために使用され得る。
【0225】
本明細書で同定されたVHドメイン及びVLドメインは、scFvフォーマットに組み込むことができ、得られたscFvのCD79b又はCD22への結合及び熱安定性は、既知の方法を使用して評価することができる。結合は、ProteOn XPR36、Biacore3000、若しくはKinExA機器、ELISA、又は当業者に既知の競合的結合アッセイを使用して評価することができる。結合は、精製されたscFv又は大腸菌上清、又は発現したscFvを含有する溶解細胞を使用して評価することができる。試験scFvのCD79b又はCD22に対する親和性の測定値は、異なる条件(例えば、モル浸透圧濃度、pH)下で測定した場合、異なり得る。したがって、親和性及びその他の結合パラメータ(例えば、KD、Kon、Koff)の測定は、通常、標準的な条件、及び標準化緩衝液を用いて行われる。熱安定性は、50℃、55℃、又は60℃などの高温で、5分、10分、15分、20分、25分、又は30分などの期間、試験scFvを加熱し、CD79b又はCD22への試験scFvの結合を測定することによって評価し得る。非加熱scFvサンプルと比較したときに、CD79b又はCD22への同等の結合を保持しているscFvが、熱安定性であると称される。
【0226】
組換え発現系にて、リンカーはペプチドリンカーであり、任意の天然に存在するアミノ酸を含み得る。リンカーに含まれ得る例示的なアミノ酸は、Gly、Ser、Pro、Thr、Glu、Lys、Arg、Ile、Leu、His及びTheである。リンカーは、CD79bへの結合などの所望の活性を保持するように、互いに対して正確な高次構造を形成するような方式でVH及びVLを連結させるのに適切である長さを有している必要がある。
【0227】
リンカーは、約5~50個のアミノ酸長であり得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、約10~40個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、約10~35個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、約10~30個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、約10~25個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、約10~20個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、約15~20個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、6個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、7個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、8個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、9個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、10個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、11個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、12個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、13個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、14個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、15個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、16個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、17個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、18個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、19個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、20個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、21個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、22個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、23個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、24個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、25個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、26個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、27個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、28個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、29個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、30個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、31個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、32個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、33個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、34個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、35個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、36個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、37個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、38個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、39個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、40個のアミノ酸長である。使用され得る例示的なリンカーは、Glyリッチリンカー、Gly及びSer含有リンカー、Gly及びAla含有リンカー、Ala及びSer含有リンカー、並びに他の柔軟なリンカーである。
【0228】
他のリンカー配列は、免疫グロブリン重鎖又は軽鎖アイソタイプに由来する免疫グロブリンヒンジ領域、CL又はCH1の部分を含み得る。代替的に、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、又はポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマーを含む様々な非タンパク質性ポリマーは、リンカーとしての使用が見出され得る。追加のリンカーは、例えば、国際特許公開第2019/060695号に記載されている。
【0229】
いくつかの実施形態では、scFvは、N末端からC末端に向かって、VH、第1のリンカー(L1)、及びVL(VH-L1-VL)を含む。いくつかの実施形態では、scFvは、N末端からC末端に向かって、VL、L1、及びVH(VL-L1-VH)を含む。
【0230】
いくつかの実施形態では、scFvは、N末端からC末端に向かって、VH、第1のリンカー(L1)、及びVL(VH-L1-VL)、又はVL、L1、及びVH(VL-L1-VH)を含む。いくつかの実施形態では、L1は、約5~50個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、L1は、約5~40個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、L1は、約10~30個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、L1は、約10~20個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、L1は、配列番号91~125のアミノ酸配列を含む。
【0231】
多特異性抗体
いくつかの実施形態では、抗原結合アームは、二重可変ドメイン免疫グロブリン(Dual Variable Domain Immunoglobulins、DVD)に組み込まれ得る(国際特許公開第2009/134776号、DVDは、VH1-リンカー-VH2-CH構造を有する重鎖と、VL1-リンカー-VL2-CL構造を有する軽鎖とを含む完全長抗体であり、リンカーは任意選択である)、異なる特異性を有する2つの抗体アームを結合するための様々な二量化ドメインを含む構造、例えば、ロイシンジッパー又はコラーゲン二量化ドメイン(国際特許公開第2012/022811号、米国特許第5,932,448号、米国特許第6,833,441号)、一緒にコンジュゲートされた2つ又は3つ以上のドメイン抗体(dAbs)、ダイアボディ、ラクダ科抗体及び操作されたラクダ科抗体などの重鎖のみ抗体、Dual Targeting(Dual Targeting、DT)-Ig(GSK/Domantis)、Two-in-one Antibody(Genentech)、Cross-linked Mab(Karmanos Cancer Center)、mAb2(F-Star)及びCovX-body(CovX/Pfizer)、IgG-like Bispecific(InnClone/Eli Lilly)、Ts2Ab(MedImmune/AZ)及びBsAb(Zymogenetics)、HERCULES(Biogen Idec)及びTvAb(Roche)、ScFv/Fc Fusions(Academic Institution)、SCORPION(Emergent BioSolutions/Trubion,Zymogenetics/BMS))、Dual Affinity Retargeting Technology(Fc-DART)(MacroGenics)及びDual(ScFv)2-Fab(National Research Center for Antibody Medicine--China)、Dual-Action又はBis-Fab(Genentech)、Dock-and-Lock(DNL)(ImmunoMedics)、Bivalent Bispecific(Biotecnol)並びにFab-Fv(UCB-Celltech)が挙げられる。ScFv抗体、ダイアボディに基づく抗体、及びドメイン抗体は、二重特異性T細胞エンゲージャ(Bispecific T Cell Engager、BiTE)(Micromet)、タンデムダイアボディ(Tandem Diabody、Tandab)(Affimed)、二重親和性再標的技術(Dual Affinity Retargeting Technology、DART)(MacroGenics)、一本鎖ダイアボディ(Academic)、TCR様抗体(AIT、ReceptorLogics)、ヒト血清アルブミンScFv融合体(Merrimack)、及びCOMBODY(Epigen Biotech)、二重標的ナノボディ(Ablynx)、二重標的重鎖のみドメイン抗体を含むが、これらに限定されない。
【0232】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている多重特異性抗体は、多重特異性抗体について当該技術分野において記載されている任意のフォーマットを採用し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体は、二重特異性抗体フォーマットに基づいて構築される。これは、第3の抗原結合領域を二重特異性抗体に付加することによって達成することができる。これまでに種々のフォーマットの二重特異性抗体が記載されており、近年ではChames and Baty(2009)Curr Opin Drug Disc Dev 12:276によりレビューされている。いくつかの実施形態では、多重特異性抗体は、ダイアボディ、クロスボディ、又は本発明において記載されるもののような制御されたFabアーム交換により得られる二重特異性抗体である二重特異性抗体である。
【0233】
いくつかの実施形態では、多重特異性抗体には、ヘテロ二量体化を強制する相補性CH3ドメインを有するIgG様分子、組換えIgG様二重標的化分子(この分子の2つの側面は各々、少なくとも2つの異なる抗体のFab断片又はFab断片の一部を含む);IgG融合分子(完全長IgG抗体が、余分のFab断片又はFab断片の一部に融合されている);Fc融合分子(一本鎖Fv分子又は安定化されたダイアボディが、重鎖定常ドメイン、Fc領域、又はその一部に融合されている);Fab融合分子(異なるFab断片が一緒に融合されている);ScFv及びダイアボディベース及び重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)(異なる一本鎖Fv分子又は異なるダイアボディ又は異なる重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)が互いに融合されているか、又は別のタンパク質若しくは担体分子に融合されている)が挙げられる。
【0234】
いくつかの実施形態では、相補性CH3ドメイン分子を有するIgG様分子としては、Triomab/Quadroma(Trion Pharma/Fresenius Biotech)、Knobs-into-Holes(Genentech)、CrossMAbs(Roche)、及び静電的に調整されたもの(Amgen)、LUZ-Y(Genentech)、ストランドを交換し操作したドメインボディ(Strand Exchange Engineered Domain body、SEEDbody)(EMD Serono)、Biclonic(Merus)、DuoBody(Genmab A/S)、及び他の非対称変異(例えば、Zymeworks)が挙げられる。
【0235】
いくつかの実施形態では、組換えIgG様二重標的化分子としては、Dual Targeting(DT)-Ig(GSK/Domantis)、Two-in-one Antibody(Genentech)、Cross-linked Mabs(Karmanos Cancer Center)、mAb2(F-Star)、及びCovX-body(CovX/Pfizer)が挙げられる。
【0236】
いくつかの実施形態では、IgG融合分子としては、Dual Variable Domain(DVD)-Ig(Abbott)、IgG-like Bispecific(InnClone/Eli Lilly)、Ts2Ab(MedImmune/AZ)、及びBsAb(Zymogenetics)、HERCULES(Biogen Idec)、並びにTvAb(Roche)が挙げられる。
【0237】
いくつかの実施形態では、Fc融合分子としては、ScFv/Fc Fusions(Academic Institution)、SCORPION(Emergent BioSolutions/Trubion,Zymogenetics/BMS)、Dual Affinity Retargeting Technology(Fc-DART)(MacroGenics)、及びDual(ScFv)2-Fab(National Research Center for Antibody Medicine--China)が挙げられる。
【0238】
いくつかの実施形態では、Fab融合二重特異性抗体としては、F(ab)2(Medarex/AMGEN)、Dual-Action or Bis-Fab(Genentech)、Dock-and-Lock(DNL)(ImmunoMedics)、Bivalent Bispecific(Biotecnol)、及びFab-Fv(UCB-Celltech)が挙げられる。ScFv-、ダイアボディに基づく抗体及びドメイン抗体には、Bispecific T Cell Engager(BiTE)(Micromet)、Tandem Diabody(Tandab)(Affimed)、Dual Affinity Retargeting Technology(DART)(MacroGenics)、Single-chain Diabody(Academic)、TCR-like Antibodies(AIT,ReceptorLogics)、Human Serum Albumin ScFv Fusion(Merrimack)、及びCOMBODY(Epigen Biotech)、二重標的指向性ナノボディ(dual targeting nanobody)(Ablynx)、二重標的指向性の重鎖のみのドメイン抗体(dual targeting heavy chain only domain antibody)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0239】
本開示の完全長多重特異性抗体は、例えば、2つの単一特異性二価抗体間でのFabアーム交換(又は半分子交換)を使用して、インビトロにおいて、無細胞環境下又は共発現使用下のいずれかで、別個の特異性を有する2つの抗体半分子のヘテロ二量体化に有利になるように、各々の半分子において重鎖CH3界面に置換を導入することにより生成され得る。Fabアーム交換反応は、ジスルフィド結合異性化反応及びCH3ドメインの解離-会合の結果である。単一特異性親抗体のヒンジ領域における重鎖ジスルフィド結合は、低減される。単一特異性親抗体のうちの1つについて生じる遊離システインは、第2の単一特異性親抗体分子のシステイン残基と重鎖内ジスルフィド結合を形成し、同時に、親抗体のCH3ドメインは、解離-会合により開放及び再形成する。FabアームのCH3ドメインは、ホモ二量体化よりもヘテロ二量体化に有利となるように操作され得る。得られた産物は、各々別個のエピトープ、例えば、CD79b上のエピトープ及びCD22上のエピトープに結合する、2つのFabアーム又は半分子を有する二重特異性抗体である。
【0240】
本明細書で使用されるとき、「ホモ二量体化」は、同一のCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖の相互作用を意味する。本明細書で使用されるとき、「ホモ二量体」は、同一のCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖を有する抗体を意味する。
【0241】
本明細書で使用されるとき、「ヘテロ二量体化」は、同一でないCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖の相互作用を意味する。本明細書で使用されるとき、「ヘテロ二量体」は、同一でないCH3アミノ酸配列を有する2本の重鎖を有する抗体を意味する。
【0242】
「ノブ-イン-ホール」戦略(例えば、PTC国際公開第2006/028936号を参照のこと)が、完全長二重特異性抗体を生成するのに使用されてもよい。簡潔に述べると、ヒトIgGにおけるCH3ドメインの界面を形成する選択されたアミノ酸は、ヘテロ二量体形成を促進するように、CH3ドメイン相互作用に影響を及ぼす位置において変異され得る。小さい側鎖を有するアミノ酸(ホール)が、第1の抗原に結合する抗体の重鎖内に導入され、大きい側鎖を有するアミノ酸(ノブ)が、第2の抗原に結合する抗体の重鎖内に導入される。2つの抗体の共発現後に、ヘテロ二量体が、「ホール」を有する重鎖と「ノブ」を有する重鎖との優先的な相互作用の結果として形成される。ノブ及びホールを形成する例示的なCH3置換の対は、T366Y/F405A、T366W/F405W、F405W/Y407A、T394W/Y407T、T394S/Y407A、T366W/T394S、F405W/T394S、及びT366W/T366S_L368A_Y407Vである(第1の重鎖の第1のCH3ドメインにおける修飾された位置/第2の重鎖の第2のCH3ドメインにおける修飾された位置として表現)。
【0243】
本明細書に記載される多重特異性抗体又は多重特異性結合断片のいくつかの実施形態では、第1の抗原結合アームのFcドメインは、変異T366S、L368A及びY407Vを含み、第2の抗原結合アームのFcドメインは、変異T366Wを含む。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合アームのFcドメインは、変異T366S、L368A及びY407Vを含み、第1の抗原結合アームのFcドメインは、変異T366Wを含む。
【0244】
他の戦略、例えば、1つのCH3表面における正に荷電した残基及び第2のCH3表面における負に荷電した残基を置換することによる静電的相互作用を使用する重鎖ヘテロ二量体化の促進が、米国特許出願公開第2010/0015133号、米国特許出願公開第2009/0182127号、米国特許出願公開第2010/028637号、又は米国特許出願公開第2011/0123532号に記載されるように使用されてもよい。他の戦略では、ヘテロ二量体化は、以下の置換(第1の重鎖の第1のCH3ドメインにおける修飾された位置/第2の重鎖の第2のCH3ドメインにおける修飾された位置として表現される)によって促進されてもよい:米国特許出願公開第2012/0149876号又は米国特許出願公開第2013/0195849号に記載されるように、L351Y_F405AY407V/T394W、T366I_K392M_T394W/F405A_Y407V、T366L_K392M_T394W/F405A_Y407V、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V K409F Y407A/T366A_K409F、又はT350V_L351Y_F405A Y407V/T350V_T366L_K392L_T394W(Zymeworks)。
【0245】
