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特表2024-512037輸送流体中の現在のグルコース値を判定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-18
(54)【発明の名称】輸送流体中の現在のグルコース値を判定する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20240311BHJP
【FI】
A61B5/1455
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558402
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 DE2022200052
(87)【国際公開番号】W WO2022199765
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】102021202767.9
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517276701
【氏名又は名称】アイセンス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】EYESENSE GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クルーゼ、 テレサ
(72)【発明者】
【氏名】グライヘン、 クヌート
(72)【発明者】
【氏名】クリヴァネク、 ローラント
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー、 アヒム
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK10
4C038KL07
4C038KM01
4C038KX01
(57)【要約】
本発明は、生物の輸送流体、特に血液中の現在のグルコース値を連続的に判定するための方法であって、
a)前記輸送流体を取り囲む組織内の時間的に離間した組織グルコース値について、センサを使用して少なくとも2つの測定値を含む一連の測定値を測定するステップと、
b)線形関数または非線形関数の形態の測定モデルに基づいて、前記センサの一連の測定値から測定ノイズ値を考慮して前記組織グルコース値を判定するステップと、
c)プロセスノイズ値を考慮して前記輸送流体中の現在のグルコース値を前記判定された組織グルコース値に割り当てるために使用される状態遷移モデルを提供するステップと、
d)線形関数の形態の測定モデルの場合はカルマンフィルタを使用して、または、非線形関数の形態の測定モデルの場合は拡張カルマンフィルタを使用して、前記提供された状態遷移モデルおよび前記判定された組織グルコース値の近似に基づいて、前記輸送流体中の前記現在のグルコース値を推定するステップと、を含む方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物の輸送流体、特に、血液中の現在のグルコース値を連続的に推定するための方法であって、
a)前記輸送流体を取り囲む組織内の時間的に離間した組織グルコース値について、センサを使用して少なくとも2つの測定値を含む一連の測定値を測定するステップ(S1)と、
b)線形関数または非線形関数の形態の測定モデルに基づいて、前記センサの一連の測定値から測定ノイズ値を考慮して前記組織グルコース値を判定するステップ(S2)と、
c)プロセスノイズ値を考慮して前記輸送流体中の現在のグルコース値を前記判定された組織グルコース値に割り当てるために使用される状態遷移モデルを提供するステップ(S3)と、
d)線形関数の形態の測定モデルの場合はカルマンフィルタを使用して、または、非線形関数の形態の測定モデルの場合は拡張カルマンフィルタを使用して、前記提供された状態遷移モデルおよび前記判定された組織グルコース値の近似に基づいて、前記輸送流体中の前記現在のグルコース値を推定するステップ(S4)と、
を含む方法。
【請求項4】
前記測定値が、少なくとも1つのフィルタ関数によってフィルタリングされ、
前記センサの誤差、特に、測定誤差が、前記フィルタ関数によって抑制されることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
生物の輸送流体、特に、血液中の現在のグルコース値を連続的に推定するための、特に請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の方法を実行するための装置であって、
一連の測定値を判定するように設計された、プローブ、特に、ポリマー光ファイバプローブによって組織を取り囲む前記輸送流体中の蛍光を測定するためのセンサであって、前記輸送流体を取り囲む前記組織内の組織グルコース値に対して時間的に離間した少なくとも2つの測定値を含む、センサと、
状態遷移モデルを提供するように設計された提供装置であって、前記状態遷移モデルが、プロセスノイズ値を考慮して、前記判定された組織グルコース値に前記輸送流体中のグルコース値を割り当てるために、また、線形関数または非線形関数の形態の測定モデルを提供し、それにより、測定ノイズ値を考慮して、前記測定モデルによって、前記センサの測定値が前記組織グルコース値に割り当てられるために使用される、提供装置と、
前記測定モデルに基づいて、前記一連の測定値を使用して前記組織グルコース値を判定するように、また、線形関数の形態の測定モデルの場合にはカルマンフィルタを使用して、または、非線形関数の形態の測定モデルの場合には拡張カルマンフィルタを使用して、提供された状態遷移モデルおよび前記組織グルコース値の近似に基づいて、前記輸送流体中の前記現在のグルコース値を推定するように設計された評価装置と、を含む装置。
【請求項17】
生物の輸送流体、特に、血液中の現在のグルコース値を連続的に推定するための評価装置であって、
一連の測定値を提供するためのセンサを接続するためのインターフェースであって、前記輸送流体を取り囲む組織内の組織グルコース値の異なる時間における少なくとも2つの測定値を含む、インターフェースと、
状態遷移モデルを記憶するためのメモリであって、前記状態遷移モデルが、前記状態遷移モデルによって判定された前記組織グルコース値を、プロセスノイズ値を考慮に入れて、前記輸送流体中のグルコース値に割り当て、線形関数または非線形関数の形態の測定モデルを記憶するために使用され、前記測定モデルが、測定ノイズ値を考慮に入れて、前記センサの測定値を前記組織グルコース値に割り当てるために使用されるメモリと、
前記記憶された測定モデルに基づいて、前記一連の測定値を使用して前記組織グルコース値を判定するように、また、線形関数の形態の測定モデルの場合にはカルマンフィルタを使用して、または、非線形関数の形態の測定モデルの場合には拡張カルマンフィルタを使用して、前記状態遷移モデルおよび前記組織グルコース値の近似に基づいて、前記輸送流体中の前記現在の前記グルコース値を推定するように設計されたコンピューティングデバイスと、を含む評価装置。
【請求項18】
コンピュータ上で実行されると、生物の輸送流体、特に、血液中の現在のグルコース値を連続的に推定する方法を実行させる命令を記憶するための請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の方法を実行するのに適した、不揮発性のコンピュータ可読媒体であって、
a)センサによって、前記輸送流体を取り囲む組織内の組織グルコース値についての少なくとも2つの時間的に離間した測定値を含む一連の測定値を測定するステップと、
b)線形関数または非線形関数の形態の測定モデルに基づいて、前記一連の測定値を使用して前記組織グルコース値を判定するステップであって、前記測定モデルが、測定ノイズ値を考慮して、前記センサの測定値を組織グルコース値に割り当てるために使用される、ステップと、
c)状態遷移モデルを提供するステップであって、前記状態遷移モデルが、プロセスノイズ値を考慮して、前記判定された組織グルコース値を使用し、前記輸送流体中のグルコース値が、組織グルコース値に割り当てられる、ステップと、
d)線形関数の形態の測定モデルの場合はカルマンフィルタを使用して、または、非線形関数の形態の測定モデルの場合は拡張カルマンフィルタを使用して、前記状態遷移モデルおよび前記組織グルコース値の近似に基づいて、前記輸送流体中の前記現在のグルコース値を推定するステップと、を含む不揮発性のコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物の輸送流体、特に、血液中の現在のグルコース値を連続的に判定する方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は、生物の輸送流体、特に、血液中の現在のグルコース値を連続的に判定するための装置に関する。
【0003】
また、本発明は、生物の輸送流体、特に、血液中の現在のグルコース値を連続的に判定するための評価装置に関する。
【0004】
さらに、本発明は、コンピュータ上で実行されると、生物の輸送流体、特に、血液中の現在のグルコース値を連続的に判定する方法を実行させる命令を記憶するための不揮発性コンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0005】
本発明は、輸送流体中の現在のグルコース値を判定するための任意の方法に適用可能であるが、本発明は、生物における血中グルコース濃度に関連して説明される。
【0006】
連続グルコースモニタリングのためのシステムは、CGM-連続グルコースモニタリングとしても知られており、生物、特に、ヒトにおける血中グルコース濃度BGを判定するために知られるようになった。
CGMシステムでは、間質組織グルコース濃度IGは、例えば、1~5分毎に自動的に測定される。
特に、糖尿病患者は、患者が1日に4~10回血中グルコース値を手動で判定する自己モニタリング処置SMBGとしても知られる自己モニタリング処置と比較して、測定を著しく高い頻度で行うことができるので、CGMシステムの恩恵を受ける。
これにより、患者が眠っている間に、自動評価および警告信号を患者に送信することが可能になり、患者の重大な健康状態を回避するのに役立つ。
【0007】
一方では、既知のCGMシステムは、電気化学プロセスに基づいている。
このようなCGMシステムは、例えば、国際公開第2006/017358号に記載されている。
さらに、光学CGMシステムは、例えば、グルコース値に依存する蛍光が使用され、参照により本明細書に組み込まれるドイツ特許出願公開第10 2015 101 847号明細書から知られるようになった。
どちらのタイプのCGMシステムも、間質組織グルコース濃度を測定する。
【0008】
組織グルコース濃度または間質グルコース濃度IGは、血中グルコース濃度(以下、BGと略す)とは異なることも知られている。
非特許文献Basu,Ananda他著の「Time lag of glucose from intravascular to interstitial compartments in humans」(Diabetes(2013):DB-131132)に記載されているように、例えば、食物または栄養の摂取を通じて、または、インスリンの投与時に、血中グルコースレベルに強い影響が生じた後に、大きなずれが存在する。
このずれは、血液を取り囲む組織における拡散プロセスによって引き起こされ、その結果、IG値は、BG値に時間遅れを伴って追従し、減衰され、これは、例えば、非特許文献Rebrin、Kerstin他著の「Subcutaneous glucose predicts plasma glucose independent of insulin:implications for continuous monitoring」(American Journal of Physiology-Endocrinology and Metabolism 277.3(1999):E561-E571)に記載されている。
【0009】
一方では、血液BGにおける、他方では、周囲の組織IGにおける、2つのグルコース濃度間で述べられる減衰および時間遅延に起因して、例えば、指から抽出された一滴の血液による血中グルコース濃度および一滴の血液中のグルコース濃度の手動判定を使用するCGMシステムの較正は、外部測定装置を使用して判定され、著しい不正確さをもたらす。
【0010】
しかしながら、CGMシステムの正確な較正を達成するためには、組織グルコース濃度と血中グルコース濃度との間の前述の差を考慮に入れるか、または、推定しなければならない。