上記の方法に加えて、本発明の多重特異性抗体は、インビトロにおいて、無細胞環境下で、国際特許公開第2011/131746号に記載された方法に従って、2つの単一特異性ホモ二量体抗体のCH3領域中に非対称変異を導入し、ジスルフィド結合を異性化させる還元条件下において、2つの親単一特異性ホモ二量体抗体から多重特異性ヘテロ二量体抗体を形成することにより生成されてもよい。この方法において、第1の単特異性二価抗体(例えば、抗CD79b抗体)及び第2の単特異性二価抗体(例えば、抗CD3抗体)は、ヘテロ二量体の安定性を促進するCH3ドメインにおける特定の置換を有するように操作され、抗体は、ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド結合を異性化させるために十分な還元条件下において一緒にインキュベートされ、それにより、Fabアーム交換により多重特異性抗体が生成される。インキュベート条件は、最適には、非還元条件に戻されてもよい。使用され得る例示的な還元剤は、2-メルカプトエチルアミン(2-mercaptoethylamine、2-MEA)、ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリスリトール(dithioerythritol、DTE)、グルタチオン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(tris(2-carboxyethyl)phosphine、TCEP)、L-システイン、及びβ-メルカプトエタノールであり、好ましくは、2-メルカプトエチルアミン、ジチオスレイトール、及びトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンからなる群から選択される還元剤である。例えば、少なくとも20℃の温度において、少なくとも25mMの2-MEAの存在下又は少なくとも0.5mMのジチオスレイトールの存在下で、pH5~8、例えば、pH7.0又はpH7.4において、少なくとも90分のインキュベートが使用されてもよい。
【0246】
いくつかの実施形態では、多重特異性抗体又は抗原結合断片は、IgG又はその誘導体である。IgGクラスは、ヒトにおいて、4つのアイソタイプ:IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4に分割される。これらは、Fc領域のアミノ酸配列において95%を上回る相同性を共有するが、ヒンジ領域のアミノ酸組成及び構造において主な差異を示す。Fc領域は、エフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞傷害(antibody-dependent cellular cytotoxicity、ADCC)及び補体依存性細胞傷害(complement-dependent cytotoxicity、CDC)を媒介する。ADCCでは、抗体のFc領域は、免疫エフェクター細胞、例えば、ナチュラルキラー及びマクロファージの表面上のFc受容体(FcγR)に結合し、標的細胞の貪食又は溶解をもたらす。CDCでは、抗体は、細胞表面における補体カスケードをトリガーすることによって、標的細胞を殺滅させる。本明細書に記載される抗体は、IgGアイソタイプのいずれかとの組み合わせで、可変ドメインの記載された特徴を有する抗体を含み、これには、異なるエフェクター機能をもたらすようにFc配列が修飾されている改変版が含まれる。
【0247】
多くの治療用抗体の適用に関し、Fcに媒介されるエフェクター機能は、作用機序を担わない。これらのFcに媒介されるエフェクター機能は、機序外の毒性を引き起こすことにより有害となるおそれがあり、かつ安全性リスクを引き起こすおそれがある。エフェクター機能の修飾は、Fc領域を操作して、FcγR又は補体因子へのそれらの結合を低減させることにより達成され得る。活性化(FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIIa、及びFcγRIIIb)及び阻害性(FcγRIIb)FcγR又は補体の第1の成分(C1q)へのIgGの結合は、ヒンジ領域及びCH2ドメイン中に位置する残基により決まる。IgG1、IgG2、及びIgG4に変異が導入されると、Fc機能が低下又はサイレンシングする。本明細書に記載される抗体は、これらの修飾を含んでもよい。
【0248】
一実施形態では、抗体は、下記特性:(a)親Fcと比較した場合、低下したエフェクター機能、(b)FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIb及び/又はFcγRIIIaに対する低減された親和性、(c)FcγRIに対する低減された親和性、(d)FcγRIIaに対する低減された親和性、(e)FcγRIIbに対する低減された親和性、(f)FcγRIIIbに対する低減された親和性又は(g)FcγRIIIaに対する低減された親和性、のうちの1つ又は2つ以上を有するFc領域を含む。
【0249】
いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、IgG又はその誘導体、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4アイソタイプである。抗体がIgG1アイソタイプを有するいくつかの実施形態では、抗体は、そのFc領域に、L234A、L235A、D265S、及び/又はK409R置換を含有する。抗体がIgG4アイソタイプを有するいくつかの実施形態では、抗体は、そのFc領域に、S228P、L234A、及びL235A置換を含む。本明細書に記載される抗体は、これらの修飾を含んでもよい。
【0250】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体の第1及び/又は第2の抗原結合アームのFcドメインは各々、L234A、L235A、及びD265Sから選択される1つ又は2つ以上の変異を含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2の抗原結合アームのFcドメインは各々、変異L234A、L235A、及びD265Sを含む。
【0251】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体の第1又は第2の抗原結合アームのFcドメインは、プロテインAへのFc結合を低減させる1つ又は2つ以上の変異を更に含む。いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2の抗原結合アームのFcドメインは、変異H435R及び/又はY436Fを含む。いくつかの実施形態では、CD22抗原結合アームのFcドメインは、変異H435R及び/又はY436Fを含む。
【0252】
様々な実施形態では、本明細書に記載される多重特異性抗体において使用されるscFvは、N末端からC末端に向かって、VH、リンカー及びVL(VH-L-VL)又はVL、L及びVH(VL-L-VH)を含む。いくつかの実施形態では、scFvは、N末端からC末端に向かって、VL、リンカー、及びVH(VL-リンカー-VH)を含む。いくつかの実施形態では、scFvは、N末端からC末端に向かって、VL、リンカー、及びVH(VL-L-VH)を含む。
【0253】
本開示において使用されるリンカーは、約5~50個のアミノ酸長であり得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、約10~40個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、約10~35個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、約10~30個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、約10~25個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、約10~20個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、約15~20個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、6個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、7個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、8個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、9個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、10個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、11個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、12個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、13個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、14個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、15個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、16個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、17個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、18個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、19個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、20個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、21個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、22個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、23個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、24個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、25個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、26個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、27個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、28個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、29個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、30個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、31個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、32個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、33個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、34個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、35個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、36個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、37個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、38個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、39個のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、40個のアミノ酸長である。使用され得る例示的なリンカーは、Glyリッチリンカー、Gly及びSer含有リンカー、Gly及びAla含有リンカー、Ala及びSer含有リンカー、並びに他の柔軟なリンカーである。
【0254】
他のリンカー配列は、免疫グロブリン重鎖又は軽鎖アイソタイプに由来する免疫グロブリンヒンジ領域、CL又はCH1の部分を含み得る。使用され得る例示的なリンカーを表1に示す。追加のリンカーは、例えば、国際特許公開第2019/060695号に記載されている。
【0255】
いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号91~125のうちの1つのアミノ酸配列を含む。
【0256】
【0257】
二重特異性抗体
いくつかの実施形態では、本開示の二重特異性抗体又は二重特異性抗体断片は、CD79b結合アームと、CD22結合アームと、を含む。一実施形態では、二重特異性抗体又は二重特異性抗体断片は、第1の抗原に結合する第1の抗原結合部位と、第2の抗原に結合する第2の抗原結合部位と、を含む。
【0258】
一実施態様では、二重特異性抗体又は二重特異性抗体断片は、CD22に結合する第1の抗原結合アームと、CD79bに結合する第2の抗原結合アームと、を含む。
【0259】
一実施態様では、二重特異性抗体又は二重特異性抗体断片は、CD79bに結合する第1の抗原結合アームと、CD22に結合する第2の抗原結合アームと、を含む。一実施形態では、CD79bに結合する第1の抗原結合アームは、配列番号9、17、25、33、41、49又は57のHCDR1、配列番号10、18、26、34、42、50又は58のHCDR2、配列番号11、19、27、35、43、51又は59のHCDR3、配列番号12、20、28、36、44、52又は60のLCDR1、配列番号13、21、29、37、45、53又は61のLCDR2、及び配列番号14、22、30、38、46、54又は62のLCDR3を含む。一実施形態では、CD79bに結合する抗原結合アームは、以下:
それぞれ配列番号9、10、11、12、13、及び14、
それぞれ配列番号17、18、19、20、21、及び22、
それぞれ配列番号25、26、27、28、29、及び30、
それぞれ配列番号33、34、35、36、37、及び38、
それぞれ配列番号41、42、43、44、45、及び46、
それぞれ配列番号49、50、51、52、53、及び54、又は
それぞれ配列番号57、58、59、60、61、及び62のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む。
【0260】
一実施形態では、CD79bに結合する第1の抗原結合アームは、配列番号15、23、31、39、47、55、63又は80のVH、及び配列番号16、24、32、40、48、56、64又は81のVLを含む。一実施形態では、CD79bに結合する第1の抗原結合アームは、以下:
それぞれ配列番号15及び16、
それぞれ配列番号23及び24、
それぞれ配列番号31及び32、
それぞれ配列番号39及び40、
それぞれ配列番号47及び48、
それぞれ配列番号55及び56、
それぞれ配列番号63及び64、又は
それぞれ配列番号80及び81のVH及びVLを含む。
【0261】
一実施形態では、CD22に結合する第2の抗原結合アームは、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含む。一実施形態では、CD22に結合する第2の抗原結合アームは、配列番号7のVHを含む。一実施形態では、CD22に結合する第2の抗原結合アームは、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含む。一実施形態では、CD22に結合する第2の抗原結合アームは、配列番号8のVLを含む。
【0262】
一実施形態では、二重特異性抗体又は二重特異性抗体断片は、配列番号9のHCDR1、配列番号10のHCDR2、配列番号11のHCDR3、配列番号12のLCDR1、配列番号13のLCDR2、及び配列番号14のLCDR3を含むCD79bに結合する抗原結合アームと、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含むCD22と結合する抗原結合アームと、を含む。
【0263】
一実施態様では、二重特異性抗体又は二重特異性抗体断片は、配列番号9のHCDR1、配列番号10のHCDR2、配列番号11のHCDR3、配列番号12のLCDR1、配列番号13のLCDR2、及び配列番号14のLCDR3を含むCD79bに結合する抗原結合アームと、配列番号7のVH、及び配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含むCD22に結合する抗原結合アームと、を含む。
【0264】
一実施態様では、二重特異性抗体又は二重特異性抗体断片は、配列番号9のHCDR1、配列番号10のHCDR2、配列番号11のHCDR3、配列番号12のLCDR1、配列番号13のLCDR2、及び配列番号14のLCDR3を含むCD79bに結合する抗原結合アームと、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3、並びに配列番号8のVLを含むCD22に結合する抗原結合アームと、を含む。
【0265】
一実施態様では、二重特異性抗体又は二重特異性抗体断片は、配列番号9のHCDR1、配列番号10のHCDR2、配列番号11のHCDR3、配列番号12のLCDR1、配列番号13のLCDR2、及び配列番号14のLCDR3を含むCD79bに結合する抗原結合アームと、配列番号7のVH及び配列番号8のVLを含むCD22に結合する抗原結合アームと、を含む。
【0266】
一実施態様では、二重特異性抗体又は二重特異性抗体断片は、配列番号80のVH、配列番号12のLCDR1、配列番号13のLCDR2、及び配列番号14のLCDR3を含むCD79bに結合する抗原結合アームと、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含むCD22に結合する抗原結合アームと、を含む。
【0267】
一実施態様では、二重特異性抗体又は二重特異性抗体断片は、配列番号9のHCDR1、配列番号10のHCDR2、配列番号11のHCDR3、及び配列番号81のVLを含むCD79bに結合する抗原結合アームと、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含むCD22に結合する抗原結合アームと、を含む。
【0268】
一実施態様では、二重特異性抗体又は二重特異性抗体断片は、配列番号80のVH及び配列番号81のVLを含むCD79bに結合する抗原結合アームと、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含むCD22に結合する抗原結合アームと、を含む。
【0269】
一実施態様では、二重特異性抗体又は二重特異性抗体断片は、配列番号80のVH及び配列番号81のVLを含む、CD79bに結合する抗原結合アームと、配列番号7のVH及び配列番号8のVLを含むCD22に結合する抗原結合アームと、を含む。
【0270】
相同抗体
本明細書に記載される、単一特異性抗体、多重特異性抗体、又は抗原結合断片を含む、抗体は、記載される多重特異性抗体又は抗原結合断片の生物学的特性(例えば、結合親和性又は免疫エフェクター活性)を保持している、単一又は複数のアミノ酸置換、欠失、又は付加を有するバリアントを含む。例えば、バリアントは、親抗原結合ドメインと比較したときに改善された機能的性質を保持するか又は有する限り、CD79b及び/又はCD22に結合する抗原結合ドメインに1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29個又はそれ以上のアミノ酸置換を含んでもよい。いくつかの実施形態では、配列同一性は、本開示のCD79b及び/又はCD22に結合する抗原結合ドメインに対して約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%であってもよい。いくつかの実施形態では、バリエーションが、フレームワーク領域に存在する。いくつかの実施形態では、バリアントは、保存的置換により生成される。
【0271】
本発明の文脈において、別途記載のない限り、下記注釈が、変異を説明するために使用される。i)所与の位置におけるアミノ酸の置換は、例えば、K409Rと記載される。K409Rは、409位におけるリジンのアルギニンによる置換を意味する。ii)特定のバリアントについて、特定の三文字又は一文字コードは、コードXaa及びXを含めて、アミノ酸残基を示すのに使用される。このため、409位におけるリジンについてのアルギニンの置換は、K409Rと指定され、又は409位におけるリジンについての任意のアミノ酸残基の置換は、K409Xと指定される。409位におけるリジンの欠失の場合には、この欠失は、K409*により示される。当業者であれば、単一又は複数のアミノ酸置換、欠失、又は付加を有するバリアントを産生することができる。
【0272】
これらのバリアントとしては、(a)1つ又は2つ以上のアミノ酸残基が保存的又は非保存的アミノ酸により置換されているバリアント、(b)1つ若しくは2つ以上のアミノ酸がポリペプチドに付加されているか又はそれから欠失しているバリアント、(c)1つ又は2つ以上のアミノ酸が置換基を含むバリアント、及び(d)ポリペプチドが、ポリペプチドに有用な特性、例えば、抗体に対するエピトープ、ポリヒスチジン配列、ビオチン部分などを付与し得る別のペプチド又はポリペプチド、例えば、融合パートナー、タンパク質タグ、又は他の化学部分と融合したバリアントを挙げることができる。本明細書に記載される抗体又は抗原結合断片は、保存的又は非保存的位置のいずれかにおいて、ある種に由来するアミノ酸残基が別の種における対応する残基に置換されているバリアントを含んでもよい。他の実施形態では、非保存的位置におけるアミノ酸残基は、保存的又は非保存的残基により置換される。これらのバリアントを得るための手法は、遺伝的(欠失、変異など)、化学的、及び酵素的手法を含め、当業者に既知である。
【0273】
CD79b又はCD22に結合する抗原結合断片を生成する方法
本開示で提供されるCD79b又はCD22に結合する抗原結合ドメインは、様々な技術を使用して生成することができる。例えば、Kohler及びMilsteinのハイブリドーマ法を使用して、CD79b又はCD22に結合するVH/VL対を同定することができる。ハイブリドーマ法では、マウス又は他の宿主動物、例えば、ハムスター、ラット、若しくはニワトリを、ヒト及び/又はカニクイザルCD79b又はCD22で免疫し、続いて、標準的な方法を使用して骨髄腫細胞と、免疫した動物の脾臓細胞を融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成する。1つの不死化したハイブリドーマ細胞から生じたコロニーを、結合の特異性、交差反応性又はその欠如、抗原に対する親和性、及び任意の所望の機能性などの所望の特性を有するCD79b又はCD22に結合する抗原結合ドメインを含有する抗体の生成についてスクリーニングしてもよい。
【0274】
非ヒト動物を免疫することによって生成されたCD79b又はCD22に結合する抗原結合ドメインは、ヒト化され得る。ヒトアクセプタフレームワークの選択を含む例示的なヒト化技術としては、CDR移植(米国特許第5,225,539号)、SDR移植(米国特許第6,818,749号)、リサーフェシング(Padlan,(1991)Mol Immunol 28:489-499)、特異性決定残基リサーフェシング(米国特許出願公開第2010/0261620号)、ヒトフレームワーク適合(米国特許第8,748,356号)、又は超ヒト化(米国特許第7,709,226号)が挙げられる。これらの方法では、CDRの長さの類似性若しくはカノニカル構造の同一性、又はそれらの組み合わせに基づいて、親フレームワークに対する全体的な相同性に基づき選択され得るヒトフレームワークに、親抗体のCDR又はCDR残基のサブセットを移植する。
【0275】
ヒト化抗原結合ドメインは、国際特許公開第1990/007861号及び同第1992/22653号に記載されているものなどの技術により、改変されたフレームワーク支持残基を組み込んで、結合親和性を保持することによって(復帰変異)、又はCDRのいずれかにバリエーションを導入して、例えば抗原結合ドメインの親和性を改善することによって、所望の抗原に対するそれらの選択性又は親和性を改善するように更に最適化してもよい。
【0276】
自身のゲノムにヒト免疫グロブリン(immunoglobulin、Ig)遺伝子座を保有するマウス、ラット、又はニワトリなどのトランスジェニック動物を使用して、CD79b又はCD22に結合する抗原結合断片を生成することができ、例えば、米国特許第6,150,584号、国際特許公開第1999/45962号、国際特許公開第2002/066630号、同第2002/43478号、同第2002/043478号、及び同第1990/04036号に記載されている。このような動物の内因的な免疫グロブリン遺伝子座を破壊又は欠失させてもよく、相同又は非相同組換えを使用して、導入染色体(transchromosome)を使用して、又はミニ遺伝子を使用して、少なくとも1つの完全な又は部分的なヒト免疫グロブリン遺伝子座を動物のゲノムに挿入してもよい。Regeneron(www_regeneron_com)、Harbour Antibodies(www_harbourantibodies_com)、Open Monoclonal Technology,Inc.(OMT)(www_omtinc_net)、KyMab (www_kymab_com)、Trianni (www.trianni_com)、及びAblexis(www_ablexis_com)などの企業は、上記の技術を使用して、選択された抗原に対するヒト抗体の提供に従事し得る。
【0277】
CD79b又はCD22に結合する抗原結合ドメインは、ヒト免疫グロブリン又はその部分、例えばFab、一本鎖抗体(scFv)、又は不対若しくは対合抗体可変領域を発現するようにファージが操作されているファージディスプレイライブラリから選択することができる。CD79b又はCD22に結合する抗原結合ドメインは、例えば、Shi et al.,(2010)J Mol Biol 397:385-96、及び国際特許公開第09/085462号に記載されるようなバクテリオファージpIX被覆タンパク質との融合タンパク質として抗体の重鎖及び軽鎖可変領域を発現するファージディスプレイライブラリから単離され得る。ライブラリを、ヒト及び/又はカニクイザルCD79b又はCD22へのファージ結合についてスクリーニングしてもよく、得られた陽性クローンを更に特性付けし、クローン溶解物からFabを単離し、scFv又は抗原結合断片の他の構成に変換してもよい。
【0278】
免疫原性抗原の調製並びに本開示の抗原結合ドメインの発現及び生成は、組換えタンパク質生成などの任意の好適な技術を使用して行うことができる。免疫原性抗原は、精製タンパク質、あるいは全細胞又は細胞若しくは組織抽出物を含むタンパク質混合物の形態で動物に投与されてもよく、あるいは、抗原は、当該抗原又はその一部分をコードする核酸から動物の体内で新規に(de novo)形成されてもよい。
【0279】
アイソタイプ、アロタイプ、及びFc操作
本明細書に記載される、単一特異性抗体、多重特異性抗体、又は抗原結合断片は、いくつかの抗体アイソタイプ、例えば、IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEを具現化することができる。いくつかの実施形態では、抗体アイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4のアイソタイプ、好ましくは、IgG1又はIgG4のアイソタイプである。抗体又はその抗原結合断片の特異性は、CDRのアミノ酸配列及び配置により主に決定される。したがって、あるアイソタイプのCDRは、抗原特異性を改変することなく、別のアイソタイプに変更することができる。代替的に、抗原特異性を改変することなく、ハイブリドーマに、ある抗体アイソタイプを別のものにスイッチさせる技術(アイソタイプスイッチング)が確立されている。したがって、このような抗体アイソタイプは、記載される抗体又は抗原結合断片の範囲内にある。
【0280】
本開示のタンパク質中に存在するIg定常領域又はFc領域などのIg定常領域の断片は、任意のアロタイプ又はアイソタイプのものであってよい。
【0281】
いくつかの実施形態では、Ig定常領域又はIg定常領域の断片は、IgG1アイソタイプである。いくつかの実施形態では、Ig定常領域又はIg定常領域の断片は、IgG2アイソタイプである。いくつかの実施形態では、Ig定常領域又はIg定常領域の断片は、IgG3アイソタイプである。いくつかの実施形態では、Ig定常領域又はIg定常領域の断片は、IgG4アイソタイプである。
【0282】
Ig定常領域又はIg定常領域の断片は、任意のアロタイプであり得る。アロタイプは結合又はFc媒介性エフェクター機能などのIg定常領域の特性に影響を与えないことが予想される。断片のIg定常領域を含む治療用タンパク質の免疫原性は、輸注反応のリスク増大及び治療応答の期間短縮に関連している(Baert et al.,(2003)N.Engl.J.Med.348:602-08)。断片のIg定常領域を含む治療用タンパク質が宿主において免疫応答を誘導する程度は、Ig定常領域のアロタイプによってある程度決定され得る(Stickler et al.,(2011)Genes and Immunity 12:213-21)。Ig定常領域のアロタイプは、抗体の定常領域配列における特定の位置のアミノ酸配列バリエーションに関連する。表2は、選択IgG1、IgG2、及びIgG4アロタイプを示す。
【0283】
【0284】
C末端リジン(C-terminal lysine、CTL)は、Ig定常領域から、血流中の内因性循環カルボキシペプチダーゼによって除去され得る(Cai et al.,(2011)Biotechnol.Bioeng.108:404-412)。製造中、米国特許出願公開第20140273092号に記載のとおり細胞外Zn2+、EDTA、又はEDTA-Fe3+の濃度を制御することによって、CTLの除去を最高レベル未満に制御することができる。タンパク質のCTL含量を、既知の方法を使用して測定することができる。
【0285】
いくつかの実施形態では、抗体は、約10%~約90%のC末端リジン含量を有する。いくつかの実施形態では、C末端リジン含量は、約20%~約80%である。いくつかの実施形態では、C末端リジン含量は、約40%~約70%である。いくつかの実施形態では、C末端リジン含量は、約55%~約70%である。いくつかの実施形態では、C末端リジン含量は、約60%である。
【0286】
Ig定常領域を含む多重特異性抗体又はIg定常領域の断片に対してFc領域変異を行って、ADCC、ADCP、及び/若しくはADCPなどのそれらのエフェクター機能、並びに/又は薬物動態特性を調節し得る。これは、変異したFcの活性化FcγRs(FcγRI、FcγRIIa、FcγRIII)、FcγRIIb、及び/又はFcRnへの結合を制御する変異をFcに導入することによって達成可能である。
【0287】
いくつかの実施形態では、Ig定常領域又はIg定常領域の断片を含む多重特異性抗体は、Ig定常領域又はIg定常領域の断片に少なくとも1つの変異を含む。
【0288】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの変異は、Fc領域にある。
【0289】
いくつかの実施形態では、Ig定常領域又はIg定常領域の断片を含む多重特異性抗体は、Fc領域に少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個の変異を含む。
【0290】
いくつかの実施形態では、Ig定常領域又はIg定常領域の断片を含む多重特異性抗体は、抗体のFcRnへの結合を調節する、Fc領域における少なくとも1つの変異を含む。
【0291】
半減期(例えば、FcRnへの結合)を調節するために変異させることが可能なFcの位置としては、位置250、252、253、254、256、257、307、376、380、428、434、及び435が挙げられる。単独で、又は組み合わせで行われ得例示的な変異は、変異T250Q、M252Y、I253A、S254T、T256E、P257I、T307A、D376V、E380A、M428L、H433K、N434S、N434A、N434H、N434F、H435A、及びH435Rである。抗体の半減期を増加させるように行われ得る例示的な単独で又は組み合わせでの変異は、変異M428L/N434S、M252Y/S254T/T256E、T250Q/M428L、N434A及びT307A/E380A/N434Aである。半減期を低減させるように行われ得る例示的な単独で又は組み合わせでの変異は、変異H435A、P257I/N434H、D376V/N434H、M252Y/S254T/T256E/H433K/N434F、T308P/N434A及びH435Rである。
【0292】
いくつかの実施形態では、Ig定常領域又はIg定常領域の断片を含む多重特異性抗体は、M252Y/S254T/T256E変異を含む。
【0293】
いくつかの実施形態では、Ig定常領域又はIg定常領域の断片を含む多重特異性抗体は、Fcγ受容体(FcγR)へのタンパク質の結合を低減し、かつ/又はC1q結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)、及び/若しくは貪食作用(antibody-dependent cell-mediated phagocytosis、ADCP)などのFcエフェクター機能を低減させる、Fc領域における少なくとも1つの変異を含む。
【0294】
活性化FcγRへのタンパク質の結合を低減させ、続いて、エフェクター機能を低減させるために変異させ得るFc位置としては、位置214、233、234、235、236、237、238、265、267、268、270、295、297、309、327、328、329、330、331、及び365が挙げられる。単独で、又は組み合わせで加えることができる例示的な変異は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4における、変異K214T、E233P、L234V、L234A、G236の欠失、V234A、F234A、L235A、G237A、P238A、P238S、D265A、S267E、H268A、H268Q、Q268A、N297A、A327Q、P329A、D270A、Q295A、V309L、A327S、L328F、A330S、及びP331Sである。
【0295】
ADCCが低減したタンパク質をもたらす例示的な組み合わせの変異は、IgG1におけるL234A/L235A、IgG1におけるL234A/L235A/D265S、IgG2におけるV234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S、IgG4におけるF234A/L235A、IgG4におけるS228P/F234A/L235A、全てのIgアイソタイプにおけるN297A、IgG2におけるV234A/G237A、IgG1におけるK214T/E233P/L234V/L235A/G236欠失/A327G/P331A/D365E/L358M、IgG2におけるH268Q/V309L/A330S/P331S、IgG1におけるS267E/L328F、IgG1におけるL234F/L235E/D265A、IgG1におけるL234A/L235A/G237A/P238S/H268A/A330S/P331S、IgG4におけるS228P/F234A/L235A/G237A/P238S、及び、IgG4におけるS228P/F234A/L235A/G236欠失/G237A/P238Sの変異である。また、IgG2由来の残基117~260及びIgG4由来の残基261~447を有するFcなどのハイブリッドIgG2/4Fcドメインを使用してもよい。
【0296】
CDCが低減したタンパク質をもたらす例示的な変異は、K322A変異である。
【0297】
周知のS228P変異をIgG4抗体に加えて、IgG4の安定性を増強することができる。
【0298】
いくつかの実施形態では、Ig定常領域又はIg定常領域の断片を含む多重特異性抗体は、K214T、E233P、L234V、L234A、G236の枯渇、V234A、F234A、L235A、G237A、P238A、P238S、M252Y、S254T、T256E、D265A、S267E、H268A、H268Q、Q268A、N297A、A327Q、P329A、D270A、Q295A、V309L、A327S、L328F、K322、A330S、P331S、T366W、T366S、L368A、Y407V、H318R、及びY319Fからなる群から選択される、少なくとも1つの変異を含む。
【0299】
いくつかの実施形態では、Ig定常領域又はIg定常領域の断片は、L234A及びL235A変異を含む。
【0300】
いくつかの実施形態では、Fcドメイン又はFcドメインの断片は、Fcγ受容体へのFc結合を低減させるための少なくとも1つの変異を含む。いくつかの実施形態では、Fcドメイン又はFcドメインの断片は、L234A、L235A、及びD265Sに対応する変異を含む。一実施形態では、多重特異性抗体は、配列番号89に記載されるバリアントIgGを含む。一実施形態では、多重特異性抗体は、配列番号79を含む。一実施形態では、多重特異性抗体は、配列番号90に記載されるFcドメインを含む。一実施形態では、多重特異性抗体は、配列番号83を含む。
【0301】
いくつかの実施形態では、Fcドメイン又はFcドメインの断片は、多重特異性結合分子の半減期を延長するための少なくとも1つの変異を含む。いくつかの実施形態では、Fcドメイン又はFcドメインの断片は、M252Y、S254T、及びT256Eに対応する変異を含む。一実施形態では、多重特異性抗体は、配列番号89に記載されるバリアントIgGを含む。一実施形態では、多重特異性抗体は、配列番号79を含む。一実施形態では、多重特異性抗体は、配列番号90に記載されるFcドメインを含む。一実施形態では、多重特異性抗体は、配列番号83を含む。
【0302】
いくつかの実施形態では、Fcドメイン又はFcドメインの断片は、ヘテロ二量体化を促進するための少なくとも1つの変異を含む。いくつかの実施形態では、Fcドメイン又はFcドメインの断片は、T366Wに対応する変異を含む。一実施形態では、多重特異性抗体は、配列番号89に記載されるバリアントIgGを含む。一実施形態では、多重特異性抗体は、配列番号79を含む。いくつかの実施形態では、Fcドメイン又はFcドメインの断片は、T366S、L368A、及びY407Vに対応する変異を含む。一実施形態では、多重特異性抗体は、配列番号90に記載されるFcドメインを含む。一実施形態では、多重特異性抗体は、配列番号83を含む。
【0303】
いくつかの実施形態では、Fcドメイン又はFcドメインの断片は、プロテインAへのFc結合を低減させるための少なくとも1つの変異を含む。いくつかの実施形態では、Fcドメイン又はFcドメインの断片は、H435R及びY436Fに対応する変異を含む。一実施形態では、多重特異性抗体は、配列番号90に記載されるFcドメインを含む。一実施形態では、多重特異性抗体は、配列番号83を含む。
【0304】
いくつかの実施形態では、Ig定常領域又はIg定常領域の断片を含む多重特異性抗体は、Fcγ受容体(FcγR)へのタンパク質の結合を増強し、かつ/又はC1q結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)、及び/若しくは貪食作用(ADCP)などのFcエフェクター機能を増強する、Fc領域における少なくとも1つの変異を含む。
【0305】
活性化FcγRへのタンパク質の結合を増加させ、かつ/又はFcエフェクター機能を増強するために変異させ得るFc位置としては、位置236、239、243、256、290、292、298、300、305、312、326、330、332、333、334、345、360、339、378、396、又は430(EUインデックスに従う残基番号付け)が挙げられる。単一で又は組み合わせて行われ得る例示的な変異は、G236A、S239D、F243L、T256A、K290A、R292P、S298A、Y300L、V305L、K326A、A330K、I332E、E333A、K334A、A339T及びP396Lである。ADCC又はADCPが増加したタンパク質をもたらす例示的な組み合わせの変異は、S239D/I332E、S298A/E333A/K334A、F243L/R292P/Y300L、F243L/R292P/Y300L/P396L、F243L/R292P/Y300L/V305I/P396L及びG236A/S239D/I332Eである。
【0306】
CDCを増強させるように変異され得るFc位置としては、位置267、268、324、326、333、345及び430が挙げられる。単一で又は組み合わせで行われ得る例示的な変異は、S267E、F1268F、S324T、K326A、K326W、E333A、E345K、E345Q、E345R、E345Y、E430S、E430F及びE430Tである。CDCが増加したタンパク質をもたらす例示的な組み合わせの変異は、K326A/E333A、K326W/E333A、H268F/S324T、S267E/H268F、S267E/S324T、及びS267E/H268F/S324Tである。
【0307】
配列番号85-野生型IgG1
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0308】
配列番号86-野生型IgG2
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDISVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0309】
配列番号87-野生型IgG4
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
【0310】
配列番号88-IgG誘導体
EPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0311】
配列番号89-太字のバリアントを有するIgG誘導体
【0312】
【0313】
配列番号90-太字のバリアントを有するIgG1
【0314】
【0315】
抗体のFcγR又はFcRnへの結合は、フローサイトメトリーを使用して、各受容体を発現するように操作された細胞にて評価することができる。例示的な結合アッセイでは、96ウェルプレートに2×105個/ウェルの細胞を播種し、BSA染色緩衝液(BD Biosciences,San Jose,USA)中にて4℃で30分間ブロッキングする。細胞を、氷上で、4℃で1.5時間、試験抗体と共にインキュベートする。BSA染色緩衝液で2回洗浄した後、細胞を、R-PE標識抗ヒトIgG二次抗体(Jackson Immunoresearch Laboratories)と共に4℃で45分間、インキュベートする。細胞を、で2回洗浄し、次いで、1:200希釈したDRAQ7生/死細胞染色試薬(Cell Signaling Technology,Danvers,USA)を含有する150μLの染色緩衝液中に再懸濁する。染色された細胞のPE及びDRAQ7シグナルを、それぞれB2及びB4チャネルを使用してMiltenyi MACSQuantフローサイトメーター(Miltenyi Biotec,Auburn,USA)によって検出する。生細胞をDRAQ7除外でゲートし、収集された少なくとも10,000生細胞イベントについて、幾何平均蛍光シグナルを決定する。分析にはFlowJoソフトウェア(Tree Star)を使用する。データを、平均蛍光シグナルに対する抗体濃度の対数としてプロットする。非線形回帰分析を実行する。
【0316】
多重特異性タンパク質の生成
多重特異性タンパク質は、Fabアーム交換を使用して生成され得、置換が、インビトロでFabアーム交換を促進する、Ig定常領域CH3ドメイン内の2つの単一特異性二価抗体に導入される。この方法では、ヘテロ二量体の安定性を促進する特定の置換をCH3ドメインに有するように、2つの単一特異性二価抗体を操作する。これらの抗体は、ヒンジ領域におけるシステインがジスルフィド結合を異性化させるために十分な還元条件下において一緒にインキュベートされ、それにより、Fabアーム交換により二重特異性抗体が生成される。インキュベート条件は、最適には、非還元条件に戻され得る。使用され得る代表的な還元剤は、2-メルカプトエチルアミン(2-MEA)、ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリスリトール(DTE)、グルタチオン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、L-システイン、及びβ-メルカプトエタノールであり、好ましくは、2-メルカプトエチルアミン、ジチオスレイトール、及びトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンからなる群から選択される還元剤である。例えば、少なくとも20℃の温度で、少なくとも25mMの2-MEAの存在下又は少なくとも0.5mMのジチオスレイトールの存在下で、pH5~8、例えばpH7.0又はpH7.4で、少なくとも90分間のインキュベートを使用することができる。