このために様々な方法が知られるようになった。非特許文献Keenan、D.Barry他著の「Delays in minimally invasive continuous glucose monitoring devices:a review of current technology.」(Journal of diabetes Science and technology 3.5(2009):1207-1214)から、較正に時間遅延グルコースシグナルを使用することが知られている。
さらに、非特許文献Knobbe、Edward J.およびBruce Buckingham他著の「The extended Kalman filter for continuous glucose monitoring.」(Diabetes technology&therapeutics 7.1(2005):15-27)から、カルマンフィルタによる血液と組織との間のグルコースの拡散プロセスの減衰および時間遅延を補償することが知られている。
【0011】
しかしながら、ここでの問題は、現在のグルコース値の連続的な判定のためのモバイル装置が、限られたコンピューティングおよびエネルギーリソースを有することである。
現在のグルコース値を判定するために、限られたエネルギーと相まって比較的少量の計算能力しか利用できず、その結果、以前から知られている方法は、モバイル装置上で実行することができず、または、短時間しか実行することができず、その有用性は、大幅に制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2006/017358号パンフレット
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第10 2015 101 847号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Basu,Ananda他著「Time lag of glucose from intravascular to interstitial compartments in humans」(Diabetes(2013):DB-131132)
【非特許文献2】Rebrin、Kerstin他著「Subcutaneous glucose predicts plasma glucose independent of insulin:implications for continuous monitoring」(American Journal of Physiology-Endocrinology and Metabolism 277.3(1999):E561-E571)
【非特許文献3】Keenan、D.Barry他著「Delays in minimally invasive continuous glucose monitoring devices:a review of current technology.」(Journal of diabetes Science and technology 3.5(2009):1207-1214)
【非特許文献4】Knobbe、Edward J.およびBruce Buckingham他著「The extended Kalman filter for continuous glucose monitoring.」(Diabetes technology&therapeutics 7.1(2005):15-27)
【発明の概要】
【0014】
したがって、本発明の目的は、より少ないリソースおよびより簡単な実装で、血液中のグルコース値のより正確な判定を可能にする方法、装置および評価装置を特定することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、代替方法、代替装置、および、代替の評価装置を特定することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、間質組織グルコース濃度の測定値に基づく生物における血中グルコース濃度に関する改善された判定を伴う装置、および、評価装置を提供することである。
【0017】
本発明は、生物の輸送流体、特に、血液中の現在のグルコース値を連続的に判定するための方法によって、上述の目的を解決し、この方法は、
a)前記輸送流体を取り囲む組織内の時間的に離間した組織グルコース値について、センサを使用して少なくとも2つの測定値を含む一連の測定値を測定するステップと、
b)線形関数または非線形関数の形態の測定モデルに基づいて、前記一連の測定値から測定ノイズ値を考慮して前記組織グルコース値を判定するステップと、
c)プロセスノイズ値を考慮して前記輸送流体中の現在のグルコース値を前記判定組織グルコース値に割り当てるために使用される状態遷移モデルを提供するステップと、
d)線形関数の形態の測定モデルの場合はカルマンフィルタを使用して、または、非線形関数の形態の測定モデルの場合は拡張カルマンフィルタを使用して、前記状態遷移モデルおよび前記組織グルコース値の近似に基づいて、前記輸送流体中の前記現在のグルコース値を推定するステップと、を含む。
【0018】
さらに、本発明は、請求項1~請求項15のいずれか一項に記載の方法を実施するのに適した、生物の輸送流体、特に、血液中の現在のグルコース値を連続的に推定するための装置によって上述の目的を達成し、
一連の測定値を測定するように設計された、プローブ、特に、ポリマー光ファイバプローブによって輸送流体を取り囲む組織内の蛍光を測定するためのセンサと、
前記輸送流体を取り囲む組織内の組織グルコース値に対して時間的に離間した少なくとも2つの測定値と、
状態遷移モデルを提供するように設計された提供装置であって、状態遷移モデルが、プロセスノイズ値を考慮して、判定された組織グルコース値に輸送流体中のグルコース値を割り当てるために、また、線形関数または非線形関数の形態の測定モデルを提供するために使用され、センサの組織グルコース値からの測定値を提供する測定モデルが、測定ノイズ値を考慮して割り当てられる、提供装置と、
測定モデルに基づいて、判定された一連の測定値を使用して組織グルコース値を判定するように、また、線形関数の形態の測定モデルの場合にはカルマンフィルタを使用して、または、非線形関数の形態の測定モデルの場合には拡張カルマンフィルタを使用して、提供された状態遷移モデルおよび判定された組織グルコース値の近似に基づいて、輸送流体中の現在のグルコース値を推定するように設計された評価装置とを含む。