【0317】
使用され得るCH3変異としては、ノブインホール変異(Genentech)、静電的マッチ変異(Chugai、Amgen、NovoNordisk、Oncomed)、鎖交換操作ドメインボディ(Strand Exchange Engineered Domain body、SEEDbody)(EMD Serono)、Duobody(登録商標)変異(Genmab)、及び他の非対称変異(例えば、Zymeworks)などの技術が挙げられる。
【0318】
ノブインホール変異は、例えば、国際公開第1996/027011号に開示されており、小さい側鎖(ホール)を有するアミノ酸が第1のCH3領域に導入され、大きい側鎖(ノブ)を有するアミノ酸が第2のCH3領域に導入され、第1のCH3領域と第2のCH3領域との間に優先的な相互作用をもたらす、CH3領域の界面上の変異が含まれる。ノブ及びホールを形成する例示的なCH3領域変異は、T366Y/F405A、T366W/F405W、F405W/Y407A、T394W/Y407T、T394S/Y407A、T366W/T394S、F405W/T394S、及びT366W/T366S_L368A_Y407Vである。
【0319】
重鎖ヘテロ二量体形成は、米国特許出願公開第2010/0015133号、米国特許出願公開第2009/0182127号、米国特許出願公開第2010/028637号、又は米国特許出願公開第2011/0123532号に記載のように、第1のCH3領域上の正に荷電した残基及び第2のCH3領域上の負に荷電した残基を置換することにより、静電相互作用を使用することによって促進され得る。
【0320】
重鎖ヘテロ二量体化を促進するために使用することができる他の非対称変異は、米国特許出願公開第2012/0149876号又は米国特許出願公開第2013/0195849号(Zymeworks)に記載のL351Y_F405A_Y407V/T394W、T366I_K392M_T394W/F405A_Y407V、T366L_K392M_T394W/F405A_Y407V、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V_K409F、Y407A/T366A_K409F、又はT350V_L351Y_F405A_Y407V/T350V_T366L_K392L_T394Wである。
【0321】
SEEDボディ変異は、米国特許出願公開第20070287170号に記載のように、選択されたIgG残基をIgA残基と置換して、重鎖ヘテロ二量体化を促進することを伴う。
【0322】
使用され得る他の例示的な変異は、国際公開第2007/147901号、国際公開第2011/143545号、国際公開第2013157954号、国際公開第2013096291号、及び米国特許出願公開第2018/0118849号に記載のR409D_K370E/D399K_E357K、S354C_T366W/Y349C_T366S_L368A_Y407V、Y349C_T366W/S354C_T366S_L368A_Y407V、T366K/L351D、L351K/Y349E、L351K/Y349D、L351K/L368E、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V_K409F、K392D/D399K、K392D/E356K、K253E_D282K_K322D/D239K_E240K_K292D、K392D_K409D/D356K_D399Kである。
【0323】
Duobody(登録商標)変異(Genmab)は、例えば、米国特許第9150663号及び米国特許公開第2014/0303356号に記載されており、F405L/K409R、野生型/F405L_R409K、T350I_K370T_F405L/K409R、K370W/K409R、D399AFGHILMNRSTVWY/K409R、T366ADEFGHILMQVY/K409R、L368ADEGHNRSTVQ/K409AGRH、D399FHKRQ/K409AGRH、F405IKLSTVW/K409AGRH、及びY407LWQ/K409AGRHの変異が含まれる。
【0324】
追加の二重特異性又は多重特異性構造としては、二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD)(国際特許公開第2009/134776号、DVDは、VH1-リンカー-VH2-CH構造を有する重鎖と、VL1-リンカー-VL2-CL構造を有する軽鎖とを含む完全長抗体であり、リンカーは任意選択である)、異なる特異性を有する2つの抗体アームを結合するための様々な二量化ドメインを含む構造、例えば、ロイシンジッパー又はコラーゲン二量化ドメイン(国際特許公開第2012/022811号、米国特許第5,932,448号、米国特許第6,833,441号)、一緒にコンジュゲートされた2つ又は3つ以上のドメイン抗体(dAbs)、ダイアボディ、ラクダ科抗体及び操作されたラクダ科抗体などの重鎖のみ抗体、Dual Targeting(DT)-Ig(GSK/Domantis)、Two-in-one Antibody(Genentech)、Cross-linked Mab(Karmanos Cancer Center)、mAb2(F-Star)及びCovX-body(CovX/Pfizer)、IgG-like Bispecific(InnClone/Eli Lilly)、Ts2Ab(MedImmune/AZ)及びBsAb(Zymogenetics)、HERCULES(Biogen Idec)及びTvAb(Roche)、ScFv/Fc Fusions(Academic Institution)、SCORPION(Emergent BioSolutions/Trubion,Zymogenetics/BMS)、Dual Affinity Retargeting Technology(Fc-DART)(MacroGenics)及びDual(ScFv)2-Fab(National Research Center for Antibody Medicine--China)、Dual-Action又はBis-Fab(Genentech)、Dock-and-Lock(DNL)(ImmunoMedics)、Bivalent Bispecific(Biotecnol)並びにFab-Fv(UCB-Celltech)が挙げられる。ScFv抗体、ダイアボディに基づく抗体、及びドメイン抗体は、二重特異性T細胞エンゲージャ(Bispecific T Cell Engager、BiTE)(Micromet)、タンデムダイアボディ(Tandem Diabody、Tandab)(Affimed)、二重親和性再標的技術(Dual Affinity Retargeting Technology、DART)(MacroGenics)、一本鎖ダイアボディ(Academic)、TCR様抗体(AIT、ReceptorLogics)、ヒト血清アルブミンScFv融合体(Merrimack)、及びCOMBODY(Epigen Biotech)、二重標的ナノボディ(Ablynx)、二重標的重鎖のみドメイン抗体を含むが、これらに限定されない。
【0325】
いくつかの実施形態では、多重特異的タンパク質は、3つのポリペプチド鎖を含む。このような設計では、少なくとも1つの抗原結合ドメインが、scFvの形態である。例示的な設計としては、以下の設計1~4が挙げられる(「1」は第1の抗原結合ドメインを示し、「2」は第2の抗原結合ドメインを示し、「3」は第3の抗原結合ドメインを示す:
設計1:鎖A)scFv1-CH2-CH3、鎖B)VL2-CL、鎖C)VH2-CH1-ヒンジ-CH2-CH3
設計2:鎖A)scFv1-ヒンジ-CH2-CH3、鎖B)VL2-CL、鎖C)VH2-CH1-ヒンジ-CH2-CH3
設計3:鎖A)scFv1-CH1-ヒンジ-CH2-CH3、鎖B)VL2-CL、鎖C)VH2-CH1-ヒンジ-CH2-CH3
設計4:鎖A)CH2-CH3-scFv1、鎖B)VL2-CL、鎖C)VH2-CH1-ヒンジ-CH2-CH3
【0326】
CH3操作は、米国特許出願公開第2012/0149876号又は米国特許出願公開第2013/0195849号(Zymeworks)に記載のL351Y_F405A_Y407V/T394W、T366I_K392M_T394W/F405A_Y407V、T366L_K392M_T394W/F405A_Y407V、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V_K409F、Y407A/T366A_K409F、又はT350V_L351Y_F405A_Y407V/T350V_T366L_K392L_T394Wの変異など、設計1~4に組み込まれ得る。
【0327】
免疫グロブリン(Ig)定常領域又はIg定常領域の断片へのコンジュゲーション
いくつかの実施形態では、本開示のCD79b結合アーム及び/又はCD22結合アームは、Ig定常領域又はIg定常領域の断片にコンジュゲートして、Fcエフェクター機能C1q結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)、貪食作用、又は細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、BCR)の下方制御を含む、抗体様特性を付与することができる。Ig定常領域又はIg定常領域の断片はまた、本明細書で考察されるように、半減期延長部分としても機能する。本開示のCD79bに結合する抗原結合ドメインは、標準的な方法を使用して従来の完全長抗体に操作することができる。CD79bに結合する抗原結合ドメインを含む完全長抗体は、本明細書に記載のとおり、更に操作されてもよい。
【0328】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常領域は、サブドメインCH1、ヒンジ、CH2及びCH3で構成される。いくつかの実施形態では、EUインデックスに従う残基番号付けで、重鎖において、CH1ドメインは、残基A118からV215に及び、CH2ドメインは、残基A231からK340に及び、CH3ドメインは、残基G341からK447に及ぶ。いくつかの例では、G341は、CH2ドメイン残基と称される。ヒンジは、概して、E216を含み、ヒトIgG1のP230で終結すると定義される。いくつかの実施形態では、Ig Fc領域は、Ig定常領域の少なくともCH2及びCH3ドメインを含み、したがって、Ig重鎖定常領域の少なくともおよそA231からK447までの領域を含む。
【0329】
本発明はまた、免疫グロブリン(Ig)定常領域又はIg定常領域の断片にコンジュゲートしたCD79bに結合する抗原結合ドメインを提供する。
【0330】
いくつかの実施形態では、Ig定常領域は、重鎖定常領域である。
【0331】
いくつかの実施形態では、Ig定常領域は、軽鎖定常領域である。
【0332】
いくつかの実施形態では、Ig定常領域の断片は、Fc領域を含む。
【0333】
いくつかの実施形態では、Ig定常領域の断片は、CH2ドメインを含む。
【0334】
いくつかの実施形態では、Ig定常領域の断片は、CH3ドメインを含む。
【0335】
いくつかの実施形態では、Ig定常領域の断片は、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含む。
【0336】
いくつかの実施形態では、Ig定常領域の断片は、ヒンジの少なくとも一部分、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含む。ヒンジの一部分は、Igヒンジの1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を指す。
【0337】
いくつかの実施形態では、Ig定常領域の断片は、ヒンジ、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含む。
【0338】
いくつかの実施形態では、CD79bに結合する抗原結合ドメインは、Ig定常領域又はIg定常領域の断片のN末端にコンジュゲートされる。
【0339】
いくつかの実施形態では、CD79bに結合する抗原結合ドメインは、Ig定常領域又はIg定常領域の断片のC末端にコンジュゲートされる。
【0340】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アーム及び/又はCD22結合アームは、第2のリンカー(L2)を介してIg定常領域又はIg定常領域の断片にコンジュゲートされる。
【0341】
いくつかの実施形態では、L2は、配列番号79~112のアミノ酸配列を含む。
【0342】
Ig定常領域又はIg定常領域の断片にコンジュゲートした本開示のCD79bに結合する抗原結合ドメインは、いくつかの既知のアッセイを使用してその機能性について評価することができる。CD79b又はCD22への結合は、本明細書に記載の方法を使用して評価することができる。Ig定常ドメイン又はIg定常領域の断片、例えばFc領域によって付与される改変された特性は、FcγRI、FcγRII、FcγRIII、若しくはFcRn受容体などの受容体の可溶性形態を使用するFc受容体結合アッセイにおいて、又は例えばADCC、CDC、若しくはADCPを測定する細胞ベースのアッセイを使用して、アッセイすることができる。
【0343】
ADCCは、CD79b又はCD22発現細胞を標的細胞として、NK細胞をエフェクター細胞として使用するインビトロアッセイを使用して評価することができる。細胞溶解は、溶解した細胞からの標識(例えば、放射性基質、蛍光染料、又は天然の細胞内タンパク質)の放出によって検出することができる。例示的なアッセイでは、標的細胞を、1つの標的細胞の、4つのエフェクター細胞に対する比で使用する。標的細胞はBATDAで予め標識し、エフェクター細胞及び試験抗体と組み合わせる。サンプルを2時間インキュベートし、上清に放出したBATDAを測定することにより、細胞溶解を測定する。0.67%Triton X-100(Sigma Aldrich)による最大の細胞傷害に対してデータを正規化し、また任意の抗体の非存在下における標的細胞からのBATDAの自然放出によって最小対照を求める。
【0344】
ADCPは、単球由来マクロファージをエフェクター細胞として、かつ、GFP又は他の標識分子を発現するように操作されている任意のCD79b発現細胞を標的細胞として使用することによって評価することができる。例示的なアッセイでは、エフェクター:標的細胞比は、例えば4:1とすることができる。エフェクター細胞は、本発明の抗体を添加して、又は添加せずに、標的細胞と共に4時間インキュベートしてもよい。インキュベーション後、細胞は、アクターゼを使用して剥離され得る。マクロファージは、蛍光標識に結合した抗CD11b抗体及び抗CD14抗体を用いて特定することができ、貪食作用の割合は、標準的な方法を使用して、CD11+CD14+マクロファージにおけるGFP蛍光%に基づいて求めることができる。
【0345】
細胞のCDCは、例えば、Daudi細胞を、RPMI-B(1%のBSAを補給したRPMI)に1×105個の細胞/ウェル(50μL/ウェル)で播種し、50μLの試験タンパク質を0~100μg/mLの最終濃度でウェルに添加し、反応物を室温で15分間インキュベートし、11μLのプールヒト血清をウェルに添加し、反応物を37℃で45分間インキュベートすることによって測定され得る。溶解した細胞の割合(%)は、標準法を使用して、FACSアッセイにおけるヨウ化プロピジウム染色細胞の%として検出され得る。
【0346】
糖鎖操作
Ig定常領域又はIg定常領域の断片を含む多重特異性抗体の、ADCCを媒介する能力は、Ig定常領域又はIg定常領域の断片のオリゴ糖成分を操作することによって増強することができる。ヒトIgG1又はIgG3は、Asn297においてN-グリコシル化され、グリカンの大部分は、周知の二分岐G0、G0F、G1、G1F、G2、又はG2Fの形態である。操作されていないCHO細胞により産生され得るIg定常領域含有タンパク質は、典型的には、少なくとも約85%のグリカンフコース含量を有する。Ig定常領域又はIg定常領域の断片を含むant多重特異性抗体に結合した二分岐複合体型オリゴ糖からコアフコースを除去すると、抗原結合もCDC活性も改変することなく、改善されたFcγRIIIa結合を介してタンパク質のADCCが増強される。そのようなタンパク質は、二分岐複合体型Fcオリゴ糖を有する、比較的高度に脱フコシル化された免疫グロブリンの発現を成功させることが報告されている異なる方法を使用して達成することができ、例えば、培養浸透圧の制御(Konno et al.,Cytotechnology 64:249-65,2012)、宿主細胞株としてのバリアントCHO株Lec13の適用(Shields et al.,J Biol Chem 277:26733-26740,2002)、宿主細胞株としてのバリアントCHO株EB66の適用(Olivier et al.,MAbs;2(4):405-415,2010;PMID:20562582)、宿主細胞株としてのラットハイブリドーマ細胞株YB2/0の適用(Shinkawa et al.,J Biol Chem 278:3466-3473,2003)、1,6-フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子に対して特異的な低分子干渉RNAの導入(Mori et al.,Biotechnol Bioeng 88:901-908,2004)、又はβ-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII及びゴルジα-マンノシダーゼII若しくは強力なアルファ-マンノシダーゼI阻害物質であるキフネンシンの共発現(Ferrara et al.,J Biol Chem 281:5032-5036,2006、Ferrara et al.,Biotechnol Bioeng 93:851-861,2006;Xhou et al.,Biotechnol Bioeng 99:652-65,2008)。
【0347】
いくつかの実施形態では、本開示のIg定常領域又はIg定常領域の断片を含む多重特異性抗体は、約1%~約15%、例えば、約15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%のフコース含量を有する二分岐グリカン構造を有する。いくつかの実施形態では、Ig定常領域又はIg定常領域の断片を含む多重特異性抗体は、約50%、40%、45%、40%、35%、30%、25%、又は20%のフコース含量を有するグリカン構造を有する。
【0348】
「フコース含量」は、Asn297における糖鎖内のフコース単糖類の量を意味する。フコースの相対量は、フコース含有構造の全糖構造に対する割合である。これらは、複数の方法、例えば、1)国際公開第2008/0775462号に記載されるような、N-グリコシダーゼF処理サンプル(例えば、複合体、ハイブリッド、及びオリゴ-並びに高マンノース構造)のMALDI-TOFの使用、2)Asn297グリカンの酵素放出、その後の誘導体化、並びに蛍光検出を備えたHPLC(UPLC)及び/又はHPLC-MS(UPLC-MS)による検出/定量化、3)第1のGlcNAc単糖類と第2のGlcNAc単糖類との間を切断し、フコースを第1のGlcNAcに付加されたままにさせる、Endo S又は他の酵素によるAsn297グリカンの処理を伴うか又はこの処理なしでの、天然又は還元mAbのインタクトプロテイン分析、4)酵素消化(例えば、トリプシン又はエンドペプチダーゼLys-C)によるmAbの構成ペプチドへの消化、その後のHPLC-MS(UPLC-MS)による分離、検出及び定量化、5)Asn 297にPNGase Fを有する特異的な酵素脱グリコシル化により、mAbタンパク質からmAbオリゴ糖を分離すること、により特性評価及び定量化され得る。このように放出されるオリゴ糖は、フルオロフォアで標識し、実測された質量の理論上の質量との比較によるマトリックス支援レーザ脱離イオン化(matrix-assisted laser desorption ionization、MALDI)質量分析によるグリカン構造の細かな特性評価、イオン交換HPLC(GlycoSep C)によるシアル化の程度の決定、順相HPLC(GlycoSep N)による親水性基準に準拠するオリゴ糖型の分離及び定量化、並びに高性能キャピラリー電気泳動-レーザ誘起蛍光(high performance capillary electrophoresis-laser induced fluorescence、HPCE-LIF)によるオリゴ糖の分離及び定量化、を可能にする様々な補足的技術によって分離及び特定することができる。
【0349】
「低フコース」又は「低フコース含量」は、本明細書で使用するとき、約1%~15%のフコース含量を有する、Ig定常領域又はIg定常領域の断片を含む多重特異性抗体を指す。
【0350】
「正常フコース」又は「正常フコース含量」は、本明細書で使用するとき、約50%超、典型的には80%超又は85%超のフコース含量を有する、Ig定常領域又はIg定常領域の断片を含む多重特異性抗体を指す。
【0351】
抗イディオタイプ抗体
本開示のCD79b結合アーム及び/又はCD22結合アームを含む抗体に結合する抗イディオタイプが本明細書に提供される。抗イディオタイプ(idiotypic、Id)抗体は、抗体の抗原決定基(例えば、パラトープ又はCDR)を認識する抗体である。Id抗体は、抗原をブロッキングするものであっても、しないものであってもよい。抗原ブロッキングIdは、サンプル中の遊離抗原結合ドメイン(例えば、本開示のCD79bに結合する抗原結合ドメイン)を検出するために使用され得る。ブロッキングしないIdを使用して、サンプル中の全抗体(遊離しているもの、抗原に一部結合しているもの、又は抗原に完全に結合しているもの)を検出することができる。Id抗体は、抗Idが調製されている抗体で動物を免疫することによって調製し得る。
【0352】
また、更に別の動物で免疫応答を誘導する免疫原として抗Id抗体を使用して、いわゆる抗-抗Id抗体を生成することもできる。抗-抗Idは、抗Idを誘導した元の抗原結合ドメインとエピトープが同一であり得る。したがって、抗原結合ドメインのイディオタイプ決定基に対する抗体を使用することによって、同一の特異性の抗原結合ドメインを発現する他のクローンを同定することが可能である。抗Id抗体は、本明細書の他の箇所に記載のものなどの任意の好適な技術によって変動(それにより、抗Id抗体バリアントを産生する)及び/又は誘導し得る。
【0353】
免疫コンジュゲート(Immunoconjugates)
本開示の抗体、CD79b結合アーム及び/又はCD22結合アームは、異種分子にコンジュゲートされてもよい。いくつかの実施形態では、異種分子は、検出可能な標識又は治療剤である。
【0354】