【0019】
さらに、本発明は、生物の輸送流体、特に、血液中の現在のグルコース値を連続的に推定するための評価装置で上述の目的を達成し、
一連の測定値を提供するためのセンサを接続するためのインターフェースであって、輸送流体を取り囲む組織内の組織グルコース値の少なくとも2つの測定値を含む、インターフェースと、
状態遷移モデルによって判定された組織グルコース値を、プロセスノイズ値を考慮に入れて、輸送流体中のグルコース値に割り当て、線形関数または非線形関数の形態の測定モデルを記憶するために使用され、測定モデルが、測定ノイズ値を考慮に入れて、センサの測定値を組織グルコース値に割り当てるために使用されるメモリと、
測定モデルに基づいて、一連の測定値を使用して組織グルコース値を判定するように、また、線形関数の形態の測定モデルの場合にはカルマンフィルタを使用して、または、非線形関数の形態の測定モデルの場合には拡張カルマンフィルタを使用して、状態遷移モデルおよび組織グルコース値の近似に基づいて、輸送流体中の現在のグルコース値を推定するように設計されたコンピューティングデバイスと、を含む。
【0020】
さらに、本発明は、コンピュータ上で実行されると、請求項1~請求項15のいずれか一項に記載の方法を実行するのに適した、生物の輸送流体、特に、血液中の現在のグルコース値の連続的な推定のための方法を実行させる命令を記憶するためのコンピュータ可読媒体によって上述の目的を達成し、
a)輸送流体を取り囲む組織内の時間的に離間した組織グルコース値について、センサを使用して少なくとも2つの測定値を含む一連の測定値を測定するステップと、
b)線形関数または非線形関数の形態の測定モデルに基づいて、前記センサ一連の測定値から測定ノイズ値を考慮して前記組織グルコース値を判定するステップと、
c)プロセスノイズ値を考慮して前記輸送流体中の現在のグルコース値を前記判定された組織グルコース値に割り当てるために使用される状態遷移モデルを提供するステップと、
d)線形関数の形態の測定モデルの場合はカルマンフィルタを使用して、または、非線形関数の形態の測定モデルの場合は拡張カルマンフィルタを使用して、状態遷移モデルおよび組織グルコース値の近似に基づいて、輸送流体中の現在のグルコース値を推定するステップと、を含む。
【0021】
すなわち、生物における血中グルコース濃度を推定する方法が提案されている。
これは、以下の手順ステップを有する。
【0022】
第1の方法ステップでは、測定値の連続が、1つまたは複数のセンサによって、生物の組織の間質組織グルコース値の時間的に離間した少なくとも2つのセンサの測定値で記録される。
【0023】
さらなるステップでは、センサの測定値と組織グルコース値との間の関係の測定値またはセンサモデルが提供され、組織グルコース値と血中グルコース値との間の関係のモデルを含む1つまたは複数の状態遷移モデルが提供される。
【0024】
さらなる方法ステップでは、生物の血中グルコース値が、状態遷移モデルおよび組織グルコース値の近似に基づく推定値によって定量化され、推定は、線形関数の形態の測定モデルの場合には、カルマンフィルタを使用して、または、非線形関数の形態の測定モデルの場合には、拡張カルマンフィルタを使用して実行されることが不可欠である。
【0025】
カルマンフィルタは、最小分散を有する不偏かつ一貫した推定器である。
これらの推定特性のために、カルマンフィルタは、最適な線形フィルタである。
同様に、最小二乗を最小化する他の(再帰的)線形推定器とは、対照的に、カルマンフィルタは、相関ノイズ成分に関する問題の処理を可能にする。
【0026】
拡張カルマンフィルタは、上述したカルマンフィルタの非線形拡張である。
拡張カルマンフィルタは、非線形関数に基づいて非線形問題を線形問題で解析的に近似する。
【0027】
この場合、評価装置は、例えば、行列のトレースなどの最適化された計算のために設計された、コンピュータ、集積回路などとすることができる。
装置および/または評価装置は、例えば、バッテリ、充電式バッテリなどの効率的な動作を維持する独立したエネルギー源を有するポータブル装置として設計することができ、したがって、バッテリ動作を可能な限り長く可能にするために、本発明の一実施形態による方法を実行するためのエネルギー消費を可能な限り少なくし、ユーザ体験を向上させる。
特に、省電力プロセッサ、回路、スイッチング回路、インターフェース、特に、無線インターフェースなどをこの目的のために使用することができる。
本方法の実施態様は、そのパラメータに関して、例えば、下にある装置または評価装置に関して、例えば、評価ホライズンおよび/またはノイズホライズン、ランダムサンプルの範囲、線形関数または非線形関数などに関して適合させることができ、これについては一方では、十分な精度を達成し、他方では、長い実行時間を達成するために以下で説明する。
【0028】
実施形態で達成することができる可能な利点の1つは、時間およびコンピュータリソースの観点から効率的な方法で輸送流体、特に、血液中の現在のグルコース値を推定できることである。
別の利点は、特定のセンサモデルおよび/または状態遷移モデルに制限がないため、既知の方法と比較して、柔軟性が大幅に向上することである。
さらなる利点は、現在のグルコース値の精度が高まるだけでなく、過去のグルコース値も同時に改善されることである。
【0029】
本発明の他の特徴、利点、および他の実施形態は、以下に記載されるか、または、それによって明らかになるであろう。
【0030】
本発明によれば、推定された現在のグルコース値の経時的な経過、特に、その経時的な変化率に応じて変化する複数の状態遷移モデルが提供される。
これは、現在のグルコース値の効率的かつ同時に正確な判定を可能にする。
【0031】
さらに、本発明によれば、少なくとも2つの状態遷移モデルが提供され、1つは、一定のグルコース濃度に基づき、1つは、グルコース濃度の一定の変化に基づき、および/または、1つは、以前のグルコース濃度の加重和に基づく。
これにより、状態遷移モデルをグルコース値の動態に基づいて適合させることができるため、現在のグルコース値を資源効率的な方法で判定することが可能になる。
これにより、グルコース値が上昇または下降するときに、血液中のグルコース値を過大評価または過小評価することが回避される。
【0032】
さらに、本発明によれば、測定値は、少なくとも1つのフィルタ関数によってフィルタリングされ、センサの誤差、特に、測定誤差は、少なくとも1つのフィルタ関数によって抑制される。
フィルタ関数を使用して、欠陥のある測定値、例えば、測定値のセンサエラーまたは外れ値を簡単な方法で選別することができ、すなわち、それらは、現在のグルコース値のさらなる計算では、考慮されない。
【0033】
さらに、本発明によれば、少なくとも1つの測定ノイズ値が、定期的に調整される。
これは、一方では、現在のグルコース値が十分に正確であることを確実にするために、他方では、現在のグルコース値の精度の向上に反映されない、または、わずかにしか反映されない不必要な調整または更新を回避するために、それぞれの測定ノイズ値が効率的に、特に、規則的な間隔で調整されることを確実にする。
【0034】
さらに、本発明によれば、少なくとも1つの測定ノイズ値を適合させるために、測定ノイズ値の分散が測定値のランダムサンプルを使用して判定され、特に、分散が推定される。
これに関する可能な利点は、測定ノイズ値を効率的に調整できることである。
【0035】
さらに、本発明によれば、統計的検定、特に、Kolmogorov-Smirnov検定を使用して、帰無仮説(ランダムサンプルが測定ノイズ値の判定された分散を有する平均自由ガウス分布に従う)が棄却されないかどうかがチェックされる。
可能な利点の1つは、測定ノイズ値を簡単な方法で適合させることを可能にすることである。
【0036】
さらに、本発明によれば、帰無仮説が棄却される限り、測定値の少なくとも1つのさらなるサンプルについて測定ノイズ値の分散が判定される。
可能な利点は、測定ノイズ値を調整する効率的な方法であることである。
【0037】
さらに、本発明によれば、特にNISテストを使用して、少なくとも1つのフィルタ関数を使用して測定値に外れ値がないかがチェックされ、外れ値として判定された測定値が破棄される。
可能な利点は、現在のグルコース値の判定の精度がさらに向上することである。
【0038】
さらに、本発明によれば、少なくとも1つのフィルタ関数が、指定された限界値を超えるおよび/または下回る測定値がないかをチェックするために使用され、その後、限界値を超えるおよび/または下回る測定値が破棄される。
これは、測定値に外れ値がないかをチェックする特に簡単な方法を表す。
【0039】
さらに、本発明によれば、少なくとも所定の数、特に時間的に連続する2つの以前の測定値が測定誤差として棄却された場合、外れ値として判定されなかった現在の測定値が、それにもかかわらず、測定誤差として棄却される。
これは、すべての条件または限界値が満たされたときにのみ終了したと見なされる測定システムの障害が想定されることを意味する。
これについて可能なメリットは、現在のグルコース値を判定する精度をさらに向上させることである。
【0040】
さらに、本発明によれば、状態遷移モデルは、輸送流体から周囲の組織へのグルコースの拡散プロセスに関する時間依存性モデリングのための拡散モデルを含む。
特に、拡散定数に基づく拡散モデルを使用すると、輸送流体、特に、血液中のグルコース値と組織グルコース値との間の減衰および時間遅延を簡単かつ計算集約度の低い方法でモデリングすることが可能である。
【0041】
さらに、本発明によれば、いくつかの以前の測定値が、「カルマン固定間隔平滑器」によってフィルタリングされる。
これについて可能なメリットは、過去の読み取り値が平滑化され、血中グルコース値の変化率が改善され、現在のグルコース値の読み取りが改善されることである。
【0042】
さらに、本発明によれば、「カルマン固定間隔平滑器」が使用される場合、それは、順方向および逆方向に実行され、順方向パスでカルマンフィルタリングが行われ、逆方向パスでRTSフィルタおよび/またはMBFフィルタが使用される。
これによって、「カルマン固定間隔平滑器」の効率的な適用が可能になる。
非線形測定モデルの場合、RTSフィルタまたは「拡張RTSフィルタ」によって、定常状態遷移モデルを使用するときの計算労力が低減される。
MBFフィルタによって、非定常状態遷移モデルの計算労力が低減される。
【0043】
さらに、本発明によれば、血糖濃度の傾向が、いくつかのカテゴリを使用して、特に、少なくとも7つのカテゴリを使用して分類される。
したがって、血糖の傾向または将来の経過を簡単かつ効率的な方法でユーザに表示することができる。
【0044】
本発明のさらなる重要な特徴および利点は、従属請求項、図面、および、図面に基づく図に関連する説明から生じる。
【0045】
上記の特徴および以下でさらに説明される特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれの場合で指定された組み合わせだけでなく、他の組み合わせで、または、単独でも使用できることは言うまでもない。
【0046】
本発明の実施形態が図面に示され、以下の説明においてより詳細に説明される。
方程式、仮定、解方法などのすべての変換ステップは、本発明の範囲から逸脱することなく別々に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の一実施形態による方法のステップを概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態によるカルマンフィルタおよびカルマン平滑器を使用した場合の血糖の経時的な経過を示す図である。
図3】傾向推定を伴う本発明の一実施形態によるカルマンフィルタおよびカルマン平滑器を使用した場合の血糖の経時的な経過を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、生物の輸送流体、特に、血液中の現在のグルコース値を特に連続的に判定して、線形関数の形態の測定モデルの場合は、少なくとも1つのカルマンフィルタの使用に基づいて、または、非線形関数の形態の測定モデルの場合は、少なくとも1つの拡張カルマンフィルタを使用して、血液中のグルコース濃度を判定する方法のステップを詳細に示す。
【0049】
この手順は、以下のステップを含む。
【0050】
第1のステップS1では、センサを使用して、輸送流体を取り囲む組織内の組織グルコース値について時間的に離間した少なくとも2つの測定値を含む一連の測定値を判定する。
【0051】
さらなるステップS2では、線形関数または非線形関数の形態の測定モデルに基づいて、判定された一連の測定値を使用して組織グルコース値が判定され、測定モデルは、少なくとも1つの測定ノイズ値を考慮して、センサの測定値を組織グルコース値に割り当てるために使用される。