いくつかの実施形態では、本開示は、検出可能な標識にコンジュゲートされたCD79b結合アームを含むタンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、検出可能な標識にコンジュゲートされたCD22結合アームを含むタンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、検出可能な標識にコンジュゲートされたCD79b結合アーム及びCD22結合アームを含むタンパク質を提供する。
【0355】
いくつかの実施形態では、本開示は、治療剤にコンジュゲートされたCD79b結合アームを含むタンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、治療剤にコンジュゲートされたCD22結合アームを含むタンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、治療剤にコンジュゲートされたCD79b結合アーム及びCD22結合アームを含むタンパク質を提供する。
【0356】
いくつかの実施形態では、検出可能な標識は、治療剤でもある。
【0357】
検出可能な標識にコンジュゲートされた本開示のタンパク質を使用して、様々なサンプル上のCD79b及び/又はCD22の発現を評価することができる。検出可能な標識は、本開示のCD79b結合アーム及び/又はCD22結合アームを含むタンパク質にコンジュゲートさせたとき、分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、又は化学的手段を介して後者を検出可能なものにする組成物を含む。
【0358】
例示的な検出可能な標識としては、放射性同位体、磁気ビーズ、金属ビーズ、コロイド粒子、蛍光染料、電子密度試薬、酵素(例えば、一般的にELISAにおいて使用される)、ビオチン、ジゴキシゲニン、ハプテン、発光分子、化学発光分子、蛍光色素、フルオロフォア、蛍光消光剤、有色分子、放射性同位体、シンチレート(scintillates)、アビジン、ストレプトアビジン、プロテインA、プロテインG、抗体又はその断片、ポリヒスチジン、Ni2+、Flagタグ、mycタグ、重金属、酵素、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、電子供与体/受容体、アクリジニウムエステル、及び比色基質が挙げられる。
【0359】
検出可能な標識は、例えば、検出可能な標識が放射性同位体であるときなど、自発的にシグナルを発し得る。他の場合、検出可能な標識は、外部場によって刺激された結果として、シグナルを発する。
【0360】
例示的な放射性同位体は、γ放出、オージェ放出、β放出、α放出、又はポジトロン放出性の放射性同位体であり得る。例示的な放射性同位体としては、3H、11C、13C、15N、18F、19F、55Co、57Co、60Co、61Cu、62Cu、64Cu、67Cu、68Ga、72As、75Br、86Y、89Zr、90Sr、94mTc、99mTc、115In、1231、1241、125I、1311、211At、212Bi、213Bi、223Ra、226Ra、225Ac、及び227Acが挙げられる。
【0361】
例示的な金属原子は、20超の原子番号を有する金属、例えば、カルシウム原子、スカンジウム原子、チタン原子、バナジウム原子、クロム原子、マンガン原子、鉄原子、コバルト原子、ニッケル原子、銅原子、亜鉛原子、ガリウム原子、ゲルマニウム原子、ヒ素原子、セレン原子、臭素原子、クリプトン原子、ルビジウム原子、ストロンチウム原子、イットリウム原子、ジルコニウム原子、ニオブ原子、モリブデン原子、テクネチウム原子、ルテニウム原子、ロジウム原子、パラジウム原子、銀原子、カドミウム原子、インジウム原子、スズ原子、アンチモン原子、テルル原子、ヨウ素原子、キセノン原子、セシウム原子、バリウム原子、ランタン原子、ハフニウム原子、タンタル原子、タングステン原子、レニウム原子、オスミウム原子、イリジウム原子、白金原子、金原子、水銀原子、タリウム原子、鉛原子、ビスマス原子、フランシウム原子、ラジウム原子、アクチニウム原子、セリウム原子、プラセオジム原子、ネオジム原子、プロメチウム原子、サマリウム原子、ユウロピウム原子、ガドリニウム原子、テルビウム原子、ジスプロシウム原子、ホルミウム原子、エルビウム原子、ツリウム原子、イッテルビウム原子、ルテチウム原子、トリウム原子、プロトアクチニウム原子、ウラン原子、ネプツニウム原子、プルトニウム原子、アメリシウム原子、キュリウム原子、バーケリウム原子、カリホルニウム原子、アインスタイニウム原子、フェルミウム原子、メンデレビウム原子、ノーベリウム原子、又はローレンシウム原子である。
【0362】
いくつかの実施形態では、金属原子は、20超の原子番号を有するアルカリ土類金属であり得る。
【0363】
いくつかの実施形態では、金属原子は、ランタニドであり得る。
【0364】
いくつかの実施形態では、金属原子は、アクチニドであり得る。
【0365】
いくつかの実施形態では、金属原子は、遷移金属であり得る。
【0366】
いくつかの実施形態では、金属原子は、卑金属であり得る。
【0367】
いくつかの実施形態では、金属原子は、金原子、ビスマス原子、タンタル原子、及びガドリニウム原子であり得る。
【0368】
いくつかの実施形態では、金属原子は、53(すなわち、ヨウ素)~83(すなわち、ビスマス)の原子番号を有する金属であり得る。
【0369】
いくつかの実施形態では、金属原子は、磁気共鳴映像法に好適な原子であり得る。
【0370】
金属原子は、Ba2+、Bi3+、Cs+、Ca2+、Cr2+、Cr3+、Cr6+、Co2+、Co3+、Cu+、Cu2+、Cu3+、Ga3+、Gd3+、Au+、Au3+、Fe2+、Fe3+、F3+、Pb2+、Mn2+、Mn3+、Mn4+、Mn7+、Hg2+、Ni2+、Ni3+、Ag+、Sr2+、Sn2+、Sn4+、及びZn2+などの+1、+2、又は+3酸化状態の形態の金属イオンであり得る。金属原子は、金属酸化物、例えば、酸化鉄、酸化マンガン、又は酸化ガドリニウムを含み得る。
【0371】
好適な色素としては、例えば、5(6)-カルボキシフルオレセイン、IRDye 680RDマレイミド、又はIRDye 800CW、ルテニウムポリピリジル色素などの任意の市販の色素が挙げられる。
【0372】
好適なフルオロフォアは、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate、FITC)、フルオレセインチオセミカルバジド、ローダミン、テキサスレッド、CyDye(例えば、Cy3、Cy5、Cy5.5)、Alexa Fluors(例えば、Alexa488、Alexa555、Alexa594、Alexa647)、近赤外(near infrared、NIR)(700~900nm)蛍光染料、並びにカルボシアニン及びアミノスチリル染料である。
【0373】
検出可能な標識にコンジュゲートされた本開示のCD79b結合アーム及び/又はCD22結合アームを含むタンパク質は、造影剤として使用され得る。
【0374】
いくつかの実施形態では、治療剤は、細胞傷害性剤である。いくつかの実施形態では、細胞傷害性剤は、化学療法剤、薬物、増殖阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、若しくは動物由来の酵素活性を有する毒素、又はその断片)、又は放射性同位体(すなわち、放射性コンジュゲート)である。
【0375】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性剤は、ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレキサート、ビンデシン、ジフテリア毒素などの細菌毒素、リシン、ゲルダナマイシン、マイタンシノイド、又はカリケアマイシンである。細胞傷害性剤は、チューブリン結合、DNA結合、又はトポイソメラーゼ阻害を含む機構によってその細胞傷害性又は細胞増殖抑制作用を誘発し得る。
【0376】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性剤は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の未結合活性断片、エキソトキシンA鎖(Pseudomonas aeruginosa)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、ニガウリ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボン草(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、マイトジェリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、並びにトリコテセン(tricothecenes)などの酵素活性毒素である。
【0377】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性剤は、212Bi、131I、131In、90Y、及び186Reなどの放射性核種である。
【0378】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性剤は、ドラスタチン又はドロスタチンのペプチド類似体及び誘導体、アウリスタチン又はモノメチルアウリスタチンフェニルアラニンである。例示的な分子は、米国特許第5,635,483号及び同第5,780,588号に開示されている。ドラスタチン及びアウリスタチンは、微小管動態、GTPの加水分解、並びに核及び細胞の分裂に干渉し(Woyke et al(2001)Antimicrob Agents and Chemother.45(12):3580-3584)、抗がん及び抗真菌活性を有することが示されている。ドラスタチン及びアウリスタチン薬剤部位は、ペプチド薬剤部位のN(アミノ)末端若しくはC(カルボキシル)末端を介して(国際公開第02/088172号)、又は抗体内に操作された任意のシステインを介して、本発明の抗体に結合することができる。
【0379】
本開示のCD79b結合アーム及び/又はCD22結合アームを含むタンパク質は、既知の方法を使用して検出可能な標識にコンジュゲートされ得る。
【0380】
いくつかの実施形態では、検出可能な標識は、キレート剤と複合体を形成している。
【0381】
いくつかの実施形態では、検出可能な標識は、リンカーを介して本開示のCD79b結合タンパク質にコンジュゲートされる。
【0382】
検出可能な標識又は細胞傷害性部分は、既知の方法を使用して、本開示のCD79b結合タンパク質に直接又は間接的に連結させることができる。好適なリンカーは、当該技術分野において既知であり、例えば、補欠分子族、非フェノールリンカー(N-スクシミジル-ベンゾエートの誘導体、ドデカボラート)、大環状及び非環式の両キレート剤のキレート部分、例えば、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10,四酢酸(1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10,tetraacetic acid、DOTA)の誘導体、ジエチレントリアミン五酢酸(diethylenetriaminepentaacetic avid、DTPA)の誘導体、S-2-(4-イソチオシアナトベンジル)-1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(S-2-(4-Isothiocyanatobenzyl)-1,4,7-triazacyclononane-1,4,7-triacetic acid、NOTA)の誘導体、及び1,4,8,11-テトラアザシクロドデカン-1,4,8,11-四酢酸(1,4,8,11-tetraazacyclodocedan-1,4,8,11-tetraacetic、TETA)の誘導体、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(N-succinimidyl-3-(2-pyridyldithiol)propionate、SPDP)、イミノチオラン(iminothiolane、IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミダートHCl)、活性エステル(例えば、ジスクシンイミジルスベラート)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアナート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアナート)、及びビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)、並びに他のキレート部分が挙げられる。好適なペプチドリンカーは周知である。
【0383】
ポリヌクレオチド、宿主細胞、及びベクター
記載された抗体、多重特異性抗体、及び抗原結合断片に加えて、記載された抗体、多重特異性抗体、及び抗原結合断片をコードすることができるポリヌクレオチド配列もまた提供される。
【0384】
CD22結合アームをコードするポリヌクレオチド
いくつかの実施形態では、本開示は、CD22結合アームをコードする配列を含むポリヌクレオチドコードを提供する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、HCDR2、及びHCDR3を含む、CD22結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号1のHCDR1を含む、CD22結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号2のHCDR2を含む、CD22結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号3のHCDR3を含む、CD22結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR、及びHCDR3を含む、CD22結合アームをコードする。
【0385】
いくつかの実施形態では、軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、LCDR2、及びLCDR3を含む、CD22結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号4のLCDR1を含む、CD22結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号5のLCDR2を含む、CD22結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号6のLCDR3を含む、CD22結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、それぞれ配列番号4、5、及び6のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、CD22結合アームをコードする。
【0386】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、それぞれ配列番号1、2、3、4、5、及び6のHCDR1、HCDR、HCDR3、LCDR1、LCDR、及びLCDR3を含む、CD22結合アームをコードする。
【0387】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号7の重鎖可変ドメイン(VH)を含む、CD22結合アームをコードする。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号8の軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、CD22結合アームをコードする。
【0388】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、及び配列番号8のVLを含む、CD22結合アームをコードする。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号7のVH、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含む、CD22結合アームをコードする。
【0389】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号7のVH及び配列番号8のVLを含む、CD22結合アームをコードする。
【0390】
CD79b結合アームをコードするポリヌクレオチド
いくつかの実施形態では、本開示は、CD79b結合アームをコードする配列を含むポリヌクレオチドコードを提供する。
【0391】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を含む、CD79b結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号9、17、25、33、41、49又は57のHCDR1を含む、CD79b結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号10、18、26、34、42、50又は58のHCDR2を含む、CD79b結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号11、19、27、35、43、51又は59のHCDR3を含む、CD79b結合アームをコードする。
【0392】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号9、17、25、33、41、49又は57のHCDR1、配列番号10、18、26、34、42、50又は58のHCDR2、及び配列番号11、19、27、35、43、51又は59のHCDR3を含む、CD79b結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、以下:
それぞれ配列番号9、10、及び11、
それぞれ配列番号17、18、及び19、
それぞれ配列番号25、26、及び27、
それぞれ配列番号33、34、及び35、
それぞれ配列番号41、42、及び43、
それぞれ配列番号49、50、及び51、又は
それぞれ配列番号57、58、及び59のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む、CD79b結合アームをコードする。
【0393】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む、CD79b結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号12、20、28、36、44、52又は60のLCDR1を含む、CD79b結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号13、21、29、37、45、53又は61のLCDR2を含む、CD79b結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号14、22、30、38、46、54又は62のLCDR3を含む、CD79b結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、以下:
それぞれ配列番号12、13、及び14、
それぞれ配列番号20、21、及び22、
それぞれ配列番号28、29、及び30、
それぞれ配列番号36、37、及び38、
それぞれ配列番号44、45、及び46、
それぞれ配列番号52、53、及び54、又は
それぞれ配列番号60、61、及び62のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、CD79b結合アームをコードする。
【0394】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む、CD79b結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号9、17、25、33、41、49又は57のHCDR1を含む、CD79b結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号10、18、26、34、42、50又は58のHCDR2を含む、CD79b結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号11、19、27、35、43、51又は59のHCDR3を含む、CD79b結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号12、20、28、36、44、52又は60のLCDR1を含む、CD79b結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号13、21、29、37、45、53又は61のLCDR2を含む、CD79b結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号14、22、30、38、46、54又は62のLCDR3を含む、CD79b結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、以下:
それぞれ配列番号9、10、11、12、13、及び14、
それぞれ配列番号17、18、19、20、21、及び22、
それぞれ配列番号25、26、27、28、29、及び30、
それぞれ配列番号33、34、35、36、37、及び38、
それぞれ配列番号41、42、43、44、45、及び46、
それぞれ配列番号49、50、51、52、53、及び54、又は
それぞれ配列番号57、58、59、60、61、及び62のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、CD79b結合アームをコードする。
【0395】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、VHを含む、CD79b結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号15、23、31、39、47、55、63又は80のVHを含む、CD79b結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、VLを含む、CD79b結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号16、24、32、40、48、56、64又は81のVLを含む、CD79b結合アームをコードする。