【0052】
さらなるステップS3では、少なくとも1つの状態遷移モデルが提供され、少なくとも1つの状態遷移モデルは、少なくとも1つのプロセスノイズ値を考慮して、判定された組織グルコース値に輸送流体中の少なくとも1つのグルコース値を割り当てるために使用される。
【0053】
さらなるステップS4では、現在のグルコース値が、線形関数の形態の測定モデルの場合には、少なくとも1つのカルマンフィルタ、または、非線形関数の形態の測定モデルの場合には、少なくとも1つの拡張カルマンフィルタを使用して、少なくとも1つの提供された状態遷移モデルおよび判定された組織グルコース値の近似に基づいて推定される。
【0054】
本発明のさらなる実施形態を、図2および図3を参照して、異なるフィルタの使用、外れ値の識別なども参照して詳細に説明する。
それぞれの特徴は、全体的または部分的に互いに組み合わせることができる。
【0055】
以下、カルマンフィルタの適用について説明する。
【0056】
カルマンフィルタは、ガウス分布測定およびプロセスノイズを有する動的変数の推定器である。
さらに、各状態がその前の状態のみに依存するMarkov特性が必要とされる。
【0057】
任意の状態ベクトル
【数1】
は、システム行列F、前の状態ベクトルxおよび定義されたプロセスノイズwによるものである。
【0058】
【0059】
さらに、これは、測定ベクトル
【数2】
測定ノイズの共分散には、以下が適用される。
【数3】
フィルタは、第1の予測ステップおよび第2のイノベーションステップの2つのステップからなる。
【0060】
1)予測ステップ:
2)イノベーションステップ:
【0061】
組織糖の動態、すなわち、血管周囲の組織中の糖濃度の変化は、血液からのグルコースの拡散によって影響を受ける。
血糖動態のモデリングは、食物摂取またはインスリン濃度などの制御変数が知られていないため、不確実性を使用したモデリングによって実行される。
【0062】
簡単な可能性は、一定の血糖濃度を仮定して血糖をモデリングすることである。
【数4】
【0063】
次いで、血糖濃度の変化を、プロセスの不確実性wを用いてモデル化する。
摂食による血糖濃度の上昇やインスリンの投与/放出による低下などの外乱が血糖変化に影響すると仮定して、本発明の一実施形態では、一定の血糖変化に基づくモデルを用いて血糖濃度の変化を行う。
【数5】
および
【数6】
【0064】
外乱は、血糖変化のプロセス誤差wによってモデル化される。
【0065】
【数7】
をもたらす。
【0066】
プロセスノイズが無相関であり、ホワイトノイズが違反しているという仮定がある場合、モデルは、要件を再び満たすように拡張することができる。
現在のプロセスノイズ値が過去のプロセスノイズ値と相関する場合、マルコフ特性に違反する。
【0067】
血糖動態の説明では、血糖変化は、急激には起こらないが、血糖の低下や上昇が一定期間を越えると顕著になるため、このようなことになる。
【数8】
でもたらされる。
【0068】
本発明のさらなる実施形態では、血糖の動態は、次数pの自己回帰モデル(ARモデル)を使用して計算することができる。
【数9】
が行われる。
現在値は、以前の値の加重和によってモデル化される。
ここで、このモデリングは、各状態がその前の状態にのみ依存する状態のマルコフ特性によるカルマンフィルタの要件と矛盾することに留意されたい。
【0069】
【数10】
【0070】
定血中グルコース変化モデルに対応する。
【0071】
血液中の血糖の周囲組織への、次いで、組織からセンサへの拡散プロセスをモデル化するために、本発明の一実施形態では、血液から組織への、次いで、センサへのグルコースの拡散プロセスは、プロセスを直列回路として考慮することによって要約される。
【数11】
【0072】
これにより、センサ内のグルコースの濃度gおよび時定数τは、血液から組織液へのおよび組織液からセンサへのグルコースの拡散の時定数の和からなる。
【0073】
サンプリングΔtによる時間離散公式は、行列指数関数を以下に適用することによって得られる。
【数12】
【0074】
【数13】
【0075】
全体状態ベクトル
【数14】
【表1】
【0076】
組織グルコース値を判定するために、センサの測定値は、少なくとも1つの測定ノイズ値を考慮して、測定モデルを使用して線形関数または非線形関数の形態の測定モデルに基づく一連の測定値を使用して組織グルコース値に割り当てられる。
本発明の実施形態による、線形関数または非線形関数に基づく様々な測定モデルが、この目的のために利用可能である。
【0077】
線形測定モデルの場合、感度eおよびオフセットoを伴う。
【数15】
に基づく非線形測定モデルを使用する場合、拡張カルマンフィルタが使用される。
この目的のために、測定行列Hは、一次テイラー多項式
【数16】
によって近似することができ、式中、
【数17】
および
【数18】
である。
【0078】
連続する測定データ、いわゆる、連続するグルコースモニタリングデータ(略して、CGMデータ)から血糖を推定する際の1つの問題は、例えば、食物摂取またはインスリンの効果に起因する血糖の変化が、10分を超える時間遅延後に組織液においてのみ顕著になることである。
一方で、これは、生理学的理由によるものである。
他方で、組織液がセンサに拡散して測定されるまでには、さらなる時間が必要である。
結果として、血糖が増加すると、推定値は、最初に遅れ、次いで、組織糖にも変化がある場合、非常に急激に上昇し、これは、非生理学的挙動を表す。
【0079】
一定期間にわたって、食べた食物およびインスリンの投与に応じて、インスリンが効果を発揮するまで血糖は、ほぼ一定に上昇する。
この変化は、そこから血糖がほぼ一定の割合で減少するまで減少する。
健常者の場合、このプロセスは、身体の制御ループのために容易に予測することができる。
糖尿病患者の場合、これは、インスリンの投与、すなわち、特に、時点および有効時間などのインスリン特異的パラメータを知らずに判定することはできない。
【0080】
血中グルコース値の変化における別の変化は、インスリンが弱まると起こる。
また、この時点は、インスリンの量、作用持続時間などに関する追加の知識を用いてのみ判定することができる。
これにより、一定の血糖変化を伴う動的モデルが得られ、血糖が上昇すると血糖が有意に過大評価され、血糖が低下すると対応する過小評価がもたらされる。
【0081】