【0396】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号9、17、25、33、41、49又は57のHCDR1、配列番号10、18、26、34、42、50又は58のHCDR2、配列番号11、19、27、35、43、51又は59のHCDR3、及び配列番号16、24、32、40、48、56、64又は81のVLを含む、CD79b結合アームをコードする。
【0397】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号15、23、31、39、47、55、63又は80のVH、配列番号12、20、28、36、44、52又は60のLCDR1、配列番号13、21、29、37、45、53又は61のLCDR2、及び配列番号14、22、30、38、46、54又は62のLCDR3を含む、CD79b結合アームをコードする。
【0398】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、VH及びVLを含む、CD79b結合アームをコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、以下:
それぞれ配列番号15及び16、
それぞれ配列番号23及び24、
それぞれ配列番号31及び32、
それぞれ配列番号39及び40、
それぞれ配列番号47及び48、
それぞれ配列番号55及び56、
それぞれ配列番号63及び64、又は
それぞれ配列番号80及び81のVH及びVLを含む、CD79b結合アームをコードする。
【0399】
一実施形態では、CD79b結合アーム又はその断片をコードするポリヌクレオチドは、配列番号65、68、70、73、75、又は77の配列を含む、VHをコードする配列を含む。一実施形態では、CD79b結合アーム又はその断片をコードするポリヌクレオチドは、配列番号66、67、69、71、72、74、76、又は78の配列を含む、VLをコードする配列を含む。一実施形態では、CD79b結合アームをコードするポリヌクレオチドは、以下:
配列番号65及び66、
配列番号65及び67、
配列番号68及び69、
配列番号70及び71、
配列番号70及び72、
配列番号73及び74、
配列番号75及び76、又は
配列番号77及び78を含む、VHをコードする配列及びVLをコードする配列を含む。
【0400】
ベクター及び宿主細胞
記載されるポリヌクレオチドを含むベクターも提供され、同様に、抗体、多重特異性抗体、又は抗原結合断片を発現する細胞も本明細書において提供される。また、開示されるベクターを発現することができる細胞も、記載される。これらの細胞は、哺乳類細胞(例えば、293F細胞、CHO細胞)、昆虫細胞(例えば、Sf7細胞)、酵母細胞、植物細胞、又は細菌細胞(例えば、E.coli)でもよい。記載される抗体はまた、ハイブリドーマ細胞により産生することができる。記載される抗体はまた、組換え的に産生され得る。
【0401】
組換え抗原結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドもまた、本開示の範囲内である。いくつかの実施形態では、記載されるポリヌクレオチド(及びそれらがコードするペプチド)は、リーダー配列を含む。当該技術分野において既知の任意のリーダー配列を用いることができる。リーダー配列は、制限部位又は翻訳開始部位を含み得るがこれらに限定されない。
【0402】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドを含むベクターもまた提供される。ベクターは、発現ベクターであり得る。したがって、目的のポリペプチドをコードする配列を含む組換え発現ベクターは、本開示の範囲内であることが企図される。発現ベクターは、制御配列(例えば、プロモータ、エンハンサ)、選択マーカー、及びポリアデニル化シグナルなどであるがこれらに限定されない、1つ又は2つ以上の追加配列を含んでもよい。広範な宿主細胞を形質転換するためのベクターは周知であり、プラスミド、ファージミド、コスミド、バキュロウイルス、バクミド、細菌人工染色体(bacterial artificial chromosome、BAC)、酵母人工染色体(yeast artificial chromosome、YAC)、並びに、他の細菌、酵母、及びウイルスのベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0403】
本明細書の範囲内にある組換え発現ベクターは、好適な調節エレメントに作動可能に連結することができる少なくとも1つの組換えタンパク質をコードする、合成、ゲノム、又はcDNA由来の核酸断片を含む。そのような調節エレメントとしては、転写プロモータ、好適なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、並びに転写及び翻訳の終了を制御する配列を挙げることができる。発現ベクター、特に、哺乳動物の発現ベクターはまた、1つ若しくは2つ以上の非転写エレメント、例えば、複製の起点、発現させようとする遺伝子に連結されている好適なプロモータ及びエンハンサ、他の5’若しくは3’フランキング非転写配列、5’若しくは3’非翻訳配列(例えば、必須リボソーム結合部位)、ポリアデニル化部位、スプライスドナー及びアクセプタ部位、又は転写終了配列を含んでもよい。宿主において複製する能力を付与する複製の起点もまた、組み込まれ得る。
【0404】
脊椎動物細胞を形質転換するのに使用される発現ベクター中の転写及び翻訳制御配列は、ウイルス源により提供することができる。例示的なベクターは、Okayama and Berg,3 Mol.Cell.Biol.280(1983)によって記載されるように構築され得る。
【0405】
いくつかの実施形態では、多重特異性抗体又は抗原結合断片のコーディング配列は、強力な構成的プロモータ、例えば、以下の遺伝子:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(hypoxanthine phosphoribosyl transferase、HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ベータアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋クレアチンなどのためのプロモータの制御下に置かれる。加えて、多くのウイルスプロモータが、真核細胞中で構成的に機能し、記載される実施形態での使用に好適である。そのようなウイルスプロモータとしては、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus、CMV)最初期プロモータ、SV40の初期及び後期プロモータ、マウス乳がんウイルス(Mouse Mammary Tumor Virus、MMTV)プロモータ、モロニー白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus、HIV)、エプスタインバーウイルス(Epstein Barr Virus、EBV)、ラウス肉腫ウイルス(Rous Sarcoma Virus、RSV)、及び他のレトロウイルスの長端末反復配列(long terminal repeat、LTR)、並びに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモータが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、多重特異性抗体又は多重特異性結合断片のコーディング配列は、メタロチオネインプロモータ、テトラサイクリン誘導性プロモータ、ドキシサイクリン誘導性プロモータなどの誘導性プロモータ、プロテインキナーゼR 2’,5’-オリゴアデニレート合成酵素、Mx遺伝子、ADAR1などの1つ又は2つ以上のインターフェロン刺激応答エレメント(interferon-stimulated response elements、ISRE)を含有するプロモータの制御下に置かれる。
【0406】
本明細書に記載されるベクターは、1つ又は2つ以上の内部リボソーム進入部位(Internal Ribosome Entry Site、IRES)を含み得る。IRES配列を融合ベクターに含めることは、一部のタンパク質の発現を増強させるのに有益であり得る。いくつかの実施形態では、ベクター系は、1つ又は2つ以上のポリアデニル化部位(例えば、SV40)を含むこととなり、これは、前述の核酸配列のうちいずれかの上流又は下流にあってもよい。ベクターの成分は、近接して連結されてもよく、又は遺伝子産物を発現させるのに最適な間隔を提供するように(すなわち、ORF間に「スペーサー」ヌクレオチドを導入することにより)配置されてもよく、又は別の方式で位置付けられてもよい。また、調節エレメント、例えば、IRESモチーフが、発現に最適な間隔を提供するように配置されてもよい。
【0407】
ベクターは、当該技術分野において周知の選択マーカーを含んでもよい。選択マーカーには、陽性及び陰性選択マーカー、例えば、抗生物質耐性遺伝子(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ペニシリン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子)、グルタミン酸合成酵素遺伝子、ガンシクロビル選択用のHSV-TK、HSV-TK誘導体、又は6-メチルプリン選択用の細菌のプリンヌクレオシドホスホリラーゼ遺伝子が含まれる(Gadi et al.,7 Gene Ther.1738-1743(2000))。選択マーカーをコードする核酸配列又はクローニング部位は、目的のポリペプチドをコードする核酸配列又はクローニング部位の上流又は下流にあってもよい。
【0408】
本明細書に記載されるベクターを使用して、様々な細胞に、記載される抗体又は抗原結合断片をコードする遺伝子を形質転換することができる。例えば、ベクターを使用して、多重特異性抗体又は抗原結合断片の生成細胞を生成することができる。このため、別の態様は、CD79b、CD20、及び/若しくはCD3に結合する抗体又はその抗原結合断片、例えば、本明細書に記載され、例示された抗体又は抗原結合断片をコードする核酸配列を含むベクターで形質転換された宿主細胞を特徴とする。
【0409】
外来遺伝子を細胞内に導入するための数多くの手法が、当該技術分野において既知であり、本明細書に記載され例示される様々な実施形態に従って、記載される方法を行う目的で組換え細胞を構築するのに使用することができる。使用される手法は、異種遺伝子配列が細胞の子孫により遺伝及び発現可能であり、かつレシピエント細胞に必須の成育及び生理学的機能を損なうことのないよう、異種遺伝子配列を宿主細胞に安定して導入するものでなければならない。使用することができる手法としては、染色体導入法(例えば、細胞融合、染色体媒介性遺伝子導入、マイクロ細胞媒介性遺伝子導入)、物理的方法(例えば、トランスフェクション、スフェロプラスト融合、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソーム担体)、ウイルスベクター導入(例えば、組換えDNAウイルス、組換えRNAウイルス)などが挙げられるがこれらに限定されない(Cline,29 Pharmac.Ther.69-92(1985))。また、哺乳類細胞による細菌プロトプラストのリン酸カルシウム沈殿及びポリエチレングリコール(PEG)誘導融合を使用して、細胞を形質転換することができる。
【0410】
本明細書に記載される多重特異性抗体又は抗原結合断片の発現に使用するのに好適な細胞は、好ましくは、真核細胞、より好ましくは、植物、げっ歯類、又はヒト起源の細胞であり、例えば、特にNSO、CHO、CHOK1、perC.6、Tk-ts13、BHK、HEK293細胞、COS-7、T98G、CV-1/EBNA、L細胞、C127、3T3、HeLa、NS1、Sp2/0骨髄腫細胞、及びBHK細胞株であるが、これらに限定されない。加えて、抗体の発現は、ハイブリドーマ細胞を使用して達成されてもよい。ハイブリドーマを産生するための方法は、当該技術分野において十分確立されている。
【0411】
本明細書に記載される発現ベクターが形質転換された細胞は、本明細書に記載される抗体又は抗原結合断片の組換え発現について選択又はスクリーニングされ得る。組換え陽性細胞は、例えば、タンパク質修飾若しくは改変された翻訳後修飾により、所望の表現型、例えば、高レベルの発現、増強された増殖特性、又は所望の生化学的特性を有するタンパク質を生成する能力を示すサブクローンについて増殖及びスクリーニングされる。これらの表現型は、所与のサブクローンの本来の特性又は変異によるものであり得る。変異は、化学薬品、UV波長光、照射、ウイルス、挿入変異源、DNAミスマッチ修復の阻害、又はこのような方法の組み合わせにより生じ得る。
【0412】
医薬組成物/投与
本開示はまた、本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片と、医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0413】
治療用途では、本開示の抗体又は多重特異性抗体は、医薬的に許容される担体中に活性成分として有効量の抗体を含有する医薬組成物として調製することができる。「担体」は、本発明の抗体が共に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、又はビヒクルを指す。このようなビヒクルは、水、及び石油、動物、植物、又は合成物由来のものを含む油、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの液体であってもよい。例えば、0.4%生理食塩水及び0.3%グリシンを使用してもよい。これらの溶液は滅菌され、概して粒子状物質を含まない。これらは、従来周知の滅菌技術(例えば、濾過)によって滅菌することができる。組成物は、生理学的条件に近づけるために必要とされる医薬的に許容される補助物質、例えば、pH調節剤及び緩衝剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤及び着色剤などを含有し得る。そのような医薬製剤中の本発明の抗体又は多重特異性抗体の濃度は、約0.5重量%未満から通常少なくとも約1重量%まで、最大で15又は20重量%まで変動し得、選択される投与様式に従って、必要とされる用量、流体体積、粘度などに主に基づいて選択され得る。好適なビヒクル及び製剤(他のヒトタンパク質、例えばヒト血清アルブミンを含む)は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,Troy,D.B.ed.,Lipincott Williams and Wilkins,Philadelphia,PA 2006,Part 5,Pharmaceutical Manufacturing pp691-1092に記載され、特にpp.958-989を参照されたい。
【0414】
本開示の抗体又は多重特異性抗体の投与様式は、当該技術分野において周知であるように、非経口投与、例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、若しくは皮下、経粘膜(経口、鼻腔内、膣内、直腸)、又は当業者に理解される他の手段などの任意の好適な経路であり得る。
【0415】
本開示の抗体又は多重特異性抗体はまた、がんなどの疾患を発症するリスクを低減させるために、予防的に投与され得る。
【0416】
したがって、筋肉内注射用の本発明の医薬組成物は、1mlの滅菌緩衝水と、約1ng~約100mg/kg、例えば約50ng~約30mg/kg、又はより好ましくは約5mg~約25mg/kgの本発明の本開示のCD79b結合タンパク質と、を含むように調製することができる。
【0417】
本開示の実施形態では、抗体又は多重特異性抗体発現細胞は、抗体又は多重特異性抗体発現細胞と、医薬的に許容される担体と、を含む組成物、例えば、好適な医薬組成物において提供され得る。一態様では、本開示は、記載される抗体又は多重特異性抗体のうちの1つ又は2つ以上を発現する有効量のリンパ球と、医薬的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物を提供する。本開示の医薬組成物は、抗体又は多重特異性抗体発現細胞、例えば、本明細書に記載されるような複数の多重特異性抗体発現細胞を、1つ又は2つ以上の医薬的若しくは生理学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤と組み合わせて含み得る。医薬的に許容される担体は、活性成分以外の、対象に対して無毒性である医薬組成物中の成分であり得る。
【0418】
医薬的に許容される担体としては、緩衝液、賦形剤、安定剤、又は防腐剤を挙げることができる。医薬的に許容される担体の例は、生理学的に適合性の溶剤、分散媒体、コーティング剤、抗菌及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤などであり、例えば、塩、緩衝液、抗酸化剤、糖類、水性若しくは非水性担体、防腐剤、湿潤剤、界面活性剤、若しくは乳化剤、又はこれらの組み合わせである。医薬組成物中の医薬的に許容される担体の量は、担体の活性及び製剤の所望の特性、例えば安定性及び/又は最小酸化に基づいて実験的に決定され得る。
【0419】
医薬組成物は、酢酸、クエン酸、ギ酸、コハク酸、リン酸、炭酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、ヒスチジン、ホウ酸、トリス緩衝液、HEPPSO、HEPES、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水などの緩衝液;グルコース、マンノース、スクロース又はデキストラン、マンニトールなどの炭水化物;タンパク質;グリシンなどのポリペプチド又はアミノ酸;抗酸化剤;EDTA又はグルタチオンなどのキレート剤;アジュバント(例えば水酸化アルミニウム);抗菌剤及び抗真菌剤;並びに防腐剤を含み得る。
【0420】
本開示の医薬組成物は、非経口投与又は経口投与の様々な手段のために製剤化することができる。一実施形態では、組成物は、注入又は静脈内投与向けに製剤化され得る。本明細書に開示される医薬組成物は、例えば、無菌液体調製物、例えば、等張水溶液、乳剤、懸濁液、分散液、又は粘性組成物として提供することができ、これらは、所望のpHに緩衝され得る。経口投与に好適な製剤としては、液体溶液、カプセル剤、サッシェ剤、錠剤、ドロップ剤、及びトローチ剤、適切な液体及び乳剤中の粉末液体懸濁液を挙げることができる。
【0421】
医薬組成物に関して本明細書で使用される場合、「医薬的に許容される」という用語は、動物及び/又はヒトにおける使用について、連邦政府若しくは州政府の規制機関によって承認されているか、又は米国薬局方若しくは他の一般に認められている薬局方に列挙されていることを意味する。
【0422】
本明細書で使用されるとき、「医薬的に許容される担体」という用語は、生理学的に適合性である、ありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤、及び抗真菌剤などを含む。好適な担体、希釈剤、及び/又は賦形剤の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどのうちの1つ又は2つ以上、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。多くの場合、等張性剤、例えば、糖、ポリアルコール、又は塩化ナトリウムを組成物中に含めるのが好ましい。特に、好適な担体の関連する例としては、(1)ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水、pH約7.4、約1mg/mL~25mg/mLのヒト血清アルブミンを含有又は不含、(2)0.9%の生理食塩水(0.9%重量/体積の塩化ナトリウム(NaCl))、及び(3)5%(重量/体積)のデキストロースが挙げられ、抗酸化剤、例えば、トリプタミン、及び安定化剤、例えば、Tween20(登録商標)も含有してもよい。
【0423】
本明細書における組成物はまた、治療されている特定の疾患にとって必要な場合には、更なる治療剤を含有してもよい。一実施形態では、抗体又は多重特異性抗体又は結合断片及び補助的な活性化合物は、互いに有害に影響を及ぼさない補完的な活性を有することとなる。
【0424】
本発明の組成物は、様々な形態にあってもよい。これらには、例えば、液体、半固体、及び固体の剤形が挙げられるが、好ましい形態は、意図された投与様式及び治療用途により決まる。典型的に好ましい組成物は、注射液又は注入可能な溶液の形態である。好ましい投与様式は、非経口(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下)である。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、ボーラス又は一定期間にわたる連続的な注入により静脈投与される。別の好ましい実施形態では、本組成物は、局所並びに全身的な治療効果を発揮するために、筋肉内、皮下、関節内、関節滑液嚢内、腫瘍内、腫瘍周囲、病巣内、又は病巣周囲の経路により注射される。
【0425】
非経口投与用の無菌組成物が、本発明の抗体、抗体断片、又は抗体コンジュゲートを、必要とされる量で適切な溶媒に包含させ、続けて、マイクロフィルタ法により滅菌することにより調製され得る。溶媒又は賦形剤として、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、並びにこれらの組み合わせを使用することができる。多くの場合には、等張性剤、例えば、糖、ポリアルコール、又は塩化ナトリウムを組成物中に含むのが好ましい。これらの組成物はまた、補助剤、特に、湿潤剤、等張化剤、乳化剤、分散剤、及び安定化剤を含有してもよい。非経口投与用の無菌組成物はまた、使用時に滅菌水又は任意の他の注射可能な無菌媒体中に溶解することができる、無菌の固体組成物の形態で調製されてもよい。
【0426】
抗体、多重特異性抗体、又は抗体断片はまた、経口投与されてもよい。経口投与用の固体組成物として、錠剤、丸剤、粉末剤(ゼラチンカプセル剤、サッシェ剤)、又は顆粒剤が使用されてもよい。これらの組成物において、本発明による活性成分は、1つ又は2つ以上の不活性希釈剤、例えば、デンプン、セルロース、スクロース、ラクトース、又はシリカと、アルゴン流下において混合される。これらの組成物はまた、希釈剤以外の物質、例えば、1つ又は2つ以上の滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム若しくはタルク、着色剤、コーティング(糖衣錠)、又はグレーズを含んでもよい。
【0427】
経口投与用の液体組成物として、不活性希釈剤、例えば、水、エタノール、グリセロール、植物油、又はパラフィンオイルを含有する、医薬的に許容され得る液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、及びエリキシル剤が使用されてもよい。これらの組成物は、希釈剤以外の物質、例えば、湿潤剤、甘味料、増粘剤、着香剤、又は安定化製品を含んでもよい。
【0428】
用量は、所望の効果、治療の期間、及び使用される投与経路により決まり、用量は、一般的には、成人では1日当たり経口で5mg~1000mgであり、単位用量は、活性物質1mg~250mgの範囲である。一般的には、医師は、適切な用量を、処置される対象の年齢、体重、及び同対象に特異的な任意の他の要因に応じて決定する。
【0429】
検出方法
本開示はまた、サンプル中のCD79b、CD22、又は両方を検出する方法であって、サンプルを入手することと、サンプルを本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片と接触させることと、サンプル中の結合したCD79b、CD22、又は両方を検出することと、を含む、方法を提供する。
【0430】
いくつかの実施形態では、サンプルは、尿、血液、血清、血漿、唾液、腹水、循環細胞、滑液、循環細胞、組織に会合していない細胞(すなわち、遊離細胞)、組織(例えば、外科的に切除された組織、穿刺吸引を含む生検材料)、組織プレパラートなどに由来し得る。
【0431】
本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片は、既知の方法を使用して検出され得る。例示的な方法としては、蛍光若しくは化学発光標識、又は放射線標識を使用して抗体を直接標識すること、又は本発明の抗体に、ビオチン、酵素、又はエピトープタグなどの容易に検出可能な部分を結合させることが挙げられる。例示的な標識及び部分は、ルテニウム、111In-DOTA、111In-ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ及びベータガラクトシダーゼ、ポリ-ヒスチジン(HISタグ)、アクリジン染料、シアニン染料、フルオロン染料、オキサジン染料、フェナントリジン染料、ローダミン染料、及びAlexafluor(登録商標)染料である。
【0432】
本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片は、サンプル中のCD79b、CD22、又は両方を検出するための様々なアッセイで使用され得る。例示的なアッセイは、ウェスタンブロット分析、ラジオイムノアッセイ、表面プラズモン共鳴、免疫沈降、平衡透析、免疫拡散、電気化学発光(electrochemiluminescence、ECL)イムノアッセイ、免疫組織化学的検査、蛍光活性化細胞選別(fluorescence-activated cell sorting、FACS)、又はELISAアッセイである。
【0433】
治療及び使用方法
本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片は、自己免疫性疾患若しくは障害又はその1つ若しくは2つ以上の症状を管理、治療、予防、又は改善するために、それを必要とする対象に投与され得る。
【0434】
本開示はまた、治療有効量の本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片を、自己免疫性疾患を有する対象に投与することを含む方法を提供する。
【0435】
本開示はまた、本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片を含む、治療有効量の免疫コンジュゲートを、自己免疫性疾患を有する対象に投与することを含む方法を提供する。
【0436】
本開示はまた、本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片を含む、治療有効量の医薬組成物を、自己免疫性疾患を有する対象に投与することを含む方法を提供する。
【0437】
本開示はまた、対象における自己免疫性疾患を治療する方法であって、治療有効量の本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片を、自己免疫性疾患を治療するのに十分な時間にわたって、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
【0438】
本開示はまた、対象における自己免疫性疾患を治療する方法であって、本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片を含む、治療有効量の免疫コンジュゲートを、自己免疫性疾患を治療するのに十分な時間にわたって、対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0439】
本開示はまた、対象における自己免疫性疾患を治療する方法であって、本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片を含む、治療有効量の医薬組成物を、自己免疫性疾患を治療するのに十分な時間にわたって、対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0440】
一実施形態では、自己免疫性疾患は、B細胞、自己反応性B細胞の調節不全、又は自己抗体の存在に関連するか、又はそれらによって特徴付けられる。自己免疫性疾患の例としては、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、シェーグレン症候群(SjS)、リウマチ性関節炎、自己免疫ミオパシー、1型糖尿病、アジソン病、悪性貧血、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、自己免疫性膵炎、セリアック病、巣状糸球体硬化症、原発性膜性腎症、卵巣機能不全、自己免疫精巣炎、乾性眼疾患、特発性間質性肺炎、甲状腺疾患(例えば、グレーブス病)、全身性硬化症(強皮症)、筋無力症症候群、自己免疫脳炎、水疱性皮膚疾患、TTP、ITP、AIHA、Anca血管炎、心筋炎/拡張型CM、NMOSD、母体-胎児同種免疫、母体-胎児自己免疫、抗カルジオリピン/抗リン脂質抗体症候群、高ガンマグロブリン血症、移植関連ID、多巣性運動ニューロパチーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0441】
本開示はまた、対象における自己免疫性疾患を予防する方法であって、治療有効量の本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片を、自己免疫性疾患を予防するのに十分な時間にわたって、それを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。ある特定の実施形態では、予防することは、無症候性対象を治療することを含む。ある特定の実施形態では、予防することは、対象における自己免疫性疾患症状の発症を予防することを含む。
【0442】
本開示はまた、対象における自己免疫性疾患を予防する方法であって、治療有効量の本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片を、自己免疫性疾患を治療するのに十分な時間にわたって、対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0443】
本開示はまた、対象における自己免疫性疾患を予防する方法であって、本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片を含む、治療有効量の免疫コンジュゲートを、自己免疫性疾患を治療するのに十分な時間にわたって、対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0444】
本開示はまた、対象における自己免疫性疾患を予防する方法であって、本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片を含む、治療有効量の医薬組成物を、自己免疫性疾患を予防するのに十分な時間にわたって、対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0445】
一実施形態では、対象における自己免疫性疾患を予防する方法は、対象における自己抗体を検出することを更に含む。
【0446】
本開示はまた、対象におけるB細胞活性化を調節する方法であって、治療有効量の本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片を、B細胞活性化を調節するのに十分な時間にわたって、それを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0447】
本開示はまた、対象におけるB細胞活性化を調節する複数の方法であって、治療有効量の本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片を、B細胞活性化を調節するのに十分な時間にわたって、対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0448】
本開示はまた、対象におけるB細胞活性化を調節する方法であって、治療有効量の本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片を、B細胞活性化を調節するのに十分な時間にわたって、対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0449】
本開示はまた、対象におけるB細胞活性化を調節する方法であって、本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片を含む、治療有効量の免疫コンジュゲートを、B細胞活性化を調節するのに十分な時間にわたって、対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0450】
本開示はまた、対象におけるB細胞活性化を調節する方法であって、本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片を含む、治療有効量の医薬組成物を、B細胞活性化を調節するのに十分な時間にわたって、対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0451】
本開示はまた、対象における異常なB細胞活性化を阻害する方法であって、治療有効量の本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片を、異常なB細胞活性化を阻害するのに十分な時間にわたって、それを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0452】
本開示はまた、対象における異常なB細胞活性化を阻害する方法であって、治療有効量の本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片を、異常なB細胞活性化を阻害するのに十分な時間にわたって、対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0453】
本開示はまた、対象における異常なB細胞活性化を阻害する方法であって、本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片を含む、治療有効量の免疫コンジュゲートを、異常なB細胞活性化を阻害するのに十分な時間にわたって、対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0454】
本開示はまた、対象における異常なB細胞活性化を阻害する方法であって、本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片を含む、治療有効量の医薬組成物を、異常なB細胞活性化を阻害するのに十分な時間にわたって、対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0455】
本開示はまた、対象における自己免疫性疾患を治療する方法であって、多重特異性抗体又は多重特異性結合断片を含む、治療有効量の組成物を、自己免疫性疾患を治療するのに十分な時間にわたって、それを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供し、多特異性抗体は、CD79b結合アーム及びCD22結合アームを含む。
【0456】
本開示はまた、対象における自己免疫性疾患を予防する方法であって、多重特異性抗体又は多重特異性結合断片を含む、治療有効量の組成物を、自己免疫性疾患を治療するのに十分な時間にわたって、それを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供し、多特異性抗体は、CD79b結合アーム及びCD22結合アームを含む。
【0457】
本開示はまた、対象におけるB細胞活性化を調節する方法であって、多重特異性抗体又は多重特異性結合断片を含む、治療有効量の組成物を、自己免疫性疾患を治療するのに十分な時間にわたって、それを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供し、多特異性抗体は、CD79b結合アーム及びCD22結合アームを含む。
【0458】
本開示はまた、対象における異常なB細胞活性化を阻害する方法であって、多重特異性抗体又は多重特異性結合断片を含む、治療有効量の組成物を、自己免疫性疾患を治療するのに十分な時間にわたって、それを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供し、多特異性抗体は、CD79b結合アーム及びCD22結合アームを含む。
【0459】
本開示はまた、多重特異性抗体又は多重特異性結合断片を含む組成物を、対象に投与することを含む方法を提供し、多特異性抗体は、CD79b結合アーム及びCD22結合アームを含む。
【0460】
いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、それぞれ配列番号1、2、3、4、5、及び6のHCDR1、HCDR、HCDR3、LCDR1、LCDR、及びLCDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD22結合アームは、配列番号7のVH及び配列番号8のVLを含む。
【0461】
いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、配列番号9、17、25、33、41、49又は57のHCDR1、配列番号10、18、26、34、42、50又は58のHCDR2、配列番号11、19、27、35、43、51又は59のHCDR3、配列番号12、20、28、36、44、52又は60のLCDR1、配列番号13、21、29、37、45、53又は61のLCDR2、及び配列番号14、22、30,38、46、54、又は62のLCDR3を含む。いくつかの実施形態では、CD79b結合アームは、配列番号15、23、31、39、47、55、63又は80のVH、及び配列番号16、24、32、40、48、56、64又は81のVLを含む。
【0462】
治療有効量が指定されている場合、投与される本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片の正確な量は、対象の年齢、体重、及び状態における個々の差異を考慮して、医師が判断することができる。
【0463】
本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片の文脈における有用な送達システムは、本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片の送達が、治療される部位の感作の前に、かつ感作を引き起こすために十分な時間で行われるように、徐放性、遅延放出、及び持続性放出送達システムを含み得る。組成物は、他の治療剤又は療法と併用することができる。かかるシステムは、組成物の反復投与を回避することにより、対象及び医師に対する利便性を高めることができ、本発明における特定の組成物の実施形態に対して特に好適であり得る。
【0464】
多くの種類の放出送達システムが利用可能であり、当業者に既知である。これらには、ポリ(ラクチド-グリコリド)、コポリオキサレート、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、及びポリ無水物などのポリマー基本成分システムが含まれる。前述の薬物含有ポリマーのマイクロカプセルは、例えば、米国特許第5,075,109号に記載されている。送達システムとしてはまた、コレステロール、コレステロールエステルなどのステロール、並びに脂肪酸又はモノ-ジ-及びトリ-グリセリドなどの中性脂肪を含む脂質である非ポリマーシステム、シラスティックシステム、ペプチド基本成分システム、ヒドロゲル放出システム、ワックスコーティング、従来のバインダー及び賦形剤を使用した圧縮錠剤、部分的に融合したインプラントなども挙げられる。具体例としては、(a)米国特許第4,452,775号、同第4,667,014号、同第4,748,034号、及び同第5,239,660号に記載されているものなど、活性組成物がマトリックス内の形態で含有される侵食系、並びに(b)米国特許第3,854,480号及び同第3,832,253号に記載されているものなどの活性成分が制御された速度でポリマーから浸透する拡散系が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、ポンプベースのハードウェア送達システムが使用され得、そのうちのいくつかは埋め込み用に適合されている。
【0465】
本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片の投与は、エアロゾル吸入、注射、注入、経口摂取、輸血、埋め込み、又は移植を含む、任意の方法、例えば、非経口投与又は非経腸投与によって実施することができる。例えば、本明細書に記載されるCD79b結合タンパク質及び組成物は、経動脈、皮内、皮下、腫瘍内、髄内、節内、筋肉内経路で、静脈内(intravenous、i.v.)注射によって、又は腹腔内経路で患者に投与され得る。一態様では、本開示の組成物は、i.v.注射によって投与される。一態様では、本開示の組成物は、皮内注射又は皮下注射によって対象に投与される。本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片の組成物は、例えば、腫瘍、リンパ節、組織、器官、又は感染部位に直接注射することができる。
【0466】
一実施形態では、投与は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、5週間、6週間、7週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月以上後に繰り返され得る。また、治療過程を繰り返すことも、長期にわたる投与として可能である。反復投与は、同一用量であっても異なる用量であってもよい。
【0467】
組み合わせ療法
本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片は、少なくとも1つの追加の治療法と組み合わせて投与されてもよい。
【0468】
本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片はまた、1つ又は2つ以上の他の療法と組み合わせて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片は、自己免疫性疾患若しくは障害又は1つ若しくは2つ以上のその症状の予防、管理、治療、又は改善に有用な1つ又は2つ以上の他の療法と組み合わせて、それを必要とする対象に投与して、自己免疫性疾患若しくは障害又は1つ若しくは2つ以上のその症状を予防、管理、治療、又は改善してもよい。
【0469】
いくつかの実施形態では、1つの治療の送達は、第2の送達が開始されるときにも依然として起こるため、投与に関して重複がある。これは、本明細書において「同時」又は「同時送達」と称されることがある。他の実施形態では、1つの治療の送達は、もう1つの治療の送達が開始される前に終了する。いずれかの場合のいくつかの実施形態では、組み合わせ投与であることから、治療はより効果的である。例えば、第2の治療はより効果的であり、例えば、同等の効果が、第2の治療を少なくして見られ、又は第2の治療が、第1の治療なく第2の治療が施される場合に見られるよりも、症状を大幅に軽減し、又は第1の治療と同様の状況が見られる。いくつかの実施形態では、送達は、障害に関連する症状又は他のパラメータの軽減が、他の治療なしで送達される1つの治療で観察される軽減よりも大きくなるようなものである。2つの治療の効果は、部分的に相加的であるか、全体的に相加的であるか、又は相加的を超えるものであり得る。送達は、送達された第1の治療の効果が、第2の送達時に依然として検出可能であるようなものであり得る。
【0470】
一実施形態では、因子などの他の治療剤は、本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片の前、後、又はそれと同時に(同時に)投与され得る。
【0471】
本明細書に記載されるCAR発現細胞などの本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片、及び少なくとも1つの追加の治療剤は、同じ若しくは別個の組成物で同時に、又は連続で投与することができる。連続投与の場合、本明細書に記載される抗体、多重特異性抗体、又は結合断片を最初に投与し、次に追加の薬剤を投与することができ、又は投与の順序を逆にすることができる。
【0472】
一実施形態では、対象に、本開示の抗体、多重特異性抗体、又は結合断片の活性を増強する薬剤を投与することができる。例えば、一実施形態では、薬剤は、阻害分子を阻害する薬剤であり得る。
【0473】
配列
表3は、CDR、VH、及びVLアミノ酸配列を提供する。
【0474】
【0475】
【0476】
表4は、VH及びVLヌクレオチド配列を提供する。
【0477】
【0478】
【0479】
【0480】
表5は、CD79bに結合するステープルされたscFvの配列を提供する
【0481】
【0482】
表6は、CD22に結合するFabの重鎖の配列を提供する。
【0483】
【0484】
表7は、CD22に結合するFabの軽鎖の配列を提供する
【0485】
【0486】
本明細書において開示した実施形態のいくつかを更に説明するために、以下の実施例を提供する。これらの実施例は、例示を目的とするものであって、本開示の実施形態を制限するものではない。
【実施例】
【0487】