効果は、動的モデル間で制御された方法で変更することによって低減することができる。
【0082】
例えば、本発明の一実施形態では、特定のパラメータに応じて、プロセスノイズに起因する不確実性のモデリングを伴う一定の変化率(cROC)モデルと一定の血中グルコースモデル(cBG)との間で前後に切り替えることが可能である。
【数19】
【0083】
cBZ動的モデルは、事前定義可能な低血糖値BZに達しない場合、または、血糖濃度が上昇し(ROC>0)、血糖上限BZを超える場合に選択される。
【0084】
本発明の一実施形態では、血糖含有量の推定をさらに改善するために、平均値およびガウス分布がないと仮定される測定ノイズの連続的な調整が行われる。
これにより、異なるセンサ間の分散およびセンサの経年劣化を考慮に入れることが可能になる。
分散の調整または更新は、現在のグルコース値に関する推定の質の変化、特に、改善に直接つながる。
しかしながら、測定ノイズ値が過小評価される場合、これは、非常にノイズの多い測定信号をもたらし、誤った測定値をもたらす。
一方、測定ノイズ値の推定値が高すぎたり、プロセスノイズの推定値が低すぎたりすると、推定に時間遅れが生じ、現在のグルコース値の判定精度も低下する。
【0085】
本発明の一実施形態では、この目的のために分散の下限値が最初に判定される。
これは、物理的および技術的考慮から生じる測定システムの最小分散に対応する。
測定分散の初期値は、予想測定分散に基づいて設定される。
【0086】
測定ノイズ値の分散を判定するために、N個の測定値および関連するフィルタリングされた測定値からなる一連の測定値からのノイズが最初に計算される。
【数20】
これにより、測定値は、カルマン平滑器によってフィルタリングされる。
次いで、有意水準αでのコルモゴロー-スミルノー検定を使用して、サンプルが平均値
定分散σνが続く。
【0087】
分散は、名前付きサンプルのサンプル分散によってテスト結果から独立するようになり、
【数21】
となり、式中、dfは、フィルタリングの自由度の数である。
【0088】
コルモゴロー-スミルノー検定の帰無仮説が有意水準αで棄却されると、(次の)N個の測定値のノイズが判定され、帰無仮説がもはや棄却されなくなるまで分散がサンプルのサンプル分散に置き換えられる。
【0089】
別の実施形態では、測定値の外れ値が検出される。
いわゆる、「二乗正規化イノベーション値」、略して、NIS値(一貫性推定)を使用して、外れ値を検出することができる。
これは、「二乗正規化イノベーション」(NIS)をテストする
【数22】
であり、
この目的のために、特に、有意水準αでの片側χ検定
【数23】
が実行される(dim[z]=1およびα=0,05はr=7,88である)。
【0090】
モデルエラー、例えば、血糖上昇が組織シグナルにも現れる場合の強い増加も、限界値を超えることにつながる可能性があり、その結果、測定値は、NISテストによって外れ値として誤って認識される。
その後、これらの値は、カルマンフィルタを通してフィルタリングされるが、これは、必須ではない。
【0091】
したがって、本発明の一実施形態では、測定値が特定の限界値を下回った場合および/または超えた場合にのみ測定値が外れ値として識別されるように、測定信号をチェックすることもできる。
測定値のこのような外れ値は、例えば、温度の大きな変化によって顕著になる圧力変動によって引き起こされる誤った測定に基づいている。
【0092】
本発明の一実施形態では、いくつかの連続する誤った測定値も判定することができる。
【0093】
これらを識別するために、以下の手順を使用することができる。
if(i>1)
i=0;
break;
else if(measuredvalues(k)< lower_limit | measuredvalues(k)> upper_limit)
i=0;
continue;
else
i++;
break;
【0094】
これにより、モデル記述が悪いために測定値を不必要に選別したり、限界値条件を満たさないがカルマンフィルタの整合性が保証されている測定値を誤って選別したりすることがない。
これにより、それぞれの限界値の制限的な選択が可能になる。
言い換えれば、モデルの不確実性に起因して、外れ値として誤って分類された測定値の数を減らすことができる。
【0095】
本発明の一実施形態では、次の方法、すなわち、NIS外れ値検定が陰性であるが少なくとも2つの以前の測定値が測定誤差(i>1)として分類された場合、システムは、誤動作していると仮定され、限界値が満たされたときにのみ超過していると見なされる方法が使用される。
【0096】
本発明の一実施形態では、限界値条件が満たされるが、少なくとも2つの以前の測定値が測定誤差として分類された場合、現在の測定値が選別される。
これにより、緩和プロセスを考慮に入れることができる。
ただし、上記の方法によるカウンタiは、再び、0に設定される。
【0097】
本発明の一実施形態では、BG-IG動態を近似することによって、算術演算の数が削減される。
予測の共分散は、対称的であるため、9つのエントリのうち6つを判定すれば十分であり、これは、追加の算術演算を節約できることを意味する。
【0098】
本発明の一実施形態では、状態遷移行列、測定行列、ならびに、プロセスノイズおよび測定ノイズ値の共分散行列がある期間にわたって一定である場合、この場合には、予測の共分散行列が反対に収束するため、計算労力を低減することができる。
中間行列要素の変化が限界値を下回る場合、アルゴリズムは、状態および測定値予測ならびに更新された状態を計算することに縮小される。
このようにして、状態の予測ステップおよびイノベーションステップのみがステップごとに実行されなければならない。
【0099】
ここでは、いわゆる、「カルマン固定間隔平滑器」の形態の拡張カルマンフィルタは、過去の測定値をフィルタリングするために使用される。
【0100】
血中グルコースの変化率ROCを計算し、推定結果を改善する上での可能なメリットに加えて、過去の値をフィルタリングすることは、データをグラフ表示に使用できるというメリットも有することができる。
カルマンフィルタの測定ノイズ値に応じて、血糖信号は、比較的ノイズが多く、これは、非生理学的である(図2の曲線101)。
これは、パラメータのより控えめな設定、すなわち、測定ノイズ値の分散によってのみ、低減することができる。
しかしながら、これは、追加の時間遅延をもたらす。