下記実施例は、先の開示を補い、本明細書に記載された主題のより良好な理解を提供するために提供される。これらの実施例は、記載された主題を限定すると解釈されるべきでない。本明細書に記載された実施例及び実施形態は例示のみを目的とするものであり、それらを考慮した様々な修正又は変更は、当業者に明らかであり、また、本発明の真の範囲内に含まれ、かつ本発明の真の範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解される。
【0488】
(実施例1)
PBMC B細胞枯渇アッセイ
末梢血単核細胞(Peripheral Blood Mononuclear Cell、PBMC)を、HemaCare(Northridge、CA)を介して、ヒトサンプル取得のための施設プロトコルに従って購入した。細胞を製造業者のプロトコルに従って解凍した。PBMCを、10%FBS、2%ペニシリン及びストレプトマイシン、1%L-グルタミン、MEM非必須アミノ酸(Non-Essential Amino Acid、NEAA)、並びにピルビン酸ナトリウム[ThermoFisher]を含有するRPMIと共に、96ウェルU底プレート中で1×106個の細胞/ウェルで培養した。次いで、PBMCを90nMのC192B30、対照抗体又は陽性対照としての抗ヒトCD20mAbと共にインキュベートした。次いで、細胞を37℃で48時間インキュベートした。抗体とのインキュベーション後、プレートをスピンダウンし(300RCF、5分)、細胞をDPBS中に再懸濁した。次いで、LIVE/DEAD(商標)Fixable Aqua Dead Cell Stain Kit[Invitrogenカタログ番号L34957]を使用して、室温で5分間、細胞を生存率について染色した。プレートをスピンダウンし(300RCF、5分)、細胞を、Human TruStain FcX(商標)(Fc受容体ブロッキング溶液)[Biolegendカタログ番号422302]を含有するFACs緩衝液に再懸濁し、室温で15分間インキュベートした。15分後、細胞を、抗CD3 PerCp-Cy5.5[クローンHIT3a Biolegendカタログ番号300328]、抗CD19-PE[クローン4G7 Biolegendカタログ番号392506]、抗CD22-PE[クローンHIB22 Biolegendカタログ番号302506]、及び抗CD20-PE[クローン2H7 Biolegendカタログ番号302306]を用いて、4℃で30分間、製造業者が推奨する濃度で染色した。プレートをスピンダウンし(300RCF、5分)、FACs緩衝液で2回洗浄し、製造業者の推奨に従ってCytofix緩衝液[BD Biosciencesカタログ番号554655]で固定し、分析のために取得する前にFACs緩衝液に再懸濁した。フローサイトメトリーデータを、最大10個の蛍光色素を用いてCantoIIフローサイトメーター(BD Biosciences)で得、FlowJoソフトウェア(TreeStar)を使用して分析した。分析は、総B細胞枯渇%を決定するために、B細胞(CD22、CD19、CD20)対CD3集団を調べた。
【0489】
下流BCRシグナル伝達カスケード評価
精製されたヒトB細胞を、ヒトサンプル取得のための施設プロトコルに従って、HemaCare(Northridge、CA)から購入した。細胞を製造業者のプロトコルに従って解凍した。B細胞を計数し、1.5×105個の細胞/ウェルの濃度で96ウェル丸底プレートにプレーティングした。プレーティング後、B細胞をC192B30又は対照分子と共に4℃で30分間インキュベートした。30分のインキュベーション時間後、抗IgM F(ab’2)(20μg/mL)[Jackson Immunoresearch laboratoriesカタログ番号109-006-129]を温培地で希釈し、C192B30、対照分子又は培地単独(刺激対照)を含有するウェルに添加した。同時に、抗IgMを含有しない温培地を、刺激なし対照としてウェルに添加した。示された時点(0~30分)で、B細胞を、固定緩衝液I[BD Bioscienceカタログ番号557870]を既に含有する別個のU底プレートに移した。最終時点の後、プレートをスピンダウンし(300RCF、5分)、染色緩衝液[DPBS+2%HIFCS+1mM EDTA]で洗浄/再懸濁した。細胞を洗浄した後、プレートを再びスピンダウンし(300RCF、5分)、製造業者のプロトコルに従って、冷却したperm緩衝液II[BD Bioscienceカタログ番号558052]を用いて氷上で透過処理した。透過処理後、プレートをスピンダウンし(300RCF、5分)、染色緩衝液で2回洗浄し、Human TruStain FcX(商標)(Fc受容体ブロッキング溶液)[Biolegendカタログ番号422302]で15分間ブロッキングし、次いで、抗pSyk(Y352)-PE抗体[BD Bioscienceカタログ番号557881]及び抗pPLCg2(Y759)-Alexa 647[ThermoFisherカタログ番号17-9866-42]で氷上で1時間標識した。プレートをスピンダウンし(300RCF、5分)、FACs緩衝液で2回洗浄し、製造業者の推奨に従ってCytofix緩衝液[BD Biosciencesカタログ番号554655]で固定し、分析のために取得する前にFACs緩衝液に再懸濁した。フローサイトメトリーデータを、最大10個の蛍光色素を用いてCantoIIフローサイトメーター(BD Biosciences)で得、FlowJoソフトウェア(TreeStar)を使用して分析した。MFIを決定し、式=100*(1-((刺激平均-化合物ウェル(対象の化合物処理ウェルの生データ))/(刺激平均-未刺激平均)))によって定義される阻害%と共にグラフ化した。
【0490】
B細胞増殖及びサイトカイン産生
精製されたヒトB細胞を、ヒトサンプル取得のための施設プロトコルに従って、HemaCare(Northridge、CA)から購入した。細胞を製造業者のプロトコルに従って解凍した。精製されたB細胞を、10%FBS、2%ペニシリン及びストレプトマイシン、1%L-グルタミン、MEM非必須アミノ酸(NEAA)、並びにピルビン酸ナトリウム[ThermoFisher]を含有するDMEMと共に、384ウェル不透明壁プレート中で3×104個の細胞/ウェルで培養した。プレーティング後、B細胞をC192B30又は対照分子と共に4℃で30分間インキュベートした。30分のインキュベーション時間の後、抗IgM F(ab’2)(10μg/mL)[Jackson Immunoresearch laboratoriesカタログ番号109-006-129]及びCPG(0.3125μM)[Invivogenカタログ番号tlrl-2006-5]を、C192B30、対照分子、又は培地単独(刺激対照)を含有するウェルに添加した。同時に、抗IgM又はCPGを含有しない温培地を、刺激なし対照としてウェルに添加した。72時間後、50μLの上清を更なる分析のために別の384ウェルプレートに移し、-80℃で保存した。B細胞を含有する元のプレートを、製造業者のプロトコルに従って50μLのCellTiterGlo2.0[Promegaカタログ番号G9241]をウェルに添加することによって、増殖について直ちに分析した。次いで、サンプルを発光について分析した。簡潔には、プレートをオービタルシェーカー上に2分間置き、室温で10分間インキュベートし、次いで、PheraStar[BMGLabTech]上で発光について記録した。次に、先の工程で保存した上清も、製造業者のプロトコルに従ってMSD[MesoScale Diagonsiticsカタログ番号K151TXK]を介してIL-6産生について分析した。式=100*(1-((刺激平均-化合物ウェル(対象の化合物処理ウェルの生データ))/(刺激平均-未刺激平均)))によって定義されるように、増殖及びサイトカイン産生の両方についてパーセント阻害を計算した。
【0491】
インビボ有効性モデル
Janssen Pharmaceutical,LLC Institutional Animal Care and Use Committeeは、マウスを含む全ての実験手順を承認した。雌性NSG(NOD-scid IL2Rガンマnull)マウスを、6~12週齢でJackson laboratoryから入手した。マウスは、ヒトPBMC移入の1日前に全身照射を受けた。末梢血単核細胞(PBMC)を、HemaCare(Northridge、CA)を介して、ヒトサンプル取得のための施設プロトコルに従って購入した。細胞を製造業者のプロトコルに従って解凍した。PBMC濃度をRPMI-1640中で15×107/mLに調整し、注射前に氷上で短時間保存した。25-G×5/8-インチの1-ccツベルクリンシリンジを使用して、0.1ml(15×106個のPBMC)を、腹腔内(intra-peritoneum、IP)注射を介して腹腔内に注射する。ヒトPBMCの注射後、抗体をIP経路、アイソタイプ(5mg/kg)、C192B30(示された用量)、又はPBSで投与した。動物を臨床症状についてモニターし、体重をIACUCプロトコルに従って記録した。生着の7日後、動物を安楽死させ、心臓穿刺を行って、全血を採取した。遠心分離(17,000RCF、1分)後に血清を得た。血清を等分し、ヒト抗体産生の分析のために-80℃で保存した。ヒト抗体産生を、MilliPlexヒトアイソタイピング磁気ビーズパネル[Millipore Sigmaカタログ番号HGAMMAG-301k]を介して製造業者のプロトコルに従って測定した。マウス血清の希釈物を1:100希釈で使用した。
【0492】
実験結果
CD22×CD79b二重特異性抗体の非枯渇能力を調べるために、実験を行った(
図1)。PBMCを、培地単独、CD22×CD79b二重特異性抗体(C192B30、配列番号1~6及び9~14のCDRを含む)、CD22×アイソタイプ二重特異性抗体(C192B36)、アイソタイプ×CD79b二重特異性抗体(C192B2)、又は抗CD20枯渇mAbと共に48時間培養した。48時間後、細胞を生細胞(Zombie Dye Aqua)、T細胞(CD3)、及びB細胞(CD22、CD20、CD19)について染色した。次いで、b細胞のパーセントを、培地単独ウェルと比較して計算した。
図1に示されるように、二重特異性抗体は、いずれの二重特異性フォーマットにおいてもB細胞の枯渇をほとんど又は全く有さなかったが、抗CD20枯渇mAbの陽性対照は、PBMCにおけるB細胞の有意な減少を示した。
【0493】
B細胞近位シグナルを調べるための実験も行った(
図2)。B細胞近位シグナル(p-Syk、p-PLCγ2)は、CD22×CD79b二重特異性抗体によって阻害された。精製されたB細胞を、刺激前に以下のものと共に30分間培養した:培地単独、CD22×CD79b二重特異性抗体(C192B30、配列番号1~6及び9~14のCDRを含む)、CD22×アイソタイプ二重特異性抗体(C192B36)、及びアイソタイプ×CD79b二重特異性抗体(C192B2)。30分が経過した後、B細胞を抗IgM F(ab)’2(20μg/mL)で刺激して、FcγR結合に関与している可能性があるあらゆる交絡因子を回避した。次いで、B細胞を所定の時点(0、5、8、10、15及び30分)で固定した。固定後、細胞を、B細胞受容体(BCR)複合体の下流リンタンパク質シグナル伝達分子(p-Syk、p-PLCγ2)について染色した。
図2のデータは、CD22×CD79b二重特異性抗体が、刺激対照又はアイソタイプ対照アーム対照と比較して、p-Syk及びp-PLCγ2を阻害することによって、BCR複合体を介してシグナル伝達するB細胞の能力に有意に影響を与えたことを示す。
【0494】
増殖及びサイトカイン分泌のB細胞遠位リードアウトを調べるための実験も行った(
図3)。B細胞遠位リードアウト(増殖、サイトカイン分泌)は、CD22×CD79b二重特異性抗体によって著しく阻害された。精製されたB細胞を、刺激前に以下のものと共に30分間培養した:CD22×CD79b二重特異性抗体(C192B30、配列番号1~6及び9~14のCDRを含む)、CD22×アイソタイプ二重特異性抗体(C192B36)、及びアイソタイプ×CD79b二重特異性抗体(C192B2)。30分後、B細胞を相乗用量の抗IgM F(ab)’2(2.5μg/mL)及びCPG(0.3125μM)で刺激した。
図3に示されるように、CD22×CD79b抗体は、アイソタイプ対照アームと比較して、BCR+TLR刺激に応答してB細胞増殖を著しく低減させることができた。更に、B細胞IL-6産生は、著しく影響を受けたが、ここでもアイソタイプ対照アームは、ほとんど又は全く効果を示さなかった。
【0495】
IgM抗体産生を調べるための実験も行った(
図4)。CD22×CD79b二重特異性抗体は、NSG-ヒトPBMC移入モデルからのIgM抗体産生をインビボで阻害した。ヒトPBMCを、照射された免疫不全マウス-NSG(NOD-scid IL2Rガンマ
null)に移入した。次いで、マウスを、様々な用量のCD22×CD79b二重特異性抗体(配列番号1~6及び9~14のCDRを含む;0.2mg/kg、1mg/kg、及び5mg/kg)又はアイソタイプ対照抗体(5mg/kg)で処理した。次いで、細胞を7時間生着させた。この間に、B細胞は、ヒト抗体をインビボで産生し始めた。7日後、動物を屠殺し、フローサイトメトリーのための脾細胞、及び分析のために血清を採取した。血清は、対照(PBS及びアイソタイプ)と比較して、CD22×CD79b二重特異性抗体で処置した5mg/kg群においてヒトIgMの有意な低減を示した。
【0496】
(実施例2)
ステープルされたCD22×CD79b scFv結合分子を開発した。表5~7に提供される配列に示されるように、二重特異性抗体は、Fc受容体との相互作用を低減させるための、両方のFcドメインにおけるL234A、L235A、及びD265S(AAS)の変異、並びに分子の半減期を延長するための、両方のFcドメインにおけるM252Y、S254T、T256E(YTE)の変異を特徴とする。二重特異性抗体のヘテロ二量体化は、ノブ・イントゥ・ホール(knobs-into-holes)プラットフォーム変異を使用することによって増強された。具体的には、CD79b結合アームは、「ノブ」(T366W)FcドメインのN末端上に融合されたscFvを含み、CD22結合アームは、「ホール」(T366S、L368A、及びY407V)FcドメインのN末端上に融合したFabを含む。更に、CD22結合アームは、プロテインA結合を破壊するための「RF」変異(H435R及びY436F)を含む。
【0497】
実施例1で使用された二重特異性分子と比較して、CD79b結合アームのステープリング(
図5)は、配列番号82のアミノ酸配列を有するステープルされたscFvにおいて示されるように、VH、VL、及びリンカー領域におけるアミノ酸変化を誘導することによって達成された。ステープルされた二重特異性抗体(spFv)は、配列番号79、配列番号83、及び配列番号84のアミノ酸配列を含む。
【0498】
実験方法及び結果を以下に記載する。
【0499】
凝集実験
30kDa MWCO膜を有するAmicon遠心限外濾過装置を使用して、分子の高濃縮を達成した。最初に、各タンパク質のアリコートを同じ出発濃度に希釈し、10分間隔で、4000×gで遠心分離した。各10分間の遠心分離段階の終了時に、濃縮器を遠心分離器から取り出し、残りのサンプル体積の視覚的推定値を記録した。以下の結果のうちの1つが達成されるまで、全てのサンプルについて濃縮工程を繰り返した:(1)サンプルが標的濃度に基づく標的体積(例えば、30mgの初期タンパク質に対して200μL)に達した、及び(2)サンプルが溶液から沈殿した。
【0500】
遠心分離プロセスの終了時に、濃縮サンプルを回収し、勾配分光法を使用してタンパク質含量を決定した。次いで、最大に濃縮されたタンパク質のアリコートを所定の中間濃度(例えば、50及び100mg/mL)に希釈した。次いで、サンプルを、それらの様々な濃度状態で、4℃、25℃、及び40℃で2週間保存した。凝集を分析SECによって決定し、濃度及び保存温度によって定義されたサンプルの各々を、分析直前に1mg/mLに希釈した。
【0501】
図5に示されるように、ステープルの導入は、全ての温度及び濃度で、高分子量凝集体の形成をほぼ完全に排除した。
【0502】
B細胞増殖及びサイトカイン産生
精製されたヒトB細胞を、ヒトサンプル取得のための施設プロトコルに従って、HemaCare(Northridge、CA)から購入した。細胞を製造業者のプロトコルに従って解凍した。精製されたB細胞を、10%FBS、2%ペニシリン及びストレプトマイシン、1%L-グルタミン、MEM非必須アミノ酸(NEAA)、ピルビン酸ナトリウム[ThermoFisher]及び0.05mMβ-メルカプトエタノールを含有するDMEMと共に、384ウェル不透明壁プレート中で3×104個の細胞/ウェルで培養した。プレーティング後、B細胞を、WT((1)両方のFcドメインにおけるL234A、L235A、及びD265S(AAS)、(2)CD79b Fcドメインにおけるノブ(T366W)及びCD22Fcドメインにおけるホール(T366S、L368A、及びY407V)、並びに(3)CD22 FcドメインにおけるH435R及びY436F(RF)を有する、ステープルされていない対照分子)、YTE(WTと同じであるが、両方のFcドメインにおいてM252Y、S254T、及びT256E(YTE)を更に有する)、及びステープルされたYTE(YTEと同じCDR及びFc変異であるが、ステープルされたscFvを有する)分子を4℃で30分間インキュベートした。30分間のインキュベーション時間の後、抗IgM F(ab’2)(10μg/mL)[Jackson Immunoresearch laboratoriesカタログ番号109-006-129]又は抗IgM F(ab’2)(2.5μg/mL)及びCPG(0.3125μM)[Invivogenカタログ番号tlrl-2006-5]をウェルに添加するか、又は培地のみ(刺激対照)を添加した。同時に、抗IgM又はCPGを含有しない温培地を、刺激なし対照としてウェルに添加した。72時間後、50μLの上清を更なる分析のために別の384ウェルプレートに移し、-80℃で保存した。B細胞を含有する元のプレートを、製造業者のプロトコルに従って50μLのCellTiterGlo2.0[Promegaカタログ番号G9241]をウェルに添加することによって、増殖について直ちに分析した。次いで、サンプルを発光について分析した。簡潔に言うと、プレートをオービタルシェーカー上に2分間置き、室温で10分間インキュベートし、次いで、PheraStar[BMGLabTech]上で発光について記録した。次に、先の工程で保存した上清も、製造業者のプロトコルに従ってMSD[MesoScale Diagonsiticsカタログ番号K15067L]を介してIL-6産生について分析した。式=100*(1-((刺激平均-化合物ウェル(対象の化合物処理ウェルの生データ))/(刺激平均-未刺激平均)))によって定義されるように、増殖及びサイトカイン産生の両方についてパーセント阻害を計算した。
【0503】
B細胞活性化マーカー発現
PBMCを、ヒトサンプル取得のための施設プロトコルに従って、HemaCare(Northridge、CA)から購入した。細胞を製造業者のプロトコルに従って解凍した。PBMCを、10%FBS、2%ペニシリン及びストレプトマイシン[ThermoFisher]を含有するRPMIと共に、96ウェルプレート中で、3×105個の細胞/ウェルで培養した。プレーティング後、PBMCを分子と共に4℃で30分間インキュベートした。30分間のインキュベーション時間の後、抗IgM F(ab’2)(10μg/mL)[Jackson Immunoresearch laboratoriesカタログ番号109-006-129]をウェルに添加した。対照ウェルでは、抗IgMを含有しない培地を刺激なし対照としてウェルに添加した。24時間後、細胞をPBSで洗浄し、Fixable Viability Dye eFluo 506(Ebioscience)と共に氷上で30分間インキュベートした。次いで、細胞をFACs緩衝液(1%FBS及び1mM EDTAを含むPBS)で洗浄し、続いて抗CD20-PE[クローン2H7 Biolegend、カタログ番号302348]、抗CD69 AF700[クローンFN50 Biolegend、カタログ番号310922]、及び抗CD83 APC/Cy7[クローンHB15 Biolegend、カタログ番号305330]を用いて、4℃で30分間、製造業者の推奨濃度に従って表面染色した。プレートをスピンダウンし(300RCF、5分)、FACs緩衝液で2回洗浄し、次いで製造業者の推奨に従ってCytofix緩衝液[BD Biosciencesカタログ番号554655]で固定した。次いで、細胞を分析のために取得する前にFACs緩衝液に再懸濁した。フローサイトメトリーデータを、CantoIIフローサイトメーター(BD Biosciences)で得て、FlowJoソフトウェア(TreeStar)を使用して分析した。細胞を、生細胞、リンパ球、及びCD20陽性B細胞上でゲーティングした。活性化マーカーCD69又はCD83を発現するB細胞のパーセンテージを決定した。式=100*(1-((刺激平均-薬物処理ウェル(対象の薬物処理ウェルの生のデータ))/(刺激平均-未刺激平均)によって定義される阻害パーセント。
【0504】
実験結果
CD22×CD79b二重特異性抗体は、増殖及びサイトカイン産生のB細胞遠位リードアウトに影響を与えた(
図6)。B細胞遠位リードアウト(増殖、サイトカイン分泌)は、ステープルされたCD22×CD79b二重特異性抗体によって強く阻害された。精製されたB細胞を、刺激前に以下のものと共に30分間培養した:CD22×CD79b二重特異性抗体、CD22×アイソタイプ二重特異性抗体(C192B36)、及びアイソタイプ×CD79b二重特異性抗体(C192B2)。次いで、30分間のインキュベーション後、B細胞を相乗用量の抗IgM F(ab)’2(2.5μg/mL)及びCPG(0.3125μM)で刺激した。
図6に示されるように、CD22×CD79b抗体(WT、YTE、ステープルされたYTE)は、アイソタイプ対照アームと比較して、BCR及び+TLR刺激に応答してB細胞増殖を著しく低減させることができた。更に、WT、YTE、及びステープルされたYTE分子の存在下でのIL-6のB細胞IL-6産生は、減少したが(
図6)、ここでもアイソタイプ対照アームは、ほとんど又は全く効果を示さなかった。
【0505】
B細胞活性化に対するCD22×CD79b二重特異性の影響を調査するために、末梢血単核細胞(PBMC)アッセイにおいて実験を行った。CD22×CD79b二重特異性抗体は、活性化マーカーCD69及びCD83の発現の減少によって実証されるように、B細胞活性化を減少させた。抗IgM F(ab)’2(10μg/mL)の添加前に、WT及びステープルされたYTE、又はアイソタイプ×CD79b二重特異性抗体(C192B2)と共に、PBMCを30分間プレインキュベートした。
図7に示されるように、CD22×CD79b抗体(WT及びステープルされたYTE)は、アイソタイプ×CD79b二重特異性抗体と比較して、IgM BCR刺激に応答したB細胞活性化を低減させた。
【配列表】
【国際調査報告】