しかしながら、カルマン平滑器を使用することにより、追加の時間遅延なしに滑らかな血糖信号(図2の曲線102)を提供することができる。
【0101】
「カルマン固定間隔平滑器」は、この間隔の測定値から、長さTの固定された過去の間隔における状態を推定する。
それらは、「ベイズ最適平滑化」方程式の解に基づいており、2パスフィルタからなり、順方向パスは、カルマンフィルタに対応する。
2パスフィルタの逆方向の実行における長さTの間隔における平滑化された状態の計算
記憶される。
【0102】
本発明の一実施形態では、Rauch-Tung-Striebel(RTS)平滑フィルタをこの目的のために使用することができる。
【0103】
RTSフィルタは、すべてのn-T<k<nについて計算される以下のフィルタ式、すなわち、
【数24】
【数25】
に基づき、
は、予測の現在の推定値および共分散に対応する。
【0104】
ある。
【0105】
さらなる実施形態では、拡張Rauch-Tung-Striebel(ERTS)平滑器を非線形測定モデルに使用することができる。
【0106】
さらなる実施形態では、Modified Bryson Frazier(MBF)平滑器を使用することができる。
これは、また、逆方向の実行における平滑化のために順方向の実行におけるカルマンフィルタの結果を使用する。
合、計算労力は、大幅に少なくなる。
【0107】
MBFフィルタに必要な計算ステップは、
【数26】
【数27】
【数28】
【数29】
【0108】
特に、MBFフィルタは、非線形関数の形態の測定モデルと共に使用することができる。
測定モデルは、一次テイラー多項式
【数30】
を使用して近似され、式中、
【数31】
および
【数32】
である。
【0109】
血糖を可能な限り正確に推定することは、較正ならびに医師によるデータの評価に関連する。
カルマン平滑器による血糖推定の最適化は、血糖のオーバーシュートおよびアンダーシュートを減少させ、これは、そうでなければ、高血糖状態および低血糖状態が著しく過大評価されるため、高血糖状態および低血糖状態の分析に関連する(図3参照)。
【0110】
血中グルコースデータの自己モニタリング、すなわち、血中グルコース自己測定SMBGを使用してシステム全体を較正する場合、推定誤差は、センサパラメータの識別不良につながるため、血中グルコース値の正確な推定も関連する。
例えば、SMBG値および対応する血中グルコース値の推定値を用いた1点較正の場合
る。
らす。
【0111】
カルマン平滑器をオンラインで使用すること、すなわち、データの既知の後処理と比較してカルマン平滑器を連続的に使用することの可能な利点の1つは、計算効率である。
カルマンフィルタの最後のT個の結果は、カルマン平滑器に必要である。
カルマン平滑器を使用する後処理の場合、これらは、再度判定されるか、または、完全に記憶されなければならない。
正規化されたアンフォールディングなどの他のよく知られた方法は、著しく計算コストが高い。
【0112】
例えば、食物摂取またはインスリンに起因する血糖レベルの変化の場合、すなわち、動的モデルが状態を変化させる時間が大まかにしか再現できない場合、結果としてより大きな推定誤差も生じる。
このデータを使用して、過去mΔt=10分にわたる平均血中グルコース変化を推定する。
【数33】
これは、非生理学的な値およびノイズの多い結果をもたらす可能性がある。
カルマン平滑器を使用した過去の値の改善された推定のおかげで、現在の血糖変化のより正確な推定を行うことができる。
血中グルコース値の変化ROCは、現在のKF血中グルコース推定値とフィルタリングされたKS血中グルコース値mサンプリングステップバックとの間の差から生じる。
【数34】
【0113】
現在の血糖変化は、矢印記号によってユーザに対して視覚化される。
分割は、例えば、5つまたは7つのグループで行われる(表および図3を参照)。
【表2】
【0114】
一方で、記録された測定値200を、図3に示す。
カルマンフィルタを使用する血中グルコースプロファイル201とカルマン平滑器を使用する血中グルコースプロファイル202との比較は、フィルタリングされた信号を使用する変化率ROCの推定によって、分類の改善または傾向の改善が可能になることを示している(図3の参照番号203を参照)。
分類203の上段は、血糖プロファイル201に基づいており、分類203の中段は、血糖プロファイル202に基づいており、下段は、測定値201に基づいている。
測定値201は、静脈血糖値を表す。
これらは、ここでは、YSI 2300 Stat Plusメータを使用して測定される。
段203における丸で囲まれた矢印は、カルマン平滑器とカルマンフィルタの比較を使用した傾向のより正確な分類を示す。
【0115】
要約すると、本発明の実施形態の少なくとも1つは、以下の利点および/または特徴のうちの少なくとも1つを提供する。
-拡散プロセスをモデル化し、線形関数の形態の測定モデルの場合は少なくとも1つのカルマンフィルタを使用して、または、非線形関数の形態の測定モデルの場合は少なくとも1つの拡張カルマンフィルタを使用して、少なくとも1つの提供された状態遷移モデルおよび判定された組織グルコース値の近似に基づいて現在のグルコース値を推定することによる、時間遅延の補償。
-測定信号における外れ値に対するロバスト性。
-ゆっくりと変化するモデルパラメータの適応。
-効率的な実装により低い計算労力での高い精度を保証。
-血中グルコースの時間および計算上効率的な推定。
-モデルパラメータの適応。
-制限を導入することによる推定のロバスト性の向上。
-測定モデルに関する柔軟性、例えば、線形センサモデルおよび非線形センサモデルの両方を使用することができ、必要に応じてこれらを切り替えることができる。
-限られたバッテリ寿命を保護するための低い計算労力。
-SMGB測定値に基づく改善されたシステム較正。
【0116】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、様々に変形することができる。
【符号の説明】
【0117】
101 ・・・血中グルコースカルマンフィルタ
102 ・・・血糖カルマン平滑器
200 ・・・読み取った測定値
201 ・・・カルマンフィルタを用いた血中グルコース値の経過
202 ・・・カルマン平滑器を用いた血中グルコース値の経過
203 ・・・分類/傾向
S1~S4 ・・・方法ステップ
図1
図2
図3
【国際調査報告】